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1956-02-15 第24回国会 衆議院 科学技術振興対策特別委員会 第3号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和三十一年二月十五日(水曜日)    午後一時五十一分開議  出席委員    委員長 有田 喜一君    理事 小笠 公韶君 理事 椎名悦三郎君    理事 長谷川四郎君 理事 前田 正男君    理事 岡  良一君 理事 志村 茂治君       加藤 精三君    小平 久雄君       須磨彌吉郎君    山口 好一君       岡本 隆一君    佐々木良作君       田中 武夫君  出席国務大臣         国 務 大 臣 正力松太郎君  出席政府委員         総理府事務官         (原子力局長) 佐々木義武君         防衛政務次官  永山 忠則君         防衛庁参事官         (装備局長)  久保 亀夫君         経済企画政務次         官       齋藤 憲三君         外務事務官         (条約局長)  下田 武三君         特許庁長官   井上 尚一君  委員外出席者         議     員 齋藤 憲三君         原子力委員会委         員       藤岡 由夫君         参  考  人         (東京大学教授、         徳川生物学研究         所長)     田宮  博君     ————————————— 本日の会議に付した案件  科学技術振興対策に関する件     —————————————
  2. 有田喜一

    有田委員長 これより会議開きます。  本日は、前会に引き続きまして、原子力行政に関し、正力国務大臣に対し質疑を続行いたしたいと存じますが、その前に、先日の委員会において決定いたしました科学技術振興の立場より、蛋白資源クロレラに関し、東京大学教授徳川生物学研究所長理学博士田宮博君より、参考人としてその意見を聴取することにいたします。田宮博君。
  3. 田宮博

    田宮参考人 クロレラと申しますのは、単細胞——一つ一つ細胞からなっておる藻類でございまして、その形は顕微鏡で見なければ見えないのでありますが、よく金魚ばちなんかをほうっておきますと、ほんのりと青くなります。あのほんのりと青くなるのが大てい、顕微鏡で見るとクロレラあるいはセネデスムスと呼ばれております緑の藻でございます。そういうのをひっくるめて単細胞緑藻と申しておるのでございます。戦後各国でもってその培養及び利用研究が盛んに行われるようになりました。昨年の秋にアメリカで開かれました太陽エネルギー利用国際会議におきましても、大きな問題としてそれが取り上げられたのでございます。  なぜクロレラが注目されておるかと申しますと、理由二つございます。一つは、発育が非常に旺盛であるということ、藻でありますから、やはり植物の一種でございますが、植物は、御存じのように、太陽エネルギー葉緑素でもって利用しまして、炭酸ガスと水とから有機物を作る。それが農業の根本になるプロセスでございまして、これを光合成といっております。この光合成能率が、普通の植物に比べましてけた違いにいいのでございます。それを数字でお目にかけますと、これは反当り、一年間の収量を比較したものでございますが、クロレラ成分と各植物成分を、蛋白質脂肪含水炭素灰分、またそれの持っているカロリーと大ざっぱに分けて比較した表でございますが、稲、小麦二毛作、これは水田で二毛作をやった場合、それから大豆小麦を畑でもって二毛作をやった場合、これで比較しますと、ここにごらんになるような大きな開きがございます。特にこのクロレラ乾燥物の五〇%——少し内輪に見積っていいますれば、四〇%から五〇%ぐらいが蛋白質でございまして、蛋白質では、この稲と小麦二毛作の五十倍という非常な違いでございます。それから脂肪もこの通り百倍でございます。含水炭素クロレラには比較的少いのでございまして、二〇%くらいしか含まれておりません。稲や小麦は、含水炭素澱粉、その他のものが多いのでございますが、この開きになりますと、幾らか少くて、四倍くらいでございます。それからいろいろな灰分は、ごらん通りの著しい開きがございますし、カロリーにいたしましてもこの通り二十倍くらいの違いがあるわけでございます。これは成分に分けた値でございますが、この収量というものは、私ども研究所でもって実際にその発育速度をはかって計算した値でございまして、反当りにいたしますと、反当りお米が三石といたしますと、三十石の収量になります。そうして特にこの蛋白質におきまして、著しい懸隔があるわけです。そういうふうに蛋白質の量が非常に多いものでございますからして、各国で考えておりますのは、クロレラ蛋白源にしたらどうかということでございます。今、霞ケ浦面積——霞ケ浦に飼うというわけではございませんが、霞ケ浦面積に等しい場所クロレラを飼ったといたします。日本人口を一億として、一人々々にどれだけの蛋白質が供給できるかということを計算してみたのです。一方それと比較するために、国内生産されております大豆——これも日本人にとっては重要な蛋白源でございますが、これと比較してみた表でございます。霞ケ浦面積は二万町歩弱、一万九千町歩でございますが、これに対しまして、大豆国内生産に使われております面積は四十二万町歩、二十倍以上の面積大豆国内生産のために使われておるのです。そこからできる年間の生産量は、クロレラの場合は百二万トンでございますが、大豆は四十三万トン、二十倍の面積を使って半分しか乾物はできておりません。その蛋白生産量にしますと、こういう値になります。人口一億といたしまして、日本人一人に供給し得る蛋白の量は、大豆の方は四・七グラムに対しまして、十二グラムでございます。大豆に使われておる面積の二十分の一でもって、この程度生産ができるのでございます。  それからもう一つクロレラが注目されます理由は、その栄養価でございます。これは昨年の太陽エネルギー利用国際会議に、ドイツフィンクという博士が発表いたしまして、大きいセンセーションを起こした結果でございます。これは先ほど申しましたクロレラにごく近いセネデスムスというやはり単細胞緑藻を使って、ネズミ実験動物といたしまして、その蛋白栄養価を調べたのであります。比較しようとする蛋白以外に、澱粉、それからビタミン源としまして少量の酵母、それから肝油、それから少量の塩類を与えます。蛋白源としては、藻類蛋白をおもに、あるいはそれと比較するために肝胆粉乳、あるいは卵白を用いまして実験したのであります。これはたくさんの実験動物を使って体重増加を二百四十日間にわたって調べて、その平均値をここへ出したのでございますが、セネデスムスという緑藻を与えた場合にこういうカーブに対して、卵白を与えたのはこれだけ、それからこの実験では、粉乳を与えたのはここで実験を中止いたしております。それは卵白を与えた場合も、それから粉乳を与えた場合もしばしば起る病気でございますが、肝臓壊疽——肝臓ネフローゼといわれておる病気がございますが、それでもってこの場合には全部倒れてしまったのであります。別の実験では、ずっと先までいっておりますが、いずれにしましても、この藻体食餌に比べまして、こちらの方は、卵白にしても脱脂粉乳にしても劣っております。緑藻を与えた場合には、肝臓壊疽は全然起っておりません。これは非常に著しい事実でございます。先ほどお何しいたしましたパンフレットは、フィンク博士の報告を翻訳したものでございまして、詳しいことはそれをごらんいただきたいと思います。ここではごく代表的なデータを二つだけ持って参りましたが、これは先ほどと同じような実験でございます。藻体のほかに、ホーレンソウだとか、下水処理液で飼った藻体ムラサキウマゴヤシ、これはアメリカで家畜の飼料に盛んに使われておりますアルファルファという植物ですが、これは非常に悪いのでございます。それに比べて、藻体は一番体重増加量がよろしゅうございます。このほかにも幾つ実験をやりましたが、肝臓壊疽が起った例は皆無でございます。これに対しまして、粉乳だとか卵白を与えた場合、あるいはそのほかにもイーストだとか、いろいろなものを使っておりますが、肝臓壊疽が起っております。  もう一つ注目すべきことは、このフィンク博士は、これまでいろいろなものを、植物性のもの、あるいは動物性のもの、また植物性でもイーストだとかカビだとか、そういう微生物蛋白栄養価を、十数年にわたって研究してきた人でございますが、これまで粉乳蛋白よりも結果が上回った例は一つもなかった。この藻体が、初めてそういういい結果を出したということ、それから食餌を与えまして、ネズミ実験は十分量与えておくわけです。食欲によって、少ししか取らない場合もありますし、非常によく取る場合もありますが、食餌の摂収量——要するに嗜好性のようなものでございますが、これはこれまでの経験では、粉乳を与えた場合が一番よかったのに、粉乳よりも藻体が入っておる方が、たくさん取られたそうでございます。毎日平均粉乳が九取られたのに対して、十二という大きな量を三〇%も上回るようなたくさんの量をネズミはとっております。ネズミにとっては、水の中にはえている藻なんかを食べた経験はないし、また先祖も食べたとは思えないのに、どうしてそんなに好んで食べたのか、非常におもしろいことだと言っております。これは、従来フィンク博士がいろいろな微生物及び植物——バレイショなんかの蛋白質栄養価を、ミルク蛋白と比較した結果を一つにまとめたものでございます。ミルク蛋白を使った場合の体毛の増加量を一〇〇といたし、ほかのものを比較してみますと、たくさんの実験で、藻体を与えた場合は、一〇八でございます。ミルクを少し上回っておりますが、ほかのものはビール酵母にいたしましても、近ごろ問題になっております木材糖化液で飼った酵母、というのは、非常にいい植物性蛋白質といわれておりますが、それなどは三三という低い値でございます。中で比較的いいのは、ケフィールというものでございます。これは中央アジアで馬の乳をチーズのように発酵さしたものでごございまして、カビイースト、おもに酪酸菌、バクテリア、そういうものがはえて、チーズ状になったものでございますが、それは割合いいのであります。これはミルクバクテリア蛋白が入っております。これは九〇くらい、それに比べまして、この藻体はこんなにいい結果を出しております。そういうふうな点が、このセネデスムスあるいはクロレラが非常に注目されるおもな理由でございます。  そこで、こういうふうに栄養価がいいということはわかりましたが、果して食ってうまいものであるかどうか。酵母というのはあの程度栄養しかございませんが、ドイツでは、昔から酵母を食糧化しようというので、相当工業化されております。工業的生産が実現されております。フィンク氏の論文によりますと、第二次大戦のときに、工業的に作られた酵母をわれわれは食わされたけれども、どうしてもうまく料理ができなかった、のどを通らなかったということを書いております。栄養価とそれのおいしさ、嗜好性というものは、決して並行するものではないのでございます。ここに少しサンプルを持って参りました。召し上ってもけっこうでございます。これはわれわれの研究所培養いたしましたクロレラ乾燥したものでございますが、乾燥の操作によりまして、少しにおいや味が違います。二つサンプルを持って参りましたが、この乾燥方法は、片方赤外ランプを照らして乾燥したものでございます。片方脱脂粉乳なんかをかわかす場合の、いわゆるスプレー乾燥でかわかしたものでございます。赤外線でかわかした方は、緑茶青ノリの間のような味でございます。こちらの方は、それほど特徴的な味はございませんが、とにかく私どもも、ビタミンをとるために、「エピオス」とか「わかもと」なんか食べておりますが、イーストなんかよりは感じのいい味でございます。いろいろなものにまぜて試食してみました。たとえば、おそばに入れるとか、せんべいに入れるとか、ようかんに入れるとか、そのままスープの中にまぜてみるとか、いろいろなことをやってみました。その色はすべて葉緑素の色でございます。非常に葉緑素の含量が高うございまして、乾燥量平均四・五%は葉緑素でございます。その色は、食事にまぜるときにいい面もございますし、悪い面もございます。ほんのり青色がつくことは、おもしろいことなのでございますけれども、たくさん入れますと暗緑色になりまして、おそばなんかに入れると、まつ黒なおそばができてしまって、栄養価は十分でしょうけれども、見たところあまり食欲を催さないような外観になります。どんな色でもいい食い物というと、キャンデーのようなもの、あるいはようかんのようなもの——ようかんなんかはまっ黒なものでもいいので、ようかんには非常にたくさん入ります。嗜好性の問題は、われわれの研究は、単にしろうとがいろいろなものに入れてみた程度でありまして、今後その方面の専門家にいろいろ工夫をしてもらえば、特に日本人のように藻類だとか、緑茶のようなもの、ああいうふうな味に新しみのある国民には、食物の中に導入することは、そうむずかしいことではないと私は考えております。  そこで、これをどう培養するかという問題でございます。培養に必要な条件といたしまして、培養に必要な条件光合成でございますから、どうしても日光が要ります。これを人工的な電球なんかで照らしてやりますと、相当磁力がかかります。計算してみると、とても不経済なものであります。どうしても日光利用することが望ましい。それから炭酸ガスを吹き込んでやることによって、発育速度が非常に増すのでございます。炭酸ガスを与えなくてもはえますけれども、それでは普通の栽培植物発育速度あまり懸隔がなくなりまして、クロレラのいいところがなくなる。それから栽培植物に必要な無機の要素、これは窒素源、それからマグネシウムだとかカリウムだとか燐酸、そういった肥料は一わたり要ります。しかし畑で麦や稲をいたします場合は、そういう肥料を与えましても、ずいぶんたくさんなパーセンテージが雨で流されたり、むだに失われたりいたしますけれども、このクロレラの場合には、そういう損失はほとんど無視できる程度です。ですから、与えたものはほとんどすべてむだなく利用されるのであります。  それからもう一つ重要な条件は、攪拌することでございます。先ほど申しましたように、水の中にサスペンドしてはえるものでありますから、培養が濃くなりまして、つまり液体の中にたくさん細胞がふえて参りますと、底の方まで光が行きわたりませんで、そのまま置いておきますと、全然日の目を見ない、つまり光合成をやらないでいるのが出て参り、発育能率が悪くなります。ときどきそれを上の方に起してやる必要があります。攪拌をやることによって、その発育能率を高める。こういう条件が必要なのでありまして、これを実現するためにいろいろな方法が提案されております。最初アメリカ人がやりましたのは、閉鎖式循環法という方法でございまして、これはレーンコートなどに使われております透明な薄いプラスチックのシートなんかで管を作ります。ああいうやわらかいものですから、置きますとぺたっとなりますが、その中をクロレラ培養を流す。いろいろな方法がありますが、こっちからこっちへ流して、また次はこちらからこっちへ戻すというような方法でとにかく流しまして、そして、透明ですから、太陽の光が上からきますし、それから炭酸ガスを含んだ空気をその上を通すようにします。これはわれわれもアメリカにならってやってみました。とにかく閉鎖したものでございますから、夏、非常に熱くなるのであります。ごらん通りに、まつ黒い液体になって流れますから、太陽エネルギー赤外線を吸収いたしまして、どんどん温度が上りましてそれを冷やさなければクロレラは死んでしまいます。その冷やすということがなかなかめんどうでございまして、小さいスケールでやります場合はできますけれども、大きく工業的にやる場合は、この方法はだめだという結論を私どもは下したのでございます。それから、第二の方法は、開放式通気法という方法でございましてこれは要するに浅い池で、カバーをかけないで開放してあるわけです。その池の底に何本かの管、パイプが通っておりましてそのパイプに小さな穴がたくさんあいておる。その穴から炭酸ガスを含んだエアをぶくぶく吹き出す。吹き出すことによって攪拌をし、かつ炭酸ガスを供給するという方法でございます。これは、第一の方法のように、過熱をする心配はございません。一年間を通じてわれわれもドイツ方法を少し改良いたしましてやってみました。ところが、実際にやってみますと、攪拌が十分ではありませんし、それから空気を通すエネルギーが相当の量になります。それから炭酸ガスのロスがべらぼうに多いのでございます。これもいけない。  そこで、私どものところで始めてみましたのは、開放式循環法という方法でございます。これは、小さい写真でございますがお回しいたしましたが、最初にやりましたものは、浅いまるい池でございまして、まん中に小さい島がある。その島に軸がありまして、そこから管が二本出ております。それが回るようになっている。それで、池の隅からポンプでもって水を吸い上げまして、その池の底を通ってまん中の島へ持っていく。その二つの管から吹き出すのです。その管には、小さい穴が斜め下向きにあいておりまして、水を吹き出す勢いでもってそれがぐるぐる回る。そのポンプから出てくる途中のところで、炭酸ガスを含んだ空気を吹き込みます。ですから、ドイツ式のように炭酸ガスのむだがそうございません。それからエネルギーも非常に経済でございまして、アメリカ式のように全体の液をざあざあ流すのでなくて、その一部分をただ管が回るだけの勢いで回しているわけです。管は間歇的に回ってくるわけですけれども、回ってきたときには、非常な勢いでもって吹き上げまして、下に沈んでいるやつを引き上げる。ですから、沈澱を起すことはございません。こういう方法で現在やっておりまして、非常にいい結果を得ております。  そういう方法で飼った場合に、一体どのくらいのコストでもって生産できるかということでございます。アメリカ閉鎖式循環法最初にやりましたのは、アーサー・ディー・リトル会社というケミカル・コンサルタントの会社でございますが、そこでの見積りでは、もしも百エーカーのプラントを作れば、一ポンドが二十五セント、つまり乾燥量にして一キロが二百円という値になります。彼らの見積りは、非常に楽観的な見積りでございまして、一エーカーから一年に三十トンもとれるというような見積りなんでございますが、われわれはもうちょっと現実的に、実際飼ってみてとれた量——計算しますと、一エーカーから十八トンとれるのでございます。十八トンということは、お米の反当り三十石に当りますが、それで、われわれの方法で飼ったといたしまして、相当ぜいたくな見積りで、これは偶然でありましたが、一キロが二百十円くらいになります。ただしそれは相当ぜいたくな見積りでございまして、今お回ししました写真の池は、全部厚いコンクリートで作ったものでございます。そんなものを作る必要はないので、一番金を食うところがこのコンクリートの池でございますけれども、これはずっと簡単な方法で建設できると思います。この間の太陽エネルギーの会でも、これは少しぜいたく過ぎるじゃないかとだいぶ皆に突っ込まれたのでございますが、われわれは、残念ながら、そちらの方の専門家でないものでございますから、どの程度までそれを簡単なものにし得るか、これはその方の専門家の方に考えていただかなければならぬ問題であります。とにかくわれわれの見積りよりも安くできるということは、申し上げて間違いないと思います。  クロレラに含まれておる蛋白質値段を、今言ったような見積りに基きまして、その蛋白質値段として計算してみますと、大体今のところ鯨の肉の蛋白質よりもちょっと高いくらいです。大豆蛋白質の二倍半くらいです。それから納豆の蛋白よりもちょっと安いくらい、ミルク蛋白の六分の一くらいの値段になります。これは今後の研究でもっと値段を下げなければなりませんし、また下げることができるだろうと私は思っております。少くとも一キロが百円くらいになれば、現在日本蛋白源として一番安いといわれておる大豆蛋白と競争できるということになるのであります。現在、私どもはこの徳川研究所の中の場所をできるだけ利用してやっておりますが、これでは限られた量しかできませんので、何とかして一エーカーないし二エーカー、一町歩かあるいはその半分くらいの面積培養地を作りまして生産して、動物実験も盛んにやれるように、また食品化研究も盛んにやれるように、何とかしたいと思います。  現在、私ども文部省から大部分の研究費をいただいております。これは、基礎的な研究にしか文部省は出してくれないわけでございます。それから、農林省からは、飼料になるかどうかを見ろというようなわけですが、この私ども研究は非常に多方面に関係いたしておりまして、食糧、飼料の点になりますと、これは農林省の管轄になりますし、それから栄養の問題になりますと厚生省関係でございますし、それから炭酸ガス利用とかなんとかいうことになりますと、今度は通産省の方です。私ども非常に痛感いたしますのは、そういう各省にわたっておる研究が、セクショナリズムと申しますか、少しでもはみ出しますと、これはいかぬじゃないか、たとえば、農林省なんかでは、基礎的な研究になるとおれたちの金は使っちゃいけないといわれる。ところが研究というものはそういうものではございませんし、実際研究しておるのは一つのグループでございまして、いろんな面がある。それで基礎的なものがまた思いがけないところで片方の応用のところにきいてくるのでありまして、こういうのを何とか今度の科学技術庁あたりでいい方法を考えていただきたいと思うのでございます。それから、ロックフェラーからも少し金をもらっております。たとえば、きょうもロックフェラーの人が来て見ていったのでございますけれども通産省文部省からもらう金は、地面についたものは作っちゃいかぬというのですね。建物や何かは作っちゃいかぬというのでしょう。これはもっともなんです。そういうところ、お役人はしゃくし定木にそういうことを言うのです。ところが地面についたものを作れなかったら、これは培養できないのです。そういうところにロックフェラーの金を使って、やっとわれわれはそこの写真でお目にかけましたような幾つかの培養池を作って、動かしておるわけでございます。地面についてはいけないとかなんとか、あんまりこせこせ言われたのでは、研究機関は因るので、そういうこともつけ加えて、私のお話を終りたいと思います。
  4. 有田喜一

    有田委員長 以上をもって、参考人よりの意見聴取は終了いたしました。何か御質問はありませんか。
  5. 長谷川四郎

    長谷川(四)委員 ちょっと聞きたいのですけれども、年に何回くらいの収穫をすることができるかということをお聞きしたい。
  6. 田宮博

    田宮参考人 何回くらいの収穫という、そういうやり方ではないのです。これはあるところに植えまして、こちらに時間をとりまして、こちらにどれだけはえたかをとります。初めは薄うございますが、だんだん濃くなります。ある一定の濃さにならないと、収穫能率がよくない。ある程度はえますと、少し取って、また上積みを元へ戻しまして、またはえてくる。それをまた取る。だから、いわば連続的に取るわけです。
  7. 長谷川四郎

    長谷川(四)委員 そうなりますと、夏冬という気候には関係なしに、収穫はできるということになりますか。
  8. 田宮博

    田宮参考人 冬も夏もできます。ただ、非常に大きい影響を与えますのは、光の量とそれから温度でございます。冬は温度が低いために、収穫はずっと落ちます。その発育速度は落ちます。夏はまた温度が高くなりますために、冬よくはえるやつは夏ははえない。夏と冬とでもって使う藻類を変えます。夏よくはえるやつは冬はえませんし、それで適当に気候によって変えていくのです。収穫は連続的にやるわけです。
  9. 長谷川四郎

    長谷川(四)委員 それから、熱を加えたときの色素の変化というようなものは、いかなる高度の熱を加えても、色素の変化はありませんか。
  10. 田宮博

    田宮参考人 ございます。きょうお回ししましたので、そのスプレー乾燥法でもってかわかしましたのは、あとで少し熱を加えてみましたが、ちょっと茶っぽくなっております。
  11. 長谷川四郎

    長谷川(四)委員 先ほどのトータルでいきますと、下水処理をした場合というのは、非常に培養率が低くなっております。そうなりますと、何らこれにほかの肥料というものは要らないわけですか。ただ先ほどの炭酸ガスというような、これは一つの費用だけの問題でございますか。
  12. 田宮博

    田宮参考人 先ほどちょっと御説明を抜かしましたんですが、あれはドイツでもって——アメリカでも近ごろやっておりますが、下水の廃液にクロレラを飼うというのでございます。これはなかなかいい考えでございまして、ドイツのでは少し燐酸をまぜております。燐酸をまぜないと、栄養分が十分でない。ところがネズミに食わした結果では、ちょっとその発育の結果がよくございませんでしたが、あれは下水処理液でもって飼ったのには、クロレラ緑藻以外のものが大分入っていたのです。これはもちろん当然入るにきまっておりますが、その影響ではないかと思われます。
  13. 有田喜一

    有田委員長 お諮りいたします。議員齋藤憲三君より、委員外発言をいたしたい旨の申出がありますので、これを許可いたしたいと存じますが、御異議ありませんか。   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  14. 有田喜一

    有田委員長 御異議なければ、齋藤君の発言を許可いたします。
  15. 齋藤憲三

    齋藤憲三君 生化学というのは、非常に新しい分野で、われわれは全然知識がございませんが、そこに比較されております蛋白、一体その蛋白というものは、どのくらいの種類があるのですか。
  16. 田宮博

    田宮参考人 蛋白の種類と申しますと、これは厳密にいえば無数といってもいいぐらいあるのでございます。普通教科書なんかには、ただ中性で溶ける、あるいは塩類を加えると沈澱するとか、それがどういうふうな状態で溶けたり沈澱したりするかというような、そういう性質で分けております。それからまた、ある別の分類によりますと、貯蔵蛋白、それから機能的蛋白、この二つに分けております。貯蔵蛋白と申しますのは、大豆の種の中にある蛋白、いわば一時たくわえておるところの蛋白で、クロレラ蛋白、あるいはホウレンソウや何かの葉の中にある蛋白は、実際、光合成をやっておる。非常にアクチブに生活機能を営むときに働いておる蛋白でございます。実際フィンクなんかも非常に強調いたしておりますのは、植物性蛋白というものは、動物性蛋白に比べて栄養価が悪いとこれまで言われておったけれども、それは植物の貯蔵蛋白と動物の機能的蛋白を比較しておるのであって、植物の機能的蛋白を使えば、動物の蛋白に負けないということがこれでわかったということを言っております。ただ、従来まで、植物の機能的蛋白があまり注目されませんでしたのは、ホウレンソウなんか食いましても、あの外側にある組織の繊維素からなっておる非常にがんこな組織の中にあるので、消化されないで出てしまう。そのために、栄養価が悪いと言われている。クロレラのように、ほんとうに裸になっておる機能的蛋白を使えば、動物性蛋白に負けないのではないか。現在ではそういうふうに大ざっぱに分けておる程度で、こまかく種類を分けますと、これは無数といってもいいのです。
  17. 齋藤憲三

    齋藤憲三君 蛋白の種類によりまして、一匹のウサギならウサギに、数種の違った一定の蛋白を食べさせた場合に、腸で吸収されるときにでき上るアミノ酸の形というものは、違うのですか。
  18. 田宮博

    田宮参考人 私は栄養専門家ではございませんので、十分なお答えはできかねるのでございますが、それぞれの蛋白によりまして、アミノ酸組成が違っております。大ざっぱに言いますと、植物性貯蔵蛋白には、人間の栄養に必要ないわゆる必須アミノ酸の中のメチオニンとリジンが非常に少い。特にお米の蛋白には、リジンとメチオニンが非常に少いので、われわれが戦争中にかかりました栄養失調、あれは今から考えてみると、蛋白の欠乏、必須アミノ酸のあるものが足りなかったという場合が多かったらしいのです。メチオニンとリジンの欠乏が原因だったと言う人もございますが、そういうふうに、必須アミノ酸、人間の栄養に必要なアミノ酸が、あるものは多い、あるものは少いというような違いは、蛋白によって非常にございます。
  19. 齋藤憲三

    齋藤憲三君 もう一つ。この光合成によってできました藻類、今のクロレラというようなものは、ミネラルにおいても相当なものが含まれておるというようなお話しでございますが、直接太陽の光線によって主として培養繁殖されたものは、抗生物質として利用されるかということと、それからよく植物に見られるような弱い放射線があるかどうか、これはどうでございますか。
  20. 田宮博

    田宮参考人 抗生物質とおっしゃいますのは、ペニシリンとかああいうふうな働きでございますか。——それは、このクロレラ培養が問題になり始めた最初のころに、アメリカのある学者が、クロレラのある種類につきましてバクテリアの生育をとめる物質がある。それにクロレリンという名前をつけました。そういうものを分泌するクロレラは、探せばあると思います。その後アメリカでも、あるいは私どものところでもいろいろ調べてみましたけれども、クロレリンに相当するものは、ほかの種類では見つからないのです。それから放射能でございますが、普通の意味での放射性物質は含まれておりません。ただ、厳密に言えば、カリウムなんかの放射能を持ったものがあるということは当然考えられるのであります。
  21. 長谷川四郎

    長谷川(四)委員 しろうとでわからぬのですが、いずれにしても、太陽の直射がなるべく多いほど成長力がいいはずでしょう。そうなってくると、そういうものを持たないということになると、おかしなことになりはしないのですか。それから、たとえば大豆の問題が出ておりましたが、これはたとえば、先ほどのお話のようなみそを作るという場合に、元来は、大豆を使い、麦を使ってみそが作られている。今日その分率を、ずっと大豆なら大豆を半減して、これをまぜて作っていくという場合、そういうようなことを御研究になったことがございませんでしょうか。
  22. 田宮博

    田宮参考人 放射能の大家の藤岡さんがおられますから、私はあまり大きなことは言えないんですが、普通放射性の同位元素と言われておる、たとえばアメリカやイギリスなんかからわれわれが輸入してもらって、研究に使っておるような放射能物質は、含まれておりません。しかし、厳密に調べますと、人間のからだの中にもウラニウムがあるそうです。それから放射能を持ったカリウムもある。そういうものはあると思います。それから、宇宙線がどんどん降ってきてからだの中にそういう放射能物質ができるという可能性はあると思います。それからおみそを作ったことはございます。それは、でき上ったみそにああいうふうに粉にしましたクロレラをまぜて、みそ汁にして食べると、おいしい、入れないよりもおいしいくらいでございます。これはおもしろいと思いまして、クロレラだけで、普通おみそを作りますように、こうじカビを使って発酵さした場合、それから通の方法大豆を発酵さした場合、その中間のいろいろなまぜ方で、発酵さしてみました。クロレラだけでも、おみそに似たものができます。少し緑がかった黒褐色でございます。幾らか緑茶のような苦みがありまして、このままではおいしくございません。専門家がもう少しおやりになれば、おいしくできるかもしれませんが、あるまぜ方の場合に、クロレラ大豆を適当な——今ちょっと比率は覚えておりませんが、ある比率のときは、相当おいしいものができます。
  23. 長谷川四郎

    長谷川(四)委員 たとえば、そういう場合に、先ほどのああいうような発酵菌を加えた場合でも、同じようなトータルができるわけですか。今あなたがおっしゃった、これだけでもっておみそを作った場合に、色素は別として、いずれにしても、みそを作る場合には、発酵菌を使わなければならない。そういう発酵菌を使った場合に、栄養価値は変りないかどうですか。
  24. 田宮博

    田宮参考人 それは、私どもまだ研究いたしておらないのでございます。これからやらなければならない問題でございます。ただ分析の結果や何かから考えまして、おみそにないビタミン類はずいぶん加わります。おみそにないビタミンA類、ビタミンB類もある。そういうものは、みそにクロレラを入れますと、ずいぶんよくなります。
  25. 前田正男

    ○前田(正)委員 私一つ聞きたいのです。クロレラにはいろいろ種類があるようですが、金魚ばちにも空中から飛んできて入るというようなこともあるようですから、今のような方法で養成されますと、いろいろなクロレラがまざってくるのではないかと思います。これはいろいろなものがまざっておってもいいものであるか、あるいはこの種のものだという分離が簡単にできるか、あるいは分離しなくともいいのか、空中から飛んできたほかのものが入って、栄養とかいろいろな方面に阻害を受けませんか。
  26. 田宮博

    田宮参考人 クロレラの中に、非常に発育の旺盛なものと旺盛でないものとあります。私どもは、発育の旺盛な、またほかのものに対して丈夫なものを、相当の濃さで別なところで飼いまして入れる。そうしますと、他のものに負けるということは、これまでまず経験いたしておりません。ただ私どもが夏の高い温度に耐えるもの、冬の低い温度に耐えるものというわけで、いろいろなところから持って参りまして、これは低い温度に耐えるということで入れますと、それがいつの間にか変ってしまうということで、困ってしまうことがあります。丈夫なものをある濃度で飼いますと、ほかのものに負けるということはまずございません。
  27. 志村茂治

    ○志村委員 培養であるうちはいいのですが、実用段階になると、いろいろ間遠があると思います。その際には、今までちょっとお触れになったようですが、農作物の場合の雑草に該当するものがあるのじゃないか。もう一つは、これの発育を妨げるようなバクテリアなんか——いわゆる病気ですね。これがあるのじゃないかというふうにも考えられますが、もしあるとすれば、どのような処置を考えていらっしゃるのか。
  28. 田宮博

    田宮参考人 私どもこの研究を始めましてから、クロレラを使っての研究は、二十年前からもやっておるわけでございますが、実際野外で飼うという研究を始めましてから五年になります。その間一昨々年までは、五月の終りころから十月の暖かい時期に、そういうほかの生物が入って——何しろこういうふうにいい栄養分でございますから、小さい動物——小さい動物と申しますのは、ゾウリムシとか顕微鏡で見なければ見えないようなマイクロ・アニマロズが入ってひどいときには、一日か三日くらいで色が変ってしまうのでございます。バクテリアによる書は、今まで経験したことはございません。なぜならば、外側が普通の無機物ですから、よく攪拌しておれば、バクテリアは入らないのです。ところが、ゾウリムシのようなものが入り出すと、困ったのです。そこでいろいろな薬、七十幾種類の薬を調べてみました。そういう有害なものをやっつけてクロレラ発育には影響を及ぼさないものを探しましたが、二、三種類いいものを見つけまして、それ以来、夏場になると、それらを使っておるのです。その虫の害はそれで防がれましたが、ただしかし何千年来われわれが栽培しておる麦や稲にも次から次に病気が現われて参ります。人間にも病気が次々に現われて参りますから、もう病気は大丈夫だとはだれも断言できない。またそれが現われたら、またそれに対する対策を考えなければなりません。
  29. 志村茂治

    ○志村委員 クロレラは、一つのスペシースになるわけですか。
  30. 田宮博

    田宮参考人 ジーナス、属です。
  31. 志村茂治

    ○志村委員 そうしますと、いろいろな種類があるのでしょうが、このいわゆる水温というのは、何度から何度くらいの間なんですか。
  32. 田宮博

    田宮参考人 摂氏にいたしまして、下の方は二、三度がリミットです。二、三度以下になりますと、発育がゼロじゃありませんけれども、非常にのろくなる。それから零度以下でも死にません。高い方は、これは先ほどもちょっと申しましたように、、夏向きのものは、四十三度くらいまででございます。それから現在飼っております、今日持って参りましたのは、三十二、三度までです。夏東京でかんかん日の照る所で、先ほどお目にかけましたような培養の仕方でやっておりますと、温度は大体四十度ほどまでいっております。四十一度くらいでちょうどいいのであります。
  33. 志村茂治

    ○志村委員 それでは、クロレラは氷の中で生きておるのですか。
  34. 田宮博

    田宮参考人 生きております。
  35. 田中武夫

    ○田中(武)委員 途中で参りましたので、あるいはお話しがあったかと思うのですが、これを食糧にした場合、食物の嗜好性から申しまして、味とかにおいとかはどうですか。
  36. 田宮博

    田宮参考人 そのことにつきましては、先刻申し上げたのでございますが、サンプルを持って参りましたので、口で説明するよりも食べていただいたり、かいでいただいた方が一番はっきりすると思います。乾燥の仕方や何かで少し違うのでございますけれども、片っ方の方は緑茶青ノリとまぜたような、それとちょっと違ったようなところもございますが、われわれにとっては割合に親しみのある味であります。
  37. 有田喜一

    有田委員長 他に御質疑がなければ、この際、参考人に一言ごあいさついたします。  きょうは、御多忙中にもかかわりませず、本委員会のためにわざわざ御出席を下さいまして、有益なる御意見をお述べいただきましてまことにありがとうございました。この委員会を代表いたしまして、私より厚くお礼を申し上げます。本特別委員会は、科学技術振興のため懸命の努力をいたす所存でおりますので、今後ともよろしく御協力のほどをお願い申し上げます。
  38. 岡良一

    ○岡委員 日本人の食生活がきわめて非科学的であって、いわば澱粉依存であり、その結果として、おなかがふくれれば栄養がとれるのだという考え方が習慣になっておったというような結果から、各国、特に先進諸国に比べて、胃腸病が非常に多いという現況でもありますので、先々国会においても、食生活の改善に関する決議案を衆議院は満場一致採択しておるわけです。なおまた、食糧事情が至って困難なことは、かねて御承知の通りのことでもありますので、こういう面から、個人の食生活においても、また日本の全国民に合理的な栄養を与えるという面から見ても、田宮さんの御研究の御業績というものは、やはり当委員会としては高く評価したいと思うのです。そうは言いながら、直接これを担当するところは、やはりまず国民栄養の調査研究の責任を持っておる厚生省でありますので、委員長の方で、あるいは理事会を通じて、せっかく田宮さんをお呼びいただいて、その御業績をいかに活用するかということについても、委員会としての適当なお取扱いを御考慮願いたいということを申し上げたい。
  39. 有田喜一

    有田委員長 ただいまの岡君の提案に対しましては、他日、理事会ででもとくと相談いたしまして、委員長において適当にはかりたいと思います。御了承を願います。     —————————————
  40. 有田喜一

    有田委員長 それでは、これより原子力行政に関し、前会に引き続き、質疑を続行いたします。佐々木良作君。
  41. 佐々木良作

    ○佐々木(良)委員 原子力行政についての質疑をいたしたいのでありますが、すでに同僚の岡委員なり志村委員なりから相当な質問がされておるわけでありますので、なるべく重ならないようにしてお話しを承わりたいと思います。  質問の前に、原子力産業の導入、樹立に関しまして、同僚からも申し上げましたように、正力大臣がまことに異常なる熱意をもって当られておることに対しましては、私ども心から敬意を表するのであります。しかしながら、御承知のように、また実際国民の間におきましては、その原子力産業なるものがどんなものであるか、その受け入れ態勢なり、あるいは気運なりというものは、事実上盛り上っておらないわけでありまして、従って、幾多の不安をおのおの持っておるわけであります。それであるのにかかわらず、大臣を中心とするところの熱意が、一部の意欲だけのような格好になって、突っ走りそうになっておる。ここにいろいろな心配が出てきておるわけでありまして、私どもも、その心配を代弁する面が、ほとんど大部分になるわけであります。本委員会におきまして同僚から次々の質問がありましたのも、主としてこの点にあったかと思います。しかしながら、これは大臣がどういうふうにお考えになりましても、やはり今、日本国内にみなぎっておりますのは、その不安でありますので、どうか一つこの委員会を通じて、繰り返し繰り返し、その問題の根本を忘れないようにしながら、話を進めていかれるようにお願いをしたいわけであります。従って、これは質問にはなりませんけれども、一番先にはっきりと大臣の所信を承わっておきたいと思うのであります。少し、大臣は意欲的な独走にブレーキをかけられまして、少くとも、本委員会だけでも、この問題を進められるに当りましては、十分に各委員の了解を得られた上で進められたいと思うのであります。これについての所見を一つ承わってからにしたいと思います。先般来のお話を聞いておりましても、大臣のいわゆる独善的な、と言うてはしかられるかもしれませんけれども、独善的なすぐれた科学者、それからこれも少し言葉は悪くなりますけれども、商人的なという言葉をつけ加えたいような意味での民間の熱意や、そういうすぐれた学者や科学者や民間の熱意だけにたよられずに、すぐれた学者の動員も、民間の熱意の盛り上げにも、この委員会の判断なりあるいは考え方なりを中心にして進めていただきたいと思うわけであります。同様な意味におきまして、この問題の基礎研究、原子力産業についての基礎研究の推進につきましても、また発電やアイソトープの利用に関する応用部門の問題につきましても、それらのプログラムの策定につきましても、同様な意味で、この委員会が打って一丸となって心配だと思う点は十分にここでただしながら、ここを通じて、国民に明らかにしながら、進めていただきたいと思うのであります。この点に関して、まず所信をお伺いいたしましてから、質問を開始いたしたいと思います。
  42. 正力松太郎

    正力国務大臣 お答えいたします。実は先ほど、一人で突っ走らぬようにという御注意がありました。この点は十分注意しておりますが、言うまでもなく、重大なことは、原子力委員会でよく委員の諸君と相談をしてやっております。さらにこの原子力委員会も、委員の四人の人を中心にしておりますが、これに対して参与というものを十五名ばかり学界、財界から選んでおります。そのほか専門委員というものを設けまして、原子力委員の手足になるように考えております。ここで原子力委員に十分相談をし、研究をしてもらいまして、なお、きまったことは、この委員会でもできるだけのことは申し上げて、委員の皆さんの御協力を仰ぎたいと思っております。
  43. 佐々木良作

    ○佐々木(良)委員 私が今希望を申し上げましたのは、今の態勢で、そして大臣の判断のもとに、今のようないろいろな諮問機関なり、内閣の中の機関を設けられてやられることは、当然のことであります。私が一番心配しておりまするのは、国民全般の中に、いろいろな意味での不安がつきまとっておるわけでありまして、国民全般の中の不安を除去しながら進むのでなければ、なかなか一般の納得が得られないわけであります。従いまして、この面はやはり国会が代表せざるを得ないわけでありまするから、この委員会に対しまして、普通のおざなりな答弁でなくて、行政機関あるいは諮問権関の委員会と同様な意味で、われわれとしてもいいことは超党派でやろうと思っておるわけでありますから、そういう意味で、ここではっきり——特別な委員会でありますから、そういう意図で臨んでいただきたいということをお願いしておるわけであります。
  44. 正力松太郎

    正力国務大臣 できるだけ御趣旨に沿うようにしたいと思っております。
  45. 佐々木良作

    ○佐々木(良)委員 これは押し問答になりますから、それならば、少し具体的な問題について、質問をいたしたいと思います。  先ほど申し上げましたように、先般来より同僚から次々にいろいろな角度から質問を出されておるわけでありますが、おそらく正力大臣にすれば、大体考えておられるような心配を次々に繰り返すと言われるに違いないと思う。その自分では考えておられるような心配が、自分では割り切っておられても、われわれはまだ判り切れぬという問題があるわけであります。本来ならば、大体若い者が突っ走って、年寄りの方があとから文句を言うわけでありまするけれども、この問題に関する限り、それがさかさまになるわけであります。この問題に関しては、どうも年寄りの方が盲目的な勇気といいますか、勉強不足に起因するのでなければよいがと心配しながら、進めておるわけであります。従ってまた、私どもの方でも、なまはんかな勉強でもって当るわけでありますから、どうかそれを含んで、できるだけ慎重に話を進めていっていただきたいということをまずお願いしておきたいのであります。  最初、少しこまかい問題から具体的にお伺いしておきたいと思います。第一に、原子力委員会が発足しておるわけでありますが、これの基本的な態度につきましてこれはたびたび言われておるのでありますが、原子力某本法に基いて運営されておるということではありますが、具体的のその内容が、私どもには心配なのであります。従って、具体的にお伺いいたしたいのは、御承知のように、最近原子炉をアメリカから購入するための話し合いに、杉本、神原両博士が行って、今、話を進められておるということを聞いております。おそらく原手炉の設計内容についての話し合いが進められておるのだろうと思いますが、大体今どういう問題が中心になって話が進められておるのか、まず御報告をお願いいたしたい。
  46. 佐々木義武

    ○佐々木政府委員 神原、杉本両氏の渡米した目的は、いまだ原子力協定の細目協定がはっきりしておりませんので、具体的な濃縮ウランそのものの授受等に関しては、実は公式な立場になっておりません。そうでなくて、その細目協定をやる以前の前提条件といたしまして、どういうタイプのものがほしいか、その具体的な設計内容はどうかという点を、向うでもぜひ聞かしてもらいたいというお話もあり、こちらでも今、準備をいたしまして、そうして早く国内に輸入するのが望ましいのでございますから、ウォーター・ボイラー型の設計書を持って参りまして、AECの方にも参りまして、またAECの方から御紹介のありましたメーカーの方とも連絡いたしまして、ウォーター・ボイラー型の原子炉について、こちらで持って参りました設計を、どこの会社で、どういうふうに、いつまでに作るかといったような話し合いを——買ってくるというわけではありませんで、瀬踏み的にしてくるということが目的でございます。ただ、あわせて天然ウランと重水をおのおの四トンぐらいずつでございますが、この方もその研究に必要な材料でございますので、ぜひ一つアメリカの方で輸出方を許可していただきたいという点も、交渉の対象になっておるのであります。その方は、あるいは本来の目的じゃないので、はっきりとしたとりきめというところまではいかぬのではないかというふうに考えております。
  47. 佐々木良作

    ○佐々木(良)委員 大体いつごろ戻ってこられる予定ですか。
  48. 佐々木義武

    ○佐々木政府委員 今月の二十四、五日に帰ってくる予定でございます。
  49. 佐々木良作

    ○佐々木(良)委員 今の、話し合いがされておる中で、その炉の操作に当る人間なり、あるいは研究委員なりの身分あるいはその他について、先だってきめた双務協定を履行するために、国内的な立法をするというような、そういう問題がついてくる心配はありませんか。
  50. 佐々木義武

    ○佐々木政府委員 協定そのものの中からは、別にそういう問題はございません。ただあの中には、たとえば廃棄物を捨ててはいかぬとか、失ってはいかぬとかいうような条項がありまして、その国家的な義務条項に関しましては、財団法人原子力研究所を作る際に、包括的に、条約に基いて、国家で負うておる義務は、研究所もそのまま負うべきだということを認可条項につけて、設立の認可をしてございます。
  51. 佐々木良作

    ○佐々木(良)委員 私の聞いておるのは、たとえば火薬の取締り規定だとかいうような、そういう一般的な取締りではなくて、特別な秘密を保持するための制限であるとか、そういう研究を、与えられた部門だけの研究でなくて、もっと手を広げた研究をすること、あるいは研究の材料を今度は別に使うこと、そういったものの制限がついてくるような心配はないかということです。
  52. 佐々木義武

    ○佐々木政府委員 そういう制限はございません。
  53. 佐々木良作

    ○佐々木(良)委員 制限がなければけっこうでありまするが、これは大臣にお願いをしておきたいと思います。今後の問題でありますので、今何とも予測しがたい事態でありまするが、私はあとで述べまするように、このアメリカの意図というものに対して、どうも安心のならぬ点を持っているわけであります。従いましてだんだんと双務協定の履行のために、いろんなほかに類例のないような、そういう国内立法がしいられてくるようなことにならないように、特段の御配慮をお願いいたしたい。同時に、そういう瞬間・なり問題が出てくる際には、先ほど申し上げましたように、私どものこの委員会におきまして、いろはから相談をされながら進められたいということをお願いをいたしておきたいと思います。まあ当るか当らぬか知りませんけれども、一般の中共貿易みたいな問題に対しましては、政府はその政治的なばい菌みたいなもののついてくることに対しまして、非常に小心である。ところがアメリカの原子炉みたいなややこしいものを特ってくる場合に対しましては、何だか非常に大胆であるというひがみを私ども持っておりますので、どうかそういう疑問が国民の中に起こらないように、お願いをいたしたいと思います。次に、先ほど、言いましたように、私はその専門でありませんで、聞きかじりでありまするから、当るか当らぬか知りませんけれども、この濃縮ウランというのは、御承知のように、初めから軍事目的で作られたものだ。軍事目的以外には、大体そろばんに合うしろものではないというふうに聞いております。ものの本によりますと、アメリカで、一グラムの濃縮ウランを作るのにも、私は電気と関係がありますから電気の方に直してみると、発電単価でもって七ミル、一グラムにつきましては二十八ドルくらいかかるのだという話であるのにかかわらず、話し合いでは、一グラムが二十五ドルで買えるということになっておるわけでありまして、一番最初の私どもの素朴な疑問が、ここから出発しているわけであります。普通ならば、一番そろばんずくでいくところのアメリカが、何でそんなに原価を割ってまでこちらに提供をするのか。金利も償却も全然考えられないわけでありまするので、原価が二十八ドルかかるものを、グラム当り二十五ドルで売るというようなところに、最初の疑問を感じておるわけであります。従って日時に、米国の意図に対する疑惑がここに私ども生じているわけでございます。大臣の所見をお伺いいたしたい。
  54. 佐々木義武

    ○佐々木政府委員 大臣にかわりましてお答えいたします。濃縮ウランのただいまの発表になっております値段は、一グラム二十五ドルでありまして、これが原価なりや、あるいはお話のように原価を割ったものなりやという点に関しては、ただいまのところ、詳細なデータはございません。  ただ、発電の問題でありますが、発電で六国ともに一番問題になっておりまする点は、技術的な点ももちろんございますけれども、より以上に問題になっておりまするのは、要するに発電原価そのものでありまして、果して、ほかの発電に比較してこれが安いものになり得るや、コマーシャルなベースに乗り得るものかどうか、いつになれば乗るのだという点が一番問題でありまして英国では、去年の春に発表になりました白書は、大体七ミル——一ミルは三十六銭でございますが、七ミルぐらいまでは下げたい、下げ得る。そうすれば、石炭による火力よりは大体安くいけるというのを目標に、例の十カ年計画でございますかを発表して十カ年に百五十万キロから二百方キロの原子力発電をやっていくということを発表しております。米国ではどうかと申しますと、米国の方では、ただいまのところでは、それほど安くはいっておらぬようであります。それもはっきりしたデータはまだないのでありまするが、大体十一ミルから十四ミル程度、これを少くとも五年後にはやはり七ミルまで下げたいというので、七ミルを目標にしておるようでございます。最終的な目標といたしましては、三ミルくらいまで下げたい、こうなりますと、これはあらゆる発電よりも安いわけであります。ただ、私ども先年参りました際にいろいろ聞いてみたのでありますが、非常にアンノーン・ファクターが多い、と申しますのは、たとえば償却を一体どう見るかという点は、新しい分野でございますので、きめ方がなかなかございません。それから保険を一体どう見るかという点も、生命保険にしましても、傷害保険にしましても、これも確率がないわけでございますので、非常にきめかねる。あるいは金利等をコマーシャル・ベースで見るかどうかといったような問題もありまして、そういう点をもう少し検討し、それからいろいろのタイプの実験をやっておりますので、そういう実験でどれが一番熱効率がよくて、そうして安い値段でできるかという点が一番関心の的になって研究を進めておるように私どもは聞いたのであります。
  55. 佐々木良作

    ○佐々木(良)委員 同じ佐々木でありながら、義武さんの方のお話は、あまり先まで行っちまい過ぎて…(笑声)私はそこを聞くのじゃなくて、そこに疑問があるから、今そこに持っていく道中を聞きおるわけであります。大臣にお伺いしたのは、これは今、電気の問題でいったからおかしいので、アメリカの発電原価が大体七ミル程度だと見ると、原価がアメリカで濃縮ウラン一グラム作るのに二十八ドルかかる。それを日本に二十五ドルで持ってきて売るということになっておる。アメリカは資本主義の国で、そろばんが立たなければ、大体話にならぬような方針をとっておりながら、少くとも二十八ドルと二十五ドルとの間に少しぐらいの数字の相違があったとしても、おそらく金利だの償却だのというものは、ほとんど入っておらないような感じだ。特別な意図があるのでなければ、そんなに安く、あのそろばん高いのが、こっちへ持ってくるわけがないじゃないか。そこに第一の国民的な疑問が生まれておる。これに対して正力さんは、大体どういう考え方で来ておられるかという、その国民的疑問の氷解をお願いしておるわけです。
  56. 齋藤憲三

    齋藤(憲)政府委員 ちょっと御質問の趣旨がよくわからぬのですが、濃縮ウランと申されましても、これは今、日本で契約せんとしておる濃縮ウランは、御承知の通り二〇%。濃縮ウランを極度まで達しますと、九九・九%というような濃縮度になりますので、この一グラム二十五ドルとか二十八ドルというのは、正確に二〇%までの濃縮度を二十八ドル原価と御調査なさったのかどうか。われわれの方は、二〇%くらいの濃縮度でございますと、二十五ドルというのは相当アメリカの方ではもうけてやっておるのじゃないかという観点をとっておるのでございますが、これは正確にはわからぬのでございます。ただ濃縮ウランと申しましても、非常に幅がございますので、その点は、正確に私の方では保持しておらないのであります。
  57. 佐々木良作

    ○佐々木(良)委員 アメリカの発電原価の七ミルということ自身にも、相当な幅がある見方であります。従いまして、二十八自身にも、濃縮ウランの濃縮度によりまして幅があるだろうと思います。そうすると、問題は、こういうふうに理解してよろしゅうございますか。二十五ドルか二十八ドルか知らぬけれどもアメリカはそろばんに合った値段日本に持ってくる。アメリカの犠牲において持ってくるのじゃなくてそろばんに合った値段で持ってくるのだというふうに理解してよろしゅうございますか。
  58. 佐々木義武

    ○佐々木政府委員 濃縮ウランは、御承知のように、アメリカでは国内法で——米国の原子力法によりますと、何人といえども国内でも売却をいたしません。全部貸与でございます。従って日本にも売却するのではなくて貸与するわけであります。こちらの方は賃借料を払えばよろしゅうございます。ただその二十五ドルが、上原価を割っているかどうかという問題になりますが、御承知のように、今までのところでは、全部国家の金で無利子で建設した事業でありますから、その原価の中にどういうファクターを織り込んでおるかは明瞭でありませんが、いわゆる利子その他まで入ったコマーシャルの意味からすれば、あるいはただいま発表している値段は、要素が抜けておるという点もあろうかと思います。しかしながら、国営でやっているものですから、決して許容の経費——使いました経費を、できました濃縮ウランの量で割った単純な計算でございますが、そういうものを下回ってということは、私ども考えられないことじゃなかろうかというふうに考えます。たださっきも申しましたように、償却の問題とか、あるいは金利の問題とか、いろいろございまするが、そういう点は純国営でやっておる関係上、あるいはコマーシャルな意味の原価計算をしていないのじゃなかろうかという感じがいたしております。
  59. 佐々木良作

    ○佐々木(良)委員 私自身も、アメリカのああいうややこしい秘密のものが、そこらの本でわかるわけがありませんので、数字等につきましては、相当心配しながら聞いておるわけであります。ただ問題は、先ほどから繰り返しておりますように、第一に、アメリカの意図に対する私どもの率直な疑惑がここからも一つ出ておるということを御承知願いたい。今のお話によりますと、国家でやっているから云々ということでありますけれどもアメリカという国であればあるほど、国家でやっておれば国家でやっておるほど、うるさいものであることは佐々木さんもよく御承知のはずだと思います。従いまして、私どもは第一の疑問をここに持っておる。ここに何らかの意図がなければいいがということを心配しておることを御承知願いたいと思います。  その次に、同じような感じになりますけれども、私は先ほどから繰り返しておりますように、このアメリカの意図なるものと、その方法でありますところの、燃料の一つのサイドである濃縮ウラニウム重点主義というものと、この二つに対しまして不安が去らないわけなんです。ですから、それを繰り返して言っておるわけであります。この二番目の問題につきましては、数字になって恐縮でありますけれども、正力さんも御承知だろうと思いますが、大体私どもが先ほどのようなデータによってうかがい知るところによれば、一グラムの今の濃縮ウランを作るのには、電力のキロワット・アワーにして、大体四千キロワット・アワーくらいが必要だという話を聞いております。そして、その一グラムを使って電気を出す場合には、六千キロワット・アワーぐらいが大体普通じゃなかろうか。そうしますと、これは熱効率からいっても、そんなにいいそろばんではない。御承知のように、石炭と比べてみても、石炭を一トン掘るのには、大体電気が七十キロワット・アワーくらいあれば掘れるわけであります。その一トンで電気を出す段になりますと、二千キロワット・アワーくらいまでは出る。それと比べてみましても、片一方は三十倍にもなる、片一方は丁五倍ですから、お話のような感じがするのであります。従いまして、私どもがくろうと衆から聞いてみましても、発電に濃縮ウラニウムを使うということに対しましては、相当な疑問があるというように聞いておりまして、現実に今濃縮ウランを応用面で発電に使ってやっておるというケースは、大体アメリカ、ソ連ぐらいのものじゃなかろうか。本来軍事目的で出発したところのもので、その辺が中心になって行われておるというふうに考えて開いておるわけであります。従いまして、別に欧州だとかカナダだとか、その辺については、御承知のように、大体天然ウランを中心にして発電を考えておる。これらのイギリスやフランスやカナダや、それら大体最初軍事目的でなさそうに見えるようなところでは、天然ウランを中心とした発電が研究の一番中心になっておるように私どもは聞いておるわけであります。そこでまた、本来からいうと、燃料を、いずれを重点に扱うかということの研究自体が、私は原子力研究所最初の課題でなければならないし、原子力委員会最初の討議の対象になるべき筋合いのものではなかろうかと思う。それがたまたま話があったのかどうかその辺は別といたしましても、アメリカと濃縮ウランというふうに、すっすっとこっちの方にだけ走りつつある危険性に対しまして、私どもは不安を抱いておるわけであります。この両方に対する比較検討等は、大体どういうプログラムの課程で始められるのか、お伺いいたしたい。
  60. 田中武夫

    ○田中(武)委員 関連してお伺いしたいと思います。先ほどの佐々木委員の質問に対しまして、いわゆる濃縮ウランが二十五ドルとか二十八ドルとか云々ということについて、佐々木政府委員の説明があいまいだと思うので、端的に一つ答えてもらいたい。アメリカ日本に濃縮ウランを持ってくる、こういうことは、商売として持ってきておるのか、特別な意図、ある政策として持ってきておるのか、その点をはっきりしていただきたいと思う。
  61. 佐々木義武

    ○佐々木政府委員 去年の一月三十日でございましたか、二十九日でございましたか、向うから申し込んで参りました書類によりますと、その目的を明瞭にしておりまして、これは単なる実験用にのみ供するというふうに明瞭にうたってございます。商売とか何とかいう意味ではなくて、あくまでも原子技術そのものを修練し、検討するというための実験の材料だというふうに目的を明示しておりまして、決して動力用その他という目的はございません。従いまして、私どもの解釈では、三十カ国程度、非常に広範な国々とアメリカは条約を締結しておりまして、単に商売とかいうような意味ではなくて、国家自体としての援助という目的で貸したものだろうというふうに今日では考えております。  それから、二十八ドルを二十五ドルにしておるのではなかろうかという点に関しましては、先ほどもお話申し上げましたように、私どもは、公表されておる数字は、二十五ドルというだけ持っておりまして、二十八ドルという数字は知りません。従いまして、そのいずれが正しいかということは、少くとも公表した数字による以外にないと考えております。  それから佐々木先生の御質問でございますが、今度の委員会ができまして以来、まだ開発計画そのものに関しましては、十分検討はしてございません。しかし一年半ばかり、内閣に原子力平和利用準備調査会というものかございまして、副総理が主宰いたしまして検討して参っておったのでございます。去年の夏に、その委員会で、茅誠司先生が委員長になっておりまして、まとめた案がございます。それは閣議決定にはなっておりません。ただいままでのところでは、随時変っていくものとは思いますが、素材として扱われておりますのでそれを基礎にして御説明申し上げます。これによりますと、本来の目的は、おっしゃる通り、あくまでも国産炉というものを中心にいたしまして、そうしてこれは天然ウランと重水を材料にし、燃料にして、熱出力一万キロワットくらいのものを考えております。なぜこういうものを考えたかと申しますと、御指摘の通りでございまして、外国の材料あるいは外国の資源にのみたよって問題を進めるというには、あまりに問題が重要でございまするから、できますれば、国内の資源あるいは国内の原料、燃料を使いまして、この原子力の開発を進めるのが一番適当な道だと考えますので、重水型——重水は、御無知のように、今、国内では、他の国に比較して割合に有利な条件と申しますか、恵まれた条件にございます。そこでまず重水を使います。そういたしますと、天然ウランの方は、黒鉛等に比べまして、割合にわずかで済みますので、天然ウラン、重水というタイプに問題を限りまして、天然ウランの方は、地下資源の調査に重点を置きまして、これはもう二年間やっておりますが、さらに今後大いに国内の調査あるいは採鉱精練等を進めようということで、今年度も予算を相当いただきまして、これを進めることになっております。それから重水等に関しましては、これもやはり今まで各会社——昭和電工とかに依頼いたしまして、この研究方を進めてございます。まだその成果は、完成したというところまでいっておりませんけれども、しかしいずれにいたしましても、濃縮ウランを中心にして、これで国の原子力発電等をやるんだというような考えをはなから無条件に取り入れておるのではなくて、あくまでも国内の資源あるいは国内の材料、原料等を基礎にして、その上に乗って、国内の原子開発をやりたいというのが念願でございます。しかしながら、それが一体いつになれば完成するのか、ただいまのところは、国産炉に関しましては、三十三年の上期から始めまして、三十四年の上期にはこれを完成したいという念願でございますが、それまでに果してこの天然ウランあるいは重水等所要のものが日本で、国産ができるかどうかという点が必ずしも明確でございませんので、もしそのときまでに国内生産できなかった場合には、やむを得ず、一部輸入することあるべしというふうな態度に出ております。  それから第二点の、先ほどの濃縮ウランのことでございますが、濃縮ウランを使ってというのは、ウォーター・ボイラーあるいはCP5あるいはスイミング・プールというような、三つくらいの型態を今考えております。これはあくまでも実験のための小型のものでございます。CP5になりますと、少し内容が充実して参りまして、使用目的も多目的にはなりますけれども、しかしこれはあくまでもその技術者の修練あるいは所要資材等の実験研究、そういうものが主体であり、あるいはアイソトープをその中からとるというのが主でありまして、これ自体から発電といったような問題は、毛頭ありません。従いまして、私どもの考えました今までの経過から見ますと、国産炉をすぐ作りたいけれども、しかしそれはそう簡単にいかないので、むしろその前提として、ウォーター・ボイラーとかCP5といったものを、これはごく簡単なものでありますから——これはアメリカからの申し出に従いまして、条約に基いて、濃縮ウランを借りて、そうして炉の形等は日本で選んで向うで作っていただき、それを輸入して、これで十分諸方面の研究をして、国産炉を作る際にあやまちのないように、最も効率的のものを作ろうというのが、ただいまのコースであります。それ以後、それではどういうふうな格好に進むのかという問題でありますが、それ以後は、動力実験炉という問題になるわけでございますけれども、これに関しましては、ただいまのところは、タイプあるいは規模もきめてございません。なぜかと申しますと、国産実験炉ができまして、日本の資源あるいは燃料、原料等のありかを見定めた上で着手するのが一番妥当な道であります。他方面から見ますと、アメリカ等では、いろいろなタイプでただいま研究を進めつつある最中でございますので、今にわかにきめるよりは、もう少しゆっくり国内の状況あるいは海外の発展状況をにらみ合せて、一番日本としては妥当なものを選べばいいのではなかろうかと思います。ただいまのところは、三十三年の下期から動力実験炉に着手するというふうには考えておりますが、そのタイプ等に関しましては、以上申しましたような理由で、まだきめるのには早過ぎるのではなかろうかというふうに考えております。
  62. 岡良一

    ○岡委員 関連して一言お伺いをいたしますが、実は先ほど佐々木局長の言われた、アメリカか濃縮ウラン等を二十数カ国に供与する協定を結んでいるということは、アメリカの自由主義諸国に対する友好的な感情に立ったものであろう。従ってアメリカにおける濃縮ウランの製造等は、すべて国家がやっている、こういう御発言がありましたが、その通りでございますか。
  63. 佐々木義武

    ○佐々木政府委員 御承知のように、AECがございまして、向うの研究所で一手に濃縮ウランを作っているような事情でございます。
  64. 岡良一

    ○岡委員 そこに濃縮ウランの受け入れに関する日米協定の実務を担当せられた下田条約局長がおられますが、この考え方は、私どもは、今後も、日本の原子力研究を進めていく上において、非常に重要な考え方だろうと思うので伺いたい。実は、私の手元にあります資料によりますと、これは古い資料ですが、四九年の一月に、アメリカに有名なフォーチュンという雑誌があります。これは産業界を代弁するという雑誌でありますが、フォーチュンの誌上でこういうことが言われている。今日のAECは、巨大産業中の巨大産業を相棒として仕事をしている。であるから、一九四九年のAECの支出額の九〇%というものは、請負契約会社の仕事に支出されている、こういうようなことがはっきり言われているのです。それから、最近原子力の平和利用の影響に関する専門委員会の公表されたあの報告の中に、自由主義諸国においては、原子炉を購入し得る潜在市場が約三百億であるということを言われている。これらの事実を総合すれば、これは明らかに、決して友好的な援助の気持においてアメリカが濃縮ウランを提供しているのだ、こう簡単には私は割り切れないのではないかと思うのです。この点について、下田条約局長と佐々木原子力局長の明確なるお答えをいただきたい。
  65. 佐々木義武

    ○佐々木政府委員 アメリカのAECの経営方式の問題が初めに出ましたので、その点をお答え申し上げますが、AECそのものが、全部直営で原子力の研究あるいは濃縮ウランの工場等をやっておりますのは事実でございますが、ただその中の、あるいは運営等具体的な操作等を全部AECの人がやっているかと申しますと、必ずしもそうではないのでありまして、あるいは大学の集合体にこれをまかしたり、あるいは特別な会社に請負でまかせまして、政府の人間として扱うという工合に扱っております。あくまでも、主体は政府であることは事実であります。政府の責任で、政府がみずからやっているというふうにお考えいただけばけっこうだと思います。  それから、濃縮ウラン協定の米国側の意図いかんということでございますが、それに関しましては、米国側の申し入れのあったときの書類に明確にそううたってありますので、私どもそういうふうにすなおに解釈しておりますが、場合によりましては、条約局長の方から御答弁があった方がよろしいかと思いますので、私は繰り返して申し上げません。
  66. 下田武三

    ○下田政府委員 御指摘になりました問題は、むしろ国際協力局の主管の問題で、法律を担当いたしております私からお答え申し上げるのは不適当かと思いますが、私どもは、佐々木局長がただいま仰せられました通りに考えております。ただ、こういうことは事実だろうと思うのでございます。ウランにいたしましても何でもですが、火薬のごとき場合、火薬というものは、やはり初めは兵器として発達したものですが、それが結局染料になり、あるいは肥料になるという平和的方面の発達に非常に役立った。ちょうどこのウランというようなものも、初めは原子力兵器というものを目的として研究されたものが、そこに新たな広大な平和的利用の面に、今乗り移っていこうという段階にあるのではないかと、しろうとながら考えているわけであります。従いまして、これはむしろ当然のことでありまして、そういう面から、アメリカ側の意図を疑う必要は、あるいはないのではないかというように私は考えております。
  67. 岡良一

    ○岡委員 別に疑うわけじゃないのです。私はただ資料に基いた事実を、率直に申し上げておるのです。でありまするから、たとえば、今、局長は、アメリカの国家がすべてを規制しておると言われるが、なるほどアメリカの原子力法の極刑は、死刑あるいは終身刑であります。おそらく近代科学の粋といわれる、原子力に関する法規が、その国の利益を害し、他国の利益に奉仕した者は死刑にするというふうな、そういうものを含まねばならないというところに、アメリカの悲劇があり、近代文明の悲劇が私はあると思う。そういう意味で、やはりアメリカの原子力平和利用の意図というものは、まだ平和利用に踏み出しておらない。アメリカの原子力法というものの成立の歴史を、おそらくずっと下田局長は御存じだろうと思う。初めてアメリカに原子力法ができたときに、どういう騒ぎをしたか、アメリカの国会でもかつてないという未曾有の騒ぎが起っておるのです。メイ・ジョンソンから初めて提出されたとき、アメリカの進歩的な学者やニューデラーが国会の廊下に押しかけ、委員会室に押しかけて、とうとう軍部や巨大産業の支配から解放することに彼らは成功した。そして一時安堵した。しかしその後にできた新しいマクマホン法というものは、ニューデラーや進歩的な科学者と、アメリカのビッグ・ビジネス、アメリカの軍部との妥協案です。しかもその妥協案であるものが、一昨年、昨年とさらに大きく修正を受けた。その過程でむしろニューデラーは、原子力法における発言権を事実上失った。敗北をして、軍部がこれを掌握した。ところが先ほど申しましたように、フォーチュン誌に述べられておるように、アメリカにおける原子力の事実上の運営というものは——法律的な運営の掌握というものは、権利として原子力委員会にあるけれども、事実上の運営というものは、やはりアメリカの巨大産業中の巨大産業というものの資金が大きく作用している。現に日本がシカゴ・パイル5型を買おう、あるいは訓練のためにアメリカへ留学生を出そうというアルゴンヌの研究所にしても、ほとんどあれはウェスティングハウスの出資じゃありませんか。そういうような事態から、あるいは特許というものの開放がされてきた、あるいは今度は海外輸出するアイソトープが、三から八十三に拡大されてきた。そうして今度は民主主義諸国の間には、三百億ドルの実験原子炉を購入し得る潜在市場能力があると発表している。私はこういう事実を言う。この事実から、単純に有効的なという考え方で臨むということは、これは大へんな失敗を犯すというか、決して日本のためにならぬと私は思う。コマーシャリズムを利用することはいい。大いに利用していいが、その利用の前提として、これはまことにありがたいことだというので、これにかかっていくということは、結局アメリカのコマーシャリズムというものに日本は陥ることになる。しかも原子力のごときものがそういう結果になるということは、おそらく日本の大きな産業の基礎において、外国の支配というものが大きく伸びてくるという可能性もあるわけです。私がそういう事実を突くのは、決してひがんで申し上げているのではない。少くとも資料にはそういう事実が一面にある。この点いかが思いますか、もう一度佐々木局長の御見解を承わりたい。
  68. 佐々木義武

    ○佐々木政府委員 アメリカの、いわゆる資本と政府との関係等に関しましては、私、実はつまびらかには存じ上げておりません。ただ私どもが濃縮ウランを受け入れるに際して、向うからいただきました公式の文書によりますと、先ほども申し上げましたように、その国の原子力の開発をするマイニングとでも申しますか、実験用としてこれを提供して、そうして原子力の技術等の発展に寄与したいというふうな文面でございますので、それをそのまま解釈して進めただけでございまして、そういうアメリカの内部的な実情は、実は存じ上げておりません。
  69. 岡良一

    ○岡委員 たとえば、実験炉を提供しようという公式な文書にでも——私はここに持っておりませんが、目を通しましたところ、アメリカ政府の公式な文書の中に、実験炉ならばどことどこの会社がありますとかいうような、あたかも商品のカタログみたいな文句がついているじゃありませんか。あれは不見識な公式文書だと思う。そういう点を、言葉の上だけでなく、やはり外交のことであり、慎重の上にも慎重を期して、日本原子力行政の推進者としては、責任者としては、行の間、文字と文字の間の正確な事実を認識するという努力が私はほしいと思う。こういう問題は、いずれ原子力研究所法案等が提案されたときに、重ねて政府の御所見を承わりたいと思うのであります。  そこで、私最後に、この問題に関連して、正力委員長にお伺いいたしたい。実はこういうふうな問題あるいは懸念が起り得るということは、決して委員長にも私どもにとっても望ましいことではないと思う。そこで問題は、甘木の原子力行政の将来の発展ということを考えた場合、アメリカだけではなく、もっと他の国々との間に原子力の協定を結ぶ必要があると私は思う。結べないという理由があるかどうかということ、結べるとするならば、あるいは英国だってもうすでに英連邦とはほとんど協定を結んでおります。フランスとも、ベルギーとも、西ドイツとも今度は結びました。インドでもソビエトとも結んだ、アメリカとも、カナダとも、英国とも結んだ。こういう形で、もっと日本の今後の原子力行政というものが、あの基本法にうたわれた平和利用、あるいは研究の自用なり、またその自主的、民主的な運営というような大きな原則を守ろうとするならば、単に一方だけと手を握らないで、すでにインドやそのほかの国もやっているのだから、日本とすれば、他の国との間とも協定を結ぶべきだと思う。この点一つ委員長としての御見解を承わりたい。
  70. 正力松太郎

    正力国務大臣 今の岡委員のお話は、まことにごもっともであります。私どもも、アメリカとは結んで、ほかと結ばぬのだということはありません。必要を認めますれば、イギリスとでもあるいはインドとでも結ぶことになります。現に今度の留学生も、アメリカだけではありません。イギリスにもフランスにもやって、広く知識を得たい、こういう考えでおります。
  71. 田中武夫

    ○田中(武)委員 くどいようですけれども、もう一つお伺いしたいと思います。佐々木政府委員は、アメリカから申し込んできた文書によって、実験用であるというので、これをそのまま正直に解釈している、こういうことでございますが、先ほどの齋藤政務次官の御答弁によりますと、二十五ドルでも十分もうけていると思われる、こういうように言っておられるのであります。もしそれが正しいとするならば、事、実験に名をかりて、余ったと申しますか、その濃縮ウランを日本に売りつけるというような、商売のようにも考えられる。また同僚佐々木委員の言っているように、二十八ドルのものを、損をして二十五ドルで売っているとするならば、名を実験にかりて何らかの意図を持ったものではなかろうか、このようにも考えられるのでありますが、この点もう少しはっきりしていただきたい。
  72. 齋藤憲三

    齋藤(憲)政府委員 私の申し上げましたのは、濃縮ウランというものは非常に幅があるものでありまして、一グラム二十五ドルといいましても、われわれの方では、アメリカ側の生産原価はさっぱり見当がつかないのです。非常に純粋度の高いものはもちろん高いと思いますけれども、双務協定によって日本に貸与する三〇%というものは、二十五ドルよりももっと安くできるものかもしれない。これは全く向うのことですからわからないのです。アメリカで安くできたものを、それ以上に上回って日本に貸与しているのかもわからぬし、あるいはそうでないかもわからぬし、われわれとしては、全く計算のしようがない問題である。ただ、どうしても双務協定によって日本にその値段で計算した賃貸契約によって貸与する、こういうのでございますから、われわれとしては、それが適当な値段であろうとなかろうと、それにたよって借り入れるよりしかたがないというふうに考えております。
  73. 佐々木良作

    ○佐々木(良)委員 途中で同僚からのお話がありましたが、私の話もだんだんそういう方角をたどろうといたしておったところであります。先ほどの佐々木局長の岡委員に対してのお話の中にも、私が先ほどから心配しておった一つ二つの問題がほの見えるわけであります。たとえば、アメリカの原子力産業に従事している者については、アメリカ国内法をもって、政府の人間として扱わなければならぬというようなことになり、政府の人間として扱う場合には、それに対するいろいろな取締りがあるということもついておるわけでありまして、そのようなものが一緒になってこっちにくる危険性を感じる。そうすると、先ほどの原子力法の原則に対しまして、非常な危険を感じるということを第一番目に注意しておったわけであります。それからまた今の二十八ドル、二十五ドルの問題にいたしましても、私は必ずしも政治的意図だけを心配しておるのではなくて、先ほど佐々木局長が言ったように、原子力産業の今の状態は、たとえば燃料を濃縮ウランにするか天然ウランにするかによって、あるいはまた減速剤を重水にするかグラファイトにするかによって、原子力産業の系列が相当大幅に違ってくる。その違った系列のものを、アメリカは、軍事目的で、相当な金をつぎ込んで、ある程度まで行ってしまっておる。そこでその軍事目的で行ってしまっておるそのペイを、われわれ日本の原子力産業に対して、あるいは企図しているのかもしれないという経済的な目的に対する疑惑も生じてくるわけであります。私が先ほど来心配しておりました点は、今、岡委員が言われましたように、ここの今扱っておる最終的な問題はどうか。軍事目的を中心として出てきたアメリカの原子力産業、従って濃縮ウランを中心とする態勢、ここにぱっぱっと強引なる独走力をもって行きそうな危険性を感じておる。ところが日本経済事情から見ましても、これを応用部門——私が知っておる発電なら発電というものに持ってくる場合には、濃縮ウランを中心とするものよりも、フランスなりカナダなりイギリスなりがやっておるような、天然ウランを中心としてやるものの方が、どうも日本には合いそうだ。それだのに、片一方の方に重点をかけ過ぎておるという点を、先ほど来心配しておるわけなのであります。この辺は、あるいは幾ら繰り返しましても問題が氷解しないと思いまするが、私は岡委員と同様な意味で、重ねてその所信をはっきりここで明示しておいていただきたいと思います。先ほどの佐々木局長のお話によると、今、私の言うたような問題は、大体検討済みで、その結果に従って、アメリカとの双務協定から出発して、実験用原子炉を買いに行っておるというように聞えるわけであります。もしそれがそうであるならば、原子力法の原則に基いて、その検討の結果なり研究の成果なりというものが、少くとも日本人の学者間に、あるいはこれを応用しようと思っている部面に、ある程度常識化されるところがなければならないと思うのです。その辺につきましては、ほとんど疑問を持ったまま、あるいは閉ざされたままになっている。私どもの心配はここから発するので、この態度につきまして、正力委員長の明確なる方針をお伺いいたしたいと思います。
  74. 正力松太郎

    正力国務大臣 御心配の点は、まことにごもっともと思います。その点は十分注意いたしましてそういうことに走らぬようにいたします。
  75. 佐々木良作

    ○佐々木(良)委員 それでは、原子力委員会の根本的な態度についての問題は、一応その辺にとどめます。  二番目に、原子力研究所の問題につきまして少々お伺いいたしたいと思います。実は、私ども原子力研究所の問題につきましとも、委員会の根本的な態度が今のようで、与えられたものにぱくつくような格好でスタートするのを心配していると同じような意味で、その方針がそのまま原子力研究所自身の中身にも移りつつあるのではないかということを心配するわけであります。たとえば、前の委員会におきましても繰り返し問題になっておりましたけれども、基礎研究と応用部門の実施についてのプログラムが、ほとんど発表されていない。あるいは作られていないのじゃなかろうかと思う。それだのにかかわらず、今度相当な予算も得て、具体的に出発しようとしているわけでありまして私どもの心配は、またここから始まるわけであります。第一に、原子力研究所の構成なり資金についてその意味でお伺いしたいのであります。私どもは、原子力の研究所だけでなくて、原子力関係を含めて、大体八十億見当くらいな要求が正力さんからなされたのにかかわらず、三十五、六億でもって予算が出ておるように聞いております。そのうち二十億になんなんとするものが原子力研究所の費用に充てられている。そのほかずらっと項目を見ましても、必要が生んだ経費の積み重ねというよりは、大体見当をつけて、取れるだけ取って、それを割り当てたというふうにしか考えられないのであります。この研究所費の十九億五千万円、それから民間に対する補助といいますから、おそらくこれは委託研究だと思いますが、それに四億五千万円とか、あるいは公社に対する一億五千万円とか、その他そういう項目につきましてどの程度検討が重ねられて、そうして予算実施の中心をどこへ置いて考えれておるか、その見当をお聞かせ願いたいと思います。
  76. 正力松太郎

    正力国務大臣 先ほど、八十億予算を出したが、三十六億になったというお話ですが、八十億というのは準備会で出したのでありまして、私のところで出しておりません。私は、出すに当っては、原子力委員会に相談いたしまして、そうして厳密に調査をしてもらいたい。それで委員会が十分精査した結果、三十六億になったのであります。その三十六億のうち、現金で約二十億、あとは国庫負担で十六億になった、こういうわけでありまして、その内訳の詳しいことは、佐々木局長から申し上げます。
  77. 佐々木義武

    ○佐々木政府委員 御承知のように、予算の総額は、原子力全般としまして三十五億一千九百万円になっております。そのうち、いわゆる予算外契約国庫負担分といたしまして十六億ございまして、キャッシュと申しますか、出せる金は二十億一千九百万円というふうに相なっております。この三十六億のうちで、原子力研究所に関するものは十九億五千百万円程度でございますが、そのうち十二億五千万円は負担行為分でございまして、キャッシュとして使えるものが七億ということになっております。その七億のおもな内訳を申しますと、研究費あるいは人件費等合せまして大体二億でございまして、建物あるいは研究川の機械、資材費を合せまして五億というふうに考えまして、大体七億ということになっております。それから貧打行為の分につきましては、主として建物あるいは大きい機械等に関しましては、今年度発注をいたしまして、三十二年度に支払うというふうな建前で進んでおります。それからこの予算の執行に際して、現在どういうふうな措置を講じているかという点でございまするが、これに関しましては、できますれば月別予算と申しますか、詳細な実行予算を作ってもらいまして、国庫外負担行為の問題もございまするから、これを兼ね合せながら、年度の初めに、なるべく早く大蔵省と話がつくものはつけて参りまして、予定通り問題を進めたいというので、普通の各省で進めておるような予算のやり方ではなしに、事前に、と申すと語弊があるかもしれませんが、なるべく早く月別予算等を作りまして、その金額を間違いなしに執行できるように、監督したいというふうな建前でやっております。
  78. 佐々木良作

    ○佐々木(良)委員 おそらく研究所自身の構成につきましては、別な法律の提案に基いて審議になると思いまするけれども、伝えられるところによりますると、現在の財団法人を特殊法人に持っていって、民間からも出資させるのだというふうに伝えられておりまするが、そういう構想で現存原案を練っておりますか。
  79. 正力松太郎

    正力国務大臣 実は、財団法人がこの三月に解散いたしますので、今度特殊法人を作りたいと思いまして、それは大部分が政府の出資でありますが、一部民間出資であります。しかしこの民間出資というのは、普通の株式組織のようなものではありません。これはただ出資はしてくれますけれども、一種の債権のようなものでありまして、決してそれによって——ただ出資だけで、何も権利はありません。権利はなくて、いわば日本銀行のような格好のものにしたい、こう思って今案を練っております。
  80. 佐々木良作

    ○佐々木(良)委員 次々に疑うようでありまするが、大体そういう構想でありまするので、また私どもの心配が生ずるわけであります。御承知のように、今の財団法人、二億程度だったかと思いますけれども、それの半分くらいは、大体電力会社だとか、メーカーだとか、肥料会社だとかいうところから、石川さんですか、中心になって、集められたように聞いております。そうしてまた今度発足しようとするところの特殊法人につきましても、今のような株主権の発動を伴わないところの民間の出資を当てにする特殊法人だということであります。これは妙な言い方をいたすようでありますけれども、裏返してみると、資本主義的な観念に立つ場合に、どういうペイを予想して、産業人はそれに出資をするということになるわけでしょうか。正力さんは、その辺は大がい御見当はつくと思いますから、お答えを願いたいと思います。
  81. 正力松太郎

    正力国務大臣 私は、その出資は、今、民間の方ではペイを目的にしておらぬと思います。ただ、今そういうような研究所を作って、将来これがりっぱなものになるというときのことを考えております。今何も考えておりません。
  82. 佐々木良作

    ○佐々木(良)委員 私どもが資本主義の原則の内容を言うことは、あるいはさかさまの、釈迦に説法のことかと存じますが、私は、先ほど問題について心配いたしましたように、アメリカの意図につきまして、軍事的な目的を一応ネグレクトしても、原子力産業の一つの系列が、大体自分の国の産業の系列に入るかどうかということは、産業人にとりまして、重大な問題であります。御承知のように、日本の電力問題が始まります際に、いろいろな競争があって、その結果、今でも悔いを千載に残すような格好で、五十、六十のサイクル問題が、そのままもって日本の電力界の一大ガンになっておることは御承知の通りであります。同時にまた、これは別な問題になりますけれども、鉄道の問題にいたしましても、ひょっとした偶然じゃないかと思われるようなところに意図があったかのごとくにして、今の狭軌になっておるところが、また悔いを千載に残すということに相なると思います。私は、ここで産業人が直ちに今のペイを完全に目的にせずして出資するというところに、本来からいうと疑いが生ずるわけであります。今申しましたアメリカ経済目的なりあるいはアメリカ産業人の目的が、アメリカ政府の目的と相一致する形で押し寄せてくるのと似た感じを、今度は国内の原子力産業に対して、私どもはまた心配を持つわけであります。日本の現在の情勢からいうならば、この原子力研究所に対しましても、おそらく所期の予算を政府から出すわけはないと思う。そうすると、当然にその資金のウエートは、今の産業人がおそらく負担するところの民間出資に相当かかってこざるを得なくなってくる。産業人にそういう意味でのウエートが加わってくることが、事実上、原子力産業が国民の産業から遊離して、産業資本の発言が、その意味において、強大さを加えてくることを私は心配しておるわけであります。この辺につきましては、いずれ原子力研究所法も出ることでありましょうから、私どもは、十分にその辺につきましても質疑検討を加えながら、進めたいと思うわけであります。資金の問題は一応これだけにいたしましても、先ほど私が言いましたように、原子力研究所が、ある意味で突っ走っているんじゃないかと言う意味も、次のようなことがあるからです。これは問題は小さいようでありますが、現在の原子力研究所は、発足して、仕事をしながら人員を採用してやっておりますけれども、今年度の計画は、伝え聞くところによりますと、大体五十人ぐらいとる予定だというお話であるのに、知らぬ間に大体三十人くらいはもう埋まっておるという話であります。これは、どういう基準で、どういうふうにして採用されたか。これは答えがむずかしくなると思いますが、私が端的に正力さんにここで心配をぶちまけるのは、こういうことです。御承知のように、学界なり、あの辺は非常にセクトの強いものであることは御存じの通りです。私は、藤岡さんを前に置いて行うわけではないし、この方々に問題があるとは申し上げません。しかしながら学界におけるいろいろなセクトが、この原子力研究所の人事にまで入ってくる危険性を私は感じておるわけであります。御承知のように、一番基礎的な出発点に当って、急ぐとどうもこういうことになる。しかしまた同時に、正力さんが言われるように、やれるときにがんと大幅にステップするのでたければ、新しいものの採用はできにくいということは私も承知いたしております。しかしながら、この研究所の金の積み重ね——今お話がありましたけれども、私どもはやはり一夜づけで重ねてきたような感じが抜け切らない。また同時に、この埋めつつある人事につきましても、知らぬ間に三十人も四十人も縁故採用みたいな形で埋まってきつつある。この辺に広く人材を求めて、そうしてフランクな形で、この研究所が出発し得るやいなやということに対して、またやはり心配をせざるを得ないのであります。この辺につきましての御所信を承わりたい。
  83. 正力松太郎

    正力国務大臣 御心配の点は、まことにごもっともだと思いますが、知らぬ間に三十人ほど集まったと言われますが、これはやはり各大学の推薦によったものであって、その中から選んだものであります。さらに今度三百人ほどいるその中から、やはり二十人ほど選ぶわけであります。これにつきましては、選考委員を作り、ごく公平に、慎重にやります。
  84. 佐々木良作

    ○佐々木(良)委員 この辺の問題は適当に端折ります。繰り返して申し上げるようでありますが、私は原子力委員会と、それから今後生れるところの科学技術庁なり技術省なりというものと、それからまた今の原子力研究所と、この三つの関係の運営というものは、最初の産業を打ち立てる段階におきましては、まことにその関連はむずかしいものだと思います。同時にまた、先ほど言われましたように、日本の現状は、役所の中においても学界の中においても、いろいろなセクトがありますし、そしてまた産業人は産業人独特の目的を持って進んでくると思います。従いまして、この辺についてどうかフランクな立場でもって善処されるようにお願いしておきます。土地問題につきまても同様でありまして、新聞をにぎわしております研究所用地の選定の問題についても、それが最初の産業の基礎の研究にいろいろな意味で不便であったりするような所が、政治的な配慮によって選ばれておる。そういう疑いをなくするような方針で、善処されることをお願いいたしておきたいと思います。  それから、これもこまかい問題のようでありますが、もう一つ研究所の問題についてお伺いをいたしておきます。この間も話が出ておりました原子力産業会議の問題であります。先日の読売を見ますと、大体名前を並べておりまして、そうして各界が網羅されるということになっております。これは正力さんの立場とすれば、ほとんど全部網羅したということになるかもしれませんが、私どもがやはりここで問題にするのは、学界との関係の問題の対立があるかのごとくに私どもは聞かざるを得ないわけであります。なぜ学界の代表をこの中に入れられなかったのか。おそらく御答弁は、その他の研究団体なり何なりというところから学者が出てくるから、いいじゃないかということになるだろうと思います。しかしながら、新聞の論調を見ましても、原子力産業会議というものは、大体正力さんの音頭によって、そして強引な、太鼓をたたく役目をここで引き受ける感じだけがして、本格的にここでもっていろいろな意見を戦わして、あるいは意見を具申しあるいは建議して、ほんとうに新しい意見日本に適用するような格好で持ち上げる機関とはなりがたい印象を、国民の一部——あえて私は一部と申しておいていいだろうと思いますが、持っておると思います。この辺につきましての御所見を伺いたいと思います。
  85. 正力松太郎

    正力国務大臣 いろいろ御心配の点をお尋ねになりました。一々ごもっともな御心配だと思います。  まず最初に、土地選定の問題を申し上げます。これはだいぶ新聞をにぎわしておりますが、土地を選定するにつきましては、私ども研究所に土地選定委員というものを選びまして、そうして、専門家をして、その土地の地質、水の関係空気関係、東京との距離の関係、すべて専門家の見るところで十分測定させました。そして、その選定委員から報告を聞きまして、その報告書をきょう委員会にかけました。それで委員の諸君に、こういうふうに選定委員がしたのだから、一つこれをもととしてよく考えてくれ、そこにせっかく専門の方がおるの、だから、これを十分尊重して、検討を加えろといって、選定委員から来た一切の書類を原子力委員諸君に渡すわけでありますから、私は公平な処置がとられると確信いたしております。  それから、なお、原子力産業会議についての御心配の点、ごもっともでありますが、私どもの仕事の太鼓をたたかすために作ったのだろうという話でありますけれども、全くそんなものではありませんで、あれを作りましたのは、この前申し上げた通りに、今日民間で研究所幾つもあります。そうして、その研究所にみな専門家を依頼しておりますから、それよりも、この各研究所がほんとうにみな一つになってくれればいい、今まで原子力にあまり関心を持たぬ団体も、みな一つになってくれという考えでありまして、それで実は言論界まで代表を入れたのであります。学界はなぜ入れなかったかという話は、これは、ごもっともでありますが、学界の方は幸いにして、政府の諮問機関としまして学術会議というものがありますから、そこで私は学者の意見が出ると思います。だからそれを除いたのは、これも全部純然たる民間にして作ったらどうだというだけで、人選方法については、一切干渉いたしておりません。すべてこれは民間でやり、そして民間で世論を作る。これは私はたびたび申し上げておる通りに、この原子力の立ちおくれた日本においてこれを回復するには、幾ら政府だけがしてもだめだ、国民が一体となってやらなくちゃならぬ、ことに産業人は利害関係が多いですから、これをみなまとめて、そしてその意見を聞きたいという意味で作らしたものでありますので、私どもの方針を遂行するために、便利なためにした、便利というのは、世論を聞く意味において、そしてまた国民とともにやりたいという精神で私は提唱したものでありますから、その点も御了承願います。
  86. 佐々木良作

    ○佐々木(良)委員 今の産業会議につきましては、おそらく委員長のお考えはそうだろうと思いますけれども、今、私の申し上げたような批判も出ておることも御承知だろうと思います。同時にまた、学術会議なるものの意見が従来相当強く反映しておった。ちょうどそれに対抗するような形で、その力を消すような形で、この産業会議というものが動く危険性を感じて云々している人もある。その辺もどうか一つ十分に御賢察をお願いいたしたいと思います。  最後に、私は電力問題に関連をいたしまして一、二お伺いしてとめたいと思います。一昨日の岡委員の質問に対する御答弁の際に、正力さんは、今、電力危機がひしひしと迫ってきておるではないか、この電力危機を打開するために、原子力発電を大いに早くやらなければならないじゃないか、それでもって五年説云々のお話があったように聞いております。これは釈迦に説法でありますけれども、今の電力危機を打開するために、この原子力発電がほんとうに間に合うようにお考えになっておりますか。
  87. 正力松太郎

    正力国務大臣 電力危機のことは、この前申した通りに、実際危機であります。これは日本とイギリスとはちょうどよく似ております。私は、電力業者自身に、君らは電力がこれだけ危機に迫っておるではないか、それをちっとも大衆に理解せしめぬじゃないかということを言ったこともあるのであります。この前申し上げた通り、今のところでは、石炭、水力では足りませんで、重油でやっておるのであります。この重油は、みなアメリカに仰いでおります。そうしますと、これは早晩必ず値が上ります。そうしてくると、電気料金を上げざるを得なくなってくる。これこそ国民生活に重大なことと思いまして、それで私は言ったような次第であります。それでは、お前その危機に間に合うかというお話でありますが、これは間に合うのではなくて、合せなくちゃならぬ、そうしなければ、日本の国の生活をどうするか、私は真にそう思っております。私は実は五年説を唱えました。これはしろうとの考えであって、私はしろうとの考えで五年説を言いました。そして詳しいことは専門家をして答えせしめると言いましたが、きょうここで藤岡委員専門家の立場として答弁をするということを言われましたから、一つここで藤岡委員から答弁をしてもらいます。
  88. 藤岡由夫

    ○藤岡説明員 私に御答弁するように正力委員長から言われましたことは、五年説ということの具体的な裏付けはどうであるかということは、前会に多分岡委員からの質問であったと思います。そこで私は、五年説ということが唱えられましたときに、最初どもは五年以内に発電に着手するというくらいのことならばといったのでございますけれども、正力委員長は、少くとも五年以内に完成する意気込みを持って進めたいということで、私もその意気込みを持って進むということならば同感である。具体的にどれだけのことができるかと申しますと、先ごろから佐々木政府委員からいろいろ御説明がありましたように、天然ウラン・重水・国産炉と称しますものを三年後に建造いたしますことを目標にしておりますが、同時に、発電試験炉というものに着手することを予定いたしております。この内容は、まだはっきりしておりません。御承知の通り、いろいろ方式がございますし、また二、三年間に外国の技術も進歩いたしましょうから、私はこの国産炉を作りつつ、いろいろの技術を高めて参り、その発電試験炉というのを計画しております段階において相当の発電の試験ができるものではないかと考えます。そういう意味において五年以内に発電の試験はある程度やり得るように努力いたしたいと具体的に考えております。しかしながら、これがコマーシャル・ベースに乗るやいなやということにつきましては、ただいまの私の気持では、コマーシャル・ベースに五年以内に乗るものとは考えておらない。でございますから、先ほどの御質問の電力の危機に対してその原子力発厄がどの程度に間に合うかということですが、これは私は専門でございませんで、いろいろ経済企画庁、資源調査会等において調査されておりますけれども、たとえば、十年とか十五年とかいう段階を、水力の未開発地域の開発であるとか、あるいは火力資源の開発というようなことによって何とか切り抜けていくというふうに聞いております。原子力発電がほんとに間に合って、コマーシャル・ベースに乗って、ほんとうの意味において電力危機を打開して参りますのは、やはりある程度の後ではないか、そういうふうに考えております。なおこの点につきましては、佐々木政府委員が相当長い間の調査の御経験を持っておりますので、電力問題についてお答えいただけると思います。
  89. 佐々木良作

    ○佐々木(良)委員 佐々木政府委員にお答えを願う前に、今、正力さんがえらい力を入れられまして、現在の電力危機の克服のために、石炭では間に合わなくて、油をアメリカから買ってたいているじゃないかというお話がありました。アメリカから重油を買って火力に使っておるのは、今の電力危機の克服のために、あるいは石炭が足らぬためにそれをやっているんだというふうに、ほんとにお考えになっているのですか。これはあげ足をとるようで恐縮でありますけれども、重油を使っておる話は、もう済んでしまっておりますよ。これは、能率をよくするために、ある程度火力に重油を入れろということを政府が奨励して、電力会社に設備まで作らせて、そうして今度は重油を使ってはいかぬということになって、今は重油というのは大がい本格的な発電のために使っていないのです。これはあげ足をとるようなことでありまして、大したことではありませんが、私が心配するのは、正力さんの現在の電力危機を克服するための原子力発電という言葉に独走的な感じがある。これを非常に心配せざるを得ないのです。現在の電力危機と、それから重油発電とを結びつけて、それを克服するみたいなことを言われると、ちょっと待ってくれ、その話には乗られぬぞということを言わざるを得ないのです。今、藤岡さんからお話がありましたけれども、私どもは、原子力発電というものに対して、ある意味では、正力さん以上に熱心です。私自身電気で飯を食っておったものでありますから……。しかしながら、同時に、そのことは、急げば急ぐほど、私どもは先ほど来繰り返しておるように危険を感じておるわけであります。新聞人として、あるいは新聞にぶつような形で、重油に変って原子力発電をやるみたいな話は、受けるかもしれないけれども、それだけ飛躍されるようならば、ほんとうに心配をせざるを得ないわけです。同時に、先ほど来お話がありましたけれども、現実に今取りかかっている仕事は、アメリカの濃縮ウランを持ってきて、そうしてこれから試験炉を作って、それからやろうかという話である。何時にまた、天然ウラン・重水という方式に考えられているとはいうけれども、しかしながら、それが学界におきましても産業界におきましても、ほとんど常識的な格好にはまだ熟してはいない。むしろ研究の成果に待って、その結果が出て、それに基いてその方式が採用される。私は、現在の段階は、こういうふうに考えているわけです。従いまして、先を急がれることはけっこうなんですけれども、どうも年寄りのせいかしらぬけれども、行き過ぎて、その辺が私どもぴったりこない。繰り返して申し上げるようでありますけれども、これを基礎研究と応用部門とに分けまして、最も慎重な態度をとられたい。特に応用面の電気について言うならば、先ほど佐々木局長から、動力用の実験炉を、三十三年なり三十四年なりというお話がありました。動力用の実験炉がその辺にくるのであるならば、なおさら、今度の原子力による電力危機克服という問題は、もっともっと先になる。私が現在むしろ心配しているのは、何か原子力発電にでもすぐ取りかかりさえすれば、今の電源開発なりあるいは水、火力の開発なりということは、もう当分見合せてもいいじゃないかというような感じで、また三段飛びの飛躍がされるような丸がいたします。それもまた心配の種になっているわけであります。大体、動力川の実験炉、並びにその次にくるものは、おそらく私はパイロット・プラントだろうと思います。動力用の実験炉及びパイロット・プラントに対する今のお見込みをお伺いしておきたい。
  90. 佐々木義武

    ○佐々木政府委員 各国の例から申しますと、原子力の開発は、一番初めにはごく小さい、極端に申しますと、ゼロ・パワーくらいの実験炉を作りまして、それである程度実験をしまして、その次には、中間実験段階といたしまして、ただいまのところでは、一万キロから四万キロくらいの実験炉を作りまして、それで相当程度研究が進んだ上で、いわゆる動力用実験炉を作りまして、その動力用実験炉で、採算関係あるいは熱効率等の問題をできるだけ研究をして、大体これでいけるというところで、コマーシャルの意味の発電用原子炉を作るというふうに進んでいるのが各国の例であります。そこで、日本ではどうかと申しますと、ただいま考えておりますのは、三十三年の下期から三十四年にかけまして、いわゆる動力用実験炉そのものを完成して、それでいろいろな採算面あるいは熱効率の面等を研究しながら、こういう方式で、こういうことでいけば、大体これくらいでやれるという見通しをはっきりつけまして、電力会社等で発電にかかるというふうな段階になろうかと思います。従いまして、動力用実験炉も、おっしゃるように、もう一段階パイロット・プラントの段階を経てそれから実際の発電というような手順には考えていないのでありますが、あるいはそうなるかもわかりません。今のところは、そこまで考えておらぬのであります。
  91. 佐々木良作

    ○佐々木(良)委員 佐々木局長の方はそういうふうに考えておられるかもしれませんが、正力さんは、パイロット・プラントの構想をほんとうに持っておられませんか。すぽっとアメリカなり——僕は大体アメリカにたると思いますけれども、それは一つの考え方で、ある意味で私ども賛成なんですよ、すぽっとパイロット・プラントを持ってきて、五万キロくらいの発電をやってみるというその構想は、全然持っておられなかったのですか。
  92. 正力松太郎

    正力国務大臣 私は、原子力に関しては全くのしろうとでありまして、私よりも佐々木委員の方が、大へんにくろうとのようでありますから、佐々木委員のお説を喜んで拝聴いたしておるわけですが、私は電力危機ということを先ほど申し上げました。それに対していろいろなお話がございますが、たとえば、電力危機ということは、これはもう済んでおると考える向きもあります。それから現在重油を入れておるということは、アメリカから入っておる。これを使うのは、値段が安いから使おうとしておるのです。それだから、重油を使わないで石炭だけでやるというのは、これは大へんな危険があるらしい。これはいかに危機であるかということを、私は一つのデータを持っておりますから、それを御参考に委員に差し上げますから、それをごらんいただきたいと思います。  それから。パイロット・プラントということでございますが、私はそんな詳しいことは知りませんから、それは原子力委員の方の話をよく聞いてやるつもりでおります。
  93. 佐々木良作

    ○佐々木(良)委員 大へん時間をとりましたので、本日の質問はこれくらいにとどめておきたいと思います。たびたび繰り返して言うように、私は今の原子力産業の状態は、基礎研究部門と応用部門との両方にわたっての本格的な基礎を作り上げるところにあると思います。そして、それがまた一歩を誤まると、政治的な目的に利用される危険性を持ち、また一歩踏みはずすならば、一つの別な意味での経済目的の食いものになる危険性も感じておるわけであります。従いまして、どうかその辺を慎重に、広範に意見を求められながら、進められるようにお願いをいたしておきたいと思います。  それから、動力用実験炉の問題、あるいはこれと相前後するかもしれない、あるいは飛ぶかもしれない。パイロット・プラントの問題というのは、これはおそらく、私は今の研究所の問題とは別個にスタートせざるを得ないのではなかろうかと思っております。しかしながら、先ほど一つの心配を提起いたしましたように、今のこの原子力問題の中で、原子力研究所だけが、また突っ走る危険性も感じておるわけでありまして、あまりここが突っ走るといたしますと、応用部門に対しまして、また別ないろいろの問題が出てきはせぬかということを心配しておるわけであります。若い者が年寄りにかわりまして、心配ばかりを並べたことになりましたけれども、私どもの意図を十分に御賢察をいただきまして、ほんとうに百年の悔いを残さないような、健全なスタートができますように、格段の御努力をお願いいたしまして、一応質問を終りたいと思います。
  94. 齋藤憲三

    齋藤(憲)政府委員 蛇足でございますが、ただいまの質疑応答を承わりまして、私もこの原子力問題及び科学技術庁に関係のある者として、補足的に御説明を申し上げた方がいいのではないかと考えまして、簡単に申し上げます。  大臣の申されました電力危機は、これは経済企画庁の調査によりましても、よほどの努力を重ねても、将来、日本は電力危機に襲われるのであるということは、はっきりいたしておると思います。御承知の通り、今日の電力は、結局重力と化学反応によって生み出すところのエネルギーであって、これは専門であられる佐々木委員御承知の通り、水力と火力の石炭あるいは重油によって発電をやっておる。ところが、原子核の分裂または核融合反応によってエネルギーを出す原子力発電は、これとは全く違った立場におけるところのエネルギー源でありまして、今の世界の大勢から見ますと、当然将来は、核分裂あるいは核融合反応のエネルギーに移行するのである。また移行すべきものであるというのが世界の大勢でありまして、今日は、採算ベースは合わないかもしらぬけれども、将来は、これは当然今日の水力あるいは火力発電よりも安くなるだろう、そこに将来の大きなエネルギー源として取り上げられておるとわれわれは考えておるのであります。従いまして、大臣の考えといたしましては、今日の電力危機を克服するには、日本のような資源の少いところ、また水力発電のいいところがだんだんなくなっておるところにおきましては、なるべくすみやかに原子力発電によって将来電気の危機を克服していきたいという考えで、最大の努力を払っておられるわけであります。それで、五年目にどういう試験用原子力発電炉ができましょうか。われわれもここに計画がありますように、五万キロ程度の動力実験用の発電炉を目標にして、原子力委員会を中心とし、原子力研究所を中心としてこれを検討していきたい、こう考えておるのです。大体五万キロの実験用原子炉ができ上りますと、そこでだんだん日本の電力危機を原子力発電によって克服していくめどが、もうその辺から出てくるのであります。こういうふうにも考えるのであります。それで、五年先のことですから、これは今の世界の大勢にかんがみまして原子力問題がどれだけのスピードをもって進展するか、これも予測できないことで、あるいはこれから作り上げまする原子力研究所研究によりましても、大きな発明が生まれて、そこに画期的な原子力発電の形態が生まれんことを望んで、われわれはこれから原子力研究所の出発を念願いたしておるわけであります。将来のことでございますからわかりませんが、私ども原子力問題に取り組んでおる者といたしましては、なるべくすみやかに、その焦点をつかみたいということを毎日のように話をいたしておるのであります。大臣といたしましても、そういう建前から大いに迫力をかけてやって、ここで一つ日本の電力危機を克服するめどをつかんでいきたい、こういう御意図をもって発言されたことと私は信じております。私はそう考えております。  それからもう一つは、原子力研究所に対するただいまのお話でございますが、それもやがて法案となって御審議を願うこととなっておるのでございますが、もちろん原子力研究所のあり方は、原子力の基礎研究と応用研究、並びにその開発を総合的かつ集中的にやるということになっておりますので、決して応用の方が独走したり、応用を無視して、基礎研究だけをやるとかいうことでなく、これは将来皆さん方の御期待に沿うように、法案が出て参りましたときに、よろしく御審議を願いまして、その御意見もよく拝聴いたしまして、原子力研究所のあり方をはっきりときめていきたいと考えております。御承知の通り、この問題は、最初から超党派的に推進していこうということでございますので、先ほどからお述べになりました通り、あくまでも超党派的にすべての御意見を拝聴して、最も、妥当な線に主力を注いで問題を解決していきたい、さように考えておりますから、蛇足でございますが、一言申し上げました。
  95. 佐々木良作

    ○佐々木(良)委員 今の齋藤次官の御意見、私どももっともでありまして賛成をするものであります。ただ、私が先ほど申し上げましたのは、正力さんのその意図なり齋藤さんの熱意なりということは、よくわかるのです。ところが、この問題は熟していないから、従って、別な意味で誤解の生ずる危険性を指摘したわけです。現在の電力危機の問題と原子力発電の問題を今のような格好に結びつけると、話が少し飛躍し過ぎる。私をしてはっきり言わしめるならば、将来の電力資源減を克服するための代替物として、原子力発電が今研究の俎上に上っておる。今の当面しておる電力危機、あるいは五年、十年先の電力危機を目ざしてその補いのための原子力発電が行われるのではない。私はそう思う。これから五年あるいは七年続く電力危機を克服するのは、あくまでもこれまで習得されておる発電技術以外に手はないわけです。御承知のように、五年目で五万キロ出たところで、あるいはもっと飛躍して、五年目にかりに十万キロの原子力発電ができましても、それよりも今進みつつある水、火力による本格的な意味での発電の方が、当面の危機克服には、現実的に役立ちつつある。私どもは、一般の誤解を避けるために繰り返して言っておきたいことは、日本の電力資源も同様、水、火力ともに、世界をあげて将来においては枯渇してくる。また経済的にも成り立たなくなってくる。その将来の穴埋めを今ここで準備するというところに一番焦点があると見て、現在の重油にかわるような意味で考えられるならば、これはとんでもない間違いである。御承知のように、原子力発電はベース・ロードです。という言葉はあるいは失礼かもしれませんが、コンスタントにずっと続けて出さなければならないロードになるわけです。火力発電の一般的な任務は、水力のエネルギーの上に、朝晩なり冬なりの、ほんとうのピークだけをとっていくのにある。その火力の任務がだんだんベース・ロード化しつつあることも事実であります。その火力のベース・ロードでない任務の、もう一つの具体的なピーク・ロードを、もっと端的に行うという任務を重油が持っているわけであります。これを同じエネルギー源と考え、経済比較をされる、それをもって電力危機の穴埋めのように考えられるということでありますならば、そういう間違いは起りっこないと思いますけれども、今、新聞に伝えられているところから、しろうとの受ける感じ、あるいは一般の受ける感じは、今の電気から一ぺんに原子力電気に変りそうな錯覚を夢みておるわけであります。それはあくまでも錯覚でありますから、今申しましたように、おそらくこれから十年くらいまでの間は、現在の水、火力をもっと重点的に開発することによって電力危機はますます克服する度合いが強くなる。しかし、それから後になりますと、今度はずっとコスト高になると同時に、資源も枯渇してくる。そこの穴埋めは原子力にたよらなければならない。そこを目標にして、私は現在の原子力発電部門に対する対策が考えられていかなければならないということを強調したわけであります。おそらくその辺については、専門家もおられることでありますので、間違いなかろうかと思いまするが、繰り返して言うように、新聞を通じまして、日本人は珍らしいもの好きでありますから、ぽかっと早のみ込みで、一ぺんにこの転換が行われるような錯覚を起すことを私は心配して申し上げたわけであります。
  96. 正力松太郎

    正力国務大臣 今の御注意は、まことにごもっともでありますが、しかしさっき齋藤君もお話しになったように、有力は危機と信じております。それについては、私も根拠があるのでありますから、これを一つあとでごらんを願います。
  97. 佐々木良作

    ○佐々木(良)委員 私は、あるいは私どもの誤解じゃないかと思っておったわけでありますけれども、ほんとうに現在の電力危機に対して原子力発電で補われるということでありますならば、やはりはっきりと、私どもはそれをいいか悪いかを決して進まなければ工合が悪いと思う。従って、きょうが工合が悪いならば、後の機会におきまして、十分討議の時間と質問のときを与えていただきたいと思います。
  98. 正力松太郎

    正力国務大臣 今のお話、まことにごもっともで、私もそういうことにしたいということを希望しておるのでありましてまだできるとは申し上げません。そういうふうに努力しているということを申し上げておるのであります。
  99. 佐々木良作

    ○佐々木(良)委員 私の言っているのと食い違っているわけです。私は重油を用いなければならぬと称する現在の電力危機を、原子力発電でもって補うという考えであるならば、だめだと言っておるのです。
  100. 佐々木義武

    ○佐々木政府委員 私から説明させていただきますが、佐々木さんも御承知のように、日本の水力資源は、大体二千百万キロワットといわれております。ただいま水力が八百万キロくらい開発されており、今後の開発が進むと、今の計画では四百万くらいふえるから千二、三百万くらいになり、五年くらいたつと、おそらく千六百万キロくらいになって、そのくらいが、大体水力としては、経済的に見てもあるいは資源的に見ても、水の利用という点からいきますと、限度ではなかろうかということが定論のように存じます。火力の方を問題にいたしますと、これは量としてはあるわけですが、だんだんコストが高くなるとか、あるいは渇水の場合には四百万、五百万くらい要ったような石炭が、場合によっては余ってしまうというようなこともありますので、そういう点もあわせ、石炭の経済性あるいは資源そのものの条件が悪いという点等を考えて、どうしても将来のエネルギー源としては、原子力発電にたよらざるを得ないと考えているのは妥当な考えではなかろうかと考えます。当面、水にいたしますとまだ大体十年近くはあるわけで、石炭にいたしましても、工夫によってはもう少しあろうかと思います。しかし、だからといって、その年になって、十年後あるいは七、八年後になって、急に原子力発電といってもなかなかできかねるのでありまして、それまでには準備態勢を整えて、順次火力なりあるいは水力を開発していく。この最後の姿がどういうふうになるか、だれにもわからないが、ジュネーブ会議にも、日本政府として正式に今後五十年くらいの将来を見通した資料を提出してありますが、それによりますと、ただいまここに持ってきておりますが、非常に長い将来を見通そうとすればするほど、エネルギー源としては非常に危険だということは事実でありまして、それを今のような原子力発電でカバーしていくという観念は変りはないと思います。ただ今すぐ問題として原子力発電がどうかということになると、そういうふうにはなかなか考えにくいのではないか。大臣がおっしゃるのも、決してここ四・五年で原子力に置きかえていくことを考えておるのではないのでありまして、端的な例を申しますと、ただいまの全出力は、火力、水力合せて千二百万キロあろうと思います。かりに今後千二百万キロを原子力発電でやるといたしましても、原子力発電の単位は、大体一基十万キロぐらいが基準になっておりまして、あの英国ですら、十カ年間に十基あるいは十二基しか作れないという状況でありますから、かりに日本で非常にスピードを上げて、全能力を上げて切りかえていくといたしましても、十年後にどのくらいになるか、せいぜい十基か二十基とかいったのが限度であります。千二百万キロの中で、一基十万キロ、かりに二十基として二百万キロというごく一部です。その間、水、火力を開発していくから、それのごく一部を追っかけていく段階で、これがクロスして切りかわっていくことは、まだ先のことであると考えております。観念論ではなく、具体的な数字そのものから推していくと、そういうような考え方になるのではなかろうか。従って大臣のおっしゃったのも、決して今の千二百万キロに対して、突如として五年間で千二万百キロくらい原子発電をやって、そしてやるのだといった意味じゃもちろんないのでございまして、逐次これに切りかえていくというふうな意味かと私は了解しておるのであります。
  101. 佐々木良作

    ○佐々木(良)委員 これはもうこの程度でとめておくのが常識だろうと思いますけれども、ただ、私が言っておるのは、佐々木局長が今言ったように、今、正力さんが言われたことなり、あるいは齋藤さんのさっき言った話なり、それであなた方はぴったり合っていると思いますか。私が感じているのは、違いますよ。それは重油の例を出されたからなんです。あなたも御承知のように、総合エネルギーをやられたわけです。そして電力も御承知のようなわけだ。重油発電は、今、日本の電力の構造の中で、どういう位置を占めているか御存じのはずです。そしてそれは当面の危機を打開するなり、効率化のために用いられているものですよ。ベース電力のために使うものとは、全然話が違う。原子力発電の場合には、一ぺんやられたら、ずっと常時水力のような格好で使わなければ、おそらくそろばんは持てぬと思う。つけたり消したりするようなものじゃない。そうすると、性格は全然違うものです。従って、大臣の考えられている電力危機克服という意味と、将来の資源枯渇なり、あるいは採算なりという面を考えた将来の電力危機克服という面と、齋藤さんなり佐々木さんなりが言われたその電力危機という認識が違うと私は言うのだ。そこをはっきりしてもらわなければならぬ。私は、それは単なる言い回しのことだと最初思っておった。それでありますから、その面から、たとえば電力政策なり現在のエネルギー政策——現在ということは、大体鳩山内閣が続いておる範囲内なり、あるいは鳩山内閣によって立てられている五カ年計画とか六カ年計画とかといわれている範囲内です。そういうものに、いかにも影響があるかのごとき印象を与えておることを私は心配したから、念のために言うたわけなんです。重油の問題が出れば当然なんですよ。そこのところがもし誤解であるならば、解いておけばいいけれども、もしほんとうに、たとえば重油の効率なりあるいは経済的な価値というものと、エネルギーの価値というものと、原子力発電というものをにらみ合せて考えておられるということであるならば、これは原子力委員長として、そして五万キロの実験炉なりテスト・プラントなりを五年以内に持ってこようと考えておるくらい熱意のある人としては、あまりどうも常識離れがし過ぎて私は、これは一緒にやったら、とんでもないことになるのじゃないかという心配をしているわけです。
  102. 正力松太郎

    正力国務大臣 あるいは私の言葉が足りなかったかもしれませんが、私の意味も、齋藤次官なり佐々木政府委員と同じ意味なんです。ただ私さっき重油と言ったのは、現在アメリカの重油を入れてすらも石炭を補うておる、こういう意味でありまして私は重油にかわるに原子力をもってやるという意味じゃありません。やはり今日の石炭、水力では足らぬからして、これは将来だんだん枯渇していくのだから、現在ですらも石炭じゃ足りないような現状だから、これをどうしても原子力で補わなくちゃならぬ、それを五年というておるけれども、必ずしも五年とは限らぬが、五年でやるように努力しなくちゃならぬ、今は一刻も早く、原子力が石炭、石油を補うに必要だということを言うておる意味でありますから、その点は一つ誤解のないように、もしも私の言葉が足らぬでありましたら訂正いたします。
  103. 佐々木良作

    ○佐々木(良)委員 この辺で一応打ち切っておきます。
  104. 有田喜一

    有田委員長 岡君に御相談しますが、きょうはだいぶ時間がおそくなっておりますし、あなたはこの前だいぶ長く御質問されましたので、まだこれから幾らでも機会がありますから、きょうは一つ簡単にお願いしたい。
  105. 岡良一

    ○岡委員 実は私はあとの機会に譲ってもいいんでございますけれども委員会開会当初から特許庁の長官に御出席いただいておりますし、下田条約局長も、時間を繰り合して御出席いただいておるというような、まことに御誠意のある態度でありますので、しばらく皆さんにごしんぼういただいて、御続行願いたいと思います。  そこで、一番長くお待ちをいただきました特許庁長官にお伺いいたしたい。一昨日私がお尋ねいたしましたことは、十二月二十八日に、毎日新聞のトップに掲げられておることですが、二十七日に、外務省で日米間の科学技術の交換に関する協定についての最終的な合同会議があった。そのときには、バッシンというアメリカ大使館の法務官、極東軍の関係者、米国大使館の関係筋も御出席であった。その内容として伝えられておるところに、秘密特許という言葉がありました。この秘密特許というのはどういうものかということを、私はお尋ねを申し上げたわけであります。本日まで答弁が留保されております。そこで重ねてお尋ねをいたします。特に一昨日念を押しておきましたように、アメリカの新しい原子力法には、特許に関する数個条の条章がありますが、これと秘密特許というものは、具体的にいかなる関連があるのか、またアメリカにおいては、原子力の軍事利用に関する発明発見と称するものは、すべて特許権は与えない、従ってこれは秘密特許というもののカテゴリーに入らないものか、この点でございますが、どうか一つお願いいたします。
  106. 井上尚一

    ○井上政府委員 お答え申します。米国における原子力委員会と特許制度の関係について、一九五四年に改訂に相なりました米国の新原子力法によりまして、要点をかいつまんで申し述べたいと思います。  特殊核物質、スペシャル・ニュークリアー・マテリアルという言葉を使っておりますが、その特殊核物質または原子力に関する発明の特許の問題を中心として申します。まず第一に、発明の性質という面から申しますと、今、岡委員がおっしゃいましたように、軍事的利用に供せられる発明、いいかえますれば、原子兵器のみの利用に供せられる発明というものと、そうでない発明、非軍事的な利用に供せられる発明というふうに大きく分類して申しますと、第一の、今申しました軍事的利用に供せられる発明につきましては、百五十一条の規定によりまして、特許権を付与しないということに相なっております。次の、これ以外の、すなわち原子兵器のみに供せられる発明でない発明であって、同時に、もちろん先ほど申しました特殊核物質または原子力に関する発明でございますけれども、これにつきましては、特許権を与えることができるわけであります。しかしこの特許権を付与することができるというこの中に二つございます。その中の一つは、その発明の内容を秘密にして、特許権を与えることを留保するという分であります。それからもう一つは、本来の手続によって特許権を与える。この後者につきましては、全然問題がないものと考えますが、前者につきまして、すなわち出願の内容は秘密にして、そうしてこれに特許権を与えることを留保するというのは、そういう規定があります。これは米国特許法の第百八十一条にそういう明文が設けてあります。この秘密の取扱いというのは、毎年々々これを更新する、ですから一たん秘密になりましたものも、時期が来ればこれを解除する。解除になりますれば、留保になっておりました特許権を与えていいわけであります。  以上、大体そういう扱い方でございますので、いわゆる秘密特許——このいわゆる秘密特許という言い方が、実は非常に不正確に使われる場合が多いのでございますが、厳格な意味におきまする秘密特許と申しますのは、特許権として与えて、特許権の成立を認めて、しかもその内容が秘密であるというのが、本来の意味でいいまする秘密特許でありますが、今申しましたようなアメリカの現行法におきましては、いわゆる秘密特許の制度はないわけであります。今般の日米間の特許権または技術上の知識の交流に関する協定につきましては、前会も申しましたように、近く議会に対して正式提案になる予定であるのであります。またこの協定につきましては、外務省の方からお話があるのが至当かと考えまするが、その御引用になりました新聞記事におきまして秘密特許云々という言葉がありましたのは、おそらく今私が申しました中で、アメリカで発明の特許の出願をする、出願の内容が秘密になっている、そして特許権としては留保される、与えられないという場合が、もっぱらこの協定上の問題になろうかと考えるのであります。日本の場合について申しますれば、現在の日本の特許法では、今申しましたような意味での秘密特許制度はございません。ですから、米国で出願があって、その出願の内容が秘密にされている、これと同じ発明の内容につきまして、日本に対して出願があった場合に、日本でこれをどう取り扱うかというのが、協定交渉の経過におきましての非常にむずかしい問題点であったのでありますが、われわれ特許庁としましては、現在は、厳格な意味におきます秘密特許制度を復活する考えはないのであります。しかしながら、同時に、この米国側の希望と申しますか、その出願の内容を秘密にする、公けにしないという要請は、なるべくこの要求に応じて参りたいというので、現行法とそういう米国側の要求との妥協をどういうふうに考えていくかというのが、今回の協定の特許に関する問題の一点であります。結局この妥協的な方法としまして、これをどうするかという点につきましては、先般申しましたように、近日中にこちらに正式提案になりました場合に、できますれば、当方から詳しく申しますまで御猶予をお願いしたいと考えております。
  107. 岡良一

    ○岡委員 そうしますと、特許庁長官の御答弁によれば、原子力に関するアメリカの特許権を与えるやいなやの取扱いは、軍事的利用にのみ限られておるものについては与えない、しかし御存じのように、原子力は、平和的利用と軍事的利用というものは、実につばぜり合いの姿というよりも、使うものによって、村正にもなり正宗にもなるということになっておるわけであります。そこで、村正になり狩るようなかね合いにおいて、そのような発明、発見については、特許権は成立しない。従って特許権は与えるが、特許権の内容は秘密に保持しておる、こういうものがいわゆる秘密特許という、あの新聞に伝えられた言葉の内容であろう。いま一つは、このような秘密特許の取扱いを、日本の特許庁としては、特許法に特別な条章を起して、秘密特許の条項を設けるというふうなことは好ましくないと思うが、事実上、この取扱いをいかにするかということについては今後の問題である、国会の審議によって適当に考うべきものである、こういう御答弁と了解してよろしゅうございますか。
  108. 井上尚一

    ○井上政府委員 込み入った言い方を申しましたので、御了解があるいは十分ではなかったかと思いますが、もう一度言いかえますと、原子兵器への利用のみに供せられる発明、これにつきましては特許権を与えない。もちろんおっしゃいましたように、同じ一つの発明でありまして、原子兵器への利用もできるし、それから平和的利用もできる。そういう場合に、これは特許権の対象になり得るわけでありますから、出願があります場合に、法律の規定によりまして、これは原子力兵器のみに利用されるんだというふうに米国政府が認定しました場合には、特許権は与えません。与えませんけれども、この場合には、その発明者から原子力委員会へ、この内容につきましての報告の義務というものは、もちろん別にきめております。また、今申しました特許権を与えることができるという性質の発明である場合、この場合におきましては——秘密を要する事項は、原子力の法律にどういうことが秘密の対象であるかという明確な規定があるわけでございますが、これに該当する場合には、この内容を公けにすることができない。従って秘密にする。そして結局その出願がありました場合には、特許庁でそれを握っているわけであります。いつまでも権利を与えないで留保しておく。そうして、秘密解除の時期が来ましたら、それに権利を与える。これがいわゆる特許発明の出願の秘密の扱いという問題であります。そういう扱いの対象となっております発明につきまして、日本に対して出願があったという場合に、日本としてどう扱うかという問題は、協定が正式に議会に提案になりまして、政府の方から御説明のある場合に詳しく申し上げたいと考えております。
  109. 岡良一

    ○岡委員 簡単でけっこうでございますが、そうしますと、結局後段で御説明いただいたように、原子力の新しい発跡あるいは発見については、平和利用の目的として特許権の申請をされたものであっても、その内容を審査した上において、これは特許権を与うべきものではないということになった場合には、特許権は与えるが、その内容は公開することを保留をするということがアメリカにはある、おそらくこれが秘密特許とでも称するものではなかろうか、こういう長官のお話ですね。
  110. 井上尚一

    ○井上政府委員 私の申し方にきわめて不十分な点もあったのでありますが、今私がいろいろ申し上げましたのは、米国の新原子力法の内容といたしまして、大体のことを申したのであります。今度の日米間の協定におきましては、原子力関係のものは全然除外しております。そういうことが、今度の協定に明瞭に書いてあります。ですから、今度の協定の内容として問題になりますのは、いわゆる核分裂性物質または原子力の利用ということに関係のないもので、同時に秘密を要する発明についての扱い方の問題であります。
  111. 岡良一

    ○岡委員 そこまで言ってくれれば、私どもは何も取り越し苦労をする必要はなかったのです。私どもがあの新聞の記事を見て、秘密条項というものは、科学の情報であり、しかも高性能の兵器に関する秘密の特許である、こういうような表現がありますので、常識上、高性能の兵器というのは、やはり原子兵器を含むのではないか、従って現在はもちろんそういう情報をいただいたところで、日本とすれば、それをどうこなせるわけのものでもありませんが、将来はやはりこなし得る段階に達しなければならないわけです。しかし日本の原子力開発がそういう段階に進んでも、そういう方向に役立ててはならないという方向にいるわけです。しかし、事実上、日本の原子力の研究発達の段階でこなし得るということになれば、原子力兵器に関する秘密条項も、日本に流れてくる可能性がある。  今度は下田条約局長にお尋ねしますが、今、特許庁の長官は、原子力に関する秘密条項は含まれておらないと言いましたが、いかなる情報を流すかということについての種目別の協定は、協定の本文の中に入るのでございますか。
  112. 下田武三

    ○下田政府委員 近く署名される予定になっておりますが、まだアメリカ政府の正式の同意がありませんので、内容につきまして申し上げることを差し控えさせていただきたいのであります。ただ、今の御指摘の点は、申し上げられると思います。どういう種類の特許権あるいは情報が取り上げられるかという点につきまして、ただいま特許庁長官の申されましたように、いやしくも原子力に関係のあるものは、すべて協定から除外しております。これは明白なことであります。もう一つは今仰せのように、スペシフィカリーに何々ということを列挙する方式をとっておりません。ただ抽象的に、防衛目的のためにする特許権または技術上の知識の交流といっておりまして、防衛目的ということだけがうたってあります。それ以外の細分の事項については、何らうたっておりません。
  113. 岡良一

    ○岡委員 それでは、原子兵器に関する科学情報あるいは原子力の軍事利用に関する科学情報というものは、協定の成文の中で、明らかに除外をするという成文が入っておりますか。
  114. 下田武三

    ○下田政府委員 仰せの通りでございます。
  115. 岡良一

    ○岡委員 それでは、私どもの心配したことは、実は解消したわけなんです。私どもが特にお忙しいおからだを御出頭願ってお尋ねしたのは、これだけでは、どうしても原子力の軍事的利用とか原子兵器の秘密に関する情報が入っておるではないか、そういうことになり、あるいは漠然と原子力というものを特に除外するという協定成立がなく、細目協定にゆだねられるということになれば、日本の防衛生産の技術的な段階において、まあしばらくはジェット機だ、次には誘導弾だ、次には原子兵器だ、こうなり得る可能性があるのですが、そういう懸念はこの協定には全然ない、将来そういうふうに発展していくというような可能性、懸念も全然国民は要らない、こういうことですね。従って、条約に関する当事者として、局長からもう一度伺いたい。
  116. 下田武三

    ○下田政府委員 仰せの通り、将来原子力情報まで発展する可能性は全然ございません。そういうようにならないための明文の規定を設けております。
  117. 岡良一

    ○岡委員 それで、私どもいろいろお尋ねを、もし万一あるならばと思って用意をいたしたのでありまするが、杞憂に終ったことは、ほんとうに私の不敏を恥じるわけであります。長らく皆さんをお引きとめいたしまして——。  そこで、最後に正力委員長に一言だけ念を押しておきたいのでありますが、こうして一昨日、本日二回にわたって、私どもの仲間もいろいろお尋ねをいたしました。その結果いろいろな点が明らかにされたのでありますが、正力委員長にお尋ねする前に、下田局長がおられますから一言だけ追加してお尋ねを許していただきたいのですが、それは、先般、衆議院、参議院で原水爆の禁止に関する要望の決議を行いました。あのお取扱いについては、関係の米、ソ、英にこの旨を、大使等を通じて手交されたということを新聞で承知いたしました。あなたは専門家でありますから私お聞きしたいのですが、日本とすれば、やめてくれということは言えないのでございますか。
  118. 下田武三

    ○下田政府委員 やめてくれということは、今までも言っておりましたし、また今後も申すつもりであります。もちろんこの間の国会の議決を伝達するに当りましては、重ねてやめてくれということを言っておると思います。
  119. 岡良一

    ○岡委員 重ねて念のためお聞きしますが、国連憲章による信託統治区域において、この信託の主権国と申しますか、たとえばアメリカが旧南洋委任統治のマーシャル群島等において水爆の実験をやるということは、国連憲章上、あれは正しいことでしょうか。専門的な御見地から承わりたいと思います。
  120. 下田武三

    ○下田政府委員 問題の地域は、国連の戦略的信託統治地域になっておりまして、原子兵器等の実験をしてはいかぬという禁止の規定は別にございません。でございますから、一般国際法で律すべき問題だろうと思います。
  121. 岡良一

    ○岡委員 国連憲章の第七十六条には、信託統治の地域における、いわゆる信託を委任せられておる国の義務がいろいろ表明されておるようでございますが、たとえば「住民の政治的、経済的、社会的及び教育的の進歩を促進すること。」その他いろいろなことが規定されておることは御存じの通りでございます。そこで、前回ビキニで水爆の実験があったときにも、マーシャル群島の住民が二百何十名かその被害を受けた。そうして国連へどうかやめてくれという陳情を直接直訴をしておるということも伝えられておるわけであります。こういう事態は、戦略地域の規定があるとして、指定する地域もありますが、しかしそれにしても七十六条の規定は、やはり守らねばならぬということになっておる。ところが、ああいうどえらい、巨大なエネルギー実験をするということは、一体国道憲章の信託統治に関する諸条章の精神から照らして、いけないのじゃないでしょうか、重ねてこの点承わりたい。
  122. 下田武三

    ○下田政府委員 これは、私の意見でも、また日本政府当局の意見でもないのでございますが、実験をやっております当事者の米国側の考え方は、もちろん住民の福祉を十分に守らなければならぬということは憲章のうたう通りでございますが、米国側の考えによれば、およそ福祉中で一番大事なのは、セキュリティーの福祉だ、国家の安全上の福祉というものは、命あっての物種で、国際社会においては、最優先の利益、福祉の問題だ。そういう考えだろうと思うのであります。
  123. 岡良一

    ○岡委員 これは局長と問答しても仕方がないことでありますが、しかしそうだとしたならば、そのセキュリティーというものはずいぶんいいかげんなものだと思うのです。そこに住んでいる住民が、放射能によって、とにかく近代医学でも、日本経験したように、ともすれば不利な状況になろうとする事態を惹起する、そういうことをあえてすることが、その地域の住民のセキュリティーのためであるということは、とうてい私はそれを承認できないと思うのであります。しかしそういう点、私は希望したいことは、アメリカはそう解釈しておるんだということで、長い物には巻かれろではなく、私どもこの科学技術の振興に関する委員会としても、やはり原子力の平和利用ということを大きなかけ声にして、それなればこそいわば超党派的な気持で審議に当っておるので、われわれとしては重大関心事であるわけです。国会における原水爆実験禁止の決議案が有効に遂行されるということに対しては、大きな関心を注いでおるという意味から、今お話のような、全く理論的には首尾一貫しないような、非常に無理な解釈で、アメリカがあくまでも原水爆実験をやるんだということであれば、外務省としてもやはり独自な立場から、きぜんたる交渉を一つぜひお願いしたい。これはいずれまた機会を見て、責任ある外務省の方にお願いしたいと思いますが、局長としてもぜひとも一つどもの心意気を御了承願いたいと思うのです。  さて、正力委員長には大へん長らくお待たせいたしまして、恐縮でした。別に委員長にお聞きをするといっても、いろいろこれまでにわれわれの同僚委員がお尋ねいたしました。佐々木君は、いわば電気に関する専門家の立場から、いろいろ若いに似げない——年寄りの冷や水という言葉がありますが、若い者の冷や水を申し上げたわけでありますが、私は主として国際的な規模において、日本原子力行政をどう持っていくかということを心配しておるわけです。そういうことから、若い者の冷や水をいろいろ申し上げておったのです。そこで、この際、私が特に委員長が閣議などで御発言を一つ強く願いたいし、あらゆる機会に御努力を願いたいと思うことがあります。先般衆議院で原水爆の禁止に関する決議をいたしました。しかしこれはいわばそのことの裏だと思うのです。われわれが要求するのは、水爆を禁止しろ、反対たということじゃなく、これは平和利用を国際的な規模でどんどん推進しろ、こういう要求こそ、われわれ国民としての建設的な要求でなければならないと思うのです。なるほど国際連合でも、昨年の十月の政治委員会で、満場一致で国際原子力機構を作るということも決定になりました。さてしかし事業計画ということになれば、それは二年ないし三年以内に、また国際的な科学者の会合を開こう、こういうようなことだけしか、あの中における具体的な事業計画としては見られなかったような気がするのです。二年、三年後にまた再び科学者の会合を開く。その間には、ことしはアメリカも英国も水爆の実験をやるんだという。一方、大国が水爆実験の競合をやっておるということでは、せっかくの原子力に関する国防原子力機構というものも、有名無実ではないか。それでは、われわれが原子力基本法に平和利用をうたい、あるいはまた国会の、原水爆の禁止をしてくれという平和への国民の大きな意欲というものは、全く大国によって無視されてしまう。ところが、その後国際原子力機構というものも、国際連合やその専門機構に加盟しておるものだけじゃない、どの国も入れる。もちろん日本もこれに入れる。入ったらやはり当然日本としては、もっと国際的な平和利用の推進、それは何と申しましてもやはり原水爆の禁止、実験、製造、使用の停止、この保障が国際原子力機構の裏づけにはっきりなくては、平和利用の推進ということはから念仏になる。このことに政府はほぞを固めていただきたいと思うのです。国際原子力機関では、あるいは核物質、原料物質のプール案も出ておる。あるいは施設等の供与についても、国連の管理化にそれをやろうという案も出ておる。これが案でとどまっては因る。これは急速に、事実としてわれわれの前に現実化してほしい。これは日本政府としては特にがんばっていただきたいと思う。特に原子力行政の担当者として、正力委員長はこの点は閣内において大いにやっていただきたい。一つ原子力発電に対する委員長の情熱を、この方面にも大きく傾けて、ぜひやっていただきたいということを、強く心から希望いたします。長らく皆さんのごしんぼう、ありがとうございました。
  124. 有田喜一

    有田委員長 だいぶ時間も経過いたしましたので、本日はこの程度にいたし、次会は来る十八日、土曜日、午前十時より開会いたし、科学技術庁設置法案が提出されるならば、その提案理由の説明を聴取し、質疑に入りたいと存じますから、さよう御了承願います。本日は、これにて散会いたします。    午後五時十三分散会