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1956-10-23 第24回国会 衆議院 運輸委員会 第39号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和三十一年十月二十三日(火曜日)    午前十時五十三分開議  出席委員    委員長 松山 義雄君    理事 今松 治郎君 理事 臼井 莊一君    理事 木村 俊夫君 理事 青野 武一君    理事 中居英太郎君       有田 喜一君    關谷 勝利君       永山 忠則君    池田 禎治君       五島 虎雄君    楯 兼次郎君       正木  清君    山口丈太郎君       小山  亮君  委員外出席者         運輸政務次官  伊能繁次郎君         運輸事務官         (海運局長)  粟沢 一男君         運輸事務官         (海運局海運調         整部長)    辻  章男君         運 輸 技 官         (船舶局長)  山下 正雄君         運 輸 技 官         (船舶局造船課         長)      藤野  淳君         運輸事務官         (船員局船舶職         員課長)    伊藤徹次郎君         運輸事務官         (港湾局港政管         理官)     見坊 力男君         運輸事務官         (鉄道監督局         長)      権田 良彦君         高等海難審判庁         長官      長屋 千棟君         日本国有鉄道副         総裁      小倉 俊夫君         日本国有鉄道参         与         (営業局長)  磯崎  叡君         日本国有鉄道参         与         (船舶部長)  西阪 文雄君         専  門  員 志鎌 一三君     ————————————— 十月二十三日  委員濱野清吾君及び下平正一辞任につき、そ  の補欠として永山忠則君及び五島虎雄君が議長  の指名委員に選任された。 同日  委員永山忠則辞任につき、その補欠として濱  野清吾君が議長指名委員に選任された。     ————————————— 本日の会議に付した案件  日本海運現状について説明聴取  海運政策及び港湾運送事業に関する件  洞爺丸沈没事件遺族補償等に関する件     —————————————
  2. 松山義雄

    松山委員長 これより会議を開きます。  海運に関しまして調査を進めます。最初に本日委員会に配付されました日本海運現状について政府より説明を求めます。粟沢海運局長
  3. 粟沢一男

    粟沢説明員 御指示によりまして簡単に御説明申し上げます。  この日本海運現状という冊子は、昨年度も調製いたしまして今回が第二回目でございますが、大体の考え方としましては、世界的に関係のある海運でございますので、日本海運のありまする環境と申しますか、要するに世界的な海運動向というものをまず見まして、その中において日本海運がこれに影響されながらどういう歩みをしてきたかという点を、具体的に数字につきまして、それもなるべく主観を交えずに叙述したつもりでございます。  内容につきまして概略申し上げますと、まず世界海運動向でございますが、昭和三十年度におきまして非常に海上運賃市況は高水準で推移いたしております。アメリカ及び欧州の経済の繁栄が本格的になるにつれまして、海上荷動きも非常に増加しまして、それに伴って運賃事情が硬化したということは御承知通りであります。これが世界不定期船運賃指数によりますと、昭和二十七年を一〇〇としまして、二十九年の夏までは引き続き八〇以下という低水準をたどってきたものが、二十九年の九月から上昇をたどりまして、三十年末には一四〇になったという数字が示されております。このように世界海上運賃率が立ち直って参りましたこと、それから現在世界の持っております総船腹の過半数が、非常に性能の低い船舶でありまして、これが代替を必要とするという事実がありますために、世界的に非常に船舶新造意欲が高揚されまして、三十年度中には一千百万トンという発注量があったということが推定されております。これは朝鮮動乱直後の一千万トンをこえる、要するに世界大戦以後の一番大きな数字であるということがいわれるわけであります。しかもこういう好況の間におきまして注目すべきことは、諸外国がいよいよ堅実な成績を上げているにもかかわらず、海運助成の傾向はむしろ強くなってきたということであります。たとえば特に西独におきましては、海運会社は同じように日本会社と匹敵するだけの好況影響を受けておるわけでありますが、三十年の十月に新たに利子補給制度を設けまして、ほとんど日本の現在の利子補給制度にまねたような新しい制度を採用しております。こういう点は注目すべきところであろうと思うのであります。  次に日本海運現状でございますが、昭和三十年度のわが国の貿易の活況は、その荷動きの量におきましても、前年度に比較いたしまして輸出数量が五百七十万トンから七百七十万トン、約三五%の増加を示しております。また輸入数量は三千三百五十万トンから三千六百七十万トン、これも約一割の増加を示しております。これに対応いたしまして日本の船の外航輸送量は二千二百万トンから二千七百万トンに増加いたしております。運賃収入は七百七十五億から一千百四十四億に増加いたしております。それぞれ二一%及び四八%の増加になっているわけであります。しかしながらこれを国際収支の面から見ますと、受け取りが一億一千六百万ドル、これは邦船によります貨物運賃と三国間輸送運賃との合計額でありますが、これに対しまして支払い額は二億二千六百万ドル、結局一億一千万ドルの支払い超過となっておりまして、依然として海運サービスでは日本輸入国だという地位を脱却していないわけであります。これは日本輸出入物資の積み取り比率を見ましても、いまだに約半分にしか達していないという事実から出てくる数字でございまして、日本としましては船をふやせばこの率は当然回復できる。戦前におきましては受取額支払い額の二倍以上でありまして、海運収入というものが国際収支に大きな貢献をしておったのに比較いたしまして、まだわれわれの努力が足りないと思うのでございます。また内航につきましても、やはりこういう外航影響を受けまして、貨物状況を比較いたしますと、鋼船機帆船ともに一〇%以上の貨物量の増大を来たしておりますが、運賃は諸般の事情がありまして、なお上げ脳んでおるという状況でございます。  次にこういう海運のになっております日本海運企業経営状況はどうであるかと申しますと、この一年間におきます主要四十八社の収支状況を見ますと、収入が一千四百六十四億、前年度に比較しまして四百九十五億円の増加になっております。減価償却費用は一千二百六億で、前年度に比しまして二百七十一億円の増加となっております。従って減価償却利益におきましても二十九年度の三十五億に対しまして、三十年度は二百五十八億と七倍強の増加を示しております。また減価償却費も二十九年度四十一億であったものが、三十年度は百九十四億に上りまして、減価償却後の純損益も、二十九年度の損失六億円に対しまして、三十年度は利益として六十四億円をあげておる、こういう状況でございまして、その結果三十年三月期におきましては繰り越し欠損金が六十五億円であったものが、三十一年三月期におきましては繰り越し欠損金は二億六千万円に減じたという状況でございます。さらに一部におきましては、海運会社でもようやく配当を復活することができました。もっともこの配当は、海運会社株式投資的価値を維持し、増資によりまして自己資本の充実をはかるという意図のもとに行われたものでありまして、これに伴う社外流出が約三億六千万円ほど見られたのでございます。また三十年度におきまして設備資金を返済いたしました状況は二百五十二億円でありまして、前年度の八十三億円に比較しますと約三倍強という数字になっております。これは業績の向上と、ただいま申し上げましたような増資によりまして自己資本が充実した結果、こういうようになったものであります。また増資によりまして、四十八社の資本金総額は、三十年三月には二百七十六億円でありましたものが、三十一年三月には四百十九億円になっておりまして、百四十三億円の増加を示したわけであります。さらにこれが三十一年九月になりますと五百五十九億円となりまして、三十年三月に比較しますと約二倍強になったということが言えるわけであります。しかしながら海運企業の過去の業績不振というものは非常に長く続きまして、船舶減価償却不足額は依然として今日六百六十億という多額に上っておるわけでありまして、これを解消いたしますためには、現在の好況でもなお数年が必要であるということが言えると思います。また三十年度におきまして営業外費用、これはその九〇%以上が支払い利息と手形の割引料等でございますが、この営業外費用が百三十五億円にも上っておりまして、総費用の約一・〇%にも当っております。全産業を平均いたしますと三・六%でありますから、それに比較しまして一〇%という高率を占めておることは、海運企業が借り入れ過多に悩んでおるという状況を示しておるものと思われるのであります。また資本構成も先ほど申し上げましたように、一年半前より倍にも自己資金が増大いたしておりますが、なおかつ自己資本比率は一七%にすぎない、こういう現状でございます。要するにわが国海運企業は、資産の面におきまして多額償却不足を抱いております。なお資本の面におきましても、多額の借り入れを背負って悩んでおり、経営基盤の確立ということは、なお今後相当努力を要するという現状であるというふうになっておるわけでございます。
  4. 松山義雄

    松山委員長 これより質疑を許します。小山亮君。
  5. 小山亮

    小山(亮)委員 海運局長の御説明がございましたので、主として最初海運局長にお伺いしますが、今年度の新船建造計画はどういうような工合になっておるか、大要を簡単に御説明願いたい。
  6. 粟沢一男

    粟沢説明員 ちょっと失礼でございますが、今年度の新船建造計画でございますか、それは三十一年度でございますか。
  7. 小山亮

    小山(亮)委員 私の方からそれではお聞きしますが、今度の十二次造船船腹は、総体でどのくらいの御計画ですか。
  8. 粟沢一男

    粟沢説明員 貨物船が二十九隻、総トン数にしまして二十三万三千四百四十トン、それから油送船が五隻、八万一千トン、合計しまして三十四隻、三十一万四千四百四十トン、こういう隻数、トン数になっております。
  9. 小山亮

    小山(亮)委員 客船建造計画はおありですか。
  10. 粟沢一男

    粟沢説明員 計画造船には、客船建造計画はございません。
  11. 小山亮

    小山(亮)委員 そうしますと、鉄の割当はこのワクの外ですか。今の計画造船だけで、鉄の割当は何トンになるのですか。
  12. 粟沢一男

    粟沢説明員 これはただいまそういう資料を持っておりませんので、ちょっとわかりかねます。
  13. 小山亮

    小山(亮)委員 海運局にはないのですか、運輸省には……。
  14. 粟沢一男

    粟沢説明員 船舶局にはございます。
  15. 小山亮

    小山(亮)委員 そうすると鉄のことは全然わかりませんか。これからお聞きすることは、たとえば船舶に対しての鉄の割当は、大体六十五万トンのワクぐらいのところ、最高あるように聞いておりますが、それが日本船に対する割当であって、現在作られておる外国船に対するところの鉄は、このワクの外ですか、中ですか。
  16. 粟沢一男

    粟沢説明員 まことに申しわけありませんが、そういう点は船舶局でないとわかりかねるのであります。
  17. 小山亮

    小山(亮)委員 それでは船舶局長を呼んで下さい。この方はあとにして、ほかの方を先に伺います。  昨日、一昨々日の本委員会質疑には、大体現在の国鉄滞貨というものが、大きな問題になっておったようであります。私どもがここで承わりますと、国鉄滞貨はおそらく年度内に解決しなければならないような問題が、たくさんに各地にあると思います。十河総裁のこの間の御答弁によりますと、国鉄現状はあらゆる努力をしても今が精一ぱいである、これ以上やるということは危険だ、現状においてもすでに危険だ、それを人の力で何とか切り抜けなければならぬような現状にある、こういうことを言われた。昨日岩手県方面に非常に木炭の滞貨があるという陳情を受けましたが、ああいうような問題はもう解決がつかぬというようなことになりますか。これに対して海陸協力してこういう問題を解決するというような申し合せは運輸省の中にはございませんか。
  18. 権田良彦

    権田説明員 今御指摘の例にございました東北地方の薪炭につきましては、お説のように滞貨がございます。この滞貨を消化いたしますには、国有鉄道の貨車繰りの関係ではみ出した足りないものは一部他のトラック、あるいは海運に転移する等、具体的な措置をとりたいと思っております。そのために今運輸省各省とでそういう個々の具体的な緊急対策を相談する打合会を持っておりまして、明日それを開くことになっております。なお省内におきましては、鉄道海運自動車その他が国鉄をも加えまして、これを具体的に解決するように打ち合せをしております。さらに国鉄には国鉄内部にこれらの問題を解決するための機構が特別に今度作られまして、これによって具体的にこれから至急に解決いたしたい。ただ全部きれいに一掃できるかどうかということは、個々具体的な事例について十分措置を講じましてできるだけそういたしたいと思いますが、昨日御説明いたしました通り、現在の百六十万トンの沿岸在貨全部を一掃することは非常に困難だと思っておりますが、そういう具体的な個々の問題についてはでき得る限りの解決をいたしたい、かように考えておる次第でございます。
  19. 小山亮

    小山(亮)委員 今日の国鉄滞貨突発事件ではない。鉄道状態が、だんだん線路も腐朽してこれに対して無理ができないようになりましてから、漸次激増してくる貨物荷動き状態からいって滞貨ができるということは、当然だれが見てもわかっておる。でありますから、どろぼうを見てなわをなうというようなことでなく、これに対する対策というものはとうにあなた方はとっていなければならぬ。私が知る限りにおいては、はなはだ残念ながら今の運輸省は、陸海空の三つを全部統轄しておるにもかかわらず、海運関係鉄道関係というものは全然違った国のような態度です。困ったときにはお互いに助け合って協力を求めるというような謙虚な態度をとらない。この間からの総裁の御答弁によれば、国家現状から予算がないから国鉄をどうすることもできないのだ、改善することもできないのだ、かりに改善をしてもすぐにはできない、何年か後でなければできないのだ、それならその間の対策というものは応急対策にしろ恒久対策にしろ、おのずから別途の考慮が払われるべきものではないかと私は思う。それはどういう方法かといえば、日本海岸が非常に多い国ですから、線路海岸沿いに走っているのが非常に多いのですから、港を利用することによってこの解決というものができるはずなんです。もし運輸省内海運局協力を得て沿海航路船を多く活用することにしたならば、国鉄滞貨というものの解決は楽なんです。なお国鉄がほんとうに完全に整備されるまでの間は、だれが考えてもこれによってこの滞貨を片づけるより方法がないじゃないですか。これは中学生が考えてもそれ以外に方法はないと私は思う。それをどうしてそういうふうな対策をおとりにならないか。もしこの輸送緩和、あるいは滞貨解決方法をやるなら、運輸省内海運局協力を求めて沿岸航路船を使用することによって解決すればいい話なんですが、そういう機関は今までできてないのでしょう。運輸省内にできているのですか。あしたから作ろうとか今度作ろうというのですか。もし今度作るというならどういう方法でお作りになるのですか。
  20. 権田良彦

    権田説明員 御指摘の点はごもっともでございまして、在来ともこういった内航及び鉄道輸送との調整ははかって参っておるのであります。それの仕組みといたしましては、だいぶ前からでありますが、省内には輸送連絡機構がございます。これを定例的にいたしておりますが、さらに海陸調整部会というものを持っておりまして、それでこの問題についても数回協議をいたしております。今回はさらにそれを各省を入れました会議に広げたわけでありますが、それは先ほど御説明した通りでございます。御指摘のように沿岸航路に移せるもの、内航海運に移し得ますものについては、個々具体的に措置をとってきておるわけであります。昨日御配付いたしました資料の一番うしろにも、今回とりました措置海運転化の実例をお示ししているわけでございますが、これではまだ不十分でありますので、なお一そうできるだけ移し得るものは移すように努力をいたしたい。なおそのためには地方陸運局トラック関係地方海運局にそういう沿岸航路関係の具体的な荷物を移すような指示機構を持っておるわけでございます。
  21. 小山亮

    小山(亮)委員 鉄道が今までの鉄道セクショナリズムで一切の解決をやっておった、その観念を全くここに改めて大いに他の協力を求めるという態度に出なければ、この輸送解決はできませんよ。現在ですらそれだけの滞貨があって、しかもいろいろ方法をとっても解決がつかぬ。将来ますます荷物がふえるばかりなんで減りっこないのですから。ですから私は今こそあなた方が思い切った処置をとらなければならぬ、こう思うのです。その問題についてあなた方の方で頭を突っ込んでこられれば、初めて日本近海船及び日本沿岸輸送船という問題について、重点的に考えなければならぬようなことになる。それをあなたの方は、どんなに貨物滞貨しても鉄道の力だけでこれをやろうとする。それは鉄道責任を追及されるから鉄道の力だけでやろうと考えることはごもっともですけれども、しかし国家的な大きな考えに立ちますと、この際滞貨があるということは、それによって生産者が非常に困るような問題が起きてくるのですから、国民の立場に立って考えて下されば、これをどう解決しようかということはおのずから明瞭だと思う。法律がなければできないとおっしゃるけれども、国鉄営利本位に考えるから、高い運賃の船を借りて安い運賃で運んだらそろばんに合わない、損がいくからできない、こういうことになる。もしかりにそうだとすれば、通常議会でも臨時議会でも新しい特別な法案を作ってもらって、何らかの国家から資金の援助を仰ぐという方法がとれる。それまでの応急対策として、鉄道としては独立採算制ですから、借入金でもこの問題の解決はできるのです。そこで私は非常措置をとるというつもりになれば、滞貨解決ということはできないことはないと思う。やろうとしないで、ただ自分たち鉄道の中だけで一切の問題を解決しようと考えておいでになるからできないのじゃないか。運輸省というのは陸海空を持つのですから、空も使うような状態には今なっておりませんけれども、しかし海上輸送というものを、あなた方この際大いに活用される必要がありはしないか。将来もまた、現在のような日本においては、海上輸送というものに重点的に頭を持ってくるのでなかったら、伸びていく日本というものは解決がつきません。この点に対して、私は鉄道関係の人の頭が非常にかたいのじゃないかと思うのですが、どうですか。
  22. 権田良彦

    権田説明員 ただいまも御説明申し上げました通りに、運輸省といたしましては緊急的にはこの急場をしのぐために、まず昨日来御説明いたしておりますように、でき得る限り内航海運も使う、またでき得る限り短距離のものはトラックに移すという措置を講じまして、鉄道と内航海運自動車とを合せた緊急対策を立てておるわけでございます。さらにこの急場しのぎだけでは根本的に解決いたしませんので、根本的には大いに輸送力増強にいろいろ資金の投下その他をはかりたいと思っておるわけでございます。
  23. 小山亮

    小山(亮)委員 具体的に伺いますが、そうすると今鉄道の方で使っておいでになる船腹は何トンですか、どういう船をお使いになっておりますか、種類は。そしてどういう方面にどういうふうに回しておいでになりますか、お伺いいたします。
  24. 権田良彦

    権田説明員 お答え申し上げます。日本国有鉄道で使っております船は御承知のように連絡船だけでございまして、これは青函、宇高その他連絡航路に充当されておるのでございますが、その他私の申し上げました内航海運というのは、民間業者によりますところのスティール・ボートあるいは機帆船を使いたい、こういう意味でございます。
  25. 小山亮

    小山(亮)委員 あなたの言っていることは何を言っているのだか私にはわからない。あなた方が民間の船を使っているということは、石炭や何かを運んでもらう、そのことを言うのですか。これはあなた方使っているのじゃないでしょう、荷物民間業者輸送してもらっているのです。そうでなくて、鉄道が積極的に自分で船を借りてでもいいからどんどん輸送するという態度に出ざる限りこれは解決つかぬ、私はこの問題はもっと積極的にやらなければならないと思う。これはあなた方、連絡会議があるから何とか会議があるからと言うけれども、会議なんというものは、あなたたちはそこで何を話しているかわからない。会議を幾らやっても船は動きませんよ。むしろ会議なんかやってもらいたくない。実行すればいいのです。実行する機関を作ればいいじゃないですか。海陸合せて相当の力を持った機関省内に作って、それでもってどんどんやったらいいので、会議なんかやる必要はない。会議なんか責任回避で、お互いに寄り合って責任を分担しているのじゃないですか。そんなつまらない会議なんかやめて積極的に動く機関を作ったらいい。それで必要なら国家から予算をとったらどうですか。われわれも協力します。それをやらないで、ただのんべんだらりとして、滞貨があって困る困る、今に何とかなるだろう、運賃でも上げてくれれば、そうすれば五年、六年、七年のうちには鉄道が直るから、電気機関車になるから、そのときには荷物がスムーズに動く、それまで国民が待っておられますか。もう少し真剣に考えてもらいたい。輸送の問題について新しい機関を作るというような積極的な構想はないのですか。
  26. 伊能繁次郎

    伊能説明員 ただいま御指摘の点については、昨日も私お答え申し上げたつもりでございますが、御指摘のような点について、国有鉄道特段経済上の負担をかけてやらせるということについては、現在のところ考えておりません。しかしながらこの問題につきましては、すでに十分御承知のところと存じますが、国鉄の財政の問題、また独立採算制問題等もございますので、政府としては、全体の問題については、さいぜんこれまた御指摘のありました鉄道運賃海運運賃との調整あるいは今後の鉄道輸送力増強、さらに海運現状についてもう少し具体的な調整のとれた輸送措置ができるかどうかということも今後やって参らなければならない、かように考えますが、今御指摘になりましたような助成措置と申しますか、国鉄に特別の負担をせしめて、その予算を国からとる、それはお言葉ではございますが、議論になりますので私としてはあまり申し上げたくないと存じますが、現状においては国鉄特段負担をかけて、予算政府から補給するというようなことはなかなか困難なことでございまして、これはお気持はよくわかるのですが、そうでなく別の方法海運海運自体として、でき得る限り鉄道で送れないもののうち、適正な海運に向く貨物をそちらの方面へ向けるという指導、しかもそれを行政命令として特別な措置をとるというような状況は、現在まだなかなかやり得ませんので、これらの点については急速に部内で目下海陸調整関係をやっておりますので、せっかく御指摘のありましたような点につきましても今後の予算措置としては考えてはみたいと思いますが、現状ではやれない状態であります。
  27. 小山亮

    小山(亮)委員 この滞貨問題の解決は、おそらく年内に解決しなければ非常に困るようないろいろな不都合な事態が起ってくるだろうと思うのです。たとえば物によっては腐って全損もするようなものも出てくるわけです。そういうものに対する非常的な応急対策をどうするか。恒久対策は今伊能次官が言われたように、いろいろ制度を改正して次々に手を打つということもありますが、目前に迫っておるところの応急対策をどうするか。それもやはり恒久対策と同じように制度がきまったり、いろいろ運賃調整をやったりしなければできないということになると、これは全然今の滞貨解決はできないということをあなたが答弁をされたことと同じことになる。非常対策というものは別に手を打つ方法がある。また政治は生きものですから、そういう差し迫った事態があるということになれば、議会は何も非常時に対応できないような死んだ機能ではない。生きた機能でやれば、こういう問題は私は解決はできないはずはないと思うのですから、それに対して特別なあなた方の御考慮がなければならない、何とか案がなければならない、その案があれば、その案に基いて、われわれもまたそれによって動きたいと思うのだが、その案をお考えになる御意思はないか、これを伺いたい。
  28. 伊能繁次郎

    伊能説明員 この点については明確に、目下研究中でございますので、何とか成案を得たい、かように考えております。
  29. 小山亮

    小山(亮)委員 それについて従来までの海運局のやり方というものは、大型船本位の海運政策造船政策というものをとってこられた。いつも私が言うことでありますが、率直に申しますと、日本運輸省は大財閥、大資本家に対するところの補助政策というものは積極果敢にやられる。しかしながら造船所に対しても、海運会社に対しても、中小企業、零細な企業に対しての対策というものはゼロなんです。何にもない。ただ組合を作って、規則を作って、そうして統制していじめていくというだけだ。金のあっせんもしてやらなければ、材料のあっせんもしてやらなければ、今まで保護をしたことは何もない。しかしながら大会社に対してはひたすら鞠躬如としてこれに奉仕しているのが、今までの海運局のやり方なんです。これは私が指摘するまでもない、天下公論の帰するところなんです。外航船が盛んになってくれば、当然内航船も盛んになってくる。それから近海が盛んになれば、今まで沿海で使った船を多少修理改良して、船体の改造をして近海に出していく。そうすると沿海の船がなくなってくるでしょう。ところが沿海の小さい船に対しては鉄の割当も何もない。いい船を作りたいが、鉄の割当がない。従って沿海の五百トン以下の船は、一々本省の許可を得なくても出先関係の許可だけでできるようにしたい。新造船としてできた五百トン以下の船は、私の推定によると、この一年か一年半の間に大体八十隻以上でしょう。それがどういう船ができておるか内容を御承知でしょうか。これはみんな古い解体した船のエンジンや船材をとってきて、補機や何かをひっつけて、これを新造船だといって作っています。これは材料の援助も何もしてやらないのですから、やむを得ずそういうものを作るようなことになるのだろうと思いますが、私はこれではいかぬと思う。沿海の小型船に対して何らかあたたかい援助の手を差し伸べてやるという御意思はないでしょうか。あなたの係かだれの係か知らぬが、御答弁ができたら伺います。
  30. 粟沢一男

    粟沢説明員 御指摘通り、今までいわゆる内航海運対策というものが非常に弱体と申しますか、おくれておったということは、私も率直に認めます。しかし、今まで特に外航についていろいろな政策がとられたということは、内航海運対策が要らなかったということではなしに、要するに終戦のときに外航船が壊滅に帰して、日本の海軍の復興はまず外航船からということから始まった政策の結果である、そういうふうに考えております。幸いにしまして、この結果今や三百数十万トンの船舶の拡充ができたわけでありますが、それに立ちおくれて内航の対策は今までほとんどとられておらなかったという状況でございます。それは一つには、内航の船腹がなお荷物の動きに比してややだぶつきぎみであったということもあると思います。またその結果運賃等をくずしまして、内航の市況もよくなかったということも結果的な事実であると思うのであります。私どもはこういう状態で放置しておくことは、もちろんいけないことだと思います。かねてからいろいろと検討しておるわけでございますが、内容的に申しますと、ただいま御指摘のありましたような近海にも出得る船があるということは事実でございます。たとえばその主機を換装すれば経済的に十分近海に回り得るというD型船等もございます。あるいは在来船もございます。そういうものにつきましては、ただいましきりに開銀に折衝いたしまして、数億の金を開銀から出してもらいまして、主機を換装してこれを近海に出す、あるいは内航にも経済的に使い得るという状況にしたいと思っております。それから、これは十二次船から始めたわけでありますが、近海あるいは内航にも使い得る中型船というものを計画造船でも取り上げまして、今年度わずか二隻でございましたが実施いたしまして、来年度はさらにこの隻数、トン数を近海船についてはふやしたい、そういうふうに考えております。なおただいま資金のあっせんを少しもしておらぬというふうなお話でございましたが、あるいはやっておるけれども非常に微々たるものではないかというお話かと思います。金額は忘れましたが、開銀につきましてもあるいは中小企業金融公庫等につきましても、できるだけのあっせんをただいままで続けておりまして、それによりまして、ただいまお話の、エンジンの古いのを利用しても新造船を作るというふうな実態も起っているわけであります。あるいは定期船につきましても、開銀に代替船の建造資金をあっせんいたしまして、一昨年から相当の金額をつぎ込みまして、代替船の建造を進めております。なお税金等につきましても、内航についても、外航並みとまではいかぬでも、できるだけ軽減をはかりたいという意味におきまして、固定資産税等も逐次引き下げております。なおこれはできれば総トン数五百トン程度まで引き下げたいと思いまして、ただいま自治庁とも折衝を続けておるわけでございます。それこれいろいろと研究をし、またできるものからやっておるわけでございますが、外航船の対策に比べまして、内容もはなばなしくなく、非常に大きなまとまった政策として打ち出されていないという結果、現在まで内航対策は非常に微弱であるというふうな結果を来たしておるわけでございます。私どももこれは決してないがしろにしておるわけではございません。むしろ今後はそういう方に重点を置いていかなければならないというふうにすら考えておるわけでございます。金額等につきましても、外航のような大きな金額は要らないわけでございます。今後できるだけ研究をいたしまして、あるいは業界の希望も聞きまして、内航対策についてはできる限りの努力を続けたい、こういうふうに考えております。
  31. 小山亮

    小山(亮)委員 粟沢君にお話しする必要はないと思いますが、現在は造船意欲が非常に旺盛で、自己資金でどんどん作りたいという船ばかりでございます。それは沿海、近海、遠洋を問わずです。ところが海運局のやっておいでになる、非常に保護しておられた大型船、いわゆる定期船会社日本の十大会社、大手筋の会社といわれるようなものは、どんどん復配もできるような状況であっても、なおかつ利子補給を続けてくれ、税金はもっと下げてくれ、そうして建造資金の半分は政府資金をあっせんしてくれというふうな、いろいろの要求を運輸省に対してしております。しかしながら不定期船であるとかあるいは中型船であるとか、近海を航海するような船を作る小さな会社は、一切運輸省のお世話にならぬ、何にもならぬからどんどん船の建造を許してもらいたいということを今非常に言うておるわけなんです。しかしながらなかなかできない。できないのはなぜか。金がないわけでも何でもない。今はむしろ金はあるのです。ないのは材料です。その鉄材がないから、鉄材の割当を少しふやしてくれということを言っておるわけなんですが、そういうようなものに対しての鉄の割当をあなた方がもっとふやすわけにはいきませんか。私がお聞きしたいのはそこなんです。きのうも一体日本はどのくらいの船が必要だというふうなことを大臣が答弁されましたが、外国がどんどん船を作っているのですから、外国が作るだけは日本も作っていかれるのです。一体日本に何トンなければならないというふうなばかな話はないのです。戦争後占領軍に押えつけられて、日本の国が生きていくためには何トンなければならぬか、四百万トンあればよろしいというようなことを言ったのです。しかしそうではないのですよ。領土を失い、島を取られ、いろいろな資源を外国に奪われてしまった日本は、このあり余った人間がどうして生きていくか。船に生きていくことが一番大事なことではないでしょうか。領土を取られた今日、船は考えようによれば動く国土です。島が動いているのと同じです。だんだんに島を取られて小さくなったら、船をどんどん作って、動く国土をふやしていく。もっと大げさに言うならば、世界トラック業者になってもいいわけだ。海上トラックは全部日本でお引き受けしますといって、世界トラック業界に出ていくような意気で、盛んに日本が海外に進出してしかるべきものだと私は思うのです。何も何トンの制限はない。占領下において非常に不自由なところで、アメリカの海運を刺激しはしないか、圧迫しはしないかという考えで、向うが非常にきびしく日本を監督しておる間なればこそ、計画造船とかなんとかいう名前でほおかぶりしてごまかしていかれたが、今日になればもうそんな必要はないでしょう。思い切ってどんどんと船を作っていいのじゃないでしょうか。それにはあなたの方で鉄その他造船資材を確保しなければならぬでしょう。しかるに日本の船がこんなに窮屈なのに、外国船にどうしてこんなに鉄を割り当てるのですか。向う四年間というものは各造船所は一ぱいじゃないですか。国民が補給金まで出して作った鉄が、外国の船にだけどんどん作られて、日本の船はその中の幾部分か辛うじてそこで作らしてもらったようなことで、一体日本海運が伸びますか。私はその点を聞きたい。なぜ外国の船をもっと制約して、日本の船を作るようになさらないのですか。資金のあっせんはしなくても、鉄の割当をうんと日本の方にやりさえすればできるのですから、その点粟沢局長のお考えはどうですか。
  32. 粟沢一男

    粟沢説明員 ただいま金の心配はしなくてもいいというお話でございましたが、やはり自己資金造船をするとしますと、金の面からの制約も当然あるわけでございまして、全体的に見まして、やはり日本船舶を建造する能力の限界というようなものはある程度あり得るかと思います。私どもその限界はある程度検討いたしまして、来年度は六十万トンないし七十万トン程度日本船の方に確保しておけば、大体いいのではないかというふうな気持で計画をいたしております。ただ部分的には金はあるのだが、資材がないので船ができないというようなことは、事実としてはあり得るかと思います。そういうものをどうするかという問題が今後残された問題かと思うのであります。  一方におきまして、これは船舶局の問題になりますけれども、輸出船を日本で作って出すということもやはり一つの必要事と認められて、いろいろな施策が講じられておるわけであります。それをどの程度に押えるというと非常にかどが立ちますが、規制して日本の船を作らなければならぬかという点は、なお今後の研究に待たなければならぬのではないかと思うのであります。なお先ほどお話がありましたように、特に中小造船所に対する鋼材の割当あるいは関連工業に対する鋼材の割当、その他の資金のめんどうというようなことも、ただいま船舶局でいろいろ検討しておりますので、そういう点につきましても近く何らかの成案が得られて、御説明があり得るかと思うのであります。そうしますれば、先ほどのお話の小型船につきましても、ある程度の鋼材の割当もスムーズにいくし、造船としてもそういう使命を持った造船所が今後働き得るのではないか、こういうふうに期待するわけであります。
  33. 小山亮

    小山(亮)委員 局長は知らないでそういう答弁をしておいでになるのか、知っていても言えないからそういうふうな答弁をなさるのか知りませんけれども、今資金のあっせんがなければ船ができないという制約された面があるとおっしゃいましたが、資金のあっせんを主として求めるのはいわゆる大手の会社です。それは終戦以来今まで作りました全体の船に、開銀から貸し出しておるところの貸出金の内容をごらんになればわかります。約一千億でしょう。そのうちの半分以上が十七社で、しかも十七社の半分が郵船と三井と飯野の三社です。その三社の中の資金の工合を見ると、半分以上が郵船会社ということになっている。結局過去の実績から言いましても、大きな会社がどんどん政府の援助を受けて作っているわけなのです。資金の援助がなければ船ができぬというのはそういうところなんです。ほかの方は、どんどん自己資金で船を作りたいからといって、あなたのところにいろいろ申請してくるでしょう。自己資金で作りたい。一切政府のお世話にならぬという炭礦汽船なんかの勇ましいのもありますが、そういうのを見れば今資金は困らないのです。政府からあっせんされなくても実際できるのです。それを政府から資金を受けなければ船ができぬといって、貴重な国民の税金からできた資金の援助を受けておりながら、そのくらい苦しい財政であるかと見るとそうでない。半分金を援助してもらわなければ船ができないという人が、ほかの会社で作った、すでにでき上った船をまるごと二はいも三ばいもどんどん売手があれば買っているじゃないですか。それを見れば金は困っていないのでしょう。金に困っていると思っていらっしゃるのはあなただけじゃないかと私は思う。それからもう一つは、今の外国船の問題もそうなんです。なるほど外貨獲得ということは大事なことです。しかしながら外国の船を作ってやって外貨獲得をすることが大事か、日本の船を作ってやってそれでうんともうけさせる方が大事か、これは問わずして明らかだと思う。さらにまた外国に船をどんどん作ってやる結果はどうなりますか。日本はどこの国と競争する、世界各国と競争するのでしょう。その競争する相手にどんどん船を作ってやって、こちらに船がなかったら、戦えないじゃないですか。実際日本の国際的な立場を考えたとき、あなた方は、ただ外貨獲得という面だけでなくて、将来の日本海運をどうするか、お考えになる必要がありはしないか。昔は、イギリスは世界一の海運国だった。アメリカがそれに次いで、日本が第三位だったといいますけれども、現在はどうですか。現在はアメリカが第一位で、その次がギリシャじゃないですか。戦争後、あの小さなギリシャが、どんどん不定期船を作って、今では世界第二の海運国ですよ。世界海運はギリシャの船で圧倒されておるような状態になってきておる。日本はその後塵を拝して、わずかに一年に三十万トンそこらしか船ができぬという。この情ない状態では、運輸省でいろいろなことをおやりになればなるほど、日本海運力は小さくなってしまう。あなた方は日本海運を机の上でおもしろがっていじっておるのじゃないかとすら私は思う。今のようなときにはどんどんと作らせるような方法を講じなければならぬ。外国の船に割り当てる鉄材を日本の船に割り当てる。外国で船を作りたかったら、鉄材を持ってこい、持ってくれば作ってやる、しかしながら日本の鉄材は日本の船に使うのだというような、それほど私は極端にやれというのじゃないが、その心組みをもって私は造船計画をお立てになるのでなかったら、将来の日本が心配でかなわない。御見解はいかがです。あなた、私の言うことが全然違うなら勇敢に言って下さい。おれの言うことが正しい、日本の将来のことなんかお前何を言うかと言って下さい。
  34. 粟沢一男

    粟沢説明員 ただいまの御見解は私全く同感でございます。要するに日本で鋼材を作って輸出するよりも、造船にして輸出する方が得だ、また外国の船を作るよりも日本の船を作って使う方が得だと私も信じております。ただそれが日本造船能力が百五十万トンあるなら百五十万トン日本の船を全部作れといわれても、なかなかむずかしいのであります。その間のどの程度の割合をとるかということが、いろいろ御意見のあるところであります。お話の模様ですと、日本はわずかに一年間に三十万トンくらいしか作っていないじゃないかというお話でありますが、過去一年半の間に日本の船は八十万トン以上できております。先ほど申し上げましたように、来年度も六、七十万トンの日本船を作りたいと私どもも考えているわけであります。これが非常に少いから百万トンあるいは百五十万トンにしたらいいだろうというお話であれば、私どももさらに先生とも議論しなければならぬかとも思いますけれども、現在のところはお話のように二十万、三十万ではなくて、一年半の間に八十万トン以上できている。来年度も七十万トンか八十万トン作りたいということを根底に置いてプランを立てております。
  35. 小山亮

    小山(亮)委員 局長のお話では、日本の作っている船が八十万トンできた。それは運輸省の御厄介にならないで、船主が勝手にどんどん作るからできている。運輸省の御計画になるものは毎年わかっている。それだけでは承知ができないというので、どんどん自己資金で作っておればこそ船がふえている。その旺盛なる造船意欲をあなた方がごらんになって、それをうまく活用して、日本船腹増強をやることをお考えになったらどうか。特別なる会社に特別なる手厚い援助をなさるというような、国民からともすれば非難を受けそうなことはおやめになって、ほんとうに日本の盛んな造船意欲を満足させるような施策をおとりになったらどうかと思う。  さらにまた、運輸省当局のお考えとわれわれと非常に違っていることは、今度の計画で——あなたの方で計画造船じゃないとおっしゃるから、計画造船でないでしょうが、大型の二万五千トンくらいの客船を二隻お作りになる。大型二万五千トンの豪華船ということになると、百億近い船価を必要とするのですが、それだけの建造費をやって、太平洋の観光客を吸収するというが、客船はどんなことをしてもそろばんに合いはしません。昔客船をどんどん奨励したのは、一朝有事のときに日本海軍の仮装巡洋艦にしようという目的のために、いろいろな保護を加えて客船を作った。だから私が説明するまでもなく、船の構造の中にどこには六インチ砲を積めるように、どこには三インチ砲を積めるようにということで、客船の船体としては全く必要のない補強をちゃんとして、いつ何どきでもこれを仮装巡洋艦に切りかえて使えるようにできているのじゃないか。だから速力の早い船を作った。もう今は戦争ということを考えなくてもいい時代なんです。また考えても商船を仮装巡洋艦に直すというようなことは、今はお笑い草です。そんなことはできはしません。そうすると、やはり商船はどこまでも採算本位に考えなければならないでしょう。そうしますと、豪華船を作ってもどうしたってそろばんに合いはしません。そうすると、その損をしたところは政府が補助するという。話に聞けば百億ばかりの船を作るのに、新しい政府の官製の会社を作って、その船を郵船会社に扱わして、そして欠損は政府がみんな持ってやる。郵船会社はもうけるだけはもうけて、損をしたところは政府政府じゃない、これは国民だ、国民にしりをふかせよう。初めからふかせようというようなそんな船をなぜお作りになるか。観光客を招致することも必要でしょうが、船が観光客を招致するのではない。観光客が日本に来ると、日本の国はどこでもみんな美しい公園だと言うのです。ところが道路はどうでしょうか。変なにおいのする砂ぼこりを浴びて、ほうほうの体で帰っていくじゃないですか。国の中を見たって、快適に自動車で走れる道路はどこにありますか。看板だけきれいにして、包装だけきれいにして人を連れて来たところで、こっちへ来て失望させるようなことになったらどうなりますか。税金をどんどんガソリン税でも何でも増強して取りますけれども、道は一つも直してない。地方に出てごらんなさい。地方はどこだってほこりの立たない道はありはしない。あなた方はよく通っておいでになるからおわかりになるでしょうけれども。それなのに一方こういう豪華船、二万五千トンの船を二隻作る。一隻で約五万トン。五万トンだと約一万六、七千トンの鉄材が要る。その鉄材をなぜ小さな沿海航路の中小企業の困っているもの、ほんとうに日本のためになる船を作る方に回してやらないのか。また国家が損するような計画を立てて、それだけ損失補償をする気があったら、なぜほんとうに血となり肉となる日本の国の中の近海の船を整備するという考えにならないか。私はその考えがどうしてもあなた方と意見が一致しないのです。憎まれ口はききたくないけれども。それにもかかわらず、あなた、今度その案をお出しになるでしょう。これは自由党が賛成するかどこが賛成するか知りませんけれども、こんなことをしたら大へんなことじゃないか。国民は非難しますよ。私はその点に対して、もしそういう案が海運局におありなら、お改めになったらどうですか。出してからけんかするよりも、出さぬうちにお引っ込めになったらどうかと思いますが、御意見どうですか。
  36. 粟沢一男

    粟沢説明員 私ども計画造船ではございませんが、客船計画があることは御指摘通りでございまして、建造資金は一隻七十五億円ぐらいに予定いたしております。二隻で結局百五十億になるということでございます。これの要するに必要性でございますが、お話のように観光関係から非常な要望がありまして、日本に観光客が非常にふえて参るし、またふやさなければならぬという要望がありまして、現在でも大体滞在客で約五万人、一時上陸客も加えますと十万人ほどの観光客が来ているわけであります。それが数年ならずしてほとんど倍になるだろう、あるいはしなければならぬという要請があります。輸送機関の方もぜひこれに歩調を合せて整備してもらいたいというわけでございます。御指摘通り道路が悪いとか、あるいはホテルがまだ不備だという点も当然あるかと思います。これはいろいろ観光関係の方で総合的に検討いたしまして整備して参るという話であります。船の方でございますが、ただいま日本郵船は氷川丸を使って旅客輸送をやっております。それからアメリカ側ではAPLラインが二隻使いまして、太平洋は大体この三隻の客船輸送をしているわけであります。これらの輸送力が不足しておりまして、現状でも相当大幅の需要があるということは事実でございます。なおこれを船をふやすことによって需要に応じ、かたがた需要を喚起するという状況になると思いますが、APLでも三万トン以上の、二十六、七ノットぐらいのいわゆる優秀客船と申しますかを計画しているということを聞いております。御指摘通りこの船は当初は確かにぺーいたしません。政府からある程度の補助をもらわなければやっていけないことは事実でございます。しかしこれも年数の問題でございまして、ずっと十年も二十年も補助金をもらわなければやっていけないということではなしに、たとえば現在の氷川丸はすでに純益をあげております。今度新造いたします船もある程度年数がたてば黒字をあげまして、政府からもらった補助金を返すという計画にいたしております。私どもただいまの計画では、政府から受けました補助金程度は将来大体返せるのではないかというふうに考えております。経済的に申しましてもその程度の船であります。決して生涯政府の御厄介にならなければ持ちこたえられないような船ではないのであります。またただいま郵船会社というお話がございましたが、郵船会社としましても、決してこれでもうけていこうというふうな気持はございません。まあ客船のことでございますので、普通考えましても一応郵船会社というようなことが出てくるのでありますが、会社としましては、もしこれを自分の方でやらしてもらえるならば、相当な損を覚悟でもやってもよろしいというような気持でおります。私どもも、かりにこれができまして、どこの会社に使わせることになりましても、そのために会社がもうける、そしてそのしりを政府だけがぬぐうというふうなことだけはないようにいたしたい、こう考えております。
  37. 小山亮

    小山(亮)委員 今のあなたの御答弁は、聞いていますと非常にいいように思いますが、一体船の耐用年数というのは何年だと思いますか。一般の貨物船は大体船令三十五年ですよ。それから客船ですと、船令二十年というのは長過ぎるのです。今あなたのお話では、百五十億で船を作ってやって、補助金をやっても、二十年もたてば補助金が要らなくなるだろう、それからもうかるのだろう——冗談じゃない。そのときには船の命はなくなっているのですよ。生きているだけに補助金をやることなんですよ。二十年もたったなんという老朽船で、日本の表玄関でアメリカの船と競争するなんというわけにはいきませんよ。しかも私があなた方に言いたいのは、今後二十年の日本の将来の船舶はどうなるかというのです。もう原子力の船ですよ。十年から十五年、その先はもう原子力の船をわれわれは考えなくちゃならないでしょう。それなのにこの乏しい資金の中から作って、よその整備も何もできてないのに、まだ貨物を運ぶのも足らないで、船舶が足らぬ足らぬといっているときに、貴重な鉄材を使って百五十億の金を使って損をする船を作って、みえばかり張って、二十年間で補助金をやらないようになって、それからもうかるだろうなんて、冗談じゃない、船は二十年もたてば客船として使えなくなるんですよ。よくそんなでたらめな案を議会に持ち出してきたな、ここは中学校じゃないのですよ。そんなでたらめなことで通りはせね。国民の税金を出して損させるなんて、みんな笑ってますよ、業界も笑ってますよ。これをやっているのは、郵船会社だけが一生懸命になっているが、ほかの業界は全部嘲笑してますよ。そういうものをおやりになる。これではもう日本海運を預かる運輸省がかなえの軽重を問われるからと思えばこそ、私はお考え直しになったらどうですかということを言っているのですよ。この問題はあなたに言ったってしょうがないから、今度大臣に言いましょう。  続いて、ちょっと簡単に御質問をしておきます。先般津軽海峡で洞爺丸の事件がございましてから足かけ三年になります。審判は長い。慎重審議を期しておるということはけっこうです。しかしことさらに長引かしておるのじゃないかという疑いすら私は持っておるのです。最近聞くところによりますと、あの審判に対するところの証人として、アメリカの船長を喚問するというふうなお話がございますが、事実でしょうか。これは審判所長がおられたら、お差しつかえなかったら、これは内容を聞くのじゃない、証人として喚問をしておるかどうか、お伺いいたします。
  38. 長屋千棟

    ○長屋説明員 お答えします。今小山さんの御指摘になったようなことは、私まだ聞いておりません。
  39. 小山亮

    小山(亮)委員 鉄道の方の関係の方に伺いますが、そういうお考えがありますか、ありませんか。
  40. 西阪文雄

    ○西阪説明員 現在国鉄ではそういう考えは持っておりません。
  41. 小山亮

    小山(亮)委員 まことにけっこうなことで、私は、日本の津軽海峡に起った事件を、全く縁故のないアメリカあたりの船長がこれを見たってわかりはしないと思う。日本海運の技術というものはアメリカの水準以上なんですから、それをアメリカ人の船長を呼んできて証言させるなんてばかなことはおそらくなさるまいし、また審判でもそんな証人の喚問はお取り上げにはなるまいと私は思うのです。私は願わくは、この審判の結審は早くしていただきたい、これが私の希望です。それは無理にそういうことを要求することもできませんが……。  もう一つは、三年間になりますと、遭難者の方がみんな金持ばかりじゃない、たとえば金持があったとしても、一家の主人をとられてしまえば、あとの人たちの生活は苦しい。苦しいということがお互いにわかっておるのに、三年間も引っぱっている。苦しがって困っているような人をそのままに見殺しにするということは、私は相当考えなければいけないと思う。鉄道としてもそれだけの迷惑をかけておきながら、まだ責任云々というようなことに藉口して、これに対する処置をおとりにならぬということははなはだ残念なことと思います。伺うところによると、紫雲丸の問題はすでに遭難者側との話し合いがついて、すべての解決ができておるということですが、事実でしょうか。次官から伺いたい。
  42. 伊能繁次郎

    伊能説明員 御指摘通り解決されております。
  43. 小山亮

    小山(亮)委員 そうしますと、私は第一審の審判の判決文を詳細によく読みましても、これは実によくこの審判官が調べています。実に詳細にわたって調べております。第一に、青函連絡船のあの船体の構造というものは適当でない。これはすでに飛鸞丸というのが数年前に遭難をしまして、そのときに船の後部の乾舷が非常に低いためにたくさん水をすくい込んで、ほとんど危険状態であった。そしてまたポンプも何も全部電気で動くようになっておりますから、一たん浸水しましてモーターがやられますと、もう全部動かなくなって、排水もできなくなるというのが実情なんですから、それから見ますと、水をすくいやすいようにできている船です。そうしてこの飛鸞丸と同型で、同様のケースでもって、それ以上の風を受けている。聞くところによると、あの造船当時は大体風洞試験というのをやる。模型を作って風洞試験というのをやって、それにパスしたのを作るのです。日本の風洞試験というものは、四十メートルの風までにしか風洞試験ができません。そうしてあの船なんかどうかというと、この風洞試験をやっておらぬ。だから突風五十メートルではひっくり返るのが当りまえです。当然なんです。ですからこれはどう考えたって、鉄道側が不完全な船を使っておったことは明瞭でしょう。そうして運航管理の機構がめちゃくちゃなんです。あの狭い、たった三時間で行かれるようなところに対して、ただ単に船長だけに一切の責任を負わして、気象から、向うの連絡まで全部船長の責任にするということは、これは無理なんです。長い、大きい、広い海上ならともかくとして、あれだけの間で行ったり来たりするということになりますと、陸上の連絡、陸上の指示というのが一番重大なんです。それを全然やっていないということになりますと、これは運航管理の面において、機構の面において大欠陥があったことは明らかです。その次に大きな問題は、函館の港湾計画というのがめちゃくちゃなんです。船はしけたときに港の中に逃げ込むのが当りまえだ。ところが港に逃げ込んだら沈んだりしてあぶない。港の中におられない港というのはでたらめな港です。それに対して建造計画計画通り進んでおりませんから、港も不完全な港だ。勢い船長は外に出なければならぬということになるのです。こう考えてきますと、これを直さない限りはまた海難が起る。そこで運輸省の方は明らかに認められて、それから後に連絡船を全部直されたでしょう。乾舷を高くされて、燃料炭の取り込み口というものをすっかり直された。それは明らかに構造上欠陥があったということを自分で認められたからでしょう。それともう一つは、運航管理の面に大改革をされたでしょう。そうしますと、船長に罪があるとかないとかいうことは、たとい無罪になりましても有罪になりましても、その問題は別として、すでに勧告という重大な警告を与えられております。勧告というものは重大なんですから、そういう勧告を受けております鉄道としては、この責任は紫雲丸の事件と同じですよ。やはり鉄道責任を負うということは明瞭ですよ。船長の罪の有無にかかわりないのです。それをこの間大臣は、局長か課長のように、ただ三百代言的な言辞で、使用人に過失がなければその過失の責任はないのだと言われたが、課長や局長がそういう答弁をするならわかりますが、大臣からはもっと常識的な、総合的な、政治的な立場に立って、国民に対してどうするかという立場に立っての御答弁がほしかった。その点において、すでにもう次官の方にもいろいろな御用意がおありでしょう。もし紫雲丸と同じような解決ができるものでしたら、一日もすみやかにその御解決に向って進まれるように御努力願いたいのですが、いかがでしょうか。
  44. 伊能繁次郎

    伊能説明員 責任の問題についていろいろ御意見を拝聴いたしまして、これについてはせんだっての委員会において、大臣からも答弁したのでありますが、大臣の答弁にもございましたように、責任の問題は別として、この問題の円満な解決のために、今後あらゆる努力をして早急に解決したいということについては、御指摘通りでございますので、われわれ鋭意努力中でございます。
  45. 粟沢一男

    粟沢説明員 先ほど小山先生から、何か国会を欺瞞するようなつもりじゃないかというお話がございましたので、ちょっと釈明さしていただきますが、そういう大それたつもりはございません。私どもの今の計算によりますと、いろいろ前提はございますが、船床の消化率七五%ということを見まして、大体六カ年間は赤、七年目からは大体黒になるという目安がついております。それから、おっしゃるように、二十年もたったら黒になるというようなことは一言も申しません。一言釈明いたしておきます。
  46. 小山亮

    小山(亮)委員 あなたは自分で言ったのですよ。十年か二十年たったら補助金を要らぬようになるだろうと言った。
  47. 粟沢一男

    粟沢説明員 申しません。
  48. 松山義雄

    松山委員長 山口君。
  49. 山口丈太郎

    ○山口(丈)委員 私は今洞爺丸の事件について質問がありましたから、これから補足して質問をしたいと思います。  大臣も、また今次官も、けしからぬことには、責任は別としてと言われる。けれども、私どもの考えでは、これは責任を別にして、乗客が船と運命をともにするということは義務づけられておるのですか。国鉄の船に乗ったり、汽車に乗ったりしたときに事故が起きたら、乗客はそういう国鉄機関と運命をともにするということを義務づけられているのですか、どうでしょうか。
  50. 小倉俊夫

    ○小倉説明員 船舶につきましても、機関車につきましても、そういうことはございません。
  51. 山口丈太郎

    ○山口(丈)委員 私はそれが当然だと思うのですけれども、今までの国鉄当局の答弁あるいは運輸省答弁を聞いているとそうなる。船長が台風が来るという報告を受けて、函館の港内にいたのでは船が岸壁にぶっつけられて、港湾施設が悪いために船がこわれてしまう。いわば船長は国鉄の船を預かっているのですから、その預かっているという職責を全うするためには、その船にとって最大限に安全な方法をとらなければならぬことは当然である。そこで台風というものがきて、異常な状態になって、船を緊急待避することが職務上当然のことであると考えたればこそ、港内へ避難したのです。避難したけれども、たまたま天候がその避難の目的を達成するにはあまりにもきびし過ぎて転覆してしまったが、船と運命をともにしたのはりっぱな殉職なんです。船長に何ら責任はないのです。はっきり言って責任はありません。それを責任があるというならどうかしている。だから私はこれは殉職だと考えるけれども、そのことと乗客が船と運命をともにしたということは全然別です。船が航海しているときならば、これは天災地変としてやむを得ませんけれども、航海していたのとは違うのですよ。ちゃんと岸壁におったのですよ。その岸壁にいた船は、今言うように、港湾施設が危ないために避難したのですけれども、乗船していた乗客は職責を持っているわけでも何でもない。この乗客の生命、財産を最善な方法で緊急避難さして保護するということは、これはまた乗客に対する責任でなければならぬ。それを怠って、船が緊急待避しなければならぬその場においてまだ乗せている。そうして審判のときの言いのがれとしてつべこべ言っている中には、けしからぬことには、船が出るときには危ないからおりて下さいということを船内で放送した、これで責任はしまいですと言っているらしいが、放送したならばなお悪いと私は思っている。それを放送したというなら、その放送した通りになぜ実行しなかったか。いかに急ぐといえども、いかに船の緊急待避を必要とするといえども、その岸壁にいる間に当然タラップを下げて下船せしむべきである。下船さした後にその船の安全を保つための職責を遂行すべきものである。しかるにそれをしないでおいて、言いのがれに、いや船内の緊急待避の放送をいたしましたと言ったと聞くのですが、そんなことでこの国鉄責任が回避できるというなら、そんなばかなことは断じてない。だから、乗船者千数百名の命を最大限に保護するためには、常に最悪の事態を考慮して、最善の方法をとるということでなければならぬ。しかもそれが天災地変、不可抗力というならば、岸壁にいるとき、陸にひっつけておるときになぜその処置をとらないか。その処置をとらないでおいて、言いのがればかり言ったりしておる。そんなことは許されることではありません。それにまた二審、三審に持っていって、解決の時日を遷延しようとする。この明らかな事実を回避して、ただ単に海難審判にのみこれをゆだねていこうとする、そうして解決の時日を遷延しようとする。あなた方はもう一ぺん死んだ人の顔を見に行かれたらどうですか。そうしたらつべこべ言えないでしょう。しかも報ずるところによれば——私は基準局に来てもらいたいと思ったが来ないけれども、実にけしからぬことには、社用の出張などによって出張した場合には、ちゃんとやはり労災法のあらゆる補償があるはずです。ところが、それを受け取ったけれども受理していない。そのために補償すら得られないことになっておる、時効になる、こう言っておる。そんなばかな話がどこにありますか。殉職した船員なりあるいはその船と運命をともにした乗客の写真などを、もう一ぺんあなた方はみな見てごらんなさい。洞爺丸の遭難記念写真があります。われわれももらっております。私は常にその写真を見て、何とか一日も早く解決して、そうしてあなた方の霊を慰めてやりたいと毎日見ております。もう一ぺんあなた方はそれを見て、自分責任、自覚というものをつけられてはどうですか。一体これはまだ三審を要求して、そうして海難審判の審判を遷延しようという考えですか、それとももうこれで打ち切って、是は是、非は非として死んだ人の霊に報いていく、こういう決心を持っておられるのですか、一つその点を私はまず承わっておきたい。
  52. 小倉俊夫

    ○小倉説明員 洞爺丸の関係につきましては、今審判所の審理をお願いしておるのでございますから、私から内容について申し上げることはできませんし、また差し控えたいと思います。ただ遺族の方々にはまことに深甚なる御弔意を心から捧げるものでありますが、先ほども運輸政務次官からお話がありました通りに、遺族の方々につきましてはできる限り適切な処置をとりたいと目下協議中でございます。私どもはただいたずらに事件を延引いたすつもりはございません。ただ将来どういたしますかということは、この二審の御決定のない以前に私から申し上げるわけにもいくまいと存じます。
  53. 山口丈太郎

    ○山口(丈)委員 何でもかでもとにかくも審理中ですからとかなんとかいうことで、じゃんじゃん延ばされております。今の答弁は私は非常に遺憾に思います。とにかく海難審判の問題は、これは小山委員が言うように海員そのものの職務遂行上に過失があるのかないのかの問題であって、あなたの答弁通りいけば、乗客の生命、財産というものは、常に国鉄機関に乗せてもらえば、その機関と運命をともにしても差しつかえないのだ、こういうことになるのです。これは明らかに岸壁についている船ですよ。台風で危険だというのです。危険を予知したればこそ、船長は船体の安全を期するために、職務を遂行するために、沖へ緊急避難した。緊急避難するような非常事態であれば、なぜその乗客をおろさないのです。避難するときにまだ乗せている。そうしておいて自分の職務を糊塗するために審判の場合に、重大なことには、船内には危険ですからおりて下さいと放送した、それで言いのがれようと思っておる。ところが生き残った者に聞いたら、そんなことは聞いたことはないという。そんなことで争われている。あなた方はあまりに口でつべこべ言うけれども、死んだ人に対する申しわけというものはほとんどなっておらない。ですから遺族に対してもちっとも同情しておらぬ、こういうことに私はなると思う。口でどう言われても結論的にそうなる。これは私はもう絶対にそういうことはないようにしてもらいたい。一日も早くこれは国鉄責任として解決して下さいと言っておきます。  次に私はもう一つ聞きたいのは、今小倉副総裁が言われたように、今度の参宮線の事件では今までにない態度でした。国鉄は今まで事故を起しても、あのように悪うございましたと言いません。つべこべ言っておった。実にけしからぬと思っておった。ところが今度は真心込めて済まなかった、こう言われておりますから、遺族の方もその点については国鉄の誠意というものはある程度了解してもらえると考えております。けれどもそのあとの問題に至ってはまたまた実に不安でならないところがありますから、一、二尋ねるけれども、運転局長の答弁によると、単線で離合するのに、列車の運行には常にタブレットというものを持っているはずです。このタブレットというものの授受は義務でなければならない。これは通行証です。一本しかない道で、向うから来るものとこっちから来るものは、その通行証をもらわなければ向うにもこっちにも行けない。しかしその授受の責任がないという。そんな汽車には乗れない。一体どうしておられますか。義務はほんとうにないのですか。出まかせで言うのですか。通行証を持たないでどこまでも行っていいのですか。ここから大阪まで通行証なしでいいのですか。来る汽車がなければいいのですが、向うから来る汽車も通行証なしに行く、こういうことになればどうなるのですか、危険でしょうがないのですが、これだけ聞いておきたい。
  54. 小倉俊夫

    ○小倉説明員 タブレットにつきましては、もちろんそれがなければその次の閉塞区間には入れないことになっております。今回の事件につきましては、二四三列車は六軒までのタブレットを持っておりました。それからその対抗の二四六上りは松阪−六軒間のタブレットを持っておりました。つまりタブレットははっきり自分の通行区間のタブレットを持っておりまして、両方ともその次のタブレットは持っておらなかったわけであります。でありますからその点には間違いはございませんでしたが、二四三列車が六軒の先のタブレットを持っておらないにもかかわりませず、そのスピードそのまま走って参りましたので、次の閉塞区間でなく、安全側線に乗り上げた、こういうことでございます。
  55. 山口丈太郎

    ○山口(丈)委員 そうすると運転局長の御答弁は間違いと受け取っていいのですね。あくまでもタブレットの授受はいわゆる駅、乗務員双方が義務づけられているものだ、こう解釈していいのですか。
  56. 小倉俊夫

    ○小倉説明員 運転局長の答弁は私は聞いておりませんけれども、運転局長も同じ御答弁を申し上げたと思います。と申しますのはタブレットの授受につきましては、一応こちらで調べてございますから、御答弁に食い違いはないと考えます。
  57. 山口丈太郎

    ○山口(丈)委員 答弁に食い違いがなく、実行されておるようであれば、私はそれで納得いたします。  次に、国鉄のたび重なる事故について、運輸省の監督でありますけれども、交通機関、特に国内のほとんど独占事業といわれる国鉄の使命は、単に営利だけを目的とすべきものではない、重要な国内産業の動脈として、これを運営すべきものであります。従って強力な指導といいますか、これがなければならぬと私は思う。ところが一つ考えてもらいたいのは、こういうことです。国鉄の首脳部の方にはそういう考えはないかもしれませんけれども、下部の課長あるいは係長というような相当年輩の中堅層では、こういうことを言っております。なに運輸省の監督の課長が何やら言うたところで、これらはおれの後輩ばかりなんだ、これを聞くのです。私は後輩、先輩で監督官署の監督あるいは指導なるものが左右されることは言語道断だと思いますけれども、そういうことが腹の中にある、これでは運輸省の通達あるいは指示というようなものも、厳密にまじめには考えられないのではないか、これはどこに欠陥があるか、このようなことが言われますのは、結果においてはやはり前々から国鉄運輸省の直轄として人事がなされていて、そうして不離一体のような人事できて、そうして分れたものですから、従って、いわば国鉄の側の方の現場の方が先輩で、そうして同じかまの飯を食っていた人で後輩の者が監督官署に行っている、こういうような人事構成から、そういうようなことが軽率に言われるのじゃないかと私は思うのです。けれどもそういうことは言語道断な話で、そういう精神がある限り運輸行政というものは行えない。そこにも非常に大きな人的構成的な欠陥があるのじゃないか、こういうふうに考えるのですが、これについて一つ改善する意思があるかどうか、あるいはこういうような精神があるとすれば——すればではない、現にあるのですから、そうだとすれば、このような存在をどういうふうに指導されるつもりでおるか、重要なことでありますから、一つお聞かせ願いたい。
  58. 伊能繁次郎

    伊能説明員 ただいま御指摘のような点について、あるいは国鉄職員等の間にそういうようなことが言われておるということは万々ないと私は考えるのでありますが、御承知のように山口先生は長い間交通にお携わりになられて、深い御経験を持っておられるのでありますが、交通関係、特に鉄道海運自動車というような仕事は、現場の経験、またそれを基礎としての監督によって、仕事が全うせられるのでありますが、そういった問題について全然国鉄運輸省というものが一体のほかであってよいかというような問題も、かなり長い間研究しておりますが、その間十分に監督し得る実際の経験と力というものも持たなければならぬと考えまして、最近におきましては御承知のように国鉄運輸省間の交流というものは非常に少くなって参っております。これは一つには御承知のように給与の問題もそれを制約する大きな事情にあるかと存じますが、しかしそれ以外においても監督の立場の者と、監督を受けて営業に従事する者との間の関係というものについて、これは運輸省として慎重に考えなければなりませんけれども、この間の問題は逐次運輸省国鉄が別れまして以来、われわれでき得る限り努力をして、その間の関係を明確にするように参っております。今御指摘のような点が相当残っておるとしますれば、運輸省の監督行政に関する業務、その他の厳正を期しまして、そういうことの起らぬようにいたしたい、かように考えます。
  59. 山口丈太郎

    ○山口(丈)委員 次にお尋ねしたいのは、きょうは労働関係の基準局並びに職安局長の出席を要求したのでありますけれども、出席がありません。それでこれらの問題については後日に譲りまして、運輸省としての御所見を承わっておきたいと思うのであります。それは何かと申しますと、最近非常に問題になっておりまする港湾荷役の問題であります。遺憾ではありますけれども、神戸あるいは大阪等におきましては、最近非常に暴力ざた等があって、問題を起して騒いでおるのであります。新聞紙上報ずるところによりましても、これは何といっても港湾荷役の労務関係あるいは運送業、そのものに大きな改善を要求いたしておるようであります。戦時中、または戦前においても、これらの港湾荷役の実態は、いわゆる仕事のないときにはたこ部屋というようなところに収容されていて、そしてたこ部屋と申しますのは、一つのその港の、いわば親分が、自分でちゃんと何といいますか一晩の宿というような、そういう部屋を経営していて、俗にいう木賃宿よりももっと低い宿賃で、そして一定の三十人なら三十人、五十人なら五十人の労務者をかこっておいて、そして常に小づかいもやる、めんどうも見てやる、こういうこともやるわけでありますけれども、反面にはそのかわり繁忙なときには、その持っている労働力というものを事業者に高く売りつけて、そうしてその労賃を取ってピンはねをやる。ですから親方はふくれ上りますけれども、それに使われておる労働者というものは常にその日暮らしにもならない。そして常に借金を背負わされておる、こういう悲惨な状態にあったわけです。終戦後それがだんだんといろいろの法規の制約を受けてなくなっていたはずでありますにもかかわらず、今日なお各所においてそのたこ部屋というのが復活しつつあります。これは非常にゆゆしい社会問題を惹起すると思うのであります。こういうようなものを、直接そういう労働の需要者がその親分と戦前のような取引をして、そして就労させるということに相なりますならば、これは明らかに公共職業安定法の違反ということになります。こういうものを繰り返すということになりますならば、これは港湾運送業法にも抵触して、その免許は取り消されると思うのでありますけれども、それらの点についてどういう指導をせられておりますか、お聞かせを願いたい。
  60. 見坊力男

    ○見坊説明員 御承知のように港湾運送事業につきましては、港湾運送事業法があります。ただいまお話がありました船内荷役につきましても、この港湾運送事業法の中における事業の一つとして規定されておるわけでございます。港湾運送事業法におきましては一般港湾運送事業、船内荷役事業、それからはしけ運送事業、沿岸荷役事業、この四種類ございますが、これらにつきましてはこの事業法に基きまして省令で運輸大臣が登録の基準を定めておるわけでございます。船内作業について申し上げますと、船内荷役事業の基準といたしましては六大港、そのうちで京浜、大阪は別になっておりますが、それを第一群港湾としまして、第一群港湾は京浜港及び大阪港、それからその他の第二群港湾、それから第三群港湾、日本海群港湾、このように分類いたしまして、それぞれ基準を設けておるわけであります。船内の港湾運送事業者が事業を始める場合には、登録基準に定められた基準を充足して、地方の海運局に登録の申請をいたして参るわけであります。それでこれらの監督の面でございますが、基準の監督につきましては、各海運局において毎年一回この基準の監査をいたしております。その時期は海運局にまかしてございますが、その監査の結果、登録基準を満たすことのできないようなものにつきましては廃業届を出さしたり、あるいは時期的に若干待てば手当ができるというものにつきましては、休業届を出させるように各海運局ごとに指導をいたさしております。
  61. 山口丈太郎

    ○山口(丈)委員 どうも私の問わんとしているところと今の答弁は若干食い違っているようですが、まあ承わりました。それでは港湾運送事業法の適用について神戸の実例をとって申し上げますと、まず事業法第三条によると、種類が四つに分類されてあります。これが許可基準として法制化されているわけです。その第一は一般港湾運送事業、第二は船内荷役事業、第三にははしけ運送事業、第四には沿岸荷役事業、こういう工合に事業の種類が分けられて、ちゃんと分類されております。そしてこれが基準である。そうするとこれは何かと申しますと、従来からの元請とか、あるいはその元請で沿岸荷役も船内荷役も、あるいは一般港湾運送もはしけ運送もひっくるめた一つの全体の元請というものを廃しようというところに、事業を分類する大きなねらいがあると私は思います。ところが神戸の一例をあげますと、この荷役はちゃんと三段に分類されております。そしておのおのがみな港湾運送事業法にいう許可を得ておる。それはどういうことになっておるかといいますと、元請業者というのがあります。元請業者には上組、日東運輸、日本通運、あるいは東和海運日本運輸、川西倉庫、住友倉庫、ニッケル・アンド・ライオンズ、港湾海陸作業、こういう元請業者があります。その下に今度は第一次船内荷役業者というのがある。この元請が今申し上げるように船内荷役も沿岸荷役もあるいはこの事業法に定められておる四つの種類の全部をひっくるめた元請をやる。そうして第二次には、今度はそのうちの船内なら船内だけの荷役分を受け取る。これが第一次請負業者、こうなっておる。そうしてそれには上組船内荷役とそれからまた上栄運輸、日本運輸作業あるいは港湾海陸作業、こういうものがあります。そしてそれがそれぞれ同じような形態であっても独立していて第二段の請負をやる。そして第三段の請負に至っては実にたくさんまた第二段の請負をやって、これが実際に作業をやるかというとそうではないのです。これら二つは作業はちっともしないのです。ただトンネルをやっておるだけなんです。そうしておいて、実際に作業をしておりますのは、その下請をやっておりますところの——ここにあるだけでもまだまだ請負も三会社あり、第二次会社もまたその上に四つあります。その下請に至りましては二十数社ございます。港湾事業法はこういうものを防止するために設けられた、こう私は解釈しておるのです。今もその通りのように御答弁がありましたが、こういうようないわゆる複雑怪奇な請負形態が存在することは、どうもふに落ちないのですけれども、これはどういう工合に考えておられますか。実際には第一段、第二段は、ちっとも直接荷役作業をやっておらぬのです。そうするとこの運送法によりますると、全部を請負業者がトンネルにして、そういう下請に請け負わせるということはできないことになっておると思いますが、これはどういうことですか。
  62. 伊能繁次郎

    伊能説明員 率直に申し上げて御指摘通りでございまして、実は元請自体も法律上登録されておりますし、それから第一次の船内荷役作業、第二次、これは事実上の名前で、法律的にはいずれも同列に、船内荷役の登録を法律上指定を受けておるのでございます。ところがさいぜん先生御指摘の、この下にまだいわゆるタコ部屋の人夫供給事業というようなものもあるのでありまして、根本は御承知のように海陸荷役、港湾運送事業というものの仕事が非常に繁閑があるものでございますから その繁閑を無視して最大限の取扱い量というものを各地の会社が持っているということは、仕事のないときに非常に損失を受けるおそれがあるということで、こういうような形に分れておるようでございますが、この程度まで登録されておるものについては、まだ私どもとしては取締りもできますが、この場合御指摘のように上組は全然仕事をしないで、藤海運や大興運輸作業や山の内運輸へ全部落してしまうということはないのであります。一部をやっております。一部やっておらないと、法律違反になるということなものですから、その辺のところは港湾運送事業についていろいろと監督をいたしておりますが、この下の段階、さらに下の段階にいきますと、やはり人夫供給事業で純粋なタコ部屋式のものがあるのですが、こういうものにつきましては法律上なかなか規制ができないということでわれわれも困っておるのですが、この点は数次の法律改正もやりましたり、いろいろ処置をしてできるだけ作業の実態を明確にして、取締りも厳格にして参りたいと思っておりますが、御指摘のように、現状ではこれがかなり労働基準法の違反になったり、各方面の法律違反を来たしておるので、われわれとしても何とか作業の合理化をしたい、それで一方陸上小運送等の通運その他については、最近これらの関係は非常にうまく参ってきたのでありますが、港湾運送事業についてまだなかなかそこまでいかないということで、港湾当事者としては非常に各海運局において努力をし、苦慮しておる現状であります。
  63. 松山義雄

    松山委員長 山口さん、約束の時間が参りましたからあと簡潔にお願いいたします。
  64. 山口丈太郎

    ○山口(丈)委員 今御答弁をいただいたのですけれども、この免許基準、これは四つに分類されているのですね。それで港湾運送業者が認可の場合に、この四つの分類されたものをひっくるめて総合した申請を一社が出して、そうしてこれを許可したということになると、これは法律の精神に合致しないのじゃないか。こういうような弊害を除去するために沿岸一般港湾は港湾、船内荷役は船内荷役、はしけははしけ、沿岸荷役は沿岸荷役、こういう工合に分類してその業者に許可を与える、こういうことに私はなっていると思うのです。ところが今伊能次官の御答弁で、もし三段請負というものをおのおの業者として基準に当てはめることにして認めたら、これは今までの港湾の認可というものができないと思うのです。運輸省は総合申請を許可されているのですか。それともこの四つの分類に従って許可されているのですか。どうですか。
  65. 見坊力男

    ○見坊説明員 この登録を受け付ける場合は、今お話のございました二条の一項に四種類ございますが、これはおのおの作業の内容が違いますので、その実情によりまして、ある業者は一、三を取る、あるいは二と四を取る、あるいは一、二、三、四みな取るということをやっております。この一の場合には船内はしけ、沿岸全部を包含はしておりますが、一の場合には条件は引き渡し、受け取りがあるわけでございます。従ってここに入りますのはランディング・エージェント、シッピング・エージェント及びいわゆるステヴェといわれる元請一貫作業がこれに入るわけであります。従ってその元請業者が作業を元請しまして、これを神戸の例で申しますれば日東運輸が請けて上栄運輸に船内の部分を落す、上栄運輸はもちろんこれは船内をやりますから、一ではなくて二種の登録は少くとも取っておるわけであります。ただ上栄が下に落す場合には、船内を下請しましたものを全部これを下に落すということは、全部下請の禁止の規定に違反いたしますので、そのうち一部を下に落すということになっております。
  66. 山口丈太郎

    ○山口(丈)委員 そこでそういうことが許されているということになれば、一部ということは際限がないのです。ただ一つこれだけのものをこうやって、そうして私ははしけで運んだのです。あとはみなやったということで、限界がなくなるといかぬので、やはり省令なり何なりでもう少し厳密にせられないと、たとえば三段になっておりますけれども、実際には手配師というのがあって騒がれておりますが、この手配師が実際はその作業を受け取っているのです。たとえば上栄運輸というのがありますが、これが問題を起しております。上栄運輸の支配人という花本某なる者が、船が出入りしたとき雇い入れた労務者の吉田というのを、砂糖を多少横流ししたとか、荷役中になめたとかなんとかいう問題で、バットでなぐり殺してしまった、実に重大なことです。これはそういう窃盗行為をやったとすれば当然法律で取り締まるべきものであって、リンチを加えるべきものではないと思うのです。しかるに私刑を加えているのです。そういうことになって騒がれてくると、今申し上げるように実際は三段になって請け負っておるのですから、全部渡すことはできないということは、港湾運送事業法で規定されておるのですが、申しわけに一個運んで、あとは全部渡す、そうするとまた次のやつがちょっとはしけで運んできたものを陸へ上げるという作業だけやって、あとの本船から出てくるのは船内作業から全部まかす、そうすると今度は一番下の請負業者が、実際には上栄が受け取ったというようになっておりますけれども、その荷役はその下の手配師が人夫をかり集めてきて——人夫を集めてくるのも請け負っておるというわけです。そしてその請け負ったのが、結局人夫が十人なら十人かかる。二十人なら二十人かかるあるいは三十人かかる、そうするとそれを三十人で受け取ってくる、ところがこれを二十五人で仕上げる。そうして三十人分の割で受け取ってもうけにする、さらにタコ部屋なるものを設けて、三十円宿というものを作って、そうして常に労働者を雇っておいて、仕事のないときにはよしおれがめんどうを見てやるというわけで、飯だけ食わしておく、そうするところは借金だというわけで、今度は労働のときにピンはねする、しかも正当な労働に対しても手数料を取る、実際はこれが請負なのです。これを放任しておいたのでは港の明朗化ということは期せられませんし、いわゆる暴力の町とまでいわれるような事態を阻止することはできないと思うのですけれども、これについてやはり私は運輸当局としてももっと厳密に監督せられる要があると思うのですけれども、どうでしょうか。
  67. 伊能繁次郎

    伊能説明員 さいぜん申し上げましたように、御指摘通りでありますので、何とかこの作業内容の合理化については、御指摘のように合理化の方法もまた労働省との援助も得て、きれいな格好にしたいと思います。事実問題としても、これは山口先生よく御承知であろうと思いますが、非常に困難でございまして、上組などというものはすでに五、六十年の歴史を持って、従来頭はねをもっぱらやっておったのが、ここまで合理化されてきたけれども、さらにもちろんもう一歩も二歩も進めていかなければならぬと思いますので、御指摘のような方向にあらゆる努力をいたしたいと考えております。
  68. 山口丈太郎

    ○山口(丈)委員 非常に力強い御答弁でありますから、私はぜひともそれを実行していただきたいと思いますが、今申し上げるようにこの花本なる者は、上栄運輸の社員だと言っておる。そうしないと手配師ということになりますから、社員だと言っている。そうして社の面目を傷つけるような窃盗行為、他人さんの荷物を運んでいて社の面目を傷つけるような窃盗行為をやったから、社員である花本は制裁を加えた、それがたまたま度が過ぎたために死んだ、こういうような言い方をしているようです。そうだとすれば、そういう悪質な者をかばうような行為を事実上やって、そうして実際には手配師に荷役労務というものをことごとく下請けさせて平然としているようなこういう業者には、免許を即時取り消すというような処置も私はできると思うのです。こういうような悪質な者についてはどんどん免許を取り消していく。そういうような手配師に名前を貸して、そうして実質上は請け負わして、さらにその上前をはねていく会社も悪質ならその手配師も悪質です。こういうものを取り締るためには、以後そういうものについては免許を取り消すというはっきりした処置に出られることが望ましいと思うのですけれども、そういうような御決断があるかどうかをまず第一に承わっておきたい。  それから第二には、これは明らかに職業安定法第三十二条の違反ですから、これはただ運輸省責任を負うということだけではなくて、運輸省は当然労働省とよく連絡をとられて、そうして職業安定法違反をはっきりと摘発せられてやるべきだと思う。私は現地に参って視察して参りました。そして港湾局あるいは職業安定所並びに労働基準局等、現地のそれぞれの要路の方と出合いまして、その実情を聞いて参りました。けれども、これらについての取締りはきわめて微温的であります。実際には行われていないといっても差しつかえありません。しかも私が当局の話を伺いますと、実際にはそれを取り締るどころではなくて、きわめて微温的なというだけではなくて、こういう法律の明文があるにもかかわらず今まで手をつけぬでおいた、こういうのが実際の実態だと思います。労働基準局、市の港湾局、職業安定所、これらで今後連絡会議を持って、そしてその取締りの衝に当る、こういうふうに言っておられますけれども、しかし実際にはそれもあまり効果を上げられるような結果にはならないのじゃないかと思います。従ってやはり中央の政府の強力な取締りというものが行われない限り——大阪にもタコ部屋がまた復活すると言って騒いでおります。そして常に港には暴力ざたが行わております。こういうものを一つ積極的になくするように努力を払われる意思がないか。  それから三つ目には、やはり問題は荷役が平均しないというところに問題があります。これは日本経済のいわば弱点でもあり、欠陥でもあるわけです。月末になると一齊に輸出品が殺到する。それを積み込まなければならない。船もそこへずっと寄ってくる。ところがそれを積み出してしまうとあとはきわめて閑散になる。従って労務の恒常契約ができない。ここに私は非常な欠陥があると思うのです。従ってそれについては輸出入荷役の均衡をはかるための処置というものが必要になる。それには何といっても通産と運輸関係との緊密な連絡をとって、輸出入荷役の平均化をはかるように努力をしなければ港の維持は困難であって、この暴力ざたを解消することは困難だ、こういうふうに考えるわけでありますが、それらについては港湾行政上どういうふうにお考えになっておるか。これが私は最も重大だと思いますから、この点についても一つ御計画があれば承わりたい、こう思うのです。
  69. 伊能繁次郎

    伊能説明員 さいぜんの問題については、御指摘通り今後港湾労働者の保護の面からも、できる限り適正な法律の適用をしなければならぬ、かように考えまして、先般御指摘の神戸その他の事件にかんがみまして、中央においては運輸、労働両省並びに関係資本家——と言うと語弊がありますが、使用主側、それから労働組合側の御協力を得、ことに関係方面の学識経験者等の御参加も願って、港湾労務対策協議会というものの要綱も今でき上って、近く決定を見る予定になっておりますと同時に、神戸についてはそういう事態にかんがみて、すでに関係省の連絡協議会もできまして、数回会議を開いておりますが、御指摘のようにこれはなかなか、何と申しますか、ああいう長い間巣を食った労務関係でありますから、役所の方でも、時に御承知のような傍観的態度をとるというようなこともないとは言えませんので、実態を十分つかんで、御指摘のような形で適正な労務体系というものを作りたい、かように考えて、目下そういった制度も組織も作って、万全の努力を尽している次第であります。
  70. 山口丈太郎

    ○山口(丈)委員 それからもう一点、手配師の跳梁を防止する一つの方法として、この輻湊した荷役をやるというような場合に、必要な労務者を急速に集めなければならぬ。そのために手配師というものが存在をして、常に暴力ざたを起すのでありますが、そういうものを防止いたしますためには、この公共職業安定法に定められておりますように、それをそのまま放任しておくのではなくて、そしてまた職業安定所に登録された者だけで、あるいは登録した者だけでこれをやるということは、職業安定所としてもなかなか困難だということも聞いております。ですから私は一策として、今港湾労働組合に聞いてみますと、現在ではこの種の労務者をあっせんする、その業務の代行といいますか、あっせん業を港湾労働組合がやっているようです。それはやはり全国的な規模をもって統一されているというので全港湾が引き受けているのでありますが、それは九州におきましては四カ所、すなわち長崎、佐世保その他、それから中国には呉、岡山、四国では十八カ所の港湾が、ほとんど全部全港湾がこれらの労務者のあっせんをやっているようです。ですからやはり大阪においても、神戸においても、そういうような組織もあるのですから、従ってこれらの組合に登録させて、そしてその組合からの呼び出しであす何名、これを職安へあっせんをして、職安の窓口を通じて業者に提供する、そういうふうにして、手配師の手を通して業者に労務の提供をやらすということをこの際はっきり禁止してしまう、こういうことも私は一つの方法ではないかと思うのです。現にそれをやって相当の成績を上げておるということですが、これを一つ大いに御指導なさる御意思があるかどうかお聞きしたい。
  71. 伊能繁次郎

    伊能説明員 今御指摘のような、九州の方で円滑に行われておるかどうかの点につきましては、私まだ十分承知いたしておりませんが、御指摘の点については職業安定法の関係で、御承知のように法律上は職業安定所を通してやる場合と使用主が直接雇ってやる場合と両方ありまして、別段今言ったような使用主が直接やる場合を禁止しておるわけでもございませんので、それだけにするかどうかということについては私ども十分研究してみたいと思いますが、一方においてはそのためにさいぜんのような形で搾取が行われたり、あるいはときに仕事上リンチが行われるということになってはいけないと思いますので、それらの点は一つ十分研究した上で一度調査をしてさらにお答えをしたいと思います。
  72. 五島虎雄

    五島委員 関連。伊能政務次官は、この運送事業法に基く業者が非常に複雑多岐にわたった組織であるということをさいぜん認められたわけです。そうしてその運送事業法に適合しないような零細な企業者もあって、その実態をつかむことがなかなか困難であると言われたわけです。そういうような事実の中から、御承知かわかりませんけれども、さいぜん山口委員が言われましたように、暴力行為が平気で行われておる実態があるわけです。この暴力行為が平気で行われる実態ということは、さいぜん伊能次官が言われましたように、これは長い歴史の複雑な積み重ねの中から生じてきている問題だと思うのです。それで特にきょうは、労働省の基準監督局も来てもらって、そうして運輸行政の面からと労働行政の面から相関連して質問しなければ、これらの質問に対するところの完全な説明は期待することができないわけなんです。それで関係当局としても、この港神戸の暴力事件から発生したところのいろいろ隘路の問題がある、従って労働省関係では運輸省とともに中央に協議会を作って、地方六大港湾程度には地方の協議会を作って、そうして目下労働行政の谷間になっておるところの各港湾労働者の実態を明るいものにしなければならないであろうと言っているわけです。さいぜん伊能さんも言われまして、各関係業者あるいは組合等々にも来てもらって、今後いかに明るくしていくかということについていろいろ話し合いをしたいけれども、歴史のバックの中から一朝一夕に明確化することはなかなか困難であろうということを言われたのです。その間に暴力行為が行われ、違反事件が行われて、そうしてその中にしわ寄せされるのは港湾労働者である、そうして平気で違反したところの人入れ稼業が行われておるというようなことは、ただ歴史的な背景によって、事は重大な問題であるけれども、なかなか一朝一夕にして解決することができないのじゃないかというような運輸当局の説明では、われわれはどうしても納得することができない。なるほどやろうとしてやってみたけれども、なかなか解決が困難であるという場合があるかもしれません。しかし今言うように、いかに歴史の積み重ねがあるかというようなことには、それぞれよって来たるところの原因があるだろうと思うわけです。そうすると、この港湾労働の運輸行政あるいは労働行政をめぐって戦前、戦時、戦後にわたって、その変動が行われただろうと思います。山口委員とともに私も港神戸の実態を調査いたしました。ところが運輸省の出先機関である神戸海運局の幹部の方は非常に明快な回答をしてくれました。今のところはなかなか困難ですと——なるほどわれわれも困難だと思っておる。そうしてさいぜん山口君が言いましたように、その荷物の集荷の集中排除ができなければ、この問題はなかなか問題だということです。従ってさいぜん伊能次官もちょっと一部解れられたように、月のまん中には非常に荷が少い、月末と月の初めにうんとピークが上ってくる、そうして戦場化してくる、あらゆる関連事業が戦場化して戦場のような忙しさだ、その中に平気で人入れ稼業が横行するわけです。それは通関関係もあるでしょうが、検数事業も非常に忙しくなる、よそから労務者を連れてこなければ荷がはけないというような状態です。これが神戸港の実態です。その中にどんぶり勘定が行われ、ごんぞう部屋の実態があり、三十円宿の実態があるわけです。それで一日も早く明確化していないところの港湾労働者の確立をしてやらなければならないと思うのです。これは労働関係だろうと思うのです。しかしこれと並行して、いかにピークを排除していくかということは通産関係だろうと思うのです。そうしてそれの行政を担当するのがやはり運輸省ではなかろうかと思うわけです。ここに神戸港の実態を山口委員が述べ、私が質問するということは、よって来たる隘路がある。それで今昭和二十六年二月に制定されたところの港湾運送事業法は、非常に不明確な法律であったというように反省するわけです。たとえば基幹人員が八名おり、そうして労務者が二十名おり、そうして船一ぱい持っておれば、道具を持っておれば、これを登録申請すれば事業が許可されるのだということになっているのですね。一年に一ぺん監査をやるが、その時日は指定していない。従って神戸港の出先海運局は一年に一回なるほど監査をやっておるが、監査をしそうなときは業者はちゃんと知っておる。そうして八名の基幹人員と二十名の労務者はちゃんと保有しておる。しかしそれを保有しておけば非常に人件費がかさむ。従って日ごろはその二十名の労務者が十名になり、五名になって、全然ないところもあるというような事実も聞いた。そういうようなことで、実際の港湾の状態が明確化できるかどうかというような問題です。そういう問題が放置されておれば、いつでも三十円宿で呻吟しなければならない労働者がうようよする、あるいは失業に泣く労働者がうようよするということになるわけなんです。それで私たちは、この委員会でこれについて質問しましても、一朝一夕に解決することはなかなか困難であろうと思う。今伊能政務次官が言われましたように、将来何とかしなければいかぬということは非常に多とします。しかしこれをもっと具体的に、何月ごろから中央協議会を作って発足するのだというように説明していただきたいと思う。そうしてまた——時間があったらもっとあらゆる状態を引っぱり出して質問もし、御答弁もしてもらいたかったわけなんですけれども、委員長が時間がないと言われますから一ぺんに言いますが、その中央審議会の性格たるやもっと力のある組織にせぬと、ただ寄って研究をする、これはどうだろう、あれはどうだろうと言ったって、現状解決できない。これは歴史的な積み重ねがあるからです。そこで現在の政府によって閣議決定に基くところの中央審議会あるいは中央協議会等も設立して、そうして神戸港の実態がこうやって現実に出てきたわけですから——これは神戸港の状態ばかりでなくて、横浜もそうでしょうし、それから大阪も名古屋も関門もそうだろうと思います。全国の港湾荷役の状態の問題には、多かれ少かれこれらの要件が実在するわけですから、われわれ委員会としてももっとよく検討しなければいけないと思うわけです。その隘路を究明するとともに、われわれ委員会としては解明しようとしても、一朝一夕に結論を得ないというような状態は、もっと真剣に取り組んでもらわなければならないわけです。従ってさいぜん伊能政務次官が言われた今後何とかしますということを、もう少しはっきり決意を示していただきたいのですが、どうでしょうか。そうしてその説明の後にもう一ぺん意見を言わしてもらいたいと思います。
  73. 伊能繁次郎

    伊能説明員 大へんいろいろと詳細な、きわめていい御意見を拝聴させていただいて、われわれとしては非常にありがたい次第でございますが、さいぜん申し上げましたように、私どももこの問題の長い間の経緯から、ここで言葉の上で勇ましくやりますということを言うことは、かえって私は無責任ではないかという感じもいたしましたので、慎重な御答弁をいたしたわけであります。さいぜんの労働省を中心とする港湾労務対策協議会につきましては、運輸省としては港湾局長がこれに参加いたしまして、また労使の関係あるいは学識経験関係は、目下労働省で人選中でございますので、これは近く発足を見ることと存じます。また神戸の問題につきましては、すでに十月の二日に先般申し上げた神戸港湾労働対策連絡協議会が設立されまして、それで数回の会合を持って、この問題の解明と同時に決定的な解決策を現地において講ずるということで、私ども運輸省といたしましてもこの問題は、交通関係労務について残された一番大きな問題の一つとも考えますので、あらゆる努力をしてこれが解決をはかって参りたい、かように考えます。
  74. 五島虎雄

    五島委員 今次官が言われましたように、実際に神戸では神戸市が世話役となって、各関係官庁の協議会が進行しております。私たちも現地で調査し、よく懇談しましたが、その協議会はいろいろの糊塗的手段しか講じてない。しかしやらないよりはやってもらった方がはるかにいいということを私は認識したわけですけれども、これはああいうような協議会では決して根本的な解決はできない。たとえば私たちがよく出先の方たちと話をしましても——職安の問題は直接運輸省には関係がございませんけれども、これは間接的に関係があると思います。職安のごときは安定作業をするところの敷地が狭いということ、六千名も七千名もの労働者を一時間や二時間で紹介事業ができるものではない。たった二十八坪であって、そして従業員は二十名である。こういうことではとうていできないと言っております。それから労働基準局の話を聞きますと、監督官が四名しかおりません。港湾会社ばかりでなく、一般の関係会社関係事業場等を監督するのに、四人の監督官が三カ月かかると言っております。一ぺん監督してその次に港湾に回って来るのは三カ月目にしか来られないというのです。それで港湾の問題ばかり監督しておると、ほかのことがゆるがせになるわけです。港湾局が非常に手薄であるということも聞きました。あるいは海の上を歩いていては監督ができない、水におぼれる、そこで船も一ぱい買ってもらいたい、こういうようなことも一生懸命言っておりました。われわれは調査に行って相談してきて、どういうことが進行しているかということを聞いたのですけれども、悩みや隘路をわれわれに訴えてもらってそれを認識して帰ってきたわけです。こういうような状態ですから、今次官が言われましたように言葉は穏やかであっても、やることはてきぱきと熱意を持ってやっていただきたいと思うわけです。  それから委員長、今伊能政務次官も大体了解されましたし、あるいは運輸当局も了解しておられる。先月の二十二日に手配師の暴力問題に端を発して、神戸港の問題が非常に重大な問題になってきて、直ちに運輸省からは神戸の出先海運局にも連絡をして、その実情の報告もしているだろうと思います。そういうようなことでこの問題を解明するに当っては、歴史的なバックの上に非常に困難な問題がある。従って一朝一夕にこれを解決することはできないと言われた。従ってわれわれ委員会としてもこれを東京のここでいろいろ論じておっても、なかなかその実態を把握することは困難じゃなかろうかと思うわけであります。従って委員長の取りなしによって理事会でも開いていただいて、少数の方でもいいからこの運輸の担当委員が現地に出向かれまして、そうしてこの困難なる実態——労働省も運輸省もそう言っておられるけれども、いまだ一つ残っているところの労働関係の谷間、そうして交通関係で一つ残っている海運行政であるというようなことを言われましたから、こういうところはどこに隘路があるか、どうすればこれを解明できるかというようなことで現地に派遣していただいて、できるだけつぶさに調査する必要があるのじゃなかろうかと思います。できるかできないかわかりませんけれども、委員長の手腕にたよりましてこの現地調査の問題をお願いして、私は終りたいと思います。
  75. 山口丈太郎

    ○山口(丈)委員 港湾のことに関していろいろ御答弁がありましたので、いろいろ私はありますけれども省略したいと思います。ただ問題は、今申し上げるようにこれは非常にむずかしい問題です。そして常に一定しない労働の要件を持っている港で、画一的に会社やあるいは一定の事業場で安定している労務供給状態を現出しようとすれば、これもまた非常にむずかしいことだということは私も了承しております。しかしながら、だからといってこのような港の封建性、それからまた暴力ざたというようなものは、現在の社会状態から考えると、そのまま放任することのできない問題であると考えるわけです。一気にできないとしても、やはり港湾行政の監督省としては、それぞれ各省との連絡をさらに緊密にして、そしてその運営の明朗化のために、一つ格段の御努力を願いたいと思います。今五島虎雄氏も申しましたように、特に最近問題となりましたのは、いわゆる神戸の殺人事件に端を発した暴力ざたです。現地における新聞によりますと、実際には暴力の町というような奇妙なニックネームをかぶせられて報道されている。こういうような状態がもうすでに大阪に移りまして、大阪にもまた暴力ざたが行われる。そうなりますと、今申しましたようにせっかく港湾事業法等がありましても、それ自体がもう有名無実に化してしまいますので、そういうことのないように防いでもらいますためにも、ただ現地にまかしておくのではなくて、本省からも一つたびたび視察をしていただいて直接指導をしていただきたい。それから労働省とも連絡をとっていただいて、明らかに職安法等にも違反するようなこういう港の行為もあるのですから、そういう違反行為を厳重に取り締ることがまたぜひとも必要であると私は思うのです。そうなりますと、職業安定所並びに基準監督署の人員をぜひとも充実してもらいたい。これをしていただかないと、私はどうしてもこれを防ぐことはできないと思います。きわめて現地は手薄でありますから、どんなりっぱな計画を立てましてもそれを実行することができないのが現状でありますので、ぜひともこの港湾地帯に対するこれら監督省の出先機関の人員を充実してもらいたい。今日のような事態ではとうていこれはできません。ぜひともこれを実行に移してもらうと同時に、委員会においても視察団を編成してその実情を調査し、それぞれ法の改正が必要であれば、当局においても一つ法の改正まで御考慮を願いたいということをお願いして、私の質問を終りたいと思います。
  76. 松山義雄

    松山委員長 正木清君。
  77. 正木清

    ○正木委員 私は簡潔に御質問を申し上げて、運輸当局の御意向を確かめておきたいと存じます。実は大臣の出席を強く求めておったのでありますが、余儀ない事情で大臣の出席を見ることができませんから、大臣に対する質問は後日に譲りまして、事務的な点についてのみ質問を展開したいと思います。  それは、政府においては、北海道の総合開発を強力に推進するために、北海道開発庁を設置いたしまして、北海道の総合開発第一次五カ年計画を立て、その遂行をはかってきたのでありますが、引き続き昭和三十二年度以降の第二次五カ年計画をただいま作成中であると私は承わっております。まことにけっこうなことでありますが、さてこの第二次五カ年計画の要綱案によりますと、北海道の開発のために画期的な交通運輸開発機関を設置いたしまして、総合的な開発の一体化をはかる、ところが、その画期的な交通運輸開発機関の内容は一体どういうものであるかというと、国策的な北海道交通開発株式会社という法案を作りまして、現に国鉄が経営いたしておりまする北海道の国有鉄道の運営をこの会社に委託経営させる、しかも国鉄が現に経営いたしておる自動車事業一切をも、この会社に委託経営させるという内容を持つものであるということが、新聞その他に盛んに書かれております。果してこういうことが政府の内部において現に北海道の五カ年計画の開発案の中で審議されているのかどうなのか、一体今日までの政府としての審議の経過の内容はどうなっているのか、そのことをこの機会に明瞭にしてもらいたいと思います。
  78. 権田良彦

    権田説明員 お答え申し上げます。ただいま御指摘通りに北海道交通開発会社設立要綱案というのがございまして、この案の内容を続いて御説明申し上げますが、この案は北海道開発庁限りにおいて策定をいたしまして、北海道開発庁から北海道開発審議会に諮問されているわけでございます。諮問されました審議会では、私の知っております限りでは三回ばかり審議をいたしまして、続いて説明いたします設立要綱案について審議に入っておりますが、三回目の審議会では、非常に事柄が重大であり、まだ内容について審議を尽すべき点が多々あるので、これを何か専門の部会を設けたいという段階にまで至っております。この設立要綱案は、先ほど申し上げたように北海道開発庁限りの案でございまして、政府部内としては今後協議を進めて参る約束に相なっております。  この案の内容を北海道開発庁の資料によって簡単に御説明いたしますと、北海道の総合開発事業を強力に推進するためには、何よりもまず鉄道、道路等、運輸交通施設の整備が急務であり、また総合開発事業と関連して鉄道並びに自動車による運輸事業の効率的総合運営をはかることがきわめて必要である。よって北海道交通開発株式会社法という法案を作りまして、この法律に基いて特殊法人を設立したい。資本金が三百六十億円という計画になっておりまして、政府出資半額、民間出資半額になっております。事業としては鉄道運輸業といたしまして、青函航路及び国鉄自動車の引継ぎ経営並びに社有鉄道の建設、次に自動車道事業、それから沿線開発事業、その他付帯事業、こういう事業内容になっております。これに対して会社の債務に対する政府保証、民間資金に対する配当金の政府保証、それから開業の年以降十年間の所得税、法人税、固定資産税等の免除という政府の助成をうたっております。これを昭和三十二年度から営業を開始したい。この特殊法人は内閣総理大臣及び運輸大臣の監督を受ける、こう書いてございます。会社の事業内容は、今正木先生が御指摘になりましたように、国有鉄道、青函航路を含みまして、さらに国鉄自動車を引継ぎ経営する。その引継ぎの条件といたしましては、国鉄が現有するすべての施設を会社に無償で貸与する形になっております。それから連絡輸送については、これは会社国鉄とが連絡運輸をやる。本土との関係はそういうふうになっております。さらに今申し上げました範囲の国鉄職員は、すべて会社に引き継ぎ、会社の職員にしてしまうという案になっております。さらに国鉄は貸与した施設の減価償却等に必要な資金の一部を会社に金として交付する。これがこの会社自体の第一次五カ年計画では、五年間で約百十三億五千万円という案になっております。経営を合理化してできるだけ黒字を出そう。さらに付帯事業として、自動車道事業をいたします。これは北海道の道路に対しましては、国がやります今の道路法による道路は今まで通り国がやる。それから道路公団のやる有料道路もやる。これは道路公団の方でやってもらう。そのほかにこの会社自動車道を作って有料道路として経営する。これがこの会社の第一次五カ年計画では八十六キロばかりの計画になっておりまして、七十五億これに投ずることになっております。さらにこの会社鉄道の新線建設を、例の敷設法に基きます予定線、調査線等につきましては引き継ぎを受けて、会社自体がやる。その計画が五カ年間で約六十二億と読んでおりますが、この内容については北海道開発庁においても資料は整備いたしておりません。こういった案が今のような経過をたどりましてそういう段階に立ち至っておりますが、運輸省といたしましてはこの案については、いまだ成規に協議を受けておりません。成規の協議に入るべく、目下要求をいたしている次第でございます。
  79. 正木清

    ○正木委員 僕はただいまの答弁を聞いて、まことに奇怪な開発庁の構想であるというように強く感じられてならないのです。運輸省としては目下公式に折衝するために手続をとっているというが、北海道開発庁の長官は、御承知のように政府の閣員の一人である国務大臣がこれを担当している。開発審議会なるものはこれまたおそらく諮問機関であろうかと思います。何ら権威を持つものではない、法律的には。従ってこれは当該大臣の決意が固ければ当然閣議に持ち込まれるということは、常識的に私ども長い経験で判断がつく。そうした場合に、一体どのような動きを示すかということは、やはり大きな関心事でなければならないと思う。だのに今日まで一体国鉄当局としては、これらの大きな問題をなぜ当該われわれ委員に対して、集め得る範囲の具体的な資料を参考資料として配付しなかったのですか。私はそのことをまず国鉄当局に真意を確かめておかなければなりません。今御答弁を承わっておりますと、業務の範囲においては鉄道運輸業、青函航路も含む、自動車運輸事業もやる、自動車道の事業もやる。こういうことになっているとただいま答弁されております。しかも株式に対しては、百分の六までは政府がこれを保証する。一体今日まで政府国鉄の経営に対してどのような処置をとってきたか。国鉄はなぜ真剣にこういう問題を考えないか。さらに免税に至っては十カ年間は所得税も法人税も登録税も印紙税も事業税も固定資産税もこれを課さないという。しかも国鉄が百数十億のこれに対して保証をしなければならない。今日の国鉄の経営内容から見ても、さようなでたらめなあほらしいことが現実にできるのかできないのか。こういうことを一口に申しただけでも、この法の内容をいかに国鉄なり運輸省としては真剣に考えなければならないかということは、もう議論の余地はないと思います。従って私は国鉄の当局にこれらの諸問題について一体国鉄当局としては真剣に調査研究されたことがあるのかないのか。それから調査研究されたとするならば、それらの一切の資料及び今日までの経過等について、参考資料としてわれわれに書類を配付する御意思があるのかないのか。それから政務次官にお尋ねしておきたいと思うが、運輸省としては、政府の一機関である開発庁が考えておるこの構想に対して、一体どのような態度をもって臨むのであるか。以上の二点を承わって、私の本日の質問を打ち切りたいと思います。
  80. 小倉俊夫

    ○小倉説明員 この問題につきましては以前耳にいたしたことはございまするが、事北海道の一機関において、審議会におきまして研究を続けられておりまして、正式に協議もあるいは相談も受けておりませんので、資料その他も不十分で、そういう点からして御報告その他が今もってなされませんでしたことは、ただいま御指摘になりましたが、あらためておわび申し上げます。ただ私どもは、この問題は実行上も非常に難点があり、さらにかりにそうなった暁に北海道の輸送がどうなるか、非常なむずかしいことになり、これは将来の輸送につきましてとうてい満足に、北海道の開発上交通が決してプラスにならずに、かえってマイナスになるのであろうということを実は確信をいたしておるのでございます。しかしながらそういう点につきましては成規の相談もございませんし、ただいま申し上げましたように資料も十分にもらっておりませんので、今まで正式な意思を表明したことはまだございません。しかし今後その資料も入手いたしまして——しかし事は大きな問題であり、しかも北海道の成規の機関にかかっておりますので、今後の成り行きもきわめて重大だと考えますので、十分に調査研究いたしてみたい、こう思っております。
  81. 伊能繁次郎

    伊能説明員 ただいま副総裁から御答弁ございましたが、国鉄からは、かような事態が政府の一部に計画されておるということについては、運輸省へ一々連絡がございました。運輸省といたしましても、その事態を察知したものでありますので、政府部内の問題として、それらについては事前に十分実情を聞きたい、またそれに対する意見も述べたいという申し入れはいたしておりますが、さいぜん権田鉄監局長から申し上げましたように、今日まで公式には何らの協議も申し入れもないわけであります。たださいぜんのお話のように、非公式には運輸大臣あるいは国鉄総裁関係責任者からお話があったやにも私ども漏れ伺っておりますが、公式には何ら話を受けておりません。われわれとしては、さいぜん局長から申し上げましたように、この問題の真意、計画の実態等について十分話を聞いた上で意見を述べたい、かように考えておる次第でございます。ただいま輸送の実態と本法案の関係につきましては、副総裁から御意見が述べられましたが、私どもとしては、この問題についてまだ運輸省として見解を明らかにすべき段階ではない、かようには考えておるわけでありますが、実質的には、かような北海道の開発についていろいろな重要な問題が、目下政府部内において取り上げられておるということも承知いたしておりますが、その一環としてかような考え方のものが最善のものであるかどうかという点について、私ども若干の疑問も持っておりますので、十分政府部内で緊密に意見を交換した上で善処をしたい、かように私は考えておる次第でございます。
  82. 正木清

    ○正木委員 委員長を通じてお願いしておきたいと思うのですが、運輸省としては、北海道交通開発株式会社法案要綱もおそらくお手元に入っておると思いますし、その他の資料も入っておると思いますので、ぜひ当委員会に参考資料として御配付下さるよう強く要望いたしまして、質問を終ります。
  83. 松山義雄

    松山委員長 本日はこれをもって散会いたします。    午後一時五十七分散会