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1956-10-22 第24回国会 衆議院 運輸委員会 第38号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和三十一年十月二十二日(月曜日)    午前十時五十二分開議  出席委員    委員長 松山 義雄君    理事 今松 治郎君 理事 臼井 莊一君    理事 木村 俊夫君 理事 山本 友一君    理事 青野 武一君 理事 中居英太郎君       有田 喜一君    關谷 勝利君       永山 忠則君  早稻田柳右エ門君       井岡 大治君    池田 禎治君       楯 兼次郎君    正木  清君       松岡 駒吉君    山口丈太郎君       小山  亮君  出席国務大臣         運 輸 大 臣 吉野 信次君  委員外出席者         運輸政務次官  伊能繁次郎君         運輸事務官         (海運局調整部         長)      辻  章男君         運輸事務官         (鉄道監督局         長)      權田 良彦君         高等海難審判庁         長官      長屋 千棟君         日本国有鉄道副         総裁      小倉 俊夫君         日本国有鉄道参         与         (営業局長)  磯崎  叡君         日本国有鉄道参         与         (運転局長)  竹内 外茂君         専  門  員 志鎌 一之君     ————————————— 十月二十日  田村元君、池田清志君及び加藤精三辞任につ  き、その補欠として濱野清吾君、早稻田柳右エ  門君及び眞鍋儀十君が議長指名委員に選任  された。 同月二十二日  委員濱野清吾辞任につき、その補欠として永  山忠則君が議長指名委員に選任された。 同日  委員永山忠則辞任につき、その補欠として濱  野清吾君が議長指名委員に選任された。     ————————————— 本日の会議に付した案件  国鉄参宮線列車事故に関する件  貨物輸送対策に関する件  海運政策に関する件     —————————————
  2. 松山義雄

    松山委員長 これより会議を開きます。  陸運及び海運に関して調査を進めますが、最初に前会において質疑が終了しておりませんので、この際前会に引き続いて参宮線列車事故に関して質疑を許します。永山忠則君。
  3. 永山忠則

    永山委員 国鉄参宮線事故に対しまして、総裁が率直にその責任をみずからおとりになるという点に対しましては、国民感情から見ましても非常に感激をしておるところでございます。われわれ国民は、今後不注意による事故をなからしめるという特段の方途について、当局の見解を明らかにしていただくことを非常に期待をいたしておるのでございますが、前回の委員会に出ておりませんので、重複することを避け、かつきわめて簡単に重点をしぼって——この事故をなからしめる方途は種々あると思うのでございますが、特に重大だと考える点について当局の意見を聞きたいと思うのであります。すなわち運転考査でございますが、これが近時労組との関係において十分実施が行われていないというように聞いておるのでございますが、その実情並びに将来のこれに対しての政府のお考えを承わりたいのでございます。
  4. 小倉俊夫

    小倉説明員 参宮線事故につきましては、全くこれは人災でございまして、私ども何とも申し開きもできませんし、また深く深く責任を感じておわび申し上げる次第でございます。ただいま事故について今後この種の不祥事を再び繰り返さないためにいかなる対策ありやというお話でございましたので、簡単に私から申し上げ、なお詳細は運転局長から申し上げることにいたします。  この事故原因につきましては全く国鉄にあることははっきりいたしておりますが、なお列車乗務員は今勾留中でございまして、私どもが当人に対し直接に聞くこともできませんので、目下事故対策委員会を設置いたしまして、その事故の究明を考えると同時に、対策を研究して参りたいと思っております。いずれにしましてもこの事故は人的の欠陥とそれから施設欠陥と、両方の原因があると存じます。  人的の点につきましては、私どもといたしましては職員一般国鉄全般につきましてさらに一そうの精神緊張、士気の高揚をはかりたいと思っております。それからただいま御指摘になりましたような運転関係職員につきましては考査、それから機能の審査、そういう点を一段と強化していきたい、教育あるいは考査という点に重点を置いて参りたいと存じます。  それから設備の点につきましては、人間の過失を補うためにやはり機械によりましてさらに事故を防ぐということが肝要でございますので、ただいままで研究しておりました列車自動停止機つまり前途障害がございますとひとりでに列車がとまる装置、それから列車自動警報機、これは前途障害がございますと機関車内でベルが鳴って注意を促すという機械でございます。さらに進みましては地上列車内とが口頭で連絡ができますような車内無線機を利用いたしまして、地上機関車乗務員との連絡がつきますようにいたしたい、そういうものを急速に装置いたしていきたいと考えるのでございます。しかし何と申しましても交通機関というものは信号によってコントロールされるものでございますので、いかなる機械を用いましても注意力が欠けておりますれば何にもならない。そういう点で信号についての注意をさらにさらに一般従事員の間に強く涵養し、信号の第一尊重という精神を吹き込んで参りたい、かように考えております。詳しいことは運転局長からさらに申し上げることにいたします。
  5. 竹内外茂

    竹内説明員 ただいまの御質問につきまして、運転考査についての現在までの経過を簡単に御説明いたします。運転考査昭和二十四年の八月八日に、当時のCTSの勧告によって始められたものでございます。その後成案といたしまして、いろいろその勧告に基いて考査実施上の手続その他をきめまして、昭和二十四年の十一月に第一回の運転考査実施いたしております。その間にいろいろと考査の内容も変って参りまして、勧告を受けた当時と違いまして、現在では昭和二十七年の十二月に総裁達で、この従事員考査の仕方というものを改正いたしております。  第一種従事員と申しますのは機関士機関助士信号係等直接運転関係のあります従事員、それから間接的といいますと語弊がございますけれども、多少その責任程度の軽い従事員についてと、二つに分けまして、安全規程及び職別運心、すなわち運転取扱心得の自分の守るべき事柄、これにつきましての考査を一年に一回やることになっております。  それから精神機能検査というのがございます。これは心理学的な検査方法でございますが、三カ年に一ぺんやるということに規定いたしておるのでございます。現在までの経過といたしましては、昭和二十八年までに三回行なっておるのでございます。従いまして昭和二十四年から二十八年までの間に三回行なっておるのでございますが、昭和二十九年には、二十八年度の学科試験につきまして成績の悪い者、数にいたしますと全体の約二〇%くらいございますが、これにつきまして学科試験を再行いたしております。  それから精神機能検査、これには注意を要すべき者も相当ございますので、これに対しましては心理学的な特別な細密検査を行なっております。現在までどういうふうな経過をたどっておるかと申しますと、現在では昇職つまり職の上る者、たとえば機関助士から機関士に上る者、あるいは新規に採用された者、あるいは長期欠勤をいたしまして復帰が可能になった者、あるいは組合専従者復帰をいたします場合、こういった者につきましては、現在でも適性考査を行なっております。  先ほど説明が不足であったと思いますが、考査と申しますのは、学科考査精神機能検査二つ、それに別に身体機能検査がございます。この二つ考査の対象になっております。現在まではこういう経過になっております。
  6. 永山忠則

    永山委員 ただいまの御説明で、二十九年までは運転考査を全面的におやりになっておるようでございますが、その後は、特殊の新規採用あるいは特に成績の悪い者、長期欠勤、あるいは専従員復職等に限定をされて、大体運転考査は年二回やるようになっておるのですが、それが一回になり漸次に、ほとんど全面的には実施してない情勢になっておるのでありますが、それらの原因労働組合との話し合いがどうもうまくいかないので、漸次に消極的に、あるいは全く雲散霧消するのではないかということを非常に憂慮いたしておるのでございますが、労組との関係はどういうように話し合いが進みつつあるのでありますか。この身体並びに精神技術等適性考査以外に、あるいはサプライ・テストであるとか、運転競技であるとか、これらの競争関係であるとかいうような諸種問題等もあわせて行われておったのでございますが、そういったような関係は、最近の情勢はどういうように進んでおるのでございますか、もう一度伺いたい。
  7. 小倉俊夫

    小倉説明員 過去のことは別といたしまして、今後この種の事故を絶滅いたしますには、先ほど申しました通りに、機械的設備もさることながら、列車従事員教育あるいはテストということが必要になって参りますので、今回設置いたしました列車運転事故防止対策委員会におきましても、そういう人的な訓練という点を強調いたしまして、それを強く取り上げておるわけでございます。それでこの運転事故防止対策委員会には労組の方の参加も求めておりまして、まだ確答はございませんが、私どもの気持としては、この労組も入れまして、打って一丸といたしまして、国鉄運転事故の絶対防止ということに進んで参りたいと、今折衝中でございます。これはもう必ずいたさなければならぬものと、強い決心をもって進んでおります。
  8. 臼井莊一

    臼井委員 ちょっと関連質問で。先般質問申し上げた中で一点お伺いしたいのですが、事故防止で、今度の問題は、やはり信号無視という問題が大きな問題になっておりますが、これを防ぐには、この間機関車へ試乗してみてのしろうと考えにしても、喚呼応答というやり方でありますね。あれが私は非常に必要だと思うのです。一体あのやり方は、運転規則には、それを行うべしという規程になっておるのでありますか。その点一つお伺いいたします。
  9. 竹内外茂

    竹内説明員 お答えいたします。喚呼応答の御質問でございますが、喚呼応答は、従来はこれは指導的にやるということになっておったのでございましたが、一昨日申し上げましたように、新しい規程の中には織り込んでございます。ちょっと条文を読んでみます。第三百四十三条というのがございまして、「機関士機関助士とが信号を確認したときは相互にその現示状態喚呼応答しなければならない。前途に支障のあることを発見したときは、発見した者がこれを喚呼して他の者はこれに応答しなければならない。機関士のみが乗務している場合信号を確認したときは、その現示状態を喚呼しなければならない」という規程がございます。
  10. 臼井莊一

    臼井委員 その規程はいつから実施されておるのですか。
  11. 竹内外茂

    竹内説明員 これは昭和二十三年の八月五日に規程改正になりましたとき、はっきりうたってございます。
  12. 臼井莊一

    臼井委員 そういうちゃんとした規程があるのに、先般のお答えではこれが果して励行されておるかどうか、多少不明のようにも伺ったのですが、もとより電車のように運転士が一人の場合は必ずしもはっきりしませんが、少くとも二名乗っている場合に、助手が喚呼する。喚呼する責任はむろん主任にもあるので、そうするとお互いに牽制し合って十分わかるわけですから、そういう点がよく実行されているかどうかということも、永山君の御質問にもあったように、平素調査訓練なんか一つ十分御監督いただく必要がある。今度の場合これをやっていれば見のがしというようなこともあるわけはなし、一人が確認した場合でもほかの者がさらにそれを再確認するので、二人が見のがすということもおそらくないので、その点を一つ規則通りに厳重にやるように指導監督をお願いしたい。それを見のがした、やっていないとすれば規則違反でありますから、この点は一つお願いしておきます。
  13. 永山忠則

    永山委員 ただいま副総裁から労組の協力のもとに安全運転のために必ず運転考査諸種の問題を実施したいというお言葉でございますので、深くこれを信頼いたしまして、あらためて現在の労組との諸情勢をお聞きすることは避けたいと考えておるのでございます。  その次に、第一種であります直接従業員運転従事者に対する待遇改善という問題に対しては、これはお聞きになっておるか存じませんが、今後どういうようにおとりになる考えでありますか。
  14. 小倉俊夫

    小倉説明員 率直に申し上げますと、国鉄は非常に危険な作業に従事いたしておりまするし、またその常務も非常につらいのでございまして、この点でかつては給与一般よりも高かったのでございます。それからさらにその内訳といたしまして、機関車乗務員は他の職種よりも給料がよかったと私は記憶いたしております。しかしながら戦後におきまして、生活給と申しますか、そういうふうな観念のもとにだんだん給与が平均されて参りました。それで現在国鉄給与は他に比較いたしまして、必ずしもよくないと私としては思っております。しかし鉄道企業体でございますので、人件費というものもおのずから制限がございますし、また給与総額の点もございますし、こういう点につきましては、できるだけ改善はいたして参りたい、こうは考えておりますが、と申しまして十分なことも今直ちにはできかねる、徐々に改善いたしていきたい、かように考えております。
  15. 永山忠則

    永山委員 この運転に直接従事される従事員待遇改善も、従前待遇は他の職種よりはよかったわけでありますので、この場合英断的におやりになることを希望いたします。その知能、身体技術、あらゆる方面においての考査を進めるという上におきましても、これがやはり待遇改善と並行してされるべきであるとわれわれは考えておるのであります。  第三点は、旧来はやはり運転監督指導者は巻きゃはんで現場に出ておった。指導的地位にある者が非常に輸送の混乱時を予想されるときには多数出まして、これが監督あるいは指導をいたしたのでございますが、現在においては、いわゆる鉄道管理局が作られた当時の趣旨とは違いまして、非常に職務範囲が広くなりました。大体局長自身現場監督指導的地位に立つということが当時鉄道管理局を作った方針でございましたが、その後において、あるいは自動車部とか経理部とかその他の各部を全部包容いたしまして、旧来の役人的な性格に逆戻りしたような点がありますので、そこでこれが現場指導監督に当る関係を一段と強化されて、旧来においてありましたように、現場監督が一番大きな指導的地位にあるという構想のもとに、この機構改善についてのお考えをお持ちであるかどうかという点であります。
  16. 小倉俊夫

    小倉説明員 まことにお説、ごもっとものことでございまして、一々思い当ることばかりでございます。鉄道職員は従来輸送を非常に重んじておりまして、私の記憶では地方鉄道では線路に草が生えているが、国鉄では草が生えていないというふうなことが、国鉄一つの自慢でございました。これはやはり指導者が始終線路を回るということで線路保守もよくなるし、また運転関係従業員緊張の度合いも増すと考えております。それで実は戦後におきましても、いろいろ国鉄やり方が変って参りましたために、資材関係あるいは経理関係、その他の日常業務が相当複雑になって参りましたために、現場機関でも輸送本来の力を幾分管理の方に移されて参りまして、御指摘通り業務監督という点がいささか従前に比較して薄くなってきたのではないか、かような点につきましては、経営調査会の方からも、現場機関が雑務に追われないように、輸送本来の責務に十分尽されるような機構が望ましいという御答申がございました。それでただいま機構改正考えておりますが、これの趣旨といたしましては、経営調査会答申にもございますように、地方をブロックにいたしまして、各地に支社を設けて、その下に管理局をつけ、その管理局をできるだけ現場業務に専念せしめる。そうして経理あるいは庶務あるいは資材といったようなものは、支社でできるだけかぶっていたすということで今工夫しておりまして、今後は管理局はできるだけその現場輸送保守営業ということに専念せしめるような機構改正を意図しておりまして、近々のうちに実施いたすつもりをいたしております。   〔委員長退席臼井委員長代理着席
  17. 永山忠則

    永山委員 ただいまお説を承わりまして、機構の改革においては、ことに運転現場指導監督重点的に配意をいたすということでございます。これに待遇改善なりあるいは運転考査等の諸問題等を総合されまして、今後この種の事故が起きないように万全を期せられる当局の御決意を事実上具体化されることを切に希望をいたしまして、私の質問を終りたいと思います。
  18. 臼井莊一

    臼井委員長代理 通告によりまして次は正木清君。
  19. 正木清

    正木委員 私は現下緊急輸送の問題を特に中心として御質問を申し上げるわけですが、その質問の過程の中で、当然今回起きました事故のことに関しても触れますので、あらかじめ委員長において御了承おきを願いたいと思います。  そこでまず第一に国鉄側お尋ねをしたいと思うのですが、本日の委員会にも現下緊急輸送対策として運輸省から参考資料の配付がございましたが、あらかじめ国鉄から一つ責任ある答弁をいただいておきたいと思いますことは、わが国の鉄道輸送が比較的順調と見られておりました昭和十一年度を基点として、当時と比較いたしますと、今日では二六一%に輸送トンキロが増強されておる。しかるに輸送施設である貨車の増強というものはわずかに四五%にしかすぎない、こう記録されておりますが、この数字に間違いがないかどうか、この点をまず承わっておきます。
  20. 小倉俊夫

    小倉説明員 輸送量トンキロにいたしまして二六一%になっております。しかしながら車両におきましては、お手元に差し上げてございます「鉄道輸送現状」の表にございます通りに、ただいまの御指摘のように、貨車数昭和十一年度を一〇〇といたしますと、三十一年度は一四五%で、四割五分の増備になっております。
  21. 正木清

    正木委員 この具体的な基礎数字を根拠にいたしましても、今日の国鉄が、いかに人事を尽して最大輸送のための努力を払っておるかということについては、これは議論の余地がないと思う、私はこう考える。あるとすれば、どこにあるのであるか、こういうことについて運輸大臣から明確なる御答弁を願いたいと思う。私は、国鉄としては、この数字を基本としただけでも最大努力を払っておる、もし国鉄当局に大きな欠陥があるとすれば、一体どこにあるのだということについて、運輸大臣並びに運輸当局から具体的な御説明を願いたい。
  22. 吉野信次

    吉野国務大臣 私もお話通り国鉄としてはもう十二分に努力しておるということを認めるにやぶさかでありません。
  23. 正木清

    正木委員 そこで国鉄にお伺いをいたしますが、施設方面でございますが、この配付された資料によりますと、軌道の延長の数字から見ますとわずかに二四%しか増強されていない、こう書いてございますが、これに対して間違いないかどうか、御説明を願いたいと思います。
  24. 小倉俊夫

    小倉説明員 御指摘通りであります。
  25. 正木清

    正木委員 そこで重ねてお尋ねをするのでございますが、昭和十一年を基点として、旅客関係においてはどういうような比率で表われておるか、これの御説明を願いたい。
  26. 小倉俊夫

    小倉説明員 これもお手元に差し上げてございます資料の「鉄道輸送現状」これの第七ページをごらん下さいますると、別表の一でございまするが、大体平常輸送でございました昭和十一年度を指数一〇〇といたしますと、三十年度は、人員は三六七%、三・六七倍に上っております。これを人キロで表わしてみますと、昭和十一年度が一〇〇でございまして、三十年度は三四八%になっております。それに対しまして旅客車数数字は、別表の二に載せてございまするが、昭和十一年度客車気動車を含めまして指数を一〇〇とし、三十年度では一二五、つまり二割五分の増加をいたしたにすぎません。電車におきましては、昭和十一年度が一〇〇でありましたのが、三十年度では一九一でありまして、九割一分しか増備いたされませんでした。合計いたしますと、昭和十一年が、お客様を運ぶ客車気動車電車を合せまして一万一千百九十三両、これを一〇〇といたしますと、三十年度では一万四千九百七十二両、指数といたしまして一三四ということになっております。繰り返して申し上げますと、輸送人員はおおむね三倍半になっておりますのに対して、客車の数は三割五分程度しかふえて参らなかったのでございます。かような情勢でございますので、旅客にいたしましても、ただいまのところは急直行の長途の旅行をされるお客様も立って乗っていただく、あるいは大都市近郊の通勤におきましては、定員の二倍、三倍という混雑程度に相なっている次第でございます。
  27. 正木清

    正木委員 貨物においても旅客においても、今国鉄が明らかにした非常な努力による無理な輸送を行なって、現在の輸送を辛うじて維持しておる。ところが現実には政府経済自立五カ年計画との関係もあって、辛うじて維持をしてきたこの限界点をすでに突破してしまって、貨物輸送の面においても、現在では来るところまで来たというのが現状であろうと思うのでございます。従ってこの来るととろまで来てしまった貨物輸送のこれらの問題を、どう具体的に解決をしなければならないかといえば、一つは緊急的な処置をどうとるか、それから将来の日本経済とにらみ合して直ちに恒久的な施策を一体どう実施をしていかなければならないか、こう二つに大別されるのではないかと本員は考えております。  そこで問題に入る前にもう一つ国鉄当局お尋ねしておかなければならない問題は、私の承知している範囲においては、老朽した施設を土台として非常な無理をして非常な輸送成績を上げておる反面に、国鉄職員人員配置については政府からの強い指示もあったと承わっておるが、かつて六十万人の職員を四十万人に大幅に削限した、かように承知いたしておるのでございますが、職員配置状況について詳細にここで説明をしてもらいたい。
  28. 小倉俊夫

    小倉説明員 お答え申し上げます。人員につきましては、戦前におきましては昭和十一年の人数で大体二十二万程度職員がおりました。現在はそれが四十四万数千人ということになっております。ただいまお話がございましたように、昭和二十四年には六十万余でございましたのが、それを整理いたしましてただいまは四十四万数千人になっております。これを業務量に比較いたしますと、戦前に対しまして輸送トンキロ及び列車回数が非常にふえております。この輸送量に対しまして現在人員がどれだけ働いておるかと申しますと、実はその前に現在の人間を一応修正いたさなければなりません。と申しますのは、労働基準法ができましたために、戦前よりも休暇日数あるいは勤務時間等におきまして働く時間が減っております。大体について申し上げますと、戦前の一人が現在は〇・七くらいの人数に当るのでございますので、四十四万数千人は、これを修正いたしますと三十七万人ぐらいに相なる計算でございます。これによりまして例の生産指数と申しますか、輸送の量を人間で割ってみますと、そこに個人当り生産指数が出て参りますが、列車回数に対する人間の割合を申し上げますと、戦前よりも個人生産指数は多分一三%ばかり上っております。さらにこれを人キロで申しますと二一三になっております。それからトンキロで申しますと一六〇になっております。それで決して能率を落しておるということではなく、むしろ能率を上げて現下輸送に対応しておるという数字でございます。
  29. 正木清

    正木委員 今の国鉄説明でより明らかになった点は、戦前昭和十一年を基点として押えた今の説明から申しましても、生産指数においても、人キロにおいても、トンキロにおいても、今の四十四万数千人の国鉄職員が、これまた国鉄当局と一体となって、現下輸送状況に捨て身の努力をしているというこの事実は明らかになったと思います。従ってこの事実を基礎にして一体運輸省としてはどうお考えになっているのか。国鉄職員国鉄総裁以下の当局と一体となって努力していないと一体運輸当局は言い切れるのかどうか、この点運輸当局の見解をこの機会に明らかにしておきたいと思います。
  30. 吉野信次

    吉野国務大臣 私はそういうふうには考えておりません。やはり従業員もぎりぎりのところまでよく当局努力してやっているということは私も認めます。
  31. 正木清

    正木委員 そこで私は国鉄当局お尋ねしたいのですが、日本国鉄の各般の施設の大きな欠陥は、戦争中の非常な無理な使用がいまだに完全に復旧されていないという点が一点、さらに時代の進運に即応する施設改善というものが非常におくれておる。一口に言うと近代化しておらない。この点が強く指摘されていいのではないか。そのおくれた面を一体どの面でカバーしてきたかというと、国鉄百年の歴史の、総裁以下末端の職員の果てに至るまで、非常な長い歴史の中での訓練された精神力というものの力が、今明らかになったように生産指数にしても、人キロにしても、トンキロにしても、大きな努力をして成績を上げておる。そうすると、人間の力にも一定の限界点があるのだ、十河総裁参宮線事故について泣いて国民におわびをし、遺族におわびをしておるあの気持は、私などもともに涙を流して総裁の心を了とした一人ではございまするが、一定の限界点があるのだというこのほんとうの大切な基本的なものを考えておかないと、再びどういう事故が起きるであろうかという、国民に非常な不安観念を与えないか、このことがより大切ではないか。私は残念ながら、この本質の問題について十河総裁から、かくあるべきものだ、かくすれば再びこういうことが起きないで済むであろうという、自信と確信に満ちた発言がこの委員会でなかったことを、はなはだ遺憾とするわけでございます。従ってこの人的力に一定の限界点というものがあるのだという私の見解について、国鉄の副総裁はどういうお考えを持っておられるか。決して心配されなくてもよろしい、まだまだ国鉄職員は、自分たちも中心になってさらに成績を上げ、能率を上げる余力があるのだ、こういうお考えであるかどうか。その点をお聞きしたい。
  32. 小倉俊夫

    小倉説明員 ただいま国鉄設備並びに職員の点につきまして御質問がございました。設備の点につきましては、これもお手元資料を差し上げてございます五カ年計画の冒頭に、「設備の老朽化」といたしまして、現在の国鉄の資産が二兆一千億のうちで、約千八百億円が老朽資産であると書いてございますが、これは経営調査会がしさいにお調べになった数字でございます。こういう老朽資産は、ともすると輸送障害になるおそれもございますので、国鉄としてはできるだけ急速に取りかえをいたしていきたい、かように考えております。何がゆえにかような老朽資産が累積して参ったかと申しますると、やはり国鉄の収入と申しますか、工事費が不足でございましたので、取りかえも十分できなかった、一方増加する輸送に対しまして、輸送力増強のための改良もいたしていかなければならない、かたがたには老朽資産の取りかえもしていかなければならない。しかしながら使える金のワクが不足でございましたので、老朽資産の取りかえも輸送力の増強も、両方とも中途半端になったということが実情でございます。国鉄戦前におきましては健全経営でございまして、鉄道が十分な改良工事を行いました上、一般会計に三千万円ないし四千万円の繰り入れをいたした時代もございますが、戦後にはそういう余裕がないどころか、本来の輸送力の増強あるいは資産の取りかえという点につきましても、資金が不足のためにかような状態になりましたので、当局努力の足りなかったことを深くおわび申し上げる次第でございます。  さらに人間につきましては、これは国鉄の現在の輸送を完遂いたしますのに大体何人が至当であるかということは、非常に算定が困難でございます。国鉄輸送関係ばかりでなく、いろいろな輸送に付随します陰の仕事をたくさんいたしております。たとえば通信でございますとか、それから駅務でございますとか、あるいは修繕関係であるとか、非常に多岐の業務をいたしておりますので、かくして現在の国鉄に何人の職員が必要であり、かつ十分であるかということはなかなか算定がむずかしゅうございますが、私が心配いたしておりますのは、こういう現状のように急激に輸送がふえて参りますと、そこに職員関係におきましてもいろいろ考えなければならぬ問題があるのではないかと思います。ただ国鉄はいろいろな点で合理化をやって参りたい、それで合理化によりまして人員を浮かして必要な部面に張りつけていきたい、こういうような長期計画を持っております。たとえて申しますれば、通信は現在有線でございますが、これを無線にしますと、中継の人間が要らなくなる、あるいは老朽資産が新しくなりますると、修繕関係人間が浮いてくる、あるいは蒸気機関車が電気機関車になりますと、石炭積み込みの炭水手が浮いてくる、こういうようないろいろな人間を生み出す工夫もいたしております。そういうふうにして合理化によって人間を浮かして、これを必要な方に転換して参りたい、かように考えておりますが、ただ心配なことには、合理化というものは五カ年計画におきましてもだんだん将来にわたって効果が出て参りまするが、現在の輸送は急ピッチで上って参ります。そこに人員の適正配置ということに時間的なずれが出てきはしないか、こういうことで実は心配いたしまして、慎重に考慮いたしたい、かように思っております。
  33. 正木清

    正木委員 ただいま国鉄から人員の適正配置と関連して国鉄経営の合理化、すなわち五カ年計画を通じての近代化について御所信の発表がございましたが、ただいま副総裁が自分自身で御指摘になりましたように、現実は五か年計画というものが資金関係を土台として既定の方針の通りには進んでおらない。ところが現実の政府五カ年計画とそれから世界経済の好転と関連して、貨物輸送というものは急ピッチで上ってきておる。そこに国鉄の限られた職員の職務時間というものに、現実には非常な無理がきておるのではないか。ある東京の有力紙はこうその点を指揮しております、国鉄現場職員は休暇を取り消し、機関助士運転の経験ある者は副機関士として機関車運転に充てるなど応急策をとっておる、この点を端的に実は有力紙が指摘いたしておるのであります。こういう事実が私どもは現実にあるのだと承知いたしておりますが、国鉄運転の方を担当しているのは竹内君ですか、一つあなたから正確に責任ある答弁を願います。
  34. 竹内外茂

    竹内説明員 ただいま御指摘の点は、現状においてそういった事実がございます。しかしながらこれは鉄道輸送の緩繁に応じまして起るものでございます。秋冬繁忙期とかあるいは春季の輸送の繁忙期におきましては、休暇を抑制する格好がとられつつあることは事実であります。
  35. 正木清

    正木委員 今当の責任者である運転局長竹内君は、私の指摘いたしました点はありますとこうはっきり認めております。しかしそのあとで、輸送のいろいろの条件を勘案してそういう点があるのだ、こうさらにつけ加えておりますが、ではあらためて私から国鉄当局お尋ねをする。一体ことしの貨物輸送の急激な増強というものは、従来の国鉄輸送計画との関連で、何月から何月までは忙しいのだ、何月から何月まではひまなんだ。従って谷があるわけですね。この谷が従来の関係から見た谷と今年度の谷とでは、私の調査している範囲では大きな開きがある。私はほとんどことしは谷がないと見ておる。これを国鉄当局は認めるかどうか、これを具体的に数字でここで説明をしてもらいたい。
  36. 小倉俊夫

    小倉説明員 仰せの通りでございまして、従来の例によりますと、大体六、七、八という季節は夏枯れの時期でございまして、このときは出荷が低調になります。その際に列車回数を減らして、従業員の休暇もとってもらい、あるいは車両の修繕もいたすというのが従来の例でございました。ところが本年は夏枯れという現象はございませんでして、出荷がふえる一方でございます。これに対しまして鉄道でも輸送力を極度に発揮して参ったのでございます。従来ならば定期、不定期を一ぱいに動かす、その上に臨貨を設定するというようなことは夏にはございませんでしたのを、ことしはそういう手段をとりましても滞貨がふえる一方でございました。数字で申し上げますと、昨年と比較いたしまして、昨年の九月の一日平均の貨物列車走行キロは三十三万キロでございました。これに対しまして当年は九月一日の列車走行キロ平均は三十五万六千キロ、昨年が三十三万一千キロに対しましてことしは三十五万六千キロで七・七%増加いたしております。十月の平均は、昨年は三十四万五千キロでございましたのが、ことしは、推定もございますが三十七万三千キロ、約八%増加でございます。年間を通じてみますと三十年度におきましては、一日貨物列車走行キロが三十三万キロでございますが、当年は三十五万四千キロに上るのではないか。つまり対前年度六・六%の増強をいたしておるのでございます。しかしながらこれがほとんど精一ぱいでございまして、昨今は大体貨物列車は三十六万キロを突破いたしておりまして、これは戦前戦後の記録的数字を示しております。私ども方面の荷主さんのいろいろな御陳情をも伺いまして、極力精一ぱい努力いたしておるのでございますが、しかしそれにもかかわらず出荷は旺盛でございまして、毎日の滞貨はどんどんふえて参りまして、昨年が大体一日の滞貨が七、八十万トンでございましたが、今年の年度初めにはそれが八、九十万トンでございまして、ただいまでは百六十万トンを突破するようなことで、今後この年末輸送につきましては、またさらに滞貨が増加するおそれがございまして、非常に心配し、何とかこの波を乗り切っていきたいという対策を立てておる次第でございます。
  37. 正木清

    正木委員 今副総裁が明らかにしたように、現在の国鉄輸送というものは、人員の配置からももうぎりぎり一ぱいのところにきてしまっておる、こういうことが明確になったわけでございます。そこで私が今度の事故で本員もほんとうに反省しなければならないと思った点は、事故が起きた結果論についてわれわれはここで軽はずみな言動は本員自身としては避けたいと思います。すでに警察当局が当時の乗務員を留置して取調べを進めておって、これの責任の所在というものはやがて法廷において明らかになるわけです。しかしながら前回の委員会において国鉄当局責任者が明らかにした点では、諸般の状況から勘案して、乗務員の信号無視が今度の一大惨事を起した直接の原因であろう、こう責任ある発言を実はいたしておるわけであります。そこで私は私なりに真剣に考えなければならないことは、かりに乗務員の信号無視最大事故原因であるとしても、国鉄経理の合理化という政府からの強い要請に基いて合理化が——要するに施設の近代化が人員配置と並行して完全に実施されておったならば、かようなことはなくて済んだのではなかったか、言いかえるならば、前回の委員会で法規をここで朗読された竹内局長に私はお伺いしたいのだが、現実にこの運転取扱規程を改訂して信号一本やりでいくことが、ほんとうに事故防止するところの最大の方策であったのかどうか。私は前回の委員会で同僚の質問に答えたあなたの答弁の中からは、そうは受け取れなかった。施設が老朽化しておる。乗客数が急ピッチに上ってくる。貨物も非常に増強してくる。限られた貨車で、限られた機関車で、限られた運転士で時代の要求にこたえるためには、何としても一切のものに無理がかかってくる。一方においてはなおかつ合理化を要請されてくる。その合理化の一つの犠牲になったのがこの運転取扱規程の改廃となって現われた結果、従来の一番大切な人命の尊重と、人から預かる貨物の安全輸送というものが犠牲になって、信号第一主義に変ったところに、今度の大きな惨事の根本原因があるのではないか、こういうように考えられてなりません。私は当の責任者である竹内局長から、あくまでも現在のこの規程のまま、今後といえども押し切っていくつもりなのか、それともこの事件を契機として、この取扱規程に研究の余地があるのかないのか、この点について責任ある明確な答弁をしてもらいたい。
  38. 竹内外茂

    竹内説明員 お答いたします。私が一昨日の委員会でいろいろ規程上のことを申し上げましたが、やはり国鉄列車運転というものはどうしても信号第一主義でやっていかなければならぬ。現在でもそう思っておりますし、いろいろと研究をいたしましても、この信号確認の第一主義だけは絶対に曲げることができないと思います。ただしそれに対する補助手段——第一主義ではありますけれども、補助手段その他については現在なおいろいろの研究がされつつございます。その点につきましては今度発足いたしました事故防止対策委員会におきまして、やはり規定上の問題についての研究もございますが、われわれとしても研究していきたい、こう考えます。
  39. 正木清

    正木委員 私は非常に重大な事柄でございますので、重ねて国鉄当局お尋ねいたしますが、信号第一主義でいくというこの基本方針は変らない、ただし補助的な手段による道が打開されるのだ、しかもその具体的な点については事故防止対策委員会で研究の余地があるのだ、こうおっしゃいますが、現に何十万、何百万のたっとい人命を預かっている国鉄でございましょう。何百万トンという大切な国民の財産を扱かって、輸送している国鉄でございましょう。あなた方が自信と信念を持って信号第一主義を今後も継続するのだという限りにおいては、再び事故を起さないためには、それにかわるかような補助的な処置を緊急に取るのだという案が、すでにあなた方になければならないでしょう。そうでなければ、再びどういう事故が起るかもわからないという国民の素朴な不安を、この委員会を通じて解消するわけにはいかないじゃありませんか。解消する自信がございましょうか。その補助的なという具体案をここで明確にして、少くともこの委員会を通じて素朴な国民国鉄に対する不信、不安というものを解消する努力があってしかるべきだと思うが、自信はいかがですか。
  40. 小倉俊夫

    小倉説明員 お答え申し上げます。先ほども私から説明申し上げましたが、この機械的設備つまり列車自動停止機あるいは列車自動警報機あるいは列車ベルというものを早急に施設いたしたいと考えております。実はこれらの設備は従来研究して参りまして、来年度の予算にも何がしか入れてございますが、今回の事故にかんがみまして今までの計画を一新して急速に増備いたしたい、これらの設備を充足いたしますには、おそらく五、六十億の金を必要といたします。五カ年間にぜひこういう施設を完備いたしたいと考えておりますやさきでございますが、これを五カ年間にするということでは、今回の事故の犠牲者の方々あるいは国民の皆様に対しましても相済まないことでございますから、他の施設を犠牲にいたしましても、この列車の防護装置を予算にできるだけ盛り込みまして、早急な実現を期していきたい。このためにはただいままで組みました予算の再検討をいたしたい、かように考えます。
  41. 正木清

    正木委員 重ねてお尋ねするのでございますが、これも東京各有力紙が一斉に指摘しておる点で、長年当委員会に籍を置く本員なども非常に自己反省をした一つでございますが、今回の事件の根本的な欠陥はどこにあったか、それを三つ取り上げております。一つ信号無視一つはタブレットの取扱いの欠陥一つは指令系統の欠陥、この三つを取り上げております。私も要約すると大体それに尽きると思う。いろいろのこまかい技術的なことは議論されるけれども要約するとこの三つに尽きる。そこでこの運転取扱規程というものが非常に大切になってくるのだ。そこで今副総裁指摘されたように、今組んである予算に再検討を加えて、かような事件を防止するために施設の近代化をはかるのだ、こうおっしゃいました。しかも五カ年計画を通じてそれに要する経費は五、六十億かかるのだ、こうあなたはおっしゃる。今の国鉄の財政の現状から見て、直ちに五、六十億の資金が右から左に簡単に操作されるというふうには私は考えません。それほど国鉄の財政資金内容というものは甘いものだとは考えておりません。もしここでこの方面に思い切った資金の配分転換をすれば肩に大きな穴があいてくる、これが国鉄の財政資金の現状である。ですからあなたが心でどのようにお考えになっておったとしても、現実にはその通り運ばないではないか、現にあなた方の直接関係ある交通新聞でもその点を指摘しておるではありませんか。日本の単線は全国鉄の八割を占めておる、これを認めますか、あとで答弁のときにおっしゃっていただきたいのですが、認めますか。認めているとすると、この八割を持つ単線の中で今あなたが答弁されたようなことを改善するためには、年間相当の資金を必要とし、努力しても十五カ年近くはかかるであろう、こう指摘しておる。そうすると現実に国民の素朴な感情というものは、国鉄に対して大きな不信をさらに抱いたということをあなた方は忘れてはいけない、このことを私は指摘したい。ではそういうものが近代化されて、そうしてもう大丈夫でございますよと国民の前に責任と自信と確信をもって言い切れる間、一体信号第一主義で行ってよいのかどうか、この問題が残るわけです。将来はこうしますということではいけないのである。ですから前回の委員会でも同僚各位からこの運転取扱規程を中心として、ほんとうに専門的に意見の開陳があったように、私はやはり信号第一主義というものについては十分に考える余地があるのではないか、もし不測な事態が起きたとき、今度は何と言って弁解しますか、弁解のしようがございませんよ。現実の問題としてなければけっこうですが、ないとは断言し得ない。そのとき信号第一主義で行きますと言い切って、あなた方はそのとき何と弁解するか、このことを私は憂えるわけです。私はこれ以上多くは申し上げません。私は国会議員の一人の責任者として、運輸委員会に席を置く一人の責任者として、以上御注意申し上げますから、再びかような事故の起きないように、最大の御努力を払ってもらいたいということを強く要求をいたしておきます。  そこで具体的に貨物の滞貨の緊急処置についてこれから御質問申し上げるわけですが、運輸省からちょうだいした現下緊急輸送対策なるものに簡単に目を通してみましたが、私の目を通した範囲においてはこれぞという具体案もないようでございます。こういう案が果して対策要綱になるのかどうか、私も失礼ですが、相当長く議会の中で暮した人間ですが、戦時中といえどもこういうものの対策案なるものを率直に言って実は見たことはございません。そこでお尋ねいたしますが、具体的に一体今の滞貨の状況は、大ざっぱにいってどれくらいの滞貨があるか、この滞貨を基礎にして、たとえば幹線といわれる東海道、北陸、東北というようなところはどの程度の滞貨になっているのか、しかもこれに対して国鉄当局は、この滞貨打開のためにはどういうような緊急な処置をとっているのか、この点について相当具体的に答弁を願います。
  42. 磯崎叡

    ○磯崎説明員 ただいま正木先生から最近における国鉄の滞貨現状について御質問がございました。お手元にグラフを差し上げてございますが、ちょっとこれで御説明さしていただきたいと思います。今年度に入りましてからすでに四月から九月まで二・四半期を経過いたしました。この二・四半期の間の輸送の実績は先ほど副総裁から申し上げましたように、大体昨年度に比べまして約八%ないし九%の増加になっております。その後引き続きまして今十月に入っておりますが、お手元に差し上げました資料は、九月一日以降の毎日の輸送状況と毎日の滞貨の状況を示したものでございます。一番下から簡単に御説明申し上げますと、一番下の貨物列車キロ、これは先ほど副総裁から申し上げました昨年の貨物列車運転キロと、今年に入りましてからの九−十月の毎日々々の貨物列車運転キロを示したものでございます。下の赤い数字が昨年度の一月以降のもので、赤は九月で三十三万キロ、十月に入りまして三十四万二千キロを運んでおりますが、ことしはごらんの通り大体三十五万キロを超過した数字を毎日示しておりまして、昨日現在では、一番動かしましたのは、十九日の金曜日でございますが三十七万六千キロ運転をいたした日がございます。  次に発送トン数で、これが私ども輸送するトン数でございますが、大体本年度に入りましてからも、ほとんど昨年度の九−十月の一割以上の増送をいたしておりまして、黒い線が本年でございますが、大体四十万トンから四十五万トンの間を上下いたしております。一番多かったのは一昨日の二十日の土曜日でございまして四十六万七千トン、これはまだ表に入っておりませんが、土曜日が最高でございまして、四十六万七千トン輸送をいたしました。これに一段谷がございますが、これは日曜日と台風があった日でございまして、日曜日にはどうしてもやはり休みをとられますので輸送力が落ちまして、昨日二十一日の日曜日が四十三万二千九百トンに下っておりますが、日曜日としては非常に輸送トン数の多かったところであります。輸送実績、発送トン数から見ましても貨物列車キロから申しましても、先ほど正木先生からもお言葉がありました通り、実は私どもとしてはできるだけの、フルの輸送をやっているつもりでございまして、私といたしましては現在の輸送力をあと十一月、十二月維持していくことが、非常に大事なことではないかというふうに現在考えておる次第であります。  これに対しまして滞貨——私どもはこれを在貨と申しまして、一応駅に荷依頼者が参られまして送ってくれといって正式に運送状を託せられたものをあげております。従いましてまだ駅に搬入されたものその他につきましては私どもの方で明確になっておりませんし、また新聞などに出ますトン数はたまたま両者が混同されて出ますので、数字その他不明確な点があるかと思いますが、これは私どもが一応駅に搬入されまして、いつでも輸送できる状態になっておるものをあげておる次第であります。この在貨のトン数は、昨年度は御承知の通り九月に入りましてから、やはり九月、十月は毎年ずっとふえて参りますが、大体六十万トンくらいから発足いたしまして昨年の今ごろ、十月の二十日、二十一日ごろは大体百万トンがこの表に示す通りの在貨でございます。本年度に入りましてからは大体九月の初めに百十万トンあたりからスタートいたしまして、現在では百六十万トンをこえまして、けさの午前六時におきましては百六十五万トンになっております。最近までで一番多かったのは二十日の百六十九万九千トン、大体百七十万トン近い数字になっております。すなわち大体毎日の私どものできます最高の輸送能力の約三倍以上の在貨を見ていると申しますのが現状でございます。  そのような状況でございますので、今先生からこれが各線区別にどうなっているかという御質問がございましたが、申し訳ありませんが手元にまだその資料を持って参りませんので、すぐ調整いたしましてお届けいたしますが、大体全国どの地方にもこの情勢が大体平均的に起っておりますが、特に現在ひどいのは先ほどお話がございました岩手県、私の方で申しますと仙台鉄道管理局の管内と、西の方の門司鉄道管理局管内の鉄鉱関係の原料の石灰石、あるいは石炭等の輸送、この二つが非常にクローズ・アップされた問題でございますが、その他各地方に大同小異の問題が起きてございまして、その具体的実例は先ほどの運輸省の資料の中にも入っておると思いますが、ごく最近の資料を今まとめておりますので、でき次第差し上げたいと思います。その通りに全国至るところに同じような現象が起きておりまして、現在のこの輸送力、すなわち現在の貨物列車運転キロと、現在の貨車設備をもっていたしましては、今より急激にふやすということはほとんど不可能に近いと私は考えております。従いまして一地方貨車重点的に配置する、あるいは輸送力をつけるということは、どうしてもほかの地方がそれだけへこんでくるというふうにならざるを得ないということに考えております。従いまして各地々々からございます緊急輸送の要請に対しましても、実はほとんどそれに応ずることができないといったような現状でございます。昨日十一月分の輸送計画を策定いたしましたが、やはり本月と同じように、あるいは本月よりもう少し上回った輸送不能の数字が出てくるというふうなことになっております。今のところは、私どもといたしましては現在の四十五万トン輸送を確保していくことが第一の任務だというふうに考えております。
  43. 臼井莊一

    臼井委員長代理 正木君、大臣が十二時半からやむを得ない用事があるそうですが、関連質問で楯君が……。
  44. 正木清

    正木委員 この問題で大臣から一言聞いて、あと関連質問に譲ります。  そこで私はこの問題について、政府である運輸省から責任ある回答を大臣がおられる間にいただきたいと思います。このグラフで今営業局長が明らかにしたのは、最高で四十六万七千トンまで行った、しかし実際は基準として四十五万トンを維持したい、こう言われる。これが国鉄としての最大の能力の限界のワクの中だ、こうおっしゃる。ところが現実にはもうすでに百六十五万トン以上の滞貨になってきておる。実際は三倍のものになってきておる。こういうことになると、これは日本経済全般に与える影響というものは非常に甚大です。これは政府として真剣に考えてもらわなくちゃならない。ましてや直接われわれの生活に響く影響は、これまた大きな問題である。これは大蔵省が財政処置をどのようなことを考え、どのような方途考えようとも、現実には輸送の面から、日本の健全経済がくずれないとはだれも言い切れないところに来てしまっておる。これは現実が証明しておるのです。そこで政府としては国鉄の今日あることを全然予期しなかったのかどうか。今の政府は御承知のように経済企画庁を土台として、戦時中の計画経済ではないが、国民経済というものを基盤として大ワクの計画経済を立てておる。そして五カ年計画というものを基点として物事を総体的に運営してきた。今日このことを予期できなかったのかどうか。予期できなかったとするならば、一体どうして予期しなかったのか。一体これをどう具体的に解決しようとするのか。しかも国鉄としてはすでに五カ年計画なるものを立てておる。国鉄は今日かくなるであろうということを数年前からきちんと予期をして、今日このことを防ぐためには、国鉄施設各般にわたって、かようかくかくにすべきであるという計画案を持っておる。一体政府としてはこれをどう解決つけようとするのか、これは大きなことですから、大臣から一つ明確にしておいてもらいたいと思います。
  45. 吉野信次

    吉野国務大臣 一々ごもっともなお話だと思っております。三十一年度の予算当初から、ある程度のことはわかっておるわけであります。しかしこんなに急ピッチに景気がよくなりまして、旅客なり輸送面においてこういった事態を来たすということは、ありていに申しまして実はそこまでの見通しは、三十一年度の就任いたしました当初にはつかないのであって、はなはだ不明なることはまことに申しわけないと思っております。しこうしてこの対策でございますが、緊急的にそこにちょっと書いてあります通りに、——今お話がございました通りこんなものは対策となっておらぬというのは仰せの通りで、実は何せ限度まで来ておるのですから、日本鉄道輸送力はそれに対策本部を作ってみたところが入れものがきまっておるのですから、ただある程度に、たとえば石灰石の輸送がとまって溶鉱炉の火がとまるといったときにそれを優先的に考える、こういってそれを優先的に考えればほかの方にまた滞貨の面がくるのですから、どちらにつかずそういうようなことでは私は解決はつかないと思いますけれども、ただなさざるにまさるのであって多少のことをやろうということで、実は私自身もこれをもって皆様方に対策だと、そんなことを言う腹は正直に申し上げてございません。それでいろいろ考えましたがどこもかしこも一ぱいでございまして、多少今日輸送力があるといえばこれはトラックでございましょう。けれどもこれも大量の貨物輸送に対して幾らか余裕のあるものを動かしたところでしょうがございませんので、事ここに至ってはどうしても三十二年度の予算を組むときに、私は相当抜本的に考えなければならぬ、こう考えておりますが、ただ今日それも待てないのですから、どういうことが一体今与えられた私の権能内においてできるかということを考えますと、若干貨車の注文を——これもすぐには間に合いませんけれども、来年度の予算を待たずしていわゆる債務の契約をいたしまして、来年度の予算が通ったときのその注文を今ここでやることができるかできないかという問題が一つあろうと思います。これも限度がございまして、御承知の通りに一体操車場の問題がどうなるかという問題がある。ですからそれやこれやを考えまして、どうしても抜本的に考えるには一体どういうことになるのか。ともかく今までのように財政資金のワクとかなんとかいうことにこだわっておっては、この問題は解決つかぬのじゃないか。それからこれもここに今責任ある人間として申し上げるのは少し出過ぎたことでございますけれども、たとえば機関車のようなものでも、今までは電気機関車日本で国産ができるからというて、ああいうものを外国から入れるということは考えていないわけです。そんなことは今考えてみたところでそういうものがあるかないか知りませんけれども、とにかくやはりそういう世界市場全般から見まして多少でも輸送力というものの増強になるということがあれば、若干のことはせねばならぬと思いますけれども、何せ根本に操車場の問題なり何なりというものが詰まっております。この操車場というものを学問的に考えれば立体的に使うということもございますけれども、これもなかなか金だけの問題ではなくて、時日を要する問題でございます。それですから根本的にはあらゆることを、一つ一つは大した効果はなくても、できるだけのことをやらなければならぬのだろうということを考えておるのでございまして、ただ今お話通り今の日本経済というものの全体から見てこれが非常に隘路になっておって、日本経済の将来の発展性というものを妨げるようなおそれを来たすということについては、私も実は非常に危倶をいたしております。とにかくそれをできるだけ避けるように、あらゆることを今せっかく考えておるということでございまして、具体的に今三十二年の予算を離れて現在においてどうする、こうするということにつきましての抜本的なことは、私も責任を持ってここに、はなはだ申しわけないのですけれども、正直に申し上げますけれども案が立たない、こう申してははなはだ無責任かも存じませんけれども、正直にいえばそういうことを申し上げるほかいたし方ない現状でございます。
  46. 楯兼次郎

    ○楯委員 実は輸送逼迫に対して、私は陸運と海運との関係について関連して質問したいのです。ところが大臣が時間がないそうでありますから、それはあとの方にお聞きをするとして、これと関連をして海運のことを少し聞きますから、あなたもお忙しいでしょうから、端的に御答弁願いたいと思います。  まず第一にお伺いしたいことは、現在二百八十万総トンの現有勢力でありますが、日本現状からいって、一体どのくらいのトン数が妥当であると大臣は考えられておるのか、あるいは運輸省としては、計画造船との関連上、どのくらいの船腹の増大が必要であるというふうに考えられておるか、簡単に一つ答弁願いたい。
  47. 吉野信次

    吉野国務大臣 これも根本に触れたお尋ねでございまして、御承知の通り一応五カ年計画を策定いたしますときには、三百五十万トンという数字で出しているわけでございます。今お話通り、外航船舶はそのうち御指摘になりました二百八十万トンあることも事実でございます。それでこの上どのくらい船が要るかという問題、これも世界的の景気というものにも左右されるわけでございまして、戦争前には御承知の通り六百万トン持っておった時代もございますので、それから見ますと今日の世界の景気と、それから日本の輸出入貨物の距離が戦前よりは長くなっております。戦前はたとえば満州とか近いところがございましたが、たとえば鉄鉱石にいたしましても、だんだん足が延びております。そういう観点から申しますと、戦前よりもよけいに船を持たぬと、日本経済というものの戦前並みの発展はできない、こういうことになっておりますので、当局といたしましては一応三百五十万トンという五カ年計画というもののワクはワクで今進行中でございまして、それも五年にならないうちにもうすでにそれに近いところまで、あと一年かそこそこで達するということでございますから、今申しましたように、世界的の経済の景気というものの一般情勢から見、また日本の貿易というものの実際の現状から見まして、若干最終的の目標というものを私は増加するのが適当ではないか、こう考えております。ただその増加の目標が五百万トンがいいか、あるいは六百万トンがいいかということは、これは問題があろうかと思います。そこまでの点につきましてはまだ私も考えをきめておりません。
  48. 楯兼次郎

    ○楯委員 それでは次に進みますが、計画造船の利子補給の問題について、過日われわれは運輸大臣のところに申し入れを行いました。非常に海運界が好況であるので、あのいまわしいいわゆる疑獄、汚職を起したこの利子補給は、現段階においては廃止をするのが適当ではないか、こういうふうに私ども考えております。それからもしどうしても廃止をすることがいろいろな経済界の関係からいって困難である、こういうことであるならば、少くとも当面復配を行なっておる会社については、これは打ち切るべきである、こういう強い申し入れを過日行なったわけでありますが、そのときの運輸大臣のお答えでは、われわれの説に相当賛成をされておったように私どもは記憶をいたしております。今日のこの好況の段階に立って、なおこれを継続をされていくのか、あるいは復配の会社だけでも次期においては打ち切っていくというおつもりであるのかどうか、この点を簡潔に御答弁を願いたい。
  49. 吉野信次

    吉野国務大臣 大体御趣旨に沿うように処置したいと存じております。ただ海運界のことは私が申し上ぐるまでもなく、海運界の好況あるいは不況の波というものは相当長期にわたって参りますものですから、根本的に今ある法律をこの際多少二、三年景気がいいからというてやめるがいいかどうかも問題がありますから、少くとも今お話のありました通りに復配をしたというような会社につきましては、私は来年度においてはこれは利子補給はしない、こういうつもりで処置したい、そういうふうに考えております。
  50. 楯兼次郎

    ○楯委員 私はその問題について、なるほど法律を直ちに改廃をするということは、これは相当強い影響を与えることと思います。ところがこれの適用を左右をされるということは、そのときの情勢に応じて運輸大臣の権限でやっていただければいいのであって、そのことを意味しておるわけです。私ども考えておりまするのは、定期船は、これはやはり実績からいって、国家の補助といいまするか、指導援護によってやっていかなくてはならないと思います。ところが不定期船については、これは今日の状況ではもうすでに五年間ぐらいの見通しができるのであるから、適用を除外をしていって差しつかえないであろう。特にこの機会に私申し上げておきたいのは、中型計画造船でありますが、二千トンないし四千トン級の、そういう適用をするとすれば、中型船の方にこの利子補給というものを適用すべきが妥当ではないか、こういうふうに考えるのでありますが、運輸大臣としてはどういう御意向であるか、お尋ねしておきたい。
  51. 吉野信次

    吉野国務大臣 お話の点は文字通りに百パーセントその通りいたしますということを今申し上げる段階になっておりませんが、大体私の気持があまり変らないのです。それですから船のトン数の点も今三千トンですか、何というか、お話通り中型の小さいものの方にもう少し下げたらどうだろうかというようなことも考えております。これを要するに、やはり常識的にとにかく景気がよくなったのですから、あまり過当な保護を船会社にやるということはやめたい、こう思っております。
  52. 楯兼次郎

    ○楯委員 そういう御意向であれば、ただここでの答弁でなくて、三十二年の予算編成において今御発言になった実績を私は表わしていただくように期待を申し上げまして、この問題は終りますが、いま一つあります。端的に申し上げますが、これは二十四国会の予算委員会で私があなたに強く要請をしておきました。といいますのは、今日政府の作りました経済五カ年計画——輸送指数というものは、あれを相当程度上回わっております。ところがあの指数を上回わらなくても、あの五カ年計画の輸送生産指数からいっても、現在の施設と数量では国鉄輸送はできないではないか、こういうことを予算委員会で強く運輸大臣に私は要請をした覚えがございます。ところが今日各委員質問、御答弁を聞いておりますと、どうも何ら具体的の対策というものがない。やむを得ぬではないか、結論的にはそういうふうにしか私はとれないわけです。これでは私はいけないと思います。私は具体的にいろいろ申し上げたいのですが、あなたの御都合もあると思いますので——大体政府が作ったものは一〇〇%実施するという期待はわれわれは持っておりません。これはいつものことでありますからそういう期待は持っておりませんけれども、少くともこの何%かは改革し、推進をするという意欲を示していただかなければ困ると思います。たとえば最近経済企画庁は大体輸送は困るであろう、従って今後十年間は国鉄に対する財政投資は九千億円必要であるという資料を出しているのです。最近は経済情勢の変更によって、これを再検討するということを言っております。再検討をしても私は縮小をするということはないと思います。いわゆる増大の方向に再検討をするということであろうと思いますが、すでにその前に、膨大なる輸送増大をになうためには——ここに資料がございますが、これは政府が出したのです。九千億の十カ年といいますと、一年間に九百億円です。国鉄が五カ年計画を作って施設の改造、近代化、車両の装備のために五千億円、年間一千億円必要であるという資料を出しておられます。ところが具体的にその資金をどこからまかなうのか、そういう検討がなされておりませんし、そういう意欲がない。仕方がないじゃないか、こういうことではわれわれが各委員会で幾ら熱心に論議をしたところでしゃべり損だ、こういうことに私はなると思います。政府の方でも出した資料には責任を持って、具体的に施策を進めていくように要望いたしまして、私の運輸大臣に対する質問を打ち切りたいと思います。   〔臼井委員長代理退席、委員長着席〕
  53. 正木清

    正木委員 私は重ねて国鉄側お尋ねしたいと思いますが、先ほどの運輸大臣の私に対する答弁範囲においては、国鉄の現有輸送力に対して在貨がすでに三倍に達している。これの打開のために具体的なはっきりとした対策がいまだに立っておらないように聞き取れたのであります。そこで私は国鉄にお伺いしたいのでございますが、国鉄から出ております資料に基いても、各主要幹線の操車場というものに、一つ輸送隘路の大きな原因があるように考えられますが、この操車場に原因があるのかないのか、この点をこの機会に明瞭にしておきたいと思います。
  54. 磯崎叡

    ○磯崎説明員 ただいま正木先生からこの資料の十五ページの操車場の資料につきまして、現在の輸送難が操車場の能力に原因があるかどうかというお尋ねでございましたが、その点につきましてはここに書きました通り、現在操車場はほとんど能力の限度に近い程度まで操車をやっております。東海道線あるいは北陸線等におきましては、主として操車場が貨物列車をこれ以上受け付けられない、受け付けても操車できないというために、列車増発ができないということがございまして、現在の輸送難の原因のうちの一つがこの操車場の能力の行き詰まりでございます。
  55. 正木清

    正木委員 輸送難の原因はもちろん多々あるであろうけれども、この主要操車場の行き詰まりが原因のうちの一つであっても、それは大きい一つではないのではありませんか。この点を専門的な立場から明確にしておいてもらいたい。
  56. 磯崎叡

    ○磯崎説明員 先生のおっしゃいました通り、私ども今の輸送難を大きな三つの原因に分けております。一つが今先生のおっしゃいました操車場、第二がよくいわれます貨車の不足の問題、第三が線路容量と申しますか、たとえば単線区間などの問題等で、線路容量の不足、この三つを非常に大きな原因にあげております。そのうちの一つが操車場の問題でございます。
  57. 正木清

    正木委員 そうしますと、この操車場のたとえば設備に大きな改善等をかりに行なった場合、今の貨車輸送の隘路というものが一体どの程度まで改善されるお見込みであるのかどうか、その点を明らかにしていただきたい。
  58. 磯崎叡

    ○磯崎説明員 現在さしあたって非常に困っております東海道線の上りの輸送力打開のために一応新鶴見操車場に若干の、これはごく少額の規模でありますが、改良を行いまして、数本の列車をとりたいと思います。北陸線の輸送力の隘路打開につきましては、現在富山の操車場の新設工事中でございます。これによりまして、ことしの国会で御承認を得ました予算で約七億程度の金を富山操車場に使います。まだ工事が残っておりますが、私どもの五カ年計画の内容によりますと、富山操車場が来年度中に完成いたすことに相なっております。そういたしますと、北陸線の操車場は、大体富山で一日千両以上のものが扱えることになりますので、北陸線の方は大体それでいける。現在その二つ以外は、五カ年計画の内容に書きました各操車場につきましての相当大規模な改良計画はまだありますが、いずれも具体的な問題とはなっておりません。
  59. 正木清

    正木委員 今朝当委員会が開会直前に、東北の、特に岩手県から深刻な陳情があったわけですが、現在東北本線と一口にいうこの幹線における最大の隘路がどこにあるか。私の知る範囲では、やはり操車場も大きな隘路の一つであるということを承知しておるのであるが、この点一つ委員会で明瞭にしておいてもらいたい。
  60. 磯崎叡

    ○磯崎説明員 現在東北線の輸送力がございませんために、東北地方に非常に御迷惑をかけておりますが、これにはやはり大体三つ原因がございます。一つは、何と申しましても東北、北海道の物資が大体五割内外、北海道について申しますと約七割が関東向けでございまして、非常に東北線を通過する貨車の数が多い。それから第二に、北陸線が先ほど申しまた通りに非常に輸送力が詰まっておりまして、北海道から関西向けの貨車を約五十両、やはり東北線を経由させております。これがプラスになりまして、東北線が詰まっておる。さらにこれに加えまして、先生がおっしゃいました操車場のうち、大宮と田端の操車場でございますが、これがこの資料にございますように現在ほとんど能力一ぱいに操車いたしておりまして、これ以上の列車は受けられないということになっておりますが、このほか、たとえば常磐炭の輸送問題等もこれに関連いたしまして、操車場の能力の問題、それからやはり仙台以南の、ことに東北本線の輸送力が、現在単線のために非常に少いということ、それが第三でございます。これらの原因によりまして、東北地方が現在非常に輸送難になっております。貨車の面につきましては、先ほど申しました通り、ここ数日来少し東北方面貨車を回しておりますが、それではとてもまだ先ほどの御要請に応ずるわけにはいかないような数であります。
  61. 正木清

    正木委員 それから地方的な問題に入ってきますが、北海道の輸送と関連して、青函輸送の問題でございます。青函輸送は、どの程度まで輸送力を増強するゆとりがあるのか、この点をやはり明確にしてもらいたい。
  62. 磯崎叡

    ○磯崎説明員 現在青函連絡船は、現有能力をもっていたしましては、十八運航と申しまして、十八の貨車を載せる船の輸送力でございますが、これによりますと、約六百二十車、正確には六百十八車の航送能力がございます。能力といたしましては、六百十八車でございます。
  63. 正木清

    正木委員 そこで運輸省に、けさほどお配りになったこの緊急輸送対策の中での具体案でお尋ねしておきたいと思いますが、大別いたしまして、この対策は自動車と船に転移するということに尽きると思うのでありますが、何らかの緊急立法の処置を講じないで、行政処置で、たとえば自動車会社、たとえば船会社に対して、半強制的という言葉が妥当であるかどうかはわかりませんが、運輸省の命令によって適時に船を配船するというようなことが一体できるのかどうか、この点を明瞭にしておいてもらいたいと思います。
  64. 伊能繁次郎

    ○伊能説明員 ただいまの正木先生の御質問については、私どもとしては海上運送法で法規の上では配船命令が可能であるようになっておりますが、現在の実際問題として荷物の性質上——また自動車の点も御指摘になりましたが、基本的に現在の国鉄輸送を緩和する程度にまで海上並びにトラックによって転移することができるかどうかということは、ほとんど困難な状態にありますので、現在われわれとしてはそれまでは考えておらない状況であります。
  65. 正木清

    正木委員 今政務次官が当委員会で明確にいたしましたように、実は私もさように考えております。ですから運輸省が行政処置としてどのような方法を講じようとも、今国鉄が引き受けておるこの膨大なる滞貨を貨物自動車によることと、それから近海輸送によってこの滞貨を処理するということは、実際問題としては不可能に近いことだ。はっきり申し上げるとそれは不可能だ、こう言い切ることができるのではないか。そういうことになってくると、この緊急対策というものは実際は対策にはならないで、かような処置をとりましたという単なる経過処置の報告にしかならないのだ、こういうように申し上げてもこれは失言ではないというように考えるのです。そうすると結論から申し上げますれば、では現在この最高の四十五万トン限界点として百六十万トンからのこの滞貨の処置というものは、国全体の経済にどのような悪い結果になろうとも、われわれ国民一人々々の国民経済の上にどのような大きな悪影響の結果になって現われようとも、今の段階ではどうにも手のつけようがないのだという結論に尽きてしまうのではないか。では一体どうしたらいいのだ、どうすればいいのだ、こういう問題に落ちついてくると思います。そうすると現実の問題としては、それはきょうあすには間に合わないとしても、やはり国鉄のこの五カ年計画というものを着実に実行しながら、これらの諸問題を一つ一つ解決つけていくことが、遠い通り道のようではあるけれども、やはり一番大切なことだ、こういうように私自身は結論をつけざるを得なくなってくるわけです。では一体本年度に開かれるであろう臨時国会において補正予算を組む必要があるのかないのか、来年度の通常国会において来年度の国鉄の予算の組み方において、ほんとうに真剣にこの五カ年計画というものの解決をはかる必要があるのかないのか、こういう問題になってくると、これはもちろん国鉄当局ではなくて、政府であるところの運輸省として真剣になって考えなければならない現実の段階にきておるわけではないか、政務次官、こういうように実は私は考えます。そこで政務次官としての運輸当局の御所信をこの際はっきりとお聞かせおきを願いたい。
  66. 伊能繁次郎

    ○伊能説明員 正木さんの御指摘になりました点につきましては、基本的には当面の輸送逼迫に対して、海と自動車をもってしては解決することがほとんど困難だと申し上げました。それについてさしあたりの注射的な問題としては、百六十万トン余りの滞貨に対して、海並びに自動車をもって七万数千トンのものを処理する。御指摘のようにこれだけではとうてい当面の問題の解決にはならぬわけでありますので、国有鉄道自身としてもまた私どもとしても、本年度の問題として予算措置を伴うもの並びに予算措置を伴わないでもやり得るものについての増強対策、これにつきましては、さいぜん御指摘のありましたヤードの増強の問題あるいは線路増設の問題というような、長時日を要するものについてはさておきまして、さしあたり貨車の問題を少しでも緩和して能率を上げるためには、貨車の緊急増備をしなければいかぬという点について、予算措置を伴う問題については目下政府部内でも協議中でございますし、国鉄においてもその準備をさせておるような次第でございます。この点については鶏と卵の議論が出ますように、貨車を作りますにも鋼材が直ちに大きな隘路になるということで、緊急に貨車を増備するについても、政府部内で鉄の手当を明確にしてもらわなければならぬというような問題もございます。本年度の補正予算措置あるいは来年度としても、これらの問題については後刻いずれ御審議を願うことと存じますが、運賃値上げの問題あるいは電化、その他借金によって施設をすれば収益も伴い、また利息も払える等の問題については、財政資金によってでき得る限りの資金措置も講じてもらうということで、すでに本年度から政府としてもでき得る限りのことをしたいと目下準備中であり、協議中であります。
  67. 小山亮

    ○小山(亮)委員 関連して。今の次官の正木君に対する御答弁の中に、現在の非常な滞貨に対して、陸上輸送貨物を海上によって転送することは全然不可能である、見込みがないとおっしゃいましたが、調整部長もおられますから調整部長に御答弁を願いたいのですが、非常対策に関してそういう処置をすることは不可能ですか、それを伺いたい。
  68. 伊能繁次郎

    ○伊能説明員 私は全然不可能ということを申し上げたことはございません。当面の問題としては困難だ、しかし現に七万数千トンのものをさしあたりの措置としてはやっております。しかしながら百数十万トンの今後また増大すべきものについて、海と陸と、また陸についても自動車と鉄道とでこの問題の解決ができるという言明は私にはいたしかねる。従いましてあくまでも国鉄輸送力の増強については基本的にやっていかなければいけないということを申し上げたのであります。
  69. 小山亮

    ○小山(亮)委員 それでは不可能であるが、何かやろうという御計画はあるのですか。私に言わせますと、木材だとかあるいは鉱石であるとか石炭であるとか、あるいはただいまの岩手県の陳情にありました木炭であるとか、こういうものは船の輸送で簡単にできるのですが、そういうことに対しては御計画があるのですか。全然計画がないのですか。
  70. 伊能繁次郎

    ○伊能説明員 ただいまも申し上げましたが、すでに七万数千トンもやっております。
  71. 小山亮

    ○小山(亮)委員 それ以上はだめですか。
  72. 伊能繁次郎

    ○伊能説明員 それ以上のことは不可能だということは申し上げてはおりません。これによって輸送の現在の逼迫が解決できるということを申し上げることは私にはできない。今後ともやりますということは申し上げておる。
  73. 楯兼次郎

    ○楯委員 関連して。今あります滞貨は、陸海で共同して輸送しても困難である、それは大体私も想像がつきますが、いわゆる内航船の復活が非常におくれておる。そのおくれておる原因は私はいろいろあると思いますが、一番根本的な問題はやはり運賃問題だろうと私は思う。従って運賃が大体見合っていけば、この内航船の復活というものは非常に早くなってくると思いますが、そういう点はどうですか。実際内航船の復活がおくれておる今日の状況に立ち至ったのは、輸送賃の陸上との不均衡が原因である、こういうふうに考えておるのでありますが、この点どうですか。
  74. 伊能繁次郎

    ○伊能説明員 御指摘通りその点は大きな原因一つであります。
  75. 楯兼次郎

    ○楯委員 それで今国内輸送対策というものを出されました。各委員がこれは何にもならぬじゃないか、大して効果がないじゃないかと言っておるのは、大体そこをついておるのだろうと思う。運輸省が余力があるかないかは知りませんけれども、もし内航船に余力があるとしても、運輸省の行政措置で鉄道貨物の転換ということは困難であろう、われわれはこういう憶測に立っておるわけです。その困難であるというのは、運輸省が命令しても、陸上が安くて船の運賃が高いというのではこれは送れない、こういうことが私は原因だろうと思う。そうだとすれば、この国内輸送対策の中で何とかその間の調整をとらなければ、これは画餅に帰すると思うのですが、この点についてどういう対策を持っておられるのですか。
  76. 伊能繁次郎

    ○伊能説明員 運賃の問題については御指摘通りでありますが、国鉄運賃の問題は皆さんの御審議をこれから得ようと思っております。その他の問題については御指摘の点もございますが、御承知のように従来の輸送の慣行によりまして、陸に乗っておったものを簡単に海に移すことはむずかしい。個々の品目によって、御承知のように鉱石であるとかあるいは木炭についても、数千トンの木炭を一ぺんに輸送するということは言葉の上ではできましても、個々の鉄道輸送取引単位というものはきわめて小さいのであります。木材についても昔は大きな単位で取引をされておったのでありますが、最近においては必ずしもそうでない。個々の送り主と受け主との関係もありりまして、単に運賃だけでいけないということだけではないのでありまして、それらのものも見合ったものをとりあえず運輸省として行政勧奨によって七万数千トンやらせておる。将来の問題としては、さいぜん御質問のありました三千トン級の中型の船、しかもそれは主として沿岸航路をやるという形で逐次でき上って参りますれば、この問題についての解決の大きな端緒になると思いますが、現在のさしあたりの緊急対策としては、大きなものを期待しがたいということが私ども考えであります。
  77. 楯兼次郎

    ○楯委員 それは私も商取引の慣習その他の面もあると思います。あると思いますが、緊急の問題を含めて将来を考えれば、やはり陸上の運賃との調整ということが問題になる。それから今陸上の滞貨を内航船に転換をするためには、運賃の相違に対して政府が何らかの考慮を払わなければ、これは幾ら具体策を作っても輸送できない、こういうことを言っておるのです。今あなたのおっしゃいましたそういう原因もあるでしょう。あるでしょうが、とにかく内航船に転換をするというだけでは、フルにこの内航船というものは使用できないということを言っておるわけです。だから陸上を行けば運賃が安い、船に積めば高い、そんなものを商人として使うはずがございません。そういう点は政府として何らか対策考えたことがあるかどうか、緊急の輸送逼迫を打開するために対策があるか、こういうことを聞いておるわけです。
  78. 伊能繁次郎

    ○伊能説明員 内航船について御指摘の点は、運賃の助成補助の点だろうと思いますが、現在のところではさしあたり運輸省としては考えておりません。
  79. 正木清

    正木委員 私はさらに数多くの質問国鉄並びに運輸当局にしたいと思ったのでございまするが、いろいろ考えてみますと、私のきょう与えられた時間のワクの中では問題がはっきりしないと思います。そこでこの機会に委員長並びに同僚委員の各位に心から私お願いしたいと思いますことは、貨物のこの増加に伴って当面の緊急対策をいかにすべきか。さらに恒久対策をいかにすべきか、こういう問題の本質論に触れて参りますと、ちょっと数時間で問題が解決つくとか、明確になるとかということは非常に困難だと思います。そこで幸いに当委員会委員長の御配慮のよろしきを得まして、与野党とも一体になってこの困難な問題に取り組んでおるのが当委員会の姿でございますので、でき得るならば、臨時議会の開かれる前に、さしあたっての緊急の問題を幾分でも解決するためにはどうあるべきかというようなこと、さらに通常国会を通じて、根本的な問題を解決するためにはどうあるべきかというようなことを、今からこの休会中に、政府国鉄もわれわれ委員会も一体となって、建設的なものを作り上げて、運動すべきものは運動するという処置をとらないと、議論だけが多くて、具体的な解決は一歩も前に進まない、こういう結果になっては大へんなことになるのではないか。従って私は、いろいろの事情は各委員諸君にも委員長にもあろうかとは思いまするが、でき得る限り時間をさいていだだいて、委員会を開いていただいて、議会側としても十分に具体案を作って、これらの難問題の解決のために貢献をしたい、こういうように考えますので、ぜひとも委員長、各委員はこの点を了とせられて、でき得る限り委員会が開かれるように御配慮を願いたい、以上申し上げて私の質問を本日は打ち切ります。
  80. 松山義雄

    松山委員長 では暫時休憩いたします。午後二時から開会いたします。    午後一時十四分休憩      ————◇—————   〔休憩後は開会に至らなかった〕