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1956-10-20 第24回国会 衆議院 運輸委員会 第37号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和三十一年十月二十日(土曜日)    午前十時四十二分開議  出席委員    委員長 松山 義雄君    理事 今松 治郎君 理事 臼井 莊一君    理事 木村 俊夫君 理事 畠山 鶴吉君    理事 山本 友一君 理事 青野 武一君    理事 中居英太郎君       有田 喜一君    池田 清志君       加藤 精三君    佐伯 宗義君       關谷 勝利君    田村  元君       堀内 一雄君    松田 鐵藏君       井岡 大治君    池田 禎治君       楯 兼次郎君    正木  清君       松岡 駒吉君    山口丈太郎君       小山  亮君  出席国務大臣         運 輸 大 臣 吉野 信次君  委員外出席者         運輸政務次官  伊能繁次郎君         運輸事務官         (鉄道監督局         長)      權田 良彦君         高等海難審判庁         長官      長屋 千棟君         日本国有鉄道総         裁       十河 信二君         日本国有鉄道常         務理事     吾孫子 豊君         日本国有鉄道常         務理事     石井 昭正君         日本国有鉄道参         事         (総裁室法務課         長)      鵜澤 勝義君         日本国有鉄道参         与         (運転局長)  竹内 外茂君         専  門  員 志鎌 一之君     ————————————— 六月三日  委員中島巖辞任につき、その補欠として西尾  末廣君が議長指名委員に選任された。 七月十六日  委員池田禎治辞任につき、その補欠として河  野正君が議長指名委員に選任された。 同日  委員河野正辞任につき、その補欠として池田  禎治君が議長指名委員に選任された。 八月二十四日  委員松田鐵藏辞任につき、その補欠として加  藤常太郎君が議長指名委員に選任された。 同日  委員加藤常太郎辞任につき、その補欠として  松田鐵藏君が議長指名委員に選任された。 九月十九日  委員生田宏一辞任につき、その補欠として仲  川房次郎君が議長指名委員に選任された。 同月二十日  委員仲川房次郎辞任につき、その補欠として  生田宏一君が議長指名委員に選任された。 十月十九日  委員山口丈太郎辞任につき、その補欠として  山崎始男君が議長指名委員に選任された。 同日  委員山崎始男辞任につき、その補欠として山  口丈太郎君が議長指名委員に選任された。 十月二十日  委員濱野清吾君、早稻田柳右エ門君及び眞鍋儀  十君辞任につき、その補欠として田村元君、池  田清志君及び加藤精三君が議長指名委員に  選任された。     ————————————— 六月二日  陸運、海運及び空運に関する件  観光に関する件 の閉会中審査を本委員会に付託された。     ————————————— 本日の会議に付した案件  国鉄参宮線列車事故に関する件     —————————————
  2. 松山義雄

    松山委員長 これより会議を開きます。  本日は陸運に関して調査を進めますが、去る十五日参宮線において突発いたしました列車事故に関して、国鉄総裁より実情を聴取いたします。十河国鉄総裁
  3. 十河信二

    十河説明員 今月十五日午後六時二十分、参宮線六軒駅におきまして、とんでもない事故をしでかしました。私は翌朝直ちに飛行機で現場へ参りまして、現場の様子をつぶさに見て参りました。その惨状を見まして、私は何とも申しわけのないことをしたとひたすら涙にくれ、国鉄を代表いたしまして、犠牲者はもちろんのこと、国民一般に対して深くおわびを申し上げておる次第であります。  事の起りは、参宮線にお客様が非常に多くなりまして、ダイヤ通り運転をすることができなく、約十一分ばかりおくれました。本来ならば松阪の駅で上り下り列車が行き違いをすべきところでありました。それを六軒の駅で行き違いをするということに運行状態を変更いたしました。どういう間違いか、六軒駅の安全線に待避しておるべきはずの下り列車が、安全線を突破いたしまして脱線転覆をし、一両の客車本線の上に横になっておったところへ、上り列車が入って参りまして、客車の上に乗り上げたというふうなひどい状態に相なったのであります。お客さんが非常に多いために機関車を二両連結いたしておりましたので、その被害はさらに大きくなって参ったという状態であります。事件原因の詳細は、関係者警察検事局等へ留置されておりまして、親しくそれらの人に会って話を聞くわけに参りません。正確なことがわかりかねますけれども、何といたしましても、これは国鉄の間違いであるということは言わなければならぬ。当然であります。私はどんなことをしても犠牲になられた方々に対しておわびはできませんが、でき得る限りの精神的、物質的の償いをいたしまして、せめてものおわびにかえたいと考えております。また事件善後措置、今後こういう事件を繰り返さないということにつきましては、直ちに本社におきまして対策委員会を設けまして、目下鋭意検討をいたしております。でき得ることから着々実行をいたして、一日も早く安全輸送の確立を期したいと考えております。  また法律上の責任、刑事上の問題は、それぞれ当局でお調べになっております。行政上の責任問題につきましては、事の重大なるにかんがみまして、私は主として監査委員会を中心に総裁以下の責任を究明してもらいたい、こう考えております。この点はまだ十分相談しておりませんが、至急にそういう委員会を設けまして、皆さんにお願いして取調べをいたして、適当な処置を講じたいと存じます。  何にいたしましても、全責任が私にあることは申すまでもないのであります。私は深くその責任を自覚いたしております。なすべきことを十分にいたしたい、適当の方法を講じたい、こう考えております。何とおわびを申し上げましても済むことでないのでありますが、今日となりましては、そういう善後処置を講じて、ひたすらに国民おわびを申し上げるほかないということをはなはだ遺憾に存じます。  以上をもって簡単でありますが一応私のごあいさつ、おわび、御説明にいたしたいと存じます。
  4. 松山義雄

    松山委員長 これより質疑を許します。臼井莊一君
  5. 臼井莊一

    臼井委員 私は質疑に先だちまして、今回の惨事犠牲となられた多くの方々に対しまして、心から敬弔の誠を捧げる次第であります。  さて数年前横浜の桜木町事件、さらに一昨年の洞爺丸、さらに紫雲丸、これらの事件に続きまして先ごろ九月末には、関西線での土砂くずれによって客車が一両川に落ちて多数の犠牲者が出た事件、引き続いて今回の大事件が起りましたことは、まことに遺憾千万でございまして、ことに今回の事件は、完全な国鉄責任であることはほぼ明瞭であると存ずるのであります。従って国鉄に対する一般国民の不安と不信、従って非難ごうごうたるものがあると言っても過言ではないのであります。ただ、ただいま十河総裁からもまことに遺憾であり、責任を非常に痛感するというお言葉がありましたが、事件が起ってからの直後の事後処置等につきましては、本委員会から現場調査に出向きました志鎌専門員お話報告等を伺いましても、国鉄をあげて、総裁が先頭に立ってできるだけの事後処置の万全を尽した、こういうように承わっておりまするし、また新聞等を拝見しても、これらに対する非難をあまり聞き及んでいないことは、これはまことに当然ではありまするけれども、せめてもの幸いであったというふうに私たちは考えるのであります。しかしながら何といっても、楽しく待ちに待っていた修学旅行に出向いたいたいけな高等学校の生徒に非常に多数の犠牲者が出たということは、御本人に対してまことに言葉に尽し得ないようなお気の毒を感ずるとともに、親御さんあるいは御親戚、御家族、これらの方の気持を察しますると、胸の詰まる思いがするのであります。これらの御遺族の方に対しては、国鉄として当然できるだけの弔慰の方法を講ずるということはもとよりでありまするが、なおできるだけこれを手厚くまた迅速にお願いしたいということを特に最初に申し上げる次第であります。  さらに国鉄におかれては、経営責任立場にあられる首脳部の方はもとより、労働組合方々におかれても、総力をあげてこの原因を究明し、再びこういうことの起らぬように万全の努力をいたすべきものであると信ずるのでありまして、これは私は国民の叫びであると申しても差しつかえないと思うのであります。よりまして私はこの趣旨のもとに、原因等につきましてもできるだけ詳しく御答弁願いたいと思うのであります。ただ総裁のお言葉によると、直接当の責任者である機関士の方が警察に留置されておられるために、まだその原因等についても確かめ得ざるところがある、こういうお話でございますが、しかしできるだけ明瞭に御承知範囲内において御解明願いたいということを申し上げるのであります。  そこで第一の問題は、今回の惨事の直接の責任所在がどこにあるか、こういう問題でありますが、運転規則が完全に守られていたかどうかということをまず第一にお伺いしたいと思うのであります。これらにつきましては、第一に常識的に考えられることは、また新聞等によりましても、一体信号無視があったかないか、こういう問題だと思うのであります。この点について当局において御調査の点をまず第一点としてお伺いしたいと思います。
  6. 石井昭正

    石井説明員 お答えいたします。最初脱線をいたしました二四三下り列車でございまするが、この列車運転機関士信号を無視したかどうか、これは先ほどの総裁お話にもありましたように、私どもは断定するためにはただいま関係者が留置せられておりまするので、つまびらかにいたしませんが、諸般の状況その他から判断いたしますと、まずそう断定せざるを得ないというふうに考えております。
  7. 臼井莊一

    臼井委員 そうすると一応信号無視があったと断定せざるを得ない、こういうことになりまするが、しかしその信号無視をしたというさらにその根本の原因をやはりわれわれとしては探ってみなければならぬと思うのです。もちろん機関士は多数の乗客の生命を預かって、そして汽車を走らすのでありますからして、その責任の重大なことは平素から十分御承知のはずである。しかるにこういう事故を起したということでありまするから、一体信号無視をどういうわけで起したかということ、これらについてはもとより留置されておられる機関士自身について調べなければならぬのでありまするけれども、しかしこれはいろいろその原因がわれわれに考えられると思う。機関車労働組合という組合機関士の方が作られておるようでありますが、これは平素われわれ承知しておる範囲におきましては、きわめてまじめに組合の運営もされていて、そしていろいろのことを研究されているようには聞いておるのでありますが、しかもこういう事故を起すということは、一体機関士が過労であったとか、あるいは休養不足であったとか、あるいはまたかりに休養の時間があっても、本人が遊びか何かにふけって、その休養の時間を十分休養しなかったというようなことも、これはないとは言えないのであります。現に大阪におきまして、この七月ですか、私鉄がこういう事故を起した、そして一名死亡したというようなことを聞いておりますが、これらも夜釣か何かに行っていたために睡眠不足であったというようなことが何かに出ておったのでありますが、そういうような問題とか、あるいはまた家庭事情心配ごとがあったとか、病人の看護をしたとか、いろいろのこういう事情があろうかと思うのでありますが、これらについて直接の監督責任に当る方が、そういういろいろのこまかいことまで平素から注意しておられるかどうか、こういうことについてどういう御指導をされているか、その点を一つお伺いしたいと思います。
  8. 石井昭正

    石井説明員 お答え申し上げます。乗務員にとりまして休養が一番大切なことであることは、お言葉通りでございます。この点について乗務員を頂かっております機関区長並びに助役その他の幹部は、常に休養の適正を期するためにいろいろ具体的に注意を払って、万全を期しておるのであります。たとえば、はなはだ申しにくいことでございまするが、鉄道職員家庭は農業を相ともに営んでおるというような事例も相当ございますが、そういう家庭におきましては、農繁期の際にはともすれば人手不足のために休養時間を作業にさくという心配もございます。そういうときには個々の家庭に出向いて、こういう列車に乗るときには十分休養させてもらいたいということまでいろいろ手を尽しておって、万全を期しておるというふうな事例も聞いております。私どもといたしましては、どこの機関区の幹部といたしましても、一番意を尽しておるのはただいま御指摘の点、かように考えておる次第であります。
  9. 臼井莊一

    臼井委員 もう一つお伺いしたいのは訓練の点でありますが、そういう快速列車等に乗られる機関士の方は、多年の経験を経ている方だと思うのですが、これは特にそういう快速列車とか急行列車とか、貨物から乗客と、こういうようなものについては何か規定でもありまして、経験等を当然考慮してやられるものと思うのでありますが、そういうことをやっておりまするかどうか。また一応そういう経験があっても、スピードの非常にアップされておる今日でありまするから、ときどき集めて訓練をするとか、そういうようなことがありまするかどうか。ことに私ども感ずるのは、機関車に同乗してみますると、信号等を指さしまでして、どこそこ信号よろしいとか、こういうようなことを声を発してやっておるのです。これは列車の映画などにも機関車の中など写っていまして、そういうことをやっておりまするが、これも果して常に励行しているかどうか。そういうことを励行しているとすれば、おそらく信号無視というようなことがあるとは考えられないのですが、訓練とあわせて、こういうことを今までもどの列車も励行させるようにしておるのかどうか。その点を一つお伺いしたいと思います。
  10. 石井昭正

    石井説明員 お答え申し上げます。優秀な列車に優秀な乗務員を充てるということは、鉄道が、現場におきまして、機関区長機関車乗務員をきめる際におきまして、第一番の原則でございます。この当該亀山機関区におきましても、いわゆる快速列車に乗務する組に対しましては、甲組と称しまして、経験も多くまた技量優秀な者を選んで乗せてはおったのでございます。それから平素訓練ということにつきましては、これはいろいろの問題もございまして、今日ではこれを規定化してやっておるという段階にはなっていないと思いまするが、各職場々々で事故防止を貫徹するために、いろいろ時間を繰り合せてやっていることは聞いております。それから信号喚呼応答とわれわれ申しておりますが、声を出して信号を確認する行為、これを励行させるように努めておりますが、必ず全部これをやっておるかどうかということになりますと、これを監査するための上級の者が乗り込むというような場合には必ずやっておるわけでございますが、それを離れましたときにおいて実際にやっておるかどうかという点につきましては、これはもう間違いなくやっておるということを、私ども完全にと申し上げ切れないのでありますけれども、私どもはふだんのしつけの通り全部やっていてくれてるものと期待し、信じている次第でございます。
  11. 田村元

    田村委員 御質問申し上げますが、今の日ごろの訓練の問題であります。私はあの事故の起りました松阪市の住人でございますが、たまたまそのとき松阪市におりましてつぶさに事情をながめ、また哀悼の誠をいたして参ったのでありますが、実に悲惨なものであります。そこで実は私、十七日に国有鉄道機関車労働組合が出しました声明書、これを読んでみますというと、「今回の事故については、目下関係方面で、その原因所在調査中であるが、国鉄当局は、いまだその原因も明確にされない現段階において、事故責任がすべて当該機関車乗務員にあるかの如く言明をしているが、われわれは此の際事故防止の見地から、その所信を明らかにして国民各位の理解を得たいと思うものである。」こういう一文がございます。もちろんわれわれはこの声明意味を、いつでも事故が起るというと現場労働者にのみ責任を転嫁してけしからぬじゃないかというふうにこれをとれば、これは非常におかしなわけでありまして、当然責任労働組合にもあるわけでありますから、これはまことに当を得ないことだと思うのでありますけれども、しかしながらその次になりますというと、今日まで数回にわたって労使双方立場を超越した事故防止対策委員会を設置するよう申し入れておったということが書かれております。そこで調べてみますと、昨年、三十年九月十三日に国鉄側労働組合から申し入れをして、そうしてこの事故防止対策委員会設置を要望いたしておるのでありますが、どういうわけかそれが立ち消えになっておった。そうして今日あわててこの大事故のあとに事故防止対策委員会お作りになった。この点で実は国鉄労働組合側申し入れの中に、諸競技、諸審査並びに運転考査廃止について申し入れ行い云々ということがあって、いわば日常の訓練といわれるものを廃止する、その一つの代替のような感じがするのであります。しかもこの事故防止対策委員会が設置されないでずっと今日に至っておりながら、なおこの諸競技、諸審査並びに運転考査の問題についても何らなされないで、いわばうやむやに済まされておったということが言えると思うのでございますが、その点に関しての国鉄側の御見解をお尋ねしたい。
  12. 石井昭正

    石井説明員 ただいま御指摘がございましたように、昨年の九月十三日に機関車労働組合から運転事故防止に対する手続という申し入れがございました。その内容は運転事故防止委員会を設けろということでございますが、お話のようにこの前提には、それまで組合側が強硬に主張しております諸競技審査運転考査、こういう運転訓練その他の最も基本になるべき制度についての廃止申し入れ前提といたしておりますので、これについては私どもは納得できない。そこで競技審査考査等やり方等についていろいろ要望もあるだろうということで、その具体案につきまして数次折衝を重ねてきておりまして、今日ではもう一歩のところまで双方の意見が歩み寄っておるという状態までは参っておったわけでございますが、遺憾ながらそれがまだ完全な妥結に至っておりませんので、はなはだ申しわけないと存じておる次第でございます。
  13. 田村元

    田村委員 昨年の事故防止対策委員会の問題はわかりましたが、今回お作りになられた事故防止対策委員会に対して、経営者のみをもってその構成人員としておられる。これは当然責任連帯性あるいは立場の均等ということからいいましても、労働組合側も入れて、経営協議会のような姿の前提の問題として、いろいろと国鉄輸送の安全ということに対して措置をすべきものだ、かように考えるのでございます。この点、私委員の名簿は持っておりませんが、経営者側のみで発足しておる。これはどうも国民として納得のいかないような感じがいたしますけれども、そういう点に関する国鉄側の御見解一つお尋ねしたい。
  14. 石井昭正

    石井説明員 お説の通り事故防止につきましては経営者側だけの問題でなく、職員と相協力して 一致団結してこの防止に当らなければならないのでございます。その意味におきまして組合参加を願うことには私どももやぶさかではございません。ただ一応私どもといたしましては、経営者だけの範囲におきまして事故防止対策委員会を作りまして、それを基礎にいたしまして組合側に積極的な参加を要望するというつもりでございまして、昨日副総裁機関車労組の方にいろいろお話し合いに出かけたのでございます。ただ組合には組合のお立場がありますから、当局が作ったそういう委員会参加するという形にするか、あるいはまた並行的にただいまお話のありました両者対等立場話し合いをする場を作ってこの問題の推進に当る、その場合におきましてはこの委員会当局側として責任をもってやらなければならない事柄について推進をはかるという考えでやっておるわけでございます。
  15. 十河信二

    十河説明員 今の問題に関連いたしまして、私が現地で機労委員長と会合いたしました際に、委員長と話し合ったことを申し上げた方がよくはないかと思います。私は今回のごとき事件は、これは当局責任だとか、組合乗務員責任だということでなく、国鉄全体として責任感じ、全体として対策を講ずべきものではないか、だからわれわれは組合と一体となってどうすれば安全輸送を確保することができるかということをさっそく協議したい、どうか君の方の組合も一緒になって共同してやってもらいたいということを申し入れました。組合委員長もその通りだということで了承してくれておる次第であります。そのことを帰って副総裁に話しまして、さっそく副総裁から組合の方に話に行ったような次第であります。そのことをつけ加えて申し上げておきます。
  16. 田村元

    田村委員 まことによくわかったのでありますが、ただ今の総裁のお言葉から全体の責任であるということでありましたが、私ども国民から言うならば、経営者側あるいは組合側の特殊の立場あるいは考え方、そういうものは実は関係がないのでありまして、どうしてもやはり人命をたっとび、また輸送安全強化をはかるということは当然のことである。でありますから、私は要望いたしておきたいのでありますが、労使双方の闘争という以前の問題として、この問題はよくお話し合いを願いたい。  それから一つちょっと石井さんにお伺いいたしますが、本年度に入ってからいわゆる天災とか不可抗力ということに関係のない、いわば注意力の希薄ということ、乗務員の不注意ということで起りました事故の概況をちょっとお知らせ願いたいと思います。
  17. 石井昭正

    石井説明員 担当の竹内運転局長が参っておりますから、運転局長からお答えをいたします。
  18. 竹内外茂

    竹内説明員 ただいまの御質問に対して御説明申し上げます。乗務員の不注意によりまして列車脱線事故あるいは車両の脱線事故を起しました今年度に入りましてからのものをお答え申し上げます。  六月十六日の朝の五時九分であります。東北本線の大宮の構内を運転いたしております際に、乗務員注意が欠けまして安全側線に突入いたしまして、先輪働輪二軸脱線いたした事故があります。それから九月二十九日朝五時二十分でありますが、常磐線赤塚駅におきまして七七一列車という列車赤塚駅を通りますときに、精神もうろうといたしましてその駅を通過いたしました。幸い車掌がそれを感知いたしまして非常弁を引きまして、ポイントは割ったのでありますが、ほかに被害はなかった。今年度起りました事故といたしましてはその二件でございます。
  19. 田村元

    田村委員 これは私はどうもおかしいと思うのですが、今の御報告はそれだけというふうに自信を持ってお答えになりましたか。
  20. 竹内外茂

    竹内説明員 お答え申し上げます。ただいまの御質問の御要旨が、乗務員のこの種の不注意によるものということで申されましたので、この二件を申し上げたわけでございます。
  21. 田村元

    田村委員 それでは一月に起りました岐阜−穂積間の列車衝突、これは貨車脱線が四両で破損客車が三両、また破損貨車が四両、負傷旅客が六名、二月に山手線の田端で信号違反、これは被害はなかったのでありますが、同時にまた二月に山陽線の大道−四辻間で列車衝突機関車脱線が一、同破損が一、貨車脱線が七、貨車破損が二十一、職員死亡一、負傷二、八月に東北線の中ノ目で信号違反があったというのは、これは本年のことじゃないのですか。
  22. 竹内外茂

    竹内説明員 ただいま御質問の御要旨は、今年度というお話でございましたので、ただいま御指摘になりました件については、存じておりますけれども、申し上げなかったのであります。お話通りでございます。
  23. 田村元

    田村委員 八月の東北線事故は本年度に入っておりますね。
  24. 竹内外茂

    竹内説明員 はい。
  25. 臼井莊一

    臼井委員 先ほど石井務理事お答えによりましても、訓練、再教育という面と、それから専門語で何と申しましたか、機関士信号を声を出して言う、これはまことに子供らしいようでありますが、私はこれは非常に必要なことじゃないかと思う。たとえば眠くなることを防ぐ方法でもあるし、またほかの者に注意を与える、こういう点においても非常に必要なことだが、これはどうも励行されてない面があるのではないかというふうに不安に思うのでありまして、これらについても一つ指導監督をもう少し徹底していただき、訓練の点においても再教育を願いたいとともに、今田村君の御質問にもございましたが、とかく労働組合といいますと、これはそう端的には言えないかもしれませんが、ベース・アップ、待遇改善ということについては非常に熱心でありますが、職場のみずからの力によって経営をよくしようとか、お互いに励まし合って向上をはかろう、営業面の改善をはかろうというような努力に、どうも欠ける面が一般的にあるように私たちは感ずるのであります。最近はその点はややよくなったと思いますが、しかし機関車労働組合においては、そういう点においては先ほど私も申しましたように、相当自覚をされておるようでありますが、私の解釈しておるようでありますか、あるいはどうであるか、その点について一言、御承知になっておる人からお伺いしたいと思うのであります。
  26. 石井昭正

    石井説明員 お説の通り職員全体、経営者たると労働者たるとを問わず、事故を絶滅するということは、日夜私どもの念頭から去らない点でございまして、終戦直後非常に社会情勢等も不安でございましたときにおいて、そういう点につきましてやや遺憾の点もあったかと思いますが、今日におきましては、労使ともみなその点についての積極的な意欲を持ち続けていることは、間違いのないことと信頼している次第であります。
  27. 臼井莊一

    臼井委員 次に、この事故の具体的なわれわれの疑問とするところについて、少しくお伺いしたいのでありますが、タブレットの受け渡しというものは、これは完全に行われておったのでありますか、どうですか、その点を一つお伺いしたいと思います。
  28. 石井昭正

    石井説明員 タブレットと申しますのは、単線区間におきまして、駅と駅との間に入ります列車が上下ともにたった一本しかあり得ないということを確保するための手段でございます。これは下り二四三列車は、六軒の手前の駅高茶屋と六軒駅間に所定のタブレットを持って六軒駅に入って参りました。六軒駅におきましてそのタブレットを渡して、次の運転区間である六軒松阪間のタブレットを受領するのが成規の手続でございます。本件に関しましては、当該列車六軒から高茶屋−六軒間のタブレットを、六軒駅におきましてタブレット授受機にこれを投げておろしまして、そうして次の駅の松阪との間のタブレットを受け取る、授受機のところへ参りまして、おそらくそこでタブレットのないことには当然気がついたことと思いますが、その後において制動その他の措置をとっても及ばなかったのではないか、これははっきり断定はできませんが、ただいまわれわれの手元にあります調査ではそういうふうに考えられております。
  29. 臼井莊一

    臼井委員 次に今回の事故原因の大きな一つは、上下線の行き違い松阪駅において行うべきものを、十一分下りがおくれていたということで、六軒駅に変えた、ここに第一の事故を起す原因があったと思うのですが、問題は臨時停車の指令のやり方が果してうまく完全に行っていたかどうかという問題だと思うのです。その第一点につきましては、当日下り二四三列車がおくれたということを運転司令が知ったのは、一体いつであったかということをまずお伺いしたいと思う。この運転司令は松阪にいたのだということを聞いておりますが、その点も一つお伺いしたい。
  30. 石井昭正

    石井説明員 実は二四三列車は亀山を十一分おくれて出ております。すでに亀山発のときにおいておくれているということは、管理局の運転司令も承知しておったと思います。これをいつ行き違い変更の手配をしたかという点につきましては、大体私どもが聞いておりますのでは、十八時ちょっと前かその辺ではなかろうかというふうに見ております。それからこの指令を発しましたところは、天王寺管理局の運転司令室から発しているということでございます。
  31. 臼井莊一

    臼井委員 そうすると十八時前後というのは、行き違い六軒駅に変更を決意して、それを指令を発した時刻でございますか。
  32. 石井昭正

    石井説明員 ただいま、六軒駅において運転司令の行き違い変更の電話を受領したのは、十七時五十五分という調査がございます。これによって見ますと、大体行き違い変更の決定をいたしまして、すぐ発したものと思いますから、この直前に決定をいたしたものと考えております。
  33. 臼井莊一

    臼井委員 そうすると十七時五十五分に発したとすると、この下り二四三号列車は津駅を十七時五十七分に発するダイヤになっておりますね。そうするとほぼそのころなんです。しかも一一分おくれたとすると、津駅においてもおそらく十八時八分ごろに出たはずなんです。そうすると津駅あるいはその次の阿漕ですか、その駅のタブレットを渡すときにでも何か連絡の方法をとったのでしょうか、その辺をお伺いしたいと思います。
  34. 石井昭正

    石井説明員 その点は機関車乗務員には行き違い変更をした旨の通告は、どこの駅でも伝達されておりません。
  35. 臼井莊一

    臼井委員 これは非常に大きな問題だと私は思うのです。今言ったように、正確に十七時五十五分に出したとすれば、たとい十八時に各駅に伝達されたとしても、当然津駅を発するときにすでに機関士松阪駅を六軒駅に変えたということを了承していれば、こういう事故もなくて済んだのではないか。どうもその状況を判断すると、タブレットは六軒駅のかけるところにかけていたというところから、当然これは松阪駅において通常通り交換するものである、こういう機関士の先入観がそこにあって、また平素それをやっておりますから、当然それをやるのが当りまえであるということから、ここに大きな問題を起したと思うのです。一体こういう場合において、運転士に伝達する方法平素講ずるのでありまするか、あるいはただ単に信号灯だけにたよるのでありますか、その点を一つお伺いいたします。
  36. 竹内外茂

    竹内説明員 ただいまの御質問お答えいたします。現在われわれが運営をいたしております運転規則の——われわれの方では運転取扱心得と申しておりますが、これは昭和二十三年の八月五日に改正をいたしております。ただいま御指摘の部門につきましても、ちょうど昭和二十三年の八月の五日の改正によって変えておるのでございます。その前の規定によりますると、現在と同じ信号扱いをいたしまして、通告を伴っておったのでございます。それが今日改正をされまして、通告を義務づけてないという規定に取りかえております。その当時の理由を申し上げますと、この通告というものは非常に大事なものでございまして、運転の条件をきめるものでございますから、タブレットその他によって渡す不確定な渡し方をやりますと、あるいはタブレットにつけておるまま落ちてしまう場合もございますので、確実に伝達をする、従って運転通告券というものを規定の用紙に書きまして、それに駅長が判を押しまして機関士に渡すというふうな方法でございます。ところがこの従来の規定をやっておりましたところ——おそらく今度の事故については非常にいい方法であったかもしれぬのでございますが、今度は、乗務員はこの運転通告券というものにたより過ぎまして、信号をおろそかにする傾向が非常に多い。しかもそういった例がこの二十三年の改正までに非常にたくさんございまして、信号をそのために軽く見て無視をするというふうな事態が非常に発生いたしましたので、むしろどんな装置をいたしましょうと、どういうことをやりましょうと、乗務員自身は最後は目でこの信号を見て、列車の運行をやるということが最終目的でございますので、むしろそういう過信を起させるようなやり方をやらぬ方がいいだろうということで、現在の規定の改正をみたわけでございます。
  37. 臼井莊一

    臼井委員 今竹内さんの御説明のような点もあるかもしれませんが、しかしもしこの信号ばかりにたよっていたときに、信号が故障したときには果してどうなるか、こういう問題と、それからたとえば夜間であれば電灯が絶対に消えないということはあり得ないのではないか、たとえばその信号が通過する瞬間に、それが故障のために消えたというような場合におきましては、信号にたよっておればやはりこういうような事故を起すと思います。従ってただ一つ方法だけにこういう列車の運行のような重要な問題をたよるということに、非常な危険性があるのではないかと思う。従ってやはり二重にも三重にも方法を講じておるべきではないかと思うのですが、その点については絶対にその信号の故障などはないのだから、信号にたよっていればよろしいというお考えでありますかどうですか。
  38. 竹内外茂

    竹内説明員 お答え申し上げます。ただいま御指摘になりました信号が消灯したり故障を起したりするおそれはないかという御質問でございますけれども、これは信号の消灯というふうなことはございます。しかしながらそれを設備の上でできるだけ信号の消灯を少くするような方法は講じておりますが、やはり万に一信号の故障というものはございます。ございますが、乗務員はこの信号の建植位置というものを常にわれわれも指導し、乗務員みずからもこれの位置を見ております。かえって今御指摘のような場合に、通告がなくて、通過してもいいというようなことでそれを思い込んでおりますと、よけい信号そのものの消灯ということを気づかずに進入していくこともございますので、われわれとしましては乗務員の指導訓練上、信号の位置、信号の厳守という点については、われわれとしては一生懸命指導しておるわけでございます。また故障の際にも、この信号がほかの故障の場合に安全サイドになりますように、故障があればすぐ赤になるような装置をわれわれは技術的に考究して敷設しております。
  39. 臼井莊一

    臼井委員 しかしその信号にたよっていてこの事故を起したのですが、信号は規定通りちゃんと出ていて、これにはいささかも手違いがなかったということでありましょうか、六軒駅においては……。
  40. 竹内外茂

    竹内説明員 お答えいたします。ただいま私ども関係機関士機関助士が警察並びに検察庁方面に参っておりますので、実際のつまびらかなところはわからないのでございますが、われわれができます範囲警察方々のところに行きまして、事情の聴取などしたものを見ますと、この信号に対しては、乗務員が初めは青であったということを言っておるようでございます。しかしながら反対列車の方の乗務員は、やはり場内通過信号注意であった。それから当時の駅長あるいは転轍、こういったような作業の方から見ましても、大体注意通過信号、つまり出発信号が赤で通過信号がだいだいであったことが大体想像できます。それから機能的な見地から、これも検察当局でお調べを願っておりまして、その責任者であります信号分区長というものを取り調べた結果、信号機能には何ら故障がございませんので、そのあとを調べましても機構上の欠陥というものは見受けられないように思います。
  41. 臼井莊一

    臼井委員 この行き違いを変更したというところに、一番第一の間違いを起した原因があるわけなんですが、何か新聞によりますと、当日は伊勢神宮の臨時大祭で非常に客が込んでいて、二本の臨時列車も出した、そういうふうな原因で十一分おくれたというふうに出ておりましたが、こういう変更をする際に今のように信号ばかりにたよっていて不安のないものであるかどうか。こういうものを発したときに運転司令はいささかも不安なく、安心して絶対大丈夫であるという自信を持っておられたのかどうか。さらにこういうきわどい変更でございますが、こういうことはしばしば各駅でもって行うことがあるのかどうか、その点をお伺いしたいと思います。
  42. 竹内外茂

    竹内説明員 お答えいたします。ただいま行き違い変更の話がございましたが、この列車自体が十一分おくれまして、他の列車がおくれていなかったというわけではございませんので、単線区間でございますから、行き違い行き違いでだんだん順繰りにおくれておったということでございます。それから天王子管理局の——これは局内のその土地の線区の情勢によりましていろいろなやり方をしておりますのですが、十分以上列車がおくれまして片方が定時であったというふうな場合には、これは両方の運転時間が関与した場合でございますが、そういう場合には行き違い変更をするということの、つまり内規と申しますか、指導になっております。今お話のございましたように、こういった行き違いはたまにしかないかというお話でございますが、単線区間では非常に多くやっております。またこの六軒駅につきましては、今記録を持って参りませんのではっきりしたことを申し上げられませんが、数日前にもこの二つの列車と同じ状態で待避をさせております。その前にも八月中ですか、ちょっとはっきりいたしませんが、二回ぐらいあります。
  43. 臼井莊一

    臼井委員 そうすると大体十分以上遅延のあった場合にはこういうこともあり得るということは、あらかじめ乗務員としては常識として考えておるべき問題である、こういう点は言われるかと思うのです。もう一つ今度は上りの二四六列車に対しては、やはり行き違い変更は乗務員には通告してないで、信号だけにたよっていたものでありますかどうですか、その点もお伺いしたいと思います。
  44. 竹内外茂

    竹内説明員 その二四六列車乗務員は、事故直後機関車客車にはさまれまして意識不明でございまして、この点はわれわれ事情を聴取するわけに参りませんので、私どももまだよくわかっておりませんです。
  45. 臼井莊一

    臼井委員 そうすると信号だけにたよっていて、駅では絶対に変更等は時間があっても言うことはなく、ただ信号だけにたよらしておるのでありますか、いかがです。あるいは時間の余裕があればここでこう変ったということを知らせる場合があるのですか、その点はどうなんですか。
  46. 竹内外茂

    竹内説明員 お答えいたします。現在の運転取扱心得の面からはそれを除去しておりますのですが、運転係が先ほど申しましたようにタブレットを持って参ります際に、そういうことを言うこともあるかもしれぬと思います。従いましてその点は規定上はそれを義務づけていないことになっております。
  47. 臼井莊一

    臼井委員 このおくれの取り戻しについては、平素何か特別な注意と指導をしておられるのでありまするか、あるいは自主的に、先ほどのお話ではあまり再訓練もやっておられないようでありまするが、こういう危険な臨時の停車駅の変更とかあるいはおくれの取り戻しについては、どういう方法でスピード・アップしてやるとか、どういう方法でやるのか、その辺の指導についてちょっとお伺いしたいと思うのです。
  48. 竹内外茂

    竹内説明員 お答え申し上げます。回復運転というものは、原則的にはこの回復規程の範囲内あるいは速度の制限の範囲内においてできるだけ回復することは、後の列車を正常化する上にはきわめて大事なことでございますが、これがまたあまりに乗務員の頭にしみ込みますと、今度は回復ということのみに頭をとられまして、実際の安全というものを失う傾向が多いということで、この点従来終戦直後からずっと今日まで、乗務員に対しましては安全の見地というものを強く指令をいたしまして、そういった指導もいたしております。また亀山機関区に対しましてはつぶさに調査しておりませんが、機関区によりましては、こういうおくれのときには、どこで何分取れというような、つまり非常に無理のない取り方の指導をしているところもございます。
  49. 臼井莊一

    臼井委員 私どもどうもはたから拝見しますと、日本の国鉄はダイヤの正確さをもって世界に知られているのでありますが、ところがあまりダイヤのことばかりこだわり過ぎると、とかくこれによって大きな事故も起しがちの場合もあると思うのです。たとえば洞爺丸の場合にも、当時の状況を調査した場合にも、どうも少しダイヤにこだわり過ぎていて、先の列車の連結とか、あるいは直接の原因ではなかったとは言いながら、幹部がそれに乗っていたというようなために、ダイヤについて少し無理をし過ぎる点があるのではないかと思う。特に最近はどうもスピード第一主義になって、とかくスピードばかりあせっていて、ダイヤとスピードのために安全性というものが失われるのではないかと思うのでありまして、この点についても一つ十分に御研究を願いたいと思います。  次に今度の衝突の事故を見ますと、下りの二四三列車が車止めを突破して、そのあとへ瞬間的に二四六上り列車が来て、客車機関車が乗り上げたために犠牲がよけいに出たのでありますが、安全側線が結局安全側線でなくて、不安全側線だというふうにも皮肉に言えば言えるのではないかと思うのですが、安全側線の取り方についてもう少し完全にできていればこういうこともなかったと思うのですが、この安全側線の取り方が多少不完全であったのではないかというふうにも考えられるのですが、この点についてはいかがでございましょう。
  50. 竹内外茂

    竹内説明員 お答えいたします。安全側線が不安全側線ではないかということは、しばしば私どもも聞いております。しかし今回の事故はおそらく安全側線がなかったならば、安全側線へ入るべき列車が反対線路へ入りまして、正面衝突を起す結果になりはしないか、その場合にはより大きな、おそるべき結果が出たのではないかと思います。  それから第二の点は、安全側線が十分な施設でないのではないかというお話でございますが、この点は速度の速さによって安全側線の性格は確かに変って参りますので、あの結果を見たことは、まだ私ども十分とは申し上げられませんが、かなり低速度でありますれば、ブレーキの取扱いとか、そういうもので信号機を見誤ったというようなことでなく、操作の上で間違ったような場合には安全側線によって難を免れた事例もたくさんございます。
  51. 臼井莊一

    臼井委員 安全側線はもちろん安全のためにとったのですから、それがなければ正面衝突することは当然でありますが、ただ私の言うのはそれがやはり完全でないのじゃないか。というのはこの安全側線を、私はしろうとですからわかりませんが、もう少し余裕を長くとるとか、あるいはまた対向線の方に脱線しても乗り上げないような方法において、これは一両乗り上げたために上り列車がこれにぶつかったのですが、これを客車がそちらの方へかりに脱線しても、第一両目がこういう工合にならぬようなふうに考うべきものである、こういうふうに私は考えるのでございます。こういう点についてはひとり六軒駅ばかりの問題ではなくて、方々の駅にこういう無理があるのじゃないか。そうなるとこれを直すにはまた予算がないということになるかもしれませんが、しかし事故を防ぐという意味においては、こういう点について各駅において私は十分今後一つ御検討いただいて、改良すべきものについてはできるだけ改良をする、こういうことにお願いしたいと思うのであります。  なお一つお伺いしますが、この信号灯です。これは遠方信号、通過信号、場内信号とありますが、これは赤、青、だいだいというと、どれとどれがどうなっておったのでしょうか、普通の定速でありますと……。
  52. 竹内外茂

    竹内説明員 お答えいたします。現在事故を起しました状況で申し上げますと、出発信号が赤でございます。ちょうど六時二十二分でございますから、夜間の方式をとっております。昼間ですと腕木が水平に上っておる状態です。それから一番上にあります場内信号機が青信号を出しております。その下の通過信号機、これは出発信号機と電導装置になっておりまして、出発信号機の赤のときには必ず機構的に満足であれば注意信号を出しております。それから遠方信号機は青を出しております。
  53. 臼井莊一

    臼井委員 たとえば六十キロ出していても急ブレーキをかければ——何か五百メートル手前からかけなくちゃいかぬ、こういうようなことも計算をされて、当然こういうふうにやられていると思うのですが、こういう場合に遠方信号ども青でなく、あるいは注意信号に出していればなおこういう事故を防ぐ一つ方法にもなるのじゃないか。ただ遠方信号があまり遠距離にある場合にはそうも言えませんが、場内から遠方信号というものは何メートルくらいにあり、通過信号が構内から何メートルくらいにあるのですか。その点もついでにお伺いしたいと思います。
  54. 竹内外茂

    竹内説明員 お答えいたします。遠方信号機は場内信号機の現示を予告する信号機でございますので、これは地形にもよって変っておりますが、また勾配とか、つまり制動距離に関連してその信号機の建植位置をきめております。従いまして非常制動でなくて常用制動、ふだんの運転をしていく際に安全なような距離をとっております。それから通過信号機に関しましては、これは出発信号機、通過信号機は場内信号機のま下に同じ柱の上に立ててありますので、出発信号機と場内信号機との間隔が、ちょうど出発信号機と通過信号機の間隔になっております。この駅におきましては詳細にわかりかねますが、四百幾らの間隔があると思います。
  55. 臼井莊一

    臼井委員 遠方信号はどのくらいありますか。
  56. 竹内外茂

    竹内説明員 遠方信号は今調べた数字はございません。
  57. 臼井莊一

    臼井委員 本件の事故はひとり乗務員信号無視ということばかりでなく、いろいろの原因がただいまの応答によってもあるのではなかろうかということを私は思うのであります。またその信号無視原因にしてもこれは単純ではない、こう考えるのでありますが、二両連結をしておるときにおいては、全然前の方の機関士にまかせているのですか。二番目の機関士の方もやはり前方を注意するものと思うのですが、そうでありますかどうですか。
  58. 竹内外茂

    竹内説明員 お答えいたします。前方の機関車乗務員というものは、信号注視の義務はもちろんございます。またその補機の機関車についても信号注視の義務はもちろんございます。区別はいたしておりません。
  59. 臼井莊一

    臼井委員 それでは時間のようですが、どうも今の御答弁をあれすると、まだ乗務員の再訓練とか、平素注意を与える問題とか、あるいはダイヤ、配線、それから運転指令を発する命令の仕方とか、いろいろ問題があるように考えるのであります。そこで今の信号だけにたよっているというお考えであると、超短波を利用して駅と機関士との連絡、こういうようなものも必要でないかと考えるのでありますが、あるいはそのほかの自動停止装置でございますか、赤信号を突破したときに自動停止装置が機関車にできるとか、あるいはまた列車内に赤を突破したときの警報が鳴るとか、そういうような施設についてはどういうふうに当局でお考えでありますか、この点を一つお伺いしたいと思います。
  60. 石井昭正

    石井説明員 ただいま御指摘のございましたいろいろな保安装置、ブレーン・ストップであるとか警報装置とか、そういうものにつきましては最近通信工学の発展に伴いまして非常に進歩して参っております。私どもの方でも諸外国の技術等を研究いたしましてこれを取り入れて、一番輸送の張っております幹線等にはすでに実施しておる部分もございます。今回の事故にかんがみましてますますこの方面について施設を完備して参りたい、かように考えております。
  61. 臼井莊一

    臼井委員 私は少しくこまかく御質問を申し上げたのでありますが、これもやはり当初に申し上げたように、この原因をひとり直接の原因である信号無視ということにばかり限定せずして、一つ広い意味で十分御研究をいただいて、そして再びこういうことのないようにぜひしなければならぬ、こういう観点から御質問申し上げたのでありますが、どうぞ一つ当局におかれては一段とこの点について、当初に申し上げたように労組の方と一体となって御研究になり、万全の方法を講ぜられるようお願いいたしまして、私の質問を終ります。
  62. 松山義雄

    松山委員長 田村君。一点だけにして下さい。
  63. 田村元

    田村委員 時間がありませんからまとめて簡単に総裁にお願いをするのでありますが、実は今回の犠牲者に対する賠償問題であります。いつも国鉄側としては事故の起るたびに非常に哀悼の誠はいたされるのでありますけれども、実際に賠償問題になると非常にあと味の悪いものが残るというのが今までの現状であります。そこで今回私は前途有為な坂戸高等学校の生徒、あるいはまたわれわれの地方におきましてもずいぶんたくさんの犠牲者が出たのでありますが、特に高等学校の生徒はきわめて前途有為の青年たちであり、なおかつ昼間定時制という特殊の学校で、いわば勉強いたしておる非常な向学の志を持った人々であります。また一方において地域的に三重県の人々もずいぶんなくなったのでありますが、実は私はとりあえず松阪周辺だけ弔問に回ったのでありますが、ながめてみまして、実際にお参りに伺って、今日の生活に豊かであるような家庭が非常に少い。はっきり申せばあまり裕福でない家庭の人々、しかもその中でその家の生活の中心になっておる人々が、今回の事故犠牲になられたのであります。そういう点で私は特に十河総裁にお願いしたいことは、この犠牲者に対する賠償問題です。幾ら出してもこれは切りのないほど大きな心の痛手ではありますけれども、しかしながら可及的すみやかに、誠意をもって御解決を願うようにお願いを申し上げたい。特にこの問題に関しましては、事故原因がはっきりするまでどうのこうのと言って、今まで洞爺丸事件におきましても非常に長引いたのでありますが、今度の問題に関しては明らかに国鉄全体の責任であることを、総裁もはっきり言っておられるし、また刑事的な取調べも一応のアウト・ラインは早く出るだろうと思いますので、今までのように結論を長引かせないで、もうほんとうに早く御解決を願いたい。それには誠意を持ったいわゆるあたたかみのある御態度で、今日の総裁の声涙ともに下るあのお気持でもって、解決に御努力を願いたいということを特に私からお願い申し上げて、総裁の御意見を拝聴いたしたいと思います。
  64. 十河信二

    十河説明員 私も先般現地で親しく、不幸にあわれた家を弔問いたしまして、全く今お話通り感じて参りました。ただいまの御意見に沿うように極力丁重な弔意をいたしたい、こう考えております。なおできるだけ早く、一日も早くすることが御遺族の方々をよけいお慰めできるゆえんじゃないか、こう考えましてそういうふうに取り計らいたいとただいまいろいろ対策を進めております。御趣旨に沿うようにいたしたいと存じております。
  65. 松山義雄

    松山委員長 青野武一君。
  66. 青野武一

    ○青野委員 去る十五日の午後六時二十二分に、六軒駅で非常に大きな鉄道事故がありましたことは、遭難された人はもとより、遺族の方々に対して私どもは心からお気の毒に存じ、再びこういう事故の起らないために運輸委員会を開いてもらった者の一人であります。顧みれば、臼井委員からもお話がありましたように、おととし洞爺丸事件が起ったが、これも国鉄責任であるとかないとかいって、海難審判所でまだ最終的な判定が出ない状態であります。濃霧のためとはいいながら、やはり向うの汽車の連絡時間の関係で、かなり時間的に無理なプランを組んでおりました紫雲丸事件は、これは単に濃霧のためだけではありませんが、これも御承知のように非常に大量の犠牲者を出しました。近くは三重県の土砂くずれによって、濁流の中に客車が一両墜落して、これまたたっとい人命を失わざるを得なかったのであります。そして今回の十五日の午後六時二十二分に六軒駅構内で、また多数の高校生及び一般の人々の生命を失うようになりましたことは、国鉄のバスとか列車に乗ることは命がけである、危険この上もないといったような国民感情を植えつけては、非常に大きな問題を将来に残さざるを得ないのであります。私どもの考えさせられることは、人事を尽して完璧を期す、人命尊重、旅客の完全なる輸送事業を確立するには、まだ残されておる仕事がないのではない、いろいろな近代設備を取り入れて施設の拡充をせなければならぬ面がたくさんあるのではないか。十河総裁は、これは国鉄全体の責任でありますと、歴代の総裁には珍しい率直な御意見で、私はその点は非常に了といたします。けれども涙ぐんで、泣き声を出して、まことに相済まぬと言っただけでは、将来の問題は断じて解決をいたしません。事故が起ると見舞金だとか、葬祭料だとか、弔慰金だとかいう点でできるだけ努力をいたしますと言っても、私どもは運輸委員でありますが、洞爺丸事件がどうなっておるか、あるいは死亡した家庭の状況によってどの程度の弔慰金が支払われたかというようなことは、紫雲丸の問題でも、三重県の土砂くずれの問題でも、そういうことの何らの報告がございません。また私どもはその報告を必要としてたびたび要求しておりますが、これを受け取ることができないのははなはだ遺憾に存じております。こういう問題からもし今度のように大きな惨事を引き起すということになりますと、全国の単線輸送というものは非常な危険にさらされざるを得ないのです。私どもは九州から出てきておりますが、東京から鹿児島へ行くとき、熊本から先は単線ですが、それでもしこういうような考え方のもとに、施設が十分でない、乗務員が労働条件の過重によって、あるいは睡眠不足あるいは家庭事情等によって非常に心身ともに疲れておるときに、機関車運転をなさるような場合にはどういうことになるか、前途の危険を考えると、国民はおそらく料金まで払って国鉄列車に乗ることを希望しないでしょう。こういう悲惨事の起ったこの機会に、国鉄当局はただ、責任国鉄全体にございます、労組とよく話し合うて将来は善処したいというだけではなく、口の言いわけでなく、具体的に設備をどうする、せめて欧米先進国並みに近代的な設備を取り入れて、少々金は要りますが、輸送の安全を確保いたしましょう、そういう点について何ら具体的な御意見がないのを、私は田村及び臼井委員から御質問がありましたときにここで聞いておって、はなはだ遺憾に思いました。問題が起ってから断わるのならだれでも断われる、都合よく口の先でどうごまかすか、どういうようにうまく言いわけをしてのがれるか、急場をのがれれば人のうわさも七十五日という考え方であってはなりません。きょうの運輸委員会委員は、まじめに非常に厳粛な気持で質問をしておるのですから、当局も、あやまちを犯した乗務員が検察庁に引っぱられており、警察に留置をされておりますから詳しいことはわからないかもしれませんが、わかっておる程度のことをなぜ具体的に御説明いただけないか、総裁の御説明、経過の御報告は月並みであって、単なる運輸委員会に対するごあいさつであったのです。私はこう思う、国鉄責任だ、できるだけのことはいたします、——その精神は私どもは了といたします。これはりっぱだと思うけれども、問題が起ってそういうことを言うだけではだめなんです。起らないようにはどうするかということについて、るるこまかい質問があり、私も同様に考えておりましたが、臼井さんからの御質問がございましたので、重複を避けまして、私はそういう点についての質問を避けたいと思いますが、この上り下りがああいう事故を起すについて、たとえばその列車安全側線の方に少し距離を離していっておれば、線路のまん中に汽車が転覆するようなことはなかったのじゃないか。それから先ほども臼井委員からお話がありましたように、列車が通過したときには、自動的に電気装置で機関車の中に点灯ができるような設備を、外国の先進国は往々にしてやっております。そういうものは一つ当局の方では実行しない。ただ一割五分から二割の運賃を値上げするのだ、こんな事故があっても強行するのだ、こういう態度では私は国鉄の誠意を疑わざるを得ません。事故があって言いわけをする、頭を下げて謝罪をするだけではいけません。日本に単線は相当数あります。こういうことがもし繰り返されるようになれば、国民は安心して列車に乗ることはできません。そういう点で具体的に私どもはこう考えておる。その完璧を期するためには、機関車労働組合あるいは国鉄労働組合とよく打ち合せをして、胸襟を開いてひざを突き合せて、そしてこれを実行したいというならわかります。けれども具体性のない、答弁はただお断わりのお話だけでありまして、私どもは納得するわけにはいきません。  そこで問題になりまする点は、この機関士の諸君らの労働条件でございまするが、私どもの聞いておる範囲では、非常に疲れておるし睡眠不足だというような点も、多少やはり問題の中に入っておるように思いますが、そういう点について国鉄当局側としてはどのような御調査をなされておるかという点と、検察庁に関係者が招致せられて調べられており、大切なところはまだ調査が進行中である、尋問中であるから全然おわかりにならない、わかっておる点はどの程度までわかっておるかということと、それから警察あたりに引っぱられておりまする人たちには簡単に面会ができて、国鉄当局としてはその事情を聴取することがそう困難ではないと私は思いまするが、もう少しつっ込んで具体的なことを私は話が願えるはずだと思いますが、まず第一に一つそういう点の御説明が願いたいと思います。
  67. 石井昭正

    石井説明員 お答え申し上げます。ただいま御質問のございました二四三列車の先頭の機関車乗務員は、前日の十月十四日には亀山を九時五十九分に出まして、二六一列車に乗って奈良に参りまして、奈良を二十時四十九分に出発いたしまして、亀山に二十二時六分に着いております。前日の夜の十時に亀山に帰着いたしております。そしてその翌日の十五日には、十七時四十一分、すなわち午後五時四十一分に亀山から問題の二四三列車に乗って、予定で参りますと、山田に十八時四十三分に着いてここで宿泊をする、こういう作業ダイヤになっておるわけでございます。  それから事故原因について、警察当局に捕えられておってわからぬということを言っておるというおしかりでございますが、私どもの申し上げ方が大へんまずくて申しわけなかったのでございますが、私どもといたしましては、検察庁に参っておりまするので、私どもからこうだと断定申し上げることは御容赦願いたいということでございます。私どもが今日ただいま申し上げられることは、検察庁等に連絡いたしまして、乗務員の陳述等を、間接でございますが、いろいろ聞かしていただいておる点から見まして、先ほど申し上げましたように二四三列車機関士が全然信号を見なかった、あるいは誤認した、そのいずれかに違いない、かように考えておる次第でございます。
  68. 青野武一

    ○青野委員 国鉄総裁にも御答弁を願いたいと思いますが、今のような国鉄の規則で、今までのようなやり方で、こういう事故を将来防げるとお考えになっておるか、将来はこうもしたい、あるいは施設を具体的にこうも改善したいといったような考え方が国鉄総裁におありになれば、一つこの機会に御説明願いたいと思います。
  69. 十河信二

    十河説明員 私はこういうあやまちをしでかして、多数のたっとい人命を失い、また多くの負傷者がありますから、私は努めてそういうことに対する説明を避けて、恭順の意を表して参ったのであります。お話通り、単線で今日日本が輸送しておるような大量の旅客、貨物を輸送するということは危険千万であります。しかしながら今日の日本の国情としてはいかんともすることができない。われわれはかくのごとき危険をわれわれ人間の注意力、人間の努力によってこれを補うのほかはないというのが、われわれの今日置かれたる国情の現実であります。私はこの現実に直面して、私の部下職員に対して、まことに申しわけない、君たちに気の毒でたまらぬが、日本の国情がこういう国情であるから、しばらくがまんをしてもらいたいということを常に頼んでおります。今後こういう事故を絶滅したいということは、私の心からの念願であります。このためには、今御指摘になりましたように、単線を複線にするということをぜひやりたい、これは年々大蔵省に向って、また国会に向ってお願いをしておるところであります。しかしながら私どもの念願は必ずしも許されないような日本の国情であります。そういう点から御了察をいただきまして、われわれは極力事故防止に懸命の努力をいたします。そういうことで御了承をいただきたいとお願い申し上げます。
  70. 青野武一

    ○青野委員 決意のほどは先ほどからのごあいさつでよくわかっておりますが、私のお尋ねしたいのは具体的な施設をどうするか、それは口の上でおっしゃることは私も聞いておって非常にお気の毒でもあり、悲壮な感に打たれるのですけれども事故があって多くの人命が失われて、あとに残された遺族の方々が血の出るような苦しい生活に遭遇しなければならぬことを考えると、単線の運行でこういうような事故が起きたことは、これは事実であります。これは現実の問題であります。こういうととがしばしば将来繰り返されては旅客はたまったものではない。そのためにはこうも改善したい、こういう設備も欧米各国のようにおくれながらも取り入れたい。それはなるほど財政的に国家の現状からいってみて、国鉄が十分な予算を獲得することは非常に困難性があるということは、私どもも運輸委員の一人として十分その点はわかっておるつもりでありますが、何を申しましても人命尊重の目的からいきますと、少々事故があったって、三人や五人死んだって仕方がないというようなことをおっしゃる人はおりますまい。けれども結果から見ると、やればやれないことのないようなことでも、とにかく実施していただかない。ただ国鉄全体の責任であるとおっしゃることは、私どもも非常に了といたしますけれども、具体的に国鉄当局がお調べになった点で、どこに理由があったからこれは国鉄全体の責任であるという点が、まだ不明確になっている。先ほどからの質疑応答の中で、私はここでじっとお聞きしておりましたが、大体信号を中心にして列車の運行をやっている。タブレットというものはあまり重きを置いてないというが、それは御質問にありましたように、停電する場合もある。あるいは電灯の故障もある。そういったようなことから考えますと、信号灯だけをたよることは非常に危険なんです。第二、第三の六軒駅問題が将来起るかもわからないという不安と疑念を私どもは持たざるを得ません。こういう点について一番大切なことは、国鉄のバスに乗っても、列車に乗っても、これは大丈夫だ、安心して乗れる、自分の家庭の中で寝ておるような気持で旅行ができる、国鉄列車に関しては絶対に事故はない、生命の安全が保障されておるというように、国鉄国民から非常に信頼を受けなければならないことなんです。これが列車運行の目的でなければなりません。ただ事故があったときに謝罪をするだけで、そして将来こういうことのないように努力をいたします——努力をしてくれることはけっこうですが、それが具体的に何も目に見えて表われてこないのでは、やはり第二、第三、第四のこういう事件が起らざるを得ません。それは洞爺丸事件についてもそうです。紫雲丸事件についてもそうです。あるいはそういう点は天災地変に関係があったのかもわかりませんが、今回の問題は、豪雨によって土砂が崩壊したわけでもない、大きな台風によって列車が転覆したというわけでもありません。人事を尽せばこういう惨害は未然に防げなければならないはずです。こういうような被害列車事故というものは、過去においてもそうざらには起っておりません。一ぺんこういうような大きな列車事故を起した以上は、当局責任として、どうすればこういうことが改善されるか、再びこういうことを繰り返さないためには、どういうことを具体的にせなければならぬかということは、あなた方の頭にすでに専門家としてできておるはずです。それはもちろん予算の伴うことでありましょうけれども、一方においては、加賀山元総裁のごときは、三十七万円ばかりで自分の家を買って、一カ月後には自分の後輩の局長に命じて、そうして家屋と土地の再評価が二百万円、当時の国鉄総裁の邸宅が、自分の買った家よりも二十一坪も大きな邸宅であって、土地でも二百十三坪、一坪が二十万円いたしましょう。そうすると土地だけでも二百坪以上ですから四千万円、自分の買った家はまるきり土地はついていないのです、借地権ですから。そうすると、二百万円ずつに見積りをさせて、するりと交換した。こういうでたらめなやり方が参議院の委員会で問題になり、衆議院でも問題になったが、こういう点でも、金額がこまかいから少々のことはいいわ、ぼろくそに言われれば、都合よく口の先で答弁をしておけばいいわというわけにはいきません。運賃の値上げを二割上げるとか、一割五分上げるとか言っておりますが、上野から省線の下にずっと商店が並んでいる。国鉄幹部、十年も十五年も前にやめた局長あたりがボスになって、はなはだしいのは、一年間百二十万円からの家賃を取っていながら、国鉄に納める金はわずかに十万円だ。何の権利があって百十万円の一年間の不当所得をするのですか。こういう問題が、国鉄の省線の下の商店街に必ずだれかが介入している。直接に貸借しているのはまれです。みな間接だ。こういうものを計算しても一年間に何億、おそらく十億に近いのではないかと私は計算をしておる。神戸の三宮の駅の付近まで、大体日本じゅうの国鉄関係の持っておる土地とか、建物とか、あるいは場所とかを公然と提供しておることが、国民から非難をされておるが、そういう点は一つも改悛の情がない、それを根本的に改革しようという気持が一つもない。これを私はいつも運輸委員会指摘するけれども、そういう点について、非常な決断のもとにこれを解決しようという御努力が今日までなされておりません。おまけに蒸気機関車、電気機関車、車両、ボイラーその他いろいろなものを大きな会社工場に注文するといえば、必ず国鉄の元局長をしておった者が、大きな会社、工場の専務があるとか、常務であるとか、社長であるとかいうところへ持っていって注文する。それで国民がせっかく汽車に乗って黒字が出た。国鉄は相当の収入がある。その収入の中から三千万円で蒸気機関車ができるものだったら、よく計算してごらんなさい、二千万円から千八百万円ぐらいでできないことはない。それを自分たちの縁故をたよって、大きな会社、工場にそういう車両、ボイラー、機関車の付属品であるところのメタルとかシリンダー、そういうものを注文する。そういう点を改めて、運賃を値上げしてくれねばどうしても国鉄経営が成り立ちませんと言うてくるならば、わかる。ルーズな点はみんなとにかくほおかぶりをして、口をつぐんで、見て見ないようにして放任しておいて、そうしてこういうような気の毒な事故が起ると、まことに申しわけがございません、ほんとうにお気の毒でたまりませんという、口の先の見舞だけでは、遺族の諸君はあきらめられまいと思う。新聞記事を見て私も思わず涙ぐんだのですが、気の毒にも夫に早く別れて、小さいときから子供を苦労して育て上げて、来年は坂戸高校を卒業するというどたんばに、一人息子に死なれた母親が、もうものを言う元気もなくて非常に落胆しているという記事を読んで、私は人ごとのように考えない。それは十河さんは国鉄総裁として御丁重なごあいさつから、心の底から気の毒がっておられることはわかりますけれども、それを形の上に私は表わしてもらいたい。どうすれば事故を完全に防止できるか、こういう点を石井さんでもあるいは運転局長でもかまいませんから、はっきりしていただけないと、国民は納得ができないと私は考える。この点を明瞭にしていただきたい。
  71. 石井昭正

    石井説明員 事故というものを防止するために、私ども日夜最大の努力を重ねておるわけでございますが、ただいまいろいろ御指摘のありました点につきまして、私どもも今回の事故をよい反省の材料といたしまして、十分研究をして、その実施案を練りたいと思っております。ただここで即座にそういうことをこういうことでやるということは、ただいま本社の中に専門の対策委員会を設けて検討しておりますので、その結果によって当委員会に御報告申し上げたいと考えておる次第でございます。
  72. 青野武一

    ○青野委員 私はこういうことを一つ御参考になるかどうかわかりませんが、申しますが、一昨年、今防衛庁長官をやっております船田氏あたり五、六名とヨーロッパからアメリカを回りましたときに、ちょうどバッファロの飛行場に着きました。そのときに、かなり年をとっておりますが、遊んではおれないからといって、自分の娘は何かキリスト教の牧師のところに嫁さんに行って、かわいい孫までできておるけれども、私はぼんやりして遊んでいることはきらいだから、流しタクシーの運転手をやっております、こう言って、私が座席にすわると、孫の写真を私に見せましたが、そのときに驚いたことは、東京では一万以上の台数の流しタクシーが走っておりますが、そういう設備のあるのはまれであろうと思いますが、その六十ばかりの、バッファロに住んでおりますアメリカの婦人が、日本の議員の方が五、六名でナイヤガラ爆布の見物においでになるというが、大体当てずっぽうで二十五ドルほど車賃を要求しておきましたが、正確なところは大体何ぼいただいたらいいでしょうか、こういうことを運転手のすわっておるハンドルの前の電話機みたいな無電をひょっと取り上げて、もしもし営業所ですか、こうこうこういうわけですが、幾らの料金にいたしましょうか、と言う。そこで営業所の方からその女の運転手に、二十二ドルか三ドルでよかろう、こういう通知がきておる。車は私どもを乗せて走っておる。そうして自動車の運転台のところですぐに受話器を当てて無電で打ち合せをして、二十二ドルか三ドルお心まかせにいたしましょう、こういう話で正確に私どもに相談があった。そういうようなことで、日本の財力には限度がありまするが、何を申しましても、自動車に乗るのはわずかに五人か、無理をしても六、七名の人命です。数が多いから少いからといって、人間の生命のたっとさに変りはありません。民主主義の基調は、今生まれた赤子も、七十、八十のお年寄りも、生きている限りは人間の生命くらいたっといものはないということが土台になって、民主主義が生まれてきておる。それと同じように、数が少いから多いからというので区別すべきものではないと私は思いまするが、何を申しましても、複線にしろ単線にしろ、列車が十二両も十三両もで、おまけに伊勢にお参りをするという学校の生徒あたりがすし詰めになって、そして親のひざ元から離れて楽しい思い出の旅行をしておる。そうすると十一両はほとんど満員すし詰めの状態になっておる。その人間の数を計算のうちに入れましても、あまり財政が豊かでない、予算がとれないからやむを得ないでは、私は割り切れないものがあると思います。こういう点で多数の客車乗客を詰め込んで運転しておる限りは、あくまでも人命尊重を最高の目的として、安全な国鉄輸送の完璧を期さなければならぬ。そうするには、少々金が要っても人間の生命はたっとい、おまけに国鉄列車に乗ってくれておる旅客の生命は特にたっといのだ。だからけがをさせても、あるいは死亡をさせてもならないから、私どもはこういう予算を要求しておるといえば、法外な要求は別ですが、大体運輸委員会あたりにお持ち出しになりましても、そういう点から御説明があれば私どもは反対する口実がなくなる。大蔵省と話し合って、なかなかうまく予算が獲得せられないからちょっと危いが、まあまあのままでほっておけ。大井川、天龍川、富士川、阿倍川その他五カ年間にこれら七つの鉄橋をかけかえなければならぬということも懸案になっておりますから、汽車賃を上げてもらいたい。まくら木も取りかえなければならぬ。全日本の約一割くらいの鉄道線は、レールとまくら木を取りかえなければなりませんから、運賃の値上げをしていただかぬと金がありません。あるいは五年、五年と十年計画で電化計画を実行していきたいといって二千二、三百億を御要求になっておることも、非常に今御努力をしていただいておりまするが、そういう点でもなるほど金の要ることはわかりますが、金の要ることよりも人間の生命が非常に大切なものであるという立場に立ったら、できる限り設備の改善をなさるべきである。ただ口を開けば夏の手当の問題だ、年末手当の問題だといって、国鉄当局幹部は、機関車労働組合国鉄三十七万の労働組合の諸君を目のかたきのようにして、必ず相当の犠牲者が闘争中には出ていきますが、そういうことでなしに、これらの諸君がまじめに、事故の起らないように寝食を忘れて努力してくれるからこそ、国鉄の運営ができていくのだ、これらの諸君が働いてくれるから国鉄が立っていくのだという立場になって、ひざをつき合せて話し合ったら、私どもは今回のような事故は起らないで済んだのではないかと思います。信号灯の問題、それから国鉄の規則の問題等につきましても、多少意見もありますし質問としておきたいと思いますが、私の方の党といたしましても、次々に関連質問が行われることになっておりますので、私としてあまり長時間を一人でいただいて御質問を申し上げるわけに参りません。そこで私は適当な機会に自分の質問を終りたいと思います。  さっき田村委員もおっしゃいましたが、これは私が本気で言っておるのではありません。事故があったから見舞金を特別によけい出せば、弔慰金を少しよけい出せば、という考え方ではございません。しかしできてから先どう解決するか、どう遺族の人々の物質的、精神的慰安をするかという点については、それは洞爺丸の問題もあるし、紫雲丸の問題もありましょうが、あの濃霧とか台風とかいう問題を含んだこれらの悲惨な事故とは違いまして、これは国鉄全体の責任であると、十河総裁もおっしゃいましたように、この運輸委員会を通じて国民全般に責任所在を明確にされた点は、私は非常に賛成であり、これを了とするものではございますが、今までの先例にこだわらずに、たとえば祭祀料にしても、葬儀の資金にしても、供物料にしても、弔慰金にしても、見舞金にしても、それらを総合したものが、必ずしも過去においていろいろな事故の起ったときの例をとらずに——往々にして国鉄の諸君は一銭でも少く出そうという考えのもとに交渉が行われているように、私は過去においては聞いておりますが、今回の問題については、もうできたことではございますし、まことに遺族の方々にはお気の毒である、犠牲になられた人たちは浮ぶにも浮ばれないような気持でなくなられたとは思いますが、そういう点について国鉄総裁がおっしゃいましたように、私たちもまたできるだけのことを早くして差し上げるように希望せざるを得ません。人間の命は金ではかえられません。自分のいとし子が今度の災害にあうて最後をとげたむざんな姿で死んでいる、その自分の子供の姿を見た遺家族の人々は、金を少々よけいもらったり、口の先で頭を下げて涙ぐんで断わりを言うたぐらいでは、私はおさまらないと思う。何としてもこういうことを将来繰り返さない努力をわれわれはいたします。しかしまことに今回の事件には申しわけがございません。そういう点についてその弔慰方法の基調になるものは、前例にこだわらぬ、前例をたてにとらない——言うなり出せというのではありませんが、そこは国民の納得のいく程度で弔慰方法がすみやかに講ぜらるべきであると私は考えますが、この点については運輸大臣も一つお答えを願いたいと思います。
  73. 十河信二

    十河説明員 御趣旨きわめてごもっともであると存じます。私も先刻から御趣旨の通りにやりたいということを申し上げておるのであります。でき得る限り御趣旨に沿うように努力いたします。
  74. 吉野信次

    ○吉野国務大臣 直接には国鉄総裁のやることでありますが、私も運輸行政を担当いたしておりますものとして、ただいま総裁が言われましたことに対しましてできるだけのお力添えをいたしたい、こう考えております。
  75. 青野武一

    ○青野委員 国鉄総裁と、予算の関係等もありましょうから、運輸大臣のお二人に私は最後に心から御希望を申し上げて、同僚委員の方と質問をかわしていただきたいと思います。それは二、三日前の新聞を見てみますと、ちょうど十五日の午後六時二十二分に六軒駅の構内でこういう大きな惨害が起りました直後でございますが、日本の日にちで申しますと、翌日の十六日の午後二時と、新聞には報ぜられている。ホノルルから、日本人も三名乗っておりましたが、乗務員とともにパン・アメリカン機に三十一名乗っておった。人間は単に三十一名、弔慰金で計算をすると大した金じゃないけれども、パン・アメリカン機はホノルルからサンフランシスコをめがけて立った。ところが四発の発動機のうち一つの発動機がとまって言うことをきかない、回らない。そうこうするうちに、やはりこれも発動機の故障でございましょうが、今度はその発動機のついておるプロペラではなしに別のプロペラが太平洋のまん中で、ホノルルとサンフランシスコの中間で一つうまく動かなくなった。私どもは新聞の記事を見ても、これはもう万事休すと思った。三十一名の乗務員と旅客の中には、日本人が三名、子供が三名とか五名とか乗っておるそうで、合計三十一名、これはもう海底に墜落してことごとく死ぬるのじゃないかと思うて、人ごとではないと私ども心配しておりました。ところが翌日の新聞を見てみると、無電の装置があったにめに、太平洋の警備艦との連絡がついた。急遽アメリカの海軍は航空母艦、警備艦、駆逐艦を動員して、数時間その故障の飛行機を飛ばしながら救助を待っておりますうちに、無電の連絡が完全についたために、直径五百キロ以内にはパン・アメリカン機の僚機はもとより、他の会社の飛行機までが周囲をぐるぐる取りまいて、いつどこの海中に突っ込んできても大丈夫、またたく間にこれを救助できるという態勢を作って無電で連絡をとったために、ぎゅうっと海中に突っ込んできた。新聞の報道によりますると、海の中に六十人乗りの飛行機が突っ込むのですから、私は簡単に、われわれが水泳に行って、二、三間上から飛び込むようなものかと思いましたら、あの太平洋のまん中の海の中というのは、一尺、二尺の厚みの鉄筋コンクリートで張ったような硬度で、非常に張る力があって、どんな優秀な飛行機でも海中にどんと突っ込んだら、鉄筋コンクリートの上にまっさかさまに墜落するのと同じで、まっ二つに割れてしまい、こっぱみじんになる。そういうことで予行演習を二回もやって、海中に突っ込んできたときに、まっ二つにはなったが、わずか六分しかたたぬうちに航空母艦、駆逐艦、両機がいつどこに突っ込んでもすぐ救助できるような態勢を作って、三十一名全員が救助された。おまけに大切な郵便物まで全部救い上げることができたという新聞記事が二、三日前に載っておりましたが、この精神です。三十一名でも何千人でも何万人でも、人の生命くらいたっといものはない。三十一名の人を救うためには航空母艦から駆逐艦と金に糸目はつけずに、直径五百キロのところならどこに飛び込んでも、空海ともに救助態勢ができ上っておるということを、飛行機の中におります人たちが無電の連絡でその放送を聞いたときには、太平洋のまん中に飛行機が突っ込むにしても、われわれは大丈夫だ、いつでも救われるのだ、こういう考えのもとに、何らの動揺もせずにそういう処置が沈着に機長の手によってとられたということが、翌日の新聞に報道せられた。私はここに持ってきておりますが、数が少うても多うても、人間の命は大切なんだ、これを守らなければいかぬ。そのためには厳格な、世界的な時間励行をしておりますダイヤなんかは少々ずれることもありましょう、いろいろな点で不備な点もありましょうが、こういう点を基調にしてものを考えていけば、一日を争って具体的な方策が生まれてくるものと私は期待しておるわけであります。できるだけこの善後処置に対しての特別の委員会を通じて、あるいは労働組合を通じてよく話し合って、専門的知識を集結して、こういう事故が将来に起らないように、あくまでも安全な国鉄輸送が完行せられますように努力していただきたいと同時に、先ほど申し上げました弔慰方法についても、前例にこだわらず適切な方法を講じていただいて、しかもそれがすみやかに実施せられるように、この上ながらの御努力をお願いしたいのであります。これで私の質問を一応終らしていただきます。
  76. 楯兼次郎

    ○楯委員 関連して二、三端的に質問いたしますので、時間もおそいと思いますから端的に御答弁願いたいと思います。  まず第一に、私どもこの事故が起きましてから直感として考えられますのは、この参宮線はいわゆる快速列車等運転するに不適当な施設と安全装置ではないか、そういうことが感ぜられるわけでありますが、こういう点について、今日運転されております快速列車を運行するに適当な線路であるというふうに、国鉄幹部はお考えになっておるかどうかをお伺いしたいと思います。
  77. 竹内外茂

    竹内説明員 お答え申し上げます。安全という見地からしましても、現在の関西線の準急列車につきましては、私ども今御指摘の点につきまして不適当であるとは考えておりません。
  78. 楯兼次郎

    ○楯委員 私が質問いたしましたのは、たとえば線路の有効長がこれらの列車運転するに非常に短かい、また信号等の設備においても、いわゆる主たる幹線に設備されておる条件がない、こういうことを申し上げておるわけです。具体的に私はお伺いをいたしますが、たとえば通過信号機が注意信号になっておった、そこで注意信号を発見いたしました機関士が急遽停車手配をとろうといたしましても、五十キロあるいは六十キロのスピードで運行しておりまする列車を、直ちに出発信号までに停車できるかどうか、この疑念があるわけでありますが、この点についてはどういうふうにお考えになっておりますか。
  79. 竹内外茂

    竹内説明員 通過信号注意であります際に出発までにとまるかどうかという御質問でございます。先ほど人を派しまして調べさしたのでございますが、場内信号すなわち通過信号の施設してありますところと出発信号との問に四百九十六メートルございます。参宮線は御存じと思いますが、昔は列車回数が非常に多い区間でございまして、設備等も現在の単線区間の中では比較的いい方だと考えております。今五十何キロの速度でとまるかというお話でございますが、どの信号機の直下でブレーキをかけましても、私は出発までの間にはとまり得ると思います。また信号機の見通し距離もございますので、大体そういう点はとまり得ると思います。
  80. 松山義雄

    松山委員長 この際木村委員より発言を求められておりますので、これを許します。
  81. 木村俊夫

    ○木村(俊)委員 すでに本日の委員会におきまして質疑及び答弁によりまして、参宮線事故の概要につきましてはほぼ明らかになったと考えるのであります。それで私はこの際各委員の御賛同を得まして、本委員会においてお手元に配りましたような内容の決議を提議いたしたいと思います。この決議案の内容はきわめて簡単ではありますが、その念願といたしますところは、当委員会において再びかかる決議を行うことのないことでございます。次に決議案の内容を朗読いたします。    国鉄参宮線列車事故に関する件       昭和三二、一〇、二〇   今回国鉄参宮線において列車事故を惹起し多数の死傷者を出したことは極めて遺憾である。   諸般の情勢より見て本事故責任国鉄にあることは明らかであり、今後かかる事故の根絶に万全の努力を払うと同時に、当面の問題として国鉄は死傷者に対しすみやかに十分なる弔慰の方途を講ずべきである。  右決議する。  以上の通りであります。
  82. 松山義雄

    松山委員長 ただいまの木村君より提案されました決議案を、本委員会の決議といたすに御異議ございませんか。   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  83. 松山義雄

    松山委員長 御異議がございませんので、さよう決定いたしました。  ただいま決定いたしました決議の取扱いにつきましては、委員長に御一任いただきたいと思いますが、御異議ございませんか。   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  84. 松山義雄

    松山委員長 それではさように取扱います。
  85. 楯兼次郎

    ○楯委員 次にお伺いをいたしたいのは、私はこの事故について防止し得た方法としては、次の二つを考えておるわけであります。それはどういうことかといいますると、先ほど運転規程の改正によって通告制度をやめた、こういうふうにおっしゃっておりまするが、この場合行き違いのための通告券が渡されておったならば、この事故はあるいは防ぎ得たかもわからない、こういう点が一つ。それから通過列車を臨時に停車をさせる場合に、場内信号機を停止にして場内で列車を停止せしめて、行き違い運行の臨時停車を機関士に通告をして停車場内に誘導をする。これが行われておったならば、私は本事故は防ぎ得たと思います。定時運転第一主義のためにこういう手違いが生じたのであると、私は根本的に考えておるわけでありますが、運転局長にお伺いをしたいのは、通告制度というものが運転規程の中から削除されてしまったのか、あるいは、ただし省略をすることができるというような規程になっておるのかどうか、この点をお伺いをいたしたいと思います。それから通過列車を臨時に停車せしめるためには、場内信号機等において停車せしめて、そうして通告をして停車場内に誘導をする、こういうような方法はとられ得ないものかどうか、この二点をお伺いをしたいと思います。なぜ私がこういう質問をいたすかといいますると、この六軒駅の状態では、いわゆる場内信号機は進行信号を現示をいたしております。ところがその下に、従といいまするか、副といいまするか、下位に通過信号機が注意を現示をしておる。当然通告のなかった機関士としては、場内信号機が列車運転に最大の指示をするものであるという頭で運転をいたしておるわけであります。その最も注意すべき場内信号機が進行を現示をいたしておるのでありまするから、通告を受けておらない機関士は、通過して差しつかえなし、そういう心境になるのも、いろいろ理屈はあると思いますけれども、これはいなめないと思います。従って信号絶対主義、そういった運転局長説明もわかるのでありまするけれども、通過信号機と併用されたこの六軒駅のような場合には、別途の方法を考えなくてはいけないのではないか、こういうふうに考えまして今の二点をお伺いをいたすわけです。通告券の運転規程上における価値、それからこうした場合に、場内信号機外で停止をせしめて駅に誘導をする、こういうことが行われ得ないものか。将来これらの取扱いについて国鉄幹部としてはどういうふうに考えておるか、この二点をお伺いをいたします。
  86. 石井昭正

    石井説明員 通過列車を臨時に停車させる場合は、一たん場内信号機のところにとめて、しかる後に誘導をするという方法は、過去においてとったこともある方法だと聞いております。この点は輸送力と関係いたしますが、同時にまた先ほど運転局長の申しました信号第一主義との関係もございます。今回の事故にかんがみまして、対策委員会におきまして、その反省等十分いたしまして、いろいろ検討をいたしたい。御趣旨の点は私どももまことにごもっともと思われる点も多々ございます。もう一ぺん再検討を十分いたしたい、かように考える次第でございます。運転規程の点につきましては、運転局長から申し上げます。
  87. 竹内外茂

    竹内説明員 ただいま前段に申されましたことは、先の質問の中でお答えいたしましたが、今回の事故については通告そのものは非常に効果的であったと思うのでありますが、逆の場合も想像されるので、またそういう経過でこの規定が改正せられ、それから通告につきましては現在は義務づけておりません。それから先ほど通過信号機云々という話がありましたが、あの信号機を直下で見ても、あるいは見通し距離もございますが、この信号が見えないのだ、あるいは見誤まるのだということを前提にして考える信号機というものは、私はないと存じます。従いましてやはり信号をとにかく確認をするということが、一番大事なことだと思います。
  88. 楯兼次郎

    ○楯委員 理屈としては私はそうだろうと思います。今通告券は運転規程の中から削除したものでない、こういうふうにおっしゃいますが、そうすると通告してもよろしい、しなくてもよろしいということであるかどうかという点と、さらにくどいようでありますが、私が強調いたしたいのは、なるほど的確に信号注視が行われておれば、その通りだと思います。ところが信号が二つあって、しかも重要視すべき場内信号機が進行信号を現示しておる。ところが通過列車に対しての指示をする通過信号機は注意信号というものが現示されておる。これは信号機の性質からいきますと、非常に軽いものである。そういう特別の場合においては、何らか別の運転規程を制定する必要があるのじゃないか。私は信号を注視をして信号一本でやっていくという説に賛成です。賛成ですが、この場合は違うのではないか。いわゆる主たる信号機、任務の重い信号機が進行よろしい、軽い信号機が注意。この列車に対しては、軽い信号がその安全度を決定をするという場合には、これは何らか違った方法を考えていかなくてはいけないのじゃないか、こういうことを言っておるのです。私もあまりそういう実態は知りませんからこういうことを言うのかもわかりませんけれども、私どもが考えますと、そういうふうに考えられるわけです。通告券というものは、説明を聞いておりましても、きわめてあいまいでありまして、はっきりしないのでありますが、通告してもよろしい、しなくてもよろしいということなら、しなくてもよろしい、こういうことで全然抹殺をしておいた方が、この信号注視の価値が出てくると思うわけですが、どうなっておるのですか。
  89. 竹内外茂

    竹内説明員 通告券に関しましては現在削除しておりますから、規程上はそれを用いないことにしております。ただここで私申し上げたいのは、およそ運転の規程というものはあいまいで、やってもいい、やらなくてもいいというような、そういう不安定な状態で決しておくべきものじゃない、こういうふうに思っておりますから、やるとなれば、はっきり規程上こういう様式でこうやれということをきめたいと思います。しかし現在はそれをきめておりません。それから先ほど重要な場内信号機というようにおっしゃいましたが、私どもは通過信号機の権威というものも場内信号機と同様に考えておりまして、この両方の信号機は同じ価値で見なければいかぬ、こういうふうに考えます。
  90. 楯兼次郎

    ○楯委員 根本的には国鉄が独算制を強調されるあまり、主要幹線に近代化を採用し、経費をつけ、従ってそれ以下の線路に対しては、近代化がおくれがちである。要員も足りない、こういうことになっておると思います。この点は大英断をもって今年度予算等から改革をしていただかなければならないと思いますが、これは各委員国鉄当局に要望された点でありますので、この程度でやめておきます。  私は過去の経験からいきまして、国鉄幹部に御承知を願いたいと思うことは定時運転の強調であります。これは一面、他の事故を未然に防止するという点からはきわめて重要なことだと思いますが、非常に混雑をしてくる、あるいは他に小さな事故が起きる、またほかの事故が起きる、そういう混乱時になりますと、一番頭にくるのはやはり定時運転、おくれてはいけない、こういうことが、自覚症状といいますか、自覚が薄れて参りますと一番先に頭に浮んで参ります。従って他に注意を欠きながら定時運転確保に努めようとする、これは私経験からいってよく承知をし、自分もこれではいなけい、こう思った点があるわけでありまして、ルーズに列車運転せよ、ダイヤを乱せとは言いませんけれども、あまりに定時運転の強調ということは考えものである、こういうことを痛感いたしておりますので、そういう面も十分考えられまして、今後の対策を考えていただきたい、このように考えまして、関連質問でございますので簡単に終らせていただきます。
  91. 松山義雄

    松山委員長 山口君。
  92. 山口丈太郎

    ○山口(丈)委員 私はこの際運輸大臣、国鉄当局、この両者にお尋ねをいたしたいと思います。  昨日文教委員会におきまして、私はこの事故の性質について、ある程度御質問を申し上げて明らかにしておきました。従って今まで御質問をされた各委員質問と重複するようなことは避けたいと思います。しかしなお私は鉄道に長らく従事しておる者としてこれを専門的に考えますと、これは総裁もおっしゃったように完全な鉄道事故であります。そしてその事故の内容に至りましては、これはいろいろとせんさくをすべき問題があろうと思います。従って国鉄はまず外部に対して、というよりも犠牲者に対して、私はその償いをする場合には、これは今決議をされましたように、すみやかに、そしてこれらの犠牲者の御遺族に対しても納得のいく十分なる補償の責任を果されることが、まず第一でなければならぬと思います。しかし実際の国鉄の今までとられている態度、あるいは運輸省の指導なさっている態度を見ますると、大きな事故で生じました賠償問題につきましては、きわめて長い時日を要しております。二年、三年とたって、そして結果においては一カ月以内に補償する額と同じことであるとすれば、これはせっかく補償しておきながら、その遺族は満足な納得がいくものでない、いわば死に金になるわけであります。もちろん人命を物質だけにとらえていくわけには参らぬのでありますが、物心両面からする遺族に対する補償が、当然最重要のものであろうと思うのであります。その場合に物心両面に両善を尽しますには、いわゆる時期の問題一つがこれを解決する重要な問題である、こういうように考えるわけであります。従ってこの補償は——これだけ明白な事故でありますから、時期的に前轍を踏まないように適宜適切なる措置をすみやかに講ずべきであると思いますが、どういうお考えであるかをまず伺いたい。  第二には私は今まで、今日の議題にはありませんけれども、本日の招集議題にしてほしいと私は申し入れたのでありますが、洞爺丸事件についてであります。これについても今申しますように、もうすでに二年を経過しておる。そうしてこれも私は国鉄のはっきりした責任であると思います。なぜかというと、船が航行しておるときに突風あるいはその他の突然の事故によってあれだけ多数の乗客の生命を失ったというならば、これは私は責任を問いません。しかしそうでなくて、洞爺丸は係留されておったものに乗船をさせたのであります。こういうように係留した船に、しかも台風下において最も危険の状態にあって、しかも岸壁に係留しておる船が天災を受けるおそれがあり、最も危険の状態にある、従って緊急待避の要ありとしてその船を待避せしめたものである。船を緊急待避せしめるものでありますならば、当然それに乗っておる人命財産に対しては、最善安全の緊急対策を講ずることは当然である。しかるにそれを怠っておるということは何といっても国鉄責任である。しかも今日においても何らそれに対しての措置がとられていない、しかも遺族は今日非常な苦境に陥っておる。非常に遺憾千万であります。従って私はこれらの問題の解決を一体どう考えておるのか、今それがどういう状態に置かれておるのか、これをこの際私は御答弁を願っておきたいと考えるわけであります。運輸大臣もこれについては相当に努力されておると聞いておるのであります。一体解決の見通しがあるのかどうか、ただいたずらに海難審判によって審判される状況だけにたよるという点についてははなはだ遺憾に思いますが、一体どうなりましたか、お答え願いたいと思います。
  93. 吉野信次

    ○吉野国務大臣 私からまずお答え申し上げますが、今回の事件のように責任がはっきりしております場合は、御指摘通りすみやかに補償するということに私も努力したいと思います。  それから洞爺丸の件についての国鉄責任云々については、山口さんの御意見は御意見として拝聴いたしますが、御承知通りその点についての海事上の責任がいずれにあるかということは、審判の手続になっておりまして、これは今進行中でございます。私もずいぶん御遺族の方が多数おられるのでありますから、手続は手続として、それは進行中で、これを私がどうするという立場にもなっておりませんので、やはりその事件の進行は進行として見守るほか仕方ないというふうに考えておりますが、ただ補償の点になりますと、責任があるかないかということがはっきりしないと最終の何はできないのです。そうしますと、今山口さんのお話のように、それがかりに今後何年かかかりまして、そしてある程度の金額が出ましても、その時というものの様子を考えますときには、何にもならないことになるということも、私もまたよく承知いたしておりますから、そこでその場合に何か便法と申しますか、もう少し融通のきいた賠償の方法についての道がないかということを、私は今考えておるところであります。これも事務的にいろいろな問題がございまして、今ここで詳しくお話をするまでにまだ研究が積んでおりませんけれども、たとえば一つの民法上の賠償の責任になるものでございますから、その責任がまだきまらないときに、その責任がきまったとして支出をするということは、これは会計法上からも多少の問題があるのではないか。そうすればかりに出すとしましても、その出し方をどういうふうに、そういった問題をよけてやるかというふうな、多少事務的に研究しなければならぬ点もございます。しかし御趣旨の点は、私も十分承知いたしておりますから、何とかその事件の海事審判というものの進行のいかんにかかわらず、何か御遺族の方にできるだけ御満足のいく方法があれば、私はこれをとるということについて努力をすることにやぶさかではないということを申し上げておきます。
  94. 小山亮

    ○小山(亮)委員 関連して。今の運輸大臣のお話は、私実は質問をしないつもりでおったのですが、あなたの御答弁を伺いますと、著しく私どもはあなた方の解釈が違っておると考えます。海事審判というものは、私が説明するまでもなく、これは海員の技術上のことについてのみ審判をするのです。従ってたとえば船長に責任があるとか、あるいは機関長に責任があるとかいうことが確定しましても、国鉄が賠償するということとは関係がないのです。なるほど国鉄の従業員でありますから、船長の過失は当然国鉄がその責任を負うのです。しかし第一審の審判を見ましても、国鉄に対しては戒告を加えられておる。つまり船の構造は絶対にあの海峡においては、輸送に適しない構造であるということがはっきりしておる。その証拠には、事件が起きましてからすぐに国鉄では船体の改造をやったでしょう。それを見ましても、明らかに今まで使用しておったところの船が不完全なものであるということは明瞭なんです。それからさらに海上の監督機構につきましても、あなた方の方は明らかにこれは間違いであるということがわかりまして、すでに思い切って海上の監督機構をお変えになりました。それがために今では安心して航海のできるような状況になっております。初めからこういうことになっておれば、おそらく事件は起きなかっただろうと私は思う。しかしながらその機構において不備な点があった。それが船質において悪かった。それからあそこは一般の海洋航海の船の船長の権限と違いまして、出帆してわずか三時間か三時間半で目的港に着くのです。そして一日のうちに一往復も二往復もできるというような状態でありますから、電話連絡もできるのです。気象の観測などというものは、船の船長よりむしろ函館及び青森の監督事務所がすべての機構をつかんでおるのですから、船長に対する指揮監督は、たなごころをさすがごとくできるはずなんです。それをやらない。それをやらないのですから、ああいう事件が起った。それを改めた、とすればもう戒告を受けておるのですから、国鉄責任は当然明らかなんです。戒告といいますけれども、海事審判である。たとえば国鉄に対しては戒告以上の罪はないのです。戒告というのは一番重いのです。船員に対してのみどんな懲罰の条項がありましょうとも、船員外の者に対しては海事審判は判決を下し得ないのです。従って戒告をすることは一番重いのです。最上の処罰である。その最上の処罰の通告をすでに受けておるのです。紫雲丸事件はもう争いの余地がないからというので、どんどん御解決になったでしょう。なぜ洞爺丸の問題だけをお引き延ばしになるのですか。海事審判で判決を下しましても、理屈からいえばさらに遭難者が賠償の訴訟を起さなければ、政府はその責めに任じないということになるのですから、海事審判だけではだめなんです。海事審判があってから後に、今度は遭難者が賠償の訴訟を起してこなければならない。そうしたら一体何年後に解決するのですか。こういうことをあなた方も知っておられながら、これをほおかりむしておいでになるということは誠意がなさ過ぎると思う。ほんとうに誠意があるなら、進んで紫雲丸事件と同じように——紫雲丸事件はすでに解決したではないですか。紫雲丸事件と同じように、なぜ御解決なさらない。当然責任がある。それを今のように海事審判の決定がなければ、われわれの方は責任がどこにあるかわからぬ、そんなばかなことはない。国鉄責任は明らかなんですから、この点をあなたは間違いないようにしていただきたい。重ねて御答弁があったらいただきたい。
  95. 吉野信次

    ○吉野国務大臣 いや、別に間違っているつもりはございません。ございませんが、ただこれは見舞金ではございませんので、つまり今お話の海事技術者の責任があるかないかということが、つまり民法的に申しますと、損害賠償のときの責任がその使用人の責任として使用者の国鉄が負うかどうか、こういう法律問題に発展することになりますから、そういう問題があることだけは、今の民法の法令からいえば当然だろうと思うわけですが、今それは第二審の審理の経過中でございます。それはそれでありますけれども、しかし今山口さんがお話しになりました通り、そういう一応の理屈は理屈で、それはありますけれども、それだけにこだわっておれば遺族の方々に大へん御迷惑をかける、こういうことでありますから、それについて何かの方法があれば、私はできるだけ早く何か方法を考えるということにやぶさかでない、こういうことを申し上げたのです。
  96. 小山亮

    ○小山(亮)委員 何かの方法とおっしゃいますけれども、それならば、洞爺丸だけをなぜお引き延ばしになるのですか。紫雲丸の問題は何とかきまって解決に進まれたじゃないですか。それを、どうしてこれだけをおいておくのですか。
  97. 吉野信次

    ○吉野国務大臣 私の承知しておるところでは、紫雲丸の方は責任がはっきりしておる。ところが、洞爺丸の方もはっきりしておると今のお話でございますけれども、それは今第二審でまだ決定していないのです。だから、はっきりしておるという御意見は御意見として私は拝聴いたしますけれども、とにかく一たん海事審判の手続でまだ第二審の審理中でございますから、それを当局として私ははっきりしておるということを認めるということはまだ早いと思います。これは一つ御了承願いたいと思います。
  98. 小山亮

    ○小山(亮)委員 もう一つだけ。国鉄責任がはっきりしておるということは、初めからはっきりしておる。それはあなた方がいろいろの改善の処置をおとりになったことだけでわかっておるじゃないか。ただ問題が残っておるのは、船長の責任かどうかということである。かりに船長のやった行為が不可抗力であって、船長が無罪になりましても、やはり国鉄責任はのがれられない。だから私はそれを言っている。
  99. 吉野信次

    ○吉野国務大臣 どうもお話の点は、国鉄の見舞金というものと、民事上の損害賠償の点というものが、ちょっとごっちゃになっておるように私は拝聴いたします。それですから見舞金の方は見舞金として、当時の国鉄当局として一応済んでおるのだろうと思います。それ以上のことは、国鉄側というか、その船を運営した船長その他に責任があるかないかという海事技術上の判決が下りまして、そこに責任があるということになれば、その使用人の不法行為ということについて国鉄はさらに民事上の責任を負う、こういう理屈ではないかと私は解釈しております。
  100. 松山義雄

    松山委員長 山口君に伺いますが、参宮線列車事故質問は終りでございますか。
  101. 山口丈太郎

    ○山口(丈)委員 いや、まだです。
  102. 松山義雄

    松山委員長 それでは山口君、一応それにしぼって下さい。
  103. 山口丈太郎

    ○山口(丈)委員 この洞爺丸事件があまり長引いておるから、国鉄さんはお金持ちですけれども、遺族の方は、きょうあすのかてにも困っておるのだから、二年も三年も引っぱっていたのでは、これは生活が困るのですから、そんな金持ちが貧乏人と同じように取り扱って、いつまでも引っぱられては困るから、関連してお尋ねしたのです。ですから、善処されるようでありますならば、一つ即刻善処せられるようにお願いしたいと思います。  それから参宮線の問題でありますが、これは技術的に言えば、こまかく言えば幾らもあります。私も二十年鉄道の飯を食っているのですから、幾らもあります。けれども、重大欠陥と指摘せられるものは、何といっても今までから指摘せられておるように、これは列車のおくれを取り戻すために、もしくは他の列車にそのおくれの被害を与えないためにとられたダイヤ変更が原因をなしておる、これは間違いないです。何といっても松阪駅で通常の離合をしさえすれば、絶対にこういう事故は起らなかった。だから二四六列車というのは松阪で待たしておけばよかった。ところがそれを待たさなかったところに事故の遠因があった。直接の原因はなくとも、遠因は確かにあったのです。ところが、私はきのうも指摘して石井さんからも御答弁がありましたが、乗務員に対してダイヤ変更の趣旨を徹底させる方法を欠いている。これも今お話のように、通告する義務があるとかないとか、規定を変更したとか変更しないとかなんとか言っておりますけれども、そんな規定のいかんにかかわらず、当然なすべき義務じゃないですか。その義務を怠っているということは、これはもう避くべからざる責任者責任であります。これをもっと反省してもらいたい、私はこういうふうに思うのです。  そこで今度こういうふうにダイヤを変更して、そうして常時指定せられている停車駅を変更して臨時に離合駅を指定した場合に、その閉塞方法は一体どういう方法をとられておるのですか、これをお伺いしたい。運転規則によりますと、いろいろの閉塞方法が書かれております。少くとも代用閉塞、つまり臨時にそういうような列車の運行を変更する場合においては、これは臨時のことでありますから、たといそれがダイヤの上に載った列車でありましでも、その変更された列車の停車を指定する場合においては、やはりその閉塞方式は代用閉塞方式を用いなければならぬと思います。そうすると今まで御答弁なさったことは、ことごとく責任のがれの答弁である。代用閉塞によると、第九十六条もしくは九十七条が当然適用されなければならぬと思うが、一体これについては平常からどういう処置をとられておるか。また運転取扱心得によりますと、これもやはり第一節通則の二百二十三条によりますと、通信方式が規定せられており、その責任者は駅長となっておるが、これは津駅で停車をした、それではその津駅で停車をしておるとすれば、すでに天王寺管理局からダイヤ変更の旨をその駅の駅長に通知しておるのかどうか、もししておらないとすれば、そのほかにはそういうような通信方式をとる機会がないと思う。そうなると、これは指令をした管理局の司令に重大な責任がある、こういうふうに考えるわけであります。運転指令は一体どういう方式をもってこれをやったのか、これを一つ説明願いたいと思うのです。
  104. 竹内外茂

    竹内説明員 お答えいたします。ただいまのお話の中で最後の点につきまして御説明申し上げますが、今度の事故の行き違い変更によって、代用閉塞方式をとるのが正しいのだとおっしゃることは、全然間違いでございます。と申しますのは、閉塞方式には、信号機そのものに故障がありましたときに、代用閉塞信号方式というものがとられますので、現状のものではあのタブレットを使って正規の閉塞のやり方ができます。また信号機も故障でも消灯でもございませんので、その点につきましては全然代用閉塞方式をとる必要がないのであります。
  105. 山口丈太郎

    ○山口(丈)委員 そうするとこれはダイヤの変更でありますから、従ってやはり正式にこの条文に当てはまらないとしても、それはいわゆる信号の故障もしくは異状等によってこの方式がとられる。こうすれば問題は、私はやはりこの通券、通票、これを指摘しなければならぬと思う。その場合に、一体この列車六軒駅までの通票を持っていたのか、あるいは松阪駅までのものを持っていたのか、あるいはこの通票の交付、これは常時停車駅の津駅を発車して次の停車駅に向うその途中においても受け渡しをしているのか、この列車について一つ説明願いたい。
  106. 竹内外茂

    竹内説明員 ただいま閉塞のお話がございましたので、この列車に関連して申し上げますが、二四三列車は、当時の状況といたしましては、六軒駅でとまることにはなっておりますが、閉塞方式はその駅間々々の安全を確保するものでございまして、たとえば津−阿漕間に一つの閉塞のタブレットがございます。阿漕−高茶屋間にもございます。高茶屋−六軒駅間にもあります。六軒松阪間にもございます。従いまして二四三列車は、高茶屋−六軒間のタブレットを持っておりましたので、それを駅で渡す。今度はそこを出て参りますときに、閉塞といたしましては、六軒松阪間のタブレットを持たなければならぬ。それがあとからぶっつけました二四六列車が持っておりますから渡すことができなかった。タブレットにつきましては、何ら間違いのないことになっております。
  107. 山口丈太郎

    ○山口(丈)委員 それでは私はお尋ねしますが、そこまでは間違いないのです。私も間違いないと思う。ところがそうすれば重大な問題があると思うのです。というのは、この六軒駅で次の閉塞区間へ進行するタブレットを乗務員は当然受け取らなければならぬ。そういたしますと、駅でそのタブレットをただとる方だけですから、とらないで行くとすれば、駅員は、これは列車が錯覚を起して通過するのではないかということが、当然予知せられるべきものだと思います。そうすれば私はきのうも石井さんに言うたのですけれども、そういうような危険を予知しているのだから、その当時においても乗務員にその危険を知らせるべきだと思う。それは何も形式的にこだわらなくても、大声をあげてもいいわけです。ところがそういうような適切な措置がとられたのかどうか、私は不思議でならない。常時の場所から側線の一番先端までの間の距離が、少くともこのような大事故を起すような距離とは考えられない。機関車がどんなに行っても、駅を通過する場合に、そう八十キロも百キロもの速度で、何ぼ快速列車でも私は通過しているとは思いません。そういうことであったならば、タブレットの授受はできません。ですから少くとも四十キロ以下のスピードで通過するのではないか、そうならばそのときに駅の責任者が適切な措置をとれば、当然こういう事故は未然に防止できたはずです。もしこれをしていないとすれば、あまりにも国鉄はいわゆる官僚式である、あるいは事務的である。これが大きな惨事原因をなしているのじゃないか。ただ乗務員信号確認だけにたよって、他は責任なしとは私は考えられないと思いますが、その指導方針はどういう方法をとっておるのですか。
  108. 竹内外茂

    竹内説明員 ただいま御指摘のありました点についてお答え申し上げますが、タブレットをとるということ自体は、次の区間に入るということは決して示しておらぬのでございます。従ってタブレットを持ってくれば、そこの運転する条件はありますけれども、あくまで出発信号機というものがありまして、それから停車場外に列車を出してもいいかどうかということが最後の段階になりまして、それがない以上はタブレットはあろうがなかろうが問題にならぬ。
  109. 山口丈太郎

    ○山口(丈)委員 ちょっと私重大なことを聞くのですが、タブレットのあるなしにかかわらず列車は進行していいのですか、そんな危険な……。
  110. 竹内外茂

    竹内説明員 今私の話がかいつまんで申し上げたのでおわかりにくかったと思うのですが、停車場のこっちのある駅の——たとえば現在の事故状態で申し上げますと、高茶屋駅の出発信号機から六軒駅の場内信号機までの間にタブレットの効果はある。それから六軒駅の場内信号機から六軒駅の出発信号機までの間はタブレットの効果はございません。信号機だけの力によります。それから今度は六軒駅から松阪駅の間は六軒——松阪間のタブレットが必要であり、たつ出発信号機が進行してもよろしいという指示条件がないと効果がないということになります。
  111. 山口丈太郎

    ○山口(丈)委員 だから私の申し上げておるのは、このタブレットの授受は当然離合駅で行わなければなりません。今あなたが指摘されるように、松阪方面から出てくる列車六軒駅までのものしか持っていない。いずれの場合においても六軒駅のものしか持っていない。だからそれを交換しなければならない。交換する場合に先に進入した二四三列車というのは当然その駅で受け取らなければ通過できないのですから、それを渡していないのですから、そしてただ通過するために乗務員が渡したのですから、その状況というものは駅でちゃんと察知しなければならぬと思う。人間ですから錯覚を起すかもしまれせん。ですから当然タブレットを渡せばそれでいいのだ、もらえばそれでいいのだ、こういう機械的なことでやっておったのでは、これは人間ですからどんな錯覚を起すかわからないのですから危険千万だ、なぜその措置平素からとるようにしておかないかというのが私の考え方です。それはどういうふうにしておられるのかお聞きしているのです。
  112. 石井昭正

    石井説明員 昨日山口先生に文教委員会でもお答え申し上げました通り、先生の御質問列車が通過速度で入ってくれば、当然異常に駅員が気がついて警告を発すべきではなかったかという御質問と拝察するのであります。その点につきましては昨日も御説明申し上げましたように、六軒駅の当務助役がただいままで調査いたしましたところでは、ホームの先端に立ってタブレットを受け取るべく信号灯を振っておった。そこを通過速度——ただいままでの調査では五十五キロ程度かと思われておりますが、ずいぶんのスピードで列車が入って参った。そのスピードが高過ぎるということを感じて警戒措置を、何らかの方法をとるべきではないかということでありますが、この場合にそういう方法がとり得るかどうか、現実の問題は別といたしまして、六軒駅の場合におきましては、先ほども申し上げました離合状況からしまして、そのスピードで入って参りましても、常用制動をかければ所定の位置にとまるスピードであったとわれわれは解釈しておるわけであります。
  113. 松山義雄

    松山委員長 山口委員にちょっと申し上げますが、お約束の時間がずいぶん過ぎておりますので、一つおまとめいただいて、簡略にお願いしたいと思います。
  114. 山口丈太郎

    ○山口(丈)委員 私はいろいろ施設のこまかい点について質問したいと思っておったのですけれども、全部省略します。ただ一点申し上げたいのは、とにかく今までの鉄道事故というものはことごとくダイヤにあります。もちろん交通機関がダイヤを重んずる、ダイヤの正確を期するということは、鉄道にとっては第一の使命であるかもわかりません。しかしその使命を全うするために、たっとい人命財産を犠牲にするような危険な運行というものは、絶対に私は許されるものでないと思います。今日のこの事故を見ましても、全く十一分のおくれを他の列車に及ぼさないというためから出発をしたダイヤ変更による事故です。この点は十分に国鉄において反省をしてもらいたい、そうしてあまりダイヤ偏重に陥らないようにしていただくということが、私は国鉄に安心して乗り得る唯一のものである。文教委員会におきましても、児童の修学旅行等においてこういう犠牲者が出た場合に、その補償を法律によって規定しろというような声も出ております。しかしそのようにして何ぼ国家が補償をしたからといって、事故防止できるものでありませんし、むしろ鉄道側からいえば、その鉄道事故を目標にしてそういう補償方法が行われ、あるいは交通機関を目標にしてそういう補償方法を法律で規定しなければならないということは、私ども鉄道に従事しておる者あるいは従事しておった者としては、これは最も忌むべき恥であります。ですからそういうものを私は制定すべきものではないと思う。少くともそういうものを制定するようなまでに事故が頻発するのであれば、われわれは大いにこれを反省してなくするということが第一の問題であります。それには今申したように、いつもかもダイヤの正確を期するために犠牲になっておる。だから今日では、私は全く国鉄では、ダイヤのために今日までの犠牲をしいてきたものだと言っても過言ではないと思うのです。そういう点について今後是正する考えがあるかどうか。ただ単にどれだけ鉄道の安全施設をやったとしても、それで事故防止できるものではないのです。乗務員をどれだけ訓練をしてやっても、それで防止できるものではありません。一体これについての指導に当られる方々としての反省と決意を伺いたい、こう考えます。
  115. 石井昭正

    石井説明員 専門家の山口先生の御意見、まことにごもっともでございます。私どもも先ほど運転局長が申しましたように、決してダイヤ第一主義で、安全を低位に置いておるという考えは毛頭ないのであります。安全第一に考えてやって参ったのでありますが、たまたまこういう事故を惹起いたしまして、その点についてなお一そう強く反省しなければならないということはお言葉通りであります。今後対策委員会等におきましてもそういう点を十分に検討いたして、なお行き違い変更等の措置についても慎重に、しかも綿密に行うように指令をいたし、また方法を講じなければならない、かように考えております。
  116. 山口丈太郎

    ○山口(丈)委員 一点今度は運輸大臣に質問をいたしてみたい。それは今国鉄にも質問を申し上げましたように、最近の交通機関は、いろいろ世間で風評せられておりますのは、交通機関は交通本来の安全輸送というものを非常に軽んじておる。そうして極端にいえば、国鉄は人命よりもダイヤの確保、そうして事故が起ればその責任の回避、いわゆる部内における責任のなすり合い、こういうことが非常に多く行われておる。またバス企業等に至りましては、これも人命よりも利益を本位に考えられておる。従ってそのためいずれも労働の再生産ということが非常に軽んぜられておるのであります。この労働再生産というものが軽んぜられておるために、あるいは正常労働というものが軽んぜられておるために、勢いオーバー労働となり、あるいは正常な勤務時間内においても労働の強制となり、そのための犠牲労働をしいられる、こういうことが非常に多いのであります。これについて今にして運輸省が適切なる指導方針を立てない限り、この近代化して参ります交通機関の安全確保を期することはできないと私は考えます。これについて運輸省は一体どういうふうに考えられるか。大臣は法律家でもありますが、ただ通り一ぺんの法律をもってこういうような事態を解決するとは考えられない。これについて一体どういう指導方針を立てようとなさっておられるのか、きわめて重要でありますから率直簡明にお答えを願いたいと思います。
  117. 吉野信次

    ○吉野国務大臣 お話通り私も交通機関につきましては安全度が何よりも肝心でございますから、従来もその通りの考えで指導もやっておりましたし、今後もそういうふうにやるつもりであります。いろいろ御指摘になった点につきましては、前国会におきましてもバスその他自動車の運転手などにつきまして、安全という見地から多少の立法もいたしておることは御承知通りであります。今お話のように運転手を過労に導くというようなことがあっては非常に因りますから、そういうことにつきましてもそういう弊害がないように私は努力したい、また努力しておるつもりでございます。
  118. 山口丈太郎

    ○山口(丈)委員 総裁一つお伺いしますが、今申し上げますように、ダイヤの正確を期するというために、しばしば国鉄においてはそのためのいわゆる犠牲労働をしいられる。従ってこれを防止しなければ事故をほんとうに防止することはできないと私は思います。そういう見地に立って総裁は部内の指導に当られるべきだと私は思いますが、これについて一つ所見を伺って私の質問を終りたいと思います。
  119. 十河信二

    十河説明員 私も何よりも安全を第一にしなければならぬということを常々念願といたしております。また部下の指導に際してもそういうふうにいたしておるつもりであります。こういう事故を引き起しました今後はさらに一段とその方面に力を注ぎたい、こう考えておる次第でございます。
  120. 松山義雄

  121. 池田禎治

    池田(禎)委員 時間もありませんので私は一点だけお尋ねしておきます。近年の国鉄の不祥事件は跡を断たないのでありまして、まことに私は遺憾のきわみであります。国民は今日の国鉄に対しまして限りなき不満を持っていることは、私が申し上げるまでもありません。そこでまた相次ぐ事件について、国鉄の最高責任者がきわめてあいまいな態度をもって臨んだことも、また私どもの遺憾とするところであります。しかるところ今回のこの不祥事件について、十河国鉄総裁は進んで責任所在を明らかにし、しかも責任はあげて私にあると終始その責任の態度を冒頭から明確にしておることは、私は歴代の総裁には見られないところの姿であろうと思うのであります。しかも本日の委員会におきまして、あなたはまさに声涙下るがごとき、まことに遭難の人々に対し、国民に対して深くわびるの態度をとったことも、私どもとしては深く敬意を表するものであります。私は今まで同僚議員からいろいろな質疑応答が行われましたのを見まして、あなた方のこれからに対するところの態度もいささかわかったのであります。しかし肝心の機関士が今日なお留置されてその事情な聴取することができないが、その事情を聴取した後に国鉄首脳部はいかなる責任をとる御用意があるか。このことを一点。それから今後再びこういう事故の起らないように、事故防止委員会等を作って事故の絶滅を期するというが、いろいろな委員から質問がありましたけれども運転局長にしても石井理事にしても、万全を期するというようなまことに抽象的な御答弁では、これは何らの進歩がありません。これは今まで桜木町事件でありましても、洞爺丸事件でありましても、紫雲丸事件におきましても、皆さんの先輩と申しまするか、同僚の人々の答えたことであって、会議録を読み返してみますと同じような御答弁が本日の委員会にもあるということは、まことに私どもとして不愉快しごくのことであって、何らの進歩の跡がない。たとえば予算的なことはどうありましょうとも、あらゆる努力をして一つ技術面においてもこうするとか、あるいは青野議員が聞いたように無電の設備をどうするとか、一生懸命にやってできぬならできぬでしょうがないが、何のことはない、万全を期するということだけだ。こういうことでは私どもとしては満足することのできない答弁であることをぜひとも一つ銘記していただきたい。そこで、私はただいま私の求めんとするところの答弁が得られるとは思っておりませんが、重ねて申し上げますことは、国鉄首脳部は、形式的にも実質的にもいかなる責任をとるか。そうして事故絶滅の方法についていかなる措置をおとりになる決意があるか。この点を伺いたいと思います。
  122. 十河信二

    十河説明員 たびたび申し上げますように、事故の全責任は私にあるのであります。私は事態を明瞭にしてとるべき処置を講じたい、ただいまこういうふうにする、ああいうふうにするということは申し上げかねます。事態を明瞭にするについては、われわれ理事者が事態を取り調べたのではあるいは手落ちがある、あるいは我田引水的になるというふうな非難を受けるかもしれません。そこで私はそういうことも考慮いたしまして、われわれを監督する地位におられる監査委員方々に——これもやはり国鉄の内部といえば内部ですけれども、運輸大臣によって任命せられた監査委員でありますし、ふだんからそういうふうな監査調査をすることを職務としておられる方々でありますから、そういう方々を中心にして調べていただいて、ここに責任がある、ここに改むべき点があるということを明瞭にして、それぞれの適当な処置を講じたい、ただいまはそういうことを申し上げる以上に、具体的にこういうふうにして責任をとる、こういう形式でどうするということは申し上げかねることをはなはだ遺憾といたす次第であります。これで御了承をいただきたいと存じます。
  123. 池田禎治

    池田(禎)委員 あなたの御答弁で私はけっこうです。ただこの際私は一言運輸大臣にも申し上げておきます。今まで不祥事件の起きたときに、国鉄総裁とか副総裁とかいう首脳部の人々がとられた態度は、身を退いて責任を明らかにすることも大事でありましょうが、それよりもいかにして事後の処置を解決するかということが重要であります。かかる事故の再び起らぬことを期することをもって国鉄の使命といたしますと、歴代の人が申していたのであります。まことに私は不届き千万な態度であると思います。そうして幾たびか醜態を繰り返しては人事的な責任をとってきた。これは国民のものとしての国鉄としてまことに不愉快千万な過去の姿であると思う。私が見るところ、古武士のごとき面影を持っている十河さんが深い決意を持って言われているのですから、これ以上論及いたしませんが、さらに責任監督の衝にある運輸大臣も断固情は情、理は理として処断する。これに対して厳重な監督を行わない限り、日本の輸送責任者としてのあなたは資格を欠くと言わなければなりません。従いまして私はあらゆることを包含して、ほんとうに国鉄の再生するという姿を見せるという厳粛なる決意のほどを承わって、私の質問を終りたいと思います。
  124. 吉野信次

    ○吉野国務大臣 お話通りと私も考えております。
  125. 松山義雄

    松山委員長 松岡君。
  126. 松岡駒吉

    ○松岡(駒)委員 一言だけ。かかることを繰り返さないために監査委員会で十分御審議を煩わすという総裁お話であります。そこでは相当専門的な問題につきまして種々審議が行われることを期待しております。私はこの際注文を申し上げておきたいことは、何といいましても、いかに科学的な通信機械等の設備が進歩いたしましても、先ほど来聞くところによりますれば信号にたよるという現状においては、現在はいざ知らず、将来のことといえども、結局人的関係というものがきわめて重大であります。従ってたとえば機関士のごとき、特にあの種の困難な仕事は疲労というものが科学的に十分研究されなければならないと思います。疲労回復についても、また科学的な研究というものがまじめに行われなければ相ならないと思います。そういう点に着眼され、そういうことのために努力されることがなければ、交通事故の絶滅を期することはけだし不可能であろうかと思います。どうぞ願わくば従業員諸君のための疲労の科学的研究、その回復についての方法の研究、というところに着眼されまして、そういう面においても十分御努力を願いたいと思います。私はただ一言希望を申し上げておくだけであります。
  127. 松山義雄

    松山委員長 本日はこれをもって散会いたします。    午後一時五十四分散会