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1955-12-14 第23回国会 参議院 予算委員会 第6号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和三十年十二月十四日(水曜日)    午前十時二十四分開会     —————————————   委員の異動 本日委員深川タマヱ君辞任につき、そ の補欠として高橋進太郎君を議長にお いて指名した。     —————————————  出席者は左の通り。    委員長     西郷吉之助君    理事           池田宇右衞門君            堀  末治君            三浦 義男君            安井  謙君            佐多 忠隆君            吉田 法晴君            豊田 雅孝君            溝口 三郎君    委員            青木 一男君            秋山俊一郎君            石坂 豊一君            井上 清一君            伊能 芳雄君            木内 四郎君            木村 守江君            小滝  彬君            佐野  廣君            高橋進太郎君            西岡 ハル君            野村吉三郎君            武藤 常介君            吉田 萬次君            秋山 長造君            亀田 得治君            菊川 孝夫君            相馬 助治君            曾祢  益君            戸叶  武君            羽生 三七君            矢嶋 三義君            片柳 眞吉君            小林 政夫君            館  哲二君            田村 文吉君            中山 福藏君            千田  正君            八木 幸吉君   国務大臣    法 務 大 臣 牧野 良三君    外 務 大 臣 重光  葵君    大 蔵 大 臣 一萬田尚登君    文 部 大 臣 清瀬 一郎君    厚 生 大 臣 小林 英三君    農 林 大 臣 河野 一郎君    通商産業大臣  石橋 湛山君    労 働 大 臣 倉石 忠雄君    国 務 大 臣 太田 正孝君    国 務 大 臣 高碕達之助君    国 務 大 臣 船田  中君   政府委員    行政管理政務次    官       宇都宮徳馬君    行政管理庁管理    部長      岡部 史郎君    自治政務次官  早川  崇君    自治庁財政部長 後藤  博君    自治庁税務部長 奧野 誠亮君    防衛庁長官官房    長       門叶 宗雄君    経済企画庁計画    部長      佐々木義武君    法務省入国管理    局長      内田 藤雄君    外務事務官    (公使)    木村四郎七君    外務省経済局長 湯川 盛夫君    外務省移住局長 矢口 麓藏君    大蔵省主計局次    長       原  純夫君    大蔵省主計局次    長       宮川新一郎君    厚生省公衆衛生    局長      山口 正義君    厚生省社会局長 安田  巌君    農林政務次官  大石 武一君    農林大臣官房長 谷垣 專一君    通商産業大臣官    房長      岩武 照彦君   事務局側    常任委員会専門    員       正木 千冬君   説明員    海上保安庁長官 島居辰次郎君     —————————————   本日の会議に付した案件 ○昭和三十年度特別会計予算補正(特  第2号)(内閣提出衆議院送付)     —————————————
  2. 西郷吉之助

    委員長西郷吉之助君) ただいまより予算委員会を開会いたします。  昨日に引き続まして一般質疑を行います。
  3. 中山福藏

    中山福藏君 私はまず大蔵大臣質疑をいたしたいと考えます。  第一点は、本年三月末の調べによりますると、朝鮮人中国人を除いて、外人が四千八十二名、年間所得額二十五億七千万円ということになっておりまして、昭和二十五年の五月までは一切所得税が免除され、昭和二十五年の六月から半分だけ課税されておったのでありますが、この外人に対する課税上の特典は本年の十二月末で期限がくるわけでございますが、その際は日本人なみ課税に改めるのかどうか、これを大蔵大臣にお確かめ申し上げます。
  4. 一萬田尚登

    国務大臣(一萬田尚登君) お答えします。仰せのように、居住外国人に対しまする所得税特別措置は、本年十二月末で切れるのでありますが、まあ内外人に対し、取扱いを異にするということは望ましいことではありませんので、これを継続する考えは持っておりません。がしかし、この廃止に基きまして急激に居住外国人税負担があまりにも重過ぎるということについては、考慮の必要があろうかと思います。最近の臨時租税調査会中間答申にも同様な見解を表明されております。従いまして、政府といたしましては、どういうような経過的な措置をとるべきかにつきまして、ただいま慎重に検討を加えておるわけであります。
  5. 中山福藏

    中山福藏君 この問題は、防衛分担金その他対外的の関係から相当慎重な御考慮をなさるものと思いますが、できるだけ外人に対しても日本人なみ課税をしてほしいということをお願いして、さらに一そうの審議をお進め下さるようにお願いしておきます。  第二点は、二千七百億という補助金関係のうち、大体一千億というものは地方としては実にありがた迷惑の金だということを承わっておるのですが、この補助金整理に関する何か対策がすでにでき上りましたかどうか、その点を承わっておきます。
  6. 一萬田尚登

    国務大臣(一萬田尚登君) 三十一年度予算編成につきましては、この地方財政について根本的な改正を加えまして、今後赤字が出ないようにという施策をとるつもりにいたしております。従いまして、仰せの問題の多いこの補助金についても、これらの総合的な適正合理化をはかるつもりにいたしております。ただいま予算編成方針等について、なお政府等慎重検討中でありますが、具体的にはまだ申しげる段階に達しておりません。
  7. 中山福藏

    中山福藏君 どうも百年河清を待つがごとき感がございましてね。内閣の寿命が短くて、その都度慎重に考慮中であるという答弁ばかり連続して数年間いろいろな問題について私どもは承わっておるので、耳にたこができておるのでありますからして、何とか早急にそういうことを処理されるようにお願い申し上げておきます。  第三の問題は、これはついでにお尋ねしておくのですが、本日下條康麿氏が、農地改革に関して非常な損害を受けた地主に対する補償の問題について、大会を開いておる。私自身の体験によりましても、現在十五万円に相当する田の一反歩がその当時三百円、あるいは五百円の金額でもって政府から買上げられておる。こういうふうなことは公平の原則から言って、当然政府として考えてみなければならぬ問題だと思う。ただいま大蔵大臣はそれについて、簡単でよろしうございますから、どういう考えを持っておるか、ある場合には補償してもいいのだというような政府のお考えかどうか、承わっておきたいのです。
  8. 一萬田尚登

    国務大臣(一萬田尚登君) お答えいたします。これは大へんな問題であることは事実でありますが、しかし私は財政的見地からして、非常に困難であろうと今考えておるわけでありますので、苦慮いたしております。
  9. 中山福藏

    中山福藏君 その次にお尋ねいたしますが、今回の臨時地方財政特別交付金は、悪くするというと赤字が減少せずに他の方面にその特別交付金が流用されるおそれがあると思う。交付金の方の税率を引き上げるということについては、大蔵省はずいぶん強硬に今度は反対して、特別交付金というような姿になったのだと承わっておりますが、これを貸し付けということにしますと、大体条件つき貸し付けるということになるから、他の赤字以外の事柄にそれを流用する危険がないわけです。ところが貸付金じゃなくて、特別交付金だから、これを他の方面に流用しても監督の方法がないと思う。これに対して、その悪用を予防するために何か対策をお考えになっておるでしょうか。またこのまま野放しに見送る、こういうことなんでしょうか。御所見如何
  10. 一萬田尚登

    国務大臣(一萬田尚登君) 申すまでもなく、今回の交付金は、地方財政窮乏打開のためにとった措置であります。従いまして政府としては、地方に対しまして一そう経費の節減、歳入の確保について努力することを要請しておるのであります。交付金配分計算の基礎となっております単位費用につきまして、主として土木費失業対策事業費農業土木費等投資的経費に改訂を加えまして、このまま推移しますれば赤字となりますと考えられる、それを解消するような方向に使うように措置いたしております。また地方自治団体においても、今回の交付金を、給与を増加する、昇給をする、そういうものに使わないように、強力に指導するようになっておるわけであります。
  11. 中山福藏

    中山福藏君 強力に指導するとおっしゃっても拘束力はない。拘束力がなくては指導なすってもその手が伸びないのではないかと、私は非常に憂慮するのでありますが、そういう点も十分御注意になりますように、私は政府に警告いたしておくわけであります。  それから今回の特別交付金財源措置は、まことに不明瞭な点がある。大体百六十億の金は形式資金運用部から出ることになっておる。しかしその実質的関係におきましては、日銀から借り入れたと同様の結果に陥っておるのではないか。今少し掘り下げて申しまするならば、百六十億円は特別会計において資金運用部から借入金として、年度末までに一般会計の方から返済されるということになっておる。しかるに資金運用部は四月以降郵貯の延び足が悪くて、既定の財政投融資計画さえ完遂することができない。従って開銀債引き受けとか、電源開発貸し付けを削って、それを民間融資の利用に振り向けておる。従って運用部が新たに百六十億万円の融資余力があるわけはないと思うのです。そこで国庫余裕金振替使用をこの特別会計にも認めることになったということになっておりますが、その結果は、本来この余裕金使用計画に入れていた外為会計や、食管会計資金計画影響を与えまして、計画以上に外為証券や、食管証券というものを日銀引き受けで発行しないことを得ないことになるのじゃないか。結局現実に金の余裕がないのだから、百六十億万円というものは、一時的には日銀から借り入れるということと同じことになるのじゃないか、結果がそうなるのじゃないかということを憂うるのですが、果してその百六十億万円というものを資金運用部から借り入れることが、はっきり私の前で言えるのでしょうか、どうでしょうか。大蔵大臣にお答えを願います。
  12. 一萬田尚登

    国務大臣(一萬田尚登君) お答えします。仰せのように、今回は国庫余裕金をもって充当しまして、そのうちに予算補正をして、これを決済する、こういうことになっているわけであります。その期間におきまして、若干この国庫余裕金を使うと、他の会計影響があろうかとも私も考えますのでございますが、しかし地方財政窮乏に対処する意味から、やむを得ないと思いますが、他の会計にできるだけ影響のないように、日本銀行引き受け公債発行と同じようにならないように、できるだけの措置を講ずるつもりであります。
  13. 中山福藏

    中山福藏君 どうも私の申し上げたことがはっきりおわかりにならぬようでございますが、結局私はこの資金運用部にはそういう金は余裕がないのじゃないかということをお尋ねしておるわけですが、時間の関係上省略しておきますけれども、形式上の文字でごまかしておるのじゃないかという感じを受けるものですから、そういう質問をしておるのですが、御注意をこの際お願いしておきます。  その次には、この百六十億の金を返済する財源を三つあげておられる。第一は賠償費、第二は一般経費節約、第三は公共事業費繰り延べる、こういうことになっておるのです。しかしこの返済財源というものの目途がはっきりしておりますときには、一般会計補正を議会に提出して、その批判と、その審議を仰ぐのが、当然のルールじゃないかと考えられるのですが、いかがですか。
  14. 一萬田尚登

    国務大臣(一萬田尚登君) お答えします。全く仰せ通りと思います。ただ今日は地方財政窮乏に対して早急に措置する必要がありまして、補正予算を組むだけの資金的余裕を持ちませんので、とりあえずこういう便法によったわけでありまして、御了承を得たいと思います。
  15. 中山福藏

    中山福藏君 次にお尋ねしておくのですが、今度の公共事業費の八十八億の繰り延べという表現によって、政府の方から御説明になっておるのですが、繰り延べという言葉財政法上にはないわけですね。ところがこの繰り越しという言葉はあるのですが、繰り越し繰り延べと、これは同じ意味に使われておるのですか。その点を一つ承わっておきたい。(「ごまかすな」と呼ぶ者あり)
  16. 一萬田尚登

    国務大臣(一萬田尚登君) お答えします。私がいろいろ申し上げるまでもこれはないと思いますが、繰り越し事業資金も翌年度に繰り越すという言葉のように考えております。繰り延べは一応事業は翌年度に繰り越すことになりますが、この財源措置は翌年度で……、この仕事年度のうちでは一応不用額仕事ができるのが困難である、あるいはいろいろな事情でできなかった、一応そこで切って、資金はこれだけ不用額になる、こういう考え方繰り延べというふうにいっております。しかしそれだからといって仕事を全部やめるわけにもゆきません。翌年度に延びる仕事は翌年度でさらに財政措置を講ずると、かように考えております。
  17. 中山福藏

    中山福藏君 財政法繰り延べというのは一萬田大蔵大臣の新発明語だと私は思うのですが、減額とか節約という字は時たま財政法中に現われて参る言葉であります。この言葉防衛庁関係でこのやり方を私は承知しておるのですが、事業だけを今年度にやって、支払いを来年に延ばすということは非常な弊害があるということは、新聞、雑誌にかねがね報道されておるのであります。こういうことをなさるというと、防衛庁にかつてそういう涜職問題が起ったが、それを奨励するというような結果になって、はなはだおもしろからぬ事態を招致するのじゃないかと思う。そういう点については何も御心配なすっていませんか。
  18. 一萬田尚登

    国務大臣(一萬田尚登君) まあ大体繰り延べとか、あるいは繰り越しというような事態はないのが望ましいので、年度内でちゃんと仕事ができることがいいということは、これは申すまでもないことであります。実際しかしいろいろな事情で毎年こういう繰り延べ繰り越しは行われるのでございます。従いましてそういう実際の状況に基きまして財源措置を講じたわけであります。
  19. 中山福藏

    中山福藏君 時間がありませんから、仕方がない。もう少し突っ込んで私お尋ねしたいのですが、このくらいで大蔵大臣に対する質問は終ります。  次には外務大臣にお尋ねいたします。今朝の放送によりますると、いよいよ日本国連加盟はだめになったということが報ぜられておりますが、今後国連加盟に対していかなる手段方法によって加盟の実をあげられるか、その点について外務大臣の御所見を伺いたいと思います。
  20. 重光葵

    国務大臣重光葵君) 国連加入の問題は、今回の総会でぜひとも日本側希望を達成したいと思って百方外交機関をあげて努力をいたしましたけれども、結果が思う通りに参らなかったことははなはだ遺憾に思います。国会の御要望をも満たすことができなかった次第でございます。この原因はどこにあるかということをちょっと御報告かたがた申し上げます。  それは非常な複雑な手続を国際連合で次々にとって参りました。それは何とかして日本をも含む加盟申請国希望を実現したい、こういう圧倒的な各国要望と、それに対して外蒙問題、外蒙を国際連合に加えるということは適当でないという考え方とのかち合いでございまして、そこで結局外蒙を加入せしめるということに最後に反対したのは中国国民政府でありまして、そうして安保理事会において拒否権を使いまして、従いまして外蒙を含む十八カ国の一括提案ということがそこにくずれたわけであります。ところが外蒙を入れなければすべてのものに反対をするというソ連態度が、これに正面から反対することになりまして、そうしてソ連は、外蒙を拒否された以上は、自分は他の自由民主国加入に対して拒否権を使うというので拒否権を使いました。そこで拒否権のかち合いでとうとう十八カ国一括加入のこの案はつぶれたのでございます。しかしこの会議において日本加盟ということは非常に重くみられました。みんな、すべての国が例外なく日本加盟には異存は唱えません。これは非常に歓迎するところである。国際連合の強化のためにも必要であるということで、みんなこれは一致しております。中国国民政府もむろんのことでございます。それからまたソ連も外蒙が加入を許されるということを条件にして日本加盟ということに異議を唱えないということまで好意を示してくれました。そこでその態勢は今後とも私は動かないと思います。のみならず、国際連合の力を強化するということ、それからまた国際連合の規約によって世界情勢が動いておる。その一般態勢というものは、これは今後ますます力が強くなるとも、逆転はいたさないと、こう考えます。そうでありますから、今後こういう双方の主張がどういうふうに調整されるかということは、今日直ちに予見することは困難でございますが、さような大局からこれをみますというと、今後の努力も手伝いまして、大勢は日本に対する形勢は私は逆転はしないだろう。そうして時間をかけてゆけばこの困難も解消できるのじゃないか。従いまして、今回の総会情勢をみましても、日本国連加入ということは、将来は必ずしも暗くはならぬ、むしろ明るくなってきておるという見当をつけております。そういう勢いを助長し、またなるべくすみやかに目的を達するために、今後もあらゆる努力をいたすつもりにいたしております。
  21. 中山福藏

    中山福藏君 国連加盟の問題はわが国にとって重大な事柄でありますが、御承知の通りに、外モンゴールというものをこれが一括加盟国のうちの一員として国連加入させることになりますれば、いわゆる国民政府自分の土地の一部の主権を放棄したという結果が現われる。その立場からそのはね返りというものは、結局すべての方面影響して、わが国国連加入というものは不可能になったと私はみておるのですが、これは法理論的にいろいろな問題が考えられるのでありますが、どうか一つ今後とも怠りなく加盟推進に御精進なさるようにひとえに私はお願いしておくわけであります。  第二に、アジアアフリカ会議というものがバンドンで開かれたのですが、来年の四月日本で開いてみたらどうかと私は考えるのです。第一は、真の日本及び日本人を理解せしむる。第二には、アジアアフリカ各国わが国とのそう一そうの懇親をはかるということが必要じゃないか、第三には、アジアアフリカ各国アジア及びアフリカを踏み台として世界の動きに対処するためにはいかなる態度をとるべきか、そこに共同立場があるのではないか、もし共通的な利害を伴うとすれば、共同の歩調はとれないものかどうかというような問題について、一応日本というものにアジアアフリカ会議をお開きになる気持はございませんか、ただいまのところ。
  22. 重光葵

    国務大臣重光葵君) 今の御趣旨はむろん御異存のないところでございます。日本国際的地位がだんだん向上するにつれて日本役割は大きくなると思います。特にアジアアフリカ方面における新独立国との間の関係を密接にするということは非常に必要でございます。アジアアフリカ方面発言権が非常に大きくなりつつあるということも明らかでございます。ところがアジアアフリカ会議は、ようやく今年初めて開かれたには違いはございませんけれども、今日本はそれを主催する側には今日まで至っておりませんでした。来年は、次回はカイロで開かれるということにもう決定をしておるようでございます。従いまして、今すぐ日本会議日本に開くということは大へんいいことで、日本を理解せしめるためにも、また日本役割を果すためにもいいことでございますから、それは趣旨は御異存はむろんないのでございますが、来年はそうはなるまいと考えております。いずれ機会を見て、さようなふうに働きかけたいと考えております。
  23. 中山福藏

    中山福藏君 エジプトのカイロでこの次に開催するという申し合せは私もその当時新聞で拝見いたしましたが、これはやはり外相日本立場というものを指弾的な地位まで引き上げるという熱意をもって、かりにそういうふうなことになっておりましても、一つ努力をしていただきたい。もしそれが、不能になりますれば、第三回はぜひ日本でやってもらいたいというくらいのことは今から御考えになってもおそくはないだろうと私考えておりますが、そのことを御留意を願いたいのです。  それから次にお尋ねしておきますが、先般カンボジアからシアヌーク首相がおいでになって、日本移民に対するとりきめがあったということは、これは外相の労苦を私は多とするものであります。しかしながら、五カ年で五万人ということになっておりますが、それについては先方は一体どういうふうな種類の移民を歓迎するのか、あるいは農業移民であるか、工業移民であるか、技術移民であるか、あるいは医療移民であるか、そういうふうな事柄につきまして、もう少し徹底して国民にこれを周知せしむるということが必要ではないかと思うのですが、外務省でお取り調べになった向う状況ですね、向うの要求、そういうことについては何かちゃんと準備が整っておるでしょうか、伺っておきたい。
  24. 重光葵

    国務大臣重光葵君) さき頃カンボジア首相が国賓として来朝されまして、そのときにカンボジアとの間に友好条約をこしらえまして、これは基本的の親善友好条約でございます。その際に移民問題をも協議をいたしました。そして友好条約の中には、カンボジア移民を受け入れる用意があるというような趣旨の一条項もございます。そこで非常に、これは何と申しますか、一つのいわば画期的のことといって差しつかえございません。そこで移民の話でございます。それじゃ移民を、どういう移民を入れるのかという話を相当詳しくいたしました。大体差し当り五カ年を考えよう、毎年一万でありますが、そのうち二千は女子でよかろうというので、夫婦ということになれば四千人になります。そうでありますから、数は今後の検討に持たなければはっきりしたことは申されません。一万見当、そのうちに女子が二千人くらいあるだろう、こういう話なんでございます。そうしてこれは大体農耕移民でございます。農耕でございます。そうしてそのほかにも五百ないし千人ぐらい、漁業だとかカン詰工場労働者だとかいうようなものを入れて差しつかえない、こういう話に相なっております。大体話し合いはさようなことでございます。ことでございますが、さてこれを実行する上においては、とくと現地調査をしなければ、これは的確な案を立てるということは不可能だと思います。そこで現地調査をするために調査団を派遣したいということで、今その準備をいたしております。その上で案ができることになるだろう、こう思います。かようなことについて資料を整えまして、これはもう十分一般に知らせるという手段は、これは取らなければならぬのでございます。その準備もいたしておるわけでございます。大体さようなことになっていることを御報告いたします。
  25. 佐多忠隆

    佐多忠隆君 ただいま中山委員から国連加盟に国府が拒否権を使ったために日本加入できなくなった点についての御覧間がありました。これに関連してお伺いしたいのですが、国民政府拒否権を使ったために、結果としてソ連拒否権を使った。そのために日本国連加盟がだめになった。日本国連加盟がだめになったのみならず、十八九国全部がだめになり、しかもその中にはアジアの非常に重要な諸国が含まれ、ことにセイロンまで含まれている。こういうことになりますと、世界の大勢がすでに両陣営のものを一つの機関の中に入れて、ここで平和的な話し合いをすることによって世界平和を確保しようということが、むしろ世界の大勢であり、輿論であったにかかわらず、国民政府拒否権行使のために、これができなくなった。そうなれば問題は、そういう世界の大勢に抗し、そうしてそれを拒否した国府の責任を問わなければならないということは、これはきゅう然として世界の輿論として起って参る。そういうふうになれば、国府が国連における中国代表権を剥奪する。そのかわりに中共をむしろ正当な代表者として入れるべきだということが非常に力強く出て参るし、そうなれば中共中国の承認というような問題も、非常にこれは重大な問題となって浮かび上って参ると思うのです。こういう世界の大勢は非常に急速に進むと私たちは見ておるのでありますが、こういう大勢が起ってくるのに対処して、わが国はどういうふうにしようとしておられるか。私はその大勢に順応することが、日本アジアにおいてみなし子にならない唯一の道であると同時に、むしろ日本こそは率先してその運動を展開すべきときじゃないか。そうなれば、私は、今中共中国の正式承認の問題も非常に緊切した問題として重要にお考えにならなければならないし、その前提条件としての国交回復その他の問題も進められなければならない。さらに国連加盟を促進する上においても、その点に非常な決意をされる必要がある、こういうふうに思うのですが、それらの点を外務大臣はどういうふうに見通し、どう対処しようとしておられるか、あらためて御説明をお願いいたします。
  26. 重光葵

    国務大臣重光葵君) 国連の組織、機構を広げていって、少しでもこれを世界的機構にするということはこれは当然やらなければならぬことであるし、また日本加入を強く希望した国国も同じくその点を考えておることが主たる原因であったと私は思います。従いまして、今国連の中においてアジアにおける諸国が十分に代表せられておらぬ、十八カ国一括案が通ればそれができたわけであります。それでありますから、アジア方面の新しい国が十分に国連に代表されるということは国連を強める、また世界化する大きなことになる原因であります。で、これに向っては全力をあげて私は主張していくことが正しいと思います。そうしていかなければならぬ。日本も従ってこれに重大な時代感覚を持っておる、こういうことになっております。  さて、中共と国民政府との関係でございます。これがどうなるか、今表示された御意見のような説を立てるものが有力な新聞論説とか評論家とかいうのにずいぶんございます。特にアメリカ方面にもずいぶんございます。これをそういうふうに見当をつけるのも相当の理由のあることだと考えます。そこでこの発展は国際連合を中心としてどういう工合に中国の形勢が発展していくか。国民政府と中共との関係、これは慎重に見守らなければならぬと思います。今すぐ日本見当を立てまして、そうしてこうだという、政策をこうするのだというのには少し早過ぎようかと考えます。これはあちらもこちらも考えて、十分検討をするということにして、そうして見通しがついたときには、むろんいろいろこれは政策をきめなければなりません。それまではよく情勢を見きわめなければならぬと、こう考えておる次第でございます。
  27. 中山福藏

    中山福藏君 私は最後に外務大臣にお伺いします。  それはエジプトのカイロに国際見本市、いわゆる常設のものを作ってみたらどうか、こういう意見でございます。それはどういうわけかと申しますと、御承知の通り、一九四五年に締結されたアレクサンドリアプロトコールを基準にしてアラブ七カ国というのが連盟を結んでおる。その事務局がカイロにあります。だからボタン一つ押せば、シリア、レバノン、トランスヨルダン、イエメン、サウジアラビア、イラク、エジプトという七カ国に直ちに同一の行動をとるように仕組ができ上っておることは御承知の通りであります。そこでエジプト大使館の設置というものを三年間がかりで外務省に交渉しでき上った。これはおそいのです。でき上ったときにはすでにドイツはシャハト博士を派遣して経済上の問題を見通して英仏の品物を東南アジアから駆逐した。これは先べんをつけたから、そういうことになったと思います。日本は三年間おくれたために、日本の貿易上非常な不利を招いた。今日でもアラブ連盟のカイロ事務局のボタン一つ押せば七カ国の共同の歩調がとれるという。だからエジプトのカイロ日本の常設の国際見本市を置くということは、労せずして多大なる収穫を得ることになるという見通しを私はつけておるのですが、どうか通産省と御協議になって、アフリカ全体に対する見本市というような意味もございますが、外務省にはそういう御意向はございませんか、承わっておきます。
  28. 重光葵

    国務大臣重光葵君) アラビアの問題について、これは今の御発言中に政治的の意味の御発言もございましたが、私は政治的にはまだ日本はどういう態度をアラビア各国についてとるということをはっきり色彩をきめる時期には至らぬと思います。御承知の通りにアラブ・リーグの問題もあります。お話のような趣旨でアラブ・リーグもできておる。しかしながら昨今、ごく最近に行われたバクダット会議、これは大きな会議である。これに対してソ連は真正面から反対をして、非常に動いておる。さようなわけでございますから、今政治的に日本がアラブ・リーグ等に興味を持つということは、これは行き過ぎであろうと考えます。しかし今の御意見の後段、すなわち見本市をカイロに開いて通商上の発展を試みると、こういうことは全然御同感でございます。そこでカイロ日本の見本市を開くことに相なっております。それは明年二月二十七日から三月十一日までの間でございます。そうして出品物の一部分もすでに積み出されて着々準備が進んでおる状況でございます。これを今常設的なものにした方がいいじゃないかというお話がございます。これは検討いたすことにいたしますが、今の計画はさような計画に相なっております。
  29. 中山福藏

    中山福藏君 これはぜひとも常設にしていただきたいのです。ことにベルギー領のコンゴー、いわゆるアフリカの西海岸地帯は、これは御承知の通りにウラン鉱ブームで、まあ世界の半分以上出すといわれておるような状況にあって、大へんな景気なんです。幸いにして昨年の四月に外務省はロー・レオポルド・ビルですか、そこに領事館を設置せられておるのですが、ことにアフリカというものを決して将来日本は見落してはいかぬと思いまするから、私は一時見本市を開くなどというようなけちなことを言わずに、ぜひともこれは常設のものにしていただきたい、こういうことを切にお願いして外務大臣に対する質問を終ります。  通産大臣がお見えになっておりませんから、それじゃ文部大臣に一つお尋ねしたい。  文部大臣は就任早々おれは自民党の小使いだ、自民党のきめた政策は、おれは一つ勇猛心をふるってそれを断行するのだというような御決意のほどを新聞で承わっております。しかして自民党の政策は三つ掲げられておるようでありました。緊急文教政策ということになっております。第一には教育委員会の廃止と、それから第二には教科書制度の改善。第三は教育者の政治的中立厳守の措置をとると、こういうふうに言っておられるわけです。しからばお尋ねいたしますが、この三つの問題についてその処理方針というものはすでに確定されておるのか。これから立案されるのか。あるいはどういうふうな手段方法によってこれを決定づけられるのか。そういう点をあらかじめお伺いしておきたいと思います。
  30. 清瀬一郎

    国務大臣(清瀬一郎君) 自由民主党ができまする過程におきまして、何しろ近代の政党でありまするから、政策の一致が大切であります。そのうちでわが国の道徳の確立と、これに牽連した文教政策の一新ということを非常に大切に思いまして、政策以前の党の綱領にも第一に掲げております。それからして、一般政策としては三つではなくして、八つほどのおもなものを掲げておるのであります。これを実行するのが私の任務と思いまして、言葉はあの通り比喩の言葉で党の小使だと言いましたが、党の政策を実行しなければならぬと思っております。この七つ、八つの大きな事柄のうちで、三つだけを緊急を要するものとしたのです。なぜ緊急を要するものとしたかと申しますると、学校で使う教科書に非常な欠点があることを私の属しておる元の日本民主党で発見いたしました。はなはだしきは、サンフランシスコ条約を調印した調印国が違っておるのです、教科書で。これはもう緊急に改正しなければならぬ。どういうところで教科書を今まで検定しておるかというと、全く匿名の、世間の知らぬ人が下調べをして、めくら判と言っちゃ悪いのですけれども、それを認めておるのです。ですからこれは非常に大切と思うて、われわれは緊急のこととしておるのであります。(「民主党のパンフレットが怪しかったぞ、だいぶ……」と呼ぶ者あり)  もう一つ地方教育委員会また県の教育委員会、この運用が悪いのか法律が悪いのか、いろいろな問題を起しておるのです。これも一つ急にやりませんと、研究の結果によっては、ことし選挙がありますからね。選挙までにやっておかぬと六菖十菊になる。  それからして、教育の中立性のことでありますが、前の国会で、衆議院の行政監察委員会で長い間調べたところが、ますます出でてますます奇怪であります。引き続いて今期国会もやっております。きょうもやっております。これらは国民が非常に心配しておることであるから、学校制度全体について慎重に研究する以前に、まず緊急にやろう。緊急対策の内容は、先月十五日に結党いたしましてからまだ二十日間にしかなりませんからして、急いではおりますけれども、本日ただいま内容までもここで中山さんにお話することのできないのは遺憾であります。もう十日も出でずしてきまることと思います。
  31. 中山福藏

    中山福藏君 それではもう十日待つことに私はいたしたいと思います。  そこで次にお尋ねするのですが、すべての文教政策の改廃という制度の改正は、要するに憲法の精神を教育基本法によって国民に植えつけるということ以外にはないと思うのです。そこでいろいろな制度の改廃というものは、結局教育基本法の方針というものに沿うか沿わないかということになるのでありますが、文相は教育基本法というものに手を加えられるつもりがあるかないのか、それをまず承わっておきたい。
  32. 清瀬一郎

    国務大臣(清瀬一郎君) そのことも臨時教育制度審議会に諮ってきめることであります。ただその前に確定的のことを申すことは、かえって害があると思いまするが、私個人の考えを一応言わして下さるならば、教育基本法に書いてあることそれ自身はみんな賛成です。いいことです。ただ一つ足りないのは、日本人としては日本人たるの自覚を持ち、われわれの伝統としていいところもあるのであります。その点があの基本法にはないのでございます。個人と世界関係を強調しておりまするが、個人と民族ないし国との関係があまりにもなさ過ぎる。あれ自身は私は非難はいたしません。どの国でも自国民族に対する親愛、愛着の情操を教育しておるのであります。コスモポリタンたる共産主義の国でも自国に対する愛国心を唱道しております。しかるに占領中にできました基本法にはそれが欠けておる。私はこう見ておるのです。
  33. 中山福藏

    中山福藏君 そこでお尋ねいたしますが、文部省は中央教育審議会、あるいは今度仮定的に創設をもくろんでおられます臨時教育制度審査会ですか、審議会ですか、それに委員を任命されるということになっておりますが、この教育基本法というものを改正せずに、その審議会を設けられるということになりますと、その教育基本法に反対の結果をこの二つの審議会が文部大臣に答申した場合においては、それは教育基本法というものがあっても、その審議の結果に基いた答申というものを文部省では遂行される御予定でございますかどうか。それを一つ承わりたい。
  34. 清瀬一郎

    国務大臣(清瀬一郎君) 今度の私どもの考えておるのは内閣審議機関であります。今の中教審というのは文部大臣の諮問機関でありまして、今までやっておらるることも、実際は中教審は今の教育制度の限度内においていいことを御答申なすっておるので、過去の答申も大てい備わった答申であります。最近には教科書制度についての答申があります。非常にいい答申です。ただしかし、あれらはすべて現在の機構のワク内でやっておられる。今度の教育制度審議会は現在の機構について改むべきことはないか、こういうことでございます。しかしながら、いずれも諮問的性質のものでありまするから、出てきましたらそれを尊重することはむろんでありますけれども、やはりこれを眺めてみて実行可能なものについて実行する、こういうことになります。(「そういうことを言っていてもいいですか」と呼ぶ者あり)
  35. 相馬助治

    ○相馬助治君 関連して。ただいまの御答弁に関連して承わりたいと思うのですが、文部大臣も御承知のように、中教審は法律の規定によって作られたきわめて権威ある委員会であるとわれわれは承知をいたしておりました。もちろん文部大臣の諮問機関でありまするけれども、必要とあらば、抜本的に国の文政一般についてこれを諮問し、これに対して答申し得るものであるというふうにわれわれは考えていたのです。しかし、今般内閣の中に文政一般についての臨時の審議機関を設けると、かようなことが発表になっておりまして、そのこともけっこうでございましょうが、お聞きいたしますると、中教審は今までのワク内の運営の面についてのみ答申する機構であると、こういうふうにお考えのようですが、これは文部大臣みずから中教審を侮辱するものではないか。中教審というものはもっとあなたが運用の妙を発揮させれば、もっと根本的な面についても研究し、これを答申させることができるのではないか。このことを一点承わっておきたいと思います。  同時に承わりたいと思いますることは、次のことが重大なのです。ただいまの中山委員質問に関連をいたしまして、その御答弁を聞きますと、教育基本法について抜本的にこれは改正の要あり、かような文部大臣は意思を持って、今度できるところの臨時教育制度審議会ですか、これにその種々なる調査や答申、そういうものをゆだねようとされておるのですか。いわゆる現在の教育基本法というものは改正しなければならない、かような明確なる断定に立っておいでになるのですか。さようであるとするならば、私はやはり一国の文政の責任者といたして、当然文部省の中にその構想なり基本的なこの法律の内容を示すところの構想があろうと存じますが、それについてこの際ぜひとも承わっておきたいと思います。
  36. 清瀬一郎

    国務大臣(清瀬一郎君) 御承知の通り、今世間でいう中教審、すなわち中央教育審議会は、文部大臣の諮問に応じて教育、学術または文化に関する基礎的な重要施策を議するのでございます。大へん重要な機関で、私は今御質問通り、これを軽視する考えは毛頭ございません。今までの決議もみなこれを尊重しております。ただ、上下という場合じゃありませんが、今回われわれの考えておりまする臨時、これは臨時です、臨時教育制度審議会は、文部大臣の諮問に応じてではなくして、内閣の付議するものをやってもらおう、こういうことであります。文部大臣の諮問といいますると、自然文部大臣一個としてそう大それた諮問はできないのです。(「できるよ」と呼ぶ者あり)ちょっとしまいまでお聞き下さい。あなたの方がお問いだったのだから。(相馬助治君「私はヤジらず聞いてますから」と述ぶ)今度の審議会は、もっと根本的なことをやろうと思っております。国の教育に対する責任と、責任をとる以上は、監督の限界がなければならぬ。学校の制度、わけても大学の制度について世間で疑義を持っておる。教育行政の全体、こういうことが大体諮問する事項でございます。  お問いの後段の教育基本法のことについては、これは諮問するかいなか、申し上げられません。しかしながら、中山さんが私にお聞きでございましたから、そこでもし私の個人の考えを言わしてもらうならば、今の教育基本法はけっこうなんです。書いてあること一点も私は異存ありませんけれども、私個人として言わしむれば、日本人が伝統に持っておるよさを保存するということ、すなわち側人より直接世界に直結せずして、国または民族に対する親愛の情操を入れるようにすればなおよかろう、かように今言うた口の下でございまして、あれを根本的に改正するといったようなことはプログラムには入れておりません。
  37. 矢嶋三義

    ○矢嶋三義君 関連。文部大臣にこの席で私はあらためて聞きたいと思います。それは、この問題は文教委員会で私が質疑した件とも関連するわけですが、ちょうど質問のすべり出しは、中山委員と私のは一緒でした。そこで私はぜひここではっきりしておいていただかなければならぬことは、あなたには現行憲法否定というものが、意識するとしないとにかかわらず、前提にあるというところに私は重大性を指摘せざるを得ない。それは教育基本法が個人と世界と直結して、日本国民ということを忘れているということを文教委員会で答弁されました。きょうも先ほど中山委員にそういうことを答弁されておりました。ところが教育基本法には「日本国憲法を」云々ということを、日本国憲法ということを前提として条文がうたわれているのです。日本国憲法という形は幾つも入っている。その日本国憲法というものは、現在わが国における国家の基本法なんです。それを私は聞いたところが、あなたは文教委員会では、その日本国憲法そのものが外国から押しつけられたもので云々だと、こういう答弁をされたのです。私は少くとも現在かりに臨時審議会が内閣にできて、これに諮問する場合、また諮問に答える場合に、そのワクというものを私はあくまでも現行の日本国憲法のワク内において諮問し、また考えられていくものだと思う。また文教の責任者としてのあなたも常に私は憲法九十九条を体してやられているものだと思うのですが、あなたが各委員会で答弁になっている事柄は、あなたが意識されていないかもしれないが、現行憲法というものを否定した前提に立っているところに、私は非常に重大性を指摘せざるを得ないのです。これについて明確な答弁を要求します。  それからもう一点は、関連質問だからもう一点だけ伺いますが、先ほどからあなたは中央教育審議会と臨時教育制度審議会の関連について述べられておりますが、私はあの中央教育審議会の設置当時、あの法案を文教委員会で審議した者です。あなたは当時の文部大臣の提案理由その他を一応読んでいただきたい。わが国の教育制度その他文教政策の根幹に触れるもの、国家的にきわめて重要だという案件について、大臣は広く各階層の人の意向を参考にして、そして大臣を通じてその内閣の文教政策を打ち立てるとなっている。従って、あの中央教育審議会には、それは現場の人も入っているでしょう、学識経験者も入っているし、また教育はあらゆる角度から行なわれるのだから、実業界あるいは政界等からも入られておると思うのです。あらゆる階層の人を擁しているこの中央教育審議会に何故に根本的改訂をするに当ってもわが国の文教政策に関することを諮問できないのか、これがどうしても納得できません。あるいは自由民主党は早々に政策協定をやったから、中央教育審議会にああいう権威のあることを知らないで、最近流行の内閣審議会を設けるというようなことをうっかり書いたのじゃございませんか。私はそうじゃないかと憶測するのですが、この二点についてあらためて明確なる答弁を要請します。
  38. 清瀬一郎

    国務大臣(清瀬一郎君) 私は現行の日本国憲法が存在する以上は、これを尊重するつもりであります。しかしながら、現行の日本国憲法の成立、それから成立以後の実際の運用については、改正すべき点ありと考えておるのであります。これはひとり私のみならず、この内閣でさように考えまして、憲法調査会法を重ねて出すつもりでございます。  それからして中央教育審議会の存在は、私は忘れておりませんです。よく知っております。文部大臣の機関として文政を決めるためにああいうものは今でも必要と思っております。ただそれよりもう一つ超高次元の日本の教育制度は非常に大切なことです。民族の将来の魂を決めるものでございます。これをいったい占領中に、しかも占領初期に決めた通りでやっていっていいかについては、われわれ疑義を持ちまして、根本的に改正しよう。それについちゃ内閣審議会を置いて、審議会できめるのじゃありません。審議会で審議したことを基準として党でも検討し、最後には国会に付議して画期的の将来のための日本の教育制度をきめよう、こういうことで、中央教育審議会が文部大臣の諮問機関としてあるのと、内閣に臨時教育制度審議会を置くということとは、ちっとも矛盾いたしておりません。私は日本の制度は大体承知しておりまして、文部省にさような審議会のあることは万般承知しております。
  39. 吉田法晴

    吉田法晴君 委員長関連……。
  40. 西郷吉之助

    委員長西郷吉之助君) 関連が多いので簡単に願います。
  41. 吉田法晴

    吉田法晴君 大へん重大な御発言がございますので、同僚議員が二つ関連質問いたしましたけれども、簡単に重ねてお尋ねいたしたいと思うのであります。憲法はあくまで尊重する、しかし憲法の成立運用について意見を持っておる、こういうお話はこれは個人としては許されるでしょう。しかし大臣としてここに予算委員会で御答弁になります態度として、しかも法律家であります清瀬文部大臣が御答弁になりますと大へんな私は問題だと思うのでありますが、そこでそういう基本的な態度をここでお問いをしても仕方がございませんから、その点は関連をして御答弁を願うことにいたしまして、今のお尋ねをしたい点は、中教審という法律に基いてできておる審議会があるのに、法律に基かない臨時の審議会の方がより高次のものであるとして、文教の方針にしてもそうでございますが、法律あるいは憲法より以上の高次のものが別にあるかのごとく、しかもそれが個人の頭の中で、あるいは党という話がございましたが、そういうもので侵し得るのかどうか、その点についてお尋ねをいたしたいと思うのであります。そこで中教審なら中教審の存在より以上のものとして臨時の審議会を作られるのか、それからその高次のものは今の御答弁をもっていたしますならば、教育基本法もでありますが、憲法の原則も侵して、あるいは変更して答申がなされることを期待されるかのごとき御答弁でございましたから、その点をお尋ねしたいと思います。それから先ほど国が予算を出して責任をもって教育をやらせる、あるいは監督をするんだから、教育制度全般について、あるいは大学院の制度についても、あるいはそのあり方についても変更を考えているのだ、こういうお話でございまして、大学の自治あるいは学問の自由等についても基本的な変更をお加えになるかのごとき口吻が漏れて参りました。かつての鳩山文部大臣の京大事件だとか、ああいったような問題より以上のきわめて重大な方針を述べられたかのようでございましたから、それらの点について明快に一つ御答弁を願いたいと思います。
  42. 清瀬一郎

    国務大臣(清瀬一郎君) 御質問の初めに、私が憲法のことについて論じたのを大臣としては不当な発言であるとの非難がありましたが、(「不当ですよ」と呼ぶ者あり)これはわが内閣としては現に現行憲法には改正事由がありはしないかというので憲法調査会法を提案するつもりにしております。鳩山総理大臣は過日の施政に関する所感の演説においても憲法改正を提唱されておるのです。現内閣の閣僚が憲法改正の必要を論ずることはいかなるときいかなる場所においても当然でございます。(「その通りだ」と呼ぶ者あり)  しかして次に中教審と今度われわれが主張いたしておりまする臨時教育制度審議会との関係であります。臨時教育制度審議会も法規に基いてやるのであります。私の団体じゃございません。これは私の説明が足りなかったと思います。それから高次元と言うたのは委員会が高次元じゃない、問題が高次元というのです。(笑声)そういうことでございます。それからしてこの会は各委員審議されるので、その答申があるかないかは私は知りません。けれどもおそらくはどういう方が委員になられても、そのときの憲法にそむくような答申はなかろうと私は存じております。学問の自由、大学の研究の自由等についても、これで御了解を願います。(「委員長」「一点だけ」と呼ぶ者あり)
  43. 西郷吉之助

    委員長西郷吉之助君) あまりに関連が多いので関連はやめていただきます。三人も関連して本来の審議の妨げになりますから……。では相馬君一言。
  44. 相馬助治

    ○相馬助治君 今同僚吉田君の質問に対して文部大臣が抗議されておりましたが、それは非常に見当が違っておる。文部大臣といえども、大臣どなたでも憲法について御批判することは当然けっこうです。ただこちらが聞いたのは、あなたの説明によりますれば、教育基本法の条項は全部賛成だ、ただしかし言い足りないところがある、かようなお話です。ところが御承知のように、教育基本法というのは教育関係の基本法であって条文もきわめて簡単です。ただしその言い足りないところは全部現在の憲法の精神によってやるということがその条文に明記されておる。そういう角度から、こちらが現在の憲法のワク内において日本の文政を考えなければならないのではないかという意味質問に対して、あなたは逆に憲法改正の意思がある、こういうことだけ言って、そうして先ほどの答弁は引き下ったから、われわれが推測するところによれば、改正すべき内容を積極的に含めてあなたが日本の文政を考えることはきわめて問題であるというので質問いたしたわけです。現在においてはあなたは教育基本法の精神によって、また現在の憲法の精神によって、そのワク内において日本の文政を律していくと、われわれ承知してよろしいのですか。それともやはり違うとおっしゃるのですか。改正すべきものがあるから改正することを含めてやっていくと今から言うのですか。
  45. 清瀬一郎

    国務大臣(清瀬一郎君) 現在においては現在の憲法、現在の教育基本法によります。
  46. 中山福藏

    中山福藏君 私がこの質問をいたしたのは、現在の憲法が改正せられない以上は、教育基本法の前文の第二項の文句によっていかんとも手のつけようがないという結果に陥るのじゃないかということをおそれたからこの質問をしたのです。時間がないからその点よく御研究願います。なかなかこれは重大な問題です。私は議会のたびごとに文教に関して質問いたしております。日本の国をどこに持っていくか、日本の人間をどこに持っていくか、天野貞祐氏以来の文部大臣、ことごとくそうです。私は教育というのは国家の運命を決するものだと考えております。この日本及び日本人をどうするかという点、十分御検討をわずらわしたい。  それから最後に文部大臣にもう一つ附いておきますが、短期大学の改廃ということが問題になっておりますが、これはどうするつもりですか。
  47. 清瀬一郎

    国務大臣(清瀬一郎君) これも制度としての短期大学をいかにするかは非常に重要なことでありまして、先刻もお答えいたしましたように、学校の制度、わけても大学の制度について審議するというのはそこのことでございます。今申しまする審議会等に付議いたしまして適切なる改正をしたいと存じております。
  48. 中山福藏

    中山福藏君 それでは通産相にお尋ねいたします。石橋さん一つよろしく。この日本防衛庁使用しておるジェット機に必要な二千キロリットルの燃料ですね。これはどうですか、日本の内地でその需要に応ずることができますか、そういう調査は済んでおりますか、お尋ねしておきます。
  49. 石橋湛山

    国務大臣(石橋湛山君) ジェット機燃料は今でも国産で相当供給しております。防衛庁のものもあるいはアメリカの空軍のものも供給しておりまして、これは日本でできます。ただしその原油までが日本にあるという意味ではございませんが、とにかくジェット機燃料というものは国産でもって相当間に合せておりますから、将来もむろん原油さえあれば……。
  50. 中山福藏

    中山福藏君 その原油を聞いているのですよ。
  51. 石橋湛山

    国務大臣(石橋湛山君) 原油は石油を掘らなければなりませんから、(笑声)現在は残念ながら原油は足りません。従って石油開発会社が十二月一日から発足いたしまして、その試掘等によりましてどれだけの成績が出ますか、それによって決定するのであります。
  52. 中山福藏

    中山福藏君 私はそれを開いているのです。それが一番大事なところですから。外国から入れれば幾らでも生産できますから、そういうことを聞いているのじゃない。原油をいつごろあなたの考えておられる日本の出産量によってまかなうことができるか、その見通しを聞いているのです。いつごろの御予定ですか。
  53. 石橋湛山

    国務大臣(石橋湛山君) これはまだ仕事を始めたばかりでありまして、これからやってみないとどれほど出るかということも、実は相当出るだろうとは期待をしておりますけれども、どうもここではっきりしたことは申し上げかねます。
  54. 中山福藏

    中山福藏君 第二は飛行機資材、これはほとんど部分品ばかりを入れてこちらで組み立てることになっておりますが、その資材を日本で作るということについてすでに方針がきまっておりますかどうか、それを一つ伺いたい。
  55. 石橋湛山

    国務大臣(石橋湛山君) 飛行機の種類によりましてはすでに五〇%以上国産をやっておりますけれども、全体から申しますと、何しろ日本の技術等もずっとおくれておりますし、いろいろの点でむずかしいことがある。同時に果してどれだけの量産をするかということで経済的の問題が起りますので、むろん研究をし、できるだけ国産によってやるような方針はとっておりますが、ただいまのところでは、まだある種類のものについてようやっと五〇%程度の供給ができるという程度であります。
  56. 中山福藏

    中山福藏君 第三点を聞きます。ウラン鉱の発見について通産省は相当努力しておられるようですが、どうですか、その結果はいかがになっておりますか。日本で必要なものを供給するふうな発見ができましたか、それをお聞きしておきたい。
  57. 石橋湛山

    国務大臣(石橋湛山君) 残念ながらまださようなりっぱなものは発見できません。今しきりに調査をいたしております。調査の途中でありますから、結論を出すということは早いと思いますけれども、まあ福島県とか、鳥取県とかに相当有望な所はありますが、これもそのパーセンテージからいうと実はあまり高いものじゃございません。ただいまわかっておりますところでは、世界の標準の最低をようやっとこえるか、こえないかという程度のもののようでございますが、これは上からだけのことでありますから、なおフランスあたりでもこれを地下深くまでやりまして、ウラン鉱の供給ができているという話でありますから、なお一つ強力にウラン鉱の採鉱をやる、そうしていきたいと、こう思っております。
  58. 中山福藏

    中山福藏君 私が最後にお尋ねしておきたいのは、日本の至るところに鉄鋼資材というものが相当官有のもので放置されておるものが戦後残っております。十年たってなお今日さびさして放置しておかれるのですが、これについてその総トン数はどのくらいあるものか、またいつごろ全部処理ができるものか承わっておきたい。
  59. 石橋湛山

    国務大臣(石橋湛山君) 建物でありますとか、機械でありますとかいうようなもので、お話のように相当古いものが残っております。これはこの春以来強力に、少くとも機械の部分についてはこれはもうその機械として中小企業等で使えるものは使わせる。それからまたそういう場合に古い機械を取りかえるとか、それからまた政府の持っております機械ですでにもう使えないという程度のものはちゅうちょなくスクラップとして払い下げるという方針を春からきめましてやっております。
  60. 中山福藏

    中山福藏君 トン数はどれくらいですか。
  61. 石橋湛山

    国務大臣(石橋湛山君) トン数は全体のところはよくわかりませんが、ただいまの計画では九万トン斜度の見込みでありますが、来年の三月ぐらいまでには少くともその半分ぐらいは処理したい、こういうことで今極力推進をしております。
  62. 中山福藏

    中山福藏君 次に厚生大臣に一つお尋ねいたします。生活保護費のことですが、一体第三国人全体の保護費というのは一カ年間にどれくらいお出しになっているのですか、承わっておきたい。人員も一つおっしゃっていただきたい。
  63. 小林英三

    国務大臣小林英三君) ただいまお尋ねの生活保護費を受けておりまする第三国人といたしましては、本年の六月末現在の調査によりますると十三万七千九百五十人でありますから、大体十三万八千人という調査になっております。このうちで台湾人及び中国人が六百人、それから朝鮮人を除きまするその他の外国人が百四十九人、約百五十人、それ以外のものは全部朝鮮人であります。  それから今の生活保護費をどれくらい受けているかという問題でございますが、大体二十四億円程度であります。
  64. 中山福藏

    中山福藏君 この生活保護費を受けているいわゆる第三国人の連中で、民生委員を脅迫してこれに署名捺印してくれということで、詐欺的な手段によって相当にその生活保護費を受けていると承わり、なおそのうちにはすでに詐欺罪として起訴されている者もあると承わっているのです。その反面日本人がひんぴんとして親子心中をする、この場合どうも第三国人にのみ寛にして、内地人に対しては非常に生活保護費を供給する点において峻厳じゃないかと考えられます。厚生大臣、どういうふうにその点をお考えになっておりますか。
  65. 小林英三

    国務大臣小林英三君) これはまあ保護の問題は日本人にいたしましても、あるいは現在生活保護を準用してやっておりまする朝鮮人にいたしましても、平等であるということが精神でございまするから、平等にすべきものだと考えております。  それから今のお尋ねの中にありました不正受給たするというような問題でございまするが、これは全国的な不正受給をいたしておりまする件数の統計はないのでございますけれども、最近数県におきましていろいろ調査を加えました結果、その著しいものをあげますると、静岡県の蒲生神崎福祉事務所、それから京都府の宇治市、同じく舞鶴市、三重県の松阪市等におきます朝鮮人の集団居住地区におきまして実態調査を行いましたところ、保護の停止、廃止、保護費の減額、変更等を必要とするところの不適正な受給件数が相当ありましたことは事実でございまするが、今後こういう問題については十分の調査及び処直をいたしたいと考えております。
  66. 中山福藏

    中山福藏君 人類愛けっこうです。人間を平等に取り扱う、それは私も賛成です。しかし国というものがあります以上は、簡単にそれだけで割り切れることはできないのじゃないかと思う、そこで御承知の通りに大へんに今自殺が流行しております。その原因はことごとく生活に困っておる人であると言って差しつかえない。どうか厚生大臣はそういう点について十分御研究なさいまして、単に宗教家になったつもりで、人類愛に私はきざしておるのだから、私はこういうふうにするのだというような簡単なことでやっていただきたくない。もう少し掘り下げて、その生活保護を受けておる第三国人の生活についての検討が必要じゃないかと思っております。私は長い間朝鮮人の訴訟事件に携わってよく共通した性格を知っております。この際一そうの思いをせらるるようお願して私はこの質問を終ります。
  67. 小滝彬

    ○小滝彬君 外務大臣に御質問いたします。私第一次鳩山内閣、第二次鳩山内閣を通じまして野党議員としていろいろ質問して参ったのでありまするが、今般第三次鳩山内閣に至りまして、与党の議員は大臣の答弁を拍手かっさいしていればいいじゃないかということを同僚議員の中で申される人もありまするが、私は与党の議員になりました以上、これまで以上に重大な責任を感ずるのであります。(「その通り」と呼ぶ者あり)ことに衆議院におきましては三百名の非常な多数を擁した与党がバックしているために、あるいは行き過ぎることがあるかもしれない。党の決定と多少デビエートしたような政策の運用が行われるかもしれないというおそれがありまするので、われわれ与党の立場としては十分政府のやり方を監視し、そうしてあやまちなからしめるということが親心でなければならない。(「その通り」と呼ぶ者あり)私はまあいわば愛すればこそ大いに苦言を呈するというつもりで御質問を申し上げまするから、ぜひはっきりと政府の所信を申し述べていただきたいと存じます。ただしかし、この予算委員会におきましてはすでにいろいろ同僚から質問もありまして、問題も大体出尽しておるようでありまするから、私は問題をしぼりまして、符に現在非常に国論を沸騰せしめておる日韓関係につきまして、二、三これまでの答弁に漏れておったような点、またもう少しはっきりさせておきたい点を質問いたしたいと思うのであります。  まず、外務大臣に御質問いたしたいのでございまするが、その前に現在李承晩ラインの方面における現況はどうなっておるか、海上保安庁の長官が見えておるようでありまするから、韓国側があの脅迫的な声明をいたしまして以来の実情はどうであるか、また警戒、保護の状況はどうであるかについて海上保安庁から簡単なる御説明をお願いいたします。
  68. 島居辰次郎

    説明員島居辰次郎君) それでは簡単に御説明いたしますが、あの声明が出ます前あたりは、平均三十隻くらい李ライン内に出ておったようでありますが、声明後は平均一日二隻くらいしか出ておりません。ことに最近においては三日ばかり全然出ないような状況であります。しかし私の方の巡視船は、依然として李ライン内外を三隻または四隻で哨戒しているような実情であります。
  69. 小滝彬

    ○小滝彬君 今の説明を聞きましても、日本の漁夫の方は全く萎縮しておるというような状態といわなければならないと思います。私特に西日本から選出せられておりまする議員といたしまして、地元からもいろいろとこの問題について陳情を受けておりますが、これは非常に嘆かわしい状態でありまして、これにつきましてはぜひ内閣の方で夏剣にこの問題を解決するような努力をしてもらわなければならぬ。  ところが、この自衛隊の方を受け持っておられる船田長官も、過般の答弁において、これはわれわれの出る幕ではない、外交交渉でぜひ円満に解決せられることが必要であるというようなことを申し述べておられたように記憶いたしておりまするが、その後の外務省における韓国代表部との交渉なり、あるいは過日外務大臣からも申されました、アメリカの極東軍の司令官あるいはアメリカの陸軍長官なども好意的にあっせんしようとする意向を持っているやに申されましたが、そのあっせんの経過なり、この臨時国会も明後日で閉会になりますので、それまでに、今内閣が外交交渉でやっていこうとしておるのでありますが、その交渉の経緯について簡単に御説明を願いたいと存じます。
  70. 重光葵

    国務大臣重光葵君) 日韓関係は、先ほど御説明の李ラインの漁業状況が直接の原因であったことは、これは申すまでもございません。そこで非常に両国の関係が緊張した状況になったのでございますが、私はまずこの両国の緊張関係を平静にするということが一番大切だと思います。これは根本の問題としては、双方の関係を交渉によって、話し合いによって解決するという平和的手段によって解決する、こういう方針であることは、これはたびたび繰り返して申し上げた通りであります。その方針で参らなければなりません。そうして交渉を軌道に上せるためには、ただ感情に刺激されるような状況であってはいけませんから、平静にする必要がございます。  そこで、私は政府として特にとった処置ではございませんが、漁業者においても自粛をするし、また韓国においても極端な手段をとらぬと、こういうことになって平静状態が回復されるんだと思います。その間にあって、それじゃ外交上どういうことをしたかと、こういうのが御質問の要点でございますが、韓国の外交機関と申しますか、代表部との間に絶えず連絡をとって、その方向に向けておるわけでございます。しかしそれだけではなかなか、これは何と申しますか、十分に参らないことをおそれて、そうして一番利害関係を持っている米国との間には絶えず連絡をとり、意向を表示して、さようなわが方の方針をよく理解してもらって、さように平静な事態になるように尽力を頼んでおります。それは米国側も十分にその方針に賛成をいたしております。賛成をいたして、平静の方向に持ってきて、そうして次は根本的の問題解決のために交渉を軌道に上せる、こういうふうな考えを持って、そういう考えには賛成を得て、助力を得ておる次第でございます。一々のことについては差し控えますが、それだけの、そういう方向で進んでおるのでございます。平静を回復するという、また準備のでき次第に交渉に入りたいと、こう考えております。
  71. 小滝彬

    ○小滝彬君 ただいまのお話は、ただ日本政府の方向をお示しになっただけでありまして、その後の進捗状態というものには触れられなかった。これは対外的な関係もあるので今言うべき段階でないという御趣旨かもしれません。私はそれを無理につつこうという気持はございませんが、一つ今アメリカの話が出ましたので、これについてお伺いいたしたいのは、日本側としては話し合いによってこれを解決しようとしているのだ、この方針はアメリカも了解しているという御趣旨でありましたが、それはもちろんその通りだろうと思います。がしかし、一体あっせんしようというような場合におきましては、あっせんをしてもらう側の人間が頼むと頼まざるとにかかわらず、少くともその一方は腹づもりとしてどの程度のことを考えておるということがわからんというと、なかなか話し合いというものは進むものじゃない。これはもうすでに私どもも経験してきたところでありまして、そこで内閣では、とにかく外交交渉でやっていこうという意思を表明しておられまするし、またその方向へ努力してわられるようでありまするから、私の想像では、相当程度の日本側の気持というものは、かりに閣議で確定していないまでも、政府首脳として、外交当局の首脳者として、大体自分考えはどうなんだ、こういうところまではいける。もし相手方がここまで出るならこうするというところまでは責任を打ってやってみようと思うというような話がなけらねばならぬと思います。これは私は内容について御質問するわけではございませんが、事態がここまできた以上、一昨年の十月の会談がブレイク・ダウンいたしまして以来、外務省は事件があるごとに厳重抗議をする、賠償請求の権利を留保するというような紙きれは出しておりますが、これはなるほど表面的には一方必要なことではありましょうが、それだけでは解決しない。結局平和的にやるという場合には、相手方はなるほど理不尽かもしれませんが、そこには何かきっかけを作らなければならない。こちらの方にもある程度相当な決意があってこそ、初めて今おっしゃるような平和的な話し合いに乗ってくるだろう。大体日本側はどういうことを考えている、韓国側はどういうことを希望しているかということは、過去三回の会談によってもわかっておりまするし、最近のいろいろ宣伝的な先方の表明によってもわかっておるわけでありまするが、その点外務大臣は……、内容の詳細を聞こうとするものじゃございませんが、どういう方法でアメリカなどと会談しておられるか、その点をお伺いしたいと思います。
  72. 重光葵

    国務大臣重光葵君) 今の御質問に対しては、私は先ほどのことを繰り返すよりほかに方法がございません。一体外交交渉をやろう、こういう問題を解決しようというのに、どういう方向に大体向けていかなければならぬかという考えもなくしてやるわけはないから、考え方を言え、こういうようなふうにも聞き取れます。私はその交渉をやるに当っては十分考えを持ち、方針を持ってやっておるのであります。しかし、その方針は今申し上げる通りに話し合いによって、平和的にこれを解決しようという方針であって、そこで決意と言われるが、一体どういう決意を表示せよと言われるのであるか、私はむろん交渉をまとめようというその決意は持っております。交渉はあくまでまとめたいという、これで決意といえば決意は持っておる。しかしながら、日韓の関係において与党の議員方が決意をあまりされるということは私は歓迎しません。(笑声)のみならず、それについてまたそういう意味ではなかったのだというお考えがあるならば、それは何どきでも伺いまして、それは別の機会に言います。
  73. 小滝彬

    ○小滝彬君 私は決意があるかという趣旨ではなくして、こうなりました以上、今の御答弁を聞きましても、とにかくまとめるという希望があることは、これはみな一致の意見でありまして、これは野党においても異存のないところだと思います。しかしここまで相当長引きましたし、これまでの決意を内閣もしたのでありますから、私の言わんとする要点は、今までのように百八十五人の与党で、いろいろの方面に右顧左眄といえば語弊があるかもしれませんが、考えをめぐらすことなく、確信を持って一つやっていただきたい。そうしてそれをさらに平たくもう少し具体的に申しますならば、一体外交交渉に当りましては、とかく世間が非常に興奮しておる際には、あれは弱いじゃないかというようなことを非難を受ける場合も少くないのでありますが、しかしそういうことはあまり心配しないで、今おっしゃった決意というものか、何ですか、とにかく確信を持ってこういう外交交渉を片づけようとすれは、決して大向うのかっさいを博することはできない。あるいは町の方で大会をやっておる人は非常にそれに対して反対の気勢をあげるかもしれないが、そういうことにぐらつくことのないようにぜひやっていただきたい、こういう趣旨でございまして、しかもそうなれば、もうそろそろ日本側の交渉の骨子になるようなものは決定せられておかなければならないときであるからして、この点は十分整えた上でなければ、交渉というものはとかく、いざ交渉になりますると事務的な話し合いになるので、それまでの政治的な断というものが相当内容的にも下されておらなければならないと思う。その点については手抜かりのないことであろうと思いますが、釈迦に説法かもしれませんが、ぜひ今の御趣旨を十分了解していただきたいと思いまするが、その点についていま一度大臣から所感をお伺いいたします。
  74. 重光葵

    国務大臣重光葵君) この問題に対する外交のやり方について今お話がございました。私も同感でございます。
  75. 小滝彬

    ○小滝彬君 それでは少し具体的な問題に入りまして、これは非常に留守家族などでも心配しておる問題であり、例として申し上げますならば、私どもの選挙区でも三十人以上の者がもう韓国で刑期を終えたにもかかわらず、依然として釜山に抑留せられておる。毎日のようにこの問題を早く解決してもらいたいという要求がありますが、この問題は、大村収容所におるところの一九四年九月一日以前に日本に滞在しておった者でそうして刑に処せられた者、そして日本の出入国管理令の立場からいうならば、向うに送還しなければならない者が依然としてそこにつながれておる。これを釈放してもらえれば、すでに韓国において、韓国側のいういわゆる刑期を済ました者は返してやろうという話し合いが、大体外務省と韓国側との話がついておるということでありますが、ところがどうも、聞き及んでおるところでは、依然として法務省側にこれに対して異論もあるということであります。これは外務省でなしに一つ法務大臣の方にお伺いいたしたいと思いましたが、法務大臣急用で行かれたようでありますから、法務省の係官からこの取扱いはどうするつもりであるか、外務省ともいろいろ話し合いがあったようでありまするが、これをどう持っていくか、いかに早く解決しようとしているか、またその方針は最終的にどうなっておるかということを説明願いたいと思います。
  76. 重光葵

    国務大臣重光葵君) この問題について、法務大臣がおられませんけれども、交渉に関係することでありますから、私からもお答えをいたしたいと思います。  この漁民の救済ということはほんとうに急務でございます。今小瀧委員の選挙区から云々というお話がございました。私の選挙区からも同様な状態、(笑声)九州でございまして、同様な状態でございます。私は選挙区の問題以上に、国家の問題として私はどうしても救済したい、日本国民がそういう状態におるんだからどうしても救済したい、そういう見地に立って私は交渉いたしております。今日まで思う通りにはかどらぬことはまことに遺憾でございます。どうもやり方が悪いからそうだ、こういう御非難をこうむるならば、これもやむを得ません。しかし私はこの交渉を一日も早く実らせたいと、こう考えております。  それについて大村の収容所の問題が関係のあることも、これまた事実でございます。そうして大村収容所の問題は、これは法規の手続を経て法務省の管轄でやっておることでございます。それを収容されておる韓国人を釈放するということが、これが何と申しますか、対象になるわけでございます。そうでありますから、法務省の当局としてこの交渉を実らせるために、それに関連する手続を、何と申しますか、簡略にするとか、また政治的にこれを考慮して取り扱うということは、法務省の係の人にとってはずいぶん異存のあることだろうと私は思います。さような困難をも排除して、そうしてこの問題を解決しなければならぬと、こう思っておるわけでございます。  そこでさような無理は、ある場合においては大きな利益のために国家的に考えてやむを得ないとこう考えておるので、その点を法務大臣とよく相談をして、法務大臣と私と同様な意見で、この問題を早く解決したいと思ってやっておるわけでございます。  それを、それならばすぐそういうわけで問題が解決するかというと、また韓国側には韓国側のいろいろまた何がございますので、その今調整を進めておるわけでございます。日本側の国内のいろいろ手続が、何があります。それをやってそうして韓国側によくそれを納得してもらって目的を達したい、こういうことで進めておるわけでございます。私はこれはそう遠くないうちにこの問題は解決すると、こういう見通しをつけて進んでおることを申し上げたいと思います。
  77. 小滝彬

    ○小滝彬君 私はまず結論的に言えば、こういう交渉のきっかけができたということは非常にけっこうなことであって、ぜひその方向に法務省を引っぱっていってもらいたいと思っておるのであります。もうすでに八月から、私自身も韓国代表部へ出かけていきまして、向うの意向をサウンドしたのでありますが、大体こういう抑留者については話し合いがつくのではないかという見込みがありましたので、外務省の方に申し入れ、外務省の方も八月来努力を続けて、そうしてしかも過般第二次鳩山内閣のときでありますが、金公使と花村大臣も会ったようでありまするし、また閣議のあとで外務大臣からも法務大臣の方へ申し入れをされたというような情報も聞いておりまして、もうこの問題は片づくであろうと思っておりましたところ、なかなか、法務省の方でいろいろの意見が出て、それが長引いてきたということになってまあ八月ごろからもうそろそろ何とかなるのじゃないかと思っておったのが、年末を控えてまたもう一つ年を釜山で越さなければならないというようなことになっておることは非常に遺憾でありまして、この点は法務大臣が見えておったら法務大臣に直接お伺いしたいと思っておったのですが、入国管理局長が来ておるようでありますから、入国管理局長でもけっこうでありますから、御答弁を願いたいと思います。それはきわめて、最近の新聞でも、ぜひこれは強制的に退去させなければならぬ、退去の保証がなければならぬ、こういうことを相当強く依然として固執されておるということでありますが、これは事実でありますか、入国管理局長にお伺いいたします。
  78. 内田藤雄

    政府委員(内田藤雄君) お答え申し上げます。われわれ法務省の立場をちょっと簡単でございますが御説明させていただきたいと存じます。  今、大村に入っております者の数は大体千六百八十五ぐらいになっておりますが、その中で大多数は、千三百名は密入国でございます。当面問題になっております戦前からの犯罪者の数は約三百七十でございますが、これらの人々はわれわれの方で手続を、国内法の手続はもちろんでございますが、しぼりにしぼってそういう数字になっております。大体前科一犯ないし二犯で入れております者は殺人とか強盗、あるいは麻薬の密輸、大量のブローカーあるいはヒロポンの大量の製造者といったようなものでございまして、あと前科三犯以上、これがほとんどその大半を占めるのでございますが、三犯から十二犯までの人々の大体は窃盗、臓物故買、詐欺横領というようなことの常習者でございます。従いましてわれわれの立場から申しますと、こういう悪質外国人は当然国外に退去できる、これは国内法の根拠ばかりでなく、国際的な慣行としても当然そうであると信じてやっているのでございまして、これらの人々を正当の理由なくして国内に釈放いたしまして、そのために善良なる日本国民が不当の被害をこうむるというようなことがあってはこれはまことに嘆かわしいことであるというのが第一の理由でございます。  それからもう一つは、将来のことを考えました場合には、現在刑務所に入っております人の約一割は朝鮮人でございます。毎月々々われわれの手元に退去強制の該当理由で送られて参ります者は約百名ほどでございまして、その中からただいま申し上げましたようなよくよくな悪質者を選んでわれわれは退去に付しておるのでございますが、そのパーセントは大体一割五分ないし二割でございます。今後この種の人々は毎月々々ふえて参るわけでございますので、これらの問題につきましても、将来何らかの保証を得たいというのが法務省としての切なる希望でございます。  それからもう一つ、われわれの非常に重要に考えておりますことは、重要と申しますか、外務省にぜひお願いしておるのでございますが、従来の李政権のやり方を見ますと、要するに人質を取って、それを種に彼らの政治的要求を一つ一つ要求して参るというようなきらいがございますので、この点につきまして、現在李ラインの問題、根本的な解決はこれはなかなかできないかもしれませんが、その解決できないならできない状態のもとにおいて今後どういうふうに措置していただくのか、それとの関連においてやはりわれわれの方のことも考えたい、そういたしませんと、今後ただ向うの人質を、人質と申しちゃ悪いかもしれませんが、漁民を返すためにわれわれはここで一つの譲歩をいたす、やり方によってはますますこれは漁民をつかまえた方がいい、つかまえていけばまた日本はへこむ、こういうことになっては大へんではないかという懸念から、できる限り外交交渉におきまして、将来に対する何らかの保証をとっていただけないだろうか、こういうことが法務省の希望として持っている点でございます。
  79. 小滝彬

    ○小滝彬君 今申されました数字のようなものは、与党におきましても今、日韓対策特別委員会なるものを設けておりまして、私ども始終聞き及んでおるところであります。私はこの委員会での意向も反映して今質問しておるのでありますが、たとえば国内釈放を行なったならば治安に影響がある、まことにその通りで、こういうことはやりたくないということは私どももよく知っております。しかしもう少し大きな見地からこの人道問題に対処しなければならぬ、そしてまたこれがいいきっかけになるかもしれないということを考えているものでありまして、その見地から言えば、釈放するのはなるほど残念でしょうけれども、日本にだって前科二犯以上十犯、二十犯の者もおるわけであります。そしてまたそれに対する保護措置、監視の措置も全然とれないというわけでもなかろうと思う。こういう特殊の場合でございますから出入国管理令のたしか五十二条の第六項というものを見まするというと、放免することもできる、すなわち法律上できないというわけでもない。法律を改正しなければならぬというわけでもないので、この際はこういう措置をとるということは必要である、外交上から見てどうしても必要だということになれば、それに応じたところの国内措置考えられて、ぜひそれに沿う措置が法務省としてとらるべきものであるというのが私どもの見解であります。  また、人質を取っておいて勝手なことをするかもしれない、だからうっかり出せぬということでありますが、なるほどそういう心配もありまするが、しかしこれは外へ出してしまうというのでなしに、国内に釈放せられておる以上、またつかまえようと思えばつかまえられる。私はこの公開の席上においてそういう込み入ったことを長々申したくはないのでありまするが、とにかくこれは一つのテスト・ケースである。そうしてもし今後においてそれがうまくいかないようなことになれば、その前科の韓国人というものは日本国内におるからして、それに対する措置はとれないわけはないと、こういうように私は信じております。  また、外務省にお願いしたいという今のお言葉、なるほど法務省という一つの小さなセクションから考えればそうかもしれませんが、私はこれを外務省に強く要求するということには多少無理がありはしないか、これもこの席であまり長く論ずるということはあるいは新聞などにキャリーされるかもしれませんから好ましくないのでありますが、ぜひ法務省の係官の方でもこの点は考えてもらいたい。と申しまするのは、韓国人の従来長く日本におった、一九四五年九月一日以前におりました韓国人については、国籍、処遇問題というものは、この日韓会談でもなかなか論じられておる、この根本問題の解決なしに、直ちにそれを引き取るというような確約を取るように努力しろといっても、ますます時間が長引くだけであります。外務省は、今重光大臣が言われた通り一生懸命やっているかもしれませんが、やはり外交というものは相手のあることであって、これに対してそれを直ちに何かのアシュアランスがなければ釈放はできないのだというようなことを言っておれば、先ほど申しますようにこの年末も向うで暮さなければならぬ、またそれからごてごてしたら半年かかるかもしらぬ、一年かかるかもしらぬので、この点についてはぜひ法務大臣に大英断を用いてもらいたい。これが決意という言葉が悪ければ、ぜひともそういう気持で外交交渉で進めていこうというなら、そういう気持に重光大臣のみならず、他の大臣もなっていただくように、これは重光大臣からも一つ法務省に強く働きかけていただきたい、こういうふうに私強く要望いたすものでございますが、大臣いかがでございましょうか。
  80. 重光葵

    国務大臣重光葵君) 全く私はその方向に動いております。むろん人質云云ということは、これは一体何と申しますか、外交の問題で考えなければならぬ問題であります。また政策的に考えなければならぬ問題であります。それは政府が決定をいたします。そうして法務大臣と協議して進めていきたいと、こう考えております。
  81. 小滝彬

    ○小滝彬君 非常に重光大臣のお話を聞きまして意を強くいたしましたが、ぜひこの際外務省が強力に内地の関心を引っぱっていただきたい。今の入国管理局長のお話は私は納得できない。それは困難なことはあろうけれども、この際そういう六法全書を引いたような議論でなしに、ほんとうにこれを解決しよう、一歩ずつ進めていこうというなら、これが一つのきっかけになるというようなことは、新聞などにも出ておりますし、私もそういうふうに感じております。あるいはこれがうまくいかなければ、そのあとで方法を変えることがあるかもしれませんが、ぜひそういうふうに取り計らっていただきたい。しかもそれを早急に取り計らっていただきたいということを強く外務大臣要望いたしておきます。  次に船田長官が見えておりますので、船田長官に一つ御意見をお伺いしたいと思いますが、これも選挙区云々と言ったら重光大臣からしかられるかもしれませんが、この竹島という島は私の選挙区島根県の管轄下にある島であります。(笑声)ところが、この島は一時ずいぶん問題になりまして、外務省でも係官が勉強しておりましたことを、私も政務次官をしておったときに知っております。なるほど抗議文なども出しております。がしかし梨のつぶてで何の反響もない。向うは本来日本が取ったのは間違っておるというような言い方をしておる。そこでああいう文書を往復しておっても解決できない。実際問題として、外交的見地から見て解決できない。それじゃ国際司法裁判所に訴えるかと申しましても、これもやり得ないことであります。これは向うの方は応訴しないでありましょう。国連に訴えたらと、衆議院で北澤君から——これはほかの問題であったかもしれませんが、申しておりましたが、これも何としても世界の平和を大きく攪乱する問題でないから、これをテーク・アップしてもらうということも事実不可能である。ところでこの問題を解決するのにどういう方法が平和的にあるかというと、かりにほかの問題、李承晩ラインの問題など、重光さんの努力で取り上げられるようになりましても、竹島の問題はちょっとむずかしいと思う。というのは、向うはこれはもう会議のアゼンダに上るものじゃない、おれのものだと言っておるので、非常にむずかしさがある。この竹島の問題は他の日韓間の問題と切り離して考える余地はないだろうか、これを法律の大家である船田長官にお伺いしたいと思います。  一体こういう竹島を向うに取られるようになり、また李承晩ラインで苦しんでおるということは、これは李承晩のはなはだ手前勝手のけしからぬ、国際法を無視した行為であります。しかし静かに翻って考えてみますならば、占領下においてもマッカーサー・フインというものがあった。そうしてまた朝鮮事件が起りましてからクラーク・ラインというものがあった。これがなくなって後、どんどん日本人が近海に出てきて困るという懸念があったかもしれないということは、ある程度外交などを考える場合、向う立場というものも考えてやらなければならぬ。しかりといたしますと、アメリカもこの問題は知らぬ存ぜぬで済まされぬ。少くとも道徳的の責任もあるということは考えられるわけであります。しかもアメリカの軍当局にも相当責任があるというように言っても差しつかえないじゃないかと思います。ところでそれじゃ、先ほどからアメリカのあっせん云々ということもありましたが、アメリカの方でただ外交的に国務省が動くというのでは竹島の問題はなかなか解決できない。  そこでこの日本とアメリカとの協力関係を律した文書などを見まするというと、その規定ははなはだはっきりはしておりません。がしかし、安保条約の第一条を見るというと、武力攻撃に対する日本の安全に寄与するということが一つの駐留軍の目的になっておる。なるほど武力攻撃はないじゃないかという議論もあるかもしれませんが、日本の主権のある所をもう勝手に占拠して、そうしてそこにいて、日本の船が近づけばそれに対して発砲するというような行為をとっておるのでありまするから、これは一つの武力攻撃をやっておるものとも解し得られるのじゃないかと思います。このように考えてみまするというと、アメリカの方はこの竹島に関する限りは、特にアメリカの海軍力などを利用してでもこれを日本側の主権下に置くような努力、援助をしても差しつかえないじゃないか、そうして日本の方は行政協定の二十四条によってこれを要求しても差しつかえないんじゃないかというふうに考えるのでありますが、船田長官の御見解はいかがでありまするか、お伺いいたしたいと存じます。
  82. 船田中

    国務大臣(船田中君) ただいま御質問のありました竹島の問題は、まことに遺憾な事態になっておると存じます。しかし竹島が武力占領をされて、そうしてしかもそれが日本の区域における敵対行為、もしくは敵対行為の脅威であるかどうか、こういう問題になりますると、今直ちにこれを肯定するということには私はいかぬのじゃないかと思います。また竹島の問題を他の問題と離して、利害関係、あるいはただいま御質問のありました抑留者の釈放の問題とか、そういう問題と切り離して、竹島だけの問題を特に解決するということもできがたい事態になっておるかと思います。これらの問題は、外務大臣から御答弁のありましたことと大体私も同様に考えておりまして、何とか外交交渉によりまして円満裏にこれを解決する、平和的解決を期待いたしておるわけであります。今直ちに行政協定二十四条の規定を適用するとか、あるいはそれの発動を期待するとかいう事態とは考えられない、私もそういうふうに考えております。
  83. 小滝彬

    ○小滝彬君 私も大体考え方としては船田長官と同じなのでありますが、外交問題としてやるのに非常にこの問題は困難ではなかろうかと思いますので、何か方法がありはしないかと考えてみたわけであります。二十四条はなるほどこれに適用しにくい点もあるでありましょう。ただ、これが李承晩ラインといささか性格を異にしておる点は、李承晩ラインというものは、公海というどこにも属しないところの共有の世界の財産に対して自分の独占権を主張するようなものでありますが、一方の方は明らかに日本の主権が確立しておると認められておる所へ入ってきたのでありますから、その取扱いぶりについては、今の平和交渉の原則はまことにけっこうで、私はこれは全面的に支持しますが、この問題は別個に取り扱い得る多少の法内な根拠がありはしないか。そうしてまた実際問題としての見地から見ましても、そういう方法をとる必要がありはしないかという考え質問いたしたのでありますが、船田長官の気持も私はよくわかるのでありますが、この点は今後さらに外交交渉で片づけばけっこうでありまするが、別個の方法をぜひ外務当局でもお考えを願いたいということを申し上げておきたいと思います。  なお、最後にもう一つ重光大臣に申し上げたいのでありますが、これはさっき申しましたことと多少重複する感があるかもしれません。今外交的にあらゆる方法を講じるとおっしゃいましたが、それについてもちろん韓国側は、日本のやり方について非常に不当に誇張していろいろの宣伝をしておる。よく掘り下げてまた説明をすれば、世界各国にわかることでありましょうが、少くともこれまで第一次、第二次鳩山内閣における——外務大臣は別であったと思いますが、いろいろ責任者の発言が、あたかも日本は北鮮や中共、ソ連とフラターナイズする気持を持っておるんじゃないかという印象を与えたということは、重光大臣もおそらくこれを率直にお認めになるだろうと思います。私は、重光大臣がアメリカへ行かれましたときに、自分ソ連とフラターナイズするつもりはないという演説をされた。帰ってから多少弁解的なことも申しておりますが、私は双手をあげてこれに賛成するものでありますが、この点私は重光大臣を激励して、今後ぜひああした点をはっきりしてもらいたい。はっきりしないで、あるいは野党あたりから質問がありまする際に言葉を濁して、御説ごもっともだがという言葉がありますると、それが非常に向うに悪用される点もありますから、はっきりとした態度——たとえばイーデンが共産圏と共存する必要はないということを言ったことが昨晩の新聞に出ております。日本あたりでは、イギリスであれば中共あたりと大いに仲よくやろうというので、首鼠両端を持している国のようにいう人もありますが、はっきりしなければならぬところははっきりして、私はこの外交をぜひ推進してもらいたいと思う。ところが昨日外務委員会での御答弁では、個人的な取りきめを共産圏とするような人もあるが、これに対して干渉がましいことを差し控えなければならぬというような御発言がございました。まあ戸の外務大臣が言わんとせられる気持は私自身にはわかるのでありまするが、私はこれについてはもう少し措置の仕方がありはしないかということを考えておるものであります。  そこで具体的な問題を最後に取り上げまするならば、これは私吉田内閣時代から主張してきたものでありますが、旅券法はもう少し改正して、今のような非常におもしろくない人的交流の状態を是正する必要がありはしないかどうか。これに対しましても曾祢君あたりから反対があるかもしれませんが、今の旅券法によりまするというと、為替管理法によって渡航についての制限をする場合を除いては、「著しく且つ直接に日本国の利益又は公安を害する行為を行う虞があると認めるに足りる相当の理由がある者」については旅券を発給しないこともできるというようになっておりますが、実はこれがあるために向うから招請されるというと、おさえる手はない、どんどん出ていくそうして向う様が宣伝に使うような、また一番いいところを見せてやって日本に送り返して、そうして日本において今や基地問題などをとらえて反米思想がはびこっている際に、これに輪をかけていろいろな国内で先方の平和攻勢を助けるような行動をする人をたくさんつれていく。そういうことになるのでありますから、私はこの憲法二十二条の点については、きょうは法制局長官も来ておりませんから論じませんが、とにかくすでにこの旅券法もある。これに対してもう少しこの渡航の自由についての制限を為替管理法におけるがごとく、その目的がどれだけ国家的に役立つかというような点も加味して、旅券問題を取り扱い得るような方向に持っていきたい、こういう考えを持っておるのであります。  これにつきましてはあるいはもう半年以上も前に大臣に質問したことがあるかもしれませんが、昨日のお話を聞いておりますと、ますますそういうところをもう少し締めていって、もう少し公平にこっち側の出したい者を向うにやる。向うから招請されたからといって何百人がどんどん出ていっても、これをおさえることができないというのでは、ほんとうの清新強力なる政治はできない。どうでございますか、旅券法について少し手をつけて、外務大臣などが心配しておられるような点、いろいろおもしろくないような心配を友好国に与えるというようなことのないように、もう少し方法を講じ得ると思うのでありますが、その点についての見解を最後の質問として、外務大臣にお伺いいたします。
  84. 重光葵

    国務大臣重光葵君) 私は国交のある国とない国に対する考え方をはっきりさして、態度を十分はっきりさしていかなければならぬ、まあそれは共産主義国に主として対することになります。私はその通りだと考えます。これは日本立場及び考え方をはっきりさせることが、与国に対して誤解を招くだけではない、相手国というか、共産国に対してもこれは必要であると思う。また共産国もむしろそれを喜ぶ、歓迎することじゃないかと思う。そこでこれははっきりさせるということは私はけっこうだと思います。そうでないというと、あいまいなことじゃ相手方もわからない、それをはっきりさせることはそれは非常にいいと思います。その点は私はつまり御同感の意を表します。これは大きな一般方針でございます。  そこで政府のやり方、私の答弁などこれは少しあいまいじゃないか、 こう言われます。しかしそれでは共産国——中国との間に一切交通も何も遮断してしまって、人的交流も物的交流もないようにするのがいいか、そういうことを言われておるわけでもむろんないのであって、日本の国のために必要な物資の交流、たとえば国際義務に反しない限りにそれをやろうとこう言っておる政府の方針は、私は正しいことだとこう思っております。それに必要なことはこれは人も物もこれは交流する、つまり旅券の発行によってもそれはでき得ると、こう解釈します。  旅券法の条文を今見てみますというと、ずいぶんこれは解釈によって、運用によってこれはきまる問題でございます。そこで旅券法を今改正するとかいう問題はまだ私は、まだと申しますか、今日ではその必要は私はないと思います。旅券法は現在の旅券法でこれを正しく運用していくということは、これは必要であると考えます。まあさようなことで答弁を……。
  85. 小滝彬

    ○小滝彬君 多少誤解があったかもしれませんが、私は旅券法を改正して、全然向うへ行けないようにするというのでなしに、岡崎君が大臣をしておりますころから、やたらにこわいものに手でもってそれをおおいかぶしておくというようなことでなしに、ある程度空気の流通をよくしなければならない。それには今の旅券法の運用とおっしゃいましたが、あの旅券法を厳格に解釈するといつも問題が起きるわけで、訴訟問題なんかも起しております。そういうことなしに、この渡航について昨日来問題になっておりまするように、ただ向うの思う人だけが行って、ほかの連中は為替管理法でおさえられちゃう、非常に片手落ちなっておるので、そういう点を是正するのにはどうしてもあの旅券法に一条ぐらいを設けておくのじゃなしに、はっきり共産圏との交通についてはこうこうかくかくのことである、こういうことを設けるか、あるいはまた招請によるものに対しても、為替管理法におけるあの選択方法と同じような、審議会を通して審議する必要があるというような点を、ぜひ今度の強力なる内閣において考えていただきたいということを申し上げましたので、私は答弁は要求いたしませんが、ぜひこの点を御考究願いたいと思うし、また旅券法も今すぐは必要はないじゃないかというお話でありましたが、事務当局あたりでも必要と認めておるかとも私はそんたくいたしておりますので、ぜひ少くとも研究をさせていただきたい、こういう希望を申し上げまして私の質問を打ち切ります。ありがとうございました。
  86. 矢嶋三義

    ○矢嶋三義君 関連して……。外務大臣はただいまの小滝委員の誘導質問に対して非常に不明確な、しかも先般私が本委員会で質問し、それに対して総理並びに外務大臣が答弁された内容とやや背反する意思のぼかした答弁をされた点を、私は遺憾に存じます。  従って、あらためて明快に御答弁いただきますが、それは先般私の質問、あるいは衆参を通じての質問に対して答弁されている大きな筋というものは、鳩山総理は国交が正式に開かれていない国、具体的に言えば中共というようなものを取り上げるというと、正式に国交が開かれていない国との交わりというものをできるだけ考えたい、こういう意味のことを申されております。また人の交流というものをはかることは、それによってお互いの国際理解というものがはかられるのであるから、そういうことも進めて参りたい、こういうことを払の質問に対して両大臣はお答えになっておられたのでございます。従ってその角度から考えましたときに、この旅券法はその運用で峻厳にも、また寛大にもいろいろ運用ができるわけでございますが、従来これは中共、ソビエトというような共産圏各国に外傷省が旅券を出されて参りました従来の方針というものは、これは後退させることなく、むしろこれは推進する意向であるかのように私は答弁を了承しておったわけでございますが、ただいまの小瀧委員質問は、旅券法をもう少し厳格に解釈して、もう少し締めたらどうかという質問がなされたわけでございますが、それをあたかも受け入れるかのごとく、しからざるがごとく、あいまいな答弁をされておりますが、一つ明確にお答え願いたいと思います。もしかつての私の質問に対する答弁と食い違ったならば、私は大臣の責任を追及します。
  87. 重光葵

    国務大臣重光葵君) 私ははっきりお答えいたします。大きな一般問題、政策問題として、そうして日ソ交渉をやっておる、平和に貢献するためにやっておる、これは事実その通りでございます。それからまたその他の共産国といえども、特に中共の問題、国際義務に反しない限りにおいて私は物の交流、人の交流ということは考えて差しつかえないと思います。さようなふうに国際間の、国家と国家の間と申しますか、国際間の状態をできるだけ緩和するように導くということは、これは一般方針としては適当なことだと、こう思っております。しかし国際的の義務もあるし、中共との間に貿易をするのが日本の利益であるからといってどんなことでも……、軍需品をどんどん送るということは、これはできません。国際的の義務に反します。そういうことははっきりと態度をきめて、はっきりとして私はこれに臨むことが、向うもむしろ希望すると、こう今申し上げたのであります。そういうことをはっきりしなければ、日本は中共に軍需品を送るような考えを持っておるんじゃないかといって、アメリカがこれを誤解すれば、アメリカとの関係は良好には進みません。そういうことをはっきりしておく、こういうことを私は申し上げた。しかし旅券法にはですな、日本の利益または安全を害する行為を行うおそれありと認められるような者に対しては旅券を交付することはないと、こういうようなこともございます。  それならそれをどう解釈するかというと大体私は今のような方針、はっきりした方針のもとにこれを解釈していけはいいのであって、これを今非常に窮屈にするとか、またこれを全然緩和していくとか、そういうようなことをする必要がないということを申し上げておるのであります。旅券法を改正する考え方は今日において持っておらぬ、こう小瀧委員にお答えしたわけであります。
  88. 矢嶋三義

    ○矢嶋三義君 関連してですが、簡単にお答えを願います。ということは、旅券法の運用に関しては過去において、最近において運用された方針を別に変える考えはないと、こういうように了解いたします。異議があったら御答弁を願います。
  89. 西郷吉之助

    委員長西郷吉之助君) 二時まで休憩いたします。    午後零時五十一分休憩      —————・—————    午後二時十八分開会
  90. 西郷吉之助

    委員長西郷吉之助君) それでは、ただいまより委員会を再開いたします。
  91. 千田正

    ○千田正君 最初に大蔵大臣にお伺いいたしますが、今朝の各新聞紙が一斉に、どうも最近の大蔵官僚は非常に横暴であるから、与党の内部においては大蔵省に対して、予算編成権をむしろ政党において握ろうと、こういう空気が非常に強くなってきておる、こういうことが一斉に報道されておりますが、これは行政機構改革その他をめぐって非常に重大な問題であると私は考えるのであります。よって来たる原因が那辺にあるかということを考えましたときに、これは現在の大蔵省がとっておるところの予算編成に基くところの官僚独善の姿が日本におけるところの政党政治に反映した一つの大きな原因であろうと、こういうふうに考えられますが、大蔵大臣はこういう問題についてどういうふうにお考えになられますか。
  92. 一萬田尚登

    国務大臣(一萬田尚登君) お答えします。大蔵省の役人が実に、今のお言葉を拝借すれば、横暴であるとか、そういうことは私ないと思います。ただ考えられますことは、最近数年にわたりまして緊縮財政をかたく守っております関係からいたしまして、各方面にいろいろと、まあ国家のためではありまするが、直接には御不自由をかける、こういう余儀なき事情にもあろうかと思います。こういう場合にいろいろと御批判もあろかと思いますが、われわれ大蔵省の者としてはそういうところを深く反省いたしまして、そういうような非難の起らないように努めていかなくてはならぬと考えております。  なお、こういうことに関連しまして、機構の点も御指摘でありますが、私は、もしも国家国民の上から見ていいということは、私はそれは純粋な気持においてやるべきだ。ただ事柄が、ほんとうにそういうふうな十分な検討を加え、またそのことがよくても、さらにそういうことが当面非常に適当するかどうか、各般のことを私は考えて機構というものについては処理すべきであると、かように考えておる次第であります。
  93. 千田正

    ○千田正君 この問題は非常にわれわれといたしまして、私は与党ではありませんから、この問題についてどうというわけではありませんけれども、真剣になって今こういう問題について考えられることは、ただいま大蔵大臣がおっしゃた通り、いろいろな問題がそこに錯雑して現われてきておると思います。それでまあ十分に反省されて、この問題は、立法機関と行政機関が相携えて国の政治に完璧を期すということは、もちろん、今大臣のおっしゃる通り、当然でありますが、あなたの信念をもってこの問題を十分に調整できると、こういう確信なもって今後進まれる御意図でございますか、その点はどうでございます。
  94. 一萬田尚登

    国務大臣(一萬田尚登君) ただいま申し上げましたように、私は正しきものを正しいといたします。理由のあるものを理由ありとして、それに従って私の所信を断行していくつもりであります。特に今お話がありました、ただ、何だか横暴であろうからというような、そういうような気持において行動をするというようなことについては、私は断じて組みしません。
  95. 千田正

    ○千田正君 先般トルコのイスタンブールで、国連世界銀行、いわゆる国際通貨基金並びに世界銀行の第十回の総会があって、大臣も御出席になったと思いますが、あの際、あそこで討議され、また決定されたうちに、国際金融会社の設立という問題があったと思います。大臣はこの問題につきましては、進んで日本もこうした国際金融会社に参加したいというお気持を表明されておったようでありますが、これは設立された場合において、現在の民間投資として外資導入を受け入れている日本状況と、それはこれとは別個な方向に、別個な立場で設立されると思いますが、多くの人たちはこの国際金融会社の本質を十分に知っていないのではないか、こう思いますので、これがほんとうに設立ざれた場合において、世界銀行との関連はどうなるのか、そうしてこうした国際金融会社が日本に、かりに日本加盟したときにもたらされるところの利益はどういう方面にあるか、こういう点をお尋ねしておきたいと思います。
  96. 一萬田尚登

    国務大臣(一萬田尚登君) お答えします。今日いわゆる世界銀行ですか、国際開発銀行が、世界の経済、特に後進国の開発に大きな役割を演じておりますことは、今さら申すまでもないのでありますが、なおこの機構をもっていたしましても、十分とは言いがたい。特にこの機構は金を借款する場合に、常に国家保証を、相手の国の保証を必要といたします。またそういう関係から、手続の上におきましても相当時間をとるとかというような不便もあります。こういうふうな点を考慮いたしまして、国家保証がなくして割合に早く金融の道をつける何らかの国際機関を今日必要とするであろうというところに基きまして、これは一九五五年に設立することがきまりまして、今日二十カ国が加盟することになり、約二千六百万ドルの出資で、出資の割合は世界銀行に対する出資の割合で、これは参加する、かようになっております。  私は先般世界銀行、国際通貨基金の年次総会に出ましたときに、この国際金融会社に参加する意思を表明したのでありますが、これは私の考えでは、目的は主として東南アジアの開発に目をおいておるのでありまして、私はこの世界金融会付より前に、特に今日の東南アジア諸国の開発のためにどうも国際的な資金を必要とする。それでできればこの東南アジア自体を目的とする極東金融会社とか、あるいはアジア金融会社とかいうようなものを一つ考えてみたいというような考えを持っておったのでありますが、まあそれはともかくといたしまして、この国際金融会社で比較的容易に金融を受けられるとすれば、これを東南アジア諸国に誘導して、個々の開発をやり、マーケットを拡大して、それが日本の産業に稗益するように、またこれが日本の産業のマーケットになるようにと、こういうふうな考え方であるわけであります。むろん日本も借りられないという理由はありませんが、これができた場合の利益は、主として東南アジア諸国の未開発の国々に重点が置かれる。資本金も三億ドルという程度でありますから、そう大きな金ではありませんが、さようになると思いますが、わが国が参加いたしますれば、世界銀行の出資の割合からいたしまして約二百七十九万、約二百八十万ドル出資しなければなりません。これは三十一年度予算におきましてこの加入についての所定の手続をとりまして、やりたい、かように今日考えております。
  97. 千田正

    ○千田正君 そうしますと、これは直接国内の方に導入する目標としては考えておられないと、こういうわけでありますか。
  98. 一萬田尚登

    国務大臣(一萬田尚登君) 実際、さようになると思います。
  99. 千田正

    ○千田正君 最近国内における民間外資の導入は相当入ってきておると思いますが、これはある程度——無制限に導入するというお考えですか。何か一つの、そこに一応の山が来ましたらそれを、基準を設けるとか、あるいは規定をするとかいう考えを持っておられますか、どうなりますか。
  100. 一萬田尚登

    国務大臣(一萬田尚登君) 外資の導入ということは、これは何も、本質において金融ではないのでありまして、外国から物を輸入する場合にその支払い手段を獲得する、言いかえれば、輸入に関連しての外貨獲得ということになって、ここに第二の制約があるのでありますが、そういう場合に、しからば、たとえば機械を外国から輸入する場合にどういうところにこれを許すかといえば、日本の重要産業であって、しかもこの産業が直接間接日本の輸出の振興に寄与する、こういうことが大きな柱になっております。ただ、それらについて私自身として若干例外を考えますのは、もしも借款が相当長期であってというような場合に、たとえば農業の開発、食糖増産のための農業の開発という場合、これは御承知の通り、金利が安くて非常に長い期間を要します。こういうようなものについて借款をする、これは私特に、貿易とはちょっと違いますが、認めていいだろうと思います。特に私がきらいますことは、日本で、もう今日はそういう情勢はありませんが、今までのところ、ずっと前までは、金融が逼迫しておる関係上、日本で金を借りない、外国からちょっと短い期間の金を借りて、そうしてそこでこれを円資金を調達する、こういうものは根本から排除していく。大体今申しましたように、重要産業に関係するもので輸出に寄与する、及び長期の、特にそういうものが食糧増産に——。こういうのが大体の柱になって、決して無制限というわけではないのであって、かつ外資の導入につきましては審議会も作りまして、十分審議したいと思っております。
  101. 千田正

    ○千田正君 通産大臣もお見えになっておるようでありますが、通産省は国際通商競争というものに備えまして、外貨の保有制度を新たに検討したい。特に海外における支店と本店との間の送金の手続の簡略化とか、あるいは外貨保有の運営の方法とかいうものを一つの制度化して、海外における日本のマーケットの確保のために外貨保有制度を作りたいということで、おそらく大蔵省にあるいは御相談になっておると思いますが、こういう点は大蔵大臣はどういうふうに考えておられますか。
  102. 一萬田尚登

    国務大臣(一萬田尚登君) この点につきましては、やはり私は、為替の正常化という意味から、そういう方向に進めていくべきだと考えております。
  103. 千田正

    ○千田正君 最後に二点だけ。一点は、日比賠償において、先般総理大臣から一応の御答弁をいただいたんでありますが、この日比賠償の原則は、御承知の通り、平和条約においてある程度縛られておる。それにもかかわらず、フィリピンに対する金銭賠償という問題が起きておりますが、政府としては日比賠償に応ずる金銭賠償をどれだけの額に考えておられるか。それとも、全然金銭賠償はやらない、役務賠償で行くのだという考えなんですか。それとも、金銭賠償をするならば、それだけの十分な財政措置ができるだけの余裕があるのかどうか。この点を一点伺っておきたいと思います。
  104. 一萬田尚登

    国務大臣(一萬田尚登君) フィリピンの賠償につきましては、日本とフィリピンとの国交の早く回復しまして、親善関係を一日も早く強くしたい、こういう考え方一つ。もう一つ国民の賠償負担、これをどういう程度に負担するか。私の立場からすれば、なるべく負担を軽くしたい、こういう両方の考えをもって、今日フィリピンの賠償に相対しておるわけでありますから、さよう御了承を得たいと思います。
  105. 千田正

    ○千田正君 私は日比賠償問題は今後起るであろうといろいろな賠償問題の一つのテスト・ケースというふうな問題に、われわれは考えるのでありまして、この際日本の国力を中心とした考えからいえば、金銭賠償ということに触れることはあまり感心しない。感心しないし、同時に、また日比賠償が一応成立した場合において、さらに多くのかつての交戦国からの賠償の要求が必ず起きてくるものとわれわれは想像するのでありまして、この際日比賠償の基本方針をはっきりと考えていただかなければ、将来の日本の賠償問題というものは非常に大きな問題に発展するおそれがあるのでありまして、この点は今後とも、たとえば日比賠償を一つのテスト・ケースとしてわれわれは考えておるのですが、これと同じような、より以上大きな問題が起きてきた場合においても、大体今の方法、方針で行く、こういうお考えでありますか。
  106. 一萬田尚登

    国務大臣(一萬田尚登君) ただいま申し上げましたように、親善の関係を早く立てるということと、国民の負担能力、そういうふうな見解等をにらみ合せて、今フィリピン賠償につきましても最も妥当なるものを検討し、かつ交渉いたしておるところであります。
  107. 千田正

    ○千田正君 最後に一点、きょうもわれわれは国会の門前に差しかかって参りますと、引揚者の団体から強い懇請をされたんでありますが、引揚者に対する在外資産の補償に対する促進の決議が、本年の六月衆議院、参議院とも通過して、当時の外務大臣からも、できるだけすみやかに法制上及びその他の措置をしたいという答えがあって、なお今日に延びております。御承知の通り内閣には審議会を設けて、外務省大蔵省、厚生省の各担当の諸君が審議されておるにもかかわらず、今日まで延びておる。何かこれは、三十一年度においては一応の一つの目安をつけてこれにこたえる方法を持ってわられるかどうか、この点はいかがでございますか。
  108. 一萬田尚登

    国務大臣(一萬田尚登君) 在外財産の処理につきましては、これはもう私から申し上げるまでもなく、非常に複雑かつ多岐でありまして、大きな問題であります。従いまして、この件は、今お話のように、審議会にかけまして、それが緒について慎重な御検討を願っております。かつ国会の、衆参両院の御決議の趣旨も体しまして、審議会に連絡をいたしまして、さらにただいま慎重な御検討を願っておるわけであります。それらの答申を待ちまして、検討をさらに加えてゆきたい、かように考えておる次第であります。
  109. 千田正

    ○千田正君 最後に一点だけ、通産大臣と農林大臣にお伺いしますが、農林大臣、お見えにならぬようなので大石次官でけっこうですが、通産大臣と農林大臣の方にお伺いするのは、日韓問題の解決はだいぶ、本委員会におきましてもたびたび各委員からの御質疑があったと思いますが、私は特に通産大臣にお伺いしたいのは、この問題が起きてからしばしば、われわれは委員会としましても、日韓間の問題の即刻の円満解決を要望してきたのでありますが、それができない。本年上半期においても大体、通産関係からいいますというと、四千万ドルぐらいの韓国に対する回収焦げつきがある。その焦げつきに対して、普通のことではできぬからというので、鮮魚類あるいはノリ類、こういうようなものを韓国から輸入して、一応の回収に対するバランスをとってゆこう、こういう方法を通産省はとっておられた。われわれ生産業者を代表する農林委員会の立場からいえば、韓国からそういうものを持ってきてもらっては国内の生産業者を圧迫するだけで、何にもならない。どうか一つ、それはある程度抑えてもらいたいということを、しばしばわれわれは進言しておったのであります。今後もこういう問題を相変らず繰り返して、やはり回収のためならやむを得ないから、朝鮮から鮮魚並びにノリというようなものを輸入して、一応の回収不能に陥った日韓間の貿易のバランスをとってゆこう、こういうようなお考えを持っておられるかどうか、それをお聞きしたいのであります。ということは、御承知の通り、李ラインにおいて非常に悲惨な立場に立たされておるのは漁民である。その漁民にことごとくしわ寄せになっておる。しかも、ノリにしろ、鮮魚にしろ、これはことごとく生産漁民にとっては日本に打撃を与えるものである。こういう観点からしまして、李ラインの解決が延びるに従って、こういう問題が生産漁民にとっては非常なる不満なのでありますから、この際通産大臣の方針をはっきり伺っておきたい。  それから農林大臣の方に対しましては、先般来ここでもしばしば外務大臣あるいは総理大臣、各担当大臣からいろいろこの問題についてお答えがありましたけれども、容易にこの問題は解決しない。外交もなかなか進展しない。最近に至って再び李承晩が、李ラインに進出したところの日本の漁船に対しては撃沈をあえて辞さないということを、繰り返して声明しておるのであります。これではとうてい解決の見込みは早急には立たない。その間におけるところのいわゆる留守家族あるいは漁民に対する、どういう一体、農林省といたしましては、担当官庁として対策を立てているのか、こういうことであります。ビキニの問題に対しましては、御承知の通り、アメリカは、賠償とはいわないけれども、慰謝金としまして二百万ドルという金を出してきた。しかし現在これに対する要求が、外交折衝がとまっている関係上、できない。できないにしろ、すでに二十六名というものが惨殺されておる。さらに、六百五十何名というものがつながれていて、百十隻という船が戻らない。こういう段階に立ち至っておるのでありまして、現業官庁の農林省としましては、こうした漁民、あるいは留守家族、あるいは遺族に対して、はっきりした対策を立てていかなければならないと思うのであります。外交問題が解決しない限り、行政官庁の立場から十分な責任をとっていただきたい。その所信をこの際明らかにしていただきたいと思います。
  110. 石橋湛山

    国務大臣(石橋湛山君) 私としては、この韓国に対する焦げつき債権を回収するために、ノリを入れたいとか魚を入れたいという考えを持っておりません。今後も同様であります。ただ、御承知のように、ノリ、魚についてはいろいろ、つまり入れてはいかぬという生産者側の要求と、また一部においてはぜひ入れてもらいたいという要求と、ずいぶん錯雑しておりまして、めんどうな問題になっております。本年の上半期は、とにかく一億枚だけのノリについて外貨割当をしたのであります。しかし実際においては、もう昨年のうちに入っておりました分が三千六百万枚かが入っただけでありまして、あと三千万枚はたしか十一月の初めに入っております、三千万枚のものが。これは日本のノリの生産時期だというので、今保税倉庫に入れて、出しておりません。あとの三千万枚はどうなりますか、これは全く今見事がつかない。こういうような状況でありまして、今年度においては上半期のうちに、すでに昨年中入っておったものが三千六百万枚入れられたというだけであります。しかし、まあ韓国の関係は外交上も非常にめんどうでありまして、実は昨年来、何とかこの両国の関係を改善するために、韓国の品物をできるだけ買ってやりたい。それには過去の焦げつき債権などはしばらく目をつぶっておいて、新しく商売をしてやろうというつもりであったのでありますけれども、なかなかそううまく行きませんで、現状のようなありさまであります。もし日本の国内でノリが必要がなければ、ノリの輸入をあえてすることは考えておりません。
  111. 千田正

    ○千田正君 今の通産大臣のお答え、よくわかりましたが、われわれは、今韓国が日本に対してやっている行動は、国際信義を守らないし、めちゃくちゃである。にもかかわらず、日本はいわゆる善隣のよしみをもって、そういう貿易をある程度紳士的にやっている。紳士的にやっているにかかわらず、今日なおあのような暴挙を与えられて、しかもその影響するところは相当生産漁民に及ぼしておる。こういうことを究明した場合に、私はその点をはっきり考えて、外交問題を押し進めるにしましても、そういう問題をまた一つの大きなテーマとしてこの問題を進めていってもらいたい。それは日本が隣りの国との間に友好関係が結ばれておるのならば、あえて漁民といえども自分らの犠牲を忍ぶでありましょう。しかし今日の状況は忍ぶに忍ばれない状況にあるということを十分考えていただいて、対策を立てていただきたいということを強く要望しておきます。
  112. 大石武一

    政府委員(大石武一君) 農林大臣にかわりましてお答えいたします。千田委員のお説の通りに、われわれも何とかしてこの日韓の紛争を一日も早く平和的に解決をしまして、西部沿岸漁民の生命線である漁場を確保いたしたいと考えております。その時期の参りますまで、とりあえず、農林省といたしましては次のような応急措置をとっております。  第一に、六百五十一名の抑留漁夫の留守家族に対しましては、一人当り一万五千円ずつの差し入れ見舞金を計上いたしまして、多少でもその生活あるいは差し入れの補助にいたしたいと考えております。  次に、抑留漁夫でありまして、これはなるべく船員保険に入るようにいたしておりますが、入らない者も相当ございますので、これらの者に対しましては、一人について一カ月一万円、最高六カ月を限度といたしまして、これを給付いたしたいと思っております。なお船員保険に入りましても、非常に保険金の安いものがございます。これに対しましては、一万五千円に保険料との差額三分の二を国家において補助してやりたいと、こう考える次第であります。なお二十六名の漁夫が死亡いたしておりますけれども、このうち五名の者にはすでに保険金が下りております。なお残りのあけぼの丸を中心とした二十一名の者については、七万五千円ずつの見舞金を差し上げることにいたしております。  なお抑留拿捕されております漁船に対しましては、多くのものは漁船保険に入れるようにいたしておりますが、なおさらにこれに特別の融資を考えて、応急の措置をいたしております。
  113. 千田正

    ○千田正君 一点だけ。私は今大石次官のお答えは、今までのお答えとちっとも変らないので、十分了承しますが、単に保険に入ったから、保険金がとれたから、これでよろしいという問題じゃないじゃないか。これは日本の政治の貧困から、あるいは今の国際情勢から、なかなか容易じゃないといたしましても、日本の政治の貧困から保険金しか与えられないという状況にあるということは、まことに悲惨なことではないか。保険金をとったからそれでいいのじゃなく、保険金以上のものが、この日本の政治の貧困から起きているこの悲惨な事態に対して、どう対処をするかということは、これは現業官庁としてはっきり考えていただきたい。これはこれから、あなた方の仕事としては、またビキニと同じような問題が出てきます。太平洋問題と同じような問題が起きてくると想像します。それに対して、漁民が保険をかけたからそれでいいということじゃないのであります。これは二百万ドルの金をアメリカからとったが、それでも不足である。不足であるが、これは外交上やむを得ないのだといって、漁民を慰め、なだめた。そうして次の段階について対処する方法をあなた方にお願いしているのでありまして、日韓の問題につきましては、日本の政治の貧困から来た問題とするならば、政府はあらゆる全幅の施策をもって、こういう悲惨な立場にある人を救うのが当然であると思うのでありまして、この所信をさらに明らかにしていただきたい、こう思うのであります。  もう一点は、この十だ向うに捕えられている人が非常に苦しいと、それで農林省及び外務省を通じて留守家族その他から差し入れをしたはずである。しかし、それが果して届いているかどうか。最近陳情してくる人たちの声というものは、もう塩におかゆしか食えないのだ、梅干しか食えないのだ、麦だけしか食えないのだという、まことに悲惨な状況で、栄養失調に陥っているというのが、今現在あなた方に陳情している状況であります。しからば、あなた方が善処したという、一体韓国側に差し入れした物が十分に果して収容されている人々に届いているかどうか。これが確認はどうなっているか。この二点だけお伺いしておきます。
  114. 大石武一

    政府委員(大石武一君) お答えいたします。全く仰せ通り、私どもといたしましても、今後の外交上の推移その他を十分に考慮いたしまして、国家としてできるだけの最善の策を尽してゆきたいと存じます。先ほど答弁いたしましたことは、とりあえず応急の生活を助けるための手段でございます。  なお、差し入れの問題でございますが、果して届きましたかどうか、まだ確認しておりません。早急に手配をいたしまして確認して、できる限りの処置を講じたいと考えております。
  115. 千田正

    ○千田正君 私の質問は終ります。
  116. 溝口三郎

    ○溝口三郎君 最初に大蔵大臣にお伺いいたします。地方財政赤字の処置につきまして、その財源となりますものの一部の、公共事業費につきまして午前中の委員会において大蔵大臣の御説明は、公共事業費の三十年度事業のうちで一部繰り延べになるものは、来年度事業繰り延べて、その事業費について本年度不用になるものを、八十八億円を地方財政赤字に埋める。従来繰り越しになるものは事業量とともに、事業費も翌年度繰り越していく。繰り延べについては、事業量は繰り越すが、所要資金不用額に立てるから、翌年度において新しい財政措置を講ずる必要があるという説明を伺ったのでございます。なお午前中、地方行政・農林水産の連合委員会におきまして、公共事業費の取扱い方について、大蔵大臣並びに政府委員の御説明を聞きましたが、まだはっきりしたところまではいっておりませんが、この際あらためてお伺いしておきたいのです。それは八十八億円の不用額というものは、これは三十年度公共事業費の一割に相当している分を計上されているのでございます。農林省関係はそのうちで約三十億、建設省関係も三十億、その他北海道等におきましては七億というようなことになっているが、これは公共事業費の一割でございますが、そういうものは一律には削減をしない方針だ。実際に仕事繰り越しになるようなものを不用額に立てるという説明でございますが、農林当局の説明によりますと、本年度公共事業費については予算の成立した直後に一割保留になっているのだ。そして今もってその係留になっているものは解除になっていないのだということなんでございます。そこでちょうど八十八億円が不用になるかならぬか。繰り越しは従来はそんなにないのでございます。全体で四、五十億だ。その取扱いについて論議されたら、どうもはっきりしない。今すぐに解除をして、実際に仕事を進めていって、そうしてできないものは、これは不用額に立てたらいいんじゃないかというようなことを午前中の委員会でも要望したのでございますが、結局その点についてははっきりいたしておりませんが、八十八億は今のところ見込みであって、できるだけ各省と打ち合せをして、そうして無理のないような方法で進めていきたい。だから今は一割保留してあるものは、そのまま解除を今することはできないということでございますが、そういうことになりますと、地方の当局者も非常に迷う点があるのでございますから、でき得るだけ早く解除できるように、各省と折衝を進めていただいて、無理のないような方法で将来仕事をやっていくようにしていただきたいということで私どもは了解して、この公共事業費財源については、質問を打ち切っておきたいと思います。そういうように承知してよろしうございましょうか。念のためお伺いしておまます。
  117. 一萬田尚登

    国務大臣(一萬田尚登君) 先ほど地方行政委員会で詳しく申し上げたつもりでありまするが、なお重ねて申し上げまするが、今のところ財源の内訳について詳しいことは、関係各省にも相談中でありますので、この相談を待たなくてはなりませんが、大体公共事業関係から、八、九十億と申しますか、あるいは今の言葉をとれば八十八億、この財源を確保する。これはまあ地方財政窮乏を打開するために、ぜひともこういう財源措置をしようといたすのでありますが、その財源を捻出する上におきましては、お話しのように、無理のないようにやるつもりを持っております。
  118. 溝口三郎

    ○溝口三郎君 余剰農産物の借款の使途につきまして、国費の負担分と、民間の負担分との区分を明確にする必要があると考えるのでございますが、三十年度におきまして、農地開発に余剰農産物の借款三十億を配当に当てたのでございます。そのうちの二十四億五千万円が愛知用水に配当された。愛知用水は総事業費が三百六十億でございまして、そのうちの国費の負担分が百十七億、地元及び公団の負担分が二百四十三億になっているのでございます。国費の負担分は、これはダム及び幹線水路、その他開墾事業等に関する地元に対する補助等でございまするが、余剰農産物は昨年は愛知用水に二十四億五千万円配賦になった。そのときに私どもの承知しておりますところは、国費の負担分は毎年約三十億くらいずつ五カ年間に継続して使用するんだと、地元、公団分等について借款を充当するんだというように聞いていたのでございますが、三十一年度事業費の要求の説明を伺いますと、三十一年度から、三十五年度までに事業は全部完成するんだ。その間の事業費は全部余剰農産物の借款によって充当していく予定なんだと、国費の百十七億分というものは、三十五年以後に支払うつもりだという説明を伺っているのでございますが、借款の使途はどういうものに他用する性質のものでございましょうか、明確にしておく必要があると思うのです。その点をお伺いしたいと思います。
  119. 一萬田尚登

    国務大臣(一萬田尚登君) 数字にもわたりますので、政府委員から答弁いたします。
  120. 原純夫

    政府委員(原純夫君) 愛知用水の余剰農産物資金を使う部分が、国費分とどういう関係に立つかというお尋ねでございますが、愛知用水につきましては、お話しの通り国以外の負担分が相当ございますので、余剰農産物の金は低利の金でございまするし、さしあたりその部分を借款で愛知公団をしてやらせるという考えでおります。借款が何年続きまするか、その状態にもよるわけでありまするが、借款以外の、つまり借款のあとと申しますか、あとに国費分を出して参るというようなつもりでやっております。
  121. 溝口三郎

    ○溝口三郎君 ただいま御説明ございましたが、愛知用水の事業は本年度から始って、その大部分は一番水源にありますダムの仕事だと思いますが、ダムの事業は、その事業費は大部分が国費で充当されるものだと思うのですが、その分を余剰農産物の借款で事業を進めていくのだ。それは将来四、五年たって国の都合のいいときに国はその国の負担分を返すのだというようなことは、どこでそういうことをきめておるか、明確にしておきたいと思います。
  122. 原純夫

    政府委員(原純夫君) 国がどうせと申しますか、国が負担すべき部分を借款でいたしますことは、いわば財政的には将来の国民に負担を残すというようなことにもなりますので、あまり望ましくない。民間の県、あるいは特に地元でございますね、これらのものが負担いたします場合に、これらを低金利でやるならば、いわゆる充当率と申しますか、完全には起債がつかないという一般の資金と比べてよろしいということから、それを余剰農産物資金はそれに優先的に回すという考えであります。お話しの段でございますが、お話しの通り国費の分が多いのですが、六割でございまして、自余の四割は地方団体及び地元の分でございますので、三十年度使います分は、ただいまのところ全部国以外の分として考えておるものに充てるということにいたしております。
  123. 溝口三郎

    ○溝口三郎君 六制の国の負担分を借金でやって、そうしてその国の負担分は五、六年たってから、忘れた時分に国が払っていくのだというようなことは、これは予算外契約か何かではっきりしておかないと、返してもらえるか何か話し合いでやっているようなことで、私の申し上げるのはこの夏、愛知用水の公団法案をやる場合に、資金計画を伺っていたのです。そしたら三十一年度から国費の分は約三一億ずつ毎年五年間で支払っていくのだ。公団や地元の分は余剰農産物でやっていく資金計画を立って、そして五カ年間で仕事をやっていくというのが、今度の予算の要求のときになってくると、それは全部変えてしまった、あるいはそういうふうに変えてしまったということは、審議を経まして、そのときは説明をはっきり聞いているが、今になると何のことだ、やったことはみんなむだになってしまう。そういう資金計画を立った場合に、本年度三十億やるならば、これはいつ国は返すのかというようなことを、予算総則か、あの法律に書いておく必要があるのじゃないかと私は思うのですが、それはなおつけ加えて申しますが、農地開発機械公団については五億五千万円の余剰農産物から配分したのだ。そしてそれは北海道上辺の国営の道路の委託費用にしたのだ。余剰農産物で借りたが、それは利子をつけて五カ年間で返すのだということを法律のうちに明記したのだ。だからそれは国民とすればその通りやっていくことはよくわかるのです。愛知用水についてはそういうことは何もないから、いつ国はその借金をしてどんどんあなた方はやりなさい。そして五、六年たつとその分は返しますというようなことだが、それはこの夏はそうでなく、今度はそういうことをきめたのだというのは、愛知用水公団法案の附則にでも機械公団と同じように、余剰農産物でやるけれども、それは五カ年あとに国費は返していくのだというような法律改正をするか、予算総則にそういうものを入れて、国費と民間の事業費の区分は明確にしておくことが、私は財政上必要ではないかと考えるのでお伺いしておるのでございますが、そういう手続を大蔵省はおとりになるつもりかどうかお伺いしたいと思います。
  124. 原純夫

    政府委員(原純夫君) おっしゃる通りあの種の大工事になりますと、後年度の所要額、それの負担の区分ないし年次制というようなものをはっきりといたすということは、非常に望ましいことであり、むしろそうでなくちゃならぬと原則は思うのでございますが、多くの土地改良あるいは一般公共事業費におきましても、残念ながら戦争の終末ごろから非常に混乱いたしまして、計画がなかなかぴしっときまらないというようなわけで、御案内の通り一般に継続費になっておるものがほとんど少いというような状態でございます。まあ今回の愛知用水関係も実は御案内のダムのサイトにつきましても、あの法案をお願いいたしました際に、なお大きなクエッションマークがついておるというような状態でもございますので、われわれとして他の事業と同様、行政的に責任を持って短期に効率の高い工事をやろうという覚悟はきめておるのでありますが、それを形式的に継続費というような、あるいはその他の形にまで持っていくだけの中身のコンクリートの何はないものでありますから、おいおいそういう点が重なりますにつれて、だんだん後年度の何も中身自体がはっきりして参るということになると思いますので、御了承いただきたいと思います。
  125. 溝口三郎

    ○溝口三郎君 ただいまの御説明では、そういう予算の範囲内で国が補助をするのだ、たとえば本年度三十億の仕事をやって、その六割を国が補助するのだということになっているが、予算の範囲内というのは、その前年度予算のことじゃない、五年先になってやってもいいのだ、十年先になってやってもいいのだということは、どこでそういう取りきめをしたのでございますか、その点もう一ぺんお伺いしておきたい。
  126. 原純夫

    政府委員(原純夫君) 全体といたしまして国の持ちます分を計画完成までに出すという考え方、ちょうど初期において余剰農産物資金が入って参りましたので、ただいま申しましたように実は北海道のは確かに国の持つ分についても借金で充てるというふうに、これは経緯でなってきたのでございますが、先ほど申しましたように国がどうせ出さなければならぬものを借金さしておくというのはいかんから、観念的には国が出す部分はその年といいますか、後年度でございますがはっきり出す、三十年度に借りられる分はこれは地方側といいますか、地元の負担分を借りるというように仕訳をして考えているわけで、総体として国の負担すべき部分は負担するというように考えているのでございます。
  127. 溝口三郎

    ○溝口三郎君 どうも私は納得できませんが、ぜひこの問題はもう一ぺん検討していただいて、国費から民間分、それを私はどこでそういう資金計画をきめて、知らぬうちに半年のうちに三十億ぐらい、いや五年先に返すのだ、後年払うのだというようなことをやるなら、継続費なんという項目を置いたり、予算外契約なんということをやることは要らないようなことだ、勝手に大蔵大臣と農林大臣の話し合いでやっていって、そうしてきょう審議したのはもう半年たったらみんな変っていたのだというのじゃ、どうも納得がゆきかねますので、この点はやはり会計の取扱い上特に明確にしていただく必要があると思う。今後余剰農産物がもっと多額に入ってくるのですから、民間の仕事に充当するか、国の経費が足らないから一応借りて、その利息は国が払うのか、民間が払うのかさえも私はきまっていないと思う。そういう点を明確にするように検討していただきたいということを要望してこの点は質疑を打ち切っておきます。  いま一点簡単にお伺いいたしたいのですが、三十一年度財政改革の問題について農業事業税約八十億になるそうでございますが、それの新設についてはこれは農林省当局、農業団体はこぞって反対を今から表明しておるのでございます。すでに農民においてはこういうものの負担能力はないのだというような理由をつけて反対を今から表明しておるのでありますが、自治庁の長官は昨日非常に重要な問題だから、特に検討を加えるということを言うておられましたが、この際大蔵大臣はぜひこれは検討するのでなくて、取りやめるのだというくらいに言明をしていただくことをお願いいたしたいと思いますが、御所見をお伺いいたします。
  128. 一萬田尚登

    国務大臣(一萬田尚登君) お答えいたします。御承知のようにこの地方財政が非常な窮迫に際しております。地方制度調査会並びに臨時税制調査会におきまして、この地方財政の窮迫に対処するために農業事業税を復活してはどうかという一つのレコメンドをいたしておるのであります。これはただいまお話しのようになかなか影響が大きいのであります。しかし他面三十一年度にはぜひともこの地方財政を健全なものにして、今後憂いのないようにしなければならない、これについては行政面においても、あるいはまた財政面においても、あるいは税制においても根本的に一つ考えてみる。こういうふうになっております。ここでそういうものはやらないと言い切り得ますれば、非常に幸いなんでありますけれども、そういうふうな事態でありますのでやるというわけでもありませんが、自治庁とも十分相談をいたしまして今後検討を加えて参りたい、慎重に検討をいたすつもりをいたしております。
  129. 溝口三郎

    ○溝口三郎君 企画庁長官にお伺いいたしたい。経済六カ年計画につきまして、本年の一月閣議の了解事項として第一回の発表をなさった、その後四月五月等にわたって計画の訂正等をしたのでございますが、十二月五日に経済審議会の答申によって、一応経済企画庁関係では経済六カ年計画は固まったのだと考えるのでありますが、なお政府与党におきましてはこの計画をもとにしまして、三十一年度から三十五年度の五カ年計画に調整をするのだ、そうしてその内容におきましては経済審議会において決定したものと変りはないのだ、三十五年度における数字としてはそのまま計上するが三十一年度については最終的には三十一年度予算が決定したあとその予算に基いて三十一年度計画を決定するというように自由民主党の政調会ではきめたように伺っておるのでありますが、なおその取扱い方につきまして年次計画等はこれは作るのか作らないのか、そうして経済審議会で答申されたものは今までは三、四回にわたって経済企画庁からは計画案を発表なさっていたのだが、もうそれは企画庁では発表せずに、あと政府与党できめたものを将来発表するのだということになっているのか、その辺をお伺いしておきます。
  130. 高碕達之助

    国務大臣(高碕達之助君) 本年の十二月の五日に、前後七十回にわたりまして経済審議会を開きまして、一月に発表いたしました六年計画、あれを基礎にしまして、その後の実績に応じていろいろ検討を加えまして経済審議会から答申された。そこでその数字に基きまして現在今与党と折衝中でございます。この数字が変るか変らないかということはただいま言明することはできませんが、おそらくはこの数字が基礎になって検討されると存じております。与党との連絡がつきますれば、さらに政府といたしましてももう一応これを検討いたしまして、なるべく早い機会に閣議においてこれを決定する、これを決定版として政府の方針として発表いたしたいと存じておりますが、ただいま発表いたしておりますものは、十二月五日の経済審議会において作成されました答申案でございます。こういうことでこれをなるべく広く御検討願う、こういうふうなことでやっておるようなわけであります。  それから三十一年度の数字につきましては、大体見当がついているのでございます。それはもちろん長期の計画を基礎といたしまして検討をやっているのでございますが、できるだけ現状に即すというような意味から、三十年度の実績等を勘考いたしまして、これに沿うようにして持っていきたい。従いまして三十一年度予算は大体長期計画を基準に置いて予算が組まれるわけでありますが、予算と相前後して三十一年度の数字はむしろこれより前に発表いたしたいと考えておるわけであります。なお年次計画につきましては、三十二年度の分は現在発表いたしましておりますが、これははずしていきたい、こう存じておるわけであります。
  131. 溝口三郎

    ○溝口三郎君 経済審議会の答申によりまして、六カ年計画における財政規模の総額は六兆六千五百二十億という算定になっております。それは国民所得の一五・四三%に相当する金額になっておるというように承わっておりますが、一月の十八日に第一回の発表になったものは、人口においても相当変更をし、人口は一月の発表に比べますと、五十六万人くらい減少になっている。しかし労働力の方はふえている。国民所得は七兆四千億が八千億くらいに上ってきている。農業水産の生産も一月は二十七年を一〇〇にして一一〇%くらいのが今度は一二六・八くらいに非常に将来明るい希望が持てるわけですが、それから算定されて財政規模が総額で六兆六千五百二十億ということになって、これはぜひとも私どもといたしますればこの実現のできるように、ただ希望図でなくて実現できるようにということを希望しているのでございますが、この点は非常に私は困難があるのじゃないかと考えるのでございます。経済審議庁長官はこの問題について初めからその確信をもってぜひこの線は必ず実現するのだという御自信ががあるかどうか、御所見を承わりたいと思います。
  132. 高碕達之助

    国務大臣(高碕達之助君) お話しのごとく六兆六千五百億、この数字は国民所得の一五・四三%ということになっております。これは戦争前の数字から出したわけでございますが、戦後におきましては、二十九年度のごときは一七・九になっている。二十八年度は一七になっております。漸減の状態でありまして、三十年度は一五%とこうなっているのでありますが、一五%に対しまして一五・四三というものはこれはあまり低い数字でもないだろう、高くもないだろう、これは正当だろう、こういうことでとったのでありますが、国民所得は昨年から比較いたしますと各五%くらい増加しております。これを四%くらいに見ておりますから、大体内輪目で見ておりますから、私はこれくらいの数字は確保できる、こういう感じで進んだわけであります。
  133. 溝口三郎

    ○溝口三郎君 この六カ年の総額の六兆六千億の中で、食糧増産に充当される資金は、千九百四十億になっている。米麦合せて食糧増産は千三百万石になるという数字でございます。一月におきまして千三百五十万程度が人口増、つぶれ地の補充のために必要だということから比べますと、五十万石程度不足になっている。これにはいろいろの理由もあると思いますし、また一部財政金融部会等においては、もっと生産を下げて輸入をしたらいいのじゃないかという論もあったように聞いているのを、自給政策を貫くためにというようなことから、千三百万石を維持するようになったと聞いているのでございますが、私はこれでいろいろの論議から結論が出たのなら一応やむを得ないと考えているのでございますが、数字の上だけでつじつまを合せましても、国民はこれで五年たてば、三百二十万トンの輸入で千三百万石の増産をすれば、人口の増があっても、現在と同じ程度の輸入をすれば自給をしていけるのだというように考えておりますが、こういうことが実際に実行できるかどうかについては、非常に疑問を持っていると思うのです。なぜ千三百五十万石から五十万石を引いてしまったのか、しかもその所要資金は千九百四十億円ということになっていますが、当初の案から見ますと資金は七割くらいにしてしまった。一石あたりの生産費というものを、当初の千三百五、六十万石のときには、二千九百億くらいの事業費が要るというのに、七割くらいに減らしても千三百万石程度維持できるというような理屈が非常にむずかしいと思う。これは新規事業をやめたとか、それから一部分を、財政資金を金融の方に回したとかというような理屈があると思うのですが、だんだんだんだんに一石あたりの生産費が安くなるというようなこと、これは実際の実行上私はむずかしいのではないかというふうに思う。この千三百万石を実行するためには、三十一年度には約三百二十億の資金が要るということになっている。三十年度は二百三十七億の資金だった。最小限の千三百万石を増産するために、資金は三十年度に比べて、三十一年度は一四〇%ということになっている。六兆六千億で初年度の三十一年度には一兆二、三百億よりか歳入歳出ができないようなふうにも聞いている。今年の一兆に比べると二%増加ぐらいである。千三百万石の初年度は、一石あたりの生産費は七割くらいに落していっても事業費は本年度の四割増しというような非常に困難な問題があると思います。私は一応こういうものができたら、これはやむを得ないと思う。非常な努力をされてここまできたのです。これ以上三十一年度予算のときに、また減らされていくというようなことになると、千三百万石の維持はできないのと、そして三百二十万トンという輸入を、現状を抑えるということもできないということに結果がなりますから、これは最低線として確保するようにぜひとも努力をしていただきたい。  それとあわせてお伺いしておきますが、主食の米麦、主食の基準量というようなことについても、千三百万石維持するためにいろいろ変えていると思う。日本人の一人当りの食べ物を二割も五年間に少くするような数字をもとにして、千三百万石維持するというようなことをやっていくと、その時分になって輸入は増さなくてもいい、そして食べ物は普通に、食生活の改善をやりましても、普通に食べれるというように考えている。食糧は二割もそのときになって減ってしまっている。具体的に言いますと、一月計画をやったときには、一人一日当り四百七十グラム、米は三百三十グラムそのうち食べていたんです。今度の計画は、四百十グラムにして、米は二百九十五グラムにして、二割も下げてしまった、あと何を食べてやっていくかということです。今年大豊作で、二十日の食糧の配給をしてもらいたい、十五日は困るから、やはり食べたいのです。食生活を改善しても五年間に今より二割も配給を減らすということは、私は不可能だと思います。そういうようなことから一応こういう、できるだけ努力はしたが、この程度より現在は数字の上ではバランスがとれないということなら、資金の面においても、増産上の面においても、これ以上に一つ減少するようなことのないように御努力をお願いしたい、その点について確信をお持ちかどうか、お伺いしてみたいと思います。
  134. 高碕達之助

    国務大臣(高碕達之助君) 第一に千三百五十万石をどうして千三百万石に減らしたか、こういうことにつきましては、お説のごとく大へんに、非常に検討をいたしまして、議論百出したのでありますが、結局これは五十万石だけは、加工するものを、国内で生産するよりも加工輸出の分だけは輸入に仰ぐということにして、そして千三百万石に縮めたわけであります。それでこれに至りました数字の根底といたしましては、三百二十八万トンの輸入は、現在ちょうどやっている数字でございますから、この数字はやはり持続していって、これ以上ふやさないということを根底にいたしたのであります。資金関係におきましても、非常によく減ったと、こういうお話でございますが、七割になったこういうお話しでございますけれども、大体国費というものにつきましては、幾らか減っておりますが、できるだけ今後融資の面におきましてこれをまかなっていこう、こういう方針をとっていくから、資金計画におきましては、大きなそごはないだろう、こういうような感じでいたしておるのであります。  なお一月には四百七十グラムのものが、今度は一日四百十グラムになったのはどうだ、こういう御質問でございますが、これは大体カロリーの計算からいたしまして、二十五年から七年にかけましては、千九百六十三カロリーであったのです。それを三十五年度には二千百四十三カロリーに一人当りのカロリーをふやす、特に蛋白質におきましては二十五年は五十六グラムであったのでありますが、今度は六十五グラムに持っていこう、それで食生活を改善して行こう、こういうふうな考えから、米麦の消費量はずっと減るだろうと、そういうことで、米が二九五グラム、麦が一一五グラムということにして、四一〇グラムという数字を出しておるわけなんでございますが、これはなかなか議論がございまして、四〇〇グラムでも多いではないかという議論もありまして、いろいろ折衝いたしました結果、結局四一〇グラムに落ちついたというわけでございます。各方面の意見をいろいろ検討いたしました結果、こういう結論が出たわけでありますから、私は必ずこの数字によって実行していきたい、こういう所存でございます。
  135. 溝口三郎

    ○溝口三郎君 食糧の摂取量については、これは実際にその実態をつかむということは非常にむずかしいから、いろいろつじつまを合わせるようにして、四一〇グラムという話がついたと思うのですが、現実から言うと、五年間に今の米麦のカロリーを計算して、ほかのものを食べて二割減らすというようなことは、私は現実としては不可能だと思うのです。だから、それはやはり資金的につまったり、生産量が出ないから、これ以上はむずかしいからというようなことにもなるのであります。だから、私はこれを変えろとは言いませんが、これ以上につじつまを合わせるためにいろいろ細工をせずに、これを最低限にして、一つこの点を確保するのだということにぜひお願いしたい。  なお、ただいま輸入計画は三百二十八万トンで、これは現状と大体同じようにしていくと言いますが、三百二十八万トンというこの取り方によっても非常に変っていくだろう、たとえば、三十年度において米は当初百三十万トンであった。下半期になってからまた十万トンふやして、米は一年に百四十万トン、現在は空前の大豊作でありながら、百四十万トンの米を輸入する計画になっておるのです。それを米は九十万トン程度で輸入はいいのだ、こういうことについても、いろいろまあ数字上の問題はあると思いますが、私の申し上げるのは、現実は大豊作でも百四十万トン輸入しているのですから、こういう点について計画にあまりそごのないように努力をしていただきたい。これは大蔵大臣もそこにおいでになりますから、ただいま高碕長官に申し上げているように、この計画は最小限の線をずっと越えて最低線にいってるんだから、ぜひともこの線を確保するように経済企画庁長官にお願いすると同時に、大蔵大臣にも御協力をお願いいたしたいと思います。なお、私の質問は、行政管理庁長官が御出席になっておりませんから、政務次官にちょつと。
  136. 西郷吉之助

    委員長西郷吉之助君) さっきおりましたが、ちょっと今席をはずしているようですから、今内閣委員会に行っておりますから、すぐ呼んで参ります。ちょっとお待ち下さい。速記をとめて。    午後三時三十四分速記中止      —————・—————    午後四時一分速記開始
  137. 西郷吉之助

    委員長西郷吉之助君) 速記を起して下さい。  それではただいまより再開いたします。  溝口さんに申し上げますが、行管の方からは宇都宮徳馬政務次官が来ております。外務大臣はもう直ちにここへ参る途中にありますから……。
  138. 溝口三郎

    ○溝口三郎君 時間がありませんから、簡単に行管の政務次官にお伺いいたしたいと思います。行政機構の改革につきましては、河野行政管理庁長官が内閣の実力者で、ぜひとも鳩山内閣においては、占領下にできたような国情に沿わない行政機構はこの際全面的に改革するのだという線に沿って、強力に行政機構の改革を進められるために、みずから買って行政管理庁長官になられたように承わっているのであります。そこで問題は徹底的にやるために、予算局を内閣に持つとか、内政省をこしらえる、社会省、貿易省等が問題になっているようでございますが、これらは賛否両論がありますが、むろん御答弁としては目下検討中だということでございますから、御答弁は要求いたしませんが、この行政機構改革の問題は、歴代の内閣がこれを計画いたしても実行できない。ぜひともこの際は結論が出たらその線に沿って断行するように、河野さんにもお伝えをお願いしたい。  そこで私は一点だけお伺いいたしたいのは、この際に河野さんは、行政機構の改革はするが、人員の整理や行政費の節約は目的ではないのだということを言うておられることは、これは公務員からすれば、この際は人員の整理はないのだという安心感を与えるようなことであるが、徹底的に合理化し簡素化すれば、当然に私は人員の整理も出てくるのだ、その対策等についてもぜひとも御考慮になっていただきたい。  もう一点は人事院の存否でございますが、人事院につきましては、これは占領下においてアメリカの制度そのまま持ってきたもので、その存否については従来何べんか企図されていましたが、参議院でいつも審議未了になったような案でございます。新聞等によりますと、人事院も廃止するようなことが報道されているのでございますが、公務員制度調査会の結論が最近出たのでございますが、それによりますと、人事院は存置せよ、そうしてさらに従前よりかも権限を強化して、これは給与の勧告権等でございますが、人事院の勧告があったものを内閣が拒否する場合には、国会に提示して承認を求めるというようなことまでして、公務員を保護するような答申が出ているのでございますが、これを廃止するようなことは、これは公務員制度調査会の答申にも反するようなことになる。この点についてどういうふうにお考えになるか、お伺いしたいと思います。  それと関連いたしまして、公務員制度自体の改革も、この際特にやる必要があるということでございますが、現在の職階制のような複雑なものは、たくさんの人を集めまして、そして能率的でないような問題がある。従来ファイリング・システムと言いますか、一人一役のような制度があったので、片一方は非常に忙しくても片一方は遊んでいるような制度だ。こういうようなものについて徹底的に公務員制度についても改革する必要があると思うのでありますが、それらの点について今まで審議されたかどうか、なお今後どういうふうになさるか、お伺いをいたします。
  139. 宇都宮徳馬

    政府委員宇都宮徳馬君) 長官にかわってお答えいたします。第三次鳩山内閣の方針に従いまして、大巾な行政改革を企図いたしておることは事実でございます。行政管理庁といたしましても、それに従いまして現在いろいろ成案を得る準備をいたしておる段階でございます。そのために現在行政管理庁の設置法の一部を改正するというような法案も臨時国会に現在出しております。しかしながら全くなお準備の段階でございまして、人事院云々についても具体的に申し上げる段階ではございませんけれども、しかしながらただいまの御意見は十分に尊重いたすつもりでございます。また公務員制度についての御意見も同様に考えます。さらに最初に御質問なさった、この人員整理を目的としない、こういっても能率的な機構を作れば、当然人員整理が行われるであろう、こういう御質問でございまするが、人員整理を目的とはしない、できる限りこれを避けるという方針でやっていくつもりでございます。
  140. 溝口三郎

    ○溝口三郎君 私の行政管理庁長官に対する質問趣旨について、長官にお伝え願いたいと思います。  外務大臣がせっかく御出席になりましたから、私時間がありませんから、一言御所見を伺っておきたい。それは移住政策の基本方針についてでございますが、本朝中山委員質問もありましたが、最近日本カンボジア友好条約が東京で調印されました。そのうちで移住については相互でできるだけの便宜を与えるという条文があるのでございます。それに基きまして、カンボジアとの話し合いで、一年に一万人約五年間に五万人の移住を計画しておる。そのほかにけさの御説明では、漁業移民を五百人か千人ぐらいやる。なおこれについては至急に現地調査を必要とするし、なおできるだけ資料等についても公表を準備中であるという御説明でございましたが、こういう話し合いが出て、これを推進していくことについて御努力になることを非常に私はけっこうだと思いますが、ただこれが実現ができますれば、今まで中南米等に対する移住をやって、この四月の本会議においても外交演説で、人口問題解決の一助として移住を積極的にやるという方針を御説明になりました。それ以上に東南アジアに移住を開始していくということは、日本として非常に重要な問題だと思いますが、それについて最近カンボジアの首相が来られて、そういう申し入れがあったから、ぜひやっていこうというような簡単な考え方でやっていくと、これは非常に重要な問題で、私の承知しているところ、カンボジアの農業は非常に日本に比べますと原始的なんだ。その農業の改良をやり、灌漑排水の計画の基本施設等をやって、農業の開発をしたところへ日本の進んだ農業を持っていくなら開発の余地は非常に多いと思う。ただ原始農業のところへ毎年一万人も持っていったら、ほんとうに食いつめた者を連れていくのだというような程度になる。私はこの問題について前提となることは、経済協力、技術協力をやりまして国土の開発を進めていく。しかも五万人が五年間でやっていくのならば、それは移住をやりまして、一戸当り十町歩もやれば五十万町歩にもなる。日本の農業を入れて、一反で二石取れれば千万石くらい取れるのだ。ただそれをやるには資材、役務等についても日本はどうしても協力して、前提となる農業開発をしていかないと、これは不可能な問題だ。それは非常に多額の金のかかることを前提として調査をお進めになっていただくことが必要と考えるのでございます。一年一万人すぐ連れていくような安易な考え方では、初めから私は成功する望みはないというように考えているのでございます。その点について、これは農林大臣にもどの程度まで、現在までそういう心がまえなり調査等をした上に、そういう話し合いが出たかお伺いしたいと思っておりましたが、この機会に外務大臣の所信をお伺いしておきたい。
  141. 重光葵

    国務大臣重光葵君) 移民政策の重要なことは繰り返して申しません。これは非常な重要な問題で、政府としてもこれを非常に重く見ているということは御了承を得ていることと思います。  そこでカンボジア移民の問題でございます。これは従来いろいろ調査した上で、その上で話し合いが出たというのじゃございません。これはカンボジアの首相が参りまして、日本との間の友好関係をぜひ結びたい、日本を先進国として十分に見習って国土を開発したい、こういう切なる希望がございました。その結果、向うの方から日本人に来てもらいたいということで、あの友好条約の中にそれが言及されているわけでございます。従いまして実際の計画はこれからやらなければなりません。それがために、調査団を派遣してその計画に資する材料を十分に集めていきたい。こういう段取になっております。カンボジアも東南アジアでございまして、むろんお話の通りに、中南米だけじゃない。東南アジア方面にもさようなことをやはり考えた方がいいのだというわけでございます。が御承知の通り、東南アジアには従来の関係がございまして、いろいろ日本人の行くことについて懸念を持っている、もしくは誤解を持っているところが外国に多分にございます。さようなわけでございますから、誤解はあくまで除き、そうして少しでも猜疑の眼をもって見られるようなことは絶対に避けなければならないと思います。これは何となれば、日本移民事業にもしくは移民の発展に直接に害があるからでございます。そこでカンボジアに送りましても、それはカンボジアの国土の開発、カンボジア自身の希望によって、カンボジア自身の指導によってこの移民が成功するようにもっていかなければなりません。そこで向うに行く人々は非常に素質も検討しなければなりません。ただ行きたいから行くというふうな一旗組じゃこれはいけないのであります。まじめな人を送っていって、そしてあくまで向うの土になって、向うの市民として十分に将来生活するという決心を持った人々が行かなければならぬとこう思います。さようになってこそ初めて向う希望に十分合致し、そして事業も成功するのだと考えております。さようなためには指導を誤らぬように政府としてはやらなければなりません。そしてまた相当それに対してはやはり金もかかるかもしれません。しかしそれらのことはまだ計画を十分にやっておるわけではございませんから、今後計画に資するために資料を集めて調査の結果、十分遺漏なきを期したいと、こう考えております。
  142. 溝口三郎

    ○溝口三郎君 もう一点だけお伺いしておきたいのですが、ただいま外務大臣の御説明にありました通りカンボジアの国土の開発から始めていかないと移民は成功しないのだ。その通りだと考えるのでございます。私先ほど申しましたように、日本の技術を入れ、国土の開発をやっていくのならば、五万人も入れれば千万石の米の生産もこれは成功の見込みがあるのだということになりますと、技術協力、経済協力をいたしまして、資材、役務等日本もできるだけの負担をいたすにしても、それだけのものをやるのならば、おそらく千億以上のものがかかる。一戸当りの移住をするには、内地でも現在政府は北海道や東北で百万円も助成をしている。この夏できました日本海外振興会社は、わずかにアメリカの資本で事業資金が五十数億で、五年間に五万人の程度に貸し付ける。一戸当り十万円くらい。そんな程度でやっていくようなもし考え方があると、これは非常に安易な考え方だ。今日あらかじめそこへやるのならば、これは帝国主義的の侵略ではないのだ。そういう東南アジア諸国にも決して誤解を受けないような移民政策の基本的なことについて、基本の法案も準備もしていく。そしてその法案に基いて移民の保護、訓練、資金の貸付等万全な策をとってやっていただくように、あらかじめ御考慮の上で進めていただきたいと考えるのでございます。新聞等に宣伝されますのは、非常に明るい希望を持っているようでございますが、これは政府としても非常な決意を持ってこの事業に着手していくのでないと、将来を誤まるもとになると考えますからお伺いいたした次第でございます。重ねて外務大臣の御決意をお願いいたしておきたいと思います。  なお、技術協力、国土の開発等につきましては、これは政府が一体となって、特に農業開発等については、農林当局とも十分御連絡の上で、調査団等についても計画をお進めになることを希望いたしたいと考えております。
  143. 重光葵

    国務大臣重光葵君) 御趣旨は十分に尊重して、さよう実現するようにやっていきたいと思います。
  144. 曾禰益

    ○曾祢益君 私の御質問は通産大臣それから労働大臣も一緒にいていただきたいと思います。
  145. 西郷吉之助

    委員長西郷吉之助君) 今すぐ参りますから。
  146. 曾禰益

    ○曾祢益君 私は外務大臣、労働大臣、通産大臣、大蔵大臣並びに防衛庁長官に対しまして、ただ一件、問題としてはただ一件でございまするが、この問題について政府のお考えを伺いたいと思うのであります。その一件と申しまするのは、実はいわゆる特需産業に従事する労働者の問題でございます。皆さんが御承知のように、特需産業労働者がアメリカ軍当局の実際上の仕事をやっておりまするけれども、その地位というものは非常に不安定なものであって、アメリカの予算がカットされる、あるいはアメリカからの注文が減るという場合には、何らの保障もなくて、そして解雇される。しかもその場合には、契約がアメリカ当局対日本業者の契約になっておりまするために、公務員等と違いまして、あるいは駐留軍関係の労務者等もさらに悪い条件でございまするが、アメリカ軍あるいは日本政府にこれを苦情を申していっても、これは法律論としては受け付けられない、かような関係になるのでございます。かような関係から、特需産業それ自身がもとより永続的なものでございませんし、特需漸減の方向をとっております関係もあって、これらの労働者の大量解雇が最近ひんぱんに行われておることは御承知の通りであります。特に本年の五月には、神奈川の追浜の富士自動車の大量解雇事件、一挙に三千七百名に上る大量解雇事件がありまして、このときはさすがにわが国の世論に非常な大きな衝動を与えたのでございます。従いまして、これはもちろん富士自動車の解雇問題に世論が焦点を合わしたからでありまして、問題は前からも存在しておったのでありまするが、従来の鳩山内閣も、この問題についての対策は決して十分でなかったのみならず、ほとんど冨士自動車の解雇問題という大きな問題を端緒として、初めてようやく腰を上げるに過ぎないという、まことに遺憾千万な状態であったわけでございます。この富士自動車問題を契機といたしまして、とにもかくにも政府においては、アメリカに対してもこれはあまりひどいではないか、何とかもっとなだらかに、かりに解雇するにいたしましても、もっとなだらかな方式をとって、日本側とアメリカ側とが連絡をしながら、日本側において受入態勢等を整えながらやるようにしてほしい、こういうようなことについては外務大臣もやっていただいたと思います。日米合同委員会の議にものせてもらったのであります。さらに鳩山総理は、特にこの問題を取り上げられて、アメリカ大使にも直接手紙を出すというような措置をとってくれたのであります。その結果、この特定の問題については約四百名ぐらいの解雇される労働組合の諸君、労働者の諸君が新たなる契約をアメリカからその会社がもらうことができて、四百名ばかりは救えたけれども、三千名をオーバーする大量解雇に対しては、何ともいたし方がなかった。ただ単なる条件闘争といいまするか、解雇条件等についての問題だけがきめられた、そしてこの三千数百名の労働者諸君は、今日まで失業対策についての政府措置が十分に効果を奏しておりませんから、ほとんど多くの人は再雇用……他の職を発見できないという、こういう状態になっておるのであります。すなわち特需労働者というものは、この富士モータースのときにもそうであったけれども、特需労働者を見逃しにしてくれるな、見殺しにするな、こういう悲痛な叫びをあげておったのであります。従いまして当時からわれわれは政府に対しまして、特需産業というものをどういうふうにして日本の民需産業に繰り入れて、あるいは必ずしも民需と言いきれない、あるいは日本の官需と言いまするか、特に防衛庁の実際生産をやっておられますから、事のよしあしは別として、その方向に繰り入れていく、そういう産業政策上の措置をとってほしい。  第二にはこの契約上の不備があるのであるから、アメリカが直接にこのいわゆる特需の役務及び物資を調達するという直接調達方式に欠陥がある。であるから、これは日本政府が中に介在して、いわゆる間接調達方式にぜひしてもらいたい。これは日米行政協定そのものを必ずしも改訂しなくともこれはできると思われるし、もし要すれば、日米行政協定を改訂しても、ぜひこれは西ヨーロッパ諸国がやっておるように間接雇用方式、調達方式にするのが当然ではないか、こういうことを政府に要求して参ったのであります。しかるに今日までいろいろ政府の間接契約方式についてのいろいろな研究はされたようでありますが、今日そのことが実現しておりません。多くのこの特需産業は、おおむね七月から十月までの間に契約が更改いたしまして、その間においてはやはり旧態依然たる直接調達方式によっておるわけであります。この結果、相模工業という、これは重車両、富士の場合は軽車両でありまするが、重車両の再生をやっております。いわゆる特需車両工場におきましては、十月に新契約ができるときにすでに需要の減少から五百名の首を切られておるのであります。しかも十月に新契約ができまして、その結果、人員の天井は五千八百名ということに契約の明文に書いてあるのであります。しかるにこの契約の中にはいま一つの条項がございまして、向う一年間の契約でありまするが、一応は五千八百名という天井にしておくけれども、実情に応じてアメリカの契約担当官はこれをかげんすることができる、ふやしてくれるならば、労働者立場から言えばけっこうでありましょうが、減らすことができるという条項がある。そこでこの契約のもとにおいてどういうことが起ったかというならば、十月に新契約ができたこの相模工場におきまして、十一月に八百八十八名の新たなる首切りをやる。一ぺんの通告をもって、五千八百という水準があるにかかわらず、契約第七条のこの加減乗除できるという——一方的に加減乗除できるという条項の発動によって、このたび八百八十八名の大量解雇をやる、こういう通告をしたのであります。かくのごときは、いかに契約上の条項があるにせよ、まことに不当といいまするか、非人道といいまするか、断じてわれわれとして承服できない、かように思うのであります。しかもそのよってきたるゆえんのものは、私が先ほど来るる申し上げましたようなこの事情によるものであり、そのことは、そういう事情を十分に御承知にかかわらず、これは政府が、結果において怠慢の結果なんだ。従いましてこういう事態が起りまして、しかもこれは言うまでもなく、師走の寒空に八百八十八名の労働者が突き出される。果してこの諸君が再雇用あるいは生活の安定の道が講じられておるのか。これは資本主義下の問題であるから仕方がない問題であるということでは断じてない、政府なりアメリカなりの責任の問題だ、こういうことでございますので、私の以下御質問申し上げる点は、まず第一に外務大臣におかれては、この状態を御承知のことと思いまするが、これに対していかなる措置を講じようとお考えになっておるか。アメリカに対してこの問題についてこれをやめてもらいたい、少くとも正月は安心して年越しができるようにしてもらいたい、あるいはこれをもっとなだらかにしてもらいたい、解雇さるべき人員を、もっと解雇される方を減らしてもらいたいというような交渉をぜひやるべきと存じまするが、いかにお考えであるか、まず外務大臣のお考えを伺いたいと思います。
  147. 重光葵

    国務大臣重光葵君) 特需が減ってきた、減ってきたために注文が少くなった、それで工場労務員を解雇するということに結果が相なる。この特需が減るということは、これはもう一般のことでございまして、これはやむを得ないことだと思います。そこで特需が減ったから、特需を受ける会社が必要のない労務員を解雇するということに自然になるわけでございます。そこでこれは特需を減らすこの米軍側の責任である、そう一がいに言えないと私は思います。しかしながら特需が減るから結局そういうことになるのだから、できるだけ一つそういうことも考えてみて、特需をできるだけ手かげんをしてもらいたい、こういうことは、またこれ実際問題として必要なことだと考えております。従いましてさようなことは、合同委員会その他の機関を通じて米軍側には十分話し合いをしておるわけでございます。  相模工業のことがお話に出ました。これは米軍の車両修理を主とする特需工場でありますが、本年十月契約改訂の際に米国側から、最近特需量は減少するからそれに備えてもらいたいという予告を工場が受けておるのでございます。そこで来年一月一日付をもって、今お話の通りに約九百名の人員整理を必要とする、こういうことに工場の方で考えたのでございます。ところが一月一日付でもってそうされるということは、今お話の通りに職を離れる人のために非常にこれは困る、これは当然のことでございます。それで年末年始を避けることを米国側に強く要請をしまして、そうして米国側がその整理期日を、それでは特需を増して一月十六日まで延期しよう、こういうふうに相なったのでございます。そこでこれはむろん理想的な解決の方法ではございません。しかしながら一方特需が減るから従って特需工場における労務員が減るという自然の傾向は、これはやむを得ないことではないか、こう考えます。そこの間において無理があり不都合があればこれは十分話し合いをして、また是正をする努力をしなければならぬと考え、またそれをやっておるわけでございます。さように米国側としては事前に通告もし、いろいろ予告をして、これはやっておるわけでありますから、契約面においてはこれをどうすることもできぬことだと思います。しかしそのほかの意味において事態を緩和する処置は、交渉によってできるだけとりたいと、こう考えております。
  148. 曾禰益

    ○曾祢益君 外務大臣は、ごく一応のアメリカ側の説明しか御承知ないと思うのです。これはいわゆる事前の警告と言いますか、予告というものは、これは一般的に常に特需は減少するものである。これはもう確かにその通り。従って私はアメリカの責任ばかりでなくて、むしろ政府の責任だということに私は申し上げたいのでありまするが、しかしこの特定の相模工業の場合には、私が今申し上げましたように、十月に向う一年間の契約をするのであります。向う一年間。そのときに、予測し得べき向う一年間の雇用量は五千八百名ということ、これは私自身にも契約担当官がはっきり言ったのであります。ところがこういう契約は、この業者の方はその裏に一応五千八百名にしておくけれども、もっと減らしてもらいたいというような話があっても、契約の表面には出さないで、契約は契約として五千八百名にしておいて、契約の七条には時々刻々に変えられるという条項があるのをいいことにして、裏は十一月から二百名減らしてほしいという裏話があったということは、業者は日本政府当局にも話しません。労働者にはもちろんそんなことは話すはずがございません。そういうことはなるほど契約の表面からいえば、一応向う一年間五千八百名としてあるけれども、七条によって、時々刻々減らしても仕方がないという、契約上はそれは完備しているでしょう。しかしこれは実際この正当のやり方とは断じて言えない。向う一年間安定の線を出しておきながら、裏では具体的に二百名を毎月減らすということに話を業者とアメリカの間がしておる。もしこれが日本政府であったならば、私はそういうけしからぬことをされる日本政府ではないと思う。そういうところに欠陥があるのであります。だから基本的には、外務大臣も第二の質問としてぜひあなたにも伺っておきたいのは、やはり今お答えございませんでしたが、この間接契約方式に切りかえるのにほんとうに真剣になっていただきたい、これが第二の質問であります。第一の質問は、一般的には外務大臣ももし不適当なところがあるならば、契約の表面は表面として、あまりひどいじゃないかというようなことがあるならば、アメリカと従来も交渉したが、交渉するのにやぶさかでないという御意思だと思います。私は本件のごときは当然に日米合同委員会にまず提出して、事情を十分にこれをアメリカに抗議していただきたい。そうしてその救急の道があるならば、処置を講ずるように御協力願いたい。要すれば、外務大臣が直接外交問題として、この小さいようでありますけれども、全特需産業労働君に対する重大な関心事であるから、特定の相模工業という問題にお考えにならずに、アメリカ政府との政治折衝もぜひやっていただきたいのであります。従って今言ったような事情であるから、確かに契約の表面はどうであっても、不当ではないか。もう一ぺん考え直してほしい。一月十六日以後というと正月が済んでからというのでありまするが、一カ月前には実際上首切られてしまうのです。これは何にもならないのであります。そういう点もお考え願って、もう一ぺん再考願って、アメリカと交渉していただきたい。  それから第二は間接雇用方式に切りかえることについて、外務大臣も日米間の大局上もっと熱意をもって対処していだきたいと思うのでございまするが、もう一ぺん御答弁を願います。
  149. 重光葵

    国務大臣重光葵君) 第一の点は、先ほどお答えをした通りでございます。  第二の点間接契約、間接調達の方式による、こういうことについては、私関係をしておる外務省当局の報告によりますというと、先般来内閣の特需対策連絡会議において十分に検討してみたが、いまだ間接調達を果ましいとする結論にはまだ達しておらぬと、こういう報告でございます。
  150. 曾禰益

    ○曾祢益君 非常に不満足な御答弁なんですが、第一の点については、この問題についてアメリカと、合同委員会において、アメリカにこの問題を取り上げていただけるかいただけないか、この点をはっきり伺いたいと思います。
  151. 重光葵

    国務大臣重光葵君) 先ほど御答弁をいたした通りであります。これは特需が減ってそうして会社の注文が少なくなる、それに対しては私は契約がものをいうと思います。それがための契約でありますから、契約がものを言うと思います。しかし契約がものを言ったから、それについてその結果無理があれば、その無理について、その事柄事柄について検討をいたしまして、必要な交渉はすることを少しもいいといわない、こういうことでございます。
  152. 曾禰益

    ○曾祢益君 私時間がありませんから、この問題はこのままでは承服できないのであります。特定の問題について取り上げていただけるか、いただけないかということを言ったのであって、イエス、ノーではっきりする問題でございます。従いましてこの点はさらに他の機会に伺うことにいたしまして、同じ問題について労働大臣に伺いたいと思うのですが、これは大体政府の特需対策委員会というものができましたが、内閣にできたのですが、これは大体労働大臣が実質的に担当せられるものだと思うんですが果してそうであるかどうか。かりにそうでないとすれば、今ここにおいでになっている閣僚諸公の中で、この特需対策全体についてのはっきりした御答弁のできる御責任のある大臣はないのであるかどうか。これは労働大臣からお答え願いたいと思います。
  153. 倉石忠雄

    国務大臣(倉石忠雄君) 特需対策連絡協議会は官房長官が主宰をいたしております。
  154. 曾禰益

    ○曾祢益君 官房長官を呼んでいただきたいと思います。質問は続けますから……。  労働大臣に伺いたいのですが、特需対策協議会のあれについては今おっしゃったようなことと思いますが、とにかく調達の契約方式は、これはもちろん産業の問題があって通産大臣の御関係もありますが、特に労働組合側からの強い要請があることは御承知の通りであります。従ってこの間接の契約方式に切りかえることについての今外務大臣から、外務省のなんといいますか、説明がございましたが、いつまでもまだ研究中である。まだ結論に達しないというようなことが、下手な説明でありますが、今申し上げたような今度の事件の実は最大のきっかけなんです。責任はここにあるのです。従って労働者立場を保護する最大の関心を持っておられる大臣として、あなたはこの間接契約方式にかえるのが正しい、こういうふうにお考えであるかどうか一つあなたのお考えを伺いたいと思うのであります。
  155. 倉石忠雄

    国務大臣(倉石忠雄君) 御指摘のように、この特需関係の労務は、業者と発注者との契約でありまして、私どもの承わっているところによりまするというと、一つ仕事を発注いたすその金額の中に労務というものも包含されて、原価計算をやっているようでありまして、従ってこれはやはり発注者と受注者との契約に属することでございますから、非常にむずかしい問題であると思いまして、これは他の閣僚からお話があるかもしれませんが、私どもの方の立場といたしましては、ただいま御指摘の明年一月十五日に八百八十名の解雇が通達されたというふうなことにつきましては、これからもあることでございますが、特需の減少に伴いまして、もっと計画的に事前に通告をしてもらって、それに対する対策を私どもとしてはできるだけ早く立てるようにいたしたいと考えております。で、今まで出て参りました特需及びこの軍関係の労務者については、労務者の失業されたものについては、特にその方面だけ必要な手当をするようにいたしまして、職業安定及び他の同じような系列の業種にそういうところから解雇された人々の職業をあっせんするということに努力をして参った次第であります。それで他の一般失業の方々よりも、そういう方面から出てこられる失業者の就職希望に対する就職の割合は若干上回っておるというようにまあ努力をしておるわけであります。根本的には外務大臣からお話のありましたただいまの連絡協議会でさらに対策を十分に練って善処いたしたいと、こういうふうに考えております。
  156. 曾禰益

    ○曾祢益君 これはアメリカ側から、なだらかにするためにお互いに協力しなければならない。その通りだと思うのです。大勢はやむを得ないのです。しかしこれを通報してくれと申しましても、先ほど言ったような事情で、実は通報もなしに、政府にもおそらく通報はなかったと思います。こういうことが起るという予報はなかった。そういうところに欠陥がございまするから、そこでやはり政府が契約そのものにもつと十分にタッチし得るようにするのが間接調達方式の一つの利点だと思うのです。雇用の安定といいまするか、あるいは特需減少に対応した雇用縮小をスムーズにやるための政策からいっても必要なんです。であるから、これは今日は時間がございませんからこれ以上申し上げませんが、間接調達方式についてもっとぜひ勉強していただきたい。それから特需のあれが抽象論でなくて、向うのあれを見合って、いわゆる減少していくのを、露骨に言えば失業対策といいますか、再雇用方針ということになるのでしょうが、これだって今の制度ではできないのです。業者がたたかれて作った契約の七条で、伝家の宝刀を抜かれているのでは、あなたの方でも計画があってもできないでしょうし、その根本にメスを入れていただく。こういう時々刻々に起ってきておる問題、これは労働組合としてはまだ戦っておりますけれども、やめる人もありましょう、そういう場合のほんとうの再雇用、職業安定についての誠意と涙のある措置をお願いしたい。これについて神奈川県の知事を主体とした現地の機関にまかすというような考えでなくて、中央でほんとうに腰を入れてやっていただきたいことをお願いしておきます。  続けまして、通産大臣、これは先に通産大臣に伺うのが順序だったと思うのですが、特需産業そのものの対策ですが、どうも一向成績が上っていないのですが、もちろんこれは特需といっても非常に広うございますけれども、直接今起っているのは主として車両工場でございます。車両工業についてはこうだ、あるいはその他の特需、これは兵器産業もございまするが、これらについての日本のいわゆる平和産業に切りかえる、あるいは場合によってはもっと幅を広げても産業政策上特需減少に対応して設備と技術と労務というものをうまく生かしていくような計画は、一体委員会ばかりできてもいつできるのか、アウトラインでもいいから、この際はっきり伺っておきたいと思いますが、御意見を伺います。
  157. 石橋湛山

    国務大臣(石橋湛山君) 今問題になっております車両修理は、御承知のように特需といいましても、特需の中でもまた特殊なものでありまして、その組織が一体もう非常に不安定、元来がはなはだ不安定で、設備、土地その他の関係から申しまして、あれがいわゆる特需の修理がなくなったからといってすぐにほかのものに転換もできないようなことに現在はなっております。ですから、実際われわれとしても処置なしで、はなはだ恥かしい話でありますが、全体として何か雇用の数をふやすという以外には実はあの問題についてはない。特需の中でも……特需全体がそれじゃ減っているかというと、これは国内の向うの軍の方の状況もだんだん変っておるらしくて、現在一種の過渡期にあるらしい。ある種のものはふえるような傾向も見えられます。ですから、今後はどういうことになりますかわかりませんが、とにかくあの車両修理というあの一部の特需な、どうも今後発展増加する見込みがなさそうでありますから、何とか今まで休業しておる人をほかに転換する道を考える。考えるといいましても、実際考えるだけで、それでは具体的にどういう方策があるかと言われますと、実は全体の雇用量がふえるような方途を講ずるという以外に今のところでは直接に手のつけようがないという状況になります、これは率直に申しまして。
  158. 西郷吉之助

    委員長西郷吉之助君) 曾祢君に申し上げますが、今官房長官に連絡しましたところ、病気の治療のため今医者に行っておりまして、帰るのに三十分ぐらいかかるそうであります。
  159. 曾禰益

    ○曾祢益君 時間がございませんので、それでは大蔵大臣防衛庁長官に伺いますが、その前に通産大臣の今のお答えですが、ある意味では率直なお答えなんですよ。しかしそれでいいという問題ではないと思う。ただ一般的に雇用が減らないようにする、新規需要があるだろうというようなことでなしに、やはり具体的に車両修理工場なら修理工場の設備もわかっておるでしょうから、それを積極的にアメリカから場合によってはその一部でも返還を求めて日本の民需産業として、平和産業として、日本の車両工場、車両工場の育成の方法考えていただきたい。そういう具体性を持った対策をぜひ練っていただきたい。それが全然できておらない。むずかしいことはわかりますが、全然できておらないという御回答は、これは十年一日のごとくであって、はなはだ不満である。ぜひお考えを願いたい。それに関連いたしまして、これは政府当局でも御承知だと思いますが、相模原の市長等が陳情しておりまするように、これは果してそういうことが可能であるかどうか。特に防衛庁長官にも伺うのでありますが、もともとこの特定の工場は陸軍の戦車工場であった関係もございまして、防衛庁の方で何らかの需要を考えておられる、こういう模様で、あるいはそういう予想をして一部を民需の方といいますか、日本の方に渡して防衛庁仕事をやっていきたいというような動きもあるわけであります。これはもう設備そのものの部分的な接収解除というくらいでは、いわゆる外交的な面もありまするが、実際の需要というものが、防衛庁なり他の日本の産業そのものになければいけないわけですが、この問題について、あるいは特需全体について防衛庁の方がどういうふうに自分計画の中にこういうものを織り込まれていくというようなお考えがあるのか。特にこの問題についてどうお考えになるか伺いたいのであります。  最後に、今申し上げましたように、日本政府の大体不動産は日本政府のものが多いわけであります。機械等についても、日本政府のものもございますし、これは大蔵大臣の所管にも非常に関係があるわけであります、特需工場のいわゆる日本側に返還してこれを生かしていく問題は。従って大蔵大臣もこの点についてのお考えがなければならぬ、財産という見地からいいましても。それから特に間接調達方式に切りかえることについては政府部内の政府機構の問題もございましょう。いろいろな関係から大蔵省の方が間接調達方式に切りかえるのに熱心でないといううわさを聞くのであります。間接調達方式に切りかえることについての大蔵大臣の御意見を伺いたいと思います。
  160. 船田中

    国務大臣(船田中君) ただいまの御質問でございますが、防衛庁といたしましては、戦後日本に育成されて参りました、ただいま御指摘のような特需による車両の修理技術を確保するための研究をいたしております。ただ防衛庁の持っております車両は比較的にまだ車齢が浅いために、特需業者を全面的に活用をする段階に至っておらないのでございますが、将来の修理の増加に備えまして一部試験的に利用いたしておるという状況でございます。たとえば日野あるいは冨士自動車等を利用しておると、こういう状況でございます。
  161. 曾禰益

    ○曾祢益君 あれはないのですか、今申し上げた相模原の方の関係は、重車両……。
  162. 船田中

    国務大臣(船田中君) 相模工業の関係は今のところございません。
  163. 一萬田尚登

    国務大臣(一萬田尚登君) 第一の点につきましては、私はやはりこれは特需産業のあり方の問題が一番基本的になると思うのです。従いましてこれは特需産業特に通産省で十分具体的な案をお考えになる場合に大蔵省も十分検討を加えて計画したいと思っておりますが、そうして私の考えですが、この軍需産業というものについてはアメリカの単に注文のことのためのみに一つの企業形態をしておるというところに私は非常な問題があると思う。ですから軍需産業、一つの企業としては当面アメリカの発注を受けて仕事をするとともに、同時にこれが将来日本の防衛需要に切りかわるようにし、さらにそれが余力があり、また将来東南アジア等のマーケットがあればそちらにも輸出する、こういうような私は形態を考えぬ限りは、この問題は解決しない、こういうふうに考えておる。それが一つ、それから第二段の間接の調達方式は、今日直接でやっておるのですが、間接方式にやって果して、私は今言ったようなことを頭に入れておりますから、単に調達方式を間接方式にしたから今日のトラブルが解決するとは私は考えません。これはどっかが、責任をどこが負うかという問題に転嫁するだけで問題の本質を解決する道では私はないと思う。特に間接方式というようなものをとっていると、どうしてもこれは財政負担がむろん加重されましょう。これはまた大蔵省の単に立場じゃありませんが、さらにまた行政機構も膨張して参るといういろいろな問題があるので、単なる調達方式としては直接な調達方式にして、そして今いろいろな御答弁があったように、具体的な問題についてそれを最善の道で解決するというのが私は一番実際的じゃないか、まあかように考えておるわけであります。
  164. 曾禰益

    ○曾祢益君 最後に、これは大蔵大臣と遺憾ながら意見を異にするのですが、もとより間接調達方式にかえられれば特需産業漸減を救うわけでもございません。それはおっしゃる通り全体の解決にはならない。これは日本のむしろ通産当局か特需対策委員会かしりませんが、全体の計画化が必要である。ことにアメリカの軍需に、ただ下請工業をやっているような情ない産業のあり方が、これは非常に批判されなきやならないので、これが日本の官需なり、できるならば平和産業に合せて、しかし特需もやっているというのが正常な行き方、それにはやはり産業政策が主である。この点はあなたの御意見の通りであります。ただ間接調達方式というのは、これは国家のあり方からいっても、私は当然だ、主権国としては。西ヨーロッパ諸国がアメリカ軍の駐留を認めている場合でもこれはもちろん労務においても間接契約であって、役務及び調達について日本産業をある意味では攪乱する、日本の社会不安を起すようなことをアメリカ政府、アメリカ軍当局にまかしておってそれでいいということは、これは大蔵省が金を出すから、金が少いから多いからという問題を離れたもっと大きな問題であるということにお考えを願いたい。もちろん政府機構がどうなる、これは政府の内部で検討される問題でしょう。特に社会不安ということを今日考えるならば、少くとも特需産業の労働者というものが駐留軍に働いている労働者と同じ程度の保護を受けることは当然極まるほど当然である。そういう意味からいって責任を押しつけられるのがいやだ、財政負担がどうだとかそういうような考えだけで物事を考えるのは非常に間違っているということを申し上げて、ぜひ大蔵大臣の御再考を願いたいと思います。私の質問は時間がございませんのでこれで終ります。
  165. 武藤常介

    ○武藤常介君 私は大蔵大臣、自治庁長官のお二人にお伺いしたいと思います。現内閣は近く税制の改革をもくろんでいるということでありまするが、占領政策によってゆがめられたところの税制を改革するということは当然過ぎるほど当然であろうと思います。なお現在の国情も当時とは相当変っておりますので私は当然なさねばならぬことであろうと、こう考えるのでありまするが、この税制改革に対しての方針、主眼につきましてどういうふうな方面でいたされますか、きわめて簡単にお伺いしたいと思います。
  166. 一萬田尚登

    国務大臣(一萬田尚登君) お答えします。税制の改正に関します根本的な考えは、一面においてこの日本の国情にほんとうに合った一つ政治にしようということと同時にこの税の均衡というものを考えていきたい。特に税の均衡というものは税のうちの負担の均衡もありますが、私の方が一番考えておるのは直接税と間接税とのバランスの問題ですが、私の考えによれば直接税に、なお依然、相当減税を従来したのでありますけれども、なお直接税に重く偏しておる、もう少し間接税に移行させてはどうだろうか、こういう点が一つの点であります。さらにそういういろいろな直接税なら直接税のうちにおいて負担の均衡を欠いているような点もあるように思ってこれらの均衡を回復するように考えております。さらに中央、地方を通じての税についての考えをもう少し変えて、まあ地方の税による財源というものをもう少し検討を加えたい、こういうようなのが今考えておる骨子であります。
  167. 武藤常介

    ○武藤常介君 ただいまの改革の方針の大蔵大臣説明は私はまことに満足するものであります。  まず私は第一に改革の主眼としては減税に重点を置かねばならぬことは当然でありましょうけれど、わが国の現在の情勢から他国との比較等もありますので、そういう施設経営をして参りますのは必ずしもそれにのみ重点を置くということは私はあえて欲するものではありません。ただいま大臣が申されたいわゆる均衡、あるいはこれを別な言葉で言うならば合理性とでも申しますか、それから第三の公平というこういう点にはどうしても十分な研究と配慮が必要であろうと私は考えるのであります。この課税に当りましてはこれは絶対の要件であると私は考えるのであります。ところが往々にしてその点の配慮が欠けておりまして、公平な点から申しましてもあるいは合理性に欠けた点から申しましても相当欠陥がある改正が、そのたびごとに行われているということが過去の実際でありまして、これはまことに遺憾に存じておるのであります。  ここに私はその第一として取り上げてみたいのは木材引取税であります。これはまさしく占領政策からくるものであって、御承知のシャウプ勧告によりましてでっち上げられた一つの税であります。今日きわめて不合理であるということは一般が認めておるのでありまするが、事の起りは、これはわが国の治山事業にとりまして、あるいは国土の保全の上から、あるいは災害の防止の上からも最も大切であるというところから、すなわち植林の奨励、あるいは山林立木の育成、こういう点から立木に対する固定資産税を撤廃したということに出発しておるようでありますが、私はこのいわゆる治山事業並びに森林の維持育成、これに対しまして国家が十分な力を払うということは全く私も同感であります。しかしながらその結果が変なところに持っていかれた、すなわちこれが引取税として素材価格の五%に当る額を、この関連産業であるところの木材業、または製材業に課するということであります。これは何と考えても私は不合理なことである、すなわち森林の所有者が固定資産税を払わなかったということを、全く経済の違ったところのこの木材業者に持っていって押しつけるということ、は、これは根本的にどうも理屈をなさないことではないか。ところがこの税ができましたころは、どういうふうであるかというと、何と申しても木材は非常な勢いで暴騰した。まるで五倍になり十倍になり、あるいは二十倍になりました。かような次第でありますので、木材業者もまずその日暮しにこれは納めなくちゃならないのじゃないかということで、がまんにがまんをして実は納めておったのでありましたが、今日のごとく下落に下落の一途をたどる状態になって参りますと、業者がどうしてもこの課税にたえることができないのであります。一体五%ということ、いわゆる五分ということはすべての業にとりまして相当の率に上っております。これが五分を課せられるということはとうてい業者ではたえ得られない、かような次第でありますので、業者は非常な叫びをなして、あるいは請願あるいは陳情、実に涙ぐましいところの訴えを続けておるような次第であります。また悲壮な決意さえもされておるというような事情であります。こんな状態に置かれておるときに、自治庁長官としてどういうふうなお考えを持たれているか、これに対する御所見をお伺いいたしたいと存ずる次第であります。
  168. 太田正孝

    国務大臣(太田正孝君) 武藤さんにお答え申し上げます。木材引取税の関係は、製材をなさっておるお方々の立場もよくわかるのでございます。同時に山元の問題もございますし、またこれを相当山間地帯においては大きな収入にしている自治体の関係もありまして、三つの点から考えておるのでございますが、申し上げるまでもなく納税義務者は木材引取者でございます。特別の微収義務者は立木の所有者ということになっておりますから、そこに税の転嫁関係が起ると思います。そして市町村に納める、こういう状況になっておるのでございます。従ってその転嫁関係につきましては、経済の原則で行くかと思いますが、市町村といたしましては、山間地帯においては相当大きな収入になっており、しかも材木を引き出すため、あるいは道路が損傷するとか、そういう経費を要する次第でありますから、もっと今日のごときにおきましては、自治体の財政という立場からして、この税をもととするよりほかない、かように考える次第であります。
  169. 武藤常介

    ○武藤常介君 ただいま長官の御答弁でありますが、確かにこれは地方の農村としては、山村としては、町村の収入としては相当の額に上るのであります。しかしこれがその根本を考えてみまするというと、これは森林の所有者が同定資産税を立木に対しては納めないで、その額を立木の所有者が納付すべきものであるからして、これを業者に持ってくるということは、私はどうしても考え得られないのであります。それでこの問題として考えなければならぬことは、ややもすればこの税金は木材業者の力によって納めるのであって、これを森林所有者に持ってこられるというと、非常に困ると、こういうふうなことを今考えておりまして、最近森林業者が非常にこれを心配されまして、大運動を起しておる、こういうふうな実情であります。御承知のように森林所有者と、また木材業者とは、全く唇歯輔車の関係にあるのでありますが、その間柄にありまして、一方では引取税を撤廃してくれ、一方においては引取税を撤廃しないで存置してくれ、こういうふうな運動が展開されておる。これはまことに私は容易ならぬ問題ではないか。こういう問題が起るということは、果してこの税に妥当性があるか、納得の行く税であるかということを私は考えるとまさに、やはりこの税には相当の不合理なものがある、納得の行かないものがあると私は考えるのであります。こういうことをいま少し政府がさらっとこれを受けとってそしてこれが解決をはからなければならぬのである。そういうふうに私は考えるのであります。そしてまた国家からいうと、その金と申しましても、大した金ではないのであります。財源としては現在の状態では実際の税源は十二、三億にとどまっておるのであります。今、日本の国が御承知のように台風等が参りますというと、あの膨大なるところの被害を受けておる。これに比べればきわめて少額なものでありますから、これらを防除するところの森林の育成が、しかも円滑に平和の間に安んじてできるようにしてやるのが政府の責務であろうと私は思うのでありまするが、現在の状態のように森林業者はこの税を存置してくれ、あるいは木材業者はこれを撤廃してくれと、実に哀れなというか、あるいはおそろしいというか、状態を現わしておる、これを町村の財源としては相当のものであるからこれはやむを得ないだろうと傍観することは、政府としてとるべき道ではなかろうと私は考えるのでありますが、なお自治庁長官に御一考をわずらわしたいと存ずるのでありますが、いかがでございましょうか。
  170. 太田正孝

    国務大臣(太田正孝君) お答え申し上げます。この税は申し上げるまでもなくお言葉ではございましたが、占領政策後にかけられたというよりずっと前から雑種税としてありましたので、しかもあるいは立木伐採税あるいは木材取引税と今日に変っておるのでございますが、結局のところはその税がどう転嫁していくかという経済原則の動きによるのではないかと思うのでございます。しかも今日におきましての木材引取税は素材だけにかけております。もとの立木伐採税のときは薪炭材や竹のようなものにも含まれておったのでございまして、木材引取税にした方が範囲の点においても今日いいのじゃないか、先ほど御指摘がございましたが、市町村といたしましては十六億円見当の収入になっておりまして、ことに山間地帯においては大きい収入になることは先ほど申し上げた通りでございまして、御指摘のような運動の起っておることもとくと承知しております。どっちにかかるか、どっちに転嫁するか、また造林というような考えから山元の人の反対のあることも承知しておりますが、今日の情勢におきましては、御趣意の点はよく再検討いたしますけれども、自治体の財源という立場からこの方をとる、経済の転嫁の法則がどういうように動いていくかということも見つつ善処したいと思っております。
  171. 武藤常介

    ○武藤常介君 私は長官が経済の方面財政方面に非常に御研究になられておるということを伺いまして、特に私は本日伺っておるような次第なんでありますが、この税源としては相当のものでありますが、今日の国情からいうと、必ずしもその税源が妥当に使われておるかどうかということはきわめて疑問なんであります。たとえばある村に対してはさらにこれは税源は設定されても実情上収入になかなかならない、ところがある地方のごときはまた国有林からくるところの引取税が膨大な金額に上りまして、相当のぜいたくをしておる、種々なる施設を、他の村に比較にならぬような施設をしておる、これはけっこうな話なんでありますけれどもが、やはり国全体からいうと、甲の町村、乙の町村に、かうな差のあるということは、これは相当国家として是正して、均衡をとらしむるようにしなければならぬのではないか、かれこれ考えて参りまするというと、この税はなお相当の私は研究を要する、こういうふうに私は思うのであります。ことに大臣も御承知でありましょうが、学者の中にも木材引取税の撤廃についてというパンフレットを出しまして、この税のきわめて不当な税金である、いわゆる不合理な税金であるということを盛んに叫んでいる学者もあります。また三十一年度の税制改革要望事項の中に全国の法人会総連合でも、この引取税はどうしても廃さなくちゃいかぬ、こういうことを書かれております。これは私は理論はいろいろつけようがありましょうけれどもが、あの現在の業者同士がほんとうに血眼になって戦っておる状態を、全く国家として傍観することは、これは非常にまずいことである。何でまずいかというと、この森林所有者にちょっとの不安でも与えるということになると、これは植林をどうしても怠る、だから森林所有者にはちょっとも不安を与えない、それだからといって木材業者の方はこの税を納めることはどうしてもできない、こういうことを騒いでおるというと、森林所有者はそこに非常な不安を持って、やはりこの植林にどうしても熱意を持たないようになる。そんな不安がなく、安心して植林をさせていくのには、そういう不安な材料を除去してやらなければならぬのではないか、こういうふうに考えるので、どうしても長官の特段なる御配慮をもってこの問題を解決さるべきものである、私はこう思うのでありまするが、時間もありませんから、最後に一言一つお伺いしたいと思うのですが。
  172. 太田正孝

    国務大臣(太田正孝君) 先ほどお話の中にありました課税方法につきましては、十分研究いたしたいと思います。また運営上の指導も工夫して参りたいと思います。実はかような席で言うのはどうかと思いますが、私も天龍川の材木を育てた一人で、お話のような点は山林業者からも聞き、山元の方かうも聞いて、ほんとうに心痛しておる次第でございます。ただ自治庁として自治団体の立場を強く考えますこと、経済の、先ほど言った山元にいくか製材者にいくか、転嫁の問題がまだ少し残っておりますので、その点も研究しつつ、御趣意に沿うようにいたしたいと思います。
  173. 武藤常介

    ○武藤常介君 私の質問はこれで打ち切ります。
  174. 佐多忠隆

    佐多忠隆君 議事進行について一言。菊川君が質問の順序になっておりますが、要求大臣の農林大臣、労働大臣、防衛庁長官をお願いをしているのですけれども、お見えになっておりませんので、きょうはこれで一つ打ち切って明日に回していただきたいと思います。
  175. 西郷吉之助

    委員長西郷吉之助君) 待機しておりますからすぐ参ります……。見えました。今労働大臣も参りますし、全部そろっておりますから……。
  176. 菊川孝夫

    ○菊川孝夫君 農林大臣にお伺いしたいと存じますのは、先国会におきまして審議未了になりました砂糖価格安定及び輸入に関する臨時措置法案その後の行方をどう処理されるかということと、来年度予算編成に当りまして、いよいよ編成期が参っておりますが、この問題をどう処理されようとするものか、一つ伺っておきたいと思います。
  177. 河野一郎

    国務大臣(河野一郎君) お答えいたします。砂糖の問題の取扱いにつきましては、農産物の価格安定の見地から、私といたしましては御承知の通り砂糖の価格があまりに下落いたしますると、澱粉、イモ切りぼし、カンショの値下りになりますので、農業生産に非常な影響がありますので、ある一定の価格にこれを保持するということが、農産物価格安定の一番重要な点であるというような見地から、砂糖の価格をある限度に安定をしたいと、こう期待いたしておるわけであります。この農産物の価格の、安定を目途といたしまする価格から推算いたしますると、砂糖の価格が相当の価格になるわけでございます。従いましてその価格に砂糖価格を安定するといたしますれば、外糖との関係において相当の利益が出る。この利益を砂糖の関係者において独占するということは正しいあり方じゃないという考えから、これを適当に政府の方にこれを納めまして、そして他の適当な、この金を有効に使うということが妥当であろうということが砂糖に対する考え方の概略でございますことは、御承知いただいておることと思うのであります。  そういう意味からいたしまして、前国会に通産、大蔵両大臣と協議をいたしましてあの法案を提出いたしたのでございます。不幸にして審議未了に終りましたので、政府といたしましてはその当時直ちに通産大臣の所管において、その差額について政府に寄付をしていただくというような処置に出て……、寄付していただくような約束をしていただくように処置していただいたと私は考えております。それから後の処置につきましては通産大臣からお答えを願った方が適当と思うのでございます。ところがその後砂糖が異常に高くなりましたので、これでは国民生活安定の上からいっても、またわれわれの期待する価格よりも非常に高過ぎるというので、砂糖の原糖の輸入を極力いたしまして、それが非常にまた値下りいたしましたのも御承知の通りでございます。ほとんど一時は利益がなく、砂糖業者は吐き出すような程度であったかもしれないと思うのでありますが、あまり下がり過ぎましたためにカンショ澱粉等がこの影響を受けますことは非常に困るということで、ある程度のこれが価格に回復することを必要と私は考えて現在おるわけでございます。  そこでこれをどう取り扱うかにつきましては、私はただいま申し上げました基本の線はこれを維持することは農政上ぜひ必要なことであるというような意味合いから、通常国会におきまして前国会に提案されました法案をそのままで提出するか、ないしは別途その差益金の吸収をはかるような方法を取るかということは、目下政府部内において研究中でございます。
  178. 菊川孝夫

    ○菊川孝夫君 河野さんは農林大臣就任当初に、まあ砂糖の専売制に一応アドバルーンをあげられた。それからこの法律をお出しになった。で砂糖業界と、もと自由党との政治資金のつながりについて、かねてからにらんでおられたところに一発ぶちこまれたということについては、われわれは河野さんの今言われました表面的な理由と並びあわせまして、非常に政治的な勘のよさを敬意を表しておるわけでございますが、しかもこの基本線をあくまでもくずさぬ、守り抜こうとする決意がおありになるということをこの委員会でお示しになったことに対しまして、私も敬意を表する、あらためて敬意を表するものでありますが、しかしながら一方考えまするときに、ここで一つくずれるということになりますると、せっかくのあなたの決意もいわゆる政商と政治権力とのつながりを一つずつやはり断っていくということは、これからが二大政党対立時代を迎えまして大事なことだと思いますので、あらためてここでさらに確認いたしておきたいのでありますけれども、何と申しましても今一番業界におきましても砂糖業者は私は相当に利潤を上げていると思う。上げ過ぎているとさえ思います。この点はやはり今の世の中で一部のいんしん産業と、非常に困っている面とがあっては、どうしてもバランスは取れないと思いますので、この点について一つ特段の御決意を一つお願いいたしておきたいと思います。  その次に第二にお尋ねしたいのは、盛んに今米穀の統制撤廃の問題について、とかくの流説が流れております。河野さん果して将来の米穀の配給制度につきましてどういうお考えを持っておられるのか、それともまだきまっておらないのか、しかしこれだけは堅持していきたいというお考えがおありになるのか、この際お伺いしたいと思います。
  179. 河野一郎

    国務大臣(河野一郎君) 重ねて付け加えさせていただきますが、ただいまの砂糖の点につきましては、私はただいま申し上げたことはあくまでも堅持して参ることをここにあらためて申し上げておきたいと思います。で、砂糖農産物価格安定の意味から大体現在で申しますれば本年はサツマイモの価格を大体二十六円として決定いたしましたから、それから推算いたしまして適当なる価格が生まれて参ります。それと原糖を輸入いたしまして一定の加工賃を引きました差額は、絶対これは砂糖屋に渡すべきものじゃない、この点は明確にして参る必要があるということを私ははっきり申し上げて御了解願いたいと思います。  それから次に米の点でございますが米につきましては現在統制をただちに撤廃するということにはきめておりませんことをこれも明らかにさせていただきたいと思います。ただ将来どういうふうにするつもりかということでございますが、これにつきましてはこれもこの機会に重ねて申し上げますが、食糧でございますから、しかも農村の側から申しますれば最も重要なる農産物でございますから、個々の農民たる生産者と一般市民たる消費者と双方が安心して政府を信頼していただけるような事態が生まれてきません以上は、統制撤廃すべきものではないということを御了解いただきたいと思うのであります。と申しますのは、統制を撤廃することによって生産農家の生産意欲を抑えましたり、農家の経済をこれによって圧迫を加えるというような懸念があるとか、または米が統制撤廃することによって異常なる価格の暴騰暴落が起るだろうというような不安感を農民諸君が持たれるようなことであれば、やってはいけない。そうでなしに、政府に対して信頼感が増しまして、統制を撤廃しても自後の生産に、自後の経済自立に支障はない、安心して米作農民が耕作に従事できるという安心感を農民各位が持っていただけるよう処置を政府が取り、取ることができ、しかもその力が農民諸君の信頼を得るに足るような事態にならなければ、農民の側から考えて統制撤廃すべきものじゃない、これは農民の側に対するお答えでございます。また消費者各位に対しましても、統制を撤廃することによって現在の消費者の生活をおびやかすような事態があり、もしくは買だめをしなければいかぬとかいうような不安感を消費者各位がお持ちになっておるようなことでは、絶対に統制撤廃はすべきものじゃないというこの二つだけは間違いないと思うのであります。従って政府としてはこれに対してどう処置すべきか。逆の点から申し上げますが、現在のやみ米が横行いたしておりまする現在の制度は、決して私はこれでよろしいと申すわけには参りません。従ってこれをいずれかの方に導いて改善して行かなければならぬということについては、どなたも御異存はないと思うのであります。集荷の面におきまして、ことしの予約制度が豊作に恵まれまして、相当に成功いたしましたことはけっこうと私も考えておりますけれども、これが不作の場合にはどうなるかということを考え、その他を勘案いたしました際に、何らかの改善を加えて行かなければならないものであるということも間違いないと思うのであります。そうして集荷にも改善を加え、しかもやみ米のなくなるような方法はどういうふうにしたらばこれができるかということを目標として、しかしてただいま申し上げました生産者、消費者双方の安心感を得るような処置に漸次政府としては施策を加えて行かなければなるまいと思うのでありまして、この施策が完了し、一般国民大衆の信頼を得られるときがくれば、私はそのときに統制を撤廃すべきものだ、しかして統制撤廃を目途に置いて、私が行政を進めていこうと考えておりますることは、これについていろいろ誤解があり、ただいま御指摘のようにいろいろありますけれども、その結論に達しますまでに、今申し上げたような各種の処置、各種の施策を十分完了いたしまして、その後でなければやるべきものではない、従って今一部に言われておりますような、政府は今年は米が非常に豊作であるからこれをたくさん取り入れて、集荷して、これを備蓄米に持っていきさえすればよろしいじゃないかというふうに言われる方もありますけれども、私はそういうふうに考えておりませんので、ただいま申し上げましたような各種の施策を十分完了いたしまして、それができ、一般国民からそこまで政府準備もできておるならばもう大丈夫だろうという安心感の上に立って処置をすべきであるというふうに考えておるのでございます。
  180. 菊川孝夫

    ○菊川孝夫君 私はまた今の日本の農業の規模と、それから世界各国、特にアメリカであるとか東南アジア各地の米産地帯の農業規模、これと比較しました場合に、過剰人口を抱えた日本の農村が唯一の頼りである米穀に対しまして、今河野さんが準備が完了したら統制撤廃ができるんだろうと、こうおっしゃいますが、私はこの外国の食糧の生産過剰の傾向を示している現在において、これと対抗して日本の農村を守るためには、まあ永久といっては語弊がありまするけれども、統制撤廃のごときは至難であり、できない問題である、かように私は考えるのであります。河野さんの方はできたら統制を撤廃したいという方向に準備を進められるのか、それとも日本の農村が今の状態では統制撤廃不可能であると、こういう角度から、どういうふうに米の配給制度の問題と取り組んでいくか、こういう角度から考えられるのか、原則的には統制を撤廃したい、こういう考え方から準備をされるのか、どちらか一つ伺いたい。
  181. 河野一郎

    国務大臣(河野一郎君) 御指摘の点はその通りでございます。外国産米を自由に内地に輸入をいたさせまして、そうして内地米との間に自由競争の立場に立つ統制撤廃は、これは私は御指摘のようにほとんどその時期はこないだろうと思うのでございます。従って外国産米、外国産麦については、ある程度の政府は統制と申しますか、管理は続けて参らなければならないと思います。安い外米を入れまして、その米を自由に内地に売らせるというようなことは、内地の農業生産を確保する上から申しまして、ほとんどこれは不可能だろうと思うのでございますが、さればと申しまして、一方において、食、糧は労働者諸君の立場から申しますれば、非常に生計費の中で大きな部分を占める、ウエイトを持つものでございますから、これは外国の労働者諸君に比べて日本労働者諸君がいつまでも高い出費をしておるということではなかなか競争が困難でございますから、これについては十分に生産の上に改善を加え、より生産費の低下をはかりまして、わが国の米価を農家のそろばんの合う限界において生産費を引き下げて、生産費を引き下げた上に立って外国の米との間の差額をなるべく少くするという処置を一方においてとりつつ外米の管理を続けていって、そうして国内においては、外米、外麦の管理の上に立って国内の米の自由販売、統制を外すというような方向に持っていくというのが最終の目的ではなかろうかと実は私は考えておるのでございます。しかしこのことがもし誤解をされまして、そういう考えだからすぐにでもやるだろうと、こう申されますと非常に害がございますから、先ほど長々といろいろな点を申し上げましたのでございまして、決してすぐにそういう措置をとれるような時期にくるとは私は考えておりません。従って政府といたしましては、やみ米をなくするという意味において、あらゆる努力を払うということにせっかく努力を続けていく考えでございます。
  182. 菊川孝夫

    ○菊川孝夫君 次にもう一点だけ河野さんにお尋ねしておきたいのですが、過般総理の代理として一応英米各国をお回わりになって、出先の外交官にも説得をして来られたと思うのですが、そこでお伺いしたいのは、私も見ておりますると、どうも戦後の日本の外交官の勘と申しますか、いわゆる外交官が向うにおいて正確な情報を一日もすみやかにキャッチいたしまして、本国政府に伝えて、本国政府対策を立てる上に資するようにするというのがまあ何と言っても大事な問題と思います。それにかんがみまして国連日本加盟については二、三日前までは、当委員会においてもきわめて楽観的な外務大臣からの答弁がございましたにもかかわらず、今日ははっきりとだめになってしまった、従ってわれわれの期待が裏切られるということになります。これを政治問題として、もう今は単なる外交は外交技術家のみによって処理できないと思う。それで政治問題として、閣僚として今後の外交官の配置ということについてお考えを願わなければならぬと思うのですが、この点について、この間特に総理の代理として外国を回わられた河野さんから、一言一つ御見解を伺いたいと思います。
  183. 河野一郎

    国務大臣(河野一郎君) お答えいたします。この問題は私からお答え申し上げますことは適当でないと思いますので、一つ外務大臣からよくお尋ねいただき、もしくは総理には報告はしてございますから、総理からお答えいただくことが適当と思いますので、一つお許し願います。
  184. 菊川孝夫

    ○菊川孝夫君 まあ行政管理庁長官として、行政機構の改革という問題について、非常に熱心に取り組まれようとしておられるのでお聞きしようと思ひましたが、拒否される以上、時間がございませんので、次の問題に移ります。  大蔵大臣にお伺いしたいのは、年末を控えまして、毎年末になりますと中小企業の金融ということが問題になります。最近まあ金融はだいぶ緩和されました、一部の優秀産業といいますか、もうかっておる産業については、銀行屋さんの方は今まで床にでんとすわっておって、借りに来たら貸したろうかどうかというて、ふんぞり返っておったらよかったんだが、最近は銀行屋さんの方もそろそろ優秀産業をたずねて、一つお借り願いたいと言って出て行かなければならぬ状態になった。これは一部だ、ところがこれをもって金融は全般的に楽になったとは言えないと思いますが、そこで過般行われました日銀大蔵省との間に戦われた売りオペの問題、これについてあなたは日銀総裁であられ、今度大蔵大臣になられたんで、最近の金融の一応緩漫化しておる状態において、私は大蔵省の主張の方を支持するのでありますけれども、ところがまあ日銀の主張が通った、こういう格好になったんですが、大臣のこの点についての一つ御所信を伺っておきたいと思います。
  185. 一萬田尚登

    国務大臣(一萬田尚登君) 中央銀行がこの流通資金量を妥当なるところに調節をする機能を常に持つということは、これはもう当然のことであります。従いましてそういう機能を持ちたいと、また持つべきであるという中央銀行の主張は、私は全幅の支持を与える、ただ問題は、今回の場合におきまして、私の考えでは売りオペとかいわゆる資金調節の問題ですが、ちょうど川底か非常に何といいますか、コンクリートみたいで、あるいは砂でもいいのですが、平面的にずっとなっておって、水の流れが非常なスムーズに流れておりますという状況の場合においては、この売りオペというようなものがそのときの資金量から見まして活溌に行われるべきだというのが私の考え方なんでありますが、不幸にして今の日本の金融市場は川底がなめらかになっておらない。非常にでこぼこがある。金融がゆるむというか、まず短期の市場に金が出まして底がゆるんでおるので一方の田は干上っておる。干上っておるというのは少し極端ですが、という状態であります。でありますから一つの所が資金量がふえてもこれを吸い上げてしまうのではなくて、この水を他の少し干ぼしになっている田の方に水を引いて行ってそしてこの水が平均していく。そうすると資金量がまだ全体として多くない、金利も急激に下らないというので、こういうふうになって全体の金融市場が平均して、しかも徐々に均衡を保っていくと、そういうような行き方をすることによって初めて短期の貸付市場、長期の資金市場、あるいはまた日本銀行の公定歩合、国債、地方債、社債こういうものの金利関係になっていく。こういうことを私はねらっておるので、その地ならしのところで、ここが少しゆるんだから吸い上げるというのはちょっと待って、これが流れてしまってからそこへやっていこうじゃないか。それが昭和の初期あたりの金融緩慢の時における日本銀行のそういう売りオペ、マーケット・オペレーションと今のマーケット・オペレーションとやり方においちょっと考えなければならん。前提条件がちょっと違うところがある。こういう立場に立ったわけです。これはしかし私と日本銀行の間に意見が違っておるわけではないと思いますが、ただそういういくらか行政的な点がある。日本銀行は主として資金量の調節を常に頭に入れておるので、若干考え、勘どころがあるいは少し逸ったかもしれませんが、何も違った点はありません。今私が申しましたようなのが私の考え方です。
  186. 菊川孝夫

    ○菊川孝夫君 それでは重ねて伺いますが、あなたは、今の日本の金利が高いことはこれは申し上げるまでもないことですが、下げたいという強い御意思を持っているのか。どの辺までは一応持っていきたい、すぐアメリカまではいかぬだろうけれども、せめて西欧並みぐらいには持っていこうという御努力をせられるのか。それともまたそれも自然の川の流れに従ってやっていこうというふうにされるのですか。これには相当政府側の意思が働かなければならぬ。こう思うのですがこの点を伺っておきたい。
  187. 一萬田尚登

    国務大臣(一萬田尚登君) 私の考えはむろんそう金利にしても急激な変化は考えておりません。なるべく徐々に円滑にいって、行き過ぎないようにするということも必要です。今後資金量がふえるにつれて、またふえる努力をいたしまして、金利はもう少し私は下がるべきだと思う。大体今御承知のようにコールが一銭五厘、無条件に一銭五厘でありますが、それが中心になっております。これはもう私は相当やはり低くなったと思います。最近は二銭一厘が一銭五厘まで相当大巾に下っておる。しかし先ほど申し上げましたように長期のたとえば社債の発行条件は最近はこれは利上げしましたが、従来の発行者利回りはあれで一割五厘ぐらいのところを、九分九厘に約一分下ったことになっておるのでありますが、まあこれは今のところとしてはこういうところでありましょうが、すべての手数料、諸掛りを入れた発行者の利回りはもう少し、私はできれば八分台に、一番究極はそういうものは日本の場合において七分台が出れば十分これはそういう国際競争に耐えていける。こういう考え方なんですが、こういうことをしかし誤解のないように願いたいのは、すぐにそういうものをここで打ち出すとは考えていない。大体そういうふうなことを頭に入れつつ今後できるだけ資金量をふやして徐々にやっていきたい。かようにまあ考えております。
  188. 菊川孝夫

    ○菊川孝夫君 一応まあオーバー。ローンの方はやかましかったのが解消されたといってもいいと思います。ところが何といってもオーバー・ボローイングが何といっても解消されていないと思います。だからそれが日本の今年は幸いにして貿易が伸びましたけれども、これから伸ばす上においてもこいつは大事な問題だと思います。この点については、証券市場も相当好況を呈したときに初めて増資がやられて、オーバー・ボローイングの解消になると思うのですが、ややもいたしますと、従来から証券市場がちょっと好況を呈しますと、日銀がすぐ一応威力を発揮したものでありますが、あなたの総裁の当時でもときどき声明書を出される、あれは一体どこをねらってやられるのか。それとも投機が過剰というようなところからおやりになるのか。その点について伺っておきたい。
  189. 一萬田尚登

    国務大臣(一萬田尚登君) まあ今御質問のような点は行き過ぎないように、まあ用心をするようにという親心からであります。
  190. 菊川孝夫

    ○菊川孝夫君 日銀総裁というのはそういう証券市場に対しても親心を示すというよりも、むしろそれは大蔵大臣の実際の仕事じゃないかと思うのでありますが、日銀総裁がそういうところに声明書を発表したり、とやかく介入されるというのは、少し行き過ぎじゃないかと思うのですが、この点はどうですか。
  191. 一萬田尚登

    国務大臣(一萬田尚登君) その点は事柄と程度の問題にもなるでありましょうが、まあ私は大蔵大臣があまりそういうことには、そう言わない方がいいという考えをしております。
  192. 菊川孝夫

    ○菊川孝夫君 しかし理財局が証券取引に関する主管局である。証券取引については大蔵大臣が主管大臣だと思うのですが、大蔵大臣が黙っておってかわりのそれでは日銀総裁にそういうことをやらせるとこう言うのですか。
  193. 一萬田尚登

    国務大臣(一萬田尚登君) その点につきましては若干私の答弁がまだ足らなかったと思いますが、むろんこの有価証券に対する行政に関して、これは大蔵大臣が主管でありますから、大蔵大臣としても常にこれが適正にいくようにもう考えております。日本銀行の方から注意するとすれば、おそらく日本銀行の立場においてまあこういうふうに注意をした方がよかろうと、こういうところに出ていると思います。具体的にどういう点について御趣旨になっているか私はわかりませんが、これはそれぞれの立場もあります。たとえば株式を通して投機的なことが起れば、まあ中央銀行としても特に警戒を要するというような点がありましょうが、一がいには私は申し上げられないと思います。
  194. 菊川孝夫

    ○菊川孝夫君 次に、時間がないので、防衛庁長官にお伺いしますが、簡単に要点だけ伺います。  砂田放言といってやかましく言われたこの放言の始末、跡を受け継いで国防省とか国防軍だというようならっぱを吹いてみたり、で次には旧陸海軍の中将を私設顧問としてまあ招聘をされて、これらの跡始末は跡を継いで実はやっていかれるのか。それとも新たな構想でおやりになるのか、その構想を一つお示し願いたい。
  195. 船田中

    国務大臣(船田中君) いろいろ砂田前長官が構想を持っておられまして、その一部が世間に発表されて、今御指摘のように砂田放言というようなことも御批評があったようでありますが、しかし砂田構想として世間に考えられておりました一番大きな問題は、やはり国防省設置の問題、それから顧問の問題、それから共同防衛隊設置の問題。で、この三者につきましては、原則的には、私は決して放言じゃないと思います。現在防衛庁の機構、人員というものから見まして、他の省と比較いたしまして優に一省をなすに足る機構になっております。それだけの大きな分量を持っているのでありますから、そうして自衛隊の士気を高揚するということから考えましても一省を設置するということは必要であろうと考えております。しからばそれをどういうふうに具体的にやるかということについては、まだ十分これから検討することでございまして、成案を、得ているわけではございません。  それから顧問につきましては、これは砂田長官の個人的な忠告者、忠言者として顧問を置くということで置いております。これをそのまま踏襲するかどうかということについては検討を加えつつあるところでございまして、これも結論を出しておりませんが、大体私の考えておるところでは、何といってもこの防衛の問題はきわめて重要なことであり、これは国民諸君に十分理解をしていただき、そうして自分の愛する祖国を自分たちの手で守る。こういうことで国民全般の心からの支持を得なければならぬことでございますから、従って旧軍人だけでなく、できるだけ広い範囲の方々の御意見を十分伺っていくことがよくはないか。かように考えておりまして、そういう角度から顧問の問題も考えて参りたいと思っております。それから郷土防衛隊の設置の問題につきましても、これはもし将来有事の場合におきまして自衛官が第一線に働く。そういう場合にそれぞれの郷土をこれまた郷土にいる青年諸君、壮年諸君が自分たちの郷土を守るということは、これはきわめて大切なことでありますから、そういう趣旨におきまして郷土防衛隊の設置ということも考えて参りたい。大体さように考えておりますが、今せっかくの検討を加えて成案をすみやかに得たいと考えておる次第でございます。
  196. 菊川孝夫

    ○菊川孝夫君 構想はなるほど一応理屈に合ったようなことを言われますけれども、今の状態からわれわれはそんなものをこしらえたって国費の乱費になる。これは意見になりますから差し控えますが、なるべく金を使わぬようにしてもらいたいというのが私どもの主張であります。  まあ時間がありませんから、次に労働大臣に最後の一点だけお伺いしておきたいのですが、今の日本の政治にとってそれはそういう防衛だとかそんな問題よりも大事なのは、私は失業問題だと思います。今年も高等学校や大学を卒業する諸君の就職口という問題は深刻な問題になりつつあります。従いましてこれからふえるところの労働人口と雇用量との関係をいかに調節するかということは、日本の政治にとっての私は一番大事な問題の一つである。こういうふうに思うのでありまするけれども、経済六カ年計画とか五カ年計画ということを盛んに言っておられまするけれども、六カ年先には少くとも大学、高等学校卒業生等は大体において就職できる、こういうような構想をもってやられるのか。それとも大体ふえる労働人口はこれだけであって、完全雇用というようなことを打ち出しておられるのですから、雇用量の増大はこういうふうになるのだという案。あるいはそれがなければ労働大臣の構想を一つここでお伺いしたい。  第二点は公共企業体労働関係法の改正を労働大臣はお考えになっておるようでありまするが、これは制定実施以来いつも仲裁の裁定が出ましたときに、その解釈上当時の吉田内閣と組合並びに仲裁裁定を出した仲裁委員との間に意見が対立いたしまして、それから紛争を生じてきたことは労働大臣も苦い経験をお持ちになっておるはずであります。従いまして改正にあたりましては、仲裁委員会の仲裁裁定が出たならば、政府もあるいは公共企業体もまた労働組合もその裁定が出たが最後それに服して、すべて労働問題がこれで一応双方に不満な点があっても服して、公共企業体関係の労働問題がおさまると。こういうふうに仲裁委員会を権威づけ、または法律の整備を行なおう。こういう構想から出発されているのか。それとどちらかというと、中裁委員会の骨抜きをはかった公共企業体労働関係法の改正をお考えになっているのか。どちらであるかその点を一つ伺っておきます。
  197. 倉石忠雄

    国務大臣(倉石忠雄君) ただいま御指摘の雇用の問題でございますが、私はこの日本の経済が今日のように大体落ち着いて参りました点から考えましても、失業問題というよりむしろ日本の労働人口をいかに経済的に活用するかという雇用政策というふうに考えるべき段階にきておると、こういうふうに思うのでありまして、そこでただいまお話のような経済六カ年計画というこれは答申が行われましたが、正式に政府でまだ決定いたしたものではございませんが、大体そういう線でいこうとわれわれも考えておるわけであります。そこでこの六カ年計画に表示いたしております主たる目的は、御承知のように経済の自立と雇用問題の解決、この二点が重点として論ぜられておるようでありますが、この計画によりますと御承知のように、当初の昭和二十九年度には六十四万人の失業者であるものをだんだん計画を進めまして、三十二年度においては約六十万人にする、そうして最終年度である昭和三十五年度においては五十四万人にいたしたいとこういう計画でありまして、この雇用及び失業の数を今申し上げましたようにいたすために、諸般の経済政策をそれにマッチさせるようにしようと、こういうことでありまして、私どもも大体この六カ年計画の線に沿って雇用の問題を考えて参りたいと思っておるわけであります。そこでその他の基本的な考え方は、そういうふうに経済の規模をだんだん拡大していくことによって積極的な雇用政策をやると同時に、しかしながらどうしてもしわ寄せのしてくる失業というものは、これはもう止むを得ないことでございます。そこで最終年度の三十五年度においては、現在の計算で参りますと約四千三百万人余りの労働人口ということになるようであります。御承知のように現在の人口増加の状況を見ますると今御指摘の大学はもちろんでありますが、今年の労働市場を見ますと中学校、高等掌校の卒業者というものが、とにかくいわゆる生産に従事できると認められておる満十四才の程度に達した者が年年二百万人くらい出て参りまして、これはまあ私どもの観察では、戦時中産めよふやせよという人口増殖をあおったあの結果が今日現れてきておる。最近の傾向では御承知のように死亡率も減っておりますけれども、人口の増加率もそれと同じように減ってきておる。しかし現在一番困っておるのは、今申し上げました戦争中の影響によってふえてきておる人口、満十四才程度になったこの生産力を持つ人口のものをどうするかということで、これは私は政府が六カ年計画考える上においても重点的に考えなければならないことだと思っておりますし、その方面に私は努力いたすつもりでありますが、なおかつ現われてくる失業者に対しては、御承知のように失業対策事業を今までもやっておりますが、これは議会でもたびたび指摘されましたように、当初この失業対策事業というものは御承知でもございましょうが、出てくる失業者に何とかして現金収入を与えようということで、生活保護的な気持でわれわれがああいう法律を作って実施いたしました。しかしこれがだんだん実行されるに及んで、地方などにおいては非常に経済効果を生ずる喜ばれる事業が行われるようになったものでありますから、全国から、多少地元負担は多いけれども失対事業をやってくれという要望が非常に多いのであります。しかし一方において失対事業の労務者は非常に非能率的であるとか、不経済な仕事をしているとかいう指摘がたくさんある。そこで私どもは、来年度予算においては特に特別失対、ことしからやっておりますが、あれが非常に喜ばれておりますからしてあの点に重点をおいて経済効果の上る事業をやっていきたい。従って公共事業方面に出てきたしわ寄せになる失業者をその面で救済していこう。御承知のように先ほど申しました六カ年計画の最終年度の三十五年度において、四千三百十何万という労働力に比較いたしまして四十五万人ということは一・七%ほどでございますから、これは諸外国に比べましても決して完全失業者が非常に多いということにはならんのでございまして、ぜひこの計画計画通りに進めていきたい。こういう熱意を持っておるわけであります。  第二点のお尋ねは公共企業体等労働関係法でございますが、これはもう菊川さんも御存じのように従業員も、経営者も、政府も、国会もこの法律については実は悩まされて参った。私もしばらくの間労働委員長で、あの仲裁裁定の最後の十六条二項による国会における議決をするたびごとに、この法律の欠陥を痛感しておった次第でございまして、これは何とか改めようではないかということは従業員側も経営者側も誰も感じておるところであろうと存じます。そこで今お話のありました十六条と三十五条の関係については私は仲裁裁定という最終判決の下るべき機関がございますのですから、これはどうしても尊重されるようにしなくちゃならない。しかしながら十六条の二項で予算上、資金上不可能な場合は国会の議決を求めるというので、最後のしわ寄せが国会にきています。こういうことは立法当時私は司令部としばしば交渉いたしたのでありますが、これでやれということでほとんど命令でやられました。そこでこれは私はこういうものはみんなが改正した方がいいという考えをお持ちでありますから、従業員の方々とも経営者側とも相談をいたしまして、みんながこの法律のままでいいということだったら私どもあえて手をつける必要はございませんが、一ぺん一つみんなでとっくり相談してみようではないか。相談した上で皆さんの御希望をなるべくいれるようにして、そうしてきめていきたいと。そういうことで目下事務当局に検討を命じておるというのが現在の段階でございます。
  198. 菊川孝夫

    ○菊川孝夫君 今の御説明になりました雇用の問題についてよりも、私は先ほども労働人口四千三百万ですかに達するというお話から考えてもなかなか容易なことではこれは吸収できん。で、まず初年度に当る明年三月の学校卒業者について一つ考えてもらいたいのだが、これからはなかなか単に自由主義的にこの雇用の問題と取っ組んでおったのではとても処置ができないと思うのです。で何と申しましてもどの企業でもまあ国家の財政投融資の影響を受けているか、あるいはまた国に物品の納入をしたり、工事の請負をやっているか、とにかく政治とつながっておらないような企業はほとんどないといっても言い過ぎじゃないと思います。従いまして先ほどの砂糖の問題にしてもそうでございますが、何でもこれは密接なつながりを持っている。特に国家権力の恩恵に浴しているといっても過言ではないと思う。たとえば開発銀行から融資を受けている融資の額に応じて、従来まあ保守政党に対する政治献金の比率と大体一緒であったというようなことを一つこの際脱皮して、そして開発銀行の融資を受けているような企業、あるいはまたその他の国家の金融機関から融資を受けているような額に応じて、一つ義務雇用制というようなところまで発展させなければ解決はできないのじゃないか。ある程度の義務雇用というような点まで考える必要があるのではないかと私は思うのでありますが、そのくらいな思い切った手を講ぜんことにはなかなかこれは処理できない。明年の三月卒業者について一つそこまでもすぐにふん切ることはできないにいたしましても、画期的な就職口のあっせんと申しますか、処理方針と申しますか、就職問題の処理方針と労働省でお立てにならない限りにおきましては、なかなか今までのお考えではこれはだんだんと問題が深刻化してくると思うのであります。そこで結論的に義務雇用制の検討の用意があるかないか。それをやらなければなかなか処理はできないのではないか。かように考えるが、労働大臣の御見解を伺っておきたい。
  199. 倉石忠雄

    国務大臣(倉石忠雄君) この雇用の問題というものは、単にそれだけのことを取り上げて考えてもむだであることはもう菊川さんもよく御存じの通りでございますが、私どもは昭和二十九年度予算の編成に当りまして、思い切ってデフレの経済をやって、そして物価を引き下げて輸出の増進をやろうということを考えましたのは、御存じのように私どもが主張いたしました経済の何と申しますか、地固めの方針でありました。その次にできました内閣もやはり同じ方針に基いて徹底的な経済政策をやって、幸いにして国民の協力を得ましたものですから、とにかく物価は御承知のように大体安定をし、国際収支のバランスも改善された。そこへ持ってきて未曽有の米の豊作というふうなことで、日本経済というものは大体私どもは安定してきていると見ているわけであります。従ってそういう段階にきたときに雇用の面はやはり積極的に考えていくべきだ。そういうことで二十九年度、三十年度のようなものの考え方で推し進めていくということになりますと、御指摘の通り雇用の問題というものは解決は非常に困難であるということは、六カ年計画の報告書にもうたっている通りであります。私どもそのように存じておりますが、何と申しましても重大なる雇用の問題でございますから、私どもとしてはこの政府の立てようとしている六カ年計画に、ぜひともこの雇用の面を一番ウェートをおいて考えてもらって政策を立てていきたい、こう考えております。ただいま御指摘のような義務雇用制というようなことについては政府はもちろん考えておりませんし、私個人もそういうものの考え方はいたしておりません。
  200. 菊川孝夫

    ○菊川孝夫君 時間はありますか。
  201. 西郷吉之助

    委員長西郷吉之助君) 時間は超過しております。
  202. 菊川孝夫

    ○菊川孝夫君 ではこれで。
  203. 佐多忠隆

    佐多忠隆君 今雇用の問題でのお話で数十万の完全失業者を目標年度、三十五年度五十四万、それから全就業者数を四千三百万目当てというようなお話がありましたが、これはおそらくその完全失業者四十五万、それから就業者四千四百八十六万四千五百目標というのとちょっと言い間違いをされたのじゃないかと思いますので、一応間違っていたら訂正願いたい。そこいらは非常に重要な大事な数字ですから正確にやっていただきたい。
  204. 倉石忠雄

    国務大臣(倉石忠雄君) 計画の最終年度の四十五年度におきましては、労働力人口は現在の情勢で増加いたして参りますと四千五百三十一万でございます。そこでその一%の四十五万が最終年度における完全失業者と、こういうふうに見ておるわけであります。
  205. 佐多忠隆

    佐多忠隆君 従って四十五万。
  206. 倉石忠雄

    国務大臣(倉石忠雄君) 四十五万です。
  207. 西郷吉之助

    委員長西郷吉之助君) それでは本日はこれにて終了いたします。明日は午前十時から開会いたします。    午後六時二十二分散会