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山本經勝君 私は、最近の
炭鉱災害頻発にかんがみまして、
日本社会党を代表いたしまして
緊急質問をいたすわけでございます。
御
承知の
通り、本年の十一月中において重大なる
炭鉱災害がすでに四件に達しておるのであります。まず
北海道雄別鉱業茂尻炭鉱の
ガス並びに
炭塵の
爆発によりまして、八十八名の
被災者のうちで六十名に上る
死亡者を出しております。続いて同月の九日、
福岡県の
田川郡におきまして、
赤池炭鉱の
ガス突出による
被災者三十名のうち十一名が
死亡いたしております。さらに十五日に同じく
田川で
真岡炭鉱の
ガス燃焼によりまして四名の
被災者を出し、そのうち一名
死亡、同じく二十九日に
福岡県の宗像郡
大和炭鉱の
ガス爆発によりまして二名の
即死者を出しております。以上の
通り、一カ月間に
ガスによる
災害で百二十四名の
被災者を数え、そのうち七十四名に上る多数の
犠牲者を出しておるのであります。
災害の性質は
爆発あるいは
突出燃焼というふうに変っておりますが、いずれも
ガスによる
災害であるという点では変りはございません。しかも、これらの各
炭鉱は、
鉱山保安法並びに
石炭鉱山保安規則に定める
甲種炭鉱の指定を受けておる
炭鉱であることでございます。この
甲種炭鉱と申しますのは、
可燃性の
ガスを多量に発生し、
爆発や発火、
燃焼等の危険が常にあるからこそ、特別に
対策を施す必要上、
法的措置が講じられておるのでございます。にもかかわらず、今回のごとき
災害を発生したということは、一口に申しますなれば、
管理者の
保安に対する
軽視、あるいは
保安の
サボといわれるものがあったのではないか。最近
石炭産業の
合理化を中心にして、業者がもっぱら利潤の追求に汲々とするあまり、
保安を
軽視し、
サボるという
実態から、このような結果を起したのではないか。もしそれが間違いであるということでありますなれば、以下私が申し上げるような矛盾が起ってはならない、こういうふうに考えるわけでございます。あるいはまた事実
サボっており、あるいは
軽視をしておるというのであるなれば、それに対する
鉱山保安法及び
石炭鉱山保安規則に基く
指導監督の任に当っておられる
当局は、どのように
日常の
監督業務の推進をなさってきたか。あるいはこの点に不行届があったのではないかという問題になるのではないかと考えるのであります。
そこで、以下数点にわたって
通商産業大臣並びに
労働大臣に御
質問を申し上げるわけでございます。
まず第一に、
災害の
原因に対する究明でございます。
茂尻炭鉱では、まず
肩盤の掘進中に
ハッパによって
停滞ガスに引火したと言われておりますが、この
作業個所は五十メートルの
延び先に
エアゼットによる
局部扇風機が設置されているだけで、完全な排気が行われておったとは言えないのであります。その
状態は、
坑道内、つまり行き詰まりになっておる
坑道内に、
ガスを多量に含んだ空気が、弱い
エアゼットの通風によりますから、いきおい乾流しております。そうして排泄されない、こういう
状態がこの
坑道の中にあったと判断されております。これは
作業の
進行を急ぐのあまり、間に合わせ的なやり方であったと言わなければならぬのであります。こういう
状態が私
ども常に至るところの
炭鉱において見受けられる実情なのでございます。こうした状況のもとで
作業を強行しておったということであるなれば、これは明らかに
保安に対する
軽視どころではなく
サボである、かように断ぜざるを得ないわけでございます。さらに七月二十六日と記憶いたしまするが、
北海道保安監督部の
派遣班が、この
茂尻炭鉱の現場を検査いたしましたその際に、問題の十一番
層払いの随所に多量の
粉炭が堆積しておった。そこで、これを一掃するよう
勧告をした事実は、
報告書によって私も見たのでございます。しかるに今回の
ガス爆発に当っては、この十一番
層払いの
粉炭に誘爆を起している。そのために被害を一そう拡大したことは、これまた明らかな事実でございます。そうしますと、
炭鉱には
炭塵があるのは当然のことで、この
粉炭の
処理の
勧告は、一時的なものであってはならない。日々発生するのでありますから、常に
粉炭を
処理する
措置が講ぜられなければならない。これは御
承知の
通り、
規則の第百三十七条から第百四十四条にわたりまして、詳細な
措置が明確な
規定になって示されておるにもかかわらず、このような
炭塵爆発を誘発したということは、明らかにこの
炭塵処理が法の
規定並びに
勧告に従って行われていなかったということを裏付けする。そうしますと、こういうような
状態を私
ども保安の
サボ、あるいは
保安軽視という事実として指摘して当然であると確信をいたしておる次第でございます。しかも、さらに
赤池炭鉱の場合におきましても、
ガス突出の危険はすでに以前から予知されておる。そのために
先進さく孔が一週間ほど前から行われておったのでありますが、三交代の
作業行程で、一方だけが通称十尺
ノミ、約三
メーターの
ノミでもって
さく孔をし、さぐりを入れておった。このくらいでは、とうていこの予防にはならないということは明白なのでございますが、一方の採炭によりまして、
払い面の
進行は一
メーターないし一
メーター半前進いたします。そうしますと、十尺
ノミでせいぜい掘れるのが九尺、そうしますと、一方
進行することによりまして、
あとに、
先進さく孔をやったいわゆるさぐりの効果というものは、すでに消えておる、こういう
状態でなくてはならぬと考えます。しかも、この
突出ガスというのは、強い力で圧縮されて、そうして地殻内に閉じ込められた
天然ガスが、
ハッパ作業によって衝撃を受け、亀裂を生じた
炭壁を突き破って飛び出してくるのであります。このような現象は少くとも綿密な連続的な
先進ポーリングを必要とするにもかかわりませず、わずかに
先進さく孔を十尺
ノミでやっておった。しかも三
作業行程で一回しか行なっていない。つまり二十四時間中に一回しか行なっていなかったということは、これまた
保安軽視の
実態以外の何ものでもないと考えるのであります。
以上のような
実態について
通産大臣並びに
関係当局は、どのような
日常の
監督、あるいは
指導を行なっておいでになったのか、あるいは今次
災害に対して、どのような
実態調査をなされ、そうして事後の
措置を十分とり行われたか。詳細な御
説明を承わりたいのでございます。
次に、茂尻及び赤池の今次の
災害に当って、私は現地についてそれぞれ調査に当った一人でございますが、
茂尻炭鉱においては、北海道の
監督部長の意見によりますと、
ガスの
爆発は、少くとも
ガスが空気中に四・五%以下の場合に起ることはないということが言明された。われわれもまた長い経験上、そう信じて参っておるわけでございます。四・五%にして初めて
爆発が起るのである。ところが一番
爆発に適切な条件だといわれるものは七・八%、こういうことになっておるようでございますが、そうしますと、四・五%以上七・八%に達する
爆発に最も恰好な条件があった。つまり流動にせよ、停滞しておるにせよ、そういう
ガスがあったということはいなめないのであります。これは
爆発の事実が物語っておる。こういう
状態から考えて参りましても、この
保安に関する現場の職制上の
指導と、いわゆる
保安監督の
関係が、いわゆる所長あるいは鉱長、あるいはまた鉱業権者といった人々が、いわゆる業務上、計画の遂行と
保安監督の最高責任とを兼ね持っておるということに非常に問題があるように考えるのでありますが、この点につきまして、
通産大臣、最高責任者としての
通産大臣の明確なる解明、御
説明をいただきたいと考えるのでございます。
さらにお伺いを申し上げまするのは、
鉱山保安法第三条にいう
保安の対象が、人と物と、いずれにウエートを多く置いておるのか。人命の
保安と、資源と施設、資材の
保安と、あるいは鉱害に対する
保安が並列されておりますが、この考え方は、人間の生命の
保安というようも、とかく
石炭産業の
合理化という方針が、能率の増進と、さらにコストの引下げを重点的に強行していく
関係上、生産と
保安という
関係が、むしろ人間の生命の重要性というものよりも、生産に重点がおかれた形になっております。このような法律そのものが根本的な問題だとわれわれは考えるのでございますが、この点につきまして、法を改正して、自後に起る
対策の基本を確立される
通産大臣にお考えはないか。
最近、
昭和二十五年以来二十九年までの五カ年間に、
炭鉱災害で
死亡したものは年々七百十九・五名、約七百二十名に上るのであります。このような多数の
犠牲者が出ておるのでありますが、たまたま、洞爺丸の沈没とか、あるいはまた紫雲丸の沈没等による
災害につきましては、非常に世間的にも大きくとり上げられますけれ
ども、日日職場でもって倒れて参りますこの
炭鉱労働者の七百二十名については、とかく
軽視された傾向がございます。この七百二十名は年々この職場でもって倒れて参るのでございますから、
炭鉱労働者の
保安問題というのは、少くともより強力な立場で
指導監督されなければならぬにもかかわらず、それがおろそかになるということの
理由は、今申し上げましたような経営者の手に、つまり事業計画を推進し、生産し利潤を追う、こういった面から、付随的な
保安として考えられたことに、何といっても大きな
原因があると考えられるのでございますから、この際、
政府当局といたされては、この法律の根本的な改正を必要とすると考えるのでありますから、これに対するしっかりとした所信を伺っておきたいわけでございます。
それで特にお願いなり、お伺いをせなければならん点は、
保安法の第四十五条ないし四十九条に示す
保安協議会、並びに
保安規則第四十九条から五十四条にわたる
保安委員会の設置、これらの運用等につきましては、非常に遺憾な点が多い。事実上空文にひとしいと考えるのでございます。その
理由は、中央協議会は
通産大臣、地方協議会は
保安監督部長の単なる諮問機関に終っている。しかもその下にあります
炭鉱の現場にあります
保安委員会は、これまたいわゆる
保安管理者の諮問機関である、こういう領域を出ておりません。しかも先ほどから申し上げますように、
保安の
サボ、あるいは
保安軽視の傾向をより強力に取締るためには、
保安監督官の増員、あるいは予算面でのこれらの行動費の増額が必要だと考えます。このことは今まで経験した多くの事実が物語っておるのでございますから、この点について
通産大臣の責任のある御答弁を伺っておきたいわけでございます。
最後に、
労働大臣にお伺いをいたしますが、法第五十四条によりますると、大臣は、この種
炭鉱災害に対しまして、
通産大臣に、鉱山における
災害に関する防止についての必要な
勧告ができることになっております。この
勧告は当然なされたと考えますが、いつどのような内容によってなされたか、このことを具体的に御
説明をいただきたいのであります。
以上、御
質問を申し上げて御答弁をいただきたいと思います。(
拍手)
〔
国務大臣石橋湛山君
登壇〕