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国務大臣(
清瀬一郎君) 第三次
鳩山内閣で
考えておりまする
文教政策のあらましを申し上げたいと存じます。
これは今回
自由民主党が先月の十五日に結成されまして、これは
全国の
党員代表が集まった
党大会でございましたから、そのときに党の
一般政策としてきめましたのがこれであります。これを
内閣で検討いたしまして、過日の
閣議でそのままに新
内閣の
文教政策といたすようにきめておるのでございます。
その第一の、一番大きなことは、ずっと今の
教育制度、これは御
承知の
通り昭和二十年の十月十日に
マッカーサー司令部が幣原
内閣に要求いたしたことに始まっております。自来積み重なった
文教制度をずっと検討いたしますると、大きなところで不明なところがある。その第一は、
憲法の上においては国が
教育をする
義務と
責任がある。すでに
責任がある以上は
教育がどう行われておるかを監督しなければ
責任は負えません。
教育がゆがんできておるのに国は黙っておれということだけでは
責任が負えませんから、この国の
教育に対する
責任と監督の関係を有機的にどうしたらいいだろうか、こういう
教育の根本の問題がある。また
学校制度、わけても
大学の
制度にどこかに合わぬところがあるじゃないか、数から申しても
世界中、
日本を除いた全
世界の
大学と同じ
大学の数があるのですね、イギリス、フランス、ドイツ、イタリア、ずっと寄せても四百そこそこ、こっちは四百九十持っておる。しかしながらすでにできたものを減すわけにはいきませんが、この
内容充実ということを
考えなければないかん、大きな問題であります。それは
学校の
行政、これにあるのです。戦後十年を経た
わが国でありまするから、高い見地で、広い視野で
一つ日本の
教育制度というものを
考え直そうということから、
文部省ではなく
一つ内閣に
教育制度審議会とでもいった、これは仮称でありまするけれ
ども、そういうものを作ってみっしり
一つ考えようということが第一でございます。これはまだ過日
閣議の承諾を得ておりまするがいかなる格好で、たとえば
憲法調査会のように
法律で構成を作るとか、あるいはまた法制の上でこういうものを作ってよろしいという頭を出してほかは政令でいくか、そこらの点は未定でございます。しかしながらメンバーとしちゃ学界の長老、耆宿はむろんのこと、政界の
方々、
実業界の
方々、各
方面の公平な
方々に入ってもらうことは予想されております。こういうことがこの
内閣の
考えておりまするところの
一つでございます。
それからして
教科書の問題です。これは
自由民主党の
組成分の
一つである元の
日本民主党では相当程度
調査いたしたのでありまするが、最後に
結論が大かた出ておるところで解散合併しました。党においては形式上いまだ
教科書の問題について党議はきまっておらんのであります。しかるに幸いに前
文部大臣が
中央教育審議会に諮問されておりまして、その諮問に対する
答申が一昨五日の午後にでき上りました。一部
新聞にも報道されておりまするが、どうか御
委員会で御
審議の対象の
一つとしてお使い下さるようにただいま配付いたしました。この案については私も敬意を表し、重要な
参考資料といたそうと思っております。むろんさっき申し上げました
通り政党内閣制度でありまするから党にもこれを報告いたしまして検討願って党の案としていずれこれと同様、または幾分修正したものが出てくると思います。それを見た上で成案を得て御
委員会に御報告申し上げまするが、中途の過程ではございまするけれ
ども、どうぞ
ごらんおきを願います。
世間で問題となりました国定か、
検定かということについては、やはり
検定をとっております。しこうして
検定をもう少し公明にしょう。あらかじめ
世間に公示された
調査員に
調査させる。それから
調査の結果
審議会できめまするが、
審議会は
責任のとれるようなふうに
審議してもらおう。できた
教科書は一ぺん作ったからといって、日進月歩の今日、いつまでもこれを使うことはよろしくないから
検定に期限をつけよう、こういうふうなことを書いております。それからして、
採択については、
採択区域をきめよう。私
どもの、もと属しておった党派では同じ
考えを持っておりまするが、
採択区域を広くやった方が
父兄の都合がいいというので、たしか県と書いてありまするが、これは郡、市の単位にしよう、こういうことを書いておるのであります。それからして、
採択のことは、その
基準内の
採択委員会でやろう、それは校長、
教員及び
教育委員会の
委員及び
学識経験者、こういうふうに書いております。今までのような一校別々ということは行き過ぎだという
意見でありまするが、
皆さんの御
意見をお聞かせ願いたいのであります。発行のこともここに第三点としております。価格の安くなるようなふうの工夫をしよう。
認可基準を引き下げよう。まず大体こういうことでありまして、どうか十分なる御検討を願いたく存じます。
この
教科書問題に引き続いてでありまするが、
わが国は敗戦後でありまして、
子供に
教科書を買って与えることのできぬ人がある。それでも今まで
生活保護法の
適用を受けるのは、こちらが心配するまでもなく、
生活保護法でいきまするが、純粋に
生活保護でないもので、やはり
教科書が手に入らぬのがあるのであります。
小学校は言うに及ばず、中学でもあるのであります。そこで
文部省では、これを準要
保護児童といっております。下調べしたところが四%くらいあるそうです。七十三万人くらいあるそうです。これには
中学校に至るまで、
一つ教科書だけは無償でいこうかという
考えをもって大蔵省にその請求をしております。種類はちょっと違いまするが、今の
給食ですね。これが
教科書よりもなお人道的でありまして、
給食の金をもってこぬから、ほかの
子供が食べるのに食べずにおるというのじゃあまりにもよくありませんから、四十三万人程度には
一つ給食費を補助しよう、こいつには三億四、五千万の金が要ります。けれ
ども、こういう
考えも持っております。
それからして
皆さんの御尽力で
わが国育英事業というものが毎年の
予算にありまして、優秀な学徒でしかし経済上の
理由で勉学ができぬものがあるので、この
育英事業を拡張いたしまして、採用の数もふやし貸す金も高めるという
考えを持っておるのであります。単価の増をいたしたいと思っております。
それから
特殊学校ですね。すなわち盲
学校、
ろう学校それからして
特殊教育精神薄弱の人、
養護学校、そういう
施設なり
教育内容なり
教員の養成について力をいたそうと思っております。それからまた
僻地教育、これも
参議院の皆様の従前熱心に御
勧奨下さったところであります。この
僻地教育の
振興についてもさらに拡大して行きたい。
それからして
学生寮です。私
ども東京におりましても
地方の
父兄が言ってくることは、入学したけれ
ども宿舎がないということなのです。
東京は皆焼けたのですから、それは無理ありません。たまたまあると六畳の間一ヵ月五千円取られる。そこでまあ私の家へでも置いてくれといわんばかりにたくさん言ってこられますけれ
ども、とてもわれわれだってそうたくさんの人を相手にできるものじゃない。そこで前
担当者の時分から
府県別に法人にしまして
学生寮をやる
計画があるのであります。来
年度は三千人ぐらい
一つやってみよう、こういうことでございます。
以上申し上げました
教科書の
無料配布、準要
保護児童の
給食、
育英事業、
特殊教育、
僻地教育の
振興、
学生寮といったようなことは、これをつづめて
教育の
機会均等を得せしめるという
意味で
内閣は取り上げておるのでございます。
それからわれわれの党も
内閣も
日本の将来は
科学の
振興にあるということを
考えておりまして、その
適用としてまず
学校教育に
理科系統を強化し、それから
各種の
科学研究には、今日でありますから金はないのでありますけれ
ども、十分なる
施設をいたしたい、こういうことであります。その
考えの
適用の
一つとして、今まで
私立大学は
人文系の方が多いのですね。
法律とか商業とかいうのでありますが、
私立大学で
理科系の
研究をしておるところにはやはり適切なる補助、援助をいたしたい、これは中教審からも同様の
答申があるのでございまするが、これを今年は実地に
一つ行なってみたい。すでに
国会においても問題になっておりまする
原子力であります。これも初めの頃は私は
原子力というのはいかにも恐るべき兵器に使われるものだ、これを
研究しかけるということは恐ろしい道を歩むというので一部
国会内にも反対の空気もあった時代もありまするが、昨年八月の
原子力平和利用の
会合が開けて以来
国内の世論も一変いたしまして、
原子力研究に遅れたならば一等国たる資格がないとまで極言されておりまするが、これもやはり
わが国においても始めるべきだというので、田無に
原子核研究所がありまするが、そのほかに
京都大学及び
東京工業
大学で
原子炉の
研究を始めていただくことに
考えております。
それから
航空学であります。
航空の物理、応用、それについてやはり今
大学の学部は、さき申したような
理由でなるべく押えておるのでありまするが、
航空だけは
一つ航空学科を復活すべきだろう、こういう
考えを持っております。
医術に関係する方ではガンの
研究、それからビールスの
研究、放射線の
基礎医学、こういうことの
研究を助成いたしたいと
考えております。
なおこの
カテゴリーに入るものは、御
承知の
地球電磁気の
研究をやってもらっておりまするし、さらに
世界各国の
研究所と歩調を合せていかなければならぬのはあの
南極地域の観測でございます。これにも
文部省では力を入れて、他の国と、一たん敗戦しましても、学問の水準においては肩を並べていくために
南地域探険のためには相当の
金額、四億近くの金を使わなければならぬと思っております。
以上は
私立大学の
理科学研究の
振興なりあるいは
原子力究研なり、
原子炉の
研究なり、
航空の
研究なり、ないしは
地球電磁気の
研究等は、これをわれわれは
科学振興のための
文教施設、こういうふうに一括した
考えでございます。
なおわれわれは
社会教育に力を入れたいと思っております。
青年の
指導とか、
青年学級、また御
婦人の方の
婦人学級、
大会といったような
方面にも力を入れたい。
それから前年には新
生活運動の貧相は
文部省でおあずかりしておったのでありますが、来
年度は
内閣の
予算のうちに計上することになっておりまするけれ
ども、これも国のためにすべき重要なことでありまするから、直接
間接、あるいは精神的に実際的に、新
生活運動がますます発展し、
国民に浸透するようにいたしたいと
考えておるのであります。
それから
参議院の
後藤文夫さんあたりが非常に熱心にやられました
開拓青年隊、あれは大へんいいということで成績もようございますが、これは
建設省の方にやってもらうことにいたしております。しかしながら
青年指導という面においては、
文部省においても非常な関心をもっておりまするし、できるだけの推進をいたしたいと思うのであります。
以上は
社会教育を
振興するという
カテゴリーのうちでやっておるのでございます。
それから
国民劇場の運営とかあるいは
国立劇場の設置も各
方面の御
意見によって着手いたしたいと思っております。
リクリエーション大会、
芸術祭、それから問題は違いまするが、
わが国の
文化の保存であります。これらの点についても十分なる注意をいたしたい。
なお非常にむずかしいことで、こちらの方の力でいけるかどうかしりませんが、党でやれとおっしゃるのは、覚醒剤を使用する
青年を
一つ厚生省なり法務省と協力の上絶滅したいと思っております。また
不良出版物、これも
法規上非常にむずかしいことでありまするが、
不良出版物の抑制もいたしたい、まあかようなことをおもなる項目として逐次やっていきたいと思っています。
なおこのほかに、緊急の施策といたしまして別にぬき上げたものがございます。以上の
一般政策のうちに含んじゃおるのでありまするけれ
ども、特に緊急の
政策として
教育委員会のことを
研究せよ党の
緊急政策では
教育委員会の
改廃という
文字を使っております。いかに
改廃するかは今熱心に
研究中でございます。それから
教科書制度を改善する、これは今申し上げた
通りで、
緊急政策でありまするから、緊急にきめていきたいと思っております。それから
教育者の
政治的中立であります。
これについては、ちょっと一言お断りいたしますが、きのう
衆議院で、
教育者の
政治的中立を厳守すると、そうすると
文部大臣は
教育二法案を
改廃して取締りを厳にするかというお問があったのであります。それに対して私は、それは
法律の
改廃はまだ案がきまっておらぬけれ
ども、
政治的中立ということは、
法律で処分するとか、
行政で取締るとかいったようなことのほかに、それへいくまでにひざを突き合せて
勧説勧奨をしなくちゃならぬのじゃないかというのです。それをある
新聞では、
勧説を直接
間接の
間接と書いて、
勧奨をインタフィアレンスという
意味の干渉と書いておるのです。あれは私の言ったのは、
勧説は勧める、
勧業銀行の勧と、演説の説と、それから
勧奨は、その勧で、奨は大将の将の下に大を書いた私の方はパースウェィションの
勧説で、
勧奨はエンカレッジメント、そのつもりで言ったのを
新聞が違っておるのでございます。
けさ速記録を見ましたら、
速記録はやはり私の
文字を使っております。あなた方に
誤解をお招きしゃせんかと思って、きょうは旨い直してどう言ったらいいか、
ひざ詰め話し合いとでも言えばよかったのですが、少し古い字を使い過ぎて、はからざる
誤解を招いて相済みませんでした。やはり過失は私の方にあるのです。
以上でございます。