○加瀬完君 私は日本社会党を代表いたしましてこのたび提案されておりまする
地方財政措置に関する二つの法案に対し反対をいたします。
反対理由の第一は、
政府の
赤字打開の基本方針の不確実、不明確な点であります。
自治庁長官はその基本方針の説明におきまして、過去の
赤字のたな上げを
再建法によって行いこれで今までの
赤字をまず広くして、さらに将来再び
赤字発生をしないための
赤字原因の除去を三十
年度の財政措置と来たる三十一
年度の財政措置で解決するのである、こういうふうに説かれておるわけであります。そうであるならば、三十一
年度における財政
計画と
再建法というものは切り離せないはずだと思うのであります。すなわち将来
赤字発生
原因の除去のための
政府における財源補充策というものがまず拡充されまして、明
年度以降の
地方財政のワクが見通され、この基礎の上に新しい
地方財政計画が示され、その財政
計画のもとに
地方の
再建計画が合理的に進められる、こういう順序を追ってこなければならぬと思うのであります。しかしこういう点このたび提案されました
再建法等におきましては明年以降の
計画というものには何らのつながりも関連も講じられておりません。すなわち
再建計画を立つべきも
地方の不足財源の内容がいまだもって不明確でありますし、また明年以降の財政収入のワクというものも全然予想ができておりません。さらに三十
年度の措置にいたしましても今小笠原
委員から種々指摘をされた点でもありますが、給与費というものが全然除かれておりますし、実際上の
赤字を削るという
方法は完全にはとられておらないのであります。また
再建法によりまして二十八
年度までの
赤字分は
対象にされておりますけれ
ども、二十九
年度というものは全然はずされております。追って措置をされるということでありますが、
再建法というものを進めるならば二十九年そのものも
対象された上に
再建法を進められなければはなはだその
意味を失うものであると思うのであります。
地方の
赤字につきまして以上のように結論をするならば、どの分を
地方の
責任として、あるいはどの分を
政府がみずからの
責任としてと、こういったような
責任分担というものがまだ明確にはなっておりません。これらを明確にするためにも、特に
地方交付税の
地方財源繰入率の適否判定を行うべき基礎となる
地方財政計画というものが根本的に検討をされ尽さなければならないはずでございますが、こういう点につきましては全然まだ触れられておらないのでございます。問題の核心の
地方財政計画を現実の実態に即したものに作り変えることが新
計画の前提とならなければならないと私
どもは思うのであります。この確立された前提のもとに基本方針というものは立てられていかないのであるならば、その基本方針というものはまだはなはだ合理性を欠くものであると指摘をせざるを得ないのであります。
反対の第二点は、国の
地方行政に対する認識がはなはだ不足をしておるのではないか、こういう点であります。
政府の提案説明によりますると、
地方団体の
赤字解消の基本方針の具体化について国、
地方の行財政の全般について詳細な検討の上で結論を出すべきである、こう説かれておるのでありまするが、詳細な検討の結論というものはいまだついておるというまだ
数字がないのであります。従って逆に、すでに提案されておりまする二法案につきましては当然ある
程度の
地方行財政の実態がつかまれておって、たとえば国との見合いにおきまして
地方の緊縮度合いが検討され、あるいは節減の幅というものがどの
程度かを認識される、こういったような点が解決されておらなければならないと思うのであります。しかしこういう検討というものば全然怠られており、
地方の認識においても欠けるものが多々あることを私
どもは発見をいたすのであります。例示をいたしますと、たとえば
委員会の質疑の過程においていろいろ述べましたように、行政規模におきましてもあるいは公務員の数等の
地方と国との比較におきましても、あるいは財政膨脹率の国と
地方との比較におきましても、あるいは国税と
地方税の伸びの比較におきましても国と比べて
地方がはなはだしく冗漫であるという具体的な例はあげることができないのであります。むしろ国の方の膨脹あるいは国の方の冗漫というものがむしろ
地方よりは指摘されるという面をわれわれは発見せざるを得はいのであります。節減の度合いにおきましても昇給ストップの
府県は四月分が二十
府県、七月分に至りましては三十四
府県もあります。宿直、超勤手当、旅費その他におきましては
委員会の過程において指摘をした
通りでございます。特に私は
自治庁側に御
反省をいただきたいと思いますのは、三十
年度地方財政計画というものは相当縮減をいたしました。極端に縮減をいたしました
方式をもって臨んでおります。行政事務の簡素化、経費の節減、
補助金の整理、行政整理、こういう方針を極端にとっておるのであります。こういう
地方団体側と
国家財政とを比べますときに、
地方団体と同じような限度において国の節減が行われているというふうには私
どもは思われません。例をあげるならば今度の百六十億の財源といたしまして、公共
事業費その他をいろいろ削っておりまして、しかも松お年末手当に〇・二五カ月分というものをやすやすと出しておるのであります。しかしねがら
地方はさっき言ったように昇格時期にきておりましてもこれさえもストップをしておる。この二つを比較いたしまして緊縮の度合いが国と
地方で平等であるということには私
どもは理解をすることはできません。
政府はこのようは
地方財政の
現況というものの認識を、はなはだ欠いた上に財政措置というものを立てて参りましても、その財政措置そのものははなはだ不確実、不明確なものと言わなければならないと思うのであります。
反対の第三は補充財源の点であります。
政府特に
大蔵省は
地方財政審議会の勧告、あるいは
地方制度調査会の答申でありましたかが、たび重なって出たわけでございますが、とれに対しましては緊縮財政をたてにとりまして、財源発見の困難というものを理由といたしまして、かたくななほど反対の態度を持して参ったのであります。しかしながら
国家財政には余裕がないということには私
どもはこれだけでは言い切れないと思うのであります。具体的な例といたしまして
委員会で指摘をいたしました
通り、防衛庁費を一瞥いたしましても、防衛関係の決算額によりますると、二十六年は不用額が十二億、繰り越し額が百五十一億、二十七年不用額三十二億、繰り越し額が二百八十九億、二十八年は不用額が十四億、繰り越し額が二百五十七億、不用額だけを合せましても六十億に及ぶ、その繰越額の歳出
予算に対するパーセントは四三ないし四九%となっている、こういう点を指摘いたしますると
大蔵大臣も
主計局長もこれを認めている。なぜこれをやれないかというと、分担金の関係があるし、諸般の事情によってと、こう言っている。一体分担金の関係とはどこの国とのつながりによってこういう制約を受けるのか。諸般の事情とは一体どういう諸般の事情なのか。私
どもは財源がないのでもなければ、あるいはまた出し得ないところの特殊の事情が国内的にあるわけではない。とういう関係の中に国民の納めた税金が率直に国民の手に戻ってこねい、こういう事態というものにはなはだ奇怪な
感じを持たざるを得ないのであります。
反対の第四は
再建法によりましては自治権の喪失を予想せられる。こういう点であります。
中田委員の指摘をいたしましたように
再建法の問題は前
国会からたびたび問題になっておりまして、たとえば造船、電力、石炭等の大資本に対する
政府の
援助と
地方団体に対する
援助とはは松はだ片手落ちを感ぜざるを得ないのではないか。あるいは税財政そのものに問題があるのではないか。その他いろいろの点が指摘されてきたわけでございますが、今度の
政府の施策を待ちましてもこういう点は何ら
修正されておりません。で、このまま
再建法というものを施行するといたしますると、さっきの
中田委員の御指摘のように人員整理の強行、あるいは徴税の強行、あるいは極度な行政費の節減といったようなことがたび重なって参りまして、当然
地方住民が受けなければならないととろの、行政的な恩恵というものからも
地方住民は切り離される、こういうふうね準禁治産者的な立場に追いやられるということは自明のことでございます。そういたしますると、この
再建案というものは
政府が最小の犠牲におきまして、
地方団体あるいはその住民の最大の犠牲によりまして、行なっているというふうに批判せざるを得ないことになります。
赤字解消ができ上りましたときには自治行政は停止されておった、こういうことでございまして、まあ俗に言う角をためて牛を殺すの愚を繰り返すということになると思うのでございます。問題はこの法案が果して
赤字を解消し得るかどうか、そして
地方自治を守るのかという点に尽きると思うのでございますが、
自治庁長官の御答弁によりましては、当然財政
再建計画は必要な条件を相変らずつける権限が残っておるわけでございますから、さらに昨日の御説明によれば、来
国会においては自治法の改正ももくろまれておるようでございまして、この自治法の改正とこの
自治庁長官の権限というものが相待ちまするときには、
再建法が前
国会で上程されましたとき論議の焦点となりました
地方自治そのものが、
再建法によってそこなわれてくるという心配をわれわれがもう一回認めないわけにはいかぬという事態を憂うるわけでございます。また当然次に来たるものは
地方議会の権限の縮小ということにもなろうし、そうなって参りますると、民主主義の育成される場というものをもはばまれてくることになるわけでございます。で、われわれは憲法の基本といたしまする自治の権限というものを、こういうような一方的な意図によりましてそこなわれていくということには反対をしないわけには参らないのでございます。もしもこういうふうな点で今一歩の後退をいたしまするならば、やがてそれは
地方自治にとっての百歩の後退となるということを憂うるものであります。
地方自治を守ることはすなわち私
どもの基本的人権を守ることにも通ずる点でもありまするので、俗に言うところの官僚の権力復元ということのために、これが利用されるということ
——官僚権力の復元のもとになるような
再建法ということであるならば、こういったような方向に対してはわれわれは反対せざるを得ないのであります。以上反対の理由を申し上げまして討論を終ります。