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1955-12-10 第23回国会 衆議院 予算委員会 第5号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和三十年十二月十日(土曜日)    午前十時三十二分開議  出席委員    委員長 三浦 一雄君    理事 稻葉  修君 理事 川崎 秀二君    理事 小坂善太郎君 理事 重政 誠之君    理事 西村 直己君 理事 赤松  勇君    理事 今澄  勇君       相川 勝六君    井出一太郎君       今井  耕君    植木庚子郎君       川崎五郎君    木崎 茂男君       北澤 直吉君    小山 長規君       河野 金昇君    河本 敏夫君       周東 英雄君    須磨彌吉郎君       田中 正己君    竹山祐太郎君       中曽根康弘君    楢橋  渡者       野田 卯一君    橋本 龍伍君       福田 赳夫君    藤本 捨助君       古井 喜實君    松岡 松平君       松浦周太郎君    松野 頼三君       山本 勝市君    山本 正一君       山本 猛夫君    阿部 五郎君       伊藤 好道君    井堀 繁雄君       岡  良一君    久保田鶴松君       小平  忠君    河野  密君       志村 茂治君    田中織之進君       田中 稔男君    成田 知巳君       西村 榮一君    福田 昌子君       水谷長三郎君    武藤運十郎君       門司  亮君    柳田 秀一君       川上 貫一君  出席国務大臣         内閣総理大臣  鳩山 一郎君         法 務 大 臣 牧野 良三君         外 務 大 臣 重光  葵君         大 蔵 大 臣 一萬田尚登君         厚 生 大 臣 小林 英三君         農 林 大 臣 河野 一郎君         通商産業大臣  石橋 湛山君         運 輸 大 臣 吉野 信次君         郵 政 大 臣 村上  勇君         労 働 大 臣 倉石 忠雄君         建 設 大 臣 馬場 元治君         国 務 大 臣 大麻 唯男君         国 務 大 臣 太田 正孝君         国 務 大 臣 正力松太郎君         国 務 大 臣 高碕達之助君         国 務 大 臣 船田  中君  出席政府委員         内閣官房長官 松本 瀧藏君         警察庁長官   石井 榮三君         調達庁長官   福島慎太郎君         行政管理政務次         官       宇都宮徳馬君         総理府事務官         (行政管理庁管         理部長)    岡部 史郎君         自治政務次官  早川  崇君         自治庁次長   鈴木 俊一君         大蔵事務官         (主計局長)  森永貞一郎君         文部政務次官  竹尾  弌君         農林政務次官  大石 武一君  委員外出席者         検  査  官 加藤  進君         会計検査院事務         総長      池田  直君         専  門  員 岡林 清英君     ————————————— 十二月九日  委員加藤高藏辞任につき、その補欠として山  本猛夫君が議長指名委員に選任された。 同月十日  委員赤城宗徳君、小川半次君、北村徳太郎君、  河本敏夫君、楢橋渡君、三田村武夫君、山口喜  久一郎君、福田昌子君、水谷長三郎君及び武藤  運十郎辞任につき、その補欠として小山長規  君、松岡松平君、田中正己君、山本正一君、川  崎末五郎君、木崎茂男君、松野頼三君、門司亮  君、河野密君及び成田知巳君が議長指名で委  員に選任された。     ————————————— 本日の会議に付した案件  昭和三十年度特別会計予算補正(特第2号)     —————————————
  2. 三浦一雄

    ○三浦委員長 これより会議を開きます。  昭和三十年度特別会計予算補正(特第2号)を議題として質疑を継続いたします。田中稔男君。
  3. 田中稔男

    田中(稔)委員 外務大臣にお尋ねいたしますが、この数年来中国を訪問してその偉大なる建設状況を視察した日本人の数は・今日までにすでに一千名をこえ、そのうちで国会議員だけでも百四十人に及んでおるのであります。他方、中国人にして日本に来た人の数は、最近参りました中国科学院院長国務院総理郭沫若氏一行をもって百名をこえることになります。しかし、こういう東西の人的交流中日両国間だけの現象ではないのでありまして、過般来米ソ両国の間においてもこういう人的交流が行われております。特に上院議員の中でも有力なキーフォーヴァー氏あたりもソ連を訪問したようでありますが、個人の場合と同じく、国と国との間におきましてもお互いに知り合うということが友好を増進するために非常に大きな寄与をする、こういうふうな人的交流は非常に望ましいと思いますが、外務大臣の御所見一つ伺いたいと思います。
  4. 重光葵

    重光国務大臣 アジア大陸に大きな権力を設定した中共の地域と日本との関係は、隣国関係で、きわめて密接でございます。そこで、これに対していろいろな交渉交流のあることは、これはけっこうなことだと思うのでございます。ただ、問題は、今中共日本との間には政治的に非常な障害がある。それは、中共日本承認を今日まだいたしておらない、こういうことでございます。そこで、その制約は免れないと思います。また、その制約日本対外関係全局から来ておることなのでありまして、それは今急に変更するの時期にありませんから、中国との間の完全なる交流は、中共承認するような時期の来た後でなければ行われないわけでございます。これはやむを得ないことと考えております。
  5. 田中稔男

    田中(稔)委員 先般来、劉寧一氏が参りましたとき入国査証の問題があり、最近見本市の関係で参りました曹中枢氏の場合に指紋登録の問題があり、いろいろ中国から参ります人につきまして障害があるのであります。それについて一々具体的な御答弁は要求いたしませんけれども、日本からも向うに参りますが、中国から日本に参ります者につきましては、十分一つ便宜をはかり、便宜を与えるという、そういう御答弁をいただきたいと思いますが、どうでございますか。
  6. 重光葵

    重光国務大臣 私は、日本中共との政治上の関係を伴わない人的の交流ということは、先ほど申し上げました通りに、これはいいことだ、実際的に考えていいことだと考えておりますので、そういうことに対して便宜を与えるということは、私の権限の範囲内でやりたいと考えております。ただ、問題は、日本には日本法律もあり、また手続がございまして、その手続は、これは国と国との間に全部双務的というわけじゃございませんが、外国に対しては一般にやっている手続がございます。その手続をすべて省略するというわけには参りません。私は、日本の法規上の手続日本として当然これはやらなければならぬことだろうと、こう考えます。
  7. 田中稔男

    田中(稔)委員 今の、日本にも法律がある、手続がある、これを省略するわけにいかないとおっしゃるのは、これは法治国として当然のことであります。ただ、それもいろいろ運用の妙がありますから、他の外国についていろいろ便宜をはかっていただいている範囲内におきましては、その限りにおいては中国から参る者について一つ考えていただきたいと、これは強く要望しておきます。  次に、重光外相は、鈴木委員長が本会議において、中国に対して手を打つ考えはあるかと、こういう質問をいたしましたときに、中国承認意思はないと言明された。一昨日本委員会における水谷委員質問に対しても同様であります。もちろん、手を打つということは、今日直ちにこれが中国——私の申しますのは中華人民共和国のことでありますが、これを承認するということを意味するわけではない。しかしながら、今もお話がありましたように、中国というものが今日歴史最大最強の国として六億の人口を擁して日本のすぐ隣りに厳として存在しておる。この事実を否認することはできない。国民ソ連との国交回復よりもむしろ中国との国交回復の方をより強く私は要望しておると思います。これはやはり日本国民国民感情だと思います。こういう場合に、日ソ交渉をやって、これはできるかできぬかわかりませんが、国交回復努力されております政府が、なぜ中国との国交回復努力なさらないのか。日華平和条約やいわゆる吉田書簡というものもいろいろ障害になっておると思いますが、日本外務大臣として、この大きな国民的要望に対して、なぜできないのか、またなぜ自分はやらないのか、はっきり一つ答弁願いたい。
  8. 重光葵

    重光国務大臣 過般の本会議鈴木君からの御質問がありまして、それと御引用でありますが、鈴木君は、中共との間に今お話しの通り国交回復したらいいじゃないか、国交正常化したらいいじゃないか、すなわちこれは承認ということじゃないかと私は思っておる。そこで、手を打てと言われるのは、その趣旨から見ると、中共との間において国交回復する、国交正常化する、承認するということに帰着しますから・もしそれならば今日はできない相談である、こう申し上げたのであります。これは私は今日も変りません。中華民国正統政府として国民政府承認したのは日本でございます。これは国会意思によって承認をいたしたわけでありまして、その承認を今取り消して、他の政府中華民国政府として承認するということは、私に課せられた責務ではないと私は考えております。ただ、対外関係のことで、世界情勢でありますから、これがだんだん変化をするということはやはり見なければならぬ。そこで、時日の経過とともに中共アジア大陸における権力がますます確立されてきておる、この事実は見のがすわけには参りません。従いまして、その大局のワク内においてできるだけの融和をはかるように導くということは、これは私は当然やらなければならぬことだと思います。それがまた正当な行き方であるし、今、それならば、すぐ飛躍をして、国民政府に対する承認を取り消して、中共政府中国政府として承認するがいいじゃないかという意見は当然出てくる。それも御意見大いに……。しかし、今日これが国民要望であるとは私は判断をするわけにはまだ参りません。そういう時期が来るかもしれない。しかし、それは慎重にやらないと、そういうことを軽率に実行に移すということになれば、日本全局国際関係をこわしてしまう。国際信用の点も考えなければならぬ。国際情勢変化も見届けなければならぬ。さようなことを十分見届けた上でやるという趣旨には、私はこれは何も異存——異存どころじゃない、それはよく見なければならぬと思って、私も努めておるのでございます。しかし、今日直ちに、従来国家としてきめたこの大きな根本の方針を、一部の人の考え方とは決して申しませんけれども、十分に見届けずして、すぐこれを変更するということは、日本政府としても国家としてもやるべきものではない、こういうことを申し上げておるのであります。
  9. 田中稔男

    田中(稔)委員 外務大臣の御答弁に賛成ではありませんけれども、ただ、非常にまじめに懇切に御答弁いただいたことに対しては満足いたします。その調子でお願いします。  政府は、アメリカ意向にとらわれて、今おっしゃったように中華民国国民政府を相手にやっておる。ところが、私ども見るところでは、国民中華人民共和国中国正統政府考え、その国民的要望を背景にして最近どんどん民間外交が展開されておる実情であります。すなわち、過去三回にわたりまして日中民間貿易協定が結ばれて、年々貿易額は増大しております。また日中民間漁業協定が締結されまして、長い間の黄海及び東海における紛争が解決いたしました。これは政府の力じゃない。また、在華同胞帰還も、日赤その他三団体の功績であることは言うまでもない。また、本年に入りますと、上林山議員団長とする訪華議員団は、中国側と共同で発表したコミュニケで、国交正常化貿易文化交流、往来の自由、遺骨送還戦犯処理、こういう広範な問題について両者の意見の一致を見たことを発表しておる。また、ごく最近においては、片山元首相を団長とする憲法擁護国民連合訪華代表団は、国交回復促進に関する片山団長周総理との会談の結果をコミュニケとして発表し、さらに両国間の文化交流について協定を結んだのであります。また、最後に、堂森議員団長とする日本医学代表団は、中華医学界医学交流に関する取りきめを行いました。これらの努力は、結局いずれも国交回復のために打たれた手であります。しかし、これらの手を打ったものは民間人であって政府ではない。日本外務省は、中国に対する外交においては今日全く開店休業状態である。過日電光外相はこういう民間協定は認めないというような態度を表明されたようでありますが、それならば、政府はみずからこういう在華同胞の帰国問題あるいは経済的、文化的な交流ということに積極的に乗り出してはどうか。そういう意向はないか。承認ということは今できないにしても、その前に打つ手として、こういうふうなことについて外務省みずから一つ出る、特にまた帰国問題、漁業問題、こういうことは政府みずから乗り出すべき時期にきておるのではないか、こう考えますが、外務大臣の御所見をお尋ねいたしたい。
  10. 重光葵

    重光国務大臣 今の御意見に対しましても、私は、先ほどお答えした通りでございます。最近、共産国国際間に承認を求めておること、他国をして自己を承認せしめようという努力は非常に急いでございます。そして、今中共その他の共産国が、政府は動かないから、いろいろな手段や連絡を持って民間といろいろ約束をして、それを積み上げて、承認していない国の政府を動かしていって承認に導こう、こういう政策をはっきりとっておる。そして、それに対して今反共諸国にずいぶん注意されておる状況でございます。今あなたの言われる通り、これは承認に導くためにやっておるのだ、こう言われましたが、中共側はまさにその方向でやっております。そこで、政府といたしましては、日本国家としては、今中共承認しておらないことは先ほど申した通り、また承認考えるという時期に達していないということも私が申しておる通りであります。しからば、中共の希望するごとく、承認に導くために積み上げ方式でいろいろやるということには、非常に大きな政治的な意味があると見なければならない。直接政治的な意味のないものについては、これはいろいろ実際的な取り扱わなければならぬと思っております。それも先ほど申し上げた趣旨によって実際的に取り扱っていかなければならぬ。特に人道問題であります抑留者帰還戦犯であろうが何であろうが、抑留者帰還ということを向うにおいてやってくれるというならば、むろんこっちもこれはぜひやってもらわなければならぬし、また、向うに困難がある場合においては、その困難を排除するように交渉をしなければならぬということは、これは当然のことでございます。そこで、その問題について、承認の問題などにからみ合わないように用心をしつつ民間でその方法を講じてもらったことも、今言及された通りでございます。これはぜひそういうことで民間側の方で尽力してもらわなければなりません。しかし、いやしくも人命に関する人道問題である以上は、この問題を承認にからませるということはないという前提のもとに直接政府交渉するということは、私はけっこうなことであるし、先方異存がなければ、そうなければならぬと思います。そこで、抑留者送還の問題、人道問題については、政府政府代表者を通じてジュネーヴにおいて交渉を進めたのでございます。これに対しては先方においても応じてくれまして、若干の成果をあげておるということも御存じの通りでございます。しかし、政府がそれに乗り出したから民間の尽力が必要ないというわけじゃございません。これは一つ十分に赤十字社努力してもらわなければなりません。さようなわけでありますが、それだからといって、個人で行って政府関係なく話し合いしたことをみんな政府責任を持たなければならぬという理屈はございません。そういうふうなことにつきましては、大きな政治上の意味を持つことになります。そこで、それはなるだけ避けたらいい、また避けなければならぬ状況にございます。従いまして、民間でやったことは政府責任がないと申しました。また責任をとらないつもりであります。とっては、積み上げ方式による承認に順々引っぱっていかれるというようなこともございますし、また承認をする時期でないという方針に反しますから、やらない方がよいと思います。ただ、隣国のことでございますから、実際上いろいろ個人的な話し合いがあって、政府責任を持たないのはやむを得ない場合がありますが、また便宜の場合がたくさんございます。それはそれでよろしかろうと私は思っております。  いずれにいたしましても、われわれの考えておるところは、何も中共の将来をどうはっきりしょうということでなく、またそれを考える時期にはまだ参らない。しかしながら、実際あそこに大きな権力を持っておるのだから、これとの関係、特にまた、人種的に言って、隣国との善隣友好をしようという親しみを持っておる人々に対しては、十分に融和のできるような頭で措置することが必要であろう。こう考えております。
  11. 田中稔男

    田中(稔)委員 日中両国国民の真剣な要望を何か謀略のようにお考えになっておる外務大臣のセンスは、私は非常に間違っておると思います。そういうことを言えば、西村君にしても稻葉君にしても、この間もソ連中国に行ってきたので、あなたの党派の中にも謀略に乗った人々がたくさんあるわけであります。そういうふうに考えては、とても今後の新しい外交を担当していただく上には私は国民として非常に不満だと思います。こういうことを言いましても、死ななければ直らないことでございますから、このくらいにしておきます。  本日の毎日新聞トップ記事に、アメリカアリソン大使が公文書をもって、今申しましたような各種の民間協定が結ばれておるのに政府がこれに対して黙認的な態度をとっておるということについて非常な不満を表明しておる。これは私はけしからぬと思います。これに対する外務大臣並びに政府態度をお尋ねしたいと思います。毎日新聞に紹介してある範囲内におきましては、私は政府態度はよろしいと思います。日本アメリカと違うのだ、歴史的に地理的に文化的に中国本土と密接な関係がある、日本日本で行くのだという大体の筋のお話でありますから、けっこうでありますが、この記事国民に非常に大きな関心を与えておりますから、この際このアリソンの抗議に対しまして日本政府としてのきっぱりした態度一つ御表明願いたいと思います。
  12. 重光葵

    重光国務大臣 この中共の問題は、ひとり日本だけの問題ではございません。これは世界の問題でございます。特に世界的に大きな責任を持っておる米国が非常な関心を持っておることは、これは言うまでもございません。そこで、それについて米国意見を言うことも、これは何も不思議はございません。しかし、日本として、これは日本独自の見解でこういう問題に処していくということは当然のことでございます。しかし、日本独自の見解を持ってこれに対処していくということは当然のことでございますが、日本と最も密接な協力関係にあるアメリカがどういう考えを持っておるかということも、日本の立場をとる上において参考になることは言うまでもございません。私はさような考え方を持ってこの問題の処理をしておるわけでございます。
  13. 田中稔男

    田中(稔)委員 外務大臣の御答弁には、大体「しかし」が多過ぎるのでございます。しかししかしであります。しかしでなく、今の最初の堂々たる御答弁で一貫してもらいたい。  次に、過日の本会議における重光外相外交報告におきまして、十月の四国外相会議意見の不一致によって、いわゆるジュネーヴ精神は消えうせ、再び両陣営の対立が増大した、こういう国際情勢に関する御判断を述べておられます。私どもは、長期の見通しとしては、今日はすでに平和的共存の時代に入ったと思うのでありますから、こういう情勢判断の相違から、外交政策はおのずから変ってくるわけでございます。この際重光外相に特にお尋ねいたしたいのは、外務大臣は、中ソ両国日本に対して侵略的意図ほんとうに持っておって、日本としては国の存立上どうしてもアメリカと結んでこれに軍事的に対抗する必要があるとお考えになっておるかどうか、外務大臣の御信念を聞きたい。
  14. 重光葵

    重光国務大臣 私はゼネバの四国会談が失敗をして、国際緊張が緩和するよりもさらに緊張の度が増してきたと観察せざるを得ない、こう申しました。その通り考えております。その後の世界情勢を見ましても、さような情勢に対応するために各国は非常に動いておるように見ます。特にアメリカとイギリスとはそういう大局の問題について十分意見の交換をする必要を感じてきたということは事実でございます。それだからといって、今共産諸国がすぐ侵略意思をもって非共産国に対抗する、こういうことを私は申し上げるわけではございません。中ソ両国日本に対して今すぐ侵略を意図しておる、こうは私は申したことはございません。しかし、中ソ両国がどういう考えを持っておるかということは、私の口よりも、これらの諸国政策の表明に重きを置かなければならぬ、こう考えております。ソ連日本との国交回復したいという意思表示をいたしております。そこで日ソ交渉が始まつておるわけでございます。これについては日本も同じ考えをもって交渉に臨んでおる次第は御承知の通りでございます。
  15. 田中稔男

    田中(稔)委員 先日の朝日新聞によりますと、目下来朝中の郭沫若院長が、谷崎潤一郎氏との対談におきまして、こういうことを言っております。「みんなとは平和的にやる。あんな大きな遅れた国家建設するためにはとっても平和的な国際関係を作らなければならない。それが必要条件です。」、こういう対談でありますが、率直に真意を述べておると私は思います。だから、中ソ両国政府平和政策というものは、これは建設にいそしんでおる両国人民ほんとうに心からの平和の意思を反映したものだと受け取っていいと思う。また、今度元陸軍中将遠藤三郎氏が片山氏一行に加わりまして中国に参りましたが、遠藤中将がその所感を述べた文章を読みますと、大体こういうことを言っております。中国には侵略的意図は絶対にない、また中国の六億の人民歴史上初めて搾取と抑圧から解放されてその日その日の生活をほんとに楽しんでおる、さらにまた、今日こういう極東の事情において日本アメリカと結んで再軍備をやるというようなことは、結局日本アジアの孤児にしてしまう、アジアの大きな平和的な流れに逆行するものだというような趣旨のことを元軍人遠藤氏が言っている。だから私は中国平和的意図は信じていいと思いますが、実はその遠藤中将周恩来総理から、一つ日本の元軍人の皆さんに大ぜい中国に来ていただいて、中国の今日の軍備侵略的なものでなく、これは単に防衛的なものであるという状況をよく見て下さい、こういうことをほんとうに依頼されたのであります。私はこれは非常にいいことだと思う。アイゼンハワーの軍事基地についての室中視察の提案もありますが、日本軍事専門家中国に行って、その専門家の目で中国を見てくるということは、私は非常にいいと思うのである。外務大臣はこういうことについてはどうお考えになりますか。
  16. 重光葵

    重光国務大臣 中国に対する見方はいろいろあると考えます。一、二の個人の言説をもって全部を判断するわけには参らないと思います。私はそれらの人々の言うことが間違っているとは決して申しません。それらの人々の観察はそれらの人々考えによって到達したことで、これはその人当りのまっすぐな考え方だ、こう私は率直に受け取りますけれども、それをもって、それじゃ中国はこうである、中国軍備は全然侵略的の意図がないのだといってこれを片づけてしまうわけにも参らないかと思います。要は客観的の事実によってよく観察することが必要だと考えます。さようなわけでありますから、一、二の例をあげて言われることについては、私はそれをもとにしてどうという御返事をいたすわけには参りません。そこで、国際情勢から見ると、中国侵略国であるといって定義を下されている状態であることは御存じの通りであります。さような状態は、これは中国の善意によって漸次解消するような機運に向うことを私は希望します。さような国際情勢変化があることが望まれるわけであります。しかしながら、今日はそういうことに国際情勢はなっている。これを全部無視して一、二の個人意見によって日本政策を動かすということはできぬ、こう考えております。しかし、今申します通り、さような、われわれが考えて実に望ましい方向に向くことを期待することは、当然のことでございます。
  17. 田中稔男

    田中(稔)委員 中国軍備侵略的であるとかないとかいうことを私は判断しておるんです。それを判断してもらうために一つ軍事専門家をやったらどうかというのでありますが、幸い周恩来総理からそういうことを申し入れてきておる。そこで、船田防衛庁長官に同様のことをお尋ねしますが、防衛庁には砂田前長官の私設顧問である元陸海軍の将軍の人がたくさんおられる。そういう人は何しておるか知りませんが、私は、ひまだろうと思いますから、そういう人を防衛庁に置いておくよりも中国にやって、軍事専門家としての目でほんとう中国の軍事状況を視察させるというごとはいいんじゃないか。そうして、もう中国ほんとう侵略的な意図がない、そういう構えがないというのならば、膨大な防衛庁の予算なんかは計上する必要はないと私は思います。それは私どもが見るより専門家が見た方がよろしいんです。防衛庁長官はどうですか。
  18. 船田中

    ○船田国務大臣 防衛庁で旧軍人の方方に顧問になっていただいておるということは、これは前長官の私的の顧問として置かれたことと私は承知いたしております。それらのことをどうするかということは、十分検討した上で私の意見をきめたいと思っておりますが、ただいま御質問のありましたように、旧軍人の方々に中国の軍事状況を視察してもらうということがよくないかということでございますが、政府としてはただいまのところさような考えは持っておりません。御意見として承わっておきます。
  19. 田中稔男

    田中(稔)委員 文部大臣がお見えになりませんから、一つ政務次官にお尋ねいたします。先日日本学術会議の招待で郭沫若院長以下が見えられ、その歓迎会が東京会館において行われました。清瀬文相は実に丁重なごあいさつがありまして、私、これは非常によかったと思う。特に最後に、自分の所管事項に関する限りはあらゆる便宜を提供いたしますからどうぞよろしくというようなお話で、私ども感心したんです。ところが、その後仄聞するところによりますと、最初郭沫若氏一行は鳩山首相を儀礼的に訪問して、そのあとで文部大臣主催の歓迎会が行われるということになっておったそうであります。ところが、それがいずれも取り消されてしまったということなんですが、これには何かどこかの国に対するいろいろな気がねもあるようでありますが、一体どういう事情でそれがスケジュールから取り消されたのか、文部政務次官の御答弁を願います。
  20. 竹尾弌

    ○竹尾政府委員 お答え申し上げます。今回の郭沫若氏一行の来日のような具体的な事実につきましては、そのつどつどの事情によりまして、いろいろの扱いをきめておるのでございます。御承知のように、郭氏は中華人民共和国の科学院長でございまして、わが国の研究施設を視察のために来朝したものでありまして、学校の施設、研究施設等をごらんになりたいとの希望があったのでありまして、そういう点につきましては、あらゆる便宜を大臣の所管事項としてお与えしたい、こういう考えを持っておるのでございます。なお文部大臣主催の歓迎会を開かれる、こういうような計画があったというようなことでございますが、そういう歓迎会を計画した事実はございません。お答え申し上げます。
  21. 田中稔男

    田中(稔)委員 重ねて文部政務次官にお尋ねしますが、片山氏一行の憲法擁護国民連合の代表と中国人民対外文化連絡協会の代表との間に文化交流に関する協定が結ばれたのであります。その内容は、お互いに相手国の絵画、彫刻、建築、映画、演劇、音楽、文学その他の成果を紹介する展覧会、講演会、出版などの文化交流事業をあっせん実施するということであります。すでに先般猿之助一座の歌舞伎興行が中国において行われて、これが大へんな成功裏に終りました。また、そのお返しとして来年春には梅蘭芳がやってくるということになっております。事実、こういうふうにどんどん文化交流が行われておるわけでありますが、今の文化協定を実際にやりますためには、どうしてもやはり政府の支持なり御協力が必要でありますが、これについての文部省のお考え一つ伺いたい。
  22. 竹尾弌

    ○竹尾政府委員 お答え申し上げます。中国その他の日本とまだ正式の外交関係が結ばれていない国々に対しまして、民間の諸団体が、大きく申し上げますならば人類文化の向上の意味におきまして、いろいろ文化に関する諸協定を結ばれるということは、これは民間の団体がおやりになることでありまするので、ただ正常の外交関係がないからと申して政府がとやかく申すべき筋合いではないと思いますので、そういう団体がいろいろの交渉をされることについては、ただいま政府としては傍観の態度をとらざるを得ないと思っております。しかし、これをさらに進めまして、政府が積極的にこれに援助を与えるかどうかということになりますると、これは正常なる外交関係の実現と申しましょうか、そういうことが先決問題でございまするので、ただいまそういう関係が設定されていない現在といたしましては、これを政府としては傍観しておる、その成り行きを見ておるという態度をとらざるを得ないと思います。
  23. 田中稔男

    田中(稔)委員 次に、三たび文部政務次官にお尋ねしますが、日本学術会議は昨年茅会長以下十数名の著名な学者をソ連アカデミーの招請によってソ連に派遣したのでありますが、その返礼として、今度ソ連から約十名の学者をわが国に招請する計画があります。このことにつきましては、松村前文相の時代から文部省にいろいろ話はしてあるのでありまして、そのために必要な約一千万円の支出を政府に申請してあるのであります。これは、松村前文相は大体了解されておりましたのですが、大蔵省の反対があってだめになったというのであります。しかし、これはぜひ一つ実現しませんと、国の体面の問題にも関係いたしますから、明年度予算においてぜひこの金額を計上していただくか、あるいは何かの形で支出していただく、こういうことをお願いいたしたいと思いますが、文部省と大蔵大臣のお考えを聞いておきたい。
  24. 竹尾弌

    ○竹尾政府委員 お話しの、先般ソ連をおたずねした日本の学者のお礼の意味でございましょうか、そういう意味ソ連の学者を日本に招待するというような話があったかどうかは存じませんが、これは文部省の所管外でございますので、そうした経費等々につきましては私は聞いておらないのであります。しかし、ソ連が例の科学アカデミーの招待で日本の学者を招待した。ソ連は、田中さんもよく御存じだと思いますが、例のボックスと称する対外文化連絡の大きな機関がございます。それと同時に、ソ連が昨年ユネスコに加盟いたしまして、そうした純粋な意味におきまする学問の交流、学者のいろいろの接待、招待、そういうような点につきましては、すでにソ連の学者がユネスコに関する会議には出席いたしまして、日本にも参っておる。そういう意味合いで、そうした純粋なる学問的な意味文化交流ということにつきましては、政府としてこれは干渉すべき筋合いではないと思います。しかし、ただいまソ連の学者を正式に招待するというような段階にはまだないと思っておりまするし、そうした学者を招待する経費については私は聞いておらないのであります。
  25. 一萬田尚登

    ○一萬田国務大臣 お答えします。その件については、まだ何も聞いておりませんし、これはよく事情を聞きまして、その上で検討を加えたい、かように考えております。
  26. 田中稔男

    田中(稔)委員 今のことは、実は日本学術会議の会長の茅氏からの非常に強い私に対する依頼でありましたから、これは真剣に考えていただきたいと思います。これは日本学界の体面の問題であります。  次に、日中貿易、漁業問題等、相当質問事項が残っておりますが、時間が残っておりませんから、簡単にお尋ねいたします。御答弁もごく簡単でけっこうであります。  中国見本市が今日開かれておりますが、これは大へんな盛況で、東京は十八日間に六十六万六千人、大阪は開場四日にしてすでに二十一万人、こういう盛況であります。これに対して特に台湾側の妨害がいろいろ行われておりまして、この附近にもいろいろビラなんかまいていっておりますが、これに対しましては、この見本市は政府が認めてやっておることでありますから、警察方面で、非常な悪質な妨害に対してはぜひ十分一つ御留意願って、適当な取締りをお考え願いたいと思うのであります。
  27. 大麻唯男

    ○大麻国務大臣 申し上げます。中国見本市が大へん盛況にあることは承知いたしております。今お話しの件は承知いたしました。
  28. 田中稔男

    田中(稔)委員 今度は日本側から来年度北京及び上海において見本市を行うという約束がすでにできている。通産大臣も御存じだと思いますが、これに対してどうしても政府の補助金が必要でありまして、先般来いろいろ関係方面から陳情に参っていると思いますが、大体一億円なければ中国の見本市に見劣りしないものを中国でやることができぬそうであります。この一億円の補助金を政府はぜひ出していただきたいと思いますが、通産大臣の御意向をお尋ねいたします。
  29. 石橋湛山

    ○石橋国務大臣 国際見本市は大体民間ベースでやっておりまして、ほかの国に対しても政府はある程度の援助をしますが、中国見本市の盛況はけっこうでありますけれども、一億円の補助金を出すことは考えておりません。
  30. 田中稔男

    田中(稔)委員 ココムの問題はきのう加藤君が聞きましたから、私は省略いたします。  次に、支払い協定の問題であります。大蔵大臣にお尋ねします。  この日中貿易の隘路は、ココムの制約のほかに貿易及び決済の方式にもあるのであります。同類交換の原則による個別バーター方式は、今日のココムの制約のもとにおきましてはバーター物資を設定することがきわめて困難である上に、相手側が中国進出口公司ただ一つではなく、今日はそのほかに十二の専業貿易公司があり、それが中国の各地に支店を持っており、こういう多数の相手と取引をするから、なかなかこれは煩項で、そのために貿易が十分伸びないという実情であります。そこで、第三次日中貿易協定の第五条には、御承知のごとく、日本中国国家銀行の間に支払い協定を締結し、清算勘定を開設して支払い及び清算を処理することになっている。また、その支払い協定が締結されるまでの間は、英ポンドによる現金決済でいこうではないかということになっている。その場合、中国側は、そういう支払い協定両国国家銀行間に結ばれた場合には、日本銀行の中に中国人民銀行の口座を設けて、日本円で貸借を記帳することにしてもよろしいということまで言っており、非常に日本側に有利な譲歩をいたしておるのであります。ところが、政府日本銀行が支払い協定を締結することを許していない。だれが考えましても、これは日本側に非常に有利であり、日中貿易を拡大する上に非常に好都合だと思うのに、なぜ一体これがやれないか。やはり国交がないからとかなんとかいうことでしょうが、国交がなくても他の国と支払い協定を結んでいる例はあるのであります。こういうことの質問は、前国会において大蔵大臣に一度いたしまして、その際に一つよく御研究願いたいということも言ってありますから、その御研究の結果今どうなっているか、大蔵大臣の御所見を伺っておきたい。
  31. 一萬田尚登

    ○一萬田国務大臣 お答えします。貿易につきましては、国際関係の許す限りこれが振興をはかりたいということはその通りで、私どももそれを希望するのでありますが、今日、この日中の国交関係において、国と国あるいは中央銀行間の支払い協定を結ぶという段階にありません。そういうものを協定することは適当でないと考えております。ただ、しかし、今後におきまして、ポンド建の為替取引につきまして、日本の免許を持っておる公認の為林銀行と中共の銀行とがコルレス契約を結びまして、直接にこれを決済する、これはけっこうなことで、それはやってよかろう、かように私は考えております。
  32. 田中稔男

    田中(稔)委員 それで、支払い協定ができるまで英ポンドの現金決済でいくということでありますが、これは政府は今反対しておるようであります。今日の外貨事情はそう悪くない。また、中国から今日食糧や工業の原料を輸入するために、そうしてココムの制約があるために、勢い輸入超過になるのでありますけれども、それはほんとう日本のために必需物資でありますから、それは大したことではない。そしてまた、ココムの制約がもし撤廃されるならば、むしろ今後は輸出超過にでもなるという勢いでありますから、その英ポンドの現金決済でやるというような方式はどうでしょうか。
  33. 一萬田尚登

    ○一萬田国務大臣 私の考えでは、日中貿易あるいはこの決済の方法等は、純経済的意味においてこ承は問題ではないのでありまして、そういう一つの取引の形態を持つことによっての外交上の問題、こういうことになると思うのであります。これは主として外交的見地から考えるべきであろう、かように考えております。
  34. 田中稔男

    田中(稔)委員 それでは、これはなかなかむずかしい話になります。  次に、新聞の報道によりますと、政府は最近設立されました日中輸出入組合の南郷理事長を中国へ派遣し、ココムの禁輸物資を除いて実行可能な新しい貿易協定を締結する考えがあると伝えられております。そうしてこの協定において従来の個別バーター方式を総合バーター方式に切りかえる方針のようでありますが・石橋通産大臣の御答弁一つお願いいたします。
  35. 石橋湛山

    ○石橋国務大臣 輸出入組合が近くできる、それから、人を派遣して云々ということは、私はただいま存じません。ただ、輸出入組合ができますれば、現在の個別バーター方式を変えて一括したバーター方式にしたい、かような考えでおることは事実であります。
  36. 田中稔男

    田中(稔)委員 それでは、今度の訪中日本実業団が結んだ、輸出九百万ポンド、輸入三百万ポンド、合計千二百万ポンドの契約、または仮契約のうち、乙類及び丙類の物資につきまして、総合バーター方式による輸出入の許可を与えていただくというようなことはできませんか。これは非常に強い要望があるのでありますが、いかがでしょうか。
  37. 石橋湛山

    ○石橋国務大臣 ココムの関係にひっかからないものについては、むろんこれは差しつかえないと考えております。
  38. 田中稔男

    田中(稔)委員 ココムの問題の質問を私は省略いたします。ただ一点お尋ねしたいのは、今日鋼鉄造船は非常に盛況でありますが、木造船の造船は非常に沈滞して、たくさんの人が遊んでおる。ところが、木造漁船につきまして五十隻の輸出の契約が訪中議員団によって結ばれたわけであります。これがもし出ますならば、数万の木造船関係の労働者が助かり、関連産業七十数種の関係者が助かるというわけですが、実ば、御承知の通り、これは戦略物資といわれている。ところが、木造漁船が戦略物資というのはナンセンスであります。これにもいろいろなへ理屈がついておるようでありますが、ココムの禁輸を解いていただきたいと思いますが、それができないならば、今度の五十隻に限って特認をとるということをぜひ政府としてやっていただきたい。これは非常に大きな関係者の声であります。これについての今までの御努力の跡、あるいはその特認がとれるかどうか、お見込をお開きしたい。
  39. 石橋湛山

    ○石橋国務大臣 木造船については、かねがね特認をとるように努力を続けております。これは、特認を認めてもらうときにはなるべく急速にやってほしいということを申し込んでございますが、ただいまのところでは、それが果していつどうなるということは、こちらにはわかりませんが、努力はいたしております。
  40. 田中稔男

    田中(稔)委員 農林大臣は見えておりますか。
  41. 三浦一雄

    ○三浦委員長 農林大臣は所管の法案の提案説明に出ておりますから、政務次官でお願いします。
  42. 田中稔男

    田中(稔)委員 農林大臣に日中漁業問題をお尋ねしたかったのでありますが、御不在ですから、それでは省略いたします。  最後に一問、中国側日本人の帰国、特に戦犯送還などにつきましても非常に手厚い扱いであり、非常に好意的に協力しておりますが、日本におります中国人の中国への帰国の問題が一つあります。これは今まではあまり満足ではありませんが、今後十分考えてもらいたいと思いますが、もう一つの大きな問題は、戦時中強制的に日本に連れてこられて不幸死亡した中国人の遺骨の送還の問題であります。これは非常に地味な仕事でありますが、今日まで中国殉難者慰霊実行委員会関係者が各方面の協力を得て今日までに二千三百四十八体の遺骨を中国送還いたしました。ところが、まだ四千四百八十二体の遺骨がむなしく風雨にさらされてまだ収集もされていないというような状態であります。この問題は人道上の問題であり、特に国民感情上に深い関係がありますから、承認はもちろん今できない、それからまた国交回復努力もしないという外務大臣お話でありますけれども、こういう問題はどんどんおやりになってもさしっかえないと思いますから、これを一民間団体の事業としないで、政府みずから責任を持ってやるというようにお願いしたい。これは中国六億の人民に対する日本国民の誠意を表わす一つの問題だと思います。これは重要な問題ですから、外務大臣の真剣な御答弁をいただきたい。あと四千四百八十二体の遺骨が残っておる。これを今収集するのも、民間団体では財政的にもなかなかできないと思いますから、今後は一つ政府みずから引き受けてやっていただきたい。そうして全部無事に向うに返していただきたい。これをやらないと、いつまでも日中間に感情上のしこりを残すと思いますから、どうぞ。
  43. 重光葵

    重光国務大臣 私は、今申されました御趣旨は全然御同感でございまして、人道問題としてこれは全力を尽さなければならぬと思います。そこで、これを今民間団体で一生懸命にやってくれておることを非常に多としております。政府がどういうことをするかということについて、今すぐ御返答を申し上げるわけには参りません。まだそこまでの段取りに参っておりませんけれども、これは全力を注いでやることにいたしたいと考えております。
  44. 田中稔男

    田中(稔)委員 それでは政府としても十分御協力を願いたい、これを要望しておきます。  私の質問はこれで終ります。(拍手)
  45. 三浦一雄

    ○三浦委員長 志村茂治君。
  46. 志村茂治

    ○志村委員 私は原子力に関して、水爆の問題、濃縮ウラン受け入れの問題、原子力平和利用の問題、これらに関して質問をいたしたいのでありますが、厚生大臣が非常にお急ぎのようでありますから、最初に厚生大臣に対する質問からいたします。   〔委員長退席、西村(直)委員長代理着席〕  先月の二十二日ころですか、ソ連で水爆の実験が行われ、日本の内地に相当量の放射能を持ったちりや雨が降ったのでありますが、それがため日本の国内には再び死の恐怖を巻き起しておるような状態であります。これは十分皆さん御存じであろうと存ずるのでありますが、福岡県では一リットルの雨水の中に、一分間二万九千カウントを示したといって危険信号を発しておるのであります。ところが、そうした一方におきまして中央気衆台では、この程度の放射能では、原子力工場で働く人の恕限度の一%ぐらいにしか当らないのであるから、人体には何らの支障はないものと思うということを言っておるのであります。本年の三月以降、米国のネヴァダ州やその他で引き続いて行われました実験の放射能については、各国で問題にしておったのでありますが、この二倍に相当する今回の空気の汚染に対して、何ら差しつかえないというのは一体どういうことなのか、国民は危険であるのかないのか、それについてはっきりしたよりどころを持っておらないのでありまして、それがための不安に陥っておるのでありますから、厚生大臣は、この際このような不安を一掃するために、その理由を明らかにしていただきたいと思います。
  47. 小林英三

    ○小林国務大臣 ただいまの御質問にお答えいたしたいと思いますが、恕限度の問題につきましては、わが国においては現在国際基準として各国で利用されておりまするところの、米国国立標準局発行の人体内の放射性同位元素の最大許容量と、空気及び水の中の最大許容濃度を一応採用しておるのであります。なおわが国におきましては、原爆被害者等に関する調査研究連絡協議会に、恕限度に関する特別部会を設置して研究いたしておるのでありまするが、今お尋ねのような問題につきましては、少しも差しつかえないというように厚生省て、は考えております。
  48. 志村茂治

    ○志村委員 人体には差しつかえないと言われておるのでありますが、おそらくそれは医師の治療を受けなければならないほど、明らかな健康に障害がないからという意味ではないかと私は考えるのであります。しかしそれでは済まされないと私は思うのであります。身体障害はなくても遺伝上の障害はあるのであります。米国の原爆被害調査団、ABCCの団長であったホームズ氏は、先日の発表で、将来二世、三世の間に突然変異や奇形児の発生率はきわめて低いと思うと言っておるのでありますが、この発表は、きわめて少いとはいいながら、遺伝の障害を認められておるのであります。このホームズという人は、御存じのように、もとABCCの医者だった人々が、白血病や白内障のような原子病が日本に起っておることを認めておるにも一かかわらず、あえて原子病は日本に一人もないと言っておる人なのであります。このホームズ氏が、その率は低いとはいいながら、将来生まれてくる日本の子供には、突然変異や奇形児を認めているということは、きわめて恐ろしいことであると私は考えております。しかも大阪市大の西脇博士は、遺伝に悪影響があるということは、はっきり言い切っているのでありますが、危険が少いからといって放任すべきではありません。障害の有無が確認されない場合におきましても、放任すべきではないと思います。いかに少くとも危険がある限り避けなければならないと考えておるのでありますが、この子孫に災いを残すというような恐るべき事実を前にして、厚生大臣はどういう見解をとっているかお尋ねしたいと思います。
  49. 小林英三

    ○小林国務大臣 ただいま御意見のありましたアメリカのABCC団長のホームズ博士が、去る十一月二十九日に東京におきまして、新聞発表いたしているのであります。これは独自の立場において新聞発表を行いました。その骨子とするところは、多くの原爆患者の中で、特に放射能患者のみを対象として調査した結果の中間報告でございまして、これは数多くの原爆被害者の一部についての観察結果であったようでございます。しかし原爆によります害というものは、熱や爆風など広範にわたるものでありまして、これらに基く障害というものは軽視し得ないものがあります。特に被害者には白血病でおるとかあるいは白内障の発生率が高いことは、医療陣や研究者間において認められているところであります。なおただいまお話の点につきましては、十分慎重に考えていきたいと存じております。
  50. 志村茂治

    ○志村委員 水爆実験によって汚染された空気中のちりや雨によって、生物が受ける危険については、各国の見解ばいろいろあるし、また多分に政治的なものがあるというようにも考えられるのであります。水爆の実験をしたがっている米国あるいはソ連は、同じようにそういうような危険は全然ないと言っているのであります。危険説などは根拠のないものである、それを日本が騒ぎ立てるのは、原力ノイローゼだというようなことを言って、しいて軽く見ようといたしているのでありますが、放射能障害に対する医学は、おそらく世界日本が一番進んでいると私は信じております。今度の国連で設置することになりました、放射能の人体及びその環境に及ぼす影響を調査するための、十五ヵ国科学者研究委員会の中に、ぜひ日本に入ってくれといっているのは、まさにそうした理由に基くものだと私は考えているのであります。二回にわたる原爆攻撃を受け、さらにビキニの死の灰と、前後三回にわたって——世界にわずか三回しかこの危険はなかったのでありますが、この三回をすべて一身に引き受けている日本でありますから、医師はもちろんのこと国民全体が、他の国には見られないような高い科学水準の知識を、放射能障害に対しては持っているということを、私は信じているのであります。従って海外の人々が、日本がこの原爆の障害に対して、あまりに恐怖心を持っているということを言われても、それだからといって直ちに日本人の考えが間違っていると私は考えておらないのでございますが、厚生大臣の御意見を伺いたいと思います。
  51. 小林英三

    ○小林国務大臣 ただいまの御意見は、非常に貴重な御意見といたしまして拝聴いたしておきます。厚生省といたしましてはこれらの問題のために、来年度は国立放射線衛生研究所を新設いたしたいと思っております。この研究所の構想といたしましては、放射能被害患者の治療法及び将来原子力の平和利用に伴います放射線による障害の予防及び診断、治療等に関する総合的研究や調査を行いまして、これに伴いまして必要な診療を実施いたしまして、さらに要員の養成、訓練を行う、放射線全般に対します衛生行政対策の基盤とたる行政機関を設置する必要がありますので、科学技術行政協議会の申し入れに従いまして、厚生省の所管のもとに、ただいま申し上げましたような研究所を来年度は作りたい、こういうふうに考えておる次第でございます。
  52. 志村茂治

    ○志村委員 厚生省がこの点に関して真剣にお考え下さることについて感謝いたします。  お急ぎでしょうが最後に一問伺いたい。米国と英国と双方が来春南太平洋で、しかもビキニで水爆の実験をするということを宣言しております。そうなれば再びカツオ、マグロの放射能の問題が起ってくるでしょうが、前回には恕限度が高過ぎたのじゃないか、そのために捨てる必要がなかった量を捨てておる、ばかを見たというような声を聞いておるのであります。米英のこの水爆実験が近く行われるというときに、こうした事実に即して厚生省はりっぱな科学的根拠のある恕限度を設定されておるのかどうか。人体に対する障害についてはやられておりますが、魚等についておる恕限度をすでに決定されておるかどうか、その点を最後にお聞きしておきたいと思います。
  53. 小林英三

    ○小林国務大臣 お答えいたします。ビキニの問題がありました当時におきましては、まだ研究が進んでおりませんために極端な脅威を持ちまして、捨てる必要のない魚までも捨てた状態になっておったのであります。今日では厚生省といたしましても表面だけのもので、内部の肉の方までもそういう被害がないということを認めまして、ただいまそういうふうに指導しております。
  54. 志村茂治

    ○志村委員 次に外務大臣にお尋ねいたします。ソ連の原爆実験に対抗するかのように、米国が来春再びビキニで水爆の実験をするということを声明しております。英国も同じころ実験をすると声明し、しかもその場所は、モンテベロ諸島を使うことは濠州があまりに近いからというので反対している、こういう理由で同じようにビキニを使わしてくれということを米国に頼んでおるということであります。ソ連はゴビ砂漠で実験をしておるらしいのでありますが、米英ソこの三ヵ国が水爆実験をあるいはゴビ砂漠で、あるいはビキニで継続するということになりますと、この三つの水爆実験の中間に立ち、しかも今後ともひっきりなしに行われるということになれば、日本人は放射能のあらしの中に置かれておるという状態でありますが、外務大臣はこのような事態に直面して、どのように対処していかれようとするのか、原水爆実験中止に対して、何らか外交折衝をなされたことがあるのか、もしあるとすれば、その経過と結果とを御報告願いたいと思います。   〔西村(直)委員長代理退席、委員長着席〕
  55. 重光葵

    重光国務大臣 近く米英側が太平洋区域において原爆実験をするという情報は、新聞情報にはこざいましたが、まだ私どもの方で確報を得ておりません。問い合せをいたしましたが、まだそういうことは決定していないというのが今日の状況でございます。しかしながらそういうことはやらぬとは限りません。これは十分に被害のないようにしてもらわなければならぬので、それに対しては特にビキニ以来米国側に対しては深甚の注意を喚起していることは今日ご承知の通りであります。アメリカ側としてはあらゆる努力、最善の努力をして予防措置を講じて被害を及ぼさないようにするということを言っておるのであります。ソ連の方には、これは外交関係もございませんし、直接の問い合せはいたしませんでした。それからまたゴビ砂漠でやっているということも、ただ諸外国の観測によることで十分にはわかりません。わかりませんが、このことについて日本が非常な重大な関係を持つということはお話通りでございます。国際連合の方で原水爆実験のことについていろいろ議論が起り、また取り上げられているということも御承知の通りであります。日本といたしましては、国際連合に加盟することができれば、その後はむろんのこと、それまでにおきましても原水爆実験については、原則として実験のできないように国際的にする方向をとることがいいと考えて進んでおります。ただし実験をする場合においては、被害のないように一つ十分な予防措置を講ずるということを主張することはむろんのことでございます。さような方向で進んでおりますことを御報告申し上げます。
  56. 志村茂治

    ○志村委員 ただいまの被害のないような実験をしてもらいたいということは、私は無理な注文だと思います。水爆などは人間の力でどうにもならぬものなのです。しかもそれはどれだけの力が出るかということも測定できないような強力なもので、実験をして被害がないようにということは無理な注文だと思います。根本的には水爆実験を中止してもらう以外には私は手がないと思うのでありますが、お話の様子ではまだ具体的な外交折衝すら中止という二とについてなかったようて思うのであります。日本がビキニの死の灰によって被害を受けた際に、米国はその損害を認めておったのでありますが、そうすれば当然に賠償請求権というものはあるはずである。それにもかかわらず米国がいろいろ国内事情もあり、賠償金ということでは出したくないというようなことから、その米国の主張に屈しまして、結局見舞金ということになってしまったのであります。従ってこの金額はアメリカが一方的にきめてしまった。そういうふうになったのでありますが、これは私は外交上の大きな不手ぎわだったと思います。見舞金は結局要求額の十分の一ぐらいだったと被害者は強い不満を持ちながら、結局は泣き寝入りをさせられておるのであります。しかしそれよりも重大なことはこの水爆実験の被害をわずかな見舞金でがまんしたという前例を開いたということです。見舞金さえ用意すれば実験は自由勝手だということになりはしないでしょうか。政府はこのままの姿で手をこまねいて、日本国民が引き続いて危険にさらされるのを見送っていられるのでしょうか。私は被害のないような水爆実験をやってくれというのは科学的に不可能だと思いますから、政府は水爆実験中止に努力していただきたいと思うのであります。その点をお聞きしたい。
  57. 重光葵

    重光国務大臣 今申し上げました通りに、そういう方向に向って努力いたしたい、こう考えております。
  58. 志村茂治

    ○志村委員 前回の実験によりまして、あれほど日本国民が恐怖のどん底に押し込められ、しかも現実に被害を繰り返させられようとしておるのであります。ですから私は二の際国際信義に基いて米国との間に、何らかの事態を解決すべき国際法上の取りきめをしておく必要が当然あると思うのであります。現在世界では水爆の実験中止について大国の間でも問題になっております。ダレス氏は、適当な方法がないから水爆の実験中止には賛成できないと言っておるのでありますが、ソ連は米英さえ賛成すれば中止すると言っておるのであります。決して日本が水爆実験中止を世界に求める根拠がないわけではありません。戦時だけではなく、平時においても常に水爆の危険にさらされております日本国民があることを強く訴えて、未然に適当な措置を講ずることが政府の当然の責任と私は考えます。今こそ決然たる態度を持って水爆実験中止を申し入れるべき絶好の機会だと私は考えております。それとも政府は依然として原水爆禁止日本協議会なんかがやっているような、ああいうふうな民間のアッピールにまかせておくつもりでありますか、今後の方針と御決意を承わりたいと思います。
  59. 重光葵

    重光国務大臣 原水爆実験中止のことについて大国間においていろいろお話し合いがある、そのことについてまだ確報を得ておりませんが、このことは先ほども申しましたように大国間だけの問題ではむろんないのでございますから、先ほど申し上げました方針によってあくまで進んで行きたい、こう考えております。
  60. 志村茂治

    ○志村委員 水爆実験中止に対して、政府に強力に推進していただきたいことを申し上げまして、次の質問に移ります。  アジア東子力センターの誘致についてお伺いしたいと思います。政府アジア原子力センターの誘致運動をしておられるというのでありますが、現在はどういうふうになっておりますか。それを簡単に御報告願いたいと思います。
  61. 重光葵

    重光国務大臣 原子力センターを日本に誘致したいという希望を持って諸般の折衝をいたしております。むろん主としてアメリカとの関係になります。
  62. 志村茂治

    ○志村委員 次に濃縮ウランについてお伺いいたします。濃縮ウラン受け入れのための協力協定について伺いたいと思うのでありますが、すでに過日の本会議におきまして政府からその承認を求められ、その際質疑もされたことでありますから、特に重要と思われる二、三の点だけについて政府の御所見をただしたいと思っております。  第一に交換公文についてお尋ねしたいと思います。協力協定は、その前文に明記されておりますように、研究用原子炉についてだけの協定であります。でありますから、この協定に将来の発電原子炉を築造する場合の協定を盛り込むということは、それ自身がまことにおかしいと思っております。だから本文に入れることを避けて交換公文にしたと言われるでしょうが、しかしこのいわゆるトルコ協定第九条について、われわれが米国でこれに関与いたしました人々からただしたところでは、この条文はトルコが特に要求したから挿入しただけのことであるといっておるのであります。アメリカ当局は日本に提示した案文は、国々によって違うものを示すのはおかしいからひな形として示しただけである、必要あれば削除しても何ら差しつかえないということを言ったということを聞いておりますが、事実その通りでありますかどうか、それをまずお尋ねいたします。
  63. 重光葵

    重光国務大臣 私は今はっきり交渉の当時のいきさつを記憶いたしておりません。おりませんがこの発電炉の問題が将来起ってくるかもしれない、その場合の協力を今糸口をあけておくことがいいと考えまして、交換公文にこれを入れたわけであります。
  64. 志村茂治

    ○志村委員 九条の問題は別といたしまして、トルコが要求したからこれを本来原子炉に関する協力協定であるにもかかわらず特に入れたんだ。だからして研究原子炉だけに限定するものであるから、日本が不必要とあればこれは何らの条件なしにただ削除してもよろしい、こう言っておったというのですが、それは御存知ないのですか。
  65. 重光葵

    重光国務大臣 トルコとの関係は多分そういう関係であっただろうと思いますが、トルコは特にこれを将来のことも考えて要求したのであろうと思います。日本側において将来のことを顧慮せずしてそれをとりはずしても、それはそのときはよかったのでございます。しかしさようなことは日本の利益であると思いまして、将来の基礎をそこに残しておいたわけでございます。
  66. 志村茂治

    ○志村委員 ただいま外務大臣の説明がありましたが、トルコのようにきわめて低い科学技術しか持っておらない国であってみれば、将来当分の間高度な科学技術を必要とする発電原子炉のようなものの開発は、ほかの国の指導をまたなければならないことがわかるのであります。しかし日本の場合は失してそうではないと思います。それにもかかわらず第九条を交換公文の形にしておかれたということについて、われわれは大きな不満があるのであります。御承知のように原子力総合部会、あなたはやっておられるから御承知だろうと思いますが、この総合部会の原子炉築造計画は三年後には自力で国産第一号炉を作り、それを土台として発電原子炉なりあるいは発電所を築造する計画を立てております。これはどの能力を日本の科学者は持っておるのであります。関係者も自信を持ち、国もすでにこれを認めておるのであります。なおトルコと同じような内容の交換公文をなぜ残したか、この点がわからないのであります。
  67. 重光葵

    重光国務大臣 トルコと日本との科学技術水準の比較は私は差し控えたいと思いますが、日本側において将来急速な進歩を遂げて、そうして米国側のそういう方面の協力を求める必要がなくなるということを私も非常に期待をします。そうなれば協力を求める必要はないのであります。ただ必要がある場合において協力を求め得る基礎をこしらえたい、糸口をあけておくことが利益である、こう考えたわけでございます。それ以外には実は何もないのでございますが、非常に問題になりましょうか。
  68. 志村茂治

    ○志村委員 これは私は大きな問題だと考えております。外務大臣はただいまのようなことを、一昨々日の外務委員会でも松本七郎君の、アメリカに対し発電原子炉の受け入れについて、特に交換公文に規定することを要請したのはどういう意味かという質問に対しまして、将来発電用原子炉を受け入れる際に有利と考えたということを発言いたされております。しかしこのことは私たちは重大に考えております。外務大臣は発電原子炉はアメリカにたより、またアメリカから買いとるのだということを考えておられるのだろうと思います。しかしもしそうだとするならば、この発言は、三ヵ年後には国産一号炉を作るのだ、そういうふうに努力している人々を全く信頼しないことになるのではないか。これらの人々国民的感情、情熱に冷水を浴びせるようになると私は考えておるのであります。せっかく努力しておる、何としても日本は原子力開発について独立しなければならないのである、あくまでも濃縮ウランというものに頼ってはいけないのだということで、天然ウラン・重水型による国産原子炉を三年後にはどうしても作ろうと努力しておる人人、そうしてこれを土台として発電原子炉を作ろうとして努力しておる人人、その人々があるときに、将来アメリカから発電原子炉を買う場合に役に立つための交換公文であったという御説明は、私は納得できないと思います。外務大臣はいかがですか。
  69. 重光葵

    重光国務大臣 私は一生懸命にやっておる科学者を実は援助したいと考えてそういうことをやったのであります。この協定をこしらえるときには専門家とも十分協議をして、そういうことが科学者の援助になる、こう思ってこしらえたのでございます。
  70. 志村茂治

    ○志村委員 外務大臣は情報と原子炉の受け入れとを混同しておられるのではないかと思います。この前の外務委員会における御回答では、将来発電用原子炉を受け入れる際に有利と考えた、こう書いてあります。日本が自分の力によって発電原子炉を作るために必要とあればアメリカの技術情報を求めることも私はけっこうだと思います。そのほかの日本で作ることのできないいわゆるジルコン等の資材を買うことは、これはいいと思います。しかしながら、既製品としてでき上っておる発電原子炉をアメリカから輸入するということ、日本国内の力によって発電原子炉を作ろうとして努力しておられる人々の目の前に、外国から発電原子炉を持ってくるということは重大問題だと思いますが、そうお思いになりませんか、いかがですか。
  71. 重光葵

    重光国務大臣 私はそうは思いません。これはできることはどんどん進めていかなければならないし、また科学者の意見に反してそういうものを輸入しようということは起らないと思います。輸入したいと科学者が思ったときに輸入できるような糸口をこしらこておくことは、私は差しつかえないように思います。   〔「サンプルだ」と呼ぶ者あり〕
  72. 志村茂治

    ○志村委員 今サンプルという声がありましたがそれには大きな間違いがあると思います。というのは、私たちは濃縮ウランを受け入れるということにつきまして大きな疑問を持っておったわけです。ということは、将来日本で生産することのできない濃縮ウラン、これによって日本の原子力開発が行われました場合には、日本のエネルギー資源がアメリカに独占されてしまう。それはやがて日本の産業がアメリカの支配下に編入されることになるのであるからして、日本は濃縮ウランを受け入れてはいけないということを言いました。しかし実情を見ました場合に、私たちがアメリカに行って、あるいはウエスチングハウスとかそれらの話を聞きました場合に、今まで原子力の先進国がやったような順序を日本が踏んで進むか、あるいは一九六〇年ないし六五年にはりっぱな発電原子炉ができるから、その一番いいものをとってまねたらどうかという方法と、それから現在の科学水準をそのまま取り入れて、日本はただいまから原子力の開発に進んでいったらどうか、この三つの方法があるということを言われましたが、私たちは第三の方法によるべきである。そのためにはまずウォーター・ボイラーとかあるいはCP5といったような実験用あるいは試験用の原子炉を入れて、これで原子炉の運転の訓練をする、あるいは資材の実験をする、これらはすべてやがて来たるべき日本独自の力による発電原子炉を作るという準備のためであります。準備のためだから、将来外国にエネルギー資源を独占される危険がない。しかもそれは濃縮ウランではなくして天然ウラン・重水型でやるという形によって、日本が完全に原子力開発に技術的に独立ができるという見通しが立ったから、私たちは濃縮ウランの受け入れに賛成しようといたしておるのであります。そのときに、発電原子炉それだけを目標にしてわれわれは努力しておりますが、この発電原子炉をアメリカから受け入れる場合の第九条だと言われておるが、それで矛盾をお感じになりませんかどうですか。情報は入れるべきだと私は言っております。技術のための情報は入れるべきだ、しかしながら原子炉というものを受け入れるということは、これは私はよくない、こう考えております。
  73. 重光葵

    重光国務大臣 発電原子炉を受け入れなければならぬということは、何も約束はいたしておりません。こちらが希望するときに受け入れる道をあけておこう、こういうだけのことであります。それで私は矛盾は感じませんが……。むしろ今言われる通りに、われわれは日本の科学が進んで、この協定それ自身も全然必要のないときが早く来ることをむろん希望いたします。そのつもりで一生懸命に一つやらなければならぬ。こういう意味でこの協定ができておるのでありますから、私は矛盾がないように考えます。
  74. 志村茂治

    ○志村委員 確かに交換公文には、日本が望んだ場合ということは書いてあります。しかしながらアメリカ日本との国力の相違ですね。私たちが心配することは、アメリカ日本政府を使ってそういうことをやるということも、一応考えられるわけでありますから、日本がそれほどはっきりした原子炉の築造計画を作っているのであるから、もうそういうような原子炉——現物ですよ、日本の科学者が努力してこれから作ろうとするものを、アメリカから入れるというようなことは取り消していた、だきたい、こう思うのであります。情報はけっこうです。技術の導入はけっこうです。しかしできたもの、日本がこれから作ろうとする同じものをアメリカから取り入れるというようなことだけはやめていただきたい。こういう二となんです。(「入れると言っていない」と呼ぶ者あり)これは言葉の問題になりますが、それでは新聞に書いてあることは違いますか。将来発電原子炉を受け入れる際に有利と考えたから、交換公文を取りかわした、こういうのでしょう。大臣はああ言っておられるじゃないか。
  75. 重光葵

    重光国務大臣 私は将来受け入れなければならぬとは決して考えておりません。受け入れることを日本が望むようになった場合の用意にこしらえておるのであります。
  76. 志村茂治

    ○志村委員 さっぱりわからないが、次の問題に移ります。次に灰の処理についてお伺いいたします。協定は灰の処理は一切禁止されております。その後の折衝でも米国はがんとしてこれを許しておらないということを聞いております。ところがこの灰の処理は、かまどの灰の処理とは違います。灰の処理日本の原子力開発上のきわめて重要なことであって、これが許されなければ日本はこの研究に手をつけることができないで、日本の原子力開発は結局ちんばになって、いつまでも独立することができないのであります。後進国のためだというアイクの宣言とはおよそ縁の遠い、不親切な仕打であると私は考えております。灰の中には、軍事目的に使用される可能性があるプルトニウムが含まれているからというのでありますが、これは私はへ理屈だと思います。六キロの燃料の中から一体どれだけのプルトニウムが取れましょう。一グラムにも足りないようなプルトニウムに拘泥するというようなこと、それ自体が私はおかしいと思っておるのであります。私たちがジュネーヴ国際会議に参りましたときに、英国はその会議に終ってから、各国の代表を飛行機でハーウエルの原子力研究所に招待しております。そうしてその所内を案内したのでありますが、その際灰の処理工場に案内し、プルトニウムの分離方法を公開いたしております。私も現にそれに案内されて、いわゆるエレクトロ・マグネティック・セパレーターを見せていただき、その説明を聞き、また各国のデレゲーションがその質問をした場合に、親切丁寧にこれに答えておったのを見ておるのであります。英国にはプルトニウムの分離についてはもう秘密にはなっておりません。こうした事情を外務大臣はどういうふうに見られるのか。アメリカだけがプルトニウムの分離について非常にやかましい態度をとっておるということ、これを私たちは悪く解釈すれば、アメリカは原子炉を通じていわゆる世界市場を独占しようという野心があるのじゃないかということが心配される点もそこにあると思うのですが、外務大臣の説明をお願いいたします。
  77. 重光葵

    重光国務大臣 濃縮ウランを借りてくるのでありますから、供給した米国がこの灰の処理について、日本と約束をするということは当然のことだと私は考えております。しかし今お話のような非常に科学進歩の状況におきましては、いろいろ急速に変化をするだろうと思います。さような変化、進歩に伴いまして必要な話し合いを日本の技術のために今後も続けていって、それに適応するようにやりたい、こういう工合に考えます。一応はこれでやっておきまして、そして先に進んで行きたい、こう考えておるのでございます。
  78. 志村茂治

    ○志村委員 それでは濃縮ウランの受け入れにつきまして、外務大臣アメリカ以外の国に折衝されたことがありますかどうかということをお尋ねいたしたいと思います。日本の将来の産案を左右するような重大な問題を、ただアメリカ一ヵ国だけにたよっているということは、極力避けなければならぬと考えておるのであります。フランスは濃縮ウランをアメリカから譲り受けると言っております。これは、フランスのサクレーの原子力研究所に行って、その副所長から私たちに聞いたことでありますが、その際何か条件がついておりましたかと聞きましたら、私は何も知っておりません、こう言っておりました。日本のように濃縮ウラン受け入れのような場合には、重大な問題が、いわゆる協力協定という大きな問題がついておりますれば、サクレーの副所長は十分知っておるはずでございます。私はそういうことを知っておりませんと言っておりましたが、外務大臣はフランスの濃縮ウラン受け入れ等の交渉の経過について、もし御存じであればお知らせ願いたい。
  79. 重光葵

    重光国務大臣 各国の原子力の研究及びこれに対する施設等の状況は相当程度調べてはおりますが、この問題について協力関係を開始したのはアメリカだけでございます。イギリス、フランス、ソ連は何もございません。そのほかは国際連合関係でゼネバ会議等があったことは、これは皆さん御存じの通りであります。さようなわけでありますが、この協定が他の国との話し合いを一切禁じておるというような関係には少しもおりませんことを申し上げます。必要があれば何だってもやります。
  80. 志村茂治

    ○志村委員 でありますから外務大臣は濃縮ウランの受け入れについて、アメリカ以外の国と折衝されたことがあるかどうか。今度の協力協定は禁止いたしておりませんから、自由に折衝できるはずだと思っております。そこで現にフランスとイギリスとの間には、よくわかりませんが、別段の条件がないような濃縮ウランの譲り受け、譲り渡しがあるということを聞いておるのであります。またもう一つ私たちがジュネーヴ国際会議に参りましたときに、ソ連の代表の一人であったブロフィンッェフという人は、日本の代表に対して原子炉特に実験炉の築造の場合においては、ソ連はもし日本が要求されるならば、あらゆる助力をするということを約しております。ソ連の実験炉は言うまでもなく濃縮ウランによる実験炉であります。そういうようなイギリスとフランスの関係、ロシヤのブロフィンッェフの発言、これらを考えてみました場合に、濃縮ウランは決してアメリカだけのものじゃありません。これによるところの実験炉の場合もアメリカだけではありません。求めようとすれば少くとも現在濃縮ウランを製造いたしております英米ソ、この三国から求められるのであります。従って私たちは日本の原子力開発を自由な立場に置かせる、そうして国際間に自由な情報の交換をするという建前からいって、できるだけ広く外務省は各国間と折衝していただきたいのでありますが、今まではやっておられないようであります。しかし今後はぜひこれをやっていただきたいと思いますが、外務大臣の御所見を伺いたいと思います。
  81. 重光葵

    重光国務大臣 御希望に沿うように努めたいと思います。
  82. 志村茂治

    ○志村委員 それでは最後に原子力の平和利用についてお尋ねしたいと思います。まず平和的利用の基本方針について正力大臣からお答え願いたいと思います。
  83. 正力松太郎

    ○正力国務大臣 お答えいたします。原子力の基本方針につきましては、平和利用に限定しなければならぬということが根本であります。それとまた学術会議の三原則である運営については民主的に行かなければならない、技術を公開しなければならぬ、研究の自由、これを尊重する、なおまたこれにつきましてはなるたけ超党派でやる、政界のみならず各方面の協力を得たいと思っております。
  84. 志村茂治

    ○志村委員 まことにけっこうな方針を伺いまして、われわれが常々主張しておったことと完全に一致いたしております。ぜひこれをそのまま法制化し、そして運用していただきたいということをお願いいたします。それにいたしましても原子力開発は急速に進めていただかなければならないと考えております。各国の原子力開発状態は、発電こそはいまだ実用の域には達しておらないのでありますが、これも一九六〇年ごろには、くつわを並べて実用の段階に入ろうといたしおるのであります。中性子やアイソトープによる放射能の利用は農業、医療、金属工業等の諸産業に広く応用されてすでに実用の段階に達し、むしろ私は世界各国の状態はけんらんたる状態にあると表現したいと思っております。これらの利用はすでに第二次の産業革命を約束しており、特に石炭、石油、電力等のエネルギー資源に恵まれていない日本の立場としては、各国が原子力電力を実用化する一九六〇年ごろには、ぜひとも先進諸国のこの戦列の一隅だけでも日本は占拠したいという強い希望を持っておるのであります。原子力を考慮に入れない経済六ヵ年計画なんというものは、将来ほとんど意義を失ってしまうものではないかというふうに私は考えておりますが、急速に発展せしめるためには、原子力開発のための機構と施設と人間の問題、さらにこれを裏づけるところの予算の問題、これらについていろいろ質問したいと考えておるのでありますが、まず第一に機構の問題についてお尋ねいたします。政府は原子力開発の行政機構に対して、どういうような構想を持っておられるか、その点をまずお伺いいたしたいと思います。
  85. 正力松太郎

    ○正力国務大臣 お答えいたします。機構としましてまず原子力委員会、この委員会には各方面の権威の人を入れたいと思っております。なお実施機関としましては、とりあえず原子力局というのを作りたいと思っております。
  86. 志村茂治

    ○志村委員 この原子力はあらゆる高度な科学の総合の結果であるばかりか、その応用の面におきましても、今後の産業開発の技術的基礎となるべきものと私は考えており、現在その基礎になっておるのでありますが、これらの科学技術とは一体不可分の関係にあります科学技術の総合行政機関が必要となるということも当然考えられるのでありますが、現在いわれておるところのいわゆる科学技術本部、あるいは科学技術省とか科学技術庁というようなものの設置については、どういうふうに考えておられるのか。  それからもう一つ加えてお尋ねしたいことは、これは学術会議あたりで問題にいたしておりますが、行政機構、たとえば科学技術庁というようなものを作った場合に、これが研究所や試験所の連絡を緊密にして、その重複やむだを省く、相互の連絡調整を密にするということは本来の目的でありますが、これを悪用して研究の統制機関となってはいけないということが強く要求されております。どういうふうな行政機構を作られるか、その機構の中には、統制機関とならないような機構をどういうふうに盛り込まれるか、この点をお尋ねいたします。
  87. 正力松太郎

    ○正力国務大臣 将来科学技術庁というものを作りまして、そうしてこれは先般行政審議会の答申もありましたので、その構成、機構と関連しまして、来たる通常国会に成案を得て御審議を仰ぎたいと思っております。
  88. 田中稔男

    田中(稔)委員 先ほど農林大臣お見えでなかったので、ただ一問だけお尋ねいたします。一問の中に四点ありますから、四点についてお答え願います。  問題は日本中国の漁業問題でありますが、民間で結ばれました日中漁業協定は来年六月で効力を失いまして、第二次協定を結ばなければなりません。その場合に、中国から代表団が日本に四月ごろにやってくる、こういう約束であります。その場合政府は、この中国の漁業代表団に入国の許可を与えるとともにそのために、いろいろな経費を要しますので、若干の補助金を支出していただくのが私は適当だと思いますが、これについての農林大臣の御意向、これが第一点であります。  第二点は、日中漁業協定の規定に違反する漁船がやはり相当ありますので、これを未然に防止するためには、現在就役中の海上保安庁の監視船二隻を四隻以上に一つ増加していただくわけにはいかないか、これについての農林大臣のお考えを伺いたい。  その次には、この協定違反をやりました漁船の処分でありますが、これは水産庁の行政処分をもう少し強化していただいて、場合によっては、非常に悪質な場合には操業の許可の取り消しというようなこともお考えいただくことが必要じゃないか、これは相手国への国際信義の問題でもありますから、これについての御所見、これが第三点であります。  第四点は、現行の民間の漁業協定の第九条に、双方はそれぞれ自国政府に対し、日中漁業問題の解決についてすみやかに会談を行い、日中両国の間に漁業協定を締結するよう促すことに努めるものとするということでありますが、こういう黄海及び東海における漁業の問題は非常に大きな国家的な問題だと思いますから、もう今日においては、民間協定でなく政府間の協定にすべきだと私は思いますが、その積極的なお考えがあるかどうか、これが第四点であります。  以上一括して御答弁願います。
  89. 河野一郎

    河野国務大臣 ただいまお尋ねになりました日中間における漁業の協定のことでございますが、これは御承知の通りあくまでも民間協定でございまして、しかも政府といたしましてはこの民間協定に対して従来取り来たりました態度をそのまま続けていくということで行きたいと思っております。  なお一、二、三と問題を分けてお尋ねでございますが、これらにつきましては、いずれも従来通りにやって参りますことはもちろんであります。しかもこの協定は双方のために非常に有利であり、有効でありますので、私といたしましては善意に、なるべくこの協定がうまくいって、そして民間協定が自主的に今日のようにいっておることは非常に喜ばしいことであると思っておる次第でございますので、その精神において取り進めて参りたいと思います。  なお最後の第四点でございますが、これは他の一般外交の問題と関係がございますので、むしろ私より外務大臣からお答え申し上げた方が適当だと思う次第でございます。
  90. 三浦一雄

    ○三浦委員長 志村さん、どうぞまた発言願います。
  91. 志村茂治

    ○志村委員 次に研究の機構についてお尋ねいたします。原子力開発と核燃料資源の探鉱と、その製練のための実施機関として、公社でなければならないということを私たちは考えておるのであります。官庁側は、いまだ民間の出資を求め、その協力と創意を取り入れようとすることを考えておられるのでありますが、平和利用に限っておる日本の場合でありますから、民間に開放することも十分意義あることと考えております。しかしながら民間資本が入ったがために、あるいは営利が強調いたされまして、研究の当初の目的が違った方向に歪曲される懸念もあるし、かえって自由なるべき研究が妨げられることもまた予想されるのであります。これは学界が強く懸念いたしておるところでありますが、本来研究資金の大部分は、国民の税金からまかなわれるところの国家予算によって支出されておるのでありますから、一部財界に偏重することがあってはならないということ、一部財界の利益のためにこの公社が利用されてはならないということを私たちは強く主張いたしておるのであります。全額国庫負担の公社、それも大幅に自由を与えた公社形態でなければならないということを私たちは主張いたしておりますが、大臣はどういうふうに考えておられるか、お伺いします。
  92. 正力松太郎

    ○正力国務大臣 お答えいたします。営利法人とする考えは全然ありません。ただ原子力の研究所を将来公社とするか特殊法人とするかについては、なお研究中であります。原子力の開発は将来多額の国家資金を必要とします。また一方官民協力の態勢のもとに進めることは必要であります。広く有能な研究者を迎えるよう配慮する必要があること、また弾力性のある研究が行えるようにすること、こういう各種の要請を満たすことが必要でありますので、その方針のもとに目下考究中であります。営利法人とすることはありません。
  93. 志村茂治

    ○志村委員 初めから営利法人なんて問題になりません、研究所で、こんなもうからない仕事ですから。ただその形が公社という国家資本一本でいくか、あるいは民間資本を入れるかということでありますが、民間資本を入れた場合に、その利益のために研究がゆがめられることをわれわれはおそれておるわけでありますから、でき得るならば、これは国家の出資一本の公社にしたいということを私はお聞きしたわけであります。
  94. 正力松太郎

    ○正力国務大臣 御趣意のほどはよくわかりました。よく研究いたします。
  95. 志村茂治

    ○志村委員 では次に、やはり原子力の開発につきましては人の養成が重要でありますから、その点についてもお尋ねいたします。理論物理学については、水準の高い相当数の学者を持っておる日本でありますが、原子力の科学技術者は、ただいまゼロにひとしいと言われても仕方がないのであります。そこで日本では、できる限りすみやかに原子力科学技術者を養成しなければならないのでありますが、幸い、私たちが各国をまわりましたときに、研究所なりあるいはその統轄機関なりあるいは大学などへ参りまして、日本の留学生なり技術者を受け入れることにつきまして懇請いたしましたところが、どこの研究所も大学も、非常な好意を持ってこれを受け入れるということを約束してくれました。そこで、各国がこのように受け入れてくれます限り、そして、もし日本国内でそれだけの科学技術者が得られぬとするならば、できるだけ多くの人々を海外に派出していただきたいと考えておりますが、政府はこのような用意がありますかどうか。  それからもう一つ続けてお聞きいたしたいことは、このように、少くとも原子力開発についての科学技術を持つておる人々は、それが学者であろうと科学技術者であろうと、それに従事する労働者であろうと、できるだけ多くの人々をこれにかり集めなければならないのであります。アメリカは、御承知のようにクリアンランスをやっております。左翼的思想を持っております者は、科学技術者として、あるいは労働者として一切雇い入れておりませんが、日本の場合は平和的利用に限定されております。でありますから、このクリアランスいとうことはやめていただきたい。これは筋が違うかもしれませんが、私たちがアメリカのAECに参りまして、アメリカ日本に対してクリアランスを要求するかと言ったら、要求しないと言っております。これは国内問題でありますから、日本が独自できめるべきでありますが、そうもならない事情がありますから、私たちは一応AECで聞いたのであります。もしも日本の学者の中に、ソ連と連絡を持ってソ連に秘密を漏らすような者があったらどうするかと言ったらば、アメリカは、ソ連に知らせて困るような情報は日本に与えておらぬと言っているのでありますから、こういうふうなりっぱな論理ができておりますから、日本に対してクリアランスを要求しないと言っております。日本政府もできるだけ多く有能な学者、技術者を動員しなければならない現状でありますから、人の養成と同時に、クリアランスはやらないという方針をとっていただきたいと思います。その御意見を伺います。
  96. 正力松太郎

    ○正力国務大臣 ただいまの御趣旨には全く同感であります。御承知のごとく、日本にはどうしても——目下急務なのは技術の養成をする、それがまだ日本では不十分でありまして、この研究所とか大学の要員を努めて海外に出しまして、そうして現に米仏等にアイソトープの学校もありますし、研究所も多数ありまして、そこがいずれもお話通りで喜んで外国人に開放してくれるようでありますから、そこにやって十分に研究をさす。またクリアランスの問題、むろんその通りであります。そういう偏見は持っておりません。
  97. 志村茂治

    ○志村委員 最後に、それでは大蔵大臣にお尋ねいたしますが、先ほど原子炉の築造計画について正力国務大臣から御答弁がありました通り、五ヵ年間に日本の原子力研究を急速に進めたい、そうして総合部会等においても、国産発電原子炉築造を五ヵ年間のうちに完遂するということをきめております。長期にわたる計画でありまして、それが完遂された後に初めて成果が現われるような性質のものでありますから、財政法第十四条の二に言ういわゆる国の工事、製造その他の事業で、その完成に数年度を要するものについて、特に必要がある場合においては、経費の総額及び年割額を定め、あらかじめ国会の議決を経て、数年度にわたって支出することができるという継続費の条項に該当するものと考えておるのであります。さらに原子力の開発が焦眉の急務となっております今日では、その予算を継続費として計上する必要が十分あると私は思っておるのでありますが、大蔵大臣はこのような予算をお組みになる考えがあるかどうか、聞きたいと思います。
  98. 一萬田尚登

    ○一萬田国務大臣 お答えします。一応ごもっともな御意見と思うのでありますが、まあこれは河川等の総合開発事業なんかとも違うように思われる。私としては、繰り越し明許費の形をとるのがむしろよかろうと考えております。
  99. 志村茂治

    ○志村委員 終ります。
  100. 三浦一雄

    ○三浦委員長 この際一言お願いを申し上げたいと存じます。政府に対する質疑は、各派の申し合せの通り本日をもって終了いたしたいと存じます。  つきましては、午後一時半から再開いたします。どうぞ委員各位並びに政府側におきましても、格段の御協力をお願いいたします。  暫時休憩いたします。    午後零時四十六分休憩      ————◇—————    午後一時四十七分開議
  101. 三浦一雄

    ○三浦委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。  質疑を継続いたします。赤松勇君。
  102. 赤松勇

    ○赤松委員 私は日本社会党を代表しまして、本予算委員会の最後の総括質問をば行いたいと思います。  つきましては、鳩山内閣に対する諸般の質問をば進めていきまする前提といたしまして、この際鳩山内閣総理大臣にぜひお尋ねをしておきたいことがございます。それはほかでもございません。御承知のように、自由民主党の結成大会におきまして、三木代行委員は次のようなことを申されました。二大政党が対立の時代に入るということは、大へん喜ばしいことではあるけれども、しかしながら自由民主党が総裁をきめないで、代行委員制をしがなければならないということは、政党政治の上からいってまことに遺憾である。こういう演説をされましたことは、代行委員の一人として鳩山さん十分御承知であると思うのでございます。そこで、これは政局全般に対して重大な影響を持っておりますので、私この際社会党を代表しまして、特に総理の御所信をお伺いしたいと思いますが、総理は、二大政党対立の時代に、一方の政党が総裁を置かないで、四人の代行委員によって統制される、指導されるという姿が正常なものと考えるかどうか。もとよりソ連におきましても、御承知のように集団指導が行われておる。しかしょもや総理は、ソ連共産党をばまねられまして、集団指導をなさるお考えはないと存じます。総理の御心境を察するに、おそらく社会党はうらやましい、できれば総裁をば早く置きたい、しかし党内事情がそれは許さないのである、こうお考えになっておられるでございましょう。党の決定によれば、四月には総裁が公選をされるということになっております。この際代行委員制度につきまして、鳩山総理はどのようにお考えになっておるか、この際御所信をばお伺いしておきたいと思います。
  103. 鳩山一郎

    ○鳩山国務大臣 代行委員制度は一時の便宜の方法でありまして、これは原則としてはとるべきものではないと考えております。できるだけすみやかに総裁を置くことがよろしいと考えております。
  104. 赤松勇

    ○赤松委員 やはり私どもの考えと一致しておるのでございまして、この点につきましては敬意を表します。そこですみやかに代行委員制度を解消して、そうして本来あるべき姿に立ち戻らせたいという総理の御所信のようでございますが、その時期は、一応党大会の決定では四月ということになっておりまするが、その四月には総理は、総裁に立候補する、あるいはその後任として緒方さんをば総裁に推薦なさるお考えはないで、こざいましょうか、いかがでございましょうか。
  105. 鳩山一郎

    ○鳩山国務大臣 ただいまそういう考えは時っておりません。
  106. 赤松勇

    ○赤松委員 きわめて明瞭になって参りました。ただいま緒方氏をば四月に代行委員制度の解消と同時に総裁に推薦する意思はない、こういう御言明でございました。しからばあなたはその際総裁に立候補され、引き続いて政局をば御担当なさるお考えでございますか、いかがでございましょうか。
  107. 鳩山一郎

    ○鳩山国務大臣 ただいまのような健康を来年の四月にまだ持っておりましたならば、やはり国民に約束をした諸政策の実行をして参りたいと思っております。
  108. 赤松勇

    ○赤松委員 よくわかりました。従いまして四月には新しい政局の変動はないもの、このように理解します。  次に李ラインの問題につきまして、この際ぜひ総理の口から国会を通じまして、日本国民の前に明らかにしていただきたいことがあるのでございます。御承知のようにこの李ラインの問題に関連をいたしまして、ただいま国民の一部には実力行使をば主張するものがございます。これは国民だけではございません。本院におきましても、委員会におきまして、さような不穏当なる言動をばなすものがあるのでございます。先般防衛庁の御答弁によりますと、韓国側と日本側の彼我の海軍力については、日本は三倍の海軍力を持っておる。従ってもし不幸戦闘を交えた場合におきましても、日本が敗北するようなことはない。従って海軍力の対比につきましては、言うまでもなく日本側が優勢を占めておるわけです。今国内に起きておりますところのいわゆる素朴なる力の平和論なるものは、備えあれば憂いなし。その昔の古い考え方から、李承晩勢力をあるいは韓国の軍事勢力を一挙に覆滅をし撃破をして、そうして日本の漁船をば守ってもらいたいというような間違った考えが出てきております。この際総理の所信を内外に一つ明らかにしていただきたいのは、よしんばわが国の海軍力が韓国よりも三倍の優勢力を持っておったといたしましても、軍事行動、戦争行為によってこの問題は解決できないのである、一たび開戦というような、軍事行動というようなことが発生したならば、その結果がどうなるかということについて、政府として一つこの際国民の前にその所信を明らかにしていただきたいと思います。
  109. 鳩山一郎

    ○鳩山国務大臣 韓国との李ラインの係争事件を、武力により解決をするという意思は毛頭ございません。話し合いによってこの問題は解決できると思います。また解決しなくてはならぬ問題だと考えております。
  110. 赤松勇

    ○赤松委員 もとより総理大臣として、あるいは日本国民の一人としてさようにお考えになることは当然でございます。私が聞かんといたしまする点はそういうところにないのだ。私の聞かんとするところは、国民の間にさような間違った考えを持つ一部の者がある、また国会におきましてもこのような発言をなす議員がある。こういう風潮に対しまして、内閣総理大臣としてそういう考えはむろん間違いであると思うのでございますけれど、そういう考え方によっては李ラインの問題は解決しないのだ。よしんば軍事行動によって勝った場合におきましても、問題は解決しないのだ、ますます韓国側に再軍備強化の口実を与えるだけである。しかも韓国と日本の間に再軍備競争がイタチごっこのように激烈になるだけであって、問題解決にはならないのであるということを、一つ明確にあなたの口からこの際明らかにしていただきたいと思います。
  111. 鳩山一郎

    ○鳩山国務大臣 李ラインの問題を武力によって解決するという意思は、毛頭ないということを先ほど声明したのであります。李ラインの問題を武力によって解決しようではないかという議論が、李ラインの問題の解決を困難ならしむる原因になっているのでありまして、そういうような議論のなくなることを非常に熱望しております。
  112. 赤松勇

    ○赤松委員 続いて総理にお尋ねをいたしますが、ただいま総理のお考えは全く私どもの考えと一致しているのでありまして、かかる軍事行動によって問題を処理しようとする素朴なる力の平和論に対しましては、総理はこれを否定されました。私どももさように考えるわけでございます。しからば問題は平和的に解決しなければならぬ。先般来わが党の各代表が質問をしておりまするが、これに対しまして、外務大臣はいろいろな解決の方法がある。いろいろな努力をばただいま払っておる、こうおつしゃっておりますが、現に漁船を駆使してその事業に従事しておりますところの多くの国民、あるいはこの問題に関して心配をしておりまする国民は、かような抽象的な外務大臣の御答弁では、とうてい満足しないのであります。ゆえに先般来国会に対しましてもきわめて熾烈なる陳情があったことは御承知の通りであります。そこで政府としては、この問題の処理にどのような努力を払おうとしておるか。京城発の七日のAP電報によると、ブラッカー・アメリカ陸軍長官は、日本政府は今週初め私に調停を依頼してきた、こういうふうに語っておりますが、アメリカに調停または問題解決のあっせんを依頼されました事実があるかないか、これを一つ明らかにしていただきたいと思います。
  113. 重光葵

    重光国務大臣 不幸なる日韓関係緊張は、あくまで話し合いによって解決をしたいという総理大臣の声明を、私はその通りに実行をいたしております。日韓両国のこの交渉は、まず第一次的には日韓両国の直接の交渉によって解決していきたい、こう思って、その筋をもって話し合いをし、連絡をして進めております。米国がこの問題について重大な関心を持っておるということは、これは想像にかたくはございません。当然のことでございます。そこで米国側とも、日韓の関係の正確な情報の交換をいたしております。そしてそのことによって……。(赤松委員「そんなことを聞いているのではない、あっせんまたは調停を依頼したかしないか、それだけでいいのです。どうぞ時間がないから、あなたは三時までしかおられませんから、簡単に御答弁願いたい」と呼ぶ)あっせんを正式には依頼をいたしておりません。しかしながら、米国が自分の利害関係上、この問題について乗り出してくることについては、十分にこちらも、それを要求はしませんが、期待して進んでおるわけでございます。
  114. 赤松勇

    ○赤松委員 正式には要求してないということは、非公式には要求をされておるのでございますか。
  115. 重光葵

    重光国務大臣 米国側がこの問題について乗り出してくるということは、少しも妨げてはおりません。正式には要求はしませんが、期待しておるということを申し上げます。
  116. 赤松勇

    ○赤松委員 しからば京城発の七日のAP電報のブラッカー米国陸軍長官の「私に日本政府は調停を依頼してきた」この談話を、これはデマである、事実に反するものである、うそである、このように外務大臣、御否定になりますね。よろしゅうございますか。
  117. 重光葵

    重光国務大臣 ブラッカー陸軍大臣、それからレムニッッアー司令官が、最近朝鮮に参りました。私はその前にもこの両氏に会いまして、そして十分日本の意のあるところを、また情報を提供しておきました。そのことによって、それを参考にして、こういう人は朝鮮において行動したと、こう思います。しかし、新聞がそれをどう報道したかということは、そう論議の対象には私はならぬと思います。これは新聞社に確かめなければなりません。
  118. 赤松勇

    ○赤松委員 私は、新聞の記事は正確であるかないかということを言っておるのではないのです。この七日発AP電報に、ブラッカーの談話が載っていたのだ。この談話はデマである、うそである、こうおっしゃるのか、それとも調停を依頼したんだと、こうおっしゃるのか。長い答弁は要りません。イエスかノーか、それだけでけっこうです。
  119. 重光葵

    重光国務大臣 調停は正式に依頼していないと私は申し上げておる。その通りです。しかし新聞の内容が真であるかどうであるかということは私は申し上げるわけに行きません。
  120. 赤松勇

    ○赤松委員 しからばブラッカー長官のこの談話は重光外務大臣によって否定されたのである。ブラッカー・陸軍長官は事実に反する談話を発表した、こういうふうに外務大臣答弁したものと私は理解しておきます。  次にお尋ねしたいのは、今まで過去四年間、なぜこの問題について国際連合に提訴をなさる手続をばおとりにならなかったか、この点をお尋ねしたいと思います。
  121. 重光葵

    重光国務大臣 日本国際連合に対する地位から見て、まだその提訴をすることは適当でないと考えます。
  122. 赤松勇

    ○赤松委員 いかなる理由で適当でないとおっしゃるのでありますか。
  123. 重光葵

    重光国務大臣 この問題は日韓の間の直接交渉によって解決ができると、こう思っておったからであります。
  124. 赤松勇

    ○赤松委員 四年かかって解決できなかったのに、今後一体どれくらいかかって解決できるとお思いになりますか。また四年でございますか。合せて八年でございますか。
  125. 重光葵

    重光国務大臣 なるべくすみやかに全力を尽して解決をしたいと、こう考えております。
  126. 赤松勇

    ○赤松委員 すみやかに解決できておりませんから、私どもは今日国会においていろいろ政府に対して質問をば行っておる。先般各委員からあなたにこういう質問が出た。外務大臣はみずから京城におもむいて直接韓国政府と折衝する用意があるのかどうか。そうするとあなたは、必要ならばさような方法をとってもよろしい、こういうことをおっしゃいましたが、あなたのおっしゃるように、日韓交渉は直接交渉によって平和的に解決をしたい、もし現在事務局同士で話し合いが行われておりまするその話し合いがうまく行かなかった場合には、日本政府責任において、外務大臣みずからこの問題をば解決するために、直接韓国政府と折衝なさる御用意がありますかどうか、これをお尋ねしたいと思います。
  127. 重光葵

    重光国務大臣 その時期が来、またそれが最も適当である、こう考えましたときには、何どきでも出かけます。
  128. 赤松勇

    ○赤松委員 外務大臣は、その時期が成熟をしたならばさような方法をとる考えである、こうおつしゃいました。では、さように理解しておきます。  先般わが日本社会党は、その解決の一つの方法といたしまして——一つの方法です。全部の方法じゃありません。一つの方法といたしまして、この際国会側より代表者を選んで韓国政府意向を打診し、政府のただいま行なっております日韓交渉をば間接的にいろいろ援助をばしたい、こういう意向を表明したのでございますが、その問題につきまして、もし国会側でさようないし表示が行われたという場合におきましては、外務大臣は韓国政府に対しまして、そのような交渉のあっせんをばなさる御用意がございますか、いかがでございましょうか。あるいはその際はむろんパスポートも出していただけると思いますが、いかがで、こざいましょうか。
  129. 重光葵

    重光国務大臣 これがもし正式の外交交渉であるならば、私はその外交交渉は行政機関が行うべきものだ、こう考えております。立法府の直接行うべきものではないと考えております。
  130. 赤松勇

    ○赤松委員 もとよりその通りでございます。ですから現在まで政府が行なっております日韓交渉をば援助するために——援助するために、こういう言葉を使いました。何も外務省をほうっといて国会側が李承晩と折衝するというわけではないのです。そういうわけでなくて、政府がただいま、韓国と折衝しておるが、あなたの意に反してちっともうまくいかない、あなたにまかしておくわけにいかぬ、そこで国会の中におきましては、期せずして外務大臣不信任的な意味において、この際国会がこの交渉をば促進し、その妥結をば早めるために、間接的な援助をばするために韓国におもむきたい、こういうような意向が一部において表明されておる。その際、外務省としては、韓国政府に打診して、その渡韓のためにいろいろあっせんなさる御用意があるのかないのか、こういうことを聞いておる。
  131. 重光葵

    重光国務大臣 国会外交交渉を直接助けていただく、これは実にありがたいことです。助けていただかなければならぬ。これをじゃまされちゃ困ります。(笑声)そういう助けていただく方法を考えてもいただき、また方法がありましたならば私どももとくとそれは考えることにいたします。
  132. 赤松勇

    ○赤松委員 じゃまされては困りますというようなよけいなことはおっしゃらない方がよろしい。あなたが無能であるからちっとも交渉が促進しない。ですから国民の一人として、あるいは国会議員としてこれを心配して、間接的にいろいろ援助したい、こういう考えでございますから、どうぞあまりよけいな、刺激するような言葉は使わないでほしいと思います。  そこで今の外務大臣答弁を要約いたしてみますならば、要するにこういうことになると思います。今国内には先ほど申し上げたように素朴な力の平和論が起きつつある。備えあれば憂いなし、こういうような声が一部に起きつつある。しかし彼我の海軍力は日本は三倍である。総理大臣はこの海軍力をば発動しても、かりにその場合勝利をおさめたとしても問題は解決はしない、かえって問題は悪化するのだ、こういうお考えでございます。結局備えあれば憂いなし、こういうことがありますけれども、今は備えがあるのです。備えあり、憂いあり、そうして外交なし、これが今日の鳩山内閣の実体であると思うのでございます。  次に私は日米会談の問題につきまして、この際政府にお尋ねをしたいと思います。外務大臣は渡米される前にアリソンアメリカ大使とお会いになりまして、十分アメリカ側の意向をば打診されたと思います。そして陸軍十八万増強と引きかえに安保条約をば書きかえ、条約の片務的、一方的性格を変え、いわゆる相互的、協力的な双務条約にするために、日米新防衛条約をば用意し、これを新たな日米関係の出発点にするという構想を持って出発されたのでございましょうか、いかがでございましよう。
  133. 重光葵

    重光国務大臣 必ずしもそうでは、ございません。私は日米の全局について重要な問題について意見の交換をし、了解を進めたい、こういう考え方で参りました。
  134. 赤松勇

    ○赤松委員 河野国務大臣は来ておられませんか。1それでは河野国務大臣が御出席になります前に、鳩山総理に私はお尋ねしたいのでありますが、河野国務大臣はいかなる資格において渡米をされたのでございますか。また岸幹事長もいかなる資格において渡米をされたのでございますか。外務大臣の随行でございますか。それとも日本政府の代表でありますか。岸幹事長ば政府じゃありませんが、いかがでありますか。
  135. 鳩山一郎

    ○鳩山国務大臣 河野君と岸君とが外務大臣と同行いたしましたのは、日本考え方を三人から言った方が正確なる了解をアメリカがするだろうと考えたからであります。
  136. 赤松勇

    ○赤松委員 それは日本政府の代表としてでございますか、河野、岸両君はいかがでございます。
  137. 鳩山一郎

    ○鳩山国務大臣 政府の代表という資格ではございません。
  138. 赤松勇

    ○赤松委員 それではどういう資格でございますか、国会議員としてですか、政党の幹事長としてですか。
  139. 鳩山一郎

    ○鳩山国務大臣 政党の幹事長がどういう考えを持っておるかということを理解してもらう方がいいと思いましたし、河野君ば河野君としてアメリカ交渉をする案件を持っておったので同行したのでありますから、政府の代表という資格も若干あります。
  140. 赤松勇

    ○赤松委員 要するに刺身のつまでございますね。そういうことになるじゃありませんか。その資格が何であるかということを聞いておる。
  141. 鳩山一郎

    ○鳩山国務大臣 アメリカ交渉する案件を農林大臣は持っていたのであります。それで参りました。
  142. 赤松勇

    ○赤松委員 重光外務大臣にお尋ねをいたしますが、この会談の内容につきまして、いかなる成果があったかということをこの際明らかしていただきたいと思います。
  143. 重光葵

    重光国務大臣 日米の政府間の意思の疎通を十分はかり得た、こう考えております。
  144. 赤松勇

    ○赤松委員 意思の疎通をはかるために、あなたはあのようなぎょうぎょうしい渡米をされたのですか。この会談におきまして、あなたの要求されました日米安保条約は不平等条約であるということに対しまして、ダレス国務長官といたしましては、不平等とは逆にこちらから言いたいことだ、こういうことを言いましたが、これは事実でございますか。
  145. 重光葵

    重光国務大臣 さようなことを記憶いたしておりませんが、それはどういう根拠に基、いた御発言でしょうか。
  146. 赤松勇

    ○赤松委員 あなたは安全保障条約の改訂につきまして交渉されましたが、私は五月の本予算委員会におきまして鳩山総理に質問をしました。その際鳩山総理は、この特別国会が終了すると同時に外務大臣をばワシントンに派遣して、日米安全保障条約の改訂のために努力をさす考えである、こう答弁をされました。その結果あなたは行かれたと思うのです。ただ日米間の意思の疎通をはかるために行かれたのじゃない。これは総理大臣がおっしゃったように、安全保障条約の改訂のために、その改訂案を持ち、また二つには先般御答弁なすったように防衛庁の防衛六ヵ年計画、いわゆる十八万案、これを持ってあなたはワシントンに行かれた。その結果安保条約改訂及び日本の防衛六ヵ年計画についてアメリカ側はどのような意思表示をしたか、これを一つ答弁願いたいと思います。
  147. 重光葵

    重光国務大臣 安保条約の改訂ということは、ずいぶん本委員会でも社会党側の意見として……。(赤松委員「時間がありませんから、簡単に答弁願います。」と呼ぶ)簡単にはいきません。私はいろいろ説明しなければならない。だから私もこれを考究して——安保条約で社会党の方々が実にこいつは不都合な条約であるということをしょっちゅう言われました。とにかくそれを考究して、私も安保条約は、なるほどこれは不平等な条約である、日本が防衛力がないから人に防衛してもらうというのは不平等な関係に違いない、だから日本の防衛は人にしてもらわぬでいいような見地に立って、これは改訂してもらうのが当然だ、こう思っておる。それだからこれは変えてもらいたいと思った。しかしまだ日本の防衛力その他を彼我の間に検討してみて、安保条約をどう改訂するかという改訂案を作って改訂するまでには至らなかったのでございます。しかしその間でも防衛分担金の、こときは、できるだけ軽減してもらうのがわれわれの希望でございますから、漸減方式によってこれを減らしていこうじゃないかというところに話し合いがついて、これは共同声明で発表された通りであります。
  148. 赤松勇

    ○赤松委員 防衛分担金の問題はこのあとでやりますから。  私が質問しているのは、日米安全保障条約の改訂について、総理は外務大臣をばワシントンに派遣すると本委員会で約束した。その約束に基いてあなたはアメリカに行かれた。安保条約改訂についてどのような結果であったか。これは五月の予算委員会におけるところの総理の約束なんです。その結果について一つ明らかにしていただきたい。
  149. 重光葵

    重光国務大臣 その結果は今申し上げた通りであります。
  150. 赤松勇

    ○赤松委員 その結果はちっとも明らかになっておりません。安全保障条約改訂についてはどうなんですか。
  151. 重光葵

    重光国務大臣 検討の結果、今その改訂の時期でないというところに落ちついたということは、今申し上げた通りであります。
  152. 赤松勇

    ○赤松委員 いかなる意味において今改訂の時期でないとアメリカは言うのでございますか。
  153. 重光葵

    重光国務大臣 今申し上げた通りに、日本の防衛力がないからその防衛力を補足するために、安全を保障するために安全保障条約ができて、日本の防衛力が完全にできれば当然これは改訂さるべきものと思います。
  154. 赤松勇

    ○赤松委員 きわめて明快なる御答弁をいただきましてけっこうです。アメリカの方が、日本の防衛力は足らないから、従って安保条約の改訂の時期でない、そこであなたは安保条約改訂の交換条件として、すなわちアメリカ側を納得させるために十八万、六ヵ年計画というものを持って行かれた、これは事実でございますね。その十八万案に対してアメリカ不満だった。不満でなければ安保条約の改訂に応ずるはずです。そこで十八万案では不満である、これこれにしろという意思表示が必ずアメリカから行われたに相違ない、これを一つ明らかにしてもらいたい。
  155. 重光葵

    重光国務大臣 その点については前に説明した通りであります。防衛庁の試案としてさような試案を受けました。私はこれをもって日本側において条約の趣旨によって防衛力の増強をするという意向のあることをはっきり申しました。しかしながら、この案については向うに提示するということはしませんでした。それはまだ熟していない、これは防衛庁の試案くらいで何も政府で確定的な結論を得たものではありませんから出しませんでした。従ってそういう米国意向も何もございません。
  156. 赤松勇

    ○赤松委員 あなたは先般の答弁と違った答弁をしておる。十八万案を向うへ持って行った。ところがアメリカの期待と要求はあまりにも過大であった。アメリカは三十数万の兵力量を要求しておった。現に七日の予算委員会の席上においてあなたは答弁したじゃないか、そればどうなんです。だれが言ったのですか。
  157. 重光葵

    重光国務大臣 私はそうは申しません。そんなことは申しません。私はこう申しました。アメリカ側の軍部の方にはそういうような要請をしておる方面もあるのだ、こういうことは申しました。それはその通りであります。しかしながら、アメリカ政府がどれだけの兵隊を日本は作れと要求した、そういうことは一度も申しません。
  158. 赤松勇

    ○赤松委員 あなたはアメリカの軍部とはおっしゃいませんでした。アメリカ側の要求があまりにも過大であったために、そのときに三十数万ということをおっしゃった。しからば三十数万というのは、アメリカの国防省なら国防省のだれがそういう要求をしておったのですか、はっきりして下さい。どこからその意向が表明されたのですか。
  159. 重光葵

    重光国務大臣 それはアメリカの軍に属しておる人でございます。そういうことは私は今記憶にございません。そういうようなことを言い、それが新聞に書かれたこともある、こういうことを申し上げたのであります。しかしそれは正式の話でも何でもないのでございます。そこまでは行きません。行かないわけは、日本側においてその計画が確定しておらぬからであります。
  160. 赤松勇

    ○赤松委員 防衛庁の試案であるこの六ヵ年計画、いわゆる十八万案が不十分であるということが会議の席上、意見の交換の結果明らかになったのでしょう、そうじやありませんか。そうだとすれば、アメリカの方から当然日本に対してこれこれの防衛力を持て、これこれの軍事力を持てという要求があったに違いない。あなたは三十数万ということをこの委員会において言っておるじゃないですか。それをダレスが言おうとあるいは国防省の軍人が言おうと、とにかくアメリカの軍部であるところの国防省から意思表示がなされたということは、あなたがこの委員会で公式に言った。そこで私はさらにあなたにお尋ねしたい。その際アメリカはこの防衛力の問題に関連をしまして、新防衛条約のことについて話が出なかったかどうか、これを一つお伺いしたい。
  161. 重光葵

    重光国務大臣 私は一人ぎめでこういうものが出ただろうというふうに言われるのは心外千万で、そういうことのなかったことをはっきり申し上げているのでございます。向うから何も防衛力をこうしろという要求はございませんでした。それからまた新防衛計画ですか、防衛条約ですか、そんなものは全然話にも上らなかったということをはっきり申し上げます。
  162. 赤松勇

    ○赤松委員 河野国務大臣に一つお尋ねをしたいのでありますが、当時あなたは日本におられませんでしたので、国内の新聞記事をよく御存じないと思うのですけれども、その当時は重光さんと河野さんとそれから岸幹事長、この間にいろいろなごたごたが起って、ずいぶん醜態を演じたということが報道されておりましたが、しかし私はあなたの勢力を十分買っております。それであなたは会談に御出席なさってどのような発言をされたのでございますか。今あなたの来られないときに、総理にどういう資格で行ったのだ、こう言いましたら、その資格の問題につきましては、あまり明瞭ではなかったのでございますが、主として余剰農産物の問題でお行きになったようなことを今ちょっとお伺いしたのでございますけれども、この会議に列席されておったことは、日本の各新聞が報道している通り。そこでこの会議に御出席なさってどのような発言をされたか、おそらく河野一郎ともあろうものがこの席上に出て、借りてきたネコのように一音半句も発言をされないというようなことは、私は万々ないと思います。私はあなたの勢力を高く買っております必ずこの席上において重光外務大臣の行き過ぎやあるいは後退、憶病さを鞭撻しながら、大いに発言されたに違いないと思うのでありますが、この三日間の会議に三日とも御出席されたかどうか、また出席されてどのような発言をされたのであるか、これを一つお伺いしたいと思います。この機会を私は河野さんに与える。この際河野さんは、私はアメリカに行ってかくかくの一成果を上げてきたということを、本国会を通じまして広く国民の前に明らかにしていただきたい。この機会は二度とありませんぞ。
  163. 河野一郎

    河野国務大臣 私は末席を汚しまして三日間出席いたしましたが、終始一言も私が意見を述べる必要はありませんでしたので、拝聴いたしておりました。   〔「期待に反したな」と呼ぶ者あり〕
  164. 赤松勇

    ○赤松委員 期待には反しません。日本の新聞では外務大臣河野さんに発言の機会をば与えようとはしなかったというように報道されておりますが、しかし私はさようなことは信じません。この会議河野さんは何のために御出席されたのですか。一言も発言をされていないというのでございますけれども、一体何のために御出席なさったのですか。また岸幹事長も当然この会議に出席をされていると思いますが、岸さんもやはり一音も御発言がなかったのでございますか。河野さんいかがですか。
  165. 河野一郎

    河野国務大臣 岸幹事長の点につきましては外務大臣からお答えがあるかと存じます。私自分のことについては私がお答え申し上げるが、私はその会議に出席をして、外務大臣の日米交渉に対していろいろ御注意を申し上げ、もしも意見を述べる必要があれば述べるということで出たわけでございます。従いまして外務大臣をお助けし、御援助申し上げるつもりで出席いたしました。
  166. 赤松勇

    ○赤松委員 よく外務大臣をば助けてやっていただきましてどうも大へん恐縮です。そこであなたにもう一度お尋ねしたいのでございますが・あなたばこの会談の成果をどのように考えでございますか。余剰農産物の問題はそこではやっておりませんから、この会談の成果——安全保障条約改訂ということと、日本の十八万案という防衛庁の試案をば持っていかれたのでございますけれども、この会談の成果についてどのようにお考えでございましょう。
  167. 河野一郎

    河野国務大臣 成果は共同声明にあります通りに、日米の友好関係が非常によろしゅうございまして、私はアメリカを訪問する以前と、この会談を通じて滞米中に日米関係が非常によくいっておるということにむしろ驚いたくらいであります。
  168. 赤松勇

    ○赤松委員 そこでもう一度あなたにお尋ねをしたいのでございますけれども、その日米共同声明の中にあります西太平洋諸国の安全に寄与する——その前に外務大臣にちょっとお尋ねいたしますが、西太平洋というのは一体どこをさすのですか。
  169. 重光葵

    重光国務大臣 私の了解しておるところでは、西部の太平洋のことを言うと思います。(笑声)
  170. 赤松勇

    ○赤松委員 西部の太平洋とは一体どこであるか、私はよく知りません。一つこの際教えていただきたいと思いますが。どこでございますか。
  171. 重光葵

    重光国務大臣 太平洋の西部と心得ます。
  172. 赤松勇

    ○赤松委員 重ねてお尋ねをいたしますが、これは外交文書の中にちゃんと書いてある。ですから非常に重要なのです。あなたはこれを説明する義務がある。西太平洋とはどこですか、再度質問いたします。(「地図で示せ」と呼ぶ者あり)あなたはこれを説明する義務があるのですよ。外交文書の中にちゃんと書いてある。日米共同声明の中に……。
  173. 重光葵

    重光国務大臣 私は今説明を申し上げました。太平洋の東、中、西とこう大体分けて、西部の方、こういうことになるわけでありす。
  174. 赤松勇

    ○赤松委員 この際その日米共同声明の中でいわれておるところの西太平洋諸国とはいかなるものであるか。これの外務大臣の明確なる、一国々々をあげての御説明を私は要求します。
  175. 重光葵

    重光国務大臣 これは各国に分けることはできぬと思います。太平洋の西、西部の方面の地域に対する平和安全の責任、こういうことになります。それだからそれはどこの国とどこの国というように、一々国で分けるというわけには参りません。その地域であります。これは大体国際間の常識でそうなっております。中近東といっても同じ意味であります。
  176. 赤松勇

    ○赤松委員 西太平洋諸国の安全に寄与せねばならぬ義務が課せられました以上は、われわれとして西太平洋諸国がどことどこであるかということが明らかにならなければならぬと存じます。そこで私はこれを強く委員長に要求いたします。これが明らかになり歩せんと、次の質問を進めるわけには参りません。重ねて答弁を要求いたします。
  177. 重光葵

    重光国務大臣 今申し上げた通りであります。西太平洋地区における諸国のことを言っております。   〔「地図で説明せよ」と呼び、その他発言する者多し〕
  178. 三浦一雄

    ○三浦委員長 今澄勇君。
  179. 今澄勇

    今澄委員 ただいまの赤松委員質問に対する外務大臣答弁は非常に重大であります。われわれもこの問題は明らかにすべき必要があるので、この際暫時休憩をして、一度一つこの問題について十分なる検討を加えたい。休憩の動議を提出いたします。
  180. 三浦一雄

    ○三浦委員長 委員長より申し上げますが、外務大臣より御説明がございますでしょうか。
  181. 重光葵

    重光国務大臣 私は今十分に説明をいたしました。西太平洋地域における、西部太平洋における地域、これはもう当然外交上、国際的に常識でもってわかる文句であります。
  182. 赤松勇

    ○赤松委員 日米安全保障条約によれば、これは日本の国内の安全保障のために条約を結ばれておる。日米共同声明は、この安全保障条約の性格をば変えるものです。飛躍的に拡大したものだ。いわゆる防衛の範囲、義務というものが拡大されている。日本国民にとってはここから海外派兵という問題が出てくる。西太平洋諸国と、この日米間の外交文書にうたわれております西太平洋諸国とは、一体いかなる国々を包括するものであるか、これが明確になりませんというと、次の質問を進めるわけには参りません。重ねて答弁を要求する。
  183. 重光葵

    重光国務大臣 これは安保条約の問題とは関係はございません。西太平洋における平和に貢献しよう、平和安全に貢献しようというのは、これは日本の西太平洋に置かれた地理的地位から、私は当外そうならなければならなぬ、こう思います。   〔今澄勇君「委員長今の動議はどうした」と呼ぶ〕
  184. 三浦一雄

    ○三浦委員長 このままで理事会を開きます。——外務大臣、今の答弁を要求されておられるのですが……。
  185. 重光葵

    重光国務大臣 私の西太平洋という表現に対する御答弁は、先ほど申しました通りを繰り返すよりほかにしょうがございません。太平洋の西の方の区域、これについて条約等の明文にこれを入れる場合においては、西太平洋地域といって一々国の名前をあげる場合が普通でございます。これは西太平洋地域と、大よそなところでいっておるのでありまして、それで目的を十分達するのであります。だからこの地理的名称を使ったわけであります。西の方の太平洋こういうことです。
  186. 赤松勇

    ○赤松委員 非常に不満でございますが、これは私から正式にこのいわゆる西太平洋諸国とはいかなる国々をなすのか、この点につきまして、もし明確でないならば、米国側と十分打ち合せ、検討されまして、本委員会に報告をしていただきたい、こう思います。  そこで続いて外務大臣にお尋ねをいたしますが、西太平洋諸国という中には、むろん台湾も一入っておりましょうか。外務大臣、いかがですか。
  187. 重光葵

    重光国務大臣 この共同声明には、西太平洋諸国とはありません。西太平洋における国際の平和、こうなっております。西太平洋方面でございます。むろん日本も台湾も西太平洋方面にあります。
  188. 今澄勇

    今澄委員 先ほど、赤松議員質問に対する外務大臣答弁はまことにずさんきわまるもので、こういう重大な問題については明確に御答弁が願いたいという趣旨で動議を提出いたしました。今外務大臣から答弁がありましたが、私はこの質問に対してはあとで外務大臣は文書によってこの予算委員会に報告をするということで、先ほど動議を撤回いたします。
  189. 三浦一雄

    ○三浦委員長 先ほどの動議ば撤回されましたから、質疑を継続します。赤松勇君。
  190. 赤松勇

    ○赤松委員 さらに外務大臣にお尋ねいたしますが、もし台湾の安全が脅威にさらされるという場合におきましては、その共同声明でいう安全に寄与するというところの手段は、どのようなことになるでございましょうか。
  191. 重光葵

    重光国務大臣 さような国際上の危機が生ずる場合においては、日本はその危機を解消するようにいろいろ努力をすることが、そういうことになると思います。
  192. 赤松勇

    ○赤松委員 これはただいま条約として出ておりませんで、いわゆる共同声明でございますから、台湾の安全が脅威にさらされた場合、直ちに日本が海外派兵をしなければならぬというような義務は、私も今のところないと思う。ただしこの共同声明の意図するものは、太平洋地域における国々が、その安全が脅威にさらされた場合、それを相互に防衛し合うというところのいわゆる太平洋相互防衛条約、そういうものを作るということを前提とした共同声明でございましょうか、いかがでございましようか。
  193. 重光葵

    重光国務大臣 それはそうでは、ございません。今日の防衛の見地から申しますれば、先ほど申した通り日本の防衛ということは不十分であるという見地に立っております。だから安保条約も行政協定もできております。日本の防衛を強化して充実するということ、これすなわち西太平洋方面の平和に寄与するゆえんでございます。従いまして、たとえば台湾と日本との間に相互に兵力をもって助け合うというようなことは、これは全然新たなことでございます。そこでこの共同声明というものは、そういうところまで予見する必要もないし、また問題も起きてきておらなかったのでありますから、問題は日本の防衛ということに話が集中しておったのでございます。
  194. 赤松勇

    ○赤松委員 この問題についてさらに私は追及したいのでございますけれども、外務大臣は三時にどうしても渉外関係のことがあるのでという理事会の決定でございますから、これを尊重いたしまして、わずかな時間でございますけれども、さらにもう一点外務大臣にお尋ねしておきたいことがある。それは私ば五月七日の本予算委員会におきまして、防衛分担金中、交付金の問題につきまして言及しております。当時私はこういう質問をいたしました。「いわゆる防衛支出金は、日米行政協定議事録によって、毎年十一月十日に、米軍から日本政府に対して次年度の所要経費の見積りが指示される。日本政府はこれを予算に計上して、第四・四期の初め十日以内に米軍が要求した所要額を支出する。」この支出をいたしました交付金につきましては、日米行政協定によりまして、必ず事後通知をしなければならぬ、こういうことになっている。そこで、特にこれは総理も聞いておいていただきたいのでございますけれども、一つ驚くべき事実をば明らかにして、国民とともにこの問題につきまして深い関心と検討をしなければならぬ、こう考えております。と申しますのは、行政協定によりまして、この交付金の使途の結果について必ず日本政府に報告をしなければならぬ。ところがただいま、米軍から事後通知されて参りました領収書その他、これは出たものもありますし、出さないものもある。出されたものは政府の倉庫の中に積まれている。そしてどういうことになっているかといえば、これは大蔵省の所管に属するのでありますけれども、大蔵省は、この莫大な交付金の使途の事後通知につきまして、領収書等を処理することが非常に困難であるという理由のもとにこれを調達庁に依頼して、そして調達庁も手不足であるからいやだというのを、大蔵省はこれを無理に調達庁にゆだね、このため調達庁においてはただいまアルバイト学生二名を使って、——二百名ではありませんよ。二名を使って翻訳及び処理をさしておるという事実がある。私はこれについて確固たる証拠を持っている。安全保障条約、及び行政協定締結以来、毎年五百七十億に上る莫大なる防衛分担金を負担してきた。たとえばこれを児童の給食費に回すとどのくらいになるか、私はちょっとそれを勘定したのでございますけれども、一年分をこれに充当さすというと、二千三百二十五万の児童の給食が無料でできるのだ。また住宅は十一万一千六百戸建つ。国民は血の出るような金で毎年々々防衛分担金を背負ってきた。この防衛分担金中の交付金をアメリカがどのように使っておるかということがよくわからない。その事後通知のあった分は政府の倉庫の中に積まれておる。アルバイトの学生二人が、これが翻訳、処理に当っておるという事実をば、鳩山内閣総理大臣はどう考えるか。かようなことが国民の前に明らかになってみなさい。防衛分担金を積極的に負担しようというような気持が起きるか。税金を出そうというような気持が起きるか。これは重大なることです。この点について鳩山総理大臣の御所見を私はお伺いしたいと思うのです。——よく相談してみなさい。そういう事実があるのかないのか、ないとは言わせませんぞ。
  195. 鳩山一郎

    ○鳩山国務大臣 私は知りませんので、大蔵大臣から答弁をしてもらいます。
  196. 一萬田尚登

    ○一萬田国務大臣 この分担金の米軍の使途については、あとでその使途の報告を受けて、これを大蔵省としては整理をいたしまして国会にも御報舌を申し上げたことがあるのであります。なお今、調達庁のアルバイトがどうというお話がありましたが、これは調達庁長官がおられますから、調達庁長官から答弁してもらいます。
  197. 福島慎太郎

    ○福島政府委員 防衛分担金の報告が大蔵省に参ることは事実でありますが、防衛分担金の日本側から交付いたしました資金によって、役務として提供しております労務の費用がまかなわれておる面が多分にございます。これが一番分量も多くなりますので、私どもの方で後日調べておるわけであります。それを総務部調査課が担当して調べておる。調査課長、総務部長が責任を持って調べておるわけです。たまたま調査課に——調査課はほかの仕事もいたしております。アルバイトの学生その他も便っておるかもしれませんが、調達庁の調査課、総務部もしくは調達庁の責任において調査をしておるわけであります。
  198. 赤松勇

    ○赤松委員 こういう状態でございますから、総理大臣もぜひ国民の血の出るような税金でございますから一つ十分御監督をしていただきたい。  この際私は会計検査院にお尋ねするけれども、会計検査院はこの事後通知の米軍の領収書その他についてこれをば検査した事実があるかないか、これを一つ明らかにしてもらいたい。
  199. 加藤進

    加藤会計検査院検査官 お答え申し上げます。会計検査院の権限の上から申しまして、米軍に交付する分につきましては、条約に基いて取りきめた金をその通り大蔵省が支払っておるかどうか、そこだけの検査にとどまります。事後それがどう使われたかは、会計検査院は現在の院法におきましては権限がございませんので、報告は受けておりますけれども、その内容は検査いたしておりません。
  200. 赤松勇

    ○赤松委員 五月の予算委員会における私の質問に対しましては、米軍の同意を得ればこの検査をすることができるという大蔵大臣の答弁であった。その際私は重ねて会計検査院をして政府は十分この検査をば行わしめ、その結果を国会に報告してもらいたいということを強く注文しておきました。ところが今の会計検査院の報告を聞きますというと、ほとんどそれに対して検査が行われていない。まことに遺憾千万でございます。この点につきましては重ねて私は政府要望いたしますが、むろん私ども防衛分担金の支出に対しては反対なんです。しかし反対であるといなとにかかわらず、これは国民の血の出るような税金でございますから、十分に一つ監視監督をされるよう、またその結果につきましては国会に報告されますよう強く要望しておきます。  次に、おそらくきょう正午関係閣僚間で話し合いが行われたと思うのでございますが、防衛分担金の問題でございます。  そこで大蔵大臣にお尋ねいたしますが、防衛分担金の削減につきましては、防衛計画とは別に、防衛分担金の分だけを純粋に切り離して削減してもらうようにアメリカ側と交渉をする、こういうお考えでございましょうか、いかがでしょうか。
  201. 一萬田尚登

    ○一萬田国務大臣 防衛分担金の交渉については、まだ始めておらないのでありますが、どういう形で交渉するか、今関係の者と相談をいたす考えを持っております。
  202. 赤松勇

    ○赤松委員 大蔵大臣は防衛計画とは切り離して交渉すべきであるということを主張されておる。ところが外務大臣及び防衛庁長官は、それではアメリカが許さぬ、いわゆる長期防衛計画を作って、そうしてそれを提示しながら防衛分担金の削減交渉をば行うべきである、こういうことを主張されておるとわれわれは聞いております。これは事実でございますか。
  203. 一萬田尚登

    ○一萬田国務大臣 それは若干の誤解といいますか違いがあります。私が考えておるのは、防衛についても計画があるのはいいでしょうが、しかし財務当局として今後の日本の財政を考えます場合に、戦後の始末において内外ともに出費が多いのであります。従いまして膨大な計画を立てられるということについては、私はなかなか賛成しがたい。要するに計画の内容いかんによる。こういうことを話している程度のもので、どういうものにするとか、どうするとか、そういう具体的なことに立ち至って賛否を言っているわけではない。私は原則的な点を一応申しておる、こういうことであります。
  204. 赤松勇

    ○赤松委員 外務大臣にお尋ねいたしますが、防衛分担金の削減の交渉について、別に防衛計画は必要ではございませんね。それはお認めになりますね。ただ防衛分担金の削減だけ交渉すればいい、いかがでしょう。
  205. 重光葵

    重光国務大臣 防衛分担金の条約上の規定は、日本の防衛力の漸増ということに伴っておることは御承知の通りであります。しかしながら、どういう計画を持っておるかという詳細な計画が出なければ、これの交渉ができない。こういう問題でもないのでございます。しかし、日本側において十分防衛力の増強はやる、こういう方針向うに徹底すれば、よほど交渉が楽になると考えております。
  206. 赤松勇

    ○赤松委員 閣内でその点について意見の対立があるということは、おそらくあなたたちもここでさようなことは申されないと思うのでございます。そこで、私はこの際政府に二点ばかり要望しておきたいことがある。  その第一点は、岡崎外務大臣昭和二十九年四月六日に、アリソン特命全権大使に対して出されておる書簡がある。この書簡の中には、日本の防衛力が進むに従って、他方においては防衛分担金が自動的に削減される。そういう取りきめをばこの交換公文において行なっておる。それから、私はここに安保条約及び行政協定締結以来、米軍の国内駐留の変動についてデータを持っております。それによりますと、在日米軍兵力量は、朝鮮動乱発生の際は、極東皇軍が五百機、米国の第七艦隊が空母を基幹として巡洋艦、駆逐艦等十隻、在日地上軍は第七師団、第一騎兵師団、第二十五師団、第二十四師団、計四個師団、現在は御承知のように次第にアメリカの陸軍は撤退をしている。おそらく来年の六月までには、第一騎兵師団が三分の一、また第三海兵連隊が日本より撤退をする、こういうことになっております。そういたしますと、行政協定締結当時の事情とは、だいぶ変ってきている。在日アメリカ駐留軍が大幅に減っている。陸軍はほとんど撤退にひとしいほど減っている。しかも防衛庁の予算はどうかといえば、やはり私はここにデータを持っておりますけれども、年々ふえてきている。昨年はアリソンは九百億予算をくれと鳩山内閣に要求し、みなさんの努力で、これは八百億程度に押えて、そこで妥協したわけですけれども、いずれにしても、防衛庁の予算はふえてきている。それから、アメリカの駐留兵は減りつつある。しかるに、行政協定でいうところの一億五千五百万ドルというのは、依然として据え置きなんです。そして、毎年々々バッタのように頭を下げて、鳩山総理や、外務大臣や、大蔵大臣ば、アメリカに対して何とか削減していただきたい、何とか負けていただきたい。六ヵ年計画、あんなものを持っていってはちらちら見せながら、何とか一つお願いしたいと言っている。その態度は何ですか。削減を要求することは当然じゃありませんか。従って、安保条約を改訂しなければならぬ理由はここにもある。そこで私は政府に基本的なアメリカとの交渉態度をば、この際国民にかわって聞いておきたい。そういう軟弱な態度で、まるでアメリカの属国のような、あるいはアメリカの植民地のような、そんな態度で折衝される理由は一体どこにあるか。もし条約や協定がものをいうならば、その条約や協定の精神に従って、当然削減するのがアメリカ責任じゃないか、義務じゃないか。なぜあなたたちはこれを強く押さない。しかも本年の四月に出された日米共同声明によれば、何だ。今度は鳩山内閣が選挙で公約して、あのように頼んできたから、特別な事情でやむを得ないから、若干負けてやろう。百八十億でしたね。しかし来年からはいかぬぞ、来年からはだめだぞ、こう言っている。そうすると、いよいよ予算の編成期になってきた。鳩山内閣がどんなに申しても、アメリカが安保条約によって要求する、あるいは新たなる極東の事態が要求するところの日本に対する再軍備の要求と防衛分担金を考慮に入れなければ、予算の編成はできない。船田防衛庁長官がおられますけれども、あなたの方の一課長は、金融財政事情というところにどういうことを書いている。日本国民所得は、これ以上再軍備費を負担することはだめなんだ、限界にきている。この上は防衛分担金を削減して、それを防衛庁予算に回してもらう以外にない、こう言っている。国民所得は、国民の負担力は、もう限界にきている。かようなときに当って、昭和三十一年度の予算編成の基本的な方針をどこに求めていくか。それは中小企業の税金をひねり回したり、弱い勤労者の勤労所得税をひねり回すことじゃない。アメリカの再軍備の要求を押え、国民の負担力に見合うところの——一方にておいてま防衛分担金を削減して、国民生活を少しでも軽くしてやる。減税その他の措置を講じてやる。これが鳩山さんの言ういわゆる友愛精神であり、友愛の政治でなければならぬ。政府は今日正午に集まって——集まったのは大蔵大臣と外務大臣と防衛庁長官だ。防衛庁長官はどこを防衛しようとしている。日本国民生活を防衛しなければならぬ。それなのに、きょうあたり集まってまだこそこそやっている。今私が質問したら、まだ政府の方は防衛分担金削減交渉方式についてはきまっておりませんと言う。何たることだ。ばかばかしくて話にならぬ。もう事態はここまできている。防衛庁の一会計課長がそう言っている。どうにもならぬ。鳩山さんは、一面においてはアメリカの、要求する再軍備を押えて、他面においては防衛分担金をば削減し、もって国民生活を引き上げていく、こういう方法をとるかとらないかこの際明確にこの国会を通じて国民の前に明らかにしていただきたいと思います。
  207. 鳩山一郎

    ○鳩山国務大臣 御趣旨はごもっともだと思います。努力をいたします。
  208. 赤松勇

    ○赤松委員 農林大臣、用がありますか。−それでは一点だけ先にあなたに聞いておきます。それは予算局の問題ですけれども、この問題につきましては日本社会党は賛成です。社会党は早くから、このことを早くやれといってきた。一大蔵大臣に財布を預けておくのではなく、内閣全体の責任において予算局を作って、そこで国の総合政策に必要な財政計画をば立てろ、予算編成をばやれ、こういうことを今まで強く主張して参りました、幸いこのたび河野国務大臣がこれに手をつけようとしておられる、まことに私、心から敬意を表します。そこであなたはこの予算局の問題について、必ず次の通常国会にその法案をお出しになるかお出しにならないか、この点を一つ明確にしておいていただきたい。
  209. 河野一郎

    河野国務大臣 お答えいたします。行政機構を改革いたします問題につきましては、全般的に鋭意検討を加えまして、各方面の御意見も十分尊重いたしまして、ぜひ通常国会に案を持って臨みたいということにいたして、せっかく準備中でございます。
  210. 赤松勇

    ○赤松委員 船田長官にお尋ねいたします。あなたはこの間のこの委員会で、郷土防衛隊を作るということをおっしゃいましたが、その郷土防衛隊なるものの構想を一つこの際明らかにしていただきたいと思います。
  211. 船田中

    ○船田国務大臣 郷土防衛隊というのは、われわれの考えておるところによりますと、第一線部隊が出動したような場合において後方の治安を守る、そういう任務を負わせたようなものにしたい、かように考えておる次第でございます。
  212. 赤松勇

    ○赤松委員 郷土防衛隊というのは、いついかなる条件のもとにおいて出動するのか、一つそれを明らかにしていただきたい、まただれがその発動権を持っておるのか。
  213. 船田中

    ○船田国務大臣 郷土防衛隊の構想については、まだ具体的な詳しい案を立てておるわけではございません。自衛官が出動したというような場合におきまして、それぞれの郷土を守るために働いてもらおう、こういうことでございます。
  214. 赤松勇

    ○赤松委員 郷土をば守らなければならぬような事態というのはどういう事態ですか、予想される事態は……。
  215. 船田中

    ○船田国務大臣 外国から不正な侵略を受けまして、自衛官が第一線で防衛に当る、こういう場合におきまして、それぞれの郷土、都道府県におきましてその郷土を守るために働いてもらいたい、こういうような考え方でございます。
  216. 赤松勇

    ○赤松委員 だんだん昭和十二、三年当時のように、いわゆる国家総動員的な、あるいは準軍事体制と申しますか、そういうものになりつつあるようでございます。  鳩山総理は先般オネスト・ジョンの問題につきまして、原子弾頭は持ち込まぬようアメリカと話し合いがついている、こういうことを言っておられますが、これはその通りでございますか。ついておるとすれば、どこでどのような形でおつけになっておるのか、これを一つ聞きたい。
  217. 鳩山一郎

    ○鳩山国務大臣 私が答弁したのは、外務大臣からそういうように聞いておりましたから、そのまま答弁をいたしたのであります。私自身として確信を持っていたわけではない。
  218. 赤松勇

    ○赤松委員 外務大臣いかがですか。——あなたはオネスト・ジョンの点について、原子弾頭は持ち込まぬようアメリカと話し合いがついておるということを総理に報告された。そこで、あなたの報告に基いて総理は、よくわからぬのだけれども、あなたがそういう報告をしたからそうだと思って国会答弁をされておる。そこで、あなたはだれとそういう取りきめをされたか。
  219. 重光葵

    重光国務大臣 アメリカ責任者との間に……。
  220. 赤松勇

    ○赤松委員 責任者とは一体だれです。
  221. 重光葵

    重光国務大臣 責任者というのはアメリカの……。
  222. 赤松勇

    ○赤松委員 何の責任者ですか。
  223. 重光葵

    重光国務大臣 政府責任者です。
  224. 赤松勇

    ○赤松委員 政府のだれですか。
  225. 重光葵

    重光国務大臣 政府責任者は大使です。
  226. 赤松勇

    ○赤松委員 アリソン大使ですか。
  227. 重光葵

    重光国務大臣 米国大使です。(「どういう形式で……」と呼ぶ者あり)それは、そういう場合には当然相談があることと思っております。そうしてそういう話し合いになっております。
  228. 赤松勇

    ○赤松委員 これは言うまでもなく原子砲なのです。従って、鳩山さんが前に原爆の国内貯蔵は云々というお話がございました。そして先般、小牧飛行場から原爆を積んだ飛行機が、ことしの一月二十八日台湾海峡の作戦に参加しておるというところの事実がありました。出たところは沖繩と韓国であります。そういう話を私はいたしましたけれども、このオネスト・ジョンが実際に必要な場合、実際に使われる場合、これは一体アメリカから運んでくるのですかどうですか、外務大臣。国内に置かないでアメリカから運んでくるのですか、それとも国内にちゃんと貯蔵しておくのですか、いかがですか。
  229. 重光葵

    重光国務大臣 オネスト・ジョンが普通兵器として国内に持ち込まれることは、普通の手続によって持ち込まれます。貯蔵する目的ばわれわれ日本側にはございません。
  230. 赤松勇

    ○赤松委員 わかりました。それではこういうことですね……。
  231. 三浦一雄

    ○三浦委員長 赤松君に申し上げますが、お約束の一時間半を経過いたしましたから、どうぞ簡潔に願います。
  232. 赤松勇

    ○赤松委員 日本に原子砲が持ち込まれる、その場合当然これに付随する原爆も貯蔵されるだろう、しかしそれは日本政府の及ぶところではないのだ、こういうふうに了解しておきます。  もう一点船田長官にお尋ねしたいのは、前の砂田さんがこう言っている。現在原爆戦下の部隊訓練は考えていないが、将来部隊装備がさらに充実すればやるようになるかもしれない、こういうふうに言っておる。それからまた、日本はオネスト・ジョンを一つ研究して、これをぜひ自衛隊に持たせたい、こういうことも言っておるわけなのです。あなたはこの砂田構想というものをそのまま継承なさるお考えでございますか、いかがですか。
  233. 船田中

    ○船田国務大臣 前長官考えられたことにつきましては、できるだけ踏襲をしていきたいと思いますが、ただいまの御指摘のことにつきましては、私としてまだ十分研究を積んでおりませんから、私の構想はまだきまっておりません。
  234. 赤松勇

    ○赤松委員 一点だけ倉石労働大臣にお尋ねをしておきたいと思います。まだたくさんありますが、それらは犠牲にいたします。  御承知のように国鉄労働組合はべース・アップの要求をしました。そしておそらく公労協関係は相次いでべース・アップの要求をするでしょう。大体調停の段階を経まして、仲裁裁定が出るのはちゅうど通常国会になると思います。いわゆる総評のいう春季賃上げ闘争がその時期に開始されるわけです。そこで先般年末闘争が紛糾しましたのは、かかって人事院の勧告をばいれようとしなかった、いれることを渋っておったその政府責任があると私は思うのです。今まで何度も言って参りましたが、公労協のベース・アップの闘争が来春展開される。これをどうさばくかということは、倉石労政の大きな試金石であると私は思います。そうして倉石労働大臣ならば、りっぱに一方において労働組合の要求を満たし、他面におきましてはこの紛争を避けるために、その行政的な手腕をば百パーセント発揮されるということをば確信をしたいと考えております。(笑声)そこであなたと私は労働委員会でしばしば話し合いましたが、あなたも大いにその必要を痛感されておりましたが、公労法第十六条、いわゆる資金上、予算上不可能な場合、この規定がいつも問題になりまして、公労協関係の闘争がいろいろ激化して参るのでございますが、この公労法第十六条、できれば国家公務員法第二十八条と言いたいんですけれども、担当大臣がおられぬようですから、国家公務員の方はおきましょう。この公労法の第十六条について、これを、あらためて仲裁裁定が出るならば、必ずこの仲裁裁定は実施しなければならないというところの法律の改正をばおやりになる意思があるのかないのか、これをお尋ねいたしたいと思います。
  235. 倉石忠雄

    ○倉石国務大臣 年末手当の問題については、政府は初めから渋っておったのではございませんで、人事院勧告は尊重しょうということを考えておりましたが、その財源措置について慎重に検討いたしておったというのが実情であります。  公労法につきましては、赤松さんもすでに御承知のように、これは私どもが制定いたした当時から非常に欠点の多い法律でありまして、あの法律を制定するときに、もう少し何とか実情に即した法律にしようではないかということであったのでありますが、当時は占領中で、司令部の関係もありまして、ほとんど押しつけのようにあの法律ができましたものですから、公労協の労働争議については、常に御承知のような紛争を起しております。やはり法律は改正する方がいいんじゃないかということが、経営者当局も従業員も社会一般もこれを認識しておいでになるのでありますが、私どもといたしましては、やはり法律を幾くらかでも手を加えるということについては、経営者、それから従業員それぞれと十分に話し合ってみて、そうして意見を徴した上で改正するならばしたい、こういうふうに考えておりますので、ただいま事務当局にそういう手続をとらして研究を始めておるという最中であります。
  236. 赤松勇

    ○赤松委員 一つできる限り早くあなたの構想をば発表していただきたいと思います。  私は最後に——まだたくさんありますけれども、もう時間が来ましたから、私は理事会の決定を守りまして、最後にただ一つだけ、せっかくお見えになっておりますから、石橋通産大臣にお尋ねいたしますけれども、この財政投融資の問題でございます。実は国会におきましては、この財政投融資の問題につきまして本格的な議論がいささか少いように思うんです。社会党としましては、昭和三十一年度の予算が編成され、これが国会に出て参りまするならば、当然三十一年度の予算を中心に財政投融資の本来のあり方について一つ根本的な論戦を内閣との間に展開をしたい、こう考えておりまするが、この際石橋さんとそれから大蔵大臣にお尋ねをし、また高碕さんにも、せっかく御出席になっておりますから、一つあなたからも御答弁いただきたいと思うのでありますが、これは、財政投融資というものは本来補完的なものであるか、それとも民間投融資にかわるものであるのかどうか、これを一つ明らかにしていただきたい、こう思うのです。まず大蔵大臣からお願いしたい。
  237. 一萬田尚登

    ○一萬田国務大臣 財政投融資は補完的なものかどうかということは、これは一がいに言えないので、そのときの国の状態に応じまして、あるときは財政投融資が主力になり、民間の投融資がついていく、これはそのときの状態によって判断するわけであります。
  238. 石橋湛山

    ○石橋国務大臣 ただいまの問題は、大蔵大臣の答弁で尽きておると思います。
  239. 赤松勇

    ○赤松委員 それじゃ高碕さんも同じお考えだと了承してよろしゅうございますか。——それじゃそうしておきましよう。  そこで続いてお尋ねいたしまするが、これは、私は社会党の社会主義経済ならば別でございますけれども、今の資本主義経済のもとにおきましては、ぜひ政府として根本的に考えていただかなければならぬ問題だと思うのです。言うまでもなく私どもの場合でございますと、いわゆる産業の社会化、重要産業の国有、国営化等が行われまして、そこに重点的な財政投融資が行われるわけでありますけれども、現在の資本主義の、しかも矛盾が激化いたしました現段階における財政投融資というものは、私は非常にこれはむずかしいと思うのです。財政投融資そのものがむずかしいのではなくて、経済の基盤が動揺しております。従いまして、この点につきまして、絶えずやはり閣内でも経企長官の立場、大蔵大臣の立場、あるいは通産大臣の立場からいろいろ問題が出てくると思うのです。それは根底が動揺しておるのです。社会主義経済のように一つの一貫性を持っていないわけです。だから、この点は御同情申し上げるわけでありますけれども、さてここで問題になりますることは、今の一兆円予算を基準にして財政投融資をばこのままずっと行なっていく、そうなりますと、どうしても勤労所得税、あるいは中小企業の減税をやりたいと思いましても、それは不可能になってくるのです。それはやはり勤労大衆や中小企業に対する重税、いわゆる大衆収奪の形をとりまして、ここに無理なデフレ的な均衡予算というものが作られる。ところが一方におきまして、石橋さんが御主張なさいますように、拡大均衡の方に持っていこうといたしまするならば、大衆収奪には限度があるのです。担税能力に限度がある、従ってこれを公債発行等に求めるということになって参りますると、一兆円のそれが破れて参りまして、ここにインフレ的な要素を含んだ拡大均衡というものが生れてくる。そこで昭和三十一年度の予算の中における財政投融資の、日本資本主義が当面する現段階における昭和三十一年度の財政投融資の重点的な割り振りはいかにあるべきかということにつきまして、この際公債を発行すべしと御主張なさっております。一つの見識を持っておられまする石橋さん、あるいは一兆円の予算を堅持してあくまで大衆収奪の上に、減税を避けながらこの均衡予算をば堅持していこうという一萬田大蔵大臣、いろいろと閣内には一つの見識を持った御意見が多々存在しておることを十分承知しておりますが、この来年度予算の編成についてどのようにお考えになっておるか、それぞれの所管の立場から一つりっぱな御意見をば承わりたい、こう思います。
  240. 高碕達之助

    ○高碕国務大臣 これは長期計画と関係がありますから、私便宜お答えいたします。財政投融資につきましては、現に本年の、こときも、大体輸出産業あるいは基本産業というものと同時に社会政策を加味いたしまして、住宅公団とか、あるいに農林漁業公庫とか、あるいは中小公庫、この方面にできるだけたくさん金を回したのでありますが、今日の現状におきましては、輸出産業も相当よくなってき、あるいは民間の資本も相当増加して参りましたから、財政投融資方面も、この基幹産業の方におきましては、約百六十億円をさいてこれを民間の投融資に回す、こういう方針でございますから、来年度及び今後の方針等におきましても、そのときの情勢に応じて国家の一番必要な方面に、また金利負担の困る方面においてできるだけこれを強くし、同時に社会保障、あるいは失業対策というふうなことから考えまして、中小工業あるいは農林漁業等にできるだけの金を回していきたい。これが根本方針でございます。
  241. 一萬田尚登

    ○一萬田国務大臣 今長官が話したところで尽きておると思います。
  242. 石橋湛山

    ○石橋国務大臣 今の御質問に対する正面からのお答えは両大臣の答弁で尽きております。これは、社会主義も資本主義も資金の調達問題は同じなのです。ソ連であっても急激に拡張をやろうとすればインフレになる。インフレになれば、インフレというものはやはり大衆の収奪になるのです。だから大衆の収奪にならないように、インフレを起さない限度においていかに拡大政策をとるかというのが財政経済の課題でありまして、これは社会主義のあなた方がやりましても、われわれがやりましても同じなのです。少しも違いがない。
  243. 赤松勇

    ○赤松委員 全然議論にはなりません。この問題につきましては、本格的な論戦は来年度予算を中心として、一つわが党の精鋭をすぐって財政経済問題を中心に大いに鳩山内閣と対決をしたい、こう考えております。私の質問はこれで終りたいと思います。(拍手)
  244. 三浦一雄

    ○三浦委員長 田中君。田中君、どうぞ簡潔にお願いいたします。
  245. 田中稔男

    田中(稔)委員 二間ほど鳩山総理大臣にお尋ねいたします。  政府日ソ交渉をやっておりますが、国民はその早期妥結を希望しております。しかしながら国民としては、ソ連との国交回復とともに中国との国交回復を熱望しておると思う。歴史的にも関係が深いし、地理的にはいわゆる一衣帯水の間にある中国と早く国交回復したいというのは、これは国民の自然の感情であります。ところがけさほどから外務大臣にいろいろお尋ねしておりますけれども、中国との国交回復について何らの手を打とうというお考えもないようであります。実はそういう政府のありさまでありますために、民間の有志が続々と中国に出かけて、中国政府当局といろいろ話をしているわけです。この間片山元首相の一行が中国に参りまして、これは大へん歓迎で、アトリー首相以来の大歓迎だったそうでありますが、片山元首相は周恩来、毛沢東などともよく話した。そうしてそれらの会談の結果に基いて共同コミュニケを発表したことは御承知の通りであります。その内容は、両国が平和的に共存し、国際紛争は、武力によらず話し合いによって解決すること、また相互に国家主権を尊重しお互いに侵略せず、お互いに内政に干渉せず極東の平和と安全に寄与すること、こういう趣旨であります。この片山元首相が発表いたしました中国側との会談に基く共同コミュニケ、この内容につきまして鳩山総理はどういうふうにお考えになりますか、御答弁願いたいと思います。
  246. 鳩山一郎

    ○鳩山国務大臣 田中君も御承知の通りに、中共との国際関係正常化するそういう範疇の中には中共承認というような問題も入ってくると思うのでありますが、これは国際上の義務の関係上、承認は今日はちょっといたしかねると思います。しかしながらソ連と同様に中共とはとにかく戦争状態終結未確定の事態にあるのでありますから、戦争状態終結確定の事態に持っていくのにはいろいろのことを考えるがいいと思います。そのためには片山君の言われた趣旨などもけっこうなことでありますが、承認してない国と日本とは条約を結ぶというわけにも参るまいと思うのです。でありますから、私は中共とは貿易でも増進してそうしてできるだけ戦争状態を終結しているという事態を作り上げていくということ以外には中共との国交正常化する道はないと考えております。それから片山君の言われた趣旨は全く適当ではあるけれども、条約を結ぶという段階には日本は今まだなっていない、そういうふうに考えます。
  247. 田中稔男

    田中(稔)委員 今の御答弁によりますと、共同コミュニケの内容を首相はよろしいと、こういうふうにお考えになった。片山元首相の努力を多とされたと思うのであります。ただ直ちにこれが条約を結ぶ、そういうことにはならないのでありますが、そういうふうな努力をだんだん積み重ねていく、いわば国交回復のためにいろいろの手を打っていくということに御賛成のようであります。この点においては重光外相よりもはるかにりっぱなお考えである。一つそのお考えで今後内閣を指導していただきたい。  次にもう一問お尋ねいたしたいのは、今夏田中織之進、松本七郎両君がやはり中国に参りました際に、周総理から言ずてがありました。帰って鳩山首相に会ってぜひ一つ首相の代理を中国に派遣していただいて、その代理と中国日本との国交回復の問題について深く懇談したい、このことをぜひ鳩山首相に伝えてもらいたい、こういう言ずてが両君にあったのであります。その後訪ソ議員団の団長であります北村徳太郎、野溝勝この両君に対しましても同様の伝言がありまして、この伝言は首相のもとに届いておると思います。今日毛首席とか周総理はこれは中国では大へんな人であります。こういう人が日本から参ります議員団その他と長時間にわたってほんとうにひざを交えて話し合った。これは大へんなことだと思う。国と国との交際におきましては、大国といたどもおそれず、小国といえどもあなどらずという態度が私は必要だと思いますが、中華人民共和国は今日実に堂々たる大国であります。この大国の総理がいたしましたこの伝言というものは、これは私は軽視することはできないと思う。これに対して一顧だに与えないということは私は非礼だと思う。私はぜひ一つ首相の代理を周総理要望にこたえて北京に送っていただきたいと思う。もしまた幸いに首相の御健康が許しますならば、これは首相みずから行っていただきたい。それはアメリカにおいでになるのも私はけっこうだと思います。アメリカにおいでになると同時に中国にも行っていただいてそうして、日本中国との国交アジア百年の大計についていろいろ御懇談いただくことがけっこうじゃないか、とりあえず御健康の関係もありましょうからまず代理を一つ御派遣になってしかるべきだと思うのでありますが、どういう御返事をなさったのか、御返事をまだなさっておられないならば、一体どういう御返事をなさるお考えか、一つお尋ねいたします。
  248. 鳩山一郎

    ○鳩山国務大臣 その返事が非常にむずかしいのです。それは中共に行きまして国際関係を緊密にしたいことはもとより当然のことでありますけれども、とにかく中共を認めていないという国際上の義務があるものですから、表面に日本を代表して中共交渉するということはむずかしいのです。それだものですから、何とかしてこれにかわってそうして中共承認したという形にならないで中共国交を緊密にする工夫はないか、これはちょっと考うべき問題だと私は思うております。そういう次第であります。どうか御了承願いたい。
  249. 田中稔男

    田中(稔)委員 今の総理の御苦哀のほど、いろい心中御工夫をなさっておること、これはよくわかります。大体私も推察しておりますが、どうぞ一ついい知恵を出して何か具体的な行動をとってもらいたい。
  250. 三浦一雄

    ○三浦委員長 川上貫一君。
  251. 川上貫一

    ○川上委員 私は総理大臣に御質問をいたしたいのでありますが、先日のこの委員会で社会党の水谷長三郎君から大へん道理にかなうた質問があったと思う。その中でも特に水谷君はこういう質問をしておる。万々一壁に突き当ったときには、どうなさるつもりであるか、こういうことを尋ねました。それに対して総理は、それは今答弁ができぬ、こういう意味のことを答えておられると思うのです。そうすると、この御答弁は、万々一の場合には決裂ということもあり得るということを言外に含ませた御答弁だと思うのでありますが、そういう点についてはどうなんであろうか、お聞きしたいのです。
  252. 鳩山一郎

    ○鳩山国務大臣 私は日ソの交渉が決裂になるだろうということを予測して答弁をしたことはありません。私は日ソの交渉は成り立つものと現在心中で思っているのです。決裂するだろうとは考えていないのです。
  253. 川上貫一

    ○川上委員 そういう答弁を総理はしておられるのでありますが、私はそれに非常に疑問があるほんとうに総理はそう考えおるのかどうか。すでに六月以来長い交渉の結果、松本全権はロンドンでこういうことを言うておる。すべての論議は出尽してしまった、あとは日本の能一度だけだ、こう言うておるのであります。また全権は帰国されたときに、ソビエトの態度はもうはつきりしておる、再交渉の余地はない、慎重論はいわば決裂論である、これ以上ねばるのなら交渉をやめた方がよいと、ここまで言うておるのです。これは一体どういうことなんですか。事態は非常に明らかなんじゃないか。しかも松本全権が帰られてからあとで事態の変化一つもないと思う。こういうことがあるから、私は、水谷君が万々一の場合ばどうなさるのかという質問をしたんだと思う。それに対して総理は、今答弁なさったようなことではなくて、それはわからぬということを答弁しておられる。私はもう一ぺん総理にお聞きいたしますが、これから交渉をねばって、こちらの要求を持ち出して、それがほんまに通るんだと思うておられますか。この点をお聞きしたい。
  254. 鳩山一郎

    ○鳩山国務大臣 私は、先刻申しましたように、決裂以外に道はないとは思っていないのであります。できるだけ日本の主張を主張して、そうして努力すべき事態であると思っております。
  255. 川上貫一

    ○川上委員 決裂以外に道がないかどうかと聞いておるのではなくて、決裂する場合もあり得るという含みで答弁をなさったのではないか、こう聞いているのです。
  256. 鳩山一郎

    ○鳩山国務大臣 決裂しないように努力したいと思っております。
  257. 川上貫一

    ○川上委員 総理大臣の答弁は、実は内心は非常に困っておられて答弁をしておられるのじゃないかと思う。松本全権がそう言うただけではない。現にソビエトを訪問した国会議員団がある、これの中には自由民主党の方々も加わっておられる。北村徳太郎氏が団長であったと思うが、そのときに、ブルガーニン首相と一緒にフルシチョフ氏はこういうことを言うておると思う。国交回復して大使を交換することはすぐにでもできるのだ、これがソビエト政府方針である、これは非常に明確である。のみならず、こう言うておる。それ以上のことはソビエトの政府日本側に提案しておらぬ、はっきり言うておる。これは九月二十一日のことであります。その際もっとはっきりしたことを言うている。もし交渉を行なっている一方がこの際何らかの問題を国交回復の前に解決する必要があるというようなことを主張するなら、それは最後通牒としての響きを持っているものであって、交渉はおしまいであるとわれわれは解釈する、こういう意味のことまで言うている。ところが総理は、必ず妥結すると思うと言うと同時に、交渉をする最初には早期妥結を考えておったけれども、ソビエト側から条約案が出されたので、それならというので考え方を変えたのであるというようなことを言うておられる。これがそうでなければ、今総理が言われるように、必ず妥結すると思うということと、今からいろいろな問題を持ち出そうとすることとは絶対に一致しないのであります。もっとはっきり言えば、ソビエト政府から条約案が出たから考え方を変えた、一方では懸案を解決して戦前の状態にまでしたい、必ずこれができるものだと思う、こういうことは私が今述べました事実の上から考えても実際にはできぬことで、交渉打ち切りということを意味する以外の何ものでもないと思う。それで私が聞いているのだが、できないということが明らかになっている。総理は知っておられると思うのです。松本全権も報告しておると思う。それなのに今日になって戦前の状態に戻すという考えで問題を持ち出していくのだということは、非常に総理の考えの中に混乱があるのか。私はそう思いませんから、何か事情があって、いろいろなことで引き延ばしを考えておられるのではないか。国民がこう疑うた時分にこれを打ち消すことができぬのじゃないかと思います。この点についてもう一度総理大臣のお考えを聞きたいのです。
  258. 鳩山一郎

    ○鳩山国務大臣 日ソ交渉の現状についての見解は、あなたと私と違います。幾ら議論をしても違うのだから、この程度でやめましょう。
  259. 川上貫一

    ○川上委員 そういう答弁をされるとは私は実は予想しなかった。この日ソ国交の問題というものは、国の運命を決定する重大な問題だと思う。君とは考えが違うからもう何も言わぬというようなことを総理大臣は言うちゃいけません。おのおのが考え方を言い尽して、国のために、国民のために尽さなくちゃならぬ。考えが違うのは取り上げぬというような政治はない。考えを尽してこそ、政府ほんとう国民の意に即する政治をすることができる。総理大臣にちょっと私は聞きますが、この国交回復の問題について総理が今答弁なさっておることの骨子は、閣議で正式に決定したことを私並びにそのほかの議員にも言うておられるのであると思うが、そう解釈してよろしゅうございますか。
  260. 鳩山一郎

    ○鳩山国務大臣 日ソの国交正常化したいということは、当初と今日と変りはないのです。そうして、私は日ソの交渉はまだ見込みがあると思うし、あなたは絶対に見込みがないとおっしゃるのだから、その見方が違うということをお互いに固執していても仕方がないからやめようというのです。
  261. 川上貫一

    ○川上委員 私はさきに実際のことをあげて、ソビエト側はこう言うておると言った。北村団長もこれを聞いて帰っておられるのだ。これは単なる新聞の報道とかなんとかいうものではなくて、日本議員団が正式に訪問したときにソビエトのブルガーニンと同席してフルシチョフ氏が、これが政府方針でありますと言うておる。その中には総理が今考えておられるようなことは、交渉ができぬことであると解釈しておると言うておるじゃありませんか。こういう点はどうお考えになりますか。
  262. 鳩山一郎

    ○鳩山国務大臣 私は今までの主張を繰り返すよりほかに答弁はいたしません。
  263. 川上貫一

    ○川上委員 総理はどうも答弁ができぬのじゃないかと思うのですが、さきに聞きましたように、そういう答弁、それからほかの委員が繰り返して質問しておることて対して答弁しておられる、その答弁の骨子というものは、正式な閣議決定に基くものでありますか、どうであるか、この点もちょっと聞いておきたい。
  264. 鳩山一郎

    ○鳩山国務大臣 閣議においては、ソビエトがどうしても承知しない場合においていかなる方法に出るかという閣議をしたことはございません。
  265. 川上貫一

    ○川上委員 この問題について閣議は何回行われているのですか。
  266. 鳩山一郎

    ○鳩山国務大臣 正式の閣議を何回開いたかはただいま記憶にありません。
  267. 川上貫一

    ○川上委員 正式の閣議を何べん開いたか覚えぬ。数回ですか、一回ですか、それならわかるでしょう。
  268. 鳩山一郎

    ○鳩山国務大臣 よく記憶がありません。
  269. 川上貫一

    ○川上委員 閣議は五月二十四日に一ぺん開いたきりで、あと開いておらぬのじゃないですか。
  270. 鳩山一郎

    ○鳩山国務大臣 記憶にありません。
  271. 川上貫一

    ○川上委員 閣議を開いた日にちも記憶にない。そうすれば具体的に聞きましょう。松本全権はどういう閣議決定を携えていくのですか。
  272. 鳩山一郎

    ○鳩山国務大臣 松本全権がこのたび帰るに当ってまだ閣議を開いておりません。
  273. 川上貫一

    ○川上委員 そうすると日ソ交渉の問題については閣僚の意思は統一せぬ、閣議は開いておらぬ、ばらばらにやっておる。これは重大な問題だと思う。日ソ交渉の早期妥結を希望しておると言われ、最初にはいろいろな懸案の問題はなかなか困難なことがあるということも総理は前国会で言われておる。松本全権は長い間の交渉の結果、妥結をせずに帰っておる。それからこのたびあらためてロンドンに行くわけである。閣議はしておらぬ、政府意思は統一しておらぬ。どのようなことになるか。この重大な問題について政府は本気で取っ組んでおらぬ証拠である。総理の答弁は総理個人答弁だとわれわれは考えておらなかった。明らかになった。閣議は開いておらぬ。そうすれば外務大臣の訓令とか外務省訓令とかいうものだけでこれはやっておるのですか。閣議決定はしない。一体総理大臣はこの重大な日本の運命、世界の平和、緊張の緩和を左右するような問題について、ろくろく閣議も開かず何日たっておるか。半年の間に一ぺんも開いておらぬ、こういうことで総理大臣は、必ず妥結すると思いますというようなことが言えますか。私は車ねて総理にほんとう考え方を聞きたい。
  274. 鳩山一郎

    ○鳩山国務大臣 松本全権が十二月いつごろ帰るか、まだ未定であるものですから、松本全権に携えてもらう訓令については閣議を開かないのは当然だと思います。
  275. 川上貫一

    ○川上委員 交渉を始めてから半年たっておるのです。松本全権の行く日がわからぬから閣議を開かないのはあたりまえだ。そんなものではなかろう。国民が一大関心を持ち、世界日本がどういう態度に出るだろうかということさえも非常に心にとめておる、こういう時分に閣議を開かぬというようなことで、総理大臣、事が運びますか。私は総理をこの席で何か追及してみようとか、一つの言葉じりをとらえてみようとかいうのじゃありません。私はそういうことではあるまいと思うておった。ここで閣議を開かぬということを聞き、それを総理大臣が平然として言われることを聞いてあぜんとした。これは私は総理に聞くが、こういう態度でほんまに日ソ交渉の重大問題が妥結しますか。そう思いますか。
  276. 鳩山一郎

    ○鳩山国務大臣 日ソ交渉については最善の道を考えなくてはならないと、日夜苦心をしております。
  277. 川上貫一

    ○川上委員 この問題については私は大ていわかったと思うから、これ以上は言いません。これでは日ソ交渉を早期妥結する意思は総理大臣にはないものだとわれわれは考える。本気でこれをやろうとするならば、閣議を開かぬということはあり得ません。内閣の意思を統一しなければこの問題ができますか。重大な問題です。ことの意思も統一しないででたらめにやっておるというようなことで、この国交回復ができるものでは断じてない。総理はこの前の本委員会で、ソビエト政府から条約案が出たので、それならというので前の考え方を変えたとこういうことを言われておりますが、どういう条約案が出たのでありますか。
  278. 鳩山一郎

    ○鳩山国務大臣 ソ連は平和条約を作って、日本ソ連との国交を調整しようという考え方を提出いたしたのであります。
  279. 川上貫一

    ○川上委員 それとフルシチョフ氏が言うておる、国交回復して大使を交換することができる、これが政府方針であるということとは、どう関係するのでありますか。これ以上のことをソビエト政府側からは言うてきたのでありますか。
  280. 鳩山一郎

    ○鳩山国務大臣 詳細なことは外務大臣から答弁してもらいます。私はその案文を忘れました。
  281. 川上貫一

    ○川上委員 外務大臣は系統的に妨害しておる一人なんです。あなたが、わしはよう知らぬ、そんなことは外務大臣に聞いてもらわなければならぬ——この重大な問題を外務大臣に聞かなければわからぬようなことで、わしは必ず早期妥結をする見込みである、これは少し言い過ぎじゃないですか。総理は知っておらぬはずはありません。どういうことをソビエト政府は言うてきたのか、これを総理が知らぬようなことでは、それは国会で、わしは妥結をする気である、こんなことはもうてんで言えない。あらためて聞きます。どういうことをソビエト同盟側から言うてきておるのか。それで総理の考えが変ったという、その根拠をはっきりとお尋ねしたいと思います。
  282. 鳩山一郎

    ○鳩山国務大臣 平和条約を結んで国交を調整したいという形式をソ連はとったのです。それを申し上げたのです。
  283. 川上貫一

    ○川上委員 まず国交回復して大使を交換し、両国の親善を深め、不自然な戦争状態をなくしてから、両方の国民の利益によっていろいろな問題を話合おうではないかというのがソビエトの提案じゃないですか。これがソビエトの提案です。(発言する者あり)このことの提案があったのでしょうということを総理に聞いておるのです。これも総理は知らぬとおっしゃるのですか。
  284. 鳩山一郎

    ○鳩山国務大臣 私は忘れたと言ったのです。
  285. 川上貫一

    ○川上委員 おそらくこういう問答というものは世界国会にはないだろうと思うのです。国会の中の議員質問に対して、この重大な国交回復の問題に、相手のソビエト政府か何を実は言うて出たのか覚えておらぬ、忘れた、これを国会の速記録に残しておいたら、全世界はどう思うだろう。私はこれは非常に情ない国会のありさまであり、まことに情ない政府態度であると思うのです。また第二に、ソビエトの政府があなたの今の答弁を聞いたらどう考えますか。ソビエトは何を言うたのかわしは覚えておらぬ、これをソビエト政府の当局が聞いたらどう考えますか。誠意をもってお互いに国交回復をしようということによって妥結するのでしょう。その相手が、ソビエトは何を言うたのか忘れた、しかも一これを国会で堂々と答弁される。こういうことは日本とソビエトの間における親交を深める道ではなくて、これは全く交渉をぶちこわす発言であると思う。総理は顧みて恥しくないですか。何とも思いませんか。何ともないですか。
  286. 鳩山一郎

    ○鳩山国務大臣 私は、平和条約を締結してソ連日本との国交正常化したいという形式をソ連政府から提案があったということを知っておれば、要を得て、それだけを知っていればたくさんだと思う。
  287. 川上貫一

    ○川上委員 それだけを知っておったのではどうもならぬのです。なぜならこれから懸案を解決するとかなんとかいうことは絶対に不可能な状態に陥っておるのです。これは一般の事実によって明らかになっておるのです。その点は私は言うが、北村団長がおられるかどうか知らぬが、聞いて帰っておられるのです。それがきまっておるのに総理が今のような答弁をされることは、国交回復に本気じゃないということと同時に、政略的な引き延ばしをして、しまいにはこれを決裂してもやむを得ぬという態度があるから、そのようなことになるのだと思う。もしも総理大臣にしてほんとうに妥結をしなければならぬと考えておられるなら、事態は明らかなんですから、問題ははっきりしておるのですから、今日直ちに国交回復、大使の相互交換、不自然な戦争状態の終結、それによってほんとうに話合いで一切の問題、懸案を解決するということを即時やらるべきだと思う。今そのときだと思う。今月今日そのときだと思うが、総理はどうお考えになりますか。
  288. 鳩山一郎

    ○鳩山国務大臣 あなたは口で言えば一切の問題が解決するという。その一切の問題を解決することに今努力をしているのです。それで意見は表明上相違を来しているのです。それをお互いに話し合って納得し合えば、その障害はぬぐい去ることができようと私は思っておる。
  289. 三浦一雄

    ○三浦委員長 川上貫一君に申し上げますが、あと二分であります。簡潔にお願いいたします。
  290. 川上貫一

    ○川上委員 与党の方がだいぶ応援しておられますけれども、総理の答弁は非常に恥しい答弁になりましょう。私は時間がありません。申合せの時間をあまりじゅうりんしたくない。私はこの際に特に総理大臣に申し上げたい。この交渉にはいろいろの妨害がありましょう、圧力がありましょう。国民もよう知っております。たとえば終始一貫系統的にブレーキをかけておるのは重光外相であります。これを総理は抱き込んでおられる。外務大臣は、自分でロンドンに出かけてこの日ソの間柄を解決するかわりに、アメリカに行ってブレーキをかける妙薬を探してきておる。元の自由党の中には早期妥結反対の意図があります。中には妥結そのものに反対の一派もあるとわれわれは考える。芦田君などの外交同志会はこれまた早期妥結反対であります。経団連、日経連その他財界の一部には、いわゆる慎重論が横行しておる。これは国民の願いを基とせず、自分の利益を基として、つまりは日ソ交渉を妨害し、対米従属を深め、日本軍国主義の復活を目ざす意図であるとわれわれはいわなければならぬと思う。しかしいろいろな妨害や圧力はありましょうけれども、すでに事態は見えすいてきたのです。ただ政略のために総理はこれを引き延ばし、それによってソビエト同盟ばちっとも不利益をこうむりません。いくら引き延ばされても一向向うには不利益はない。不利益をこうむる者は日本国民です。たとえて言えば、冬を迎えたが、あなたのやり方では同胞は帰っちゃきません。りくつじゃありません。事実です。貿易や漁業の問題も、根本的には解決は一向前進しません。平和と国際緊張の緩和を希望する世界国民の期待には沿えません。まして松本全権も言うておるように、慎重論や引き延ばし論は決裂論である、こう言うておる。一番しまいになって決裂したらどうなりますか。あなたの考えではこの可能性は私はあると思う。こういうことになれば、せっかくここまできた隣邦中国との間の不幸な圏係など、皆目見通しもっかぬようになることは明らかである。もちろんこういうことは排外主義者や、軍国主義者や、帝国主義者や、アメリカを先頭とする世界緊張緩和をぶちこわしたい一味の人々には思うつぼになるかもしらぬけれども、しかし日本はこれでは李承晩や蒋介石と一緒にアジアのみなしごになるでありましょう。国民の不幸ははかりしれません。そのとき軍国主義は大手を振って横行するでしょう。ごらんなさい、現在この交渉中でも、あのように砂川はむごたらしい基地拡張が行われておるじゃありませんか。いわんや決裂でもしてごらんなさい、前途は実に危険であり、不幸であります。これは私の一片の憂いじゃない。繰り返して言いますが、総理大臣は民族の運命を思い、今日直ちに国交回復の閣議決定を行う決心は出ませんか。あるいはもう一つ聞くが、総理大臣がほんとうに妥結をしたいのならば、自分の権限——あなたには権限があるのだ、あなたの権限によってこの際両国の即時国交回復の一切の権限を松本全権に与える勇断はありませんか。それだけの勇気はありませんか。これが国民に尽す道である。私はこれに対しては国民が支持すると思う。われわれもまたこれに対しては支持するでありましょう。私はこの重大な時分に、総理大臣がほんとうに勇気と確信を持って一身を挺し、できもしないことにぐずぐずし、圧力と妨害に頭を下げ、日本の運命を破壊するよりも、断じて大きなる確信のもとに、即刻国交回復、大使の交換、不自然なる戦争状態の終結ということに挺身されることを心から期待します。時間がありません。おそらくこれに対して答弁は同じことを繰り返されるだけであろうと思う。もし何か言うておかなければあとで恥ずかしいということがあればおっしゃって下さい。それがなかったらこれでけっこうです。
  291. 三浦一雄

    ○三浦委員長 これにて昭和三十年度特別会計予計補正(特第2号)に対する質疑は終了いたしました。     —————————————
  292. 三浦一雄

    ○三浦委員長 この際日本社会党の提案として、赤松勇君外十五名より昭和三十年度特別会計予算補正(特第2号)の編成替を求めるの動議が提出されております。(拍手)  まず右の編成替を求めるの動議の趣旨説明を求めます。伊藤好道君。
  293. 伊藤好道

    ○伊藤(好)委員 私は日本社会党を代表いたしまして、昭和三十年度の特別会計予算補正(特第2号)の編成替を求めるの動議を提出するに当りまして、その趣旨を説明いたしたいと思います。  申し上げるまでもなく、今度の国会は、外交問題と中間的な報告のほかには、地方財政の救済、その他地方自治体ないし国民生活の安定に関する問題が、国会の中心的な議題でなければならないと考えるものであります。これに対しまして、政府は、地方財政の問題に対してだけは特別会計の補正の予算を提出しておりますが、予算として国民生活を救済するという問題につきましては、ほとんど何ら手を触れておりませんし、地方財政の救済についても、はなはだ私どもといたしましては不十分きわまる態度であると思うのであります。従って現在の重要なる地方自治体もしくは国民生活の問題に対して、現内閣は非常に不親切である、かように私は考えておるものであります。そこでわれわれといたしましては、年度のもうすでに四分の三期をこえておりまして、非常に残りば時間的には少いのでありますが、主として地方財政の救済と、年末を控えまして国民生活め困難な事態に対してできるだけの救済的措置を講じたい、こういう根本方針を提示いたしまして、それに基いて予算補正の編成替を求めるの動議を提出した次第であります。従いまして、私どもの補正予算組みかえに関する動議は、われわれの考える基本的な方針にのっとってこれを提出した次第でございますので、十分の御審議を賜わりまして御賛成を願いたいと思うのであります。  そこでわれわれの動議といたしましては、昭和三十年度特別会計予算補正(特第2号)については、政府はこれを撤回し、次に述べるような要綱によりすみかに組みかえをして再提出することを要求する次第であります。  再提出をする際の根本的態度といたしましては、まず第一に、政府案による地方財政の赤字補てんは、補てん額が僅少でありまして、昭和三十年度地方財政計画における必要経費の不足が満たされないばかりでなく、財源として昭和三十年度一般会計において可能なる歳入増収額及び可能なる組みかえを行わないで、一時借り入れを行なったことは不当であると考えるものであります。よって政府は、これを撤回する必要あるというのがわれわれの態度でございます。  第二に、地方財政の窮乏は、申し上げるまでもなく、ますます深刻でありまして、本年度財政計画も、赤字の累積のために実施困難な事態に陥っているのであります。このままいたずらに推移すれば、地方財政の破綻を早めるばかりでなく、地方財政支出と密接に関連のございます公共事業、社会保障、義務教育、公衆衛生等の一般会計予算の支出の効果が、阻害されるおそれが十分にあるわけであります。従いまして、地方交付税率の五%の引き上げ及びたばこ消費税の税率を百分の三十に引き上げまして、地方財政における本年度既定経費の不足を補うとともに、交付団体、不交付団体の双方に対しまして、公務員年末手当の増額、登録日雇い労働者年末手当の支給、被生活保護世帯に対する年末補給金支給の財源を与える必要があると考えるわけであります。  さらに第三には、公務員の給与は低いままにくぎづけされておりまして、かつ昇給、昇格もほとんどストップされているのが現状でございますので、特に本年度は年末手当の支給を規定額より〇・二五ヵ月分増額いたしまして、公務員の生活保障に充てる必要があると考えるのでございます。  第四に登録日雇い労働者は、実働日数が一般勤労階級よりも過少に制限されておる現状にかんがみまして、これに年末手当を支給して生活を保障する必要があると考えます。  第五に、地方財政の窮迫せる現状にかんがみまして、緊急失業対策事業に対する国庫補助率を引き上げ、かつ失業発生の特別に多い市町村に対しましては、全額国庫補助を行う必要があると考えます。  第六に、被生活保護世帯に対する生活保護費の単価が今日過少でございますので、これに一時的な生活補給金を支給する必要があると考えるわけであります。  第七に、この四項目にわたる歳出の増額補正を行いますためには、昭和三十年度一般会計歳入における自然増収、昭和二十九年度一般会計の余剰金一部の本年度一般会計歳入への繰り入れ、防衛庁経費及び賠償等特殊債務処理費のうち、明らかに明年度に過年度繰り越しになるものと予想される額の一部の支出組みかえ、一般行政費のうちの不用額及び節約可能なる額の一部の支出組みかえによって、十分に財源措置ができるとわれわれは考えておるものでございます。  なお予算定員外の経費によって雇用されておる人員に対する年末手当は、国及び地方が行政措置として支出することにいたしたく、さらに本年度災害復旧費、李ライン漁船損害補償費、臨時救農土木費は、やはり予備費により支出することにいたしたいと考えているわけであります。  われわれは、このように地方自治体の破産的状態と、年末を控えて困難なる国民生活のうち、特に一番悪い状態にある諸君に対しまして、この際救済的な措置を講ずることが、本国会の最大の使命と存じまして、幸いに財源措置も可能でございますので、以上のような予算補正の編成替を求める動議を提出したわけでございます。どうかよろしく御賛同願います。(拍手)
  294. 三浦一雄

    ○三浦委員長 これにて昭和三十年度特別会計予算補正(特第2号)の編成替を求めるの動議の趣旨説明は終りました。  これより右の編成替を求めるの動議に対する質疑を行います。  右の質疑に対する答弁には、次の諸君が当られる旨の申し出がありました。赤松勇君、今澄勇君、阿部五郎君、伊藤好道君、河野密君、小平忠君、成田知巳君、右の諸君は答弁に当られる便宜のため、こちらの席におかけを願います。  質疑は順次これを許します。古井喜實君。
  295. 古井喜實

    ○古井委員 私は社会党の御提案に対して御質問をいたしたいと存じますが、これによって、果して御提案が健全なものであるかどうか、さらにこれを通して、社会党の皆さんとわれわれとが、地方財政の再建について、財政の基本方針について、また関連する他の諸問題について、どういう立場の相違を持つかを明らかにすることができれば仕合せと存じます。   〔委員長退席、西村(直)委員長代理着席〕  社会党の御提案を拝見して、まず直観的に起ってきます疑問は、政策的経費を含めたかかる膨大な予算の補正を、この際どうしてもやらなければならぬ緊急性があるかどうか、またこれだけの内容を持った案件が、かかる短期国会に適するかどうかということであります。つまり、補正予算、短期国会の建前、性格からいって、いささか逸脱してはいないかという点であります。次いで起る疑問は、内容がいささか放漫ではないか、先のことをどう考えておいでになるだろうか、場当り主義でいこうとなさるのではないかということであります。私はこの際主として提案の内容につきまして御質問をしたいと思います。  今回の補正は、地方財政の対策を中心とするものであります。そしてこれに対してどれほどの財源措置をしようとするか、またし得るかが問題の焦点であります。そこでこの地方財政の問題と財源措置の問題と、この二つを中心にしてお尋ねをいたします。  まず地方村政の問題であります。地方財政の現状がいかに窮状にあるかは、あらためて申すまでもありません。累積した過去の赤字が六百四十億という巨額に達する。府県の八〇%、五大市の中の四つ、市の七五%、町村の三五%、従って、いわば自治体が軒並みに赤字をかかえている状況であります。自治体の機能は麻痺してしまい、自治制度そのものが財政の面から崩壊しょうとしておる状況であります。その原因と責任がどこにあろうとも、この事態をほうっておくわけにはいきますまい。いわんやその責任の一半、相当大きな部分が多年にわたる国の施策にあるとするならばなおさらのことであります。従来一部にその原因はあげて自治体のみにあるのだという見方とか、自治体が考えを入れかえてこなければ対策を講じてはならぬと言わぬばかりの見解も聞かれました。われわれはかかる見解にはくみすることはできません。地方財政に対しては国も反省して、進んで理解ある対策を講じ、すみやかにその再建をはからなければならぬとする点におきましては、社会党の皆さんもわれわれも一致した見解に立つものと信じます。問題はこの際における対策の点であります。地方財政の根本的の建て直しは、徹底した行財制度の改革にまで及ばなければ目的を達し得ないものと思います。本年度一体それができるのかどうか、すでに年度半ば以上を過ぎ、根本的改革はそのいとまが本年度はなくなったわけであります。従ってわれわれは根本的建て直しにつきましては明年度以降に期しまして、本年度は暫定的にやむを得ない最小限度の対策にとどめるほかばないという考えて立つのであります。  そこで提案者にお伺いをしたいと思います。この御提案は地方財政の根本的建て直しの対策としてこれを出されておるか、あるいはさしあたり本年度における暫定的の対策という考えにお立ちになってお出しになっておるかという点であります。この点がいささか不明瞭であると思います。提案の内容を拝見しますと、交付税率の引き上げや、たばこ消費税率の引き上げなどは今年度限りでも何でもない永久的な引き上げになっております。また今国会に御提案になっておる法案においても、暫定的ではなくて恒久的な案になっております。そこで提案者はこれを根本的対策として提案されるのか。そうとすればこの程度で一体よいと考えておられるのか。もしそうでなくて単に暫定的の対策とせられるならば、根本的な建て直し案を持っておられるのか。その構想と、これを実現していくプログラムについてお伺いをいたしたいと思います。
  296. 伊藤好道

    ○伊藤(好)委員 最初にこの補正をごらんになりまして直観的に膨大過ぎるのではないか、あるいは緊急性が果してこれだけあるのか、こういうような感じを持つというお話でございますが、私はこの程度の予算の補正は膨大であるとは思っておりません。私どもは緊急的措置として態度をきめたわけでございますが、しかしその緊急的措置は、その場限りのという意味ではなくて、来年度以降における根本的な地方の行財政改革においても当然踏襲されるような基本線は、この際すでに各方面において研究ができておるのみでありますから、そういう態度から私どもやっておるわけであります。それから放漫ではないか、あるいは場当り主義ではないか、こういうことも、これは考え方の相違によるものと考えます。  なお今最後に古井さんからお尋ねの、地方財政の今度のわれわれの補正が暫定的であるか、根本的であるか、これはもうすでにお答えしたことでありまして、暫定的ではあるが、基本的な線は頭ははっきりと出しておきたい。そういうことになって初めて来年度以降における根本的対策を講じ得る条件が獲得できるものであるとわれわれは考えておるのであります。
  297. 古井喜實

    ○古井委員 私の疑った通りに、暫定的であるのか根本的であるのかわからぬ、ぬえ的な対策であるということが明らかになりました。しかも来年度以降においてどういう根本的な改革を行おうとされるのかということについては一つも案がないということも明らかになりました。(「そんな論理があるか」と呼ぶ者あり)私どもは今回は最小限度の対策を講じようという立場に立つのでありますからはっきりいたしております。従ってこの政府の措置の。こときもこれで十分だとは考えておるのではない、最小限度だと考えておるのであります。こういう考えに立ってみますときに、また各般の資料から検討してみますときに、御提案によると、地方財源の不足は、約百五十億、どんなに少く見ても百三十億程度、大きく見れば百九十億程度の過大な見積りのように思われるのであります。  そこで私は二点についてお伺いしたいと思います。この際補てんすべき地方財源の不足を三百六十六億八千八百万と算定せられた根拠はどこにあるかということであります。この根拠をお伺いいたします。  なお関連して、この御提案と地方制度調査会の答申との関連を明らかにしていただきたい。すなわち地方制度調査会におきましては、この一般財源の不足を給与費関係を除きまして、約二百億と判定したのであります。この調査会は各方面の権威者も集まり、社会党からも代表を出され、そうしてみんなで一致してこういう財源不足と見たのであります。これと相当大きな食い違いがある。全く独自の数字のように思われるのでありますが、かかる数字を出された根拠並びにこの権威のあると思われる調査会の答申に一顧も払われなかったその理由をあわせてお伺いしたいと思います。
  298. 伊藤好道

    ○伊藤(好)委員 われわれは、地方財政の赤字で国庫の負担すべきものは二百三十八億というのが大体地方制度調査会の答申ではなかったかと思うのであります。それに実は地方公務員の年末手当の増額あるいは不均衡の是正その他を計上したわけであります。別に私は根拠はないなどということは毛頭考えておりません。  なお、この際われわれが根本的な行政機構改革について案を持っておらぬ、こういうお話でございますが、これは与党の内部でもこれから政府がおきめになり、われわれもこの二十日の日からいよいよ具体的な行政機構改革の案を策定するところでございます。
  299. 古井喜實

    ○古井委員 根拠はお示しにならなかったのでありまして、ただ地方制度調査会の答申との関連だけをおっしゃったのであります。そこでこの御説明に従って考えますれば、年末手当等の部分を除いた残りで三百十七億という数字をお出しになっておる。地方制度調査会は二百三十八億ではなくて、約二百億と言っておるのである。すでにこれだけ見ても約百二十億の開きがあるのであります。しかもその根拠は一つもお示しにならない。どういう根拠でこういう数字をお出しになったか、明らかにしていただきたい。
  300. 伊藤好道

    ○伊藤(好)委員 ただいま地方制度調査会との間の関係をちょっと言いましたが、私ちょっと言い違いまして、二百三十八億は自治庁の出しておる統計によっております。
  301. 古井喜實

    ○古井委員 ただいまのお答え程度以上でないとするならば、先ほど私が申しました数字の開きははっきりある。しかも開きの起った根拠は一つも明らかでない。つまり大ざっぱな見込みの金額であるということに帰すると思います。それ以上に解釈のしょうがないのであります。この点はそうでありませんか、それとも確たる根拠をお持ちになっておるか、この数字の根拠について御説明願いたいと思います。
  302. 伊藤好道

    ○伊藤(好)委員 社会党は今日野党でございまして、政府当局のごとく事務的な機構を整備しておりません。従いまして私どもはこの際の補正予算といたしましては、自治庁当局の出した案をかりに援用して、さらにそれについては、幸いにしてわれわれが政府をとりますならば、これは督励して正確な調査をするつもりであります。
  303. 古井喜實

    ○古井委員 この提案がその程度の根拠に基いた案であるということがはっきりいたしました。なお自治庁案と称するものにつきましても、その案自体を調査会で検討した結果、さっき申した数字になったのでありまして、もうすでに破れた正しくないといわれた数字の方をおとりになっておる。つまりこの補正予算に盛っておる数字は明らかに根拠のない数字であります。それに関連して質問いたします。   〔発言する者多し〕
  304. 西村直己

    西村(直)委員長代理 静粛に願います。
  305. 古井喜實

    ○古井委員 少し案の内容についてお伺いをいたします。この御提案の歳出補正の部の口を拝見すると、たばこ消費税の率を引き上げる、そうしてそれは交付税及び譲与税配付金の特別会計に入れると書いてありますが、これは交付税として配る意味でありますか、これをお伺いしてから次の質問に移りたいと思います。
  306. 阿部五郎

    ○阿部委員 お答えいたします前に、先ほどのお尋ねに対して補足して申し上げておきたいと思います。  地方制度調査会が二百億くらいの赤字になるであろうということを発表しておる。それに対してそれ以上の財源を与えんとしておるのは何ゆえであるかという御趣旨であったかと思いますが、それは地方制度調査会も、あの数字というものは、国の財政計画と地方の実際の予算との間には、給与においては相当多額の差があれ以外にあることも認めており、またそれを合算して年度末になって決算をいたしましたならば、それと異なった数字が出てくるということも過去の経験に徴して明らかなんであります。たとえば昭和二十九年度の決算はすでに済んでおりますが、それにおいては、財政計画と地方の給与との間には莫大な差があるにもかかわらず、またそれを含めて地方制度調査会の持っておった数字と違った、たしか二百三十数億の決算上の赤字、こういう結果が現われてきたと存じます。今度二百億赤字が出るという地方制度調査会の見込みも絶対正確なものとは思われませんし、またわが党が今回補正せんとするのは、各地方団体にできた赤字を、その赤字通りに完全に解消してしまおうというのではありません。もしそんなことをいたしましたならば、それは地方団体自身が放漫な財政をやったところまで一律に解消してしまうというようなことになるのであって、かえってほんとうの公正を欠くのであります。そこで私たちといたしましては、とにかく財源が少いがために地方財政に欠陥が生ずるのであるから、正当なる補てんを行なっていきたい、こういう趣旨なのであります。  それから次に、ただいまお尋ねのたばこ消費税、これにつきましてはもちろん特別会計に入れるのでありますから、これを公正な方法で地方交付税として配付しようとするのであります。
  307. 古井喜實

    ○古井委員 ただいまのお話によれば非常な誤まりがあるのであります。この財源をもって給与費の関係の不足分まで御解決になろうとするらしい御見解でありました。大へんな誤まりであります。給与費の実支給額との開きは約二百七十億といわれておるのである。こんなもので解決できるものじゃないのであります。これを除外しておるのか、一体これで解決しようというのか、一つはっきりしてもらいたい。(「それは年末手当じゃないか」と呼ぶ者あり)年末手当の関係は別に刷り離してある。その点はどうでありますか。
  308. 阿部五郎

    ○阿部委員 地方財政の赤字を解決するに当って、これは給与費によってできた赤字であるから補てんする、これは公共事業の過大施行でできた赤字であるから補てんするというような区別は一切できません。それで私が申しましたのは、給与費の差額によって起った赤字をすべて補てんせんとするのではないことは、それはそれ以外の赤字でさえも補てんしない部分があると、先ほど申し上げたことによっておわかりであろうと存じます。
  309. 古井喜實

    ○古井委員 さっぱり私にはわからない。また聞いておる者にはわからない。説明になっておらぬ説明であります。かりに給与費に充てるとするならば二百七十億の開きがある。しかるにここで給与費に充て得る分は百十七億だけであります。さっぱり自分の案の内容さえ御存じないようであります。この点は御説明にならないのであります。  それから次にたばこ消費税を交付税の会計に入れてこれを交付税として配るということでございますが、そうすると、この御提案によれば交付団体、不交付団体両方に財源を与えると言っておられるが、不交付団体にはどれによって財源を与えるのか。交付税は交付団体しか行かないのであります。不交付団体はどうなさるのか、どこで財源を与えられるのか、これを一つ明快に御説明願いたいと思います。
  310. 阿部五郎

    ○阿部委員 不交付団体においては赤字を生じておりませんから、この措置をとる必要はないのであります。
  311. 古井喜實

    ○古井委員 とんでもない。不交付団体も赤字を生じております。事実を一つも御承知ないのみならず困ったことに、この要綱の趣旨には交付、不交付両団体に財源を与えるということを書き表わしておいでになる。うそであるかほんとうであるか、この記の二のところをごらんになっていただきたい。
  312. 阿部五郎

    ○阿部委員 お答えいたしますが、この地方交付税に組み入れてありますのは、先ほど伊藤好道氏から説明いたしました通りに、これは赤字対策ばかりではないのであります。年末給与の組み入れも、失業者に対する年末の給与も、そういう財源をすべて含めてこの交付税から支出する用意をしてあるのであります。それで、赤字対策のみをするのではなくて、そういう財源も含めてのものでありますから、ただいまおっしゃられたような結果が出るのであります。
  313. 古井喜實

    ○古井委員 これは驚き入った話でありまして、私が三百十七億、つまり二百億を百十七億オーバしておると言っている三百十七億というのは、三百六十六億八千八百万のうちから、年末手当の関係の分とか、それ以外のものを除いた金額のものを、これを持ち出して言っておるのである。案を御承知ないのみならず、この要綱には、交付団体、不交付団体に財源を与える、両方に与えると言われるのであるならば、交付団体でなしに不交付団体の方にはどこで財源をお与えになっているのかということを聞いてみたい。私はあり得る場所もあると思っておる。
  314. 阿部五郎

    ○阿部委員 この案を、こらんになりましたならば、この地方交付税をもって財源を与える分と、国から直接与える分があることがおわかりになると思います。たとえば、緊急失業対策事業の分の中天手当の分につきましては、五分の四を直接に国家予算から支出する、五分の一を地方交付税の方から支出する、あるいは、その次の緊急対策事業費増額のうちのこの国庫補助率の変更による支出増のごときは、国庫から直接に全額出す、この交付税によらない、こういうことに相なっております。それによっても、ただいまの御質問に対しては、すでに原案そのものがさようなことになっておるのであります。
  315. 古井喜實

    ○古井委員 これはまことに理解のしにくいお話でありまして、その地方負担分の財源はどこに与えてあるかということなんです。四分の三出しても、四分の一は地方で負担するのである。その財源はどこに出してあるかというのです。言いかえればそういうことになる。交付団体の方はわかりますよ。不交付団体、つまり交付税をもらわない方にはどこから出ておるかということの御説明を伺いたいのであります。
  316. 西村直己

    西村(直)委員長代理 この際ちょっと御報告申し上げますが、日本社会党から門司亮君を一人答弁者に加えたいということであります。その点を御了解願います。
  317. 門司亮

    門司委員 今の古井さんの御質問にお答えをいたしたいと思いますが、不交付団体に行かないじゃないかという御質問でございますが、これはお読みになればよくわかりますように、たばこの専売益金を譲与税と交付税の特別会計に入れるのでありまして、譲与税としての取扱いをすれば、これは行くのであります。本来ならば、この場合ば、たばこ消費税を増額するという、いわゆる地方税法の改正を行なってすることが一つの筋合いだとも思いますが、これはあるいは考え方が変れば税法改正で出すかもしれませんが、少くともこの五十四億というものを、たばこ消費税の百分の十と二十くらいに、いわゆる今古井さんが言われた地方制度調査会の答申案通りの案を出すといたしまして、一月と二月の二ヵ月の専売益金の中からこれをさきますると、大体このくらいの数字になることは、古井さん、おわかりだと思う。従って、そういう税法の改正をすることはできるのでありますが、しかし、この際税法改正を一応取りやめるといたしましても、この相当額のものは、これを譲与税の中に繰り入れていくといたしますと、これは不交付団体にも当然配分ができるのでありまして、古井さんの御心配のようなことは私は大体ないと考えられるのであります。
  318. 古井喜實

    ○古井委員 これはもう少し突っ込んで御質問をすれば、今の点がもっと明瞭になると思います。不交付団体に財源を与えるならば、たばこ消費税の率を上げさえすればそれで当然行くのであります。それは門司さんが一番よく御存じである。それならば、なぜ特別会計に入れるのか。入れる必要はない。たばこ消費税を上げさえすればそれで当然不交付団体にも行きます。譲与税の方だとおっしゃるけれども、これはおそらく今お考えの話だろうと思います。何か違う点があればお伺いをいたしましょうが、その上に五十四億の数字の根拠を一つ御説明願いたい。
  319. 門司亮

    門司委員 五十四億の数字は、最初に申し上げましたように、財源的には大体地方制度調査会が答申した案通りに一月、二月を繰り入れればそういうことになると思います。多少の数字の狂いがあるかと思いますが、もしこれを十二月の分をとれば、約八十億くらいになると思います。  それから、今いろいろお話がございましたが、これはよけいなことではございますが、政府といたしまも、この譲与税につきましては……。(笑声)現在の政府ですよ。あなた方の方ですよ。交付税が少いと言って、今年現在四十四億三千万円というのをちゃんと譲与税の方に入れられておる。こういう財政措置をあなた方自身がおとりになっておる。あなた方自身がよくおわかりだと思う。別に不思議な奇想天外なことをやったわけではございませんので、一つ御了承願っておきたいと思います。
  320. 古井喜實

    ○古井委員 これは専門家門司さんにしては全く驚いた御答弁でありまして、たばこの益金から四十四億七千四百万円特別会計に入れております。それは交付税として配るのであります。だから、同じようにとおっしゃるなら、交付税として配るのだから、五十四億もつまり交付団体以外にこれが行かないとなれば、今までの例の通りだとおっしゃるなら、交付税になってしまうのです。譲与税じゃないのです。今の四十四億というのはそうなっておる。その上にたばこの売り上げ二千三百七十六億円、これの現行のたばこ消費税の率の百十五分の十五、これから出てくる数字は三百九億でありましょう。百分の三十に上げたら何ぼくらい増収になるか、計算してごらんになれば、この数字が合うか合わぬか、御説明の筋が通っておるかどうかは、説明を要せずしてわかるのであります。ただし、これは専門家のことでありますから、この程度にしておかぬと御都合が悪いと思います。  次に、なお……。   〔「答弁を求めているぞ」と呼び、その他発言する者あり〕
  321. 西村直己

    西村(直)委員長代理 古井君発言中でしょう。発言中です。
  322. 古井喜實

    ○古井委員 私は答弁を求めておるのではありません。求めると御迷惑だと思っておるから、求めない。要するに、これは伺っても御答弁ができないのです。間違っておるからできない。問題にならない。そこで、そういう内容も含んでおりますし、地方財源の附則のここにお掲げになったものは過大である。少くとも根拠がないということは、今の質問応答によって明確になったと私は思いますから、次の問題に移ります。  次は、財源措置の問題に一つ移っていきたいと思います。つまり五百三十一億円の財源措置の点であります。この五百三十「億の財源措置、この点にこそ一番大きな問題があると思います。いわば財源をあさり尽した感があります。食いつぶした感があります。それどころでない。食えない財源、食えばあとで腹の痛む財源、あるいはない財源まで食おうとなさっているように思えるのであります。これは一々申し上げないでも、これだけ申し上げればわかると思う。とりわけこの中で一番重要なのは、自然増収百億の問題だと思っております。この百億は一体どういう根拠でお出しになったかという問題がございますが、この点は事重大でございますから、独立の問題として他の同僚の質問もありますし、私はこういうものを当てにして予算を改変しておけば、これは年度内に執行不能の予算になってしまう、こういうふうに見ておりますが、これはあとの問題に残しておきます。  問題は来年度の財政、予算との関連であります。この点についてお尋ねいたしたいのであります。来年度の予算は、かような補正をいたしましたら、まことに甚大な影響を受けてしまうと思います。財源が食いつぶされてしまいます。歳出の増加が当然来年に伴ってきます。加うるにまたある範囲の減税措置のごときものもあります。これらを合せますと、来年度の財政の上で一千億と申したいが一これは数字を申し上げてもよろしいが、一千億でおさまらない来年の所要財源、必要な経費が起るのであります。一千億以上になるのであります。その上にこれがなくても当然に明年度必要になってくる経費もございます。そういう問題もございます。そこで一応この案を行なった場合に、来年度どれだけの財源を要する経費が起るかということについて、一向お考えになっていないのか。それともお考えになっておるならば、来年度にどれだけあとを引くのか、どれだけの経費が来年度新しく要るかという点についての御見解、御説明をお伺いいたしたいのであります。
  323. 伊藤好道

    ○伊藤(好)委員 来年度の予算の構想につきましては、われわれは一兆円を標準にするという態度でございます。このことは一兆円のワクを必ず厳守しなければならぬという考え方ではございません。しかしまた多くこれをオーバーするという考え方でもございません。その点はついては標準とするという考え方でやっております。申し上げるまでもなく、交付税率やその他を向うへ回します。本年度引き上げますと、来年度の財源問題として考慮しなければならぬという問題が起ってくることは当然でございますが、それらの点を考慮して一兆円を大きな基本的な標準としてやるという考え方で、ただいま検討中でございます。
  324. 西村直己

    西村(直)委員長代理 先ほどの古井君の御意見に関連して門司君から御意見があります。なるべく簡単に願います。
  325. 門司亮

    門司委員 簡単に申し上げます。古井さんもよくおわかりだと思いますが、さっきの四十四億数千万円は・たばこの益金を交付税の中に入れることが法律の中にはっきりしております。従ってこれは交付金の中に入っております。われわれはこれを交付税の中に入れると言っておりません。いわゆる剰余金の中に配付するという考えでありますから、その懸念はないと思います。この点重ねて申し上げておきます。
  326. 古井喜實

    ○古井委員 ただいま特に補足しての御答弁でありましたので、わかったと申せばいいのでありますけれども、それではわからないのであります。しかし専門家門司さんの方が、なぜ私がわからないかということはよく御承知だろうと思いますから、先ほど私がお尋ねしている問題の方に入っていきたいと思います。そこでただいま来年度の財政に対してどれだけの影響があるかという問題については、一兆円予算に必ずしもこだわらないのだという大づかみな話だけで、どれだけの歳入が来年今までの予定よりこの案の結果減るか、あるいは歳出の必要な経費が起るかという見込み数字については御説明が伺えなかったのでありますが、この点は重大な問題ですから、一つ数字について御研究がなければないでよろしゅうございます。私が申し上げてもよろしゅうございますが、あれば御説明を伺いたいと思います。
  327. 門司亮

    門司委員 せっかくの御質問でございますので、来年度の予算にどういう影響があるかというお話でございますが、私どもはこのことは、政府、あなた方もお考えになっておりますように、来年度の問題については、あるいは再来年度の問題については、これは抜本的に改革をしなければなりません。従って抜本的に改革をしようとすれば、本年度この程度の補正をいたしておきませんと、来年度の抜本的な仕事はできないのであります。この点は私は御了承願えると思うので、これが直ちに来年度にどう影響するかと言われておりますが、これは国家予算全体を見なければなりません。従って国策に重要な関係を持っておりまして、私は地方財政としては少くともこれだけのものを国会で補正をしていただかなければ、来年度の地方財政計画は立たない、赤字の穴の上にまた計画を立てるということがあってはならないから、こういう数字を実は要求したのであります。
  328. 古井喜實

    ○古井委員 ただいまのお話で来年度の構想もほぼわかってきたような気がしますが、この経費は来年度は落ちない。あとを引く。引いても来年度はこれくらいな財源は与える必要があるんだとおっしゃる意味でありますから、つまりこれらの財源は来年も要るのです。あとを引くことになると思うのです。そのあとを引く金額がどうなるか。それを私は言っておるのでありまして、どれくらいとお考えになるか、ただ数字は文字だと思って簡単にお考えになっておるかもしれませんが、われわれにとっては重大な血税でもあり、実際の政治責任を果す上には容易ならぬことになると思いますから、数字がどうか、ないのかあるのか、あればおっしゃっていただきたい。
  329. 門司亮

    門司委員 来年度にどれだけの影響を持つかというお尋ねでございますが、これは国家財政との関係もありますので、明年度においては地方財政はこの問題で何らの支障は、ございません。もし支障があるとするならばどういう点に支障があるのか、私はむしろお教えを願いたい。
  330. 古井喜實

    ○古井委員 来年度これがどれだけのあとを引くか、財源所要額を生ずるかという点はとうとう説明を伺うことができなかったのであります。つまり来年はどうなるかわからぬ、こういう来年のことを考えない御案であります。他の面において変動があるかもしれない、それはそのときに考えてもいいが、この関係だけでどうなるかということを私は聞いておるのであって、来年のことを考えないで、この財政の対策は、案が立たないのであります。その点は重ねて、くどいようでありますがお尋ね申し上げたいと思います。
  331. 阿部五郎

    ○阿部委員 ただいまのお尋ねは、この予算が来年に尾を引いて、支出がどうしてもふえるということを前提としてのお話でありますが、この予算を本年度執行したからといいまして、地方財政において政府に支出の義務を課するようなものは何一つございません。(「交付税を上げている」と呼ぶ者あり)交付税は本年は増額いたしましたが、これは三%ふえる。これは地方財政計画は来年度抜本的な計画の中に織り込むのでありますから、これが国家予算全体としてそれだけ重くなるということはないのであります。またこの年末給与とかあるいは生活困窮者に対する増額というようなこときものも、もとより本年度のみの処置でありまして、来年度は別な構想をもって、もっともっとふやすかもわかりませんし、またふやさないのも政府の自由であります。
  332. 古井喜實

    ○古井委員 御答弁を伺いますにつれてますますわからなくなったのでありますが、この交付税率の引き上げをやれば、これがことし限りでない以上は三百十二億は来年度もかかるのであります。当りまえのことであります。それからたばこ消費税の率をことし限りと言わないで引き上げるのでありますから、その関係でそれだけの財源は国の方の財源として要るのであります。これは見方もありますけれども、約三百億になるのであります。また期末手当も、法律的にことしも来年もということでありましょう、ことしだけでおやめになるという意味ではありますまいから、そうすると七十一億余りはまた来年もかかるのであります。そういうことがあり、緊急失対、生活保護費、この御提案を来年度の関係から見ますと、新しい経費が国庫財政の方で約八百億当然要るとわれわれは勘定するのであります。一面剰余金百五十億を繰り入れてこれを食ってしまう、防衛費二百億も食ってしまう、三百五十億の財源はことし食ってしまうのでありますから、これを両方足しますと、約千二百億という金が新たに要るのであります。そのほかにこういう補正がなくてもふえる経費が、われわれは正確にはきょうはつかみませんけれども、三百億やそこらはありはしないか、こう考えますと、千五百億という財源が来年は要ることになるのである。これを一体どうするのか。増税をなさるのか、公債発行をされるのか。毎々ちょいちょい聞きます防衛費をみんな削ってしまおうとでも言われるのか。どういうふうにこれを来年の財源措置についてお考えになるものであるか。これが私どもは来年に対する影響が甚大だとして、ここを憂えておるのであります。そのめどがつけたいのであります。この点について、これは簡単なことでございますので、この財源に対してどうされるかということを一つ御説明願いたいと思います。
  333. 河野密

    河野(密)委員 ちょっと古井君、誤解していらっしやるのじゃないかと思うのですが、来年度の予算にこれはあとを引くじゃないか、それはむろんその通りにあとを引くんです。それは地方交付税率を引き上げれば、来年度の予算の歳出の面においてそれだけふえることは言うまでもないし、もとよりそれはありますが、しかしそれなるがゆえに、歳出の一面がふえるからそのために歳入の面にこれが影響を来たすということではないと、こう思うのであります。その点は古井君は、私たちが考えている昭和三十一年度の全体の構想を申し上げなければちょっと納得がいかないかとも思いますが、あなた方の方でも地方交付税率を引き上げると言っていらっしゃるので、その点については同じ考え方に立っている。あなた方も地方財政の窮乏を救うのに対して、今のままでいいとはおっしゃっておらない。交付税率を引き上げろと言っていらっしゃる。それは来年度においてその財源をどこに求めるかということの問題は、来年度予算を編成するに当ってお互いに考えなければならない問題なんです。その点は今実はあなたにここで申し上げる段階にまで至っておりませんが、私たちの考え方は、今頭の中で考えて、日本の予算の歳出を見て、現在地方財政に対する支出がおよそ全予算の一五%になっている。それが来年には交付税率を引き上げたから、あるいは一七%になるかもしれない、こういうことはあり得ると思う。それはあり得るけれども、それならば現在の防衛予算の二二・幾らというものをどう動かすかという問題もあるし、そういうことをにらみ合して私たちは来年度の予算を編成して、その上に立って御検討を願わなければならないのであって、ただこれであれば千数百億の穴があくのじゃないか、そういうばく然たることはおっしゃらない方がいいと思います。
  334. 門司亮

    門司委員 古井さんのお話に誤解があるようでございますから念のために私から申し上げておきますが、地方財政問題も、なるほどこれだけの金が使わればそれだけ来年に響くかもしれませんが、法律をごらんになればわかりますが、私どもの出しております地方交付税の引き上げは、本年度限りということになっております。私はこれだけの財源は、本年度の補正予算で出し得るという確信でこれを出しておるのであります。
  335. 古井喜實

    ○古井委員 事実と間違ってはまことに迷惑いたしますので、御提案になっている法律案を一つよくごらん願いたいと思います。今年度限り交付税率を引き上げるという法案ではありません。前回の特別国会に御提案になった法律も、ことしのみならず来年度以降ずっと行う引き上げの御案でありました。きょうも私は念のためにちゃんと調べてきたのです。あなたの方が自分の案を忘れてしまっている。そういう間違った話はちょいちょいあるようですけれども、それは別にして、さっき河野さんから老獪な御答弁がありましたが、しかしとにかく私が申した、特に来年この関係で千二百億ばかり所要財源があるかどうかというのじゃないという点に誤まりがあります。それだけあとを引くのであります。結局それを何によって来年は埋めるかといえば、これだけの財源を生むために、今までの既定経費を新たに千五百億切れば埋まります。切らなければ増税するとか公債以外はないじゃありませんか。どういう道がありますか。簡単な話で、これは経費から千五百億切ろうというのか。防衛費が千三百億余るようでありますから、すばっと落してしまって、漸減だとか、拡大阻止だとかおっしゃっておるのではなくしで、自衛隊を全滅させれば千三百億は浮くかもしれません。しかし党の政策大綱にお示しになっておるような行き方で行かれるのであるならば、これを全滅させるわけにはいきません。(拍手)そうすれば経費の節約、千五百億は節約で出せますか。できますか。それが問題なんです。でなければ一体どうするのか。増税するのか。あなたの方は減税したいと言っているのではないですか。さっきもおっしゃった通りに、中小企業者を減税するとか、勤労者に減税したいとおっしゃった。減税すればますます足りなくなるのですよ。どうなさるのですか。これくらいなことさえも、来年について大づかみの行き方さえも考えないで、この補正予算をお出しになるというのは、まことに私は無責任きわまる態度だと思う。(拍手)何か伺う点があれば伺いまして、私はこの程度で質問をやめたいと思います。しかし御答弁によってはまたやります。
  336. 河野密

    河野(密)委員 古井君にお答えしますが、古井君はこの措置によって来年度には千五百億円の穴があくものと頭からきめてかかって、そうして千五百億をどうするのかと言われるが、まだ古井君の頭の中で考えられた千五百億というものをわれわれは認めておりません。ここでまず考えられることは、この交付税率を引き上げた点と、それからたばこ消費税の税率を引き上げた点における歳入源というものは、はっきりした数字は今申し上げるだけの材料を持っておりません。(「期末手当はどうだ」と呼ぶ者あり)期末手当の問題は、これはあなたの方も最近法律を出して、〇・二五を立法化されたのではありませんか。そういうことはあなた方のためにおっしゃらない方がよろしい。法律できまったものは法律できまったもの、法律できまらないものはこれからの処置による。何も千五百億という財源が必要だということば、これには一つも書いてないし、あなたがそういうふうに計算されるだけであって、私たちはあるいは二の一般の行政費の中でどれだけ節約をするかという問題もあるし、あるいは行政機構の問題もあるし、いろいろな財政投融資をどういうふうにするかという問題もあるし、千五百億ということは少しも問題になっておらない。だから全体として昭和三十一年度の予算に対するわれわれの案を見てから、それから先のことは御批判願いたい。それからの討論はわれわれの案を出してから一つやろうじゃありませんか。今のこれだけの問題についてそういうことをおっしゃってもそれは無理です。   〔西村(直)委員長代理退席、委員長着席〕
  337. 古井喜實

    ○古井委員 それだから私はあとに尾を引く金額が千二、三百億と言ったのですが、それのほかに当然それと、ことしわれわれが期末手当を上げればあとを引く経費を見ているから、別に三百億ばかりかかると言ったのであって、それはちゃんと見ておる。そこで千五百億という数字はこれをはじけば当然出てくるのです。だからそれをどうごらんになっているか。この数字でわれわれがはじいた通りにごらんになっているか。魔術の数字を使われるかということを明らかにするために、あとどういう必要な経費がどの金額起るかということを伺ったのです。あなたの方は説明されないのです。説明されないのだから、認めるの、認めぬもない、案がないのである。そこでこういうことでは、これは算術でありまして、算術でそうなるのでありますから、ただいまの御答弁は、要するに私には一つも了解できない。ごまかしとしかいうほかはありませんので、これ以上はもうお尋ねいたしませんで、これで私の質問をやめておきます。(拍手)
  338. 三浦一雄

    ○三浦委員長 松野頼三君。だいぶ時間もたっておりますから、一つ簡潔にお願いいたします。
  339. 松野頼三

    松野委員 本日は時と所を変えまして、新しい政界の分野で、社会党の提案による補正予算に対して同僚議員質問をいたします。特に新しい慣例として十分野党の意見を尊重する意味でこの壇上に立ちました。従ってことに行政の担当ではございませんので、政府委員のような答弁を私はあえて求めようという考えはございません。従って数字において不明のところがあるならば、不明でけっこうでございます。その意味で私の質問を続けたいと思います。なおあるいは冷静を欠くような言葉があるかもしれませんが、これは一つ御寛大に前もって御了承を願います。(拍手)  まず歳入の面からお尋ねいたします。ただいま実は同僚古井議員質問に関しましては、残念ながら前半戦は提案者の負けでございました。従って後半にはもう少し別な角度で、相当御答弁ができるという根本問題についてお尋ねいたしますからどうか、十分一つ点のとれるような御答弁をお願いいたします。歳出面は大体においてどれを見ましても財源を与えるのでございますから、いただく方はけっこうなんです。さあそれじゃ与えられるかどうかという問題が後半の歳出面の締めくくりで出てくるわけです。歳出面で一番大きな問題はただいま大体済みました。次に緊急失業対策事業費七日分、二百八十二円、大体これが二千円に当ると思います。これが緊急失業対策の事業費として出ております。そのほかにこれと関連して生活保護費千五百円、この生活保護費の千五百円というのは一括して上程されておりますが、この内容は、おそらくもち代とか、はがき代とか、たび代とか、げた代とかいうものを合せて、平均三・四の扶養家族について千五百円という内訳だろうと私も推察いたします。ただ一つ、ここに問題になりますのは、非常に大きな社会党の政策として、かねがね社会保障の政党として主張されておるあなた方が、重大なミスをされております。それはこの失業対策の単価二百八十二円、大体この失業登録者は二十日間稼動する。二十日間働くというのは、大体平均して全国でいい方です。もしこれを二十日間働いたとしますと、五千六百四十円、ところが驚くなかれ今日の生活保護費——東京で五人家族平均八千二百三十三円、地区別によって違いますけれども、最低六千二百円というのが、今日の生活保護費の実態であります。そうしますと、今日一番大きな問題は、失業対策事業で登録して実際に稼働いたしましても五千六百四十円、働いてもなおかつ今日の生活保護費の額に及ばないというところが、今日最もこの問題に対する重要な焦点なんです。七日間のもち代がほしいのじゃない、最も大きなものは、社会保障の立場で言うならば、この問題をこの際解決せずに、いたずらにもち代を与えるからと、その場限りのことを言うことは、根本的に政党の性格として、私は断じて社会党においてもうなずけないだろうと思う。ことに補正予算をお出しになるのに、この問題をあなた方は等閑に付して、いたずらに正月のもち代をやるというのは、人気取り政策としか思えない。この五百億という膨大な予算を組むならば、なぜあなた方はこの問題の矛盾を解決せずに出されたか。いずれ歳入面はあとにいたしまして、もしも歳入面が五百億あるならば、われわれはまずこの矛盾、ことに全生活保護者、全緊急労務者に対します単価の引き上げこそ、今日の緊急問題である。千五百円のもち代よりも、われわれは将来における生活保障の根本について、五百億円という財源がもしも後半においてあるならば、われわれ保守党でさえもこの点には関心を持つのです。この点はあまりに私は場当りすぎやせぬか、まず政策論として御意見をお伺いしたい。
  340. 成田知巳

    成田委員 お答えいたしますが、松野さんの御指摘のように日雇い労務者の一日当りの給与は少い、あるいは生活保護者に対する給与が少いということは事実でございます。私たちもぜひ解決したいと思っておりますが、とりあえず補正予算で公務員に期末手当を支給する以上、これと平行して同じように日雇い労務者にも、生活保護者にも、一世帯千五百円、あるいは平均一百八十二円の年末手当のもち代を出したいというのが、補正予算を出した根本の趣旨であります。根本的な解決は、来るべき三十一年度の予算でやりたいと思っております。
  341. 松野頼三

    松野委員 ただいまのお話に関連いたしますと、ちょうどこの予算の中に、最後に年末賞与五千円に関する免税というものが出ておりますが、ただいまの御答弁によっていくと、いわゆる就職をした組織的労務者はこの恩恵をこうむりましょう。しかしながら、それ以下の失業対策者、あるいはそれ以下の生活保護者に対するあたたかい手があまりにも少な過ぎる。金額において八億あなた方は予想され、片一方では五億計上されている。せっかくの政策において、こういう大事な矛盾をしている。財源は後ほどにいたします。政府委員答弁のような小さい数字を言うのではない。根本的な思想、対策の置き方が違う。社会保障に対する根本的な政策が違う。ことに社会保障審議会における答申案の趣旨に照らしても、非常な矛盾がある。これは大きな矛盾です。しかしあなた方の案をかりに全部のむとしても、この重要な矛盾を堂々と天下に出されて、これが新社会党だというならば、われわれもこれは一考を要する。
  342. 成田知巳

    成田委員 お答えいたします。すでに私の方から出しております昭和三十年の年末賞与等——等と書いてありますから、御注意願いたい、賞与等に対する所得税の臨時特例に関する法律案というのを出してあります。今松野さんが期末手当をもらう者についてのみ五千円の免税では片手落ちではないかと言われましたが、もしその法律案でありましたら、片手落ちでありますが、そうではない。期末手当をもらう者も、あるいは五千円以下の期末手当しかもらわない者も、全然もらわない者も、一率に給与から五千円を差し引く。それによるところの減税が七十億となっておるから、決して片手落ちではないということを御承知願います。
  343. 松野頼三

    松野委員 ただいまの五千円の減免措置は、残念ながら千五百円のもち代をいただく方には何ら関係ございませんし、失業対策に従事する者は七日間で全額二千円ですから、当然五千円というものは論拠がありません。この方たちは担税能力以下である。私は、ここに階級層という感じを特に持つ。ある層には手厚い政策が行われるが、ある層にはほとんどゼロであるということは、この予算の実態を現わしている。  第二番目に、いただく方の案は非常に不均衡があり、国民階層に対する均衡を失しているとしても、それが実現できるかどうか、歳入の面をお尋ねいたします。本年度一般会計の歳入の自然増収の純増加百億、まずこの問題についてお伺いします。
  344. 今澄勇

    今澄委員 大体この補正案は、予算編成権を持っておらない私どもが編成したのでありますから、その見通しは大体政府の数字を基礎にした腰だめであります。自然増収百億の内訳は、租税の増加が二百十億、専売益金の減少が百二十億、年末調整でマイナスの金が十億、雑収入二十億と踏んだのであります。その算定の基礎を概略御案内申し上げますと、法人税は九月決算期の増加を例年二八%とわれわれは認めておるが、大蔵省は大体二二%と認めておる。その差額二十五億をわれわれは計上いたしました。所得税については、第一番に国あるいは地方の公務員の年末手当が〇・二五で大体百二十億、これに対する所得税のはね返りを三分の一とはじいて大体三十五億、中小企業労働組合の結成による所得の多少の増加、最近の年末手当妥結の現状等より見て、これよりはね返るものが大体二十億、経済の回復からくる農業所得の増加を大体二十億と踏んで、七十五億の所得税の増加補正をいたすわけであります。  間接税については、砂糖の消費税が年間の輸入増加を十万トンと見て大体三十億、それから物品税が、十月中の実績が三十二億、これから類推して大体補正に七十億を組んで、二百十億の租税増収案をわれわれは作りました。これが大体その基礎であります。  もう一つは、たばこの専売益金の減ですが、政府の原案でも大体七十億の減を見通しております。われわれはそれにさらにたばこ消費税の地方配付の五十四億を計上しておりますから、概括して百二十億という数字で、大体百億という自然増収の数字を出した、こういうように御了承を願います。
  345. 赤松勇

    ○赤松委員 日雇い労務者に対して大へん同情のある御質問をいただいたのですが、二百八十二円という単価は、現在の単価である。それから日雇い労務者の年末手当の要求も、やはり二百八十二円を基礎にして十五日分要求しているわけであります。従って党としましては、そういう立場からの修正を出したのでありますけれども、社会党内閣ができたならば・単価の引き上げは必ずやりますから、どうぞ御心配なく。
  346. 松野頼三

    松野委員 ただいまの今澄委員の御答弁は、ここに経済月報の今月号がありますが、これは全国民に公表しているもので、これをごらんになるとわかりますように、どちらかというと、本年は予算に対する徴税率は、上半期〇・七%ばかり下回っている。なお御承知のように、三十年予算は七月一日から三百七十億減税をいたしております。従って下半期は上半期よりも、三百七十億減税の法律を通過させました以上、確かに減収になってくる。従って今後のあなた方の御予想は、まず減税の三百七十億分だけは過大に見積られたのではないか。たばこは御案内のように、最近確かに数量においてはふえておりますが、金額においては減収になっております。その辺が非常に疑問であって、私たちが常識的にどの数字をはじきましても、今日百億という自然増収は不可能であります。もしも後半期に社会党の諸君が大いにたばこをのまれるならば、これはある程度響きましょう。しかししりからやにが出るほどのまなければ、なかなかこれには追いつけない。相当無理な数字が出ている。どの数字を見ましても——新聞の政府公表の数字を見ましても、経済月報を見ましても、これは私が与党であるから、政府を圧迫して新らしい資料を持ってきたのではありません。公表された数字を持ってきておりますが、どうも数字の根拠が疑問であります。これはどうしてもうなずけません。  第二番目に、二十九年度一般会計余剰金の歳入繰り入れの百五十億です。これはおそらく二十八年が四百八億の余剰金、二十九年が三百八十億、これを差し引きまして三百十何億になりましょう。この二分の一を国債に充てて、その残りの二分の一が百五十億に相当する。これを使われるのはよほどのときでなければなりません。財政の原理として、これは翌年の財源に充てているというのが、健全財政をとっている内閣の過去における通例であります。ここが古井委員が来年度予算をつつく理由なんです。百五十億を本年もしも補正予算で食いつぶすならば来年は支障を来す、従ってこの点は是認するわけにはいかない。先ほど伊藤君が一兆円堅持と申されました。あまく見ても、一兆一千億は出てこないでしょう。一兆円も、この百五十億を食ったら、出てこない。これで来年の構想をあなた方はぶちこわしているんだ。政府はあるいは来年の構想を言わなかったかもしれません。政府は来年の重要な百五十億をこういうときに使っていないから、来年も予算を組めるわけですけれども、これを食ってしまうならば、来年は百五十億どこかに穴があく。しからずんば増税をしなければならぬという根拠はこの辺から出てくる。これはどちらかといえば財政法における——不可能じゃありません。財政法に違法するとは私は言いません。しかしこれを食うことは翌年の財源において非常な圧迫が起る。これが第二番目。第三番目に、防衛経費の減額——ちょうど社会党の皆さん方の十月十三日の社会党綱領を拝見いたしますと、ここに新しい問題が実は提起されました。日米安全保障条約及び行政協定は暫時の間認める、また防衛の中にも防衛庁は直ちに全滅するんじゃない、漸減をするという言葉になっておる。来年はなくなりはしないことが明記されている。日米安全保障条約をあなた方ば認められておる。そうなれば、この防衛庁費と防衛分担金という関係は常常この議会で論議されておりますように——認めないとおっしゃるならけっこうであります。認めるとおっしゃるならば、安全保障条約の趣旨は御存じの通りだと思うのです。あえてここで読み上げる必要もありません。自国の防衛を漸増するにつれて防衛支出金、防衛分担金は漸減するというのが趣旨なんです。あなた方がこれを切ってしまうとどうなる。防衛庁費と防衛分担金は——日米安全保障条約は認める。この趣旨を体するならば、またそれに付随いたしまして、日米共同声明が四月十九日に出た。これに私は必ずしも賛成じゃない。しかしながらこれを認める以上は、時の内閣がやったことは、これは国際法上、われわれ全議会人というものは認めなければならない。内閣がかわってこの共同声明を修正するならこれは可能でしょう。あるいは安全保障条約を修正するなら可能でしょう。あなた方でさえ今日の安全保障条約は不満足ながら認めておるということなら、もしもこの補正予算に二百億というのを立てられるならば、防衛分担金の関連として、もしもこの二百億円をほんとうの財源とされるならば、直ちにアメリカ交渉されて、そうしてしかる後にここに計上しなければ国際信義にもとる問題である。勝手にこれを切ることはできないことは、今までの経過がその通りなんです。あなた方が認められないというならばけっこうです。しかし新しい社会党は防衛問題について相当変って参りました。どちらかというと進歩的になってこられた。(笑声)それじゃここにあまり破壊的な共産党が掲げるように、いきなりここに防衛庁費二百億と出されることは少し私は納得できません。  次の賠償問題においても、今日日ソ交渉あるいは外交において、世界の平和の中にいわゆる賠償問題の早期解決はあなた方の方にうたわれているのしです。それなうばこんなものをぼんぼん切って日本とフィリピンの賠億を目の前に控えて、われわれ与党でさえも政府に早く解決しろ、社会党でさえも早く解決しろというときは、いきなりこんなも一のをぽんぽんと切ることは、私は国際的にどうかと思う。一括的に言うと、はなはだ失礼でございますが、その中で一番答弁のはっきりしたものを答弁していただけばけっこうであります。一々私はつっつく意味じゃございません。総括的に言ったのは、この中で一番あなた方が的確に答弁できるものをやっていただけば、事務当局じゃありませんからけっこうであります。それで質問も羅列的にいたしましたが、こういう矛盾がこの中にあるんです。御答弁があれば喜んで拝聴いたします。
  347. 今澄勇

    今澄委員 政策の基本に関する重大な問題は伊藤政審会長から答弁を願うことにいたします。私から今御指摘のあった点について答弁をいたします。  まず第一にわれわれは先ほど申しましたように、専売の益金減を百二十億も見込んでおるのであるから、たばこの問題についてもこれだけの減収を見込んで補正を組んでおるのであって、けっから煙の出るほどたばこを吸わなくても十分やっていける財源があることを御了承願いたいと思います。それから二十九年度の剰余金の繰り入れ百五十億円ですが、これは二十九年度の歳入一兆千八百五十億円、歳出が一兆四百七億円あります。ここで差引剰余金が千四百四十二億円、そのうちの繰り越しの財源が六百五十四億円、差引純剰余金が七百八十八億円、その金額の半分が三百九十四億円あります。この半分を一応財源として使用し得ることにいたしましたが、なおその金額を使わないで、これのまた二分の一以下の百五十億にとどめたことは、基礎的な収支の資料としては、以上のような慎重な態度をとったものであることを御了承願いたいと思います。なおこれは昭和二十四年吉田内閣のときにおいて、この剰余金を繰り込んで予算を編成せられておるわけでありまして、自由党におられた皆さん方ば過去を回想してよく御検討願いたいと思います。  それからなお防衛庁費減額二百億については、予算の現在額千百二億円の中で、九月末でこの支出済みの金額は二百七十四億円、約二割五分の減にすぎないのであります。二十九年度から三十年度への繰り越し額は約二百三十億円もあります。本年は本予算成立遅延の関係もあって、もっと繰り越しがふえる見込みでありますが、この点については皆さん方の代議士会でも意見が出たように、二百億円程度の金額を繰り込むことは妥当であると考えております。  賠償の問題は政府の減額予定は大体三十億になっておりますが、この経費は三十年度百億円、前年度の繰り越しが百九十二億円、計三百二十二億円もあって、本年度分百億円の大部分は明年度へ繰り越される見込みであります。だからかような財源の情勢から見て、五百億円程度の削減は十分いけるものであるという、以上の算定の基礎に立って処置をいたしたことを御了承願います。
  348. 伊藤好道

    ○伊藤(好)委員 ただいまはいろいろ今澄君から答弁申し上げましたが、防衛関係のことだけは多少誤解があるようでありますから、私からお答えいたしたいと思います。私どもが安保条約、行政協定を認めておるというお考えは少し誤解であります。私どもは両条約、協定国会において承認されておる、そういう現実の事実は、これは当然の事実でございまして、だれが何といってもこれを否定することはできないわけであります。ただし私どもはあれはよくないと思っておりますので、これが解消に向って積極的な交渉をいたしたいという考えを持っておるわけであります。従いまして、今日のような日本の地方財政の窮乏の事態においてこれを救済しようという際には、ただいま申しましたような前年度来の実績、ことしの実情に即してまず国会で防衛庁費についてこれを活用するという態度をとると同時に、その減額交渉について先方交渉いたしたい、こういう態度であります。
  349. 松野頼三

    松野委員 ただいまの今澄君の数字については私も相当異論がありますが、あえてここで論議するよりも、いずれ大衆の委員全般の採決でどちらが正しいかきめていただくことに譲ります。(笑声)  それからただいまの問題に関連して、実は来年度予算の構想にちょっと触れます。それは先ほど伊藤さんは大体一兆億と言われた。一兆億の堅持ということは一兆五百億、六百億、いろいろございましょう。しかしながら最も重要な問題は本年皆さん方の措置をいたしますと、交付税が三百十二億、これは来年ふえます。たばこ消費税は本年は五十四億ですが、来年は三百七億国家財政から負担になります。公務員の期末手当七十一億、これも同額といたしましても七十一億ふえましょう。失対事業十三億、これをこのまま平年度化すると三十一億、そのほかに十二月分の五千円の減税を平年慶化しますと、百億円になって、八百七、八十億がこれが来年ずっと同じ物価で同じ単価で持ち越されるのです。そのほかにあなた方は百五十億の財源を食ってしまう。防衛庁の二百億を食ってしまう。賠償等の減額の五十億、これで四百億ばかり収入の面を食ってしまうのです。合せて千二、三百億というものはこのままのものを組んで新しい政策を入れなくても実はこうなってくる。このほかに防衛庁費を切る切ると言われますけれども、これはあなた方が切られるならば、アメリカ交渉しなければいけない問題である。だからいきなり千三百億の防衛庁費がゼロにはしない、漸減でしょう、ゼロになったってとんとんなんです。ましてあれだけのものを一ぺんに首切るならば、それこそ失業問題、退職手当で来年は減るということはありません。かりに全部退職さしてしまっても減ることはありません。退職金だけふえます。そういう関係考えて参りますと、非常にこの問題がずさんであり、しかも財源においては非常な疑義がありまして、せっかくやりましたものもすっかり不可能になる、こういうことが結論的に出てくるのです。歳出面の半面はとにかくきれいな方で、だいぶ不均衡はありますけれども、もらう者はうれしい、もらわなかった者は不満がある。ひっくり返しますと、これはから手形になる、こういう結論になる。あえて小さい数字的なことは後ほどにいたしまして、こういう観点は私は断じてうなずけません。また歳出面のものはほとんど私は無理だと思う。従ってこれは後ほど皆さん方に譲りまして、私の率直な質問に対して非常に御苦心の多い答弁を一応聞きましたので、私の質疑をこれで終りたいと思います。
  350. 伊藤好道

    ○伊藤(好)委員 今現在の日本の景気、現在の日本の物価水準、あるいはその他の条件を前提として考えられる数字的なつじつまとしては、お話のような点がございます。しかし私どもは、日本の経済の来年度における見通しと、私らがこれに対する政策を実施した場合における変化、たとえば歳出面におけるいろいろな削減の問題があります。あるいは増収関係においては、必ずしも増税をするという一般論ではなくて、あるいは直接税に対して奢侈品税を設けるとか、その他特別にもうける方面に対する所得税を重くするとか、あるいはまた不当な大企業、大資本に対する補助金の打ち切りでありますとか等々の施策を、あるいは税制全般について加えることによって、私は移動する条件が出てくると信ずるのであります。従って私どもは、大体の方針をただいま申しましたような一兆円を標準に置いて、なおかつ国民生活を圧迫しないで来年度の予算は組み得る、こういう信念を持っております。
  351. 三浦一雄

    ○三浦委員長 これにて昭和三十年度特別会計予算補正(特第2号)の編成替を求めるの動議に対する質疑は終了いたしました。  本日はこの程度にいたしまして、次会は明後十二日午前十時より開会し、討論採決を行うことといたします。  本日はこれにて散会いたします。    午後五時五十二分散会