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1955-12-09 第23回国会 衆議院 予算委員会 第4号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和三十年十二月九日(金曜日)    午前十時三十四分開議  出席委員    委員長 三浦 一雄君    理事 稻葉  修君 理事 川崎 秀二君    理事 重政 誠之君 理事 西村 直己君    理事 赤松  勇君 理事 今澄  勇君       相川 勝六君    赤城 宗徳君       井出一太郎君    今井  耕君       植木庚子郎君    小川 半次君       加藤 高藏君    北澤 直吉君       北村徳太郎君    河野 金昇君       河本 敏夫君    周東 英雄君       須磨彌吉郎君    竹山祐太郎君       中曽根康弘君    楢橋  渡君       橋本 龍伍君    福田 赳夫君       福永 一臣君    藤本 捨助君       古井 喜實君    松浦周太郎君       三田村武夫君   山口喜久一郎君       山本 勝市君    阿部 五郎君       伊藤 好道君    井堀 繁雄君       岡  良一君    久保田鶴松君       小平  忠君    志村 茂治君       田中織之進君    田中 稔男君       西村 榮一君    福田 昌子君       水谷長三郎君    武藤運十郎君       柳田 秀一君  出席国務大臣         法 務 大 臣 牧野 良三君         大 蔵 大 臣 一萬田尚登君         文 部 大 臣 清瀬 一郎君         厚 生 大 臣 小林 英三君         農 林 大 臣 河野 一郎君         通商産業大臣  石橋 湛山君         建 設 大 臣 馬場 元治君         国 務 大 臣 太田 正孝君         国 務 大 臣 高碕達之助君  出席政府委員         外務事務官         (経済局長)  湯川 盛夫君         大蔵事務官         (主計局長)  森永貞一郎君         大蔵事務官         (銀行局長)  東條 猛猪君  委員外出席者         文部事務官         (大臣官房総務         課長)     斎藤  正君         専  門  員 岡林 清英君     ————————————— 十二月九日  委員山本猛夫君辞任につき、その補欠として加  藤高藏君が議長の指名で委員に選任された。     ————————————— 本日の会議に付した案件  昭和三十年度特別会計予算補正(特第2号)     —————————————
  2. 三浦一雄

    三浦委員長 これより会議を開きます。  昭和三十年度特別会計予算補正(特第2号)を議題として質疑を継続いたします。加藤高藏君。
  3. 加藤高藏

    加藤(高)委員 ココムの問題に関しまして政府の御所見を承わりたいと存じます。朝鮮戦争の終結いたしました現在におきまして、ココムにおいてソ連リスト中国北鮮リストとの間に依然として大きな開きがあるのであります。これは非常に不合理でもあるし、かつまた日本にとりましてきわめて不利益であると私は存ずるのであります。政府はこの差別撤廃についてココムにおいていかなる措置を講ぜられたか、またその見通しはいかがであるか、それをお伺いしたいと思います。
  4. 石橋湛山

    石橋国務大臣 お話ココムの問題はしばしばここで話が出たのですが、これの直接交渉連絡日本側の窓口は外務省なんですけれどもココムの方に通産省としてもむろん関係がありますから人を出しております。これも外務省の役人に身分を切りかえて出しております。最近も一人課長級専門家パリにやってあります。こういうことで極力やっておりますし、それからココム関係者がこちらへこの夏ごろ参ったのでありますが、私もココム事務局長というような身分の人と会いまして、そのときにも十分日本側事情を話し、それからアメリカからフーバー氏等が来ましたときも、やはり話が出まして、外務大臣と同席してココム緩和について極力話をしておきましたが、実際の見通しとしては非常にむずかしいということであります。大体事務的には全面的の緩和とかいうことはむずかしいので、日本としてはケース・バイ・ケースで、特別の免除を受けるという方法でやる以外にはないわけであります。今までもそういうことでやっており、今後もしばらくそういう方法でいくより仕方がない。全体の解除ということは、今まで中共と、ことにアメリカ側との関係の上から非常な神経質になっておることでありまして、とても大きく解除するというような空気は今のところありません。これははなはだ残念なことであります。そこで最近も木造船の問題などが出ておりますが、そういうことについては、一々の品目についてその場合々々で解除を求めていく、そういう方策をとる以外には実際にはないのですから、そういう方法をとっていく、かように考えております。
  5. 湯川盛夫

    湯川政府委員 ココム統制品目緩和ということにつきまして政府としても絶えず努力しておりますが、これは一にかかって国際情勢緊張緩和という問題と関連しておりますので、その機が熟しませんとなかなか十分に実現できません。私どもといたしましては、注意してそういう機の熟するのを見ながら、それとにらみ合せてできるだけ統制緩和ということに努力いたしております。
  6. 加藤高藏

    加藤(高)委員 ただいま通産大臣お話の中に、木造船の問題あるいはまたココム担当官派遣問題等がございました。私先日パリに参りまして、パリココムの本部において担当官の話を聞いたのでありますが、木造船の問題などについては、これは英国軍令部の軍人が来て、この木造船輸出について、日本の対中共輸出についての反対をしたというような話を聞いたのであります。ただいま一名課長級の方を御派遣になったと言っておりましたけれども各国ココム担当官を見ますと、イギリスが十五名、その他いずれも十数名の係官が派遣されておるようであります。日本は現在、この十月聞きましたのですが、わずか四名しか派遣していない、こういう状況である。しかもその四名の方がこのココム禁輸物資の全部の専門家でもございませんし、いろいろの問題が起りました際に、一々それについて解明することができない、こういう状況にあります。ただいま、今後将来ともやるとおっしゃいましたけれども政府熱意が足りないんではないか、こういうように考えるものでございます。少くともやはり各国並みに十名以上の、あるいはまたそのときそのときに応じて日本から専門家派遣する、そういう措置が私は必要ではないか、こう考えるものでありますけれども、これに対しての政府の御所見を承わりたい。
  7. 湯川盛夫

    湯川政府委員 お答えいたします。各国代表部の人数でございますが、なるほど十名以上持っているところも一つか二つはございます。しかし多くは大体日本と同じないしはそれより少い代表部でやっております。ただいろいろな問題の際に、専門家本国から呼ぶということは非常にやっておりまして、ただいまお話イギリスが十五名おったというのは、おそらくその専門家委員会というのが開かれたときに、本国から見えたんだろうと思います。日本でも、たとえば船の問題だったらば運輸省の造船関係の方に来てもらったこともございます。また最近は、先ほど通産大臣の言われましたように、特に機械なんかが一番問題になりますので、機械専門家派遣しております。当初に比べれば相当日本代表部も増強されました。また今後必要に応じてそういう専門家会議の開かれますときは、できるだけ適当な専門家派遣したい、こういうふうに考えております。
  8. 加藤高藏

    加藤(高)委員 本年に入りましてからの調査によりましても、西ドイツ、あるいはイギリス、フランス、ベルギースイス等は、別表でただいま読み上げますけれども中国禁輸物資相当数量輸出しておるのであります。これらの特免物資について日本も同様の措置をとるように私はお願いしたいと思うのでありますが、どうもその御熱意が欠けているように見受けられるのであります。たとえば品目を読み上げてみますと、おもなるものでも、イギリス鉄板輸出しております。またベルギーにおきましては、電動機電線スイス計測器、その他国別はわからないのでありますけれども自動車等相当輸出をしておる実情であると聞いております。ことに対中国貿易といいますのは、御承知のように、海を接している国でありますので、もう一段努力する必要があると私は存ずるのでありますが、この点につきまして、今までのお話でありますと、あまりに形式的でありますので、もっと具体的にこれをやるかどうかという点についての通産大臣の御所見をお伺いしたいと思います。
  9. 石橋湛山

    石橋国務大臣 ココムに限らず海外にいろいろ行っておりますと、日本が手薄であるという感じは確かに受けます。これは今までの予算関係とか、いろいろのことからそういうことになっていると思いますが、できるだけ手薄でないように、日本の財力の許す限りにおいて、外務省にも勉強してもらい、大蔵省にも勉強してもらって、人を大いにふやしたい、かように考えております。  それから今の、どうも日本以外の国の西独とか英国からは日本から輸出してない多くのものが大へん出ておるということをしばしば聞くのですが、不思議なんです。日本亜鉛鉄板のごときは、現に五千トンでありますか、特別の許可を受けまして出すことになっておるのです。あの特免といいますか、特別の許可というものは一々公表しないもののようでありますから、各国とも実際はわからないことはないけれども、表向きにはわかっていないはずであります。しかし日本はその特免を受けた数からいうと、昨年夏ごろ以来ずいぶん多いのでありまして、決してほかの国に比較して少い方ではないと私は思っておるのです。それがどうもわれわれの知らないものが西独英国から出ておるということは不思議なんです。どういうことでありますか、これはあるいは密輸であるか何であるか、その辺もわからないのでありますが、むろんわれわれも決して熱意を持っておらないのではないのでありまして、しょっちゅうこの問題については外務省と打ち合せて通産省としても努力をしておるわけでありますから、さらに実情を調べまして、今申すように、もしお話のように、ココムに対する人手が足りないということでありますれば、これは一つ増員するように努力したいと思います。
  10. 加藤高藏

    加藤(高)委員 ただいま通産大臣はいろいろなものが中国輸出されておるという点について、不思議であるということをおっしゃいました。けれども、それは一面におきまして日本政府努力が足りない、こうも言えると私は思うのであります。そうした点におきまして、さらに一段努力日本産業発展のためにお願いしたいと思います。かりに例をとりまして、ソ連東欧圏並み貿易品目が許されるといたしますならば、大部分が可能になるのでありまして、そうした場合におきましての日本産業全般に及ぼすところの影響は非常に大きいものと考えますので、なお一段の御努力をお願いしたいと思います。  なおこの際一点お伺いいたしたいと思いますのは、北鮮との貿易問題についてでございます。ただいま李ライン問題によりまして、日韓両国国際関係は非常に悪化しておるのでありまして、一部には経済断交までの世論が出ておるわけであります。この際日本といたしましては、それに対抗する意味におきまして、北鮮との貿易を開く御意向があるかどうか、これについてお伺いしたいと思います。
  11. 石橋湛山

    石橋国務大臣 北鮮との関係は、御承知のように、非常にデリケートでありまして、外交等の大局から見て、果して今日本北鮮と積極的に貿易関係を開くというような政策をとるのがいいかどうかというのは、疑問だと思うのです。そこでまだ実は通産省としては状況を見ておるわけであります。まだ政府として北鮮との貿易関係を積極的にこの上に多くしようというふうな考えを持っておりません。しばらく情勢を見てからでないとこれは決断ができない、こう考えております。
  12. 加藤高藏

    加藤(高)委員 ただいまのお話ごもっともでありますけれども、そうしたことを一応表示することによりまして、現在非常に悪化しておりますところの日韓両国間の関係において、韓国側意向を牽制する意味にもなるのではないか、こういうように考えますので、この点につきまして外務省の御所見を承わりたい。
  13. 湯川盛夫

    湯川政府委員 先ほど通産大臣から言われましたように、政府としましては韓国との関係をできるだけ早く正常化したい、こういうことで全力をあげているわけでございますが、そうしたことに今直ちに北鮮との貿易を認めるということはやはりどうしても障害があるというふうに考えられますので、今のところは北鮮との取引は認めないということでやっております。それをやればかえって牽制することになるかどうかという点については、現在の判断では、むしろそういうことをしないで、韓国との関係正常化をできるだけ早くしたい、こういう方針でやっておるというふうに私どもは了解しております。
  14. 加藤高藏

    加藤(高)委員 北鮮貿易の話に触れましたが、その点についてもう一点。北鮮からの引き合い電線あるいは紙その他印刷インク等相当大量な引き合いがきておるように聞いておるのです。その点も一つ通産大臣といたしまして、将来外交問題と切り離してこの北鮮との貿易問題をお考えになる御意思があるかどうか、その点を一つお伺いしたい。
  15. 石橋湛山

    石橋国務大臣 貿易は商売だから政治と切り離してということも一応理屈としては言われることで、われわれもすでに言うておるのでありますが、実際問題としては、中共に対する貿易でも、御承知のように、政治問題がからんでおりまして、なかなかめんどうな関係になる。北鮮に至ってはそれこそ今の韓国関係もありましてそう簡単には片づけられないが、これは向うのいろいろの事情もありましょうし、日本としても北鮮から持ってくれば持ってこられるものもあると思いますけれども貿易だけの問題を切り離してやるというわけにはいかないと考えておりますので、一つ外務省の方の外交関係とも十分打ち合せて善処したい、かように考えております。
  16. 三浦一雄

  17. 福田昌子

    福田(昌)委員 おもに社会保障についてお伺いさしていただきたいのでございますが、その前に経済企画庁の長官にお伺いいたしたいと思います。  ことしの一月経済六カ年計画を御発表になりましたし、そしてまたそれを基調にいたしてお作りになったと考えられます今度の三十年度予算根本精神も、これは健全財政拡大均衡予算であり、そして民生安定向上予算だということを御説明になられました。その趣旨ですでに行政的に六カ月以上政治がなされたわけでございますが、結果的に見まして、経済六カ年計画初年度であることしの民生安定というものが計画通りに行っているかどうか、この点につきまして高碕長官大蔵大臣の御意見を伺わせていただきたいと思います。
  18. 高碕達之助

    ○高碕国務大臣 六カ年計画は本年一月発表いたしまして以来、その後の経済情勢の変転に応じまして、さらに経済審議会においていろいろ検討いたしまして、ようやく十二月五日にこの答申が出たのであります。これによりますと、民生安定についての厚生計画等相当織り込んでおるわけでございまして、特に住宅問題におきましては、六カ年を期しまして二百七十万戸を完成いたしたい、こういうことでやっておるわけでございます。一方食糧の増産におきましても、六カ年間に千三百万石の増産を達成する、同時に食生活の改善をするということに相当計画を織り込んでおるのであります。その他低所得あるいは生活保護を要するという方面の方々のために、社会保障強化生活保護保健衛生対策強化等につきましてやっておるわけでございまして、ちょうど前厚生大臣川崎さんがやっておりました社会保障六カ年計画も最近に完成するわけでございますが、これとにらみ合せて根本方針を立てまして、その根本方針に従って三十一年度の予算措置等も講じたい、こういう考えでございます。
  19. 一萬田尚登

    ○一萬田国務大臣 六カ年計画予算関係でありますが、六カ年計画答申もごく最近出たわけでありますが、できるだけこれは予算計画とが一致していくように、ただいま経企長官とも相談をいたしておるわけであります。
  20. 福田昌子

    福田(昌)委員 私はこの六カ年計画初年度であることしの予算の御決定後、その予算が実行されてからすでに半年以上もたちますから、その結果が民生安定の面でも、健全財政の面でもどういうことになっておるか、結果がどういう形で現われて参ったかということを、伺わせていただきたいと思って御質問申し上げたのであります。その結果についての御感想を伺いたいと思います。
  21. 一萬田尚登

    ○一萬田国務大臣 六カ年計画を遂行いたしました結果、民生安定にどういうふうな関係を持っているか。大体今後におきまして、予算編成——この六カ年計画も同様でありますが、健全な財政を組んでいく、この上から見て、どうしても民生の安定の方向に力を予算の面においても注がねばならぬと思います。こういうふうな見地から、今度の予算編成基本方針を決定するに当りまして考慮を加えていこう、かように考えておるわけであります。
  22. 福田昌子

    福田(昌)委員 民生安定の上に考慮を加えるという形で予算をお組みになりまして、それで三十年度はすべり出しているわけですが、その結果、民生安定の上にどういう結果が現われたかということを伺ったのであります。民生安定の向上にどれだけ役立って、どういう形で現われて参ったかということをもう少し具体的に御説明いただきたいと存じます。
  23. 一萬田尚登

    ○一萬田国務大臣 六カ年の初年度計画を実行した結果、三十年度において民生安定にどういうふうな効果を与えておるか、こういう御質問であります。これはこの三十年の予算におきましても、六カ年計画初年度において民生の安定に対する、たとえば社会保障費というものも相当な増額をいたしております。これが千億をこえるという状況であります。これが当然民生の安定に寄与しておるということは、今ここで一々こうこうと言うわけにいきませんが、言うまでもないことであります。
  24. 福田昌子

    福田(昌)委員 内閣責任を全部大蔵大臣に背負わせるということは、これはまことに酷なことでございまして、慎しまなければならないことだと思いますし、民生安定の点を大蔵大臣責任にまかせる、これを大蔵大臣だけに追及するということは、私も慎しまなければならない問題だと思います。しかし全般的な内閣措置として考えてみますと、せっかく民生安定、向上予算だといって打ち出されました政府の三十年度の予算による行政の結果を見ますと、遺憾ながら、民生安定どころか、非常な民生不安定な結果が今日出てきていることはいなめません。御承知のように、失業者はますます増加の一路にあります。浮浪者もまた、これはもうあえて統計を御明示いただかなくても、町を歩いていても、浮浪者増加していることは目に見えて明らかでございます。こういうような姿は、決して民生安定向上とは言えないのでございまして、かような点をお考えいただきました場合、今度の三十年度の予算というものは、社会保障的な面において非常に前進した予算であったとは絶対に言いがたいのでございます。かような意味において、私は三十一年度の予算編成においては、もっとまじめに社会保障というものをお取り上げ願いたいということをお願い申し上げておきます。  高碕長官お急ぎのようでございますので、先に高碕長官に対する御質問をさせていただきたいと思いますが、経済六カ年計画によりますと、その最後の年には、完全雇用の制度をもって少くとも完全失業者は四十五万程度に押えたいという御意見のようでございますが、この完全雇用への方向完全失業者を四十五万に押え得る、その御構想についてもう少し具体的に伺いたいと思います。
  25. 高碕達之助

    ○高碕国務大臣 お答え申し上げます。六カ年後における日本人口が大体五・五%増加するわけでございます。これに対し就労すべき、つまり労働を要すべき人口というものは非常にふえまして、約一二%ふえてくることになっておりますが、これに対して私どもは、失業者吸収する方面から申しまして、これは一二・七%吸収しよう、こういう方針で進んでおりますから、ただいまの完全失業者が大体七十万と見ておりますが、その意味から申しますと、増加する人口増加する従業員等に対しまして、つまり〇・七%失業吸収率をふやす、この計画で進んでおりますから、今の七十万を五年先には四十五万に減すことができる、この数字を基礎にして進んでおります。
  26. 福田昌子

    福田(昌)委員 御構想はよくわかるのでございますが、実はもっと具体的な御説明をいただきたいと思うのでございます。どういうふうな産業構造規模拡大において、どういう形において労働人口吸収していくというという具体的な御措置を伺わせていただきたいと思います。
  27. 高碕達之助

    ○高碕国務大臣 今ちょっと数字は手元にございませんが、大体第一次産業、つまり農業方面に現在のパーセンテージの四%程度吸収する。それから第二次産業の方につきましては、これはたしか一八%と記憶いたしておりますが、一八%程度吸収する。第三次産業につきましては、ラウンド・ナンバーによりますと、大体二〇%程度ということにいたしまして、そうして先ほど申しました一二・七%にしよう、こういうふうに計画しております。——ただいまの数字は多少違っているかもしれませんから、御了承願います。
  28. 福田昌子

    福田(昌)委員 実は経済六カ年計画をお持ちいただいたということは、非常に大きな進歩だと思うのでございます。しかしその計画の内容を私どもが検討させていただきますと、その産業規模構造におきましても、労働人口吸収におきましても、完全失業者の消滅の点におきましても、私ども考えましてもきわめて甘い構想だと考えられるのでございます。こういう形では、年間少くとも百万以上膨脹して参ります日本過剰人口に対する労働力吸収というものは、そう簡単には参らない、こういうような計画では、とても完全雇用の暁にはいつまでたっても到達しないと私たちは考えるのでございます。これは私ども見解のみではございませずして、朝野の新聞がそのことを非常に心配いたしております。経済六カ年計画をお立ていただいたその政府の御見解でただ一つ当てになるのは、人口増加率だけだということを申しておりますが、全くそうでございます。人間がふえてくる、このことだけは経済企画庁の御計画はぴったり当っているようでございますが、その他の産業構造規模において、また労働人口吸収という点につきましては、はなはだ疑問がございます。私はこういう点につきまして、もっと日本の膨大な人口過剰に対する抜本的な対策、この人口過剰によってさらに増加する労働人口吸収というものに対してもっとまじめな政策をお考えにならなければ、日本経済自立というものは非常に困難だと思います。きょうはその産業構造についての御質問は控えさせていただきまして、私は人口問題についてのみ触れさせていただきたいと思います。そういう人口過剰に対して政府としてはどういう対策をお考えになっておられるのか。人口問題というものはこれまで割に軽視されておったと思うのでございます。しかしあらゆる経済問題というものは、すべて人口の過剰に関して目をふさいでおっては解決ができません。従ってこの人口過剰に対してはもっと積極的な措置というものが急務でございますが、これに対してどういう御計画をお持ちであるか、この点を少し、これは無理かと思いますけれども、高碕長官にお伺いさせていただきたいと思います。
  29. 高碕達之助

    ○高碕国務大臣 どうも人口問題というのは非常に重大な問題でございまして、先ほど人口増加ということは企画庁の計画中間違いないものだ、こういうお話があったのでございまして、実はこれははなはだ申しわけないわけでありますが、日本で一番信頼しておりますこの現在の統計におきましても、この一月私ども考えておりました数字と、現在調べますと、六年後は予定よりも五十万減る、こういう数字が出て参りまして、その前途を予測することは非常に困難でございます。これに対してどういういふうに民生を安定せしめるかというふうな、産業構造等につきましては、日本の現在におきます経済の立て方が大体外国依存でございまして、海外の状態によって変更することが多いものでありますから、非常に困難がありまして、私はこれに打ちかつために全精魂を打ち込んでやっておるわけなんでございます。そういう点から考えますと、これは内閣全体の意見と申しましてはどうかと思いますが、私個人の意見を申し上げますことを許していただきますれば、現在の人口をこのままほうりっぱなしにしておいてはとても解決できない。どうしても家族計画というものを立てなければならぬ、こういうことをおぼろげながら感じまして、これを逐次協議いたしまして政策に織り込んでいきたい、こういう考えでおります。
  30. 福田昌子

    福田(昌)委員 人口増加率が経審の御計画よりも六年後には五十万少くなるということ、これはもう日本人口過剰の状態からみますと大へんけっこうなことだと思うのでありますが、私はそれもまた結果を見なければはっきり言えないと思います。その人口過剰に対する政策一つとして、受胎調節運動を強化されるという御意見でございました。これは当然のことでございますが、受胎調節だけによりまして人口過剰の抑制をはかるということには限度がございます。たとえば五人の子供を三人に規制するということはできることでありますが、三人の子供を一人ずつにしようというような極端なことは、いかに運動してもできないことでございまして、受胎調節運動にも限界があるということが考えられます。かような見地から考えまして、私はただいまの御答弁の、六年後には予定よりも五十万少い結果になるということは、必ずしも信憑性がないと考えざるを得ないのでございます。当面の問題といたしまして、受胎調節をお取り上げいただきましたが、これに対して具体的にはどういう措置をおとりになるお考えであるか、この点お聞かせをいただきたいと思います。従来でも人口過剰には受胎調節運動が必要だということは、耳にタコができるほど伺いました。しかし予算措置を見ますと、年間せいぜい五、六千万円。八千万から九千万の国民に対する受胎調節運動の費用が五千万から六千万ばかりではお話にならないのであります。こういうような予算の使い方では、口だけで受胎調節運動を推進するとおっしゃっても実効が伴いません。予算措置にどういうお考えを持っていられるか、この点につきまして大蔵大臣の御見解を伺いたいと思います。
  31. 一萬田尚登

    ○一萬田国務大臣 人口政策につきまして具体的な案ができますれば、これは私は非常に基本的な問題と思いますので、予算的にもむろん考慮を加えるつもりでございます。
  32. 福田昌子

    福田(昌)委員 大蔵大臣にあえてお伺いいたしましたのは、大臣はいろいろと御用件が多いととですから、こまかなことにまでお気づきにならないと思うので、人口問題、受胎調節の問題はないがしろにできないという点において、御関心をお持ちになっていただきたいと思ってお尋ね申し上げたのでありますが、具体的には厚生大臣の御見解を伺いたいと思います。
  33. 小林英三

    ○小林国務大臣 人口問題が戦後のわが国におきまする最も重要かつ困難な問題でありますことは、ただいま御質問の中にもございましたが、最近発表されました本年度の国勢調査の中間報告によりましても、わが国の人口はすでに八千九百万を突破いたしております。このままで参りますと、十年後には一億を突破するかと予想されるのであります。狭小な国土におきまして、このような過剰人口をかかえまして、しかも経済の自立と雇用問題の解決を今後はかっていかなければならないことを考えますときに、政府といたしましてもこの問題は真剣に検討しなくてはならぬと思います。厚生省におきましては、御承知のように、さきに人口問題審議会を設置いたしまして、各界の権威者によりまして、これが対策等につきまして十分審議を願いました結果、ただいままでに人口の基本的調整に関する決議及び人口収容力に関する決議等を得た次第でありまして、今後これらの決議等を参考にいたしまして、さしあたり当面の緊急施策といたしましては、家族計画施策を強力に推進いたしますとともに、人口の収容力の点につきましては関係各省とも十分協議いたしまして、広く経済政策全般の立場から最も効果的な施策をいたしたいと存じておるのであります。
  34. 福田昌子

    福田(昌)委員 ただいま厚生大臣から御答弁いただきましたことは、もう過去、この民主国会が始まって以来問題になっておることでありまして、私どもはここ五、六年来耳にタコができるほど聞いて参りました抽象的なお言葉でございます。私が伺っておるのは、そういう抽象的な段階ではないから、積極的に、予算的にどういう御措置をなさるかということでありまして、その行動できる具体的な構想をこの際伺いたいと存じます。
  35. 小林英三

    ○小林国務大臣 この問題はなかなか一口には申せないほど重大な問題でありますから、政府といたしましても特に予算等の処置も得まして、慎重にやって参りたいと思います。
  36. 福田昌子

    福田(昌)委員 その予算を少くともどの程度にお考えになっておられるかということを伺ったのでございまして、すでに今月の二十日ごろには最後的な決定もなさろうかというようなことを伺っておりますが、大体の目安はおありだと思うのでございますから、その御計画を伺わしていただきたいと思います。
  37. 小林英三

    ○小林国務大臣 厚生省といたしましては、いわゆる家族調整をいたしまして、そうして厚生省の所管の範囲内においてやって参りたいと思っております。その他の問題につきましては各省と連絡をいたしまして、人口問題に対して解決いたしたいと思います。
  38. 福田昌子

    福田(昌)委員 大へん御慎重におかまえになりして、今なおこれから御研究なさるということを伺いましたが、私どもといたしましては、この問題はそう研究ばかりしていただいておっては大へんな問題だと思います。なぜかと申しますと、人口動態の上から考えましても、日本の現在におきましては一分間に少くとも三、四人の赤ん坊が生れておりす。私が質問を始めましてからもすでに何人かの赤ん坊が生まれましたでしょう。こういうような急を要します状態においてのんびりと、これから人口対策は研究いたします、受胎調節の予算もこれからゆっくり考えましょうでは、間に合わないと思うのでございます。これから御研究をいただくそうでありますから、私はできるだけ早急に御研究をいただきたいと思いますが、その御研究の資料のために意見を申し上げておきます。大体昨年度は、この受胎調節運動というものが必要だからといって私ども大いに主張いたしまして、非常にささやかな、これなら政府も実行できるであろうという予算要求として、約二億あまりのものを要求いたしたのでございます。ところがこのわずかばかりの二億というものがばっさりと削られて、結果的に出されたのは五千八百万円程度予算措置しか決定できなかった。これでは実際において何もできないということがいえるのであります。こういうようなずさんなことを、しかも来年度もまた繰り返されるということであれば、人口対策に対して政府が積極的な意図を持っておるなんというのは、はなはだ失礼でございますが、私は全くうそっぱちだと申し上げなければならないと思うのでございます。いろいろな予算面で御支出も多いと思うのでありますが、この予算の全貌をよく御検討いただきまして、むだな使い方はお慎み願いたいと思うのであります。たとえば出産、乳幼児の死亡、こういうものだけを取り上げて考えてみましても、今日生活保護法の医療給付というものは増大の一路にございます。ところがその医療給付の内容を考えてみますと、生活保護世帯における出産、乳幼児の養育費、乳幼児の死亡葬祭料というようなものにも相当の費用を使っておられますが、この費用だけでも年間六億から七億をこえておるのでございます。こういう生活保護世帯における出産、乳幼児の死亡——生活保護世帯でありましても、かわいい子供は生みたいでしょうし、育てたいでしょうし、これを生んではいけない、育ててはいけないというようなことは、絶対に慎しまなければならない問題であって、そういうことを取り上げてはならないと思うのでありますが、しかし、生まれて死ぬ、死ぬというととは、栄養失調もありましょうし、手が届かなくて死ぬのでありますけれども、そういうような費用に年間六億も七億も使っておるということを考えますと、私はこういう点を抜本的にお考え直しを願いたいのであります。そういう費用はむしろボーダー・ライン、たとえば生活保護階級の受胎調節の費用に積極的にお回しになれば、今日の人口過剰に対しても幾ばくかの措置がとれると思うのであります。従いまして、こういう予算の今日まで使われております内容の御検討も十分されまして、受胎調節にはもっと適正な効果のある措置をお取り上げ願いたいと思います。私はこの点につきまして重ねて大蔵大臣の御決意を伺っておきたいと思うのでありますが、せめて二億か三億の受胎調節の費用ぐらいはことしは御決定いただくということを、ここに御言明願いたいのであります。この点についての大蔵大臣の御所見を伺います。
  39. 一萬田尚登

    ○一萬田国務大臣 子供が生まれてそれが死亡したり苦しむということよりも、出生率を適当のところに置く、その施設をするということは私は合理的だと思います。従いまして、ほんとうに子供を生まないということでありますれば、これは考えてよろしいのですが、やはり今のところ、やっても生むということであれば、これはむだになります。この辺をしっかり見きわめてやっていきたいと思います。
  40. 小林英三

    ○小林国務大臣 ただいま福田委員から非常に貴重な御意見を拝聴いたしました。厚生省といたしましても、人口問題の解決の一助といたしまして、生活困窮者等につきましては、来年度は本年度よりよほど過大に予算を請求しておりまして、器具等を無料で給付するというような方法もとっておるのでございます。
  41. 福田昌子

    福田(昌)委員 大蔵大臣も私の意見に半分ほど御賛成いただいたようでございまして、半分は、指導したって生むのはしようがないじゃないかという御意見でございましたが、これは大蔵大臣と私ども見解を異にするのでございます。指導の方法が悪いから、指導が足りないから無理な子供を生んでおるのでございまして、予算的に十分措置をなされば生まないで済む、生まないような指導が十分できるはずでございます。従ってこの点よくお考えいただきまして、何と申しましてもわずかな予算でございます。一兆円をこえる国家予算から見れば微々たるものでございますが、しかし日本人口過剰対策から見れば非常に大きな力を発揮するこの二億か三億ぐらいの金、これぐらいの金はことしだけは英断をもってぜひ御決定願いたいということを重ねて申し上げておきます。大蔵大臣の御決意をこの際はっきり固めていただきたいと思います。
  42. 一萬田尚登

    ○一萬田国務大臣 これは別に大蔵大臣の決意というほどのことでもないのでありまして、事態がきわめて明白でありますれば、決してそうむちゃに、予算を削って支出を惜しむというわけではありませんが、重点的に十分検討を加えていきたい、かように御了承願いたいと思います。
  43. 福田昌子

    福田(昌)委員 事態が明白であれば十分検討を加える、決意をするほどの問題でもないというお話でございましたから、私どもはそのお言葉を了といたしまして、大蔵大臣の良心に訴えまして、今三十一年度の予算措置に非常な期待をいたしております。  次にお伺いさしていただきたいのは……。
  44. 三浦一雄

    三浦委員長 福田君にちょっとお諮りしますが、経済企画庁長官にはまだ御質問なさいますか。
  45. 福田昌子

    福田(昌)委員 まだちょっとございますけれども
  46. 三浦一雄

    三浦委員長 まだありますか。ではどうぞお続け下さい。
  47. 福田昌子

    福田(昌)委員 人口問題に関連いたしまして重ねてお伺いいたしますが、労働人口という点を考えますと、今日のように停年制が五十五年にしかれておりますと、それ以上は働く職場というものが非常に困難になりますけれども、この停年以上の、しかも健康な働く能力のある労働者に対してどういう措置をお考えになっておられますか。この老年の労働力吸収という点についてどういうお考えを持っておるか、この点高碕長官の御見解を伺わしていただきたいと思います。
  48. 高碕達之助

    ○高碕国務大臣 経済計画におきましては、これは十四歳以上を——大体その人口の六七・七%が働くというものの、その数字をとっておりまして、五十五歳以上とか六十歳以上とかいうものについては制限を加えておりません。
  49. 福田昌子

    福田(昌)委員 大まかに、制限を加えていただいていないそうでございますけれども、実際に停年になれば職場がなくなるということになりますし、今の就職難の時代にはそう働く場所もないということになりますが、そういう人たちに対する特別な御計画としてどういうお考えを持っておられますか。もしおありでございましたら伺わしていただきたい。
  50. 高碕達之助

    ○高碕国務大臣 現在大体五十五歳の停年となっておりますが、私どもが七十歳になってまだこういうふうに働いておるというふうなところに、少し間違いがあるような気もいたします。(笑声)このことにつきましてはよく検討を要する点があるだろうと存じますが、遺憾ながらまだ私はその点につきましては、よく検討をいたしておりませんからお答えいたしかねます。
  51. 福田昌子

    福田(昌)委員 その点よろしくお願いいたしますが、老年労働者の職場という点についてはよく御検討をお願いいたしたいと思います。  人口抑制策にまた返ってお尋ねいたしたいと思うのでありますが、人口抑制策の一つとして受胎調節をお取り上げいただいておりますが、遺憾なことには、何と申しましてもこれが有識者の階級にのみ主として普及されておって、あまり——貧乏しておるから優秀ではないとは言いがたいのでありますけれども、貧すれば鈍するということもありまして、貧乏して参りますれば環境的にもだんだん優秀でなくなって参ります。そういう家庭に子供が相変らずできているという状態、さらにまたもっと大きく優生学的に研究いたしますと、優秀ならざる素質のある家庭、精神病者とか遺伝的な犯罪傾向のある家庭の子孫の増加率というものが、今日非常に高いのでございますが、こういう優秀ならざる素質を持った家庭の出生の増加率に対して特にどういう措置をおとりになるお考えがあるか、この点を厚生大臣に伺いたいと思います。
  52. 小林英三

    ○小林国務大臣 お答えいたします。優秀ならざる家庭の子孫はなるたけ減らしていって、優秀なる子孫をふやしていくということが最も望ましいことでありますけれども、これを選択するということはなかなか容易ならざる問題でございまして、この点につきましては将来十分研究いたしたいと思います。
  53. 福田昌子

    福田(昌)委員 将来大いに御研究下さるというお話でございましたが、それはもう御研究なさるには及ばないのでございまして、現在ございます優生保護法を予算的に御活用願えるならば即座にできることでございます。受胎調節の運動におきましても非常に困っており、そうしてまた、あまり知能が優秀でない階級に積極的な指導方法を突き進んで普及していただけばいいことでございますし、またもう一つ、今遺伝的な精神病に対しましては、優生保護法で規定されております断種手術を、今後相当予算措置を講じてやっていただけば目的を達することでございます。また遺伝的な犯罪者というものも、これは断種手術をするということが優生保護法できめられておるのでございますが、遺憾なことには、これまで刑務所に入っておる遺伝的な犯罪者に対しまして、断種手術をなされたという例を一回も聞かないのであります。外国では人口増加に対しましても、優秀な民族の増加ということを考えておりまして、悪質遺伝に対しては相当英断をもって措置がされておるのでございます。断種手術もされておる。アメリカのような物の豊かな、そしてまた土地も広い国でさえ悪質遺伝に対しての断種手術というものが相当大幅に強行されております。ところが日本では毎年々々こういう措置というものが非常にお情的で、ほとんどなされていないということさえ言えるのでございまして、遺伝的な精神病患者に対しましても、年間わずか千名足らずの人がどうにか優生手術を受けているというような状態でございます。遺伝的な犯罪者に対しては、先ほど申し上げたように、ここ数年来一例もないというようなことでは、私は日本人口政策において非常な落度だと思うのでございます。従いましてこういった遺伝的な悪質遺伝を持っておりまする人に対する断種手術というものに対しましても、今後予算措置を講じて、政府としてこれに対して御熱意を持っていただきたいと思います。この点に関しても大蔵大臣と十分御相談されまして、厚生大臣予算措置を大幅にお考え願いたいと思います。大体学者の伝えるところによりますと、精神病患者で強制断種手術を要する者は、少くとも二十万はあるということがいわれておるのですが、二十万どころか二万人も日本ではなされたことがなく、二千人もそういうような該当として考えられたことはないのであります。千名足らずの者しか考られていないということは、これは非常な問題でありますから、この点お考え願いたいと思います。  さらに法務大臣にお願い申し上げておきますが、今も申し上げましたように、遺伝的な犯罪者に対する断種手術というものは一例もなされていない。これは刑務所の医官がもっと積極的に民族の優秀性、犯罪防止というものを考えれば、医官の申請によって処置される点でありますから、この点も具体的にお考えいただきまして、そういう遺伝的な犯罪者に対する人口政策上の措置というものを今後積極的におとりいただきたいと思います。これに対しての法務大臣の御意見も、できたら伺わしていただきたいと思います。
  54. 牧野良三

    ○牧野国務大臣 お答えを申し上げます。福田さんからそれに関する御質問があるというので、どういう用意をしたらいいかと思っていたのでありますが、今承わりますと、法務行政の中で御説のような方面にはきわめて手が行き届いておりません。日本の法務行政はあまりに形式に流れて、そういう方面に関する行き届いた施設ができていないということは非常に残念でありますから、明年度からは私がその方面にできるだけの力を入れまして、遺伝的な方面、精神衛生の方面というものに特別な考慮を払いたいと思いますから、何とぞ御支援を賜わりたいと存じます。
  55. 福田昌子

    福田(昌)委員 経済企画庁長官がお急ぎでいらっしゃいますから、私は経済企画庁長官に対する質問はこれで打ち切らせていただきたいと思いますが、ただ一点だけ、経済六カ年計画をお立ていただいて民生安定のため非常に御心配いただいたのですが、結果的には、今申し上げましたように、浮浪者も年々増加しておるし、生活保護法の該当者もふえて、最近は東京都内だけを考えてみましても、最低月平均千人以上が生活保護世帯に繰り入れられているという現状でございますが、こういうような事態がなぜ起って参ったとお考えになっておられるか。こういう貧困家庭がふえて参った、失業者がふえて参ったということに対するその理由についてどういうお考えを持っておられるか、この点伺いたい。
  56. 高碕達之助

    ○高碕国務大臣 この点は私は現状は確かに今のお話のごとくになっておるということを非常に遺憾に感ずる次第でございますが、私ども最初予定いたしておりましたことは、全体の生産が増加してくれば需要がふえる、そうすればそこに労働力吸収もあれば、失業者の数も少くなり、また不完全失業者も収入がふえるからよくなるだろう、こういうところで非常な期待をもってこの一年間やってきたのでありますが、これははっきり申し上げますと、ほかの経済現象は私どもの予定以上に進展いたしておりますが、失業者の問題につきましては、私どもの予定しておったよりも比較的多いというところに、その欠陥があると存じますが、この意味から申しまして、今後の方針は一方産業の合理化、生産の向上ということをいたしますと同時に、失業対策あるいは社会厚生施設というものにつきましては、さらに一段考慮を払う必要がある、こう存じます。
  57. 福田昌子

    福田(昌)委員 高碕長官の非常な御努力にもかかわりませず、結果的には今のような民生安定向上とは逆行するような民生不安の状態が出て参ったのでございますが、これは今も長官がお認めいただきましたように、やはりこれは何と申しましても経済政策に齟齬する点が出て参った、今までのお考えが多少甘かったということも失礼ながら申し上げざるを得ないのでございます。こういう点にお考えをいたされまして、来年度の予算措置におきましては、私はこういう民生安定の点についての御考慮を十分お払い願いたいと思います。こういう点については私どもといたしましては、それは経済政策の根本政策におきまして政府与党の先生方とは意見を異にいたしておりますが、しかし今日の問題そのものを考えますと、何と申しましても民生安定にはもっと社会保障制度というものを極力推進させなければならぬということは、当然なことであります。ことに資本主義を標榜される保守党の政権下にあっては社会保障というものこそ、民生安定の——その不幸を助ける一つの大きな政策でなければならないと思います。従って社会保障というものは政府として非常に大きくお取り上げになってしかるべきだと思うのでございますが、これに対する今後の御構想を伺いたいと思います。
  58. 高碕達之助

    ○高碕国務大臣 お答え申し上げます。先ほどちょっとお答え申しましたごとく、前大臣の川崎厚生大臣が非常な熱意をもって社会保障六カ年計画というものを立てられまして、現大臣においてはこれを継承しておりまして、極力これを推進したい、こういう御意向でありますから、これは経済六カ年計画と当然並行的に十分考慮して進んでいきたい、こういう所存でございます。
  59. 福田昌子

    福田(昌)委員 最近内閣の御熱意によりまして社会保障六カ年計画というものの御発表があったようでございますが、内容を読ませていただきますと、その予算規模におきましても——碕長官のさきに御構想になっておられました経済六カ年計画の中の社会保障関係の部門を取り上げて考えてみますと、予算規模においても私は非常に開きがあると思うのでございます。最近発表になりました社会保障六カ年計画厚生省案におきましては、その予算の総額も相当大きな予算を組んでおられまして、総額七千八百六十七億というような御発表がございましたが、経済六カ年計画の御発表においては六千四百五十億というような御発表で、一千億以上もその間に開きがあるという状態でございます。これは政府としては一体どちらをおとりになるのか、この点私ども非常に不安に思っておりますので、伺わせていただきたいと思います。
  60. 高碕達之助

    ○高碕国務大臣 この五日に発表されました経済審議会における答申はそういうふうになっておりますが、さらに与党ともよく相談をいたしまして、与党の意見も聞きまして急速に政府意見を定めたい、こう存じております。
  61. 福田昌子

    福田(昌)委員 ぜひ御研究いただきまして、御意見の統一をお願いいたしたいと思います。なお私どもといたしましては、経済企画庁で御発表になりました経済六カ年計画の中の社会保障の部門に使われます予算措置というものは、こまかく考えてみますと現行の社会保障制度を一歩も出ない、ほとんど現状維持だという程度にしか考えられないのでございます。つい二、三日前発表になりました厚生省の社会保障六カ年計画におきまして、多少とも社会保障というものが熱意をもってお考えいただけるようになったということが考えられるのでございます。従いまして予算措置の点におきましても、私はその規模において、少くとも厚生省御発表の社会保障六カ年計画のその程度の御配慮を願いたいと思うのでございます。  なお重ねて御意見を伺わせていただきたいのでございますが、経審長官におかれましては、社会保障というものをどういうふうにお考えになっていられるか、この点お伺いしておきたい。
  62. 高碕達之助

    ○高碕国務大臣 お答え申し上げます。社会保障はいわゆる社会保障でございまして、民生の安定ということが根本の基礎になっておると考えます。
  63. 三浦一雄

    三浦委員長 恐縮ですが、大蔵大臣が十一時五十分から参議院の本会議に出なければならぬ事情がございますから、お継り合せを願えますか。
  64. 福田昌子

    福田(昌)委員 それじゃ質問を省かしていただきます。  ただいま社会保障というのは民生の安定だというお話しがございましたが、全くその通りでございますが、ただ漠然と言われております社会保障というものは、個人々々で非常にお考えが違うのでございます。私どもが見ておりますと、政府のお考えになる社会保障というものは、民生の安定とはおっしゃっておられますが、その熱意におきまして、私は社会保障の精神までいっていないと、失礼ながら考えざるを得ないのでございます。昔は社会保障と申しますと、社会保険と社会福祉制度、この二本立て、これをあわせてやっていけばどうやら社会保障だというふうに考えられておったのでございますが、戦後の新しい動向といたしましては、ことにヨーロッパの先進国が社会保障として考えておりますことは、社会保険と社会福祉制度の二本立て、並行線の制度ではないのでございます。社会福祉と保険制度が有無相通じて一体となった、溶け込んだ制度になっているのでございまして、保険を主にいたしましても、いずれにしても、最後まで国の責任において国民の不幸、国民の健康を守り抜くというのが社会保障の精神になっております。こういう点を考えてみますと、日本社会保障についての政府のお考えというものは、まだいささかおくれているといわざるを得ません、社会保険というものはあくまで保険であるから、相互扶助の精神でやるべきであって、保険に対して国庫負担をするというのは行き過ぎだというような御意見を発表されることがたびたびございまして、従ってたとえば今日の医療保険の面におきましても、赤字に対する国庫負担ということになりますと、政府は、これは保険の性質上負担すべきじゃない、金がないのにそんなところまで出せないというような御意見になりまして、社会保険、医療補助の赤字の負担というものに対して、非常に熱意がないというような態度になっておりますが、これは私今後お改め願わなければならない問題だと思うのであります。ヨーロッパの社会保障というものは、医療保険におきしまても非常に進んで参って、国庫負担の面が多いということを十分お考え直しを願いたいと思います。たとえば英国社会保障は、日本社会保障制度とは比べものにならない進んだ状態であります。また医療保険の面におきましても機構が日本とは違っておりますが、それにいたしましても、医療の負担面ということになりますと、国費をもって約九〇%近い支出をいたしておるということを考えていただきたいと思います。また負けた国イタリーやドイツにいたしましても、医療面に対しましては国庫負担分というのは非常に大きいのであります。総医療費に対して少くとも国庫が二〇%から二四、五%の負担をしておるというのが、負けた国西ドイツやイタリーの現状でございます。こういうような点をお考えいただきまして、今日は社会保険は保険の性質で、相互扶助の精神でやるべきで、国庫が負担すべきじゃないというようなお考えはお改め願いたいと思うのであります。そういう精神で、新しい社会保障の概念でなければ、私は日本のこの貧困家庭の多い、また疾病の多い国民の不幸というものは救われないと思います。この点を今後ともよく御配慮いただきまして、今後の社会保障に対する予算措置というものを、また御計画というものをお考えいただきたいと思います。  大蔵大臣に一点だけお伺いさせていただきたいと思うのでありますが、そういう意味におきまして、私どもは今後の社会保険の赤字というものに対しまして、ぜひこれは国庫の負担——これは民間でも、もう長年にわたりまして、今日の社会保険には、医療給付面に少くとも二割の国庫負担をしてもらいたいということを繰り返し繰り返し陳情もいたしておりますし、具体的にお願いをいたしておりますが、これはゆえなしとしないことでありますから、また社会保障の精神から当然のことでございまするから、その点について大蔵大臣もよく御配慮をいただきたいと思います。この健保、国保の赤字に対してどういう措置がされるか、少くとも二割の国庫負担が要求されておりますが、二割の国庫負担をなされる御意思があるかどうか、この点を伺わさせていただきたいと思います。
  65. 一萬田尚登

    ○一萬田国務大臣 社会保障についての考え方について、そう違いがあるわけじゃないのでありますが、財政上なかなか苦しい結果思うように行かないというのが現状であるのであります。今のお尋ねの健保については、すでに六カ年にわたって年々十億ずつ国庫から出すということに一応なっております。なお来年度の予算編成については、御意見のところは十分検討を加えて参ります。
  66. 三浦一雄

    三浦委員長 福田昌子さんの時間は十一時五十六分まででございますから、どうぞお約束の時間内にお願いいたします。
  67. 福田昌子

    福田(昌)委員 健保に対して六カ年計画では、年々十億ずつ国庫から負担するというような御発表をいただきました。これは国庫から御負担なされなかった従来から見ますと、今年から、また今後の御措置は一歩進んだと言えるのでございますが、しかし今日の膨大な赤字の補填というものを考えてみますと、いかに健保や国保の運営の修正をいたしましても、元々の支払いの基金が初めから無理な形にあるのでございまするから、これは赤字の解決ということはできないのでございます。十億の国庫負担をお出しになったといたしましても、それは健康保険の中の政府管掌の分の赤字の補填に出されるのでありまして、そういう点を見ますと、これは医療給付面に対する比率から見ますと、三%にも当らない程度の国庫負担にすぎないということしか言えません。一般の大衆の要望しております国庫負担は医療給付面の二〇%を負担してもらいたいという要望から見ますと、これは非常に大きな開きがございます。二〇%の要求に対してわずか三%補助していただくということでは非常に無理があるのでございます。この点もよくお考え直しいただきまして再検討をお願い申し上げたいのでございます。大体私どもといたしましては、医療面に対するもう少しあたたかい御同情と申しますか、御熱意というものが望ましいのでございます。日本の医療費というものは非常に無理な形において組まれております。大体貧乏で、しかも人間が多くて生活水準が低ければ病人が多いのは、個人の家庭においても国家においても同じであります。従って医療費の増加はやむを得ないのでございますが、医療費の増加を、従来厚生省は国民総所得の三%に医療費を押えたい、これが限界だというので絶えず主張して参られたのであります。国民総所得が六兆円をこえました今日においては、三%ということになりますと総医療費は結局千七、八百億の範囲にとどまることになりますが、現実の国民総医療費は三千億をこしておるのでございます。厚生省の無理やりな三%の限界をはるかに突破して、国民総所得の五%以上をこそうというのが現実であります。それでもいろいろ被保険者の面から見ますと、制限診療だとか、あるいは十分徹底的な、最後まで病気が直るまでの恩恵にあずかり得ないというような意見も出ておるような状態で、そう無理やりにして押えましても、すでに三千億の総医療費のワクをこしておるというような状態であります。この総医療費に対しまして、先ほども申し上げましたように、外国では相当国家負担というものがなされておるのですが、日本ではわずか年間十億、三%程度のものしか——これはもちろん健保の分だけでございますが、それだけしか出されないということは、国民の医療体系に対して政府のお考えが非常に冷淡だという感じがするのであります。医療費というものはむやみやたらに勝手に膨張するものではないのでありまして、必要に応じてある程度限界が来るものでありますし、必要なものはどうせ要るのでありますから、社会保険の円滑な運営という意味合いからいたしまして、国庫負担というものをもっと英断を持ってお考えを願いたいと思います。いろいろお願い申し上げたいのでございますが、時間がございませんので、あと厚生大臣に伺わしていただきたいと思います。
  68. 一萬田尚登

    ○一萬田国務大臣 御意見非常にとうとく拝聴いたしまして、検討を加える所存でございます。
  69. 小林英三

    ○小林国務大臣 国民の最低生活を確保いたしまして、さらにその生活内容を向上させるためには、ただいま福田委員からもお話がありましたように、社会福祉及び社会保険、そのほか公衆衛生等社会保障の分野におきまして与えられました課題はきわめて多いと存じますが、何と申しましても私どもの当面いたしております緊急の課題は、国民の医療保険制度を確立することであると存ずるのであります。しかもその第一着手といたしましては、ただいまお話の中にありましたような、赤字のために危機に瀕しております健康保険、疾病保険財政の再建を完了することにあると存じます。従いまして厚生省といたしましてはさきに提出されました七人委員会の報告書及び社会保険審議会の意見書の内容を十分検討いたしました上、所要の措置を講じて参りたいと考えておるのであります。  次に国民健康保険につきましては、さきの国会におきまして実現を見ましたところの給付費に対します二割の国庫負担制度を裏づけられましたので、その普及を強力に推進いたしまして、健康保険の整備拡充と相まちまして医療保障の完成、国民皆保険への実をあげるべく努力いたしたいと存じておるのであります。  結核対策の増進にいたしましてもその他の問題にいたしましても、十分に今後の厚生行政の上に力を尽したいと考えておるような次第であります。
  70. 福田昌子

    福田(昌)委員 私が先ほどお尋ね申し上げましたことはそういう点ではないのでありまして、厚生大臣が私の質問をお聞きになっていなかった証拠だと思うのであります。用意して持って参られました御準備の書類をお読みになっただけでありまして、私の御質問にはお答えいただかなかったのであります。この点厚生大臣も御就任になられまして日が浅いことでございますから、御無理なつっ込んだ御質問を申し上げましても御研究がまだ十分でないと思いますから、あまりつっ込んだことは遠慮させていただきますが、ただ私といたしましては、今後の御研究において、先ほど申し上げましたように厚生省自体の今日の国民総医療費に対する見解が間違っておるのだ、それを非常に不都合に小さく無理な袋に閉じ込めて置こう、無理なワクに押し込めて置こうというところに今日の健康保険の赤字の問題も生まれてくるのだということを、よく御吟味いただきたいと思うのであります。そしてその赤字の原因には今日の社会保険の運営上、あるいはまた機構上いろいろの欠点がありましょう。その欠点を修正されることは当然でありますが、何と申しましても根本的な誤謬である支払い基金のワクが小さい、これに対する国庫負担がないということ、言いかえますと、医療保障の精神が徹底していないというところに、その原因があるということをよくお考えいただきまして、新しい厚生大臣として医療行政に対し、ことに今後の赤字の解決に対しまして十分なる御措置をお願いいたしたいと思います。  たくさんお尋ねいたしたいと思ったのですけれども、時間が来てしまいましたので、やむを得ませんから具体的な点で一、二点お尋ねいたします。今日附添婦の廃止の問題について、国立療養所及び病院あるいはその他のところで非常に附添婦が騒いでいる。患者さんも騒いでおりますが、この附添婦の廃止の問題につきましては、去る二十二国会におきましても、完全看護、完全給食の美名のもとにいきなり附添婦を廃止することは行き過ぎであるから、病院の整備だとかあるいはまた人員の増加、その他諸般の準備態勢を整えてからやるべきだという決議を、衆参両院の社会労働委員会でいたしておるのであります。そのときに政府当局は附添婦の廃止は当分やらないという御言明があったにもかかわらず、なしくずしに今日附添婦の廃止問題が起っている。このことは私どもから見ますと、衆参両院の委員会をまことに無視した厚生省のやり方だと言わなければならないと思うのであります。しかもその附添婦廃止の問題も、いろいろな完全看護、その他新看護体系という名前をもっていたしておりますが、その第一の理由としているところは、結局社会保険の支払い基金が足りないというところに原因があるのでありまして、支払う金が少いから附添婦のところをまずへらしていこうというところに、そのねらいがあるとしか言えません。しかも予算的に見ますと、わずか三億か四億程度、たくさんに考えても五億程度予算だと思うのでありますが、それを削るためにほんとうに日々の零細な生活の方便である附添婦を廃止するというととは、非常に酷な措置であると思うのであります。従いまして社会保障前進を叫ばれる厚生大臣なら、こういうような無慈悲な弱い者いじめの政策措置は私は即刻お改め願いたいと思いますが、これに対する厚生大臣の御処置を伺いたいと思います。
  71. 小林英三

    ○小林国務大臣 ただいまお尋ねになっております附添婦の問題につきましては、実は今御意見の中にありましたように、私が参議院の社会労働委員長をいたしている当時、やはり衆議院と同様に附添婦の解決の問題につきましては委員会で決議をいたしているのでえります。ところが先般まだ私が厚生省に参りません前に、全国各地から、国会における決議を無視したような方向措置されているというような陳情も受けておったのであります。ところがはからずも厚生大臣に就任いたしましたので、私さっそくこの問題については事務当局を呼びまして検討をしてみたのであります。その結果十月から二千二百七十人の常勤労務者、俗に雑使婦と言っておりますが、これを来年の第四、四半期の一月から三月までの間に配置するといたしまして、厚生省といたしましては、一時にやるわけにも参りませんので、十月から十二月一日現在までの間に実施いたしておりますのが、全国の百八十二の国立療養所のうちで、四十九カ所実施しているのであります。この四十九カ所の国立療養所に今までおりました附添婦の数は五百九十五人でございまして、そこでこの四十九カ所に常勤労務者を配置いたしました結果、五百九十五人のうちで百八十六人をいわゆる常動労務者として転用いたしました。それで残りはどうなったかと申しますと、残りは従来派出看護婦会等から出張しておりましたその元の派出看護婦会に帰りまして、他の方に参っておる者、それから自力またはあっせんによりまして転職いたしました者、それから患者との契約期間がまだ切れません者はそのまま現在も残っておるのであります。しかもこの四十九カ所の実施いたしました国立療養所のうちには、附添婦もいないような療養所もかなりありまして、結果におきましては大体半数は採用して、そうして従来のいわゆる附添婦というものをできるだけ採用いたすようにいたした結果になっておるのでありますが、なお来年の一月から残りの国立療養所にこれを実施するということになるのでございますが、厚生省といたしましては、厚生次官並びに労働事務次官から各府県知事にあてまして、労働能力に応じまして、職場の転換であるとか、あるいは職安、あるいは福祉事務所、公私立病院等の増設もどんどんできておるところもございますから、そういうところに配置してもらうようにということでやっておるのであります。私も実は当時参議院の社労の委員長をいたしておりまして、この決議にも賛成をして参加いたしておる一人でありまして、附添婦の問題をできるだけ円満に片づけるということに対しましては、十分にその気持を持っておりましたが、今日まで私が聞き得たところによりますと、大体において半数は採用しており、他の者は、ただいま申し上げましたような工合に職を求めている。今後の問題につきましても十分に国会の決議を尊重いたしまして、やりたいものだと考えておるのであります。
  72. 福田昌子

    福田(昌)委員 もう一点だけ。時間が参りましたそうですから非常に遺憾でございますが、ただいまの附添婦の問題につきまして、私どもといたしましては当時参議院の社会労働委員長をしておられて、あの決議案を取り扱われた今の厚生大臣のお立場からいたしまして、私どもは当然あの決議を尊重されまして、厚生省のつき添い廃止の制度に対して、当然な英断をもって処置されるであろうと思っておったのでありますが、今はその参議院時代の御決意というものがにぶってしまって、行方不明になっておる。そして厚生省が事務的に考えた附添婦廃止の制度をそのまま踏襲しようとしておられるという点につきまして、非常に遺憾に思います。私はもう少しつき添いというその仕事、その細々とした手段によってこそ、やっと生活しておる附添婦の生活の姿についても、またそれをたよりとして療養しております患者の立場につきましても、厚生大臣のもっと熱意のある御同情というものを私はこの際打ち出していただきたいということを重ねてお願いいたしておきます。  時間がございませんので、一点だけ法務大臣にお尋ねさせていただきたいのですが、法務大臣は売春対策に非常な御熱意を持っておられるということを伺いましたが、これに対しまして、この売春行為というものは、これはもう国辱的な恥かしい行為でありますが、これに対してどういう処置を今後おとりになる御意思であるか、この点伺わしていただきたいと思います。
  73. 牧野良三

    ○牧野国務大臣 お答えを申します。いわゆる売春対策に対しましては、私はあらゆる方面に関するお心がけが誤まっておると思います。処罰によってこれが絶滅するというような浅薄な残忍な心持を持ってはなりません。どこまでも愛情を持って、そうして制度をもってりっぱにこれを指導していかなければならぬ。どこまでも刑罰を適用しなければならなりませんのは人身売買、その方面でございます。でありまするから社会施設及び私どもの心持でどこまでも伸ばしていく方面と、刑罰をもって厳格に処置をしていかなければならない方面と二つをわけまして、適当な立法措置を講じていきたいと、せっかく今心がけておる次第でございます。
  74. 三浦一雄

    三浦委員長 お約束の時間が参りましたから……。
  75. 福田昌子

    福田(昌)委員 一点だけお願いします。売春対策に対するお考え、これは処罰を主としてはならないというお考え、私ども全く同感でございます。ことに人身売買とかあるいはこれに付随しているたとえば置き屋業者あるいはまた周旋人、ポン引き、こういったものに対する処分ということも、当然早急になされなければならない措置だと思いまするが、こういうような人身売買に対する取り扱いあるいはまた売春行為を利用して、それを搾取して生活しておるような業者とかポン引き、こういうようなものに対する厳罰処置というものは早急にお考え願わなければならないと思いますが、こういうものを今国会に御提出になる御意思があるかどうか。  それともう一つは、従来とも法務大臣になられた当初におきましては、皆様よく人身売買よろしくない、置き屋業者のそういう形態は許さるべきでない、ポン引きはよろしくないということをよくおっしゃるのでございます。ところがいよいよ売春法案を出しまして置き屋業者を取り締るとか、そういった売春の周旋人を取り締るということになりますと、そうしてそういった業者や周旋人が盛んに運動をし始めますと、最初の法務大臣の御意思が遂にあめ細工のごとくぐにゃぐにゃになりまして行方不明になってくる。遂には業者を取り締るということは、これは何とかかんとかいうような理由になりまして、結局売春婦の保護施設を作るのが先じゃないかというようなまことしやかな言葉を旗じるしにされまして、こういった業者の取り締りというものがいつまでもできないのでございます。人身売買におきましてもきわめてその処置が手ぬるい。置き屋業者に対する処置もきわめて手ぬるくなっておるどころか、全く放置されておるという状態にあるのでございます。こういう過去の法務大臣の御態度にかんがみまして、私どもは今度新しい法務大臣が決してそういうぐにゃぐにゃな行方不明な御信念ではないと思いますが、この点をこの席上において御確約願いたいと思います。
  76. 牧野良三

    ○牧野国務大臣 お答えをいたします。私はそんなふうに簡単にお考え下さるところに、根本的な誤まりがあるのじゃないかと思います。何百年かの因習と伝統とをもってここに至るのみならず、戦後における占領政策によってわが国の風紀がどんなにまで廃頽しておるかということを考えるならば、さように単純には考えられません。よって私はこの職にあるといなとは問わず、この問題の解決に対しては身を捧げたいと思いまするから、どうぞ御支援を賜わりたいと存じます。
  77. 福田昌子

    福田(昌)委員 私は簡単に考えているのではないのであります。その信念をお願いしておるのであります。決して私自身簡単に考えておりません。これは誤解がありますから、弁解いたしておきます。
  78. 牧野良三

    ○牧野国務大臣 私も申し上げます。あなたが簡単に考えているというのではありません。社会があまりに簡単、単純に考え過ぎております。あなたと私との志は同じであります。
  79. 三浦一雄

    三浦委員長 柳田秀一君。
  80. 柳田秀一

    ○柳田委員 私は日本社会党を代表いたしまして、主として文部行政、文教政策についてお伺いをいたします。  過ぐる自由民主党の一般政策を拝見いたしますと、その冒頭に、国民道儀の確立と教育の改革という点を打ち出しております。これは文部大臣が就任直後、新聞記者に語られたところによりますと、この問題は実は水田政調会長と相談して、一番冒頭に持ってきたのである、こういうようなことを発表しておられたところを見ますと、よほどの重点をここに置いておられると思うのであります。問題はその国民道儀の確立という点でありますが、国民道儀を確立するという前に、国民道儀というものは一体どういうものであるか、どういうふうにお考えになっておるかということを、文部大臣から承わりたいと存じます。
  81. 清瀬一郎

    ○清瀬国務大臣 道儀の根底ということは、非常に深い、むずかしい問題であります。私はかように考えております。わが国の今日の形態は、個人の尊厳をもって道儀の根底と考えております。それゆえに、個人の心から出発したところの行いの基準であります。以前のように、外界からの圧迫への服従で初めて行いがきまるのでは、真の道儀ではないのでございまして、各個人の内心にある良心の発露として、正しい行いをしなければならない。しこうして、今度は行いということになれば、そこに外形的の要素が混入しまするが、わが日本国民の持っておる伝統のうちで、正しいものはこれを保全いたします。誤まれる行いはこれを是正する、やや抽象的でございまするが、そういうことをもって道儀の基準といたしておるのでございます。
  82. 柳田秀一

    ○柳田委員 これは非常に抽象的な問題でありますが、ただいま文部大臣は、個人の尊厳を重んじたい、大へんけっこうなお説であります。さらにわが日本の伝統、その正しきは保全したい。そこで考えまするに、われわれ日本人として、従来国民道儀の根本はどこにあったか、これはやはり忠孝の精神、忠孝一本の精神と、一旦緩急あれば義勇公に奉ずるという精神、これがバック・ボーンをなして、しかもこれがわが日本の古来の伝統として、われわれは教えられ、またそれをもってわれわれ国民道儀のいわゆるバック・ボーンというひうに教えてきたと思います。従って、こういう従来の忠孝一本の精神、一旦緩急あれば義勇公に奉ずという精神、これはわが日本古来の伝統として正しいもので、保全するのか、それともこういうものは今日本の新しい国民道儀のバック・ボーンとはなり得ないのか、その点を明確にしていただきたいと思います。
  83. 清瀬一郎

    ○清瀬国務大臣 今申しました通り、孝です。親に対するの務め、同じ孝でありましても、ある種類、たとえば朱子学でいった二十四孝といったような形式の孝ではなくて、自分の心の発露としてやる孝行、これは奨励し保存すべきものであります。忠、日本の国家に対して、また国家の象徴たるものに対して、良心より親切にできるだけのお尽しをするというこの道も、またわが国の伝統の最もうるわしいところと思っております。しかしそれが行き過ぎて軍国主義にしようという考えは毛頭持っておりません。日本人の古来のうるわしい親切な、親に対する孝、君に対する正しき忠、これは私は維持すべきものと考えております。占領以来の自由主義教育はいいところはありますが、あるいは末の方で幾分誤解があったことは私は事実と認識しておるのでございます。
  84. 柳田秀一

    ○柳田委員 私がお尋ねしましたのは、だれしも親に孝行する孝を否定するような者は一人としてありません。ただ忠孝一本というこういう精神、あるいは一旦緩急あれば義勇公に奉じて、大君のへにこそ死なめ顧みはせじという、こういうような考え方が新しい日本の、今あなたが掲げておられる国民道義の確立のための道義そのもののバック・ボーンとなり得るのかなり得ないのか、この点を明確にしていただきたい。
  85. 清瀬一郎

    ○清瀬国務大臣 正しい意味の私の今言った近代的と申しますか、個人の尊厳を基礎とする意味においての孝、または国に忠はむろん保持すべきものと思います。そのほかに社会と個人との関係、すなわち今までできた言葉でいえば公徳、これも加わらなければなりませんので、忠孝一本と私は考えておりません。社会なり世界なり、すべて人類全体に対する自己の関係考慮しなければなりません。
  86. 柳田秀一

    ○柳田委員 私の言うのは、忠孝の忠というのは、これは忠ならんと欲するというその忠、この忠は天皇に対する忠なんです。天皇に対する忠と親に対する孝とは一本であるというこの精神、これをあなたが今もお認めになるかということです。しかし大君のへにこそ死なめ顧みはせじというのは、個人の尊厳、人格の尊重を尊ぶ以上はこういう考え方は出てこない。そこに矛盾があるのです。忠孝というのは天皇に忠ということなんです。国家に忠とか国民に忠とか主権者に忠ということじゃない。そういうような意味において、これが今後のバック・ボーンになるか、この点をはっきりしておきませんと、あなた方の国民道義の高揚ということの解釈が出てこない。その点をもっと明確にしていただきたい。
  87. 清瀬一郎

    ○清瀬国務大臣 よく落ちついてお考えを願いたい。道徳の基準、道徳の出発の根源は個人の尊厳、すなわち良心から出発することであります。しこうして当時は、今は憲法が改正されましたが、当時は天皇をもって国家の代表と見ておった。そういうふうに忠孝一本と当時言ったのは、親に孝行するのも君に忠義を尽すのも、同じ相通じた観念だということを忠孝一本と言ったのです。私は日本が国を立てている以上は、今日は天皇は主権者でございませんが、日本国家に対し民族に対して忠誠を尽すということは、その意味において今日の道徳の基準になり得るものと思います。
  88. 柳田秀一

    ○柳田委員 押し問答しても始まりませんが、今文部大臣は個人の尊厳を言われたが、同時に私は国民道義のバック・ボーンというものは個人の尊厳だけじゃない。個人の尊厳と同時に真理と平和を愛好する人間、これがやはり国民道義の根幹になるものと私は思いまするが、文部大臣はいかがお考えですか。
  89. 清瀬一郎

    ○清瀬国務大臣 真理をたっとび、平和を愛することは、同じく今日の道徳の大きな基礎でございます。
  90. 柳田秀一

    ○柳田委員 そうすると、個人の人格を尊重する真理と平和を愛するこの精神は、これあなたの所管せられる文部行政におていは、教育基本法の精神と全く一致しておるわけであります。従いましてあなたは、教育基本法の精神をここでお認めになる。私はかように解釈してよろしいのでございますが、もしもそうでなければ、その理由をお聞かせ願いたい。
  91. 清瀬一郎

    ○清瀬国務大臣 教育基本法に書いておることは、全部私も賛成であります。ただ教育基本法を全体として読みますると、世界人としてのあれはなければならぬことです。ただ日本国民としては、伝統的のよさは保持しなければなりませんので、勤労を重んじるとか、あるいは平和をとうとぶとか、責任をとうとぶとか、すべてこれは教育基本法のことは、全部徳目として賛成であります。ただしかし日本という固有の国家である以上は、やはり日本国に対する義務、忠誠、もう一つ言えば、日本国を愛する、郷土を愛する、こういうことが少し入っておればなおいいと思います。
  92. 柳田秀一

    ○柳田委員 まことに文部大臣は明快な御答弁をされまして、その点は感謝にたえません。教育基本法の根本精神は全く賛成だ。すなわち教育基本法には、「われらは、個人の尊厳を重んじ、真理と平和を希求する人間の育成を期するとともに、普遍的にしてしかも個性ゆたかな文化の創造をめざす教育を普及徹底しなければならない。」この法律の精神こそは、とりもなおさず日本国憲法の精神であると思います。しかもその日本国憲法を、あなたはこれをマッカーサー憲法として、違反なりとせられた。現在の日本国憲法の精神をあなたはくんでおられない。これはハーグ条約によって、あるいは大西洋憲章によって、あるいは旧日本国憲法の第七十三条、第七十五条によって、これは違法なりときめつけたあなたの思想と矛盾することになりますが、これはいかがですか。
  93. 清瀬一郎

    ○清瀬国務大臣 私は何ら矛盾を感じておらないのです。日本国憲法でも、教育基本法でも、その根底は民主主義なんです。民主主義である以上は、自己を支配する憲法は、自己の手によって、自己の民族によって、良心的に作られなければならない。幾分でも外界の圧迫の形跡がみじんでもあれば、私はその憲法は真の民主的のものではない、かような観念を持っております。
  94. 柳田秀一

    ○柳田委員 私は従来の政治の跡を見ましても、いつの時代でも時の為政者が社会情勢とか、あるいは社会風潮とか、社会思潮とか、こういうようなものを何らか意識的に変えんとするときに常に出てくるのが、国民道義の高揚という言葉なんです。表現は違います。なおわれわれのつい記憶に新たなのは、あの戦争に突入する以前に、われわれは何を教えられたか、国体明徴だとか、あるいは国民精神の作興だとか言われた、ヒトラーしかり、東条しかり、そう見て参りますと、今回新党が冒頭にこの国民道義の高揚ということを掲げたことは、すなわちこの国民道義の高揚ということによって、これを手段として一つの何らかの目的がある。その目的は鳩山総理大臣が今度三大方針一つに打ち出しておられるところの憲法改正なんです。現在の内閣が三百人の絶対多数の上に安定した政権で、どういう方向に打ち出されるか、国民は二大政党という形をもって、そうしてお互いに二大政党が同じ土俵の上で相争い、相練磨することを期待しておりまするが、同時にその反面一番おそれておるのは、この絶対多数の上にあぐらをかいて、いよいよ保守反動の方向に進まんとするその危険を察知しております。ことに現鳩山内閣の文教政策においては、なおさらその危険を察知しておりまするが、この国民道義の高揚確立ということ、すなわち今あなた方がお考えになっている憲法改正の精神に連なるものと私は見ておりますし、国民としてもそれをひとしく憂えているのです。でなければこういうものは憲法改正の精神に連なっているんだという根拠があれば、これをはっきりお示しいただかないと国民は安心しないのです。ただ単に国民道義の高揚、国民道義の高揚といいましても、それはいつも為政者が言うことであって、単なるためにする言葉である。われわれは苦い経験をなめているがゆえに、この国民道義の高揚ということは、憲法精神に連ならないということをはっきりあなたはここで言えますか。
  95. 清瀬一郎

    ○清瀬国務大臣 さっきも申しました通り、個人の人格の尊厳をもって道徳の出発とし、民主政治の出発としております。それゆえに、日本人個人々々の尊厳、ある以上は、他より請求されて得ました憲法をそのまま拝み奉るということは、私は真の道徳的良心的の行いじゃないという深い信念を持っております。ただ政治はあなたも御承知の通り二大政党ができれば、やはり政治闘争も始まりますし、人間の弱点として脱線することもありまするから、お互いに相戒めて、正しき民主政治をフェアプレーの議会主義の上においてやりたいとみずから戒めておるところであります。もしわれわれがあやまちましたら、どうか厳重なる御忠告あらんことをお願い申し上げます。
  96. 柳田秀一

    ○柳田委員 文部大臣は組閣早々に文教調査審議会というものを内閣に設ける、それから閣議はこれを決定したと聞いておりまするが、この文教調査審議会というものの性格と構成はどういうものでありますか、その御腹案をお示し願います。
  97. 清瀬一郎

    ○清瀬国務大臣 せっかくお問いでありまするから、実は腹心を開いて申し上げます。との今の教育制度は、昭和二十年マッカーサーが日本を占領した初期、たしか十月の二十二日と思います。あのときに占領軍の教育に対する目的と政策という大きなメモランダムができました、それに基準しております。同年の十二月三十一日に修身と地理と歴史を禁ずることを、直接日本の何万の学校に通知しました。また武道を排除しまして男女共学を命じた、こういう一連のディレクティヴによりまして、また翌年の春にはアメリカから教育使節を十八人でありましたか呼んで、日本の教育の改革をしたのであります。日本に国会がありますから、やはり国会でできた法律の形をとって今日の各法律ができましたけれども、はなはだ残念なことはわれわれの子供、孫、兄弟を教えるもとは、実際はそういう勢力によっておるのでございます。実に残念な涙のこぼれるような事実でございます。昭和二十七年にわが国が独立いたしましたときに、初めて独立国として改革の事業をしなければならぬのでありましたけれども、独立したからといって、きっぱり今までのディレクティヴを全部廃してしまうといっては、外交上許さないといったような心が、政治家に幾分あったでありましょう。もとの組織をそのままにしておいて、幾らかでも改正しようというので、私どもの前任者大達君でも、安藤君でも、松村さんでも、その中で改正しようというので、わずかに高等学校のカリキュラムに歴史をちょっと入れてみたり、あるいはまた国を愛する心——愛国心といわないで国を愛する心といったような文字をちょっとはさんでみたりしておりますけれども、あなたも子供を持っておる、私も子供を持っておる、孫もあります。実際の教育の状態を見るというと、実に痛嘆にたえないから、この内閣では憲法の改正と相並んで、教育をもう少し日本的に、さればといって反動をやろうというのではありません。軍国主義をやろうというのではない。鳩山さんも自由主義者です。私もリベラリストです。そういう方向じゃございませんけれども日本の正しい伝統を伝えるためには、今の制度ではとうていこれはいかぬということをつくづく考えまして、一念発起してこの教育制度審議会を始めたのでございます。  党の綱領はごらん下さっておりますが、教育の責任と監督を明確にする、大学制度を改革する、教育行政を改正するというのでございまして、ほかの立場をとっておられる方には危なっかしいことと御心配下さいますが、われわれは心に誓って昔の軍国主義の復活、封建制度の復興はいたしません。もっと開明したる教育の制度をいたそう、かように柳田さん考えておるのであります。
  98. 三浦一雄

    三浦委員長 午後一時まで休憩いたしまして、午後一時に再開することといたします。    午後零時三十三分休憩      ————◇—————    午後一時四十五分開議
  99. 三浦一雄

    三浦委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。  質疑を継続いたします。柳田秀一君
  100. 柳田秀一

    ○柳田委員 ただいま文部大臣からリベラリストの自負のもとにるる御答弁がありましたが、あなたのリベラリストは私も存じております。あなたが自由主義者としてかつて帝国議会で普通選挙以来戦われたことはよく知っております。しかしながら、最近失礼ながらちょっととうが生えてこられたのではないかと思いますので、オールド・リベラリストとしては私も認めておきましょうが、ただ、時間の制約を受けておりますので、オールド・リベラリストの名論卓説を長く聞いておりますと持ち時間が過ぎてしまいますので、これからは一問一答で簡潔に一つ御答弁をお願いいたします。  そこで、先ほどの文教調査審議会ですか、この性格、構成はいかんとお尋ねしましたが、これは、立法措置、たとえば憲法調査会のごとき立法措置でおやりになるのですか、それとも行政措置でおやりになるのですか。
  101. 清瀬一郎

    ○清瀬国務大臣 その二つのうち、まだ決定はいたしておりません。憲法調査会のように全文を法律でやるか、あるいは、委員会、審議会が表になっておりますね、あれをふやして規則を政令に譲るかは、まだ決定いたしておりません。
  102. 柳田秀一

    ○柳田委員 それじゃ、これと現在の中央教育審議会との関連はどうなりますか。
  103. 清瀬一郎

    ○清瀬国務大臣 それも他の閣僚と相談したことはありまするが、片方は文部大臣の諮問機関であります。片一方は内閣における審議会のようなもので、だいぶ違っておるのです。ただ、しかし、行政簡素化ということをする内閣方針一つあります。それとにらみ合わしまして、一つにしたがよいという論も閣内にございまして、さような決定には至っておりません。
  104. 柳田秀一

    ○柳田委員 大臣の方からみずから行政簡素化の趣旨もあるのだからということを言われるならば、現存するこの中央教育審議会を活用されたらよいのであって、さらに屋上屋を架してわざわざ設けられる必要はさらさらないと思うのでありますが、ただ、中央教育審議会は文部大臣の諮問機関であり、片方の今度の文教調査会ですか、これは内閣に置かれる、これは文部省でなしに内閣総理大臣の所管のもとに置かれるという、その違いはどこに違いがあるのか、この点明確にしていただきたい。
  105. 清瀬一郎

    ○清瀬国務大臣 従前のは、文教の行政官たる大臣の諮問機関でありますから、現存の教育法のワク内で各種のことを諮問いたしております。先刻申し上げました通り、教育制度の審議会は、もう一つ根本に現行制度を変えようかという意図があるわけです。そこが性格上の相当の相違であります。しかしながら、事は同じく文政に関しますから、大きな審議会のうちの一部門と見ることもできないことはなかろうと、今せっかく考えておるところであります。あなたの屋上屋を架すべからずという御意見も尊重いたしまして、考える時分にはその考えを十分いたしたいと思います。
  106. 柳田秀一

    ○柳田委員 それでは、これは文部大臣からでなくて政府委員からでもけっこうですが、現在の中央教育審議会の設置目的のところを参考までに一つ読んでいただけませんか。
  107. 斎藤正

    ○斎藤説明員 文部省設置法第二十六条でございます。「第二十六条 本省に中央教育審議会を置く。」「中央教育審議会は、文部大臣の諮問に応じて教育、学術又は文化に関する基本的な重要施策について調査審議し、及びこれらの事項に関して文部大臣に建議する。」「中央教育審議会は、人格が高潔で、教育、学術又は文化に関し広く且つ高い識見を有する者のうちから、文部大臣が内閣の承認を経て任命する二十人以内の委員で組織する。」——以下省略します。
  108. 柳田秀一

    ○柳田委員 ただいま政府委員が読みました通り、教育、学術、文化に関する重要な基本政策を諮問する機関なんです。そうなって参りますと、ただいま文部大臣が言われましたように、わざわざ内閣に何の必要があってこういうような調査審議会を設けるか。これはまさに屋上屋なんです。現在の中央教育審議会を十分活用されたらそれで事足りるのであって、わざわざ内閣に置く理由は見出せないと思うのですが、いかがですか。
  109. 清瀬一郎

    ○清瀬国務大臣 今度のものは、単に文部大臣が諮問するというのではなくて、午前中にも申しました通り、教育の根本について再検討の要があるのです。それゆえに、これを内閣に置きまして、もし立法の手続を必要とするのであったら、その限度、構成等も諮問いたしまして、わが教育界に一新時期を画そう、こういうことでございます。従って、各界の長老、耆宿のほかに、実業界、政界等の有力者も入っていただきたい、こう思っております。
  110. 柳田秀一

    ○柳田委員 あなたは文部大臣であり、行政長官であり、同時に国務大臣である。しかも現在は、中央教育審議会の委員も、内閣の承認を経てと、こうなっておる。だから、現在のものでさらさら差しつかえないのです。ただいまの御説明では、河野大臣も言っておられるように特に行政簡素化を大きく打ち上げでおる内閣として、これを内閣に設置するというような特別な理由は見当らぬと思いますが、これで押し問答しておっても時間をとりますので、先に進みます。  ただいまの御答弁で、あなたが特にこれを内閣に置くというような理論は見出せないと思います。そこで、先般大臣は、かりに中央教育審議会から答申を出しても党の決定の方を重しとする、こう言われた。現在は政党内閣であり、政党内閣を組織する政党人であり同時に政党内閣の一員として当然の言葉だと私は思うのでありますけれども、そうなって参りますと、これをわざわざ内閣に置く、しかもその内閣はすでに大綱をきめておられる、その内閣のもとにこういう審議会を置くのですから、この審議会がどのような答申を出しても、内閣の気に入らぬものは初めから採用しないということになる。そうなってくると、いかに公正妥当な結論を出されても、党議が決定しておる、内閣はそれを採用しないということになる。そうなってくると、そこに集まってくる学者は、これこそ吉田さんではないが曲学阿世の徒しか集まってこない。結局、あなたのねらいとされるところは、これに名をかりて——教育はあくまでも中立でなければならぬが、その教育の中立性ということをこういう審議会によって形式上何らか裏づけしたい、そうして実質上は自由民主党の政策推進の機関とするというねらいが隠されておることは明々白々だと思うのです。そうでないと言われるならば、その御根拠をお示し願いたい。
  111. 清瀬一郎

    ○清瀬国務大臣 教育は国民の性格をきめることで非常に重要なことであります。それゆえに、一党一派に偏することなく中正な日本人を作るのでありまして、たとい内閣がかわり、あなた方が国政を担当されましても同じように実行可能な学校制度、教育制度をとるだろうと存ずるのであります。私どもが今考えておる審議会は決して一党一派のためにするものではございません。一党一派の仕事をするのにはまあまあ三百の代議士で十分でございます。ただしかし、国のために大切なことでございますから、公平なる人の眼で占領以来のこの教育が国家のためにほんとうにいいかどうかを深く研究していきたい、こういうことであります。決してそういう人々に頼んで自由民主党の政策を実行してもらおうという考えは毛頭ございませんから、御心配ないようにお願いいたします。
  112. 柳田秀一

    ○柳田委員 その御答弁でこっちが安心できるなら、わざわざ質問いたしません。先般の自由民主党の政策を見ますと、国民道義の確立と教育の改革という中にこういうことが書いてある。その第三項の中に、「教育者の政治的中立を徹底せしめるため必要な措置を講じる」とある。今あなたは、教育は中立でなければならぬと言われましたが、これは当然なことである。ここに、教育の政治的中立でなしに、教育者というように、者という字を入れてある。者という字が入っておるところに不用意にあなた方自民党の考えが、しっぽが出ている、こういうふうにも見えるし、あるいは、いみじくもそごに自由民主党の深謀遠慮が存しているというふうにも見えるのですが、この教育者の政治的中立を徹底せしめる必要な措置を講ずるという、必要な措置というのは具体的にはどういうことですか。
  113. 清瀬一郎

    ○清瀬国務大臣 そこに教育といわずに教育者という文字を党でお入れになったのは、誤植でもミスプリントでもないのです。日本の教育者に必ずしも中立でないという明確な事実があるのです。しかしながら、これをためることは実は非常にむずかしいことです。あなた方も御推察下さると思いますが、それを改めなければ、審議会でどんな審議をしてもこれはいけません。そこで、その手段方法としては、立法の手段もありましょうし、また行政的な手段もありましょうし、私が過日委員会で言ったように本人に会って話し合いをするといったようは手段もございましょう。ことに、立法のことにつきましては、ただいま慎重なる研究中でございます。   〔委員長退席、重政委員長代理着席〕
  114. 柳田秀一

    ○柳田委員 そうすると、昨年問題となりました例の教育二法案ですが、教育公務員特例法の、あの行政罰を刑事罰に現在はする意思なしと、かように解釈してよろしゅうございますか。行政罰をやはり刑事罰に立法化しょうと考えておられるかどうですか。それから、もう一つは、例の特定の政党を支持する、あるいはそれを支持せざるためのという字、問題になりました、ためのという文字を復活される意思がありますか。これを一つ伺います。
  115. 清瀬一郎

    ○清瀬国務大臣 今お問いのことは、ただいま審議中でございます。往年私どもの属しておりました党派では、行政罰しかるべしというので、その当時それを選びましたが、その後実際やってみると、必ずしもうまくいっておりません。その原因がどこにあったかは今反省しなければならぬ時期でございまして、せっかく閣内においても党においても審議中でございます。近くきめて立案をし、皆さんの御協賛を得るようになるかと思いますけれども、この臨時議会内にはとうてい問に合いませんと思います。
  116. 柳田秀一

    ○柳田委員 あなたは御就任のときにも政党の小使だというようなことを言っておられますが、それでは、まだ現在自由民主党としては審議中かもしれませんが、あなたがかつて民主党の政務調査会長のときに、あなたのもとに文教制度調査特別委員会というものをお作りになって、そこで結論を出されました。これはあまりにも早急に結論が出たので、実はあぜんとしたのですが、その中に教育二法案の強化ということがうたってある。あなたも政務調査会長として責任があるわけです。その当時あなたは政務調査会長として教育二法案の強化をスローガンに打ち出されたのですが、その内容はどうであったか。おそらくスローガンだけではなかったと思う。政務調査会がこういう政策を打ち出して、スローガンだけだということはあり得ない。だから、あなたの責任において教育二法案を強化したいというのはどういう内容であったか、それを御説明願いたい。
  117. 清瀬一郎

    ○清瀬国務大臣 今お言葉でありましたが、教育制度特別委員会は必ずしも政調会のもとにあるものじゃなくて、政調会と同格の有力な調査会であります。党内のかねてより教育について見識を持っておらるる方を委員に委嘱いたしましたがゆえに、比較的早く結論に近いものを得ました。しかしながら、これを得たのは十一月十二日でございまして、あの党の慣例では、政務調査会にかけて、総務会にかけましてから党議となるのであります。できましたのが十二日でありましたが、いまだこれを総務会に送るに至らずして党は解消して、今の党派になったのであります。せっかくあそこまでの成案を得ましたが、あれは元の日本民主党の党議にもなるに至らず、また解消しましたから、むろん今の党派の党議にはなっておりませんので、あれはあれまでのものでございますから、これ以上解説することは、かえって世の惑いを引き起すかと思いますので、お答えはいたしかねます。
  118. 柳田秀一

    ○柳田委員 それじゃ、具体的に例をあげて尋ねていきますが、たとえば、学校の先生が憲法擁護の教育をやったり、憲法擁護の運動をすることは、特定の政党を支持することになりますかどうか。これはどうですか。
  119. 清瀬一郎

    ○清瀬国務大臣 その擁護運動ということの意味が、おやりになったことが具体的に現われぬと何とも言いがたいのです。今の憲法が存続している以上は、この憲法の趣意を解説して児童に教え込むという限度においては、ちっとも中立性は害されません。ところが、今日本においてあなた方の党派の幹部、風見章君だとか、あるいは元総理大臣であられた片山君とか、これらの方が主唱されて憲法擁護国民連合というものを作って、われわれの自主憲法期成同盟というのと両々対立して、日本の大きな二つの政治運動になっております。この政治運動のどちらかの旗持ちをするということになると、私は、政治運動に巻き込まれておるものと、かように見なければならぬと思います。
  120. 柳田秀一

    ○柳田委員 そうすると、学校の先生が憲法擁護ということを生徒に教えたり、その実践をすることが、やはり特定の政党を支持することになるのですね。
  121. 清瀬一郎

    ○清瀬国務大臣 ただいまほぼ明らかに申し上げたと思いますが、現在憲法は生きておるのでありますから、これを解説したり教えたり、守れということを生徒に教授さるることは、ちっとも差しつかえありません。ただ、今別に憲法擁護国民連合という一つ政治運動があって、われわれの自主憲法期成同盟と対立して二つの政治運動が国内に巻き起っております。その一つを支持し、一つに反対するということは、私は中正なる態度ではないと思っております。
  122. 柳田秀一

    ○柳田委員 それはおかしいと思う。憲法擁護は正しい。現在の憲法を擁護するのは当りまえなんだ。憲法九十九条によって、われわれ国会議員であろうが、公務員であろうが、学校の先生であろうが、憲法を擁護する義務がちゃんと課せられてあるのです。そういうことをやるのが憲法の精神なんだ。あなた方がやっておる憲法を改正すべしという運動をやるのが憲法の精神に違反しておるのだ。間違っておる。そういうものに入るのが特定の政党を支持するというのなら、憲法の精神がじゅうりんされておる。あなたは初めからマッカーサー憲法だと言って憲法の精神を認めておられぬ。だから、最初に学校教育基本法を認めるとあなたは言われたが、それはあなたの態度と矛盾するのじゃないか。あなたは、はしねくも馬脚を暴露されておる。
  123. 清瀬一郎

    ○清瀬国務大臣 同じ擁護という言葉をお使いになりますけれども、現行憲法の趣意を解説したり、これを守れと言うことと、われわれの自主憲法期成同盟と対立して、政治運動として——おそらくこれは手続もされておると思いますが、憲法擁護国民連合で今言ったような政界の幹部、長老が乗り出してやらるる一つの運動とは、同じ擁護という文字を使いましても、それは意味が違うんです。われわれのやっておる憲法改正運動も政治運動だと思います。それからあなた方のこれに対抗してやっておらるる擁護運動も一つ政治運動と思います。私の解釈はその通りでございます。
  124. 柳田秀一

    ○柳田委員 あなたは、一昨日でしたか、文部委員会で、やはりこの教育あるいは教職員の政治的中立性の問題を質問されたときに、こういうふうに答えておられる。今のところ法律で処罰する考えはないが、教育の政治的中立については「カンセツカンショウ」の形で何らか措置をとるんだ、こう言っておられる。そうなってくると、この法律では処置しないが、何だか行政的に国家が干渉をするんだ、こういうふうな意味を言っておられる。ところが、それに対してあなたはこういうようなことをまた委員会で言っておる。「カソセツカンショウ」というのはそういう意味じゃなかったのだ、これは、何ですか、英語のパーシュエーションとエンカレッジメントですか、むずかしい漢字で答えられておるのです。私はさすがにあなたは弁護士だと思う。あなたが弁護士として日本で一流の名をなされた弁護士の本性がそこに出ておる。三百代言の本性が出ておる。これは、「カンセツカンショウ」というのは、全部の文章から見ると、法律では規定をしないで行政的に何かインダイレクトにやるということが、これは全文を見ればすぐわかる。それをむずかしい漢文で逃げられたところは、まずあなたはさすがに弁護士界の長老だと思う。その意味では感心しておる。それと同様に、たとえば今の議論でも、なるほどあなたは弁護士界の長老だと私は思う。そういうような意味におけるところの三百代言的言辞をして、私はしろうとでものを正直に考える人間ですから、あなたとやり合ったって太刀打ちができない。あなたは黒を白と言うだけの、そういうようなことをもって商売をやってこられたのですから、これはとてもたまったものではない。だから、私は、先ほどあなたがリベラリストだと言われたけれども、少々とうの立ったオールド・リベラリストであると申し上げたい。こういうことになってくると、これから清瀬文部大臣の速記録は日英両文をもって書かなければならない。どちらが正しいかというときは英文をもって正しいとする、まるで条約のようなことになってくるのでありますが、それでは、先般の「カンセツカンショウ」ということはお取り消しになったのですかどうですか。
  125. 清瀬一郎

    ○清瀬国務大臣 あの速記録の全文をお読み願いたいのであります。教育者の中立性を保つのは、必ずしも法律でいくの、行政でいくのといったようなことはしないで、本人に向って、君、このことがようろうか、あるいはこれは行き過ぎはせぬかというような勧奨、すなわちお勧めをするという方法もあるのだ、これを説明したのです。今の世の中で、今日の教育法を知る者が、教員におれは干渉するのだ、インターフェアランスするというはずはない。あれは勧告がいけないのです。教員さんに勧告するということはけしからぬというのです。これは教育法にはない。勧告という言葉を避けて、勧奨と言ったのでありまして、私が古い言葉を使っていけないという非難が出ておりますが、そのふつつかは陳謝しますけれども、私の趣意は、干渉を加えるといった意味の「カンショウ」ではありません。そんなことを文部大臣が言ったら、これは不信任になります。「カンショウ」するというのは、お勧めするということです。
  126. 柳田秀一

    ○柳田委員 大へんお苦しい答弁ですが、今比較的率直に陳謝をすると言われるのですから、それ以上追及しません。ただ、あなたは文部行政の担当者です。今の文部行政では、当用漢字でなるべくやさしく言葉を表現しましょうといって、文部省が今宣伝し指導しておられる。その長官ですから、これからは英語で翻訳せぬとわからぬような言葉だけはどうぞ一つ御遠慮願いたいと思います。  そこで、文教調査審議会ですか、これには教育委員制度の改廃、こういうことが書いてあるのです。改廃というのですが、改というのは何かというと、これはおそらく教育委員の現在の公選制を任命制にすることだろう、廃というのは、地方教育委員会を廃止することだろう、ここに改廃という平仄が合ってくると思うのですが、現在あなたは、教育委員会制度に対しては、都道府県教育委員会の委員は任命制にするのだ、あるいは地方教育委員会は廃止するのだ、大体こういうような御方針ですか。
  127. 清瀬一郎

    ○清瀬国務大臣 改廃は、また言葉を取り上げるようで、はなはだいけませんけれども、この方を改にして、こっちを廃にするというふうな改と廃ではなくて、改廃という一つの言葉に御了解を願いたい。その改廃の内容は、あなたが先刻御引用の通り、私の前の党派ではほぼ結論に達しかけておりましたけれども、新たなる党ができましてから、改廃の方法、限度ということは、これは党でもきめておりません。閣議でもきめておりません。しかし改廃はいたします。
  128. 柳田秀一

    ○柳田委員 今おっしゃる通り、前の旧民主党時代の文教制度調査特別委員会ですか、ここでは、地教委は廃止、都道府県の教育委員は任命制、教育長は文部大臣の承認を得る、文部大臣の指揮監督権を強化する、これを法律できめる、こういうようなことを誉めておられる。それから、自由民主党が発足になりますと、自由民主党の政策として福田さんがこういうことを言っておられる。今のところ、民主党の政調会できめた、市町村教育委員会は廃止、都道府県教育委員会は存置するが委員は任命方式に改めるという考え方が圧倒的に多い、こういうふうに大体あなた方の党の方向は出てきておる。だから、そういうような方向を知った上でいわゆる文教調査審議会に入ってこられた委員が、あなた方の御希望するような結論をお出しになれば、あなた方はそれをとられる。現行通りでよろしいということになったら、あなた方はそれよりも党議をもって重しとする、こうなってくるから、あなた方がせっかく内閣にそういうような調査審議会をお作りになっても、それはわざわざあなた方がそういうところに民主的な立場をとったかに見せる見せかけに過ぎぬということを私は言っておるのであります。教育の民主化と一口に言いますけれども、現在教育の民主化で一番必要なことはどういうことか、これを分析して考えますと、教育制度においての民主化、教育内容においての民主化、教育の方法においての民主化、こういうことに私は分けられると思う。教育制度においての民主化、これが教育委員会の現行制度なんです。この都道府県教育委員を任命制にすることが民主化の方向ですか。あなたはどうお考えになりますか。
  129. 清瀬一郎

    ○清瀬国務大臣 福田君がその通り言われたかどうか知りませんけれども、私の党内では福田君の言ったような方向であろうととは察しておりますけれども、しかしながら、党議としては、やはり適当な会合を開いて討議しなければ、いまだ党議ということには参りませんから、今日いかに改正するかは、ここで責任を持って申し上げることはできません。しかしながら、ある方法がよいということをきめて、これを国会の多数の表決によってその方がよいのだということがきまれば、その多数に従うことは民主主義にかなったことであろう。現行法があるのに、それを実行しないとか、あるいは自分の意思を通すために、多数によって、名を陳情にかりて脅迫がましいことを言う、そういうことは民主主義でありません。けれども、合法的によく調べて、国会が多数の意を受けて法律にして、これに従うということになれば、それは民主主義だと私は思っているのであります。
  130. 柳田秀一

    ○柳田委員 それじゃお尋ねしますが、あなたは現在の都道府県教育委員会の委員が公選制になっていることによってどのような弊害があるとお考えになりますか。あなたが前に所属しておられた民主党においては、これを任命制にするのだということをきめておられるのですが、現在の公選制においてどのような弊害があるか。これは文部行政の衝に当るあなたの個人の見解でもけっこうですから、一つお伺いしたい。
  131. 清瀬一郎

    ○清瀬国務大臣 一つの例を申しましょうか。柳田さんも御承知でありますが、ある府県においては、市町村の教育委員会は、高等学校の学区は小さい方がいい、何となれば、小さい学区で、おれの町のこしらえた学校におれの方のものを入れるのだ、遠いところのものを入れるのは困るといった主張をとり、県の教育委員会では、いや、それは古い話だ、大きな単位でもって学区制を作るのが当然だという説をとって、にっちもさっちも動かないのです。これなどは教育委員会の欠点の一つを暴露したものだと私は思っております。
  132. 柳田秀一

    ○柳田委員 私が尋ねているのは、教育委員会のことを言っているんじゃない。現行法の公選制を民主党は任命制に改めようというのでしょう。だから、教育委員の現在の公選制においてどのような欠陥が現われているとあなたはお考えになりますかと言うのです。これを任命制にするのは、やはり何らか任命制にする理由があるでしょう。こういう点が悪いから任命制にするとか、公選制のどういうところに欠陥があるとあなたは認められるのですか。
  133. 清瀬一郎

    ○清瀬国務大臣 公選制で出てきた人々——個人でも集団でも、その人に対してよしあしの評価をすることは穏当でないと思います。ただ、公選制をやめるということでもありません。任命制をやるという党議はきまっておりません。それは今なくなった党派がやりかけたことなんです。それに対しては答えはしませんけれども、教育自身の中立性を保つのに幾らか欠けるところがありはせぬかということも思われます。しかしながら、なくなりました日本民主党の最後に作りかけた案について、ここでとやかく私は言わない方がいいと考えます。
  134. 重政誠之

    ○重政委員長代理 柳田君、ちょっと申し上げます。あなたの時間は来ましたから、そのお含みで一つ……。
  135. 柳田秀一

    ○柳田委員 驚き入った御議論です。教育委員が公選制だから中立性に欠けるところがあるかもしれぬと言う。それじゃ、任命制にすればその中立性が欠けるところが是正されるのですか。任命制にすることによって、これは選挙によって出てきた都道府県知事、すなわち政党色に支配されることになってくる。いよいよもってこの方が中立性に欠ける。まさにこれこそ私は驚き入った御議論だと思いますが、今委員長から時間を注意せられましたので、この問題はこのくらいで打ち切ります。まだまだ尋ねたいのでありますが、教育内容の民主化ということになってくると、私は国定教科書というものを排撃して、そうして教科書というものは民主的な方法によって検定され、そうして採択され、発行、供給されるものと思いますが、どうも今の内閣においては、あるいは国定の方向に持っていかれる危険が多分にある。先般自民党の水田政調会長は、やはり新聞で自民党の政策を言われたときに、国定教科書の説に賛成しておられる。あるいは教育の方法における民主制というならば、やはり憲法の自治精神によって地方教育委員を尊重し、そうして文部省が監督すべきではない。文部省設置法によって、文部省はその権限の行使に当っては行政上、運営上監督してはいけないとなっておる。また教育委員会においては、文部大臣は都道府県教育委員会に対して行政上、運営上指揮監督をしてはならぬということになっておる。今そういうところの逆コースを自民党内閣はおやりになろうとするのではないかと教育に携わる者、また文教に関心を持っておる者が皆ひとしくこれを憂えておる。新聞の論調も大体そうなんです。あなたはまだ党議が決定しておらぬというのですからいたし方ありませんから、次に移ります。  実はこれは直接文教の問題ではないのですが、大蔵省が十月の十五日省議を開いて、その中で特に教育委員会制度は、二重予算の特権を持ち、一方地方公務員の多数を占める教職員の人事権を持ち、市町村の財政権に大きな制約と負担を与えているから、市町村教育委員会は廃止または制度の合理化をはかる、こういうことを大蔵省の省議がきめている。このようなことを大蔵省の省議がきめるということは僭越しごくなんですが、ことに私は、河野行政管理庁長官が予算権を大蔵省から取って内閣に移すという御構想に満腔の賛意を表する。しかも河野農林大臣の実行力をもって、必ずおやりになることと思う。これは御支援申し上げているのですが、こういうふうに大蔵省が他省の機構、内容にまで立ち入って省議を決定するというようなことは、大蔵大臣として許されますか。
  136. 一萬田尚登

    ○一萬田国務大臣 今お話のようなことを省議できめたことは、全然ございません。
  137. 柳田秀一

    ○柳田委員 省議できめたことがないにしても、省議でやはりそういうような協議のあったことは、この通り事実なんです。だからこそ河野農林大臣が主計局に予算権を持たしておくから、こういうことになってくるので、内閣にこれを持っていこうとされる。このことはよくわかる。一つ河野農林大臣から、こういう点に関する御意見を、簡単でよろしゅうございますから承わりたい。
  138. 河野一郎

    河野国務大臣 お答えいたします。行政機構を変更いたしますことにつきましては、目下検討中でございまして……。
  139. 柳田秀一

    ○柳田委員 ただいまの大蔵省のこういう態度は、いいと思うか悪いと思うか、どうですか。
  140. 河野一郎

    河野国務大臣 大蔵省がそういうことをしたとは私は想像いたしません。
  141. 柳田秀一

    ○柳田委員 あったとしたら、どうですか。
  142. 河野一郎

    河野国務大臣 あったとしたら、非常に悪いことです。
  143. 柳田秀一

    ○柳田委員 ほかの大臣諸君も、河野農林大臣のように率直にお答え願いたい。率直にお答えになれば、私もしつこく言わないのです。それではことしの六月二十五日に発効した余剰農産物の交渉の結果、一千五百万ドルの余剰分のうち綿花が三百万ドル、これは学童服が三百万着作れるのですが、これの加工賃は日本持ちということになっている。ところがこの加工賃は予算上に計上されておらぬ。そこで政府はその窮余の策として、この綿花を売って、その売った金で学童に服を供給したい、こういうふうに考えアメリカの方にオーケーをもらおうとするが、一向にオーケーが来ないというので、今のところにっちもさっちも行かぬということになっている。こういうことを聞いているのですが、これはかりにアメリカの言うごとく綿花三百万ドル分を加工するとすれば、これは予算措置がとられておりませんが、どれくらいの加工賃が要るのか、そうしてこれを来年度予算予算化するのか、そのときはやはり、かつての内閣がやっておったように、綿花を売却してそうして既製服を買うのか、その方針一つ担当大臣から伺いたい。
  144. 清瀬一郎

    ○清瀬国務大臣 綿花を糸にひいて、織って、着物に裁断して縫うということになると、ちょっと十五億くらいの金が要るそうです。正確ではありませんが……。
  145. 柳田秀一

    ○柳田委員 綿花を売って、その売った金で学童服の既製品を買って、そうして学童に配給されようとするのですか、どうなんですか。
  146. 清瀬一郎

    ○清瀬国務大臣 もらった綿花を売ってしまうなんという考えは持っておりません。ただしかし、これだけのわが国の財政処置でありますから、綿花をもらうのをかえて、食物でももらえぬかということを、研究しております。
  147. 柳田秀一

    ○柳田委員 それじゃ河野大臣にお伺いしますが、あなたは先般アメリカへ行かれましたが、このことに対して何か向うと話し合いになってきましたか、この問題は、元来吉田前首相が昨年アメリカへ行かれたときのおみやげだというが、そうじゃない、これは駐日米大使館におった農務担当官のラヂエンスキーと、それから米本という日本におけるミシガン大学の同窓生の間で、ビキニの水爆によって非常に反米思想が強い、何とかここで日本人の反米思想を緩和するためによい手がないかというので、それならば子供に学童服でもおやりなさい、そうすれば親も子供も喜びますよということから話が出てきた。だからアメリカとしては、できるなら三百万着の学童服にその裏へメード・イン・USAを入れたいのだ。だから松村前文部大臣がこれを売って学童服を買いたいと言ったのに対してオーケーをくれない。その点に関して農林大臣は向うへ行って何か交渉されてきましたか。
  148. 河野一郎

    河野国務大臣 贈与の分につきましては、今年度分はまだ今お話の通りきまっておりませんので、明年度分については今年度分の決定の上において相談しようということで、まだこの点には触れ広かったわけでございます。今御指摘の通り給食の分につきましても、学童服につきましても未決定でございますが、これは昨年きめました際に、その内容に立ち入ってきめておりませんでしたが、その後アメリカ側からそういうようなことを言って参りましたので、今折衝中で、もう少しできまるようなことになると考えております。
  149. 柳田秀一

    ○柳田委員 それでは続いてお尋ねいたしますが、この余剰農産物の剰余分については、脱脂粉乳七千トン、小麦八万トンがありまして、それで文部省においても、給食児童の対象を四百二十万人から六百十万人にふやしておるわけです。そうすると、もしかりに来年度こういうような剰余分が来なければ、現在膨張したところの給食予算、こういうものは現在のままでもって、その足らぬまえは政府の方で見られるのか、その点に関して文部大臣はどういう考えを持っているか。この剰余分を見込んで本年度は膨張してきておるが、もしも来年度こういうような剰余分が必ずしもあるとは限りません。なかった場合には給食の幅をやはり狭めるのか、かりになかろうともこの広げた給食の幅は維持していこうというお考えか、あなたのお考えでよろしい。どうせ予算化する以上は、裏に大蔵大臣がおられましてまた何か文句を言われるかもしれないけれども、あなたのお考えだけでいいですから、一つ伺っておきたいと思います。
  150. 清瀬一郎

    ○清瀬国務大臣 この内閣では教育の機会均等ということを考えております。そして今日生活保護を受けておらぬでもやはり生活に窮屈な親たちがたくさんあられるとみえて、給食の金を持ってこない子供があるそうです。しかし、それを差別待遇するわけに行きませんから、大体学童の四%、七十三万人くらいと計算しまして給食費の補助をしてあげよう、ついでですが教科書も七十三万人には無料で小学一年から中学まで与えてやる、こういう希望でもって、せっかく大蔵大臣にもお願いしておるところであります。
  151. 柳田秀一

    ○柳田委員 なおこのほかに私はオリンピック誘致に対する主競技場建設の問題あるいは派遣費の問題、そのほか今問題になっております黄変米の処理等に関してお尋ねしたかったのですが、時間の関係もありますから、この辺でやめておきます。  最後に申し上げますが、今私は文部大臣と一問一答をやっておったのですが、文部大臣は、質問者がどういうことを質問しているかということをもう少しよくお聞きになって、率直にお答え願いたいと思います。あなたと一問一答しておったのでは何時間時間をもらっても足りないのです。そしてあなたの発言している時間というものもわれわれの時間の中に食い込んでくるのですから、ほかの質問者も困ると思うのです。昔の帝国議会当時ならそれでよかったかもしれませんが、少くとも今日の国会においてはこういうことをやられると非常に審議がはかどらない。一つこれをお改め願いたいと思います。   〔重政委員長代理退席、西村(直)委員長代理着席〕
  152. 西村直己

    西村(直)委員長代理 久保田鶴松君。
  153. 久保田鶴松

    ○久保田(鶴)委員 きょうは聞くことが非常に多いのでありまするが、まず最初に行政管理庁長官河野さんにお伺いしたいと思うのでございます。  行政改革はすることが多くあろうと思うのでありまするが、一体何をやろうと思っておられるのか。と同時に、あなたが行管担当大臣として就任されまするときに抱負を述べられ、予算編成機能を分離して総理府の方に移管したい、こういうことを申しておられますが、大臣はこの改革についてただ抱負を述べられただけであるのか。あなたのことだから、必ずおやりになるのであろう、言われたことはやるであろうと私は信じておりますが、実際それをおやりになるかどうか。この点をまず第一に伺いたいと思います。
  154. 河野一郎

    河野国務大臣 お答えいたします。行政機構を改革いたします点につきましては、目下検討中でございまするし、本日も国会に提案いたしました審議会をさらに強化拡充いたしまして、各方面の御意見もこの審議会を通じていろいろ承わり、そうして案を立てていきたい、こう考えております。従って今新聞でお示しになりました点は、私は私の考えはございますけれども、私一個の考えでこの大問題をきめるわけには参りません。しかも、これは先般も本会議で申しました通りに、これは行政の機構でございますから、全国民諸君の御便宜をはかり、行政の能力を強化するようにいたしませんければならぬときでございますから、一つ社会党の各位の御意見もおありになれば十分承わって、そうしてなるべく皆さんの希望に沿うようなことがいいのではないか。これは別に政策とか主義とかいう問題と離れても考えなければならぬ問題だと思いますので、そういう意味で特に慎重に取り扱いたい、こう考えております。従って私一個の考えをそのまま推し進めていくんだということとは多少違って、私は私の考えを持っております。それは述べますけれども、私の考えでこれは万事やるということではないだろう、こう考えておりますので、いずれなるべく早く案をきめまして、そうして国会の御審議を願いたいと思っておりますから、そのときまでこの行政機構のどういう案をどうするかということについては、一つ御猶予をちょうだいいたしたい、こう考えております。
  155. 久保田鶴松

    ○久保田(鶴)委員 そういたしますと、あなた一個の考えで、この問題をあなたの抱負として発表されましたが、しかし今の答弁によりまして大体わかりましたけれども、閣僚全体の空気として、次の通常国会にはこれを法案としてあなたが出されるというその見通しがついておりますか、それを伺いたい。
  156. 河野一郎

    河野国務大臣 これはぜひ次の通常国会には法案として取りまとめまして、御審議を願う段階に進めて参らなければならぬ問題だと考えております。
  157. 久保田鶴松

    ○久保田(鶴)委員 それでは次の通常国会にはこれは必ず出るものである、こう了解してよろしゅうございましょうか。
  158. 河野一郎

    河野国務大臣 条件をつけるのは卑怯のようですが、特別な事情があれば別でございますが、私はぜひそうしなければいかぬ問題であると考えております。
  159. 久保田鶴松

    ○久保田(鶴)委員 いろいろ伺いたいことがあるのでございますが、きょうは私、主として大蔵大臣通産大臣にいろいろの意見を伺おうと思います。大体河野行政管理庁長官の御意見はわかりました。  次に大蔵大臣にお伺いしたいのでありますが、中小企業年末金融等について日銀の総裁並びに銀行協会長は、最近は金融緩和が著しいので少しも心配はない、こう言うておられます。このことについて大蔵大臣としてのお考えはどうか、伺いたいと思うのでございます。
  160. 一萬田尚登

    ○一萬田国務大臣 最近の一般的金融情勢からいたしまして、中小企業金融も徐々に潤ってきつつあると私は考えておりますが、しかし年末はやはり特殊な事情もありますので、なお万全を期する意味におきまして、中小企業金融関係の融通資金量を特にふやす措置をとって、これに備えておるわけであります。
  161. 久保田鶴松

    ○久保田(鶴)委員 大蔵大臣も御承知と思いますが、国会に配付されました通産省の資料によりますれば、年末における中小企業金融資金と、そうしてその金融の見込みの推定は、第三・四半期におきまして千百七億円でございました。ところがそのうち政府関係の金融機関の資金の供給の見込みが二百一億円でございまして、その差額の九百六億が市中金融機関への期待額となっているのであります。従って昨年同期における市中金融の貸し出しの純増加は八百十五億となっております。その差額九十一億は計数的に見て不足する、その推定等を行なっておるのであります。私は、大蔵大臣はこの九十一億内外の金額を現在のいわゆる金融緩和によって市中金融機関よりも支出される、こうお思いになるかどうかという点を伺いたいのであります。
  162. 一萬田尚登

    ○一萬田国務大臣 先ほどは、特に年末金融について申し上げたのでありますけれども、中小企業金融全般についてのお話であります。この中小企業金融において、特に私は今ここで一般の市中金融との関連において考えておりますことは、将来中小企業専門の金融機関に債券を発行さす。これを緩和して市中金融機関に持たせる。そうしてこの専門のほんとうに中小企業金融に熱意を持ち、なれておるものに多くの資金を与えていかなければならぬ、こういう構想も持っております。財政関係においてかりにいろいろな情勢から資金が一時不足するような場合には、そういう方法で融通カバーをしていく、こういうふうに考えて中小企業金融に遺憾なきを期することは、ここで私は確言をしていいと思います。
  163. 久保田鶴松

    ○久保田(鶴)委員 大臣はそう申されますが、私はこうした推定の政府機関の資金の供給が、これは大体二百一億及び八百十五億円くらいではないかと思っておるのであります。従って現在国庫より預託されておりまする六十二億が予定通り年末に引き揚げられれば、たちまちそれだけ減額される金額でございますので、従って中小企業年末金融にとっては最も緊要なことであろうと思うのであります。従って指定預金の引き揚げを暫時猶予する、こうしたことが、この委員会において大臣はここではっきり確約してもらえるかどうかということを確かめておきたいと思うのであります。
  164. 一萬田尚登

    ○一萬田国務大臣 預託しております指定預金を引き揚げることはありません。そのほかに、私はなお資金的措置相当いたしておるわけであります。
  165. 久保田鶴松

    ○久保田(鶴)委員 預託してある資金は引き揚げる予定はない。それは特に十二月だけでなくて、一月になって、あるいは二月になってそれを引き揚げるというようなことがありました場合においては、一月なんかは特にそうした中小企業の人たちは困るのでございますから、そういう点等についても大臣はどうお考えになっておりますか。
  166. 一萬田尚登

    ○一萬田国務大臣 先ほど申しましたように、この中小企業の金融には特に力を入れるつもりをいたしております。決して実情に沿わない無理の来るようなことはいたさないつもりでおります。
  167. 久保田鶴松

    ○久保田(鶴)委員 それでは次に、現在中小企業に対する金融機関の貸し出しの金利は、言うまでもなく政府機関の方が割安であることは御承知と思うのであります。従ってこのことを逆に申しますると、市中金融機関の貸し出し公定金利は、プラス歩積みまたは両建をも強制して、金利負担ははなはだ高率となっておるのであります。これに引きかえまして政府金融機関の貸し出し金利は、とにかく一割内外にこれを安定している点で、中小企業にとっては最も安定した資金である、こういうふうに私は思っているのであります。従いまし工各種の中小企業団体はもちろん、地方公共団体、あるいは政府関係金融機関自体も、年末に向ってこれらの財政金融のその資金を要望しておるのであります。われわれは、このために特に現在の国庫余裕金の一部をさらに中小企業金融の一部に向けまして、短期預託とするという緊急策が最も適切であると思うのでありますが、大蔵大臣はこうした問題について、それをどうお考えになっておるかということを確めておきたいと思うのであります。
  168. 一萬田尚登

    ○一萬田国務大臣 ただいまのところ国庫余裕金を増すというのも考えておりませんが、先ほど申しましたように、第三・四半期、特に年末にかけまして、ちょっと私の今頭にあるところでも予定の計画に比べまして四、五十億は資金をふやすという道をとっておるのでございます。
  169. 久保田鶴松

    ○久保田(鶴)委員 そこで、このほかに私特に大蔵大臣に確めておきたいと思いますことは、衆議院の商工委員会が、自民、社会党はもちろんのこと、全会一致をもって決議いたしました。その決議は、中小企業年末融資に関する件に対してこれを決議いたしておる。具体的にこの決議いたしました問題を、大蔵大臣はどうお考えになっておるかということを一つ一つ私は伺ってみたいと思います。その点を一つ答えていただきたいと思うのであります。中小企業年末融資を円滑に推移せしめるため、政府は左記の事項を速急実施し、いやしくも国会の決議を軽視するがごときことのないよう格段の戒心をしなければならない。  第一点は、中小企業向け政府指定の預金の引き揚げ猶予はもちろんのこと、新規増加をはかること。こういうことでございますが、これに対する大臣のお考えを伺いたいと思います。
  170. 一萬田尚登

    ○一萬田国務大臣 先ほど申しましたように、指定預金の引き揚げもいたしません。政府関係の金融機関の年末の貸し出し資金量をふやして参りたいと思います。
  171. 久保田鶴松

    ○久保田(鶴)委員 二点といたしまして、政府関係金融機関に対する予定計画額の投融資は、優先的に速急に実施すること。これに対するお考えはどうですか。
  172. 一萬田尚登

    ○一萬田国務大臣 むろんこの政府関係の機関が中小企業の融資に対して率先してやることは言うまでもありません。あるいは質問の要点を私は間違えたかと思いますが、政府の中小企業金融の専門の金融機関が、中小企業に対して率先して熱意を持ってこれに当る、これは申すまでもないことであります。
  173. 久保田鶴松

    ○久保田(鶴)委員 第三点として、貸し出し条件を緩和し、手続は極力簡素化するとともに、その迅速化をはかること。なおこれが趣旨を末端に徹底せしめることということでございまするが、その徹底はさせますでしょうか。
  174. 一萬田尚登

    ○一萬田国務大臣 仰せの通りいたしたいと思います。
  175. 久保田鶴松

    ○久保田(鶴)委員 四点といたしまして、公庫の指定代理店のうち、中小企業金融には著しく熱意を欠くものがあるのであります。こうした金融機関に対しまして、その指定の取り消しを行うことということでございますが、これはどうでございましょうか。
  176. 一萬田尚登

    ○一萬田国務大臣 ぜひとも熱意を持ってやらせるように私は指導するのがいいと思っております。取り消してみて、それにかわってほんとうに中小企業の金融をやってくれるものがありますればよろしゅうございますが、現状では、そういうような代理をやってもらうのは、その金融機関によらなければできない場合が多い。そこにまた弊害がありまして、熱意もないということも起る。これはどうしてもそういう金融機関に十分注意を与えまして、熱意を持ってやらせる。こういうふうにいたしたいと思っております。
  177. 久保田鶴松

    ○久保田(鶴)委員 今の第四点の問題は非常に問題だと思うのであります。大蔵大臣は、取り消しをしてみて、あとでやってくれる会社がなかった場合には困るのでというようなことでございますが、そこが問題なんです。実は国民金融公庫とか、あるいは信用金庫とか、その他の金庫等は、中小企業というよりも、もっと零細な商売をいたしておる人たちの金融機関として作られたものと思うのであります。ところが、こうした金融機関は、ややもいたしますると、地方のボスに利用されております。従って、小口の取り扱いを非常にじゃまくさがります。大口のところにその金を貸すことにいたしますと同時に、小口の人らが金融の問題をいろいろ頼みに参りますと、ほとんど断わられるというような不親切な状態が現われているのであります。こうしたことに対しまして、設けられた金融機関の趣旨というものに反するがために、こうした問題に対するその取り消しの問題はどうされるかということが重大なる問題だから、この点を重ねてお尋ねいたしておる次第であることを御了承願って、御答弁願いたいのであります。
  178. 一萬田尚登

    ○一萬田国務大臣 そういう点につきましては、できるだけそういうことのないように指導をやっていきますが、一つには、代理の貸付になっておる結果、自然ある意味において親切な点が欠けるところもあろうかと思います。それで、おもなところにはなるべく代理でなく、直接に店を出させて、そうして責任を持って貸付をやらせる、こういうふうな方法を今とりておりまして、指導と相まちまして、現に改善を見ている、こういうふうに考えております。
  179. 久保田鶴松

    ○久保田(鶴)委員 次に、第五点といたしまして、市中金融機関の中小企業に対する融資を積極的に行わしめるため、必要な措置を強力かつ早急にとること、こういう決議でございますが、これに対してお答えを願いたいと思います。
  180. 一萬田尚登

    ○一萬田国務大臣 市中銀行におきましても、中小企業金融は積極的にやらせつつあるのでありまして、まあ地方銀行あたりの貸付も、平均すれば一口の金額が必ずしも大きくはないのでありまして、これは、まあ中小企業とは一体何であるかということにもまたなるのであります。しかし私は、そういうふうな市中銀行が相手にする中小企業というのは問題ではないのではないか。むしろさらにそれよりも低いもの、特に政府機関等においてめんどうを見なければなかなかうまくいかないような中小企業により問題があるであろう。そういう見地から、先ほど申しましたように、今後そういう金融機関が資力を調達する場合に、言いかえれば債券を発行してその債券を市中金融機関が持つようにして、その市中金融機関の金を専門の機関において集めて、そうしてめんどうを見てやる、こういう構想を私今いたしておるので、こういう点は、今後十分検討を加えて実施に移していきたい、こう考えております。
  181. 久保田鶴松

    ○久保田(鶴)委員 第六点といたしまして、中小企業信用保険及び信用保証の機能を強化し、その保証範囲の拡大をはかることというのであります。これはどうお考えでございますか。
  182. 一萬田尚登

    ○一萬田国務大臣 私も全く同じ考えでございます。
  183. 久保田鶴松

    ○久保田(鶴)委員 七点といたしまして、下請代金の支払いを強力に促進すること、これはどうでございましょうか。
  184. 一萬田尚登

    ○一萬田国務大臣 これはもう前からの問題で、はなはだ遺憾に思っております。特に一般金融が今日緩和して、大企業が資金的に困ることはもはやないのですから、そういう点がないように、それは文字通り私どもも促進したいと考えております。
  185. 久保田鶴松

    ○久保田(鶴)委員 八点といたしまして、災害都市の困窮は言語に絶するをもって、各金融公庫は、その貸付に当って金利、あるいは貸付期間、手続及び担保等について格段の配慮を払うことというのであります。
  186. 一萬田尚登

    ○一萬田国務大臣 けっこうなことでありますから、さように努力をいたしたいと思います。
  187. 久保田鶴松

    ○久保田(鶴)委員 今申しましたこと等に対しまして、けっこうなことであるとか、あるいは努力をいたしますという言葉だけではならないのであります。今八点まであげました問題を一々答えてもらいましたが、けっこうなことであるというだけではなしに、そうした問題に対して大蔵大臣はどういう考えを持っていられるかということ。私の申しましたことは、けっこうなことで、努力するでは承知できない。それを一つ御答弁してもらいたい。
  188. 一萬田尚登

    ○一萬田国務大臣 大体今までの答弁で御了承を得たと思っておったのでありますが、私が今申したようなこと、また御指摘の点を具体的に実行する考えであります。
  189. 久保田鶴松

    ○久保田(鶴)委員 そこで、政府の市中金融に対する態度について、これは重大なことであるからぜひ伺いたい。今大蔵大臣がなされたようなおざなりの、けっこうなことだ、努力するじゃなしに、真剣にこの問題を考えて答弁してもらいたい。そのことは岡山県高梁市の下町二三番地でございますが、ここに備北信用金庫の貸付と焦げつきの問題があるのであります。この信用金庫は、出資金は一千二百五十万円でございますが、目下同市において建設中の三井工業株式会社に対しまして、金融違反を犯しているのであります。金融法によりまして、一千万円の資本でございます場合においては二百万円は貸せると思います。それ以上貸すことは金融法違反と私は解釈いたしております。ところがこの会社に対しまして五千三百万円の貸付をいたしておる。その上これが貸付に当りまして、六千万円内外の導入預金によりまして高利を実施しているという奇怪な事件であるのであります。焦げつき事情を知りました地元の預金者は、取付がせられ始めますと——このことは、信用金庫といたしまして貸付限度から見ても違法だということがわかっている。そのために、事態の推移によって地方の金融機関に及ぼす影響が非常に大きい、こう思うたのでございましょう。従って、県下の信用金庫協会等においても極秘裡に事態の収拾を急ぎまして、全国信用金庫連合会等に対しましてもこの問題が持ち込まれていると思うのであります。全国信用金庫連合会は八重州口にありまして、常務理事として森岡さん、また佐久間長次郎さん、こうした方々がいらっしゃいます。この森岡さん等は、この問題の起きました高梁市に行かれまして、いろいろこうした問題に対する調査をされたと思うのであります。そういうようなことからいたしまして、預金者のこうむった被害は非常に甚大であります。従って、この際この定期預金の満期の来た人たちはその支払いの要求に応じてもらえない、こういうことで非常に困っております。年末に当って企業にも非常に支障を来たしております。そうしてこの支払い満期が来ておりまする人たちの預けた金額は、合計いたしまして五千二百万円に上っておるのであります。これを一体どうするか、こういうような問題でございます。しかも三井工業関係の預金名儀は、数口に分れてそのほとんどが仮名のものといわれております。また貸付担保の裏づけ等にはなっていないのであります。その上信用金庫の年利四分一厘の利率をこえているという実情でございます。また右預金に対する特利は月七分程度となっております。それをまた借り入れ債務者の負担としているということは、まことに重大なことと私たちは思うのであります。従いまして、導入預金について注目すべき一例として、最近同県下の信用金庫に対しまして、東京の某商店より次のごとき書面が参っております。いわゆる導入預金なるものの性格を知るものとして私はその書面を一応大蔵大臣にも聞いてもらっておこうと思うのであります。こういう書面であります。  「(前略)  扨て唐突に御手紙差上げます段御容赦下さい。貴金庫に於かれまして左の様な場合が御座いましたら是非御紹介下さいますよう御願申上ます。詳細に御説明の上必ず御期待に添い得ることと存じます。これは俗に預金の導入と申しておりまして例えば貴金庫の御取引先が事業資金を必要とし貴金庫に借入の申込があります場合借出条件は具備しておるが資金の枠の関係で第三者より預金を導入し貴金庫の預金量を増加するようにして借出したい場合一定額の定期預金を致すものです。定期預金の金額は百万円以上五千万円迄にて期間は三カ月から六カ月です。尚定期預金を致します場合は薄謝を借入会社より頂くようになっております。而して貴金庫及借入先関係の信用に関しますことは勿論一切秘密に致します。  右念のため申上ます。(後略)   昭和三十年十月十八日   東京都中央区日本橋江戸橋〇〇〇   〇〇ビル一階       〇  〇  商  店          〇 〇 〇 〇   信用金庫理事長殿こういう手紙が参っております。こうした問題に対しまして大蔵大臣はどうお考えになっておるか。非常に重大な問題でございますので、この問題に対するお答えを願いたいと思うのであります。
  190. 一萬田尚登

    ○一萬田国務大臣 具体的な事柄で銀行局長がその衝に当っておりますので、銀行局長から答弁いたさせます。
  191. 東條猛猪

    ○東條政府委員 お答え申し上げます。全国の信用金庫の運営につきましては、中小企業の金融機関である使命の重大性にかんがみまして、経営に遺憾のないようにできるだけの指導をも加えておりまするし、また金庫の経営者もそのつもりで経営に当っておるのでございますが、数多い信用金庫の中には、まことに遺憾でありまするが、間々不祥の事態の発生を見ますることは、私どもといたしましても大へん遺憾に存じております。ただいまお話のございました岡山県高梁市の備北信用金庫につきまして、大体お話のごとき導入預金及び特定会社に対する貸付が行われておりますことは、遺憾ながらこれは事実でございます。それでこの善後策といたしましては、私どももいろいろ苦慮いたしておりまするし、出先の中国財務局におきましても、金庫の当事者その他とその後いろいろとこれが解決策を相談をいたしておる次第であります。またお話もございましたように、全国信用金庫連合会におきまして、預金の引き出し、その他応急の措置がとれまするように、資金面その他いろいろの手配を講じておる次第であります。この備北信用金庫の解決策につきましては、いま少しく時日を要すると存じておりますが、でき得る限りの処置を講じまして、善意の方々にできるだけ迷惑を及ぼさないように処理して参らねければならぬ、かようなことでただいま関係方面ともいろいろ相談をいたしておりまするのが、備北信用金庫の現段階でございます。ただいま御朗読になりました、いわゆる導入預金の案内状と申しまするか、その手紙を実は私どもも手にいたしております。これはもちろん導入預金の問題でありまして、かねて相互銀行とか信用金庫には、無尽の問題でありますとか、そういう高利の導入預金については十分配意いたすように、そういうことはやってはならぬという注意をもちろん平素から喚起いたしておりますが、そういうコピーを手にいたしましたので、これまた念のために、こういうこともあるので、注意するようにということはそれぞれ手配をいたしておるような状況にございます。
  192. 久保田鶴松

    ○久保田(鶴)委員 銀行局においても、こうした問題は御存じであったと申しておられますが、それならばこの正月を控えまして、今申しましたように、非常にたくさんの金を満期の期日が来ているのに支払ってやれないというようなことで、困っている人に対する措置をどう——大蔵省公認として一応この信用金庫に対しての信用をつけたと申しましようか、大蔵省公認というようなことから、この信用金庫というものに対して預金者は信用しているわけなんです。それについて、この正月を控えての預金者に対する措置を、具体的にどうして上げるつもりですか、それを私は伺いたい。
  193. 東條猛猪

    ○東條政府委員 お答え申し上げます。御承知の通りに、備北信用金庫は出資金一千二百五十万円ぐらいの金庫でございます。先ほども申し上げましたように、いわば全国的な信用金庫の連合会というよう血ものがございまして、そこに信用金庫の資金をある程度プールいたしております。しかしながら、この連合会の資金を無制限に特定の、しかも小さい出資金の金庫につぎ込めるかどうかということは、やはりこの連合会の運営の問題にも関連をいたしますので、よほど慎重な配慮が必要でございますので、御指摘のように年末を控え、いろいろ困った事態を生じても困りますので、その辺のところを、できるだけそういう不測の事態を生じないようにただいま連合会でもいろいろと研究していただき、またわれわれといたしましても、そういう方向に沿いまして検討いたしたいというのが現状でございます。
  194. 久保田鶴松

    ○久保田(鶴)委員 銀行局長、具体的に私がこの問題をあなたに申し上げますなら、銀行局としても無責任であるといわなければならない。従いましてこの金融公庫の連合会も無責任である。連合会はこの問題に対しまして岡山の方に森岡さんが出張されたそうでございます。ところが岡山の方の備北信用金庫は金を貸せと言わないから、こちらは貸してやろうと思って用意はしておるのだけれども、貸してくれと言わぬところに貸すわけにはいかぬのだ。備北信用金庫といたしましては、その金を借りてそれをまた預金者に一時に支払うということにいたしますと、その利子を払わなければならぬので、なるべく預金者にその利子の負担をさせておいて、そうして自分たちらは得をしようとするような考え方を備北信用金庫の理事長を初めとして理事の人たちらが持っておるのだ。こういうようなことを私たちは伺っておる。そうした問題について銀行局が御存じでございますなら、八車洲口の全国信用金庫連合会の方々ともよく相談なさいまして、正月を控えて困る預金者に対して一時も早くこの金を支払いをしてやるように努力してやる御意思があるのですかないのですか、それを伺っておきたい。
  195. 東條猛猪

    ○東條政府委員 お答え申し上げます。御承知のように備北信用金庫の経営責任者がその後かわりまして、私どもといたしましては、新しい理事者のもとに預金者の保護考え、また信用金庫自体の再建にも支障のないように誠心誠意努力をしております。また私どもの方も、もちろん出先の財務局長も、そういう方向に沿って、できるだけ誠意をもって努力しておる、私はそういうふうに確信しております。従いまして御指摘のごとく、信用金庫の連合会から出かけていっていろいろと相談をいたした事実もございますので、それにつきましては預金者のことも考え、また信用金庫の再建の道をも考えながら、できる限り事態を円満に持っていきたい、かようなことでただいま努力をいたしておるわけであります。
  196. 久保田鶴松

    ○久保田(鶴)委員 この備北信用金庫の問題については、銀行局長から大蔵大臣もお聞きのような話がございました。また私がいろいろ申しましたことも、大蔵大臣はお聞きと存じます。従って大蔵大臣として、この問題に対する結論はどうお考えになりますか、大蔵大臣から伺っておきたい。
  197. 一萬田尚登

    ○一萬田国務大臣 なおよく実情を調査しまして、そうしてこれは何といっても預金者というのが一番お気の毒ですから、できるだけ一つ調査しました上で適当な措置をとりたい。すべて受け合うわけには参りませんが、よく実情を見た上で適当な措置を講じたいと思います。
  198. 久保田鶴松

    ○久保田(鶴)委員 大蔵大臣は預金者はお気の毒だと思うがと、あなたは人のことだからそんなのんきなことを言うておられますけれども、実際金を預けている人が正月を控えてその期日がきているのに、それも大蔵省公認というその名に信用いたしましてこの備北信用金庫に金を預けたのです。それをあなたは預金者はお気の毒だと思うがというようなことをおっしゃらんと、まず大体銀行局長も話されまして、その事情も調べておられるし、御存じだ。またあなたも今話をお聞きでありましておわかりだと思います。日本財政をあずかる大蔵大臣といたしまして、ただいま私と銀行局長との間における話を聞かれたら、これは大体どんなものかということは、あなたの敏感な頭によっておわかりだと思います。それによって結論は出ると思う。そのあなたの結論を伺いたい、こう申しておる。どうお考えになりますか。
  199. 一萬田尚登

    ○一萬田国務大臣 これが処理につきましては、今のお話程度ではなかなか具体的にどうこうということは困難であります。金庫の内容についてなおとくとよく調べまして最善の措置を講じたいと考えております。
  200. 久保田鶴松

    ○久保田(鶴)委員 こうした問題についてまだ申し上げたいことがあるのでありますが、時間がございませんので、一応この問題に対しての結論をつけておきたいと思う。信用金庫のいろいろな問題はたくさんございますが、現われたのは備北信用金庫だけであります。ところがこうした問題は至るところにあるのであります。これは銀行局長もよく聞いておいてもらいたい。この信用金庫あるいは相互銀行というものは、私は大蔵委員会でもいつも申しておったのでありますが、ボス化している。大きな方面には金を貸すが、こまかいものには金を貸さない。それの現われの露骨なものの名前をはっきり申せとおっしゃれば申してもよいと思います。私たち社会党の同僚議員が紹介して参りますと、これは断わる。保守党の議員がこの申し込み等に対する紹介をして参りますと、これはあく。大蔵省は地方のボスの手先で、選挙に利用してこうした金融機関を指導していらっしゃるとは思いません。しかしながらそういうようなわれわれが疑いをかけなければならないような点が多くある。そういう点を銀行局といたしましても十分一つ監督してもらいたい。私はその点、あなたの方に、どこそこの金融公庫、またどこそこの相互銀行というような、ほんとうに零細な中小企業金融機関として設けられた金融機関が、線をはずしている、筋が通っていないということをはっきりと申し上げられる。その点またあなたにお教えします。そのお教えいたしましたことに対して、あなたは、この場所でその点を十分監督するということが言えますか。それをここではっきり申しておいてもらいたい。
  201. 一萬田尚登

    ○一萬田国務大臣 今御指摘のような点がないこともない。私もそれを非常に遺憾に思い、心配もいたしております。これは実情です。しかしそういうことが起らないように十分な監督をするように申しつけておりますが、なお一そう今後監督を厳重にするというのは、口だけではなく具体的に施策の上で、そうしてまた小口の金融機関であり、小口の金融を扱うという精神に即するような金融機関に仕立て上げたいと考えております。
  202. 久保田鶴松

    ○久保田(鶴)委員 次には明年度予算編成に関しまして、中小企業金融公庫あるいは国民金融公庫、商工中金等に対しての資本額の充実に対しまして、政府はどれだけの増資を計画していらっしやるか、大蔵大臣から一応説明してもらいたいと思います。
  203. 一萬田尚登

    ○一萬田国務大臣 今のところ来年度のそういうような投融資についてまだ結論を得ておりません。しかし特に私は健全財政といいますか、非常に節約をお願いしている財政を続けておりますので、何といってもしわが中小企業方面に寄ることは否定できないと思う。そういう意味からも、そういう点についてのしわをなくするように今検討をいたしているわけであります。
  204. 久保田鶴松

    ○久保田(鶴)委員 どうですか、大蔵大臣。今申しました金融機関ですね、これは先ほど私が申しておりました中小企業、零細業者に対することの続きでございますが、もう十二月ですよ、ですからあなたも三十一年度の予算に対します構想というものがあるでしょう。それはないですか。それを一つ話してもらいたい。
  205. 一萬田尚登

    ○一萬田国務大臣 今申しましたように、中小企業金融については、私としてはこれを増強したいということを方針にしておるということは申し上げた通りであります。ただ金額等については、まだきまっておりません。
  206. 久保田鶴松

    ○久保田(鶴)委員 金額等についてはきまっていないけれども、あなたは大蔵大臣として、こうした金融機関に対してこれだけの金はふやしたい、増資したい、こういう構想があるでしょう。その構想を私は聞かしてもらいたいと思うのです。
  207. 一萬田尚登

    ○一萬田国務大臣 これは全体の財政の投融資等についてもバランスをとりつつ考える点もありますので、今ここで単に中小企業金融についてだけ金額等を申し上げることはできません。
  208. 久保田鶴松

    ○久保田(鶴)委員 こうした中小企業の金融関係等につきましての大蔵大臣の話を聞くと、わが国の中小企業、零細業者は泣くでありましょう。この点はこれ以上お尋ねしてもむだと思いますから、私は次に進みます。  税金関係について大蔵大臣にお伺いしたいのですが、政府は口を開きますと真に中小企業を保護育成をする、こう申しておられます。その意思がございますならば、まず法人税の是正がなされるべきであると私は思うのですが、現行税法では、何億の大会社もあるいはちっぽけな企業も、一律に四〇%の法人税が課せられているのであります。   〔西村(直)委員長代理退席、委員長着席〕  これを資本金五十万円以下程度の中小法人には三〇%ないし三五%に引き下げる意思がございますか、それを伺いたいのであります。
  209. 一萬田尚登

    ○一萬田国務大臣 中小の法人税につきましては、もうずっと前の国会からいろいろ御意見がありまして、ただいま検討を加えておりますが、これはまた個人の中小企業との負担の公平の問題もいろいろありますので、今なお検討を続けております。
  210. 久保田鶴松

    ○久保田(鶴)委員 今申しました資本金五十万円程度以下の業者に対しましての問題は、私は三十年度予算の組替案の趣旨弁明をいたしましたときの本会議でもこのことを申し上げました。私が今申し上げたことは私たち社会党の考えておりましたことでございまして、特に、今度の鳩山第三次内閣として三つの方針を話されましたその一つがこの税金問題で、税法を改革すると言っておられる。その税法を改革すると申されました中の一つを私は今お伺いしたのでございますが、ほんとうに困っているのは中小企業、零細業者であります。その零細な業者と大きな法人と小さい法人とを一律にということが、あなたは矛盾しておるとお思いになりませんか。それでよいとお思いですか。それから伺いましょう。
  211. 一萬田尚登

    ○一萬田国務大臣 今回税制の改革をいたしておりますが、税制の改革は第二次鳩山内閣当時、あるいはさらにさかのぼって第一次の当時からぜひやりたい、これは敗戦後においていろいろと国情にふさわしくないと思われる税制も入っておるから、というところに根本があるのでありまして、この税制改革は大きく考えておるわけであります。ただいま税制調査会等にかけて検討を願って、最近中間報告もあったようでありますが、さらに詳しい報告もあろうと思うのであります。そういう意味におきまして、これらの意見を取り入れて今後の具体的な案を今考えておりますが、そういう点からしまして、今の私だけの考えですが、大体累次の減税もやりましたが、やはり所得税とかあるいは法人税等の直接税が重いという感じを私は持っている。従いまして、税制の改革については今後そういう方面に特に力を入れ、それらの税の間の公平を期していきたいと考えます。特に中小企業関係の税の負担、あるいはまたさらに勤労者の所得税、こういうものは今後——特に今さして減税というようなことも考えにくいのでありますが、税の軽減を考える場合にはまず考えられるであろうと私自身は考えているわけでございます。
  212. 久保田鶴松

    ○久保田(鶴)委員 それではなお税の問題について伺いますが、勤労者の税金が高いということは認めてもいいと大蔵大臣は参議院で答えておられますが、それならば、本年の年末手当あるいは十二月分の給料においての五千円までの免税案を当然のむことをお考えになろうと私は思いますが、これはどうでございましょうか。おのみになりますか、それを伺っておきたい。
  213. 一萬田尚登

    ○一萬田国務大臣 特殊の、たとえば年末の賞与というようなものについて単に税を負けるということはやはり考えられないのでございます。所得税についての負担が重いとかあるいは権衡を失するとか、こういう見地から考えるべきだということをただいま考えているわけでございます。
  214. 久保田鶴松

    ○久保田(鶴)委員 あなたは、参議院の大蔵委員会においての勤労者に対する税金は高いということに対して、高いと答えていらっしゃるが、それはうそですか。あなたは参議院でそうお答えになったでしょう。勤労者に対する税金と、年末手当等に対する五千円までの免税、こんなことはここで論議するまでもないと思う。当然五千円までの税金は免税してやるべきだと思うのですが、ここで一つはっきり答えていただきたい。参議院でもあなたはそうお答えになったでしょう。
  215. 一萬田尚登

    ○一萬田国務大臣 私が勤労所得税は高いと申し上げたことは、全体としてのことです。従って、全体として動労所得に対する課税はどういうふうにするか、またどういうふうな扱いにするかというように考えるべきで、ただ年末手当とか、そういもうのを一つだけとって、その所得についてだけ免税するということは税の考え方からいけない、かように考えております。
  216. 久保田鶴松

    ○久保田(鶴)委員 この問題につきましては、あなたも参議院でそう申しておられますし、私たちは、勤労者に対する所得税とそれから年末手当等に対しまして、五千円までは免税にぜひしてもらいたい、またそうすべきであると思っておりますが、大蔵大臣はこの問題に対してはっきりここでお答えにならない。これ以上意見を伺いましてもむだだと思いますが、大体大蔵大臣考えは、この年末手当等に対して、五千円までは免税されるべきもの、こう解釈して私はこの問題を打ち切りたいと思います。それでよろしゅうございますか。
  217. 一萬田尚登

    ○一萬田国務大臣 先ほど来からも繰り返して申し上げております通り、さようなふうにお考え下さらぬようにお願いいたします。
  218. 久保田鶴松

    ○久保田(鶴)委員 次に年末における徴税の問題だが、毎年年末になりますと、税金の取り立てが激しくなるので、さなきだに借金取りに追いかけられて、きゅうきゅうとしているのが中小企業者でございます。さらに税金の強制取り立ては全く生活を脅かされる単に経済的の面のみだけではないのであります。従って精神的にも大きな打撃をこうむるのであります。こうした問題から、社会問題にまで発展する例も少くないのであります。特に地方税におきましては、一層この傾向が激しいのであります。政府はこうした問題につきまして、あたたかい親心を持って、せめて正月くらいは何とか明るく送らせるように考慮すべきだ、こう思うのであります。この点について大蔵大臣並びに自治庁長官はどうお考えになりますか。東京都におきましても、大体十二月に入りますまでは、月に三億二、三千万円の徴税を行なっておられる。ところが十二月に入りますと、ちょうど明日あたりから二千二百人くらいの徴税係員を動員いたしまして、そうして七十億以上の徴税を行わなければならぬというような計画を立てている。そういうようなことをやらせて、都民のふところをねらって苦しめるようなことを、これまた自治庁長官はどう思われますか。やめさせるようにその指令を出し得るかどうか。今申し上げましたことは、大蔵大臣と自治庁長官と両方に伺っておきたいと思うのであります。
  219. 一萬田尚登

    ○一萬田国務大臣 まあ国民みんなですが、特に勤労者、こういう方々が明るい年末を迎える、明るい年を迎えるようにということは、これは文句ないのです。ほんとうにそういうことを希望する。今度財政の非常に苦しい中において、何とかして年末に騒ぎのないようにと思いまして、〇・二五の人事院の勧告を入れたのも、一面そういうわけであります。むろんこういう勧告を守った方がいい、やるなら明朗にしてやったがいいというので、一つ政策とも考えるのでありますが、そういう考えで、何もわれわれ進歩的な保守陣営というむのは、国民大衆を無視するというようなことはいたさないつもりであります。
  220. 太田正孝

    ○太田国務大臣 徴税につきましては御趣旨の点十分注意していきたいと思っております。実は滞納もうんとたまっておりまして、国が一千億、地方税が六百億くらいあろうかと思います。しかしその問題は年末にどうこうというのではありません。年末の大切なことを考えまして、徴税に適切なやり方をいたしたいと存じております。
  221. 久保田鶴松

    ○久保田(鶴)委員 税金の問題につきましては、今申しましたように、特に東京都を中心に全国をお考えになってもわかるので、十二月は非常に激しいのです。その徴税方法がひどいのです。そのために身投げをしたり、首をつったり、汽車に飛び込んだり、正月を越せないからということで、社会問題をひき起すようなことがあるから、私はこの問題について自治庁長官は特に考えてやってもらいたい、こうお願いいたしておるわけであります。  次に税制改革の基本線について私は伺うのでございますが、大蔵大臣は、先ほどからいろいろ税金の問題を私がお尋ねしておりますと、のらりくらりと相もかわらぬ返事をなさいますが、あなたはそうおっしゃっても、あなたは鳩山内閣のもとにおける財政を預かられる大蔵大臣でありますぞ。鳩山さんがこの間本会議において、自分の所信を表明されました。その三つの中で、一つは税制改革を断固行います。こう言っておられます。その税制改革を行いますといっておられるのに対する、その税制の問題を私が伺いましても、あなたはそれをはっきりおっしゃらない。従ってこの税制の問題について、明年度の税制の改革を断行しようとされる、その方針を鳩山さんが本会議でなさいました。その趣心に基きまして、大蔵大臣としてそれを一つ話してもらいたいと思います。
  222. 一萬田尚登

    ○一萬田国務大臣 鳩山総理が税制改革を言われておりますが、これは三十一年度におきましては、三十一年度に実行のできることを考えておるのでありまして、税制の根本的な改革というものが、そう短時日の間にできるものじゃございません。これは国民生活の上にも、日本経済の上にも非常な大きな影響を与えるのですから、これは衆知を集めて、国民の納得するような税制をここに確立したい、こういう趣旨でありまして、さよう御了承願います。
  223. 久保田鶴松

    ○久保田(鶴)委員 それではこの間鳩山さんが三つのうちの一つの、税制改革を行う、こう言われましたことはうそでございますか。鳩山さんが本会議場においてなされました演説はうそをつかれた、こう私は解釈してよろしゅうございますか。
  224. 一萬田尚登

    ○一萬田国務大臣 決してうそを言ったわけではないのでありまして、税制の改革はするのであります。税制の改革をするにしても、これはやはり衆知を集めて、初めてほんとうのいい税制ができるのであります。そして税制の改革をするという場合にはどうしてするか、どういうふうな税制にするかという成案を得なくてはなりません。これは私はそう簡単にはいかないのじゃないかと思います。むろん税制の改革をやるのでありますから、三十一年度にやる、特に三十一年度において最も問題になるでありましょう地方の税制、これはどうしても三十一年度に私はやらなくてはならない、こう考えておるわけであります。何も総理の言われたことと違ったことはないのであります。どうぞ御了承を願います。
  225. 久保田鶴松

    ○久保田(鶴)委員 税制改革を行うと鳩山内閣が打ち出された、その鳩山内閣のもとにおけるあなたは大蔵大臣であります。そうすると、この予算委員会において、税制改革問題等に対するあなたの構想というものがなければならぬ。あなたの構想がどこにあるか、それを私は聞いておる。でなければ鳩山さんが本会議場でなされた演説はうそであったのか、こう申し上げておる。その構想を私は聞かせてくれと言っておる。(「構想はないじゃないか」「勤労所得税の軽減」と呼ぶ者あり)
  226. 一萬田尚登

    ○一萬田国務大臣 お答えします。先ほど来たびたび申し上げますように、税制の改革というものは非常な専門的な知識が要るのであります。この新しい税制をやろう、こういうのであります。私自身が何も税制の改革について、全然意見がないというのではありません。私、初めから申しますように、特に税制等については、直接税、間接税の関係、特に直接税が重いから、これを一つ考えて、特にまた直接税の中でも、たとえば、中小企業とか勤労者の動労所得税、こういうものも重いから、こういう点にやはり重点を置いて考えている、かように考えておるのでありまして、こういうものをもとにしまして、税制の改革も私は今後行われるであろうと考えております。
  227. 久保田鶴松

    ○久保田(鶴)委員 私は具体的に一例をあげてみましょう。たとえば勤労者に対する税の軽減は月収二万円までは無税にする、こういうような具体的な問題についてはどうかということなんです。たとえば、よく言われるのでございますが、昭和九年、十年ごろ千二百円までの所得者については、これは免税であった。それが今日三百倍としまして、三十六万円までは免税にすることができる、こうわれわれは解釈するのです。その三十六万円までは免税にすることが困難であれば、具体的に、今申しますように、その所得が二万円までの月収者に対しましてこの免税は、これは当然である。こうしたことを税制改革の一つの問題としてあなたはどうお考えになるか、それができるのか、それができないのか、できないのなら鳩山さんの演説はうそだったのか、こういうことを私は聞いているのです。
  228. 一萬田尚登

    ○一萬田国務大臣 お答えします。さような具体的のことを今検討いたしておるのであります。
  229. 久保田鶴松

    ○久保田(鶴)委員 こうした問題についていろいろ伺いたいのでございますが、時間がございませんので次に移ります。   〔発言する者多し〕
  230. 三浦一雄

    三浦委員長 御静粛に願います。
  231. 久保田鶴松

    ○久保田(鶴)委員 次に租税特別措置法は昭和二十一年から続けられて参りましたが、その額が実に六百億を突破いたしておるのであります。実に膨大なものであります。その利益の増加が実際にコスト引き下げにどのようにまじめに使われたかということの保証は何らなく、単に大会社、大資本の利益を増すことのみに役立つものとなっておるのであります。従いまして政府は、この租税特別措置法を根本的に改発する、その意思はございますか。またわれわれは貸し倒れ準備金やあるいは価格変動準備金はもはや不必要なものと思うのでございますが、政府のこれに対するお考えはどうか、これを伺いたい。
  232. 一萬田尚登

    ○一萬田国務大臣 さような点についても今十分検討を加えておるわけでございます。
  233. 三浦一雄

    三浦委員長 久保田さんに申し上げますが、大体お約束の時間が約十分過ぎましたから、簡単に願います。
  234. 久保田鶴松

    ○久保田(鶴)委員 それでは進めます。税の問題について間接税のうち酒税の引き下げによって、大衆の要求いたしておりまする安い酒を正月に供給する考えを私たちは持っておると同時に、大蔵大臣もそうしたことを考えておられると思うのでございますが、どうでございましょうか。
  235. 一萬田尚登

    ○一萬田国務大臣 酒の税金を下げて安い酒を飲んでいただくようになると非常にいいと思うのですけれども、なかなか財源に乏しいので、お酒を飲む人は一つがまんをしてもらいたいと思います。
  236. 久保田鶴松

    ○久保田(鶴)委員 物品税では大衆の必需品が多いので、第二種戊、己類、第三種は全廃いたしまして、第二種丁類は一八%程度にすべきものと私は考えておるのであります。政府はこうした点についてどうお考えになるかという点をお伺いしたいのであります。
  237. 一萬田尚登

    ○一萬田国務大臣 必需品に対する物品税、これは私も下げたいと思っておりますが、全体の税制改革のときに十分に御意見のあるところも考えてやりたいと思っております。
  238. 久保田鶴松

    ○久保田(鶴)委員 今申しました酒の税金または物品税等に対しては、これを撤廃すべきものと考えておるのでありますし、こうした問題についてもいろいろ意見を持っておりますけれども、こうした問題をいろいろ論議をしておりますと、時間が長くなりますので、私の大蔵大臣に尋ねる点はこの程度にいたします。  次に時間がございませんので、通産大臣に伺います。輸入砂糖の超過差益金の吸い上げの問題について伺いたいと思うのでございます。前国会において砂糖価格安定法案が審議未了に終りましたために、特殊物資輸入特別会計で砂糖の価格差益金を吸収することが不可能となったのであります。これに対して政府は業者に対する行政指導として差益金を積み立てさせ、また一定期間ごとに政府へ寄付をさせることにいたし、その内容を盛った覚書をも業者からとっているのであります。特に四月から七月分については原糖輸入業者から覚書を取っているはずでございますが、それに対しましての積立金は大体幾らくらいになっておるか、通産大臣に伺いたいのであります。
  239. 石橋湛山

    石橋国務大臣 これも御承知のような経過から、業者も超過利潤がある場合には、その超過利潤を法律が審議未了になったからといってこれを私するのは相済まぬ、こういうところから特別の処置で、もし必要ならば法律ができなくても政府へ寄付してもいい、こういう自発的の考えから一つの誓約書をわれわれの方へ出しております。しかしまだ積み立てをしておりません。近いうちに積み立てる時期が来るのであります。これは、その後砂糖価格が最近下りましたから、結局来年度の三月までの相場がこれからどうなるかわかりませんが、案外少いかもしれませんが、現在のところでは積み立てるべく誓約しておる分が、二十数億円あるはずです。けれども、これは今後の価格の変動によってまた金額は変ると思います。さようなところであります。
  240. 久保田鶴松

    ○久保田(鶴)委員 通産大臣の話を聞いておりますと、これは積み立てていないとおっしゃる。それでまたその寄付も政府にしない、こういうふうにおっしゃるのですが、そうなんでしょうか。
  241. 石橋湛山

    石橋国務大臣 あれは輸入割当がありましてから三カ月後に積み立てる、こういう約束になっておる。従ってようやくここへ来て積み立てる時期が来たわけです。ですから実際にはまだ積み立てておらない、もう二、三日のうちに積み立てる、こういうところでございます。
  242. 久保田鶴松

    ○久保田(鶴)委員 その二、三日のうちにどれくらい積み立てるのですか。
  243. 石橋湛山

    石橋国務大臣 今の契約によれば二十三、四億円になるでしょう。
  244. 久保田鶴松

    ○久保田(鶴)委員 そうするとその二十三、四億円を積み立てましたら、その積み立てた金を政府に寄付させる、こういうことなんでございますか。
  245. 石橋湛山

    石橋国務大臣 そうでございます。それは寄付することになります。
  246. 久保田鶴松

    ○久保田(鶴)委員 そうすると、その寄付いたしました金につきまして、これは行政措置だけで実施することもできないのだが、これはどういうような方法政府に寄付をさせましたものに対する取扱いをなさるのですか。
  247. 石橋湛山

    石橋国務大臣 むろんそれは一応は寄付でありますれば、一般会計へ入るでしょう。
  248. 久保田鶴松

    ○久保田(鶴)委員 そうするとこの歳入は、本年度の歳入に必ず間に合うようになさるのですね。そう解釈していいですね。
  249. 石橋湛山

    石橋国務大臣 間に合うはずです。
  250. 久保田鶴松

    ○久保田(鶴)委員 そうすると時間がありませんので、私はこの問題についていろいろ伺いたいのですが、これは重大な問題でありますけれども、バナナ、パイナップル、砂糖のみならず、価格差益金が不当に多い輸入物資、たとえば朝鮮のノリとかあるいは外国時計等につきまして、こうした問題に対するその予算措置といいましょうか、これをあなたはどういうふうにしようと思いますか。
  251. 石橋湛山

    石橋国務大臣 輸入品に超過利潤が出るということは、実際は間違ったことなんで、なるべくそういうのが出ないような貿易制度をとるのを私どもは理想としておりますが、しかしながらいろいろの事情でやむを得ず超過利潤が出るものについては、はっきり捕捉できるものは、これは不当に業者にもうけさせるというのはよろしくないことでありますから、国庫にこれを吸収するという方法をとりたいと思っています。この前もバナナ等については、特殊物資の超過利潤を吸収する法案を出しておるのでありますが、これは砂糖の法案と一緒に結局審議未了になりました。これも砂糖と同じようにそのままほうっておくわけにいきませんから、現在特別の処置をしてバナナやパイナップル、カン詰についての超過利潤は国庫に収納する方法をとっております。時計などについては、現在のところはまだその処置をしておりません。通常国会において砂糖とこの問題と見合ってどういうふうに処置しますか、検討しておりますが、場合によってはやはりバナナ、パイナップルあるいはノリ、まだほかにもございましょう。そういうものについての超過利潤の処置をする法案を提出して御審議をわずらわしたい、こう考えております。
  252. 久保田鶴松

    ○久保田(鶴)委員 砂糖、バナナ問題は一応これで見送ります。  それでは次に、現在通産省は次の通常国会において、百貨店法を提案するというような準備を進めておられるかのごときことを伺うのでございますが、そうでございますか。
  253. 石橋湛山

    石橋国務大臣 これはいつも非常に問題になりながら、むずかしいことでありますので、実は通産省の中に合理化審議会というものがあります。それに商業部会を設けまして、そこで百貨店の問題と関連しまして、一般の小売商業をどういうふうにして合理化していくかという問題を、今検討しております。その審議の結果を待ちまして、なお必要があれば百貨店法の提出をいたしたい、かように考えております。
  254. 久保田鶴松

    ○久保田(鶴)委員 そういたしますと、百貨店法というものを出すか出さぬかということはまだはっきりわからないのですね。そう解釈してよろしゅうございますか。
  255. 石橋湛山

    石橋国務大臣 その通りであります。まだ出すとも出さないともきめておりません。
  256. 久保田鶴松

    ○久保田(鶴)委員 百貨店法等についてはいろいろ意見があるのでございますが、これも一応見送ります。  それではもう一、二問だけ伺って、西村さんとの紳士的約束を守りたいと思います。  本年九月一日に施行されました中小企業協同組合中央会の結成状態がきわめて非民主的で、各地で非難の的となっておるととはあなたはどうお考えでありましょうか、お聞きでございましょうか。
  257. 石橋湛山

    石橋国務大臣 府県中央会でありますか。それは私はそういう非民主的であるという非難があるということは承知しておりません。大体今までありましたいろいろの団体が、民間において自発的にやっておるのでありまして、政府がこれに干渉するわけではございません。
  258. 久保田鶴松

    ○久保田(鶴)委員 通産大臣は雲の上で政治をとっていらっしゃいますから、零細な業者の団体であるこうした協同組合等のことにつきましては御存じでない、聞いていない、こうおっしゃる。それではお教えいたしましょう。補助金をバックに強い官庁の干渉が行われておる。従って発起人を県側で一方的に決定し、また業者には何の相談もございません。この発起人によって起きて参ります。また行われます。役員の人事も決定することにいたしております。従いましてひどいところではこの会長には知事がなっておるところさえあるという状態でございます。また予算はもちろん県庁では一方的にきめておるのでありますが、これでは業者の団体として作りますにもかかわらず、業者の自主性が全くなくなるのであります。こんなことなら従来の商工指導所あるいは商工相談所と少しも変らないのであります。そういう行き方なら新しくこんなものを作らなくても、従来のものを強化した方がましだと、こういう声が起っておるのであります。このように非常に保守的な、また官僚統制となって、中小企業の育成には役立たぬのみか、地方のボスの名誉欲で作っておるのでありますが、ほんとうに中小企業の問題点をおおい隠すものと考えるのでありますが、こうした問題等に対しまして非常に全国的に問題になっておる。こうした点について通産大臣はこれをどうお考えになっておるかということを一応伺いまして、四時までという西村さんの話がございましたから、私の質問を終ることにいたしたいと思います。
  259. 石橋湛山

    石橋国務大臣 今御指摘のごとき事実があるかないか取り調べますが、これは私どもとしては各地方の民間団体にまかしておる、あるいはそこへ、府県によりましては県知事とか県の役人というものが、何かそういう御指摘のような干渉をしておるところがあるかもしれません。大体御承知のように、中小企業者自身組合を作るというときに、団結がうまくいかない、いろいろごたごたするものでございますから、そこへとかく知事とか何か口を出す余地が起る、われわれとしてはそういうことは希望しておりません。なお一つよく事情を調べまして、御指摘のような弊害があれば注意することにいたします。
  260. 久保田鶴松

    ○久保田(鶴)委員 弊害があるのです。非常に全国的に、私が申し上げましたように、弊害がある。中小企業を監督なさるのは通産大臣です。その通産大臣は、鳩山内閣のもとにおいても元気のある通産大臣である。こういうようなことから、全国の中小企業者や零細業者はあなたを期待している。だからあなたは、こうした非常に非難の多い問題等に対して監督を十分にしてもらいたい。今私が申しましたことは、あなたは頭のいい人でございますからおわかりと思います。わからなかったらあとで速記録を読んでいただきまして、それの監督、注意等を一つしていただきたいと思います。  以上をもって私の質問を終ることにいたします。
  261. 三浦一雄

    三浦委員長 本日はこの程度にいたしまして、次会は明十日午前十時より開会いたします。  本日はこれにて散会します。    午後四時一分散会