○井堀
委員 私がこのことをお尋ねいたしましたのは、今後の
労働行政全体に非常に大きな
影響があるからお尋ねをしたのです。今の御答弁では、私はまあ言質をとってどうこう申し
上げることは適当でありませんが、訂正をしていただきたいと思うのであります。
労働組合が
労働者の政治勢力を伸張していくということは重大な職分の
一つであります。特に民主主義の時代にあって
労働組合が政治的な問題から遊離されるということは許されぬ。それが直ちに政治権力奪取のための権力闘争に、
労働組合運動が巻き込まれるということが政治偏向です。
労働組合が正しい政治的な要求を掲げて政治活動を起すことは、
労働者の当然の任務であります。そのためにこそ、二大政党の場合においては、保守党が
労働行政に力を入れる。すなわち個々の
労働者に
関係のある政治問題を、親切にしかも
労働者の利益のために戦う政党のために、
労働組合がこれを支持しあるいは支持を取り消すというようなことはあり得ると思うのであります。しかし残念なことには、日本の
現状にありましては、
労働組合はいずれも社会党にオール支持をしておる。そのうちに保守党も
労働政策を高く掲げておりますから、それが具体化し実施されてきますと、
労働組合の中からも自民党でなければならぬという
労働組合も生まれるかもしれない。しかしそれは現実に
労働者のために利益を提供する政策が取り
上げられなければならぬのであります。そういう意味で、何もイギリスの保守党をまねする必要はありません。そういう点では、私はただ保守党と革新党の対立の問題はイデオロギーの対立だけではない、特に
労働問題の中には現実の場において協力する舞台がたくさんあると思う。こういう点について旗を改めていくべきだと思うので、ちょっと試みに具体的なことをお尋ねしたわけであります。特にあなたの政党では、その政策は
一般政策の中で、「勤労者の生活安定と産業平和の確立をはかる。」という項で三つ並べてあります。1、2、3、とあるその2の中に、「国際自由労連の方針を支持し、
労働運動の政治的偏向を矯め、その健全な発達を促進する。」とこう書いてある。私はこれを批判をするわけじゃありませんよ。これは御自由でございます。ですけれども、
労働行政を直接担当して一線に立つ
労働大臣が、もしこの政治的偏向というものが、あなたが先に述べられたように、
労働組合運動が政治権力奪取のための権力闘争にいきなり変っていくということは、明らかに政治的偏向であるが、これをさすのであればいいのです。しかし
労働組合はあくまで経済闘争ばかりに終始すべきものである、政治に無関心であれということはあり得ないのでありまして、こういう意味でのけじめをはっきりしてもらって、健全な
労働組合のあり方に対して
労働省に正しくものを見てもらう。どう
もとかく最近
労働省の傾向というものは、
労働組合の正しいあり方をつかみそこなっておるという点を幾つも知っております。こういう点で
一つ十分御注意いただいて、部下の御指導をいただくのでなければいかぬ。国際自由労連を指向するということはどういう意味かわかりませんが、まあそういうことにいたしまして、
大蔵大臣が見えましたから結論をつけたいと思います。さっきも倉石さんは、今度の政党は
労働政策に対しては積極的な態度を表明しているということを申された。全くその
通りであります。従来保守党の性格あるいはその方針を決定する重要な政策の中には、
労働政策はほとんどなかった。今度は重要なところで取り
上げた、こういう取り
上げ方はあくまでも抽象論ではいけません。看板に掲げる以上は行動の上で明らかにしなければならぬ。勝負はこれからきまる。どうぞ
労働組合をあなたの味方に引きつけるような大胆な実行力のあるものを求めたい。そこでわれわれは切磋琢磨してわれわれももっと勉強して向くようにやります。
そこでお伺いいたしたいのは、これは今倉石さんが言われたことを私は
言葉じりをとるのじゃありません。実を得たいと思う。勤労所得税を軽減するとかいうことはすぐ出てくる。失業
対策のためにどれだけ
予算を割愛するとか、たとえば、今〇・二五の
手当を
増額せよという
人事院の
勧告がある。それを大蔵省は四の五の言うて、その結果は出す、こういう
やり方で産業平和を確保するという労使
関係のあり方というものは、これはあなたの方が無理です。最初から苦しいにきまっておる。
人事院の
勧告というものは私が申し
上げるまでもありません。
公務員の罷業権、団体行動権というものを制約したかわりに、
人事院という公正な
立場において民間の団結権、罷業権を持っている
労働者と、
労働条件あるいは待遇の上で差異が起らないように、適切な道を講ずることというのが法の建前であります。そういう
勧告が行われたら、その
勧告を実施するために——これは七月に行われている、だめですよ。
大蔵大臣はこういう点について、やはり出すものならすぱっと出す。それは苦しいでしょう。こういう態度が産業平和を指向する
労働政策を掲げる
政府の態度でなければならぬ。最初から出さぬつもりだったら、これは別です。こういうことになると問題は明らかになってくるのでありまして、ぜひ三十一年度の
予算については、
労働行政の中に今後最も大きな問題で出てくるでありましょう失業
対策のための費用、あるいは倉石さんから中小企業の
労働対策について非常に御熱心な主張がありましたが、私どもは非常に重大なことだと思う。さっき未払い賃金の問題を例にとりましたが、この未払い賃金の統計を見て、私はまことに重大であると思いまする一節がございます。それは未払い賃金を起しておりまする事業場の規模別の傾向であります。これは参考のために申し
上げておきますが、三百人以上の事業場においては、ほとんど未払い賃金がございません。ごく特殊のケースであります。全体を一〇〇と見まして一・六%にすぎぬのであります。そしてそれぞれ
事情が明らかです。ところが常時百人以下の
従業員を雇用している職場にありましては九五%、十人以下の零細事業場にありましては五九・五%という比重が出ておる。でありますから賃金未払いを起しておるようなところは、大体中小企業のうちでも零細企業に近いところであります。こういう状態が今現出しておるのでありますから、こういう問題に対してすみやかな
措置を講じなければ法の保護を受けられぬような状態で、中小企業、零細企業の
もとに働いております
労働者が不幸な状態になるわけです。こういう問題に対する
処置としては、倉石
労働大臣の抱負は新聞で伺ったのでありますが、こういうものに対して積極的な指導
行政をおやりになろうというのでありまして、しごくけっこうです。指導でけっこうであります。何も立ち入って役人が干渉する必要はありませんが、指導
行政をやるためには、こういうところに惜しみもなく
予算を出すべきです。特に中小企業、零細企業場におきましては、大きい工場やあるいは
公務員のような福利施設や、あるいは
厚生的ないろいろな費用というものはほとんどございません。こういうものに対しては総合的な組織を与えて、その組織を通して立ち上れるように保護を加えるとかいったような、労務
行政の中における調整が必要であります。そういうものに対する
予算は大胆に見てこなければ、私は民自党のいう
労働行政などというものはおそらく看板倒れということになるだろうと思うのであります。こういう意味で、
大蔵大臣は中小企業、零細企業場における
労働者の保護のために
予算について十分考慮するお考えがあるかどうか、
一つその
決意を伺って、次の
通常国会ではその答弁のいかんによって、われわれの争いの仕方が違ってくると思います。この
所見を
大蔵大臣と
労働大臣に伺ってみたいと思います。