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1955-12-10 第23回国会 衆議院 法務委員会 第4号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和三十年十二月十日(土曜日)    午前十一時九分開議  出席委員    委員長 高橋 禎一君    理事 池田 清志君 理事 椎名  隆君    理事 高瀬  傳君 理事 福井 盛太君    理事 田中幾三郎君 理事 古屋 貞雄君       小林かなえ君    世耕 弘一君       林   博君    古島 義英君       松永  東君    横井 太郎君       横川 重次君    細田 綱吉君  出席国務大臣         法 務 大 臣 牧野 良三君  出席政府委員         警  視  長         (警察庁警備部         長)      山口 喜雄君         法務事務官         (入国管理局         長)      内田 藤雄君  委員外出席者         専  門  員 小木 貞一君     ————————————— 本日の会議に付した案件  法務行政収容韓国人問題等)に関する件     —————————————
  2. 高橋禎一

    高橋委員長 これより法務委員会を開会いたします。  本日は法務行政に関する件について調査を進めます。質疑の通告がありますから、これを許します。古屋貞雄君。
  3. 古屋貞雄

    古屋委員 法務大臣にお尋ねをいたしたいのですが、今問題になっております第三国人本国送還についての法務省の御意見をまず承わりたいと思います。  最近だいぶ問題になりました浜松事件、それから洪進山に関する事件、これを総括して考えますと、日本におきます第三国人本国強制送還に対して問題になっておりますのは、台湾国民政府中華人民共和国政府と、二つに対する国籍問題がからまりまして混乱の原因をなしておるわけであります。これと同じように、朝鮮におきましても、南鮮帰りたい、北鮮帰りたいという二つ関係がございまして、これについて政府が非常に御苦心されている事情はよく私も存じております。しかし、北鮮にもまだ日本同胞が残されておりまして、こちらに帰してもらわなければならぬ。中華人民共和国にはまだ相当戦犯がおりますし、しかもこれらの人々処置について、日本側におります中国人民に対する取扱い朝鮮諸君に対する取扱いが、こちらの同胞を帰してもらいます関係に非常なデリヶートな関係を持ちますので、国民といたしましては、これらの第三国人本国送還いたしますその手続の過程において、努めてトラブルを起さないように、しかも人権を尊重されて、そして中華人民共和国並び朝鮮にいらっしゃいます同肥を帰してもらいます手続の上にもよりよい万全を期すべきだと私は思っております。かように私ども考えておりまして、特に、人道上から考えましても、本国選定については、日本の役所なり日本人々がその人の意思決定に対して妨げになるような態度取扱いをかれこれすることは、人道上から考えましても、はたまた同胞をあちらから帰していただく立場に立って考えましても、非常に重大な関係を持ちますので、公正にしかも親切丁寧にこれが取扱いをなすべきだ、言いかえますならば、第三国人日本において受くべき待遇は、人道的から考えまして、しかも国際信義立場から考えて慎重になすべきだと思いますが、法務大臣はこれに対してどういうお考えでありますか、まずこれを承わりたいと思います。
  4. 牧野良三

    牧野国務大臣 ただいまの御質疑に対してお答えをいたします。今おっしゃったことは、大体これまでの法務当局考えておることと一致いたします。どこまでも人道的立場国際信義を基本にしてやらなければならぬ。これは事務的には非常にむずかしいととがありますが、人道上と国際信義の上に立ってというお説から言えば、当局としては相当大胆な措置に出なければならぬと思います。ただこの際私は委員会皆さん全体にお願いしたいことがあるのであります。それは、こういう問題については、委員会意見相当一本にまとめていただくということが、国の立場を明らかにして、かつ国際的な問題を簡単に処理する上に非常に大切なことじゃないか。と言いますことは、けさの毎日新聞が書いておりますように、もし政府当局のやるように李承晩の理不尽な態度に迎合して大村抑留者を釈放するなんということになって、あの中からどうもうな犯人が日本国民の平和な生活の中へばらまかれたならばどうなるか、当局は安易な方法をとってはならぬ、こう言っております。事務的に理屈の上から言えばこれも正しいが、ただいま古屋さんの言われる大所高所から言えば、こういう問題をわれわれ国会として最善の注意を払って措置する方法を講じて、しこうして大局的には抑留された日本人を助け、李承晩政府の理不尽な態度に反省を求めるということにしなければなろね。その道に対して政府のなすことが委員会を通じ国会で非難なんかがあってはなりませんので、どうかこの点に対しては、政府はこういうことに行かぬかということで委員会の御意見を一致させていただいて、その方向を実行するということが大事なんじゃないか。私は、この間の興安丸事件が起きたときに切にそのことを思いまして、社会党の幹部諸君と会ったときにそのことを御依頼して、最後にあんないい手続がとられたのでございます。今度の季ライン問題に関連する大村抑留者処置につきましても、どうか皆さんのこの点に関する当局への御指導を切にお願いしたいと思います。
  5. 古屋貞雄

    古屋委員 大臣の今の抽象的なお答えでありますが、第三国人本国送還する場合においては、やはり被送還者意思を尊重して送還策決定するという原則をお認めになっておると思うのですが、さように承わっておいてよろしゅうございますか。
  6. 牧野良三

    牧野国務大臣 もうどこまでもその線で行きたいと存じます。
  7. 古屋貞雄

    古屋委員 なお、これはあとで御質問申し上げます関係上経過の事実を簡単に申し上げたいと思うのですが、ただいまさような法務大臣の御意思を承わりますと同時に、さらに進んで申し上げたいことは、実は、朝鮮に私が参りましたときに、北鮮総理大臣であり主宰者の責任を持った金日成氏と三時間半ばかりお話をしたのですが、その中で、日本国におる六十万の朝鮮同胞朝鮮帰りたいということであるならば、喜んで自分はこれを引き取ります。お迎えをいたしますということを、私、直接承わっております。今、朝鮮諸君日本にたくさんいらっしゃる方が朝鮮帰りたい、こういう申し出陳情がきょうもあるはずなんであります。私は陳情を承わっております。それから、総理大臣その他にも、国会にも陳情にたしか来ておるはずであります。従いまして、こういうような日本におりまする六十万の朝鮮人諸君北鮮への帰国希望者については、法務大臣の方で今の御趣旨のような手続をいたしていただける御決意があるかどうか、承わりたい。
  8. 牧野良三

    牧野国務大臣 ただいまのお話でありますが、どこまでも、当局の堅持している原則としては、お説の通りにやりたい。ただ、国際法上の関係を、その点は古屋さん考慮して、お互いに摩擦を起さないように善処することに御協力を仰ぎたいと思うのでございます。ことに、大村の方なんかは、北の方はいいらしいが、南がどうもむずかしいですね。だから、北の連中はその点では話がわかる。ところが、南の連中がわからぬので、これをどうしても強制送還しないといかぬのです。これは日本面目論なんか言う必要はないと思う。朝鮮人なんだから、韓国人なんだから、韓国へ帰る。それには、今度一釈放すると同時に送還する。受けないと言ったときにはどうしたらいいか。そのときにはもう強制送還をする。これは国際法上認められておるのだから、強制送還をやる。ところが、海じゃなかなか実行がむずかしい。事例調べてみたら、鉄砲なんかダーンと撃って、そして無理に送還する。アメリカはメキシコ人なんかをそういうようにした事例を持っておる。ところが、日本ではそれはやれない。が、あなた方と相談して、おとぎ話みたいなことだけれども一つ考え方がないでもない。そんなことから考えていくと、実行の端緒ができるのではないか。そこで、南北韓国朝鮮両方当局の意向をよく見まして、強制送還の道を一つ考えていただきたい。これは委員会一つ心配してみて下さらぬか。強制送還することが正しいので、これが国際法上の原則でもある。それをやれば、本人も心配なく解決する。だから、北の方はうまくいくらしいが、南へ一つ行っていただきたい。そして、今あなたが北でやってきていただいたようなことを、お互いに南の方でやって、手をとっていきたい。そうすれば国際親善もおのずからできて解決するのではないか、こんなに思っておりますが、私は、この問題に対して相当大胆にやろうじゃないか、こうも思っております。どうぞ。
  9. 古屋貞雄

    古屋委員 私、大臣の御決意を受けて、非常にうれしいのでございますが、実は、その道は、北鮮金日成氏とお会いしたときには、赤十字代表日本に差し上げたい、日本でも赤十字代表北鮮に送っていただいて、北鮮におりまする日本人同胞を帰す一つの手配を北鮮の私どもとしてもらいたい、それから、北鮮といたしましては、赤十字代表日本に差し上げますから、日本でこれを受け入れて、そして六十万の朝鮮諸君ほんとうの真意を確かめて、北鮮帰りたい人は赤十字を通じてもちらにお帰りを願う、こういうことでありまして、この方式はすでに現に行われておるわけなんです。日本北鮮との間には条約が締結されておりませんけれども中華人民共和国ともいまだに平和条約が締結されず、国際間の正常化が行われておりませんけれども赤十字を通じてあちらへたくさんの方をお帰ししておるし、あちらから同胞もこちらに帰していただいておるという道が開けておりますから、これと同じような手続をいたすなら、即時私は明日でもできると思う。法務大臣のお考えはいかがでしょう。
  10. 牧野良三

    牧野国務大臣 当局も幸いにそういう考えを持っておるそうであります。私もあなたと同じようにやりたいと思います。そこで、国際法上の紛争を起さないように、お互いにその点を上手にやろうじゃありませんか。どうぞ。
  11. 古屋貞雄

    古屋委員 私ども要望しております気持当局がお持ちになっておるということでありますので、おそらく日本におります六十万朝鮮人諸君は喜んで、たくさんの人がお帰りになるだろうと思うのです。と申しますのは、金日成将軍に私お会いしたときに、日本で働くことのできない、あるいは病気でおります人々は、御迷惑なんだから、私の方で引き取ろう、こういうことを私どもとお約束をいたしました。従ってまた、お帰りになります場合においての費用の点につきましても、日本政府に御厄介にならないでもいいんだ、自分の方でその費用を持ちますと申しておりますので、どうか一つ法務大臣、具体的に、本日お答えを願いすしたような、りっぱなお考えをすみやかに実践に移していただきたい。私の申し上げたいことは、こちらで御答弁願いましても、事務当局事務処理についてめんどうだということで、いつもこれが実現がなかなか困難なんです。ただいま申し上げましたように、中華人民共和国との間にはすでにこれと同じようなことが行われております。もう一つは、実は今、私どもがお会いをいたしました四十三人の邦人が、もう三ヵ月ばかり前から、北鮮政府の御配慮で平壌に集合いたしまして、あちらで私どもお会いいたしましたのみならず、私ども日本に持ち帰った本人たちの手紙を見ましても、何不自由ない手当を受けて、日本の船の来ることを待っておるのであります。  そこで、法務大臣にお願いいたしたいことは、赤十字人道的な立場からこれを引き取りに参る、こういうふうなことを言っておりますが、相手方の方では、日本のこれらの人々を特に帰してもらいたいという申し出が、日本にある日朝協会、これは朝鮮人諸君日本人の各階層から網羅した人からなっているのですが、日朝協会から帰してもらいたい、世話をしてもらいたいという申し出北鮮政府にあったのであるから、赤十字日朝協会の方がいらっしゃいますならば、即時お帰しをいたすことになっておる、こういう状況にあるということを私見て参りました。今問題になっておりますのは、日朝協会代表が加わることは非常に迷惑だということで遷延しております。しかし、すでにもう帰るんだといって決意してあそこへまとめられておる四十三人分同朋は、一日千秋の思いであちらで待っております。こういうことにつきましても、これは直接は外務大臣の御所管にも関係しますが、こちらにも関係を持っておりますので、この点についても法務大臣が何らかの御配慮をいただきたい。今両者の間に決定をしておりませんのは、赤十字が、日朝協会代表では困る、赤十字だけで引き取りに行きたいと言う。しかし、日朝協会では、赤十字のおっしゃるこういう人ならいいという御指名を願えば、それでもけっこうだということになっておるようですが、要は、日本の国内におけるそうした形式論の問題で今引き取ることができないことになっておる。この点についても法務大臣も御配慮を願えるかどうか。そして、すみやかに近いうちに日本態度さへ決定しますならば、向うではすぐ帰すことになっておる。私どもは直接会って参りましたが、御婦人がおもで、あとは小さい子供であります。男は五十五、六の蟻川という人が一人だけしかおりませんので、あの人たち気持の上に思いをはせますと、まことにお気の毒だと思っております。法務大臣のでき得るだけの御配慮をこれに加えていただいて、すみやかに帰国が実現するように御努力願いたいと思うのですが、いかがでしょう。
  12. 牧野良三

    牧野国務大臣 私は、今の日朝協会とかなんとか、ほかの方のものはまだよく知らないのですが、あまりいろいろな団体を入れないでおいて、単純に赤十字だけにしようではありませんか。そうして、これをやることにすることをどこまでも目的として、一つ委員会以外であなたと相談しましょう。そうして実行のことをあまり格式ばらないようにして御相談したいと思いますが、ただ、この間・興安丸のときも、三団体一つは承諾したけれども、どれかが承諾せぬとかなんとかいったようなことのために数日かかったのです。だから一本でいきましょうや。赤十字一つがいい、そういうような心でいきましょう。きわめてシンプリファイして……。
  13. 古屋貞雄

    古屋委員 法務大臣の御意思はよくわかるのですが、たとえば今の三つ団体というのも、中華人民共和国三つ団体でなければ相手にしていないわけです。そこに相手の方に問題がある。こっちはいい。法務大臣のおっしゃるように私ども考えているのです。それから、朝鮮の問題も、あちらがそういうことを言ってきているのです。ですから、この点は法務大臣意思はよくわかりました。その点は事務的になりますから、あとにいたします。  さらに進みまして、私の法務大臣に承わりたいのは洪進山の事件でございますが、洪進山の意思は、御承知通り中華人民共和国帰りたいということになって、さような名簿を華僑総会から提出をいたしまして、関係方面赤十字、並びに厚生省援護局、さような面から生部手続をいたしまして、これは入管の方にも一応の連絡がございまして、そうして東京から舞鶴に向う途中におろされたのですが、この問題はいろいろと政治問題がこれにからんでおると思います。日本政府としても取り扱い上非常に御迷惑だと思いまするけれども、たた、私、申し上げたいのは、私どもが十月十七日の日に中華人民共和国毛沢東さん以下総理大臣並びに常任委員長の劉少奇さんなど十数名の代表者と私ども二十五人の国会議員が会いましたときに、こういうような質問を受けこういう約束をしてきたのです。それは、まず毛沢東さんから、浜松に百数十人の中国人たち強制送還をされるために収容されておる、その人々意思に反して台湾政府日本政府が何らかの取引をするというようなことがあって、中国人民本国選定自由意思をじゅうりんするというようなことがあるらしいが、皆さん承知ですかというような話のきっかけから、ぜひ本人意思を尊重してもらいたい、というのは、これはもう人道上から考えても、また中国人民としての固有の権利であるから、日本でかれこれこれに対する制約をしてもらっては困るというお話がございました。その後に総理大臣周恩来さんから、日本戦犯については皆さんの御要求に応じて今年中にある程度の人をお帰しのできるような特別措置をいたしますという話が関連して行われておるわけです。これは単なる手続上の問題やそのときのでき心の処置ではなくて、ほんとうに重大な国際間の信義人道上の問題を中心にして解決すべき問題だと私ども考えて帰ったわけです。しかし、洪進山のこの問題については、どういうような弁解がございましても、本人は確かに中華人民共和国帰りたい、こういうことで厚生省においては運賃あと払いということで東京から汽車に乗せて名古屋まで行った。これが、舞鶴まで送られて、舞鶴でいよいよの出国に対する決定をいたしますときに、もう少し調べたいことがあるというならば、そこでお話しを願ってお調べを願えばいいのに、名古屋で夜中に何十人かの警官が暴力で引きおろすということはない。これは直接中国の紅十字会に電報が入り、紅十字会から厳重な抗議が赤十字に来ているということから考えまして、こういうような乱暴をやられているということは——乱暴ということは言い過ぎかもしれませんが、理不尽なことは、法務大臣のおっしゃられる御意思とは合わない、法務大臣の御意思に反することだと考えるのですが、この点はどうですか。
  14. 牧野良三

    牧野国務大臣 実は、古屋さん、あの事件を私は一向知らないのであります。ただ、あれは台湾へ行ったら殺されてしまいましょう。だから中共へ行きたいでしょうから、それならやるがいいでしょう。それで、なるべくそういうものを尊重すると同時に、何といってもああいう共産主義のところに対しては、国際関係があるものだから、事務的にむずかしいことを言っているのでしょうが、これからはあなた方と心を合せて、こういうものはきわめて単純に扱いましょうや。そうして、日本にいてくれることは厄介なんだから、だから、そういうことは常識的に、そうしてあなた方と隔意なく相談すれば解決すると思います。この間も私はその心持をもっていこうじゃないかと言いましたし、事務当局もみんなそういう意見でありますが、何か国際的にむずかしいところがあるらしいから、そういうところはあなたや私らで国会以外のところで事実上の解決をして処置をするということに進みたいと思いますから、どうぞ。
  15. 古屋貞雄

    古屋委員 法務大臣がやはり長い間の政治家としての立場からお考えになられたことは、私どもも満腔の敬意を表します。その通りいたしたいと思います。それで、洪進山につきましては、そうしますと、法務大臣立場としては、断じて本人意思に沿うような処置を今後とっていただける、こういうように承わってよろしゅうございましょうか。
  16. 牧野良三

    牧野国務大臣 そういたしましょう。それじゃ、ここできめましょう。
  17. 古屋貞雄

    古屋委員 この問題は、私個人の問題や党の問題でなくして、法務大臣の御意思中国の紅十字会なわ毛沢東なり周恩来総理に通じますならば、今後はあちらにおります日本人に対する待遇も非常に好転すると思います。非常にありがとうございました。  そこで、今度は、今後におきましても、もちろん法務大臣の御意思がそうでありますから、下僚の事務当局におかれましても、法務大臣の御趣旨を尊重されて、ただいまのような趣旨に基いての送還をされていただけることを私は非常に喜ぶものであります。そこで、今後の法務行政に関する問題について法務大臣意見を承わりたいのですが、実はただいま法務大臣の表明しておられますような御意思に反するような強制送還が行われておったのがこの間大きな問題になった、こう考えますと、早く牧野さんが法務大臣になっていただきましたならば、こういうごたごたも起らずに済んだということを私ども非常こ考えて、鳩山さ、な早く法務大臣牧野さんにすればよかったと思うのですが、実は、いやな質問になりますけれども浜松において強制送還をされた中には、数人の本人意思に反した強制送還が行われているわけであります。大体、法務大臣台湾にいらっしゃいまして、私も訴訟の相手になったことがあるのですが、御存知でしょうが、台湾の東の方に火焼島という島があるのです。そして、無頼漢やそういう者を特別に、日本で言えば島流しなんですが、そこに入れてしまうのですよ。そこに入れてしまいますと、いつ生命がなくなるかわからぬように消えるのが多い。この間私どもが心配いたしておりますのは、あの浜松事件原因をなした数人の者が本人意思に反して送られたこと、しかもそれは明らかに籍は中華人民共和国大陸なんです。台湾には生まれたこともなければ、台湾に住んだこともなければ、台湾生活したこともない人たち台湾に送られておるわけです。この問題は内田局長にこの間も質問をしたのですけれども、この点が大きな問題になるのです。本人意思表示が明確でなかったとすれば、私は原籍に送るべきだと思う。市民権のあるところに送るのだということは規定にもあるわけです。それを台湾に送られておるという事実がありまするので、これが問題になっておるわけです。それで、今中国紅十字会でもだいぶ問題として打ち出したのですが、過去のことを私は責めるわけではありませんけれども浜松第三国人のあの収容所自体既決囚を入れているところである。犯罪人を入れているところである。これは法務委員会は一応これを視察しておく必要があると私は思う。ほとんど処置のないところに入っておる。もちろん、あそこに入っておりました人が非常に乱暴をいたしまして、あそこの警備員に暴行を加えた事実もしばしばございまして、今日まで二度までごたごたが起きて、この間のいわゆる十一月の三日から四日の未明にかけての問題は三回目なんです。そのときに、百二十数名の方は先にもう出発をされてしまって、あとのもう台湾に帰るのはいやだという代表的な人物を五、六人残しておいたのに、これを警備員並びに警察官が暴力で引きずり出して乗せていくという問題があの事件原因をなしているわけです。私は、こういうようなことをすることがいいのか悪いのかという問題よりも、こういうことをしなければならなかったという理由を実は政府に聞きたいのです。どういうわけでそういうことをやらなければならぬのか。本人が、いやだ、大陸に行きたい、もちろん非常に日本におりたいという執着心も強いようで、日本におりたい、しかし、日本におれないとするならば大陸帰りたい、こういうことで、実は私どもの方に申し出をいたしました書類を私は持って、十一月二日に官房長官にも会い、法務大臣花村君に会おうと思いましたが、花村君がおらぬものですから、岸本次官にも会ったが、五人、その他にも数名、台湾には絶対に帰りたくない、台湾に行けば殺されるのだ、台湾には行ったこともなければ、生まれたこともなければ、どこだかわからぬところだ、生活に困るから大陸帰りたいということで、強く執着してそういうことを申し上げておられたらしいのですが、それが暴力で引きずり出された。暴力で引きずり出されたときの乱闘の問題は、これは刑事事件になっておりまするけれども、私どもの方では刑事事件証拠保全をやって、証拠保全書類を私は持っているわけです。裁判所によって調べた事実です。これを事実とするかしないかは判事さんがきめるでしょうが、私どもは、一応判事さんがお調べになった、台湾に帰されたり中共に帰されたりした人々の帰る前の申し出手記を持っているわけです。証拠保全手記がある。これによりますと、こういうことになっている。法務省入管から私どものところにいただきましたあそこの寮の模様によりますと、これが一寮、二寮、三寮、四寮、五寮まであって、一寮には全部台湾に送り帰す人を入れておいた。二寮には台湾に帰す人と中国に帰す人を入れておいた。三寮、四寮、五寮は全部中国に帰る人を入れておいた。この三寮、四寮がごたごたいたしました一番はなはだしいととろなんです。十時過ぎになりますとこの寮にはかぎをかけるそうです。ところが、この問題が起きましたのは夜中の一時ごろから二時ごろです。向うさんの証拠保全手記によりますと、警備員と警察官が窓を破って暴力で入ってきて、その人間を引きずり出そうとした、われわれはもうすでに台湾に帰る人の見送りも済んだので安心して寝ておったところが、その平静を破られたばかりでなく、くつをはいた人間が飛び込んできて、がちゃがちゃ騒がれた、こういうことで、何も抵抗しない者もけがしている者があるのですが、一体こんな夜中にこういうことをやらなければならなかった理由はどこにあるか、それを納得の行くような御答弁を願いたいと思います。
  18. 牧野良三

    牧野国務大臣 古屋さん、全く知らぬのだ、事実を。だから、主管局長から一応答弁してもらいます。
  19. 内田藤雄

    内田政府委員 ただいま古屋委員の御質問の第一点は、こういうふうにわずか数名の問題について、そういった騒動を起すようなことまでなぜやったか、こういうのが質問一つの点じゃないかと思います。率直に申し上げまして、古屋委員からあの当時五名の名前をわれわれの岸本次官にお申し出があったことは、当時私どもは直ちに承知いたしました。それと前後いたしまして、われわれ自身の浜松の分室長からも、その五名及び以外の五名、計約十名だったと思いますが、今回の台湾送還を拒否しておる者がある、そして目下これらに対して極力説得中である、こういう報告を受けたのでございます。それで、われわれ自身といたしましても、その間の一つの施行の過程におきましては、こういうような者はこの際残そうということも一時考えたことは否定いたしません。しかし、われわれは、その間に直ちに調査を十分にいたさせまして、どういういきさつであるか、どういう理由であるか、その根拠というようなことを調べさせましたところが、これは先般も御答弁申し上げたと存じますが、二名の者はその後説得によって意思を翻して台湾に帰るということになりましたので、これを除きまして、残りの八名のうち、一名が、積極的に、自分中国本土に帰りたいのである、一名は香港に行きたいのだということで、それについては十分な根拠があるとわれわれも認めましたので、この二名は除きました。他の二名の中の一人は、まだ日本においてやりたいことがあるから置いてくれ、今度台湾に帰すのはやめてもらいたいという理由でございました。他の一名は病気で、自分はもう少し療養したいから置いてもらいたいというようなことでございました。それか他の四名につきましては、これは頭から、お前たちに対して理由なんか言う必要はないのだ、自分たちはどうしても今度帰るのはいやなんだ、こういうような説明であったのでございます。もっとも、私どもは、別途に、ことに古屋委員が問題にせられておると思われます人々は、あるいは東京華僑総会等に自分中共帰りたいのだという手紙などを出しておったかもしれないと思っております。しかし、先般も申し上げましたように、これらの人々はいずれも、一たび、興安丸が本年の二月に出ますときに、われわれが、中共へお帰りになるならどうぞお帰り下さいということを申しまして、そのために仮放免もいたし、また帰国のための日本政府からの手当も出してやった、それにもかかわらず逃亡した人々なのでございます。われわれといたしましては、そこまで日本政府として手を尽したものが、今度は台湾送還になりますと、その直前になって自分はいやだと言い出す。この前も申し上げましたように、九月二日にすでに台湾送還のことはさまっておったのでございますから、その間に適時に適当な方法に従ってわれわれの方に意思表示をしていただけましたならば、あるいはまた考えようもあったかもしれぬと存じますが、何分こも十一月四日の出港を目前に控えまして、その直前、十月三十一日でしたか、十一月の一日かに至りまして、初めてわれわれのところに、自分たちは台湾へ帰るのはいやだ、こういうような申し出をしたわけなのでございます。従いまして、われわれとしましては、調査の結果、この人々はいよいよ出るときになると因縁をつけて残ろうとする連中である、こういうふうに認定いたしまして、強制送還をいたしたのでございまして、決して、中共に帰る意思がある、またそれが理由があると認定したにもかかわらず無理に台湾へ帰したというのではないわけなんでございます。それで、先般も御説明申し上げましたように、われわれといたしましては、本人意思を十分尊重するということを現に実行いたして参っております。しかし、その意思というのは、やはり適当な時期に適当な方法で発表されたものに基いてわれわれとしては行動せざるを得ないのでございまして、船が出る直前になって、自分意思を変えたというようなことを言われて、そのつどそれをまた残すというようなことをやっておりましては、いわば切りのない話でございますし、また相当なる国費を使ってやりますことにつきまして、そういう本人のわがままを聞いてはいられない、そこにはおのずから本人意思の尊重ということには限度があるという考えでおります。それで、先般も相当考えましたのですが、こういう悪い先例を残して、本人がそのときになってぐずぐず言うたびに強制送還の実施ができないということになっては、やはり行政事務として妥当でないと考えまして、やったわけでございます。   〔高橋委員長退席、福井(盛)委員長代理着席〕
  20. 古屋貞雄

    古屋委員 その理由でなく、今の夜夜中にやったということの理由を私は聞きたいのです。夜夜中に、五人か七人のようですが、七人残しておいて、警察と警備官がみんなのやすんでおる部屋に入り込んで、指名をしながら、警棒でなぐる、ける、この事実は一すでに林栄開という男は浜松に今おります。それから、一番病気をして重いのは、御承知通り顧敏生でございますが、これは一日に肋膜から、くつでけられた結果、八合くらいの水を毎日とっておる非常な重病人でありますが、こういう問題を引き起す原因の、夜中にやらなければならなかった理由を私は承わりたい。それから、四十五人も警備員がおるのに、警察にまで頼んで、五人か六人の者を、しかも各房にかぎをかけておるのに、たくさんの警察官が踏み込んで乱暴したというのは、これはどういう理由で夜中の一時か二時にやったかということを私は聞きたい。
  21. 内田藤雄

    内田政府委員 先般毛申し上げたと存じますが、船に適時に到達いたしますということを見はからった関係で、通常に平穏に帰りました人々も、たしか夜中の零時何分かの汽車に浜松で乗せたはずでございます。それで、われわれ中共におきましては、そういう問題に対して、もちろんそれは先ほど申し上げましたように直前にわかったことでございますが、そういう人々を事前に早目に別のところに置いておくということ、現地にできるならばそうしろということを指令しておったそうでございます。ところが、これは現地の判断を尊重するよりいたし方ないのでありますが、現地側といたしましては、事前にその隔離的な行為をやりますと、結局全般に非常な動揺を起して、平穏に行こうとする人々にも問題を起しては困るんではないかといった考慮から、最後まで説得に努めましたけれども、いわゆる実力行使的な形での隔離ということは差し控えておったようでございます。それで、十二時何分かの汽車で今の百二十何名かの人々が出ましたその後に、さらに説得に努めたようでございます。その説得の過程におきまして、残留者の人々の支援などもございまして、この退去強制になっております人々をあくまで渡さないというような実力行使的な準備が行われたそろでございます。たとえて申しますと、ピンポン台などをこわし七、なぐる棒などを作るというような準備が、残った人々の間に行われた。しかし、それにもかかわらず、最後の瞬間まで、浜松の警備官は、警棒なども持たず、あるいは鉄かぶとというようなものもかぶらずに、全く手ぶらで説得に当ったそうでございます。それで、いよいよ最後の説得に参りました警備員の一番の主任の者が、ただいま申しましたような手ぶらの形で説得に参りましたのを、引きずり込まれて、みんなから袋だたきにあったというようなところから、実は乱闘騒ぎになったようなわけなのでございます。それで、なぜ夜中に行われたかということを問題にせられておるようでございますが、ただいま申し上げましたように、一般の者を出すのが零時何分かの汽車でございましたので、それまではっまり隔離的なことをやらなかった結果、そうしてその後にさらに説得に努めて、ついに説得が成功せずに、ただいま申し上げましたような警備の一番の主任者が袋だたきにあうといった事態が生じました結果、警察官方の応援を願って、今の退去強制者を引きずり出すということにならざるを得なかったわけなのでございます。
  22. 古屋貞雄

    古屋委員 今の局長のお言葉に対してはあとにいたしますが、法務大臣ほお時間がないそうですから、法務大臣に伺いますが、今お聞きの通り、乱闘を行なった。その前の十時ころには寮の部屋にかぎをかけるわけです。ですから、かぎのかかった中に入っておる人間を連れ出すのに暴力で連れ出したということになっておる。しかも、今瀕死の病、いおゆる肋膜炎を起しまして、非常に重い病気で赤十字に入院しておるそうですが、そういうように入っておる人の中にも乱暴するのもあるそうです。だからといって、敵愾心を起して、外からかぎをかけておる中に入り込んで暴行を加えるということは、今お聞きの通りの経過からも、これはまことに一線を越えた行動であるということが考えられる。ことに、この問題は、後日裁判所で明確になると思いますけれども既決囚の入っておるところで、設備も非常に悪い。そうして、なおこの点は私の方でよく調べてみますると、あそこの警備員の素質が一番悪く、そうして非常に乱暴者が多い。こういう行き過ぎた行為につきましては、これは国際関係があるのですから、法務大臣からはっきりとこれに対する処置の御言明を願いたいと思うが、こういうようなことが従来行われておったことはないのでしょうか。ただいまその五寮、四寮のかぎのかかった中におりました十数名の人々が起訴を受けておるのですが、これに暴行を加えて、そうして赤十字に入院をして生命も非常に危険である、数ヵ月の入院加療を要するというような傷を受けるに至らしめた者に対するこの責任は、今のところ何も明らかになっておらない。この問題はおそらく司法事件の進捗に伴って明らかになってくると思いますが、そういうようなもしも行き過ぎの事実があるとするならば、厳重な御処置を願うことができるかどうか。これは仮定論になりますが、しかし、このことは、凌辱罪が成立するかどうか知りませんけれども、当然の権力行使とは言えぬと思うのです。今、夜中に説得したと言うけれども、夜中に説得する必要は絶対ない。親切のことならば、夜中には睡眠時間を与えて、翌日やればできることです。夜中に説得をし、説得をするということによって暴行が行われたということは事実です。決して中に入っている被収容者があばれ出して問題を起したのではない。説得に行くという事実が夜中に行われ、しかも警察官が一緒に行って騒いでおったという事実がこの問題を起しておるのです。これは黒田君が詳しく調べて参りましたし、その他において証拠保全をしておりますから、後日明らかになりますけれども、こういうような中共送還された人々手記の中にも、窓を破って入り込んできて指名をして——中元という警察官の名前も書いてある。そして暴行を加えておる。最後には水をためておりまする防火用水槽の中に投げ込まれたのぶ数人ある。こういうようなことは行き過ぎであるという場合においては、厳重な処置法務大臣としておとりになるお約束ができるかどうかということと、既決囚を入れておくところに第三国人諸君を入れてこれを収容しておくということは、国際信義から考えましても、人道的に考えましても、これは相当無理ではないか、かような収容所をお改めになるお考えがあるかどうかの二つだけ法務大臣から承わりたいと思います。
  23. 牧野良三

    牧野国務大臣 決してあなたの御質問は仮定的ではありません。具体的事実に対しての御意見でありますが、これはよく調べまして、こんなことの今後決してないようにいたします。御了承をいただきたい。過去における取扱い上の過誤がありましたならば、後任者でありますけれども、私からおわびを申します。今後はあなた方と心持ちを合せ、こんな事態の起らぬことを期したいと存じます。御了承をいただきとうございます。
  24. 古屋貞雄

    古屋委員 非常に明快な、あたたかい、しかも正しい御答弁をいただきまして、私、非常に満足です。かようにして参ることによってのみ、第三国人の今後の送還についてスムーズに行われる基礎が築き上げられることを喜ぶものであります。  法務大臣は十二時までということでありまして、引き続きまして局長にお尋ねいたしても、これは意見の相違になるかもしれませんから、この点はこれ以上お尋ねいたしません。ただ、後日の機会でよろしゅうございますから、国警長官に他の関係と一緒にお尋ねすることにいたしまして、本日は私はこの程度にいたします。
  25. 福井盛太

    ○福井(盛)委員長代理 今日はこの程度で散会することにいたします。次会はいずれ公報をもって御通知することにいたします。    午後零時三分散会