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1955-12-06 第23回国会 衆議院 法務委員会 第2号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和三十年十二月六日(火曜日)     午前十一時二十五分開議  出席委員    委員長 高橋 禎一君    理事 福井 盛太君 理事 古島 義英君    理事 三田村武夫君 理事 古屋 貞雄君       池田 清志君    小島 徹三君       椎名  隆君    高木 松吉君       高瀬  傳君    横井 太郎君       横川 重次君    櫻井 奎夫君       田中幾三郎君    志賀 義雄君  出席国務大臣         法 務 大 臣 牧野 良三君  出席政府委員         警察庁長官   石井 榮三君         警  視  長         (警察庁警備部         長)      山口 喜雄君         法務事務官         (入国管理局         長)      内田 藤雄君  委員外出席者         厚生事務官         (引揚援護局引         揚課長)    瀬戸新太郎君         建設事務官         (住宅局総務課         長)      南部 哲也君         専  門  員 小木 貞一君     ――――――――――――― 十二月五日  委員長世耕弘一委員長辞任につき、その補欠  として高橋禎一君が議長の指名で委員長に選任  された。     ――――――――――――― 十二月五日  売春等処罰法制定に関する請願(上林山榮吉君  紹介)(第四号)  与論島茶花港に入国管理事務所設置請願(上  林山榮吉紹介)(第二六号)  人権擁護のための予算増額に関する請願(菊地  養之輔君外一名紹介)(第七一号)  大隅簡易裁判所庁舎新築請願山中貞則君紹  介)(第九五号) の審査を本委員会に付託された。     ――――――――――――― 本日の会議に付した案件  罹災都市借地借家臨時処理法第二十五条の二の  災害及び同条の規定を適用する地区を定める法  律案起草に関する件  法務行政に関する件     ―――――――――――――
  2. 高橋禎一

    高橋委員長 これより法務委員会を開会いたします。  この際ごあいさつを申し上げたいと存じます。このたび私が当委員会委員長の職を汚すことに相なりました。法務委員長の責はまことに重大であると存じまして、はなはだ名誉に感じますと同時に、その任の重きを痛感いたしまして、果して経験のない私が十分にその職責を尽し得るやいなや、非常に心配をいたしておる次第でございますが、幸いにして委員各位におかれましてはいずれも練達堪能方々でございますので、皆様方の御同情と御理解とによりまして、十分な御協力を賜わり、この職を果さしていただきたいと存じます。どうぞよろしくお願いいたします。(拍手)     ―――――――――――――
  3. 高橋禎一

    高橋委員長 罹災都市借地借家問題について調査を進めます。  質疑は通告によつてこれを許します。池田清志君。
  4. 池田清志

    池田(清)委員 罹災都市借地借家臨時処理法関係におきまして、去る十月一日起りましたところの新潟市につきまして、その災害及び地域指定をいたしますことにつきましては、私は満腔の賛意を表する次第でございます。同様なる事柄といたしまして、去る十二月三日鹿児島県名瀬市に起りました火災及びこの地域に対しましても同様な処置が新潟市とともにとらるべきことを私は要望する次第でありますが、委員長のお手元におきましてはどういうようなお取り計らいになつておりますか、お尋ねを申し上げたいと思います。
  5. 高橋禎一

    高橋委員長 ただいまの池田君の私に対する御質問に対してお答えをいたします。名瀬市の問題については、御存じのように本月の三日火災があつたわけでございまして、関係当局において目下その被害実情調査中であります。しかし、いろいろ事情を聞きますと、まだ正確な被害調査が完了しておらぬ、こういうふうに聞いておるわけであります。申し上げるまでもなく、この罹災都市借地借家臨時処理法第二十五条の二の災害及び同条の規定を適用する地区を定める法律は、いろいろの観点、ことに罹災地において借地借家関係のその件数がどの程度あるかというようなことも十分調査いたしませんと、果して立法措置をなすべきであるかどうかということの確信も得られないわけでありますし、なお、御存じのように、名瀬市は本年の十月中にも相当大きな火災がありまして、その火災のあつた地域と本月三日の火災の起りました地域との場所的関係というようなことも正確に調査してみる必要がある、そういうふうに考えますが、それらのこともまだ十分明確になつておらないというような状態でありますので、何と申しましても大火災ですから、一応の見通しといたしましては、やはり新潟市と同様な措置をとるべきである、こう考えますが、先ほど申し上げましたような、被害状況調査がまだ行政当局においても十分終つていないというような関係がありますから、当委員会においてもすみやかにその実情調査いたしまして、立法措置をなす必要があるということに相なりましたならば、委員各位と御相談申し上げて適当な措置をとるべきものである、そういうふうに考えておる次第であります。
  6. 池田清志

    池田(清)委員 委員長の御懇切な御説明でよくわかりました。械機的に調査ができておらない、準備が間に合わないというようなことも了承いたします。つきましては、すみやかに調査を完了せられまして、新潟市にならつて立法措置を早くしていただきますように要望いたす次第であります。
  7. 高橋禎一

    高橋委員長 他に御質疑はありませんか。-他に御質疑がなければ、この際お諮りいたします。  罹災都市借地借家臨時処理法第二十五条の一の災害及び同条の規定を適用する地区を定める法律案について、次のごとく委員会の成案を決定し、これを委員会提出法律案といたすことといたしたいと存じます。すなわち    罹災都市借地借家臨時処理法第二十五条の二の災害及び同条の規定を適用する地区を定める法律案   罹災都市借地借家臨時処理法昭和二十一年法律第十三号)第二十五条の二の災害を次の表の上欄に記載するとおり、同欄に記載する災害につき同条の規定を適用する地区を同表の下欄に記載するとおり定める。     災   害    昭和三十年十月一日新潟新潟市におこつた火災     地   区    新潟県のうち新潟市     附 則   この法律は、公布の日から施行する。  以上のごとく決するに賛成の諸君の御起立を願います。   〔総員起立
  8. 高橋禎一

    高橋委員長 起立総員。よつて以上のごとく決しました。     ―――――――――――――
  9. 高橋禎一

    高橋委員長 次に、法務行政に関する件について調査を進めます。  質疑の通告がありますので、これを許します。古屋貞雄君。
  10. 古屋貞雄

    古屋委員 私は、国際問題にも関係をしますし、人権問題にも関係をしますところの重要な案件であります外国人強制送還についてお尋ねしたいと思います。  この問題は、さきに問題を起しました浜松事件、これは、強制送還をされる被送還者中華人民共和国に帰りたいという意思表示を明確にしておるにかかわらず、あえて強制的にこれを日本政府中華民国である台湾送還をいたしました事実、それから、その次は、これとは逆に、中華民国台湾に帰りたいというのにそれを中華人民共和国送還をする、こういうような二つの矛盾した方法が行われまして、大きな国際問題を引き起しておりますので、この際、第一に、強制送還をする手続はどういう手続をしておるかということと、それから、送還をいたしまする場合に、送還される本人自由意思に対して日本政府は干渉しておる事実がございますが、さような場合の権限に対する関係、それから、特に出入国管理局管理下におきますところの強制送還収容所における警備官権限、並びに出入国管理局におきましてこれが手続をいたします場合の実情についてお尋ねをしたいと思いますが、まず第一に、強制送還をする場合にどういう手続をもつて送還を実施しておるのか、特に国民政府中華人民共和国に対する送還の場合ば同一の手続で行われておるのか、それとも異なつた手続で行われておるのか、これを援護局の方にお尋ねしたいと思います。
  11. 瀬戸新太郎

    瀬戸説明員 在日華僑方々送還につきましては、援護局としては、まず第一番に、華僑総会から名簿日赤に来て、日赤はその名簿入国管理局に提出いたしまして、その人が帰るかどうかということを調査してもらいまして、それを点検した上で、その名簿日赤から厚生省にもらいまして、その名簿に基いて運賃あと払い証を交付いたしております。そこで、今度の場合は、非常に日にちが切迫いたしました関係で、まず華僑総会から日赤に出た名簿を、まだ入国管理局で完全な調査をやるいとまがございませんので、応急的な措置として一応運賃あと払い証名簿の出た全員について交付いたした次第であります。
  12. 古屋貞雄

    古屋委員 そこで、今の手続はこうですね。華僑総会から送還をされる被送還者名簿日赤に出されて、日赤からその名簿が出されたことの通知が入管にあり、入管の許可を経て、いいということになつて厚生省援護局に回るのですね。その点、いかがでございましようか。
  13. 瀬戸新太郎

    瀬戸説明員 それは、入管では一応帰国予定者としてきめていいかどうかということで点検をして日赤の方に通知されるわけでありまして、最終的にその入管で見た際は帰国できるかどうかということを全員について決定はなされておらないわけであります。
  14. 古屋貞雄

    古屋委員 そうすると、援護局の方から運賃あと払い書類を各被送還者に渡すのでございますか、それとも一括してどこかへ渡すのですか。どういうことになつておるのですか。
  15. 瀬戸新太郎

    瀬戸説明員 これは、日赤を通じまして、日赤に一括交付いたしまして、日赤から帰国華僑の方にお送りしております。
  16. 古屋貞雄

    古屋委員 そこで、今度は具体的にお尋ねしたいのですが、洪進山については、さような命令書と申しましようか、指令書と申しましようか、書類が渡されたということを承わつて、それによつて洪進山は名古屋まで乗つてつたというのですが、その事実はお認めになるのですか、どうですか。
  17. 瀬戸新太郎

    瀬戸説明員 それは、あと払い証によつて名古屋まで乗車しております。
  18. 古屋貞雄

    古屋委員 そこで、内田管理局長に承わりたいのですが、内田管理局長は、洪進山を名古屋から引きおろしたのですが、それはどういうようなお考えでおろしたのですか。その点を詳しく御説明を願いたいと思います。
  19. 内田藤雄

    内田政府委員 ただいまの引揚課長のお話と重複いたすかもしれないですが、今回われわれの方で当面いたしました実情をあわせて御説明いたしたいと存じますが、今回の引き揚げにおきましては、従来ともなかなか時間のゆとりというものが十分にございませんのですが、特に今回の場合には、中共の紅十字会からの配船の電報が参りまして配船に至りますまでの間が非常に短かかつたわけでございます。それで、われわれの方に帰国者名簿が提出せられました日が十日の夕刻ごろであつたように記憶いたします。それで、片方興安丸は二十日に舞鶴を出港する、こういうことになりましたので、舞鶴に集結いたしますためには、その二日くらい前に――たとえば東京で申しましても確か十七日が予定されたようでございますが、そのころに東京を出発しなければならぬ、こういった関係で、非常にその間の期間が短かかつたわけでございます。  それで、具体的に洪進山氏の場合のことを申し上げますと、この人は、もうすでに新聞等にも出ておりますが、台湾から正規旅券を持つて台湾政府派遣警察関係の留学生ということで日本に来ておつた人でございまして、その人が一年間こちらの正規在留期間を経過いたしましたあと台湾政府において帰つてこいということのために、旅券正規の更新、つまり旅券そのもの有効性でございますが、その延長が拒否せられまして、その結果、われわれの方でも正規延長ということは不可能になつたわけでございます。そして、その結果、結論的には不法残留ということになりまして、そうして今年の九月に退去強制ということになつてつた人でございます。それで、その間に、われわれといたしましては、台湾旅券で来た人でございますし、台湾政府からのそういつた派遣の人でございますから、当然この人は台湾に帰るものであるということで、台湾に帰国するようにと勧告をいたしておりました。本人もその間に自分中共へ行きたいという話はわれわれの方には何らなされておらなかつたようでございます。従いまして、この人は、もう僕らの観念から申しますと、当然台湾へ帰る人だ、こう思つてつたのでございますが、はからずも、そのリストを見ますと、中共側に帰るというリストの中に洪進山氏の名前があつたわけでございます。それでわれわれとしては非常に意外に感じたわけでございますが、片方、何分にも日が迫つております。われわれは、そういうリストをもらいますと、直ちに検察庁、国警、そのほか関係方面に相当多数そのリストを送付いたしまして、その人々について異存がないかの回答を求めるのでございますが、特に洪進山氏はそういつた関係の人でございますから、われわれとしまして意見を求めたわけでございます。その結果、これはどうも問題ではないかということになりまして、その間に、ここにございますが、台湾政府の領事館などからも、これはどうしても自分の方に帰してもらわなければ困るというような話もございますし、かたがた、いろいろ検討いたしました結果、われわれの意思がはつきりきまりましたのは十五日ごろであると思いますが、これはやはりこの際興安丸に乗つて帰られることは困るということに大体意思決定をいたしまして、本人にさつそくその旨を伝えるように手配いたしましたが、連絡に応じて直ちに出頭しなかつたというような事情もございまして、十七日に本人に対しまして、あなたはいろいろ国際的な角度から見て問題があるから、できるならば自発的にこの際帰ることを取りやめてもらえないかという趣旨において、われわれの関係の係官が話をしたように承知いたしております。ところが、その晩の汽車本人舞鶴向つたということがわかりましたので、直ちに手配をいたしまして、名古屋において下車せしめたのでございますが、法律的に申しますと、それは仮放免条件違反による仮放免の取り消しという形において行われたと承知いたしております。大体名古屋において下車せしめるまでのいきさつは右のような次第であります。
  20. 古屋貞雄

    古屋委員 そこで、局長お尋ねしたいのですが、私どもは、被送還者本人意思によつて帰国する先がきまるものであつて日本政府がかれこれこれに対してくちばしをいれるということはできないと考えると同時に、人道上から考えましても、その点はそれが当然である、こう思うのですが、管理局意思決定が十五日にされたと局長の言うのは、その被送還者が帰ることにどういう関係をお持ちになるのでしようか、その点をお伺いしたい。
  21. 内田藤雄

    内田政府委員 出入国管理令の第五十三条にこういうふうに規定いたしております。「退去強制を受ける者は、その者の国籍又は市民権の属する国に送還されるものとする。」これが第一項でございます。従いまして、通常の場合にはこの原則で大体文句なしにいくわけなのでございますが、ただいま古屋委員の仰せられましたように、その第二項に「前項の国に送還することができないときは、本人の希望により、左に掲げる国のいずれかに送還されるものとする。」という規定がございまして、われわれといたしましては、第一項の原則と同時に本人意思というものを人道的な見地から考慮いたすべきであると考え、また現にそういたしております。特に中国のような場合、二つ政権が実際上存在し、しかも双方が互いに相手の政権を否認し合つているというような関係の場合には、この問題は非常にデリケートなむずかしい問題なのでございまして、われわれとしましても、過去におきましてもこの取り扱いについてはかなり苦労して参りました。しかし、大体におきましては、今古屋委員の仰せられましたように、われわれといたしましても、できる限り本人意思を尊重するという建前で参つております。洪進山氏の場合にも、この五十三条の第一項の規定そのままで参りますれば、つまり本人自分台湾に帰りたいのだ、こう言つた場合には何ら問題は生ずる余地もないのでございまして、われわれとしましては当然それで処置いたします。しかるに、台湾旅券で来て、そういつた特殊の人であるにもかかわらず、今度は中共へ行きたいということになりますと、これは本人自由意思を尊重すると申しましても、その考えだけでは措置できないのではないかと、われわれとしては考える次第でございます。それは、結局、あの場合、具体的な事情を申し上げますと、実際問題としまして、洪進山という一人の人物を二つ政権が奪い合つているという格好を呈したわけでございます。われわれといたしましては、もちろん原則原則でございますけれども、そういう人道上の問題と申しますよりも、前面に政治問題があつて奪い合いが行われているときに、これを片一方にぽつと渡してしまうということは、やはりわれわれの立場上いたしかねるという、きわめて常識的な結論に基きまして、しばらく見合せてもらいたい、われわれとしてもあなたのほんとう意思というものは十分尊重するのだから、この際興安丸で帰ることばやめていただけないかというのが、われわれの気持であつたわけでございます。決して本質的に本人意思を無視してやろうという考えはわれわれとして持つておりません。
  22. 古屋貞雄

    古屋委員 非常に奇怪なことを承わつて、私、はつきりしたいと思うのですが、中華人民共和国中華民国二つ奪い合いをしておる、そういう事実は断じてないはずです。どういう証拠に基いておつしやるのか、その点をはつきりして下さい。これは問題なんです。どういうわけで私が申し上げるかと申しますと、私ども中共にお招きを受けて行つたときに、毛沢東主席と十月の十七日にお目にかかりました。そのときに、われわれはあなたの国の内政に干渉しないとともに、わが国の内政にも干渉してもらいたくないのだ、従つて、十六日のニュースによると浜松における百何十人かのうちには中華人民共和国にどうしても帰りたいと言つておるのを強制的にお国では台湾に送るというようなことがニュースでこつちへ入つている、――これは上林山君が団長で直接聞いております。私も直接聞いたのだ。そういうような問題は、人道上から考えても、これは当然に本人の選択に基き、本人自由意思に基いて手続をしていただいてお帰しを願うことが、これはもう国際人権宣言の上から言つてもそうだし、われわれの常識から考えてもそうだ、そういうことで御協力を願いますということを私どもは聞いて参りましたけれども洪進山自身を中国が引き取らなければならぬ、台湾との争いなんだ、そういう前提においてあなたはお話しになつているが、その事実は何に基いておつしやるのですか。
  23. 内田藤雄

    内田政府委員 私どもがそういう印象を受けたと申し上げているのでございまして、現実に、洪進山はぜひ渡せということを華僑総会側言つておるわけです。興安丸にぜひ乗せろ、そういうことを片一方では言つているし、片一方では、こちらにおります台湾総領事館あるいは大使館などからは、どうしても洪進山は台湾へ帰せ、こういう要求が来ておつたわけです。(「華僑総会政府じやないじやないか」と呼ぶ者あり)それならばその意味は訂正いたします。中共と申しました意味は、華僑総会側の方でそういうふうに要求してきておつた、こういう意味でございまして、片一方では総領事館あるいは大使館が要求してきている、こういう状況におかれましたから、もうしばらく待つてもらいたい、こういう結論を下した次第でございます。
  24. 古屋貞雄

    古屋委員 私は今の答弁は納得いかないのです。本人はすでに、あなたと同じ日本政府が、運賃あと払いするということで書類を出して、汽車にお乗りなさいといつて、乗つている人なんでしよう。乗る前ならあなたの理論がへ理屈がつくかもしれないけれども、今ではつかぬじやないか。あなた方がそういう推察によつて人人権をじゆうりんしているという姿は、国際問題になる。私どもがこう申し上げているのは、あなた方と血を分けている同胞が中国にはまだたくさんいらつしやいます。中華人民共和国には戦犯の諸君もいるし、早く帰してもらいたいというのは日本の世論でしよう。こちらではでたらめなことをやつて、向うに対してそういう者を帰せということを言えない立場に置かれているということをお考えになつたらどうですか。あなたは国家の役人でしよう。まずあなたの最初の認識自体が根本から間違つているわけである。あなたは奪い合いをしていると言うが、華僑総会がそうおつしやるのは当りまえである。本人の申し出によつて華僑総会名簿を作り赤十字にこれを持つて行き、普通の手続をされて、日本政府援護局運賃あと払いで乗せたあとでしよう。それをどういうわけであなた方が途中からおろしたか、質問をするのです。  それから、浜松の内容もでたらめです。ほとんど半死半生の中で水槽にみな投げて、あそこで殺そうとしているじやないですねだから聞くのだ。これもあとからもつと詳しく明確に聞きたいが、浜松事件は起訴されました関係上、刑事訴訟法で判事によつて仮処分しておりますから、それに基いて私は質問するわけです。  あなた方は、おろしたという問題についての法律上の根拠は仮放免違反だ、こうおつしやるでしよう。それなら、あなた方のところに一応名簿行つているじやないか。この人間は中国へ帰すのだ、この名簿行つて、あなたの方ではその名簿赤十字に渡し、それによつてちやんと運賃あと払い汽車に乗つていらつしやいと言つているじやないか。洪進山本人の供述によりますと、あなたの方の東京事務所に、私はこれで帰るのですけれども、何か手続をしなければいけないでしようかと、洪進山は念を押しに行つている。それには及ばないだろう、すでに名簿が出されて、そうして送還されることになれば、もうそういうことは必要ありませんと言つたので、洪進山は汽車に乗つている。あとになつてから、それはそうでないとか、これから調べるとかおつしやるでしようけれども、そういう事実を本人言つている。どつちがほんとうか知りませんけれども本人は、あなたの下の東京の官庁に行つて、こういうことになりまして帰ります、私は仮放免立場だから、何か手続をしなければいけませんかと言つたところが、あなたの部下は、いや、もうそうなつている以上はいいでしよう、これは名簿が出ている以上は管理局も承知している上だ、すでにあなたはお乗りなさいという命令書みたいな書類をもらつている以上は、乗つて行くのはいいでしようということで、それまでやつてつているというこの事実を前提にしてお考えになつていただいたか。台湾政府から横やりが出てきたから、あなた方の政治的意味もあるからそういうことをやつた、そういうことになると相当大きな問題になります。そうでしよう。そういう事実について、あなたは局長として知つてつた知つておらなかつたか。  もう一つ伺いましよう。仮放免をしたのはいつでございますか。二カ月も前のことでしよう。九月ですから、洪進山に対する調査とかなんとかいうことは十分に今までにやれるじやありませんか。今になつて途中まで乗つたものをおろさなければならなかつたという必要は、常識から考えてもないとわれわれは考えるのです。その人は帰つてしまう人だから、それを九月に仮放免されてから二カ月もたつて、今ごろになつてあなたの方で調査するとかなんとか、そういう緩慢なことをおやりになつているが、それは理由にならない。合理的に御説明を願いたい。
  25. 内田藤雄

    内田政府委員 洪進山氏が、十二日でございますか、東京事務所に出頭いたしまして、今古屋委員のおつしやいますように、自分は仮放免立場にいるのだがということで手続について問い合せたという事実、問い合せというのが的確な表現かどうか存じませんが、とにかく出頭いたしましていろいろ話し合つたという事実はあるように聞いております。その際、私どもの方といたしましては、一般的に帰国者については帰国のリストに載つておれば格別の手続は要らないであろうというふうに係官が応答した、ないしは少くとも洪進山氏がそういうふうに了解されたかもしれないということについては、私は争おうとは存じません。しかしながら、ただいまも申し上げましたように、ちよつと前後いたしますが、われわれとしましては、洪進山氏は台湾へ帰る人である、本人もそういうふうに言つてつたのでございまして、われわれば台湾へ帰るという前提考えておつたわけでございます。ところが、突如として中国本土へ帰るという問題が現われたわけでございます。そこで、その以後にわれわれとして本件を検討したわけでございまして、あの当時、非常に切迫した事情のもとにおきましては、十分な調査ができなかつた次第でございます。それで、これはかねて華僑総会の方とも話し合いをいたしまして、できるだけそういつた帰国者名簿は前びろに渡してもらいたい、少くとも一月前にはわれわれとしては受け取つておきたい、こういう希望を申し入れてございますし、また帰国者名簿に載つた者でも、場合によつて帰国が認められないことがあるということは、私どもの了解しておりますところでは、東京華僑総会も十分承知しておつたと聞いております。現に、過去におきましても、リストに出て参りましたにかかわらず帰国をさしとめた例が四件ほどございまして、これはいずれも刑事事件の被告あるいはその容疑者であつたと存じますが、いずれにしましても、そういうことのために舞鶴において帰国がさしとめられた例が過去にございます。そういう際にも格別問題を生じなかつたのでございまして、われわれとしては、最後的な帰国許可の決定舞鶴において行われるものであるという考えできておりますし、その点ば華僑総会側も了解しておるというふうに聞いておつたのでございます。
  26. 古屋貞雄

    古屋委員 それで、問題になるのは、洪進山氏の中共帰国が突然だとおつしやいますけれども、あなたはお調べになつたはずだと思いますが、洪進山は台湾政府のために警察官として警察大学へ来たのですが、これは自費で来ている。一つも官費ではないのです。そして、学校を卒業してから、帰るべきものを帰らずに、やめて、官吏の身分は罷免されているわけです。そして日大に勉強し、早大に勉強しているわけです。そして、あなたの万は、管理令に基いて、期限が切れたからというので強制収容をして、仮放免した。こういうことになりますと、台湾政府の命令によつてもう職を免ぜられ、帰らないということがはつきりしている以上は、台湾政府がそういう方をどう扱うかということは常識でよくわかるはずです。台湾に喜んで帰れない。台湾の二・二八事件などでは三万人の人を殺している。洪進山は警察官ですから、こういうことはよく知つている。今帰れば自分の生命に関することはよくわかつている。それで中華人民共和国に帰りたいと言つている。それを突如あなた方がもつと調べるのだといつても、本人のかたい決意があり、今申し上げましたように、現実に華僑総会を通じて一切の手続が済んで、しかも運賃あと払いという日本政府の保証によつてつた人です。しかも、今の御答弁によりますと、あなたの方の下部にはその前に一応出頭している事実もある。これを名古屋で、あなた方の方の係官か警備員かが行つておろしたということならまだけつこうですが、何十人かの警察官が汽車のとまるのを待ちかまえて暴力でひつぱりおろしたということは、これは何といたしましてもあなたの方の権力行使とは考えられない。そういう事実はお認めになるのでしようか、ならぬのでしようか。一体、あなたの方の警備員が行つておろそうとしたが、それにがえんじなかつた、暴力でもつて反対した、それで仕方がないから警察に頼んだということであるのか。私どもの方の調査によりますと、初めから警察が出ておつて、到着すると同時に十数人の警察官が飛び込んで、いやおうなしに、片つ端から、洪進山はどこにおるのだ、この汽車に乗つておるだろうと言つて探し歩いて、暴力でひつぱりおろした、この事実を私どもは承知しておりますが、そういうことが一体あなたの管理局の警備員なりあなた方の権限でおやりになれるかどうか。警察でも逮捕状を持つて行かなければやれない。逮捕状がなければ、日本におります以上、日本法律では、他人を強制拘引したり勾留するわけにはいかぬと思う。しかもあなたと同じ日本の役所が保証して乗つた人である。それを警察官がただいま申し上げたように強制的に引きおろす。これをあなたは法律的根拠は仮放免違反だとおつしやるけれども、そういうことの現行犯だとしてやつているだろうと思うが、そういうことを一体やつていいのか悪いのか、あなたの答弁を聞きたい。しかも一人ですよ。何も持つておりません。あなたの方の警備員でけつこうだと思うのです。警備員にあらざる警察が待ちかまえて数十人で引きおろしたということが、権利行使の範囲になるかどうか。私どもはもちろん逸脱した行為だと思うのですが、どうでしよう。
  27. 内田藤雄

    内田政府委員 引揚援護局の方で切符を出して、あと払いの証明書を出しておつたじやないか、この点は、先ほど来申し上げておりますように、事実上時間の余裕がないものでございますから、予定者には全部引揚援護局は出したと聞いております。あの場合、われわれの方の審査によつて決定した者でなければ運賃あと払いを出さないというやり方で参りましたならば、二十日にもし出港したと仮定しますれば、おそらくはとんど大部分の人が間に合わないという結果を招来するおそれもあるわけでございまして、われわれとしましては、先ほど来繰り返し申し上げておりますように、前びろにそのリストをいただいたような場合なら別でございますが、そうでない場合には、ともかく一応運賃あと払い舞鶴に行けるようにして、最後の許可は保留するという形でいかざるを得なかつたわけでございます。従いまして、あと払いのあれを出していることは、日本政府意思としてすでに出国を許可したのではないかという御意見でございますれば、そうではございません。  それから、もう一つ、名古屋で引きおろしたことについてのやり方の問題かと存じますが、これは、ただいま申しましたように、われわれとしては法律上そういう措置でやつたのでございますが、何分にも、当時非常に困惑いたしましたのは、洪進山氏を知つているという者がいないのでございます。そこで、どうしてやるかということになりまして、国警の方で洪進山氏の警察大学の同期生が名古屋にいるから、その人によつて確認して名古屋でおろそう、こういうふうになつたように聞いております。それで、その際国警の方にお願いしたのは確かに私の方からお願いいたしました。しかし、自後、警察官が何名とか、そういうことは直接われわれの権限の問題でもございませんので、これは国警の方で必要だとお考えになつた措置をおとりになつたものだと了解いたします。
  28. 古屋貞雄

    古屋委員 これは、舞鶴にお着きになりましても、あなたの方で日本政府の出国命令書を出さなければ出られない人です。それを、ほかの人がやすんでいる夜中に今のようなことをおやりにならぬでも、賢明なあなた方は舞鶴でおやりになつたらどうです。落ちついて何日もいるでしよう。顔がわからぬならなおさらのこと、舞鶴にいらつしやれば、団長もいるし、自治会の会長もおりますから、洪進山氏を出してくれと言えば、こういうことをやらなくたつていい。何がゆえに名古屋でやつたかという理由を承わりたい。
  29. 内田藤雄

    内田政府委員 それは確かに一つの方法であつたかもしれません。舞鶴へ行きまして、舞鶴でとめるということも一つの方法であつたと思いますが、名古屋で仮放免の条件に違反している現行犯でございますから、名古屋でおろしたということも違法ではないと考える次第でございます。
  30. 古屋貞雄

    古屋委員 私の申し上げているのは、行き過ぎの違法であることは明らかであると申し上げているのです。  それじや、もう少しはつきり承わりましよう。洪進山君をあなたは一体どういうお考えでおとめになつているのか、今どういう調査をされているか知りませんが、本人意思決定というのは一日でできると私は思います。洪進山君をおろしてからもう相当の期間がたつているわけです。こういうことをやることはだれが考えても非常な人権じゆうりんだと私は思うのです。本人意思のはつきりするまであなたの方でいろいろお調べになるということについて、その問題を中心にいろいろ憶測が行われている。日本の警察の秘密の内容を彼は知つているのだから、これが日本と国際関係のまだ戦争状態にある中華人民共和国に持つていかれては困るのだとか、あるいは、台湾からやかましく日本政府言つているから政治的にとめているのだとか、いろいろな憶測が行われるわけです。これは決していい行為じやないと私は思う。日本が外国の警察官を養成しておるために、頼まれたのだからそこに帰さなければならぬという義務はないと思う。引き受けることは自由だろうけれどもあとのことは向うの勝手であつて日本が警察の教育をしたのだから、どこへ行つてしやべつては困るとか、その人間がどこに行つてはいけないと拘束することはないと思う。中華人民共和国に帰りたいならお帰しする。今まで被疑者か刑事被告人かが勝手に日本を去つて自分の本国に帰るという場合に途中でとめたということは私承わつているのですけれども、その他の場合においては、ほとんど本人意思通りで、これを途中で、今申し上げたような洪進山君のような行動をあなたの方でおとめになつたことはいまだかつて聞いておらないのです。特に洪進山君の場合については、警察大学に行つたということ、蒋介石政権から教育について日本に委託されたというような特殊な関係だとおつしやるけれども、第三国人という立場からは、一つも条件は特殊ではないのです。そうでしよう。すでに向うの役人でないことはわかつている。台湾政府の官吏は罷免されておる。従つて台湾政府の役人としての地位はなくなつてしまつた。そうすれば、日本の普通の第三国人なんですから、第三国の普通の人間と区別してあなたの方でお取り扱いしているところに私どもは疑問があるのです。そこで、日本政府は何か政治的に特別な意図があつてこれをじやましているのだ、本人意思をさえ切つているのだ、こういう工合に世界中の人がこれをお考えになることは無理ないことだと思う。その結果、外国に戦犯その他でとめられている人々を甘木に早く帰そうという一つの日本の世論と食い違い、将来日本の国際信用の上に障害にこそなれ、一つもためにならぬと思う。それをあえておやりにならなければならぬという真意を承わりたい。
  31. 内田藤雄

    内田政府委員 ただいま古屋委員は、洪進山はすでに官吏でなくなつてつて従つて普通の一市民であることが明らかであるという前提に立つて御議論をなさつておるのではないかと存じますが、実はその点も明らかではないのでございます。本人は確かにそういうふうに申しておりますが、他方、国民政府の方からは、彼はまだ現職の警察官である、そして現職の警察官がそのまま中共の方へ行くことは承服できない、こういうふうに言つてつております。それで、過去におきましての問題でございますが、かつて国民政府の役人であつた者がその後中国本土の方へ参りました例は確かにございます。しかし、それらの例は、明白に官吏をやめまして、一市民の資格で在留いたしまして、そうしてその後中共の方へ参つた例でございまして、これは、ただいま申しましたように、果して現職の官吏であるかどうか問題なのでございます。例といたしまして、現職の官吏が他の方へ参つたという例はございません。それで、われわれといたしましては、終始申しておりますように、本人意思をこの人の場合だけ特にじゆうりんしようというような考えはなかつたのでございます。また台湾側から特に圧迫を受けてやつたということもないのでございますが、ともかく一応ほとぼりのさめるのを待つて、また本人意思も十分に確認いたしまして処置いたしたい、こう考えたわけでございます。
  32. 古屋貞雄

    古屋委員 現職の官吏であるかないかは、もうすでに警察大学を卒業しまして他の大学に自費で学んでおるという事実、これによつても私は明らかになつておると思うのです。それは国民政府といたしましては言いがかりを言うでしよう。そういうことは日本政府は考慮する必要がないと思うのです。しかもこれは国際関係の問題となつてつて中華人民共和国の紅十字会から非常にやかましい抗議文が来ている。邦人の引き揚げについてお世話しているところからやかましく言つてきておるということまでもしいてしりぞけてやらなくてはならぬという理由はないと思う。これは意見の相違になるかもしれませんけれども、少くとも、あなた方のおやりになつていることは、日本の国際関係においてプラスにはならぬ、マイナスになることは明らかである。しかも、日本国民の輿望である戦犯を早く帰してもらいたい、あるいは中華人民共和国にある邦人を早くたくさん帰してもらいたいということに対して逆行するような効果があつたことをわれわれは遺憾に思うのである。この問題はいずれ法務大臣からも承わりたいが、あなたには事務的なことを承わりたい。  もう一つ、浜松事件でございますが、浜松事件についてまずお聞きしたいことは、浜松事件のいきさつ。ただいま申し上げたように、私ども中国へ参りましたときに、毛沢東さんからもそのお話がございましたから、お約束をしてわれわれ議員は帰つたのでありますが、十一月四日、数人は中華人民共和国へ帰りたいと言うのを、本人意思に反して、しいて台湾強制送還をやつている。しかも、あなたが今おつしやつたように、原籍は台湾にない、中華人民共和国にしかない者であるが、その人の意思に反して台湾強制送還するということが実際に行われてしまつたのです。行われてあるから、それで、われわれ十一月二日に田中官房副長官を訪れ、法務大臣を探したけれども、おらぬから、岸本次官を訪れ、私と長谷川議員と石野議員と三人で、特に中国に行つたときの毛沢東さんの趣旨も話した。どういうわけでこう話したかというと、あちらにおります戦犯諸君の処置についてデリケートな関係がありますからです。私どもそういう事情を訴えて、本人意思に反してまでも日本政府強制送還するのか、それは困るからということを申したら、田中官房副長官は、よくわかつたと言う。その日のうちに外務大臣にもお会いしまして、われわれ直接その話をしたら、本人意思を尊重するということで、私ども別れた。数日たつと浜松事件が起きた。  そこで、調査した結果伺うのですが、あなたの方はまずこういうことをお認めになりますか。一般の送還者は先に帰して、数人の方だけをあとに残して、夜の二時ころに、あなたの方の警備員と警察官が強制的にあとの数人をあと汽車へ乗せて舞鶴に送ろうとして乱闘が起きた、こういう事実はお認めになりますでしようね。その点はどうですか。
  33. 内田藤雄

    内田政府委員 古屋議員と長谷川議員と、それから石野議員でございますか、岸本次官にお会いになりまして、五名の者について、これは意思に反しておるから送還をやめろというお申し出があつたということは、そのとき直ちに、私は次官から承知いたしました。同時に、それに相前後してでございますが、浜松の方からも、その五名以外の者についても、今度台湾送還について異議を述べておる者があるという報告が参りました。われわれといたしましては、これにどう処置するかということについて、外務省とも協議いたしまして、十分に検討いたしました。なお、その間、ちよつと前後いたしましたが、そういう申し出があつたのに対しまして、現地におきましてもいろいろ説得に努力いたしたのでございますが、その結果、二名の者はまた台湾へ帰るということを表明いたしましたために、結局八名が残つたわけでございます。そして、その中で、われわれといたしまして、直ちに本人意思を確認する、またその理由はどういうことであるかというようなことを急ぎ調査などいたしまして、二名の者につきましては、これは相当な理由があると考えまして、送還を停止いたしました。また、これは結果論でございますが、あの騒ぎのための負傷によりまして一名の送還を停止いたしました。それで、結局問題になりますのは、古屋議員のお申し出になりましたその人の名前で申しますと三名になるのでございます。ところで、この三名の者ですが、実は、本年の二月に興安丸中共の方に日本人の引揚者を引き取りに参りますその機会に、われわれとしまして、中共側の方に帰りたい者はこの際申し出るようにということで、当時はまだ大村でございますが、大村におりました中国人に勧奨いたしました。その結果相当多数の希望申し出がございまして、たしか百三十八名と思いましたが、希望の申し出がございました。それで、当時としましては、初めてのこういった大量の帰国の問題でもございましたので、いろいろリスクも考えましたけれども、この際一つ思い切つて寛大にやつてみようということで、全員の仮放免を認めました。そして、帰るという者には被服も支給しますし、またある程度の帰国手当なども出したのでございます。ところが、そうした経緯があつたにもかかわらず、非常に多くの者が逃亡いたしまして、実際上その興安丸に乗船できるように集合いたさなかつたのでございます。問題になつておりますこの二名の者は、いずれもそのときの逃亡者でございます。しかもこれらの人たちが帰国を今度はいやがつておるという理由が何ら明確に示されておりません。ただ、諸般の事情によつて帰国を希望しないというようなことを申しておりまして、古屋議員がおつしやいますように、中共の方に行きたいから、今度台湾へ行くのはいやなんだということは、いずれも申しておりません。そういつた関係から、われわれとしましては、これは正当な理由による台湾送還の拒否でもるとは認定できなかつたわけでございまして、われわれとしましては、本人中共に行きたい意思であるということを確認しながら、しかもなお無理に台湾に帰したということはないわけでございます。
  34. 古屋貞雄

    古屋委員 それなら承わりますが、原籍が台湾になくて中共にある者をお帰しになる場合、これは、今あなたのおつしやる規定の第一項で、当然にそちらに市民権がある者をそちらにお帰しになるなら私は文句を言えないのですが、台湾に行つたことのない人たちを台湾に送つたという問題は、この点はどうなんですか。
  35. 内田藤雄

    内田政府委員 われれわが先ほど申しましたのですが、これが原籍の問題だけで片づけることができますならば、これはきわめて簡明になるのでございますが、実情を申し上げますと、むしろ台湾から日本に来ている者でも、相当やはり中国本土に行きたいと申しておる者もございますし、逆に、原籍が中共にあつて日本に来ておるというような人の場合、特に正式の手続の入国者でない人、これは偶然にもみんなそうなんでございますが、一つのいわば密入国者でございます。それで、その本人たちの申し立てをずつと記録などによつて見ますと、自分たちは中共の政治がいやで、共産党の政治がいやだから、香港に逃げ、そして香港から日本に密入国してきた、こういうふうに言つておるのが多いのでございます。各人によつて多少事情は違いますが、大体、外国船に乗りまして、船員としてあるいは船員のような顔をして乗つてきて、日本にそのまま上陸してしまつたというような人々でございまして、また、職業なども調べてみますと、これも多少の違いはございますが、料理人というようなのが多いのでございます。われわれとしては、香港から来たからといつて香港に帰すということができますならば、これも確かに一つの方法でございます。しかし、香港は、御承知のようにことに密入国の巣で、香港に何ら居住したという証拠も全然ないような者でございますと、香港は絶対に受け付けません。それでは中国本土が本籍だから中国本土に必ず帰せばいいかと申しますと、ただいま申しましたように、自分中共の政治がいやで脱出したのだという場合に、これまた中共へ無理に帰すということは本人に気の毒だという事態も生ずるわけであります。そこで、この人々につきまして、われわれとしましては、中共へお帰りになるならどうぞお帰りなさいという機会も与えまして、それ相応の手続をしたのでございまして、今度また台湾へ帰るのがいやだというその理由がどうしても中共へ帰りたいからだというのではなくて、ただ諸般の事情により帰国を希望しない、言いかえますと、何とかして日本にいたいんだというだけのことでございますと、これはわれわれとしてはその申し出を受け入れるわけにはいかない、こういうふうに考えておる次第でございます。
  36. 古屋貞雄

    古屋委員 その理屈はわかるのです。どうしても本人日本におりたいというのを、強制送還をするというならば、それは原籍地に帰すのが当然だと思うし、あなたの方としてはそういうことをおつしやつておりますけれども華僑総会にははつきり書面が来ております。台湾には帰りたくない、絶対にいやだ、こういう書面を持つて、外務大臣や官房長官にお目にかかつて、私は名前を申し上げたわけです。その他にも、初めから中国に帰る、中国から来たのだということで申し出た者でも、これは台湾送還したのが二人ばかりあるようですが、こういうこと自体、私は非常な人権じゆうりんだと思う。今のあなたの御主張から言えば、台湾に行つたこともなければ、生まれたこともない、いまだかつて住んだこともないということが明らかになつておるのに、どうしてもそこへやらなければならぬという理由はどこにあるのでしようか。原籍は大陸である。香港から来たんだ。あなたのおつしやる通りを認めても、大陸へ帰すのが当然であつて、しかも三日や四日、五日や十日の日を争つて、無理やりに暴力でそれを引ずり出して、台湾送還しなければならぬということは、私は納得がいかないのですが、その点はどうなんでしよう。どなたが考えましても、台湾に原籍があり、台湾にかつてつた人なら、納得いくかもしれませんけれども台湾に行つたこともなければ、台湾におつたこともない、生まれたこともない、籍もない、しかし大陸に原籍があり、大陸に住んだこともあり、それが今の説明によつてもわかつておる。しかも本人からは東京華僑総会にはちやんと手紙が来ておるのです。それを私は預かつておる。ここにもありますよ。そして外務大臣に見せたら、本人意思を尊重しようということを言つてつたのですが、そういうことをあなたの方で調査をせられたのは、どういう方が調査されたか知りませんけれども、あなたの方で強制送還をしたその本人たちは、自分の口から台湾に行きますということは毛頭言つていないはずです。しかも、その人々は、台湾に原籍もなければ住んだこともない、最初に住んだところは大陸だ、こういうことが明らかになつておるのに、あえて暴力で引きずり出して乱闘事件を起さしてやらなければならぬという理由はどこにあるか、その点を承わりたい。
  37. 内田藤雄

    内田政府委員 先ほども申し上げたことでございますが、その出身地ということで画一的に区別できますならば、非常に簡明なわけでございます。しかし、実際問題は、先ほど来申し上げておりますように、台湾の出身者で中共の方へ行きたいという人もたくさんございますし、われわれは、そういつた今の状況下におきましては、その出身地だけで画一的にやるということは妥当ではないのではないかと考えまして、なるべく本人意思を尊重するという考え方で、現に台湾出身者の人でも相当中共へも多数帰つております。そういつた角度から、出身地がこの場合に中国本土であるからこれを中国本土に帰すべきではないかという御意見に対しては、それはむろん一つの大きな要素ではございましようが、常にそれだけでは参らないというふうに考えておるのでございまして、それがまた本人の利益にも合うのではないかと考えております。  それから、華僑総会に手紙を出して、自分中共へ行きたいのだという意思表示をしたというのは、あるいは事実かもしれません。私はその手紙を見ておりませんから、それはあり得ないとは決して考えませんが、問題はそれをいつやつたかということでございます。われわれとしましては、この送還の問題というものは実はなかなか厄介な問題なのでございまして、たとえば、先般台湾への送還が済みました直後に、約八十名の人がおりましたときに調査いたしてみたのでございますが、そのとき積極的に意思を表示いたしました者は、たしか中国本土が十三でございまして、台湾が十二、香港が五、つまり三十名だけがともかく意思表示したのでございますが、あとの約六十名の人はみんな未定とかあるいは日本に残りだいとかいうような、つまり送還先の意思表示をいたさないのでございます。これは一つの例ではございますが、中国の人の退去強制者の実情はこういったことからも現われておるのでございまして、なかなかはつきりした意思がつかめないのでございます。しかも、われわれは、それでは意思がつかめないからいつまでも送還手続をやらないというわけには参りません。なぜならば、そういたしますと、今度は意思のはつきりしない者はいつまでも収容所に置いておかなければならぬということになりまして、これでは収容所としても迷惑でもございますし、また収容が長期になるということの結果、別の形で人道的な問題も生じて参るわけでございますので、われわれとしましては、ある一定の時期に表明された意思従つて相手国と引き取りをかけ合うというよりいたし方がないわけでございます。  それで、われわれとしましては、積極的に中国本土に帰りたいという意思表示をいたしました者は、十分に尊重いたしております。のみならず、この前の興安丸のときのように、そういう意思表示をした者以外でも、こういう機会があるのだから中国本土に行く人は帰りませんか、こういうようなこともやつておるのでありまして、そういつた機会のあるごとに、なるべく自分意思を尊重した形で早期の送還を実現したいという努力はいたしておるのでございます。しかし、どうしてもその意思表示をしない、あるいは少くとも中国本土であるということを積極的に意思表示をある時期にしない者につきましては、これは、今日日本が置かれております外交的な状態、つまり正規に国交を持ち、ここに大使館なり領事館もある国民政府というものを相手にこの引き取り方を交渉せざるを得ないというのがわれわれの置かれている立場だと考えております。また現にそうやつてつておるのでございます。そうして、約一年来の長い交渉の結果、今年の六月に初めて台湾の方から直接しの送還の係員が参りまして、この問題を進捗せしめたのでございますが、そのときの向う側の言い分は、決してわれわれが申しておりますようなことを全面的に承諾をしたのではないのでございまして、台湾がやはり人口過剰で悩んでいるせいで、向うもなかなか引き取りを喜ばないのでございます。それをわれわれの方でいろいろ苦心交渉いたしまして、それでは台湾に帰りたいという者は引き取りましょう―。しかし、われわれの方から申せば、中共に行きたいという者を除けば全部台湾で引き取つてもらいたいというのが主張なんでございますが、向うは、その中で台湾に帰りたいという者は引き取りましよう、その意思自分たちで確認したいからということで申し出がございましたので、それに基きまして、浜松の収容所で向うの人にその意思の確認をさせたわけでございます。そうしてその結果百二十四名のリストが参りましたのは九月の二日でございます。従いまして、その当時もう九月二日には全部わかつてつたのでございますから、どうしても台湾はいやで中共へ行きたいというようなことならば、その当時にでも申し出があつたならば、これはまたいろいろ考慮の余地もあつたかと思うのであります。ところが、実際上、その当時われわれは毎日のように台湾側とも接触し、また本人たちとの接触もやつたのでございますが、一番紛糾いたしました問題は、帰国前にだれを仮放免してくれるかということであります。いろいろ家事の整理とか何とかで仮放免をしてもらいたいという希望が強かつたのでございますが、その点につきましては、前の興安丸で非常に苦しい経験を持つているものですから、そうルーズな仮放免ば今度はごめんだということで、いろいろ調査などをいたしまして、五十数名に仮放免の許可者をしぼつたのでございますが、そういつたいきさつでもめましただけでございまして、本来中共へ行きたいのに台湾送還の方になつておるのは困るといつたような申し出は全然なかつたのでございます。ところが、十月の末に至りまして、突如としてそういうことを申し出て参つたのでございまして、われわれとしましては、政府の行為といたしまして、むろん本人意思はできるだけ尊重いたしますが、しかし、それにはおのずから適当な時期に適当な方法でということがやはり問題なのでございまして、船の出港た瞬間になつて自分はいやだというようなことまで一々聞いておりましたのでは、これは送還ということが全般的に実施し得なくなるという角度から、いろいろ検討いたしましたが、結局、先ほど申しましたように、二名につきまして相当な理由があると認めた者の送還を停止いたしました以外は、送還を実施いたしたわけであります。
  38. 古屋貞雄

    古屋委員 そうおつしやいますが、一体、本人たちの意思表示を確かめたのは、あなたの方の係員ではなくして、台湾から来たとかなんとかいうわからない名前の――本人の手紙を見ますと、こういうことを書いておるのです。陸災同胞救済総会代表、こういう人が、あなたの方の許しを得て被送還者に会つて、そうして台湾に帰るのだという書類を作つてしまつたので、本人たちは意思表示をしていない、こういう手紙が本人から九月二十日ころに華僑総会へたくさん飛び込んできてあるわけです。従つて華僑総会へ、私ども絶対に台湾に帰ることは考えておらないから、何の書類かわからぬから取り消してもらいたいという書類がきておるわけです。従つて、その当時あなたの方のどういう方が立ち会つたか知りませんけれども、四名の今申した人は、華僑総会で調べますと、台湾政府の安人か何かの関係の人だということでリストを作つた、これは本人意思ではないという手紙がここにたくさんございます。それは裁判の関係で、ここでは証拠をあげる必要はありませんから、それだけ申し上げますが、そういうような事情があるわけです。従つて、あなたの方がただそういうものを信用して勝手にやられたというところにこの問題の原因があるわけです。だから私どもはやかましくあなたの方なり関係方面に十一月二日にちやんとこの問題を申し上げておるわけなんです。そのときのお約束を政府は破つておるわけです。これはあとから大臣に責任の追究をいたしますから、事実のことだけをお尋ねいたします。  こういう事実はどうですか。あなたの方で百二十数名を、浜松駅から名古屋行きの汽車で十時ごろ先発させて、あとの五、六人を、しかも台湾への帰国を希望しておる人たちを入れておらない他のあちらこちらの房におつた六、七人の人たちを、あなたの方と並びに警察が無理やりに引き出してあと汽車で送ろうとしたこの現実の事実をどうお考えになるかということが一つと、それが原因で乱闘が起きたということが一つ、その点はいかがでしよう。浜松事件の乱闘の原因ですね。夜明けの一時ないし二時ごろの寝静まつているときの問題なんです。百二十数名の先発隊が出発してしまつた、このあとの事実についてはどうなんですか。
  39. 内田藤雄

    内田政府委員 われわれとしましては、これは浜松の施設の関係もございますが、ともかく台湾へ帰ることになつた者は別にしておくようにという線で現地に指示しておつたようでございます。それで、その際に問題なしに別になつた人々があつたわけでございますが、十月二十七日にそういうふうに別にしたのだそうでございますが、そのとき別になつた者は問題ないのでございますが、約十名がそのとき別にならなかつたのでございます。それで、そのとき、われわれの方としましては、早目にぐずぐず言つておる者も別にしたらどうかということは指示したのでございますが、現地の考慮から、あまり早目にやつて、せつかく円満に台湾に帰ろうとしておる者までも動揺させるというようなことがあつてはおもしろくないといつたような考慮から、それを別に無理に早目にするといことはやらなかつたようでございます。それで、船等の関係もございまして、当初から別になつて、おりました者は浜松を夜半の零時何分かの汽車で立つたのでございます。あとに残りました者につきまして、それらの説得に努めたわけでありますが、なかなか説得が効果を現わさない。そして、いよいよ二時ごろでございましたが、あそこの警備の主任は輸送指揮官として出ておりましたので、その次席の者か何かが単身その説得に入つて参りましたところを、その人が袋だたきにあつたということから紛争が生じたのでございます。従いまして、ただいま古屋委員の御質問のうち、夜中に事が行われたというのは、ほかの一般の帰つた者が夜中に立つたのでございますし、それは汽車の都合でそういうふうに夜中に事件になつたわけでございます。それから、なぜそれまでに別に置かなかつたかということの理由は、以上申し上げたような理由からでございます。
  40. 古屋貞雄

    古屋委員 私の言うたのはあなたの方のお刷りになつたプリントでよくわかるのですが、第二寮、第三寮、第四寮、第五寮というこの関係ですが、五人くらいが三寮、四寮、五寮に分れておつたものを、あとから暴力で引き出しているという事情を聞いている。これは刑事訴訟法ではつきり証拠保全したようになつているから聞いているので、でたらめ言つているのではない。責任を持つて答えていただきたい。二寮の中には台湾に帰る諸君中国に帰る諸君が一緒におつた。三寮、四寮、五寮の中には中国に帰る人しかおらない。そこに乗り込んで暴力で人々を引つぱつたところに本件の問題が起きた。こういうことは、今説得したとおつしやるが、説得でなくして、最初から、暴力であとに残つた七、八人の人間を引きずり出して汽車に乗せよう、こういうことをあなたの方が計画的にやられたことは、警官が百五十名その場に行かれたことで明らかで、あなたの方の寮はおそくても十時ごろかぎをかけて締めてしまう。そうして入つているところに百五十人の警官が押しかけて乱闘をやつたという事実を承わりたい。二時ごろ乱闘が起きた、その乱闘は各寮から引きずり出そうということが原因であつたということ、その一事で私は時間の関係上一応打ち切りますが、そこだけ御答弁していただきたい。
  41. 内田藤雄

    内田政府委員 われわれの方の気持としては、できるだけ説得して円満に処理したいと考えたわけであります。最後の説得に、ただいま申し上げましたように、当時の残つておりました警備官の一番上席の者が単身中り込んで行つたところを、暴力でやられた。これではとうてい本人たち退去強制になつております者を円満に引つぱり出すことはできないということで、その警備官退去強制する職務を執行しなければならないわけでございますので、それわためにそこに参りまして、警察官はその警備官の公務の執行の妨害を排除するという意味で行動したものと了解しております。
  42. 古屋貞雄

    古屋委員 それならば申し上げますが、数人の人間を水槽にほうり込んでおいたという事実はどうですか。これが妨害の排除になりますか。水槽に入れたこの中に、病人で死にそうになつており、赤十字に入院している、こういう連中が水槽の中に数人ほうり込まれたという事実はどうですか。これが妨害の排除になるかどうか、その事実があるかどうかということです。
  43. 内田藤雄

    内田政府委員 水槽にほうり込まれたということは向う側が主張しておるということは聞いておりますが、そういう事実があつたかどうかは存じません。
  44. 古屋貞雄

    古屋委員 あと継続して質問いたしますが、時間がございますから、午前中はこれで打ち切りまして、午後に譲ります。
  45. 高橋禎一

    高橋委員長 午後二時再開することにいたしまして、暫時休憩いたします。    午後零時四十九分休憩      ――――◇―――――    午後二時二十六分開議
  46. 高橋禎一

    高橋委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。  本会議等の関係がありますので、本日はこれにて散会し、次会は公報をもつてお知らせいたします。    午後二時二十七分散会