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平賀説明員 ただいま御
質問の
通りに、十月一日に
火災が起りまして二カ月有余経過いたしましたために、いろいろの
既成事実
関係が
現地では起っておることと想像されるのでございますが、原則といたしましては、従来ありますところの
借地法・
借家法の
規定によりまして
法律的な
解決がされるよりほかはないのではないかと思っております。それから、なお、今度の
法律が施行されますと、この
既成事実に対しましてどういうふうに働いていくか。これはやはり、今度の
法律の
適用に関しまして
解釈上いろいろな問題が起ってくるのではないか。
法律的に
解決はできる建前になっておりますけれども、果してスムーズにいくかどうか、かなり懸念されるものがあると思うのでございます。
それから、今具体的に御
質問のございました
地主による
土地の
取り上げ、これは、
借地法の
規定でいきますと、要するに、
賃貸借の解約であるとか、あるいは
賃貸借の
期間の
更新の拒絶であるとかいう形で行われておると思うのでありますが、これにつきましては、
借地法の
規定におきまして、
期間の
更新を拒絶する、あるいは解約するには正当な事由がなければならないということになっておりますが、この点は
借地権者の方は決して遺憾ないと思うのであります。それから、
地主が
借地権の存在を無視いたしまして、事実上
地主がそこに家を建ててしまったということになりますと、これは
借地権の侵害になるわけでございます。
借地権は今度の
罹災によって決して消滅するわけではございませんので、
借地権者は
地主に対しまして
建物の取り払いを要求できることになりますので、これも
法律上十分
保護されると思うのでございます。
そのほか、今度は
期間が二カ月以上になりましたために、この
法律の施行を予期いたしまして、何と申しますか、思惑的にいろいろなことが行われておる、そのために
法律上かなりむずかしい問題が起ってくるのではないかということが予想されるのでございます。その一例としまして、今度の
法律が
適用されますと、従来ありました
借地権は、これは
登記をしなくても向う五年間はその
借地権をもって
第三者に対抗できるということになるわけでございます。ところが、その
登記をしないでも
第三者に対抗できるというのは今度の
法律が施行されて後五年間でございまして、施行されるまでの間に、たとえば
地主がその
土地の
所有権を
第三者に譲っておるという
状態、これはもうどうにもいたし方がない。その新しい
第三者が
借地権者に対して、
借地権はない、
借地権は存在しないのだからという主張をしてきますと、ちょっとこれには
保護が欠けるわけでございます。しかしながら、わずか二カ月間に急速に
土地の
所有権を譲渡したという
ような場合でありますと、果して真に譲渡するつもりであったかどうか、新しく施行されますこの
法律の
適用を免れるために仮装の譲渡をしたのではないかという場合も現実にはかなりあるのではないかと思われるわけであります。そうなりますと、そういう点でやはり
救済が考えられるわけでございます。従いまして、この点いずれも
救済ができないというわけではないだろうと思うのでございます。
さらに、もう
一つの例といたしまして、今度の
法律が
適用されますと、
罹災建物の借り主、つまり
借家人は、
地主に対しまして
土地の
賃借の
申し出ができることになるわけでございます。しかし、その
賃借の
申し出も、この
法律が施行されて後に初めてできる、現在のところまだできないという
状況にあるわけでございます。さらに、
一つ困りますことは、
借家人が
賃借の
申し出をする前に、すでに
地主なり
第三者なりがその
土地の上に
建物を建てまして、現にその
土地を使用しておるという
状況ができ上っておりますと、
借家人はその
土地の
賃借の
申し出ができないという
規定になっておるのでございます。でありますから、今回の場合におきましても、この二カ月の間に
地主なりあるいは新たにその
土地を買い受けました者あるいはその
土地に
借地権の設定を受けた
ような人がおりまして、
建物を建ててその
土地を使用しておるということになりますと、
借家人は
賃借の
申し出ができないということになるおそれがあるわけでございます。もっとも、今度の
法律の第十四条をもちまして、
建物ができましたならば、その
建物を貸してくれという申出権はございます。しかし
土地賃借の申出権はないというおそれがあるわけであります。ただ、しかしながら、これとても全然
解決ができないわけじゃないのでありまして、今度新たに
適用になりますこの
罹災都市借地借家臨時処理法の第二条にいう、
建物所有の目的ですでに
土地を使用しておる者があるときというその
建物は、一体どういうものと
解釈しているか。私ども承わっておりますところでは、
地主なんかの方で、この
借家人の
賃借申出権の行使を阻止いたしますために
バラックなんかが建ててあるという話を聞くのでありますが、そういう
バラック、ことに
賃借の
申し出を封ずるためにそういう
バラックを急いで建てたという
ような場合に、その
バラックがこの
法律の二条にいうところの
建物と言い得るかどうか、これは非常に疑問ではないかということも考えられるわけでございます。これはいずれ
裁判所の問題になると思いますが、
裁判所でいかなる
解釈をするか、あるいはそういう
バラックなんかはここにいう
建物ではないという
解釈も立ち得ないわけではないのでございまして、そういう点で
保護がはかられるということも可能であろうと思うのであります。
今回、二カ月以上の
期間があり、しかもこの
法律の
適用を見越しましていろいろ両方の側で事前の方策を講じたということのために、かなりむずかしい問題が起ってくるとは思いますが、やはり何らかの合理的な
解決が可能ではないかと私どもとしては思っておる次第でございます。