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1955-12-14 第23回国会 衆議院 農林水産委員会 第10号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和三十年十二月十四日(水曜日)    午前十一時三十六分開議  出席委員    委員長 村松 久義君    理事 吉川 久衛君 理事 笹山茂太郎君    理事 白浜 仁吉君 理事 助川 良平君    理事 稲富 稜人君       足立 篤郎君    安藤  覺君       五十嵐吉藏君    石坂  繁君       大森 玉木君    川村善八郎君       木村 文男君    楠美 省吾君       小枝 一雄君    鈴木 善幸君       中馬 辰猪君    綱島 正興君       原  捨思君    本名  武君       松田 鐵藏君    松野 頼三君       赤路 友藏君    淡谷 悠藏君       伊瀬幸太郎君    井谷 正吉君       石田 宥全君    川俣 清音君       中村 時雄君    芳賀  貢君       日野 吉夫君    久保田 豊君  出席政府委員         農林政務次官  大石 武一君         農林事務官         (大臣官房長) 谷垣 專一君  委員外出席者         水産庁長官   塩見友之助君         専  門  員 岩隈  博君     ――――――――――――― 十二月十三日  若松港を輸入油脂原料取扱港に指定の陳情書  (第一一〇号)  食糧管理制度改善に関する陳情書外四件  (第一一六  号)  鹿児島県の農林水産業災害復旧対策確立に関す  る陳情書  (第一三五号)  災害耕地復旧資金借入金に対する利子補給に関  する陳情書(  第一四二号)  未開発地域開拓促進に関する陳情書  (第一四六号)  台風常襲地帯における農林水産業災害防除に  関する特別措置法等制定に関する陳情書  (第一五七号)  米穀の予約売渡制継続に関する陳情書外一件  (第一九九  号)  農業振興対策確立に関する陳情書  (第二〇〇号) を本委員会に参考送付された。     ――――――――――――― 本日の会議に付した案件  北洋漁業に関する件  農林水産関係公共事業費に関する件     ―――――――――――――
  2. 村松久義

    村松委員長 これより会議を開きます。  本日はまず先般の委員会に引き続きまして北洋漁業の問題について調査を進めます。質疑を許します。松田鐵藏君。
  3. 松田鐵藏

    松田(鐵)委員 水産庁長官にお尋ねしたいと思います。かつて塩見長官水産庁長官を歴任され、またその後における各局長を歴任されまして、再び水産庁長官となって御就任になったのでございまして、およそ農林省内における水産行政に対する塩見長官行政的手腕の卓越せることは自他ともに認められ、また尊敬されておることと存じておるのであります。非常に期待するところが多いのでございます。  そこで今回発表されました北洋漁業につきまして、母船割当許可方針及び独航船方針が発表されておりまするが、この点に対してまず母船許可ということに対しては、日本の各母船会社は自己の経営でなくて、日本政府から与えられた北洋の大きな産業のためにその仕事を経営されるという観点からいきまして、こうした母船許可方針に対しては世間ではとかくの議論もありますが、りっぱな方針であると私は考えておるのでございます。よって次に私ども漁民立場からいきまして二、三の点について長官の御意思のほど、また今後なされんとする御計画に対して、でき得るだけの範囲内におきまして、漁民に安心させるような方途をもって行政的処理をなされていただきたいと存じて質問をしたいと存ずるものであります。  まず第一に、鮭鱒漁業といっても独航船の問題とそれから四十八度の鮭鱒漁業という問題があるのでございます。本年の西カムにおいては独航船割当の基準が、北洋に対する依存度の高い漁業ということから、四十八度の鮭鱒漁業者をもって西カム独航船として認めようという案のように聞いておりまするが、この点に対しては非常に漁民としても満足することと存じます。しかし年々繰り返されておる四十八度鮭鱒漁業をして合理的な漁業をなさしめるためには、どうしても全体を大臣許可にしまして漁船大型化をしていかなければ、とうていあの漁業というものを安定した漁業になし得ないであろうと考えておりまするが、この点に対する長官の御意見を承わりたいと存じます。
  4. 塩見友之助

    塩見説明員 四十八度以南鮭鱒流し網漁業につきましては、ここ数年間非常にはっきりした考え方がとられておらなくて、それで漁民の方々も、どういう格好にしたらいいかというような点に幾らかの不安を持ったように考えられます、この流し網漁業の方も今の状態のままに置いていったのでは、やはりその不安定さが続くわけなので、できるだけ西カムの方の鮭鱒漁業の方へ思い切って転換をしていただくという方向一つと、それからなおそれでも過剰な状態でありますから、それに対しましては、できるだけその船型も大きくできるようにいたしまして、それで事故が起らないようにすることと、それに伴いまして、今お話の、知事許可で非常に小さいもので鮭鱒主体にやるけれども沿岸のほかの漁業もやるというような一部のものを除きましては、今お話のありました通り、大体大臣許可の方へ移していって、そうして大型化もできる、いざというときには、そういうふうな母船式の方への転換が容易にできるような形態に移行してもらうような考え方が一番いいのではないかというふうに私は考えております。なおこの点につきましては、今後道府県等意見も十分徴しまして、その方向を確定して参りたい。私ども気持としましては、昨日やりました部課長会議でも申しておりますけれども、そういう考え方がいいのじゃないか、こういうことをざっと言っておりまするが、反対意見は少いようであります。お話通り方法は十分考えていい、またそれが今後の鮭鱒流し網漁業を安定さしていくのにいい方法じゃないか、こう思います。
  5. 松田鐵藏

    松田(鐵)委員 御意思のほどはわかりましたが、しからば漁船大型化をするということに対して、このプリントにもありまするが、昨年、本年あたりの遭難事故というものは非常に大きな数に上っておって、非常に安全性を欠いておるのでございます。四十八度の鮭鱒流し網漁業は現在五十トン未満三十トン以上ということになっておりまするが、同じ北洋に出漁する漁夫であり、あの災害にあっている点から見ましても、これはもっともっと大型化を奨励しなければならないものと考えておるのでございます。また現在は母船側独航船母船を持っておる。しかして沿岸漁民母船を持っていない。独航して漁業を営み、そうして港基地まで帰港するという点からいきまして、魚を追うて、一日の漁でなくして数日間の漁業を営んで、それを満載して帰ってくるという点からいきまして、独航船安全感というものは非常に不安定なものである。かような点からいきましたならば、今水産庁で立てておられる独航船トン数は、木船において七十五トン、鉄船において八十五トンということになっておりますが、その線まで伸ばしてやっていくことが非常に合理的ではないかという考え方を持っておることが一つ。次は漁夫の待遇の問題からいきましても、どうしても七十五トンまで伸ばしてやることが至当でないかという考え方を私どもは持つものでございまするが、この点に対する長官の御意見はどのようにお考えになっておるか、承わりたいと存じます。
  6. 塩見友之助

    塩見説明員 この独航船方向につきましては、実はまだ十分な時間がなくて、大臣と詳細の打ち合せができておりません。私の意見だけは大臣にお伝えはしてあるわけですが、確定的なことはここで申せません。ただいまおっしゃったところの海難安全性をもっと高める、漁夫のためにもそういうふうな手を考える必要があるというふうなことは全く同感でございまして、それで私の方としましては道府県その他関係者意見を十分徴しまして、ただいまのお話のような大型化の線というものは、他にいろいろ検討すべき要件もございましょうけれども、一応いま少し時間をかして検討さしていただきたい。大体の方向として私の気持としては、そういう方向は当然まともに取り上げて検討する価値がある、結論をここで申し上げにくいわけですけれども、新しい方向として十分検討しなければならない、こういうふうに考えます。
  7. 松田鐵藏

    松田(鐵)委員 つけ加えて、もう一つその理由があるのでございます。それは何といっても五十トン未満の船でなければ四十八度に操業できないということからいきますと、漁民は五十トン未満の船を計画するのでございます。これではいつまでたっても五十トン未満というものに標準を置くことになって大型化をされるのでございます。しかして先ほど述べた二つの理由からいっても、水産庁は、北洋独航船同様な措置をしなければならないという意図が判明して参りますと、本年からやはり大型化しようというときにおいては七十五トン、できるだけ安定した漁業を営みたいという考え方から大型化計画をもっていくことだろうと思うのでございます。そうしていくことによって初めて漁民の重なった費用というものがなくなって、正しい経済の安定が来たされるということが考えられるのでありまするから、こういう点におきましての長官の特段の御配慮を願いたいと存じます。  次に、この方針の中に現われておりまする操業区域の問題でございます。長官にはいろいろの含みがあってなされたことだろうと存じますが、まだ案が決定していないので、そういう含みをこの委員会で述べることができ得ないこともあるだろうと私は考えておるのでありますが、この図面から見ますと、四十八度まで今までの沿岸漁船操業区域となっておるのでございまするが、本年に限って東経百六十五度の線をもって四十六度まで切り下げておる。こういう図面プリントの中に見出されるので、私はこの図面を見て非常に愉快に考えた点が一つと、不安に考えた点が一つあるのであります。すなわち百六十五度までの線において今までの操業区域というものを四十六度まで下げて狭めたということからいくと、これは母船型の独航船というものは、御承知通り一千五百万なり二千万なりまた三千万なり水揚げのできる可能性を持っておる最も日本で安定した利益のある漁業であろうと存じます。その利益のある漁業に対してこれだけの区域をまた地盛りしてやるというふうに見えるのであります。四十八度の沿岸漁民は何らそこに恩恵がないということになるのではないか。こういう点から毎年々々操業区域が変るということになると、非常なる不安を持つことであろうと考えられるのであります。逆に非常に喜んで期待を持つということは、この百六十五度からの線における四十六度という線を拡大したということからいったならば、百六十五度から以北二度より五十度まである時期を限って入会をさせるという考え方長官にあるのではないかという考え方を私どもはするのでございますが、一方において地盛りをする、一方においてまたこれを優遇してそういう希望を持たせるというお考えではないかという考え方をわれわれは持つのでございます。さすが塩見水産長官であると私は非常に期待しておるのでございますが、この点どういうようにお考えになっておるのか、お聞かせ願いたいと存じます。
  8. 塩見友之助

    塩見説明員 ただいま御質問の点は、今度の許可方針の中で非常に時間をかけて検討した事柄でございます。御承知通りに、アリューシャンの南方海域における紅サケ回遊路は、年々海況によって幾らか変動しております。そこで南の方になりますと、南から北に上っていく、途中から西の方に変ってくる、こういう形でございまして、どうしてもこの海域漁業を安定させる意味からいうと、もう少し回遊路を追いまして、操業期間なり操業区域なりを安定さしていくという考え方と、それから主体紅サケでございますから、できるだけカン詰設備を持っておる母船が魚の処理上から最も適当じゃないかという考え方から、今年度は四十六度まで下げますけれども、さらにその以南につきましても調査相当強化していって、どの程度の漁場価値があるかということをできるだけ早く確認をしたい、こう考えているわけです。  もう一つ鮭鱒流し網の方でございますが、これはかなり数量が今度はオホーツクに転換ができますから、漁場余裕は、苦しいところですけれども、従来ほどではないということと、それから鮭鱒流しと境界になります四十八度三十分、その線ぎりぎりまで母船は下がれたわけでございますけれども、今般は、これもやはり母船位置は一定の距離を四十八度三十分から北にとらすというふうに、母船にはある程度遠慮させると申しますか、北の方へやる、少し奥の方へ入らせる、こういうような形の許可をやることにしております。  そういうふうな関係から、以南人たちがどういうふうに働くかという問題につきましては、これはまだ確定しておりませんから、御質問の数字についてはお答えできませんが、ただこの海域は非常に海難が多いのでございまして、去年の救難の方の報告を聞きましても、幌筵その他の方へ難破の船体が相当上っておるというふうなことから考えまして、その点についてはもう少し全体としても検討を加えたい、こう考えております。
  9. 松田鐵藏

    松田(鐵)委員 長官の御意見では、私が申し上げたことに対してこれから御検討を願えるということでけっこうでございまするが、先ほどの長官の御答弁の中に、将来四十六度までの中を拡大した理由についても、安定した北洋漁業というものを一本化していかなければならぬというような意図のように私は聞き受けておるのでございます。それによる沿岸漁船大型化というものも加味されて御考慮されることと存じまするが、しからば東経百六十五度から四十六度というこの線は、今までは四十八度線の以南操業区域であったのだから、もしまたここにあやまって漁船が入っていくというようなことであったならば、かつての自分操業区域に入っていって違反船だという刻印を押されるということは、将来の漁民立場からいって非常に不利益であろうと考えるのでございますが、こういう点に対して、もし百六十五度の線に大型化された漁船が行った場合において、入会を認めておくというようなお考えがあるかどうか、この点をお伺いしておきたいと存じます。
  10. 塩見友之助

    塩見説明員 ただいまの百六十五度以東四十六度から四十八度の間の問題でございますけれども、これにつきましては、従来の調査では、まだ一ぱいも以南の船は入っていないというふうなかなり距離の離れた地域でございます。それでこの地域、ことに百六十五度以東なりますれば、これはやはり海の状況から申しますると、独航船と同じような装備を持っておりませんと、とにかく海難その他の危険が起り得るような地帯でございまするので、私の方としては、先の問題として、どういうふうにこの海域全体を調整していくかという問題とは切り離しまして、来年度の問題としては、乗組員の安全とかその他も考えますると、そういうようなところへ出ていくというふうなことは希望をいたさないわけでございます。
  11. 松田鐵藏

    松田(鐵)委員 そうすると四十六度五十分以東へは絶対入ってはいけないという議論なりますか。
  12. 塩見友之助

    塩見説明員 機械的に申し上げますれば、そういうことになります。
  13. 松田鐵藏

    松田(鐵)委員 水産庁考え方は、遭難事故やそういうことからの安全を保たせるために、また大きな北洋漁業産業という意味からいって、これは沿岸漁民は入ってはいけないという親心と、日本産業全体のことも考えてのことだろうと存じますが、もし水産庁考え方が正しいということになった場合においては——先ほど申し上げた百六十五度以西は、考慮されるというお話でありますが、この点は沿岸にも近い、距離も近い、また四十八度以南漁船が非常にここを渇望しておるものでありまして、この点に入会をさせて、緩和をしてやるという考え方を持たれると、漁民としても非常に喜ばれることと存じます。私は初めからここへ入っていけということでなしに、水産庁監督下において、ある時期を限度として入会をさせるような方途が講ぜられるならば、沿岸漁民も非常に喜ぶことであろうと存ずるのであります。  ただここに一つの問題がある。今までは四十八度以北、すなわち百六十五度以西の海区において行われた漁船が、違反船として摘発されておるのでございます。これは命が惜しいか、金がほしいかということになると、命よりも金ということで、行った、とってきた、つかまった、違反船だということになっているのが多いのでございまして、しかも日本漁民の中で、違反船だという極印を押された場合において、その漁民というものは非常に困ることになる、だろうと思うのであります。長官は将来のことを十分お考えになっておられるのであるし、この北洋漁業全体のことに対する大きな構想を持っておることでありましょうから、明年においては長官方針が御決定になることだろうと私は考えるのであります。しかし単にここのところは百五十度までといっても、今年限りになることだと思うのであります。しからばここにおいての漁民が、百六十度以東を捨てるという考え方から、百六十五度以西に対して、幾分の時期を限って、ゆとりを持たしてやっていただけるようになったならば、沿岸漁民は非常に喜ぶことと存ずるのでありますが、この点を御考慮願えれば、非常に幸いだと思うのであります。長官は、はっきりでなくてもけっこうでありますが、そういう点を御考慮願いたいと思いますが、どうでございましょうか。
  14. 塩見友之助

    塩見説明員 四十八度以南流し網漁業の問題については、かなり数量西カムの方へ入るというふうな形で余裕はつくと思いますが、気持の上では、母船式に比べると、やはり何といっても不利な漁業ですから、幾分自分たちにはゆとりのある態度をとってほしいという気持はよくわかるわけであります。今度の場合も、その母船位置等について、先ほど申し上げましたように、少し北に上げるというふうな形をとっておるところにも、そういうところが表示されておるわけですが、まだ今の問題につきましての最後的な打ち合せを了しておりませんので、お気持のほどはよくわかりますが、その点は考慮して検討いたします。ここで確定的な御返事はいたせない段階でありますので、御了承願いたいと思います。
  15. 松田鐵藏

    松田(鐵)委員 長官のそうした御意思がわかれば、もうこれ以上質問することがないので、私ども気持も、漁民気持も十分ごしんしゃくなされて、部内をまとめていただくようにお願い申し上げまして、私の質問を終ります。
  16. 川村善八郎

    川村(善)委員 ただいま松田委員質問長官がお答え願ったので、われわれはだいぶ安心して了承するのでございますけれども、ただ一点だけ関連的に質問を申し上げたいと思う。もちろん西カムの方に相当転換——四十七度以南といいますか、漁場は広くなったというようなゆとりができたという感じがしますけれどもサケマスは大体四十八度以北五十度くらいまでというのが一番厚く、ことにマスが厚くなるところでございます。これらにゆとりを持っておるというのですからぜひその実現をさせたいと思います。そこで問題は、三十トン以上五十トンの船が大体繰り上げられることになっておりますが、聞くところによりますと、同じ繰り上げになりましても、本年の繰り上げのトン数が大体七十トンだというと、それを五十トン持っておりますと二十トン補充しなければならぬのでございますが、そうでなく、その五割増しを補充するということが伝わっておるのであります。これが是か非かはっきり承わっておりませんので、この点一点お伺いしたいと思うのであります。  違反船に対する措置でございますが、三十年度はこの処置が非常におくれましたために、漁民が困り抜いてしまって、道庁のごときは道議会で議決をして、水産庁のとられた処置反対方向に行ったというのでゆゆしき問題が起きております。こうした問題も緩和していかなければなりませんが、いわゆる五割増し増トンをしなければほんとうに独航船としていけないかどうかという点、違反船に対する処置をいつごろどうとられますか、この点を明らかにしていただきたいと存ずるのであります。
  17. 塩見友之助

    塩見説明員 四十八度以南の船から独航船なりますやり方としましては、昨年はかなり重い条件をつけております。同じトン数を底びき網漁業から持ってくる。それは大体だれが考えてみましても少し重過ぎるではないかというふうなことで、われわれの方としましても十分検討したわけでございますが、五〇%の増というふうなことは、いろいろな角度から考えまして適当な線ではないか、こう考えておりますので、その線はくずしたくない、こう考えております。  それから違反船なんかに対しまする処理方針は従来通り考え方で、順序からいけばどうしてもあと回しになる。たくさんあるわけですから、その違反に対する処置を終りましたものは別でございますが、またその処置の済んでないようなものについては従来通りの扱いをしていきたい、そのほか個個の具体的な案件につきましては、水産庁だけの意見でなくして、やはり地方庁の方においてもいろいろな問題が起っておりますので、それらについては具体的に地方庁の方と相談して処理して参りたい。機械的になりやすい問題もございましょうから、そういう点は必ずしも実態がだれが見ても機械的だというふうな点については、ある程度弾力性地方庁として十分打ち合せして処置していきたい、かように考えております。
  18. 川村善八郎

    川村(善)委員 ただいま増トンの船の五〇%ということでございましたが、具体的にいうと先ほど言ったように、五十トンの船が七十トンになった場合に、二十トン補充すればいいものを、四十トン補充しなければならないというのか、それから七十トンの場合は二十トン補充すればできるのか、この点をもっと明らかにしていただきたいということと、さらに違反船の問題で、大臣許可のものもだいぶあるようでございますが、その繰り上げが、常識的にいうとこれはできないということになりますが、そういう違反船にもいろいろ種類がございましょう。承知の上の違反のものもあり、知らず知らずに区域外に入っていったという違反船もございましょう。いろいろケースがございましょうが、相当の隻数があるので、これらもやはり今から明らかにしておかないと、いざ水産庁から許可方針が発表されたときに、その問題も起きてこようと思いますので、明らかにしておきたいという意味から質問を申し上げているのですから、もっと具体的に御説明を願えれば幸いだと思います。
  19. 塩見友之助

    塩見説明員 今の以南流し網から独航船への繰り上りの問題ですけれども、これは前年の方針としましては、全部のトン数以東の底びき網から持ってくるようにという方針でございました。それとの均衡ももちろんございますが、その条件は少し重過ぎるのじゃないかというふうなことは考えられるわけであります。それで今度の場合も、増トンをするそのトン数だけを持ってきたのでは不十分で、独航船に繰り上り許可の五割を持ってくる、それのほかに増トン分を持ってくるというような形で処置して参りたい、こう考えます。ただしその時期等については、あまり切迫しておりますときにそういう処置をするのは、当業者については非常に不便もございましょうから、そういう点については現在まだ打ち合せ中でございます。その結論を待って、大臣の御決裁を得たい、こう考えております。  違反船については、違反をして、そしてすでに違反についての処罰の済んだものは別でございます。前年から前々年方向も、処罰の済んでいないものについては、順位としてはどうしてもおくれるわけでございます。今許可の申請が多いわけですから、そういう種類のものはどうしてもあと回しになるというふうな形をとらざるを得ないだろう、こう考えます。
  20. 川村善八郎

    川村(善)委員 もっと具体的にお伺いしますが、昭和三十年度までの繰り上り条件は非常に重かったから緩和していこう、従って二十トン増トンしなければ許可トン数の見合いがつかないという場合には十トン、すなわち二十トンのうちの五割の十トンをつけ加えればいいというふうなお考えだと解釈してよろしゅうございますか。  それからさらに違反船の問題については、それがいかなるケースでありましても全然認めないのではなくて、認める意思はあるけれども、いろいろ出願を検討してからその決定をするという御方針なのか、この点を最後にお伺いしておきます。
  21. 塩見友之助

    塩見説明員 私の答え方が少し不十分だったかもわかりませんけれども独航船へ繰り上る場合に、今まで四十トンのものが四十トンで独航船に繰り上る場合は、同じトン数だけ持ってこなければならないわけです。その部分を半分にしよう、二十トンにしよう。だから四十トンが四十トンの独航船になるのに、二十トンだけ持ってこなければならない、こういうことであって、増トンする部分はこれを半分にするとかどうとかいうことでなくて、増トン分増トン分として補充していこう、こういう考え方でございます。  それから違反船の問題につきましては、違反について処分の済んでおらないものについては、今のように要求が多い場合には、事実上はどうしてもあと回しになってくるだろうこう考えます。
  22. 村松久義

  23. 赤路友藏

    赤路委員 北洋母船式漁業許可の基本方針の点でちょっとお尋ねしたいのですが、三十一年度許可は系列化を重視しておるということですが、そういうことですか。
  24. 塩見友之助

    塩見説明員 系列化という言葉は、私が南米の方から帰る前にいろいろ論ぜられた言葉で、私もその経過を全部承知しておるというわけではございません、聞いたわけですけれども、帰って参りましてから、大臣にも、その意味というふうなもの、表現がはっきりした表現ではないわけですから、その点は伺ったわけですけれども、その意味としては、私が大臣に伺った限りにおいては、一つは、過去における許可において、実際はA社がほとんど全部内容をやっておるとかあるいは八割やっておるとか、六割やっておるとか、名義のB社の方は実際は母船式の運営にほとんど軽くしかタッチしていない、こういうふうな形態があるわけです。そういうふうな形を、A社としては、自分がたくさんの母船を集中している、あすこは多いから遠慮せいとかそういうふうなことを言われるのがいやさに、そういうふうな形態が、非常に数が多くなるというふうな形になりますると、許可自体が非常にはっきりしないで、明朗な線をとりにくいというふうなことで、そういうものは男らしく、自分の会社の名前で堂々と出てくるべきだという線で許可をやっていくのがいいのじゃないか。そういうふうな意味からは、今までの許可のもので、実際はA社の方が実権を握っておるというものは、実際はおれのものだ、おれの名前で計算してもらってかまわないのだ、このくらいの形で明朗にやるのがいいのじゃないかというふうな考え方一つ入っております。はっきりした方がいいのじゃないか、こういうのが一つでございます。  もう一つの問題は、そういうふうな形は、実際ははっきりさした方が、そういうものが——親子関係というか、兄弟というよりももっと片方が実権が強いような関係をはっきりさして、しっかりしり押しをさしてやるという態度をきめれば、それははっきりと独航船に対するいろいろな援助であるとか、それから母船の装備の改造であるとか、いざカン詰その他が荷もたれになって、それを始末する場合に、弱いところが投げ売りして、かえって海外からは値をくずして悪口を言われる、そうして輸出が停滞するというようなことなしに、はっきりできるじゃないか。それが非常にあいまいになっていると、かえって、いやあすこは実力がないから少し値をくずしても仕方がないといって値をくずすようになる。北洋漁業全体のマイナスになるようなことが起り得る。これはほとんどおれの系列なんだということになれば、そういうことは親の方がさせないで、援助していくというふうな形になるわけです。責任を持たせられる。責任が非常に不明確になってくるような形よりは、はっきりと堂々と責任を持てるという形になった方がいいじゃないかというふうな意味で、一挙に名前まで変えてしまうということは、今までの経緯からむずかしい場合がたくさんございますので、百かゼロかということにきめてしまうのはむずかしいことがございます。そういうふうな点で、少くも系列というようなことははっきりさして、見るものは見ていく、そうして独航船にも迷惑をかけないような態度をはっきりととっていくというふうな形をねらって、系列化というものを、既存の許可を大体前提として考えられておられたわけです。その意味において私は賛成でございます。ですから新しい許可については、できるだけそういうものが起らない方がいいわけですから、もう起らないという形で持っていきたいというふうに考えたわけでございます。
  25. 赤路友藏

    赤路委員 今長官説明でわかったのでありますが、その基本的な考え方といたしましては賛成でございます。その基本的な考え方は正しいと思います。そこで問題となりますのは、親子か兄弟かわかりませんが、その系列というものの分類が問題になると思う。たとえば一〇%めんどう見るとか八〇%めんどう見るとか、こういった系列の中の内容というものが問題になりやしないかと思うのです。たとえば一〇%見ておっても、八〇%見ておっても、あるいはこれは極端な場合でありますが一%しか見ていなくても、それを系列とするかどうかという点が一応問題になるかと思いますが、その点はどうでしょう。
  26. 塩見友之助

    塩見説明員 ただいまの御質問の点になりますと、会社、会社の関係によりまして非常に千差万様の形をとっております。あるところでは船の改修費を借りる場合に保証してもらったり、あるいは魚を売るときに、自分のところでは十分な力がないからそれを委託するとか、いろいろ複雑な関係をとっております。それで系列の中に入れと言われておる会社につきましても、その会社自体としては、できるならば独立して経営したい、実力をもって自立してやっていきたいという意欲はやはり相当あるわけでございます。それを無理やりに、お前はあれの子になれというふうなことは言えるものではなく、やはりそれが実力を持ってくれば自立してもけっこうなわけです。そういう意味から言えば、年々その関係は変り得るわけでございますから、そういうこまかい問題につきましては会社間の内部関係に譲るべきである。それで、おれは今年は系列の中に入れてもらって援助してもらおう、しかし翌年になれば自立してそれから離れたいというような形があるわけです。それが実力があって実際の関係もそうなってくれば、それは独立してもかまわないわけでございまして、そういうような関係につきましては会社間の話し合いにまかせるべきであって、政府の方でこうせいというふうなことをとやかく干渉すべき問題ではなかろうというふうな考え方に立っております。
  27. 赤路友藏

    赤路委員 今御答弁願った通り、現段階においては会社間のことであってこれが非常に複雑である、それだけにどの程度といった線を引くわけにもなかなかいかない、こういうことだと思うのです。従って、息のかかっておるものは一応それは系列である、こういう御趣旨だと私は思うわけです。従って本年はそうだが、来年はその息のかかっておるものが断ち切れさえすれば別のものとしてやっていきたい、そういうことが正しいやり方であるというふうに理解いたします。私がなぜこれを申し上げるかというと、戦後今日までの母船の操業形態の増加数を見ますと、系列というものが引かれますといささか不明朗な感じを受けるわけです。私が申しましたように、それは八〇%息がかかっておるか一%しかかかっていないかわからないのですから、こういう息のかかったものを抜いて、純然たる母船独自の立場においてやっておる数字を二十七年度から拾ってみますと、これに対してはやや疑問の点が出てくるわけです。この前北洋漁業の問題がここで議題になったときにも私が申し上げましたように、事実はどうかわからないが、昨年河野農林大臣が告訴を受けたということは事実なんです。今度はそういう不明朗な形を残してはならぬ。少くとも北洋漁業に関心を持つ者は、やはり一応不審を抱いておる。だから三十一年度の許可については、そういう不明朗なことのないように明確にしておかれた方がいいだろう。ほんとうにガラス張りの中で、どこから押してもこれが正しいという数字、あるいはそういう許可の姿が出ることが望ましい、こういうふうに私は申し上げた。調べてみますと、昭和二十七年、二十八年は試験操業なんです。このときには日水、日魯、大洋は各一船団ずつなんです。二十九年度になって大洋はやはり一船団、日魯が二船団、日水が一船団、函館、極洋が合せて一船団。三十年度は日魯が四船団、大洋が二船団、日水が二船団、大洋と函館が一船団、極洋が一船団、報国、宝幸が一船団、北海道公社と大洋冷凍が別にあります。こういう形で、今度の三十一年度の発表になったものを見てみますと、最終的な線では大洋冷凍が一、北海道公社が二、大洋漁業が三、日魯が六、日水が二、これは鮭鱒です。それから極洋が二、函館が一、報国が一、宝幸が一、十九船団になっておるわけです。そこで私が特に言いたいことは、河野農林大臣が就任されてからやたらに日魯がふえておるのです。河野さんはかつて日魯に関係があったということで疑惑を持たれておることは事実なんです。これは私一人じゃないと思う。少くとも北洋漁業に関心を持つ者はみな疑惑を持っておる。なぜ日魯だけがこうふえなければならぬか。かつて北洋における漁業は日魯がリードしておったということは認めなければならぬが、しかしそれに再び復帰させるということであってはならぬと思うのです。こういうような不明朗な形のものはなくなさなければいかぬと思う。こういうふうに日魯に船団がふえてくることには何か理由がなければならぬだろう、こういうような疑惑が、私だけでなしに一般にあるから、この際こうしたことをほんとうに明確にしておくことが、今後北洋における漁業の発展のためにも正しいやり方じゃないか、こういうことを私は考えるので、くどいようでしたが、一体系列とは何かということを特にお尋ねしたわけです。この点に対して長官はどういうふうにお考えなりますか。
  28. 塩見友之助

    塩見説明員 これは漁業全体の問題とも関連いたしますが、たとえば捕鯨業のようなものは、やはり過去にやっておったその経験と実力というものが、漁業ではやはり漁業種類が変れば経営能力に非常に差が出てきますから、それで過去にやっておったところだけがやっております。今極洋は南氷洋に出られないで北洋の捕鯨の方を共同でもって中心になってやっておるという形です。それから以西のトロール底びきにつきましても、やはり大洋、日水というふうに従来やっておったところが一ふえ方、減り方に幾らかの差はありますが、大体過去の実績というが経験を生かして比重としては非常に高いものを持っております。そこに日魯が——これはちょっとけたか違いますけれども、わずかな数で入ってきたというふうな形をとっております。北洋の場合においては、昔はカニの方は日水だけでやっておった。それから鮭鱒の方は沖とりもロ領の方も日魯だけがやっておったというふうな実績になっておりました。そういうふうなものを独占していくという方向はおもしろくないわけですから、これはやはり各社で競争でやっていってもらうというふうな形が適当だと思いまするが、捕鯨であるとか、以西千ロール底びきであるとかいうようなものも、やはり経験の高い実績のあるものについては非常に仕事の上で自信があります。またやらしてみますると、実際経営方法はうまいです。独航船に対する支払いや、販売、カン詰を作る作り方なんかについても、やはり一日あるいは数日の差は十分ついております。ブランドも片方の方はやはり市場に行って国内でも外国でも高く売れる、いろいろ差がつくような力の差はございます。そういうふうな関係から総合して考えれば、まあとにかく北洋鮭鱒では日魯が一日の長があるし、ほかの社に比較すると、それだけの伸びを示すというふうなことで、それは公平であろう、不公平だとは言えないと私ども考えておるのです。この点につきましてはどういう考えかというのを、これを担当しておりまする部長、課長、次長ももちろんですが、担当官一人々々を私は呼んでみました。ことしのは一体どういうところが、君たちの考え方で適当かというふうなところを——私の考えは全然抜きにして、入りたてのときにざっくばらんに聞いてみましたのですが、そうするとその判定がやはり四人とも全部一致しておりました。それで最後に五船団になるなら——それは運動をしてたかしてないかということは全然別ですが、極洋が入るのが順当であろうというふうなことまで全部一致しておりました。それで事務当局の意見として、これは会議でも何でもありません、一人々々聞いてみて大体そういう結論になった。それで私は捕鯨もトロールも北洋鮭鱒もカニも通じてみてこの処置は適当な処置であろう、こういうふうな考え方大臣にはっきりこれでやっていくという進言をしたわけでございます。
  29. 赤路友藏

    赤路委員 今の御説明、私も非常によくわかると思います。そこで長官に御希望申し上げておきたいことは、経営方針がうまい、あるいは支払いの方法等も確実である、操業についても経験を持っておる、これは非常に許可されるときの基準のウエートになると思いますが、それとともに労務管理がりっぱであるかどうかということも一応将来考えていかなければならない。今度の場合はそれがおそらく含まれていないだろうと思う。これはもう今年のことは申し上げません。将来やはり労務管理というものは重大なことだと思う。御承知通り日魯の労務管理がほんとうにあの大会社としてりっぱな形であるかどうか、先般日韓の問題で参考人を呼んだときにもお聞き願ったと思うのですが、業務でなくなった船員に対して一人当り五万円を切れる弔慰金しか出していない。もちろん船員保険がありますから、船員保険にかかっておると免責されます、従って一文も出さなくてもいいでしょう。しかしそうは簡単にあれだけの大会社の労務管理の方法としては言えないと思うのです。これでは決して労務管理がいいとは私は考えられません。従ってそういうこともやはり許可する場合の一つの大きなウエートとしてお考えを願いたい。以上で大体わかりました。  そこでお尋ねしたいのは、西カムに一挙に五船団をふやしておりますが、これの資源関係について御自信が持てますか。
  30. 塩見友之助

    塩見説明員 西カム漁業主体マスでございます、一部白も入りますが、大体主体マスでございます。マスにつきましての過去における漁獲等の統計を見ますれば、これはこの前御質問がございまして紅ザケが一番問題である、その通りでございますが、資源的には十分の余裕がございます。
  31. 赤路友藏

    赤路委員 資料をいただきましたが、この資料によりますと、戦前と戦後の漁獲量が載せられておるわけです。もちろん戦前におきます漁獲の全体としては、ロシヤ領における漁業、北千島漁業母船式漁業、こうあるので、単にこの母船式漁業と戦後の母船式漁業の漁獲の数字を比較するということはどうかと思いますが、この表によりますと、昭和十五年における独航船一ぱいの総水揚げは四万五千二百尾になっておるわけです。ところが三十年度の独航船一ぱいの水揚げは十六万一千に上っておるわけです。そういたしますと、昭和十五年当時からいたしますと三・五、六倍以上の漁獲をあげておるということになります。漁獲を上げることはけっこうです、これは日本のために大きなプラスになることですから、なんぼ上げようともけっこうでございますが、資源という問題を考えないでむやみやたらにとったのでは、みずから自殺行為をするのと同じになりはせぬか、こういうことがわれわれは非常に危惧されるわけです。この前も申し上げましたように、特に紅ザケについては乱獲のために資源が枯渇しておるというようなことをカナダなりあるいはアメリカ側の方からローマ会議でいわれておるわけです。あるいはソ連側もそういうようなこともいっておる。そういう段階にあれば、これらの点に対する注意が十分なされていいのじゃないか、ただその漁獲を上げるということだけであってはならぬのであって、少くとも漁獲を上げるとともに、そのことは、とれるということでなければならぬ、とるべき資源が保存されるということでなければならぬと私は考える。この点があまりにも軽視され、等閑に付されておるのじゃないか、この点はいかがでございましょう。
  32. 塩見友之助

    塩見説明員 ただいまの御指摘の点は、戦前の日本漁業者といたしましては非常に不注意であった点だと思います。戦後はかなり資源に対しての考え方が業者の頭の中にも順次しみ込んではきております。政府の方においても、戦前はその問題に対する関心は比較的少かった傾向があります。逐次しみ込んではきておりますけれども、国際的に考えた場合に、そういう考え方を、特に公的な立場でものを考えなければならない政府は、強くとるべきじゃないかと考えております。そういう点から、ただいまの具体的な点につきましては、問題がマスでございますので、資源的には余裕があると考えておるわけでございますが、御注意の点は、独航船の操業能力、使用反数等は、戦前に比べまして倍以上にふえているという形でございますから、十分今後とも注意して、漁獲高その他の統計等は、偽らずに正確なものを出すようにということをこの間の許可に当っても申しております。その数字が偽わりであった場合には非常に危険ですが、現在のところ今までの報告数字で見れば、これは危険がございません。
  33. 赤路友藏

    赤路委員 現在までの数字の実績からいって、今度の三十一年度の許可程度では危険がない、こういうふうにおっしゃっておられる。しかしながらこれは国際漁業でもありますし、単に日本立場からのみこれを律していったのではいけないのじゃないか、このことは長官も同感だと思う。そこで資源調査ということが重大になってくると思う。いただいた三十一年度の予算の要求書を見てみますと、この調査というものが非常に貧弱なのです。これを見るとオホーツク海で七十五トンが一隻、千島で七十五トンが三隻、全部用船ですが、鮭鱒に対して百五十トン三隻なんです。三隻で百五十トンですから一隻五十トンです。こういうような状態でほんとうにあの海域における資源の調査というものがやられるのかどうか。将来、今問題になりますように、日ソの漁業協定等も、当然結ばれなければなりますまいし、日米加の漁業条約というものもまた改訂期にくるなれば、当然改訂されなければならない。そういうような段階になったときに、まず何といっても日本立場を主張するものは資料だと思う。資料なしに勘で、あるいは今までの数字の累積だけで、私は主張するわけにはいかないと思います。そうなってくると、資料の調査ということが最も今後日本漁業を発展さす上においては重大な問題である。この重大なものに対する予算措置というものが、ほとんど、われわれが見て、これで一体調査ができるのかという程度の予算措置しかできていない。これをなお今日においても変更ができるとするなれば、いま少しこの重要な北洋漁業の資源調査ということに対しては力を入れていただきたい。変えられぬならば仕方がないが、少くともこれについては相当長官は自信をもって将来に対していただきたいと思いますいかがですか。
  34. 塩見友之助

    塩見説明員 御注意の点は、私もそういう点については、もう少し強化できればいいと存じます。ただこれは経過を聞いてみますると、やはり予算の単価でチャーター料をどうしても低く押えられがちなので、業界、民間の方でなかなか雇われにくいという点がございまして、ある程度頼み込んで出てもらうというくらいなところもあるようでございます。そういう点も障害になっておるようであります。それからこの調査につきましては、ただ政府の調査だけでなくて、あれだけの隻数が漁撈をやるわけでございますから、それは比較的精度は薄くても、集まれば相当大事な資料ですから、それを正確に出してもらうということ、及び母船側調査船、特に大会社の調査船については、そういう点で、単価の点その他の点についても政府ほどの困難はございませんし、相当な協力はどうせお互いのことでございますので、政府だけのでなくて——、ことに操業をやるとなりますと、当業者の船の方が装備その他の点について有利な場合がございますから、そういう点も本年度は協力を求めるつもりでおります。これはもう許可に当りましてそういうことは申しております。資源その他の調査については、大いに協力してもらいたい、先生たちにしても、自分たちも系列化の親の方になるというふうなところは、当然そういうふうなところに協力していいのだという考え方をとっております。親になれないようなところでも、自分も一人前に扱ってもらいたいから協力させろというふうな申し入れもあるくらいであります。そういう御注意の点は、今の予算だけの点で見ますと、確かに十分でないと私も考えておりますから、予算的にも、またそういう方法をもってしても、また当業者の報告も正確にしてもらうというふうな点からも、あらゆる面から詰めて、正確な資料を、外交交渉等において十分必要な資料を積みたい。御注意の点はよくわかりますので、そういう努力をいたしたいと思います。
  35. 赤路友藏

    赤路委員 今長官の御答弁の中に出ましたので、もう一つこの点について長官にお願いしておきますが、この各母船にはそれぞれ別に調査船というものが付属としてあるわけなんです。これは名前の示す通り調査船でなければならぬ。事実現在の母船についている調査船というものは、ほんとうに調査をやっているのかあるいは独航船と同じような操業をやっているのか、これすらも私は明確でないのでないかと思う。調査船としてつけておる限りにおいては、私はぜひ調査船としての使命を、この母船についておる調査船には果してもらいたいと思う。そのための水産庁の方の監督を十分にしていただきたい。とるだけとって、資源保護に対して何らの協力をしないというようなことでは、私はこの大きな会社の諸君も少しおかしいと思う。御承知通り、定置などでは、フカのために、金融公庫から金を借りて一億円程度のものをすでに今日まで出しておる。こういうような零細なものすらも、資源保護、資源維持のために借金をしてまで出しておる。北洋における大きな漁業をやっておるしこれは国際漁業だ、これをやっておる大きな会社が、資源保護のために、あるいは調査のために、あまり大して努力をしていないということではならぬと思いますので、このことは将来のこととして、長官に十分一つ御監視と御努力をお願い申し上げておきたい。これは希望であります。  そこでお尋ねしたいのは、三十一年度の母船につく独航船数は決定いたしましたか。
  36. 塩見友之助

    塩見説明員 これはお手元に配付してあると思いまするが、母船式鮭鱒及びカニ漁業許可方針というふうなところの別表の中に入っておりますが……。
  37. 赤路友藏

    赤路委員 はい、わかりました。
  38. 塩見友之助

    塩見説明員 前年との比較がこれではそのままわかりませんが、独航船としては前年に比べまして百六十六ぱいふえております。そのうち三十一ぱいはアリューシャンの方で、あと残りの百三十五はいがオホーツクの方になっております。
  39. 赤路友藏

    赤路委員 東カムの方ですか、アリューシャンの方……。アリューシャンの方は母船団の数がふえていないのですね。アリューシャンの方は母船数がふえないで、独航船数が三十一隻ふえているわけです。これはどういう意味ですか。
  40. 塩見友之助

    塩見説明員 これは前年度の許可のときに、いろいろ複雑な割当方等が行われたようでございます。その関係からして、母船の能力に比較しまして、収容隻数が非常に少な過ぎるというふうな関係が結果として生じております。そういうふうな形でございますと、どうしても母船の経費が、独航船との経費の区分の場合に、よけいかかり過ぎて、経済的にいうと、非常に不利な条件になっておる。母船に適正な独航船数が割り当てられれば、コストは相当低下できるにもかかわらず、その点が不工合になっておる。これは当然鮭鱒は国際市場でどんどん伸びてはいきますけれども、やはり価格の問題は農水産物全体が過剰気味の方向で、価格の点は相当な腹をきめていかないといけない問題ですが、そういうふうな点から考えまして、コスト低下ということを真剣にはかっていかなければならぬというふうなことを考えますと、母船の収容隻数であまりに少な過ぎるものは適正なところまで上げてやるということが必要である、こういう関係から、また海況の方もこの程度のものならばふやしても危険はないと感ぜられまするので、増加さしたわけであります。
  41. 赤路友藏

    赤路委員 各県割当の方はできておりませんか。
  42. 塩見友之助

    塩見説明員 これは昨日から、ただいまも継続してやっておるわけでございまするが、各県の部課長を呼びまして、協議をしておりまして、それが済みましてから大臣の決裁を得たいと思っておるわけであります。これをまだ終了しておりませんが、考え方の基準といたしましては、アリューシャンの方面は前年と同じで、過去の実績を大体中心にしまして、県別の割り振りを考えております。それからオホーツクの方につきましては、過去の実績を半分と、それから四十八度以南大臣許可船の比率というものを半分々々にとりまして、それで各県の方に割り振っておる。その原則につきましては、道府県の部課長全部が原則としては賛成であるというふうなことで、現在進行中でございます。
  43. 赤路友藏

    赤路委員 今の御答弁によりますと、独航船については従来の過去の実績を原則としてやるということになりますと、北海道と東北十一県ということにやはり限定されると思いますが、その通りでございますか。
  44. 塩見友之助

    塩見説明員 その通りでございます。但し底びき網整理計画の大体当初の計画が済んだようなところ、今度で大体済みそうなところについては、それいっぱいのところでとどめるという考え方に立っております。
  45. 赤路友藏

    赤路委員 それから過去の実績という問題が出るわけなんですが、たとえば東北十一県、これは非常に具体的になりますが、昨年度のもので見てみますと、茨城県なら茨城県で四隻割当があった。これは必ずしも実績のある人たちがやるということでないのではないか。県にまかせてしまっている、県の自由裁量になっている、こういうことじゃないですか。
  46. 塩見友之助

    塩見説明員 ただいま実績によってと言っているのは、三十一年度の割当ならば、三十年度までの許可の積算数でございます。三十年度に持っていた許可数、それに比例しているということでございます。
  47. 赤路友藏

    赤路委員 そうすると当初独航船割当が北海道及び東北十一県ということになったことは、戦前において北洋に出漁し、北洋漁業に依存しておったものはこれらの道県であるという建前の上に立つで、まず北洋における漁業はこれらの人たちをもって優先とする、こういうことであったと思うわけなんです。それはそれで正しいと思うのですが、いつまでもそういう形であったのではならぬだろうし、これはやはり日本全体の漁業とのからみ合せにおいて北洋漁業というものを考えていかなければならぬ。だからいずれかの機会にはそういうような特権的なものがなくならなければならぬのではないか。こういうふうに私は考えるのですが、その点についてはどういうお考えをお持ちですか。
  48. 塩見友之助

    塩見説明員 当初の年次におきましては戦前の実績というふうなことを非常に重く見ましたし、それからもう一つは、沿岸の底びき網漁業を整理しまして、その船が持っていけますから、さらに沿岸漁業の方にも好影響を与えよう、こういうふうな形でスタートを切ったわけです。その後底びき網の整理というふうなものを関係各県から出させまして、これは私やっておらないことですけれども、それを一応きっぱり進めよう、こういう進め方をしております。まだそれが済んでおらないという形でございますので、それで今のところはそういうふうな形で進めております。方向としましては、大体そういうふうな懸案のものが処理できれば、ことに四十八度以南流し網についても合理的な調整ができれば、これは当然おっしゃる方向で、もっと弾力性を持った考え方をとるべき時期が当然くるのではないか、こう思います。
  49. 赤路友藏

    赤路委員 四十八度以南流し網の問題ですが、大体長官の今までの御答弁を聞いておりまして、原則として私はいいと思うのです。ただ三十一年度の操業に当ってこの母船側の方の漁区の拡大ですね。ただいま松田君からも指摘されましたが、これが突如として行われた。先ほども私御質問申し上げたように、東カムの方は母船の船団がふえていない。にもかかわらず三十一隻独航船がふえた。これの事情は御説明になった通りなんです。しかし現地における流し網業者としては、おそらくそう簡単に受け取れないのではないか、こういうことを私は杞憂するわけなんです。よく言われる言葉なんですが、何か資本漁業を擁護する、そういう形でこの問題は受け取られやすい。三十一隻ふやしたためにそれだけ漁区を拡大したのではなかろうか、これが一点あると思う。それから長官は御存じないと思いますが、三十年度のこの操業に当って、調査船が四十八度三十分を下って下へおりてきたということは事実なんです。そのとき問題になったことはお聞きだと思う。その当時から、四十八度の流し網の諸君は、これは独航船側かあるいは母船側が漁区を拡大するための工作だということは言っておるわけなんです。そういうようなうわさがあるところへ、今日突如として漁区の拡大が発表されたということになれば、これは当時の事情を知っておる者としては、なるほどそういうような工作の上に立ってやったのではなかろうかという疑問を持つのは当然だ。われわれですらそういう疑問を持つのですから、従って当面その漁業に携わっておる流し網業者の諸君としてはなおさらそういう感が深いと思う。そこの点はよほど明確にしておかなければいかぬと思います。先ほどの松田委員質問に対するお答えの中には、紅ザケの魚道が発見された。だから紅ザケ処理の技術上の問題としてこれは母船側を下げたのだ、こういう話を聞いたわけですが、それだけではちょっと納得しかねると思うのですが、いかがでしょうか。
  50. 塩見友之助

    塩見説明員 主たる漁業は紅ザケでございますが、先ほど申しましたように、南から上るわけです。あれはほんとうを言えば、いい漁場があれば南まで下げた方が、コストの方も下りますし、収容力もふえるわけでございます。来年は南の方もそこまで調査したいと思っております。その点からいうと、紅ザケの処理からいえば、当然カン詰というような形でいくべき筋でございます。それからこの区域は現在独航船は全然出ておりませんけれども、それは距離相当離れております。ほんとうを言えば、独航船区域になっておるけれども鮭鱒流し網がいくのならば、その鮭鱒流し網に対しても乗組員の保護の観点からいって、当然独航船と同じように、この区域に行くものは、これだけの装備とこれだけのトン数、速力がなければならぬということを規定するのが、まともな親切なやり方であったわけです。過去においてはそれをやってないものですから、遭難やその他の危険が起る、こういう形になっております。ここらのところは、全体としていずれ調整しなければならぬ、こう考えておるわけであります。母船の方に非常に有利なあれを出したというふうな気持流し網漁船の方が持つのはよくわかります。私の方としても、そういうふうな意味ではいろいろな処置の場合に、できるだけそういう気持をくんで調整するのが適当であろう。母船側に対しては、もちろんきびしくその点については言ってあります。
  51. 赤路友藏

    赤路委員 それで長官お話は大体よくわかりました。問題は当面の問題なんですよ。ことしの操業の問題なんです。松田君が言いましたように、三角地帯への流し網業者の方の拡大ということは、これはここ二、三年来、去年、おととしあたりから、拡大せい拡大せいとやかましく言ってきておるわけです。その当時私は、この陳情を受けた場合でも、常にそれは筋が通らぬというので、業者の諸君の陳情は突っぱねてきておるわけです。まず四十八度以南流し網業者自体がいかにして安全操業をするか、どうして現在のような状態から進展を見せるか、まずみずからが四十八度以南におけるこの構造をより進展するように整備計画を持ってくるべきではないか、われわれは五カ年計画を持ってこれをこういうふうにするのだ、そういうふうなみずからの意欲の上に立って、初めてその行政上に欠陥があるなればそれをつくことができる。ところがみずからはそういう意欲を持たないで、ただ単に、いや漁区を拡大せよということでは筋が通らぬというので、私は今日までけってきたわけです。そこで、今の漁区拡大はわかりますが、当面三十一年度の操業については何らかの措置考えてやらなければいけないのじゃなかろうか。もちろん、御答弁がありましたからこれ以上は申し上げませんが、三角地帯の拡大についてもなおいろいろと問題点があるから、十分時間をかけて検討したい、こうおっしゃるわけです。私は言葉じりをつかまえるわけではございませんが、三角地帯での操業を時間をかけて検討するというのならば、この漁区拡大も当然時間をかけて検討されてしかるべきではないか。それを単に調査船だけが出て、ここに魚道があったからというのでおやりになるということでは、これは何か片手落ちの感をおそらく受けるだろうと私は思うわけなんです。その点を一つ十分御考慮おきを願いたいと思う。  もう一つは、紅ザケをより経済効果の上るように処理するということ、これは当然だと思います。その場合、必ずしも母船に限らないのじゃないか。運搬船ということを考える。そうすると一つ考え方が出てくるのじゃないかと思いますが、その点はいかがでしょう。
  52. 塩見友之助

    塩見説明員 紅ザケの処理としましてはやはりカン詰でございます。冷凍して持ってきて、こっちの陸上のカン詰工場でやるという方法はありまするけれども、やはりその場でカン詰にするのが、最もコストが安いし、合理的な方法だと思います。
  53. 村松久義

    村松委員長 これにて休憩いたしまして、再開はおおむね本会議終了後にいたします。    午後一時二分休憩      ————◇—————    午後四時七分開議
  54. 村松久義

    村松委員長 これより会議を開きます。  この機会において、先般来調査を継続いたして参りました農林水産関係公共事業費に関する件について決議をいたしたいと存じます。委員長の手元において作成したる案文がございますので、これを朗読いたします。    昭和三十年度農林水産関係公共事業費に関する件   政府は、昭和三十年度農林水産関係公共事業費につき、当該公共事業が当初の計画を達成する上に必要な事業費を確保するため、いかなる名目によるにかかわらず客観的に是認される不要額以上の節約を行うべきでない。  右決議する。   昭和三十年十二月十四日       衆議院農林水産委員会  以上の案文を本委員会の決議とするに御異議ございませんか。   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  55. 村松久義

    村松委員長 御異議なしと認めまして、さように決定いたします。  この際政府の発言がありますからこれを許します。大石君。
  56. 大石武一

    ○大石(武)政府委員 ただいま本委員会においてりっぱな決議を賜わりまして恐縮いたした次第であります。その御趣旨に沿いまして、一生懸命に善処、努力いたす決意でございます。(拍手)
  57. 村松久義

    村松委員長 本日はこれにて散会をいたしまして、明日政府より提案されると予想されておりまする競馬法の一部改正法律案の趣旨弁明を聞くため全員の協議会を開催いたしたいと存じます。  本日はこれにて散会し、次会は公報をもって御通報申し上げます。    午後四時十一分散会