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春日委員 東條
銀行局長にお
伺いをいたしたい。
一つの問題は、
中小企業等協同組合法に基いて商工協同組合が共済火災を行なっているのであります。しかるところ、これらの共済火災が行なっている物件に対する質権設定の問題について、この六月ごろでありましょうか、
銀行局長の通達がこれを否定的に取り扱い、しかもその
銀行局長通達に基いて、地方財務局長から全国の
金融機関に対して、この共済火災の行なっている質権設定については、これを慎重に取扱えという通達が行われておりますが、この問題についてお
伺いをいたします。
これを要約いたしますと、火災共済給付金請求権の担保力については、免許を受けた保険業者の給付請求権に比して、
一般的に
相当の危険が存在して好ましくないと思量されるので、慎重に取り扱う
よう重ねて連絡する、こういうことになっております。私非常に不思議に思うのは、少くとも
中小企業者がその困難なる経営を切り抜けていくためには、いろいろと行財政の各般を通じて考慮が払われなければならないのであって、それは
政府として十分慎重に、かつ好意的に取り扱わなければならぬ問題だと
考えておるのであります。今日この協同組合法に基いて、全国各地において火災保険協同組合というものが結成されまして、それぞれ相互共済の立場において損害保険の業務を行なっております。これはどういうことになってきたかと申しますると、現在火災保険の料率がはなはだ高い、あまりに高きに失するので手が届かない。それで今日火災保険の普及率が何%になっておりましょうか、私はおそらく二〇%を幾らもこえてはいないと思う。国民の大多数は、火災保険料率が高いので、八〇%近いものはほとんど無保険のまま、一たんその危険を発生いたしました場合においては自力で再建することすらできない
ような、いわば野放しの状態に置かれていると思うのであります。これはどういうことでこんな結果になってきたかと申しますると、独占禁止法という法律がありながら、火災保険取締りに関する規則とか、あるいは料金算定に関する法律とかいろいろなものが作られて、現行保険会社の保険料率というものがほとんど法律によって定められているので、法律によって定められた料率を下って契約を行うという
ようなことがあったり何かする
ような場合には懲役に処するという
ようなひどい法律が作られて、その結果、現在火災保険会社というものが膨大な利潤を占めていることは天下周知の
事柄であります。今日十幾つの火災保険会社がわずか十カ年間に蓄積いたしました膨大利潤は、すでに六百数十億をこえるといわれておるのであります。ことほどさ
ように火災保険会社の社内留保の蓄積も膨大なものであり、利潤もまた膨大なものであるけれ
ども、その法律に基いて料金がちっとも下げられない。あるいは一社が必要に基いて下げ
ようとしても下げることができない
ようなめちゃくちゃな仕組みになっておるのでございまして、従ってそういうばかげた高い料金によって火災保険をかけることのできない
中小企業者たちは、みずからこの協同組合を結成して、自分たちの納得のできる、しかも採算のとれる料率によってこの共済火災の協同組合事業を行なっておるわけであります。この協同組合事業は北海道において、愛知県において、福島県、京都、大阪においてという
ような工合に、地方自治団体の財政上の裏づけ等を得ておりまして、しこうして健全に発達をしておるのであります。北海道においては、その組合においてもし一その契約金を払うことができない
ような場合においては、五千万円を限度として地方公共団体が
予算外の義務負担において保険事業を行なっておるのでありまして、愛知県のごときは三千万円、その他においても三千万、二千万、一千万という
ような工合に、少くとも地方自治団体は、その地方における
中小企業者が現行火災保険料率では高くてかけられないので、万一火災が起きたときに自力で再建することができないというその危険な状態を救済するために、そういう
ような
予算外の義務負担を行なって、そういう組合行為を助長育成しておるのであります。こういう
ような現
段階において、銀行局からこういう否定的な通達、すなわち
一般保険業者の給付請求権に比して危険が存在しておると思われるから、従って好ましくないから、こんなものは質権設定の対象にしてはいけないという
ような通達を出すということは、私ははなはだもってけしからねと思う。なるほどこういう
ような協同組合行為が火災保険会社の
利益をあるいは蚕食する面はないとはしないけれ
ども、こういう
ような共済行為によって
中小企業者が救われておる現状は大きなものがあるのであります。たとえば北海道におきましては、先年稚内に大火があったけれ
ども、数千万円にわたりますその質権設定に対しては、一銭も遅滞なくこれを皆済いたしておりますし、あるいは愛知県におきましては、すでに発足以来四カ年の歴史をけみしておるが、その契約した損害保険金の不払いという
ようなことはいまだかってない。すなわち質権を設定され、その契約も完全に履行されてきて、今もって
金融機関に対しても、その契約当事者に対しても何らの損害を与えたことはない、迷惑を与えたことはない。にもかかわらずこういう
ような通達を出されることは、
一つには
中小企業組合運動に対する
政府の妨害であり、
一つには火災保険業者の営利行為に対する銀行局の格別な配慮に基くものではないかとすら私
どもには
考えられるのであります。なるほど中には悪いものもあるでありましょう。しかしながら、その保険共済協同組合の設定した質権そのものが権威あるものであるかどうかというその選択は、当然当該
金融機関がみずからの責任と権威において行なった
事柄であって、
銀行局長が、過去の
実績もよく、信用の高いものすらひっくるめて、こういう火災共済の行なっておる質権設定については、これを好ましくないという
ような一方的断定をもってこういう通達を行われるということは、私は
中小企業に対する
政府の全般的な施策の立場から
考えて、はなはだ当を失しておるものだと
考えるのであります。これに対する東條
銀行局長の御見解をお
伺いいたしたいと思うのであります。特に、慎重に取り扱われたいということが言われておるが、この慎重に取り扱われたいということと、その好ましくないと思量したその根拠、こういうものを具体的に、かつ明確に御
答弁を願いたいと思うのであります。