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1955-12-10 第23回国会 衆議院 外務委員会 第7号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和三十年十二月十日(土曜日)    午前十時三十三分開議  出席委員    委員長 前尾繁三郎君    理事 石坂  繁君 理事 北澤 直吉君    理事 須磨彌吉郎君 理事 福永 一臣君    理事 山本 利壽君 理事 穗積 七郎君    理事 松本 七郎君       伊東 隆治君    植原悦二郎君       菊池 義郎君    高岡 大輔君       並木 芳雄君    福田 篤泰君       高津 正道君    森島 守人君       岡田 春夫君  出席国務大臣         外 務 大 臣 重光  葵君  出席政府委員         外務政務次官  森下 國雄君         外務事務官         (条約局長)  下田 武三君         外務事務官         (国際協力局         長)      河崎 一郎君  委員外出席者         文部事務官         (社会教育局         長)      内藤誉三郎君         専  門  員 佐藤 敏人君     ————————————— 本日の会議に付した案件  万国著作権条約批准について承認を求めるの  件(条約第一号)  万国著作権条約条件附批准、受諾又は加入  に関する同条約の第三附属議定書批准につい  て承認を求めるの件(条約第三号)  無国籍者及び亡命者著作物に対する万国著作  権条約適用に関する同条約の第一附属議定書  の批准について承認を求めるの件(条約第四  号)  ある種の国際機関著作物に対する万国著作権  条約適用に関する同条約の第二附属議定書の  批准について承認を求めるの件(条約第五号)  原子力の非軍事的利用に関する協力のための日  本国政府アメリカ合衆国政府との間の協定の  締結について承認を求めるの件(条約第二号)  国際情勢等に関する件     —————————————
  2. 前尾繁三郎

    ○前尾委員長 これより会議を開きます。  万国著作権条約批准について承認を求めるの件、外三件及び原子力の非軍事的利用に関する協力のための日本国政府アメリカ合衆国政府との間の協定締結について承認を求めるの件を議題といたします。質疑を許します。  穗積七郎君。
  3. 穗積七郎

    穗積委員 きょうは著作権に関する議定書の問題についてのみ質問をいたしたいと思います。  第一にお尋ねいたしますのは、この議定書昭和二十八年一月三日に署名したとなっておりますが、これが今日まで国会承認を求めることが延びて参りましたのはどういうわけなのですか。しかもこの提案理由の中に、来年の四月二十八日にアメリカとの協定が切れるから、手続上間に合うように今国会中に承認をしてもらいたいというようなことも言っておるわけであります。ずいぶん前に署名したものをぎりぎりになって御提出になりました政府の何か正当な理由があろうと思いますが、どういう理由によってこういうふうに遷延されたのか、その間のいきさつを少し明らかにしてもらいたい。
  4. 下田武三

    下田政府委員 ごもっともな御質問でございますが、実はこの万国著作権条約批准問題は、日米間の著作権関係をいかに処理するかという問題と密接な関係があったのでございます。御承知のように日本明治年代からベルヌ条約という条約に入っておりまして、このベルヌ条約はの本のみならずヨーロッパ諸国が入りまして、一つの同盟を結成いたしておったのであります。しかるにアメリカその他の米州諸国ベルヌ条約当事国とならないで、そのうち外にあったわけであります。それでその不便を除くために、ベルヌ条約当事国と、これに参加しないアメリカその他の米州諸国との間の橋渡しをしようというのがこの万国条約の目的でございます。でございますから、この橋渡し的な条約によって日米関係を処理するという道も一つございますが、そのほかにそれなら当の相手のアメリカ日本だけで二国間の条約を作って関係を処理しだらいいではないかという意見も当然起るわけであります。そこで日米間の二国間条約でありましたならば、いろいろこまかいことまで規定されて、日米間に関することだけは少くとも円満にできるのではないか、そういう見地から実は政府当局におきましても著作権関係国内の御意見を尊重いたしまして、もう実は三年越しに日米間の二国間条約を交渉いたしたのであります。ところがその間におきまして、アメリカ著作権に関する根本方針転換を生じたのでございます。アメリカは、申すまでもなく、ヨーロッパドイツ人イギリス人イタリア人の移民の子孫が国をなした国でございます。でございますから、日本と同様に当初は文化輸入国でありました。でございますから外国書物をなるべく保護を薄くする。ということは、アメリカでどんどん勝手に外国書物を導入して、自由にこれを米国民に読ませるということが利益であったわけです。そこでベルヌ条約に入りませんのも実はその理由であったわけであります。そこでアメリカといたしましては、四十何カ国という国との間に二国間の条約を従来締結して参りました。そうしていろいろな国とお互いのギヴ・アンド・テイクでこまかい取りきめをしておったのであります。ところが今世紀になりましてから、アメリカ文化輸入国どころではなく、輸出国になったのでありまして、今までのように、外国人著作物の米国内での保護をどうするかということよりも、米国人著作物外国においていかにして保護されるかということが重大な関心事になって参りました。それでアメリカはこの形勢にかんがみまして、当然米国著作権政策というものは早く変ってしかるべきであったのでありますが、やはりアメリカ国内関係方面利害関係もありまして、やっと昨年になりまして従来の四十数ヵ国との間に結んでおった二国間条約方式というものを根本的に改めまして、今度は万国条約一本で対外関係を処理するという政策の大転換をいたしたのであります。そこへもって参りまして、日本からは二国間条約——アメリカとしては大統領が議会に送りました文書の中におきまして、米国は明確に政策転換を行なったのであるということを申しておるやさきに日本から二国間でやろうということを申したのであります。これはアメリカとしましては、せっかく国内の困難を排除して万国条約一本でいくという方式を採用したばかりのときに、日本だけは例外として二国間でやるということのできないことは当然でございます。それで最後まで執拗に交渉いたしておりましたが、先月アメリカダレス国務長官から井口大使あて公文書をもちまして最終的に米国としてはどうしても日米間の二国間条約で処理することは不可能であるということを申して参りました。そこでやむなくそれではやはりこの万国条約で処理しようということに政府方針を決定いたしました。もっとも日本昭和二十八年一月三日に署名いたしたのでありますが、この条約が発効いたしましたのは本年の九月十九日でございまして、この条約自体が発効したのはつい最近でございますから、日本は、日米関係なしといたしましても、最近になってこの条約に加入するという態度をきめたのは決しておそいわけではないのであります。現にスイスドイツイタリアフランスーごく最近フランス署名いたしましたが、イギリスは目下その準備中であります。大体主要国歩調は、ちょうどあたかも日本批准しようというときの前後に足並みをそろえておりまして、国際的の観点から申しましても、ちょうど日本がただいま批准しようという行き方は世界の主要国、大国の足並とそろっておるわけであります。そういう事情でございますので、決してただいま批准しようということは、じんぜん政府がぐずぐずしておったというためにおくれた次第ではないのでございます。その点御了承願いたいと思います。
  5. 穗積七郎

    穗積委員 御説明の範囲につきましては一応わかりましたが、それではあと審議参考のためにお尋ねいたします。ベルヌ条約に現在加盟している主要国名国数、それから万国条約にすでに署名及び批准を終えた国の名前と数をちょっと知らしてもらいたいと思います。
  6. 下田武三

    下田政府委員 ベルヌ条約当事国数は後ほど申し上げますが、この万国条約の作成の際に署名をいたしました国は日本ドイツアメリカフランスイタリア英国等四十ヵ国が署名いたしたのでありますが、批准手続を済ませましてこの条約の発効を見ております国は現在のところ十六ヵ国でございます。これはアメリカドイツフランス等ヨーロッパ米州諸国を含んでおりますが、このほかにもつい最近に英国スイス等批准しようという措置をとっておるという格好を持っておるのでございます。でございますから、日本批准いたしますと、大体四十ヵ国の署名田中半分の十九ヵ国が年内にこの条約当事国になると存ぜられます。
  7. 穗積七郎

    穗積委員 今の御説明万国条約ですか。
  8. 下田武三

    下田政府委員 ただいま申し上げましたのは万国条約であります。それからベルヌ条約の方は現在のところ四十三ヵ国が当事国になっております。このベルヌ条約当事国は、日本を初めといたしましてイギリスフランスイタリア、オランダ、ポーランド、スウェーデン、チェコスロバキア、 ユーゴスラビア等の国で四十三ヵ国でございます。
  9. 穗積七郎

    穗積委員 万国条約署名した国が四十ヵ国、それから批准を近く完了すると予定されておる国が十九ヵ国1あと二十一ヵ国の見通はどうでございますか。
  10. 下田武三

    下田政府委員 政治的条約と違いまして、著作権でございますとか工業所有権でございますとかいう技術的な事項に関する国際条約は、それぞれ各国国内法制が実に千差万別でありまして、条約ができてから全部が当事国になるのはなかなか年数がかかります。十年、十五年とたってから批准する国もあるわけでございまして、この条約なんかはむしろ早い方ではなかろうか、わずか二、三年の間に半数批准してしまうというのはむしろ早いことではないか。と申しますのも、これもユネスコが先ほど申し上げましたベルヌ条約当事国とそのうち外に入っておる米州諸国橋渡しを何とかしょうと思いまして、ユネスコ主催でこの条約ができたという点が、比較的早くこの条約半数の国について発効せしめた有力な動因と相なっておると思うのであります。それで日本としましてはユネスコ主催の当初の会合におきまして、最初から実は十二ヵ国の理事国に指名されているわけであります。日本がこれを批准するとしないとにかかわらず、初めから第一回の理事国十二ヵ国のいすを日本のためにあけておるのでありまして、この点からしましても日本は積極的に万国条約の中に飛び込んでいきまして、そうしてこの条約実施運営の段階において、アジアにおける最大の発言者としての地位を獲得してリードする責任がむしろあるのではないか、そういう工合に考えております。
  11. 穗積七郎

    穗積委員 私のお尋ねしたのは条約批准が長くかかるかかからぬかという見通しを聞いている。二十一九国についてどういう見通しですか。
  12. 下田武三

    下田政府委員 その見通しはただいまのところ立ちかねます。
  13. 穗積七郎

    穗積委員 それでは次にお尋ねしますが、そうしますと、ベルヌ条約に加盟して、同時に万国条約に新たに加盟するというダブる国があり得ると思うのでず。その場合と、それからそうでなくていずれか一方にのみ加盟する国とあるわけですが、日本両方へ加盟した場合には、そのダブつた方はそれはそれでいいけれども両方にダブらないいずれか一方に加盟している国との関係はどういう関係になるのか、その間の取り扱いといいますか、両国間の関係に対して混乱を生じないかどうか、その点をちょっと説明をしていただきたい。
  14. 下田武三

    下田政府委員 仰せ通りベルヌ条約加盟国と、ベルヌ条約加盟国でありながら万国条約加盟国に同時になる国と、ベルヌ条約には関係なくて万国条約だけの当事国になる国との立場というものは全く違って参るわけであります。そこでこの条約におきましても第十七条という規定がございますが、これがその間の関係を処理することに相なっております。また第十七条に関して附属文書がございますが、一口に申しますと、日本でありますとか、イギリスフランスイタリアドイツカナダ等は、これは昔からベルヌ条約当事国でありながら、今度はこの万国条約当事国にもなるわけでございまして、昔からベルヌ条約当事国であっ上国間同士では依然としてベルヌ条約がプリヴェールするということになります。でありますから、それらの国以外のアメリカを初めといたしまして米州諸国ベルヌ条約の当駅国との間には、今度はユネスコのもとにできました新しい万国条約がプリヴェールする、そういう関係に相なるわけであります。
  15. 穗積七郎

    穗積委員 この議定書につきましては政府が十分検討された上で、こういう問題は思想とか主義とかいうことと別個の問題で、客観的に一般の国民著作権を擁護するということですから、主義、主張、党派にとらわれないで政府は合理的な協定を結ばれたと実は信じておったわけです。ところが局長教え子であると思うが、私も教え子である山田三良先生初め信用すべき学者が、この協定に対していろいろな疑問を投げかけられ、不満を訴えられて、質問かつ要望書のような形のもの出しておるわけであります。これを局長はごらんになりましたかどうか、まずそれから聞いておきます。
  16. 下田武三

    下田政府委員 それはよく拝見しておりますし、またこの問題を処理する過程におきまして、過去二、三年の間何回となく山田先生にお目にかかって、その御意見は拝聴いたしております。
  17. 穗積七郎

    穗積委員 それに対してあなたの方は違った意見を発表されて、この陳情に対する合理的な答えはすでにされておられると思うが、それでもなおかっこの方々がまだ納得しておらぬということなんです。私も実はこういうことば専門外のことですが、この陳情書を拝見いたしますと、なかなかもっともなことも書いてあるのです。ですからこれも一つの問題の提起にはなっていると思うのです。この意見が正しいか正しくないかは別として、問題点を提起していることについては、私は大いに蒙を開いていただいたと思っております。そういう意味でこの質問は重要でありますし、のみならず単なる個人的利益じゃなくて、著作者全般立場に立って、その考えが正しい、正しくないは別として、そういう考えで問題を提起されておるわけだから、これについて一つ逐次説明をしてもらって、どうせ通す以上は、こういう疑義があとに残らないようにすることが、特に著作者関係としては政府やり方ないしは国会審議としては良心的じゃないかと思うのです。逐次一つ説明していただきたいと思います。もし必要があれば、私がこれにかわって質問してもいいが、それも省略いたしますから、これについて逐次一つ解説してもらいたいのです。
  18. 下田武三

    下田政府委員 これにつきましては、内容が実は文部省・主管の事項でございますので、後ほど社会教育局長から御説明があると思いますが、全般的な私ども気持といたしましては、山田先生赤木先生勝本先生のお気持は、明治初年の日本意見を代表しておられるような気がするのです。と申しますのは、先ほど申しましたように、アメリカも十九世紀までは文化輸入国であった。日本明治年代は明らかに文化輸入国でございました。そこで外国著作著作者に対して翻訳料も払わないで勝手に翻訳するようなことがあっても、多少そういう無秩序なことをいたしまして本、日本国内外書翻訳が安く読めればいいという点から、外国著作権者に対する翻訳をできるだけ容易ならしめる、勝手に自由に翻訳できるという立場が一番いいというお考えでございます。ところが日本国内におきまして、六大新聞を初め有力雑誌が参加いたしております団体、また日本著作権者団体日本の音楽家の団体日本の美術家の団体、写真、放送その他の現実著作権を使って仕事をしておられる団体の御意見というものは、これはもう早く万国条約批准すべきであるという御意見なのです。と申しますのは、山田先生その他理論的にものをお考えになりまして、こうしたら日本に有利であろうと御推察になっておるのでありますが、現実著作権について仕事をしておられる、そのやり方を間違えば血が出るという現実的な仕事をしておられる新聞社雑誌社その他の御意見は、実はこの御推察になっておられる先生方の御意見とは、まさに正反対なのであります。と申しますのは、たとえば外国著作物岩波書店で翻訳物を出すというときには、ちゃんと自分の方で苦心して、よい翻訳書ができたと思って岩波が出されるわけですが、そうして現地著作者岩波の契約が尊重される。ほかからあいまいな著作物がどんどんと刊行されるということでは、岩波は立っていかないわけです。そういう取引の秩序の点から申しましても、良心的にいち早くこういう外国著作物があるから翻訳を出そうという企画をされて、いい翻訳家を見つけて、いい装丁で、いい印刷で翻訳したものを出すというところに御苦心があると思うのですが、そういう著作物出したらすぐ半年後に今度はインチキの人が勝手に下手な訳で、悪い紙で、半分の値段で翻訳書出したということになりますと、日本出版界は大混乱を来たすのであります。ですから、そういうように翻訳が自由勝手に安くできるということが主眼ではなくて、日本文化水準を高めていくためには、秩序ある外国著作翻訳することが必要である。同時に翻訳者地位が安心して確保されるものでなければならない。日々著作権仕事をしておられる民間団体の御意見ば、あげて万国条約賛成であられる。山田先生明治二十九年に東大を出られて、そのころは日本語の著作はなく、外国原書で勉強をやっておられた。だから原書が読めるからいいのですが……。(発言する者あり)そこで文部省も御苦心になったのですが、文部大臣の御諮問に対して本、結局お配りしましたような答申が出ておりますけれども、その裏には圧倒的に万国条約賛成であるという民間新聞雑誌その他の団体の支持があったわけです。
  19. 穗積七郎

    穗積委員 今の基本的な考えについては私も賛成なのです。よくわかるのですが、私が特に局長に答弁をわずらわして納得のいくような審議をやり、納得のいくような条約批准をしてもらいたいと言っておることは、今言われましたような基本的な文化政策もの考え方ではないのです。たとえば第一にあげておられますのは、万国条約主要条項について解釈が確立していない。従って条約解釈を統一するような意味で、その法律の形式でもって、そういうもの国内法をちゃんとして受け入れておいて、しかる後にこの条約を通すべきではないかということです。これは今のおっしゃった基本的な条約そのもの方式規定しておるのではなくて、手続というか準備が不足だということだから、それを先にやったらどうかというだけのことであって、根本的な対立意見ではないのです。たとえば原子力協定につきましても、まず受け入れ国内の基本的な考え方手続方法等をちゃんとしておいて、しかる後に外国協定を結んで受け入れ考えたらどうか。こういうことは何につきましても論理的に根拠のあることだと思うのです。ですから第一このことについてお尋ねいたします。条約は結んでみたが、それに関する解釈混乱をするために困りはしないか。だから逆にいえばそういう基本的な解釈を統一し、国内法を整備した後においてこれを通すということがものの順序ではないかと思うが、それに対する外務省当局のお考えはどういう態度で臨んでおられるのか。さっき言ったように、あなたの方で二十八年に、しかも一月に署名されてから後今日まで場合によれば通るかしらないということであるならば、その間に十分国内解釈は統一する可能性があったと思うのです。しかもそれは今お出しになるにしても、同時にお出しになってもけっこうなのです。そういうお考えはないかどうか、その間のお考えを少し総括的に明らかにしておいていただきたいと思います。
  20. 下田武三

    下田政府委員 いかなる条約でもできた当初からその包含する規定解釈について、当事国確定解釈が統一されてあるなんというものではございませんが、このような著作権に関する条約のような場合には特にしかりでございます。長年にわたって条約実施をしております間に、いろいろな解釈上の紛議が生じまして、その条約上の会議でもって相談して、だんだん確定解釈が生まれるものでございますけれども、この著作権条約は、実は各国法制が非常にばらばらな点、また利害関係のばらばらな点からいたしまして、ユネスコ主催会議におきまして、実は妥協妥協を重ねてできました妥協産物でございます。そこで一貫して筋が通った解釈は初めからできっこないのであります。そこでこの条約に反対なさる方面では、こんなに解釈のわからない条約はないと仰せになるのでありますが、それは妥協産物であるから、筋道が一貫して通らないものもあるのはやむを得ないのであります。そこで私どもはこの万国条約にそういうことで突き進むのでは困るのでありまして、少くもアメリカとの間には解釈を統一しようという試みを事前にいたしまして、現在この条約について非常に大きな問題、たとえば遡及効があるかないかというような問題につきましては、実はアメリカ側解釈の検討をいたしまして、主要点についてことごとく日米間に解釈を一にしておるのであります。そこで来年の二月になりますか、まだ期日は確定いたしませんが、第一回の理事国会議がありまして、日米歩調をそろえてこの条約解釈を統一することにリードしていこうという機運すら今できておるのであります。そこで解釈の点につきましては、今後条約実施運営の面につきまして不明な点ははっきりさせていきたいというのが、政府当局考えでございます。  第二に、この条約だけではっきりしない点は、一つ立法したらどうかという御意見につきましては、これは日本著作権法の二十八条だったと思いますが、条約に特別の定めあるときはそれに従うという趣旨の規定があるのであります。でございますから、条約できめてしまいましたら、あらためて国内法を作らなくて毛、著作権法特例に関する二十八条の規定から、条約法律の効果を持ち得るわけであります。ですから立法をする義務は全然ないわけであります。ただ条約規定は原則だけを掲げまして、はなはだばく然たるものでございますから、日本国内関係者に対する親切の意味から、もう少し条約内容をはっきり国内法として国民に指示するという直味から、立法をしてもむろんかまわないわけであります。しかし著作権法条約に定めあるときはそれによるという特例があるのでありますから、実際に当っては、その特例条約をそのまま国内適用するという立場で解決し得るわけであります。しかしこの点につきましては文部省におきましても研究されておりまして、あるいは現在直ちに立法するよりも、いろいろ会議を開きまして、経験を経てからやられた方がいいかもしれませんが、とにかく必要があれば国内立法もされるつもりで文部省もおられるのでありますから、その点は将来の問題として残しておかれまして、一向差しつかえないというように考えます。
  21. 穗積七郎

    穗積委員 われわれの心配に対してだんだん態度を明らかにしていただいて感謝いたしますが、日米間で解釈が統一したと言われておられるのは、何か文書でもできておりますか。もしそれがあるなら、そういうものは当然初めから審議のための参考資料としてお出しになるべきだと思うが、どういうわけでお出しにならないか。そういう手続がしてあったら、初めからいろいろな疑点はなくて済んだわけですが、それをお尋ねいたします。
  22. 下田武三

    下田政府委員 これは係官のディスカッションのミニッツと申しますか、そういうものを実は作っております。ただこれは国家間の約束とかなんとかいうものではございませんで、ディスカッションをしていることで、お前の方はこう解釈しているのか、自分もそうだったということで解釈の一致点をミニッツに残したものがございます。これはお出しできると思います。
  23. 穗積七郎

    穗積委員 それから今のあとの二十八条の特例をもって条約解釈国内法に云々ということですが、これはやはり混乱したり、今までいろいろ事情を伺いますと、特に終戦後著作権の問題については、いろいろ混乱したようなケースがあるようですから、これはやはり国内法としてちゃんと整備してお出しになった方が、私は親切なやり方ではないかと思いますが、重ねてその点は要望しながら質問いたしますが、お考えはいかがですか。
  24. 内藤誉三郎

    ○内藤説明員 国内法の整備につきましては、目下検討しております。この点の問題点は、第一に保護期間が従来日本の場合には死後三十年でございますが、これは相互主義ができますので、相互主義によって、アメリカの場合は発行後二十八年になっておりますから、発行後二十八年で切れますから打ち切ることができますので、その相互主義の問題とか、それからマルCの点が必要があれば、マルCの記号の問題、あるいは法定許諾制の問題、七年たてば一定の料金を払って法定許諾ができますので、翻訳は自由になりますので、そういうような規定、あるいは現在の法制が一応来年の四月二十七日で切れますので、この法律はその後から適用するということにいたします。すなわち遡及効はないという、先ほど条約局長のお話がございましたが、遡及効がなくて自然に乗り移れるように、つまり現在発行しておるものはもとの条約でいく、来年の四月二十八日以後に発行したもの万国条約でいく、こういうような乗り移りの規定等がございますので、そういう必要な規定については、できるだけお話のように明確にしておきたいと思いますので、準備を進めております。
  25. 穗積七郎

    穗積委員 その点了解いたしました。それからその次にベルヌ条約のもとにおいては、翻訳権を留保しており、その地位万国条約翻訳権の規定と調和していないという意見書が出ておりますが、これほどういう点で調和しないのかよく理解できないのですが、その間の事情を説明していただきたいと思います。
  26. 内藤誉三郎

    ○内藤説明員 ベルヌ条約の場合には、外国著作物翻訳する場合に、十年たてば翻訳権が消滅するから、ただで自由に翻訳ができる、こういう規定になっております。これを留保している国は、日本とエジプトとトルコの三国であります。そこで今度の万国条約の場合に、翻訳権に対しては別に制限しておりませんから、従ってアメリカとの関係においては発行後二十八年になるわけであります。ただこの場合に今度の条約では法定許諾制というものがありまして、七年だてば一定の安い料金を払ってだれで毛翻訳が自由にできる、こういう規定になっております。ですからこの点が委員会で一番問題になり、山田先生赤木先生あたりが非常に熱望されたことなのです。というのは、特にああいう学識経験者の方は、翻訳を利用する方の消費者の立場に立っていらっしゃる点もあったわけであります。そこで十年間も翻訳されないものがどのくらいあるか、大部分は翻訳されておるのであります。これは戦時中の統計ですから正確なものとは申せませんけれども、約一割くらいが十年たっても翻訳されない。しかし−交通機関が発達して、日進月歩の文明時代でございますから、今後ますますそういうものは少くなるだろう。しかしこれは絶無にはならないでしょう。と申しますのは、ある小説が当った場合に、前の小説にさかのぼって全集物を出すような場合もありますので、若干は残ると思います。ですからこの十年の留保というのは、私どもとしてはあればほしいところなのです。しかしながらこの点が致命傷になるかということでもないと思います。と申しますのは、一つは、今まででしたら十年内に契約した翻訳物は著者が死んでから三十年日本保護するというのを、今度の条約では発行後二十八年に切れるという利点がございますので、この点をあわせ考えてみると日本利益だ。さらに今後日本文化輸出国立場をとらなければならぬ。ことにアメリカには日本に駐留した軍隊も相当ありますので、日本著作物が相当アメリカに利用されるし、今後東南アジアにおいても利用される。そういう文化輸出国立場考えますと、その十年の留保にぞうこだわる必要もないのじゃなかろうか。あの先生方意見でも十年たてばいいだろうという意見はある。ですからこの条約が実際に動き出すのは、来年の四月二十八日以後に発行されて、それから十年たって初めてこの問題が起きるわけですから、この点はお話のように調和は確かにないのです。ないのですけれども米州諸国との間に、先ほど条約局長もおっしゃったようにマルCという簡単な記号で保護の道が開かれているという点も考えてみますと、この際万国条約批准した方がいいのじゃなかろうか、こういう結論に到達したわけであります。
  27. 穗積七郎

    穗積委員 そうするとこの問題は理論的にはちょっと矛盾するわけですね。差しさわりができるわけですね。実害は少いという解釈ですが、結論を言えば、実害は少いからそれほど心配しなくてもいいということなのですか。
  28. 内藤誉三郎

    ○内藤説明員 それと、もう一つは、利益の方は、今言った翻訳権が今までの場合は十年内に翻訳した場合は、日本で著者の死後三十年保護しなければならない。ですから十年たってしまったものはただになるという利益はあるけれども、今度の条約では、発行後二十八年しか保護しないというので、保護期間が短かくなっておりますから、この点の利益考えれば実害は少いだろうと思います。
  29. 穗積七郎

    穗積委員 そうすると、条約局長にちょっとお尋ねいたしますが、今の実害の少いという実情はわかりましたが、法理上言いますとどうなりますか。日本ベルヌ条約当事国として留保しておいて、一方万国条約等に加盟した場合のその取扱いは、法理的に矛盾は生じませんか。
  30. 下田武三

    下田政府委員 世界に二つの著作権に関する体系があります以上は、どうしてもいたし方ないわけでありまして、先ほど申し上げましたように日本は、ベルヌ条約当事国に対しましては、日本の留保付のベルヌ条約適用する、米州諸国との間だけに新しい条約適用する、そういうどうしても二本建にならざるを得ないわけであります。実はこの二本建をさらに将来世界中一本で規律できるような条約を作ろうというのがユネスコの理想でございますが、ユネスコ会議で一挙に理想まで到達し得ませんで、過渡的な措置として、ひとまずアメリカその他の米州諸国をひっくるんだ橋渡し条約を作ろうということに相なりまして、できましたのがこの条約でございます。従いまして初めから世界を一本建で規律しようという考えであったわけであります。
  31. 穗積七郎

    穗積委員 そうすると、私がお尋ねしたところを集約して問題として最後まで残るのは、やはり協定解釈の問題だと思うのです。また話がさっきに戻るわけですが、その点については今研究中であるという文部省の御答弁でございました。これはアメリカとの間で話し合った解釈に従って日本解釈を打ち立ててもよろしいが、本来から言えば、協定解釈というものは、やはり日本が自主的になすべきものであって、何もアメリカにオブライズされてそういう解釈をしたということでなくてもいいと思うのです。日本解釈は、アメリカもすでに了解しておることをやられたことについては、そういうふうに解釈すれば妥当な話し合いだったと思う。そこでやはり日本の独自の解釈を明確にする必要があるのじゃないか。特に関係当事者にとっては実益を伴った協定でもございますし、今までのいろいろな国際紛争のケースを見ましても、著作権問題というのは非常にややこしい関係になって、お互い対立した解釈でもって譲らないというケースもときどき出てくるわけですから、日本国内においては、まず著作者全般のためにも、学界のためにも、やはり独自の解釈を明確にした国内法というものが整備されることが必要じゃないかと思う。これは私は本来から言えば、これと同時に審議すべきものだと性質上思いますが、せっかく政府がそういう御準備中であるとすれば、それを強く要望いたしまして、そして今研究中であって大体その方向に向っておるということですが、私は確約を迫るわけじゃございませんが、国内法整備に関する時間的な見通し等について、最後にお尋ねいたしておきたいと思います。
  32. 内藤誉三郎

    ○内藤説明員 次の通常国会には提案いたしまして、来年の四月二十八日までにはぜひ通過を願えるように、なるべく早期に出すつもりであります。
  33. 穗積七郎

    穗積委員 私の質問はこれで終ります。
  34. 前尾繁三郎

    ○前尾委員長 ほかに御質疑はありませんか。  これにて暫時休憩いたします。    午前十一時十九分休憩      ————◇—————    午後三時二十六分開議
  35. 前尾繁三郎

    ○前尾委員長 それでは休憩前に引き続き会議を開きます。  万国著作権条約批准について承認を求めるの件外三件及び原子力の非軍事的利用に関する協力のための日本国政府アメリカ合衆国政府との間の協定締結について承認を求めるの件及び国際情勢等に関する件について質疑を許します。  松本七郎君。
  36. 松本七郎

    ○松本(七)委員 かねがね一般情勢について大臣にもう少し詳しくお伺いしたいことがたまっておりますので、この機会にあまり長くかげずに、重点的に少しお伺いしておきたいと思います。  まず最初に国際連合の加盟問題であります。最近の情報によりますと、相当有望視されておるようでございますが、ごく最近の情勢に基いてどのような段階にございますでしょうか、見込み十分ありとお考えでございましょうか。
  37. 重光葵

    ○重光国務大臣 最近の情勢は、いわゆる十八カ国一括加盟の案を審議するための特別政治委員会が七日に開かれまして、五十二対二、棄権五の結果をもって承認されたわけであります。その委員会に関する限り通過しました。その結果加盟問題は今日、つまり十日に開かれる安保理事会で審議を見るわけです。どういう国を加入国として資格があるかということをきめるのが安保理事会の本件に対する仕事でございます。今日と泊しますわな十日ですが、向うは時差がありますから、その結果はおそらく明日にはわかり得ると思います。この安保理事会でこの問題がどう取り扱われるかということが峠になります。この安保理事会で常任理事国の一国でもこの案に対して拒否権を使う、またこの案が成立しないような方向に持っていくということになれば、これに含まれておる日本の加入ということも推進を受けないわけで、困難になります。そこでこの理事会においていかなる国も拒否権を使わないように、またここで成立を見るようにしむけなければなりません。それが外交機関をあげての努力目標でございました。そこで問題は、十八ヵ国のうちにある外蒙に対して拒否権を使うか使わないかにしぼってきたわけでございます6十八ヵ国一括加入案が承認されるならば、ソ連も日本とまだ国交を回復していないけれども日本の加入をも認めて差しつか、えないという態度になっておるのであります。それからまた米国側は、せっかく十八ヵ国の案が成立するならば——自分らはこれまで一括加入ということには絶対に反対をしてきておった、国際連合加入の問題は、各国の資格を別々に審査するように国際連合の規約の趣旨がなっておる、だから各個の場合について、加盟の資格があるかないかということを審査すべきであって、十八ヵ国一括してやるというようなことは考えてもいなかったのだ。特に共産国の四、五ヵ国、そのうちには外蒙古も入っております。外蒙古などはとうていその資格がない、こういうことで突っぱねて来ておったのでありますが、結局は、日本等を入れるためには、この案を成立せしめる方がいいという考え方になったのでございます。そこで米国ばそのために非常に努力をいたしまして、まとめ役になっております。特に拒否権を使わんとしておる中国国民政府に対しては、米国は拒否権を使わないように強く要請をいたしておりました。三回も要請をしておりまして、いずれも大統領自身の名前をもってやっておるようであります。最後の要請も一両日前にいたしておるようでございます。日本といたしましても、今加入を外蒙古のために阻害されるようなことがあっては非常に残念でありますから−国民政府の言い前それ自身は非常に理由のある言い前と思います。外蒙古の加入に対して国民政府が拒否権を使うという理由は了解し得ないことはございません。しかしそれがために日本の加入をも妨げられるということになれば——国際連合の強化ということから見ても、また東アの平和安全の方面から見ても、日本の加入を認めるようにしむげなければなりませんから、そういう大局を論じて国民政府が拒否権を使わないようにと強い要請を国民政府にしてきたのでございます。その結果、十日に開かれます理事会においてどういうことになりますか、またなりましたか、その結果はまだわかりませんけれども、もしこの理事会において無事に国際連合加盟の問題が解決せられるならば、次には国際連合総会が十五日に開かれる予定に今報告を受けております。これはその総会において多数決できめますから、もう問題なく日本の加盟ということも実現し得るのでございます。要するに理事会の結果が一番重要である現在の状況でございます。さような次第でございます。
  38. 松本七郎

    ○松本(七)委員 国民政府に拒否権の発動をさせないようにアメリカが今働きかけておるというお話でしたが、日本独自として国連大使、あるいは日本政府が台湾政府日本代表部を通じて話し合うとか、そういうことは全然されておらないでしょうか。
  39. 重光葵

    ○重光国務大臣 今申し上げた通りにそれを強くやっておるのでございます。この国連加入の問題は、国会の総意として常に要請されておった問題でございます。従いまして、外交機関をあげて目的達成に今全力をいたしておる状況でございます。それは、まず第一がニューヨークにおける国連駐剳の日本大使並びに大使館で、これは国連内部に六十ヵ国の代表がおるのでありますから、ここに働きかけております。それからこの問題について難色を示した国々の本国政府に全部日本の要請を強くしてきておるのでありまして、それもおそらく十ヵ国以上に上るでございましょう。それからカナダが十八ヵ国一括加入案を提出したということは、強くこれも日本の要請にこたえたものでございまして、カナダ政府の好意を非常に感謝しておるわけでございます。アメリカが従来の方針を変えてこの案の実質上の成立をあっせんしておるということは、これは特に日本に対する関係を重要視したからであるのでありまして、外交機関はむろんアメリカとも密接な連絡をとって、その希望を実現することに努めたのであります。国民政府に対しては、台湾において、東京において、これらの国々の政府の所在地と東京、それと国際連合所在地、この三ヵ所が中心になっていつも外交機関は動いているわけであります。さようなわけで、全力を尽しておることを御承認願いたいと思います。
  40. 松本七郎

    ○松本(七)委員 すみやかに加盟ができるように希望するものでございますが、加盟した暁にいろいろ問題が起るでしょうが、あらかじめ伺っておきたいのは、国連憲章第七十八条と平和条約第三条との関係でございます。憲章第七十八条には「国際連合加盟国の間の関係は、主権平等の原則の尊重を基礎とするから、信託統治制度は、加盟国となった地域には適用しない。」こういう規定がある。ところがこの平和条約第三条によりますと、「日本国は、北緯二十九度以南の南西諸島(琉球諸島及び大東諸島を含む。)」云々、それから小笠原諸島その他を「合衆国を唯一の施政権者とする信託統治制度の下におくこととする国際連合に対する合衆国のいかなる提案にも同意する。」こういう規定があるわけですが、この両者の間に、平和条約の三条と国連憲章七十八条、国際連合の加盟国になった場合には信託統治制度は適用しないという規定と矛盾するように思うのですが、どういろふうなものでしょうか。
  41. 重光葵

    ○重光国務大臣 条約局長説明を依頼します。
  42. 下田武三

    下田政府委員 御指摘の点につきましては、こういうように解釈いたしております。国連憲章の七十八条にいっておりますのは、たとえばアフリカのスーダンならスーダンという地域がございます。そのスーダンという地域が信託統治地域になっておる。しかるに一方スーダンそのものが国連に加盟資格ありと認められて安保理事会、総会の決定を経まして加盟国になってしまった、そういう場合にはもう国連の加盟国になったという事実と、引き続き一方では信託統治に服しておるという事実とは両立し得ないわけでございます。信託統治は戦略的と普通の信託統治と両方ございますけれども、いずれにしてもこれは後進国に対する制度でございますから、国連憲章の標準に照らしましてすでに加盟の資格あり、つまり意思と能力ということがございますが、その加盟国としての独立国の能力があると認められる、そういう場合に初めて加盟国になり得るわけでありまして、一方後進国を対象とする信託統治といろ場合と両立し得ないわけでございますから、その場合のことを規定いたしましたのが第七十八条でございます。従いまして平和条約の第三条のように、旧日本の南洋委任統治、ああいうところを部分的に信託統治地域としてやった場合は七十八条の問題とは別の問題である、そういうように考えております。
  43. 松本七郎

    ○松本(七)委員 その解釈の問題は条文その他、まだ少し問題があると思いますが、こまかくなりますからまた大臣以外の別の機会に譲りたいと思います。  続いて大臣にお伺いいたしますが、この前の委員会のときに、私の質問を大臣勘違いして答弁されておったようでしたが、穗積委員からも御質問したように、鳩山総理大臣と外相の間に、日ソ交渉についての考え方に違いがあるではないかということをわれわれ前から問題にしているわけなのです。ところがそれはもうないとこの前言われた。ところがこの前本会議における鳩山総理大臣の答弁を聞いておりますと、私もここで申しましたように、鳩山総理は、以前には自分は戦争終結宣言でやろう、一時は日本の方から戦争終結宣言をしょうなんて言われたこともあるくらいなのです。そういうふうなことを言われながら、だんだん変ってきておることは間違いないと思う。この前も本会議で鳩山さんの答弁によりますと、ソビエト側が平和条約方式出してきたから、それ以来自分はこの平和条約方式に変ったのだ、こういうことを言われておるわけです。そうすると、重光外務大臣は総理と考えの違いはないのだ、最初から平和条約方式でやるのだということで一致しておると言われるけれども、鳩山さんの答弁を聞いておれば、最初明らかに考え方に違いがあったと思う。その事実をどう解釈されるか。それからもしあったとすれば、いかようにしてだんだん接近してきたか、その点についての御説明を願いたい。
  44. 重光葵

    ○重光国務大臣 鳩山総理が総理になられる前に、戦争終結宣言をやったらよかろうと言われたということを聞きますが、鳩山総理の説明を伺ってみると、総理になられた以後においてそういう考えを持っておったということではないと思う。こういうように私どもは了解して参りました。というのは、日ソ交渉を始めるときには十分検討いたしまして、ただ言葉の上で打ち合せたのみならず、わが方が提案するときには、ちゃんとした根本方針を訓令の形においてこしらえました。そういうところから完全に同じ考えをもって訓令ができ、この交渉を始めてきたわけでございます。そうしてその交渉の都度報告をし、かつまた協議をして参ってきておるのでございますから、私は意見の差があるということを感じたことはございません。ただ表現上の差があったかどうかしりませんけれども新聞紙上等において、特に選挙中いろいろ差のあることが報ぜられました。それは知っておりますけれども、よく協議をしてみますと、差があるのではなくて、少しも方針に異なっているものはなく、十分主張すべきところを主張して平和条約をこしらえようということであって、その平和条約をこしらえるという案は、初めから日本はそういう方針でやってきておるのでございまして、そういう方針をきめたのは政府がきめ、鳩山総理がみずからこれに参画しているわけでありまして相違はない、こうはつきり申し上げるわけでございます。
  45. 松本七郎

    ○松本(七)委員 植原委員から、国際連合の問題について関連質問があるそうですから、もう一つ伺ってすぐそちらに譲ります。外務大臣自身は意見の食い違いはないと言われても、総理大臣の口からいろいろ発表されることによって、日本国内に対する影響ばかりではなしに、国外に対してもそういう考え方が響いてくると思いますが、同じ早期妥結とばく然と言われても、その早期妥結の内容ということについては、国民は果してどれだけはっきり政府の意図を理解しているかということを私は最近疑ってきた。それはこの間からの論議で明らかになったように、外務大臣は、早期、妥結の内容は、平和条約方式でもって懸案をできるだけ解決したものでやりたいと言われるわけです。ところが鳩山さんの今までの総理大臣になる前からの発言その他を通じての印象では、早期妥結ということは、懸案の解決が長引く場合には、一応戦争終結なりあるいは大使の交換、引き揚げの問題の解決、その程度のことでもとにかく一段落つけて妥結しよう、こういうふうに相当の国民は理解しておるわけです。もしそうだとすれば、外務大臣のような考え方をもって推し進めるならば、・国民を欺瞞することになると思う。だから早期妥結の内容は、すでに早期妥結という言葉自体おかしいと思う。どのくらいの期間をもって早期というかということになれば常識問題だと思います。三ヵ月も四ヵ月もたって依然早期妥結と言い得るかどうか問題だと思います。そういう点をもう少しはっきりと責任者から国民の前に明らかにしておいていただかないと、政府の責任というものがぼやけてくるだろうと思うのです。そういう意味で、鳩山さんば、ソビエト側が平和条約方式出したから、自分もそれ以来平和条約方式でいくことになったのだという答弁でございましたが、今度会談が再開された場合、ソビエト側がもし平和条約方式を改めて、社会党の言っておるような暫定協定方式でもやろうというような場合について、政府はどういう態度に出られるつもりか。これはただ行ってみなければならぬ、それ一点張りで、それに対する考えは何らここに明らかにしていただくことはできないものかどうか。
  46. 重光葵

    ○重光国務大臣 こういう問題について、内外にわたってあいまいな印象を与えることはよくない、こういう点は私も当然考えております。その通りに考えておりますが、それならば早期解決という意味は、今討議をしてまだまとまらない案件をそのままにして、そして国交回復の暫定協定だけをこしらえる社会党の説明されるようなふうに行くのだ、こう今日言うのは少し早過ぎもしますし、今時期じゃないと思います。西独の方式をそのままとるということは言えません。これはいかに御不満であっても、わが正当と主張するところはこれを実現する、こういうところで交渉を進めていくと申し上げる以上に、今早まって、これが決裂するとかあるいはまたすべて妥協するのだ、そのうちたな上げをするのだ、そういうようなことは、今私は日本側として責任者の言明をすべきものではない、こう考えております。あくまで方針の通りに主張して、それを実現したいということで邁進いたしだい、こう考えております。
  47. 植原悦二郎

    ○植原委員 関連して。人が少いから出てこいと呼び出されて、質問するつもりもなかったのですけれども、国連の問題が問題になれば、もう少し国民にはっきりさせておいた方がいいと思うので、あえて質問することを御承知を願いたいのであります。外蒙古の問題でありますが、これが今の国連の一番大きな問題になっておるが、一体これは従来はシナの領土で、現在はソ連の衛星的国家というよりは衛星的領土ぐらいのものでなかろうかと思うのです。その点でやはり国民政府がこれを承認することに、いろいろ煮え切らないような態度でおるのではなかろうかと思う。これはまだほんとうの世界の地図の上に独立の医家として認あられておるよりは、むしろソ連の衛星領土というような形のものじゃなかろうかと思いますが、これに対する御見解はどうでしょうか。
  48. 重光葵

    ○重光国務大臣 実質はそうだろうと思います。
  49. 植原悦二郎

    ○植原委員 そこで次に私のお尋ねしたいことは、今まで国連加盟について私の寡聞であるためかどうか知りませんけれども、国連加盟の問題のときには、一国か二国くらいがせいぜい加盟を採決された。今度のように十八ヵ国も一括して加盟の承認を求めようとすることは、ほとんど例がないことだと思います。ないばかりでなく、私が少少これに対して考慮をしなければならないということは、カナダはこの数年間、どちらかといえば、中国も承認した方がいいというようなことを、はっきり私は申したとは申さないが、カナダの世論は大体そういうふうな傾向になってきたのではないかということで、今度の十八ヵ国が一括して承認された。そのうちに五つのソ連の方に近い共産主義の国がある。十三が自由国家である。こういうようなことを考えまするときに、かなりカナダ政府がこれを提案するには深慮遠謀がしからしめたところだと思う。こういう点も、実はある点は言ったがいいか、言わないがいいかしれないけれども、こういう点はある程度国民に理解せしめておくことが必要じゃないかと思う。  またもう一つの問題は、日本といたしましては、ほとんど社会党の方でも、御熱心に日本の国連加盟を賛成なさっておる。国連加盟をいたしますれば、これに対するところのオブリゲーションが伴う。そのオブリゲーションとして一番大きなものは、インターナショナル・ポリス・パワーに日本は必要である場合には加わらなければならない。こういう問題が起ってくることを考えなければならぬ。一国が加盟の国を侵すような行為があった場合には、国連はこれを共同の力で防衛しなければならない。そういうような場合に、もし東南アジアにでもそういうことが起ったとかりにする。現にインドとポルトガルの問題が小さいけれども起っておりますが、これがあえて国際間までに私は及ぼすとは思わないが、そういうような場合が起ったときには、日本もそれに対して、もし要求されるならば、自由国家としてこれの防衛に当る責任を持たなければならぬ。その責任を持つに対しては、日本の現状においては私は十分の用意ができておらぬと思うが、政府としてはそれらのことを腹づもりにして、国連加盟はけっこうなことだけれども、これに伴うところの国際上の義務を果さなければならない。その用意は容易でないというようなことを、この場合に国民にある程度認識せしめておくことが必要ではなかろうかと思いますから、あえてこの質問をすることを御承知を願いたい。
  50. 重光葵

    ○重光国務大臣 さような点について、国民を啓発するという必要は私は認めます。その通りだろうと思います。ただ、今そういうような国連加盟について、さような義務があるから加盟してはいかぬという御議論ではないようでございます。だからそれに対してはお答えの必要はないのでございますが、今まで国会がたびたび意思表示をされました国連規約そのもの承認して、むろんそれに対する非常な日本地位を認めさして、つまり権利も義務も負わなければなりません。当然のこととして加入を決議されたのであります。私はその通りに一つ一生懸命やっておるわけであります。  そこで、それじゃ今お話の、現実的に警察兵力提供の義務があるのかというと、それはまだそこまでは参りません。お話の通り日本はまだそれどころじゃございません。そこでかりにいろいろな事態が起ったとしても、これは日本で、いわば自主的に処理し得る点が多かろう、こう考えます。国際連合規約に対する権利義務は当然負わなければなりません。そこの問題ほお話の通りのような状態だと思います。カナダが十八ヵ国一括案を提出したというのは、中共まで見抜いた深謀遠慮に出でておるのか、その点は私は今日まで見当をつける材料がございません。ございませんが、十八ヵ国一括案−1初めは十七ヵ国になっていたのですが、一括案を考え日本もぜひこの中に入れなければならぬといって、入れて、そうしてカナダ外務大臣はモスクワ訪問のときにソ連にも異存のないように説得をしたというような事実がございます。ございますから、日本としては、この十八ヵ国一括加盟の案が成立することが、日本の国際連合加入という目的を達する道になってきたのでございますから、これはいろいろなことはむろんございましょうが、これが成立することによって、日本の加盟ができることを今強く希望し、またその方向に向って努力をしてきたわけでございます。
  51. 植原悦二郎

    ○植原委員 私は日本が国連に加盟することに非常に熱心な論者であるし、またきょうの空気は社会党の方もそれを支持してくれて、私はありがたいと思っておるような状態でありますが、それに伴う義務を果すべく用意することの政府の責任もかなり重いと私は思いますがゆえに、上手にそこを国民を指導していくように御心配になってはどうかということであります。  それからカナダの問題につきましては、英国は中共を承認しておる。カナダも反対しておったが、近年は非常に英国に沿うて承認した方がいいというような傾きになっておる。米国も初めて十八ヵ国一括加盟の問題が起ったときには、米国においても相当反対の空気があったようだが、政府のかじのとり方で、今日は米国は、これを承認するのみならず、国民政府までもこれを誘導しようとしておるということを考えますときに、私が最初にお尋ねした外蒙の問題——現在国民政府はシナから離れている、しかも国連に地歩を持つ、この地歩を維持する上から言いましても、この際外蒙を承認する方が賢明な策だと思うような、そういうことが私の頭に浮んでくるのでありますから、あえてこの問題は外務大臣に私深くお尋ねしようと思いませんけれども、十八ヵ国一括加盟の問題、これをカナダがしたこと、カナダと英国との関係、またカナダと最近の中華民国との感情上の問題、この問題が起ってから  アメリカ態度において相当変ったことを考えアメリカが熱心に国連の国民政府がこれを承認するよう、にしておるというようなことを考えるならば、かなり外交上のいきさつがあるものだ、こういうことを相当考えておくことが、日本の極東におけるばかりでなく、中共と国民政府との関係考えたり、また日ソの問題を考える上においても、かなり重要なことだと思って、あえてお尋ねしたわけでありますが、かなり複雑な問題だから、御説明があればよし、なければ私あえてお尋ねしようとは思いません。
  52. 重光葵

    ○重光国務大臣 今の御意見は非常に拝聴しました。私も大よそそういうように考えておりますが、それらの問題に対する私の見方としては、先ほど申し上げました通りに考えております。
  53. 松本七郎

    ○松本(七)委員 もう一つ、日ソ交渉の領土問題で指摘したいのですが、千島の問題、これは吉田内閣当時は千島を南と北というふうに分けたことはなかったと思う。サンフランシスコ条約においても、これは明確に分けてあるわけじゃないと思うのです。それが最近は南と北を分けてソビエトとの交渉に当っておるようですが、いやしくもポツダム宣言その他からいえば、日本の領土問題については、やはり連合国全体を相手にしなければ最終的な解決はできない、その点は問題ないと思う。政府が南千島だけこの際切り離して、そうして返還をソビエトに要求するということは、今の政府方針がそういうものであるということは了解できても、今言うような領土問題の経過、性質から考えれば、少くとも日ソ交渉と並行して、連合諸国にもそういう問題を持ち出してい話を進めるのが順当だと私は思いますが、そういうことはやっておられないのでしょうか、あるいは必要を認められないのでしょうか。
  54. 重光葵

    ○重光国務大臣 連合国側と申しましても、領土の問題は小笠原と琉球の問題だろうと思います。米国関係でございます。小笠原、琉球諸島は日本の領土であるべきであるという主張は、ずっと続けてやっております。そして潜在主権が認められたということになっております。従いましてこれらの島々に住んでおる人々は日本人として取り扱っておるという状況でございます。しかし、はっきりこれが日本の行政権に返されておらぬことは、これまた事実でございます。その返される日の遠からざることを希望するわけでございます。しかしソ連との関係は、私は少し違うと思います。ソ連はこれから国交を回復しよう、正常化しようというねらいをもって交渉をしておるのであります。米国との関係は、はっきりと平和条約が結ばれて、国交を回復しておるのでありますから、その前提において基礎が違います。しかし国交回復後においても、これらの諸島に対するわが国の希望は常に米国側に表示をしておることは、今御説明した通りでございます。ソ連に対しては、日本の固有の領土、いまだかつて問題に従来なったことのない領土については、国交回復の際にこれは返してもらいたい、こういうことは日本の主張としては私は正しい主張じゃないか、こう思います。それでその主張を続けていたしておるわけでございます。
  55. 松本七郎

    ○松本(七)委員 その説明は、今までの何回もの説明政府考え方というものはわかっておるのですが、私の今聞いておるのはその点ではないのです。千島の問題はただ対ソビエトだけの問題ではないのではないか。というのは、御承知のようにポツダム宣言において、カイロ宣言の条項は履行せらるべく、また日本国の主権は、本州、北海道、九州及び四国並びにわれらの決定する諸小島に局限せらるべし、こういう宣言によって今後のすべての領土問題というものは決定されるのです。ですから、かりに日本が本来の領土であるから当然返してもらうべきだという主張を掲げてソビエトと交渉するとしても、こういうポツダム宣言のあれがある以上は、これは対ソビエトだけでは済まないのではないか。今度は米国とソビエトの間柄で千島の問題をどうするかは一応別として、日本としてはこういうポツダム宣言がある以上は、ソビエトに交渉すると同時に、やはりこのポツダム宣言に基いて、連合国に対して毛、ここで規定されている以外のそういう諸小島についての帰属はやはり話し合いをしなければ最終的な決定はできないのじゃないか。それだから、少くともソビエトに交渉する以上は、並行して連合諸国とも何らかの話し合いをする必要があるのではないか、その点をお伺いしておるのです。
  56. 重光葵

    ○重光国務大臣 よくわかりました。ソビエト以外の今日日本と平和を回復しておる国々との関係は、これはサンフランシスコ条約で決定をしておるわけであります。そこでサンフランシスコ条約はポツダム宣言を受諾したことから出ておるのでございますけれども、平和を回復するためにすべての条文は平和条約規定されておるのでございます。そうでございますから、領土問題もこれらの国々に対しては、サンフランシスコ平和条約規定に従って処理されるべき問題だと思います。サンフランシスコ条約によれば、千島南樺太という地域に対する領土権は日本は放棄しておるのでございます。しかし歯舞、色丹のごとき北海道直属の島々に対する領土権はむろん放棄しておるわけではございません。これはアメリカ初め平和条約調印国もはっきりそう申しておるのでございます。  さて問題は、千島とは何ぞやという問題になります。千島とは何ぞやという問題は、明確に条約上に規定ほございません。明確にございません。どう解釈するかという問題に結局帰着いたします。南千島というのは・日本からいえば千島じゃない、こういう解釈をとっておるのでございます。南千島は従来千島として取り扱われておらぬ、これは北海道として取り扱われておるのだ、日本とソ連との千島、樺太交換条約にもこれは規定がないのだという歴史をたどってそういうふうに定義をいたしておるのでございます。そこで、それじゃサンフランシスコ条約による千島というのはどうであるか。米国はどういう解釈をそれにしておるか。米国は千島をソ連に譲り渡すというような意味のことをヤルタ協定なんぞでもやっておるようだが、一体どういう地理的な保障になるかというようなことをたださなければなりません。米国側の考え方は、クーリールといううちには、日本がそう主張する日本固有の領土がこの中にあるというふうには考えておらぬのだ。日本がそう主張すると、南千島は固有の領土だとして返還を主張するということにはアメリカもこれは異議はない。しかしヤルタ協定で千島というものはどこからどこまでというような、はっきりした地理的の地図で線を画したことはなかったのだ、こういうふうな大体の説明がございます。そうでありますから、日本日本として南千島はクーリールのうちに入っておらぬのだ、こういう建前でこの主張を強くするということには、国際的の故障は少しもないと私は思います。そこで、その他の千島、中部以北の千島と南樺太という問題については、これはサンフランシスコ条約にはっきりと日本は放棄したということになっておるのでありますから、この問題については国際的の関係が起ってくる、こう思います。何となれば、サンフランシスコ条約によって領土の放棄を日本から受けた国は条約調印国であります。その調印国はこれに対して利害関係を持っておる、こういうことだ相なるからであります。
  57. 松本七郎

    ○松本(七)委員 アメリカ考え方は大体わかったようですが、それじゃアメリカ以外のサンフランシスコ条約を認めた国はどのような解釈をしますか。
  58. 重光葵

    ○重光国務大臣 それは大体アメリカに右へならえで来ているようでございます。
  59. 松本七郎

    ○松本(七)委員 それは右へならえをするだろうというあれですか、それとも一々問い合せてそれを確認されたのですか。
  60. 重光葵

    ○重光国務大臣 全部については確認しませんけれども、おもな国についてはアメリカと同様な意見である、こういうふうにわれわれに通告をいたしております。
  61. 松本七郎

    ○松本(七)委員 次の問題に移りたいと思いますが、自主独立の外交の建前から中国の問題が非常に重要な段階に今あると思うのですが、これは国際連合の加盟問題その他とも関連しておるのではないかと思います。けさの新聞の報道によると、何かアメリカが、日本民間団体その他で中国といろいろ協定を結んだり、あるいはこちらからたくさん人が行くというようなことについてだいぶ不満があるようで、政府考え方その他を問い合せという形で来たということですが、そういう事実があるでしょうか。
  62. 重光葵

    ○重光国務大臣 中共の問題について、中共もしくは共産国が、民間もしくは個人間の約束を積み上げていって——文化交流であるとか、貿易であるとか、その他いろいろな問題をとらえて民間と約束をして、それを積み上げていって、その力を政府にかけて結局承認に持ってくるようにしよう、こういう政策をとっておることは、これはもう明らかなところでございまして、これは日本側からだけではありません。アメリカにおいてもイギリスにおいてもそういう方面のことを非常に神経質に調査をし、注意をいたしております。従いまして、米国がさようなことに関連する日本民間側——政府ではございませんが、民間側の人々の行動について注意を払っておるということは事実でございます。そうしてそれについてはいろいろ問い合せが来たことは事実でございます。しかしこの点については、日本側、日本政府としては、むろんこれは日本政府立場をもって、考え方をもってこの問題を処理しておるのでございます。政府は中共を承認するということはできない。たびたび申した通りであります。しかし、中共がアジア大陸において広大な地域を設定しておるということは、これは争うことはできません。そこで実際問題といたしましては、中共との関係をいろいろ処理しなければならぬことが起ってくる。特に人道問題である抑留者の送還の問題はどこまでもやってもらわなければならぬ。そこで政府民間だけにこれをまかせておくわけにはいかぬという立場をとっておる。しかしその他の問題は、すぐ政治的にこれを利用されることは避けて、あくまで民間の約束については政府関係はないのでございますから、関係しないことにしていかなければならぬ、こう考えておるのでございます。少し御質問の点を逸脱した感がございますけれども、同じようなことがだいぶ予算委員会でも議論になりましたから、そのことも考えて一般的に申し上げたわけでございます。
  63. 前尾繁三郎

    ○前尾委員長 松本君、通告者がだいぶありますので、そのつもりでやって下さい。
  64. 松本七郎

    ○松本(七)委員 それではこの程度にしておきたいと思います。また別の機会に質問したいと思いますが、ちょっとそれと関連して、この前の本会議における外務大臣の報告の内容にもわたるのですが、経済外交というような面を相当打ち出されたことは、私ども大いに賛成なのですけれども、この報告の中で輸出の問題に外務大臣は触れられて、今後着実に伸びていくためには、相手国市場においてできる限り摩擦を生じないよう、一段の工夫が必要である、そういうことをうたっておられるわけです。これは当然なのですが、しかしそれに対して今後どういう根本方針で臨めば摩擦を少くしながら、しかも日本の貿易の伸張がはかり得るかという問題になると、これはなかなか容易でないと思うのです。そこでこれはどうしてもすぐお隣の中国との関係なんかがここに出てくる。現に今大臣の御答弁の中で指摘されたように、民間でいろいろな貿易協定を結んだりすることが先方の一つの戦術というか、根本的な政策であるというふうに言われたのですが、日本の貿易界、財界としても早くこういう貿易は伸展させたいと思っておることは当然なことです。それにはココムだとかいろいろなワクがありますから、政府がやりたくても、なかなか国際的な制約によって思うことができないだろう。それだからせめて民間において結べる協定ほどんどん結んでいく、必要に迫られてこういうものが積み重ねられてくると私は思うのです。こういう点から考えますと、将来の貿易のことについて、外務大臣はアメリカも相当敏一栄しておるし、そうかといって日本外国の圧迫をこうむらないように、競争場裏にうまく向わなければならぬという考え方だろうと思うのですが、現実の状態を見ると、エジプトの綿花の問題をとってみましても、あるいはビルマの米の問題をとってみましても、だんだんアメリカの繁栄が続けば続くほど、欧州あるいはその他の国々が経済的な圧迫を受けて、自然とエジプトなら綿花をソビエトに相当量出さなければならなくなる。あるいはビルマは米が余っておるから共産圏に出すようになるとか、そういうふうな状態がだんだん出てくると私は思うのです。国本の将来の貿易ということを、ただ競争にしゃにむに打ち勝たなければならぬ。それにはできるだけいい品物を安くして競争するのだというような考え方ばかりで今後進んでいくと、行き詰まるだろうと思うのです。そういう点から民間の貿易協定だとか、そういうものをできるだけ実行に移す段取りを、もう少し政府が力を入れるべきではないかと思うのです。今問題になりましたアメリカがいろいろ心配して問い合せるということとも関連するわけですが、政府としてはこれに対してどういう返事をされたのか。ただ日本の特殊事情を説明するだけで、民間協定をそれでは少し押えるようにしろとか、そういう何らか抑制することを政府は少しでも考えておられるのか、あるいはそういうことをアメリカ側に意思表示されたことがあるのかどうか、そういう点、少しお伺いいたしたい。
  65. 重光葵

    ○重光国務大臣 抑制するというのは中共貿易のことでありますか。
  66. 松本七郎

    ○松本(七)委員 そうです。
  67. 重光葵

    ○重光国務大臣 いやそういうことはございません。中共貿易はたびたび繰り返して申す通り、国際義務に反せざる限り、これは伸張させていきたいという考えで進んでおります。むろんこれは国際義務、特にココムの点などは尊重しなければなりません。中共貿易はいろいろ検討をいたしてみましたが、これはそういう国際的の制限がなくなっても、なかなか容易なものじゃないということをだんだん発見してくるのでございます。なかなか元の対支貿易のように返りはしない、これはシナ通はみな承認するわけでございます。元のように返らなくても少しでもこれを増すということは当然いいことなのでございますから、これは進めなければならない。これは中共貿易に対する態度でございます。一般の貿易の問題にお触れになりましたが、なるべく日本の貿易の信用を害しないように、品物等についても外国の不信を招くような品物を送り出さないように、また貿易の仕方についても不当に外国を刺激するということは損でありますからしない。そういうことをいろいろ注意いたしております。その手段手続は対外的に考えなければならぬ手続もかなりあります。しかし国内的に考えなければならぬ事柄もずいぶんだくさんあるのでございます。それは通産省と特に連繋をとって遺憾なきを期しているわけであります。中共の貿易だけによって将来を開こうとするような考え方をとらずに、その他の方も行けるところに向って十分発展をするように、特に処置しなければならぬように思うのであります。それは東南アジア、アラビア諸国、アフリカ方面までも考えていかなければならぬ、こう思っております。これらの方面における貿易は非常に伸びております。案外に伸びていることを申し上げてさしつかえない、こう考えております。
  68. 前尾繁三郎

    ○前尾委員長 高津正道君。
  69. 高津正道

    ○高津委員 私は日ソ交渉についてお尋ねをします。日ソ交渉の内容には多くの課題がありますが、在ソ戦犯釈放問題は日ソ両国においてすでに一致点が見出されているのでしょうか。まだだということであるならば、その対立をしたというか、不一致の部分はどういう点であるか、それをお尋ねいたします。
  70. 重光葵

    ○重光国務大臣 抑留者の帰還の問題でございます。これは御承知の通りに一般国交回復の交渉とは離れて、人道問題として強く要請をしておるということは御承知の通りであります。その方針は今後も続けるつもりでございます。それは一般の交渉問題と並行するような状態になってしまいましたけれども、あくまでもこれは切り離して、少しでも早く解決するように進めたい、こういう方針でございます。解決のできない今日までの事由は、ソ連が、平和条約をこしらえ上げなければこの問題は解決をしない、こういう態度に出ておるからであります。私は、これは人道の見地からいって間違っておると思います。平和条約の問題とは離れてこれは解決すべきものだと思います。そこでその主張ば私は根拠のある強い主張だと思って、それを進めていくつもりでございます。しかしソ連がその点についてわが方の主張をいつまでも認めてくれぬ、こういうことになるかもしれませんが、ちょうど人質にとって平和条約を進めようとしておるというふうに考える人もございましょう。しかし私は、これは十分主張を強くすれば、ソ連も漸次に日本側の主張を認めてくれるのじゃないかと思う。いろいろな調査をこれに関連してソ連に要請をしてきたのでございますが、それらのことについては、ずいぶんソ連もよく調査をして返事をしてくれておるような状況でございますから、この線をくずさずに進めていきたいと、こう考えます。
  71. 高津正道

    ○高津委員 不一致点は、ソ連側は平和条約を結んだら本問題を解決する、日本側は、その他の一般交渉とは別に人道問題としてこれを別個に早くやってくれ、こういう点が不一致点として残っておるというお答えでありますが、在ソ戦犯の釈放問題の中で、ソ連側は在ソ抑留邦人を戦犯と言い、日本側は戦犯ではないと言い張っているという、そういう両国の食い違いがあなたの説明のほかにまだあるのじゃないですか。
  72. 重光葵

    ○重光国務大臣 ちょっと御質問の点が私にはよくのみ込めませんが、日本は戦犯の問題を認めたことはございません。しかしソ連は戦犯を持っておるとこう言っております。それはソ連が言っておるのでございます。そこでこれも抑留者の一部分だと思います。しかしその問題についてこれは争う必要が私はないと思う。向うは戦犯と言ってこっちは抑留者と言っても、帰してくれればよいのでありますから、それは争う必要は何もないので、そういう点が交渉のもつれになっておる事実のないことを申し上げれば、あるいは答弁になるかと思います。
  73. 森島守人

    ○森島委員 今外務大臣の説明を聞きますと、日本には観念上戦犯という考えはないのだと、はっきり明言されましたけれども、私はここに証拠を持っているのです。重光・ダレス会議に関する日米共同声明というものがございますが、これはむろん大臣がおやりになっておるので、責任をお持ちになると思いますが、この中に、はっきり戦争犯罪人というものに関する話し合いが出ている。私は読むと、「外務大臣は米国の管轄下におる戦争犯罪人の早期釈放を要請した。」こうはつきり日米両方で声明のうちに書いておる。これでもなお戦犯という観念はお認めにならぬのか、英米両国に対しては認めて、ソ連に対しては認めぬというお立場をおとりになるのか、もしそうといたしますれば、その理論的根拠を私はお聞きしたい。
  74. 重光葵

    ○重光国務大臣 その共同声明の通りであります。アメリカ側は戦犯として取り扱っておる人間があるのでありまして、これを私は釈放してもらいたいと、こういうのであります。その通りであります。ソ連に対しても、ソ連が戦犯として抑留しておる者を早く帰してもらいたい、こういうのであります。少しも変りはございません。
  75. 森島守人

    ○森島委員 それは詭弁だ。英米に対してば戦争犯罪人を帰してくれ、こうあなたはおっしゃったにきまっている。ただいまのソ連一に対する説明によりますと、抑留せられている邦人を帰してくれ、こうおつしゃっている。そこに非常な差のあることは明らかであります。いかに御答弁になっても私は納得ができない。むしろ率直にソ連に対しても戦犯を帰せという御要求をなさった方がいいのだ。そこでソ連としては、戦争状態にある今日戦犯を帰し得ないのだ、これは私は理論が通っていると思う。ほかに抑留邦人があるかもしれません。この抑留邦人は自分の意思に反してソ連に滞在を余儀なくされている連中だから、これがあるとすればこれは交渉前に人道上の問題としてこの帰国を求めることは私は当然だと思うのであります。
  76. 重光葵

    ○重光国務大臣 その点は米国に対する態度とソ連に対する態度とは、私どもは違いはございません。違いほございませんが、今言われる通りにそれでは社会党は戦犯は今帰してもらう必要がない、戦犯以外の者は早く帰さなければならぬ、こういう立場をとっているわけですか。それは私は初めて伺うのです。私は社会党毛、戦犯も含めて一日も早く帰すように交渉を希望されていると考えて、私はその希望に沿うて今日まで交渉しておる。戦犯であるから戦争が済むまでは向うが抑留してもいいという議論は私はとりかねる。
  77. 森島守人

    ○森島委員 ただいまの御説明は私はある程度納得できます。しかしソ連が戦争状態にある限りは戦争犯罪人を帰すことができぬという根本的態度をとっている、日本は抑留者だから早く帰せという主張をとっている、こうなりますればその両方の主張が根本衝突、正面衝突することは必至であります。いかに政府がおやりになってもこの点については了解点に到達することは困難じゃないか、こういうふうに思っておるのでざごいます。御質問がありましたが、私の党といたしましては戦犯並びに抑留者を国交回復と同時に帰すという主張をいたしております。
  78. 高津正道

    ○高津委員 戦犯か戦犯でないかは争う必要がないということを言われる。しかしそういう概念でやっぱり戦犯ということをここには大いに主張しておられるのでありますが、私は外務省の見解が統一しておるのか統一していないのか。寺岡参事官が先月の末に留守家族が参った場合に非常な暴言を吐かれたという陳情を受けました。言葉で聞いたのでは責任がないから、五人の人間が来ましたから五人に署名をさせて文書で書いてくれと言って書かせたのであります。重大な問題だから、五分程度だろうから私はこれを読ませてもらいます。   私たちは十一月一日に兵庫県在ソ同胞留守家族大会をもって、ほとんど全員参加のもとで日ソ平和条約を即時締結することこそがわれわれの肉身を掃えす唯一の近道であるということを話しあい、日ソ平和条約即時締結の要請決議を採択し、東京に代表を送ることになり私たち代表が上京いたしました。   そして十一月二十七日午前十時、在ソ同胞留守家族の委員の方たちに迎えられまして例会に出席して、留守家族のみんなが日ソ交渉の即時締結を切実に望んでいることを話しあいました。   二十八日には日ソ国交回復国民会議の全国大会に出席して私たちの生まの声を訴えました。   三十日午前九時四十分頃外務省で松本全権にお目にかかり、私たちの要請決議に署名を添えて御礼と共に衷情を訴え、なお一そうの御努力をお願いしましたところ、全権も私たちの気持ちを充分おくみとり下さいました。折角外務省に来たので日ソ交渉に最も関係の深い欧州参事官寺岡洪平氏にもおねがいいたしたく守衛さんにおたずねして案内されて三階の同氏の部屋に通されました。   寺岡氏は快く私たちを迎えて椅子をすすめて下さいました。   席に着いて、一代表が「兵庫県の在ソ同胞留守家族を代表して私たちは一日も早く肉親を掃えしていただきたいために上京しました」と申し上げ、そして名刺を一枚と要請決議を渡し、寺岡参事官の名刺をいただきました。氏は要請決議を読んで下さいました。   男一代表「この要請は兵庫県代表が十一月一日ほとんど全員が集まって決議したものです。どうかよろしくおねがいいたします」   代表の一人は平和条約即時締結の「たすき」をかけました。   一代表「この要請決議には兵庫県と書いてばありますが、東京の方ともいろいろ話しあい、全部が平和条約即時締結によって掃えしていただけることを願っております」   寺岡氏はうなづいておられました。   一代表「西独は国交回復してどんどん帰えっているのに、日本だけほどうして私たちの肉親を掃えしていただけないのかということについて、納得のいかない点がありますので、こういうことについても御説明ねがいたいと思います」   寺岡氏「西独の場合と日本の場合はちがう。日本はソ連が攻めてきて三日間しか戦っていないのだから戦犯はいない」   一代表「戦犯はありえないといわれますが、私たちの夫は満州でソ連に対してスパイ的な行動をしてきたことを知っております」   一代表「私も主人が対ソ諜報をしてきたことを知っております」   一代表「南方にいたら憲兵や私たちのような特務機関であった夫は殺されていたかも知れません」   寺岡氏「戦犯というものを認めるような留守家族とは自分意見が違うのだから話を聞く必要はない、お帰りなさい」   一代表「そのようにおっしゃいますが、私たちは大東亜戦争の犠牲者として、指導者から戦犯と認めねばならないような行動をさせられたのですから、国策の犠牲者としての戦犯です」   寺岡氏は立ちあがって「戦犯と認めるならばそのような人は刑が満了するまでソ連にいたらよいのだ」   「そんなものは帰って来なくてもいいんだ」   「話す必要はない」「帰れ」「帰れ」 と手をふり払われました。   そして寺岡氏は、要請決議を四つにたたみ、その間に名刺をはさんで自分の机の右すみに置かれ、そしてまた「帰れ」「帰れ」を連発されました。   その声につれて、そばにおられた秘書の人も「帰りなさい」「帰りなさい」といわれました。   一代表「大東亜戦争の犠牲者として軍の幹部からの命令で戦犯といわれるような行為をしたのであって、それと同じ人が今でもスガモにBC級戦犯としておるではありませんか」   しかし寺岡氏はそれには応じられず、なお「帰れ」「帰れ」といわれて戸口の方に行かれました。   一代表「私たちは国策の犠牲者として十年苦しんでいるのです」女の二人の代表は氏のおそろしいけんまくに廊下にとび出しました。   一代表「そんなことをいうあなたたちが私たちの肉親を帰さないのではないか……」と大声をあげましたが、  「帰れ」「何をいっているんだ、帰れ」といわれて部屋を出てしまわれました。   秘書も「帰りなさい」といわれましたので私たちも部屋を出ました。   私たちは、十年間苦しんで帰りを待ちわびていたので、寺岡氏におねがいにあがったのに、帰れ帰れと何も聞いていただけずに、追い払われたことを大へん残念に思っております。   私たち留守家族は、このような方のために十年間も苦しめられて、肉親を掃えしていただけないのだと思います。このような責任ある方の私たちに対する態度考え方について、どこまでも良心的に追求していただきたいと思います。   なお二十九日には衆議院で岸信介氏、池田正之輔氏、水田政調会長、堀内一雄氏ともお会いして日ソ平和条約を即時締結して一日も早く私たちの肉親を掃えしていただくようお願いし、同情はしていただきましたが、この方たちのお心のなかにも寺岡氏と同じようなお考えをおもちのように思われ、このようなお考えが私たちの肉親を掃えすことをはばんでいるのではないだろうかとその点を憂慮いたしております。   衆議院議員     高津正道先生    神戸市兵庫県下祇園町三九〇          笠原金一郎 印          吉岡 瑞穂 印    神戸市灘区深田町ニノ一二          亀田 秀子 印    神戸市兵庫区矢部町三一四          黒沢 悦子 拇印    神戸市灘区城ノ内通七丁目二          沢田千枝子 拇印  こういう陳情を受けましたが、私はこれには誇張がなくてほんとうだろうと思うのでありますが、外務省の参事官のこういう態度というものは許しておいていいものであろうかどうか、そして私から見ればこれではあまりにも官僚的であり、十年聞悩んで、抑留者の釈放を気も狂わんばかりに待ちあぐんでいる留守家族に対して、あたかも気違いになれとでも言っておるふうに私には思われるのであります。外務大臣は自分の部下にこういう考えの者があり、この考えはこのままでいいのかどうか、それからこういう留守家族をいやが上にも刺激するような態度をとる者があっていいのかどうか、この点をまずお伺いします。
  79. 重光葵

    ○重光国務大臣 そのことはまだ私は知りませんでしたが、今お読み上げになった手紙の内容を伺ってみますと、ずいぶんそれには感情の高まった点もあるような印象を受けました。私はこの留守家族の困窮の状態をつぶさに承知いたしております。これは何としても救い出さなければならぬ、こういうふうに常に感じております。それでありますから、ソ連の抑留者に対して、も普通の交渉と離れて、一刻もすみやかに救出したいという交渉をやっておるわけであります。  そこでそれは戦犯の問題も関係がありますし、自分の近親の者が実際はスパイをしておったり、そのスパイは心ならずもさせられたのだ、こういうふうに告白をされておるのは、これはそうであったのでございましょう。しかし寺岡氏はそれがいかにも日本的の感情にいれないものがあると感じたのでございましょう。しかしそう申したからといって、私はその取扱いを是認ずるわけでも何でもございません。役人であるから、そのくらいの気に食わぬことを言われても、十分に意向をくんで、このふびんな困難な地位にある人々に同情を表して、すべてのことを寛容な態度でもって受け入れて、そして仕事をすべきだと私は思います。そこでしいてそれに対しておとがめがあるならば私は十分に調査をいたします。それからまたそういうことのないように取り計らうことに少しも異存はございません。ただこの問題は言葉の行き違い等も相当にそこに含んでおるようにも思われますし、あまり感情的には取り上げぬ方がいいようにも感じます。しかしその取扱いについては十分注意をいたすことにいたします。
  80. 松本七郎

    ○松本(七)委員 関連して。文書内容は少しは違いますが私どもの方にもたくさん来ておるのです。早く講和を結んで、そして平和でありたいと言ったのに対して、ああいう態度に出られたと嘆いている文書もあります。ですからこれは一部の人のあれではないのであります。特にこれは外務大臣としても十分調査して、こういうことのないように善処していただきたいと思います。
  81. 菊池義郎

    ○菊池委員 関連して。われわれがイワノーヴォの戦犯のところに参りましたときに、向うの軍人はわれわれにどういうことを言ったかといいますと、われわれは決して戦犯でも何でもない、しかるに戦犯だといって人質に抑留しておるのだ、しかしながらわれわれは戦争でもって死ぬべかりしものが間違って生きておるのだからわれわれにかまうな、われわれはソ連の土と化することを少しもいとわない、われわれにかまわず堂々と日ソ交渉をやってくれ、それがために絶対に交渉に負けてはならぬということをはっきりとみな言っておりました。それから私は帰りましてから将官等の留守家族のところにも手紙をやりましたが、留守家族のところからも私のところに同じようなけなげな手紙がちょいちょいございました。そういうわけで、スパイをみずから戦犯だなんていって——スパイはみんなやっておる、ソ連でもどこの国でも盛んにやっておる、スパイをやったからといって戦犯だとみずから称するそんなばかな者はない。われわれは何でそういうことを聞く必要があるのか。参事官の言うことは当然だと思います。御参考のためにちょっと申し上げます。
  82. 松本七郎

    ○松本(七)委員 こういう発言は大事な問題です。私は一緒に行ったわけではないですが、われわれの同僚の穂積議員のこの点についての報告はしょっちゅう聞いておるのです。今の話は、最初はそういう悲壮なことを言われたそうです。だけれども、それは日本の国情その他を全然知らないで、そして昔ながらの気持で軍人さんがそういうことを言われた。それに対して日本の議員から日ソ交渉の状態なりいろいろ説明されて、決してそんなに悲壮なことを考えなくてもいいということをよく言ったそうですが、その経過は、こういう発言をされた以上は、やはり行かれた議員のほかの方にも発言していただかなければならぬと思います。この点特に、私も穂積議員には話しておきますけれども委員長として一応みんなの意見を記録にとどめる必要があると思いますから、その点一つ委員長了解しておいていただきたいと思います。
  83. 重光葵

    ○重光国務大臣 私も今のようなことは報告に接しております。これは事実その通りだったと思います。またそういうことを紙に書いてきております。私はさような悲壮な決意を聞いてほんとうに涙が出たのでございます。しかしそれであるからなおさらこういう人々に早く帰ってもらうように、私どもとしては一そう粉骨砕身しなければならぬ、こういうふうに考えて進んでいるわけでございます。
  84. 高津正道

    ○高津委員 菊池委員のスパイは戦犯ではないと向うの人が異口同音に言ったような意見や、そうではなかったという穗積七郎君の報告についても申し上げたいのでありますが、(「スパイは戦犯ではないというのはこちらの意見ですよ」と呼ぶ者あり)外務大臣は取り調べて注意すべきであるというお答えが寺岡参事官に関してあったと了解しております。中央教育審議会は文部大臣の文教政策に対する最高の審議機関です。それにK——本人迷惑でしょうからK何がしということで申しますが、この人は教科書出版会社の取締役であり、株主であるから、そういう人が入っておってはいけないということを私が指摘した。またその会社に勤めておった人が文部省の学習指導要領——教科書がそれにのっとってやるその基準を書くところの担当官に今や返り咲いている。元会社にいた人ですからこういうことは非常に不当であるということを言ったら、松村文相はその担当をすぐにかえられた。私は案外正義感の強い文相であると思ったのです。それから私もやめざるを得ないようにやかましく言いましたけれども、中央教育審議会の委員もやめることになった。寺岡参事官の場合私は今の陳情書を信じますが、こういう態度で接する者があれば、現在の政府、それを支持する保守政党、それがいよいよ人気を落すのだといって喜ぶような党派心は私に少しも起らないで、政府そのものに対する不信が強まるので、あとを受けるわれわれとしても、役人だとか政府というものはこんなものだと思われては困るというようにも考える。それでこれは単なるここでの答弁として調べてみた上で注意するというのでなしに、調べる場合にはいつでもこっちの人間を上京させますから、両方意見を開いた上で厳重に、配属をかえるぐらいでなく、しっかりやってもらわぬとしようがないと思います。こういうことはこれ一つじゃないです。たくさん聞いているから僕はこういうことを聞いたわけです。これを外務大臣に要望して答弁があれば答弁を聞きたいし、答弁がなければなしで、これを要望して私のきょうの質問を終ります。
  85. 前尾繁三郎

    ○前尾委員長 森島守人君。
  86. 森島守人

    ○森島委員 私簡単に一問だけお聞きいたしますが、先日私が一万名内外の人の状況不明者、それからソ連の抑留者について資料を要求しておきました。そのときの政府委員の説明によると、どうもはっきりしない点がある。私十分にのみ込めない点がある。いずれ資料を見た上でまた質問をいたしますけれども、私は終戦直後の事態に関しまして二点だけお聞きいたします。終戦の直前においてソ連軍が入ってきた。ところが関東軍は新京から都落ちをした。今イワノーヴォにおる山田司令官なんかが一番先に逃げちゃった。そういたしますればあの広い満州に対ソ戦辞せずと言っておった日本の陸軍も支離滅裂になったことは想像されるのであります。外務省の人はあるいは民間の捕虜だった人にお会いになるような機会がないかもしれません。私どもは選挙区の関係でたくさん会っておる。これらの人の意見を総合いたしますと、軍隊は支離滅裂になった。本隊もわからず、原籍もわからず、氏名もわからぬのが何百何千と一緒にソ連の方へ連れていかれた。そうして朝起きると、次から次と何十名、何唐名という人が疲労と空腹と寒さのために死んでいった。これはやむを得ず、名前もわからず、原隊もわからず、本籍もむろんわからぬが、自分たちの手でねんごろに荼毘に付して、そうして木を立てて帰ってきたという例がたくさんあるのであります。私はおそらく外務省が漫然として、正確なる材料に基かずして一万何千名、こうおっしゃっておる節があるのではないかと思う。このたくさんの人が、無名の戦士が死んでいったという事実は御推測ができるかどうか、この点について外務大臣の御意見を伺いたいと思います。
  87. 重光葵

    ○重光国務大臣 私もその通りに——実ははなはだこれは悲しむべきことであった、残念なことであったと思っております。ただ数字の点は終戦後特別に設けられた調査機関によって、厚生省あたりで非常に入念に調べた結果でございます。これは多分その点は御承知かもしれませんが、入念に調べた結果このことになったので、これは外務省の手よりもそっちの手で調べておるのでございます。その数字を外務省が受げ入れてこれを向うに要求をし、また調査を依頼したわけでございます。当時の事情はそういうわけでありますから、いろいろなそこに不明な点があろだろう、こういうことは想像されます。
  88. 森島守人

    ○森島委員 もう一つの点は、捕虜生活の間にロシヤの婦人と非常に懇意になって、むしろ敗戦後の日本に帰るよりはと、みずから進んでソ連に残存した人も相当におるということは事実でございます。これば私が捕虜だった人から聞きましても、その人たちはもし自分に親戚等がなければ、自分も進んで捕虜にとどまりたかったということを告白しておるという人もあるのであまして、こういう数字もあるいは行方不明の中に含まれておるのじゃないかということも想像される。私はいたずらに一万何千名ということで主張し——調査すべきは調査すべきでございますが、わからぬ点があれば、こういうふうな事情に基いておる点があるのじゃないか、こう思いますので、外務事務当局としてこれらの事実を率直にお認めになって、資料にお基きになることも必要でしょうが、わからぬような場合には、そういう点について国民が抱いておる疑問を一掃されることがこの際必要であり、これは日ソ交渉を進める一つの手段としても私必要じゃないか、こう存じておるのでございます。もちろんソ連の方にも手落ちはございます。現に私らがハバロフスクへ行きました場合で毛、ソ連では死亡者の名前を発表しておりません。これは私もこっそり手に入れてきて、外務省関係の方は外務省へお渡ししている。そういう点から見ましても、確かにソ連の方にも私は手落ちのあったことは認めるのにやぶさかではありません。双方にわからぬ材料があるのだと思いますから、この点をもっと明確にして、国民の抱いている疑惑をお解きになることが、日ソ交渉を進めるゆえんではないか。これに貢献するゆえんではないか、そういうふうに考えております。ことにはなはだしいのは私の記憶違いかもしれませんが、吉田内閣時代には三十一万何千おるということを公然と言っておったのが、いつの間にか政府は一万何千ということを言っておる。これもしいていえば、ソ連を故意に悪意に解釈せんとする意図に出たものと判断せられてもやむを得ないのであります。この辺についても十分慎重なる対策を立てていただきたいということを要望いたしまして、私の今日の質問を終る次第であります。
  89. 前尾繁三郎

    ○前尾委員長 菊池義郎君。
  90. 菊池義郎

    ○菊池委員 与党はなるべく質問してはなりませんし、また質問したくもありませんが、大臣に個人としてお目にかかる機会もございませんし、また政府委員の諸君に聞いてもどうもはっきりしたお話を聞かして下さいません。仕方なくこういう御質問を申し上げる次第であります。  ドイツがソ連に乗り込んでいって堂々たる交渉をして、五日でもって独ソの国交の樹立に成功し、戦犯を帰すこと、大使を交換することを約束しておりますが、日本の方は数ヵ月かかってまだ妥結しない。向うの方では日本に熱意がない、熱意がないと言っておりますが、この講和条約締結を第三国においてやることが、果してこれが早急に妥結するという目的の前に得策であるかどうかということを、われわれはどうも痛切に感じます。ソ連は最初東京でもいい、モスクワでもいいじゃないかというてきたのですが、なぜ東京に変えなかったのであるか、また今からでもこの交渉の場所を東京に変えてやれば、機密が漏れる心配もございませんし、いろいろの点において非常な便宜がある。一々暗号電報でもって英国に通ずる、そういう手数も省くことができるわけであります。どういうわけで東京に場所を決定しなかったのであるか。またこれからして東京に変えるお考えはありませんか。われわれは東京でもってやった方が一番手っ取り早くていいと思う。それでなければ、ソ連にどしどし乗り込んでやるということを考えてもかまわないのですが、この点についてお考えを伺いたい。
  91. 重光葵

    ○重光国務大臣 交渉場所は慎重に考えたのでございます。そうしてソ連のロンドンで交渉したい、こういう提案に応ずることがいいと思いまして、ロンドンで交渉することに相なりました。そうでありますから、これを続けてやるのが一番穏当で、常識でございます。これを今東京に移すことを提議する意向はございませんことを申し上げます。
  92. 菊池義郎

    ○菊池委員 シベリア出兵の後においても交渉の場所を四ヵ所ぐらいも変えております。今までの外交上の歴史を見ましてもしばしば交渉の場所は変えられておるのであります。なぜそういう不便なところを選ばれるのであるか、これがどうしてもわからぬ、わけをちょっとお話願いたい。
  93. 重光葵

    ○重光国務大臣 その点から申しますれば不便でないのでございます。一番便利な、一番効果的に交渉のできるところ、こう考えておるのであります。
  94. 菊池義郎

    ○菊池委員 松本全権は交渉のあとでもってすぐ交渉の内容が世間にばらまかれて困るということで、非常に不満の意を漏らしておられる。機密を守るためにも、もちろん日本の方が十倍もいいと私は考えております。
  95. 重光葵

    ○重光国務大臣 その点もロンドンの方がいいのでございます。これは一つこちらにおまかせを願いたいと思いますが……。
  96. 菊池義郎

    ○菊池委員 民主党内閣時代の外交方針と、それから三百有余を擁する強力な新党内閣の外交方針とは、おのずから変らなければならぬし、また変っていいはずであります。でありますから、こういうときにおいて  きょう全権の送別会をわれわれ開いたわけでありますが、全権も新手を入れかえ入れかえやらせてはどんなものか。もう数ヵ月も骨を折らせて気の毒だと思う。もちろん松本全権の手腕力量を何らわれわれは不満とするものではないのですが、ほかに人がないわけではない。新手を入れかえてやれば、また別の主張をすることもできる。それは松本全権も日本に帰りまして、歯舞、色丹以外のもの日本にとるということは困難であるということを言い切っておりますし、それからまた歯舞、色丹だけ最初交渉することを言いつけておいて、あとから南千島の交渉をくっつけられて、やりにくくてしょうがないということも漏らしておる。それから抑留者を引き揚げさせることも、講和条約締結されない限りはだめだということをはっきり言っておる。それがみんなソ連に筒抜けに漏れているそうでありまして、松本全権といたしましては、ロンドンへ帰ることがどうもいやだということも漏らしているそうでございますから、どこからどう考えても、新手を入れかえてそしてこっちの主張をさらにあらためて向うへ申し入れることが、外交の戦術からいっても適当であると思うのでございますが、そういう点についてどういうお考えを持っておられるか。
  97. 重光葵

    ○重光国務大臣 人を入れかえる時期ではないと考えております。それは交渉を継続する意味においても、日本の主張を強く打ち出す意味において毛、かえない方がいいと思います。松本全権は、その外交経歴等によってもわかります通わ、りっぱな全権でございます。これまでロンドンにおいて交渉しておる交渉ぶりも、ほんとうに適切に、そして有効にこれを行なっております。日本の主張すべきことは、細大漏らさず主張してきております。そこで私は、また政府といたしましても、十分の信任を表しておるわけであります。これを今かえるということになれば、こちらの腰がぐらついたということになるので、そういうことはいたさぬ方がいい。あくまでも主張すべきことは主張して、そして国交調整の目的を達するように努力してもらうということが、最も適当な措置だと実は考えております。
  98. 前尾繁三郎

    ○前尾委員長 大臣は他に所用がありますから、簡単に願います。
  99. 菊池義郎

    ○菊池委員 今までの主張どこれからの主張と変る場合には、当然に全権も入れかわった方が理屈に合うと私は考えております。ロンドンに参りまして、私は全権の交渉したという部屋も見ましたし、そこでもって議論でもやったか、大した議論もしなかったというようなことでございました。ドイツのごときは、口角あわを飛ばし、テーブルをたたいて激論をして、その結果、彼らはドイツから飛行機を取り寄せて帰ろうとした。それほどに憤慨した。そうすると、ソ連の方で拝み倒して、もうちょっと待って下さいと言って引きとめられて、あの交渉がまとまっているくらいであります。四カ月もかかって交渉が妥結しなかったというのは、要するに松本全権がマリクともと友人であったという関係から、あまり激しい議論もできにくいのじゃないか、そういう点も考慮して、むしろ友人でない、互いに反目し合っているような相手が、かえって交渉にはいいのではないか。そうすればいかなる議論でも徹底的にやれるわけです。そういうようにわれわれは考えるのですが、いかがでございますか。
  100. 重光葵

    ○重光国務大臣 ロンドンに行かれて、両全権が会った部屋もごらんになった。そうでしょう。日本の大使館でも交渉しているのでありますから、それはそうでございましょう。あるいはソ連の大使館にも行かれたのかもしれません。そういうことでありましょうけれども、そういうことを取り上げて、松本全権の苦心惨たんしてあの交渉を進めているそのことを御批評になることは、私は、何というか、非常に心痛く感じます。あの四ヵ月の間に日本の主張を有効に突き進めるためには、ずいぶん苦労が多い。特にソ連を相手にしてやることは苦労が多い。私もみずから体験しております。私はその労を謝したい気持が一ぱいでございます。これは交渉が完全に妥結を見るということにでもなりますならば、その機会がありましょう。今日ではまだその途中でありますから、私はそういうことは申す機会はございませんでしたが、さような気持でございます。そうしてこの全権に外務省の本省はむろんのこと、政府として、議会としても一つうしろ押しをしていただいて、そうしてやれるだけのことをやれ、こうおつしゃつていただくことを私は衷心から希望しておったわけでございます。しかし御意見のあるところは、私としては十分拝聴しなければなりません。よく拝聴いたしました。
  101. 菊池義郎

    ○菊池委員 松本全権とマリクともともとの友人であるという点が、交渉にかえって差しさわりになるのじゃないか、私はさように申し上げているので、松本全権の御苦労、苦心惨たん、これは十分われわれはお察ししておるわけです。  それから私は昨日お伺いしまして、これもはっきりしたことは聞かれませんでしたが、韓国との全面交渉になりますと、大村の収容所の強盗、傷害その他悪質の犯人までも日本国内に釈放せんければならぬかと聞きましたところが、それに対しては明確なお答えがアジア局長から得られませんでしたが、この点は法務省との間の話はどういう工合になっておりましょうか。
  102. 重光葵

    ○重光国務大臣 それは漁夫の釈放の問題に関連しているのでございます。これも詳細なことを申し上げるのははばかります。まだ十分妥結を見ているわけでございません。しかし今の点については申し上げられます。それは朝鮮人の犯罪者の刑期が満了した人々を大村の収容所に収容しているので、それはどういう標準でそういうところに収容することになったかということは、これは法務省の関係でございまして、私も一々のことは存じておりませんが、収容することが、治安維持その他について必要だ、こう感じておるわけでございましょう。しかしこれは刑期を満了した人間のことでございます。刑期を満了すれば、普通の場合は当然釈放することが当りまえのことでございます。しかしそれを保護収容して一おるという建前でございましょう。これを韓国側が釈放してくれ、こういうのでありますから、私は釈放後保護方法についてしかるべき方法が立つならば、これはけっこうだと実は思うのであります。そういう考え方をもって法務大臣ととくと協議をして、法務大臣も大体そういうことに賛成でございます。そうして漁夫の帰還の問題を少しでも有利に解決したい、こういう方針をもって進んでおるわけであります。
  103. 菊池義郎

    ○菊池委員 それからフィリピンの賠償問題でもって、向うの方から二千万ドルの現金賠償を辞退してきたというような情報がありますが、それは事実でございますか。
  104. 重光葵

    ○重光国務大臣 フィリピン賠償に関するそういう新聞記事が昨今相当出ておりますが、これはおおむね信憑するに足らぬ記事でございます。そうして私はそういう問題について今深く御説明をすることはできますけれども、ややともするとそれが新聞紙上に完全に報道せられません。交渉に非常に悪い影響を与えております。それはフィリピンの方でも非常に神経質になっておりますから、そこでこれはしばらく一つお待ちを願って、御説明し得る時期になりましたら私は遅滞なくやりますから、その程度で一つお許しを願いたいと思います。
  105. 菊池義郎

    ○菊池委員 二億五千万ドルの民間借款、これは保証しないということを政府の方からもちょっと漏らしたようでありますが、政府は保証しませんか、しますか。
  106. 重光葵

    ○重光国務大臣 これについてもここで御説明を避けたいと思います。せっかく日本側の趣旨を向う側によく理解してもらって、そうして少しでも早くこの問題を片づけたいという方針のもとに進んでおるわけでございます。どうぞそのくらいでお許し願いたいと思います。
  107. 前尾繁三郎

    ○前尾委員長 次会は明後十二日午前十時より開会いたします。  本日はこれにて散会いたします。    午後五時二十三分散会