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岡田委員 この点については、単に訳上の問題その他事務的な問題だけではなくて、実はイニシアルの責任問題ですから、
あとで政治問題としても
外務大臣に伺いたいと私は
考えております。と申しますことは、
外務省としてはこれは事務的問題として、いわばごまかしてしまおうという
考え方があるようであるが、しかしこの物事の本質に入ってみると、これは単なる誤訳では済まない問題になってきている。そういう点をお
考えいただきたいのです。と申しますことは、この前の
国会においては、たとえば核分裂物質の問題あるいは先ほどあなたの
お話になったイレイディエートの問題ですか、こういうような問題もありました。これは私も指摘しました。これは重大な問題です。たとえば前段の核分裂物質の場合には水爆も入るという規定があるわけであります。ところが今度の正訳によると、核分裂物質の分裂という言葉を除いて、特殊核物質という言葉を使っておる。これは当然原文を見ればわかる。スペシァル・ニュークリアー・マテリアルズというようになっておりますから分裂物質ではないわけです。こういう点ではもう本質的に違う。誤訳という言葉の程度では済まされない事柄なのです。しかもこれだけではなくて、私昨日時間がないので、あまりゆっくり調べられなかったのだが、重大な誤訳と言われない、誤訳と解すべきでない点についての
仮調印の文章と本調印の文章において重大な誤まりが大体八点ないし九点ある。こういう点については一体どういう政治責任をお負いになるのかという点も私は伺いたいと思う。例をあげて申し上げましょう。一条のCの三行目に「中性子その他の放射線を発生させることを
目的として設計された」云々こうあります。この「放射線を発生させることを
目的として」というのは
仮調印では全然違っております。これはどういうように言っておるかというと、放射性物質を
生産するための原子炉という
意味に使っております。これは全然違うわけであります。しかも原文を見るとラディエーションという言葉を使っております。「フォー・ザ・プロダクション・オブ・二ユートロンズ・アンド・アザー・ラディエーショーンズ」ということになっております。こういう点でも非常に違って出てきておる点が一点であります。
それから第三条のBのうしろから五行目のところに「取り出された燃料要素の放射能」と書いてあります。これは原文によるとリプレイスド、こうなっております。ところが
仮調印の文章、によるとこれは取りかえられた燃料物質になっております。これはこうなると全然燃料物質の物体そのものが違うことになるのです。正文によると、取り出された燃料要素というのですから、消耗された燃料物質のことをいうのです。ところが
仮調印の場合には取りかえられたというのだから、その次の品物、今のものを使ってしまって、
あとの燃料物質という点になるので、こういう点では全然誤訳という言葉では済まされないものです、本質的に違うのです。先ほど
お話のイレィディエート程度の問題もあります。それからもっと初歩的な、これは多分に
外務省の意識的な問題であると
考えておるのがあります。
四条のうしろから二行目に「を適当と認める機関を通じて」という機関、これなんかは
正式調印された英文を対比されると、これは
外務省の
一つの意図に基いて直されたのではないかと
考えられる点がある。それはどういうように書いておるかというと、原文によると「スルー・サッチ・ミーンズ・アズ・イット・ディームズ・アプロプリェート」、こうなっておる。ミーンズということを機関と訳しております。
仮調印の場合においては手段と訳しております。これは手段と訳すのが適当であって、ミーンズという
意味から機関というような具体的な物的な
状態を出すということは、いかにも無理であると私は
考える。少くともこれは
仮調印の問題と本調印の問題とにおいては本質上の問題があるし、このミーンズには
外務省の政治的な意図が入っておると私は
考える。
こういうような例をあげて参りますと、まだまだありますけれども、きょうはこの程度にします。こういう点では単に誤訳ということでは済まされない問題です。これは言葉の
内容、文章の本質が変ってしまっておる。こういう場合にこういう政治的な責任をどのようにおとりになるか、この点を伺っておきたい。