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1955-12-12 第23回国会 衆議院 海外同胞引揚及び遺家族援護に関する調査特別委員会 第3号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和三十年十二月十二日(月曜日)    午前十時五十四分開議  出席委員    委員長 原 健三郎君    理事 臼井 莊一君 理事 中馬 辰猪君    理事 堀内 一雄君 理事 戸叶 里子君       逢澤  寛君    大橋 忠一君       木村 文男君    仲川房次郎君       眞崎 勝次君    眞鍋 儀十君       稻村 隆一君    楯 兼次郎君       柳田 秀一君  出席政府委員         外務事務官         (アジア局長) 中川  融君  委員外出席者         外務事務官         (アジア局第五         課長)     針谷 正之君         厚生事務官         (社会局更生課         長)      松本 征二君         参  考  人         (日韓漁業対策         本部事務局長) 田中 道知君         参  考  人         (被拿捕船主) 西村 清志君         参  考  人         (全日本海員組         合漁船部長)  高橋熊次郎君     ————————————— 十二月十日  在外未帰還同胞帰還促進等に関する請願(松  平忠久君紹介)(第二二四号) の審査を本委員会に付託された。     ————————————— 本日の会議に付した案件  参考人出頭に関する件  韓国抑留同胞漁民引揚及び留守家族援護に関  する件     —————————————
  2. 原健三郎

    原委員長 これより会議を開きます。  海外同胞引揚及び留守家族援護に関する件について議事を進めることといたします。  本日は、特に現在問題となっております韓国抑留同胞漁民引き揚げ並びにその留守家族援護問題について調査を進め、本問題の解決をはかりたいと思います。  この際、本件についてお諮りいたします。韓国抑留同胞漁民引き揚げ問題について、その実情を聴取するため、本日、関係代表であります日韓漁業対策本部事務局長田中道知君、被拿捕船主代表西村清志君、全日本海員組合漁船部長高橋熊次郎君を本委員会参考人として、実情を聴取いたしたいと思いますが、御異議はございませんか。   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  3. 原健三郎

    原委員長 御異議なきものと認め、三君を本委員会参考人として、実情を聴取することにいたします。     —————————————
  4. 原健三郎

    原委員長 これより、韓国抑留同胞漁民引き揚げに関しまして、参考人各位より事情を聴取いたしますが、その前に一言ごあいさつを申し上げます。参考人各位には、御多忙中のところ御出席下さいまして、委員長として私から深くここにお礼を申し上げます。本委員会は、ソ連、中共地区等に残留しております同胞引き揚げについて努力を尽して参りましたが、今回、李ラインにより韓国拿捕抑留された同胞漁民早期釈放送還の問題は、国民ひとしく希望するところであり、一日も早く解決をはからねばならないものであります。この本委員会の意図をおくみ取り願いまして、お話し下さるようお願い申し上げます。では、田中道知君にお願いいたします。田中道知君。
  5. 田中道知

    田中参考人 本日の機会をお与え下さいましたことを、厚く御礼申し上げます。  一言日韓漁業対策本部というものを御説明申し上げたいと思います。これはいかにも韓国に対抗するがごとき団体のように思われておりますので、一言その成り立ちを申し上げたいと思います。これは日韓漁業協定が結ばれるときに当りまして、漁業者の意見を取りまとめて、政府に協力するという意味からできた団体でございまして、韓国に対抗するという意味でできた団体でないことを、初めにお断り申し上げたいと思います。  韓国拿捕につきましては、これは韓国が二十七年の一月十八日に海洋主権宣言をいたしまして以来、現在に及んでおるのでございます。最初この宣言をいたしました当初におきましては、アメリカの海軍が相当これをリードしておりました関係から、多少のいきさつはありましたが、拿捕し、抑留するというような事件はあまり見なかったのでございます。しかるに九月二十七日におきまして——おそらく韓国当局クラーク大将にお願いしたであろうと思うのでありますが、九月二十七日に、クラークラインというものを設定いたしました。ここにおいてクラークラインに入りまする日本漁船は、米国の艦艇におきましては、これは危険であるから出ろということを言われて、出されました。ところがさらに二回目あたりからは、わざわざここは危険であるからというので、佐世保に連れてこられて、そこで釈放されておりました。ところがその当時でも、韓国艦艇で行われるものは、みな拿捕されて抑留されたのでございます。これから拿捕抑留が始まっておるのでございます。さらに二十八年八月二十七日にクラークラインが停止されまして以来というものは、全く韓国の独壇場となって、拿捕抑留が激しくなったのでございます。その年次の拿捕隻数及び人員はお手元に資料として差し上げてありますので省略いたします。現在は二百九そうがつかまり、百十そうが未帰還でございます。なお人員は二千七百二十九名がつかまりまして、二千九十名が帰されて、六百三十九名が抑留されておるという現状でございます。  この抑留されておる実情につきましては、他の参考人より申し述べると思いまするが、あまりにもお気の毒な待遇を受けておりまするので、われわれは細々ながら、対策本部の本来の仕事ではございませんが、見るに見かねて、これに差し入れを行なったのでございます。その差し入れは二十八年十一月十四日に始まりまして、第一回は一人に対しまして金は十ドルを限度に、他は日用品嗜好品、医薬品を差し入れいたしたのでございます。この差し入れにつきましては、でき得れば日本巡視船監視船を使用いたしたいとお願いいたしたのでありまするが、韓国承知いたしませんので、民間船を雇い上げまして、差し入れをいたしたような次第でございます。さらに第二次、第三次、第四次、第五次、第六次と六回にわたりまして差し入れをいたしております。しかしながらわれわれ民間の手の貧しい中からの差し入れでございますので、十分でありませんことは、皆さん方の御承知のことと存じます。  以上、大体われわれがやっておりますることでございますが、私はこの件につきまして、援護庁に対して、一般引き揚げと同様な取扱いをしていただきたいとお願いいたしたのでありまするが、戦前の戦争によるものと一線を画しておる、だから戦後のものは取扱いを受けないということで、中共抑留されておる者、朝鮮に戦後抑留されておる者は別扱いとするという御指示を受けたので、今までお願いもいたさずに、今日まで参ったのであります。しかし、考えまするのに、一般方々は、全く戦争犠牲としてお気の毒に思うのでございますが、また祖国の犠牲になった、われわれは戦争犠牲になったという強い誇りをお持ちではなかろうかと思うのでございます。ところが、その後韓国にとらわれました人間は、何のためにとらわれたのやらわからなくて、しかも酷遇を受けておる。全く心のよりどころもない哀れな人間であって、これは一日も早く帰していただきたいと思うものでございます。なお現在抑留されておりまする人間は、これは人質に取られておるような状態でございまして、従来は、李承晩は、すぐに特赦というような関係で、船は取りましたが、人間は大体帰す。こういう方針をとっておったのが、その後だんだん高じますると、実役を課して、大体懲役は重いのが一年、軽いのが六カ月、そして未成年者はこれは不起訴として帰しておりますが、次の段階といたしましては、実刑を課して、その終った者は直ちに帰す。こういう取り扱いをいたしておったのでございます。しかるに現在では、その実刑を終ってもなお帰さない。こういう実情になっております。従ってわれわれの考えといたしましては、人質に取っておるのだ、こう感ぜざるを得ないのでございます。なかなか人質を帰すということは困難ではありましょうが、今後とも何とかして引き取っていただくようお力添えを願いたいと思う次第でございます。その他のことにつきましては、御質問にお答えをいたしたいと思います。
  6. 原健三郎

    原委員長 次に、西村清志君にお願いいたします。
  7. 西村清志

    西村参考人 ただいま田中参考人よりるる御説明がございまして、いささか重複するところもあるかもわかりませんが、まず李ライン日本漁業関連性について、実情についてのあらましと、事件発生以来より今日まに至るところの実情について簡単にお話申し上げたいと思うのであります。  現在李ラインと称せられております海域は、西日本漁民が古い伝統と歴史の上に立って、幾多の困難と多大の犠牲を払って開拓して参った漁場でありまして、いわば、われわれにとっては生命線とも称すべき漁場であるのであります。それを先刻お話がありましたように、昭和二十七年一月十九日に一方的に海洋主権宣言を発表してより、日本漁船がその海域に立ち入りを禁止され、あるいは銃撃を受け、拿捕されるというような結果に陥ったわけでございます。従来その海域で操業しておりました日本漁船は、サバのはねづり、まき網漁業、底びき網漁業、カジキはえなわ漁業など、約二千隻で四千人の漁業者がそれによって生活を維持して参っておったのであります。従いまして、そこで働くことができないということになりますと、これはまさしく死の宣告にもひとしいのであります。現在までに拿捕された隻数については、ただいま発表がございましたので省略いたしまするが、なおかつ残っているいわゆる未帰還のものが百十隻、六百三十九名、これらは、拿捕抑留の理由といたしましては、漁業資源保護法とか、あるいは出入国管理令違反の罪名で船長はおおむね一年、船員は六カ月の体刑を課しているのであります。食料なんかきわめて粗悪でありまして、いわゆるまる麦の八割に対して白米二割、副食物といたしましては、海草類によって塩味を入れておる。通称ホンダワラと申しますか、ああいうものをわずかしか入れてないという現状であります。従いまして、拿捕された船主の打撃というものは、まことに申すまでもないことでございまするが、船員留守家族といたしましても、実は貧困その極に達しているのであります。すなわち、中小あるいは零細漁業者、そういったものはもう倒産寸前にあるのでございますが、現在拿捕されている船舶の中に、六隻の保険に加入していない船があるのでありまして、船員は百十数名を数えているのでありますが、これらのものは保険に加入していないために、保険金はもちろんもらえないし、留守家族給与ももらえない。従いましてますます倒産しつつあるのであります。一例を申し上げますならば、鹿児島県の拿捕された船の第十二共進丸のごときは、二千七百万円を投じまして新しく建造いたしまして、進水直後、いまだ保険手続も完了していない間に拿捕されたのであります。船主といたしましては、四十名の船員に対しまして、いわゆる道義的な責任感から月々仕送りをして参っているのであります。すなわち一カ月に二十万ないし三十万を支出しておりますし、かつまた差し入れ品については、数回の間に、一回について三十万ないし五十万ずつを負担して参ったのでありますが、もはや船主といたしましても限界点に達している状態であります。従って今後これが継続いたすとしますれば、もはや援助の方法がないというような段階に立ち至っておるのであります。留守家族といたしましては、一律に食糧にも事欠くありさまで、特に家族の多い家庭なんかは、失対に行くとか、あるいは農事の手伝い、また帰宅後におきましては、若い主婦はバーの女給とかあるいはダンサーにまで身を落して、辛うじて露命をつないでいるような状態であります。今回の大会で一婦人が、ことしのお正月には子供たちにもちも食べさせられないといって、窮状を泣いて訴えておりましたが、これは真実の血の叫びであるのであります。本日この委員会におきまして、皆さま方が私たち実情を御調査下さることになりましたことをわれわれ一同心から感激している次第でありますが、今後一日も早く彼らに救いの手を差し伸べて下さらんことを切にお願い申し上げる次第でございます。
  8. 原健三郎

    原委員長 次に、高橋熊次郎君にお願いいたします。
  9. 高橋熊次郎

    高橋参考人 私は、本委員会におきましてお聞き取り願いたいと思いますことは、主として抑留されている船員取扱いはどのようになっているか、そしてまたこの留守家族はどのような逼迫した状態に置かれているかということを申し述べたいと思います。  最初抑留船員韓国における待遇取扱いの点でございますが、先ほど田中さんから述べましたように、李ラインが設定されました当初は、抑留いたしましても、陸上の収容所もしくは刑務所等に収容することではなく、釜山等に曳航いたしまして、船の中で船員生活を許しまして、そこで拘禁をするというような状態でありました。送還等は、特赦とかいろいろな名目をつけまして、裁判というような形式は省かれて帰されておったのでありますが、その次ごろからは、形式的でありますけれども、韓国国内法に基く裁判に付されまして、その刑期が終ったら帰す、こういう状態でございましたけれども、昨今では、裁判による刑期が終了いたしましても、送還されないというのが現状でございます。現在、六百三十九名中約二百名のものが、刑期が終了いたしましてもいまだ帰されないというような実情にございます。向う刑務所におきます取扱いは、今も申されましたように、少量の白米をまぜましたところのコウリャン食で、副食はとてもお話にならないような梅ぼし等によって食べさせられておる。それから寒さ暑さ、ノミ蚊等責め苦は一通りでないということであります。それに病気にかかりましても、何ら医薬の支給等もなく、まして医療等のことがなされておるような事実は全然ございません。そのような状態に置かれておるのであります。現在、六百十九名中、一番長い者は二十八年の七月に抑留されたのでありまして、新しい人は先月抑留されたというようなことになっております。  次に申し述べたいことは、その留守家族生活状態でありますが、ただいまも他の参考人から申し上げましたように、その留守家族は、子供を抱えて、なかなか昼の正規職業にありつくこともできませんので、どうしても夜間飲食店等で働くというような余儀ない状態に置かれております。本来、船員法に基きますと、当然業者の方がこれらの給与保障する立場に置かれておるのでありますけれども、御存じのごとく、国民政府による拿捕事件頻発、その次には中共による拿捕事件頻発、それから二十七年から、今日に至り一そう激しくなって参りました李ライン中心にいたします韓国政府拿捕事件のために、以西底びき漁業その他東支那海に出漁いたします漁業者は、非常なる圧迫を受けまして、給料等も十分に支給し得ないというのが、李ライン中心にいたします漁業の実態でございます。その後、議員立法等によって、給与保険制度昭和二十八年に制定されたのでありますけれども、漁業が非常に圧迫を受けておる、経営が非常に圧迫を受けておるというようなこともありまして、中共との民間協定ができて、中共等拿捕の心配がなくなったことを機会にいたしまして、できるだけ負担を軽減するという立場からであろうと思いますが、この拿捕に基く給与保険等をかけないで出漁する者がかなり多くなったのであります。従って、現在におきましては、給与保険の恩恵も受けることができません。大会社等は、細々ながらも船員法におきます生活保障をいたしておりますけれども、漁船船員給与というものは、一般固定給のほかに歩合というものがあって、二本の体系からなっておるのであります。従って、抑留されますと、固定給の方は船員法に基きまして支給されるのでありますけれども、それにプラスされるところの歩合給というものが全然なくなる。かりに大会社等経営状態が比較的良好な会社からはそういうものが支給されたといたしましても、それはとうてい一家生活を支えられるようなものではない。まして給与保険等に加盟せずに出漁した場合には、全然給与支給の道が閉ざされている。そういうことから、先ほども申しましたように、子供等を抱えているために、昼、正規職業につくということはなかなか困難でありまして、従って、飲食店等で、非常に条件の悪いようなことで、二百円とか三百円等の収入を目当に働いておるというのが現状でございます。  それから、この抑留されたことによりまして、あるいはまた抑留のせつなにおきまして射殺等によって死亡した者が二十六名ございますが、それらの家族は一体どのような待遇に置かれているかということを申し上げておきたいと思います。これは給与保険でなく、船員保険法によって保障がされております。しかし、この船員保険法による遺族年金というものは、とうてい一家を支えるような金額ではございません。平均におきまして年間四万五千円程度年金を受けている。こういうのが実情でございまして、それが生活の支えになってやっていけるというような状態にはなく、しかも船員家族就職機会等におきましても非常に不利な条件を持っておりまして、簡単に職を得られるというようなことにはとうていなりませんので、つい非常に条件の悪い夜間飲食店に働くとかダンサーになる、こういうふうに身を落すような状態に置かれているのであります。  もう一つ申し上げておきたいと思います。向うにおきます待遇のうちで、韓国刑務所では、大体八畳くらいの板敷のところに二十名程度のものが収容されている。従って、ノミ、夏には蚊というようなものの責苦を受けている、こういう報告が帰ってきた者からわれわれにもたらされているわけであります。あるいはこれから申し上げることは本委員会関係のないことかもしれませんが、私といたしましてぜひ皆さんにお聞き取り願いたいと思いますことは、一体この拿捕抑留責任は、漁業者船員が負うべきものであるか、それとも政府がその責任を負うべき立場に置かれているかということで、われわれ日ごろ考えていることを述べたいと思うのであります。昭和二十七年の一月に李ライン宣言がなされました。当初政府はこの李ラインに対する見解を表明したのでありますが、全然李ライン宣言等に拘束される必要はないという態度を表明しておるのであります。従って、漁業者といたしましてもまた船員といたしましても、そこに出漁をしなければ他に転業の道がございませんので、多少の危惧はありましたけれども出漁した、こういうことになっておるのであります。しかし現実は、御承知の通り、韓国艦艇によりまして拿捕そして抑留というようなことになっているのであります。われわれ漁業関係者の一人といたしまして、出漁すべきだという形が政府から打ち出され、しかも出漁すると韓国政府艦艇によってほしいままに抑留されてしまう。かりに抑留されなくても、常に韓国政府艦艇が周辺に来ることにおびえながら、それを見張っていなければならぬという非常に不利な状態に置かれているのに、政府保護が何ら適切な方法においてなされておらないのであります。従って、われわれといたしましては、危険を保護することができないことであるならば、生命と財産を保護する立場に置かれている政府の方といたしましては、そういう危険な区域に出るべきでないということを言うべきであろうと思います。それもいたさない。しかも出ると、そのような不法な拿捕事件に遭遇しなければならない。そのような危険な拿捕抑留に遭遇いたしましても、今までのところ何ら具体的な政府援護あるいは保護がなされておらない。こういうことに対して、現在関係漁業者といたしましては、非常に不信の念を政府に持っておるということを、本委員会で申し述べるべきではないかもしれませんが、一番最後に述べておきたい、かように考えます。  大へん口下手に申し上げましたが、質問がありますならば、お答え申し上げます。
  10. 原健三郎

    原委員長 これより、三名の参考人に対し、質疑を行います。質疑通告順によってこれを許します。臼井莊一君
  11. 臼井莊一

    臼井委員 簡単に御質問申し上げますが、現在の日韓漁業の問題につきましては、まことに遺憾千万でございまして、拿捕せられておる方々、また業者たる船主の方に対しては、まことに御同情にたえませんし、また皆様方非常にこの問題に対して活動せられておることについては、私ども大いに敬意を表する次第であります。ただいまのお話のうちで、向う抑留されておる際に、あるいはその後に射殺された者が二十六名ということでありますが、そのほかに何か負傷されたような方がどの程度ございますか。その点と、それからもう一つは、向う抑留されていての健康状態向う病気になっているような者があるいはあるのではなかろうかと思うのですが、もしおわかりでしたら、その点をお伺い申し上げます。なおまた、こちらに帰って参りましてから、船員あるいは漁夫の方ですから健康はいいはずでありますが、帰ってこられてから健康を害しておられる、こういうようなこともあるいはあるかもしれませんが、もしその間の事情を御承知でしたら、お話し願いたいと思います。
  12. 高橋熊次郎

    高橋参考人 私の説明のちょっと言葉が足りなかったので、誤解をされたかと思いますが、射殺その他沈没等による死亡者が二十六名ということでございます。たとえば向うに行って、裁判等に反抗したために射殺されたというような事実はございません。拿捕のせつなに、当然韓国艦艇日本漁船に接近してきますときには、でき得ればその拿捕からのがれようとするのですが、その際に威嚇射撃といいますか、そういったようなことをいたしました節に、漁撈長その他の者に命中いたしまして、死亡した者もございます。また拿捕抑留中に病いを得て病死した者もございます。それからいろいろな衝突におきまして、韓国のそのような拿捕を目的に接近してきた船舶と接触いたしまして沈没した船、こういうことの死亡等が計で二十六名でございます。それから抑留者刑期が終って、あるいはその他のことで向うから日本に帰ってきた場合に、その就職がどうなるかということについて……。
  13. 臼井莊一

    臼井委員 健康とそれから就職についても……。
  14. 高橋熊次郎

    高橋参考人 それを申し上げたいと思ってつい忘れましたが、やはり健康は抑留者生活というか、収容所生活の無理がたたって、悪いという者が多うございます。それからもう一つ、もっと大きな問題は、大会社大津漁業であるとか日本水産であるとか日魯漁業であるとかというところにおきましては、帰って参りまして、健康が回復しますと、さらに乗船の機会が与えられます。しかし、御存じのように、大会社を除けば、ほとんどが中小零細漁業者が多いので、船員は帰されたけれども、漁船は返されない、こういうことのために、ほとんど失業するというような状態に置かれております。従って帰ってきても、なかなか十分な保養と将来の明るい労働というようなことは考えられないのであります。そういうような点については、非常にみじめな状態におかれておる、こういうことでございます。
  15. 臼井莊一

    臼井委員 それから家族の方や何かで、生活に困られている方については、この間厚生省に聞いたら、生活保護法でしておるということであります。これはわずかでございますが、そういうようなお気の毒な方の数がどの程度あるかというようなことが、もしもおわかりでしたらお伺いしたい。
  16. 高橋熊次郎

    高橋参考人 本来、この船員遠洋漁業船員でございますが、船員保険法の被保険者になっております。御承知のように、船員保険強制保険でございますので、これは手続が了している、いないにかかわりませず、全部被保険者でございます。しかし船員保険法の建前上、年間雇用でないということのために、失業保険金はもらえないのが大方でございます。それから給与保険は、もちろん帰ってきますとそこで打ち切られる、こういう状態でございます。大体、以上のような点でよろしゅうございましょうか。
  17. 臼井莊一

    臼井委員 この間、厚生省の話では、もし困っている人がある場合には、給与法で支給している、こう聞いた。あるいは私の聞き違いで、もし困っているものがあれば給与法を適用する、こう言ったのかもしれませんが、そうすると大体失業保険はもらえないというので、もし失業している方があると非常にお気の毒であります。あと給与法である程度までは救済されて、親切にやっておられるというように一応解釈しますが、なおそういうあれに対しまして、地元等で集めて、あるいは組合等で何か適当な先方に対する慰問をやるとか、あるいはこちらの家族に対して慰問をするとか、そういうようなことをもしやっている点があればお伺いしたい。
  18. 田中道知

    田中参考人 厚生省の援護という問題は最近起った問題でございまして、約一カ月前に、何とかお救いを願う方法はなかろうかというので、水産庁、厚生省その他にお願いをいたしたのであります。ところが、現在は保険制度以外はないということで、しかしそれではあまりひどいが、何とか方法はなかろうかというときに、厚生省の方が、そういう方法もあるが、こういうお話がありまして、それならばさっそくそれに適用される者がありやいなや、またその数いかんということで調査を進めたのでございます。ところが先ほど高橋参考人からも申し上げた通り、その給与というようなものはおよそ一万円以下でございますが、給与というようなものを船主が払うということになってきますると、先ほど鹿児島の参考人が申し上げたように、船主もぶっ倒れてしまって、払う力がないというならば援護を受ける資格ができるかもしれませんけれども、一方船主からは受け取る資格があり、船主はまた払う資格があるといたしますると、援護を受けられないという実情にあるということが判明いたしまして、これに力を入れて、数その他を調べるのを中止いたした、こういうような実情でございます。なお水産庁はその方面をさらにまた調査いたしているかとも思いますが、われわれの方としては調査を打ち切った、こういう実情でございます。  また先ほどの御質問にもどりまして、補足して申し上げますが、二十六人の人間がやられた、こう言っていますが、一九五三年の二月四日には、御承知の通り第一大邦丸という船が向うの砲に当りまして、頭蓋骨に命中して即死いたしております。これが最初事件でございます。当時の週報におきましては、それをとるのに、これはたれが撃ったのか、警備隊が撃ったのか、ほかの警察隊が撃ったのか、たまを調べるために、のこぎりで頭を切ったというあの事件でございますが、それ以来のは、先ほど申し上げたように、遁走するときに銃弾に当ったというような事情でございます。なお二十六名のうち二十一名は、韓国のフリゲートが後から乗り上げて、直ちに二十一名の生命を奪ったという実情であります。
  19. 原健三郎

    原委員長 中馬辰猪君。
  20. 中馬辰猪

    ○中馬委員 今回のこういう問題について、参考人皆さん方が非常な御苦心と努力をされておられますことに対しましては、深く敬意を表したいと思います。  そこで、私はいろいろ問題がございますけれども、保険に加入していないところの漁船の建造の問題で御質問をしたいと思います。先ほど西村参考人は六隻あるというお話でありましたけれども、その船名をちょっとお示しを願いたいと思うのであります。
  21. 西村清志

    西村参考人 鹿児島県の分については、第六丸六丸、第十二共進丸、この二隻は判明しております。ほかに長崎、愛媛全部で六隻のつもりでおりますが、それはあとで調査して御報告申し上げたいと思うのであります。
  22. 中馬辰猪

    ○中馬委員 これらの保険に加入していない漁船につきましては、おそらくは金融の道等におきましても、非常な困難と申しますか、むしろ絶望的な状態にあるのではないかと思うのでありますけれども、水産庁におきましては、一体どのような方針で将来の計画の指導をされておりますか。
  23. 西村清志

    西村参考人 今までの分についても、そういった配慮がなされていたことは事実でございますが、今回の分については、現在までは、いささかもらってはおりますが、はっきりとした金融の方法は、講じてはおられないようであります。
  24. 中馬辰猪

    ○中馬委員 先般、実は衆議院の農林水産委員会におきまして、いろいろわれわれの方から農林大臣に対して質問をいたしたり、あるいは要求をいたしたりした場合において、保険に加入していない漁船の代船建造については、優先的に一つ取り計らってもらいたいという強い希望を実はいたしたわけであります。それに対して、大臣が実は確約されたわけです。責任を持って一つ引き受けるからという約束をされたわけですが、ある議員の方から、かりに大臣の方からそういうことを言われても、農林中金といいますか、これは銀行でありますから、銀行の方においてなかなか言うことを聞かぬのではなかろうかと言いましたら、大臣はなかなか実行力のある方でありますから、それについておれは責任を持つのだ、こういう非常に強い発言をされたわけでございます。それで、かりに今からこの手続きをとり、政府の方でそれを指導した場合に、いつごろになって金が入り、船の建造を始め、それからまたさらに進水をして、それから漁撈に出発することができるかというような見通し等について伺いたいと思います。
  25. 西村清志

    西村参考人 今回、委員会においてそういった取りきめをなされたことに対しまして、感謝する次第でございます。われわれといたしましては、未保険者のものについては見舞金を要望したのでございますが、見舞金よりも、そういった金融措置が業者のためによろしいというような御見解でございますけれども、もしそうであれば、政府といたしまして、金融機関に対するところの強い連絡をとっていただきたい。その方が非常におくれがちなために漁船の建造がおくれる。従って漁期を逸してしまうというような実情が多々あるのでございます。もし急速なる措置をおとり下さるといたしましたならば、金融ができましてから四カ月目には、新船が進水できるというようなことになりますから、ぜひそういった方法について、万全の御協力をお願い申し上げたいと思うのでございます。
  26. 中馬辰猪

    ○中馬委員 ただいま大へん西村さんから心強いお答えがございまして、われわれも意を強うしておるわけですが、私どもといたしましても、一つ責任を持って、農林大臣の言明が実行に移されますように努力いたしたいと思います。実はその問題できょうの昼、農林大臣に面会を求めて、懇談する機会を持っております。他の、同僚でございますところの長崎県の田口先生とか、そういう方々と一緒になって、農林大臣と協議する約束をいたしておりますから、また後ほどその協議の結果については、あなたの方に個人的に御報告いたしたいと思います。
  27. 西村清志

    西村参考人 よろしくお願いします。
  28. 原健三郎

    原委員長 次に、木村文男君。
  29. 木村文男

    ○木村(文)委員 まず私は委員長に対して、私の意見を取り上げて、いろいろと本委員会において本問題を討議することができる運びをつけてくれたことを感謝いたします。  次に、参考人方々にお尋ね申し上げたいのでありますが、一番先に私は田中日韓漁業対策本部事務局長さんにお尋ね申し上げたいと思います。  その一項は、これまでに抑留されておりました方々に対して、対策本部としてどういうような対策をなされてきたか、これを具体的に御説明願いたいのでありますが、時間の関係もありますので、ここで大まかに御説明を願いまして、その他の詳細のことにつきましては、もしできましたならば、後日当委員会に対しまして、その資料を御提出願いたいと思うのであります。委員長からもその取り計らい方を希望いたします。  次に、遺家族に対しても同様でございます。この点について、留守家族に対してどういうような援護対策を本部としてとってこられたか。  それからもう一つは、先ほど高橋参考人あるいは西村参考人の両君からもお話がございましたが、政府がこれに対して、従来までは何らの保護対策をしてくれなかったというようなお話でございましたが、もしかりにそうであったとすれば、まことに私は遺憾なことだと思います。そこで政府が対策をとれなかった間において、対策本部として、あるいは韓国に対して直接に、あるいは政府当局に対してどういうような方法によってその援護方を要請してきたか、その経緯もあわせて御説明願いたいと思います。  次に、第三点といたしまして田中さんにお伺いいたしますが、船主が非常に企業の困難を感じておる。それは要するに漁撈されないためでありますが、その漁撈されないための一番の問題は、私は船であると思う。先ほど西村さんでしたか、今、中馬君の御質問に対しましても切々な訴えをしておられるようでありますが、私も、ほんとうに、企業者としては、何とも言われない、政府は対策なし、また自分にはその対策の方途も目当てもつかない、それに加えて再び出漁しても、さらに拿捕されるかもしれぬというようないろいろの経営上の不安があるだろうと思う。しかしながら企業者でありますから、一応の危険を冒しましても、なおその事業継続のために熱意を持つのは当然であります。しかしながら、土台は、何といっても私は資金だと思う。その資金面について、本部はこれまでどういうような救いの手を伸べて参ったか、またどういうふうにして船主に協力してきたか、この点を、もしございましたら一つ説明を願いたいと思います。それがやがて本委員会において何らの対策なし、ほんとうに船主は文字通り資金の面において窮迫の状態である、これがなし遂げられないということになれば、たとい政府援護の手を留守家族あるいは抑留者に伸べましても、それは一応の策にすぎないのであって、恒久的な生活権擁護の方策ではないと私は思います。従いましてわれわれは、この田中さんの御説明によりまして、必ずわれわれの同僚諸君と力をあわせまして、政府当局にその対策のすみやかにとられることを迫りたいと考えております。まず田中さんに対して、その三点をお尋ね申し上げたいと思います。
  30. 田中道知

    田中参考人 今まで対策本部としてはどういうことをやってきたか、こういう第一点のようでございますが、先ほど申し上げました通り、日韓対策本部援護本部ではないのでありまして、むしろ対策をやるべきなのが、最近では援護本部に変ったような格好に相なっておるような次第で、徹底した運動のできなかったのは遺憾に存じております。まず第一に行いましたことは、一ときも早く抑留船員を返せ、こういう運動を展開いたしたのでございます。これにつきましては、まず世界の世論に訴えなければならないというので、世界の会合があるたびに、その宣伝用の外文のパンフレットを広く配布いたしまして、世界の世論に訴えたのでございます。第二といたしましては、政府要路に対しまして、ぜひともこの解決をしていただきたいという運動を展開いたしたのでございます。第一の運動に対しては、効果のほどはわかりません。第二の国内的の問題に対しましては、いろいろ先生方の御配慮、最近におきましては特に熱心な議論が行われ、方法が研究されまして、大村の収容所等の交換問題とか、いろいろな問題の曙光が見えてきたことは、これ皆様方のお力のたまものと存じております。  次に、ささやかではありますが、われわれのでき得る問題は、差し入れの問題でございます。最初、概括的に申し上げましたが、六回にわたりまして差し入れを行なったのでございます。第一回は、二十八年十一月十四日に行いましたが、差し入れ品といたしましては、衣料、日用品嗜好品、医薬品、金でございます。このとき金を送りましたところ、この差し入れ船が着く前日に、李承晩大統領は、全部を特赦と称して釈放いたしたのであります。そしてその金を渡す必要がなくして、持ち帰ったのでございます。そのために対策本部としては、為替の変動によりまして、一ぺんに百万円以上の損失を受けたというような実情もございます。第二回、第三回、第四回はさようなことにも用心いたしまして、そういうことがなくなりましたが、最近におきましては、三十年十一月七日、船を仕立てまして、特に寒さにも向いますので、衣料品を主とし、病人も多いというので、医薬品を寄贈いたしまして、協成汽船の剣山丸という船を雇い入れてやりました。こういうのがまあわれわれのでき得る範囲の差し入れの仕事でございました。  なお留守家族に対してはどういうことをやっておるかという御質問でございますが、遺憾ではございますが、留守家族にまで手を差し伸べるわれわれには力がございませんので、こういう運動をやっておる、遠からずお返し願えるであろうというので、激励や慰問の言葉を差し上げるという程度で、われわれの手ではそれ以上はできなくて、いまだやっておりません。  なお、この漁場において拿捕された船主が困っておりますのは、先ほど申し上げた通りでございますが、船主といたしましては、船をとられ、給与をやるべき人間向うにおる。商売をやらずして給与は払わなければならぬという実情になっておりますので、今、疲弊こんぱいしております。政府といたしましてとっていただいたのは、拿捕せられた船に対する公庫の金融は優先するという一事でございまして、このためには、その手続その他の指導を本部がやっているというような実情でございます。ささやかではございますが、これだけやっているような次第でございます。  なおこの件につきましては、政府にいろいろとお願いいたしましたが、最後の問題は、相手のあることであるから早急にはいきませんが、国内の問題は、いつでもできるであろうというのにもかかわらずやらないことは、はなはだ遺憾であるということで、毎日のようにお願いいたしておりますが、やっと最近、先ほど申し上げました事情になったようなわけでございます。何かまだ言い足りないような気がいたしますが、以上、お答えいたします。
  31. 木村文男

    ○木村(文)委員 そこで委員長に対して、これと関連しますが、この際申し上げておいた方がいいと思います。三人の参考人方々の御説明によりますと、問題は船主に対する対策、これは主として金融の面になると思います。それから抑留者に対する対策、これは抑留者自身に対する援護、それから留守家族に対する援護の二つに分れている。その中でも応急的な対策と恒久的な対策の二面が出てくると思います。そういう対策になりますと、私はどうしても政府関係当局の責任ある筋の者の当委員会に出席を求めまして、私どもはその所信をただしたいと思います。その取り計らい方を委員長に希望いたします。
  32. 原健三郎

    原委員長 木村君にお答えします。本日のこの三名の参考人の御意見、説明が済み、またその質疑が済みましたあとで、直ちに外務省のアジア局長中川融君が出てきておりますので、この方に質問をやり、さらにその他の関係当局に引き続き質疑を続行し、本委員会の意見をまとめたいと思っています。
  33. 眞崎勝次

    眞崎委員 各委員の今までの質問その他参考人の御説明によって考えましたことに基いて、私の希望を申し述べたいと思いますが、本委員会として、もはやこの抑留者帰還あるいは留守家族その他被害の救済について、政府に対して具体的に取るべき手段を要望する時期じゃないかと思いますので、これを考慮願いたいと存じます。また根本的の解決策についても、すでに自由民主党においても、それぞれ関係筋において声明書その他の研究中でございますし、社会党はすでにこれを声明もしておるような事情でありまするから、関係委員会である本委員会からも、根本対策についても何かの手段を政府に対し要望し、あるいはまた米国大使館についても、要望するところあってしかるべきじゃないかと存じます。ぜひ御考慮を願いたいと存じます。  実は、御参考までに申し上げますけれども、私は去る六日の日に、超党派的に、漁業に一番関係の深い長崎県、佐賀県、福岡県、島根県、山口県、愛媛県、香川県と、その関係議員がみな集まりまして、何とか根本的の対策を考究せねばいかぬというので、外務省の方にもお願いし、また米国大使館に行って、大使に面会すべきはずでありましたが、いろいろの手違いで、私個人で政治部長その他に会って、李ラインに関する米国の見解、安保条約について、もはや日本保護すべき時期じゃないか、ことに竹島を占領しておるということは、まさに安保条約に触れておる問題じゃないか、こうただしまして、なお、日韓両国は兄弟のような国であり、それに対して米国は親のような立場をとっておる今日であるから、いつまでも兄弟げんかをさしておいては、自由主義国家のためにも非常に取らざるところであるから、何とかこの際好意的に、日米親善のために、世界平和のために適当の処置をとってもらいたいということを申し込んである次第でございます。御参考までに申し上げておきます。
  34. 原健三郎

    原委員長 眞崎君にお答えいたします。御意見のほどはまことに賛成でありまして、政府当局との質疑が終了いたしましたならば、本委員会の意見を至急まとめたいと思っております。そうして、私の考えでは、理事各位や皆さんの御賛成を得るならば、具体的に決議案を通過せしめて、政府に実行を迫ろう、こう考えておる次第でありますので、右、御了承願います。
  35. 戸叶里子

    戸叶委員 すでに同僚の委員からいろいろ御質疑が出ましたので、私ただ一、二点だけお伺いしたいと思います。先ほど日韓漁業対策本部田中さんからのいろいろなお話を承わりました。それはよくわかったのですけれども、いろいろな対策を講じておられてのそういう経験を通して、一体それでは韓国抑留されている人たちを釈放させるには、どういう方法をとったらいいというような何かお考えをお持ちでいらっしゃいましょうか、この点、承わりたいのであります。
  36. 田中道知

    田中参考人 事が外交に関することでございますので、われわれしろうととしては、全く判断に苦しんでいるわけでございます。しかしながら、漁業者漁業者なりに、こうあったらばどうであろうかという漁業者の試案というようなものを申し上げてみますと、ともかく人質向うが取っているのであるから、それを帰すには、尋常一様では帰さない。ところが幸い向うは、大村収容所に収容されている者を帰せば、それに応じようというような話もあったように伺っておりますので、国の権威を失しない程度においてそれができ得るならば、直ちにやっていただいて、抑留漁夫を帰していただきたいとわれわれはかく考えております。根本的な問題といたしましては、先般、韓国日本に向って経済断交を声明いたしました。これはもちろん日本側としても、これを実行するにおいてはもろ刃のやいばであって、われわれ日本側にとっても痛いことではあろうが、向うにとっても相当痛いことであろうと考えるのであります。われわれがあの近海で漁業をいたしておりますと、向う漁船漁業者も、相当たくさん働いております。この漁業者の魚が、あるいはノリが日本に輸入品として多く参っております。これらをとめることによって、韓国に与える打撃というものも相当多いので、その経済断交に応じて、しばらくの間それを実施いたすならば、必ずや反省の実があがるのではなかろうか、われわれは漁業者なりにかく考える次第でございます。
  37. 戸叶里子

    戸叶委員 最初の方の大村収容所の問題は、これは政府当局にも聞かなければならない問題でございますから、あとからにしたいと思います。  そこで、第二点としてお伺いしたいのは、皆さんの方から抑留されている方々差し入れを行なっていらっしゃるようでございますが、その差し入れをする場合には、どういうふうな方法をとって差し入れをされているか、そうして、そのときに何ら問題なくその目的を達成せられていたかどうか、この点を伺いたいと思います。
  38. 田中道知

    田中参考人 第一次のときは、最初でございましたから、外務省から韓国代表部とよく連絡をしていただきまして、割合にスムーズに参りました。ただ一つわれわれといたしましては、日本監視船なり巡視船が近くに行っておりますので、これに積んでいって渡したいというのが念願でございましたが、それはまかりならぬというので、民間船を雇い上げて行った。こういうような実情でございます。ただ一点、その点は遺憾でございましたが、差し入れ方法は、割合にスムーズに行っていると申し上げるほかはないと思います。
  39. 戸叶里子

    戸叶委員 差し入れに行かれた方は、向う抑留者にお会いになれましたでしょうか、なれなかったでしょうか。
  40. 田中道知

    田中参考人 上陸を許しておりません。
  41. 戸叶里子

    戸叶委員 まだ帰っておらない六百三十九名の抑留された方の中には、一ぺん釈放されて、また抑留されたというような方もおりますでしょうか。全然一度だけでございましょうか。
  42. 田中道知

    田中参考人 その点はっきりしておりませんが、多少あるではなかろうかと想像しております。
  43. 戸叶里子

    戸叶委員 数はわかりますか。
  44. 田中道知

    田中参考人 数はわかりません。
  45. 木村文男

    ○木村(文)委員 関連して、田中さんにちょっと。差し入れをする場合、あなたの方で日赤なんかと連絡をとったことがありますか。
  46. 田中道知

    田中参考人 日赤と連絡もとっておりますが、日赤とは主として待遇の問題、刑務所抑留所における待遇の改善について、何とかしていただきたいということで連絡をとっておりますが、日赤にこういうものをやってくれというような連絡はいたしておりません。
  47. 原健三郎

    原委員長 これにて質疑は終了しました。  この際参考人各位一言お礼を申し上げます。各位には、御多忙中にもかかわらず、長時間にわたって御出席をわずらわし、かつ詳細に実情お話下され、本委員会として、今後の本問題の解決の上によき参考となりました。委員長としてここに皆さん方に厚くお礼を申し上げます。長時間お引きとめいたしまして、御苦労様でございました。これをもってお引き取りを願いたいと思います。     —————————————
  48. 原健三郎

    原委員長 次に、政府当局、わけても外務当局に対しお尋ねいたします。われわれは、韓国抑留同胞漁民の一日も早く引き揚げを完了されることを熱望いたしております。この韓国抑留同胞漁民引き揚げについて、外務当局は現在何をやっておるのであるか、将来いかなる対策をもって臨まんとするのかという点を簡明にお答え願いたいと思います。
  49. 中川融

    ○中川(融)政府委員 韓国抑留されております日本人漁夫の早期釈放につきましては、人道上の問題といたしまして、われわれは最も熱心にやらなければならぬと考えまして、これは日韓問題の中でもまず第一に取り上げるべき問題として努力してきておるのであります。しかるに、すでに皆さんも御承知のように、大体昨年の終りころから、すでに刑期を終えて、当然向う国内法によっても内地に帰還すべきはずの漁夫の方々が、釜山の外国人収容所に収容されたまま帰国を許されないという事態が発生して参ったのであります。今日まで約一年強の間に、ごく少数の人しか帰ってきておりません。あるいは未成年者でありますとか、あるいは老人であるとか、あるいはどういう考慮からでございましょうか、若干の人が帰っておるだけでありまして、大部分の人は、依然として釜山の収容所に収容されたまま帰らないのであります。これにつきましては、昨年暮れよりわれわれは口をすっぱくして韓国側に交渉しております。いかなる理由によりましても、帰国を阻止される理由が発見できない。たとい韓国側の国内法立場に立っても、帰国を阻止される理由が発見できないという形でありますので、これをすぐに帰すようにということを再三申しまして、繰り返し折衝したのでありますが、ナシのつぶてで一向音さたがなかったのであります。ところがことしの夏ころになりまして、韓国側はこの問題に関して、あなたの方はそう言うけれども、日本でも大村収容所に、戦前から日本におり、ある意味で永住権を持っておる韓国人を入れたまま釈放しないではないか、それも刑期を終えた者を入れたまま釈放しないではないですかということを言い出してきたのであります。それで、その問題に対しては、一体それは根本が違うじゃないか、日本の方は、国内法規に基いて韓国に強制退去しようとして入れておるのである、従ってあなた方が引き取れば、いつでも即刻これを韓国に送り届けようと思っているのに、あなた方が引き受けないからこうなっておるのだということを説明いたしましたけれども、先方はこれについては、強制退去について何ら日韓間に合意がまだできていない、この点は、終戦前からおる韓国人の処遇の問題として、日韓会談の一つの大きな項目だったのである、それが日韓会談が決裂して片づかない、従ってその処遇の問題が片づかない以上、日本側の一方的な強制退去を受け付けることはできないのだという主張を繰り返すのであります。われわれはこの抑留漁夫の方々の早期釈放を何とか実現したいと考えておりますので、その間に何らか話し合いの道がないかと思いまして、大村収容所の今の、終戦前からの抑留韓国人、終戦前から日本に在留しておる韓国人、これの釈放ということが一体日本人の漁夫を帰すことの絶対必要な条件であるのかということを質問いたしました。それに対しては、条件とはいわない、しかしながら、これが実現されれば、非常に日本人漁夫の帰国は容易になるであろうというふうな言いぶりであります。しかしその後再三向うと話し合いました結果、結局向うの真意は、大村におります——現在大体三百五十名ぐらいになるでありましようか、終戦前から日本に居住しておる韓国人で、犯罪を犯し、刑期を終え、韓国に強制退去命令の出ておる人たち、これを内地において釈放してもらいたい。そうすれば韓国の方でも、刑期を終えてすでに釜山の収容所に収容しておる日本人の漁夫の人たち、大体二百七、八十名であると思いますが、これを即刻帰すという線を相当はっきり出してきておるのであります。これについては、日本側といたしましては、入国管理令——これは法律の効力を持つ政令でありますが、その入国管理令に基いてとっておる措置であるので、国内法立場からいいまして、これを韓国側の言う通りにすることは、いろいろ困難があるのであります。従ってその問題につきましては、法務当局あるいは治安関係の国警その他の当局と緊密に協議してきておるのでありますが、今までのところ、まだ、韓国側の言い分をそのまま認めて、これでこの漁夫の方の早期釈放をはかるという方針を決定するまでに至っていないのであります。この間に何らか日本としても、法規を曲げずに、しかも韓国側のそういう条件的な申し入れに対して、ある程度向うのあれに応ずるというような方法はないだろうかということをいろいろ苦慮して研究いたしております。特に最近、李ライン問題が国内でも非常にやかましい問題となってきております。この情勢を何とか打開する一つの方策として、政府としてもこの問題は積極的に検討してみたい、こういうことになっておる状況でございます。  なお、韓国抑留されております漁夫の方々待遇問題、これは前から待遇が非常に悪いということで心配し、これを改めるようにということを交渉してきておるのでありますが、ことにことしの夏、漁夫の方で未成年者が七名帰ってこられたのでありまして、その際の話、なお脱走して帰ってこられた人もおるので、これらの方々の話を聞いてみますと、非常に待遇が悪いということがいよいよはっきりして参りましたので、さらに詳細な報告、それらの人から聞きました報告も添えまして、韓国側に対して強い要求をしておるのであります。その後、韓国側からは、待遇改善につきまして、韓国側の待遇は調べてみたところ悪くないということであるというごくおざなりな返答がきておりますが、しかし日本側から詳細な資料をあげての抗議をいたしましたことと、なおこれにつきましては、日本赤十字でも非常に関心を持ちまして、韓国赤十字あるいは国際赤十字等に働きかけまして、これの是正方について努力をしております。また赤十字からは、一つお互いに双方の抑留所を視察しようじゃないかということを申し入れておるのであります。これについて先方の赤十字からよろしいという返事は参りませんが、しかしこういう申し入れをして、ある意味で世界の世論にも訴えておるということからして、韓国側の態度も、これが相当響いておるのではなかろうかと期待いたしております。その後収容所待遇がよくなったという知らせはございませんが、しかし収容所の管理当局等にもいろいろ動揺の色があるというような報告もあるのでありまして、ある程度向う側も反省しておるのではないか、かように考えております。抑留漁夫の方々の釈放、早期帰国の問題がいまだに実現を見ていないのは、はなはだ遺憾でありますが、しかし政府といたしましても、必ずしも法律論のみに拘泥せず、何とか実質的な解決方法をはかりたいと考えております。なお二、三日前でありましたが、韓国側から不意に漁夫の方々を四名返して参りました。これは何らの前ぶれもなく、四名の方々を先方の定期船に乗せまして返してきております。この方々からの報告等も聞きまして、さらに現在の向う待遇状況ということを調べてみたいと考えております。
  50. 原健三郎

    原委員長 これに対する質疑。木村文男君。
  51. 木村文男

    ○木村(文)委員 アジア局長にお尋ねいたします。第一点は、日韓会談の再開の見通しはどうなっているかということ。
  52. 中川融

    ○中川(融)政府委員 日韓会談につきましては、御承知のように、一昨年末以来、鋭意これが再開について努力してきたのでありますが、なかなか思うにまかせなかったのであります。しかし最近、李ラインを侵犯する日本漁船をあるいは砲撃し、あるいは撃沈するという例の声明がありまして以来、日本におきましても、世論が非常に沸騰いたしました。また韓国側におきましても、これに応じて、この問題についての相当いろいろの言動が国内に行われておるということで、われわれとしていかにもこれをこのまま放置しておけないという事態がいよいよはっきりして参っておりますので、政府といたしましても、先週の金曜日でしたか、木曜日でしたか、(木村(文)委員「そこをはっきり」と呼ぶ)先週の木曜であったと思いますが、閣僚懇談会を開きまして、日韓問題は、早急に打開をはかるという方針をきめたのであります。もとより、当面の問題は、漁業の問題であります。また抑留漁夫の方々の救出の問題であります。しかしながら、この問題は、結局日韓問題全体と関連を持ってくるのでありまして、われわれ政府といたしましては、どうしても日韓問題全体についてあらためて決意を強くいたしまして、これの打開をはかるという方向に進もうということに決定いたしておるのであります。なお、このためには、日韓双方にある意味で共通の利害関係を持っております米国政府をも動かしまして、米国の援助、協力というか、推進と申しますか、これを要請しようということになっておりますので、何とか遠からざる機会に、日韓問題の打開の道を再び開きたいというように考えております。
  53. 木村文男

    ○木村(文)委員 アジア局長の今の責任ある答弁によりますと、日韓会談の再開は、今日、漁夫の抑留の問題から世論が非常にやかましくなってきたし、このまま放置はできないというような段階に来ている、政府は閣僚懇談会まで開いて、重大なる決意をしたという御説明でございました。しかもその御説明の中に、私が期待しておったこの抑留の問題は、いわゆる李ラインの問題と切り離して解決はできない段階にある、こういうお話でございましたが、私はその理由がわからない。どうも納得がいかない。なぜ季ラインの問題と日韓会談全般の問題とを切り離せないのか。ただいま起きている李ラインの問題は人道上の問題である。かりに李ラインをしいたその問題は、日韓会談の外交上の全面的な問題であるとして一歩譲り得るとしても、今回起きている拿捕あるいは抑留というような問題は、これは人道上の問題である。こういうことを考えますと、どうしてもこれは切り離して解決すべき問題だと私は考えますが、アジア局長の見解をただしたい。
  54. 中川融

    ○中川(融)政府委員 日韓の全体の問題と切り離しては解決できないという見通しを申し上げました点は、ただいま御指摘になりましたうちの李ラインの問題であります。すなわち、日本は季ラインがいかぬ、向う李ラインをどうしても必要とするということから、日韓漁業の問題が非常にむずかしくなっているわけであります。この問題につきましても、われわれとしては、これは当然切り離してやるべきじゃないかということをずっと主張してきておるのであります。しかし韓国側は、これを、そのほかのいろいろな財産の問題であるとか、あるいは国籍の問題であるとか、そういう問題と切り離せないという態度で、それをここ三年間ぐらいにわたって一貫しておるのであります。従って、結局交渉を開いてみましても、その根本的な漁業の問題は、ほかの問題と一貫しなければ、解決しないという先方の態度が強いということから申し上げたのであります。しかし抑留漁夫の方々の救出の問題は、御指摘になりましたように、これは人道上の問題でありまして、そういう全般的な問題の解決を待たずに、何とか早急に解決しなければならぬ問題でありますので、これについては、われわれ政府といたしましては、当然他の問題とは切り離して、まっ先に解決したいと考えております。なお、韓国側の態度も、先ほど申しましたように、大村とはこれを関連せしめておりますが、他の問題とは別に関連せしめないで話を進める態勢をとっておりますので、この問題だけは人道上の問題として切り離して解決ができる、またそういう方向に進めていきたい、かように考えております。
  55. 木村文男

    ○木村(文)委員 この問題だけは、人道上の問題であるから、日韓会談と切り離してできる可能性がある、——まあできるというような力強いお言葉をいただきまして、これは政府としてまことに当を得た御方針だと敬意を表します。そこで、もし万一この問題が切り離せないような事態になった場合には、外務省として、政府として、第一の策としては、正式にアメリカに、積極的な、強力な仲介の労をとっていただく御意思があるかどうかということが第一点。  第二点は、それが不可能になった場合には、いわゆる国連に対して提訴をするところの用意があるかどうかということ。この二点についてお伺いしたい。
  56. 中川融

    ○中川(融)政府委員 アメリカは、終始日韓問題の打開に熱心に協力しておるのでありまして、今回、日韓問題がまた非常に先鋭化してきたという事態に当りましては、アメリカは率先してこれに対して憂慮の意を示しまして、日韓双方の中に立って、これのあっせんと申しますか、口をきいて、何とかこれを打開推進したいという気持を表明してきているのであります。これに応じまして、日本政府からも、アメリカの強力なあっせんと申しますか、口ききということをぜひお願いしたいと申し入れておるのであります。従いまして、日韓問題のあらゆる問題につきまして、米国が中に立ちまして、双方の間の問題の公正妥当な解決を何とかはかるということに協力してくれると考えております。目下抑留されております漁夫の方々の救出の問題につきましては、従来、日韓間で直接に話合いをある程度しておるのでありますが、今後もこの方法を進めると同時に、またアメリカの協力をも要請いたしまして、ぜひこれの妥当な解決をはかりたい、こういうふうに考えております。  なお国際連合提訴の問題でありますが、これは日韓問題が、たとえば李ラインの砲撃声明というようなことで、非常に危ない事態、いわゆる一触即発というような事態に立ち至り、あるいは遂に先方から火ぶたを切って、ここで一種の戦闘行為が始まったというようなことが起るとすれば、当然国連の関心事項になり得るのでありまして、そういう際には、この方法をも考えてみたいと考えております。しかしながら、今の段階では、アメリカの協力も得て、何とかこれを話合いによって日韓間で片づけていきたいと思って、その方向に努力しようという考えでおるわけでございます。
  57. 戸叶里子

    戸叶委員 ちょっと関連して。——アジア局長の今の御答弁で、アメリカが終始との問題の打開に協力していてくれる、それからまた非常に憂慮している、こういうことは政府からはいろいろな委員会でたびたび私ども聞いて参りました。けれども、何度聞きましても、何か私たちには具体的な案がちっとも示されておらないように思うのです。もうすでに日数はずいぶんだっているのですけれども、いつでもその御答弁は、終始、打開したい、憂慮しているというだけでは、どうも私ども納得がいかないのです。一体具体的にどういうふうにアメリカがこの問題の解決に乗り出してきてくれるのか、または乗り出してきたのか、その具体的の事実をお示し願いたいと思うのです。
  58. 中川融

    ○中川(融)政府委員 アメリカと日本との間では、ワシントン及び東京におきまして、今回の砲撃声明がありまして以来、ひんぴんと話合いが行われておるのでありまして、それによってアメリカの考え方というのも相当われわれにもわかっておるのでありますが、アメリカとしては、やはり日韓双方の中に入って、双方の主張をできるだけ公正妥当と思われる線でまとめるように協力したいということであります。具体的な問題につきまして、たとえば李ラインの問題につきまして、どういう解決をアメリカが考えておるかというような点まではまだわかっていないのでありますが、しかしそういう方向にこれから進めていきたい。つまりアメリカも入れまして、双方の間で公正妥当な線を出すように進めていきたい、こういうことでいろいろと話合いを行なっておるのであります。具体的なことと申しましても、それ以上のことは、今のところまだ具体的な解決策というものが出ておるわけではありませんので、その方向をいろいろ話合っておるということに御了解願いたいと思います。
  59. 木村文男

    ○木村(文)委員 そこで、私は最後にアジア局長に次のことを尋ねたい。これは委員長にも申し上げたいことでございますし、また委員各位にも御協力を願いたいことでございますが、この問題は、私どもの院内だけの問題でなくて、もうすでにこれは国家的な国民の世論でございます。国民的な、民族的な問題であると私は思う。そこで私はこの際、国民代表してきているこの国会から、少くとも当委員会あるいは関係のあるところの農林水産委員会、こういうような面から、当問題を究明するために、また現地の調査及び収容者の慰問並びに待遇の実際の状況、こういったようなことを調査するために、われわれは、国民の名のもとにその任に当る責任があると私どもは考えるのであります。私はアジア局長が、私どもの持っているこの考えに対して、外交上支障があるかないか、あるいは行くべきであるかどうか、それが世論を代表し、世論を巻き起していく上においても必要であるというような見地から御賛成であるかどうか、この点を一つ伺っておきたいのであります。
  60. 中川融

    ○中川(融)政府委員 現地の調査でありますが、これは、一つ李ライン等の海上の状況の調査、もう一つは、韓国の中に行かれまして、収容所の問題であるとか、あるいは京城まで行きまして、韓国政府の要路者にその真意を問いただすというようなことが、いろいろお考えの中にはあるのではないかと想像いたします。このうちの李ラインに行きます問題は、すでにわれわれ政府当局もかつて実施をいたしたことがございます。またそのほかの民間団体の方も実際行ったと思いますが、これは今までもやっておりますし、日本側の一つの自発的な視察といたしましてできるところであると思います。もちろんこれについては、李ラインに入った場合に、向うからいろいろな害を加えられないということの保障を取りつける必要があると思いますが、李ラインというのは、あそこで魚をとってはいけないという向うの法令があるわけでありまして、あそこを単に通過するだけなら、何ら向うも阻止しないことになっておりますので、別にそう困難はないのではないかと思っております。韓国の中に入りまして向う実情を視察し、かつ先方の政府の考え、要路者の考え方を聞くということは、前々から政府自体もやりたいと思っておったところでありまして、これもすでに申し入れたことがあるのであります。今回の問題が起きてからではありませんが、従来再三申し入れたことがあるのでありますが、いつの場合にも、先方はそれを拒否しております。その理由とするところは、政府当局者が来られても、生命、身体等の安全を保障し得ないということを申されまして、拒否いたしております。しかしこれは、われわれとしては、そういうことの申入れをする権利は当然あると考えておるのでありまして、国会議員の方がもしそういう御希望がある場合には、われわれとして韓国側に折衝するということは、当然いたす用意がございます。ただ韓国側の従来の態度にかんがみまして、果してその結果どう向うが言いますか、この点については、確たる成算は持ち得ないというのが、遺憾ながら実情でございます。
  61. 木村文男

    ○木村(文)委員 ただいまのアジア局長の御答弁では、外交上の問題については別に支障はない、こういうことでございます。また李ラインの調査については、これは従来も行なっているから当然可能である、こういう御答弁のようであります。そこで私は委員長に対して、そういうようないろいろの外務省との関係もあるでありましょうから、何とかして超党派的にいろいろ話を持ち込みまして、そういう機会を作りまして、外務省とよく折衝いたされまして、御善処を願いたいと思います。  最後に、先ほどアジア局長は、大村収容所に収容されている者は、入国管理令の違反者に該当する者が多いのだ、従ってその性質は、今回の漁夫の問題とは非常に違うという観点から、法律的に苦慮、研究している、こういうお話でございますが、法は厳然として守られねばなりません。法治国として、法の威厳こそ私は最も大切であると思う。しかしながら、事、国民生命に関する問題しかも何らの罪を犯してない、政府李ラインを認めてない、しかも公海において、当然の権利として漁獲している者に対する危害でありますから、これは国民として非常に迷惑な話だと思う。そこで政府は、気の毒な国民——従来の韓国の法規を犯したものではない、世界の法規を犯したものではない。それを、侵犯者でない者を侵犯者扱いされておるのに、政府が、国内における法律によって、管理令に該当するから、それとの交換はなかなかめんどうであるというお話は、一応はうなずかれるが、これは政治的な解決をする段階に来ておるのではないかと私は思う。でありますから、この国民の民族的な叫びを十分考えられまして、大きなる襟度によって、この大村収容所の問題と現在韓国抑留されている国民のそれとをよくお考えになられて、すみやかなる処置をとられるように特に希望いたしまして、私の質疑を終りたいと思います。
  62. 原健三郎

    原委員長 大村君にお答えしますが、国会議員派遣の件については、よく相談いたしまして、善処いたしたいと思います。  本問題についての質疑は、次会にさらに続行いたすことにいたします。     —————————————
  63. 原健三郎

    原委員長 一時から本会議が始まるそうで、至急委員会を切り上げてくれという御要望がありましたが、この際、柳田秀一君より、遺家族援護に関し特に発言を求められておりますので、これを許します。柳田君。
  64. 柳田秀一

    ○柳田委員 時間がありませんから、簡単に申します。戦傷病者戦没者遺族等援護法の第十七条による更生医療の給付と、同法の第二十一条による補装具の支給について、私は京都府の例を持ってきたのですが、これはおそらく各地とも同じじゃないかと思いますけれども、政府からの委託費が非常に不足しておって、せっかく私たちが戦傷病者戦没者遺族等援護法を改正いたしましても、この恩典が実際に受けられておらぬという実情を聞いておるのであります。これに対して、政府はどういうふうに御認識になり、またそれに基いて、どういうふうにこの法の精神を実際に生かしていこうとお考えになっておるか、簡単でけっこうですから、お答えを願いたいと思います。
  65. 松本征二

    ○松本説明員 お尋ねの件でございますが、戦傷病者の更生医療の問題につきましては、各方面で足りないという要求がだいぶ出て参っておりますので、厚生省でいろいろ調査いたしたのでありますが、これは県の事情によってだいぶ違いまして、現に富山県、新潟県等におきましては、もう更生医療はほとんど要らないというようなことでございます。私の方から申しますと、各県で非常にバランスが違いますので、本年度の予算は五千万円ばかりございますが、これを調整いたしますれば、足りないところに対して、十分御要求に応じ得られると思いますので、この点については心配ないと思います。補装具の方は、実は足りないのでございますが、これは予算も多少ふやしましたことと、年度も年度末に近づいておりますので、その辺の措置によってやりまして、多少足りないところは来年度の方に回しまして、早急に解決したいというふうに考えます。
  66. 柳田秀一

    ○柳田委員 三十年度の予算を見ますと、更生医療が五千万円、補装具が七千七百万円ということになっております。京都府の実情を申しますと、これは原因はいろいろあったでありましょうが、その一番大きな原因は、従来、援護法の施行によるところの宣伝啓蒙が伴わなかったところが、その宣伝啓蒙が漸次行き渡ったのと、昭和二十八年に、援護法の改正によって、支給該当者がふえてきたということが、両々相まったと思うのでありますが、京都府においては、昭和三十年度は、国から京都府への割当は、更生医療が百二十七万五千円、補装具が百一万七千円。ところがこれに対して今のところの所要見込み額は、更生医療で二百五十三万九百七十八円、補装具で三百三十六万七千七百五十円、従って現在予定されている不足額が、更生医療で百二十五万五千九百七十八円、補装具においては二百三十五万七百五十円、こういうような巨額になってきているのです。昭和三十年度では、前年度申請者の大半が未支給であったために、要支給希望者があっても、申請を暫時見合すような指導もしているというような現状であります。従って、これではやはり法の趣旨が十分に行き渡らぬと思いますから、今ここですぐに御答弁をいただこうと思いませんが、当局においても、十分善処方を要請しておきたいと思います。何か御答弁がありましたら、承わっておきたいと思いますが……。
  67. 原健三郎

    原委員長 それでは、本日はこの程度にして、次会は公報をもって御通知いたします。  本日はこれにて散会いたします。    午後零時三十七分散会