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石井説明員 行政管理庁が先月十七日に
運輸大臣あてにお
出しになりました
日本国有鉄道の
経営調査の結果に基きますところの
勧告事項につきまして、先般
行政管理庁の方から御
説明があつたわけでございます。本
勧告は
運輸大臣あてに出されたものでございまして、このお取扱いについては、目下
運輸省において御
検討中であろうと存ずるわけでございます。結局この問題は
勧告が出されます前に、事前にいろいろ世間の御批判の対象となりましたので、この際お許しを
願つて、御
勧告の
内容について目下私
どもが
考えております点を申し上げて、御
審議の御参考に資していただきたいと思います。
管理庁の御
見解を体しまして私
どもの
意見を申し上げる前に、
根本的な問題につきまして
管理庁の方でどういうお
考えでや
つておられるかという点が
一つ明瞭にな
つていないのではないかということが、今回のようないろいろの論争と申しますか、そういうことめいたことになりましたことではないかと実は私
どもとしては思うのでございます。それは結局
国鉄が一体どういう
輸送を行いまして、どういう
設備をいたしまして、どういう
サービスでも
つて国民の御
要請にこたえ、あるいは
国家産業の
発展の
基礎となる
輸送の
使命を達するかという点、これは結局国の
交通政策の
根本ではないかと思うのでございますが、そういう点についてどういう
考え方をと
つているかということが
はつきりすることが、結局私
どもの今後の
経営なりあるいは
資金の
調達という点の
根本を解決する一番大きな要素ではないかと思います。この点につきましては毎々私
どもの方から申し上げておりますように、現在私
どもの
国鉄は、単に現在の
設備を
現状のまま維持するだけでは、とうてい
国民の御
要望にこたえることも、
国家の
経済の
発展あるいは
産業の伸張に
輸送の能力を合せていくこともできないということを申し上げているわけでございまして、結局私
どもの当面の問題は、過去におきますところの非常な
財政的な苦境のために、当然やらなければならない
施設の更新という点がおくれて累積されておりまして、そのために
相当老朽施設がたま
つている。この
老朽施設を一、二年のうちあるいはここ数年のうちに取りかえなければ、
国鉄として
国鉄の
安全度を保
つていき、そうして
国民の皆さんにこたえるだけの
輸送の基盤ができないという点が
一つでございます。いま
一つは当面の急務とな
つております現在の非常に逼迫した
輸送事情、特に
大都市付近におきます
通勤輸送あるいは
東北、
北陸方面におきます
貨物の
輸送力、こういうものが、非常に逼迫していることは、
皆様も御
承知の
通りでございます。これをこのままに放置しておくわけには参らない。
従つてこの
輸送需要に合せた、そして現在の非常に
混雑度を増しておりますところの
輸送を緩和することも
一つの重要な
使命であり、また
国民の御
要望であろうと思うのでございます。それからいま
一つは
国鉄の
近代化でございまして、現在
国鉄が、いわゆる
鉄道が近代的な
輸送機関として生まれかわることは、これは長い歴史を持
つております
鉄道の機能を充実いたしますのみならず、それが
経営の
合理化の
基礎となる。将来においてはこれによ
つて輸送コストの引き下げを行い、そうして
国民経済としての
輸送の
エックスペンスを減らしていく。これがためにはさしあた
つて近代化のために必要な
資金の
投入を行い、そして
合理化を上げる
設備を増していかなければならぬ。具体的に申しますれば
電化であり、あるいは
ディーゼル化であり、あるいはいろいろの作業の
機械化という点にあると思うのでございます。こういうような条件、私
どもの
鉄道をどう持
つていかなければならないかという点、そうしてまた
保安度をどの
程度まで高めて安心した安全な
輸送が行い得るか、あるいは
輸送力をどういう
程度で
サービスをや
つていくか、こういう点とあわせてその
基礎となる
資金の
調達あるいは
資金の使途という点について、
考え方を
はつきりきめていただくことが一番重要なことであろうと思うのでございますが、そういう点について
管理庁の方のいろいろの御
見解が、そのバック・グラウンドとしての
考え方が私
どもとしては
はつきり伺うことができない。また今までにおけるいろいろの
管理庁の御
意見の
発表を見ましても、必ずしも首尾一貫しておらないというような
感じがいたすのでございます。
第二点といたしまして、現在の私
どもの方の
輸送の
設備というものが、果して万全なものであるか、あるいは万全とまで参らなくとも少くとも
保安度、社会的な
要請に合う
保安度を継続して持
つていける
状態にあるかどうかという点の御
見解につきまして、
管理庁の御
意見と私
どもの
意見とが
根本的に食い違
つているのではないかと思うのであります。私
どもの方は決して現在運行しております列車が危険であり、あるいはいつ転覆するかわからないというようなことは絶対に申し上げておらないのでございます。またそのような
運営をいたしてはならないのでありますし、全力を尽してそういうことのないように防いではおりますが、しかしながら現在の
設備が
現状のままで、
現状のような
財政状態で
資金の
投入が確保されないという
状態が、ここ一、二年なりあるいは数年も続くというようなことに
なつた場合におきましては、はなはだ遺憾でございますが、そういうようなことを申し上げなければならないような
状態に立ち至るのではないかということを心痛いたしているがために、たびたび従来とも当
委員会あるいは
国民の
皆様にも
現状を訴えているわけでございます。そういう点につきまして
管理庁の方では、現在の
輸送情勢あるいは
設備の
状態が終戦直後よりは
改善せられたというような
観点から、今日の
状態で一応
安全度が確保されているという御
見解をと
つておられるのであります。この点の
考え方におきまして、
根本的な
食い違いが出て参
つたのではなかろうかと思うのでございます。しかしながら私
ども運輸省にお
出しになりましたこの
勧告書を拝見いたしますと、必ずしもそういうような
根本的な
食い違いが、歴然とこの
勧告で現われておるという
状態ではないように感ぜられるのでございます。この点は従来
勧告をお
出しになる前にいろいろ御
発表になりましたような
管理庁の御
意見と、だいぶそのニュアンスと申しますか、色合いが変
つておられたのではないか、こういう
感じを持つわけでございます。
そこで
勧告事項の
内容の点につきましては、過般
管理庁の方から御
説明があつたわけでございますが、この
勧告事項の
内容に
従つて、私
どもの
考え方を申し上げてみたいと思うのであります。
第一の
グループは、現在の
制度につきましての御
意見でございます。この点につきましては現在
運輸省において、
日本国有鉄道経営調査会という
審議機関を設けて、各界の有識の
方々をお集めにな
つて、御
審議を
願つておるようでございます。また昨年は
政府におきまして、
公共企業体合理化審議会をお作りになりまして、約六カ月にわた
つてこれも御
検討にな
つております。従いまして私
どもといたしましては、そういう
政府のいろいろの
審議機関の御
審議の結果なり、あるいは経過を待
つて、
意見を申し上げるのが妥当ではなかろうかと思
つておる次第であります。ただ
皆様も御
承知のように、
国鉄は一応
公共企業体とな
つて、広範な
自主性を与えられておるということにはな
つております。しかしながら
建前はそうでございますが、実際の運用なりその他につきましては、財務的な面におきましては、特に従来の
鉄道省、
運輸省時代と格段の質的な変化があるわけではないのでございます。若干の点につきましては、自主的と申しますか、ある
程度の裁量の余地は許されて
参つておりますが、しかしながら今日最も重要な
財務関係につきましての
自主性は、基本的な点においてはほとんど変りはないというのが
実情ではなかろうかと思います。こういう中途半端なところが、結局
公共企業体というものについて、いろいろと御
議論を生じ、また私
ども実際に
運営いたしておりますものにとりましても、割り切れない結果を生じておるという点はあるかと思うのでございます。こういう点は、
政府の諸
機関における慎重な御
審議、それから
国会における大局からごらんになりました御
検討、そういうものを御期待申し上げるわけでございます。従いまして
経営委員会あるいは役員の構成、任免、あるいは
内部機構の問題、
人事管理の問題というような点につきまして、
管理庁の御
勧告にな
つている
事項は、主として
政府においてお
考え願うべき問題であろう、こう
考えておる次第でございます。ただこのうちで一、二御
指摘の点につきまして、私
どもは弁明申し上げたい点もございますが、これはその次の
グループのところで申し上げたいと思います。
ただ
人事管理については、広範に
自由任用の道が開かれておるにかかわらず、
部外からの
人材の登用に見るべきものがないというような御
指摘がございましたが、この点につきましては、私
どもは広く
人材を求めることについては、強い関心を持
つているところでございますが、しかし有能な民間の方に、
国鉄の
内部の人とな
つていただくためには、いろいろな点、率直に申し上げれば給与その他の点で非常に困難な点がございます。そういうことで現役の有能な
方々が
国鉄の
内部に入
つていただくということについてはいろいろ
考えて
参つても、実現は困難であつたという
実情は御了承を願います。そういうことでございますので、いろいろ
部外の
方々の
知識経験を生かして
鉄道の
経営に有益な御忠告、御
指導をいただくというためには、従来ともや
つておりましたが、
委員会あるいは顧問とかいうような形で御
協力を得て、できるだけこの趣旨を生かすようにや
つて参つておるということを御了承願いたいと思うのでございます。
次に
勧告事項の第二の
グループでございますが、これが問題の
根本点ではなかろうかと思うのでございます。結局この第二の
グループにつきましては二つの
観点があるかと思いますが、
一つの
観点は、先ほど申し上げました
施設の
回復状況という点についての
見解の相違が
一つある。いま
一つはその
施設に対してこれを手当していく
資金の問題が
一つある。こういうふうに
考えちれるわけでございます。
管理庁の御
意見は、大体におきまして二十四年までには
戦災復旧に重点を置いてや
つて参つたが、その後
老朽回復、
改良強化に努力した結果、その
状態は
戦争直後の
混乱状態を脱して、
相当の
改良を実施しておるのである。この点につきましては私
ども何ら御異論はないわけでございまして、
施設の
戦災復旧はおおむね
昭和二十四年度までに実施をいたしておる。ところが二十五年度以降の問題といたしましては、御
承知のように
朝鮮動乱の勃発がございまして、非常な
輸送量の激増と
なつたわけであります。従いましてその後の私
どもの
施設といたしましては、限られた非常に苦しい
資金でも
つてこの
施設の取りかえをや
つていかなければならぬ、あるいはまた
輸送の増加に対応する
設備もや
つていかなければならぬ、こういうような
状態に迫られたわけでございます。その結果といたしまして、一部
老朽施設の取りかえというものが十分な形ではできないという結果になりまして、その取り残された部分が若干ずつ毎年累増して参つたわけでございます。これが
昭和二十八年度以降私
どもが
減価償却費の増額によ
つてこの点を払拭いたしたいということを、ここ二、三年間毎回お願いを続けて参
つたのでございます。ところが
管理庁のおつしやる点によりますと、たとえば
レールのごときは、
昭和二十六年度で取りかえが完了しておるというようなことでございますが、こういう点につきましてはもちろん
管理庁のような御
計算をいたしますれば、そういう
計算はできるかと思いますが、現実にどういう
状態かということでございますと、
管理庁の御
計算に従えば、まず毎年三万三千トンの
レールの
投入が
基準だ、こういうお話でございます。この
基準で
計算いたしますと、ただいま
国鉄の
レール総トン数は二百三十五万トンでございますので、これを全部取りかえるには七十年かかる。
レールの寿命は御
承知の
通り、
本線路などにありましては大体
平均二十年から二十二、三年、側線でありましても二十五、六年から三十年というのが常識的な
数字でございます。
従つてそういう御
計算で三万三千トンが
基準だという御
計算になりましても、それで果して
実情に適するかどうかという点を御験算にな
つていただいたならば、直ちにその不合理な点がおわかりにな
つたのじやなかろうかと思うのであります。ただ現在私
どもの持
つております
資料、
調査に従えば、
不良レールはなお二十万トンございます。この点はまだ
投入不足ということが言えるかと思うのでございます。
車両の
状態につきましても、
管理庁の方は、
国鉄の
耐用年数がきわめて短かい
考え方をと
つておるという点を御
指摘にな
つておるのでありますが、私
どもは必ずしも短かいとは思
つておりませんが、しかしかりに三十年に
耐用年数を延長いたしまして、
管理庁がおつしやるように長い
耐用年数で
計算いたしましても、
蒸気機関車三〇%、
貨車が二八%というように
耐用年数を超過いたしておりますところの車が
相当たくさんあるわけであります。それから
客車、
電車につきましては、
平均車令は若干短縮はいたしておりますが、
内容的に見ますと、
客車のごときは
木製客車を鋼体化いたしまして、その
改造車を一応新車と同じように全く新しい年令からスタートさせて
計算いたしておるわけでございます。実際問題といたしましては、これは
実情上からいえばはなはだ不適当だと思うのであります。一応そういう
計算をしてみればそうなる。あるいは
貨車などにつきましては、御
承知のように
戦争中非常にたくさんの
貨車を一時にふやしまして、その当時の資材の劣悪なるのに毛かかわらず、いわゆる粗製乱造いたしたわけであります。その後
改良も加えておりますが、しかし全体的に見れば実質的にはそういう点が、年こそ若くてもいわゆる
老朽ではございませんが、若朽というようなことにな
つておるわけでございます。
車両の
故障事故件数は今なお戦前の八・二倍という
数字を示しておる。最近におきましても
東京鉄道管理局などにおきまして
電車の
車両事故というものは、動いている間に起きます
事故件数は、いろいろの努力によりまして先年よりも減らすことができましたが、しかし車庫の中で発見いたしておりますところの
事故は、前年の倍にも上
つておるというような
状態であります。
それから隧道、橋梁、
橋台等につきましては、これは実態上の問題としていろいろ
議論があるわけでありますが、この点につきましては、先ほど申し上げました
運輸省の
経営調査会におきまして、純然たる
専門家の第三者によ
つて実情を調べたらよかろうという御決定になりまして、
実地調査班が
数個所お出に
なつたようでございます。その結論ばまだ私
ども伺つてはおりませんが、そういうような点でいろいろ御
検討願えれば、私
どもが申し上げておることは決して偽わりではないという点の御
判断が願えるものと確信をいたしておる次第であります。
なおそれ以外に
電気関係あるいは
通信関係の
設備などにつきまして、これは御
承知のように非常に
耐用年数も短かく、また
施設も
近代化に伴いまして古い型がだんだん使えなくなるという率は非常に高いわけでございます。そういう点につきましては、私
どもの方といたしましても
電気関係の諸
機械、諸
設備は
相当ございますが、こういう点について
管理庁の方では御
調査がなかつたわけでございます。御
調査がないことは別にとやかく申し上げることはないと思うのでありますが、しかしながら全体的に御
判断をいただく場合には、やはりそういう点も含めてごらん願うべきではなかつたかというふうに
考えられる次第でございまます。
次に問題は、いわゆる
減価償却費問題とな
つております。こういう諸
設備の取りかえに必要な経費、それをいかなる
資金でまかなうかという問題でございますが、この点につきましては
減価償却の
考え方でございまして、
管理庁の方のお
考えは、
国鉄は国の
営造物法人である、
従つて事業を解散した際は国が投下した元の
資金を回収することば予定していないのであるという御
見解でございます。私
どもの方は、これは
一般私企業の
減価償却と別に異
なつた
考えをする必要はない。
国鉄がいわゆる
公共企業体といたしまして、国の
財政から離れて独立の会計でも
つて企業を維持、継続、
発展さしていく、そういう
建前のもとに
減価償却制度を設けておる以上は、
一般の
私企業と
根本的な
考え方において何ら異なる必要はないのではないか。ことに
管理庁のようなお
考えでいくとすれば、結局ある時期、すなわち私
どもの方の
施設が取りかえなければならないというような時期には、その都度
国家の再投資が必要とな
つてくるわけであります。すなわち
資金の回収を予定していないのだということでございますから、そういう際にまた新しい再投資をするということが前提でなければならないと思う。現在
国鉄に対して
政府なり
国家がおとりにな
つておる
建前は、明らかにそうではないのでございまして、
減価償却費によ
つて自己
資金を生み
出して、新しい
施設を作りかえる場合には、その
資金でも
つてや
つていかなければならぬ、こういうふうに
考えておるわけでございます。あるいは言葉が不適当かもしれませんが、自分の
企業の力でや
つていかなければならない、こういうことだろうと思います。従いまして
管理庁の御
見解によ
つて一応投下した
資金を回収することを予定しておらないといたしましても、これは
国鉄がいわゆる事業を解散したというような事態に逢着した際の御
議論でありまして、私
どもは
国鉄というものが未来永劫続くとは申し上げかねますが、しかしながら
鉄道の
使命というものは、ここ数十年というものは依然として十分に働いて、そして
国民の生活の
基礎となり、
国家経済の基盤となるということを予想しておるわけでございます。
従つて事業の継続ということが
建前である以上、やはり一ぺんつぶれましたからとい
つて、それを無価値として除却すればよいというわけにいかないので、直ちにそれにかわるべき
施設を私
どもの
企業の力で作り
出していかなければならない、こういう
考え方でございます。こういう
根本的な
考え方が第一点に相違いたしておるわけでございます。
しかしこういう
根本的な
考え方の
議論は別といたしまして、結局現在の
減価償却費が足りるか足りないか、幾らが適正であるかということが、いわゆる
国鉄が黒字である赤字であるという
議論の最も大きな中心点とな
つての
議論でございますが、この点については、
管理庁は
国鉄の
減価償却費は百七十億ないし二百億でよいのだというような御所見を前に
発表にな
つておるわけでございます。しかし今回の
勧告については、その点は明瞭にはな
つてはおりませんが、しかし結局修繕費と
減価償却と合せて約四百九十億でございますか、
昭和十一年度の修繕費と取りかえ推定額との合計、物価上昇率と資産数量の増加を見込むと約四百九十億となるということを言
つていらつしやるのでございますが、おそらくこういう点でやはり依然として二百億あるいは百七十億
程度というようなお
考えを持
つておられるのかとも思うわけでございます。この
数字の出ました根拠につきましては、私
どもの方といたしましては非常に推定が多い
数字でございまして、資産数量の増加率のごときは、
管理庁の方の御
資料によりましても七割を増しておるのでございますが、それは価格関係であるということで、物量だけを見れば四割三分だというような増加率だという御
計算であります。そういう
計算の
内容を拝見いたしましても、私
どもの方で
計算をいたしますと、物量
計算だけでも八割以上の
数字にな
つておりますが、そういう点でいろいろ
数字上の
見解の
食い違いもあるわけでございます。ただこれは当初の取りかえ推定額が
減価償却費に当るものだという点について、初めから
根本的に大きな御
見解の違いがあると思うのであります。
それでは現在
国鉄の資産は幾らあるかと申しますと、これは償却資産だけで約一兆八千億と申しておりますが、この点につきまして
管理庁の方としては、その
数字の
計算の正確性も疑わしいというようなことを言
つておられるのでありますが、なるほど私の方も一銭一厘間違いのない
数字だというふうに申し上げることはできかねますが、しかしながらこれは
昭和二十二年及び三年におきまして行いました実態
調査の結果を
基礎といたしまして、その後の物価の上昇率並びに資産の増減を
計算して推定いたしておりますので、実際そんな大きな狂いがあるものではないということは確信を持
つて申し上げられますし、また現在再評価を実施中でございまして、全部まとま
つてはおりませんが、ただいままでの中間的な見通しにおきましても、一兆八千億という
数字は若干上回ることはあ
つても、これより下ることはないのじやないかというような
数字が出ておるのでございます。そういう一兆八千億の償却資産に比べまして、わずか百七十億あるいは二百億というようなものの償却でよろしいということになれば、これは結局
国鉄の
設備は全部で八十年なり百年なりかからなければ更新しないというような結果に相なるかと思うのであります。従いまして私
どもといたしましてはかような
数字を御納得申し上げるわけにはいきかねるかと思うのでございますので、結局問題といたしましてはそういう低い評価ではなくして、
減価償却の
計算方法についていろいろ御
異議がある、こういうふうに
考えられるわけでございますが、その点はいろいろ償却資産の
内容について、トンネルの年数であるとかあるいは土工の年数であるとか、そういうものが、現在使
つておる
耐用年数はむしろ短かいのではないかという、御
意見といたしましてはこれは私
どもも決してわからないことはないのでございます。ただ私
どもが今まで使
つておりましたのは、法人税に準拠してや
つてお
つたのと、それから今まで
減価償却を認めていただきましたのは、結局第一次再評価ベースによ
つておる。
従つて現在の実勢から見ると四割も五割も低いベースでも
つてや
つておられる。従いまして
考え方といたしますれば、
耐用年数をそれでも
つてもうすでに倍近くも延ばしておるという結果になるわけでございます。そういう場合におきまして、一応現在法人税法の
計算方法に準拠してや
つてお
つて、いろいろ予算上の御要求なりあるいは
減価償却費というものについての
考え方をや
つておつたということにすぎないわけでございます。従いまして私
どもも適正な
減価償却費を計上していただくという段取りに
なつた場合におきましては、いろいろ
耐用年数その他の点につきまして
検討を加えるべく準備もいたしておりますし、
検討もいたしておるわけでございますが、そういうことをいたしました場合において、果して幾らくらいの
数字になるかという点につきましては、推定でございますが、やはり四百八十億から五百億という
数字がどうしても出て参るのではないか、私
どもかように
考えておるのでございます。
それで
管理庁の御
意見の中で、一応私
どもの方のいろいろ
施設の実態
調査のやり方が不完全であ
つて、台帳などが整備されておらないというような御
指摘があつたようでございますが、これは私
どもの方の台帳の
制度その他について若干の誤解があるのではないかと思
つております。私
どもの方では財産の台帳がないということは絶対ないのでございまして、固定資産に関する台帳といたしましては固定資産原簿というものを備えつけてございます。またこれとは別に保守を担当しております現場、保線区あるいは電力区というようなところにおいては、その保守を担当する
設備について必要な保守台帳、あるいはこれに必要な図面を備えつけて管理をいたしておるわけでございますが、この財産台帳と保守台帳がいずれも
戦争中、戦災によ
つて焼けたものもございます。また終戦に際してわざわざ焼いたものもございます。しかしながらそれは二十二年度から二十三年度末にかけて現地を
調査いたしまして数量の把握を行いまして、全部整理をいたしたわけでございます。
従つて二十三年度以降につきましては、前に焼けました原簿によらなければわからないような、取得年度がどうしてもつかめないというものも若干は残
つております。しかしこれは今日おしかりを受けても何とも仕方がないものでございます。過去の経歴の一切を示すものが焼けてしま
つておるということでございますから、
従つてその点はいかにおしかりを受けてもやむを得ない、どうにもしようがないのでありますが、財産台帳も保守台張もすべて整備しておるのでございます。現在あるものにつきましてある
状態というものは、
はつきりつかんでおるわけでございます。
管理庁は、ある管理局についてお調べに
なつた際に、二十七年十月に帳簿様式を改正した、その帳簿様式を改正した際に、旧帳簿から新帳簿に移す場合に最後のしりだけ書いてあとを続けておるというのをお取り上げにな
つて、そうして二十七年度以前の財産移動は何も書いてないというようなことを言
つておられるのでございますが、これは古い帳簿をちやんと保存してございますので、これをつなぎ合せてごらんになればわかることなのでございます。そのほかあるいは
施設台帳の局で持
つております写しの方を御
調査にな
つて、工事の竣工が正確に記録されておらないというような御非難をしておるようでございますが、これなどは結局もとの帳簿には全部竣工年月日を書いておりますが、管理局の持
つております写しの方につきましては、決算期に一度にまとめて整理するということでや
つておりますので、その決算期までの間に御
調査にな
つて、これが整理されておらないというような、私
どもから見ればよく事情をお聞き下さればわかる事柄ばかりではなかろうかと思
つておる次第でございます。
そこで
管理庁の方の御
意見といたしましては、
減価償却費の
考え方のほかに、また
車両を取りかえ法でやつたらいいだろう、あるいは隧道、土工、プラットホーム等を永久資産でやるべきだというような御
意見も出ておるようでございます。これらは実際問題といたしましては、適正な償却費が見積られてそして適正な
耐用年数をきめるといたしますれば、形式だけの問題でありまして、それによ
つて実質的に何らの
経営経費的な影響が出てくるものではないのであります。むしろ取りかえ資産などにいたしますと、毎月の取りかえ費というものは非常に波動が多くなるわけでございまして、ある年は非常に多くの経費を要するということになりますから、そういうことを防ぐために作りました
減価償却制度に対して、一歩後退となる取扱い方になるわけでございます。また隧道、土工などが永久資産であるというのは、お
考え違いではなかろうかと思うのでございまして、隧道にいたしましても、現在の古い隧道はほとんど新しく掘り返されております。路盤な
ども新しいところへどんどん切りかえていくというような
状態でございます。これが
耐用年数の点につきましてはなおいろいろ御
議論があるかと思いますが、これをも
つて永久資産というように、土地のごとく使用によ
つて原価が減らないというようなものと一緒に
考えるのは、会計的な取扱い方として妥当を欠くものだというように
考えておるわけでございます。
管理庁はそのほかに、修繕費を毎年大幅に減額してこれを業務費に流用しておるということをおつしや
つておるわけでございますが、これは
国家予算と対比いたしますとまさしくおつしやる
通りのことでございます。しかしこれは過去の経緯を御
承知の方は十分御了承願えると思うのでありますが、
昭和二十四年度におきましてGHQが業務費を対前年度約四割以上削減いたしております。その当時そういう
程度のスケールでは実際にやれないということは
はつきりいたしておりましたが、何分にも当時の情勢でございますので、これは大蔵省、
運輸省も了承の上で、やむを得ず修繕費の方へその分の経費をほうり込んでおつたという格好にな
つております。その格好が今日まで続いておるのでございまして、その点今日まで直さなかつたという形式的な点につきましては、いろいろ私
どもの方でも努力の足りなかつた点もあり、また
政府におかれましてもいろいろの御事情で、そういうやり方をやられたという点についての理由はあるものと思います。業務費それ自体の問題といたしましては、
管理庁自体としても、大勢的に圧縮してお
つて節約の実が上
つておるという
実情はお認めにな
つておるわけでございます。従いましてこの点を特にお取り上げにな
つて、何か形式上の点をとらえて実質的に非常に不当なことをしておるかのごとく御
指摘にな
つているのは、はなはだ私
どもとして遺憾でございます。
大体問題の中心となります償却の問題、実態の問題につきましてはざつとそういうことでありまして、最後に
経営の刷新
合理化の点でございますが、この点につきましては私
どもの方といたしましても
管理庁の御
指摘等につきまして、前からいろいろと
考えておつた問題もございます。また努力をいたして参
つたのもございます。
外郭団体につきましては後刻別途御
説明申し上げまするが、今回新総裁の下に、この点につきましていやしくも
国民の
皆様から御非難を受けることのないようにという
観点から、いろいろの措置を講じたいと
考えております。今回
管理庁の方で御
指摘になりましたのは、か
つて二十八年度にいろいろの財産管理その他に関連してお調べになりましたいわゆる公益法人、営利法人等のようなことにつきましては、特に御
調査に
なつたということではなくして、むしろ工事請負関係の外郭的な団体というようなものについてのお調べが中心であるかと思
つております。この点につきましては、
外郭団体の整理について私
どもの誠意を認めていただければ大へん仕合せだと思うのでございます。
工事業務についてはいろいろの御
指摘がございます。全国でたくさんある工事でございますので、私
どもは
管理庁の御
指摘のようなことが
一つもないということは決して申し上げません。今後この点については十分注意を払
つて、こういう御
指摘を受けるようなことのないようにや
つて参りたいと
考えておるのでございます。ただ
管理庁の御
判断の
基礎とな
つております御
調査の
数字につきましては、これは会計検査院の御検査と違いまして、一応私
どもの方に対するいろいろな
数字上の突き合せをして、間違いないということをお確かめにな
つておやりにな
つていないために、私
どもの方から見れば、必ずしもそういうふうにな
つていないものが、な
つておるというふうにおとりにな
つておる点も随所にあるかと思うのでありまして、この点はおしかりを受けるようなことを私
どもがや
つておりますれば、おしかりを受けることは当然でございますが、そのおしかりを受ける
内容が、十のものが五であつたならば、五という
観点でお調べを受けたい。それが十に広が
つておしかりを受けるようなことがないように、お取り計らいを願いたいものだという
感じを抱いておるのでございます。その点につきましてのいろいろな釈明は、時間が長くなりますので、お手元に差し上げました
資料で御
検討を願いたいと思います。
車両の新造につきましては、これは
管理庁の方でも将来の問題としてということでございまして、私
どもの方としましても鋼体化その他の
改良が終つたあとにおける工場の能力については、いろいろ研究をいたしておりますが、しかしながら直ちに
車両新造は自営の方がいいという結論に到達するのには、まだ
検討すべき多くの問題が残
つておると存じます。
付帯事業として御
指摘になりましたものはいろいろございますが、特に志免炭鉱のごときは、私
どもの方でも現在自営をしなければならないという積極的な必要の根拠はないのでありますが、ただしかしながら今この炭鉱を急速にどう処置するかという点につきましては、何とも方法がない。従いまして私
どもの方としては、現在志免炭鉱については独立採算制をとらせて、できるだけ
経営を
合理化しておるというのが
実情でございます。そういう点につきましては、一
国鉄だけではなくして、
政府全体としていろいろ御心配を願わなければ解決のできない問題ではなかろうかと思
つております。
被服工場あるいは製材場のごときは、これはもう私
ども前から
考えてお
つてや
つておるわけでございますが、何分にも既存の
設備また既存の労働者がおるものを、一挙に解決するわけにはいきかねる。順次
合理化の方向へ持
つていくというほかはなかろうかと
考えておるのであります。
なお共済組合の物資部の問題につきましては、
管理庁の御
意見は、いわゆる給付の
内容をなすところの交付金と事務費とを若干御混同にな
つておるような御
意見かと思いますが、いずれにいたしましても物資部職員を
国鉄で
指名しておりますものは法令上認められており、また他の官庁においても似たようなことをおやりにな
つておると
承知いたしております。しかしながらこれを漸減する方向にはずつと
参つてきておるわけであります。
それから物資部の運賃につきましても、いろいろ御
意見もございまするので、ただいまこの点について
検討して、近く改正をいたしたいと思
つております。
鉄道公安官
制度につきましては、これはただいままで漸減はしておりまするが、しかしながらこれは荷物なり、あるいは乗客なりの秩序、あるいは
事故防止という
観点から見ますときに、現在の警察力にお願いして、防犯まで十分手を尽していただけるかどうか。捜査の方については、これはもちろん警察にお願いすればできないということはないと思うのでありますが、そのことをあらかじめ防ぐということは、これは自衛上私
どもの方では最も大切なことでございます。事が起
つてから犯罪を捜査するというような点につきましては、できるだけそういうことにならないようにするために、私
どもは主として公安官
制度の活用の意義を認めておるわけでございます。こういう点につきまして、現在でも社会情勢の推移に伴
つて漸減はいたしておる。直ちに不要であるという結論は出せるかどうかは、しばらく御
検討の余地を与えていただきたいと思
つているわけでございます。
私
どもといたしましては、もちろん
管理庁の御
指摘になりましたことのみならず、
一般の世論並びに
国会の
皆様からのいろいろ御好意ある御忠告に対しましては、できるだけすみやかにこれを取り入れまして、そうして健全な、また
国民の
皆様に御期待していただける
経営をいたしたいと念願しておるわけでございます。その前に私
どもといたしましても、ぜひ
皆様の御理解を得まして、現在の
財政状態を健全化して、そして新しい、また
サービスのよい
鉄道ができる
基礎を与えていただきたい、かように
考えておる次第でございます。
なお
外郭団体につきましては、大槻常
務理事から御
説明申し上げることにいたします。