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政府委員(齋藤正年君) この答弁書にもお答えしておきましたように、鉱害につきましては現実に鉱害が発生いたしました場合には、その発生の当時の鉱業権者が賠償の責任を負わなければならないということは非常に明瞭でございまして、それは通常鉱業権者が独自の自分の責任において賠償するわけでございますので、そういう地帯における鉱害賠償は社会的にも非常に重大な影響を持っているということにかんがみまして、御存じの
通り臨時鉱害復旧法あるいは
特別鉱害復旧法という
法律によりまして政府が
補助をいたしまして、特に単なる損害の賠償ではなしに原状回復の
措置をとることになっているわけでございます。この点は公共施設についても、あるいは一般の民間の施設についても全然変らないわけでございまして、特に公共施設につきましては高額の
補助をいたしまして十分な原状回復をするようにやってございます。従来はその
予算額が非常に少なかったたためにだいぶんおくれて参ったのでありますが、昨
年度から
失業対策の
関係もございまして
予算が急速に増加されまして従来の二倍
程度の
事業量を、現在のわれわれの
事業能力としてはほとんどフルに近い
程度の
予算をいただくことになりましたので、今後はこういう復旧の方は急速に進むことと思っております。ただここにお答えしましたように、
特別鉱害につきましては区域も全部認定済でございまして、
計画がはっきり具体にきまっております。あとは事務的な、あるいは技術的な準備が整い次第進行し得るのでありますが、一般鉱害の方につきましては加害者と被害者とが十分同意して初めて
計画にのるわけでございます。現在のところ
予算の方は今申しましたようにかなり十分でございますので、もっぱらこの同意の
促進をはかってできるだけ早期に着手するという
措置を今後なお一そうやりたい。従来はそういう希望がありましても
予算がなくておくれておったという点は確かにございましたけれども、現在
程度の
予算であれば、そうでなしに、むしろ同意の
促進、事務的な処理を
促進して早く
予算の消化ができるようにやりたいというふうに一応なって参りましたので、今後はその努力をいたしますれば
相当進むものと思っております。
それからもう一つは、沈下を起さないような
措置をどの
程度とれるかという問題でございます。この点につきましては、実は鉱害につきまして、これだけ掘ったならばこの
程度沈下するという問題につきましての理論的な法則はもとより、経験的な、まあ何と申しますか、平均値というふうなものも実はまだ出ておらないわけでございます。そういうやり方で今までやってきましたのが非常におかしいじゃないかというふうにお考えになるかもしれませんが、従来はその起した損害を金銭賠償するというふうな考え方でございましたので、要するにある
程度の金をもらって納得するというような形で処理されて参ったので、まあそういうことであったような事情もあると思いますが、また同時に採掘の進み方もそれほど早くはなかったので、まあそういう点非常におくれておった。それからまあ
事業者の
事業のあり方もそこまで
計画的と申しますか、そういうことをやるほど進んでおらなかったといういろいろな事情もあると思いますが、これではいけないということで、昨
年度から特に
予算をもらいまして、どの
程度採掘した場合にはどの
程度沈下するかということを、モデル・マインを指定しまして非常な精密測量をやるということを今やっております。これは
相当年限をかけませんと、そのデータが信頼し得るほどのデータが出ませんので、今直ちにそれをもってどうだというほどのことを申し上げることになっていないのは非常に残念でありますが、ここ数年間引き続いてその
調査をいたしまして、ある
程度の一つ基準というふうなものを出したいというふうに考えておるわけでございまして、現在はそういう一般的な基準がございませんので、まず従来の経験に徴してどの
程度までの鉱害は起り得るかということを予測して、それに大体見合う
程度の範囲内で
経済的採算の許す範囲で防止工事なり採掘方法の制限なりを行うと、こういうやり方でやってきたわけでございます。ただお話のように、これは地上物件が特に重要な場合には、その特に重要な物件に直接影響を及ぼすような所については、特に厳重な監督をするということはこれは当然考えられることでございまして、そういうふうなことをやったものも、もちろん特にそういうふうなものについてはございますので、この堤防問題というものは非常に重要な問題でございますから、その点については今後従来よりも一そう一つ気をつけて監督を強化して参りたいというとかうに考えておるわけであります。
それからここにお答えいたしましたように、採掘のためどのくらい沈下するかわからない、御
質問には充填をもっと強化すれば沈下を防止し得るのではないかという御
質問でございますが、それに対してこういうお答えをしてあるわけでございますが、これは実は今申しましたように、沈下につきましてどういうふうな、何と申しますか、力が働いてどの
程度沈下するかということについてはっきり固まった事実がございませんので、こういうふうなお答えをすることになったわけでございますが、また実際問題といたしましても、これは採掘をしたあとを完全に充填いたしましても、これは地下何百メーターという所では上から非常に強い圧力がかかった状態で炭があるわけでございます。その炭をとりましてあとを充填いたしますと、いかなる充填方法を講じましても、その上からかかった圧力に
相当するだけのものをそこへ押し込むことはできない。また採掘途中である
程度天盤が下ってくる。それがまた石炭の採掘のためには、ある
程度天盤を下げるということがまた必要な採掘の便宜をはかるというような
関係もございますので、どうしても完全充填をいたしましてもある
程度下る。それから完全充填をするということが非常に費用がかかりまして
経済的に採算が合わない場合もある。こういうようなことで、結局前に話しましたこととおわせまして、地上物件が非常に重要な問題で、特にその場合にその沈下の影響が特に強いと考えられるような場合には、特別にその地区だけについて採掘を制限するというようなやり方でやっていく。同時にその採掘は河川の施設にどの
程度影響を及ぼすかということを建設省と絶えず連絡をして、その影響を観察しながら採掘をやっていくというふうに、事前の連絡の強化と、それから採掘方法の監督と、さらに具体的なものについてもっと神経を使ってこまかく規制していくというようなやり方でやっていきたいというふうに考えております。