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1955-06-29 第22回国会 参議院 予算委員会第四分科会 第2号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和三十年六月二十九日(水曜日)    午前十時五十一分開会     —————————————  出席者は左の通り。    主査      松澤 兼人君    副主査     田中  一君    委員            雨森 常夫君            植竹 春彦君            堀末  治君            吉田 萬次君            梶原 茂嘉君            田村 文吉君            高田なほ子君            湯山  勇君            武藤 常介君    担当委員外委員 竹中 勝男君   国務大臣    厚 生 大 臣 川崎 秀二君    労 働 大 臣 西田 隆男君   政府委員    厚生大臣官房会計    課長      堀岡 吉次君    厚生省公衆衛生    局長      山口 正義君    厚生省医務局長 曾田 長宗君    厚生省医務局次    長       高田 浩運君    厚生省薬務局長 高田 正巳君    厚生省社会局長 安田  巌君    厚生省児童局長 太宰 博邦君    厚生省保険局長 久下 勝次君    厚生省引揚援護    局長      田邊 繁雄君    労働大臣官房総    務課長     堀  秀夫君    労働大臣官房会    計課長     澁谷 直藏君    労働省労政局長 中西  實君    労働省労働基準    局長      富樫 總一君    労働省婦人少年    局長      藤田 たき君    労働省職業安定    局長      江下  孝君   事務局側    常任委員会専門    員       正木 千冬君   説明員    大蔵省主計局主    計官      大村 筆雄君    厚生省国立公園    部長      森本  潔君    厚生省公衆衛生    局環境衛生部長 楠本 正康君     —————————————   本日の会議に付した案件 ○昭和三十年度一般会計予算内閣提  出、衆議院送付) ○昭和三十年度特別会計予算内閣提  出、衆議院送付) ○昭和三十年度政府関係機関予算(内  閣提出、衆議院送付)     —————————————
  2. 松澤兼人

    主査松澤兼人君) ただいまから第四分科会を開会いたします。  本日は厚生省及び労働省所管について議題といたします。  それでは、まず厚生省所管について政府説明を求めます。
  3. 川崎秀二

    国務大臣川崎秀二君) ただいま議題となりました昭和三十年度厚生省所管予定経費要求額概要について、御説明申し上げます。  昭和三十年度厚生省所管一般会計予算要求額は、衆議院において九億五千三百八十万円の修正増額を受けまして、総額八百四十六億一千二百五十五万九千円と相なりまして、これを昭和二十九年度補正予算を加えての予算総額八百三十八億一千六百三十七万六千円に比較いたしますと、七億九千六百十八万三千円の増加となっておりますが、これを前年度の当初予算七百五十三億六千一百九十四万七千円に比較いたしますと、九十二億五千六十一万二千円の増加と相成ります。  また、これを一般会計予算額に対比いたしますと、その八・五三パーセントを占め、前年度の八・三六パーセントに比べまして、相対的にも増加を示しているのであります。  次に、右の予算のうち、特に重要な事項についてその概要を御説明申し上げます。  第一は、社会保険整備育成施策に必要な経費についてであります。  社会保険は、社会保障制度の主柱をなす制度として今日きわめて重要な意義と役割をになっておりますので、これを育成助長して参りますことの緊要なことは申すまでもないことであります。従いまして、前年度に引き続いて各社保険を通じて、その事務費全額国庫において負担することとし、これに必要な経費として四十億九千一百余万円を計上いたしますとともに、厚生年金保険及び船員保険長期失業給付費に対しましても、従前と同様、その給付財源の一部を国庫において負担することとし、これに必要な経費として十四億八千三百余万円を計上いたしているのでありますが、本年度施策におきまして、特に重点となっておりますものは、まず政府管掌健康保険及び船員保険医療給付に対する国庫負担であります。政府管掌健康保険財政につきましては、前年度において約四十億円、本年度において三十億円の赤字が予想されるのであります。この赤字財政再建整備をはかりますための抜本的な施策は、学識経験者等斯界権威者をもって構成する審議会を臨時に設置いたしまして、その審議を待ってこれを確保する予定でありますが、当面の前年度及び本年度赤字合計七十億円につきましては、国庫において負担することとしたのであります。ただ本年度において、その全額一般会計において負担いたしますことは、財政規模等から見て困難でありますので、さしあたり本年度においては十億円を負担し、残余の不足財源は一応長期借入金によって操作し、明年度以降において毎年十億円程度借入金償還財源補てんのため、一般会計より厚生保険特別会計に繰り入れることといたしたのであります。これとともに、当面の不均衡保険財政改善をはかるため、保険料率現行の千分の六十より六十五に引き上げるほか、標準報酬等級改正を行うことを予定している次第であります。保険料率はすでに引き上げましたことを、これはこの文章には書いてありませんが、すでに断行をいたしました。  船員保険におきましても、疾病保険部門収支均衡による赤字が約一億五千万円見込まれますので、健康保険と同様、この不足財源補てん国庫において負担することとし、とりあえず本年度においては二千五百万円、明年度以降においては毎年度本年度同額程度一般会計より船員保険特別会計に繰り入れることに予定しております。これとともに、健康保険と同様、若干の保険料率引き上げ標準報酬等級改訂等を行うことといたしておる次第であります。  次は、日雇労働者健康保険制度強化充実であります。  同保険制度は、発足後末だ日が浅いこと、その特異な雇用形態と被保険者が低所得階層に限られていること等のため、その給付内容一般健康保険に比して劣っておるのでありますが、創設後最近までの実施状況に照し、これを改善することが適当と考えられますので、給付期間現行の六カ月より一年に延長いたしますとともに、新たに療養給付に歯科の補綴を加え、埋葬及び分べん費等現金給付をも実施することにいたしたのであります。これらの給付内容向上の裏づけとして、従来と同様に、療養給付費の一割を国庫において負担することとし、これがための経費として一億九千八百余万円を計上いたしたのであります。  さらに、国民健康保険につきましては、従前に引き続きその健全な運営を助成することを目的として、療養給付費の二割に相当する金額を各保険者に対して助成交付金として補助するため、四十九億七千九百余万円を計上いたしますとともに、赤字保険者に対し前年、度同様、その再建整備を促進するための貸付金として三千万円を計上いたしたのであります。  第二は、結核対策強化に必要な経費についてであります。  過般の実態調査によりますと、わが国の結核患者は二百九十二万人と推計され、そのうち、入院を必要とする者は百三十七万人の多きに達していることが明らかにされ、その禍害り広さと深刻の度は想像以上のものであることが察知できるのであります。従いまして、結核撲滅施策を一段と強化することといたしたのであります。まず、患者発生予防と発病の早期発見のため、健康診断及び予防接種強化徹底をはかることとしたのであります。すなわち、健康診断実施対象を従来の学校、収容施設事業所等集団生活者指定地域の三十歳未満のものより学齢に達したもの以上の全国民に拡大したこと、要注意者に対しては六カ月後に精密検査を新たに行うこととしたこと、最も感染のおそれのある患者家族予防措置強化、特に狭隘な住宅家族と雑居している患者に対しては隔離療養室無償貸与制度を試験的に設けたこと、一般住民に対する健康診断及び予防接種費用減免率従前の一〇%から五〇%へと大幅に引き上げたこと等でありまして、これらの施策に必要な経費として約四億八千三百万円を計上いたしたのであります。また、結核療養所病床につきましては、末だ不足を告げている実状にありますので、国立一千床、公立三千六百床、法人立五千四百床、合計一万床を前年度と同様に、増設いたしますとともに、結核回復者の後保護施設二カ所を新たに設置いたしますほか、国立結核療養所の諸施設整備等に必要な経費として十一億三千六百余万円を、結核回復者保護施設経営費不足財源に新たに、二分の一の補助を行うに必要な経費及び国立結核療養所維持運営に必要な経費費等として九十九億二百余万円を、従来と同様医療費公費負担に対する補助に必要な経費十六億一千二百余万円を、その他結核予防従事者の研修、実態調査等に必要な経費を含め、結核対策のため、総額百三十一億五千五百余万円を計上いたした次第であります。  第三は、覚醒剤及び精神衛生対策推進に必要な経費についてであります。  まず、覚醒剤対策につきましては、さき内閣覚醒剤問題対策推進中央本部を設けて、覚醒剤に対する綜合施策の樹立と推進をはかって参ったのでありますが、さらに、取締りを一層強化いたしますとともに、広く国民ヒロポン禍害のおそるべきことの認識を深め、青少年の施用防遏に協力を求めるため、一段と広報活動を活発に展開することにいたしたのであります。特に、覚醒剤中毒者を収容してこれに必要な医療を行うため、精神病院に二千百床の病床を併設することにいたしたのでありまして、これら覚醒剤対策に必要な経費として、一億三千六百余万円を計上いたした次第であります。  次に、精神衛生の面におきましては、患者保護の立場より、また、公安上より見まして、保護収容すべき患者に比べて病床不足が顕著でありますので、公立及び法人立に二千二百床の増床を行いますほか、国立精神頭部療養所施設整備のための経費を含め、一億八千九百余万円を計上いたしたのであります。また、国立療養所経営のための経費及び都道府県知事が本人の保護公安上の必要に基いて命令する措置入院経費並びに精神衛生相談所運営に要する経費等、七億三千三百余万円を計上いたした次第であります。  第四は、受胎調節に必要な経費についてであります。受胎調節は最近における人工妊娠中絶激増傾向にかんがみ、従来、主として母体保護見地よりその普及指導をはかって参ったのでありますが、さらにこれを促進いたしますことは人口の対策見地からも緊急不可欠と認められますので、家族計画思想の一そうの普及徹底をはかることにいたしたのであります。このための施策として、さしあたり受胎調節普及度の最も低いと思われます生活困窮者に対しまして、受胎調節に必要な器具薬剤等無償または低廉な経費で提供することとして、三千二百余万円を新たに計上いたしましたほか、前年度に引き続き保健所が中心となって、その普及指導を行なって参るために必要な経費として、二千六百余万円を見込みました次第であります。  第五は、水道施設等公衆衛生関係施設整備充実に必要な経費についてであります。  まず、公衆衛生基礎施設であります水道施設整備普及公衆衛生維持向上を期する上におきましてきわめて重要でありますので、その整備に意を用いてきたのでありますが、特に、下水道施設は、整備に巨額の経費を必要とするため、その普及がはなはだしく渋滞いたしておりますとともに、事業費の中に占める労務費が比較的高い事情等をも勘案いたしまして、本年度より緊急就労対策の一環として整備することとし、前年度より三億六百余万円増額して五億一千百余万円を計上いたしたのであります。また、飲料水に基因して消化器系伝染病の多発する農山漁村に対し、簡易水道の布設を助成するため八億四千万円を寺上いたしましたほか、特別鉱害及び一般鉱害対策事業に対し補助を行うに必要な経費並びに南海地方の震災に基因する地盤変動対策事業に必要な経費等一億六千五百余万円を見込んだのであります。  次に、公衆衛生第一線機関として重要な機能役割をになっております保健所につきましては、C級からA級への格上げを九箇所行いますとともに、老朽施設十カ所を改良整備し、さらに、エックス線等重要設備整備をはかる等のための経費として一億三千四百余万円を計上いたしまして、その機能強化に努める所存であります。さらに運営費におきましては、要員充足状況を考慮して実人員経費算定基礎といたしました反面、給与の単価を実情に即して若干の引き上げを行うこととしまして、その所要経費十六億一千七百余万円を計上いたした次第であります。  第六は、国立病院等医療機関整備に必要な経費についてであります。  医療機関整備につきましては、医療体系中枢機関としての国立病院として名実ともにその指導的役割効率的運営を遂行せしめるため、相当大幅な整備改善を行いますに必要な経費として十二億二千二百余万円を見込みましたほか、公立一般病院につきましても、医療機関整備計画にのっとって、その整備を助成促進するため四千五百万円を計上いたしますとともに、引き続き国立病院の一部を地方へ移譲することとし、これを促進するための経費として一千八百万円を計上いたした次第であります。さらに、無医村または医師不足町村の解消と国民健康保険の健全な運営に資するため、国民健康保険直営診療所整備拡充を行うこととし、これに要する経費として四億円、伝染病予防上必要欠くことのできない隔離病床一千八百六十六床の整備のための経費として一億五千余万円をそれぞれ計上いたしました。  第七は、生活保護に必要な経費についてであります。  生活に困窮する者に対しその最低限度生活を保障し、その自立を助成するために必要な経費でありまして、扶助の種類は従来と同様であり、保護基準につきましても結核患者に対する栄養加算改善を行いましたほかは、従前と同様といたしているのであります。反面、不況の進行過程にかんがみ、保護人員は前年度補正予算算定基礎人員に対し、各扶助共五パーセントの上昇を見込んで所要経費算定を行いました結果、扶助費は合せて三百四十三億九千四百余万円となり、前年度に比して十七億四千四百余万円の増加となっているのであります。しかしながら、旧軍人恩給及び日雇労働者健康保険実施に伴う減少見込額十九億円、前年度不足見込額十億円をそれぞれ加除いたしますと、扶助費の純計は三百三十四億九千四百余万円となり、かえって前年度より八億八千二百万円の減少となっているのであります。これは旧軍人恩給裁定進捗に伴う減少見込額増加が六億四千万円、過年度赤字計上分が前年度より十九億八千六百万円の減少となっているためであります。  右のほか、保護施設事務費に七億二千七百万円、生活保護法施行のための経費に四億三千余万円が見込まれ、これらすべてを合せまして生活保護に関する経費として三百四十六億五千二百余万円を計上いたした次第であります。  なお、保護実施につきまして、漏給文乱給の防止をはかってその適正な運用を期するとともに、指導的職員の資質の向上をはかるため、都道府県基幹要員人件費として全額国庫負担委託費を交付することとし、これに必要な経費として新たに八千九百余万円を計上いたしたのであります。  第八は、児童保護に必要な経費についてであります。  まず、措置費につきましては、施設の増設に伴う児童増加を見込みますとともに、デフレ施策の影響をも考慮して保育所及び母子寮援護率を若干引き上げることといたしましたほか、前年度不足分二億円を含めまして算定いたしました結果、その所要経費は五十六億四千余万円となり、前年度に比べまして八億三千余万円の増加となつているのであります。  また、盲児及び肢体不自由児等身体障害児に対し、育成医療を施し或いは義肢等補装具支給を行うための経費児童相談所及び一時保護所運営に必要な経費並びに保母養成所に必要な経費等三億二千二百余万円を計上いたしているのであります。  第九は、世帯更生運動推進に必要な経費についてであります。  疾病失業または事業失敗等によって経済的破綻を来たし或いは自立の道を失って被保護階層に転落するおそれのある世帯に対し、その再起更生のため適切な指導を行いますととも一に、必要な資金を低利で融資してその生活意欲を振起せしめて自立更生をはかることといたしたのでありますが、その実施につきましては、都道府県をして都道府県社会福祉協議会を通じて右に述べましたような生活困窮者に対し自立更生に必要な生業、技能修得事業継続及び支度等に必要な資金貸付を行わせることとし、国は、これに必要な経費の二分の一を補助することとしたのであります、このための経費として、一億円を計上いたしたのであります。  第十は、戦傷病者戦没者遺族及び留守家族等援護のための経費についてであります。  戦傷病者戦没者遺族等援護法に基く遺族年金障害年金及び障害一時金の支給等に必要な経費といたしまして三十一億九千二百余万円を、また未帰還者留守家族等援護法に基く留守家族手当障害一時金及び療養費等に必要な経費として十四億六千百余万円をそれぞれ計上いたしました。右のうち、遺族年金及び留守家族手当は、旧軍人恩給公務扶助料引き上げに対応して本年十月以降若干の増額予定いたしておるのであります。また、療養給付を受けるもののうち、大部分のものは本年十二月二十八日をもって法定療養給付期間を経過することとなりますので、なお三カ年間、これを延長することを予定しているのであります。  第十一は、引揚者援護に必要な経費についてであります。  昨年度中の海外からの引揚人員は、集団及個別を含めて三千二百七十四人となっておりますが、中共及びソ連地区にはいまだ相当数残留者帰還を待望しているものと想像されますとともに、両地区とも残留者帰還が引き続き期待されますので、一応集団三千人、個別五百人、戦犯釈放百人を予定いたしまして、その輸送、帰還手当支給、食事、被服、日用品及び医療等給与を行うためだ必要な経費のほか、集団収容施設補修整備のための経費を含め、六千九百余万円を計上いたしまして、その受け入れ援護に遺憾のないこを期しているのであります。  なお、引揚者定着援護に必要な住宅施設につきましては、建設省所管に計上されております第二種公営住宅のうちより、八百五十戸を引揚者用に建設する予定にいたしている次第であります。  右に申し述べましたほか、らい予防及び国立らい療養所経営費等らい対策に必要な経費として十七億三千四百余万円を、法定伝染病予防費補助として七億円を、アヘン専売事業の円滑な運営をはかるために新たに設けられたアヘン特別会計固定運転資金に充てるため、同特別会計に対し繰り入れを行うために必要な経費として三千五百万円を、戦傷病者及び身体障害者に対し更生医療実施又は補装具支給等諸種援護を行うために必要な経費として三億四千四百余万円を、母子世帯経済的自立を助長してその福祉の増進をはかる母子福祉貸付資金に必要な経費として五億円、民間社会福祉事業振興をはかるため、昨年設立されました社会福祉事業振興会に対する出資金として、さらに一億円等をそれぞれ計上いたしたのであります。  以上昭和三十年度厚生省所管一般会計予算のうち、若干の重要な施策につきまして御説明申し上げたのでありますが、このほか保健衛生社会福祉の各費目につきましても、それぞれ所要経費を計上いたしておるのであります。  次に、昭和三十年慶厚生省所管特別会計予算の大要について御説明申し上げます。  まず、第一は、厚生保険特別会計についてでありまして、さきに申し述べましたように、健康保険においては、前年度及び本年度赤字補てんするため六十億円の長期借り入れを見込みますとともに、収支均衡を失いました保険財政改善に資するため、保険料率引き上げ標準報酬等級改訂予定いたしております。また、日雇労働者健康保険におきましては、給付期間の延長と給付改善を行うことといたしました。  右に要する経費として、健康勘定におきましては、歳入歳出とも五百三十二億七千九百十二万円、日雇健康勘定におきましては歳入歳出とも二十二億二千三百二十八万三千円、年金勘定におきましては歳入四百五十億一千九百九十二万円、歳出九十二億九千五百六十二万八千円、業務勘定におきましては歳入歳出とも二十八億三千五百六十一万四千円をそれぞれ計上いたしました。  第二は、船員保険特別会計についてでありますが、健康保険について申し述べましたと大体同様の措置をとることといたしておるのであります。これに要する経費といたしまして、歳入四十五億九千八百二十五万八千円、歳出四十億六千七百六十五万三千円を計上いたしました。  第三は、国立病院特別会計についてであります。  さきに述べましたように、国立病院施設整備を行うために必要な経費を大幅に計上いたしましたほか、三億円の債務負担行為を計上いたしているのであります。前年度に引き続きまして血液銀行、高血圧の治療センター、ガンの治療センターをそれぞれ若干個所整備いたしますとともに、もっぱら地方一般病院に対し貸し出しを行うためにラジウムを設備することといたしまして、これら総体の経費として歳入歳出とも七十八億五千四百六十六万八千円を計上いたした次第であります。  最後は、あへん特別会計についてであります。  あへん法に基いてアヘン輸入売り渡し事業を独占的に行うため、昭和三十年七月一日を期して設置することといたしており、本年度は、輸入三十五トン、国内産の収納二・五トン、製薬原料としての売り渡し三十二トンを予定いたしまして、所要収支を見込みました。すなわち歳入歳出とも一億九千六十三万七千円を計上いたしました。  以上昭和三十年度厚生省所管一般会計及び各特別会計予算につきまして概略御説明申し上げたのでありますが、何とぞ本予算案の成立につきましては、格別のお力添えを御願い申し上げる次第であります。
  4. 松澤兼人

    主査松澤兼人君) 御質疑の方はどうぞ御発言を願います。
  5. 湯山勇

    湯山勇君 私はずっとお聞きしたいと思いますから、どうか途中で関連のある方は質問下さってけっこうですから……。  まず、生活困窮者受胎調節普及事業費補助金というのが今年度新たに組まれておるわけでございますが、これはどういうふうに実施されるのか、実施方法について御説明いただきたいと存じます。
  6. 山口正義

    政府委員山口正義君) お答えいたします。この生活困窮者に対して受胎調節普及しますやり方につきましては、一口に申し上げますと、受胎調節技術指導を実際にいたしております保健所あるいは保健所に並置してございます優生保護相談所活動と、それから社会福祉事務所民生委員という方々と協力して実施するという方法でやって参りたいと存じているわけでございます。従いまして、まず保健所あるいは優生保護相談所の方の社会福祉事務所の方から、どういう方々に必要であるかというリストをいただきまして、それに基いて今度は保健所におりますあるいはそこで嘱託をいたしております実地指導員が出かけていっていろいろ世話をする。そうしてその際に器具薬品が必要であれば、その器具薬品支給するというような方法でやって参りたいと、そういうふうに考えております。
  7. 松澤兼人

    主査松澤兼人君) ちょっと……。川崎厚生大臣は、衆議院社会労働委員会において赤痢ワクチン黄変米について、緊急質問のために出席を要求されている。この緊急質問だけに限定してすぐ帰ってきていただけますか。
  8. 川崎秀二

    国務大臣川崎秀二君) こちらで何かまとまって……。
  9. 松澤兼人

    主査松澤兼人君) こちらはやはり厚生大臣に来ていただかないと、今まで、きのうのやつも大臣には初めから終りまで出席していただきましたから、すぐ帰ってきていただくということを条件にして、もし帰っていただかないと審議が停滞するかもしれませんから、その点をお含みの上で……。どのくらいかかりますか。
  10. 川崎秀二

    国務大臣川崎秀二君) 三十分と限定して……。
  11. 松澤兼人

    主査松澤兼人君) 三十分になったらまた要求に行きますから……。
  12. 湯山勇

    湯山勇君 大体件数は、どれくらいを見込んでおられるのでございますか。
  13. 山口正義

    政府委員山口正義君) 生活保護法の者と、それからボーダー・ラインの階層の者と、両方でございますが、いろいろ算定基礎はございますが、結論的に申し上げますと、生活保護法の該当者約十五万五千人、それからボーダー・ライン層約十二万人というふうに見込んでおります。
  14. 湯山勇

    湯山勇君 次に、医薬分業関係費は、これは大臣が見えてからお聞きすることにいたしまして、国立公園の運営費ですね、それが今年度はずっと減額になっておるようでありますが、国立公園などもその後相当手を入れなければならないのができておると思うのですけれども、これはむしろ増額すべきじゃないかと思いますが、これについてはどういうふうな御見解を持っておらるるのでしょうか。
  15. 森本潔

    説明員(森本潔君) 国立公園の施設整備につきましては、昨年、二十九年度までは国の直轄事業費補助金との二本立で参っておりました。二十九年度におきましては、国の直接施設の費用が約五百万、補助金が三千六百万円であります。本年は補助金の少額の補助金、ことに分散して使うような補助金は整理するというような、一般の方針がございましたので、二の補助金をやめまして、これだけの相当額を国の直接の施設費に組みかえる。従いまして、国の補助金という形はございませんが、ほぼ同額が施設費に入っておる、こういう組み方でございます。ただいまお話しの通り、いろいろ、国民の利用、あるいは外貨の獲得のために、施設をして参らなければならぬのでありまして、今年度の緊縮予算の関係上、ただいま申し上げましたような状況でございます。
  16. 湯山勇

    湯山勇君 ほかのものと違いまして、こういう国立公園というようなものは、一度損傷したならば、取り返しのつかないようになる場合が多いのでございます。他の施設ならばまあ来年ということもありますけれども、こういうものにつきましては、もう少し一つ認識をしていただいて、大蔵省の方もぜひ現状がこわれていかないように、特に自然を取り入れたものにつきましては、今後十分一つ御考慮願いたいと存じます。  それから結核対策はこの前にお聞きしましたから、結核対策でレントゲン車二十台を整備するということになっておりますが、この検査したあとの処置、このことがまだ明確になっていないと思うのですが、検査されて、どういうふうになさるのか、これについて一つ御説明をいただきたいと思います。
  17. 山口正義

    政府委員山口正義君) レントゲン自動車を増す等のことをやりまして、検査能力を増加するということをいたしたいと存じているのでございますが、それで発見されました患者をどうするかというお尋ねでございますが、発見されました患者、あるいは要注意者、いろいろなものがあると思うのでございますが、患者のうちでどうしても入院させなければならないというようなものにつきましては、入院のできるように、これはいろいろな条件が重なってくると思うのでございますけれども、その付近のベッドのあき工合、あるいは経済的な問題、いろいろな問題があると思うのでありますけれども、それは保健所の技術職員、あるいは医療関係者などが相談いたしまして、できるだけ入院できるように世話をしなければならない。従来もそういう方針でやってきたのでございます。それから在宅患者につきましては、従来も実施させております保健婦の方に家庭訪問させまして、こういうものについていろいろ指導をしていく。これはもちろん主治医と連係をもってやるわけでございますが、それをやって参らなければならないと思っております。  それから特に今回新しく予算に計上して現在お願いしております在宅患者療養室。どうしても家庭の家屋の状態で、他に感染のおそれが非常に強い、また本人の療養にも差しつかえが起るというようなものにつきましては、もしその自宅に宅地の余裕がございますれば、そこにごく小さな療養室を公費で作ってやってそれを貸与する、そして家族内の感染防止あるいは本人の療養に十分な部屋が持てるようにしていく。そういうように考えておるわけでございます。
  18. 湯山勇

    湯山勇君 その計画は非常によろしいのでございますけれども、その計画を実施するに必要な予算措置がなされていないようでございます。たとえば発見した患者入院させると申しましても、病状は実際は昨年と同じふえ方をしておりますし、それから何といいますか、居宅隔離室の設置をするということになりましても、一県わずか五十戸程度、こういうのでは、実際は今日出ておる二百九十二万の患者、それから要注意患者その他合せて五百数十万、これらに対する対策さえもできていない、こういう状態で、新たに発見した者をそういうふうに入院させるとかあるいは在宅隔離するとかそういうことを言っても、すでに出ておる患者に対しての手も届いていないのに、新しい患者に対してやるということは、これは私は全く言うべくして不可能ではないかというように思いますが、その点いかがでございますか。
  19. 山口正義

    政府委員山口正義君) ただいま湯山先生の御指摘になりました二百九十二万という数字でございますが、これは一昨年の実態調査によりまして出た数字でございます。これは直ちに隔離療養を要する者が二百九十二万と推定されるということでございまして、正直に申し上げますと、その二百九十二万現在全部把握しておるわけではないのでございまして、その実態調査のやり方についてもいろいろな機会に御説明申し上げているかと存ずるのでございますが、全国から二百十地区を選びまして、人数にいたしまして約五万人、その五万人につきまして正確に検診をいたしまして、そうして統計学的にこれを全国に類推いたしますと二百九一二万ということになるのでございまして、実際の届出の状況などから勘案いたしまして、その二百九十二万のうちで当時実際につかんでおりましたのは約二七%にすぎないというような状況でございまして、それで私どもといたしましては、しかもその二百九十二万と推定されますうちに無自覚性のものが約八割というように感じられますので、どうしても無自覚性のものがそれだけたくさんおりますことは、感染源となって結核患者の大きな原因となりますので、それを早く見つけ出して早く手を打って参らなければならないという考えで進んでいるわけでございまして、先ほどから御指摘のように、結核ベッド増床が一万床、それから居宅隔離いたします療養室が全国でわずか二千三百ということで、御指摘のように、これで十分とは決して言えないと思うのでございます。ことに居宅隔離につきましては、本年初めて実施いたしますので、テスト・ケースというような意味も含んでおりますので、数にいたしますとわずかな数でございますが、しかしこういう手を打ちまして、そうして先ほど御指摘の二百九十二万がさらにふえるということでなしに、二百九十二万のうちでつかんでいる数がごく一部でございますので、それをさらに検診によって幅を広げて、そうして無自覚性患者、無自覚性でしかも感染源になっているような患者を見つけ出して手を打ちたい、そういうふうに考えているわけでございます。
  20. 湯山勇

    湯山勇君 大臣がお見えになりましたからちょっとお尋ねいたしたいと思いますが、医薬分業関係費というのが今度相当増額になっておるようでございます。これはずっと昨年来問題になっております新医療費体系と関係を持っておるものと思いますが、この医薬分業関係費、この調査によって新しい医薬費体系をお作りになる計画かどうか。それから現在の審議会の進行状況ですね、これはどうなっておるでしょうか。
  21. 川崎秀二

    国務大臣川崎秀二君) 医薬分業につきましては、昨年参議院から御発議になりまして、衆参両院において一カ年の延期ということが可決をされたわけでありますが、その際における御決議の趣旨等を拝聴いたしておりますると、医薬分業そのものに対するところの否定的な議論も一部はありまするけれども、大部分は準備が行き届かないがために、厚生省の準備態勢が不完全であるからということの理由で、御決議になった趣旨が多いのでありまするから、従って、厚生省といたしましては十分にこれに対する態勢を整える必要があると、かように存じまして、今回一千三百万円に上るところの経費を新たに計上をいたし、これが準備に着手をいたしたわけでありますし、こうして、これと関連をいたしまして、新医療費体系の問題も結論を出さなきゃならぬ時期に来ておりますので、今秋を目ざしましておそくとも秋の入口ごろには、すなわち九月の末ごろまでには結論を出してもらいたいということを申し入れをいたしておるわけでございます。  医薬関係審議会等の審議も相当に、この医薬分業に対するところの議論はそれぞれ、従来の経緯あるいは利害等もありまして、なかなか進捗をしない点もありますけれども、なるべく最大公約数をとりまして医薬分業の一部分でも実施をせよという今回の御決議の大体の趣旨に沿いまして、今日準備を進めておるような次第で、医薬関係審議会政府としましてはぜひとも議事を進捗して結論を出していただきたいということを申し入れいたしておるような次第であります。
  22. 湯山勇

    湯山勇君 その際に、提出されました医療費体系というものについてはさらに検討を加えるという意味の決議があったと思います。そこであの体系を新らしく作り直される御意思がおありになるのかどうか、そういう作業をお進めになっておられるのかどうか。と申しますのは、あのままではなかなか私は審議会通過もむずかしいと思います。そこで、この新しい調査に基きまして将来納得のできる医療費体系をお作りにならなければならぬ、そういう責任が政府には負わされておると思いますので、新しい体系をお作りになるのかどうか、そういう作業をお進めになっておられるのかどうか、この点をお尋ねいたしたいと思います。
  23. 曾田長宗

    政府委員(曾田長宗君) 医療費体系の再吟味につきましては、その根本的な資料といたしました二十七年の三月及び十月の調査、あの種類の調査は、再びこれを繰り返しますとしても非常に手数を要します。これをもう一ぺん根本的にやり直すということは、時間の関係からも不可能でございます。しかしながら、先般またいろいろ御審議を願いました折に明らかになりましたように、いろいろ考案されました体系というものが保険経済及びこの医療施設経費というものにいかような影響を与えるかというような点につきましては、十分な確たる結論が出てこなかった。そしてそれを見るためには、ある程度の調査を重ねて、ことに年次がかなりたっておりますので、新しい資料に基いてこれを検討し、そして不都合の点があるならば、いわゆる新体系というものをさらに修正していくというようにいたしたいというところで、本年の四月以降の調査を計画いたしたいというような状態でございます。
  24. 湯山勇

    湯山勇君 その新しいいわゆる再検討した医療体系ですね、それはいつごろできる御予定でございますか。いつごろを目標に作っておられますか。
  25. 曾田長宗

    政府委員(曾田長宗君) いわゆる新医療費体系と申しましても、大体の数字と、それからいろいろそれに基きましたいわゆる保険局の方で決定いたします個々の新点数というようなものと、これはかなり密接な関係がございます。私どもとしましては、新体系はなるべく九月中くらいには明かにしたいというふうに考えております。
  26. 湯山勇

    湯山勇君 これはぜひ早くやらないと、また前の二の舞をやるおそれがあると思いますから、早くおやりになることを要望いたします。  それから結核対策につきましては、先般一般質問で大臣にずいぶんお聞きいたしましたから、これは大臣もお認めのように、ずいぶん不十分な点が多いと思いますので、ぜひ一つ画期的な対策をすみやかにお立て願うようにお願いいたしまして、時間をとりますからこの点を省きます。  次に覚醒剤対策についてお尋ねいたしたいと思います。この推進中央本部費というのが新たに組まれておりますが、これは支部を各府県にお持ちになっておるのでございますか。それは特定の府県だけでございましょうか。
  27. 川崎秀二

    国務大臣川崎秀二君) 細部は薬務局長から答えていただきますが、これは各府県ともに支部を作りまして実施をすることになっておりますから、各府県にあるはずでございます。
  28. 湯山勇

    湯山勇君 その場合の各府県の費用でございますね、各府県の支部と申しますか、その支部の費用はどういうところからどういうふうにお出しになる御計画でございますか。
  29. 高田正巳

    政府委員高田正巳君) 私からお答えいたします。ただいま大臣からお答えを申し上げましたように、覚醒剤地方の本部という名前で呼んでおりますが、これは各都道府県に作ってもらうように勧奨をいたすということに閣議決定に相なっておるわけであります。そこで今日の状況では、すでにできました所もございますし、まだ一部できておりません所もございまするが、これはできておらない所と申しましても、それに似通ったものはみなできておるわけでございます。そうしてそれの費用でございますが、これは私ども、これの所管のものといたしましては、この費用を実は補助金等で若干流したいという希望を持っておったわけでございまするが、いろいろ予算編成の基本方針等にもその問題がひっかかって参りまするので、国の補助金は計上されることになりませんのでございます。ただ、地方本部等が中心になって——もちろん国が中心になって、地方本部と一体となって展開をいたしまする啓蒙宣伝の費用につきましては、従来と違いまして、国が大幅に予算を計上願いまして、そして都道府県に物でそれを与えていく。都道府県は品物で国から補助を受けたような格好になるわけでございまするが、物でもつて中央から流されたものを利用して啓蒙宣伝をやっておる。従いまして、事業費等におきましては、今のような形で国の援助を実質的には受けて参るというふうな形に相なって参る次第でございます。
  30. 湯山勇

    湯山勇君 啓発宣伝費の物の面でのお話でございますけれども、ただ、こういう府県の本部なら本部でパンフレットを流すとかビラを持ってゆくという段階では私はないのではないかというような感じを持っているのですが、この啓発宣伝というものには特別な何か構想があるのでございましょうか。
  31. 高田正巳

    政府委員高田正巳君) この覚醒剤の啓蒙運動につきましては、たとえ話を伝えまして恐縮でございますが、大通りを太鼓をたたいて歩くというふうな啓蒙運動の時期は過ぎた。もう少し路地に入って、しかも路地も見当をつけた地区の路地に入って、ほんとうの意味の浸透をはかるべき時期であるというふうなことにつきましては、今湯山先生御指摘の通りだと思います。そこで、これがやり方につきましては、中央の本部、すなわち関係各省をもって組織いたしております内閣に設置してありまする中央本部におきまして、何月でございましたか、先ず第一着のあれといたしまして、年間の啓蒙宣伝計画というものを策定いたしました。その内容といたしますところは非常に広範にわたっておるのでございまするが、今先生仰せのような気持が十分盛り込まれておりました。重点的な階層であるとか重点的な地域であるとか、そういうふうなものを特定いたしまして、今年度はそれを中心に啓蒙運動を展開していくというふうなことになっておる次第でございます。なお、これが啓蒙運動は年間を通じて行おうという建前をとっております。ただ盛り上りを、五月と十一月というふうな盛り上りの時期を予定いたしておりまするが、年間を通じて、今仰せのような方向で啓蒙運動をやっていくというような内容の計画の策定をしておるわけでございます。
  32. 湯山勇

    湯山勇君 次に、らい対策について大臣にお伺いしたいのですが、従来かららいという名称はこれはいろいろ問題にもなりますし、山口局長にはしばしば私申し上げたことがございますが、らいという名前にはいろいろ天刑病という性格の意味もありますしするので、何とかこれを改めてもらいたい。また改めた方がよいのではないか。ハンセン氏病——ハ氏病とか、あるいは別の名前に、らいというような従来からの天刑病的な意味ではない新しい言葉にして、そして新しい対策を立てていったらどうかという意見も識者の間にも相当ありますし、患者はすべてこれを願っております。そこで今までの大臣にはいろいろ申し上げたのですけれども、まあ一つ検討してみようというところで、一向積極的な御意見が伺えなかったのですが、大臣はいかがでしょうか。らいという名前を改めて、患者にも希望を持たせるし、そしてそういう新しい科学的な名前にして、世間のらいに対する認識も改めていこうというようなお考えは、お持ちではございませんでしょうか。
  33. 川崎秀二

    国務大臣川崎秀二君) これは確かにらいということが昔から非常に、何という表現を申し上げてよいのかよくわからないのですけれども、まあ不治の病であるだけでなしに、人体の組織破壊ということから、非常に国民から嫌悪されたような立場にありますので、らい患者というものの考え方に与える影響というものになりますると、ただいまお話のように、何か適当な名称に改めるということも一つの考え方だとは思います。思いますが、いろいろ検討してみましても、ただいまもちようどお話のありましたような名前でありますと、ほんとうにそれにふさわしいというか、ぴったりくる感じが少くなりまして、そういう点でいろいろまあ問題があるのではないかと思うのであります。せんだっても、フランスのらい研究に関する世界での遍歴、世界の各国のらい患者を慰問して歩いておる第一人者と言われる方に会いましたが、やはりらいの名称だけは、外国もこれを一貫して同じような名称を使っておるような状態でありまして、今さしあたって名称を変更するということによっての効果というものにつきましては、公衆衛生局長の意見なども参照しまして申し上げるわけでありますが、今直ちにこれを変更するという適当な名称がありませんので、実は検討はいたしておりますが、まあ弱っておるような次第であります。
  34. 湯山勇

    湯山勇君 一つこれはゆっくり大臣にお話し申し上げまして、御了解いただける部分は御了解いただきたいと思います。
  35. 川崎秀二

    国務大臣川崎秀二君) それから私の方からちょっと先ほど薬務局長から答弁をいたしましたが、実は覚醒剤対策につきまして、新たな宣伝経費を一千万円計上いたしまして、これは先ほど薬務局長も答弁をいたしましたのでありますが、一千万円の内訳というものについて、なおその宣伝啓発に使う、特に重点的にたとえば東京のダウン・タウン、あるいは横浜のヒロポン街、ヒロポンによって悩んでおる地区が大体わかっておるわけでありますから、神戸もそうでありますし、あるいは三重県の四日市、いわゆる港地区が大体の中心と思われますので、そういう地区のヒロポン患者の家庭に対して十分浸透する、啓蒙するということが一番目的じゃないかという意見が非常に強いのであります。それにつきまして、従来は映画を作るとかあるいはリーフレットを作るとか、パンフレットを作るとかいうようなことで、諸官庁、また諸官庁のもとにある宣伝広報機関というようなものにのみ指向されまして、大衆、ことに一般知識層には普及いたしておりますが、肝心のヒロポン常習者の周辺といいまするか、環境に浸透いたしておりませんため、大きな効果が望めなかった、かように存ずるのでありまして、その意味では、ただいま薬務局長から答弁をいたしましたような宣伝啓蒙が必要ではないかということを考えております。これは党の方から出てきました一千万円の新たな計上でございまして、原案者も衆議院の民主党の委員でありますが、それらの意見をも参照しました結果、最近では、たとえば映画一つ作るとか、あるいはリーフレットをうんとまくとかいうことは、もう時代が過ぎているのじゃないか。たとえば二、三年前に相当著名な民間による映画もありましたし、かなり浸透いたしておりますので、映画館の幕合いに、特に東京でいえば江東地区であるとか、あるいは浅草付近であるとかいうような、ヒロポンが非常に入手しやすいような場所、ヒロポン禍の少年が非常におるような場所に、ニュース的にその惨害を知らせるというようなやり方もどうであるかというような意見が出ておりまして、細別はきまっておりませんが、先ほど申し上げましたような線に沿いまして鋭意今研究をいたしておるので、今月の中旬あたりには大体の素案ができるものと思いますが、この使い方につきましてはおまかせを願いたいと思っておるような次第であります。
  36. 湯山勇

    湯山勇君 ただいま覚醒剤につきまして、本年度まあ精神衛生対策という名称のもとに覚醒剤の中毒患者に対する病床増加せられたこと、大へんいいことだと思うのでございますが、あの精神衛生法改正のときに、こういう慢性中毒患者だけではなくて、嗜癖者、まあ慢性中毒とまではいかなくても、今収容してなおせばなおるというそういう、あの当時嗜癖者という言葉を使いましたが、それに対する対策もぜひ必要だということを、これはどなたもみなお認めになったと思うのでございます。今回もそれらに対する明瞭な対策、そういうものが見当らないように私は思うのでございますが、これについてはどういうふうにお考えになり、どういうふうにやっていこうとしておられるか、お伺いいたしたいと思います。
  37. 山口正義

    政府委員山口正義君) ただいまお尋ねの精神衛生法の改正によりまして、従来は中毒性の精神病というはっきりしたものだけを取り扱っておりましたものを、昨年改正していただきまして、中毒者というものも入れるということになったわけでございます。それに従いまして、その中毒者も精神衛生法に基いて、非常に高度のものにつきましては措置入院というような措置もとっておるわけでございますが、中毒者という範囲がかなり解釈によって広くなって参りますので、ただいま御指摘の嗜癖者と申しますか、どうしてもなかなかやめられないというような者も、考えようによっては中毒者というふうに言えると思うのでございます。しかし、そういうものを措置入院をするというわけには参りません。そういうものに対する指導といたしましては、やはり精神衛生相談所というようなものを中心としていろいろ指導していくということを考えておるわけでございます。また病院から退院いたしました者に対した、家庭へ帰りましてからどういうふうに生活指導するかというようなことも、そういう精神衛生相談所なんかを中心にして、精神衛生相談所の数は少いのでございますので、それを中心にして保健所等でそれを指導するというようなことをやって参りたいと思います。
  38. 湯山勇

    湯山勇君 私は、そういうものに対する何らかの施設がなければ、単に相談とか指導だけではこれは改まらない。そういう施設を何かお考えになっていらっしゃるかどうか、こういうことをお聞きしたいわけでございます。
  39. 山口正義

    政府委員山口正義君) 嗜癖者を収容すると申しますか、入れて治療すると申しますか、生活指導するというようなこともいろいろ省内で検討はいたしました。予算を考えます場合にもそういう点も検討してやったわけでございますが、しかしそういう者を無理に入れるということもなかなかできないわけでございまますので、それをどういうふうに指導して入れていくかというような点もいろいろ問題がございましたので、三十年度予算ではそこまではお願いしておりません。取りあえず精神病者という形でお願いいたしておりますが、ただいま湯山先生から御指摘のような、嗜癖者に対して何か施設を作って、医療と申しますか、あるいは生活指導と申しますか、そういう点をやっていかなければならないというふうに私どもは考えております。
  40. 湯山勇

    湯山勇君 それから次に、今らいのことをお聞きいたしましたついでにお尋ねいたしたいのですが、らい患者に対する慰安金の問題でございます。これは月額五百円、作業をやっておる者は八百円つくことになっておりますけれども、作業のできない者についてはわずかに百円だけしかつかないと聞いております。これではどうもあまりにかわいそうだと思います。何とかこれは少し増額にはならないものでございましようか。
  41. 川崎秀二

    国務大臣川崎秀二君) この問題につきましては、私の方の党内からも非常に熱心な意見もあり、また社会党の和田さんから特別なお申し出がありまして、修正の際にも私は相当強く主張いたしたのでありますが、今回残念ながら計上されなかったのでございます。そのことの必要性は認めておりますので、今回は不幸にして実施を見ませんでしたが、できるだけ近い機会におきまして増額をはかりたいと、かように存じておる次第であります。
  42. 竹中勝男

    担当委員外委員(竹中勝男君) ちょっと関連ですが、私どもの党でもそれを非常に問題にしておるわけでございますが、何か措置費といいますか、国立病院関係の計上の中からそういうものが出てくるところはありませんですか。昨年は何か十三項目にわたるらいの何かがあったように思いますが、そういうものの中から……。
  43. 曾田長宗

    政府委員(曾田長宗君) この前にいろいろな御要望がございまして、その既定予算の中でやりくりのつく限りはというようなことで、いろいろ当該年度内に若干は措置いたしたのでございますが、ただいまの不自由患者の慰安金と申しますのは、前年よりも若干三十年度においてはふえて、三百円ばかり年にしましてふえておるのであります。そのふえ方が非常にわずかで、皆様方からも御満足を得られない、私どもとしても決してこれでけっこうだというふうに考えておらないことは、大臣からもお話しになった通りでございます。ただいまの既定予算の中でのやりくりで何とかならないかということにつきましては、いろいろ私どもも検討いたしておるのでありますが、根本的な立場といたしましては、従来らい療養所の経理というものが、いろいろ皆様方からも御指摘がございましたように、必要な経費が組まれておらない。そうしてその必要な分は、何と申しますか、いろいろ患者費等に若干予算として余裕をまあ見ていただきましたのを、いろいろ流用して使わせていただいておったというようなことが従来ございましたのですが、さようなことではこの経理か筋目立ってこない。それでやはり不要の分は不要として立て、また必要な経費は必要な経費として組むべきであるというようにして参りましたので、従来に比べますると、必要な経費は、不十分ではございますけれども、若干ずつ増額してきておるのでありまして、そして一方におきましては、とかく経理の上で、言葉が悪いかもしれませんけれども、幾分この弾性を持ち過ぎておったというところを筋目立ててきておりますが、今日といたしましては、いわゆるただいまのお話のように、やりくりで融通するという余地は非常に少くなっておりますので、私どもとしては今後とも大蔵省の方とも御相談申し上げて、必要な経費というものを逐次増額して参りたい、さような方針でおるのでございまして、御了承を願います。
  44. 湯山勇

    湯山勇君 次に、この水道費の方、水道施設整備費、これについてお尋ねいたしたいのでありますが、簡易水道につきましては、すでに以前にいろいろ御質問がありましたから、この地盤変動に対する水道費でございます。これは昨年九千万円ありましたものが本年は三千万円、六千万円の減額になっておりますけれども、実際に厚生省の方で、各府県について査定になった事業はまだ数億あるはずでございます。そこで、この事業は今後一体どういうふうにしていかれるおつもりなのか。地盤変動というのは、御承知の通りに、一種の災害でございまして、簡易水道でこのかわりをせよと言われましても、これは明らかに補助率が違っておりますし、今日の府県財政の状態では、簡易水道に対して府県がさらに補助するということもなかなか期待できない。で、地盤沈下によって飲料水に困っておる所に対して、こういうようなまだ残事業が数億あるにかかわらず、こういうふうに著しく三分の一落してしまうというようなことについては、私はどうも納得できないのですが、これはどういうわけでこうなったか、今後どういうふうにしていかれるのか、御説明をいただきたいと思います。
  45. 川崎秀二

    国務大臣川崎秀二君) 地盤変動の対策につきましては、主に西日本並びに近畿地方、西日本のうち特に近畿地方、四国地方、東海の一部というような地域におきまして、南海地震を中心にし、二十六、二十七年におきまして相当な大きな沈下があったものでありますから、それに伴う復旧ということを一つの大きな目標といたしまして着手されて今日まできたと思うのであります。昨年、一昨年からは、昨年すでにデフレ予算のために相当な圧縮をされた上に、さらに本年は、当初の査定におきましては、地盤変動対策はすでに二カ年にわたって実施されてきておるので、この際は引き続きデフレ予算のために、もうこの程度で切り上げたいというのが財政当局の考え方であったのであります。しかし私どもはせっかくの継続事業であり、かつ高知県、愛媛県、三重県、和歌山県の重点地区にきましては、相当にこの経費が打ち切られますと、今後の給水事業にも大きな影響なり、住民に非常な悪影響がありますから、ぜひ復活してもらいたいということを要望いたしまして、党の方からも非常に強力な意見が出ました結果、また各党におきましても、せめて重点地域だけでも継続をしてもらいたいとう御希望がありまして、これらが一体となって推進されました結果、一応この線におきまして復活を見ましたのでございまして、もとより厚生省としてはこれでもって満足をいたしておるものではありませんけれども、当初地盤変動対策は二カ年にわたるところの継続事業によってほぼその最も打撃を受けたる地域は修理を見たというふうに憶測している者もあったのをくつがえしまして、ここに至ったのでありまするから、本年ははなはだ経費が些少で恐縮でありまするけれども、まずこの程度におきまして本年度は御了承を願いたいというのが、厚生省としての考え方であります。  もとより地盤変動につきまして厚生省が軽視をいたしておるということではありませんので、この過程におきまして非常に奮闘をいたしました結果、かように少額ではありますが残りました。その他の部分におきましては、地方のお力によって解決をする以外に方法がないと、今日では私考えておるような次第であります。
  46. 湯山勇

    湯山勇君 来年度からはどういう御予定でございますか。
  47. 川崎秀二

    国務大臣川崎秀二君) もとより来年はこの事業が完成をいたしませんで、地方財政が非常に窮乏をしているがために、地方としても対策ができない。なお給水事業のために必要なる経費を要求いたして参りますれば、その実情を調査いたしましてさらに続ける方針でございます。
  48. 湯山勇

    湯山勇君 だいぶ時間もたって参りましたので、なお聞きたいことがたくさんありますけれども、重点的に聞きたいと思いますが、インターンでございますね、これもずっと懸案の事項なので、その後いろいろ若干改善されたところはあるにいたしましても、まだまだインターン学生の身分、それから待遇、それから指導医の手当、それやこれやから見まして、今日やはりインターンの問題はずいぶん大きな問題だと思います。これについて先般は、三百日以上かなにかインターンをやっていなければ国家試験を受ける資格がないとかなんとかいう局長通牒も出たとかいうようなことも聞いておりましたが、それはおそらくそういうことは何かの間違いだと思いますが、ともかくもこのインターン学生の身分、処理、こういうものについては、何らかの方途を講じなければインターンの成果も上らないし、従ってこの制度自体の維持も困難になるのではないかということを考えるものでございますが、大臣はこれはどういうふうにお考えになっており、さしあたり本年はどのようにしていこうとお考えになっていらっしゃるかお伺いをいたしたいと存じます。
  49. 曾田長宗

    政府委員(曾田長宗君) こまかいことでございますから、私から……。こまかいということは重要でないという意味ではございませんが、私からお答え申し上げますが、今般特別に項目として予算の上で増額というようなことは見込んでいないのでありますが、私どもの国立病院で預かりますインターンに対して、インターンの宿舎を提供する設備をするという予定予算を組んでいただいてあるわけであります。  インターンにつきましては、これはいろいろ根本的な問題がございまして、まず今後インターンの実績を十分に上げていくというようなことのためにいろいろ手を打たなければならぬことがございますけれども、とにかく今日におきましては、インターンという以上は、病院に本来ならば住み込みまして、そして病院での患者に対するいろいろな診療というものを直接に見習う機会を多く持たせることが必要であるというように考えられまして、この宿舎の整備ということはこれは何にもまさる大切なことではないかというように考えたのでありますが、これを公立あるいは民間の施設にお願いいたしておるのでありますが、その際に国からいろいろ補助を出すということについては、これは何しろそのインターンの施設が大体二年ごとに指定がえをいたしておるような状況もございまして、これはしかも永久といいますか、長期間に残ります建築物というようなところから、この補助についてもいろいろ異論も出ておりまして、今日のところ、ただいま申し上げましたような公立あるいは民間のインターン教育の指定病院に全部これの補助を差し上げるというところまで話がまとまっておらぬのであります。  とにかく、国立病院におきましても私どもの直接管轄しておる施設でございますから、そこにおいてはこのインターンの資格の設備を提供しようということになったわけでありまして、そのほかいろいろの点が、私どもとしても何とか手を打ちたいというふうには考えておるのでありますが、三十年度におきましては不十分ながらこの程度のことしか予算には組み得なかったというような事情でございまして、なお先ほどお話でございましたが、いわゆる三百日というのは、せっかくインターンをやりましても、結局実際にインターンの仕事をやらなければその成績が上らないというようなところから、審議会の意見にもよりまして、この通牒を出したような事情はあったのでございます。あの日数等については実情に合わせましてかなり無理があったというようなことは、私どももその後検討して承知いたしております、これについてはしかるべき処置をとるつもりでおります。御了承願いたいと思います。
  50. 竹中勝男

    担当委員外委員(竹中勝男君) 途中ですけれども、二、三厚生大臣がおられる間に御質問しておきたいと思いますので、湯山委員と相談して、お尋ねさしていただきます。  一つは、昨年できました日本中央競馬会法の三十六条による益金の一部、四分の一を民間社会福祉事業施設に充てるという法律ができたわけです。で、今年度予算におきまして、それは私二億円ぐらいになるかと思いますが、どこにそれが入っておるわけでございますか、項目からいきますと。まずそれから……。
  51. 川崎秀二

    国務大臣川崎秀二君) この問題につきましては、御承知のように、ただいま御指摘の通りでありまして、社会福祉事業のためにほぼ四分の一の経費を計上するということになっておりまするから、本年の益金は九億六千万円でありまするから、その四分の一ということになりますると、二億一千五百万円という程度のものは社会福祉事業に出さなければならないわけであります。予算編成の途上におきまして、社会福祉事業振興会の費用が三千万円であります。また世帯更生運動というのはゼロになっておりまして、その際私は特に両院の御決議を大蔵当局に主張いたしまして、社会福祉事業振興会のごとき純粋な社会福祉事業推進するために設けられたものに対して、三千万円というのは不当であるということを強力に申した結果、今日政府原案にありまするように一億計上されております。それから世帯更生運動の方はゼロでありましたのが、一次の復活におきまして三千万円、今度の修正によりまして一億ということになりましたので、厚生省関係の社会福祉事業というものに対しては二億は確実に計上されたわけでございます。  そのほか、私どもは社会福祉事業振興を非常に文字通り考えまして、これでもなお足りないといっているのでありますが、この費用の分配には、大蔵大臣としましては、育英会に対する貸付金であるとか、あるいは私学共済組会に対するところの補助金であるとか、あるいは育英会に対する補助金であるとか、あるいは生協に対するところの貸し付けであるとか、こういうようなものも全部含めまして、ここにもつといい資料があったのでありますが、ちょうど手元にありませんけれども、そういうような団体を、十六種類でありますか、たしか私の記憶にありますのは。それに充てて参りまして、これらに全部貸し付けをしている、それに補助金を出しているのであるから、それを合計すればむしろそれ以上のものになるという大蔵側としては見解をとっているのであります。従いまして、今度の予算の修正をも含めましては、私の感じておりますのは、大体競馬会法の立案のときの趣旨に沿うたように最終的にはなったのでありますが、中途においては非常に不満ということも、分科会でありまするから、詳しく御報告申し上げておきます。
  52. 竹中勝男

    担当委員外委員(竹中勝男君) 今の大臣の御説明で、実質的にはどこかに入っているということになると思いますけれども、しかし厚生省の方のこの三十六条に関する御理解、解釈と、大蔵省とだいぶ違っているように私は感ずるのですが、というのは、これは当然今あげられたような項目には、これがあるなしにかかわらず、一定の予算は組まれているわけで、また組まなければならない性質のものでありますので、この競馬法によって生まれるところの益金というものは、少くともまあ年間の厚生省関係予算にプラスするような意味を持っておると私どもは解釈してきておるわけですが、ことにこれはできるときに、御存じの通りに、民間の弱い社会事業をこれが強化するための目的に使うということがはっきり言われておったわけです。というのは、民間の社会福祉施設というものは非常に弱い。たとえば横浜の養老院の聖母園といいますか、ああいう所が焼けた。もう前から修理しなければ危険だというようなものが、財源がないために放置されておったために、修理やら改装が全国的に今必要なものが相当あるにもかかわらず、財源がないためにこれが制限されて、そしてこういう不慮の非常に大きな人命にかかわる災害を起すというようなことが、相当全国的にはあり得ると思うのですが、従って、この民間社会福祉施設強化していくということのために使われるこの益金というものが、まあ一般厚生省予算の中に繰り入れられてどこかにこれが分散されて、大体二億一千万円ぐらいになるというふうに解釈されるということは、ちょっと私は不満に思うのです。  要求されておる書類にはやはり競馬益金として要求されておるのですが、その後のあれにはその項目が消えてしまっておるのです。やはりこれはどれどれにどういう、幾らこの競馬益金で社会福祉施設強化するというふうに、はっきりすべきであると私は考えるものですが、この点について、さらに来年度においてそういうふうに積極的に、プラス面にこの競馬益金というものを使われる意思があるかどうかをお伺いしたい。
  53. 川崎秀二

    国務大臣川崎秀二君) ただいまの御趣旨は、私の考えとしては全くごもっともだと思っておるのであります。ただ、いろいろなまあ他の省の関係で、事実は社会福祉事業一般的には目されるものが、かなり育英会とか、あるいは広義に解釈をいたしますれば相当にあるものでありまするから、大蔵側の申しますることもむげにしりぞけるわけには参らないのでありますが、純粋にやはり社会福祉事業、ことに零細な大衆を相手にして、そして社会福祉推進しておりまするやはり厚生省の関係の諸団体の事業を進歩させることが、あのときの目標であったように私も感ずるのであります。従いまして、本年は修正案を含めますると、ほぼ目的を達したような形になっておりますが、ただいまの御趣旨は十分に尊重いたしまして、今後の予算編成、あるい増額要求等に際しましては、十分に考慮をいたすつもりであります。  また競馬益金の使途を明記せよということにつきましては、御趣旨はごもっともと思いますので、その点につきましても今後一そう検討を加え、御趣旨に沿うて前進をしたい、かように思っておる次第でございます。
  54. 松澤兼人

    主査松澤兼人君) ちょっと速記を止めて下さい。   〔速記中止〕
  55. 松澤兼人

    主査松澤兼人君) 速記を始めて下さい。
  56. 竹中勝男

    担当委員外委員(竹中勝男君) 児童局関係のことですが、保育所援護率を昨年八月に児童局は大蔵省に対しまして五五%を要求しておりますが、今年度は三六%になっておるのですが、保育行政が非常にやはり弱いと私どもは感じておりますが、これをもって保育行政の万全が期せられるかどうかということについて、大臣あるいは局長から簡単に、明確にお答え願いたい。
  57. 太宰博邦

    政府委員(太宰博邦君) 私からお答え申し上げます。要求をいたしましたのは五四%強を要求いたしましたが、やはりいろいろな国家財政その他の関係から、財政当局と相談いたしまして、とりあえず本年度はぎりぎりの線というところで三六%というところにまとまった次第であります。これにつきましては、すでに竹中委員御承知と存ずるのでありますが、保育行政が過去三カ年、平衡交付金制度にその経費が入っておったという関係で、全国的な運営がまちまちでございました。これを一昨年から国庫補助制度に切りかえた。切りかえてみまして調査してみますると、その平衡交付金時代に今まで各地戒心べまちまちでやっておりましために、これを全国一本の基準にまとめ上げていきますのに、やはり相当これを指導もし、また監査もしまして、軌道に乗せなければならないという段階になっておりまして、ただいま昨年以来その線に沿って軌道に乗せるべく努力中でございます。従いまして、ただいまのこの三六%でかりに不十分だといたしましても、果してそれじゃどこまであれば完全にいけるか。それは多ければ、十分余裕があればよろしゅうございますけれども、やはり国家財政との関係もあります。さような点をなお検討している段階でございますので、今年度は一応この辺でもって運用していく。なお、その調査の結果に基きまして、さらに財政当局とも相談をいたしたいと、かように考えている次第でございます。
  58. 竹中勝男

    担当委員外委員(竹中勝男君) 民主主義国家、ことに進歩した民主主義国家は、いずれも児童福祉関係に非常に力を入れております。これはアメリカでもイギリス、北ヨーロッパの諸国、ソ連でも中国でもそうでありますが、日本は一番社会福祉の面でおくれているのはやはり児童福祉施設だと思いますが、これがいい職員を、いい保母だとかいい職員を持っていなければならぬのですが、現在の薄給で、職員の失業保険や退職金が積み立てられないでおるのですが、それはその措置費からこれを支出することを禁じておるからなんです。ところが、薄給で実際はこういう出所がないのです、保育所関係の職員は。そのためにいい職員がどんどん幼稚園に移ったり、あるいはほかの職等に移ったりしているわけです。これではほんとうに保育という目的は達せられないのですが、こういう保険あるいは退職積立金を措置費から出すことを緩和される御意思はございませんか。
  59. 太宰博邦

    政府委員(太宰博邦君) きわめて事務的なことでありますので、便宜私からお答え申し上げます。  措置費と申しますのは、御案内の通り、その施設運営していきまする、まあざっくばらんに申しますれば、ぎりぎりの経費であります。従いまして、国が負担いたしますのは、そのぎりぎりの経費だけということになっております。そこで私どもといたしましても、また当然できるだけ職員を優遇して、安んじて働いていただきたいという点はもちろんでございますけれども、今の措置費の建前からいたしまして、やはりぎりぎり限度というところにおさまらざるを得ない。まあそれもそのときの情勢その他によっていろいろ変ると存じますけれども、今日の段階におきましては、国といたしましては給料あるいは勤務地手当、あるいは家族手当、とにかく法律によってはっきりと義務支出が命ぜられておる社会保険の負担というふうに、法律によってはっきりと明示せられている費用だけしか実は出せないということでございます。退職の手当の問題、あるいは失業保険の手当の問題は、御指摘の通りでございまするけれども、ただいまの法律の建前といたしましては、それが義務支出になっておりません。この辺につきましてはやはりそういう法的な問題と、それから財政の問題と、彼此勘案しつつこれを漸次改善して参りたい。なお俸給の方につきましては極力これを、薄給というお話でございましたが、私どももこれを引き上げたいと考えておるのであります。ただいまの段階におきましては、国がこの辺までは私の方で負担してあげれるという最高限度を政府で示しておりますが、そのうち実際の個々の施設の支出額はそれよりも下回っております。これはいろいろの理由があると存じます。また一ぺんに急に上げられても困るのでありますが、漸次是正して参りたいと考えております。
  60. 竹中勝男

    担当委員外委員(竹中勝男君) これに関連してもう一つ、これは大臣にお伺いいたしたいのですが、昨年度予算には計上されておって、今年度予算に削られてしまってゼロになっているのが季節託児所、わずかに三千数万円のものですが、これがなぜ削られたのか私わかりませんが、これは今農林関係で非常にやかましくなっているのは、価格だとか、政策だとか、これは増産の政策の上からいっても、わずか三千万円程度のことで非常にこれはプラスになる保育所なんです。ことに最近東北には洪水が出たり、災害が相当出ております。それで、これは新しい事態も起っております。これは一つの政党の政策からいっても、国の政策からいっても、もちろんわずか三千万円くらいのことで全国的に季節に開かれている保育託児所が開かれないというようになることは非常な、これは金にかえられない問題だと思う。わずか三千万円程度のことでありますからして、これを大臣には政治的に一つ解決されるお考えがございませんか、その点をお伺いいたしたい。
  61. 川崎秀二

    国務大臣川崎秀二君) この補助金の削減は、私の最も遺憾としておるところでございます。今回の予算におきましても、何とか修正の際にも復活をいたしたい、わずか三千万円のことでありまするから、出したいと思って最後までねばったわけでありますけれども、とうとうその目的を完遂することができませんでした。そのために、市町村の自主的な活動というものが摩滅されるということになりますと、非常に大きな問題だろうと私は考えておりますので、今回の予算では不幸にして実現をみなかったことは、まことにこれは申しわけないことだと思います。弁解の余地がございません。ただ、何らかの方途によりまして、季節保育所というものを復活をさせることに今後は努力をするつもりでございます。
  62. 吉田萬次

    ○吉田萬次君 この問題は私も非常に重要な問題だと思いまして、予算委員会の予備審査のときに質問したのであります。ただいま厚生大臣が、厚生大臣の強い力をもってすらこれの復活の要求ができなかったというような、それくらいの重大問題に対して、予算委員会のときに、どなたかしりませんけれども討論されて、来年は復活させるということをはっきり明言せられておりますが、大臣、その確信がありますか、お伺いしたい。
  63. 川崎秀二

    国務大臣川崎秀二君) これはまあ、今年一応様子を見るということに結局はなったわけでありますが、その様子を見るということも非常に消極的な見地でありまして、従って、今度の予算におきましての私は最も遺憾なものの一つだと思っております。従って、明年度におきましてはむろん復活を要求するつもりでございます。
  64. 竹中勝男

    担当委員外委員(竹中勝男君) それからもう一つは、質問というよりも希望ですが、この日本の社会保障制慶が非常に鞍行的であって、国民経済の上からも、あるいは生活の安定の上からも、非常に重要な一つの政策で、政治的な意味も持ち、また経済的な意味も持っておる制度なのでありますが、どうも、今日の保険経済の赤字にしても、あるいはいろいろな意味において、今御審議中のように、必要なものが計上できないというような財政的な困難というものがあるわけですが、それはかねて厚生大臣が考えておられる、またわれわれもそれを支持して、そう考えておるわけですが、どうしてももう少し総合的な見地から、現在のでこぼこ、いろいろな不統一、社会保障に関する、あるいは社会福祉に関する不統一といいますか、あるいは分散といいますか、あるいは基準のでこぼこといいますか、こういう点を是正していくならば、そうして総合的な施策が確立できるならば、この財政的な困難というものの非常に大きなものが緩和される、のみならず日本のこの社会保障制度の確立の方向が確定していくと考えております。大臣は総合企画に関する行政庁を計画するというふうにお考えのようですが、これについては、今の予算ではございませんけれども、すぐ来年の予算に関係することでありますから、この計画についてもう少し具体的なものをなるたけ早く示していただきたい。そして私ども、まあ多少そういうことに頭を突っ込んでおるものが、十分いろいろ意見を述べられる機会を作っていただきたいと思うのですが、これは日本の厚生行政の上に最も基本的になるものと思います。ことに、われわれが信頼をしておる厚生大臣の、こういう方の専門的な見識を持ったところの厚生大臣がおる間に、必ずこれを一つ実現するようにわれわれ協力したいと思っておりますが、そういう点について、これは希望ですが、一言御意見を聞かせていただきたいと思います。
  65. 川崎秀二

    国務大臣川崎秀二君) ただいまお尋ねのことは、私ども全く平素より同感をいたしておるところでございます。たとえば季節保育所の問題につきましても、年度当初の第一次の査定のときにおきまして、これが落ちておらなければ、むろん重要な施策として推進されてきたと思うのでありますが、社会保障全般をながめてみますると、かなりむだな使い方もあり、でこぼこもあるようであります。従いまして、これらにつきまして総合的な対策を立てなければならぬと思いまして、社会保障企画庁というものを本年度内に出発をさせたいという考えを持っておるわけであります。本年度内に出発させるということになりますると、どうしても法律改正と、それから予備金を使用すること以外に、補正予算を組まなければ予備金を使用する以外にないのでありまして、この点につきまして目下どうせ社会保障企画庁もできますれば内閣直属のものとなりますので、内閣の方とも相談を内々しておるような状態でございます。しかしそのことを待っているわけにも参りませんので、一応厚生省自身実施官庁といたしましても、その場つなぎと申しまするか、前提といたしまして、省内に社会保障企画室を設けることを決定いたしまして、一昨日の閣議におきましてこの方針を決定をいたし、厚生省組織令の改正によりまして、七月の一日から省内に参事官を主宰者といたしまする企画室が今回新たにできるわけであります。  この社会保障企画室におきましては、厚生行政全般にわたる総合調整、社会福祉行政に対するところの総合調整はもとより、社会保障六カ年計画を一応この企画室において作り、でき上った上は経済企画庁の方に回しまして各省とも十分連絡調整をした上、世間に発表するようにいたしております。その時期は、年度内にはむろん行いまするし、この社会保障六カ年計画ができますれば、それと前後いたしまして、社会保障企画庁が内閣に出発することに相なると思うのでありまして、このような点について、予算上の措置をも伴う社会保障企画庁につきましては、さらに検討を加えておるような状態でありますが、そういうプログラムで進んでおることを御了承願いたいと思います。
  66. 湯山勇

    湯山勇君 簡単にお尋ねをいたしますから、一つ簡明率直にお答えをいただきたいと思います。  保健所運営費が減額になっておる。このことについては、先般一般質問で大臣にはちょっとお尋ねしたのですが、昨年九五%の充足率を見ておったのが本年七二%に落さてれております。これは厚生省の力で強力な措置をおとりになればその充足率はもっと高まると思いますので、充足率が昨年よりも落されて予算が組まれたということは、端的にいえば、一種の厚生省の怠慣だというようなことも言えないことはない、しいて言えば。そう思うわけでございます。そこで、もしこの七二%を上回った充足があった場合にはでございますね、それに対して補助を出すというような措置は考えておられるのかどうか、この点についてお伺いいたしたいと思います。
  67. 山口正義

    政府委員山口正義君) この問題につきましては、先般予備審査のときにも湯山先生からお尋ねをいただきまして、私お答え申し上げたわけでございますが、九五%を七二%に落された、厚生省の怠慢ではないかというおしかりでございますが、昨年度要求いたしましたときには、保健所につきましては一保健所当りどれぐらいというような定員がございますので、それの九五%を見込んで予算を計上していただいたのでございますが、ただいま御指摘のように、実際に保健所の職員の充足ということがなかなか困難でございますので、実際には七割に足らないというような状況でございます。それにつきましては、私どもいるいろ努力をいたしておりますのでございますが、なかなか充足をしかねる。ことに医師初め技術関係者の充足が困難であるという状況でございます。そこで今年は実際に埋まっております人員ともにらみ合せまして、そして今後の伸びを一応見込んで、七二%という予算を計上さしていただいておるわけでございますが、ただし、その際に人員の単価、職員費の単価につきましては、昨年度は十四万五千円でございましたのを、本年度は十七万八千円、その程度になりますが、そういうふうに相当大幅に増額していただいております。それによりまして職員の待遇もできるだけよくして充足をはかりたいということを考えているわけでございます。ただいま御指摘の七二%をこえたときにどうするかということでございますが、私ども現在の状況、従来の充足状況から考えまして、本年度の伸びを見越してそういうふうにお願いしておるわけでございます。
  68. 湯山勇

    湯山勇君 これでまあ待遇もよくなったし、そして受胎調節その他保健所の仕事がますます多くなっております。どうしてもこれは百パーセント充足してもらわなければならぬ。そういう指導をしていけば、七二%というようなものではなくて、もっとふえてもいいはずでございます。そこでこれは予備費か何か、そういう場合操作ができますでしょうか。大臣いかがでしょうか。
  69. 堀岡吉次

    政府委員(堀岡吉次君) 七二%をこえまして全体の金額として不足が出るというような場合でありますれば、これは予備費の要求をやるべき筋のものであると、こう考えております。
  70. 湯山勇

    湯山勇君 次に、あへん特別会計について大村さんにお尋ねいたしたいと思いますが、特別会計というのは非常に不明確な点が多いと思うのですが、ことさらにこういう特別会計を設ける趣旨はどこにあるか、私は、非常に悪く解釈すれば、一兆円予算というワクを守っていくために、一般会計を縮めるために、特にこういう操作をしたのではないか。私の考えとしては、なるべくこういう特別会計を作らない方が望ましいのではないかと思うのです、そしてまた、このアヘンの問題を厚生省でやっておったから、この予算の中でやったからといって、私は別に不都合はないと思います。ことさらにこれを特別会計にした理由はどこにあるでしょうか。
  71. 大村筆雄

    説明員(大村筆雄君) お答え申し上げます。実はただいまの御質問の趣旨は、ほかの委員会においてもしばしば御質問を受けておることでございますが、率直に申しまして、本年度は内地産の買い上げもございますし、それから従来の外国からの輸入もございまして、その間の価格のプール等もございますし、それから規模から申しますと、特別会計の中では割合に小規模な特別会計でございますが、やはり一つの事業会計でございまして、会計の明確を期し、同時に弾力性を与えるという意味で、特別会計にするのが運用上効果的ではないか、そういう趣旨で作ったのでございます。
  72. 湯山勇

    湯山勇君 もし作るとすれば、これの購入が始まったのは昨年からですから、そのときに作るのであれば、そういった疑問は起りません。けれども、今になって、予算のワクの問題が非常に大きくなっておるときにやられるというところに、問題がありますので、これは議論になりますから、私はその点だけ指摘しておきたいと思います。  それから次にお尋ねいたしたいのは、母子福祉貸付金、これが七千万減額になっておる。これはまあ今度はだんだん償還金があるからという御説明でございましたが、償還金はどれだけ本年ある見込みでございますか。
  73. 堀岡吉次

    政府委員(堀岡吉次君) 三十年度は一億七千五百万円の償還の見込みであります。
  74. 湯山勇

    湯山勇君 一億七千五百万円というのは年間の合計ですね。だから、年度当初に七千万落したのに匹敵するかどうか。時期によっては、幾ら額が大きくても、年度末なんかに入ってくるようなことだと、七千万落したのに匹敵しないことになりますね。これはどういうことになっておりますか。
  75. 太宰博邦

    政府委員(太宰博邦君) 私からお答え申し上げます。これはすでに一昨年から始まっておりまして、貸付がそのときから、地方地方によりまして年何回かに分けて貸付をしております。貸付を返しましたときから、法律に規定されておりますような償還期限に応じまして、逐次戻ってくる。従いまして、今御指摘のように、これが年度末にごそっと今の一億七千万円が入って、くる、あるいは年度半ばに入ってくるということではございませんので、その金額が相当に入ってくる場合は別といたしまして、やはり年度初めから返るものは、償還金に充てたものは返ってくる、こういうふうになっておりますので、その点の御心配は要らないという感じを持っております。
  76. 堀末治

    ○堀末治君 大臣に一つお尋ねしますが、大臣でなくでもいいですが、今の盲人に対する福祉施設ですが、光明寮というのは全国的にあるそうですが、これは一体全国では幾つ、どこにあるのでしょうか。
  77. 太宰博邦

    政府委員(太宰博邦君) 塩原、東京、神戸と、三つだそうでございます。
  78. 堀末治

    ○堀末治君 そうですか。実は北海道にないのです。盲人が福祉施設に入ろうとすれば、あの海を渡ってこなければならない。これはなかなか、盲人として経費の負担にたえない。ぜひとも北海道に一つほしいということを非常に要望しているのですが、まだなかなかそこまで手が伸びないというのでありますが、厚生省ではどういうふうに考えておいででございましょうか。
  79. 川崎秀二

    国務大臣川崎秀二君) 十分に土地の事情を考えまして善処いたしたいと思いますが、北海道は、御承知のように、海を隔てておりますから、やはり将来はどうしても一つは作った方がいいように私は考えます。従いまして、御要望もありますし、また土地の非常に強い熱望がありますれば、それに応じまして、こちらの方で調査いたしました上で、善処いたすつもりであります。
  80. 堀末治

    ○堀末治君 だいぶ強い要望があなたの方にも申し出ているはずだと思いますが、本年度はございませんが、ぜひとも来年度にお考え願うことを特にお願いいたしておきます。
  81. 松澤兼人

    主査松澤兼人君) 暫時休憩いたします。    午後零時五十三分休憩      —————・—————    午後二時十五分開会
  82. 松澤兼人

    主査松澤兼人君) ただいまから再開いたします。  休憩前に引き続き厚生省所管審議に入ります。
  83. 湯山勇

    湯山勇君 健康保険についてはいろいろ問題がありますけれども、これは非常に大きい問題だし、いずれ法律審議のときに十分な審議がなされると思いますから、日雇健康保険についてお尋ねしたいと思いますが、これについては、今回歯科の保険を認められたということは非常にけっこうなことだと思いますが、六カ月の期間を一年に延ばすということよりも、今の日雇健康保険で重要な問題は、傷病給付支給されるかされないかということが重要な問題だと思いますが、これを、傷病給付を——これは必ずしも一カ月とか二カ月とかというのでなくて、二十日なら二十日というような日数でもいいんですけれども、それさえもできなかったというのは、建前の上からそれをやらなかったのか、あるいは予算の関係でやむを得ずこういうことになったのか、この点はいかがでしょうか。
  84. 久下勝次

    政府委員(久下勝次君) 日雇労働者健康保険法につきまして、今回ただいま御指摘のようなもののほか、いろいろと給付内容改善をいたしたのでございますが、この場合に、実はもともと私どもの考え方も、健康保険と同様の給付を漸次取り入れていくというのが、最初からの方針でございます。はなはだ実は遺憾ながら昭和三十年におきまして国庫負担増額の要求が通らなかった関係もございますので、主として財源の関係に制約を受けましたので、いろいろ計算をしてみたのでございますが、かりに傷病手当金を二カ月給付するといたしますと、平年度におきまして、七億九十五百万円、約八億円の財源が必要になるのでございます。これに比較いたしまして、傷病の給付期間六カ月を一年に延長いたします金は、平年度と比較いたしますと、ちょうどその半額程度で済むわけでございます。その辺のことも勘案をいたしますと同時に、療養給付を行うということが、やはり健康保険としては本来の目的ではないか。そういうようなことも考えあわせまして、主として財源の関係からかような措置をとったのでございまするが、また財源の範囲内におきまして、どれをとるかということにつきましては、ただいま後段に申し上げたような理由もございまするので、とりあえず一年まで延長し、傷病手当金の採用につきましては、今後の財政の内容につきまして、いろいろな面から努力することによって、今後の問題に譲らざるを得なかった次第でございます。
  85. 湯山勇

    湯山勇君 次にお尋ねいたしたいのは、これは大臣が見えてからお尋ねしたいと思いますから、あと……。  食物検査の費用ですね——食品検査、この分が今年は減額になっておりますけれども、やはり本年の米穀事情等から見まして、相当外米が入ってくると思われます。従来は外米の検査というのは、非常にずさんといえばずさんであって、全部にわたって検査することができなかった。そういうところから配給すべきものの配給もおくれておったり、あるいは検査しないで——一部検査して全部をまあそうだろうというので、配給されたようなこともあるようでございます。ことに昨年来の黄変米にからむ各般の問題から考えまして、これは、食品検査というものはさらに強化しなければならないと思いますが、にもかかわらず、この費用は減額されている。これはどうも納得できないのですが、これで果して十分な食品検査ができるかどうか、いかがでしょうか。
  86. 楠本正康

    説明員(楠本正康君) お答え申し上げます。御指摘のように若干減少を見ておりますが、これらは主として事務的の一般節減の基準にのっとりまして、たとえば旅費であるとか、さようなものを減額いたしたものでございます。従いまして食品検査の規模そのものは前年同様でございます。人員から申しましても、回数から申しましても、前年同様に計算をいたしております。ただ、ただいま御指摘のありましたように、従来とても十分でなかったじゃないかということでございますが、予算の面では、なるほど従来以上に実施することはできないわけでございますが、これらの点につきましては、できるだけ重点的にしかも効率的に実施をいたすことによりまして、できるだけの能率を上げていきたいと、かように考えておる次第でございます。
  87. 湯山勇

    湯山勇君 お気持はそういうお気持であろうとは思いますけれども、実際に外米の検査をするにしても、人が足りなくて従来は半分もできなかったはずでございます。それを幾らやっていこうといっても半分もできない能力でもって全部やろうったって、これはどんなに精神力を発揮してもできないので、むしろこれはもう大幅にふやさなければいけないのではないか。ことにマグロの検査なども、いろいろ事情はあったにしても、廃止されましたが、これらにつきましても、決して国民はマグロの検査をしなくてもいいということで心から信頼してはいないと思います。あれだけやかましく言っておいて、突如として、もう検査しなくても食べられるのだというようなことでは納得できないし、黄変米のときでも、もう大丈夫だといって廃棄をやめる、また大丈夫だといってはまた見合せるというようなことが繰り返されておりますので、食品検査に対する国民の信頼度というものは、きわめて低いものがある。しかもそれはただそういう感情的なものだけではなくて、非常にこれは重大な問題なので、せめて安心して物が食べられるような状態にだけはしなくてはならない。そういう点からいって、食品検査というのは非常に重要なことだと思いますが、これを何とかふやすというようなことは考えられないのでしょうか。
  88. 楠本正康

    説明員(楠本正康君) 御指摘のように、国民の食生活に大きな安心感を与えますためから申しましても、各食糧の検査を厳重にいたしますことは、全く御説の通りと存じております。ただ私どもといたしましては、十分に科学的な検査をいたしまして、絶対に安全が確保されたときにおいてのみ手をゆるめる、あるいは必要がなければこれを廃止するという方針でおります。従いましてこれらの点につきましては、十分に慎重にあらゆる方面から試験研究をいたしまして、マグロのごときものは、安全だという学界の一致した意見に基きまして、かような措置をとっておる次第でございます。なお黄変米等につきましても、最近は現地におきまする買付等も非常に改善されまして、品質が従来よりも格段に向上をいたしております。従いまして昨年程度人員予算によりまして、より一そうの効果を上げるものと期待をいたしておるわけでございますが、しかしながら前段に申し上げましたように、食品検査を一そう徹底させることはきわめて必要でありますので、今後機会あるごとに、これらの予算増額あるいは人員の増というものに努力を続けて参りたい考えでおります。
  89. 湯山勇

    湯山勇君 それから次にお尋ねいたしたいのは、この前のときに清掃法が通過いたしまして、これによりまして、各市町村の浄化槽、塵芥焼却場、こういうものに対する補助を国が負担するというようなことが決定されますし、その予算措置については、たしか付帯決議もあったかと思いますが、これは今回は緊急就労対策とか、その他どこかの費目へ入っておるのでしょうか、この補助金は。
  90. 楠本正康

    説明員(楠本正康君) ただいま御指摘の清掃関係の施設補助費は、従来も下水の一環として実施をいたしております。ただ本年はこれらの下水経費が大幅に増額されましたが、ただいまお話のございましたように、緊急就労対策の一環として実施をいたすことに相なっております。従いまして清掃施設につきましては、多少就労率——労務の就労率等に十分でないところがある関係から、一応予算面からは削除と相なっておりますが、しかしながら従来とも下水の一環としておりた事情もございますので、目下財務当局とも折衝をいたしまして、施行の面でこの実施が継続できますように交渉を重ねておる次第でございます。
  91. 湯山勇

    湯山勇君 あれは補助率はきまっておりましたか、ちょっと失念しておるのですが。
  92. 楠本正康

    説明員(楠本正康君) これは清掃法によりまして、四分の一ときまっております。
  93. 湯山勇

    湯山勇君 そうするとですね、運営によって出されると申しますけれども、緊急就労対策下水道事業は三分の一補助ですね、そこで補助率が違う関係で、この方から、何とか操作によってということをお考えになってもできないのじゃないでしょうか。
  94. 楠本正康

    説明員(楠本正康君) これらの点につきましてはいろいろ問題もございますので、目下大蔵省と事務的にどうしたらいいかということについて、いろいろ相談をいたしておる段階でございます。
  95. 湯山勇

    湯山勇君 私のお尋ねしたいのは、出るか出ないかということをお聞きしたいのですけれども、それは相談の上で出すということでありましょうが、相談の上でできないということもあり得るのでございましようか。
  96. 楠本正康

    説明員(楠本正康君) 私どもといたしましては、継続事業もあるのでありますし、また各都市の屎尿処理も行き詰まっている緊急性もありますので、ぜひ出せるように交渉をいたしておるわけでございますが、しかし必ずしも厚生省だけの気持でどうこうと結論を申されませんので、結果的に見ては、何とかこれら差し迫った問題の処理できるような方法を考え出したい、かように考えておる次第であります。
  97. 湯山勇

    湯山勇君 大蔵省の方はどういうお考えでしょうか。
  98. 大村筆雄

    説明員(大村筆雄君) お答えいたします。屎尿処理費用につきましては、昨年清掃法を御審議いただきましたので、付帯決議その他で御意見を承わっておるのでありますが、本年度は御承知の通り非常に屎尿行政は大事な年でございます。特に失業対策には非常に重点を置かなければならぬという考えで、従来の下水の整備事業費でございましたのを、特に緊急就労対策ということに取り上げまして、特に金額も大幅に増額いたしておる次第でございます。従いまして緊急就労対策でございますので、労務吸収率がある程度いいのじゃないか。どうもそうしないとやりにくいという面かございまして、本年度は屎尿処理費は残念ながら割愛してゆくということで予算を編成しております。それで、ただいま厚生省から実行上云々というお話がございましたが、経費の性質から考えまして、どの程度の労務吸収率になるかという点が多少問題かと思いますが、その点で目下検討しておる最中でございます。
  99. 湯山勇

    湯山勇君 これは主計官もあのときおられたと思うのですが、あれだけ屎尿処理ということにつついては、要請が強くて、そして特に付帯決議にもあったし、法律は、国は補助をするというのが——法律の条文を覚えていませんから、しなければならないというのか、することができるだったか、そこの記憶はありませんけれども、いずれにしてもするというのが趣旨だったと思いますし、これは相当そのつもりで着手しておるところもあると思います。そういうところについては、何らかの方法措置できるように御善処願いたいと思いますが御考慮願えますでしょうか。
  100. 大村筆雄

    説明員(大村筆雄君) お答えいたします。屎尿が相当詰まっておりまして、都市で相当お困りになっておるということは、これは十分承知いたしておりまして、もちろんできますならばそれをやるのもけっこうなんでございますけれども、先ほど申しましたように、失業対策を今年度は超重点的にやらなければならぬということで、重点的にそちらの一般の下水道の方に重点を置いておる次第でございまして、従いまして屎尿処理施設にいたしましたところで労務吸収率がどうかという点が一番問題になると思います。そういう点から、今までやっていたものは、労務吸収率からいけば非常に低いものですから、緊急就労対策ということにはならないのじゃないかというふうに考えておるのでありますが、ただ従来の継続事業につきましては、起債等におきまして、できるだけ考慮を払いたいというふうに考えております。
  101. 湯山勇

    湯山勇君 大臣おいでになって、すぐお尋ねしたいと思いますが、蚊とハエの撲滅運動というのを提唱されまして、これは国民の評判も非常にいいし、私どもの党でも非常に期待を持っております。これは率直なお伺いの仕方ですけれども、ほんとうにおやりになるのかどうか、これを一つお伺いしたいと思います。
  102. 川崎秀二

    国務大臣川崎秀二君) 蚊とハエのいない生活というものを目ざしまして、これが撲滅運動に取りかかろうという考えをいたしましたのは、単なる思いつきでなしに、今後持続的にこれを行なってまず三カ年計画で少くとも都市と呼ばれる地帯、並びに農村におきましても従来モデル地区として指定されたもの、並びにその隣接区域等におきましては、これを完成をしたいというのが三カ年計画の一応のねらいでございます。しかしてこれが対策といたしまして、今回の予算は、御承知の通りすでに私が就任いたしますとともに、ほとんど荒削りができておったような状態で、これらの新規経費を盛ることができませんでしたけれども、五月以来、このことを着想をいたしまして、従来すでに分散的に行なっておりましたモデル地区その他の実績にかんがみまして、必ずこれは効果が上るものと考えましたので、今回八十一億一千万円の既定経費のやりくりをもって一応スタートいたしたわけであります。もとより来年度からはこのもの直接に費用もかけて、全国的に実施をいたしたい、こう考えておりますので、本格的に取り組もう、こう思っている次第でございます。
  103. 湯山勇

    湯山勇君 よくわかりましたし、御決意のほどもまたけっこうだと思います。そこで、私はたくさんの事例は知らないのですけれども、大臣から事例をお聞きしたのもありますが、相当やはり経費が要ることも事実と思いますし、八十一億というのは、これはどういうやりくりということになるのでございますか。
  104. 川崎秀二

    国務大臣川崎秀二君) 内訳をここで、ちょうど資料を持っておらぬそうでありまして、後刻お届けいたしますけれども、項目別に申し上げますれば、下水道の補助費が五億、それから従来清掃その他に使っておりました費用並びに労働省の失業対策費のうち、どぶさらい、ごみ掃除等の費用、すなわち失業対策で単なる失業対策として掲げられたものを、できれば一応の目安と目標を与えたらどうか、単にどぶさらいをしたり、ごみ掃除をするということでなしに、この事業というものが蚊とハエというものの撲滅を目ざしているのだということを労働者に認識をせしめ、また市町村をして一つの目標をつけるために、従来の失業対策費に対しまして目じるしを与えたということが大きな収獲であります。これは労働省も十分納得してくれまして、失業対策が蚊とハエのだというふうにとられてはこちらも遺憾であるが、確かに目標としてはけっこうなので、その事業を行う際には、必ず蚊とハエを駆除することが一つの目的として設けられたということを浸透させるということを約束をしてくれました。これらの経費を入れまして八十一億になるわけであります。下水道が五億、失業対策の費用がたしか十三億、その他の経費を全部合算いたしまして八十一億という数字が出ております。こういうことであります。
  105. 湯山勇

    湯山勇君 大へんよくわかりました。同時に、こういうのは国民全般の協力態勢がなければできないことは大臣御承知の通りなんですが、ですから失業対策だけに、そういうお考えでないこともよくわかりますけれども、こういう運動こそ、今新生活運動というようなもので取り上げていったらいいのではないかというような御意見もあるわけでございますし、私どもも平和にして健康な生活というような抽象的なのでなくて、蚊とハエをなくするというような端的な、直截明快な打ち出しが新生活運動に非常に大きな効果があると思いますが、あれとこれと結びつけてやるというような御意図はございませんか。
  106. 川崎秀二

    国務大臣川崎秀二君) ただいまの御意見、非常に適切な御意見でありまして、また同時に私どももそのねらいをつけたわけであります。環境衛生部長は直接内閣に、また文部省に参りまして、今回こういうことをやるについては、やはり宣伝啓蒙費というものも要る。従って新生活運動に予定されているところの五千万円の経費のうち、ほぼ一千万円見当のものはこのことのために出してもらいたいということを申し入れたのであります。それに対しまして、新生活運動の力は党との関係もありまして、まだ具体的に何をやるかということはきまっておりません。非常に広範囲ないろいろな意見が出ておりますけれども、しかし具体的な経費を伴っての具体策というものは出ておりません。これは非常に問題になっておるわけでございまして、新生活運動というものの趣旨はわかるけれども、具体性がないじゃないかということがいろいろ批判されていると思います。そこで私どもといたしましては、むしろ具体的な問題から出発をしたものでありますから、新生活運動を推進しております文部省や内閣の方も、どうも厚生省が出し抜いたというような感じも多少受けたようでありますが、しかしとにかくほぼ一千万円の経費はこの運動のためにさいてよろしい、しかし、それを勝手にするとあと残った四千万円の振り当てということになって非常にまた問題になるから、まあ蚊とハエの方は一つ実績でスタートしてみてくれ、その実績に応じて出すというような了解に今日なっております。  なおただいまお話のありました、一般普及しなければならぬので、単にかけ声だけではいけないことはもとよりであります。従って一般の家庭の御協力を得なければならぬ、そのためにはもっともっと宣伝を活発にしなければなりませんので、今は国会中でありまするから、私なかなか方々へ行けないのでありますけれども、言論機関あるいは会社、工場の重要なところなどには直接出向きまして御協力を求める方針であり、宣伝方法につきましても、さらに具体的に進めたい、かように思っておるような次第でございます。
  107. 湯山勇

    湯山勇君 わかりました。じゃ私はこれで終ります。
  108. 田中一

    ○田中一君 結核対策のうらの病床整備費、これは国立一千床、公立三千六百床、法人立五千四百床、この法人立というのは医療法人のたぐいですか。
  109. 山口正義

    政府委員山口正義君) 御指摘の通り医療法人も含むわけであります。
  110. 田中一

    ○田中一君 国立公立法人立というものの比率ですが、国立一千床、公立三千六百床、法人立五千四百床、これはどういう形でこういう比率に分けたのであって、なおかつ指導はどういう形にするのか。あるいは法人の方の側から自分の方はこれだけやるんだというようなことなのか。どういう根拠でこういう数字が出、また指導はどういうふうにするのか。
  111. 山口正義

    政府委員山口正義君) 国立は、これは医務局の所管でございまして、国が直接増床するのでございますが、公立法人立につきましては、それぞれの各県から、その県内の希望をとりまして、それを県ごとに取りまとめまして厚生省の方に要求して参ります。しかしながら要求が非常に、現在考えております。公立法人立、合せて、九千床でございますが、それに比較いたしまして、要求されております病床数が非常に多うございますので、どこにどういうふうにそれを配置するかというような点につきましては、その地方病床の利用度、あるいは患者の分布というようなことを勘案いたしましてきめたい、そういうふうに考えております。
  112. 田中一

    ○田中一君 将来とも国立公立法人立のどれに対して一番ウェートをかけて奨励しようとするのか。
  113. 山口正義

    政府委員山口正義君) 大体、従来の結核病床増床と申しますか、建設につきまして、これは終戦後の年次の推移によりまして様子がだいぶ変ってきておりまして、終戦後しばらくの間は国立に重点を置いておったのでございましたが、昭和二十六年に結核予防法が制定されまして、それに基いて公立あるいは営利法人にも、病床を建設するときには補助を出すというような規定が設けられましたので、それ以来公立法人立にも相当の病床を建設してもらって、それに対して国庫補助金を出すという方針に切りかえられて参ったのでございます。なおこのほかに、昨年度までは社会保険立のものに対しましても、国庫補助金が出ておったのでございますが、今年度は、社会保険等の赤字の関係もございまして、三十年度は、これは計上されていないわけでございますが、これはやはり公立にいたしましても、法人立にいたしましても、その病床の公共性ということを十分考えて指導していかなければならないと思うのでございますが、従来国立が非常に重きを置かれておったという状態から、最近は、むしろ公立法人立の方にウェートが変ってきておるというような情勢であります。
  114. 田中一

    ○田中一君 この補助の範囲というものは、建造物、あるいはその諸施設人件費、そういうものは全部含まれておるものがこの(一)というものなんですか。それともどの点のどの分までを……。
  115. 山口正義

    政府委員山口正義君) 補助の対象になりますのは、建物と内部設備でございまして、人件費は含まれておりません。
  116. 田中一

    ○田中一君 次に伺いたいのは、御承知のように、十三ページにある水道施設の問題ですが、何といいますか、緊急就労対策の下水道事業というものは、これは直接に厚生省地方団体にさせるつもりなんですか。それとも何か別個に、別のものにやらすのですか。
  117. 川崎秀二

    国務大臣川崎秀二君) 厚生省がさせるつもりでおります。
  118. 田中一

    ○田中一君 そうしますと、簡易水道(1)、(2)、特別鉱害(3)、(4)、(5)、(6)と、全部これは厚生省がじかに指導してやらすのですか。
  119. 楠本正康

    説明員(楠本正康君) 緊急就労対策としてとり上げておりますものは下水道整備だけでございまして、そのほか簡易水道、あるいは地盤変動等は緊急就労対策と関係がございません。従いましてそちらの方には問題がないわけでございます。
  120. 田中一

    ○田中一君 今、大臣に伺うと、蚊とハエの駆除もこのうちに含まれておるということで、けっこうと思うのですが、大体その就労対策としてこの事業をするのか、この事業をしながら余っておる労力を吸収しようという考えなのか。これは非常に大事な問題なんです。今までの失業対策という意味の事業というものが考えの置き方で非常に効果が違ってくる。そこで今度の五億一千百余万というものを盛り込んだのは、どこにそのウェートを置いてやるのか、これは厚生大臣に伺いたいのですが。
  121. 川崎秀二

    国務大臣川崎秀二君) これは年度当初の予算編成におけるところの考え方としては、もとより下水道の整備ということで計上されたわけであります。しかしながら、これに対するところの一つの目標を与える意味でわれわれが言い出しました蚊とハエの駆除ということについて賛成をしてくれまして、そして一つの目標をその中に与えたわけでありまするから、事業そのものとして、もとより失業対策でありまするけれども、一つのねらいをもって並行的に行われるということになったわけでありますから、われわれの目標がこのことによって、まあいわばその事業に考え方を流し込んだというふうにおくみ取りいただけばけっこうだと思っております。
  122. 田中一

    ○田中一君 よくわかるのですが、その蚊とハエの駆除というのは、結果だと思うのです。そうするとこれは失業対策ですね、失業対策に重点を置いて下水道の工事を始めるのか、下水道工事というものに重点を置いて、そうして労力を吸収するのか、この考え方ですべてそういうものの効果というものが非常に違ってくる、その点が非常ににむずかしいのでありまして、地方補助金でやらせるにいたしましても、一体下水道を作るということが主眼であって、そうして余剰労力をもって来てやらせるのだというと、どこまでも下水道というものを完成するということが目途でなければならぬのです。そういう点が指導の仕方によって非常に間違いがあるのです。そういう点はどこに重点を置いて考えるか。
  123. 川崎秀二

    国務大臣川崎秀二君) それはもう明白に下水道を作るということが基幹の政策でございます。これに対して失業対策として最もそのことが効率的であるということで利用されたというふうに見られてけっこうであります。
  124. 田中一

    ○田中一君 このうちの(6)の過年度災害分、これは今まで過年度災害の総額が、パーセンテージでいいですから、どのくらいあって現在どのくらい残っておる、この二十九年度までどのぐらい残っておるのか、そうして前年度は三億一千五百万円、本年度は一千万円となっておるけれども、これはどういう理由でこういうことになっておるのかということを御説明願いたい。
  125. 楠本正康

    説明員(楠本正康君) これらの点は、一応査定は災害の当時実施をいたしておりまして、すでに昭和二十九年度におきまして、そのうち相当部分が完成をいたしております。その災害直後の査定がいまだ二十九年度において完成しない分だけをここにあげてあるわけでございます。
  126. 田中一

    ○田中一君 そうしますと、一千万円でもって全部災害分は完成する、こういう見方をしていいのですか。
  127. 楠本正康

    説明員(楠本正康君) その通りでございます。
  128. 田中一

    ○田中一君 十六ページのこの国家試験費の問題ですが、これは試験に対する経費、試験の経費ということになっておるのですが、これは試験料並びに登録料というものは、国家に直接入るようになっておるように理解しているのですけれども、これはどのくらい入っておりますか。
  129. 曾田長宗

    政府委員(曾田長宗君) 収入額の資料をただいま持ってきておりませんので、後ほど資料として差し上げたいと存じます。
  130. 田中一

    ○田中一君 この国家試験費というものの経費が、試験料並びに登録料の総収入とどちらが多いか少いかということが知りたいのです。これはむろん国家収入になっておるのでしょう、全部。
  131. 曾田長宗

    政府委員(曾田長宗君) これは国庫に入る収入でございます。
  132. 田中一

    ○田中一君 それはわかりませんか。
  133. 曾田長宗

    政府委員(曾田長宗君) もう少し詳しく申し上げますと、この印紙収入になっておりますその額については調べればわかるのでございますが、今持ってきておりません。
  134. 田中一

    ○田中一君 それで大体この経費と収入というものは見合いますか。それともむろん経費の方は余分にかかっておるという御答弁なんですか。
  135. 曾田長宗

    政府委員(曾田長宗君) 今正確な数字を持って参っておりませんけれども、経費の方が幾分上回っておるというような状況です。
  136. 田中一

    ○田中一君 どのくらい上回っておりますか、わからぬですか。
  137. 曾田長宗

    政府委員(曾田長宗君) ちょっと後ほど調べまして確たることを申し上げたいと思います。
  138. 田中一

    ○田中一君 厚生大臣に伺いますが、もしもこうした国家試験費というものが、一応経費で計上された経費よりもこれは上回ることになるならば、私は問題だと思うのです。これはおそらく試験料、登録料というものは高くなる、高額に失するんじゃないかという考え方を持つんです。これは何がために国家試験をするのか、これは国家のためじゃないんです、国民のためやらなければならぬ。従って国民のためにやる費用というものは、その収入よりも下回ってはならぬと思うのです。また無理な比率であってはならないと思うのです。従って私立大学などは一応試験でもって——たくさんの学生を募集して、試験でもって一年間の相当なる数の経費を調弁するという形が私学には往々見られます。国家試験の場合は、そういう形があってはならぬと思うのです。その点、今数字はおわかりにならぬと思いますが、もしも相当これが高額になるならば、そうした意味の雑収入的なものが多いことは私は好ましくないんです。これは内容を詳しく知りませんが、もしもそのように相当大きな金が国家に入るならば、試験料、登録料というものを軽減されていいんじゃないか、こう考えるのですが、大臣御見解いかがでありますか。
  139. 川崎秀二

    国務大臣川崎秀二君) ただいまの御意見と大体同じような意見を私も持っております。
  140. 田中一

    ○田中一君 ちょっと前に戻りましたけれども、今の問題と関連して伺いたいですが、御承知のように前国会で水道法案を出しました。そうして審議未了になってそのままになっておりますが、これは厚生委員会、建設委員会ともども、衆参ともにいろいろいろ問題があった問題なんです。そこで水の問題につきまして、厚生大臣が行政の窓口を簡素化してそうして一元化する。しかし内容は、建設省と水質の問題その他の問題はおのずから違ってきます——そういうような意図か、そういうようなお考えは、どういうお考えを持っておるかお伺いしたいのですが。
  141. 川崎秀二

    国務大臣川崎秀二君) 水道行政につきまして、これが二元化になるというようなことは絶対に避けなければならぬと私ども考えております。従いましてこのことにつきましては昨年水道法案が上程されて、そうしていろいろないきさつがありまして、今度の国会におきましても水道法案をなるべく早い機会に出したいということで折衝を続けておりますが、建設省の方におきましてはまだ体制が整いませんがために、この国会にはなかなか提案が間に合わないと思っております。しかし昨年の十月でありますか、両省におきましては、この問題につきまして意見をかわしました結果、施設工事ということにつきましては建設省がやるが、それ以外の一切のことにつきましては厚生省がこれを取り行うということの基本的な覚書をかわしたそうであります。しこうして今度の予算編成の途上におきましても、このことを確認し合っておりますので、その線から逸脱することはないと思います。従ってこの問題につきましては、保健衛生ということが何と言いましても眼目でありますから、従来まで紛淆を続けておりましたものは、大体厚生省の方に統一をせられることを私どもは希望いたしておりまするし、そういうように必ず在任中に解決をいたしたい、かように存じておるような次第でございます。
  142. 田中一

    ○田中一君 そうしますと、簡易水道の建設というものは、建設省は本年度やるようになるのですか。
  143. 川崎秀二

    国務大臣川崎秀二君) 簡易水道に関しまする限りは、全部厚生省で責任を持ってやっております。
  144. 田中一

    ○田中一君 そこに問題があるのです。ではもう一つ大臣に伺いますが、工業用水と農業用水の水の管理権といいますか、水の窓口といいますか、これはどういうふうにお考えになっておられますか。同じ水なんです、同じ水を使うのですから……。
  145. 川崎秀二

    国務大臣川崎秀二君) ただいまのお尋ねの点は、水利権にも非常に関係のある問題でありまして、これは個々の法律に基いて決定されておりまする関係上、建設省の管理に属しておる部面もあるのであります。これが簡易水道の部面におきましては、そのようなことがないものでありまするから、厚生省において一切取り運ぶことができるというような形に今日まではなっておるわけであります。
  146. 田中一

    ○田中一君 農業用水、工業用水、それから上水道、簡易水道、この四つに分れるのですが、水全体の問題については、今の簡易水道というのは、原則としては河川から引かないで掘り抜きにするということなんですか、厚生大臣の御答弁は。水利権に関係がないとおっしゃるなら全部掘り抜きにして水を供給するというのですか。
  147. 川崎秀二

    国務大臣川崎秀二君) 御答弁申し上げますが、私もしろうとでありまして、果して御満足の行くような御答弁をいたしておるかどうかは知りませんけれども、一応責任者としての答弁をいたしておることを御了承願いたいと思うのであります。簡易水道は、原則的にはただいま申されたように掘り抜きでありまして、または水利権と直接関係のない形で推進をされておるわけでありますが、かりに河川等に関連がありましても、これは管理者たる都道府県知事と相談をして今日まで実施してきておりますので、従って一元的に厚生省で取り扱い得る形になっておる、こういうふうにお答え申し上げるのが適当であろうと思います。
  148. 田中一

    ○田中一君 この問題をこれ以上やるとまた長くなりますからやめます。本年度予算説明書を見ますと、勤労者厚生住宅として三十億の金が出ております。前年度は御承知のように二十億。そこでこれはどういう形で処理をしておるのか、全然厚生省というものは一切この金というものを扱わないで、あなたの方の会計面で触れないで、預金部からじかに貸して返すという形をとっているのですか、単に事務的なものだけやっているのですか、この予算の何といいますか、所管の事項別調べにはないわけなんです。どにありますか。
  149. 川崎秀二

    国務大臣川崎秀二君) これは厚生年金保険の運用に関連をいたしまして、厚生省としてはその還元を例年被保険者に対するところの福祉の享受として要求をしでそのワクをとっておるわけであります。本年御承知のごとく四十五億、そのうち住宅に対して三十億という数字になっておるのでありますが、金は直接厚生省としては扱っておらぬわけであります。
  150. 田中一

    ○田中一君 どこでどういう形で扱っておるんです。
  151. 久下勝次

    政府委員(久下勝次君) これはまず第一に、基本的には資金運用部資金の運用計画の中に盛られまして、法律上の形式は地方債になっておるのであります。具体的な扱いは、厚生年金保険の被保険者福祉施設ということでございますので、一応各都道府県公共団体が地方債の形で申請をして参るわけでございますが、下審査を私の方でいたしまして正式の決定を自治庁でいたしておるわけでございます。なおしかしながら地方公共団体は、この融資の性質上、おおむね原則として厚生年金保険の適用事業所である会社、事業所等に転貸をいたすことを扱い上認めておるわけでございます。従いまして実際問題といたしまして、まず会社、事業所から勤労者の住宅を建てたいという申請をとりまして、それを都道府県なり市町村の承認のもとに地方債の形式で申請書が出てくる、そういう形でやっておるわけであります。
  152. 田中一

    ○田中一君 厚生大臣に伺いますが、ここでもいわゆる住宅政策が二元化されておるわけですね。一応都道府県の起債でまかなっておる、起債にまなっておるからおれのほうは知らぬと、その四十五億のワクをとっておるのは厚生省なんです。これは四十二万戸の住宅建設ということをうたってきた国務大臣としての川崎さんのお考えとしては、やはり住宅建設というものは一元化した方がいいんじゃないかと思うんですが、それはどうお考えになりますか。
  153. 川崎秀二

    国務大臣川崎秀二君) それは住宅政策は建設省において一元的に行うべきが私は当然であろうと思います。しかし行う際におきまして勤労者住宅あるいは社会福祉に直接関係のある母子住宅であるとか、それらの社会福祉施設的なものに多く投入してもらいたいということで注文をつけるということは、これは厚生省としての当然の立場でありますから、もとよりこれは住宅政策の中に一連の対策として包含をされてきておるものと私は考える。またそういうふうに建設大臣も国会におきましては答弁をしておるものと私は思っております。
  154. 田中一

    ○田中一君 この問題もあまり長くなりますからやめますが、同じような形でもって産業労働者住宅資金融通法という法律がありまして、六割五分貸しているのが、厚生省持っておるんです。同じケースなんです。こちらは八割五分ですか、貸しているのは。こういうのがあるんですね。少しも変っていません。内容はみんな同じです。ただ貸す方の比率が厚生省の方が甘い、あるいは余分に貸しているということにすぎないんです。これは厚生大臣としては、この方面も一元化するというような意図は現在お持ちでないわけですか。
  155. 川崎秀二

    国務大臣川崎秀二君) それはなるべくそういう方向に向って努力はいたしたいと思いますが、年金保険の享受者というものが多少その他のものからハンディキャップを受けるということは、施策としては当然現われてくるところでありまして、もとより行政の一元化ということも考えてみなければなりませんが、特殊な条件というものも考慮に入れつつやはり進みたいと私は思っておる次第であります。
  156. 田中一

    ○田中一君 もう一つだけ。資料でほしいのですが、消費生活協同組合の貸付金、これは四十二組合が対象になっておるそうですが、これは今までの貸付、回収その他の問題を資料でもって一つお出し願いたいと思います。貸付状態、回収状態。よろしゅうございますね。
  157. 松澤兼人

    主査松澤兼人君) 大体それでよろしいですか。僕、一つだけ、らい療養所の問題について。奄美群島の本島の和光園というところがありますが、今度はこの予算の中に入って多少拡張するような形になっておりますか。
  158. 曾田長宗

    政府委員(曾田長宗君) 奄美の療養所が、御承知のように、昨年度の後半からこちらに移って参っております。それをそのまま引き継ぎまして、それからさらにいろいろな設備が荒廃いたしておりまするので、それを逐次改築し、あるいは拡充して参るというような予算を三十年度においても組んでおる次第であります。
  159. 松澤兼人

    主査松澤兼人君) それは厚生省予算の中に組んでありますか。あるいは奄美大島振興の方に入っておりますか。
  160. 曾田長宗

    政府委員(曾田長宗君) 厚生省予算に組んでおります。
  161. 松澤兼人

    主査松澤兼人君) ほかに御質問ございませんか。
  162. 安田巌

    政府委員(安田巌君) 先ほど消費生活協同組合の資金貸付状況のお話がございましたが、二十八年度が全部で六十二組合、それから二十九年度が全部で六十七組合、それで償還期限が七年で、また二年据置でございますから、償還はまだ始まっていないと思います。その程度でよろしゅうございましょうか。
  163. 田中一

    ○田中一君 けっこうです。
  164. 湯山勇

    湯山勇君 ちょっと、大臣に要望がございますので……。
  165. 松澤兼人

    主査松澤兼人君) 簡単に……。
  166. 湯山勇

    湯山勇君 簡単です。この予算が通りましたあとで、府県へ配分されるのがおそくなりますと、府県の方は窮屈な財政の中で、予算の配分は来たわ、府県負担の分も組まなければならない、こういうことで、とかくまあ迷惑する、困ることが多いようでございます。これは厚生省だけに限ったことではありませんけれども、厚生省予算はこういうふうに非常に多岐にわたっております関係で、特にそういうことが影響することが多うございますから、一つ決定次第すみやかに府県の方へ出すものは出していただくようにくれぐれもお願い申し上げます。
  167. 川崎秀二

    国務大臣川崎秀二君) ただいまの件につきましては、一昨年も吉田内閣のときに暫定予算が二回にわたり、最後に予算成立が七月の末に至りましたので、非常な迷惑をしたという事例は、私どもよく承知をいたしておりますので、今回も同じようなケースを追いつつありますので、二度と再びそういう轍を踏まないように、なるべくすでやかに配分することに努力いたします。
  168. 曾田長宗

    政府委員(曾田長宗君) ただいまの委員長からの御質問にも関連がございますのですが、午前中に湯山委員から御質問がございましたらい患者の特に不自由者に対する慰安金の問題でございますが、私、三十年度においては、きわめて若干ではございますが、増額になっているということを申し上げましたが、これは実はその奄美の患者の分がふえておりましたので、単価としましては前年度通りでございますから、失礼いたしましたので、訂正申し上げます。
  169. 松澤兼人

    主査松澤兼人君) ほかに御発言がなければ、厚生省所管については、一応質疑を終了したものと認めて御異議ございませんか。   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  170. 松澤兼人

    主査松澤兼人君) 御異議ないようでございますから、質疑は終了したものと認めます。     —————————————   〔主査退席、副主査着席〕
  171. 田中一

    ○副主査(田中一君) 次に、労働省所管についての審査に入ります。  まず政府の御説明を願います。
  172. 西田隆男

    国務大臣(西田隆男君) 今回提案されました昭和三十年度一般会計及び特別会計予算中、労働省所管分につきまして、その概要を御説明申し上げます。  まず第一に、一般会計におきましては、歳入において総額三億十五万九千円で、前年度の二億三千四百十九万四千円に比較して、六千五百九十六万五千円の増加となっておりまして、この主たるものは、国家公務員等退職手当暫定措置法に基いて受け入れる特別会計等の失業者退職手当負担金であります。一方、歳出におきましては総額三百三十九億九千七十三万八千円で、前年度の二百九十二億六千八百五十七万三千円に比較して、四十七億二千二百十六万五千円の増加となっております。なお、このほかに、建設省所管の官庁営繕費に五千六百三十二万七千円を労働省関係分として計上いたしておるのであります。  次に、この歳出の内容について概略を申し上げますと、その一は、失業対策の拡大強化であります。経済諸施策の進展に伴いまして、失業情勢は必ずしも楽観を許さない実情にありますので、現行失業対策事業のワクの拡大をはかり、これを再編成するとともに、新たに特別失業対策事業として建設的な事業を大規模に実施するのほか、失業保険制度改善し、適用範囲の拡大、給付内容の適正化等の措置を講ずることによって、失業者の生活の安定を期することとし、これに必要な経費として失業対策事業費補助百六十八億二千万円、失業保険費負担金百十七億四百万円、政府職員等失業者退職手当三億六千万円、合計二百八十八億八千四百万円を計上いたしております。  その二は、労使関係の安定促進であります。国民経済の自立達成を期するためには、労使関係の安定をはかり、産業の平和を確立することが強く要請されている現情に鑑みまして、民主的労働組合を育成し、健全な労使関係を発展助長するため、労働教育の整備充実をはかるとともに、労働組合の福祉生活動の促進、労働金庫の適正なる運営等の施策を強力に推進することとし、これに必要な経費として六千百七万五千円を計上し、なお、労使関係の合理的かつ円滑なる調整をはかるため、中央労働委員会並びに公共企業体等労働関係調整委員会に必要な経費として、一億一千二百六十三万五千円を計上いたしております。  その三は、労働経済に関する統計調査の整備充実であります。労働経済に関する統計を迅速かつ的確に収集整備してこれを分析し、労働行政施策基礎資料とするとともに、労使その他関係方面に提供し、紛争議の合理的解決、生産の増強等に寄与するため、前年度に引き続き、毎月勤労統計、労働生産性統計、職種別賃金実態調査及びその他労働事情に関する統計調査を実施するほか、新たに地域的に発生する失業情勢を迅速的確に把握し、失業対策に万全を期するため、地域別等就業失業調査を実施することとし、これに必要な経費として、一億八千九百十九万九千円を計上いたしております。  その四は、労働関係における国際協力の強化であります。国際労働憲章に規定されている義務を履行し、積極的にこれに協力するために必要な分担金及びILO関係の諸会議への出席旅費等の経費並びにわが国の労働事情に関し海外広報活動実施するための経費として九千五万九千円を計上いたしております。  その五は、労働保護行政の円滑なる運営の確保であります。労働者の保護福祉を積極的に推進し、労働生産性の向上をはかるため、労働基準行政を一段と刷新整備するとともに、産業災害の防止と、職業病けい肺等、この種疾病の特殊性にかんがみまして、これが予防及び特別保護の方途を講ずるほか、中小企業における労働者の技能水準の向上をはかるため、技能者養成施設に対し助成を行うこととし、これに必要な経費として十二億七千六十四万六千円を計上いたしております。  その六は、婦人及び少年労働者の保護助長であります。婦人及び年少労働者の特殊性にかんがみまして、これら労働者の保護福祉の増進をはかるとともに、一般婦人の社会的地位と生活向上をはかるため、地方婦人少年室の行政機能強化するほか、前年度に引き続きまして、各種調査の実施、啓蒙資料の発行等を行うための経費として六千百十万九千円を計上いたしております。  その七は、就職の促進と職業補導事業の拡充であります。現下の雇用情勢にかんがみまして、就職の促進をより一そう強力に実施する必要がありますので、公共職業安定所の職業あっせん機能強化して、これが効率的運営をはかるとともに、産業界の要求する技能労働力の円滑なる需給調整をはかるため、前年度に引き続き、一般公共職業補導所を運営するほか、新たに家庭婦人、未亡人等を対象とする家庭内職、家事サービス等の職業補導事業実施することとし、これに必要な経費として三十億百十九万二千円を計上いたしております。  その八は、その他一般行政事務に必要な経費であります。  以上の経費のほか、大臣官房等における行政事務費として三億二千八十二万三千円を計上いたしておるのでございます。  第二に、労働者災害補償保険特別会計につきまして申し上げます。  この会計の歳入歳出はいずれも二百三十二億五千六百七十三万円で、前年度の二百四十億四千八百二万九千円に比較して、七億九千百二十九万九千円の減少となっておりまして、歳入の主たるものは、保険料収入の二百八億八千六百六十九万九千円と、支払準備金受け入れの十五億円であります。又歳出の主たるものは、労働者災害補償保険給付費の百七十五億三百五十五万一千円でありますが、本年度は労働者の業務災害被災者に対する療養給付の適正充実をはかるため、前年度に引き続き労災病院の整備拡充を行うとともに、懸案事項でありましたけい肺病罹災者等の予防及び保護強化するため、今国会に提出し審議をお願いしておりますけい肺及び外傷性せき髄障害に関する特別保護法に基き、けい肺患者及び外傷性脊髄損傷患者に対する療養、休業、配置転換給付並びにけい肺健康診断実施する等のため、十二億八千四百六十三万五千円を計上いたしております。  第三に、失業保険特別会計につきまして申し上げます。  この会計の歳入歳出はいずれも四百五億九千三百五十八万四千円で、前年度の四百二億九千六百五万一千円に比較して、二億九千七百五十三万三千円の増加となっておりまして、歳入の主たるものは、保険料収入の二百五十億六千七百五十八万二千円と、一般会計より受け入れの百十七億四百万円であります。又歳出の主たるものは、失業保険給付費の三百四十二億四千二百万円でありますが、特に本年度におきましては、本会計の積立金より生ずる運用利子収入のおおむね二分の一を充当することにより、労働者の福祉増進をはかるため、職業補導施設及び宿泊施設等の保険施設を拡充整備することとし、これに必要な経費として、五億五千万円を計上するのほか、失業保険法の一部を改正し、適用範囲の拡大と保険給付の適正化をはかることといたしております。  以上をもちまして、労働省所管関係予算の大要の御説明を終ります。何とぞよろしくお願い申し上げます。
  173. 田中一

    ○副主査(田中一君) 質疑のおありの方は順次御発言を願います。
  174. 高田なほ子

    高田なほ子君 けい肺病のことについてお尋ねをいたします。けい肺病の療養者について、今度新たに法律をもって保護せられることができるような措置を講じられておりますことは、まことに私ども喜びにたえないところであります。ただ、御質問申し上げたいことは、この法律が出る以前に、けい肺病のために倒れて退職金、一時金といったようなものをもらっておる者に対して、この法律が適用されるのか、されないのか、この点についてお尋ねいたします。
  175. 西田隆男

    国務大臣(西田隆男君) 本日衆議院委員会でただいま採決をしていただいて参ったのでありますが、政府の考えておりましたのは、九月一日から実施をしたい、こういう法律案を出しましたが、衆議院各党各派共同一致の修正案として、法律の公布の日に遡及して支給する、こういう修正が本日成立いたしておりますので、その法律の成立に基きまして、予算上は措置がいたしてありませんけれども、その修正の趣旨を考えまして、政府としては善処したいと考えております。従って、公付の日に遡及して、打ち切りになっておられまする人たちも、療養給付も休業給付ももらえるということなると思います。
  176. 高田なほ子

    高田なほ子君 それではちょっと婦人労働の問題についてお尋ねいたしたいと思います。御承知のように、婦人労働の問題は、あまり重要に表面には出てこない問題ですが、この労働者の雇用の問題は、日本の経済の動きの中で、また本年度予算においても、相当失業対策事業などについても考慮されておるようでありますが、失業の波の中で、現在の日本の婦人労働問題というものは、相当大きな幅を占めておるように私は考えます。そこで、先般予算委員会で高碕国務大臣に婦人の就労問題について御質問申し上げましたところが、次のような意味の御答弁があったわけです。つまり、婦人は職業戦線に出てこないで、幸福な奥様になるような計画を私は考えている、こういうような意味の御答弁がありました。これは国務大臣の御答弁としてはまことに腑に落ちない答弁であります。婦人の労働対策を、全く等閑に付されておるような御答弁のように思いますが、こういう疑義を持っております私は、婦人労働に対する基本的な方針、つまり今日失業、潜在失業の波の中でようやく婦人の労働問題婦人の就職がだんだんだんだん狭められているような傾向にあるときに、奥様になることが望ましいというようなことは、婦人労働の中を狭めていく非常に基本的な問題に触れていると思います。そこで労働大臣がせっかくお見えになりましたから、こうした重要な問題についての基本的な方針、これをお尋ねしたいと思います。
  177. 西田隆男

    国務大臣(西田隆男君) お答えいたします。ただいま高碕国務大臣の答弁を引用してお話がございましたが、私は必ずしも高碕国務大臣と同じ考え方は持っておりません。しかし日本の婦人の労働者というものは、最近になりまして急速に増加してきておる。しかもその中で、はっきりした雇用関係の樹立されている婦人労働者の数というものは、男性の労働者に比較いたしましてはまだ非常に少いと思います。今後そういう雇用状態が日本の労使関係においてだんだん確立されていくに従って、婦人労働者の数も増加するという傾向にあることは、高田先生のおっしゃる通りでございます。従って今後の労働問題にとりましても、婦人労働者をいかにするかという問題は、非常に大きな問題だと思います。私の基本的な考え方を申し上げますというと、現実の、ただいまの問題としましては、日本の雇用状態の関係から考えまして、職を希望される婦人の人たちに即時雇用関係を樹立させるということは今非常な困難性があります。かつ日本の婦人の未婚者以外の人を除きましては、いろいろ特殊な情勢下にあって、現在のような賃金体系のもとにおける雇用労働者としてのすべてが、男性と同等な立場において取り扱いをされねばならぬという実態までには、相当まだ遠い状態にあると考えておりますので、私労働省に参りまして婦人少年局等の予算等を伺ってみますというと、今まで全く婦人、年少労働者というものに対しては、政府としては考慮が払われていなかった程度の、きわめて僅少な予算しか計上されておりません。従って婦人労働者の実勢をつかむことすら、ほとんど不可能な状態におかれております。大きく、さっきから申しますような完全な雇用関係に立たせるようなあっせん、お世話を申し上げるということは、とうてい現在の婦人少年局の機構そのものではできない。従って当面の問題として一番お困りになっておる未亡人であって働かねばならない人、あるいは家庭に入っておられても、働かねばならない人というような人たちにさえも、救いの手を差し伸べるということができないような、ほんとうに情ない状況でありますので、とりあえず本年度の労働行政の面におきましては、そういったような面に対して何らかの救いの道の手を差し伸べたいというので、きわめて僅少でありますけれども、一千万円の予算増加いたしまして、内職あっ旋所、あるいは婦人の職業補導という面について、少い金ではありますけれども、ある程度整備をして、人員をあてがって、ここでいろいろ今後の、将来婦人問題を解決する第一歩としての、建設的な働きに一つ乗り出そう、こういう考え方で三十年度予算で一千万円という予算を取っております。詳細につきましては婦人少年局長からお答え申し上げます。
  178. 高田なほ子

    高田なほ子君 具体的な問題はだんだんお尋ねをしたいと思いますが、一番問題になるところは、日経連も中央教育審議会に対して、婦人の就職は遠慮してほしいというはっきりした答申をしております。これに対して高碕さんは婦人労働者は皆奥様になるプランを立てておる、こういうばかなことを言ってお茶を濁しておる。これに対して支えになるのは、やはり労働大臣だと思う。ただいまの御答弁を承わりますと、婦人の就労問題についても、なかなかの御関心を示しておって下さるわけでありますが、御承知のように現実としては失業者が多い。雇用条件が悪くなってくると、先に整理の対象になるのは婦人なんです。つまりこうした状態の中で、だれがこの支えになっているかというと、それは労働組合を組織しているところの婦人部では、婦人部自体が首切りに対して抵抗を示していますけれども、行政的にこれを救う手は、今までなかったように私は思うのであります。しかしながら労働組合の抵抗が非常に大きいということは、それだけ行政面が救いの手が薄いということを示していると思うのです。私は特に労働組合の婦人層が、首切りに対して猛烈な闘争をするということを、私は決して好んではおらない。だがしかし現実にはそうしなければならないのでありますから、この点は十分に労働大臣が現状を把握せられまして、女子の就業率が、現在より以下に低まらないように、行政の面において強い手を打って下さることを希望いたしますが、これに対して適当な手の打ち方について、大臣はいろいろの案をお持ちだろうと思いますが、お答えいただきたいと思います。
  179. 西田隆男

    国務大臣(西田隆男君) ただいまのお説ごもっともと考えます。私も実は事業をやっておりますが、事業場の実情は、婦人の労働者を優先的に減らすというようなやり方はやっておりませんし、考え方も毛頭持っておりません。従って各企業場におきましても、今高田先生のおっしゃるような考え方を今まではしておった人があったかもしれませんが、そういう観念は私自身から考えますと、取り去っていただきたいと思います。ということは、日本人は九〇%が労働者と言われるような実情に基いて生活をしていかなければならぬ国柄でございます。現在は絶対男だけが働いて、男だけの賃金で生活が支えていかれないという場合も考えられます。もし、その中に働ける婦人があった場合にはその婦人は当然に働くべきであり、また働かすべきである。そうして日本人が、男であっても、女であっても、夫であっても、妻であっても、子供であっても、それは平等に生産に寄与することによって、生活を少しでもよくしていくという方向に向うのが、労働行政の目標でなければならぬ。私はそう切実に考えておりまして、今後労働行政を担当するに当りましては、そういう基本的な考え方に基いて、私ども御婦人の問題も考えて参りたい、かように考えております。
  180. 高田なほ子

    高田なほ子君 今日は婦人少年局長の藤田先生もお見えですから、この際具体的にこの問題についてお伺いしたいんですが、二十八年度あたりの調査をなされたのを見ますと、大体全就業者の四割くらいがこの婦人労働者が占めていながら、だんだん横ばいの状態になっていっているようですが、最近の傾向では、現場の方を御調査になってみて、その率は落ちておりませんか、いかがでしょう。
  181. 藤田たき

    政府委員(藤田たき君) 失業者がふえておりますことは事実でございますが、一番私どもで至って失業、就職が困難と思われておりますのは、今度四月卒業いたしましたところの高等学校の生徒たちでございまして、その点でもって、この三月などは四十万というような女子の失業者が出ておりますのですが、その点私どもは非常に憂慮いたしておりますのでございますが、私どもが考えまして、また調査いたしまして、一番就職がむずかしく思われましたのは、やはり子供を抱えているような未亡人たち、それから貧困の家庭で、夫が病気であったり、何だりする人たち、そういう人たちが一番困っているんじゃないかしらというふうに思っておるのでございます。それにもちろん大学の卒業者たちも非常に困難な就職状態になりましたが、それは労働者といたしまして、ぜひともその人々のために就職を助成するというところの態度を持っているわけでございます。一九五五年の二月現在で、女子雇用者が数は四百三十九万人になっておりますので、決してこれは減ってはおりませんけれども、女子を三十人以上雇用しているような大きいところの工場、中というような工場におけるところの女の雇用者の数が、やや減っているのじゃないかと思います。小さいところは減っておりませんし、それにもちろん女子は家族従業者というところの非常な大きな役割を占めておりますものですから、その点ではふえておるということは申し上げられます。それは決して雇用者がふえたことを意味いたしませんので、その点は残念に思っております。
  182. 高田なほ子

    高田なほ子君 第二番目に大臣にお尋ねいたしたいことは、今藤田局長の示された数字を見ても明かなように、非常に婦人の職業というものはいろいろな面でなかなかの苦労の道を歩いてきておるわけですが、最近こうした中にある婦人の労働条件の保護という問題は、必ずしも円滑にはいっておらないようです。労働基準局あたりの調査を拝見いたしましても、相当基準法違反に当るようなもの、そういうものが多いようでございますが、できるだけ、というよりはむしろ法律に示す、基準法で規定される保護条件が完璧に守られるようにしてもらわなければなりませんが、これに対して労働大臣もだんだんお考えいただいていると存じますが、労働条件保護のための、特に婦人の労働条件ですが、具体策というものについてお考えがありましたら、御答弁いただきたいと思います。
  183. 西田隆男

    国務大臣(西田隆男君) お答えいたします。私の考えておりますことは、少くともある程度事業規模を持った事業場に雇用されておる婦人労働者は、労働基準法の保護を受けている点については、これは男性の労働者とちっとも変りないと考えております。さっきも婦人局長が言われたように、ある程度事業規模を持たないところに職を持っておる御婦人の方は、これは御婦人といわず男でも、労働基準法の完全な保護を受けていない人が相当数あることは、これは私も承知いたしております。従ってそういう方面にまでも労働基準法の精神を生かして労働者を守るということ、これは当然労働行政の面においてやらなければならぬ。今後もそういうふうにやりたいとは考えておりますけれども、これは実情を申し上げますというと、実際につかみにくいことでございます。これは国民の、各使用者と労働者双方とも、また社会のその他の人々もやはりそういう考え方に基いて、お互いにいたわり合うという基本的な精神が涵養されていかないと、法の取締りをいちいち厳重にそこまで持っていって施行するということは、現在の実情では労働省の人数の関係もありますけれども、なかなか手が行き届きかねておるのが実際の実情でございます。
  184. 高田なほ子

    高田なほ子君 私は法の取締りばかりが解決策であるとは考えられないのです。欠点は次のように私は把握しているわけです。つまり婦人の地位の向上、婦人の労働条件の向上、そういったようなものは、戦後日本の民法あるいは教育法、労働法、こういう一連の法律の改正で、ようやく婦人の地位が男子と同等になってきた。しかしそれは形式上に同等になったので、内容ではさっぱり同等にならない。だから労働基準法の婦人に対する保護規定があっても、その保護規定が必ずしも理事者といいますか、雇う方の側に徹底しているようには私考えられないのです。つまり女がお産をして休むなんということはぜいたくだ。生理休暇で休むなんということもこれもぜいたくだ。こういう権利を振り回すなら、男がだぶついておるのだから男を採った方がいい、こういうのが一般の通念のように思う。つまり婦人と労働保護という問題が、国際条約の中にまでうたわれている基本的人権の尊重にあるのだということすら、まだわからない人が非常にたくさんある。そういうことをわからせるということの手だてをとって、また行政面には絶えず大臣が婦人の労働条件の保護について親切なアドバイスをするというくらいの、強いやはり指導力が特に婦人の面においては私は必要に思う。中国あたりでも、革命の後に婦人の地位がどんどん向上して、労働条件はほとんど完璧に守られておりますが、これはやはり手放しでおくのではなくて、行政面において婦人の労働条件を守るためのいろいろな悪条件をどんどんどんどん削除していく積極的な手が打たれているように聞いている。ところが日本の場合には基準法一本だし、労働基準監督官の数は少い。これでは婦人の労働条件を守る法律があったとしても、私は守り得ないのが当り前ではないかと思う。つまり行政面におけるこうした保護について何らかの施策がないかということについてお尋ねしているわけです。
  185. 西田隆男

    国務大臣(西田隆男君) お答えいたします。これは非常に男女間の不公平と申しますか、不平等と申しますか、言葉の表現はそういうことになるでしょうが、これをいかにして是正するかという問題は、こういう言葉をもっていえば、深遠にして非常に困難である。これは日本人の長い間の伝統と申しますか、国民性と申しますか、そういうものによってつちかわれた男女間が、終戦後先生のおっしゃるようにある程度めざめてきたということは、これは現実の問題として事実でございますが、この男女間をほんとうに公平な平等な立場にまで、いかにして押し進めていくかという問題は、単に働く御婦人だけでなく、家庭の御婦人も、日本全体の婦人という問題、男性との関係においての婦人という問題を考えていかないと、労働行政の面だけでこれをやるということは、効果がないわけじゃありませんけれども、私はもっと深く立ち入って考えるべき問題じゃないかと思います。日本は御承知のように、悪い言葉かどうか知りませんが、女ならでは夜が明けぬ国というくらいに、女を大事にしたのではなくて、女がほとんど生活の主体みたいな格好で、家庭において、あるいは家庭外において働かされておったという姿だろうと考えております。そういう国柄で、すから、女を日本の国で除外して排他的な考え方で経営者とかあるいは男性が考えているという観念は、現在の実際の面ではある程度是正されているのではないか。これからは御婦人方それ自身が男性とほんとうにすべての点において公平な立場で平等なだけの働きをされるだけのやはり素地、素養を積まれて、体力的にも、精神的にもあるいは頭脳的にも、そういうふうな方向に婦人自身が進んでいかれる道を講ずることによって、男性との差別待遇と申しますか、そういうものが基本的に払拭される。その払拭されたときにはじめて男女が平等の立場に立てる、こういう事態が社会面に現われてくるのじゃないか、こういうふうに考えております。これはお前の言い方は非常に失礼だ、今の日本の女性は男性に決して劣らないという御意見も出ると思いますけれども、私自身はそういうふうに考えておりますので、今日の労働行政の面におきましても、婦人少年局の方でそういう精神的な方面、それと現実に困っておられる、職につこうにもどうにもつけないというような人たちに対して、若干救済の手を差し伸べて、だんだんその制度を拡充していくというようなことは、切実な問題として考えております。第二の問題として考えるべき点は、結局労働力を持っておられる人が、いかに平等に男性と公平な立場において就職の機会を得られて、少しでも長く働けるような社会を作り出すかということをその次に考える。こういう基本的な考え方で現在進んできておりますので、一つこの程度で御了承願って、いろいろ御意見があると思いますけれども、御意見はまた聞かしていただくことにしまして……。   〔副主査退席、主査着席〕
  186. 高田なほ子

    高田なほ子君 御意見は御意見として承わりますが、私はきょうは大臣としての御答弁を願っているので、婦人が実質的に内容を上げるなんということは婦人自体の問題で、つまり大臣としてはもう少し、婦人労働の行政面についての措置がないかということを伺っているわけでありますから、そういうふうに御答弁いただきたい。そこで次にお尋ねいたしますが、ILOの婦人労働に対する条約がございますが、この第三条に、産後の強制的休暇の期間は国内の法令で定めなければならない。ただし、いかなる場合にも六週間未満であってはならない。つまり日本の産後の休暇は労働基準法に示すように、強制休暇期間は五週間になっております。しかしILOの国際条約の母性保護の条約においては、六週間未満であってはならない、こういうふうに規定し、同時に一昨年寺本労基局長がILOの会議においでになったときも、この産前産後の休暇の期間については、さらにこれでも足りないというので、可能な場合には十四週に延長すべきであるという出産休暇についての勧告を総会に出しているわけです。こういうふうに産前産後の休暇という問題についても、すでに国際条約においては六週間未満であってはならないという、さらにそれでも足りないから勧告しているというこういう時期に当って、現在婦人の労働条件がくずれているんですから、ここで一奮発してこの六十五条の改正をなさるべきが私は至当だと思うのですが、この点について労働大臣の御見解をお伺いしたい。
  187. 西田隆男

    国務大臣(西田隆男君) ただいまのお話しのILOの婦人の条約の案文が草案され、こちらにも送付されておりますが、これが当然批准されるという段階になりますれば、産前産後の分べん手当、産後の手当の問題は、当然この規定の産前産後六週間以内でないような日本の法律は、当然変えざるを得ないと思いますが、まだ批准の運びになっておりませんし、閣議でも決定をいたしておりませんので、ただいまは五週間となっているだろうと思いますが、当然これは将来は批准されれば、当然法律の改正を行うだろうと思います。
  188. 高田なほ子

    高田なほ子君 まことにごもっともな御答弁です。そうなくてはならないのに、五週間が最大不可欠のものであるかのような考え方を持っている者がたくさんやはりいるわけですから、もう少しこの労働行政の中の婦人労働行政の面については、強力なやはり予算を取ってもらわなければ決して救われない、こういうふうに考えるわけです。  その次お尋ねしたいことは、毎度のことでもうお耳ざわりかもしれませんが、婦人少年局の機構を強化するというふうに予算の面でも御提案になっておりますし、若干の予算がふえていることも喜ばしいことであります。しかしいかがでしょうか、全く全人口の半分を占める婦人のために、あるいは子供のために一生懸命になって一番私どもに密接に案じられる役所は、何といっても婦人小集局だと思います。藤田さんがここにおられるからおだてて申し上げるわけでは決してないのですが、これは全般の婦人の声なんです。それなのに予算というものは全くこれはお粗末です。ジェット機の一台が二億円なんだから、その二億円のジェット機の一台分を婦人少年局機構の強化のためになぜ使わないのか、私どもも地方の方に行ってしばしば質問されるし、もっともだと思う。どうですか、婦人少年局の機構の強化のために、このくらいの予算増加でこれでよろしいとお考えになっているんでしょうか。またこれでは不備だと、どういうふうにしていった方がいいというお考えをお持ちになっていらっしゃるか。特に労働大臣からのお答えをお願いしたいと思います。
  189. 西田隆男

    国務大臣(西田隆男君) お答えいたします。決して三十年度の婦人少年局の予算が十分だとは考えておりませんが、さっきから申しますように、今まであまりにも予算が少かった。機構も何も、まだまだ本省に局長だけがおられるという程度で、各地方に行きますと、協助員とか何とかというのが一千人ばかりにいる程度で、婦人少年問題の解決をつけるというにはお粗末な機構でありますので、一挙に予算をふやして、予算が取れたからさあやるぞと言っても、なかなかできるものではありません。従って逐次漸進的に、ゆるゆるやるという意味ではございませんが、特に漸進的に機構そのものを整備しながらだんだんやっていかなければ、日本の婦人の問題だけでも片づかない。あなたのおっしゃるように人口の半数以上は女性なんですから、その女性を労働行政の面においてうっちゃっておいたんでは、日本の将来が決して幸福になるとは考えておりません。しかしこれは労働大臣だけの問題ではなく、国会としてももちろん考えてもらわなければいけないし、日本国民全体としてもう少し婦人問題という問題については、関心を深くしていただかないとどうにもならぬと考えております。私自身としては決してこれで満足いたしておりません。
  190. 高田なほ子

    高田なほ子君 それでは具体的に地方分室あたりの人員強化するようにお考えになっていらっしゃいますか。
  191. 西田隆男

    国務大臣(西田隆男君) 現在のような状態で、どの程度の仕事が今年度予算でできますか、これは婦人少年局長の方でやっていただけると思っておりますが、私はこれは十分でないと思っております。これは実際仕事をやると、いろいろの欠陥が表われてくる。今までは金がなかったから仕事をしない、仕事をしないから欠陥が表われて参りません。金があって仕事をすれば必らず欠陥が表われるところができる。そういうところは今後拡大するところは拡大し、補正するところは補正をし、効果のある活動をしていきたいと思っております。
  192. 高田なほ子

    高田なほ子君 大臣は欠陥が表われておりませんと言っておられますけれども、私はしろうとですけれども、今まであまり藤田局長とも連絡してはまずいと思って連絡をしておりませんが、私の目では、欠陥が表われております。実際仕事をしようとしてもできないという欠陥が、もう地方の各分室では表われてきている。旅費が足りなで、てんやわんやの大騒ぎ、こういうような欠陥が表われていることを、もう少し白日のもとにさらして、労働婦人少年局をどんどんと強化する方向にもっていかなければ、ILOに参加しても、実際これは恥かしくて、私は発言権がとと言権がないのじゃないか。婦人少年のためにこんな蚊の涙のような予算を取っている国は、ほんとうにこれはずっと文化水準の低い国家だと思いますが、それは意見でありますから藤田さんにお尋ねしますが、本年度予算が若干ふえているようでございますが、この予算を通じて現在婦人少年問題をほんとうに真剣にやろうと思う場合に、どうした面にどういう欠陥が表われてくるか、やはり私どもは率直にそれを知りたいと思うのです。どうぞ遠慮なく一つおっしゃっていただきたいと思う。
  193. 藤田たき

    政府委員(藤田たき君) ただいま大臣から人がいないのと予算か足りなくて仕事ができないというお言葉がございましたが、それは確かにそうでございますが、私どもといたしましては、人がおりません。予算がありませんところをいろいろ工夫して、たとえばただいまおっしゃいました一千人という救助員というものは、これはたった年に一千円の手当を受けておられる方々でございまして、何ともお気の毒でございますけれども、非常な熱情をもって婦人少年室の仕事に御協力していて下さるのでございます。ただいままでの方針が定員をふやすことができないという方針であったものですから、私どもとしては地方におります百余名の婦人少年室長及び補佐の協力援助する機構として、一千名の協助員にお願いいたしまして、足らないところを補っているのでございます。もちろん高田先生のおっしゃいますように、いろいろたとえば旅費が足りません、それから電話代が足りません、切手代が足りませんというふうに、仕事をしていきます上に非常に節約また節約をしていかなければなりませんことは私どもの方の役所だけでないかもわかりませんが、そういう点を非常に考えていかなければならないことと思いますが、何を申しましても人員不足ということが非常に大きな欠陥であると思います。と申しますのは、一つの県に二名ないし四名というところの月給をもらってるところの職員でございましては、なかなか都道府県、中には非常に広いところもございますし、なかなか一回りすることもできない。定員の不足ということは私どもにとって非常に痛手だと思います。それから今申しましたいろいろな仕事を続けますに当っての旅費などもございますが、今まで節約の時代でございますものですから、私どもとしてあまり無理を申し上げることができなかったわけでございます。
  194. 高田なほ子

    高田なほ子君 ありがとうございました。私が実態を把握しているのと御答弁とが全く一致しておって、これは一つ労働大臣にも大いにがんばっていただいて、どんどんこの仕事をしていただきたい。足りなくなった場合には、補正でも出すくらいの一つ意気込みでやっていただくように、特に私は強く要望いたします。  それからもう一つお尋ねしたいことは、婦人少年局の予算の中で、売春対策費が削減されておるようです。今ちょうど売春禁止法が上程されて、非常に下部の運動は盛んになっていますが、どうしてこれは減らされたのでしょうか。
  195. 藤田たき

    政府委員(藤田たき君) 御承知の通り労働省の方は、売春問題について非常な関心を持っておりまして、昭和二十三年以来、この問題に対していろいと実態調査、啓蒙等々を数限りなくいたしておりまして、その資料はお手元に差し上げてある、先生方もあると存じます。そのように去年まで私どもは実態調査というのをいたして参りましたのです。実態調査というものが一応打ち切ることができるような段階に達しましたものですから、実態調査費を今度は削りまして、それをほかの方に回したわけでございまして、そういう理由で少くなりましたのでございます。
  196. 高田なほ子

    高田なほ子君 もう一問だけ大臣にお尋ねをいたします。この家内労働、つまり家族でもって内職をしている者、この者に対する調査も、婦人少年局の方から絶えずいただいておりますが、その実態によりますと、非常にこの工賃が低い。他の婦人労働に比べますと、お話にならないように低いわけです。しかも家事と並行して行なっていますから、疲労度が非常に強いのです。これはやはり家内労働に対する中間搾取と申しましょうか、手工業に対する中間搾取の方法を何とかここらでとめる道はないかという御相談なんですが、これに対して何かお考えをお持ちでしたら、この際お願いしたい。
  197. 西田隆男

    国務大臣(西田隆男君) お答えいたします。これは婦人局長から詳しい内容はお答えいたしますが、今おっしゃったように、内職をしておられる人は個々別々に内職の契約をしておられる。従ってもう少しよけい払える賃金も値切られて安くしかもらってないという実情は、婦人局で調査の結果はっきりいたしております。従って今回の予算におきましても、内職の補導所を作りまして、そこに収容して、そして作業をさして、ただいまでも婦人局の方であっせんはいたしております。一まとめに婦人局の方で賃金の面までも相談に応じて、そして公平な賃金をできるだけ内職者に都合のいいように払っていただける点まで、婦人局の方でお世話を願おうということで、今度の予算では内職補導所を相当作るように予算を計上してございますから、それで十分ではありますまいけれども、まず大都市に作りまして、だんだんそれを拡大していきたい、かように考えております。
  198. 高田なほ子

    高田なほ子君 東京都でも約十二万人くらいの手内職の主婦かおるわけですが、今度そうした補導所、あっせん所を作るというと、その十二万人に対しどれくらいのものが救済される予算になっておりますか、お尋ねをいたします。
  199. 藤田たき

    政府委員(藤田たき君) 予算の面においては非常に人数が少ないわけでございます。なかなか内職補導所の利用者数というものが、一カ所当りそうたくさん持つことができませんで、予算の面においては一千六百八十人というような一カ所当りになっておりますのですけれども、私どものねらっておりますことは、その内職相談所におきまして、たとえばいろいろと今までもいたしておりましたけたども、調査研究いたしまして、たとえば東京都内でもって二百八十六種類もの内職があるのでございますけれども、そういうようなものを調査いたしました結果、こういう内職はこれくらいの値段で今までされておるし、結局また同じ東京都内でも、この地区ではこれだけで、あの地区ではこれだけというようなことです。そういったような情報を私どもは集めて、そしてそれをみんなに提供したいと思っているのです。情報の提供ということが一つでございます。そしてまた私どもとしては、これくらいの工賃であるべきだというところも、価格も表示したいと思いますが、これは非常にむずかしいことでございまして、価格をこれだけにきめてしまったら、もうそんな高いところじゃ出してやらないということになりますので、値段をきめますことは非常にむずかしゅうございますけれども、これくらいが妥当なものであるという線に到達して、それを出したいと思っております。でありますから、予算の面で一カ所当りの人数は非常に少うございますけれども、そういうような情報を流しますことによりまして、いろいろとお世話をしたいと思っておりますし、それからまた、今までたとえば男の人が一時間働きまして二十七円、女の人が十六円しかもらえないというような、そういうようなことを、やはり技術を持っておらないわけでございますから、技術の巡回補導などということもいたしたいと思っております。ですが御指摘なさいましたように、なかなかたくさんの人をカバーすることはできないと思っております。
  200. 高田なほ子

    高田なほ子君 大へん家内労働に対しては、これは等閑には付される日陰の問題のようでありますが、まことに重要な問題であり、ただいまの御説明を伺っても、決してこれを救うという方向にはいかないと思いますが、さらに重ねてお尋ねをいたしますが、この内職をする婦人は、大体において家庭の主婦が八五%を占めておりますが、しかもこれがほとんど母子世帯が多いという状態にかんがみ、託児所を設置するという問題は、内職の補導とともに不可分の関係を持つもののように私どもは承知しておりますが、労働省といたしましても、労働問題からこういう託児所の必要性というものをあなたも御主張なさっておられるのだと存じますが、この点、労働大臣いかがでございましょうか。
  201. 西田隆男

    国務大臣(西田隆男君) 託児所が働く御婦人の方に必要であることは、これは申すまでもございません。戦争前の各事業場におきましても、御婦人の働いておられましたときには、各事業場で託児所を持っておりました。がしかし、終戦後御婦人の労働の範囲が、先ほどおっしゃったように挟められまして、組織を持ったところに未婚の婦人の労働者は相当おられますが、既婚婦人の労働者と申しますものは、きわめて数が少いためにおそらく託児所を設けて既婚婦人を雇用関係に置いておるというところは、例外的にあるかもわかりませんが、全体としてはないように考えます。従って日本における子供を持っておる婦人の働くための託児所というものは、今もうほとんど議論する余地のないほどなくなっておると思います。従って今後、婦人問題を解決し、子供を持っておられる御婦人が、内職じゃなくて、普通の労働に従事される場合のことを考えますと、急速に託児所というすのを作らなければならぬということを私は考えておりますが、本年度予算では、残念ながら託児所を援助するという費用は計上されておりません。
  202. 高田なほ子

    高田なほ子君 大へんによい資料を労働省婦人少年局は出しておられますが、これを全部の国会議員に無料で配付しておられるわけでございますか、いかがでございますか。
  203. 藤田たき

    政府委員(藤田たき君) これは多分全部の先生方には差し上げてないと存じます。社会労働委員会の先生方には差し上げたと思っておりますが、こちらにも差し上げた方がよろしゅうございましたら、持って参ります。
  204. 高田なほ子

    高田なほ子君 大へん少い予算の中で、こういう膨大な、なかなかりっぱな資料を毎月送らせるということは、よれはずいぶんひどいようでございますが、これは労働大臣もお見えになりますから、これは予算を取って、労働委員でない全部の先生方にこれをお送りできるように一つお骨折りいただくようにお願いいたします。
  205. 松澤兼人

    主査松澤兼人君) ちょっと速記をとめて下さい。   〔速記中止〕
  206. 松澤兼人

    主査松澤兼人君) 速記を始めて下さい。
  207. 湯山勇

    湯山勇君 時間もこういう時間ですから、私しぼって二点だけお尋ねしたいと思います。それは失業問題と関連いたしまして、安定所のことについてでございますが、今日の就職の状況は、大臣も事業場をお持ですから、よくおわかりいただけると思うのでありますが、縁故就職がほとんど大部分であって、そうして安定所を通しての就職というものは、二流、三流、あるいはもっと悪いところしか開放されていない実情にあると思います。そこで、このままでいきましたならば、今日のこういう失業者の増加する傾向の中にあって、安定所の果す役割というものは、きわめて小さい役割しか果せない。そこでこういうことについては、根本的に何らかの対策を立てなければならない段階ではないかと思うのでございますが、その点について何かお考えがあれば、一つお示しをいただきたいと存じます。
  208. 西田隆男

    国務大臣(西田隆男君) 湯山さんのお尋ねになりましたのは、安定所を通じて就職しておるすべての者が、一般失業者よりも悪い事業場に行っておるということですか。
  209. 湯山勇

    湯山勇君 もう一度申し上げます。就職する場合、縁故就職、それから試験を受けて就職する、安定所を通じて、安定所のあっせんといいますか、それによって就職する。ところがいい事業場等は一般的に縁故就職とか、それからまた試験でより抜いて採るとかということになりまして、特に縁故就職が問題だと思うのですけれども、そうして安定所のあっせんによってする場合というのは、きわめて労働条件の悪い、そうしてまあいつ倒れるかわからないというようなところへやむを得ず行くことが非常に多い。そうしてまたその率からいいましても、安定所によって紹介される率は、きわめて率が低いと思います。こういう状態でおいたのでは、将来非常に憂慮すべき状態になるのではないかということで、大臣のこれに対する御所見を伺いたい。
  210. 西田隆男

    国務大臣(西田隆男君) お答えいたします。大体において現在の学校卒業者、それから新たに初めて就職をする人たち、こういう人たちは、今おっしゃったような縁故就職だけじゃないと思いますけれども、一定の試験を受けて合格した人が就職する。しかも就職の状態が、職を求める人全部に行きわたらないという情勢の現状におきましては、優先して採用された残りの人は、従って職業紹介所でも通じて何とか就職をしようという行き方に現実の姿はなっておると思う。従って他の一流、二流という希望する会社の雇用状態がはっきりきまったあとでの就職ということになる関係上、安定所を通じて就職される人が、それ以下のところに行っておられる。それともう一つの理由は、安定所に出てこられて就職を求められる人は、学校を出て初めて就職をするという人よりも、もう一司も二回も三回も職を変えて、他の方面で相当な年令になっておって就職のあっせんを頼むと、こういうふうな関係から湯山さんのおっしゃったように、結果的に見ますと、数等劣等なと申しますか、悪いところに就職をされるというのが、現在の安定所の実態であると考えております。従って安定所といたしましては、就職を求めに来られる人に差等をつけて職をあっせんしようとは考えていなくて、結果がそうなっている。これが社会上よろしくないではないかという御議論であれば、当然改めて、やはり雇用するものにある程度の差というものはついても、均霊的に与えられるように労働行政の面においては善処していかなくてはならない、こういう結論になってくると思いますが、実情は私はよく知らないので、安定局長の方から説明させます。
  211. 江下孝

    政府委員(江下孝君) 安定所に新しく求職を申し込みます者が、新たに毎月男子と女子に分けまして、男子が約二十三万、女子が十四万程度あるわけでございます。これらの人が紹介を受けまして就職するわけでございますが、残念なことには、御承知の通りに現在の安定所というものは、昔は、戦争中は勤労動員であるとかいう安定所でございました。それが一転いたしまして、新しい民主的な安定所になりましたけれども、どうしても現実に見ますと、安定所の仕事が肉体的な労働をするものが中心に現実はなっておるわけであります。そこで私どもの理想としましては、こういう現実に肉体的な労働以外のもっと高等と申しますか、そういうものにも安定所の機能を拡充するということでなければ、これは先生のおっしゃるように、いつまでも悪い仕事しか来ないということだと思っております。そこでこの点について、実は急激にそれでは安定所の職員の素質を向上させるなり、その他……、ということはこれはなかなか現在では望み得ない実情ではございますけれども、しかしながら私どもとしては、これは実を結ばなかったのでございますが、たとえば大学卒業者の就職あっせんをどうするかということにつきまして、本年度予算の編成等におきましては、知識階級について特別な安定所を考えてみたらどうか。そうしなければ、民間の信用がないので、いきおい安定所に行かざるを得ない。こういうことを予算的にも考えてみたのでございますが、ことしは残念ながら日の目を見なかったのであります。しかしながらそういう面で幾らかでも安定所というものを向上させまして、民間の求人者が信頼して安定所に頼むというように、持ってくるということが、一番大事ではないかと私どもは考えておるのでございます。  それから現在御承知の通り、求人者というものは、大体縁故を採用して、残りのあまりよくない求人を安定所に持ってくるという傾向があるのは確かでございます。そこで安定所としましては、毎月求人開拓班というのを作りまして、これは旅費も少いことでございますけれども、一定規模以上の工場を歩いて回っておるというのが実情でございます。つまり、そういう求人開拓ということをやることによって、少しでもいい求人を安定所に持ってくるということで努力いたしておりますが、何と申しましても、今りように雇用情勢が苦しくなって参りますと、求人開拓もなかなか思うように参らないという現状にあることは認めざるを得ないと思っております。それから新規学校の卒業者につきましては、先生も御承知と思いますが、中学校、高等学校につきまして、これは安定所で大部分やっておるということを、これは自負できると思っております。  以上のような事情で、現状におきましては、なかなかこの安定所というものが、世間一般から信頼されて、あらゆる求人が持ち込まれるという事態に立ち至っておりませんので、今後この方向には私どもといたしまして、格段の努力をいたしたいと思っております。
  212. 湯山勇

    湯山勇君 よく事情もわかっておられるようでありますから、この点につきましては、ぜひ抜本的な対策を立てていただかないと、安定所に対する信頼感がなければ、結局労務行政というものはできないと思いますので、これはぜひお願いしたいと思います。  いま一つは、今婦人問題がいろいろ出ましたが、特にサービス業に従事しておる婦人ですね、これに対する賃金の規定がないというふうに聞いておりますが、たとえば施館の女中さんだとか、それから飲食店の女給さんだとか、そういうものに対する賃金の規定がないというようなことを聞いておるのですが、これがなければ、今健康保険に入ることもできません。それから、それがないために、病気して休んだりしたときには、もうどこからも援護の手がないわけですから、自然に堕落していくというような事実があるように感じられますが、ああいう人たちに賃金の規定があるのでございましょうか。
  213. 富樫總一

    政府委員(富樫總一君) 基準法におきましては御承知の通り、一般の労務者につきましても、賃金の額をこうせいという規定はございませんで、賃金のいわゆる定期払い、毎月一回払い、直接払いという規定がございまして、この点につきましては、基準法の適用がある限り、サービス業の女子にもそういう規定の適用がございます。また基準法で有給休暇とか、あるいは超過勤務手当などを出すというような場合において、一体その人の賃金は幾らであるかという算定方式も、たとえば一日平均賃金は幾らかという場合には、基準法の十二条にそれぞれ規定がございます。その規定によって把握しがたい場合には、労働大臣が実情に即した算定方法を示すということになっておるわけでございます。しかし御承知のように、この一部サービス業におきましては、お客のチップなどが実質的内容になっておるというような場合には、実際問題としてなかなか困難な面がございますので、必要に応じまして、たとえば私どもの方で最近妙な例でございますが、たとえば林業労務者とか、漁業労務者などにつきましては、違った意味で非常にむずかしい問題がございます。それにつきましては、基準局におきまして労使双方に指導を加えまして、協定賃金といったようなものも逐次作り上げておるような次第でございます。仰せの趣旨にかんがみまして、逐次そういった方面におきましても、そういう方向で善処して参りたいと考えておるわけであります。
  214. 湯山勇

    湯山勇君 今の御説明のように、一部分のサービス業については賃金というのはないのでございましょう。雇用関係はあって、そうして勤労に対しては賃金を払わなくちゃならないという規定があるにもかかわらず、その法で示す賃金というものは支給されていないのですね、この人たちは。これは許されることでしょうか、そういうことは。
  215. 富樫總一

    政府委員(富樫總一君) 現在の基準法におきましては、支払うべき賃金につきましてはこれこれ、こういうことになっておるわけでございます。しかし実際の労務契約につきましては、基本的に契約自由の原則をとっております。で、そういうチップ専門のものにつきましては、チップをもらい得る何と申しますか、可能性と申しますか、そういう機会が労務の提供に対する報酬という、まあこの労働法上の解釈が行われておるわけでございます。現在の基準法上は法律上違反というようなふうになりません。しかし実際問題といたしましては、それが当不当の問題といたしまして、実態に沿いまして、はなはだ不当、是正していかなければならぬというような問題は相当あるかと思います。いわゆるカフェーとかキャバレーとかいうことになりますと、なかなか私も実情はあまりよく存じませんが、実態に即して今後とも婦人少年局のあたりにおきましても、相当研究していただかなければならぬと思います。確かに今後の当不当の関連におきまして特に研究課題であると私ども考えております。
  216. 湯山勇

    湯山勇君 これも長くなりますから、私はまた別の機会に譲りたいと思いますけれども、大臣今お聞きのように、ああいう人たちの賃金というものがないわけです。そうして今御説明のようにサービス料をもらう条件になるものが賃金というような考え方もある。いわばまあ大臣であれば、大臣は大臣の席で、いすに坐っていれば、その大臣の机代といす代とがこれは賃金だ、こういうまあ解釈をとっておられるわけですね。そういうところから今の先ほどの御質問の婦人の地位の低下、そうしてまた婦人の転落と、そういう要素が出てくると思います。憲法でもちゃんとそういうことは明記されておりますし、法律で賃金きめなくちゃならない、そうして基準法でも雇用ができて、そうしてその労務に対しては賃金払わなくちゃならないと言っておりながら、実際はそういうことがやられていない、こういう谷間があるわけでございます。ぜひまあ大臣のお力で早急にこういうのを解決していただければ、国全体も明るくなるし、そうして今の婦人の転落ということも防げると思いますので、一つ早急に解決していただくようにお願いいたしたいと思います。
  217. 高田なほ子

    高田なほ子君 ちょっと関連して一問だけ……。
  218. 松澤兼人

    主査松澤兼人君) ちょっと速記やめて。   〔速記中止〕
  219. 松澤兼人

    主査松澤兼人君) 速記を始めて下さい。
  220. 高田なほ子

    高田なほ子君 これは非常に大事な問題です。そちらの今発言した方はどういう法律に基いておっしゃっていますか、わかりませんが、チップをもらえる可能性があるという解釈は、今私初めて聞きます。ILOの婦人労働の条約を見ても福祉厚生の面においては、これは深夜業というものは一応認められている。旅館の女中さんのようなのはこれは福祉厚生に入るか入らないか疑問で、これは明らかにサービスです。そういうことは、チップをもらう可能性があるというようなことを政府委員として御答弁になるのも私はどうかと思いますが、これは旅館のサービスは諸外国並みに八時なら八時でぴたっとやめてしまう、こういうことぐらいは行政面でできると私は思う。大臣として、日本の旅館のように十二時までも一時までもお客が大いばりで女中をこき使うというこのことは、これは新生活運動をしている限りでは、行政面で直してもらえると思いますが、大臣はこういうことを八時なら八時、九時なら九時でストップさせるぐらいにやっていただきたい。これを強く希望いたします。いかがでございますか。
  221. 西田隆男

    国務大臣(西田隆男君) お答えいたします。私はこのサービス業の賃金形態がどういうふうに払われているかということは、詳しくは存じませんが、昔は湯山さん、おっしゃる通りだと思います。最近はこれはある一定の低い給料を出して、あとは旅館のサービス料ですか、あれを分配と申しますか、分配した形での賃金がたしか払われているのだろうと思います。
  222. 湯山勇

    湯山勇君 そういうのは一部しかないのです。大部分はそれさえもやらないのです。
  223. 西田隆男

    国務大臣(西田隆男君) それは急速に一つ調査して善処いたします。  それから高田先生の今おっしゃいました勤務時間の問題、これは当然労働基準法から言えば、これは交替性をとっていると思うのです。また交替性がとられていないとすれば交替性をとるように、あるいは勤務時間を深夜業の労働基準法の適用によって賃金をきめていくというような方法がとられると思います。
  224. 松澤兼人

    主査松澤兼人君) ほかに発言もなければ、労働省所管についての質疑は一応終了したものと認めて御異議ございませんか。   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  225. 松澤兼人

    主査松澤兼人君) 異議ないものと認めます。  それではただいまにて当第四分科会の付託議題の質疑は全部一応終了いたしました。別に御発言もなければ、これにて本分科会の審査は終了することとし、審査報告書の作成及び本委員会への報告の内容等については、主査に御一任願いたいと存じますが、いずれもさよう決定することに御異議ございませんか。   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  226. 松澤兼人

    主査松澤兼人君) 御異議ないものと認めます。  それではこれにて散会いたします。    午後四時二十八分散会