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政府委員(駒形作次君) 重水につきましては私どもが基礎研究でもって取り上げておりまするところのやり方は二つございます。
一つは水素を液体にいたしまして、その液体水素を分溜いたして参りまして軽い水素と重い水素を分ける、そういう方法でございます。もう
一つの方法は
日本が電解工業を非常に大きく持っております
関係上、その電解工業で水の電解をいたしますときに出て参りますところの蒸気の中に重い水素の分が比較的多くなっておりますから、これを出発点といたしまして重水を取るという方法でございます。この方法は交換反応による方法と私どもは申しておるのでございます。すなわち液体水素分溜方法と交換反応による方法と二つの方法を一応研究の対象といたしておるのでございます。この電解工業から出て参りますところの重水は、現在の電解の設備全体を、もしそれによって重い水を回収することができるというふうに計算をいたしまするならば、年に十五トンの重い水が得られることになるのでございます。しかしながらこれはこの電解工業と結び付けておりますところの方法はノルウェーでやっておるのでございますけれども、ノルウェーの電解工業の事情と、
日本におきます電解工業の事情は若干異るところがございます。ノルウェーにおきましては非常にユニットの大きな工場が三つないし四つの大きな工場に集約されておるのでございますけれども、
日本の電解工業の工場はそういうふうに集約されていないのでございますからして、全体の電解工場をこれに動員するということは
かなり無理があるのではないかと、私どもは
考えておるのでございます。しかしながらそういうふうな電解工業の重い水、重水を利用するという方法をやはりやりまするならば、相当の成果をこれに
期待できると私どもは
考えておるのでございます。
それから、それではなぜ液体水素による分溜の方法を研究するのかという御
質問があるかもしれんと思うのでございますけれども、コストの計算をいたしてみまするというと、これはおわかりのように、重い水と軽い水を分けるよりも、重い水素と軽い水素を分けるという方が非常に能率がいいのでございます。従いまして重い水素の液化分溜をやります方がコストが非常に安くなるということもこれまた明らかなことでございまするので、その方法は、たとえばアンモニア合成の水素からちょうど脱脂乳式に重い水素をとりまして、あとの軽い水素は硫安の製造に使うというふうなその硫安製造の過程の中にこれを入れるということも可能なわけでございまするからして、やはり基礎研究として当然取り上げてしかるべき問題と私どもは
考え、これに対しましても力を入れている次第でございます。
それからウランの方はどうなるかというお話しでございまするが、御
承知のようにわが国のウラン鉱石というものは現在のところ非常に多量に出るというふうにわかっている所はございません。しかしながら各諸々方々におきまして、その徴候は認められているのでございます。フランスにおきまして、当初におきましてはウランはないといわれたフランスが、探査を非常に組織的にそうして相当金をかけましてやりました結果、現在はフランスはウランにつきましてはヨーロッパで持てる国になっているのでございまするが、それは地表の探査だけではだめなのでございまして、地下二、三十メーターないし百メーター
程度のところを克明に探査することによってフランスは成功をみたのでございます、従いまして
日本におきましてもその徴候をとらまえまして、そうして各所におきましてもう少しく深いところの探査をやって参りまするならば、ある
程度の成果は
期待できるのではないかということを、その
関係のものも申しておるのでございます。鉱石がそのような
状態でございまするので、これを製練いたしまする方法の研究というものも、今基礎研究の
一つとして行なっておるのでございまして、この問題は何と申しましても、国内に鉱石がなければそれからあとの製錬という問題も十分ではないのでございまするけれども、そのような次第で両方に基礎研究を一生懸命進めている
段階でございます。