運営者 Bitlet 姉妹サービス
使い方 FAQ このサイトについて | login

1955-06-25 第22回国会 参議院 予算委員会 第33号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和三十年六月二十五日(土曜日)    午前十時二十五分開会     —————————————  出席者は左の通り。    委員長     館  哲二君    理事           池田宇右衞門君            石原幹市郎君            西郷吉之助君            豊田 雅孝君            佐多 忠隆君            吉田 法晴君            松澤 兼人君            堀木 鎌三君            木村禧八郎君    委員            伊能 芳雄君            植竹 春彦君            小沢久太郎君            木村 守江君            左藤 義詮君            佐藤清一郎君            田中 啓一君            西岡 ハル君            堀  末治君            吉田 萬次君            片柳 眞吉君            梶原 茂嘉君            高木 正夫君            廣瀬 久忠君            溝口 三郎君            秋山 長造君            久保  等君            小林 孝平君            高田なほ子君            湯山  勇君            田中  一君            永井純一郎君            石坂 豊一君            深川タマヱ君            武藤 常介君   衆議院議員            中曽根康弘君   国務大臣    法 務 大 臣 花村 四郎君    外 務 大 臣 重光  葵君    大 蔵 大 臣 一萬田尚登君    文 部 大 臣 松村 謙三君    厚 生 大 臣 川崎 秀二君    農 林 大 臣 河野 一郎君    通商産業大臣  石橋 湛山君    運 輸 大 臣 三木 武夫君    郵 政 大 臣 松田竹千代君    労 働 大 臣 西田 隆男君    建 設 大 臣 竹山祐太郎君   国 務 大 臣 大久保留次郎君    国 務 大 臣 川島正次郎君    国 務 大 臣 杉原 荒太君    国 務 大 臣 高碕達之助君   政府委員    内閣官房長官  根本龍太郎君    内閣官房長官 松本 瀧藏君    内閣官房長官 田中 榮一君    法制局長官   林  修三君    法制局次長   高辻 正己君    自治庁財政部長 後藤  博君    防衛庁次長   増原 惠吉君    防衛庁長官官房    長       門叶 宗雄君    防衛庁経理局長 石原 周夫君    経済審議庁次長 石原 武夫君    経済審議庁総務    部長      酒井 俊彦君    経済審議庁調整    部長      松尾 金藏君    経済審議庁計画    部長      佐々木義武君    法務省刑事局長 井本 臺吉君    法務省人権擁護    局長      戸田 正直君    外務省参事官  安藤 吉光君    外務省国際協力    局長      河崎 一郎君    大蔵省主計局長 森永貞一郎君    大蔵省主計局次    長       原  純夫君    大蔵省理財局長 阪田 泰二君    大蔵省銀行局長 河野 通一君    文部省初等中等    教育局長    緒方 信一君    厚産省社会局長 安田  巌君    農林大臣官房長 安田善一郎君    通商産業大臣官    房長      岩武 照彦君    工業技術院長  駒形 作次君    労働省職業安定    局長      江下  孝君    建設省道路局長 富樫 凱一君     —————————————    会計検査院長  東谷傳次郎君     —————————————   事務局側    常任委員会専門    員       野津高次郎君    常任委員会専門    員       長谷川喜作君    常任委員会専門    員       正木 千冬君   説明員    会計検査院検査    第四局長    大澤  實君     —————————————   本日の会議に付した案件 ○昭和三十年度一般会計予算内閣提  出、衆議院送付) ○昭和三十年度特例会計予算内閣提  出、衆議院送付) ○昭和三十年度政府関係機関予算(内  閣提出、衆議院送付)     —————————————
  2. 館哲二

    委員長館哲二君) これより委員会を開きます。  先日山下義信君の質疑中運輸大臣に対する分が答弁が保留されておりますので、運輸大臣の発言を求めます。
  3. 三木武夫

    国務大臣三木武夫君) 先般山下委員傷痍軍人に鉄道の無料乗車券を与えるかどうかということについて御質問がございました。現在傷痍軍人には五割の割引きをいたしておる。これを無賃にするということはいろいろほかの方面との均衡も考えなければなりませんし、国鉄財政の現状からして、社会政策的な意義のあることではございますけれども、そういう社会政策的ないろいろ計画を全部国鉄しわ寄せをするということも、これは慎重に検討しなければならない。国が何か保障するということになれば、無賃乗車券を発行することは、これはむろん考えられるわけでございますが、そういう点からこれは慎重に検討をいたしたい、こう考えております。お答えをいたします。
  4. 佐多忠隆

    佐多忠隆君 まず、私は物価の問題についてお尋ねをしたいと思うのでありますが、昨年の予算編成予算審議のときには、物価をどうするかという問題が非常に重要な問題として取り上げられたのでありますが、今度の予算編成その他について、この物価の問題の重要性というのが相当軽視されてきているのじゃないかという感じがいたすのでありますが、今度の予算編成について物価の問題をどういうふうに扱われたかという点が一つ、これは大蔵大臣に御答弁を願います。  それからさらに、昨年度——二十九年度物価政策として、大体どういう見込みをつけて物価政策を進められ、それが実績としてどういうふうに現われたかという昨年度実績検討を、これは高碕経審長官に御説明を願います。
  5. 一萬田尚登

    国務大臣(一萬田尚登君) 三十年度予算編成に当りましては、三十年度を通じまして約二%の物価低落を見込んで編成をいたしております。
  6. 高碕達之助

    国務大臣(高碕達之助君) お答えを申します。昨年来デフレ政策をとりまして、物価引き下げ政策としておったのでありますが、引き続きまして、この三十年度におきましては、ただいま大蔵大臣お答え申し上げました通り、大体二%引き下げる、この方針で進んでおります。
  7. 佐多忠隆

    佐多忠隆君 今年度の問題に入ります前に、二十九年度計画としてはどういう計画を掲げておられたか、その実績としてどういう成果をおさめたか、その点をもう少し正確に御説明を願いたい。
  8. 高碕達之助

    国務大臣(高碕達之助君) 昨年度物価引き下げ政策の結果、卸売物価は大体五%下っておりますが、消費者物価はその割に引き下りませず、横ばいの形勢であったのであります。
  9. 佐多忠隆

    佐多忠隆君 政府計画としてどういうふうにお立てになり、どういうめどであったかということを聞いておるのですが、あるいはこれは数字の問題になるかと思いますから、事務当局でもけっこうですが、正確に卸売物価について、さらに消費物価についてどういう見通し計画立て、それがどういう実績になって現われたかということを正確に一つ御報告を願いたい。たとえば、今大臣は五%程度下ったとおっしゃるけれども、少くとも年度平均に見る限り三%の低下であるというような状況になっておりますので、それらの点を正確に御報告願いたい。
  10. 高碕達之助

    国務大臣(高碕達之助君) ただいま政府委員から詳細な数字について説明させますから、さよう御了承願いたいと思います。
  11. 松尾金藏

    政府委員松尾金藏君) お答え申し上げます。昨年度、二十九年度中におきましては、御承知のように生産財卸売物価につきまして五%ないし一割の物価引き下げということを目標にしてスタートをいたしたのでございます。これはごく大ざっぱに申しまして、年度間平均でほぼ五%程度物価引き下げ、それから年度末、いわゆる時点の差で一割近い物価引き下げというような意味で、五%ないし一割の物価引き下げということを目標にして進んで参ったわけであります。実績といたしましては、御承知のように昨年の夏ごろが最低の線でございまして、そのころは大体ごく概略で、二十九年の二月の最高のときに比べまして、二十九年の七月の最低のときは大体一割近くの卸売物価低落を来たしたと思います。その後年度の後半に至りまして、若干物価の持ち直しがございましたけれども、年度間平均では二十八年度平均と二十九年度平均生産財卸売物価低下は、ほぼ当初の期待通り五%程度物価低落示しておるわけであります。これに対しまして、消費者物価、いわゆるCPI関係につきましては、昨年度−二十九年度中に、生産財卸売物価ほどではございませんが、やはりできるだけの物価低落、特に御承知のように消費者物価につきましては、その中で大きなウエートを占めますところの主食以外の非主食、特に生鮮食料品値下り等CPIの全体の数字に大きく響いてくるわけでございますが、二十八年度中の生鮮食料品等のいわゆる不作、あるいは魚の不漁、こういう点が二十九年度中に大体まあ平年くらいの収獲になることを期待いたしまして、当初CPI値下り期待いたしておったのであります。ところが実際の実績をたどってみますと、そのような生鮮食料品値下りが思ったほど期待できなかった。しかし片一方には繊維製品その他につきましてはかなり低落があったのでありますが、しかし実績をたどってみますと、結果的には二十八年度平均に対しまして、二十九年度平均は若干の逆に値下りではなくて、値上り示した。この点は当初の期待とは、CPIにつきましては予想の通りにいっていないというような状況に相なっておると思います。
  12. 佐多忠隆

    佐多忠隆君 今御説明通りでありまして、ことに消費者物価について当初の計画値下りが行われないで、むしろ逆に値上りになったということ、これが大衆生計費の向上、従って生活苦という問題になって現われておるのでありまして、その限りにおいては、政府物価政策はその点において大きな失敗というか、破綻を示しておると思うのであります。これは当初われわれが最も憂慮した点であり、この点についての何ら具体的な施策がないから必ずそういう方向になるだろうということを憂えて、相当追及したにかかわらず、政府はこれで所期目的が達せられるというお話であったが、実績は明らかに政府失敗であったことを物語り、しかもしわ寄せがすべて大衆生活苦に現われておる。この点は銘記していただかなければならないと思うのであります。  しかしこれは途中で内閣も変ったことでありますから、これ自体についてはそう追及をしようとは思いませんが、従ってその過去の実績を慎重に考えるならば、三十年度計画達成のために、今数字をお示しになりましたが、その数字を達成するために、物価政策として総合的にどういう政策をとられるかという点をもって具体的に示していただきたい。ことに今や物価政策は、そういう物価水準一般の問題ではなくして、むしろそれよりも個別物資価格をどうするかという具体的な問題にまで問題は進展している。従って物価政策を具体的に、しかも総合的に、計画的に遂行されようとすれば、そういう配慮がなされなければならないと思うのでありますが、それについて、政府はどういう実際の配慮をしておられるか、詳しく御説明願いたい。
  13. 高碕達之助

    国務大臣(高碕達之助君) お答え申します。昨年はただいま政府委員お答えいたしました通りに、卸売物価につきましては相当値下りをいたしておりますが、消費者物価については、期待したごとく値下りをいたしていない。これは国民生活に非常に密接の関係にあるということは御説の通りでございまして、政府はこの点に留意いたしまして、卸売物価は本年も軟調を示しておりまして、相当現在では安くなっておりますが、消費者物価もこれにつれまして幾らか軟調の形勢でありますが、これを実行いたしまする上におきましては、政府は直接関係し得る物価等につきましては十分に考慮をいたしまして、消費者物価値上りを来たさないように、引き下げるような方針をとっておるのでありますが、今後におきましても消費者物価引き下げることにつきまして、政府はできるだけの方針をとっていきたいと、こう存じておる次第であります。
  14. 佐多忠隆

    佐多忠隆君 今の御説明では、ただ経済大綱に示された数字を指示しておられるだけであって、その数字を達成するための物価総合施策はどういうふうに考えておられるか、特に個別の物資についてどういうふうな考え方をしておられるかということをお聞きしておるわけなんです。たとえば、経済大綱には、公企業料金重要物資価格引き下げをやるのだというようなことも具体的に方向だけは示しておられるので、そういう引き下げをやるための具体的な施策、それはどうされるのか。しかもこの経済大綱の中に、物価政策は総合的に、計画的に行わなければならないのだということもうたっておられるので、それをもう少し詳しく御説明願いたい。
  15. 高碕達之助

    国務大臣(高碕達之助君) お答えいたします。今後日本経済を自立いたします上につきましては、輸出を振興すると同時に、やはりそれだけ輸入に待たなければならぬ、こういうことはもちろんでありますが、経済外交をいたします上につきましても、できるだけ現在日本消費いたしますところの食糧品、これは少くとも二割近くは輸入いたさなければなりません。またそのほかの材料にお恥きましても、諸材料は三割近く輸入しなければならない。この三割近くの輸入につきましても、現在の世界市場は、食糧品はもちろんのこと、全体の材料におきましても生産過剰の状態に相なっておるような状態でありますから、その輸入につきましてもできるだけ低物価、値の安い、品質のいいものをとる、こういうようなことについて、十分世界各国市場情勢を判断いたしまして、そちらから持ってくるという方針をとりたいと存じております。そうして一般物価引き下げ方針といたしたいと存ずるわけでございます。
  16. 佐多忠隆

    佐多忠隆君 どうも昨年政府物価問題を非常に重要な問題として取り上げられて、それを予算編成の重点に置かれていろいろ努力をされたが、それにもかかわらず、先ほど申し上げたように、二十九年度所期目的を十全には達していない。そこでもし今長官が言われるような、生産財について二割程度、あるいは消費財についても一割七分程度引き下げようとされれば、もっとそういう施策が具体的に総合的に計画的に精密に立てられていて、その施策が強力に推し進められるにあらずんばその目標を達成できない。従って来年の今ごろになれば、また同じことを繰り返さなければならないという実情に逢着をすることは火をみるよりも明らかであると思うのでありますが、どうもこの点に対する十分な満足のいく御説明がありませんので、私はこの問題はもっと政府において十分に検討をして、具体的な施策をお立てを願いたい。それでなければ、そのしわ寄せばすべて庶民大衆生活苦に現われて参るのでありますから、この点は十分に御検討を願いたい。  さらに今、高碕大臣がお述べになった海外市場の問題でありますが、海外市場の今お述べになったような見通しからいたしますと、日本物価国際比価関係を、現在の段階においてはどういうものとお考えになっているか。従ってこれを今後どういうふうに持っていくことが必要だとお考えになるか。これがさらに日本物価問題の一つの大きなてこになると思うのでありますので、この国際比価関係の現況、将来の見通し、そういうものについての政府の所見をお示しを願いたい。
  17. 高碕達之助

    国務大臣(高碕達之助君) お答え申し上げます。私は現在世界物価を左右いたしておりますのは、やはりアメリカ及びヨーロッパの物価というものが非常に重大なる関係があると存ずるわけでありますが、国際物価は今後私は急騰はしない。どちらかと言えば、これは漸次安定しつつ、むしろ低落ぎみにあるだろう、こういう見通しを大体持っておるわけであります。順次国際的の緊張も緩和されておるようであります。各国軍備というものも今日は下火になっておる、こういう関係消費の方は逐次減っておる。一番産業とし、国民経済としてむだであるものは軍備であります。このむだをみなせなくなっておる。むだをせなくなってしまって、生産をふやすということになると、物価が安定し、同時に物価低落するものだという私は考えをいたしております。従いまして、各国とも今後自分の国の輸出については非常な競争をやるだろう、競争は盛んになるだろう。こういうふうなことを見通し立てておる。それでその競争場裏に処して、日本海外の依存の度が多いのでありますから、これに対して輸出をするには、どうしても日本生産原価引き下げていくということにかかっていかなければならぬ。こういうふうな考えを持っておるわけなんでありますが、そうして全体の物価引き下げるという方針でなければ、これは私は日本経済は安定しない。根本の方針は、世界物価は逐次安定し、どちらかというと低落状態示して、おる、これに処して日本はいかなければならぬ、こういう考えをいたしております。
  18. 佐多忠隆

    佐多忠隆君 その点が昨年度の当初、昨年度のちょうど今ごろは、今長官のおっしゃったような見通しなり方向かなり強く出ていたと思うのでありますが、過去一年間の状態からいうと、その点が若干違ってきたのではないか。むろんなるほど輸出市場競争、その他は相当尖鋭にはなるでありましょうけれども、物価関係に関する限りは、むしろ物価は下落がそんなに非常に急速に進むというようなものでなくて、物価水準としてはある意味では停滞、場合によっては少し上りぎみというようなのが去年の下半期からの形勢であったように思うのですが、従ってそういう関係から、日本物価国際比価の問題は、繊維品については、これは恐慌的な価格のせいでもあるわけでしょうが、相当割安になっている。鉄鋼についても昨今は割高が非常に改善をされてきた。残る問題は化学製品なりあるいは機械器具について、特殊のものについてなお割高が続いているというような問題になっているのじゃないかと思うのですが、そういう関係を正確に見れば、国際比価関係の判断ももう少し、そういう長官の言われるようなラフな検討でなくて、もう少し正確な検討をしなければならぬ。しかも個別物資的な対策が、この国際商品についても非常に重要になって参る。そうすると物価対策は、先ほどから言っておりますように、物価水準一般の問題でなく、個別物資対策の問題にまで進めなければならないのであるが、その辺をどういうふうにお考えになるか。
  19. 高碕達之助

    国務大臣(高碕達之助君) お答え申し上げます。お説のごとく、私が先ほど申し上げました問題は、大体総括的に申し上げておりますが、個別的に考えてみますというと、この食糧というものは生産過剰にある、こういうふうな見通しをしていいと思っております。従って物価低落するものと見ている。今後各国とも逐次この農業経済から工業経済各国が変りつつあるのであります。南米にいたしましても東南アジアにいたしましても……、その意味におきまして、工業用機械類とか、これに要する材料鉄鋼製品、そういうふうなものにつきましては、需要供給関係上、大きな暴落をせずに、あるいはある程度価格は維持できると思っております。化学工業製品につきましては、これは現在の状態ではいずれも研究の状態が多いのでありまして、そうしてこの製品が非常に急速に進歩をいたします結果、これは価格につきましては非常な変動があるものと、私はこう存じておるわけでありまして、今日高いと思っておりますものは、明日にすぐにもう生産のプロセスが変ります結果、非常に変動がある。こういうような大体の見方をいたしておるわけであります。いずれにいたしましても、今日の問題は佐多さんのおっしゃるごとく、国内におきましても海外市場におきましても、個別的に考えまする場合に、一つ々々十分に検討をいたしたいという所存でございます。
  20. 佐多忠隆

    佐多忠隆君 そういう情勢にありますから、従って財政基本方針としてどういう方針をとるかということについては、非常にむずかしい段階逢着をして参っておると思うのでありますが、その点は後ほどさらにお尋ねをいたすとしまして、その前に、それでは一体生産の面において、特に鉱工業生産あるいは農林業生産において、二十九年度計画予測はどれぐらいのものとして立てておられて、それが実績としてどういうふうに扱われて参ったかという点をまず御説明願いたい。
  21. 高碕達之助

    国務大臣(高碕達之助君) ただいま  の御質問につきましては、正確なる数字をもってお答え申し上げたいと存じますから、政府委員をしてお答えいたさせます。
  22. 松尾金藏

    政府委員松尾金藏君) お答え申し上げます。昨二十九年度におきましては、当初の計画におきましては、全体として生産のあまり大きな上昇は必ずしも期待できないというような見通しを持っておったのであります。ところが御承知のように二十九年度実績をたどって参りますと、二十九年度前半期におきましては、生産低下は思ったよりも早く現われて参ったようであります。大体物価の動向とほぼ歩調を同じくいたしまして、昨年度の、二十九年度の夏から秋ごろにかけてかなり鉱工業生産低下は大きかったのでありますが、しかし二十九年度終りごろになりまして、また暦年の終りごろになりまして、御承知のように鉄鋼あるいは非鉄金属、あるいはゴムというような関係におきまして国際的ないわゆる需要の、まあ一種のブームに近いような状態も一部に現出いたしまして、これも御承知のように、この部面におきまして生産伸びかなり思わざる、思わざるといいますか、予期した以上に二十九年度の後半期において伸びたような次第であります。その結果二十九年度年度間平均をとってみますと、実はこの委員会に配付しております三十年度計画の印刷の関係で、計画いたしました当時は一・二%程度生産上昇というふうにその当時の推定実績はなっておったようでありますが、その後のさらに正確な推定実績といいますか、さらに正確な実績をたどってみますと、三%に近い実績示しておるようであります。その主たる原因は、二十九年度の末、特に二月、三月ごろに、平年度であれば、例年であれば電力関係その他で生産が落ちる、比較的伸びない月であるにもかかわらず、比較的生産伸びが大きかったというようなことで、ここの三十年度計画推定実績として掲げております一・二%の上昇よりは、さらに実績としては伸びているというような状況であります。全体としましては、二十九年度当初、生産があまり伸びないというように期待しておったにもかかわらず、それに対してはかなり生産伸びは大きかったというような実状になっております。
  23. 佐多忠隆

    佐多忠隆君 農業生産は、農業もひっくるめてですか。
  24. 松尾金藏

    政府委員松尾金藏君) ただいま申しましたのは、鉱工業生産関係でございます。
  25. 佐多忠隆

    佐多忠隆君 農業は。
  26. 松尾金藏

    政府委員松尾金藏君) 農業関係は、御承知のように、主として天候に支配される関係がございますので、やはり当初の計画なり見通しのときには、一応平年作の天候を予定をして、仮定をいたしまして推定をいたすわけでありますが、そういたしますと、御承知のように二十八年度かなり凶作であったわけであります。従いまして、二十八年度凶作であった分を取り戻して、大体二十九年度並みの農業生産期待いたしておったのでありますが、実績を見てみますと、御承知のように二十八年度、九年度の比は、これは二十八年度凶作に対しての比較でございますから、数字としてはかなり大きく出て参るわけでございますが、大体八%近い生産状況凶作に比べての数字としては相なっております。実際の実績といたしましては、御承知のような麦の豊作に対しまして米に若干の不作があったというような状況に相なっていると思います。
  27. 佐多忠隆

    佐多忠隆君 もう一ぺんちょっと。農林水産業生産水準は二十五年——二十七年度を一〇〇にしたものが、三カ年計画に出ておりますが、この二十五年——二十七年度を一〇〇とした指数として二十八年度は幾らになっておりますか。
  28. 松尾金藏

    政府委員松尾金藏君) これは農林、水産全部合わせての数字でございますが、二十五年——七年を一〇〇といたしますと、二十八年度は大七・七%という数字に相なっております。
  29. 佐多忠隆

    佐多忠隆君 今政府委員から御説明がありましたように、政府は、二十九年度デフレ政策を遂行するために、国民所得も相当低めに計算をしなければならない。従って生産伸びないのだ、また伸ばすべきでないのたということで計画をしておられた。それにもかかわらず、今御報告の通りの、あれだけデフレ政策を一生懸命やられたにかかわらず、今お示し通りの増産が行われておるのであります。そこで三十年度はそういう事態をいろいろと御検討になったと思うのでありますが、三十年度計画はどういうふうにお立てになったか、それを鉱工業生産、あるいは農林水産生産について御説明願いたい。
  30. 松尾金藏

    政府委員松尾金藏君) お答え申し上げます。  まず鉱工業生産関係でございますが、鉱工業生産の現在までの、というよりも、鉱工業生産自体の実勢といたしましては、有効需要が伴えば、たえず伸びよう伸びようとする実勢にあることは御承知通りでございます。従いまして三十年度生産伸び鉱工業生産関係推定をいたします際には、どの程度の有効需要が三十年度に出るであろうかという点が、その推定といいますか、計画の目安になると思うのでございますが、御承知のように、これらの関係は国内におけるところの消費需要、それから投資の需要、ならびに海外に対する輸出需要、あるいは特需の需要というような関係が大きな需要の項目に相なると思うのであります。ところが、御承知のように、国内の関係におきまして、国内の消費関係は、国の予算の関係あるいは個人消費関係におきましても、本年度、前年度に引き続きますやはり引き締めと申しますか、そういう基調に変りはないと思うのであります。これに対しまして投資の関係におきましても、有効な必要な投資に努力をするといたしましても、その基調にはやはり大きな変化はない。これに対しまして海外需要関係で申しますと、御承知のように本年度輸出につきましては、前年度に比べまして五千万ドル程度輸出増加を期待いたしておりますけれども、片方に特需の関係かなり大幅な特需の減少はやむを得ない。こういうことを想定いたして参りますと、本年の有効需要としてあまり大きな有効需要期待をすることはできないのではなかろうかというような意味合いで、本年度は前年度に比べまして一・五%程度生産上昇期待いたしておりますけれども、これはやはり輸出伸びがさらに伸びれば鉱工業生産ももっと伸びることになるかもしれません。現在の輸出に対する期待、特需の減少というようなことを考えて参りますと、まずこの辺が目標計画としての数字ではないだろうか、こういうふうに考える次第であります。  農林水産業生産計画は、これは先ほども御説明をいたしましたように、天候に支配されることが一番大きいのでありますが、計数としては平年度作の天候を前提とした数字というふうに御了承を願いたいと思います。
  31. 佐多忠隆

    佐多忠隆君 今の御報告ですと、鉱工業生産について二十九年度比に一・五%、農業生産について三・六%の増加だというふうな御答弁でありますが、これは二十九年度の当初計画のときに比較して実績がどうだったかというその報告から明らかなように、こういうふうな伸びではなかなか済まない、むしろことに去年度伸びが後半期にかかっていたという実情から検討すれば、今年の伸びは特に鉱工業生産においてはもう少し大きな伸びになる。去年ですら三%の伸びでありますから、今年はこれに匹敵するか、あるいはこれよりも多くなるというようなことが見通されるのじゃないかと思うのでありますが、自然的な趨勢はそうであるにかかわらず、政策としてはここに押し下げることが日本経済政策としていいのだというお考えなのかどうか。その辺を特に政策方針の問題として高碕長官に御説明を願います。
  32. 高碕達之助

    国務大臣(高碕達之助君) お答え申し上げます。大体は生産を伸ばしていく方針でありますが、伸びるというふうなことを予定以上に見込みますというと、それに要するところの支出が非常にふえるわけであります。大体は実質の伸びの数量よりも幾らか内輪目に見て、そうして生産に要する資材そのほかについての節約をし、そうして実際はそれだけの材料をもってよけいふやすと、こういうふうな方針をとっていきたいと存ずるわけでありまして、決してこれを下げるというわけじゃありません。いつも計画よりも生産が少くいっているということに非常な経済上のそごをきたしますし、それよりも計画はむしろ小さくしておいて実行をふやす、こういうふうな方針をとっていきたいと存ずるわけなんであります。
  33. 佐多忠隆

    佐多忠隆君 そういう政策方針がインフレ政策をとるかデフレ政策をとるかという財政方針とも関連をして参ると思いますので、それでは今の生産の方の問題はあとからもう一ぺん返ることにいたしまして、資金なり金の方の問題に移りたいと思いますが、二十九年度の総合資金需給実績が出ておりますが、これを通じて見て、あるいはさらに二十八年度実績もそうでありますが、総合資金需給の実績から見て、一体二十八年度なり二十九年度はインフレだったというのがいいのか、デフレだったというのがいいのか、その辺を大蔵大臣はどういうふうに判定をしておられるか、数字も出ておりますから、その数字に準拠しながらその性質を明確に解明をしていただきたいと思います。
  34. 一萬田尚登

    国務大臣(一萬田尚登君) お答えいたします。二十八年、二十九年についてのお尋ねでありますが、私は二十八年はむろんインフレ的な情勢が強かったと思います。二十九年、これは二十九年に至りましてデフレ政策財政面並びに金融面からとったのでございますが、しかしそれが日本経済の実態がデフレ様相をすべてにおいて呈したとも考えておりません。私はインフレにならないようにできるだけこれをおさえるというような状況が二十九年の状態であったと考えております。
  35. 佐多忠隆

    佐多忠隆君 それではもっと正確に、二十九年度はどういう見込みで御出発になり、その結果はどういう実績として現われたか、その点の御説明を願います。これは内閣が変ったのでありますから、もし大蔵大臣に御無理であったら事務当局でけっこうであります。政府委員から御説明願います。
  36. 阪田泰二

    政府委員(阪田泰二君) ただいまお尋ねのございました二十九年度の問題でございますが、二十九年度につきましては、この二十九年度の予算案が国会に提出されました当時におきましては、大体財政関係におきまする収支は、国庫資金の関係におきまして、前年度からの余裕金の支払い、前々年度の余裕金の需要関係におきまする支払いの超過、食糧証券の関係における支払い超過がありますが、その他外国為替関係における引き揚げ等を差し引きまして、大体国庫収支はとんとんになるであろう。なお金融機関の方の対日銀収支にもあまり動きがないので、大体通貨は年度間を通じて膨脹しない、こういったような見通し立てたわけであります。実績におきましては、先般資料を差し上げておきましたが、財政資金の対民間収支は、いろいろこれは原因があるわけでありますが、前年度からの繰り越された支出額が非常に多かったという関係、二十八年度の予算のずれがあった関係、これはまあ国際収支が非常に好転しました関係、この両面から政府財政収支といたしましては散布超過の要因が増加いたしまして、千九百億円の散布超過がございました。これに対しまして金融機関の方の関係におきましては、これは預金も年度の当初はやや増加がにぶっておったわけでございますが、年間を通じましてかなり増加いたしましたわけで、その反面、貸し出しが非常に引き締められましたので、対日銀関係におきまして千九百億ぐらいの返済になっております。総合いたしまして年間を通じて日本銀行券は三十九億円だけ減少いたしまして、年度末は五千三百七億ぐらいの発行高になりました。内訳について見ますと、今申し上げましたように、国庫散超の関係、あるいは金融機関融資の関係、だいぶ変動いたしましたわけでございますが、総合いたしました基調といたしましては、財政、金融両面から引き締めの基調で推移いたしまして、日銀券も年間を通じてほとんど増減ないといいますか、発行高を大体維持している、こういうような形になっております。
  37. 佐多忠隆

    佐多忠隆君 今御説明通りに日銀券は五千三百億台でほとんど増減がないんだという結果になり、結論としては従って平衡状態で進んで参ったということがいえると思うのですが、しかしその内訳は非常に大きな狂いというか、見通しの誤りが出て参っておると思うのであります。今政府の御説明通り財政資金対民間収支はゼロとして想定をされて、それで財政政策、特に金融政策が当初は立てられたにかかわらず、結果においては千九百億の散布超過になっている。この問題は昨年われわれが予算審議をいたしたときに予算の組み方が非常にずさんであり、ルーズである。特に再軍備関係に関する諸経費は非常にルーズであるからして、これは必ずや使い残り、その他の関係として残っていくから、そういう関係その他で散布超過がふえることは明らかであるといういろいろな議論をいたしたのでありますが、とにかくそういう点についての政府見通し、特に金融政策等の計画的な施策がなされていなかったために千九百億の散布超過になり、しかもそれと同時に、それをカバーするものとして、今の金融機関関係の、あるいは日銀関係の非常な引き締めが行われるということになってしまった。そこでこれから見ますと、正確にいえば、二十九年度は一体デフレなのかインフレなのかという私は質問をいたしましたが、これは財政に関する限りは非常なインフレ財政だった、結果においては非常なインフレ財政だったということになる。ただ金融においてそれを打ち消すような非常なデフレ政策を行われたために、金融と財政との相殺ができて、ようやくさっきお話しのように五千三百億の通貨維持ということで事態は収拾をされたと思うのでありますが、これが当初からの計画であり、見通しであり、こういう形において政策が行われたのであるならば、何ら混乱なりそこを来たさなかったのであるけれども、しかし初めの見通しがそうでなく、従ってそれに対応する金融政策その他が当初から計画的に行われないで、散布超過がだんだんふえるに従って、それに対応する金融政策が非常な唐突な間に行われた。従ってそれのしわ寄せはすべて産業にき、しかも中小商工業にきて、ああいう整理なり、ああいう必要以上の摩擦と混乱を引き起して、それがさらに大衆の失業となりあるいは生活苦となって、そこにしわ寄せをされているという結果に相なったと思うのであります。従ってこういう事態は真剣に検討をされなければならないし、この検討の上に三十年度計画立てられなければならないと思うのでありますが、その辺を大蔵大臣はどういうふうにお考えになるか。
  38. 一萬田尚登

    国務大臣(一萬田尚登君) 大体佐多さんのただいまのお考えと同じ私は考えをいたしております。むろん事態の認識について若干大きく表現をされておるというような点はありますが、筋としては私大体同じ考えでおります。
  39. 佐多忠隆

    佐多忠隆君 筋として大体同じ認識をされた結果、三十年度は大体どういう具体的な金融政策あるいは財政収支の実施の方途を立てようとしておられるのか、その点をもう一度御説明を願いたい。
  40. 一萬田尚登

    国務大臣(一萬田尚登君) さようでありますから、財政のしわが特に金融による、こういうような点を極力避けまして、財政財政で健全性をもつ、金融は金融で健全性を持つという一つの筋を通しまして、それがさらに総合調和されて、日本財政経済がうまく連行されていく、かようにいたすべきだと考えております。
  41. 佐多忠隆

    佐多忠隆君 きっと政府の方ではそういう意味で、財政資金対民間収支では三十年度も散布超過七百億ある。しかしそれに見合いをとって日銀の貸し出しを六百八十億だけ引き締めるから、それとの相殺において大体カバーされて、従って日銀券の発行は五千三百億程度ということで収め得るというような御計画だろうと思うのでありますが、これはこれとして一応つじつまが合っておると思います。しかし大体予算においては収支がきちんと均衡しておるにかかわらず、実績において散布超過が出るということの主要な原因がどこにあるとお考えになるのか。私たちに言わせれば、軍事費関係、これに関連する諸経費が必要以上にたくさんとられて、それが過去二、三年蓄積して、そういうものが本年度予算と関連なしに出されていくということに収支のアンバランス、財政のインフレ状態が出てくる。従って問題はその軍事費に関連するインフレ状態、そこに問題のかぎがあると思うのでありますが、その点を大蔵大臣はどういうふうに認識しておられるか。
  42. 一萬田尚登

    国務大臣(一萬田尚登君) 私の考えでは、今日財政の払超の要因の主なものは、やはり繰り越しの関係、それから外為会計の関係、これからくることが多いと思っております。直接に軍事費の関係、これも繰り越しというような、こういうふうな関係から、むろん散超に影響を与えることも事実であると考えております。
  43. 佐多忠隆

    佐多忠隆君 そうすると、今後この予算において収支をバランスさせるのみならず、実際の収支においてもバランスをさせるように今後は努力される。従って次の年度財政編成方針その他においては、それを十分に堪案をされるという意思があるかどうか、その点をはっきりしておいていただきたい。
  44. 一萬田尚登

    国務大臣(一萬田尚登君) むろんできるだけ努力をいたしまして、お話のような状態を作り出すことに努むべきと考えております。
  45. 佐多忠隆

    佐多忠隆君 それから今の御報告によりますと、日銀券の発行は三十年度も二十九年度と同じように五千三百億程度でとめる。これでとめようとされれば、いろいろに無理な金融政策が行われて参ると思いますが、そうすれば生産物価との関連でありますが、生産の方は先ほど政府の方でお示しになった生産以上に伸びることはこれは火を見るよりも明らかであると私は考えるのでありますが、そういうふうになれは、それにかかわらず、日銀券の発行高は押えられている、そのために物価は非常な値下りを来たすというようなことになるのじゃないかと思いますが、そうすればむしろ物価が恐慌状態を引き起してくるというような事態も引き起されますし、それをもあえてして可なりというふうにお考えになっているのかどうか。そこいらの点を物価政策としてあるいは金融政策としてどういうふうにお考えになるかを大蔵大臣に御説明願いたい。
  46. 一萬田尚登

    国務大臣(一萬田尚登君) お答えしますが、生産が非常に増大をする、そうして金融を引き締めていく、そこで物価低落して、いろいろなところに支障を来たしてくる。私は必ずしもさようには考えていないのでありまして、金融政策といたしましては、生産が増大をするというところに問題があるのでありまして、内外の需給状況からみまして、そうしてそれがバランスがとれるようなやはり金融政策があるべきで、まず生産が増大するためには、前もって金融がゆるんでいる、こういうふうに考えるのでありますが、そういう施策はとるべきでない。ただ経審あたりで今回計画立てているのであります。それに応じて適正な資金量を確保をしていく、かようにすることによって、むろん理屈通りにはいきませんが、そう大きな破綻を見ずして進むことができるだろう、むろん地固めもやっておりますし、しかもこの年度を通じて物価平均において二%は低下を一応予定もしていることでありますから、そういう関係から今後の日本経済が決して楽なものではないことは言うまでもありませんが、そう考え方と反して大きな混乱が出るというふうには私は想定をいたしておりません。
  47. 佐多忠隆

    佐多忠隆君 その点はかなり見通しとして違った見通しになるように思うのですが、しかしこれは意見の相違でありますから、これ以上議論はしませんが、ただ私の希望をしたい点は、鉱工業生産なり農林水産の生産はかりに相当とめられても、もっと今政府計画されているよりも伸びるということを考えなければならないし、その場合にそれもあえて押えて五千三百億のこの通貨発行高を保持することに全力を注がれ、その結果、物価は二%でなくてもっと下落するということがあってもいいのだ、むしろそういう方策をとらなければならないというふうにお考えになるのか。そうでなくて、物価が二%程度下るならば、そしてなおかつ生産が上るならば、それに応じて通貨発行高その他は考えるという政策をおとりになるのか、それが今後の財政方針の分れ目になると思うのでありますが、それらの点をどういうふうにお考えになっているか、もっと詳しく御説明を願いたい。
  48. 一萬田尚登

    国務大臣(一萬田尚登君) 先ほどから関係大臣からも話がありましたように、また佐多さんの御意見によっても、今後における物価政策が単なる、あるいは主として物価水準にあるのじゃないか、今後における物価政策は個別的な物価政策に移行すべきだという御意見であったと思うのです。私もその点は同じ考えを持っております。従いまして日本銀行の発行券の五千三百億、こういうふうな考え方、これを一歩も譲らぬというような考え方は、これは私はやはり物価政策一般を対象として考えるときの議論であると考えます。いわゆる一般物価水準をどこにもっていくか、また他の言葉でいえば、金融の量的統制、資金の量的統制を中心に考えるべきとの私は考え方と考える。従いまして今後においては私の考えでは、これは一家言に過ぎませんが、しかし理解をいただくために一応引用すれば、たとえばここで物価政策として私は石炭に対して非常にこれを安い石炭、いわゆる石炭を安く一般産業に供給するような、そういう政策をここに打ち出されてくると、これが全産業価格構成に及ぼす影響は私は非常な大きなものがあるだろうと思う。そういうような経済政策をとってくる場合には、自然商品の価格も下る、輸出も増大してくる。こういう場合において必要な資金を出すことには、私はやぶさかではない、かような考えでいることを申し上げます。
  49. 佐多忠隆

    佐多忠隆君 五千三百億のワクにとらわれて、きちっと是が非でもこれを守るべきだという方向でないというお話は、そうであってしかるべきだと思いますが、同時にしかし財政の方面、あるいは経済の方面、特に生産の方面、そういうものは逐次計画化されてきておる場合に、これまでどうしても金融の面は計画的な見通し立てられず、しかもその見通しに基きながら、いろいろな計画的な施策が行われなかったということが従来の欠陥であったと思いますので、せっかく一応の見通し立てられたし、従ってその見通しに準拠しながら金融政策計画的にいろいろな具体的な政策を適時とるように進めていただきたい、この点を特に強く要望をしてわきたいと思います。  そこでこれまで私は二十九年度実績、さらには三十年度の問題についていろいろお尋ねをいたしたのでありますが、もっと視野を拡げまして、幸いにして現政府は長期計画をお立てになっておるので、その長期計画について二三の点をお尋ねしたいと思うのでありますが、お出しになった六カ年計画目標構成というようなものは一体どういうふうになっておるのか。これは私の理解するところでは、あの考え方なり様式なり、そういうものをしさいに検討いたしますと、同じく経済審議庁からお出しになったコルムの一九六〇年のアメリカ経済、この方法論に大体準拠しておられるように思うのですが、その場合にこのコルムの計画がねらったところは六十年までの間に、大体軍事経済から平準化の方向に向っていく。従って軍事費の支出は、国防支出は一九五二年の五百億から五三年には六百億になるが、それ以降は四百億あるいは五百億、もう少し減っていくのだと、そういうように国防支出が減っていくと、それに関連をして失業その他が出て参るので、そういういろいろな事態が出て参る。それにどういうふうに直面し、特に完全雇用をどういうふうに保持していくかということが重要な目標として計画立てられたと思うのでありますが、これをお手本にされた経済審議庁の六カ年計画は、一体そういうことをちゃんと意識しながら、そういう問題を中心に計画目標に置いておられるのかどうか、その点を大臣に御説明を願いたい。
  50. 高碕達之助

    国務大臣(高碕達之助君) お説のごとく、六カ年計画の手本はこのコルムの一九六〇年の計画経済に置いておりますが、アメリカと日本と違います点はどこにあるかと申しますというと、日本はアメリカのように自分で自給自足の経済が立たんということが一つの違いでございます。もう一つはアメリカの完全雇用の問題につきましては、労働率というものを労働稼働人員から比較いたしまして、大体五六%ぐらいに見ておるのでありますが、わが国では六七%そこそこでございますが、逐次これを三十五年には下げていって六五%ぐらいにしたいと、こう思っておったのでありますが、各方面の御意見を聞きまして、これはやはり六六%そこそこで持っていきたいと、こういうふうに多少変更いたしておりますが、そこの違いがありますことと、もう一つはお説のごとくアメリカでは軍需工業を逐次変更するという考えでありますが、日本の方におきましては特需関係が御承知の二十八年は七億六千万ドルもあったのであります。これが順次減って参りまして、二十九年度は五億八千九百万ドル、三十年度はこれを四億二千万ドルに、三十二年にはこれを三億ドルと見、逐次これは六年の間には特需が一つもなくなるということを前提といたしております。  それから国防の方につきましては、大体国民の経済力に順応して持っていこう、こういうふうな考えでございまして、これは防衛計画はまだできませんから、はっきりした数字はわかりませんが、大体の目安を国民経済に順応して持っていこう、で、防衛計画ができますれば、それと相調和していこう、こういう関係もございますが、今年におきまして、考え方は現在における国民の労働する人たちの一時間の収入を大体二十九年は七十四円と見ておりますが、三十年度は七十五円七十二銭と一時間を見まして、それで一週間に四十七時間働く。そこで一年間に二千四百四十時間働きまして、これだけ働くものとしての金額を見まして、その金額に相当するだけの国民総生産をあげていかなければならぬ、これが数字のもとになっております。従いまして二十八年度におきましては、これは実績でありまして、国民の総生産は七兆一千五百六十二億円と、こうなっておりますが、二十九年度は半ば推定でございますが、それが七兆二千三百十億とこうなっておりまして、それを三十年度におきましては七兆五千五百九十億、それから三十一年度は七兆九千四十億、三十二年度は八兆二千八百三十億といたしまして、これが三十五年度には八兆八千九十二億、こういうふうになっておりますが、これの三十五年の数字はあるいは多少変更いたしたいと、こう存じておりますが、大体今までのところは、初めの三カ年におきましてはそれだけの生産を上げるということによって完全雇用に近い人間を吸収する、こういう考えでございます。
  51. 木村禧八郎

    木村禧八郎君 ちょっと関連して。ただいま経審長官の御説明のこの六カ年計画はコルムの方式にならっておると今御説明になりましたが、どうしても納得できない点は、人口をまず出して、その中で労働力率を出して、それに働く時間をかけてそうして総生産を出して、それによって計画を作って行くというのですが、ところがこれを実現させるためには、どうしてもそこに有効需要がなければならぬわけです。有効需要が片方になければ、ただ入口を計算して、そこで労働力率を出して働く時間をかけて、それで生産計画は立っても、できたものを買うというマーケットですね、有効需要というものがなければそれはできない、成り立たぬわけですね。ですから、その有効需要、それをどういうふうに考えておるか。そうしなければ一応のペーパー・プランにすぎないのであって、そのマーケットなり、有効需要、これは財政とも関係があると思うのですが、その点はどうもあれを見ましてもコルム方式にもこれは欠けておると思う。大体いわゆるケインズの均衡理論的な考えでやっておるのですけれども、その点一つ納得しませんからお伺いします。
  52. 高碕達之助

    国務大臣(高碕達之助君) お答え申し上げます。有効需要は、国民総生産を、民間資本構成というものとそれから政府購入、民間資本の構成の中には、設備と、在庫と、それから住宅、むろんこの償却も含んでおりますが、それと、それから政府購入といたしますと、中央、地方を通じまして、これの政府投資及び公社債のことを言っておりますが、そのほかに個人消費、こういうものと、こう三つにこれを分けておるわけであります。要するに有効消費というのは、国内の消費とそれから輸出の振興ということに相なってくるわけなんでございますが、そういうふうにこれを分けて言っておるわけであります。
  53. 佐多忠隆

    佐多忠隆君 今のお話で、そうしますと、特に六カ年計画をお出しになった時と、その六カ年計画における三十二年度の指標と、それから三カ年計画として最近お出しになったそれの最終年度の三十二年度の指標、それには各項目についていろいろな差があるのですが、なぜこういうことになったのか。従ってまたそういう計画変更に基いて、それをさらに延ばして行かれるとすれば、六カ年計画の最終年度数字、すなわち三十五年度数字はどういうふうに変化するのか、そこいらを一つ説明を願いたい。
  54. 高碕達之助

    国務大臣(高碕達之助君) 本年の一月に六カ年計画立てました時と、根本に一つ変ってきた突発的な事項があったわけであります。それは人口が予想よりも非常にふえたということ、これは奄美大島がわれわれの予想しなかった時に日本の人口に入ってきた。これが約二十万ふえた。こういうようなことで少し人口がこの一月の時と変りましたことと、それからもう一つは、労働力率を六七・六%、二十九年は六七・七ということにし、これを逐次下げて行く考えで、三十二年度ば六六にしたい、こういう考えでおったのであります。それで三十五年度は六五にしたいと、こういう考えでおりましたところが、いろいろ各方面の御意見を承わりました結果、それはどうも低過ぎる、そう低く見ることはよくない、こういうことで、御意見を承わりました結果、ここに根本において二十九年は六七・七にし、三十年は六七・六にし、三十一年度を六七・四にする。それから三十二年度も六七・四といたしました結果、三十二年度は六六と六七・四という非常に大きな違いとなりました。国内の人口が非常に、二十万というようにふえましたことと、それに労働力率を変更いたしました、この二つでございます。その結果、三十五年の数字には相当の狂いがきたわけでありますが、狂いの元はそういうわけでございますから、逐次、これは初めに申し上げました通り、各方面の御意見を承わりまして、その御意見に従ってこの目標というものは修正して行きたい、こういう所存でございます。
  55. 佐多忠隆

    佐多忠隆君 計画数字が変ることは、事態が変化しておるのですから、これは私たち了承をいたしますが、ただ変った場合には、その変ったあれをもう少し正確に丁寧に、理解のできるような一つ資料の配付の仕方をしていただきたい。特に今の問題は人口あるいは労働力率だけでなくて、特需の関係その他非常に重要な点においても相当な変更がなされております。従って私はここで要求をいたしておきますが、三カ年計画による三十二年度と、当初六カ年計画による三十二年度との数字の対比表を正確に出していただいて、そうしてどういう理由でそういうふうに違ったかということの詳しい説明をつけたもの、さらにその計画変更が六カ年計画の最終年度三十五年度にどういうふうに現われてくるかということも文書で一つ御提出を願いたい。  それで時間がありませんので先へ急ぎますが、いわゆるこの計画で先ほどから問題になっておりますように、一番重要な問題のかぎの一つは完全雇用の問題であると思うのですが、そこで二十九年度の予算を編成されるときに、完全失業をどういうふうに見通して失業保険その他の政策金額を算定をされたか。それがさらに実績としてはどういうふうな狂いなり、違いが出てきたか、それをまず御説明を願いたい。
  56. 西田隆男

    国務大臣(西田隆男君) 二十九年度のことですから、一つ政府委員から答弁いたします。
  57. 江下孝

    政府委員(江下孝君) お答え申し上げます。二十九年度におきましては一兆円予算の編成によりまして雇用の情勢が非常に見通しが困難になりまして、私どもといたしましては、一応全般の雇用の悪化と申しますか、失業勢情の悪化、完全失業者におきまして一割程度の増加をするのではないか、これを予算的に見まして、失業保険の受給者でございますが、これは二十八年度約三十五万、二十九年度はその三割増し程度の四十五万という数字であったのであります。それから安定所の窓口に出て参ります最後の要失業救済の数でございますが、これにつきましても、これは安定所の窓口に要救済者として出て参ります数は、どうしてもこれはズレるのでございますので、五%増ということで計算をいたしまして、二十八年度が吸収人員十五万七千という数字でございましたので、十六万三千というふうにいたしたのでございます。ところが現実には金融引き締めの措置が非常に急激に参りまして、その他思わざる面におきまして雇用情勢が相当悪化いたしまして、御承知通り補正予算をもちまして、失業保険におきましては約四十九万人、すなわち当初の予定の四十五万人より四万上回っておる。それから失業対策事業におきましては当初の予定の十六万三千を十七万人にふやしたのであります。
  58. 佐多忠隆

    佐多忠隆君 今御説明通りに、二十八年度に比べて二十九年度は夏季で失業者数一〇%程度の増加だ。年間平均をとると約五%の増加だろうから、この予算を組むのだというのが二十九年度予算だったと思うのです。ところが今御説明にありましたように、あるいは数字示しておりますように、二十九年の四月は五十一万から出発をして年度末には八十四万になった。従って年間で言えば、年度当初から年度末にかけてのあれは六〇%の増加だ。初め一〇%程度とお考えになったのが六〇%程度の失業増加だ。これを年間平均にすれば四十三万から六十三万で五〇%程度の増加ということになってこれを政府は年間平均五%増ということで予算を立てておられたのでありますが、全くこの見通しは誤まっている。これは量的な誤まり以上に大きな誤まりであるということが言えると思うし、これもあのときに、二十九年度予算を審議するときにやかましく申した問題でありますが、いや、大体政府見通しで落ちつき得るし、落ちつけるような雇用政策をとるのだとおっしゃったにかかわらず、何らそれに相応するような雇用政策がとられなかったために、こういう実績を出してしまわれた。しかもこのために失業者が非常な困難をしておるのみならず、新しい就業の問題が非常にむずかしい問題となっていて、重要な問題になっておると思うのであります。従ってこれは二十九年度は完全に政府失敗をされたことでありますが、これまた内閣が変っているので、なかなか追及の仕方がむずかしいのですが、それらの実績をお考えになって、三十年度は一体どういうふうに雇用の問題を考えておられるか、失業の問題を考えておられるのか、その点を御説明願いたい。
  59. 西田隆男

    国務大臣(西田隆男君) お答えいたします。ただいま佐多さんは、三十年の三月の一番完全失業者の多い統計が出た八十四万という数字を御引用になった。二十九年度平均しまして六十三万の完全失業者ということになっております。従って三十年度におきましては、経審の六カ年計画の初年度目的が達成されて、経済規模の拡大がある程度行われ、国民の総所得が増加するという前提に立ちまして、三十年度にふえまする就職不可能な完全失業者を二十万人と想定いたしまして、この二十万人を失業対策事業に吸収するようにいたしまして経費を計上しております。その内容は、労働省に計上されておりまする失業対策事業の方で約二十二万、それから建設省の方で今まで緊急就労対策事業費として計上されておりましたのが、今度は道路整備事業費として五十億計上いたしております。この金と、それから通産省の方で鉱害復旧事業費として十三億二千万円計上になっております。これらの費用を合わせまして、その他水道、河川、港湾等を加えまして一カ月間の稼働日数を二十一日にして十四万人を収容する、こういう一応の見当を立てております。あとの六万人の人々に対しましては、職業補導所にこれを収容することによって就職の道をはっきりさせる、こういうふうな計画立てて、大体三十年度の失業対策立てております。これは万全ではありませんけれども、どうにかこの程度ならばやって行けるのではないか。人員の点におきましては、二十九年度に比較いたしまして約三〇%よけいに失業者が出てくるという想定を立てております。金額におきましては九十五億程度二十九年度の補正よりもよけいに予算に計上しております。概略でございますが、お答えいたします。
  60. 佐多忠隆

    佐多忠隆君 今、労働大臣は私が年度末八十四万人の数字を出したら、過大な数字を出しておるかのように御説明になりました、それで年間平均は六十三万だということをおっしゃった。それはあなたのおっしゃる通り。従ってそれならばそれと対比する年間平均を前年度、二十八年度をとると、さっきも申しましたように四十三万人です。従ってその増加率は五〇%ということになる。これを政府は、年間平均は五%でとまると思いますし、それで措置しますと言われたから、非常に大きな狂いがきたということを申し上げておるのであって、都合のいい数字だけを誇大にとっておるのではありませんから、その点は一つ正確に御認識を願いたい。で、三十年度の問題をお話しになりましたが、三十年は四月は七十万人というのがこの間の数字に出ております。この七十万から出発をして年間の平均は六十三万、前年度と同じにとめようとおっしゃる。ところが前年度は先ほども申しましたように、五十一万から出発をして、そうして年度末一番多くなったときに八十四万になって、この平均が六十三万人ということだと思う。出発は五十一万だった、ところが今年は四月には七十万から出発して、しかも年間平均六十三万人でとめようとなさるならば、そうすれば、年度末には大体六十五、六万ということに減少をしなければならぬという方向になると思うのですが、そういうふうな見通しが立つのかどうか。従ってそういう見通し立てられる具体的な雇用量の増大の問題その他はどういうふうにお考になっておるのか、それがはっきりしなければ、この六十三万という平均数字が明瞭にならないと思いますので、その点を御説明願いたいと思います。
  61. 西田隆男

    国務大臣(西田隆男君) お答えいたします。さっきもお答えしましたように、経審の経済六カ年計画の規模が達成された場合を想定して、一応の完全失業者ということを考えておりますので、経済情勢の推移に従って各月各月には多少の狂いが出てくるであろうと考えております。それともう一つ、特に私どもの方で考えておりますのは、今までは立法することによって当然起きてくる失業者に対して何らの措置もとっておりませんでした。従って二十八年度と二十九年度の開きが、予算関係財政投資の関係の面であった。佐多さんがさっきおっしゃったように、非常な影響を受けた産業が出てきたために失業者が増加したというふうに私も見ておりますが、現内閣におきましては、失業対策の予算を編成しました当時は二十万人という想定をしておりましたが、その後の経済情勢の変化に伴って生じた失業者に対しましては、こは特別の措置を資金的に財政的にとって行かなければ、三十年度の失業対策の万全は期せられない、こういう観点に立って、かりに申しますならば、特需の労働者に対する失業対策、あるいは石炭合理化法の制定に伴いまする失業対策というようなふうに、その月、その月に現実に起きて参りました失業対策として予算に計上していない事態に対しましては、それに対して適当な措置をとって行くことを考えておりますので、二十八年度と二十九年度との対比された数のような急激な失業人員の増加ということは、私としては現在考えておりません。
  62. 佐多忠隆

    佐多忠隆君 増加しないことはあるいはあり得るかもしれませんが、六十三万人の年間平均にしようと思えば、現在三月から四月に相当減った、相当減っても、なお七十万人で出発するのですから、それがさらに年度末には相当減らなければ六十三万という平均数字が出てこない。その失業者減少の雇用対策をとっておられるかどうかということが問題なんですが、どうも今までの御説明では、そういう雇用対策はほとんど具体的にとられていないとしか考えられない。さらに就業者の問題でありますが、就業者は、経済審議庁の計画によりますと、三十年度は八十三万人の就業増加がある、それがどこかに吸収されなければならないということになるのでありますが、その吸収の方向は、経済審議庁から出された資料によりますと、第三次産業にほとんど偏在をしてしまっている、大部分が第三次産業に吸収をされる計画になっておる。ところがこの第三次産業に、第一次はもちろん吸収の余力はないし、第二次もさして雇用がないので、従ってやむを得ず第三次に吸収をするということになっておると思うのでありますが、この第三次産業に吸収をされるということは、実質的には職業にありついたのではなくて、潜在失業者としてそこに追い込まれるということを意味しておるにすぎないと思うのでありますが、この点はどういうふうにお考えになっているのか、それらの点について、完全雇用政策を少くとも呼号されれば、その方向に何らかの具体的な施策をもっとはっきりお立てにならなければ、こういうことでは全く看板に偽わりがあり、看板をおろされる以外にないと思うのでありますが、この点をどういうふうにお考えになりますか。
  63. 西田隆男

    国務大臣(西田隆男君) お答えいたします。佐多さんも御承知のように、潜在失業という観念があることはこれは間違いでございませんので、日本のように四〇%以下のはっきりした雇用関係しか許されていない国柄におきまして、潜在失業という概念に基く失業者を的確に把握するということは非常に困難なことでありまして、労働省として一応考えておりますのは、不完全就業という立場において二百六十万程度考えております。それから総理府の統計調査部で出しておりますものは、一時間から十九時間の就業時間しか持たない労働者という意味合いで、これを二十九年度平均では四百三十八万程度を一応抽出法によって計上しているようでございますけれども、これが自家営業、農林水産等々に分れておりますので、どの程度のものをどこまで持って行ったら、果して潜在失業という概念に合うようなことになるかという結論をつけることは非常に困難だと思っております。従って私どもの考え方では、これは何回も申しますけれども、経済審議庁の立てました計画が実施されました場合、国民の総所得がふえるという観点に立ちますというと、現在潜在失業者と呼ばれている者以外、いわゆる完全失業者というものを対象にして、その数を潜在失業の方に振りかわって行くようなまずい施策をとりさえしなければ、潜在失業が減るとは申せませんが、潜在失業者として現在考えられている者の生活内容は少しずつでもよくなって行くのであって、そういう意味においては潜在失業者は佐多さんのおっしゃるように急速な増加を示すことはあるまい。そういう観点に立ちまして、職業紹介所に出てくる者、あるいは日雇い労務者として登録しているというふうな者等々、失業保険の受給者というようにはっきりわかっておりますいわゆる失業者に対する対策を十分に立てて行きたい、かように考えております。
  64. 佐多忠隆

    佐多忠隆君 そういう遠い将来のこともですが、私が現実に問題にしているのは今年度、三十年度八十三万の就業者の増加を計画しておられる。それを全部吸収する計画立てておられることはそれでいいのだけれども、しかしそれが吸収される行く先が、大部分が第三次産業に偏在しているということが具体的に数字が出ている。その第三次産業に吸収されるのであるならば、それは本来の意味で、就業したというよりもこれはもう潜在失業あるいは不完全就業にすぎないのじゃないかということを言っているので、それに関連をして、もっとこの雇用増加の問題は真剣にこれを中心の問題として取り上げられなければ、現在の重要な問題に対処しておられることにならないのみならず、あなた方自身が掲げられた看板に偽わりありということになるから、この点をもう少し具体的に、真剣に施策をさるべきだということを要求しているのであります。時間がありませんので、さらにこの経済自立の問題が、もう一つの戦後の非常に重要な問題でありますし、この問題を残しておりますが、時間がありませんのでこれ以上続けませんが、ただ経済自立の問題として、国際収支の見通しが、当初の六カ年計画と三カ年計画かなり違ってきた。ことにこの三十二年度の特需が三カ年計画では三億ドルになった。六カ年計画では二億五千万ドルであったのが、三カ年計画では三億ドルにふえてきているというような実情であって、なぜ増加してきたのか、こういう点から見れば自立速度が変ってくるのじゃないかどうか、それらの点について、あるいはMSAの関係、あるいは余剰農産物の受け入れの関係、そういう点で問題が新たに提起をされているのか、そこいらが非常に不明瞭であり、しかもこういう計画の変更をされるならば、これは当初の経済の自立を急ぐという方向を変えてしまわれて、特需依存の方向がなお相当程度続くのだ、あるいはそれの脱却のテンポが非常におくれるのだ、しかも経済情勢から言えば、これを脱却することは可能であり、できるような計画になるにかかわらず、しかもただ、今後の特需の見通しからして、相当な援助その他があり得るのであり、それを前提にすれば、こういうふうに変更しなければならぬ、こういうことになったのではないかと、こういうようないろいろな非常に重要な問題が残されておりますが、これはもう時間がありませんから、これ以上御質問はいたしませんが、一応の御答弁を願いたい。
  65. 高碕達之助

    国務大臣(高碕達之助君) お答え申し上げます。最初、特需はずっと減るものだ、非常に減るものだと、こう思っておりましたところが、現在の状態から判断いたしますというと、三十二年度は大体最初私どもが二億五千万ドルと、こう見ておったのでありますが、もうこれは五千万ドルぐらいふえるということで、現在の見通しからいたしまして、これで三億と、こういうふうに五千万ドルだけふやした、これは実情に沿ってやったわけであります。そのほかの実は考えは何もいたしておりません。ただ三十五年におきましては、やはりこれはゼロにするということで、この計画を遂行いたして行きたいと存じます。  先ほど御要求になりました資料につきましては、これは来週火曜日ごろまでお待ち願いたいと存じますが、それまでに、一月にきめました六年計画と、現在の三年の計画との間の数字の差を、各部門につきまして詳しく資料を差し上げたいと思いますから、それまで御辛抱願いたいと存じます。
  66. 永井純一郎

    永井純一郎君 私はこの前総理大臣の総括質問のときに、憲法改正の提案権の問題につきまして少しく質疑したのでございましたが、時間がなくなってしまっておったので、実は総理大臣とこの委員会の席で十分に話し合いをいたしまして善処を願いたい、こう思っておったわけでございまするが、総理の総括質問が済みましたので、官房長官にお伺いをして行きたい、こう思います。これは政府が言いまする通り、憲法の改正というものを阻止しておるという、憲法が改正をできないようにしておるということを私は少しも言っておるわけではないのであります。しかし基本法でありまするから、非常に改正ということは重要であります。あるいは日本のあらゆる経済財政政策がこれによって変るのでありまするから、私は非常にそれは慎重でなきゃならぬ。しかも慎重であるために立法府も行政府も、司法をつかさどるところも、すべてがこれを尊重して、この憲法を守る義務が明らかに課せられておるわけであります。しかし、なおかつ改正をしてはいけないというのではなくて、改正する場合は、こうこういう方法が一つだけあるんだというふうに私は憲法が規定しておると、こう思うのです。そこでこういうふうに考えまして、私はいろいろな問題がありまするけれども、特に二点、どうしても政府が言われておることに合点することができないわけであります。それは一つは、先ほど申し上げまするように、現在の憲法を尊重し、かつこれを守るという義務を持っておるところの内閣政府部内が改正を意図するということ、そのことが非常な矛盾であって許されないことではないかという点が一点、もう一つ政府に提案権ありとする場合は、これは明らかに私は結果から見て、国会が最高機関であるにもかかわらず、これに優先して政府が提案権を持つことになるという点が私は生まれてくると思う。主としてこの二点に集約をいたしまして官民長官と質疑を重ねて行きたい、並びに私は政府考えを聞きたい。できるならば、これは慎重に一つ善処をしてもらいたい、こういうふうに考えるわけであります。  で、一番先にお尋ねしたいのは、内閣が、七十二条の普通の議案として国会に提案、憲法改正案が普通の議案と同じように国会に提案できるようなふうに言いまするけれども、もしそうである場合は、そういう改正案がかりに政府から出されてきた場合には、これを国会が受けてこれを審議しなきゃならぬわけですが、この受ける形というものは一体どういう形で国会は受けるのか、これらをまずお伺いしたいと思う。
  67. 根本龍太郎

    政府委員根本龍太郎君) お答え申し上げます。憲法改正が非常に慎重であらねばならぬということはお説の通りと存じます。ところで、ただいま御質問になりました、政府がもし憲法改正の原案を出す場合にはどういう形においてこれが提出されるかというお尋ねのようでありまするが、これはやはり普通の議案と同様にこれは出すほかないものと考えておる次第であります。
  68. 永井純一郎

    永井純一郎君 それでは答弁にまだならないわけだと思いまするが、国会は発議権を持って国民に提案しろと、こういうふうに憲法に書いておる。発議をして下さいという提案をするのかどうかということなんです。どういう形で政府は一体改正案というものを具体的に出すわけなんですが、どういう形で出すか。国会はそれをどういう形で、どういう形の議案としてこれを受けるのか、ここに私は非常に疑義があると思う、その点を伺っておる。
  69. 根本龍太郎

    政府委員根本龍太郎君) お答えいたします。憲法九十六条の規定は、これは国会が憲法改正の議案を出しまして、それに対して国民の賛否を求めるということが憲法九十六条の規定だと思います。そこで国民にその賛否を求める議案が国会に出されなければならないわけであります。これは本来は国会で提案されることでありまするから、国会議員にその提出権があるということは当然の理でありまするが、同時にまたこれは政府にもその議案を提出する権能はあるものという解釈をとっておるのでありますが、これは先般総理と永井さんとの間の論議のときに盛んに議論されたのでありまするが、通説は、通説と申しますか、大多数の学者も、やはり政府にもその提案権があるという解釈をとっておるのでありまして、特に現在のように議院内閣制であります場合においては、政府は超然内閣と違いまして、そこに私は政治的にも政府に提案権があると解釈することが当然ではないかと、かように考えております。
  70. 永井純一郎

    永井純一郎君 いや、そこまでの議論はわかっているのです。この前からやっているわけです。私は今日は掘り下げて質疑をしているわけなんです。従ってもう一つ関連してこういう問題が起ってくるのです。国会は最高の機関でありながら三分の二、しかも三分の二というのは在任議員の三分の二なんですから、あの憲法が言う三分の二は……。その三分の二がなければ発議できないぞという制限をしているのに、かりに少数の、一番いい例は鳩山内閣のような百八十人かそこらの内閣がですよ、議院内閣制をとるからという議論も一応わかると思うのです。たった百八十名程度の、あるいは参議院におきましてはわずかに二十二、三名の鳩山内閣が改正案を提案できるという理論上の主張ができる、あなた方の主張をもっていえば……。そうすれば、国会でさえ三分の二でなければ発議ができない、たった二十二名、あるいは衆議院における百八十名程度の少数内閣政府提案としてやるということは、これは結果から見て、明らかに最高機関である国会に優先して政府が改正案を提案できるという結果が出てくる。そこで私が最後の結論は、質疑応答したいのですが、今申し上げているのは、その国会が三分の二の、実人員の三分の二の賛成者がなければ発議ができないのに、政府が、改正案を具体的にあなた方が作って政府が提案できると言っておりますが、その提案はこの改正案に基いて発議をしてくれという提案をするのか、どういう形の提案をするのかということを言っているのです。
  71. 根本龍太郎

    政府委員根本龍太郎君) お答え申し上げます。国会の三分の二の賛同が得られなければ、これは国民にその賛否を問うことができないことを規定しているのが九十六条の規定だと思います。そこで、しからばその国民に賛否を問うための国会三分の二の議決を得るためにも、これはどこかでその原案が提出されなければなりません。それが国会議員にあることは当然でございます。また、それと同様に国会も政府も持っておる、こういう解釈でございます。そこで政府が提案した場合には、これによって賛同を得て、国民の賛同を得ていただきたいという、あなたの言われたその後者に属するものとわれわれは考えます。
  72. 永井純一郎

    永井純一郎君 非常に技術的になった場合には、林君からお答えを願ったらいいと思いますが、そうすると、今根本さんが言われるような提案をする場合こ、一体どういう議員になるのですか。実際的には、一体。
  73. 林修三

    政府委員(林修三君) ただいま官房長官からお答えしたところで尽きているわけでございますが、結局憲法九十六条で、「国会が、これを発議し」という発議の意味に帰着すると思うのですが、これは私どもの解釈といたしましては、これは普通の議案、たとえば法律案なら法律案と同じような議案を、憲法改正の議案を、国会が、それぞれ両院が、三分の二以上の賛成をもって議決をされて、議決されたところのものを国民に対して発議をする、こういう意味に憲法九十六条は私は読むべきだと思っております。従いまして、その発議に至るまで、憲法九十六条の発議に至るまでの、国会でその審議される議案、これは結局普通のほかの議案と同じように政府も出し得る、あるいは国会議員もお出しになり得ることは当然だと思うのでありますが、その議案は、普通の議案と同じ形で、国会議員がお出しになる形で政府も出し得る、かように考えるのであります。そういう議案を国会において御審議になって、このおのおの三分の二以上の賛成があって両院が議決されれば、そわで国会は国民に対して発議をする、こういうことになるんじゃないかと、かように考えます。
  74. 永井純一郎

    永井純一郎君 どうも少しもはっきりしないし、議論が先に進まないようですが、あなたのおっしゃるように、六十二条の普通の議案として国会に提案した場合は、議会は御承知通りこれに賛成して成立せしむるか、あるいは否決するか、修正するか、この三つによって、国会できまってしまうのです、六十二条の普通の場合。し心し改正案の場合、政府にかりに提案権ありとした場合には、これを発議して下さいということで、そういうその理由を書いて提案するのですか、改正案そのものを具体的に作ってですよ、その形を聞いている。どういう形で一体提案してくるのか。
  75. 林修三

    政府委員(林修三君) 政府の方に議案の提案権があると申しますのは、憲法七十二条でございまして、六十二条でなくて七十二条でございますが、その普通の議案ば御承知のように政府が出しまして、おっしゃる通りに国会において可決されるか、否決されるか、あるいは修正されるかの形をとります。それで、国会においてそういう意味の御審議をお願いしたいということで出すわけなのです。で、憲法改正案につきましては、これは政府のみならず、国会議員から御提案になる場合も同じだと思いますが、これは同じことなんでございますが、憲法九十六条の規定に従いまして国会が可決をしたものを国民に対して発議をする、そういう発議をする原案を国会議員がお出しになる、あるいは政府が出す、形はどちらがお出しになる場合も同じことだと思います。つまりそういうふうに国会が三分の二以上の多数で議決したものを国民に発議するのであります。そういう発議をする原案なるものを国会において御審議になる。その原案を政府なり国会議員が出す、こういうことだと私は思います。
  76. 永井純一郎

    永井純一郎君 ですからもう少し掘り下げて議論をしてもらいたい。でないといつまでも疑義が残ったままになりますから……。それは、七十二条で言うのは、普通の議案の場合はそれでいいのです。ところが憲法改正の場合にはですよ。かりに私が言うように、憲法を次のように改正するといって、ここに議案を出してくるわけなのです。それをこのまま国会が受けて議決することが発議になるのですか。それを言っているのですよ。
  77. 林修三

    政府委員(林修三君) 具体的にどういう形をとるかは、まだ私どもいろいろ研究の余地はあると思いますが、筋は今おっしゃった通りでございまして、国会において政府が出すか、あるいは国会議員の何人かの方がお出しになりますか、そのいずれを問わず、国会において憲法九十六条の規定に従って、両院がそれぞれ三分の二以上の同意を得て議決をされれば、それが憲法九十六条のいう国民に対する国会の発議になる、こういう意味に私は解釈しております。
  78. 永井純一郎

    永井純一郎君 そういたしますると、実質的には国会の発議を促すことにただなると思うのですね。実質上そういう提案の仕方というものは、私は七十二条から生まれてこないと思うのですよ。そういうことは明らかに七十二条と憲法改正の九十六条とは違うのです。それは国会が具体的に受けた場合を考えても、われわれは非常に困難するのです。そういう議案の受け方は……。そこでもう一つは、もう一点さらにわからなくなってくる点は、国会がそういう提案を受けた場合に、受けるということは実数の在任総数の三分の二の議員数がない場合でも受けなければならぬ、理論上ですね。三分の二がない、たとえば鳩山内閣が現在出してくる、そういう改正案を出してくる、具体的な出し方の形式自体に今私が申し上げたように非常な疑義があるけれども、出してきた場合に、かりに参議院では三分の二民主党というのはいやしない、そこにそういう憲法改正案を少数内閣がやはり出し得るわけです、理論上。それを一体国会は受けることができますか、その場合受けられないと思うのです、私は。
  79. 林修三

    政府委員(林修三君) 先ほどその発議を促すとおっしゃいましたけれども、これは憲法九十六条から言えば、あるいはそういう言葉も使い得るかと思いますが、しかしこれは結局のところ、政府が出しますにしろ、国会議員がお出しになりますにしろ、国会に出ます憲法改正の議案はこれは議案と思いますが、議案を国会において御審議になるものと思います。それから政府が出します場合は、もちろんまあ七十二条でございますが、国会議員がお出しになります場合に、これはまだ国会法の規定が、今そこの点ははっきり規定がございませんけれども、普通の議案の提出手続によるものだと思う。かりに参議院で民主党の議員がお出しになり、そこで所定の国会法の定める賛成があれば、議案は私は国会に出し得る、かように考えます。
  80. 永井純一郎

    永井純一郎君 それでかりに現在の参議院で民主党が二十二名かそこらしかいない、ここに今政府が改正案を提案することは、あなたの政府の理論上から行くと出てくる、理論では。そういう場合に、それは国会はその議案を受けなければならぬ、私はそれは受けることが許されないと思う。三分の二がなければ発議さえできないという制限を国会が受けている、その国会がそういう改正案を私は受けることはできない、その点どうですか。
  81. 林修三

    政府委員(林修三君) 今発議と言われましたその発議は、先ほど私が御説明したように普通の今の国会法で言っております議案の提出または発議といっていることと、私は意味が違うと思います。これは当然に国会が議決を得た上で、国民に対して発議され、その発議される原案を国会にどなたがお出しになるかということは、これは九十六条は直接言っておらないのじゃないかというのが、私どもの考え方でございます。従いまして、かりに政府でなくて、国会議員の方で憲法改正の議案を国会にお出しになりますことについても、必ずしも私は三分の二以上の署名がなければ出せないものじゃない、三分の二以上の署名がなければ出せないというものじゃない、かように考えるわけであります。その議案を国会において御議決になるのには、もちろんこれは憲法九十六条の規定に従って三分の二以上の同意が要りますけれども、その原案を御提案になることについては、私はそういう制限はないものと、こう考えております。
  82. 永井純一郎

    永井純一郎君 三分の二の賛成者がなければ発議できないのですよ。三分の二の賛成者がなければ発議できないと書いてある。それは発議は二人でも三人でもできます。どの法案でもそうです。しかし賛成者は三分の二なければならぬ、その場合私が言うのは、その場合国会でさらにそういう制限があって三分の二以上の賛成者がなければ発議ということが国会ができないほど制限を受けている。また成り立たないわけです。そうでないのにわずかに少数の議院内閣制であるから出し得るのだという議論も一応認めるとして、非常にわずかな弱少内閣が改正案を国会に出すということは、明らかにその点だけでも、国会が制限を受けておる、三分の二ということで制限を受けておるにもかかわらず、少数の内閣が提案をするということは、これはもう明らかに、最高機関である国会よりも優先して改正案の提案ができるということになりはしないかと思う。その点どういうふうに考えますか。
  83. 林修三

    政府委員(林修三君) おっしゃる趣旨はわかったのでございますが、私どもは、憲法九十六条に書いてあります両院がそれぞれ総議員の三分の二以上の賛成を得てという意味は、国会の中における議案の提案について発議者が三分の二以上の賛成者の署名を得てという意味には私たち読むべきじゃないと思います。これは普通の学者の解釈ももちろんそうでございますが、国会における議決の仕方について三分の二以上の同意が要るのだ、つまり単純過半数でなくて、三分の二以上の同意が要るのだ、国会が議決してそれを国民に対して発議する、そういう意味に読むべきじゃないか。従いまして、国会議員の方でその原案になりますものを御提案になります場合にも、必ずしも私はそういう三分の二以上の賛成署名がなければ出せないものだというふうには考えません。憲法九十六条はそういうふうには言っておらない、かように考えておるわけであります。
  84. 永井純一郎

    永井純一郎君 かりに一歩譲って、そうであるといたしましても、実際上は私はそういうことはしないと思うけれども、三分の二の特別の議決がなければ発議さえできないという制限を国会自身が受けておる。それに、わずか二十二名の、具体的な例で言うならば、鳩山内閣が提案をするということは、それは発議するということに制限を受ける国会が、発議は三名でも五名でもできるかもしれませんが、議決するのにはあなたの説のように三分の二が必要だという制限を受けておる、その国会が三分の二以上の賛成者が実際的になかったら、これは成り立たないわけです。それであるにもかかわらず、少数の政府が改正案を出すということは、これは明らかに少くとも政治的に見て僣越しごくですよ。また法律的にも、明らかに私は国権の最高機関としての国会に優先する、結果から見て優先する提案権を持つことになると思う。かりに議決が三分の二ということに、あなたの言う通りにしても、三分の二という制限を受けるわけです。三分の二なければ国民に提案できないんですよ。その点は実質的に明らかに私は結果から見て政府の方が提案権について優先する。少くとも政治的に見て……。私は官房長官にお伺いしたいのは、これはお互いにわれわれ政治家として、政治的にそれは私は僣越だと思います。実際また国民も憲法というものはむずかしいものでなく、常識的なものだ、また読んでも非常に常識的だ。だれでも憲法は軽々しく改正しちゃいけない、しかしやるときには国民の代表であり最高機関である国会が三分の二の同意を得て国民に発議してきめてもらうのだというような筋を通すべきものだと思う。それ以外のことを、わざわざ持って回ったような議論をして、前の長官であった佐藤局長のような、海外出兵は公務員が出張で行くのだというような議論に近いような持って回ったような議論をしないで、もうあっさりと本筋で行くべきならば行べきであると思う。私はこういう話し合いをやはりここでされて行くべきだ、こういうふうに私は思う。この点一つ宮居長官の御所見を伺いたい。
  85. 根本龍太郎

    政府委員根本龍太郎君) 何回も繰り返して沖制局長官からもお答えがありましたが、三分の二の発議権というものは、その原案を国民に発議する場合におけるこれは制限規定だと存じます。その国会が議決するための発議権というものは、普通の議案の発議の形式で足りる、こういうふうな法的解釈を法制局長官も言われました。私らもその通りだと思う。そこで問題は、それは一応それとして、憲法改正というものがそういうふうに非常に重要なものであるから、政府で、特に少数与党より持っていない政府で出すよりも、多数の賛成議員が署名されて出すことが政治上好ましいではないかという議論であるならば、それはまことに傾聴すべき意見であると私は考えておるのであります。その情勢によってこれは判断すべきものであると考える次第でございます。
  86. 永井純一郎

    永井純一郎君 いや、私は法律的にもその今の法制局長官の意見には賛成できかねるわけなんです。また学説としても、あなたはこの前宮澤博士の当然に提案権が内閣にもあるという説のことを説明しておられたが、そういうふうにあの本には書いておらない。これは非常に疑義があるのだ、しかし内閣法で、そういうふうな「予算その他の議案を国会に提出し、」というふうに立法化してしまったからやむを得ないのだというように宮澤博士も書いておるわけです。これは非常に、内閣自身に普通の法律案を提案する権限があるかということ自体について宮澤さんも非常に疑義を持つということを書いておられるくらいで、私は先ほど来の政府のこの法律上の議論としては納得できないのでありまするが、しかし、今根本さんから政治上の問題として、それは十分に考えるべきことだ、こういうふうに言われました答弁を私は了承するわけでございますが、しかし、もう一つ非常に私どもが納得できない点は、やはり九十九条で、国務大臣が一番先に書いてありまするが、この憲法を尊重して守らなければならぬ義務があるのだということを明らかに書いておることでございます。これは議院内閣制でありまするから、政府に提案権がやはりあるんだという議論を百歩譲って了承しましても、その九十九条によるところの義務というものは、執行部に……、政府にも国会にも裁判所にも負わしておるわけでございまするが、特に民主憲法を頂点として、民主的な法律の体系がずっと作られておるわけでございます。それを守る義務はやはり一番執行部に私はあると思う。執行部は、これは憲法とか諸法規を守って忠実に執行する義務があるわけです。その政府部内に、改正しようとする積極的な意図を持った機関を設けるということは、私は明らかにこれは矛盾だと思う。この点を一体どういうふうに考えておられるのか、これは私は明らかに矛盾だと思う。ですから、その点から言っても、やはり政府から提案することはどうしても無理があるので、やはり国会が提案すべきものだ、そのときには、やはり三分の二以上の賛成者があって議決できるという情勢ができたときに私は初めてそうことをすべきものである、政府が積極的にそういう改正の意図を持つということは、これは私は明らかに九十九条とは矛盾をする、これも法律上の議論としても私はそうだと思いまするが、政治上の信義から言いましても、それはやはり憲法を国民に、守るんだという態度を政府が示されることが望ましいと、こう思うのですが、官房長官の御所見を承わりたい。
  87. 根本龍太郎

    政府委員根本龍太郎君) その第九十九条の規定は、これは法治国家として当然のことであろうと存じます。すなわち、立憲民主政体の国といたしましては、これは憲法が一番の基本の法律でございまして、この憲法によりまして、国家機構、行政、立法、司法おのおのこれに従って行われる。国民もまたそれを尊重して生業を営む、この意味においてあの規定があるものと存ずる次第であります。しかしながら、それゆえに憲法改正を意図してはならないということはないのでございます。また、現在も御承知のように、現行憲法はその成立当時の経緯並びに実施の結果において、すでにいろいろの改正をすべきであるという世論も相当大きく出ておるわけでございます。従いまして、このときに当りまして、これはもとより各議員あるいは個人において研究することも必要でありまするが、こういう事態のときに、憲法改正というか、憲法そのものを再検討して、国家のより繁栄、民生の安定のために資することを考えることもまたこれは当然なしていいことだと、こういうふうに考えるのでございします。お示しのように憲法九十九条の趣旨は、どこまでも政府はその憲法が存続する限り、しっかり守らなければなりませんけれども、しかし憲法のものも、これは法のために国家が存在するわけでもない、また憲法のために国民が存在するのでもない、国家そのものの永遠の繁栄国民の生活安定、そこに私はそれを目ざして憲法があるものと考えるのであります。そういう観点からいたしまして、その憲法もまた時勢に合わなくなってきた、あるいは改正すべき気運になったときに、これを検討することは何ら九十九条に違反することではないと、こういうふに考えている次第であります。
  88. 永井純一郎

    永井純一郎君 ですからその筋は、やはり改正をしてはいけないということを、憲法が言っているわけではないのです。憲法も改正を認めているわけです。その改正をする方法論なんです、私が言うのは……。政府部内にそういうものを積極的に改正しようとする意図を持つ機関を置いたり、政府がみずから積極的にやろうということでなしに、改正する必要が起った場合、そういう客観情勢が起った場合は、その意を受けて国会がみずから、国民の代表の最高機関であります国会がやるということが一番いいことであって、そのほかのものはやらない方が……、私はやらせることができないと思うのですが、まあかりに法律上の議論には触れないで、そういう情勢ができた場合、国会がそれをやったら私はいいんじゃないか、それが一番国民も納得する、そのために三分の二というような制限をわざわざ憲法はしているわけだと私は思う、少ない場合には客観情勢がまだできておらないと見なければならぬわけですから、少ないにかかわらず、三分の二の賛成者すら得られないのに、そういうときに義務を負う政府みずからが、積極的な意図を持ち、改正を研究したり、作業したりすることは、私はよくないのではないか、こういう所論をしているわけです。
  89. 根本龍太郎

    政府委員根本龍太郎君) 永井さんの御意見はこれはあなたの御意見としてわれわれは拝聴いたしますけれども、やはり先ほど申しましたように、現在この憲法が特異な条件のもとに成立されている。そうしてまたこれは方向は違うといえども、最近に至りまするというと、新聞で拝見をいたすのでありますが、両派社会党においても現行憲法を改正すべきだという議論があるようでございます。それは方向が違うわけですけれども、憲法は現在各政党も改正した方がいいというような状況も出ているのでございます。そこでその場合において、各党もおのおの研究することがこれは必要でございます。しかしこれを客観的に政府が、こういうような状況下において、各国状況あるいはいろいろの状況考えて、憲法そのものを純粋に検討するということは、決して私は今お示しのような九十九条に違反するというようなことにはならないではないか、こういうふうな見解をとっているのでございます。
  90. 永井純一郎

    永井純一郎君 提案をする形の問題についても、先ほど来法制局長官も非常に答弁に疑議がある。多数私は疑議がありますので、時間が切れましたが質問々保留して、あとまたいたしたいと思いまするが、今官房長官から両派社会党においても改正を、一部分の人にそういう意見があるという意味であろうと思いますが、これは先ほどの根本君の発言は、私は非党に不穏当だと思う。私どもの党議決定はそういうことになっておらない。そういう意見を個人的に吐く入はいます。これもどうも河野君の発言のようなことになっても、はなはだ遺憾であります。非常に出過ぎた御意見であると思う。これは一つ問題でありますから、私どもここに委員として党を代表して質問しているわけです。それにそういうお答えがあったということを私了承することはできません。私どもはやはり憲法はどこまでも守ることが日本国民生活、あるいは日本の安全保障のために一番いいという結論を出して、この憲法を守ろうということが党議決定になっている。これは官房長官の方で一つお取り消しを願いたい。
  91. 根本龍太郎

    政府委員根本龍太郎君) 私言葉が足らなかったならば、これは取り消しますが、新聞で拝見するところによるとと申したのでありまして、これは両派社会党の中にも憲法改正に関する、われわれと方向が違う方ではありまするが、そういう意見がありましたので、ちょっと申したのでありまするが、これが不穏当とあるならばいさぎよく取り消します。
  92. 館哲二

    委員長館哲二君) それでは、これにて一時四十分まで休憩いたします。    午後零時三十六分休憩      —————・—————    午後二時二十分開会
  93. 館哲二

    委員長館哲二君) 休憩前に引き続いて、会議を開きます。  さきに秋山委員の御質疑中、外務大臣及び審議庁長官に対する分が残っています。この際、御発言を願いたいと思います。
  94. 秋山長造

    ○秋山長造君 私の質問はこま切れになってしまいまして、持ち時間がごくわずかしか残っておりませんので、ごく簡単に項目だけお尋ねしますから、一つ答弁の方はできるだけ詳細に、反問の必要のないように一つお願いします。  まず第一に、去る二十二日に日米原子力協定が仮調印されたわけですが、この仮調印というものの法律的な効力について御説明を願いたい。なお、先般の本会議でも、外務大臣は、仮調印だからあとから自由に修正ができるというお話があったのです。しかし、それには当然米国側のこれは同意が必要なわけでありまして、国際慣行上、仮調印したものの修正というものが実際問題としてできないのではないかというように思うのですが、これらの点についてお伺いしたい。
  95. 重光葵

    国務大臣(重光葵君) 仮調印は、お話の通りに、双方の意思が合致したことに対しましてかりにこれを認めたものでございます。でありますから、双方の意思が一応決定したのでありますから、これを変更することは、むろんこれは双方のまた合意に基かなければなりませんから、従って、交渉の過程におけるよりも変更が困難であるということは、 これは当然想像ができます。しかし、不可能のことではないこともまた法律上明らかなことだと思います。
  96. 秋山長造

    ○秋山長造君 従来そういう例がございますか。
  97. 重光葵

    国務大臣(重光葵君) 私、今ちょっと材料を持ちませんが、ないことはないと思います。なお、お入り用ならば、十分調査した上で資料な差し出すことにいたしても差しつかえございません。
  98. 秋山長造

    ○秋山長造君 一つそれをお願いします。  さらにお尋ねしますが、仮調印を終った後、正式の調印に至るまでの間に、日米両国それぞれの国内法上の手続というものがあるはずなんです。その手続は日米双方においてどういうことになるのか、この点についてお伺いしたい。
  99. 重光葵

    国務大臣(重光葵君) その詳細の点につきましては河崎局長から説明をさしていただきたいと思いますが、御異存ありませんですか……。
  100. 河崎一郎

    政府委員(河崎一郎君) お答えいたします。まずアメリカ側では、仮調印後、たまたま目下米国議会開会中でございまするから、その議会に三十日の間さらしまして、その間に議員から異議が出なければ、米国側に関する限り調印は一応発効するわけであります。日本側は国会にかけまして承認を求めることに相なるわけでございまするが、効力発生の日にちにつきましては、両国の議会に関して効力が発生しましてから、あらためて日米の間で効力発生の日にちをきめて、効力発生に関しては公文交換をいたしまして、アメリカの議会も日本の議会もその協定文を承認した後において、あらためて効力発生の日にちをきめることに相なっております。
  101. 秋山長造

    ○秋山長造君 アメリカ側は一月間議会の閲覧に供すればそれで効力を発生するということでございますが、そうなると、ただいま外務大臣が仮調印の修正はできぬことはないと言われるけれども、事実上アメリカが三十日たってしまうともう向うでは本物になってしまうのですから、これはもうほとんど全くと言ってもいいくらい、外務大臣のおっしゃるように修正ということはできなくなるのであるというように思うのですが、その点いかがですか。
  102. 重光葵

    国務大臣(重光葵君) 先ほど申しました通りこれはアメリカ側の手続としては非常に困難になると、こう考えます。
  103. 秋山長造

    ○秋山長造君 その点は後ほどもう一度お尋ねしますが、その次に、二十二日に仮調印が行われたにもかかわらず、いまだに協定の正文が発表されておらない。これはどういう理由によるのか、お尋ねします。
  104. 重光葵

    国務大臣(重光葵君) それは正文はまだ発表はいたしておりません。おりませんが、その大体の内容——正文ではありませんが、大体の内容はもう公表をいたしております。正文の発表はなるたけ早くやりたいと思っております。なるたけ早くやりたいと。それがまだ発表の日にちが合意できないために正文は発表しませんが、合憲ができ次第に発表いたします。
  105. 秋山長造

    ○秋山長造君 その合意がなぜできないかということを聞いているのです。
  106. 重光葵

    国務大臣(重光葵君) これはアメリカ側の都合ですな。
  107. 秋山長造

    ○秋山長造君 その都合がどういう都合か……。
  108. 重光葵

    国務大臣(重光葵君) それは向うの都合で、よく聞いておりません。おりませんが、これは不日発表の日にちが合意ができると、こう思っております。合意ができ次第、これは発表いたします。
  109. 秋山長造

    ○秋山長造君 質問に対する答弁にはなっていないのですけれども、次に進みます。  今回のこの原子力協定ができたために、今後アメリカ以外の国からの受け入れの自由があるのかどうか。まあ、せんだって本会議では、あるという御答弁だったのですけれども、しかし、たとえばソ連は原子力の平和利用の面ではアメリカよりも一日の長があるということを言われておるのです。現に、七月の一日から五日間ソ連で原子力の平和利用会議がございまして、日本学術会議からも藤岡由夫博士を派遣することになっておる。こういうものに参加してソ連の原子力利用状況というものをつぶさに検討した上で、これはソ連の方から受け入れることが有利ではないかという事態にならないとも限らない。ソ連から受け入れるという自由も完全にあるのかどうか、この点を一つ念を押しておきたいと思う。
  110. 重光葵

    国務大臣(重光葵君) 私どもにおいて専門家の意見などを徴しました上で、今ソ連から受け入れるという問題が現実の問題としてあるということを今予想はできないのでありますが、しかしながら、さようなことが日本の利益であると判断される場合においては、そのことがこれによって不可能となることはないのであります。すなわち、その道が開かれておるわけであります。それはそのときに判断いたしたいと思っております。
  111. 秋山長造

    ○秋山長造君 それでは、その面についてはもう百パーセント日本の自主性が残されておると解釈してよろしゅうございますか。  それからなおついでにもう一つ、従来政府は、この問題については専門学者の意見を十分尊重して解決をしていく、こういう方針を宣明してこられた。今回のこの原子力協定の伝えられる内容を見ますと、やはり、秘密はないというけれども、あちこちそれらしいものがあるように思われる。そこで、今日まで政府が持ってこられたこの専門家の意見を尊重するという態度を、今後も持ち続けて、特に学術会議の例の三原則、この三原則というものはあくまで公明正大に政府として守っておゆきになる御意思であるかどうか、この点と二点……。
  112. 重光葵

    国務大臣(重光葵君) 十分尊重していくという心がまえで進みたいと考えております。
  113. 秋山長造

    ○秋山長造君 それからさらに、いつも問題になっておる、将来の原子力発電に関する協力についての交換公文というものが交換されておるわけでございますが、この交換公文というものの法律上の性格はどういうように理解したらいいのでございましょうか。
  114. 重光葵

    国務大臣(重光葵君) この点もすでに御説明いたしたところと考えます。この場合における交換公文は補足的の意味を持っておると、こう御了承願いたいと思います。
  115. 秋山長造

    ○秋山長造君 補足的ということはこれはもちろんわかっておるのですが、これがやはり法律的な拘束力を協定と同じように持つものではないかと私は思うのです。この点はいかがですか。
  116. 重光葵

    国務大臣(重光葵君) その点は、協定の本文に掲げておるわけてないので、本文と同じ強さにおいてこれが拘束力を持っておるということは言えないと思います。すなわち、本文の協定の補足的の意味であって、その意味において双方の意思表示があり、双方の同意があったことでありますから、その程度において双方の約束となり、拘束力があるといっても差しつかえないと思います。しかし、それは協定自身とは程度の非常に違うものであることを申し上げたいと思います。
  117. 秋山長造

    ○秋山長造君 ニュアンスはなるほど多少違いはあるかもしれぬけれども、要するにこれは国家間の、日米双方の合意なんですから、しかもそれが文書によって表明された合意である以上は、やはり実質的な拘束力というものは協定本文と何ら私は変りはないのじゃないかと思う。その点をもう一度念を押したい。  それからもう一つは、原子力発電というものは、専門家の説によると、これが実際商業ベースに乗ってくるというのは、アメリカやイギリスのようなこの問題の先進国においてすら、十年、十五年先の問題である、こういうことが言われておるのです。だから、十年、二十年経過するまでには、またこの問題についてどういう情勢の変化があるやらわからない。そういう先の先のこことを、なぜ今あわてて、この際、名前は交換公文であるにしろ、実質的にはやはり法律的な拘束力を持つところのこういう取りきめをやらなければならないのか、その理由について、よく納得のいくように御説明願いたい。
  118. 重光葵

    国務大臣(重光葵君) この交換公文の意義及びその拘束力については、今申した通りでございます。従いまして、この協定本文とは違うものであるということを申し上げたのでございます。  さて、この交換公文においては、これは前に説明を申し上げた通りに、われわれはアメリカ側の言質をこれでとっておくと、こういう意味に解釈をしておるのであります。すなわち、将来技術上の援助をかような方面において日本が欲する場合においては、アメリカ側はそのことをやろうと、こういう言質をとっておる意味であります。さようでございますから、こちらの方に拘束をされておる点はございません。それとともに、十年、二十年先をこれで拘束をされておるということは少しもないのでございまして、つまりこの協定の存する限り、その短期間の間においてこの交換公文も効力を持つわけでありますから、さような先のことを言っておるわけじゃございませんが、たとい先のことを言っておったとしても、わが方において拘束されておる点はございません。こちらの希望する場合に向うの協力を得たい、こういうことでございますから、この重要な科学進歩に貢献しようという場合に、かような言質をとっておくのが非常に有意義であろう、こう考えた次第でございます。
  119. 秋山長造

    ○秋山長造君 この点は、外務大臣のおっしゃるように、さらっと読むと、この原存力の協力について希望し、期待するというような言葉が使ってあるのです。しかしこれは、あの日米安保条約にも同じような言葉が使ってあって、日本の自衛力漸増は単なる期待かと思っておったら、最近は総理大臣以下どなたも、安保条約によって自衛力漸増の義務を課せられておるといって、こっちから一方的に義務だ、義務だというように変ってくるのですから、これは必ずしも期待だとか希望だとかいうようなことをそのまま受け取るということは私はできないと思うのです。そう点は一つ、特に慎重に私はやってもらわなければいけないと思う。  次にお尋ねしたいことは、とにかく仮調印が済んだのですが、今後正式の調印はいつおやりになるのでありますか。また開くところによれば、政府は八月に開かれるジュネーブ会議の後まで延ばされる、こういうことでございますが、もしそれが事実ならば、ジュネーブ会議の情勢次第でまたこれを修正しようという含みも持っておられるのかどうか、その点をお尋ねしたい。
  120. 重光葵

    国務大臣(重光葵君) 今日予想せられる限り、この協定の本文をジュネーブ会議によって変えなければならぬということはないとわれわれは考えております。ただ、これは援助をお互にしようということなのでございますから、当然ジュネーブ会議においても同様な規定で差しつかえないと今予想しております。  それから正式調印の時期は、これは合意によって決定をするのでありまして。今はっきりと申し上げることはできませんけれども、日本側においては十分準備その他を考慮して、そうしてその時期を先方と打ち合せをして決定をいたしたい、こう考えております。
  121. 秋山長造

    ○秋山長造君 そういたしますと、必ずしもジュネーブ会議の後にどうこうということじゃない、ジュネーブ会議の様子次第でということではないのですか、本調印は。
  122. 重光葵

    国務大臣(重光葵君) この点は前にも御説明を申し上げた通りに、必ずしもそうでないと私は説明を申し上げております。
  123. 秋山長造

    ○秋山長造君 そこで、この日本の国内手続の問題ですが、一体国会におかけになるのは、本調印を終った後に国会にお諮りになるのか、それとも、現在の仮調印のままで国会にお諮りになって、その承認を受けた後にあらためて本調印を行うようになるのか、この点と、それからいつの国会に一体おかけになるおつもりであるか、この二点について……。
  124. 重光葵

    国務大臣(重光葵君) いずれにしても、なるべく早い機会に国会の御承認を得たいと考えております。その正式調印のなるべくは前にも国会の御承認を得たいと考えてまりますが、この点ははっきり申されないのでございます。手続としては、調印後に国会の御承認を得るということは、あるいは適当であるかもしれませんが、しかし、かような問題でありますから、できるだけ早く私は御承認を得る手続を経たいと考えております。それが今国会になりますか、ちょっとその点を、十分準備の上で御返答を申し上げたいと思います。
  125. 館哲二

    委員長館哲二君) 秋山君、持ち時間が切れておりますから、御注意を願います。
  126. 秋山長造

    ○秋山長造君 今の点ももう少しお聞きしたいのですけれども、時間がございませんから、次へ進みますが、項目だけ読み上げますから、一つ……。  ウランの貸与価格なり、あるいは原子炉を受け入れるかどうかというような問題、また何型をどれだけの条件で受け入れるかというような問題、こういう問題はいずれ今後細目協定でおきめになるのだろうと思うのですけれども、これらの問題と関連して、せんだって六月の十一日にペンシルヴァニア大学で行われたアイゼンハワー大統領の新提案、あの新提案の適用が日本の場合にもあるのではないかという点について、まずお尋ねしたい。  それから次には経審長官お尋ねしたいのですが、このようにして非常に短期間に、むしろわれわれから言わせれば、どうした理由か、非常に政府はあわてて、先を急いでこの協定をお結びになったのですけれども、しかし肝心かなめの国内の受け入れ体制というものが一体できておるのかどうか。現在内閣なり、通産省あるいは経審、さらに学術会議、財界等々、それぞれにこの原子力関係の機関があるようであります。今後一体この原子力政策日本が乗り出してゆくに当りまして、内閣に原子力委員会を作るという話もある。また総理府の外局として原子力庁を置くという話もある。また現在の経済審議庁を経済科学企画庁に切りかえて、そしてこれに担当させるというような話もある。一体確固たる政府基本方針というものがおありになるのかどうか。さらにそれと関連して、いずれにしても、これは本格的に日本が原子力平和利用の問題と取り組む以上は、どうしてもこれに関する基本的な立法というものが必要になるのではないかと思うのです。その名前は原子力法といいますか、何といいますか知らぬけれども、とにかくそういう特別な立法が必要になるのじゃないかと思うのです。そういう点について政府はどのようなお考えを持っておられるか。外務大臣と経審長官とお二人にお伺いしたいと思います。
  127. 重光葵

    国務大臣(重光葵君) 私に対する部分だけをお答えします。  今の大きな問題は、アメリカの大統領のペンシルヴァニアでの演説の問題でざざいますね。お話の通りに、原子材料の半額をアメリカが負担してもいいという趣旨の演説でございました。これは日本をむろん除外しておるわけではございません、演説の趣旨によりましても。そうでありますから、どういう意味を持つのか、また特に日本に対してはどういう意思であるのかというようなことを、今具体的に問い合せ中でございます。向うの意思をはっきり聞きたいと思っております。さようなわけで、この問題はまだその程度以上には発展はいたしておりません。  それから今の原子炉の問題等につきましては、他の説明員から御説明申し上げます。
  128. 高碕達之助

    国務大臣(高碕達之助君) 受け入れ体制の方につきましては、原子力庁にするとかいろいろな意見がございますが、さしあたり私は、国内のいろいろな機関をなるべく一括してしまって、それであまり大きな機構になっても、とても初めから大きな仕事になるわけではありません。ここ一年、二年は、機構だけ作ってしまっても、とてもそんなに大きな仕事になるわけではありませんが、小じんまりとしておるが、しかしこれをなるべく一つでまとめてゆきたいということで、今せっかく検討いたしております。  一方これの利用の方につきましては、できるだけ官民の合同の機関を作りまして、さしあたり民間の方を基礎といたしまして財団法人、それに対して政府は実行するために必要な援助を与えるというような方法で実行に移りたい、こう存じておりますが、一方、原子力法のごときは、現在におきましてはアメリカとイギリスだけが持っておりますが、これは主として原子力の平和用でなくて戦争用に使うというようなことから、原子力法を作っておるようであります。日本の方は全然それと違っております。もし原子力法を作れば、この原子力の利用によって衛生上のいろいろな問題が起るとか、そういうふうな点から考えて作ることにいたしたいと思っておりますが、ただいまのところ、別の立法をいたしますにつきましては、検討中であります。
  129. 館哲二

    委員長館哲二君) 最後の原子炉の型のことについては、お答えありませんか。
  130. 高碕達之助

    国務大臣(高碕達之助君) ただいまその問題は検討いたしておりますが、それにつきましては政府委員から、こういうもの、こういうものということについて、御説明いたします。
  131. 佐々木義武

    政府委員佐々木義武君) お答え申し上げます。濃縮ウランを利用しまして実験する様式には、ただいまのところでは三種類ばかりございまして、ウォーター・ボイラー、あるいはスイミング・プール、あるいはシカゴでやっておりますCPファイブというのですが、ただいまのところでは、ウォーター・ボイラー型の方が一番いいのじゃなかろうかというので、これは三種類の中で最も規模も小さくて安いものでございます。
  132. 秋山長造

    ○秋山長造君 価格はどれくらいするのですか。
  133. 佐々木義武

    政府委員佐々木義武君) 設備の方は、これもいろいろ種類がございますが、大体円にいたしまして二億足らず程度のものかと思います。それから濃縮ウランの方は燃料になるわけですが、向うではまだ価格は口にいたしておりませんけれども、そのごく一部にすぎないというふうにいっておりますので、大した金額ではなかろうかと思います。
  134. 秋山長造

    ○秋山長造君 これでやめますが、ちょっと今のに関連して……。
  135. 館哲二

    委員長館哲二君) 時間がよほどたっておりますから……。
  136. 秋山長造

    ○秋山長造君 今のお答えで、経費が二億円かかる。さらにウランの貸与価格が相当かかるわけですが、そうなると、これは来年度からやられるということなら来年の予算で解決がつくわけですけれども、案外早くおやりになるというようなことになれば、その予算の関係はどういうことになるのか、その点、大蔵大臣に一点だけお伺いして、私の質問をやめます。
  137. 一萬田尚登

    国務大臣(一萬田尚登君) さしあたり三十年度の予算に、前の繰り越しも一緒で、三億六千万円ばかりが用途に充てるものがあります。まあ今後どういうふうになるのか、具体的にはっきり計画もいたしておりませんから……。
  138. 秋山長造

    ○秋山長造君 今年のは、予算の使い道はきまっているのですよ。
  139. 一萬田尚登

    国務大臣(一萬田尚登君) ですから、それは調査とか人をやったとか、いろいろなことについて、今後とういうふうにきまるか、きまった上でないと……。どういうふうになっているか、計画がはっきりした上で、今後の予算についても考えなくちゃならないと。
  140. 秋山長造

    ○秋山長造君 補正予算をお組みになるのですか。
  141. 一萬田尚登

    国務大臣(一萬田尚登君) それはそのときに、まあ、どういうふうにするか考えてみたいと思っております。
  142. 館哲二

    委員長館哲二君) 木村禧八郎君。木村委員に伺いますが、外務大臣には御質疑はないのですか。
  143. 木村禧八郎

    木村禧八郎君 ありません。
  144. 館哲二

    委員長館哲二君) それでは、外務大臣はどうぞ……。
  145. 木村禧八郎

    木村禧八郎君 まず大蔵大臣にお伺いいたしたいのですが、大蔵大臣は今度のあの財政演説で、特に電源開発のことについ触れられまして——御承知のように、電源開発の政府出資は今度特にふえたわけです。それに関連して、財政投融資に関する資金の使い方ですね、また財政投融資ばかりでなく、一般的に資金の重点的使用、効率的使用ということを、非常に特に大蔵大臣は強調しているわけであります。ところで、実際問題として非常にたくさんの金が電源開発に回されておりますが、それが非常な乱費を生じておる。こういう事実を大蔵大臣は御存じでありますかどうか、この点お伺いしておきたい。
  146. 一萬田尚登

    国務大臣(一萬田尚登君) 電源開発会社の資金に限りませんが、この財政から出します金につきましては、これは税金であるか、あるいはまた民間資金を特に政府機関で集めた金でありますので、これか運用は特に効率的でありまた健金な運用でなくてはならぬことは申すまでもありません。従いまして、これにつきましては、ふだんから格段の注意を払っておるわけであります。また電源開発会社にいたしましても、私はきわめて効率的な運用を努めておると信用いたしておるのでありますが、しかしこの電源の開発も進むにつれまして、たとえば陥没地とかあるいは家屋等の補償等につきまして、とかくなかなか妥結が困難の結果、ともすると、どうも高いような感じのするものもあったようであまりす。従いまして、これらは自然電力の原価を高くするような結果にもなるのでありまして、今後こういう点については一そう注意を加えて参りたい。そのほかについては、私、今承知いたしておることはございません。
  147. 木村禧八郎

    木村禧八郎君 大蔵大臣は特に、電源開発促進法に基いて特殊会社としてできておる電源開発会社については、この特殊会社として発足したのはその理由はいろいろありますが、外資導入を便ならしめるとか、あるいは特殊会社に政府資金を入れる場合にはコストが安くなる、あるいは税金をかけない。そのほかに、政府の資金を投入すれば監督について、民間の会社に資金を入れるよりも特殊会社にしておいた方が監督が十分にできる、こういう点がやはり特殊会社にした一つの重要な理由になっていると思う。それで大蔵大臣はただいま、補償関係において多少高く補償をするような面もあるかもしれないが、大体において効率的に使用していると思う、こういうお話がありましたが、実際大蔵大臣はお調べになったことがあるのでありますか。今のような御答弁では済まされない事実がある。具体的事実があるのです。動かすことができないような事実がありまして、非常な乱費を生じております。しかもまた電源開発法あるいは補償関係の法律にも、明白に違反するような、非常なむだな金を使って、今まで、大蔵大臣はそのために電源のコストが高くなる、こういうことを言われましたが、そういう事実は現にあるのですよ。大蔵大臣はただ抽象的に御答弁になっていますが、十分にこれは一体、非常にたくさんの金なのでありますから、莫大な金でありますよ、電源開発関係、特に電源開発会社について出される金ですね、これはもう少し大蔵大臣、実態を大蔵大臣としてもこれは御調査される必要がある。大蔵省としてそういう資金の効率的、重点的使用について御調査になったことがございますか。
  148. 一萬田尚登

    国務大臣(一萬田尚登君) 大蔵省といたしましては、常に財政資金の運営には、事後においても、十分調査をいたしておるわけであります。なお、電源開発会社につきましては、これは大蔵省直接の監督というわけでもありませんで、直接の監督の省で十分監督をいたしておると私は考えております。
  149. 木村禧八郎

    木村禧八郎君 十分に監督しておられるという御言明がございましたが、それでは、私は具体的なモデル・ケースして、御母衣ダムの例につきまして、関係大臣にこれから御質問したいと思いますが、今大蔵大臣が十分間違いなく運用されておると思うと、そういう御言明があったのですが、果してそうなってるかどうか。これは今後のこともあるのです。特に電源開発には莫大な資金を使っておるのですから、それがこれから私御質問するような状態において使われておったらば、これは大問題だと思うのです。そこで、もしそういう事実が、非常な乱費されておることが具体的にはっきりされましたら、大蔵大臣として、いわゆる大蔵省としてはどういうふうにこの資金の効率的運用について措置をお講じになるか、この点についてお聞きしたい。
  150. 一萬田尚登

    国務大臣(一萬田尚登君) 今大蔵省といたしましては、その資金は効率的に使われておる、間違った方向でないということを信じておるのですが、これは、この電源開発会社は大蔵省の直接の監督下にはないのでありまして、大蔵省としては電源開発用の資金を割り振りしますが、直接に監督の省から御答弁を願った方が誤りがないと思います。
  151. 木村禧八郎

    木村禧八郎君 直接これから質問して参りますが、大蔵大臣としても今後、資金のボリュームが非常に大きいですし、十分その点御関心を持っていただきたいと思います。  次に法務大臣に伺いたいのすが、たとえば電源開発会社がある地点を開発するような場合、補償をもらうということだけを目的として、そこに家を建てた。今までなかったのを、そこへ……。そうして補償をもらった場合、そういうものは法律的にいって、これはどういうようになりますか。効なのか、無効なのか、その点まず伺いたい。
  152. 花村四郎

    国務大臣(花村四郎君) お答え申し上げます。その家を建てたということが、法律の権限に基いて建てられたのであるか、あるいはただ補償をもらうという意味にわいて何らの法律的権限なくして家を建てたのであるかという、その法律的原因がいかなる理由であるかということによって、おのずからその解釈も異なって参りまするが、もし法律の権限に基いて建てた家であるとするならば、これは補償をもらうべき権利があるのでありまするから、これはもらっても何ら問題のないところでありますけれども、もしそれが法律上の権限なくして、ただ補償をもらう意味において無謀にもその場所に家を建てたというような場合に、果して補償をもらえるかどうか。これは法律的に見ましてなかなか問題になろうと思いまするが、おそらくそういう不法占拠に基く場合においては、もらえぬという結論になるのが正当な見方ではあるまいかと、こう思っております。
  153. 木村禧八郎

    木村禧八郎君 電源開発に伴う水没その他による損失補償要綱第九条に、この要綱は「土地の形質の変更、工作物の新築、改築、増築若しくは大修繕又は財産の附加増置がもっぱら補償の増大のみを目的とする等権利等の設定及び移動がその濫用にわたるものと認められる場合に適用されるものと解してはならない」とありますから、今法務大臣の言われた通りだと思うのですが、もしそういう、明らかに補償の増大のみを目的として家を建てた場合に、補償を払ってしまった場合には、これはどうなるのですか。
  154. 花村四郎

    国務大臣(花村四郎君) ただいまのようなお話の場合においては、多分不当利得返還の請求が生ずることであろうと存じます。
  155. 木村禧八郎

    木村禧八郎君 まだ法務大臣にあとで一、二点お尋ねしたいことがあるのですが、会計検査院長見えておられますか。電源開発関係においてこれから、特に御母衣ダムについて私はモデル・ケースとして御質問したいのですが、非常な乱費を生じております。御母衣ダムばかりではないのであります。会計検査院は電源開発について、その資金の使途についてこれを検査されたことがございますかどうか、それから特に御母衣ダムについてこれを検査されたことがございますかどうか、その点お伺いいたします。
  156. 東谷傳次郎

    会計検査院長東谷傳次郎君) 会計検査院といたしましては、電源開発の各工事現場に参りまして検査いたしております。ただ、検査いたしておりますのは、電源開発ばかりでなしに、他のものも非常にたくさんございますので、重点的に検査をするということにいたしておりまして、重点的に電源開発の場合にはどういうふうにやっているかと申しますと、一応金額などで線を引きまして、検査を実行いたしております。本年におきましては糠平、胆沢、猿ケ石、あるいは佐久間、秋葉、あるいは西吉野というような所を、今までに検査をいたしております。今後田子倉、結局只見川方面を検査いたすことにいたしております。ただいまの御母衣でございまするが、今年はまだ検査をいたしておりませんが、本年中に検査をいたす予定にいたしております。  これまで検査したことがあるかということでございますが、二十八年の六月に一度検査をいたしまして、昨年は実地検査はいたしておりません。これは、先ほど申しましたような重点的な意味合いで、他の方面の検査を執行いたしましたために、昨年は御母衣に参っておりません。本年はこれから行くことにいたしております。
  157. 木村禧八郎

    木村禧八郎君 その検査の結果についてお伺いいたしたいのです。
  158. 東谷傳次郎

    会計検査院長東谷傳次郎君) 一昨年検査をいたしたのでありますが、これは御承知のように、関西電力が初め調査その他をいたしておりましたので、電源開発が発足いたしました、二十七年九月ですか、そのときに関西電力から引き継ぎを受けたのであります。従いまして、二十八年の実地検査の場合には、その支出関係がどういうふうになっておるかということを主として検査し、その他、そのときまでに支払いをしておる事項に対しまして検査をしたのでありますが、詳しいことは覚えておりませんが、今局長が来ておりますから、場合によれば詳しく局長からお話しいたしたいと思います。
  159. 大澤實

    説明員(大澤實君) 御母衣ダムの検査のことについてお話し申し上げます。ただいま院長から申しました通り、二十八年の六月でございます、このときに現地を検査いたしました。その後二十九年におきましては、本社におきまして御母衣ダムの経理関係を検査しましたが、現地は参っておりません。それで、二十八年の検査のときわれわれ感じました点は、一つには、この地点ば御承知通り、関西電力がすでに調査を初めておった所を、電源開発が引き継いだということになっておりますが、関西電力が約一億程度の金を投じておったのでありますが、それの経理が非常にはっきりしていない。それをそのまま引き継いでいるので、仮払金の引き継ぎあるいはその物品の引き継ぎというものがはっきりしていない。これをすみやかにはっきりさせるという点が一点、これはその後時間をかけて、相当はっきりしてきました。それからもう一つは、補償料に関連するのでありますが、たとえば建物を買収しまして移転補償料を払っておりますが、そのほかに、慰謝費、まあ慰める、慰謝費という名目で二十万円か三十万円の金を払っておる。あるいはそのほかさらに移転料という名目で十万円程度出しておる。これはすでに移転補償料を払っておれば重複した補償ではないかという点を一応疑問を持ちまして、検査したのでありますが、これは結局、何といいますか、普通の家屋の買収に払っております移転補償料は、家屋そのものを維持する費用であり、そのほか移転費というものは、家財その他、家畜、樹木等を運搬する費用である。慰謝費はやはり、土地の買収上やむを得ずしてそこに、何といいますか、ある意味においてプラス・アルファといいますか、そうした意味において加えたという会社側の回答に接しました。一般考えますと、移転補償料が多少高いのではないかと考えられますが、先祖伝来の土地を失って去る人たちに対する慰謝料としてはやむを得ないのではないかと考えまして、その点は了といたした次第であります。なお、そのほかこまかい点はありますが、大きな点の調査した結果はその程度であります。
  160. 木村禧八郎

    木村禧八郎君 これは非常に会計検査院としても怠慢ではないかと私は思うのです。この御母衣ダムについては各方面で非常に問題になりましたけれども、相当研究もされておるのです。富山大学の教授で小寺廉吉という人が、富山大学の経済学部論集第六号に、詳細にわたって客観的に御母衣ダムのこの不当支出のことについてこれを述べております。そうしてこういうふうに言っております。「この電源開発の補償請求権の増大もしくは獲得を目的として、水没地区において工作物を新築したりあるいは新たに移住した来たりすることの類例が珍しくない。庄川筋でも、過去の庄川問題においても、また昭和二十九年八月この冨山大学の教授が白川村の大字大牧の関西電力のダム建設地点を調査したときも、同様の事例があったけれども、今御母衣発電計画の場合のように、多数の外部からの移住者が入り込み、それに対して会社が金を交付した事例は、未曽有であろう」こう言っているんですよ。会計検査院は、この御母衣ダムの建設について内閣が発表しました、告示をいたしました昭和二十七年六月、そのときにはこの地点にあった家屋は何軒でありましたか、この点お答え願いたいと思います。何軒家屋がありましたか。
  161. 大澤實

    説明員(大澤實君) 当時ちょうど調査に参りました者がただいま出張しておりますので、はっきりわかりかねますが、百八戸だと思いましたのですが。百八戸分の移転補償料を払ったように記憶いたしております。
  162. 木村禧八郎

    木村禧八郎君 現在は何戸でございますか。
  163. 大澤實

    説明員(大澤實君) ただいままでに——、ただいままでと言いますのは、われわれ検査しました二十八年度及び二十九年の前半ぐらいにまで補償料を払っておりますのは、ただいまの百八戸でありまして、そのほかに、聞きますと、全体で三百何十戸に対する補償を要求してきているということが、話は聞いておりますのですが、支払いが終っておりますのは百八戸とたしか聞いております。
  164. 木村禧八郎

    木村禧八郎君 その支払いが終ったのを聞いているのではなくて、ダム建設の告示をしたときに家が何軒あって、現在何軒ある。この富山大学の小寺教授の調査によれば、当時二百六十世帯。ところが、最近では三百三十五戸あると会社が発表しておるんですよ。三百三十五戸。告示をしてからですね、実にこれは七十五戸ですか、ふえておるのです。そうしてこれは詳細にいろいろ書いてありますが、私は中央公論で小山イト子氏の「ダム・サイト」という小説を読みましたが、それどころじゃないんです。小山イト子氏の書いた「ダム・サイト」どころじゃございません。この御母衣ダムの問題は、補償料が少し高いとか安いとか、そういう問題ではなく、外部から移住者がたくさん来ているのです。二百六十戸が三百三十五戸になってしまっておるのです。そうしてこの人たちが移転しなかったらどうなりますか。会計検査院はそういう点御調査になっているか。  それから先ほど関西電力云々とありましたが、これまで大体御母衣ダムは総工費二百四十六億余万円で着工することになっております。二十七、八年は約十債使っております。二十九年度は四億三千九百万円、ざっとこれまで十五億使っておるのです。三十年度の予算は幾らでありますか、これもお伺いしたいのですが、この十五億の金を何に使ったか。これは調査費として使われたと言われておるのです、調査費として。先ほどのお話を伺いますと、これは補償料ではないのですな。いろいろな、払われたのは何か慰謝料とかなんとか、これは十五億の金は一体どういうふうに使ったか。聞くところによると、もうすでに使ってしまって、十五億使ってしまって、困っていろいろな問題が、あとでも御質問しますが、生じているようでありますが、この詳細な決算ですね、決算をお調べになりましたかどうか。そうしてお調べになったことがあったら、ここで御報告をしていただきたい。一体何に使ったか。まだ着工していないのでありますよ。全然着工していない。来年から着工になる。十五億の金をすでにもう全部使っちゃっている。そうして最初に二百六十戸であったものが三百三十五戸にふえて、しかもこういう事実が明らかにされています。「会社側は、借家並びにこの関係人も、米の配給停止証明さえあれば、同一の家族の何人でも、金二十万円ずつ促進協力移転準備費の内金としてその金を渡した。現在までに、最近までに一千五百方円ほど支出したと出先機関は言っている。」この金は事実どういう方面に使われたか、その一例として「同居中の親を別居のごとく装い、二男、三男の分家、また湛水区域外である新設地区の誘い入れのもとで」とあって「隣村、隣郡より古家の編入が始まり、わずかな日時内に九地区家屋八十四世帯が増加されている。」こういうことが言われておるわけです。で、そういうよそから補償を目的として転入したそういう人にもこの金が払われている。そういうことが、事実が明らかになってきています。会計検査院はこの十五億のこれまで支出した金の使途について、もっとこれは詳細に検査しなければならぬわけで、今の御答弁では怠慢と言わざるを得ない。すでに各方面で非常に問題になっており、こういう富山大学の学術的な調査論文にもはっきり出ておるのです。これではあまり怠慢ではないかと思うのです。  このように御母衣ダムの問題についても怠慢ですと、ほかの電源開発につきましてもそういう乱費が行われ、また今後もそういうことがたくさん行われるのじゃないかと思うのです。これは資金のボリュームが大きいだけに、東大な問題です。会計検査院はこういう点こそ、前に汚職事件、造船汚職の問題もありましたが、最近会計検査院は、われわれも決算について、防衛庁その他不当支出について、相当まじめに検査されるようになりまして、その御努力はわれわれ敬服しておりますし、一そう今後は会計検査院がしっかりしなければもう仕方がないのです。特に最近は財政の乱費がひどくなってきているのです。そういう意味で、会計検査院はもっとしっかりしなければいけないと思うのですよ。この十五億の使途、これを明らかにしていただきたいと思います。
  165. 大澤實

    説明員(大澤實君) 御母衣ダムで約十五億三千二百万円が二十九年までに支出されております。その内訳を大ざっぱにいいますと、まず土地、建物の買収及び補償の内払い金、これが七億八百万円程度と記憶いたします。それから現場のいろいろな工事のための入居のための仮設費、これが二億程度と記憶しております。それからダム・サイト決定のいろいろな調査費、測量調査、これが四億程度と記憶しております。その他内訳は全部はっきりいたしておりまして、その通り使っていたかどうかはこちらとしても検査いたしております。なお、いろいろただいま三百三十戸のことでお話を伺いまして、非常にわれわれ参考になりまして、まだこれはわれわれ検査のあとの問題かと思いますが、一つ十分に検査を徹底いたしまして、御期待に沿いたいと思っております。
  166. 木村禧八郎

    木村禧八郎君 ただいまの御説明では満足できません。もっと細目内容についてわれわれは検討しなければ、不当支出であったかどうかわかりません。従って今すぐに御答弁——資料がなければいたし方ございませんが、これは詳細に資料として検査した結果をお示し願いたいと思うのです。それによって不当支出、さっきの法務大臣が言われました違反となるような、また返還請求をしなければならぬような事例も出て来るのじゃないかと思います。従いまして、その点について詳細な資料をお出し願いたいと思うのですが、お出し願えるかどうか。
  167. 東谷傳次郎

    会計検査院長東谷傳次郎君) ただいまいろいろとお話を承わったのでありますが、局長説明をいたしましたように、補償料七億一千万円というのが出ておりまするが、これの内容は、これから実地検査に参りますので、詳細に検討いたし、それからそのほか調査費諸がかりで二億五千万円使っておりまするが、それらも内容を十二分に検討いたしたいと思います。その結果は御報告いたしたいと思います。
  168. 木村禧八郎

    木村禧八郎君 もう世間周知のごとく、御母衣ダムにおいては、賛成派の人と反対派の人が対立しまして、非常にもめておるわけです。そういう客観的な事実から見て、会社側としては、電源開発会社としては、なるべく賛成派の人を多くするために故意に金をさっき言いましたように二十万円。幽霊人口を作って、またわざわざ外から入れて、そうして二百六十戸を三百三十五戸にふやして、賛成派が多い、こういうような工作もしているやに聞いております。またそういうふうに私は小寺さんの論文を読んで実は気がついたのと、もう一つは投書があったのです。それで一兆円予算で耐乏生活をわれわれに要求しておりながら、御母衣ダムについてこういう事実がある、ということを詳細なる投書を私はもらったのです。全然知らない人です。そうしていろいろ調べたところが、この富山大学の教授が「水資源の開発に伴う補償問題」として三回にわたって非常な詳細な現地調査をやっておるのです。それが実に詳細に出ておりまして、私はこれを読んで驚いたのです。小山いと子氏の中央公論に書いたあの「ダム・サイト」どころではないのです。しかもそれが補償費が高いというのじゃなく、高い安いよりも、不当に多くなってきている。それからまた会社側のいろんな工作もあるようであります。私は初めて御母衣ダムの問題と取り組んだのでありまして、賛成派あるいは反対派、そういう見地には私は一応どちらにも属していない。特に財政面からこの問題を取り上げなければならぬ、そういうのでそうしてこの問題は私は調べて見たわけです。これについては、だんだん調べれば調べるほどこれは非常な疑惑が持たれて来ます。単なる補償料目当てにはいっただけでなく、電源開発会社をめぐってあるいは汚職とかあるいは疑獄とか、そういうものを疑わしめるようなものをわれわれは想像せざるを得ないのです。そういう意味で法務大臣にこの点ちょっと伺いたいのです。この電源開発に関して疑獄とか汚職というようなものについて、検察当局でこれを調べたことがあるかどうか、あるいはまたないといたしましても今後においてそういう点について調べられる御意思があるのかどうか、この点伺っておきたいのです。
  169. 花村四郎

    国務大臣(花村四郎君) ただいまお尋ねの汚職問題は、ただいま私初めてお聞きをするような次第でありまして、いまだかってその報告は受けておりません。が、しかし、そういう事実がありとしまするならば、それは法律に照らして厳重に捜査を進めたいと存じます。
  170. 木村禧八郎

    木村禧八郎君 なお、先ほどの会計検査院の御報告によりますと、これは関西電力から開発の権利を譲り受けたようです。今あそこの所長は得能という関西電力におられた人だそうであります。これは幾らで譲り受けたのか、この水利権というのは、これはまだ知事が認可していないやに聞いておりますが、譲り受けたというのは何を譲り受けたのか。それでそれは金額はいくらなのであるか、こういう点調べられたかどうか、伺っておきたい。
  171. 大澤實

    説明員(大澤實君) 関西電力から譲り受けたということはちょっと悪かったと思うのであります。関西電力が調査費を出しておった金を肩がわりした、あるいは材料を買っておったものを肩がわりしたというのでありまして、水利権はたしか電源開発になりましてから、県の方から電源開発が買ったといいますか、取得したことになったと記憶しております。なお詳細はいずれまた資料と同時に御提出いたします。
  172. 木村禧八郎

    木村禧八郎君 もう一つ参考のために会計検査院にぜひ聞いておいていただきたい。また、詳細は小寺教授の調査されたものを一ペん会計検査院、読んでいただきたいと思うのです、これを。あとで資料はお見せいたしますから。これにばこういうことが書いてあるのです。この御母衣ダムについては賛成派と反対派があって、それで反対派はもう非常に強力に反対しておって、この例はほかの例と違うというのですね。ほかの例は、補償をたくさんもらおうとかもらわないということで反対しているのですが、御母衣ダム反対の場合はそうじゃなくて、あそこは非常に豊沃な土地であって、どうしても郷土を離れたくないというので、死守同盟というものが結ばれておると、こう書いてある。その反対派を切りくずすために会社側はいろんな策をとっておる。そうしてこの教授が四人の人が現地に行って調べた。それでその四人が毎夜そこへ行って戸別訪問して筆記したところなんですが、賛成派の若山亀五郎という人が会長なんです。その人から聞いたことが書いてあるのですね。これを見ますと、これは不当な補償料を払っているのではないか、非常にはっきりして来るのであります。こう書いてあります。「すでに会社に売却を約束したのは約百戸である。家を売却してしまったのは七十戸だが、会社の帳面には百戸になっていると思う。問題の二十万円をもらったのは八十戸であるが、この金は補償金とは別で、見舞金といって、会社に協力して出て行くと約束した者に移転準備金として支払っているのである。」賛成派の会長の若山亀五郎氏の話なんです。「使い途は、東京、大阪その他の親類などをたずねて相談したり、あるいは移転先を探すための族費などに使用するということになっている八十戸分すなわち千六百万円は受け取りを取って会社に渡して、これで移転先を探しに出たりした者はない。もらい得だったと、外部から来て中野や海上の水没予定地に入った者も少くない。この人たちの家は借地借家である。東京の人は三カ月おって出て行ったが、その家は便所も台所もないバラックだった。出て行くとき会社は五十万円支払った。ちなみに関西電力がダムを建設する大牧では、以前は戸数二十軒だったが、今では四十軒ないし五十軒にふえている。白川村や同じ郡内その他郡上からも入っている。ダム建設の工事以後入った者は十五ないし二十軒である。一昨日大牧からこのようなものの代表五人がこの同盟会にやって来て、大牧に最近外から入り込んで家屋を新築した者たちには会社は一軒当り十万円は支払うが、家族に対しては全然払わぬと言っておる、何かよい方法があったら教えてくれと言って泣きついて来た。その人たちの言い分は自分たちは住む場所を求めてここへ移転して来たのだ。それなのにわずかの金で出て行ってしまうのは人権侵害だと言うのである。同盟会の書記は大牧に出かけて、行って三十戸の人を集めて、十万円ぐらいしかもらえなくなってしまった、そうして湛水のときにがんばってもだめだ。会社に対しては少しでも余計くれるよう今頭を下げにやあだめだと泣き落し戦術を教えてやった。」なおこのほかに長くなりますから省略しますが、そこの賛成派の幹部に対して非常に多額の金を払っています。役員約三十人に対して役員は五千万円の請求をしております。そうしてこれに対して結局千五百万円払っておるというようなことが書いてあるのです。こういう事実から見まして、これは非常に不当な、明らかに賛成派の人も言ったことを、これはもし不審に思われますなら、小寺教授を証人にでもして、小寺教授からも聞いていただいてもいいと思うのですが、こういう状態になっておるのですよ。ですからよほどこれはしっかり御調査願いませんと、私特に今後はこんなふうな補償だったら電源開発には非常にたくさんの金がかかるのですから、大へんなことになる。それである人はこう言っている。これは名前は特に私は申しません。現地に行った人は現地の人と会って、酒を飲んだ席で実はこれは関西電力にだまされてしまったのだと、実は関西電力がここの地点は非常にいいと言いましたが、あとで高碕長官お尋ねしますが、調査した結果非常な大きな断層があることがわかったのです。断層がある。これは一時中止することになったやに聞いております。非常に大きな断層があって非常に危険である。それで関西電力は非常にこれはいいと思ってそれで開発会社が引き受けたところが、あとで調査したところが、大断層があって、今までのグラヴィティ・ダムという式ではだめである。それでロックフイルド式に変えなければならないというので、非常に金がかかるのです。関西電力にだまされた、そういうことを開発会社の相当の地位の人が漏らしておられるのです。そういう非常な不明朗なものが関西電力とあるいは開発会社との間にわれわれは感知できるのです。そういう点についても十分御調査願いたいと同時に、この白川亀五郎氏の言うような事実があった場合、その補償金はこれはどうなるのですか。会計検査院としてはこれがはっきり事実としてわかった場合、どういうふうにこれは処置されるのでありますか。
  173. 東谷傳次郎

    会計検査院長東谷傳次郎君) ただいまいろいろとお示しになりましたが、不当であるということが私どもの方の検査の結果断定ができるようになりますと、私どもの方はそれを返還しろということは言う立場にありませんので、出すべからざるものを出しておるという断定を下して監督官庁というか、政府の方に移牒する。結局会計検査院が毎年検査報告というものを出しますので、政府は決算とともに国会に提出するという運びになるのであります。積極的に会計検査院はそれを返還せしめるという権能は持っておらんと思います。   〔委員長退席、理事池田宇右衞門君着席〕
  174. 木村禧八郎

    木村禧八郎君 それはどなたでもいいのですから、答弁していただきたいのです。そういう支出がはっきりした場合、これはさっき申し上げました電源開発に伴う水没その他による損失補償要綱でも禁じてあると思うのです。はっきりこれに該当している場合、これは通産省はやはり監督官庁でありますが、これは通産大臣はこういう場合にどう処置されるのですか。
  175. 石橋湛山

    国務大臣(石橋湛山君) 補償問題についていろいろうわさは聞いておりますが、今日のあなたの質問で非常に詳しく承わりました。これをどう処理するかということは私ども法律のことはわからないのです。通産省としてはむろん厳重にできるだけの処置をとらなければならぬと思いますが、実際にどういう処置がとられるかということについては、今私にはちょっと正確にお答えしかねます。が、ただできるだけの処置をとる、こういうことだけを申し上げます。
  176. 木村禧八郎

    木村禧八郎君 それはまた私も法律をよくわかりませんからお伺いしておるのですが、あとで専門の方どなたか御答弁していただきたいのです。それは事務当局でもけっこうでありますから、どうなるのかその点明らかにしていただきたい。  それから高碕長官に伺いたいのですが、前に総裁をしておられるころ、この告示はなされたと思うのです。それで現在の人が相当反対があったように、賛成と反対とあってしばしば非常に陳情しておるようであります。ところが一時その大断層があるので、ちょうど高碕長官が総裁をやっておられるころ、これは中止になったのじゃないか。その間の経緯、これを詳細に承わりたいと思うのです。どうもわれわれはもし今のグラヴィティ・ダムをよしてロックフイルドにしても世界最大だそうですね。百三十メートルのロックフイルド・ダムというのは世界一だそうであります。もし断層がそれで十分にカバーできなかったらこれは大問題だと思うのです。もしそういう切れたような場合非常に大きな問題になりますよ。ですからわれわれ技術的にもこれは明らかに証明していただきたいのです。最初の関西電力から譲り受けたあとでよく調査してみたら大断層があった。それがなぜこの断層でいけなくなって、そうしてロックフイルド式でやればどうしてこの断層をそれでカバーできるのか、技術的に明らかに。それで高碕長官が総裁をされているころどうして一事中止されたが、一時中止したのをまたどうしてこれを着工するような段取りになってきたのか、それらの経緯を一つ承わりたいと思います。
  177. 高碕達之助

    国務大臣(高碕達之助君) お答え申し上げます。これは昭和二十七年の九月ですか、電源開発会社が発足いたしますと同時に、着工するところはどこを着工するか、こういう問題になりました。そのときの電源開発審議会におきまして、まず御母衣と佐久間と二カ所やれと、こういう命令だったのでございますが、御母衣の方は関西電力が簡単に応じてくれたわけなんですけれども、佐久間の方はなかなか、この調査をしておりました中部電力が簡単にイエスと言わないので、これには二月、三月この交渉にかかったのでありまして、従いまして、電源開発会社が最初の発足として一番先に御母衣をやると、こういうことにきめまして、逐次この調査に入ると同時に、この補償問題等も急いで解決すると、こういうことに相なったのであります。ところがだんだん調査をいたしてみますというと、なかなか思ったよりも地質が悪い、断層が至る所にある。これじゃいけないというので、この場所を幾らかダム・サイトをかえようじゃないかということで、二回、三回ダム・サイトをかえたのであります。かえたけれども、なかなかいい所に到達しない。しからばこの現状によってダムが建設できるかどうかということのために、いろいいろアメリカのサベイジという一番有名なるその方の専門家も呼んで参りましたし、日本の地質学者も呼んであの手この手でいろいろ研究しましたが、一年たち、研究が一年半たちして、これはとうていできないと、これはできても非常な費用がかかると、こんなに私は感じまして、それで、それまでは今お話のごとく反対派は主婦同盟をもってきてやっておると、女がはち巻をしてやってくると、もう死んでも動かないと、いろいろ事情を聞きますというと、これはもっともな点がありまして、なかなかあの付近といたしますれば、長い長い歴史を持っておる土地でありまして、それが水没するということは、どうも非常に気の毒だと、私もこれは非常に同情しておったのであります。私もできるだけ同情的にこの補償を解決してくれということは当事者に申しておきましたが、この支出のことにつきましては、これは非常に厳重にやらなけりゃならぬと、この点は私は特に会計検査院にお願いいたしまして、われわれは手が少いのだから、会計検査院で十分やってもらいたいということを特にお願いしておったようなわけなんでありまして、十分この検査はいたしますが、できるだけ私は土地の人たちによくやってくれということは当事者に申しているわけであります。私がはなはだ忙しかったために、実は現場にも一ぺんも行っていなかったのでありますが、やってやれないことはない、やれば非常な費用がかかる、こういう結論でありましたから、それで私は昨年の一月でしたか、昨年の一月だったと思います、二十九年の一月にこれは一応中止しろと、それで、ただし研究だけはやっていてよろしい、こういうことで、もう補償の解決、補償に対する金は支払うことまかりならんと、こういうことで打ち切ってしまって、そして研究だけやっておったのであります。その後いろいろ検討いたしました結果、技術的に相当できるというような最近では結論が出たようでありますが、その状況はまだ私よく聞いておりません。最近にこれはやれるだろう、こういうふうな結論が出ておるということだけは聞いておりますが……。
  178. 木村禧八郎

    木村禧八郎君 通産大臣にこれは資料として要求いたしたいのですが、ただいま高碕長官からもお話がありましたように、たくさん断層があってですね、一時非常に調査の結果困難な事情がありまして、そこで中止までも一時考えられておるんです。その後アメリカの技術家の調査ではできるのじゃないかというので、しかしそれには非常に金がかかると、そこでその技術面から見まして、最近通産省はいよいよ来年から着工するということを発表されました。私はしろうとですからわかりませんが、今まであんなに断層があって困難であるというのが、どうしてこのロックフィルド式によると非常に金がかかるかもしれないが、一応いいのかどうか、あとで危険はないのかどうか、あとで技術的に一つ資料として証明したものを出していただきたい。どうしてこういう結論になったか、これは技術的な説明を出していただくのと、それからもう一つはその電源開発促進法の三条の第四項によりますと、「前項の規定により意見の申出があったときは、国の行政機関の長は、これをしんしゃくして必要な措置を講じなければならない。」こうなっております。それで現地からも賛成、反対がありまして、反対派の意見をこの富山大学教授の資料を私は新聞をひっくり返して見ましたが、たびたび陳情しているようです。それに対して三条四項によって何か措置されたことがあるのかどうか、それで反対派の方では場所を変えてくれという主張をしているようであります。反対派の方は、この富山大学教授のを見ましたが、二地点を指定している。こういう所に移してもらいたい、そうすれば被害が少ない、こう主張されているようであります。従ってそれに対して新聞なんかを見ますと、何ら考慮されたことがないようであります。全然考慮しないで、どんどん一方的にやっているような感じを受けるのであります。それに対して何か措置されたかどうか、その点を伺いたい。  もう一つ法務大臣に、最近これは朝日新聞に出ておりましたが、人権問題として法務省が調査に行った。ところが朝日新聞の結果を見ると、何ら人権を侵したような事実はない、そこで私もいろいろ調べてみたのであります。ところが実は人権擁護局の人がやって来て、何のために行ったかと言えば、今までの反対派の人を押えつけて、賛成派の人に勇気をつけるために、人権擁護局が人権擁護の名によってこれを調査しに行ったやに、そういうようなふうにわれわれは聞いたのです。そうしますと、人権擁護局が人権を侵害しに行っている。これは重大問題であると思います。ところが何ら朝日新聞によれば、そういう事実はなかったということになっている。地方の農民などは、人権擁護局からそういう調査に行けばこれは非常におびえます。そういうこと自体もこれは非常に圧迫になると思うんです。で、私はもっと慎重に法務局はこれは措置しなければ、これは第三者からみて一応人権擁護であるというふうに見えるけれども、内容は賛成派を擁護し、反対派を圧迫する。で、高碕長官もよく御存じだと思いますが、あそこの反対派の人というのはよそと違いますね、ちょっと例がないのです。ほんとうに純真ですよ。ほんとうに郷土を守りたい、あそこは非常に豊饒な所です。私は現地へ行ってみませんけれども、話に聞きますと、実にいい所だそうです。長い間かかってあそこを開拓した。そういう賛成派、反対派入り乱れて対立しているところに、法務省が人権擁護の名によってそういう調査をするということは、これは私は非常に軽率ではないかと思います。その結果として、その会社側の何か手先となって法務省が動いたようなそういう感じを受けるのです。ほかの新聞もいろいろ書いています。会社側の新聞はそれを擁護するように。しかしわれわれはまあどういう新聞が一番冷静であるかと思って、まあ朝日新聞は大新聞でありますから、信用できるものとしてこれを読んだのです。ところが朝日新聞はそういう事実は立証できない、こういうことをはっきり朝日新聞は六月の十六日書いております。ずっと新聞をたどってみますと、朝日新聞が大体厳正中立に書いているようであります。ほかにいろいろな新聞がありまして、会社側を宣伝をしているというふうに見受けられるような記事が非常にたくさんあります。こういう点は二百六十戸のうちの人の実際重大なる人権に関する問題でありますから、そんな軽卒に私は動くべきではない。何のために法務省は、人権擁護局はあそこへおいでになったか。それでどこの人権擁護局のどういう人が行って、そうしてどういう結果になったか、この点もお伺いしたい。
  179. 花村四郎

    国務大臣(花村四郎君) お答えいたします。木村君のおっしゃられた事実と少し違っておるように思うのでありまするが、私の手元に届いた報告によりますると、御母衣ダム建設問題につきまして、地元荘川村の大字海上部落及び中野部落でダム建設の賛成派と反対派が相対立いたしまして、そうして村八分にするとかあるいは業務上の妨害をするとか、もしくはその他の圧迫等を加えて人権侵害の事実が行われておるという報に接しまして、果してさような事実ありやいなやを調査いたすために、岐阜地方法務局と名古屋地方法務局において加害者側及び被害者側の双方に対して調査を進めたのでございます。その結果といたしまして、調査の概要を申し上げますると、御母衣ダム築造によって地元の荘川村及び白川村におきましては住家約二百七十余戸田畑が約一千四百町歩余が水没いたしまするので、住民は死活問題としてこれに反対いたしまして、昭和二十七年六月、ダム反対期成同盟会を結成いたしまして、先ほど申されましたような死守会という名称をつけまして、そうして強力に反対いたしたのでございます。ところが一部の住民は、電源開発事業は国家再建のために必要であるといたしまして、そうして開発会社の買収に応じまして、土地家屋を提供して補償をもらったのであります。そのためにこの反対派の方では、祖先伝来の村をこれは売るものであるということでいろいろな圧迫を加え、子供の間におきましても賛成派の子供を村八分するというような事態が起りまして、賛成、反対をめぐって、そうして絶交をこれ事とするがごとき雰囲気を起しまして、非常に村のうちがもめたのでございます。もとより、ダム建設に対する賛成、反対等は住民の自由なる活動ではございまするけれども、しかしそれがために、その手段として村八分であるとかあるいは業務上の圧迫をするとかいうようなことは、これは人権擁護の見地から見まして好ましいことではないという観点に立って、法務局ではこれが調査を進めたのであります。しこうして、賛成派、反対派の代表者と懇談を数度において重ねました結果、結局この話がつきまして、そうして両派で円満に解決がついて、自後人権じゅうりん等の問題は解消したという報告が来ておるような次第でありまするが、もし木村委員の言われるような事実ありとするならば、さらに再調査をいたしまして、適当なる方途を講じたいと存じます。
  180. 池田宇右衞門

    ○理事(池田宇右衞門君) 木村さんに申し上げます。あなたはもう七分経過していますが、あなたのは重要問題ですから、あなただけの発言を許しておきましたが……。
  181. 木村禧八郎

    木村禧八郎君 もうこれで終りますから、最後に……。
  182. 池田宇右衞門

    ○理事(池田宇右衞門君) それでは特別に。
  183. 木村禧八郎

    木村禧八郎君 それではもう時間がございませんから——。私も現地を調査したわけではありません。資料に基いてしたのでありますから、その点法務大臣はもう一度これは公正に十分御調査願いたい。先ほど情報に接したと言われたのは、どういうところからの情報か、会社側からの情報か。これは御承知のように賛成、反対があるのですから、デリケートなのです。そういうところにうっかり政府が、法務局なんかが行くと、これはもうそうでなくても会社側の手先ではないか、こういうように思われますから、そういう点は十分、非常にデリケートであるだけに、慎重を期せられたい。  それから先ほどの通産大臣ですね、御答弁わずらわしたいと思うのですが、質問に対して。技術的な問題ですね、技術的な報告をいただきたいことと、もう一つは、現地に反対派人がいろいろあった場合、反対があった場合、電源開発促進法三条四項ですか、あれによって何か適当な措置を講じなければならない、措置を一体講じたいことがあるかないか、この点ですね。  それから、これで質問する機会がございませんから最後に一点。実は結論として、どうも世界銀行から一千万ドルですか、借款ということがこれは前提になっている。一千万ドルの借款を受ける。そこでそのために技術的に断層があって、非常に無理なんであるけれども、それを無理を押して強行するのではないかという疑いが、われわれしろうとには一つ浮ぶことと、もう一つは、これまで調査費として十五億円使ってしまった、実はこれも調査しているやに聞いております。そこでそういうものを使ってしまった関係上、技術的に相当断層があって問題なんだけれども、強行せざるを得ないような状態になってきているのではないか。それから、それだけ金をつぎ込んだから、やらないわけにはいかなくなってきたと、これはわれわれしろうとの推測でありますからわかりませんが、もしそうとすればこれは重大な問題であります。ですから技術的に十分この調査をされまして、そういう行きがかりにとらわれないでもらいたい。十五億円使ってしまったので、行きがかりでしようがない、あるいは一千万ドル世界銀行から借りるために何とか博士の調査を依頼したとか、行きがかりにとらわれて、これを技術的に困難だけれども遂行せざるを得ない、またロックフイルド式にすれば、先ほど長官が言われるように金がかるかのでしょう。当初予算よりももっと金がかかるのじゃないですか。そういう点も出てきますので、どうもこの点については私いろいろな疑義がわいてくるのです。また現地においては、名前は申しませんが、あるブローカーがおって、そうしてこの電源開発の内閣で告示されたその地点において山林を買い占める、相当な何億という金をもって買い占めるブローカーがいるやにも聞いております。電源開発をめぐって非常に不明朗な国費が乱費されているようなわれわれは感じを受けるのであります。ボリュームが大きいだけに、非常に重大な問題ですし、これを技術的にも欠陥があるのに無理にやらせるということになっては、将来それが決壊なんかするような場合に、これは大問題になると思うのです。そういう点で十分これは慎重にも慎重を重ねて御調査願いたいと思うわけです。それでいろいろまだ問題がありますけれども、持ち時間がございませんから、また他の機会に資料をいただきましてから御質問申し上げたいと思うのです。先ほど質問しました点について御答弁を願いたいと思います。
  184. 石橋湛山

    国務大臣(石橋湛山君) 私も技術上のことは全然わかりませんが、現在受けている報告では、その断層問題は調査の結果、セメントを流し込んで解決がでまるというこれは日本側技術者の結論のようであります。でありますが、なおそれでもロックフィルド式ダムですかを作るには、日本の現在の技術ではだめだし、機械も要りますので、その関係から世界銀行へ若干の借款を申し込んでいることも事実であります。しかしこれは世界銀行でもすぐにできない、それをオーケーをしておりません。なお私どもとしては、せっかくやったものですから、ダムを作って発電はしたいのであります。だが無理をするつもりはありませんから、なお今後どんなことをしても一カ年の調査を要します。さらに多分アメリカから新しく技術者を招いて、十分検査をした上にやるならやるということにしたいと思います。たださっきから問題の補償の問題が、反対派、賛成派が入り乱れておって、それで賛成派の中で今まで何らの金も受け取らずに残っておって、それみろと言われておるような連中がありまして、その連中はまたいろいろ陳情してくるのであります。それでありますから、今年のたしか五月の二十日ごろに、とにかく技術的にはあのダムは建設ができる見込みだ、従って補償問題も相談に応ずるという意味の声明は現地で出しました。ですから現在はやるつもりではおります。しかしお話しのようになお調査を十分にしてからやりたいと考えております。
  185. 木村禧八郎

    木村禧八郎君 措置は。三条四項というやつですね。
  186. 石橋湛山

    国務大臣(石橋湛山君) 今までそういう特別の措置はしたことないです。
  187. 木村禧八郎

    木村禧八郎君 したことないのですか。それでは違反じゃありませんか。電源開発の三条四項に違反しているのではありませんか。何もしたことがないのですか。これは重大問題ですよ。たれか御答弁願います。
  188. 池田宇右衞門

    ○理事(池田宇右衞門君) 答弁がありませんが……。
  189. 木村禧八郎

    木村禧八郎君 措置したことはないということを確認いたしまして、質問終ります。今の私の質問は反対派の人の立場に立ってしたのではないのです。御承知のように小寺教授の調査に基いて、この立論を進めたのでありまして、私は偏した立場でやっているつもりはないのです。たまたま教授が長い間かかって詳細に調査したものがあるのです。お見せしてもよろしゅうございます。また私も現地調査をしてみたいと思います。その結果によって質問したいと思うのです。時間が超過しましたからこれでやめます。どうも……。
  190. 小沢久太郎

    小沢久太郎君 私は、まず住宅問題について建設大臣に御質問いたしたいと思います。  このたび鳩山内閣が四十二万戸建設計画を打ち出したのでございますけれども、その第一の特徴といたしましては、公営住宅の質を極度に落したということでございます。たとえて申しますと、第一種の住宅について言いますと、一戸当り十二坪の耐火住宅がございますが、それは二十九年度におきましては一万五千百七十二戸を作っておるのでございます。ところが三十年度になりましては、それを三千九百戸に減少しております。それから最小の住宅の坪数でございますが、二十九年度におきましては十坪々最小としております。それが三十年度には八坪を最小とするというふうに落してあるわけであります。従いまして一戸当り八坪の簡易耐火住宅ですか、それは二十九年度には一戸もなかったのが、三十年度には五千百戸というふうにしてあるのでございます。それから又最小住宅をずっと二十九年度よりも小さくしてあるということでございます。そういうふうに非常に小さい住宅を多くしてある。それからまた最小住宅をずっと二十九年度よりも小さくしてあるということでございます。それから第二種の住宅につきましてもやはり同じことが言えるのでございまして、最小住宅は二十九年度においては八坪でございました。それが三十年度におきましては六坪にしておるのでございます。で一戸当り六坪の簡易耐火アパートというものが従いまして二十九年度には二戸もなかったのが、三十年度には八千三百戸を作っておるというようなことでございます。このように公営住宅の質を著しく落してあるわけでございまして、公営住宅全体として計画をみますと、二十九年度には四万八千六百七十六戸作ってあるのでございまして、それに対しましては三十年度は五万戸にしてあります。しかしそういうふうに数はふえておりますが、予算は二十九年度の百十三億が三十年度の百二億というふうに減じてあります。戦後次第に住宅の質を向上してきたのでありまして、三十年度になりまして、このように質の低下をきたしたということは住宅政策の逆行ではないかということと、それからこれがためにスラム化するおそれがありはせんかというふうに私どもは思うのであります。そこでまず大臣に伺いたいことは、公営住宅の質を落したのはどういうわけであるかということを一つ質問いたします。
  191. 竹山祐太郎

    国務大臣竹山祐太郎君) ただいま公営住宅の質を落したという御質問に対しましては、今度の住宅対策は公営住宅と公庫の建前とこれに新たにもう一つ公団住宅の三本建にいたした点をあわせて御検討をいただきたいと思っておるわけでありまして、お話しのように公営住宅だけにつきますと、大きないわゆる一番進歩した中層アパートというものの戸数が目立って減っておりますことはお説の通りでありますが、実はその一番金のかかる中層耐火のアパートを今回の公団の建前、公団の事業に移しました点がわれわれの構想の一つの特長でありまして、公団の二万戸のうち一万戸はまさに御指摘の公営住宅の中において発達をして参りました中層アパートを移したものと御理解をいただけば間違いないのでありますが、その理由はどこにあるかと言いますと、われわれは公営住宅というものを住宅政策の基盤にして、低家賃の住宅をできるだけまず多く供給することを重視いたしておる点は従来といささかも変っておりませんが、それを遂行いたしてゆく場合におきまして考えなきゃならぬ点は、この公営住宅には御承知通り半額の地方負担、主として県及び市町村の負担を伴うわけでありまして、今年われわれの計画におきましても約百億に近い地方負担を伴うわけでありますから、これに対する起債その他の資金的裏打ちをいたすということはもちろんいたしておりますが、現在の地方財政の御承知のような事態から言いますと、これにこれ以上大きな負担をかけるということは私は実情に合わないと考えるのが一つ。また大きな進歩してきた中層アパートはこれをもっと拡大をいたしたいということが国民の要請でもあるし、われわれも考えて参りますが、それには公営の制度でこれを拡大していくということには非常な無理が伴うと思いまするので、これを公団に引き取りまして、思い切って中層アパートをもっぱら中心とする公団の住宅建設を進めて参ることにいたしたわけであります。従ってそういう一番金のかかる中層アパートを公営の制度から外しまして、その部分を全部、小さいとおっしゃいますけれども、まず多く低家賃の住宅をこれに充てるという建前をとった次第でありまして、その結果あるいは質が低下したというふうに御理解いただくことはやむを得ないかもしれませんが、私たちはさように考えておりません。また非常に小さい家を作ったじゃないかというお話しもありますが、たしかに小さいものもありますが、これは第二種住宅の一番低家賃の家を供給しなきゃならぬうちにおきまして、従来の八坪の木造の費用と大体同じ費用で耐火のアパートを作りますと、どうしてもこのくらいになります。その結果家賃は従来の千円程度のものが八百円程度低下をいたすわけでありまして、私たちは全体を通じていわゆる耐火率を約倍にするということを結果的にねらいましたのと、できるだけ安い家賃の家を公営住宅において数多く供給しようという意図をもって計画をいたしましたために、さような結果に相なっておるわけでありまして、意識的に公営住宅の政策を後退させる考えは毛頭ありません。ただこの際お断り申し上げておく点は、小沢委員御指摘のように、この公営のこまかい内訳につきましては、いろいろ国会の御審議を経ました過程におきまして、衆議院においてもあまり小さい家を多くしないようにしろという御注意を受けておりますので、これは予算でありますから、この全体の予算の範囲内におきまして、地方の実情に適合をするように、また今後参議院の御意見等も伺いまして、実施の面においてはただいま御指摘のような点はできるだけ努めて避けて参りたいと考えております。
  192. 小沢久太郎

    小沢久太郎君 大臣は先ほど中層四階建アパートを公団の方へ持っていったと仰せられましたが、公団の方が実は家賃が高いのであります。で勤労者の住宅としてはやはり私は中心が公営住宅でなければならぬと思います。そういう意味におきまして、値段が高ければ幾らでもできます。しかし公営住宅の安い家賃で、そうして勤労者にいい家を提供するということが私は住宅政策の根本じゃないかと思うのでございます。それから先ほどの小さくしてなるべく安い家賃で提供するということは、これはけっこうでございますが、それにはやはり私は限度があると思います。幾らでも小さければ小さいほど安くなります。しかし私は日常生活してスラム化しないように、そうして安易な生活をしてもらうためにはやはりある限度がある。やはりその限度は大体八坪じゃないか、六坪は小さ過ぎると思うのであります。六坪は大体一間しかできないというふうに思うのでありまして、これは大臣も大体同じお考えだと思います。大体六坪はどういうふうな人を対象に御計画になったか、そういうことを一つ大臣にお伺いしたいと思います。
  193. 竹山祐太郎

    国務大臣竹山祐太郎君) これは別に特定の階層をねらったというわけではありませんけれども、結果的に申しますと、いわゆる母子住宅であるとか、一番生活に困窮をしておられる階層の要請が強いものでありますから、しかもできるだけ耐火のものを作りたいということの結果かようになっておりますが、決して特定のものを考えてはおりません。
  194. 小沢久太郎

    小沢久太郎君 この六坪にいたしますと、結局過密状態になる、結局スラム化してくるという心配があると思うのでございますが、大臣のお考えいかがでございますか。
  195. 竹山祐太郎

    国務大臣竹山祐太郎君) 坪数からいえば小さいことは事実でありますが、今申しましたように未亡人の住宅でありますとか、特別の家族状態の人たち等をある程度集団的に収容をするという場合におきましては、これでも安い家賃ならば私はやれるんじゃないかということと、それから従来の木造住宅よりも一番研究をいたしました進歩したつもりの、いわゆる耐火アパートでありまして、小さいとはいいながら生活の様式からいえば従来よりも数等これは進歩したものでありますから、そうただ過密住宅を作ったということにはならぬと考えております。
  196. 小沢久太郎

    小沢久太郎君 先ほど大臣が、この六坪のものは予算であって、この後に研究してやると仰せられたのでございますが、たとえば研究した結果八坪にするか、七坪にするかということは、弾力性があるというふうに解釈してよろしゅうございますか。
  197. 竹山祐太郎

    国務大臣竹山祐太郎君) これは大体八坪の木造の家と今回の六坪耐火の家が約二十四、五万円程度に一戸の予算を考えておりまして、むしろ木造の方が高いくらいでありますが、これは大した差はありませんから、この間には彼此計画的にどちらへ持っていっても私はその希望に応ずるようにいたして差しつかえなかろうと思っておりますので、決して計画にこだわった考えは持っておりません。
  198. 田中啓一

    田中啓一君 関連して——。ただいま伺っておりますると、衆議院の方でも六坪の住宅というものはあまりにも小さ過ぎるじゃないかという議論もあって、必ずしも六坪に拘泥をしないで、予算上はそういう実は計算をしておるけれども、実情に合ったように実行については考慮をしようということのようにお言葉は受け取れるのでございまして、大変弾力性のある——計画というのはたれが立てましても、一ぺんは単価を見積ってさっとやらなきゃならぬものでありますから、それと実際というものとは違っても、十分実情に沿うように考慮しつつ実行を進めているというお話しで、けっこうに存ずるのでございますが、そうしますると、まあ非常に四十二万戸ということを大きくおっしゃいまして、これはまあ画期的な住宅政策だ、こんなふうに世間は受け取ってきたのでございますが、しかし予算額はもうここへきまって動かないのでございますから、大きく建てればそれだけ戸数は減るもののようにも思うのでございますが、そういった場合は何も四十二万戸きちっと一戸も違わないように建てなければいかぬものでもない、多少数は減っても実際に合うように実行面では考慮したい、かようなおつもりのように拝承いたしましたが、さように了解して差しつかえございませんでしょうか。
  199. 竹山祐太郎

    国務大臣竹山祐太郎君) もちろん計画でありますから、実際に少しずつ変るわけでありますが、今私が考えております点は、先ほども申し上げましたように従来やっておりました八坪の木造と今回の六坪の耐火構造のものとの間は大体一戸の予算がほぼ同じような額でありますから、それを希望に応じて木造にするか耐火にするかということを考えて参りたい。従ってこれは戸数には変更はありません。
  200. 小沢久太郎

    小沢久太郎君 終審長官に伺いたいのですが、経審長官は総合企画官庁の長として日本の住宅政策の点で、つまり母子寮とか何とかでしたら六坪でもこれはいいと思います。たとえばそれは共同施設をとりますから相当部屋にとれますが、これは単独の一戸になれば私は六坪じゃ小さいというふうに思うのでございますが、経審長官の御意見を承わりたいと思います。
  201. 高碕達之助

    国務大臣(高碕達之助君) いろいろ大きさについては御意見がございますようでございますが、  〔理事池田宇右衞門君退席、委員長着席〕  大体これを統計的に、また科学的に建設省の方がやっておるようでありますから、建設省の意見に私も賛成する次第であります。
  202. 小沢久太郎

    小沢久太郎君 建設大臣にお伺いいたしたいのでございますが、この四十二万戸計画の特徴といたしまして、金融公庫の融資率を引き下げたということでございます。で、去年は八割または八割五分でございましたが、今回七割または七割五分に下げるというわけでございまして、これまでも頭金がなくて利用できなかった人があったわけでございますが、今回こういうふうに下げますと、利用する人がまたなくなってくるというふうに思うのでございますが、大臣のお考え一つ承わりたいと思います。
  203. 竹山祐太郎

    国務大臣竹山祐太郎君) 融資率の問題につきましても世間にだいぶ誤解を受けておりますが、これは公庫の融資率を全面的に引き上げたわけではありませんので、従来の率でやって参るものもありますし、これは極端に申すといろいろな種類がある。分譲があり、賃貸があり、木造があり、耐火があり、産労住宅がありというようなわけでありますので、それぞれの種類に応じまして考えて参ったものでありまして、お説の通り一部には従来よりも五%程度引き下げたものもありますが、どうも実行の面におきましては、いろいろ御意見もありますので、極力従来の率に近いような実施に向けて参りたいと今せいぜい計画検討はいたしておる次第であります。
  204. 小沢久太郎

    小沢久太郎君 それでは、くどいようでございますが、実施に際しては実情に合うようにするような弾力性を持っているというふうに解釈してよろしゅうございますか。
  205. 竹山祐太郎

    国務大臣竹山祐太郎君) さように今せっかく努力をいたしておるつもりであります。
  206. 小沢久太郎

    小沢久太郎君 次に、金融公庫の融資いたしました増改築が三万戸、それから民間の増改築が一万五千戸、結局四万五千戸というもの、それがこの不足戸数解消の中に入っておるのでございます。それからまた民間建設は二十三万戸としてあるというふうにいたしまして、四十二万戸ということを計算してあるのでありますが、どうも私が思いますと、ただまあつじつまを合したのじゃなかろうかというふうに、これは曲解かもしれませんが、私どもはそう感じられるか。それで増収築の四万五千でございますが、これは過密防止には私は多分なると思います。しかしこれをもって不足住宅の解消には私はならぬと思うのでありますが、大臣のお考えは。
  207. 竹山祐太郎

    国務大臣竹山祐太郎君) これは仰せの通り、欲をいえば、全部一戸建のものを建てた方がいいということは、御意見の通りでありますけれども、実は二百八十万の不足戸数の中には約八十万戸くらい狭小過密住宅というもの、要するに一軒の中に何人も入っているというようなものが見込まれて計算をされているような、これが実態でありますので、一方におきまして、主婦連等から公庫に、増築分の金融をつけろということは従来から非常にやかましく言われてきた点でありますが、一応の考え方として、一戸建をやる方が先だということで今日まで参ったのでありますが、今回住宅政策を全面的に展開をする機会におきまして、お説のようなことも十分われわれ考えますけれども、実情に合せるためには、この要請の切なる増改築の分をこの際制度の中に取り入れていくことも、決してわれわれは故意に戸数を増すための考え方ではないわけでありまして、その結果、増改築の分が狭小過密の分を解消することによりまして、実質的には増築によって不十分ながらも一戸の独立の家を持ち得るようなことになる面もあるわけでありますから、そういうわけで、今回の住宅政策の中に三万戸程度の増築資金を計上をいたしたような次第であります。
  208. 小沢久太郎

    小沢久太郎君 この増改築の一戸当りは大体どのくらいの融資をするお考えですか。
  209. 竹山祐太郎

    国務大臣竹山祐太郎君) これは十分というわけにはいきませんけれども、全体のワクの中でできるだけ弾力性を持たして参りたいと思いますが、予算上の考え方としては、十五万円程度の金融対象を考えておるわけであります。
  210. 小沢久太郎

    小沢久太郎君 この増改築に対して融資をするということはけっこうなことだと思います。それでまあ実際いたんでおるところがあるわけでございますが、それを直すということは寿命を延ばすということで私はいいことだと思います。ただそれが四十二万戸解消の戸数の中には私は入らないのじゃなかろうかというふうに思っておる次第であります。それからこの民間の増改築一万五千とか、それから民間建設の二十三万とかというようなものは、どういう点からそういうふうに計算されたのか、ちょっとお尋ねいたしたい。
  211. 竹山祐太郎

    国務大臣竹山祐太郎君) これは御承知のように、昨年の民間自力建設というものが約二十万戸弱あったことに統計に現われております。これはなかなかむずかしいことだと思いますが、大体そういうことを前提にいたしまして、従来は、御承知のように何ら民間の自力建設には政策的裏打ちはなかったわけでありますが、今回は不十分ながらも税制措置及び金融保険制度によって五十七億の資金の国家保証をするというようなことを考えまして、われわれとしては三万戸程度これにプラスをすることが可能であるという考え方で二十三万戸及び別に一万五千戸の増築というものを考えたような次第でありまして、この数字は端的に申しますと、なかなか正確に従来も把握されておったかどうかということについては若干の疑問もありますので、今回別に住宅の全面的な調査をいたすことにいたしておりますから、来年度以降の計画につきましては、これらの問題ももっと正確に把握できると思いますが、われわれはさような立場で二十三万戸を考えておる次第であります。
  212. 小沢久太郎

    小沢久太郎君 それからもう一つ伺いたいことは、公営は大体都市の中心地近くに作る、それでそういう住宅が割合に小さい住宅であって、粗末な住宅であって、そうして家賃が割合に安い、それから公団の住宅は、これは広域地区の住宅でございますから割合に都市の周辺地区に作られて、それが建築の質がよろしい、そうして家賃が高いということは一つの矛盾じゃないかというふうに思うのでございますが、大臣のお考えを承わりたい。
  213. 竹山祐太郎

    国務大臣竹山祐太郎君) ちょっと観念的にはさようなことを御心配あろうかと思いますが、われわれ実施の面におきましては、そういうことは実は考えておりませんので、御指摘のように公営の中にもアパートがありますし、公団も決して郊外にばかり建つことを考えておりませんので、できれば都心の方へと考えておりますが、一部としては、やはりいわゆる衛星都市的な面も公団のねらいの一つであることば事実でありますが、公社は全部郊外へ持っていくということは考えておりませんので公営と公団とを適当に組み合せまして、御注意のような点に陥らぬようにいたして参りたいと考えております。
  214. 小沢久太郎

    小沢久太郎君 私が先刻来公団法の御説明を承わったときは、これは広域地区の住宅であるというようなことを承わったのでございますが、ただいま大臣の御説明によりますと、周辺地区にも作る、あるいはこの中心地区にも作るというふうに御説明がございましたが、大体そういうふうに了承してよろしいわけですか。
  215. 竹山祐太郎

    国務大臣竹山祐太郎君) さように考えております。
  216. 小沢久太郎

    小沢久太郎君 それから最後に、この公営住宅が、質が昔から非常に落ちておるというようなこと、それからそのために勤労者の日常生活を相当悪化させるというようなことが考えられるというか、われわれはおそれる。それからまた金融公庫の融資率を引き下げて、そうしてそういうものを利用する人がいわゆる勤労者にはだんだんなくなってくるというようなことから考えまして、私はどうも今度の住宅建設の政策は、その中心が勤労者から少しずれておるのじゃないかというふうに危惧の念を抱くのでございますが、しかし私はそうあっちゃいけないと思いますが、大臣はそういうことを意識的にやっておられるのか、あるいはそうでないか、一つ説明を願います。
  217. 竹山祐太郎

    国務大臣竹山祐太郎君) 結論を先に申せば、さようなことは全然考えておりませんので、今回の三本立にいたしましたすべてをあげて勤労者を対象に考えておるつもりであります。先ほども申し上げましたように、公営はわれわれから見れば質を落したつもりはありません。むしろできるだけ低家賃の層を公営で数多くねらっていこう。それから公図は非常にぜいたくじゃないかというお話でありますが、これは地方負担を伴わないで、土地ぐるみ全額を公団の負担におきまして中層アパートを建てるのでありますから、決して私はぜいたくにはならない。従来の公庫の産労住宅には相当の頭金を要したのに比べれば、全額公団で作ってやります結果は、それに入る勤労者は決して従来よりも負担を増すということはないと確信をいたしております。大体の見当は、公営は一番低家賃の層をねらい、それから公庫は勢い個人で家を建つものが主でありますから、若干いい層になるということは避けられませんが、公団はその間をねらって参るつもりでありますから、全体を通じて勤労者に対する住宅供給という面に全力をあげておるつもりであります。
  218. 小沢久太郎

    小沢久太郎君 次に、道路問題について大蔵大臣に承わりたいと思います。日本の道路が非常に悪いということは、これは私から申し上げるまでもないことでありまして、国道なんかでも自動車が通れない所がある。それから最近自動車の数が非常にふえました。それから目方も非常に重くなったので、日本の道路は近代交通にたえなくなってきた。それで少し長雨でもありますと、国道でも通れないという非常に悪い状態であります。それがために、日本産業のために非常に損失を与えているわけでありますが、それをわれわれは道路を改良いたしまして、そうして早急にいい道路を作るというふうな念願から、昭和二十八年度に議員立法によりまして、道路整備の財源等に関する臨時措置法というものを制定したのでございます。そしてそれによりまして、五カ年計画立てまして、その財源はガソリン税相当額のものはそれに必ず入れなければならぬというふうな法律を作ったわけでありますが、二十九年になりまして、揮発油譲与税の問題が起きたのであります。つまり揮発油税の三分の一は地方に譲与するという問題が起きましたときに、これはことし一年でやる、つまり二十九年だけの時限法でありまして、三十年度になったらもとへ戻すというように国会の決議でそうなったわけでありますが、今度の三十年度になりましては、地方財政のいろいろな問題があるわけでありますが、また二十九年度と同じような地方道路税というものが出てきたわけでございますが、これはわれわれから考えますと、国会の意思を無視するものじゃないかというふうにわれわれ考えるわけでありますが、大臣のお考え一つ承わりたいと思います。
  219. 一萬田尚登

    国務大臣(一萬田尚登君) お答えします。今お話のように、道路の必要性が非常に要請された。ところが御承知のように地方の財政はまた苦しい。道をぜひ作ることが必要であるが、財源的には苦しい。そういうふうな場合に、これを一体どうして調和していくかというところに今回の地方道路税の創設があるのでありまして、これはガソリンに対しまして若干の増税になるのでありまして、これははなはだ私どもも増税となる点におきまして考えさせられる点もあるのであります。一方地方に道路を作り、これによって今お話の自動車、トラック、その他の消耗を軽くし、かつまたガソリンの消費量も道がよくなることによって私はやはり減少していく、こういうことを総合して考えると、全体としての運賃に対する影響もそれほどなく、しかも所期目的が達成される、こういう意味合いにおきまして、地方道路税を新しく創設して参ったのであります。
  220. 小沢久太郎

    小沢久太郎君 私は地方財政が道路のガソリン税で事業を行うためには非常に苦しくなり、これがために何とか処置しなければならぬということは、私も同感でございます。しかし先ほども大臣がちょっと申されましたように、昨年一万一千円から一万三千円に上っておるのでございます。そして今回民主党では減税ということを口にし、また実行されておりますが、そういうときに、ガソリン税だけ上げる、しかもそれが奢侈品みたいなものならいいのでありますが、これは道路運送に欠くことのできないもの、そういうものにまた増税するということは不合理だと思うのですが、大臣の御見解を一つ承わりたいと思います。
  221. 一萬田尚登

    国務大臣(一萬田尚登君) お話の点もごもっともな点もあるのでありますが、先ほどから申しましたように、私はこれによりまして、一方また利益を受ける点も非常に多いのであります。たとえば道が非常に悪いことによってのいろいろな故障があるとか、あるいは自然の車体の損耗、それからスピードの問題あるいはまたガソリンの消費量が自然多くなるというようなことを考えてみると、私は一面において税の上から見ると重くなるが、全体から見るとこれはそう不公平ではなかろう、こう考えるのであります。
  222. 小沢久太郎

    小沢久太郎君 その点についてはわれわれもいろいろ意見がありますが、ここでは議論になりますので私は申し上げません。  次に、建設大臣に伺いたいのですが、つまり今度地方道路税を創設いたしましたので、ガソリン税が一万一千円になって、つまりそういうふうにガソリンの税が減るということと、それから補助率が高くなったわけであります。こういうことになったのでございますが、例の五カ年計画があるのでありますが、それを一体遂行する自信がおありかどうか、またどういう計数的なことになっておるか、御説明を願いたいのであります。
  223. 竹山祐太郎

    国務大臣竹山祐太郎君) お話の通り、今度のガソリン税は一万一千円で、昨年度から見るとガソリン税としては二千円減ったことになっておりますが、これは昨年の国会で国会の御意思に基いて当制の政府案が変えられまして、一万三千円のうち、増税になりました二千円分だけを地方の譲与税として実質的に回しまして、表面三分の二を政府が使い、三分の一を地方に譲与するという中で、三十一億円だけ、この二千円の増税分に当ります分を地方の譲与税といたしまして、四十八億円はこれを五カ年計画の道路計画に使う、地方へは予算を一応組んでしまったから渡すけれども、五カ年計画の事業に使うということの相互の了解のもとに、二十九年度は予算を実施いたしましたようなわけでありますからして、実質的には一万一千円の額が五カ年計画の対象として使われたわけであります。そこでこの三十年の予算におきましても、今回はそういうややっこしいことをやめまして、はっきりとガソリン税は一万一千円といたしまして、昨年実質的に地方に譲与いたしました二千円分は、地方道路税にはっきり切りかえまして、政府の五カ年計画に使うガソリン税は一万一千円といたしたわけでありますので、この計画からいえば、昨年同様の基礎でありますから、五カ年計画遂行上いささかの心配はないわけであります。ただこの際、御指摘のように、これは主として私の考えが中心でありますが、地方負担金というものを減らしまして、国道につきまして三分の二の政府負担を四分の三にし、地方の県道につきましては二分の一を三分の二にいたしまして、約総額六十億の地方負担をこれで軽減することにいたしました。これには道路の立場の方々から見れば、道路がそれだけ縮まるのだからけしからぬじゃないかという御意見はもとより覚悟の前でありまして、実は五カ年計画の基本をくずさない範囲におきまして、御承知のような地方財政の現状で、道路を希望はあると言いながら、地方へ押つけて参りましても、そのために非常な地方負担を伴って参ります。今年なども道路の負担——約百億円を地方で負わなければならぬという現状でありまして、そういう現状から見まして、私は思い切って地方の負担をできるだけ減らすということを大蔵省と話をきめましたようなわけで、その点が今御指摘のあった点と考えますが、これは両方いいわけには参りませんので、五カ年計画はこれによって決して削減はいたしません。そのためには、一方今日御審議をいただいております道路の臨時措置法におきまして、予算額が——要するにガソリン税は予算額として見込みますけれども、実際に税収があった場合におきましては、それを翌々年度の道路の財源にするということを、一般の歳入譲与の例外といたして、臨時措置法に明確に法律で規定することによりまして、現に二十九年度において数十億の譲与の、いわゆる余分の財源が入っておりますから、これを三十一年度の道路財源に充当する等の処置もあわせて考えまして、五カ年計画は当初の案通り遂行ができる確信を持っておるわけであります。
  224. 小沢久太郎

    小沢久太郎君 ただいま大臣が、二十九年度の予算につきましては、ガソリン税は一万一千円ということは、これはそうでございますが、三十年度以降は一万三千円と組んであるはずであります。これは私間違いかもしれませんが、私はそう記憶しております。結局そうしますと三十年度以降の問題につきまして、二十九年度から数えまして五カ年のうち一万一千円のものは二十九年度、あとは一万三千円組んでおるのでガソリンの消費量の少しの伸び考えられるとしても、この五カ年計画を遂行するために、私は相当の一般国費をつぎ込まなければならぬという結論になると思うのでございますが、いかがでございましょう。
  225. 竹山祐太郎

    国務大臣竹山祐太郎君) これはお説の通り、五カ年計画にはできるだけ一般財源から補ってもらいたいということはわれわれも考えておりますし、今後の計画におきましても、当初に考えました程度一般財政負担はしてもらうつもりで考えております。
  226. 小沢久太郎

    小沢久太郎君 大蔵大臣にお伺いいたしたいのですが、このガソリン税を一万三千円から一万一千円に下げて、そうして補助率を上げるがために、相当国費を入れなければ五カ年計画遂行はできないと思うのですが、それでこの五カ年計画は、私はどうしても遂行せなければいかぬ、そうしてガソリン税を一万三千円から一万一千円に下げたということと、それから補助率を上げたためにできなくなるのは、ガソリンの伸びで相当カバーできると思うのでございますが、その伸びでカバーできるということは、それだけ早く道をよくしなければならぬということだと思うのです。そのためには五カ年計画をどうしてもやってもらわなければならぬ、それがためには一般国費をある程度つぎ込むということをしなければ、私は五カ年計画はできないと思うのでございますが、この点はやはり必要な五カ年計画に対して国費をつぎ込むということを私は、大臣にされる意思があるかないかということをお伺いいたします。
  227. 一萬田尚登

    国務大臣(一萬田尚登君) ごもっともな御意見で、ぜひともこの五カ年計画——道路五カ年計画を私どもも完遂いたしたいと思います。がしかし、財政的に考えれば、他にもやらなくてはならぬことが非常にありますので、道のためにすべてをつぎ込むというわけにもできません。できるだけ道路五カ年計画は完遂するように努力いたしたいと思います。
  228. 小沢久太郎

    小沢久太郎君 それでは治山治水問題につきまして、建設大臣にお伺いいたしたいと思います。終戦後非常に災害が続発いたしまして、被害を平均いたしますと、年に二千数百億になるというようなことでございますけれども、貧乏のこの日本が、こういうふうな災害を受けちゃ困るわけでございまして、一日も早く根本対策として治水事業を完遂しなければいかぬと思うのでございますが、政府としては、治山治水の根本対策としてどういう案をお持ちでございますか、御説明願いたいと思います。
  229. 竹山祐太郎

    国務大臣竹山祐太郎君) これは前内閣でお立ていただきましたいわゆる十カ年計画というものがありますので、われわれは内閣が変りましても、こういう基本的な、自然を対象とする問題は、政策によって変るべきものと考えませんので、私はこの十カ年計画をそのまま踏襲してこれの完遂をはかる考えで進めております。
  230. 小沢久太郎

    小沢久太郎君 この十カ年計画を踏襲してやられるということになりますと、今年あたりの治水費は非常に少いのでございますが、大蔵省の方のお考えはいかがでございましょうか。
  231. 一萬田尚登

    国務大臣(一萬田尚登君) お答えします。御指摘のように今度の予算で治山治水の費用が約三%ぐらい少いようであります。昨年に比べて減っておりますが、これはまあこの治山治水に使用するいろいろの資材等の値下り等を勘案をいたしまして、実質上特に工事量等において支障のないように考えておるわけであります。
  232. 小沢久太郎

    小沢久太郎君 それから災害復旧の問題でございますが、これもやはり去年に比較しまして、つまり事業量に対する比率も少いし、それから予算金額も少いというわけでございまして、どうも私は今度の内閣は治水治水事業に対して熱がないんじゃないかというふうに思うのでございますが、いかがでございますか。
  233. 一萬田尚登

    国務大臣(一萬田尚登君) 決してさようではないのでありまして、今回は緊縮予算の関係も知りまして、他との振り合い等、昨年度よりは実質上ふやすことができなかったのは遺憾といたしますが、私はこの治山治水というものはほんとうに国力の消耗を防ぐ一番もとの直すところでありますから、これには特に国費を注いでいくべきだという私は考えを持っております。今後のいわゆる財政の運営、あるいは予算の編成については、特に注意をいたして参りたいと思っております。
  234. 小沢久太郎

    小沢久太郎君 それから過年度災害もまだ相当残っておるんでございますが、これは大蔵省が中心になられまして、各省と相談して、これをどういうふうに早く解決するかという根本方針を御相談になっていただきたいと思いますが、いかがでございますか。
  235. 竹山祐太郎

    国務大臣竹山祐太郎君) 災害の問題は、お話の通りなかなか残された大きな問題でありますので、われわれとしても、大蔵省といろいろ相談をいたしまして国庫負担法の改正を実は今国会にお願いをいたすつもりで目下話を進めております。これは今約一千億残事業のあります分を、一ぺんに片づけられれば一番それにこしたことはないわけでありますが、現在の財政状態で一気に解決をするということにはなかなかできないと思いますが、本年の予算におきましても、幸いにして昨年災害が少かったので、総額からいえばお話の通り減少はいたしておりますが、残事業の進渉率は昨年より上げておるつもりであります。同時に今後の災害の問題に関連をいたして参りますから、国庫負担法の改正等によりまして、今私のねらっております点は、災害予算というものは、今までのように財政的に困れば圧縮をして六年も七年もかからなければ解決をしないということでは困りますから、法律ではっきりと一つ、三年間に災害を片づけていくと、あるいは連年災害に対しては最高率の国庫負担率をもって地方財政に対処して災害だけは片づけるというような点を骨子にいたしまして、近く国会に御審議をいただきたいと思いますが、そういうことと今後の財政状況等にらみ合せて災害対策はすみやかに一つ解決に進みたいと考えております。
  236. 小沢久太郎

    小沢久太郎君 時間がありませんので、治山治水問題につきましていろいろお伺いしたいことがありますが、それくらいにいたしまして、次には、国土総合開発の件につきまして、高碕国務大臣に御質問いたします。で、戦後非常に国土が狭くなり人間が非常に多くなった。それがために国土総合開発をしなければならないということは、これはまた当然でありまして、しかし実障の問題としてなかなかこれができていない。そこで高碕さんは、この国土総合開発の機構を拡充して十分にやるようにしたいというよりなお考えを持っておられるようでございますが、どういう御構想であられるか、一つ説明願いたいと思います。
  237. 高碕達之助

    国務大臣(高碕達之助君) お答え申し上げます。国土総合開発のことにつきましては、ただいま大体はこの計画はもう進行しておりますが、実行の域になってきて腰が砕けているように私は感ずるのであります。私この際、経済審議庁は別に開発部を置きたいのでありますが、ここにおきまして国土総合開発委員会の方々の御意見をよく承わりまして、今後はいかにしてこれを調査するということよりも、これを実行するかということにつきまして、よく御意見を承わりまして、そうしてこの審議庁におきまして実行策を立てる、ところがただちょっと厄介なことは、審議庁自身は計画をいたしましてやりますが、この実行は各官庁、各関係の方でやっておるものでありますから、その間の連絡が非常にめんどうだと思っておりまして、この間をどういうふうにつけるかということにつきましては、よく総合開発計画審議会の御意見を聞きまして、立案いたしたいと存じておるわけであります。
  238. 小沢久太郎

    小沢久太郎君 ただいま高碕国務大臣が、調査よりも実行の段階だと申されましたが、私は実際その通りだと思います。それで一番問題は、予算がなければ何にもならないんです。それで幾ら調整をとれた案を作りましても、それの予算化するということが結局一番大事だと思うのであります。そういう点につきまして、大蔵省とよく連絡をとって、審議庁でできた案がそのままバランスをくずさないような体系をとって、予算面に生きてくるというふうに努力していただきたいと思う次第であります。  それからもう一つ、特定地区の問題でありますが、特定地域ができまして、あれが閣議決定にもなっておりますが、それが閣議決定になって後に、どういうふうに予算面に生かされているか、大臣の御意見、御見解をお尋ねしておきます。
  239. 高碕達之助

    国務大臣(高碕達之助君) 特定地域ももうきめられ、そして計画も順次進んでおりますが、これがほとんど予定通り実行されていないことは事実でございます。それはこれにつながって予算が裏づけされてない、こういうことでございます。この点につきましては、今後十分私は審議会の結果によりまして、それをもって大蔵省と折衝いたしまして、予算の裏づけをする、その予算を各省に振り当てるわけでありますけれども、各省に振り当ててしまいますと、そこに多少総合できない点がありまして、ある場所だけは進んでおるが、一部分だけはおくれておる、そういうふうな結果に相なるものでありますから、その総合するのにはどういうふうな予算で、どういうふうな機構でやるかということにつきましては、これはただいま実は私自身が考えておるわけなんでございます。
  240. 小沢久太郎

    小沢久太郎君 たとえばそういう場合に、これは少し筋がちょっとおかしいかもしれないが、たとえば総合調整資金とか、そういうようなもので幾らかでも総合性を持たせるように、各省で出したものは大蔵省は全体のバランスをとりながらやられるんでしょうけれども、まあ別々にやりますから、地域的に総合がとれないところがある。そういうところを審議庁が穴を埋めてゆくということが必要じゃないかと思いますが、いかがでございますか。
  241. 高碕達之助

    国務大臣(高碕達之助君) まことに私御説ごもっともだと思います。私どもの考えておりますことは、まあたとえば十億なら十億という調整資金というものを、これは各省で保管しておいてもらってもいいと思うのです。その調繋資金を使うときだけは、審議庁で計画によって調整資金を使う、こういうふうにやったらどうかと、こういうふうに今は考えておるのでありますが、その点はよく御意見を承わりたいと思います。
  242. 小沢久太郎

    小沢久太郎君 大蔵大臣にお伺いしたいんですが、総合開発の問題は、実は案としては相当バランスがとれた案ができておる。それが実際予算化する場合、そのまま大蔵省はなかなかのまないんです。ある程度査定して切ってゆく、それがためにそのときどうしても総合性が保てなくなるわけです。もちろん保てればけっこうです。それを保たせるのが理想ですが、保てない場合がある。そういうときにどうするかというような問題ですね、これはただいま私思いつきを申し上げましたが、そういう点についてよく御研究なすって、できました案が十分生かされる、そうして国の費用を、少い費用を十分能率よくまあやっていただくように御努力願いたいと思います。
  243. 一萬田尚登

    国務大臣(一萬田尚登君) 全く御意見の通りであります。大蔵省としましても、経審とよく連絡を持ちましてそうしてこの総合開発が総合開発計画に基いてうまくいくように一つ今後十分努力いたします。
  244. 田中啓一

    田中啓一君 関連しまして。実は今の総合開発の推進の仕方といたしまして、調整資金というようなことも確かに一つ考え方で、なかなか私は名案だと実は思うのでありますが、それよりも前に、そもそも総合開発法というものは議会が非常に率先をして、必要を感じてああいうものを生み出して、いろいろ当時の経済安定本部、その他の省との間にいきさつもございましたが、まあ今のような一応形になって、準備を進められているのでありますが、さてせっかくできましたその総合開発の案というものは、実は国会の方へは提出をされておらぬわけです。もっともこれはされても国会が事実審議するということは、これは大へんでありますから、そのために開発委員会というものができておりますので、それはそれでよろしいと思うのでありますが、せめてその委員会でできて、きまったもの、内閣の御承認になったものを概略でもよろしいが、地図と内容を付したものを議員にはお配りになったらどうかと思う。どうしても各省というものは各省の仕事別の根性が現われてくるのですね。議員のある方はこいつは地区的に——選挙立候補地であるのでありますから、地区的な根性が現われてくるのですが、それを総合すればちょうどいいところへくると思うのでありますから、そんなに費用もかからぬことと思うのでありますから、国会議員にみんなお配りになりましても、これは私どもそういった概略のものを、今日まあ例の余剰農産物の資金で特別に農業関発をやろうとしている地区のものを、予算委員会にお配りになっている程度のものでもよろしいのでありますが、そういうふうになさったらば、非常に議員の理解を深めて、そうしていろいろそれによって具体案は予算として出てくるわけでございますから、審議を進めるのに都合がいいのじゃないか、かように——実は思いつきでございますが、そういうようなことをしていただけますでしょうか、どうでしょうか、経済審議庁として。
  245. 高碕達之助

    国務大臣(高碕達之助君) まことにごもっともと存じますから、これはさっそく実行に入りたいと存じます、そんなに費用のかからぬことでございますから。
  246. 田中一

    田中一君 今小沢君の質問に対する御答弁ですが、経審長官としては、本年度二十億程度の調整資金を要求したというふうに伺っているのですが、調整資金で総合性を持つような工事をするという御意見は、大蔵大臣、建設大臣、通産大臣、また農林大臣運輸大臣も同感という御答弁があったので、本年度はこの予算をこれはまあ通さぬと思いますから、少くとも十億程度のものをこの総合開発に基く調整資金として、資金運用部資金から一応本年度は起債を認める、いわゆる国がそれを持てませんから、地方に起債を認める。それが総額十億程度、そうして三十一年度でその負債というものを国が負担をするような形に持ってゆくのはどうか。ゆこうと考えれば、先般も質問したように、各現業大臣大蔵大臣ともどもこの調整資金の必要性を認めていらっしゃる、同時に経審長官もそれを要求をしているという段階なら、起債で十億程度のものを本年度は持って、それを地方に出して、三十一年度の予算でそれをまた国の方の予算に振りかえるというような方途をとる意向を経審長官並びに大蔵大臣考えられませんか。これは大蔵大臣も、その点は十分その通りでございます、本年度は財源上できないのだという御答弁があったので、今のような便法を用いればりっぱに総合性のあるものができると思います。その点ちょっと伺います。
  247. 一萬田尚登

    国務大臣(一萬田尚登君) これはまあどこに置くか——非常にお考えも私はいいお考えと思うのですが、またこれはやり方によって非常に乱れる点もある。しかし十分検討を明年の予算編成までにはしてみようと、かように私考えております。
  248. 田中一

    田中一君 私はそういうことを伺っていないのです。三十年度の予算は組みかえをなさらぬでございましょうから、一応本年度は早期に経済効果を上げるために——今のような調整資金があれば早期に経済効果が上るということは、あなたも各現業大臣も、先般の質問に私に答弁しておるのです。従いまして、三十年度に限ってはその部分部分の地方起債をする面でそれが総額十億程度、そして三十一年度には国の方に振りかえる、このような形にしたならば、あなた方先般からも御答弁になっていることは、三十年度から実効が上ってくる。いわゆるあなたの説による六ヵ年計画というものも、初年度から最もよりよい効果が上るのじゃないかと、こういうわけなんです。これは財政計画あるいは起債の計画が乱れるほどのものじゃございません。やる意思があればできることなのです。その点をはっきり伺っておきます。
  249. 森永貞一郎

    政府委員森永貞一郎君) ただいまの調整資金的なアイデアを起債で実行上やっていったらどうか、そういうお尋ねのように拝聴いたしましたのでございますが、これには起債の財源の問題もございますし、また事業は必ずしも地方団体の事業だけじゃないわけでございまして、たとえば運用部資金等の貸付の対象になるものだけでもないわけでございまして、果してうまくいくかどうか、それらの点につきましても十分検討しなければならぬと思いますが、実行上におきましてあるいはいろいろな問題がございまして、今すぐここでその通り実行をいたしますということをお答えする段階にないことを非常に遺憾に思います。なお十分検討はいたしたいと思います。
  250. 小沢久太郎

    小沢久太郎君 それでは私時間がございませんから打ち切ります。
  251. 溝口三郎

    ○溝口三郎君 まず経審長官にお伺いいたします。昨日、本会議で余剰農産物の協定に関しまして承認の採決がありました。余剰農産物の受け入れにおきまして二百十四億の借款のうち、今回の借款については、三十億が農業開発に使用する分に決定されたのでございます。借款によります食糧増産という問題は、これは日本では初めて行われることでございます。長い間人口、食糧問題で非常な努力をして参ったのでございますが、御承知のように人口の増加に食糧の増加が伴わないが、年年食糧もふえていくような実情にあったわけでございます。今回借款によって食糧増産を行うということは、数年前からも話がありましたが、昨年の秋から具体化して参りまして、初めて今回着手することになったのであります。今回着手いたしますことは、今後この事業着手の以後、この運営が正しい方向に向っていくならばその効果はあると思います。その方向を誤まれば非常な危険を伴うようなことになりますから、この機会に経審長官に対しまして、政府の御所見をお伺いいたしたいと思うのであります。  まず第一にお伺いしたいのは、この審議の過程におきまして、二十三日に経審長官は特に農林水産委員会に御出席になりまして、今回の借款に対する政府としての考え方を御説明になったのでございます。それによりますと、本年度余剰農産物の借款による農業開発は三十億円にきまったと、明年度以降は既定計画通りに実施するように極力努力をする、なお三十億円の内訳について私が質問をいたしましたが、内訳については、二十五億円は愛知用水に配分する、五億円については北海道開発とか、その辺ははっきりしないようなお話でございました。そこで私は農林省当局に聞きましたところ、二十五億円を愛知用水に配分することについては、これは当初全額愛知用水に行くのが二十五億円になったのです。これはやむを得ないと私どもは考えておるのでございますが、五億円の配分については、農林省で考えておりますのは、北海道その他機械開墾地区等にも配分を希望しているが、今もってきまらないというようなことでございましたが、その点については決定になったのかどうか、これをお伺いいたしたいのでございます。まず第一に、農林委員会に御出席になりまして二項目について御説明になりましたが、それはその通り承知いたしてよろしゅうございますか、あらためてお伺いいたします。
  252. 高碕達之助

    国務大臣(高碕達之助君) お説のごとく、三十億円を農業開発に使う。そのうち二十五億円を愛知用水に使って、あとの五億円を北海頂にある篠津と根釧とございます。そのほかに青森の上北というところがあります。上北と根釧は機械開墾になっております。大体そういうふうに分けたいと、こういうことになっておりますが、これはまだ決定いたしておりませんが、そういう趣旨で農林省の方で考究中でございます。
  253. 溝口三郎

    ○溝口三郎君 ただいま経審長官からの御答弁では、五億円の配分についてはまだ決定していない。承認にはなりまして、この金額を使用する段階になりましてどの地区に行くかまだ決定していない。いつごろになったら決定されるのでございますか、その辺を明確に御答弁をお願いいたしておきたいと存じます。
  254. 高碕達之助

    国務大臣(高碕達之助君) まだこれははっきりきまらないのですけれども、できるだけ早く農林省においてきめてもらいたいと思っておりますが、いまだきまっておりません。
  255. 溝口三郎

    ○溝口三郎君 農林大臣にお伺いいたします。農林大臣はこの借款による農業開発については愛知用水、八郎潟、石狩沿岸の開拓、機械開墾等、できるだけ実現するように希望をしておるということを、先般の委員会等で御明言によっておられましたが、今年度この地区のうち、八郎潟は、既定計画には後年度になっておりますが、それ以外については、ぜひとも実現できるように御努力になっておるが、今もってそれが決定にならぬというのは、どういうところに原因があるのか、お伺いいたしたいと思います。
  256. 河野一郎

    国務大臣河野一郎君) 御承知通り、この御指摘の五億につきましては、これを他に財源を併用していかなければなりません関係がありますので、財政計画——後年度にわたっての財政計画立てていかなければいけないと思うのでありまして、さしあたり今年度におきましては、今御指摘の通り、三十億を二十五億と五億に分けてできますけれども、始めました以上は、明年以後における計画財政計画は一切確定いたしませんといかぬものでございますから、その財政計画の細部わたって、大蔵当局と目下打ち合せ中でございまして、なるべく早くこれについての打ち合せを完了いたしまして、きめていきたいと、こう考えております。
  257. 溝口三郎

    ○溝口三郎君 この借款の問題は、すでに昨年の秋ごろ内定していると考えておるのでございます。明年度財政計画等が今日に至ってもまだきまらぬということは、はなはだ私は怠慢だと思うのでありますが、すでにこの四地区につきまして、総事業費が五百六十億、そうしてこれを五カ年間でやるということを、昨年前内閣できめて、対米交渉をしまして、そのうちで本年度はさしあたり三十億が農業に配分されたのでございます。それから来年度も当然私は、事業に着手したのならそれに伴って後年度の不動の計画立てて進まれることは当然であろうと思うのですが、今の御説明によると、何か来年の問題もあるからどの地区へ着手するかわからないような印象を与えられるのでございますが、着手することは着手するのかどうか、それをお伺いしておきたい。
  258. 河野一郎

    国務大臣河野一郎君) お答えいたします。御承知通り、この余剰農産物の決定に当りまして、いろいろ経過がありましたことは御承知通りであります。これがアメリカとの関係においていろいろな条件、いろいろな問題等が出て参りましたので、この決定がおくれました間に、一方予算の編成の方がどんどん進んで参るというので、そこで三十億の使途については、一応愛知用水に全額使っていこうということにいたしましたことも御承知通りでございます。そういう経過をたどって参りましたために、愛知用水を基準にしての財政計画はきちんと立っておったのでございますが、これは私は先般もお答え申し上げました通りに、いろいろな地元その他の御要求もございまするし、またこれを重点的に一カ所でやるのと、これを機械開墾と併用してやろうということとありましたので、それで機械開墾についてはこれを今年から着手した方がよろしいということにいたしまして、一応三十億になっておりました愛知用水を二十五億とし、その今御指摘の五億を別立にして、これで機械開墾をやっていくようにしようということにいたしましたので、この機械開墾を着手いたしまするものにつきまして具体的に実は財政計画をやっておる、こういうふうなのでございまして、まあお小言をちょうだいすればちょうだいする筋かもしれませんが、私といたしましては、一応予算編成当時に筋を立てておりましたものを、途中から変更するというようになりましたものですから、そこで細部にわたって大蔵当局との間に打ち合せをしなければならぬようなことになったということでございます。しかしそれではやるかやらぬか、むろんやるつもりでおりますから、どうかその意味で御了承いただきたいと思います。
  259. 溝口三郎

    ○溝口三郎君 経審長官にお伺いいたしますが、私先ほどお伺いいたしましたのに、本年度は予算が少いから三十億の範囲でやっていくのだ、明年度は既定計画通りに必ず実行するようにしていきたいということを言われておったのですが、既定計画というのはどういうことをさすのか、お伺いしたい。
  260. 高碕達之助

    国務大臣(高碕達之助君) この本年度計画の中には、予算を積み重ねました結果、愛知用水等が入っていなかったのでありますが、そこで来年度からはこれをいよいよ着手するということになりますれば、大体来年度の方は——三十年度三百五十債円と、こう見ておりますが、この中には愛知用水は入っていないのでありますが、三十一年度に六百八億円と、こう見ておりますが、この中には将来、今後入れてゆく考えでおりまして、それでかりに来年度余剰農産物が入ってこなくても、これは実行すると、継続になってやってゆくと、こういう考えでございます。余剰農産物がかりに入ればそれだけは実行が楽になってくるわけでございます。予算の実行が楽になる、こういうわけでございます。
  261. 溝口三郎

    ○溝口三郎君 私のお伺いいたしますのは、その問題でなくて、余剰農産物の使用につきまして、一昨日農林水産委員会に御出席になりまして、本年度農業開発は三十億を配分すると、明年度以降は既定計画通りに必ず実行するように努めるということをお述べになりましたので、既定計画というのは、本年度は三十億の範囲でまだきまらないけれども、どういうふうにするか、政府部内でなるべく早くきめようと、明年度は四つの地区があると、それは既定計画通りに必ず実行するように努めるということを御説明になりましたから、私はそれをもう一ぺん確めたいとお伺いしたのであります。
  262. 高碕達之助

    国務大臣(高碕達之助君) お答え申し上げます。来年度以降につきまして、この愛知用水初めその他の計画につきまして、本年度これに着手いたします以上は、これにつきましては、既定計画としてこれは必ず実行に移してゆく、こういうようにお答え申し上げたわけでございます。
  263. 溝口三郎

    ○溝口三郎君 本年度四地区に着手するかしないかが今問題なんです。本年度着手いたしますものは中断しないようにしていきたい、着手しないものは、それを明年度は既定計画通りにやるようにお話になったから、本年度は何かやりくりをして四地区のうちのある一地区を、愛知用水とか、一地区などをやっておいて、明年度は必ず四地区をやるというような印象を与えていられるから、既定計画通りに実行するというのはどういうことを言われたのか、お伺いしたい。
  264. 高碕達之助

    国務大臣(高碕達之助君) 農林省計画として四地区をやるということの計画は既定計画でございます。
  265. 溝口三郎

    ○溝口三郎君 本年度につきましては、地区がまだ決定にならないので、これはなるべく早くきめて、当然これは特別会計が——受け入れの特別会計も要るかと思いますが、なるべく早くきめて実行に入るようにしていただきたいが、二百十四億の借款については、これは特別会計ができると思うのですが、もう一つ、受け入れについては特別会計をこしらえる必要があるのかないのか、これは事務当局からお伺いしたいと思います。
  266. 森永貞一郎

    政府委員森永貞一郎君) 余剰農産物の二百十四億の受け入れにつきましては、ただいまお話がありましたように、特別会計を作っていただくことにいたしまして、問もなく、その法律案並びに予算案を国会の御承認をいただくように提出する予定でございます。それを貸し付けます場合の受け入れ態勢でございますが、愛知用水につきましては、御存じのように愛知用水公団という形態で考えておりまして、この点につきましてはすでに法案を提出ずみでございます。他の地区につきましてどういう形態になるか、これにはいろいろ問題がございますが、やはり事業団的なものが介在するほうがよろしいのではないか。事業団でなくて特別会計にするかどうかということにつきましては、いろいろ問題もあろうかと存じますが、ただいまのところは、やはり事業団的な形態のものを考えてゆくべきじゃないか、さように考えております。この二百十四億の受け入れの予算案を提出いたします頃までには細目をきめまして御報告申し上げる、さような段階にいたしたいと思いますので、しばらく御猶予を願いたいと思います。
  267. 溝口三郎

    ○溝口三郎君 そういたしますと、借款による農業開発については、愛知用水公団法案は提出になっておりますが、今回の使用についての五億万円につきましては、本国会中に別の公団法が出るかもしれない、特別会計でやるかもしれない、その場合までには使途の区分も明確にする、そう承知してよろしいのですか。
  268. 森永貞一郎

    政府委員森永貞一郎君) 事業地域あるいは事業主体によりまして、既存の事業主体でいいものがあるかどうか、そのへんにつきましてもいろいろ検討が必要であると存じますが、少くとも機械開墾につきましては事業団的なものが必要ではないかというような考え方をいたしております。なお愛知用水以外の地区につきましてどういう配分をするか、また、どういうふうなやり方をするか、それらの点につきましては、ただいまお話がございましたように、予算案を提出いたします頃までには、はっきりとした方針政府部内においてきめていただきたいと、さように考えております。
  269. 溝口三郎

    ○溝口三郎君 余剰農産物の配分のほかに世界銀行の借款がある。その受け入れ態勢は、愛知用水につきましては世界銀行は政府の保証を要求していると承知しているのでございますが、篠津とかその他の機械開墾地区等に五億万円今年使用する場合に、機械を世界銀行から借款をするのだと思いますが、それに対しては政府が保証しないと世界銀行は貸さないのじゃないかと思います。そういうようなことについては、さらに全体を通じた一つの公団というものをこしらえることでないと、五億万円は配分しましても実行ができないようなことになるような気がするのですが、それはどういうふうに考えておられますか。
  270. 森永貞一郎

    政府委員森永貞一郎君) ただいまお話がございましたような関係もございまして、やはり事業団みたいなものが要るということになるのじゃないかと、さように存じておるわけでございます。
  271. 溝口三郎

    ○溝口三郎君 余剰農産物の協定について、農林水産委員会で外務委員会と連合審査をやった結果、農林水産委員会としての総意を外務委員会に申し入れたのでございます。その申し入れについては、石黒外務委員長から、昨日、本会議でその通りにお述べになったごとくでありますが、農林水産委員会が申し入れをするようなことになりました前提は、どうも審議の過程におきまして、説明を聞きましても、はなはだ不可解な点があるのです。配分等についてどうするのか、そして明年度以降必ず農林省できめた計画を実行してゆくとかというような説明はいたしますが、この財政の点から申しましても、当初私どもの承知しているところでは、昨年の秋、前内閣で余剰農産物の対米交渉を始めた当時は、四地区の全額を借款をしたいということを申し入れた。それは五百四十億にもなるのでございます。しかもその工事をするについては、日本では今ないような機械を、二千万ドル世界銀行から借りて、そうして短期間の間にその遂行をしたいという希望でいったのが、本年度は五百六十億のうちのわずかに三十億の程度しか配分にならない。来年度再来年度について借款の見通しはどうかということを伺いましても、来年のことは、内外の情勢を見た上で、借りるか借りないかは今はきまっていないのだ。こういうことになると、この事業に着手しましても、来年からの見通しというのは、ほとんどわからない。なにか、この点については、事業を着手したならば絶対に中断することなく、既定計画で五カ年の間に五百六十億の事業計画ができるように、その不動の計画立てるべきだということを申し入れの中にも入れたのでございますが、終審長官は、アメリカでは十億ドルを三カ年で余剰農産物の処分をする法律ができているから、七月以後の売り渡しにかかっている。日本ではまだ来年はどうするかきまっていない。しかし自分は個人的には話を進めてゆくようなお話があったのでございますが、この申し入れに対して経審長官は、三カ年の受け入れ態勢を政府部内でおきめになって、そうして交渉を進めてゆくようなお考えはあるのでございますか、お伺いしたい。
  272. 高碕達之助

    国務大臣(高碕達之助君) お答え申し上げます。来年度以降の余剰農産物を受け入れるか受け入れないかという問題につきましては、相手方もあることでありますし、また条件そのほかにつきましても、必ずしも私は本年度の条件をそのまま継続はできない点もあります。大体、本国会におきまして、各方面の御意見を承わりまして参考にするところがあったのであります。今後交渉をする上につきましては、条件、数量、種類等についてもよほど考えなければならん、こういうふうな点から考えまして、私は、財政投融資の方面、日本産業開発という方面からいくと、この枯渇したる資金を長期に低利で得られるのでありますから、これから得たいという考えを持つのでありますけれども、そのほかの点も考慮して実に移さなければならんというふうに考えるわけでありますから、まだ政府といたしましては、そこまで検討はいたしておりません。できるだけ早い機会に内外の情勢検討いたしまして態度をきめたい、こう存ずるわけでありますが、いやしくも農業計画として最初三十億円の金を使った以上は、これは余剰農産物が借款ができるかできないかという問題でなくて、それができなくても、これを実行するようにやっていく考えでございまして、余剰農産物のほうで長期の借款ができれば、その実行上非常に全体的に金繰りが楽になって、容易になるというだけのことでございますから、さよう御承知願いたいと思います。
  273. 溝口三郎

    ○溝口三郎君 世界銀行の借款と余剰農産物の借款と、二種類の借款をもってやっていく目的ば、世界銀行からは先ほど申しましたように、日本に今までなかったような優秀な機械を入れて、短期間に工事の能率化をしようという一つ目的と、そうして余剰農産物で五百数十億の借款をするのは、現在まで八郎潟とか愛知用水とか大規模のものはあるけれども、それは国内の財政資金では半永久的に着手できないから、その当時起りました余剰農産物借款で機械を借り、そうして短期間にそれをやろうということだったのでございます。ところが今のようなお話で、本年度三十億は借款するが、来年度入らなくなってもそれは必ず中断しないでやっていくと、そういうことになりますと、五カ年でやるのでありまして、一年の食糧増産四地区ぐらいのところで一年間に百億ぐらいずつかけていく、それは不可能なことだと私は思う。そういう点について、現在の食糧増産を本年度は二百五十億程度やっているのですが、そういうのを十億ふやすのも、これは農林大臣非常に御苦心になって、昨年並みぐらいに本年の修正予算ができたのでございます。わずかに百万石程度の増産、それを一年に四、五十億もふやしていくということは、私は非常に困難だと思う。そこで申し入れにも、食糧増産をやる場合には、国内の既定の農業開発計画食糧増産に必要な経費を絶対に削減しないこと、一般会計を削減してこの四地区を中断するようなことになるような危険も多分にあるから、農林委員会ではこういう申し入れをしたのでございます。これは一体尊重なさるかどうか、大蔵大臣から御答弁をお願いたしたい。
  274. 一萬田尚登

    国務大臣(一萬田尚登君) お答えいたします。  私はこういうような考えをしておるのです。この食糧増産をやらなくちゃならぬということは言うまでもありませんが、同時に、これには長期の、しかも安い金利の資金が要るということも覚悟しなくてはならないと私は思う。そこで、余剰農産物というようなものを買い入れ、その代金をこれに充当するのはどうかという考え方が浮ぶのも、これまた払いいと思いますが、しかしこの余剰農産物の場合は、単に資金ばかりでない、ただ資金だけ何らかの形で手に入れれば……ほかの方にこれはやはり日本農業というものに及ぼす影響というものも、私は、やはり考えなければならないと思う。どういう影響があっても、それはおかまいなしというわけにもいかぬと思う。それで、そういうようなことも勘案しつつ、これはやろうと思えば、私はおそらく来年もできると思います。大体においてこれは三カ年を一単位にして考えておりますから、こちらが希望すればこれはできると思うが、しかし来年には日本農業その他についてのいろいろなことを考えて、またしかし必ずしも余剰農産物でなくても、ほかの面において農業に対する借款ができないとも限らない。そういう点はまたどうなるか、ほかに有利な借款ができれば、しいてまた農産物でなくてもいいかもしれない。そういう意味で、私は、来年はとくとそういう資金が要ることは覚悟しなければならないが、そういう方法については保留しておいても一向差しつかえないのではないか、かように考えております。一般会計からどうかということについては、これは来年についても予算の編成は私は容易ならぬ状況にあると思っておりますから、今そういうふうな一般会計というふうなことに関連しては、今後十分検討を加えまして、できるだけ協力はいたしますが、なお検討の余地を残す必要があろうと考えております。
  275. 溝口三郎

    ○溝口三郎君 余剰農産物の受け入れをやって農業を圧迫するようなことは、これは絶対に避けなければいけないということ、これは当然でございます。今年の余剰農産物の受け入れにつきましては、農林大臣も、二百二十余万トンの小麦の輸入計画のうちの一部分なんだから、そういう点は毛頭心配はない、価格につきましても、国際価格で買うのだから何らの危険はないのだ、来年度におきましては、もう小麦がすでに本年の収穫は昨年に比べて三百万石程度の減収になる見込みだということになると、私は本年以上にしなければいかんというようなことになるわけです。で、本年度程度のものは当然輸入に待つ以外に方法はないのではないか。輸入しない方がいいにきまっている。大蔵大臣は、それだから、ほかの借款を何か考えることもできるというようなことを今御説明になりましたが、それは、できればまことにけっこうですけれども、今までの既定の農業開発の計画に支障を及ぼすようなことは絶対に避けていただきたいという申し入れをいたしたのでございます。農林大臣は、それに対してぜひ言明しておいていただきたいと思います。
  276. 河野一郎

    国務大臣河野一郎君) お答えいたします。  おそらく終審長官も、大蔵大臣も、この計画の遂行に必要なということで、この借款を、余剰農産物の受け入れを続けていくというようなことに、あまりに強い関連を持つということは、考えなければならぬというようなことで、御答弁があったと私は思うのであります。しかし私は、先般来の本会議場、もしくは他の委員会お答え申し上げております通り、わが国の農産物もしくは農産物の価格に影響のあるというようなことは絶対に避けなければなりませんけれども——これは絶対避ける、支障のあるようなことはいたさぬという前提の下に必要量の輸入をするのでございますから、その範囲内において、米国の理解ある御協力によりまして、ぜひ遂行して参りたい。こういうことでございまして、万々一これが従来の既定の内地の土地改良に混淆してくるというようなことは断じて避けなければならない。申し上げるまでもなく、従来の分は、全国農民の分布その他の事情に応じて勘案いたしまして遂行しているのでございまして、これを一カ所に集中して多額の費用を入れるということは、必ずしも妥当の趣旨とは考えませんので、これは全然別でありますから、その点は深く理解を持っている次第でございます。
  277. 溝口三郎

    ○溝口三郎君 ただいま農林大臣から御答弁がありましたが、言うまでもなく、借款による食糧増産のこの事業計画の性格は、現在までの土地改良、開拓とは全然違うのでございます。現在、数千数万地区を全国でやっているのでございますから、それが、こういうものからそっちの方に影響するようなことになると、これは非常に大きな問題になるから、ぜひとも、ただいま言明された通りなことで御努力をお願いいたしたいと思います。  簡単に、時間がありませんからお伺いいたしたいのでありますが、経済六カ年計画で、簡単に申し上げますが、経済六カ年計画で、昭和三十五年までに、米麦の増産千三百五十万石の計画立てられたようでございますが、それは二十九年度ベースにしまして、人口の増加に伴う米麦の増加量、つぶれ地が毎年八十万石ずつつぶれるのを補充していくと、三十五年になっても現在の米と麦の輸入量が約四百二十万トンだと思いますが、それが少しも増加にならないという計画からお立てになったのだという御説明が……そういたしますと少しも余裕がない、千三百五十万石その通りにやりましても、本年度の予算の二倍から二倍半の予算を出していかないと実行ができない。これは非常な努力を要することと思いますが、そういたしますと、将来統制撤廃等を通じて一番の条件になっております備蓄とか操作米というようなものは、少しもこれを補充していくという余裕はないように考えるのでございます。それが操作米なり備蓄米がある程度なければ統制撤廃をすることはできないが、計画の千三百五十万石はいつまでたっても操作米、備蓄米を増加することはできないと思うのですが、私は、千三百五十万石のほかに、もう少し余裕のある増産計画立てていただきたい。これは資金の面は別でございますが、立てないと、いつまでも統制は永久にやっていくようなことになるようなことになるのじゃないかというように考えるのでございます。そこで千三百五十万石の問題につきましても、そのうちに今度の借款によるものが入っているのか入っていないのかということにつきましても、これは十分に私は検討していただく必要があるし、できれば今までやっておりますような国内の食糧増産計画、たとえば千三百五十万石は、これはどうしても人口増とか、つぶれ地のためには、ぜひとも必要なんで、それにプラス・アルファになるような、こういうものは別途に計画立てて、一般会計とか借款による食糧増産というようなものは、将来混同しないようなふうに、そしてまた備蓄とか操作米のためにも、少し千三百五十万石以上にプラスする計画立てないと、経済六カ年計画がほんとうのものにならんと考えるのですが、備蓄操作米の補充等について農林大臣はどういうふうにお考えになっておるか、この機会にお伺いしておきたいと思います。
  278. 河野一郎

    国務大臣河野一郎君) お答えいたします。自由販売の準備のための備蓄米ということでございますが、自由販売をするとかしないとかいうことを別にいたしまして、私は食糧の安心感、食糧の安全度を高めるという意味から参りましても従来から現在までにおけるような程度で、早目に早目にというような状態でいくことは正しいこととは考えておりません。そういう意味におきまして、ただいまの予算の中にも外少前年度よりも持ち越し量をふやして計画立てておるわけでございます。しかしただいま溝口さんの御指摘になりました点は、今申し上げますように、備蓄もしくは操作米というようなことを別にいたしましても、この点について、私は将来の食糧政策は一応経済六カ年計画で、ただいま御指摘になりましたような数字を掲げてわれわれ実行の目途といたしておりますけれども、これは御承知通り豊凶もずいぶん多く影響いたします。凶作が続きますれば非常にそこに窮屈が生まれまするが、豊作という場合が想定されまするときには、それによって相当の操作米が出てくることも御了承いただけると思います。さらにまた、食糧事情がここ数年来の経緯から見ましても、非常に違ってきておりますことも御承知通りであります。麦と米との需要量の変遷というものは非常に大きなものを見ております。これの将来の、六カ年先の推移というものは、私は相当のものが出てくるのじゃなかろうかと思うンであります。  そういたしますると、ここに食糧の総合的な計画というようなものについて、畜産の振興というものも大きく取り入れて考えていかなければなりませんし、水産方面の、さかなの蛋白というものも大きく考えていかなきゃいけないというようなことで、どうしても総合的な食糧計画考えていく必要があるでしょうし、さらにまた人口問題についてもこれとにらみ合ってどういうようになってくるかということもここに生まれて参りませんければ、ただこれを従来の既定の数字だけで、既定の趨勢値をもって食糧問題を解決するということは、これを解決し、これを今の増産計画だけでいったのでは、とうてい追いつくものではない。こういうふうに考えますので、資金に余力があれば、今溝口さんのおっしゃいますように、国内の食糧の増産は、これは幾らあっても足りないということじゃないのでございまして、多々ますます弁ずるものでございますから、われわれといたしましては、大方の技術のいろいろ御協力も願いまして、増産に邁進しなければならんということはもちろん必要であることも深く計画の中に織り込みましてやっていくべきものだと考えておるものでございます。
  279. 館哲二

    委員長館哲二君) もう時間が切れておりますから……。
  280. 溝口三郎

    ○溝口三郎君 時間がありませんから、この機会に高碕経審長官と農林大臣に特に私はお願いしておきたいのでございます。先般二百十四億の配分につきまして、農業関係は三十億、愛知用水に三十億でしたが、いろいろな事情から、北海道その他に多くふやさなきゃならん事情になった。当初二百十四億の借款がきまる当時は、電源開発は何ら昨年の秋には問題に入ってなかった。農業は五百八十億全額を借款によってやろうというような目的で出ていったのが、二十分の一ぐらいになってしまった。非常に少いからぜひこの際もう十億くらいは本年度農業に回してもらいたいということを、外務農林連合委員会で同僚の委員から申し出たのでございます。そのときに外務大臣大蔵大臣、経審長官、農林大臣おそろいで御協議の上で、本年度は三十億できめたからやむを得ないから、十億の分については来年度は必ず繰り上げて農業の方へ回すから、本年はがまんしてくれということで、私どもは了承していたのでございます。電源に百八十二億が配分になります。この大部分は私の承知しているところでは御母衣のダム等にこれは使用されるのじゃないかと考えるのでございます。  そこで先ほど木村委員から御母衣ダムのこの二、三年にわたる経費の使途についての非常な疑惑のあるような御発言があったのでございまして、本年度二百十四億のうちで、農業は三十億でやむを得ないが、電源は非常に重要だから百八十二億、今までの交渉のうちにはなかったのだけれども、自分のときになってからこれは入れたんだというようなことを言われたんです。私は特はこの使途につきましては、そういう世間の疑惑のないように、責任を持って一つ配分を、私個人は了承いたしますが、ああいうような疑惑の起ないように、これは政府としてもお考えになっていただきたい。また新しく愛知用水のロックフイル式ダムが始まるのでございます。それらについては農林大臣はぜひとも部下を督励しまして、寸毫も世間から非難されることのないように十分の関心を払ってこの事業に着手されんことを特に両大臣にお願いをいたしまして質問終ります。
  281. 湯山勇

    ○湯山勇君 最初文部大臣、それから自治庁長官大蔵大臣にお伺いたします。  義務教育国庫負担法が実施になりまして以来、毎年全国的に学年始めは教師の定員数がきまっておりませんので、非常に教育上不便、支障をきたしているのでございます。ことに来年度等におきましては、地方財政が逼迫して参っておりますので、この傾向は一そう大きくなるのではないか、こういう心配がございます。しかしながら、この教員定数というものは、政治情勢によって支配される性質のものでもなく、また子供の数は来年は幾らふえる、再来年は幾らふえるということはもうわかっているのでございますから、そういうような事態が再び起らないように、来年度におきましては、府県会の予算編成は三月でございますから、それ以前にちゃんと地方財政の面からも、あるいは半額負担の面からも、予算の面からも支障のないように措置をとっていただきたいと思いますが、これは三大臣関係がありますので、三大臣から一つ答弁をいただきたいと思います。
  282. 松村謙三

    国務大臣(松村謙三君) お話の通り、ことしはこれは格別でございますが、通常議会の際におきましても、それがよく連絡がとれますれば、地方としても非常にけっこうだと思うのであります。それがなかなか今日までも大体都合よくいきませんような事態でありますが、できるだけそれに沿うように努力をいたすつもりでおります。実際のところは地方からの申請を自治庁で集めまして、それで定員数をきめるというやり方をとっておるわけでございまするが、これが毎年々々の何で数学的に数が初めからわかるというような機構でもできますれば、大体御趣旨のようなことができると思いますけれども、ただいままでのところはまだそうは参っておりませんので、できるだけそういう御趣旨に沿うようなふうにいたし、町方の教育に支障のないように努めたいと思います。  詳しいことは、ここに事務の局長がおりますでございますから、御説明申し上げてもよろしゆうございます。
  283. 川島正次郎

    国務大臣川島正次郎君) 生徒の増加に対応しまする教員数は、文部省で基準がきまっておりまして、その基準から計算をいたしまして数をふやすのでありまして、本年の予算におきましても大体その基準に従いまして計算して地方財政の中へ見積っております。四月、五月の暫定予算の際にはまだ決定いたしませんので、予算措置はいたしませんでしたけれども、六月の暫定予算のときにはこれを計算いたしまして暫定予算を組んでおるわけでありますからして、現在では各地方は支障のないようになっているのだとかように心得ております。
  284. 一萬田尚登

    国務大臣(一萬田尚登君) ごもっともな御意見でございます。文部大臣、自治庁長官ともよく相談いたしまして、できるだけ善処いたしたいと思います。
  285. 湯山勇

    ○湯山勇君 自治庁長官の御答弁はちょっと違っておったように思います。現在は支障のないことはまあ大体了解できますが、四月の初めには困っておったわけでございまして、来年からは四月の勧めからそういうことがないように願いたい、こういうのが私の質問でございますが……。
  286. 川島正次郎

    国務大臣川島正次郎君) 今年は解散のために国会の開会がおくれまして、予算の決定がおくれたためにそうなったのであります。通常三月までに予算が国会で決定しますなら、当然四月からして必要な経費はいくわけでありますけれども、今年は解散という特異の事情にぶつかったので、おくれたことは事実でございます。今後はなるべく四月から、両方財政も困っておる際でありまするからして、支払いに差しつかえないような処置をしたい、こう考えております。
  287. 湯山勇

    ○湯山勇君 時間がありませんから、一つぜひ、どういう政情になろうと四月に先生がきまらないというようなことのないようにお願いします。  次に、原子力の平和的利用ということにつきましてお尋ねいたしたいのですが、先ほど、日本は今度の濃縮ウラン仮調印と……、アメリカの方は仮調印となっているのでしょうか。向うはもう仮調印というのじゃなくて、本調印の形になっているのでしょうか、これは経審長官一つ、済みませんが……。
  288. 高碕達之助

    国務大臣(高碕達之助君) 外務省からお答えするのがほんとうだと思いますが、これはこちらが仮調印でありますから向うも仮調印であります。同じでございます。
  289. 湯山勇

    ○湯山勇君 昨年から、今中曽根さんいらっしゃいますけれども、原子力の平和的利用というのが問題になりまして、いろいろ問題になっておりますが、今問題の中心は、国内態勢がどうなっているかというところにあると思います。そこで濃縮ウラン受け入れに対する国内態勢たとえば炉は日本で作るつもりか、どこでどこに作るか。それからウォーター・ボイラーであれば三つくらいできるそうですが、六キロあれば、一つ作るのか二つ作るのか、三つ作るのか、そういった問題、そういう構想。  それからまた、昨年から引き続いてこの予算は組まれておりますから、その昨年から研究してきた現状はどうなっておるか、将来はどうしていこうとしているか。これは通産大臣にも御関係があると思いますので、両大臣から一つ関係部門の御答弁を願いたいと思います。
  290. 高碕達之助

    国務大臣(高碕達之助君) お答え申し上げます。  国内の態勢につきましては、いろいろの意見がありますが、まだそう急いで大きな機構を作ってしまう必要はないと思っておりまして、ただこれが各方面にいろいろな機構ができると、将来のじゃまになりますから、なるべくこれる統一していきたい、こういう考えでございますが、これを受け入れます機関につきましては、前刻お答え申し上げましたごとく、民間の財団法人にいたしまして、それに対して政府は助成していくあるいは補助する、こういう方針で進んでいきたい、こういう所存でございます。
  291. 石橋湛山

    国務大臣(石橋湛山君) ただいままでの研究のこまかいことにつきましては、ちょうど技術院の院長がきておりますから答えさせますが、大体昨年度及び本年度で、これは三十一年度から実施して参りますけれども、拡大して実行ができる程度の研究を完成をしたい、こういうことで今やっておりまして、昨年度の研究報告は各方面から今出ております。なお技術院長から答えさせます。
  292. 駒形作次

    政府委員(駒形作次君) 二十九年度の原子力の予算につきましては、その詳細は、ここ当委員会の予備審査のときに申し上げました資料に書いてある通りでございますが、なお、申し上げますというと、原子炉の設計の基礎研究、これはいろいろなタイプの原子炉の設計につきまして、基礎的のデータを取りそろえておるのでございますが、一番初めの段階におきましては、出力ゼロのものを対象にいたしまして、その研究をいたした次第でございますので、これは三十年度に至りまして、その出力を増しました種々の場合の研究を進めていきたいと考えておる次第でございます。  それから炉の関係といたしましては、放射性の物質を取り扱いますところの、遠隔制御をいたします装置でございますが、これをマニュプレーターと申しておるのでございますが、マニュブレーターにつきましては一台試作いたしましたのでございます。二十九年度の予算におきましてこれを実行いたしまして、大体そのマニュプレーターの形のものはでき上っておるのでございまするが、まだ不備の点もあり、なお進んで研究を進めて参る必要がありますので、これはやはり三十年度におきましてやって参りたいと思っております。なおマニュプレーターにつきましては、機械的のマニュプレーターというのと、電気的のマニュプレー夕ーというものがございますので、現在、二十九年度で行いましたものは機械的のマニュプレーターでございます。電気的のものも今後着手いたしたいと考えておる次第でございます。原子炉の材料の問題につきましては、大体問題を分けまして、重水関係とウランの製練の関係と黒鉛の精製の関係、この三つの問題でございますが、それぞれ二十九年度におきましては基礎的のことを各所にお願いをいたしましたので順次レポートが今私どもの手元に参っておるところでございます。まだ全部そろっておりませんけれども、参っておるところであります。  それから資源の関係といたしまして、国内のウラン鉱石の探査の問題をやっておるわけでございますが、これは何分ウランの放射性の鉱物の探査ということは、一般の鉱物の探査とはやはり装置並びにそのやり方において違うところがありますので、放射性鉱物の探査の技術を確立するということに最初におきましては重点を置いている次第でございます。しかしながら現場におきまして、やはりこの技術の確立に努める必要がございますので、二十九年度におきましては大体七カ所におきまして、これの実地に行って探査をいたしましたけれども。まだそのおのおのにつきまして十分な結果が出ていないのでございます。三十年度におきましては、やはりこの方針のもとにやるように考えておりますが、なお、技術が相当ある段階まで参りますならば、その個所をふやしまして、そうしててきるだけ全面的に探査を進めて参るようにいたしたいと思っております。
  293. 湯山勇

    ○湯山勇君 それでは昨年はああいうふうに中曽根氏が提案されまして、政府の方では、内容の検討なく、組まれたのでございますけれども、本年は政府の方からこの予算を提案されたわけですから、大体これは見通しが立っておると思います。そこで本年度の予算でもって一応基礎の基礎と申しますか、意図された基礎的な研究はでき上ると御判断になっておられるかどうか、通産大臣から……。
  294. 石橋湛山

    国務大臣(石橋湛山君) ただいま申し上げましたように、大体本年度においてこれの一応の完成を遂げたいと思っております。
  295. 湯山勇

    ○湯山勇君 それでは来年からいよいよ本格的なことに入るわけですが、来年からどういうふうにやってゆこう、実験用原子炉、これをどういうふうな規模でどれくらいなものを作ってゆこうというように考えておられるか、これは通産か経審かどちらかよくわかりませんけれども、御説明願いたいと思います。
  296. 駒形作次

    政府委員(駒形作次君) 大臣の御説明がございましたごとく、二十九年度、三十年度におきましては、もっぱらその基礎的の研究の面に重点を注ぎまして、相当程度工業化の試験という面に着手を急ぐようにいたしたいと考えておるのでございますが、三十一年度におきましてはその成果をもって工業化の試験を遂行し、順次その規模を、たとえば重水にいたしましても、ウランの製錬にいたしましても、その規模を拡大するような工合にいたす予定にいたしております。最初私どもが考えましたのは、大体千キロワットという熱出力の天然のウラニュウム、純粋型の原子炉を考えておったのでございますが、いま少しく大きい規模のものの方がいいのではないかという意見も出て参っておるのでございます。この問題につきましては研究を進めて参ります段階におきまして十分検討をいたしまして、千キロよりもあるいは数千キロというふうな工合にしたならばよいということでございますならば、あとの年次におきますところの設備を大きくするということによって解決がつくものと考えておる次第でございます。この天然ウラニュウム、重水のパイプにつきましては、大体そういうものでもってやっていくべきであるといぅことになっておる次第でございます。
  297. 湯山勇

    ○湯山勇君 そこでその材料ですが、天然ウラニュウム、重水ですね、重水が国内でできる見込みがありますか、天然ウラニュウムについてはどうでしょう。
  298. 駒形作次

    政府委員(駒形作次君) 重水につきましては私どもが基礎研究でもって取り上げておりまするところのやり方は二つございます。一つは水素を液体にいたしまして、その液体水素を分溜いたして参りまして軽い水素と重い水素を分ける、そういう方法でございます。もう一つの方法は日本が電解工業を非常に大きく持っております関係上、その電解工業で水の電解をいたしますときに出て参りますところの蒸気の中に重い水素の分が比較的多くなっておりますから、これを出発点といたしまして重水を取るという方法でございます。この方法は交換反応による方法と私どもは申しておるのでございます。すなわち液体水素分溜方法と交換反応による方法と二つの方法を一応研究の対象といたしておるのでございます。この電解工業から出て参りますところの重水は、現在の電解の設備全体を、もしそれによって重い水を回収することができるというふうに計算をいたしまするならば、年に十五トンの重い水が得られることになるのでございます。しかしながらこれはこの電解工業と結び付けておりますところの方法はノルウェーでやっておるのでございますけれども、ノルウェーの電解工業の事情と、日本におきます電解工業の事情は若干異るところがございます。ノルウェーにおきましては非常にユニットの大きな工場が三つないし四つの大きな工場に集約されておるのでございますけれども、日本の電解工業の工場はそういうふうに集約されていないのでございますからして、全体の電解工場をこれに動員するということはかなり無理があるのではないかと、私どもは考えておるのでございます。しかしながらそういうふうな電解工業の重い水、重水を利用するという方法をやはりやりまするならば、相当の成果をこれに期待できると私どもは考えておるのでございます。  それから、それではなぜ液体水素による分溜の方法を研究するのかという御質問があるかもしれんと思うのでございますけれども、コストの計算をいたしてみまするというと、これはおわかりのように、重い水と軽い水を分けるよりも、重い水素と軽い水素を分けるという方が非常に能率がいいのでございます。従いまして重い水素の液化分溜をやります方がコストが非常に安くなるということもこれまた明らかなことでございまするので、その方法は、たとえばアンモニア合成の水素からちょうど脱脂乳式に重い水素をとりまして、あとの軽い水素は硫安の製造に使うというふうなその硫安製造の過程の中にこれを入れるということも可能なわけでございまするからして、やはり基礎研究として当然取り上げてしかるべき問題と私どもは考え、これに対しましても力を入れている次第でございます。  それからウランの方はどうなるかというお話しでございまするが、御承知のようにわが国のウラン鉱石というものは現在のところ非常に多量に出るというふうにわかっている所はございません。しかしながら各諸々方々におきまして、その徴候は認められているのでございます。フランスにおきまして、当初におきましてはウランはないといわれたフランスが、探査を非常に組織的にそうして相当金をかけましてやりました結果、現在はフランスはウランにつきましてはヨーロッパで持てる国になっているのでございまするが、それは地表の探査だけではだめなのでございまして、地下二、三十メーターないし百メーター程度のところを克明に探査することによってフランスは成功をみたのでございます、従いまして日本におきましてもその徴候をとらまえまして、そうして各所におきましてもう少しく深いところの探査をやって参りまするならば、ある程度の成果は期待できるのではないかということを、その関係のものも申しておるのでございます。鉱石がそのような状態でございまするので、これを製練いたしまする方法の研究というものも、今基礎研究の一つとして行なっておるのでございまして、この問題は何と申しましても、国内に鉱石がなければそれからあとの製錬という問題も十分ではないのでございまするけれども、そのような次第で両方に基礎研究を一生懸命進めている段階でございます。
  299. 湯山勇

    ○湯山勇君 お尋ねしようと思ったことをほとんど御答弁いただきましたので、通産大臣に、お急ぎのようですから、お尋ねいたしますが、今のようにフランスはこのために数十億のお金を出したことによって、ないといわれておったのが今ではヨーロッパで有数な生産国になっております。私は今の日本の科学技術、特にこういうものがあまりにも外国依存に過ぎるのではないかという感じを持っております。で、参考までに今外国へ払っておる特許料、それから特許件数、これはどれくらいでございますでしょうか。
  300. 石橋湛山

    国務大臣(石橋湛山君) お答えいたします。これは特許権だけでなく技術の輸入が全部入っておるものでございますか、一九五〇年から昨年五四年まで五カ年間に四百三十一件ありまして、その使用料は一昨年が千六百五十三万三千ドル、それから昨年が二千一百六十四万一千ドルであります。
  301. 湯山勇

    ○湯山勇君 そういう莫大な金を特許料、技術料として出しておるのですけれども、日本の学者は学会に行く旅費さえない状態でございます。もしこれらの外国へ払うお金でもって国内の学者に研究してもらえば、きっと私はこれらに払うより以上の効果があがると思いますので、今後そういう点について特にこの画期的な原子力の平和利用の面においては、そういう体制をとっていただきたいと思いますが、通産大臣並びに文部大臣の御所見を伺いたいと存じます。
  302. 石橋湛山

    国務大臣(石橋湛山君) 国内における研究費その他を増額しまして、できるだけ日本自身の学問を作り上げるということは、もう御意見通りで、私も長年それを唱えておるものでありますが、ただ時間の問題でありますから、時間をかければ国内でもできるけれども、まあそうゆっくりもしておられないという世界情勢でありますと、やはりノウハウはある程度外国から入れて至急に実施をするという必要も起ろうと思いますから……。
  303. 湯山勇

    ○湯山勇君 基本的には……。
  304. 石橋湛山

    国務大臣(石橋湛山君) 基本的にはむろん国内の科学技術を大いに育成するという方針でいきたいと思っております。
  305. 松村謙三

    国務大臣(松村謙三君) 私の方におきましても国内において十分の研究をいたしたいと思いまして、現に原子核の予算も組み入れておるわけでございまするし、またそのための大学の講座等も増加するつもりでおるわけでございます。
  306. 高田なほ子

    高田なほ子君 ちょっと関連質問。松村文部大臣に関連してお尋ねをいたします。今原子力の研究について原子核の研究所の問題が出たわけであります。これは原子力の研究は一皮はげば平和利用と同時に、やはり危い爆弾の研究どいう方向にも向いてくるわけです。そこで原子核の研究は私どもは心から賛意を表するわけでありますが、原子核研究所が設立されるときの学術会議としての趣意は、明らかに原子核研究一本であって、原子力の研究はしない。つまり学者の共同研究、研究の自主性を認めるということを原則とすると同時に、原子力の研究はしない、こういうことが打ち立てられておるわけです。また政府もそれを認めておるわけです。けれども原子力の基礎的な調査がだんだんと拡大されて参りますと、こうした原則が破られる危険も非常に多いように思います。そこで原子核研究に対して原子力の研究をしないと、こういうようなはっきりとした態度をお持ちになっているかどうか、この際文相の御意見をお聞きしておきたいと思います。
  307. 松村謙三

    国務大臣(松村謙三君) 何か世間に誤解がありますようで、文部省のそういう予算は、防衛の研究を含んでおるなどというようなことが、何か新聞などに出たことがありまして、まことに迷惑をいたしておるわけでございます。私どもは原子核の利用研究、原子に関するすべての研究は、これは平和利用をいたしたい、こういうつもりでやっておるのでございまして、軍事的の意味は毛頭持っておらぬことを御承知をお願いいたしたいと思います。
  308. 高田なほ子

    高田なほ子君 ちょっともう一点、今の質問に対する御回答がはずれておるのです。こういう点なんです。原子核の研究、これは異存ないわけです。また原子力の平和利用、これも異存がないわけです。ただ原子核の研究の中に原子力の研究が含まれてはいけないということは、これは学術会議の大きな原則の一つなんです。でありますから、今回文部予算の中でできます原子核研究所に対して、原子力の研究をしないという確約ができるかどうかということを質問しているわけです。
  309. 松村謙三

    国務大臣(松村謙三君) お答えをしますが、原子力の研究はいたしてないことであります。
  310. 湯山勇

    ○湯山勇君 それでは大蔵大臣と厚生大臣とにお尋ねいたします。地固め予算というのは耐乏生活を期待いたしております。ところが耐乏生活というようなことを国民にさせるためには、その鍛練に漏れるもの、落ちるものに対する救援の措置がよくできていない場合には、つまり耐乏緊縮予算には社会保障という裏付がなければ、その政治はやはりこれは苛酷な政治ということになると思うのでございますが、今年度政府のお出しになった予算は、こういう点においては十分措置がとられておるとお考えになられますかどうですか。これは大蔵大臣、厚生大臣、おのおのの立場で御答弁を願います。
  311. 一萬田尚登

    国務大臣(一萬田尚登君) 地固めの予算を遂行して行く過程におきまして失業がふえてくると、生活の困窮の方がふえるということもこれは本当にやむを得ないことで、こういう方々にはどうしても手を差し伸べなくてはならぬ、これは全くその通りであります。そういう従来緊縮予算を組んでも、ともするとそういう点に、たとえば失業対策費がそれほどないというようなことで、結局この緊縮予算というものが、実行できにくい。あるところに行くと壁に突き当る、こういうのが実情であったと思うのです。今回私はそういうふうな見地から、失業対策費等を含めて社会保障については、むろん御満足はできないかもしれませんが、できるだけ配意をいたしまして、昨年よりもふやして千億を超える予算を組んでおります。(「うそばっかり」、「本当ですかね」と呼ぶ者あり)
  312. 川崎秀二

    国務大臣(川崎秀二君) ただいま大蔵大臣から御答弁がありましたが、私も今度の予算がこれで十分だとは思っておりません。しかしながら非常に窮屈な財政事情の中におきまして、とにもかくにも第一次の復活、同時に今回の予算修正をも含めまして一千十五億に上りまする純粋の社会保障費が、それだけに上ったということは、中には失業対策だとか、あるいは生活保護というような義務的なものもありまするけれども、かなり重点的に予算を盛ったつもりでございます。
  313. 湯山勇

    ○湯山勇君 私は両大臣の御答弁はそのまますなおに受け取ることができないことをまことに残念に思います。そこでこういうような耐乏生活、あるいは緊縮予算をやるような場合の国民の生活については、各方面の意見をやはり相当尊重してやらないと、落ちるものは一そう落ちて行くと思いますが、この観点から厚生大臣お尋ねいたしますが、今回の健康保険の改正につきまして社会保障制度審議会、あるいは社会保険審議会、これらの答申について大臣はその答申を十分受け入れていない。言い方によれば無視したような形になっておりますが、これは私はどうも納得できないのですが、どういう理由でございますか。
  314. 川崎秀二

    国務大臣(川崎秀二君) 健康保険改正に当りましては今度の法律を出す以前におきまして、赤字対策として国の負担分において十億並びに本年度を通して四十億の融資をいたすことを決定をいたしたわけであります。従いまして十分国の負担もいたしておりまするから、一方において料率の引き上げ、あるいは保険法の改正によりまして、被保険者も同時に負担をして頂くつもりで今回の保険法改正ということになったわけであります。しこうして社会保険審議会の方には料率の引き上げも議題として出しましたが、社会保障制度審議会には保険法の改正、つまり標準報酬のワクの引き上げを中心とする今回の法律の改正だけを出したのでありまして、これに対して社会保障制度審議会は御反対ではありましたが、一部学者の中には政府の原案をそのままのむわけには行かないけれども、この際保険者が負担をするのが当然であるというような有力な意見もありまして、審議会の総意として反対ということが出ましたが、その反対の趣旨を一部分入れまして、たとえば標準報酬の頭打ちを七万円と考えておりましたが、四万八千円に引き下げて提案をいたしたわけでありまするから、全然無視ということは当らないと思うのでございます。
  315. 湯山勇

    ○湯山勇君 全然無視したということは当らないとはおっしゃいますけれども、やはり全然無視しているのであって、受け入れてはないわけです。ことに一部の人がどう言おうがこう言おうが、会は会として、会でなければ意味をなさないのですから、審議会が反対したということになれば、それはやはり審議会の意見として聞かなければ、その中の一人二人がどう言ったからといって変えておったのでは、今度の三鷹事件の被告だって死刑にはならない。そこで、なぜこういうものを無視してまでやらなければならないか、これは一つもう一度御答弁願いたいと思います。
  316. 川崎秀二

    国務大臣(川崎秀二君) もしこれを今度の健康保険法の改正を伴わないで出しますれば、当然赤字は、赤字補てんとしての対策は、十億ばかり欠損になるわけであります。従いましてこのことに対する責任はだれが負うかということになりますれば、政府が負わなければなりません。政府は従ってそのような無責任な態度で国会に臨むわけには行きませんから、国庫が負担をした以上、一方において被保険者も負担をしてほしいというのが社会保障の精神であるとして、最低限の御負担は被保険者においても負担していただきたいという趣旨から提出をいたしたわけであります。
  317. 湯山勇

    ○湯山勇君 これは私は十分さらに御検討願いたいと思います。そこでこういうふうに今最も大きい原因は赤字だと言われますけれども、その赤字の出た原因はどこにあるとお考えになられますでしょうか。
  318. 川崎秀二

    国務大臣(川崎秀二君) 赤字の原因は四つ五つあると思いますが、その一番大きな原因はもとより医療費の増大であります。医療費の増大のうち、結核関係の費用が非常にかさんできたということに相なると思います。ことにストレプト・マイシンとか、あるいは新規高貴薬が非常に購入をされまして、これを保険医が打つというようなことで、技術が進んだ割合にこのような医療費が高まってきたことが原因だと思っております。
  319. 湯山勇

    ○湯山勇君 賢明なる厚生大臣は何もかもよく御承知であるのですから、私は今の結核対策の問題です、最大の原因であるといわれる結核対策は、これは健保だけではなく、国保にいたしましても共済にいたしましても、あるいは生活保護にしても、結核によってずいぶん苦しくなっております。ところがその厚生大臣の最も大きな原因として御指摘になった結核対策が、本年は昨年よりも後退しているというように私は判断いたします。予算面から見ましてですね。ことに昨年の三月の十三日に結核実態調査協議会から患者の数は二百九十二万、要休養者三十二万、要注意者二百二十九万、合計処置しなければならないものの数字は五百五十二万であると答申されております。昨年二十九年度はこれに対する対策一つ立てられませんでした。そこで大蔵省におきましても大蔵大臣のお進めになっておる国の予算では、この答申については二十九年度は何の手も打てなかった。一日も早くこれだけの実態調査に基いた対策立てなくちゃならないということを、これにもちゃんと書いてございます。にもかかわらず、本年の予算を見ますと、病床も昨年よりはふえておりません。ことに健康保険分の三千六百は今年はなくなっております。  それから末端機関である保健所は、結核予防の一番先端の機関ですけれども、このお医者さんは、昨年は九五%の充足率で予算が組まれておりましたが、本年は七二%しか組まれていない。これは末端機関を強化しなければならない段階であるにかかわらず、これだけ後退しているということは、私にはどうしてもわからない。  第三には、アフター・ケア・ベッドの回転率をよくするためには、アフター・ケアをふやさなければならない。厚生省もおそらく二十くらい作らなければならないとお思いになっておったと思います。ところが、昨年と少しも変らないわずか二つしかありません。なお、運営費を見ろと言われましたけれども、運営費は、アフター・ケアの単価を落したものを回したというだけで、予算はふえておりません。さらに患者、それから病院で働いておる職員も反対しておるつき添い婦制度をなくすようなことも考えておられる。これは、患者がこれだけふえたところに対する対策一つもやっておらないのです。昨年よりも後退しておりますので、大臣がせっかく今日の健保その他の赤字の原因は結核にあると御指摘になっておきながら、その結核対策がこう後退している。これは私は重大な問題だと思います。これだけりっぱな調査が出たときに、抜本的な対策立てなければ、いつの日にかこの対策が立つか、こういうことを考えますと、非常に憂慮にたえないので、これらの点についての厚生大臣の御抱負あるいはただいまの点に対する弁明を伺いたいと存じます。
  320. 川崎秀二

    国務大臣(川崎秀二君) 結核対策は、結核対策自身といたしましては、費用のこの計算の取り方でありますが、確かに御指摘の通り二億一千万円ほど減少になっておりますし、また御指摘の点は多々私どもも肯定せざるを得ない点があると思うのであります。しかし全体として、たとえば健康保険、国民健康保険の伸び方などを見ますと、医療費のうちの約六割というものは結核に注ぎ込まれておりますし、今回の赤字補てん等におけるところの措置等を考えて見ますと、実質的に結核対策としてかけられておるところの費用というものは、私はかなり広範に注ぎ込まれておると考えるのであります。で、たとえば国民健康保険は、かなりこの結核をもカバーいたしておりますし、健康保険でもそうであります。本年度においてはこの二億一千万円を、結核対策それ自身の姿としては減少はいたしておりますけれども、健康診断の対象を大幅に増加したとか、あるいは要注意者については、健康診断をさらに六カ月後に精密検査を実施するとかいうような新らしい方針をも打ち立てまして、さらにこの結核患者に対して、従来全然行われなかった在宅患者に対して家族内の感染を防止するために、わずかではありますが隔離療養室を無償貸与するなどの新規措置をも講ずるとか、こういうような意味合いでは相当に重点的に私は伸びておる点もあると思うのであります。ことにこの結核医療費の点が非常に少くなっておる点を申されましたが、これは公費負担の対象となる療法のうち、約八割を占めまする最近のこの新らしい科学療法、抗生物質療法というものを、本年はストマイ、あるいはパスというものからヒドラジット、あるいは内服薬のパスに切りかえる、そのことのために実際には昨年よりもやや上廻ったところの対策立てられておるのでありまして、この点は十分御勘案を願いたいと思うのであります。  それから、ただいま保健所のことにつきまして御指摘がありました。これは今度の予算案におきまして、第一回の査定のときには御承知ではありましょうが、半分地方の職員にふり落すというような措置も実は大蔵当局では立案をいたしておりまして、これではとうてい地方衛生機関の先駆となる保健所を保つわけにはいかないというので、私は非常に反対をしまして、あとでは十分了解してくれまして復活したのでありますが、医師の非常に少ないような点につきましては、今後ますます努力をいたし充足いたすつもりでございます。  なお、アフター・ケアの施設につきましてお話がございましたが、これは御指摘の通りでありまして、私としては、今回の予算では非常に不十分でありますので、アフター・ケアについては将来大いに増額をいたしたい。今回の予算に関する限りでは頭を下げます。(笑声)
  321. 湯山勇

    ○湯山勇君 厚生大臣に頭を下げられたのでどうも質問ができなくなりましたが、大蔵大臣にちょっとお尋ねいたします。患者の数は二倍以上にふえているのですけれども今厚生大臣が言われましたように、実際は結核対策は後退しております。それはレントゲンの車を二十台買うと言われておりますけれども、これはかえってお前病人だということがわかっても、対策がないのですから、考え方によれば死の宣告をするようなものなんです。そこで健保の赤字も生活保護費も、すべて結核対策という日本のような特殊の現象があるためにこうなっております。よその国と、結核があるために比較ができない、そこで結核対策というものは切り離して抜本的にする必要が私はあるのではないかと思うのですが、厚生大臣は今のような御答弁ですが、大蔵大臣これはどうお考えになられますか。
  322. 一萬田尚登

    国務大臣(一萬田尚登君) お答えします。一つのまあ財政ということをしばらく離れて考えれば、私はこの結核対策というものは、これはこれとして考える、考えなくてはならぬだろうと思います。思いますが、しかしやはり財政の許す限りでなくてはなりませんので、その辺非常に研究を要すべきである、かように考えます。
  323. 湯山勇

    ○湯山勇君 厚生大臣やはり結核対策ができなければ健康保険の率を上げましても、生活保護費の医療費をふやしても、同じことを繰り返すことになるのではないかということを心配します。よその国との比較もできない、やはりこの現実の事態に立って抜本的な結核対策を、少くとも来年は立てるというようなことが必要じゃないかと思いますが、どうお考えになりましようか。  それからつき添いの問題ですね、これは衆議院も参議院も決議がありましたので、どうなさるか、これも一緒に御答弁願います。
  324. 川崎秀二

    国務大臣(川崎秀二君) 先ほど大体結核対策の細部にわたりまして答弁を申し上げたのでありますが、全般といたしまして、今回健康保険の赤字解決、また根本的対策の樹立の際に、ただいま厚生大臣の諮問機関として、七名の根本的対策委員会を設置いたしておりますが、この人々の答申を待ちまして、かつ社会保健、社会保障制度審議会の意見をも徴した上で、結核については十分に根本的な対策立ててみたいと思っております。ことに、これはイタリアあたりでは、結核保険というものを全然他の保険から切り離して一本立ちをさせておりますが、北部イタリアではちょうど日本と同じような状態でありますので、これらもかなり参考になると思います、ただし今日日本の保険は統合の方向に向っておりますので、従って保険の内部において結核を独立させるという手もあるかと思っております。しかしこれはまだ私自身の構想でありまして、厚生省としてまとめた考え方でないことはお断わりをいたしておきます。  なお、つき添い制度の問題につきましては、過般来衆議院、参議院の両社会労働委員会から決議がありましたので、私も十分これに沿うて善処をいたしたいと思っておりますが、一月から国立療養所の新規定員の増加が行われます。三月三十一日までにつき添いが大体終るような見込みで今日対策立てておるのでありますが、しかし、これらはそのときの情勢によりまして幾分弾力性を持って実行したらどうか、明年度予算を編成する際におきましては、つき添い制度が若干残るというような形になるかも知れないと思っております。
  325. 湯山勇

    ○湯山勇君 ぜひまああの決議の趣旨に沿って御善処願いたいと思います。  最後に修正案としてこの予算は当院に出されておりますので、修正点についてたくさん疑問の点があるのですけれども、これは修正者から一つお聞きしたいと思います。
  326. 館哲二

    委員長館哲二君) 中曽根衆議院議員が見えております。
  327. 湯山勇

    ○湯山勇君 中曽根議員は原案支持者の方で、どうもお聞きするのは私としてもまずいのですけれども、せっかくおいででございますから、やむを得ず質問さしていただきます。旧軍人恩給です。これをこのたび修正になっておりますが、当初の案では、下に厚くするという基本方針でありましたが、本日発表になりましたもので見ますと、下の方は三〇%ぐらいしか上っていないで、上の方は五〇%も上っております。これは当初の趣旨と違っておると思いますが、やむを得ないのかどうか。それからまた、十八億一千万、普通恩給について……、その算定の基礎はどこにあるか。これを一つ説明を願いたいと思います。
  328. 中曽根康弘

    衆議院議員中曽根康弘君) どうもふなれでありまして、御満足行かないかもしれませんが、御了承願います。  まず、下に厚く、上に薄くという原則の問題でありますが、これはできるだけそのように段階を作ることにいたしまして、将官を二号、佐官を三号、尉官以下は四号引き上げる、そういう原則で作ったのであります。ただ、基本になっておりまする恩給法の各階層のはしご段は、大体戦前のはしご段を基準にいたしておりまして、それに多少の修正を加えておりますけれども、やはりまだ相当の差がございます。これはやはり恩給法という建前でやる以上は、ある程度やむを得ないものではないかと思います。そういうはしご段を基準にいたしまして、できるだけさらに縮めようという考慮から、一番下の人は四号俸上げるが、上は二号にとどめるという考えでやったのであります。まだ完全に行かないことは遺憾でございますが、しかし恩給法の建前上、この辺でやむを得ないのではないかと思います。  第二に、予算算定の基礎でございますが、大体将官を二号、佐官を三号、尉官以下を四号に引き上げる、これで完全実施をいたしますと、年間全部で百七十五億余の負担になるのでございますが、その基礎的数字一つございますが、大体、たとえば公務扶助料にいたしますと、大将十六人、中将百二十九人、少将が四百二十四人、一番多いのは兵長でございまして四十七万四千百九十二人、上等兵が四十六万五千七百五十五人、伍長が三十五万四千三百五十八名、これが一番中心になっておるわけでございます。こういう基礎数字をもとにいたしまして計算いたしますと、フルにやって百七十五億、来年の六月までは五〇%ということでございまして、その半分で約八十七億、しかも十月から十二月までの三カ月分を今回は計上しておりますから、大体二十一億になりまして、これが当初の大蔵省原案を党側で修正しました四億と比べまして大体二十一億になりまして、数字としては間違っていないつもりでございます。
  329. 湯山勇

    ○湯山勇君 今御説明の大将何名、兵長何名……これはどこの数字でございましょうか。実は私、これは大蔵省でもお聞きしたし、恩給局でも聞いたのですけれども、そういう資料はないということでしたが、どこでおとりになった資料ですか。
  330. 中曽根康弘

    衆議院議員中曽根康弘君) これは大体大蔵省で基礎にいたしておる数字によったのでございます。
  331. 湯山勇

    ○湯山勇君 大蔵省はどこからそういう数字をとったのですか。
  332. 森永貞一郎

    政府委員森永貞一郎君) 恩給局の数字を基礎にいたしまして推定いたしました数字でございます。
  333. 湯山勇

    ○湯山勇君 私は不思議なことを聞くもので、恩給の事務を担当しておる恩給局にない数字を、大蔵省が推定して四百二十四名までできるというのは、これは手品だと思いますが、大蔵大臣どうお感じになりますか。
  334. 一萬田尚登

    国務大臣(一萬田尚登君) よく調べてみましよう。
  335. 湯山勇

    ○湯山勇君 それではこれは一つ責任を持って資料をお出し願いたい。それじゃそれはそれだけにしまして、大蔵大臣、今のことをよく覚えておって下さい。この数字はきわめてあいまいだということを、これで実際実施できるかどうか疑問ですから。  それからその次にもう一点お尋ねいたしたいのは、防火建築帯造成補助というのがありましたが、これが、補助金整理の法律によって延期になっております。今度これが出てきたのは復活ですか、新設ですか。これはどうなりますか。
  336. 中曽根康弘

    衆議院議員中曽根康弘君) これは共同修正の際に申し入れがありまして、われわれの方の方針としては、項の新設はやらない、そういう関係で、今までの前例等も調べまして、建設本省の経費の中に入れておけば差しつかえない、こういう解釈のもとに入れたのであります。従って新設ではございません。
  337. 湯山勇

    ○湯山勇君 新設かどうかを聞いておるのではなくて、復活ですか、復活でないのですかということを聞いておるのです。
  338. 中曽根康弘

    衆議院議員中曽根康弘君) 今まではこれは独立の項であったと思います。しかし、なるたけ予算を簡素化しよう、こういうことで要らない項はなるたけ削る、今年もそういう方針をもって予算を編成いたしましたので、本年度ばそれを項としては認めないことにしたのでございます。しかし、修正の際に、この経費を入れろという強い要望がございまして、適法であるならば入れてもいいということになりまして、建設本省として入れるならば、それは不当でも不法でもないという解釈でございましたので、入れたわけでございます。
  339. 湯山勇

    ○湯山勇君 要らない項をなくすというのはだれの方針でございますか。なくしたのはだれでございますか。
  340. 中曽根康弘

    衆議院議員中曽根康弘君) それは大蔵省の基本方針でございます。
  341. 湯山勇

    ○湯山勇君 これまた変なことになったんですがね。大蔵省の説明はそういう説明じゃありません。速記をよくごらんいただきたい。議会の方でなさったので、大蔵省としてはその理由はこうだろうと推測する……推測しておった。大蔵省じゃなくて、修正者がやったと大蔵省は言っております。提案者の方は、それはおれたちじゃない、大蔵省がやった、これはどうも話が違いますが、どうなんですか。
  342. 中曽根康弘

    衆議院議員中曽根康弘君) 私誤解をいたしておりまして、申しわけございませんでした。大蔵省の方針としては、本年度予算の編成に際しては項を整理する、こういうことで整理したのであります。しかし、予算の共同修正に際しては、整理されたものの中でもどうしても復活しなくちゃならぬという主張がありまして、それが不法でも不当でもないという場合には入れてもいいではないか、こういうことで建設本省の中にこれは入れられたのでございます。
  343. 湯山勇

    ○湯山勇君 そこで、そういうふうに項を整理するというようなことを議会で勝手にやってもいいかどうか、これはどうお考えになりますか。項を整理してもいいというようなことですね。項の整理というようなことを議会がやるということは合法か非合法か、これはどう御判断になりますか。これは提案者から聞きたい。
  344. 中曽根康弘

    衆議院議員中曽根康弘君) なるたけ大蔵省原案を尊重いたしまして、項や何かには手をかけない、その項のもとにおける増減ということが、望ましい次第であるというふうに承知いたしております。しかし、共同修正の際に、非常に強い要望がございまして、先ほど申し上げたような解釈で行われた次第であります。
  345. 湯山勇

    ○湯山勇君 これも総括質問の前に大蔵大臣お尋ねしたときには、項はいじっていないという御答弁でございましたけれども、やはり今日この法律が復活という形で出てくる以上は、実質的には項をいじったことになっております。だから以前の大蔵大臣の御答弁とは違ってきている。そこで、大蔵大臣は算定の基礎も先ず大丈夫だ、それから形式的にも先ず間違いないというので、この修正に応じられたと思いますけれども、大蔵大臣ただいまお聞きの通り……時間がございませんから、あまり深く申しませんけれども、ただいまお聞きの通り大蔵大臣の権限、項を動かすのは大蔵大臣の権限です。これは会計法によりましても、あるいは財政法によりましても大蔵大臣の権限、その権限を、たとえ強い要望があったにしても、勝手に衆議院でいじっている、修正の内容をとやかく言うのではなくて、そういういじり方をしたところに大きな問題があります、あるいはまた今の恩給にいたしましても、恩給の算定の基礎も今お聞きの通り明確になっていない、大蔵大臣もよくおわかりにならない、こういうのが、大蔵大臣に押しつけられているのです。こういう修正が今後もあっていいと思うかどうか、また今回の修正が大蔵大臣は妥当であったと思うかどうか。やはり今日でもなおこの修正は大して自分の権限も侵してないし、差しつかえないと初めの通り思っておられるかどうか。  それからまた提案者の方には、こういうことによって修正することがほんとうに国民のためになることが、ならぬことか。項をこういうふうないじり方をすることが認められたならば、場合によったらどんな大きな修正でもできます。こういうやり方がいいか悪いか、今日における心境を一つ、中曽根さんから伺いたい。
  346. 中曽根康弘

    衆議院議員中曽根康弘君) お答え申し上げます。なるたけ政府の原案を尊重いたしまして、項の変動等はないようにするのが、常道であると思います。今後はできるだけそういう趣旨に沿って行きたいと思います。(「邪道だぞ」「今度のは違法ですよ」「名答弁だ」と呼ぶ者あり)
  347. 湯山勇

    ○湯山勇君 大蔵大臣どうですか。
  348. 一萬田尚登

    国務大臣(一萬田尚登君) 大蔵大臣といたしまして、予算の政府原案が修正されることを望むようなことはないことはむろんであります。これはあくまで堅持いたすべきであります、今回の修正について今どう考えるか、私は妥当と考えております。  それから項のことについてのお話もありますが、別に私は事新らしく項がふえたとは今も考えていないわけであります。
  349. 湯山勇

    ○湯山勇君 大蔵大臣はそういうことをおっしゃいましたけれども、それは大へんな間違いですから、よく主計局長から教えてもらっていただきたい、必ず間違いです。大蔵大臣がもう一つがんばったらこういうことにならなかった。これも一つ今後のために大いに考えておいていただきます。こういう非合法なことをいかに政権を守るためとは言いながら、こういう不都合な修正に応じるという与党の態度もはなはだけしからぬ、一つぜひ今後戒心願いたい。以上で終ります。
  350. 田中一

    田中一君 先ほど経済六カ年計画に基いて、国土総合開発の問題につきまして、幸い自治庁長官がおられるので、自治庁長官に伺いたいと思いますが、私はこういう案を出しております。経審長官は、調整予算を持ちたいと、しかしながらこれも今年度の予算の編成に当っては自分の申し出が通らなかった、こう言うのです。そこで地方起債を各関係府県に若干持たせまして、そうしてそれを三十一年度の予算で国に振りかえるというような方法をとって、総合開発の各省に分けておりますところの予算の現地における総合調整というものをやったらどうかというような質問をしたところが、大蔵大臣も、一つの案としてはけっこうである、しかしながらなかなかいろいろな問題があって、ことに起債もなかなかないからというような御答弁があったのですが、あなたはそういう形をもって総合開発の経済効果を早期に上げるという考えに対しては、起債のワクをどのように考えておられるか、十億程度のワクがないのかどうか伺いたい。
  351. 川島正次郎

    国務大臣川島正次郎君) 御質問はよく承わっておったのですが、大蔵大臣に御質問があった関連を私存じませんからちょっと意味が聞き取れなかったので、まことに申し訳ございませんが、もう一度ちょっとお願いいたします。
  352. 田中一

    田中一君 これは時間外ですよ、お聞き取り願えないのは大へん申し訳ございません、私の声が悪いので……。十億程度の地方起債を国土総合開発の調整資金として三十年度は一応地方に、府県に起債を許すわけにはいかないだろうか。そうすれば総合開発は早期に経済効果が上がるのではないだろうかと、こう言っているのです。従ってあなたの方で起債のワクというものが本年度十億ぐらいのものは貸し出すものはありませんかと伺ったのです。またそういうような措置をとろうというお考えがないかどうか伺いたい。
  353. 川島正次郎

    国務大臣川島正次郎君) 御趣意はよくわかりました。総合開発の場合は、起債だけでやる事業とそれから公共事業で政府の補助事業に対する起債の分と両方あるわけでありまして、それが合併した経費でもって事業をやると、こういうことになるのでありまして、今お話の総合開発のために、いわゆる国土開発のために別に十億程度の起債のワクはないかという御質問でありました。大体本年度の起債総額は一千百二十四億、前年度通りでありまして、しかもそのうちから再建整備に要する費用百十億を引きますからして、昨年よりはよほど窮屈になっているのでありまして、現在の計画としては国土開発のために起債を許そうという計画はできておりません。しかしまだ起債は全然どこも許しておりませんので、これからの研究になるのでありますけれども、今日といたしましてはお話のような意味の起債は計算をいたしておらぬわけであります。
  354. 田中一

    田中一君 まあ、これ以上私は申しませんから、経審長官からよく私の言っている意図を御聞き下さい。そうしてなるべくそういうことの実現するようにお願いしたい。  大蔵大臣に伺いますが、今の調整資金の問題につきましては、開発銀行の本年度の貸付計画のうち、予備として十五億を余しているのです。今の起債のワクができなければ、この十五億の開発銀行の予備金を十億程度、経審長官が言っているように経済六カ年計画の初年度であるところの三十年度、そうして早期に経済効果を上げるということが眼目と思いますから、このうち十億程度をやはり地方にあなたの措置でもって、何か適当な措置をもって貸付けるようなことはできませんか。
  355. 一萬田尚登

    国務大臣(一萬田尚登君) この予備金に十三億ありますが、これは今のところ石油価格、これに一応充てているのでありまして、大体使途がきまっているのであります。
  356. 田中一

    田中一君 この開発銀行に関連して、今の場合はその御答弁やむを得ませんが、開発銀行に関連しましてこの前身であるところの復興金融金庫ですか、これが相当大幅に終戦後石炭増産のための炭住資金として金をだいぶ貸してあります。これの回収率はどうなっておりますか。それから一昨々年でしたか、自由党吉田内閣は選挙の前に突如として利子の切り下げをして二十億程度のものを石炭鉱業者に何というか、くれてやったようなことがございますが、この炭住資金に対しますところの今日までの回収率並びに利子の切り下げなんかをまたやるようなつもりがありませんかどうか、それを伺いたいと思います。
  357. 一萬田尚登

    国務大臣(一萬田尚登君) 復金から開発銀行が承継した金は、この復金の総貸出額は全部で三千四十一億三千五百万でありますが、三月末のこの残っておるのは三百九十八億五千五百万円になっております。大体それで一割程度が残っておる。これは公団の分が千七百八億二千四百万円、これが全額回収になる、それを除いた千三百二十三億一千百万円が今年の三月末で三百九十八億五千五百万円と、かようになっております。全体からみれば約一割が現在残っておると、こういうのが復金の回収率であります。
  358. 田中一

    田中一君 これの最後の、一番しまいの回収はいつごろに予定されておりますか。
  359. 一萬田尚登

    国務大臣(一萬田尚登君) 政府委員から申し上げます。
  360. 河野通一

    政府委員河野通一君) 復金から承継いたしました貸し出しの回収の状況は今大蔵大臣から申し上げた通りでありますが、回収未済の残高が三百九十八億、そのうち延滞になっておりますものが八十三億、こういうふうに御了承願いたいと思います。延滞になっておりません貸出残高はこれは期限がまだ参っておりませんから、返って参りませんが、期限が参るとともに返ると考えて差しつかえないと思います。また延滞になっておりますものも極力回収をいたして参らなければならないと思います。国民の税金その他からなっておりますものですから、今後といえども一銭一厘でも回収を多くする、回収不能額を減らしていかなければならないと考えております。しかし何分にもそのうちの個々のものにつきましてはすでにその事業の対象が破産をいたしたといったようなものもございます。こういったものはやはり担保その他を処分いたしましてもどうしても回収できないものが残念ながら残ると思いますが、これらは今後極力回収いたした上で努力いたしました後の問題でございまして、現在どの程度最終的に欠損あるいは回収不能の状態になるかということは今のところちょっとわかりません。極力回収に努めたいと思っております。
  361. 田中一

    田中一君 炭鉱住宅に貸した金が相当大きいと思うのですが、この八十三億のうちそのような炭鉱住宅に貸した資金はどのくらい入っておりますか。
  362. 河野通一

    政府委員河野通一君) ちょっと手元に炭鉱だけの問題の数字は持っておりませんが、お手元に……、お手元にございませんか、鉱業全体、復金の関係のマイニング全体に出しております資金のうち現在残高として残っておりますものが百九十九億であります。この中で延滞になっておりますものが四十二億程度ございます。このうちの、ちょっとはっきりしたことは申し上げられませんが、相当部分が炭鉱関係です、その炭鉱関係のうちの相当部分がいわゆる炭住関係であろうと思います。なお詳細な点は調べた上で後刻資料として御提出いたしたいと思います。
  363. 田中一

    田中一君 私はこういうことを伺ったのは建設大臣に申し上げたいからなんです。これ四十二億の延滞のものが、これが担保物件と申しますか、炭住というものがあのバラックを建てたものでございますから、従って物件としての回収はできないのじゃないかとこう考えておるのです。そこで建設大臣に伺いたいのは、どうも本年度の四十二万戸のワクの中に木造建築が多いということなんでございます。せいぜい十年か十五年で大改造しなきゃならないものになるにかかわらず木造建築が多いということに対してはこれは相当考えてもらわなきゃならぬと思うのです。これは御答弁要りません。  そこで大蔵大臣一つ伺いますが、住宅資金に関する民間の投資が金利がばらばらなんです。たとえば昨年日本損保協会といいますか、火災保険協会が東京都住宅協会に貸そうといった金利は、これは七分八厘なんです。七分八厘で現在契約はしておるのです。しかし今度の住宅公団に貸す金利というものは九分になっております。あるいは八分八厘程度に下げましたかどうか、少くとも同じ会社、団体が投資するのに、一つは七分八厘、片方は九分などということになりますと、これは金融機関勝手々々にやっていいのでしょうけれども、しかし少くとも公共のために奉仕しようというようなつもりで投資する資金というものは、これはやはり多少大蔵大臣としてはこれに対する指導というものがなくちゃならぬと思うのです。従って現在の民間資金というものを公共のために投資する場合どの程度のものが妥当なる金利であるか、大蔵大臣の御見解を伺います。
  364. 一萬田尚登

    国務大臣(一萬田尚登君) ただいまお示しのこの東京都の場合におきましては、これは金額も小さくて、比較的これは一年以内のものでつなぎになっております。ですからこやつは建築資金というわけにいきません。金利も従って安い、こういうふうに御了承願いたい。  それから金利につきましては、今全体に全部の金利についてこうこうというわけにいきませんので一応金利の最高を、いわば法律でといいますか、金利調整審議会というのがありまして、そこで金利の最高を資金の性質に応じてこうきめてありまして、それ以上は金融機関が利子をとるわけにいきませんから、それ以下でしたらば競争でなるべく安くする、こういうのが今日の金利の状況になっておりまして、この数字的にこまかい点は銀行局長から申しますが、大体長期のもので一割程度になっておると思います。それから普通短期貸し出しのものが大体日歩にいたしますと二銭前後というくらいなところで大体押えておる。なお金利の点についてこまかいこと必要でありますれば銀行局長から申し上げます。
  365. 田中一

    田中一君 電話公債はたしか七分二厘だか八厘たかと思っておりますが、電話公債の消化率はどうなっておるか相当貸しておりますか、それとも先般の生命保険会社、団体に聞きますと、これは金融界のもてあましものだということもいっております。そこで大蔵大臣としては片方においては七分八厘程度の電話公債を発行させ、公団のような、四十二万戸のあなたの言った公約です、これを実行さすためにはやはり金融資本に対してはおじぎをしなきゃ金がこないというのか、九分の利子、長期短期を問わず、電話公債、実は長期です、この東京都のごときは短期といっても一年、長期といっても五年です、こういうもので、大蔵大臣としてはどういうような民間事業の公共事業に対す投資に対する利率というものの指導をするか、考え方を持っておるかを伺いたいのです。もっと銀行局長からでなくて、あなたから伺いたいのです。
  366. 一萬田尚登

    国務大臣(一萬田尚登君) お答えします。この金利につきましては、何としてもこの資本の蓄積が先行して、そうして需給関係のバランスが得られないとしますと、いかようにいたしましても実際は金利が上って来ます。かりに需給が悪いときに、強権的に金利を下げるようなことをいたしましても、これはいろいろな手を尽しまして、実際上の資金コストが上るということは、今日の経済組織では私はやむを得ないと思っております。それでできるだけこのまず資本の蓄積をはかっていく、こういうことをまあやっておる。これはこの数年来非常に苦しいこの財政経済政策を継続して来た結果、物価も下り、安定もしておるということで、今日ようやくその芽が出て、資本の蓄積ができ始めて来つつあるわけです。これはまあ実際から見ましても日本銀行からの貸し出しはぐっと減っております。もうこの日本銀行と市中銀行との関係におきましては、その正常化は相当将来でないうちにくるだろうと考えております。言いかえれば今後金融機関等が預貯金がふえても、日本銀行にも返すことは非常に少い、そうしてそういうことは将来非常になくなる、そうしてみると集まった資金は、どうしても産業その他に投融資あるいは貸付をしなくてはならないという状態がくるのでありまして、そうしますと、個々の金利も下ってくる、こういうのが今漸次現われつつある現象で、この情勢を強く押し進めて参りたい、こういうことで金利も今後においては当然私は下げるというよりも下る状況下にある、これがまた下げるように指導をしていく、そうしてこういうことで大体の目安にいたしまして、たとえば長期のものにして私はやはり年七分ぐらいのところで長期のものが調達できるというのがまあいいのじゃないか、第一の目標はその辺においていけるであろう、こういうふうな考え方をいたしております。短期についてはむろんそういう情勢では、これはたとえばコールにいたしましても今日日歩二銭一厘ないし二厘いたしておりますが、これは日本銀行の最低公定歩合よりもちょっと低いか、あるいはそういうところに近いところ、今後についていえば一銭八、九厘というようなところにコールのレートをもっていきたい、こういうふうな指導方針、これを元にして短期の貸し出しも金利を下げていく、かように考えて一応の構想を持って進んでおるわけであります。
  367. 田中一

    田中一君 電話を持っている人は、持てる階級が多いのです。今度の公団は、いわゆる金利が高いために、また五年のような短期のためにどうしても家賃が小さいものでも四千五、六百円になるわけなんですね、従って電話公債は七分八厘程度の利回りのものを発行させ、そうして非常にこの住宅に困っている、いわゆる大衆に対しましては、九分の金利の金を投資させるということがあっちゃならぬと思うのです。そこで建設大臣は、あなたの方でも電話と同じような率の公債を発行すれば、これは国民が得をするのです。この持たない国民が安い家賃でもって家へ入れることになるのです。そこで場合によればそういうような構想をお持ちになったことございましたかどうか。
  368. 竹山祐太郎

    国務大臣竹山祐太郎君) 公団法では、住宅の公債の発行のできる制度を織り込んでありますが、今年はまだ全体の公債政策の問題もありますし、一応政府の無利子の財政資金と、それから預金部及び簡保の資金、それに今御指摘の保険会社の民間資金を合わせまして、できるだけ低い金利の住宅資金をもって公団の運営をいたしたい、かように考えておる次第であります。
  369. 田中一

    田中一君 いや、建設大臣考えてないですよ。考えているならこの住宅公債を出して電話と同じように七分八厘の公債を出せばいいじゃないですか。なぜ大衆が負担しなければならないところの公団の住宅に対して九分の金を借りるんですか。電話公債七分八厘のちゃんと例があるんじゃありませんか。私はそこに非常に大蔵大臣がやはり金融資本の上に乗っかって、やっぱり何か自由にならないような点があるんじゃなかろうか、こう考える。これは私国民の前に大きな声で言います。電話に対しては七分八厘の利回りの公債を発行させ、住宅に対しては九分の利回りの投資をさせる、こんなことはあり得るはずがないと思う。こういう点で住宅の家賃が高くなるのは当りまえです。こういうことは四十二万戸の発言をしたのが一萬田大蔵大臣ですから、あなたが今度は国民の恨みを買うことになるんです。まあこれはこれ以上聞きません。  そこで次に伺いたいのは、建設省は米国の技師を招聘して、いわゆるわれわれが言っておる弾丸道路というものを三年計画で調査しておる。それで本年度の予算を見ますと九百九万円余計上しております。これはどういう所を今まで調査したのか、どういう構想でしたのか、それから今衆議院におきまして各派共同提案で通過する見込みになっておりますところの高速自動車道路、これを建設大臣はどちらをとろうとするのか、それで九百九万円の本年度に計上しましたところの調査費というものはどこを調査しようとするおつもりなのか伺いたいのです。
  370. 竹山祐太郎

    国務大臣竹山祐太郎君) 今年度予算に計上いたしておりますのは、前内閣以来引き続いてやっております東海道の新しい高速道路、いろいろ名前は世間で言われておりますが、要するに東海道へ新しい高速道路を作ろうということで調査を継続をいたしておるわけでありまして、今御指摘の、先般アメリカの、今佐久間に来ております土木の技師を頼んでその実地調査を依頼をいたしたのも、当面まず着手をしたらと考えております名古屋、大阪間の地区につきまして今現地調査をいたしておるようなわけで、お話の衆議院におきまして、各派の共同提案を見ております問題は、これはいずれ両院の御意思の決定を待って、その方向にわれわれも全力をあげて、その御趣旨の実現に努力をいたしたいと考えておりますが、私の感じで申すならば、前内閣以来考えて参りました東海道の新しい道路は、この全体の今予想されておるものの一部をなすものであるというふうにわれわれは理解をいたして、この全体の計画に対しても全面的な努力、協力をするのが当然と心得ておるようなわけで、私たちはこの法案の通過はまたあろうとなかろうと前内閣以来の、今申す新しい道路の構想に向って、外債、外国資本、その他低利の資金を得るためにあらゆる努力をいたしておるようなわけであります。
  371. 田中一

    田中一君 新聞を見ますと建設省は従来自由党からやっておるところの東海道の方の道路、それから国会においては各政党がいわゆる中央道路というものを支持しておるように聞いておりますけれども、今の九百九万円を投じて本年度調査するという所は、それは場所ははっきりいたしませんが、少くとも中央道として山間部につけようという道路に乗っかっておるものと了承してもいいんですか。
  372. 竹山祐太郎

    国務大臣竹山祐太郎君) これは今回新しく提案を見ます路線というものは、これからおそらく審議決定をされるものと考えますが、建設省が従来調査の対象にいたしておりますものにはいろいろな案があり得るわけでありますが、とりあえず今私が申し上げました大阪、名古屋間の路線につきましては、具体的に言えばいろいろまだありますけれども、大体の設置の見当がついておりますもの確定をしたところから手をつけて参りたいという考えで、私どもは漸次いろんな経済その他の角度から調査をいたして、実行に入るに従って進めて参りたいと考えております。
  373. 田中一

    田中一君 建設大臣に伺いますが、本年度の予算を見ますと、東北興業に一億の投資をしておるようになっております。これは内容は東北興業が今までどういう実績をあげておるか、同時にまたこの一億円の投資というものは、東北は御承知のように後進地でございます。どうか一億でも、二億でも投資をしていただいて、十分な開発をしてほしいと思いますけれども、しかしどういう計画でやるのか、それから大体従来まで東北興業がどういう実績をあげておるか、この点を一つ詳細に御説明願いたいと思います。
  374. 竹山祐太郎

    国務大臣竹山祐太郎君) 東北興業につきましては、ずいぶん歴史は古いわけでありますが、御承知のように、戦後非常に衰微と言いますか、事態が悪化をいたしまして、前内閣もいろいろ努力をして安定の線まで参ったわけでありますが、現在やっております仕事は、山形県、福島県、岩手県等に直接及び子会社等が仕事をいたしておりますが、率直に申して非常にこれが振興をしておるとは申せない状態であります。しかし東北の問題は、お説の通り、何としても北海道とともに新しい将来への開発の資源を持っており、力を入れなきゃならないところで、現内閣としても総理の施政方針にそのことをうたっておりますように、いろいろな、もちろん東北振興の方策はありましょけれども、そのことが専門の目的で作りました東北興業をして東北の振興に一役を買わせるということもこの際必要と考えまして、お話の通り今回の予算に一億円の予算を計上をいたしたわけであります。これはもとより一債円で仕事が大きなものができるとは心得ておりませんが、これを元にいたしまして、今後民間資本等を集めまして、東北に向く工業を興して参りたい。実はいろいろ腹案もありますけれども、これは資金計画等に伴いまして今後考えて参るわけでありまして、全然構想がないわけではありません。それは東北の知事会等の希望は、セメント工業、肥料工業等の計画をやってくれということでありますので、一応そういう線に向って今資金を、あわせて具体的な計画を予算の決定を待って進めて参りたいと考えております。
  375. 田中一

    田中一君 建設大臣、今までの実績はどうなっておるのです。
  376. 竹山祐太郎

    国務大臣竹山祐太郎君) 実績と申しても、今本社の直営をいたしておりますのは山形県で亜炭の工業をやっております。これはようやく黒字の程度であります。福島県で石炭窒素の工場をやっておりますが、これは相当よく行っております、そのほかは、いわゆるある程度出資をしまして、子会社と言いますか、共同の会社をやっているものが、山形、宮城、岩手、青森、秋田等にありますが、全体をくるめて、ようやく戦後の混乱の中でどうにもならなかった会社が一本立ちをするところまで参った。まあこれからしっかりやろうという基礎が確立をしたという状況であります。
  377. 田中一

    田中一君 次に伺いたいのは、最近屋外事業場におけるところの災害か非常に多くなっているんです。この点生産性向上ということをうたっているところの現内閣として、その強化によって人為的な災害が多いのではなかろうかと考えられる節もあるのです。そこで来月の一日からいよいよ安全週間に入るようですが、まず第一に、労働省はどういう形で今の生産性向上を企図するための災害防止と言いますか、こういう点を考えられているか、同時にまた公共事業の発注勘定であるところの建設省は、ただ労働省にまかせておればよろしいという程度だけであっちゃならないと思うのです。従って建設省自身がこれに対する協力態勢と言いますか、あるいは予防態勢と言いますか、こういう点をどのような措置をとっておられるか、詳細に説明を願いたいと思います。
  378. 竹山祐太郎

    国務大臣竹山祐太郎君) 労務管理そのものは労働大臣からお答えがあると思いますが、建設省は御承知のように直営をいたしている分がありますので、さような面におきましては、できるだけ、御注意のような点について、細心の注意を払ってやっているつもりでありまして、全体に対しては、直営工事は割合成績がいいと言われているようなわけでありますが、なお今後よく注意をいたしまして、災害の少いようにいたしたい、まあ起りました災害に対しましては、公動員の災害補償制度を活用をいたして参っているような次第であります。
  379. 西田隆男

    国務大臣(西田隆男君) お答えいたします。国全体の事業場としましてのこの災害は、二十八年度が四十七万七千件、二十九年度は四十六万三千件と、若干の減少を来たしております。しかしながら、さっき田中さんがおっしゃいましたように、屋外でありますところの特にこの建設事業、これは残念ながら二十八年に十万九千件が、二十九年には十二万七千件と増加いたしております。理由は、大規模の電源開発工事が起きたことからきております。それから電源開発の工事の請け負い期間と申しますか、工事期間を特定の理由によって短縮を要請されている、そのための災害、それからもう一つは、屋外における建設工事、土工工事の近代化、機械化をまだよく従業員そのものが消化し切っていない。この三つが大体大きな原因でふえていると私は考えております。従ってこれに対しまする対策としましては、労使双方に対して、これはもう安全週間でなくても、日ごろから安全に対する啓蒙運動をやっております。それを一つやっております。それから特にこの大きな工事をやっております場所に対しましては、技術管理官を常駐せしめたり、あるいは大きな工事の、特に大きな作業をする場合には派遣をしたりいたしまして、従業員の技術的な訓練、それから監督、啓蒙と、こういう教育というような面でできるだけの努力をいたしております。特にこの屋外建設工事におきましては、爆薬をたくさん使いますので、これが以前と違いまして、大量の爆薬を使って一挙に爆破するという方法をとっておりますので、爆薬につきましては、特に注意をしておりますけれども、本年度に入りましても、御承知の秋葉ダムでも三件事故が起りまして、二十数名の人を殺しまして、この際も二トンのところを四トンの爆薬を使った。一カ所だけは完全に爆破ができましたけれども、一カ所はそれができてないのか、できてるのかわからないのに、さく坑して、そうして小さなハッパをやったために、爆破してなかったダイナマイトに点火して、非常に惨事を起した、こういうふうな、注意すれば防ぎ得るという事故がかなり多くありまして、そういう面に関しましては、労働省としましても災害を除去するために非常に努力をいたしております。電源工事でも特に佐久間ダムのごときは注意しました結果、十万時間無事故であるというような最近非常に成績が上っておりまして、今後ともこれに対しましては万全の措置を講じて行きたいと考えております。
  380. 田中一

    田中一君 七月一日からの安全週間にはどういう行事と方法をなさって、今の安全の徹底をはかるかということについて……。
  381. 西田隆男

    国務大臣(西田隆男君) これは御承知のように、労働省だけで安全週間をやるものではありませんで、民間の団体と協力を求めてやっておりますので、安全団体が各所にありまして、それと緊密に連絡をとりまして、安全週間は目的としては無事故週間にしたいという考えで現在やっております。二十九年度中におきましては、工場では全く無事故な工場が千六百八工場できておりまして、相当安全週間の効果は上っておると思います。
  382. 田中一

    田中一君 いろいろ一単位の産業にも労災保険をやっておるところもありますし、いろいろ補償保険組合が多いわけなんですが、これを政府一つ統合するような意図はございますか。
  383. 西田隆男

    国務大臣(西田隆男君) 今お尋ねの点は、労災保険のことでございましょうか。労災保険は各自治体でやっておるということを私は知りませんが、国として労災保険法に基いて労災保険を実施いたしておりますので、労災保険の収支バランスは相当赤字になっております。従って今度改正法案をただいま衆議院の方に提案いたしておりますが、それによって労災保険も赤字の出ない程度に三十年度からは十分にやって行ける見通しをつけてやっております。特に今申しました土建事業に対しましては非常に災害が多うございますのでメリット制を、今度の法案の中で改正して、メリット制に保険の何と申しますか、納付金をいたしております。それで大体労災保険は赤字が出ないままに経営して行けると、かように考えております。
  384. 田中一

    田中一君 相当今度の法律の改正でやはり民間の負担が多くなるわけなんです。そこで私一つ建設大臣大蔵大臣に伺いたいのですが、このいろいろ保険に、たとえば今の共済とか、いろんな形でもって保険をやっておりますが、こうした保険料というものは発注官庁である建設省の予算の原案と言いますか、実施予算と言いますか、こういうものには含まれておりますか、おりませんか。
  385. 竹山祐太郎

    国務大臣竹山祐太郎君) 私もこまかい運用はよくわかりませんから、よく調べまして御報告いたしたいと思います。
  386. 田中一

    田中一君 時間まだありますか。
  387. 館哲二

    委員長館哲二君) 時間はもう二分だそうです。
  388. 田中一

    田中一君 大蔵大臣にその関係を伺いますが、公共事業費の実施予算というものの中には、そうしたいろいろな保険やその他の費用というものは、予算の計算の中に織り込んであるかどうかを伺っているのですが。
  389. 森永貞一郎

    政府委員森永貞一郎君) 直営事業についてのお尋ねだと存じますが、直営分につきましては所要の賃金並び付帯設備等を、一々の積み上げ計算ではございませんが、一定の基準によりまして積算いたして計上いたしております。
  390. 田中一

    田中一君 請負工事の場合にはどのくらいの率で織り込んでございますか。
  391. 森永貞一郎

    政府委員森永貞一郎君) 請負の場合には、こまかい積算をいたした上で金額を計算しておるわけではないわけでございまして、大体の所要経費を単価を見積りまして計上いたしておりますが、おそらくその中で業者がそういったものも計算に入れまして入札に応ずるということでございまして、政府の予算といたしましては、そこまでの積算はいたしておりません。
  392. 田中一

    田中一君 労働大臣に伺いますが、このように政府の予算の中には、そうした保険料というものを含んでないのです。ですから請負の場合は、その労務管理と言いますか、安全が守れないのです。政府の予算にはそういうものがいつも入っていないのです。そこでこれは竹山建設大臣は御存じないそうですが、それがほんとうなんです。もう請負に出す場合にはそうした諸経費というものを含まないものが現予算として、実行予算として積算されるように私は聞いておるのですが。
  393. 森永貞一郎

    政府委員森永貞一郎君) 予算の積算をいたします場合に、たとえば建築工事でございますれば、鉄筋は一坪当り十万円なら十万円、これは普通世間に行われておりまする単価の数字その他を見きわめて、その単価をとって予算を積算いたしておるわけでございますが、普通世間で行われておるその単価の中には、そういうことももちろんこれはコスト計算に入っておると思います。しかし政府が予算を計上いたします場合には、その世間一般で行われております単価を、そこから始めまして予算を積算いたしておるわけでございまして、観念的には入っておるということを申し上げられるかと思いますが、予算の積算をいたします場合には、そこまで一々計算をしてはいない、さような趣旨でお答えを申し上げたわけであります。
  394. 田中一

    田中一君 では一つ竹山さんにお願いしますが、これはあなたに一つお願いします。そこに合同庁舎がありますね。合同庁舎の実際に組んだ予算、もうでき上ったのですから秘密がないと思いますが、あれの積算ですね。予算の積算の表を資料でお出し願いたい。  それから大蔵大臣にお願いしますが、防衛庁の建築をやっておりますね。あれも請負が済みましたから、あれの実際の積算というものはどうなっておるか。大蔵大臣から防衛庁の方へ御要求になって、実際の積算の原案というものを資料としてお出し願いたいと思います。よろしうございますか。
  395. 森永貞一郎

    政府委員森永貞一郎君) 防衛庁の庁舎の問題でございますが、契約金額、その明細みたいなものをお出しすればよろしいのでございましょうか。
  396. 田中一

    田中一君 契約金額はわかっておるのです。従ってその原案、むろん見積り積算する原案です。これはあるはずなんですから……。
  397. 森永貞一郎

    政府委員森永貞一郎君) おそらく予定入札価格のことかも存じませんが。
  398. 田中一

    田中一君 そうじゃないのです。実際に防衛庁が防衛庁庁舎を作ろうとする、そうすると、初めに設計か何か基礎積算しますね。その積算の内容を一つ示し願いたい。どういう基礎でやっておるか。
  399. 森永貞一郎

    政府委員森永貞一郎君) 防衛庁当局とよく相談いたします。
  400. 田中一

    田中一君 それは承知してくれたのでしょうね。相談して、どうなんです。
  401. 一萬田尚登

    国務大臣(一萬田尚登君) 防衛庁長官によく相談してみましょう。
  402. 田中一

    田中一君 相談して出してくれるのですか。
  403. 一萬田尚登

    国務大臣(一萬田尚登君) ちょっと相談してみましょう。よその省のことでございますから、私勝手にどうも防衛庁の……。建設省の方で監督をやるわけでありますから、何しておりますから、大蔵省は……。
  404. 西田隆男

    国務大臣(西田隆男君) 田中さんのお尋ねになっていることがよくわかってないようでありますから……。私は事業をやっておりますので、よくわかりますが、労災保険料とか、失業保険料とかというものは公租公課の中に、事業予算の中に必ず編成いたします。しかし請負者が事業予算の中に編成をしておらぬといって、今度は請負入札する場合に、労災保険料が幾ら、失業保険料が幾ら、健康保険料が幾らというような内容を明記してはおそらく落札はしてないと思いますので、大蔵省も建設省も弱っておるのじゃないかと思いますが、あなたのおっしゃるのはそういう意味合いにおいての内容を示せと、こういうことでございましょう。
  405. 田中一

    田中一君 やはり西田さん事業をしておるからよくわかりますが、今のそういうものが予算に入ってないのですから、屋外災外に対する安全な保証ができないのです。だから実際に資料を出していただきたいと思うのです。よろしうございますね。
  406. 竹山祐太郎

    国務大臣竹山祐太郎君) できるだけのものは、わかりますれば出します。どうもできないものだけは出せないと思います。よく調べまして別の機会に資料として提出いたします。
  407. 館哲二

    委員長館哲二君) 本日はこれにて散会いたします。明日は日曜日でありますが、特に開会をいたしまして午前十時より質疑を続行いたします。それでは散会いたします。   午後七時三十六分散会