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1955-06-21 第22回国会 参議院 予算委員会 第29号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和三十年六月二十一日(火曜日)    午前十一時九分開会   —————————————  出席者は左の通り。    委員長     館  哲二君    理事           池田宇右衞門君            石原幹市郎君            西郷吉之助君            豊田 雅孝君            佐多 忠隆君            吉田 法晴君            松澤 兼人君            堀木 鎌三君    委員            伊能 芳雄君            植竹 春彦君            小沢久太郎君            小野 義夫君            木村 守江君            左藤 義詮君            佐藤清一郎君            田中 啓一君            高橋進太郎君            西岡 ハル君            堀  末治君            安井  謙君            吉田 萬次君            梶原 茂嘉君            小林 政夫君            廣瀬 久忠君            溝口 三郎君            秋山 長造君            小林 孝平君            高田なほ子君            永岡 光治君            湯山  勇君            田中  一君            山下 義信君            石坂 豊一君            深川タマヱ君            武藤 常介君            千田  正君            八木 幸吉君   国務大臣    法 務 大 臣 花村 四郎君    大 蔵 大 臣 一萬田尚登君    文 部 大 臣 松村 謙三君    厚 生 大 臣 川崎 秀二君    通商産業大臣  石橋 湛山君    運 輸 大 臣 三木 武夫君    郵 政 大 臣 松田竹千代君    労 働 大 臣 西田 隆男君    国 務 大 臣 大麻 唯男君   国 務 大 臣 大久保留次郎君    国 務 大 臣 杉原 荒太君    国 務 大 臣 高碕達之助君   政府委員    法制局長官   林  修三君    警察庁刑事部長 中川 董治君    防衛庁長官官房    長       門叶 宗雄君    防衛庁経理局長 石原 周夫君    経済審議政務次    官       田中 龍夫君    経済審議庁計画    部長      佐々木義武君    法務省刑事局長 井本 臺吉君    大蔵省主計局長 森永貞一郎君    大蔵省主計局次    長       原  純夫君    大蔵省理財局長 阪田 泰二君    大蔵省銀行局長 河野 通一君    厚生省公衆衛生    局長      山口 正義君    厚生省引揚援護    局長      田邊 繁雄君    農林政務次官  吉川 久衛君    通商産業大臣官    房長      岩武 照彦君   事務局側    常任委員会専門    員       野津高次郎君    常任委員会専門    員       長谷川喜作君    常任委員会専門    員       正木 千冬君   —————————————   本日の会議に付した案件 ○昭和三十年度一般会計予算内閣提  出、衆議院送付) ○昭和三十年度特別会計予算内閣提  出、衆議院送付) ○昭和三十年度政府関係機関予算(内  閣提出、衆議院送付)   —————————————
  2. 館哲二

    委員長館哲二君) これより委員会を開きます。  本日から一般質疑に入ります。まず田中啓一君。
  3. 田中啓一

    田中啓一君 私は経済審議庁長官を初めとしまして、関係大臣に、主として経済計画と三十年度予算との関係について質疑をしたいと思います。  まず第一に経済審議庁長官にお伺いいたしたいのは、昭和二十九年の農林水産生産水準というものは、昭和二十五年ないし七年度を一〇〇といたしますると、一〇五であるというところから始まっておるのでございますが、これはどういう勘定で一〇五になるのでありますか、それをお伺いしたいと思います。
  4. 佐々木義武

    政府委員佐々木義武君) 農業増産計画に関しましての御質問でございますが、実数並びに出し方を御説明いたしませんと、なかなか数字説明がややこしいものでございますから、少し時間を拝借して御説明いたしたいと思いますが、よろしうございますか。
  5. 田中啓一

    田中啓一君 どうぞ。
  6. 佐々木義武

    政府委員佐々木義武君) まず米麦実数の方から先に御説明いたしますと、米麦の中には米、小麦大麦裸麦と、四種類をとってございますが、その総合指数の問題でございまして、まず実数から申し上げますと、二十七年から申し上げますが、二十七年は玄米換算にいたしまして八千八百四十六万石でございます。それから二十八年は七千五百七十八万石、二十九年は八千五百四十九万七千石、三十年度は八千八百五万石、三十一年は八千九百一万石、三十二年は九千八十万石となっております。これは米麦合せての玄米換算実数でございますが、それを米、大麦小麦に分けて参りますと、実数はございますが、あまり長くなりますので、米麦でこういうふうに出しまして、そして米麦指数をとる際には、どういうふうな指数になるかと申しますと、実は指数の取り方が非常に問題でございまして、今のように、たとえば二十九年を基準にいたしますと、非常に増産率が低いのでございます。逆に二十八年を取りますと非常に凶作の年でございますので、非常に増産が余計なような数字でございますが、そこでそういう指数では意味がございませんので、今度は指数の出し方といたしましては、昭和元年から二十九年までの残りの趨勢値を取りまして、従って長い間の趨勢値を取りまして、そして平年作である場合には、一体二十九年度というものはどのくらいであるべきかという基準数字を仮に設けたわけでございます。その基準数字というのはどうかと申しますと、先ほど申しましたように、二十九年は八千五百四十九万石と申し上げましたが、それが二十九年は御承知のように、平年作より若干悪い作でございますので、去年は仮にこれを本来の趨勢値で直しますと、平年作でありますれば、八千七百四十七万石ですから、少くとも以下というふうに出るわけでございます。従ってそれを基準にいたしまして、そして三十年度はさっき申しましたような数字で、三十一年、三十二年はこういう数字ということになります。おのずから平年作に対する増産数量が出て参りますが、その増産数量を見ますと、米麦では三十年度がその基準年次に比較いたしまして五十七万八千石、三十一年度は九十五万八千石、三十二年度は百七十八万四千石、合せまして三百何がしというふうな数字を出しまして、それに所要資金等はじいたわけでございます。以下同様に米麦以外の大豆とか、カンショとか、バレイショとか、いろいろな全部のもの、あるいは繭、生糸、あるいは畜産物、あるいは林産物等それぞれ各部門のデーターを出しまして、そしてその間のまた総合指数というのがございまして、全部の農林指数の中で農産物、あるいは林産物畜産物がどういうふうなウエートになるか、また農産物の中で米麦カンショその他に対してどのくらいのウエイトかというウエイトを出しまして、そういうものを総合して、そして今申しましたような基準年次にそれぞれの部門基準を取りまして、加重平均でやりますと、今申しますような、さっき田中さんから御質問ありましたような指数になる、こういうふうな結果に相なるのであります。
  7. 田中啓一

    田中啓一君 佐々木さんから御説明願いましたことでありますが、そうしますと、二十五年ないし二十七年を一〇〇とするというと、その基準年次の一〇〇というものの裏にある実数は、現実数字をお使いになったのではなくて、二十五年ないし二十七年の何といいますか、農業生産傾向と申しますか、まあわかりやすくいえば、米なら平年作、そういうものを推定されまして、これはやはり実数が出るのですね、推定援護局長……。
  8. 佐々木義武

    政府委員佐々木義武君) そうです。
  9. 田中啓一

    田中啓一君 それを二十五年度はいかにあるべきか、二十七年度はいかにあるべきか、二十八年度はいかにあるべきかというものをお出しになって、それの平均したものの実数を一〇〇とする、こういう立て方でございますか。ここは実数になっているのでございますか。実数というのは、本当にできた現実数字でありますか。どっちが、傾向数字か……。
  10. 佐々木義武

    政府委員佐々木義武君) 二十五年——二十七年の平均数字はやはりございまして、八千五百五万石となっておりますが、それを一〇〇として、さっき申しました実数伸びの数はございます。三十年度に関しましては一〇二、三十二年度一〇四、三十七年度一〇六となってございますが、先ほど申しましたのはそういう傾向、何といいますか二十五年——二十七年に対する増加率の出し方じゃなくて、いわゆる平年作と申しますのは、二十五年——二十七年では不十分なので、もう少し長い目で見ようというので、米は昭和元年から二十九年まで、小麦も同様でございます。大麦裸麦に関しましては、戦後の傾向数字をとってございます。従いまして二十五年——二十七年の、最も平均と思われるような平均数をとってございますが、小麦、米に関しましては元年から二十九年の数字基礎にしてはじいてございます。
  11. 田中啓一

    田中啓一君 どうもまだよくわかりませんが、そうすると、二十五年の数字、あるいは二十六年の数字、二十七年の数字、それは米麦だけにとってのお話でけっこうでありますが、それは現実に二十五年の米麦実収額高玄米換算、そういうものでなくて、二十五年というものもちょうど平年作になっておったかどうかわかりませんが、長い間の米穀の生産のまあ傾向というものを見て、二十五年のあるべき姿の数字をおとりになったのでありますか。そこを聞きたいわけです。
  12. 佐々木義武

    政府委員佐々木義武君) 二十五年——二十七年に関しましては、平均数をとって、それの三十年以降の何と申しますか、希望数字と申しますか、こう望みたいといういわゆる人口増加並びにつぶれ地等を差し引きましたその残、従ってまあ輸入量はふやさない、現在よりもふやさない、人口増なりつぶれ地は増産でまかなうという建前で計算して参りますと、そのくらいの増産は必要だという数字が出てくるわけでございます。その数字を平年作に足しますとあるべき数字が出てくるわけですが、その平年作の基礎というものは、何年度をとるかということが御質問趣旨だろうと思いますが、それは先に申しましたように、米、小麦に関しましては、昭和元年から二十九年までの数字基礎にしてはじいてございます。
  13. 田中啓一

    田中啓一君 よく私の質問趣旨がおのみ込みになれぬからそこの御説明がたどたどしくなると思います。私の御質問趣旨は、二十五年——二十七年を一〇〇にして、二十九年は一〇五にはなっておらぬのじゃないか、現実数字が、つまり二十五年——二十七年もこれを現実数字をおとりになるならば、米麦実収高をおとりになっているならば、それに対して二十九年度が一〇五%になっている、こういうふうにここに書いてありますが、五%も増加しておらぬはずじゃないか。
  14. 佐々木義武

    政府委員佐々木義武君) それはどの数字でございましょうか。
  15. 田中啓一

    田中啓一君 経済三カ年計画年次別構想、昨日お配りになった。
  16. 佐々木義武

    政府委員佐々木義武君) 今、田中さんのおっしゃったように、二十五年——二十七年を平均しますと、おっしゃる通り、二十九年は九八・八九になるわけです。
  17. 田中啓一

    田中啓一君 それでこれには二十九年度は一〇五になっておる。もう済んでしまっておる年でありますから、結局二十五ないし二十七年度の実収高平均を一〇〇とすれば、二十九年度は一〇五になっておる、こういう、過去の数字でなきゃならんと思うのでありますが、私は過去の数字を比較すると、そうはならんのだろうと……。
  18. 佐々木義武

    政府委員佐々木義武君) 失礼しました。私ただいままで申し上げましたのは、米麦に関する総合数字でございまして、田中さんのおっしゃっていますのは農産物林産物水産物全部合わした総合指数が一〇五・二五になっているわけです。  ちょっとつけ加えさしていただきますが、二十五——二十七年を一〇〇といたしました総合指数は一〇五・二五、御趣旨のように、そういうふうになるわけでございまして、それはさっき申しましたように、農産物林産物水産物、それぞれにウェートがございまして、そのウエートを掛け合わして参りますと、そういう数字になるわけでございます。その中で農産物、しかも農産物の中で蚕とか、畜産とかいったようなものをとっちゃって、しかもカンショとか、そういうものをとって、米麦だけをとって参りますと、さっき申しましたように九八・八九になる。言いかえますと、二十九年度は米麦は二十五年——二十七年に比較して生産は落ちているわけで、それ以外の林産水産とかが非常に伸びていて、総合すると、そういう数字になる、こういう格好になっているわけであります。
  19. 田中啓一

    田中啓一君 それの御説明はよくわかりますが、しかしそれでもどうも私、事実に対しては腑に落ちないのでありますが、この昭和三十年度経済計画の大綱という方の付表の第二表でありますが、分配国民所得の表がございますが、これに農林水産業というのがございまして、まあ昭和二十九年度は実数にして一兆一千七百二十億と、こういう数字が書いてあります、まあそんな見当のものでございましょうが。このうち米麦占むる数字というものは、私は相当のものだと思うのです。御承知のように、米麦合わせまして玄米換算八千万石というようなことをおっしゃっておるわけですね。そうしますと、まあ一石一万円と勘定しますというと、八千億になるというわけで、一兆一千億ないし二千億の中に占めるこの米麦比重というのは非常に大きいのです。
  20. 佐々木義武

    政府委員佐々木義武君) この国民所得の中で、これは分配国民所得でございまして、実は生産国民所得がこの中に出ておらんので、あるいは御質問のようなことに相なろうかと思いますが、この中で動労所得農林水産業部門、これは主として勤労者と申しますか、その個人所得の分でございますが、そのほかに、個人所得と申しますのは2のAの部門がございまして、まあこの部門が一番大きいわけですが、この分もあらゆる農産物の収入の分が入ってくるわけでございます。そのほかに、最後に賃貸所得の中にも一部地主等所得がございまして、そういうものを全部合せますと、農村で生産したものが生産国民所得として実ははっきり出てくるわけでございますが、ただいま生産国民所得の方を手元に持っておりませんので、的確な数字は申しかねますが、その点を全部合計しますと、先ほど御説明いたしました二十九年の生産実数とはぴったりと合うはずでございます。
  21. 田中啓一

    田中啓一君 どうも米麦占むる割合大かた七割なのですね、農林水産業で。
  22. 佐々木義武

    政府委員佐々木義武君) 六割でございます。
  23. 田中啓一

    田中啓一君 これは分配国民所得のその業種の所得を見ましても、あるいは総生産的な勘定をしましても似たようなことだと思います、比重はですね。そうなりますと、一体その方が九八にしかならないのに、あとの方は、およその見当林業一千億、水産業一千億、まあちょっと多いかもしれませんが、というような見当のもので、どれだけ材木が高くても魚が高くてもそうはいかんであろう。だから何かここにお考えの違っておるところがあるのでなかろうか。計算はずいぶんおやりになっておりまして、計算に対する御努力は大いに信用しておるのでありますが、私の通俗的な常識ですと、どうも合わんような気がしてなりません。で、これは一つ予算審議中にもう一ぺん実数を二十五ないし二十七年の実数は何だということを、中身をお分け下さって、農業水産林業ぐらいにお分け下さって、まあ農業米麦を取り上げておられますから、その他というくらいに分けていただいて、そうして実数をお示しいただいて、はっきりしていただけば、それで私はよろしいと思うのであります。それはそれでよろしいのでございます。
  24. 佐々木義武

    政府委員佐々木義武君) ちょっとウエートを申し上げさせていただきたいと思います。米麦の全部に対するウエートでございますけれども、農林水産全部合せますと、米麦の占める地位は、このウェートは一〇〇〇が単位になっておりますので、四七二でございます。それから農産中に占める地位は五九二、約六割でございます。ですから二十九年度は米麦は若干減ってはおりましたのですが、それ以外の蚕あるいは雑穀と申しましょうか、米麦以外の食糧関係あるいは畜産などは非常に伸びておりまして、そういうもの、あるいは林産水産等伸び考えますと、今のような一応総合指数になるわけであります。
  25. 田中啓一

    田中啓一君 ですから、それは一つ今私が申し上げましたような分類で、なるべくなら一般質問中、二十五日までに審議庁から数字をお出し下さるということで先へ参った方がよかろうと思うのであります。  で、私の印象はなかなか二十九年度に実質五%はどうも増加しておりそうもないということが一つと、従ってそれから今度三十年度に参りますれば、まあ三十年度というものは、今やっておることが効果が三十年度になって表われてくる、生産に表われると思うのでありますが、今去年ないし今年の予算というものでさらに四%近く増加して一〇九になり、さらに三十一年度は一一二になり、三十二年度は一一六になると、こういうまあ数字をおあげになっておるのでありますが、これにはどれだけの裏に施策を考えておられるのでありますか、まあ三十年度計画に、あとの方に文句として書いてございますので抽象的にはわかります。お考えの方向はわかります。しかし今予算を審議しておるのでありますし、どうしても三十年度にこうなる、三十一年度にこうなるということは、自然的傾向でなるというお見込みであるのか、あるいはそうでないこれだけのことをやってなるつもりということになるのでありますか、そこらを一つお伺いをいたしたい、こう思うのであります。これは政務次官からでも佐々木さんからでもどちらからでも一つ
  26. 佐々木義武

    政府委員佐々木義武君) 御質問の御趣旨ごもっともでありまして、非常に農業増産計画というものがむずかしいのでございますが、根本的な態度から申しまして、どういう考えで三十一、二年がこういうふうに伸びるという計算が出るのかという点でございますが、米麦の方が中心でございますので、との方はあとでお話ししまして、米麦以外の点から申し上げて参りますと、畜産等に関しましては大体現在の需要伸び基礎にいたしました、その需要伸びに大体見合うように供給力考え、それに必要な所要資金等もはじいてございます。所要資金等も要すれば御説明申し上げますが、林産に関しましては、今のままで参りますと、どうしてもこれは御承知のようにえらい山があるような結果になりますので、将来伐採量成長量が平常な姿に返るという年次をとりまして、それまでに何とかして早く到達したいというので、造林あるいは林道等の開設に相当資金も見、同時に利用、合理化等にも力を注いで需要面をある程度整理するということで、森林の伐採計画等も出す。それから水産に関しましては、これは相当生産伸びるというふうな勘定にいたしまして、特に農林水産物輸出増というものをこの計画では相当思い切って盛り込んでおりますので、特に水産の増強に関しましては相当な数字をあげてございます。そういうふうに、米麦以外にも相当生産計画伸びるように考えておりますが、何と申しましても、この伸びるという推定根本米麦でございまして、それでは米麦はさっき申しましたような増産というものが、一体金等裏づけ考えられて組んでいるのかという点が田中さんの御質問趣旨かと思いますが、実はその米麦増産には、ごくまだラフな勘定ではございますけれども、三十年度には三百五十億、三十一年には六百八十億、三十二年には七百五十億というぐらいの財政、あるいは財政一般からあるいは投融資関係からこれをまかなう、まかなわんとこれほどの増産は不可能ではないかというふうな資金的な裏づけの面からは計算が出てくるわけでございます。しからばその資金裏づけ一体可能であるかどうかという点が非常に問題でありまして、農業増産計画の問題でございますが、今までのところでは、あくまでも三十五年度に、六ヵ年計画を立てました趣旨にのっとりまして、さっき申しましたような根本原則、言いかえますと、人口増加とつぶれ地による毎年八十万石程度の減産分とは増産によってまかなう。従って食糧に関する輸入増はしないというのを根本趣旨にして、この増産計画というものを立てておりますので、長い目で見まして、あるいは根本的な原則は、この際短期の資金手当云々ということでもってあまり変えない。あくまでもその目的には到達するように努力する。しかし必ずしもそうは現実にはゆかん場合もあるかもしらん。しかしまあ努力だけはしてみようじゃないかということで、三十一年は、今申しました六百八十億、三十二年は七百五十億というふうな計数を出して、取りあえず来年度の財政状況金融状況から考えますと、これには相当無理があるのはわかっておりますが、しかしただいまのところといたしましては、これを一つ旗じるしにして、来年度の財政計画等を組む際には極力これに近いように、ほかのものも勘案して考えていこうじゃないか、これを今すぐ落すということは根本農業政策から見て当を得たものじゃないんじゃないだろうかということで、ただいまのところはこういうことを考えて進んでおります。
  27. 田中啓一

    田中啓一君 私も経済審議庁経済自立に対するお考え方には衷心賛成なのであります。でありますから、そういった計画をお持ちになることに対してはまことに敬意を表するのでありますが、しかしなかなかこれまでも思うようには行かなかったのでありまして、非常な努力一つお互い要ることだと実は思っておるのであります。そこで努力をしてやり抜くのにいろいろなことを考えなければならんのでありますが、そういう点を一つ質問によりまして明らかにしていきたいと思うのであります。それは一体農業に対して、ことに今米麦のことをおっしゃったのでありまして、結局は土地の拡張あるいは改良というようなことが中心になっておるのでありますが、今度の予算につきましても、まだ補助金の整理が足らないとか、あるいは共同修正も総花的で、どうも選挙区のおみやげ修正だというようなことはかなり世間では言いふらされ、新聞などもことごとくそういう論調であります。で、これはおそらく農業投資に対する投資効果というものに対して非常に世間は疑問を持っておるのであろう、こう私は思うのであります。そこで一体この二十九年度のこれは実績でありますね、産業資金供給見込みというものは。それから三十年度はそうありたいということであろうと思うのでありますが、二十九年度にしても設備並びに運転合せて約一兆というのですけれども、資本として投下されてゆくわけなんであります。そのうちに農林金融公庫というものがあがっておりまして、百七十八億、あるいは三十年度には二百三億というような数字があがっておるのでありますが、一体一兆というものはおそらく資本形成のところの数字をそのままお使いになっておるのではないかと思うのでありますが、農業面へは財政投融資、これは国のものも地方公共団体のものも合せまして、それからまた民間の農業者自体団体などを作ってやっておりまする投資あるいはそうでない農器具等への投資というようなものを合せまして、およそ農業面への投資というものは、この資本形成のうちでどのくらいの部分を占めるように思われますか。こういういろいろなことをおやりになっているのでありますから、何ぼかそういうようなことも平素御検討になったことがあろうかと思うのでありますが、それを一つお伺いいたしたい。
  28. 佐々木義武

    政府委員佐々木義武君) ちょっとわからないのですが、あとで調べまして……。
  29. 田中啓一

    田中啓一君 これはまあ実はまことに計算のしにくいもので、私自身も実は計算をしたことがないのでありまして、かたきを人に求めておるようなことでございますから、何か見当がつけばお出し下さるといいと思うのでありますが、私は農業生産増加のピッチというものが非常におそいのは、これは財政投融資を含めて農業投資というものはこれが非常に少いのだ。ですから伸びっこないのだ。しかもこの産業資金供給見込みのところでもお書きに触っておるように、どうも農林漁業金融公庫の金ぐらいをあげておくよりほかには勘定のしょうがないというような状態で、その面へのみんなの……、私も含めてでありますが、考慮が非常に薄い。農業者自身はむろんそんなことは知りませんし、団体からもあまりやいやい言うことはない。ただ補助金というような名前で農業補助金というものをたんと出せというような話でありまして、そうなればなにそんなものを持っていってどういう一体資金効果があるやらないやらわからない、今は財政の地固めの時代で、そんな総花的なことをやってはむだだ、そういうことを一がいに言われて伸びない。こういうことになろうかと思うのでありますので、やはりこれはわれわれほんとうに深刻に検討しなければならぬことでないかというふうに思いますので、この点も出せれば一つこれは大見当のものでけっこうでございますから出していただきたい。要するに国民経済における資本形成の中で、農林、水産業方面、三つくらいに分類するとどれくらい使われるのかということを一つ見当をつけていただきたい。  それからもう一つは、金を投じてそれだけ一体増産になっていくのか、投じた金の効率はどうだ、非常に農業というものは第三次産業に比べれば非常に低率ではないか、とうてい勘定に合わぬものではないか。勘定に合わぬけれども、何分にも日本国民の四割も占めておる農民のことだから、やらぬわけにいかぬから、純経済的な見地ではないけれども、社会政策的にやらなければならぬと思っておりますというようなことをあなたのところの長官はこの間言うておられた。そんなにはっきりおっしゃらぬけれども、とにかく何らか社会政策的なことも考えまして、やはり農業問題は重要でございますというように御答弁になっておりましたが、そういうこともあわせ考え下さることは別段悪いとは思いませんけれども、純経済的な見地に立ちまして、たとえば土地改良などですね、毎年とにかく何のかのといいながら、二百億からの財政投融資をしておるのでございますが、国が出せば県も、しかも財源は公債で出しておるのでありますが、それに予算をつける。それからまた農業者自体も持ち寄ってみずからも出しておる。これを合わせて一つの事業費になるわけでございますが、事業費というものを一つ資本の投下と考えまして、これの効率というものの比較ですね、鉱工業との比較ですねこれはどんなふうにお考えになっておるのでございますか。
  30. 佐々木義武

    政府委員佐々木義武君) 実は投資効果の問題に関しましてはずいぶん長い間、例の国土総合開発審議会というのがございまして、その中に投資効果分科会というものを作りまして、有沢先生、中山先生等が中心になりましてその研究をやっておったのでありますが、非常にこれはむずかしい問題でありまして、なかなか結論はできません。それでただいまのところではどういうところまでいっておるかと申しますと、農業と鉱工業との比較といった、他部門間との比較というのはいろいろな条件、たとえば利子とか償却とかいうそういうものをどう見るかということで非常な差がございまして、日本の今の経済はノーマルな経済でございませんので、利子だけでもいろいろな利子がございまして、償却でもものによっていろいろ違いますし、なかなか比較対照は困難な事情にございます。そこでせいぜい今のやり得る段階は、農業なら農業の中で、土地改良の中でどの土地改良、どの地方のどの地帯の土地改良が効果が一番大きいか、こういう判定は直接投資、間接投資、あるいは便益等を考慮いたしますと出てくると思いますが、他部門との比較ということはなかなかできないのでございます。  日本に例をとっては非常に語弊があると思いますので、他国の例をこっちのフォーミュラに当てはめてやってみたのでございますが、これはなかなかうまい結果が出ませんので、なかなか今のところでは他部門との比較はあまりできないのでございます。農業なら農業の中で、土地改良なら土地改良の中でどういう経済効果が一番多いかということでやってみようというので、ただいませっかく作業中であります。もう少しやっておりますと田中さんおっしゃるように、だんだん鉱工業とも比較できると思いますが、何せ一番問題としておりましたのは、私どもといたしましては、むしろ公共事業費内部で投資効果経済効果というものをどういうふうに考えるべきかということで比較したわけでございます。つまり鉱工業との比較はわれわれ経審といたしましておくれをとっておるものと思いますが、現状は以上の通りでございます。
  31. 田中啓一

    田中啓一君 むずかしい問題には違いないと思いますが、しかし何分にも投資効果が少くて、もっと多いところへ向けようという、金も不足しておるときに、そんなところは不能率じゃないか、これがおそらく農業投資というものがなかなかできない根本原因だと私は思う。でありますから、これは何としても大見当でも、やはり他の第二次産業と比べて、そうしてはっきりして、そうしてこれだけの効果はあるのだ、そうしてまたそのほかにもこういういいことがあるのだというようなふうに持っていかなければこれは強力に進めぬのであろう。先ほど経済審議庁は、国の財政投融資だけでも三十一年からは六百億以上にしなければならぬと思う、努力したい、政府全体として努力したいというお考えは、まことに私は衷心賛成であります。私どもも大いにそれを推進することにやぶさかではございませんが、やりたいのでございますが、何分にも世間の抵抗は強い。強いのは、私はわからずに強いのではないか、お互いに自分の業種のところへ金を持ってこようとみなかかるのは、これは当然なんだ。でありますから、これはやはり経済的な比較というものをやらぬことには乗り切れぬのではないかというふうに思いますが、その点を一つぜひやっていただきたい。つまり土地改良をやって、増産というものが、たとえば一億投下すれば米が十万石よけい増加いたしますと、——それほどには大ていどこもいかぬだろうと思いますが、そういうところからやはり他の産業との比較はできると思う。ことに今基盤産業、あるいは特に重要と認められるものについては非常に合理化をやろうということで、その方への投資を大きく向けていこう、こういうことになっておるときでありまして、私の所見によれば、農業というものは基礎産業じゃないか、実は今、日本の経済自立にとっては鉄や石炭と同じようなふうに見なければならぬのじゃないかと、こう考えますので、それらの、今やっておる今度の投資効果の比較というものは、私はできるのではないかというふうに実は思うのであります。なかなか単純ではありますまいから、困難な作業だとは思いますが、まああまりむずかしいところは切り捨てておいて、お互いとにかく経済政策をやる者が見当は立てる。ことにまあ今大臣は通産大臣だけおいでを願ったのでありますが、非常にこの資源開発というものは重大視して、国土狭きにあらず、資源開発の知恵が足らんのだ、努力がたらんのだ、思い切ってやらんのだ、こういうことを常に口にしていらっしゃる。そういうときでありますから、どうしてもそこのところを一つ明らかにして、世間に納得さしてこれはお互い進めたい。そうでなければ、例によってこれは農民の陳情運動に過ぎないのだ、議員の選挙区へのおみやげ案に過ぎないのだ、こういうことでは、これはやっぱり国の政策として私はとれないと思う。正直いってまじめに考えたらそれでは私はやっぱりならんと思う。そうでないのだということが明らかにならなければこの資金は回らん。また回すべからずだと思う。でありますからどうぞその一つ資金効果の点についても、今産業合理化をやらんとしているものと比較してどういうことになるのか、こういうことを一つ見当をおつけを願いたいと思うのであります。  そこで次にもう一つお伺いしたいのは、この経済計画のバランスの問題でありますが、おそらく鉱工業生産物に対して最大の市場を提供しておるものは、農林水産業だと思う。従って農林水産業生産物と、鉱工業の生産物と大体交換するところに——よけい交換できれば国民の生活水準は高くなるし、交換量が減れば水準は下がるのだ。鉱工業としてはそのほかに輸出というものがございますから、そちらに市場を持っていく、需要を持っていく、まあ二つあわしたものが鉱工業の生産なんでありまして、この三つのバランスをとって増加していくところに今後の経済の発展があり得ると思うのであります。従っておそらくもし農林水産業生産増加というものがこの三カ年計画なり六カ年計画に見込んでおられるような数字にならなければ、鉱工業の生産増加ということもやれないのだから、やってもそれは有効需要がなくて、できないことをやることになるであろう、こうまあ私は考えるのでございますが、この点は一つせっかく通産大臣がおいでになっておりますから、本日御所見を一つ一ぺん大臣からお伺いしたい。
  32. 石橋湛山

    ○国務大臣(石橋湛山君) それはお説のように、これは鉱工業はむろん輸出もでありますが、実際は内需に根拠がなくては輸出というものもうまくいかないと私は思うのです。ですからこれは各産業がバランスを得て、ことに今の農業の形態が、こう人口が多いのがいいかどうかということも一つの問題でありますけれども、とにかく非常に大きな需要地帯でありますから、農業が繁栄するということは鉱工業のためにぜひ必要だということは、私もその通り考えております。
  33. 田中啓一

    田中啓一君 そこで私は、せっかく政府としてもこの御多忙の中を、六カ年計画というものを策定をされ、そうして三十年度の計画もお立てになり、今試案として中間のつなぎの三カ年計画もお立てになりつつあるところなんであります。そこで、ことにまあこれまで経済審議庁長官も、これだけのとにかく生産増加をやらなければ、とうてい日本の人口は養っていけない。言葉をかえて言えば雇用というものの増大はできないのだ、こういうお考えでありまして、まあ私はいわば必死の数字であろうとこれは思うのであります。でありますので、これはどうしてもやり抜かなければならんことだと私は思う。これはもうどうもヘチマもないので、これはどうしてもやらなければならんことだと思うのであります。そこで大蔵省からは大臣、政務次官はおいでになっておりませんが、主計局長が来ておられますから、一つこの経済計画と国の予算との関係でございますね、こまかいことは申しませんですが、一つこれに向って努力できるかどうか、とうてい望みがないのかですね、ここらを一つ、腹一ぱいのお話を願えればけっこうだと思います。
  34. 森永貞一郎

    政府委員森永貞一郎君) 大臣から申し上げなくてはならん大きな問題であると思いますが、私どもといたしましても、この六ヵ年計画の達成には十分協力して参らなくてはならんつもりでおるわけでございます。六ヵ年計画の中にむしろ財政計画も含まれるわけでございます。従いまして実現できる財政計画、また六ヵ年計画をみんなで協力して作り上げると、そういうつもりでこの計画の樹立並びに実施には一致協力して参ると、さような考え方を持っておることを申し上げておきます。
  35. 田中啓一

    田中啓一君 実はこの数字というものはなかなか私も、ただいま農林水産業の面だけ主として申し上げまして、鉱工業なりあるいは貿易関係についてはよう触れるひまもないのでありますし、実は準備もないのであります。とにかく日本の国民が生きるか死ぬかという問題でございまして、とにかくこれだけのことはやってのけなければ、石にかじりついてもやってのけなければ生きて行けぬという数字を示しておられるものと私は理解をいたしておりまして、ぜひ一つ政府が総力をあげてこの実現に向って御努力あらんことを希望いたしまして質問を終りたいと存じます。
  36. 小林政夫

    小林政夫君 私も経審長官に最初にお尋ねをしたいのですが、田中さんの質問と同じようなことになりますが、主として田中氏の質問農林水産関係に集中していたのですが、あらかじめ出された三カ年間の年次別構想について説明を聞きたかったわけでありますが、もうすでにだいぶ深入りをしておりますから、私の聞きたい点だけを掘り下げて聞きますと、鉱工生産水準のこれの内訳ですね。三十年度のものについては、ある程度三十年度限りのことについては前にもらったものに出ておる。これをこの年次別にどういう指数になるのかということ。  それから、これはもう今聞いても何ですから、資料で出してもらいたい。それと特にその中で新産業、新技術という点を強調しておられるわけですが、この鉱工業生産水準の中でそれだけをピックアップしてはっきりさしてもらいたい。どうもいろいろそういう資料を要求するとばらばらに出ますが、この年次計画に合わせて、必ずこの裏づけであるという意味のものを出してもらいたい。と同時に、今農林水産関係のこれだけの指数を達成するのにはどれだけの投資が要るかと、こういうことでありましたが、同時に鉱工業生産のこれだけの水準を全うするのにはどれだけの資金裏づけを予想しておるのか。その資金の中で財政投融資にどれだけ依存するつもりであるか、こういう点、資金計画、これをあわせて年次別に出していただきたい。それからこの政府購入という欄ですが、二十九年度一兆三千九百九十億と、こうなっておりますが、これはわれわれの審議した予算数字とはどういう関係になっておるのか、これを説明して下さい。
  37. 佐々木義武

    政府委員佐々木義武君) 政府購入の問題でございますが、この政府購入というのは、中央財政と地方財政を合わしたものであって、しかもいわゆる財政投融資という範疇で申します融資の方に属しますのは民間資本形成に入っておりまして、ここでは主として公共事業的なものが主であります。投資の中ではそれ以外に一般経費等を含んでおりまして、そういうものをあわせて政府購入というふうに見ておりますが、従いまして普通のいう一般会計とか特別会計という範疇とは全然違ったものでございます。
  38. 小林政夫

    小林政夫君 それはわかっておるのですけれども、まあ支出項目に分ければどういうものを入れたと、こういうことを聞きたいわけなんです。それで今の説明でちょっと腑に落ちない点は、前に出された三十年度国民経済計算の中で、政府の財貨並びに経常購入が二十九年度九千億で、そして総資本の形成で、政府の資本形成というのは五千億、これを合計しても一兆四千二百億という数字になるわけで、この二十九年度一兆三千九百九十億という数字ですね。
  39. 佐々木義武

    政府委員佐々木義武君) 大きい項を申し上げますと、一般会計財貨サービス購入という欄が一つでございます。それから第二番目は、非企業特別会計経常費というのがございまして、第三番目は企業特別会計新設費、それが合わせまして中央財政財貨サービス購入ということになります。地方財政の方にも同じような項目が立っております。  以上を総計したものが政府の財貨サービス購入ということにくくられるわけでございますが、しからばその前段の中央財政の方の内訳が一体どういうふうなことになっておるかという点でございますけれども、この中に含まれている項目はいろいろな控除項目とか、会計間の重複の問題等がありますけれども、そのほかには損失補償とかあるいは出資及び投融資の部面、あるいは振替支出、すなわち恩給等の面でございますが、振替支出の点とか、あるいは国債費等が主たる項目の内容になっておるのでございます。  それからその中でさらに企業特別会計新設費というのがございますが、その内訳は、固定資産の増減がどういうふろになっておるか、あるいは作業資産の増減がどういうふうになっておるか、それから政府財産の減価償却がどういうふうになっておるのかといったようなことがその内訳になっておるのでございます。地方財政の方に関しましても大体そういう内訳でございまして、それを出したものがさっき申し上げましたような計数になっておるのでございます。従いましていわゆる普通の財政におかれますような分類の仕方と非常に分類方法が違いまして、なぜそれではこんなややこしい計算が必要なのかという点でございますが、これは大体万国の申し合せのようなことになっておりまして、いわゆる国民経済予算と申しますか、そういうものの出し方はこういう方式で出すべしと、それによって各国の比較が可能だということでこういう考え方の話し合いができておりまして、そういうものに従って作りました予算、ただいま御審議いただいております予算の中から、こまかいただいま申し上げましたような分類に従って各項目を抜き取りまして、そうして足したり引いたりして作るわけでございます。従いまして、それがそのまますぐに来年の予算、三十一年、三十二年の予算とどういう関連を持つのだということになりますと、非常にややこしいことになるのでございますが、まあ今までの出し方はただいま申し上げましたような項目を中心にいたしまして、今までの予算書の中からそれぞれ足したり引いたりして作り上げたというふうに御了承願いたいと思います。
  40. 小林政夫

    小林政夫君 一応今項目を読み上げられたのですが、その項目別の数字を入れたものを出していただきたい。
  41. 佐々木義武

    政府委員佐々木義武君) たしか三十一年、三十二年に関してはまだそれはできていないのでございます。過去のはございますので……。
  42. 小林政夫

    小林政夫君 そうすると三十一年、二年というものは、この数字というのは大体どういうふうにやって出たわけででございますか。
  43. 佐々木義武

    政府委員佐々木義武君) 過去の趨勢等から全体のワク内から何が何パーセント、何が何パセーント、個人消費はどのくらい、あるいは政府購入がどのくらい民間資本形成はどのくらいというふうに過去の数字がございますので、それを大きく見合いまして、三十一年以降は、アイデアといたしましては、個人消費はなるべく押えたい、そうして資本蓄積の方に回したい。その資本蓄積の中でも、できるだけ民間蓄積の方を主にしてはいきたいけれども、しかし財政投融資とか、政府購入の方も、そうは今の日本の経済からいきますと進めるわけにいきませんので、この方はむしろ一般サービス部門と申しますか、経常費と申しますか、投融資関係以外のものは割合に押えられるけれども、投融資の方は若干伸ばしたい。主として投融資、食糧増産等も入っておりますが、そういうものは伸ばしたいというふうなアイデアでパーセンテージを再検討いたしまして、それによって実数を出してみるわけであります。そういうものは要らんじゃないかというような御議論もあるわけですが、実はそうじゃありませんので、反面からいたしまして、今度は来年の国民所得を作って、その中から財政の規模その他を考えていきますと、それが大きく全体の国民経済にどういうふうに循環するかということを見るためには、どうしてもそういう大ワクの国民経済全般のものがないとその中にはまらんわけでありますから、そういうものを現在作っておるわけであります。従いまして三十一年、三十二年に関しましては、財政なり投融資の部面がまだ微細にできておりませんので、これに合うようにぴちっとした内訳ができておりません。そういうので、過去の数字はございますが、三十一年、三十二年のものはまだでございますので、御要望の数字は、できますれば、二十九年までの数字でごかんべんいただきたい、かように思います。
  44. 小林政夫

    小林政夫君 それは二十九年ももらってもいいんですけれども、何回もこの年次別構想を出してもらうに当っては、あなたは聞いておられたかどうかわかりませんが、経審長官には、ペーパー、プランでなしに、実際にこの通りやる。しかも各大臣とも了承されて、特に予算の問題についてははっきり裏付けのある、確信のあるものを出してもらいたい。しかしソ連のような完全計画経済をやっているところでも、なかなか計画通りいかん。だから一銭一厘違わぬというようなものは出せんだろうけれども、少くとも今日の段階においてはこの通りやるんだという、こういうものを出してもらいたいということでこれが出たわけであります。だからその内訳については、実情はあなたのおっしゃる通りかもしらんが、先ほども森永主計局長はこの通りやりますというような答弁をしているけれども、どうやるんですか、あなたは内容も知らずに、森永君。
  45. 森永貞一郎

    政府委員森永貞一郎君) 私が先ほど申し上げましたのは、この六カ年計画の樹立に際して、またその実施について、財務当局も十分協力をしていかなくちゃならんという趣旨で申し上げましたわけでございまして、三カ年計画試案が提出されておりますけれども、これはまあ経済審議庁の試案の段階でございます。いずれ私どもにもさらに詳細な計画につきまして御相談があるかと存じます。その際にはこの六カ年計画の中に、あるいは三ヵ年計画の中に、むしろ財政の方面の計画も入って財政の裏打ちのある計画をお作りになる、そういうことだと存ずるのでありまして、その際に私どもといたしましても十分御協力し、実施可能な計画にこれをまとめ上げていく、さような趣旨で申し上げたわけでございます。
  46. 小林政夫

    小林政夫君 それじゃこれはわれわれの要求した資料ではないですよ。少くとも経審長官は、閣議決定とはいわないけれども、了解を経て、——私はこの前の総括質問のときにだめ押しをして、了解であっても、大蔵大臣もちゃんと責任を持たれる数字かということを念を押して出してもらうことにしたわけです。これじゃ審議の対象にならぬ。私の要求大臣のほかに来ておりませんから、質問を留保しておきます。
  47. 館哲二

    委員長館哲二君) それでは午後一時十五分まで休憩いたします。    午後零時十五分休憩    ————————    午後二時開会
  48. 館哲二

    委員長館哲二君) 休憩前に引き続いて開会いたします。
  49. 小林政夫

    小林政夫君 先に要求しておりました中小企業向け融資資金の需給推算資料が大蔵当局から提出されておりますが、大蔵大臣に十分な責任を持ってもらう意味において、一つ大臣からその説明を願いたいと思います。
  50. 一萬田尚登

    ○国務大臣(一萬田尚登君) 数字説明政府委員にやらしてよろしゅございましょうか。
  51. 小林政夫

    小林政夫君 まあ適当に……。
  52. 河野通一

    政府委員(河野通一君) お答え申し上げます。中小企業の資金需給の見込みと申しますことはなかなかむずかしいのでありまして、正確な数字が実はつかめないのでありますが、とりあえず私どもが手元に持っておりまする資料から関係の向きとも相談いたしましたところに従って試算をいたしたものを御披露申し上げたいと思います。  資金の需給につきましては、まず第一に需要面でありますが、これは金融ベースに乗り得るいわゆる有効資金需要を取り上げることにいたしました。すなわち耐久施設の増加、いわゆる設備でありますが、設備の増加、在庫の増加及びこれに伴う預金現金の増加、これを資金需要という面にあげました。これに対しまして資金の供給の面では減価償却、自己資本増加、さらに不足する部分を外部資本に仰ぐ、こういうふうな考え方で供給ということを考えたのであります。外部資本は大体において金融機関の借り入れということを予定いたした次第でございます。なお売掛金と買掛金につきましては、これは非常にむずかしい計算をいたさなければなりませぬし、かたがた両者が同額というふうに推定いたしまして、一応この計算からは除外いたした次第でございます。  以上のような方法によりまして、大体資料といたしましては経済審議庁で作られておりまする三十年度の国民経済計算、これに大蔵省で作っておりまする法人企業統計というとようなものを参酌いたしまして、それから抜き出した資料によって計算いたした結果が次に申し上げるようなものになった次第でございます。  資金需要面につきてましては、耐久施設の増加が千八百六十二億円、これは個人、法人、中小法人合せてであります。在庫の増加が千七百三億円、預金、現金の増加が七百二億円、合計して四千二百六十七億円、こういう数字に相なるわけであります。  これに見合うべき供給の数字でありますが、これは自己資本増加が八百九十一億円、減価償却が千百六十五億円、需要と今申し上げました二つの数字の差額二千二百十一億円というものを金融機関からの借り入れに仰ぐ、こういうことで両者がバランスするように一応試算をいたした次第であります。  冒頭にお断わり申し上げましたように、なかなこかれはむずかしいのでありまして、この数字が果して完全に正鵠を得ておるかどうかは自信がございませんが、一応私どもの資料でとり得るだけの資料をもとにして試算した次第でございます。
  53. 小林政夫

    小林政夫君 お断わりもされたように、必ずしも正確でない、特に売掛、買掛というものを相殺するということはお互い中小企業間同士の売掛、買掛であるならば相殺も可でありますが、大企業から中小企業が品物を仕入れる、そうしてまた大企業の下請等によって仕事をする、この大企業からの仕入れ代金というものは、えてして中小企業の信用にかんがみて短期の決済、大企業へ納入したものは言われるごとく台風手形というようなものを出されてかなり引き延ばしをされている、こういう実情からいって、ただ非常にその点は需給推算をするときに問題であると思うのです。将来、この資料の要求も本員としては一年がかりの要求でやっとこういうものができたわけでありますが、今後大蔵大臣として、私の希望としては毎年予算審議の際にはこういうものを出していただきたいと思うのでありますが、次回までにもう少し推算の根拠をかえるとか、正確を期する意味においてお考えはございませんか。
  54. 一萬田尚登

    ○国務大臣(一萬田尚登君) お答えいたします。大へんごもっともな御意見であります。これは業者等の意見も十分お聞きしまして、かつ中小企業金融に関係しております金融機関の意見も聞きまして、で承るだけ実際に近いものを統計を作りまして御参考にいたします。
  55. 小林政夫

    小林政夫君 それから一応不正確かもわからない、あまり自信がない計算ではあるが二千二百十一億、こういう金を三十年度において新規に中小企業は要ることになるわけでありますが、これに対する資金裏づけといたしまして、国民金融公庫、中小企業金融公庫、この二行による新規投入資金というものは二百三十億に相なるはずであります。そうして半政府機関である商工中金の資金繰りから考えて、新規投入額は約八十億、あわせて、純然たる政府機関と半政府機関とをあわせまして三百億程度の新規資金が投入されたわけでありまして、残る百九十億強の金というものは一般金融機関からの支給に仰がなければならぬわけでありますが、この点について大蔵大臣は三十年度中小企業に対する一般金融機関からの百九十億強という資金は十分見通しがつくとお考えでございますか。
  56. 一萬田尚登

    ○国務大臣(一萬田尚登君) お答えします。経審の三十年度の総合的資金需給調べによりますと、その資金需給のうちで民間の金融機関の貸出高は約五千三百億になっております。そうして従来の統計によりますと、資本金一千万円以下の会社に対します貸し出しと、それ以上の企業に対します貸し出しの比率が四と六、約四〇%が、民間金融機関の貸し出しのうち、四〇%が資本金一千万円以下の会社に対する貸し出しの割合になっております。そうしますと、約それで二千億になりましょうか、二千億程度が民間金融機関から中小企業に金が回るというふうに推定をいたしております。それで先ほどお話の政府機関の金がプラスになっていく、かように考えて、大体中小企業の三十年度に必要とする資金は調達できるというふうに考えております。
  57. 小林政夫

    小林政夫君 今度民自両党の話し合いで資金委員会が設けられました。先般もそれについて質疑応答を重ねたわけでありますが、万一中小企業方面に対する今、お見込みと違うような情勢が起ったときに、あの資金委員会の運用というものは、金融債等の引き受けについてのみ考えるのであって、こういうものについては考えないのか、あるいは、もちろんそれは大蔵大臣も言われたように、伝家の宝刀として持っておるわけであって抜くつもりはない、こういうことでありますが、やろうと思えばやれる態勢なのかどうか。そういう点はいかがですか。
  58. 一萬田尚登

    ○国務大臣(一萬田尚登君) お答えしますが、先般の修正によりまして、従来よりも民間により多く資金需要をしたという、これは約百九十億程度のものになる。これによって特に私は資金需給の流れに影響があるとは考えておりません。特に私は、デフレヘの政策が二年継続されて、中小企業の受ける苦しみが大きいだろうと思う。ですから、今後において金融的に、特に中小企業の金融については、いたずらな救済になることはむろん避けなくてはなりませんが、有効にこの資金が使用される限りにおきまして、むしろ私はやはり中小企業へ優先的に一つ考えていこう、かように考えております。
  59. 小林政夫

    小林政夫君 私は、二千百十億に対する直接政府の意図でこれだけは流れるという金が三百億程度、これでもってまあ従来の実績から考えておおむね中小企業に流れるであろう、こういう推計でありまするが、コントロールする金額としては三百億という金額は少し少いのじゃないかと思う。約一割を、一五%の確実な金が必要でありますから、それでデフレ下におけるお話のごとく、しわは中小企業方面によりやすいので、それがどうしても見込み通り金がいかないというときに、円満な金融機関との話し合いによってということも必ずしも考え得ない事態が起るかもしれないと思うのですが、その点は十分遺憾なきを期するということになるわけですか。
  60. 一萬田尚登

    ○国務大臣(一萬田尚登君) 繰り返しますが、個個の場合にこれは対処しなくてはならぬと思いますが、この中小企業の金融について、特に貸せとか命令的な措置はむろんとりませんが、十分な配慮を加えますが、特に私は今回は住宅方面にも相当金を使うようになると思います。大体従来の中小企業等に対する考え方が、困ればすぐに金融というふうな考え方であったので、私の経験においても常にそうです。私は少し考え方を変えておるのでありまして、中小企業に対して政府のマーケットを与える、これは輸出産業に関連する中小企業については特に指導を与えるという意味でありますが、国内的におきましては中小企業の製品を特に買うというような、中小企業にマーケットを与える。特に今回の庶民住宅というような場合に、これはまあコンクリート、いろいろありますが、これは私はやり方によっては相当こういうふうな関係において中小企業等の製品が需要されていく一つの助けになりはすまいかとそういうふうな考えで、いろいろの面について私は考えれば相当はける道もあるのじゃないか、かようにも思います。そういうふうにはけないとすれば、日本の中小企業自体のあり方について、言いかえれば、内外に対する需要に応じ得ないような製品を中小企業が作るとすれば、これは私は中小企業自体のあり方について検討を加えていきたい、こういうふうに考えておるのでありまして、そういうふうな面からも一つ指導を与えていきたい、こういうふうに考えております。
  61. 小林政夫

    小林政夫君 安易な金融をつけないということについては、われわれも機会あるごとに、中小企業に対してもそういう趣旨の指導といいますか、話し合いをしているのでありますが、全くその点は同感でありますが、財政投融資使い方について、先般の大蔵大臣及び経審長官の私に対する答弁だと、比較的将来は公共的性格を持った事業に流す、そういうことで、おおむね方向としてはそうだと思うのですが、この中小企業の金融、特に今の中小企業金融公庫、国民金融公庫等を中心としたこの中小企業金融は、資金運用部資金の原資等の関係から考えても、財政投融資でいくべきで、むしろそれは将来ふやしていくべきではなかろうか、こういうふうにも考えるのですが、また金利等の点から考えて、その点はどうでしょう。
  62. 一萬田尚登

    ○国務大臣(一萬田尚登君) 中小企業の、これはまあ従来の実績から見れば理論的に言えば私は中小企業は弱いですから、金利なんかについても安い、また安くすべきであるという考えであるのでありますが、実際の扱いにおきまして、なかなかやはり金額も小さい、繁雑にもなり、また手数が要る等等から、今日の自由主義の経済では、金利が高うございます。そういう見地からすれば、なるべく安い金利で出し得る財政関係資金を与えることが、中小企業にはできるだけ望ましい、こういうふうに考えております。しかしそれだけでは今後はいけませんので、特に中小企業に対する融資については、民間の金融機関にも格段の注意を払っております。要するに資金コストが上らない、単に表面金利というだけではなく、資金コストが上らないようにする。また特に一般に言われる、たとえば歩積みとか、いろいろなコストの上るようなことが、もう今日よほど減っていると思いますが、やはりありまして、そう思いますが、特に中小企業の場合は金高が小さいですから、そういうふうなことになっても資金コストに及ぼす影響は大きいように私は思いますので、そういうことも配慮して政府財政関係資金、民間資金を通じて、中小企業の金融をもう少し適正なものに、明るいものにしてあげたい、かように考えております。
  63. 小林政夫

    小林政夫君 今度の民自予算折衝といいますか、衆議院の予算修正によって相当中小企業は金利の点については打撃を受けていると思います。税金から、一般会計から出されるべきものを資金運用部資金に振りかえられる、こういう点だけでも相当大きいと思います。今の御趣旨を将来十分生かしていただきたいと思います。  それから、どうも直接のお答えがなかったわけですが、資金委員会というものについてはあまり触れられたくないというお気持があって、そういう答弁だろうと思うのだけれども、まあ心ならずもできた資金委員会というようなものの置かれた以上は、やるやらぬは別として、そういう大蔵大臣の意に添わない資金の流れ方を一般金融機関がする場合、それをまあ規制するというか、方向づけをする、こういうことはやろうと思えばやり得る態勢だと思うのですが、どうですか。
  64. 一萬田尚登

    ○国務大臣(一萬田尚登君) 中小企業の金融について、かりに資金委員会があった場合に、その融通を確保する、そういうふうな制度で確保するかというような御質問かと思うのでありますが、金融の面は、個々の面で同じ中小企業といいましても、融通のつくものとつかないものがあります。融通というごとになれば、具体的の個々の場合はそうするとこれはなかなかどうということにいきませんで、私の考えでは、やはり中小企業自体と、これに関係する中小企業金融機関と密接な関係におきまして、そうしてこれをそれぞれの立場から指導する、こういうふうな形が一番実際に適しておると、かように考えております。
  65. 小林政夫

    小林政夫君 それは、そういうふうなことでいけば問題ないのですが、そういかなかった場合に、これはわれわれは、そういうことを言い出すかどうかは別として、資金委員会というもので大いに資金の流れを規制しようという立場の者からいうと、そういうものができたら利用できるものになるのではないかと思うのでありますけれども、これはこれ以上押し問答しても仕方ありませんからやめておきますが、そうすると、今社会党あたりから提案されておるようでもあるし、前から吉田内閣時代にもそういう考えがあったのでありますが、金融機関の経営を、特に銀行の経営を健全化するという意味において一件大口貸し出しを抑制する、こういう法的措置を銀行法に織り込む、こういう考え方があったのであります。この点については大蔵大臣、どうお考えになりますか。
  66. 一萬田尚登

    ○国務大臣(一萬田尚登君) ごく抽象的にといいますか、理論的に申し上げますれば、私はやはり一金融機関の一つの取引先に対する貸し出しの金額というものは、ある程度に制限されるということは、金融機関の健全性の上から見て私は望ましいことだと思います。ただ日本の場合におきましては、特に戦争に負けた後の資本蓄積の乏しさ、あるいは資本自体がなくなったというようなことのために、御承知のように企業の借入金に依存する度合いが非常に大きいのであります。ごく一般的にいって、戦前は六と四の割合で、自己資金が六で、大体四割くらい借入金、今ではこれが逆になって、大体私は逆じゃないかと思いますが、よほどよくなったにしましても、大体逆なところ、六くらいが借入金、こういうふうな関係にありますために、今急に一つの取引先に対する貸し出しを制限いたしますと、これは実際上非常に混乱を生ずるおそれがありまするので、考え方としては正しいが、これを実施するについてはもう少し時期をおくらした方がよかろう、かように考えて、今提案されておるものには私賛成しかねるのであります。
  67. 小林政夫

    小林政夫君 今のお話の趣旨考えると、大体金融が正常化したらというようなことと思われるのでありますが、どうも最近いろいろ考えてみると、金融正常化というのはどういう状態なのかということについて、必ずしもはっきりしてない。大蔵大臣の見解は、どういう状態をもって金融正常化の状態とお考えになりますか。
  68. 一萬田尚登

    ○国務大臣(一萬田尚登君) これは金融の正常化というのはいろいろな考え方、見方があると思いますが、ごく私は基本的な線で申し上げますれば、蓄積された資金で産業界、その他の資金需要がなるべく多くファイナンスされる。もう百パーセント近くファイナンスされれば一番よろしい。そういかなくても、そういうふうな状況に近寄る。従ってそういう場合の資金の操作については、主として金利、あるいはマーケット・オペレーション、あるいはまた将来予定されるであろうアメリカあたりにあります預金支払準備の準備率の変更等々で調節ができ、市場資金の量が規制される、こういうふうな状況だと私は考えております。
  69. 小林政夫

    小林政夫君 金利及びマーケット・オペレーション、支払い準備金の設定というような、信用調節の問題ですが、よく最近言われておる純ざやか逆ざやか、こういう問題があります。いわゆる金融が正常化しておると思われる諸国においても、純ざやのところもあるし、逆ざやのところもある、こういうととでありますが、日本の場合にはどういう姿が望ましいとお考えになっておるのか。また、オペレーションにしてもどうも国債も最近はかなり減っておる、それのみで日本の信用調節ができるとは考えませんので、支払い準備金制度等についてもある程度大蔵大臣の考えておられる金融正常化の状態においてはこれをやる、こういうお考えかどうか。
  70. 一萬田尚登

    ○国務大臣(一萬田尚登君) 日本の現状におきまして、金融正常化は私の考えでは今やっとそういう芽ばえができつつある、若干そういう徴候が現象的にも現われておる、こういう程度である、あるいはもう少しぐらい進んできておるかもわかりませんが、そしてその一番端的な表現が、従来日本銀行に市中銀行が非常に大きく資金を依存をして、日本銀行の貸し出しが大へん多かった。一時四千億以上になっておったのが、これが今日においては千億ちょっとぐらいのところに落ちた、こういうような状況であります。これは資本の蓄積ができればまず現われるところであります。それから、民間の資金需給関係も預金に比べて貸し出しの増加が小さくなってきて預金の方の増加率が大きくなった。従って市場資金が非常に楽になり、これが金利に影響して今回また一厘だけ下げた、こういうような状況であります。しかし、それならどういう程度正常化しておるかと言えばなかなかなのでありまして、コール・レートにしても、ほんとうをいうと、コール・レートなんかは、日本銀行の最低歩合よりちょっと低いのが正常の姿であります。今日でもなお二銭一、二厘ぐらいになっておると思われます。日本銀行の貸し出しの最低歩合は一銭六厘であるにもかかわらず、市中の一般の貸出金利はおそらく二銭というようなところだろうと思っております。こういう状況では、たとえば日本銀行の金利政策がすぐに市場金利を規制するという段階にまで達成しておらない、かりにこういうふうな制度が復活してもある一定の期間、暫定的の処置が必要だ、こういうような状況にあるのでありまして、今後このいい状況を推進していく、こういうことであります。
  71. 小林政夫

    小林政夫君 もう、大蔵大臣はいいです。あと、大臣がおりませんから質問を保留します。
  72. 館哲二

    委員長館哲二君) 経審長官は二時半ぐらいにこちらに来られるそうであります。そうしますと、大蔵大臣と防衛長官とが出席されておりますので、秋山君、大蔵大臣にお尋ねになりますか。
  73. 秋山長造

    ○秋山長造君 まず、防衛長官にお尋ねしたいのですが、政府は従来この防衛問題について、いつも国力に相応した自衛力の漸増というような、きわめてばく然とした言葉でもって、この防衛問題というものの説明をしてきておられるのですが、この国力相応の自衛力という、この言葉についてもっと具体的にはどういうものを国力相応の自衛力と考えておられるのか、まずその点をお尋ねしたい。
  74. 杉原荒太

    ○国務大臣(杉原荒太君) お答え申し上げます。国力相応の自衛力ということは、自衛力の漸増ということを考えて参ります場合に一番必要と思いますことはいろいろありますけれども、一つは御承知通り今、日本の安全、国の安全を保つという上からいたしまして、その大きな部門を外国の力に依存しておるというような状態でありまするからして、わが国の独立国としての実を上げていく上からいたしまして、やはりある程度の防衛力はぜひ必要があると考える次第でございまして、しかしその際に一番大事なことは、やはり防衛ということは申し上げるまでもなく、防衛力を作り上げるということには非常に金がかかるということ、そしてそれが結果として国民の生活を不当に圧迫するというようなことがないようにやっていくということが非常に大事な点と考えます。従いまして、その国力に相応すること、これは非常に広い、いろいろなことを含んだことだと存じますが、一口にこうだということは非常にむずかしいのでありまするけれども、要は国民生活に不当な圧迫を加えないということに主眼を置いて考えていかなければならぬことだと存じます。
  75. 秋山長造

    ○秋山長造君 そうすると、自力衛の漸増ということは本来の軍事のみから見た面と、それから国民生活という面から見た場合と、この二つの矛盾した面から出てくる結論だろうと思う。その結論は具体的にどの程度の兵力なり、あるいは戦力と申しますか、自衛力と申しますか、とにかく力です、どの程度の力をもって、大体この程度ならば国民生活は圧迫することはないだろう、しかも防衛という目的を最小限度満足せしめるだろうという、何か目安というものが政府自身にあるに違いないのです。その目安というものは具体的に、たとえば予算にしてどの程度だ、あるいは兵力にしてどの程度だという、何かわれわれに納得のしやすい一つの具体的なめどがなければならぬし、またあるに違いないと思うのです。その点を具体的にお聞かせを願います。
  76. 杉原荒太

    ○国務大臣(杉原荒太君) お答え申し上げます。ごもっともな御質問だと思います。これを具体的に、たとえばどれぐらいの防衛力の量か、あるいはまた、これを財政等の関係から見て、またよく言われます国民所得との関係、そういうことから見て、一体どれぐらいのものが必要か、ごもっともな質問だと思います。実は今この長期計画を研究中でございますが、その際も私は実はそういう点を深刻に検討を加えたいと思います。そういう点に実は時間もかかっておるような次第でございます。この間も本委員会におきまして、他の大臣から、たとえば防衛費、国防費といいまするか、防衛費と国民所得関係はどれぐらい考えておるかという御質問がございましたのに対しまして、たとえば二、三%というような他の大臣からのお答えでございました。そして現在は防衛庁費と、それから防衛支出金、合せたものが大体今年の予算では二・一%ぐらいだったかと存じます。これなども、それじゃその程度で……いろいろの意見もあるようであります。まず、常識から見ましても、そうひどく財政国民所得関係からいたしまして、あまりに(「はっきりしなさい」と呼ぶ者あり)ひどいものに怠らぬようなところを十分注意してやっていかなければならぬことだと思います。(「さっぱりわからん」と呼ぶ者あり)
  77. 秋山長造

    ○秋山長造君 防衛庁長官の御説明はよくわからんのですけれども、じゃ、もっと端的にお尋ねしますが、防衛庁長官は自衛力の限界というものをきめる場合に、まず国民生活の安定ということを第一にお考えになるのでございますか、それとも国民生活の安定ということは二の次で、何よりも第一は純軍事的な立場からまずお考えになるのですか、その点どちらかはっきりお答えを願います。
  78. 杉原荒太

    ○国務大臣(杉原荒太君) 国の安全という上から見まして、何としましても経済の安定ということが一番基礎的のことだと存じます。従いまして、防衛力の建設の場合、負担等につきましてはそういう基礎的なところの関係の調和を失わぬようにやっていくということが大事だと考えております。
  79. 秋山長造

    ○秋山長造君 大蔵大臣にお尋ねいたしますが、大蔵大臣は財政の責任者として、日本の国力に相応した自衛力の限界というものをお考えになっておるかどうか、お考えになっておれば大体どの程度のものが国力の限界であるかどうか、その点をお伺いしたい。
  80. 一萬田尚登

    ○国務大臣(一萬田尚登君) これはむろんある程度の弾力性を持ちますことは言うまでもありませんが、日本の今の現状、たとえば国民がこういうふうな税金を負担しておるとか、いろいろな生活条件の現状を考慮に入れて、まあ大体私は国民所得の三%というようなところが最大限に、一番高いところに近いじゃないかというように見ておるわけでございます。
  81. 秋山長造

    ○秋山長造君 大蔵大臣は具体的に国民所得の三%ということを初めておっしゃったわけでございますが、そういたしますと、先般の防衛分担金の削減交渉の結果出された共同声明の中に、明年以降国力の、自己の資力のより大きな部分を防衛目的のために振り向けるという言葉があるのですが、これは具体的には国民所得の三%程度が限度だというように解釈してよろしゅうございますか。
  82. 一萬田尚登

    ○国務大臣(一萬田尚登君) その点は私は、かように解釈いたしておるのであります。この三十年度におきまして、防衛庁費の増加が百二十五億、施設費関係のものが二十七億ふえております。合計百五十二億ふえておる。昨年度に比べましてこの百五十二億を、昨年度に比べて増加いたしておりまする百五十二億全額を、防衛分担金から削減をしておる。言いかえれば一応予算面におきまして、現実に三十年度に予算化されておりまする防衛支出の昨年度に比べて増加した部分を、全部アメリカの分担金からの削減で出している、言いかえれば日本からは増加した部分について出していないが、今後そういうふうなわけには行かない、もう少し自分自身の資力を出して防衛力を増加することを期待する、こういうふうに私は解釈をいたしております。
  83. 秋山長造

    ○秋山長造君 だからその自分の方からも出すという限度が、国民所得の三%程度が限界だと考えたらよろしいのでございますかということをお尋ねしているわけです。
  84. 一萬田尚登

    ○国務大臣(一萬田尚登君) 私の申すのは防衛に関する総支出の額であります。たとえば三十年度で申しますと千三百二十七億、こういう金を私は考えておるのであります。
  85. 秋山長造

    ○秋山長造君 三十年度はそういうことになっておるのですけれども、大蔵大臣の論法で行きますと、今後総合経済六ヵ年計画等を見ましても、国民所得は年々ふえて行くことになっている。そうすると、国民所得が年々ふえて行くに従って、その防衛費というものもそれに並行してふえて行くということになるわけですか。
  86. 一萬田尚登

    ○国務大臣(一萬田尚登君) そういうわけじゃないのであります。かりに私は、日本の防衛というものはこれはいろいろの考えがありましょうが、私の考えでは限界があると思っております。これはいわゆる防衛なんでありまして、日本の国の広さもきまっておるのでありまして、防衛費は限界がある。そう防衛力々々々というて増加するわけにも行かないので、ある一定の限界までくれば、その力を維持して行く、キープして行くということになるだろうと思う。そうしますと、たとえば防衛が必要でない場合は、今言うたような場合は、そこまで行く必要がある間は別ですけれども、一応そういうふうに考えてもよいが、そういうふうな維持ということに近寄れば、将来の防衛力はそれより大きくなくってもいいかもしれぬ。そうしますと将来は、それをほんとうに民生の方に回して行ける、こういうふうになるだろうと私は思います。そういうふうなものがあるから、みな防衛々々といっても金を使うということを必ずしも意味しないので、そういうこともあり得るというバランス、全体のバランスを考えて行かなければならぬと思います。
  87. 秋山長造

    ○秋山長造君 大蔵大臣は去る三月三十一日の本委員会において、わが党の佐多委員質問に対して、「民生の安定のない国防は考えられないというのが私の立場であります。国防はまず民生の安定に始まらなくてはならない。」そうして「日本の自分の力において国防をなし得る力は非常に少い」というのが私の見解でありますと、こういう御答弁をなさっておる。そういたしますと、本年度の防衛費の問題についても、千三百二十七億が国力にふさわしい防衛力だとおっしゃるけれども、本年度の予算全体を見ますと、との防衛費がふえたために、鳩山内閣が国民に対して公約をした社会保障、あるいは住宅建設、その他の民生安定の経費というものは、相当これは軒並みに激しい圧迫を受けていることは、これは今さら言うまでもない。また現に数字は申し上げませんけれども、あるいは結核患者に対する手当にしても、失業対策にしても、あるいはその他老朽校舎の建設等にしても、これはもう非常に困難な立場に追い込まれておる。そういう事態が一方にあって、しかも大蔵大臣は、民生の安定のない国防は考えられないという見解をこの委員会において表明しておりながら、なおかつ千三百二十七億円という防衛費が国力にふさわしい、民生の安定を圧迫しない防衛費であると、こうおっしやるととは、これは私は矛盾しておると思う。おかしいと思う。さらにその上に、自衛力漸増の限度として国民所得の三%程度まではと言われることも、従って一そう私はおかしいと思うのですが、この点について現在の防衛力というもの、あるいは防衛費というものが、日本の国力にふさわしくない、無理な、民生安定その他の方面を圧迫する防衛費であるというふうにお考えにならないか。
  88. 一萬田尚登

    ○国務大臣(一萬田尚登君) お答えします。それはこういう考え方であります。私の考え方といたしまして、民生の安定のない防衛は考えられないという考え方は依然として私変りはありません。ありませんが、そのバランスといいますか、それならなぜそういうようにある程度の防衛をやっておるか、こういうことになると思うのですが、それはやはり、一体国を防衛せぬでいいか悪いかというところから考えなくちゃならぬので、たとえば国民生活の安定向上が望ましいと言っても、国際情勢等で前のように戦争をしなくちゃならぬ、これは非常にばからしくて正もたくさん要るが、これもやむを得ない、こういうような事態も、ごく端的な例ですが考えられないことはない、そういう意味合いにおきまして、今日アメリカと日本が共同防衛の立場になって、特にアメリカに防衛をお頼みしておる、こういうことが必要がないとすれば、これは別個になると思う。しかしこれは国際情勢から今日そういうふうな必要があるという判断からきました場合、この国の力で許される範囲内において、防衛を漸増して行くということは、これは私はやむを得ない、こういうふうに考えておるのです。しかもその場合において、条約において日本が義務づけられておるその費用をできるだけ少くして、その費用をもって日本自身の防衛力を増加するという手まで尽してやっておるのでありますから、私はそれは全体として、しかし同時にそのときにおける——単に民生というだけで考えずに、日本の国全体としてやはり防衛を含めて——防衛ということもやはり私は民生の安定の一つである、いろいろ変な論議になりますけれども、国民生活全体を考えて行くと、私は決して矛盾をしておらぬ、かように考えます。
  89. 秋山長造

    ○秋山長造君 その点は私納得できないので、たとえば同じ三月三十一日の只今の大蔵大臣の御答弁のすぐ前の方で、鳩山総理大臣は、わが党の佐多委員が、現在の日本を取り巻く国際情勢というものが決してそう切迫したものでない、むしろ非常に平和の方向に進んでおるということをるる申し上げて、そうして防衛問題についての鳩山総理大臣の見解を質したわけです。それに対して鳩山総理大臣は、私も全くそう思う。で、「従って日本の国防問題も急を要する問題ではないと考えております。ゆえに分担金の減額についても、防衛庁費の問題についてもよく相談をして、なるべく減額をして、それがほかの仕事に向けられるようになることを衷心よりこいねがっております」というのです。だから少なくとも鳩山総理大臣の考え方は、これは分担金はもちろんでございますが、防衛庁費にいたしましても、今までの防衛庁費はむしろ客観的に見て多過ぎるのではないか、だからこれも極力防衛庁費も減らして、そうして民生安定の事業の方に回したい、こういう考えだと思うのです。で、大蔵大臣もおそらくそういうお考えでさっき申し上げたような答弁をなさったのだろうと思うのですけれども、その点はいかがでしょうか。やはり千三百二十七億というものは、どうしてもこれは必要なといいますか、これがなければどうにもならないというぎりぎりのものかどうか。
  90. 一萬田尚登

    ○国務大臣(一萬田尚登君) 私と総理の御答弁とは違っていないと思います。総理もなるべくそういうことがいい、私も具体的に全体の防衛費を前年度並みに押えて、今年漸増する分については特に持ち出しをしないようにして行く、こういう考え方も同じような考え方に基因していると私は思います。同時にまた国際情勢が平和に、同時にこの平和を維持して行くのには、やはり力というものが必要である。今日の世界の平和は、やはり力があるところにバランスがあるというお考えも私はたしかにあると思います。
  91. 秋山長造

    ○秋山長造君 堂々めぐりになるのですが、防衛庁長官にお尋ねしますが、とにかく政府としてはただいまおっしゃるような説明をつけて、とにかく今後年々防衛力をふやして行かれる御方針のようでございます。従いまして防衛費もふえて行く、予算もふえて行くことはこれはもうおのずから明らかなことなんです。この場合に防衛力をふやして行くからには、これは必ず一つの長期的な計画がなければならない、特に計画性を重んずる軍隊のことですから、軍隊と言ったり言わなかったりされておりますけれども、われわれ軍隊と思っておりますが、そういう最も計画性を尊重する、いわばその計画性が生命ともいうべき軍隊をどんどんふやして行かれるのですから、必ず私は確固たる長期的な計画一つの目標、目途というものがあるに違いない、そういうものがあるのかどうか。私どもは従来しばしば防衛六ヵ年計画というものの実態について政府の説明を求めてきたんですけれども、いまだにはっきりした説明をなされないのですが、そういう具体的な計画をお持ちになってやっておるのじゃないのか、この点いかがですか。
  92. 杉原荒太

    ○国務大臣(杉原荒太君) お答え申し上げます。いまだその計画の決定したものを持つに至っておりません。折角鋭意研究中でございまして、防衛庁自体としても実はまだ成案を得るに至っていないのが実情でございますが、私これはいろいろとまだ検討すべき点があると考えております。
  93. 秋山長造

    ○秋山長造君 しかし今年度、三十年度においても相当増強をされることになっておるのです。これも三十年度だけ一つ切り離して適当におやりになるのではなくして、やはり今年三十年度にこれだけやったら、今度は来年度はどこをやる、その次にはどこをやるというように、やはり一つの長期計画の中の一環として、三十年度の増強計画というものが考えられ、そして予算が組まれたに違いないと思うのです。その点はいかがですか。
  94. 杉原荒太

    ○国務大臣(杉原荒太君) お答え申し上げます。三十年度におきまして今予算の御審議を願っておりますその前提となります三十年度の計画につきましては、もちろん一つの決定した計画を持って、それを基礎にして予算編成に当ったのでありますが、その内容につきましてはすでに御承知でもございましょうが、そのおもな点だけ申し上げますと、陸につきましては自衛官を二万人、それから海につきましては防衛艦を四隻それから掃海艇を三隻、それを主にしたものでありますが、海につきましてそういうことをするその必要性でございますが、これは今、実は海上自衛隊の主力をなしておりますものは、アメリカから供与を受けております十八隻のフリゲート艦がございますが、これは戦争中に作られたもので、艦令も約十二年くらい非常に古いものでございます。何とかこれを、性能度から見ましても非常に時代おくれになっておりますので、新しいものにかえたい。それから掃海の方につきましては、これは非常に緊急の必要を認めておる次第でございます。今まで日本の近海に、大戦中に敷設されました機雷の掃海、これはずっと数年間やってきておるのでございますが、まだ掃海されない部分が二万平方キロ以上もあるような状態でありまして、現有の掃海能力をもっていたしますれば、今後なお数年を要する状態でございますので、今掃海艇の増強ということを考えておる次第でございます。  なお、空の方につきましては、現在航空自衛隊というものが、昨年発足したばかりでございまして、まだほんの初歩の、まだ保有航空機もほとんど大部分が練習機、そして実用機といたしましては、ただ輸送機が十機、連絡機が一機、こういう状態でございます。これを今年の予算の前提として計画いたしておりますが、アメリカから供与を期待いたしましたF86を約五十機、それから輸送機を約六機、あとはほとんど全部が練習機でございます。これによってやって行きたい。まだF86の方も航空団というほどのものでありませんが、これを中心にして作りますが、これはまだ高等のものでなく、航空の教育訓練学、実質的に申しますとまだほんの航空学校の延長みたいなような、その程度のものでございます。
  95. 秋山長造

    ○秋山長造君 今度の本年度の増強計画を見ますと、九州方面並びに北海道方面に相当重点を置かれておるようであります。この問題については、この間衆議院の内閣委員会でも相当突っ込んだ質問が出ておったようでありますが、九州並びに北海道に重点を置いて自衛力の増強をおやりになるということについては、何か一つの目標があると思う、その目標は何であるかお尋ねしたい。
  96. 杉原荒太

    ○国務大臣(杉原荒太君) おっしゃいましたように今年自衛官約二万を増強、これは主として混成団というものを二個、これをもとにして作りまして、一つを北海道他の一つを九州といきましては、あくまでも受け身の、つまり侵略があった場合これを防ぐということをしなければならぬ。攻勢的ね、攻撃的な、他国に脅威を与えるというような攻撃的な軍備ということを考えていない、あくまでも受け身の防御のものでありますから、特定のいわゆるある程度仮想敵国とか、そういうことを特定してやる。今、北海道、九州と申しますのは、これは日本の国土を要するに守るという上からいたしまして、これは日本全国いずれも大事でございまするが、地理上の関係等からいたしまして、その配置につきまして、今申し上げましたような北海道、九州、こういうふうにした次第でございます。
  97. 秋山長造

    ○秋山長造君 特定の目標はないという御答弁でございますけれども、しかし日本の地理を考えた上で、しかも九州と北海道に特に重点をおいて増強をされるということになれば、そこにおのずから特定の目標を想定されておるに違いないと考えざるを得ない。で、たとえば侵略があるかないか知らぬけれども、長官が、侵略があるかもしれないという前提に立って九州と北海道とを増強を特にされるという以上は、万一侵略があれば、九州なり北海道に一番に侵略があると、こういう前提に立っておられると思うのです。その点はどうですか。
  98. 杉原荒太

    ○国務大臣(杉原荒太君) 先ほども申し上げましたように、この北海道、それから九州も一つの島を形成しておるわけでございまして、そこを、これは日本の地理的関係からいたしましても、日本の防衛力の配置をいたします場合には、やはりこういうところが先に考えられるというのは、これはおのずからそうなるものだと私は思います。
  99. 秋山長造

    ○秋山長造君 おのずからそうなるということが、どうもわれわれはわからぬですけれども、おのずからそうなるということの前には、前提がおありになるんだろうと思うのです。まあ率直に言えば、やはり私はソ連なり中共なりというものを想定されておいでになるんじゃないかと思う。その点はいかがですか。
  100. 杉原荒太

    ○国務大臣(杉原荒太君) これはいわゆる仮想敵というように、どこときめて、そしてこうだということは、私日本の対外関係等の大局の利益からいたしましては、適当でないと考えております。
  101. 秋山長造

    ○秋山長造君 そうおっしゃることは、特定の国を具体的に取り上げて口に出すことは適当でないということはわかります、わかりますけれども、しかしそれと、それからこれとは私はおのずから別だと思う。だから具体的に九州なり北海道なりに特に重点をおいて、しかも落下傘部隊まで本年度は作って行かれるようでございますが、落下傘部隊等は、これは私は純然たる防御的な性格のものだとは思えない。その点はいかがですか。
  102. 杉原荒太

    ○国務大臣(杉原荒太君) この点は、これはもう純然たる防御的なものに違いないので、いろいろ移動の関係がございますから、その点は落下傘部隊が攻撃的ということは、そういうつもりでございません。
  103. 湯山勇

    ○湯山勇君 関連して。今の混成団ですね、混成団というのはどういう編成で、普通のものとどういう任務の違い、あるいは目的の違いがあるか、その点をまず明らかにしていただきたいと思います。
  104. 杉原荒太

    ○国務大臣(杉原荒太君) 一口に申し上げますというと、今御承知通り管区隊がございますが、この管区隊を小さくしまして、人員にいたしましても約半分のものでございます。普通科連隊一、それから特科連隊一、それを基幹にしたものでございます。大体このいわゆる管区隊を小さくした一つの総合部隊というふうなものでございます。
  105. 秋山長造

    ○秋山長造君 次にお伺いしたいのは、ただいま御答弁を聞きました自衛力漸増ということ、それから駐留軍の撤退ということは、これは直接につながっている関係でございますかどうか、その点一つ……。
  106. 杉原荒太

    ○国務大臣(杉原荒太君) 日本自身の自衛態勢の整備されるに伴いまして、逐次駐留軍の撤退ということを期待いたしております。その意味におきまして、これはもちろん両者の関係もあることでございますが、現に近く約五千名ぐらいの米軍が撤退いたすことに相なっている次第であります。
  107. 秋山長造

    ○秋山長造君 近く一混成団五千名が撤退をするということでございますが、それが撤退をすると、あとへ残る駐留軍の兵力というものはどのくらい残るわけでございますか。
  108. 杉原荒太

    ○国務大臣(杉原荒太君) お答え申し上げます。地上軍が今まで約二個師団ほどだったと承知しております。そのうちから今五千名撤退するわけでございます。空、海につきましては私その勢力等を承知しておりません。
  109. 秋山長造

    ○秋山長造君 これは混成団というのは大体何個師団ぐらいと解釈したらいいのですか。
  110. 杉原荒太

    ○国務大臣(杉原荒太君) 人数にいたしまして約五千でございます。
  111. 秋山長造

    ○秋山長造君 じゃ駐留軍の一個師団というのは人員にして何人ぐらいですか。
  112. 杉原荒太

    ○国務大臣(杉原荒太君) それは向うの編成とか、その人数等のことは秘密にしているようでございますから、私よく存じませんのでございます。
  113. 秋山長造

    ○秋山長造君 それはおかしいと思うのです。この混成団は五千人だということはここではっきり御発表になって、そうして師団は何人だということは秘密で言えぬということはおかしいのじゃないですか。
  114. 杉原荒太

    ○国務大臣(杉原荒太君) それは、お説の通り行政協定に伴う特別の刑事法もいろいろありますが、公けになっていないものについては申し上げる自由はもちろんございません。しかし今混成団につきまして申し上げましたのは、差しつかえないということで申し上げている次第でございます。
  115. 秋山長造

    ○秋山長造君 この点はアメリカあたりの議会ではどんどん詳しい数字的なものまで取り上げて、大っぴらに論議をしていると思うのです。もう一度お尋ねしますが、この一個師団は何人ぐらいで編成されているものか、それをぜひ聞きたいとは思うのですけれども、それが聞かせていただけねば、それじゃ一個師団というものは幾つの混成団をもって一個師団としているものか、何混成団で一個師団というものができ上っているのか、その程度のことはお聞かせ願えませんか。
  116. 杉原荒太

    ○国務大臣(杉原荒太君) その編成等につきましては、私遺憾ながら申し上げることはできません。
  117. 秋山長造

    ○秋山長造君 私はこの点がはっきりしなければ、今度の日米の分担金削減交渉等の問題についても、われわれがはっきりした認識を持つことはできないと思うのです。それからまた今後の日本の自衛力漸増という問題、防衛問題を考えるのにもやはり大切なかなめが一つ欠けることになると思うのです。だから何らかの機会にぜひその点をお聞かせを願いたいということを申し上げておきます。  それから、この前私が五月の末の暫定予算のときに政府へお尋ねしたときには、防衛分担金があまり減らないのは当りまえで、駐留軍そのものが大して減っていないのだ、行政協定を締結した当時から比べて大して減っていなかったのだということを外務大臣も、また防衛庁長官もおっしゃっておった。それでこの点もう一度お尋ねしますが、二十七年のあの安保条約、行政協定の発効したときの駐留軍の兵力と、それから今日近く一混成団が撤退すれば、あと二個師団程度のものが残るとおっしやるその兵力との間にどれくらいな違いがあるのか、その点をお尋ねしたい。
  118. 杉原荒太

    ○国務大臣(杉原荒太君) 講和発効当時から、従来実際上違いがないというふうに私はずっと聞いてきております。そらしてそれにつきまして、今つまり約五千名撤退する、それだけが新らしく減るわけでございます。
  119. 秋山長造

    ○秋山長造君 それでは長官のおっしやるのは何ですか、二十七年の行政協定ができた当時の駐留軍の兵力というものが、ずっとそのまま、大体においてそのまま今日まで維持されてきて、そうして最近その中から一混成団だけが減るという程度のことなんですか。
  120. 杉原荒太

    ○国務大臣(杉原荒太君) 朝鮮事変のために多少の出入りがあって、現にあれは二十四個師団でございましたか、つい去年の暮れから今年にかかっておったと思いますが、一部がこちらに来てまた向うに、朝鮮の方に引き返しておる、そういうふうな事実は承知いたしております。
  121. 秋山長造

    ○秋山長造君 そうすると、まあとにかくあまり二十七年以来今日まで、日本側の自衛力漸増に並行して駐留軍が減って行くという最初の約束はそのまま実行されないで、向うは大体あまり減らないでずっとおって、しかも日本側ばかりが自衛力をどんどん増強し、自衛隊をふやしてきたというのが私は実態だろうという結論に到達せざるを得ない、そう考えて差しつかえございませんか。
  122. 杉原荒太

    ○国務大臣(杉原荒太君) 事実は結果的に見ますとそういうふうになっておるわけでございます。
  123. 秋山長造

    ○秋山長造君 そこで大蔵大臣にお尋ねしたいのですが、ただいまのお話しのように、行政協定を締結した当時から今日まであまり駐留軍が減っておらないというお話しなんです。ところが先般大蔵省からわれわれの手元に提出されました在日米軍預金ドル振込額調という資料を見ますと、昭和二十七年度が四億三百五十一万ドル、二十八年度が四億三百五十二万ドル、まあこの二年度は大体同じような額なんですが、ところが二十九年度になりますと、これが約半減いたしまして三億三千五百五十五万八千ドル、こういうふうにうんと駐留軍の関係の費用が減っておるのです。だから駐留軍が減らないにもかかわらず、駐留軍の費用、アメリカ側の負担する駐留軍の費用が半額近く減っておるというこの数字とつじつまが合わなくなって来るんじゃないか、この点はどういう実態になっておるのか御説明願いたい。
  124. 森永貞一郎

    政府委員森永貞一郎君) ただいま御指摘のございました数字は、おそらく外国為替関係の資料で当委員会に提出いたしました資料と思うのでございますが、それは在日米軍の日本におけるドルを円にかえた実際の資金がそこに入っておるわけでございまして、安全保障関係のいわゆる駐留軍の関係がそのうちどれだけあるか、その分を抽出してみませんと正確なことはわからぬわけでございます。すなわち二十七年あたりが朝鮮関係の作戦も行われておりまして、その関係の特需が日本でまかなわれておったというようなこともあるわけでございまして、そういった関係の支出、その分がただいまお示しがございました数字の中に混入されておるわけでございます。従っていわゆる安全保障協定による駐留軍の正確な数をその数字のみから推定することはちょっと不可能ではないか、そういうふうに考えております。
  125. 秋山長造

    ○秋山長造君 そういたしますと、駐留軍が減っていないにもかかわらずこの金額が減っておる、経費が減っておるということになるのです。ただいま主計局長がおっしゃったような、多少のほかの事情もこれはあるかもしれぬけれども、しかしここの註にも書いてあるように、この金額は在日米軍の維持費のほか、いわゆる特需の一部を含んでおるという註がついておるのですから、大体この数字から私は想像して間違いないと思うのです。にもかかわらず、駐留軍が減っていないということになれば、これは減っただけをおそらく駐留軍が日本側の分担金の方に肩がわりをさしておるんじゃないかというように私は思わざるを得ない。現にこの資料と同時に出されました在日合衆国軍日本側交付金支出済額表という資料を見ますと、昭和二十七年度には労務者の給与というものはゼロなんですよ。ところが二十八年度にはこれが一躍して百五十七億三千四百万円になり、さらに二九年度にはこれが三倍近くふえて四百四十四億九千万円というようにふえておる。だからこの二つの資料をつけ合せて考えてみ、さらにもう一つ経済審議庁の方で御調査になった特需契約週報八十五号という資料を調べてみますと、二十八年度にはこの防衛分担金の関係の特需ですね、防衛分担金の中から支払うところの特需が七千五百万ドルあった。ところが二十九年度にはそれがゼロになっておる。防衛分担金特需というものが二十八年度には七千五百万ドルもあったのが二十九年度にはゼロになっておる。この三つの資料をつき合わして結論を出しますと、結局あの行政協定の二十五条の二項の(b)に出ておるところの「合衆国が輸送その他の必要な役務及び需品を日本国で調達するのに充てるため、」と書いてあって、この防衛分担金の中からは役務とそして需品の経費を出すべきであって、労務者の給与というようなものは、これは日本側の防衛分担金をもってこれは支払うべきものではないという性質のものなんだ、ところがいつとはなしに向う側が、アメリカ側が勝手に自分の方の経費を減らして、そうしてその肩がわりに使うべからざる日本側の防衛支出金を向う側の労務費に流用をして、そうしてそれだけ在日駐留軍の維持費というものを減らしていった。結局アメリカ側がそれだけ本来負担すべきものを減らして、自分の肩を軽くして、そうして使うべからざる日本側の防衛分担金というものを労務費に流用しておる、こういう結論に私はなると思う。その点お認めになるかどうか。
  126. 森永貞一郎

    政府委員森永貞一郎君) 大蔵省に関係のございます問題につきまして、私からお答え申し上げます。米軍がドルを円にかえまして日本で使いました金、その統計を資料として出しましたが、その中には先ほど申し上げましたように、行政協定第二十五条の(b)の関係による日本における駐留軍の維持費、通信、運搬、役務、需品、いろいろな費目がございますが、要するにローカルな費用でございますが、それ以外の費用が混入されておるわけでございまして、その費用だけが幾らかという推計、これはいろいろなことで推計をするよりほかないわけでございますが、二十九年度をとってみましても、やはり一億ドル近くの金がやはり駐留軍のプロパーの経費のために支出されておるようでございます。これは推計でございます。分担金が当初金額がきまりました当時、米軍が約一億八千万ドルくらいのそういうローカル・エキスペンスのために負担するという前提で、当初一億五千五百万ドルという日本側の負担がきまっておりましたが、その防衛分担金の対象になっておりまする駐留軍の方のプロパーの経費につきましては、ただいまお話がございましたように、特に非常に減っておるということはないようにいろいろな資料から推測できるのでございまして、その点はまず第一にお答え申し上げたいと思います。  それから第二番目の問題で、労務費を日本の交付している分担金から払うようになった、それは向う側の負担がそれだけ減って、日本側の負担が重くなったのじゃないか、そういうお尋ねでございましたが、これは日本側が負担をいたしますこの防衛分担金は、いわばつかみで向うに渡しまして、向うが向うの予算と一緒にこれをどんぶり勘定で使っていく、そういう建前でございますが、しかし日本側といたしましても貴重な租税収入からそれだけ支出するわけでございますから、それが何に使われたかということにつきましては、やはり非重に重大な関心を持っておるわけでございます。そこで当初この負担をきめましたときの覚書によりまして、日本側といたしましては毎月何に使ったかという報告を受け、また場合によれば、その支出の状況につきまして監査もできるこれはもちろんアメリカ側の協力をまってでございますが、監査もできるようにしようというようなことになっております。従いまして、何に使うかということは、われわれとしてもしょっちゅう注意しておるわけでございまして、そうなりますと、おのずからこの分担金で何を出すかというこの経費の出し方を日米間において協定しておくことが便利なわけでございまして、そういう観点から多少この使い途につきまして、輸送、通信であるとか、用役作業費であるとか、あるいは物品費であるとか、災害復旧費、そういうものに使おうというようなことに協定ができたのでございます。しかるにその後米軍におきまして、会計制度の改訂がございまして、どういう点が改訂されたかと申しますと、二十七年度までの米側の会計規則によりますと、円予算とドル予算、これは別々に計上されておりまして、別なルートで予算も使用され、決算も行われておったわけですが、日本の二十八年度に相当する向うの会計年度からこの円予算とドル予算が一緒にドル予算の中に計上せられるということになりました。しかも円資金は日本側にあるわけでございますから、円資金から支出いたしました場合には、そのドル予算でついているドルをつけかえと申しますか、財務省の方に一々これを返すという会計手続が米側においてせられたわけでございます。そうなりますと、この需品費でございますと、一口十万とか二十万とか百万とか、小さいやつがたくさんございまして、その一々についてそういうドル予算をつけかえる、戻入のそういう手続をしなければならぬ、それは非常に繁雑ではないか、そこで労務費はこれは一月ずつまとめておきまして、ある程度まとまった支払が行われるわけでありまして、そういうまとまった支払いが定期的に行われるものについて円払いをするということに触りますと、この財務省へのドル予算の戻入の手続が比較的簡単に済む。そこで日米間において協議が行われまして、それまでは需品費の相当多くの——物品費ですが、相当多くの円払いが行われておりましたのを逐次労務費について円払いをする、その半面物品費につきましては、ドル払いがふえるというようなことに協定をいたしまして、二十八年度以降は防衛分担金で支払いをする費目に労務費を加えたわけであります。この労務費を加えたことは、二十五条の(b)項のサービスの中に入るわけでございまして、二十五条の規定の性質からいって決してそむいているとは考えません。また負担関係から申しましても、従来——円払いで行われておりましたものがドル払いになって、労務費関係が円払いになる。そういう振りかわりの関係でございますので、何ら負担関係には影響がないわけでございますので、そういった新たなる会計法上の便宜を私どもといたしましても考慮に入れまして、労務者の給与を円払いにすることに同意をいたしました次第でございます。これによりまして両方の負担関係には何ら変更が面かったことを御了承いただきたいと思うのであります。  経済審議庁関係の資料につきましてのお尋ねがございましたが、その資料を私ども拝見いたしておりませんので、その点は経済審議庁の方からの御答弁にゆだねたいと思います。
  127. 秋山長造

    ○秋山長造君 結局主計局長のおっしゃる意味は、今までほかのものに払っておったのをアメリカ側が肩がわりをして、そのかわりアメリカ側が負担をした労務費をこちらの防衛分担金で払ってゆくのだから、プラス・マイナスして結局損にも得にもなっていない、こういう意味ですか。
  128. 森永貞一郎

    政府委員森永貞一郎君) さようでございます。
  129. 秋山長造

    ○秋山長造君 私はそれは事実じゃないと思うのです。この大蔵省から出た資料で、いろいろほかのものもこれはまざっておるかもわからぬけれども、明らかにこの在日米軍預金ドル振込額調、この一覧表の金額というものは、これは日本側の防衛分担金に見合うべきアメリカ側の駐留軍の経費というものがその大部分を占めるものだと思うのです。そうしてしかもそれがほとんど二十八年度から二十九年度にかけて半額近く減っておるのですから、これはもうアメリカとしては駐留軍の維持費というものがうんと減ったということに率直に受け取る方が私は正しいと思う。だから本来言うならば、こちらの分担金を減らしてくれてしかるべきはずであるのに、向う側の分担金に見合うところの駐留軍維持費というものを一方的に減らして、そうしてその穴埋めに日本側の防衛分担金というものを流用しておる。私は明らかにこれは行政協定の二十五条第二項の(b)の違反だと思う。そのように大蔵省お考えにならぬですか。
  130. 森永貞一郎

    政府委員森永貞一郎君) 数字にわたる問題につきましては、先ほど来申し上げておりますように、四億くらい出ておりましたのが二億三千五百万に減っておりますが、これは在日米軍の維持費のほかに、砲弾発注の支払いであるとか、あるいは朝鮮関係の支払い等が相当入っておるわけでございます。その分を除いて考えますと、これは若干の減少が全然ないということは言い切れませんですが、この数字が表わすほど駐留軍プロパーの経費が減っておるというふうにも考えられないのでございます。もちろん、米軍におきましても、いろいろ支出の節約その他が行われておることは事実でございまして、そういった節約が全然行われてないと申し上げるのではないのでございますが、当初の、二十七年度に防衛分担金の当初の金額一億五千五百万ドルがきまりました当時の米側のドル負担の予定額が一億八千万ドルであった。それが基礎になって一億五千五百万ドルができている事実を考えますと、日本側のみが過重な負担をしてきているということではないのではないかと思います。もちろん、われわれといたしましては、将来にもわたりまして、この分担金をできるだけ減らしていきたいという点の熱意におきましては、非常に強い熱意を持っておるのでございますが、今までの事実を考えますと、日本側のみが非常に過重ね負担をさせられておるというのは必ずしも当らない、事実ではないと、さように考えるわけでございます。  なお二十五条(b)項の関係で、この労務者の給与を出すのは違反ではないかという点でございますが、この点は、外務省の条約解釈の結果から考えましても、二十五条違反ではないことを確信いたしております。
  131. 秋山長造

    ○秋山長造君 その主計局長のただいまの御解釈は、二十七年の最初、行政協定ができた当初からのこの条文の解釈なんですか。それとも、先ほどお話がありましたように、二十八年度からの解釈なんですか。
  132. 森永貞一郎

    政府委員森永貞一郎君) 二十五条(b)項にはいろいろ経費の種類があげてございますが、それに基いてさらにこまかく日本側は何を出すということを、これは行政協定以外に協定をいたしたわけです。その最初の協定には労務費は入れておりませんでした。しかし、その後、先ほど申し上げました米国の会計の手続関係から労務費をこちら側が負担し、今までこちらが負担しておったものを米側のドル支払いに振りかえるということにいたしたわけでございまして、二十五条の(b)の条文の解釈から申しまして、決してこれは違反でもございませんし、不当な解釈でもないということを当時から確信いたしておりました。
  133. 秋山長造

    ○秋山長造君 ところが大蔵省の方から出しておられる「国の予算」という厚い本がありますが、あの本を読んでみますと、昭和二十七年度の「国の予算」の中にも、それから二十八年度の「国の予算」の中にも、どちらにもこの防衛分担金の支出についての説明は、アメリカ側が労務費は持つべきものであるという説明が書いてあるのです。二十八年度からその協定が多少変ったようなことをおっしやるけれども、二十八年度に出た「国の予算」の中にも、その六十一ページにちゃんと、大蔵省のどなたが書かれたのか知らんけれども、「この経費の使途は協定によって役務と需品に限られている。」「これに対応する米国側の負担は、労務費その他」であるというように、やはり、労務費はアメリカ側が負担すべきものと、労務費以外の役務費と需品費を日本側の防衛分担金で負担すべきものだと、こういうふうに説明がついておるのですよ。だから今主計局長がおっしゃるように、二十八年度から労務費を日本側から出していいようにやりかえたというならば、この「国の予算」にそういう説明が出るはずがないと思う。
  134. 森永貞一郎

    政府委員森永貞一郎君) 二十五条の(b)項に「役務及び需品を日本国で調達するのに充てるため、」というのがございます。労務費は、もちろんこの役務の中に入るのでございますが、先ほど申し上げました後日の支出実績の報告なり、監査等についての米軍費を考慮いたしまして、この役務及び需品の中で、どういう費目を日本側が負担した、交付金で出すかということを、この行政協定以外に別に協定いたしたわけです。その協定につきまして、先ほど申し上げましたような米側の会計手続上の理由がありまして、初めは労務費はアメリカ側が持つことにきめたけれども、この労務費は日本側で持ってほしい、そのかわり需品費の大部分をアメリカが持つということになったわけでございまして、私どもといたしましては、この役務というごとの中に労務費は初めから入っておると、ただし、実行上両方の協定で労務費は初めはアメリカのドル資金であったのを日本側の円資金に振りかえた、さような経過なんでございます。  なお私、この行政協定ができました当時は、直接この立案には携わっておりませんでしたが、幸いこの席に、その当時の立案者である石原防衛庁経理局長が見えておられますから、何でございましたら、石原経理局長にお聞きただしを願えればはっきりすることと存じます。
  135. 秋山長造

    ○秋山長造君 これは主計局長はそういうようにおっしゃるけれども、この行政協定の条文に書いてある役務というのは、労務費を含まないのですよ。これは、この点ははっきりしておるのです。(「その通り」と呼ぶ者あり)これは「合衆国が輸送その他の必要な役務」だから、この役務の中の主要なものは輸送なんですよ。あるいはその他、電信、電話であるとか、そういうサービスがこの役務の内容なんです。そうして、労務費というものはこれとは別なんです。二十五条の一項に含まれるものなんです。日本側が負担する以外の、アメリカ側が負担するものなんです。これは私ははっきりしていると思う。大蔵省が現に「国の予算」の中で毎年そういう説明をつけておられるのだから……。
  136. 森永貞一郎

    政府委員森永貞一郎君) 「国の予算」は、まあ二十七、二十八、二十九年とございますが、これはありのままに記述をいたしておるわけでございまして、二十九年度の「国の予算」の中には、ただいま私が申し上げましたことを含めまして、「なお、二十九年度におけるこの経費のおもな使途は、合衆国軍の日本駐留に伴い必要とされる通信費、労務費、用役費、作業費」云々というふうに説明を、解説をいたしておるわけでございます。これは私が先ほど来申し上げておる事情をそのままここにも記述しておるわけでございます。何でございましたら、石原経理局長に詳しく一つ御答弁を願ったらどうかと思います。
  137. 秋山長造

    ○秋山長造君 私は時間がないから、時間が惜しいからあまり繰り返しませんけれども、これは二十九年度の「国の予算」にはただいまおっしゃることは書いてありますけれども、二十七年、二十八年はこれは労務費は払うべきものじゃないということを書いておられるのですよ。そして何の説明もなしに、二十九年度からずっと自然な形で労務費も日本側の負担に含めるような説明をつけて、そしてそういうように切りかわった理由も何にも書いてない。これはおそらく、もうなしくずしに向うの方が一方的にそういうことをやってしまったものだから、今さらそれに反抗することもできぬので、だから大蔵省も、まあこの程度は適当に書いておけばあまり目立たんだろうということで、適当に私は説明をつけられたと思う。これはやはり行政協定違反ですよ。もう少しこれは、大蔵大臣の言うように、まるでアメリカが防衛分担金をまけてくれたことを、えらいありがたいような御説明ばかりしておられるのですけれども、本来ありがたがるべき性質のものじゃないですよ。むしろこちらは適当に利用されて、こちらが負担すべからざるものを向うが流用されている。そして、ありがたがってついて行っている格好だと思う。私はこういうやり方には絶対に承服できません。
  138. 森永貞一郎

    政府委員森永貞一郎君) 二十八年は年度の途中から両方の協定によりまして、これを変更したわけでございます。従いまして、向うの説明がありましたのちに協定を取りかわしまして実行をいたしておるわけでございます。決してただいまお話がございましたように、やみくもに向うが既成事実を作って、それをあとで追認するというわけではございませんので、その点ははっきり御了承いただきたいと思います。
  139. 秋山長造

    ○秋山長造君 いつですか、今のは……。
  140. 森永貞一郎

    政府委員森永貞一郎君) 空軍関係、陸軍関係、海軍関係と分れておりますが、最後にきまりましたのは、たしか陸軍の関係であって、これは二十八年度の暮近くでございました。空軍関係が一番先でございました。
  141. 館哲二

    委員長館哲二君) 秋山君に申し上げますが、高碕国務大臣が出席されていますが。
  142. 秋山長造

    ○秋山長造君 外務大臣と一緒に。
  143. 佐多忠隆

    ○佐多忠隆君 ちょっと関連して。今のお話を聞いていますと、行政協定があるにかかわらず、それの解釈の問題として別な協定をやったんだ、話し合いをやったんだというような御説明でありますけれども、行政協定が締結された当時の考え方は、今秋山君が言ったように、サービスは今秋山君が例示したようなもので、労務費はこれには含まないというのは明らかだ、そういう説明をしておられた。それにかかわらず二十九年か二十八年にそれだけ変更するような話し合いをされたとすれば、それは行政協定の改訂であるべきであって、あの行政協定は勝手にそういうふうにし得る性質のものじゃないんじゃないか。それを勝手にそういうことをされるのは、先ほどから秋山君が言うように行政協定の違反であると言われてもやむを得ないんじゃないかと思いますが、その点をもう一ぺん正確にお答え願いたい。
  144. 森永貞一郎

    政府委員森永貞一郎君) 二十五条の(b)には「輸送その他の必要な役務」これは原文ではサービスということになっておるわけでありまして、この輸送というのは一つの例示にすぎないわけでございます。行政協定にはそれだけの規定しかないわけでございまして、この行政協定の実施に当って、先ほど申し上げましたような、報告を受けたり監査をしたりする場合の便宜を考えまして、さらにこまかい実施上の細目を両方で相談して作っておる。これは当初からあったわけでございまして、この実施上の細目はそのときどきの情勢によりまして、両方の合意によりまして、これを変更するということで参っておるわけでございます。この役務の中に労務費が入っておりますことにつきましては、私ども何らの疑念も毛頭ないと存じております。
  145. 佐多忠隆

    ○佐多忠隆君 当初サービスにはそれが入らないということは明瞭にして、しかも一両年はそれを含まないでやっておられるのだ。途中からそれを変更された。
  146. 森永貞一郎

    政府委員森永貞一郎君) 初めこの役務費の中に労務費が入ってないということは、誰もそういうことを考えたことはございません。ただこの二十五条を実施していく上におきまして、双方の便宜の上から別に相談をいたしまして、労務費はアメリカが持ち、その他のものは日本側が持つということに両方で約束をしておったわけであります。この約束は二十五条(b)の範囲内でございます。二十五条の範囲内である限りは、これを必要に応じて変更していくことは何ら差しつかえがない、さように考えるわけであります。
  147. 吉田法晴

    吉田法晴君 行政協定改訂の問題、あるいは行政協定についての責任は外務省かもしれませんが、今、秋山君の質問に答えられて明らかになったことから、一点だけこれは労働大臣だと思いますが、お尋ねいたしますが、防衛分担金の中から大部分が労務に支払われる、こういうことになりますと、この駐留軍が使っております労働者は間接雇用ということで政府が責任を持つ、こういうことになります。そうすると、その支払いの形態からいたしましても、あるいは法的な責任からいっても、もっと政府の意向と申しますか、あるいは日本の政府の責任というものが労働者に対して負わされなければならないのじゃないかと思います。ところが従来、たとえば退職金の問題にいたしましても、調達庁なら調達庁が考えた意向さえも許可されないというような実情でありまして、今の明らかになりました事態からして、労働大臣としてはもっと自主的に労働者の雇用条件その他について、あるいは退職金についても何と申しますか、日本の政府の責任がもっと果さるべきじゃないかと考えるのでありますがどういう工合にお考えになりますか。一点だけ伺います。
  148. 西田隆男

    ○国務大臣(西田隆男君) お答えいたします。特別調達庁の方で支払っておりますが、アメリカの方の会計その他の関係上、十日に一回ぐらいの割合いで支払っております。従って特調の方で融通のできます範囲内で労働賃金は特調から払い、逆にアメリカ側からもらうということになっております。なおアメリカ駐留軍側から払う金がどういう名目の金から払われておるかということについては、これは大蔵省と外務省の問題でありまして、特調としてはその金がいかような金であっても、払っておった金をアメリカ側から返してもらえばそれで責任が済んでおるのであります。
  149. 館哲二

    委員長館哲二君) 経済審議庁長官が出席されましたので、先ほど質疑を留保されました小林政夫君の発言を求めます。
  150. 小林政夫

    小林政夫君 午前中の経済、大蔵両事務当局の話から、最近出されたこの昭和三十二年度までの年次別の構想ですね。これはどういうことなのか、われわれが要求したのは、六ヵ年計画、こういうことを鳩山内閣は高く公約に掲げて、ぜひあの計画通り施策を進めるのだ、しかして三十年度予算は六カ年計画の初年度予算である、こういうことで予算の審議を進めて参ったのでありますが、午前中の審議の結果によると、三十二年度までの年度別のあれもただ経審が勝手に作ったので、大蔵省は知らない、こういうことでありました。経審長官いかがですか。
  151. 高碕達之助

    ○国務大臣(高碕達之助君) お答え申し上げます。経済審議庁の試案でありますが、各関係省とも打ち合せた上において作成いたしたものでございます。   〔委員長退席、理事池田宇右衞門君着席〕
  152. 小林政夫

    小林政夫君 打ち合せた上で作られたのですが、われわれこの前も念を押しまして、三十年二度までなら、われわれの言うような予算裏づけもあり、十分各省大臣が執行の責任の持てるものを出す、こういうことでありましたが、その通りに間違いございませんか。
  153. 高碕達之助

    ○国務大臣(高碕達之助君) お答え申し上げます。三十二年度までにつきましては、各省とそれぞれ打ち合せておりますが、その三十年度はすでにもう予算が出ておりますが、三十一年、三十二年につきましてはその当時における、その際における現状とそれから過去の実績とを積み立てまして、大体の目安はついておりますが、この目安を基礎といたしまして、それに合うようにしてやっていきますが、この数字はそのままはのむことはできない、多少変更するものと存じます。
  154. 小林政夫

    小林政夫君 御説明は、言葉としての御説明はそうですけれども、そういうことも言えましょうが、午前中大臣はおられなかったから、ここで質問時間を食うことははなはだ迷惑するわけですが、政府購入にいたしましても、一番これは予算関係する問題なんです。これだって内容は全然固まっていない。こういうことで果してこの予算財政当局も了承をし、この通りやるなんというものじゃなかろうと思うのです。
  155. 高碕達之助

    ○国務大臣(高碕達之助君) 大体の根本方針といたしますれば、この政府購入の方はあまりふやして行かないで、民間投資の方を十分にいたしたいと思いまして、これを数字で申しますれば、二十九年度の実績は、政府購入は一兆三千九百九十となっておりますが、大体これはその次の三十年度におきましては一兆四千八百、これがさらに三十一年度になりました場合一兆五千四百九十、その次の年は一兆六千二百三十、大体一六・七%ふえる、二十九年度に比較いたしまして、そういう計画でございますが、民間資本の方におきましては、これは二十九年度は一兆九百九十となっておりますが、次の年は一兆二千四百九十、その次は一兆三千五百十、その次は一兆四千七百六十、大体二十九年度に比較いたしまして三四%増加いたして行きたい、こういう方針でありますから、できるだけ民間資本を蓄積して、そうしてそれを産業方面に投資したい、こういう方針でございます。
  156. 小林政夫

    小林政夫君 この政府購入は国と地方自治体と合せたもので一応この通りということであれば、一兆四千八百億という大体国及び地方自治体の財政規模がきまるのですね。大蔵大臣はそれじゃ経審長官が今言われた通り、三十年度及び三十一年度、三十二年度、この財政範囲でおやりになるつもりですか。
  157. 一萬田尚登

    ○国務大臣(一萬田尚登君) ただいまのは一応経済審議庁の試案と考えられますんで、大蔵省とも十分打ち合せまして、さらにこの計画を立てて行きたいと思います。
  158. 小林政夫

    小林政夫君 だから経審長官、お聞きの通りです。これから打ち合されるのです。われわれの要求したのは、これをなされる前に打ち合してとの通りやるという数字をお願いしたわけです。
  159. 高碕達之助

    ○国務大臣(高碕達之助君) 大体これは事務当局同士でよく打ち合せた結果でございますが、政府購入の方には地方の公社債、政府投資等も含んでおりますから、そういう意味におきまして、これは必ずしも予算と合致するということはできないかと存じます。
  160. 小林政夫

    小林政夫君 そういうことは理由にならんし、そんな一々こまかいことを突っついて行けば、何ぼでもつっきますけれども、それよりも今事務当局では十分打ち合したと言われるけれども、午前中の主計局長森永君の答弁でも、知らないというのです。今の大蔵大臣の答弁と同様で、これからよく相談をして善処する、こういうことなんで、われわれの希望しておるものではないというごとなんです。だから大体私はほんとう言うと、あなたが一週間以内に出すと約束をされたときに、むりだ、出るかなあ、ほんとうかなあ、でもやれると言われるのだからお待ちしょうと、こう思っておったのですけれども、実際問題としてむりだと思っておったのです。事実ゲヤハルト・コルム博士方式による推計にすぎない。それでこういうものを何カ年計画というようなことで、国会に発表されたと同時に新聞社にも発表されておって、各紙が掲載しておりますが、非常に国民は迷惑する。ほんとうにその通り政府は施策を集中してやるのか。こういうことで、予算裏づけのない、こういうものが意味をなさないということは何度も申し上げてある通りであります。そういう点についてはいかがですか。
  161. 高碕達之助

    ○国務大臣(高碕達之助君) お説のごとく、なかなかこれを詳細にやりますにつきましては、積上式をやって行かなきゃならぬので、これは決して一週間じゃありません。もっと前から、三月以来いろいろ考えまして、いろいろな数字を取り合った結果なんでありますが、大体の大綱においてはこれは各省間においてよく打ち合せを積んであるのでありますが、これを実際上に運用いたします上におきましては、積立式でやって行かなきゃならぬ、そういうわけでありますから、これは大綱は間違いありませんが、この予算の編成だとか、そういう方につきましては、さらに積立式で考究して行かなきゃならぬ、こう存ずるわけであります。これだけやるのはなかなか精一ぱいだったのでありますから、どうかこの点くらいでごかんべんを願いたいと存ずる次第であります。
  162. 小林政夫

    小林政夫君 私はこういう計算をした経審の事務当局の労力と、これだけの計算をしたということに対するまあ労力です。労力に対して別に難くせをつけているのではなし、非常に敬意を表しますけれども、あなたの態度——態度というか、考え方というか、心がまえというか、六ヵ年計画——計画と名を打ってわれわれにおっしゃるということであれば、これはその通りやれるものでなくてはならない。これは大綱大綱とおっしゃるが、大綱というものはやはり積み重ねて行ったものでなくちゃならぬ。いろいろ聞いてみると、たとえば鉱工業生産の水準の問題にいたしましても、あるいは農林水産生産の水準の問題にしても、これだけのことをやろうとするのにはかなりの財政投融資、あるいは資金裏づけがなくちゃできない。米の増産の問題一つ取り上げても、午前中も問題になった。ほとんど財政の見通しもはっきりついておらない。こういうようなことでこれを計画だといって、政府の計画という以上は、施策担当者ですから、それをやるんだ。まあ一生懸命にやった結果、予算をつけた、金もつけたけれども、実際にはその通り資金効率があがらなくて行けなかったと、こういうことなら、あとになってどうもその通り行かなかったということならともかく、初めから全然そういうプランもないものが計画とは言えない。だから、六カ年計画とおっしゃるが、六カ年計画ではない、学者の見通し、こういう意味ではなかろうか。計画ということを引っ込めたらどうか。初年度だけもう本年度は責任を持ちましたとこの前も言われたけれども、今出てしまったものにこれが六カ年計画の初年度と言ったところで、また来年もそれは二年度です。計画じゃありませんよ。
  163. 高碕達之助

    ○国務大臣(高碕達之助君) 私は経済六ヵ年計画を発表いたしますにつきまして、これは経済一つ計画性を持たす、こういう意味でありまして、六年後の日本の経済はかくあるべきものであるという大綱を示し、それに沿うように今後の経済の運営をやっていきたい。こういうわけでございまして、実際運営いたしまするにつきましては、これはその当時における世界の情勢、過去における実績、それとを勘案いたしまして、全部積立式にやっていかなければ、正確な計画は立たないことはお説の通りでございまするから、そういうようなものと前に立てました、また立てつつあるところの前途の計画とをよくにらみ合せて実行に移していきたいと、こういう所存でございますから、さよう御承知願いたいと思います。
  164. 小林政夫

    小林政夫君 そういうことはおっしゃらなくともわかっておるので、ただわれわれ、私もまた国民も鳩山内閣に期待したのは、非常に今おっしゃるように計画性を持ってやる、こういうことであったろうと思う。それがその実ふたをあけてみると、計画ではない、全然……。こういうような推計ならば吉田内閣のときだってあった。吉田内閣と鳩山内閣と変った点、一つのニュアンス的にも違った非常に国民が期待した点は、なるほど今度は計画的にやるのだ、大いに重油ボイラーを奨励しておいて直ちに、一年足らずのうちに石炭に切りかえるというような、国民をまごつかせるようなことはやらない。あるいは何ヵ年計画、何ヵ年計画と言って事務当局は発表するけれども、何一つとしてその通りは行かない、こういうことに非常に不満を感じておった国民としては、今度は一つ少くとも政府が計画と銘を打ったものについては、その通りやるのだろうと、こういうのが鳩山内閣に対する期待です。それがこれでは全然吉田内閣のときの政策と一つも変らない計画ではないか。吉田内閣のときでも、経審の事務当局はこういうような推算のことはやっておった、事務的には。それを大きく計画々々と言って発表しただけにすぎない。だから本年度の、三十年度予算は六カ年計画の初年度予算だというようなことはとんでもない。考え方としてはお持ちになっておったかもしらぬけれども、事実としては六カ年計画というものはないのだと、こういうことだと思うのですが、いかがですか。
  165. 高碕達之助

    ○国務大臣(高碕達之助君) お答え申し上げます。この経済六カ年計画は目標を作り、経済計画性を持たすという意味で、それに沿うように三十年度予算も初年として、その出発点として立てていくように初年度予算は組んだのであります。三十一年度、三十二年度等につきましても、それに沿うように今後はこの予算を組むというふうな方針をとっていきたいと存ずるわけなんでありまして、しからばこの計画通りに、必ずその数字通りにこれを持っていけるのか、持っていかなければそういうものは一つの宣伝じゃないか、アドバルーンじゃないか、こういう御意見でありますが、これを持っていくか、いかぬかということは、今後どういうふうに運営していくか、いかにしてこれを実行に移すか、いかにしてこの目標に到達するかということには、十分努力すべきでありまして、これに取り組んでいきたい、政府当局はもちろんでございますが、国民諸君の御支援も得てやっていきたい、こういう所存でございまして、これは全然その計画性を持っていないというでたらめの計画でなくて、経済でなくて、今後の国民の向うべき、進むべき経済の前途をここで定めたものというのがこの経済六ヵ年計画の目的でございます。さよう御承知願いたいと思います。
  166. 小林政夫

    小林政夫君 経審長官としての心がまえというもの、気持はわかりますよ。気持はそういう気持かもしれませんが、事実そう実行されていないということを私は、言っておる。だからこの通りやるのだとおっしゃっても、今のようなことで財政当局との話もついておらない。それは三十年度は予算が出ておるのですから、それが計画の初年だといえば名前だけは初年度に違いないけれども、三十一年度、三十二年度というようなものについては全然話し合いがついていない。こういうことであれば、これは計画とは言えないのではないか。あなたは計画的にやっていこう、しかも国民もこのつもりでおってもらいたい、こうおっしゃっても、実際に閣僚の間においても意見が一致しておらない。いっか経済安定委員長の時代であったか、私はあなたに御注意したこともあると思いますが、閣議決定をしてもなかなか信用できないのです。与党の党議できめてもまた信用できない。国会でどんどん気に食わぬものは、私はたとえはねのけても議員立法等で修正する先例もあるのですから、これはよほどしっかりほんとうに計画としてやられるのなら足元を固めて、さらに国民の支援を得てやらなければ、しかも今のわれわれのような経済態勢において計画らしきことをやっていこうというのは相当困難で、重点をしぼって、これとこれはこういう計画でやっていかなければならぬという意見を申し上げたことがあると思いますが、一番初歩の閣議の足並みすら保ってない。こういうことではだれが信用しますか、こういうことは……。
  167. 一萬田尚登

    ○国務大臣(一萬田尚登君) 先ほど申しましたが、これはこの大綱になっておりまして、この大綱を具体的に具現をしていく予算裏づけ等については、さらに経審とも、大蔵省とも話し合って、そうしてこの大綱が具現できるように予算措置をさせる、こういうことであります。
  168. 高碕達之助

    ○国務大臣(高碕達之助君) お答え申し上げます。ただいまの小林さんの御注意は私はごもっともだと思いまして、この計画を実行するのには私は並み大ていでないと存じます。従いましてまず閣内の統一も、またこれに従事する政府の役人の方の統制もよほど必要だと存じまして、ようやく発足したばかりでございますから、できるだけそれについては御注意に基いて今後の連絡をよくとっていきたいと存じますから、発足の第一年としてはこれだけのものだというところで御勘弁を願いたいと思います。
  169. 小林政夫

    小林政夫君 大蔵大臣は、その大網だからこれにせいぜい予算をつけていくと言われるが、それじゃ今の政府購入の、三十年度一兆四千八百——これはもちろん防衛費も入りますこの中に。そうして地方財政、国の財政を通じて、こういう財政投融資関係は、この出された資料では個人消費支出の方へ入っているそうですが、それを除いたものはほとんど全部これに入る。この内訳はもらうことになっているが……。そういうことで必ずこの通りやっていかれますか、今からここで約束されますか。
  170. 森永貞一郎

    政府委員森永貞一郎君) 午前中のお答えを補足することになると思いますが、三十一年度、三十二年度、これはいわば大数的な観察としてできているわけでありまして、私どももちろんその大ワクにつきましては、これをできるだけ尊重いたして参りたいと思いますが、しかし御承知のように、予算はこれはやはり下から一つずつ積み上げていくわけでございまして、必ずしも大数的観察のみで予算ができるわけじゃないことはもう小林委員よく御承知通りでございます。たしか私が午前中申し上げましたのはそういう意味で、なお実施にいろいろな作業が必要なわけでございまして、実施作業をいたしますにつきましては、私どもの意向もさらに十分反映していただくようにお願いもし、また御協力も申し上げ、またそういう意味でわれわれとしてもこれをよりよき計画にするための協力を惜しまない。そうしてそういう財政的な裏打ちがあって初めて実行面の可能性もふえてくるわけでございまして、そういう意味で午前中にお答えいたしたわけでございます。この大数的な観察といたしましては、私どもこの方向につきまして別に異存があるのじゃないわけでございまして、この大局的な方向につきましては、私どもも極力その線に沿いたい、さように考えているわけであります。
  171. 小林政夫

    小林政夫君 これはあなたはだいぶ午前中の気持と、だいぶ問題がむずかしくなってきたから、少し調子を合せて、答弁がどうも経審の方に片寄ったような答弁ですが、もちろん予算は積み上げていかなければならぬし、といって、少くともこの産業政策、あるいは金融政策等を実施した結果が、この計画とズレができるということならやむを得ないけれども、こういうような計画として発表されたものが、その三十年度の予算を組むときに違っている、こういうことはおかしいので、このやった結果、二十九年度の予算を実行してみてまた違った結果も出るだろう、それに基いて多少の修正をする、こういうことはあり得るかもしれませんが、今こういうふうにやっているのだという計画ですから、計画ならそんな大数観察とか、何とかという問題じゃない。そういうことから言うと違っているんで、私はこの計画というものをぶちこわそうと思って言っているわけじゃない。非常にその計画というものはむずかしい。むずかしいについては、閣内はほんとうに心からなる一致をもって臨まなければならぬし、与党も一糸乱れざる統制のもとに進んでいかなければならぬだろう。   〔理事池田宇右衞門君退席、委員長着席〕 それでこそ初めて国会でも了承できる立場になってくるかもしれない。国会が了承してもまた輿論等の支援も受けなければならない。こういうようなことで、われわれの経済体制下における計画遂行というものは相当むずかしい。むずかしいのに、その心がまえ、気持としてはわかるけれども、まだその努力がとられておらぬということを言っているわけであります。だからあまり安易な、私の質問に答えができればいいということじゃないのです。実際に日本の経済をこの通りやっていこうというならもっと積極的な努力がなければならぬ。
  172. 高碕達之助

    ○国務大臣(高碕達之助君) お説のごとく閣内、政府部内はもちろん、与党との関係もありましょうが、私は、六年計画なんというものは政党政派を超越して国民全体としての御支持を受けなければならぬ。そういうわけでありますから、この計画実行に当りましては、また計画を立案するにおきましても、私はできるだけ広く政党政派を超越して皆さんの卓見をお伺いいたして立てたい、こういう所存でございますから、どうか一つ御協力あらんことをお願いいたします。
  173. 小林政夫

    小林政夫君 私は高碕長官の気持はわからぬことはないけれども、われわれが要求した資料とは非常に違うということが言えるのでありまして、これは高碕長官としては、今度の経済審議庁の改正等でねらっておられるように、場合によっては、あなたは各大臣に対して勧告もできる。そういうような立場から各省の十分調整を得た、しかもこういうものが出て、これにそぐわない予算を組みかけているというような場合には、それを勧告によって直させるということもできるほどの固まった——少くともそれは六ヵ年はできない、三十二年までならやれますと、こういうことで出された数字とわれわれは了解しておる。それが非常に違っておるということについては、これはもうこれ以上のものは出せない、そういうことならもっと日にちをかしてもらえば大蔵大臣とも話し合い、関係大臣とも話し合って、われわれの希望通りのものを出す余地があるのか、この点を聞かして下さい。
  174. 高碕達之助

    ○国務大臣(高碕達之助君) 今回の予算審議の期間におきましては、私はできるだけのことをいたしましたのが、今日提出した結果でございます。従いまして他日予算が通過いたしました後に、さらに十分検討いたしまして御期待に沿うようにいたしたいと存じます。
  175. 小林政夫

    小林政夫君 私は今のようなことでは少し考え直さしてもらわなければいかぬと思うのですが、私のみならずほかの委員からもこの資料の提出方については大分要求があり、そうしておそらく私と同様の気持を持ってこの提出された三十二年度までの年次別構想を受け取っておられると思う。そこで十分これは取扱い等について、理事会等においてお諮りを願いたいと思います。  農林大臣がおりませんから残余の時間は農林大臣出席してからいたします。
  176. 佐多忠隆

    ○佐多忠隆君 ちょっと資料について。先ほど行政協定のサービスの問題で問題になりましたときに、主計局長はその後二十八年であったか二十九年に別な実施についての話し合いをして、別な話し合いの結果、そういうことに伝ったと言われたのですが、その別な話し合いによってまとまったことの内容を文書にして御提出願いたい。
  177. 山下義信

    ○山下義信君 私は厚生大臣にまず社会保障制度関係質問いたしたいと思います。先ほど政府は社会保障制度の長期計画を立てる考えがあるということを表明いたしましたことは、非常にわれわれが同感いたしている点でありまして、こういうことを言われるというと、どうも倒閣の気分がにぶるのでありますが、われわれの見るところでは、社会保障制度の計画につきましてはもう議論する余地はない、どういう程度の制度をわが国に実施するかということはほとんど世論が一決していると思うので、あとはただいかに、これをどういうプロセスで実施するかという施行の段階であると考えるのでありますが、その長期計画に対しまして、厚生大臣の所信のほどを承わっておきたい。
  178. 川崎秀二

    ○国務大臣(川崎秀二君) 社会保障制度の長期計画の問題はしばしば答弁をいたしておりますが、ただいまのは、どういうプロセスで今後具体的に推進してゆくかということに対しての具体的な御質問でありましたので、そのことにつきまして明確にお答えしておきたいと思うのでございます。このことはすでに社会保障制度審議会からも勧告をされておりまして今日に至りまして、私が先般社会保障六ヵ年計画を作成する用意があるということになりましてから問題になったのでありますが、本年度はまずこの制度の有力な支柱の一つであります健康保険制度につきまして根本的な検討を加えたいと思っております。しかしこの検討が終り次第、まず国民を疾病から守る医療保障に関する総合計画を樹立いたしまして、次になるべく国民の各層にわたる広範な年金制度の達成を期したいと考えております。  従いまして、大体のプログラムを申し上げますならば、健康保険制度に対する検討を、大体三十一年度予算に関連しての検討を完成して、九月ごろまでにはぜひとも案を完成いたしたいと思っております。医療保障制度の問題は、明年度予算と関連をいたしまして逐次解決をいたしていきたい。年金制度の問題は、それ以後に——もとより研究は今日よりいたし、具体的な検討の段階に入ろうと思いますけれども——になってゆくと思うのであります。すでにこれらがために、こういうことを準備する機関を設けなければなりませんから、この国会が終り次第、社会保障企画庁というものに対する具体的な推進をいたしたいと思っておりますが、これは法律を伴いますから、従って臨時国会が開かれるならばその際において提出をいたしたいと思いますけれども、臨時国会がなければ、来年の通常国会ということに相なると思います。それを立案する前に、厚生省としては社会保障の中核体でありますから、社会保障企画庁ができるのを待っておるわけには参りません。従って社会保障企画室とも申すべきものをこの七月から省内に——厚生省組織令を改正いたしまして、作る予定でありまして、この社会保障企画室で大体社会保障白書とも申すべきものを作成をしたい。しこうして社会保障六ヵ年計画を理想的に作ってみたい。もとより理想的と言いましても、空想的であってはならないのでありますから、経済のことも織り込んで作るわけでありますが、しかし経済審議庁との関係があります。経済の細かい算定につきましての一応厚生省が理想案を作ってから持ち込んでくれというような話し合いを、先日経済審議庁長官といたしたばかりでございまして、以上が今後の社会保障長期計画に対する私のプログラムであることも明確に申し上げておきます。
  179. 山下義信

    ○山下義信君 社会保障関係の審議会、あるいは調査会、協議会というような各種の諮問機関が重複、あるいは繁雑にして、多数の審議会の類のものがあるのでありますが、この際それらを統合いたしますと同時に、こういう大きな政策の推進につきましては、われわれとしても異議がないのでありますから、各政党、各会派に呼びかけて、何といいますか、協力を求めて強力に推進してやっていくというお考えはありませんか。
  180. 川崎秀二

    ○国務大臣(川崎秀二君) 行政がだんだん専門的になってきますと、かなり審議会の数がふえて参っております。これにつきましては統合を要望する声もかなりあります。たとえば具体的はないかという有力な意見が出ておりまして、私どもは今直ちにこれらを統合改廃するということではございませんが内部においては改正を要する審議会もあると思いますので、順次整理統合をいたしていきたいと思います。なお、ただいまお話の社会保障長期計画、あるいはそういうような種類に属するものは、超党派的に呼びかけよということでございましたが、全く同感でございます。
  181. 山下義信

    ○山下義信君 私は次に、生活保護の政策について当局の所見を伺いたいのであります。今年度の予算を見ますると、幾らか名目的に増加しておるように見えますけれども、きわめて僅少でありまして、また被保護世帯の増加の予想も、例年のごとくただ申しわけ的に五%の増を見ておる程度であります。われわれが常識的に考えますると、この情勢下におきましては、ことに貧富の懸隔が最近顕著になっておりまして、いろいろ社会情勢を見まするというと、非常に被保護世帯の階層が激増しておるのではあるまいかということが考えられるのでありますが、しかし政府の意見が、予算を見ますと異なっておるようであります。被保護世帯の増減の趨勢について、当局はどういうふうに見ておりますか、また最近の趨勢はどうでありますか、お答えを願いたい。
  182. 川崎秀二

    ○国務大臣(川崎秀二君) 生活保護法によりまして、保護を受けておりまするのは、三十年の一月で約六十五万二千世帯、人員にして百八十七万四千人であります。これは前年同月の百九十万二千人に比して約二%五だけ減少を見たわけになります。主な理由は、軍人恩給の給付であるとか、あるいは日雇い健保の強化、それから母子福祉資金の貸付金の影響によりまして、このように多少少くなってきておると思うのであります。もとより生活保護を要する者、並びにボーダーライン・ケースにある者はかなりふえつつあるのではないかと思いますが、これに関連をしましてとられておる施策が早急に伸びておりますので、そのような関係からこのような数字が出ておりまして、昨年から見ましてやや少くなっておるというのが今日の実情であると思っております。
  183. 山下義信

    ○山下義信君 政府はことさらにこの生活保護の適用を圧縮しようとしている傾向があるのではないかと思うのです。たとえば結核患者の入退者の基準などを強要して、そうしてそれらの入院患者を追い出す。むりに追い出すもののですから、最近の統計を見るというと死亡者が非常に激増している。そういうような生活保護の適用を圧縮しようというような考えを持っているのではないかと思う。今回予算で見ると、政府は全国に五百有余の国家公務員を配置しようとしているがごとき、これは何の目的であるか。また第三国人に対する生活保護の適用の方針はどういう方針を持っているか。あるところによりますと、非常に集団的な、暴力的な威嚇をもって適用を迫っているというようなことも聞きますが、こういう方面はどしどし仮借なくやって、そうして法の適用の圧縮というようなことを避けなければならぬと思うのでありますが、当局の方針を聞いておきたい。
  184. 川崎秀二

    ○国務大臣(川崎秀二君) 生活保護につきまして、ただいま山下委員が申せられましたことは私も全く同感であります。政府は決してこれに対して極度に圧縮しようというような意図をもって対してはおりません。むしろ最低生活を保障するためには、すなわち幾多の他の法律がありましても、なおかつこれに落ち込んでくるいわゆる最も最低生活に伸吟いたしておりまする階層に対しての救いの手というものは強力に差し伸べなければならぬ関係もありまして、われわれとしては、これを圧縮しようなどという意図はございません。ただ濫給、漏給といいますか、生活保護の面におきましては、かなりそういう点が各方面から指摘されておりますので、この点については十分戒心をいたしていきたい。また第三国人の一部ではありますけれども、生活保護法の実施に当って、相当に、先ほどから述べられたような好ましからざる現象が一部の都市を中心にして起っていることは御承知通りであります。従ってこの方面に対するところの取締り的な措置というものもやはり講じなければならない、かように感じておるのでありまして、第三国人全般の生活保護は、日本人に対する生活保護に準じての取扱いは、当然あたたかい手を差し伸べる必要があると原則的には考えている次第でございます。
  185. 山下義信

    ○山下義信君 私は持ち時間がありませんから、重ねて伺う余裕がないので次に移りますが、最近保護施設におきまして非常に悲惨な事件が起きます。先には横浜の養老院で百人の老婆が一ぺんに焼け死ぬという事件が起きまして、また最近には千葉の精神病院で十数名の精神患者が焼死をするという事件が起きまして、一体これはどういうことだ。だれの責任だ。こういう事件が起きまして、政府はどう考えるか。原因が何にあるとお考えになりますか。家屋の作り方が悪いとか、逃げ道がなかったとかどうとか、そんなことじゃないと私は思います。こういう事件に対して、政府はどうお考えになりますかということをこの機会に御表明願いたい。
  186. 川崎秀二

    ○国務大臣(川崎秀二君) 横浜の養老院の施設は外国人経営の施設であり、また最近火事を起しました式場精神病院でありますか、これは民間の施設でありますから、直接の責任が政府にないといえば言えるのであります。しかしながら私はやはりそういうような社会保障施設というものが、あるいは家屋の老朽のために、あるいはその他の理由によりまして起っておることの最終の責任は、やはり政府の社会保障にす対するところの、施設に対する力が足らず、また指導が足りなかったために起ってきたのでありますから、もとより国が最終の責任を負うべきで、われわれもそのことに対しては責任を痛感いたしておるのであります。従ってこういう施設の災害等に対しましての費用も、昨年度は少かったのでありますが、本年は一応千二百万でありますか、経費を計上いたしまして——いや、六千万の補助を予定をいたしておるのでありまして、とれでもなおかつ足らない部分もありましょうけれども、養老院あるいは精神病院等のああいう災害が起りました善後措置については十分の協力態勢をしきたい、かように存じておる次第であります。
  187. 山下義信

    ○山下義信君 こういう不祥事件が起きますことは、これは政府がこの方面の費用の支出を惜しむからです。無理な経営をするからです。それでいろいろ注意を届かしてやるということができなくて、こういう不祥事件が起きるのであります。十分政府におきましては注意をしていただきたいと思います。  それから次に伺いたいと思いますのは、医薬分業の問題です。これは明快なる御答弁を得たいと思うのは、こういう大きな問題を政府が採用をするか採用をしないかということを、政策としないという手はないと思うのです。ただ法律が来年に実施を命じているから、それで政府が法律の命令によって準備をするのだと、国会がやめろと言うならやめるのだと、こういう態度はないと思うのです。国民に非常に大きな利害関係の影響のある医薬分業制度をやるかやらぬかということは、そのときの内閣の重要な政策として私は対処すべきだと思うのです。現内閣は医薬分業制度に対して、政策としてこれをやるかやらぬか、閣議に諮ってその態度を一括して進むか進まないか、この際明確にしていただきたいと思います。
  188. 川崎秀二

    ○国務大臣(川崎秀二君) これは山下議員に明確に、かつ私の政治的立場をも明かにしてお答えいたしておきます。私はこれは断然やるつもりであります。しかしながら、御承知のごとく医薬分業に対するところの問題が十分今日まで一般に解明されずして、特にさきごろの国会におきまする、ことに参議院の厚生委員から芽を起しまして昨年延期になりました理由というものも十分に感得をしなければならぬのであります。従いまして私は医薬分業法案に関しまする限り、その当時の御決議は、厚生省の準備不足に原因があった、こういうことを言われておるのでありまするから、今回は準備については万全を期する、たとえばこれらの医薬関係審議会の結論も八月中につけていただくという考え方のもとに今日進んでおるのであります。しかしながらこれら医薬分業の問題は、いつも医師会あるいは薬剤師会等の間におきましての力関係の問題が国会に反映するようないきさつもありまして、私個人といたしましても、今日までの経過を見まするとはなはだ残念なことが多いのであります。  率直に申し上げますが、私は医薬分業推進論者の一人でありまして、個人としてはこれを推進いたしたい立場であり、また厚生大臣としても、今日まで厚生省の内部におきまして医薬分業問題に対する厚生省の態度は——大臣の態度でなくて厚生省の態度は、医薬分業を推進すべしという今日までの結論でありますが、私は同時に党人でありますから、すべてこれらは民主党また国会の御決定に最後は従わなければならぬのであります。そういう背景をもちまして、進行はいたしておりますけれども、この次の国会におきまして最小限度の医薬分業の達成には全力を尽したいと思いまして、その準備の体制を今日ではしくつもりであります。
  189. 山下義信

    ○山下義信君 次に伺いたいと思いますのは、原水爆等の被害によりまして傷つきました者に対する治療の体制を、政府としては一つの制度をお立てになるお考えがありますかどうかということであります。先般水爆の被害者に対しましては、国においてあるいは船員保険等でやったのだとおっしゃいますけれども、実質は国において十分の治療を御尽力下すった。しかし一方においては長崎、広島等の原爆の傷害者は本年の予算で千二百万の小額はあてがわれておりますけれども、まだまだ水爆の傷害者の治療に比較いたしますれば比較になりません。その他私どもはしろうとでわからないけれども、将来濃縮ウランその他の放射能関係のことや、いろいろな点を考えますというと、原水爆放射能の影響の治療等々の制度に関しましては、政府としてこれが対策を立てておく必要があるのではないかと考えますが、この点に対しまする厚生大臣の御意見を伺いたいと思います。
  190. 川崎秀二

    ○国務大臣(川崎秀二君) ただいまのお尋ねは、終局的には山下議員の指摘されたと同一の意見を持っておりますけれども、今日の予算からいたしまして、この原爆被害者に対する国が治療を行うというようなことは、今日の規模ではとうてい考えられないと私は考えておるのでございます。そこで原爆傷害者中治療を要すると認める者に対しまして、各種の治療方法を確定する建前のもとに、ある種の研究的に行う治療費につきましては一千二百万円本年は計上いたしたわけであります。従って、今後はただいま御質問の方向に向くべきではありましょうけれども、今日これを全面的に治療費を払うというような意図は持っておらぬことをお答え申し上げます。
  191. 山下義信

    ○山下義信君 環境衛生を主管せられまする厚生大臣として、多分あなたの方でこれは御研究願うのが適当ではないかと思いますが、それはかつて進駐軍によりまして廃止せられました露店の復活の問題であります。これはせっかくその都市の美観のために、その他いろいろ取締関係で撤去しました。その後の状態が適当である都会の地域もある。またそういう方法もあるいはけっこうと思う点もありますが、しかし全般的に見まして、露店営業というものの復活は一ぺん考えてみる必要があるのではないか。おそらくこれによりまして、何と申しますか、あるいは未亡人の世帯でありますとか、あるいは経済更生を必要といたしまするそれらの各層が小資本をもって経済的立ち上りの機会を得る。従来の弊害は打破いたしまして、そうして適当な立法措置によりまして、あるいは失業救済の一端にもなりまするし、この街頭の営業、露店営業というものにつきまして政府は検討してみるという考え方はありませんか、どうですか、伺いたいと思います。
  192. 川崎秀二

    ○国務大臣(川崎秀二君) マッカーサー治下でありますから二十三年の春であったと思いますけれども、いわゆる露店の取締りにつきまして、これに関連して食品衛生法その他それに伴うところの措置が出ましてから、露店をなるべく圧縮する考え方のもとに今日まで推移をしてきたようであります。しかしながら実情は、ただいま御指摘のように、未亡人であるとか、あるいは非常に生活に困っておられる人々が、こういう露店を一つの営業形態として生活の根拠を築こうというような面もあり、非常に今後はこの点について考慮をいたさなければならんのではないか。たとえば、これははなはだ個人的ではありますが、銀座の夜店がなくなったということで、非常に私どもは、何といいますか、郷愁を感じている面もありまするし、ある意味では、露店は非衛生的な面だけは断固としてこれを取締りをいたさなければならんのは、食品衛生法の趣旨ではありましょうけれども、御趣旨に従いまして十分検討はしてみることにいたします。
  193. 山下義信

    ○山下義信君 私はこの機会に軍人恩給のことについて所管大臣に伺いたいと思うのでありますが、このたびの予算の修正で、十八億二千万円、この増額の内容をどういうふうにされるということがきまりましたか。きまりましたら一つ説明を願いたいと思います。
  194. 大久保留次郎

    ○国務大臣(大久保留次郎君) この問題は、委員会におきまして民主と自由党の協力によって修正のものであります。大体の案はまとまりましたようでありますけれども、こまかい点は、まだ少しまとまりかねている点があるのでございます。ですから、私から申し上げるのはいかがかと存じますが、便宜上私の知りました範囲におきまして申し上げておきます。今回増額されました金額は、総計十八億八千万円、そのうち恩給の事務費七千万円ということになっております。純粋に恩給費の総額としては十八億一千万円、この大部分は、いわゆるベース・アップ四号俸引き上げといいますか、及び一万円のべースを一万二千円に上げるのに大部分を費すことになっております。それも全額の支給は本年度においてはできませんので、おそらく半額を十月分より実施するということになるのではないかと考えております。
  195. 山下義信

    ○山下義信君 この詳細が判明いたしますのはいつごろでございましょうか。
  196. 大久保留次郎

    ○国務大臣(大久保留次郎君) これは二、三日中に大体まとまるのではないかと思います。
  197. 山下義信

    ○山下義信君 今般軍人恩給、すなわち遺族扶助料に関しまして、公務死の認定のやり方を改めるということになると思うのでありますが、これがための影響というもの、すなわち、公務死と認めます従来の戦病死者数はおよそどのぐらいであるというお見込みでございましょうか。
  198. 大久保留次郎

    ○国務大臣(大久保留次郎君) 今回私どもの調査したところによりますると、公務死の拡張によってふえる人員は、約二千五百名ぐらいで、そのうち、いわゆる責任自殺者と申しますか、これが四百名。
  199. 山下義信

    ○山下義信君 この数字は納得しがたいのでありますが、まあ、時間がございませんから、私は全般的に伺いたいと思うのは、遺族の扶助料に関しまする要望といいますか、希望といいますかというものは、今回の措置で大体満たされたものであると了解してよろしうございましょうか。また、政府においても、この程度で問題は大体解決したと考えておられますか。なお、将来何と申しますか、増額というか、優遇するというお考えでありますか。この程度で遺族の扶助料問題はまず一応解決したとお考えになっておられますか。その点はいかがですか。
  200. 大久保留次郎

    ○国務大臣(大久保留次郎君) 遺族の扶助料としては、まず一段落と存じまするが、さっき申しました通り、本年度においては約半額であります。来年度もしくは来々年度から全額の支給になるようになると思います。そうなればまず大体においていいと思うのでありますが、ただ軍人界の希望として残っておりまする点は、加算の問題、この問題は材料が違っておりまして、宏かなか正確に調べるのは困難であります。これを調査するだけが残っておる、こう思います。
  201. 山下義信

    ○山下義信君 次に、私は法務大臣に売春対策につきまして政府のお考えを伺いたいのでありますが、政府は売春取締り法をなぜ政府案としてお出しにならなかったという理由を承わりたいと思います。
  202. 花村四郎

    ○国務大臣(花村四郎君) お答え申し上げます。実は前内閣のときに、売春問題対策協議会を作りまして、そうしてこの売春法に関しまするこの委員会に諮問をいたしておったのでございまするが、この委員会ができましてから今日に至るまで二十数回にわたりまして委員会あるいは懇談会、あるいはまた幹事会等々、何回となく開かれまして、そうしてこの問題を討議して今日に及んでおるのでございまするが、だんだん進みましてその結論に到達せんといたしておるのでございまするが、政府といたしましては、この諮問機関の最終的の意見を聞いた上でしかるべき法案を作って提案をすべく準備をいたしておるのでございまするが、今日なおかつその結論が出て参りませんので、従って今日まで政府提案をするに至らなかったような事情でございます。
  203. 山下義信

    ○山下義信君 要領の得んことをまあおっしゃる……。法務大臣に伺いますが、現在売春婦と思われる婦人のわが国における数、また売春を営業としておりまする業態のもの、あるいは場所の提供等をいたしておりまするような、そういう売春取締りの、これはあなたの方でお考えになるといたしましても、あるいは今議員立法が出ているといたしましても、要するところ売春取締りの対象となると思われる現在のわが国のそれらの実数というものは、どういうふうに把握しておられまするか、承わりたいと思います。
  204. 花村四郎

    ○国務大臣(花村四郎君) お答え申し上げます。お尋ねの事柄につきましては、厚生省、労働省、あるいは警察庁において正確なる調査をしておられることであろうと存じまするが、法務省といたしましては全国各地検から報告のあったものを集計いたした数字があるのでございまするが、これを御参考までに申し上げますと、散娼数が四万六千七百八名、集娼数が七万二千百三名、合計十一万八千八百十一名でありまして、売春業者の数は二万九千三百六十五名と相なっております。それからさらに、売春等の取締りについてのお話でありましたが、この種犯罪の取締りについては、従来とも犯罪を証明いたしまして、公訴を維持するに足る証拠を集めることがきわめて困難であるため、その成果を期しがたいという声をしばしば耳にいたしておったのでございまするが、私といたしましては困難なことについては十分理解できるのでありまするが、一面事柄は憲法に保障する自由権に牽連するものでありますから、その具体的血方策については必要性の限界、その及ぼす影響等、あらゆる面から十分な検討を加える所存でございます。
  205. 山下義信

    ○山下義信君 大へん行き届いた御答弁を伺いました。この数字はいつの数字か、古いことであろう一思いますが、実数とよほど隔たりのありますことは言うまでもなく御答弁のお方も御承知だろうと思います。私が伺いたいことは、私も売春取締りの賛成者でありますが、この取締りに臨検以外に、何か取締りの方法がございますか。法務大臣並びに警察担当の大麻国務相から御所見を伺いたい。臨検以外に売春取締りの方法は何かほかにありますか。
  206. 花村四郎

    ○国務大臣(花村四郎君) 臨検以外にも、これは労働省並びに厚生省等の所管に属するものでありまするが、年少の婦女に対する売淫行為の方面に婦女を使役したというような場合においては、やはりこれは児童福祉法であるとか、あるいは職業安定法であるとか、あるいは労働基準法等によっても取締りができようと、こう存じます。
  207. 大麻唯男

    ○国務大臣(大麻唯男君) 申し上げます。ただいまのところは、御承知のように臨検の制度はございません。刑事訴訟法に基いて一般犯罪と同様に取締りいたしておるのでございます。
  208. 山下義信

    ○山下義信君 法務大臣は売春をお取締りにならん御方針のようでありました。何となれば取締りの方針を御明示になりませんから……。また、大麻国務相の答弁は、臨検という以外に方法はないと思うがどうかということのお尋ねをいたしたのでありますが、臨検以外にこういう方法で取り締る道があるということを御答弁にならなかった。また大麻国務相も売春のお取締りはなさらん御方針のようにみえます。私はこの機会に大麻国務相に伺いますが、私は売春のモデルは、売春の最高峰は芸妓制度だと思うのです。これを皆見ならって売春婦が続出をいたす。一般の売春の最高峰は芸者制度です。何とかなさろうというお考えはありませんかどうかということを承わっておきたいと思います。
  209. 大麻唯男

    ○国務大臣(大麻唯男君) お答えを申し上げます。芸妓制度はむしろ社会慣行の改善にまつべきものでございます。警察といたしましてはこれが人身売買とか、あるいは御指摘の売春というような行為のあるときには、厳重に取締りをいたしておる次第であります。
  210. 山下義信

    ○山下義信君 私は芸妓制度を無視することは、売春取締りの上においての呑舟の魚を逸するものだと思うのです。これは議論する余地がありませんが、なお私は警察担当の大臣に伺いたいと思うのでありますが、最近結婚媒介所という看板で、非常に売春のあっせんをいたしておる業者が多数ある。その弊害はしばしば新聞紙等で御承知であると思いますが、これらを厳重にお取締りになるお考えがあるかどうか。
  211. 大麻唯男

    ○国務大臣(大麻唯男君) 申し上げます。結婚媒介所は、もしそれが健全なものであれば、むしろこれは育成すべきものであると考えます。しかしながらもしその看板を掲げて、それによって売春のあっせんをするというようなことがありましたならば、これは法規によってこれこそ厳重に取締りをいたします。
  212. 山下義信

    ○山下義信君 労働大臣も昨今売淫防止週間というのをやっておいでになるということでありますから、どういうことを労働大臣としてやっておいでになるのか。また何かその情勢でキャッチされたことがありますかどうか。この際承わりたいと思います。
  213. 西田隆男

    ○国務大臣(西田隆男君) お答えいたします。労働省といたしましては婦人少年局、安定局を中心にして毎年年に一回六月十日から七月十日までの一カ月間、いわゆる特別週間としてやっております。しかし労働省としての今の限界と申しますか、範囲は、いわゆる啓蒙をするということ、それから世論を正しい方向に導いていくように、あらゆる関係諸機関を通じて努力をするということ、それから実際に調査を婦人少年局を通じて行う。もし事実そういう問題がありました場合においてはそれに対して協力をして、転落していく者はこれを防止する、現実にそういう問題にぶつかっておる者に対しては、これに救済の措置をとるというような具体的な方法でやっておりますが、本年度の中間報告はまだ参っておりませんので、六月十日からの実績がどうなっておるかということは、ただいま御報告をいたしかねます。
  214. 池田宇右衞門

    池田宇右衞門君 ただいま風紀及び売春法というような関係から担当大臣各位に御質問したところが、なかなか要領のいい御答弁をしておりましたが、私はこの際法務大臣、警察担当大臣、労働大臣にこの問題を重ねて質問したいと思います。それは申すまでもなく進駐軍の駐在以来、日本の風紀の頽廃は目にあまるというかこのまま推移するということになりますならば、日本の青少年を通じ学生まで、しかも日本の将来の進展、国政の上に大きな問題と相なり、日本の発展、進展の上に非常な障害となる傾向ありとだれ人も憂慮するものであります。これが取締りに当りまして、かりに法務省にいたしましても、検察庁においても、明治十九年くらいの建物で検察官は雑居して、それぞれ事務をしておる状況から見まして、その狭隘と、日日に重加する事件において忙殺されておるだろうと思います。これに対しまして法務大臣は、検察庁の建物の建て直しや清新な方針に対しても、またあらゆるこういう風紀紊乱の少くなるような方途においてどういう調査をし、どういう方法を用いておるか。また、検察官もだれ人も、自然に発生する日本の現状を考えるときに、おそらくこの問題をとらえたら、他の仕事ができないほど続出増加する傾向であろうと思います。教育上から申しましても、ゆゆしき問題の起らない前に、もっと信義、秩序ある世の中を建て直さなければならぬと思う。これは教育方面の秩序ある、信義ある世の中を作る重大問題であろうと思いまして、この点を明らかにされたいと思います。
  215. 花村四郎

    ○国務大臣(花村四郎君) ただいまの御質問まことにごもっともであります。検察庁舎の狭隘でありまするのにもかかわりませず、事件の傾向はむしろ凶悪犯罪がふえつりあるがごとき状況にあるのでありまして、まことに池田委員の言われたごとき遺憾の点が多いので、本年度の予算においても、少くとも犯罪予防防遏の面にかんがみて、相当のやはり予算をもらうことによって、こういう不条理を是正したいものであると考えて、大蔵省に対して相当強い要求をいたしたのでありまするけれども、御承知のごとく、国家財政の不如意の折からでありまするので、(笑声)要求も意のごとく参りませんことを、まことに遺憾に存じまするが、この点は有力なる池田委員も、今後一つ大いに法務省の御支持を切にお願いいたす次第でございます。  なお、この売春婦の取締り、なかんずくこの進駐軍等に牽連を持ちまする売春行為をあえていたしておりまする婦女子に対しましては、あらゆる点から厳重な取締りはやっておるのではございまするけれども、しかし相当目こぼしもあり、(笑声)あるいはまたやむを得ざると考えらるる点もありまするので、その辺はやはり時の情勢に従って、しかるべくもっと最善な方途を購じていきたいと、こう存じております。
  216. 大麻唯男

    ○国務大臣(大麻唯男君) 申し上げます。つつしんで傾聴いたしました。(笑声)この問題につきましては、文部省や労働省や厚生省各省の啓蒙措置、転落防止措置に並行いたしまして、警察といたしましては、売春事犯とか人身売買事件は取り締っているのでございます。その数をちょっと、あるいは御必要ないかもしれませんけれども申し上げてみますというと、昭和二十九年中には売春事件が三万余人、それから人身売買事犯は四千余人検挙されたという嘆かわしい状態でございます。私どもといたしましては、ただいま池田さんの仰せになりましたことをよく傾聴いたしましてございますから、遺憾なきを期したいと考えている次第でございます。御了承願います。
  217. 松村謙三

    ○国務大臣(松村謙三君) お話しの通り、戦後風紀の上において確かに粛正を要するものが非常に多いのでございまして、これは一つ社会教育の面において、これから十分に努力をいたしたいと存じて、今回もいろいろの計画をやっているのでございます。ただ一つ申し上げておきたいことは、現在もしからば青少年はことごとくそういう悪風に染まっているかと申しますと、必ずしもさようではございませんで、一面にはきわめて健全な分子もいることを御了承願い、それを中心といたして、そういうふうに悪風に染まった面を、そのいい面へ引きつけるということを考えなくちゃならぬと思いまして、そういうふうに指導をいたすつもりでおります。それに伴いまして悪書の駆逐でありますとか、映画の改善でありますとか、あらゆる面に努力をいたしたいと思います。
  218. 山下義信

    ○山下義信君 私も文部大臣に伺いたいと思ったのでありますが、学生等が赤線区域へ立ち入りすることを禁止しようとするお考えはありませんか。この点伺っておきたいと思います。
  219. 松村謙三

    ○国務大臣(松村謙三君) ちょっと私、聞き漏らしましたが、どの区域へですか。(笑声)
  220. 山下義信

    ○山下義信君 赤線区域であります。
  221. 松村謙三

    ○国務大臣(松村謙三君) これは学生を指導いたしますのに、大体学校に一任をいたしておりますので、文部省から直接にそういうある一定のところへの出入りを禁止するというようなことはいたしませんで、でき得るならばその学校の自治及び学生の自省に待つと、そういうふうにいたしたいと考えます。
  222. 山下義信

    ○山下義信君 文部大臣がお立ちになりましたついでに伺いたいのでありますが、文部大臣は新生活運動を提唱なさって非常な熱意を込めてこれからやろうというお考えのようでありますが、この際私は旧式なことを申すのじゃありませんが、売春取締りのことが問題になりました機会に、謹厳な松村文相に私は御相談するのでありますが、今後新生活運動の一つの模範を率先垂範なさるお考えで、現政府の閣僚は今日以後芸者のはべる宴席には一切出ないということを、閣議でお申し合せになる勇気と熱意がおありになるかということを伺っておきたいと思います。
  223. 松村謙三

    ○国務大臣(松村謙三君) これは大体社会常識に従うべきものと考えまして、今後起る新生活運動の趣旨に従って閣僚も行動すべきものと思うのでございます。ただここに申し上げますことは、新生活運動は民間の盛り上る団体に期待することは、先般来申しておる通りでございますが、その決定するところは閣僚初め政府もまた率先して垂範すべきものと心得ております。
  224. 山下義信

    ○山下義信君 私は労働大臣に本年度内におきまする特需の失業者のお見通しはどういうふうに見ておられますか、またこれが対策はどう考えておられますかという点を伺いたいと思います。なおいま一点、私は持ち時間がございませんので、私の質疑をもう一つ申し上げておきたいと思いますのは、いわゆる西田労政という御抱負の中に、自分はニコヨン、今のニコヨンという、ああいう階層、ああいうあり方は解消していきたいんだというニコヨン解消論を労働大臣はぶっておいでになるようでありますが、そのニコヨン解消とはいかはる御構想であるか、ついでに承わりたいと思うのであります。
  225. 西田隆男

    ○国務大臣(西田隆男君) お答えいたします。特需産業における離職者の問題ですが、兵器製造部門に、現在一万二千名働いております。それから車両等の修理業に二万九千四百名出ております。このうちで昭和三十一年の三月末までに整理を要するとみられる人員が、兵器製造部門で四千九百名と想定いたしております。車両修理業で一万六百三十名と想定いたしております。従ってこの離職をされる人々が配置転換等がどういうふうになるかと申しますと、兵器製造部門で二千七百名、それから車両等製造部門で約五百名の社内の配置転換が可能であるという推定をいたしております。従いましてその他対策を要する人員といたしましては、兵器製造部門が二千二百名、車両等の修理業が一万百三十名という数字になっております。この中には現在問題となっております富士自動車の三千九百五十名というものを含んでおります。従ってこれに対する対策は、これは整理の時期がいつになって、どういう仕事内容を持った人間が離職するかということがいまだはっきりいたしておりませんから、多数集団的に離職者が出る場合におきましては、その地方自治体と話し合いまして、地方自治体の幹部、それから労働省の幹部、それから事業団体の首脳部等々によって対策本部を設置しまして、その対策本部において配置転換の対策を講じていきたい、こういうふうな構想で通産省ともいろいろ協議を現在いたしておる段階でございます。  それから第二の問題のニコヨンの解消についてでございますが、私は当委員会でも何回もお答えいたしましたけれども、今までの失業対策といいますものは、ただ金を失業者にやって、何か働かしておけばよろしいというようなふうに私には受け取られました。従って失業対策といえどもこれはやはり生産に寄与する仕事でなければいかんし、しかも建設的な仕事でなきゃいかん。従って日雇といえども、毎日毎日不安な状況でいつも職業安定所に行って、今日はどこに行くのやらというような気持で職業安定所に臨むことは、これは精神上の問題もありますし、思想上の問題もありますし、かつまた生活上の問題等もありますので、失業対策事業としては、相当長年月にわたる生産性の高い建設的な事業にこれを切りかえて、そしてそこに失業者を吸収すべきである。従ってまあ言葉は適切でないかもわかりませんが、一種の雇用の継続される事業というものを選定いたしまして、そうして山下さんも御承知のように各地区地区、各地方別に種々いろいろ雑多な失業者が出ておりますので、一括してこれをその仕事に従事せしめるということは、これは非常に困難でございますけれども、そのうちで今申し上げましたような生産性のある建設的な、しかも雇用の継続の相当長期にわたってできる仕事に従事できるように、日雇い労務者はそういう方面に重点的に仕事に従事させることによって日雇い労務者としてのものの見方、考え方を変えてゆくような方向に導いていきたい。どうしてもそういう建設的な仕事に従事できない労働力の非常に薄弱な人に対しましては、これは生活保護法等の関連において軽微な失業対策事業を起すことによって、その方面に就職のあっせんをしたい、こういうふうにしてだんだん改善していきますならば、健全な労働力を持った者は、ひがみ根性を起さないで一種の雇用関係に立つ労働者の自覚のもとに建設的な事業に励んでもらいたいと考ておりますのが、いわゆる私のニコヨン対策であります。
  226. 山下義信

    ○山下義信君 私の持ち時間がなくなりましたので、この際不在閣僚に対します質問をいたしておきますから、適当な機会に御答弁を願いたい。運輸大臣に対しましては傷痍軍人に対しまする無賃乗車の取り計らいをするという考え方はないかという点であります。農林大臣に対しましては、黄変米の現状はどうなっておるか、現在の数量、またこれが処分方針はどう考えておるかどうか考えておるかという点を御答弁を求めたいと思ったのであります。なお、農林大臣にはやみ米の現在の状況について、最近はまたやみ米が非常に高くなっておるのでありますが、これが対策はどう考えておるかという点を伺いたいと思うのであります。適当な機会に御答弁を願いたい。  なお最後に、私は大蔵大臣と通産大臣に承わりたいと思うのは、下半期の経済界の見通しであります。景気の見通しであります。これは今日の段階におきましては、いろいろと下半期の経済状況につきましては若干気迷いの状況と申しますか、状態と思いまするので、通産大臣は貿易御所管のあらゆる点から該博な、しかも通産大臣特有の御識見でもって、下半期の経済界の景気の見通しをお示しを願いたい。大蔵大臣は大蔵大臣の立場でもって下半期の経済界の見通しにつきまして御所信を承わりたいと存ずるのであります。
  227. 石橋湛山

    ○国務大臣(石橋湛山君) 貿易についてお答えいたします。実は昨年度の日本の輸出は、例の砂糖その他にリンク制がありまして、そういうことでだいぶ増進をしておりましたのでありますが、これは諸般の事情からリンク制を大体やめまして、現在は全くリンクはございません。従ってその打撃があるのではないかとおそれているのでありますが、幸いにして世界的な状況も好転をいたしまして、それから日本の方もいろいろ物価の低下、あるいは合理化等が行われまして、たとえば船舶のごときもリンク制は全然なくなったにかかわらず、相当多数の注文を外国から今取っておるようなわけであります。あるいはスティールのごときも、やはり同じように相当輸出の見込みがついております。こういうわけでありますから船舶、重化学工業の面の輸出はかなり見込みがあるように思われます。ただ心配は繊維品でございますが、これはどうなるかまだわかりませんが、たとえばインドネシアにおける三角貿易というようなことも今考えて交渉を始めております。それからまた日本の雑貨等につきましては先般東京で見本市を、これは雑貨だけではございませんが、世界的なトレード・フェアをやったのでありますが、今後また日本のことに雑貨あるいは繊維品等についてアメリカの百貨店と連合をいたしまして、アメリカで展示会をやるというようなことも試みております。いろいろそういう方面に努力しておりますから、この今年度の下半期の輸出も思ったよりはいいのではないか、大体において予定通りの輸出が期待できるのではないかと考えております。こういうわけでありますから、その方面からの日本の経済界に対する影響は必ずしも悪くはない。ただ全般的に何と申しましても、まだデフレ政策のあとを引いておりますから、いろいろの方面で国内の景気がパッとするという、非常にそのはなばなしく活躍をするということにはならないかと思いますが、しかし、まあ今の状況でこれから先特に悪くなるというごともなかろうと考えておる次第であります。
  228. 一萬田尚登

    ○国務大臣(一萬田尚登君) 財政的な見地から申し上げますれば、むろんデフレ的な、いわゆるこの地固めと申しますか、この線も進んで参りまして、従いまして相当苦しい線もやはり出ます。物価も経審等の考えではやはり二%程度下る、こういうような方向であります。しかし当面今回は減税も相当しております。また社会保障的な費用も相当財政面に展開しております。他面財政投融資も相当増額になっておる。こういうような関係から見まして、私はやはり健全な足取りで、景気的に見れば、大体一口に言えば横ばいと申しますか、そういうような情勢で推移するだろうと考えております。
  229. 山下義信

    ○山下義信君 通産大臣と大蔵大臣との下期の経済界の見通しにつきましては、若干相違の点があるようでありますが、私の質疑はこれをもって終了いたします。
  230. 館哲二

    委員長館哲二君) 山下君に申し上げますが、農林大臣への質問につきましては、政務次官がおられますが、お聞き取り願えますか。
  231. 山下義信

    ○山下義信君 よろしうございます。承わりましよう。
  232. 吉川久衛

    政府委員(吉川久衛君) お答え申し上げます。黄変米は現在のところ十五万二千トンほど政府で手持ちをいたしております。これにつきましては、工業用の原料として売り渡しをいたしまして、もちろん一部でございますが、国損をきたさないように処分するつもりでございます。それからただいまのところまだ学者の意見が一致をいたしておりませんので、この毒性についてはっきりいたしますまでは、食糧用としては配給をいたしません。もちろんこの加工用として売り渡すものも、大体病菌には二色ございまして、ペニシリュームチトリナムというものは、これはそうひどい病菌ではないようでございます。こういうものは一部分ではございますが、お菓子だとか、あるいはみそだとかという方面に売り渡したい。それからペニシリュームイスランジクムという方は、病菌が強いので、学者の方でまだ結論を得ておりませんが、これにつきましては工業用の、食用に全然関係ない方面に売り渡したい、かように考えております。  それからやみ米の問題でございますが、これは御指摘の通り、今日相当にやみ米が動いております。私どもの見ているところでは、八十万石くらいやみに流れているのではないかと見ておりますが、これは食管制度の欠陥からきているものであると考えております。で、今回新た触る集荷制度が実施をされる予定になっておりますので、これによりましては相当やみは減るのではないか。そのためには価格の問題において相当高くきめなければならないと思いますが、まあ新しい制度によって、ある程度これはなくなるのではないかという見方をいたしておりますが、根本的には食管法の改正がなされなければならないと思います。これについては簡単に改正するというわけには参りません。諸般の事情を勘案し、相当の準備と調査をいたした上で、食管法の改正ということになるように考えております。お答えになりましたかどうか、以上お答えといたします。
  233. 館哲二

    委員長館哲二君) 明日は午前十時から質疑を続行することにいたしまして、本日はこれにて散会いたします。    午後五時二十五分散会