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1955-06-20 第22回国会 参議院 予算委員会 第28号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和三十年六月二十日(月曜日)    午後二時四十五分開会   —————————————   委員の異動 本日委員秋山俊一郎君、泉山三六君、 田村文吉君、松浦清一君及び最上英子辞任につき、その補欠として安井謙 君、小沢久太郎君、梶原茂嘉君、山下 義信君及び深川タマヱ君を議長におい て指名した。   —————————————  出席者は左の通り。    委員長     館  哲二君    理事           池田宇右衞門君            西郷吉之助君            豊田 雅孝君            佐多 忠隆君            松澤 兼人君            堀木 鎌三君            木村禧八郎君    委員            伊能 芳雄君            植竹 春彦君            小沢久太郎君            木村 守江君            左藤 義詮君            佐藤清一郎君            田中 啓一君            高橋進太郎君            西岡 ハル君            堀  末治君            安井  謙君            吉田 萬次君            小林 政夫君            溝口 三郎君            秋山 長造君            小林 孝平君            高田なほ子君            永岡 光治君            湯山  勇君            永井純一郎君            山下 義信君            石坂 豊一君            深川タマエ君            武藤 常介君            千田  正君            八木 幸吉君   衆議院議員    福田 赳夫君   国務大臣    内閣総理大臣  鳩山 一郎君    外 務 大 臣 重光  葵君    大 蔵 大 臣 一萬田尚登君    文 部 大 臣 松村 謙三君    厚 生 大 臣 川崎 秀二君    農 林 大 臣 河野 一郎君    通商産業大臣  石橋 湛山君    運 輸 大 臣 三木 武夫君    労 働 大 臣 西田 隆男君   国 務 大 臣 大久保留次郎君    国 務 大 臣 川島正次郎君    国 務 大 臣 高碕達之助君   政府委員    内閣官房長官 松本 瀧藏君    法制局長官   林  修三君    法制局次長   高辻 正巳君    経済審議庁計画    部長      佐々木義武君    外務省参事官  安藤 吉光君    外務省アジア局    長       中川  融君    大蔵省主計局長 森永貞一郎君    大蔵省主計局次    長       正示啓次郎君    文部政務次官  寺本 広作君    厚生省社会局長 安田  巌君    通商産業大臣官    房長      岩武 照彦君   事務局側    常任委員会専門    員       野津高次郎君    常任委員会専門    員       長谷川喜作君    常任委員会専門    員       正木 千冬君   —————————————   本日の会議に付した案件 ○昭和三十年度一般会計予算内閣提  出、衆議院送付) ○昭和三十年度特別会計予算内閣提  出、衆議院送付) ○昭和三十年度政府関係機関予算(内  閣提出、衆議院送付)   —————————————
  2. 館哲二

    委員長館哲二君) これより委員会を開きます。
  3. 池田宇右衞門

    池田宇右衞門君 私は鳩山総理が御不自由なおからだにもかかわらず、他の閣僚に毎日先んじて出席し、国政処理の任に当っておられますことは、まずもって敬意を表するものであります。  総理にお尋ね申し上げたいと思いますが、目下政界におきますところの大きな流れとなっておりますことは、二十二国会終了後、総理は時期をみておやめになるということでありますが、私の見たところでは総理はきわめて元気であり、十分に国政を担っていく決意であると信じます。しかるに政界の一部に総理がやめるというような暗流が流れつつあるということも否定できません。もしかようなことでありますならば、経済界に及ぼす影響及び日ソ交渉中の現状から見まして、まことに不安、不利なことであると考えます。この際、総理決意を明らかにされたい。
  4. 鳩山一郎

    国務大臣鳩山一郎君) 私は体が完全でないものですから、民主党の総裁になりますときに、二年くらいは辛棒します、二年以上やるということはむずかしいかもしれないということを、総裁になるときに二年間という期限を付してなったような次第であるものですから、(「あと一年ある」と呼ぶ者あり)それでその引退するというようなことが出たのであります。けれども特別の事情なぎ限りは、今のような状態ならばまだ続けてやっていけると思いますから、国政のために熱心にやるつもりでおります。
  5. 池田宇右衞門

    池田宇右衞門君 ただいま総理決意をお伺いできましたが、しかしもし予算終了後やめるというようなことに相なりますれば、われわれはまじめに予算審議を進めていく上に気の抜けたビールを飲まされたようなあと味の悪いことを残さなければなりません。総理は長い政治生活上、最後を国民に捧げ、平和で明るい日本を作り出す決意と聞き及び、その通りでありますか。もし党内事情から起る問題がありましても、この際はっきり辞任は今年はしないというような、重ねて総理の御心境を伺いたい。または心境の変化ということもあるから、鳩山総理はチャーチルのごとく適当の後継者を見いだしたときは後進に道を開く心境でありますかどうか、この二点を承わっておきたいと存じます。
  6. 鳩山一郎

    国務大臣鳩山一郎君) 現在私は引退する意思はもっておりません。けれどもよき後継者ができるということは非常な希望でございます。
  7. 池田宇右衞門

    池田宇右衞門君 私は鳩山内閣農政地方行政を中心として、若干の御質問を申し上げたいと思います。  第一に農業問題でありますが、農林大臣は見えておりませんから、審議庁長官から関連がありますから御答弁を願います。  三十年度経済計画の大綱を見ても、農林水産業生産基準を二十九年度に比して四%上昇させることになっておるが、その裏づけたる三十年度予算による米麦増産量は、二十九年度に比し十万石減少しておる。その理由はおわかりですか。これが一点。  衆議院修正の結果、土地改良費を初め、相当の増額を見たが、これにより、今年度増産量百二万石に対しどれくらい増加することになる見込みか、修正のおかげでようやく経済計画という自給度向上が実現できるようになったのでありますが、これに対するお考えはどうですか。
  8. 高碕達之助

    国務大臣(高碕達之助君) お答えいたします。詳細のことは農林大臣からお答え申し上げると存じますですが、大体論といたしまして、三十年度予算につきましては、経済六カ年計画初年度といたしまして、主として輸出増進をして国際収支関係を改善する地盤を作るということが基礎であった結果、ある程度農業方面に対する投資金額そのほかにつきましては、予算面におきましては予定のごとく獲得できなかったということは事実でございますが、しかしいろいろ農林当局においても苦心いたしまして、初年度に沿うように、基礎的方面におきましてはできるだけ予算をふり向けて、そうしてさしあたり減産になるような方面においては、できるだけ当面問題として増産できるような方針をとる、こういう結果、三十年度予算が編成されたようなわけであります。なお、修正予算におきましては、さらに幾らか初めの予定よりも増加いたしましたことは大へん今後の計画上けっこうだと存じております。
  9. 池田宇右衞門

    池田宇右衞門君 食糧農産物が、数年来世界的に非常な生産過剰になり、農業恐慌の波がすでに日本に押し寄せつつありますことは御承知通りであります。わが国のように輸入依存の高い国においては、いやがおうでもこの圧力を受けざるを得ない情勢であります。しかるに先般来、農相並びに経済審議庁長官答弁によれば、余剰農産物買付を、来年も再来年も続けるということであるが、ただ放置しておいてさえ力が弱い日本農業に、世界的な農業恐慌の波が及ぶことを防ぐ熱意があるかどうか、この点が疑わしい。これについて答弁を願います。
  10. 高碕達之助

    国務大臣(高碕達之助君) お答え申し上げます。ただいまのお説のごとく、世界的の大勢は、農産物が非常に増産されつつありまして、従前は売手のマーケットでありましたが、今後はだんだん買い手が値段を作る時代になってきておる、こういう次第であります。この余波は、日本にも当然及んで参りますが、日本といたしますれば、御承知のごとく現状におきましては絶対量の食糧は二割、大体二割見当足りない。こういう状態でありますから、世界情勢からいって、農産物が過多になった場合には、日本経済を回復する上においては、世界経済農産物が足りなかったよりももっと歩みやすくなってくるわけなんであります。なお、余剰農産物を買い入れるにつきましては、いろいろ各方面から検討いたしましたが、第一は、われわれの心配しておりますことは、余剰農産物受け入れによって日本農業にいかなる影響があるかということが一つの問題であります。もう一つアメリカ余剰農産物を買い入れたために、われわれが東南アジア方面に輸出する上において、米その他をもって唯一の輸出品としておるところの東南アジア諸国に対して、日本商品を売るという上において障害がある。つまり貿易面においての障害があるだろう。この二つの面はよほど重要に考えなければならないと存じまして、この点は農林大臣通産大臣とも数回十分検討いたしました結果、いろいろな方面から考えまして、日本経済を自立する上におきましては、あの長期にわたる低金利の問題、そして日本に大きな影響のない範囲においてこれを持ってくるということは、日本経済を自立する上において最も必要だ。こういう結論に到達いたしまして、今回いろいろな余剰農産物を入れることに相なったのでありますが、来年度再来年度におきましては、現状状態であれば、数量であると分担金額であるとか種類というものについては、よほど考慮をする必要があると思いますが、私個人とすれば引き続きやって参りたいと思いますが、しかし情勢は刻々に変化しておりますから、この刻々に変化する情勢に対応して、そのときどきにきめていきたい。こういうことでありまして、政府はまだ来年度はこれを実行するという腹はきめておりません。まだ検討中でございます。
  11. 木村守江

    木村守江君 ただいま余剰農産物の問題につきまして、経審長官からも答弁がありましたが、余剰農産物の買い入れいたしまする八千五百万ドル分の買付の実際の価格は一体幾らであるか、御承知のようにアメリカ農産物価格東南アジア方面、あるいはカナダ方面に比較いたしまして割高でありまして、もしも八千五百万ドル分を買うのが、日本食糧需給の線において買うといたしましても、高いものを買うというような状態であったならば、私は非常な損失をきたすと考えるのであります。あるいは政府考えといたしましてはいわゆる千五百万ドルの贈与分がある。その贈与分平均すれば、高い米を八千五百万ドルで買っても差しつかえないのではないか。平均において安くなっておるのではないかというような考え方があったならば、これは大きな間違いだろうと私は考えております。だから贈与分はあくまでも贈与分でありまして、これは価格がない。そこに初めて贈与の値打があるのでありまして、これと平均するというような考え方があってはならないと思いますので、八千五百万ドル分の買付の実際価格幾らであるか、御明示を願いたいと思います。
  12. 高碕達之助

    国務大臣(高碕達之助君) お答え申し上げます。この一億ドルの中の一千五百万ドルは贈与でありますから、この問題はあと価格をきめまする上において、もらったとか何とかということは全然これは考慮に置く必要はありません。また置いておりません。それからまたあとの八千五百万ドルの中でわれわれの責任で買うものはその中の五千九百五十万ドル、七割でございますから、その七割のものにつきましては大体の全額で割り当てておりますが、これの数量等はまだ確定しないということは、そのときの相場、そのときの世界的の競争相場をもって買い取る。こういうことになっておりますから、現在の予算では大体小麦を二千二百五十万ドル買うことになっておりますが、これで三十四万トンということになっておりまするから、六十一ドルくらいの平均になっておりましょうか。それからこれは予定でございます、確定いたしておりません。そのときの相場になりますから。大麦が三百五十万ドルでこれが五万五千トン、こういうことになっておりますから、これで米が十万トンで約五百万ドル、これは十万トンということからいいますとトン約百五十ドル見当になっております。綿花が三千五百万ドルで十七万一五千俵、それから葉タバコが五百万ドルで二千七百トン、こういうふうになっておりますが、この数量金額はきまっておりますが、この数量はただいま申し上げました通りにそのときの相場によって安くなればこの数量よりそれだけ余計取る、こういうふうになっておりましてこの価格は決して世界競争価格より高い価格でない、こういうふうに今後取引していきたいと存じます。従いまして千五百万ドルをもらったから、これを平均してどうこう、こういう勘定は断じていたしておりません。
  13. 木村守江

    木村守江君 私の聞いておるのはちょっとただいまの答弁とは違うのであります。もちろんアメリカ農産物価格というものはアメリカ自体においてはいろいろ調整できましょうが、日本が外国から農産物を買うときに、東南アジア方面から買った場合には安い、しかもアメリカから買う場合には高い食糧品を買わなければいけないというような破目になった場合に、この余剰農産物の問題もほかの方面からの値段より高い場合には、これを拒否して、そうして受け入れない、しかもほかの方面から買ったよりも安い値段で買い得ることができるのかどうかというようなことを聞いておるのであります。  なお、その千五百万ドルの贈与分の問題はまだはっきりわからない、はっきりしていないというようなことでありましたが、これは私の聞き違いかもしれませんが、この千五百万ドルの贈与分というのはまだ決定していないのですか。
  14. 高碕達之助

    国務大臣(高碕達之助君) お答えいたします。千五百万ドルはこれは小麦とそれから脱脂粉乳、それから綿花とになっておりまして、これは決定いたしております。決して決定していないとは申しません。今の五千九百五十万ドルのそれの数量が、つまり価格によって変動しますから、価格がきまらなければ決定しない。予算はそういうふうになっておりますが、そういうわけでお答えしたわけでありますから、さよう御承知願いたいと思います。
  15. 池田宇右衞門

    池田宇右衞門君 何と言っても自給度向上が第一であり、それによりわが国国際収支の悪化するのを防がねばならぬ、今回の補助金の整理も整理された総件数は三十二件に及んでいるが、その金額はわずかの八万七千六百万円に過ぎない。しかしながらこれを農民の場合に見れば、このわずかな補助金によってどのくらい生産意欲を高めて来たかわからない。こんなわずかな補助金を惜しんで農民増産意欲を低下させるのは、俗に言う一文惜しみの百知らずで、賢明な蔵相はおわかりにならないはずはないと思うが、まあ幸い衆議院修正によって復活したものがあるが、政府農政に対するピントが少しはずれてはいないかどうか、また国民所得の中に占める農業部門所得は二十八年度で二一%にしかなっていない、工業、製造業等の第二次産業は三一%、運輸商業等の第三次産業では四一%になっておる。農林業部門というものは国民生活必需原料を供給する重要な役目をになっておるのに、営利を追究する産業でないからと言って、所得の増加を低位にとどめておいてよいという理由は私はないと思います。三十年度経済計画並びに経済六ヵ年計画において農林業部門所得をどのくらい増大するように考えておられるか、長官より明細に御答弁を願いたいと思います。
  16. 高碕達之助

    国務大臣(高碕達之助君) お答え申し上げます。ただいまの私は一々数字ではお答えすることが、ちょっと詳細な資料がございませんからお答えいたしかねるのでありますが、必要でございますれば早速資料として御提出いたしますが、大体の方針といたしましては、根本的に食糧増産ということは単純なる経済問題でなく、これは必要でございます。経済上必要でありますが、単純な経済問題でなく、農村問題として社会問題として、日本人口をどういうふうに処分するか、こういう上におきまして非常に強く考えなければならぬ問題だと存じておりますが、現在の情勢でございますれば、農村負担といいますか、潜在失業者を吸収している量は農村には非常に多いのであります。これは実際の数字が出ておりません。この問題を解決するために将来の増加する人口失業者というものは主として第二次、第三次産業に持っていこう、そうして農村人口吸収ということの負担力というものをできるだけ減じようじゃないか、負担力をできるだけ減じるが、食糧増産は逐次やっていって、六年の後においては玄米換算として千三百五十万石の増産をしよう、千三百五十万石ということになりますが、その中には荒廃地によって減産するものを見込まなければなりませんから、実際の増産は五、六百万石になるだろと、こう存じておりますが、そういうふうなことで政府の六カ年計画を立てたようなわけでございますが、詳細なことはまた資料として御要求がございますれば提出いたします。
  17. 池田宇右衞門

    池田宇右衞門君 六ヵ年の計画については今長官から申したが、農村がきわめて低位所得にあり、しかも人口問題を解決するといたしましても、この方面も必要がある。あくまでも農民をして犠牲を強いるということはとうていできない。今度の六カ年計画にはこの点に相当な用意と計画と留意を払わなければならぬと思うが、この点は一つ長官からよく資料を集めて答弁を願いたいと思います。  さらに私は農林大臣が見えませんから、米価問題その他はちょっと差し控えておきまして、この際予約供出によります減税措置について一言大蔵大臣にお伺いしたいと思います。供出奨励金の際の免税額は約二十五億円と言われているが、新制度に変っても最低この程度は確保してもらいたいと思うが、本年も実行する計画がおありであるかどうか。
  18. 一萬田尚登

    国務大臣(一萬田尚登君) お答えいたします。大体前年度並みの減税考えております。
  19. 池田宇右衞門

    池田宇右衞門君 次に地方財政問題について質疑をしたいと思いますが、少くとも本日本会議において各党から論議されておりますから要点だけを申し上げてみたいと思います。  地方財政は年々赤字を続け昭和二十八年度末で五百六十億円、二十九年度末では六百億を突破すると言われている。昭和三十年度の見通しでも政府緊縮財政のしわを受けて相当赤字を予想されている。政府国会に出した地方財政計画を見ると、収支のつじつまがあってはいるが、当初の原案では百四十億の歳入不足が見込まれていたことは事実であります。この収支を合わせるために単独事業費を半額に百四十億の圧縮を行なったのであるが、特に単独事業費はすでに百五十億の節減を見込んでいた上に、さらに七十億円の節減を行なっている、合計すれば百二十億円の圧縮となるが、今まで毎年増加してきた単独事業費本年度は逆に百二十億という節減を見込んでいるが、地方財政計画をこのまま実行して赤字を出さない自信があるかどうか、長官から承わりたいと思います。
  20. 川島正次郎

    国務大臣川島正次郎君) 前回も御説明申し上げたのですが、二十九年度通りにいろいろの事業をやっていきますると、今年度におきましては百四十億程度不足になります。全部の公共団体ではございませんが、特に赤字に悩んでいます公共団体といたしましては、いわば非常事態に直面をいたしておるのでありまして、事業の面におきましても、また事務費の面におきましても、できるだけ圧縮をいたしまして、財政の立て直しをする必要があるのでございまして、私は百四十億の不足分は、各公共団体自粛によって、これを埋めてもらいたいということを希望いたしておりまして、これを先般の知事会議にも強く要望いたしたわけでございます。
  21. 池田宇右衞門

    池田宇右衞門君 希望だけで今日の赤字が埋まれば、心配する者も、それから悩む者もないが、私はさらにお尋ねしますが、当初の百四十億の歳入不足地方財政計画を訂正したのは、交付税の率を引き上げなければならぬという口実を野党側に与えることをおそれて、また自治庁当局では二二%を二七%に引き上げることを考えているのが大蔵省の反対にあって、その方針をやめたのではないかと思います。その点に対して明らかにされたい。
  22. 川島正次郎

    国務大臣川島正次郎君) 交付税のパーセントが今二二%ですが、それが適当であるかどうかということについては、いろいろ御議論のあるところでございまして、相当程度これを引き上げなければ、地方財政は救われないということも、これは確かに一つの御議論でありまするけれども、何といたしましても、長年にわたる蓄積した地方赤字でありまして、一応三十年度におきまして、地方自粛によりまして、これを解消してもらいまして、その上にどうしてもこれを見なければならぬ問題があれば、それは国において見よう。言いかえれば、地方財政健全化は三十年度と三十一年度と両年度にまたがってやろうということが政府方針でありまして、この点につきましては、大蔵大臣自治庁長官との間において十分協議ができておるわけであります。
  23. 池田宇右衞門

    池田宇右衞門君 先ほどあなたはたしか社会党の松澤委員答弁にも三十年度の二法案は暫定的であって、三十一年度においてはほんとうの法案を出して、地方財政健全化する、こういうような御答弁であったように私は承知しております。地方財政はすでに土台にシロアリが入って、非常に不健全なものであります。三十年度、三十一年度で、あなたの考えるように、楽に立て直るものではございません。出すならば本年度もなぜしっかりした法案を出さないか、私はこの点をあなたにお聞きしなければならぬ。さらに私は今回の地方財政計画を実行しても、三十年度末にはさらに赤字額が増加すると思うが、政府の提出した地方財政再建特別措置法を見ると、この法案のねらい、生命とも言うべき教育委員会の二重予算権の一時停止等の規定が盛られていない。現在地方財政赤字の主因をなすものは人件費の過大であり、その大半が教員の給与費である。教育委員会の二重予算権の一時停止をこの法案に盛らなかったということをまず自治庁長官に聞きたい。また地方財政赤字解消鳩山内閣の十大会約でもあるが、このような状態では赤字解消熱意が疑われる。この点は総理大臣から御説明を願いたいと思います。
  24. 川島正次郎

    国務大臣川島正次郎君) 地方財政の問題は二つに分けて考えなければならぬのでありまして、一つはこれまで蓄積した赤字をどう処置するかということと、もう一つは今後赤字が出ないようにするのにはどういう方策が必要かということでありまして、今回提案しております地方財政再建促進特別措置法とは、とりあえず今まで蓄積した赤字を、これをたな上げしようということでありまして、今日地方資金難に苦しみまして、県によりましては俸給の遅配その他があるということは、多額な赤字をしょっておりまして、それをごく短期に切りかえて銀行で融資をしておりますために、それ以外の融資ができませんので、資金難に苦しんでおりますからして、一応現在あります赤字というものをたな上げしますれば、そこに自然に当面必要な資金はでき得る態勢になるのであります。この点におきまして、どうしても御審議を願っておる地方財政再建促進特別措置法というものは必要だと私は考えておるのであります。  しからば今後どういう方策で赤字が出ないようにするかということにつきましては、とりあえず本国会に自治法の改正案その他を出しまして、この国会ででき得ることだけは提案をして御審議を願っておるのでありますが、根本的には地方機構の改革を必要とするのでありまして、これは地方制度調査会においても取り上げて研究しておりまするし、また政府におきましても熱心にこれを研究いたしておるのでありまして、根本的な改正案ができますれば、これを次に国会に提案して審議を願いまして、三十一年度におきましては本格的に地方財政健全化をはかりたい、こういう考えでおります。  それから教育委員会の問題でありますが、教育委員会の今日の二重予算原案送付権につきましては、従来いろいろの非難もありますし、議論のあるところでございますけれども、今回の再建促進法には、これは取り上げないでおります。ただ再建促進法の中に、再建計画を立てたその範囲内において、すべての財政の運用をしろ、こういうようになっておるのでありまして、特に教育委員会を取り上げませんけれども、教育費が必要以上に膨脹することはできないような条件をつけてあります。
  25. 鳩山一郎

    国務大臣鳩山一郎君) このたびの諸法案は、累積せる赤字の応急措置についてが目的でございまして、根本の地方制度の改正については、それが目的ではございません。どうしても赤字を征伐するのには、地方制度の根本的改革を考えねばならないと考えまして、地方制度改正の審議の会によく研究してもらって慎重な検討をしたいと考えております。
  26. 池田宇右衞門

    池田宇右衞門君 総理は真剣に考えて下さい。
  27. 木村守江

    木村守江君 ただいま自治庁長官から地方財政赤字の問題の解消についていろいろ御意見があったわけです。私は現実に現われました地方財政赤字の問題は否定でき得ない問題であって、これに対するいろいろな御苦心のほどはよくわかりますが、何と申しましても、私は根本的に赤字を生じないようにして参るのが第一の問題だと考えるのであります。しかも本年度におきましてはそれができ得ない、根本的な解決はでき得ないといたしましても、私はその片りんを地方財政計画において示さなければならないと考えておりますが、私はただいま教育の問題が出ましたから、教育の問題は地方財政の大きな赤字の原因であると言われておりまするが、私はもしも自治庁がほんとうに義務教育に関する限り、良心的ないわゆる計画をいたしましたならば、私は義務教育に関する限りは、地方財政赤字にならないと考えております。ところが御承知のように、一例をあげてみますと、職員給与におきまして、全国の平均が小学校におきましては一万六千九十二円でありますが、いわゆる自治庁の計算する基準財政需要額というものは一万三千九百四十円と出ております。こういうような大きな開きがあり、また中学校におきましても、実に一万五千二百二十一円というような小額な、千五百円内外の差額があるような、こういう財政計画をしております。また退職手当につきましても、実際地方の都道府県が支払っておるところの金額は千分の三十五というのが現在の平均でありますが、あなた方が計算しておるところの退職手当に対する、いわゆる地方に回ってくる計算というものは千分の十五、実に半額にも及ばないというような計画を立てておりまして、どうして一体地方財政が、財政赤字がいわゆる解消して参ることができるでありましょう。こういうような大きな穴を作っておいて、そうして弥縫策的に今までの赤字を埋めるのだ、これも一つの方法なんだというようなことは、私どもはどうしても了承でき得ない。しかもあの三法案の裏には、地方自治を抑制するところのいわゆる圧力が加わっており、地方自治を破壊するような大きな意味を持つものでありまして、こういう点、どう考えてもあなたの答弁は私ども満足でき得ないのであります。これに対しまして一体この小中学校の教職員給、あるいは退職手当の支給に対するこういうような基準財政需要額が、どういうそろばんの置き方で出て参ったか、これで一体ほんとうに地方赤字を解消できるのかどうかということを御説明願いたい。
  28. 川島正次郎

    国務大臣川島正次郎君) 木村さんのお話の通りに、現在地方財政は教育費の重圧であえいでおることは事実でありまして、府県市町村を通じますると、三割近くが教育費でありまするし、ことに今年の例を見てもわかる通り、七十七万人の児童増加に伴いまして、教員数並びに設備の増加等で、五十数億の金が要るのであります。年々これだけがふえておるのでありまして、教育費の問題を解決しない限りには、地方財政健全化はできないということはお説の通りでありまして、私どもはその点につきましても十分考究をいたしておるわけであります。ただいまお話の給与のベースの食い違い、並びに退職慰労金に対する問題なども、いずれも赤字の原因になるのでありますけれども、ひっくるめまして一体義務教育費というものをどういう形でやるかということを検討しなければ、地方財政健全化にならぬということは、これは私ども深く認識いたしておりまして、この点につきましてはかねて考究をいたしておりますが、まだ国会に提案しまして御審議を願う段階になっていない。これが今日の真相でございます。
  29. 池田宇右衞門

    池田宇右衞門君 水道行政は現在不統一であるから、従来これを統制するため、水道法案政府提案として提出され、衆議院を通過したが、本院で審議衆議院解散のため審議未了となった。しかるに現内閣においては、水道行政については現在何らの方策を立てていない。水道行政を軽んずる点だと思う。従って今年度予算についてみても、従来と比較して退歩していることはまことに嘆かわしい点であります。上水道、下水道、簡易水道の普及は、保健、行政の根幹と思われるが、これに対する所見を伺いたい。  また上水道の普及率は、日本の三七%の低位に対し、米国では七一%というので、日本の倍と申し上げます。中でも日本農村のごときは、わずか六%という貧困さであります。環境衛生ということを重要公約とされた嶋山内閣としては、いかに認識され、また改めんとしておりますか。国家の基本対策として、総理の抱負を伺いたい。  また水道事業は確固たる長期計画を立て、実行して行く必要があると思いますが、そのときまかせで、何らの計画が立たないときは、今年度案のごとく、水道施設中、簡易水道は前年より減額し、上水道の分は全額削除されていることを見受けるのでありますが、どうも厚生大臣の腰が弱くて、大蔵省に押し切られたような感じを見ることは、あまり感心いたしません。総理並びに厚生大臣の所見を伺いたいと思います。
  30. 鳩山一郎

    国務大臣鳩山一郎君) この点については厚生大臣から答弁をさせます。
  31. 池田宇右衞門

    池田宇右衞門君 そうですか。あなたがわからなければ、それじゃけっこうです。
  32. 川崎秀二

    国務大臣(川崎秀二君) ただいま上下水道、並びに簡易水道の問題について、いろいろお尋ねでございましたし、また御意見でありましたが、上水道問題につきましては、今度の予算におきまして非常な窮屈なワクのために一部分実施をできなかったような点もあるのであります。しかし簡易水道の問題につきましては、このような予算の窮屈性にもかかわりませず、予算編成の途上におきましても、十分主張をいたしまして、昨年度とほぼ同様な措置をいたしたのであります。それにもかかわりませず、国会におきましては、農村一般、ことに海岸地帯の漁村におきまして、非常に水利が悪いから、一般国民から喜ばれておる簡易水道の施設を拡充する必要があるという論議が高まりまして、ことに自由党の方面からその意見が高まって、民主党との間に修正ができ、昨年以上の措置をすることができ得たわけであります。
  33. 伊能芳雄

    ○伊能芳雄君 水道の問題につきましては、従来建設省と、厚生省とが非常な醜いなわばり争いをしてきております。このために水道施設計画をし、実施する方面では、非常に悩まされておるのでありますが、これに対しまして鳩山内閣は早急に解決する御決心がおありであるかどうか、伺いたいと思います。
  34. 川崎秀二

    国務大臣(川崎秀二君) 水道の問題につきましては、単に工事の面だけが建設省に属する仕事でありまして、その他の面につきましては、従来までとかく紛淆いたす面が多かったのでありますが、ことごとく厚生省側でやることにいたしまして、話し合いがまとまったわけを御報告申し上げておきます。
  35. 伊能芳雄

    ○伊能芳雄君 それは私初めて伺いますが、いっそういうお話がまとまっていつから実施しておられますか。念のために伺っておきたいと思います。
  36. 川崎秀二

    国務大臣(川崎秀二君) 従来この問題について覚書をかわしておったのでありますが、その覚書通り実施されない面もありましたが、本年の本予算編成の最中におきましてこのことを確認し合ったわけであります。
  37. 池田宇右衞門

    池田宇右衞門君 ただいま衆議院修正で簡易水道の施設は二億円増額されたが、このくらいは九牛の一毛であります。特に簡易水道は農村が主であり、しかも普及率はわずか六%しか過ぎない。農村においてはいまだ川の水を飲んでいるという状態がところどころに見受けられるのであります。平気な顔をして予算編成をした態度は、政府農村軽視の現われであると言われても仕方がない。厚生大臣はもっとこの問題に、漁村のみではありません。農村漁村を通じて簡易水道を設置する、将来増額予算を取ってこれらの問題を解決する熱意があるかどうか。
  38. 川崎秀二

    国務大臣(川崎秀二君) 簡易水道に対する要望はひとり他党だけではありませんので、私どもの属しておりまする民主党におきましても、大がいこの水道関係で議論がありますれば、簡易水道の増額のみが非常に熱烈に要望されるわけでございます。従いましてただいま御要望になりましたことにつきましては、今後の予算においても十分に努力をいたしたいと思います。なお計画では十カ年計画で一千二百万人を対象とするものもすべて含みたいということで進めておるのでありますが、今日のところ十分でありませんので、来年からは少くともこの計画を達するためには最低十六億ずつの費用が毎年要るわけであります。この十六億ずつの費用の計上につきましては今後一そうに努力いたすつもりでございます。
  39. 池田宇右衞門

    池田宇右衞門君 国民健康保険に関する問題でありますが、健康保険は医療給付費の増加のため生じた赤字に対し三十年度予算において十億円の補てんをしておるが、医療給付の増加により収支の悪化していることは国民健康保険といえども同様である。国民健康保険の赤字は二十八年度で医師に対する未払い分等を除いても八億円に及んでいる。国民健康保険を実施している市町村の数は昨年十二月現在で四千六百六十七市町村となっており、全国市町村七千二百六十八の六四%に当っておる。しかも組織なき農村漁村民がおもなる対象になっております。政府の原案では、健康保険の赤字を補てんしたが、国民健康保険の助成金及び直営診療所建設補助金等を削減したのは、都市を中心とする健康保険を重要視し、農漁村を中心とする国民健康保険を軽視した結果と相なるが、いかん。
  40. 川崎秀二

    国務大臣(川崎秀二君) 国民健康保険が医療保険の中心であり、将来はむしろ国民健康保険が主体になってわが国の医療保険をささえるべきであるというのが私の所説でございます。また一般的にもこういう意見が高まって参りまして、今日では健康保険よりも重点を国民健康保険に移すべきだという考え方が広まってきておるのでございますけれども、本年の当初予算におきまして健康保険の赤字対策に重点をおきましたのは、もし健康保険に対して国家の給付をも十分なさず、またこれに対するところの補充をいたさなかったならば、健康保険が崩壊の危機に到達をする、こういうふうに見てとりましたので、とりあえず健康保険の崩壊を食いとめることに全力を注いだわけでございます。従って決して国民健康保険を軽視したのではございませんので、できる限りの措置はいたしたのでありますが、なおこれまたまことにこの席上で申し上げて恐縮でありますが、自由党方面から強い御要望があり、国民健康保険は直営診療所並びに助成交付金等が修正をせられまして、合計三億五千万円の修正が、民主党の中にも非常に強い修正意見がありましたので、すべてを含めまして七十二億六千万円という数字になったわけであります。  私は、先ほど御指摘ではありましたが、国民健康保険は今日は確かに市町村を中心にいたし、特に地方農村が主力になっておりまするが、でき得ればこれが大都市に実施をされますならば一そう国民健康保険に対する認識を高めるのではないか。今日までのところ六大都市はいずれも実施をいたしておらず、最近名古屋市におきまして国民健康保険を実施したらどうかという市議会の大勢を制する意見が取り上げられつつありまして、あるいは具体的な実施の段階に入るのではないかと思いますが、でき得れば率先垂範、東京都がこれに手をつけていただけるときがきまするならば、きっとわが国の医療保険というものはりっぱになるという考えをもちまして、これは区議会でもできることでありまするから、区議会等に対しましても私は実は個人的にはずいぶん勧誘を今日いたしておるような状態でございます。
  41. 池田宇右衞門

    池田宇右衞門君 外務大臣は見えておりませんか。
  42. 館哲二

    委員長館哲二君) 外務大臣はあとで……。
  43. 池田宇右衞門

    池田宇右衞門君 それでは最後に総理にお尋ねを申し上げたいと思いますが、日ソ間は国交回復の交渉に入っておりますが、失敗いたしますと、総理並びに外相はその責任をおとりになりますか。交渉に当り全権を派遣する前に、十年間も抑留されている同胞国民の引き渡しをまずソ連に交渉し、これが完了を見、次に漁業問題の解決、しかる後に何ゆえ全権を派遣するようにしなかったか。私はソ連が人道を重んじ、人類の幸福をはかりつつあるのならば、今次戦争末期にわが国が仲裁を依頼せるにもかかわらず、ソ連は一方的にわが国に宣戦を布告し、わが国はついに無条件降伏せるに、この戦後よりわが領土を占領したのは南樺太、千島、朝鮮等でありました。国が大きく、強力な軍隊を持つからといってこのような無謀な行為をなしつつある例が世界の外交史上他に例があるかどうか、あるならば外務大臣からお聞きしたいと思います。国際外交上このようなことがしばしば行われているでしょうか。  日ソ外交問題については、交渉に入る前に首相と外相との間に食い違いがあり、二重外交が行われているように思われたのであります。総理は日ソ国交の正常化についてすでに言明されているが、両国国交がいかなる程度までなされることが正常化と考えておられるか。この際最も重大なことは正常化の範囲であるから、この点を明確にしていただきたいと思います。
  44. 鳩山一郎

    国務大臣鳩山一郎君) 日ソの国交の正常化ということは、日本とソ連とが戦争状態のなかった状態に持ってゆくのを目的とするわけでございます。それですから戦争によって起きたところのもの、あるいは抑留者の帰還とか戦犯者の帰還、あるいは領土の問題とか、あるいは北洋漁業の問題とか、すべて戦争によって起きたところの問題を解決することを目的として、日ソの交渉をするわけでございます。そうしてただいま御質問がありました抑留者の帰還とか戦犯者の帰還をなぜ最先に交渉をしないのかという御質問でございますが、松本全権の交渉はもとよりこの問題を最先に交渉をいたしまして、この問題の解決がなければ次の問題に入るわけにいけないというような態度でもって交渉中でございます。
  45. 池田宇右衞門

    池田宇右衞門君 総理の御答弁にある通り日ソ交渉は非常な重大問題であり、巷間伝わるところによれば成功、不成功はなかなか見通しがつきません。従って国の内外に及ぼす影響も甚大であると言わなければなりません。十余年の間待ちに待った留守家族の皆々様の立場から考えましても、これが不成功に終るというようなことがあれば重大責任と言わなければなりません。従ってもし不成功の場合には、総理は非常決意をなされるであろうと思いますが、総理並びに外務大臣からこの点についてどういう決意をされるか、国民に明らかにされたいと思います。
  46. 鳩山一郎

    国務大臣鳩山一郎君) 私は自分の身体を賭して成功を期したいと思っております。
  47. 池田宇右衞門

    池田宇右衞門君 時間がありますか、農林大臣が来たから……。
  48. 館哲二

    委員長館哲二君) 農林大臣が出席されておりますから、農林大臣一つそれじゃ池田君からお尋ねを願います。
  49. 池田宇右衞門

    池田宇右衞門君 もうほかの問題もありますから、ただ農林大臣に私は一つ聞いておきたいのは、予約制度……、米価その他の問題は省略いたしまして、予約に対しては相当決意があるか。第一番に予約をしたと同時に概算払いは石当りどれくらいするのか、千五百円か二千円か、二千五百円か、そしてもちろん予約金でありますから利子はつかないだろうと思います。精算の後にこれを差し引くようなことはなかろうと思いますが、この金額と予約に対する適正価と、この点について農相から承わりたいと思います。
  50. 河野一郎

    国務大臣(河野一郎君) 利息をつけたりなどいたしません。今数字は……。
  51. 池田宇右衞門

    池田宇右衞門君 出ておりませんか。
  52. 河野一郎

    国務大臣(河野一郎君) 出ておりません。大体御想像なさる通りでございます。
  53. 池田宇右衞門

    池田宇右衞門君 それじゃ……。
  54. 館哲二

    委員長館哲二君) 外務大臣の答弁は留保しておきます。  永岡光治君。永岡君にお諮りいたしますが、経審長官に対する質疑は少し最初の方にお願いしておきたいと思います。
  55. 永岡光治

    ○永岡光治君 承知しました。  私はまず最初に、鳩山総理大臣に決意のほどをあらためて伺っておきたいのでありますが、御承知通り今日の新聞紙上をにぎわしておる一番大きな問題は、やはり私は失業問題が根本になって繰り返されておるように思うのであります。たとえば毎日繰り返されております悲劇、その根本問題は何と申しましてもこれは失業問題が大きな原因であるはずであります。東北地方では自分の娘を売ってその生活の困窮を救済するために、そういうことを行なっておるような記事がたくさん出ておりましたが、最近では九州の炭鉱地帯ではすでに娘を売るには忍びないということで、母親が、夫のある母親が、その娘にかわって特飲街に身を売って、そうしてその失業からくるところの生活の困窮を救済しようと、非常に気の毒な事態が出ております。また銀座あたりに参りますと、十二や十三の小さい子供が、花売り娘でありますが、その花を売らずに、まことにわが身の春をひさいで一家の失業からくるところの生活の困窮を救済しようと、こういう悲劇がたくさん出ております。  こういうことを考えまするにつけて、私は特に失業問題というものは大きく取り上げなければなりませんし、しかも社会悪、悲劇というものの根本問題が失業からくる問題であります。この失業さえ解決できるならば、この悲劇、いわゆる社会悪の大半は私は解決できるものと考えております。同時に日本経済の再建という大きな目標から考えましても、何をおいても失業問題の解決というものが急務中の急務でなくてはならぬとかたく信じております。私はそれゆえにこそ、鳩山内閣もおそらく今度の総選挙に当って国民に公約されました際にも、失業問題の解決ということを大きくスローガンに掲げて参ったのでありますが、おそらく私はそういうところから総理決意されたものと考えております。そういう意味で、今日の鳩山内閣でいろいろ施策を行なっておりまするけれども、急務中の急務は、何をおいても失業問題でなければならぬと、こうかたく信じておりまするが、総理に重ねての御決意のほどをまず冒頭私は伺っておきたいと思うのであります。
  56. 鳩山一郎

    国務大臣鳩山一郎君) 失業問題が現在のわが国において非常な重大な問題であるということは、私も同じ考え方をしております。失業の施策としては、やはり産業を振興して、そうして雇用量を大きくして、どうかなるべく失業者の少いようにしたいということが第一であります。第二には、失業対策費を増加して、どうかして幾分かでも失業の対策を十分にやっていきたいと考えております。詳細のことは他の閣僚から聞いていただきたいと思います。
  57. 永岡光治

    ○永岡光治君 そこで総理答弁の中にも明確にありましたように、今日の急務中の急務はやはり失業問題の解決という答弁になったわけでありますが、そこで私は六カ年計画を立てて失業問題の解決に当られております経済審議庁長官にお尋ねするのですが、現在の失業問題を数字の上でどのように見ておるかをいま一応この席で明確にしておいていただきたいと思うのであります。
  58. 高碕達之助

    国務大臣(高碕達之助君) 現在の失業問題につきましては、昨年の暮に、大体完全失業者は六十三万人くらいにこの三十年度は押えていきたいと、こういう考えで進んでおったのでありますが、この三月末におきましてはそれが八十万近くになっておる。四月になりましてこれは幾らか減って参りまして、七十万そこそこになっておる。本年度はこれを六十三万に押えていきたいと、こういう考えでおります。これを六年後におきましては生産需要人員の約一%、四十三万人くらいに切り詰めたいと、こういうような計画を立てておるわけであります。それでありますが、私は先ほどお話しのごとく、完全失業という問題よりも、もっと大きな問題は、これは現在の状態では調査することがすこぶる困難でありますけれども、潜在失業というものが相当のものであろう。これは社会問題として一番重要に考慮すべき問題だと、こう存じまして、これに重点を置いていろいろ研究いたしておりますが、はなはだ遺憾ながら、今日までの統計でははっきり出てこないのであります。ある人は八百万と言い、ある人は一千万と言い、ある人は四百万と、こういうふうな非常に区々まちまちの数字が出るのでございますが、これを私は自分の勘で考えてみますというと、従前の関係上、農村だとか中小工業者の方では、必要はないけれども、失業して来た人間があれば、流れ込んできますればこれは情誼上、親類の者が来た、それでは今まで五人で働いておったところを六人でやろうじゃないか、七人でやろうじゃないか、こういうように収容しておる。だからこれはよほど大きな問題だと、こう思うのでございますが、この数字をいかにして完全に握るかということにつきましては、よほど私は考慮せねばならぬ問題だろうと思ってただいま苦慮しているわけなんでございますが、この点につきましてはよく皆様方の御意見を承わって、この潜在失業というものをよく把握するということは今日の急務と存じておる次第でございます。ただいまも申し上げました通りに、数字で表われますいわゆる完全失業者というものにつきましては、現在、職を申し込んでくるその中で、就業した者を差し引いたものだけしか出てこない。これはほんとうに実際の数字は間違いありますまいけれども、これをもって完全失業者と、これだけの対策をしておるということをもって能事終れりとすることはできないと、私はこういう所存でございます。
  59. 永岡光治

    ○永岡光治君 そこで、潜在失業者を八百万といい、一千万といい、数字は明確なことはつかんでないと言うのでありますが、私は明確な数を、たとえば八百万であるとが一千万とかをつかまなければ、対策は立てられるものではないと思います。そこで完全失業者の対策の問題についても後ほど触れたいと思うのでありますが、そういう潜在失業者についてどういう救済の方法を考えておるのか、具体的に。観念的に経済六カ年計画をどうと言うのじゃない。私はどういう具体的な計画を立てておられるか、特に予算の裏づけはこうしておるのだという、そういう明確な対策をお聞かせ願いたいと思います。
  60. 高碕達之助

    国務大臣(高碕達之助君) 失業対策として根本的に考えるべき問題は、生産をふやす、国民所得をふやすということがまず第一なんであります。大体私どもの六カ年計画におきましては、国民所得につきましては六年間に二三二%をふやそう、そこで離職する人間は、離業人口は一〇%ちょっと超えておるわけなんでありますが、それに比較いたしますと、国民所得、総生産がふえて参りますから、そこでつまり失業者を減らして行こうじゃないかということなんでありますが、潜在失業者の問題につきましては、これは各個人の、各個の収益をふやす、収入をふやして行くということにすれば、これは自然的に解決してくるだろう。それはどこに重きを置くかと、こう言えば、この点につきましては、つまり農村なり中小工業者というものに相当これは多くしわが寄っているだろう、その方面におきまして、金融面におきましても、中小企業についての金融を潤沢にするとか、農村対策をするとか、こういうことに持って行きたいと、こう存じております。
  61. 永岡光治

    ○永岡光治君 農村とか中小企業とか金融機関、そういう方面でも極力収入をふやす面で何とか解決をはかって行きたいという気持だけを、私は承わることができたのですが、ところが中小企業も御承知通り昨今はやはりふるいません。倒産に次ぐ倒産が今日のおそらく状況でございます。農村の場合でもおそらく私はそういうことが言えると思います。予算面から見て、あなたが期待するように農村は収入の面を非常に上げ得るような今日の状況にないと思います、三十年度予算から見ましても。これはあなたの希望だけであって、具体的に、もしあなたが自信があると言うならば、農村には経済の何パーセントを上げて、何万人吸収できるか、中小企業にはどれだけ援助して、何万人吸収できるという、そういう具体的な数字がなければ、単なる希望だと、こう言われても、私はあなたのはっきりしたところの、解決できるのだという確信あるところのものにならぬと思います。
  62. 高碕達之助

    国務大臣(高碕達之助君) 大体増加いたします人口を今後さらに農村に吸収するということは非常に困難だと思います。従いまして、六年計画におきましても、農村に吸収する率は大体横ばいでやって行くわけなんでありますが、工業の方に対しましては、大体二〇%ないし二一%増加する人口を余計にふやして行きたい。それから第三次産業の方におきましては一八%ぐらいを、一八・七%になると思いますが、これくらいを吸収して行きたい。農村の方はこれはもう吸収しないという方針でありますが、私は農村の経営ということにつきましては、今期の予算に組んでおります通りに、農村は多角経営をするということによって、現在のようなただ農産物を生産して、そのままなまのままで出すということよりも、これを加工し、これをもっと高度化して、ある場合には輸出もする、農水産物の方はこれを輸出振興の方も今後いたしたいと思っております。中小工業の方におきましては、現在のようなやり方ではますます数がふえてしまい、おのずからの相互いの競争によって立って行かない。それでこれらに対しては産業組合あるいは輸出組合なり、いろいろ組合組織をもって共同作業をせしめ、共同の方式をとるということにして行けば、これで農村なり中小工業につきましては、その販売……大ていはその販売において非常な打撃を受けているのであります、一面におきまして、日本の輸出工業におきましても大工業だけが輸出工業じゃありませんので、農水産業なりあるいは中小工業の産業というものは非常な重要な役割をしているわけでありますから、その意味からしますれば、金融方面におきましても、輸出産業にかげております金融というものは、必ずしも大工業だけをやるのじゃなくて、これを中小工業ないし農産加工業等に充てて行きたい、こういう方針で進んでいるわけであります。
  63. 木村禧八郎

    木村禧八郎君 関連して。ただいま経審長官から非常に重要な御発言を承わったのですが、この失業対策については、完全失業者に対する対策も重要であるが、政府としては潜在失業者に対する対策が非常に重要である、しかしその実態の把握に非常に苦慮しているというお話がありました。それで失業対策としては潜在失業者に対する対策が非常に重要であると、改めてこの重大性を認識されておりながら、実は総合経済六ヵ年計画も、またわれわれに今度新しくここに出された三カ年計画も、建前は潜在失業者はこれは対象になっておらないのです。毎年増加する人口のうち労働力人口が大体八十万、それをどの程度に吸収するか、それで三十五年度にはまた人口として四十三万五千くらいはやむを得ない、こういう結論になっているのであって、潜在失業に対しては全然これはオミットされているのです。そうして毎年の増加労働力人口を三十五年に四十三万五千に減らす。労働力人口を吸収した上、現在の失業者を四十三万五千に減らす。ですから全然これには潜在失業者の対策はないのです。ないにもかかわらず、今の政府の御説明では、失業対策としては完全失業者に対する対策も重要であるけれども、日本の刻下の急務としてはこの潜在失業者に対する対策が重要だ、それに対してはただいま御質問がありましたが、それに対して明確な御答弁がないのです。それで今までの御答弁は、ただ気持であって、実は計画には織り込んでないのです。三ヵ年計画にも六カ年計画にも織り込んでないのです。織り込んであるとしたならば、どういうふうに織り込んであるかを、これはわれわれ承わらなければなりません。今までの総合六カ年計画の一番の欠陥は、潜在失業対策がないということが欠陥であった。ところが経審長官はそれが重要なのであると、それならそれに対する対策が示されなければならない力そんなに重要でありながら、これに潜在失業対策が織り込んでないのです。非常にその点が私は食い違いだと思うのであります。もしそういう対策がおありならば、そうしましたら、これをまた変えなければならぬ。組みかえて潜在失業対策としてどういう対策を織り込むか、あるいは少し総合経済六カ年計画を作り直さなければならぬと思います。この点御所見を承わりたい。
  64. 高碕達之助

    国務大臣(高碕達之助君) ただいま木村さんの御指摘になったことはまことにごもっともでありまして、現在の数字からやって参りまするというと、この潜在失業者の数を調べるということが非常に困難であります。それで六カ年計画におきましては、完全失業者というものを数字のめどにおいてやっているということは事実でありますが、これを実際予算に組み、政策として実行いたして参ります上におきましては、私が先ほど申しました通りに、これは政府としては潜在失業者というものを考慮に入れて考えて行かなければならない。それで大体申しまして、六ヵ年計画におきましても国民総生産が二三・一%ふえている。それで事業者数は一〇%強しかふえていない。そこで、生産を増強いたしますれば、生産を増強して仕事が多くなれば、これはつまり潜在失業者を解消するゆえんであり、そこに根本の方針があるわけなんです。さよう御承知を願いたいと思いますが、さらにこれを具体的数字についてどうやるかということは、私は経済六ヵ年計画の、この六年先の数字一つ金額、目標を求め出したものであって、実際問題は、現在においてその当時の経済情勢と過去における実績というものをよく把握して、そうしてこれを予算化し、実行して行かなければならない、こういうことは私も考えておるのでありまして、これは現在の積立式と、それから将来の目安とをこれをくっつけるというところに政治の要諦がある、こう私は存じます。
  65. 館哲二

    委員長館哲二君) ちょっとお諮りいたします。  永岡君に御相談いたしますが、実は外務委員会が今休憩して経審長官を待っているのです。で、しばらくでいいですから経審長官でなく質問を続行されますか。
  66. 永岡光治

    ○永岡光治君 失業問題を中心にしてやろうと思いますから。
  67. 館哲二

    委員長館哲二君) ちょっと木村さんに御相談……。
  68. 木村守江

    木村守江君 社会党から了解を得ました。
  69. 館哲二

    委員長館哲二君) 今のようにできるだけ……。経審長官またあとで帰ってこられますから、そのとき御質問を願ったらいいと思いますが……。
  70. 木村守江

    木村守江君 関連して。私は、ただいまの経審長官答弁を聞いておりますというと、経審長官答弁希望的作文であると、こう言っても私はいいと思うのです。先ほどわれわれに総合経済計画前期三カ年の年次別構想というものをお配りになられましたが、このうちの農林水産生産水準という項におきまして、三十年度より三十一年度には大体三・五%ですか、この農林水産生産指数が増加することにつきまして、一体いかなる根拠で、こういうような計算が出るのかということを私はこの前あなたに質問をいたしたのであります。ところが、何かきわめてわけのわからない答弁でありました。私はその際も伺ったが、一体農林水産業六カ年計画として幾ら投資をして、幾ら資金を投じて、一体三・五%の生産指数の増加を見ることができ、計算することができたかということを重ねてお伺いをいたしまして、この三・五%の出た根拠を御説明願いたいと思うのであります。  なお、ただいまの永岡君の質問のお答えに対しまして、いわゆる農村潜在失業者の問題について、あなたはこの六カ年計画によってこれを救済できるというようなことを言っておりますが、御承知のように、本年度の農林省の予算は大体百十五億円の減少を来たしております。このうちには幾多補助金がありますが、これらの補助金は、あるいは農地改良の問題にいたしましても、あるいは林道の開さくにいたしましても、こういうような補助金によって農村潜在失業者を救って参ることは、私から言う必要もないと思うのであります。そういうような金を削っておいて、そうして、どういう工合に農村潜在失業者、あるいは二男、三男対策ができるとお考えになっておりますか。あなたはその希望的作文を答弁するのでなく、政治家として、経済審議庁の長官として、計数的にもっとはっきり御答弁を願いたい。
  71. 高碕達之助

    国務大臣(高碕達之助君) 大体お手元に差し上げております経済六カ年計画におきましては、農林水産の三十五年度における生産は約……(木村守江君「三十年、三十一年を言っているのですよ」と述ぶ)二十九年度は五・二%それから三十年度は九%、それから三十一年度は一二・五%、三十二年度は一六・五%、こういうようになっておるわけなのです。
  72. 木村守江

    木村守江君 三・五%の根拠ですね、三十年から三十一度にふえている三・五%の根拠です。どういう根拠で出ましたですか。一二・五%から九%引くと三・五%になります。その三・五%が出た根拠です。
  73. 高碕達之助

    国務大臣(高碕達之助君) その根拠につきましては、それだけ政府投資、融資等も十分にいたしまして、農産物の生産を増加しておるのであります。詳細なことは政府委員からお答えを申し上げます。(木村守江君「それから潜在失業者」と述ぶ)潜在失業者の問題は先ほど申しました通りに、農産物の方におきましては、鉱工業生産と比較して、その生産の増加率は大体一〇%強なのであります。鉱工業生産物は二三%強になっておりますから、その間に農産物の方の増加の指数は少いから、農業方面に将来の増加する人口を吸収することをやめて、鉱工業方面及び第三次産業に持って行きたいと思っております。
  74. 永岡光治

    ○永岡光治君 ただいままでの御答弁を承わりましても、実に私はお粗末しごくだと思うのです。鳩山内閣国民に対して公約をいたした大きな目標の一つである失業問題について、今総理もお聞きの通り、単なる作文に過ぎないのです。こういうふうにしたいというだけで、具体的にこういう数字があって、こういう予算を組んで、こうなりますという説明は、残念ながら六ヵ年計画の当面の責任者でございます経審長官答弁ができないのです。これほど私はお粗末な計画はないと思うのです。これはいずれ……しかし経審長官は外務委員会の方でも呼ばれているのでありますから、それは行ってけっこうでありますけれども、あとでまた参りましたらまた続けていただきたいと思うのでありますが、細部にわたっての問題は、私は労働大臣の答弁によって、いかに政府がお粗末な、その場限りの政策を連ねているに過ぎないかということを明確にして行きたいと思うのでありますが、そこで私は、労働大臣にお尋ねいたしますが、この六カ年計画で発表されております失業者の総数がどのくらいになって、そしてそれは何人吸収できて、その何人はどの事業とどの事業にこういうふうに吸収できる、予算の裏づけが必要な事業については、このように予算の裏づけをしていると、そういう明確なる答弁一つ願いたいと思うのであります。
  75. 西田隆男

    国務大臣(西田隆男君) お答えいたします。経済六カ年計画によりまして、三十年度で増加いたしまする完全失業者の数は約二十万と見積られております。従って労働行政の面において、増加する二十万の失業者をどうするかという観点に立って、労働省の失業対策事業費及び建設省の道路整備事業費、通産省の鉱害復旧費等が計上されております。労働省に計上されておりまする金額は、失業対策事業費は百六十八億円、建設省の道路整備事業費は五十億、それから通産省の鉱害復旧費が十三億二千万円、これだけの費用を計上いたしますことによって、道路整備事業、これに対して特別失業対策事業費として約三十五億、これで約三万人の失業者を吸収いたします。それから一般の失業対策事業費として百三十三億円を計上いたしましたことによりまして、約十九万人の失業者を吸収する。建設省の五十億を計上されました予算におきまして道路整備、それから港湾等によりまして約四万五千名、それから水道におきまして五千名、それから鉱害復旧の十三億二千万円で約一万名、それから国政調査及び統計等の仕事によりまして約一万名、これを一カ月二十一日間の就業に換算しますというと、十四万人程度失業対策事業に吸収し得ることになっております。従ってあと残りまする六万人と申しますのは、これは職業補導所に収容することによりまして、職業の補導教育を通じて、これを終ったものに対して職業のあっせんをする、この経費が総額において二億三千万円、予算に計上されております。それは職業補導所による人間が多過ぎるのではないかという御反問があるかもわかりませんが、この増加する労働力人口と申します中には、十四歳から十九歳までの年齢の人が入っておりますので、十四歳から十五、六歳まではまだ中等学校と申しますか、中学に行っている人でございます。この人間がこの中に含まれておりますので、万全とは言いかねますが、これによってどうにか三十年度の経審の六カ年計画に基く完全失業者の吸収ができるものと考えております。
  76. 永岡光治

    ○永岡光治君 私は、まず、その事業別の問題に触れる前に、今、労働大臣の答弁によりますと、三十年度失業者が二十万人ふえる、今日は完全に失業者が全部救済されて、そうしてさらに二十万人ふえるから、その二十万人の救済はこうだ、こういう説明がありました。今日ですら完全に失業者は救済されていない。ちなみに私は先般の本委員会における公述人の、その方面の権威者である松尾均君の公述を求めましたが、彼の公述によりましても、昨年一年間で行政整理その他倒産等いわゆる企業整備されたもの、職を失なった者が百十四万人から百二十万人、それから学校を卒業して職につかなければならぬところの人間が八十万人、合せて約大体二百万人だ。ところが、そのうち就職した者はどのくらいいるかというと、約百万です。昨年ですら百万人の救済ができていない。それにもかかわらず、百万人の解決かできて、さらに二十万人ふえる、工業などについて二十万人の問題についての説明は今ありましたが、これは別としまして、昨年における失業者すら救済ができていないのに、どうして二十万人で足りるか、私にはわからない。ただ二十万人の失業者がふえるということでありますが、学校の卒業者で職を必要とする者が八十万人、それは今日多くの国会議員は地方から、あるいは自分の身内から多くの失業者の救済について、たくさん履歴書を預かっておると思います。そういう一つの例を見てもおわかりと思いますが、どうしてなまやさしいものではないと思いますが、一体今までの失業者は全部どうして救済ができるのでありましょうか。
  77. 西田隆男

    国務大臣(西田隆男君) お答えいたします。予算委員会で御意見を聞かれたのは、どういうふうな基礎数字に基いて御発表になったか私は存じませんが、昨年度の学校卒業者はこの委員会で何度も申し上げますように、中等学校卒業者におきましては九二%程度就職しておる、高等学校が少し比率が落ちて、これは六〇%ぐらいであります。大学卒業者が七七・七%というのが、四月十五日現在の就職の率になっております。従って今あなたのおっしゃるような、百数十万人の中の百万人近い人間とおっしゃるが、そういう実績には私の方の調べではそうなっておりません。これは資料がもし必要ならば、あとから資料を提出いたします。
  78. 永岡光治

    ○永岡光治君 私は学校の卒業者百八十万人が職についていないというのじゃない、職を求める人が、八十万人卒業してくる、整備その他で百二十万人、二百万人救済しなければ完全救済にならない。昨年そういう失業者の指導就職を含めて、幾ら救済になったかというと百万だというのです。百万余っているのじゃないかと、こういうことです。
  79. 西田隆男

    国務大臣(西田隆男君) お答えいたします。現在職業安定所に職を求めて来ます者が四月末で平均いたしますというと、約百四十四万一千人程度の者が職を求めて来ております。しかもこの職を求めに来ます百四十四万一千と申しますものは、必ずしもその日にすぐ職につかねばならないという希望を持った人ばかりでないことは永岡さん御承知通りであります。そのうちに毎日々々収容いたしておりますものが、昨年度平均いたしましても結局六十三万名程度の完全失業者を全国の職安で就職のあっせんをして就職をさせております。保険の受給者が五十一万人——失業保険の受給者が五十一万人程度平均になっております。この二つを合せてみますと六十三万と五十一万と合せましても百十四万、多少数字は違うかもしれませんが、百十四万というものが現在失業対策事業と失業保険によってどうにか生活の資をかせいでいるという実態でございまして、必ずしもあなたのおっしゃるように二百万人を三十年度において職を与えなければ、失業対策は万全ではないではないかという議論にはならないかと考えますが、資料あとで御提出しまして、資料によって御検討願いたいと思います。
  80. 永岡光治

    ○永岡光治君 後ほどそれは資料の提供を求めまして、さらに詳細は一般質問等でつまびらかにしていきたいと思うのでありますが、とにもかくにもあなたがおっしゃった通り職業安定所で調べても百四十四万という膨大な数字が職についていないことは、これは事実です。あなたはただ二十万の救済で事足りると考えているところに私は問題があるということを指摘しているのであります。決して二十万でこれは十分ではない。もし、あなたのおっしゃるように百四十万の数から比べても七分の一なんです。七分の一をもって、それで失業救済は大体できたのだというところに大きなこれは認識の相違があるわけです、私とあなたの……。こういうことでは失業問題の救済を鳩山内閣の大きな看板にしている、その鳩山内閣としてはお粗末なものじゃないかと私は申し上げているのです。
  81. 西田隆男

    国務大臣(西田隆男君) 永岡さんは何か数字を勘違いをしておられると思いますが、百四十四万一千人と申しますのは、職業安定所に職を求めに来る人の総数であります。そのうち、さっき申しました五十一万名は失業保険の受給者、それから六十三万名は職にありついているということを一応私どもは考えておりますので、あなたのおっしゃるような数字にはなりません。しかし、現在予算に計上しております金額で必ずしも失業対策が万全とは思っておりませんが、これは予算数字をごらんになればわかると思いますが、昨年は百十九億しか計上されませんが、今年度は二百四十億から五十億近い金を苦しい中から計上いたしたという点を考えましても、万全ではなくても、鳩山内閣が失業対策に対しては相当なウエートを置いて考慮を払っているということだけは御了承願えると思います。
  82. 湯山勇

    ○湯山勇君 労働大臣は今、ああいう御説明をなさいまして、二十万の対策でもってまず昨年通りの基準が維持できるというような意味の無理な説明をなさいましたが、本日本会議自治庁長官が明らかにされたところによりましても、再建整備によってずいぶん退職者が出てくる、数はどのくらいかわかりませんけれども、とにかく六十億の退職起債を用意している、こういう御説明がございました。そうすると、この六十億の退職起債を用意しているその裏づけとして——裏づけというのは逆になりますけれども——どれだけ一体今度の再建整備によって失業者が出るか、それをどう計算しておられるか、また大企業の合理化をするということをしばしばおっしゃっておりますが、その大企業の合理化によって何方名、どれだけの失業者が出てくるか、こういうことは今の二十万の中に入っているか、いないか、そうしてまた、出る数はどれだけと踏んでおられるか、もしこれが明らかになっていなければ、先ほどのお話の農村、中小企業への潜在失業者として、整備された地方公務員なり大企業からの失業者がいくと思いますが、この数はどう踏んでおられるか、対策はどうなっているか。  さらに今労働大臣は失業保険の五十一万、これが加えられて大体対策はできているということでございますけれども、予算の上で見ますと、三十年度は二十九年度よりも減っております。一月平均が二十九年度は四十九万二千、三十年度はそれより四万ばかり減って、四十五万四千人しか組んでおりません。大臣が言われるように、もし予備金か何か入れて五十一万となさいましても、それではとてもこの失業対策は追っつかないと思う。と申しますのは、本年度の失業対策の基準になるのは、本年度の上半期は昨年度の下半期並みだという前提に立っているのですけれども、すでにもう昨年下半期以上になっております。そうすると、今のように失業保険と、そうして二十万の対策で事足りると言われる説明は全くこれはお座なりなことにすぎないと思いますが、今申し上げましたような点を明らかにして一つ答弁を願いたいと思います。
  83. 西田隆男

    国務大臣(西田隆男君) お答え申し上げます。私は二十万人さえ収容すればいいという意味のことを申したわけじゃございません。それから今後生じてくる失業者に対してどうするかという問題でありますが、これは私が何回もお答え申し上げたと思いますが、今まで国が立法することによって当然生じてくるであろうと予測される失業者に対して何らの財政的な裏づけをしていなかったことはこれは御承知通りなんであります。少くとも鳩山内閣におきましては、国が立法することによって失業者が生ずることが予見された場合においては少くともこれと並行して財政措置なり資金措置を講じてその立法の事項に伴って生ずる失業者はこれを救助しなければならぬと、こういう考え方をもって鳩山内閣は現在進んでおります。従ってまず第一に法律案として国会に提案されておりますこの石炭鉱業合理化臨時措置法案、この法律案によって生じます失業者に対しましてもこれが万全であるなしという議論は別としまして、一応政府としてはこれに対する対策を立てて失業者を生ぜしめないという方法を講じたい、かように考えております。それから湯山さんのおっしゃるように、次々とこの重要産業の合理化をやれば出てくるじゃないかというお話でありますが、これは出てくることも想像されます。しかし、これはことごとく国の立法によって出てくるものではないのでして、それを一々労働行政の面で調査をしてまだ失業者ができていないのにもってきて何人出るかということを調査すること自体が非常に困難であります。これは出ないとは私申し上げません。従ってそういう事態が起きました場合にはこれは当然予備費か何かの方面でまかなう、あるいは予算を補正して経費を出す、いずれかの措置を政治的にはとらなければならないだろうと考えております。ただいま失業保険については、これは労働省は四十二債八千万円ばかり予備費を持っております。従ってもし失業保険の給付人員がわれわれの予想しておりますよりも急激に増加しました場合には、これをもってまかなうつもりでおります。地方自治のやつは法律が通って、そして、はっきりどのところでどれだけの人間がどうなるかということになれば当然対策を講ずべきであると考えております。
  84. 湯山勇

    ○湯山勇君 今、労働大臣は非常に重要なことをおっしゃいましたが、合理化が進んで行けばその対策については補正予算を組まなくちゃならない、地方再建整備によってどれだけ出てくるかわからない、大体これは、退職起債を六十億見ておるのでありますから、千や万じゃないと思います。おそらく何万という失業者が出てきます。そうすると、別に対策を立てなければならないということをおっしゃいましたが、現在その対策が立っていないと、こういう意味でございますから、出ることは、あの法律が通れば出ることは確実でございますから、補正予算を組むということを労働大臣は考えておられるのか、明確に一つお願いします。
  85. 西田隆男

    国務大臣(西田隆男君) お答えいたします。  地方方面に出てきます失業者に対しては必ずしも中央で補正予算を組む必要がないと思います。資金的なめんどうを見ることによって地方事業を興すなりなんなりによって地方でできると思います。これを失業者として失業対策を講ずるということになると、結局現在編成されておる予算の範囲内で、あるいは予備金を追加してもなお足りないという場合においては失業者をうっちゃっておくということはできません、これは何らかの措置を当然とるべきであると考えております。
  86. 永岡光治

    ○永岡光治君 私はこの数字の問題について先ほどちょっと触れましたけれども、労働大臣の答弁の中に、失業保険を払う者五十一万人、その中で失業者、早急にこれは完全失業をなくす意味において職を与えなければならないはずなんです。そういうことを考えましても決して政府の約十六万程度で事足れりと私はどうしても考えられない、それでもって十分であると考えておるのははなはだけしからぬと考えるのですが、これは次の資料をいただいた際に明確にすることにいたしまして、ただいまあげられました道路整備、あるいは港湾、水道、そういうものによって失業救済をするという話でありますが、私はここに明確にしておきたいのは、三十年度予算歳出の中で公共事業関係費、これは私は失業救済の大きな仕事の対象にしなければならない経費だと思うのでありますが、それについて、昨年に比べて、吉田内閣に比べて、その吉田内閣よりは失業問題に重点を置こうという、その鳩山内閣は九十三億も減額しておる。これは一体どういう理由なんですか。
  87. 西田隆男

    国務大臣(西田隆男君) お答えいたします。これは建設大臣が答えるのが順当でしょうけれども、金額はあなたのおっしゃる通り減ってきました。しかし失業者を吸収できる事業に対して、公共事業費はかえって増加をいたしておるのであります。減ってはおりません。数字は、今、ここで詳細に一一個別的には存じておりませんけれども、これも資料一つ御報告申し上げます。
  88. 館哲二

    委員長館哲二君) 永岡君に、持ち時間が大体済んでおりますので……。
  89. 永岡光治

    ○永岡光治君 僕の時間少し少いですよ。ちょっとおかしいと思うですな。
  90. 館哲二

    委員長館哲二君) それは委員長を御信用願いたいと思います。
  91. 木村禧八郎

    木村禧八郎君 関連して労働大臣はこの前一般会計で失業対策費を組んでも地方財政負担金をめんどう見なければ計画通りの失業対策はできない、こういうふうにおっしゃって、そうして地方負担分もめんどう見るのだと、こう言っておられました。ですから、労働省百六十八億組まれて、そうしてそれに対応する地方の資材負担分——資材費、あるいは労務費、事務費等の負担分、これは今度全部私は中央が見るのだと伺っておったのです。労働大臣前にそう言われた。ところが見ておれないと言っておるのです。そうなると、これは当初言われた当時の計画と違ってきて一般会計で百六十八億組んでも地方財政の方に余裕がなくて、実際には私はそれが計画通りに失業が救済されないと思うのです。この点はどういうふうになっておりますか。
  92. 西田隆男

    国務大臣(西田隆男君) お答えいたします。地方財政が非常に困っておることは木村さん御承知通りです。私が第一次鳩山内閣当時に申し上げましたことは、失業対策事業というものを、今までは……言葉の表現は悪いかもわかりませんよ、悪いかもわかりませんが、ただ金をくれればいいという考え方で失業対策事業というものを考えるべきではない、少くとも失業対策事業であっても、これは生産に寄与し、建設的な仕事をすることによって若干国家に貢献をするという建前で失業対策事業考えるべきである、そういう観点から失業対策事業というものを考える場合においては、これは国で行う失業対策に対しては地方負担さすべきでない、国が当然全額国庫負担でやるべきである。地方地方で特色のある失業者が生じてくる場合も考えられる、従ってそういう失業者に対しては当然地方地方として失業対策事業考えるべきである。かような意見を実は申し上げたのであります。その趣旨に従って三十年度予算の折衝に当りましては、国で行う失業対策に対しては全額国庫負担ということで実は交渉したわけでございますが、結局五分の四を国庫負担、しかも今まで四十五円でありました材料費を二百十円に引き上げる程度で実はやむを得ず妥協したわけでございまして、私が考えておりますことが全面的に人数の上において、あるいは金額の上において通っていないことは事実でございますが、これは今後とも努力してぜひ私の考え通りに今後とも推進していきたい、かように考えております。
  93. 館哲二

    委員長館哲二君) 永岡君どうか……。
  94. 永岡光治

    ○永岡光治君 一つ、私への答弁に対する疑義をたださなければなりませんから。
  95. 館哲二

    委員長館哲二君) これで一つ、今の質疑で一つお取りやめを願いたいと思います。
  96. 永岡光治

    ○永岡光治君 私ただいま、私の質問に対しての、公共事業費を落しているが、これはけしからんじゃないかという問に対しての労働大臣の答弁は……、しかし、その中でも、失業救済なる仕事の対象になる経費をふやしておると、数字ははっきり覚えていないけれどもふやしているとおっしゃったのですが、ここにあげられております内容を見ましても、私が考えておりまする失業対策の経費の中でも実は減らしておる。たとえば治山治水対策費というのが、私はおそらくこれは失業救済予算の対象になり得ると思う。ところがこれもどれくらい減らしておるかと言いますと、七億五千万円減らしておる。それからさらに、また先ほどから増産対策事業、これとても農村における失業対策事業の対象になると思うのですが、七億八千万円減額いたしております。さらに災害復旧事業等に至っては、これは労働大臣、すでに御承知通りに、まだ昭和二十八年の災害も三〇%しか復旧はいたしておりませんが、にもかかわらず、これについても百三十六億という莫大な減額をしているわけです。これは皆やはり失業対策の事業に私はなり得ると思う。もし、ほんとうにあなた方が失業救済のために努力するというのであるならば、この経費を減らす理由が私はないと思う。少くともほかの経費はいろいろ考えたでありましょうけれども、さらにつけ加えてこういう問題についても、増額はたとえしないまでも現状維持は守るべきだと思う。それでこそ初めて失業対策の熱意がうかがわれると思うのでありますが、これについてどう考えるか。それから時間がないと思いますから、さらに重ねて最後の質問をいたしますが、こうして考えてみますと、鳩山内閣は口では失業対策に重点を置いてやるのであるということを言っておりまするけれども、六カ年計画の具体的な内容の質問を追及してみましても、別段これは新しく、なるほど失業救済がこうできるという自信を深め得るところの答弁はありません。しかもその失業対策に対するところの熱意というものについては、予算上では大して見るべきものがないにかかわらず、他方それでは防衛関係の経費をみたらどうかと言いますと、これは莫大な経費が組まれております。ここにも歳出の予算がございますが、防衛庁関係経費は昨年に比べまして百二十五億、公共事業関係費は九十三億二千万円も減らしておるにもかかわらず、一方におきましては、百二十五億というものが増額されておるわけです。鳩山総理がしばしば言われるところの外敵の侵入に備えるという、その防衛関係の経費をこうたくさん組んでおりますが、今あなたが守ろうとしているところの日本は、外敵の侵入の前に失業という問題において自殺をし、罪悪を生み、悲劇を生む。次から次とみずからの生命を断っており、混乱を起そうとしているわけです。百二十五億の防衛費を組むだけの余裕があれば、なぜ私は失業対策のためにこの経費を使ってもらえないのかというのです。これがほんとうの日本を守るところの方針ではないか、民生の安定を非常に大きく願っておる鳩山内閣としては、これは大砲もバターも、こういう二つのことはできないということを、この予算の上からも明確にしておるわけです。今、労働大臣や経審長官がどのような論弁を弄し、どのような説明をして私たちを納骨させようとしても、失業問題が救済されていないというこの事実だけは否定できない。率直に経審長官は述べられたと思う。あの方は正面だから述べられたと思う。今潜在失業者は非常に大切な問題だといい、それについて何か対策を講じたいと言っておりますけれども、その具体策もお聞きの通りないような状態です。もしこのような莫大な経費を失業救済のために、民生安定のために、産業の開発のために、発展のために使ったならば、私は立ちどころに解決ができると思うのでありますが、ちなみにたとえばジェット機を一機例にとりましても、莫大な救済ができるわけですが、一機では大体月収一万円の家庭の救済が千六百六十七世帯できるわけです。これを人員にいたしますと、大体八千三百三十人の救済ができるわけです。こういうふうに考えてみますと、明らかに私は今まで述べられましたところの、鳩山内閣がこの失業救済のために重点をおくといったそのことは、この三十年度予算では全く私たちの期待は裏切られた、と同時に、あなたが言うところのバターも、それから大砲もということは、現実の問題としてはできないのだということを、この三十年度予算では明確に私は示しておると思う。このことを特に私は指摘いたしまして私の質問を終ります。
  97. 西田隆男

    国務大臣(西田隆男君) お答えいたします。ただいまの永岡さんの言われたように、あらゆる公共事業費を減らさずに増額して、いろいろ失業対策に適用すれば、それはもうそれにこしたことはないことは申すまでもないのです。しかし私が申しましたのはうそではございませんので、道路事業の中で、本年度予算に組まれておりますのが九億九千万円、それから河川事業、港湾事業、この二つを加えましてふえておりますのが、五億、それから水道事業でふえておりますのが一億、合計十五億九千万円と申しますのが、公共事業費の中の失業対策の人員を吸収する費用として実は昨年よりふえております。永岡さんのおっしゃるような事業までも去年のままおいておけばなおさらよかったと思いますが、そのようなわけであります。
  98. 館哲二

    委員長館哲二君) 昨日、千田君からの外務大臣に対する質問が留保されております。この際千田君の発言を求めます。
  99. 千田正

    ○千田正君 昨日首相並びに外務大臣にお尋ねしましたのでありますが、外務大臣がおいでにならないので鳩山首相から大綱についての所信は承わっております。そのうちで一つ重大な課題について外務大臣にお伺いしたしと思いますのは、この日ソ交渉のうちに国連加入の問題が一つ重大な問題として提示されておるのでありまするが、国連加入に際しましては、今まで日本がしばしばアメリカその他の国々によって、国連の総会においては推挙を受けたのにもかかわらず、ソ連側その他の国々の反対を受けて、とうとう国連に加入できなかった、今度の交渉においてこの問題は取り上げられるとするならば、一体どのところに重点をおかれておるか、言いかえれば、これからの問題、国連加入の問題に対しましては、従来の通りアメリカ側というような、いわゆる自由国家群を頼りとして国連の加入を再申請するのか、それともソ連に頼ってこれに参加するか、こういう問題、これは今世界の視聴を非常に集めております。日本は一体ソ連側に頼って国連に参加するのではないだろうか、あるいは従来の通りアメリカ側にこの問題を提示して参加を求めるのであろうか、あるいは第三点としましては、鳩山首相以下皆さんが考えておられるように、自主外交の立場から、日本はいずれにも頼らずにこの問題を提示するのか、その際ソ連側がアメリカと同じようにこれの許諾を与えるような方向に向けるべく、この問題を課題として今度の日ソ交渉に入っておるのかどうか、この点につきまして所信のほどを承わりたいと思うのであります。
  100. 重光葵

    国務大臣(重光葵君) 国際連合加入の問題について、日本側が加入を非常に希望しておるということは御承知通りでございます。その希望が理事会における拒否権にも関連があるということも御承知通りでございます。日本といたしましては、むろんこれは日本自身の立場からこの加入を要請するわけでございますが、しかしこの日本の要請を受け入れようという自由民主諸国の側は、これは問題はございません。しかしソ連側において問題があったことも今申す通りでございます。従いまして、日ソの交渉においてこの問題をも話合いに上る機会があると、こう私は信じております。その機会があればこれを取り上げて、ソ連に対してこの問題についても日本の立場を支持してもらいたい、こう考えておる次第でございます。
  101. 千田正

    ○千田正君 その程度であるならば、私も大体考えられないでもありませんが、将来の加入の問題に対しましては、従来も国連の総会、あるいは安保理事会の会議の状況を見るというとなかなかデリケートであります。それは簡単な問題でないことは、外相も御承知通り世界の二大陣営がいかにして自分らの陣営を獲得するか、それが国際平和を保つ上におけるところの一つの大きな基本になるだけあって、相当微妙な問題が将来残されておる。でありまするから、この際あなたの御発言で、私ははっきり御答弁をいただきたいと思ってお願いしたのでありますが、これ以上のことはいずれこの日ソ交渉が進展するにつれてまたお尋ねするといたしまして、次に私のお尋ねするのは、この十八日、マニラのUP特電によりまするというと、この日比賠償問題につきまして、ガルシア副大統領が十八日の各国の記者会見で、日本には日比問題について三通り考え方がある。一つは、一そう多くの賠償を支払うべきものとするとの見方と、もう一つは、昨年の大野・ガルシア協定の四億ドル案をとる問題と、第三点は大野・ガルシア協定の四億ドル案と八億ドルの新方式の中間で妥協すべきだとする案、右三案のうち、重光外相の考え方は明らかに第三案だが、国会の討議によってうまく調整されることを希望かつ期待する、こう述べておりまするが、外務大臣は果して第三案の四億ドルと八億ドルとの中間妥協案を考えておらるるかどうか、この際御所信のほどを承わっておきたいのであります。仮にその問題が四億ドル以上ということになりました場合において、ビルマ、インドネシア等に対するところの国交問題に対して影響しないか、この点の御所信を承わっておきたいと思います。
  102. 重光葵

    国務大臣(重光葵君) 日比賠償の問題は、これは非常に実際問題として大きな問題であります。これが今懸案中であり、また交渉中であるということも御承知おきの通りでございます。そこで実は今比島側のまとまった考えを提出してもらう時期になっておるわけでございまして、それを待っておるわけでございます。比島側も御承知通りに、今お話になりました大野・ガルシア協定というものが一応できたのでございましたが、これもそれを遂行することのできないような状況に相なりました。そこで先方の意見のまとまるのを待ちまして、そしてわが方の態度もこれに決定をいたしたいと、こう考えておるのでございます。そこで私の考えはどうであるかということなんでございます。これはまあ大野・ガルシア協定が必ずしも四億、これにはいろいろ条件があることは御承知通りであります。正確に言って四億、言っていいか悪いか、これは別問題でございますが、しかし日本側において過去の内交渉の経過の間において、日本は四億以上は出せないのだと言ったことがあるのでございます。向うは十億を切るわけには行かぬのだと言って、これはまあ交渉の経過を私は今申し上げております。ところがその経過のうちで、先方は八億まではしようということになったのでございます。そこで私は、それならば妥協をするならば日本の最初の立場である四億、向うのその後の立場であった八億、これの中間で妥協するよりほかにしようがないじゃないかというようなことを申したようなこともございます。私もそういうような方法が妥協の方法であろうかと考えます。しかし実際は今申し上げる通りに、向うの考え方、向うがまだどういうところで、最終的とは申せませんが、向うの考え方を固めるかということは待たなければなりません。それを待った上でわが方もこれを検討して立場をきめるということになっておりますから、その案の出てくるのを待ってはっきりしたことは申し上げ得ると考える次第でございます。
  103. 千田正

    ○千田正君 もう一点だけ……。一昨日は鳩山首相から、この問題については日本側の国内の財政状況から見ても四億ドル以上はとうてい出せない、四億を堅持してこの問題に当りたいという御答弁であったのであります。大蔵大臣におきましては、この問題は十分にわからない。それで非常にこれはデリケートな問題でありますので、よほどしっかり考えないというと、将来各国との交渉に非常に影響を及ぼす問題でありますので、この点は一つ伺っておきたい。  もう一つ重大な問題がありますが、それは前の吉田内閣のときに、終戦後アメリカ日本に対して与えたところのガリオア、イロア等のこの戦後における援助の問題、これに対して前吉田首相は、日本の債務である、これに対して支払わなくちゃならない義務を負っているんだ、こういうふうにした結果、いわゆる私たちは協定というような問題が将来起きてきますが、この額においては非常に大きな問題だろうと思うのであります。これは日比問題以上に日本にとっては国民負担になる重大な問題である、これの再開を今アメリカ側からこの問題の処理交渉を日本側が受けているらしいので、新聞紙の発表によるというと、今月の末か、七月早々この問題をさらに討議しよう、日米間に討議しようという問題が起きているらしいのです。内容を検討して見ても、御案内の通りアメリカのいわゆる積算している見積額というものは二十億米ドル以上に上るところの膨大なるところの金額であります。これが日本の国内経済に及ぼすところの影響は非常に重大である。これを日本側がどう処理して行くかということが、これからの日本のいわゆる財政の建て直しに対しては非常に重大な問題でありますので、これは受け入れ方をすでに準備しておられるのか、考えておられるのか、アメリカ側は早々にこの問題を協定しようじゃないかという申し入れに対して、日本側としてはどういう心がまえでおられるのか、これは外務大臣はもちろんのことでありまするが、鳩山総理大臣にも一言お答えを願いたいと思うのであります。
  104. 重光葵

    国務大臣(重光葵君) 今御質問のガリオア、イロアのアメリカ関係の金銭債務の問題でございます。これはお話の通りに、日本の前内閣時代にも日本側の債務と心得るということの建前であったという御説明でございました。私どももそう承知をいたしております。そうしてこれは折衝によって決定すべき債務だと私どもは心得ております。そこでそれはどういう意味かと言うと、この問題は今お話の通りアメリカ側は二十億をこす計算をしております。そうしてその二十億をこす計算は、わが方においてもこれは共同して計算しなければならぬ問題である。あるいは双方ともそれを認めることになるのでございましょう。また認めたことがあるかもしれません。しかしながら、それが債務の金額というわけではございません。これは折衝によってこの債務をどれだけのところに押しつけるか、またどれだけのところに最後にこれを決定するかというので、これは交渉によって決定をしなければならぬ債務だと、こう考えております。そうしてその交渉の結論が出ました場合に、その額や支払い条件等は交渉によってきまることになりますれば、それを国会に出して承認を得て、その結果によって初めて承認を得て、初めてこれは法律上の日本の債務として成立する、こういうふうな順序と考えております。まあさような順序を経てこれはどうしても決定をしなけりゃならぬ、交渉を取りまとめなければならぬ問題だと考えておりますので、できるだけ有利な結果を得べく目下いろいろ考案中でございまして、お話の通りに、アメリカ側からはこの問題を早く妥結をし、決定をしたいということを申し出ておることは事実でございますが、これはとくと検討してそうしてこの交渉に応ずることにしなければならぬと、こう考えておって、目下検討中でございます。その発展につきましてはまた御報告の機会があると思います。
  105. 佐多忠隆

    ○佐多忠隆君 関連。日比賠償あるいは経済協力の金額を八億ドルというフィリピンからの申し出に対して、われわれはこれが非常に過剰負担になる、日本経済力あるいは財政支出力からいって、ほとんど負担し得ない額であるというふうな強い感じを持って質問をいたしておるのでありますが、総理大臣あるいは外務大臣の言葉を聞いておりますと、どうもそれほどむずかしい問題ではなくて、これで大体妥結するつもりだというようなふうにしか受けとれないのでございますが、果して大蔵大臣はそういう容易な負担であり、従って妥結し得る金額であるとお考えになっているのかどうか。その点が第一点。  それからわれわれは、もし八億ドルというような金額で妥結をされて調印をされるということになれば、社会党としてはどうしてもこれは今の、少くとも今の段階までわれわれが検討し、いろいろ調べたところでは、これに賛成をすることができない。従って反対の立場をとらなければならないだろうという気がいたす。この点は、あるいは私想像でありますけれども、自由党も同じような気持なり感じを持っておられるのじゃないか。そうすると、今あなた方が言っておられるように、安易な考え方でこれで妥結をするというのであれば、国内においては、そういう大きな食い違いがきて、あるいは否決をされるという公算が非常に大ではないかと思う。そういうことも十分考慮のうちに入れておられるのかどうか。この点はそういうことを考慮に入れた上でこれまでのような答弁をしておられるのかどうか。総理大臣、外務大臣にこれは御答弁を願いたい。ことに昨今はその八億ドルの金でプレス・キャンペインまで非常に積極的にやっておられる。それが容易なことであるかのようにプレス・キャンペインをしきりに積極的にやっておられるのであるが、そういう態度で果して乗り切れるとお考えになっているのかどうか。その点を御答弁を願いたいと思います。まず大蔵大臣から。
  106. 一萬田尚登

    国務大臣(一萬田尚登君) お答えします。いわゆるこの八億ドルのこれが日本財政力、経済力で負担し得るかどうかということですが、これは、これからそういう案が出ますれば交渉に入る。ですから今それが負担能力にたえるとか、たえないとかということでは私はないと思います。
  107. 重光葵

    国務大臣(重光葵君) 私は交渉に当っておるのでありますが、これは容易な数字ではないと私は思っております。私は今までフィリピンとの間の賠償交渉はあらゆる努力をして、これは妥決をする方向に行かなければならぬと、こう大局論としては考えております。どうかしてこれをまとめて日本の将来の通商の途、東南アジアの経済外交というようなことに飛躍的に進んで行きたいとこう考えております。しかしながらこれも条件次第でございます。先方の条件をよく検討をいたしまして、そして関係方面との十分協議をして、そうしてむろんできるだけの日本としては奮発もしなければなりますまい。しかしながらやれないことはやれない、条件のいかんにかかわらずこれをまとめなければならぬというふうには考えておりません。しかし大局論としては私はさような考え方でもってあらゆる努力をしてみようと、こう思っておるわけでございます。決して、また今八億々々と言われるけれども、これは新聞情報でございまして、私どもが信じておる数字ではございません。しかしいずれにいたしましても、これは新聞情報にしても、そういう数字ならば、これは容易なことではないと、私は困難なことを考えております。それと同時に、先方の提案がありましたらば慎重に検討をいたしまして、最後の決定はいたさなければならぬ、こういうふうに考えておるのであります。どうぞ御了承を願います。
  108. 千田正

    ○千田正君 鳩山総理大臣に、私の対米債務に対する所信の点を。アメリカ側からは至急再開するような要望がされておるようでありますが、これに対して応ずるだけの準備、それに対しては外務大臣から御答弁ありましたが、総理大臣としてはこの問題を今会計年度に開始するだけの所信がありますかどうか、その点を承わっておきたいと思います。
  109. 鳩山一郎

    国務大臣鳩山一郎君) 私はガリオアの問題については、外務大臣が答弁した以外に私の答弁はありません。佐多君の御質問に対しては、私は日比交渉については当事者じゃないのです。知らないのです。フィリピンの代表者とはそういう話はしません、内閣において。フィリピンの交渉は高碕経審長官が交渉の相手になって相談をしまして、まだ結論を得ませんで、いろいろのうわさが立っておるのでありまして、八億ドルの賠償をするというようなことは話にはなっておりません。今のはちょっと間違いました。高碕君は交渉になっているので、責任者はやはり外務大臣です。
  110. 秋山長造

    秋山長造君 ただいまの佐多委員の質問に対する外務大臣の御答弁ですが、八億ドルというけれども、これは新聞情報で必ずしも正確でないというような御答弁を伺ったのですが、われわれはあの新聞情報は正確だというふうに思っておったのですけれども、それが正確でないというのは、どういう根拠があってそういう御答弁があったのか、外務省の方へは八億ドルとは別な情報があるのか。さらにもう一点は、すでに十五日にネリ大使の方からマニラにおるト部事務所長代理、あのト部所長代理の方へこの八億ドルの賠償請求について非公式に申し入れがあったということも報道されておるわけです。それが事実であるのか、それともそれも新聞情報にすぎないので、外務省の方には何らそういうものは申し入ればなかったのか、この点もう少しはっきりさしていただきたい。
  111. 重光葵

    国務大臣(重光葵君) 私が新聞情報であると申し上げたのは、われわれは情報を持っておらないということを申し上げたのであります。外務省としては向うの提案を待っておるわけでございます。その提案を待った上で、あるいはそれについて御議論を伺うことにいたしたいと実は考えております。まだ提案を受け取っておりませんから、受け取った上で考慮しようと、こう考えております。
  112. 館哲二

    委員長館哲二君) 先ほど池田君の御質疑中、外務大臣に対する分は保留されております。この際池田君の発言を求めます。
  113. 池田宇右衞門

    池田宇右衞門君 私は、先ほど総理に対しまして、やはり外務大臣にも同じことを聞いたのであります。外務大臣お知りの通り日ソ交渉はすでに国交回復の交渉に入っております。成功すれば初めてそれが当然でありますが、不成功に終ったときには総理並びに外相はどういう責任をおとりになるかということをまずもってお聞きしたのでございます。その理由といたしましては、御承知のごとく十年間もわが同胞を抑留しておって、いまだ渡しておりません。あらゆる交戦国が全部よこしたのに、外相もお知りの通り仲裁を頼んだら直ちにわれわれに一方的に宣戦を布告し、無条件降伏をしたその前後においてわが国の領土を千島、樺太、朝鮮までこれを一方的に占領してしまった。しかも当時満洲におきますところの、朝鮮におきますところの同胞に加えたところのあの人類史上残酷な行為に対しましては、当時の日本国民といたしましては断腸の思いであった。しかるに、なぜ全権を派遣する前に引き揚げ問題をまず解決し、漁業権の問題についてもまずもってこれを先に解決して、初めて全権を派遣するのがわれわれは当然であるというように思っておりました。しかしながら、事すでに矢はつるを放れております。よく人を見て法を説けと言うが、ソ連が外交史上に強力なる軍隊を持っておって、国が大きいからといって、近代外交における日本に対するような取扱いは、どこにそういう例がありましたか。その一点と、外交というものは今総理にお尋ねすれば、日ソ外交は戦前におけるところの正常な状態に復することを目標として外交を進めておると、こういうお話しであったのであります。従って総理はもしこの外交上におけるところの失敗、不成功に終るようなことがあれば、自分は重大責任をとる決心であると、総理はともかくもしろうとであるところもありますが、あなたは全身を打ち込んだ外交官であります。そうして日本が日ソ外交の成功があって、初めて世界に独立国家として明るい脚光を浴びる時節到来と言わざるを得ないのであります。事は八千七百万の国民に明るさを持ち、独立国家といたしての実現をするかしないかという大きな問題があると同時に、日本の内外におけるところの信用に対しましての反響は大きいと言わなければなりません。従って外務大臣の責任も総理以上の重大な決意と決心がなければならないと思います。これに対する外相の決意とそれから見通しを一つお聞きしたいのであります。
  114. 重光葵

    国務大臣(重光葵君) ソ連に抑留されておる人々の帰還問題ということは、これはもうむしろ交渉と関係なく、離れてもこれは従来やっておる問題でありまして、これはぜひとも実現をいたしたい、こういうことで日本の全権はこの問題を第一に取り上げて、そうしてぜひ一つこれを実現さしてもらいたい、そうして両国間の空気をもそれによって改善、なめらかにして、そうして交渉を進めれば、ほかの交渉案件も従って工合よくいくようになるかもしれないから、一つぜひそれをやってもらいたいということで、強く要請をしておるのでございます。向うはそれに対して考慮しようということでございますから、これは交渉の経過を待たなければなりません。その他の問題につきましては、これはもう私は少し言い過ぎるといわれるくらいに、批評があるくらいに、私はもう日本の立場はあけすけに申し上げておるわけであります。それは日本国民としてかような重大な交渉に当って、わが方の態度の基本的なものについては十分理解解をし、また納得をしなければならない問題だと考えて私はそれを御説明しているわけでございます。かようなわけでありますから、この交渉はソ連側の態度も大体において、一々これは御説明の自由を持ちませんですけれども、大体においてはもう御感得のことであると思うのであります。さようなことでありますから、将来交渉の見通しが今日はっきりとついているわけではございません。しかしこれは私は日本国として、日本国民として重大な関心をもってこの交渉を見守っているわけでございますから、その国民的の要請に応じて交渉を進めてゆくということによって、交渉の前途が開けないとは言えないと、私は楽観も悲観もしておらぬので、必ず自分は日本側の正しい主張は一つ実現したいと、これのみに心を砕いているわけでございます。これでお答えを申し上げます。
  115. 池田宇右衞門

    池田宇右衞門君 楽観も悲観もしないが、見通しがついているということであれば、成功の一歩に入るというふうにも信じられまして、それでいいが、もし不成功に終ってから、最初総理と外相がこの問題で食い違って、またどうも過程において食い違って、相手がああしたソ連だから、ソ連は日本世界平和に寄与しないといって宣戦を布告した。今日の日本は進んで世界の平和に寄与するという決意の下に十年間隠忍自重してきた、むしろ逆の傾向に相なっている。従って、私はただそれだけでなく、その責任は、外務大臣は超非常な決意をして、国民に詫びても跡始末で何ら見るべきものがないが、つまり大責任、重大責任をもってこの問題の解決に当ると、もし国民に満足のいかない場合においては、自分は大きな責任をとるという決意のほどを重ねて質問いたします。
  116. 重光葵

    国務大臣(重光葵君) 私は今申し上げた通りに、この重要な交渉案件については一般国民、われわれの一般日本人の理解納得の上に、それを背景として全力を尽してゆこうという方針であることを申し上げます。
  117. 池田宇右衞門

    池田宇右衞門君 重大決意をもって、自分は全国民の信頼と援助によってこの問題を突進すると、その決意総理に対しましても、また国民に対しましても、重大決意をもっていかなる難関も突破するという非常決意があるかということを聞いているのであります。あと国民を信頼して進むということは、非常に外交上において軟弱外交のそしりを免れないと、ここが日本外交の柔軟性と申しますか、きわめてよいようだが、失敗しやすいことであろうと思う。今回の外交は十年間抑留されたところの家族、苦しみ抜かれたところの家旅、また漁民、あらゆる角度から日本の外交史上これほど一大決意を持って当らなければならないときはない。しかるに今のようなことでは心細い。私は外務大臣はもっと強い決意、そして八千七百万国民世界のあらゆる平和に寄与する国民の協力を得て、この問題を解決するという熱意決意をさらに被瀝されたいと思います。
  118. 重光葵

    国務大臣(重光葵君) 私は今申します通りに、今伺いますことは全然私もその通り考えております。
  119. 池田宇右衞門

    池田宇右衞門君 これ以上伺っても仕方がないから、次とかわります。
  120. 左藤義詮

    左藤義詮君 先ほど同僚各委員からフィリピンの賠償交渉についての質疑がございましたが、鳩山内閣が対ソ交渉についても、その他賠償についても、非常に功をあせっておられるのじゃないか。選挙に大ぶろしきを広げたその跡始末などにもし国家の将来を誤まるとすれば、子孫に非常な私は影響を与えると思うのであります。その点におきまして一つ伺っておきたいと思うのでありますが、フィリピンから参ります情報によりますと、全権を持って日本に交渉に来ておられましたネリ大使がフィリピンに帰りまして、鳩山首相はフィリピン賠償の支払い額が八億ドルとすることに同意したということを発表をしておられるのであります。新聞情報云々というお話しもございましたが、私ども想像いたしましても、非常に金額の問題で交渉が難渋して専門家の会議に移された。ネリ大使も非常に焦慮しておられて、帰る日を延ばしたり、帰るまでに何とかして一つ見通しをつけて行きたい。五月三十日ですか総理に会見せられて、そして非常な明るいというか、希望を持って帰って行かれた。そして鳩山総理が八億ドルに内諾を与えられたということを公表をして、八億ドルでフィリピンの世論をまとめるように非常に努力をしておられるというようなことから私ども考えましても、例の調子で鳩山総理が私は何らかの約束を与えられたのじゃないか。向うが勝手にこういうことを想像して、ひとり相撲をしておるのじゃないと思うのでありますが、巷間伝えるところによれば、あるいはすでにメモさえも渡っておるのじゃないか、こういう点につきまして、もう少し総理並びに外務大臣、あるいは交渉に当られました高碕経審長官からはっきりしたお話を伺いたい。
  121. 鳩山一郎

    国務大臣鳩山一郎君) ネリ氏とは八億ドルの賠償金の支払いを同意したというような話し合いは少しもありません。
  122. 左藤義詮

    左藤義詮君 そうしますると、ネリ大使がフィリピンでいろいろ発表したり動いておられることは、全部ひとり合点である、こちらは全然そういうような印象も与えなかった、元来金額につきましては大野・ガルシア協定は四億までであります。先方の今度持ってとられたものはおそらく十億と伺っておるのでありますが、それが一躍八億ということで私ども非常に驚きもし、心配もいたして、新聞情報だとおっしゃいますけれども、われわれは夜も眠られぬほど心配をしておるのであります。そうすると、そういう印象を与えられたということは、勝手に向うがひとり相撲でそう受け取っただけであって、全然そういうようなことはこちらは関知しない。従ってすでに十五日にト部事務所長代理に書簡が渡されたように向うで報ぜられておりますが、その書簡が着いているかどうかも伺いたいと思いますが、もし向うから八億ドルということであなたの方は内諾したのだから、これで交渉しようというような話がございましたら、これに対して、われわれは全然知らない、全然拘束されないのだ、全く白紙でこれに当り得るかどうか、これの減額を要求する、あるいはお断りする、そういう交渉の余地を十分持っていらっしゃるかどうか一それで外交的にも道義的にも絶対そういうような拘束を受けるようなことはないということをはっきりここで御断言できるかどうか。
  123. 鳩山一郎

    国務大臣鳩山一郎君) 賠償金八億ドルというような話し合いはありませんでした。
  124. 左藤義詮

    左藤義詮君 外務大臣から。
  125. 重光葵

    国務大臣(重光葵君) この交渉と申しますか、少し詳しいことをお話しした方がいいと思います。日比賠償の問題が前内閣において取り上げられたときに、大野・ガルシア協定というものがあって、大野・ガルシア協定を出発点としては話ができないのだということで、非常にこの問題を中心として日比の関係が空気が悪くなったということは御承知通りであります。そのときに、この問題はどうしても解決しなければフィリピンとの平和関係はできないのである、平和条約調印ということはできないのだということでこれを解決する必要を痛感したのであります。それは日本だけが痛感したのではなくして、フィリピンも非常にそれを感じて、そのためには賠償問題を一つ片づけるようにして進んでいかなければならぬというので、さような熱心なメッセージがマグサイサイ大統領から鳩山総理に来て、そうして鳩山総理はすぐこれに同様な熱意を示して、この問題について返答をやったということはもうすでに発表された通りでございまして、そこで日本側から何か案を示してもらいたい、こういうことでありました。そこで、日本側はフィリピンにおける代表者から案を示せということで案を示したのが、すみやかに専門委員日本に派遣して賠償の形式、実質をどうするかということについて十分討議したらよかろうということで、専門委員会日本に派遣したのであります。そうしてわがほうの専門委員会と協議して、フィリピンに賠償として送り縛る現物等について協議をいたしたのであります。その中に関連をしまして、沈船引き揚げという問題もございました。そうしてこれが約一月ばかりも専門委員会の検討が続いたのであります。そのときに賠償問題の主任であるフィリピンのネリ大使が日本にその専門委員会の仕事に結末をつける意味において、これを総監督して結末をつける意味においてやって来たのであります。そうしてわが方としてはこれに対応するために、むろん交渉の責任は私自身これは外務大臣として当然とるわけでありますが、しかし賠償問題のごときいろいろ多岐な専門的知識も必要であるし、また私がはなはだ不案内の点が多いものでありますから、高碕経審長官をわずらわしてこれに参加をしていただく、こういうことに政府方針を決定して、つまり高碕長官と私がネリに接触をしていろいろ話を聞くと、でき得るならば一つ賠償の方式を見つけ出したいという考えの下に接触をしたのであります。  そこで沈船の問題があり、あるいは日本から向うに賠償する品物についていろいろの話が積み重なり、また出てきたということは、これは御推察にかたからぬことでございます。その専門委員会の結論は、すでに発表された通りでございます。沈船問題についても発表をみたと思います。まあさようなことで話があった。そこで当然のことといたしまして、いろいろな案が、ネリの案もかような工合にして賠償問題を解決したらよかろう、こういうことも考えられる、大野・ガルシア協定では、絶対にこれはもう話にならぬというようなことは、これは向うから言ったわけでございます。それからこちらの方は、私が先ほどお話しした通りに、日本は四億以上は出せないと、さらに先ほどは申しませんでしたが、年間二千五百万ドル以上は、日本に支払い能力がないとわれわれは判断してこの交渉に臨むのだ、そういうことをよく考えてもらわなければならぬということは申しました。向うとしては先ほども申す通り、十億はぜひ賠償として取らなければならぬ。これは何でも向うの議会、上院その他の方面の有力者の間にそういうようなことを案をこしらえてしまって、ネリが持ってきて、非常にネリ氏はそれに拘束されて困ったような態度でございました。しかしそれにもかかわらずネリは、十億でなくてまあ八億までにするから何とか一つしてもらいたいと言ったことは事実でございます。しかしながら、もちろんこれはわが方としてこれがいいというな印象を向うに与えるということは、これはできません。できませんからやりませんでした。そこでネリは、もう専門委員会の仕事も済んだんだから一つ帰らなければならぬ、また向うから早く帰って来いという指令が来たものですから、帰ることになりました。  そこで、帰るまぎわになってネリといたしましては、いろいろなネリ自身の案を持ち出したことはあるのでございまして、これはこちらには関係のないことでございます。そこで帰る。せっかく来て、つまりまとまらないのでありますから、しかしわれわれの考えたことは、まとまらなくてもこれがこれでもってすべてもう破談になってしまったという印象は与えたくないのでありまして、これは将来の交渉を継続していくという建前であくまでやっていく、日比の関係はあくまで継続すると、こういう考え方で進むことが最も必要なことと、こう考えました。そこで、さような方針をもって、日本でいろいろ接触されたその材料を持って一つフィリピンに帰って、そしてフィリピン側を第一まとめなければ、こっちはお話しにもならぬ、ただ漠然たる案を出さはてもこちらから正確な返答をするということもできない、ただ座談的に終るわけだから、一つフィリピンの側の方ではっきりまとめてきてもらいたい、こういうことでネリ氏はそれを承諾して帰ったのでございます。おそらくフィリピンにおいては、ネリ氏はいろいろな自分の案を練って、そして政府なり要路の人と今接触をして案をこしらえておるのだと思います。またそういうふうな情報をわれわれは出先から受けております。しかし、それならばフィリピンの案はこれであるということがまだはっきり出てこないのであります。出てくるという予報は新聞では受けましたけれども、それはまだこないのであります。それがきた上でこちらは今度初めて関係方面と密接な連絡をとって、そしてこれを検討した上でこれに返事をしなければならぬ段取りになる。さような事態が今日の事態でありますから、この問題については、今フィリピンの側の意向を十分承知をした上で検討をしたいと、こう思っておることを御報告いたします。これが経過でございます。
  126. 左藤義詮

    左藤義詮君 ただいま、ネリ氏は賠償の担当の大使のようでございますが、専門委員がいろいろお話し合いをしたその結末をつけるために、あるいはこれを監督するために来られた、そうするとこれは全権委任状を持って正式に来られたのであるか、あるいはどういう資格であるのか、これに対して外務大臣、あるいは高碕長官はどういう資格で折衝されたのであるか。   〔委員長退席、理事池田宇右衞門君着席〕
  127. 重光葵

    国務大臣(重光葵君) ネリ大使は、大統領並びにフィリピンの外務大臣の本件に対する委任状を、これは非常な公式なものではございませんでしたが、はっきりした委任状を持って参ったのでございます。その権限によってこれはやりました。われわれは日本政府の当局としてこれに応じたわけでございます。
  128. 左藤義詮

    左藤義詮君 さような資格を持って折衝をせられて、しかもその委任状を持って、最初十億ドルというような空気であったのを、全権の責任において八億ドルくらいなら話しができるというような案を示された。そしてしかもそれに対しては鳩山首相その他の閣僚が内諾を与えたということを向うではっきり言っておられるのでありますが、新聞情報とおっしゃいますけれども、私はネリ氏がこれを発表しておる。またその線で政府部内あるいは国会をまとめておられるということを、まさか私はこれをただ単に新聞の勝手な想像とはおとりにならぬと思うのです。そうすると、とにかく正式の全権の資格を持って来たネリ氏が内諾を与えたということを言っておられるのですが、そうしてそれによって、いまだ来ておらぬと言っていらっしゃいますけれども、すでに十七日にはト部所長代理に書簡を出された、これは新聞情報かもしれませんが、もし外務省が正式に受け取っておらぬとすれば、新聞情報かもしれませんが、とにかくフィリピンの世論としまして、これに対してはレクト氏その他からいろいろな問題があるようです。クロニクルに鳩山首相が一萬田を首にするとか——これこそ新聞情報かもしれませんが、相当フィリピンの方がこれに対して積極的にネリ氏が十億ドルで来たけれども、八億ドルで大体話をつけて、鳩山総理その他の内諾を得てやっている。その線で私はおそらく提案をしてこられる。それに対して私ども心配いたしますことは、それは全然向うの一人相撲だ、一人勝手だ、こちらは全然そんなことに対しては何らの返事も与えていない。五月三十日にお話しになって、ネリ氏が非常な希望をもって帰えられたようですが、政府は向うだけの一人相撲だ、もし八億ドルにして向うの内諾を得たというつもりでこちらに提案をしてこられても、これに対してわが方は絶対にそんなことは知らない、これからあらためて白紙で交渉するのだ、これに対して政治的にも道義的にも責任は全然ないのであるかどうか。さようなことで全権の委任状を持って来て交渉して、さような、それはあなたの方が勝手に一人相撲をとっているんだということで突き放して、それでいけるものであるか。それでいけるだけの、こちらは何も全然そういう内諾を与えたという向うが印象を得るようなことは全然こちらはしていないのだということがはっきり言い切れるのかどうか。その点を総理並びに外務大臣、あるいは実際折衝された高碕長官からはっきり伺っておきたいと思います。
  129. 重光葵

    国務大臣(重光葵君) その点は、今私がるる御説明をした通りのような経過でございますが、先方の提案を待ってこちらは整理し得る情況であることをはっきり申し上げておきます。そこでもういろいろ新聞情報をきめてかかるということは、私どもは何にも根拠がないと考えておる次第でございます。しかし向うの考え方は追って正式に言ってくると、こういう予想をいたしております。それはそういうような予報も出先から来ております。しかしまだ何にもそういうことはございません。来ましたらば、とくと検討してこちらの態度を決するつもりでございます。
  130. 左藤義詮

    左藤義詮君 さよういたしますと、わが方としては大野・ガルシア協定に従い、あるいは四億までは話をしているのだか、それ以上はまだこちらは少しもこちらのふところは見せていない、向うは十億ドルの話をもって来ているのだが、八億ドルまでは譲って来られた、その線において今後全く何らのわれわれは拘束なしに、自由にこれから交渉をされるのだ、向うからもし八億ドルの提案があれば、これに対して何とも私どもは制約されないで日本経済支払能力その他を勘案をして、あるいはビルマ、インドネシア等のあれを勘案して、国民にできるだけ負担を子孫に残さないように、全然これは自由な立場からやり得るものだ、かように私どもは安心をいたして差しつかえないのでございましょうか。
  131. 重光葵

    国務大臣(重光葵君) その通りです。その通りに私どもは考えております。今御説明の通り大野・ガルシア協定等から出発すると申しますが、これは大野・ガルシア協定から出発する交渉の経路ではございません。大野・ガルシア協定というのは四億だけではございません。これはいろいろ条件がついております。四億と言うけれども実は十億だということは書いてあります。さようなことは私どもは出発点にはいたしたのではございません。
  132. 木村守江

    木村守江君 関連……。私は予算委員会に出て参りまして、毎日いろいろな総理以下の答弁を聞いておりますが、一言にして鳩山内閣を批評いたしますれば、私は鳩山内閣というものはおしゃべり陳謝内閣だと言ってもいいと思うのであります。総理大臣初め農林大臣、これは閣僚こぞってよくおしゃべりをいたしますが、よくあやまる内閣だ、こう言っていいのじゃないかと思われます。ただいま同僚の左藤君の質問に対しまして外務大臣の答弁を聞いておりますと、まことにふらふらな陳謝そのもののような格好で答弁をいたしております。しかし、私は今重光外務大臣に質問するのではありませんが、鳩山総理大臣にお尋ねいたしまするが、あなたは先ほど千田議員の質問に対しまして、フィリピン代表とは会っていない、政府の代表は高碕経審長官であり、高碕経審長官が会って、その責任は外務大臣が負うのだと、千田君が途中まで帰って来るときに、あとから追いかけて答弁をいたしております。ところがただいま左藤君の質問に対しまして、あなたはどうやらフィリピンの代表と会っておるようでありまするが、これは一体どちらがほんとうであるか、つい一時間になりません。三十分くらい前の質問で答弁でありますので、忘れはしないだろうと思われますので、一体どちらがほんとうであるか。しかしてもしも会ったといたしましたならば、そのときにどういう話をしたのであるか。私は外交交渉というものの実体はよくわかりません。しかし外交交渉というものが、これから交渉に入るのだというような正式な話し合いでなくても、お互いに茶飲み話であって、お互いにあいさつをし合うところの儀礼的な間であっても、私はもしもその間に八億ドルを承認するようなあなたの今までのやりきたり、考え方から考えまするならば、きわめて軽い気持をもって内諾を与えておるような格好になったのではないかと疑わざるを得ないのでありまして、この点どうぞわが日本の大きな問題でありまする関係上、明瞭に答弁をいたしてもらいたいと思うのであります。
  133. 鳩山一郎

    国務大臣鳩山一郎君) ネリ氏は最初来たときにあいさつに来ました。それから帰るときにもあいさつに来ました。しかし賠償交渉の内容については私は一度もしておらないのであります。ですからして私としては一つの条件もネリ君に要求したことはございません。会ったことはありました。談判したことはないのです。そういう意味において私は答弁をしていたつもりであります。
  134. 左藤義詮

    左藤義詮君 これも新聞情報かも知れませんが、日比賠償については、すでに日本・フィリピン両国とも総額を八億ドルとする点については暫定的な合意に達しているので、その内容についていろいろ協議をするために、日本側の外務、大蔵両省は早急に連絡会議を開き、支払期限一方法等につき具体案を作成する云々のことも報ぜられておりますが、さような計画がございますか。あるいはすでに、これは十七日の新聞でございますが、そういう連絡会議をお持ちになったことがあるかどうか。大蔵省は全然つんぼさじきにおかれて、この問題については関知されていらっしゃらないのかどうか。あるいは私は八億ドルは内諾を与えていない、かようなことについてわれわれ国民及び子孫は拘束されないということは御言明になりましたので、安心いたしましたが、こういうような経過について大蔵大臣はどの点までならば払う、今二千五百万ドルというお話がありましたが、わが国財政は耐え得るのであるか、これはフィリピンだけでございません。その他のいろいろな問題、今のガリオア等もございますが、これと本年度予算との関係、また高碕長官はこの問題を折衝されておるのですが、今お出しになった六カ年計画のしかも今その半分の三カ年計画、非常に薄っぺらで驚いておるのですが、これについては来年度財政計画については何らのお見通しがございませんが、本年度予算ですらも、おそらく昨年から残してきた分を加えましてもなかなか……、もしフィリピンとの賠償が成立しますならば、非常に財政負担が大きくなる。これは明年、明後年さらにインドネシアの問題も当然来ると思うのでありますが、さようなことに対してどこまでお見通しをお持ちになっておるか、本年及び明年、明後年との私は財政計画に対する賠償の問題に対しては大蔵大臣の御所信をお尋ねいたします。これに対して先ほどお尋ねいたしましたように、全然外務省その他とのこの問題に通ずる御交渉がなかったかどうか。新聞に伝えられておるような連絡会議というものは、これは全然やはり新聞情報で御用意がないのかどうか、その点伺っておきたい。   〔理事池田宇右衞門君退席、委員長着席〕
  135. 一萬田尚登

    国務大臣(一萬田尚登君) お答えします。私は直接には先ほどからお話しがありましたように、経審長官が下打合せをやられておったようであります。そうしてこれは外務省の、外務大臣の所管と、こういうふうになっております。ですからむろん賠償の金額財政負担はどうなる、経済協力はどうなる、こういうものの具体的な事柄について必要な限度において経審長官と連絡をとったことはこれは言うまでもありません。大蔵大臣が全然知らんということはない。これはしかし今伝えられておる点については、これは今お話しがありましたように、あらためて今後検討さるべき問題であるように思います。それから今後における賠償能力といいますか、どういうふうにいろいろの見通しを立てておるかということでありますが、これはまあ日本経済の力、それからまあ賠償の諸条件等によって、いろいろと考えられるのでありますが、今の具体的賠償能力の点については、まあ御承知のように、今日日本がどういうふうな苦しい国情にあるかということは明瞭なんでありますから、そう大きな能力がないということは私は言えるだろうと思うのです。具体的にどういう能力を持っているかということは、今後賠償を各国等とやっていかなければならないような状況にあるのでありますから、私は一つ差し控えたいと思います。
  136. 左藤義詮

    左藤義詮君 八億ドル云々については、全くこれは新聞情報で心配いたしましたが、念を押しておきますが、絶対にこちらは責任はないということでございましたので安心はいたしました。しかし一応その内容として伝えられているものについては、念のためにお尋ねしておきますが、資本財が五億万千万ドル、そのほかに借款供与が二億五千万ドル、このローンというものは一体どういう性格のものを考えておられるか。民間で出資をするのであるか。それにいたしましても、これに対して政府はどういうように保証なさるつもりであるか。従って財政的な措置はどうなさるつもりであるか。こういうもし借款供与ということがお話しのような内容でございますならば、これの条件とか、その内容方法等について、一つ伺ってみたいと思います。
  137. 高碕達之助

    国務大臣(高碕達之助君) お答え申し上げます。フィリピンのネリが参りましたときに、いろいろ話し合いがありまして、外務大臣の責任においてやるが、経済問題が多いから、君が一つ交渉に当ってくれんかというお話がありまして、私が交渉に当ったことは事実であります。交渉の経過だけを、一応経済問題に関係しますから、よくお話し申し上げておきたいと思います点は、私は第一にフィリピン側に対して、あなた方はいつも交渉をして外務大臣が印をついても、これを議会が承認しなければ何にも認めないということがこの前にあったではないか。そういうことならば、数字に入って交渉することは用をなさないから、まず数字に入るなれば、あなた方の最後の案を持っていらっしゃい、その上においてこちらが協議するのだ、こういうことを前提といたしまして話したのであります。ところが大野・ガルシア案について彼らの言うことは、四億ドルを十年間に払うということになっておるのだが、これは十年間で払うのか、こういうことを言うのです。これはもってのほかだ、日本経済力から言えば、これはどうしても二十年間はみなければならない。一年に二千万ドル払うということがせいぜいである。しからば大野・ガルシア案はなぜ十年ということを書いてあるか、こういうのですが、これはあなた方の要求によって書いたという話だと、こういうことで答えた。しからば大野・ガルシア案はこれは四億ドルであるけれども、経済価値において十億ドルを下らないということはあるのだが、これはおまえ責任を持てるかとこういう質問であったのです。これはなかなか重大な問題で、私はなかなか責任を持つということについては相当考えさせられると、こういうふうに答えたのでありますが、幸いに向うは大野・ガルシア案というものは全然白紙だと、これにとらわれないで交渉するのだということから、私は交渉に入ってみたわけであります。しかし先方は十億ドルということをそこで主張しておったわけであります。これは幾らでも御主張しなさいということで入ったわけであります。実はどこまでも日本現状から言えば、一年に二千万ドル、二十年で四億ドルということが基礎でなければならぬ。しかし賠償を払うということは、どうしても日比間の両国の経済関係をよくする、お互いの立場をよくするためである。それにはできるだけ協力しようではないか。協力の方法とすれば、現在日本はフィリピンに対して民間である程度の投資をして、フィリピンの事業を開発していく方針があります。もうすでに実行しておるのであります。それは御承知のごとく製鉄会社がフィリピンの鉄鉱石を開発して、それを日本に持ってくる、こういう実例があるのだ。この実例によって日本相当金額を投資しようではないか。しかしこれは政府が直接投資するわけにいかない、政府は確実な民間の企業体を作る、日本側で……。フィリピン側も確実な民間の企業体を作りなさい。それで両政府が認めた企業体を作ろうではないか。そしてそれに対して日本政府はできるだけ出資できるような方法を講じようではないか。それは今日の輸出入銀行なり、日本の場合、開発銀行をもって政府が口をきいて投資をしてやる。しかしその金については、政府は一定の金利、長期の低金利である程度取る、日本側はこれをもってローンの基礎としようではないか、その責任は誰が負うかと言えば、日本政府が認めたる、またフィリピン政府が認めたる私設の商社がこれに当るのである。従いまして日本側とすれば、これは賠償でなくローンである、借款である。フィリピン側はこれを、この借款は賠償を満足に履行するために使う、賠償と認める。それはよろしい、あなたが勝手に認められる。日本側はこれは借款である。しかしこれは、借款は賠償に付随したものである、こういう原則を作ろうじゃないか。この原則は私は作る必要があると言って、これははっきりネリと私との間に申し合せが済んだのであります。従いまして賠償に付随したるところの借款というものは、日本政府負担するのではなくて、一時はこれ立てかえましょう。またそれに対して責任を持ってやるでしょう、輸出入銀行あるいは開発銀行の手を経て……。けれどもこれは長期において回収できる、低金利でも回収できる、こういうふうに私は解釈いたしております。なお、その金額等につきましては、四億ドルだとか、八億ドルであるとか言いますけれども、同じ四億ドルでも十年間に払うということになれば、一年の負担は四千万ドル、これは絶対できません、日本現状におきましては……。これは八億ドルになると高い、あるいは六億ドルでは多いと言えましょうが、これは長期にわたればまた負担することもできるでしょう。そういうわけでありますから、この金額だけを論じて、日本負担をどうこうということを言うよりも、金額、同時に支払期限ということ、そういうこともあるわけでありますから、それで私はまず最初にあなた方の立場をはっきりきめて、はっきり相談していらっしゃい、そうすれば私どもは一応相談に乗ろうじゃないか。こういうことでその意味におきまして、私は外務大臣を補佐いたしまして、経済的のことにつきましては折衝いたしましたわけなんでありますが、この問題はまだ閣僚なり、大蔵大臣なりに相談するまでの時期に到着していないのでございます。先方の条件が出て、それから十分これを検討して、そうして日本政府はこれを負担し得るかどうかということは、できるだけ善意を持って、できるだけお互いの立場を考えてこれを善処していけば、おそらくは解決し得る、また解決せなければならん問題だと私は存じているわけなんでございますが、その点大体私の折衝いたしました経過はそれだけでございます。
  138. 左藤義詮

    左藤義詮君 二億五千万ドルという、まあ年数は別にしましても相当の借款を供与する、これは今のお話では民間の企業体を作ってやらせる、すでに鉄鉱石開発の先例もあるからやれる、こういうお見通しでございますが、これに対しては政府が輸出入銀行に投資をする、低金利で投資をする、そうすると投融資計画等いろいろ重要な財政上の問題が起ってきますが、これは全然投融資でございまして、万一民間企業体がうまくいかずに、どうしてもその企業体でやった仕事が損害を出して行き詰まるというような場合には、結局はそれは政府がしりぬぐいをする何か保証がなくてもやれる見通しがあるのかどうか。純粋にコマーシャル・ベースで、かような民間企業体で、何歩か知りませんが、低金利の投資さえすれば、二億五千万ドルという膨大なものが、今の日本の貧弱な経済界の実情において、それだけのローンが供与できるとお考えになっているのかどうか。全然国会の承認を得ず、あるいは国民負担をかけず、純粋の投融資だけでかようなことができるとお考えになっているのでありますか。また、それをいよいよ御決定になる場合にはやはり国会の十分の論議がそこに起ってくると思いますが、そういうようなことも考えあわせて、ただコマーシャル・ベースで、政府が低利で開発銀行あるいは輸出入銀行に投資さえすれば、これがすらすらゆくというふうなお見通しがあるのかどうか。
  139. 高碕達之助

    国務大臣(高碕達之助君) この問題は初めから考えられた問題でありまして、二億五千万ドルか三億になりますか、あるいは二億になりますか、この金額はきめていいが、従ってこの期日というものは二十年でできるか、あるいは三十年で終るか、あるいは五十年かかるか。それはこの事業があるかないかということできまることでありますから、その事業がなければ、これはできないことだと思っておりまして、その了解はネリとの間にできておるわけであります。
  140. 左藤義詮

    左藤義詮君 まだお尋ねしたいのですが、時間がなくなりましたので、この問題と関連いたしまして、まあ全然内諾も何も与えておりませんし、全く白紙でありますが、これが決定いたしますれば、ビルマとの条約のうちの、いわゆる再検討条項がまた生きてくる可能性があるわけであります。あるいはインドネシアが様子を見ておりますのも、フィリピンと日本との交渉の条件次第それをにらんでおるわけでありますが、そういうことも十分考えあわせて、しかもガリオアあるいはタイの円の問題、その他日本の外債払いの問題、そういうことも考えあわせてこのお示しになった経済六カ年計画の半分のこのわずかな三カ年のぺらぺらなものですが、この中にもあるいは大蔵省本年度今御提出になっておる予算、あるいは明年度当然編成なさるべき予算等についても十分の御検討をなさっておるかどうか。その点についてのお見通しも伺っておきたいと思います。
  141. 高碕達之助

    国務大臣(高碕達之助君) このガリオアの問題につきましては、私まだどういうふうになってゆくか、何ともお答え申すことができないのでありますが、賠償問題は六ヵ年計画におきましては、大体前半期三ヵ年間に解決するものだと、こういう見当を持っておるわけであります。しかるに賠償問題に対する、支払うところの賠償の金額については、しからばドル予算を見ておるかというお考えでございましょう。これはドルで払うべきものではなくて、全部円で払って日本国内の産業をそれだけ大きくして、そうしてできた品物で払うと、こういうことになっておりますから、外貨予算の中には三十年、三十一年には載っておりませんから、さよう御承知願いたいと思います。
  142. 左藤義詮

    左藤義詮君 この問題はまだ私意見がございます。外貨予算のことじゃございません。日本の物で払う、その物が果して生産、輸出ができるかどうかということでありますが、これはもうこの次にいたします。本日私がお尋ねいたしましたことにつきましては、当然先方へも伝わると思うのでありますが、さようにいたしましても先ほどくどいようでありますが、私が心配しておるので申し上げるのですが、内諾云云のことは全然ない、先方は全く内諾したことを新聞で言い、ネリ氏が言い、またあるいは向うでそういうふうに一人合点をしておるとすれば、それは向う様が勝手に空想を描いて一人相撲を取っておるもので、こっちは全然それに関するところではないという今日御答弁でございまして、これが決してこちらの道義上、あるいは外交上の一切責任がないのだと、全くこれはわれわれは拘束されていないというお答えであると私は再確認いたしますが、これに対する鳩山総理大臣のはっきりした、私どもの心配がないように、どんな外国からはね返りが来ましても、絶対大丈夫だという確言をお願いしたい。
  143. 鳩山一郎

    国務大臣鳩山一郎君) これについては外務大臣が申した通りであります。
  144. 木村守江

    木村守江君 関連して。先ほどから経審長官答弁を聞いておりますと、相当突つ込んだ日比交渉が行われたということを、われわれは了承いたしたのであります。あるいは経審長官は四億ドルというような金の問題に拘泥するばかりではだめだ、若干の年限等を考慮しなければいけないのであって、そういう点からもよく考えなければいけないと言いまして、暗に返済期間が長ければ、もう少しふやす案もやむを得ないじゃないか、ふやしてもいいじゃないかというような裏に言葉があるように考えられます。また、二億五千万ドルの借款の問題につきましてもいろいろお説を述べられましたが、私はこれらの問題から総合いたしますると、どうやら現内閣は日比賠償交渉におきまして、ネリ大使に対して八億ドルの借款を内諾したのではないかと、それに近いような約束をしたのじゃないかというようなことを疑わざるを得ないのであります。私はかようなことを考えて参りましたときに、これはきわめて大きな問題でありまして、もしもあなた方がきわめて軽い気持で、今まで言われたような考え方から、四億ドルに固執しないで返済がたやすくできるような方法であったならば、よいだろうというような考え方から、そういうような約束をされたといたしましたならば、これは大きな問題であると言わなければなりません。あなた方はあるいはそれでいいというような考え方からそういうような約束をいたしたといたしましたならば、これは国民に訴えまして国民の世論に聞きまして、(「その通り」と呼ぶ者あり)鳩山内閣がこのくらいまできめたいと思ったのだが、実際国民が聞かないのだと言って、国民の世論によってこの金額を徹底するように、今のうちにかぶとをぬいで国民に訴えた方が、日本の将来のために大きな得策ではないかと私は考えております。にっちもさっちもいかなくなって、向うから八億ドルの問題も持って来られまして、今まではそういう約束はしなかったと言って最後までがんばっておりますが、しまいにどうにもこうにもいかない、鳩山内閣の存立、寿命等の問題でありません、日本経済の大きな問題であり、日本経済の破滅というような究極になって参ると考えますので、私はその辺を卒直に今のうちに国民大衆に訴えまして、こういうようなことでもしょうがないと思ったが、国民はどうだというような、いわゆるほんとうに大衆政治家と言われる鳩山総理大臣は、こういうような態度をとるころの考えはないかどうか。なお重ねて御質問申し上げる次第であります。
  145. 鳩山一郎

    国務大臣鳩山一郎君) 私は日比賠償交渉の経過は、今までの発言によって御了解下さったことと思います。この条約ができれば、当然に議会の承認が必要なのでありまするから、特に国民の意思を問うよりも、議会の意思を問えばそれで十分だと思います。
  146. 吉田萬次

    ○吉田萬次君 私は労働組合運動の政治的偏向につきまして総理大臣にお伺いしたいと思うのであります。それで今国会におけるところの首相の施政方針演説におきまして何ら言及せられておられないのが、いわゆるこの労働問題であると思うのであります。なぜこの問題について、この重要な問題について言及せられなかったかということを私は疑うものであります。労働問題が非常な変還を来たし、推移によりまして、経済闘争から政治闘争へだんだん変ってきておる。これを簡単に考察してみますると、尼ヶ崎製鋼は昭和二十九年六月、二カ月余のストによって、その結果崩壊しまして、その組合は非常な難渋したことは御存じの通りであります。この組合は、最初一五%の賃金要求をけられ、それからさらにそれならばといって三百八十一名の解雇も、これもまた出したのをけられたというような結果、最後に組合の力が尽きてしまって、そうしてあらゆる条件をのむというときになりましては、すでにもう組合というものの存在というものがなくなってしまっておったような次第であります。結果論から見ますると、千七百余名の組合員と、一万数千名に上るところの家族が、職業的革命家のために犠牲になったような状態であります。また次に、大阪証券のストを見ますると、大阪証券取引所の理事長、あるいは理事たちは、驚くべき認識下足であって、そうしてこの解決後において、どうしてあんな解決をしたのだろうというようなことをあとで後悔しておるような状態であります。証券界といえば、御存じの通りに、女と金によってすべてを割り切るというところでありまするが、あまりにも労働問題に対する真剣味を欠いておったがために、こういうふうになったと思いまするのと、これに反する従業員側は、いわゆる総評であるとか、あるいは全銀連がそり背景になって指揮命令しておるがために、思う通りに遂行することができ、さらに名古屋、広島にこれが波及したのであります。さらにこれが生命保険に及び、進んで福岡銀行に口火を切りまして、財界の心臓部である金融界に波及しておるのであります。しかるに経営者の側は、そり必要最小限度の横の連絡というようなものもなく、同じかごの鶏が、自分の仲間が苦しめられておるのを見ながら、自分の番の来るのを待っておると同じような状態であります。すなわち経済闘争から政治闘争に重点を置き、その結果企業を破壊し、経済機構を混乱させ、みずから破壊に導くような状態を形成しておるのであります。で今度の予算につきましても、資本の蓄積であるとか、あるいけ擁護であるとかいうことをはっきり打ち出しておりまするのに、労働問題について何らの施策を施されておらないということは、首相はこの労働攻勢に対する措置というものにどんな考えを持っておられるか。英帝国は今日老大国に変遷し、またマレンコフは御承知通り農政問題によって失脚しておるような状態であります。一国の首相というものは、やはりこの労働問題について相当な関心を持ち、そうしてこれに対する対策を講じなければならぬと思いますが、首相はどのようなお考えを持っておいでになるか承わります。
  147. 鳩山一郎

    国務大臣鳩山一郎君) 労働者が経済的地位の向上をはかるために活動したり、あるいは副次的に政治に入ったりすることは差しつかえないのでありまするけれども、この範囲を逸脱いたしまして、政治的偏向の方に臨むべく、政治的偏向の方に傾きつつあるということは、まことに遺憾にたえませんと言うしかありません。どうかして労働者みずからが自分を葬るような傾向に、すなわち政治的な偏向の方に走らないように、できるだけの対策を講じなければならないと存じます。
  148. 吉田萬次

    ○吉田萬次君 現在経済界で非常に論議の中心になっておりまするところの生産性問題の推進ということに対して、総理大臣はどうお考えになっておりますか。
  149. 鳩山一郎

    国務大臣鳩山一郎君) 総合的経済政策か進めていきまして、労働者の生活の安定をはかることが必要と思います。
  150. 吉田萬次

    ○吉田萬次君 それでは御答弁になっておらないように思います。もちろんこの問題は、労働大臣あるいは通産大臣に関係がありまするから、その方面の方に御説明を願うことにいたします。で、政府は今回四千万円の予算を計上しまして、この生産性問題の推進に努力しておりまするが、その使途はどうであるか、この問題につきましては総同盟はいわゆるこれに積極的の参加を表明しておるのに対し、総評はこれに対して反対しておる。で生産性推進というものは労使一丸となって行うべきものでありまして、総評その他労働団体をどのようにこの問題について説得せられるのか。もちろんこの生産性の推進問題につきましては、この使途というものはその大部分が海外の視察になっておると思いまするが、これにつきまして、やはり総同盟であるとか、総評の方面まで手をのばして、これらの人々を海外へ視察に出すというようなことを考えておられるかどうか。また、通産大臣はこの経済界の提唱に対しまして骨を折った御当人でありまするが、特にこり問題に対してあなたは相当の御意見を持ってみえると思いまするが、これに対する御意見が拝聴したいと思います。労働大臣と通産大臣の御意見を拝聴いたしたいと思います。
  151. 石橋湛山

    国務大臣(石橋湛山君) お話しのように生産性向上のために、今回政府相当の力を注ぎまして、民間団体として生産性本部というものができまして、これは建前はむろん政府が大いに援助するのでありますが、しかし民間の運動としてやってもらおう。こういうことで御承知のように石坂泰三君が本部長となりまして生産性本部ができました。これには言うまでもなく労働者の協力も求めなければなりません。これを求めたのでありますが、残念ながらその一部の総評方面には誤解があるらしくて、つまり生産性が上るということは、結局労働強化になるんじゃないかというような(「そういうやり方をしようとしているから」と呼ぶ者あり)議論がありまして、今のところではまだ全面的に生産性本部の仕事に協力してくれるということになっておりません。しかしこれはむろん誤解でありまして、労働者といえども生産性が上らなければ、分配もふえないのでありますから、一人当りの生産、あるいは資本一単位当りの生産というものの向上ということは、あらゆる面において必要なのでありますから、私はこの趣旨を労働者が誤解するということは、何か全くの誤解であると、やがて解消するものと信じております。なおまた生産性本部そのものも、労働組合等に向っては、今できるだけ賛助してくれるように努力しておりますし、われわれもその努力を惜しまないのであります。で、これも急激にやりましても、なかなか一度誤解が起りますと、これを急に解決しようとしましても、またかえってそれが誤解を生むようなこともありますから、十分労働組合の方の状況も様子を見ながらこの問題に努力をするつもりで、ただいまやっております。
  152. 西田隆男

    国務大臣(西田隆男君) お答えいたします。生産性本部の問題は、ただいま大体通産大臣から御答弁した通りでございますが、労働省としましては、ただいま総評の方で生産性本部に参加することを拒否いたしました。しかし連合体が拒否したからといって、それをそのまま見送るつもりではございません。各企業の単産に呼びかけまして、そうして生産性本部の中に入っていただいて、経営者も労働組合側も、国民経済的な視野に立っての労使の協力態勢をここへ確立いたしたい、かように考えて折角努力中であります。
  153. 吉田萬次

    ○吉田萬次君 次に、時間がありませんから、一兆円予算について大蔵大臣通産大臣に承わりたいと思います。本年度予算において、一兆円予算堅持ということが言われておりまするが、一兆円予算にこだわるような必要があるでしょうか。今までデフレーション政策としてほんとうに国民とともに苦難をなめてきたというようなことは、明治十四年の松方内閣におけるところの紙幣の濫発、あるいは昭和五年におけるところの井上蔵相の金解禁問題、外国では、英国におけるところの一九四五年の、経済相のクリップスが、輸出かしからずんば死かというような悲痛な言葉を発しましたあのデフレーション政策というものは、なるほどほんとうのデフレーション政策だと思うのであります。今回のデフレーション政策というものはただ一時的の現象であって、ほんとうのデフレーション政策であるかを疑うのであります。それは自由党時代に一兆円の予算というものを堅持しましたのは、これは二十八年度の異常災害によるインフレと国際収支赤字三億ドルを克服するためにやむを得ずとった財政健全化政策でありまして、そうしてこの結果が現われて、二十九年度には国際収支は逆に三億ドルの黒字になっておるというよう状態であります。さらに失業者が八十四万人に及ぶ今日、これに対処するためには、私は積極策というものに転ずべきことは通念となっておると思うのであります。何ゆえこの一兆円予算というものにあなたは、大蔵大臣は固執せられるのか。現に本年度予算におきましても、一般会計は実際において一兆円のワクを出ておるのであります。すなわち交付税及び譲与税配付金を特別会計へ繰り入れた専売益金の三十億円であるとか、あるいは道路税譲与金の七十二億円のごときは、いずれもこれは一般会計に受け入れて後支出すべき牲質のものであると私は思うのであります。それをことさらにこの一兆円のワクというものをどうして堅持なさるのか。さらに日本のデフレは昨年来の外国の財界の好転によりまして、日本のデフレ政策の苦しみが緩和せられてきておる今日、外国の経済の好転も絶頂に達しており、むしろこれの後退が予測せらるる今日、国内のデフレをさらに強めたら一そうこの打撃が深刻になるのではないかと思うのであります。しかもそのしわ寄せは、中小企業に影響するところのおそれがある。蔵相は八合目まで来たらミルクを飲ませるということを言われましたが、水くさい、ミルクでもなし、またミルクくさい水に変じてしまっているように考えらるるのでありまするが、蔵相はこの八合目のミルクというものを今日考えられまして、どういう方策によって、どうして今日そういう場面が展開せられてくるかということに対する御意見を承わりたいのであります。
  154. 一萬田尚登

    国務大臣(一萬田尚登君) お答えします。何も形の上の一兆という、それに重大な意義を置くわけではないのであります。今例にとられましたたとえば国際収支が前の一兆円の予算、その他金利の引き締めで黒字に三億ドル、いわゆる三億四千万、こういう程度になったじゃないか、こういうお話でありますが、この国際収支がよくなった内容といいますか、安心ができる国際収支の改善であるかどうかということがまた大きな問題でありまして、これは御承知のように、国際収支の改善は、それほど安心のできるものではない。たとえば船が出て砂糖で補償する、こういうふうなこと、あるいは輸入を非常に減らしまして、そのかわり輸入が減るだけ国際収支はよくなっていく、こういうふうなこと、その他数え上げれば多々あるのでありまして、同時に物価情勢を見ると、これも必ずしも安心が国際物価に比べてできない。こういうふうなことからもう少し、ここでもし気をゆるめれば一部物価が騰貴をし、そうして国際物価を悪化させるおそれが多分にある。こういうふうな財政をとりつつも、なおかつ三十年度国際収支はとんとんに行けばいいのじゃなかろうかというような予想しかないのであります。そういう意味におきまして、やはり地固めを進めていく、地固めということは、形は一兆という予算ですが、私どもの今回の場合においてはどういうふうに、すでに今度の修正において四百億程度減税をしております。こういうところはまた前の一兆とはちょっと情勢が違う点もあるのであります。その他社会政策的な方面にも比較的に配慮しておる。こういうところがミルクといいますか、そういう従来のデフレによって特に苦労の多いところに手を差し伸べる。こういう形をとるためにまた将来の拡大生産に備えて融投資をふやしてこれを優先的に、しかも資金の配分をして経済の発展の基礎をつちかっていく、こういう考え方が一兆円予算の牲質であります。
  155. 吉田萬次

    ○吉田萬次君 私はこの問題につきまして、八合目のミルクの問題については私も意見は持っております。しかし結論的に見解の相違に陥るおそれがありまするから、この程度でやめておきますが、そこで通産大臣にお伺いいたしますが、あなたは基幹産業を初め、その他の方面に拡大均衡政策をとるということについて、御熱心にこれを提唱しておらるるように思いまするが、あなたはこの現在の状況、現在のありさ芸から考えて、拡大均衡に転向すべきときであるかないか、どうお考えになりますか。また一萬田さんのお説に屈服せられまして、そうして拡大均衡政策というものをこの際故郷せられるのでありますか。この際お尋ねしたいと思います。
  156. 石橋湛山

    国務大臣(石橋湛山君) お答えいたします。大蔵大臣は決して拡大均衡に反対しているのじゃございませんで、しかし私もこの経済財政政策というものは急激に変更すべきものじゃないと思うのです。拡大均衡がいいからといって、昨日まで引き締めておったのを急にゆるめてやるというのは、これは心理的な影響から申しましても、できることじゃございません。病人に一度に——今までおかゆもろくに食べられなかったのを、一度にごちそうを食わせるようなことになってもいけないのであります。私は、本年度においては拡大均衡ではあるに違いないのであります。しかしながらそれは徐々にやらなければいかぬというのが、やはり私の考え方であり、大蔵大臣もやはり同様でありまして、拡大均衡に決して反対しているわけじゃなくて、今大蔵大臣からお答えがありましたように、この一兆円の予算ではありますが、そのうちにおいてできるだけ今後の拡大均衡に寄与する方面に重点的に予算を組んだ、あるいは財政融資についてもその配慮をいたした、あるいはまた経審を中心におきまして、経済六ヵ年計画というのを作りましたのも、やはり拡大均衡を目ざしての政策でございますから、私は今の政策が拡大均衡と何ら矛盾するものでないと、かような信念を持っている次第であります。
  157. 吉田萬次

    ○吉田萬次君 これはやはり見解の相違でありまするがそれから私は砂糖の問題について農林大臣に質問したいと思います。この問題は非常に、私が今まで質問した問題と違いまして、重要な問題だと思いまするが農林大臣は来ておらぬようでありますが……。
  158. 館哲二

    委員長館哲二君) 農林大臣は間もなく出席いたしますが……。
  159. 吉田萬次

    ○吉田萬次君 それじゃそれまでお待ちします。
  160. 湯山勇

    ○湯山勇君 ちょっと時間のすきがあるようですから、総理にお尋ねしたいと思いますが、ただいま吉田委員の質問に対して総理は、労働組合は政治偏向していると、あるいはしつつあるというようにお答えになったと記憶するのですが、そうでございますか。そうだとすればちょっと聞きたいのですが。
  161. 鳩山一郎

    国務大臣鳩山一郎君) 政治偏向をすれば改めなくてはならないということを申しました。
  162. 湯山勇

    ○湯山勇君 それでは現在しているとか、して一ないかではなくて、しているとすればという仮定の御答弁でございましたか。
  163. 鳩山一郎

    国務大臣鳩山一郎君) 吉田君が尼崎製鋼の例を言われたときに、ああいうことは幾らか逸脱しているような、政治的偏向があるように見えるような意味の話を私はいたしました。
  164. 吉田萬次

    ○吉田萬次君 私は農林大臣に砂糖の問題について質問したいと思います。この前あなたは北洋漁業の問題につきまして、あるいは大洋それから北洋、日産、日魯というようなこの会社の船団編成につきましてとかくの評があり、また相当な疑念を持たれてあなたの身辺には何か黒い影がつきまとうように言われておったのであります。が、私はその問題に関連したわけではありませんが、どうもあなたがとっておいでになるところの事柄について不可解な点があり、ことにこの砂糖の問題につきましては、私はすこぶる遺憾な点があり、またあなたのおやりになっておることが間違っておりはしないか——また完全に私は間違っておると考えるようなわけがありますので、それで質問する次第であります。政府が砂糖の輸入の外貨の割当という、こういうその強権を掌握しておるのでありますが、これについてやはりあなたがこの砂糖の問題に対する衝に当っておられる。この伝家の宝刀というものは正宗にもなり、村正にもなる問題でありまして、きわめて注意せなければならぬ問題であります。そこで私はあなたにお伺いしまするが、まず外貨の割当基源に関する問題であります。現在までの政府の砂糖行政に対する方針を見ますると、二十七年度の後半からは需給のアンバランスから生産設備を抑制しまして、企業合理化による実績重点主義をとって参りましたのであります。ところが昭和二十八年には、これが能力性三〇%、実績性六五%、均等性五%というように変って参りました。しかしながら、この行政指導というものを打ち出されて現在に及ぶということは、私どもはこの措置に対して何ら悪いということを考えない。これは当然なことだと思うのであります。しかるに政府が二十七年度後半から一貫して指導して参りましたこの方針を一擲しまして、そして突然、しかも抜き打ち的に能力割四〇%、実績割六〇%、均等割ゼロというようなことをお示しになりました。能力重点主義に、予告なくこういう方針に切りかえられて、これがために砂糖業界にどんな波紋を描き、いかに砂糖の中小企業者が苦しんでおるということはあなた御存じであろうと思うのであります。どうして政府はこのように、またあなたはこのように豹変する態度をとられたかということがお承わりしたいのであります。この点について納得のいく説明をしていただきたいと思います。
  165. 河野一郎

    国務大臣(河野一郎君) 御指摘でございますが、今の行政処置は、主として通産省でやっておりますので、今通産省の事務当局とよく話を聞いて、必要があればお答え申し上げます。(「通産大臣答弁せよ」と呼ぶ者あり)
  166. 石橋湛山

    国務大臣(石橋湛山君) これは砂糖の輸入割当は農林省と通産省と相談をしてやることになっております。今度まあ特別な、また砂糖についての例の特別の立法もできますので、そこで大体の方針は、設備能力に対する精糖業者あるいは再精糖業者に対してそれぞれ割り当てるものと、それから全くそれと離れて輸入商社に割り当てるもの、これは分量から言うと少いのであります。こういうふうに二つに分けてそうして公平に分けていく、こういう方針で今立案をしておるわけであります。
  167. 吉田萬次

    ○吉田萬次君 私は今の通産大臣の御答弁には承服することができませんのですが、以下政府が出されました数字によりましてこの質疑を申し上げたいと思います。まず均等割の廃止でありまするが、この五%の廃止というものは、これは一、二の大会社が非常に利益を占めるのでありまして、小中業者の方面にはこれはきわめて痛手のはなはだしいものだと思うのであります。これは重大問題であるということは、百の力を持っておるものが五というものの価値というものは、それほど重大ではありませんが、十のものが五というものを均等割をなくせられたなら、きわめて不利な立場に立つのは当然であると思うのであります。この五%をどうしてなくせられたのか。今までのようになさる御意思があるかどうか。さらに不可解なのは、実績割を五%その中から削っておられます。さらに能力割にそれを加えております。従って能力割が三〇%から四〇%になっておる。政府の行政指導方針通りに施設の能力を押えて企業の合理化に努力してきたところの中小企業者につきましては、何の理由でこういう煮え湯を飲まされるような措置をとられたのか、すこぶる私は不快にまた不可解に感ずる次第でございますが、今度のこの問題につきまして、利益を占めるのはいわゆる一、二の業者に限ると思っておりますが、これに対してどういうお考えを持っておられますか。これには私は何だかその影があり、あるいは裏があるように感ぜられるのでありますが、さようなことはないとお考えになっておられまするかどうか。また中小企業を抑制するという鳩山内閣の措置は了解に苦しむのでありまして、政府の所信に沿って努力してきたところの中小企業者が、正直者がばかを見るという今日の状態を見ましたときに、これは非常に私は不愉快に感ずるのであります。今回の措置を撤回せられまして、従来の三五、六五というような線に戻すという御意思はあるかないか、承わりたいと思うのであります。
  168. 石橋湛山

    国務大臣(石橋湛山君) 御質問に対して、詳細のことはまたあとで調べてお答えいたしますが、大体は先ほど申しましたように、今まで設備割当については、相当また弊害もありまして、いろいろ非難も受けたわけであります。いずれにしてもこの割当というものは、どうしましても何とかかんとか非難を受けてまことに迷惑するわけでありまして、こういうことの早くなくなることを私としては希望しておるのであります。しかし今回は特に設備割当のほかに輸入業者に割り当てまして——ただしこれは先ほど申しました特別会計への納付金を考えて、そうして輸入業者の、有利に最も輸入するところのものに一種の競争入札のようにして輸入業者に割り当てまして、そうして自由にそれはお話のような必要のある精糖業者あるいは再精糖業者はそれからまた自由の部分を入手ができるようにいたそう、かように考えてやっておるわけであります。この影に何かあるというようなことは絶対にございません。これは河野農林大臣もこのことを、おそらくどういう割当方法をしておるかということをまだ知っておらないと思うのです。私も詳しいことは実は知らないのであります。大体の方針だけはさようなことを申し上げられると思います。
  169. 田中啓一

    ○田中啓一君 ただいま輸入割当の方式を御変更になったというお話が出ておりまして、しかもこのことは三大臣の共管であるという御答弁でございましたが、通産大臣からお答えを願ったのでありまして、通産大臣のお言葉の中には、質問をとり違えたような御答弁に聞えたのです。というのは、設備、能力は同じことであろうと思いますが、そればかりにあまり重きをおくのも弊害があってと、こういう御答弁であったのでありますが、実は吉田さんの御質問の趣意を伺っておりますと、弊害があるから、弊害のある方へなぜ一体割当のやり方を変更したのだ、従来均等割とか、あるいは実績割とかいうものを相当重んじておったのに、非常に能力重点主義に変えたのじゃないか。それは大設備を持っておるわずかの精糖業者の便宜をはかっておるのじゃないか、どういうわけだ、こういう御質問であったと私は思うのであります。私は通産大臣がそう思われるのも御もっともだと思うのでありますが、その事情を明らかにしていただきたい。でありますから、三省共管でございますから、どの大臣からでも御協定の上ではっきり御答弁を願いたいと思います。これは大臣御存じのないような問題でもなかろうと思うのであります。なかなかやかましい問題で、ずいぶん大臣のところにもいろいろのことをいうていっておる問題だろうと思います。
  170. 石橋湛山

    国務大臣(石橋湛山君) そのことは、ここに官房長が来ておりまして、幾らか私より詳しいと思いますから、技術的なことを申し上げさせます。
  171. 岩武照彦

    政府委員(岩武照彦君) 私からやや詳細にお答えいたしたいと思いますが、砂糖、ことに粗糖の輸入割当につきましては、数年来いろいろな問題もありまして、一応当初からの考え方としましては、先ほどお話もありましたように、精糖業者中心の能力並びに処理実績及び均等というふうな考え方で、二年前からでございましょうか、やっておったのでございます。ところが当時の情勢といたしましては、メーカーを中心に考えますと、御承知のように、設備拡張競争、それから原料処理競争等が起りまして、その結果相当な過剰設備ができてきておる、これは御承知通りであります。従いまして昨年以来それに輸入業者の割当を相当加味して参りまして、その結果何割になりましたか、今詳細存じておりませんが、その形で過剰設備がふえて参るのを防止しようというふうになったわけでございます。なお今後の問題につきまして、目下国会に御審議をわずらわしております砂糖の法律によりまして、砂糖の輸入によります利益金を吸収する方策を講じますと同時に、その関係の設備あるいは処理というふうなメーカー間の不当な事業拡張的な競争をある程度是正いたしますように目下検討中であります。そのメーカーの設備に対する割当と、それから輸入業者に対します割当等をどういう比率で行いますか、これはまだ検討中でございます。ただしちょっと言葉を間違えましたが、今後はメーカーの設備に対する外貨の割当という方式は、これは自分でL・Cを開きまして、為替の取り組みをいたしますものに為替の割当をするのが本体だろう。これが商社の活動を容易ならしめる方法だろうということで、メーカーに対しましては発注のワクの限度を示しまして、その範囲内で輸入業者に発注をしてもらいまして、現実の為替取引、つまり為替の割当は輸入業者に割当をする。こういう方向に改められる予定でございます。
  172. 吉田萬次

    ○吉田萬次君 それでは最後に食糧庁の長官にお伺いいたします。(「長官いない」と呼ぶ者あり)それでは通産大臣でも農林大臣でもよろしうございます。昭和二十八年十二月精糖会社の乱立を需給のアンバランスを調整するために設備の増設を押えまして、昭和二十九年六月末現在で設備能力のストップ令というものを出しておられます。私はこの措置というものは、これ以上新設の精糖会社をふやさないのだと理解しております。従ってその措置が適切であると思っておりましたにかかわらず、今回外貨割当基準につきまして四国製糖あるいは富国製糖というような二社を新規に加えられておるように聞きます。これは前に出された通達をみずから破るということになっておりまして、あなた方自身が出された通達というものを無視してまで二社をその間にもぐり込ませようというようなことは納得がいかないと思いますが、これはどういうことでありまするか、お伺いしたいのであります。
  173. 河野一郎

    国務大臣(河野一郎君) ただいまお尋ねになりました点は後刻調査をいたしまして御報告いたしますが、今の四国製糖、それらのことは私は聞いておりません。いずれよく取調べまして御報告いたします。
  174. 吉田萬次

    ○吉田萬次君 これはまだ私は御質問申し上げたいと思いますが、まだほかにも一つ案件が残っておりますから、この程度でやめておきます。非常に私はこれは深い何かの根があるように考えるのでありまして、みずから出した法令をみずからこわすというようなことは、私は納得いかないのであります。  それから簡単な問題でありますが、私が場外馬券、車券というようなものについてお伺いしたいと思いますのは、公営競馬のいわゆるのみ屋というものを取締るということについて、競馬法の一部を改正せられて、そしてこの国会で可決せられて、来月十四日から施行せられるというふうに聞いておるのであります。鳩山内閣が組閣当時、事は小さな問題でありまするが、競馬、競輪というものは賭博行為であるということから、これは禁止すべきものであるというようなことを公約せられましたのか、あるいは宣伝をせられましたのか、従って国民は非常にこれを関心を持ち、そして鳩山ブームがこれによって出て来たかのように考えられます。そこで私がお伺いするのは、いわゆる競輪、競馬におきまして、競馬におきましてはこれは一つのレクリエーションというようなものに解釈すれば差しつかえないようにも思いまするし、世界の各国で行われており、そのスリルというものに対する関心から人が集まるのであろうと思います。しかしながら場外馬券というものは何も馬の走っておるのを見ず、そしてすべてのその空気、スリルというものを味わわずして金をかけるということは、これは私は明らかに賭博行為に思います。これに対して農林大臣はどうお考えになっておるか、また競輪の場外車券というものは、これは競馬以上に私は賭博行為のように考えますが、これに対する見解をお承わりしたいと思います。
  175. 河野一郎

    国務大臣(河野一郎君) お話のように私も競輪、競馬、これらのものを健全なる娯楽として育成して参りたいということから、内閣組閣後におきまして、休日になるべく開催するようにという方針を立てて、これを地方の実情に合わせて順次改善しておることは御承知通りであります。そこで、ただいま御指摘の場外馬券、車券のことでございますが、これは出発いたしました当初が、終戦後のすべての乗物が不便であるとか、いろいろな諸般の事情がありまして、発足いたしまして今日のようになっておるのでございます。従って私といたしましても、各方面の意見を十分しん酌いたしまして、御趣旨のように順次改善して参りたいと考えておる次第でございます。
  176. 吉田萬次

    ○吉田萬次君 私は競馬、競輪というものにつきましても、現在の場外馬券、車券というものは、あなたが初め非常に宣伝的に国民にお話になった点から考えますると、当然私はもうやめさせるべき性質のものだと思うのであります。それを今日までこれを平気で見ておられるし、これに対するただいまの不可解な御答弁によってこの場を逃れようとなさるについては、すこぶる遺憾に思うのであります。これに対して通産大臣の競輪場外車券というものに対する御意見を承わりたいと思います。
  177. 石橋湛山

    国務大臣(石橋湛山君) 競輪につきましても、あるいはまたモーターボートもああいう競争でありますが、ああいうものにつきましても競馬と同じようになるべく弊害をなくしたいというので、今農林大臣から言われたように、まず開催日を自粛するようにということで、各方面へそういう勧告をいたしまして、現在実際自粛をいたしております。相当に開催日が減っておるのであります。それからなお競輪につきましては、この間御審議を願いました競輪法の臨時措置法の改正の場合に当院から付帯決議もありまして、この次の国会までに何らか根本的な対策を考えろということでありまして、私としてもあの改正法によりまして今回審議会が設けられて、その審議会が競輪の今後の根本施策を決定をし、審議をするように改正をしていただきまして、その審議会の意見も十分に聞きまして、そうして善処いたしたいと思います。このいろいろ影響するところも相当に大きいものでありますから、ただ一挙にこれをすぐつぶしてしまうということも、実はまだ別途の弊害も生じますから、今のところつぶすということにはなっておりませんが、これは審議会の決定をまちましてしかるべく処置を行いたい、かような現在の私の考えであります。
  178. 吉田萬次

    ○吉田萬次君 私は競輪が地方財政に非常に寄与しておるということはよく知っております。しかし私が今質問したのは、場外車券の問題だけであります。御答弁に及びませんけれども、御考慮を願います。
  179. 湯山勇

    ○湯山勇君 議事進行。私は先ほど総理に政治的偏向があるかないか、どう言われたか、初めは肯定されたような御答弁がありまして、次には仮定のような御答弁があって、最後にまた肯定されたような御答弁があって、どうもはっきりしなかったのですが、政治的偏向があると総理はお認めになっておられるのか、それから認めておられるとすれば、どういうのを総理は政治的偏向と言われるのか、これは別に意見的な質問ではなくして、参考までにお伺いしたいと思います。
  180. 鳩山一郎

    国務大臣鳩山一郎君) 吉田君のお話のうちに、尼ヶ崎の話がありましたが……。
  181. 湯山勇

    ○湯山勇君 尼ヶ崎の……さっきちょっとおっしゃいましたが、尼ヶ崎のは吉田委員の御質問にも経済要求が重なっていって、ああいうことになったとおっしゃったはずだと思うのです。
  182. 鳩山一郎

    国務大臣鳩山一郎君) 私が答えましたのは、経済的地位の向上のためにする活動、政治的な活動、これは差しつかえないと思いますが、政治的偏向、その範囲を逸脱して政治的な偏向あることは望ましくない、こういうようなことをお答えしました。
  183. 堀末治

    ○堀末治君 私は主として北海道開発の問題について総理大臣その他の関係大臣にお尋ねしたいと思うのでありますが、それに先立ちまして、現下非常に問題になっておりまする官公庁諸君の夏季手当の問題について少しくお尋ね申し上げたいと存ずるのであります。  終戦以来公務員諸君も労働組合を作りましたことは、けっこうでありますが、その後のいろいろな闘争の状況を見ていますと、どうも私ども国家公務員として果してああいう態度でいいかということに疑いを持つのであります。もとより労働組合でございまするから、それは法の趣旨に沿うことはけっこうではございましょうけれども、何といたしましても、普通の企業体とは全然違うのであるから、どうしても国家公務員という立場に立っての労働争議でなければならない、かように思うのであります。しかしきょうは要するに国家公務員の職組のあり方について私は論議しようとは思っておりませんが、ただ今問題になっておりまする夏季手当の問題は、今まだだらしなく解決がついておらない。新聞紙の報ずるところによれば、彼らはあくまでも一ヵ月を貫徹するためにすわり込みをしよう、こういうことも新聞に報ぜられておるのでありますけれども、一面またこれに対する政府の態度がはなはだなまぬるい。せっかく予算に〇・七半ということを妥当なりとして計上して、今その予算審議中にあるのでありますが、その審議も終らないうちに、彼らの争議によって根本方針を変えるような要するにいろいろな相談が行われている。これははなはだ鳩山内閣のためにとらない方針だと私は思うのであります。おそらく〇・七半をきめられたときには、いろいろな状況を勘案して、これならば公務員の夏季手当として妥当であるということをよく御検討になったことだと思うのでありますから、あくまで私はこの方針を堅持して労組に対処すべきだと思うのであります。しかるところ、新聞紙の報ずるところによりますれば、あるいは超勤手当あるいは日直、宿直料を繰り上げて払う、それもできないなら何らか工夫をする、ことによれば〇・〇五ヵ月分を増してやる、それがためにこれは地方公務員も同様な処置を講ずる、そうしてそれに対しては、預金部資金から融資をする、大よそ十億円、こういうようなことも出ておるのであります。しかるに一方地方公務員のほうの状況はどうかといいますと、きょうの本会議もいわゆるその赤字財政がるる論議されたのでありますが、新聞紙の報ずるところでも、すでに新潟のごときは全部返上を要するに知事から申し出ている、彼らは受け取って、承服したかどうかまだよくわかりませんけれども、そういう状況。なおまた熊本県では二百名の要するに整理を出した、一方またここに出ているのは夏季手当の返上、昇給停止、三十一都道府県は無昇給、こういうような状況でありますのに、ひとり国家公務員だけがあくまでも一月でなければならないのだというて、すわり込みをするのだという態度に対しては、私どもはどうしても賛成できないものでありますが、一体これに対して政府はどういうふうにお考えになっているか、この点についてお聞き申し上げたいと思います。
  184. 大久保留次郎

    国務大臣大久保留次郎君) お答え申し上げます。ただいま堀さんからお尋ねがありました公務員に対する態度は、はっきりときまっております。すなわち法律にきまりました範囲において夏季手当を支給するということにきまりまして、すでに実行に移しております。決して方針がきまっておらんというわけではございません。はっきりきまっております。なお、もう一つの超勤手当の問題でありまするが、これは予算の許す範囲におきまして〇・〇五を中心として支給するということに大体これもきまりました次第でございます。  なお、争議の全体につきましては、違法にわたるような、法律に違反した行為は絶対にいかぬ、違法にならない程度の行為は、これは従来の慣例によって認める。いやしくも違法なことはいかぬという態度をとっております。
  185. 田中啓一

    ○田中啓一君 関連質問。どうも私は今の国務大臣の御答弁を伺っても、今度の政府のおとりになっている態度はわからないのであります。法律、予算の範囲内でやっている、何もかもその範囲だからよろしい、こういうだけの話でありまして、それは当然のことなのでありますが、しかし、これはまだあまり質問もそれに関連して展開されておりません。今日が初めてでありますが、新聞紙の報ずるところによれば、何か超勤手当をやりくりをして〇・〇五カ月分の、これは月給の方の〇・〇五でありましょうが、それだけを出すのだというふうにしか受け取れない記事であります。しかしまことに意味深長で、ほかに意味があるかもわかりません。わかりませんが、私どもが受け取りますその印象は、超勤手当というものは超過勤務をした者に与えられる予算としてできているはずでありますが、それがあらかじめ超勤をしてもせぬでも〇・〇五カ月分は夏季手当のかわりにやるのだという印象を与える発表になっておるのでありますが、そういうことを一体なさるのでありますか、なさらないのでありますか、はっきりと御答弁願いたいのです。今のような、法律、予算の範囲内でやっております、そんなばかな御答弁はあるものではないと思う。何ですかその御答弁は。
  186. 永岡光治

    ○永岡光治君 関連々々。超勤手当の問題で今質問が出ておりますが、少くとも今日まで超過勤務手当を完全に支給した官庁は全然ございません。そうして超勤手当の原資の不足のために、たとえば三十時間超過勤務をしても原資が五時間しかないので、あとの二十五時間はただ働きで奉仕をしておるというのが今の国家公務員の現状でありますが、これを累積すれば莫大な金になりますが、それは一体どうするのか。〇・〇五だけ払ってごまかそうとしておりますが、それで正当な報酬の支払い方を請求、要求しない国家公務員が不思議なくらいであります。なおまた繰り上げ支給云々のことを言っておりますが、一昨年は〇・五の予算で法律はきめられた。事実予算がきまって、それが通過したあとで、参議院あるいは衆議院予算委員会等の要望があって、政府は善処するということで善処して、実際には〇・七五を支給した例があるが、それが一昨年、にもかかわらず、今年に限って予算の成立を見ないからといって、あるいはまた法律に〇・七五しか規定していないから出せないという、そういうことではどうも納得できないのでありますが、一昨年の国会と今年の国会とでどのくらいの違いがありますか、それもあわせてはっきりした答弁をお願いいたします。
  187. 大久保留次郎

    国務大臣大久保留次郎君) お答えいたします。超過勤務手当の問題でありますが、これは文字の示す通りでございます。勤務以外の勤務をいたしました場合に支給する手当でありまして、その予算本年度におきましては暫定予算として四、五、六の三ヵ月をとっておる次第であります。その予算の範囲内におきまして都合をして出すことにいたしました次第であります。
  188. 田中啓一

    ○田中啓一君 今の御趣旨は、超過勤務したものを勘定して、予算がなければそれも出せないというならば、今永岡さんのおっしゃるようなことでありますから、超過勤務をしたものはその時間を勘定して、予算のあるだけは払いますというお約束をなすったものでありますか、それから超過勤務をしてもせぬでもだれにも〇・〇五カ月分は出すという約束をしたのか、そのいずれかということをお尋ねしているので、どうもポイントに当らない御答弁では困りまますので、はっきり一つ答弁を願います。
  189. 大久保留次郎

    国務大臣大久保留次郎君) それはさきにも申しました通り、超過勤務の性質上当然超過勤務をいたしました者に支給する金でありまして、超過勤務をしない人にはできないのであります。しかしこれは永岡さんの言われる通り、従来ややもすれば五時間働いても五時間つけないで、ごく短かくつけて支給することがありましたから、そういうことのないように支給いたしたいと存じてああいうきめをいたした次第であります。
  190. 田中啓一

    ○田中啓一君 ところが、新聞紙の報ずるところでありますから、これはあらためて政府からお聞きしなければわからないのですが、世間に与える印象は、超過勤務をした者に政府予算の範囲で勘定して払うと、こういうふうにはおそらく受け取れないのが新聞紙への表れ方なんであります。私どもの見方が悪いのかもしれませんから、ここで念を押しておきますが、超過勤務をしない者には決して〇・〇五はお払いになりませんでしょうね、これをはっきりと御答弁願います。
  191. 大久保留次郎

    国務大臣大久保留次郎君) 私はそのように解釈しております。(「解釈じゃないよ」と呼ぶ者あり)そういうつもりであります。
  192. 永岡光治

    ○永岡光治君 ただいま超勤が出ておりますが、これは一つ私は給与担当大臣の大久保さんに特に考えてもらいたいと思うのでありますが、この〇・〇五カ月分、それでは問題にならぬと思います。その未払いの分を要求して、その分についてはどんどん支払うだけの責任を持っておりますか。それを強く追及いたします。おそらく一人当り平均したら、たとえば現業官庁に例をとってみれば一番よくわかるのでありますが、これは人事院からも資料が出ているわけでありますが、おそらく事実超過勤務をしたその金額に対してわずかに六分の一か七分の一しか支給されていないというのが今日の状況だと考えておりますが、そういう金もこの際合せて支給してもらいたい。従って〇・〇五のみならず、それ以上のものがあるわけです。中には三十時間、五十時間、六十時間、あるいは計算すると二百時間ぐらいあるものもありますが、それもこの際は支給してもらえると、こう解釈していいですか。
  193. 大久保留次郎

    国務大臣大久保留次郎君) 今度の予算は大体普通の公務員におきまして一ヵ月分の超勤手当を計上しております。(「それは五時間だ」と呼ぶ者あり)約一カ月分の手当です。それで、大体従来の慣例によりますと、この予算で足りているようであります。ただいまの永岡君の言われるような問題がありましたならば、それは具体的にこの所管の係においてしかるべく措置するものと思います。
  194. 湯山勇

    ○湯山勇君 関連。大臣あなたは給与担当の国務大臣ですから一つしっかりしていただきたい。それは現在公務員に正しく超勤手当を払われているかどうか。ここには自治庁長官もおられますし、郵政大臣もおられますからよくおわかりだと思いますが、一体実際した超勤のどのくらいが支払われているか、これをまず大久保国務大臣に御答弁願います。これがわからずに今のようにやったのかどうか、全部行っているというそういうことでは話になりません。実際にどれだけ払われてどれだけ未払いになっているか、これを一つ明らかにしていただきたい。
  195. 大久保留次郎

    国務大臣大久保留次郎君) そのこまかい実際の数字は持ち合せがございませんが、予算の範囲内において、しかるべく計上しておることと信じます。
  196. 湯山勇

    ○湯山勇君 大久保大臣は予算の範囲内でしかるべくやられておるというのは、予算がないから実際超勤しても受け取っていないのです、(「その通り」と呼ぶ者あり)これを国務大臣は御存じないから、どうにかなっておる、ただそういうことだけしかおっしゃらない。そういうことを言われる前提として、今日これだけしか予算が組まれてない、実際の超勤はこれだけある、こういう事実を御把握にならないから今、疑問が出たように、〇・〇五をかぶせるのじゃないかというような疑問が出るわけです。実際の勤務はこれだけ、予算はこれだけ、従ってこれだけ未払いがある、これは〇・〇五や〇・一や〇・二じゃ払い切れません。そういう実態を御報告になって御了承を得られれば、皆さんもそれじゃ少しちゃんと払わなくちゃならないという御意見が出るにきまっておる。どうかその点はっきりしていただきいた。
  197. 大久保留次郎

    国務大臣大久保留次郎君) さっき申しました通り、こまかい数字の持ち合せはございません。もし必要ありとすれば御調査の上お答えいたします。
  198. 堀末治

    ○堀末治君 今の夏季手当の問題については、実は私まだまだお聞きしたいことがあります。ただ、しかし、この機会に私、一言申し上げておきたいと思いますことは、いわゆる〇・七半をきめるのには相当の根拠のあったことで、実はその根拠も聞きたい。私から言えば、大体私どもの実業家的の勘から申せば少くとも一月ぐらいは妥当であろう、これは決して労組におもねるのではございませんが、あるいはお盆といい、お正月といい、これは年中行事で一番子供たちにとっては楽しい行事である、従ってその子供たちを楽しますためには、相当の要するに給与が必要だということは、これはもう私は申すまでもないのであります。従いまして、できることなら公務員諸君にも一月くらいの夏季手当は私はあることを希望いたします。しかし、折角こうして予算を組まれたについては、何らかそれらについて計数的にも根拠があっておやりになったことだろうと思いますし、なおまた一兆円予算という大ワクに縛られた点もありましょうから、私はこれに対しては今ここで論議はいたしません。ただ、しかし、折角ここまで政府方針をおきめになって、それがいわゆる労組の攻撃によって政府が腰を砕けるというような情報が新聞にひんぴんと出ておることを私、非常に遺憾に思うのであります。これが響くところは、現に官房長官が新聞談で申しております通り、ただ、ひとり官庁あるいは地方公共団体ばかりでない、今ここに不足にあえいでいるいわゆる実業界の影響が非常に多い。まして、いわんや中小企業のごときは賃金さえ払われないでいるところでございますから、その影響するところが非常に大きいのでありますから、どうかそれらの点を十分お考え下さいまして、政府はがんとして〇・七半、〇・〇五増しなどというようなけちなことをしないで、七半なら七半でがんとして早くこの争議を解決していただくことを希望してやまないのであります。  次に私、お伺いいたしたいのは、本日の私の北海道の開発問題でございまするが、幸いこの開発問題を鳩山総理も施政方針においてこれを取り上げていただいたことは、まことに私ありがたく存じておるのでございまするが、ただ、しかし、簡単な言葉で施政方針に述べられただけでありまするので、できることならばあなたから直接いわゆる北海道の開発の根本方針並びにその構想についてお話を承わりたいと存ずるのであります。
  199. 鳩山一郎

    国務大臣鳩山一郎君) 北海道の開発の基本方針としては、日本の自立経済のためにも、また人口問題解決のためにも、その役割をするのは北海道の開発にあると思うのであります。そこで第一次五カ年計画において北海道の産業振興の基礎となるべき施設の整備充実をはかり、三十二年度よりは第二次五ヵ年計画基礎の設備にさらに拡充して強化することをはかりたいと思っておる次第でございます。
  200. 堀末治

    ○堀末治君 まことに御答弁ありがとうございましたが、それにつきましても北海道は内地の諸府県に比べますと、九州、四国、中国でおよそ十四県の広さがある。東北六県新潟七県の広さを持っておるのでありますが、今日なおわずかに人口四百五、六十万で、地理的の諸条件が悪いので今日まで未開発になっているのでありますが、これはいたし方ございませんが、それにつけましても今残っておる耕地はまだ七十五万町歩、おそらく全日本の内地に比べれば一五%ほどのものが残っておるのでありますが、これに対しては思い切り投資をしなければならぬ、幸いに政府でも本年は百五十億、百六十億の投資をしていただいておるのでありますが、こんなへそくり金ではとても北海道の開発は進みません。幾ら計画は五カ年、あるいは十カ年立ててもなりません。ここで思い切って政府投資を、本年度はできないが、来年度あたりから思い切って投資をする御計画はありませんか。これは総理大臣並びに大蔵大臣からお伺いいたしたいと思います。
  201. 一萬田尚登

    国務大臣(一萬田尚登君) 北海道の開発には私どももできるだけ力を入れたいという念願でございます。今年の三十年度予算につきましても、北海道の開発には乏しいうちからできるだけ割愛をいたしたい、なお、この余剰農産物はこれは特別会計になりまして、近く国会予算を提出いたしますが、そのうちから三十億が農業開発にいくようになっております。多くの分が愛知用水に回りますが、できればできるだけ多く北海道にやるように今、検討を加えております。
  202. 堀末治

    ○堀末治君 今、お尋ね申し上げない先にこの余剰農産物の特別会計のお話が出ましたが、ほのかに聞くところによりますると、この余剰農産物は本年限りだと、来年は入るか入らないかわからないというようなことを先般も本会議でわが党の佐藤君から経審大臣に質問を申し上げたのですが、経審大臣の御答弁も来年はあるともないともお話がございませんでしたが、来年はいかがでございましょうか。北海道開発のためにこれらの特別会計を来年度も当てにし得るような状況でございましょうか、いかがでございましょうか。
  203. 高碕達之助

    国務大臣(高碕達之助君) 来年度余剰農産物を受け入れるかどうかと、こういう問題でございますが、これは非常にいろいろな点からまだ考慮して決定いたしておりませんが、大体から申しまして、余剰農産物を持ち込むことによって日本農業にどういう影響をするかということと、それからもう一つ余剰農産物を持ち込むことによって日本の対外貿易にどういう影響をするかという面は、マイナスの面として非常に考慮しなければならぬと思っております、しかし、またプラスの面としては農業開発そのほかの産業開発なり、非常に低利の長期の金が借りられるのでありますから、そういう点も考えて、最大公約数から考えて、これは国のためにいいと思えばきめたいと考とえまして、私の個人の考えでは持っていきたいと思っております。しかしまだ政府としましてそういう点をよく検討することが必要と思いまして、まだ決定はいたしておりません。
  204. 堀末治

    ○堀末治君 今の経審長官の御答弁よくわかるのでありますが、私ども実業家的の勘から言うと、とにかく三年据え置き四十年払いという金ですから、私はこれはおそらく入れる方が得でなかろうかと、実はこういうふうに思うのであります。ことに北海道のようなああいう、要するに開発をするためには、こういうふうな長期の金が最も適当と思うのでありますから、相なるべくは来年もぜひこれを入れまして、北海道開発に多額の費用を回わしていただくことを切望してやみません。なおまた大蔵大臣にお願い申し上げたいのでありますが、今の御答弁の中に主として愛知用水の方に向けるということでございますが、私はなるほど重点的にこういう金を使うということは非常にけっこうですけれども、すでにその金が北海道にもやられるのだということがだいぶん報道されて、北海道の人士としては十分にこれを当てにしております、でありますから、なるべくそれらもお考え下さいまして、多額にお回し下さるようなお考えはございませんでしょうか。
  205. 一萬田尚登

    国務大臣(一萬田尚登君) 今、検討中でございますが、愛知用水は計画がしっかりできておりまして、そして、これはもうどうしても金をある程度入れなくてはなりません。北海道の計画ができていないというのじゃありませんが、まだまだこれは今後に待たなくてはなりません。それに一つ、今後は世界銀行その他私はどうしても外資を導入してやる以外に、安い金で長期のものは日本のものでは困難じゃないか。財政資金から出すのが一番いいんですが、なかなか今後の財政がむずかしいから、どうしてもアメリカあたりから金をうんと持ってきませんと……ほんとうに北海道は私もやろうと思っております。
  206. 堀末治

    ○堀末治君 なお今度は、総理並びに自治庁長官にお尋ね申し上げたいのでありますが、北海道はあの通り広い。先ほど申しました通り、十四県にもわたって、現に函館に上って、玄関から事務室に行くのに七時間かかる、なおまた事務室から今一番問題のある根室までには十七時間もかかる、こういうような広い地域であります。それが今たった一つの区域になって、しかも、二十二年以前は、特別行政区域で、北海道庁というものでやっておったのが、あの当時のどさくさで何らあと考慮をしないで内地並みの、要するに、府県と同様にされた。これが非常に北海道の開発を阻害しておるのでありまするが、それによりまして、私はかねて北海道は分県すべきであると強く主張しておりますが、政府としては、いわゆる県の廃合等を考えて道州制を考えるというのですから、今この問題が中絶しておるような状況でございますが、従いまして、地方制度調査会のいわゆる道州制の答申を、私、注意深く見ておるのでございまするが、最近の小委員会の状況は、要するに、市町村合併と同じような方式で県を統廃合すべきであるというような答申が出るように承わっておるのでございまするが、もしもそういうような場合に、北海道は少くとも四つないし五つに分県するということが最も北海道開発のために適当じゃないかと、かように思うのでございますが、この点に対して、総理はいかがでございましょうか、お考えは。
  207. 鳩山一郎

    国務大臣鳩山一郎君) 分県すべきか、特別行政区域とすべきか、ただいまのところまだ確定した意見は持っておりません。地方制度調査会等の答申を得まして今後研究すべき問題であると思っております。
  208. 堀末治

    ○堀末治君 私は今の北海道の特殊事情から申せば、あるいはこれは逆行かもしれませんけれども、しばらく内地並みに開発されるまでは特別行政区域としておく方が最もいいんじゃないか、こういうことにも考えております。しかし、またなかなかこれはいろいろ議論もありましょうから、でき得ることならば、四つないし五つにしても、おそらく道州制が内地府県に行われても、四つくらいにするのがちょうど適当なことじゃないかと、かように考えておるのでございまするから、なるべく総理もお気にとめられまして、これらの点について、閣僚諸君を督励せられると同時に、あなた御自身御研究下さることを切に希望する次第であります。  次に、大久保長官にお尋ねしたいのでありますが、今の開発庁の問題であります。開発庁は、ちょうどこれは私ども骨を折って吉田内閣のときに開発法を作り、開発庁を作ったのでありますが、今の開発庁は全くヌエ的存在のような形になって、無力な形ですが、こんなことではほんとうの開発行政はできないから、でき得ることならば、これを実施官庁かに昇格して、強力に、要するに北海道の開発行政を進めるべきだと、私はこういう見解に立っているのですが、大臣の御見解はいかがでございましょうか。
  209. 大久保留次郎

    国務大臣大久保留次郎君) ただいま堀さんから御質問がありました通り、現在の開発庁はその通りであります。執行の責任というものがないのであります。予算は取りますけれども、予算の執行は他の官庁を経由して開発庁に回るというような回りくどい方策をとって、まことに遺憾であります。よって私は順次関係の各官庁に連絡をとりまして、堀さんの希望しております実施官庁の方向に向って進みたいと存じます。
  210. 堀末治

    ○堀末治君 なお、大久保長官に申し上げておきますが、いわゆる今の開発庁のあり方でありますと、北海道の住民が非常にいわゆる負担が多くなる。それはなぜかと申しますと、これはあなたお気づきかどうかわかりませんけれども、とにかく開発庁は、開発庁自身がやるのではございませんが、いわゆる都合のいいやつだけ中央の方に取ってしまって、都合の悪い、そろばんの合わないような仕事だけは道庁に押しつけている、こういう形である。それに対して道庁は、自分の費用を持ち出し、起債を仰いでいるということですから、この開発庁ができたとき私どもが意図したことと非常に違って、北海道の財政が非常に悪くなっている。これはあなた御承知かどうかしりませんが、もしもあなたが幸いにそれらの点がお気づきでありましたら、至急にこの問題を御研究下さいまして、でき得ることなら今国会一つやっていただくように御努力願いたいと存じますが、いかがでございましょうか。
  211. 大久保留次郎

    国務大臣大久保留次郎君) 北海道庁の関係でありますが、開発庁の予算は一カ年約百五十億円でありますけれども、その三分の一、すなわち約五十億円の予算は北海道庁に分けてやっている。従って、その関係は密接でなければならぬのであります。あなたのお話もありますし、より一層連絡を密にして、開発に差しつかえないようにいたしたいと存じます。
  212. 堀末治

    ○堀末治君 大蔵大臣にお尋ねしますが、北海道は、いろいろなことで条件の悪いことがあるということはあなた御承知だと思う。現に、今、労組が、せっかくもらっている石炭手当に対して、石炭手当は免税せえということを言われているのであります。さようなことで北海道の住民が、いわゆる気候その他の関係で非常な不利な立場に立っている。ところが、税金は内地と同じ率にとられている。これがまた実に大きい負担であります。しかして、国税もそうであれば、しからば、地方税はどうかといいますと、従来通り地方税は非常に高い。これはもう御承知でもございましょうが、標準税率を突破して、大かた制限税率一ぱいになっている。特にああいう寒い所でございますから、うちが広くなければだめだ、従って、固定資産税が非常に高い。これが実に北海道の住民の負担でありまして、従っていわゆる産業が、いろいろファクターが多分にございますけれども、いわゆる、おそらく石炭は、電源をどんどん開発してもあれを消化するような結果にならないのじゃないかということを私は懸念している。それでございまするから、でき得ることならば、特別行政区域として、そういう税の措置をするとか、もしも特別行政区域がなかったならば、なくてもけっこうですが、何とか今言われた通り、そういうような特別措置を講ずるお考えがございませんか。ぜひやっていただきたいと思うのでございますが、いかがでございましょう。
  213. 一萬田尚登

    国務大臣(一萬田尚登君) 北海道に住んでおるからといって、税を特にどうするということは、一般的にいって非常に困難じゃないかと思います。ただ、しかし、北海道に入植するような場合におきまして、今でも二十八年の一月から三十二年の末までに開墾をして、そして三十三年一ぱいでこれを耕地に使うような場合は、それから生じます穀物に五年間は所得税を免除する、こういうふうな措置はあります。これはもう、そういうふうになっておりますから、こういうような意味合いにおきまして、北海道の、特に開発とかというような特殊な考え方によって、あるいは税の上で何か考えるということは今後検討して、ただこれだけで、すべて北海道に対する税の措置が終ったということだけでもありますまいから、そういう意味合いでは、今後十分検討を加えてみたいと思います。
  214. 館哲二

    委員長館哲二君) 堀君に申し上げますが、時間がだいぶ過ぎておりますから……。
  215. 堀末治

    ○堀末治君 これだけで終ります。  どうか大蔵大臣も、北海道の実情を御承知下さいまして、十分に御同情ある御検討を賜わることを切望するのでございます。  最後に運輸大臣にお尋ねしたいのでございますが、北海道の開発の大きいネックになっているのは何かと申しますと、青函の運賃であります。あなたも御承知でございましょうが、あの青函はわずかに百十三キロ、しかるに、あそこを運賃だけを別にして四百五十キロ、三・九倍の運賃をとっている。本来ならば、一カ年の貨物があそこを動くのは最近は四百二十万トンくらいでございましょう、そして普通の運賃に直せば大よそその運賃が十億二千万円ぐらいで済む、それが国鉄の予算は二十九年度四十億を要させている。こういう大きい……それがどうかというと、北海道で生産されたものが内地に来る、同時に内地から向うに持っていく、これは衣料のごときは全部移入しなければならぬ、そういうようなものを全部向うが負担している、二十九億八千万円というものをとにかく四百五十万人の人が、こちらの人よりよけい負担している、それはなぜかというと、鉄道運賃がそういうふうに高い、私はこれは非常に不合理だと思う。国鉄は今は公共企業体になっておりますけれども、昔は国有であります。その国有がそういう不公平な取扱いをして、そのまま今の公共企業体に移している。私はこれは非常な不合理だと思う。どうしても十分これは改めませんと、せっかく大久保長官骨折って、なけなしの予算からどんどん持って来て、向うを開発しても、これは究極あそこの運賃でうんと吸い上げられてしまって、鉄道ばかり肥やすという結果になる。これではとても北海道の開発……これは今までの内閣もそうでございましたけれども、特にこの内閣は総理大臣自身開発をせなければならないと今も言明されたのでございまするから、まず、こんなのから一つ改正していただかなければならないと、かように思うのでございますが、いかがでございましょうか。
  216. 三木武夫

    国務大臣(三木武夫君) 御承知のように、やはり汽車と船とは経費の点にも差がございますし、その上にやはり民営のあの青函連絡のいろいろ貨物輸送をしておる業者もあるわけであります。これを非常に不当に国鉄が圧迫いたしますことも考えなければならない、バランスもとらなければならない、また一面から申しますと、国鉄には輸送力に限界がございますものですから、非常に安い運賃で、国鉄に貨物が集中いたしましても、これは輸送の円滑のためには考えなければならない。こういう点から、今御指摘のような運賃、そのほかにも運賃算定の幾多経緯があるのでございますが、衆議院予算委員会でもこの問題が問題になりましたので、私は国鉄当局に対してできる限り運賃を低減する方法はないかということで検討を命じておる次第でございます。
  217. 堀末治

    ○堀末治君 今の御答弁ではどうも満足いかないのでございますが、なかなかめんどうな問題でございまするから、ぜひそれらも十分御検討願って、近いうちによい解決をいただきますことを切望いたしまして私の質問を終ります。
  218. 館哲二

    委員長館哲二君) これにて総括の質疑は全部終了いたしました。二十一日から二十五日までの間一般質疑を行うことにいたします。  明日は午前十時から開会いたします。  本日はこれにて散会いたします。    午後七時二十四分散会