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1955-06-11 第22回国会 参議院 予算委員会 第23号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和三十年六月十一日(土曜日)    午前十時四十九分開会   —————————————  出席者は左の通り。    委員長     館  哲二君    理事           池田宇右衞門君            石原幹市郎君            西郷吉之助君            豊田 雅孝君            佐多 忠隆君            吉田 法晴君            松澤 兼人君            堀木 鎌三君    委員            秋山俊一郎君            伊能 芳雄君            泉山 三六君            木村 守江君            佐藤清一郎君            高橋進太郎君            西岡 ハル君            堀  末治君            吉田 萬次君            片柳 眞吉君            小林 政夫君            田村 文吉君            高木 正夫君            中山 福藏君            廣瀬 久忠君            秋山 長造君            小林 孝平君            高田なほ子君            永岡 光治君            湯山  勇君            田中  一君            永井純一郎君            松浦 清一君            石坂 豊一君            深川タマヱ君            武藤 常介君            八木 幸吉君   国務大臣    内閣総理大臣  鳩山 一郎君    外 務 大 臣 重光  葵君    大 蔵 大 臣 一萬田尚登君    文 部 大 臣 松村 謙三君    厚 生 大 臣 川崎 秀二君    農 林 大 臣 河野 一郎君    通商産業大臣  石橋 湛山君    郵 政 大 臣 松田竹千代君    労 働 大 臣 西田 隆男君    建 設 大 臣 竹山祐太郎君    国 務 大 臣 大麻 唯男君    国 務 大 臣 川島正次郎君    国 務 大 臣 杉原 荒太君    国 務 大 臣 高碕達之助君   政府委員    内閣官房長官  根本龍太郎君    内閣官房長官 松本 瀧藏君    内閣官房長官 田中 榮一君    法制局長官   林  修三君    法制局次長   高辻 正己君    防衛庁次長   増原 恵吉君    防衛庁経理局長 石原 周夫君    経済審議庁次長 石原 武夫君    外務省参事官  安藤 吉光君    外務省国際協力    局長      河崎 一郎君    大蔵省主計局長 森永貞一郎君    大蔵省主計局次    長       原  純夫君    大蔵省銀行局長 河野 通一君    通商産業大臣官    房長      岩武 照彦君   事務局側    常任委員会専門    員       野津高次郎君    常任委員会専門    員       長谷川喜作君    常任委員会専門    員       正木 千冬君   —————————————   本日の会議に付した案件 ○昭和三十年度一般会計予算内閣提  出、衆議院送付) ○昭和三十年度特別会計予算内閣提  出、衆議院送付) ○昭和三十年度政府関係機関予算(内  閣提出、衆議院送付)   —————————————
  2. 館哲二

    委員長館哲二君) これより委員会を開きます。  この際委員長から政府に御警告申し上げておきたいと思います。  三十年度予算案が本院に回りましたのは非常に時日がおくれて回ったのであります。本院といたしましても、できるだけ早くこれを審議促進をしたいと考えてやっておるのであります。本日のごときも、すでに開会の態勢にあるにもかかわりませず、政府側の御出席が非常におそいために、約一時間近くもおくれましたことは、委員長といたしまして審議についての責任を負うという意味において、非常に遺憾に思うのであります。この点政府の御答弁を求めておきたいと思います。
  3. 鳩山一郎

    国務大臣鳩山一郎君) 十時に大変おくれまして、閣僚が揃いませんでしたことはまことに残念であります。正刻に集まりますように必ず督励いたします。
  4. 館哲二

    委員長館哲二君) 今後審議時日が非常に少いのでありますから、本委員会委員が皆非常に熱心に勉強されるので、政府側もこちらの要求のあります各大臣は必ず要求されたときにそろって頂きますことをこの際深く御注意申し上げます。
  5. 吉田法晴

    吉田法晴君 予算修正関連いたしまして、同僚議員から御質問を願いましたが、残っております重大な問題について二、三初めにお尋ねをいたしたいと思います。  昨日の毎日新聞の「国民の声」という投書を集めました欄に、「保守政党間の駆引」として、このたびの予算修正関連する政府態度批判をしている記事はお読みになっておると思うのであります。「民主政治妥協、互譲は必要であるが、それはどこまでも筋の通ったものであるべきである。国家予算ども、その政党の使命とする政策に照らして互譲さるべきで、政局安定とか、保守合同とかの人的関係党派的差別を勘案して進めらるべきではない」、私はこれにさらにポストのこともつけ加えて申し上げたいのであります。別な人はこういうことを申しております。名前はちゃんとはっきり入っておりますが、国の予算国会議事堂で堂々と審議せず、裏のホテルや料亭で馬喰(ばくろう)の取引のごとく、民自両党で一種の腹芸と称する方法妥協するなどとは、まったく前途にさびしさを覚えさせるものがある。政治には裏の駆引があるという考え方は一応理解するが、バナナのたたき売りのような安易な気持で審議もそこそこに成立の段階に持っていってしまうようでは議会政治に信頼することはできない、「三十年度予算を不成立にもできず、解散もこわいし、せっぱつまったところで、こういう取引修正をしたのであろうと、こういうきめつけ方をいたしおります、民主政治家としての鳩山総理は新聞は読んでおられると思うのであります。われわれが質問をしても、財政政策の立場からする限界も言うことができないし、あるいは合理的理由も言えないところをみれば、修正には合理性はないし、修正の結果ではなく、修正そのもの責任を負おうとしないのだから、修正政府責任限度をこえているのではないかと考えるのでありますが、鳩山総理はどういう工合にお考えになりますか。政党政治の建前から言うならば、選挙政策によってその議席を獲得せられ、あるいは第一党になられ、内閣を組織されたその鳩山内閣が、施政方針を述べ、予算を組んだ、その上で、本国会でありますが、自由党に屈するかどうか、こういう場合には屈して総辞職をするか、あるいは解散をして国民の意思を問うべきではないかと考えるのでありますが、その点についての鳩山総理の御見解を承わりたいと思う。
  6. 鳩山一郎

    国務大臣鳩山一郎君) 私は民自両党の共同修正政府提出予算原案の精神をくつがえすものとは思いませんでした。政府提出原案の通過するのには、この民自両党の共同修正をのむよりほかに道がなかったので、共同修正に応じて提出した次第であります。
  7. 吉田法晴

    吉田法晴君 選挙で公約をされた方針、あるいは最初立てられた財政金融に対する基本的政策予算方針、それがくずれた、くずれるかどうかという点については、総理大臣としても内閣としても、これは重大な判断をされたのだと思うのでありますが、かりに予算が否決されたら総辞職をされるか、解散をされるでしょう。あるいは今度の場合のように、修正がされた、のんだといわれますが、修正がされた。しかも巷間伝えるところによると、大部分自由党政策をのんだ言われている。この政府方針が、修正をされた、基本方針がくずれたというこの現実に対して、政府はどういう態度を、政治的な責任をとろうとせられるか、その点も伺っておるわけであります。
  8. 一萬田尚登

    国務大臣(一萬田尚登君) お答え申し上げます。私どもが今回の修正によりまして、先に提案しました予算原案の骨幹をこわしておる、こういうふうに考えておりません。
  9. 吉田法晴

    吉田法晴君 大蔵大臣のそういう事務的な答弁を求めようとしているのではございません。総理に、予算が否決されたら総辞職解散かの道を選ばれなければならぬでしょう、あるいは予算修正をされた場合にはどういう政治責任をおとりになりますか。のんだということは言われますけれども、事実上、政策あるいは方針がくつがえったことは間違いございますまい。私ども見ておりますというと、選挙で掲げられた、あるいは約束された方針というものがくずれた、アメリカの日米交渉関連する圧力もございましたろう。鳩山内閣の闘志といいますか、あるいはけんかに負けた鶏のような、意気全く銷沈をした格好でありますが、これは客観的に方針がくずれた、こういう点を明らかにいたしておりますが、これに対して政治家としてどういう責任をとろうとされるか、それを承わっておるのであります。
  10. 鳩山一郎

    国務大臣鳩山一郎君) 共同修正案政府提出原案の性格をくつがえさないと思ったのであります。くつがえしてはいない、それですからこの程度妥協は、私どもにおいては総辞職、あるいは解散をもって迎うべきものではない。政局の安定のためにこの妥協をのむことを適切なりと考えたのであります。
  11. 吉田法晴

    吉田法晴君 それでは大蔵大臣にお伺いをいたしますが、今国会財政演説の末項で、こういうことを言っておられます。「これに対し今日巷間には、その基調を緩和し、何らかの景気対策を要望する声がないとは申せないのであります。しかしながら、内外の経済情勢にかんがみるときに、わが国経済拡大発展は、経済健全化基調とした資本蓄積を基礎として、初めて達成されるのでありまして、インフレ的景気政策はこの際とるべきものでないと思うのであります」と、自由党その他からの議論も考慮に入れながら大みえを切っておられますが、この基本方針はくずれておらないかどうか。この点については遺憾の意を表せられましたけれども、この基本方針はくずれたか、私どもはくずれておると思うのでありますが、大蔵大臣の御答弁をお願いします。
  12. 一萬田尚登

    国務大臣(一萬田尚登君) お答えいたします。私はそういう今お読み下さった私の演説基調がこわれていないと考えておるのであります。ただこわれていない、こわれていないといっても、これは要するに議論になりますから、私若干これにつけ加えまして、このこわれていないということを申し上げます。それは一番の問題の点は、一般会計から投融資を出した、その投融資を今度は引き上げまして、そうして、その埋めを金融債等公募によろう、ここに問題があるのであります。従いまして、私の考えでは、もしも公募ができない、十分市場消化ができないということになってくると、これは私いろいろ問題があると思うのでありますが、これは十分今後において消化し得る、こういうふうに確信をいたしております。もっともこういうようなものの措置をとる場合、率直に言って、やはりタイミングというものがあるのであります。私は、そのタイミングの点において、従来より慎重にというふうに考えておったでありますが、しかしこれは要するに、この程度の問題、今後のやり方において十分このカバーをし得る、そうして全局のためにその点は若干自分の意見が後退しても、全体において日本財政経済の、特に日本経済に及ぼす好影響というものを考える場合には、それは私同意する、こういう見地に立っております。
  13. 吉田法晴

    吉田法晴君 けさの日本経済新聞は、金融大幅に緩まんという見出しで、「今度の民自両党の予算折衝一般デフレ政策限界に達し、下期から明年度にかけては拡大政策に転ずるのではないかとの期待を与えたとされているので、この面からはインフレ含み動きが現われる恐れもある」という、こういう記事がございます。おそらくこれは一般に受けております印象であろうと思うのでありますが、こういう批判、見方について、それでは具体的にどのように考えられるか、それから昨日も問題になっておりましたけれども補助金整理という方針はくつがえったのじゃないか、これに関連して、補助金等整理に関する法律に対して、どういう態度をとられるか、これも問題でありますが、これらの点について大蔵大臣の所見を伺います。
  14. 一萬田尚登

    国務大臣(一萬田尚登君) お答え申し上げます。今回の修正によりまして、この日本経済インフレを招来する危険が増大しておりやせんかという見解であります。これに対しましては、私はそういうふうに考えておりません。むろん今後の財政経済施策いかんによっては、いかなる場合におきましても、そういう危険があることはこれは申すに及びません。しかし今後の財政経済は当を得るにおいては、この修正によって、日本経済インフレに落ち込む、あるいはそれが非常に危険性を大きく持っているということはありません。これは具体的に申しましても、今回の財政は、修正後においても、これは歳出にしても、租税収入歳出を全額まかなっておるのであります。問題は従って金融面においてインフレの傾向が強いかどうかということにある、この点につきましては、御承知のように今日のデフレ政策の遂行、特に財政規模におきましても、三十年度におきましては、決して私はインフレを招来するような規模の大きい財政ではないと考えておるのでございます。依然として経済においてデフレの、いわゆるこの地固めの政策を実施して、かつ将来の発展に備える基盤を養っていくという、この計画根本はここにあるわけであります。ただこの金融面でありますが、今後の金融政策において、やはりもろもろの点を十分勘案いたしまして、当を得なくてはならぬと思っておるのでありまして、こういう意味におきまして、これらの資金の流れといいますか、資金需給関係、あるいは資金をどういうように使うかということについて、一そう私注意を要すると思うのでありまして、これは認めてもいい、これはどういう方法でやるか、目下、十分検討を加えていきたい、こういうふうに考えております。
  15. 吉田法晴

    吉田法晴君 同僚木村委員からも質問を申し上げましたが、金融に逃げたと、こういうお話でありますが、従来の公債発行方針は、こういうずるい形ではあるけれども、くずれたのではないか、こう私ども考えるわけでありますが、補正予算のことは昨日木村さんから聞かれましたから私からは聞きません。来年度以降も公債発行しない、そういう方針を堅持するのだと、こういうことでございますか、その点を念を押しておきたいと思うのです。と申しますのは、あとでも触れますけれども防衛分担金削減交渉関連をして、日米共同声明によって、来年度以降の防衛力強化約束政府はしておられます。そうすると、一たび公債発行方針がくずれるならば、来年度以降において、軍事公債あるいはそれに類するものの発行危険性がはっきり出て参ると考えるのでありますが、大蔵大臣どのように考えておられますか。
  16. 一萬田尚登

    国務大臣(一萬田尚登君) 来年度の予算編成については、これを十分歳出歳入全体について、特にこの歳出面等において考えてみなくてはならん点が多いと思います。今これについてどうということをとここに確言はいたしませんが、私自身の考え方をお聞きになるといたしますれば、私は来年度においても、公債発行公債に財源を求むることを考えてはおりません。特に赤字公債を、公債にしても赤字公債というものの発行はこれは私絶対にする考えはありません。
  17. 吉田法晴

    吉田法晴君 赤字公債ということでございましたが、先ほど私は軍事公債という名前で申し上げました。軍事費がわれわれの言うように純消費的なものであるか、あるいはそうでないかということは、これは議論の分れるところでありますけれども軍事関係のこれを赤字考えられるかどうかという点もありますので、その点は重ねて一つ軍事費関係のために、そういう公債政策は絶対にとらないと、こういう約束をされるのでありますか。昨日補正予算関連をして内閣責任をとるということもございましたので、来年度の話でございますけれども方針一つはっきり承わりたい。
  18. 一萬田尚登

    国務大臣(一萬田尚登君) お答えします。私は軍事費につきましては、日本経済力に応じて初めて考慮さるべきもので、これは条約面においてもはっきりしている。従いまして赤字公債によって軍事費をまかなう、かようなことは考えておりません。
  19. 鳩山一郎

    国務大臣鳩山一郎君) この際ちょっと発言したいのですが、それは私が来年補正予算を組またいか、組んだらどうするかという質問がありました。
  20. 吉田法晴

    吉田法晴君 それは私は質問しておらん。
  21. 鳩山一郎

    国務大臣鳩山一郎君) それはこのたびのような、このたびの修正のような意味においての補正予算は絶対に反対だという意味でして、もしも天災がありまして、その災害のために費用を出さなくちゃならんというような場合には、補正予算をやむなく組まなくちゃならん場合もありますから、そういう意味も、(「それは別だ」と呼ぶ者あり)別だという意味でありますが、それだけは御了承願いたいと思います。(「天災以外は」と呼ぶ者あり)天災以外には組まない。
  22. 吉田法晴

    吉田法晴君 その点は私から質問をしたのじゃなくて、木村さんから質問をされて答弁をされたのでありますが、一応ここで私どもは承わるということだけにして、災害を除いて補正を組まなければならんというような事態になるならば、この方針に対して責任をとるという点は私ども承わっておきます、それでは。
  23. 佐多忠隆

    佐多忠隆君 関連して。債券発行の問題で大蔵大臣は当初計画方針がくずれていないというお話をるるされておりますが、それをもう一ぺん明瞭にしていただきたいと思うのは、公募債発行は、昨年度は三百九十億を予算として計画をされた。しかるに、これが昨年度一年間に実際に消化され、実行に移されたのは三百三十五億で、計画通りにいかなかった、予算通りにいかなかった。三百九十億は非常に重過ぎたんだということで、それを訂正をなさって、今年度の計画は、三百八十五億の公募債計画として当初お出しになった。これは明らかに昨年の三百九十億が重過ぎたから、これよりも少し少な目に出さなければ消化できないのだという御趣旨で、こういう方針計画をされたと思うのです。しかるに、今度の補正によって、三十年度当初予算では、先ほど申しましたように、三百八十五億であったのが大幅に引き上げられて、公募債は四百三十億となって、非常に増加をいたした。しかもその増加をいたした額は、昨年当初計画の三百九十億よりさらに大幅に増額をしたということになっておる。そうすれば、公募債公募方針としては、去年より低目に計画をしなければならないという方針であったにかかわらず、逆に去年よりはるかに多く公募債計画をされたという結果になっておるのであって、それらの点から見ても、この消化が非常に困難であるのみならず、方針として御変更なさったことが数字的にあまりにも明瞭であると私たち思うのでありますが、その点をどういうふうにお考えになりますか。
  24. 一萬田尚登

    国務大臣(一萬田尚登君) お答え申します。昨年度において、公募が今御指摘のように三百九十億、これが果して適当な額であったかどうかということは、これは私、これに問題があると思う。なぜと申しますれば、昨年度におきましては、日本銀行に対する民間の借り入れも、日本銀行貸し出しも、なお四千億というものを上下しておった。非常にまだ日本銀行依存度が高い。現実に昨年度において日本銀行に返金した、通貨回収になったのも千九百億円、そういうふうにまだまだ金融機関の力というものが非常に弱いのであります。しかし今日におきましては、特に昨年度のいわゆるデフレ政策への転換、物価の安定等からして、貯蓄力増大、しばしば私が引用しましたように、銀行だけの預金と貸し出しの差額を見ても、すでに二千億ぐらいはある。そして今日の日本銀行依存度は、もう日本銀行に六百億ぐらい民間が返せば、そう日本銀行に返金する余地はない。今日日本銀行貸し出しは二千億を割っており、千五、六百億ぐらいじゃないか。こういうように、非常に情勢が変化をいたしておるのであります。そういう意味におきまして、今回の金融債——私はむしろそういう情勢ならば、初めから公募公募でいけばいいじゃないか、こういうことを言われるかもしれない。私はそこのところはちょっと見解が違うので、そういう情勢ではあるが、なお、一般会計からこれを出す、いわゆる財政投融資に向ける。これは金利といろいろ関係がありますが、そういうような関係から、そこに余力があったから、私の原案ではそういうふうになっておるのでありますが、私はこれを公募に回して、決して消化できないということは——考え方も変っておりませんし、実際の消化も可能である。かように考えております。
  25. 吉田法晴

    吉田法晴君 金融事情が違ってきたし、よくなってきたから、公募債にしてもふやしてもスムースにいくだろう、こういうお考を述べられました。ところが、今度の両党の修正に伴って、この点も政府はのまれたと思うのでありますが、資金委員会というものを作って、預貯金の強制あるいは資金統制をやろうという構想が出て参っております。これは実際の預貯金現実、それから今の見通しからしますならば、実際にこれは問題だと思う。この資金委員会による資金統制という問題は、従来大蔵大臣の言われてきた金融正常化、あるいは自由主義と全く逆でありませんか。あるいは金融正常化自由主義というものの中に、そういう資金統制というものも入っておるのかどうか、大蔵大臣にお尋ねいたします。
  26. 一萬田尚登

    国務大臣(一萬田尚登君) 決してこれは違わないのであります。一つには、これは私の考では、今回預貯金増大について、たとえて申しますれば、預貯金の利息について税の減免の措置を講ずる、こういう法案も提出しておる。非常に国家的な力を持って預貯金増大をはかるという面あがる。同時にまた金融機関資金というものについての公共性、こういうものも、これは国民銀行等金融機関にいわゆる信託をして、国家経済のために最も有効に使ってほしい、こういう信託関係が成り立っておるということもある。むろんこういう点について、従来でも自主的にはやっておったのであります。従いまして、そういう点についてて、私がかれこれ言うのではありませんが、そういう点もあります。そうして、今日においてやはり一つ金融正常化というところに向って国の力を向けていく一つ転換期にある。大きく転換をしていく。ですからそこは単にそういう資金動き自由放任と言いますか、自主ということばかりに頼っておったときには、これはやはり私は安心ができない点もあろうと思う。いわゆるものの転換期で、それがうまくいって、ずっと正常化してしまう、そこにちょっと何と言いますか、それが十分うまくいくような、うしろだてを持つということはいいことだと思う。従いまして、今回の措置も時限的であって、これを永久にやるというのじゃなく、この転換期を越すために、ちょっとそういううしろだてを持っておって、過ちなきを期しようというような考え方で、これを考えておるのであります。従いまして、できるだけ金融機関等が自主的に——むろんこれは一つ企業でもあるから、企業の点もありますが、資金の運用については、最も国民経済的な見地に立って自主的に運用されるということを、あくまで私は期待いたしますが、それに対して、やはり国家的な目的達成のために一つうしろだてを持つ、これは転換期にきておりますから用心をすることは私はよかろうと、かように考えております。
  27. 吉田法晴

    吉田法晴君 今の答弁の中には矛盾がございます。自主的にやるというならば、それは転換ではないでしょう。しかし自主的にいく限度を越えておるからそこで国家機関が入って統制をする。しかも自主的な機関によってそれをやるというなら別でありますけれども、あるいは行政的な措置というならば、まだあなたの言われるような多少うしろだてを加えた転換ということができるかもしれませんけれども、法律を作って、これは貯蓄奨励運動じゃなくて、おそらく天引貯蓄等も行われるでしょうし、あるいは資金の配分についても法律に基いて統制が行われるだろうと思うのでありますが、法律を作ってなぜやらなければならないか、法律を作ってやるというところには、転換はそういう自主的な転換じゃなくて、強制的な転換がございましょう。国家権力による統制がございましょう。それは大きな原則的な転換じゃないですか、重ねて御答弁を願います。
  28. 一萬田尚登

    国務大臣(一萬田尚登君) 私が転換と申しますのは、あるいは若干正確性を欠くかもしれませんが、従来、特に戦後におけるインフレの進行過程等から、大体において非常に税金に依存をしておったのであります。従いましてこの財政投融資においても、税金による財政投融資が非常な比率を占めておる。これは従来の復金からさらに今日の開発銀行、この今日の貸出残高がどの程度に残っておるかということを考えれば、きわめて明白で、その及ぼすところは、日本の基幹産業にはすべてに、石炭、鉄、造船、すべてに及んでおる。こういうふうな、私はこれを今日民間金融に移していく、転換させる。こういうふうに、これが私が言う転換であります。従ってこういう場合に、国家のそういう税金であれば、これは当然税法に従って税収入を確保する、それを一つの企画に沿うて流し込むのでありますから、これは間違いなく、それを今度は一般民間金融に持っていく、そういうことが金融正常化である、かように私は考えます。ですからそういうところにおいては、これは私は金融界の自主性にまかして十分それでいけると思うが、しかしまた一定期間、ごく短かい期間にカーブを切るところにちょっと番人を立てるというふうな考え方も私は必ずしも不当でない。それらの点については十分どういう内容を持つか、検討を加えてみたいと思います。
  29. 吉田法晴

    吉田法晴君 今のお話では、両党の協定の中にありますように、法律を作って云々ということはおやりにならないのでありますか。
  30. 一萬田尚登

    国務大臣(一萬田尚登君) これは私は十分今検討を加えております。どういうふうな内容を持つか、立法措置をとるかというような点も今後考えようと思いますが、おそらくそういうふうなことが必要ではないか、いわゆる用意は、準備することは私は今の考えではよくはなかろうかと思っておるのでありますが、内容については、今後ただこれでもって金融統制を加えるという考え方を持っておらないという、これだけはっきりしておきます。
  31. 佐多忠隆

    佐多忠隆君 資金委員会を設けるかどうかはどうも今きまっていないというふうな御答弁でありましたが、六月一日の民主党、自由党、両党の話合いの結果確認された、いわゆる十一原則というやつですか、その中にははっきり、経済自立体制のためには財政投融資の量の増加をはかる、預貯金量の一定割合を財政投融資資金に活用する、この基本的立場の了解をみるに至った。そして預貯金の一定割合を財政投融資に向けるに当っては資金委員会を設置すること、金融機関公債または金融債の保有、その他大蔵大臣が指定する方途に運用をしなければならない、これに必要な法的措置を用意することというようなことが確認をされたということになっております。これを大蔵大臣は御存じにならないというのかどうか。  それから同時に、今大蔵大臣は、資金統制はやらないのだということをおっしゃいましたが、資金委員会の設置の考え方は、今申し上げた通りに、資金統制をやるのだということの明示にほかならないと思うのです。そのことは現内閣が、鳩山内閣経済計画を総合的に長期的にやる、長期的な計画的な運営を経済運営の基本原則とするというのであるならば、そこに必ずや資金の面においても総合的な資金計画が出なければならない。特に産業計画その他と照応した資金計画がなければならない。しかもあなた方の計画、総合的な計画の中心点は金融面からなんだ、資金の面からなんだというお考えである以上は、特にその点が考慮されなければならないと思う、段階はそこにきている。ただ問題は、そういう資金計画の作成と、その計画に基く運営を官僚統制というぎこちない形においてやることがいけないのだ、そこには十分の配慮をしなければならない。それが今大蔵省で考えられている法的措置は、単なる官僚統制に堕するから、それでいけないのだという考えであると思う。従ってこの資金委員会の設置の問題については、金融界から猛烈な抵抗があることも覚悟をされなければならないと思う。しかし私はいかに抵抗があろうとも、その抵抗を排除して、総合的な計画的な資金の運営がされることがこの際絶対に必要なんだ。あなた方は資金蓄積、資金蓄積とおっしゃるが、過去数年において蓄積はむしろ過剰になされ過ぎているというのは、数字がはっきり示しているところなんです。問題は、その蓄積された資金が適正に配分をされていないという面があるのだ、それらのことを総合的に勘案するならば、資金の合理的な統制はまさに必要なんで、そういう意味では適正な、むしろ適切な統合であるならば、この際勇を振ってやらなければならないし、そのためには金融資本の抵抗、圧迫があろうとも、それらを排除してやり切ることが、鳩山内閣がほんとうに経済政策を適正に運営をし、打ち立てていくかどうかの岐路にあたると思うのですが、それらの点をどういうふうにお考えですか。
  32. 一萬田尚登

    国務大臣(一萬田尚登君) 一点の資金委員会、これに関連するこの法案の問題ですか、これは民自両党で了解せられたと思いますが、私が申し上げたのは、政府としてこれを法案として提案するか、まだこれは今検討を加えているということを申し上げたのであります。先ほど来私がしばしば答弁の間に漏らしているといいますか、言いましたように、私といたしましても、いわゆる曲り角のカーブに番人を立てて置くというような意味合いにおいてやはり考えていいのじゃないか。しかし政府で提案するかは、まだ決定していないというふうに了解願いたいと思います。  それから資金の流れの規制、経済計画、それらは当然ではないかという御趣旨、それはまた六カ年計画をやらんとする現内閣として当然とるべきじゃないかという御趣旨、この資金の流れを、計画性を持つ経済を実現していくために、資金の流れをそれにふさわしいように持っていくということについては、私もその通り、それを統制的な形を、統制色を出すかどうかというところに問題がある。御意見は、従来の官僚統制がいかぬと、こう言われている。私もそれは何も異議ありませんが、私はもう少し考えが違うので、そういうふうな流れを先ず金融界の——これは金融というものはなかなかむずかしくて、規制しても、これは官僚統制なるがゆえにどうというよりも、金融自体にやはりむずかしさがあるので、どの金、この金、紐がつかぬこの金といっても、そこで実際使う人が使ってくれない、それも仕方がないという事態もいろいろある関係から、私はやはりでき得る限り、自主的に、金融機関でも国を思わぬ人はないのでありますから、できるだけ自主的にやらせることが、やはりこれは最善であると思うのでありますが、それがいかぬときには、お説のようにする準備を持っているというのが、今の段階においてふさわしいであろう。もしもいかぬならば、これは私が財政演説におきましても、金融においても自主性はとうとんで、そうして国民経済に役立つように資金を扱われることを期待するが、もしもそれがいかない場合には必要な措置をとるということを、私は財政演説にも申し述べておったのでありまして、この考え方と今回のやり方とは一つも私は違ったところはないと考えております。
  33. 吉田法晴

    吉田法晴君 佐多委員から私の質問を補足をして、われわれが金融計画的な運営に反対しておるのではないと、こういう点は補足をしていただきましたが、総理大臣として、鳩山内閣日本経済計画的な再建ということでおやりになるならば別問題、しかし今言われております資金委員会なり、あるいは両党による構想、法律による資金統制、これはおそらく預貯金の強制、あるいは天引貯金の何らかの強制等も含んで参りましょうが、これは民主憲法の精神からいって非常に問題であるし、それから歴史的に考えますならば、かつて準戦体制といわれたとき以外にはなかった。この点鳩山首相として、根本的なこれは問題だと思いますので、鳩山首相に一つ答弁をお願いしたいと思います。
  34. 鳩山一郎

    国務大臣鳩山一郎君) その点については大蔵大臣から答弁をしてもらった方が適切だと思いますので、大蔵大臣にお願いいたします。
  35. 一萬田尚登

    国務大臣(一萬田尚登君) 先ほどからしばしば申し上げましたように、この命令融資的なことは絶対に考えておるわけじゃありません。そういうことの弊害がいかに大きいかということは、すでに私戦時を通じてもう試験済みだと思います。そういう意味におきましても、私が先ほどからしばしば申し上げますように、一定の方向はこの政府として示すべきだと思います。しかしそれに順応させるのに、金融機関等の、実際金を貸すものの自主、その良識というものを尊重しなければうまくゆかないと、私はこういう考えに立っておるのであります。
  36. 吉田法晴

    吉田法晴君 きのうからもそうでありますが、鳩山首相が経済財政基本方針といったような問題についての全然お考えがない、御見識がないということは大へん残念であるし、私は今の民主政治のもとにおいて、これは鳩山首相の大きな欠点だとして、一応猛省を促しながら先へ質問を続けたいと思うのでありますが、この三十年度予算修正のために、たとえば資金委員会について法律を作るかどうか、こういう問題もございますが、そのほかに税法その他十七、八の法律案が必要なようでありますが、この予算修正を含みまして審議をいたしますには、その法案が出そろうことが必要でありますが、いつまでそれを用意せられますのかこれは総理じゃ無理かと思いますが、官房長官からでもお答えを願いたいと思います。
  37. 根本龍太郎

    政府委員根本龍太郎君) お答え申し上げます。両党の予算修正に伴いまして、修正いたさなければならない法律あるいは新たに立法しなければならない問題につきましては、これは本来の性質からするならば、両党の議員立法として出されるのが筋でございます。しかし場合によりましては政府提案とする場合もありますが、目下この点については両党の折衝委員において研究中でございまして、政府としてはすみやかに予算審議との関係もございますので、提案されることを要請しておる次第でございます。従いまして、いつどの法律が上程できるかということについては、まだ確答申し上げ得ない段階であります。
  38. 吉田法晴

    吉田法晴君 先ほどの資金委員会の構想、あるいは今後の資金計画と申しますか、両党の決議には資金統制の面が出ておりますが、それらの点について明らかにならなければ、これは予算審議が困難だということを申し上げて、予算修正関連します最後の、憲法調査会の問題に関連をして、これは鳩山首相にお尋ねをいたします。  憲法調査会を作るということを含んで予算修正をのまれたのであります。従って憲法を改正するかどうか、改正する意図があるかどうか、この点も、これは鳩山首相に念を押しておかなければならぬ点であります。  それから昨日来の質疑を聞いておりますというと、鳩山首相は憲法をも御存じない。こういうことを私は考えるのでありますが、憲法九十九条、総理大臣初め国会議員もでありますが、公務員等の憲法遵守を命じております規定をどのように考えておられるのか、この二点について鳩山首相の答弁を願います。
  39. 鳩山一郎

    国務大臣鳩山一郎君) ちょっと質問がわからなかったのですが、憲法を遵守して……。
  40. 館哲二

    委員長館哲二君) 吉田君、もう一度。
  41. 吉田法晴

    吉田法晴君 憲法九十九条には内閣総理大臣を初め「国務大臣国会議員、裁判官その他の公務員は、この憲法を尊重し擁護する義務を負ふ。」とはっきり書いてございます。その九十九条を、これは御存じないでは済みません。この規定の精神、憲法全体からいって、民主憲法あるいは平和憲法を守るべき義務から考えてみて、憲法を改正する意図があるかのごとき昨日来の答弁でございましたが、どのように考えておられるのか承わりたい。
  42. 鳩山一郎

    国務大臣鳩山一郎君) 私はその条項は、われわれの憲法改正の権利をはばむものだとは思いません。
  43. 吉田法晴

    吉田法晴君 憲法改正の権限をはばむものではない。この憲法の条章にははっきり「この憲法を尊重し擁護する義務を負ふ。」と書いてあります。
  44. 鳩山一郎

    国務大臣鳩山一郎君) 憲法には憲法を改正する手続も書いてあるのであります。その憲法が改正せらるるまでは、日本国民日本憲法を守らねばならぬということは当然な事柄であります。その規定があるからといって憲法改正の権利がなくなるというわけのものではありません。
  45. 吉田法晴

    吉田法晴君 憲法を改正されるまでは憲法を守らなきゃならぬ。そんな子供のような理窟ならば、九十九条を設けなくたって、それはどの法律でもそれはその通りであります。これは「憲法を尊重し擁護する義務を負ふ。」と書いてある。  それでは憲法改正問題についてお尋ねをいたしますが、この憲法を制定いたしました際に、法律の提案権さえも政府にはないのだ、憲法には、国会が唯一の立法機関と書いてある。憲法には、政府が法律を提案するという権限を規定した条文はどこにもない。内閣法だけにしか書いてない。そこで、それは、憲法は国会が最高の機関として、あるいは唯一の立法機関として持つのが、法律の提案権を持つのだけれども、実際問題として、一つ方法として内閣からも付随的に、あるいは従属的に提案権を認めるべきであろうという議論もなされておる。憲法に至っては、政府が憲法改正の提案権を持つなどということはだれも議論をしたことはありません。ごく少数の意見がございましたけれども、これは法制局長官はきのう、いろいろの意見がございましてと、事実を歪曲をいたしておりまして、問題は民主政治家として民主政治、あるいは平和主義を擁護しようという鳩山首相が、法制局長官の何と申しますか、最近の三百代言的な論議じゃなくて、その良心にかんがみられるならば、民主主義を守らなければならん、平和主義を守らなければならんという信念もおありなんでしょう。そして、この憲法がどういう建前に立っておるかということはおわかりになっておると思うのでありますが、なお九十九条は、憲法改正を総理大臣が軽々に言うということが、九十九条違反にならんと考えられるか、あるいは政府にも憲法改正の提案権があるとなお考えておられるのか。鳩山総理民主政治家としての良心にかんがみて一つ答弁を願います。
  46. 鳩山一郎

    国務大臣鳩山一郎君) 私は先刻申しました通りに、民主主義国家でも、憲法改正については、どこの国でもできると思います。憲法改正の権利というものは国民にある。それが民主主義でしょう。学説等については、法制局長官から詳細に答弁いたします。(「学説じゃない、政府にあるかということを聞いているのだ」と呼ぶ者あり)
  47. 林修三

    政府委員(林修三君) 今の吉田委員からの御質問は、政府に提案権ありやということについての御質問だと思います。この点につきましては、昨日もお答えいたしました通りに、学説上いろいろの議論はございます。これは結局憲法九十六条及び七十二条の解釈の問題になると思います。で、結局、憲法のその提案権が国会のみだという根拠で主張されておりますのは、憲法九十六条で、国会がこれを発議すということが書いてある点を、主としてとられておられる点でございます。これは、この読み方から考えまして、国会がこれを発議するというのは、国会が、両院が三分の二の多数でそれぞれ議決した上で、国民に対して発議する、そういうふうにも読むべきじゃないかと、そういうことから読めば、もちろんこれは、九十六条の規定は、必ずしも国会議員のみに提案権を認めたものではない、政府にも提案権を認めるという根拠もあるというふうに考えられると思います。また憲法七十二条は、内閣総理大臣は、内閣を代表して議案を国会に提出することが認められる、この中には、今、法律案も当然入っているというふうに解釈されておりますが、憲法改正のものも入っていないとは、これは言えないのじゃないか、かように考えております。おっしゃいましたように、学説は、政府にも提案権ありと言っておられる学者は、宮沢、田上の有力な教授がおられます。なしといっておられる教授は、佐々木教授等がございますが、いろいろな学説はございますが、従来法制局としての考えは、政府に提案権なしと言い切る理論上の根拠はない、逆にいえば、あるものといっていいんじゃないか、かように考えておる次第でございます。
  48. 吉田法晴

    吉田法晴君 鳩山総理にお尋ねをしたのに、林法制局長官から答弁をされて、大へんまあ私の意に反するのです。法理上の点については、今、林法制局長官が詭弁を弄しました、事実をしいて申し述べましたが、宮沢俊義さんの最近の学説は知りません。しかし憲法ができたときの説明には、新憲法の研究その他、私も、きのうもう一ぺんひっくり返して読んでみました。これは七十二条の、この議案の提出権についても、国会法のあれからいっても、それは法律の提案権が国会にあるという、国会のみにあるということを考えるならば、むしろ法律の提案権も内閣にはないのではないか、こういう意見と関連しながら述べられておるので、むしろ政府が議案の中に含んで憲法の提案権ありとあなたが今言われるように、積極的には述べておる議論ではございません。これは今あなたが言われるように、その通りであります。これは、あるいは法学協会雑誌等は、これは、あるいは名前一つかもしれませんけれども、多くの意見を参酌して、そうして中正な意見を私は出しておると思うのでありますが、今はまあ政府の一員に加わっておる浅井清さんにしても、その当時は、憲法の改正提案権が内閣にないと言うていることは御存じの通り、憲法の重要性、あるいは最高法規としての権威を従来の旧憲法に比べて高くしてある、あるいは改正規定なら改正規定を非常に厳重にした。これは単に国会だけでなしに、国民投票に付さなければならんという、非常に厳重にした精神から考えますならば、七十二条の議案の中に憲法が入るということは、これは誰が考えても常識的に入りません。これらの点は、政府の意見に国会がもし唯々としてこれを容認いたしますならば、私は重大な問題だと思います。委員長においても、この憲法の改正権がどこにあるのか、これは国会の権威、憲法上の国会の地位に関連する重大な問題でございますから、お取り上げを願いたいと思うのでありますが、法制局長官は事実を歪曲して、多くの学者の意見が、内閣に憲法改正提案権があるかのごとく申しておりますけれども、あるいは憲法制定の審議の際にも、あるいはその直後においても、大半の意見は、これは佐々木惣一先生その他を初めとして、大部分が、憲法の改正提案権は国会にのみある、こういって参ったところであることは、これは間違いのない事案であります。私はこの憲法の精神からして、あるいは九十九条という、遵守義務ではありません、擁護の義務をうたっており、そうして九十六条等にも憲法改正の手続を非常にむずかしくしておる点からいっても、憲法を守るべき、擁護すべき義務が、総理大臣初め国務大臣にも、これはあまねく課せられておる、そういう点から、先頃の選挙の際には、憲法を改正すべきでないという、憲法改正反対の議員が三分の一以上あっということで、憲法改正の反対の国民の意向も明らかになっておる際に、総理大臣が軽々に発案権についてまで、あるいは憲法改正の意図まで明らかにせられることは、それは国民に対するこれは裏切りであり、あるいは憲法を破らんとする、重大な政治的に糾弾さるべきことだと思うのでありますが、重ねて総理大臣答弁を伺いたい。
  49. 鳩山一郎

    国務大臣鳩山一郎君) 国会の権利は私は少しも害されることはないと思うのです。政府に提案権がありましても、国会の多数においてこれを阻むこともできるのでありますから、提案権があるかどうかということは、昔のような超然内閣の時代において問題になると思いますけれども、今日民主政治において政府に提案権があるのは私は当然だと思います。その政府の提案が、国会議員の要求するところの数を得なければ成立はしないのでありまするから、十分に三分の一以上の国会議員の権利というものは確かに実行する力があるのでありますから、何らの差しつかえは私は生じないと思うのであります。
  50. 林修三

    政府委員(林修三君) 今吉田委員のおっしゃいました点につきまして、ちょっと先ほどの説明を補足させていただきます。今吉田委員が仰せられました宮沢教授の説でございますが、宮沢教授のあれは、お説の通りに、はっきり積極的に言っておられることでないことはおっしゃる通りであります。いわゆる法律案の提案権が内閣にもないとすれば云々ということで言っておられます。従いまして、その点は明瞭に積極的に言っておられません。しかし逆に、内閣に法律案の提案権なしとは、はっきり言っておられませんし、その関連として憲法改正までやはり積極的に認められておるのではなかろうかと、かようなわけでございまして、これは今御引用になりました法学協会で出しました「註解日本国憲法」におきましても、宮沢教授はむしろ政府に提案権ありという説の方にも入れておられます。この点は御承知だと思います。
  51. 吉田法晴

    吉田法晴君 原本を見ればわかる……。
  52. 林修三

    政府委員(林修三君) しかし、おっしゃった説は、吉田先生もおっしゃったように、積極的に言っておられないことは御承知の通りでございます。  それから、私は必ずしもどちらが多数説とか少数説とかということを申したわけではございません。  それから浅井博士が憲法改正の提案権なしと言っておられることもおっしゃる通りでございます。しかし私どもとしては、理論的に、政府に提案権がないと言われるだけの理論的の根拠はないのじゃないか、むしろ逆に、あると認めてもいいのではないか、かように思います。
  53. 永井純一郎

    永井純一郎君 関連して……。私は総理大臣にお伺いします。  今の問題は非常に重要な問題だと思います。どうも鳩山内閣吉田内閣の轍を踏みそうに、だんだん、ものわかりが悪く私はなってきておると思う。(「そうだ」と呼ぶ者あり)前の法制局長の佐藤君も、同じように、海外出兵の問題について、自衛隊が出張で海外に行けるのだというような三百代言以下の議論をしておられた。それは政府が無理なことをしようとするから、それをやむを得ず法制局の事務当局が、へ理屈をつけるから、私はそういうことになってくると思う。今度の問題も同じことだと私は考える。これは私はこういう反問をむしろ総理大臣にしたい。  この平和民主憲法を改正しようという議論が非常に今出てきておるのであります。ところが九十九条で、総理大臣以下はこの憲法を守らなければならぬ義務がはっきりあるのでありまするから、憲法改正の調査会を作る前、この平和憲法を擁護する、擁護達成のための調査会というものをなぜ作らないか。私はその方が先だと思う。むしろその義務あがると思うが、それをなぜ作らないのか。その質問をしたい。(「おかしいぞ」と呼ぶ者あり)それでなければ、私は改正ということを政府がすることはできないと思う。むしろ義務があるのです。どうして守ろうかというための調査会をなぜ作らないか。この方が私は先だと思うのであります。(「おかしなことを言うなよ」と呼ぶ者あり)おかしくないよ。
  54. 鳩山一郎

    国務大臣鳩山一郎君) 永井君の見解と私は全く見解を異にております。
  55. 永井純一郎

    永井純一郎君 見解じゃないよ、信念ですよ。
  56. 鳩山一郎

    国務大臣鳩山一郎君) 信念でも見解でもどちらでもよろしゅうございますけれども、憲法の解釈についての見解が違っております。
  57. 永井純一郎

    永井純一郎君 どういうふうに違うのですか。
  58. 鳩山一郎

    国務大臣鳩山一郎君) 私は九十九条によって憲法改正の権利をはばむものではないと信じております。(「名答弁」と呼ぶ者あり)
  59. 永井純一郎

    永井純一郎君 権利はもちろんはばみません。権利はあるのです。国民の代表する国会の中にある。しかもそれは特別の議決でその改正はできることになっておる。しかし特別のこの憲法を守る義務というものは、国会議員だとか総理大臣以下に特にある。国会のみは国民の代表として、改正をするところの特別の決議によって改正する発議をすることができるけれども、そしてそれを国民に問うことはできるけれども、執行府の政府にはそういうものはないのです。これは明らかにむしろ擁護する義務があるのだから、その義務に従うところの、今日のような改正の情勢になってくれば、どうして擁護するかというための調査会をなぜ作らないか。それこそ私は作るべきだと思う。これは解釈が違うとか見解が違うとかという問題じゃない。その義務をどうしますか。憲法を守ろうというあなたの義務をどうするかということなんです。
  60. 鳩山一郎

    国務大臣鳩山一郎君) 私は、繰り返して申しますが、憲法を守るということは、日本の憲法を日本人が守るということは、これは当然な事柄であります。けれども、同時に、日本人は、日本の憲法の一部分を改正したいと思うならば、その改正したいという権利もあるわけであります。その改正することについて特別の規定が現憲法に設けられておるくらいでありますから、日本人がその憲法の条章に従って改正する権利があるのはもとより疑うべき余地はないと思っております。
  61. 永井純一郎

    永井純一郎君 もう一つお伺いします。
  62. 館哲二

    委員長館哲二君) 永井君に申し上げますが、関連はなるべく簡略に願います。
  63. 永井純一郎

    永井純一郎君 それはそれとして、私は承服できませんが、それでは私が言うように、あなたの守らなければならぬ義務をどういうふうにするかということです。それを聞いているのです。あなたは義務づけられている。一番さきに内閣総理大臣としては、改正をすることよりも、守ろうとする義務をどうして果すかということを私は聞いておるのです。それがあなたの義務なんです。
  64. 鳩山一郎

    国務大臣鳩山一郎君) 私は現在の憲法の条章に従って憲法改正をしたいと……。
  65. 永井純一郎

    永井純一郎君 条章に従って義務があるのじゃありませんか。
  66. 鳩山一郎

    国務大臣鳩山一郎君) 条章に従って改正をしたいと……。
  67. 永井純一郎

    永井純一郎君 義務をどうするのですか。条章に従う義務をどうするのですか。しなければならんじゃないですか。そんなことでは三百代言ですよ。
  68. 永岡光治

    ○永岡光治君 関連して……。私は、憲法改正問題が議論として出ておりますので、内閣にその提案権があるということは憲法の七十二条をその根拠にいたしているのでありまするが、この憲法は、先ほど吉田委員からも政府に対して質問をいたしておりまするように、軽々にこの改正を行うべきものでないことは、私は、国の最高法規である以上、当然であると思うのであります。従って、改正という問題について新しく章を設けて、第九章という章を設けて、そこで条章にこれは明確にしていると思う。これ以外に改正の問題について触れるところがないというのが、当然守るべきところのこの条章でなくてはならぬと思うのです。従って政府がもし提案権があるとするならば、私は第九十六条の中にも当然そういうことを触れなくてはならぬと思うのであります。あえてそれを触れてないということは、やはりこれは提案権を認めていないと、こういうように見なければならぬと思うのであります。のみならず、第九十九条には、政府としては、内閣としてはこれは守らなければならぬと、そういう義務の方にこそむしろ重点を置いてあるのでありますから、これは当然提案権という問題を政府は行うべきではない。もし行うとするならば、これは国民の権利として行うというのでありまするならば、与党というものがあり、与党において当然やるべきで、国会議員は持っているのでありますから、私はそういう意味で、政府には当然この憲法第九章をあらためて新しく改正という立派な章を設けて、特に厳重に規定している建前から見ましても、当然政府には提案権はないものと、こういうふうに考えておりますが、総理大臣はどのように考えておられますか。
  69. 鳩山一郎

    国務大臣鳩山一郎君) 私は、たびたび答弁した通りに、提案権があると思っているのであります。
  70. 永井純一郎

    永井純一郎君 義務の方が先ですよ。義務の方が……。執行機関国会だけですよ。
  71. 吉田法晴

    吉田法晴君 この問題はきわめて重大でありますので、論議を続けたいのでありまするが、時間がございませんから別に譲りますが、宮沢さんにしても、それから常識から考えて見ても、内閣法に定めてあるところは法律その他の議案ということで、法律以上に重大な憲法の問題は内閣法にも書いてない。それから第七十二条も、これは明らかに議案の中には内閣法を参酌してもない。鳩山首相は、内閣にあると私は考えると言われますけれども、その内閣総理大臣の地位は、主権者である国民がその代表を選んで、そこで意思をきめる国会信託によって、言いかえるならば国民信託によって総理大臣の地位に立っておられる。その総理大臣には九十九条の憲法擁護の義務が課されているのに、自分だけでこれを通せるということは民主憲法のもとにおいては許されません。論議はこれはまだ相当の時間を要しますし、別の機会にあらためて国会として取り上げてもらうことにいたしまして、問題を保留して先に進みたいと思います。
  72. 佐多忠隆

    佐多忠隆君 ちょっと関連して…。ちょっと今の御説明を聞いていて痛感したのですが、法制局長官の御答弁は、非常に政治的な判断を交えた政府の手先であるかのごとく、法制局長官としての独自性を非常にぼかすような御答弁があるように少くとも私は聞き及びました。これは前法制局長官の時代からそういう傾向が顕著に出て参ったと思いますが、法制局長官はもう少し厳然とした態度で、場合によっては、この法律の厳正な解釈に関しては時の政府と争ってでも法の権威を守るという態度を堅持されんことを特に希望をいたしておきます。(「気をつけなければいけない。」「特に憲法問題だ。」「なってないよ。」と呼ぶ者あり)
  73. 吉田法晴

    吉田法晴君 次に、日本の講和後の重大な段階を画すると考えられます日米共同声明関連をいたしましてお尋ねをいたして参りたいと思うのであります。あるいは安保条約によって一時期を画し、MSA協定によってこれを強化し、さらに共同声明によって、今後鳩山内閣のもし平和外交あるいは自立経済という方向でなしに、別に協力あるいは戦争体制というものを強化して参るとすれば、これはきわめて重大な問題であり、重大な段階であると考えますので、質問をいたして参りたいと思いますが、その質問に入るに先だちまして、この日米共同声明の中にあります政府の意向、こういうものがどういう意味を持っておるのか、これを一つお尋ねをいたしておきたいと思うのであります。あるいは第一にお尋ねをいたしたいことは、防衛分担金の削除に関連をいたしまして、「三十一年及びこれに引続く年間において、自己の資力のより大きな部分を防衛目的のために振向けることが、日本政府の意向であり」、こういう言葉もございます。それから防衛分担金の一億五千万ドルという金額は、年々これは検討するのであって、そして昭和三十年度については、検討をした結果、ございますような百七十八億減の三百八十億と、こういう数字もございます。この二つの言葉と、それから先般の当委員会における質問等を勘案いたしますというと、明年度以降においても、防衛分担金は減少をしても一億五千万ドルに復活することはないと解釈せられるのでございますが、その点については、どういう工合に考えておられるのか伺いたい。
  74. 重光葵

    国務大臣(重光葵君) この点は前にはっきり御説明をいたしたと思っておりますが、今年度に限りまして、今仰せの通りに百七十八億円を減額することに交渉がまとまって、本年の会計年度の防衛分担金の三百八十億と、こういう工合に合議が成立したわけでございますが、しかし日本財政状態が漸次よくなるということを予期いたしまして、次年度からは「自己の資力のより大きな部分を防衛目的のために振向けることが、日本政府の意向であり、」という意向を表示したにとどまります。従いまして次年度よりは防衛分担金の減額の交渉はむろんこれはできるのでありまして、また私その場合に臨みましてその交渉をやらなければならぬと思っております。その交渉において、でき得るだけそのときの事情に応じて分担金の減額の多きことを望むことは当然でございます。その方向に向って努力いたしたいと考えておる次第でございます。
  75. 吉田法晴

    吉田法晴君 もう一度念を押しますが、そうすると、この間の条約局長答弁によると、この金額は年々再検討をする。今年は百七十八億減、そしてこのことはあとで行政協定自身が改訂される、こう承知してかまいませんか。  それからもう一つは、今の言明によりますと、あるいは防衛庁長官も昨日新聞記者会見等で話をしておられるようでありますが、今後なおこの行政協定の改訂については努力する、防衛分担金の削減についても努力する、かように解釈してよろしゅうございますか。
  76. 重光葵

    国務大臣(重光葵君) 行政協定の改訂ということは申したことはございませんが、行政協定の改訂はする時期でないということを申し上げておいたと思います。しかしながら防衛分担金の削減については、必ずこれは定期に、(「定期じゃない。毎年と言ったじゃないか」と呼ぶ者あり。)すなわち毎年これは交渉をいたす考えでありますし、また交渉しなければならぬと思っております。それは今申す通り、なるべく多額の減額を得たいと、こう考えております。
  77. 吉田法晴

    吉田法晴君 それでは、少しあいまいなところがありますけれども防衛分担金の金額は、あとで行政協定が改訂される、なお分担金削減の交渉は続ける、こういうように了承をいたしまして先に進めます。「昭和三十一年及びそれに引続く年間において、自己の資力のより大きな部分を防衛目的のために振向けることが、日本政府の意向であり、」という、この言葉の意義はいかがでありますか。それから自衛隊のこの中身は、自己の資力というものの中身は、共同声明にありますような、あるいは自衛隊の増強、それからそれを含めます防衛庁費の増額あるいは軍需生産等装備も含むのかどうか。あるいは飛行場の拡張までもその中に含んでおるのかどうか。重ねてお尋ねいたします。
  78. 杉原荒太

    国務大臣(杉原荒太君) お答え申し上げます。ただいまのこの御質問共同声明の中にあります文句は、外務大臣からもお答え申し上げましたように、安保条約等によりまして、またいわゆるMSA協定等によりまして、防衛力について日本がみずから、防衛についてみずから責任を負っていく、漸増的に責任を負っていく、そういうことが規定されておりますので、そういうことを前提にしての一つ政府としての意向、方針の声明でございます。それをその場合実行するに当りまして、日本一般的の経済条件というようなものを当然考慮する、これは当然のことでございます。今アメリカとの間でも、そういう一般的の日本側の意向、方針を表明したにすぎないのでございまして、具体的に数字的にどうというようなことは何も話し合っていない次第でございます。
  79. 吉田法晴

    吉田法晴君 数字を尋ねておるのではございません。政府の意向というものの意義を尋ねておるわけであります。が、明確な答弁がございませんでした。意向を表明するだけで、来年度以降においてそれが予算なり数字なりに現われるべき性質のものであるかどうか。協定ではございませんけれども、先般衆議院なり、ここでも問題になっていたようでありますが、どういう程度約束なのか、これをお尋ねしたわけであります。それからなおその中身は、これは共同声明は外務大臣責任において出されたのであろうと思うのでありますが、その中に自衛隊の増強その他防衛庁費の増加だけを政府の意向として言われたのか、それともあの共同声明の中にありますような、軍需生産だとか、あるいは装備の点についても含むのか、あるいは飛行場の拡大というものまで政府の意向の中に入っているのか、こういう意向の中身を外務大臣にお尋ねしたのであります。
  80. 重光葵

    国務大臣(重光葵君) この共同声明のできましたときの考え方でございますが、その考え方は、ここに書いてあります通りに、防衛目的のためにより多くの部分を、大きな部分を使う、こういう考え方でございます。それがどういう程度まで防衛目的に入っておるかということを詳細に分析してきめたものではございません。従いまして防衛目的のために、これはこの日米双方の合意でありますから、いかなることが防衛目的であるかということは、そのときにおいて双方とも認め合わなければそれはなりません。しかしさような、いかなるものが防衛目的であるかということは、そのときにはっきりして差しつかえないものであると、この協同声明のできたときには特にどういう費目をどうするというような詳細な了解があったわけではございません。
  81. 吉田法晴

    吉田法晴君 大へん時間を食ってはなはだ残念でありますが、費目、数字のことを言っているのじゃなくて、日米共同声明の中にも、あるいは防衛庁費の問題だけでなくて、軍需生産のことも、あるいは軍事基地のことも、飛行場の拡張のことも、あるいは装備のことも入っているが、その費用云々という点については、それらのものも項目として、あるいは考えとして入っているのかどうか、こういうことを聞いているのです。
  82. 重光葵

    国務大臣(重光葵君) それは次の分担金交渉のときにはっきりとなることだとして差しつかえないことだと思っております。
  83. 吉田法晴

    吉田法晴君 明らかになりませんが、時間がございませんから他に譲りまして、一点だけ総理にお尋ねをいたしますが、昨日総理は恩給法に関連をして、恩給法の恩給費の限度いかんという点について全然御意見がございませんでした。財政方針についてもそうでありますが、共同声明についてはこれは総理御承知だろうと思うのです。来年度以降において、自己の主力、言いかえるならば財政負担の中で防衛努力をするということを日本政府の合意によって声明をした。言いかえるならば来年度以降において、今年もそうでありますが、軍事費増大を少くとも、その程度はわかりませんけれども責任程度はわかりませんけれども約束をされた。これは今年の予算編成に当っての方針とは違っております。なぜもっと政府として、これらの点について言うべきところを、国民の意のあるところを言わなかったか。あるいはこの声明の意味するところのものにかんがみて、総理大臣としての国民に対する責任をどのように考えておられるか、一つ承わりたいと思います。
  84. 鳩山一郎

    国務大臣鳩山一郎君) 自衛軍の漸増は、条約上の日本の義務でありまするから、漸増するために政府考えるということは、条約上の義務だと思っております。
  85. 吉田法晴

    吉田法晴君 それではこの声明にありますように、条約上の義務を履行するために、軍事費がどんどんふえていくこともこれはやむを得ませんと、あなたは選挙のときに明言されましたか。あるいは憲法改正問題についても言われましたか。そうではございますまい。国民約束したもの、あるいは三十年度、予算編成当時にあったところの軍事費削減の方針について、あるいは約束についてどういう責任を負われるか。あるいは、たとえばそれでは限度という問題もございましょう。国民生活あるいは財政の許す限り云々ということもございますが、どの程度までそれでは鳩山内閣としては軍事費に削くことを考えておられるか。これは国民に対する責任の立場から、国民に対する責任はもう忘れておられるようでありますが、主権者に対する義務は忘れられているようでございますが、鳩山総理一つ責任ある答弁をお願いいたします。
  86. 鳩山一郎

    国務大臣鳩山一郎君) 自衛軍の漸増は、日本経済六カ年計画とにらみ合せてやるよりほかはないと考えております。
  87. 吉田法晴

    吉田法晴君 防衛計画について、時間がございませんから、一括して承わりますが、防衛六カ年計画というものは、防衛庁試案としてあったというお話でありますが、その後追及をいたしましても出されません。六カ年計画があるのかないのか。それからその中の数字は十八万、十個師、あるいは二十万トン、千五百機だとかいったような数字は天下周知の事実でございますが、防衛分担金交渉に関連しまして、どういう意向を表明され、あるいは共同声明に関連して、どういうことを防衛庁であるいは政府で言われたのか、あるいは意向を表明せられたのか、一つ承わりたいと思います。それから防衛計画があってもこれを発表をしない。国民国会に対して秘密にしようとしているが、そういう態度が、これは民主政治態度か。あるいは今日本に秘密に関するというものはこれはないはずである。何かいつの間にか軍機があるような口吻を、国防会議設置法に関連してもお話しになりましたが、そういう秘密がだんだん育つということになりますならば、これは軍部を育てることにもなりましょうけれども、かつての軍事支配体制のもとにおける事態が生じてくるでございましょうが、総理大臣としては、どういう工合に考えていられるのか、承わりたいと思います。
  88. 鳩山一郎

    国務大臣鳩山一郎君) 防衛庁長官から答弁をいたさせます。
  89. 杉原荒太

    国務大臣(杉原荒太君) お答え申し上げます。政府といたしましては、経済六カ年計画に見合う長期の防衛計画を作るというつもりで、そういう方針でおります。従いまして防衛庁といたしましては、当然の職責といたしまして、ただいま研究中でございまして、これはしかしいろいろと国力、特に財政関係国民生活との関係その他いろいろとこれは非常に私は検討をしなくちゃならないものと考えまして、今せっかく検討中でございまして、まだ事実成案を得るに至っていない状況でございます。  それからこの御質問の中にもございましたが、分担金交渉の際には、当時政府を代表して折衝しておられました外務大臣からも、日本側としては、そういった長期の防衛計画を立てるつもりであるということは向うにも表明しておられますが、それ以上のことは申しておりません。  それから国民国会との関係、これは防衛のことというものは、特に私は国民国会の申すまでもなくその理解納得を得るということが最も大事なことだと思います。従いまして、実は長期計画というものを立てますのも、一つはこれが一体どれだけ、漸増というが、どの限度までゆくかそれがいつまでもわからぬというような状況では、かえって私は国民の理解、納得、支持というものがむずかしいのじゃないか。計画を立てるということも非常な困難な諸条件がございますけれども、何とか大体の計画、しかもそれが単に狭い意味の防衛の見地からだけじゃなく、大局的に政治的に判断を下して妥当なところの一つの案を作りたい。それがためには、もちろん政府が、内閣責任を持ってやるべきことではございますけれども、しかし慎重の上にも慎重を期する、大所高所から見て妥当な案を作るために、より慎重にするために、実は諮問機関として国防会議にかけてその上で決定したい、こういうふうに考えておる次第でございます。
  90. 吉田法晴

    吉田法晴君 鳩山首相の答弁を願います。秘密といったようなものが育つならば、民主政治というものはこれはなくなってしまいます。そういう態度について。
  91. 鳩山一郎

    国務大臣鳩山一郎君) それは限度でしょう。ちょっとよく聞いていなかったのですが。
  92. 吉田法晴

    吉田法晴君 この防衛計画についてもそうでありますが、あるいは国防会議その他こういう問題に関連して、秘密が当然のことのように政府の口から出て参りました。民主政治のもとにおいて、秘密というのあるはずがない。もしそういうものが育ってゆきますならば、民主政治というものはこわれてしまいますが、鳩山首相としては、どういう工合に考えておられますか。
  93. 鳩山一郎

    国務大臣鳩山一郎君) できるだけ秘密のない世の中にすることが必要だとは思いますけれども国家の上からも考え、徳義の上からも考えまして、政治にも幾分かの秘密は必要だと思います。
  94. 吉田法晴

    吉田法晴君 この問題についてももっと掘り下げたいのですが、時間がございませんし、そういう態度ではこれは民主政治のもとにおける総理は勤まりませんよ。  次に、軍需生産の今の政府の構想、それから方向というものを、一つ御説明を願いたいと思います。
  95. 石橋湛山

    国務大臣(石橋湛山君) 軍需生産につきましては、先般来防衛庁長官から申し上げておるように、実は防衛計画そのものがまだ確固たるものが前内閣以来ずっとできておらないのです。従ってこれに付属する防衛産業というものをどうするかということについても、実はいろいろ研究しておりますが、案がまだ立ちません。現在の自衛隊というものを基礎にしたら、日本の防衛産業というものは、ほとんど特別な国家機関か何かでそろばんをはずしてやれば別でありますが、そろばんにのっける産業は現に成り立たないということが現状であります。今研究はしておりますが、根本はやはり防衛計画そのものをはっきりしてもらうということが必要だと思います。
  96. 吉田法晴

    吉田法晴君 私は共同声明後、防衛力を増強してゆくだけでなしに、軍需生産もきのうきょう言われておりますような総合兵器発展計画といったようなものでどんどん進められ、あるいは軍需生産が中心になっていくのではないかと心配をいたしますが、さらに飛行基地の拡大というものをお約束せられました。現在拡大しようとしております飛行基地は、これは大型ジエツト機の発着のためのものであります。衆議院あるいは参議院においてもずいぶん論議せられましたが、最近の日本の姿を見ますというと、これは鳩山首相は条約上の義務を負っておるからということでございますけれども、どんどん飛行基地が拡大され、そうしてそれが日本の基地から何が飛び立っていこうと、これに対しては何ら私どもがこれを阻止すべき有権的な権限がない。そこで日本の内地から朝鮮戦争に参加する戦闘機が飛び立っていく。爆撃機が飛び立っていく。また仏印戦争に参加する。台湾附近の作戦にも日本の基地から飛び立っていく。今度拡大されようとする飛行基地からは原爆を持って飛び立っていくのではないかと非常な心配を持っている。衆議院で質問されたときに、小牧から原爆を積んで立ったのではないかという質問に対して、何ら政府は明確な答弁をしておりません。あるいは柳田氏は横須賀にミッドウエイに原爆が搭載されてきたのではないかという質問をされましたが、それにも明確な答弁がございません。現に日本の横田に原爆搭載機がおったことは事実でございます。これは否定するわけにも参りませんでしょう。そこでこうした私どもの心配、あるいは原爆戦争に日本が巻き込まれるのではないかという心配に対して、政府はどのような態度をとられるか。あるいは行政協定改訂の意思を表明せられましたけれども、行政協定だけでなしに、安保条約の廃棄、改訂の意思が、勇気があるかどうか。この原爆基地拡大に関連して明確な答弁鳩山首相に願います。
  97. 鳩山一郎

    国務大臣鳩山一郎君) 私は日本の自衛力の現状におきましては、安保条約を改正する考えを持っておりません。それから原爆が日本に持ってこられたとか、日本から原爆を積んでとかいうようなことについては、私はあなたと違った観察をしております。日本には原爆は来ておらないし、また日本にアメリカの原爆を持ってくる場合には、日本の同意を得なくては持ってきまい。こない。そういうふうに解釈しております。
  98. 吉田法晴

    吉田法晴君 事実認識は、先ほど私の申し上げました事実は、これは否定すべからざる事実であります。私は原爆を持ってくるはずがない、そう言っておられる間に、持ってこられても、あるいは日本の基地から飛び立っても、これを阻止する方法がないではないか。持ってくるはずがない。あるいは持ってくるという相談があったならば、これを拒絶する、こういう言明をなさるならば、あなたはそれを阻止する、行政協定の改訂なり安保条約の改訂に努力する勇気があるかどうかということをお尋ねしているわけです。
  99. 鳩山一郎

    国務大臣鳩山一郎君) 私は冒頭に述べましたように、日本が自衛力を持つ現状におきましては、安保条約を改訂する意思がないと申し上げたのであります。しかしながら、安保条約があったり、行政協定があって、普通の兵器ならば日本に持ってくるでしょう、条約上から。けれども原爆や水爆は、普通の兵器と同一視することはできないし、同一視しない、そういう確信を持っております。
  100. 吉田法晴

    吉田法晴君 確信だけでは何の保証にもなりませんよ、どうするのです。
  101. 佐多忠隆

    佐多忠隆君 関連して。今吉田君は事実をあげて、事実認識の問題として問題を提起していると思う。従ってもしお考えが違うのであるならば、その事実は間違いなんだ。そういうことじゃなくて、こういうことだったのだという御証明がなければ、事実認識として認めなければならないことになると思うのです。その点を一つ詳細にしかるべき大臣から御答弁を願いたい。
  102. 重光葵

    国務大臣(重光葵君) 今の御忠告によりまして、私から御答弁をいたします。今申されたような事実、すなわち原爆を米軍が持ち込んでいるではないか、いるという事実、それははっきりと米軍の責任者から否定を受けております。私が問い合せた結果、否定を受けております。そこでこれはそれが当然正しいと信じなければなりませんから、事実を打ち消して今までの御答弁をいたしたわけであります。  それから今総理が確信を持って、さような原爆を持ち込むようなことはないと思われるという趣旨の御答弁がありました。その確信は、駐留軍またアメリカ側の責任者の意向を確かめた上での確信でありまするので、これを私から御報告を申し上げます。
  103. 高田なほ子

    高田なほ子君 関連して。なるほど否定したということを伺っておるわけですが、しかしこのことは、だれもどんなに聞かれても原爆を持ってきておりますというようなことを、それは絶対に言わないでしょう。持っておってもそれは言わないかもしれない。私は、そういうことを水かけ論で言うのではなくて、安保条約並びに行政協定で明記してある通り日本は明らかに、アメリカ合衆国軍隊が陸軍、海軍、空軍その他の軍事的な行動をするために一切の便宜を与え、義務として便宜を与え、アメリカは権利としてこれを受け取っていることは明記されているのでありますから、義務としている限り、日本側はこうしたアメリカ側の行動を拘束する力はないのではないかと思いますが、この点について、外務大臣見解を求めます。
  104. 重光葵

    国務大臣(重光葵君) その点も、従来から私は繰り返して見解をはっきりと申し上げておる通りであります。それからまた原爆を持ってきておるか、こないかというととは、水かけ論であると、こう言われるが、さようなことを政府政府との間で責任を持っておる者が言う場合においては、私は水かけ論じゃないと思う。それが水かけ論であるならば、国際間の交渉は一切できないということになります。(「その通りだ」と呼ぶ者あり)  それから条約の行政協定の条文から私は解釈をして、この行政協定の条文において、一切の援助をするというような文字があります。その場合において、原爆のことは、一切考慮に入っておらなかった。原爆のことは新たな問題である。でありますから、行政協定の文句として権利義務が発生しておらぬと、こういうことをはっきり申し上げたのでございます。さような条約の解釈によって、アメリカ側もそのときには別に相談をすると、こう言っておるんでありますから、これ以上なこちらに対して保証はないと思います。それで御承知を願いたいと思います。
  105. 高田なほ子

    高田なほ子君 当時原爆がなかったから、新たにこういう問題が起きたときに相談をする、これを日本政府は信頼をする、こういうふうに私は御答弁を要約して受け取っているのです。しかし、そのことだけで私は安心はできないと思う。つまりアメリカ側が権利として持っているもの、日本側はこれに対して義務という立場にいるわけですから、義務である以上は、これを拘束する力はないのだと思うし、また原爆そのものに対して、今後日本側に対して相談をすると言うけれども、相談をした場合に、拒否する権利を持っていないのではないかということを私は今質問をしているのです。これに対しては何かピントがはずれた御答弁であったものですから、もう一度御答弁を願いたい。
  106. 重光葵

    国務大臣(重光葵君) 私の御答弁はピントがはずれていないと思う。私の答弁は今申した通りであります。幾らその点をはっきりと……御答弁をいたしておりますから、それに譲ります。
  107. 永岡光治

    ○永岡光治君 今外務大臣答弁された中で、相談するということはやはり問題ではないか。そこでかりに今ないといたしましても、あるかもしれませんが、かりにないといたしましても、相談した際には、政府はこれをおそらく拒否すると私は確信いたしております。もし強硬に向うがされたならば、それをなおかつ受け入れなければならない義務があるのではないか。私は安保条約の中から、出てくるおそれがあると思うのですが、どうでしょう。
  108. 重光葵

    国務大臣(重光葵君) 今申した通りであります。権利義務は生じておらない。新たな問題として相談を受けた場合には、日本の立場によってこれを処理します。
  109. 吉田法晴

    吉田法晴君 処理する。拒否するのですか。
  110. 重光葵

    国務大臣(重光葵君) そのときによって、これはそのときの政府がこれははっきりと態度をきめるでしょう。
  111. 吉田法晴

    吉田法晴君 今の政府は、……今の政府は。
  112. 重光葵

    国務大臣(重光葵君) 今の政府は、われわれはそういうことは受け入れないという態度をとってきておりますが、しかしそれは相談を受ける——相談をする権利はどこの国でもあります。これは当然のことであります。しかしその場合において、わが方の利益を考慮して、それによってこれをはっきりと、これに相談に応ずるか応じないか——イエス・オア・ノーを言う権利はこちらにあるのでありますから、こちらの考え方によって処理する。すなわち、われわれはそういうことは、日本を原爆の基地として戦争に巻き込まれるようなことは、われわれはこれは日本の利益に反すると思っているから、今相談を受ければ、むろんこれは拒否します。しかし世界戦争が起りまして、そのとき日本はどういうことになるかということになってみれば、そのときに決定すると私は今答弁するよりほかに答弁の仕方がないと思います。そのときの日本国民が決定すると私は思います。
  113. 吉田法晴

    吉田法晴君 時間がございませんから……。その次にお尋ねいたしますが、濃縮ウラニウム受け入れ問題について、昨年の六月三日ダレス国務長官は証言をしておったのでありますが、その中で、海外の友邦に対して原子力情報と材料を与えることによってわれわれの全原子力計画の基礎である原料基地を築き上げる能力を増強することになるであろうと言っておられます。ゼネヴァ会議で、原子力の平和利用のためにあるいはその条件等についてもっと有利な申し出があると想像される今日、どうしてゼネヴァ会議まで待たないのでありますか。総理大臣なり、あるいは外務大臣等から明確な答弁を願います。
  114. 重光葵

    国務大臣(重光葵君) 濃縮ウラン受け入れの交渉は、是が非でも急いでやろうというような考えを持ってやっているのじゃございません。また日本が将来科学進歩のために拘束を受けるようなことがあってはならぬのであります。しかしながら、今日科学の革命時期になって、科学の革命とも呼ばれているこの原子科学の進歩のためにわれわれは全力を尽す、日本の科学のこの方面の進歩のためにいい方法は、これはとらなければならぬ、外国の援助も必要でございましょう。しかしながら、それについて日本の科学進歩そのものを妨げたり、また拘束されたりするような結果にならぬことに注意しなければならぬのはむろんのことであります。従いまして、さような心配のない場合において、ゼネヴァ会議の意義を特に推測して、そしてその一日も日本の科学の進歩を早くしなければならぬ状態において、それを漫然と待つことも私はどうかと思う。しかしながら待つことが、その科学進歩の目的に沿うということがはっきりした場合には、むろんこれは待って差しつかえない。さような意味でありまして、特に急いでいるわけでも、特にこれを遅滞させる必要も私はないと考えて、大きな目的のために進んで行ってよかろうと、こう考えておるわけであります。
  115. 吉田法晴

    吉田法晴君 だから、ゼネヴァ会議をどうして待たんかというのです。  時間がございませんから、最後に鳩山首相にお尋ねをいたしますが、鳩山首相は民主党の総裁として、過ぐる選挙において、平和外交、あるいは国際的な平和共存、あるいは中ソとの国交回復、あるいは貿易の拡大、あるいは自立再建のための総合経済六カ年計画の実施、あるいは国民生活の向上、あるいは国民経済の拡大均衡、こういう方針選挙に勝たれたと思います。ところが、鳩山内閣には、あるいは民主党には、二つの性格があって、そうしたジキルとハイドのジキル的な性格もございますけれども、ハイド的な性格がある。対米協力、あるいは力による平和防衛努力と米軍事力の強化に対する協力、こういう性格がございますために、今日、あるいはアメリカから言われ、あるいは自由党から押されて、後者の態度が強化されつつあるように思うのであります。しかし鳩山首相が、あるいは鳩山内閣が、後者の方策を強化して参られるということは、これは選挙に対する公約でもなく、国民の期待に沿うゆえんでございません。鳩山内閣の、あるいは民主党の、選挙における勝利の原因を考えられるならば、後者の態度をやめて、平和外交のために、あるいは国際的な平和共存のために、あなたのその老後のからだを犠牲にしても努力する意思はないか、はっきり承わりたいと思うのであります。  なお、つけ加えて申し上げますけれども、バンドン会議には高碕国務大臣を代表として送られております。これは高碕個人で行かれたのではなくて、おそらく鳩山内閣を代表して、政府を代表して行かれたのだと思うのでありますが、このバンドン会議の決議と申しますか、共同コミュニケの中には、平和五原則を中心にした十原則の決議がございます。おそらくこの点については政府としても責任を持たれなければならぬだろうと思うのでありますが、アジアの中で、アジアの一つの国として、友邦として関係を持っていきますためには、これは五原則なりバンドン会議の十原則に従っていく以外にはないと考えられますが、この点についての鳩山首相の明確な答弁をお願いいたします。
  116. 鳩山一郎

    国務大臣鳩山一郎君) 私は、自衛力の漸増をする、そうして日本日本の自衛力を増して、アメリカと一緒になって共同防衛をするという行き方と、中ソとの国交を調整して国際関係正常化するという、この友好関係を結びたいという、この二つの方針は、決して矛盾するものではないのであります。世界の平和を維持するのに、やはり力による平和、力のバランスということも、一面においては必要である。同時に、戦争状態を終結していない現状をそのままに放置するということははなはだ危険でありますから、国際関係正常化するということもまた、世界の平和のために非常に必要な一面でありまして、これは決して矛盾しないのでありますから、その点は並行しても決して差しつかえはないと思っております。  バンドン会議の十原則、けっこうな原則だと思います。バンドン会議において相互に理解をしましたし、相互に親睦の度を増したのでありますから、これがやはり世界平和のために非常な貢献があったと喜んでおる次第であります。
  117. 館哲二

    委員長館哲二君) 時間が来ておりますから……。
  118. 吉田法晴

    吉田法晴君 一つだけ……。時間がございませんから、十分な私の意見を述べて質疑をすることができないのでありますが、バンドン会議にも鳩山内閣の二つの方向、二つの面が出ました。それは、高碕代表が世界平和のために貢献をしたい、それから経済的な提携、文化的な協力に貢献をしたい、こういう三つの提案をされた。これは新聞も報じましたし、私どもも聞きました。ところが、もう一人別の全権で、今までの台湾政府を認めておるのだから、中国との平和関係交渉に入ることができない、あるいは自由主義諸国陣営との協力の範囲内においてしか貿易はできないのだ、こういうぶちこわしの議論——バンドン会議の空気からいいますならば、全くぶちこわし、そうして日本が孤立するような発言がなされております。この詳細を述べる時間がございませんのを大へん残念に思いますが、そのあと、新聞は——インドネシア新聞でありますが、新聞は、この人は東条内閣の閣僚であった、あるいは戦争中の中国の公使であった、こういうことで、その発言に対するインドネシアあるいはアジアの感情を露骨に出しております。政府は高碕代表を送って、あるいは顧問等も送って、賠償交渉についてのきっかけを得たい、それから経済提携を通じてアジアで貢献をしたいと思っておられたかもしれませんけれども、そういうあるいは外務省の公使その他の態度では、これは絶対にインドネシアとの友好関係を結ぶということ、賠償交渉さえも私はできぬと思う。これはインドネシアだけではございません。その他の点にもございます。私は鳩山内閣が、あるいは鳩山首相が、ほんとうに世界大戦を防止したい、あるいは平和共存の今後の世界政治に寄与したい、そうしてその中においてアジアの平和五原則による、あるいは十原則による友好提携の中において、日本がその役割りを果したいというならば、私はその面を強く主張して、バンドン会議にも鳩山首相自身がおいでになるべきであった。最近の外交を見ておりますと、周恩来にしても、あるいはインドネシアの首相にいたしましても、ビルマの首相にいたしましても、世界の各国の人たちがみずから出て、これは国際緊張の緩和のために、あるいは東西交流のために努力をしておる。私は鳩山首相がもしほんとうに日本の国の国民の生活を考え、あるいは自立経済考え、平和と幸福を考えられるならば、勇を鼓してその最後の御努力を、世界のトップ・レベル・トーキングに参加せらるべきだと思う。  選挙でなぜ勝ったかということは、これは御存じであるはずだ。私は選挙の当時においては、それがおそらく空約束であろうということも申して参りましたけれども、しかしあなたの言われた平和外交なり、あるいは国交回復なり、あるいは自立経済への努力というものについては、そして選挙に臨むいわゆる政治家的なうまさについては、心から感服をいたしましたけれども、その後は、あるいはアメリカに押されあるいは自由党に押されて、完全にそのいい面はなくなってしまった。しかも気魂を失ってしまって、喧嘩に負けたしゃもみたいに、頭を垂れてしまったような格好、(笑声)それでは政治生命はこれは完全にございません。  国際的な平和共存のために、あるいは平和外交のために、国民のために、最後の努力を、みずから腰を上げて国際的な政治の面に乗り出す決意はないか。あるいは今からでもおそくはございませんが、あなたのいい面について、日本国民生活の向上と、それから平和と独立のために努力をする勇気はないかどうか。もしなければ、もしなければ、政権を投げ出して、私ら社会党にお渡しなさい。バンドン会議の実情、あるいはそれと同じ精神に貫かれましたアジア諸国会議に私ども出席してみて、もうアジアの動向は、あるいは世界においてもそうでありますが、これは平和共存以外にない、五原則以外にないと思って参りましたが、内外の政策について勇気を持って立ち上がるか、それとも、投げ出して社会党にやらせるか、そのいずれかを選ぶほかないと思いますが、最後に一つ答弁鳩山首相にお願いいたします。
  119. 鳩山一郎

    国務大臣鳩山一郎君) 国民約束いたしました事柄を、順をもって実現したいということに、全力を費す決意を持っております。
  120. 重光葵

    国務大臣(重光葵君) 今の御発言は、この議場を通じて世界に対する御発言であると考えますので、私はその意味において、バンドン会議に対してとりました日本政府態度について、一言申し上げさせていただきたいと思います。  バンドン会議に対しまして日本がどういう態度をとったか、今お話しのうちの前半について尽きてはおります。現内閣といたしましては、日本といたしましては、平和外交をやっておる、平和外交を使命として立っておるものでありますから、バンドン会議におきましても、日本側の最も重要な提案は、バンドン平和宣言案というものを提案したことは御承知の通りであります。これは平和宣言でありまして、日本の平和外交を端的に示しておるものであります。その具体的の骨子といたしましては、国際紛争を、武力を排して平和的の方法によって解決するということを中心としたものでございます。この宣言をバンドン会議の宣言として採用するために、わが全権は全力を尽したのであります。そうして中途にして、これは宣言でなくてもいいというような意見もずいぶんありましたけれども日本代表の固執によって、バンドン会議の宣言のうちにこの趣旨が入ってきたのでございます。  しきりに平和五原則のことを言われます。これも文字上けっこうなことでございます。しかしバンドン会議の宣言、また十ケ条というものは、国際連合の趣旨を主として取り入れた宣言に相なっております。しかしてわが方の平和宣言の趣旨をも取り入れてくれたのであります。これでバンドン会議の平和宣言、十原則というものは、全く日本政府の賛同するところでございまして、この趣旨によって平和外交を進めていくことに、少しの異存もございませぬ。それを希望するところでございます。しかしながら、そういう平和外交ということが、何もかも相手方の言うことをそのままのまなければ平和外交でないということではむろんございませぬ。日本日本としての立場があり、また正当な主張がある。これは十分に機会あるごとにいたしまして、そうして世界の平和に同時に貢献するということがわれわれの任務でなければならぬと、こう考えております。  バンドンにおいて新聞記事等にいろいろなことがあったことは御指摘になりました。私も承知をいたしておりますが、それはよく調査いたしましたところ、さような弊害のあるものでは少しもなかったということを見出しました。この点についてはあまり、詳細に申し上げるのもどうかと思い、また必要もないかと思いまして、政府考えておる平和外交の趣旨を十分に申し上げて、世界に対して誤解のないようにいたしたいと、こう考えておるのであります。
  121. 吉田法晴

    吉田法晴君 バンドン会議にどういう態度で臨んだかと、こういう御説明ならば、私も重ねて質問をしようと思いません。しかし今のお話の中で、相手のあることだから、外交について相手のことを必ずしも聞く必要はない、こういう御答弁がございますと、先ほどバンドン会議でのコミュニケ、あれはレゾリューションといっておりますから、決議であるといってよかろうと思います。それについて責任を負わぬような、アジア会議での決議について、相手方のことを全部聞かなければならぬといったような趣旨の御発言がございましたから、それはお取り消しを願いたいと思います。バンドン会議の決議に関連して外務大臣からお話があったから、むしろそれはあなたの今の趣旨に合致することでなかろうと思います。取り消し願いたいと思います。これは鳩山内閣の二重性格のうちの一つ、その二つがバンドン会議にも出た。そして公式には高碕代表を通じて、あるいは顧問団等の努力もあったと思いますけれども、あの十原則、共同コミュニケに賛成される、そうして世界の平和に貢献をしたい、あるいは経済的な提携、文化的な提携に貢献をしたい、こういう発言があったけれども、しかしあなたがそう言われるならば、名前をあげますけれども、これは別に前の方には書いてありませんけれども、谷さんと思いますけれども、「日本は中国との交渉を求めず」こういう題で、アジア・アフリカ会議出席日本首席代表は、日本は中日関係正常化のため、周恩来首相と予備交渉をする意思はない。日本の公使は、これはミニスターと書いてありますが、日本はすでに台湾政府を認めているのだから、同時に人民政府に正常な外交関係を持つことはできない。日本が現在なさんとすることは、現在存在する限界の範囲内で、中国あるいはインドネシアとの貿易の問題についての意向その他が書いてございますが、その調子であとの方に、谷正之は東条軍事内閣のときの外相であり、戦争当時多年中国にあって大使を勤め、一九一七年にはヴェルサイュ会議に出席、ウイーンの公使を勤め云々と、こういうふうに感情が出ている。これはインドネシア諸君の感情だと思うのでありますが、それがアジア諸国の会議あるいはバンドン会議に集まりましたアジアの各国の共通的な感情をここに出している。これが政府としては、平和外交あるいは共存アジアの中で、この五原則から十原則による地位を得たいということで、謙虚に協力をしたい、アジアの中で貢献をしたいということで行くべきであってその他の方針はこれは押えるべきではないか。こういう意味で申し上げたのでありますが、弁護をされ、あるいは……。
  122. 館哲二

    委員長館哲二君) 発言中ですが、吉田君に御注意申し上げますが、実は議事のいろいろな都合もありますので、一つ適当に打ち切りを願いたいと思います。
  123. 吉田法晴

    吉田法晴君 共同コミュニケに責任を持つべき外務大臣として、あるいは政府としては、今の答弁の中には不穏当の点がございますので、明らかにして、一つお取り消しを願いたいと思います。
  124. 重光葵

    国務大臣(重光葵君) 私は少しも不穏当なことを申し上げたつもりはございません。私の要点は、十原則はけっこうである、バンドン会議のときに表示をしたわが代表の努力が十原則を生む一つの動機になったくらいで、わが方の平和外交について誤解をせしめたことのないことを申し上げたわけでございます。どういうところを取り消せとおっしゃるのか、それはわかりませんけれども、私は外交の一般のやり方として、相手方のことをすべて聞かなければ平和外交でないというようなふうな印象は与えたくない、こういうことを申し上げたのであります。これはもう普通のことを普通に申し上げたにすぎませぬ。それで御了解を得たいと思います。
  125. 館哲二

    委員長館哲二君) 午後一時半まで休憩いたします。    午後零時五十九分休憩    ————————    午後二時四十四分開会
  126. 館哲二

    委員長館哲二君) それでは午前に引き続きまして開会をいたします。
  127. 松浦清一

    ○松浦清一君 私は総理大臣に国防会議の問題について御質問を申し上げます。  この国防会議の問題は、先般国防会議の構成等に関する法律案ということで国会に上程をされまして、今月の三日本会議に上程をされました際、私は党を代表して質問に立ったわけですが、その際国防の基本方針あるいは防衛計画の大綱、あるいは防衛出動の可否等について内閣総理大臣が諮問をしなければならぬこの重要な会議でありましたので、基本的な性格、目的等の問題についての御質問申し上げましたが、その際時間の関係等もございまして、総理大臣からはきわめて概念的な抽象的な答弁しか得られなかったのであります。従って事情が許せば再質問をいたしまして、十分核心に触れてのお尋ねをしたかったわけでございますけれども、それができませんでしたので、今日はあの本会議における質疑応答の再質問をするという建前において、この問題についての御答弁をお願いをいたしたいのであります。  まず第一に、先ほど申し上げましたように、防衛庁設置法に基きまして今回構成されようとする国防会議の性格、目的というものは、どういうところにあるかということを、基本問題でありますから総理大臣から御答弁を願いたいと思います。
  128. 鳩山一郎

    国務大臣鳩山一郎君) 性格は、内閣に置かれた諮問機関であります。それから目的は、国防に関する重要な事項の審議であります。それだけで答弁したつもりです。
  129. 松浦清一

    ○松浦清一君 内閣総理大臣が国防会議を所管して、その内閣総理大臣が国防会議の議長になるということは、どうもおかしいと思うのですが、どのように考えておられますか。
  130. 鳩山一郎

    国務大臣鳩山一郎君) 総理は議長としてこの重要会議の諸君の発言を直接聞いた方が望ましいと考えまして、総理が議事をまとめる役をとったわけであります。  内閣との関係は、やはり内閣責任制は少しもこわさないのでありますから、決して矛盾はしないと思っております。あらゆる角度から検討をした方がいいというだけの問題ですから、別に内閣責任制をくずすということはないと思います。
  131. 松浦清一

    ○松浦清一君 防衛庁設置法の第三章の第四十二条には、内閣総理大臣は国防の基本方針、防衛計画の大綱、防衛出動の可否等いわゆる自衛の大方針というものをこの国防会議に諮らなければならぬということが義務規定になっておりまするが、その通りでありますか。
  132. 鳩山一郎

    国務大臣鳩山一郎君) はい、その通りであります。
  133. 松浦清一

    ○松浦清一君 そういたしますると、内閣総理大臣は、自分が自分の所管する国防会議に対しまして、この重要事項を諮問して、自分がそれに答えるというそういう結局自問自答の姿になると思いますが、そういうことでよろしゅうございますか。
  134. 鳩山一郎

    国務大臣鳩山一郎君) そういう例は他にもたくさんあるのでありまして、ただあらゆる角度から検討をしたいという目的であります。
  135. 松浦清一

    ○松浦清一君 ところが、国防会議の構成が今度の出ておりまする法律案によりますと、内閣総理大臣が任命する副総理たる国務大臣、それから外務大臣大蔵大臣、防衛庁の長官、経審長官、それから民間から選ばれまする五人の議員によって構成されるとすれば、その国防会議は形の上では自衛隊を動かしたり、防衛の大綱をきめたりしていくのに国民の意思をよく聞いておるという形にはなっておりますけれども、実際はそうではなく、行政の最高主管者である内閣総理大臣が議長になり、内閣側から五人の議員が出ていくということになれば、民間側の意見というものはきわめてその主張の上において小さいものになると考えられますが、それでよろしいのですか。
  136. 鳩山一郎

    国務大臣鳩山一郎君) これは諮問機関で、この慎重を期するというのでこういう形式をとったのでありまして、決して自問自答というわけではなく、練達堪能の人たちの意見を聞くということは重大性にかんがみて慎重を期しただけであります。
  137. 松浦清一

    ○松浦清一君 国防会議が、この法律案が通るか通らないかしりませんけれども、もし、設置されるということになりますと、この国防会議と統合幕僚会議と内閣との関係というものはどういうことになりますか。
  138. 鳩山一郎

    国務大臣鳩山一郎君) 統合幕僚会議というものは防衛庁長官のただ補佐機関だけでありまして、防衛長官は統合幕僚会議の意見を聞いて、それをこの会議において、やはりさらにまた審議をし直すということになろうと思います。
  139. 松浦清一

    ○松浦清一君 防衛長官が統合幕僚会議の意見を聞いて、そうしてさらに相談するとおっしゃったのですか。
  140. 鳩山一郎

    国務大臣鳩山一郎君) 防衛長官は、この会議の当然の議員でありますから、防衛長官は統合幕僚会議の意見を聞いて、国防会議に出席してやはりまたさらに研究すると思います。
  141. 松浦清一

    ○松浦清一君 そうすると、これは国会との関係は……国会と国防会議との関係は。
  142. 鳩山一郎

    国務大臣鳩山一郎君) 国会とは別に直接の関係はございません。
  143. 松浦清一

    ○松浦清一君 防衛庁の組織の機構を調べてみまするというと、陸海空自衛隊の上にそれぞれの幕僚監部があって、その上にそれぞれの幕僚長がおって、それが防衛庁の長官それから内閣総理大臣につながっておるというのが防衛庁の組織であります。そうして陸海空の幕僚監部において立案をした防衛の計画、後方補給の計画、訓練の計画、出動時における自衛隊の指揮命令等を統合幕僚会議が調整することになっておる。そこで各幕僚長の意見がこの統合幕僚会議で一致したといたしますと、その通り防衛長官に報告をするということになっておる。もし統合幕僚会議で意見が一致を見なかったときには、意見の一致しなかった点とその理由とを述べて、さらに自衛隊の最上位にある者が統合幕僚会議の議長になっておりますから、その議長の意見も添えて防衛長官に報告をしなければならぬ、こういうことになっております。そのように幕僚監部において計画された、ただいま申し上げたような事柄が統合幕僚会議において意見が一致しなかったときに、その最後の裁断を下すというのは一体どこの機関でありますか。
  144. 鳩山一郎

    国務大臣鳩山一郎君) それは防衛長官が決定すると思います。
  145. 杉原荒太

    国務大臣(杉原荒太君) 今総理大臣がお答えを申した通りだと思います。それは御承知の通り、防衛庁設置法におきまして防衛長官が庁務を統括する、こうございますからして、それの適用の一つにいたしまして、そうして一方統幕は防衛長官の補佐機関でございますから、そこで意見が一致した場合でも一致しない場合でもそれを決定するのは防衛長官、こういうことになる次第でございます。
  146. 松浦清一

    ○松浦清一君 防衛長官が、それの裁断を下す権限というのは防衛庁設置法のどこにありますか。
  147. 杉原荒太

    国務大臣(杉原荒太君) それはお答えを申し上げますが、第三条だったと思いまするが、防衛長官は、内閣総理大臣の指揮監督を受けて庁務を統括する云々という規定がございますから、その個所でございます。
  148. 松浦清一

    ○松浦清一君 そうしまするというと、防衛長官がその意見の異なった結果の報告を受けて、その防衛長官を指揮監督する最高の権限にある内閣総理大臣にはそういうことを相談したり復命したりすることなくて、防衛長官は単独で裁断してよろしいのですか。
  149. 杉原荒太

    国務大臣(杉原荒太君) お答えを申し上げます。これはもちろん防衛長官としての決定でございます。そして防衛長官はまた内閣総理大臣の指揮監督のもとにございますから、もちろん総理大臣の指揮監督を受けるわけであります。
  150. 松浦清一

    ○松浦清一君 国防会議には内閣側から出る議員として、副総理としての国務大臣、それから外務大臣大蔵大臣、防衛長官、経審長官、これが内閣側から出ることは法律の規定するところになっておりますが、その副総理が現在のように外務大臣が現在副総理を兼任しておられるのですな、外務大臣あなたが副総理を兼任しておられるのですか。
  151. 重光葵

    国務大臣(重光葵君) はあ。
  152. 松浦清一

    ○松浦清一君 その外務大臣が副総理を兼任しておられる際に、内閣法の第九条による副総理と外務大臣とは二つの役職であるけれども人間は一人である、そうすると内閣側から出る議員というのは副総理兼外務大臣大蔵大臣、防衛長官、経審長官と四人になりますか。
  153. 鳩山一郎

    国務大臣鳩山一郎君) その通りであります。
  154. 松浦清一

    ○松浦清一君 そういたしますると、内閣総理大臣がこの国防会議に非常に大きな国防の基本方針それから国防の大綱、さらに大きな出動の可否というような問題を諮問いたしました際に、民間から五人の議員が選ばれることになっておりますから、内閣側から出た四人の議員と民間から出た五人の議員とが完全に意見が対立した場合に、議長たる内閣総理大臣はどういう方法で最後の意思決定をなさるのですか。…もう一ぺん申しましょうか。これは非常に重大な問題です。
  155. 鳩山一郎

    国務大臣鳩山一郎君) 今の御質問は、閣僚以外の人間が幾人議員となっているかということですか。
  156. 松浦清一

    ○松浦清一君 いや、そうではない、今度の法案によりますと、内閣法の第九条による国務大臣と、それから大蔵大臣と防衛長官と経審長官と、こうなって、いるのですよ。現在のように外務大臣内閣法の第九条による副総理を兼ねておる場合には、内閣側から出る議員は四人になりますね、そうすると民間側から選ばれる議員が五人とすれば、五対四になる。あなたが議長になられるのですから、五対四になる。意見が完全に対立した場合に、どういうふうにして国防会議の意思決定をなさるか。
  157. 鳩山一郎

    国務大臣鳩山一郎君) わかりました。五名以内となっていますから、そのときは民間から入るのは五人あるとはきまっておりません。同時に諮問機関でありますから、別に差しつかえはないと思います。
  158. 松浦清一

    ○松浦清一君 民間から出る議員は五人以内となっていることは法律案によってきまっておることは知っております。  しかし国防会議が一番最初に設置をされたときには、外務大臣が副総理を兼ねておらん。従って内閣法の第九条による副総理と外務大臣二人が出る、あと三人で五人ですね。内閣が五人出ることになるのですよ。そのときには内閣側から出る議員の数とのつり合い上、民間側から五人出すことになる、もし内閣側が四人のときはそのつり合い上、民間側は五人以内となっておりますから四人を選ぶ、その次に内閣がかわるかどうかして、副総理と外務大臣が別々になると、また五人になる。また元のようになると、五人になるというふうに変っていくのですか。
  159. 鳩山一郎

    国務大臣鳩山一郎君) そういうことは考えておりません。決議機関でありませんから、数にこだわることはないと思います。
  160. 松浦清一

    ○松浦清一君 先ほどから何べんもその国防会議に諮問される問題を申し上げましたから言いませんが、それほど重要な問題が国防会議に総理大臣から諮問をされて、そして意見が対立をして、国防会議の意思決定をすることができないというようなことになった場合、それはやむを得んということに、こうなるのですか。
  161. 鳩山一郎

    国務大臣鳩山一郎君) 練達勘能の人たちでありますから、そういうような場合はないと思います。
  162. 松浦清一

    ○松浦清一君 もし、あったらどうする……。
  163. 杉原荒太

    国務大臣(杉原荒太君) 少し補足さしていただきます。法案にございますように、議事をどういうふうな方法でやるかということは議長が会議に諮った上で決定すると、こうございますから、今ここでその議事の規則の内容ということをあらかじめ政府側で予定して申し上げることはできませんけれども、大体これはこの会議の性質、構成メンバー等からいたしましても、その議事の運営につきまして、実際上、自然に一つの結論に到達するようなふうに議事の運営をすべきものでないかと存じます。しかし場合によりましては、今、御指摘のように意見が分れることは確かにあり得ることだと、そういう場合にはこれは諮問機関でございますから、それは多数の意見は多数の意見として、少数の意見は少数の意見として答申するということも一つ方法ではなかろうかと思います。
  164. 松浦清一

    ○松浦清一君 ちょっとわからんのですが、防衛庁設置法の第四十二条の二項に「内閣総理大臣は、左の事項については、国防会議にはからなければならない。」という義務規定になっておる。国防の基本方針及び防衛計画の大綱、前号の計画関連する産業等の調整計画の大綱、防衛出動の可否、その他内閣総理大臣が必要と認める国防に関する重要事項、この五つの問題については内閣総理大臣は国防会議に諮らなければならぬという義務規定になっておる。こういうふうになっておる。問題が国防会議にかけられて、そして意見がまとまらないからというので、意思が決定されなかった場合に、この重要な五つの問題について内閣総理大臣はどうなさるお考えでありますか。
  165. 鳩山一郎

    国務大臣鳩山一郎君) ここれは決議機関ではございませんから、その諮問した事項について国防会議の拘束は受けないはずでございます。内閣責任を負ってやるのが至当だと思います。
  166. 松浦清一

    ○松浦清一君 そういたしますると、防衛出動の可否というような問題が起りましたときに、国防会議に諮問をされて、民間側はそれに反対であると、内閣側は内閣総理大臣に任命された大臣の人たちでありますから、これに対して賛成であると、こういうふうに意見が分れても、内閣総理大臣は国防会議の意思いかんにかかわらず、これを総理大臣責任において決定されると、こういうことですか。
  167. 鳩山一郎

    国務大臣鳩山一郎君) 総理大臣には決定権はないのであります。総理大臣はこれを国会に提出することについて責任をとりまして、内閣の決定したことについて国会の承認を必要とするのでありまするから、差しつかえはないと思います。
  168. 松浦清一

    ○松浦清一君 緊急に自衛隊を出動しなければならぬときには国会に諮らないでも内閣総理大臣の権限によってこれを行使してもよいと、こういうことになっておるのですよ。緊急の場合には内閣総理大臣の権限で自衛隊の出動ができることになっておる。もし、国会を開いて承認を求めるいとまのないようなときには、たとえ法律で内閣総理大臣の権限において出動命令を下すことができるというようなことになっておっても、一応ここに義務規定になっておるからには、国防会議に諮らなければならぬと、この義務規定に従って内閣総理大臣は国防会議に諮問されると思う。そのときに内閣側から出ておる議員は四人、民間側から出ておる議員五人で、民間側は反対であったと、こういうような場合には、反対にかかわらず、内閣総理大臣は自分の独断でこれを命令することもできないことはないと、こういうふうな御答弁でありますか、その通りでありますか。
  169. 鳩山一郎

    国務大臣鳩山一郎君) 総理大臣責任においてそういう場合には決定をいたします。
  170. 松浦清一

    ○松浦清一君 民間側の議員の選任といいますか、そのきめ方については国会に諮ってこれをきめるということになっておる。たとえばこの間も本会議で申し上げましたように、会議でものを相談するときには、会議を主宰するものが原案を持ってその会議に諮るということは、原案なしに合議制によってものをきめるということよりもその主張において原案が非常に強いウェートを持っておるということは、これはもう常識であります。従って、たとえば、民間側から選ばれる五人の議員について、内閣総理大臣国会に諮られたとしても、今まで国会に各種の委員の承認を求めてくる場合がございますが、大てい九〇%は内閣側の選ぼうとする委員が選ばれて参りました。従って、国会に諮るとはいっても、原案政府が出すのでありますから、その出す政府の意思というものが、民間側の議員を選ぶのに非常に大きな重さを持って国会に出てくると思うのです。従って、もし、この議員の選び方について、たとえば、軍備に賛成をする人、それとそうでない場合、あるいは軍需産業資本家と、あるいはまたそうでない場合とは、民間から選ばれる五人の議員の意思というものが相当大きな違いが起ってくると思うのですが、どういうような角度から議員を選ぼうとしておられるのか、お伺いしたいと思います。
  171. 鳩山一郎

    国務大臣鳩山一郎君) ただいまのところ、練達であり、堪能であり、識見のある人を選びたいという考えだけを持っておりまして、具体的にただいま考えておりません。
  172. 松浦清一

    ○松浦清一君 総理大臣はこの間の本会議でも白紙だと言って、そのように答えられたんです。ところが、これは新聞でありますから、間違いであればそうおっしゃっていただいてけっこうです。読売新聞の十日付の夕刊に、杉原防衛庁長官が記者団と会見をして、この点について話をしたことがこの新聞に出ております。それは「国防会議設置法案について政府はあくまで成立を期する方針で、その点ある程度楽観している。」と、こういうことを冒頭にして、「民間議員については、原案は五名となっているが、これは一応の目安であり、修正も差しつかえないと思う。民間議員の選考基準はまず、旧軍人であるといなとにかかわらず、軍国主義的傾向の人は絶対排除したい。また営利主義傾向の人、たとえば重工業関係の人などは好ましくないと思う。」と、こういうことを防衛長官が話しておられるのですが、どうですか、ほんとうですか。
  173. 杉原荒太

    国務大臣(杉原荒太君) お答えを申し上げます。その新聞記事は、私の真意を正確に伝えていない部分がございます。私が話しました真意は、この国防会議というものは非常に重要な、また国民の運命にも関するような国防に関する重要なことについて、内閣総理大臣の諮問を受ける機関であるから、国務大臣以外のいわゆる民間議員の選任ということは、慎重の上にも慎重を要する。そして、そのことが、ただ単にある部門についての専門家ということに重点を置くのじゃなくして、もっと広い視野から、大所高所から政治的の判断を誤まらないように、国の進路を誤まらないようにするということが主眼だ。そういう角度から人選ということも考えなければならぬ。そしてその間におきまして、いわゆる軍国主義的の思想というような人はそういう点からいって適当じゃなかろう。そしてまた直接に国防に関連しまして、実際上の営利的の利害関係を持つというような人は、やはり、適当じゃなかろうと自分は考えておる、こういうことを、趣旨を申し上げた次第であります。
  174. 松浦清一

    ○松浦清一君 この際、国防会議に諮問する問題の中に、出動の可否等について諮問をするというような項目がございましたから、この機会にお伺いをするのですが、日本とアメリカ合衆国との間の相互防衛協定の第十条の第一項に、「両政府は、いずれか一方の政府の要請があったときは、この協定の適用又はこの協定に従って行われる活動若しくは措置に関するいかなる事項についても協議するものとする。」と、こうあるのです。その中の、「この協定に従って行われる活動若しくは措置」というものは、この国防会議そのものとは関係がないかもしれませんが、その活動とは一体どういうことでありますか、外務大臣一つお答えをお願いいたします。
  175. 重光葵

    国務大臣(重光葵君) その字句の意味については、法制局長官に御説明をお願いしたいと思います。お許しを願いたいと思います。
  176. 林修三

    政府委員(林修三君) この相互防衛援助協定の十条でいっております活動措置、これは英語ではオペレイション・オブ・アレンジメンツと言っておりますが、大体この条約の中の一項で書いてありますことでございまして、いわゆる、援助物資の供与とかあるいはそれの取扱いとか、資金の問題とか、ここに書いてあるようなこと以外に出ることはないと存ずるわけであります。
  177. 松浦清一

    ○松浦清一君 そのように簡単に解釈をされ、簡単に説明されるというと、問題ないのですが、そうすると、ただ、私がこれを尋ねたのは、「この協定に従って行われる活動若しくは措置」というような字句が使われてありますから、もしも、これは想定でありますから私の見解が間違っておればお許しを願いたいと思いますが、あり得るかどうかこれはわかりませんが、中共が台湾解放のために武力を行使するというような仮定の一つの事件が起ったとする、そうすると、台湾政府とアメリカとの間には、防衛の、相互防衛の協定が結ばれておりますから、アメリカの第七艦隊も出てきましょうし、日本に置かれておるアメリカの飛行機も飛んで行って、中共の武力解放を妨害するという挙に出ると、そういうようなことになった場合には、日本の自衛隊を一つ台湾の方に派遣をせぬかというようなことをアメリカが言ってくるのではないかと、こういうようなことは、今までしばしば国会において論議をされてきておったのですが、まだこの意味について全く解明ができておらんように思われるので、私は仮定で申し上げたような問題が、その他の場所において起ったとした場合に、いかなる場合にも、アメリカから日本の自衛隊が出動するように要請されるというようなことはないのかどうか、これをお伺いいたします。法制局長官、あなたじゃだめ、外務大臣にお願いします。
  178. 重光葵

    国務大臣(重光葵君) さような重大な問題は、その都度あるいは外交交渉にはなるかもしれませんが、その規定の範囲内ではないと解釈をいたしております。
  179. 松浦清一

    ○松浦清一君 アメリカと日本との間に取り結ばれておる安保条約、安保条約に基く行政協定、日本国とアメリカ合衆国との間の船舶貸借協定、日本国とアメリカ合衆国との間の相互防衛援助協定、日本国に対する合衆国艦艇の貸与に関する協定、これらの日本とアメリカとの一連の防衛協定の中には、アメリカから日本の自衛隊出動を要請されるというようなことは全然約束されていないと、こういうふうに解釈してよろしゅうございますか。
  180. 重光葵

    国務大臣(重光葵君) 約束中にはないと、こう解釈いたしております。
  181. 松浦清一

    ○松浦清一君 それでは今度は外務大臣を中心として通産大臣、農林大臣等にお伺いいたします。  現在、松本全権がロンドンに行きまして、日ソ交渉が行われております。この問題は、かつて平和条約がサンランシスコにおいて締結をされました際、私どもは戦争に関係のあった国々との全面講和がなされることを基本方針としておりましたが、不幸にしてその際には全面講和にならなかったのであります。自来、平和条約に調印をしておらない国々との間にこの種の条約の締結されることを期待いたしておりましたので、日本とソ連とのロンドンにおける交渉の経過というものについては、至大なる関心を持ってこれを見ておるわけです。ところが一昨日あたりからの新聞を見ておりますと、七日に第一回の会談が開かれたということでございますが、そして松本全権から政府に対して報告があったということですが、これは報告でございますか、それとも何らかの、交渉の内容も新聞には書いてありますが、話し合いがございまして、それに対処する方針についての報告であったのか請訓であったのか、お伺いをいたしたいと思います。
  182. 重光葵

    国務大臣(重光葵君) 去る七日に日ソ交渉の実質的の第一回の会合があったということは、今お話通りであります。今御質問の点をも含めて、これに対する報告、本委員会に対する報告を私はいたしたいと思います。  七日の会合におきましては、わが松本全権からわが方の立場及び主張を全面的にソ連側に説明をいたしまして、ソ連全権はこれを聽取をいたしまして、一、二の質問はいたしましたが、この全面的のわが方の主張に対してとくと検討をして、次回にそれに対するソ連側の意見を述べたいというので、会議が終りまして、そして次回を待つことに相なりました。実はさようなことも私がここに申し上げるのは少し言い過ぎておるかもしれません。というのは、この交渉のうちに、双方の全権の間に交渉は双方の合意する声明発表以外には一切発表はしないということに打ち合せをしておるわけでございますから、そういうことを申し上げるわけでございます。しかし、日本側において日本側の立場を十分に説明したと私が申し上げても、それは会議進行に少しも障害とならないことを信じて、ここに御報告申し上げる次第でございます。日本の立場及び主張は、しからばどういうことであるか、内容はいかんということは、一々申し上げるわけには参りませんが、しかしこの日本の立場及び主張のいかんは、私が去る二十六日でございましたか、この交渉に臨む政府方針考え方を詳しく国会に御報告を、また御説明を申し上げました、それに尽きておるわけでございますから、さように御了承を願いたいと思います。この交渉が国民的に重大な関心が払われておるということは、よく私も承知をいたしております。それで今日までの経過報告は、ほとんど全面的に、予備交渉をも含めまして、全部そのいきさつを公表いたしておるようなわけでございます。七日以後の交渉ぶりは、さようにロンドンにおいて合意をしたこと以外は発表しないことに相なっておる模様でございます。しかし、今申しました通りに、交渉の進行に差しつかえのないことは私の裁量によって適当に御報告申し上げ、そしてその発展について十分御了承を得たいと、こういうふうに考えておる次第でございます。
  183. 松浦清一

    ○松浦清一君 何ですか、今御報告なさると言って、内容は一つもありませんでしたが、それだけのことでございますか。差しつかえない程度のことは報告をいたしますとこうおっしゃって、何も内容は御報告なさらない。
  184. 重光葵

    国務大臣(重光葵君) 今御質問の松本全権から報告がきておるか、また請訓かということでしたから、報告が参っておる、その報告に従って私のなし得るだけの御報告を今いたした次第であります。
  185. 松浦清一

    ○松浦清一君 いや報告か請訓かということをお尋ね申し上げた点についてのお答えならば、それでけっこうです。それなら交渉に差しつかえのない外務大臣たる立場において報告のでき得る範囲を御報告願いたい。
  186. 重光葵

    国務大臣(重光葵君) それを実は今申したわけでございます。
  187. 松浦清一

    ○松浦清一君 何だかチンプンカンプンわからんです。新聞で報道されておるというようなことを質問いたしまするというと、先ほどの防衛長官のように、新聞の報道はでたらめというような言葉は使わなかったけれども、それは間違いであるとか、言葉の解釈の違いであったとか言って大臣各位はよく逃げられるのですが、これもうそならうそと言っていただいてけっこうです。これも新聞の報ずるところでございますが、松本全権が日本側の要望として主張した点は、日ソ両国間の国交の回復、在ソ邦人引き揚げの即時実施、漁業及び通商協定の締結、歯舞、色丹、千島列島の返還、この四つの問題が提案をされて、そうしてただいま外務大臣がおっしゃったように、マリク全権はこの日本側の提案に対して後刻御返事を申し上げるということで、七日の会談は別れて、十日に再開されるべき予定であったこの会談が十四日に延ばされていると、こう報じておるわけです。松本全権が申し出たのは、今申し上げた四つの点であることは確認なさいますか。
  188. 重光葵

    国務大臣(重光葵君) それは確認することができません。その新聞記事はおそらく私の去る二十六日の報告演説等からいろいろ取捨して書いたものではないかと考えます。松本全権の主張したことは私の先ほど申し上げました通り日本の立場及び主張全般にわたっていたしたことでございます。
  189. 松浦清一

    ○松浦清一君 外務大臣が九日の朝早く、これは松本全権からの報告を受け取った直後であろうと思われますが、総理大臣を音羽の私邸に訪ねられて、この報告をされた。それから外務省に出て来られて、一時間以上園田政務次官、谷顧問、門脇次官等々の人たちを集めて、松本全権からの報告の内容を検討したとある、どういうことを検討されたのですか。
  190. 重光葵

    国務大臣(重光葵君) さような新聞社の報道がございました。全部は本当ではございませんけれども、私も慎重に検討いたしましたことは、また鳩山総理大臣にも報告をいたしましたことは事実でございます。しかしその検討の内容はいろいろございますが、今一々その内容を申し上げるのは、そういう御要求じゃないと思いますが、申し上げることは差し控えたいと思います。
  191. 松浦清一

    ○松浦清一君 いやいろいろお話し合われたことはあると思いますけれども、新聞の記事を否定されれば、これは別問題です。今申しました四つの点の要望を松本全権がしたという、そんなことはうそだ、こういうふうに否定されれば、私はもう尋ねる筋は一つもないのです。私はこういうことも松本全権が言ったであろうということを裏書きすることは、今あなたがおっしゃいますように、二十六日の衆議院の本会議で、交渉の目的といいますか、今まで予備的に話し合って来た事柄について報告をされております。これは速記録ですから、これは間違いのないことです。その報告はどう書いてあるかというと、戦争状態を終結して、平和条約を締結し、国交を樹立して、外交使節を交換できるようにすることが交渉の目的である。この目的を明らかにして、具体的には、平和を回復するためには領土に対する主権を尊重し、内政に介入せず、紛争は平和的に解決することを互いに確認すること、それから抑留者の釈放、帰還問題、北海道所属の島々、千島、南樺太などの領土問題、北洋漁業問題、通商貿易問題、日本の国連加入問題等について話し合うことが目的であるということを衆議院の本会議で報告をされておる、それは先ほどあなたは内容的には御説明なさらなかったけれども、衆議院の二十六日の本会議において報告をしたことは事実であるということを肯定されておりますから、その真否について私はお伺い申し上げた。ところがこれも新聞の報道がでたらめだと言われれば別ですけれども、たとえば領土問題について、歯舞、色丹、千島列島の返還を要請したとある、ところが二十六日の本会議であなたが領土問題について言われたのは、北海道所属の島々といいますから、これは色丹、歯舞であることは間違いない。そのほか千島、南樺太などの領土問題を話し合って行くのが目的であると言ったが、新聞に報道されておるところでは、歯舞、色丹、千島は入っておるけれども、南樺太は入っていない。そんなことは報告できないと言われれば、申し上げることはできないと言われればそれまでですけれども、もしこのように外務大臣が衆議院の本会議において報告をされた事実と、松本全権がソ連側に申し出をした事実とに相違があった場合には、どうなさるのですか。
  192. 重光葵

    国務大臣(重光葵君) 松本全権は忠実に政府方針を体して今交渉に臨んでおります。新聞記事は私は不正確であると申し上げたわけであります。
  193. 松浦清一

    ○松浦清一君 日ソ交渉のこの目的なり、それから交渉の内容なり経過なりというものは、これは私が御質問申し上げるまでもなく、日本国民全体が非常に大きな関心を持っている問題だと思います。しかしながらこれは政府の立場になってものを言うのでなしに、外交ということは何でもかんでも赤裸々にしてしまうということが、交渉の技術上得であるか、損であるかということは、これはいろいろ問題がありますから、私は突き詰めてこれを究明しようとは思いません。従って交渉の内容はいかにともあれ、交渉をする目的だとされている問題の重要性についての考え方一つ伺いたいと思います。  領土の問題については、これはもう先ほどから繰り返して申し上げておりますように、また松本全権が向うに行きまするときからちゃんときめて行っておる北海道の島々、千島、南樺太等の領土をこちらに返してもらうということは、現在の日本の国の置かれておる立場、狭い国に九千万人近い人間が住んでいて、非常に困っておるというような実情から考えて、もともと日本の領土であったものは返してもらいたいということは、国民全体の要求でありますことは、これは申し上げるまでもございません。で、この問題に関連をして漁業協定、それから貿易の協定等も行なってくるとのことでございますが、もし外務大臣も、総理大臣もそうでありましょうが、平和を回復するということに対して全力をあげたとしても、何かの障害があって、平和を回復することはできなかった、平和条約を締結することはできなかった、こういうような事情になった場合でも、漁業の協定、貿易の協定、通商の協定等だけはできる可能性が想定されるわけです。そういうふうにお考えになりませんか。
  194. 重光葵

    国務大臣(重光葵君) それは交渉の経過を見て検討いたしたいと考えております。
  195. 松浦清一

    ○松浦清一君 いや経過でなしに、その辺のところについては、政府のお考えというものがあるはずなんですよ。平和条約がソ連との間に締結されるということは、これは今度向うに行って話し合いをしておる最高の目標であることは間違いないのです。間違いない。それは絶対にやってもらいたい。ところがどのように努力をしても、何かの障害があって、そうしてできなかったというような場合には、せめて通商協定、漁業協定だけでも話し合わなけけれならぬ、こういう二段がまえ、三段がまえの方針というものがきめられておるはずだと思うのです。それはそのときになってみなければわからぬと、こうおっしゃるかもしれませんが、非常に国民の大きな関心を集めておる問題でありますから、平和条約の締結ができなければ通商協定も漁業協定もしないのだという、そういう態度なのか、どっちなのか。それを私は聞きたいのです。
  196. 重光葵

    国務大臣(重光葵君) 戦争を終結して平和に入る、すなわち平和条約を作るためにこの交渉をやっておるわけでありまして、その平和条約を作るために必要なわが方の立場は十分認めてもらい、また主張は貫徹しなければならぬと、こう考えております。従いまして二段がまえ、三段がまえはいたしておりません。これらの重要な問題については日本側としても、またソ連側としてもこれは解決すべき問題でありますから、その解決はできる、またしなければならぬ、またするつもりで交渉に入っておるわけでございます。
  197. 松浦清一

    ○松浦清一君 これは何べん掘り下げて聞いてみてもおそらく外務大臣はお答えにならないと思いますから、その交渉の内容等についてはもう聞きません。そこで、具体的にこれは答弁をされても差しつかえないと思いますが、たとえば漁業問題についてですね、漁業問題についてどのような具体的な方針を持って松本全権がおいでになっておるか、その点を伺いたい。農林大臣にでも……。
  198. 重光葵

    国務大臣(重光葵君) 漁業問題は、これは常識になっておることを申し上げても無論交渉の内容に触れているわけではございません。漁業問題は要するに北洋漁業の問題であって、北洋の公海における漁業に関連する問題でございます。ソ連の領海で漁業をするということは、これはできませんが、公海において漁業する、その漁業に関連をしておる重要なこと、これはぜひこの交渉において解決しておきたいと、こういう方針をもって進んでおります。
  199. 松浦清一

    ○松浦清一君 そのソ連の領海というのが問題なんですよ、国際公法上の通説では領海というものは距岸三海里ということになっておるのです。大体世界の国々は距岸三海里が領海であって、それより外は公海であるという見解をとっておる。ところがソ連は距岸十二海里が領海であるということを主張している、そこで漁業問題についてどのような具体策を持っているかということを私が聞いたのは、日本側が理解をしておる国際公法上の通説である距岸三海里の外は公海であるという建前で北洋の漁業問題の話し合いをするのか、これは非常な問題ですよ、それであるいはサケ、マス、カニ等の漁業はその辺が一番大事な漁場でありますから、その点についての基本的な松本全権が持って行った考え一つお伺いしたいと思います。
  200. 重光葵

    国務大臣(重光葵君) 日本が領海三海里説をとっておることはお話通りであります。日本の立場はそれであります。それが日本の主張しなければならぬことであることは当然のことであります。それが交渉のまた題目になるわけであります。しかし交渉はまださようなところまでは実は行っておらぬのでありますが、交渉の内容については私は何らかこれを今から推察して申し上げるわけには行きません。
  201. 松浦清一

    ○松浦清一君 この領海、公海の問題について関連をして、これも外務大臣にお尋ねをいたしますが、二十七年の一月に朝鮮の李承晩大統領が海洋主権宣言というものを一方的に出して、そうして李承晩が考えた、指定をした線以内に日本の漁船は入ってならぬ、船は航海してはならぬといういわゆる李承晩ラインというものを引いたのです。それから二十八年の九月になってから、それまでは非常に漁業関係についての朝鮮側の態度はゆるやかであったが、二十八年の九月には、これから十日以内に李承晩ライン以内におる日本の漁船は全部退去しろ、もし退去しなければこれは拿捕する、こういうことを言って、向うの艦船がその日になって残っておる日本の漁船を拿捕した事件があるのです。御記憶であろうと思います。その問題について、その後の交渉の経過は一体どういうことになっておりますか。
  202. 重光葵

    国務大臣(重光葵君) 領海に関して日本側の見解は先ほど申し述べました通りでございます。これは北洋であろうとまた日本海、朝鮮近海であろうと、その点は日本の立場は変りはございません。従いましてこれに矛盾する外国の行動については、当然これは外交交渉の題目になるわけでございます。そこで韓国との間においてもこの問題が取り上げられておるわけでございます。しかし韓国との関係は、全面的に一つ何とか韓国との関係正常化したいという考え方を持って、ずいぶん長い間内面的に交渉を進めておったのでございます。しかし不幸にしてこの交渉は今日まで成功しませんでした。そうして韓国との間の現状は、必ずしも交渉に有望な雰囲気ではないのであります。しかしそれでも重要な隣国との関係でございますから、でき得るだけ空気もやわらげて、そうして交渉を進めて行くように仕向けて行きたいと思うて、目下いろいろ苦心をいたしておる状態でございます。将来の見込みについては、まだ申し上げられるいい見通しも持ちませんのを非常に遺憾といたします。しかしこれはあくまで忍耐をもって、そうして隣国との関係正常化いたしたいという方針を変えずに進みたい、こう思っております。従いまして今の領海の問題も実は韓国との間に解決を見ないし、また今その問題を、すぐ解決ができると、こう申し上げられる域には達しておらない次第でございます。
  203. 松浦清一

    ○松浦清一君 李承晩ラインの内容、範囲については外務大臣御承知だと思いますが、とにもかくにも領海三海里どころの騒ぎではなくて、済州島から五十海里も南の方に寄った所にその南端の線があって、そうして東の方は竹島をぐるっと、ひょこっとへこまして囲んで、李承晩ラインというものが引かれておるわけです。そういうものができてから、この付近で操業しておった千七百隻という漁船が、朝鮮海域から追っ払われてしまって、とほうにくれているというのが、この付近を漁場とする日本漁業の実情です。その問題が起ったときに、前の吉田内閣時代に岡崎外務大臣がこちらの金公使ですか、外交機関を通して口上書とか何とか称するものを二回か三回出して話をしておるということを聞きました。しかしその後、あなたが外務大臣になられてから具体的にどのような交渉をされておるかということについては、寡聞にして私は知らないのですが、具体的にどのような交渉をされたか伺いたいと思います。
  204. 重光葵

    国務大臣(重光葵君) その問題は東京において韓国の代表部、今、公使館と称しておりますが、代表部と外務省との間に絶えず交渉をいたしておる状況でございます。
  205. 松浦清一

    ○松浦清一君 もとに返りまして、今、日本の漁船がソ連に七十二隻抑留をされて返してくれない、二百二十九人の漁船に乗っておった漁船船員が向うにやはり抑留されて、帰してくれない。今度松本全権が漁業問題についてどのような具体策を持って行かれたかということを私が伺ったのは、これらの拿捕されて抑留されておる船の返還、それから抑留されておる二百二十九人の船員も、向うに残っておるあるいは抑留されておる日本人として送還されるように話し合いをするという具体的な考え、それをよく承知をして行っておられるかどうかということを、先ほど伺ったけれどもお答えがなかった。この具体的な問題についてどういうことでありますか。
  206. 重光葵

    国務大臣(重光葵君) 今伺いました具体的の問題については、むろんこの交渉中に処理さるべき問題でございます。
  207. 松浦清一

    ○松浦清一君 時間がないそうですから最後に簡単に一、二伺いたいのですが、先ほど重光外務大臣に、もし平和条約というような形で国交の回復ができないというようなことになっても、通商協定、漁業協定だけでもやってくるという二段がまえ、三段がまえの考えがあるのかと、こういう問いに対しては、申し上げられないと言ってお答えにならなかった。ところが、通産大臣にお伺いをいたしますが、これがもしそういうようなことになった場合に、中共との間に先般御承知の通り貿易関係については向うから代表団が来られて、そして貿易協定が結ばれた。それから漁業協定については、日本側から民間の代表の諸君が向うに行って漁業協定を結ばれた。平和条約は締結されておらぬけれども、これらの協定がソ連との間に結ばれたと仮定すれば、民間同志できめられておる中共とのこの二つの協定に対して、政府責任を持つとかあるいはこれを国と国との協定にやりかえるとか何とかいう変った考えを持たなければならぬということになると思いますが、一体この辺はどういうことでしょう。こういうことを私伺うのは、かつて日中貿易協定が成立した際に、鳩山総理がこの協定に対しては協力すると言ったとか言わぬとかいうことが、かなり激しく国会の中で問題になった、その結論を今私聞きませんけれども、そういうことでありますから、もしそうなったら中共とのあの民間の協定を一体どうするかというような政府考え方を一応私はこの際承わっておきたいと思います。
  208. 重光葵

    国務大臣(重光葵君) 中共との民間貿易協定については、これは民間の貿易協定であって、政府間の協定でないことは、これは言うまでもございません。しかし民間の協定であっても、目的を達する範囲内において、でき得る限りこれに支援をするということは、これは方針として当然のことだろうと、こう考えます。ソ連の場合はそれとはだいぶ趣きを異にしておる、というのは、ソ連とはもう正式に国交を正常化しようといって交渉が始まっておるのでありますから、この交渉において漁業の問題も貿易の問題も取り上げて差しつかえないものと、またそうしなければならぬと、こう思っておるのでございます。
  209. 松浦清一

    ○松浦清一君 通産大臣どうですか。
  210. 石橋湛山

    国務大臣(石橋湛山君) ただいまの外務大臣のお答えで尽きておると思います。  中共の問題は、ただいま正常な国交の回復をしておりませんから、民間の活動としてやり得ることは、できるだけわれわれも、政府としてでなく、できるだけの援助はしたいとこう思っておりますが、表向きの援助はいたしかねております。
  211. 松浦清一

    ○松浦清一君 時間の関係で、最後に私は農林大臣にちょっと伺っておきたいのです。  今、漁業問題の点についての質問をいたしましたのですが、満足のできる御回答ではなかった。ところがソ連沿岸を含む北太平洋一帯が、サケ、マス、カニの非常に重要なる漁場であるということは、私よりも農林大臣の方がよく御承知のはずであります。今の日本の漁業というものは、これはもう農林省、水産庁のかけ声のあるなしにかかわらず、沿岸の漁業は、漁業資源の枯渇によって、もう生きて行けないという実情になって、沿岸から沖合い、沖合いから遠洋へと、こういうことが日本漁業の生きる道としての一つの大きなスローガンになっていることは御承知の通りであります。今度のせっかくの交渉の機会でありますから、この重要な北洋の漁業問題が、ソ連との間に円満に話がついて、そうして戦争前と同じような状態において北太平洋漁業ができるようにしなければならぬと思いますが、日本の水産業に対する将来の計画方針、北洋漁業についての河野農林大臣考え方を最後に伺って私の質問を終ります。
  212. 河野一郎

    国務大臣河野一郎君) お答えを申し上げます。  全体の漁業につきましては、お示しの通り、沿岸から沖合い、沖合いから遠洋へということに発展いたしておりますのでございますが、ところがこれにつきましても、たとえば先ほどからお話のあります通りに、以西の底びき、北洋の漁業、太平洋のマグロ、カツオ漁業、これらは、いずれもこの方面においてすでに許可に権利金がつくような状態になっておりまして、どの海域におきましても非常に押すな押すなという状態になっております。そういうようなわけで、私といたしましては、全面的に日本漁業、もしくは日本の水産のあり方について再検討を加える時期がきておるというふうに考えまして、今回の予算におきましても、これについて議会終了後直ちに各方面の権威者にお集まりを願って、調査研究の機関を設けまして、それによってわが国の漁業の将来のあり方を御検討願うということにいたして、その答申を待って、私としても検討して行きたいということに、基本的には考えております。しかして北洋のことでございますが、これは非常に幸か不幸か、今、ソ連との間にいろいろお話し合いもあるのでございますけれども、今年北洋に対して鮭鱒ないしは、かにについて相当多量に出漁の計画をいたしましたところが、これらの漁団が、船団が、いずれも非常に大漁いたしまして、未曽有の大漁でございまして、おそらく私が最初に考えました通り、わが国内においてもおそらく今年の年末には大衆の食料としてさけ、ますの消費は十二分にあるのじゃなかろうか。その他またこれらのカン詰につきましても、今の国際情勢では販路に困るほど取れるのではなかろうかと思うくらいに、目下魚獲は進んでおります。そういうことでありますから、ソ連との交渉の、これがうまく参ることはもちろん望ましいことでございますけれども、さしあたり現在の状態におきましても、販路の拡張もしくは消費の拡大等にむしろ今後考えなければならん状態にあるほど、今年は豊漁でございます。しかもオホーツク海の方面に出してありました試験船の結果はまだ未定でありますけれども、私はこの方面にも相当の漁獲をあげるのではなかろうかと思うのでありますが、戦前の沖とり漁業の経験が非常に今有利に展開いたしておりますので、この方面をうまく調整して、今後進むことによってある程度の目的は達成できるというふうに考えておる次第でございます。
  213. 八木幸吉

    ○八木幸吉君 まず総理にお伺いをいたしますが、憲法調査会で、憲法第九条の改正のほかに、どのような問題をお取り上げになるおつもりでございますか、腹案があればお示しを願いたいと存じます。
  214. 鳩山一郎

    国務大臣鳩山一郎君) 制定当時の事情、実施の結果にかんがみまして一般の規定にわたって改正をしたいと思います。一般の規定といいますれば、やはり前文から始めまして、各章にわたって、すべてにわたって改正をして参りたいと、改正の題目にいたしたいと思っております。
  215. 八木幸吉

    ○八木幸吉君 次に、自衛隊との関係において、憲法第九条の解釈について総理にお伺いをいたしたいと思います。憲法第九条第一項は「国権の発動たる戦争と、武力による威赫又は武力の行使は、国際紛争を解決する手段としては、永久にこれを放棄する。」と規定しておりますが、この条文の「国権の発動たる戦争と、」という文句は、「国際紛争を解決する手段として」にかかり、従ってこの第一項は自衛戦争はこれを禁止していない、こう考えるのですが、念のために伺います。
  216. 鳩山一郎

    国務大臣鳩山一郎君) 八木君のおっしゃる通りに解釈をしております。
  217. 八木幸吉

    ○八木幸吉君 次に、憲法第九条第二項前文の「前項の目的を達するため、」という意味は、同条第一項後段の「国際紛争を解決する手段として」にかかるのか、または第一項前段の「日本国民は、正義と秩序を基調とする国際平和を誠実に希求し、」にかかるとお考えになりますか、いかがでございますか。
  218. 鳩山一郎

    国務大臣鳩山一郎君) よくわからないのでございますが……。
  219. 八木幸吉

    ○八木幸吉君 つまり九条第二項の前段の「前項の目的を達するため、」これが第一項の「国際紛争を解決する手段として」これにかかるのであるか、あるいは前段の「日本国民は、正義と秩序を基調とする国際平和を誠実に希求し、」とこれにかかるとお考えになるか、どちらだとこういう意味です。
  220. 鳩山一郎

    国務大臣鳩山一郎君) それについては、学説が違っているように聞いておるのでありますが、とにかく自衛のためならば兵力を持つことができるというように解釈をしておるわけであります。
  221. 八木幸吉

    ○八木幸吉君 私の伺った意味をもう一度割って申しますと、憲法第九条第一項は、自衛戦争を禁止していない。しかし第二号の「前項の目的」というのは、前半にかかって国際紛争解決だけではないのであるから、第二項で自衛戦争も否定している。これが多数説であると思うが、総理はこれに御同意であるか、このことを聞いておるのです。
  222. 鳩山一郎

    国務大臣鳩山一郎君) 私は自衛のためならば武力行使は許されているものと考えております。
  223. 八木幸吉

    ○八木幸吉君 そういたしますと、第九条第二項は、やはり「国際紛争を解決する手段としては」ということにかかると、こういう意味にお考えになっておりますか。こう了承してよろしゅうございますか。
  224. 鳩山一郎

    国務大臣鳩山一郎君) そうです。
  225. 八木幸吉

    ○八木幸吉君 次に「陸海空軍その他の戦力」という文字の解釈でありますが、この「陸海空軍」は自明の理として戦力であるが、「その他の戦力」というのはこれでない戦力、つまり「陸海空軍」というのは顕在的の戦力であり、「その他の戦力」というのは、それ以外の潜在的戦力である、こう解釈をするのですが、総理は同じように御解釈になるか、承わりたいと思います。
  226. 鳩山一郎

    国務大臣鳩山一郎君) 私はそうではない、あなたの御意見と違うように思いますけれども法制局長官から法文の解釈について答弁させます。
  227. 林修三

    政府委員(林修三君) 「陸海空軍その他の戦力」という言葉は、結局「その他の」ということで、陸海空軍を含めまして、戦力を「保持しない」ということにかかっておるものと思います。その戦力という言葉については、潜在戦力というお話しも、いろいろ学説もございますけれども、ここで禁止されているのは、第一項との対比において、自衛のため必要相当限度の範囲における、いわゆる武力というものを禁止するものではない、かように考えております。
  228. 八木幸吉

    ○八木幸吉君 法制局長官にもう一ぺん伺いますが、第九条第二項で自衛戦力は保持を禁止してない、こういう御解釈ですか。
  229. 林修三

    政府委員(林修三君) 戦力という言葉の意味の問題に相なると思います。これにつきましては、従来いわゆる戦力というのは近代戦争を遂行する能力程度に達する以上のものを戦力という考え方もございますが、しかしまた最も素朴に考えると、戦力というのは文字通り戦う力ということでございます。従いましてそういう意味に解釈すれば警察官ももちろんある意味においては戦う力です。第九条第二項は一切そういう戦う力を禁止しているものとは考えられない。従いまして自衛のため必要相当限度の戦う力を保持することを禁止しているということは、一項、二項両項合せて考えられないというのが私たちの考えであります。
  230. 八木幸吉

    ○八木幸吉君 法制局長官に伺いますが、吉田内閣当時の憲法第九条第二項の解釈と、今の解釈とは違っていると思いますが、違ったと解釈してよろしゅうございますか。
  231. 林修三

    政府委員(林修三君) これは戦力という言葉の使い方の問題になると存じます。戦力という言葉に一定の意味を持たせて、一定限度以上戦う力を戦力というように言ったのが吉田内閣当時の言い方でございます。しかし必ずしも戦力という言葉に限定しないでも、文字通り素朴に、戦う力を戦力と考えれば、二項で禁止されておる戦力には段階がある、かように言い得るのではないか。その段階が同じか違うかという問題は、必ずしもそこはその客観情勢のいかんによって異なると思います。同じ場合もございます。
  232. 八木幸吉

    ○八木幸吉君 今の御説明納得しかねる点も多々ございますが、時間の関係上次に移ります。  総理はよく自衛隊のことを兵力という言葉で仰せられておりますが、その兵力という意味は、戦力という意味と同じでありますか。今の法制局長官のおっしゃる戦力という意味とどういう関係になりますか。自衛隊は陸海空軍、つまり軍隊といってよろしいとお考えになりますか。何か違うとお考えになりますか。
  233. 鳩山一郎

    国務大臣鳩山一郎君) 私は兵力といい、戦力といい、それから戦う力というように解釈しまして、現在の自衛隊は兵力とも言えるし、戦力とも言えるし、軍隊とも言える、こういうように思っております。
  234. 八木幸吉

    ○八木幸吉君 総理は自衛隊は戦力とも言えるし、軍隊とも言える、率直なお話しであります。そこで私は次に移りたいと思いますが、本国会における一般施政方針演説その他衆議院予算委員会等で、憲法の解釈の変遷ということをしばしば総理はおっしゃっている。この意味は憲法制定当時は戦力も絶対に保持しちゃいけないというのが多数の解釈であったけれども、防衛庁設置法、自衛隊法等が国会を通過した以上は、たとえば自衛隊が戦力と見られても、これを国が保持するということは差しつかえないというふうに憲法の解釈が変化してきた、こういうふうにお考えになっているように私は想像するのですが、念のためにこの点を確かめておきたい。
  235. 鳩山一郎

    国務大臣鳩山一郎君) 八木君のおっしゃる通り考えております。
  236. 八木幸吉

    ○八木幸吉君 ただいまの総理の御解釈に従えば、国会は国権の最高機関であるから、ここで通過した法律は、たとえそれが常識的に憲法違反である、こう考えられても、憲法の解釈が変化したのであるから差しつかえない、こういうふうなお考えであろうと思います。
  237. 鳩山一郎

    国務大臣鳩山一郎君) とにかく国会が憲法違反をすることはないので、憲法解釈の仕方が変遷してきたものと思います。
  238. 八木幸吉

    ○八木幸吉君 そういうただいまの御解釈の通りであれば、国会に過半数の議席を占めておったならば、極端を言って、憲法違反の法律でも作り得る、こういうことになるわけでありまして、従って憲法改正の発議には議員の三分の二以上の同意が必要である、しかもそれを国民の投票によらなければならん。これが憲法第九十六条の規定でありますが、国会さえ通れば、法律が憲法違反の疑いがあっても差しつかえないということになれば、この憲法第九十六条が死文に化するおそれあがると私は考えるのであります。そこで私は国会でかりに形式的に法律が通過しても、国民の側においてもしそれが憲法違反である、こう考えるならば、これを提訴するだけの道が開かれなければならん、こう思うのでありますが、日本には不幸にして違憲に関する特別に設置せられた違憲裁判所というものがありませんから、そこで憲法第八十一条の規定によりまして最高裁判所が憲法違反に関する裁判をやり得るのだ、裁判所法の規定で具体的の事例でなければ、これを受理しないというのが現在の建前でありますけれども、それでは一方、国会さえ通れば憲法違反の自衛隊法でもこれを正当化するという結果になって、国の根本法規である憲法の尊厳を維持するということがむずかしい、こう私は考えるのでありますから、たとえ国会を通った法律であっても憲法違反と考えれば、それを最高裁判所が受理し得るという道を開く必要あがると思うのですが、この点についてどのようにお考えになりますか。
  239. 鳩山一郎

    国務大臣鳩山一郎君) 先刻あなたから憲法改正についての範囲などについてお話がありました。やはり現在の最高裁判所は具体的の事件でなければ、違憲であるか違憲でないかを裁判することができないというのが通説でございます。今度は最高裁判所は違憲裁判所、違憲かどうかというようなことも最高裁判所できめ得ることということを具体的でなく抽象的でもきめるというような権限を付与することが必要だ、これも憲法改正の一理由になるだろうと思います。
  240. 八木幸吉

    ○八木幸吉君 それにつけ加えて、これは法制局長官に伺いますが、最高裁判所が具体的に受理し得る事例、たとえばそれを想像し得る事例を考えてみますと、かりに徴兵制度がしかれる、そういう法律が国会を通る、ところが私なら私が赤紙が来てお前兵隊に来い、こういう応召が来て、しかしこの徴兵制度そのものは憲法違反である、こう私が考えてそれを最高裁判所に提訴する、これは現在の裁判所法で受け付けますか、受け付けませんか。
  241. 林修三

    政府委員(林修三君) まあ今事例におあげになりました法律は現在ないわけでございますが、かりにある法律ができまして、それが違憲であるという場合に、その法律に基きまして処分を受けた、あるいはその法律に基きまして自分の権利利益を侵害されたという者は、そういう具体的事件を通じて審級に従って裁判所の審理を求める。最高裁判所は結局その具体的事件の審理において、前提としてその法律が憲法違反かどうかということも審査し得ることは、現行憲法下において可能なことと存じます。
  242. 八木幸吉

    ○八木幸吉君 次に、国防会議の性格について総理にお尋ねをいたします。現在の防衛庁設置法におきましては、国防会議は内閣総理大臣の諮問機関になっております。これは内閣責任制の立場から当然のことであると私は思うのですが、自衛隊法第七十六条第一項但書に、緊急防衛出動の場合は内閣総理大臣国会開会中といえどもその承諾を得ずして防衛出動を命ずることがてきる、こういう規定があるのであります。そこで私はこの規定は非常に危険な規定であると思うのですが、もっとも自衛隊法第七十六条第二項では内閣総理大臣国会の事後承認を求める規定はありますけれども、実際問題として一たん自衛隊という実質上の軍隊が行動を起したならば、たとえ国会がこれを否認いたしましても、直ちに撤収するということはむずかしい、こう私は考えます。そこで自衛隊の出動は戦端を開くのと同じでありますから、言いかえれば一国の運命を決するような重大問題でありますから、慎重の上にも慎重を期さなければなりませんので、そこで単に内閣責任制の立場から総理が行政の最高責任者であるといって、その専断で戦端を開くというのは困る。これをチェックするのは国防会議の重大な一つの存在意義であると私は思うのです。そこで国防の基本方針やその他のことは内閣総理大臣の諮問機関の事項としてもよいわけでありますが、緊急出動の場合だけは国防会議の議決事項とすべきであると私は考える。これを具体的に申しますと、自衛隊法第七十六条第一項但書を、「特に緊急の必要のある場合国会の承認を得るいとまがなかったときは、国防会議の同意を得て出動を命ずることができる。」、こう改めるのが国の大事を決する上に必要じゃないか。  これに対して御意見はいかがですか。
  243. 鳩山一郎

    国務大臣鳩山一郎君) ただいま聞いていますと、ごもっとものように思うのですけれども、法律の話で、現在の法律上の解釈は法制局長官からしてもらいます、とにかく緊急の場合において内閣総理大臣が出兵についての判断をしなくちゃならんということについても、国防会議の承認ですね、承認を必要としやしないかということについての私の意見ですね。それは検討の値打ちがあるものと思います。
  244. 八木幸吉

    ○八木幸吉君 今直ちにどういうお考えであるかということを突きとめることは無理かもしれませんが、つまりむちゃな総理大臣が出てきて国会開会中でも戦端を開くことができる、防衛出動を命ずることができる、こういう権能を持っておれば非常にこれは危険なことである。ほかのことはよいが、戦争をおっ始めるということだけは国防会議の同意を得なければ、総理大臣といえどもこれを専断でやることはできない、こういう一句を入れて置くことが国家のために必要じゃないかこういうのが私どもの趣意でありまして、よく一つ御検討を願いたいと思います。
  245. 鳩山一郎

    国務大臣鳩山一郎君) 現在は諮問機関ということで国防会議をこしらえるものですから、現在においてはできるはずはないのでありますけれども、戦争をするかしないかということを単独できめるということは危険ですから、検討してみる余地はあると思います。
  246. 八木幸吉

    ○八木幸吉君 そこでその議論を推し進めると、国防会議の構成員を民間人としては識見の高い練達の人というふうに原案になっておりますけれども政府の一方的の考えで構成員をきめるということは、これもやはり私は危険だと思う。どうしても挙国一致的の体制を必要だと思いますから、この緊急防衛出動の場合の議決機関であるという建前から、民間の代表としては衆参両院議長、総理大臣の前歴のある人、日本銀行総裁といったような個人でなくて、資格においてその構成員をきめるということが私は正しいからではないか、こう考えますので、これに対す御意見も伺ってみたいと思います。
  247. 鳩山一郎

    国務大臣鳩山一郎君) 検討いたします。
  248. 八木幸吉

    ○八木幸吉君 次に行政改革の問題について総理にお伺いをいたします。  申すまでもなく、わが国民の租税負担は年々非常に累加いたしております。大蔵省の発表によりますと、満洲事変直前の昭和六年の国民一人当りの税金は二十三円であったのが、昭和三十年度では一万四千三百五十円になっております。もっとも物価も騰貴いたしておりますけれども、もはや国民の担税能力の限度にきておると思うのであります。ここで少しく数字をあげてお聞きを願いたいと思いますが、昭和六年のわが国の中央行政官庁の官吏の数は三十六万、議会、裁判所、会計検査院、その他国費をもって支弁する各県知事や、国鉄、専売局を合せて六十八万でありました。それが本年は三月が百三十六万三千有余になっております。また地方公務員は昭和八年は都道府県市町村の一般職の官吏、警察、消防、学校等の職員の数は七十四万であったのが、昭和二十九年度は百三十五万になっております。つまり中央地方を通じて二十年間に官吏の数が百四十二万から二百七十一万にふえております。このほかに地方には公選による議員とか、委員等が百数万あるし、中央官庁には非常勤職員がそのほかに五十三万おります。更に機構の方から申しますと、昭和六年は各局部課などが四百七十七あったのが、昭和三十年度は一千百三十二にふえております。出先機関のことを申しますと、現在は二万六千三百八十六の出先機関があって、そのほかに附属機関、なお一千六十四ある。まあ一言で言えば非常な膨大な機構が存在しておるわけでありまして、国民負担の軽減の立場からどうしてもこれは一大改革を要すると思うのであります。御承知の通りアメリカでさえフーバー委員会ができまして、三百人の専門家を動員して一年数ヵ月の間に百九十万ドルの経費で三十億ドルの節減をやっております。この前の吉田内閣のときに緒方自由党総裁に内閣委員会でこのことを申し上げましたら、日本にもフーバー委員会のようなものを作ることを真劔に考慮してみたい、こういうお話があったのであります。私は特にこの場合総理にお願いいたしたいのは、鳩山内閣が如何に多くの公約をお掲げになりましても、いざ実行するとなるとその財源に行き詰るのが現状でありまして、戦争に負けて領土を四割五分も失って貧乏になっておるのでありまするから、どうしても戦前の倍以上のこの膨大な複雑な組織を維持して行くということはこれはむずかしい、これを簡素化し、能率化し、わが国力、国情に合うように改革することが私は必要だと思うのであります。前の吉田内閣におきまして、吉田首相も熱心にこのことをやっておられましたが、しかもできなかった。この大事業を私は憲法改正と同じように非常な熱意をもって鳩山総理がおやりにならんことを切にお願いしたいと思うのです。ことにこの問題は自由党が従来非常に熱心でありましたから幸いに民主党の方から自由党にお呼びかけになりまして、これを政策一つの協議の重大題目にお取上げ願いたということを、私は国民の名において切にお願いしたいのでりますが、これに対する総理の御所見をお伺いしたい。
  249. 鳩山一郎

    国務大臣鳩山一郎君) 行政整理の必要なることは、過日もわれわれの同志において協議をしたことがございます。とにかく整理されたる人員を吸収するところの何か考えができなければ大規模の行政整理ができませんのですが、いろいろ考えまして、有効なる行政整理をやりたいと思います。
  250. 八木幸吉

    ○八木幸吉君 それには二カ年ぐらいの期限を切ってやはり一大真剣な調査会が必要であると、こう私は考えまして、それも一つ御考慮いただきたい。  それから待命制度を昨年やりましたが、今年も引続いてやるのかどうかこの機会に……これは総理は御存じないかもしれませんが、行政管理庁長官から……
  251. 川島正次郎

    国務大臣川島正次郎君) 待命制度は一応昨年限りで打ち切りまして、今年はそれにかわる制度としまして指名制度というものを作りまして、待命制度と指名制度の違いは、待命制度ですと、強制的に退職を命ずることができるのでありますが、指名制度ですと強制力はございません。どこまでも話し合いでやるということになっておりまして、昨年計画しました六万人の行政整理は非常に順調に行っておりまして、今年残っておるものも大体予定通り行くつもりでおります。
  252. 八木幸吉

    ○八木幸吉君 次に、不正事件の発生防止、予算の効率的使用等についてお伺いをいたします。  会計検査院の昭和二十八年度の決算報告によりますと、その非難事項は二千二百三十二、金額にして百四十八億円でありまして、その中には災害復旧事業で会計検査院の早期検査のために工事費の減額修正が百十億にも上ったものがあります。しかもこういう結果を生じました実地検査の割合というものはわずかに八%五でありますから、不正事件が何百億あるということはこれによっても想像ができるのであります。この原因はむろん官紀の弛緩が重大問題でありまして、政府内部におきましても努力をされておると思いますし、また今年度予算におきましても、会計検査院の予算が二千七百万円ばかりふえておりますけれども、なおかつその総額は四億三千万円でありまして、行政管理庁が六億六千万円の金を使っておるのから見れば、どうしてももっと会計検査院の機構を拡充する必要あがる、こういうことを私はこの非難金額から見て痛切に感ずるわけであります。そこで政府がこれらの官紀を振粛するため、そうして予算の効率的使用、国費の節約に努力するためにいかなる決心をお持ちになっておるか、これは総理に伺っておきたい。それからそれの対策として具体的にどのような方策をお持ちになっておるか、これは大蔵大臣と行政管理庁長官に伺ってみたいと思います。
  253. 鳩山一郎

    国務大臣鳩山一郎君) 八木君のおっしゃる通りに、官紀の振粛は非常に必要なことと思います。どうして官紀を振粛するか、これはやはり自分たちでまず範を示して、そうして官紀を振粛したいというふうに思っております。
  254. 一萬田尚登

    国務大臣(一萬田尚登君) 大蔵大臣といたしましては、このことにつきましては、この予算編成に当りまして特に厳正な査定をいたしまして、そういう国庫の金を乱用する余地のないようにする、こういうことが最も私は適切じゃないか。なおまた会計検査院であとでいろいろとごらん下さる、これはまあ厳にやらなくちゃなりませんが、しかしそれよりも私はそういう事態が起らないようにしなければならない。これは総理もおっしゃるように、やはり綱紀を厳にするとか、官紀が弛緩してはならない、こういうふうにして、同時にまたあまり先ほどお話があるように各省が多くて、要は人が多いと、こういうようなあり方が私はやはりいろいろな問題を生ずるもとじゃないか、そういう意味合いにおきましても、先ほどお話しのように、財政の上からも思い切った行政整理をしていくということが大切であろうと考えております。
  255. 川島正次郎

    国務大臣川島正次郎君) 現在の会計検査並びに行政監査は、会計検査院へ行政管理庁並びに必要なる各主管官庁、それぞれやっておるのでありまして、これにつきましては、かねてから一元化したらどうかという議論もあるのでありまするが、いずれも職責の内容が違いますので、直ちにこれを一元化することはなかなか困難でありますが、この三者がお互いに連絡をとりまして、なるべく不適正な金が使われないように処置することが必要だと考えまして、そういう処置をとるように今日し向けております。
  256. 八木幸吉

    ○八木幸吉君 過去五カ年間における食糧増産対策費として千百五十八億円を費して五百三十二万石の米麦増産と農林省が発表しておられますが、この実績は経審長官はお認めになるかどうか。  それから将来経済自立六ヵ年計画の食糧増産費と、その希望する主食増産の予想額は幾らであるか、これを伺っておきます。
  257. 高碕達之助

    国務大臣(高碕達之助君) ただいま御質問の、過去における五カ年の計画は、あの数字は過去の実績でございまして、あれは認めております。  それから経済六ヵ年計画におきましては、その程度ではとても補い得ないわけでありますから、一年に大体五百億と見ておりますが、そうして六カ年間に玄米の増産として千三百五十万石という予定で進んでいるわけでございます。
  258. 八木幸吉

    ○八木幸吉君 最後に病変米のことについてお伺いをいたします。  第一は、病変米の現在の在庫数量は約十五万トンと承知をいたしておりますが、その詳細の数量並びに買入価額及び倉敷料は幾らになっておるか。  また第二に、病変米を一般国民に配給することとせずして、工業アルコール用原料その他に使用するとするならば、通産省はトン当り一万七千円で二万トンぐらいは引き受ける、こう言明しておられますが、ただいま申しました十五万トンに近い在庫病変米を処理して、大体どれくらいの国家の損失が出るお見込みであるかどうか。  第三には、病変米の輸入防止のためにどのような食糧需給計画をお立てになっておるか。  第四には、着港検査制度を開始するとのことでありますが、輸入商社を大株主とした海外貨物検査株式会社をしてその検査をやって、果して所期の目的を達することができるかどうか。  以上四点は農林大臣、それから厚生大臣には、現在病変米の検査人員は十数名というきわめて少い人でありますが、輸入の実情からいたしましても、昨年の一月のインドシナ米五千トン入ってきた中で、たった三百粒、ほとんど一握りにも満たない米をとって、三十七粒のイスランジアがあったから、それで十二・四%の毒素が判明したのであります。かようなサンプリングのとり方で、国民の大切な配給米の毒のあるかないかということをおきめになることは非常に危険なことでありまして、私は前の厚生大臣にこのことを申し上げたのですが、どうか見本のとり方を十分納得のいくだけの規模においてやってもらいたい。これに対するお考えを伺いたいのと、再搗精して一度毒素はないと一部分で言われましても、これは国民の主食のことでありますから、全然安心するまでは配給しないということを、この機会にもう一ぺん一つ言明していただきたいと思います。これだけのことを農林大臣と厚生大臣に伺いまして、私の質問を終ります。
  259. 河野一郎

    国務大臣河野一郎君) お答えいたします。最初のことにつきましては、いずれ後刻資料として差し上げることにいたします。  それから着港検査にいたしましたので、大体これから先は不良の米は政府で買い上げないことにするつもりでございます。  それからもう一つ申し上げておきたいことは、大体衆参両院のそれぞれの委員会に私は出まして、この病変米の処分につきましては両院の御協力を得て、そうして納得のいく上で処理をしたい、これを政府で従来のように、たとえ一部でも独断で処理いたしますと、その間に理解や納得を得ることができないおそれがありますから、これらの諸君の御協力を得て処分をしていきたい。こういうことにお願をして今後そうするつもりでございます。  最後に病変米の処理は再搗精しても一部の人の中にも、学者の中にも異論のあるうちは断じて配給はしないということをたびたび申し上げておりますが、あらためてこの機会に申し上げます。
  260. 川崎秀二

    国務大臣(川崎秀二君) 検査は輸入食糧の検査の一環といたしまして、食品衛生法に基いて従来横浜、神戸その他におきましてやっているのでありますが、御指摘の通り厚生省の職員はきわめてわずかであることはお話しの通りでありまして、抜きとりに当ってサンプリング職員と検査の職員は合計大体十五名と申されましたが、検査員を合わせると三十八名であります。この職員が手不足のため非常に御批判を受けていることは厚生省としても恐縮をしておりますので、ただいま御指摘の方法については、十分将来、こういう問題が起らないように検査職員を充実さす方向に向いたいとは思っております。なお最近では農林省がただいま農林大臣の御言明にありませんでしたが、どこかで農林大臣が言っておられるように、非常に厳重な検査を現地でもいたしておられるようでありまして、これはまあ輸出入業者の商社が非常に買い入れの際において十分な検査をする関係で、昨年の八月に事故が起って以来、次第にそういうようなことは影をひそめて参っておりますので、御安心を願いたいと思っております。  なおこの配給の方はただいま農林大臣の権限でありまして、農林大臣が申されれば、私もかねてから国民に与える心理的影響からも配給をやめた方がいいのじゃないか、自分の方としては食品検査会はああいう結論を出したけれども、しかし学者の中にはなお異論を言うものもあるので、この際国民に与える影響からして、やめた方がいいのではないかという個人的な意見も申しておったような次第でありまして、実は最近の農林大臣の言明で安心しておるような次第であります。
  261. 湯山勇

    ○湯山勇君 ちょっと総理の先ほどの御答弁関連して……。総理にお尋ねいたします。総理は、先ほど八木委員質問に対しまして、戦争をするとか戦争をしないとかいう意味の応答があったようでございます。これは八木議員との応対の関係で不用意に発せられたのか、あるいは総理は国防会議に諮ってその承認を得れば戦争をするという実質を御表明になったのか。私どもはあの法案審議のときに、防衛出動ということと戦争ということとは必ずしも同じ概念ではないというように把握しておるのでございますが、総理はどういうふうにお考えになっておるのでございましょう。
  262. 鳩山一郎

    国務大臣鳩山一郎君) 私は先刻のお話は、八木君の、質問に答えたときには、国際的に戦争と見られるか見られないかは、これは別問題でありますが、今の現在においては、自衛の目的以外にはできませんのですから、むろんそういう制限がついての話であります。
  263. 湯山勇

    ○湯山勇君 それでは、現在のところ一般的に戦争をするというようなことは全然お考えになっておられない、そう把握してよろしゅうございますか。
  264. 鳩山一郎

    国務大臣鳩山一郎君) そうです。自衛のために、防衛の目的以外に国家は兵力は持てない。
  265. 湯山勇

    ○湯山勇君 戦争はなさらない。
  266. 鳩山一郎

    国務大臣鳩山一郎君) そうです。
  267. 湯山勇

    ○湯山勇君 了解いたしました。
  268. 館哲二

    委員長館哲二君) 本日はいかがでございますか、質疑を続行いたしましょうか。   〔「散会々々」と呼ぶ者あり〕
  269. 池田宇右衞門

    池田宇右衞門君 本日はもうごらんの通りだから、散会をしたらどうですか。   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  270. 館哲二

    委員長館哲二君) それでは本日はこれをもって散会いたします。    午後四時四十四分散会