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1955-03-31 第22回国会 参議院 予算委員会 第5号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和三十年三月三十一日(木曜日)    午前十時三十八分開会   —————————————    委員の異動 本日委員西岡ハル君及び秋山長造君辞 任につき、その補欠として、田中啓一 君及び平林剛君を議長において指名し た。   —————————————  出席者は左の通り。    委員長     館  哲二君    理事           池田宇右衞門君            石原幹市郎君            西郷吉之助君            豊田 雅孝君            佐多 忠隆君            成瀬 幡治君            松澤 兼人君            堀木 鎌三君            木村禧八郎君    委員            秋山俊一郎君            雨森 常夫君            伊能 芳雄君            泉山 三六君            植竹 春彦君            小野 義夫君            木村 守江君            左藤 義詮君            佐藤清一郎君            田中 啓一君            堀  末治君            安井  謙君            吉田 萬次君            片柳 眞吉君            小林 政夫君            田村 文吉君            高木 正夫君            中山 福藏君            廣瀬 久忠君            溝口 三郎君           小笠原二三男君            久保  等君            永岡 光治君            平林  剛君            三輪 貞治君            湯山  勇君            曾祢  益君            田中  一君            永井純一郎君            松浦 清一君            石坂 豊一君            深川タマヱ君            武藤 常介君            千田  正君            八木 幸吉君   国務大臣    内閣総理大臣  鳩山 一郎君    法 務 大 臣 花村 四郎君    外 務 大 臣 重光  葵君    大 蔵 大 臣 一萬田尚登君    文 部 大 臣 松村 謙三君    厚 生 大 臣 川崎 秀二君    農 林 大 臣 河野 一郎君    通商産業大臣  石橋 湛山君    運 輸 大 臣 三木 武夫君    郵 政 大 臣 松田竹千代君    労 働 大 臣 西田 隆男君    建 設 大 臣 竹山祐太郎君    国 務 大 臣 大麻 唯男君   国 務 大 臣 大久保留次郎君    国 務 大 臣 川島正次郎君    国 務 大 臣 杉原 荒太君    国 務 大 臣 高碕達之助君   政府委員    内閣官房長官  根本龍太郎君    内閣官房長官 松本 瀧藏君    法制局長官   林  修三君    法制局次長   高辻 正己君    経済審議庁次長 石原 武夫君    外務省条約局長 下田 武三君    大蔵省主計局長 森永貞一郎君    大蔵省理財局長 阪田 泰二君    通商産業大臣官    房長      岩武 照彦君   事務局側    常任委員会専門    員       野津高次郎君    常任委員会専門    員       長谷川喜作君    常任委員会専門    員       正木 千冬君   —————————————   本日の会議に付した案件 ○昭和三十年度一般会計暫定予算(内  閣提出衆議院送付) ○昭和三十年度特別会計暫定予算(内  閣提出衆議院送付) ○昭和三十年度政府関係機関暫定予算  (内閣提出衆議院送付)   —————————————
  2. 館哲二

    委員長館哲二君) これから委員会を開会いたします。  昨日の委員長及び理事打合会の結果、本日午前中総括質疑を行いまして、午後三時から討論採決に入ることを申し合せましたから御了承いただきたいと思います。   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  3. 館哲二

    委員長館哲二君) なお質疑は各会派一名にお願いいたします。  では総括質問に入ります。
  4. 左藤義詮

    左藤義詮君 定足数ございますか。
  5. 館哲二

    委員長館哲二君) 定足数ございます。
  6. 左藤義詮

    左藤義詮君 定足数何名ですか。十五名でしょう。定足数ないようですが……。もう一度お数え願います。
  7. 館哲二

    委員長館哲二君) 速記をちょっととめて下さい。   〔速記中止
  8. 館哲二

    委員長館哲二君) 速記を始めて。
  9. 左藤義詮

    左藤義詮君 非常に本予算も遅れておりますが、暫定予算提出も大へん遅れまして私どもきわめて短かい審議で国民に対して申しわけないと存ずるのでありますが、この短かいわずかな質疑によりましてもいろいろ現内閣の掲げられました公約が片っ端から雲散霧消しておる。まず教科書無償配布が明日からの新学期に間に合わないで、これが消えてしまった。これが第一号でございますが、続々としてこうして公約は消えていっておる。また自由党は非常に計画がないという御攻撃でございましたが、六年計画だとか、あるいは防衛六カ年計画とか、これもきのうの質疑によりますとほとんど実体のないものである。ただ方向日本をよくしようという方向ならばだれだって同じことなのでありまして、これがほとんど空漠たるものである。年次計画もできない。本予算との関係も明らかにならない。しかも防衛計画総合計画とは非常に数字においても矛盾をしておる。かような事態が明らかになったのでございますが、いずれ本予算詳細質疑をすることにいたしまして、たくさん私どもまだ明らかでない点がございますが、特に私ども心配いたしますことは外交の問題でございまして、昨日の総理並びに外務大臣の御答弁では、ソ連交渉をする場合には歯舞色丹はもちろん、千島南樺太についても交渉をする。しかしどうもむずかしそうだと初めからさじを投げたような御答弁でございますが、これはどういう点まで確信を持ち、どういう点までは国民の前に必ずこの線を厳守すると……杉原構想というものもいろいろ研究されておるようでございますが、いろいろおあせりになって、すでに会議訓令案等も御準備になったと新聞に伝えられておるのですが、昨日の総理お話では何か向う事情もよくわからないけれども、とにかくいいことだからということですけれども、そういう頼りないことでなしに、いよいよきょうの新聞でもニューヨーク交渉なさる大体見通しがついてきたようですが、これに対して国民とともにどれだけの私は強い腰をもってどの点までは国民のために厳守なさるのであるか。特に領土の問題についてお伺いしたいと思います。
  10. 鳩山一郎

    国務大臣鳩山一郎君) きょうもすわっててよろしゅうございますか。
  11. 左藤義詮

    左藤義詮君 どうぞどうぞ。
  12. 鳩山一郎

    国務大臣鳩山一郎君) では失礼させていただきます。私がドムニツキーに会いましたときのことは昨日、どの程度まで話をしたかということをよく申しませんでしたけれども、幾ら考えましてもどの程度まで言ったかよく覚えてないのであります。ただし歯舞色丹、あるいは千島を加えて言いましたにしても、これは限定的の意味で言ったのではありませんで例示的な意味で申したので、領土問題に対しては話を進める必要があるということを強く要求しただけであります。で、今度ニューヨークで開かれる交渉についてどの程度にどのくらいの準備をするかということは交渉の際に言うべきことであって、その前にお話をするということは不利益だと思いますから申し上げることはできません。
  13. 左藤義詮

    左藤義詮君 衆議院自由党犬養委員質問に対しまして、総理の御答弁、これは速記録でございますが、「ヤルタ協定は、サンフランシスコ平和条約によってほとんど認められてしまって、放棄してしまっている。それですから日本歯舞色丹返還のように、南樺太千島列島等返還主張することはできないだろうと思っております。ただしソ連は、サンフランシスコ条約の当事者ではありませんから、話し合いはしてみるのが必要だろうとは思いますけれども、しかし歯舞色丹返還を請求するような強い理由は持っていないと考えられます。」初めからさじを投げたような御答弁であり、しかもこれが、衆議院予算委員会のことが新聞に報道されますときには、各新聞ともに、ここに切り抜きを持っていますが、非常に私心配して持っているのですが、ソ連返還要求せずとか、千島返還主張は不可能とかという大きな見出しで、国民に、しかも世界にこういうふうな印象を与えておるのでございますが、こういうような私は初めから非常な弱いことで達成できるものであるかどうか、こんなこと私が今さら申し上げなくてもですが、一九四一年の大西洋憲章では、戦争に勝っても領土坂らんということを宣言をしておりました。その翌年にはソ連も加えた連合国宣言で、この不割譲、不併合の原則は承認しております。ところがヤルタ協定というものはこの原則を全く踏みにじったものだ。しかも日本は全然これはつんぼさじきといいますか、関知いたしておりません。われらはポツダム宣言によってのみ降伏をいたしたのでございます。その後の経過を見ましても、米国の上院はサンフランシスコ条約を批准するときに、ヤルタ協定日本に関する事項は米国としては承認しないという旨の議決をしておるのでございます。米国すらかように強い議決をしておるのでございます。私はしろうとでございますが、国民の一人としてしろうとだけに心配するのでございますが、このヤルタ協定というものは民主党の大統領たるルーズベルトがなくなる直前に非常にあせってスターリンにひっかかったんだと、当時の秘書であったヒスという、後に問題になった……ソ連の謀略だと、まあ共和党の攻撃かもしれませんけれども、現在このヤルタ協定米国は全面的に廃棄しようというようなお話も非常に強いのでございまして、先日ヤルタ協定の全貌が発表されたことも私いろいろな含みがあると思うのでございます。このヤルタ協定のしかも条文の中でも、南樺太返還するとありますが、千島は引き渡すと書いてあるのであります。そこに非常なニュアンスの違いがある。こういうことを使い分けたことをスターリンも承認して調印しておるのでございます。そうしますと、樺太日露戦争の結果であるにしても、千島は元来日本領土である。ソ連から奪い取ったものでないということもスターリンも認めておる裏書きでございます。そうしますれば歯舞色丹まではやれるけれども千島はどうも危ないとか、あるいは樺太はできないとか、もう少し私は調印に対する経過を御研究になって、幕末以来千島の問題にどのくらいわれわれの先人が苦労しているか、私はこういう国民の非常な心配に対して、衆議院犬養委員に対する御答弁、それが報道機関を通じて世界、特に日本国民に与えました印象、こういうことに対しましてもう少し私は総理ほんとうの愛国心を持って、祖先に対し、子孫に対する責任を持ってどういう交渉をするかについてはお漏らしいただきたい。どうも非常に攻撃を受けた、秘密外交に戻るようですけれども、もう少し、すでに国民にこういう印象を与えてしまった以上、もう少し強い信念を持ってこの場で御答弁をいただきたいと思うのでございます。
  14. 鳩山一郎

    国務大臣鳩山一郎君) 私が衆議院で答えましたのは、その当時私が持っていた気持を申したのでありますが、ああいうようなことをあまりに率直に答弁するということは不利益があって、利益がないのでありますから、これから交渉する問題についてはこの程度において御了承を願いたいと思います。
  15. 左藤義詮

    左藤義詮君 不利益なことを一国の総理としてすでに国会において御答弁になったと、それが報道機関によって全世界に伝わっておる。それが非常に不利益であったから、これからは一切言わないのだというだけでは私は済まないと思うのでありまして、 こういう御言明をなすったことがこれが全く私の本心でないのだとか、これに対する私はきのうまでお答えになった所見と比べましてはっきり私はこの言明処置をしていただき、そうして今後は少くとも国民外交でございますので、吉田秘密外交ではございませんので、どうか一つ、たとえば南樺太千島とはこういう違いがあるのだと、これだけは最後まで要求すると、私はもう少し総理のはっきりした、こういう非常に国民総理の御健康を心配しておりますが、総理頭脳まで国民に疑わせることのありませんようにもう少しはっきりしていただきたいと思います。
  16. 鳩山一郎

    国務大臣鳩山一郎君) 衆議院で答えましたのは、その当時私が持っていた気持を申したのでありますが、ああいうようなことをあまり率直に答弁するということは、不利益があって、利益がないのでありますから、これから交渉する問題については、この程度において御了承を願いたいと思います。
  17. 左藤義詮

    左藤義詮君 不利益なことを、一国の総理としてすでに国会において御答弁になった、それが報道機関によって全世界に伝わっておる、それが非常に不利益であったから、これからは一切言わないのだというだけでは、私は済まないと思うのであります。こういう御言明をなさったことは、これは全く本心でない、きのうまでお答えになったのと比べまして、はっきり私はこの言明処置をしていただき、そして今後は少くとも国民外交でございますので、吉田秘密外交ではございませんので、どうか一つ、たとえば南樺太千島はこういう違いがあるのだ、これだけは最後要求するという、もう少し総理のはっきりした——非常に国民総理の御健康を心配しておりますが、総理頭脳まで国民に疑わせるようなことがありませんように、私はもう少しそこをはっきりしていただきたいと思うのであります。
  18. 鳩山一郎

    国務大臣鳩山一郎君) 衆議院答弁したこと以上には申し上げられません。
  19. 左藤義詮

    左藤義詮君 衆議院の御答弁では、そうすると、歯舞色丹返還要求するが、それのようには、南樺太千島列島どっちも同列にしてありますが、主張することはできないであろう、こういう御答弁をなさった、それ以上についてはもう御答弁ができない、こういうようなお話でございますが、そういたしますと、報道機関を通じて、国民、全世界印象を与えた、その印象を肯定なさるのでありますか、それをこの機会において是正なされるのであるか。これは国民が非常に心配しておる問題でございます。私ども先人の血の出るような苦心、子孫に対して大きな責任を持つ問題でございますので、一つこの点を明らかにしていただきたいと思います。
  20. 鳩山一郎

    国務大臣鳩山一郎君) 千島列島並びに南樺太については、サンフランシスコ条約で放棄しておりますから、とにかく歯舞色丹同列関係にはないと思うのです。
  21. 左藤義詮

    左藤義詮君 それはわかります。
  22. 鳩山一郎

    国務大臣鳩山一郎君) それですから、どういうような交渉をするかは、ただいま明示するわけには参らないと思います。
  23. 左藤義詮

    左藤義詮君 非常なおそるべき影響を与えるような御言明をなさって、それの処置をなさらない。これは非常に総理責任問題だと思うのですが、国民に対してこれは申しわけ立たぬと思うのでありますが、一方においては、米国に対しては、小笠原、あるいは沖繩の問題について要求をするということをはっきりおっしゃっておる。また私どももこれは当然すべきだと思うのであります。二面外交、それをほんとうに上手に、その妙味を発揮すると申しますか、米国がこの際小笠原沖繩返還の先手を打たれるならば、日本アメリカと手をつないでいく非常に大きな力になり、ソ連との交渉に対する無言の指示になると思うのでありまして、この点も私は非常に御同感でございますが、その方については御言明になって、どこまで進んでおるか、あとでこれは外務大臣にお聞きいたしますが、一方においては、これだけの印象を与えた御言明をなさって、あとのことは秘密で言えない。しかも私が先ほど申し上げましたような、ヤルタ協定条文を読んでも、南樺太千島については、相当事情が違うようでありますが、その点も全然国民に明らかにすることがないのでございますが、千島だけは最後の線で守る、あるいは南樺太については交渉の余地があるとか、何かお話をいただかないと、アメリカに対しては要求をする、ソ連に対してはするのか、しないのか。現在のところでは、衆議院の御答弁ではしないと、してもだめだというふうな印象を与えておいでになるのであります。こういう、私は非常に不利な、初めから無条件降伏をしてこの交渉にお臨みになさるのでありますか、さようなことでありますれば、抑留邦人の問題にしましても、私は厚生省からどれくらいの邦人が抑留されておるのか責任のある数字を伺いたいと思いますが、最近帰るものもわずかに百人に満たない、ほかのものは残されて交渉のときの人質にされるのか。これはポツダム宣言によって戦いは済んだのでありますから、戦犯以外のものはすみやかに帰すということが約束されておるわけであります。それが十年もいまだに帰されない。こういうことも、私は対等の地位においてソ連交渉なさるならば、帰還を待ちわびておる家族や、国民の哀情から、もっと強くお進めになるべきである。また漁業問題について、もし十三海里を領海とするああいう説をソ連が唱えるならば、これは北洋漁業にとって致命的な打撃でございます。通商条約の問題にしてもそうでございます。これは国民とともに、この際非常に強い腰をもってやってもらいたい。私の先日の質問に対して、ソ連事情等は全然研究していないというお話でございますが、西ヨーロッパの立ちおくれた防衛体制も非常に整ってきましたので、ソ連の方も非常にあせっておる。そのためにマレンコフの退陣とか、いろいろ事情は変ってきておる。何とかして日本と手を握りたい。むろんほかにもいろいろ意図はございましょうが、向うが買い気に出ておるのに、そんなにあわてる必要はないと思います。もし選挙の宣伝でないのでございましたら、こういう微妙な時期に初めから戦わずしてもう旗を上げるというような、こういう態度国民に申しわけが立つでございましょうか。
  24. 鳩山一郎

    国務大臣鳩山一郎君) 初めから旗を上げて、主張すべきものを主張しないというような態度は断じてとりません。
  25. 小笠原二三男

    小笠原二三男君 ちょっと関連質問……、昨日来左藤君を中心として自由党からこの質問が続けられておりますが、われわれ左派社会党としましては、あの当時の片面講和を得るために南樺太千島を放棄することに断じて反対した唯一の政党の立場から言って、このことこそわれわれが主張する権利があると考える。(「国民全体がだ」と呼ぶ者あり)今日国民世論ということで、自由党の方では放棄は断じて認めない、こういう形で質問をされておりますが、なかなかお答えがありませんので、総理はその当時追放中で政治に関与されておりませんでしたが、こういう平和条約が結ばれることについてどういう心境を持っておったかどうかお伺いしたい。
  26. 鳩山一郎

    国務大臣鳩山一郎君) 平和条約を結ぶに当ってどういう心境で……。
  27. 小笠原二三男

    小笠原二三男君 吉田内閣が、あの当時南樺太千島を放棄することを前提とする平和条約を取り結ぶことについて、追放中でありましたあなたはどういう御心境を持っておられたか、お伺いしたい。
  28. 鳩山一郎

    国務大臣鳩山一郎君) いかなる事情で放棄したかは存じませんけれども、とにかく日本条約を結んだ以上は、その条約は守っていかなくてはならないという心境で今後も進むつもりでおります。
  29. 左藤義詮

    左藤義詮君 外交の問題で、総理は非常に日ソの問題に御熱心で、ドムニツキーの提案を破り上げて、ここにきたわけでありますから、その後の経過については今さら申し上げるまでもありません。実際この衝に当り、責任のあるのは外務大臣だと思いますので、外務大臣に対して日ソ交渉に臨む、一つ国民を代表しての心がまえ、特に領土の問題についてどういうふうにお考えになっておるか、どうも総理に申し上げても、総理衆議院でこういう印象を与える御答弁をなさったっきりであとお答えいただきません。昨日の御答弁では少しこの問題に御理解ができてきたようでありましたが、またきょうは一切言えないということになって逃げておしまいになりますので、外務大臣から一つわれわれ国民を代表してどの程度の最低の線だけは守る、これは民主党公約でございますから、この政府一つ公約をはっきりこの際お示しいただきたい。
  30. 重光葵

    国務大臣重光葵君) お答えします。日ソ交渉に当って領土問題を初めいろいろ種々の問題、未帰還者帰還の問題、漁業問題等、今お話しになりましたこれらの問題について日本側として従来から堅持しておりました立場主張のあることは御存じの通りでございます。領土問題につきましてもいろいろな条約上の関係において、その意味の異なる、区別のあるということも先ほど総理の御言明通りと私は考えます。これらのことをすべて私は日本の従来とも堅持しておりました主張に基いて強くわが主張を実現すべく交渉において努力をしなければならぬと、こう考えております。それが当然のことと考えております。特にかような重大な交渉に当りましては、いわば基本的の問題でありますから、これはあらゆる努力をして、その実現をはかりたいと、こう思っております。しかしこれは交渉をどこまでも全部わが方の通りにならなければ一切交渉結末をつけぬか、こういうことにつきましては、私は主張するだけ主張し、また努力をするだけ努力をして、その結果に応じて、これは国論とも照応して、結末をつけるべきものだと、これは今予定は何もございませんけれども、理屈はそういうものだろうと考えておりますが、しかし主張するものはあくまで努力をして主張を実現したい、こう考えております。
  31. 左藤義詮

    左藤義詮君 総理ドムニツキーとどこまで話したかも御記憶になっていない。衆議院速記録を見ますと、ドムニツキーという人は、モロトフのことでしょう、外務大臣マレンコフも十分知っておると言うから、国交調整をしてひどい目にあっても困るから、よくドムニツキーに話をしておいた、こういう御答弁をしておられるのでありますが、私はそういう場合にもどこまで言ったのか、私が今申し上げたような歯舞色丹千島、あるいは南樺太とは相当ニュアンスの違いがある。そういうこともあまり頭におありにならないで、どこまで言うたか、例示はしたかもしれんけれども、はっきりしていない、しかも向う外務大臣なりマレンコフを意識してお話しになるときにも、そういう私は非常に失礼でございますが、頭脳の御健康を御心配申し上げなければならぬような御答弁でございますが、かって松岡洋右氏が二面外交というようなことを考えて、ヒトラーに欺かれ、スターリンに裏切られて、私どもがこの敗戦のしかも一番最悪のときにどんな目にあったか、私ども骨身に徹しておるのでございまして、私ども先人が明治以来陸奥宗光小村寿太郎が血を流してやりました外交、しかも戦い破れてこれからは外交によってのみ日本が国際的な地位を回復し、子孫の幸福をはからなければならんときに、私は非常にたよりないと申しますか、ほんとうに行き当りばったりの、何も定見のない、信念のない、初めから国民にできないというような印象を与えて、国民の盛り上る世論を力としての国民外交ができるかどうか、私はきょうの御答弁によって非常にこれは遺憾でございますが、領土問題につきまして私は満腔の遺憾の意を表しまして、時間がございませんので、なお本予算機会に譲りますが、また今後の交渉の進展を十分私ども見ていかなければならんと存ずるのでありますが、この際にこの交渉一つの条件としまして抑留者の問題ですが、厚生省としては今どれだけの戦犯と、それ以外のどれだけのものが抑留されておるかという数字をお持ちになっておられますか。
  32. 川崎秀二

    国務大臣川崎秀二君) お答えいたします。正確な数字を発表いたします。ソ連関係におきまして、もとより千島樺太等におるものも含めまして、戦犯関係者は、赤十字社の名簿において一千四十三名、そのほかに生存残留をしておるもの一千名ないし一千五百名、状況不明者は一万五百名から一万一千名と大体見ております。合計してソ連関係が一万三千名、中共関係は北鮮の方も入れまして、戦犯関係者は先般来日されました李徳全女史の名簿によりますと、一千六十九名、そのほか生存者が大体六千人くらいと見ております。それから状況不明者、これが四万四千、合計して五万一千、これが中共関係であります。以上お答えいたします。
  33. 左藤義詮

    左藤義詮君 ソ連との交渉に当って戦犯者についてらもちろんでございますが、特に戦犯以外の者は、十年前に当然帰っておるべきものでございますので、これについては今度の交渉に当っては、何よりも私は留守家族の心持を思い、また国民全体の痛憤、憂慮を体しまして、厳重に御交渉になる御意思があるかどうか。総理はあまり外交のことをお触れにならないようですから、外務大臣に伺っておきたいと思います。
  34. 重光葵

    国務大臣重光葵君) 御承知の通りに、ソ連との関係においていまだに外交関係はございませんので、正式の経路によって交渉をする手段がございませんでした。しかし第三者を介し、この問題については、従来とも全力をあげて未帰還者の帰国が実現できるように努力はいたして参りました。今回日ソ交渉が開けるということになりますれば、この問題はもちろんさっき申し上げた趣旨でもってわが方の希望を達成するように極力努力をいたす考えでございます。
  35. 左藤義詮

    左藤義詮君 この点は交渉に当りまして私は一つ最善の御折衝を希望しております。先ほどの私のお尋ねの中にお答えがございませんでしたが、米国に対しても、この際ソ連との領土問題の解決を有利にする、ほんとう米国日本を支持するという意味で、そういう点からもこの機会沖繩小笠原等の返還の問題についてそれこそ二面外交で御交渉になる御意思があるかどうか、あるいはこれについてすでに何らかの手をお打ちになっているかどうか、あるいはこれに対してもし手をお打ちになっておるとするならば、何らかの反応があるかどうか、このお見通しを一つ承っておきたい。
  36. 重光葵

    国務大臣重光葵君) 琉球、小笠原両諸島に関する御質問でございましたが、この両諸島は平和条約の第三条で米国の信託統治にすることを認めておるのでございまして、信託統治が決定するまで、米国が一切の施設を行うことを認めてきております。しかしその後の何で日本側の要請もありまして、米国はいまだにこれを信託統治とする意向を示さないのみでなく、かえってダレス長官アメリカの議会で、これらの諸島に対する日本の潜在主権ということの存在を認めておるような状況で、大変その点はわが方に有利になっております。しかし軍事上の必要もありまして、これらの諸島においての施設は、米国がまだこれを自分の手に持って、行政、司法その他一切の権力を米国が行なっておるような状況で、これに対してはなるべくすみやかに、特に小笠原の住民の帰還とか、あるいはまたこれら諸島における住民の生活の問題等について、わが方はアメリカに対してできるだけ便宜を与えるように交渉を続けて来ております。琉球については、教育を含む民政に、なるべく日本の内地と同じようにするというようなことも、満足とは言い切れまいが実現をしつつある状況でございます。さようなわけでありまして、潜在主権をさらに一歩進めて、これらの諸島に対する日本側の主権を十分に認めるようにし向けて行きたい、又そういう方に交渉をして行きたいという方針をもって進めておる次第でございます。このわが方の希望が将来いつ達成をするかという見込みは、今日の国際情勢において今見込みをつけることはできませんが、しかし国際情勢の改善、変化によって、これは不可能のことではないと思って、常にその方に努力をいたしたいと考えております。
  37. 左藤義詮

    左藤義詮君 先ほど小笠原君から、自由党サンフランシスコ条約を認めたじゃないかというお話しでございましたが、もしあのときに講和ができてなければ、われわれはいまだに占領下におるわけでございます。自由国家とだけでもあのときに講和の道を開いたから、今日ソ連からも手を伸べて来ておるのでありまして、しかしああいう条約を作りましたからといって、だんだん国際情勢の変化、あるいは自由国家との話し合いによりまして、少しでも国家、国民に有利なようにこれを改善して行くことが私どもの望むところでございまして、そういう意味におきましても、今外務大臣お話しになった点を、これは私はソ連との領土問題の交渉と相併行し、世界外交の非常な微妙な急所があると思うのでありますが、米国に対しても十分に小笠原やあるいは琉球の住民、私どもの同胞と早く手を握れますように、最善の努力を期待する次第でございます。  次に鳩山内閣が選挙の公約として、共産圏諸国との貿易、特に中共貿易について非常な大きな宣伝をされたのでございますが、さて選挙が終ってみますると、終りはまるで処女のように一向進展していないようでございます。一体前内閣の当時どれだけの中共貿易、ソ連ともそうですが、特に中共貿易についてどれだけの質的な相違があるのか。結局昨年一年間だけでも中共貿易が、輸出は四倍強、輸入は一・五倍に飛躍しておるのでございまして、これは結局一昨年来の禁輸品目の解除ということが効果を上げたからでございまして、これ以上進めて参りますためには、どうしても今の輸入超過になっておるこれを解決するということが、結局中共が一番欲しておる鉄鋼製品とか機械とかいうようなこの禁輸品目を一日も早く解除をすることが一番の急所だと思うのでございます。ところが現内閣になりましてから、ココムに対してどれだけの折衝をなさったのか、どれだけの実効が上っているのか、(「自由党は反対したじゃないか」と呼ぶ者あり)中共貿易そのものは反対していない、われわれは。(「望みなきものとしておったじゃないか」と呼ぶ者あり)昨年軍クロム酸ソーダなど六つばかりの禁輸品目について、ココムの特認、すなわちただ一回限りの特別輸出を認めてもらったという実績があるだけでございまして、それ以外何ら実績を上げておられない。もう少し、西欧と同じ並みにということもございましようが、日本の特殊事情をもっと御説明して、中共貿易は前内閣と質的に違うぐらい非常な熱意を持つ、こういうことを公約せられたのなら、なぜもっと積極的な努力をなさらないのか。それともああいう公約をしたけれども国民には約束したけれども、ココムに対して一つも押しがきかなくて、一つも実績が上らなくて、こうして公約の旗をおおろしになるつもりかどうか。もう一つは、ココムの問題とともに、これはその事実はなかったといいますが、もし中共貿易に深入りするならば、何らかの対米取引に、あるいは台湾との取引に影響があるぞというようなことを、そういう風声鶴涙かも存じませんが、冷水を浴びせられたということが、今せっかく使節団が来ておりますが、どうも乗り気になれない、これが進まない一つの原因だと思いますが、これに対しまして米国大使館は、こういう事実はないと否定しております。また外務省や通産省も公式の警告はなかったがというような、どうも一つ割り切れぬ御説明でございますが、御承知のように、マッカラン法だとか、あるいは外国資産管理規則だとか、あるいは輸出統制法というアメリカには法律があって、もしこれにひっかかったら大変だという、大変にみんなが、杞憂かもしれませんが、私の選挙区の大阪では、この点非常に心配しておるのでございます。この点が公約通り、中共貿易を促進するように、なぜアメリカに対して、絶対さようなことはないのだ、日本立場として、一つ中共貿易をどんどんやるようにという積極的な支持を得るようになぜ御努力をなさらないのか。そこまでアメリカがはっきりする考えはないにしても、かような風声鶴唳で煮え切らぬ、割り切れぬ政府態度でなしに、絶対そんなことは心配ないからどんどんやるのだ、そこが自由党と違うところだと、こういうくらいのなぜ積極的にこの問題に対する処置をなさらないのか。私はココムとアメリカ、中共あるいは共産諸国貿易に対する日本立場を十分理解してもらう、あるいは積極的に支持してもらうということが、いわゆる国民が受け取っておる現内閣外交の中心問題だと思うのでありますが、一向その点に御努力をなさった形跡もございません、実績も上っていないのでございます。せっかく使節団が参りましても、これは一向、ただおっかなびっくり、本当に私は大事な大陸貿易の礎石を置くことができないのじゃないかと思うのでございます。これに対して総理並びに外務大臣あるいは通産大臣の御意見を伺いたい。
  38. 重光葵

    国務大臣重光葵君) 中共貿易に対しまして、今日の国際情勢から見て、いろいろな制約が存在しておることは、これは事実でございます。お話のココムの問題もございます。また各国といたしましては、その国内法規の関係もございます。これらの制約のあるという事実を前提にいたしまして、その範囲内において中共貿易を伸長したい、増進したい、こういうことも決して、これは空想ではないと思います。というのは、共産国との貿易にはいろいろ先方の機構上のこともあり、こちらもこれに応ずるようなまたいろいろ施策をすることができなければならん、それらのことを十分努力をいたしまして、そうしてさらにまたさような国際的な制限の範囲内において、わが方の生産品を向うに輸出するという努力を続けていきますならば、それは相当の成績を上げると、こう考えております。そのことはむろん私は前自由党内閣でやっていなかったとは申しません、しかし、われわれの手においてさらにそれの実現をするために努力をいたす方針をきめたのでございます。それからまた……。
  39. 左藤義詮

    左藤義詮君 方針だけでなしに、どれだけ実績が上ったかおっしゃって下さい。
  40. 重光葵

    国務大臣重光葵君) 実績は、本院ではございませんでしたか、通産大臣か実績を数字をあけて述べられました。いずれ通産大臣が再びお答えになることと思います。しかし、私といたしましては、さようないろいろなココムその他の国際的な制約のあるものをでき得るだけ制約を少くするということを心がけてやらなければならんことはむろんのことでありまして、しかるがゆえにココムの品目の減少等については、同じような地位にある他国とも連繋をとってそうしてその実現に努力をしているわけでございます。その他これは大きな国際関係に直接影響もあり、また原因を持つわけでありますから、中共貿易について他国をして日本立場をよく理解せしめることがむろん必要でありますから、それについては十分努力をいたしておると申し上げて差しつかえないし、又今後も十分その点は努力をしていきたいと考えます。これだけをお答え申し上げます。
  41. 石橋湛山

    国務大臣(石橋湛山君) ただいま外務大臣からいわれたように、中共貿易については、いろいろの国際上の制約がある、困難があるということは事実でございます。しかしながらその点は今外務大臣からいわれたようにこれからの努力によってこれを漸次解消したい、ココムの禁輸品のごときも、その禁輸の解除をできるだけ交渉をするというようなことを現にいたしておりますし、また今後もいたすつもりであります。また、それを離れて中共などにはいろいろな困難があります。これは鳩山内閣でどれほど進展したかということは、少くとも私に関する限りあまり過大な期待を持ってもらっては困るということを常に申しております。それはなかなか中共そのものの貿易が価格や品物の関係でむずかしいのです。日本の中小企業者が輸出したいというものは向うがなかなかとってくれない、向うから欲しいものは価格が非常に高いという制約がありまして、実際商売上の困難があります。それで今度は使節団が来ましたから、これにわれわれは相当の期待を持っております。ただ政府政府交渉というようなわけには行きませんから、われわれは引っ込んで眺めていなければならないような格好でありますが、しかし当業者と今度の使節団との間にいろいろな商売の品物などの話をつけてもらって何とかやっていきたい今の制約のもとにおいても、うまく行けば往復五千万ドルくらいまでの貿易はできる見込みがないではない、現に昨年は輸入は香港の分が入っておりますが、四千万ドル入っております。輸出が約二千万ドルと思いますが、こういうわけで事実殖えております。一昨年に比較して非常に殖えているというわけでありますから、やれると思いますが、今申しましたように、価格及び品物の品種の問題を一つこの際もし今度の使節団の来たことによってある程度の解決ができますと前途有望だと思っております。
  42. 左藤義詮

    左藤義詮君 もうちょっと……。
  43. 館哲二

    委員長館哲二君) もう時間切れになりますからなるべく簡単に願います。
  44. 左藤義詮

    左藤義詮君 実情をおわかりになっていらっしゃる通産大臣から自由党とちっとも違わないお話がございましたが、ココムにつきましても努力しているいるとおっしゃっておまりすがちっとも実績が上っておりません。今五千万ドルというお話がございましたが、これもお手並みを拝見いたすほかないのでありますが、こういうような非常にむずかしいことを公約にはどんどん御宣伝になったが、実際やっていらっしゃる通産大臣が、これはあまり本当にしてもらっちゃ困るというようなお話でございますが、これを特に関西などは非常に期待しているわけでありますか、経済審議庁の総合六カ年計画では、この共産圏との貿易、大陸貿易をどのくらいまでに計算をして、六カ年間どういう年次計画で織り込んでおいでにななるのか。
  45. 高碕達之助

    国務大臣(高碕達之助君) 中共との貿易はできるだけ増進いたしたいという方針でありますが、これはまだ具体的に数字を得ておりません。
  46. 左藤義詮

    左藤義詮君 何もかも具体的なものは一つもなく、ただ選挙の宣伝であったということだけを私は確認いたしまして、やむを得ず質問を終りますが、特に外交の問題につきましては私ども党派を越えて、これを国民の一人として非常に私は心配している問題でございます。松岡外交の愚を繰り返しませんように、第一次大戦後の国交回復等も後藤新平が初めて手をつけましてから、なかなかあの手この手を数年ほど講じてやっと道が開けたのであります。私はこういうことは選挙の宣伝にお使いになったり、きのう言うたことをきょうお忘れになるような、しかもそれが国民に非常な、国民だけでないに世界に影響を与えている。私はもう少しほかのことはいずれまた申しますけれども、さっそくニューヨークで開かれようとするこの交渉にあたりましては、本当に私は先人の血の出るような意を体し後世の子孫に真に申しわけが立つように、これはもう近々に交渉が始まるようでございますが、これはそういう党派を越えて、真に国を愛し、子孫を愛する国民の衷情を披瀝してどうか私は事を誤まりませんように、切々たる私は私の念願を申し上げ、御善処を望みまして私の質問を終ります。
  47. 田村文吉

    ○田村文吉君 今まで毎年組んで来られました予算の大綱を見て参りまして、今度お示しになりました予算の三十年度の骨格予算を拝見して、私は毎回実は申し上げてきているのでありますが、何かしらここで根本的に少し考え直しをしなければならない時期に到達しているのじゃないか。この問題がいわゆる経済閣僚ということで問題を常に経済閣僚だけの御答弁を伺っているのでありますが、総理として今非常に町には失業者があふれておりましたり、あるいはまた、学校を出た人が就職ができない、あるいはまた中小企業の人が非常に苦労をしておるとかいうようなことで、貿易の将来の見通しも実はあまり明るくないというような情勢下にございます日本の現状といたしましては、もう少し財政規模について、総理自体がお考えを新たにしていかれる必要があるのじゃないか、こういうことを私は考える意味で、次の御質問をいたしたいのであります。その前に総理はむろん御承知とは考えておりまするが、戦争の始まります前の昭和十四年における国民所得というものは、百四十五億でありましたが、おそらくは今年のお示しになる数字は、六兆二千五百億程度になると思いまするから、総所得の上から申しますというと、大よそ四百三十倍、こういうことになっておりまするが、昭和十年の歳計は二十二億円であった、その二十二億円のうちに軍事費が十一億含んでおったのでございまするが、今年度想定される予算は一兆億ということに相なっておるのでありまして、歳計の上から申しますると大よそ四百五十倍に相なっておるのでございます。軍事費を除きましたもので比較いたしまするというと、七百六十七倍の数字が出てくるのであります。そこで歳出の方面はさようなふうになっておりまするが、歳入の方で申しまするというと、酒の税金が大体十年は二億円、現在がそれが千四百億、約六百七十倍になっております。専売益金がやはり二億近まであったものが、今日は千五百九十億でございまするから八百四倍と相なっております。ところが驚くべきことは、所得税と法人税というものは昭和十年におきまして二億二千七百万円でありましたものが今日は四千九百億、いわゆる二千百五十倍になっておる。これは実に日本の今日の国民の苦難というものの発生している根拠がここにあるのだということを証拠立てると思うのでありまするが、終戦後アメリカの政策によりまして、直接税によってできるだけ税金をまかない、公債は発行しない、こういうような方針で参りましたために、今日依然として直接税である所得税、法人税というものが実に二千百五十倍という倍数に相なっておりまして、物価の比例から申しまするというと、約五倍の負担をしているわけなんであります。これではとうてい日本の民生の安定とか、民力の涵養ということは不可能になる。これを根本にまず直すことが必要であると考えるのでありまするので、私は第一に一体そういうことになっている根本の原因は何かということを歳出の方面から考えてみたいのでありまするが、いろいろこまかく申しまするというと、数字が出て参りまするけれども、それはよしまして、要するに過去において特殊産業のいろいろ補助をやった、助成をやった、こういうようなことがあった、また金融の統制が非常にやかましく行われておりまして、全般的に国内の金融は平滑に運転していなかった、また公共事業あるいは地方自治体の事業等に対する補助、助成というようなものが非常に多くなっている。従いまして地方財政はこれに伴って膨張をいたして参りまして、今日は地方財政は危機に瀕している。また一面においては公債政策、こういうものが何かの一つ覚えと申しまするが、絶対に公債は発行しない、こういうことですべてを税金でまかなう、こういうような方針でこられましたために、いわゆる個人が一番貧乏で借金をして、その上は地方財政、地方財政はうんと借金をして貧乏している。国だけがきわめて健全な、借銭の非常に少い方法でいく、これがドッジ氏の立てた案であったのでありまするが、今日民生の非常な不安定を来たして産業が萎靡、振わないということは、そのもとをただしまするというと、そういう点にあるのでありまして、それからの歳出の関係上歳入というものがどうしても直接税、法人税というものに重きをおいたと、こういうことに相なると思うのでありますが、そこで私はこの際は一つ今までの惰性的の財政の作り方をおやめになりまして、根本的にフレッシュな頭で財政を見直してみる、こういうことが必要になってきているんじゃなかろうか。そこで私は第一に考えたいことは、今申した所得税、法人税というものが二千百五十倍いわゆる二億二千七百万円が四千九百億円になっておるというようなこのアブノーマルな数字をまず半分に減ずることを前提として考えたい。今は租税特別措置法というようなもので、いわゆる請願政策の結晶のような法律ができておりまして、業種によっては非常に都合よくできており、また有利に利益の上っている産業は割合に税金がかからないようになっておる。しかし一般の産業、ことに中小企業等になりますというと規定の通りちゃんと四割三分の法人税を払わされておるのでありまして、こういうような点をまず改めることが必要じゃないだろうか、まあ少くも私は直接税の所得税、法人税は思い切って半分ぐらいに一つ減じてしまう、こういうことが根本的にまず世直しをする必要な条件でなかろうかと、かように考えるのであります。それで私はそのためには今日の財政のやり方ではいけないので、地方にもっと金を廻わしてやってもかまわないから、中央から多くの金を出して、その予算を不有効に使用する方法をやめて、もっと有効的に金を使用する、ただ単に行政整理というようなことで人員を減らすというような考えでなしに、もっと有効に、地方自治体がガラス張りの中で、自分たちの出して税金をもっと有効に使うと、こういうことができないものであろうか。私は先般見せて頂いたが、二十八年度の決算に現れておりまするいわゆる不正事件というものが二千二百三十二件ある、その金額が百四十八億円、これはまさに氷山の一角でありまして、実際に全部これは剔抉いたしましたならば一千億に近いものが無駄に使われているんじゃないか、こういうことを考えて参りますときに、思い切ってこの際にやり方をお変えになれば、決して所得税、法人税を半分に減額するということも不可能じゃないのだと、こういうような考え方を持つのであります。同時に臨時特別措置法によるようなああいう不公平な、人によって変っていく、陳情によって変っていくような法律はできるだけ一つこの際は撤廃しておしまいにする、こういうようなお考えが必要でなかろうかと思うのであります。また公債につきましてもたとえば住宅建築あるいは治山治水あるいは道路港湾と、今後将来の生産に役立つものに対しては必ずしもそうやかましくこれを税によらないでも公債の方法でおやりになったところで一向差しつかえないのです。まず民力をもっと涵養してやるようにいたしまして、産業がこれによって興ると、こういうことを考えなければならんのじゃないか。現在の日本というものは、一番の欠陥は、資本がきわめて欠乏しておりまして、労働力がきわめて豊富にあるということなんです。これが日本の大勢に見た今日の実情なんでありまするから、どうしてもこういう問題を考えるときに、もっと政府で根本的に財政計画を立て直しておいでになる必要がある。これには、すでにお出しになった暫定予算では私はどうこう申しませんが、やがて本予算をお組みになる。それにつきまして、そういうようなお考えをもってお進みになるべきじゃなかろうか。これにつきまして、先ず総括的に総理が今日の財政計画について根本的にこれは考えて、民生の安定、いわゆる民力の涵養というものについてお考えをいたしていただく必要があるのじゃないか。従って、大蔵大臣には、またそれに対する方策もあるのじゃないか。この質問を第一に申し上げます。
  48. 鳩山一郎

    国務大臣鳩山一郎君) 大蔵大臣から答弁をしてもらいます。
  49. 田村文吉

    ○田村文吉君 私は一国の総理大臣が、かような問題、民生の安定、国民八千万の人に皆ひっかかっているような問題を、総理大臣がただ経済閣僚が答弁すればいいというものではなくて、総理としてこれに対する大体の構想というものは考えて、もし、さような点についてのお考えがあれば、何かの構想を持って経済閣僚にお示しあるべきであると思う。これは外交の問題が必要であるということ、そのことと同様に、私は総理としてお考えになるべき性質のもんだと、かように考えるのであります。従いまして、総理大臣の答弁をお願いいたします。
  50. 鳩山一郎

    国務大臣鳩山一郎君) 民力の安定の必要なることは、もとよりそういうように考えますけれども、どういうようにしたらば民力の安定が最もよくできるか。それについてはいろいろ議論があるわけでありますから、私より主管大臣から答弁をした方がよろしいと思います。
  51. 田村文吉

    ○田村文吉君 少くも今の直接税が二千百五十倍、もし物価指数を昔に直しても五倍になっているというようなことは、非常に無理があるのだということを総理はお考えにならないかどうか。これはもうお互いが毎日生活をしていく上において非常に必要な、大事なことなんです。また国民が聞かんとしていることなんです。でありますから、私はさような点について、どういうふうにするという具体案はわかりませんで、けっこうでございまするが、そういう点をお認めになっているかどうか。
  52. 鳩山一郎

    国務大臣鳩山一郎君) 直接税の軽減は必要だと思います。けれども、直接税の軽減をして、直ちにそれを公債によるのがいいかどうかということは、専門家の知識が必要でありますから、専門家からお答えをしていただきます。
  53. 一萬田尚登

    国務大臣(一萬田尚登君) お答え申します。田村さんのただいまのお考えは、私といたしましても大体同じような考えで、お考え方は私としては正しいと思いますが、しかし、しからば、それを具体的にどういうふうにしていくかという点については、これはたとえば、今お示しの所得税等を半分にする。そして、それを間接税に持っていくと、こういうような点については、私は、にわかに賛意を表しかねるのでありますが、今日、この所得税——直接税が中心になり過ぎておる、こういうお考えについては、私も同感であります。そういう点については、三十年度の予算に具体的に示して参るつもりをいたしております。  なおこの公債政策、これはむろん公債を発行するという、特に将来の生産と見合うそういうような仕事に対して公債財源によるということが、それ自体悪いという意味では決してないのであります。ただ、しかし、これには問題があるのでありまして、やはり、その公債が市中消化を少くして、日本銀行の引受けというようなことに、実質上、形式上初めからなるのはむろんでありますが、実質上でもそういうふうになるということは、そのときの情勢においてそれはインフレになる懸念、いわゆるインフレ要因、それ自体が全くのインフレ要因、そうしてみると、そういうようなやり方は、特に経済の地固めをしている、先ず経済の健全化をはかるというときには、どうしても避けなくてはならない、こういうふうに御了承を得たいのでありまして、今後資本の蓄積の増加するにつれて、たとえば、社債とか、あるいは株式にいたしましても、あるいは将来において公債ということも考えられることは言うまでもないのであります。これは、要するに、時の問題とお考え下されば非常にいいだろう、こういうふうに考えておるわけであります。
  54. 田村文吉

    ○田村文吉君 反問したいのですが、時間がありませんから、経審長官にちょっと伺いたいのですが、独禁法つにきまして、これはややもすると誤解がありまして、あるいは勤労者の階級によくないとかというような心配をする人もないではないのであります。また大衆のためにどうかというような議論もないではありませんが、今の独禁法というものは、アメリカのウェッシュ氏が来て、無理に押しつけられた独禁法で、そのために、日本のような経済の底の浅いところでは、こういう法律があるために、実は経済が非常に混乱をするのであります。ちょっと品物が余るというと一ぺんに暴落してしまう。こういうようなことになりますが、それを幾らか緩和して、あるいは届出主義にするとか、あるいはこういうことだけは認可にするとかというようなこともちょっと考えられるのでありまするが、そんななまやさしいことではいけないので、もう今日の事態になりましたら、この日本の経済からいったら、一日も早くかような悪い法律は撤去すべきものである。もし独禁によって非常に弊害が出て参りましたならば、そのときは単独法でも何でもお出しになっておやりになったらよろしい。一応、今日輸出の振興をやるとか、産業の振興をやるということを考える場合には、当然に撤去すべきものである。こう私は考えるのでありまして、これに対しまして経審長官のお考えを伺いたい。
  55. 高碕達之助

    国務大臣(高碕達之助君) お答え申し上げます。独禁法につきましては、さしあたりこれをどうこうするという考えはいたしておりませんが、輸出産業、特に中小工業、これの団体的な行動につきましては、これはどうしても輸出を振興していくことが大事だと思いますので、この意味につきまして独禁法を緩和するということにつきまして今研究をいたしておるような次第でございます。
  56. 田村文吉

    ○田村文吉君 きわめて妥協的のお考えがすぐ出ると思うのでございまするけれどもほんとう日本の産業の癌はここにある。こういう点は、輸出の方だけやればいいとか、現在でも銀行は金利というものを協定しないというようなことをしておりますけれども協定している。新聞社の新聞の値段というものも協定をしないようでありますが、協定をしている。あの特需の産業はそういうことをしていて、ほかのものはそういうことをできない。こういうことでありますから、あらゆる産業というものは、特に中小企業というものは参っている。こういう点は経審長官として特にお考えをいただきたいのであります。  最後に私は一つ法務大臣にお伺いいたしたい。というのは、この十年来、私どもは米のやみに——法務大臣おられませんか、おられませんければ農林大臣。  私はこの十年の間、やみ米という生活をして来たのでありまするが、もっともあの終戦の直後においてはある程度やむを得なかったと思うのでありますが、もう十年になりますのに、いまだに上野の駅、どこの駅でもって、やみ米屋がひっつかまって、百俵とられたとか、二百俵とられたといっておるのですが、こんなみばの悪いことを続けたらいけないと思う。これは法務大臣は一体、法律というものがあって、その法律はどうしているのだということを実は伺いたい。と同時に、農林大臣は統制の撤廃をなされうか、あるいは定買付をなさるか、どうでもよろしいが、一日も早く——こういうような生活をわれわれに続けさしておいて、上は総理大臣からその庶民に至るまで、やみの米を食っていかなければならん。駅弁に、駅へ行くとくず米と称して満足な白米を食わなければならない、こういう偽わった生活をわれわれにさしておくということは、これでよろしいのか。これを私は、法務大臣がおいでになりませんが、農林大臣から一つ答弁いただきたい。
  57. 鳩山一郎

    国務大臣鳩山一郎君) お答えいたします。全く同感でございまして、一日も早くそういう事態をなくするために、米の供出制度をやめまして、そして諸般の準備を整えて自由販にいきたいと、私はこう考えております。御承知の通り、現在の制度ではもう行き詰まっておりますし、行けませんから、その方向を、今お話通りに、一般識者の間におきましても、専売にするか自由販売にするか、いずれかの方途をとりまして、現在のように政府責任か持っておりますのはわずかに十五日でありますということでございますから、現状をもっていたしましては、お示しのようなことにならざるを得ない事態にありますので、これを今申し上げたようにすみやかに変えていきたいということを考えておりますが、また、誤解があるといけませんから申し上げますが、それには諸般の準備が入り用でありまするから、その準備をすみやかに整えていきたいと、こういうふうに考えておる次第であります。
  58. 田村文吉

    ○田村文吉君 私は多分そういうことをおっしゃるだろうと思って予期しておったのです。あらゆる内閣準備準備ということで日を過しておるのでありまするが、もう十年になってこういうみんなが法律を破っているような生活をしているということは、これはゆるがせにすることができない問題です。それを、審議をしまして、いろいろ研究をいたしましてと、こういうようなことを言っておられる事態ではないと私は思います。そこで鳩山さんが総理になられたら、こういうことこそ、公邸の廃止だとか、マージャンの廃止だとか、そういう小さな問題ではなくて、こういう国民が全部法律をバイオレートしているようなことをまずやめさせるということが第一です。そんなことに審議々々ということで日をお過しになるときではないと思う。私は、河野農林大臣がそういうことについてもっと、あなたは政治力も強いのですから、一つ大いにやっていただきたい、かように思います。
  59. 河野一郎

    国務大臣(河野一郎君) お答えいたします。私の申し上げました準備は、決して今までの準備々々という準備ではないのでござまして、今の制度で参りましたものを直ちに変えます場合には諸般の準備が入り用なのでございます。これは御承知ように、現在の供出制度を直ちに専売にするとか、直ちに自由販売にするとかいうことはとうてい不可能でございます。御承知の通り、日常生活に絶対必要な食糧のことでございますから、これが混乱いたしませんように、農家の側から申しましても、消費者の側から申しましても、いろいろな準備が入り用なのでございます。従って、これは政府準備ではなくて、国民的に諸般の準備を理解していただくために入り用だという準備でございますから、お指摘のような点ではないことを御了承いただきたいと思う。
  60. 田村文吉

    ○田村文吉君 そんなことを言っているといつまでたってもできませんよ。  それでは時間がきましたから……。
  61. 館哲二

    委員長館哲二君) 田村君に申し上げますが、法務大臣は無断退席をされましたので、今出席を要求しておりますが、いかがでございますか。
  62. 田村文吉

    ○田村文吉君 法務大臣がおいでになったらその趣旨を伝えていただいて……、簡単な問題でございます。一体十年間も法律を破られてそのままでおるということは、終戦後の混乱時代と違うのですから、どうお考えになっているか。これを一つ法務大臣から伺いたい。(「総理々々」と呼ぶ者あり)総理から御答弁願えればなおけっこうです。
  63. 鳩山一郎

    国務大臣鳩山一郎君) 法律が破られなければならないような状態において法律の威信を傷つくるということはまことに情ないことですから、法律の威信の緊持の上からも何とかしなくてはならない問題であります。
  64. 田村文吉

    ○田村文吉君 今の問題は、ただ一部の人が法律を破っておるからどうこうという問題ではなくて、国民のほとんど全都が公然と破っておるような形を残してはおかれないのです。万難を排してこれは直ちに撤廃すべきものであると、こう思いますからお伺いいたしたわけですから、どうかその趣旨を御了解いただいて、来たるべき本予算においては早くそういうものの施策を立てるべきだと、かように考えますから、それを申し上げておきます。
  65. 佐多忠隆

    ○佐多忠隆君 第一に防衛分担金、自衛隊関係の経費、これが二十七年度から二十九年度に至る過去三カ年においてどういうふうな数字で推移してきたか、それを数字にわたりますから、まず政府委員から御説明を願います。
  66. 森永貞一郎

    政府委員森永貞一郎君) 防衛支出金の二十七、二十八、二十九の金額を申し上げます。二十七年度は防衛支出金が六百五十億でございまして、そのうち防衛分担金に属するものが五百七億円、それから施設提供諸費、そのほかの系統に属するものが百四十三億円、それから二十八年度は防衛支出金の総額は六百二十億円でございまして、うち防衛分担金が五百五十八億円、施設提供諸費が六十二億円、それから二十九年度は総額五百八十四億八千万でございまして、防衛分担金が五百三十二億八千万、施設提供諸費が五十二億円と、かような数字に相なっております。
  67. 佐多忠隆

    ○佐多忠隆君 自衛隊関係
  68. 森永貞一郎

    政府委員森永貞一郎君) 二十七年度は保安庁でございましたが、経費の総額五百九十一億円、二十八年度は六百十三億円、二十九年度は、当初予算におきましては七百八十八億円、年度半ばで補正によりまして、節約いたしました結果、節約後の金額は七百四十三億円、さような数字になっております。
  69. 佐多忠隆

    ○佐多忠隆君 合計するとどういうことになりますか。
  70. 森永貞一郎

    政府委員森永貞一郎君) 合計いたしますと、二十七年度が千二百四十一億円、二十八年度が千二百三十三億円、二十九年度が節約後の数字でございますが、千三百二十七億円でございます。
  71. 佐多忠隆

    ○佐多忠隆君 防衛支出金、自衛隊関係の経費総額の推移は数字的には今のような推移で参ったのでありますが、これを三十年度にどういうふうにするか、さらに三十年度だけでなくて、今後相当長期にわたってどういうふうに処理をするかという問題が、日本の現在の財政を審議する上において一番重要なかぎであるように思いますが、しかもこういう問題が重要なかぎになっておることはまことに遺憾でありますが、現実としてそうなっておるのでやむを得ませんので、その点に関連する問題として、まず第一に総理大臣にお尋ねをしたいことは、日本の国防の基本的な構想というようなものをどういうふうにお考えになっておるか、これまでたびたび繰り返しいろいろな議員によって尋ねられましたけれども、何らまとまったものが示されておりませんので、一応ここで結論的に一つ構想を大ざっぱでよろしゅうございますからお示しを願います。
  72. 鳩山一郎

    国務大臣鳩山一郎君) 私は日本が自分の国を防衛するのに、日本の独力でもって防衛するということはとうていできないと思います。それですから、やはり日本防衛ということはアメリカなり、あるいは国際連合の力とかいうものにたよらなければできないのでありますから、そういうような援助を得る期間だけ守れるというような程度においての日本防衛にすればいいのだろうと私は思っておるのであります。
  73. 佐多忠隆

    ○佐多忠隆君 そういう意味での防衛をお考えになっているとすれば、防衛の方針しとて防衛分担金、あるいは自衛隊の関係において、経費的には大ざっぱに言って、どういう推移をたどらしたらいいというふうにお考えになっておりますか。
  74. 鳩山一郎

    国務大臣鳩山一郎君) ただいま日本防衛アメリカの駐留軍の力に待っておるのでありますから、アメリカの駐留軍が撤退する、それだけを目標として防衛の充実をはかっていけばいいと思っております。
  75. 佐多忠隆

    ○佐多忠隆君 そういたしますと自衛をすることはできないので、あくまでもアメリカあるいは国連に、特にアメリカの軍事力に頼らなければならない。それが救援にきてくれる期間だけ守り得るようなものでいいのだというお話であったと思いますが、そうすると総理が言っておられる、アメリカの駐留軍に交替するために、自分は自分の国をみずから守るために軍隊を持つのだという考え方は誤りであり、これは間違っていたのだというふうにお考えになるのですか。
  76. 鳩山一郎

    国務大臣鳩山一郎君) 御質問の趣旨は、アメリカの駐留軍としても、アメリカの駐留軍だけでもって一たび戦争が起きた場合においてはとうてい不足だろうと思うのであります。けれども、どういう戦争が起るか予想がつかないのでありまするから、ある程度の防備をもって満足をするよりいたし方がない、可能な防衛力を持つより仕方がないと思っております。それを目標とすれば、現在アメリカが駐留している程度防衛力は持って、アメリカ軍の撤退を可能ならしめるということは日本がとるべき方針であると考えております。
  77. 佐多忠隆

    ○佐多忠隆君 現在アメリカが駐留しておる程度防衛力、軍事力は持たなければならないという御答弁でありますが、それならば、アメリカは現在日本にどういう兵力を駐留させておるのか。特に総理は、今後は陸上兵力だけではなくて、海空軍に重点を置くのだということをおっしゃったのでありますが、それらの構想を背景にして今の日本における駐留軍の態容の御説明を願いたい。
  78. 杉原荒太

    国務大臣杉原荒太君) 今アメリカの陸上兵力が約二個師団半、航空勢力、海軍勢力については私ここでお答えすることを差し控えます。
  79. 佐多忠隆

    ○佐多忠隆君 今総理アメリカ軍が駐留して、アメリカが持っておる程度の軍事力には日本が交替して持たなければならぬだろうと言われた。しかも総理は海空軍に今後は重点を置いて考えるのだと言われた。それならば、おおよそ海空軍の駐留兵力がどのくらいのものであるかということをお示しにならなければ、その点が明瞭でないと思うのであります。重ねて一つ
  80. 杉原荒太

    国務大臣杉原荒太君) その点は御承知の通り、今日本の機密に関する法律もございまするし、また法律の問題は別にしましても、今ここでお答えをすることはできません。
  81. 佐多忠隆

    ○佐多忠隆君 機密に関する法律があると言われるけれども、それは個々の兵器についての軍事機密だけがとめられているのであって、何らそういう法律によって軍の態容なり何なりを示されないということは法律的にあり得ないはずだと思います。
  82. 杉原荒太

    国務大臣杉原荒太君) 私はあえてそう佐多さんのおっしゃったことを議論がましく言うのではございませんが、先ほども申しましたように、私法律のみを根拠にして申し上げておるわけじゃございませんが、事柄の性質上ここで私申し上げることができないことは御了解いただきたいと思います。(「それはおかしいじゃないか」と呼ぶ者あり)
  83. 佐多忠隆

    ○佐多忠隆君 私たちはかって東条軍閥時代に、自分のそういう軍の態容その他について知らされることがなかったためにああいう失敗、国を滅ぼす結果にすら引きずられていった。今は同じようなことが現に行われつつあるように思う。ことに外国の軍隊が日本の中にいて、その態容がわからないで予算の審議をさせられる。これは東条時代以上の暗黒予算審議だと思う。(「その通り」と呼ぶ者あり)一つ一つの個々の作戦の機密に属するようなそういう問題を私たちは知ろうとは思いません。しかし政治家として、日本の国政をどうするか、その中心になっている国防をどうするかという政治的な判定をするに必要な空軍、あるいは海軍の態容くらいは知らなければ、今総理のおっしゃったその判断が正しいのかどうか、それの審議すらできないことになる。
  84. 杉原荒太

    国務大臣杉原荒太君) 今佐多さんのおっしゃることも、お話としてよくわかるのでありますが、今直接にアメリカの空軍勢力はこうだ、海軍勢力はこうだということを私がここで(「どこで言えるか」と呼ぶ者あり)申し上げることができないということを、私これはおわかり下さることだと思う。ただ直接に、それとは別に、日本側として、大体どれくらいの、兵力量にして大体どれくらいであろうかということは、これはこの間から申しておりますように、大体アメリカ軍の逐次撤退するということを考慮に入れました場合、大体どれくらいのものであろうということを今検討をしておりますので、それが検討の上一つ申し上げることとしたいと思います。今日ここでまだ申し上げる段階に達しておりません。
  85. 佐多忠隆

    ○佐多忠隆君 その点はこれから逐次お尋ねをしてゆきたいと思って、予定をしていた点でありますが、幸いに出て参りましたので申し上げますが、それならば、今は、今この時期においては、わが国の国防の態容を、特に兵力、その他、艦船、航空機の台数その他として大ざっぱに示す段階に至っていない。それがはっきりし次第、あるいは本予算との関連においてそれがはっきりし次第、それじゃそれにとってかわられるアメリカ日本に駐留しているそういう軍の態容はお示しになれるのですが、時期の問題なんですか、どうなんですか。
  86. 杉原荒太

    国務大臣杉原荒太君) 来年度の分につきましては、今考えておりますことは、本予算算の際にもちろん御説明申し上げます。  それから先々大体駐留軍の撤退ということを考慮に入れての場合の兵力量等は、先ほど申し上げましたように、いろいろの方面からこれは検討を加えておりますが、それが済み次第、私らの案が大体できました上で申し上げることにいたします。(「いつできるのだ」と呼ぶ者あり)時期の点は今はっきりといつだと申し上げる段階にありません。
  87. 佐多忠隆

    ○佐多忠隆君 その問題も、私はきょう質問の結論の方でさらに詳しく御質問をいたしたいと思っておりますので、もう少しその前の問題を片づけてからにいたします。  そこでもう一つお尋ねしたいのは、日本の今おっしゃった国防をどうするかという問題の前提には、現在の国際情勢をどういうふうに判定するかという問題が重要な問題であると思うのですが、特に台湾海峡をめぐるいろいろな極東の国際情勢、これをどういうふうにお考えになっておるか。これは本会議で私質問をいたしましたら、いろいろ検討はしている、非常に慎重な注意をもって検討はしているとおっしゃったので、まずその情勢の判断をここで詳しく、これは外務大臣から御説明願いたい。
  88. 重光葵

    国務大臣重光葵君) 台湾海峡をめぐる国際情勢は、現在非常に注意を要する相当危険なものであると判断をせざるを得ません。中共は御承知の通りに台湾を中共の領土として、これを中共のいわゆる解放を主張しておることは御存じの通りでございます。その解放のためには武力をも辞さないという態度を示しております。台湾の国民政府は、中国の正当の政府と自認をしておって、そして台湾はむろんのこと、機会があれば本土をも回復したいという方針を変えておりません。そこで御承知の通りに、金門、馬祖両群島はアモイに接近しておる。これはまだまだこれを手におさめて放そうとしない。しかしその他の大陳島等は手放しております。そこで問題は、中国のうちで、中共と台湾の国民政府との間にかような敵対関係、二分されておるということに非常に困難があることは、これは言うを待ちません。  米国は御承知の通りに、台湾をもって軍事上の基地としてこれを防備するということが絶対必要であると考えて、御承知の通りに第七艦隊をもって台湾海峡を守備しておる。つまり台湾の防衛に任じておる、こういう状態になっております。そこで中共がもし台湾の解放ということに武力的進出をするという場合には、ここに軍事上非常に危険なことになります。当然なります。台湾の国民政府が今大陸に進出しようという考え方はないようでございます。しかし、台湾の国民政府としては、あくまで台湾の自分の領土としておる所を、現在持っておる所を放そうといたしておりません。そういうことも御承知の通りであります。  そこで国際関係でございますが、私は台湾海峡をはさむかような情勢が、これが東亜の平和安定に危険をはらんでおると、こう判断をいたします。そうでありますから、この情勢は何とかして緩和する方向に向けなければならぬと思うのでありますが、しかし、今日の日本地位といたしまして、積極的に働きかける事態にはないと思います。これは間接にさような日本側の心配を関係者に十分に了解さして、そしてでき得るならば、この危険な状態を話し合いによって、もしくは関係者の交渉によって平和的に解決することが日本としては最も望ましいのでありますから、さような意思表示はいたしておるわけでございます。  そこでこの情勢がどういうふうに発展するかということは、直接日本関係しておることでありませんから、はっきり見込みはつきません。しかし、危険はございますが、私の判断するところでは、これが直ちに武力抗争に発展すると判断はいたしかねます。かような緊張した状態が相当長く続くのじゃないか。そしてその長く続いておる期間の間におきまして、私といたしましては、日本といたしましては、これが平和的に解決するような国際情勢が自然に生じて来、また変化をしてくることを希望しておる次第でございます。
  89. 佐多忠隆

    ○佐多忠隆君 詳しく情勢をお聞きし、しかも問題の解決は、話し合いによって平和的に解決するような努力をしなければならぬ、こういう御意向、私たちも全く賛成でありますが、三月二十五日アメリカの海軍作戦部長カーネイ氏を先頭にして、アメリカ軍最高首脳部は、一斉に四月の中旬には中共が馬祖、金門両島を攻撃する、そういうことになっていよいよ戦端が開かれた場合には、戦局は単に沿岸の諸島にとどめず、中国本土をも爆撃をして、中共の戦争能力を破砕しなければならぬということを大々的に新聞に発表をして、新聞宣伝を開始をいたしております。それに対して政治家としてアイゼンハワーは、そういうことはあり得ない、少くともそういう四月あるいは五月の初旬の軍事上進出ということはあり得ないだろうから、そういう問題をそういうふうに大きくセンセーショナルに取り上ぐべきではないという意見を述べております。この点について私昨年の十月、中国に参りましたときに、周恩来と三時間を超える会談をいたした。その会談の言葉の端に、台湾の解放が今年のあるいは来年の最も近接した要求であり、問題であるということを非常に呼号をしながら、会談の口裏では、しかし台湾の解放という問題は非常に困難な、従って数年を要する、場合によっては十数年を要することでありますからということをちょっと漏らしたのでありますが、それらを考えますと、国民に対する宣伝としてはああいうふうな非常なあれをやっているが、実際上はそこは非常に慎重に考えていると看取していいんじゃないか。従って今外務大臣の言われたような、あるいはアイゼンハワー大統領が判定をしたような判定が正しいし、従ってまた政治家としてはそういう方向に問題を進めていかなければならない。民主党のジョージ上院外交委員長もそういうふうに事態を看取して、従ってパリ協定が批准をされた後においては四カ国会談を早急に開くべきだという提案をいたした。これに呼応してイギリスのチャーチルも、あるいはフランスの首相も、さらにはソ連のブルガーニン首相も同じように、四カ国会談によって問題を解決をしようということを主張をし、おそらくこの夏か秋にはそういう形勢が実現をしていくと思う。そうであればここにアメリカには軍事的な、軍部的な見解と、政治家的な見解とが非常に分れて対立をしておる。さらにはその対立は、この間本会議で申しましたように、アメリカとイギリスとの見解の非常に大きな対立としても出て参っておる。その場合に私は今外務大臣が言われた方向を積極的に強く打ち出していかれることが日本態度であると思う。それならばさっき言った、日本の国防の態容を、総理が言われたようにあやふやな陸海空、特に海空軍に重点を置くんだというような考え方に軽々しく賛成をされるのでなしに、これはさっき申しました中共の軍事的な破砕を企図し、それを宣伝をしておるアメリカの最高軍首脳部の見解であり、その首脳部の見解が今、日本関係当局に防衛支出金の問題として非常に圧力をかけていると思う。そういう圧力に屈することなしに、世界の情勢をはっきりと見きわめて、そういう方向に国策を向けていき、従ってまた防衛支出金の問題、その他にそういう毅然たる態度をもって対処されなければならないし、その点から言うならば大幅に削限をして、そしてこれを社会保障経費に、住宅建設等に回すんだと、かって総理が明瞭におっしゃったその考え方を積極的に、忠実に推し進められていくことが絶対に必要であると思いますが、総理はそれらの国際情勢、あるいは国防の問題、さらには社会保障経費の問題についてどういうふうにお考えになっておるか、明瞭な御答弁を願いたいと思います。
  90. 鳩山一郎

    国務大臣鳩山一郎君) 私も、ただいまのお説のように世界大戦、あるいは戦争の原因が近くに勃発するものとは考えておりません。従って日本の国防問題も急を要する問題ではないと考えております。ゆえに分担金の減額についても、防衛庁費の問題についてもよく相談をして、なるべく減額をして、それがほかの仕事のために向けられるようになることを衷心よりこいねがっております。
  91. 佐多忠隆

    ○佐多忠隆君 総理が基本的な方針をお示しになり、防衛分担金は削減をするのだ、しかもそれが社会保障経費の方に回されることが望ましいのだということをここで明瞭に発言をされたのでありますから、一つ内閣はそれを基本的な方針として、その実現のために努力をしていただきたいと思いますが、それならば大蔵大臣に一つお尋ねをしたいことは、現在の日本の経済情勢、一般的な経済財政情勢、特に国防に関連する経費との関連において、現在の日本の経済財政状態をどういうふうにお考えになっておるか、おそらく、その点を明瞭に御説明を願えれば、今総理が言われたような点が、経済財政上の情勢判断からもおのずから出てくるという結論になると思いますが、その魚の御説明を願いたいと思います。
  92. 一萬田尚登

    国務大臣(一萬田尚登君) お答えします。国防と経済力、私は国の経済力に応じた国防でなければならない、こういうふうに考えております。もう少し端的に申せば、三十年度の予算においては、前年度の千三百二十七億のうちでやる、こういうふうに考えております。
  93. 佐多忠隆

    ○佐多忠隆君 その防衛分担金の問題の前に、もっと日本の経済、財政状況から見てそういう結論が出てこなければならないゆえん、あるいは大蔵大臣が日本の政治情勢からもそれが必要であるというふうに確信をしておるのだということをおっしゃっており、新聞によると、そういう見地からアメリカ側の説得に当っておられるようでありますが、われわれ国民に対してもその事情を説得された場合に、初めて防衛分担金は削減しなければならんし、あるいは国防費は削減をしなければならんし、それを社会保障経費に持っていく以外にないという結論がより明瞭になると思うのですが、その点をもっと納得のいくように御説明を願いたい。
  94. 一萬田尚登

    国務大臣(一萬田尚登君) 私の考えは、今日、特に戦後の日本において、民主の安定のない国防は考えられないというのが私の立場であります。国防はまず民生の安定に始まらなくてはならない。これは結局国防全体を考える場合に、国力を越えた国防というものはあり得ないという意味になるのであります。そうしてこれは今日あらゆる日本の経済、財政、金融、このいわゆる経済上の力をいろいろ総合的に考えました場合に、ここに本当に日本の自分の力において国防をなし得る力は非常に少いという私はまあ段階のように考えておるのでありますが、しかし同時に、それだからといって、それならば従来の歴史的な経過を全然無視はできないのであります。従来でも私の考えでは、日本としてこれだけのものは国防にしなければならんということと、もう一つは、日本の力でそれはなし得るかどうか、この二つの問題があると思うのであります。従来、なさねばならんと思うその力と日本の経済の力というものがクロスをしておる。そこが私は日本の国防の限界である、こういうふうに考える。しかしさらにこれを国際的に見れば、むろん今日の国防というものは、私は一国の国防ではないであろうと思う。これはまあ防衛長官の範囲に入りますが、いわゆる世界の平和を確保するという意味が必ずあると思う。それは世界の情勢を見ても、今日の国防はやはり集団、国際的なユナイテッドのネーションの形において世界の平和が保たれておるという見地からすれば、国際的なまた要請というものがあると思う、こういうふうに考える。そこのところが今日いろいろと国防上に問題を投げておるのではないかと思うのでありまするが、しかし、日本の今日の現状では、日本としてこれだけはやはりすべきだという線と、それを日本の力でなし得る、そこで私はクロスして考えているというのが現在で、そしてそれが先ほど言った、具体的に言えば先ほどの数字になると思うのであります。
  95. 佐多忠隆

    ○佐多忠隆君 大蔵大臣は防衛関係費、防衛支出金と自衛隊関係の経費千三百二十七億、これは一応このままにして、そしてこの中の防衛支出金を削減をして、それを自衛隊の拡充の経費に回して、総額は同じにする、それを維持するというお考えのように思いますが、しかし、さっき総理の述べられた主張は、方針はそうでなくて、さらにもっと大幅に防衛支出金を削減をし、しかもその一部を社会保障経費に、住宅その他に回すということをおっしゃっている。かりに防衛支出金は二百億あるいは百五十億も削減は可能であると思いますが、これはなお本予算の審議のときに検討したいと思いますが、百五十億ないし二百億の削減が可能であるとすれば、それをそのまま持ってきても相当な社会保障経費になり得るのだし、かりに若干、そのうち、たとえば五十億の防衛庁の増強というような形にしても、なおかつ百億程度のものは持ってこられる。そしてまた大蔵大臣自身も住宅建設費については百億程度のものをふやそうと言っておられる。ましてやわれわれの主張のように防衛支出金のみならず、自衛隊が非常に大きな繰越金を持ち、さらには増強の必要もないのだという先ほどの国際情勢の判断から、われわれのように判断をすれば、そこに回し得る金はもっと出てくるし、そういう方向日本の財政なり経済を持っていくことが、さっき大蔵大臣の言われた国民生活の安定を第一に願う施策になり得るし、それがあなたがたの公約の眼目であったと思うのでありますが、その点は総理主張を、方針を忠実に実行されるかどうか、実行されなければならないと思うが、その点を明瞭にしていただきたい。
  96. 一萬田尚登

    国務大臣(一萬田尚登君) それは、私は限界といいますか、それよりうちだと言っておる。そのうちという言葉は、総理の言われた、できるだけこれは少くしてやればよろしいということに当るのでありまして、私としてもできるだけ内輪がよろしいのであります。何も総理と意見の相違もありませんと思います。御了承願いたいと思います。
  97. 館哲二

    委員長館哲二君) 持ち時間が大分超過しておりますので……。
  98. 佐多忠隆

    ○佐多忠隆君 それでは時間がないのでこれで打ち切ります。  総理は非常に重要な言明をなされたのでありますから、また次の機会に、いやあれは言わなかったほうがよかったのだ、言い過ぎたのだというようなお取り消しのないように、(笑声)確実にこれを実施に移されるように要望して、今日はこれでおしまいにいたします。
  99. 松澤兼人

    ○松澤兼人君 第一にお伺いいたしたいことは、鳩山民主党総裁、あるいは総理大臣は、現在の国会における民主党の弱勢ということを痛感しておられると思うのです。民主党からは自由党に向いまして、本予算編成の事前に自由党と折衝をして、本予算国会通過に対して自由党に協力を求めるという方針を立てておられるようでございますが、それはどういう理由でそういうことをお考えになって、党から党へ申し入れをされたのか、この間の事情について説明していただきたいと思います。
  100. 鳩山一郎

    国務大臣鳩山一郎君) 時局はまことに重大ですし、わが党は弱勢でありますので、このままで行けばとうてい本予算は通過する見込みはありませんから、話し合いによって誤解をできるだけ除いて、そして自由党と話し合いをしていきたいと思いまして、そういうような手続きを着々ととりたいと思っております。
  101. 松澤兼人

    ○松澤兼人君 それは見方によりますと、保守連携、あるいは保守合同ということの前提のようにも考えられます。しかしそうではなくして、単に予算に限って事前折衝を行い、党と党との連立、あるいは連携ということは全然考えない。依然として保守二政党は対立のままで行くのである、こういうことになるのか、あるいはまたは革新政権ができることを全力をあげて阻止しなければならない。その一つの前提として予算の事前折衝を行い、そしてそれが保守合同と申しますか、あるいは保守連携と申しますか、それへ行く一つの段階としてそういうことを考えておいでになるのか、政局安定に対する基本的な構想をお示し願いたいと思います。
  102. 鳩山一郎

    国務大臣鳩山一郎君) 保守合同がいいか、保守連携がいいか、あるいは二大政党に直接に持っていってしまうほうがいいか、これはなかなか情勢に一よって判断を異にしなければならない問題だと思っております。二大政党になるのは、形式的には非常にいいのでありますけれども、二大政党になれば、革新勢力の政府を作るということも二、三年後にはできてくるわけであります。そういうことで日本の経済状態なり、あるいは外国との関係なりが一変するということが果していいのかどうか、非常に慎重に考えなければならないと思います。それに対しての用意というものは、やはり保守勢力が二つに分れていたほうがいいと思うのであります。それですから、保守勢力が合同して、すぐ二大勢力に持っていったほうが必ずしもいいというわけにも参らないと思います。それには連携のほうがいいわけでありますから、いろいろ情勢によってこの問題は判断していかなくてはならないと思っております。
  103. 松澤兼人

    ○松澤兼人君 そうしますと、基本的な問題は別として、ただ本予算通過だけの問題に限定して事前折衝を行いたい、こういうふうに了解してよろしゅうございますか。
  104. 鳩山一郎

    国務大臣鳩山一郎君) 直ちにそのほうがいいとも言えないのであります。やはり予算折衝だけではまだ政局は安定というわけにはいきません。政局の安定ということには合同、もしくは連携が必要だと思っております。
  105. 松澤兼人

    ○松澤兼人君 自由党民主党の事前折衝の申し入れに対して拒絶をしたという新聞の報道がございますが、総裁として、総理大臣はこのことをお聞きでございますか。あるいはもしそうであるならば、今後の本予算国会通過の際に、いかなる信念なり、あるいは構想を持っておいでになりますか。
  106. 鳩山一郎

    国務大臣鳩山一郎君) とにかくわれわれは謙虚な気持を持って時局に善処をするという心持以外には持ち得ません。
  107. 松澤兼人

    ○松澤兼人君 それでは問題を変えまして、民主党は選挙に臨みましていろいろの公約をされたのでありますが、しかしつぶさに本予算編成の数字を検討してみますと、なかなか公約を早急に実現する財源というものがないように考えられます。総理は果して三十年度に公約を実現するほぼどの程度の財源を必要とするか、あるいはどの程度ならば三十年度予算を通じて公約実現のために使用し得るとお考えでございますか。きわめて概略でよろしゅうございますが、総理からお答えを願いたいと存じます。
  108. 鳩山一郎

    国務大臣鳩山一郎君) 防衛費が防衛庁費並びに分担金を合せて前年度のワク内においておさまれば、世間に発表した公約がほぼ実行できるものと考えております。
  109. 松澤兼人

    ○松澤兼人君 先ほど佐多委員質問お答えになりまして、総理のお考えでは、結局防衛分担金及び防衛庁費両方とも削減したいというふうに私は聞いたのであります。しかしかりに千三百二十七億という合計した防衛費というもので押えるということでありますと、私は他の財源というものが大幅に制限されるんじゃないかと、こう考えます。もう一度確かめてみたいと思いますことは、総理防衛分担金及び防衛庁費、両方とも削減なさるおつもりであるのか。で、今承われば前年度千三百二十七億という数字は守っていきたい。そうなりますと防衛分担金で減った部分は防衛庁費をふやす、こういう結果になると思うのでありますが、その辺のところはいかかでございますか。
  110. 鳩山一郎

    国務大臣鳩山一郎君) 私は先刻答弁をいたしましたようになれば非常に喜ばしいという気分は持っておるのでありますけれども、あなたが、公約を実行する可能性あるかどうかという御質問でありまするから、防衛庁費並びに分担金の支出が昨年のワク内においてとめらるるならば公約はほぼ実行できるとお答えをした次第であります。
  111. 松澤兼人

    ○松澤兼人君 その問題につきましては、あとで大蔵大臣にお尋ねいたします。で、本予算が編成の時期を過ぎまして、今日まで遅れているという最大の理由はどこにございますか。
  112. 一萬田尚登

    国務大臣(一萬田尚登君) 鋭意この予算の編成をやっておるのでありまするが、御承知のように今回の予算におきましても、なかなかいろいろ折衝しなくては、単に対外的ばかりではありません。対内各省ともなかなか今後やらなくてはならないということで、自然できるだけ事務の進捗をはかっておるのですが、またお考えによってはあるいはそういうふうなお考えになるかもしれません。私どもとしてはできるだけ早く今やっておる、こういうように御了解を願いたいのであります。
  113. 松澤兼人

    ○松澤兼人君 私は最大な理由はどこにあるかということをお尋ねしたのであります。日米間の折衝も十分でないし、あるいは各省間の折衝も十分でない、こういうことであります。総理は憲法改正に当りまして、独立したのであるから押しつけ憲法を改正することは当然である、こういうふうにおっしゃっていらっしゃいます。しかし私は財政の一つの問題をとってみましても、日本が独立したというふうに考えられない。自主的な予算日本独自の考えでもって組むことができないということは、日本の少くとも財政における自主性がないということを示すのではないか、こう考えるのであります。従って私は、この日米交渉を終えなければ独自の予算が立てられないということは、何と申しましても、どんなに鳩山総理ががんばってみられても、財政上の自主権がないのじゃないか、こういうふうに考えることができるのじゃないか、こう思いますが、総理はどういうふうにお考えでございますか。
  114. 鳩山一郎

    国務大臣鳩山一郎君) 現在政治の目的が独立の完成にあると私は考えておるのでありますけれども、なかなか独立の完成ということは一日ではできません。それですからわれわれが努力をして、独立の完成のために当分しんぼうしなくてはならないと考えております。
  115. 松澤兼人

    ○松澤兼人君 ただいまのお言葉では、独立の完成に努力したいということで、現在財政上には独立した財政権がないというふうにおっしゃるようなお心持のようにも考えられますが、この点はいかがでございますか。自主的に日本予算を組む権限、あるいは能力というものを持っていないのだというふうに了解してよろしうございますか。
  116. 鳩山一郎

    国務大臣鳩山一郎君) 防衛金の分担というのは約束がありますので。これもやはり約束をして支出しなくちゃならない金でありますが、これも日本ほんとうに経済的にも独立をし、政治的にも独立をしておるのならば、そういうような約束はしなくて済んだのだろうと思いますけれども、現在はそういう約束のあって、支出しなくてはならないことは契約上の義務になっておりますから、これもまあ独立の完成という観点から考えれば、完成という域には日本はまだ入っていないというよりいたし方がないと思っております。
  117. 松澤兼人

    ○松澤兼人君 時間もありませんから大蔵大臣にお尋ねいたします。  いろいろと三十年度で経費が増加する分と、あるいは減額になる分と、あるいは節約になる分と比較検討してみますと、公約実現のためにはそう大した財源というものが残されていないように考えます。ただいま鳩山総理防衛費を千三百二十七億に押えたならば公約実現の財源は浮いてくる、こういうふうにおっしゃられます。私は少くともここから百億程度のものを内政費に回さなければ公約の実現には非常な支障がある、こう考えるのでございますが、一萬田大蔵大臣はどのようにお考えでございまするか。
  118. 一萬田尚登

    国務大臣(一萬田尚登君) むろんこの防衛分担金が減額されれば、予算編成上に非常に役立つことは、これは言うまでもありません。がしかし、それがないから公約は実行できない、あるいは公約の財源はない、そういうことは絶対にありません。一つ例をとってみましても、たとえばこの減税について三十年度で約三百億のものを直接税で減税するのでありますが、私は先ほども田村さんの質問に答えましたように、若干日本の税制において間接税に……、直接税が非常に比重が高い、間接税で若干その増収をはかる。今回は税率は変えるわけじゃありませんが、増収をはかる措置をとっております。そういう面から財源も相当出るのであります。御指摘のように困りはぜんか、非常な困難が、困難といいますか、なかなか大蔵大臣として非常に手腕を発揮しなければいけませんが、予算編成上の財源にどうもならないという状態ではないのであります。
  119. 松澤兼人

    ○松澤兼人君 直接税から間接税に移行されるという点、しかしそれは片方の肩の荷を片方に移しかえるというだけでありまして、国民の財布からは結局同じように出す。のみならず、たとえば地方税にいたしましても、地方財政の再建整備をやるという場合には、特定の税源を新らしく設けて、従来よりも一・二倍の税収を当てにしているというようなことでありますから、三百億減税、あるいは五百億減税ということを言われましても、国民のふところの出し工合というものは結局において変ってこないのじゃないかというふうに思うのでありますが、その点はいかがでございますか。
  120. 一萬田尚登

    国務大臣(一萬田尚登君) お答えをします。一応そういうふうな意見も立つでありましょう。ありましょうが、今日酒を見ますと、非常に密造が多いのであります。従ってこれを厳重に取締って、そういう密造のないようにいたしますると、どうしてもやはり造石数をふやさなければならない。それだからといって酒の消費量が事実ふえるというわけじゃないのです。ただやみの消費が正しい軌道に乗るということなんで、もう一つの砂糖について言えば、砂糖の輸入をふやすのでありますが、そうすると今日の砂糖の値段がずっと下るのであります。そうすると、砂糖の値段が下るということは、国民生活に私はやはり影響していく、しかもそこへ財源が出してくる、こういうふうな形。そうして同時に直接税に非常に片寄っている税制が、若干間接税に移行していって、そうして徐々に税制がバランスをとっていけるであろう、こういうところをねらいとしておるのであります。
  121. 松澤兼人

    ○松澤兼人君 そうあってくれれば大へんうれしいことでありまするけれども、しかし三十年度を終りましても、やはり国民の生活はそう大して楽にならないのじやないか、こう思うのであります。しかし問題を変えまして、昨日委員質問に対しまして鳩山総理は、ビキニの水爆実験の中止の申し入れをしたということを言われ、そうして重光外務大臣は、申し入れをしたのか、あるいは実験の計画があるかどうかを問い合わせたと言われた。その辺のところがきわめてあいまいでありますので、総理重光外務大臣との間に統一した御答弁を願いたいと存じます。
  122. 重光葵

    国務大臣重光葵君) ビキニの水爆問題についてどういうことを申し入れたかということについて、昨日の御質問に対して取調べをいたしました。昨年十月五日付をもって米国政府あてにこういうことを申し入れました。第一点が、ビキニ以外の地域で実験してもらいたい。実験を要するならば、あの地域で実験してもらいたくない。第二点が、もし、どうしてもそれがアメリカのために不可能であるならば、実験規模を最小限度にとどめて、また万全の危険予防措置を講じてもらいたい、これが第二点でございます。第三点は、そういう措置を講じてもらっても、予測せざる損害が発生するようなことが万一あるならば、そういう損害については十分将来も補償してもらいたい。こういうふうな申し入れをいたしておきました。ビキニでそういう実験をすることができるかできぬかという国際法の論議にあまり深入りをするということによりも、これらの実験による損害が起らないようにまずするということが一番大切なことだろうと、こう思ったのでございます。そこで本年一月四日に、ビキニの補償解決の際にこれをまた繰り返して申し入れました。ところが、米国大使は、米国政府は、今後かような事件の起らないようにあらゆる可能な努力をすると、こういう証言を与えたのでございます。これがビキニの原爆補償に関係する問題でございます。
  123. 松澤兼人

    ○松澤兼人君 時間がございませんから、もう一つ。昨日田中委員からの質問で、タイ国の特別円の問題について全貌を発表してもよろしいというお話がございました。昨日の新聞の夕刊を見ますと、要求を減額して日本政府と折衝してもよろしいという発言があったということが報ぜられておりますが、私も時間がございませんから、その全貌なり、今後の交渉の見通しなどについて伺うことができれば幸いだと思います。
  124. 重光葵

    国務大臣重光葵君) タイ国の特別円の問題の交渉の経緯をまず申し上げます。御承知の通りに、戦争中にタイ国において日本はずいぶん軍需品の買い入れ等、軍費を使ったのでございます。その決済の手段といたしまして、特別円勘定というのが日本銀行に設定をされました中に、特別円というのは、タイのバーツを等価で特別円に勘定したことになっております。ところが、終戦のときにおいてこの残額が約十五億円になっておることがわかりました。特別円の協定は、昭和二十九年九月十一日にタイ国によって、これはもう効力はないのであるということで、一方的に通告を受けました。これは終戦のときでございます。そこで特別円に関する、またこれに関係のあるいろいろな取りきめが戦争中からございます。その特別円協定の取りきめの全部がここにかようにございます。これは田中委員の御希望によって外務省からごらんに入れたのでございます。私はもう今日となりましては、こういうのはすべて特に公表しなくても、これはほとんど公開的でよかろうと思ってお目にかけたわけであります。ところが、タイのほうは、その廃棄を通告した特別円の協定の中に、必要に応じ一グラム四円八十銭の割合により金に振りかえ得るという旨の規定があるのでございます。ところが今申しますような経緯で、この協定はもうなくなったものであるというのが日本側主張でございます。タイ側は、協定はなくなっても、一たんそういう債務を持っておるわけだから、それはその協定の意味によって一つ支払ってもらいたい、こういうことが双方の主張の差でございます。そこでこれを、今の協定に応じますというと、そうしますというと、十五億特別円というのが、現在の千三百五十億円というものとなるといって返済を要求しておる。そこで日本側は、協定はこれは効力がなくなったのであるから、これは援用することができない。すなわち十五億円の特別円は今の日本の十五億円であるといって主張に差があるわけでございます。そこでその交渉を、むろんこの解釈についてはまだタイ側においても承諾をいたしません。そこで結局はタイと日本との関係で、その協定を離れて合意を見るよりほかにしようのない問題と相なりました。さようなわけでありますから日本側もできるだけタイとの友好関係を顧慮して、タイの希望をもできるだけいれられるだけいれようという考え方をもって進んで参ったのでありますが、何分その差がひどいのでございます。そこで従来ほとんど二年以上もこの交渉はそのままに、そのままじゃございませんが、妥結を見ないのでございます。ところが今回親善使節といたしまして参られたタイの外務大臣が、今回新聞で、外相自身が談話として新聞記者に話されたように、従来の経緯から見るというとよほど勉強いたしました、つまり約半減をしたわけでございます。従来は今申上げました通り千三百五十億円というような数字があるのでございますが、これを大体半額くらいな見当に、これはもう自分の何でもって、早く日本との関係を、こういうものを片付けたいという念願に動かされて、これを断然ここまでは考えるというようなことで持ち出されたのであります。必ずしも現金を全部くれというのじゃないというようなことで持ち出されたのであります。これは親善使節で来られておるタイの外務大臣鳩山総理及び私に対して同様な提案をされたことは事実でございます。さようなことでタイ側も非常に努力をしておるわけでございます。いわんや親善使節として来られたタイ国の代表、政府の代表でございますから、わが方としてもその提案に対しては十分検討をいたしまして、これに対応するだけの好意は十分表示して、この交渉を妥結に導きたいという努力をいたしておるわけでございます。これが全部の経過でございます。  それからこの文書の発表のことでございますが、この過去の協定文その他を、これはまあそういう関係になっておりますから、これは発表しても差しつかえはございませんけれども、それよりも過去の経緯をよく一般に知らしめるというほうがかえってわかりやすいのじゃないか、こういうふうに考えて、今考究をいたしております。
  125. 松澤兼人

    ○松澤兼人君 詳細御説明をいただきましてありがとうございました。  最後に運輸大臣にお伺いしたいと思うのです。三十年度の造船計画、運輸省で考えていらっしゃいます全貌をお示しいただきたい。特に公団形式か何かで造船だけやって、できた船を海運界に貸付けるのだというような計画もあるようでございますが、民主党内閣におきましては完全雇用とかいうことを強く言っておいでになる。そこで造船関係から考えてみましても、六十万総トンぐらいの造船をなし得るところの雇用量というものがあるわけでございます。これを確保するという意味から申しましても、やはり政府の施策よろしきを得ないと、かえって失業者をたくさん出すという結果にもなると思いますので、この際その構想の全部をお示し願いたいと存じます。私は時間がございませんので、再質問ができませんから、どうぞ御深切に御説明願いたいと思います。
  126. 三木武夫

    国務大臣(三木武夫君) お答えをいたします。現在の商船隊は約三百三十万トン、政府は将来の貿易のスケールとも考えまして、今後六カ年計画を通じて四百五十万トン程度日本の商船隊を拡充していきたい、こういう六カ年計画を持っておるわけでございまして、そのためには今年度でき得べくんば二十二万トン、タンカー六万トン、貨物船十六万トン、二十二万トン程度計画造船をやりたいという考えではございますが、全体との財政投資ともにらみ合して……、この数字にはあるいは六カ年を通じて調整を要する場合が起ってくると考えておるのでございます。いずれにいたしましても、海運界は資本構成が非常に悪いわけであります。自己資金は一一%程度、八九%は財政資金、あるいは他人資本というわけでございますので、これが利子負担の過重になっていく、まあ大体八十五億から九十億程度の利子を負担しなければいかん。海運界は少しは好況と申しましても、この利子負担に取られておるわけであります。これがやはり国際競争力に非常な日本の海運界の弱点になっておる。この資本構成を何とかして是正をするということが、海運振興の根本になるわけであります。そのためには、あるいは海事特殊会社によって今後作る新造船については、これを特殊会社と共有の制度にして、今後における資本の悪化を防止したらどうかという案もございます。あるいは海運の融資に対してこれを株式化したらどうか、いろいろな案が出ておるのでございますが、まだ結論には達しておりません。これは非常に重要な問題でございますだけに、単なる思いつきでは私はやるべきではない、慎重に日本の海運の将来を考えまして、慎重に検討を加えて、何らかの改善を今後の計画造船に加えていきたい、こういう考えでございます。
  127. 木村禧八郎

    木村禧八郎君 最後の締めくくりの質問でございますので、二、三の点についてお伺いしたいのでありますが、その前に鳩山総理に対しまして、一昨日佐多委員質問に関連しまして、今の日本国憲法は本質的に無効である、本質的に無効であるということを答弁されたわけであります。これはですね、私はしばしば問題になります鳩山総理の放言以上の問題である。むしろ暴言ではないかと思います。総理も御承知ではありましょうが、日本国憲法九十九条には、はっきりと規定がございまして、「天皇又は摂政及び国務大臣、国会議員、裁判官その他の公務員は、この憲法を尊重し擁護する義務を負う。」と書いてあります。従ってこの間の鳩山総理日本国現憲法は片質的に無効であると言われたとは この憲法九十九条の規定に違反すると思うのです。少くともこれは尊重してない。九十九条は尊重する義務を課しているんです。にもかかわらずですね、この国会において今の日本国憲法は本質的に無効であるということは、これは重大な私は暴言であると思われます。従いまして、鳩山総理に対して、この席において予算委員会に対して私は陳謝を要求したいと思います。これはわれわれ国会議員を侮辱するものです。また今の憲法を制定しましたに関係ある当時の天皇その他この制定に参加した議員をも侮辱するものです。そして本質的に無効であると考えているこの現憲法下において、そうしていろいろな法律案その他の予算案を審議するということ、こういうこともみな無効になる。これは新聞に大きくこの間出たのであります。これは私は非常な秩序を破壊するものだと思う。これに対して、はっきりとここでこの間の御言明に対して取り消すと同時に、私はこの予算委員会に対して陳謝を要求したいと思います。
  128. 鳩山一郎

    国務大臣鳩山一郎君) 私が現在の憲法を無効であると言ったならば、あなたのおっしゃることも正しいと思いますが、あなたの議論の前提となっておる私が憲法を無効だと言った覚えはありません。憲法を無効だと言ったのではないのであって、占領中に作る憲法を無効とするというような法制を持っておる国もあるのであるから、憲法を改正するというのは当然であろうと、こういう意味で言ったのであります。現在の憲法を無効であるというようなそんなばかはおりません。
  129. 木村禧八郎

    木村禧八郎君 速記をお調べになればはっきりわかります。今の日本の憲法は本質的に無効であると考える。そして占領中に作った憲法がですね、無効であると、そういうふうな規定をした国の憲法もあると、そういう国もあるということをおっしゃっております。どこにそういう国がございますか。
  130. 鳩山一郎

    国務大臣鳩山一郎君) 占領中に憲法を……フランスの憲法には明文があります。占領中に憲法を作ることはできない。もし作ればそれは無効だと、フランスにはちゃんと明文があります。
  131. 木村禧八郎

    木村禧八郎君 西ドイツなどにおいてはですね、これは暫定憲法になっているからそれは差しつかえないと思うのです。そうしてこれは西ドイツの場合は、この占領が終ったらほんとうの憲法を作る、そういうことになっていますが、しかし現に今、日本国憲法はここで実施されているんですよ。速記をごらんになればはっきりわかるんです。自分は本質的に無効と考える、こういうことを言われているんです。今の御答弁は違っております。あのときの発言に対する御答弁としては正確でありません、従って速記にこれは明らかになっているんだから、これは私はどうしても取り消しと陳謝を要求しますよ。もしそれをされないで、あくまでもそれを御主張になるのでありますならば、私はこの予算委員会の名によって取り消し生要求する動議を提出したいと思うのでありますが、そういう形をとる前に、率直に、これは新聞に出た影響が私はこれは非常に悪い影響があると思います。従って、この間の一昨日のあの発言は間違いであるということをはっきり私は取り消していただきたい。同時にこれは暴言以上の私は発言だと思いますから、陳謝を要求いたします。
  132. 鳩山一郎

    国務大臣鳩山一郎君) 私が申しましたことは、ただいま申すような意味で申したのでありますけれども、もし言葉に不足があって、誤解を生ずるならば、私はこれを取り消すのに何もちゅうちょすることはないのであります。
  133. 木村禧八郎

    木村禧八郎君 それではよくあと速記録をお調べになって、そうしてあの速記録では確かにこれは不当であります。従ってそれが不当であるとお考えになりましたならば、お取り消しになるというお言葉があれば一応ここで了承いたします。取り消しをされない場合には、再び私はあくまでも、この問題はうやむやにしておくべき問題でないと思いますから、あくまでもこの点ははっきりさせたいと思います。  そこで次に私はもう一つ総理にこの際伺っておきたいのですが、徴兵制度の問題ですね、日本のこの防衛に関連して徴兵制度の問題は総理はどうお考えになっておりますか。将来これは強制徴兵制度を採用していくお考えでありますか。あるいはあくまでも徴兵制度は採用しない、この日本の志願兵制度のもとでこの防衛をやっていく、こういうふうにお考えになっておりますか。
  134. 鳩山一郎

    国務大臣鳩山一郎君) 現在私は徴兵制度によって国防をするという気持を持っておりません。
  135. 木村禧八郎

    木村禧八郎君 そのお考えは現在でありますけれども、その徴兵制度の実施の時期ですね、時期について伺っているんです。現在の時期についてはやらないという意味でありますか。あるいは防衛六カ年計画をやっていく過程においては徴兵制度を考えるかもしれない、また防衛六カ年計画は絶対に徴兵制度を前提としないでやる、こういうお考えでありますか。
  136. 鳩山一郎

    国務大臣鳩山一郎君) 現在は徴兵制度を作るという意思を持っておりません。
  137. 木村禧八郎

    木村禧八郎君 それは防衛六カ年計画についてですか。
  138. 鳩山一郎

    国務大臣鳩山一郎君) それについても持っておりません、現在。
  139. 木村禧八郎

    木村禧八郎君 それなら伺いますが、総理は今後日本防衛については、海空軍に重点を置かれると言われました。海空軍に重点を置きますとどのくらい金がかかるとお考えですか。ジェット機一台作るのにどのくらいかかりますか、防衛長官
  140. 杉原荒太

    国務大臣杉原荒太君) ジェット機でもいろいろあると思います。いろいろの機種その他ありますから、私、そういう方専門じゃございません。もし御必要があれば、それぞれについて一つ詳細に専門家から説明いたさせます。(「防衛長官が知らないでどうするのだ」と呼ぶ者あり)
  141. 木村禧八郎

    木村禧八郎君 これから空軍に重点を置く、その場合には財政上非常に金のかかる軍備になるのであってジェット機一台大体こういう機種は幾ら、こういう機種……、そのくらいの頭がなくてどうして防衛庁費が組めますか。どうして防衛六カ年計画が組めますか、そんな頭で。どのくらい日本の今後に軍備が要るか、予算が要るか、あるいは船を作り空軍を中心にしていく……。そんな考えでおられるから……。おそらく知ってはおられるのでしょう。知らないはずはないのです。ここでもしお話しになれば、たとえば千機を持てば、ジェット機だけで二千億円あるいは三千億円かかる。そうなったら今の志願兵制度で防衛計画ができますか、財政上です。財政上できますか。私はどうしても財政上、技術的ではなく、財政上志願兵制度は防衛六カ年計画をやっていけば行き詰まると思う。財政上できっこないのですよ。その自信ございますか、
  142. 杉原荒太

    国務大臣杉原荒太君) 財政上の点、もちろんその点が今後の防衛力の増強計画を立てます際に当りましては、いろいろの点を複雑に考えてやっていかなければならぬことはもちろんでありますが、それが具体的な、最後にこの財政規模によってしぼられてくるということは申すまでもございません。そういう点、今後の日本の財政力の規模等の推移もよく考えまして、そういう点から見まして無理のない程度ということを目標にして考えて参ります。
  143. 木村禧八郎

    木村禧八郎君 無理のない程度といいますと、MSA協定においては、杉原さんも一番よく御存じのように、防衛の義務を負ついるのですよ。防衛の義務を負っているのであって、日本の財政上許さぬからやれないというわけにはいかぬですよ。
  144. 杉原荒太

    国務大臣杉原荒太君) これは木村さんよく御存じの通り、MSA協定をよく読みますというと、それは無条件ではございません。そこにいろいろな制約、条件をつけてあります。日本の財政上、経済上その他いろいろとそこに当然常識的にも考えられる条件をつけて規正してあります。
  145. 木村禧八郎

    木村禧八郎君 それは言葉のことであって、たとえばこの間ヘンゼル氏が、国防次官補が参りました。そうしてヘンゼル氏は、今の現状で国民所得の四%ないし五%は負担できるはずであると、向うは言うのですよ、向うは。こっちは二・五%にすぎない。まだ防衛努力が足りないと言っているのです。しかしそれは力関係になってくるのです。国民生活をうんと引き下げればできるのです。しかしそれによって、現在でもすでに国民は耐乏し、失業者がたくさん出てきている。生活保護を要する人がたくさんいる。にもかかわらず救えないでいるのでしょう。従ってこういう現在でさえも防衛費は日本の経済の現状ではもう過大ですよ。多過ぎる。これをむしろ減らさなけりゃならぬのに、海空軍を中心とする軍備に移行すれば、どうしても徴兵制度を採用して安い軍隊を作るよりほかに方法はなくなっていく。追い込まれている。これは、いい悪いの問題でなく、今の現状からそうなのです。そうでなければ、アメリカからたくさんの援助を、相当の援助をもらうよりほかに方法はないわけです。おそらく私は経済審議庁ではそういう作業をされているのではないか。もしこのままでいくならば、アメリカの援助にたよるか、徴兵制度を採用するか、どちらかにしなければ、財政上防衛費は行き詰まる。また自立経済を考える場合に、食糧とか、あるいは衣料の輸入を節約するために人造繊維を作ったり、食糧増産をやったり、そっちの方に向ける金が防衛力に食われて出せなければ、いつまでたっても経済自立はできません。そういう財政上から、どうしてもこのままでいけば、この徴兵制度実施に追い込められていくと思う。そこで総理は、憲法を改正する必要というのは、これまでの御答弁によれば、自衛のためなら戦力を持っていいという解釈ですから、憲法九条は防衛力増強のために改正する必要がないはずなのです。にもかかわらず、憲法を改正するというのは、徴兵制度を前提とする防衛力の増強を頭で考えているからです。また財政上そうやらざるを得ない。またアメリカからもそういうことをおそらく要求があると思う。だからこそ憲法改正をすると言われているのじゃないか。そう思うのですが、この点に対する総理のお考えを伺いたい。この日本の今の現状で、防衛力増強するのに、また軍艦、飛行機を中心とする再軍備に移行していって、一体この財政状態でできるとお考えですか。その点を伺いたい。
  146. 鳩山一郎

    国務大臣鳩山一郎君) 憲法改正をする動機の中には、徴兵制度を胸の中に持っているということは絶対にありません。そうして防衛力を持つということは、この日本で飛行機なり何なりが自分の国で作ってもいいというような状態にならなくてはならないし、また作る経済力を持つようにもならなくてはならないのでありまして、すべての条件が備わってこなければ、なかなか完全なる防衛力を日本自身で持つということはできないのであります。そういうような方向にありたいという意味であります。
  147. 館哲二

    委員長館哲二君) 木村委員に御注意申し上げますが、もう時間が切れておりますから。
  148. 木村禧八郎

    木村禧八郎君 この点についていえば一番重要になってくると思いますので、大蔵大臣に今後の財政とにらみ合せて、その海空軍を重点にするところの防衛力の増強というものは、この財政力から見て、今の志願兵制度を前提として一体できるか。その点この財政の面から大蔵大臣にまず伺いたいと思います。  それから経済審議庁長官に対しては、この六カ年計画との関係、ことに経済自立の関係ですね。それから軍艦、飛行機を作るには防衛産業を育成しなければならない。どうしても防衛産業を育成するには相当な金が要ります。食糧増産千五百万石ですか、六カ年計画で、それだけでも千二百億円お金が要るというのです。また船舶造船の計画だけでも、あれは千五、六百億円くらい要ります。そうすると防衛産業のほうにそれだけの金がつぎ込まれる。そうしたら経済自立計画の方に対する金は浮いていかない。いつまでたっても経済自立できない。そこで金のかかる海軍、空軍中心の再軍備に移行していけば、自立経済とどうしても矛盾してくる。私はその一番の困った解決策として、徴兵制度にしますと、私は目の子勘定で計算してみましたら、今の防衛力の規模、今の自衛隊の規模で戦前のような徴兵制度をしいて、そうしてこの給料を大体戦前は公務員六十五円のときに、新兵さんは五円くらいでした。だから十分の一に切り下げると百億円以上浮きます。百億円以上浮くのですよ。私はそういうことが、一般にはそんなことを政府が公表したら大へんですから、作業としてやられているのではないかと思うのですよ。そうしてなるほど今はやらぬ、やらぬと言っておりますけれども、結局これまで吉田内閣がやってきた政治のように、今はやらぬと言いますけれども、結局その情勢の変化、事情やむを得ない。こういうことによって徴兵制度をしかざるを得ない方向に、こういう再軍備の仕方をやっていれば行ってしまうのではないか。その意味で今後の日本経済の総合的な構想、見通しを立てる立場にあられる高碕長官にもこの点お伺いしたいわけです。
  149. 高碕達之助

    国務大臣(高碕達之助君) お答え申し上げます。経済総合六カ年計画の目途といたしますところは、国民生活の安定、経済の自立、そうして完全雇用ということが己的ございまして、それを本当の目標にいたしているわけなんです。一方防衛の方につきましては、経済支出がどれくらい負担できるだろうか、こういう点から検討いたしまして、これは国民所得に対して何%というふうなことの意見もありましょうけれども、私はそういたさないつもりであります。国家の経済力に応じてこれは進んでいくべきものだ。それには三十年度は六カ年計画の第一年でございますから、その三十年度の予算には、大蔵大臣か説明いたしました通りに、千三百二十何億というものを見込みまして、以後六カ年間に国民の経済力が増加いたしますにつれて防衛力は増加するという大体の輪郭だけを認めただけでありまして、防衛の内容につきましては、防衛長官のほうの責任でありますから、これに御検討願うということにいたしまして、防衛の長期計画と経済六カ年計画とは相並行して今後検討いたしたい、こういう所存でございます。以上お答え申し上げます。
  150. 一萬田尚登

    国務大臣(一萬田尚登君) お尋ねの点につきましては、総じて国民所得が今後増加するしつれて、その割合で防衛力を増加するとすればし得るというふうに答える以外にないのでありますが、今日の情勢では、大体先ほどお示しのように、国民所得に対して二、三%ぐらいなパーセントになっているのですが、まあこういうところが私は限界であるだろう。言いかえれば、ほんとうに今日の日本の経済力をもってすれば、そう防衛力を自己の力において増加するというゆとりは少いと私考えております。
  151. 館哲二

    委員長館哲二君) 時間が切れておりますから……。
  152. 木村禧八郎

    木村禧八郎君 只今の御答弁は非常におざなりです。もっとこれは真剣にやはり考えてみなければならぬ問題だと思うのですよ。それで結局私は一兆円予算に押えられながら、アメリカからの強い要請によって防衛費がふえざるを得ない。しかし予算はふくらますことができないから、結局インフレ的な、金融面におけるインフレ的な方法によって糊塗していく、そうしてやはり今後は相当インフレ的な方向に進まざるを得ないのじゃないか、今度の住宅建設なんかでもそうなんです。ああいう社債みたいなものを発行していこう、こういうような方向になってきていると思うのです。従っておざなりではなく、今度本予算が出て参りますときに、また詳細に御質問したいと思いますので、もっと真剣に一つこの問題は考えておいていただきたいと思います。時間が参りましたので、私の質問はこれで終りにいたします。
  153. 館哲二

    委員長館哲二君) 昨日千田委員から、ビキニの原爆被害補償の問題についてお尋ねがありましたが、それについて外務大臣答弁を求めます。
  154. 重光葵

    国務大臣重光葵君) 昨日私の欠席の間に千田委員の御質問がありましたビキニ原爆の被害の補償の問題についてでございます。これにお答えを申し上げます。ビキニの交渉は、実は前内閣、つまり吉田内閣において交渉を進めておったわけでございます。その交渉が非常に進みまして、ほとんど結末に近づいたときに引き継いだ問題であります。そのときに私はさらにアメリカ側の譲歩を要求をいたしまして、そうして金額を総額二百万ドルということでまとめたのでございますが、決してこれで十分であるとはその当時も思っておりませんでした。しかし長い間の交渉で、しかもある意味の政治的の交渉で、これでまとめることが被害者の状況から考えてみても、つまり被害者は補償をもう首を長くして待っておった時代でありますから、そういう状況を考えてみましても、これでまとめる方がいいと考えまして、不満足ながらこれでまとめたわけでございます。  今後原爆の実験によってかような被害を繰り返さないように、先ほど御説明をいたしました通りに、できるだけの措置をとっておるわけでございます。もしまた万一不幸にしてかような結果が生じました場合においては、むろんそのときに日本側態度を保留してある通りに、これに対しては十分先方において補償してもらうように努力をするつもりでございます。お考え申上げます。
  155. 千田正

    ○千田正君 自席から簡単にお尋ねいたしますが、それは補償として要求されたのでしょうか、賠償として要求されたのでありましょうか。外務大臣とアリソン大使の交換文書によりますというと、これは慰謝金である、慰謝料であるというふうにアリソン大使からの交換文書が参っておるように聞いております。かりに今の状態でお運びになって、これでよしとしましても、将来こういう問題が再び繰り返された場合においては、補償あるいは賠償として独立国家の立場から要求される御所存でございますか。この点をはっきりお伺いしておきたいと思います。
  156. 重光葵

    国務大臣重光葵君) この賠償の解決では補償としてそれをもらったことになりました。そう発表いたしておりますが、もし慰謝料ということであったら、それは間違いです。補償ということになっております。将来も補償として要求するつもりであります。
  157. 千田正

    ○千田正君 この公文書によりまするというと、二百万ドルの金額を、法律上の責任の問題と関係なく慰謝料として日本政府に対しここに提供することを閣下に通報いたしますという公文書があなたのお手元にあると思います。そうしますというと、法律上の責任はこのたびはアメリカ政府が負わない。ただしこれは法律上の責任でなく、慰謝というような意味において日本気持を含んで提供するという意味の公文書と私は解しますが、これは外務大臣といたしましては、あくまで補償としてこれは受け取る、こういうふうに考えられますか。あるいはその公文書のごとく、法律上の関係はなく補償の意味を含んだ慰謝料として日本側は受け取る、こういうふうにお考えになられますか。その点を一つお答え願いたいと思います。
  158. 重光葵

    国務大臣重光葵君) 今文字は補償という文字を使っておるということでございましたが、その公文書をお持ちならば、その公文書の方が正しいと申さなければなりません。実は法律問題をずいぶん長い間戦わしたのでございますが、法律問題ではこれは解決いたしません。法律とは別に一つ現ナマで解決しようじゃないかということでやったわけでございます。その意味は、今申します通りに、法律問題とは関係なくやはり、補償、償いをさせたという意味に私どもは考えております。
  159. 千田正

    ○千田正君 そうしますと今後にかりにこういう問題が起きたとしても、これは前例にならないという御方針でございますか。その点だけを伺っておきます。
  160. 重光葵

    国務大臣重光葵君) それは前例にはむろんなりません。なりませんが、しかしその解決のあったということは、これはもう承認せざるを得ません。
  161. 八木幸吉

    ○八木幸吉君 私は一般の問題は本予算の審議のときに譲りまして、四月の改選期を控えまして地方各種議員並びに知事、市町村長の退職金の問題について伺いたいと思います。私は選挙をされた人たちと、採用や任命によってその職につく人とは、退職金の関係において根本的に差異がある、かように考えるものであります。と申しますのは、選挙によって選ばれる人は、たとえば知事、市町村長であれば一定の期間その職務を有権者から委任をされ、又議員であれば予算等の審議を代表者として選ばれたわけでありますので、従って任期中は尊敬もされるが、また同時に自粛もしなければならぬ。任期中はそれに相当する待遇を与えられておるわけであります。そしてその任期を完全に果しましたならば、国民の判断によって再選をされるなり、あるいは落選をするなり、おのおのその判断を受けるわけであります。ところが一般に任命もしくは採用されましてその職につきます者は、たとえば一般の公務員にいたしましても、警察の人にいたしましても、教員等にいたしましても、一生をその職に捧げて老後になりまして退職をいたすのでありますから、老後の生活に心配のないように十分手厚く退職金を支給するということは、これは当然であると私は思うのであります。ところが近来は、最初に申しました選挙で選ばた人にも退職金を支給するという風潮が多くありまして、地方等でも条例等でもこれをきめておるところがございます。総理もおいでになりますが、日比谷の議会時間にはなかったことであると私は思うのですが、そこで四月に改選されまする知事、市町村長並びに各種の議員の数は約七万余名に上っておりまして、知事等の数百万円から府県会議員等の数十万円に及ぶ退職金が今うわさされております。また中にはこれを辞退しておる方もあります。私が資料を目下自治庁の方に要求いたしておりますが、まだ提出がございませんけれども、概算するところによりますと、全国を通じて約二十億円に上るであろうと私は想像いたしております。そこで私の伺いたいのは、地方財政の赤字を出しておりまする現在に、政府として何とかかような退職金を出さないように、またもらわないようにという強力なる勧告をなさるお気持があるかどうか。私としてはぜひ勧告をしていただきたい。これが一点。  それからもう一点は、勧告に従わずして国から多くの補助をもらっておりながら、なおかつ巨額の退職金を、身分不相応の退職金を出すといったような地方団体には、今後補助金等の査定をされるときに、地方財政の再建に誠意のないものとして、相当厳重な査定をされることが望ましいと私は考えるのでありますが、これらの点について、自治庁長官なり大蔵大臣の御所見を伺いたい、かように存ずるものであります。
  162. 川島正次郎

    国務大臣川島正次郎君) 地方公共団体の特別職に対する退職慰労金につきましては、世間でもとかくの非難がございます。財政窮乏の際に常識を越したような多額の金員を贈与するということはどうかと私ども考えておりまするが、法律的にはこれをとめる根拠はないのでありまして、ただいまのところは関係者の良識によって行動してもらう以外にはし方がないのでありまするが、今の八木さんのお話はまことにごもっともでありまするからして、至急に考えまして、できれば、適当の処置をとります。
  163. 一萬田尚登

    国務大臣(一萬田尚登君) 私は全く同じ考え方であります。
  164. 八木幸吉

    ○八木幸吉君 議員と退職金の関係についての本質的な私の考えについての総理の御所見を伺いたいと思います。もう一ぺん言葉を足しますと、選挙された者は退職金をもらうべきものでない。任命採用された者は退職金を支給するのは当然だ。これは私の本質的の考えなんですが、それに対してどういうふうにお考になるか。つまり議員が議員をやめてからでも退職金を取るということは、これはいいことであるかどうだろうか。私はいいことでないと思うがどうだろうか。こういうことを伺っているわけです。
  165. 鳩山一郎

    国務大臣鳩山一郎君) 私もやったり取ったりしない方がいいと思います。
  166. 八木幸吉

    ○八木幸吉君 私はこれで終ります。
  167. 小林政夫

    ○小林政夫君 かねて要求しておる資料が出てないのでありますが、と申しますのは、非常にむずかしいことは承知いたしておりますが、中小企業向け融資資金の需給推算をしてもらいたい、こういうことを申しておるわけであります。これは前小笠原大蔵大臣もはっきり約束をされまして、今度の予算が始まるまでに出しますと、こういうことになっておった資料でございます。今届けられた資料は、現状であって、国民所得等の推計ができておるわけでございますが、それと同様の正確さを持った中小企業向け融資資金の需給推算をやって出していただきたい。そうしないと、どうも中小企業向け融資資金が十分かどうかということがいつも水かけ論に終ってしまうのです。
  168. 西郷吉之助

    西郷吉之助君 一つ疑点がありますので、政府にお尋ねしたいのでありますが、御承知のごとく、衆議院がこの暫定予算を通します際に、与党たる日本民主党の同調を得て、暫定予算補正要求付帯決議案を通過したのでありますが、こういう問題につきまして、昨日他の委員質問に対しまして、一萬田大蔵大臣から、暫定予算の補正予算提出しないという御発言があったと思いますが、そういたしますると、衆議院の決議案がはなはだ意味をなさなくなりますが、もし大蔵大臣のような考えであるとすれば、結局大蔵当局の考えでは、この暫定予算に対する補助費等未計上分を本予算において組まれる考えではないかと思いまするが、さような暫定予算に対する補正分を財政法上本予算に計上することができるかどうか、非常に疑問に思うわけであります。そういう点について大蔵大臣から詳細に御答弁願いたいと思います。
  169. 森永貞一郎

    政府委員森永貞一郎君) 財政技術の問題でございますので、私から便宜お答え申し上げますが、四、五月分の暫定予算は、当然本予算に吸収されるわけでございまして、来たるべき本予算におきましては、補助金、公共事業の継続事業等につきましても、本予算に計上いたします場合には、当然四、五月分が含まれるわけでございます。含めて一年分の予算を組むわけでございまして、ただそれをいつ支払いができる状態におくか、そういう問題が暫定予算が必要があるかどういということに相なるわけでございます。ただいまのところは、暫定予算の補正を考えていないということでございますが、これは本予算には、もちろん四、五月分が入るわけでございますが、その支払い上必要なる暫定予算は今のところ考えてない。そうしますと、本予算が成立いたしました後に、この四、五月分の補助費等の金も出ていくということになるわけでございまして、さような意味で昨日来申し上げておるわけでございます。
  170. 西郷吉之助

    西郷吉之助君 ただいま主計局長の御説明がありましたが、御説明にある通りに、この暫定予算に組んでない分をすでに通過せしめた——本日参議院がこれから進行いたしまするが、この暫定予算が両院を通過したと仮定いたしまして、そうしたすでに通過した暫定予算に対する未計上分を財政法上本予算に組むということができるかどうかということについては、非常に財政法上の疑点があると私は思うのであります。今主計局長の説明だと、当然に四、五両月文に対する未計上分を六月以降の本予算提出の際に組むようなお話がありますが、その点は財政法上いかがかと思いますが、その点を明確にされたい。
  171. 森永貞一郎

    政府委員森永貞一郎君) 補助金等で存置いたしますもの、あるいは公共事業の継続事業、これは本予算では六月以降の分だけを組むのではなく、四、五月を含めた一年分を組むわけでございます。財政法上、四、五月分を含めた一年分を本予算に組むことにつきましては、何らの疑点のないことを御了承いただきたいと思います。
  172. 西郷吉之助

    西郷吉之助君 今の四、五月分を含むのは当然だと言われるが、当然といえば この暫定予算は四、五の両月分でありますから、その暫定予算に組むのは当然であって、今主計局長の言われるのは、すでに暫定予算に入っていないのを、その分に対する未計上分だけを本予算の際に組むのは当然だと言うのをおかしいのじゃないか。形の上では四、五月分に計上すべきものならば、当然にこの暫定予算に組むべきものであるのを、暫定予算に組まないでおいて、六月以降の本予算に四、五月分の未計上分を組むのは当然だと、さようなことはないはずです。
  173. 森永貞一郎

    政府委員森永貞一郎君) 暫定予算は、事務的な予算という建前で、政策的な予算は計上していないわけでございますが、その政策的な予算は、本予算に初めて登場するわけでありますが、本予算に登場いたしますときに、それらの政策的の問題、六月以降の分が本予算に組まれるわけではないわけでございまして、やはり一年度の予算を本予算に組むわけでありますから、そこで今回の暫定予算に対しましては、継続的な補助事業の分は計上いたしていないのでございますが、これは四、五月に必ずしも現金交付の必要がないということで計上していないわけでありますが、金額といたしまして、本予算のうちでは一年分を計上するということになるわけでありまして、その点につきましては問題はないと存じます。
  174. 西郷吉之助

    西郷吉之助君 主計局長のお答えはそれを了承するといたしまして、大蔵大臣に伺いますが、冒頭に申し上げました通りに、与党も含めてこの暫定予算の補正要求付帯決議を出したのでありますが、今主計局長の説明かありましたが、それを尊重するということは、政府としては当然だと思いますが、それについて補正予算は出さないで本予算に組むことになりますると、衆議院でこの決議案を通したときの趣旨と違ってきやしないかと思います。そういう点について、大蔵大臣より御明答を願いたい。
  175. 一萬田尚登

    国務大臣(一萬田尚登君) 私は今のところ、暫定予算の補正予算を組むというふうに考えていないということを御答弁申し上げたわけでございますが、これはまたなお十分考えてみることにしましょう。
  176. 西郷吉之助

    西郷吉之助君 最後総理大臣に御答弁願いたいと思いますが、ただいま大蔵大臣からさような御答弁がありましたが、書いてある通り暫定予算補正要求付帯決議案でありますので、さようなことになりますと、与党も御承諾になって通した衆議院のこの決議案は形が違ったものになり、はっきり申し上げると、意味をなさなくなると思いますが、そういう点につきましては一鳩山総理はいかがお考えになりますか。
  177. 鳩山一郎

    国務大臣鳩山一郎君) 付帯決議は、議会で約束いたしました通り、十分尊重して本予算を組みたいと思っておるのであります。
  178. 西郷吉之助

    西郷吉之助君 総理大臣は私の申し上げたことがよくおわかりにならなかったのではないかと思います。この暫定予算に対する付帯決議は、暫定予算補正要求付帯決議案となっておるのであります。でありますから、この趣旨で参りますると、当然に暫定予算に対する補正予算を本予算の前に出すことになるわけであります。しかし今の大蔵大臣の御答弁だと、この暫定予算に対する補正予算は出さない、本予算で出目のだとおっしゃいますので、そうなりますと、衆議院通りました暫定予算補正要求決議案というものは無意味になるわけでありまするから、さような点につきまして総理の御見解をただしたいわけであります。
  179. 鳩山一郎

    国務大臣鳩山一郎君) ただいま主計局長の話を聞いておりますと、出すべき補助費を本予算で出すようになるならば、実質的に当然に四、五月の暫定予算も補正されたと同じ結果になるというふうに見ておるのであります。これが正しい解釈かと考えております。
  180. 西郷吉之助

    西郷吉之助君 どうもその点が不明確でありますが、これ以上押し問答になることもいかがかと思いますから、その点を今申し上げたように、少し衆議院の趣旨とは合致しない結果になるとは思いまするが、これ以上追究いたしましても時間を空費いたしますから、私の質問はこの程度にとどめまするが、どうも今の御説明では、衆議院のこの暫定予算に対する付帯決議の趣旨は没却されたものというふうに考えざるを得ないということを申し上げまして、質問を終ります。
  181. 小林政夫

    ○小林政夫君 先ほどの資料ですが、大蔵大臣責任を持って出すのか出さないのか、委員長から確認をして下さい、ここで……。
  182. 一萬田尚登

    国務大臣(一萬田尚登君) これは技術的なものになると思いますが、御趣旨の点はできるだけ一つ作らしてお手元に出すことにいたします。なおこれは技術的なことでありますから、果して御満足がいくようになりますか、またお知恵も拝借いたします。
  183. 木村禧八郎

    木村禧八郎君 議事進行。あと理事会を開いて、先ほど鳩山総理日本の憲法も本質的に無効だと思うということを言った覚えがないと言いますが、今速記録ご調べ中でありますが、しかし朝日新聞速記によって出た内容によりますと、はっきり言われているのです。一昨日の緑風会の廣瀬氏の質問に対しまして、総理はこう言っています。「憲法を改正したいとの希望は今でももっている。現在の憲法は占領中できたものである。占領中にできた憲法は無効だとしている国もあるので、日本の憲法も本質的には無効だと思う。」、そういう国もあるから、日本の憲法も無効だと思う、はっきりそういうふうに出ておりますから、私はこれは暴言ではないか、こういう質問をしたのであります。いずれまた速記録をはっきりと調べて、そうしてそれが事実であった場合、(「さっき取り消したですよ」と呼ぶ者あり)今調べてそうだったら、理事会でそれを諮っていただきたい。
  184. 鳩山一郎

    国務大臣鳩山一郎君) 私は新聞に書いてある記事は肯定いたしませんが、もしもそういうようなことを私が言いそこなって言っておりましたならば、むろんそういうような間違っておることを取り消さないではいられません。むろん取り消します。だから今のところで取り消せと言われても、条件付きで取り消すより仕方がない。もし言ったならば、取り消します。
  185. 木村禧八郎

    木村禧八郎君 今のは質問じゃありません。議事進行で、理事会で別に諮って下さい。
  186. 佐多忠隆

    ○佐多忠隆君 今条件付きでもって取り消さなければならぬかもしらぬとおっしゃったのですか、その条件のはっきりした上で、速記録を正確に見た上で、一つそれに対しては委員会としてもどういう態度をとるべきかということを理事会においておきめを願いたい。
  187. 館哲二

    委員長館哲二君) 委員長において了承いたしました。  以上をもって質疑を全部終了いたしました。三時半まで休憩いたします。三時から委員長理事打合会を開きます。  暫時休憩いたします。    午後二時五分休憩    ————・————    午後四時五分開会
  188. 館哲二

    委員長館哲二君) これより委員会を再開いたします。  内閣総理大臣から発言を求められております。これを許します。
  189. 鳩山一郎

    国務大臣鳩山一郎君) 私としては、憲法を無効だと思ったことは決してないのでありまするが、昨日広瀬君の答弁に当って用いました用語は、そういう誤解を招くような言葉であります。この際取り消しをいたします。(「了解」と呼ぶ者あり)
  190. 館哲二

    委員長館哲二君) これより昭和三十年度暫定予算三案の討論に入ります。  先刻の委員長及び理事打合会の申し合せによりまして、順次御発言を願います。
  191. 永岡光治

    ○永岡光治君 私は日本社会党を代表いたしまして、昭和三十年度暫定予算案に反対するものであります。  一月二十四日解散、二月二十七日総選挙、三月十八日国会召集という特殊事情から考えまするならば、できるだけ本暫定予算案に賛成いたしたいのでありまするが、今回政府提出いたしておりまするところの暫定予算案は、基本的な点につきまして、多くの賛成することのできない欠陥を持っておりまするので、われわれはとうていこれを承認することができないのであります。すなわち政府原案第一の欠陥は、目下アメリカ側と折衝の途上にありまする防衛分担金の削減が未決定でありますにもかかわらず、これを二十九年度予算の三カ月分に相当するものをそのまま盛り込んでおる、こういうことであります。この問題は三十年度予算編成に当っての最も重大なる問題でありまして、今次総選挙を通じまして、現鳩山総理みずからが国民に訴えて参りました、いうところの日本の独立への悲願に重大なる支障を来たすものでありますと同時に、この国民に対するところの訴えのゆえに政権を取ることのできました鳩山内閣の政治的生命にも関する問題でもあるわけであります。すなわち現在におきましては、この交渉の成否こそが、日本が独立へ一歩前進するか、あるいは依然としてアメリカの支配に押えつけられるかという重大な政治的意義を持つものであると考えられるのであります。もとよりこの問題に関しましては、不平等条約を改廃いたしまして、日本の完全なる独立を達成する、こういう建前に立つところのわが党といたしましては、防衛分担金につきましても根本的に反対の立場に立っているのでありまするが、この暫定予算案におきましては、そういう根本的な立場からの論議はおくといたしまして、かりに安保条約を認めておらるる保守党諸君の苦しい現在の立場に立つといたしましても、なおかつ先ほど申し上げました理由からいたしまして、二十九年度予算の三カ月分に相当するものを計上することは絶対に認められないと思うのであります。さらに政府がたびたび発表いたしておりまする通り、すでに米軍一個師団引き揚げで、日本側分担金も百八十億は必要がなくなる、こう申しております。さらに特需ドル払いの減少傾向についてみまするならば、一昨年から昨年、そうして本年の見通しから推定いたしまして申し上げまするならば、米軍側の分担金ドル払いは、実に円貨に換算いたしまして三百億程度も減少して行くのではないか、こう推定されるのであります。これと見合いまして、当然日本側の分担金も百八十億はおろか、さらに大幅な削減ができるはずであります。かような根拠からいたしまして日米折衝が目下行われておりまするやさき、暫定予算におきましていち早く過大な支出を認めることは、どう考えましても納得できないのみならず、愚の骨頂と言わなければならないと思うのであります。なおまた当座の費用といたしまして、政府は繰り越し明許費を持っていて、今日までいかようにもやみの操作をいたして来たのでありまするから、今日このような重大な時期を控えまして、これを大胆に全額削減することがきわめて当然と考えられるわけであります。  第二に、防衛庁費の計上につきましてでありますが、これにつきましても同様なことが言えるわけであります。目下行われておりまする日米交渉は、防衛分担金の削減と、防衛庁費の増額とが相からみ合わされまして、論議されておることは、周知の事実でありまするが、これにつきましてわが党は、憲法に違反するところのやみの再軍備を認めておりません。従って基本的にこの費目につきましても否定的立場に立つものであります。  次に重要なる各費目について申し上げますると、先ず第一に、生活保護費の問題でありまするが、これも昭和二十九年度予算の三カ月分を政府がまじめに計上しようといたしまするならば、約九億五千七百万円の増額を必要とするのであります。すでに生活保護費は、打ち続く吉田内閣の悪政により、生活困窮者の増加によりまして、現行でも赤字は増大の一途をたどっておるのでありまして、二カ月分だけでもこの程度の増額はぜひとも必要な経費として計上しなければならないものであります。  次に社会保険費についてでありますが、今までの吉田内閣のもとにありまして、社会保障関係費は極端な圧迫を受けまして、すでに健康保険の赤字は重大なる社会問題と相なっております。政府で当然国庫負担として支出しなければならない健康保険の赤字ですら、約四十億に達しておりますが、すでに事務当局では、来年度はその額は九十億に達することは必至と見ているようであります。従いまして民主党内閣が真に社会保障を、せめて現行を維持しようといたしましても、九十億の月割の二カ月分を追加計上すべきは当然と言わなければならなのいであります。  第三に失業対策の問題でありますが、すでに一萬田蔵相初めといたしまして、鳩山内閣の経済政策の基調は、頑迷なるデフレ政策の堅持にあることは重ねて強調されておるところでありますが、このデフレ政策の犠牲となって、失業者は急激に増加して参りましたし、今後もさらに増加して参るでありましょう。これは重大な社会問題でありまして、毎日々々の新聞の三面記事をにぎわしております読むに忍びないほどの悲劇の源泉は実にここにあるのであります。しかるにこれに対する予算措置はきわめてずさんきわまるものであります。昭和二十九年度の予算では、この関係の経費といたしましては、わずかに十七万人の吸収事業費しか計上されておらなかったのであります。現在では完全失業者だけで百万人に上っていますが、政府の発表によりましても完全失業者は約七十万人もいるのであります。でありまするから、完全雇用を公約された鳩山内閣といたしましては、現行の失業対策事業費の三倍から四倍の増額を私は当然なされなければならぬのであると思うのでありますが、この点の考慮を怠っておるのであります。さらに失業保険費も同様でありまして、昭和二十九年度の受給実人員が四十九万四千人では見積り過小でありまして、三十年度はどうしましても六十万人以上に増加を見込むべきが至当と考えるのであります。  さらに第四に、義務教育費の国庫負担金についてでありまするが、政府は児童数が七十七万人増加すると言っておりまするが、これによって生ずるところの必要な教職員の数は約二万人になるのでありまするが、この増員は見込んでおりません。現に多くの府県におきまして、受け持ちの先生のきまらぬ子供がたくさんあるのであります。新学年がこのような状態で発足することは大きな失策であり、不幸と言わなければなりません。当然政府は義務的に、半額国庫負担の建前よりいたしまして、これに要する二カ月分の経費、すなわち十一億円を追加計上すべきであると思うのであります。  以上のように、政府が当然義務として増額しなければならない諸経費の増額に伴いまして、地方自治体の財政負担もまた若干の増加を来たしますが、御承知の通り自治庁の発表によりましても、目下地方自治体の財政におきまして、全国で約四百六十億田に上るところの赤字を生じております。従いましてこれ以上地方財政に負担をかけることは不可能と思われまするので、当面これらの経費増額は国庫よりの交付税交付金の増額によりまして補てんする以外にないと考えるものであります。さらにまた当面地方財政の赤字のうち、緊急を要するものの補てんも、国の行政事務の円滑なる運営を期する上から、当然のことでありまするが、これらについては何らの考慮を払われていないということはきわめて遺憾であります。  以上申し述べましたような理由をもちまして、われわれこの昭和三十年度暫定予算案に断固反対するものであります。(拍手)
  192. 石原幹市郎

    石原幹市郎君 私は自由党を代表いたしまして、ただいま提案されております昭和三十年度四、五月分暫定予算三案に対し、若干の意見を付して賛成の意を表す次第であります。  まず冒頭にはっきり申し上げておきたいことは、第一に本暫定予算は当然修正組みかえを行わなければならない性質のものでありまするが、すでに会計年度末になった今日、三十年度初頭より財政的空白を生ずるおそれがありまするので、やむなくと言いまするか、忍びがたきを忍んで、これを承認いたすものであること、第二に、政府はしばしば本予算を四月中旬までに国会提出すると言明しておるのでありまするが、今度の暫定予算の傾向から推測いたしますると提出される本予算は、過般の選挙ではっきり国民に約束された、いわゆる民主党公約とはおそらくちぐはぐなものとなることは必至でありまして、これは公約不履行という点で、今度の地方選挙にも大きなマイナスとなるので、政府は地方選挙終了までは本予算提出すまいという予想が世上伝えられております。私は政府の必ず本予算は四月中旬までに出すという約束を再確認いたし、これを前提としまして、この暫定予算に賛成いたすことをはっきりさせておきたいのであります。  すでに本委員会におけるわが党同僚の質問に対しまして、政府答弁はすこぶるあいまいでありまして、誠意も熱意もなく、しかも一貫性を欠き、選挙運動中のから元気は全く影をひそめ、いかにしてから手形公約の跡始末をせんかと、きょうきょうとしている風さえ見えるのであります。申し上げるまでもなく、元来暫定予算というものは、本予算成立後は当然これに吸収され、いわば本予算の一部前払いとでも申すべきものでありまするので、これと切り離して考えるわけには参らないのであります。そこで政府としては、年度予算の編成方針、骨格予算の概要、年度間の財政投融資計画等については、できるだけ忠実に国会に報告して、暫定予算の審議をして十分ならしむべきが至当であります。しかるに資料として提出されましたものは、昭和三十年度予算の骨格に関する大蔵大臣の構想なる、わら半紙三枚ほどのガリ版刷りであったのであります。外観もまことにお粗末なものでありまするが、内容に至ってはさらに空疎きわまるものでありまして、数字の示されておりまする点は、予算の総額を一兆円以内に押える、減税は三百億と申しているのみであります。あとはきわめて抽象的に、総選挙の最中に繰り返された民主党のいわゆる公約の羅列があるばかりであります。一体一兆円のワク内でいかにこれだけの公約を盛るのか、今後の推移こそ見ものでありまして、すでに本委員会の論議を通じ、羊頭狗肉的内容を思わせるものが相当にありましたことは、各位了承のところと思うのであります。  このように昭和三十年度本予算案の何らの見通しのないままに編成された暫定予算案でありまして、多くの欠陥を持ったものであることは当然と言わねばなりません。本暫定予算は年度末の関係上やむを得ず通すのでありまするが、三十年度本予算の内容や、政府の誠意いかんでは六、七月分までも暫定にとどまる場合も想像し得るのでありまして、まことに遺憾に思うのであります。もともとわれわれは、暫定こま切れ予算措置は極力これを回避するのが政府の当然の責務と思うのでありまして、暫定措置のため国家国民の受くる損失ははかり知るべからざるものがあると思うのであります。特に遺憾なことは、第一次鳩山内閣において旧冬成立早々解散を行うか、または三十年度本予算案を提出しておったならば、このようなことはなかったと思うのであります。暫定予算措置による国民経済に及ぼす悪影響の全責任はことごとくあげて鳩山内閣の負わねばならぬところであります。  次に、政府はこの予算は政策的な諸経費を除外し、単なる事務的予算と称しておりますが、私はこの予算には鳩山内閣の性格というか、欠陥というか、まさに重大な問題を含んでいるものと考えるのであります。それは地方行政財政にも重大なる影響を及ぼす性質のものでありまして、すなわち、地方財政に対し生活保護費、義務教育費、地方交付税交付金、災害復旧補助金等が三カ月分計上され、他の公共事業は直轄事業の二カ月分だけが計上されているにとどまり、一面において災害復費を除く公共事業の補助金や普通補助金は全部切り捨てられております。二十八年度の暫定予算の先例を見ましても、継続的な補助や普通補助につきましては、必要最小限度の経費はちゃんと計上されておったのであります。政府はさしあたり交付税交付金や金融措置でこれらの穴埋めをさせるとは言っておりますものの、今日窮迫せる地方財政下においては、従来補助金等を中心としておった継続事業や、その他の行政が著しく渋滞停頓し、あるいはお先まっ暗ということになるのであります。地方としては、三十年度新予算を編成するに当って、その編成方針も立たぬということになり、暫定予算のために地方が諸事業執行上に受ける損失の上に、かかる措置により継続的のものすら行い得ざることとなって、災害期を直前に控え、あるいは目下工事の最盛期にあるもの等は、その損失莫大なるものありと考えられるのであります。その他補助金についても、ある程度放漫、非能率な補助金政策はこれを検討するにやぶさかでありませんが、補助金等の大幅整理をねらわんとする意図のもとに計上せざるものとすれば、これら補助金は農業関係のものが多いだけに、日本農業の特異性にかんがみまして、これが保護の立場からも、かかる補助金の唐突無謀な圧縮に対しては、厳重なる監視と警告を政府に発せざるを得ないのであります。鳩山内閣は、その選挙宣伝とは全く正反対に、農業や漁業、治山治水等の施策を軽視するものとのそしりを免れ得ないと思うのであります。その他総選挙中鳴りもの入りに宣伝した防衛分担金の大幅削減も、現在に至るまで未解決に残されており、防衛支出金は二十九年度予算の三カ月分を機械的に計上しているにすぎぬ点もはなはだ心外に思うものであります。その他、義務教育費国庫負担額、農村不当課税問題等、遺憾の点はきわめて多いのであります。  かく論じて参りますれば、たとえ暫定予算にしろ、まことに不備不体裁、とうてい国民の満足いたしがたいものでありまするが、冒頭に申し述べました理由により、やむなく予算案に賛成いたし、私の討論を終ります。(拍手)
  193. 松浦清一

    ○松浦清一君 私は日本社会党第二控室を代表いたしまして、政府提出にかかる昭和三十年度一般日会計暫定予算案、同じく特別会計暫定予算案、政府関係機関暫定予算案に反対し、ここにその意思を表明するものであります。  今回提出されました政府予算案の最大の特質は、第二次鳩山内閣予算編成方針が通り一んぺのおざなり主義に終始し、国会予算審議の権威をそこなうことはなはだしかったという事実であります。申すまでもありませんが、暫定予算とは言っても、これは三十年度本予算の一部でありまして、年度予算の編成方針、骨格予算の概要、財政投融資計画等については、政府は年度を一貫した方針を明確にして国会に提示し、この予算審議をして遺憾なきを期すると同時に、国民の前に公約した民主党の選挙公約の実行を明確に示すべきが至当であります。しかるに鳩山内閣は第一次内閣を組閣してから早くも三カ月以上を経過し、かつ第二次内閣においても、その主要閣僚がすべて留任しているにかかわらず、予算編成方針は明確な一貫性を持っておりません。すなわち政府は今次衆議院の総選挙において、明年度予算を一兆円のワク内にとどめ、そのうちで住宅四十二万戸の建設、社会保障費の増額、中小企業融資の増額、貿易向け融資の増額等を行い、一方では五百億円の減税を行うという空手形を乱発いたしております。しかも一兆円予算という緊縮の効果を高めるためには、物価の引き下げに努力すると言っております。にもかかわらず、まず第一に、物価引き下げについて政府はいかなる方針を持っているのか明らかにされておりません。最近の物価は上昇気配を示し続け、海外物価もまた西欧の景気好転の結果として鉄鉱を初めとする原材料相場が全般的に値上りを示しております。加えて海上運賃の値上りがあり、わが国に輸入される原材料がだんだん上昇の傾向をたどりつつあります。この結果は必然的に生産品に対するコスト高を招来し、このため国内物価全般、特に輸出品価格の上昇を示し、この影響を受けまして食糧品を中心とした消費財にも波及しつつあります。このために労働賃金の引き上げの必要が生じ、政府の物価引き下げ宣伝にかかわらず、事実はこれに逆行して本年の物価の前途に大きな不安を投じつつあります。政府はこのようにきびしい経済と国民生活の現実に目をそむけ、相変らず言葉だけの公約を放言しておるのであります。われわれ国民はこの予算審議を通して、鳩山内閣公約は完全に不渡り手形となりつつあることを見せられたのであります。すなわち一萬田蔵相は、年度予算の編成構想のうち、財政投融資は前年度並みの二千八百億と余剰農産物見返り資金二百億とを合せた三千億円程度と述べられておるのでありますが、余剰農産物と見返り円資金の使用は、アメリカ側の指示を必要とするいわゆるMSAのひもつき資金であります。これを日本側の支出として資金計画のうちに入れて考えることは不合理であります。従って昨年の二千八百億円程度の資金で実質的な財政投融資計画を立てるとすれば、住宅建設、貿易振興、中小企業融資、減税等々の総花式な、盛りだくさんな公約は全面的な資金不足となって実現不可能となることは明らかであります。かてて加えて日米交渉における防衛支出金の分担額について、これを削減することをアメリカ側から拒否されるならば、各種公約の実現のための財源をこの分担金の削減に期待することは不可能になり、この面からも鳩山内閣は明年度予算の編成難に陥るのであります。このように、予算編成について、何らの方針も明らかにし得ない政府の手によって提出された暫定予算が、年度予算編成方針から全く遊離して、国民の期待を裏切ってしまったのであります。政府はこの結果を事務的な暫定予算編成という体裁のいい言葉でごまかしておるのであります。たとえこれが純事務的な予算編成であったといたしましても、まことに不完全きわまりないものであります。社会保障関係費、義務教育国庫負担金、地方財政に対する交付税交付金等についても、暫定予算において当然月割りで考慮せられるべきであるにかかわらず、政府はこの必要ある現実を無視していると同時に、膨大な赤字に悩む地方財政に対して全く目をおおっているのであります。しかも一方では、防衛支出金や防衛庁経費については、事務的予算編成の範囲を逸脱するような経費を計上しているのであります。従ってわれわれは衆議院予算委員会においても、以上の諸点を痛烈に指摘して、両派社会党共同にかかる組みかえ動議を提出し、その組みかえを要求したのであります。私はこの予算案のように、純事務予算の名に隠れ、年度予算編成との計画関係を明らかにせず、選挙公約に対して一片の誠意を示さない予算に対しては、国民の名において断固として反対するものであります。(拍手)
  194. 豊田雅孝

    ○豊田雅孝君 私は緑風会を代表いたしまして、ただいま議題になっておりまする昭和三十年度暫定予算案に対しまして、原案に賛成をいたすものであります。  ただし希望を付しておきます。それは補助費の関係におきましては、特殊のものを除くのほか、原則として計上せられておらないのであります。これは暫定予算には政策を織り込まないと政府は言いつつも、補助費を少くせんとする政策を織り込んでおるとも言い得るのでありまして、この事実は地方公共団体に大きな不安を与えまするのみならず、現実に事務上並びに事業上に支障を来たすおそれが多分にあると考えるのであります。つきましては、政府は地方公共団体等に不安を与えることのないような本予算を一日も早く編成また提出せられますると同時に、今回の暫定予算の欠くるところを補いまする本予算がその方向を決定し得るに至りましたならば、できるだけ早く各省と緊密なる連繋をとられまして、地方公共団体にあるいは内示する等の適宜の指導連絡を行う。しかして地方公共団体の事務並びに事業の遂行上遺憾なきを期せられたいと特に考えるのであります。  この点をこの際希望を付しまして原案に賛成することにいたします。(拍手)
  195. 木村禧八郎

    木村禧八郎君 私はただいま上程されました三十年度暫定予算に反対をいたすものであります。  反対の理由は、この暫定予算の性格にあるわけであります。この暫定予算は、二十九年度の自由党内閣によって作られた予算を継承したものでありまして、私たちは自由党の作った二十九年度予算が、その性格においてわれわれの立場と根本的に違います。そういう意味で、そういう根本的にわれわれと立場の違う予算を延長したその暫定予算には賛成することができないのであります。  この暫定予算の性格の第一は、今の日本の経済の実情から見て、防衛費はこのように計上することができるような経済では全くないわけです。現在どういう経済状態に置かれているか。今、日本国民が直面している、実際に毎日の日常において体験している非常な苦しい状態を考えたならば、今の日本の現状が、防衛費をこのように組み得るような余裕ある経済でないことはあまりにも明白であります。いろいろ鳩山内閣公約を、生活保護の問題、あるいは失業対策、住宅建築、いろいろ言っておりますが、今生活扶助の問題なり、失業対策、あるいは住宅の問題、さらに災害復旧の問題、教育については学校建設の問題、そういう問題がみんな停頓しちゃっているわけでありまして、そういう実情のもとでこういうような防衛費をたくさん盛り込んでいる。暫定予算といえども、そういう予算は許され得ないわけであります。また一歩譲って、かりに防衛費を組まなければならないとしましても、防衛費は防衛分担金を含めて今アメリカと折衝中であって、不確定なものなんです。どうなるかわからない。そうして暫定予算の性格からいって、政策的なものは大体組まないと言っていますが、この防衛分担金でも、防衛費でも、アメリカとの折衝の過程においてわかるように、最も政策的なものなんです。きわめて政策的なものです。そういうものがまだ不明確であるのに、安易にこれに盛り込んであるということは、これは責任ある態度と言えないと思います。これがこの予算の性格の一つとしてどうしても容認できない点でございます。  それから第二は、いかに暫定予算といえども、この四月、五月の二カ月といえども、今の国民の苦しんでいる状態としては、緊急に要するものは失業対策なり、あるいは住宅対策なり、あるいは生活扶助なり、医療扶助なり、そういう社会保障的なものは、緊急を要するものはこれはどうしても私は計上しなければならないと思うのです。それを暫定予算の名に隠れて、これを組み込まないでいるのですが、鳩山内閣は実は吉田内閣の政策を批判して、吉田内閣のような政策ではいけないのだ。そうしてたくさんの公約をやったのでありますから、その片鱗くらいは、この暫定予算に現われてもいいと思うのです。暫定予算というものは、これは政策的なものは、盛り込めないのだ、こういう議論は私はこれは成り立たないと思うのです。政策的でない予算なんというものはありっこないものなんで、程度の問題なんです。それを暫定予算は政策的なものを盛り込めないという名に隠れて、何ら一つ吉田内閣の政策に批判的な立場にある鳩山内閣のこの政策というものが片鱗だに現われていない。まるでこれでは吉田内閣の政策をただ継承したにすぎない。特に国民生活安定の面に何ら考慮をされておらない。この二点がこの予算の性格としてわれわれが根本的に容認できない点であります。  なお最後に、もう一つ賛成できない点は、前の国会で問題になりましたあの造船疑獄事件を起しました外航船舶建造利子補給の予算が出ております。暫定予算に出ておりますが、これは一応利子補給をしなければならないものとしても、これには前提条件があったはずでありまして、実はこれまでのような日本の海運政策というものは根本的に間違いである、あれは変えなければならないという前提に立っているわけでありますが、依然として海運政策については根本的な刷新を、していない。従来のままの機構で、そうして漫然と利子補給を計上しているということは許されがたいことだと思う。そういう意味でも、私は金額は多くはありませんが、その性質からいって、このような私は利子補給を認めることは絶対にできない。そういう意味でこの予算案に反対いたすわけであります。
  196. 深川タマヱ

    深川タマヱ君 私は日本民主党を代表いたしまして、ただいま議題となりました暫定予算三案に対しまして、政府原案に賛成いたすものでございます。  本案は御承知の通り、過般の総選挙のため年間予算を三月中に成立せしむることが困難なる事情にかんがみまして、四月、五月中の国政運用のため必要やむを得ぬ最小限度の経常的経費を計上いたしてあります。その内容を検討いたしましても、原則として新規な政策的な諸経費や、新規事業に伴う経費の計上はいたしてございません。しかし生活保護費におきまして二カ月分のところを三カ月分を計上いたしたり、失業対策費におきましても一日の吸収人員を、二十九年度予算におきましては十七万人でございましたものを、最近の事情を勘案いたしまして二万人増しの十九万人にいたしたことや、保険金給付実人員を、二十九年度予算の月平均十九万四千人を五十万三千人に予定いたすなど、社会保障的経費につきましては慎重かつ細心の工夫が講ぜられております。また地方交付税交付金や義務教育国庫負担金を、二カ月分のところを、第一・四半期分を計上いたしまして、地方財政の経理に差しつかえなきを期したり、公共事業関係費の直轄事業につきましても、季節的見地から東北、北陸等の寒冷地帯には、当該期間に特に事業の促進をはかりますため、前年度予算の四分の一の経費を計上いたします等、技術的に格別なる考慮が払われております。私どもはすみやかに日本民主党公約せる政策を織り込んだ年間予算案を提出されますことを強く要望いたしますとともに、本暫定予算は四月、五月をまかないますのに必要やむを得ぬものと存じまして、政府原案に賛成いたすものでございます。(拍手)
  197. 八木幸吉

    ○八木幸吉君 私はただいま議題となりました昭和三十年度暫定予算に反対するものであります。  その理由は、私は自衛隊は憲法第九条に違反するものと信じますがゆえに、自衛隊に関する費用を含んでおりまする本予算案には遺憾ながら賛成することができないのであります。しかしながら、わが国が独立国として自衛戦力を持つことは当然でありまして、その機会の一日もすみやかに来たらんことを希望するものであります。現内閣が今回の総選挙におきまして、自衛戦力が必要であるという、従ってこれを持つためには憲法の改正が必要であるということを選挙の題目として国民に訴えるにきわめて消極的な態度であったということは、非常に私は遺憾に存じておるものであります。今後政府におきましては、国民の間に、独立国として自衛戦力を持つ必要があり、そのためには少くとも憲法第九条は改正しなければならぬ、こういう啓蒙運動をきわめて積極的に行われんことを切に希望をするものであります。しこうして憲法改正の結果、自衛隊が現在のような日陰者の立場から、正々堂々と国軍の本務に徹して、その士気が高揚せられんことを希望するものであります。同時に政府におきましても、自衛隊の問題が出るごとに、きわめて苦しい説明や弁解や、ときには論弁を弄せられるようなことがなく、自衛隊に関する予算にいたしましても、正々堂々と国会要求をされ、それが妥当なものであるならば、われわれも喜んでこれに賛成をする日の一日もすみやかならんことを希望いたしまして、私の反対討論を終るものであります。
  198. 館哲二

    委員長館哲二君) 以上をもちまして討論は終結いたしました。  これより採決に入ります。昭和三十年度一般会計暫定予算昭和三十年度特別会計暫定予算昭和三十年度政府関係機関暫定予算を一括して採決いたします。三葉に賛成の諸君の起立を求めます。   〔賛成者起立〕
  199. 館哲二

    委員長館哲二君) 起立多数と認めます。よって三案は可決すべきものと決定いたしました。  なお本会議における委員長の口頭報告の内容等につきましては、委員長に御一任々願います。  次に賛成の方には順次御署名を願います。
  200. 館哲二

    委員長館哲二君) 御署名漏れはございませんか——ないと認めます。  本日はこれをもって散会いたします。   午後四時五十四分散会