○小林英三君 ただいま議題となりましたる八つの法案につきまして、社会労働委員会におきまする審議の経過並びに結果について御
報告を申し上げたいと思います。
まず、
あん摩師、
はり師、きゆう師及び
柔道整復師法の一部を
改正する
法律案につきまして申し上げます。
現在、
あん摩師、
はり師、きゆう師及び柔道整復師以外には、何人も医業類似行為を業としてはならないことになっておりますが、
昭和二十二年十二月、
あん摩師、
はり師、きゆう師及び
柔道整復師法の公布の際におきまして、引き続き三カ月以上医業類似行為を業としていた者で、同法施行後三カ月以内に一定の事項を届け出た者に対してのみ経過的
措置といたしまして、
昭和三十年十二月三十一日まで、当該医業類似行為を業とすることが認められているのであります。今回の
改正は、この経過
措置が本年末をもちまして打ち切られることになっておりまするので、これに対する
措置を講ずることを目的としておるのであります。
本案による
改正のおもなる点は、従来、医業類似行為の一種として取り扱われて参っておりまする指圧は、これをあん摩に含まれるものといたしますとともに、現在医業類似行為を行うことを本年末まで認められておりますいわゆる既存業者に対しまして、期限を三カ年延長し、同時にその間に
あん摩師試験の受験資格を認めまして、これに合格したときには、
あん摩師の免許を受けることができるということになっているのでございます。
以上がこの法案の要旨でありまするが、本案の審議に当りまして参考人を招致いたしまして意見を聴取し、各委員よりきわめて熱心なる質疑が行われたのでありまするが、その詳細は速記録によって御了承願いたいと存じます。
かくて質疑を終了し討論に入りましたところ、榊原委員より、本案に関する付帯決議を付すべき旨の
動議が提出されましたが、その案は次の
通りであります。
医業類似行為に関しては、
政府はその業態を把握、検討の上左
記事項に関し適当なる
措置を講ずべきである。
記
一、第十九条第一項の規定による、届出をした既存業者であって本法に認められないものについては、猶予期間中に充分な指導を行い、
国民保健上弊害のないものにつき将来適当な
措置を講ずること。
二、
あん摩師等のうち、身体障害者については、本法運営に関し特別な考慮を払うこと。
三、所謂、無免許あん摩、その他の無免許営業者に対しては、厳重なる取締を励行し、その根絶を期すること。
右決議する。
これが附帯決議でございます。
討論を終了いたしまして、まず原案について採決を行いましたが、全会一致をもちまして原案
通り可決すべきものと決定いたしました。
次いで、付帯
決議案につきまして採決を行いました結果、これまた全会一致をもちまして本委員会の決議とすることに決定いたしました次第であります。
次に、
日雇労働者健康保険法の一部を
改正する
法律案につきまして申し上げます。
日雇労働者健康保険の給付内容は、健康保険及びその他の疾病保険に比較いたしまして、はなはだ不十分でありますので、主としてこの給付内容の改善をはかりまするために、今回
法律改正をいたそうとするものであります。
改正点の第一は、療養の給付期間を現行六カ月から一年に延長することでございます。第二は、療養の給付範囲を
拡張いたしまして、歯科診療における補てつを含むものとすることであります。第三は、死亡及び分べんに関する現金給付を創設することでございます。第四は、被扶養者の範囲を
拡大いたしまして、被保険者と同一の世帯に属する三親等内の親族で、主としてその者により生計を維持するものを含めることでございます。
以上が
改正法律案の概要でありまするが、衆議院におきまして、次の二点について修正が行われたのであります。
すなわちその一つは、本制度による給付の受給条件といたしまして、二カ月間に二十八日の保険料の払い込みが必要となっておりますものを二カ月に二十八日、または六カ月に七十八日のいずれかに該当すればこれを認めることとして、受給条件の緩和をはかったことでございます。
第二は、本法の施行期日を公布の日に改めたことであります。
委員会におきましては、まず本法案の提案理由並びに衆議院におきまする修正点につきまして、
政府当局及び修正案提案者の八木衆議院議員から、それぞれ詳細な
説明を聴取し、慎重審議の結果、討論に移りましたところ、
吉田委員より、「今回の
改正ははなはだ不十分であるが、一歩前進と認める、将来の改善を期待して原案に賛成する」旨が述べられたのであります。
かくて討論を終局いたしまして、採決いたしました結果、全会一致をもちまして原案
通り可決すべきものと決定いたした次第であります。
次に、
労働者災害補償保険法の一部を
改正する
法律案につきまして、御
報告をいたします。
まず、法案の内容について申し上げますると、
改正点の第一は、総トン数五トン以上三十トン未満の漁船による水産動植物の採捕の事業を、本保険法の強制適用事業に加えることにいたし、その結果、業務災害を受けた労働者に対する使用者の補償費負担を分散軽減し、当該労働者に対して容易に補償が行われ得るようはかったことであります。なお、この
改正に
関連し、沈没、滅失、行方不明等になりました船舶に乗り組んでおりました労働者の生死が、三カ月以上わからない場合等に死亡の推定を行い、遺族補償費及び葬祭料の支給に関する規定を適用し、航空機の場合にも、これを準用することにいたしたのであります。
改正点の第二は、土木及び建築等の事業に関しまして保険料率のメリット制を適用し、保険給付の額と確定保険料の額との割合が百分の八十五をこえ、または百分の七十五以下であるときには、主務大臣は確定保険料、額を百分の二十の範囲内において命令で定める率だけ
改訂し、その差額を追徴または還付し得るよう改めたことであります。他の事業に関しましては別の方法でメリット制度が行われておりまするが、その性質上有期的事業には適用できなかったので、今回ただいま申し上げたような方法で、災害増加の傾向にある土木建築等の事業にメリット制度を適用し、保険料負担の公平と災害防止をはかったのであります。
改正点の第三は、事業が数次の請負によって行われる場合は、元請負人のみを保険の適用事業の事業主としていた現行法を改め、元請負人が下請負人と書面による契約で保険料の納付を引き受けさせることとした場合には、元請負人が申請し
政府がこれを
承認することによって、その請負事業について下請負人を保険の適用事業の事業主といたしたことであります。
以上のほか、強制適用事業が任意適用事業になった場合の取扱い、保険料の
報告及び納付の
手続、追徴金及び延滞金の徴収免除等、保険運営の合理化と規定の整備のために必要な
改正を行なっておるのであります。
本法案は、去る七月十四日衆議院より送付され、社会労働委員会に付託されたのでありまするが、委員会におきましては慎重に審議が行われました結果、七月二十七日採決を行い、全会一致をもって原案
通り可決いたしたのであります。
次に、
失業保険法の一部を
改正する
法律案につきまして、御
報告を申し上げます。
本案は、
昭和二十二年第一回
国会におきまして制定されましたる
失業保険法が、その後数回にわたる
改正によりまして逐次制度の整備拡充が行われたのでありまするが、最近における深刻な失業情勢にかんがみましてこの際さらに
改正の必要ありとして、去る五月二十六日内閣より提出されたものであります。
今次
改正の主眼点は、第一に、被保険者の当然適用の範囲を、医療看護その他の保健衛生事業、更生保護事業に対しまして新たに
拡大すること、第二に、長期被保険者に対する失業保険金の給付日数を二百七十日または二百十日とする一方、季節労働者を主体とする短期被保険者に対する給付日数を九十日といたし、一律百八十日の給付制度から生ずる不合理性を是正すること、第三に、被保険者資格の取得並びに喪失について
政府の確認の制度を設け、権利の保護とともに不正受給の防止等をはかろうとすること、第四に、福祉増進のための必要な施設を設置するための明確なる規定を設けること、等であります。
本委員会は、七月二十六日
政府より提案理由の
説明を聴取いたし、二十七、二十八の両日にわたって慎重審議を重ねました結果、質疑を終了いたしました。
その間、本案の内容そのものが一般勤労者にとって少からぬ影響を及ぼすものでありまするだけに、現行法との間の利害得失等の問題をめぐりまして、種々真剣なる質疑がかわされたのでありますが、詳しくは速記録によりまして御了承を願いたいと思います。
次いで討論に入り、竹中委員、相馬委員、長谷部委員から、それぞれ会派を代表いたしまして、本案が勤労者にとって不利益をもたらす
改正であるという理由で、
反対討論が述べられました。
かくいたしまして採決に入りましたところ、
政府原案
通り多数をもちまして可決すべきものと決定いたした次第でございます。
次に、
戦傷病者戦没者遺族等援護法の一部を
改正する
法律案並びに未
帰還者留守家族等援護法の一部を
改正する
法律案につきまして申し上げたいと思います。
まず、
戦傷病者戦没者遺族等援護法の一部を
改正する
法律案の概要を御
説明申し上げます。
戦傷病者戦没者遺族等援護法による援護の
措置をさらに強化するために、今回この
法律の一部を
改正しようとするものでありまして、
改正の第一は、先順位者の遺族年金額を、恩給法の
改正による旧軍人の公務扶助料の増額に対応いたしまして、二万八千二百六十五円に引き上げることであります。第二は、太平洋
戦争中の戦地で受傷、罹病した者が、戦地勤務中死亡した場合、または戦地の勤務を離れてから、原則として一年以内に死亡した場合におきましては、公務以外の事由で死亡したことが明らかであるものを除きまして、援護審査会の議決により、公務上死亡したものとして取り扱おうとするものであります。
第三は、現在弔慰金を支給する遺族の範囲は、配偶者、子、父母、孫、祖父母及び兄弟姉妹に限られておりまするが、弔慰金支給の趣旨にかんがみ、これらの遺族がないときは、他の三親等内の親族で戦没者と生計関係を有していた者にも支給し得るようにいたそうとするものであります。
第四は、軍人恩給が停止された日、すなわち
昭和二十一年二月一日以後に遺族以外の者の養子となったもので、遺族援護法公布の日、すなわち
昭和二十七年四月三十日前に縁組を解消したものにつきましては、右の期間における縁組をもって年金の失格あるいは失権の事由とすることは必ずしも適当でないと考え、この
改正法の施行後におきまして、遺族年金を支給しようとするものであります。
第五は、いわゆる雇用人等の軍属につきましては、従来
昭和十六年十二月八日以後における戦地勤務の者のみにつきまして本法を適用しておりましたが、日華事変中、事変地で勤務していた者も本法の対象に加え、それぞれの規定に従い障害年金、障害一時金または遺族年金を支給することにいたしてあるのであります。
第六は、軍人につきましては、死亡の原因が公務によるものでない場合においても、事変または
戦争の勤務に
関連する傷病によるものであるときは、遺族に対し弔慰金を支給することになっているのでありますが、太平洋
戦争における戦地勤務の軍属についても軍人の場合と同様、弔慰金を支給する
措置を講じたのであります。
第七は、太平洋
戦争の終結に際して、敗戦の責を痛感して自決した者が相当あるのでありまするがこれらの者に対し、援護審査会におきまして公務死亡とみなすべきものと決定したときは、その遺族に対し遺族年金及び弔慰金を支給することにいたしたのであります。このほかこれらの
措置に伴う所要の調整もあわせて行なっているのであります。以上が
政府原案の提案理由及びその大要であります。
この
法律案に対しましては、衆議院におきまして、次の諸点について修正が行われたのであります。すなわち第一は遺族年金額を
政府案の二万八千二百六十五円から三万五千二百四十五円に増額したこと。第二は、軍人及び準軍人につきましては、故意または重大な過失によるもの以外の死亡を公務死とみなし、また軍属につきましては、戦時災害の要件をはずして公務死の範囲を
拡大したこと。第三は、満州開拓青年義勇隊の隊員に対しましても弔慰金を支給することにいたしたこと。第四は、養子でなくなった者の遺族年金の受給権復活の範囲を
拡大したこと。第五は、戦犯として拘禁中死亡した者につきましての遺族年金、弔慰金の支給を
適正化したこと、等であります。
次に未
帰還者留守家族等援護法の一部を
改正する
法律案の大要を御
説明申し上げたいと思います。
今回
改正しようとする第一点は、留守家族手当の月額を本年十月分から二千三百五十五円に増額することでございます。すなわち従来から未帰還者の留守家族に毎月支給しておりまする留守家族手当の年額と、戦傷病者、戦没者遺家族等援護法の規定に基く先順位者たる遺族に支給する遺族年金の額とは同額を支給することになっておりますので、今回遺族年金の額が本年十月一日から増額されるのに伴いまして、留守家族手当についてもこれを増額いたそうとするものであります。
改正の第二点は、帰還患者に対する療養の給付期間を三年間延長することであります。すなわち未
帰還者留守家族等援護法の施行前に帰還した人々であって、旧来復員者給与法または旧特別未帰還者給与法により国が療養の給付を行なって参りました者につきましては、この未
帰還者留守家族等援護法の制定後は、この
法律により引き続き療養の給付を行なってきたのでありますが、法に定められました七年間の療養の給付期間が本年十二月二十八日で満了することになりますので、今回この期間をさらに三年間延長いたそうとするものでございます。
以上がこの
法律案の大要でありますが、本法案は衆議院におきまして、次の諸点について修正の上議決されたのであります。すなわち衆議院におきまする修正のおもなる点は、その第一は留守家族手当の月額を、
昭和三十年十月分から
昭和三十一年六月分までは二千五百八十三円、
昭和三十一年七月分以降は二千九百三十七円としたこと。その第二は留守家族手当または特別手当の額に相当する額の手当を、生還の場合は三カ月間、未帰還者の死亡の事実が判明した場合におきましては六カ月間、それぞれ延長支給することといたしたこと、等でございます。
委員会におきましては、両法案につきまして、その提案理由並びに衆議院における修正の要旨に関し、
政府当局及び修正案提案者衆議院議員山下春江君等から、それぞれ
説明を聴取しました後、両法案を一括して審議いたし、種々熱心な質疑が行われたのでありますが、特に「公務死の範囲」及び衆議院の修正点たる「故意又は重大なる過失」の
解釈が中心の問題となったのであります。
かくて質疑を打ち切り、両法案とも討論を省略いたしまして、それぞれ採決いたしました結果、両法案ともに全会一致をもちまして原案
通り可決すべきものと決定いたした次第でございます。
次に
理容師美容師法の一部を
改正する
法律案につきまして申し上げます。
近時理容所、美容所の増加並びにこれらの施設における従業者の漸増に伴いまして、施設に対する衛生
措置の確保並びに開設者の業務管理が必要となりましたので、現行法を
改正整備することになったのであります。
改正の第一点は、理容所、美容所の開設者がその施設を使用するに際しましては、事前に都道府県知事の検査を受け、その確認を得なければならないこととしたことであります。第二点は理容所、美容所の開設者に対し当該施設内で行う理容、美容の業務につきまして適正な管理を行わせるようにするとともに、その
責任を明らかにするようにいたしたことであります。第三点は都道府県知事が免許取り消し業務停止または閉鎖命令の行政処分をするに当りましては、その処分を受ける者に弁明または有利な証拠の提出の機会を与えることといたしたことでございます。
本案につきましては、熱心なる質疑を行い、討論を省略いたしまして採決いたしました結果、二案ともに全会一致をもちまして、原案
通り可決すべきものと決定いたした次第でございます。次に、
覚せい剤取締法の一部を
改正する
法律案につきまして御
報告を申し上げます。
本案は最近における覚せい剤の乱用による
事態に対応いたしまするがために、今回さらに罰則及び原料の取締りにまで及ぶ
改正を行わんとするものであります。
改正の第一点は、常習として覚せい剤の輸入、所持、製造等の禁止規定に違反した者は麻薬の違反と同程度に罰則を強化したことであります。第二点は覚せい剤の原料を製造、販売、使用または研究しようとする者につきましては、厚生大臣または知事の指定を要することといたし、正規の業者に対する制約をできるだけ少くするよう
措置するとともに、もっぱら原料が覚せい剤の密造者に渡らないよう
措置したことであります。
本案につきましては、熱心なる質疑を行い、討論を省略いたしまして、採決の結果、全会一致をもちまして原案
通り可決すべきものと決定いたした次第であります。
以上御
報告申し上げます。(
拍手)