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1955-06-08 第22回国会 参議院 本会議 第21号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和三十年六月八日(水曜日)    午前十一時七分開議     ━━━━━━━━━━━━━  議事日程 第二十一号   昭和三十年六月八日    午前十時開議  第一 過度経済力集中排除法等を廃止する法律案内閣提出)(委員長報告)     ━━━━━━━━━━━━━
  2. 河井彌八

    議長河井彌八君) 諸般の報告は、朗読を省略いたします。      ——————————
  3. 河井彌八

    議長河井彌八君) これより本日の会議を開きます。  五月二十六日、内閣総理大臣から、飼料需給安定審議会委員藤野繁雄君、田中啓一君、飯島連次郎君の任期満了に伴う後任者を指名されたいとの申し出がございました。  つきましては、この際、日程に追加して、同委員補欠選挙を行いたいと存じますが、御異議ございませんか。    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  4. 河井彌八

    議長河井彌八君) 御異議ないと認めます。
  5. 松岡平市

    松岡平市君 ただいまの選挙は、その手続を省略いたしまして、議長において指名せられんことの動議を提出いたします。
  6. 加賀山之雄

    ○加賀山之雄君 私は、ただいまの松岡平市君の動議に賛成をいたします。
  7. 河井彌八

    議長河井彌八君) 松岡君の動議に御異議ございませんか。    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  8. 河井彌八

    議長河井彌八君) 御異議ないと認めます。  よって議長は、飼料需給安定審議会委員藤野繁雄君、田中啓一君、飯島連次郎君を指名いたします。(拍手)      ——————————
  9. 竹中勝男

    竹中勝男君 私はこの際、健康保険法一部改正に関する緊急質問動議を提出いたします。
  10. 戸叶武

    ○戸叶武君 私は、ただいまの竹中君の動議に賛成いたします。
  11. 河井彌八

    議長河井彌八君) 竹中君の動議に御異議ございませんか。    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  12. 河井彌八

    議長河井彌八君) 御異議ないと認めます。よってこれより発言を許します。竹中勝男君。    〔竹中勝男登壇拍手
  13. 竹中勝男

    竹中勝男君 私は、日本社会党を代表しまして、現在の政府を構成している民主党がその重要な基本政策として、過ぐる総選挙を通じて国民公約しました社会保障強化充実の方策に関し、今般提出されております健康保険法の一部改正法案に関連して質疑を行います。  まず鳩山総理にお尋ねいたします。総理は、社会保障ということをどのように理解されておられますか。そうしてこの社会保障に関する政府政策が三十年度予算を通してどのように充実強化されているとお考えですか。これは民主党の重要な基本政策一つ考えますからして、総理みずから明確な御答弁をお願いいたします。その答弁を一そう明白に伺えるために、さらにこれを次のようにお尋ねいたします。  去る六月二日、参議院社会労働委員会で、私は川崎厚生大臣に次のようにお尋ねしました。「健康保険法わが国社会保障制度の根幹をなすものであり、すでに三十年の歴史を持ち、数百万の勤労者がこれに関与するところの重要な法律でありますが、従って今般の改正は、きわめて重要な意味を持っておると考えます。そこでその改正は、単なる健康保険赤字穴埋めのためのものであってはならない。すなわちその充実強化のための改正でなければならないと考えております。しかるに、この改正案について政府が説明しておるところによっても明らかな通り、この改正は、健康保険赤字、三十年度末に出るところの赤字百億円のうち、その約三十億円の赤字をこの改正によって、すなわち保険料率の引き上げ、標準報酬等級改正すること、保険給付を受ける被保険者扶養家族制限をなすこと、離職者への医療給付制限をすること、こういうことによって赤字を解消してゆこうとするものでありまして、これは明らかに社会保障であるところの健康保険充実するものでも前進せしめるものでもなく、むしろ縮小し後退せしめるものではないか」という私の質問に対しまして川崎厚生大臣は大体これを認められて、次のように答えたのであります。「社会保障費は三十年度一千億円に上り、前年度より増加はしておるが、実質的には赤字補てんのために社会補障そのものの充実にはなっていない、これによって社会保障後退をこの程度に食いとめたのであって、これについては国民に対する公約の手前、民主党内にも異論があって満足するものでない」という返事をされたのであります。社会保障制度についてこのように一個の見識を持ったところの有能な厚生大臣が、こういうように率直に良心的な見解を述べられたのでありますが、総理はこれを認められますか。これを認め、これを肯定されるならば、この社会保障充実強化公約に期待して民主党に票を投じたところの国民に対し、この機会をよい機会だとお考えになって、この議場を通して国民釈明し、また公約違反国民陳謝されるお考えがないかどうかを伺います。  次に、川崎厚生大臣にお尋ねします。健康保険は、さきにも申した通りに、きわめて重要な社会保障の支柱をなすものでありまして、わが国勤労大衆生活に対してはもとより、事業主資本家経営者にとっても重大な関係を持つ法律でありますから、その改正には最も慎重を期さなければないと考えます。しかるに、厚生大臣内閣諮問機関である社会保険審議会社会保障審議会がいずれもこの改正案反対の答申をなしたにもかかわらず、大臣は、新たに個人的に委嘱した七人の諮問機関にこれを諮って、この改正案を提出しておられるのであります。この内閣諮問機関であるところの両審議会をこのように無視し、あるいは軽視し、軽くみて、個人的な諮問機関意見を尊重したところの理由を伺いたいのであります。  第二の点は、この改正案が目ざす赤字補てん策は、決して健康保険そのものが持つところの欠陥の抜本的な改正ではありません。健康保険赤字原因は、わが国健康保険対象であるところの被保険者勤労大衆罹病率が非常に高いこと、ことに結核罹病率が高いという特殊な性質に基くものでありまして、従ってその赤字は、健康保険を管理運営する政府の誤算と、保険料徴収の無能力、さらに根本的には健康保険国民健康保険結核対策などに対する国庫負担部分の過少に基くものであると考えております。従ってこの赤字穴埋めを被保険者であるところの勤労大衆事業主に押しつけるということは非常な見当違いであり、不合理であると私ども考えざるを得ないのであります。これが現在、日本労働組合を初め勤労大衆事業主も、強くこの改正案反対しておる理由でありますが、厚生大臣は、このような国民の強い反対に対しても、この改正案をどこまでも押し通すつもりでありますか。あるいはこれを撤回し、さらに根本的、恒久的な改正にとりかかられる意思はないのでありますか。  この点に関連して質問の第三は、このような重大な改正は、他の各種の社会保険年金制度共済組合社会扶助制度などとの関係を調整してゆかなければならないし、また国の経済財政政策との一定の関係に立ってなされなければならないのでありますから、大臣はかねての抱負である、またわれわれが多年希望しておるところの社会保障企画庁とでもいうような行政機関を作って、現在各省に分散し、不均衡であり、凹凸のあるところの基準を持ち、繁雑な機関手続や、そのための経費を合理化し、わが国社会保障制度一つ一貫性総合性、あるいは計画性能率性を持たすような、こういう企画庁を作られるところのお考えはないかということを伺いたいのであります。  次に、これとは関係が直接ありませんが、緊急性を持っておりますので質問いたしたいのでありますが、近頃東京都内でも小学生赤痢予防注射で発熱して問題を起しております。この点は委員会でもまだ質問を尽さないにもかかわらず、また昨日は、三重県で四百人の学童がチフスの予防注射を受けて、そのうち三百数十名が発熱嘔吐のために騒いでおります。こういうふうにわが国公衆衛生保健行政の上にゆゆしき問題が起っておるのに対して、厚生大臣はどのように対処されるお考えでありますか。どうも鳩山内閣のもとでは、国鉄の連絡船がひっくり返ったり、小学校の生徒に注射で病人が出たり、小学生が、大へん鳩山総理のもとでは困っておるような状態でありますが、しかし、その原因一つが、いろいろ原因がありましょうが、これは国民生活が不安である、国民が常に窮乏と生活の不安にさらされておるために、その仕事に専念できないような状態からくるものであると私は考えております。一つ原因がたしかにそこにあります。すなわち最低生活保障がない、疾病や老齢や失業のときに対する社会保障制度がきわめて不備なことが、この国民仕事に熱心に忠実にやれない原因になっておると思うのでありますからして、そこで最後に一萬田大蔵大臣にお尋ねしたいのであります。  一体社会保障費性質は、大臣はどういうようにお考えになりますか。社会保障費は単なる救済費保護費ではないのであります。社会保障費はその本質において、日本のような弱小な日本個別資本がその負担にたえないところの労働賃金を、総資本としての国が補給し、これによって労働者生活を安定し、労働力を永続的に再生産していく一つの生産政策的の意味をはっきり持っておると私ども考えております。こういう観点に立って、同じ敗戦国であるところの西ドイツは、国家財政の三〇%を社会保障費に支出しておるのであります。これに比較して、わが国社会保障費はわずかに一割にすぎないことは過小であると思われませんか。社会保障費に対する国庫負担部分を思い切って増額するところの考えはありませんか。一体大蔵大臣は、どれほどの社会保障費が、日本経済現実に即して国が負担し得るところの妥当な率であるとお考えになりますか。  以上、きわめて大まかな点についてでありますが、こまかいことにつきましては委員会で御質問いたしますので、こういう点についてはっきりしたところの御答弁をお願いします。(拍手)    〔国務大臣鳩山一郎登壇拍手
  14. 鳩山一郎

    国務大臣鳩山一郎君) 竹中さんの御質問に対して、お答えをいたします。  社会保障充実強化について、どういうことを考えているかというような御質問でございました。社会保障充実強化は、結局まず国民生活の安定の基礎を作るということが必要だと思います。国民生活の安定の基礎については、住宅問題の解決をしなくてはならないと思います。この解決とともに、国民疾病、あるいは失業、あるいは貧困から守るために、疾病保険制度、あるいは失業保険制度年金制度というものを充実していきたいと考えております。  その他の御質問につきましては、川崎君から答弁をしてもらいます。    〔国務大臣川崎秀二登壇拍手
  15. 川崎秀二

    国務大臣川崎秀二君) 竹中議員の御質問に対しまして、お答えを申し上げます。  社会保障制度強化充実ということは、今回の総選挙におきます民主党公約のうち、最も重要なものであったことは間違いがありません。従いまして、今回の予算編成に当りましても、社会保障強化ということが、予算編成の大網の中におきまして、失業対策中心とする社会保障ということが書かれておりまして、社会保険というものに対して十分な配慮が当初になかったものでありますから、閣内におきましても、社会保険強化ということを失業対策以上に考えてもらわなければ困るということを申しまして、予算編成途上におきましては、これがだいぶ修正をされて、健康保険を初めとする赤字対策その他につきまして格段の措置をとるに至ったのであります。従いまして、そういう経緯では参っておりますが、御指摘通り社会保障が今回の政策において、非常に充実をし、強化をしたということは、私個人としては良心的にはこれは申せないのであります。(「後退してる」と呼ぶ者あり)ただ、これが後退をしたというようなことは、むしろ編成途上にきまして、健康保険赤字の半額を国庫負担をするという形になりました以上は、その意味において少くとも後退することを食いとめたということは言い切れると思うのであります。  健康保険は、御承知通り昭和二十八年の暮以来、非常な赤字が激増しておりまして、その当時衆参両議員の中におきましても、社会保険先覚者たちはしきりに、二十九年中に非常に赤字になるのだということを警告をされておったのであります。それにもかかわらず、政府はそのままこの対策をじんぜん日を過ごして参った関係で、私がこれを受け継ぎましたときには、すでに四十一億の赤字が二十九年度の夫に出るという有様でありまして、これでは国の社会保障を背負っていきます厚生大臣としては、とうてい前途を乗り切ることができず、国会における真剣な質疑応答にもこたえることがきませんので、責任ある立場として、とりあえず二十九年度の赤字というものに対しては処理をし、三十年度全体を見渡しての応急の措置を講ずることといたしたのが、今回の健保の改正並びに国庫負担の実現となって現われて参ったのであります。  そこで、世上にいろいろ御批判がありまして、ことに社会保障制度審議会並びに社会保険審議会労使が非常に反対であることも十分承知をいたしておりますが、従って審議会にかけました案は、国会にかけます前に、標準報酬のワクについては政府も物価その他の関係からいたしまして相当反省をする必要があると思いましたので、七万円の頭打ちを四万八千円に改めて提案をいたした次第であります。もとより社会保障制度審議会は、労使は非常に猛烈に反対をされておりますが、学識経験者並びに中立の方々の中には、政府の案を多少修正するならば、今日の健康保険財政というものに対しては、やはり国が一部負担する以上は被保険者も一部これを負担すべきが当然であるということを積極的に言っておられる方も相当にありまして、その意見を十分に尊重して、今回かような改正案提案となったのであります。  また七人委員会意見を聞いてやったのではないかということでありますが、これは七人委員会の方は恒久策を私が諮問をいたしておりますので、今回の改正案予算編成途上におきまして、すでに責任を持って解決をいたしたものでありますから、決して七人委員会にかけて社会保障制度審議会を無視したというようなことはございませんから、この点は十分に御了承願いたいと思うのであります。  次に、社会保険統合整備をするために、社会保障企画庁を新設する意思はないか。これは御指摘のことは、すでに内閣の内部におきましても原則的に了承を得ておりまして、その具体化につきましては、三十一年度予算の前提となるときに、これを具現化しようと思っております、従いまして、この社会保険統合強化をいたします際に、いろいろな統計その他の必要から、各省から人材を出しまして、なるべく行政機構がふくれあがるという形で社会保障企画庁を設けることなしに、各省から人を出してもらいまして企画庁を作りたい、こういう構想を今日は持っております。  なお最後に、最近東京都下その他におきまして、赤痢ワクチン注射のために非常に遺憾な事態が起っておりますことを御指摘されましたが、私も非常に遺憾に思いまして、直ちにその原因究明をいたしておりますが、東京都下の方は、今日ではあの事件の起りました翌々日には、高熱患者はほとんどなくなりまして、今日では健康な状態にすべてもどっておるようであります。なお、その原因につきましては、ワクチンについて不良な品物があったのではないかという疑義が相当にありますので、今日これが徹底的な究明方途を講じておるような次第であります。    〔国務大臣萬田尚登登壇
  16. 一萬田尚登

    国務大臣(一萬田尚登君) 社会は連体でありますから、政府といたしましても生活困窮者に対しまして、最低限度生活保障するに遺憾なきを期するようにいたさなくてはならぬことは、私も全くその通りと思うのであります。同時にまた、このことが単に保護救済に終らずして、労働の再生産といいますか、この勤労者の場合には、自立更生というそういう役目が果せるような適切な指導をして参らなければならぬと考えております。こういうような見地に立ちまして、実は三十年度の予算におきましても、私としては約五十億円ばかり増額しまして、全部で社会保障が千六億ぐらいになっておると思いますが、できるだけそういう精神を織り込んだつもりをいたしておるわけであります。  なお、この財政上に社会保障費がどういう程度占むべきかというお尋ねがあったのでありますが、これはそのときと申しますか、社会情勢国柄等によりまして、どういうふうのがいいかということは、これは原則的には申し上げかねると思います。日本社会保障財政における推移を見ますと、たとえば昭和九年において二%、二十五年において七%、これが三十年度において一二%にはなっておるのであります。なお、イギリスの最近のところでは一八%、これはしかしこういうことは財政上に占むる地位、割合だけでいろいろと考えることも当らないので、それはそのときにおける経済情勢が一体どうであるのかということが大きな影響を与えますから、しかし財政上においても日本というような国は、人口が多くて、貧弱な資源しかないのでありますから、私は自然社会保障費というものが、今後財政上において占むる地位が大きくなるのもやむを得ないだろう。従いましてこの財源をいかに調達するかということに、今後大きな思いをいたしてゆかなくてはならぬと考えるのでありまして、今後私どもといたしましてもそういう見地に立ちまして、財政上の許す限りにおきまして、社会保障充実に努力する、こういうことも申し上げておきたいと思います。(拍手)    〔竹中勝男発言の許可を求む〕
  17. 河井彌八

    議長河井彌八君) 竹中君、御登壇を願います。    〔竹中勝男登壇
  18. 竹中勝男

    竹中勝男君 鳩山総理にお尋ねいたします。  総理は御病中にあった際には、医者にかかり、それから薬を飲み、あるいは入院をされたと思いますが、ところが日本には今三千万の国民が何ら社会的な医療、すなわち社会保障によるところの医療を受けられないで、その外にありまして、金がないために、病気をしても年寄りは、医者にもかかれず薬も飲めずに、さみしく死んでゆくような状態が全国的に展開されておるのであります。そこで鳩山総理社会保障充実強化と言われるので、こういう人たちは、民主党を信頼し、鳩山総理の言葉を信頼して、民主党を支持したのであると私は考えておりますが、これに対して現在に見るように、つき添い婦の問題にしても、あるいは失業保険の問題にしても、住宅建設にしてもうあらゆる社会保障の面において、形式において一部増大しても、一部が後退して、結局においては社会保障後退しておる。この現実の前に、総理は、私が先ほどお尋ねいたしましたことは、この社会保障公約に対する違反の事実に対して、国民釈明していただきたいというのでありますが、その点について改めて総理にお尋ねし、釈明を要求するところのものでございます。(「陳謝」と呼ぶ者あり)陳謝でも釈明でもよろしい。    〔国務大臣鳩山一郎登壇拍手
  19. 鳩山一郎

    国務大臣鳩山一郎君) 再質問に対してお答えをいたします。  このたびの法案によって健康保険を十分に充実させることができませんでしたことは、まことに遺憾に存じております。これは、長期の計画は、どうしても立てなければならない事態に迫られておりますので、厚生省におきましても、ただいま熱心に検討中であります。  それから三千万人の人で、医療に困る人々には、生活保護法によって、とにかく一応は見ておるわけでございます。(「冗談じゃないよ」「厚生大臣釈明しなさいよ」と呼ぶ者あり、その他発言する者多し)    〔国務大臣川崎秀二登壇
  20. 川崎秀二

    国務大臣川崎秀二君) ただいま健康保険並びに国民健康保険対象にならない大衆が、今日三千万人以上に上っておることは御承知通りであります。これらに対する今後の私ども考え方といたしましては、何と申しましても社会保障中心は、社会保険であり、その社会保険の今日及ばない国民に対しては、国民健康保険をもって次第にこれを充実をさし、しかもなお国民健康保険で手の届かないところに対しては、医療保険を将来百国民保険的なものに改革をする。すなわち今日の段階におきましては、被傭者の保険と、国民一般対象とする国民健康保険に分れておるのでありますが、現在の社会保険統合いたしまして、健康保険の体系に属するものを一本に、国民健康保険を、これは一本でありますが、これを将来においてはやはり統合する機会があるかと思います。その際におきましては、全国民が全部医療機会に恵まれるという状況に立ち至らしめる措置が必要ではないかということを私どもは考慮いたしておるのであります。そして今日の問題につきましては、生活保護法充実その他の措置を講じまして、これをカバーをいたしていきたいというのが、今日の厚生省考え方でございます。      ——————————
  21. 山下義信

    山下義信君 私はこの際、健康保険の危機並びに健康保険法の一部改正案に関する緊急質問動議を提出いたします。
  22. 菊川孝夫

    菊川孝夫君 私は、山下君の動議に賛成いたします。
  23. 河井彌八

    議長河井彌八君) 山下君の動議に御異議ございませんか。    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  24. 河井彌八

    議長河井彌八君) 御異議ないと認めます。よってこれより発言を許します。山下義信君。    〔山下義信登壇拍手
  25. 山下義信

    山下義信君 私は社会党第二控室を代表して、健康保険法改正に関し政府質問いたしたいと存じます。  社会保障制度の前進は、外交方針、防衛問題とともにわが国最大の問題でありますが、前二者のはなばなしさに比して、とかく低調に流れがちであることは常々遺憾に思っておるものでございます。本日は政府も熱心に御答弁を願いたいと存じます。  社会保障の諸問題は、問題が生活に直結しておりますだけに、近時国民の関心が高まってきたことは事実であります。さればこそ各政党は選挙におきまして盛んにこれを公約し、貧困と病苦と生活に泣く多くの国民に一縷の望みを抱かせたのであります。ことに鳩山内閣は、従来の内閣と異なりまして、首相といい、一萬田蔵相といい、声を大にしてこのことを叫んだのであります。健康保険の問題につきましても、われわれに劣らざる政策を掲げたのであります。しかるに今日に至りまして国民の期待を裏切り、これを失望させるということは、政治としてまことに罪が深いと思うのであります。(拍手)  鳩山首相は、外に国際間の平和を求め、うちに友愛福祉政治をやるというのでありますから、私は社会保障政策について、先ず首相の御見解を承わりたいと思うのであります。特にわが国社会保障制度をどの程度まで推し進めていくか、大体の目標をどこに置くか、およそいつまでにそれを実現したいと考えているか、大体のプランを持つことにしてはどうであろうか、こういう点について伺いたいと思うのであります。鳩山内閣は、ことしは失業対策に重点を置いたようでありますが、次は何を中心にやろうという考えであるか。医療保険統合か、国民養老年金の創設か、前者は整備統合でありますが、国民養老年金制度はぜひ手をつけるべきであるとわれわれは考えておりますが、首相の御見解はいかがでありましょうか。それにしましても鳩山内閣政策からいきますというと、明年以降防衛関係費の膨張は避けられないと思いますが、果して大砲とバターと両立し得るとお考えでございましょうか。富める国ですらも、このこと難いのに、貧乏国わが国におきまして、いかにこれを実行し得るというお考えでありましょうか。おそらくバターも乏しくなるのではないでしょうか、耐乏生活をやがて強調するようになるんじゃないでしょうか。それとも、鳩山首相は豆がお好きかわかりませんが、満州産の大豆でとうふやみそ汁には不自由させないという御自信がおありになるでありましょうか。将来の見通しについて、あるいは希望について、これを国民にお示しを願いたいと思うのであります。  さらに社会保障行政改革刷新の必要はないとお考えでしょうか。社会保障省の新設、総合運営の断行についての首相のお考えを、ありますれば、あわせて承わりたいと思います。  次に大蔵大臣に、一萬田さんに伺いますが、蔵相の政界出馬は、志、民生安定にありと伝えられておりまして、従ってあなたは社会保障に意外に御熱心であるということでありますが、その限りにおきましてはけっこうに思います。しかし財政上将来の社会保障関係費について、これをどう考えておいでになりますか、差し当っては明年度のお見通しはどうおつけになっておられましょうか。また医療保険に対してはどう考えられますか。健康保険への国費負担はどうしてもやらぬという御方針でしょうか、国民健康保険の育成方針と健康保険との関係について、大蔵当局には何かの御方針があるのでありましょうか、これは根本問題でありますから、大蔵大臣からお答えが願いたい。  この機会に私は一萬田さんにお尋ねしますが、社会保障関係費の使用について、これを能率化し、これを効率化し、一千億の賞用を年三回回転しますれば、三千億の効果を示すことになるのでありますが、何か御工夫にお持ちになりませんでしょうか。たとえば防衛費と同じように社会保障費のワクを千三百億なりあるいは千五百億にきめて、その内訳を有機的に総合的に、年々の情勢に応じたプランによって、有効適切に運用させるということにしてはどうかと思うのでありますが、今のように各費目がばらばらで、年々、型のごとくに諸経費を要求するというのでは、むだが多いのではないのでしょうか。極力冗費を節約しますれば、健康保険の国費負担も出てくると私は考えますが、蔵相の御所見を伺います。  川崎厚生大臣に対しましては、主管大臣でありますから、具体的にお尋ね申し上げますが、まず赤字対策につきまして、この赤字が出たということは一体たれの責任でありましょうか、これは保険経営者である政府が、その運営よろしきを得ないで、ついに二十九年度に四十億の赤字を出したということなんでしょう。責任を明らかにするということは何ごとでも大切なことであります。しかるに政府赤字原因をもって他にありとなし、今回の改正によって、これを被保険者等に転嫁しようとすることは、大へんな間違いではないかと思うのであります。赤字原因として政府の挙げておる結核治療費の増高は、これは政府みずからその源を作ったのである。病床の増加、入院料の値上げ、抗生物質の使用、療養期間の延長、これは皆政府の施策でありまして、これが影響は二十八年度から、早くから予見し得られたところである。にもかかわらず、政府は今日までいかなる対策をお講じになったのでありましょうか。また一件当り医療費の増加、これはもう去年の二月から顕著に現われまして、ことに三月、四月にかけましては、急カーブで一段と激増し始めたのである。何が故にかくのごとく急激に様相を一変したか、これまたその原因政府にあるのです。昨年の初めから政府は抗生物質の点数値下げの問題、保険収入に対する減税措置の問題、医薬分業の問題等について、ことごとに保険対策を誤まり、政府保険医と、この両者の関係は極度に悪化するばかりでありまして、ついに保険医に異常なる憤激と反感を与え、これが医療費増大にしらずしらず影響を与えたことは察知するにかたくないのであります。しかるに政府はあえて悟ろうとはしないで、頭から彼らを不正医師と見なして、法律改正によってこれを監視し、これを威嚇すれば、医療費が低下すると考えておるのであります。すなわち赤字原因、しかも相当重大なる原因を医師の不正にありとする政府考え方、もしさようであるならば、従来うわさの高い不正診療の実情について、その真相、果してどうであるか、この機会に御発表を願いたいのである。会計検査院は批難事項において全国三千六百四十九施設の中で、五十七カ所の国立療養所等を調査したところが、百一件の不正件数があるということを指摘しておる。月々三百数十万件に上る莫大な件数から推算いたしますと、一年間の不正件数が約四十五万件ということになる、また一方、九万の保険医の全体については、思い半ばに過ぎるものがあることを報告しておる。本年五月、政府全国保険課長会議を開いて、最近の監査の結果では、全例不正といっていいほどであると発言して不正請求の多いことを語っている。また本年初めから厳重なる取り締りをするぞという方針を示しただけで、医療費の支払い高がたちまちにして今年の一月には一億五千万円、二月は一億二千万円の予想減を見たということでありまするが、果して事実かどうか、この際明白にされたいのであります。  次に、受診率の上昇を挙げておりますが、こういうことは決して憂うべき現象ではないのでありまして、政府官掌の被保険者は主として中小企業の従業員であり、それらの従業員が相当健康を害しておるということを示しておるのでありまして、同時に健康保険がいかに彼らの窮状に役立っているかを物語るものでありまして、何ら憂慮の必要のない当然の現象であります。もし受診率の低下を望むというならば、ひとえに労働者生活を向上し、かつ公衆衛生活動を活発に行いまするならば、自然に受診率は低下するのでありまして改正案に見るがごとく、家族の範囲を制限するというようなことは、改悪でこそあれ、何ら赤字の改善にはならないのであります。以上のごとく、赤字の責任は全く政府にあるのでありまして、従って四十億の赤字国庫において負担するのが当然と考えるものでありますが、厚生大臣の御所見はいかがでございましょうか。(拍手赤字の見通しや、これが措置につきまして、いささか不審の点がありますが、これは委員会で伺います。  ただ大蔵大臣に伺いたいのは、赤字に対する長期融資は六十億をやると言いますが、いっこの融資はするのであるか、その辺の手続についてお示しを願いたい。おそらく政府は、今回の改正によって収入の増加をはかり、一方は療養の給付を極力制限することによって支出を抑え、明年度以降は政府負担の必要のないことをひそかに期待しておるのであろうかという疑いがあるから、この際、政府の融資の関係を大蔵大臣から明白にお示しを願いたい。  続いて、なお厚生大臣にお尋ねしますが、保険料の引上げは、デフレ経済下の現在、労働賃金の実質的低下の今日、これに逆行するのはなはだしき暴挙とはお考えになりませんか。労働者に支出の増加をしいることは、労働者の賃金を引き上げる覚悟がなくてはできないのであります。労働者の生計のいかなる点から負担の増加の合理性を発見されましたかう御説明を願いたい。  当面の急務は、健康保険の根本対策をどうするかということであります。赤字処理と同時にこのことが提起されねばならないのであります。政府はこれから検討するという態度でありまして、驚き入った無責任、無責任というよりは無為無能というほかはありません。厚生大臣はその就任を諾するに当りまして、かねてその用意と確信があるべきはずでありまして、殊に尊敬する川崎君でありますから、その御用意があると思いまするので、次の諸点について特に明確なる御答弁を得たいと思います。  一、厚生大臣は、明年度はおよそ百億の国庫負担は実現して見せると言明したということでありますが、果たしてその御方針であるかどうか。二、結核予防法を根本的に改正して、公費負担のあり方を検討し、保険経済との関係解決する考えはないか、ありとすれば、どのように改正しよとするか。三、保険制度を確立する考えはないか。保険医の資格、指定方法、分布方針、処遇の問題、公的性格の与え方、権利義務の明確、生活保障、保護助長の範囲、優良保険医の表彰等、保険運営に心から協力し得るようにすることはきわめて緊要と考えるが、政府の方針はどうであるか。四、医療機関の整備、特に公的医療機関保険運営と密接なる関係がありますが、保険病院等整備計画を積極化し、大施設によって医療コストの低下、医療内容の適正化をはかるということは必要であると考えるが、御意見はどうであるか。五、予防衛生、公衆衛生活動は医療保険と不可分の条件であるが、政府はかえって消極的方針をとって予算も減じておる。不祥事件も今言われたように頻発の傾向がある。これを積極化する考えはないか。六、診療報酬支払制度改正する考えはないか。高価薬を使えば使うほど利益があるという現行制度、繁雑なる請求手続、複雑にして困難なる審査方法、適当でない今の基金制度、これらについて改革意思はないか。七、被保険者の協力は最も重要な問題でありますが、健康保険におきましてもメリット制を取り入れる考えはないか。健康にして無病であった者、あるいは健康管理優秀なる事業場等に対する褒賞制等を考慮する意思はあるか、ないか。八、保険原理は広範なる危険分散を求めております。現下の保険状況におきましては、多々ますます被保険者の適用範囲を拡大いたしまして、たとえば忘れられたる五人以下の従業員およそ三百万、この際これらの新加入をはかるべきであると考えますが、政府の方針はいかがでありましょうか。九、保険運営の能率化は、責任制の確立と運営の民主化によるのほかはないのであります。今日の政府管掌は全く官僚の独善に陥りやすいのでありまして、また責任の明確も期しがたいのであります。あるいは経営と監督の分離等、運営上これを改善するお考えはないのでありますか。  以上、質問の大要でありますが、最後に希望を申し上げておきます。わが国社会保障の現況は、医療保険が六五%を占めて、制度としてはアンバランスであります。しかし、これは医療保険が行き過ぎておるのではないのであって、年金等、いまだ着手せざる部分が多々あるからであります。従って健康保険に多少にても行き過ぎがあって、国力に相応しないなどと誤解して、これが後退をはかりまするならば、せっかくの保障制度はこの一角から総くずれとなりますことは、きわめて明白であります。しこうして国内不安の間隙がこの点に集中し、この盲点をうかごうということは、断じて避けるべきであると存じます。政府、殊に厚生大臣の勇断を望みますとともに、明快なる御所信のほどを伺わんとする次第でございます。  これをもって質問を終ります。(拍手)    〔国務大臣鳩山一郎登壇拍手
  26. 鳩山一郎

    国務大臣鳩山一郎君) 山下君の御質疑に対しまして、一応私からお答えをいたします。  社会保障制度充実せよというお話は、まことにごもっともな話でございまして、できるだけのことはいたしたいと思います。  経済六カ年計画と対応して社会保障の長期計画を立てろというお話についても、もとより賛成でございます。目下長期計画の立案に、準備中でございます。  今年は失業対策を重点にしたが、次には何を中心とするかというお話でありましたが、とにかくまず健康保険制度の根本的な検討をいたしまして、国民健康保険中心とした疾病保険充実をまずはかって行きたいと考えております。  大砲とバターとのお話もありましたが、国民経済充実発展に即応して、もとより防衛力も考えて行かなくてはならない、防衛力の整備充実国民経済充実発展に即応するものでなければならないと思っております。国防力と同様に社会保障制度におきましても、経済六カ年計画と見合いまして、そうしてやはり社会保障制度というものも防衛力と同じように見合って行かなくてはならないと考えております。  他の御質問に対しましては、関係閣僚から答弁をしていただきます。(拍手)    〔国務大臣川崎秀二登壇拍手
  27. 川崎秀二

    国務大臣川崎秀二君) 山下議員の御質問は、かなり広範にわたり、かつ具体的でありましたので、その項目ごとに御答弁を申し上げたいと思います。  まず第一に、健康保険の二十九年度の赤字を全部国庫負担しろ、こういう御質問であったと思うのであります。二十九年度の赤字の四十一億円はすでに発生済みのものでありまするから、国が責任を負うという形は今度とったのであります。もとより定額国庫負担は十億でありまして、御期待に沿うことはできなかったのでありまするけれども、しかしながら、長期融資を行いまして、終局的に国家の財政援助に待ったことになっておりますので、この点御了解を願いたいと思うのであります。なおこのように赤字がふえてきた原因につきましてだんだんの御指摘であったのでありますが大体において山下議員の御指摘と私は同じ考え方を持っておりまして、ことに、このように赤字が出てきたことは、医療機関が非常に多くなったため、国民が早期治療ということに目覚めて早く医者にかかるという考え方がふえてきたことが第一の原因であり、しこうして最近におけるわが国の平均年齢というものが驚異的な上昇を見せておりますることを見ましても、健康保険中心とする医療機関の増大ということは、決して悲しむべきことではなくして、むしろ非常に福祉国家の増進ということでは、積極的にこれを支持すべき立場に私どもは立ておるのであります。従いましてこれに対しまする考え方は、やはり第一に国が責任を持つ、同時に社会連帯の観念からいたしまして、医療給付費の増大につきましては、被保険者もやはり国と同様に責任を持ってこの処理に当っていただきたいと考えておる次第であります  保険医の監査について、政府は、何かこの赤字がふえてきた一番原因が、被保険者の不正受診あるいは医療担当者の不正にあったかのように考えておるのではないかというお話でありましたが、そうは考えておりません。これは一部分の現象でありまして、全体の現象ではないと考えております。しかし不正保険医が全然ないということではないのでありまして、その点では、ただいま数字をあけて示せということでございましたから御回答を申し上げますが、二十九年八月分の診療報酬請求明細書の調査によりますると、調査件数約三百二万件のうちに、確実に不正だと認められたものは約一万件であります。従って全体にいたしますると、わずか〇・三二でありますが、こういう事実もありまするし、また保険医監査について申し上げれば、昭和二十九年度の監査対象者の数は千八十四人でありまして、そのうち百三十二人は指定取消しの処分を受けております。本年一月以来赤字をさらに圧縮いたしますため、被保険者の不正受診あるいは保険医の監査等を初め、行政措置強化いたしておりますが、成績が相当上っておりますので、今後は御指摘通り不正なる保険医に対しては断固これを取り締る方針でございます。なお、保険料を千分の六十五に引き上げた根拠はどうかということについての御質問でありますが、現行の保険料率の千分の六十というものをきめましたのは、御承知でもありましょうが、昭和二十六年十一月であります。従って相当その間に経済情勢も推移をいたし、当時の標準報酬は七千三十円でありまして、本年度は平均一万一千七百円となっておりまして、標準報酬の上昇割合は六割六分、こう見ることができるのであります。この点からしても保険料率の五%の引き上げは決して不可能ではない、かように考えております。また実質賃金も非常に上昇しておりまして、これは数字がありますが、あまりこまかいことになりますのでどうかと思いますが、これらから見ましても、たとえば製造工業部門では一二五%となっており、工業部門でも一二六%という平均指数を示しておりまするので、料率の引き上げは、国家が本年度の赤字に対しまして半分責任を持った以上は、一方において被保険者も持っていただきたいというのが私の考え方でございます。  次に医療給付費に対する定率の国庫負担をしろ、来年度は一つ百億くらいやれということでございます。私は百億負担するということは申したことはございませんけれども民主党の政綱にかんがみまして、将来健康保険に対しましては定率の国庫負担をするということは当然の行き方であろうと思います。社会保障制度審議会からも数次の勧告を受け取っておりますので、原則として支持しておる政党としては、財政上の制約がありますが、漸次これを実現して行きたい。私の考え方を率直に申し上げますと、国民健康保険が今日二割の国庫負担でありまするから、健康保険料の方はこれらとのバランスの関係からいたしまして、一割の国庫負担を明年度は実現をするのが、財政上の制約その他からいたしましても当然のことである、かように考えておる次第でございます。  それから少しく細部にわたっての御質問でありましたが、たとえば保険制度をもう少し確立したらどうか。現在は御承知のように自由開業医制度の上に立って都道府県知事が個々に指定をしておる建前をとっておるのは御承知通りであります。いろいろな問題がございます。たとえば保険医の分布状況が適正でないとか、あるいは医師の資格があって申請すれば、今たれでもなれるというような形になっておりますが、これを、ある期間保険医として資格を保持したものでなければならぬというようなことも論議の対象となっております。また病院につきましても、そこに勤務する個々の医師が保険医となる建前でありまして、病院全体が総合体として指定されていない現状にありますが、これを総合体として指定したらどうかというような意見がありまして、これらについてはまだ取りまとめた構想はございませんけれども、こういう点を十分に勘案をいたしまして、将来保険制度というものに対しては、あるいはそのような方向に進むことが妥当ではないかと考えております。  それから医療機関、特に公的医療機関を整備しろ、それについては計画性を持って実施する必要があるのではないかという御指摘であります。これは全くその通り考えております。  予防衛生あるいは公衆衛生充実して、受診率を減少せしめるようにしてはどうか。本年は結核予防法の一部が改正されまして、健康診断の対象ども非常にふえておりまするから、これらを中心に一そう予防衛生、公衆衛生の面を充実して、健康保険の費用が増し高にならないように抑制もする措置を講じたいと思っております。  また次に御質問でありましたが、診療報酬の支払制度改革はどうか。今日の制度はいわゆる点数定額式でありまして、必ずしも優秀な技術のある医師が優遇されておる形になってはおりません。従ってこれにつきまして十分に研究を要する事項であると考えております。  それからメリット・システムを採用する考えはないか。これは労災保険ではやっておるのでありますが、労災保険健康保険は本質的には異なる制度の上に立っておりますので、今日ただいまこれを採用することは私は困難である、かように考えております。  それから健康保険の適用範囲を五人未満の事業所に拡大する考えはないか。これは御質問通りでありまして、国民健康保険を全国に均霑さし、充実さして行くのと並行に、健康保険の方も五人未満の事業所にも適用いたしまして、いわゆる医療保険にかからないものが少くなるという方向に進めることが、今後の社会保障中心政策にならなればならぬ。両方からはさみ撃ちにして行く必要があると思っております。  それから社会保険の運営について、一般企業と同じように一つ責任制のある制度をしいたらどうか。これは社会保険の今日のやり方は、現業事務と監督事務を分離することによって能率が上るということも指摘をされておりますので、具体的には行政機構の問題として考えをいたしてみたいと思っております。  なお、総理大臣に対する御質問の中で、総理からお答えのなかった年金制度の問題でありますが、これは今日民主党の政議会も真剣に考えをいたしておりまして、恩給制度改正と並んで、国民年金というものを日程に上してみたらどうかというようなことで、案を練っておるようであります。厚生省といたしましても、終局的に国民年金というものを考えなければ、結局全国民の階層、国民全体にわたって、医療にいたしましても、あるいは老齢年金にいたしましても、均霑することがないものでありますから、非常に不公平な形になると思うのであります。従ってわが国におきましては、社会保障はイギリスを模範にしておる方が非常に多いようでありますが、最近におきまして、アメリカやスエーデン等におきまして、非常にすぐれたる老齢年年金制度が確立されまして、この点はわれわれとしても十分に考えてみなければならぬ点でありまして、最近軍人恩給が増額を要望されながら、一部からは将来軍人恩給と文官恩給が一千億をこすようなときには、他の国民から相当の批判を受けるのではないかという声も学者の間には起っておるのであります。私もそのような考え方でありまして、将来はでき得る限り、国民年金というものの姿の中においてすべてのものを解決していくことが、社会保障制度の理想ではないかというふうに考えをいたしておるので、着手をいたしたいと思っております。(拍手)    〔国務大臣萬田尚登登壇
  28. 一萬田尚登

    国務大臣(一萬田尚登君) お答え申します。  来年度の健康保険等の社会保障に対する方針は、財政上どうかと、こういうことでありまするが、私は、この厚生大臣の御相談に、財政の許す限り熱意をもって御相談に応じよう、かように考えております。なお、この健康保険の資金繰り等についてお尋ねがあったようでありますが、これは赤字が出ておりますが、当面は国庫余裕金で参りまして、年度末に資金運用部資金で借りかえる、かように考えております。そして本年度を加えまして、今後毎年十億ずつ、七カ年になりますが、これですでにありまする赤字を解消するということにいたしております。  なお医療保険につきましては、財政的に考えましても、各種の医療保険統合いたしまして、相互の権衡をはかりまして、むだな事務費を節約するというようなことは、私はけっこうなことであると思っておりまするが、同時に厚生大臣のお考えもそうかと思うんでありますが、やはり財政当局といたしましても、今日の社会保障保険年金、共済組合等について、私は根本的に一つ考えてみて、そしてほんとうのすばらしいりっぱなものになると、こういうふうにしていただけばいいんじゃないか、そうすると財政上もよほど楽に、しかも有効にいく、こういうふうになるのじやなかろうかと思っておりますが、私はこの点についてはしろうとでありますが、できるだけ厚生大臣と、十分に今後相談をしてみようと考えております。  なお社会保険の資金の統合運用でありまするが、今日この資金運用部に統合してお預りしておるのであります。なおこれらについては、これは財政金融の立場がありますのですが、なお十分検討を加えまして、なるべくこういう資金がさらに資金源として拡大ができるような適切な方途がありますれば、しかもこれが日本財政金融の上にも支障はないというような何らかのことが、いい途がありはせんかどうかということについて、十分検討を加えてみたいと考えるのであります。      ——————————
  29. 河井彌八

    議長河井彌八君) 日程第一、過度 経済力集中排除法等を廃止する法律案内閣提出)を議題といたします。  まず委員長の報告を求めます。商工委員長吉野信次君。    〔吉野信次君登壇拍手
  30. 吉野信次

    ○吉野信次君 ただいま議題になっておりまする法律案は、現行法律を三つ廃止せんとするものであります。過度経済力集中排除法、それが一つです。それから過度経済力集中排除法の施行に伴う企業再建整備法の特例等に関する法律、それから過度経済力集中排除法第二十六条の規定による持株会社整理委員会の職権等の公正取引委員会への移管に関する法律、この三つであります。  御承知通り、この一連の法律は、過度の経済力集中を排除して、国民経済の再編成をすることを目的としたものでございまして、この法律によりまして、持株会社整理委員会は最初三百二十五の会社を指定したのでありますが、その後指定を取り消されたり何かいたしまして、現実にこの法律の適用を受けましたものは、日本発送電とか、日本製鉄等の二十八社でざいます。この二十八社につきまして昭和二十四年度からそれぞれ所定の手続を履行いたしまして、昭和二十九年十一月をもって一切の事務が終了したのでございます。それでありますから、今回この一連の法律を廃止せんとするのか、ただいま議題に上っている法案でございます。従いましてこの法案自体つきましては、委員会におきまして格別の意見はなかったのでございまして、ただ、これに関連していわゆる独占禁止法、あの法律の運用の状況とか、あるいは将来の運営の方針などにつりきまして、委員会におきまして政府との間に若干の質疑応答がございましたが、それらは会議録によって御承知を願いたいと存じます。  かくて質疑を終了いたしまして討論に入りましたが、格別の御発言もございませんで、採決の結果、全会一致、本法案は原案通り可決すべきものと決定いたしました。  右、委員会の経過と結果を報告いたします。(拍手
  31. 河井彌八

    議長河井彌八君) 別に御発言もなければ、これより本案の採決をいたします。本案全部を問題に供します。本案に賛成の諸君の起立を求めます。    〔賛成者起立〕
  32. 河井彌八

    議長河井彌八君) 総員起立と認めます。よって本案は、全会一致をもって可決せられました。  議事の都合により、これにて暫時休憩いたします。    午後零時十八分休憩      ——————————    午後五時七分開議
  33. 河井彌八

    議長河井彌八君) 休憩前に引続き、これより会議を開きます。  次会の議事日程は、決定次第公報をもって御通知いたします。  本日は、これにて散会いたします。    午後五時八分散会      —————————— ○本日の会議に付した案件  一、飼料需給安定審議会委員補欠選挙  一、健康保険法一部改正に関する緊急質問  一、健康保険の危機並びに健康保険法の一部改正案に関する緊急質問  一、日程第一 過度経済力集中排除法等を廃止する法律案