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1955-04-30 第22回国会 参議院 本会議 第12号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和三十年四月三十日(土曜日)    午前十時三十六分開議     —————————————  議事日程 第十二号   昭和三十年四月三十日    午前十時開議  第一 国務大臣演説に関する件(第四日)     —————————————
  2. 河井彌八

    議長河井彌八君) 諸般の報告は、朗読を省略いたします。
  3. 河井彌八

    議長河井彌八君) これより本日の会議を開きます。  日程第一、国務大臣演説に関する件(第四日)。  一昨日に引き続き、これより順次質疑を許します。田村文吉君。    〔田村文吉登壇拍手
  4. 田村文吉

    田村文吉君 私は内政に関する問題について、以下若干の質問を試みたいと思います。  戦争のために負うた心身の傷をなおし、わが国自主独立の実をあげて参るために、さしあたり強力に推進されなければならない重要なる政策は数々あります。さればこそ、鳩山総理はその施政方針を述べるに当り、与野党間のいたずらな政争が繰り返されることの遺憾を表明し、みずから謙虚の心持ちをもって野党の協力を求めておられます。もちろん今日の政局の混迷は、洗ってみれば、過去における鳩山総理の率いる民主党が、またその責任の一半を負担すべきは当然でありまするが、さりとて、今日各党がいたずらに相手方を非難し、感情や党略のために政局の混迷を継続することは許さるべきではないと思います。政策の点で大同小異である民主、自由の両党が、今日の内外ともに重大な時期において、互いに相提携して強力に政策を推進することがなぜできないのかと、国民の多数はむしろ不思議にさえ思っており国民の間に政党政治に対する不信の念が持ち上り、あるいは極右、極左の欲するままに一騒動持ち上るのではないかとさえ憂慮しているものもあります。政局不安の責任の一半を負わなければならん鳩山総理は、その考えている政局安定をいかなる方法をもってその実をあげんとせらるるのか。ただあなたが謙虚な態度でとか、友愛精神を説くだけでは、政局の安定は得られないと思うものであります。進むにせよ、守るにせよ、はたまた退くにせよ、総理として、また民主党総裁として重大なる決意をなさるべきであると思われます。そもそも総理はいかなる心境にあられるのか、承わりたい。これ質問の第一点であります。  ついで第二問として総理並びに文部大臣に承わります。教育の最終の目的が人格完成にあることは今さら論ずることを待ちません。人格完成は、道徳心の涵養に待たねばなりません。しかるに現在の学校教育における倫理修身の道が軽視され、また低迷しておるのではないかと存ずるものであります。たとえば、しつけの根本をなす修身の徳目さえはっきり示されておらないのでありまして、東洋道徳の美点、特質等は全く失われていると申しても過言ではないと存ずるのであります。  さきの吉田内閣当時における天野文相は、教育勅語にかわるべき国民道徳実践要領を提議されたのでありますが、世のいわゆる何でも冷笑し、ひやかすことをもって誇りとしている学者や評論家の反撃にあって、日の目を見るに至らなかったこともありまする。その後に出られた大達文相は、きわめて勇敢に教育勅語の形態はとにかく、その内容は、わが日本民族の三千年の歴史により造成された、きわめてりっぱな徳目であり、その内容を支持すべきことを主張され来たったのでありまするが、遺憾ながらこの精神学校教育の形の上に現わすまでに至らないでやめられたのであります。  これを要するに、八年間の占領政策において、日本愛国心民族精神をでき得る限り弱めるために、在来の東洋道徳日本道徳を全部洗い流し、民俗、習慣、歴史の異なる英米流教育を中途半端に取り入れたところに、教育の混乱が生じ、小学から大学に至るまですべての教育のバツクボーン、すなわち骨格が抜けてしまった。すなわち学校のしつけや徳育の根幹をなすものがなくなってしまったのであります。天野文相大達文相主張を冷笑をもって迎えた、いわゆるインテリの冷笑主義の先生や評論家でも、裏へ回って自分子供家庭教育のことになると、いつかしら昔教わった道徳倫理の観念が、無意識に働いていることに気づかない矛盾さえあるのであります。もしこのままに時代が推移し、さらに今日のティーン・エイジャーの人たち子供教育する時代になったとき、教育の前途、また日本の将来、はなはだ憂慮にたえないものがあるのであります。私は一日も早く、学校教育民族的道徳の鉄の骨を入れてもらいたいと思うものであります。私はこの点について総理及び文相に強い期待を有するものであることを表明いたします。  さらに、文相にお尋ねいたしたいことは、社会教育、ことに青少年教育の見地に立って今日の映画、図書、テレビ、または賭博的遊戯、これらはいずれも営業でありますから、営利のため行き過ぎることも無理からぬかとも思うのでありますが、さりとてこれらによって影響を受くる青少年の風紀の頽廃、道義の低下は、まことにゆるがせにすべからざるものがあると思うが、文相はこれに対しいかに善処し、調整せられんとするか承わりたい。さらに文相に対する第三問として現在行われている産業開発青年隊は、農林省、建設省等によって若干の助成を受け、各府県においてようやく普遍化されていることは喜ぶべき傾向でありまするが、文部省並びに関係各省けさらに手を伸べて、これが育成をはかりこれを拡充発展せしむる意図がないかどうか。青年が自分の生まれた郷土のために道を直し、堤防を作り、あるいははげ山を緑化する等の勤労に従事することは、愛郷心愛国心を育成することにもなり、本人の心身の鍛練にも役立ち、かつは貧しい日本経済にも寄与し、国の再建を促進することにもなると思うのであります。文相並びに関係各相のこれに対する御見解を質したい。  次に、総理並びに労働大臣に対してお尋ねいたします。生産を増強して国民生活の向上をはかり、一面輸出を伸張して経済自主自立を期する今日のわが国情の至上命令として、産業に従事する雇う人と雇われる人が互いに和親協力して一体となり、その企業それぞれを繁栄せしめなければならぬことは、私がここに申すまでもありません。そこで私の第一問としてお尋ねしたいことは、現在の労働組合が、もちろんその全部とは申しませんが、政治闘争に巻き込まれ、これに偏向しているきらいがあるのではないか。かつその運営が非民主的になされているきらいがないか。一例を申しますと、昨今行われる闘争が、下部から盛り上るのでなく、上部の指令によって動いているものが多い。単一組合自主性もなければ、個人々々の自主性もないように見える。無思慮な若い人たちが、また組合が、回り回って陰の人、共産党に巧妙にあやつられているように見えます。労働三法も、終戦後のどさくさまぎれに作られた法律であって、日本産業の実体や特異性に合わない行き過ぎた点が多々あるように思うが、総理はどう考えておられるか。またあわせて労働対策に関する総理根本理念をも承わりたい。また、労働大臣は、これらの点を考慮して対策を考えておられるかどうか伺いたい。  第二問として、労働大臣に伺いたいことは、私の年来の主張としてあらゆる労使間の紛争は、すべて仲裁裁定によって平和裡に解決されることが願わしい。またこれが崇高なる東洋思想を有する日本が、率先して世界に示すべき平和運動の先がけであると主張いたして参ったのでありまするが、(「概念論」と呼ぶ者あり)現実はなかなか理想とは遠い。しかしながら、事公益に重大なる関係を有する銀行業私設鉄道新聞事業公設市場取引所等企業に対しては、公共企業体と同様に、すべての紛議は仲裁裁定によって解決されるように立法する考えがないかどうか。年中行事のような私鉄のストについては申すまでもありません。昨年起された地方銀行の争議のごときも、かなり悪らつなものを生じ、経済界に甚大な不安を与えたのであります。最も信用を重んずる銀行としては、多分に組合主張に屈せざるを得ざる結果になったのでありまして、かくては年々銀行資金コストを高め、金利の低下など、とうてい望み得ないことになり、一面銀行業務の停止と相待って産業界に深刻なる影響を与えることになります。ゆえに私は、かような公益に重大なる影響あるものは、たとえそれが私企業であっても、公共企業体に準じ、一面ストライキ等の行為を禁止すると同時に、一面仲裁裁定によって平和裡に解決される道を開くべきであると思うが、総理大臣にその用意ありゃいなや、お伺いいたします。  次に、大蔵大臣に対し、次の三点をお伺いいたします。その第一は、三十年度通常予算を一兆円におさめるため苦心されたことは、大いに敬意を表する次第でありまするが、何か、前自由党内閣時代より一兆円々々々と呼ばれ来たっておりまして、一兆円の数字に魔術でもあるように見えますが、いかなる根拠があるのか伺いたい。私がかように申せば、何かお示しの予算を、もっと越してもよいではないかというようにおとりになるかもしれませんが、それは全然反対であります。私はなぜに予算を一兆円まで持ち上げる必要があるのかと申したいのであります。端的に私は今日の国力から言って、一兆円の予算は多過ぎる、八千五百億程度が適当ではないかと存ずるものであります。(「軍事費をどうするのだ」と呼ぶ者あり)その根拠を申し上げますと、今年度予算国民所得の一割五分八厘と相なっており、戦前昭和十年の公債発行高約三割三分を含めての一割五分二厘に比べて、必ずしも財政規模は大きくなっておらないように見えます。しかし、昭和十年には四割六分の軍事費を含んでおり、今年度はおおよそ一割三分、一割三分の軍事費該当額を含んでおります。そこで軍事費を差し引いた予算で比較いたしますると、昭和十年は国民所得の八分、すなわち八%に過ぎないのに、今年度は一割二分、すなわち一二%と相なっておって、今年度の方が五割強ふえていることになるのであります。(「それが観念論なんだ」と呼ぶ者あり)今かりに昭和十年度の比率をもって今年度の適止予算額を算出いたしますると、軍事費該当額を加えて六千三百七十億円となるのであります。これに地方交付税交付金及び社会保障費等、終戦後の特別な事情をしんしゃくして別に二千億円の増加を加えてみましても、今年度予算は八千五百億円ならば十分まかなえるはずであらねばならぬのであります。表面的にも一兆円のワクにおさめることに非常に苦労をされたと思っておりまするが、まだまだ予算の浪費、あるいは不経済的使用が多々あるのではないかと私は憂慮するものであります。社会保障事業もちろんけつこうであります。ただし、これがために国力に不相応に予算を膨張せしめることは、今後賠償費用等も漸増することを考えまするとき、他日必ずほぞをかむことになると信ずるものであります。御就任、日の浅い大蔵大臣は、すべてが思うようにもならなかった結果もあると思うが、日本現在の予算規模はもっと大幅に縮小する必要をお認めにならないかどうか。続いて本問題に関連して国民負担、すなわち税の問題があります。今回年額五百億に当る直接税の減税が行われたことは、少しでも民意に沿ったものとして歓迎する次第でありまするが、さきに申し上げたように、予算規模根本的に縮小されるならば、直接税たる所得税法人税においてさらに二千億を減じ、間接税において五百億を増徴して、差し引き一千五百億の減税がさらに可能となり、これによって貯蓄は増強し、資本の蓄積がなされ、従って産業が振興されて完全雇用に進み得ることは、あえて六カ年計画を待たないでも、明年からでも完遂できる近道であったと思うのでありまするが、すでに御苦心の結果組み上げられた予算根本的変革はなかなか困難でありましょう。しかし、私が大蔵大臣の最大の関心を求めるものは、所得税法人税の合計が、国民所得に比べて戦前は一分四厘、すなわち一・四%に過ぎなかったものが、今年度は七分四厘、すなわち七・四%と相なっておって、実に五倍強の負担増加と相なっておるのであります。別の言葉で申せば、戦前と今と比べて国民所得は四百三十倍に過ぎないのに、所得税法人税は二千七十倍、実に二千七十倍に相なっておることを考えますとき、政府も政党も国民もすべてが根本的に考えを新たにして新しい構想のもとに予算の収縮をはかり、同時に国民負担の軽減を行い、いわゆる民力の涵養に努め、国民の創意と工夫とによって、これらの貯蓄財を民間の手によって最も有効適切に活用することが、日本経済の自立となり、日本の完全な独立を招来することになると固く信ずるものであります。  以上私の申し上げましたことを着々実行に移すことを大蔵大臣はお考え得られるかどうか、伺いたいのであります。  第三問は租税特別措置法の問題でありまするが、同法は各業、各種各様租税の減免が定められており、しかもその内容は複雑難解をきわめておりまして、よほどの専門家でないとわからないということが事実であります。これはいわゆる陳情の集積であり、党略の落し子であり、しかも次から次へと法律を継ぎはぎをした結果であるのであります。法人税の例をとって申しますると、在来の四割二分である税率が、ある法人には二割以内で済んでいるものさえある結果、平均三割しか税収が上らないというようなきわめて不公平な課税の実行が行われている。中小企業者等にはこれが恩恵を受くる術を知らない場合が多い。極端に言えば特別措置法は力の強い、収益の多い大企業のための特恵法であるとさえ言われているのであります。今国会で預金利子全額免除法律が出されるようであるが、問題であると思います。大体産業保護のためにあるいは金利を加減したり税を減免したりすることは、知らず知らず官界、政界を腐敗せしめる因をなすものでありますので、ここらで租税はすべからく公平に、かつ素朴なものとしてもっと、誰にもわかりやすい法律に改める意味から特別措置法をこの際根本的に改変し、むしろ本税自体を大幅に引き下げる意思がないかどうか、伺いたいのであります。  次に独占禁止法の廃止について、高碕経審長官並びに石橋通産大臣にお伺いいたしたい。経審長官はその六カ年計画の前文にも、年々増大する労働人口雇用の機会を与えることはわが国経済最大な問題であると言っておられます。私も同感であります。ただし、私をして忌憚なく言わしむるなれば、わが国雇用の増大をはばんでいるものは金融の独走と直接税の過重負担と、あわせて独占禁止法の存在であると申したいのであります。大臣も御承知通りあらめ産業品不足で景気のよいときもあり、生産過剰で不景気のときもあります。景気のときに生産増加のために事業を拡張し、その結果は生産過剰となり、不景気となる。激烈な競争の結果、価格の暴落を来たし、これがひいて新たなる需要を喚起して需給の調整をとるようになる。これは自由主義経済原則論であります。ところが増産、増設を遂行するにも、また競争によって新しい需要を喚起するためにも、おのずから時間のズレがあります。しかるに日本のような経済の底のきわめて浅い、しかも自己資本の蓄積の少い企業は、一朝製品が余ると滞貨を持ちこたえる力がない。悲鳴を上げて倒産に至った例は、昨年のわずかの金融引き締めでさえ、あれだけの事例を起したありさまであります。またあのようにとことんまで競争をやったあげくには、大企業に併呑されて、逆に独占資本を助成することになったり、企業休廃業等によって多数の失業者を出さざるを得なくなるのであります。ブレンタノはかように申しております。カルテルは一般に考えられるほど独占利潤略奪者ではない、それは恐慌の中から生れた困窮児であって、あまりにも飛び上り過ぎた生産が再び大地に到達するための落下傘の役目を果たす、いわゆる自己崩壊を免かれるための防衛手段に過ぎないと言っておるのでありまして、今日の資本主義経済のもとにあっては、資本の浪費と消耗をなくするためにも、また失業者を出さないためにも、強弱大小企業がおのおの申し合せて、必要に応じて生産を調整することは絶対欠くべからざる要諦であるのであります。底の浅い日本産業の現状からして産業自体を守るためにも、失業者を出さないためにも、独禁法のような悪法は一日も早く全廃するか、あるいはやむを得ざれば、カルテル届出主義に改めるかにすべきであると思うのであります。(「賛成」と呼ぶものあり)実情を御承知ない方は、許可を得れば不況カルテルもできるではないかと言われますけれども、裕下傘は落ちてから開いたでは何にもなりません。残念ながら今日のお役所としては、そんな機敏な処置がとれない機構と相なっております。この当惑している産業人気持は、実際人であった高碕経審長官にはよくおわかりが願えると思います。昨年来の九州地方石炭界の不況で、カルテルの必要が労働組合指導者にもわかってもらえたと思います。事柄は極めて重大であります。日本産業が戦後立ちおくれた立場に立って、東洋、アラブ、アフリカにその羽根を伸ばし、今後の賠償を又払いつつ、ふえゆく労働人口を養っていくことは容易ではありません。独禁法日本経済を弱め、国際競争力を失わしめるための占領政策の一端として取り上げられ、今日なお残存している最も有害な法律の一つであるのであります。石橋通産大臣とされても、日本経済の早急なる自主自立への道として本法の撤廃がいかに重要なる通商産業政策であるかを認識せられて、この悪法を撤廃するか、やむを得ざれば、カルテル届出主義に改められるか、一日も早く断行さるべきであると思うものであります。なお、この問題を輸出産業に限定されるようなことは、かえって外国の誤解を招くものであって、知のとらないところであります。経審長官並びに通産大臣の御所見を承わりたい。  農林大臣に対して、次の二点に閲し、御所見を伺いたい。その第一は、食糧自給自足の問題であります。私はかねてから政府食糧自給度を高めるという程度の言葉には不満足の意を表するものであって、百歩前進、自給自足まで進むことがわが国に与えられた絶対の命題であり、また必ず達成し得るものとして、ばかの一つ覚えをしているものであります。しかしてこの命題は少しぐらい輸入食糧が安いからとか、東南アジアとの貿易の相互互恵のためなどいうことで左右されてはならないのであります。なぜ私が食糧自給自足完成を叫ぶかと申しますると、遠い将来のことはわかりませんが、現在の国際間の貿易管理の実情から見てまた、原料、資源に乏しい上が日本が、輸入食糧輸入工業原料との合計に見合うほどの工業品輸出をなし得るかどうか、十分の自信が持てないからであります。従って今日の上が日本は、百年、二百年前の英国が、食糧はどしどし輸入する、綿も入れる、そのかわり紡績、綿布等植民地に買わせる、これによって富を築いてきた自由主義時代の故知に学ぶことはとうていできないのであります。農は国の大本であると古人が教えたことは、二千六百年後の日本において、変らざる真理としてよみがえってきておるのであります。  そこで食糧自給自足の方図を分析して、二つの問題があります。第一は、多角経営を伴う食糧増産であり、第二は、食生活の改善であります。食糧増産については、過去において各種の名目をもってする補助金助成金の数が多かったために、各種の弊害がなかったとは申しません。また農家をしていたずらに依頼心を起さしめたような弊害は、今もなお続いていないとは申しません。しかし、日本農業経営は、集約経営限界点にきているとは考えられません。特に最近の著しい科学の発達により、耕地、品種の改良、適正肥料使用等により、勤勉力行、いわゆる篤農家があげる反当収量のせめて八割まで、すべての農家が収穫をふやすことは決して困難でないと常識的に考えられることであります。故に政府がさらに集約的農法を助成し、農家増産意欲を刺激するようの政策をとるならば、穀物及び畜産とも、現在収穫量の五割に近い増産を見ることも必ずしも不可能でない。これは農村の二、三男問題の解決にも大いに役立つことになると存ずるものであります。食生活の改善は、消費者の米食になれた長年の習慣を変えることでもあり、かつ、経費の増高が一番問題であるので、そう簡単には参りますまい。しかし今日まで食糧管理庁がこの問題に対し、冷淡過ぎたそしりは免れないと思います。よろしく厚生省の協力をも求めて総合研究所を作り、一日も早く経済的で、かつおいしい代用食を次々と考案して実地に移すことを考えられたいと思います。ただし、農林大臣に特に進言したいことがあります。それは食糧自給のために、わが敬愛する河井参議院議長、すなわち今様青木昆陽先生のサツマイモの増産と利用とを忘れないでいただきたいことであります。  最後に簡単に伺いたいと思いますことは、現在の供出制度にせよ、予約買付制度にせよ、何分の統制を残す限りにおいてやはり別に米の自由市場を開かなければ、国民の全部が依然として不明朗なやみ米生活を送らなければならないことであります。農相は配給制度等に関し、すでに御方図がお立ちになっていると思うのでありますが、お差しつかえなくばお示し願いたいと同時に、敗戦十年、依然として国民の全部が、子供に話してならないような法律違反を続けなければならないことは、一日も早くやめてもらいたいという悲願を述べて私の質問を終ります。(拍手)    [国務大臣鳩山一郎登壇
  5. 鳩山一郎

    国務大臣鳩山一郎君) 田村さんの御質疑に対してお答えをいたします。  第一の御質疑は、政局安定のため、協力をいかにしてあげんとするかという点にありました。これはやはり謙虚な態度で各派の意見を聞いて善処するという以外に申し上げようがございません。政局安定のために無理なことはいたしません。  学校における徳育根幹については、もちろん教育基本法の第一条の点を申し上げるよりいたし方ないと思いますが、すなわち、人格完成でありますが、先日ここで申しました通りに、民主政治をうまくやっていきますのには、各人が自分自身人格尊厳を尊重するということに先ず第一歩を踏み出さなければなりませんが、同時に、同じように他人の人格尊厳も尊重しなくてはいけない。こういう気持になれば民主政治はうまくいくものと思います。  労働問題について長く御質疑がありましたが、労働問題も、同じような気持になればうまく解決していくと思います。詳しいことは労働省の長官よりお聞き取りを願いたいと思います。    〔国務大臣松村謙三登壇
  6. 松村謙三

    国務大臣松村謙三君) お答えを申し上げます。  教育根本についての御質疑でございましたが、これは今日におきましては御承知通り教育基本法に基いてやっておりますことは、これは申すまでもないことでございます。また実際、今日世界の交通がこのように発達をし、十年、二十年後のことを考えてみますと、世界民族の接触というものが、これは非常な緊密なことになってくることは当然でございます。従いまして世界のどの民族からも尊敬を受け得る道義人格完成、こういうことと、良智、良能を備えた高い教養を持つ国民を作りますことは、これは外へ向っても、世界に伍して落伍しない意味から申しましても、ただいま総理が申されました通り、この民主政治を守るにつきましても、これを根幹としてやらねばならぬと、私ども、さように考えている次第でございます。それにさらに民族としてこのように立っております以上は、何としても民族愛と申しますか、強い祖国愛と申しますか、平和に対してこの民族がともに貢献するという強い民族愛祖国愛考えを持ち、そして世界から尊敬を愛ける道義人格を持つ、こういうことを目標としなければならない。教育基本法精神はまさにそこにあることと私どもは解釈をいたしているわけでございます。ただいかにもこの教育基本法というものが、専門の教師の方々はよくおわかりでありましょうけれども、父兄、国民の間に徹底をいたしておりませんきらいが十分あると思うのでございまして、これは何とかいろいろの方法をもって、この教育の趣旨をぜひとも父兄の方々に了解を得まして、家産教育学校教育とが関連するようにしなくてはならない、これに努めたいと考えております。大体近来、大臣がかわり、政権がかわるごとに、この教育根本までが動揺するがごとき感じを与えますことは、これはとんでもないことでありまして、お話の通り教育根本は動かないように、大臣がかわるくらいのことはもちろんのこと、政権がどの政党にかわりましても、この教育根本だけはかわらないようにしなくてはならない。平凡でございましても、そういうことに努めることが私どもの大きな任務であろうと考えて、努力をいたしております。  それから社会教育のことでございますが、これはお話し通りのことでございます。そこでやはり映画でありますとか、その他に対して十分の注意をして、改善をすることはもちろんでありますけれども、今度の予算にもその費用をとりまして、積極的にラジオを利用し、また映画を利用いたし、紙芝居を利用いたしまして、社会教育をよく導くということに努めたい、かように考えております。  それから産業教育につきましてはうこれは農林省、建設省でやっておりまして、相当に効果を上げている向きもございます。文部省といたしましても、これらの各省と連絡をいたしまして、実際の訓練と、それと学術とを結びつけた形において効果を上げたいという考えで努力をいたしております。お答え申し上げます。(拍手)    〔国務大臣西田隆男君登壇
  7. 西田隆男

    国務大臣(西田隆男君) お答えいたします。  労働組合が政治的な偏向に陥ったり、あるいはその運営が非民主的に堕するがごときことは、健全な労働組合のあり方にもとるものでありまして、公正な労使関係の確立のためにも厳に戒めなければならないと考えておりすす。政府といたしましては、総合的な経済政策の実施によりまして、労働者の生活の安定と向上をはかることによりまして、労働不安の除去に努めておりますが、労働者諸君の良識と国民の正しい世論とによって、今後とも労働組合の健全な発展が行われるよう強く期待をいたしております。労働関係法の改正につきましては、各方面にいろいろな御意見があるようでございますが、私としましては本国会に改正案を提出する考えは持っておりません。  第二の問題にお答えいたします。公益に重大な関係のあります事業においては、労使ともにその責任を自覚いたしまして、ストライキ等に持ち込むことのないように、でき得る限り努力すべきであると考えますが、もしどうしても労使双方の間に解決がつかないという問題が起きました場合におきましては、第三者の調停斡旋等により解決をつけるというよき慣行をこの際確立したいというふうに私は努力いたしております。春季闘争として大幅に宣伝されました私鉄、炭労等の争議におきましても、今回はきわめて一小部分、きわめて短い期間に調停が成立いたしまして、解決をいたしておりますことは、まことに喜ばしいと考えております。私としましては、労働組合も経営者も第三者の調停を重んじて頂きたいと、かように考えております。現在、スト規制法に関する考え方は毛頭持っておりません。    〔国務大臣一萬田尚登君登壇
  8. 一萬田尚登

    国務大臣(一萬田尚登君) お答え申し上げます。  御質疑の一つは、三十年度予算が一兆円になっておるが、その根拠はどうか、なおこの規模をさらに縮小することがよくはないか、こういうことが御質問の趣旨であったように思います。特に一兆円の予算について、これをふやすというような考えでなくして、縮小するということが主眼で、私も財政についてはなるべく規模が縮小、小さくなってやれるなら、それはむろんよろしいのでありましで、そうしてその歳入超過についてはこれを減税に振り向ける。これは私、原則論としてその通りだと思うのでありますが、ただ日本の場合におきましては、御承知のように非常に人口が年々ふえております。それに経済が何としても貿易に依存していかなければならない、こういうふうな特殊な事情であります。さらに新しい日本の姿が文化国家、こういう方向を指向しておる等々を考えてみまする場合に、私の考えでは、予算がそう単に縮小すればいいというわけにもいかないので、予算は必ずしも縮小しなくても、国民負担が軽くなっていく、こういうふうな方向をとるべきである。これは結局日本経済を盛んにする、日本経済を盛んにして、その基盤の上に予算を組んでいく、かように予算は、ある程度大きくなっても、国民負担はそれほど重くはならない。こういうふうな姿が、私は今後日本の姿とマッチする予算の姿ではなかろうかと考えております。それから特に六カ年計画におきまして、明年度あたりから徐々に経済もその規模を大きくしていくという状況にあります等々を考えまして、必ずしも一兆円ということにこだわることもなかろう。こういうふうに考えており、今後のこれは問題であります。ただ、しかし趣旨としましては、なるべく予算の規模を小さくして、そうして余力を減税に向ける。これは私は非常にけっこうな考えであると思います。  それからその二の御質問は、直接税を大幅に軽減して、民力を涵養する考えはないか、こういう御趣旨、これは私全く賛成であるのであります。従いまして、今回苦しい予算ではありまするが、まず直接税を御承知のように減税をいたします措置を講じまして、かつ法人税についてもこれを軽減いたします措置をとりましたゆえんも、こういうわけにあるのであります。ただお示しになりましたように、昭和十年ごろの、そのころと非常に情勢が違いますことは、これは日本の国の客観的な情勢がその当時と非常に違っておることから、特にまたああいう戦争をして、ああいう頂け方をした後の、日本再建に関連をいたしておりますから、当時のようには急速に行きかねる、こういうふうに御了承を得たい。  なおその次に、税負担の公平と税法の平易化のために、特別措置法を改正する必要があると思うがどうか、こういう御意向。私も特別措置法、こういう個別的な減税の制度につきましては、必ずしもいいと思いません。こういうのは徐々になくすべきだと思いますが、ただ日本の今日の国情が、一概に言えないことが多くありまして、やはりこの個別的扱いを、なお存置しなくてはならん情勢があるのを遺憾といたしますが、そういう意味から特別措置法もなお存置する必要がある、かように考えておるのであります。ただ税が公平、かつまた税自体が非常に簡明になる、これはお説の通りで、極力そういうことを実現いたしますように努力をいたすつもりでおります。答弁いたします。
  9. 高碕達之助

    国務大臣(高碕達之助君) 御質問独禁法の問題につきましてお答えをいたします。  独占禁止法の目的とするところは、公正かつ自由競争を促進いたしまして、国民経済民主的で健全な発達をはかることであります。従いまして不当なる独占や、不公正なる取引に対しましては適正なる法的規制を加えることが今後とも必要であると考えております。が、我が国の独占禁止法に対しましては、従前合理化のためあるいは不況対策のための企業を組織化することについても禁止するような批判もあったのでありますが、一昨年大幅の修正が行われたのであります。で、このようなカルテルに対する認可の途が開かれ、公正取引委員会においても適宜エラスティックな運用を行なってきたようであります。また一方、中小企業に対しましては中小企業安定法、貿易業者に対しましては輸出入取引法等によって、それぞれ特殊事情において独禁法適用の除外例が設けられております。また石炭のような基礎産業につきましては、新たに予定しておりますところの合理化法案において、その産業の必要性に応じてカルテルの結成の道を開くことにいたしておるのであります。つきましては、今直ちに独禁法を改正したり、カルテルの結成を届けては、上述の措置法の効果を見た上で、今後とも慎重に措置したいと存じます。    〔国務大臣石橋湛山君登壇
  10. 石橋湛山

    国務大臣(石橋湛山君) 独禁法の問題についてのお尋ねですが、これは今、高碕国務大臣からお答えいたしましたので尽きておりますと思います。私も、中小企業などについては、御承知のように安定法がありまして、ある程度、相当よく運用されていると思います。それから輸出入取引法、それから石炭などについては、これから合理化法等を御審議願います場合に、十分御検討を願いたいと思っておりますから、そういう具体的な問題についてできるだけの改正をする。ただいまのところでは全面的に独禁法を廃止するというような考えは持っておりません。それもある程度、やはり独禁法そのものの効果もあるものと考えておりますので、さような差しつかえのある部分だけを逐次改正していきたい、かように考えております。    〔国務大臣河野一郎君登壇
  11. 河野一郎

    国務大臣(河野一郎君) お答えをいたします。  大体、私は田村さんのお話になりましたすべての点につきまして、全く御同感でございます。たとえば、食糧自給度を高めるということでなしに食糧の自給をするようにしてはどうかと、もちろんこれは可能でありますれば、その方向に進むことが当然でございまして、お示しになりました通りであれば、篤農家の集約農法等も十分に尊重いたしまして、これを全面的に推し広めていくような措置をとるようなこともぜひしなければならん。そういうことによりまして、反当収穫量を引き上げていくというような可能範囲はあくまでもこれを実行すべきだと考えております。  しかし、何分にも朝鮮、台湾から戦前におきましても一千万石以上のものを移入いたしておりましたし、人口も急激に増加して参りましたことでございますから、米によってこれを全部満たすということは、なかなか困難のことであるということは御承知通りであります。従いまして、食生活改善によりまして、粉食にこれを置きかえるということの必要でありますることは、もちろん私もこれは同感でございまして、これにつきましては、またあらゆる施策を進めていかなければならないと思います。お示しのこともございましたが、御承知通りに、学校給食等によりまして、最近は特に米が麦に、たとえば米食が粉食に置きかえられておりますることは、年々の米の収穫量に対する輸入量の実績の示すところによりましても、おわかりいただけるようなことではなかろうかと思うのであります。しかしいずれにいたしましても、お示しのようなふうにやって参ることが一番妥当と考えております。  次に、農村建設青年隊のことでございますが、これにつきましても全く同感でございまして二、三男対策、その他の点につきまして、十分考慮しなければならないと思っております。従いましてわずかではございまするが、ただいま提案いたしておりまする予算の中にも、前年度よりもふやして参ることにいたしております。大体金額は少いのでございますけれども、隊数で申しますれば、十五隊を二十隊にふやすということにいたしておるのであります。  最後に、現行食管制度をどういうふうに変えて行くつもりか、これについて述べろということでございますけれども、これはたびたび申し上げておりまする通り、現在の供出制度がすでに行き詰りを来たしておりまして、この制度を推進することは妥当でないということにつきましては、私も全く同感でございます。しからばこれをどういうふうにするか、先般も申し上げました通り、結論としては自由販売の方向にいくべきものである。自由販売に移行することを私としては最終の目途といたしまして、それに到達いたしますまでの準備がございまするし、経過を十分とらなければなりませんし、これにつきましては、万全の準備と用意をいたさなければなりませんので、その準備、用意の期間といたしまして各方面の識者の御注意を拝聴いたしまして、予約買付制度によって、この間をやっていきたいというふうに考えております。この予約買付制度実行につきましても、もちろんこれは従来のように政府並びに府県当局等の力でやるのではないのでございまして、農家自身の御協力ないしは関係農業団体の御協力によりまして、これを十分効果を上げるようにいたさなければならんのでございます。これら関係団体の幹部の方々といろいろ御協議申し上げまして、せっかく今準備中であります。大体お答え申し上げます。  一つ申し落しました。カンショのことについて、いろいろお話がございましたが、私といたしましては、この点は深く留意をいたしまして、今回砂糖の措置をとるにつきまして、砂糖の価格のいかんが、わが国のカンショの価格に非常に影響を及ぼしますので、この点に深く注意をいたしましてやっておる次第であります。  お答え申し上げます。    〔田村文吉君発言の許可を求む〕
  12. 河井彌八

    議長河井彌八君) 田村文吉君。
  13. 田村文吉

    田村文吉君 時間の関係上再質問はいたしませんけれども、高碕経審長官の御答弁は、いわゆる官僚の方が作られた作文が御答弁になっておるようでありまして、はなはだ不満に思うのであります。しかし時間がありませんから、いずれ予算委員会等において十分御質疑をいたしたいと思います。     —————————————
  14. 河井彌八

    議長河井彌八君) 小酒井義男君。    〔小酒井義男君登壇拍手
  15. 小酒井義男

    ○小酒井義男君 私は日本社会党を代表して、政府施政方針に対して質問を行います。私の質問いたしたいと考えておりますことの大半は、すでに同僚議員によって質問をされておりますので、重要な数点に限って質問を行うことといたします。  去る二十五日に行われましたところの政府施政方針演説については、国民のひとしく失望をいたしておるところと信じております。また同僚議員からも批判を加えておられますが、鳩山総理は、総理の施政演説と、現実に行いつつある政治との矛盾にお気づきになっておるかどうかお尋ねをしたいのであります。鳩山内閣のやっておられる政策は、これはきわめて反動性の強いものであると言わなければならない。裏づけのない施政演説を行われたのでありますが、この点について、まず鳩山総理所見を問いたいのであります。たとえば総理は施政演説の中において、戦争回避は国民の悲願であり、平和の維持は為政者の最大の任務であると言われました。また去る二十七日に行われました左藤義詮議員の質問に対して、「今でも自由国家群とそれから共産主義国家群とが、いわゆる冷戦というのをやっておりまして、この冷戦の仲間に入れば、これは熱戦になるおそれがほんとうにあると私は思っております」と答弁をしておられるのであります。しかるに現実においては、防衛関係費を増額したり、あるいは防衛六カ年計画を作成し、そのために必要に迫られて国防会議の設置を急いでおられるのであります。私は政府は、施政方針に基調を置いて政策を行い、予算の編成が行われ、法案の提出がなされるべきであると信ずるのでありますが、鳩山内閣は外交だけが二元外交でなしに、内政の面においても表裏のある政策を行おうとしているのではないかと思うのであります。鳩山総理大臣は、自身おやりになっておる演説と、政治の上の矛盾にお気づきになっておるかどうか、この点について私はまず第一に総理所見をただしたいのであります。  次に、私は鳩山総理に対して、沖縄の残存主権と、沖縄島民の日本復帰運動について、政府所見をただしたいのであります。元来沖縄は、わが国の沖繩県であったのでありますが、平和条約第三条によって合衆国を唯一の施政権者とする信託統治制度のもとに置かれるものとなっておるのであります。しかしサンフランシスコ会議の席上において、ダレス首席全権はわが国が残存主権を保有することを認め、当時の吉田首席全権もこれら諸島が一日も早く日本の行政に復帰することを希望すると発言しておるのであります。また現実にわが国においても、内地在住の沖繩人はすべて、公法、私法上の日本国籍民としての待遇をしているのでありますから、鳩山総理としても、当然、琉球、小笠原の残存主権はお認めになっておるものと思うのであります。昨年二月の二十三日に、ニューヨークにありますところの国際人権連盟議長、ロージャ・ボールドウィン氏から、わが国の自由人権協会会長、海野晋吉氏に対して、次のような手紙が送られて来ております。「拝啓、私はただいまアメリカで定期的に刊行されている速報によって、次のような報告を受けました。それによると、沖繩で合衆国当局が一方的にきめた非常に低額の代価で土地の強制的な買収をし、非常に高い使用料を取って貸し付けて、土着の地主たちを虐待しているということです。これに対して沖繩人たちは抗議をしたが、米軍当局はそれを共産主義者だと応酬している。私たちは沖繩に通信員を持ちませんが、貴協会には連絡の方法があることと存じますので、右御調査方お願い申し上げます。また日本の新聞などで多分報道されていると思いますが、その事実及び貴下のこれに対する見解もお知らせ下されば幸甚です。そうして下されば、私たちはアメリカ当局とこの問題について交渉をいたします。なお、沖縄は東京の極東軍司令部の統轄下にあるものと思われますが、貴下が東京にあるアメリカ極東軍司令部に有力な抗議をすることはけっこうと存じ上げます。一九五四年二月二十三日国際人権連盟議長ロージャ・ボールドウィン、海野晋吉先生」以上の手紙が来ておるのであります。この手紙が来ましてから、すでに一カ年余を経過しておるのでありますが、沖繩住民とアメリカ軍との紛争はいまだ解決をみることがなく、人道上許されざる人権侵害事件はあとも絶たないようであります。本年になってからも相変らず実力行使による土地の強制取り上げが実施され、傷害、暴行事件等の人権侵害は一々取り上げることのできないほど多いということを、現地からの新聞特派員は報道しているのであります。私は一々その事例を申し述べたくはありません。また一々申し上げなくても、週刊誌あるいは日刊新聞の記事によって鳩山総理も御覧になっておることと思うのであります。私はこうした問題が一日も早く解決されることが、沖繩住民のためにも幸福であるばかりでなく、アメリカの名誉のためにも望ましいことであると思うのであります。平和条約第三条では、合衆国は「行政、立法及び司法上の権力の全部及び一部を行使する権利を有するもの」となっておりますから、日本政府の立場は、正面から抗議することは、あるいはできにくいかと思いますが、しかしわが国に残存主権が認められているのでありますから、アメリカ政府に対して早期解決を要請することは不可能ではないと思うのであります。幸い鳩山総理は、本年一月十日ダレス長官への手紙の中においても、国民と共に外交を行い、潜在する反米感情を一掃するように努めたいと書いておられるそうでありますが、いずれわが国に復帰する運命にある沖縄島民のために、アメリカに対して沖繩民政の是正を要望せられる御意思はありませんか。また沖縄島民の多数は一日も早く日本に復帰したいと考えて運動を続けているのでありますが、その運動に協力をされる御意思はありませんか、承わっておきたいのであります。  次に私は綱紀粛正と大臣の私企業兼職禁止に関する問題について政府所見をただしたいのであります。私は、政府が施政演説の中に綱紀粛正の問題が一言も触れておられなかったことに対して、まことに遺憾を感じたのであります。鳩山内閣は、総選挙に臨むに当っては、役人の麻雀、ゴルフを禁止すると宣伝したのでありますが、むしろ政局担当の責任にある現在こそ、行政機関の職員全体が公務員としての自覚に徹して、国民に奉仕する心がまえを徹底させることが必要ではないかと思うのであります。毎年、会計検査院の手によって検査され、報告されます結果を見ましても、予算の不正不当支出は歴年増加の一途を辿っております。実に目に余る乱脈さが見られるのであります。例を最近三カ年にとりましても、昭和二十六年度の批難事項一千百九十八件、二十七年度の批難事項一千八百十三件、二十八年度の批難重項二千三百三十二件となっておるのであります。金額においてもまた同様であります。特に防衛庁関係の不正不当支出と補助金関係に基くものが非常に多いのであります。苦しい日常生活の中から血の出るような思いをして納める国民の税金が、不当不正に支出さしている事態をいかにして是正する方針であるか、政府の方針が承わりたいのであります。私が従来決算委員会において体験をいたしましたところによりますと、大体私は二つの問題が残されていると思います。一つは責任者の処分に対する従来の方針であります。一つの例を申し上げますと、部下の不正事件の責任を問われまして転勤をした責任者の転任先が従来よりも上位のポストになっておった例さえも私は知っております。不正不当事件の責任者に対する処分は厳罰をもって臨むこともやむを得ないのではないかと思うのでありますが、政府のこれに対する所員がお尋ねしたいのであります。またもう一つの問題といたしましては、行政運営上欠くことのできない経費を、それをやらないために、これを交付しないために予算の流用が行われ、あるいは民間団体等からの寄付金をもって行政運営をまかなっているというような例が各方面に見られるのであります。必要な経費を渡さないでおって、そうしてこれを、綱紀の粛正をするというわけには参らないと思いますので、必要な経費を予算に編成をしてこれを交付される御意思があるかどうかこの点についてお尋ねをいたしておきます。  なおこれに関連して鳩山総理に承わりたいことは、総理の施政演説をたびたび例に出すようでありますが、総理は、政府民主主義のルールを守り、みずからその身を清廉にして国会の品位を高め、これによって政治の信頼を回復することに全力をあげる覚悟であると言っておられるのであります。まことにわれわれ傾聴に値する名言であると思っております。御承知のように、第十九国会において国民は議会政治に対する大きな不信の念を抱いたのでありますから、その必要はわれわれが当然認めなければならないのであります。疑獄問題が起ったからといって、国務大臣が私企業の役員をあわてふためいて辞職しなければならないような醜態を再び繰り返してはならないと思うのであります。国民に対して新生活運動を呼びかけ、公務員に対して綱紀の粛正を行わんとする、それより前に、政府みずから、みずからの周囲をきれいに洗って、そうして国民に呼びかけをする必要があると思う。この際、鳩山総理は、大臣に就任する場合には私企業の役員あるいは政府より補助金を受ける諸団体等の兼職を禁止する御意思がおありでないか、みずから国民に対して範をお示しになる御意思をお持ちでないかどうか、お尋ねがいたしたいのであります。  次に終審長官に対して一点お尋ねをいたしたいのでありますが、総合経済六カ年計画完全雇用関係であります。政府昭和三十五年度の人口推定における労働力化率を六五%という計算をしております。それによって二百五十九万人の労働人口がふえることになっておるのでありますが、昭和二十七年—昭和二十九年の三カ年平均の労働力化率は六八%となっておるのであります。これによって計算をいたしますと、昭和三十五年度の労働人口は四百六十一万人増加することになるのでありますが、政府が六五%と計算をされました算定の根拠を御説明願いたいのであります。また聞くところによりますと、財界の有力な意見として、完全雇用の問題に対して、現在の貿易規模では直ちに完全雇用を目標とすると、肝心の経済自立の達成が困難になるから、前三年は経済自立に重点を置き、完全雇用は第二義とすべきであるとの有力な意見があるのであります。この意見によりますと、完全雇用はあと廻しにせられ、当面、企業合理化を強力に推進することになるのでありますから、当然企業合理化の中からはみ出されて来る失業者ができて来ると思うのであります。労働生産性の向上に主体性が移行しますと、そうならざるを得ない。われわれとしても、独占資本につながる鳩山内閣の経済政策、労働政策のもとに完全雇用が実現すると信じてはおりません。やはり完全雇用は、社会主義政策を推し進めること以外にその道はないと思っておりますが、今さしあたっての問題として、この企業合理化と完全雇用とを、どちらを優先させるか、三カ年間これをあと回しにする考えかどうか、その点を一点ただしておきたいのであります。  最後に私は、防衛問題について防衛庁長官に一点お尋ねをしたいのでありますが、すでに防衛六カ年計画というものの防衛庁試案はできておるはずであります。試案ができておって、予算を編成をして、そうしてこれを実行に移さなければならない、そういう段階に来たから、今急いで国防会議の設置を進めておるというのが実際だと私は思う。国防会議を作るのは、必要に迫られてやっておると思うのですから、この防衛六カ年計画の試案でけっこうですから、一つ試案の構想を御発表願いたい。同時に、木村保安庁長官は従来自衛隊を増強する場合に、大体十二万ないし十三万程度が志願兵制度によって行われる限界である、これ以上を増強するとすれば、当然徴兵制度を考えなければならぬという意味のことを国会で答弁しておられる。防衛六カ年計画、すなわち陸兵十八万、海上十二万トン、航空千百機といわれておる、そういうものをもし作る場合に、徴兵制度の必要はないか、志願兵制度でそれが果してやり得るかどうか、この点について一つ防衛庁長官所見をお尋ねをいたしたい。  それから運輸大臣にお尋ねをいたしたいことは、従来から問題になっておる定点観測の問題であります。この定点観測の問題は、毎年々々災害のために苦しめられておる日本の農業といわず、あるいは海運業といわず、あらゆる国民の非常に熱望しておるところです。これの復活を国民の各層が要望しておる。たとえば、これに対する予算は、例の予算外契約で出しておりますところの防衛関係予算の一割程度をさけば、定点観測の予算はできるはずなんです。これをやらないでおいて、これをあと回しにして今度の予算に組まれておらない。国民の生活を守ることの方が私は大切だと思う。その必要なことをやられておらない。この予算編成に対して運輸大臣はいかなる努力をせられたか、その必要をお認めになっておらないのか、その点について運輸大臣の見解が承わりたいと思う。  以上私は諸点について、政府の答弁を明確にされるよう要望いたしまして、質問を終ります。(拍手)    [国務大臣鳩山一郎登壇
  16. 鳩山一郎

    国務大臣鳩山一郎君) 小酒井君の御質疑に対して答弁をいたします。  第一の御質疑は、外交について私の申しましたことと、内政についてのとっておる処置とが矛盾をしておるではないかというようなことでございすした。防衛についてあるいは国防会議を起したり何かするというのが、世界を平和にせんとする目的と矛盾をしておるというような御意見だと思うのでありますが、そうではないのであります。今日の世界の情勢は、全く無防備に日本を置いておくということは、私はやはり危険だと思っております。そこまでに世界の平和ができていないと思うのであります。それですから、日本の防衛力を作りたいと思うのは、現在の世界の情勢で当然だと思います。これが世界戦争をむしろ起さない方に役立つかもしれないのでありまして世界戦争勃発と少しも関係はないと考えております。  第二の沖縄の残存主権のことでありますが、これは質問者がよく御承知のようでありますが、とにかく領土権はわが国にあると私は思っております。ただ、平和条約第三条、やはり御指摘になりましたが、平和条約第三条によって、米国は立法、司法、行政の三権の全部を行い得ることになっておるので、日本は現在においてはこういう権限がないのでありまするから、残存主権というものは、ただ領土権だけだろうと思うのであります。アメリカには、島民の日本復帰については機会あるごとに米国に伝えておるのでありまして、米国もよくこれは了承しておるものと信じております。でありまするから、奄美大島のように向うが統治権を放棄さえすれば、当然に沖繩は日本に復帰してくるのでありまするから、そういう機会の一日もすみやかならんことを欲しておる次第でございます。  第三の御質疑の綱紀粛正について、私企業兼職を禁止する意思はないかというようなお話でありましたが、一般的には好ましくないことであろうとは思いますけれども、場合によっては、これを認めなくちゃならない場合があると思います。検討しなくてはならない場合もあるだろうと思います。全部を私企業兼職を絶対に一般的に禁止するという考えは、今のところ持っておりません。  他の御質問は、私よりは関係閣僚の方が適当だろうと思いますので、私はこれをもって答弁といたしておきます。    〔国務大臣高碕達之助君登壇
  17. 高碕達之助

    国務大臣(高碕達之助君) ただいまの小酒井さんの御質問お答えいたします。  六カ年計画において、労働力の人口増加の算定に誤算がないか、こういう御質問でございます。これは将来のことでありますから、なかなかこの算定は慎重を期していろいろ考慮いたしましたのですが、現在日本の統計で一番信頼し得るものは、厚生省の人口問題研究所で持っておりますところの総人口及び生産年齢人口の統計でございます。この数字を基礎にいたしまして、労働力化率は最近の実績その他を勘考いたしまして、現在のところこれは妥当と存じております。  それから第二の御質問の、経団連等で言っております完全雇用企業の合理化と両立せないではないか、最初の三年間は企業の合理化が先であって、完全雇用があとだ、どっちをとるか、こういう御質問でございますが、これは実際むずかしい問題でございまして、これを両方、完全雇用とそれから企業の合理化というものを並立していくというところがほんとうの努力を要する点だと存じまして、総合経済六カ年計画におきましては、重点的に、かつ効率的に企業の合理化を推進いたしまして、企業生産性を向上し、コストを下げて、そうして輸出を増進し、順次生産増加するということに努力をいたしまして、できるだけこれは完全雇用とそうして合理化とを並行的に進めたい、こういう計画で今実は進みたいと存じます。    〔国務大臣杉原荒太君登壇
  18. 杉原荒太

    国務大臣(杉原荒太君) お答えいたします。  政府といたしましては経済六カ年計画に見合う長期防衛計画を作成する方針をとっておりますから、防衛庁といたしましても当然の職責といたしまして、策案をせっかく準備、研究いたしております。が、まだ防衛庁自体といたしましてもいろいろ検討を要する点が残っておりまして、固まった結論を得るに至っておりません。従って政府としての成案をまだ得るに至っていない段階でございます。  それからさらに、この六カ年計画の検討に当りまして、私らのところでは、今、徴兵制度は考えておりません。   [国務大臣三木武夫君登壇
  19. 三木武夫

    国務大臣(三木武夫君) お答えいたします。  北方定点観測再開の必要については、小酒井さんの御認識と同じ認識を持っておるわけでございまして、何とかして今年度再開をいたしたいと努力をいたしたのでございますが、御承知のように、従来使用いたしておりました船舶、これを新造しなければならぬわけでございます。そのためには十九億円の資金を必要とするわけでございまして、目下の財政状態からなかなかこれが困難になって参ったわけでございます。しかしながら、太平洋上の観測を強化するために鳥島測候所に上高層の観測業務を開始し、また北日本方面の気象予報を強化するために北海道のオホーツク海岸の紋別に測候所を新設する等、気象の業務の充実をはかってはおりますが、しかしながら御指摘の通り、北方定点観測はぜひとも再開をしなければならぬこれは課題でございますので、できるだけ近い将来にこの実現をはかりたいと考えております。(「必ずやりなさいよ」と呼ぶ者あり)    〔小酒井義男君発言の許可を求む〕
  20. 河井彌八

    議長河井彌八君) 小酒井義男君。
  21. 小酒井義男

    ○小酒井義男君 まだ若干時間があると思うのですが、よろしいですか。
  22. 河井彌八

    議長河井彌八君) よろしうございます。御登壇を請います。    〔小酒井義男君登壇拍手
  23. 小酒井義男

    ○小酒井義男君 どうも満足するような答弁がいただけぬのですが、時間の関係上、ただ、鳩山総理に二点だけ、答弁の中で重点的な問題について、再質問を申し上げたいのです。  一つは、沖繩の人権問題に対して、政府は何らこれに対する解決の方途をお考えになれないのかどうかということ。もう一点は、綱紀粛正に対して具体的な御答弁がなかった。従来のような、ああいう方針で鳩山内閣も、綱紀の、いろいろな不当不正支出に対するところの処置を行なって行くのか、もっと厳格な立場で責任のある対策を講じる考えがないかどうか。この二点だけ再質問をいたします。(拍手)    〔国務大臣鳩山一郎登壇
  24. 鳩山一郎

    国務大臣鳩山一郎君) お答えをいたします。  私は綱紀粛正の問題について、重点が私企業を許すか許さないか、兼業を許すか許さないかの点にあったと思うので、それだけについて答弁をいたしました。綱紀粛正は万難を排してできるだけやりたいと思っておりまするから、ただいまの御質疑のありました要項に基いてよく検討して参りたいと思います。  それからもう一点の沖縄の問題は、具体的に何をしたということはありませんけれども、ただ沖繩島民が日本に帰属を欲しているということについては、アメリカに対してたびたびそう言ってありますから、アメリカはこれを了承しておりますと申したのであります。それでは足りませんかしら。(小酒井義男君「総理は個人的にもたびたびダレス長官に書簡を送っておるようですから、やはりこういう個人的な立場でも、ああした問題の解決をはかる努力をおやりになるかどうか」と述ぶ)機会あるごとに努力をいたします。(「綱紀粛正は友愛精神じゃできぬ」と呼ぶ者あり)やはり基礎になるでしょう。(「私語しちゃだめです」と呼ぶ者あり、拍手
  25. 河井彌八

    議長河井彌八君) 片岡文重君。    〔片岡文重君登壇拍手
  26. 片岡文重

    ○片岡文重君 私はこれから日本社会党第二控室を代表いたしまして、政府に若干の御質問をいたしたいと存じます。  まず鳩山総理にお尋ねをいたしますが、ただいま同僚小酒井君からも指摘せられました通り、今日の政界、官界における綱紀の弛緩については、すでに鳩山総理、一次組閣以来言明をされておるところであります。当然これを認めておられるところでありまするが、その後における綱紀の粛正に対する具体的な方策はほとんど見るべきものはないと私は考えます。で、御承知のように、わが国において今日ほど国民の政治に対する信頼を失っておる時代はないと考えます。もちろんそのよって来たる原因は、ただいま申し上げました綱紀の弛緩、政界の汚れ、あるいは高級官僚の血税濫費、不正選挙によるいわゆる大物の免れて恥なき態度等々、いろいろあると思いまするが、少くとも、原因はともあれ、政治に対する国民の信頼を失うという姿は、法治国家として、民主主義の国家として、これ以上の悲劇はないと私は考える。これに対して総理は一体、この失われた政治に対する信頼の回復のためにいかなる手段をとらんとするか、これをまずお伺いいたしたいのであります。  次に、過般の、たしか十三日であったと記憶いたしまするが、記者会見において鳩山総理は、適当な相続人さえあれば引退してもよいと言明せられたと伝えられております。もしそうだとするならば、その引退を声明せられた真意をまずお伺いいたしたいのであります。  過ぐる衆議院選挙に当って、四十二万戸の住宅建設、また五百億の減税、さらには中小企業対策、社会保障強化等のできもしない公約を盛りだくさんに発表して、その選挙が終りまするや、少くとも、このアドバルーンによって辛うじて第一党を獲得して組閣早々にして今日引退を声明せられるというがごときは、無責任もはなはだしいと私は思う。国民を侮辱するもきわまれりと私は考える。このような態度をもって今日国政に当っておられるという、その御心境を私は伺いたい。特に、今日総理が適当な相続人あればという御心境は、まさに百八十余名を数える民主党の中に」人の総理大臣たる器ないかと、まことに御同情の念禁じ得ないものがあります。(拍手)しかし、だからといって、今日そのような発言は私は許さるべきものじゃないと考える。十分お考えの上、腹を据えて一つ御答弁をいただきたい。  次に重光外務大臣にお尋ねをいたします。重光外務大臣はしばしば機会あるごとに、日本の外交は自主的外交であると言明せられておりまするが、組閣以来の外交のあり方を見まするに、私どもにはどうしてもそうは考えられません。いろいろと実例をもって申し上げるまでもないと存じますが、たとえば過日のアジア・アフリカ会議等のごとき、少くともこれに参加された二十九カ国の主要国がそれぞれ総理もしくは外相を送って自国の立場を率直に表明し、大胆に意見の交換を行なっておられます。わが国もこの種会議には進んで総理なり外相が出席をして、その抱懐する考え、また日本の置かれておる今日の立場等については、十分にこれらの会議を通じて世界に表明すべき事柄ではないかと考えるのですが、遺憾ながら御出席はなかった。これは一体どういうわけで出席をされなかったのか。予算編成中であるとか、あるいは国会の開会中であるというような理由は、私どもはすでに承わっております。そうでなくして、出席し得なかった、気がねしなければならなかった何ものかがあるはずであります。真相を御説明いただきたいと思うのであります。  さらに、このバンドンにおけるアジアアフリカ会議の際の日本代表と周恩来中共首相との墾談の際に、日中両国に半官半民組織による通商代表部を設けて、事実上国交の正常化を促進せしめてはどうかというような話があったはずであります。もちろんこれには日本における台湾政権の大使を認めるわけにはいかない、しかし、だからといって、今すぐこれを追放せよという要求をするものではないという含みの多い前提のもとになされたとは存じまするが、この問題について、外相はどのようにお考えになられるか、どういう措置をされるおつもりであるか。  第三点は、同じくその懇談の席上であったと存じまするが、中国に今抑留されておる戦犯の日本送還について、周恩来から、日本政府がこれら戦犯の減刑、仮釈放等の処遇について責任ある交渉ができるならば、これを送還してもよいという申し出があったはずであります。これについて外相はどのようにお考えになっておられるのか。また今後どのように措置をしようとなさっておられるのか、お伺いをいたしたいのであります。  第四点は、去る二十三日バンドンかりのUP特電として伝えられるところによりますると、やはり中共の周恩来総理が、中国はアメリカと戦争するここは欲しない、極東の緊張問題に関してアメリカと会談することを望んでいるというステートメントを発表し、さらにこの政治委員会では、もし代表のうちで仲介者をかって出る者があれば、喜んでアメリカと交渉したいと、こう述べておられます。これに対して、同じく二十三日のワシントンからのUP特電は、アメリカ国務当局の声明を報じて、この周提案を受諾する用意のある旨を伝えてきております。まらに三十六日ダレス・アメリカ国務長官は、中共との停戦会談を広く門戸を開放するという示唆を行なっております。この種の問題は、少くともわが国の浮沈にも関する密接重大な外交交渉である。これが太平洋をはさんでまさに火花を散らしておりましたときに、日本の外交専門家たちは一体どこで何をしておられたのでしょうか、またどういうことをされるのでしょうか。わくともこの台湾海峡に関する事態は、わが国が原爆の基地になるかならないかの私は重大な問題だと存じまするので、このようなときに、日本が進んでこれに介入することができないようなことでは、外相がしばしば言明されるような自主的外交が行われているなどということはとうていわれわれには信じ得られないのです。対米依存外交か、対米追従外交かと言われてもやむを得ないのではないかと存じますが、これに対する外相の御所見を伺いたいのであります。  次に河野農林大臣にお伺いをいたします。何事によらずきわめて宣伝上手でいらっしゃる民主党の中にあって、ことのほかとりわけ宣伝上手でいらっしゃる河野農林大臣の農業政策なるものは、ようやく身辺に迫って参りました農村不況の脅威におびえておりまする五百万耕作農民の心理作用に、はなはだ微妙な影響を与えておるようであります。で、この際私は率直にお尋ねいたしますが、先ほど同僚議員の御質問の中にも食糧の問題について農法、耕地、農機具等の改良による増産によって食糧の自給態勢を確立することに重点を置いておられるのか、それともますます外米輸入に依存していかれるつもりなのか。先ほどのお話ではいずれに重点を置かれるのか、はっきりしなかったように私は考えまするので、この際自給態勢をとるということに重点を置かれるならば、その具体的な計画を明瞭にお示しいただきたいのであります。  さらに第二点は、農相はことさら選挙期間中に、硫安の五円値下げを誇大に宣伝しておりました。選挙戦術としては少からぬ効果を上げ得たものと思いますけれども、これが実際に農家二戸当りに与えました負担軽減は、年間わずかに四十円、まさに二階から目薬にも及びません。真に政府がこの農家経済考えての肥料値下げでありまするならば、当然硫安に限らず化学肥料全般にわたって、かつ小売価格まで規制するような誠意ある方策をとるべきであると考えまするが、農相はいかにお考えでしょうか。  第三点は、米価問題についてでありまするが、従来政府は米価審議会に対して一方的に政府原案を押しつけてきたのであります。今年は一体どのような方式をとって、いつごろ決定するつもりであるのか、お伺いいたしたいのであります。伝えられるところによりますと、二十八日の記者会見で、本年産米価については、一応予算米価である九千七百三十九円を最低として、正式決定を秋の収穫後にしたいという説明をされたそうでありまするが、もしそうだといたしますれば、農相のお考えになっておるところは、明らかに秋まで米価決定を延ばせば、その間に輸入食糧の値上り等によって食管会計に余裕ができる。従って大蔵省との交渉も容易になるだろう。さらに最低米価と言っておっても、今のことであるから、暫定的にきめたものであり、従って秋になって、なお削ることもできるし、増額はしなくても済まされるということもできるのではないか。さらに、米価が多少動いても、集荷量には大して影響ないものと考えておられるのではなかろうか。あるいは、そんたくに過ぎるかもしれませんが、少くとも、もしこのようなことであるならば、政府の現に行わんとされる農政のあり方は、五百万耕作農家にとって、とうてい受け入れ得ないものである。と同時に消費者側にとっても、きわめて重大な関心を持たざるを得ないと存じまするので、具体的にお示しを願いたい。  次に、第四点として伺いたいのは、零細な沿岸漁業の保護育成について、ほとんど政府考えておられないのではないかとさえ思われる現状でありまするが、これについて、もし考えておられるならば、これまた具体的に一つ御説明をいただきたいと思います。  次に、三木運輸大臣に対してお尋ねをいたします。元来わが国の交通政策なるものは、戦時中の一時期を除きましては、ほとんど陸は陸、海は海として考えられまして、総合された有機的な計画というものはほとんど考えておられなかったのではないかと思うのであります。しかしながら御承知のように狭隘な国土に少い資源をもって自主経済を確立しようといたしますならば、まずもって今日の輸送機関の総合的な運用が、経済的かつ能率的に行われることがきわめて必要なことだと私は考えます。で、無益な競争や不経済な重複輸送等は極力回避すべきであると存じますが、こういう点について特に海陸空、いまや三位一体となっての交通機関が発達しつつあるのですから、これをいかにこの総合計画の上に生かされようとするのか、御所見を伺いたいのであります。  第二点は、日本航空の経営でございますが、すでに大蔵省からも若干の警告がなされておると伝えられておりますが、その経営はきわめて放漫な赤字経営であり、民間出資十億円というものは、ほとんど消化されておらないのではないですか。その上この利潤を上げておる整備関係の仕事は会社を別途に作ってこれを民間に与えて、血税による政府出資は、ことごとく赤字経営を続けるところの日本航空にまかされておる。これはあまりにもあくどいやり方であって、まさに一部の少数者に便宜を供与する以外の何ものでもないと私は存じます。これに対して運輸相は今後どういうようにこれを経営し、維持していこうとお考えになるのか、お伺いをいたしたいのであります。  これをもって終ります。(拍手)    〔国務大臣鳩山一郎登壇
  27. 鳩山一郎

    国務大臣鳩山一郎君) 片岡君の御質疑に対して答弁をいたします。  国民の政治に対する信頼の回復ということは、最も必要なことであります。片岡さんがその必要をお述べになったと同様に、私も国民の政治に対する信用の回復は非常に必要なことだ。で、もしも国民が政治に対して信用を失ったならば、ただ革命あるのみでありますから、そういうことのないように、われわれはできるだけの努力をしなければならぬことは当然であります。さてどうして政治の信用を回復するか、これはどうしても政府としては国民に対してあけっぱなしの政治をして、そうしてその約束が実行せられないときには責任をとる。そうして責任の政治をして、信用の回復をもってくるより仕方がないものと思っておるのであります。  次に、私が引退の真意はどこにあるのか、適当な相続人があればやめると言ったのはどういうわけかということであります。ただいまでも、やめた方がいいというような情勢ができますれば、いつでもやめたいと思っておりすす。これは決して国民からの信託にそむいたという意味ではないのであります。どうかして日本を戦争のないような世の中にして、そうして日本人の国民生活を安定するというような二つの大きな内外に対する希望ができそうになれば、もとよりできそうな方に一歩でも前進した方がいいと思っておりますから、そのために保守政党の結集が必要だとしますれば、そのために最善の方法をとることが、やはり国民に対する信頼を果すゆえんになると思う。そうして政治の責任を尽すことが、政治に対する国民の信頼を回復することにもなると思いまして、私はああいうような発言をしたのであります。決して別に何の意味もあるわけじゃありません。国民の信頼を受けながら引退をするというのは無責任じゃないか、しかしながら、信頼を受けたより以上の成果が上るような情勢ができれば、その方に行くことが、国民の委託に沿うゆえんであると私は思っておる次第でございます。(拍手)    〔国務大臣重光葵君登壇拍手
  28. 重光葵

    国務大臣(重光葵君) 外交問題に対しまする御質問お答えいたします。  バンドン会議に関することでございました。バンドン会議の重要性は本院においても私の強調いたしましたところでございます。しかし、私は前にも御説明いたしました通りに、私の議会に対する仕事が、バンドン会議に行くことが適当でないと、こういう形勢がございましたから、私はバンドン会議に出席するということを自分主張しなかったのでございます。いろいろこれについては御批評もございましょう。しかし、私はこの際には議会における仕事が、私の最高の仕事と考えまして、総理並びに外務大臣の出席以外の方法で、最も適当な最善の方法をとった次第でございます。なお、バンドン会議につきまして、中共との関係に御言及がございました。台湾海峡の問題が一番大きな問題でございました。台湾海峡を差しはさんでおる今の緊張した国際情勢がきわめて重要な問題であると、いうことは、全くお話の通りであります。日本としてはこれに重大な関心を払わなければならぬということは当然でございます。この台湾問題について、バンドン会議において中共の首相周恩来氏の発言もあったことも十分に報告に接しております。また、これに対してアメリカ側がどういう反響を示したかということも承知をいたしております。元来、このバンドン会議におきまして、日本の代表が有力なる平和的の発言をしたということは、台湾海峡の形勢を具体的に頭に置いてやったわけでございます。すなわち国際紛争については、いかなる場合においても武力を排して、そうして平和的手段をもって、話し合いによってこれを解決するという主張をいたしまして、その主張がバンドン会議の平和決議案に採用されたことは、あるいは御承知かとも存じます。かようにして台湾海峡における緊張したる形勢を平和的に解決をしようという空気を作り、またその方向に関係国をし向けるということがわれわれの方針であったのでありまして、バンドン会議における周恩来首相の発言も、あるいはかような空気に影響されたのではないかと考えまして、この点は非常に私の喜んでおるところであります。しかし、この重要な問題について、むろんこれにそのままにとどめておくということは、まだ足りないのでありまして、さような考え方をもって関係国に対して十分に解決方について努力をするようにし向けることが必要であろうと考えております。しかし、それだからといって、正式に日本が今これに介入をしてそうして双方の話し合いをあっせんするというような直接の手段をとるのは、まださような時期はきておらんように考えます。しかし、この紛争が一日もすみやかに平和的に解決をいたしまして、そうして東亜の安定、平和を維持するように十分にし向けていきたい、こういう方針をもって進んでおるわけでございます。    〔議長退席、副議長着席〕  それからなお、周恩来氏から貿易代表部を日本に作ることや、戦犯の送還について発言があった。これは会議場の発言ではないようでありますけれども、そのことについては、これまた報告を受けております。しかしながらこれは正式のまだはっきりした意向がよくわかりませんので、そのことについては十分先方の意向も突きとめまして、かようなことについては十分に検討を加えて、そうして特に戦犯送還のごときは、個人的な問題としては非常な重要な問題でありますから、手落ちのないように、一つ実益を得るように努力をいたしたい、こう考えておる次第でございます。お答え申上げました。    〔国務大臣河野一郎君登壇拍手
  29. 河野一郎

    国務大臣(河野一郎君) お答えいたします。  米の自給の問題についていろいろ御意見がございましたが、これは少し私の考えておりますること、従来主張して参りましたことについて誤解があるようでありますから、この機会に申上げておきたいと思います。私はこの米の問題を考えまするときに、常に農村経済の立場から米の問題を考える。全体の国民食糧としての立場から米の問題を考える。国家の経済、国家の財政の立場から米価の問題を考える。この三方面から考えて、そこに一つの結論を得るように努力していかなければならない。こう思うのでございます。そこでこの私の考えからいたしまして、米の自給を可能ならしめるように努力するということは当然のことでございます。当然のことでございますが、さればと申して、農家に負担をかけるような行き方で米の自給を推進するということは、必ずしも私はとらないのであります。これがときに誤解をされまして、外米に依存するのかというふうになるのでございますが、私はあらゆる施策を講じて、先ほどもお答えを申し上げましたように、米の自給は結構なことである、ぜひやらなければならぬことである、しかしその限界点は、農家経済を圧迫してまで自給を国家が要請してはいけない。こういうふうに私は考えるのであります。でございますから、そこに問題があり、決して外国産の米の値段が下ったからといってその下った米をわが国に持って参るといって、それに影響せられて、国内の米の値段を農家の買上げ値段を下げなくても、外国の米が安く買えるから、農家の米作を奨励しなくてよろしいというようなことは、私は毛頭考えておりません。これは全然別であります。なるべく海外の米を安く買って来ることはぜひしなければならぬ、心がけなければならぬことでありますが、それが下ったから、安く買えるからといって国内の米価をそれによって動かすわけには参りません。この点は御了承いただきたいと思うのであります。ただ、どこまでも考えなければなりませぬことは、先日も野溝議員の御質問お答えいたしましたように、海外の食生活費がだんだん下って参りますのに、どんどん下って行こうといたしますときに、労働問題から考えて、日本食生活費を十分考慮しなければならないという点に、私は又別の要素があると思うのであります。その意味から総合的に食生活改善について、はかっていかなければならないというような、いろいろな要素がございますので、それらを十分とり合せて国内の米の問題については考えていきたいと、こう思っておるのでございます。  ついでに米価の問題について申上げておきます。米価の決定につきましては、申上げるまでもなく米価審議会の答申を十分尊重していかなければならんことは当然でございます。従来とかくこれについて、これを閑却したきらいがあるかどうかということでございますが、私は従来とても十分尊重しようという、政府には熱意があったこととは思いますが、財政等の点から見合いまして、十分その意思をくむことができなかったのではなかろうかと思うのでございます。私といたしましては、今考えておりますることは、本年は従来のような集荷の方法を変えまして、米について予約買付制度をやろうといたしておりますので、いつ一体米価決定をすることが一番妥当かと考えられますることは、予約買付、すなわち予約をいたします前に米価をきめることがいいか、実際集荷するときまでに決定するほうがいいか、これは幾多の問題があると思います。どちらが農家のためによろしいか、ないしはどちらが適切妥当であるかというようなことは、考えなければならないことでありまして、私はこの点を、予約制度の実施に先だって米価審議会の皆さんにお集りを願って十分御懇談を願いまして、その決定の時期はいずれが妥当であるかというようなことについて、御意見を伺ってしたいと考えております。ただ、私の考え方といたしましては、どこまでも米価の算定の基礎は、生産費に重点を置かなければなりませぬと同時に、またその米の豊凶も相当の要素を持つと思うのでございます。凶作でありますれば、もちろん相当の価格にこれは上げなければ、農家経済の維持ができませんけれども、そういう関係がありますので、出来秋まで待つということも一つの考え方ではないか、こう新聞記者に私は意見を発表したのでございます。いまお話のように、それまで待つ、そうして米がとれたならば、暫定的にきめたものを、さらに安く下げるようなことをしやせぬか、そういうインチキなことは、絶対に考えたこともございませんし、そういうことで農林大臣が務まるとも考えておりません。この点は一つ、誤解のないように、お聞き取りいただきたいと思います。  肥料政策についていろいろお話がございましたが、これも一つ親身にお聞き取りをいただきたい。よく硫安だけ下げて、硫安一トン当り四十円じゃないか、こういうことをよく非難せられます。私はあのときに、肥料の問題について、硫安は硫安製造業者が一番強く反対をいたしましたので、所期の目的を達することができなかったのでございます。ただしその際に過燐酸、石灰窒素、カリ、これらの三肥料については、硫安以上に大幅の値下げをいたしております。業者の御協力によりまして、ある程度の目的を達しているのであります。しかしこれはどこまでも暫定的なことでございまして、来たるべき肥料年度におきましては、肥料審議会の議を経まして、そうして相当の値幅の値下げをしていきたいことは、私が就任当時に外部に発表いたしました通りで、硫安におきましては、現に私が予想いたしました通りに、十万トンの増産になっております。十万トンが予定より増産せられれば、ある程度の硫安の値下げをすることは当然でありましょう。そういうふうに徐々に目的を達成するような事態になっておりまするし、加えて私といたしましては、通産大臣の御協力を得て、硫安その他の肥料の増産に相当の施策を講ずるように、目下準備中でございます。でございますから、近き将来において可能な点は、硫安におきましては国際価格にまで日本の硫安の価格を下げていきたい、そうして国内の農産物の引き下げをはかっていきたい。こういうかうに考えているのでございまして、伏して根拠のない宣伝をするとか、農村に対して、いい加減なチャランポランを言うとかいうようなことは決して弔えておりません。私は自分で発表いたしましたことにつきましては、深く言責を重んじていくつもりでございます。御了解いただきたいと思います。    〔国務大臣三木武夫君登壇
  30. 三木武夫

    国務大臣(三木武夫君) 片岡君の御質問お答えいたします。  第一点は、海空陸一貫した運輸政策というものが必要であるという御意見でございますが、全くその通りでございます。政府経済の六カ年計画を樹立して、総合的な経済政策を推進して行こうと考えておるのも、やはりこういう総合的な行政を運営していかなければならぬという考えに基くものでありまして運輸行政も、政府経済総合以策の一環として考えて行きたい。しかし具体的になって参りますると、いろいろ問題がございます。あるいは海陸空との間の問題、あるいは鉄道と自動車の問題、都市交通の問題、いろいろの具体的な問題が出て参りますので、本年の一月に運輸省内に、交通政束連絡会議というのを設置いたしまして、部会も設けて、そうして具体的に検討を加えつつあります。何分にも複雑でございますので、右から左に解決というわけにはいかない、非常に緻密に検討を加えなければならないので、そういう処置をとりまして、総合的な運輸行政をやっていきたい。こういうことで努力をいたしておる次第であります。  第二の日本航空会社に対しての経理についていろいろお話がございましたが、とにかく日本航空事業が欧米諸国に比べて十数年立ちおくれたことは事実であります。そういう航空事業の先進国においても、航空事業に対して、ある程度政府助成を今日まで行なっている。日本の場合においては立ちおくれたわけでございますから、ある程度政府が航空事業の育成に対して助成を行う必要は、当然のことと思うのであります。それで今年度の予算におきましても、日航に対しては十億円の政府出資、あるいは三億五千万円の補助等を計上いたしたのも、こういう見地に立って日本の航空事業を健全に育成をしてゆきたいという趣旨にほかならぬのでございますが、しかし、こうなって参りまして、政府の出資も、今年度の十億円を加えると三十億になって、政府の直接の補助も与えるということになって参りますと、これは日本航空会社という会社自体の性格も、これはよほど国策会社的な性格を帯びてくるわけでございますので、日本航空会社法の一部改正の法律案も用意してございます。そういう意味から政府の監督権を強化し、あるいはまた経理監査を厳重にして、いやしくも国家の助成を受け、多額の国家の出資を受けている会社として、徹底的な経営の合理化をはかり、いろいろ御指摘の点についても検討を加えて、日本航空会社の経理を、これは万遺憾なきものにいたしたいということで努力をいたしてゆくつもりでございます。お答えといたします。
  31. 重宗雄三

    ○副議長(重宗雄三君) 西郷吉之助君。    〔西郷吉之助君登壇拍手
  32. 西郷吉之助

    ○西郷吉之助君 私は自由党を代表いたしまして、先般行われました鳩山総理並びに経済閣僚の演説に対しまして、所見をただしたいのであります。  まず、一兆円予算の性格について所見をただしたいのであります。政府は三十年度予算編成の趣旨といたしまして、わが国経済自立国民生活安定のため、拡大均衡予算を編成して、六カ年経済計画を樹立すると説明し、いわゆる一兆円のデフレ予算を、もう一カ年続けて地固めをするというのであります。私は政府に対しまして、この一兆円予算の性格についてさらに所信をただしたいのであります。  昭和二十九年度予算編成に際して、当時わが党内閣におきまして、緊縮予算としていわゆる一兆円のデフレ予算を編成いたしましたが、それには以下述べるようなやむにやまれぬ理由が存在したためであります。すなわち、昭和二十七年までわが国国際収支は、毎年三億ドル内外の受取超過を続けて参ったのでありまするが、昭和二十八年に至りまして、わが国国際収支は、特需等の臨時収入が減少していないにもかかわらず、輸出の不振と輸入の増加のため、全体といたしまして二億ドルに上る赤字を示し、急激なる悪化を来たし、もしこのままで放置せんか、貿易上最小限度必要でありまする四、五億ドルを割るやも知れず、このまま外貨の減少をきたせば、輸入増加による国内必需物資の物価騰貴の抑制も困難となり、ひいては悪循環的インフレを高進する結果となり、経済自立は不可能となり、きわめてゆゆしき経済状態に陥るおそれがあったため、やむにやまれず、いわゆる一兆円デフレ予算を編成いたし、しかもその当時には多額に上る前年度からの繰越金を有しておったのであります。以上のごとく二十九年度におきましては、一兆円デフレ予算を組まざるを得ざる明確な理由があったため、その内容は別といたしましても、予算総額を一兆円のワク内にとどめる趣旨には野党も双手をあげて賛成してきたわけであります。かようにいたしまして、二十九年度におきましては緊縮政策の結果、物価の高騰も抑制し得まして、特に卸売物価は顕著な下落を見、ことに国際収支は三億四千四百万ドルに上る黒字を示しまして、所期以上の大きな効果を発揮し、国民は遠からず拡大均衡への転換があることを予想いたしまして、その苦痛を忍んできたわけであります。しかのみならず、さきにも申しましたごとく、二十九年度には相当多額の繰越金もあり、またその間におきまして国際収支も予期のごとく黒字に転換したるなどのために、国庫の対民間収支は千九百億円の支払超過となり、それが深刻な不況を切り抜けるのに役立って参ったのであります。しかるに本年度予算案では、前年度繰越金も大幅な減少をきたすこととなり、また国際収支も収支の均衡を保持するのがせいぜいである関係上、対民間支払超過は全く多くを期待できず、約七百億円程度にとどまりまし、て経済界は昨年度より著しく窮屈な状態に追い込まれ、従いまして本年は昨年のような強力な金融引締めの必要はないわけであります。かかる際に、依然として強度のデフレ予算を編成し、これを実施するならば、わが国経済界に与えます影響はきわめて甚大なものがあり、また、いまだ再建の途上にあって、その基盤必ずしも強固とは言えないわが産業界は、果して本年のこの強度のデフレ政策にたえ得るやいなや、まことに憂慮にたえないものがあるのみならず、また拡大均衡への歩みは全く見られざるものと言わなければならないのであります。かようなことに対しまして、きわめて重要な点でありまするかり、総理並びに大蔵大臣所見をただしたいのであります。次に、一兆円予算の規模について所見をただしたいのでありますが、まず最近の金融情勢についてでありまするが、たとえば日銀貸出残高を見ますのに、昭和二十九年三月残高は約四千二百億円で、終戦後の最高貸出残高を示しておりまするが、五月以降は漸次縮小されまして、さらに本年に入り、一月、二月とも、この趨勢に何ら変化なく、減少の一途をたどり、本年二月には一千六百億円となり、年度末たる三月口、ついに二千五百億円と圧縮を続けまして、本月の十二日現在では二千百山億に圧縮されておるのであります。これは要しまするに、わが党内閣が二十九年度予算編成に際し、忍びがたきを忍んで組んだ一兆円デフレ予算の効果が、今申し述べた数字となって、ここに明確に現われてきたわけであって、われわれが予期した効果は、全くてきめんに現われたわけであります。これは要しまするに、金融面から見まするならば、すでに悪性インフレ的要素はほとんど全く影をひそめたのみならず、大蔵大臣が財政演説におきまして、「金融機関が進んで貸出金利の引き下げをはかって企業コストの低下協力云々」と要望せられました。その金利引き下げの情勢は、次第に醸成せられてきていると思われるのであります。のみならず経審長官もその演説におきまして、「わが国経済自立復興をはかって参りますためには、従来のような消極的な財政、金融の引締政策のみに依存して参ることはできない」と述べておられます。かように考えてくるならば、今回政府が二十九年度に引続いて一兆円のワクにこだわり、地固め予算と称して、もう一年引続いて強度のデフレ政策を続ける理由がすこぶる不明確なるのみならず、あまりに一兆円の数字にこだわり過ぎて、そのためかえって公約したところのものについても、十分かつ実行可能な予算的裏づけも、不可能となり、単に総花的に形式を整えたに過ぎず、実質的には国民の期待に、はなはだほど遠いものと言わなければならないと思うのであります。単に一兆円の数字をこえるか、こえないかが、健全財政か、あるいは不健全財政かの目じるしになるのではないわけであります。のみならず、一兆円のワクは単に名前だけのもので、防衛庁費の予算外契約といい、また地方財政上の措置といい、実際的には一兆円のワクはすでにくずれて単に粉飾されたにとどまり、心理的効果をねらったに過ぎないものと言わざるを得ないのであります。そこで私はこの際、何ゆえにかかる無理をなさってまで一兆円という数字にこだわるのか、今日までいろいろ御答案ございましたが、なお全く納得しかねる点もございますので、あらためてこの際、大蔵大臣にお尋ねいたします。  次に、経済六カ年計画について所信をただしたいのであります。政府は今回の予算編成方針として、経済六カ年計画を基礎とされて経済自立のための地固めを行うことを眼目とすると述べておられますが、第一に、この経済六カ年計画内容が問題であると思われるのであります。政府はこの経済六カ年計画により、完全雇用経済自立の実現を図り、将来の拡大均衡達成を目標とすると述べているのでありますが、先般来の経審長官の説明では納得いたしかねる点が多々あるわけであります。その中で最も重要なりと考えます点は、この経済六カ年計画中には、政府が本予算の際には十分に説明すると、先般の暫定予算審議の際に言明された防衛六カ年計画が何ら説明されていない点であります。防衛関係費については、今回政府は相当苦杯をなめ、折衝の過程において、今後のわが国防衛計画の見通し並びにこれが方針を明確にする点について多大の難関に逢着されましたが、今回のこの経済六カ年計画を説明するに当って、他の事柄も相当重要でありまするが、防衛生産の今後のあり方いかんは、今後のわが国経済発展過程に重要なる要素なりと言わなければならないと考えるのであります。しかるに、その点につき今なお何ら説明が加えてなく、これを伏せておくような感じを与えますことは真に遺憾であります。(拍手)いやしくも経済六カ年計画なりと銘打つならば、防衛についても年次計画をこれに織り込んで、国民の前に計画の大綱ぐらいは少くとも示すことがぜひとも必要であると考えるものであります。防衛問題については今なお特にいろいろな論議があり、国民の関心も相当深いのでありまするから、今回の経済六カ年計画には防衛六カ年計画を織り込むことは当然なさるべきことであると考えるのであります。わが党内閣当時においても、経済三カ年計画を策定してあったことは御承知であろうと考えまするが、これを参考になさるならば、もっと数段と内容の充実した計画が立ち得るものと考えるのであります。只今までの御答弁では、防衛長期計画は目下検討中であるというふうに先ほどのお答えでありまするが、いやしくもわが国経済が今後いかなる過程を経て拡大均衡の線に沿って発展するか、またその中で、少くともわが国基幹産業の個々のものは今後年次計画の上にどう示されてくるのかぐらいは、少くとも明確に示されるべきものであり、またこれに当然防衛計画も包含されなければ意味をなさないと考えます。こういう点につきまして、さらに経審長官並びに防衛庁長官から明確な御説明を承わりたいと考えます。  次に、金利の問題について所見をただしたいのであります。只今申し述べましたごとく、昭和二十九年度における財政金融の引締政策の結果、経済全般が正常化して参り、悪循環的なインフレの要因もほとんど終息いたし、卸売物価は特に顕著な下落を示し、特に金融界においても、日本銀行貸出残高は昨年三月をピークとしてこれまた顕著な減少を示しまして、本月上旬の数字では二千億円に激減いたし、従来しばしば問題視されて参りましたオーバーコーンもようやく好転してきて、経営健全化の方向に進みつつあるわけであります。従いまして、わが国経済再建の途上において今後最も考慮さるべき点は、わが国産業界の設備の合理化並びに能率化、さらに間接費の節減による商品コストの引き上げを図り、かくしてこそ、わが国経済自立の上に最も重要な輸出の振興もなし得ると考えるものであります。かく考えますときに、今日残されました問題は、産業界における間接費の節減、すなわち金利の引き下げ、この問題を当然今日考うべきであると思うわけであります。物価につきましては、これを国際物価にさや寄せするために引き下げ政策をとってくるならば、金利のみを国際水準と無関係に現在のごとき高金利のまま放置しておくべきでないことは、きわめて明瞭であると考えるのであります。(拍手昭和二十九年度上半期における銀行金利を見ましても、平均八・九六%であり、また英米等における金利コストが年二・五ないし四%程度に比しまして、あまりにも高金利すぎると思うのであります。今日大企業はもちろんのこと、中小企業対策上から申しましても、銀行金利率は、戦前戦後さしたる差はないのに反しまして貸出金利のみは戦前に比較いたしまして驚くほど高くなっておるわけであります。これがわが国現在の商品コストを高からしめている最大の原因であり、特に輸出貿易等の場合には、この高金利が非常な災いをなしまして、対外競争上不利な立場にあるわけであります。金融界の二十九年度の決算を見ましても、その利益は莫大なものでありまするが、これは一に高金利によるわけでありまして、換言すれば、産業界全体の犠牲の上にかかる莫大なる利益を金融機関が上げ得たわけでありまして、まことに矛盾もはなはだしいと思うわけであります。(拍手)戦後かかる政策の実権は、御承知のごとく政府になく、日本銀行に完全に把握されている現状でありまするが、かかる現在の方式のままで、政府は先ほど申し上げたような経済六カ年計画を推進いたす上にも差しつかえがないのかどうか。そういう点について所見を承わりたいわけであります。特に一萬田大蔵大臣は、過去長いこと日銀総裁として来られたのでありまするから、この間の事情は詳細に御承知であり、また最近政府当局は金融界に対しまして金利引き下げを要請しておると聞くのでございまするが、さような要請程度で済まされる問題であるかどうか。現在の制度、方式のままにして置いて差しつかえないものであるかどうか。そういう点についても所見を承わりたいわけであります。  また金融界のこの金利引き下げ反対の理由も、われわれは十分承知いたしておるのでありまするが、ただいま申し述べましたような理由から考えましても、金利のみが依然として現状維持を主張する理由はほとんど現在失われて来ておるのみならず、金融界も率先して経済再建に対する熱意をこの金利引き下げにおいて示すべきであると思うわけであります。また大蔵大臣は就任以来、わが国経済自立、特に貿易の振興を強調され、税の軽減等の助成策を主張されておりまするが、われわれが大蔵大臣に対しまして、この際特に考慮を求めます点は、以上述べましたような理由から、金融界におけるところのこの金利引き下げの問題を是非考えてもらいたいという点であります。大蔵大臣も現在では、先ほどまでの長い金融界の単なる元締めの立場ではなく、現在大蔵大臣の地位より大局的にこの問題を考えれば、当然にこの金利引き下げに今後特段の努力をなすべきものと考えるわけであります。(拍手)ここに大蔵大臣からこれに対しまして具体的な所見を承わりたいわけであります。  次に一兆円予算に関連しまして、地方財政について政府所見をただしたいのであります。  その第一点は、一兆円予算と申しまするが、地方財政面において粉飾が幾多行われ、いわゆる小手先の技術によって糊塗されている点があると思うのであります。すなわち、予算規模関係する、たとえば専売益金三十億円を歳入よりはずして地方に直接移譲したり、また今回新たに創設された地方道路税七十二億円はこれまた一般会計に繰り入れず、直接特別会計に繰り入れているのでありまするが、一方所得税法人税及び酒税の収入額の一定率、すなわち地方交付税相当分千三百八十八億円については、一般会計に一度繰り入れたあとに特別会計に繰り入れているのであります。すなわちいずれもその取扱いを異にしていることは、まことに理解に苦しむところでありまして、専売益金及び地方道路税についてかかる異例な措置を講じたことは、ひっきょう一兆円予算を形式的に整えるためのごまかし的の方法と言わざるを得ないと存ずるのであります。(拍手)これに対する大蔵大臣所見を明確に承わりたいのであります。  次いで第二点は、一兆円予算の形式を整えるに急にして、これによって生ずるしわを、あげて地方財政に寄せていると考えざるを得ないことであります。すなわち本予算におきまして地方財政の巨額の赤字対策をいかように具体化しているかという点であります。過去の赤字四百六十二億円に対しましては、公募債による百五十億円と、政府資金による五十億円の起債、合計二百億円の起債財源をもってこれをたな上げして、その他に政府資金による退職手当起債六十億円を用意すると言い、しかも赤字の額の僅少な地方団体に対しましては、三十年度内に自力更生を図ってもらう以外に手がないと言い、またさらに、残余の赤字については、地方財政再建促進特別措置法案を今国会に提出して赤字団体に対する必要な立法措置をするということでありまするが、これでは地方団体の政府に対する赤字補填対策への期待は全く裏切られて果して実際にはどの程度の手が打たれ、またどのくらいの赤字が実際解消できるか、全く現在の政府の説明では理解できぬのでありまするが、自治庁長官はこの赤字解消に対して一体どの程度の確信を持っておられるのであるかどうか。こういう点について具体的に説明を求めるわけであります。  次に、さらに所見をただしたい点は、本年度地方財政計画におきまして、地方団体をして将来再び赤字を生ぜしめないためにするところの何らかの措置が果して講ぜられているかどうかという点であります。これにつきましては、現行地方行財政全般を通じまして、さらに抜本的な改革をなすにあらざれば、将来とも赤字を生ずるであろうことは、各一般識者の一致した見解であると申しましても決して過言ではないと考えるのであります。たとえば人件費において、地方財政計画と地方の実際の支出額との間には、二十八年度決算においても実に四百四十三億円もの開きがあるのであります。また災害復旧費については、事業の年度割が三、五、二の慣例になっているにもかかわらず、実際はこれが著しく低い率になっているために、地方団体としてはやむを得ずいわゆる施越工事を行うこととなるわけであります。また六三制学校建築、民主党最大の公約である住宅建設等の国庫補助事業についても、建築費や用地費の単価が実際に即しないために、地方にいわゆるつぎたし単独事業を強いるような結果になるわけであります。今申した点は、赤字原因の事例を二、三あげたにすぎないのでありまするが、かような点についていかなる是正措置が果して今回なされているかどうか。そういう点についても改めて大蔵大臣並びに自治庁長官から明確な御説明を承わりたいわけであります。  以上をもちまして私の質問演説といたします。(拍手)    〔国務大臣鳩山一郎登壇
  33. 鳩山一郎

    国務大臣鳩山一郎君) 西郷さんにお答えをいたしますが、私に対する質問よりは大蔵大臣への質問のほうが主のようでありますから、大蔵大臣から詳細に答弁をしてもらいます。    〔国務大臣一萬田尚登君、登壇
  34. 一萬田尚登

    国務大臣(一萬田尚登君) まず、ただいまの御質疑の一兆円予算の性格、規模につきましてお答えを申し上げます。  一兆円予算については、何も形にとらわれてというわけではないのでありまして、これは今後における国際情勢及び今日、日本経済状況及び今後どうあるべきか、こういうふうなことに立脚いたしまして、同時にまた財政自体といたしましては、税収入というものがどのくらいあるか、こういうふうな、もろもろの点から一兆円予算を必要とする、こういうことになるのであります。こういう点についてはまた見方の相違もあることも、これも免れ得ません。今その点につきまして、お示しの、たとえば国際収支の点からこれを見ると、二十八年度は非常な赤字である。それで二十九年は一兆円予算で非常な緊縮をした、その効果が現われて、二十九年度の三月には三億四千四百万ドルに及ぶ黒字になったのではないか、もうこれ以上何もそう財政を緊縮する必要はないじゃないか、こういうのが一つの御意見であったかと思うのでありますが、二十九年末、この三月で国際収支が三億四千四百万ドルの黒字になりましたことは御説の通りであります。ありますが、この黒字をしさいに分析してみると、ほんとうに日本経済国際競争に打ちかつだけの力を持って、こういうふうな黒字が出たかといえば、そうでないのでありまして、この黒字が出たゆえんは大きく輸入が減っておるのであります。まあ国際収支じりですから、輸入が非常に減った、これはどういうことかといえば、その当時持っておった、倉庫にあるストックで、まず間に合わしておる、こういう経過があるのです。そこでこの分はどうしても今後の日本経済が動いていく場合におきまして、三十年度はふえなくてはならぬことは、もうすでに目に見えておるのであります。それから輸出がよかったと申しますけれども、これにはいろいろと御承知のような特別な取引関係から起って輸出がふえた結果になっておるのが少くないのであります。特に船なんかを、造船というようなものをお考え下されば非常によくわかる。ですから、この三億四千四百万ドルの内容を見ると、何も安心ができる状況ではありません。まして日本国際収支を考えます場合においては、三億四千四百万ドルの黒字になったというが、今申しましたような、そういうおもしろくない状況以外に、なお、アメリカの特需に約六億ドル、二十九年度でも六億ドル依存しておるということを忘れてはならないのでありましてこの六億ドルは、年々減る。もう三十年度には経審のあれからしても四億二千万ドルくらいには落ちてしまう、そうすると、これは今後ますます減らなくては、経済自立ということが言えないのであります。そういうことを考えてみます場合に、決して国際収支の今日の状況が安心できるということでないことは、どうぞ御了承を得たいと思います。  なお、一兆円予算を組んだ結果、繰越金が二十九年は多かった。三十年度は少いから、金融がそれだけ、財界は資金的に圧迫を受ける。それはその限りにおいてそうであるのでありますが、しかし二十九年はそのために、そういうふうな繰り越しによる財政支出が多かったために、金融面では非常に引き締めた、いわゆる金融独走という御非難があったくらいに金融面を締めぬと物価が下らぬのですから、これは締めた。一方で出るが、一方で締めれば、財界としてはそれがあったから楽だとは言えない。で、かえって私は出して締めるよりも、出さずして金融のほうで楽をしたほうが、これは私は正常だろうと、こういう考えを持って、三十年度はそういう方向でいきたい、かように考えておるわけであります。そういうふうなことからいたしまして、私は三十年度はやはりこの一兆円という、こういう予算編成が性格的に見ても、また規模においても、これは適切である、かように考えておるわけでありまして、是非ともこの点については御了承を得たいと考えておる次第であるのであります。  なお、金利の点につきましてお話がありました。私も全く御意見と同じ考えを持っておるわけであります。ただ如何にしてこれをほんとうになるべく早く具現するかということに、苦慮といいますか、いろいろ骨を折っておるわけですが、まあ私はやはりこの金融というようなものについて、そう力を用いるのはよくないという考え方、従いまして今日金利を下げ得る条件が相当成熟しておると認めますので、金融機関にはかりまして、実質的にも名目的にも金利が今後適正に下っていきますように話し合いを今進めているわけであります。  またこの金利考えます場合には、もう一つやはり考えなくてはならぬことは、日本の今日の企業が借入金に依存しておる度合いが非常に大きい。言いかえれば、自己資金が少い。昔でしたらば六割が自己資金で四割が借入金、従いまして利子のつかない自分の金を六割持っておりますから、よほど金利負担が軽かったのでありますが、今日ではあべこべで自己資金は四割以下、借入金が六割、こういうことなっておりますから、この面からも金利が特に高くなります。それでやはりこれに対しまする対策といたしましては、どうすれば企業が自己資金をふやし得るか、これは税の上からも考えて見なくてはならぬと思うのですが、自己資金がふえるような態勢を今後他面においてとる必要がある、かように考えてその双方から一つこの企業の、日本経済金利負担を実質的に軽く下る方法をあらゆる面からとって参りたいと決意をいたしておる次第であります。それから地方財政につきましてありましたが、まあ特に地方財政のところでたとえば専売益金とか、あるいは地方道路税なんかは一般会計を通さずにやっておかしいじゃないか、そうして一兆というのはおかしいじゃないかという御質問でもありましたが、まあこれは私はこういうふうに考えて、実はしたわけでありまして、専売益金はタバコ消費税と考えられるべきものだ、当然これは地方税になる。それで一般会計を通さずにやっておるわけであります。それから地方道路税につきましても、前年度以来実施いたしておりまする入場譲与税と全く同じものであるのでありまして、従いまして一般会計を通さずに……まあ通す必要もない、かように考えて、決してこういうことまでして何も一兆という形にとらわれて一兆……、この一兆というものはただ心理的、むろん心理的な点もありますが、単に形にとらわれて、何でもかんでも一兆に押し込む、そういう意味では決してないのでありまして、こういう点につきましては、私がしばしば申し上げました、また今日も先ほど申しましたような一兆という予算を組まざるを得ない日本の今日の置かれているすべての条件からきているのでありまして、内外の条件からきておるのでありまして、ぜひともそういう点について御了承を得たいと考える次第であります。  なお、地方の財政の赤字の点について非常に御心配をいただきました。私どもも非常にこれは憂慮をいたしておるのであります。三十年度におきましては、できるだけ赤字団体の財政の再建を促進いたすために、赤字団体の自主的な努力によりまする経費の節減、事業の抑制、徴税成績の向上、その他財政の合理化をして、そうして他方地方財政再建促進特別法のような立法措置を考えておりまして、この地方の赤字解消に国家としても手を差し延べようと、かように考えておるわけであります。  なお、この地方の団体の赤字につきまして、いろいろと四百億、あるいは四百六十億、こういうふうに言っておりますが、しかしこれらは詳細に検討を加える必要があるのでありまして、私どもの考えるところでは、実際に救済的に考える赤字は約二百億前後というふうに押えて処置をとっておるわけでありまして、この赤字につきましては、先ほどお話がありましたように、大体これはもう借入金にすでになっておるのでありまして、赤字と、固定しておる借入金とが見合っておるという形になっておりまして、これを債券に振りかえるようにして、そうしてその利子を補給しよう。これで一応赤字をたな上げして、その他については地方各赤字団体におきまして、自分の力においてできるだけ先ほど申しましたような節約をして、そうして今後に赤字が出ないようにして参る。しかし基本的には、私の考えでは、財政的見地から言う基本的には、地方が赤字になるからすぐ中央から金を送って、それを増すという行き方は適当でないだろうと思っております。これはやはり地方自治体自体の財源を強化していくというふうな形が、行き方がいいだろうと思っておりますが、しょせん、こういうことにつきましてはやはりもう少し大きく根底的に、今後地方自治団体はどうあるべきか、こういうふうな行政機関自体にわたっても考え、同時にまた行政機構全体にわたらなくても、今日の状態であるとすれば、一体地方団体というものは、自治体というものはどういう仕事をすべきか、仕事の内容についてやはり考える。そうしてその仕事と財源とがつり合いがとれる、こういうふうな地方自治団体に持っていくべきものであると、まあ考えておるわけであります。御答弁いたします。    〔国務大臣高碕達之助君登壇
  35. 高碕達之助

    国務大臣(高碕達之助君) 西郷さんの御質問は、経済六カ年計画になぜ防衛計画が織り込まれていないか、こういう御質問でございますが、経済の総合六カ年計画におきましては、防衛力というものは経済力の充実と発展とに即応いたしまして逐次増強するという計画を六カ年にわたって立てておるわけなのであります。一方、防衛力の具体的の計画につきましては、現在政府は慎重に検討中でございますから、その策定に際しましては、この六カ年計画との間におきまして、総ワクについても相互いに、相互に調整いたしたいと、こう考えております。  なお、防衛計画につきましては、できるだけ防衛計画と普通の一般産業とを相マッチするように計画を立てたいと、こういう考えでおりますが、防衛計画の具体的な内容が決定いたしましたときにおいては、六カ年計画とも多少は調整をいたしたいと、こういう考えでおります。以上。    〔国務大臣杉原荒太君登壇
  36. 杉原荒太

    国務大臣(杉原荒太君) 経済六カ年計画に見合う防衛計画を作成するつもりで研究中でありますことは、先ほど小酒井議員に対するお答えの中で申し上げた通りでございまするが、策案の具体化に伴いまして、ただいま経審長官からも申し上げましたように、相互に調整をはかっていく考えでございます。    〔国務大臣川島正次郎君登壇
  37. 川島正次郎

    国務大臣(川島正次郎君) 地方財政整備の問題につきましては、大蔵大臣から相当詳しくお話がありましたのですが、何といいましても、今日の地方財政は非常な苦しい立場に追い込まれております。ここに至りました原因はいろいろあるのでありまするが、地方団体におきましても、また国におきましても、ともに反省すべき点はこれを反省し、是正いたさなければならぬのであります。  ただ、地方団体の整備を考えた場合に、現在の経費のうち義務的のものが非常に多いのであります。大体地方財政のおもなるものは給与費、教育費並びに公共事業費でありまするが、給与費を一つ取りましても、百四十万の地方公務員がおりまして、今年度の予算におきましても、昇給の財源として八十億を見積っております。また教育費にいたしましても、今年は七十五万人増加する児童に対しまして、教育の増は一万二千五百人見積っておるわけでありまして、これらはとうてい削減し得ない種目であります。また公共事業の面を見ましても、失業対策に対する費用、住宅に対する費用、災害復旧に対する費用等、これまた義務的の賞用でありまして、削減し得ないのであります。これらをいろいろ勘案いたしまして、いかにして今後赤字が出ないようにするかということにつきましては、いろいろ方策を練っておるわけでありまするが、とりあえず三十年度の予算の編成に当りましては、従来ありまする赤字を、これは短期債でころがしておったのですが、これを全部長期債に借りかえて利息の補給をしてやるということ。それから今後赤字が出ないようにすることにつきましては、機悟の改革をいたすつもりでおります。最も根本的の対策といたしまして、府県の統合あるいは道州制等の問題もございますが、そこまでは手はつきませんけれども、自治法を改正いたしまして、でき得る限り簡素合理的な地方制度に直したい。これはぜひ今議会に提案して、御協賛をお願い申し上げるつもりでおります。これらはとうてい三十年度の予算には計上できませんので、機構の改革をいたしまして、三十一年度から本格的の地方財政の合理化をいたしたいと、かように考えておるわけでございます。  三十年度におきましてはできるだけ事業の節約をいたしまして、赤字のできることを極度に防ごう、こうした地方財政計画を今日樹立いたしておりまして、いずれお示しを申し上げる予定になっておりますから、さよう御了承願います。
  38. 重宗雄三

    ○副議長(重宗雄三君) これにて質疑の通告者の発言は、全部終了いたしました。国務大臣に対する質疑は、終了したものと認めます。  議事の都合により、午後一時五十分まで休憩いたします。    午後一時三十九分休憩      —————・—————    午後一時五十七分開議
  39. 重宗雄三

    ○副議長(重宗雄三君) 休憩前に引き続き、これより会議を開きます。  この際、日程に追加して、松永義雄君の逝去に伴い欠員となりました検察官適格審査会予備委員の選挙を行いたいと存じますが、御異議ございませんか。    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  40. 重宗雄三

    ○副議長(重宗雄三君) 御異議ないと認めます。
  41. 山下義信

    ○山下義信君 検察官適格審査会予備委員の選挙は、成規の手続を省略いたしまして、議長において指名せられんことの動議を提出いたします。
  42. 湯山勇

    ○湯山勇君 ただいまの動議に賛成いたします。
  43. 重宗雄三

    ○副議長(重宗雄三君) 山下君の動議に御異議ございませんか。    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  44. 重宗雄三

    ○副議長(重宗雄三君) 御異議ないと認めます。よって議長は、検察官適格審査会予備委員に棚橋小虎君を指名いたします。(拍手)      —————・—————
  45. 重宗雄三

    ○副議長(重宗雄三君) 去る十三日、内閣総理大臣から、湿田単作地域農業改良促進対策審議会委員佐藤清一郎君、伊能芳雄君及び三橋八次郎君の任期満了に伴う後任者を指名されたいとの申し出がございました。  つきましては、この際、日程に追加して、湿田単作地域農業改良促進対世審議会委員の選挙を行いたいと存じますが、御異議ございませんか。    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  46. 重宗雄三

    ○副議長(重宗雄三君) 御異議ないと認めます。
  47. 田中啓一

    ○田中啓一君 湿田単作地域農業改良促進対策審議会委員の選挙は、成規の手続を省略いたしまして、議長において指名せられんことの動議を提出いたします。
  48. 上林忠次

    ○上林忠次君 私は、ただいまの田中君の動議に賛成いたします。
  49. 重宗雄三

    ○副議長(重宗雄三君) 田中君の動機に御異議ございませんか。    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  50. 重宗雄三

    ○副議長(重宗雄三君) 御異議ないと認めます。よって議長は、湿田単作地域農業改良促進対策審議会委員に佐藤清一郎君、伊能芳雄君、三橋八次郎君を指名いたします。(拍手)      —————・—————
  51. 重宗雄三

    ○副議長(重宗雄三君) 去る二十三日、内閣総理大臣から、離島振興対策審議会委員山川良一君の委員辞任に伴う後任者を指名されたいとの申し出がございました。つきましては、この際、日程に追加して、離島振興対策審議会委員の選挙を行いたいと存じますが、御異議ございませんか。    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  52. 重宗雄三

    ○副議長(重宗雄三君) 御異議ないと認めます。
  53. 上林忠次

    ○上林忠次君 離島振興対策審議会委員の選挙は成規の手続を省略いたしまして、議長において指名せられんことの動議を提出いたします。
  54. 田中啓一

    ○田中啓一君 ただいまの上林君の動議に賛成をいたします。
  55. 重宗雄三

    ○副議長(重宗雄三君) 上林君の動議に御異議ございませんか。    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  56. 重宗雄三

    ○副議長(重宗雄三君) 御異議ないと認めます。よって議長は、離島振興対策審議会委員に前田穰君を指名いたします。(拍手)      —————・—————
  57. 重宗雄三

    ○副議長(重宗雄三君) 去る二十三日、内閣総理大臣から、積雪寒冷単作地帯振興対策審議会委員三浦辰雄君の委員辞任に伴う後任者を指名されたいとの申し出がございました。  つきましては、この際、日程に追加して、積雪寒冷単作地帯振興対策審議会委員の選挙を行いたいと存じますが、御異議ございませんか。    [「異議なし」と呼ぶ者あり]
  58. 重宗雄三

    ○副議長(重宗雄三君) 御異議ないと認めます。
  59. 上林忠次

    ○上林忠次君 積雪寒冷単作地帯振興対策審議会委員の選挙は、成規の手続を省略いたしまして、議長において指名せられんことの動議を提出いたします。
  60. 田中啓一

    ○田中啓一君 ただいまの上林君の動議に賛成をいたします。
  61. 重宗雄三

    ○副議長(重宗雄三君) 上林君の動議に御異議ございませんか。    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  62. 重宗雄三

    ○副議長(重宗雄三君) 御異議ないと認めます。よって議長は、積雪寒冷単作地帯振興対策審議会委員に森八三一君を指名いたします。(拍手)      —————・—————
  63. 重宗雄三

    ○副議長(重宗雄三君) この際、日程に追加して、国会法第三十九条但書の規定による議決に関する件を議題とすることに御異議ございませんか。    〔「異議なし」と呼ぶ者あり]
  64. 重宗雄三

    ○副議長(重宗雄三君) 御異議ないと認めます。  一昨二十八日、内閣総理大臣から、ソビエト社会主義共和国連邦との国交の正常化を目的とする交渉における全権委員に衆議院議員松本俊一君を任命することについて本院の議決を求めて参りました。同君が全権委員につくことに賛成の諸君の起立を求めます。    〔賛成者起立〕
  65. 重宗雄三

    ○副議長(重宗雄三君) 総員起立と認めます。よって本件は、全会一致をもって同君が全権委員につくことができると議決されました。(拍手)      —————・—————
  66. 重宗雄三

    ○副議長(重宗雄三君) 高碕国務大臣からアジア・アフリカ会議の報告のため発言を求められております。この際、発言を許します。高碕国務大臣。    〔国務大臣高碕達之助君登壇拍手
  67. 高碕達之助

    国務大臣(高碕達之助君) アジア・アフリカ会議の経過について御報告いたします。  昨年末インドネシア、インド、セイロン、パキスタン、及びビルマの五カ国は、インドネシアのボゴールに会しまして、本年の四月十八日を期してアジア・アフリカ会議を開催するためアジア・アフリカの二十五カ国を招請いたしました。そのうちにはイスラエルだとか、朝鮮だとか、中国政府が招請されておりませんが、中共政府が招請されておるというふうな次第で、当初西欧各国では警戒的態度を持っておった事実もあります。わが国といたしましては本会議の目的が、政治経済及び文化の協力増進にある事実にかんがみまして、この招請を受諾いたしまして、私は代表として四月十五日東京発、十六日会議地のバンドンに到着いたしました。  私は出発に先だちまして、外務大臣からわが国の会議に臨む基本的態度として、国連憲章を尊重し、自由諸国の一員として国際平和推進に貢献し、関係諸国との親善関係を増進することに努め、世界的視野の中に会議の運営さるるよう努力すべきよう申し渡されました。  会議は到着の翌日から早くも各国代表の非公式の懇談会として始められました。まず第一に経済協力、第二に文化協力、第三に政治問題といたしまして、政治問題は三つに分けまして、第一が基本的人権及び民族自決、第二が従属民族問題、第三が世界平和と協力促進、この三項目について討議をすることに相なりまして、十八日、十九日、両日は本会議を開きまして、これは公開いたしまして首席代表が順次自分の抱負を演説したのであります。私は日本政府を代表いたしまして、平和的民主主義国として再生したる日本が、あくまでも平和に徹し、国連憲章の精神にのっとり、政治、経済、文化の各分野においてアジア・アフリカ地域の友邦と手をたずさえて世界平和に積極的に寄与せんとする決意を明らかにいたしまして、後日平和促進及び経済並びに文化に関する提案をするということを予告いたした次第であります。それで経済、文化の面につきましては、それぞれ別の代表をもって委員会を作りました。政治の問題の先ほど読み上げました三項目のことにつきましては、首席代表がいずれも非公開で討議するということに相なりました。  まず政治問題の第一の基本的人権についてでございますが、これについて国連憲章の規定に言及することを避けて、抽象的に天賦人権思想によらんとする、これはインド側でしたが、インド側からそういう主張があったのでございますが、一方トルコ初め、現実的に国連憲章を支持せんとするものとが対立したのでありますが、わが国といたしましては、国連協力の方針に基いて、その後者を支持いたしまして、結局会議は国連憲章に明示せられたる基本的人権を支持することに決したわけでございます。また連日この問題につきまして紛争を重ねておりましたのはパレスタインの問題であります。アラブ人がパレスタインに対する反対の意見をもちまして国連に善処するよう要望したのであります。それで会議といたしましては、アラブ人に同調いたしまして、国連にその善処を要望する決議をいたしました。  第二の従属民族問題につきましては、植民地主義を排して西部ニューギニアにからむオランダとインドネシアの紛争については、これはインドネシアを支持する決議を採択いたしましたが、たまたまこの際に、二十二日にセイロンの代表が古い型にかわる新しい型の植民地主義の脅威を指摘したわけであります。これは共産主義を阻止する意味のように解されましたが、この発言をいたしましたところが、トルコ、パキスタン等九カ国精神的支配や浸透的手段による新植民地主義を阻止するという案を提出いたしましたところ、これに対してまつ先に中共が反対いたしまして、インドがこれに同調するということで、非常な激論が交換されたのであります。容易にこれは妥結しかねたのでございますが、二十四日になりまして、第三項の平和促進問題起草委員会にこれを持ち込むということに相なったのであります。  それで、第三項の世界平和協力の促進ということにつきまして、二十二、二十三日、各代表が逐次陣述を行いまして私も国際緊張のもたらす危険を痛感し、原子兵器使用は人類を破滅に導くことを思い、正義と自由と安全の原則を基礎とせる世界平和を維持せんがために、国連憲章の精神にのっとってその性質のいかんを論ぜず、戦争に導くおそれのある事態のいかなる段階においても、武力の行使、または武力を用いる威嚇をやめて、平和手段により解決をはかること、これが第一項であります。第二項には生活水準向上のために経済、文化の協力を促進し、共栄の実をあげることを宣言案として提出いたしたのであります。  かくて一般の陳述は終りまして、私は決議起草小委員会の設置を動議いたしましたところが、それが採択されまして、日本ほか十一カ国をもって小委員会が結成されたのでございます。それで前記第二項の問題となっておりました従属民族問題も本委員会において討議されることに相なったのでございます。わが代表といたしましては、日本の提案の平和宣言の内容に他国り希望する平和条項を追加されても、あくまで平和宣言として発表することを固執いたしましたのでございますか、これは単に決議案でいいんじゃないかという意見も出まして、容易に決しかねておったのであります。ところが、この新植民地主義を含むような表現に中共代表は強硬に反対して、小委員会は行き悩んでおったのでありますが、中共代表が、日本が固執せる平和宣言のタイトルを全会一致をもって可決するならば、自分は前記の反対の主張を放棄してもいいという、こういう発言がありまして、ここで日本主張が貫徹されて、国連憲章精神を尊重するわが主張が全部織り込まれました寡言案が可決されたのであります。首席代表会議には、このほかに大量破壊兵器禁止及び軍縮問題並びに国連加入問題が審議されましたが、日本その他の七カ国が起草委員となって、大量破壊兵器を軍縮と分離して決議せんとするインドの主張と、これらを並行してやろうという意見とが対立いたしましたが、わが国は原子爆弾を受けた唯一の被爆国といたしましての特殊の立場において、軍縮問題と大量破壊兵器の禁止を並行せしめんとするところのパキスタンとかトルコに同調いたしまして、わが方の主張を貫徹したのでございます。また国連加入問題は、南北ヴェトナムが両方出席いたしまして、多少やり合いがありまして問題になっておりましたが、また中共は、朝鮮と蒙古の加入を希望いたしましたが、結局会議参加国中の未加入国、日本ほか六カ国の加入を国連に要請することに決議されたのでございます。  一方、経済委員会は十九日に第一回会合を開きまして、翌二十日一ぱいで実質的討議を終りました。アジア・アフリカ地域内において、日本が唯一の高度工業国である事情もありまして、わが方の発言趣旨はほとんど全部の会議の報告に採択されたのでございます。わが方の提案の要旨は、経済開発と貿易改善及び拡大、この二本建てになっておりまして、経済開発のためには工業化を奨励し、生産雇用の増大をはかり、国際連合経済開発基金の設立と、世界銀行の当地域に対する貸付の増大を要請いたしました。またアジア・アフリカ諸国相互間で技術援助を強化すべきこと、これを提案したのでございます。また貿易改善及び拡大につきましても、原料、特産物の取引の安定、価格の安定でございます。商品見本交換の活溌化、多角的貿易決済方式の採用等の具体的提案を行なったのでございます。そうして、できるだけ現実的な議論を呼び起して来たのであります。経済委員会では、政治問題の討論の場合と違いまして、議論が紛糾することなく、わが方といたしましても、その発言は単にわが国の立場だけによらず、努めて地域内各月の経済的立場を考慮する態度に出ました結果、他の諸国の好感を得たように思います。  また文化委員会は、まず二十日に二十九カ国代表をもって全体会議を開催いたしましたが、この委員会におけるわが方の提案は、アジア・アフリカ地域が古代文明発祥の地であり、かつ現代文化の母体であることを想起いたしまして、この会議を契機といたしまして、学問、芸術、科学、技術、映画、演劇、スポーツ等、各般の分野において地域内諸国間の文化交流を一層盛んにすることを提唱いたしたのでございます。なお、わが方といたしましては、顧問団の示唆に基きまして、アジア・アフリカ文化賞の設定を提案いたしましたが、各国いずれもこれに多大の関心を示しまして、今後具体的方法を研究することに相なりました。文化委員会は各国提案を総合するために、日本ほか十一カ国をもって小委員会を組織いたしまして、これに勧告書の作成をゆだねましたが、小委員会は二十三日まで連日討議を続けた結果、第一に知識の穫得、第二に情報の交換、第三に文化の交流、この三項目にわたって詳細な具体的施策を列挙せる勧告書を作成いたしまして、これが文化委員会によって採択されたのでございます。文化委員会の討議は、全体会議及び小委員会を通じて常に和気あいあいのうちに進められました。アジア・アフリカ諸国においては、いまなお、ややともすると日本経済進出に対して疑惑を抱いている向きもあります折柄、日本といたしましては、文化協力を試みることが当面良策ではないかと思います。  以上のような次第で、アジア・アフリカ会議はすべての議題を終了いたしまして、二十四日の夕刻に本会議を開催いたしまして、経済、文化両委員会の勧告を含む共同コミュニケを採択するとともに、世界平和と協力に関する宣言を可決いたしました。これに引き続いて、二十数カ国の首席代表より謝意の表明があり、私も主催国の労をねぎらい、会議の成功を祝ってはなむけといたしました。会議は議長の閉会の辞をもって、七日間にわたる歴史的討論の幕を閉じましたが、その世界平和に対する貢献は甚大であったと存じます。  最後に、参議院が佐多、曾祢、梶原三君をバンドン会議に派遣されましていろいろ御助言を得ましたことを深くここに感謝いたしまして私のごあいさつといたします。(拍手
  68. 重宗雄三

    ○副議長(重宗雄三君) 次会の議事日程は、決定次第公報をもって御通知いたします。  本日は、これにて散会いたします。    午後二時十八分散会      —————・————— ○本日の会議に付した案件  一、日程第一 国務大臣演説に関する件(第四日)  一、検察官適格審査会予備委員の選挙  一、湿田単作地域農業改良促進対策審議会委員の選挙  一、離島振興対策審議会委員の選挙積雪寒冷単作地帯振興対策審議会委員の選挙  一、国会法第三十九条但書の規定による議決に関する件  一、アジア・アフリカ会議に関する高碕国務大臣の報告