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1955-04-27 第22回国会 参議院 本会議 第10号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和三十年四月二十七日(水曜日)    午前十時十三分開議     ━━━━━━━━━━━━━  議事日程 第十号   昭和三十年四月二十七日    午前十時開議  第一 国務大臣演説に関する件(第二日)     ━━━━━━━━━━━━━
  2. 河井彌八

    議長河井彌八君) 諸般の報告は、朗読を省略いたします。      —————・—————
  3. 河井彌八

    議長河井彌八君) これより本日の会議を開きます。  日程第一、国務大臣演説に関する件(第二日)。  一昨日の国務大臣演説に対し、これより順次質疑を許します。左藤義詮君。    〔左藤義詮君登壇、拍手
  4. 左藤義詮

    左藤義詮君 自由党を代表いたしまして、総理並びに関係閣僚に若干の質疑をいたします。  第一に伺いたいのは、本年度予算案提出が著しく遷延したことの責任についてであります。一昨日の施政演説を拝聴いたしまして、総選挙に第一党を獲得した民主党政府が、久しぶりに政権をとられまして、内政、外交にわたる抱負実現に、清新はつらつの気魄をもって邁進せらるるかと思いのほか、その内容は単調にして平板、迫力なく、信念なく、組閣早々にして早くも疲労困憊、さながらつえにすがつた衰余の老人のごとく、議場の片すみから起る一握りの拍手さえ、この内閣の挽歌のように聞えたのであります。現内閣の弱体と不見識には、ほとんどの国民失望落胆をしておる状態であります。過日、暫定予算審議に当りまして、私から本予算案提出期日をお尋ねいたしましたのに対し、総理並びに蔵相は、四月十五日を目途とし、遅れても一、二日をいずることはないと確約せられたのであります。実際には閣議決定が十九日、提出は二十五日と、この重大な時期に十日の違約をあえてせられております。防衛分担金折衝が長引いたのも、いわゆる二面外交の矛盾を露呈するものでありますが、拡げ過ぎた公約の大ぶろしきが穴だらけで、各省からの夜討ち朝がけ、それを調停すべき与党そのもの寄り合い世帯で、歳出の重点化どころか、まことに不手ぎわ千万な総花予算となっておるのであります。法王の威力も、日銀というバチカン宮殿に鎮座ましましてこそでありまして、現下の財政がいかにきびしいものであるか、予算編成の途上において早くも蔵相辞任の風説さえ飛んだのであります。一萬田さんは十二月十日に、総選挙に立候補の意思を尋ねた新聞記者に対しまして、「出れば衆議院だ、参議院年寄り政治道楽場所だ、」かように答えておられますが、果してこれほど遷延したミルクか水かわからんような予算が、やすやすと年寄り道楽場所をまかり通ると思っておられるかどうか。(拍手)いかなる思想を持つかは、もとより各人の自由でありますが、これを新聞に発表するがごときは、まさに参議院を侮辱するものであります。蔵相は本院に向つて挑戦する考えであるのか。これほどの元気な蔵相が、本予算案は十五日に提案し、六月の暫定予算は出さないということを予算委員会で確約せられた。しからば衆議院をいつ通過せしめて本院に回付するつもりであるのか、本院で何日の審議期間を要すると思っておられるのであるか。私どもは六月はおろか、七月さえ暫定に追い込まるるのではないかと心配をしておるのであります。本来、第一次鳩山内閣が旧冬成立と同時に、解散をするか、あるいは直ちに三十年度予算を出しておったら、四、五月暫定の必要もありません。いわんや六、七月まで国民に不安迷惑を与え、財界を混乱せしめることはなかったはずであります。その空費せられた間に、財政的な裏付けも見通しもない選挙公約を濫発して、さて現われたのがこの穴だらけ予算案とあつては、私どもどうしても納得ができません。提案の期日を違約した責任並びに本予算成立見通しにつき、暫定は出すか出さないか、総理並びに蔵相の確固たる所信をお伺いいたしておきます。  次に伺いたいのは、外交方針についてであります。総理外相も、わが国外交方針基調をあくまで自由世界との協調におき、その上で共産世界との交渉をも進めるということを強調しておられます。これは一月二十二日の演説も全く同一の趣旨であります。さてしからば、いわゆる二面外交実績がどうであるか、自由世界との協調基調とするといいながら、それのできなかったことは、対ソ交渉のスタートにおいて、外相訪米拒否、まことに情けないわけでありますが、外相訪米拒否や、防衛分担金折衝の難航によって暴露されております。一体相手国の大統領や国務長官がどういうような日程で、一体どういうような向うが空気であるかというぐらいの情報を報告しないで、在外公館は一体何をしておるんですか。本月十九日、英国政府ガット規定の対日適用を留保することを決定いたしております。これはおそらくオーストラリアやニュージーランドにも及ぶものだと思うがいかがでしよう。英国は右の決定とともに、通商条約交渉開始を申し入れてくるようでありますが、その内容日本品の進出を阻止するための保障を盛ろうとするものでありましたら、政府は一体どう対処するつもりであるか、どういう準備をしておられるか。越えて翌二十日には、米国上院財務委員会で、対日関税大幅引き下げを促進するいわゆるクーパー法修正をされております。これは対米輸出の伸張を著しく困難にするものと思うがいかがでしよう。日本ガット加入を最も積極的に支持しておる米国が、関税を引き下げぬようにクーパー法修正するようでは、米国以外のガット締約国にも大きな影響を与えると思いますが、かくのごとき米英両国のこの情勢に対する政府態度を伺つておきたい。  かくのごとく自由世界との協調は、首相外相演説にもかかわらず、一向明るいものではございません。せっかく再開の機運に向った日韓交渉さえも、対ソ交渉開始のために、鳩山内閣は容共的だという理由で頓挫しております。台湾政府との摩擦なしに対中共国交を開く見通しがあるかどうか。民主党選挙スローガンに高く掲げられました中共貿易拡大のために来朝いたしました貿易使節団との民間交渉が、その協定を政府保障するかどうかでもつれておるようでありますが、一体政府はどの程度までこれに保障を与える用意があるのか、その内容を詳細に承わりたい。中国との貿易を促進するつぼは、私ども自由世界の理解と協調を十分に取りつけることであり、ココムの禁輸品目を大幅に解除することにあると思うが、これに対して政府は一向にその成果をあげておらぬではありませんか。各地の会社や工場が、にわかに使節団の見学を辞退したりしている実情は、敏感な財界人が、自由世界との協調という政府のお題目を信頼しておらぬ証拠ではありませんか。かくのごとき不徹底な空気の中で、使節団滞日期限はもうすでに切れておるのでありますが、これに対して外務省は延長の申請を受理されるのであるか、それともすみやかに離日を求められるのであるか、これもついでに伺つておきたい。  対ソ交渉につきましては、総選挙中にでもすぐ実現するような幻想を与えられておりましたが、じんぜん三カ月にして、やつと交渉場所と日時がきまつた程度であります。総理は、まず国交を回復して、しかるのちに懸案の解決をはかるというような口吻でございましたが、今でもさようにお考えになっておるのであるかどうか。戦後十年たってもいまだ帰らざる抑留邦人の帰還問題、北洋漁業日本の生命でございますが、この漁業権の問題、ソ連の公海に対する解釈等の問題も、非常にむずかしいのでございます。特に領土の問題につきまして、これは先般予算委員会でお尋ねをいたしましたが、ほとんど総理はお答えにならない。こういうことは交渉のじゃまになる、今お答えする時期じゃないというようなお話でございましたが、しかも衆議院予算委員会では、千島、樺太については要求する意思がないというように御答弁になって、これは大きな見出しで新聞に報道せられておる。言うだけは言うておいてあと秘密外交というのでは、これは非常に内外に与える影響は大きいと思うのであります。あたかも明四月二十八日で、サンフランシスコ条約の第二十六条の拘束はなくなるのでございますが、この際かような重大な、子孫、民族の将来に影響する問題について、日ソ交渉に当っていかなる確信を持っておられるのであるかどうか、明瞭に承わっておきたいのであります。一体閣内の完全な一致と、国民の十分な後援があってこそ、いわゆる二面外交も望むことができましょうが、二人三脚の調子もそろわんような実績では、はなはだ心もとないものであります。下手をしますると、自由世界とは気まずくなってしまい、共産世界からはなめられる、いわゆるコウモリのようなみじめな結果に終りはしないか、非常に国民は憂慮いたしております。しかも、また共産世界からの呼びかけが、いわゆる日本共産党をインスパイアーして、その謀略、あるいは破壊活動が増長するような原因を作るおそれはないかどうか、非常に心配しておるのでありますが、さすがに総理も、ドムニツキー氏との交渉を取り上げるに当りまして、斎藤国警長官を招致して、治安対策を講ぜられたようでございますが、その後の情勢と、将来の治安方策につきまして、これは大麻国務大臣から詳細に一つ答弁を願いたい。  第三にお尋ねいたしますのは、前回の総選挙に、総理を初め、閣僚並びに各候補者が、大風に灰をばらまくように、いろいろ公約せられたその跡始末であります。予算案はやっと一昨日いただいたばかりで、詳細の説明を伺っておりませんから、いずれ委員会その他で逐次質疑をいたしますが、先にも触れましたように、防衛分担金を削減して、住宅厚生施設に向けるという、非常に国民の飛びついた甘い夢は、これは跡形もなく消えてしまいまして、社会保障の確立という一枚看板も、一、二の重点的施策を除きましては、吉田内閣当時から少しも前進しておりません。民主党が、健康保険適用範囲拡大給付費一定割合国庫負担というような公約をせられましたが、一定割合国庫負担はこの予算には見えておりません。健康保険赤字処理に三十億を計上しまして、さながら鬼の首を取つたように川崎厚生大臣は、おつしやいますが、これは単なる局部の応急措置にとどまつて根本的な切開手術とは申せません。結核対策も二百六十四億という要求に対して、はなはだわずかな計上でございます。文教予算につきましても、すでに教科書の無償配布分が、私ども公約違反第一号と称しておりますが、科学振興費あるいは私学振興費等、まことにお寒い状態である。閣内の有力である松村文部大臣はこれで満足しておられるのであるかどうか。  本年度のような超デフレ予算では失業者の増大は必至でありますのに、その対策費はわずかに四十六億の増加であります。しかもこれは公共事業費を減らしたその方を補うことすらも十分ではないのであります。これも民主党のうたわれました公約に、大学卒業者などの知的勤労者に特別の就労対策を講ずるということをうたっておられますが、どういうふうにこれが実現をしておるのであるか、その内容を詳細に承わりたい。  また、農林大臣は、行き詰り状態にある現在の米の供出割当制度を根本的に再検討して、時代に即応する適切なものにするということを公約にうたっておられますが、その構想がどれだけ本予算に頭を出しておるのであるか、ことにさしあたり農民に重圧感を与える強制供出制度を改善すると言うておられますが、具体的にどういうことをしておられるのか。農林予算においては、特に補助金整理をうたわれました三十年度予算編成要綱というものをこの前拝見いたしましたが、その筆頭にこれを取り上げておられますが、大蔵省の第一次査定で、前年から六十一億の打ち切りの内示を受けますると、血みどろの復活要求を続けて結局は昨年度と大差ない補助金予算に落ちついております。何のことはありません。政府公約与党が大手を振って破ってしまったようなものであります。しかもこの補助金の分配こそ問題でありまして、上層の三割ほどの農家をのみ厚く潤して、なかなかうまく行き渡らない、ほんとうに必要な貧農のところには流れていない、かえって補助金というものが農家階層分解を促進させておるという状態であります。補助金について非常な抱負を打ち出された農林大臣はどう考えておられるのか。  数えればきりがありませんが、何よりも大きく打ち出されました例の住宅四十二万戸の達成でありますが、あの民主党公約は、おそらく政府資金で四十二万戸できるのだと大部分国民は思っておったのでありますが、ふたをあけてみますると、二十四万五千戸は民間の自力に待つということであります。総数の半分以上に上る民間建設政府計画の中に織り込むことは、これはインチキもはなはだしい。昨年度実績から見まして、税制措置その他をいろいろ言っておられますが、これを考慮に入れましても、せいぜい十七、八万戸どまりだというのがくろうとの見込みでありますが、政府はどうお考えになっておりますか。国がめんどうをみるという十七万五千戸につきましても、家賃の安い公営住宅予算を昨年より十億円も削って、家賃の高い公団住宅建設への融資に力を注いでいる。これは低額の所得者の方に回らぬと思うのであります。住宅金融公庫の予算はふえておりますが、土地を得るための融資率を下げておりますから、申込者は、土地買い取りの頭金のひねり出しに苦労して、実際はせっかくの恩恵に浴することができない、かような状態になると思うのであります。すでに六月一ぱい暫定予算といたしましても、この大事な時期の四分の一が過ぎてしまって、わずか九カ月で果して四十二万戸達成できるかどうか。ことに公営住宅にいたしましても、政府予算地方へ回して、これを地方議会で議決して、実際取りかかるまでにはなかなか役所仕事はそう簡単にいきません。公団にいたしましても、保証金とかいろいろめんどうな手続き、窓口が実に煩瑣である。土地を得て、実際にこれが雨露をしのぐ家に入り得るのは決して容易ではございません。四十二万戸達成ということは、ただペーパー・プランを与えるということであるのか、それとも建設大臣選挙で疾呼せられたように、この三十年度三月三十一日には、はっきり四十二万戸、あの狭いところに家なくして苦しんでいる人々が、四十二万戸屋根の下にほんとうに住むことができるようになるのであるか、このお見通しについて明確なる一つ答弁を願いたい。  第四に、現内閣総合経済六カ年計画でございますが、これは資金等の裏づけのない未熟、未完成のものをにはかに政府が発表したものであることは、前国会においてわが党の愛知君が指摘した通りであります。果せるかな、本年度予算はこの六カ年計画と少しもマッチしておりません。やっと予算やりくりを終った後に、これと歩調を合わせるために計画のほうが修正せられた。これでは一体何のための計画であるのか。産業合理化のための投融資も増額せず、金利引き下げ見込みもはなはだあやふやである。輸出振興のための予算も蚊の涙ほどで、どうして六カ年計画の地固めができるのであるか。六年後の完全雇用経済自立というこの目的への踏み台は、本予算においては全然はずれてしまっている。この点について一萬田、高碕両大臣所見を承わっておきたい。何とかの一つ覚えといいますか、大蔵大臣がしばしば公約してこられた一兆円予算、このワクは単なる見せかけの、これは形だけでございまして、実質はすでに裏口からくずれ去っているのではありませんか。防衛庁関係予算外契約はしばらくおくといたしましても、専売公社の益金三十億を、一般会計を通さずに公共団体へ回すことにいたしましたのは、特別会計一般会計との関係を乱すものでありまして、こんなことをどしどしいたしましたら、それこそ切りがないと思いますが、大蔵大臣は何と考えられますか。開拓者資金融通特別会計への一般会計からの繰り入れ十億円も、これを資金運用部資金に振りかえたことも、明らかにこれは粉飾であります。砂糖、バナナ等特殊物資の輸入に関連する納付金七十億ですか、これを特殊物資資金として一般会計を通さずに、直接輸出入銀行に出資しておりまするのも、これもまた明らかに粉飾でございます。ことに心配いたしますのは、苦しまぎれに予備費を一挙五十億も減額したことであります。一荒れ百億といいますが、これからの災害にどうして備えようとするのか。望まぬことでありますが、長期予報はすでに赤信号を出しておる、こういう際に、何と心細いことではありませんか。政界に大望を抱くさすがの蔵相も、悲鳴をあげられたほど、この予算は苦しいやりくり、いわゆる含み財源をあさり尽した弾力性のないこの予算では、ちょっと修正を受けても、一つ風水害が来ても、たちまち一兆円のワクはほころびてしまいます。(拍手)いや、初めからほころびたものを無理に粉飾してごまかしておるにすぎませんから、年度内において、必ず補正の必要が生ずると思いますが、これに対する大蔵大臣所見を伺っておきたい。  今一つ伺っておきたいことは、分担金防衛庁費関係でありますが、千三百二十七億のワクを守ったといいますけれども、あの膨大な予算外国庫負担契約は、みすみすこのワクを破っておるのではありませんか。この百五十四億円は、明年度以降のワクを計算するとき、そのワクの外に加える約束をしているのではないか。日米共同声明によりますと、分担金大幅減額は、今年だけに限定されておるので、私どもの特に心配するところでありますが、これに対して防衛庁長官及び外務大臣の明確な答弁を伺います。また三十一年度以降は、自己の資力のより大きな部分国防目的に振り向ける、かような約束をしておられますが、これは明らかに条約規定以上の義務を負うことではないでしょうか。もししかりとすれば、国会予算審議権を無視したものでありまして、全く自主性を失ったものといわなければなりません。かかる約束をしました以上は、当然政府にも一応の防衛計画があると思います。なければこれはむちゃくちゃなことであります。その防衛計画一つお示しを願いたい。新聞の伝えるところによりますと、六カ年に及ぶ防衛計画を、内密に米国側に提示したということを申しておりますが、もししかりとすれば、すみやかに国会提出することが政府の当然の義務でなければなりません。これについて防衛庁長官所見を承わりたい。  最後にお尋ねいたしたいのは、政局に対する内閣所信または見通しについてであります。総理施政演説におきまして、かねて十八番の友愛精神を説かれまして、互譲寛容の精神こそ、民主政治運用の基本だと訓示をせられました。私ども若輩には遠い伝説ですが、若き日の総理は、闘志万幅、傷つける浜口老首相の登院を促したり、議場で政敵に実力を行使するほど、なかなかの勢いだったと承っております。幾たびかの政友会分裂にも、必ず一方の立役者であったのみならず、最近におきましても、自由党を出たり入ったり、また出たり、その行動のすべてが果して寛容と互譲によるものであったかどうか。(拍手自由党主流派との憎しみに満ちた闘争のあとに、これを脱党して、反対党たる改進党と結んで現在の政権を得られましたが、こういう行動が果して友愛精神の顕現であったかどうか。(拍手)今に及んで、謙虚な態度で誠意を披瀝して協力を求める、かように申されましたが、それならば、なぜ総選挙に勝ち誇りて組閣せらるるその際において、すなおに協力を求められなかったのか、百八十何名では政局の安定しないことはわかっているはずであります。衆議院議長議院運営委員長の問題で壁に頭をぶっつけてから、やっと友愛精神に気がつかれるようでは、はなはだ心もとない気がいたします。で、失礼だとは思いますが、鳩山先生の言動が明朗闊達はけっこうでございますが、ともすればその度が過ぎて、一国の首相としてあまりにも軽率、無思慮に流れ、国内的にはもちろん、国際的にもしばしば信用を失墜していることは、まことに遺憾の至りであります。とりあえず最近の一、二の例を申しましても、例の原爆貯蔵の問題とそれの取消し、これは内外に非常なショックを与えたのであります。占領憲法は実質的に無効だ、かような言論をなすって、これまたたちまち取消しておられる。防衛分担金減額分住宅その他の社会保障費に回す、これは何べんも言われましたが、これが無効であったのみでなく、非常に有害であった。日ソ交渉地に関しまして、外務省からソ連声明に対して文書を発表いたしました。ニューヨークにきまったことは世界的常識であるとまで言っておる。かつ、いま一応二ューヨークで押すと、かように言っております。その同じ日に衆議院外務委員会で、ニューヨークにはこだわらんと、あまり闊達すぎて実に頼りない御答弁であります。かようなことを数えますれば、枚挙にいとまがございませんが、しかも失礼ですが、病気のせいか、どうも頭脳に統一性がない。何を言い、何をやりだされるかわからぬという、多くの国民が非常な不安と憂慮をいだいておるのであります。私はその国民心配を思いまして、かような失礼なことを申し上げるのであります。  この不安を痛感せられましたのか、首相親友であり、内閣の蔭の実力者でありまする三木民主党総務会長は、内閣辞職解党並びに総裁引退をも辞せずと、あの爆弾的な保守合同論を提唱せられたのであります。後任総裁として、緒方自由党総裁初め数名の名前まで三木さんはあげておられるのであります。これは岸幹事長総理自身とも連絡済みと伝えられ、民主党総務会もこの三木声明を一応了承いたしたと承わっております。四月十八日大阪中央公会堂におきまして自由、民主党主催赤間知事候補推薦演説会において、私も三大会長と同席いたしましたが、満堂の聴衆に対して、民主党は百八十六名ではどうにも動きがとれない、その意味ではほんとうに降参したのである、無条件降伏したのである。人は三木をタヌキと言うが、この公開の席で発言をする以上、私の話には断じて裏はないと、はっきりこの耳で承わったのであります。わが国議会政治のベテランであり、総理の一身を思うこと最も深き三大会長は、おそらく現下政局総理の健康を心から憂慮して総理終りをしてチャーチルのごとく全からしめようという切々の友情かと拝察いたすのであります。(拍手)この友情に対して、総理はいかなる心境にあられるのであるか。総理の御家族、御親戚はもちろん、総理自身にも、つとに隠遁の志のあることは以前にも記者団に漏らされたところでありますが、当時総選挙への影響をおもんぱかって、側近があわてて口どめをいたした形跡がございます。もし親友の言をいれて、保守合同または保守提携に向われるのであるならば、いついかなる方法をもって自由党協力を求められるのであるか。あくまで総辞職解党総裁公選の原則に従うおつもりであるか。その総辞職は、予算成立の直後であるのか、それとも予算が難航してその際に初めて進退を考慮せられるのであるか。私ども法案審議に対する心がまえの上からも、ぜひ率直なる御所見を承わりたいと存じます。(拍手)  右のごとき十八日の大阪における三木演説にもかかわらず、越えて二十日の記者会見において、総理三木発言そのものも知らないし、その後の発展についても聞いていないし、保守合同はもう一度くらい解散選挙してからの方がいいだろう、かようなことを言われた。国会が行き詰まれば、することはただ一つであると、明らかに解散をにおわしておられるのであります。翌二十一日には根本官房長官車中談において、あくまで一兆円予算を堅持する、もし自由党側修正により一兆円がくずれるようなとき、これはもう、初めからくずれているのですけれども自由党側修正により一兆円がくずれるようなときは、解散可能性が強い、かような強気の言明をしておるのであります。老友の忠言にそむいても、総理は断固解散の腹がおありになるのかどうか。過般の選挙に巻き起りました鳩山ブームは、吉田政権があまりに長過ぎた反動と非劇の政治家に寄する日本人のいわゆる判官びいきの結果に過ぎません。わずか二カ月余りにして早くもブームは雲散霧消いたしました。過日の地方選挙においては、民主党自由党の獲得議員数においてはるかに下に立っておるのであります。かような現状において解散、総選挙をいたしまして果して政局安定の自信をお持ちになっておるかどうか。(「大丈夫社会党あり」と呼ぶ者あり)和戦いずれに出られるおつもりであるか。この重要な時期に、この予算その他の重要な法案をもって、総理はいかなる所信を持っておられるのであるか、この点を最後にお伺いをいたしまして、なお若干時間がございますので、御答弁によりましては再質問を保留いたしまして、私の質問を終ります。(拍手)    〔国務大臣鳩山一郎君登壇、拍手
  5. 鳩山一郎

    国務大臣(鳩山一郎君) 左藤君の御質疑に対して答弁をいたします。  予算案を四月の十五日ごろ提出いたしますというのが二十五日まで延びましたことは、まことに申しわけありません。十五日ごろ提出いたしたいと努力はいたしたのでありますけれども、本国政府との交渉が延びまして、鋭意努めたのでありますけれども、やむを得ず延びたのでありまするから、御了承を願いたいと思います。左藤君の演説を伺っていますと、予算案の延びたのも、公約の実行のできないのも、すべてが外交方針の誤まったのに基因しているような御演説でありました。つまり米国協調関係を維持していくと同時に、ソ連や中共との国交を正常化せんとするのは二元外交であって好ましからざる結果を生ずるだろう、予算案提出のおくれたのも、公約の実行できないのも、すべてこの誤まったる外交方針に基因しているのだというようなお考え演説をされたように聞いております。これは左藤さんのお誤まりであろうと思います。(左藤義詮君「そんな質問はしていません。」と述ぶ)そうですか、私はそう聞いたのです。とにかく米国一辺倒でいったならばもっとよくいくのだというような、直訳をすればそういうような演説に私は聞いたのです。それは誤まりだと思います。(左藤義詮君「全然違います。」と述ぶ)とにかく今日まで世界の歴史を見ると、二つの国家群に分れて、あるいは数十国家群となり、あるいはそれを非とする国家群となって、そのために戦争は起きたのであります。今でも自由主義国家群とそれから共産主義国家群とが、いわゆる冷戦というのをやっておりまして、この冷戦の仲間に入れば、これは熱戦になるおそれがほんとうあると私は思っておるのであります。それですから、冷戦をやめていくのは、どうしても通商貿易をして国交も正常化することが適当だろうと思っているのであります。そういうことによてだんだんと国際連合の考え方を基調としていけば、世界の平和は維持できると思ってやっておるのでありまして、決して誤まっておる外交政策とは私は思っておりません。  それから最後に三木君の話を問題にされたのであります。三木君の話はもとより当然なことを言われておると私は思っております。そういうようになれば、はなはだけっこうなことだと衷心思っております。  詳細な点は閣僚から御答弁をいたしたほうがいいと思います。私はこれをもってやめます。(拍手)    〔国務大臣萬田尚登君登壇、拍手
  6. 一萬田尚登

    国務大臣(一萬田尚登君) お答え申し上げます。  予算案提出がおくれましたことについておしかりを受けましたのでありますが、実は予算案提出につきましては、私といたしましては、できるだけ努力を傾倒いたしたのでありますが、私が考えておりましたときよりもおくれまして提出を余儀なくされましたことは、私といたしましても、いかにも不手ぎわに存じます。これは率直に私はさように考えておるわけです。が、この予算案につきましては、私としては、今日においてまあ最善を尽しておるわけでありまして、ぜひとも原案通り成立を希望いたすことは申すまでもないのであります。  なお、ただいまの御質疑で一兆円の予算一つ覚えの一兆円というふうなお話もあったかと存ずるのでありまするが、この一兆円と申しますのは、何も形にとらわれた考えではないのであります。今日、日本の国力及び具体的の税収入等から見まして、どうしてもそういう見地からも、一兆円程度にとめなくてはならぬ。同時に他方、日本の経済、特に日本の経済が国際的に非常に立ちおくれておることも、これは私は、いい悪いは別として、率直にやはり認めなくてはならない。立ちおくれを取り戻して、そうして世界の経済と伍していく、その競争力をそこまで持っていくのには、どうしてももう一奮発をして、日本の経済の地固めをしていかねばならぬと、こういうふうな関係から、どうしても一兆円という、こういう程度で国家の歳出というものを組んでいかなくてはならない、こういうふうに考えて、一兆円というものを考えておるわけであるのでありまして、決して単に形にとらわれて、何でもかんでも一兆円に押し込めばいいという、そういうわけでは決してありません。これだけは特に御了承を得たいのであります。  なお、六カ年計画との関係について、何も六カ年計画関係がないではないか、少しもその裏づけがないじゃないか、こういうふうな御質疑もあったようであります。これはいろいろとまあ見解の相違の点もありましょう。いろいろ議論の余地もあると思うのでありますが、六カ年計画につきましては、やはり地固め、六カ年を通じての計画が、うまくいくかいかぬかが私は問題である。初めのちょっとが振り出しがどうということよりも、六カ年を通じてうまく、そうしてこの六カ年の間には、内外情勢に大きな変化もあるのでありますから、必ずしもまた計画通りいかぬということも、これも人間の社会ではやむを得ない。(笑声)そういうような意味でありまして、しかも六カ年計画の初年度、初めの三年は地固め、特に初年は安定をもとにしてやるということは、強くうたっておるのでありまして、そういうふうに決して六カ年計画が裏づけがないというふうにおとり下さらぬように願いたいのであります。特に予算におきましても、単に一兆で締めていくというだけではない。地固めということに二つ私は考えておる。一つは、ほんとう日本の経済を健全化するために、いわゆる合理化をして、むだを排除していくとともに、他面において将来の飛躍に備えていく、日本の経済を積極的によりよくしていく面と、この二つあるのでありまして、まあその面につきましては、私は投融資を昨年度に比べまして、やはり四百二十億以上ふやしておる点に、そうしてしかも、これを石炭、鉄というようなものを中心にして合理化を進めていこう、重点的に配分をしよう、こういう考え方におる点も、ぜひとも御了承を得たいと思います。  なお、予備費について少いじゃないか、八十億、昨年も補正は八十億だったのでありますが、初め百三十億組んでおって、むろん百三十億に比べて八十億で、五十億ばかり少い。これも私は、もう少し予備費を置く方がよかろうという点については異存はないのでありますが、今回の予算では八十億になりましたわけであります。今後、たとえば災害なんか、大きな災害があれば、これは予備費は相当大きくても、いたし方ない場合もあるのでありますが、ある程度災害がありましても、またそのときは、その他の災害に関連する一般会計に組んであります予算が幾らもあるのでありますから、調整は十分できる、こういう考えをいたしております。  なお、最後にお尋ねの中で大きな問題は、予算国庫負担に関する問題であると思うのでありますが、これは日本の防衛力を整備していく上におきまして、早く契約をしておく必要がある、こういう見地から組んでおるのでありまして、御了承を得たいと思います。(拍手)    〔国務大臣重光葵君登壇、拍手
  7. 重光葵

    国務大臣(重光葵君) 一般外交考え方につきましては、すでに外交演説の中で申し上げました通りでございますが、今御質問の点を順次にお答えをいたしたいと思います。  ガット交渉のことをお話がございました。ガット交渉はジェネバにおいて進行中でございまして、御承知の通りに、わが対外貿易を進める上について、ガットの加入ということが重要であるということは、申すまでもございません。その要件といたしましては、二十三カ国の承諾があれば、それはできることに相なっております。今日まで日本ガット加入を認めようという国は、二十一カ国に及んでおります。従いまして数カ国の賛成を得れば、これも実現するという状況に相なっております。そのために、出先においても非常に努力をいたしておるような次第でございます。ところが、お話の日英通商関係のことでございます。イギリスは、主として国内の情勢から、日本ガット加入の原則を認めるということを承諾をいたさないのでございます。これは、まことに私は遺憾なことで、貿易の自由主義の祖国とも言われておるイギリスが、日本ガット加入に反対するということは、日英関係の従来の伝統から見ても、まことに遺憾なことでございます。しかし、これは主としてイギリスの国内の情勢から来ることでございますが、イギリスといたしましても、他の国が日本ガット加入に賛成することをじゃまをするようなことは、そういうことは一切やらないというような意思表示もしております。ただ自分のところは、実際の取扱いは、日本品を少しも区別をする取扱いはしておらないけれども、権利としては、日本ガット加入を認めるということに承諾を与えられない立場におる、こういうことでございまして、今回、日英の間に、通商条約を結ぼう、締結しようという意思表示をイギリス側から表示して参りました。これも不日、東京で開かれることに相なっておるので、その交渉におきましては日英通商全般のことについて、日本側としてできるだけの通商上の故障のないようにこの交渉中に努力をいたしたいと、こう考えておる次第でございます。  次に、米国の議会で関税を引き下げるということについていろいろ故障があるような情報を持っておられるというお話でございます。これも私どものところにおいても、いろいろの情報を持っておることは事実でございます。しかし、これを全面的に見ますというと、米国日本品関税に対して低下をしようという努力を政府を中心としてやっておることは事実でございます。これは私は非常に歓迎しなければならぬところでございまして、いろいろな故障は排して、できるだけのこの日本の希望に応じてもらいたい、こう衷心から念願する次第でございます。これらのことが自由主義国との間の協調もしくは協力に非常に障害をなしておるということは、私は全面的にはならないと考えます。かようなことも、でき得るだけ双方の理解のいくように進める努力は必要でありますが、これが全面的に悪化をしておるという材料には私はならぬように考えます。もとより自由民主諸国との間に、通商その他の関係をさらに改善するという努力は、これは極力払わなけりゃならぬ、こう考えておることには相違ございません。  次に、韓国との関係を申されました。韓国との関係は、過日の私の外交演説にも申しております通りに、極力今、国交の調整をやろうとして実は内交渉をやっておるのでございます。これは御承知でもございましょうが、財産権の処理の問題等について、いろいろ故障のあること、またむずかしい問題のあることも事実でございますが、しかし一番の隣国でありますから、われわれの常に希望しておる善隣友好の関係というのは、韓国から始めらるべきものとすら思っておるわけでありますから、これに対しても最善の努力を尽していきたいと、こう考えておる次第でございます。  次に、中共貿易の問題でございます。中共貿易を促進したいという考え方は、たびたび御披露に及んでおる通りでございます。目下来朝中の民間代表との交渉、つまり民間団体との交渉が、その滞在期間中にりっぱにまとまるように、これも衷心希望いたしておる次第でございます。今直ちに中共との間に政治関係を設定して、さようなところに進んでいくということは、まだそういうことは今日では機が熟していないように考えます。そこで民間の通商貿易の実際的の仕事を進めていく、さような交渉がまとまることを衷心から希望いたします。滞在期間の問題についてお話がありましたが、旅券の滞在期間は、従来とも共産国を初めとして外国に行く旅券の期間は非常に厳格に、最初から厳格にやっておるわけであります。また、各国ともこれはそういうならわしになっております。しかし中共貿易も非常に実際的に重要な問題でありますから、期間を一度延ばしました。特に特別の考慮で延ばしましたのでありますが、その延ばした期間内に仕事の済むことを私は希望しておるわけでございます。  それからその次にソ連との交渉について、これはもうすべて文書は、最近のところまで発表、昨日も発表いたしました。そこでその通りに進んでおるわけでございます。一度は先方も、日本の希望する所で交渉を開くことに異存はないということでございましたが、私どもニューヨークが一番いいと、こういたしたのであります。しかしその後の情勢を見て、ニューヨークはどうしても困る、ほかの中立国ならよろしい、こういうようなソ連の意向であることがはっきりいたしましたから、これも交渉を促進する、成果を得るために、このソ連側の意向をも考慮いたしまして、それならば向うの提案をしたジェネバかロンドンか、日本はロンドンのほうが都合がいいのであります。それでロンドンで交渉を開こうということの意思表示をいたしまして、先方もそれに異存がなく、この交渉は従いまして予定の通りに、遠からずロンドンで開催をみることに相なっておる次第でございます。  最後に、防衛金の分担について非常に自主性を、予算の編成等の自主性を失っておると、こういう御批評がございました。防衛金の分担は御承知の通りに安保条約から行政協定、MSA協定等に詳しく条約上に規定をされておるわけでございます。その規定によりまして日米の間に交渉をするのは、これは当然やらなければならぬことでございます。日本側がこの防衛力の漸増をする、それに伴って防衛分担金の軽減の話に応じよう、こういうことでございますから、当然これは話し合いをいたすわけでございます。しかし話をいたす条約上の義務は、何ら予算審議権なり予算をこしらえる日本の主権を侵す、そういうことは少しもございません。これは国際的約束は全部、約束によって処理しなければなりませんけれども、それによって主権の問題とは、これは関係がないものであります。しかしアメリカとの関係において防衛分担金日本義務でありますから、それを軽減する、してもらいたいということは、アメリカと十分話をしなければなりません。その了解を得る手続をいたしたわけでございます。これで答弁終ります。(拍手)    〔国務大臣大麻唯男君登壇、拍手
  8. 大麻唯男

    国務大臣(大麻唯男君) 私に関する御質疑に対しまして簡単にお答え申し上げます。  過般、私の方の斎藤警察本部長官が参りまして、「今日鳩山総理から招かれてそうして日ソ国交調整と国内の治安維持との関係はどういうふうに考えるかというような警察当局の意見を徴せられました、そこで私は国交調整と容共ということは、別問題と警察当局では考えております、もとより当局といたしましては、共産主義によるまあ暴力と申しますか、そういうようなことについては極力これを調査し、またこれを予防しなければならぬと考えておりますけれども、当局といたしましては日ソ国交が調整されたからといって国内の治安が悪化するとは考えておりませんと、こういうような意味のお答えをいたしておきました」と申しておりました。私はそれでけっこうであろうと、申しておきました。(笑声)そこで今後は警察当局といたしては、法律の許す範囲内において暴力活動の予防、制約については、万全を期さなければならない、そういう方針でいくということを二人で話したことがありまして、その後警察、治安の機関といたしましては、その線に沿うて一生懸命職務に勉励いたしておる次第でございます。それだけお答えしておきます。(笑声、拍手)    〔国務大臣川崎秀二君登壇、拍手
  9. 川崎秀二

    国務大臣(川崎秀二君) お答え申し上げます。  社会保障の強化推進は、御指摘のごとく、党の重要な公約でもありまして、予算編成に当りましては財政上可能な限りにおいてその充実をはかったのであります。本年の歳出総額は、労働省の関係の失業対策費を加えますと、昨年度予算に比しまして五十億の増加で、合計一千六億となり、わが国予算におきまして初めて一〇%をこえるに至ったのであります。厚生省関係では、社会保障の中核となるベき医療保障を中心といたしまして、社会保険、公的扶助その他の社会福祉及び公衆衛生につきまして、それぞれ従来の施策を一段と強力に推進いたしますため、約六百八十四億の費用を計上いたしております。  また御質問の健康保険の赤字対策につきましては、吉田内閣以来の懸案でありましたが、本年度の赤字につきましては、総額六十億に対し、さしあたり十億円を一般会計において負担し、二十億を借り入れといたしまして、国家の負担をも明らかにいたしますとともに、保険料率の引き上げ、標準報酬のワクの引き上げなどによりまして、その健全化をはかることといたしたのであります。しかしながら御指摘の通り、これはあくまで本年度の一応の解決策でありまして、私としましても決してこれに満足いたしておるものではございません。従って抜本的な措置を講じますため、近く民主的な審議機関を設けまして、社会保険の学識経験者から臨時委員の方方を委嘱することにいたしまして、今明日中にも発表いたすつもりでございます。(拍手)    〔国務大臣松村謙三君登壇、拍手
  10. 松村謙三

    国務大臣(松村謙三君) お答えを申し上げます。  科学振興費につきましては大よそ十億五千万くらいの経費をとることができました。また私学振興は七億八千万くらいの経費をとることができたのでございますが、もちろんこれをもって十分だと申すのではございませんが、十分その運営に注意をいたしまして効果を上げたいと思っております。  また、今年の大学の卒業生の就職の問題でございますが、これには私どもも非常に心配をいたしておるわけでございます。今年の卒業生は大よそ、私立、公立、国立を合わせまして十二万八千ぐらいの数でございます。そのうち義務教育の教員の養成所の方でありますとか、あるいは医学の方面の方を除きますと、就職の対象となる数は大よそ十万四千ぐらいのものでございます。それが、卒業時において就職のできております数は五万五千九百、それから家業につきます者が一万一千ぐらいでございます。それからまだ職につくことを得ない者が一万六千二百ぐらいの数字でございます。それからなお、どうしたか十分調査が行き届かない、わからないという者が一万千ほどおりまして、今日その就職を要する者の数は大体一万六千と、こういう数でございます。その一万六千のうちで大体の割当を申しますと、一万は大学、それからあと五、六千は短期大学と、こういうことでございまして、これらの人を何とか職をあっせんいたしたいと思いまして、労働省、厚生省、その他関係各省とともに就職斡旋協議会を作りまして、もう地方との連絡をして、その就職に努めておるような次第でございます。  大体のお答を申し上げました。(拍手)    〔国務大臣河野一郎君登壇、拍手
  11. 河野一郎

    国務大臣(河野一郎君) 私に対するお尋ねにお答えいたします。  第一は米の政策についてでございます。これはかねて申し上げました通りに、従来の米の供出制度を変更いたしまして、米の自由販売にいく方向をとりたいということを申し上げたけれども、これにはいろいろ準備その他必要なる処置がございますので、その経過といたしまして本年は予約買付制度でいきたいということにきめております。これにつきましては別に一般会計におきましては予算措置を必要といたしませんで、食管特別会計においてそれはやっていける、こういうつもりであります。この処置につきましては、すでにある程度の準備は完了いたしまして、目下関係農業団体等と打ち合せをいたしておる次第でございます。  第二は補助金の問題であります。農業関係補助金でございますが、従来の補助金制度につきましては、ある程度これを整理するという方針は変っておりません。と申しますのは、わが国の農業につきまして考えまするに、戦争の状態にありましたときと終戦後の状態にありましたときに、米麦すなわち主食の増産に非常に重点を置きましたために、一般の農業経営が多少偏向いたしております。そういう意味合いから本年度予算におきましては、多角経営をなるべく推進いたしたいというような意味合いにおいて、養蚕でありますとか畜産でありますとかいうような方面に、補助のいき方を多少変えた次第でございまして今御指摘になりましたように、初めに補助金を十分に減すと言っておったが、あとからまた補助金がふえておるじゃないかとおっしゃいますけれども、これは内容的に多少変えたわけであります。  申し上げるまでもなく、日本の農業につきましては、わが国農業の特異性にかんがみまして、ある程度補助政策が必要でありますことは御承知の通りでございまして、これを全然やめてしまうとか、そういうものは要らぬとかいうような考えでやって参ることは困難と考えておりますので、どうしても補助政策はとっていかなければならんという結果から、こういうことになったのでありまして、この点御了解願いたいと思います。    〔国務大臣竹山祐太郎君登壇、拍手
  12. 竹山祐太郎

    国務大臣(竹山祐太郎君) お答えを申し上げます。  お話の通り住宅の問題はなかなか容易なことでないということは、われわれも決意をいたしてかかって参るつもりでおります。今いろいろ御質問の中で、多少世間に誤解をされておる点もありますので、この際お答えを申し上げますが、今回の住宅の全体の計画は、御承知の通り従来の公営及び公庫の二つの制度に公団の制度、この三本建てにいたしたわけは、公営は御承知の通り最高限度の国庫の負担をいたしまして、低家賃住宅をできるだけ多く供給をするという建前でありますので、今度もこの戸数はふやしております。しかも今までは千円以上の家賃が最低でありましたが、今度は八百円台の家賃で六千五百戸も多く作ろうということに、いわゆる公営の分の計画はいたしております。従って従来公営の中で相当程度ずい分よいアパートを建てておりました分は、これは公庫及び公団の方に移した方が全体の調整上適当であると考えましたので、予算の全体の割り振り上多少変ったことに相なっております。  公庫の土地の問題につきましてお話もありましたが、土地につきましては、全般的に見て公団で百万坪の土地造成をいたしますほかに、国有地数十万坪を提供してもらいますし、また五百万坪の緑地の開放もすでに東京においては行いました。その他あらゆる面で土地の提供には全力をあげて参るのと、公団土地融資につきましても、誤解がありますが、従来通りいたすことにいたしております。  そのほか自力建設についてお話がありましたが、二十三万戸の自力建設、一万五千の増改築は従来の状況から推して決して非常な無理とは考えておりません。と同時に、新たに減税の処置と五十億の金融補償をいたしますほかに、今の土地の問題等もあわせましてこの民間自力建設にはできるだけの協力をいたすということで、この三本建てを全体合わせまして、すみやかな御審議をいただいて、私は各方面の御協力をいただいて、何としてもこれの完成に全力をあげて努力をいたしたいと考えておる次第であります。    〔国務大臣杉原荒太君登壇、拍手
  13. 杉原荒太

    国務大臣(杉原荒太君) 左藤さんの御質問の第一点の防衛庁の予算外契約、国庫債務負担行為が非常にふえたという点に対してお答えいたします。これはなるほどふえております。それを大体分けてみますというと、一つは施設整備関係でありますが、これは官舎とか飛行場その他港湾施設等、従来と比較しまして別に特に説明をするまでもないと思います。(「はっきり言えと呼ぶ者あり)それからその中で船舶建造費、これはなるほど相当大幅にふえております。そのわけは、最近アメリカ側からの供与を期待しておりました警備艦の二隻というものが、その後だんだん話し合いましたが、向うからの供与が期待できないということがはっきりいたしましたので、これを日本側で建造するということになったこと、それから今までの船舶の建造の進渉状況から顧みまして、四分の三を国庫債務負担行為の方に回したということがふえておる理由でございます。それから飛行機の購入でございますが、(「こっちを向け」と呼ぶ者あり。笑声)これが新しい項目でありまして、これがふえております。これはしかし日本側で、ことに航空自衛隊の充実を必要と認めまして、この方の予算外契約がふえております。それからもう一つ装備費を約十六億ばかり国庫債務負担行為としてあげておりますが、これは従来アメリカ側に期待しておりました装備の中で、日本側で作ることが可能であり、また必要であると思うものを計上しております。これはしかし日本側でまたすぐ作るとしましても、相当時間がかかりますので、試作等時間がかかりますので、これを国庫債務負担行為の方に計上した次第でございます。  それから次に分担金交渉に関連して共同声明に書いてあることにお触れになりましたが、これは防衛力の漸増についての政府の一般的な意思を表明しておるのでありまして、安保条約だとか、あるいは相互防衛、いわゆるMSA協定によって日本が負担しておりますところの義務などの範囲を逸脱したものでは全然ございません。  それから最後に長期防衛計画のことでございますが、これは総理の施政方針演説でも明らかにされましたように、今、政府では経済六カ年計画に見合う長期防衛計画を作っていくというつもりにしておりますので、そういうつもりであるということは、これはアメリカ側にもはっきりと申しております。しかし長期計画そのものは、これは今検討中でございますので、これは今後検討の上、国防会議などの実現を見ますならば、そこにかけた上で決定せらるべきものと考えております。
  14. 河井彌八

    議長河井彌八君) 高碕国務大臣答弁は、明日に留保せられました。     —————————————
  15. 河井彌八

    議長河井彌八君) 佐藤尚武君。    〔佐藤尚武君登壇、拍手
  16. 佐藤尚武

    ○佐藤尚武君 私は、一昨日の総理大臣の施政方針に関する演説並びに外務大臣外交方針に関する演説につきまして、緑風会を代表して、主として外交の方面から二、三の質問をいたしたいと存じております。  第一は、国際連合の問題でありまするが、外務大臣はその演説の中で、国際紛争の平和的解決を力説して、これは日本の平和憲法の主義であるばかりでなく、国際連合憲章の趣旨にも完全に一致するところであると言明しておられるのであります。国際紛争の平和的処理が世界平和の維持の上に根本原則であるということは、今さらかれこれ申すまでもないところであるにかかわらず、この原則は過去においてしばしば尊重されていなかったがために、ついに世界平和を撹乱するというところまで参った実例が多々ございます。中でもかの満州事変ないしは北支事変等も、不幸にしてその一例でありました。われわれは断じて再びかような過ちを繰り返すということはやってはならないと感ずるのでございまするが、この際、外務大臣が改めてこれを強調されたということは、諸外国との善隣友好の関係を保持して行こうという日本の建前から申しましても、これは大いに意義のあることであり、諸外国に日本の方針を周知せしめるということにもなりまするので、私も外務大臣のこの言明に対しまして同感を表しておるものでありますが、国際連合なるものには、それ以外にまだ重要な原則があります。その一つの原則は、平和処理の問題が失敗した場合、成功しなかった場合、その結果侵略者が現われて来たというようなことになりますると、そこに国際連合の憲章におきましては、集団安全保障の原則が盛られておるのであります。これらの原則は、国際連合加盟国の自衛手段でありまするが、これらの原則を含めた国連憲章の原則なるものを、日本はあの平和条約でもって、あらゆる場合にこれを尊重するということを誓約しておることは、すでに御承知の通りであります。その同じ国際連合憲章の前文の中で、日本は国連に加盟を申請するという約束もしており、また現に申請したのでありまするが、国連に加盟を申請するという以上は、国連憲章の原則を尊重するということはこれは当然のことでなければなりません。そういう観点から見まするまらば、国際連合の憲章というものは、わが国の国策の基調とまでなっておる次第であります。そこで私が申し述べたいことは、それほど国際連合と日本との関係は密接なものであり、国連憲章なるものは、日本にとりましても重要な憲章であるということであるならば、政府はいま一段と国際連合に力をそそがなければならんというように信ずるものであります。日本の国連加盟の問題にしましても、政府は今まであらゆる機会にこれを強調し、推進して来たということを私も承知はいたしておりまするけれども、今後もすべての機会をとらえて、そうして政府においては強力に日本の主張を世界に向って表明すべきであり、そうして世界の世論をかり立てて、日本の加盟を拒否しておるその拒否ができない、これ以上は続けられないというところまで持っていくという必要があろうと私は信ずるものであります。これは単に日本の問題ばかりではありませんので、日本初め、あのイタリアのごとき、やはりまだ加盟が許されておりません。これらの両国が、世界にとりましても経済上、政治上あらゆる点において重要な国であるということは申すまでもないことであります。ことに日本のごときは、国際連合の総会において、国連に加盟する資格のある国であるということが立派に決議されておるのであります。かような次第でありまするからして、日本が加盟を強く主張するということは、これは当然なことでありますると同時に、私は国際連合なるものの性質から見まして、これは全世界にわたるべき平和維持の機構でなければならないし、また国際連合はそのためにできておる機構であると承知しております。しからば全世界の独立国が全部これに加盟をするということが本来の筋でなければならないのであります。もとより国際連合の憲章には、加盟国の資格の制約があります。そのおもなる点は、平和愛好国でなければならんということでありまするが、とにかく平和愛好国としてわれわれの間に伍することのできる国はもちろんのこと、そうでなくて、われわれと主義、主張を異にする国でありましても、われわれの間、つまり平和愛好国の間に伍するようにこれを仕立てまして、他国のことを仕立てると言うことは、はなはだ語弊があるかもしれませんけれども、とにかくそういうように導きまして、結果は全世界に普及するというところまで持っていくべきであろうと私は考えておるものでございます。国際連合の普遍性を主張いたしたいのであります。またわれわれは、日本政府ニューヨークにオブザーバーとして大使を派遣しております。そこまで参りましたことは、私は非常にいいことであったと同感させられておるのでありまするが、大使を派遣するくらいならば、その人が十分に活動ができるだけのことを、日本政府としてはしてあげなければならないのであります。しかるに現状はいかんと申しまするならば、いろいろな制約を受けまして、経費の点においても制約を受けておる。有能な大使があちらに参っておるのにかかわらず、全力を発揮することができないというような、そういう事態であるように見受けられまするが、これは政府としても十分にお考えにならなければならぬところであろうと存じております。なおまた、それだけ重要な国際連合であるとするならば、国内におきましても、政府はいま一段、国連を一般民衆に周知せしめるための努力をなさる必要があろうと思うのであります。これは今までも政府においてそういう努力をされてきたことも一部承知はしておりますけれども、まだまだ日本国内におきまして国連を知っておる人はきわめて少い今日におきましては、政府の一そうの努力を望まざるを得ません。もとよりこれは単に政府ばかりのことでなく、民間においてもその努力をすべきでありますが、これは政府におきましても十分にお考えを願わなければならぬと思うのであります。国連加盟の問題、国連に常駐する代表者の活動上の便宜供与の問題、ないしは国連精神の国内普及の問題等、政府において十分にお考えをお願いしたいと思うのであります。  次は、ソ連並びに中共関係の問題であります。この問題は主として鳩山総理大臣の演説に盛られておる問題でありますがゆえに、私は総理大臣のお考えを伺いたいと思うのであります。鳩山総理大臣は、その第一次内閣の組織当時から、わが国の国策の基調としては、米国との友好関係の維持に重きを置いておられて、同時にソ連との戦争状態の終結、国交の回復を強調しておられたのであります。また中共とは、さしあたり貿易関係を再開したい、それによって友好関係を回復しようという、そういう方針を立てられたのでありましたが、今次の施政方針におきましても、また再びそれを繰り返して、これら両国との関係について、従来からの主張を明らかにしておられます。昭和二十七年平和条約が発効したとともに、連合国とは国交が回復いたしました。国際関係は常軌に復し、友好関係の増進を見つつあることは、まことに慶賀にたえないところでありますが、ソ連とは、終戦以来十年の今日におきましても、今なお戦争状態が終結に至らず、従って国交も回復されていないということは、これは変態でありまして、いつまでも不問に付しておくわけには参らない問題であります。またこのまま戦争状態を続けておく、机の上の問題であるにしましても、そういう事態を続けていくということになりましたならば、今後長く両国間には正常な関係は回復されないということになるのでありまして、これは決して両国のために利益とするところでないばかりでなく、ひいては世界の平和の上にも影響を及ぼす問題であろうと存じます。このゆえに、いつか一度は、だれかの手によって戦争状態の終結の手が打たれなければならなかったのでありまするが、それを鳩山総理がやりおうせられたのでありまして、私は公平な第三者といたしましても、総理の決断に対しては満腔の賛意を表するものであります。もっともそのとき以来、ソ連との交渉開始場所の問題等につきましていささかいざこざがあったように聞いておりまするが、それらは第二義的な問題としか見られないのでありまして、しかもただいまの外務大臣の言明によりまするというと、交渉場所もロンドンにきまったということでありまするから、今さらかれこれ今までのいきさつを取り立てて問題とするほどのことはないと思うのであります。そうでなく、重要な点はそのほかにあると考えまするので、以下二、三の点について、政府所信をただしたいと思うのであります。  総理大臣はその演説の中で、平和外交推進を強調して米国を初め、他の民主主義諸国との協調をもって、わが国外交の基本方針とし、あわせてソ連との正常関係の回復、中共との貿易関係の改善を呼びかけておると同時に、共産主義国家と外交を行うということと、共産主義を受け入れるということは、全然別個の問題であるという点を強調しておられます。そしてわれわれはあくまでも反共の態度を堅持するのである、そして民主主義擁護のために万全の策を講じて参る覚悟であるということも明らかにしておられる。憲法で保障している基本的人権の尊重、集会結社、言論、信仰の自由を基調とする民主主義国家の建設をわれわれは根本理念としておりまする以上、首相のこの言明は当然なことであり、またこのことは幾たび繰り返されても差しつかえないところでもあります。私は評しろ首相がみずから陣頭に立って、そして国民をしてこの主義に徹せしめるだけの気概をお持ちになって実践していただきたいと、そう熱望しておるものであります。歴代の内閣の努力がこの点において十分であったかと申しまするならば、私ははなはだしく不満であった、ことに青年階級の指導につきましては、今まで歴代の内閣のやって参ったところを見ましても、一つも満足するところまで到達しておりません。今日の青年指導が、その帰趨にも迷うとさえ言われておる今日の世情は、そういったようなところから出ておるのではないかと思うのであります。いや、総理が不幸にして十分なる健康に恵まれておらないということも、十分私ども承知はしております。しかしながら、みずから陣頭に立って国論を指導していく、青年思想を指導していくという気概だけは、私はぜひお持ち願いたいのでありまして、私が長年駐在しておりましたフランス等におきましても、ポアンカレーであるとか、あるいはブリアンであるとか、世界的の政治家がその当時おったのでありまするが、これらの政治家は、総理として、機会あるごとに国内を歩き、そうして重要な施政演説なり、外交演説なりやって参り、国論を統一し、そうして民衆を率いて行くというあのやり方をみまして、私は非常に学ぶべきところがある。日本政治家として学ぶべきところがあるということを痛感させられておりました。願わくば総理御自身、繰り返して申しまするならば、陣頭にお立ち願いたいのであります。もとより今日におきましては、ラジオ等の便宜もありまするし、必ずしも総理御自身が各地をお廻りになるという必要もございますまい。もっとも選挙の当時はずいぶんお回りになったという、あの状態をみまして、できない相談ではないと思いますけれども、必ずしもそれは必要ではない。ラジオを通じて声をお送りになるということもできる今日でありまするからして、ますます私はそういう気概をお持ち願いたいと御注文申し上げたいのであります。  総理大臣は更に論法を進めて、こう言っておられます。「しかしながら、いくらわれわれが反対している共産主義思想であっても、現にその共産主義を信奉している有力な国家が存在する事実は否定はできません。このような国家に対しましては、お互いに相手国の主権を尊重し、自国の思想を他に宣伝、強制することなく、正常なる国際関係もしくは経済交流を開くべきであり、このことはまたおそるべき第三次世界大戦の勃発を防止するためにも必要である」と言っておられる。私は総理大臣のこの考え方にも全幅的に同感を表するものであります。しかし私は考え方として同感であるというのであって共産主義国がこういうようなすなおな考えに徹底しているとは、私といたしましてとうてい信じ得ないのであります。もしいずれの共産主義国も首相の言われたような主義に徹底して、共産主義は自分の国だけの問題である、他国に自分の意思を押し付けたり、強力をもって他国の政治組織や社会のあり方を破壊して、自分の国と同じ型の国に作りかえたりするというようなことが名実ともにないという、そういうようなことが明確になりまするならば、問題は全く別でありまして、すべての自由国家群は安心して、これらの共産主義国とも国交の回復増進に乗り出すことができるわけでありまするけれども、不幸にして事実はしかく甘いものではありません。元来共産主義は一国では成立しないといわれておる。近隣の国々をすべて同様に、自分たちと同じように共産主義の国に転向せしめるのでなければ、共産主義というものは育たないと、あの人たちも言っておるのであります。そうして隣邦をそういうふうに赤化して回るというためには、手段のいかんは問う必要がないとはっきり言っております。これが国際共産主義のそもそもの出発点であり、そうしてこれあるがためにこそ、国際共産主義というものはおそろしいものとされておるのであります。彼らはときには実力をもって臨み、ときには甘言をもって内部崩壊を企てるのでありまして、そのときの国際情勢、相手国の国情を巧みに利用して回った実例が多々あります。  私は大正十四年に一度モスコーに参りました。また昭和十七年には二度目で、日本から派遣された使臣としてあちらに参り、四年ほどソビエトに駐在したことがあります。二度目は戦争中から終戦後にかけての滞在でありましたが、戦争の末期に当りまして、あのスターリングラードの大勝を転機として、ソビエトの大軍がずっとウクライナを経て盛り返して参りました。そうしてベルリンを目指して進軍して行ったのでありまして、ついにポーランドのヴイスラ河の線に到達したのでありまするが、その際、首都のワルソーには、このワルソーは一九三二年からドイツ軍に占領されて、長い間呻吟して参った首都ワルソーでありましたが、ソビエト軍の進出を当てにして、そうして城内でもって愛国者たちが決起したのであります。市内において、占領ドイツ軍との間に悲惨な戦争が何週間も続けられました。ソ連の支援を待って毎日々々苦しい戦争を続けておったのでありまするが、その支援はとうとうこなかった。ソビエト軍は城下に迫って、ついにその支援は与えなかったのであります。かるがゆえに、そのポーランドの義勇軍は、ドイツ軍によって殱滅されてしまったのであります。そのあとでソビエト軍が入城しまして、そのドイツ軍をこれまた壊滅させてしまいました。ワルソーはまことに悲惨な死の街と化したのでありまするが、それ以来ポーランドはソビエト軍の配下に属してしまったのであります。そうしてそこに打ち立てられたものは何かと申しまするならば、それはすでに独立ポーランドではなくて、ソビエト・ポーランドでありました。ベルリンが陥落して間もなく、ソビエトの大軍はバルカンになだれのごとく侵入したのであります。そうしてルーマニア王国、ブルガリア王国を次々に手に入れて、やはりソビエト型の国を作って参りました。最後はあのチェコでありましが、これは共産党の内部浸透が徹底しておりました。チェコの警察が一夜にして赤化してしまったのであります。かくして血をみずしてチェコの革命が成功したのであります。これらの悲劇は、みな私どももまだモスコーに滞在しておりました間、もしくは抑留されておった間に起ったできごとであります。そのときから数えて、今日ではすでに十年の月日がたちました。その間コミンテルンがあるいはコミンフオルムに名称が変ったとかというようなことはございました。しかしながら国際共産党なるものが依然として存在を続けているということは、これは争うべからざる事実でありまするし、またモスコーが国際共産党と手を切ったというようなことは一度も聞いてはおりません。そういうような保証は何人からも与えられていないのであります。このことは、われわれといたしましてよく記憶をしておかなければならぬところと信ずるのであります。ソビエト連邦が共産主義であるといなとは、それはソビエト自体の問題でありまして、何も他の介入を許さないところであるのは明白であります。私もまた、あの膨大な人口をかかえてのソビエトといたしまするならば、ああいったような政治のあり方でなければとうていやっていけないということもよく承知しておるのであります。しかしそれはソビエトのことで、ソビエトの必要によってああいう形態が盛られておるのでありまするが、われわれの必要はそうではない。われわれにはわれわれの欲する政治、経済、社会の形態があるのであって、それは維新以来、われわれの先覚者が作り上げたところの現在のこの形態、体制そのものでなければならぬと思うのであります。われわれは、でありまするからして、この作り上げてきたこの体制なるものは、全力をあげてこれを守り通すということ、これはわれわれの信念であり、信念を通り越して、むしろ信仰とさえ言うべきものであると私は信じておるのであります。断じて暴力革命はわれわれは欲しない。これは是が非でも避けていかなければならぬということでありまして、この点は総理初め閣僚諸公においても、もちろん御同感であろうと思うのであります。  ソビエトが世界一の大陸軍国であるということも皆承知しております。が、そればかりでなくて、ソビエトと並んで中共がまさにその第二の軍国とならんとしている今日であります。われわれこの日本は、北からも西からも大きな重圧を加えられているという、こういう事態に当っての日ソ交渉でありまするからして、私は大きな懸念を持たざるを得ないのでありまして、このソビエトを相手にしての交渉は、決してなまやさしいものであり得ないということをつくづく感じさせられるのであります。重ねて私は総理大臣に申し上げたいと思うのでありまするが、今やそういう情勢下にあって交渉開始されようとしているこの政府といたしまして、交渉に当る前にほんとうにしっかりと腹をきめていただきたいということでありまして、なまやさしい考えでもって交渉に入るということでありましたならば、ただいたずらに引きずられていってしまうという以外にはないと思うのであります。  中共との貿易問題、これもけっこうであります。それは貿易によって親善関係を盛り出さう、作り出そうというようなこと、これも私は一向異存がない。ただし、ここに考えなければならぬことは、外務大臣からも言われた通りでありまするが、中共問題ないしは対米問題に関して、感情によって支配されてはならぬということであります。実際の問題を見まするというと、昨年の日本貿易総額の約三五%というものは米国との間の取引であります。中共貿易がいかに発展いたすといたしましても、中共貿易をもってこの対米貿易に置きかえるということは、これはとうてい不可能なことでなければならぬと思うのでございます。こういったような点から考えまして、どうしても一つ日本としてぜひ頭に入れておかなければならぬことは、日本は海洋国であるということであります。海洋の自由を確保し、世界至るところに市場を開拓してこそ、この日本は立っていくのでありまして、あの満州事変以来、ないしは大東亜戦争に至りまして、この海洋の自由を奪われたがために、日本は自滅の道をたどらなければならなかったというあの経過から見ましても、海洋の自由、海洋を確保していくということがいかに必要なことであるかということもはっきりいたしております。しからば日本の進む道はおのずから明らかでありまして、今さらこの日本が大陸国になれといったところで、それは不可能であります。日本の進む道は自然と明らかになっておるということを、私はこの政府がこれから先の施策を誤まられないように、ぜひとも慎重な考えをお持ち下さるようにお願い申し上げる次第でございます。(拍手)    〔国務大臣鳩山一郎君登壇、拍手
  17. 鳩山一郎

    国務大臣(鳩山一郎君) お答えを申し上げます。  ただいま佐藤さんの御激励と御注意、まさに伺いました。(笑声)あなたの何という本でしたか、お書きになっているものも読みまして、コミンフオルムの世界革命、国際共産党は解散をしても、やはりその憂いはまだあるということはまさに承知をしております。それがゆえに国交を調整することによって、日本の共産党が激励されるようなことがあって、それが暴力革命にまで発展しては大へんだと思いまして、十分注意を行なっているつもりであります。しかしながら、やはり共産主義国家をのけものにしてしまって、自由主義国家だけが国際関係を緊密にするということは、やはり戦争を勃発せしめるおそれがあるということは確かでございますから、注意しながらやはり共産主義国家群とつき合いをしなければならないと思っております。佐藤さんの引証されたチエッコの革命が警察隊を共産化して、一夜にして暴力革命をなし遂げたということも、あなたのお書きになった本に書いてありますので、そういうことのないようにしたいと思いまして、そのおそれがあるかどうかを問いただしたようなわけでございます。どうか私の心中も御了承下さらんことをお願い申し上げます。(拍手)    〔国務大臣重光葵君登壇、拍手
  18. 重光葵

    国務大臣(重光葵君) ただいまお話しの国際連合の平和主義に共鳴しなければならぬということについては、むろん異存のありようもございません。善隣友好の関係、それから国際連合の集団安全保障の機構等について十分尊重もし協力をいたしていかなければならぬということについては、日本として従来とも努力をいたしてきておることであることは御承知の通りであります。私は今、東亜方面の形勢から見て特に国際的の紛争については武力を排して、そしてその紛争を平和的手段によって解決するということが、非常に実際問題として必要と感じておるものでございます。昨今の台湾海峡を差しはさんでおる緊張したる情勢にかんがみても、その方針は正当であると信じておるのであります。そしてこのことについては、私も過日申し上げました通りに、バンドン会議においてわが全権が非常に強調した点でございまして、それがバンドン会議の決議の一部分になって現われることになったことは、私の非常に喜んでおるところでございます。従いまして、お話の国際連合への加盟は、今日まで多数の国の支持がありましたにもかかわらず実現をいたしておらないことは、実に遺憾なことでございます。しかし、わが国としては、国際連盟加入の問題を一そう促進するために努力をする次第でございます。なお、それらのことについて、国際連合に派遣しておるわが代表の活動については、十分政府も活動のできるように便宜を与え、努力をいたす考えでございます。さらにまた、国際連合の重要なる国際機構が、ここに厳存しておるのでありまするから、これを国内的に十分に周知せしめ、国内を国際連合の支持について教育するということの必要も申すまでもございません。さようなことについて、できるだけの努力を惜しまないつもりでございます。  次に、共産国との関係について佐藤さんの長い間の御経験をもとにしてのいろいろの御注意、これは私も非常に貴重なものと考えまして、十分その御趣旨を体してこれから努力をするつもりでございます。  以上をもってお答えといたします。(拍手)     —————————————    〔野溝勝君登壇、拍手
  19. 野溝勝

    ○野溝勝君 私は日本社会党を代表いたしまして、鳩山総理初め各大臣に質問をいたしたいと存じます。  あらかじめ御承知おき願いたいのは、鳩山総理の病気に対しましては、全く心から御同情を申し上げます。また関係閣僚とじっこんの間柄にあるのでございますが、問題はわが国浮沈に関する平和と独立を守るのに重大な関係があるために、あえて私情を捨ててここに質問をいたしますので、首相ほか関係閣僚にも、さような意味において御答弁を願いたいと存じます。  なお首相は、施政演説の中で友愛、互譲、寛容の精神を説かれました。特にこれが民主主義の悲願であるかのごとく終始お話になられたようでございますが、私は民主主義というものは、以上申されたことも、もちろんそうでありましょうけれども、悪と戦うということが民主主義だと思います。いわば働く階級が生活を脅かされるということは、これはどこかに私は間違いがあると思うのでございます。さようなことは政治を直す以外にないと思います。さような間違った政治に対して断固戦うことが私は民主主義だと思っております。かような点について、私の見解を申し上げておきます。  私はまず、日本の独立についてお伺いいたします。鳩山首相政権担当の当初から、日本の独立の悲願を強調されておりました。それは今日日本が完全独立を意味しているのでないことを率直に認めたからであると私は考えております。この点首相の率直さに私は敬意を表しておりました。それならば独立の悲願を達成するには、政治的にも経済的にもどうしようとするのか、そういう点をこの際明らかにしていただきたい。日本サンフランシスコ条約で一応の独立国になったというが、本当の独立というものは、領土権、裁判権、あるいは貿易の自主化、互恵平等等の主権が完全に確立されていなければ、私は完全な独立と言えない、かように考えております。  まず、領土権について申し上げますならば、満州、朝鮮、台湾、琉球、千島、樺太等四分の一の領土をなくしました。全くふえたものは人口のみでございます。資源もなければ領土もありません。さらに軍事基地、演習地等により七百三十有余カ所の領地を使われております。かような中にあって、国民生活というものが勢い貧困化することは当然だと思います。  さらに裁判権の問題などもそうでございます。裁判権の問題なども、安政並びに嘉永の当時の条約よりは、はるかに私はじゅうりんされていると思っていますが、たとえばあの当時の条約を見ますると、大体外国の使臣に対しましては、それらの国の了解を得なければ逮捕できない。ところが今度の裁判権は外国の使臣どころじゃない、全部家族に至るまで容易に、日本において犯罪を犯しましても、直ちにこれを処理することのできないような状態になっているではありませんか。  さらに貿易の自主化の問題について、日本が戦後において一国経済でやっていけないことは御承知の通りであります。しかるに資源もなければ領土もない、かような日本の国が何とかして生き伸びんとするには、あるいは独立、完全なる自立国家にするには、あくまでも自立経済を確立しなければならぬと思っています。かようなときに今日の日本貿易は一種の干渉貿易でございまして、かようなことで一体果して日本の独立ができたと言い得るかどうか。  さらに私は問題なのは、経済上の非常なる圧迫でございますが、たとえば関税の問題につきましても、あるいは住民税、固定資産税、道路使用税等等、外国の駐留軍が日本に来まして、日本の法律を日本の人民と同様に適用を受けるということならばわかるのでございますが、これらの点についてもへんぱの、むしろ日本の領土に生活しながら、この諸君だけに対して特定の扱いをするということ自体が、日本の独立を脅かしておると思っております。さらに申し上げますならば、ココムでございますが、一体安い国から原料を取り入れまして、それを加工して市場競争をするというならわかるのでございますが、あそこの船を使ってはいかん、あそこの原料を買ってはいかんというような貿易制限、制限貿易関係にある今の日本貿易状態というものは、これは私は日本の自立を破壊するものだと思っています。例をあげて申しますならば、大体カナダ石炭が一トンについて十五ドル、中国からくる石炭が一切あけて十二ドル、三ドル近くのそこに違いがあるとすれば、仮定でございますが、これが勢い、製品になった場合にはどういうことになるかということくらいは、賢明なる総理としては御了承のことと思います。結局さような不利なる条約のもとにおきましては、その穴埋めというものは、この貧困な日本国民の負担となり、かくいたしまして、コストの引き下げ、そのためには産業の合理化、企業整備の名におきまして、労働者への犠牲にしわ寄せされて参るのでございます。こういうことは当然なことでございまして、鳩山内閣の自立経済確立について、あるいは独立国家に対する見解について、一体こういうようなことを真剣に考えておるかどうか。  次に、私は鳩山内閣の自立経済六カ年計画についてでございますが、鳩山内閣のこの六カ年計画というものを見ますると、一体どこを中心に考えておるのかわかりません。あとで申し上げますけれども、これは予算との関連においてこの性格というものは打ち出されておるべきものだと私は思っておりますが、今の状態から推しまして、今日施政方針の内容等を見まして、さようなことが裏づけされてはおらないし、自立経済をなすには、総理は施政方針の中でいろいろと言われておりますが、一体それを具体的にどういうふうに実現しようとするのかということが発表されておりません。私は自立経済を確立するには、何といいましても、計画経済の推進と人口問題、国内資源開発、自立貿易、こういうことが完全に裏づけされなければならないと思っております。こういう点について施政方針の中には、幾分その片りんは見受けられましたけれども、具体的にこの際に所信を明らかにしていただきたいのでございます。  次に、外交問題初め公約についてお伺いいたしますが、鳩山内閣政権担当当初より数多くの公約をされたのでございますが、その公約中どれとどれとを一体実現しようとしておるのでありますか。私は次の諸点につきまして具体的に質問いたします。  鳩山首相は独立への悲願をかけて、日ソ国交調整を中心に、自主独立を国民公約して来ました。しかるに組閣二カ月半にして、すでにこれらの公約は私はむしろ破綻を来たしたと思っております。一体、日ソ国交回復の公約が、本日の新聞を見ますると、やや前進したかのごとく見えております。それもただ交渉場所の問題だけでございまして、それ以外は一歩もまだ発展しておりません。  さらにそれよりも重大なことは、中国との国交回復の問題であります。今般中国からの通商使節団の来日を契機に、私はこの際こそ鳩山首相が唱えております国交回復の絶好のチャンスだと思うのであります。しかるに鳩山内閣はこの使節団に対しまして実に冷淡であったと私は思います。具体的に申しますならば、何がゆえに一体それほど首相が主張しておる国交回復の問題について、もし総理がこの間に対する折衝ができないとするならば、少くとも外相重光君くらいは、私は積極的に日本代表といたしまして、この交渉ないしは折衝に、ないしは歓迎に当るべきものではなかったかと思うのであります。一体政府といたしましては、アメリカの支配に気がねをしておったのかどうかしりませんけれども、あまりにも私はひより見主義的な政府であると、かように断ぜざるを得ません。  さらに首相は、日ソ国交調整の会談前に、千島、樺太の領土返還は無理かのごとき印象的な発言をしております。一体どういう気持でこんなことを発言したのですか。私はいやしくもサンフランシスコ条約に賛成をしておったあなたが、一体こういう問題について触れる資格があるかどうかということについてむしろ疑問を持つものであります。(拍手)  次に、最も外交の失敗といたしましては、防衛費の対米交渉の問題でございます。同僚各議員から質問はありましたけれども、私の聞かんとするところは、この日・中ソの国交調整を叫んでいる際に、重光外相は、外交基調は日米に置くと発言をしております。何ゆえことさらにかようなことを発言しなければならないのか。まるで外相は、自立外交の方向に水をぶっかけているようなものでございまして、これでは自由党当時の対米外交一辺倒と一つも違ったところはないと思います。私は現内閣に申し上げるのでございますが、自由党外交方針に対しまして自主外交で進めということは、すでに民主党といたしましても、もちろん民主党の内部、前身でございます改進党等におきましても、すでにかようなことは高く叫ばれておったのでございます。しかるに一たび朝につくや、自由党の試験済みであったことを繰り返してやっているようなこんな外交方針では、全く私は重光君の外交方針に対しまして、あなたが考えている日清談判的外交であると言わざるを得ないと思います。かようなセンスを持っている外相をいただいている今回の政府に対しまして、私は先々が不安であるということを言わざるを得ないと思います。  さらに重光外相防衛分担金をめぐっての見解でございますが、重光氏の渡米がダレスから拒絶された。これは重光個人の問題ではないと思います。これは私は日本の侮辱であり、従属国日本に対する一つの優越性をアメリカが誇り瀕したものだと思います。重光外相のこの点に対する見解を特にお聞きしたいと思います。ところが、重光外相は、先般外交方針の中で、あるいは同僚議員の質問に対して、会談は一つも不可能なことはないということを言われております。一体何のことでございますか。会談は一つも不可能なことはないということは、あなただけのことである。一体日本国民や、日本の民族や、日本が対世界に対して課せられたこの傾向というものは、全く従属国をのしづけられたと私は思うのであります。さらにあなたは、一つも不可能なことはないと言いますけれども、こちらの方針を引き下せば、こちらの方針を低調にすれば、どんなことも不可能なことはなくなるのでございます。私は日本外交が、そこに敗北的、追随的外交であることを指摘せざるを得ないのでございます。(拍手)こういう点につきまして重光外相の見解を特にお聞きしたい。  さらに今後の日本外交は、重光君に言わせますと、経済外交を中心にしていくと強調されております。私はこの点は同感でございます。しからば、経済外交を中心にしていくというならば、一体今の西欧民主主義陣営に基調を置くというこの考え方と、日本の自立経済を中心とする経済外交の方針と、どういう点が一致するのでございますか。今日西欧民主主義陣営を基調にしていくということであれば、私は日本の経済の自立ないしは独立自主の見解というものはデッド・ロックに乗り上げると思うのでございます。こういう点について一つの経済外交、いわゆる重光外相の言う経済外交とは何ぞやという点についてお伺いしたいのでございます。  さらに重光外相は平和外交の一環といたしまして、A・A会議に平和宣言を提案し、日本の平和憲法の精神を高く叫んだということを言われました。私はあのA・A会議における高碕君の発言は、まことにけっこうだと思っております。しかし、それならば現内閣はそれほどバンドンにおける、あの会議における平和宣言を主張したその気持を持っておるならば、なぜその気持を抹殺するような憲法の改正を唱えておるのでございますか。この点は総理並びに外相にお伺いしたいと思います。  次に、防衛費問題の削減ということは、名目だけだと思います。千三百二十七億円のワクは維持されたように思いますが、実際はそれ以外に予算外契約を百四十億も五十億もしておるじゃございませんか。一体このために雑件費から予備費までほとんど使われております。一体ほとんどゆとりのないような予算になっておるじゃございませんか。こういうような予算を作っておきまして、いかにも千三百二十七億でとどめたというようなことを言うことは、私はこれは一つの擬装であると思います。さらに私が言わんとするのは、特にジェット機、駆逐艦の国内生産、大砲、戦車の試作なども、いずれも将来巨額の予算要求するものがある。今年度予算は今申しました通り、頭を出したというだけではありますけれども、来年度はおそろしく……私は来年度を思うときに想像に余りあるものがあるのでございます。特に日米壮同声明において、ジェット機のためには基地拡張が要求され、約束されておるのでございます。    〔議長退席、副議長着席〕  鳩山首相は三月十五日のダレス国務長官及び三月十六日のアイク大統領のアメリカ記者団の会見において、もし中国が台湾、澎湖島攻略を目標に金門、馬祖の両島を攻撃するなら、新型原子兵器を使用するかもしれない云々と声明したことと相前後いたしまして、原水爆の貯蔵をアメリカから依頼があれば、わが領土に保有もやむを得ないと発言し、後に同僚、衆議院における緊急質問の細迫君に対する答弁で、これは仮定論であると弁明されております。一体仮定論ならば受け入れるのであるか、ここをこの際はっきりとその態度を示してもらいたいのであります。さらに、アイク並びにダレスの声明と何か因果関係でもあるような印象が与えられておりますが、その点に対する首相の見解もお伺いしたいのであります。  さらに、一昨日外相のA・A会議の平和外交演説とは全く矛盾しておるのは、現内閣の性格は外に向っては平和を唱え、内に向っては憲法改正か再軍備、こういうような私は裏表の外交では、将来世界の物笑いとなると思うのであります。(拍手)  なお、日米共同声明におきまして、合意の議事録は発表しないことになったと言うが、吉田内閣当時におきましても、秘密外交を攻撃してきた鳩山内閣が、これを公表しないということはまことに遺憾でございます。国民の疑惑もありますから、この際私は公表していただきたいのでございます。  また共同声明では、三十一年以降は自己の資力のより大きな部分を防衛目的のために振り向けることが約束され、今回の削減については特別の措置として恩を着せられ、今後は防衛費の増額が条件となったことは事実でございます。形式的な三十年度防衛分担金の削減と引きかえに、さらに一そう再軍備費を増大させておるのでございまして、かようなことに対して鳩山内閣は一体どういうことでこういうような内容を承知したのかどうか、こういう点でございます。  また首相は、施政方針演説の中に国防会議設置を強く主張されたようでございます。このことは防衛分担金削減折衝中に約束したという話でございますけれども、これは事実かどうか。いつ倒れるかわからない鳩山内閣が、独立の悲願をうたった鳩山首相が、来年度以降の国民負担をさらに加重させ、国民を苦しめることをアメリカと約束し、国際慣例にしたことは重大なる私は失態と思います。この点に対しまして外相のいう日米可能外交論なるものは一体こうしたところから生れておるのかどうか、またこういうものに対する首相の見解をお聞きしたいのでございます。  さらに私はこの際お伺いしておきたいことは、杉原防衛庁長官に対して一言お伺いいたしておきたいと思います。杉原防衛庁長官は防衛構想におきまして……(「いないいない」と呼ぶ者あり)いないようならば、一つあとで御答弁を願うことにいたしまして、外相に一応お聞き取りを願いたいと思います。日本経済新聞四月十日号に、「日本はあくまでも米国を主体とする自由諸国家群の一環として、その防衛体制の一翼を担う」として、米軍駐留のため便宜を積極的に認めている。これは選挙中に民主党があらゆる場所公約したところの、米軍を早期撤退させるための独立軍隊を作るという公約と全く矛盾しておると思うのでございます。しかもこの一翼をになう防衛力ということは、もはや自衛の境を越した双務的な共同防衛を承知しておるものと私は思うのでございます。かような点に対し、特に防衛庁長官並びに外相の見解を問いたいのでございます。  さらに、台湾海峡問題が前途楽観を許さない、かような見解につきましては、私もさように思っております。NEATOの体制への日本の投入が云々されておる状態の下で、かかる双務的な軍事同盟を許容するかのごとき交渉はきわめて危険であると思います。  次に鳩山内閣の財政方針について。鳩山内閣の性格を決定するものは選挙演説や議会答弁ではないのでございます。三十年度予算内容そのものであると思います。この三十年度予算を分析するとき、吉田自由党内閣当時と同様に庶民大衆を犠牲にする再軍備予算であって、何ら大綱において相違はありません。一兆円の予算中、歳出におきまして防衛関係費、すなわち再軍備にのみ重点を置き、農村及び中小企業初め平和産業の諸予算を頭打ちにし犠牲を払わしております。特に農村関係予算を百八十億も削減し、それを恩給、住宅社会保障の方に幾分振り向け、経済の自立を唱えておるのでございますが、まことにかような内容はごまかしでございます。このごまかしをやるために内政費を圧迫され、物件費、予備費に至るまで削減されております。予算弾力性はきわめて乏しく、ことに農林予算の大幅削減、私は毎年来るこの風水害、これらのいわゆる災害に対する、その予想をしておるところの予備費までもこっぱみじんに、ほとんど僅少を残した程度でこれを削減し、これを処理するということに対しましては、農民虐殺の予算であると言わざるを得ません。減税を三百二十七億円したと言うが、一部税率の引き下げを行なったのみでありまして、所得標準を変えて、むしろ三割近く収税を多くしておる。実際に減税になったのは、はっきり減税をされておるのは、法人税と配当金、預金利子課税だけが完全に引き下げられております。現内閣の言う低額所得とは目上のものを指すのであるかどうか、(笑声)少し皮肉のようには思いますけれども、この点をお伺いいたします。  なお物価は、大体横ばいの見通しと言うが、一体本当に横ばいなのかどうか。本日の新聞を見ますと、特に経審の発表といたしまして、この点が出ておるのでございますが、私はその種目の取り上げ方について非常なる誤謬と異議を持つものであります。特に石橋通産大臣、経審長官代理も御承知のことと思いますが、政府は動力、農具、砂糖、飼料等の値上りを放置しておるではございませんか。一体下ったというのは、私はむしろ農村における牛乳、卵、農産物が下っただけでございまして、その他の物価が下ったということにつきましてはまだ現実に承知をしておりません。さらに三十年度の財政投融資三千二百七十七億中、農村関係は二百十億で総額の七%弱しか融資されておらない。政府は農民を一体何と心得ておるのでございますか、この結果どのような事態が起きておるか、政府責任を負うという心がまえで、かような予算を作ったのでございますか。  次に、私は日本経済の見通しについて政府所信をお聞きしておきたいと思います。わが国の特需は減退し、特に三十年度見通し四億五千万ドル、さらに輸入の面では抑制したが、前年に比較いたしまして相当の増加は必至でございます。大体私ども見通しといたしましては、三十年度計画では十八億ドルから二十億ドルに行くのではないかと思っております。こういう開きに対して一体どういうふうに調整しようとしておるのでございますか。さらに輸出面でございますが、前年よりも五千万ドル多く見積られておる。昨日の施政方針の演説の中にもありましたが、この五千万ドル多く見積られておるが、逆に昨年末のような一時的な好況は私は本年は望めないと思います。特にこれらの点で国際収支は再び危機に直面するのではないかと思います。なお、昨二十六日、御承知のごとくアメリカの外電、ジョージ上院議員は互譲関税修正案を出しております。七月一日改訂困難ということをうたっております。特に本日の新聞を見ますと、井口大使はさような報告を出しておるのでございます。この点に関しまして、経済外交を唱えておる重光外相並びに経審長官代理等はどういうように一体これを考えておるのか。施政方針の演説とはおよそ遠い動きを示しておるではございませんか。かようなところにも私は現内閣予算の危機、これが含まれておると思います。私はこういう点において強くこの際、石橋経審長官代理の見解をお聞きしたいと思います。特に石橋経審長官代理は、各国の市場競争は激甚になる見込みだということを強くうたっております。各国の市場競争が激甚になって参りますれば、私は輸出五千万ドルというような問題も、一体そんなことは希望ではございませんか、それをどういうふうにして切り抜けて行くのか。さらに今申しましたように、今日、井口君の談話ではございませんが、繊維関係におきましても、ジョージ上院議員のあの見解はまことに日本の繊維界、経済界に大きな影響をもたらすと思います。かような見通しの上に立って五千万ドル輸出増が一体どういうふうにあなたはできると考えておるか、こういう点を一つお聞きいたしたい。  それから次は一萬田大蔵大臣にお伺いいたしたいと思います。蔵相はただ預金、貯金と資本の蓄積による財政の立て直しを説いておりますが、国民に対しまして、かようなことは一体誰にも適用できると思っておるのでございましょうか。一体今日の国民の経済状態は、私が申し上げるまでもなく、全くデフレでございまして、この状態のもとにおきまして、商人といわず、農民といわず、労働者といわず、みな困窮を続けております。かようなときに預金、貯金、資本の蓄積を勧める。その勧めることはけっこうでございますが、どういう一体国民が経済事情にあるかという点についてお伺いするとともに、特に資本の蓄積を願うような、あるいは預金を願うような、またはできるという可能なものは、どういう一体階層にあるのか、私は勧めることはけっこうでございますが、どういう階層が一体多く金を持っておるのか、こういう点についてお伺いいたしたいのでございます。さらに輸出入銀行への出資が今回の予算では非常に目立っております。一体基礎並びに平和産業の拡大による完全雇用の線が示されておらない、にもかかわらず、この輸出入銀行の方に多くの予算を使っておるのはどういう一体わけでございましょうか。貿易に対しましては、先ほども申した通り、そう容易ではございません。これと輸出入銀行とは一体どういう関連を持っておるものでございましょうか。さらに国産石油開発等の資源開発を説いておりますが、具体案に示されておりません。私はなるほど総理の言われました資源開発は大賛成でございます。資源開発をいたしまして再軍備の費用に使うのを、地下資源その他の資源開発、科学振興によるところの日本の原料に対する振興育成は大賛成でございます。しかし、これに対する具体策が一つも示されておらない。あなた方の六カ年計画の中にもありますが、一体かようなものは絵にかいたぼたもちで、私はこれをやるにはやるらしいところの一つ予算の裏づけというものがなくてはならぬ。しかるに、かような点につきまして具体的な予算が示されておりません。もし示されておるにいたしましても、ほんのちょっぴりでございまして、こんなことではこれは問題にならぬと思います。こういう点について私はこの際改めてお伺いしたい。さらに生糸等の国内原料の利用の科学振興の育成面について、これと関連してお伺いしたい。  さらに民主党の六カ年計画は、今申しました通り、私は宙に浮いた傾向にあると思っております。さらに公約実現の立場から住宅対策が非常に高くうたわれておりますが、確かに私は一歩前進であると思います。この点は率直に認めます。一歩前進である。しかし宣伝と内容とは違っておるのでございまして本予算を検討するときに、四十二万戸の実体はきわめてお粗末で、国が直接間接そのめんどうを見ておる増加数はわずか二万五千戸足らず、改築分をも二戸と見まして、やっと五万五千戸の増加という状態ではございませんか。こういう点につきまして私は政府に一そうの努力を要請するとともに、特に政府だけでは、とうてい今の予算から見ると、私は四十二万戸どころか、十万戸にもいかない状態でございますから、こういう点につきましては民間業者とどういうふうにタイ・アップしてこの達成に努力しようとするのか、この点を明らかにしていただきたい。  次に農業関係の問題でございますが、先ほども申しました通り、かような大きな犠牲のもとにおきまして、一体、農業の発展ということができるのかどうか。特に私は、昨日の施政方針の中で鳩山総理と経審長官代理は、食糧自給を重点にして農業関係を推進する、こう言われております。しかるに今日、農相河野君の同僚議員に対する答弁を聞きますと、多角的農業でいくと言っております。これは一体どういう考え方か、こういう点について意見の統一が欠けておると思うのであります。この点について最初お伺いしたい。  さらに今回の農業関係予算を見ますると、私は、多角的農業にいたしましても、あるいは食糧重点の農業にいたしましても、こんな状態では半知半解の予算でございまして、一体こんなことで所期の目的が達せられるものではないのでございます。  たとえば農業関係の削減のおもなものを申し上げますと、災害復旧補助費四十五億、食糧増産費関係二十億、農林漁業への投融資四十億、農業委員会補助十四億、農業保険二十六億、乾繭倉庫等々はほとんど打ち切られております。こういうような予算の事情から見ますると、むしろ私は農業の育成ないしは、農林行政なんということはもう放棄せざるを得なくなるのではないかと思います。農相はこの後退予算日本の農業育成強化ができるかどうか。さらに、日本農業を自給自足の体制へ育成しようとするか、あるいは国際依存によっていこうとするのか、この点をはっきりしていただきたいのであります。農相の同僚議員に対する答弁内容を見まするというと、補助費などにつきましては必要な面は十分計上してあると、こう言われております。しかし今申しましたように、農業保険であるとか、あるいは農業委員会あるとか、農林漁業への投融資であるとか、あるいは食糧増産費であるとか、災害復旧であるとか、そういうものは必要でない補助費かどうか。  さらにこの際、農相の所見を聞いておきたいのは、一体、農業のうちの食糧は、私はただ単に生産だけの面だけでは食糧問題は解決しないと思います。一体、配給、生産、消費の三位一体の体制が確立しておらなければ食糧問題の解決はあり得ないと思います。こういう点におきまして農相の食糧問題に対する見解をお聞きしておきたいのであります。  最近農林省におきましては予約売買制ということを強くうたわれております。一体この内容を見まするというと、これはほとんど大体において自由にまかせようという傾向らしいのでございます。一体、食糧事情は、農相の見解によりまするというと安心のごとく表現されております。先ほども申しました通り、戦後食糧問題を重点にした農林行政を、農林政策を、多角的農業への転化を企画しておるようでございます。しかし一体、多角的農業といい、私は反対はいたしませんけれども、何といっても今日食糧の自給体制というものは確立しておらないのであります。一体、絶対食糧の不足の状態のもとにおきまして、私はかようなことで果して食糧の問題に混乱が起らぬかどうかということをまず聞きたい。  さらに、さような点について具体的に示されておらないし、なお、もし食糧問題について非常な不安が起るようなことがあるならば、余剰農産物の買い入れでこれを補わんとするような考え方もあるやに聞いております。かような考え方は非常に日本の農村を誤まらしむるばかりでなく、私は、日本の民族の独立、さらには日本のいわゆる隷属を永久的に意味するものになるという考えを持っております。これは十分に私どもも真剣に考えなければならぬ問題だと思っております。さらに私は、この余剰農産物を積極的に受け入れるという考え方に対して、農林大臣に特に申し上げておきたいことは、一体ビルマ並びにパキスタン等におきましても、この余剰農産物の受け入れに対しましては反対しております。これは農相御承知の通りです。しかるにかような過酷な条件で余剰農産物を受け入れて日本の農民に対する食糧増産意欲を粉砕し、かくいたしましてこれが基本となって日本の自立経済を脅かし、その結果は、日本が永久的に隷属的、従属的国家に置かれるという、こういう一つのテーマ、筋に対しまして、農林大臣は真剣にこの問題について考えたことがあるか。特に余剰農産物についてむしろ高い、まずいものを買うというよりは、この際真剣に日本の農民の地位を高め、さらに自給自足の体制を整えるという農業方針を一体やる意思はないのかどうか。私どもはもちろん最小限度に不足の分は買い入れなければなりません。しかしその場合は、あえてアメリカ等の方針に基く国、または指定する国、ないしはテキサス米のようなものをあえて買わなければならぬようなことはないと思うのでございます。    〔副議長退席、議長着席〕  この場合はアジア諸国から十分私は買い、ないしはアジア諸国との経済提携、こういう点におきましても、この際思い切って自立食糧政策というものを確立しなければならぬという考えを持っております。特に農林大臣に申し上げておきますが、先般、世界銀行調査団が参りました。その際に、その報告の中で、日本の食糧増産は国際収支バランスの改善にとってもきわめて重要な役割を持っておると言われております。私は、こういう一つの調査団が参りまして、以上の指摘をなしておることに対しましても、農相自身は十分反省すべきであると思います。特に日本財界初め大蔵官僚らが、かねてから考えておる、一つ日本の産業を工業立国の一本やりでいこうという、この見解でございます。これは私は十分考えなければならぬと思います。なぜかならば、原料と資源の少い日本の国が、もし工業立国の方針でいくということを規定したならば、一体その結果はどうなるか。先ほども申しました通り、すべての生活の基本でございまする食糧が不安だということになるならば、この点だけでも、日本はすでに敗北ではございませんか。この点だけでも日本はひけ目でございます。私はこういうようなことを軽々しく論じ、また軽々しく結論を出すべきものではないと思っております。特にこういう点につきまして、私はいろいろの角度から農林大臣に対しまして反省するとともに真剣に考えて善処してもらいたいと思う。  次に米価の問題でございますが、昨年十月、自由党内閣の保利農相は、八千九百二十円で低米価を打ち出しました。さらに追加払いも払わぬというようなことをほのめかしました。日本農民組合総本部関係農民が農林省に十日間もすわり込みをいたしました。あの大問題を起しましたことは、私は河野君もよく御承知だと思います。それにかかわらず、今回また予約売買制の名のもとに、行当り九千七百三十九円、昨年度産米手取り総合米価九千八百五十九円、今回は百二十円も低くなっているのでございます。一体これで食糧政策の円満な遂行ができるかどうか。さらに、昨年農業協同組合法及び農業委員会法が一部改正になり、完全に骨抜きになりました。その結果は、福島県鏡石における六十戸に対する地主の集団土地取り上げを初め、全国各地に農地の取り上げが起り、さらにまた最近の新聞を見ますと、小作料四倍もの引き上げなども考えられているようであります。まことに私は農村不安これに過ぐるものはないと思います。かような農村の社会不安を起す予算並びに施策に対し、この際、情熱漢と言われているところの河野君にして、私はこの農村危機をいかにして切り抜けんとするものか、この席をかりて見解を明らかにしてもらいたい。(拍手)  さらにいま一言申し上げておきたいことは、大蔵大臣農林大臣に、日本農業の経済状態を参考に申し上げます。国民所得中、農業所得の占める地位は、昭和二十五年におきましては三〇%、昭和二十八年におきましては十六・三%、三十年度はさらに低下すると思います。そうすれば半分でございます。こういうような農村の状態のもとに、補助金打ち切り、農民保護政策一切の打ち切りは、日本農民をして全く危機に陥らしむることでありまして、こういう点につきまして大蔵大臣農林大臣は十分なる財政上の反省をしてもらわなければならぬと思います。この点に対する御見解をお聞きしたい。(拍手)  最後に、私は自治庁の問題について、特に地方財政の問題についてお伺いしたい。地方財政計画は、計画当初において、もはや年間百五十億の赤字が予想されております。さらに給与費その他を実際に即して計算した赤字は四百六十二億、さらに本年度、集計いたしますると九百億になんなんとするということが言われております。一体これをどういうふうに解決するのか、あるいはこれを解決しようとして指導するのか、その指導、見解についてお伺いしたいのであります。民主党の六カ年計画では、私はこの赤字ないしは地方財政の行き詰りの問題は解決できないと思っております。特に今自治庁の考えているのは、この赤字解決のために、住宅費ないしは固定資産税、こういうようなものを引き上げて赤字解決にしろというようなことをうたっているらしいのであります。一体、今日、地方の住民といわず国民といわず、同じでございますが、一体そんな余裕があるかどうか。特に再建整備法におきましては、住民税とそれから行政整理をもってこの赤字の穴埋めにしようというようなことは、まことに私は心外にたえないのでございまして、かような点に対しまして、特に自治庁はどういうように一体これを考えているのか。私は申し上げますけれども、今の地方財政というものは、そんな地方に余力があるものじゃないと思います。むしろそんなことよりは、一体、独立財源をどうするのか。中央もこのままではかなわんじゃございませんか。大体地方予算というものが四〇%ないし四五%は中央に依存するひも付きでございます。こんなことをいつまでも続けていくならば、これは自治精神なんというものはありません。もちろん私は、中央がこう百四十億の資金を出すとかいうようなことだけでは、とうてい解決できないのでございますから、ここに抜本塞源的な完全な地方自治体の再建確立について、具体的に政府は結論を出すべきものであり、この際に私はそういう案を示してこそ本当に自治体も安心をすることになると思うのでございますが、こういう点についてただ弥縫策的な案だけでは承服できないのでございます。  以上の点につきまして、首相はじめ関係閣僚の御答弁を願いまして、その結果いかんによりましては時間の許す限りにおきまして再質問いたしたいと思います。(拍手)    〔国務大臣鳩山一郎君登壇、拍手
  20. 鳩山一郎

    国務大臣(鳩山一郎君) 野溝君の御質問にお答えいたします。  野溝君が第一に、政治的にも経済的にも日本は独立が完成していないというようなお話でありました。これは見方によってはそういうようなことも言えると思います。法的に日本が独立国家であるということは、これはまたもとより論のないことでございます。われわれが政治の目的を、簡単に言えば、独立の完成というのが正しいと思うくらいに、われわれはどうしても独立の完成ということをなし遂げなければならないと思っております。先ほど御質問の中に、駐留軍及び国連軍との間の刑事問題の話がありましたが、駐留軍及び国連軍との間の刑事裁判権、は、現在北大西洋条約諸国と同様な関係になっております。この点だけを指摘して、日本だけが独立国家でないということは言えないと思っております。  第二に、千島、樺太等のお話がありましたが、この点についてはたびたび私は質問に答えておりますので、その答えたことによって付加する点はないと思っております。法理的には種々の理論は立ちましょう。けれども、六月の初めからソビエトと会議が始まるのでありまするから、とにかく今日この点について詳細に論議を戦わすということは不利益だと思いまするから、私は申し述べません。  原爆保存については私はたびたび答弁をいたしました。私のこの話がダレスの言葉と何らの関係のないことはもとよりであります。当時の外国新聞記者の突然の質問によって、私は、平和目的のためならば、アメリカの保存をきくような場合も、そのときにおいて考えなければならないと思うというような意味の答弁をしたと記憶しております。その後において私は、アメリカがそういう要求をすることは絶対あるまいというような答弁を、衆議院においてやったように思っております。  第四の国防会議について何かアメリカと約束をしたようなお話がありましたが、そういう事実は絶対にございません。  以上、御答弁申し上げます。(拍手)    〔国務大臣重光葵君登壇、拍手
  21. 重光葵

    国務大臣(重光葵君) 外交問題について御質問にお答えを申し上げます。  一番大きな問題は、政府外交がアメリカに対して追随的である、また極端に敗北主義的であるとか申されました。私はこれを受け入れることはできません。私は、日本外交は、つまり日本のために自主独立の外交をやらなければならぬと、こう深く信じているのでございます。私が米国に対して協調主義を強調するのもこの主張から出るものでございます。決してアメリカの言うことを全部聞くということじゃない。主張すべきは主張し、協調すべきは協調しなきゃならぬと、こう考えておるのであります。そしてまた同様に米産国との国交調整も同じことで、これは自主独立の外交としてこれはやるべきであると、こう考えておるのでございます。さらにまた経済外交に重きを置く、私はたびたびこれを繰り返しました。しかし民主主義国との協調を排することが経済外交であるような意味のお話がございましたが、私はこれはそうは思いません。民主主義国とはできるだけの協調をして、そして経済貿易を進めていくことが必要であると思う。すなわち私の言う平和外交、どこの国とも友好親善の関係をこしらえて積み上げていく、そして貿易増進をはかるべきである、こう考えます。その点においては相手国がどういう国であるとを問わず、主義のいかんを問わず同様に考えておる次第であります。そこでアジア・アフリカ会議において平和主義が強調されたことについて御共鳴を得たことを感謝しますが、これは私の申し上げた通りに、わが平和憲法にあると、こう申しました、その通りであります。私は将来憲法が改正されるという時期が来ても、私はこの主義は決して変らぬと考えておりますので、さように申し上げる次第であります。  防衛費の分担金交渉につきまして、これはもう合意のできたこと全部を共同声明によって発表をいたしました。そのほかには何も合意をしたものはございません。それが全部でございます。  それから私の渡米問題について非常に国家として汚辱であるというようなお話もございましたと思います。どうでしょうか、これはそう極端にお考えになるのは、私は少しどうかと思います。(笑声)これは向うの都合を聞いたところが、向うはちょっと少し延ばして、準備のできるまで延ばそうじゃないかというように言われておるのですから、その程度一つ御勘弁を願いすす。  それから米国議会における対日関税低下の問題についてお話がありましたと思いますが、これは先ほど御答弁に及んだ通りでございます。  それから日ソ交渉日ソ交渉は遅々として進まないじゃないかという御批評がありました。御批評はつつしんで承わっておきますが、今日まで予備交渉は着々として進んで、本交渉の段取りになっておることも申し上げた通りでございます。  以上をもって私の答弁といたします。    〔国務大臣萬田尚登君登壇、拍手
  22. 一萬田尚登

    国務大臣(一萬田尚登君) お答えを申します。  私に特に御質疑なさった点は、お前は資本の蓄積々々と言うが、みんな会デフレで、非常に困っておるぞ、一体どこからそういうことができるかと、こういうふうな御質疑であったかと思うのでありますが、むろんこの資本の蓄積が、いかに国民生活並びに日本経済の再建、あるいは繁栄のために必要であるかということは、よくそれはわかっておる、それでどういうふうにやるか、こういうふうな御質疑であったのでありますが、資本の蓄積のために私ども考えておることは、物価の安定、言いかえれば貨幣価値が安定しておることが何よりも大切である。従いましてまずこの物価の安定ということに施策を向けるわけでありますが、しかし、資本が蓄積されて行くためには物価が安定する、安定をすると同時に、物価の安定のためには国も個人もやはりできるだけ日本の場合においては、つつましい支出をするということがやはり前提とならなければならないと思うのであります。そういうふうな過程において今御質疑のように非常に困る方も私はやはり出てこられる。そこで今回の予算におきましてはできるだけ社会政策的に、減税も特に低額の所得者に対して税率の軽減をする。それから社会保障についても乏しいながらできるだけ配慮を加える。あるいは失業対策費もできるだけ計上する、こういうふうにして特別にこういう過程においてお困りになる方に手を差し延べるとともに、資本蓄積のためにさらに一方貿易を振興しなければならない。日本の場合には、他面国内資源の開発、特に農産食糧等の増産ということに力をいたさなければならぬ、こういうふうに私はなると思うのであります。がしかし、いずれにいたしましても、まずこの資源の開発にしても、非常に大きな資本を要する。大きな資金がなくては早急に、日本の人口の増加を考える場合に、なかなかいかない。言いかえれば食糧だけをとりましても、今後の人口増加を考える場合に、今日の輸入をさらに減らすということは私は実際上容易でない、こういうふうに考える。そうしてみると、貿易ということが日本の場合においてはいよいよ必要になってくる、かように考えておるわけであります。そういうふうな見地からいたしまして、輸出入銀行等にも今回資金を非常に廻したのは、輸出入銀行のこの資金によりましてプラントの輸出を盛んにしよう、これの資金を円滑にしよう、こういうような考え方からきておるのであります。決して農村経済について関心が薄いとかいうわけではないのでありまして、農村経済については非常に深い関心を持つと同時に、できるだけ特に食糧については増産をはかりたい、こういう考えを持っておるのであります。    〔国務大臣杉原荒太君登壇、拍手
  23. 杉原荒太

    国務大臣(杉原荒太君) 野溝議員の御質問の際、やむを得ぬ用でちょっと席をはずしておりましたので、あるいは御質問の趣旨を私が的確につかんでいないかもしれませんが、お答え申し上げます。  今のままで防衛力を増強して行く、こういうことであれば、これは結局ますますアメリカに対する従属の状態を深めていきはせぬか、こういうふうな御質問の御趣旨だったかと思いますが、私らは実は、それとはちょうど逆の方に持って行きたい。つまり今まで日本の国防をアメリカにずっとほとんど依存してきた、しかし国力上これはやむを得ぬ事情があった、しかし何とかして一つ国力の許す限りにおいては、これからは全く日本の国防を外国に依存してしまっておるということではいけないから、それだから何とかしてそこから脱却する状態、いわゆる自主的な防衛体制といいますか、そっちの方に持っていきたい、それを目的にして苦しい中だけれども、増強、漸増していきたい、こういう趣旨でございます。(拍手)    〔国務大臣石橋湛山君登壇、拍手
  24. 石橋湛山

    国務大臣(石橋湛山君) 野溝君の御質問中、私に関する部分は主として貿易の問題であったように思います。お説のように、今、日本貿易が非常に困難な位置にあるということは事実であります。その中で、アメリカやイギリス等が、ややもすると日本の輸出に対して、妨害と言うては語弊があるかもしれませんが、いろいろ日本の輸出の伸張を好まないような態度を示しますのは、これは一つは、一つじゃない、主として、日本の輸出力に非常な恐怖を抱いておる、われわれが考える以上に、日本の輸出力、ことに非常に安く物を売る、あるいはダンピングじゃないかというようなことに非常な恐怖を抱いておるところから主として起っておるように思いますから、私どもはそういう誤解を極力解いて、そして彼らが特に日本の輸出伸張に対して妨害をしないような方法を、これは私ども通商産業省としても努力をいたしますし、なお、外務省等にもお願いして、さような努力をいたしておるというつもりでおります。根本的に申せば、御承知のように世界の通貨に自由交換がないということが一番の難点なんです。ことに日本としましては、今われわれが輸出をしようとする東南アジアとか中近東とかいう方面は、御承知のように元来購買力が非常に少い。また適当な向うの輸出品が少い。ですから、現在日本が輸出をしようとすれば、向うからの輸入をしなければならない。輸入しようとすれば、どこの国も米を買ってくれ、砂糖を買ってくれ、バナナを買ってくれ、こういうようなことになりますから、非常に貿易がむずかしいのでありますが、しかし、私どもとしては、何とかして先方から、できるだけ日本の輸入をふやして、そうして同時に輸出をふやしたい。これは日本が輸出しようとすれば相当輸出ができるのでありますが、いかんせん、輸出しても向うさんからもらうものがないから、片貿易になるから困っておるというのが現状でございます。それらの点について、これから改善を加えたい。  それから中共貿易等も同様でありまして、御承知の、かつて支那大陸に対する日本貿易というものは、中小企業者の生産品である雑貨とか、あるいは海産物というものが非常に大きかったのでありますが、御承知のように現在の中共は、そういうものはあまり輸入することは好みません。それに代って重工業品というようなものを非常に多く輸入したい、こういうところに日本要求と向うの要求との食い違いがあるということにも、いろいろな困難がある。それらの点を一つ調整していくというのが、これからのわれわれの任務でありますから、できるだけの調整を加えたいと思います。  それから、今年度予算においても、輸出振興については相当努力をいたしております。乏しい中から、とにかく昨年の予算では、輸出振興に使う経費として一般会計に計上されたものは三億一千万円程度でありましたが、今年度は八億三千万円程度にこれをふやす。まあ総額においてはむろん満足すべきものではありませんが、とにかく増額は相当いたしまして、そうして輸出の振興をいたしたい。五月に入りますと、さっそく東京で国際見本市が開かれます。あるいはICCの国際商業会議所の会合も開かれます。また日本からアメリカの方へ日本品見本市を開く計画も今進めております。いろいろのことで輸出振興には最善の努力をいたしたい。同時に先ほど大蔵大臣も言いましたように、輸出入銀行の資金を昨年は三億円足らずでありましたが、本年はそれを四億円以上にふやしまして、輸出入銀行融資によりまして相当プラント輸出を増進したい、かようなことで輸出増進には努力いたしております。同時に、輸出をするには物価がやはり安くなければいけませんが、その物価も単に不景気で安くなるということではおもしろくありませんから、そこでコストを下げる、そのためにすでに生産性本部というようなものも作りまして、日本の技術及び経営上の調査をいたしまして、生産費を極力下げる工夫をいたします。あるいは石炭の合理化、あるいは石炭についても調査団をドイツ等へ派出いたしまして、日本の石炭がどうしたら原価を下げ得るかという研究を進める準備もすでにいたしております。本年の貿易見通しは、一昨日でありましたか、演説の中で申しましたように、輸入は大体十九億ドルくらいとみております。輸出は十六億五千万ドル程度のものを出したい、これは先ほど申しましたように、出そうと思えば出せるのであります。それには相当の工夫が要る、出しただけでは困りますから、やはり輸入を相当やる、もう輸入十九億ドル、輸出十六億五千万ドルという程度ならば、本年度の外貨国際収支もバランスいたす見込みでございますが、しかし私としては、輸入は相当ふやしてよろしい、なにもそう外貨をたくさん抱えているということだけが能じゃありませんから、必要なる輸入はふやして、そうして輸出を伸ばすという方針をとるべきものと考えてやっております。同時に資源の開発というものも輸出等に関して必要でありますが、これも御承知のように、水力電気も続けてやります。それから低品位炭を利用した火力発電というものにも努力をいたすことにしております。また国産石油の開発というものもやりますし、そのほか予算としては小さい、こまごましたものでありますが、鉄の資源の調査あるいはチタンに関する補助とかいうものもいたします。そうして日本の資源を豊富にし、輸出にも寄与するようにいたしたいと考えております。どうぞ一つ協力をお願いいたします。    〔国務大臣竹山祐太郎君登壇、拍手
  25. 竹山祐太郎

    国務大臣(竹山祐太郎君) 民間協力はどうかという御質問でありましたが、一つは今回の計画に、保険会社から五十億円の資金を住宅に投資をしてもらうことに大蔵大臣のお骨折できまっておりますし、なお、その外に銀行から相当の投資をしてもらうことに話は進行いたしております。なお、建てる方の側からいいますと、この間も総評の方がおいでになって、ぜひ一つ住宅の問題には協力をしてくれというお話で、私の方も喜んでいたしましょうということで、労働金庫等、労働組合側も非常に住宅の建設には協力を願っておりますし、また各会社の社員住宅の建設計画というものは非常なものでありまして、この数は想像以上に多くなろうかと考えております。  大体、今さようなわけで、民間協力についてはわれわれも努力をいたしますが、一般の情勢は、予想以上に私どもは期待をいたしておる次第でございます。(拍手)    〔国務大臣河野一郎君登壇、拍手
  26. 河野一郎

    国務大臣(河野一郎君) お答えをいたします。  野溝さんの御意見、いろいろ拝聴いたしました。十分御趣旨のほどを尊重して農林行政を大体においてやって参りたいと思いまするが、その中には二、三私と所見を異にいたしまする点もありまするし、誤解がある点もありますから、この際申し上げておきます。  第一は、小作料の問題でありますが、この小作料を新聞の記事でここでお述べになりましたけれども、これは米価を相談いたしまする過程において、そういう話が出たということが新聞に出たのでございまして、私といたしましては、小作料の変更につきましては軽々にこれを扱おうとは考えておりません。これにつきましては学識経験者、特に利害関係のない人たちの意見を十分尊重いたしまして決定する、必要があれば変更するということでやって参るつもりでありますから、この点は御了承おきいただきたい。  第二に、米価のことでありますが、これも御指摘になりました点は、御承知の通り、何分本年度の米価は、これから生産費も予想はつきませんし、ないしはまた、豊凶等の点も予想がつきませんので、今野溝さんの御指摘になりましたのはいわゆる予算米価でありまして、必ずしもこの米価が今年の米価の基準になるということではございませんから、その点はあらかじめ御了承おき願いたいと思います。糧問題について閣内の意見が違うじゃないか、こういうことでございましたが、これは決して違いませんので、総理の御演説にもありましたが、われわれどもは、総合食糧の観点に立ちまして、米麦その他畜産製品、水産製品、これらを総合的に考えまして、御承知の通り、米食から粉食に漸次移行しておりまする事実等を勘案いたしまして、これを総合的に政府としては考えていきたい、こういうことを総理も述べておられますし、私といたしましても、多角経営という点も考慮して推進していきたいということで、予算等についても考慮しておりますので、この点は御了解おきいただきたいと思います。  それから余剰農産物のことについて申し上げますが、これはだいぶやかましいお話でございましたけれども、私は、わが国の食糧の需給関係、次には経済関係、かつ経済価値等を考慮いたしまして、この米国の余剰農産物の受け入れはいたすのでありまして、決して不必要な物を受け入れいたす考えは毛頭ございませんし、国際的に考えて高い物を買って参るということも絶対に考えておりません。経済的に有利であって、しかも必要な場合にこれを入れるということを基本的な考えにいたしておりますから、この点も御了承いただきたいと思います。  次に、予算関係について申し上げます。予算関係につきましては、たとえば農業保険の予算が減ったじゃないかとおっしゃいますけれども、これは予算としては減っております。しかし、何分これは災害のことを予想してやるのでございますから、災害がありました場合には、これは当然ふやして払わなければなりませんことは御承知の通りでございます。その他、決して私はこの予算には満足いたしておりませんが、何分現内閣の方針に順応いたしまして、次年度に繰り越せるものは繰り越して、今年度において絶対必要なものを予算に編成したということで御了承をいただきたいと思うのでございまして、これらの点につきましては、今後も十分努力するつもりでございますから、御了承をいただきたいと思うのであります。  最後に、食糧の問題についてであります。これは御承知の通り非常に様相が国際的にも変ってきております。また国内の食糧問題そのものにつきましても、ただいま申し上げまするように、米麦の関係等が変ってきております。そこで特に考慮いたさなければなりませんことは、国際的に米麦の価格が下落の方向をたどっておりますることは御承知の通りであります。してみれば国際的に勤労大衆の食生活が、外国は非常にこの面において楽になるにもかかわらず、わが国の勤労大衆諸君の食生活に圧力を加えることは厳に戒めなければならない。そういう面におきまして、政府が現在考えておりまする国民の主食の価格を上げるということは絶対に避くべきものである、これは基本的な考え方であると私は思うのであります。そこで、それと関連いたしまして、農産物の価格をどういうふうにきめるか、農家の販売価格をどういうふうにきめるかということは、また別に農業経営の面において考えなければならない。ここで二重価格制度ということも一つ考え方であろうかと思うのであります。しかしこれは国家の財政負担とも見合って考えなければなりませんし、かたがたいたしまするので、それらの複雑なる要素を考慮いたしまして、ここに日本の食糧の自給関係を推進して参らなければなりません。もちろん国内における食糧の自給関係を強く考えていかなければなりませんことについては、全く私も野溝さんと同意見であります。しかし、今申し上げまするように、食糧の国際価格と日本の食糧の価格と、生産費の上において食い違いがますます大きくなって参ります。しかも農業経営の点につきましては、野溝さん御指摘のような点が現われてきております。でございますから、これらの各種の点を勘案いたして参りませんと、私が申し上げるまでもなく、従来のような考え方で農家に食糧の増産、もしくは食糧の自給自足の責任を強く負荷させますることは、農家経済を圧迫するようなことになるので、厳に戒めなければならないというような面から考えまして、私は農業経営の多角化を強く主張するものであります。決して私は食糧の自給自足を無視したり、食糧の自給自足に対して冷淡な考え方を持っておるわけではありませんで、予算の許す限り、もしくは農業施策においてでき得る限り各般の努力をして参らなければならないことについては全く意見は同様でございます。いずれまた詳しい御意見等につきましては、別の機会に承わることもございましょうし、私から申し上げる機会もございましょうと思いますから、本日はこの程度で御了承おきいただきたいと思います。(拍手)    〔国務大臣川島正次郎君登壇、拍手
  27. 川島正次郎

    国務大臣(川島正次郎君) 地方財政は今日全く危局に立っておるのでございまして、なまやさしい対症療法ではとうてい解決をいたさないのでありまして、野溝さんのお話のように、抜本塞源的な施策が必要といたされております。それには大幅な機構の改革を要しまして、三十年度予算編成にはとうてい間に合わないのでありまして、地方財政の健全化につきましては、三十年度並びに三十一年度、両年度を通じまして基本的の修正をいたしたいと、かようにただいま考えております。とりあえず三十年度予算編成に当りましては、従来たまっておりました赤字は、これを長期低利に書きかえまして、必要な利息の補給は国において支出をいたすことにいたしましたし、なお三十年度におきましては、できるだけ赤字が出ないような方策をとるつもりでおります。赤字の解消につきましては、中央地方を通じまして、犠牲と協力が必要でございますけれども、私どもは、地方税への依存によりまして赤字を解消しようとは決して考えておらないのでありまするからして、この点は御了解を願っておきます。(「起債はどうした、川島さん、起債々々、再建整備について」と呼ぶ者あり)  再建整備につきましては、新たに法案を提出しまして、近く御協賛を願うことになっておりますから、その点御了承願っておきます。
  28. 河井彌八

    議長河井彌八君) 質疑は、なおございますが、これを次会に譲り、本日は、これにて延会いたしたいと存じますが、御異議ございませんか。    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  29. 河井彌八

    議長河井彌八君) 御異議ないと認めます。  次会は明日午前十時より開会いたします。議事日程決定次第、公報をもって御通知いたします。  本日は、これにて散会いたします。    午後一時四十九分散会      —————・————— ○本日の会議に付した案件  一、日程第一 国務大臣演説に関する件(第二日)