○曾祢益君 私は
日本社会党第四控室を代表いたしまして(「第二だよ」「右か左か」と呼ぶ者あり)第二次
鳩山内閣組閣にあたりまして当面の
外交問題に関する若干の御
質問を申し上げたいと思います。
第一に
鳩山内閣は総
選挙の前から、その
外交方針は対
米関係については吉田
内閣の方針を踏襲する旨を
言明して参りましたが、総
選挙中におきましては、首相はむしろ対共産圏国交の
調整を主眼とするのゼスチュアをなしましたため、
アメリカはこれに対し敏感に反応を示し、すこぶる警戒的な
態度をとるに至ったのであります。その結果余剰農産物買い入れ
交渉、
防衛分担金削減の
交渉等もデッド・ロックになりまして、
民主党は
選挙においては優勢であったけれども、組閣と同時に対米
外交は全く行き詰まりという痛し痒しの難局に当面されたのであります。この苦境を打開しようとするあがきが、
一つは過般の首相の外人記者会見における
アメリカ軍の
日本における原子兵器貯蔵もやむを得ないという一大失言になりました。又他の
一つは
アメリカに対する特使の派遣による了解工作という企てに現われておるのでございます。そこで、私は次の
諸点に関する嶋山
総理の御見解をただしたいのであります。
まず原子兵器につきましては、
世界的軍備縮小と並行いたしまして、原子力の有効な
国際管理の確立に伴ってこれを一切禁止することを趣旨といたしまして、
政府はこれが実現のため、あらゆる
努力を傾注すべきものと思いまするが、
政府の決意と準備を伺いたいのであります。
首相がこのような
基本的な
態度を強く打ち出すことなく、
アメリカからの要請すらないと思われるにかかわらず、仮定の議論に対しましていち早く
アメリカの
日本における原爆貯蔵を許すといった答えは、これは重大な失言でございまして、おそらく
アメリカ外交の行を行き詰まりを強く意識するのあまり、対米媚態を示さんとした
総理の心境がしからしめたものと
考えるのでありまするが、首相は率直にその非を認め、この際、この
発言を取り消す御意向はないか伺いたいのであります。
日本の安全保障は、究極におきましては
国際連合の集団保障に依存し、かつ当面は自由国家群からの保障によってささえられる必要を認めなければならないと思いまするが、
日米安全保障条約及び
行政協定によりますれば、直接
日本に加えられる
武力侵略でない場合においても、
極東の平和と安全の名において、
日本における
軍事基地からするところの
アメリカ軍隊の軍事行動が、
日本の意思と無
関係に発動され、
日本の意思に反して
わが国が
戦争に巻き込まれる危険が存在するのであります。しかも原子兵器の使用を伴うようなことが予想される状況におきましては、
日本における原子兵器の貯蔵ばかりでなく、
日本における
アメリカ軍の一切の軍事行動というものが、わ国の意思に反し、平和の
目的から逸脱することのないように、安保条約、
行政協定を改訂し、または他の方法によって
日米両国間に明確な了解を取りつけることが必要と思われますが、
総理の所信を伺いたいのであります。
政府は、
アメリカに対し特使を派遣する意向のようでありまするが、その任務の
一つといたしましてわれわれの反対する
わが国の
防衛力の増強とか、われわれが主張する
防衛分担金の削減とか、これも
折衝の題目と
考えられまするが、
防衛問題を論ずるならば、このような観点を離れまして、一層
基本的な問題から論ずる必要があると
考えるのであります。すなわち原子
戦争の時代におきましては、原子兵器及び戦略爆撃機を持たない国が、これを持つ国の報復能力にその安全を託する傾向があることは認められますが、
軍事基地を提供するということは、半面において、提供する国を反対陣営からの原子力攻撃の危険にさらすという、国のいわば生死存廃をかけた重大な意味を持った貢献と犠牲でございまして、強大な報復力を持つ国は、この点を深く考慮に入れ、かつ徹底的に自己を抑制し、いやしくも弱小国を危険な地位に陥れたり、間接侵略に対する抵抗力を弱めたりするような要求を持ち印したりすることは、厳に慎しむべきものと思うのでありまするが、このような
見地から
防衛問題と平和問題について、
アメリカと大局的な話をされるお
考えはないかどうか、明らかにしていただきたいのであります。同じく特使の
折衝の一大眼目としましては、
国際貿易の自由化、なかんずく共産圏
貿易に対する短見的な、ショート・サイテットは制限を大幅に緩和することを強く主張すべきものと
考えられまするが、首相の決意を伺いたいのであります。
第二は、
ソ連、
中共に関する問題でございますが、
鳩山内閣は、総
選挙終了後は、前に申し述べましたような対米
外交の行き詰まりを打開しようとするあせりから
選挙前及び
選挙中に、鳴り物入りで宣伝した対共産圏
外交の推進は、もはや全く影をひそめてしまい、今や中ソ国交の
調整とは単なる
選挙目当ての無責任な、から宣伝が実体であることを立証しつつあることは、先ほど同僚
佐多君が明確に指摘されたところであります。われわれは
鳩山内閣及び
民主党が、このように
外交を政争の具に供する
態度を強く指弾いたしまするとともに、われわれに関する限りは、完全野党の立場に立って、
政府の公約実現を督励し、その業績に対して厳正な批判を加えたいと思うのでありまするが、この
見地に立って、次の
諸点に関し
総理及び
外務大臣の御所目を伺いたいのであります。
第一に、対ソ
国交調整の問題でありまするが、この
基本目標が必ずしも明らかにされておりません。ただ国交の
調整、正常化というだけであって、決して明らかにされておらないのであります。この
基本目標とは、
戦争状態の
終結の確認と、平和友好
関係の樹立にあると思うのでありまするが、その場合にいかなる条件によって行うかということはきわめて重要なことでありすす。これも
政府が何ら明らかにされておらないのであります。このことは
アメリカに対しても、また
ソ連に対しても自主的な内容でなければならない。また具体的には、
ソ連も最近に至ってこれを認めておりますように、サンフランシスコ講和体制をこわさない、
日本の
外交及び安全保障の自主性を犠牲にしないものでなければならないものと
考えるが、いかがでございましょうか。
日米安保、中ソ友好同盟の
二つの対立的な安全保障体系を終局的に不要ならしめることを目途といたしまして、まず新ロカルノ方式による
日米中ソ四カ国間の集団安全保障条約を提唱することをいかにお
考えであるか。さらに、従いまして日ソ
平和条約は、
日本とインド、ビルマとの条約と同様に、サンフランシスコ条約でもなく、しかもこれと矛盾しない内容のものといたしまして、ただし
領土問題については、
平和条約中におきましても、歯舞、色丹のみならず、先ほど
総理は言葉を濁されたのでありまするが、当然千島、南樺太の
日本復帰を規定する必要があると思うが、いかがでございましょうか。さらに
平和条約の締結が遅れる場合には、あらかじめ両国間において打ち合せの上、
戦争終結の両国
共同宣言を発することが適当と思われるが、御所見を承わりたいのであります。
領土以外の懸案、すなわち抑留者、戦犯の帰国、通商、漁業等の問題は、必ずしも
平和条約と同時でなくとも、随時
解決する方針がしかるべきと思うが、この点も明らかにされたいのであります。
次に、
中共関係でありまするが、
基本的には、
中国は
一つでなければならないが、当面
二つの
中国ということを
総理は言われまするが、これは
二つの
中国の、
二つの政権が存在するという事実に即しまして、
中国本土については
中共を相手とし、これとの間に日ソ間と同様な条件で平和友好
関係を樹立すべきものと思うが、
政府はこの首相の
二つの
中国という
言明にかかわらず、実は
アメリカに気がねをいたしまして、自主的な
外交をちゅうちょしておるように思いまするが、明らかにされたいのであります。当面まず
台湾をめぐる緊張緩和のため、特にコロンボ
会議諸国と連携いたしまして、まず停戦の実現、さらには
中国問題全般の処理に関する
国際会議の開催に
努力すべきものと思うが、依然としてこの点に対する御明確なる御
答弁がなされておらないので、あらためて伺いたいのであります。
政府は
中共関係につきましては、他の同僚諸君からもお話がありましたが、
政治問題よりも、まず相互の渡航の自由あるいは
貿易の
促進を実行すると言っておられまするが、
貿易については、先ほども申しましたように、いやしくも
ココム・リストの大幅改訂に関する、
政治的な、最高レベルにおける話し合いがなされなければ、
中共貿易拡大は単なるから念仏に終るのであります。往来の自由化につきましても、先ほど
佐多君が御指摘のように、現に
中国貿易使節団の査証問題及び行動の制限、あるいは
日本の労働組合代表の
中国渡航の申請等に対しまして
旅券交付の拒否、これらの実例から見ても、いろいろ細かな御殿女中式的な口実を設けまして
政府は現実には渡航の自由化を実行されておらないのであります。これらに関する、この食言に対するはっきりした御
答弁がありまするならば、これを明らかにしていただきたいのであります。
最後に、アジア・
アフリカ会議に関してでありますが、
日本の自主独立の立場を強化するためと、
国際緊張の緩和を
促進する
見地から、十分にこれらアジア・アフリカのいわゆる後進民族
諸国の期待にこたえるような心がまえをもって、かつ周到な準備を整えた上、積極的、自主的にこの
会議に参加すべきことは、言うまでもないところと思うのであります。これがためわが党は、国会の審議を通じてこの準備に積極的に参画する意向でありまするが、
政府もまた進んで国会を通じてその所信を明らかにし、かつ
国民の世論を背景といたしまして
会議に臨む覚悟がなければならないと思うのでありますが、このことは、単なる形式的な、いわゆる
超党派外交とは、厳密に区別して考うべきことは申すまでもないところであります。先ほどの
重光外相のお話によりますと、
政治的問題等は
提案せぬ、これも
一つのお
考え方かもしれませんが、さような消極的な
態度ばかりでなく、真に
国民的世論の背景に立ってそうして積極的に大いに自主性を発揮する
外交の機会とされたいので、これに関する
政府の心がまえと準備につきましてあらためて明確なる御
答弁を要求いたしまして、私の
質問を終りたいと存じます。(
拍手)
〔
国務大臣鳩山一郎君
登壇、
拍手〕