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1955-07-29 第22回国会 参議院 法務委員会 第23号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和三十年七月二十九日(金曜日)    午後二時三十八分開会   ―――――――――――――  出席者は左の通り。    委員長     成瀬 幡治君    理事            剱木 亨弘君            宮城タマヨ君            市川 房枝君    委員            井上 清一君            中山 福藏君            廣瀬 久忠君            吉田 法晴君            赤松 常子君            一松 定吉君            羽仁 五郎君   衆議院議員            古屋 貞雄君            椎名  隆君            吉田 賢一君   政府委員    警察庁警備部長 山口 喜雄君    法務大臣官房調    査課長     位野木益雄君    法務省人権擁護    局長      戸田 正直君   事務局側    常任委員会専門    員       西村 高兄君    常任委員会専門    員       堀  真道君   衆議院事務局側    常任委員会専門    員       小木 貞一君   説明員    法務省刑事局公    安課長     桃沢 全司君    最高裁判所長宮    代理者    (事務総局総務    局総務課長)  磯崎 良誉君    最高裁判所長官    代理者    (事務総局民事    局長)     関根 小郷君   ―――――――――――――   本日の会議に付した案件 ○弁護士法の一部を改正する法律案  (衆議院提出) ○訴訟費用等臨時措置法の一部を改正  する法律案衆議院提出) ○検察及び裁判の運営等に関する調査  の件  (籾井炭鉱及び小倉炭鉱における労  働争議等に関する件)   ―――――――――――――
  2. 成瀬幡治

    委員長成瀬幡治君) これより委員会を開きます。  まず弁護士法の一部を改正する法律案及び訴訟費用等臨時措置法の一部を改正する法律案、両案を便宜一括して議題に供します。  両案についてまず提案者から提案理由説明を願います。衆議院議員法務委員会理事古屋貞雄君。
  3. 古屋貞雄

    衆議院議員古屋貞雄君) ただいま議題となりました弁護士法の一部を改正する法律案提案理由を御説明申し上げます。  外国人弁護士制度は、旧法時代からありましたが、終戦占領という特殊事情のもとにその職務範囲が拡張されその要件が緩和されたものでありますが、この問題は独立後の今日においては、一面、国際的視野立ちながら他面独立国にふさわしいように改める必要があると信じます。  すなわち、わが国においては、旧法時代には、日本の国籍を持つものでなければ弁護士になることができなかったのでありますが、現行法はこれを改めて、外国人であっても日本の試験に合格すれば、弁護士になり得るとしましたので、この意味において現行法はきわめて開放的となっているのであって、この上さらに、現在のような外国人弁護士制度を認める必要はないものと考えられるのであります。また弁護士事務たるや、警察、検察、裁判等重大な国務の遂行に関連協力するものであって、その職責きわめて重要なことは申すまでもありません。しかもなお、諸外国立法例によりましても、現在のような外国人弁護士制度は全くその例をみないところであります。  以上の理由により、外国人弁護士制度は、この際これを廃止することが最も妥当と考えるのであります。  よって、本法案におきましては、第七条の外国人弁護士に関する限り全部これを廃止することにいたしました。しかし、経過規定を設けまして、従来同法第七条の外国人弁護士としての既得権を有する者は引き続きその資格を有するものといたした次第であります。  以上が本法案提案理由であります。何とぞ慎重御審議の上すみやかに御可決あらんことを御願いいたします。  次に訴訟費用等臨時措置法の一部を改正する法律案提案理由を御説明申し上げます。  御承知通り民事訴訟費用刑事訴訟費用及び執行吏手数料等につきましては、戦時中の物価の高騰に応じて臨時的にこれらを増額するために、民事訴訟費用法刑事訴訟費用法及び執達吏手数料規則の特例として、昭和十九年に訴訟費用等臨時措置法が制定されましたが、終戦後も引き続く経済情勢変動に伴い、数度この法律改正し、これらの額を増加して参ったのであります。  前回の増額、すなわち昭和二十七年七月の改正以来、国内の経済事情は多少安定はして参りましたものの、物価の騰勢はなお継続し、例を経済審議庁調査の東京における家計費指数にとりましても、本年三月の指数は、昭和二十六年平均の約三割八分方の増加を示し、現在の訴訟費用及び執行吏手数料等の額によっては、訴訟関係者または執行関係者等負担の均衡上公平を欠くものと考えられますので、この際暫定的に、これらの額を増加しようとするのが、この法律案提出趣旨であります。  ところで執行吏手数料は、公務員たる身分を持つ執行吏に対する給与の一変形ともいうべきものでありますが、一般公務員給与べースにつきましては、昭和二十七年十一月及び二十九年一月と二度改正増額され、昭和二十六年のベースに比較して五割強の増加となっております。しかるに、その間執行吏手数料増加されておらず、従って、今回の手数料改正はおそきに失した感もある次第であります。  次に、この法律案改正点を申し上げますと、第一に、民事訴訟費用中の書記料及び翻訳料の額を百十倍とあるのを百五十倍に改めようとするのであります。  第二に、執達吏手数料規則に定められております執行吏の差し押え、競売その他書類送達等手数料について若干増額改正をいたそうというのであります。このことはたとえば書記料八円を十円に、記録閲覧手数料十三円を二十円に改めることによって、十円以下の端数を整理し事務的煩瑣を除き、あわせて事務能率改善をはかろうとするものであります。  第三に、差し押え、競売等における、債権額競売金額区分改正いたしました。  すなわち、現在、五百円まで、二千円までとある区分を廃止し、五千円までから出発することとし、さらに競売金額については十万円をこえる場合二万円ごとに百五十円を加えるとあるのを、五万円ごとに四百円を加えることに改めました。これによって経済事情と執務の実態に適合せしめようとするものであります。  以上、この法律案改正の主旨並びに要点について御説明いたしました。  何とぞよろしく御審議の上、すみやかに御可決あらんことをお願いいたします。以上であります。
  4. 成瀬幡治

    委員長成瀬幡治君) 両案について御質疑のおありの方は、御発言を願います。なお、最高裁判所の方からは民事局長関根さん、磯崎総務課長法務省からは官房調査課長位野木さんがお見えになっております。衆議院の方からは古屋さんのほかに椎名吉田委員がお見えになっております。
  5. 中山福藏

    中山福藏君 私ちょっと提案者お尋ねしておきたいのですが、執達吏費用を引き上げる、これはなんでございますか、昨年ごろ関西を初め諸地方執達吏涜職事件が起った。これは要するに生活の窮乏というところからきたから、これに対して少し給料を引き上げてやった方がいい、手数料を引き上げてやったらいいというお考えで出されたのですか。あるいは経済上の物価指数変動によって、経済的に一つ物価が変ったのだから、そういうところから生活給というような意味で引き上げてやろうというところからきているのですか。どっちですか。
  6. 古屋貞雄

    衆議院議員古屋貞雄君) ただいまの御質問でありますが、両方関係があろうと思うのでありますが、特に都会地執行吏の方は別でありますが、地方に参りますと、執行吏になる方は今はないのであります。というのはただいま御質問の第一の毎月規定された収益が非常に少い、従いまして十一万円以下の場合には、政府がこれを保証しておりまするが、年間十一万円ではどうしても食べていけない、こういう関係を考慮いたしまして、やはり生活のある程度保証をしてあげなければ、涜職などの原因を馴致する一つ原因になるであろうということが一つ、大体物価指数並びに許訟費用の他の方面ともにらみ合せまして法案の原案をこしらえた次第であります。
  7. 中山福藏

    中山福藏君 大体あなたも弁護士を職業としておられる方だと私は考えるのです。そういたしますと、実際執達吏の言語、動作というものが非常に近ごろ粗暴になりまして、とてもそばでは聞いておられないような乱暴な言葉を至るところで使っておる。それでなるほど給与の引き上げとか何とかということも肝要でしょうけれども、そういう点も並行して一応お考えになってお出しになっておるのですか、どうでしょうか。
  8. 古屋貞雄

    衆議院議員古屋貞雄君) その点も考慮いたしましたが、その点は従たるものでありまして、主としてはただいま申し上げました通りであります。さような御意見については監督官庁の方が見えておりますから、その点に対する今後の心がまえのお話を願いたいと思います。
  9. 関根小郷

    説明員関根小郷君) 中山委員からのお尋ねの点でございますが、執行吏言動が今非常に粗暴になっておるというお話しでございますが、これは全部の執行吏がそういうことじゃないと思いますが、あるいは執行の現状で、その周囲の雰囲気等から、あるいはそういったことがあったかもしれませんが、でき得る限り執行吏言動については、そういうことのないようにあらゆる機会を通じて指導しておるわけであります。特に昨年の一月一日から執行吏事務査察するという制度を設けまして、毎年二回、大体各地方裁判所ごとに六月と十二月に裁判官を中心といたしまする査察を行なっております。裁判官査察官執行吏との会合を毎年秋ごろ開催することにいたしまして、そこでお互い査察の結果いろいろ欠点のあるところを見出して、お互い研究してなるべくいい方向に向いていこうということで、まあ実際におきまして幾分はそういうことはあったかも存じませんけれども、全体としてはいい方向に向いているのではないかと思っておるわけでございます。
  10. 中山福藏

    中山福藏君 私ただいまの御答弁拝聴したわけですが、これは役人をしていらっしゃる人にお尋ねしておきます。これは私ども考えるところでは、吉田提案者も坐っておられるのですが、これは執達史がいかなる行為をしておるかということは、大体私は知悉しておる、証拠の上からこれくらいの金を扱っただろう、要するに地獄のさたも金次第ということがよくいわれておりますが、これは御参考に一つ供することでおもしろい話がありますから一つ申しておきますが、ある人が死んで阿倍野という葬儀場に死骸を焼いてくれと依頼しましたが、ところがその隠亡がどういうことを言ったか、たくさんの申し込みを受けております、ところが地獄のさたも金次第ですからと焼場の隠亡が言うた。この言葉執達吏の場合も当てはまるんじゃないかと実は私考えておる。これはどっちかというと地獄のさたみたいなんです、執行を受けるというような人については。また執行する人たちは鬼みたいなものでしょう、ある意味においては。そこでたくさんの金を手数料以外に払ったものについては、執達吏が優先して執行するというきらいがある、これは事実行われております。それに関係して今度の涜職という問題が起ったときに、一番最高涜職金額はどれくらいのものだったかを一つお示しをこの際してもらいたいと私はこう考えます。
  11. 関根小郷

    説明員関根小郷君) 今お話しのございました執行吏涜職の問題でございますが、これは残念ながら一年に二件くらいずつ刑事事件がございます。まことに残念な次第でありますが、その金額につきましては、あるいは予納金から横領する、あるいは謝礼金をもらうとか、そういったいろいろの種類がございますが、予納金などで着服横領した事件では約三十万円くらい横領したのがございます。これは実際におきまして徴役に処せられております。こういった人が出たときには、直ちに執行吏の仕事をやめさしてもらっております。全体の執行吏の数が現在三百人ちょっと出ていますが、一年に二回くらいずつ出てくるということは非常に遺憾なことでございますが、何と申しましても経済的にかなり困難な生活状況でございます。それでこのたびの法案などにおきまして特に手数料を上げていただければ、そういった点におきましても、いい意味において是正する助けになるんじゃないか。それから今お話がございました地獄のさたも金次第というお話がございましたが、執行吏執行をいたしますときに、金を特にくれたものに先に手を出す、着手するということはこれはあり得べからざることなんです。実際にこういう事実があるならば、実際にあった事例をお教えいただきたい。実はそういったうわさがございますので、うわさのもとをぜひ明らかにしていただきたいということを申し上げますと、なかなか出てこないので、それで先ほど申し上げました査察制度におきましても、いざ査察に参りますると、その点がはっきり出てこないのであります。でありますから、やはり一般債権者なり債務者なり執行吏を利用なさる側において、そういったことがおありになったら、どしどし裁判所なりあるいは最高裁判所なり、地方裁判所なり、高等裁判所なりにお申し出いただきまして、われわれに協力していただきたい、これは切にお願いする次第でございます。
  12. 中山福藏

    中山福藏君 私どもは法案に反対するものじゃないのです。これはもうやはり生活給というものはぜひ必要だと思っております。しかしそれはやはり国民の血税から払われるのですから、これは質問しているのです。それで私もう一つお尋ねしておきたいですが、ただいまの査察制度、まことにけっこうでございます。それでその査察をなさるのには、なかなか今おっしゃったように、査察をされた場合に、直ちに証拠を上げるということはむずかしい。これは人の手から茶碗をたたき落すということは、かりに知っていてもお互いに相当考えなければならぬ問題であります。だから人の手から茶碗をたたきこわせば家族が困るということを考えて、むやみに、知っていても、なかなか証拠を提出するということは、私ども一応考えてみておるわけです。私自身も相当間違いのない事実をつかんでおります。しかしそういうことは家族全体の生活に影響する問題でありますから、まずこの場合控えておきますが、その査察をなさるのに、ただ通り一ぺんにぐるっと回っただけではいかぬ。ただ書類の上で手数料を幾ら取ったということだけではいけないが、その査察の真髄というものを発揮するためには、何らかのそこにたとえば投書箱を設けるとか、いろいろな方法を講じなければ、ただ汽車に乗って、船に乗って、ただぐるっと見てきただけでは査察にならぬ。そういう点についてお考えがありますれば承わっておきたい。
  13. 関根小郷

    説明員関根小郷君) 今のお話はごもっともでございまして、特に投書箱なんかもなかなかいいお考えだと思います。それでそういった方法につきましても、先ほど申し上げました執行吏査察官との会合におきまして研究を重ねております。それからどうも査察と申しましても、形式的に流れやすいというお尋ね、これはごもっともでございまして、あらかじめ何日に査察に行くぞということになりますれば、執行吏の方でも用意をしてしまうのでございますので、あるいは投書などに基きまして臨時査察に行くということで、ある程度効果が上るのではないか。それで現在投書がございましたときには、突然に査察に行くということもやっております。これは査察の結果いろいろの疑点がございますが、特に出て参りました一、二を申し上げますと、これはざっくばらんに申し上げるわけですが、たとえば執行吏執行をやりますときに、あらかじめ債権者から金を預かる、予納金でございますが、その予納金執行が終ってしまったあとに返すのがおくれるということがある。そういうことが出て参りますると、そういうことは絶対にないように、それからその他帳簿記載記録の上に調書などを作るわけでありますが、その調書記載につきましても、いつ何時に執行を開始して、何時に終ったというような記載がない場合がある。そういったところもこまかい点でありますが、いろいろ研究を重ねてはっきりする。そのほかに帳簿などに現れない点でいろいろなうわさがある。これはなかなかつかまえにくい。お話しのようにあるいは投書なり、あるいはさらにざっくばらんにそういうことを実際に御経験なさった方にお申し出いただくほかないのじゃないか。できる限りの努力はいたしますが、なかなかめんどうでございます。その点御了承願いたいと思います。
  14. 古屋貞雄

    衆議院議員古屋貞雄君) ただいま中山さんの御質問はごもっともなんで、おそらく法務委員会も、衆参法務委員会査察いたしました報告でもさして、やはりこれは十分有効に査察効果が上るように助言をすることにしたらと思いまして、実は衆議院はさようにも考えておるわけであります。御了承を賜わりたいと思います。
  15. 中山福藏

    中山福藏君 私ここで一つお尋ねしておきたいのです。ただいまは立ちのき請負業というのがありまして、これは一人前の日当五百円取って、三十人ぐらい明け渡しのときにそこに差し向けることがあるのです。それと執達吏と組んでリベートが相当に行われておると私は見ておる。この立ちきの請負業というようなものを法務省とかあるいは最高裁判所でお考えにならなければ、この弊害というものは実におそるべきものなんです。これは一種の暴力団なんですね、やることを見ておりますと。柱につかまって立ちのきを受ける人が泣いている。そうするとその足を引っぱって、柱に抱きついておりますものですから、足が畳と並行して宙に浮いているのです。そういうひどいことをやってただいま立ちのきをやるところもある。それでこの立ちのき請負業というものと執達吏関係というものをよほどお調べにならぬというと、ただ単に法律で月給を上げたから、それで安んじてその職務を遂行していくだろうなどとお考えになっていたら、甘い考えだと思います。そういう点についてはどうですか、提案者の方々もお考えになっておられますか。
  16. 古屋貞雄

    衆議院議員古屋貞雄君) 実はただいまお尋ねのようなことがかつてはございまして、この点が御承知暴力行為取締法案ができる直接の原因をなしたように記憶しております。さような点についても十分考えまして裁判所の方で監督を十分していただくようにお願いを申し上げるとともに、さような事実がしばしば行われるような状況がございますならば、法務委員会あたりでその結果の報告を受けてから処置したい。今回はとりあえず執達吏の諸君の生活に困った場合、あるいは債権者から依頼をして頭を下げて頼むというようなことになって参りますので、実はそういう弊害がふえて参ります。さようなことも実は考慮いたしまして今回この法案提案したような次第でございますから、御了解を賜わりたいと思います。
  17. 成瀬幡治

    委員長成瀬幡治君) 速記をとめて下さい。   〔速記中止
  18. 成瀬幡治

    委員長成瀬幡治君) 速記を起して下さい。
  19. 吉田法晴

    吉田法晴君 先ほど中山委員質問に答えて査察の問題について御答弁がありましたが、その査察の結果等は、先ほど来の中山委員の御質問趣旨もございますし、法務委員会等に御報告を願えるかどうか伺いたいと思います。
  20. 関根小郷

    説明員関根小郷君) 今のお尋ねは、国会の法務委員会報告をしたらどうかというお尋ねでございますか……。これは実はそういうことができないわけではございませんが、査察の結果は、先ほど私が申し上げましたように、毎年秋に査察官執行吏との会合の席でお互いにぶちまけてお互いに是正しようというので、この査察の結果というものは書面に書いて報告を求めておりません。あるいはそういった御要望があれば、われわれまた研究いたしましてその結果を書面にしてもよろしゅうございますが、先ほど申し上げましたように、割合にこまかい結果が出てくる程度でございます。たとえば帳簿記載の仕方がまずいとか、あるいは予納金の返還がおくれるとかいうような程度でございまして、こちらにお出しするほどの結果が出るとは思えないのでございます。しかし、御要望がありますればまた研究いたしたいと思います。
  21. 吉田法晴

    吉田法晴君 訴訟費用等臨時措置法の一部を改正する法律案について私は一つ疑問を持つのですが、それはなるほどその後昭和二十七年以来物価が上った、あるいは一般公務員ベースが上った。そこで執達吏等訴訟費用の一部を上げるべきだと、こういうような御趣旨かと思いますが、最近の実情を申しますと、差し押えを受ける、あるいは競売に付する、こういう事態は、これは好んで起って参った事態ではない。最近のデフレ政策なり、あるいは不況なり、そうした大きな国の政治なり方針の結果、中小企業その他についてこういう差押なり競売を受ける等の悲劇的な事態が起っておるのが実態だと思うのです。そこでこの費用増額にいたしましても、あるいは手数料増額にいたしましても、できるだけその点は御遠慮をしてもらいたいと、こういう気持が実はあるわけであります。その点についてどういうように御配慮になったのか。あるいはこれは手数料のたとえば、下の方の小さい区分をやめて、三-五円とか四十円とかありますのが、一括して五千円まで七十円になるとか、下の方は実際問題として倍率から言えば非常な大きな倍率になっておる。それは今日五百円とか二千円とかいうものが少くなっておるという実態はありますけれども、おそらくそういう点についても私が申し上げましたような精神が生かされておるとは思わぬのでありまして、そういう点について、一応提案者の御配慮がどういう工合にあったか、あるいはどういう御研究の結果こういうことになりましたのか、提案者から一つ御答弁願いたい。
  22. 古屋貞雄

    衆議院議員古屋貞雄君) ただいまお尋ねになりましたような点を十分配慮したわけなのであります。たとえば手数料はできまするならばつとめて安い、極端に申しまするならば政府が全部負担するような制度にすべきだと思うのです。というのは、差押を受け競売に付されまする人々は、すでに債務の履行ができないために差押をされ、競売に付されておるわけであります。しかし一面またかような制度のできます反面を考えますと、執行吏の方の生活保証が行われないところに、ただいま中山先生からお話しのように、競売屋というやつがあるのです。そうして、競売屋というやつが出てきて執行吏と結託をして、そうして競売をしなくてもある程度の弁済を受ければ済むような場合でも、たとえば家の中で一番大事な戸棚であるとか、畳であるとか、ふすまなどを競売屋と結託して競売してしまって、即座に必要な畳であり造作ですから、債務者がまた高く競落人から買うと、こういうことが実情はしばしば行われておるわけです。従いまして、さような両方を勘案いたしましてまあこのくらいならば、という程度に実は今回改正をしたわけなんです。御質問のような程度趣旨十分配慮の上で本改正を企図し、提案したような次第でありますので、その点御了承賜わりたいと思います。
  23. 赤松常子

    赤松常子君 今全国執行吏がどのくらいおいでになるのでしょうか。それからこの手数料改正によって予算はどのくらい要るのでございましょうか、その二点を伺いたいと思います。
  24. 古屋貞雄

    衆議院議員古屋貞雄君) 執行吏の数は最高裁の方からお答え願いますが、予算は一文も要らないのであります。依頼者負担になっておりますからその点御了承願いたいと思います。
  25. 関根小郷

    説明員関根小郷君) 大体全国でただいま三百五名でございます。
  26. 一松定吉

    一松定吉君 一言ごく簡単だが、執達吏待遇改善のために手数料を値上げするということには反対いたしません。それはいいでしょう。ところが今、中山君の質問されたように執行吏がいろいろな者と共謀して債務者をいじめるようなことが非常に近ごろ多いのですね。そういうようなことについてほんとうに国民の権利を保護し、執行吏の行き過ぎを是正するということについては、法務省等において相当の監督等をしておるだろうと思うのですが、そういう点についてさっき査察するとか何とか言っておったが、そういう査察の結果は、執達吏会合のときに話し合いをするというようなことでは今、中山君が心配するような、われわれが見聞きしておるようなことの是正ができない。そういうことについても一つどういうふうな査察の仕方をし、どういうふうなその結果について制裁を与え、責任を問うておるかということについて、実際問題を一つ話していただきたい。
  27. 関根小郷

    説明員関根小郷君) 今、一松委員お話しの中で法務省とございましたが、最高裁判所監督しております。今お話がございましたように、確かに査察では執行吏債権者と結託する、あるいは暴力団と一緒に組むというようなことがわかりっこないのです。またそういうことがあったかどうかということは、監督官庁としてなかなかわからない。でありますので、先ほど申し上げました査察制度ではそういった事実がなかなか発見できない。そうでありますので、私先ほど中山委員お話にも申し上げたのですが、結局、そういった事例があったとき、投書なりあるいはそれに立ち会われた弁護士の方なりあるいは当事者の方から、そういったことがあるぞということをお教えいただかないと、なかなか実際に発見ができないのであります。そういった投書があったときには、直ちに調査を進めまして、あるいは退職させたり、さらに進んで刑事上の問題になりますれば、検察庁の方が起訴をする段階になる、そういった事例がときどきございます。そういった事例のないように具体的に起きた事例をお互いに注意をいたしまして、そういうことのないように心を入れておるわけであります。
  28. 成瀬幡治

    委員長成瀬幡治君) 暫時休憩いたします。    午後三時五分休憩    ――――・――――    午後六時二分開会
  29. 成瀬幡治

    委員長成瀬幡治君) 休憩前に引き続いて委員会を再開いたします。
  30. 吉田法晴

    吉田法晴君 まあ査察をやる、そういうことで執達吏債権者というか、あるいは競売屋と結託する云々というようなものの弊害は除きたいとこういうお話し、それについては手数料等も上げてということでありますが、さっきの委員会の休憩になりましてから、お互いに私が話をしたことですが、同じ公務員であって、給与をどうして差押者だけから給与の源泉を取らなければならぬか。それは今までの制度をそのままおいておくならば、これは何としてもそういう弊害が起って参る、あるいは差し押えたものの中から、差し押えた価格の中から自分の給与が払われると、こういうことになりますならば、これは人情と申しますか、人間の弱さからいっても、あるいはその差押をいたします場合に価額の大きいものから先にする、あるいは差し押えられるものから言いますならば、それが必須のものであろうと、やはり押えられるという事態が起ってくるのではないか。そこでこれは従来の制度については根本的にメスを入れるということでなくして、従来の制度の上に立って最近の差し押えられるものとの調整といいますか、こういう点を考慮をいただいたということでありますが、あるいは最高裁においてあるいは法務省等において、この公務員である執達吏給与の形体そのものに改善を加えるべきである。もし国からこの給与をみるということになりますならば、従来のような弊害は一挙にして解決せられると思うのでありますが、この点についてこれは法務省なり裁判所なりその監督と申しますか、政府監督政府というと語弊が起りますが関係者においてどのように考えておられますか、この際承わりたいと思います。
  31. 関根小郷

    説明員関根小郷君) 今吉田委員からのお尋ねの点は非常にごもっともな点でございまして、実はこれは法務省におきまして法制審議会で今執行吏制度研究中でございます。これは今お話がございましたように、執行吏は国家の仕事をやる公務員であるにかかわらず、その俸給は国家から支払われないで、債権者なりあるいは債務者から取り上げるということはおかしい。まるで公務員でない請負人のような形になる、そういう御疑問ごもっともでございます。これは実は執行吏の仕事は非常にむずかしい仕事であるというところから、俸給では果してうまく仕事ができるかというところから出てきた制度かと思います。そこで出来高払いという結果になるわけでございますが、世界の各国の立法例におきましても、やはり同じような制度をとっている国が多いわけなんです。しかしそれに改正を加えまして、ある一定の限度は俸給を出す、その上はまた日本手数料制度のようにその上に手数料を加味するといった制度もございます。お言葉通り、純然たるほかの公務員と同じように国家が俸給を払うという制度にしてもらえば、確かにお話しのように何となく弊害がなくなるという気持がいたしますが、その点も法務省のもとにおきまする法制審議会において検討中でございます。そうなりますれば、あるいは執行官ということになりまして、執行局という局ができて、そこに執行官が配属されて、そして執行官のもとにおいて補助機関とともに執行事務をやると、そのかわり執行官は完全にほかの公務員と同じように毎月俸給をもらうということが考えられるわけであります。そのいずれにつきましても長短がありまして、相当研究をしなくてはならない問題だと考えられるわけなんです。
  32. 吉田法晴

    吉田法晴君 研究をしておると、こういうお話しでございますが、一番しまいはその半額を見るかあるいは全額を見るか、なかなか研究を要すると、こういうお話しで、意図がはっきりいたしませんが、いずれをとるかはとにかくとして、その一部あるいは全額を国で見るという、こういうことに変えるおつもりなのかどうか、今の当局の一つ御方針をお示しを願いたいと思います。
  33. 関根小郷

    説明員関根小郷君) 今吉田委員お話は非常にめんどうな問題でございまして、もし俸給制度になりますると、相当な人件費が要るわけでございまして、特に執行吏に頼む人というのは債権者それからまた取られる債務者という特定な人なんです。そういう特定の利用者からだけ手数料を取って、それで執行史の俸給をまかなうという方がいいのか、あるいは税金から国民全般の負担において執行吏に俸給を払うのがいいか、これはなかなか決定しがたいむずかしい問題なんです。しかしもし俸給制度にいたしますると相当な人件費が要るんじゃないか。それでもし俸給制度にいたしますれば、相当の高い俸給を出さなければ、なかなかいい人は来ないということも考えられますので、法制審議会でいつ決定するか、早急にはなかなか決定しかねる問題かと思いますが、ただいま執行機関の問題として研究中でございます。
  34. 吉田法晴

    吉田法晴君 だから先ほどの答弁の初めの方は研究をして改正をする御意思と申しますか、研究をしておると、ところが前の答弁でしまいの方にはなかなか慎重を要すると、こういうお話しでしたから、重ねて聞いたのであります。そのいずれでありまするか、これが給与の問題については、あるいは収入の点についてはいろいろ御議論があるだろうと思いますが、請負給というのは、これは何としてもやはりほんとうに安定を得られるわけでもございませんし、それから請負みたいになって、一件一件から自分の収入がきまって参るということになれば、言われるような弊害を根絶するということはなかなかむずかしかろうと思う。それから人数も、先ほど御答弁がありましたが、大した人数でもなかろうし、相当な金額が要るというお話でございますが、給与のあり方、あるいは実際に請負みたいになると、それが言われるような弊害を生ずる原因であるということがわかっておるならば、改善について、これはその具体的な方法はいずれでありましょうとも、改善方向に向ってゆかるべきだと私は思うのです。そういう意味において、するのかせんのかわけがわからんという答弁でなしに、はっきりした改善をするのかどうか、その点を一つ明らかにせられたいと思います。
  35. 位野木益雄

    政府委員(位野木益雄君) 執行吏制度改善の問題ですが、これは本来監督最高裁判所がいたしておりますが、制度改善の方は法務省の所管ということになっておりますので、私の方から便宜お答えいたしたいと思います。仰せられますように現在の執行吏手数料制度というものが、ややともすれば債権者の代理的な要素も加味されがちだというふうなこと、それから執行吏の収入が不安定だというふうなことなんかの欠点もございますので、政府といたしましては、昨年の八月から法制審議会に諮問いたしまして、執行吏制度改善について研究をいたしておるのであります。執行吏制度全体について改善研究しておるのでありますが、とにかくその手数料の点などがこの問題の中心の一つをなしておるのであります。これを純然たる公務員的なものにするかどうかというふうなことも、一つの大きな論議の焦点になっておるのであります。まだ法制審議会の議論としては、十分そこの点の詳細にまで及んでおりませんが、すでに各界の意見を法務省は徴しておるのであります。学界とか、弁護士会、裁判所検察庁方面の関係機関から意見を徴しておるのでありますが、今右田委員の言われましたように、今の手数料制度がどうも必ずしも好ましくないというふうな意見もかなり強いのでありまして、純然たる俸給制にすべきであるというふうな意見も相当大きく出されておるのであります。しかしそういうふうにいたしますと、先ほど説明員も言われましたように、国家財政上の非常な負担はおそらく避け得られないということも考えられますので、なかなかいろいろな点を十分考慮した上でないと、そこまで踏み切りにくいという点もあるのであります。しかしながら今までの民事の執行の面に対する国家の財政上の負担というものは、必ずしもその事務の内容に比較いたしまして十分であったかどうか、これは十分反省すべき余地があるのじゃないかというふうなことも考えておりますので、吉田委員の御意見も十分しんしゃくいたしましてなお研究いたしたいと考えております。
  36. 成瀬幡治

    委員長成瀬幡治君) 私からちょっと御質問申し上げたいと思いますが、最高裁並びに法務省のほうは本案に対して賛成か、反対の御意見かという点が第一点。  それから第二点としてお伺いしたい点は、御承知のように人事院のべース・アップの勧告はもう二度やっていないわけです。ところが今度お上げになる理由は、物価等他とのアンバランスがあるから一つ上げなくちゃならぬというような、そういうものに見合うためにこの法律案を出したという趣旨のように、提案の際にも御説明があったのでありますが、そういうものに対してどういうふうにお考えになるか、こういうふうに手数料がずっと上って参りますと、国庫収入がふえるかどうかということは、私にはわかりませんけれども、一体全体その十一万五千円を最低保証しておって、国庫補助をせなくちゃならなくなった。それだのにこれをやればそういうことがなくなるのか、あるいは今後もやはり持ち出しをしなくちゃならないのか、そこらあたりの国全体のと申しますか、そういう収入関係の点、もし御調査になっていたら、数字を一つ明らかにしていただきたいと思います。  それから次に第三点としてお伺いしたい点は、手数料が安いために、生活が非常に困難であるからなり手がないというのが一つ理由なんですが、一体それでは各地方裁判所に対しては、これくらいの員数が執達吏として必要だというような申し出とか何とかいうものがあると思うのです。ですからそれがもし、たとえば東京地方裁判所においては何人くらいというようなことで、裁判所長はこんなふうにしてやろうというのに対して、応募者が全然なくて困っておるというような具体的な資料等をもし集めて御研究になっておれば、あわせて一つ提案者並びに関係当局のどちらからでもいいですが、一つお聞かせ願いたいと思います。以上でございます。
  37. 関根小郷

    説明員関根小郷君) それでは便宜私からお答えいたします。最高裁判所側の意見を申し上げたいと思います。この法案につきましては、簡単に申し上げますと賛成でございます。  それから第二点の執行吏手数料を上げることによって、国庫の収入との関係、これは手数料を上げますと、執行吏の収入がそれだけふえてくるわけでございますので、従って執行吏の収入が少いときに国庫から補助されますいわゆる補助金、これを受ける執行吏が少くなるということになるわけでございます。しかしながらその数字はじゃどのくらい減るかということは、手数料増額からどの程度執行吏の補助金を受ける者が少くなるかということはちょっと予想をしかねますので、一年ばかりやってみないとわかりません。しかしおそらく国庫から出ます補助金の額は少くなると思います。現在執行吏の収入が少いために国庫から補助金をもらっておりまするのが、昨年度約四十名ばかりおります。金額にいたしまして約二百万円近くの金が出ておりますから、これがおそらくかなり減ってくるのではないかと思います。  それから第三点は、執行吏の数が少い、どのくらいふやすべきかという目安があるかというようなお尋ねでございましたが、これはしかし実は戦前は、全国執行吏の数が平均六百人を越えておりまして、ところが戦後執行事件というものが非常に少くなりまして、従って執行吏もとうてい収入の道として得られるものがないということから、やめる人が多くなりました。現在、戦後非常に少くなりました。一時よりも少しふえて参ったのでありますが、約戦前の半分しかおりません。これは最低限度どうしても各地方裁判所の本庁、それから支部でございますね、その支部には少くとも一人は必要なわけでありますので、戦前の数くらいまでにはやはりどうしてもほしいというわけなんです。それでも各裁判所でこれは任命することになっておりますので、この収入あるいは経済状況が変りまして、相当収入が上がるということになりますれば、各地方裁判所で補給源を、裁判所の書記官なりその他から採るわけでございます。でありますので、現在よりも約倍数くらいまではほしいわけなんです。   〔委員長退席、理事剱木亨弘君着席〕
  38. 位野木益雄

    政府委員(位野木益雄君) ただいま委員長の御質問の二点と三点は裁判所側の答弁がございましたから、私の方は第一点の方を中心にして申し上げたいと思います。結論を申しますと、この法案には反対はいたしません。積極的に賛成かと申しますと、その点はちょっと少し理由を申し上げておきますが、従前執行吏手数料の値上げにつきましては、大体物価指数に応じて値上げがされてきたという経過になっておるのであります。この前の改正の当時、すなわち昭和二十七年から現在までの物価変動を見ますと、全都市の消費者物価指数、これが大体約一・一七六倍ということになっております。従いまして、従前の値上げのやり方を持ち出そうといたしますれば、この程度の値上げはよろしいが、それ以上は工合が悪いというふうことになるかとも思うのであります。しかしながら、これをもう少し過去にさかのぼりまして、それ以前の値上げの経過、物価との均衡を考えますると、これはやはりもう少し上げてもいいというふうなことになるのであります。現行の動産引渡し等の強制執行手数料の算定の基準となっております金額を定めた執達吏手数料規則一部改正というのができたのは明治四十四年でありますが、あるいは訴訟費用等臨時措置法ができましたのが昭和十九年のことでありますが、その当時と現在とを比較いたしますと、執行吏手数料等増加比率は、物価の上昇にははるかに及んでいないのであります。そういうふうなこと、あるいはこの執行吏手数料の額が全般的に見てやや低額だというふうなことも、いなめないというふうなことも考えられますので、そういうふうな意味から、この法案増額程度ならばあえて特にこれは工合が悪いというものもないと考えるのであります。なぜ政府提案にそれならばしなかったかということでございますが、今までは相当程度物価変動がひどい場合でないと、この手数料の額は改正しなかったのであります。その手数料と申しますのは、その手数料の性質は決して執行吏給与というものが性質の本体ではないのでありまして、申すまでもなくこれは国家の執行行為を求める国民に対する手数料という、そういう性質が本体的なものであります。従いましてこれを物価の多少の変動に応じて始終変更するということは適当でないと考えるのでありますが。今までの程度では、政府としてはこれを積極的に提案するというまでの必要はない。特に経済情勢といたしましても、物価変動も今のところは横ばい、むしろ下る傾向にあるということもありますので、あえて提案しなかったという次第でございます。
  39. 椎名隆

    衆議院議員椎名隆君) 執行吏手数料の値上げにつきまして、最高裁判所の方は、いわゆる法案に賛成する、法務省の方は積極的に賛成はしないが、また反対でもない、しかしながら物価指数の点からゆくならば、もう少し値上げしてもいいというような法務省の答弁は、一体どれがいいのか、私たちにはわけがわからん。はっきりしたところをむしろ言ってもらいたいと思うのですが、御承知通り裁判所は直接監督の任に当るから、執行吏の内容はよくわかっている。まず現在の程度において、執行吏が非常にどこの裁判所でも不足しておる。例をあげて言うならば、私は千葉県ですが、八日市場の裁判所でようやく執達吏さんを頼んだ。何とかして執達吏になってもらいたい。なぜかというと、せっかく私たちが判決に勝っても、最後の執行執達吏にやってもらわなければならぬ。それに執達吏さんがいなかったら、判決は握っておるが、その権利の内容を実現することができない。そうなってくると、せっかく判決は勝ちましたが空証文を握っているのと同じだ、ところが執達吏になり手がないというのはなぜかというと、結局収入が少い、十一万五千円というのは、年収が十一万五千円に満たなかった場合は、その差額を十一万五千円に満つるまで政府が出すまでにすぎないのです。かるがゆえに一家でもって四人の子供を持っていたとしたら、執達吏は結局食ってゆけないのです。それがゆえに私たちの債権者に対する迷惑が非常に大きかった。そこで何とかある程度まで物価指数に比例するものに一つと、ある程度まで執達史生活保証することが一つ、こういうような実際上の面からいって、この程度の値上げをするのは適当だ、私たちはむしろこれは議員の方から立法することなく、裁判所ないしは法務省の方から現在の執行吏手数料規則というものは実情に合致してないから、何とか上げてもらいたいと、むしろあなた方の方から出してもらえるのではないかと考えておったのですが、結局いつまでも出ないし、実情に合致しないから、私どもの方で立案したわけです。そういう実情でございますから、この程度上げてもらわないと、現在の実情においては、約六百人おりました執達史が現在におきましては三百名、かるがゆえに地方裁判所に、せっかく事件の判決に勝って手数料を送っても、執達吏がいないからといって、執行ができないような場合があるのです。そういうような実情から、この程度の値上げをしていただきたいとして提案した理由でございます。
  40. 小木貞一

    衆議院専門員(小木貞一君) 今の点私から少し補足さしていただきますが、昭和二十七年の公務員の一般の給与ベース改正のときには、これは、実はこういう今度上げますような手数料改正をやらなかったのでございます。しかるに、一般の公務員の場合におきましては、昭和二十七年、二十八年等の改正がございまして、結局昭和二十六年の一般公務員改正のときに比べますと、大体昭和二十八年の改正は約五〇%ぐらい一般の公務員給与は上っておるわけでございます。従いまして、一つには、これは先ほど法務省から、これは純然たる手数料が本体だというようなことを申しますが、しかし、裁判所の言うように、これは何と言ったって執行吏の出来高払いは、要するに生活給与の一変形であるという性格もこれは持っておるものだと思います。従いまして、まず一般の公務員ベースにもこれは合せるようにしなけりゃならぬ、実はおくれておったのだというのが一つの点でございます。それからもう一つは、さればといってこれを無制限に上げるわけには参りません。これはやっぱり、一面においては法務省の言うように、手数料の性格を持っておりますから、これを利用する国民負担ということも、これはもちろん考えていかなければなりません。従いまして、この点につきましては、提案理由にも申し上げましたように、これはやはり東京の家計費指数というものを昭和二十六年の平均から比べて、約三八%上っておるという一つのデータがあるわけでございます。これらの二つを勘案いたしまして、こういうこの範囲の値上げをすることは、これはやむを得ないし、また必要であるのじゃないかと、こういう考え方で今回の提案をいたした次第でございます。補足いたしておきます。
  41. 一松定吉

    一松定吉君 ちょっと執行吏監督のことで伺いたいのですが、どなたか政府の方から……。つまり、執行吏債権者の委任によって債務者の財産を差し押えて、それで競売に付するというような結果、非常にこの債権者と意思を通じて無理な差し押えをするとか、無理に競売をするとかいうことが往々にあって、それがためにずいぶん債務者は泣かされるような場合がある。これは深刻なものであるということを話しておりましたが、そういうようなことについて、いわゆる査察の規程が高等裁判所で設けられておるということが、この添付書類の中にありますが、これを見ますと、ただ一年に二回だけ執行吏役場に臨んで、そうしてその帳簿だとか、記録だとかいうようなものを検査する、そうしてその職務執行査察するということがある。こういうようなことをして、そうしてその結果どうするかというと、その取扱いについて、もしくは行状について、これはどうだかと思うようなときには注意を与えることができるということに、注意というだけのことが第五条に規定されておる。執行吏監督規程という中の注意だけ与えて、そうしてやるが、その第七条に、監督に必要なる事項を各高等裁判所では定めるということになっておる。これはよほど監督というものを厳重にして、そういう無理な執行をしてみたり、債務者が今日は都合が悪いからと言って、明日は支払いますからちょっと待って下さい、今病人がどうだとか、子供がどうだとかいうようなときもで、少しも血も涙もなくて、そういう執行を強行するようなことが往々にしてある。そういうようなことは、おそらく人間の徳義とか、人情とか、困窮だとかいうようなものに同情してやるということが、やはり執行吏にもなけりゃならんぬ。そういうような査察をし、もしくは監督をしたその結果を、さっきのお話しでは執達吏会同のときに集って、お互いに注意をし合うのだというようなことでは私はおもしろくないと思う。そういうことについてはやはり懲戒処分をやるとか、罰俸をやるとか、あるいは職務執行を停止するとか、やめさせるとかいうようなことをしなければならんのであるが、そういうようなことは今まで行われていないのですか、もしくは行われておるんですか。あるいはこの監督規程の第七条の、各高等裁判所がその執行吏に対する監督に関して必要な事項を定めるというようなことがあって、その定めた必要な事項の中には、今言うようなほんとうに厳重に監督するというような規定が定まっているのですか、定まっているならばそういう具体的な例をあげてもらいたい。こういうようなことにはこういうことをする、そうして今われわれが言うような心配はない、あるいはそういうことをしたときにはこういうような制裁を加えるからして、かれらは非常に自分の行動に対して注意を払って、不法乱暴なことはしないのだというようなことにしておかんと、執達吏の問題については、執行についてずいぶん非難があるのですからして、そういうようなことについて一つ実際の話を聞かせていただきたいと思います。参考にしたいと思います。
  42. 関根小郷

    説明員関根小郷君) 今一松委員お話しの点は、実は今お話がございました執行吏監督規程の中でお読みになりました第三条の第一項には、毎年少くとも二回検査をしなければならないという規定がございますが、その第二項に、この時期を限らずに、査察官執行吏の役場、出張所、あるいは執行吏が実際に職務を行います現場に行って、職務執行を監察することができるというので、これは随時監察をやっております。それで私ども、第一項では毎年少くとも二回はやれということを言っております。それから先ほどお話がございました、もし不当なあるいは違法な執行執行吏がやった場合は、制裁はないかというお話しでございますが、この今申し上げました執行吏監督規程というのはこの懲戒のところまでは書いてございませんが、懲戒に関することは一般の国家公務員法に基きましていろいろな懲戒規定が発動するわけでございます。それでたとえて申しますと、あるいは戒告からさらに進みまして転勤を命ずる、休職を命ずる、あるいは退職を命ずるというような事例がございます。それでただいまではどんな場合にそういうことがあったかということでございますが、これは、これを調書を偽造してしまった。たとえば競売代金を受け取らないのに受け取ったと称して調書にそれを書いてしまったというような偽造の問題、これなどはさらに進みまして、検察官の発動がありまして、起訴された場合もございますが、そういった事例までいかないものにつきましては任意退職で退職した事例もございます。でございますので、この査察規程はこの国家公務員法に規定のないところだけを書いております。  それからもう一つお話がございました査察の結果を、会同でお互いに話し合うということは、これは一つを申し上げただけでありまして、査察の結果違法なことが発見されますれば、これは懲戒、あるいはさらに進みまして、この起訴処分、刑事処分まで発展するわけでございまして、もしさようなことがありますれば、特にそういった事例を先ほど申し上げました会同等におきまして、こういつた事例があるということを示しまして、特に注意を促すということをいたしております。
  43. 一松定吉

    一松定吉君 この執行吏事務処理規則というところを見ると、第二十二条ですね、「執行吏は、競売物又は売却物をみずから又は他人によって買い受けてはならない。」こういうような禁止規定がありますが、これが往々にして乱用されておる。何かよい物がある時分には非常にこれを安く競売しておいて、そうしてその買い受ける連中は執達吏が利益を得る、そういうようなことが往々にして行われるんですが、そういうような監督について、一つ近ごろそういうような実例を発見してこれを処分したとかいうような実例がここ四、五年の間にありましたか。そういうようなことはどうですか。これは執達吏の中には常にこれが多い。たとえば何百万円もするような物を、ごくわずかで競売してしまう。   〔理事剱木亨弘君退席、委員長着席〕 競売の申し入れをする人間は、執達吏が外部に競売の期日などを知らせるような方法をとって、自分と意思を通じた人間だけに競売して、わずかな金額競売する。そうするとその所有者は非常な高価な物がわずかの価格で競売されて、自分の債務はその原価も払うことができなくて、なおかつ競売されても債務が残るというようなことで、債務者が泣いてこれを訴えるというような実例が往々にしてある。そういうようなときには十分に調べて、それがある意味からいえば、自分の職務を冒涜して、自分と腹を合わした人間をして競売をさしてそうしてもうけるというようなことですから、これは執行吏の一番悪徳な行動なんです。そういうふうなことに対して処分した実例が最近ありますか。
  44. 関根小郷

    説明員関根小郷君) 今お話しの点は執行吏が非常に安い競売物を買い取る機会に、みずから買い取るとかあるいは家族の名儀で買い取る、あるいは友人の名儀で買い取るというようなことがあったかというお尋ねでございますが、実は最近の数カ年の間においては一件も実はございません。実際にあったかどうかわかりませんけれども、われわれの方にそういったわかった事件はないのです。それでもしそういった事件がおありだったら、あるいは投書などに現われてくるのじゃないかと思うのですが、投書もかなり一年に五回とか六回ございますが、その中にも出て参りません。私はおそらく、実際にあったといたしましても、発見がなかなか困難じゃないかと思います。もしありましたら、それは懲戒等まで発展すべき事柄だと思いますが、実際にはこの数カ年におきましてはございません。
  45. 一松定吉

    一松定吉君 私の希望するのは、そういうようなことがあっては大へんですから、そういうときには一つこういうような厳格な処置をとるのだというぐらいのことを執達吏によく認識さしておけば、自然にそういうことは表だって大びらを切ってやれぬようになるから、そこをお願いをしたい。ずいぶんひどいことがあります。それは御注意を願います。
  46. 成瀬幡治

    委員長成瀬幡治君) 速記をとめて下さい。    午後六時四十三分速記中止    ――――・――――    午後七時三分速記開始
  47. 成瀬幡治

    委員長成瀬幡治君) 速記を始めて。  他に御発言もないようでありますが、両案に対する質疑は尽きたものと認めて御異議ございませんか。   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  48. 成瀬幡治

    委員長成瀬幡治君) 御異議ないと認めます。  ちょっと速記をとめて。   〔速記中止
  49. 成瀬幡治

    委員長成瀬幡治君) 速記を起して下さい。  次に検察及び裁判の運営等に関する調査議題に供します。  速記をとめて下さい。    午後七時五分速記中止    ――――・――――    午後七時五十六分速記開始
  50. 成瀬幡治

    委員長成瀬幡治君) 速記を始めて下さい。  本件につきまして質疑のおありの方は御質疑を願います。
  51. 吉田法晴

    吉田法晴君 籾井炭鉱の経営の実態、あるいは詐害行為の取消請求訴訟、あるいはそれに関連をいたします仮処分の申請等がなされておって、それを裁判所の構内において暴力と脅迫によってそれを取り下げた、その取り下げた理由はとにかくでありますが、裁判に法定の手続をとっておられますものを、暴力と脅迫によって取り下げさせたという事実は間違いないと思います。こういう点について当局としていかように考えられるか。それから告訴の点についてどのように考えられるか、あるいは処理をせられるか承わりたい。
  52. 桃沢全司

    説明員桃沢全司君) 裁判所の訴訟を暴力で取り下げさせた、もしそれが事実でありましたならば、これはやはり刑法犯を構成するのでありますから、当然これは取り締らなければならない問題だと思います。ただ、この証拠関係は相当むずかしいと思いますので、ただ告訴しっぱなしでは取調官も非常に難渋するのではなかろうか。たとえば告訴人が遠くに離れて、その遠くに離れておる告訴人を遠くの地で調べてもらうということになると、非常に真相がなかなか検出されないで、事件の成立というものはむずかしくなってくるのではないか。これも個人的に考えるのでございますが、そういう事件がございましたら、一つ積極的に現地の警察あるいは検察庁においで願うような手配にしていただいて、そして取調べを進行さしてもらう、しかもそれが暴力で取り下げた、あるいは脅迫によって取り下げたんだという証拠関係を十分提出していただきたい、かように考える次第でございます。なお告訴の問題でございますが、私これも個人的なことを申して恐縮でございますが、非常に検察庁が忙しいために、告訴事件というものは処理が非常にずむかしくなってきておる。これは全般的にさような傾向にあるのでございますが、何とかこの告訴事件というものは順調に取り上げられて、迅速に処理されるということを私ども念願しておるのでございますが、非常にむずかしいという実情にございます。かような関係からこの告訴事件の迅速処理は必要なことでございますが、この督促も一つ告訴人側の方でも十分お願いしたい。かつ私どもの方でもできるだけの手当はいたしますが、そして協力といってはちょっと語弊があるかもしれませぬが、捜査機関に協力するというぐらいの気持ちで一つやっていただきたい、かように希望を申し上げる次第であります。
  53. 吉田法晴

    吉田法晴君 告訴せられました野村宗一郎君本人がこの席へ出られてお話しになったぐらいでございますから、告訴の意思は十分でございます。これはもう証明されておると思う。私どもがちょうだいしました文書によると、福岡警察から中野の野方警察署宛補充調査の求めがあって、その調書は取られた、こう書いてございます。希望の点は私どもも了承をいたしますが、詐害行為の実体はとにかくでございますが、民主主義のもとにおいて、法治国のもとにおいて、法に従って詐害行為の取消しを求める、あるいはそれに基いて仮処分をやった。ところが裁判所において、福岡地方裁判所でありますが、裁判所のこれは庭あるいは裁判所の構内しかも裁判所の二階まで、屋根の上まで追い上げて百人近い人間が六時から十二時に至るまで数時間にわたってこれを脅迫、あるいはどの程度の暴行がなされたか、その告訴状にも書いてございますけれども、暴行してそしてこの仮処分の取消しを求めるその理由、納得した理由といいますか、あるいは仮処分を取り消した理由は別問題にいたしまして、そういうことが今日許されるかどうか。これは私は何人も明々白々だと思うのであります。人権擁護局長も来ておられます。あるいは説明員その他も来ておられまするが、法務省とあるいは日本の今の国民として、当然こうした暴行が裁判所において白昼行われる、あるいは日本の一部において行われるということは、許しがたいことだと思うのであります。そこでそういう点から十分の調査も願いたいと思いますが、告訴の精神に従っては十分一つこれをお進め願いたいと思います。問題はあとの取り下げました仮処分の本訴が進んでおるわけであります。仮処分を取り下げしたとするならば、その仮処分が取り下げられたその原因の当不当、これも告訴の問題としては関連をいたしますが、仮処分そのものとしてはこれは原因がなくなりましたから取り下げられましょうけれども、しかしそれだけに本訴なら本訴の点については十分その権益が守られる、こういうことに私はなるべきだと思うのであります。裁判所の裁判についてまで私どもがとやかく申し上げるわけではございませんけれども、法治国における法律執行あるいは権利の擁護というものを、あるいは法務省なり、裁判所なり、あるいは人権擁護局なり、われわれがこれを擁護するのは当然だと思うのであります。その点について出席しておられます関係者あるいは政府においても十分これは取り上げらるべきだと思うのでありますが、その点について所見を重ねて承わりたいと思います。
  54. 桃沢全司

    説明員桃沢全司君) もしそれらの事実が明白になりましたときには、おそらく捜査機関におきましても厳重な手段をするだろうと思いますが、これらについて私どもの方も現地に対して適切迅速になるべく捜査を遂行するように注意を促したいと考えております。
  55. 吉田法晴

    吉田法晴君 この籾井炭鉱事件の、あるいは裁判所における暴力脅迫事件等にも、警察もまあ出ております。ところが具体的に申しますと、この野上鉱業の重役の中に警察出身の重役があるということで、警察に対する疑惑がこれは感ぜられるのであります。その点も御注意願いたいと思います。小倉炭鉱の暴力事件あるいは暴力団の横行等について先ほど詳細に述べられましたから、私から繰り返しませんが、こうして炭鉱地帯において暴力が横行する、しかもその暴力行為をやります者が、あるいは暴力団が集団的に特定の経営者あるいは炭鉱業者に私的に使用せられ、あるいは小倉の場合には旅館に泊め優遇をし、そうしてたとえばそれが殺人傷害をやった場合には、だれか身がわりになって、まあ連中の言葉で言いますならば、かまると申しますが、刑務所なら刑務所に入ることもちゃんと準備をして、そうして暴力をさせておる。こういう事態に対して、そうしてあたかも小倉炭鉱の中において法がない、あるいは人権というものが全くないような事態になっておる。人権擁護局長は聞かれたかどうか知りませんけれども、解雇数日にして実力でもってふとんをはぎ、あるいは人を放り出して傷害を加える、こういうことがこれは行われていいものか、これはおそらく何人も明らかなところであろうと思うのでありますが、しかもこれが炭鉱地帯に広範に行われて参っておる、抜刀事件ごとき参考人から申し述べがございませんでしたけれども、あるいは大和炭鉱というところにおいても、これは会社員が抜刀をして脅迫をし、組合の幹部を追い散らかしておる、こういう事態が起っております。しかるにこれに対して先ほどもお話がございましたけれども、警察は十分の活動をしない、あるいは検察庁もこれを取り上げない、こういう状態が北九州に現に現われておる。これに対して法務省あるいは人権擁護局はどのように考えておられますか、あるいはどのようになさろうとするか、その点を一つ承わりたいと思います。
  56. 桃沢全司

    説明員桃沢全司君) 現在の炭鉱の不況から相当この労働争議というものが深刻化して参って、それに付随して種々の事犯が起きつつあるということは、私どもとしても非常に遺憾に考えておるところでございます。小倉炭鉱関係につきましても、労使の間が相当感情的に対立しているのではなかろうかとうかがわれる筋もございまして、非常に心を痛めているのでございますが、先ほど来のお話しの種々の事件、この多くは私どもも報告を聞いておるのでございます。それらにつきましてはいずれも現在捜査中でございまして、決して一方的に一方だけを取り上げるというようなことなく、十分暴力事犯に対しては捜査を遂行しつつあると、かように私ども考えております。  なお、お話し趣旨はこれまた現地に伝えまして適切の処理を促したいと、かように考えております。
  57. 戸田正直

    政府委員(戸田正直君) 炭鉱に関係しまして種々の暴力事犯が起きておるというようなお話しでございまして、もしさようだといたしますと、これははなはだ遺憾に存ずる次第であります。私ただいま参りましたので、先ほど来からの事件の模様を実は承知いたしておりませんので、ただいまの籾井炭鉱事件といいますか、これにつきましても現地からの報告をまだ受けておりませんので、果して福岡の法務局で調査いたしておりますかどうかもつまびらかにいたしておりませんが、さっそく現地の方に問い合わせまして、調査をいたしたいと思います。
  58. 吉田法晴

    吉田法晴君 桃沢説明員の炭鉱争議の深刻化に伴って暴力事件が頻発する云々というお話がございましたが、私はここに法務委員会に取り上げました問題は、いわゆる争議行為に伴います暴力事犯、これはあなたたちが言われる事犯でもございません。争議が行われる場合、もしそれに対して労働組合員で暴力があった云々というならば、警察でお調べになるでしょう。ところが、起っております暴力事犯は、そうじゃない。自分で暴力団を雇って、あるいは日本刀を携行し、あるいは警察官のピストルを取り、これはまあ例外でございますけれども、入れ墨した者が特定の給与を受けて、組合員でない者が他からはいり込んで、そうして従業員の生活を脅かす、あるいはその人権を脅かす、こういう事態です。そこでこれは法治国のもとにおいては、もしあるいは経営者の、あるいは組合にしてもそうでございますが、権利が脅かされるというならば、あるいは生活が脅かされるというならば、これは組合員の諸君がやっておりますように、あるいは警察の出動を求め、あるいは検察庁の出動を求め、もしそれでいかなければ国会に来る、それ以外に私はないと思うのです。ところが、もし警察が取り上げない、あるいは検察庁が取り上げない、あるいは国会が取り上げないならば、先ほど野村さんが言われましたけれども、個々の個人が自分の実力でもってその権利を守る以外になくなる。しかしそうなるならば、これは何と申しますか、民主主義ではなくなってしまいます、あるいは法治主義ではなくなるでありましょう。そういう法治主義なり民主主義がなくなるような暴力団が横行しておる。これに対して当局はどういう態度か、あるいはどういう措置をしようとしておるか、こういうことをお尋ねしたのでありますから、それについては、これは十分の調査をして、そして処罰をすべきものは処罰する、あるいは検挙すべきものは検挙する、あるいはそういう暴力団の横行はこれを根絶するために努力をしたい、こういうのが私は答弁のしかるべき筋だと思うのです。正直に申し上げますが、戦後あるいは占領中に暴力団というものは実際になくなりました。姿を一応消しました。しかし種は残っておる。その種がこれが今や炭鉱の不況とそれから特殊の状態の中で大きく今芽を吹き出そうとしている。二、三年前聞いたことでありますが、田川地方なら田川地方の郊外にちょっと出ますというと、もう道を歩くことができん、こういう状態を聞いて参りましたが、その際にはこれは警察等の活動によって若干まあよくなったようであります。最近に至りまして、例示いたしましたような非常にたくさんな事例が起って来ている。しかもそれが組織的に行われておる。特定の炭鉱業者でございますが、それを相当意識的に使って、あるいは雇ってそして人権のじゅうりんと、あるいは組合活動の自由が押えられようとしておるところに問題があるのでありますから、そういう意味一つ取り上げをお願いしたいと思うのであります。  それからなお人権擁護局長にもこの点は、まだ報告も聞いておらんということでありますが、私は国会も調査をすべき事態だと思うのでありますけれども、人権擁護局においても十分な一つ調査をお願いしたいと思うのであります。  それから警察、検察庁については、不公平な取扱いのないように、こういうことでございますけれども、端的に小倉の例が出ましたから申し上げますけれども、小倉その他地方におきましては、あるいはいなかにおきましては、必ずしもあなたたちが考えられるような公平な取扱いが行われておりません。それはあるいは検察庁も舞台が狭いから、こういう前時代的な経営者には、これを陰に陽に使おうとする努力がなされております。そこでそういう人権のじゅうりんが看過されるような事態にこれはなりがちであります。なっておるという事例をここにこまかく持ち合せはございませんけれども、なりがちであるということを申し上げておきます。なりがちでございますから、その点については十分な調査と、そうして個々の事例について告発せられました事件等については、国民の期待を、残っているわずかな期待を失わないように、一つ当然の処置を講ずるように御鞭撻と御指導とを願いたいと思う。答弁は簡単でよろしゅうございますが、これについて所見を一つ承わりたいと思います。
  59. 山口喜雄

    政府委員(山口喜雄君) 先ほどから問題になっておりました小倉炭鉱の問題につきましては、お話しのように、いろいろな労使間の紛争につきまして実力といいますか暴力をもって自分の主張を通すというようなことは、避けてもらいたいと思います。それが組合側から行われましたものでありましょうとも、あるいは会社側から行われましたものでありましょうとも、双方ともやはり暴力を使うということは労使の紛争がありましても極力一つ避けていっていただきたい、私どもはかように考えておる次第であります。先ほどからるるお話しの最近におきます会社側がいわゆる暴力団とおっしゃいましたそういう人々を雇っていろいろの行動に出ておるというような問題につきましては、警察といたしましても事態を紛糾させてもいけないと思いまして、再三再四にわたりまして会社側に対しましても厳重に実は警告をいたしておるのであります。今後そういう事態改善せられない、また何か暴力事犯が起るというような場合におきましては、警察といたしましては、先ほども申し上げたような方針に従いまして、断固たる措置をとるつもりでございます。ただ、お願いいたしておきたいと思いますのは、実は小倉炭鉱の問題につきましては、その前に組合側の方におきましても、会社側の幹部その他に対する若干の暴力事犯と申しますか、そういうようなものが起っておったのでございます。双方とも暴力は労使紛争に際しましても使わない、話し合いで解決をするということで進んでいただきたい。警察は何らそういう場合でありますればもう労使間の問題に頭をつっ込むというような考えは毛頭ございません。ただ、紛争がある。暴力が行使せられると、警察といたしましても出て参るということになるわけであります。いろいろと問題が複雑になりますので、先ほどから申しましたような気持で進んでおります。この点は御了承願いたい、かように思います。
  60. 戸田正直

    政府委員(戸田正直君) 先ほど申し上げましたように、いろいろの争議に関係しまして暴力事犯が発生しておるようでありまして、人権擁護の立場から見まして、有形無形の暴力行為というものは好ましくないと考えております。そこで先ほど申し上げましたように、私の方といたしましてもできる範囲内におきまして十分調査をいたしたいとかように考えておる次第であります。ただ、各種のこうした事犯が非常に多いようなお話しでございますが、私の方といたしましてはただいままでの機構とかあるいは規模が非常に小さいために、どうしてもやりまする事件に限界がございまして、主として親告によりませんと、その他職権で多くの事件を求めるということが実際上困難でありまして、特殊な事件につきましては情報によって職権で調査もいたしております。しかしできる限り十分な調査を今後いたしたいとかように考えておりますが、本事案につきましては、早速原局に問い合せまして調査をいたさせたいとかように考えております。
  61. 吉田法晴

    吉田法晴君 多少答弁には不満がございますけれども、それは争議に関連した云々ということでございますが、これはとにかく炭鉱地帯の暴力団、暴力というものはそういう近代的なものじゃない、それは前時代的なと申しますか、封建的なと申しますか、前時代的なものです。そこで私は重視をするわけなんです。事実をあげてあれをしなければ、十分なあれができませんので、不満が多少残っておりますが、大体調査なりあるいは告訴したものについて取り調べようというのですから、一応きょうはこの程度にしておきます。  ただ委員長にお願いをいたしておきますが、休会後議員の調査等もございましょうし、この九州地方におきます炭鉱地帯の暴力の横行について、あるいは暴力あるいは人権のじゅうりんにつきましては委員会としても調査を願いたい。あるいは専門員をして調査室を通じてもっと一つ調査をお願いをいたしたい。委員会の正式調査がもし間に合いませんなら、専門調査室長等もおあてになって、十分調査を願いたい。それだけの価値が、国会が正式に取り上げて調査するに十分値いする問題であります。委員長にそういう調査のお取り計らいをここに依頼をいたしておきます。  きょうは時間も大へんおそいので、この程度質問を終りたいと思います。
  62. 成瀬幡治

    委員長成瀬幡治君) 御趣旨了承いたしました。  他に御発言がなければ、本日はこれをもって散会いたします。    午後八時二十三分散会    ――――・――――