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1955-07-25 第22回国会 参議院 法務委員会 第20号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和三十年七月二十五日(月曜日)    午後一時四十五分開会     —————————————    委員の異動 本日委員大達茂雄君、大屋晋三君及び 松野鶴平君辞任につき、その補欠とし て小幡治和君、伊能繁次郎君及び佐藤 清一郎君を議長において指名した。     —————————————  出席者は左の通り。    委員長     成瀬 幡治君    理事            剱木 亨弘君            宮城タマヨ君            市川 房枝君    委員            井上 清一君            伊能繁次郎君            岩澤 忠恭君            小幡 治和君            佐藤清一郎君            中山 福藏君            廣瀬 久忠君            河合 義一君            赤松 常子君            一松 定吉君            羽仁 五郎君   政府委員    防衛政務次官  田中 久雄君    防衛庁次長   増原 恵吉君    防衛庁防衛局長 林  一夫君    防衛庁装備局長 久保 亀夫君   事務局側    常任委員会専門    員       西村 高兄君    常任委員会専門    員       掘  眞道君     —————————————   本日の会議に付した案件 ○幼児誘拐等処罰法案中山福藏君発  議) ○日米相互防衛援助協定等に伴う秘密  保護法の一部を改正する法律案(内  閣提出、衆議院選付)     —————————————
  2. 成瀬幡治

    委員長成瀬幡治君) これより委員会を開きます。  まず幼児誘拐かい処罰法案議題に供します。本案について提案者から提案理由説明を願います。
  3. 中山福藏

    中山福藏君 提案者といたしまして、幼児誘拐等処罰法案提案理由を御説明申し上げます。  いわゆる幼児誘拐かい事件社会にいかに大きな衝動を与えるかは申し上げるまでもありません。莫大な身代金愛児の生命を奪われたかのアメリカリンドバーグ大佐愛児誘拐かい事件といい、カンサスシティの富豪の愛児誘拐かい事件といい、そしてまた、最近の日本におけるこの種の事件といい、これほど子を持つ親たちを恐怖のどん底に落し、また社会の人々もこれほど関心を持った事件はないと申せましょう。他面、何の判断もつかないそして何の抵抗もなしえない無心の幼い子供を誘拐かい)し、さらにその親たちの傷心につけ入り、人間の弱点を悪用して身代金要求するがごとき行為は、最も悪質なかつ残酷な犯罪と申せましょう。かくのごとき犯罪は極刑に処せられるべきものであると考えるのであります。しかるに、わが国の刑法は、その第三十三章に略取及び誘拐かい)の罪を規定しておりますが、第二百二十四条によりますすば、未成年者略取または誘拐かい)した者は三月以上、五年以下の懲役に処せられることになっており、また、第二百二十五条によりますれば、営利、猥褻またが結婚の目的をもって人を略取またば誘拐かい)した者は一年以上十年以下の懲役に処せられることになっているのであります。これは財産罪その他の犯罪刑罰と比較してみまして非常にその刑罰が軽いといわざるを得ないのであります。このことは、諸外国収及び誘拐の罪についての立法例と比較してみましても同様のことがいえるのであります。  以上の点を考えまするとともに、幼児誘拐事件の多くが身代金要求を伴なっております点からみまして、身代金要求した場合の適用罰条を明確にし、七歳に満たない幼児に対して略取または誘拐が行われた場合には、特に刑を引き上げることといたしまして、この種の犯罪に対しては、厳罰をもって臨むことを明らかにし、もってこの種犯罪が未然に防止されるようにいたした次第であります。すなわちさきに例をあげました未成年者略取または誘拐した者は三月以上五年以下の懲役に処せられるのでありますが、七歳に満たない幼児略取または誘拐した場合には、六月以上十年以下の懲役に処せられるよう刑を引き上げております。その他刑法第三十三章の略取及び誘拐の一連の犯罪につきましてそれが七歳に満たない幼児に対して行われた場合には、それぞれ刑を引き上げ、重く処罰することといたしました。  以上がこの法律案提案理由の大要であります。なにとぞよろしく御審議の上御可決あらんことをお願いいたします。  なお、ちょっと最後に一言言わしていただきますが、実はこの題名が、幼児誘拐等処罰法となっておりましたが、これは幼児誘拐かい)等処罰特例法の誤まりでありまして、議案課正誤を申し上げましたところ提案者からは正誤ができないということでありますから、後ほどどなたか委員の方で修正案一つ出しを願いたいということをつけ加えておきます。
  4. 成瀬幡治

    委員長成瀬幡治君) 本案につきましての質疑は、後日の委員会に譲りたいと思いますが、御異議ございませんか。   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  5. 成瀬幡治

    委員長成瀬幡治君) 異議ないと認めます。
  6. 成瀬幡治

    委員長成瀬幡治君) 次に、日米相互防衛援助協定等に伴う秘密保護法の一部を改正する法律案議題に供します。本案について御質疑のおありの方は御発言を願います。
  7. 中山福藏

    中山福藏君 本秘密保護法改正案につきましてちょっと政府にお尋ねしたい点があるのですが、これに艦艇貸与ということになっておりますが、艦艇というのは一体どういう範囲のものを艦艇とするのか、その範囲一つ説明願いたいと思います。
  8. 林一夫

    政府委員林一夫君) 艦艇と申しますのは、別に範囲があるわけではないのであります。向う言葉で申しますとヴェセルという言葉を使っておる、もう一つのところでは船舶貸借協定船舶艦艇と大体相通じて使っておるのであります。艦艇貸与協定によって供与を受けておるものは大体においてDD型の駆逐艦とかDE型の駆逐艦とか掃海艇AMSというような比較的大きなもの、しいて申し上げますれば比較的大きなものの意味に使っておるようであります。この艦艇貸与協定という艦艇は、どの範囲艦艇に入るかというようなことは別に申し上げるあれはございません。
  9. 中山福藏

    中山福藏君 艦というのと艇というのは逢うのじゃないかと実は考えております。たとえば潜水艇あるいは水雷敷設艇というようなものが、艇という字がついておるように思うのですね、ヴェセルという言葉をお使いになったのですが、やはり秘密を保護する上におきましては、艦艇の定義というものを明確にしておかなければ、私はそういう場合に、艇と艦は違うのじゃないかというような問題が起った場合には、当局がまごつかれるのじゃないかということを考えておるのですが、これはやはりはっきりしておかれるのがいいのじゃないかと思うのですが。
  10. 林一夫

    政府委員林一夫君) 艦艇貸与協定によって供与させる艦艇は、大体向うで表にのせまして、これだけを供与するという表に表示しまして指定してくるわけであります。それによりますと、大体今申し上げましたようなDD型の駆逐艦とかDE型の駆逐艦あるいは潜水艦というようなことになりまして、比較的大きなもの、こういうことになっております。艦とか艇とかい区別はないようであります。
  11. 中山福藏

    中山福藏君 これは翻訳された言葉なんですか。一つお尋ねしておくんですが、あるいは向うの原語はその両方を含むのか、あるいはそれを一体として翻訳されたのか、それはどういうことになっているんですか、名前は同一なんですか、向うでは。
  12. 林一夫

    政府委員林一夫君) これは向うとの協定の場合は、先ほど申しましたように、向うでは別に区別して使用していないようでございまして、シップスとかヴェセルという言葉でやってきておる、でありますからこちらとしても別に艦とか艇とかいうものを現在のところ区別をいたしておりません。協定名前として船舶貸借協定あるいは今度の艦艇貸与協定、前の協定船舶という言葉使いますし、今度の場合は艦艇という言葉を使っておるわけです。
  13. 中山福藏

    中山福藏君 これはヴェセルという言葉が何に当るかということは、この前の船舶協定のときに私どもいろいろ研究してみたんですが、政府の御解釈はある部分において誤っておるのではないかということをこの前持っておった。しかし今日はそういうことはすでにもう論じ尽されておることですから、私は申し上げませんが、もう少し外国語を翻訳されるときに御研究なさらないと、あと日本語に翻訳された場合に、とんでもない法律上の疑義が生じてくるんじゃないかと考えまするがゆえに、政府の御注意を喚起して私はこの問題はこれで打ち切ります。それからもう一点だけお尋ねしておきます。大体昨年共産党の力というものが、自衛隊の中に入り込んだというような話を承わっておるんです。それが何十回といってスパイ行為を行なった者が発見されたということを承わっておりますが、大体スパイ行為を行うということは頭の程度によって違う。だから秘密保護法ということにつきましては、その秘密を探索し得る能力のいかんによって、またその結果が違ってくると思うんです。昨年入り込みましたその共産党スパイ行為と申しますか、共産党員は幾らくらいの数であったか、またどれくらいの能力程度人間であったか、それをこの場合一つ承わっておきたいと思います。
  14. 林一夫

    政府委員林一夫君) 自衛隊に対する共産党破壊工作、これは二十九年度件数にしまして約五百数十件、こういうふうになっております。これはもちろんその内容から申しますといろいろの程度がございまして、隊外から宣伝、煽動するというようなきわめて一般的なことや、あるいは隊内にそのような分子が入り込んで隊内でグループを作るというような工作とか、あるいは隊内に党員を入れ込むというような潜入工作とか、あるいは隊内で自衛隊に働きかけてその武器を入手しようというような武器工作というようないろいろな種類があるのでございまして、そういうようなもの、特にその中で多いのは、潜入工作と申しましょうか、入隊するときにカモフラージュして入ろうというような工作が相当多いのでおりますが、このような工作にはいろいろ程度種類があるのでありまするが、そういうようなものを含めまして大体五百数十件に上っておるというようなわけでございます。具体的にスパイ行為をした者がどのくらい、何人くらいあるかというような点はちょっとわかりかねますが、大ざっぱに申しましてこのような工作が、私の方でわかっておるというところでは、五百何件でございます。
  15. 中山福藏

    中山福藏君 これは文民優位ということになっておりますから、なかなか文民という力が艦艇の性格、素質について通暁されるということはむずかしいと思いますが、私はかつて大谷光瑞について佐藤鉄太郎という人がこういう批評をしたことがある、あの坊主はえらい坊主だし、大体専門家がロンドンに上陸をして、軍艦の看板を見ただけでその秘密がわかる、こう言うんです。ドイツのキール軍港で松岡という柳田国男氏の弟が海軍大佐をしておりましたが、その人の話を聞きますと、砲台の築造の方法というものは砲口を見てわかる。だから知識程度に応じてスパイ行為が非常に変ってくる。あなた方がスパイ行為を取り締る法律をこしらえただけで、万事終れりとせられたのでは大へんなことになる。専門家が、目のきいた人間が見るとわかる、軍艦秘密はどこにあるかということがわかる。そういうことの研究があったか、単に法律をこしらえただけで、この秘密を守ることができるかどうか、一つあなたの御見解を承わっておきたいと思います。
  16. 林一夫

    政府委員林一夫君) ただいまのお話はスパイ行為を探知するために、何か専門的な知識のある者がおるかというような御質問でございますか。
  17. 中山福藏

    中山福藏君 それは誤解しておられる。私の尋ねるのは五百何件スパイ行為が行われ、その基礎になる人間共産党員があなた方のところへ入りこんだという。だから五百何件あるうちに五百人というものが動いておることがわかる。これによって専門知識を何人このうち持っておったか。また全然専門知識を持たない者がやったのか。専門知識に応じてスパイ行為の深度というものがわかる。そういうことについてよほど御研究にならぬと、法律を作っても、なかなかスパイ行為を防止することはできないんじゃないか。そういうことについての何と申しますか、核心をついた、つまり法律がなければいかぬと思いますが、そういうことについての御見解をどういううに持っておられるかということをお尋ねしておるわけです。
  18. 林一夫

    政府委員林一夫君) 先ほど申しました五百何件あったとしますのは、外部から宣伝、煽動したり、あるいは入り込もうというようなもので、その中で秘密を探ろうというような工作は五百件くらいあります。そんなわけで比較的数は少い方でございます。一番困りますのは、中に入り込んで秘密を探ろうというような、これは秘密を探ろうということは非常にむずかしい。ましてやそういう相手方がどの程度知識を持ち、技倆を持ってやっておるかということに至っては、なかなか識別することがむずかしい。私どもできるだけ秘密保護法を生かして、そのようなことのないように十分注意しておるわけなんです。そういうような詳細な点についてはまだ十分整っていないわけであります。
  19. 中山福藏

    中山福藏君 これ以上質問しても押し問答になりますから、一応あとに譲って他の方に質問していただきます。
  20. 羽仁五郎

    羽仁五郎君 前回の私の質問の趣旨を繰り返すのは恐縮ですが、国民権利制限するということは、最小限度にとどめられるべきであって、それを軽々しく国民権利制限を拡大せられるということは許すべからざることであるというふうに考えるので、伺うのですが、前回の私の質疑に対するお答えでは、従来本法によりまして貸与を受けておるものを、内部だけであるなら内部規律でもってまかなえるけれども、外部民間工場等修理を依頼するという関係があるので、一般国民権利制限もやむを得ないというお答えでありますが、しかるに本決施行以来民間修理出したことはないというお答えでございました。そこで伺いたいのですが、今回改正目的とされます艦艇のどの部分秘密になっておるのですか、艦艇全部がそうですが、それともその一部分ですか。
  21. 林一夫

    政府委員林一夫君) 今回改正しましてこの適用を受けさせようという艦艇貸与協定によりまして供与されるもののうちで、特に秘密があると考えられるのは、掃海艇でございます。アメリカではAMSといっておりますが、掃海艇でございますが、その掃海具に関しまして一部秘密がある。掃海具、掃海する器具でございますが、その掃海器具とその説明書、これについて秘密があるということがほぼ確認されたということでございます。
  22. 羽仁五郎

    羽仁五郎君 ただいま問題になる部分というのはどの程度のものなんですか、取りはずしが第一できるものなのか、できないものなのか、それから第二には取りはずして自衛隊防衛庁内部工場において修理ができるものなんじゃないか。つまり私の質問する要点は、あなたは前に今後は民間工場修理を出す場合が多かろうというお答えでしたから、民間工場修理に出す部分は、秘密を含まない部分修理にお出しになったらどうだろう。秘密を含む部分は、従来の本法に規定した部分はごく小さい部分ですね、ごく小さい照準器とかレーダーとかいったようなもの、そういうようなものは内部修理される。それで取りはずしができるなら取りはずして内部修理する、民間修理に出さないということになれば、本改正案は出す必要がない、おやめになったらどうかというふうに考えるのですが、そういうことはできませんか。取りはずしができる、やはり民間に出すというならその点を詳しく御説明願いたい。
  23. 林一夫

    政府委員林一夫君) これらの秘密個所は大体において取りはずしができる部分でございます。まあしいて取りはずそうと思えば大体取りはずすことができてるものでございますが、ただこれだけ内部修理できないものでありますから、やはりあわせて専門家修理に委託するということが最も適当な方法であろう、やはり外部修理に出すことにいたしたい、そう考えております。しかもその場合にいわゆる証明書とかその値いろいろ参考のために出すという場合もございますから、どうしても修理をするというような場合に、第三者の方にその秘密個所を示すというようなことになるわけであります。そのような意味でこのような規定をしたわけであります。
  24. 羽仁五郎

    羽仁五郎君 私はもう少し専門的な御説明を期待するのですが、本年度の予算では防衛庁防御科学研究所に対して非常に多くの予算を計上しておられる。それはすでに国会の承認を得られたことじゃないかと思うのですが、もれだけ膨大な経費を使って防衛科学研究所をお打ちになっておられて、それで今問題になっております秘密部分の、しかもきわめて局限された部分研究なり修理を、内部でおできにならぬということはどうも納得できない。それでこれは委員長にお願いしますが、その点についは専門的な見地からここで証言されることが必要だと思います。つまりこれは内部でできない部分民間に出すということは、専門的な責任を持ったお答えをいただきたいと思うのですが、委員長政府と御相談下すってそういうお答をいたださい。
  25. 林一夫

    政府委員林一夫君) 羽仁委員のおっしゃるような専門的知識はないのでございますが、技術研究所は大体において研究所でございます。設計とかあるいは修理研究設計、こういうことをやっておるわけであります。そこでもって生産するとか、あるいは修理をすとかいうような技術は今持っておらないわけであります。あらゆる面にわたって研究をしておる研究期なのであります。そのようなわけでどうしても実際にこれを製造するとか、修理するというようなことになりますと、専門業者に出すということをしなくてはならないというような現況でございます。その程度一つ御了解を願いたいと思います。
  26. 田中久雄

    政府委員田中久雄君) 羽仁委員のただいまの御要求ごもっともでございますが、たくさんの予算をいただいております今の技術研究所は、先ほど防衛局長が申し上げました通り、非常に日本のおくれております技術をせめて水準まで持ってゆきたいということで今非常な努力中でございます。昔のように防衛庁自身工場をもつというこは、今までの方針としてはとっておりません。すべての修理を全部原則として外へ出ております。今まで、外に出さなかったを申しますのは、あまり修理をしなければならないようなものが、あまりなかったのじゃないか、秘密に関してなかったのじゃないかと存じております。なお先ほど秘密を要する一つとして掃海具のごときものが例にあげられましたが、昨年末供与を受けました軍艦と申しますか、駆逐艦のあさかぜという千六百トンの船がございますが、それは母艦になるわけでございますが、その中に入りますと、いろいろな個所が実は朱で赤くしるしがしてあります。これは私もしろうとでございますので、これは何かと聞きますと防衛秘密でございますと、こういうことでそのところへは無理にタッチして探そうとかなんとかすることは、秘密供与になり得ようかと思います。そういうことはいろいろな艦艇の中にみんなしるしをされておりまして、具体的にそれをはずして修理をするという場合もあり得ようかと思うのであります。実はそういう実情になっておるわけでありまして、そのほかにいろいろな部分艦艇の構造にもございましょうし、主として電波関係に相当あるということを御了承願いたいと思います。
  27. 羽仁五郎

    羽仁五郎君 これはやはり本法あるいは改正法案というものが、一般民間工場会社に及ぶということは、日本工業方面にも悪い影響があるのじゃないかと、そういう点を十分心配すべきじゃないかと思う。そのためにはやはり民間工場会社においてはできるだけ自由に製作修理研究などが行われることが望ましいことは申すまでもないのであります。そういう意味本法がなるべく民間工場会社適用せられないことが、本法立法のときの御答弁にあったかと思うのであります。今御説明のように修理を要するといっても、そう始終こわれるようなつまらない機械ではない、容易にこわれるものじゃないし、修理の必要が生ずるというとも、現に本件施行以来一年前後の破損もなく修理の必要もなかった。今回新たに貸与されるものにつきましても、やはりその秘密を要する部分はそうしばしば修理を要するようなそうがたがたのものではなかろうと、それが第一点、第二点に、やはり近代技術の発達の全般の水準から考えまして、私は国際的に秘密になっているというものは、ごく小さなデリケートな部分だと思う。昔のように大きなものがごっそり全部秘密になっているというような時代ではございませんから、半ばは理論的な部分じゃないかと思っております。そう考えてみても取りはずしのきくものじゃないかと、これが二点の理由、第三の理由は、さてその防衛科学研究所は主として理論上御研究になっているという御説明でありますが、これがやはり近代科学進歩は相当の実験なしに、ただ本ばかり読んであれだけの予算が要るというものでもないのでしょうが、あれだけの予算をお使いになる以上は、相当の実験というものがあるのだと思う。そうすればそのまれに起る、一年に一回、二回起る修理の必要、そうしてかつまたそれがかなり理論的な、高度の理論適用せられるような、そういうデリケートな部分修理というものは、私は民間会社でそういうものは修理されることよりも、そうした十分の研究設備を持った研究所において同時にそれらの修理に当られることが、研究進歩の上から望ましいことであり、何も防衛庁の中へ造船所を作るとか、そういう大規模な工場をお作りになることを私は申し上げているのじゃないので、ごく理論的な高度の理論を要し、それが実際に適用されている部分研究製作修理というふうなものは研究所の中で行われることは私は当然じゃないか。ですから一般造船所のようなものを作るというのじゃない、現在の日本にある、民間にもある科学研究所のようなものは当然内部に設置せられるのは当りまえだ。ですから以上三つ理由からどうも私は今のお答えでは納得ができないので、その専門的な見地から、それが防衛科学研究所内部修理ができるというような性質のものでないということが明らかになれば仕合せだと思うので、先にど委員長にお願いしたような措置をお取り計らい願いたいと思います。
  28. 赤松常子

    赤松常子君 ちょっと私一、二質問いたしたいと思います。今までは船舶だけに限定されていたのでございますけれども、今度艦艇までも秘密保護法の中に加えるということになりまして、またこれからだんだんと他のいろんな産業などにこれが拡大するということは考えられないのでございましょうか。すでに御質問済みかと思うのですけれども、ちょっと退席いたしておりまして失礼いたしました。これがだんだん他のいろんな技術産業にどんどん拡げられるということはあるかないか、秘密の分野がどんどん拡げられていくということを不安に思うのでありますが、それを伺います。
  29. 林一夫

    政府委員林一夫君) この秘密保護法は御承知のように今までアメリカとの間に協定されておりまするMSA協定船舶賃借協定、この二つの協定によりまして、アメリカから供与されまする装備品個所秘密を保護するための油津なんでありまして、今度これは昨年締結された艦艇貸与協定、別の協定でございますが、これによって供与されたものも、その中に秘密個所があると予想されるものですから、これも一本加えまして、この三つ協定によってアメリカから供与される装備品秘密を保護するために、ただいま申し上げました艦艇貸与協定も一本この中に加えたというわけでございまして、この三つ協定によって供与される装備品に限定されるわけでございます。今後さらにほかのものにずっと及ぼすというようなことは、現在においては考えられないことであります。
  30. 赤松常子

    赤松常子君 もう一つ秘密を要するものというようなことは、アメリカできめるのですか、日本できめるのですか。
  31. 林一夫

    政府委員林一夫君) 防衛秘密といっておりまするが、その秘密は公けになっていないものということで、世界中において、どの国においても、あるいはどの場所においてもこれが公けになっていないという点があるわけです。もちろんアメリカにおいても分けになっていないし、日本においても公けになっていない、そういうものをアメリカがこれは公けになっていないからというわけで指定してくるわけです。もちろんその場合には日本においても分けになっていない、第三国においても公けになっていないというものを指定してくるわけです。それによってこの秘密を保護するという建前になっております。
  32. 羽仁五郎

    羽仁五郎君 先ほどのお願いを重ねてお願いをしておきまして、続けて質疑をいたしたいと思います。次に伺いたいのは、本法制定当時に防衛秘密として指定されておりましたもので、その後一年前後の間に、国際的あるいは日本国内の科学技術進歩などに伴って、秘密でなくなってしまったものがあろうと思う。それらについてはその秘密の指定解除の措置をとられるということは当然と思いますが、従来そういう措置が必要の場合にとられておいでになるでしょうか、どうでしょうか。それをお伺いしたいと思います。
  33. 林一夫

    政府委員林一夫君) この秘密が公けになったということになりますれば、これを解除するという手続をとるのでございまするが、今までに解除の手続きをとったというような事例はございません。
  34. 羽仁五郎

    羽仁五郎君 その公けになったかならないかということについては、現在まで従来どういうふうな手続をしておられますか。ただ黙っていれば、公けになったといってもわからないのですから、国際的に分けになっているかいないかということを、学術雑誌その他を検討されるのが当然と思いますが、それはどういうふうなことをしておいでになるか、御説明願いたいと思います。
  35. 林一夫

    政府委員林一夫君) この防衛秘密アメリカにおいてももちろん秘密でございまして、まあアメリカが所有しておる秘密日本供与した。で日本もこの供与を受けてこの秘密を守るということは、やはり日本の防衛上必要であるというわけで、向うの指定によってこれを秘密扱いにしておるわけです。秘密の保護の取扱いをやっておるわけですが、この秘密が分けになったかどうかということは、もちろんこれはアメリカにおいても十分、アメリカ秘密でありますから十分平素から検討しておりますし、またわが国においても知れる限りにおいて、それは検討しておるわけなんです。
  36. 羽仁五郎

    羽仁五郎君 今の御答弁ですと、まお大体はアメリカ研究して、公けになっていれば、解除してくれるだろうということですが、しかしそればかりに頼っておられるということじゃなく、日本の国内でももちろんその検討を怠らないということですが、これは別に他意があって申すのではありませんが、やはりこれは重要な点で、すでに公けになっておるのをまだ秘密指定を解かないでおるということは、国民権利を侵害しておられることですから、そういうことがあった場合には、防衛庁長官が責任をとられなければならぬと私は思いますが、重大な問題だろうと思いますが、従ってそれについてはぜひ、ただまあこれ以上その点については特に伺いませんけれども、十分の努力をせられて、いやしくも学問上または技術上、すでに一般知識になっておるものをなおまだ指定を続けているというようなことの絶対にないように、お願いをしておきたいと思います。これは政務次官から御答弁願います。
  37. 田中久雄

    政府委員田中久雄君) すでに草間上秘密の効力がなくなりまして一般に利用されているものが、なおこの法律によって禁止せられているということは、国民権利であるところの制限をするわけでございますので、全くお説の通りで許されないと思います。よく注意をいたしましてそういう誤りのないように、効力がなくなったものはすみやかに解除する措置をとりたいと思います。
  38. 羽仁五郎

    羽仁五郎君 今の御答弁はもしそういうようなすでに公けになっているものを秘密を続けている場合には、最高の責任者が責任をとるという私の質問の趣旨を肯定せられたと伺ってよろしゅうございますか。
  39. 田中久雄

    政府委員田中久雄君) その通りでございます。
  40. 羽仁五郎

    羽仁五郎君 では次にただいまおいでになりました方にお伺いしますが、あなたは防御科学研究所の所長を兼ねておいでになるのですか。……防衛科学研究所の所長にお尋ねをしたい。防衛科川研究所には今回は来年度の予算としてどれだけの予算をお取りになったのですか。
  41. 久保亀夫

    政府委員(久保亀夫君) 十三億円余りでございます。
  42. 羽仁五郎

    羽仁五郎君 その十三億円という膨大な予算を取られて研究しておられます防衛研究所の責任者としてお答えを願いたいのですが、ただいま議題になっております改正法律案、この法律案で新たに合衆国艦艇貸与を受ける、この貸与を受ける合衆国艦艇の中の秘密に指定されたものは、どういう部分であるか御承知ですか。
  43. 久保亀夫

    政府委員(久保亀夫君) これは掃海具関係と承知いたしております。
  44. 羽仁五郎

    羽仁五郎君 その程度のことしか御承知がないのですか。
  45. 久保亀夫

    政府委員(久保亀夫君) 掃海具と申しますのは、その一部を申し上げたのですが、たびたびここで御説明があったかと思いますが、レーダーあるいは掃海具、あるいは、音響管制共、具体的に申しますと、そういったことになると思っております。今お話しの点はこまかい設計図面、あるいはこまかい仕様書等についての御質問かと思いますが、ただいまのところどの機能、あるいはこの設計図のことが特に秘密部分であるというところまでは承知いたしませんで、それに関するもの全部が構造その他について秘密が保護されている、こういうふうに承知いたしております。
  46. 羽仁五郎

    羽仁五郎君 これは私はやはり防衛科学研究所の主たる任務は、一般的な学問的な研究におありになるように推測するのですが、しかし今日の高度の科学技術研究については、単に書物の上だけで御研究になっているということではあるまいと思う。そこに当然実検的な設備をお持ちになっていることと思いますが、どの程度その点についての研究実験というものをなさっておられるか、概括的に御説明願いたいと思います。それとも全然実験はやっておらない、本だけ読んでいるということですか。
  47. 久保亀夫

    政府委員(久保亀夫君) その点につきましては、もちろん研究所といたしましても、また関係幕僚幹部におきましても、漸を追うて物によりましてはアメリカ側から、今日までは秘密部分のないものコンフィデンシャル、あるいはそれ以上にならないものにつきまして、デッド・コピー、つまりなまの設計図面をそのままもらいまして試作をいたしますという場合もございますし、またそうした知識をもとにしまして日本側独自の旧軍時代のそれに関する研究、たとえば機雷とかそういったものにつきましても、あるいは音響測定器等につきましても、従来の知識もあわせてあるいは設計を作る、あるいは試作をやっている段階になっているのもあります。また、ただいまお話がございましたが、米軍の秘密に関する事項、こういったものにつきましては、実はごく最近になって艦艇に関連して入って参ったもの、これらにつきましては、米軍のあるいは説間を求め、あるいはわれわれのそういった試作、水測兵器等を参考にぼつぼつかかりかけている段階でございます。今後秘密部門に属します部分につきましては、もらった図面を中心にして、あるいはそれを参考にしてわれわれの方の研究とあわせて設計、試作の段階に入っていく、そういう段階だと御了承下さい。
  48. 羽仁五郎

    羽仁五郎君 これは、先日問題になりましたアメリカから濃縮ウランの貸与を受けるという問題についても、学術会議の藤岡原子力委員長の話しておられたことですが、この貸与を受けるということについては一つの大きな弊害がある。すなわちそれの貸与を受けているものについては日本研究が進まなくなるおそれがある、これは非常に重大な点で、十分に心配しなければならないと思う。安易に貸与を受けて、貸与を受けている部分についてはもう研究をしなくてもいいのだということでは、貸与を受けることは害があるということまで言っておられますが、防衛科学研究所ではアメリカから貸与を受けるものについて時間的に、今御説明のようにぼつぼつということなのですが、原則的に貸与を受けているものについては、あまり責任を持って研究はしないということなんでしょうか、どっちなんですか。
  49. 久保亀夫

    政府委員(久保亀夫君) ぼつぼつと申し上げましたのは、秘密部分に属するものというお話も出ましたので、そういう意味で申上げましたので、ことに一番早い陸につきましてはもちろん、海につきましても米軍の貸与の、ことに装備等、ことに電気関係のものにつきましては、それについてあるいは図面でもらう、あるいは一部原図面で試作するというような、たとえば水測兵器、先ほど申し上げましたがまあレーダー等についてもすでに実施をいたしておるのでありまして、だんだんと秘密に属するものまでに進んで参っておるという意味で申し上げたのでありまして、貸与品についてはもちろんのこと、またこれも先ほど申し上げましたように、日本の昔の陸海軍の技術につきましても、ものによりましてはかなり当時進歩しておったものもありますし、そういった資料、あるいは相当たとえば水測兵器の例をとりましても音響機雷なら音響機雷、あるいはソナー等につきましても、かなり経験のある技術者が、これは目下のところ遺憾でありますが主として民間によるわけでありますが、そういった方面の情報や知識を動員しまして、われわれ独自の力もこの貸与品の進んだ設計とあわせて研究を進めておるわけであります。
  50. 羽仁五郎

    羽仁五郎君 現在、防衛科学研究所では、実験室ではどの程度の規模のもの、あるいは予等の上で御計画になっておられるか、また実験工場についても同様どの程度のものか、御説明願いたい。
  51. 久保亀夫

    政府委員(久保亀夫君) 先ほど申し上げましたように、三十年度技術研究所予算といたしましては約十三億六千万円でございますが、実は技術研究所が発足しまして三年弱でありまして、その間、当初仮住いをいたしておりましたのを、まことに申しわけないことで昨年火災を起しまして現在も仮住いをしておりまして、本年の九月ごろにやっと本格的な研究所ができ上る、かような予定になっております。研究所の付属設備といたしまして、研究所自体の中に今度三宿にできるのでありますが、約四百坪のこれは主として車両機械等の試験研究をする設備を持っております。それから浜松に航空試験所を、現地でいたします試験所を持っております。それから久里浜に水中兵器、あるいは水測兵器等を研究する、研究と申しますよりも、試験所でございます。大体そういうことで人員約五百人余りということになっておりますが、現在のところではまだ未整備の段階でございまして、試験設備、あるいは研究設備は未整備の段階でありまして、その十三億の中の相当部分が、実は試作及び委託研究費に使われております。御参考にその内訳を申し上げたいと思いますが、十三億のうち、約七億一千万円が試作費、試作費と申しますと、これば設計そのものを試作委託することもございますが、あるいは技術研究所内で設計する、あるいは民間に委託いたしました設計研究所でいろいろの調査いたしまして、われわれでスペックを作りましてやる。これが七億一千万円。それから、ただいま申しましたように、今日整備の段階にあるのでございますから、試験用、あるいは研究用機械器具類がたくさんあります。これが約三億五千万、この二つで約十億をこえるわけであります。あと人件費等庁費の類が約一億、それから、いわゆる研究費と申しますか、独自の自分のところで研究のために使います。あるいは燃料であるとか、いろいろ小さな器具であるとか、文字通りの試験研究費が約六千万円ということで、今日の段階では、初めに申し上げましたように未整備の段階で、設計あるいは試作等についても、外部の設備、また技術者に依存する程度が今日では高い、これにつきましては、私どもは年を追って器具の整備、あるいは技術者の整備等で、できるだけことに基礎的なものはわれわれのところでやっていくという方針を立てて逐年進めて参っておりますが、今日、ただいまの状況は、ただいま申し上げたような実情でございます。
  52. 羽仁五郎

    羽仁五郎君 この七億一千万円もの試作費というものをお使いになって、それでそれがおもに外部に委託されているということでは、ずいぶん問題があるのじゃないでしょうか。その内部でなさっているならば、それだけの巨額の試作費というものが用いられるということも納得できますが、外部に出されてこれだけの大きな試作費を使われている。その点に第一問題があるわけですが、もちろん試作あるいは試験あるいは研究、それは森羅万象あらゆる問題を御研究になっているわけじゃないでしょうが、主としてその目標、当面の研究の目標とせられておりますものは、現在、日本がこういった法律まで作ってアメリカから借りなければならないようなものは、率先して御研究になっていくことが当然と思いますが、そうじゃないでしょうか。
  53. 久保亀夫

    政府委員(久保亀夫君) 必ずしもおっしゃるような状況ではございませんが、もちろんそういう関連はございますが、一つには今の技術研究所の現在の使命といいますが、これは非常に目先の、それから遠い将来のもの、こういった関係のものでございますから、たとえば目先のものと申しますと、米軍から貸与を受けて、比較的設備の簡易なものについても若干これを日本人的な、あるいは日本人の体格、あるいは地形にあわせるものに改造あるいは改良していく、こういったものにつきまして、性能表をもらって、これを設計を作る。しかしこれも一応試作をしてみて、その上実用試験をして、これで正式の規格をする、こういったものもございますし、また若干その程度の高いもの、七億の中で相当大きな金額を占めておりますのは、中型特車約二十五トン程度の特車でございますが、これにつきましても、現在24というものを相当供与を受けているわけでございます。これは日本の、地形、体格からいって、事実上、用兵上適当でないのじゃないかといったようなことで、これにかわるものを試作したい。これにやはり一億近いものを要するといったような、そういった装備を、基本的なものに、これは予算関係でどの年度でということはわかりませんが、できるだけ将来においておきかえていくというふうな用意もしております。こういつたようなものもございますし、それからまた現有兵器、たとえば誘導兵群なら誘導兵器、まあ誘導兵器自体を作るということは、相当先のことになりましょうが、それのいろいろな基礎的な問題、たとえばレーダーの研究の一面としてコンピューターならコンピューターというものをその面から検討していく、こういったものについてはアメリカの秘に該当するものについても、設計その他をしんしゃくしていくといったような問題も当然出てきますし、そういった非常に幅の広い仕事をしておりますので、今おっしゃったような、もちろん秘密に属するような高度の内容についても、あるいは現有三八器の発達改良といったようなことで、できるだけとり入れてあわせて検討しておる、かようなことであります。
  54. 羽仁五郎

    羽仁五郎君 これは政務次官にお伺いしたいのですが、今の局長の御説明はお聞きの通りですが、ああいうような運営方針で妥当だというふうにお考えでしょうか。やはり防衛庁は十三億の予算を乏しい国家財政の中から要求せられ、承認せられて、そして研究所をお持ちになっているのですから、民間でやれるようなことをなさっているということはおやめになるのが当然じゃないか。民間ではとてもできない、従って当面の問題として日本が借りている防衛秘密に関する研究、さらにすぐには日本アメリカから借りられないもので、国際的には公けにされていない高度の科学技術研究があろうと思う。そういうものを日本研究していなければ、やはりそういうものを用いたいということになれば、借りなけばならないということになるのですから、単に最初に私が申し上げたような貸与を受けて、そしてそれを民間にまで及ぼして、法律を作って制限しておるということが、やはり安易な道につかせることになって、いつまでも秘密貸与を受けている、それ以上高度の研究にはなかなかいかない。特車の日本の地形に合せる御研究なんということをやっておいでになるという御説明ですけれども、そういうものは日本民間の自動車会社でも十分できることじゃないかと思う。そういうことに貴重な予算を割かないで、やはり本法並びに改正法律案が問題にしているように、あるいはさらに進んでもっと高度のそういう研究というものをなさるのが適当でないか。もしそうでないとすれば、特に防衛庁の中にああいう研究所をお持ちになっている必要がないのじゃないか。大学その他の研究所と連絡をせられて十分やれることじゃないかと思いますが、政務次官のお考えはどうでしょうか。
  55. 田中久雄

    政府委員田中久雄君) 羽仁委員のお説はわれわれもその通りと存じまして、ただ現状は日本は敗戦によりまして、何にも、およそ武器に関するものは跡形もなくなってしまいました。各地にあります艦船を造りました工廠の跡なんというものには、相当優秀な経験工が百姓なり、漁師をしているという状態でありまして、何にも残っていない。設備もなければ、技術もないという状態がすでに七、八年過ぎたあとのものでございますから、戦争当時でさえも、技術の劣っておりました日本は、せめて諸外国並みに追いついていこうということには、なみなみならぬ努力が要るのでありまして、技術研究所はできましてまだ足かけ三年でございまして、理想といたしましてはお説の通りでございますが、まずできるだけ短期間に標準まで追いつきたいということで、実は現在は手一ぱいでございまして、いろいろ督励をいたしておりまして、相当民間におりました技術者も招聘をいたしまして、何年間に追いつきますかわかりませんが、すでに戦争当時おくれていた上に、ブランクが七、八年もあるわけでございますから、われわれといたしましては最短期間に標準までいきたい。さらにお説の通り高度の研究を続けたい、これが今防衛庁として考えておりますところでございます。なるべく早い機会にこのような高度の研究に入りたいと念願いたしております。
  56. 羽仁五郎

    羽仁五郎君 この問題についてはもうこれ以上質問をする意思がないのですが、しかしお願いをしておきたいのは、やはり防衛科学研究所予算は、日本全体の大学その他の教育機関の予算の中で、一般には大学その他の研究機関の予算は御承知のように全然ふやされていないのです。しかも要求ば、あるいは入はどんどんふえている。ですから大学その他の研究機関の予算というものは総体的には減少しておるのです。それに反して防衛科学研究所は昨年度から本年度にかけて六倍ないし十三倍というふうに、非常に飛躍的に予算を増大しておられる。これはよほど根本的に再検討をせられる必要があるのじゃないか。今お聞きしたように、今防衛科学研究所でやっておいでになります仕事はかなり雑多のようで、まあ雑多の基礎には政務次官御説明になりましたような事情もあろうかと思います。しかし、何といっても原則的には一般民間の、つまり軍事科学技術全体が進歩していかなければ、で、軍事科学技術だけ進歩するということは、過去の軍閥のあやまりを繰り返すことになってしまいますから、富士山の頂上に上るには、すそ野に沿ってついていかなければならないということは申し上げるまでもないので、やはり一般の科学技術研究予算、すなわち防衛庁に限らず大学その他の科学技術研究予算というものがやはり削られながら、防衛庁予算がふえていくというのであって、今政務次官がお述べになりましたような御説明も実際に実現しない。いろいろと、ずいぶん優秀な航空技術者などが自転車を直したり何か仕事をやっております。それは必ずしも防衛科学に置かれなくても、大学その他でも十分そういった人の科学なり技術なりが生かされるものですから、私は特に本年度一般科学研究費が百億前後にくぎづけされておるときに、防衛科学研究所が六倍ないし十三倍というふうに飛躍的に予算を増大されておるということは、今申し上げたような、特にこの本法改正法律案の対象としておるような秘密の問題についていても再検討せられる必要が私はあるのじゃないかと、それでさっきも申し上げましたように、科学的な研究が同時に実験と関連しなければ無意味ですし、かつまた、その実験にある程度の試験工場の設置というものが当然予想されることですし、貸与を受ける高度の品物の秘密内部で保持して、それで修理していかれるということは私は全く不可能だというふうには考えられない、今までの御説明を伺っても……。従って今後そういった面に御努力に相なるか、それともほんとうに全く大学その他の方に、やはり国家機関ですから同様の……、必ずしもこういう一般国民に対する秘密の保持という方法でなくても、国家機関内部秘密の保持の範囲内でも、防衛科学研究所以外でも、工業大学とか、何かそういう国立機関に仕事をしてもらうということもできるのじゃないか。願わくはどうか、安易な道に流れられて、貸与されておる物というものについてはあまり研究もしない、修理もできない、それで民間出していくという方法でなすっては、先ほど赤松委員の御質問にありましたように、この法案が毎年拡大されていくということになるのはおそるべきことであります。政務次官もそういうことのお考えはないのでしょうか。しかし現在のようでは日本が借りるたびに拡大していかなければならない、そういうことでなく、内部でおやりになれるようにお願いしたいと思います。次に伺っておきたいと思うのは、その問題と関連するのですが、先ほど政府委員の御答弁では、当分現在のところでは拡大のことはお考えになっていないということでした。そうでしたね、そこで伺っておきたいのですが、現在このいわゆる秘密関係する、そしてこの法律の問題に関係するもので、やはり国民が絶えず問題にしているのは、いうまでもなく原子兵器の問題で、これについては首相ないし外務大臣からしばしば国会でお答えがありましたが、そこでこの防衛庁が最近米軍とかなり共同の行動を演習その他でやっておられたりする事実もあるようですし、その根拠いかんはさておきまして、実際事実はあるようです。そこで伺っておきたいのは、これは政務次官の方から伺っておきたいのは、最近自衛隊が米軍と共同に演習をし、まあ共同の行動の計画を持っておられるようですが、その際に米軍の方で原子兵器を用いるような場合についての対策は立てておられるのですか、おられないのですか。その点をお答え願いたいのです。
  57. 田中久雄

    政府委員田中久雄君) 米軍と一緒に演習をするという計画はこれまでもございませんでしたが、現在もございません。おそらく将来もないと思っております。ただこちらの者を米軍の部隊に預けまして、飛行機の操縦でありますとか、あるいは高射砲の射撃であるとか、こいうものを教えを受けておるという事実はございます。それはあまりそう大した規模のものではございません、ごく少数の者が技術を習いに行っておるわけでございます。演習といたしましては、これまでもございませんが、将来もないと思っております。
  58. 羽仁五郎

    羽仁五郎君 今の問題に関連してなのですが、私はつい昨日でしたか、一昨日でしたか、米子の米軍の飛行基地の周囲を見たのですが、あの米子の米軍の飛行基地は御承知であろうと思いますが、滑走路が国鉄の大篠津駅に近接しているために従来しばしば事故が起り、本年一月のごときは無人誘導機が駅の上屋に衝突し、かつその向うの民家に衝突して、そこにおった人が一人負傷したという事件があった。それでごく最近の数日前には調達庁の方からの通達があって、その駅に近接している滑走路三百メートルというものは暫定的に使用をしないということになって、一応の解決をみておるようですが、やはり今の問題について、最近日本の航空自衛隊がそこで教育を受けておられるのでしょうか。そういうことがあって、もしその駅に近接しておる三百メートル滑走路というものが暫定的に使用しないということだけでは非常な不安がある。将来またそれが用いられるようになるのでは、駅及び駅の周囲の民家、まあ国際航空法に違反して第一いるのです。ですからそれを必ず決定的な措置にされたい。そしてすでに予定されているような海面、海の方に三百メートルの滑走路を延ばすという計画なり何なり、そういう措置をとられて、最近暫定的にそこを使用しないという御決定があったのを、決定的な措置にされたいということを強く要望しておられますが、これはどうか十分御研究下さって、そういうふうに御解決を願いたいと思うのです。  さっきの質問の続きを許されたいのですが、演習はしておられない。それで教育を受けておられるということですが、日米防衛協定によれば、場合によっては共同の行動をとるということが起り得るわけです。そこで日本側には原子兵器というものはないということは、総理大臣や外務大臣の御説明でよくわかりました。米軍が原子兵器を持っているかいないかということは、日本側のあずかり知るところでない。従って米軍はそれを用いることがあり得るわけです。現に持っているかもしれない。そういう場合日本自衛隊内、あるいはその周囲の一般国民なりが全くそういう兵器を使用された場合の惨害に対して無防備であるということは許されない。人道上も許されないことだと思います。その点についてはどういうふうにお考えになって、どういう措置をいたしておられるのですか。あるいは防衛科学研究所の方でもそういう問題を御研究になっているならば、いずれの方からでもお答えを願いたいと思います。
  59. 林一夫

    政府委員林一夫君) ただいまの御質問は、将来原子兵器を使用するというような段階に至った場合、こちらとしてそれに対する対策を今から考えておるか。した方がいいかというふうな……。
  60. 羽仁五郎

    羽仁五郎君 いやそうではない。つまりさっき申し上げたように、日本側に原子兵器がないということは総理大臣、外務大臣がしばしば御答弁になって、これに誤まりはなかろう。しかし日米安全保障条約によれば、米軍がどういう兵器を使うかということについて、日本側に一々通告しなければならないという義務はない。従って米軍が原子兵器を持っているかいないかということは、日本側の知り得ないところである。すでに今日持っているということもあり得るのじゃないか。で、その点についてはどういうふうに政府ではお考えになっているか。
  61. 増原恵吉

    政府委員(増原恵吉君) 現在アメリカ日本に駐留をしておりますのは、御承知の通りいわゆる安保条約に基いてであります。安保条約を結びまする際に、これは外務大臣が明言をされているところであります。当時としては原子兵器については予想をしておらない状態のもとに結んだのであります。しかも原子兵器というようなものは、防衛という見地からこれを使用するにしましても、非常に重大なものであるので、原子兵器を日本の、向うの持っております日本内の基地に持ち込むというような場合には、米国としては必ず日本側に話をしてから、話をした上で行うという、そういう明白な約束を取りつけておるということを外務大臣が明言をしておるところでございます。現在において原子兵器を米軍は日本の米軍基地内に持ち込んでおることはないということも、向うの責任者が外務大臣に明言をしたというふうに承知しておるのであります。
  62. 羽仁五郎

    羽仁五郎君 ただいまの御説明は私もその通りに信じておるのです。ですから外務大臣、総理大臣の国会における言明というものは間違いないと思っています。しかし法律の面から、条約の面から申せば、日米安全保障条約について原子兵器を予想しておるかいないかということは全く書いてない。それからまた条約関係の面からいっても、当時原子兵器はすでに存在していたのです。ですから全くこれを予想しなかったという解釈が成り立つかどうかということは、やはりそこに疑問があろうと思います。従ってそういう日米安全保障条約が現在外相ないし首相が声明せられるような趣旨において日本では了解されておりましょうが、しかしアメリカ側でもしそうでない解釈をする場合も絶無ではあり得ないのではないか。従って日米安全保障条約を改正せられて、その点において明らかに明記せられるというふうなことが、軍事問題としては必要なのではないか。で、これは本改正法律案とも関連して、もしそういう点の保障がないと、本法というものは際限なく拡大解釈されていくおそれがあるのです。今の点については特に日本防衛庁としての自衛隊の兵士、兵士といいますか、自衛隊員の生命というものは、やはり尊重せられなければならないし、いわんや自衛隊が米軍と共同して行動した際の、国民の生命、財産の安全ということについても、重大な関心を持たれているのですから、もし今増原政府委員の御説明になったようなことが防衛庁の方針でおありになるとすれば、やはり防衛庁の方からも日米安全保障条約が、二様の解釈が許されない、現在首相、外相が言明しておられるような解釈が確定する方法をおとりになるというお考えはないのでしょうか。すなわち具体的に申せば、日米安全保障条約にこのことを明記する、あるいはそこまでいかないならば、先日来の日米間の口頭の上での御了解というものを、文書の上の了解にせられるという努力をせられることが必要ではないのでしょうか、どうでしょうか。
  63. 増原恵吉

    政府委員(増原恵吉君) 政府委員からお答えをする限界を少し越えているようであります。現在までのところ、外務大臣がしばしば言明をされておりますように、米国側としても、そういうものを日本に持ち込むといいますか。そういうことは話をした上でということを責任者が明言をしておる。そうしてそれは国会の席上において外務大臣が明言をしておるところであります。私はこれに疑いを差しはさむ必要はないのではないか。秘密保護法がそういう方面にやたらに拡大をされるということは、これはMSA法に基きまして、いわゆるトップ・シークレットというようなものはMSA協定の品目の中には入らぬ。MSA協定に基いて原爆をくれるというようなことはこれはどだいないと思います。
  64. 羽仁五郎

    羽仁五郎君 この御説明通りなんですか、しかしそこにやはり国民の不安が残る。というのは、第一には御承知のよりに琉球に対しては、これは日米安全保障条約の関知するところじゃないので、別個の規定によって琉球が使用されているわけです。ですから琉球においては米軍が琉球を基地として原子兵器を使用するかしないかということは、これは日米安全保障条約の解釈いかんにかかわらず、やはり日本側において知り得ない。これはその通りですね。現在琉球に原爆基地があるかないかは、日本側としては全く知らない。あるかもしれないし、ないかもしれない。そう言うよりほか仕方がないだろう。国民の前でこの点をはっきりされておく必要があると思う。日米安全保障条約に伴っては今説明された通りだと思う。琉球は日米安全保障条約の範囲外ですから、琉球をどういうふうに使っているかということについては、日本側は何にも言えないし、また何にも通告を求める権利はないのですから、琉球に原爆があるかもしれない。これは前に本委員会で外務省から政府委員に来ていただいて伺ったときにそういう御趣旨のお答えでしたから、私はそれはやはりそうだろうと思う。あなたはどうお考えですか。
  65. 増原恵吉

    政府委員(増原恵吉君) その点は外務省がお答えいたしましたら、それによって御了解を得る方がいいと思います。私の了解しまするところでも、琉球に対しましてはいわゆる日本としては潜在的な主権というものを持っておるに現在はとどまるわけであります。そういうことになろうかと思います。
  66. 羽仁五郎

    羽仁五郎君 そこでつまり二つの不安が出てくるわけですが、つまり琉球を基地として米軍が原子兵器を使うことがあり得るかもしれない。まあ今日の国際的な世論に対して米軍がそれを使うということはよくよくのことではなかろうか。私はそういうことが絶対ないことを望んでいるのですが、しかし自衛隊なり防衛庁なりとしては、そういうことを全く今まで予想しないでおいでになっていいものでしょうか、どうでしょうか。そこでそういうトップ・シークレットというものは本法によっては決して守られもしないし、またそれについての保障もない。そうすると現実の問題としては米軍が琉球を基地として行動を起した場合に、そうして日本自衛隊が今度別個の角度から、すなわち日米安全保障条約に伴って共同の行動をしなければならないという場合に、日本自衛隊の隊員なりあるいは日本国民なりが、原水爆兵器使用に伴う災害に対して全く無防備であってよいというふうにお考えでしょうか、どうでしょうか。そこに私は問題があるのじゃないかと思う。そういう点についてはどう考えるか。そうして先ほどの防衛技術研究所はそういう面の研究をしておられるのかどうか。その点を伺っておきたい。
  67. 増原恵吉

    政府委員(増原恵吉君) 御質問の趣旨が少しよくわかりかねるところもございますが、先ほど申しましたのは、いわゆるMSA援助協定に基いてもらいまするものの品物の中にはいわゆるトップ・シークレットに属する原爆、水爆のごときものは入っておらないのであって、協定によって原爆、水爆をもらうというような建前にはなっておらないということを申し上げたわけであります。従いましてそういうものの秘密を保護するというようなことは、防衛秘密保護法の対象外であるということであります。わが方の自衛力をだんだん増強をいたしまして、またいわゆる安保条約に基きまして、日本に万一にも侵略行為があった場合には、共同で防衛するという事態はもちろん出て参ります。その場合にどういうふうな防衛をするかということは、まだ具体的の話し合いをする段階には至っておりません。将来の問題に属するわけであります。そういう場合に適切な自衛隊員の行動というものはもちろん考えていかなければならないわけであります。
  68. 羽仁五郎

    羽仁五郎君 お答えよくわかりました。そうすると、今のお答えは第一には、原子力兵器に関する秘密というものは、本法の対象には現在ならないのみならず、将来もならない。それはMSAによっていわゆるトップ・シークレットというものは問題にならないからだ、これが第一点、第二点は本法ないし改正法律案を離れて、一般日本自衛隊が米軍と共同に動作をしたり、あるいはそれ以外でも米軍側が琉球などを基地として万一、絶対にあり得ないことと思いますが、多少万一の場合も心配しなければならないのだから、そういうことについては、それは現在具体的の問題にはなっていないというお答えなんですね。そこで二点だけ伺っておきたいのですが、第一点は日米安全保障条約に伴って日本に原水爆兵器をもって来るか来ないかということは、必ず日本に御相談があるということは、外務大臣、総理大臣のお答えではっきりしたのですが、日米安全保障条約によらないで、琉球を米軍が、つまり日本にとってはねむれる主権しか残っていない、その他の主権の全部握っているアメリカが、琉球を原爆基地にするということは、平和条約の建前からいえばあり得る。その場合にはやはり日本側に通達があるものというふうに考えてよろしいでしょうかどうでしょうか。その点が第一、第二の最後の質問は、これは防衛技術研究所の方に伺っておきたいのですが、それらいろいろな点を考えて、原子力兵器などに伴って自衛隊なり国民なりが被害を受ける、そういう被害を防ぐという方法について現在御研究をしてお出でになるのか、御研究が全くないのか、この二点を伺っておきたい。
  69. 増原恵吉

    政府委員(増原恵吉君) 最初の問題は私からお答え申し上げるのはいささか不適当と思いますが、私が申し上げられることは、琉球に対してはいわゆる潜在主権というようなものがあるにとどまるということで御了承願いたいと思います。  第二の点は、万々一いわゆる侵略をして参ります方が、原爆、水爆等を使いました場合に、その被害を何と申しまするか、最小限にとどめるということに関する調査また研究というほどの大したものではございませんが、いわゆる調査研究はいたしております。
  70. 久保亀夫

    政府委員(久保亀夫君) 今の被害の対策につきましては、ただいま次長のお話しの通り研究所にもほんの数人でございますが、原子力対策班といったものをこしらえまして、ごく小規模ではありますが、可能な範囲でのデータを集めて、たとえば、被服の研究であるとか、そういった面を一部研究をいたしております。
  71. 羽仁五郎

    羽仁五郎君 そうすると、防衛技術研究所では、いわゆる放射能等を防禦するような、自衛隊員が放射能などにさらされても、その生命あるいは健康に害が及ばないような、そういう装備の研究などはしておられないのですか。
  72. 久保亀夫

    政府委員(久保亀夫君) 若干いたしております。
  73. 羽仁五郎

    羽仁五郎君 増原政府委員の方に伺いたいのですが、先ほどのお答えの点で、第一の点はいかにもお答え通りで、琉球に対しては日本は潜在主権しか持っていないのだから、何をされても仕方がないということは私もその通りだと思うのですが、しかし何をされても仕方がないからといって、黙っていなければならないということでもなかろうと思う。ことに琉球の使用の方法によって、それが日本国民あるいは琉球におられる日本国民、あるいは琉球以外の日本国民にも害が及ぶようなそういう形において琉球が用いられるというようなことについては、全く発言できないということでも私はなかろうと思う。それでこれはこういう機会にどうかその問題について防衛庁においても十分御研究を、しっかりした研究を打たれて、従って日本政府全体として、琉球を基地として原子兵器が使用されないように、万々一そういうような企てがある場合には、それが日本側に少くとも通達されることが必要である。通達されないでそういうことは行われることは、日本としては承認できないという方向にわれわれ努力していかなければならないし、防衛庁としてもそういう方向に努力をせられたいと希望しますが、その点はどうでしょうか。
  74. 増原恵吉

    政府委員(増原恵吉君) 私は今の第一の質問に対してお答えしましたのは、外務省の方でお答えしてもらうことが適当と思ったので、いわゆる潜在主権があるという形であるということにとどめたのであります。潜在主権だから何をさてれてもしようがないという意味お答えしたのではありません。潜在主権以外の方は外務省の方からお答えを願う方が適当であろう。仰せになりました趣旨は私どもとしてもなお十分研究をいたすつもりでおります。
  75. 羽仁五郎

    羽仁五郎君 第二の先ほどのお答えの中で、侵略者があって、そうしてそれが原子兵器を用いた場合に、それに対する対策を考えなければならないということ、これは侵略者の場合だけではない。つまり日米安全保障条約によって、日本の本土に駐留している米軍は、先ほどのような趣旨で、通告がなければそういうことはあり得ないのです。琉球においては通告がなくてもあるいはあり得るかもしれない。そういうことは絶対にないと思うけれども、そういう場合には、別に琉球にある米軍が、日本を侵略しようと明らかにするわけではない。しかしその米軍の行動についてそういう心配があるのじゃないか、しかしそれについても先ほどのお答えと結論は同様なんだろうと思う。それについても具体的な問題はまだ出ていないということであろうと思うのですが、どうでしょうか。
  76. 増原恵吉

    政府委員(増原恵吉君) ただいまの御質問の御趣旨は、いわゆる米軍が琉球において原子力を使用した場合についてという御趣旨、これは先ほども申し上げましたように、琉球における問題は私どもでも一応の解釈を持っておりまするが、外務省との打ち合せをまだしてあるわけでもございませんので、これは外務省の方からお答えを願うことにいたしたいというふうに考えております。
  77. 羽仁五郎

    羽仁五郎君 いや、私の質問の要点は、つまりそういう心配が全くない、またそういう具体的のことは何もなさっていないというお答えであれば、それで私も安心するわけなんです。つまり原子兵器が日本ないし日本の周囲で用いられた場合について、自衛隊なりあるいは国民なりがその害を受けないということの、そういう手当をしなければならないという問題が、まだ具体的な問題としては出ていないということなんですね、結論は……。そうですが、従って防衛技術研究所においてもごく部分的な手当をしておる程度だということなんですか。そういうことですか。
  78. 増原恵吉

    政府委員(増原恵吉君) 単に原子兵器だけの問題ではない。いわゆる侵略が起るという場合につきましては、今具体的に二年先、三年先、五年先にどういう侵略の可能性がある、危険性があるというふうなことをなかなか認定できるものではございません。万々一あったらばということを考えて、自衛力の漸増計画をやっておるわけでございます。それと同様で、現在いわゆる原子兵器というものはあるわけなんです。そういうものが万々一投下されたというような場合に、最小限にその被害を局限をするというような方法、これは主として米国等で研究をされておりまするところを勉強をしておるという程度でございまするが、そういう程度の、先ほども調査と申し上げて、研究といえるかもし木ないがというふうなことをちょっと申し上げましたが、そういうような程度のことを今はまだやっておるにすぎない。この方は非常に基礎的に研究をいたしますということになりまするというと、実験のための施設、材等も容易なことではないわけであります。なかなかそういうよ、な段階には進まない。いろいろ米国その他でやっておりまするものを調査をいたしまして、それをまとめていくというふうなことをやっておるのであります。
  79. 羽仁五郎

    羽仁五郎君 この協定等に伴う秘密保護法の施行以来の実際の実情については、もう少し詳しく実はいろいろ御報告を受けたいと思っていたのですが、時間もだんだんなくなってきたようですから、それは省略いたしますが、ただ一言最後に伺っておきたいのは、やはり秘密を保護するためのいろいろな措置をとられてあろうと思います。先ほど政務次官の御説明の中にも、船の中に赤いしるしをつけて、それは防衛秘密であるというような措置をとられているということでありますが、これが一定の限度を越えて拡大されるというようなことがないように、あくまでも御努力になっていることだろうと思う。全くそのものに限ってというふうで、そのものの周囲というものまで防衛秘密に入れられるということは絶対にないように御努力が始終行われているのだと思う。それから従いましてそういう防衛秘密が存在しているその周囲の防衛秘密を守るための措置というものも、私はやはり必要にして十分な措置にとどめられて、いやしくも国民を威嚇するか、あるいは国民に不安を与えるというようなことをなさるべきじゃないと思いますが、従来十分その点について慎重に措置しておられることを考えますけれども、一応お答えいただいておきたい。やはりこれは本法によるのじゃなくて、日米安全保障条約による米軍基地の、つまり刑事特別法による秘密の保護のやり方、これは主として米軍が日本法律に基いてやっておられるのですが、それにはどうもときどき行き過ぎであるような、その周囲を通る者も威嚇するようなことがあるようですが、そういうことはないように御努力を願いたいと思いますが、いかがでしょうか。
  80. 増原恵吉

    政府委員(増原恵吉君) その点は御趣旨の通りにやっておりまして、現在は何といいますか、情報というかインフォーメーションとしてもらっているものは書類の形になっております。これは金庫に入れて保護をしておりまして、金庫の前を通るなどということは一向差しつかえございませんし、船についているものは、船のその局限された部分について目じるしをして注意を喚起する。しかしこれも主として注意をすべきものば乗組員であって、乗組員以外の人が来た場合には、そのときに特に関係者が注意を払うということであるわけでありまして、区域を広げていやしくも国民を威嚇するなどということは絶対にないようにいたしてもおりますし、将来もいたします。
  81. 羽仁五郎

    羽仁五郎君 先ほど政務次官のお答えの中に、赤いしるしがつけてあって、これは何ですかと聞いたらば防衛秘密だということであった。そのあとで政務次官がそこに何が入っているかということを聞くことは、法に触れるおそれがあるというようなお答えがありましたが、政務次官のような方が、そういうようにこわいような感じを受けられるということであれば、国民はずいぶん……。そこに何が入っているかというようなことは、当然国民が知る権利に属することだし、その中に入っているものがどういう内部的なこの法に規定されているような性能、性質というものについては秘密として保護される、そこに何が入っているか、つまり本法によって秘密として保護さホていないことについて、いろいろ国民が知りたいと考え、また知るということは決しておそるべきことではないし、国民権利に属することでもある。これは実にデリケートな点ですから、どうか十分に国民権利が侵害されないように御努力をお願いして、私の質問を終ります。
  82. 中山福藏

    中山福藏君 私、もう二点だけ一つ聞いておきます。簡単ですから、お答えいただけばいいのです。一体今借りておられます艦艇というものは何隻で、いつまで貸与関係が続くのか、いつ返還されるのか、それを伺いたいというのが一つ。それから第二に、外国から借りた艦艇に対する秘密を保護するということについては一つ法律がある。しかし防衛技術研究所でこれが内外の秘密に当然属しなければならぬというような秘密の、何と申しますか、機械器具というものが日本で発明されたときには、それをいかにして秘密を守っていかれるか、そういう点についてお伺いしておきたいのです。この二つだけを最後に私はお伺いしておきたいと思います。
  83. 増原恵吉

    政府委員(増原恵吉君) 第一点でございまするが、艦艇で受けておりますもの、いわゆる船舶貸借協定によりまして、フリゲートが十八隻、上陸用舟艇が五十隻、これが船舶貸借協定でありまして、艦艇貸与に関する協定、今度これに入れていただこうという改正案にありまする艦艇貸与に関する協定で受けておりまするものは、現にもらって日本に持ってきておりますものは駆逐艦DDと称します駆逐艦二隻と、現在もうたしか今日くらい引き渡しを受けて、受け取ったと思いますが、ちょっと小型の駆逐艦DEといいますのが二隻、それからもう少しあとになりますが、乗組員が参りまして訓練を受けておりますが、千七百トンの潜水艦、これだけが艦艇貸与に関する協定によってもらうことになっております。それ以上には現在のところ見通しとして、若干のAMS掃海艇がございますが、これは現在のところ七隻、これは三百トンばかりの、掃海艇としての性能はなかなかよろしいものであります。それ以上には今のところ若干の掃海艇がもらえるかもわからぬということでありまして、駆逐艦あるいは潜水艦というふうなものは、もはや貸与供与されないという見通しの方が強いという状態でございます。
  84. 中山福藏

    中山福藏君 いつ返すのですか。
  85. 増原恵吉

    政府委員(増原恵吉君) 一応五年ということになっております。さらに五年延ばすことができる……。
  86. 中山福藏

    中山福藏君 更新ができるのですか。
  87. 増原恵吉

    政府委員(増原恵吉君) 更新ができるというふうになっております。
  88. 中山福藏

    中山福藏君 それからもう一つの第二の問題ですが、あの防衛科学研究所において……
  89. 増原恵吉

    政府委員(増原恵吉君) 技術研究所でやっておりまするものが、なんと申しますか、防衛上または優秀な、秘密を要するものができました際の秘密保護の規定は、現存のところ防衛秘密保護法のようなものはございません。従いまして秘密保護の措置としては、防衛庁設置法、自衛隊法に基ずく官庁秘密保護の規定がございます。関係者は秘密を漏らしてはならない、これは罰則もあります。これによって保護をするということに相なっております。
  90. 中山福藏

    中山福藏君 それについて秘密を保持するという方法を今考えておられますか、どうですか。外国の借りものだけに対する秘密保護をしても、内地でもっと優秀ないい機械器具を発明したときに、これを保護する規定がなければ、内部で幾ら保護されても、外部の人が秘密を探って外部に漏らすという場合には、処罰の規定がないということになれば、頭をやぶにつっこんでしりだけ出しているということになるのじゃないですか。
  91. 増原恵吉

    政府委員(増原恵吉君) その点御趣旨でもっともと思います。その点につきましては、こういういわゆる秘密保護というようなものは必要最小限度にとどめるということが、防衛秘密保護法を当委員会に御審議を願いました際にも、強く要望された点等にかんがみてなおよく研究して参りたいと、かように考えております。
  92. 羽仁五郎

    羽仁五郎君 それはちょっと話が変になってきたのですが、本法制定の際には、これは当時法制局長官であった佐藤君が政府委員としても明瞭に答弁されましたが、現在の日本の憲法の建前、また刑法の建前というものから、いわゆる固有の秘密、固有の軍事的秘密というものは存在してない存在を認められるべき建前でない。従って、本法はそういった一般的な秘密立法というものは、何ら予想してないというお答えで確定していたんですが、しかしながら御研究になるということになると、前の政府お答えが変ったということになりますが、どういうものですか。
  93. 増原恵吉

    政府委員(増原恵吉君) 防衛秘密保護法は書いてあります通りのことでございまして、そういうところには触れません。そういうものをどうするかという御意見もありましたので、研究をすると申し上げたので、防衛秘密保護法とは何ら関係のないことです。
  94. 羽仁五郎

    羽仁五郎君 関係のないという言葉をもう少しはっきりさしていただけませんか。防衛秘密保護法が、本法がまだ法案であった時代に、政府提案理由として御説明になったことに対するわれわれの質問は、本法はいわゆる一般国防秘密保護法の前提としているのではないか、そういうものを次第に導くおそれがあるのじゃないかということを各委員から御質疑があった。本法のようなものが頭を出してきて、そうしてだんだん国防保安法や、軍機保護法のようなものが出てきては大へんだという多くの質疑に対して、政府委員は、憲法及び刑法などの現在の状態というものから、そういう日本の国の固有の軍事的秘密というものは存在していない。従ってそういうものを保護する立法というものは予想されていない、従って本法が法案であった時代にそれを提出された政府の意図もそういうものは、全く予想していないというお答えであった、それはその通りですね。
  95. 増原恵吉

    政府委員(増原恵吉君) 防衛秘密保護法は御審議を願いまして今俎上にあります通りでございまして、一般的な秘密を保護をいたす考えはございません。
  96. 羽仁五郎

    羽仁五郎君 それから伺い漏らしていたので、もう一つ伺っておきたいのは、先ほどの塩原政府委員がおみえになります前の政府側の答えでは、今改正によって保護しようとする防衛秘密というものは、その掃海艇にだけあるというお話でしたが、今の御説明ではその他駆逐艦並びに潜水艇貸与を受けられるということでありましたから、そうしますと駆逐艦潜水艇本法によって保護されるような軍事機密はないのですかあるのですか、それを伺っておきたい。
  97. 林一夫

    政府委員林一夫君) 先ほど艦艇貸与協定によって供与をされるもののうちで、あると申し上げましたのはこのうちのAMS掃海艇の方にあるということが現在確認されているということでございまして、その他のものについてあるかどうかということは、現在わかっていないということなんであります。
  98. 羽仁五郎

    羽仁五郎君 それはいけないでしょう。その法律を作るときに、あるかないかわからないというようなことで法律を作るということはできないじゃありませんか。だからそれはあるのかないのかはっきり……。しかも掃海艇のように大体において防御的なものについての秘密という場合と、潜水艇のように、場合によっては攻撃的な、侵略的な疑いを受けるものについての防衛秘密の場合では、やはり意味がかなり違ってくると思う。従ってこの点ははっきりさしておいていただきたい。貸与をお受けになる艦艇すべてについて秘密があるのかどうか。それともそうでないのかということを明らかにしておいていただく方が、よろしい。
  99. 林一夫

    政府委員林一夫君) ただいま申し上げましたように、はっきりしておりまするのは、掃海艇についてあるということだけでございまして、潜水艦についてあるかどうかは、現在のところまだはっきりいたしておりません。
  100. 羽仁五郎

    羽仁五郎君 やはり本法について採決を求められる前に、それを明らかにせられることが当然だと思います。そうでなければ国会議員がそういうことについて何も知らないで本法について採決するということはできない。
  101. 増原恵吉

    政府委員(増原恵吉君) これは貸与してくれまする潜水艦なり、駆逐艦なりにおりまするもので、それがいわゆる米国側での秘密区分になっておりまするものが載っておりまする場合に、それを日本でもこの防衛秘密保護法によって保護することは、MSA協定に基いてそういうことになっております。ですから向うの中にその秘密区分のものがあるかないかということを申しまする際に、向う秘密区分があるということで、これが秘密区分だということを指定して来るために、現在はまだわからないということが実情であります。去年これを御決定願いました際にも、そのときに何と何がどうだということと、まだ申し上げられない状態にあったわけであります。受け取りまする際に秘密区分を言ってくる、それに従って秘密保護法秘密指定をするということに相なるわけでございます。
  102. 羽仁五郎

    羽仁五郎君 そんなことならば、こういう改正法律案をお出しになる必要はないですよ。米軍から貸与を受けるものについての秘密という、包括的な法律の解釈をされるならば……。ですから本法が成立する場合にも、この秘密範囲については御答弁がありました、確かに……。ですからやはり本法につきましても、今度保護されようとする秘密種類というものが明らかにされているというりことは、私は本案審議の不可欠の条件であろうと思います。今の増原政府委員の御説明のようであれば、大体借りる物の中で秘密の指定があれば、それを秘密の指定としてお認め願うということであれば、これはこういう改正案をやる必要はない。船舶の中に艦艇もありました、そしてその中に掃海艇もありましたし、潜水艦もありましたしということでよくなってしまう。ここに、ことさらに今まで船舶貸与を受けていたが、艦艇をということになってくるのは、やはり一々これを拡大していく場合には、どういう秘密種類について本法を拡大されるか。一々国会の御審議をお受けになって、それでその御承認をいただくという御趣旨が、私はやはりそういう包括的な態度でお臨みになるのは正しくないと思う。至急お調べ下すってお答えを願いたいと思います。
  103. 増原恵吉

    政府委員(増原恵吉君) これは昨年の御審議にお加わりになっておりました羽仁委員ですから、よく御記憶のことと思います。昨年もそういうことで御審議を願ったわけでありまして、実際は今度この艦艇貸与協定を入れていただこうというのは、船舶貸借協定できましたのは、申し上げたように、フリゲートが十八と、上陸船艇五十であります。その後にもらいまするものは、これは船舶貸借協定では秘密保護法の、現在のままでは入らないわけで、船舶貸借協定でもらった船に、たとえばソーナーというものが秘密であるとしますと、現在の秘密保護法でそれは保護できますが、同じものが艦艇貸与協定でもらうDDの場合には、秘密保護ができないということで、これを入れていただこうということでありまして、包括的な面で適用範囲を広げようというわけではありませんで、その適用する船が、現在の船舶貸借協定ではこれだけしかないので、現に艦艇貸与協定によってDDをもらっておる、近くそれにDEを二つもらう、潜水艦を二つもらうから、そこにはやはりソーナーとか何とかという種類のもので、あるいは全体の使用方法、これは文書によって、情報として参りまするが、そういうもので、いわゆる秘密区分のあるものが現有の事例に徴してはあるので、そういうものを保護できるための改正をお願いする、こういうことでございます。
  104. 一松定吉

    ○一松定吉君 議事進行について……。実は私がこの法案を審議するについて、昨年の議会の、昭和二十九年の六月九日に公布されている日米相互防衛援助協定に伴う秘密保護法というものが、すでに実施されている。しかるにこれが船舶、航空機、武器、弾薬その他の装備品及び材料をいうということで、すでに通過して、実施せられている。ところが今回は、それだけではわが国の防衛上おもしろくないというので、艦船も加えなければならないというので、条約によって、ついにその条約が締結されて、効力発生せられておる。その艦艇について秘密がある場合に、これを一つ船舶と同じように、秘密保護をしたいからというのが、この政府提案理由であります。これに関して、いや原子爆弾だとか、水爆だとかいうような、あのすべての問題についての、秘密保護についての政府の意見がきまらないから、それでこの政府提案のことについては云々という、羽仁委員の御質問は、非常にこれ該博であって、この法案々通過せしむるこについて、政府をして将来考えをここに至らしめることについての効果のあることは、これは私は羽仁委員の御意見に賛成いたしまして、敬意を表しておきますが、しかしその問題について、その秘密保護を、一体将来するかせぬかというようなことの答弁ができないからということで、それでこの法案について、もう審議はできぬ、採決はできぬというようなことの御意見は、どうかと思うのです。実は皆さん御承知の通り、この前の委員会のときに、もうだれもほかの者は全部質問がない、羽仁委員だけが質問がある。それならば一つやってもらおうじゃないかということで、この間ずいぶん羽仁委員は、長時間質問をされたわけです。今日もまた、お出になって、長時間質問なさる。われわれはみな、その質問の該博なことに敬意を表しております。しかしながら、ただ一人で、これを独壇場で時間をお取りになって、そうしてしかも非常にその範囲をお広げになって、御質問なさって、それがために、われわれも他の委員会に出なければならぬ重責を持っておるのでございまするから、御質問の趣旨は、私は決して反対をいたしませんが、大がいなところで一つこれを要件に集約せられまして御質問をなさって、実はこの法律案は、本日私どもは上げてもらうということで、おそらく皆さんもそういうお考えでお顔をそろえていらっしゃるのではないかと私は考えているのでおります。でございまするから、なるべく一つ短時間で、余を摘んで一つ質問なさって、そういう趣旨に沿って法案の審議の促進をはかっていただきたいということについての、議事進行の意見々発表いたしまして、委員長の御再考をお願いし、羽仁委員の御判断に待つのであります。
  105. 成瀬幡治

    委員長成瀬幡治君) 御趣旨よくわかりました。
  106. 羽仁五郎

    羽仁五郎君 ただいまの、一松委員の発言の御趣旨に従いまして、最後に一点だけ伺っておきます。先ほど一松委員の御解釈のようですと、本法によって、相当包括的に艦艇、航空機、弾薬、武器その他いろいろ本法ですでにまかなわれている。そこで、場合によっては一松委員のただいまのお説を敷衍いたしますれば、本改正法律案を提出する必要ないということになる、そういう御解釈ですか、それともそうでなく、やはり国民権利制限するということは、最少限度にとめなければならないから、そこで借り受けるものについて借り入れるものについて、そこに秘密があった場合に、その保護を願われるという態度をおとりになるのか、そのいずれであるのかということだけを伺っておきたい。念のためもう一ペん……。これ以上質問しませんから、念のため詳しく申し上げますが、先ほどの増原政府委員お答えの中にも、やはりあいまいな点があるのです。それはつまり駆逐艦と、潜水艇とは借り受けることがきまっている。それから掃海艇については一部は借り受けることがきまっている。しかしそれ以外のものは借り受けるか、受けないかわからないというようになっているというお答えだったのですが、やはりこういう改正法律案の審議を受けます場合に、政府としては、私は当然つまりこれこれのものを借り受けるということを明らかにせられて、そうしてその審議を受けられる方が正しいのじゃないか。その点についてあいまいがありますと、場合によってはきわめて包括的な権限を要求しておられるのじゃないかという疑いを生ずるおそれがあります。以上私の最後の御質問で、すから、どうか納得のいくようなお答えで、満足したいと思います。
  107. 増原恵吉

    政府委員(増原恵吉君) そこの点は、昨年からよく御承知の羽仁委員ですから、御理解になっていることと思っているのでありまするが、防御秘密保護法は、いわゆるMSA協定によってもらうものと、船舶貸借協定によってもらうものとの中で、アメリカ防衛秘密としているものを、わが国でも同程度秘密保護をしようということでありまするから、MSA協定でもらいまするものは、そうしてそれに秘密がある、これは秘密はごくわずかしかもちろんありませんが、これは船だろうが、飛行機だろうが、潜水艦だろうが、その他のものであろうが、MSA協定でもらうものはみな入ります。しかしフリゲートとか上陸舟艇というものは船舶貸与協定でもらったものでありますから、このMSAだけでは入りまん、従ってこの船舶貸与協宏で入れていただいた。その後にDD二隻、DE二隻、潜水艦一隻、掃海艇AMSを二隻もらっておりますが、これが若干おくれるかもわからぬという多少未確定のものがあるといことを申し上げたのであります。大きなものは来る見込みはございません。これは昨年の経過から申し上げますと、最初昨年の予算で十七隻もらうという予算出しました。途中でだんだん話し合いがうまくいきませんでかわりました。最初は十七隻というものを出しておったのでありますが、それが今申しました駆逐艦二隻、小型駆逐艦二隻、潜水艦一隻、それから掃海艇が七隻というふうに今なっているわけであります。あと多少掃海艇がくるかもわからぬ。従ってこういう艦艇貸与協定によってくれますものは、これはMSAでもらったのでもありませんし、船舶貸与協定でもらったのでもありませんから、現在のままでは防衛秘密は保護できない。従ってそれを、入れていただきたいということであります。
  108. 成瀬幡治

    委員長成瀬幡治君) 他に御発言がなければ、質疑は尽きたものと認めて御異議ございませんか。   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  109. 成瀬幡治

    委員長成瀬幡治君) 御異議ないと認めます。それではこれより討論に入ります。御意見のおありの方に賛否を明らかにしてお述べを願います。  なお、修正意見がありましたら討論中にお述べを願います。
  110. 中山福藏

    中山福藏君 私は本案に賛成いたします。  現在の、この世界の情勢を見ますというと、これほど不思議な現象はないと私は見ているのです。それは食うものと食われるものがともに平和を唱えている。食うものというのは原水爆というもうのを持っていて平和を唱える。食われるものは何にも武器を持たずに平和を唱えている。そしてその弱い者が、お前さんの持っている原水爆を廃止したらどうかと言っても一向開かない。そうして、弱い立場にある連中が、自分を守るところの自衛的な措置というものはごめんこうむりたいという叫びが相当強い。私は平和論者であります。しかし世界は世界連邦ができない限り平和はこないと見ている。これはから念仏なんです。そういう実態を把握していなければ、平和を説くことはできない。私は国会議員として、この世界の現状を頭に入れて考える場合においては、私は平和論者でありますけれども、どうしても自分の国を守るところの一つの問題については、秘密を保持する必要がある場合は、これはあくまでも秘密を守っていかなければならぬと私は考えております。私はですから本案に賛成いたします。
  111. 一松定吉

    ○一松定吉君 私はやはり同じく中山君のお考えのように、この法案は通過せしむべきものである、そしてこの法案に規定されておる艦艇秘密を保渡する必要があるという建前によって、これを通過せしめ、法律たらしめる必要があるという意味において賛成であります。
  112. 赤松常子

    赤松常子君 私は日本社会党第二控室を代表いたしまして。本案に反対いたします。三つの点を簡単に申し上げます。  それにまず第一に、昨年締結されましたMSA協定でございますが、この締結に際しまして、日本社会党は反対をいたしました。その理由をここで繰り返す要はないと思うのでございますけれども、まず第二に、日本の完全な独立を妨げるという意味、それからその次に、必要以上の軍備を増強するということになって、民生の安定が圧迫になるという立場から、MSA協定に反対いたしたのでございます。そういう親和法律に反対いたしました次第ですから、それに付随して結ばれる協定には反対せざるを得ない、それが第一でございます。  それから第二点は、先ほどもちょっと質問申し上げたのでございますが、秘密の物件の決定というものがすべてアメリカにあるということについて、日本の自主性といううものも認められていない。いろいろ技術の向上やその他の問題に対しましても非常に不満足なものが感ぜられる次第でございますので、そういう点を反対の第一の理由といたします。  第三は、だんだん今お尋ねいたしまして、拡大の見通しがないとおっしゃっておりますけれども、今後の見通しでいろいろこれからこういう秘密主義というものが拡大されると思うのでございます。そういうことは口にしてもいけない、また文字に現わしてもいけないということにこれから拡大されるおそれがあると思うのでございまして、言論の自由は圧迫されるようなことになりかねないとも思う次第でございますので、以上の三点に立ちまして反対を表明する次第であります。
  113. 羽仁五郎

    羽仁五郎君 私は、本法案に反対するものであります。  反対の理由を簡単に述べます。反対の理由は四つございますが、第一は、秘密によって、いわゆる防衛秘密というようなものによって国を守ろうとする考えは、もう過去の考え方である。現在国際的にそれぞれの国が自分の国の安全と幸福を守ろうとするのは、区々たる防衛秘密によるものではないというそういう時代に、新しい進歩に逆行しているからであります。かつそれには、いろいろな弊害を伴います。すでに本法律案審議の際にもスパイというふうな言葉が用いられておりました。最近アメリカなどにおいて、特にオッペンハイマーのような高潔な学者までがそういう疑いを受けるということで、世界がこれを問題にしているように、この防衛秘密というふうな考え方は、やがて独立的な判断を持ち、そして独創的な理想を持っている人たちを圧迫するおそれがあるということは、イギリスなどの世論においても、強く叫ばれているところであります。これが第一の反対理由であります。  第二の反対理由は、現存御承知のように、原子力の学問上の研究というものは、実に急速なものがありまして、その原子力に関する学問上の進歩に比すれば、区々たる小さな、いわゆる本法が対象としているような防衛秘密というものは、およそどれだけのつまり意味を持つものであろうか、そういう点からも小さな秘密をとり立てて、そして国民権利制限するということは、全く妥当でない。  第三の反対理由は、原子力の場合に明らかにされておりますように、原子力の場合でもできるだけ秘密は作くらないように、科学の進歩を阻害しないようにしていこうということは、妥当なる世論となっております。で、そのために世界の科学者が、そういう努力をしておられるとすれば、国際的な科学の進歩に、またなかんずく日本国内の科学技術進歩という点からも、区々たる防衛秘密を増大されることは、百害あって一利がない、先ほど質問の過程においても、それは明らかになっておりますように、防衛科学研究所などの研究というものも、かえって防衛秘密というふうなものがあるために、一面においては、それに頼る、他面においてはだんだんそれを乗り越えようという努力が十分なされない。こういう意味から、いわゆる哲学上の原則として秘密を作るものは歴史に逆行するものである。歴史は刻々に秘密秘密でないものにしていくことが歴史の進歩である。こういう原則からも本法は妥当でない。  最後に、しかも政府の行政上の必要によって秘密を保護されたいとお考えになる部分はおありになるで、しょうが、それは内部の規律によって十分守れるものである。で、いかにしてそれが守れるかということは、質疑の過程において私は明らかにしたつもりであります。大して多くのものを借りるわけではない、かつまたそれが始終破損するものでもない。従って、それを内部修理せられるということならば、民間会社に出す必要がない。そういうことで、十分内部で守れるはずである、それを外部まで、国民権利制限して拡大されるということは妥当でない。  以上、四つの理由から本法案に反対するものであります。
  114. 剱木亨弘

    ○剱木亨弘君 私は、自由党を代表しまして本案に、この改正案に賛成をいたします。  その理由はきわめて簡単でございまして、日米相互防衛援助協定等に伴う秘密保護法の一部を改正する法律は、自由党内閣のころにおきまして制定したものでありますし、なお今回改正されようといたします。日本国に対する合衆国艦艇貸与に関する協定も、自由党内閣当時において上程議決されたものでありまして、これが今回秘密保護法の中に加えられるのは当然の解釈いたしますので、自由党はこの点をもって賛成をいたすものであります。
  115. 成瀬幡治

    委員長成瀬幡治君) 他に御発言もないようでございますが、討論は終局したものと認めて御異議ございませんか。   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  116. 成瀬幡治

    委員長成瀬幡治君) 御異議ないものと認めます。  それではこれより採決を行います。日米相互援助協定等に伴なう秘密保護法の一部を改正する法律案を問題に供します。本案を原案通り可決することに賛成の方は挙手を願います。   〔賛成者挙手〕
  117. 成瀬幡治

    委員長成瀬幡治君) 多数でございます。よって本案は多数をもって原案通り可決すべきものと決定いたしました。  なお、本院規則第百四条による本会議における口頭報告の内容、第七十二条による議長に提出すべき報告書の作成、その他自後の手続につきましては、これを委員長に御一任願いたいと思いますが、御異議ございませんか。   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  118. 成瀬幡治

    委員長成瀬幡治君) 御異議ないと認めます。さように決定いたしました。  それから報告書には多数意見者の署名を付することになっておりますので、本案を可とされた方は順次御署名を願います。  多数意見者署名     井上 清一  一松 定吉     廣瀬 久忠  宮城タマヨ     小幡 治和  剱木 亨弘     伊能繁次郎  佐藤清一郎     岩沢 忠恭  中山 福蔵     —————————————
  119. 成瀬幡治

    委員長成瀬幡治君) ちょっと速記をとめて下さい。   〔速記中止〕
  120. 成瀬幡治

    委員長成瀬幡治君) 速記を起して下さい。  本日はこれをもって散会いたします。    午後四時五分散会      —————・—————