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1955-07-21 第22回国会 参議院 法務委員会 第19号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和三十年七月二十一日(木曜日)    午後零時四分開会     ―――――――――――――    委員の異動 七月二十日委員山本經勝君辞任につ き、その補欠として河合義一君を議長 において指名した。     ―――――――――――――  出席者は左の通り。    委員長     成瀬 幡治君    理事            泉山 三六君            剱木 亨弘君            宮城タマヨ君            市川 房枝君    委員            中山 福藏君            廣瀬 久忠君            河合 義一君            赤松 常子君            一松 定吉君            羽仁 五郎君   政府委員    防衛政務次官  田中 久雄君    防衛庁次長   増原 恵吉君    防衛庁長官官房    長       門叶 宗雄君    防衛庁装備局長 久保 龜夫君    法務政務次官  小泉 純也君    法務省矯正局長 渡部 善信君   事務局側    常任委員会専門    員       西村 高兄君    常任委員会専門    員       堀  眞道君   説明員    大蔵省主計局主    計官      大村 筆雄君     ―――――――――――――   本日の会議に付した案件 ○少年院法の一部を改正する法律案  (内閣提出衆議院送付) ○日米相互防衛援助協定等に伴う秘密  保護法の一部を改正する法律案(内  閣提出衆議院送付)     ―――――――――――――
  2. 成瀬幡治

    委員長成瀬幡治君) これより法務 委員会開会いたします。  まず、少年院法の一部を改正する法 律案議題に供します。本案について 質疑のおありの方は、午後一時半の再 開からお願いすることにいたしまし て、暫時休憩をいたします。    午後零時五分休憩      ―――――・―――――    午後二時八分開会
  3. 成瀬幡治

    委員長成瀬幡治君) これより法務委員会を再開いたします。  少年院法の一部を改正する法律案議題に供します。本案について御質疑のおありの方は御発言を願います。
  4. 宮城タマヨ

    宮城タマヨ君 お忙しいところをおそれ入りましたが、責任をもってお答え願いたいとお願い申し上げておきます。  一体昔から法務省行刑局は、これは特殊扱いをされておりましたように伺っております。その行刑局は今度矯正局に変りまして、その中にこの虞犯少年犯罪少年を含んでおりますところの少年院が、矯正局の管轄内に入っております。ところがこれはどうも大蔵省で非常に認識が不足のように私ども思っておりまして、いろいろな困った問題が出てきておりますので、今日は一つはっきりお答えを願いたいと思います。それは少年たちが非常にまま子扱いされているのじゃないかということ、つまりいい子でございませんから、まあどうしてもあと回しあと回しになるということでございますが、これは国家立場から申しましても、私どもこういう子供を作ります国家自体責任を持たなければならないという立場におきまして、もっと認識を改めていただきたい。ということは、つまり予算をもっといただきたいという点でございます。そこで一、二伺いたいのでございますが、実は今度ひどく問題になっております少年院法の一部改正子供手錠をはめるという問題が起っておりますので、いろいろ研究してみましたところが、今度新たに法律によって手錠をはめるのでなくて、実際は手錠をはめているという現状でございます。しかもこれが重大問題とわれわれが思います点は、十四才以上の子供にも手錠をはめておりまして、そうしてその件数を見ますというと、何と一年間に一万何千件と手錠を使っておるということが、政府の資料の提出によってわかりましたのでございます。これは実に私はゆゆしい問題だと思うのでございます。たとえどろぼうの子供でございましょうといえども法律規定もないのに手錠をはめておりますということは、これは安易な道をたどっておるのじゃないかというところに私は落ちると思って、その点をいろいろ政府に追及いたしましたところが、ここにまた大蔵省責任を持っていただかなければならない問題が起りました。それは第一に、職員の数が足りないということ、聞いてみますというと、今年の予算で見ますと、子供九人に対してたった一人の教官がつく割合に滅されております。以前は五人に対して一人ということになっておりまして、実行されておりました。ところが実際少年院に入ります子供の数はふえるし、教官あるいは事務官というものが減ってくるということになりますというと、これはけしからぬことではございますが、手錠をはめたり、最後には私は捕縄でもかけて子供をがんじがらめにしなければ成敗ができんということになりますというと、これは全く人権じゅうりんもはなはだしいもので、理屈を言うならば憲法違反になるのじゃございませんかと思っております。そこで一つ法務省が出されますところの予算については、これは矯正教育でありといえども教育でございますから、あすの国家を背負ってくれます子供教育のことでございますから、一つ考え願いたいと思いますが、御当局の御所見をお述べ願いたいと思います。
  5. 大村筆雄

    説明員大村筆雄君) お答え申し上げます。ただいま宮城先生の御質問の点、はなはだごもっともでございまして、私どもかねてから法務省所管の問題についてこれは国家行政基本に属するものでございますから、特に重要視いたしまして、特別の関心を払って慎重に予算の計上に努めておるつもりでございます。たとえば先ほど少年院の人の問題も出ましたのですが、これにつきましてはここ数年収容人員は、実は横ばいでございますが、昨年度の少年院脱走事件その他の点にかんがみまして、人手も足りないという問題もございますので、三十年度予算は特別的に二百人ほど人をふやして計上しておる本のでございます。しかしながら教育関係、たとえば教室の整備とか、あるいは教育資材充実、あるいはまた職業教育充実、こういう面につきましても、特別に本年度予算では配慮いたしまして予算の増額をいたしました。あるいはどうしても教官の手で足りないというものにつきましては、外部の人に特別に補導をお願いするというような特殊面接員の利用につきましても新たに本年度予算に計上することをしました。ことに、少年院につきましては、先生のおっしゃる趣旨になるべく沿うように、大蔵省としてできるだけ予算を計上しておるつもりでございます。
  6. 宮城タマヨ

    宮城タマヨ君 時間がございませんから、まことに私も十分に伺うことはできませんけれども施設あるいは人員等について、若干お考え願いましたという点などもよく調べてみますというと、人員もまあ差引百人くらいふえているだけで、これは子供増加に比べますと問題になりません。それから施設等でございますけれども施設が完備するということは、刑務所式にするということではございませんと思います。私はやはりこれは教育的な施設をし、そして教官にはほんとうにいい人を得て、教育の場としてふさわしいあり方にしていただきたいということを重ねてお願いしておきます。  ことに、私は今まで考えられていなかったわけでもございませんけれども、ああいう子供たちでございますから、せっかく就職いたしましても、雇い主に被害を加えるといったようなことがずいぶんたくさんの件数出ておりまして、たかにしましてもかなりのたかがございますかと思いますが、そういうことに対して国家はいつもほおかぶりをして、その支払いはどこにしわ寄せされておるかというと、これは雇い主であるとか、世話をしめんどうを見てくれている保護司にこの迷惑がかかっておるわけでございますが、いかなる方法国家賠償をするか、これは予算を要することでございますから、あと回しになっておることでございますが、その問題、それから中間施設の問題、それは特別のああいう所で生活をしておりました者をすぐ社会に出しますからこそ、社会に順応することができない、今私の言っておりますのは、刑務所のことでなくて少年院のことでございますが、この少年院から社会に送り出します中間施設を、どうしても国家がこれを作らなかったら、せっかくの少年院の仕事も私は効果が上らないと思っております。しかしこれには非常に金が要ることでございますが、中間施設国家でもってやっていただきたいということ、それからまた重大な問題は、保護関係します保護司手当でございます。昨年から金額にしてごくわずかな、それこそ蚊の涙、ノミの涙ぐらいな手当が出ておりますが、一昨年あたり一年間のお礼としてたった四百五十円位の予算が組まれております。これは国家としてまことに私は恥かしいことだと思う。むしろその金は要らないから、ほかの方法は講じられないかと申したことなんでございますが、この保護司は今五万人にはまだ足りておりませんが、その五万人の方たちが、もしも保護観察を返上すると言ったら、一体国家国民は安心して一晩でも寝られないだろうということを一つ大蔵省考えていただきまして、こういう人たちだから、もうつつ込んでおけばいいというような考え方でなしに、一番つっ込みやすいまあ彼らの命くらいはどうでもいいと政府はお考えになるかもしれませんが、そういうところこそ、すぐに一つ予算措置も、まずこの際十分にしていただきたいということをお願いいたしましておきたいと思うのでございます。
  7. 大村筆雄

    説明員大村筆雄君) お答え申し上げます。先ほど申しました通り、できるだけ少年院の問題につきましては乏しい予算の中でも、不満足ながらできるだけのことをするように配慮いたしております。なお、全体的に見ますと、不十分な点が多々あるかと存じますが、こういう点につきましては、今後できるだけ予算的措置も講じて、よくしていくようにしたいと、かように考えております。
  8. 宮城タマヨ

    宮城タマヨ君 最後に一言、今度子供手錠をはめるということも、現状ではどうもやむを得ないというところで、残念ながら、残念ながらでございますが、政府原案通りもう目をつぶるより仕方がないかと思っておりますが、この点につきましてもどうか一日もこういうことを早く取り去るように、職員増加、あるいは職員内容につきましても、また職員研修等につきましても、要する費用を十分お出しいただきたいと、これはお願いでございます。
  9. 大村筆雄

    説明員大村筆雄君) 御要望の点は、十分体しまして善処いたします。
  10. 羽仁五郎

    羽仁五郎君 一言申し上げておきたいのですが、ただいまの宮城委員の御質問大蔵当局はやはりまだ十分御了解がないのじゃないかと思います。それで主計官に向って政治上の責任のある答弁を求めることは無理ですから、お伝えを願いたいのですが、そうして実際上それに納得せられた場合には、そういう措置をとっていただきたいのですが、少年犯罪を犯した場合に罰せられるべきものは少年であるのか、国家であるのか、現行法では少年であるとはなっていないのであります。すなわち、趣旨においては罰せられるべきものは国家なんです。ですから、少年院に関する予算というものは、そういう少年国家が作ったことについて、国家が支払わなければならない罰金に類するものなんです。ですから、予算をお考えの上で、少年院関係予算というものは、国家が払う罰金に類するものだということをお考えになれば、少年院予算法務省から要求せられたものが、そのまま大蔵省で承認せられることが当然だろうと思う。もしそれをお払いにならないならば、大蔵大臣罰金を払わないということにほかならない。そうすれば、一般にはどういうことになるか。ですから、予算性質がかなり違うのです。これは少年院法をよくごらんになればおわかり下さることですから、そこで大蔵大臣にどうかその点をお伝えいただきまして、願うことならば、つまり現在審議中なり、あるいはすでに決定した予算範囲内でも、法務省の方で少年院関係して予算の復活なり、考慮なりを要求せられる場合には、それに応ぜられるということが当然だろうと思います。いわんや来年度の予算においては、当然これをお認めになるということが当然だと思う。もししからずという御意見であるならば、その根拠を示されたい。その根拠は、客観的にながめて、ないのです。ですから、罰金を払うという気持で、どうか予算の観念の上で、少年院に関する予算というものは特別の性質を持っている。ですから、今お話しのように乏しい予算の中で何とか御努力になるという程度のものではないのです。そんなことをおっしゃれば、世間の一般に貧乏な人は罰金を払わない。ですから、そういう点ではない、もう少し違う観点からお考えを願いたいということをお伝えを願いたいのであります。あなたのお答えになれる範囲お答えをいただければありがたい。
  11. 大村筆雄

    説明員大村筆雄君) ただいまの羽仁先生の御意見につきましては、十分大臣にじかにお伝えしたいと思います。御質問内容の点につきましては、これは法務当局ともよく御相談いたしまして、できるだけのことをいたします。
  12. 成瀬幡治

    委員長成瀬幡治君) 他に御発言もございませんようですから、質問は尽きたものと認めて御異議ございませんか。   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  13. 成瀬幡治

    委員長成瀬幡治君) 御異議ないと認めます。それではこれより討論に入ります。御意見のおありの方は、賛否を明らかにしてお述べを願います。なお修正案がありましたら、討論中にお述べを願います。
  14. 宮城タマヨ

    宮城タマヨ君 私は本案につきまして、ここに修正案提出いたしたいと思っております。それは    少年院法の一部を改正する法律案に対する修正案   少年院法の一部を改正する法律案の一部を次のように修正する。   第十四条に三項を加える改正規定中第二項を次のように改める。  2 在院者逃走した時から四十八時間を経過した後は、援助を求められた警察官が連戻しに着手するには、裁判官のあらかじめ発する連房状によらなければならない。  それでこの修正理由でございますけれども少年院少年鑑別所職員は、在院及び在所中の少年親権者ともなり、またその保護者にかわるべき者でございまして、このような職員逃走中の少年を連れ戻しますのに判事令状を要するということはまことにおかしなことで、親がわりでございますから、責任と愛惜とを持って、もうできるだけ早い期間に逃れ帰したいと努力するのは、これはあたりまえなことだと思っております。また現状から申しましても、いろいろ参考人なんかから聞きました上でございますが、判事令状を持ってということにしないで、現状のままでよろしいだろうと、しかもどうしても悪条件の中に少年が入り込んでおりまして、手ごわいというような場合には、今回の法律によりまして警察官を使えば、幾らでもできます。これは特別な場合のみでございますから、特別な処置として警察官をしてさせれば、十分に事が足りると思っておりまして、本来の少年法及び少年院法精神に基きまして、逮捕状を要求する者は警察官のみに限るという修正をいたしたのでございます。  それから第二でございますが、この第十四条の二「在院者逃走、暴行又は自殺をするおそれがある場合において、これを防止するためやむを得ないときは、手錠を使用することができる。」というこの条文でございますが、これはまことに忍びがたい新たな問題を子供に課せられるような気がいたしましたのでございます。賛成しがたいのでございますけれども、しかし現状におきましてはまたやむを得ない事情でございますので、これはただいまも大蔵当局にお願いしましたように、予算を十分に獲得して、少年院施設、あるいは職員増加職員の質の向上をはかってもらうといったようないろいろな根本問題がございますので、まあ現状におきましてはやむを得ないというところにおりて参りました。しかし、野放しにすることはできませんから、これに附帯決議をつけたいと存じました。その附帯決議を読んでみます。     附帯決議   政府は、少年院及び少年鑑別所少年の健全な育成を期し、これに矯正教育を授けることを目的とするものであることにかんがみ、その処遇にあたっては、慈愛を旨とするべきであって、手錠の使用は、必要な最小の限度に止め、少年を受刑者視して、いたずらにやすきについてみだりに手錠を使用し、少年法精神にもとることなきよう厳にいましむべきである。右要望する。 という決議案をつけたいと思っておりますが、どうか皆様方の御賛成をお願いいたしたいのでございます。
  15. 羽仁五郎

    羽仁五郎君 ただいま議題になっております本案並びに修正案に対して反対せざるを得ないことをはなはだ遺憾に考えるのであります。ことに宮城委員提出修正案は、本案審議の過程において宮城委員が非常な御尽力をなさいまして、手錠の問題についても、少年院において手錠を使用するということを認めないという修正案も、宮城委員はお考えになったようでありますが、いろいろな事情からその手錠については修正が行われないで、連れ戻しについてだけの修正がなされたのであります。私はこの手錠修正宮城委員によってなされましたたらば、その修正案賛成をいたしたいというように考えていたのでありますが、その修正宮城委員の最大の御努力にもかかわらず提案されませんでしたので、本案並びに修正案に対して反対をするものであります。  反対班田は常に質問の際に明かに述べておきましたのでこの際省略させていただき、また本会議にいて反対討論の際に申し上げる機会を持ちたいということを考えております。
  16. 赤松常子

    赤松常子君 私はこの宮城委員の提案なさいました修正案に、涙をのんで賛成をいたします。  年端のいかない不幸な子供たち、それはみんな社会国家の愛情の足りないところに、その犠牲者として発生いたしております。そういう子供たちのことを考えまして、いろいろ教育をし直し、国家責任においてそういう子供たちをよりよく育てていかなければならない少年院に、手錠や何かというものをことさらまた持ち出さなくてはいけないということの責任を深く政府考えなければならないものだと思います。法務当局の方々にくれぐれもお願いいたしますが、早くこういう手錠などを法律の表面から抹殺できるような、充実した施設、それから職員増員等が十分行われますように、一そうの御努力関心を要望いたす次第でございます。  私はそういう意味におきまして要望いたしましてこの修正案賛成いたします。
  17. 成瀬幡治

    委員長成瀬幡治君) 他に御意見もないようですから、討論は終局したものと認めて御異議ございませんか。   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  18. 成瀬幡治

    委員長成瀬幡治君) 御異議ないと認めます。  それではこれより少年院法の一部を改正する法律案について採決をいたします。まず討論中にありました宮城提出修正案を問題に供します。宮城提出修正案賛成の方の挙手を願います。   〔賛成者挙手
  19. 成瀬幡治

    委員長成瀬幡治君) 多数でございます。よって宮城提出修正案は可決されました。  次に、ただいま可決されました修正部分を除いた原案全部を問題に供します。修正部分を除いた原案賛成の方の挙手を願います。   〔賛成者挙手
  20. 成瀬幡治

    委員長成瀬幡治君) 多数でございます。よって本案は多数をもって修正すべきものと議決せられました。  次に、討論中に述べられました宮城提出附帯決議案議題にいたします。宮城提出附帯決議案を本委員会決議とすることに賛成の方の挙手を願います。   〔賛成者挙手
  21. 成瀬幡治

    委員長成瀬幡治君) 全会一致と認めます。よって宮城提出附帯決議案は、全会一致をもって本委員会決議とすることに決定いたしました。  なお、本院規則第百四条による本会議における委員長口頭報告内容、第七十二条により議長提出すべき報告書の作成、その他自後の手続は、委員長に御一任願いたいと思います。御異議ございませんか。   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  22. 成瀬幡治

    委員長成瀬幡治君) 御異議ないと認めてさように決定いたしました。  それから報告書には多数意見者署名を付することになっておりますから、本案を可とされた方は、順次御署名を願います。   多数意見者署名     市川 房枝  河合 義一     赤松 常子  宮城タマヨ     中山 福藏  泉山 三六     一松 定吉  剱木 亨弘     晴瀬久忠
  23. 小泉純也

    政府委員小泉純也君) ただいま宮城委員から提出されましたる附帯決議が、全会一致をもって御可決に相なったのでございますが、政府といたしましては、この決議趣旨を十分に尊重いたしまして、御趣旨に沿うように全職員にこれが趣旨を徹底せしめ、本委員会における決議をば、実行に移すように最善の努力をするということをここに申し上げておきます。
  24. 成瀬幡治

    委員長成瀬幡治君) 速記をとめて下さい。    午後二時二十七分速記中止      ―――――・―――――    午後三時十五分速記開始
  25. 成瀬幡治

    委員長成瀬幡治君) 速記を起して下さい。  次に、日米相互防衛援助協定等に伴う秘密保護法の一部を改正する法律案議題に供します。  本案について質疑のおありの方は御発言を願います。
  26. 羽仁五郎

    羽仁五郎君 これは政府当局から、自衛隊並び防衛庁内部方針として本案関係しまして根本問題について一言伺っておきたいのですが、現在設置されておりますような自衛隊というものが、過去の軍国主義の復活になっては大へんだと、これは国民の非常に心配している点でありますし、当局においても十分その点については油断はおありにならないと思うのですが、しからばどうしてそれを防ぐのですか、どういうふうにして、今当局は現在の自衛隊あるいは防衛庁というものが過去の、過去といいますか、およそ軍国主義の方向にいくことを、いかにして防いでおいでになるか、それを伺っておきたい。
  27. 田中久雄

    政府委員田中久雄君) 羽仁委員の御心配になりますことは、私どもと同様でございまして、現在の自衛隊が過去の軍閥のような発展をするということは、いかなる努力をしてもこれは防がなければなりません。現にこれにつきましては、法制上もいろいろな制限が加えられておりますし、将来ともこの方針政府においても堅持して参るつもりであります。
  28. 羽仁五郎

    羽仁五郎君 その軍国主義が発生することを防ぐためにどういう方法をとっておいでになるか、具体的にその要点についてお示しを願いたいと思いますが、今の政務次官お答えで、その根本方針をお示しいただいたので満足をいたしますが、そういう根本方針をどういう要点において絶えず御努力になっておられるか、その点をさらに政務次官御自身か、そうでなくてもけっこうですが、要点をお示し願いたい。
  29. 田中久雄

    政府委員田中久雄君) これにつきましては、最初から当っておられる増原次長から詳しく具体的に申し上げたいと思います。
  30. 増原恵吉

    政府委員増原恵吉君) ただいまの防衛庁自衛隊は御承知のように、いわゆる軍事というふうなものが特別に分れた形をとっておりません。行政というものの純粋な一部、内閣総理大臣内閣を代表して最高の指揮監督をするということに相なっております。そうして、法文の中にそういう言葉は使ってございませんが、政治優先という形をそこで確保されておるわけでございます。政治防衛自衛というふうな問題を完全にその把握下におきまして、国の行政、民生安定、文化の向上、産業の発達等とにらみ合いまして、適切な自衛防衛の分野を持っていくということが、基本法制上の建前に相なっておるのは御承知通りでございます。防衛庁の中におきましては、防衛庁長官は文民たる国務大臣が当ることに法制上相なっておるわけでございます。そうして、この長官を補佐いたしまして、方針等長官がきめまする際、その補佐に当りますものは内局と申すのでございます。これは平時であれば、いわゆる背広を着ておる連中が基本的な事項について長官を補佐いたします。自衛隊制服関係、いわゆる防衛ということに関しましては、陸上、海上、航空の三幕僚長がございまして、これは制服でございます。しかし、この制服の幕僚長が陸上それから海上、航空自衛隊に対しまして行いまする監督は、すべて長官の命令を執行をするという形でございます。陸上幕僚長が自己の権限としての命令権を持たないという法制上の建前をとっております。命令を出しまする者は長官一人でございます。その長官の命令を執行をする陸上自衛隊については、陸上幕僚長、海上自衛隊については海上幕僚長、航空自衛隊については航空幕僚長が長官の命令を執行する。そうして、もとより陸上幕僚長、海上幕僚長、航空幕僚長は、それぞれの自衛隊については、いろいろ方針的なことを考えるわけでありまするが、この方針を行いまする際には、長官のいかなる場合においても承認が要る、その承認を長官が行われまする際は、内局の私たちが補佐をするという形で行なっておるわけでございます。そうして隊員が入隊をいたしまする際に、宣誓をいたしまする事項の中にも、人格を尊重して、国の安全を守るために挺身をするという言葉を入れておるわけでございます。平素の教養、訓練におきましても、国を守るということが自衛隊の使命てあるわけでありまするが、その使命を実行する際の部隊の上命下従の関係を厳重に訓練をいたしまして、いやしくも下剋上等の風のないように、そういうことがやはりおもしろくない派閥的な関係を生ずるもとになりますので、そういう点については十分厳重に戒心をいたしまして、教養、訓練に当っておるということでございます。
  31. 羽仁五郎

    羽仁五郎君 今御説明をいただきましたのは、この武器を有する一定の国家機関の集団が、軍国主義的なものにならないよう保障の一部分だろうと思うのでありますが、それ以外にも重要な問題がありはしないかと思いますが、御説明下さいました点だけについて一言伺っておきたいのですが、いろいろお述べになりました要点ですね、たとえば一言にして言えば、政治優先長官の文民の点、それからその文民の解釈というもの、最近何か、われわれが新聞などで伺うところでは、少しずつ変化があるように思われるのですが、具体的に当局としてはそういう変化が起りつつあるというふうにお認めになるのですか、そういう変化は全然起っていないというふうにお考えでしょうか。ただいまの御説明では創立当時といいますか、従来の方針をお述べになったので、少しも変っていないようですが、最近幾分変化があるのじゃないか。たとえば文民の解釈については、法制長官などの解釈も、われわれ従来了承しているところとは少し違うようなことを伺ったようで、御存じのように当時日本に軍人のいない時代、文民という規定をした以上は、前の経歴において軍人であったという人は文民というような概念に入っていなかったのは当然でしょう。しかしそうでない、しかりとするならば、当時文民と規定したことはおかしいですが、そういうふうな疑義を生じていますが、それらをひっくるめて今の御答弁に御変更はないものというふうに了承していいのですか、どうですか。
  32. 増原恵吉

    政府委員増原恵吉君) 文民という言葉の解釈につきましては、先だって法制長官お答えをしたところで御了解を願いたいと思いますが、この解釈はたしか前の吉田内閣時代に、前の法制長官佐藤君が行いました解釈と同様であったように私は記憶いたしているわけでございます。私どものこの警察予備隊として発足をいたしましてからは約五年になりますが、陸の方は警察予備隊、保安隊になり、自衛隊になりまして、途中で海が始まり、空が始まったわけでございますが、基本的な考え方といたしましては、いわゆる政治優位という原則に立っていく、国の行政の一部として国の全体の発展をこいねがう、その調和のとれた自衛力を持っていくという考え方は変りはないと存じます。
  33. 羽仁五郎

    羽仁五郎君 先ほど私はただいまの当局の御説明に異論があるのじゃないかというふうに申し上げましたが、それは失言であったかもしれませんから取り消しますが、それではお伺いいたしますが、文官優位という中には、自衛隊、あるいは防衛庁というつまり武器を持った集団、国家機関としての集団が、絶えず議会の厳密な監督のもとになければならないということを含んでいますか、どうですか。もし含んでいるとするならば、なぜそれを先御説明がなかったのですか、ちょっと心配になりますので伺っておきたいと思います。
  34. 増原恵吉

    政府委員増原恵吉君) これは行政の一部と申し上げたので、そこで当然含まれていると思って申し上げなかったのでございます。国会の厳密な監査、監督のもとにあることは当然だと思っております。
  35. 羽仁五郎

    羽仁五郎君 私はこの国際的にもただいまの点をぜひ常に明らかにされたいとこいねがうものなんです。最近国際的には西ドイツにおいて、その軍隊あるいはそれに近いものが成立をしかかっておりますが、それについてイギリスの世論は、やはりそのドイツにおいては日本と同様に過去において軍国主義の伝統が非常に強かっただけに、ややともすれば現在作られる民主的な武力というものが、軍国主義のまた復活へ導くおそれが多分にある。それを防ぐ最高のそうして唯一の方法は、常にそのそういう武装集団機関としての武装集団が、厳格に議会の監督のもとにあるということは、そうしてどんなこまかいことであっても、常に議会が監督するかしないかによって、軍国主義が発生するかしないかが分れるのであります。イギリスにおいてはそういう努力を議会が怠らず、またイギリスの軍隊がそういう議会の監督を喜んで受けているので、軍国主義が発生しないのであります。ドイツなどにおいてはそういうことが実際に行われるには非常な努力を要するであろうが、その努力が必要だということは、これはマンチェスターガーディアンが主張しておりました。私は非常にこれは傾聴すべき議論だと思うのでありますが、日本においてもそういう努力をするには、今のような点で自衛隊なり防衛庁なりが、絶えずこまかい点に至るまで原則から微細な点に至るまで、常に議会の厳格なる監督のもとに立つということは、今日までのところ果して行われているというようにお考えなのか、また将来も今日以上にそういう点で当局の方は御努力なさるおつもりでしょうか。われわれは国会の方でそういう努力をするつもりですが、ただいまの点につきまして一つ当局の根本的な立場をここで明らかにしていただきたいと思います。
  36. 増原恵吉

    政府委員増原恵吉君) その点は現在の日本の憲法、法律基本法の建前から私は疑いのないところであると思います。私ども防衛庁自衛隊法律によって設定をされ、昔は軍令というものがありまして、相当重要な事項が軍令という形で制定をされたことは御承知通りであります。現在はすべて法律によって委任された政令その他によってできておるわけでありまして、法律に基いて発生をし、動き、監督をされるということでございます。私ども現実の問題としましても、国会の各委員の方々にしばしば自衛隊を視察に、あるいは防衛庁に視察においでを願っております。私どもこれを大いに喜んでおるわけでありまして、熱心にごらんを願ってときどき相当こまかい点についても御批判をいただいておりまして、これを尊重して私ども努力をいたしておるわけであります。そうした点について昔の日本の軍隊のような傾向が生れる基盤というものは、私は完全に払拭できておるというふうに考えます。
  37. 羽仁五郎

    羽仁五郎君 先ほど宣誓についての御説明がございましたが、宣誓の内容はどういう内容を現在やっておられますか、伺いたいと思います。
  38. 増原恵吉

    政府委員増原恵吉君) 自衛隊法の五十二条に服務の本旨ということで規定をいたしております。「隊員は、わが国の平和と独立を守る自衛隊の使命を自覚し、一致団結、厳正な規律を保持し、常に徳操を養い、人格を尊重し、心身をきたえ、技能をみがき、強い責任感をもって専心その職務の遂行にあたり、事に臨んでは険を顧みず、身をもって責務の完遂に努め、もって国民の負託にこたえることを期するものとする。」、この言葉を取りまして宣誓文といたしておるのでございます。
  39. 羽仁五郎

    羽仁五郎君 ただいまお読み上げになりました宣誓の法律的な根拠はどこにあるのでしょうか。
  40. 増原恵吉

    政府委員増原恵吉君) 法律根拠という……、この宣誓をしなければならぬということを五十三条に隊員は総理府令の定めるところにより服務の宣誓をしなければならないというように書いてあるわけでございます。
  41. 羽仁五郎

    羽仁五郎君 先ほどの御説明の中に行政機関の一部という性質が現在の自衛隊防衛庁の本質である。で最初から軍隊として発足したものでない、今日においてもそうでない。そういう御趣旨であるとすれば、公務員でありますから、公務員に対する宣誓というものと、それから今お読み上げになりましたのとはだいぶ逸脱している点があるのじゃないか。ですから公務員の一般的な宣誓に、これは防衛庁法などのときにも連合委員会で私の意見は述べておいたのでありますが、特別な宣誓をするということは、憲法に果して許していることであるかどうか。一般公務員ということであるならば、公務員としての宣誓をせられるということはありましょうが、今御説明の中にある「危険を顧みず」ということでありますが、それは先ほど御説明になりました人格の尊重というようなことと場合によっては矛盾する場合も生じてきはしないか。従ってその宣誓を受けられる隊員の方々が、この宣誓を受けられるときに、どういう点に問題があるかというと、やはり憲法なり、あるいは一般公務員なりの宣誓の範囲を越えておりますと、その宣誓を受けられる隊員がどうしても良心に基いて宣誓をなさらないことが起りはしないか。つまり少し無理な宣誓ですから、宣誓はするけれども、果してほんとうに自分がそういう宣誓を守り得るかどうということには疑惑を抱きはしないか。そういうことから人格の尊重という根本原則をくずしてくる。そういう意味から質問を申し上げるのですが、これは私が今伺った宣誓書の内容については、すでにそのまま問題ないというふうにお考えでしょうか、それともさらにまだ御研究の余地があるというふうにお考えでしょうかどうでしょうか。
  42. 増原恵吉

    政府委員増原恵吉君) 公務員には御承知のように一般職の公務員と特別職の公務員がございます。自衛隊員はこの法律に基きまして、防衛庁法、自衛隊法に基きまして特別職の公務員、一般職の公務員法を準用しておる部分はありますけれども、この法律に基いて任用をされる特別職の公務員でございます。従いましてこの法律にこういう自衛隊員というものは宣誓をしてこういうことを守る公務員であるということが定められておるわけでありまして、これは憲法上差しつかえないと解釈をいたしております。
  43. 羽仁五郎

    羽仁五郎君 その点についてもなお常に御検討をお願いしたいと思うのでありますが、というのは、私今こまかい議論はいたしませんけれども、憲法が基本的人権を保障しておりますのは、やはり国民がその意思に基かない行動を強制されることはないというのが大前提でありますから、宣誓書の内容があまりいろいろな点にわたってゆきますと、どうしても本人の意思に、自由な意思というものに圧迫が加ってくる場合を防ぐことができません。ですからかりに形式上には一種の特別の契約に基く公務員でありますから、その契約内容を了承の上で、その契約に応じている。というようなことは一応通りますけれども内容的にはやはり軍国主義の復活ということの心配がそこからも出てくるのでありまして、隊員の自由なる意思というものが常に圧迫され、強制によって内部の規律が保たれているという面が過大になるということは非常に危険なことだと思います。従ってさっきお述べになりました宣誓書の内容にも私は問題があると思いますが、今当局では問題がないというふうにお考えかもしれませんけれども、さらに御検討を願っておきたいと思います。その趣旨は先ほど申し述べましたから重ねて申し述べませんが、これは問題がないというふうに考えないで、絶えず検討を怠らないという御態度を願えるかと思いますが、どうでしょうか。
  44. 増原恵吉

    政府委員増原恵吉君) 一般公務員にいたしましても、公務員になります際には公務員として守るべき服務の大要があるわけであります。公務員でない者と公務員である者とは違うわけでございます。職務上の秘密を守る義務というふうなものは、公務員でなければないわけであります。そういうおのずから服務に従いまする義務というものは、私はどうしてもできると思うのであります。そういう意味で、一般職の公務員は一般職公務員として必要な服務の義務があり、特別職の自衛隊員は国を防衛するという与えられました特別職の任務に応じての服務の義務が出てくると思うのであります。またそれがなければ、国を防衛するという任務を全うできないという意味においてこうした服務の本旨を書き、これを宣誓さすわけであります。国を防衛し、武器をとって国を防衛する。万々一の場合には武器を使用するという場合があり得るわけであります。その場合に、危険を顧みずという言葉は、単なる飾り言葉というわけではない場合もあり得るわけであります。そういう場合に、危険があるから私はごめんをこうむるということでは、その自衛隊を作り、国を守るという本旨が達せられないわけであります。それで、こういう言葉がありますことは、自衛隊員としては私は必要なことではないか。そして、これを法律で定め、このことを了承した人々が自衛隊員となって入るわけでありまして、自衛隊員たることを欲しない人々を、入れることは当然できないわけであります。そういう意味で、私どもとしては差しつかえないのではないかと考えておるのであります。
  45. 羽仁五郎

    羽仁五郎君 それでは今の点は、希望としてだけ絶えず御検討を願いたいということだけ申し上げまして、次の質問に移りますが、今の宣誓と並んで、つまり、その宣誓にはこの憲法に関する言葉が全然出てきていないのですが、それはそれと並んでこの憲法について宣誓が行われるのでしょうか。それからもう一つそれと続いてこの際伺っておきたいと思いまするのは、私が二、三回自衛隊を見学いたしました際には、憲法に関する教育というものがあまり主眼ではなかったのであります。その当時その意見報告書の中に述べておいて、もっと憲法についての教育が徹底することが必要であるという意見を述べておきましたが、現在ではどうなっておりますか。その二点にお答え願いたい。
  46. 増原恵吉

    政府委員増原恵吉君) 憲法、法律を尊重することは国民として当然のことでありまするので、特に宣誓書の中にはうたっておらないのでございます。憲法、法律をかりそめにも……ちょっと失言をいたしましたが、宣誓文の中には法令を尊重しという言葉を、法令を遵守しという言葉を入れてございます。なお、あとの憲法の教育をするということは、種々行なっておりまするが、一般隊員に対して専門的な憲法教育的なものをやることはいたしておらないということでございます。憲法の趣旨その他についてはときどき幹部に教養を行なっておるのでございます。
  47. 羽仁五郎

    羽仁五郎君 その宣誓書の中に法令というふうにあるのですから、その宣誓が絶えず自由な意思に基いて宣誓が守られるためには、その宣誓書の内容が十分に理解されていかなければならぬ。そのためには、そこに法令と書いてある法令とは主として何をさすのか。何をさすのみならず、その宣誓のさしているところの法令というものの最もおもなるものは憲法であり、その憲法はいかなる内容を持っているかということは、これは私は特に他のいろいろな業務なり技術の習得に先立って行うべきものだと思うのです。それからかつて視察の報告の際にもそういう意見を述べておいたんですが、今の御説明では、他のいろいろな教育、訓練等に先立って憲法についての教育ということがなされていないような御説明でしたようですが、それでは私は大へん心配があるのじゃないか。もう少し憲法についての教育をまずまつ先になさるということが必要じゃないか。またそういうふうになさる御意思はないのかどうか。
  48. 増原恵吉

    政府委員増原恵吉君) 幹部につきましては、もとより相当専門的な特殊の突っ込んだ教養を行なっております。一般隊員に対しましては、防衛庁法、あるいは自衛隊法等をよく了解させ、その基本である憲法の必要な条章等を話をすると、憲法の講義というふうなことでこまかくやるということはいたしておりませんが、その本旨は了解をさせるということは行なっているつもりでございます。
  49. 羽仁五郎

    羽仁五郎君 ときどき、いわゆる通俗の議論の中に、自衛隊にバックボーンがないとか、あるいは根本精神がない、その結果新聞の伝えるところによれば、かつて大学の教授であった方の著書を教科書に類するような形で使用されているとかということがございますが、当然自衛隊防衛庁の根本精神というものは憲法だ。それで、それこそ憲法をけんけん服膺せられるということがあれば、りっぱなバックボーンができる。りっぱな根本精神ができると思う。ところがその点については、ただ要点だけを教育されるということであって、そして他にそういう特定のかつて大学教授であったような方とか、特定の人の述べておられるものを教科書の上に使用されることは、本末転倒であり、かつ根本精神を誤っているものではないか。私はこれ以上この問題について質問しませんが、最後に一言この問題については、憲法の教育を優先せられるという御意思はないのでしょうか、どうでしょうか。
  50. 増原恵吉

    政府委員増原恵吉君) 国の基本法としての憲法でございまするから、隊員としての任務遂行に必要なる限りにおいては、やっぱり憲法をよく教えて参ることにいたすつもりでございます。
  51. 羽仁五郎

    羽仁五郎君 これは念のために伺っておきますが、私どもは、先ほどの御答弁では、自衛隊防衛庁が、つねに厳格に国会の監督のもとにあるということをお認めになりましたが、国会における自衛隊防衛庁関係する法律案審議の際の委員会の討議の模様とか、あるいは本会議における国会の論議とかというものは、自衛隊においては尊重せられ、かつそれが多くの適当なレベルまで浸透しておるものでしょうか。そういうものについては、ごく少数の方しか、こちらへお見えになるくらいの方しか関心をお持ちにならないのでしょうか。どういうふうに取扱っておられますでしょうか。
  52. 増原恵吉

    政府委員増原恵吉君) 国会において御論議をいただきましたことは、何と申しますか、包括的にこれを承知をしまする者はやはり幹部の者でありまするが、それぞれ必要な限度におきましては、たとえば御審議を願っておりまする秘密保護法となりますれば、調査関係の者には相当下部にわたりまするまで、決算の審査等になりますると、それぞれ関係の者、下部にわたりまするものにまで御論議の趣旨を徹底をしまして、将来誤りなからしめるようにいたしております。
  53. 羽仁五郎

    羽仁五郎君 これも私の希望でありますが、最初の原則、すなわち軍国主義が発生しないということのためには、その国家機関としての武装団体が、絶えず厳格に国会の監督のもとにあるということでなければならぬ。しかもそれは個々の隊員に至るまで徹底してなければならないことだと私は確信します。今の御答弁ではそこまでお認めになっていないようですが、どうか私のそういうふうな考え方というものを十分お考えを、願って、国会の監督のもとにあるということが、個々の隊員に至るまで徹底せられるような御努力を願いたいと思いますが、いかがでしょうか。
  54. 増原恵吉

    政府委員増原恵吉君) 御趣旨はその通りと存じまするが、実際にやりまする形態は、隊員の一人々々にまで国会の御論議を熟知させるなんということは、事実として参らないわけでございます。法規的なものにいたしましても、基本はすべて法律できまるわけでございます。他に何らの法規的なものをきめる何がないわけであります。しかし、その基本に基きまして、成規の手続で政令その他のものが定まる、こまかいものはそういうもので定まる。しかし、それを基本的に国会で、あらゆる角度から検討をされて監督をされるということに現在の制度が相なっておるわけでございます。
  55. 羽仁五郎

    羽仁五郎君 本法につきましてこういうことを御査問申し上げておりますのは、この前に杉原長官ですか、杉原国務相が御出席の際に申し述べておいた理由に基くのでありまして、繰り返しませんが、簡単に要点だけをぜひ徹底させていただきたいと思いますが、本法によって保護されておるところの秘密というものは、内部の規律が厳格に保たれていれば、内部の先ほど言及されました国家公務員が持つところの秘密の保持という義務によって十分にまかなわれる問題である。ただ一つ民間の会社などに修理を依頼される場合に、公務員でない人がその秘密にタッチするという場合がございますが、しかしこれとても、内部の規律の関係で十分に守れることです。内部の規律と全く無関係というものではない。かつまた、契約によってそういう仕事をされる民間の会社が、その要求されております秘密の漏洩という事実があれば、続けて契約を受けるということはできなくなりますから、当然その民間の会社としても、その契約をさらに継続していかなければならないという要請から、その内部の秘密に準ずる規律をもってその秘密は守られるものである。かりにその点において幾分の不安があるといたしましても、しからば翻って内部において守るべき秘密国民に守れ、国民の権利義務を制限してくるということには、これはまた別の大きい問題が発生してくる。そのために、言論の自由、あるいは学問研究の自由、そういう問題、あるいは憲法で決して許していないところのいわゆるスパイというような考え方がこういう方面から復活してくるおそれがある。それらの問題が本法討議の際に十分に問題になったことは、絶えず私は決して忘れられてはならないことだと思うのです。今いろいろ伺いました点がやはりここに関係してくるのでありまして、先ほどからの御説明の点、すなわち自衛隊防衛庁というものが絶えず憲法のもとに国会の厳格なる監督を受けて進んでいかれるならば、本法の一部を修正されようとされますような法律案というものは、大なる問題を持たないのかもしれませんが、先ほど申し上げましたように、その原則が徐々に動いているのではないかという心配がございます。そうなりますと、すでに本法についてもいろいろ問題があり、それがあるいは附帯決議あるいは修正案ということによって防がれていたものが、根本が次第に動いて参りますと、今修正案が目的としているもの自体について、必ずしも大なる問題はないかもしれませんが、しかし自衛隊防衛庁をめぐって秘密が拡大されてくるということには、私は自衛隊防衛庁としても深くお考えにならなければならない点があるのじゃないか。従ってここで伺っておきたいのは、こういう修正案をお出しになります前に、こういう修正をしないでもやっていけるのではないかという努力をなすったことがおありになるのか、ないのか、その点を伺っておきたいと思います。
  56. 増原恵吉

    政府委員増原恵吉君) 私ども立場からいたしましても、秘密保護法というようなものを無用に拡大をするというような意思は毛頭ございません。仰せになりましたように、官庁内部のこととして十分に秘密保護せられるではないかというふうにお述べになりました。これは昨年本法制定の際に、御承知のように、まことに綿密に御論議のあったことでございます。しかし、そのとき私どもが結論として申し述べ、お願いをして秘密保護法が成立をいたしましたのでありますが、これはやはり何といたしましても、これを扱いまする私ども自衛隊員が最もこの秘密保護について最善の注意をしなければならんことはもとよりでありまするが、お述べになりましたように、修理その他製造等でこれを請け負わしまする民間会社というものが必ず出てくるわけであります。これを秘密保護を確保するためには、やはり公務員が公務員法に基く秘密保護規定のごときものがどうしてもなくてはならないし、一面やはり一応想定としての心配としては、他にいわゆる秘密を漏泄しようとする悪意ある者なしと言えないのでありまして、一般国民に義務を課せると申しましても、善良なる国民には何ら関係のない法律でございます。秘密を窃みこれを漏らそうということをしようとする人に、してはならない義務を課するわけでございまして、ことに今回の改正は、御承知通り、艦艇貸与協定によってもらいまするものにありまする秘密の武器等を保護するということだけでございまして、その実質、内容等については全然変りはないわけでございます。やはりこの形の取締法をもってすることが、秘密保護を確保する上において適当であるというふうに考えて御審議を願っておるわけでございます。
  57. 羽仁五郎

    羽仁五郎君 今御説明の中に、悪意をもってということがございましたが、これはまたこの前の杉原国務相に対する議論を繰り返すことはいたしませんですが、悪意と善意との間には、必ずしも常に明確な区別がない場合がありますし、ことに精密な機械などに関係しては、学問上の研究の要求ということもありますし、また一般言論、報道の自由からの要望もあることですから、常に悪意ということだけでは解決できない。かつまた、国際平和というような問題については、かなりレベルの商い問題であって、レベルを低く判断すればスパイとして判断されるものが、レベルを高く考えればほんとうの愛国者であるということは、日本の江戸時代からも多々例のあることです。ですから、そういう点についてはどうか逸脱せられないように法律範囲内を守っていただきたいと思うのですがそこで伺っておきたいのは、内部の今の他に方法がなかったかということについて伺っておきたいのは、本法に触れる人があった場合はないということをこの前お答えをいただいておりました。続いて伺っておきたいのは、外部の会社などに修理などを依頼せられた場合は従来おありになるのでしょうか、ないのでしょうか、それを伺っておきたい。
  58. 増原恵吉

    政府委員増原恵吉君) 本件の秘密保護法の指定による秘密のものについては、まだ外部の会社に修理を依頼したことはございません。
  59. 羽仁五郎

    羽仁五郎君 それでは伺いますが、ただいま拡大されようとしております対象につきましては、民間の会社に修理その他を依頼せられる可能性が非常に大きいものでしょうか。もちろんこれは全くないとかあるとかいうふうにはお答えにくいと思いますが、私は常識的に伺っておりますが、民間の会社に修理を出す場合が非常に多いのでしょうか、それともあまり修理に出す場合はまあなかろうというものですか、いずれでしょうか。
  60. 増原恵吉

    政府委員増原恵吉君) 現在防衛庁自体の修理能力というものは割合に限定をされておりまして、相当の修理をいたしまする場合には、民間にみな出さなければならん。従いまして今度の場合でも相当の修理をしなければならん場合が多いということになりますと、これは民間に出す可能性が十分あるわけでございます。
  61. 羽仁五郎

    羽仁五郎君 先ほどの根本的な点に関係いたしますが、二つの点を伺っておきたいと思うのですが、今日あるいは十分御説明が願えなければ、次回にお願いしたいと思う。  一つは、会計検査院に指摘されております予算の正しからざる使用に関して防衛庁関係ではこれが非常に目立っておることが世論の批判を受けておられますが、これについてどういうふうにお考えになっておられるか、そうしてどういうふうに解決しようというふうにお考えになっておるか、これが第一点。  第二点は、これもやはり世間でしばしば指摘せられておる点でありますが、交通機関などにおいての防衛庁の隊員の行動について世間の非難を受けられておる場合が非常に多い。若い人であり、かつまた現在直接に生命の危険にさらされるような仕事をされているわけではない、苦労をしているわけでもない、そういう方々が老人、婦人、そういう人々を押しのけて、電車の中で座席を奪うようにしてすわっている、あるいは自分の月の前に当然席を譲るべき婦人、老人というような方がおられても、席を譲る気配がないということがいろいろな場合に指摘されておりますが、こういう場合についてはどういうふうにお考えになっているか。そういう問題が解決されるのにはどんな方法をお考えになっているか、以上二点についてお伺いをいたしたいと思います。
  62. 増原恵吉

    政府委員増原恵吉君) 防衛庁あるいは前の保安庁時代等相当の国費をいただいて物品の調達その他を行なっているのであります。それについて会計検査院より指摘を受けました事項が相当にありますることは、まことに遺憾に存じます。この理由はまあいろいろ考えられるわけでございます。新しくできました組織、各方面より人を集めました組織で、ことに会計方面の熟達者など他よりなかなか適当な人を十分に割愛をしてもらうことができないというような事情もありまして、初めはこの不なれな者が少くなかったというふうな事情が、十分な綿密、周到、適切な経理に欠くるところがあったということの一つの原因をなしていると思います。また一つ防衛庁で使います物品は一般市販でない物が非常に多いわけでございます。その仕様書、いわゆるスペックを作りますのに、非常に困難をいたした。従いましてそれに基く原価計算その他もなかなか困難であった、また実際に使用の経験のないものなども当初は相当にありまして、消耗品的なものもどれだけ買うことが適切であるか、十分わからないものは、一応机上においてはまあ勉強をいたしまして、多く米軍等の例をとりまして、米軍で百使っておりますものであれば、いろいろな条件を考慮して、その三割とか、四割とかいうところが適当であろうという、一応いろいろな事情からの推断に基く調達をいたしましても、なおかつそれが過剰であって、不用不急のものを買ったという批難を受けるというような事情もあったわけでございます。そうした点はしかしだんだんと日を経るに従いまして、経理員もその方面の仕事になれて参りますし、スペック等も原価計算の方法にも周到を期し得るようになりましたし、また調達の関係が多いのでございますが、これは調達実施本部を設けまして、陸、海、空を一本で、同じ目で調達をする、また平素の市価の調査なども綿密にまあ市価調査を谷重要部門ごとに、また細部にわたりまして、市価調査を厳密にいたしまして、市価による購入等についても最近は十分な自信のある資料によって調達ができるようになったのであります。彼此あわせまして、またたとえば装備審議会を設けまして、ここで一応米国のものを取り入れましたのでありますが、これを基本的に検討いたしまして、最もわが国の自衛防衛に適した編成装備を作るということを今鋭意進行中でございます。また調達は一般競争は割合に問題がないのでありますが、指名、随契というようなものをやりますると問題を生ずることがあるわけでございます。これは指名随契委員会というのを特に作りまして、三自衛隊関係官、調達実施本部の関係官、及び内局の関係官が集りまして、この物品はどういう理由によって指名もしくは随契にしなければならないかということを吟味いたしまして、適切な判断をするようにいたす、また指名の場合には、どこの会社とどこの会社を指名することが適切であるかということを指名随契委員会にかけまして、そうして、特許などのありまする明僚な随契の場合には二千万円以上、その他の随契の場合には一千万円以上のものは長官の決裁を取る、長官の決裁を取るということは、事務的に申しますと、内局の私どもが補佐をして、その書類をさらにこまかく審査するということになるわけでございます。そういう手続をとりまして、将来いかんのないように十分努力はいたしているところでございます。  第二点はそういう御非難を受けることが私ども十分耳にいたしているのであります。しかしこれは私どもの方でも十分平素隊員の教養その他には気をつけているところでございまして、何しろはっきりと、制服という目立つ服装をしておりますので、まれまれにそういうことがありましても、非常に一般の人の注意を引くというようなこともあるやに、私どもはまあ身勝手な考え方をしているのであります。しかし、これは各部隊においても幹部が十分気をつけまして、およそこの宣誓のあれにもありますように、平素私どもは、隊員というものは一般人としての教養を身につけることが大切であるということを指導の一つの重点にいたしているわけであります。単に自衛隊員としての武器の愚作、訓練ということだけでなく、情操を涵養し、一般社会人としても十分敬愛に値するような者になるよう心がけることを注意をいたしております。今お述べになりました交通機関等における挙動等につきましても十分注意をいたしているところであります。至りませんところがありますれば、まことに恐縮でございますが、なお一そう注意をいたすつもりでおります。
  63. 羽仁五郎

    羽仁五郎君 今の点については第一の点は決して弁解をされたというふうには伺わないのですが、弁解がましく聞える部分もあるようであります。で、それに熟練していないというふうな点は、それに熟練せられることが職務の性質上要求されていることなんですから、それに熟練をしていないということではいけないのじゃないかと思うのですが、これはまあ重大な問題である、特に重大な問題であるというふうにお考え下っていることだろうと思います。それにつきまして一点だけ、これはすぐお答えが願えるかどうかわかりませんが、昨年の九月のころであったと思いますが、新聞を見まして、当時議会がなかったので、すぐさま伺うことができなかったのですが、やはりその予算の正当でない使用に関係しまして、何か大へん失態を演ぜられたのを、朝日新聞でありましたか、新聞記者がその責任者とお会いになってそれで意見をお聞きになったところが、要点だけ申し上げますと、ちょうど今の御説明をもう少しえげつない言葉でおっしゃったようになっておりますが、われわれは商人ではないというのですが、品物のよしあしや値段の高低ということについてそんなにこまかいことを言われても、そういう責任までは負えない。つまり商人でないから少し役に立たないようなものを、少し市価より高く買うことがあっても、それは仕方がないのだというようにお答えになったようです。それは私の相愛であれば非常に仕合わせですが、やはり本修正案とも関連して、自衛隊防衛庁の中に言論あるいは国会の監督、あるいは国民の納税によって成立しているものであるというような点についてちょうど先ほど御説明がございましたように、そういう政治一般及び国民経済この中のバランスをとった一部分として存在せられるというお考えから、次第にそうでなく軍事的なものが独立し、みずから絶対的な必要、あるいは判断ということをなさるようになることであると、非常に危険なことだと思うのですが、今の点についてはお調べがあったのでしょうか。そうしてそういうような答えをなされたのは、これは新聞の誤報であったのでしょうか。それともそういうようなお答えを新聞紙に向ってなさった方があるとすれば、その方は続いてそういう仕事をなすっておられるのでしょうか。それらの点について今御説明が願えれば仕合せだと思うのですが、どうでしょうか。
  64. 増原恵吉

    政府委員増原恵吉君) ただいま御指摘の事実そのものについて調べた記憶を持っておりませんが、しかしおよそ防衛庁において物品の調達の仕事に当っておる者が、物品が高いか安いか、いいか悪いかそんなことわしゃ知らんということは許すべからざることでありまして、さようなことを申した者があれば、これは厳重な措置をしなければならぬと思いますし、さようなことは決して考えておりません。きわめて厳密に、現在においては平素の市価調査にいたしましても、きわめて厳密な調査を毎月いたしまして、それに基いてやっております。原価計算にいたしましても、十分こまかい点につきまして計算を積み上げていくということをやっておりますし、また年間を見通しました市況の上り下りについても、できるだけの見通しはつけまして、やはり市況のいいときになるべく安くいいものを買うというような配慮も、これはきわめて熱心にいたしておるわけでございます。そういうことがないように十分努力をいたしておるところでございます。
  65. 成瀬幡治

    委員長成瀬幡治君) 別に御発言がなければ、本日はこれをもって散会いたします。    午後四時十三分散会