○羽仁五郎君 ごく最近の銀座の殺人犯についての犯人と
考えられる人を、
警察で逮捕されて血液型の検査、アリバイ等でそうでないということが明かになったようですが、ああいう新聞発表は政府はどういうふうにお
考えになりますか。もちろん新聞記者の取材活動の自由というものは絶対に制限されてはならないものでありますが、私はどうもああいう種類のものは、新聞記者の取材活動の自由の結果ではなくして、
警察の方で
人権を十分に尊重していない結果からきているのじゃないか。もし前者であるならば、われわれは問題にすることはできませんけれ
ども、後者であるなら、すなわち
警察の方で十分
人権を尊重する観念が徹底していない。まだ人は裁判の結果有罪とせられない限りは無罪である。しかるにその人に対して、あたかも罪人であるかのごとき印象を社会に与えて、終生回復すべからざる名誉を棄損するということを
警察は平気でやっておられる。これはあなたも多分御同感であろうと思うのですが、ああいうことは根絶していただきたい。いわんやそういう写真を平気で新聞社に与える。あるいは新聞社が写真をとろうとしているときに、
手錠その他を御本人が隠すような便宜を与えないということはよくないと思うのです。これは御答弁いただかなくても、そういう御尽力を願い得ることと確信いたしましてよろしゅうございますか。
そこで伺いたいのですが、
少年院の場合に、
手錠をかりに
使用するということは、根本の趣旨が大前提からいうと誤まっているわけで、
少年も決してものの判断を失っているものではない。むしろわれわれ成年よりも
少年の方が、残念ながら純真な判断をし得るのです。ですから
少年院に行って
自分が改善せられる見込みがあるとかということなら、決してそこへ行くことを
少年が拒否するはずがない。この苦しいしゃばにいるよりも、
少年院に行っていい
教育を受けよう、本も読めるかもしれない。いい
教育も受けられるかもしれないということがなければ、これは結局現在の
手錠の
使用を改善するということはおできになるまい。これを革になすっても、やはり実質においては同じですし、それが世間に見えないところで、その人が逃げないようにするような工夫もしていただかなければなりませんが、そういうふうに表面に出ないようにしましても、やはり実質においては同じなんですから、私はここに非常な危険があるのを、宮城
委員、
赤松委員、各
委員が御指摘になっているのは、
少年院が改善される形において
使用される
手錠というものを、われわれは決して問題にしないのです。そこまで行政なり何なりに立ち入ろうとしているのじゃないので、行政上の御必要というものがおありになるかもしれない。危険なのは、その
少年院における
教育環境が向上しない関係において、
少年院が少しも愉快なものになっていないときに
手錠が
使用されれば、その
手錠は激烈なものに悪化してゆく、そこに問題がある。ですから本法案が国会を通過すべきものであるかどうかということは、最初にも政府に向って申し上げたのですが、現在政府は
少年院の施設について予算その他どれだけの努力をなさるおつもりなのか。それから第二には、現在政府は一般の行刑あるいは
警察ももちろん含めまして、特に
少年院の
院長、
職員に対して、そこは
少年院が第一義的には
教育の場所であるということを、どれだけ徹底なさるおつもりかということに私は関係してくると思います。ですから最後の私の
質問は、
手錠の
使用について、現在のような残酷な
使用の
方法を改める御意思がおありになるかという
質問ですが、それに対して政務次官は、それについて十分努力をなさりたいということでありましたので、私は
質問を終るわけですが、どうか、以上御
質問申し上げましたように、大前提がなければ、やればやるだけむだです。それで弊害が起るばかり。どうか
一つその大前提を実現するために全力をあげていただきたい。そうして私は常に繰り返すのですが、生まれてきた赤ん坊を見れば、誰が見ても天使のような赤ん坊です。どの赤ん坊も天使のような赤ん坊です。生まれたときから殺人、強盗、放火などをするような顔つきをしている赤ん坊は一人もいない。ところが、それがいつのまにか、殺人、強盗、放火をするようになってしまう、あるいは身の毛のたつような犯罪をするようになる。最近の坂巻
少年に対しては、裁判に関係のないことについては何も言えないはずの裁判官が、判決の中で国家に向って反省を求めている。この判決を見て花村法相に国家はどういう反省をなすっているかと伺いましたが、何のお答えもない。その判決を見てからにする。しかし坂巻
少年に対する判決書は、
法務大臣は当然ごらんになるべきだと私は期待していたのです。ごらんになっていないことは残念でしたが、ごらんになって下さって、これは別に判決書を見なくても、当時新聞紙上でも報道されておりまして、裁判官が国家の反省を求めている、裁判官にまで政府は反省を求められているのです。本
委員会でもこうしてうるさく強く申し上げるわけです。どうか、大蔵当局に向って、
少年関係の予算というものは国の負うべき罰金である。これは罰金を納めなければ、国が罰金以上の刑に服しなければならぬということになるのです。こういう点で十分の予算を取られて
少年院をしてその本来の目的にかなうように、われわれが入りたくなるくらいたのしくなる必要はありませんけれ
ども、本来の目的にかなうような
少年院になって、連戻状や
手錠というものが要らない、そういうように実際
少年院が日々に改善されていくという御努力を願わなければならんと思います。