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1955-07-04 第22回国会 参議院 法務委員会 第13号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和三十年七月四日(月曜日)    午前十一時二十七分開会     —————————————  出席者は左の通り。    委員長     成瀬 幡治君    理事            剱木 亨弘君            宮城タマヨ君            市川 房枝君    委員            岩澤 忠恭君            廣瀬 久忠君            藤原 道子君            一松 定吉君            羽仁 五郎君   政府委員    法務政務次官  小泉 純也君    法務大臣官房調    査課長     位野木益雄君    法務省刑事局長 井本 臺吉君    法務省保護局長 齋藤 三郎君   事務局側    常任委員会専門    員       西村 高兄君    常任委員会専門    員       堀  眞道君   説明員    法務省矯正局総    務課長     高橋  孝君    最高裁判所長官    代理者    (事務総局総務    局総務課長)  磯崎 良誉君    最高裁判所長官    代理者    (事務総局人事    局長)     鈴木 忠一君     —————————————   本日の会議に付した案件 ○検察及び裁判運営等に関する調査  の件(大阪刑務所看守暴行凌辱致  死事件に関する件) ○裁判所職員定員法の一部を改正する  法律案内閣提出衆議院送付)     —————————————
  2. 成瀬幡治

    委員長成瀬幡治君) これより法務委員会を開会いたします。  まず、検察及び裁判運営等に関する調査として、大阪刑務所看守暴行凌辱致死事件の件を議題に供します。まず井本政府委員から事件の概要について御説明願います。
  3. 井本臺吉

    政府委員井本臺吉君) 大阪刑務所職員受刑者に対する暴行致死被疑事件の件について御報告申し上げます。  この事件につきましては、先月の二十五日付でわれわれのところに大阪地方検察庁から報告が入っておるのでございますが、この関係受刑者の一人の島居宏というものが、本年の三月十八日に大阪刑務所を出所いたしまして、その後にさらに窃盗罪を犯して奈良地方検察庁管下葛城支部というところで取調べを受けたのでありますが、その際に、実は自分は前に刑務所に入っている際に、看守受刑者の一人を死なせるような犯行を犯したということを詳細供述いたしましたので、奈良地方検察庁検事正が、これを大坂の地方検察庁に移牒いたしまして調べが始まったということになるのでございます。  概略の被疑事実は、大阪刑務所大谷という看守部長、それから東川という看守、押川という看守、この三人が昭和三十年の二月二十七日夜、刑務所内におきまして囚人金石岩(当二十九年)が、係官の制止をがえんぜずして、放歌高吟等ありましたので、これを戒護するために、受刑者でありまする先ほど申し上げた島居宏それから滝本稔大口京一こういう者らに命じまして、金石岩両手両足手錠をかけてふとんで巻いた上に、さらにロープで縛りつけたために、金石岩が死んでしまったという事案でございます。この被疑事実の通りであるといたしますならば、これは傷害致死罪に該当する事案じゃないかと考えるのでございます。この事件につきましては、検察庁といたしましては、拘置所刑務所等の普通の人々を拘置する場所におきまして死亡した場合には、その死因病気であると、事故であるとを問わず、全部一度検事が念のため検証をしております。この事案につきましては、その当時堺の支部検事町四郎という者が変死の報告を受けまして、死体状況を検視しておるのでございます。ところが当時の検視の模様では立会の石田というお医者さんの診断書によると、心臓衰弱というような診断になっておりましたので、一応犯罪の嫌疑はないということで処理済みであったわけでございます。しかしながらとの事件が起きましてからさらに綿密にこの事件につきまして死因鑑定いたしました結果、窒息死疑いがあるというので、目下大阪医科大学の医学部法医学教室大村博士鑑定の嘱託中でございます。とにかくかような留置人看守もしくは同囚の者の暴行行為によりまして死んでしまうということは放置できない一つの重大な事件であると考えますので、私どもといたしましては、どの事件についてどの程度に処置しなければならんか、目下死体死因鑑定並びに関係者関与状況について厳重捜査中であるのであります。もちろんこの電報を見ますと、看守部長大谷優(当四十八年)をもうすでに逮捕取調べをしておるようでございますし、その他の関係者についても厳重取調べをしておるという実情でございます。以上御報告いたします。
  4. 成瀬幡治

    委員長成瀬幡治君) 本件について御質疑の方は御発言願います。
  5. 宮城タマヨ

    宮城タマヨ君 大体事件の経過はわかりましてございますが、初めに医者診断いたしましたときに誤診であったといたしますと、そういう場合には、本件はまだわかりませんけれども、誤診であったというような場合、あるいはその診断する方法が非常に疎漏であったというような場合はどういうことになっておるのでございましょうか。その意味は、この金という人の保護者あるいは家族がどういう状態か存じませんけれども、何か文句を、保護者家族たちから抗議を言われるような手段でもちゃんと備えられでおるのでございますか。
  6. 井本臺吉

    政府委員井本臺吉君) まだ調べがそこまではっきりしていないのでありまするけれども、この金石岩という男が妙な病気、たとえばてんかん的な発作を一回起したそうでございますし、刑務所内部ではやってはならないような行動をやった経歴があるというような、普通の状況の者ではないということがうかがえるのでございます。ただ、どの程度にこの男が普通の人と違った状況にあるかということは、全体の事件の性質にも関連いたしますので、十分今検討中でございます。なお鑑定の結果につきまして、先ほど申し上げたように一定の診断心臓衰弱となっておりますけれども、これは刑法にも規定がありますように、虚偽診断書を作るというようなことになりますと、そのこと自体も、虚偽であろと知りながらかような診断をいたしますれば、刑法士罰則の適用がございます。過失によってかような間違った診断をしたというようなことになりますれば、これはまあ刑法上の問題にはならないと思いますけれども、その他の行政上の処置ということもある程度考えなければならんというように思います。
  7. 宮城タマヨ

    宮城タマヨ君 こういう種類事件をときどき新聞なんかで見ますけれども、大体今度起りましたような囚人を殺したとか、あるいは死ぬるまでには至らなくてもいろいろな問題がときどき新聞に出ておりますが、そういうようなものの統計表でもございますでしょうか。
  8. 井本臺吉

    政府委員井本臺吉君) ちょっと本日資料を持って参りませんでしたが、役所の方へ帰りますれば、どの程度かような事故があったかというようなことは、はっきりわかると思います。
  9. 宮城タマヨ

    宮城タマヨ君 それではそれを調べていただきたい。それから今一つは、どの新聞かに皮の手錠はめたということが書いてございますが、手錠はどんな種類を使っているんでございましょうか。皮のほかにどんな種類がございましょうか。
  10. 井本臺吉

    政府委員井本臺吉君) 金の手錠と皮の手錠と二種類あるようでございます。詳しいことは所管の課長さんが見えておりますので、その方からお答えをいたさせたいと思います。
  11. 高橋孝

    説明員高橋孝君) ただいま刑事局長から御説明がありました通りに、大阪刑務所職員収容者暴行を加えたような事件が発生しまして、現在大阪地方検察庁で取り調べ中でありますが、関係当局としてはなはだ遺憾、恐縮に存ずるところでございます。それからなおただいま宮城先生から御質問になった点で、本件が起きた場合に保護者等にどういう措置をしたかという御質問がございましたけれども、私の方に参っておる報告書によって申し上げますと、本件事故が発生しまして直ちに被害者身分帳に記載してあります本人の内妻及び父に対して通知をしておりますけれども、いずれも名あて人が不明だということで返戻されておりますが、保護者関係に対する通報の点は以上の通りでございます。  それからただいま御質問手錠種類でございますけれども、手錠種類手錠も含めた意味で、監獄法によりまして、戒具というものが規定されております。その製式をどういうふうに定めるかということについては法務大臣の訓令によりましてきまっております。手錠種類命手錠とそれから皮手錠の二種があることになっております。
  12. 宮城タマヨ

    宮城タマヨ君 皮とそれから金との手錠は使い道が違うのでございましょうね。どういう場合にどういうふうに違って使うのでしょうか。
  13. 高橋孝

    説明員高橋孝君) 皮手錠の方はその作り方から見まして皮のバンドがございまして、そこに両手をはめるような仕組になっております。従いまして皮手錠を用いる場合には、本人が非常にあばれるとか、それから本人自殺のおそれ等がありまして身体拘束程度を強めて拘束しておいた方がよいと思われる場合に大体使用しておるのでございます。それから金手錠の方は、普通の護送のときに使っておるような金で作った両手を前であわせる金手錠でございますね、そういうふうに金手錠皮手錠がありますけれども、大体は皮手錠の方が身体拘束ができやすいような作り方になっておりますし、そういう場合に、必要である場合に使うという建前になっております。
  14. 宮城タマヨ

    宮城タマヨ君 この間当委員会少年院法の一部改正のときに手錠の問題が問題になったのでございますが、今日まで少年院には手錠がまだできていないはずでございますが、実際においてはどこにも少年院には手錠が渡っておるようでございますが、それは刑務所の方から融通しているのでございましょうか。そうして少年にはめております手錠は皮でございますか、金でございますか。
  15. 高橋孝

    説明員高橋孝君) 少年院におきましては法律ではっきりそういう皮手錠なり金手錠を使ってよろしいという規定は現在のところはございません。ただ実際の必要の面から少年院処遇規則のほうに、自殺のおそれがあったり暴行のおそれがあったりするような場合には適当な措置を講じてよろしいと、こういうふうな規定がございます。それで少年院におきましても、そういう必要性がある場合には、必要の最小限度において皮手錠なり金手錠なり現在使っております。それで現在までも法律規定はございませんでしたけれども、そういうふうな事情のために皮手錠なり金手錠、まあ両方使っておるわけであります。それは各少年院で、刑務所から転換された少年院もございますし、そういう手錠の入手につきましては転換をされた場合に、そのまま引き継いで便っておるところもございます。それからなお役所の方で正式に手錠用の予算だといって配付したことはございませんけれども、役所の費用で購入してそれを使っておる場合もございます。  それで実際の使用方法につきましては、先ほど申し上げましたように、普通の護送等手錠を使っておいた方がよろしいと判断されましたような場合には、護送等の場合には金手錠を使っております。それからなお皮手錠の方は、少年院の中で本人自殺等のおそれがあるような場合に普通使っております。大体以上の通りであります。
  16. 宮城タマヨ

    宮城タマヨ君 手錠をはめられても、まだあばれる余地がございますか。
  17. 高橋孝

    説明員高橋孝君) 金手錠の場合にしましても皮手錠の場合にしましても、いろいろな精神上の欠陥ですとか、特別の場合におきましては手錠をはめられておっても、からだを壁等にぶつけて自傷行為をやってみたり、そういう場合が相当事例もあるようでございます。
  18. 宮城タマヨ

    宮城タマヨ君 今日の問題になりました金氏の場合は、まだ調査の結果を待たなければ、いろいろこれ以上のお尋ねをしてもわからないと思うので他日を期しますけれども、実は今日私はこのことを伺うつもりはございませんでしたが、ちょうど刑務所内のことが出ましたので、伺いたく思いついたのでございますが、今しきりに広告しております「少年死刑囚」という映画でございます。これは一昨日でございましたが、法務省推薦映画で、もとを言ってみると、私が保護しております少年映画だから、どうしても見に来いといって、私は試写会に参りました。そうしてこれは刑務所はたしか府中刑務所内で写った映画でございます。はっきりとその独房その他がみんな出て参るのでございますが、少年独房の中で非常にあばれて手錠をはめられます。そうして手錠をほめられましてもいろいろな問題があるのでございますけれども、その少年が外に連れ出されましたときに、かねがね教えられておりました、ほかのおとなの人からかぎを奪って渡してくれということを教えられておりますが、その通り看守からかぎを奪いまして、そうしてみんな協力して独房令部かぎをあけて、独房の中から囚人を出しまして大格闘するところの画面がございますが、そこで私は手錠をはめられてあばれる様子なんかが、ほんとうにああいうことができるのかしらというふうに、あるいは芝居であるからかしらというふうに考えたのでございますけれども、歩あああいう映画を、あれが刑務所の事態として、ことに画面では少年刑務所ということが出て参りますが、あれが少年刑務所である。刑務所であるといえども、刑をもって臨んでいるところの少年に対する少年刑務所が、あのようなものであるかということを私は世の中の人に刑務所実態として絶対に見せちゃならないと考えている。そうしてあれが実態であったならば、私は承知ならぬと思っております。しかしあれは実態でなくて、映画のための映画であろうと思っておりますが、そこに私は法務省としても、法務省推薦映画ほんとうに承知していらっしゃるとするならば、私は法務省の責任を追及したいと思っております。いま一つは、少年ほんとうに育てられた恩のある祖父母を殺すところが画面に出てきます。それからまた、そのおじ、おばというようなつまり四人を殺すその画面が出て参るのでございます。非常に残酷な画面でございまして、あぶいうものを私は世の母親の立場としてもこれは絶対に子供に見せてもらっちゃ困るというように感じたのでございます。そこで私は手錠のはめ方、そうして手錠をはめてもなおあばれる余地があるというようなことから、今度少年院法一部改についてだんだん私はもっと検討しなければならないなというように考えてきたのでございますけれども、これを一つこの問題とは別問題ですが、先ほどもちょっと次官の方に、小泉次官にお願い申し上げましたけれども、これほんとう法務省推薦映画でございますかどうか、研究していただきたい。もしもそれで矯正教育、つまり日本の行刑というものを社会一般の人に見せる一つ資料になるのではないかというようなことでしたら、私はああいうおとな刑務所を使わないで、少年刑務所実態を見せていただけばいいのじゃないか。そうしてほんとうのことを見せていただけば、まあ刑務所を知らない人が大部分でございますから、その意味でも効果はあるかもしれませんけれども、一つこれは十分研究していただきたいというように考えております。そこで私はこの事件にまた戻るのでありますけれども、この事件最後といたしまして、これはこの殺されました者が朝鮮人でございますね。これはまあ人種的な差別待遇をされたというように解釈しない方がよろしうございますかもしれませんが、新聞で見ますというと、歌を歌ったそうして制したけれども、あばれたということがございますけれども、一体どの程度に歌を歌ったら、あそこで罰則なんでございましょうか。それからあばれるときもあるだろうと思いますが、どの程度にあばれればそういう窒息死をさせなければならないような状態にやられるのか。あるいは私はまがって考えますというと、これは朝鮮人で、まあ朝鮮人の命なんか、一人の命なんかどうでもいいというように考えられるのではないか。それからなおひいて言いますというと、どうせ悪いやつの一人二人は死んだって、そんなことはかまわないじゃないかというような考えが、今日の行刑当局にといいますか、実務者に私はあるのじゃないかというような、つまりあそこへ入れると、非常にお粗末に扱われるのじゃないか、人間なんかどうでもいい、人間の命なんか、一人、二人どうでもいいじゃないかというようなことが今日の事件を引き起したのじゃないかというようなことも考えておりますが、その問題について、一つ当局の御答弁を願いたいと思います。
  19. 高橋孝

    説明員高橋孝君) まず少年死刑囚映画法務省推薦になっておるかどうかの点でございますけれども、この点は私その問題を聞きまして、法務省内部関係の問題としても、普通の場合そういう場合には官房広報連絡室で推薦するとかしないとかという問題を取り扱っております。ですからその方に聞いてみましたところが、法務省のほうで推薦したような事実はないということになっております。ただないとしましても、刑務所の中、まああの映画の場合は府中刑務所を使ったようでございますけれども、府中刑務所を使って、府中刑務所側としましてもいろいろ便宜の措置を与えたり、注文をつけたりやっておるのでございますから、この点であるいは外部の方が誤解された向きもあったかもしれんとも思いますけれども、正式にあの問題を法務省として推薦したような事実はないようでございます。  それから拘置所とか刑務所の中に収容された収容者に対して、朝鮮人とか日本人、そういう人種の違った者に対して差別待遇をしておるのじゃないかというまあお尋ねの点でございますけれども、私たちといたしましては、そういう人種の問題で差別待遇をする、特に悪い意味で異なった人種人たちには過酷に当るとか、そういう面では決して差別待遇をとって……まあ建前もとっておりませんし、実際もとっておらないものと私は確信いたします。それで本件大阪刑務所事故の場合は、たまたま被害者朝鮮人であったということにはなりますけれども、先ほど申しましたように朝鮮人であったからこういう過酷なことをした……、まあ過酷となるかどうかまではまだ調べ中でわかりませんけれども、少くとも傷害致死疑いがあるようなことをしたということでは決してないと思います。なお、しからばどういうわけでこういう事故が発生したのか。これはまだ真相はわかりませんけれども、この本件犯罪が発覚する以前に、こういう事件があった、収容されている朝鮮人が死亡したという報告書が参っておりました。それでその報告書でありますとか、その後まあこちらから調査して大体現在までにわかった事情を申し上げますと、本件被害者たる金石岩という人は、昨年の十二月二十四日に大阪拘置町から大阪刑務所移管になっております。それで移管になりましたら、受け入れ側の方で一応の調査をするわけでございますが、その調査によりますと、入所当時から多少神経に、精神に異常を認められるような節があったということでございます。なお大阪拘置所未決拘禁中もてんかん等発作を起したことがあるというようなことで、大阪刑務所においては普通独居拘禁と言っておりますが、雑居でなくて一人だけおる部屋に一人だけ収容するという方法をとっておるようでございます。その後本年の二月十日ごろから高い声で歌謡曲を歌ったり、それから壁や扉を足でけったり、そういうようなことをする状況が出ておるようであります。それから次第にその度合いがひどくなりまして、二月二十五日ごろはますます狂暴になったというようなことで、その時から初めて皮手錠を使用しまして厳重に視察をしておったということでございます。それから二月二十七日になりますと、ますますその度合いが激しくなったので、先ほど説明がありました大谷という看守部長が今度は足にもやむなく施錠をした。しかし二時間ぐらいで静かになったので、間もなくその錠をといた。それからまた同日の午後五時頃から興奮状態になりまして、頭を壁にぶっつけたりするようなことをするようになったので、再び手錠をかけて大谷部長受刑者に手伝わせてふとんにくるんで、三ヵ所だけをロープで縛って、そうしてあばれないような措置をとって寝かせた。この状態が相当続いたような報告になっておりますけれども、そういう状態で置いたところに、これは翌日になりますけれども、二月二十八日の午前四時ころからなお狂繰状態が相当極度になったので、朝方の、早朝のことでもありますし、付近の監房の睡眠のじゃまにもなるというところと、それからなお十分に視察が行き届くようにというようなことで、巡回の通り道になっておる廊下の方に移して寝かせておった。その後午前五時三十分ころ巡回した当時に本人を見ましたところが、非常に静かになっておった。それに驚いてよく調査をしたところが、顔色も悪くなっておるし、呼吸も弱いというので、事務所に連れて行って人口呼吸をしたり、カンフル注射を打ったり、応急の手当をしましたけれども、ついに同日の午前八時半ころに死亡した。そういうふうな状況に現在判明しましたところではなっておるようでございます。それでおそらく本人に対する取扱いが、今申し上げましたような措置をとった際に、あるいは故意か過失かわりませんけれども、行き過ぎの点があって、それが犯罪を構成するに至ったのではないかというふうな感じがするわけであります。
  20. 宮城タマヨ

    宮城タマヨ君 この金氏は精神異常をきたしたのではないのでございましょうか。そういうまあ疑いでもあって、もっと親切にやるなら、精神科医者に見せるとか何とかというような手を打ってほしいような私は気がしますけれども、刑務所としたら精神科医者を呼んでくるというようなこともできるでございましょうね。それでもしこれが精神に異常をきたしておるというようね場合に、即座に刑務所から精神病院に移すというような方法ができることになっておりますか、どうでございましょうか。
  21. 高橋孝

    説明員高橋孝君) この被害者たる金石岩大阪刑務所の方で受け取った場合に、先ほど申し上げましたような調査をするわけでありますけれども、その際におきましてはまだはっきり精神に異常をきたしておるかどうか、精神異常者と断定するに足るところまではいっておらないようでございます。前に拘禁中にてんかん発作を起した経験を持っておりますとか、それから刑務所側におきましても、受け入れまする場合には、例の、そういう調査専門家でありまする医療分類課職員等も立ち会ってやっておりまするが、その職員がいろいろ見た結果、多少精神に異常があるような節がある程度の認定をしたようでございます。それからなおはっきりこれが精神病者だというふうに診断がつきますと、これは宮城先生からおっしゃいましたように、刑務所側でもそういう場合に対する適当な措置ができますようにお医者もかかえておりますし、お医者さんの中に精神医学者もおります。そこで手当をするわけでございます。それで今から大阪のこの被害者に対する取扱いを見てみまして、私の方でどうかと思う点は、そういう精神に異常があるような点を認めました場合には、直ちに刑務所の方の医官連絡をしてその診断をさして、その診断に基いて適当な措置がとれなかっただろうかどうだろうかという点が、今のところでは私の方もこの点について多少遺憾な点があったのではないかというふうに考えております。
  22. 宮城タマヨ

    宮城タマヨ君 ちょっと速記をとめて下さい。
  23. 成瀬幡治

    委員長成瀬幡治君) 速記をとめて。   〔速記中止
  24. 成瀬幡治

    委員長成瀬幡治君) 速記を起して下さい。
  25. 宮城タマヨ

    宮城タマヨ君 ちょっともう一つ最後に伺いたいことは、先ほど映画撮影のことについてでございますけれども、刑務所の内を、刑務所をとるのに二十日以上もかかったのです。その間あの大がかりのあれだけの撮影をいたしますということがどうだろうか。しかもこれは映画会社の言うことでございますから、私はまるまると信用はできないと思っておりますけれども、前局長がいらっしゃって、刑務所長も陣頭に立って指揮をしていただいて、二十日余りで映画をとりましたということを非常に強調しておるのでございますが、もしもそれがほんとうでありとすれば、これは教育的の立場から、それからまた作業等にいろいろ関係する場合もあるだろうと思っておりますが、その点いかがでございましょうか。
  26. 高橋孝

    説明員高橋孝君) 一般の場合に考えますと、刑務所撮影の場所に供するという問題につきましては、いろいろ問題があろうかと思います。ただ今度の少年死刑囚の問題につきましては、会社の方でそういう企画をやるというようなことで、刑務所の方に対してもできるだけの協力を求めてきたわけでございますが、その場合に刑務所内における収容者の取り扱い方等がいろいろ出て参りまする関係上、刑務所側といたしましても映画会社の方でそういう企画があるということであれば、でき得る限りその内容が実際の面からしても間違いがないように、と申しますのは、ただ興業価値を高からしめるだけのために、ないことをあるようにやってみたり、いろいろな危険性がある面から、できるだけせっかく作るのであれば、ほんとうの間違いのないものをいう考え方からいろいろ意見も述べて、注文もして、なるたけりっぱなものをということで相当協力したようになっておるのであります。
  27. 宮城タマヨ

    宮城タマヨ君 最後に私は希望を述べておきますが、少くとも刑務所の中で守られておる人たちのために、必要以上の部面を見せて、しかもそれが金もうけのために使われておるというようなことは、矯正教育の上からいっても、また社会問題としても私はおもしろくないと思っております。どうか十分に追及していただきたいということを申し上げて、私はこれで終ります。
  28. 成瀬幡治

    委員長成瀬幡治君) それでは本件に関しましてはこの程度にいたしまして、次に、裁判所職員定員法の一部を改正する法律案を議題に供します。本案につきまして御質疑のおありの方は御発言を願います。
  29. 羽仁五郎

    ○羽仁五郎君 ただいまの法律案に関連して裁判所にちょっと伺っておきたいと思いますが、われわれはもちろん立法、司法、互いにその独立を保ち国民の信頼を全うするということを唯一の目的として伺いたいと思っております。私はやはり申すまでもなく、裁判所というものが最後の解決を与えられるところでありますから、いやしくもあるいは人々の思想上の立場であるとか、あるいは政治上の立場であるとかということによって差別をなさるということは許されないことであり、またそれをなさっていることはないと確信したいのであります。しかし、どうも事実上において遺憾ながらときどきそういうような心配を国民が抱いておる。特定の思想、あるいは特定の政治的立場というものに対しては、裁判所が御同情低いのではないか、それに対して感情的な憎悪をお持ちになっている場合があるのではないか。そういうような言説をかなり高い地位の責任を裁判所においてお持ちになっている方が御意見として発表されるということがございますが、それはそういうような思想を持っている人々に対して不安であるばかりでなく、国民全体にとりまして万一裁判所が国民の宗教、あるいは思想、あるいは政治というものの立場によって何らかの差別をされるということでありますと、裁判の公平いずこにありという疑惑が起ってくるのは当然であります。これはその裁判所の方に深刻に伺いたいという点が第一点。それから第二点、これは国会の方の責任も深く考えなければならぬことでありますけれども、最近国会を通過しております法律の中には、いわゆる立法によって罪を作っているような法律が幾つかございます。殺人とか強盗とか、国民が常識において罪としているものだけでなく、法律をもってこれこれこういうことをするのは罪であるというふうにした立法がございますが、これらの立法は私どもは絶えず議会においては反対の立場をとり、こういう法律の適用については裁判所において非常にお困りになるであろう、そういう人の信念あるいは政治上の問題なんかに関係してくるようなものを罪とするということが、なかなかその当事者に納得されないであろう、従って裁判所は非常な御苦労をなさるであろうということも非常に憂慮しておるのでありますが、残念ながらそういうものが法律になっておる。従ってそういう種類法律、つまり立法によって罪というものを作った種類法律は、なかなか納得がむずかしいと思うのです。人を殺したり盗んだりするということは、悪いということはわかっておるのですから、その本人裁判に服するということも比較的容易でありますけれども、たとえば公務員が政治活動をやったとか、あるいは何であるとかいうことは国によっては罪としていない、禁じていねい国もあるのです。そうしてまた日本においてもある時期にはそれを禁じてなかった、あるいは考えようによってはそういうものが悪いことだとは考えられない。そういうような意味においてそれを法律で罪としておる以上は、裁判所がその適用をなさることは、裁判所の権限に属することでありますけれども、しかしそれはなかなか納得されがたい性質の罪であるということは十分御了解下さっておることと思うのです。従ってそういう場合におきましては、その裁判を受ける方々の方で、場合によれば裁判所ではなはだ好ましくないというふうな行動をとられるというととが起ってくる場合があります。たとえばかなり大がいの人が傍聴するとか、あるいはその傍聴人なり何なりがいささか動きを示すとか、そういうことで裁判の神聖を害するのではないかというふうにお考えになる点があろうかと思われますけれども、しかし何ゆえにそういうことが起るかといえば、今申し上げたように立法によって作った罪というものは納得されがたい。従ってそういうふうな動きが起ってくるのではないか。しかるに最近の裁判所が国民に与えておられます印象から申しますと、そういうような騒ぎが起ってくると、その騒ぎが起らないような処置を裁判所が厳重になさる。その騒ぎにある意味において対抗するという、この前にも予算の場合に申し上げてそれは御訂正下さったようでありますが、いわゆる法廷闘争に対抗するというふうなお気持を裁判所がお持ちになっては私は大へんだと思う。いかに被告なり国民の方から法廷闘争という立場をとりましょうとも、裁判所においてはいやしくも法廷闘争などという立場をおとりになることは許されるはずはない。やはり裁判所は誠意をもって裁判が納得せられるよう努力をされるものだと思う。ところがどうも騒ぎが起るのじゃないかというようなことになって、鉄かぶとのような……、つまりそういう実力というものを裁判所の回りにめぐらされて、そうして一般を刺激される、あるいはそこで聞くことが決して禁ぜられていないような弁論をもお聞きにならないで、それで判決を下される。私はこれらの個々の具体的問題について申し上げておるのじゃない、一般的方針としてこの第二の点は、ただいま申し上げたように立法によって作っておる罪というものは、かなり納得せられがたい。しかもそれを納得されるような裁判をせられるには、ただいまおとりになっておるような方法がよろしいのか、それともむしろ逆にかなりの騒ぎにもそれを十分の理解をもってごらんになる、また従ってそういう場合には弁論なども述べたいと思っていることがあれば十分お聞きになって、そうして裁判をなさるという方がよろしいのではないか、こういう点についてなんです。  最後に特に伺っておきたいのは、司法研修所の問題でありますが、この問題は、実は私は学術会議の方も兼ねておりますが、学術会議の方で問題になってきて、大学教授の方々から問題になってきたことでもありますし、また先ごろ衆議院法務委員会においても御質問ございまして、裁判所の方からもお答えがございましたので、私は詳しいことは申し上げませんが、申すまでもなく、司法研修所に入所せられる方々は、あるいは裁判官となられる方々もおありになるが、また同時に弁護士になる方々もある、検事になる方々もある。まず、その裁判官の場合でありましても、私はいろいろの思想について無知であるということは適当だとは思わない。たとえば共産主義の思想につきましても、共産主義の思想について深く研究することなくしてこれを排斥するということは、私は危険なことだと思う。いわんや弁護士の場合には、そういう共産主義的な政治的立場のある方の人権をも擁護せられる任務を持たれるわけです。もちろん裁判官といえども、政治上の立場あるいは思想上の立場を問わず、国民の人権を擁護して下さることに余念ないはずだと私は信じます。しかるに司法研修所に入所せられようとする方々に対して、第一には思想上の問題について調査をせられるということがあったのかどうか。第二には、その調査の際に、公安調査庁などに依頼せられて調査をせられたことがあるのか。第三は、将来——今日以後、そういう今申し上げた第一点、第二点のことを続けてなさるおつもりであるのかどうか。この三点について簡潔にお答えを願いたいと思うのであります。で、衆議院においての裁判所のお答えも拝見しておりますから、それらについてはもはや伺う必要はないのでありまして、私の申し上げた三点についてのお答えがいただければ仕合せだと思います。どうか最初に申し上げましたように・裁判について、国民が裁判所という所は公平に、どういう政治的立場であろうと、どういう思想的立場であろうと、よくわれわれの言うことを聞いて、そうして裁判をして下さる所だという感じをお与え下さいますように、以上の点についてのお答えがいただきたいのであります。
  30. 鈴木忠一

    説明員(鈴木忠一君) お答え申し上げます。最初の御質問でございますが、裁判所ないしは裁判官が思想的傾向を問題として、思想的傾向を理由に差別的な待遇をすべきではない、また現にそういう差別的待遇をしておるような誤解を生ずるような言説をする向きがあるけれども、それは間違っていると言われる羽仁委員の御発言は、私どももその通りだと存じます。思想の自由は憲法がはっきり保障しておるところでございますから、憲法のもとに国家の司法権の運用に従事しておる裁判官が、自分の思想的傾向に異なるがゆえに、ないしは自分の嫌悪する思想なるがゆえに、思想の持ち主なるがゆえに、そういう点に執着して、毛ぎらいをし、差別的な待遇を事務の上ないしは裁判の上においてするというようなことは、私どもも考えられないことでございます。おそらく全国の裁判官といえども、思想的な理由によって、当事者ないしは被告人に対して、差別的な感情を抱き、待遇をするというようなことは、おそらくだれも考えておらない点だろうと思います。その点は裁判所を信用していただいて私は差しつかえないのじゃないかと、こういうふうに考えます。  それから第二の問題でございますが、おっしゃる通りいわゆる自然犯と、それから自然犯に対して行政犯ないしは取締り法規の上の犯罪、そういう場合は性質も違いますし、立法がなくてもわれわれの自然的な感情として、人の物を取り、他人を殺し、傷をつけるというようなことは、立法を待たずして、われわれ人間としてこれに対して本能的に嫌悪を感じ、鎮圧をすべきだというように自然的に考えられますのでありますけれども、いわゆる取締法規となりますと、本来ならば放任していいところのものが、立法があるがゆえにわれわれが行動の自由を阻害されるのだという面がたくさん出て参りますから、そういう面において犯罪が生じた場合に、これは取り締る方の検察官、警察官ももちろんでありまするけれども、事件となって裁判所に持ち来たされた場合に、一番裁判官として、ざっくばらんに申せば、自然犯の場合に比べれば、非常にいやなケースなんです。たとえば卑近な例を申し上げますれば、経済統制のごときもののような場合とか、いわゆる思想内意犯罪であるとかいうような場合、それが裁判所に参った場合に、裁判官はこの個人の感情・個人の考え方からいえば、持ち来たされた事件裁判するのはきわめて愉快でない、避けたいような場合を、われわれといたしましてもしばしば経験するわけでございます。しかし御承知のごとく裁判官は憲法のもとにおいて、法律のいわばディナーとして、召使として、法律は適用せざるを得ない立場でございますから、自分の個人的な見解、個人的な世界観というようなものに縛られて、それで法律を無視したような結果の裁判ということは、これはまた裁判官の本質に反しますし、第一憲法にも反するわけでございますから、そういうときの裁判官のジレンマというものは、これはおそらく御想像以上に苦しい立場にあるということを申し上げたいと思います。一般的にそういうことでございますが、ただいま御質問になりました事柄は、具体的な裁判に関する事柄でないと特にお断わりいただきましたので、私の方も一般的に申し上げるわけでございますが、たとえば御指摘になりました法廷闘争に対する裁判所の措置というふうなものも、これは場合によっては裁判所が必要以上に対抗意識を発揮しているのではないかというような場合が見られるかもしれませんのですが、裁判所としては大体裁判の事務というものは、当事者が持って来なければ、犯罪があっても裁判所みずから発動はいたしませんし、当事者の間の紛争を裁判所みずから買って出るということももちろんございませんので、いわば裁判所の作用というものは、申立てがなければ発動をしないという、きわめて受け身的なものであることはこれは申すまでもないわけです。で、いわゆる法廷闘争に対する裁判所の防禦策と申しましても、これは私どもから言わせますと、常に受け身、受け身で、後手後手を打っているようは立場、それが事実であろうと私どもは考えているわけです。ただそれを常に後手々々ということで放任主義にして、あとでこうすればよかった、ああすればよかったという結果論のみに従来は没頭をしておったのでありますけれども、場合によりましてはいろいろな情報とか、周囲の関係上、自然にやはり裁判所としては対抗という意味でなくて、受け身ではありますけれども、具体的に事件が起きないように、また起きた場合に最小限度に食いとめられるように、守衛とか裁判所内の職員を動員をし、それでも足りないと思われる場合にはあらかじめ警察方面に連絡をして、万一の場合には発動をお願いできるようなことをいたした例も過去においてもございます。しかしこれは裁判所の本質から申しましてもあくまで予防的、しかも消極的に予防するということが主眼でありまして、積極的にそういう運動なりそういう裁判所に対する働きかけを積極的に弾圧をし、抜本的にどうしようこうしようといったところで、これは裁判所の手には負えばいことでありまするし、第一裁判所の任務でもありませんので、そういうことは考えておりません。将来といえどもやはり受け身であり、積極的にそれを抑圧し、弾圧するというようなことは、裁判所としては抽象的に申し上げましても、具体的に申しましてもいたさないだろうと私は信じております。  それから第三番目に、司法研修所に入所をする場合の思想調査を最高裁判所が行なっておるではないかというような御質問で、学会等においてもそういう発言がなされたのを、羽仁委員がお聞きになったように拝聴いたしましたけれども、結論的に申し上げれば、裁判所司法研修所に入所する際において、裁判所がその候補者の思想を思想として調査をするということはこれは絶対にございません。それからなお従ってその思想調査を公安調査庁に依頼したというようなこともございません。ただおそらく誤解を生じたのは、御承知の通り司法研修所に入所する者は、将来裁判官になるか、検察官になるか、あるいは弁護士になるか、これはなお未決定な問題であります。しかしながら裁判官になるにしても、弁護士になるにしても、やはり日本国の法曹として、憲法、法律のワク内において行動をするのだ。国の機関としての裁判所に対してはやはりその機関たる地位を認めて行動をし、尊敬をすべきものだ、こういうことがやはり法曹に通じての前提問題であろうと存じます。法曹たる資格を穫得するについて。それでそういう場合に、具体的な場合に過去のいろいろ身元調査をいたします。前科のあるかとか、今までどこに勤めておったというような身元調査をいたします。そういう場合に犯罪が現われてくる場合もございます。それから学生でありますから、学校において非常に騒動を起したとか、特定の政党に所属しておってそのメンバーの獲得にかなり活動をした。そして学校騒動で停学を食ったとか、いろいろそういうケースはございますけれども、そういうことが生じて参ります。調査の結果。そういう場合に私どもの方としてはそれが抽象的に憲法を破壊するとか、法律を無視するとかいうようなことは、これはだれも申しませんし、だれもそういうことを公言して行動するものはございませんけれども、裁判所を侮辱するような行動をしておったり、法律を無視しておるような行動をしておったりするような者に対しては、ある場合にはこれは果して将来法曹として十分な適格があるだろうかどうかというようなことは、私どもとしても司法研修所に入り、しかも国家からは何らの義務というものを課せられない、しかも国費のもとに俸給をもらって修習をいたすものでありますから、そういう点で法曹としての資格が、適格があるかどうかというような点について疑問を持って入所を延期をした。もちろん裁判官会議でおきめになることでありますけれども、絶対に採ってはいけないというようなことではなくて、過去のこういう行動を見て、様子をしばらく見ていた方がいいんじゃないかというような意味合いで、一年入所を延期したというようなことはございます。しかしそれは私どもの考えとしては特定の思想の持ち主なるがゆえに入所を延期させるというような考え方でないととは、御了承願いたいと存じます。将来といえども思想がどうこうというような点は、調査をする意思は毛頭ございません。
  31. 羽仁五郎

    ○羽仁五郎君 裁判所の御意見でありますから、もっぱら尊重して拝聴いたした次第でございます。第一点につきましても、なお国民に不安を与えられないように御努力を、これはお願いを申し上げるわけであります。第二点につきましても、先ほど伺いましたのは、その実力を用いて刺激をせられるというような心配を国民に与えられるのではないかという点、それからもう一つは聞くべき弁論を聞くことが、別に禁ぜられていない場合にもお聞きにならないということが、何か国民に裁判所は十分国民の聞いていただきたい思っていることを聞いて下さらないのではないかという疑いを、不安を与えている。これらの不安を与えられないように努力せられるという御答弁でございます。第三の点につきましても、司法研修所に入所しようとする人に対して、思想調査をやっていないという言葉でありましたが、思想調査をしているのではないかというような不安を国民が抱かないような努力をして下さることというふうにお答えを拝聴する次第であります。なお、念のため、これは私の私見でありますが、司法研究修所は教育機関であろうというように考えております。教育の場合には、おのずからたとえそれが国費で経営されているものでありましても、やはり目的は教育でありますから、従ってその教育の場合には、過去においてその人がどういうことをしたかということをとがめてしまうならば、もう教育はあり得ない。むしろ過去においていろいろなことをした人が教育せられて、そうしてでき上ってくる人には、そういうふうな経験を持たない人よりも、むしろかえって意義の深い人を得る場合もあると思う。学生運動をやっておったとか、あるいは共産党活動をしたとか、そういう人が自分は今度は憲法に従い裁判の面で努力したいというようにお考えになった方は、これは宗教的な場合には善人すら往生する、いわんや悪人おやというくらいですから、むしろそういう苦しみを経てこられた方の方が、今日の社会においてはそういう問題があるのですから、そういう問題から生じてくる問題に対して、深い同情のある、納得のある裁判、弁論、または検察をなさり得る方になるということが、司法研修所の重大な使命であると思う。そういう意味で司法研修所は古い、ことに敗戦前の日本の教育的な考え方にお立ちになっているとは私は信じたくない。やはり日本の現在の最も進んだ教育的な面にお立ちになることと思います。従いましてこれがあくまで教育機関である、後にこの方はそれぞれの職責に立たれる場合には、一番制約をされる職務につかれることでもございますし、ただいまの御説明では幾分私納得しかねる点もございますけれども、これは裁判所の考え、また私の考えでありますから、望むところはただいま私の申し述べました点をも御参考にお考え下さいまして、いやしくも国民に司法研修所は入るときからして思想的な差別をやっている、それじゃ結局裁判というものも思想的な立場でやられるだろう、それではもう裁判には納得しないというような気持が国民の間に出てきては、大へんだと思われますので、いやしくもそういう事実がないということはよくわかりましたが、そういう不安を国民に与えるようなことをも慎重にお考え下さいますことをお願いいたしまして、私の質問を終ります
  32. 一松定吉

    ○一松定吉君 議事進行、もう大がい質問済んだように思うのですが、どうでしょう、定員法を上げてしまっては、簡単ですから……。これは反対もないでしようから……。
  33. 成瀬幡治

    委員長成瀬幡治君) 御異議ございませんか。
  34. 一松定吉

    ○一松定吉君 これ日程に上していただいて……。
  35. 成瀬幡治

    委員長成瀬幡治君) それでは別に御発言もなければ質疑は尽きたものと認めて御異議ございませんか。   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  36. 成瀬幡治

    委員長成瀬幡治君) それではこれより討論に入ります。御意見のおありの方は賛否を明らかにしてお述べを願います……。別に御意見もないようでございますが、討論は終局したものと認めて御異議ございませんか。   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  37. 成瀬幡治

    委員長成瀬幡治君) 御異議ないものと認めます。  それではこれより採決を行います。裁判所職員定員法の一部を改正する法律案を問題に供します。本案を原案通り可決することに賛成の方の挙手を願います。   〔賛成者挙手〕
  38. 成瀬幡治

    委員長成瀬幡治君) 多数でございます。よって、本案は多数をもって原案通り可決すべきものと決定いたしました。  なお、本院規則第百四条による本会議における口頭報告の内容、第七十二条により議長に提出すべき報告書の作成その他事後の手続につきましては、これを委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ございませんか。   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  39. 成瀬幡治

    委員長成瀬幡治君) 御異議ないと認めます。よってさように決定いたしました。  それから報告書には多数意見者の署名を付することになっておりますから、本案を可とされた方は順次御署名を願います。   多数意見者署名      宮城 タマヨ  藤原 道子      市川 房枝   岩澤 忠恭      剱木 亨弘   廣瀬 久忠      一松 定吉
  40. 成瀬幡治

    委員長成瀬幡治君) 速記をとめて下さい。   〔速記中止
  41. 成瀬幡治

    委員長成瀬幡治君) 速記を起して。  他に御発言がなければ、本日はこれをもって散会いたします。次回は八日午後一時から委員会を開き、参考人から意見を聴取いたします。   午後零時四十八分散会