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1955-07-01 第22回国会 参議院 法務委員会 第12号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和三十年七月一日(金曜日)    午後一時四十三分開会     —————————————  出席者は左の通り。    委員長     成瀬 幡治君    理事            剱木 亨弘君            宮城タマヨ君            市川 房枝君    委員            岩沢 忠恭君            中山 福藏君            藤原 道子君            吉田 法晴君            一松 定吉君            羽仁 五郎君            小幡 治和君   政府委員    法務政務次官  小泉 純也君    法務大臣官房調    査課長     位野木益雄君    法務省入国管理    局長      内田 藤雄君   説明員    最高裁判所長官    代理者    (事務総局総務    局総務課長)  磯崎 良譽君     —————————————  本日の会議に付した案件 ○出入国管理令の一部を改正する法律  案(内閣提出衆議院送付)     —————————————
  2. 宮城タマヨ

    理事宮城タマヨ君) これより法務委員会を開会いたします。  まず出入国管理令の一部を改正する法律案議題に供します。本案につきまして御質疑のおありの方は順次御発言を願います。
  3. 中山福藏

    中山福藏君 入国管理同の方にお伺いしますが、第五十四条のうちに、ここに第三という項目を入れるということになっているわけです。で、その要点は、結局保証金額及びその保証金を納付する旨を記載しなければならないという、ここに条項が表われておりまして、被収容者以外の者がこれを納めるということになっているのですが、これは五十五条の第三項と照らし合せてみますというと、万一被収容者が仮放免の場合に逃げた場合に、その金を没収するということになっているのですが、保証書の場合にはどうするのですか。保証金の納められていないときは、これを没収することができないということになるのじゃないですか。これはどういうことになりますか。
  4. 内田藤雄

    政府委員内田藤雄君) ただいま中山委員の御指摘通りでございまして、その場合の問題につきましては、私の了解しておりまするところでは、保釈保証金の問題につきましてもこのような問題があるように聞いておりますのでございますが、われわれといたしましては、その場合と同じように、その保証書を出しました人にできるだけ払ってもらうように交渉いたしまして、どうしてもそれができないような場合には、別の法律的な手段に訴えるよりほかないと考えておる次第でございます。
  5. 中山福藏

    中山福藏君 これは刑事訴訟法の場合は今おっしゃった通りに、まあ大体一部というものは現金で、他の残部のものを保証書を入れるというように取り扱っていると思うのですが、しかし万やむを得ないときには全額に対する保証書を入れるということになっておりますのですけれども、ただいまおっしゃったように、その徴収の方法がないというような場合には、そのままこれを放置されておるというような状況にあるわけなんですが、私は、この制度が今度改正されて、相当の有力な同体であるにかかわらず保証金が積めないで、団体の力によってその保証書を入れるということになりますれば、この事情というものは頻発してきて、その団体の何人も責任を負わないというようなことになってくるのじゃないかということを非常に憂うるのでありますが、大体この刑事訴訟法の場合における被疑者釈放保証の場合においては、個人が大体その保証をするということになっているのですね。この出入国管理令の場合は、これは大体団体保証さるという意味じゃないですか。
  6. 内田藤雄

    政府委員内田藤雄君) われわれがこの規定をどうして挿入しようかと考えるに至りましたいきさつを御説明いたしまして、従いましてわれわれの運用の大体心組みというものを御説明いたしたいと存じまが、この、こういう規定の必要を感じました最初のきっかけをなしましたのは、日本人が、中岡あるいはそのほかの外国の人と婚姻いたしまして、その国に行っておった、ところがその相手の人がなくなったというような理由で帰国いたしましたような場合において、相手の国の国籍が離脱できません関係で、本来の日本人であるにもかかわらず、国籍の上では外国人である、そういう人をやはり出入国管理令法律上は、外国人として取り扱わなければならないことになるのでございますが、その際にいろいろこの従来の法律によりますと、やはり保証金を取らなければならないということで、運用上非常に囲った事例がいろいろあったのでございます。  それから昨年の末ころから、韓国との間に、密入国者送還がとだえていたことにつきまして、いろいろ交渉を開始いたしましたところが、密入国でなしに、犯罪等理由によりまして大村に長く収容せられておる者の釈放という問題が起って参りました。それでこの問題につきましては、われわれ自身としても、かねていろいろ苦慮しておりました問題でございましたので、そういう機会にこの問題をあわせて解決いたしたいと存じまして、漸次日本の治安に関係のないと認められる人々の仮放免ということを現に実行して参ったわけでございます。その際に多くの人々は大体親類があるとか、あるいは友人とかがございまして、その仮放免につきましての保証金についても、さして問題が起らなかったわけでございますが、中には長くそういうふうに隔離されておったというような事情のために、適当な引受入が見つからない、またそういう長い収容のために金もなくて、この仮放免の金が納められない、こういうような方がある数出て参ったわけでございます。それで私どもといたしましては、適当な、われわれの方でこれならばと思うような団体に頼みまして、この身元引受けをやってもらいまして、仮放免いたしたわけでございます。このわれわれの力の仮放免と申しますと、通常の刑を終った人あるいは仮放免によって刑務所から出て参りますような人の場合に存在いたしますような法律上の保護がないのでございます。そのためにそれを運営して参ります金の問題というのが一つの問題になったわけでございます。ことに今申し上げましたようないきさつで、ある団体にこちらから保護を頼みながら、その団体からまた保証金を取るということは、人にものを頼んでおきながらまた一方においては要求するというようなはなはだ妙なことになりますので、これは何とかいたしたい、また実際問題といたしましてもそういった団体保証金相当期間寝かしておかなければならないということは、その保護団体の他の一般保護事業運営のためにも支障をきたす、こういうようなこともございましたので、かたがたわれわれといたしましては、少くともそういう場合には保証書をもってかえ得るようにいたしたい、こういうふうに考えた次第でございます。従いましてわれわれといたしましては、この条文をおきましたことによりまして、いたずらに仮放免保証書をもってかえ得るようなものにしようとは考えておりません。通常放免を向うから申し出て参りますような場合には、今まで通りやり方保証金を積ませて仮放免をいたすという考えでございまして、ただいま申し上げましたような非常な特殊の場合にこの条文によって保護団体に無用の負担をかけないやり方運用いたしたい、こう考えおる次第ございます。
  7. 中山福藏

    中山福藏君 まあ大体局長のおっしゃったことはわかるのですが、大体刑事訴訟法の場合の保釈金はこれは大体取り立てが可能なんですが、ところが入国管理令の場合には不可能だと私は見るわけです。しかしただいまおっしゃったような事情がありとすれば、これも幾分酌量することができるわけでありますが、しかし実際占領当時の連合軍の裁判の状況を見て、弁護士が保証するという場合においては相当保証金を積み立てさせました、五万円から十万円と。それから万一被疑者が逃亡した場合にはどうなるかというと、その金を使って犯罪人を捜査したものなんです。私はこの保証金というものはやはり非常に収容者が仮放免の場合に逃亡したら、その金をもって捜査する、いわゆる国に損害をかけないで捜査できるような建前をとるというのが一本来の保証金制度出発点じゃないかと見ておるのですが、それがその取立不可能な状況にあるところの保証金を積まして、その精神を没却してかかるというのは、これは保証金制度趣旨に私はそむくのじゃないかということを考えておるのですが、万一そういう場合がありとすれば、ただもう野放しに、そのままそれは逃亡したままで放置しておかれるという考え方でございましょうか、それを一つお尋ねしておきます。
  8. 内田藤雄

    政府委員内田藤雄君) 保証金制度趣旨というものは、全く中山委員の御指摘通りであると存じます。われわれもそう考えておりますので、ただいまも申し上げましたように、この条文を実際生かします場合というのはきわめて限られた、ただいま申し上げましたようにむしろわれわれの方から仮放免をいたすのにつきまして、ある人にその引受けを依頼しなければならないような、きわめて例外的な場合にのみ使うというつもりでおります。従いまして通常の場合におきましては全く中山委員の御指摘のような運営の仕方をいたして参りたいと思っております。それから万一これで逃げて逃亡したというような者が出ました場合には、これは仮放免条件違反になるわけでございますので、当然これの仮放免を取り消しまして、再び収捕するために努力したいと考えます。
  9. 中山福藏

    中山福藏君 私一人でいろいろなことばかりお尋ねしているということは他の委員の方に済みませんからいいかげんにやめますが、私はただいま局長が仰せられたような御答弁でこの保証金精神というものがあなた方のお望み通りにゆくかゆかないかということには非常に疑問を持っております。これはほとんどだめだろうと思います。そこでどうか一つ、そういうことを水かけ論でやっておったところでしょうがありませんから、なるべくただいまおっしゃったように、厳格にこの問題を取り扱っていただきたいということを御希望申し上げておきます。そこで最後一つ……、次長はおられますか。
  10. 内田藤雄

    政府委員内田藤雄君) ちょっと食事の約束のためにおくれて参りますが。
  11. 中山福藏

    中山福藏君 そこで最後法律上の問題、これはきのうお尋ねしたわけですが、異議の申立期間の三日、行政訴訟提訴期間の六ヵ月、それから特別の理由がある場合においては一年の特別の場合があるということになっておりますけれども、かりにそれがあるといたしましても、ただいま入国管理局においてお取り扱いになっておるのは再審願いをことごとく出さしておられるように私は考えております。これは特別の本人の利益のためにそれを勧告されて再審のお願いというものをまあ被収容者が出しておるわけなんです。そこでこれが行政行為か何かということのきのうの質問に対して、行政行為ではないというきのうの御答弁であったんですが、これは学説判例等、ただいまある方面で調べていただきますというと、すべて行政行為であるというような意見が多いようであります。従ってこれに対してはやはり行政訴訟が起し得るのだという意見相当に多いわけですね。これはやはりきのう次長が仰せられたように行政行為ではないという御意向でございましょうか。また行政行為であるとすれば、きのう申し上げたようにこれを法律に明文化しておくということがやはり必要じゃないかと思うのですがね、そういう点はどうです。
  12. 内田藤雄

    政府委員内田藤雄君) ただいま中山委員再審をことごとくやらしておるというふうにおっしゃいましたがこれは事実ではございません。再審というのはわれわれはむしろ、やらせるなというわけにも参りませんが、本人が勝手にやる以上はいたし方ございませんが、再審をやれというふうに奨めるようなことは……、むしろやるなということをはっきり訓令も出しておりますし、またわれわれといたしましても再審願いが出されることを決して歓迎いたしておるわけではございません。しかし実際問題として再審願いが出されました場合には、これはわれわれとして何らかの実際上応答をいたさなければならないかと考えておる次第でございます。それからその再審願い行政行為であるかどうかという問題につきまして……。
  13. 中山福藏

    中山福藏君 いや、それに対する決定ですよ。合議なさってこの再審願いというものは却下すべきものだという御決定になりますね、事実上今取り扱っておられるそういうふうな御行為行政処分の中に入るんじゃないかということを私は申し上げているんです。きのうの次長の御答弁ではそれは法律行為じゃない、だから行政訴訟の手続をとることはできないという御答弁だった。それはお間違いじゃないかということを念を押しておるわけです。
  14. 内田藤雄

    政府委員内田藤雄君) 昨日次長答弁は私も脇におりましたのですが、中山委員も御自身でお認めになったんじゃないかと存じますが、再審の問題というものは法令にはないわけでございます。そこでわれわれといたしましても再審というものを法律上根拠のあるものとは考えておりません。従いまして次長が昨日申し上げたのはその意味においての法律行為ではないと申し上げたのではないかと存じますが、その意味ならばわれわれはそういうふうに了解いたしております。
  15. 中山福藏

    中山福藏君 これは形式上、法令にない場合においても行政行為であるという学説判例意見が多いわけです。私が調べてみましたところがそういう意見が多い。これはやはり法務省としては、すべてこれは法務大臣の任命に関しても特別の知能のある人を法務大臣にしろということを書いてある。これはほかの閣僚を任命する場合と法務大臣とは違うんです。行政組織法を見てみてもそういう場合でありますから、法務省管轄下におけるところのすべてのこの問題については十分一つ御検討になっておいて、そういうものが法律行為であるかないかということも一つの明確なる線を規則の上に残していただきたいということを私は御希望申し上げて質問を終ります。
  16. 羽仁五郎

    羽仁五郎君 ただいま議題になっております法律案について二、三の点を質問したいと思うのですが、第一に伺いたいのは現在の外国人収容の現状について御報告をしていただきたいと思います。
  17. 内田藤雄

    政府委員内田藤雄君) 現在収容所と称しておりますものは大村浜松横浜浜松はこれは横浜収容所の分室でございますが、その内訳を申し上げますと大村が千百四十三名、浜松が二百四十一名、横浜が三十二名、全部を合計いたしまして千四百十六名でございます。そのうち大村について申し上げますと、そのほとんどが朝鮮人でございまして千百三、そのほかに中国人か二十三、そうして朝鮮人内訳を申し上げますと不法入国が七百八十八、それから不法残留が二十三、そのほかは大体二十四条の関係者でございます。
  18. 羽仁五郎

    羽仁五郎君 二十四条というのは……。
  19. 内田藤雄

    政府委員内田藤雄君) 二十四条、つまり犯罪とか麻薬とかいろいろございます。それから横浜を申し上げますと……。
  20. 羽仁五郎

    羽仁五郎君 それはいいと思います。今の次に収容期間の長さをちょっと伺いたい。
  21. 内田藤雄

    政府委員内田藤雄君) これにつきてましては、昨年六月最後韓国送還船が出まして以来昨年中はずっと途絶いたしておりました。その関係で昨年末には一時千六百までが一番最高高であったと思います。約千六百まで通したのでございます。しかしその後ちょうど会談の糸口となりましたのは、もう昨年の暮のことでございましたが、そのころから韓国政府側といろいろ話し合いを始めまして、結局二月の末に久しぶりに送還船がまた出ましたのでございます。それで三、四と三回、月に一回ずつ順調に送還が行われまして約七百名余りを、これはいずれも密入国者だけでございますが送還いたしました。その日韓聞話し合いの結果と申しますとちょっと語弊がございますが、いずれにいたしましてもその話し合いの途上におきまして長い収容者の問題ということも議題になりまして、先ほども申したことでございますが、われわれ自身この問題は何とか解決をしたいと思っておったことでもございましたので、漸次、長い収容者であるということをむろん一つ、第一の条件、それから実際の原因となりました犯罪内容その他を検討いたしまして漸次釈放して参りまして、先般までに約二百四十名を釈放いたしたと考えます。それで今後におきましても、実は先般来韓国側日本に対する感情が非常に悪化いたしまして、その理由はいろいろあろうかと存じますが、まあわれわれが接触しております限りでの向う側の言い分によりますと、日本側北鮮政府相手にするような態度に出てきたということを非常な理由にいたしておるようでありますが、そうしたことのために五月に予定をしておりました送還船が、六月になりいまだに出ておりませんですが、しかし最近どうやらわれわれの説明なども了得いたしましたのか、七月の中旬までにはまた密入国者送還できるようになるのではないかと考えております。そういたしますと大体密入国者だけについて申しますと、昨年中に密入国いたしました者は、この船で全部片づく予定でございます。  それからその密入国者でない、ただいま犯罪等理由によって収容されている人の問題になりますが、これにつきましてはわれわれは少くとも昨年の暮ごろのやり方というのは非常に慎重にやっておりまして、単に登録令違反であるとか、あるいはただ窃盗で一年半以内の刑を受けたというようなことについては退令にいたしておりませんし、従って大村にも送っておりません。送っておりますようなのは概して申しますと大体普通の判断でございますならば前科三犯ないし四犯以上、特殊の麻薬とかヒロポンといった特殊の犯罪の場合には、あるいは再犯くらいで退去にいたしておるものも中にはあるかと存じますが、大体はわれわれが常識で判断いたしまして刑務所から出てくるとまたすぐ犯罪をやる、そうしてすぐまた刑務所に送られて出てきておる。こういった到底通常社会生活を求めても無理であると思われるようなもののみを大村に送っております。しかし、遺憾ながらこの数というものが毎月少しずつふえて参っておりまして、先ほど申し上げましたように二百四十名ほどを仮放免いたしたのでございますが、その間にまたそういった理由で送られている者がこれをだんだん補っていっているという格好になりまして、やはりそういう理由によって大村におる者が現在三百二、三十名おるのではないかと考えます。
  22. 羽仁五郎

    羽仁五郎君 ただいま御説明をいただいて非常な御努力を払っておられることに対しては敬意を表するものであります。今の御説明でありますと、この外交関係の好転によって本年中に昨年中の密入国関係の方は間もなく送還が可能であろうということになりますと、そのお見込みによると、かなり現在の収容者の数は減ることになりますが、どの程度減ることになりますか。
  23. 内田藤雄

    政府委員内田藤雄君) 先ほど申し上げましたことしに入りましてからの送還船によるものは、最初の第一船が二百二十名でありました以外は各船とも二百五十名、そういうことが基準になっております。   〔理事富城タマヨ君退席、委員長着席〕 これは船の大きさ、まあそれが基準になりまして、韓国側密入国者として確認してこれを引き受けると言って参る数字が、大体そういうことになっておる結果でございます。で、今後のことにつきまして的確なことは申し上げかねますが、それらの例によりますと大体一船出ますと約二百五十名は送り返せる、こういうふうに考えております。そうして、同時にそのときとときを同じゅうするわけではございませんが、それを見合う格好で五、六十名のものを従来は仮放免いたして参っておりますから、その数字次がプラスされたものが大村収容所から減ることになるわけでございます。
  24. 羽仁五郎

    羽仁五郎君 それから先ほど伺いましたかなり長期に、まあ収容という問題について、予想されているよりも非常に長く収容されている方がかなりあるのじゃないかと思いますが、そういう方の人数、それからその収容期間、どれぐらい長くいるのか、もし今お答えを願えれば伺いたい。
  25. 内田藤雄

    政府委員内田藤雄君) 私今ちょっと数字をここで探しておりますが、大体、まあ大体と申しますか、はっきり申し上げられますことは、昭和二十七年度のものはたしか一名、前科八犯のすりというのがおりますが、これを除きましては全部釈放いたしたわけでございます。それから昭和二十八年度分につきましても非常なぎりぎりの線で残っております人の数は二十名以内ぐらいではないかと考えます。二十九年度になりますと八年よりも数が多いと思いますが、しかし先ほど申し上げましたように、犯罪内容あるいは刑期いろいろなもの勘案いたしまして、非常に社会生活に疑念を抱かせる者以外には、大体釈放して参っておりますので、その数も非常に少いはずでございます。
  26. 羽仁五郎

    羽仁五郎君 ときに今度の法律案提出理由もやはり収容を継続することが適当でないという場合を問題にされておられるので、ぜひその収容継続が適当でないという場合については、ただいま提案されておりますような方法、あるいはその他の方法をわれわれとして考えなければ、政府としてもお考えを願わなきゃならぬと思いますが、この出入国の問題につきましては、旧占領時代から平和条約発効当時から外国人登録法その他の審議の際に、私の見解はしばしば申し上げまたその際に政府から政府の方針をお答えになっておるものも速記録に残っていますので、今ここに繰り返すことは避けなければならないのでありますが、やはりどうか絶えず、ことに大村収容所の大部分の方が朝鮮の方であるという点から、これらの朝鮮の方のまた大部分はかって本人の御意思にあるいは反して日本国民として生活をしておられた方であるという点が第一点、第二点は日本が長く支配しておりましたために、朝鮮が独立せられるその実が上るのがなかなか時日を要する、それまで日本朝鮮との間の外交関係が急速に解決するということがなかなか困難である。そういう点からかって日本国民として住んでおられた方が日本朝鮮との新しい外交関係が確立するまでの間の処置については、当時政府の御答弁としても決して人情に反するようなことはしないつもりだから安心を願いたいということを、外務法務連合委員会で言明をされておりますので、どうか第一にこの趣旨を常にお守りをいただきたいと思いますがいかがでしょうか。
  27. 内田藤雄

    政府委員内田藤雄君) ただいま羽仁委員の御指摘になりましたように、入管令の発足に当りまして当時の岡崎外務大臣が声明いたしましたその内容は、その趣旨におきまして今羽仁委員の御指導になった通りだろうと考えます。しかしその中にもはっきり言っておるのでございますが、特に悪質の者は別として……、というふうになっておりまして、われわれといたしましては当時からこの大臣の声明を基礎といたしまして諸般の訓令などを出しておりますし、またわれわれといたしましても大体その線に沿ってやって参っておるつもりでございます。
  28. 羽仁五郎

    羽仁五郎君 ただいまの点については後に二、三の実例で伺いたいと思うのですが、原則的には今お話しの通り悪質の場合を除いてそういった特殊な事情があるので、一般外国人と同じように扱うということはできないという趣旨は守られていることと考えます。  第二に、やはり二つの点から特にその点を留意していただきたいと思うのは、今いろいろ御尽力、御努力になっている御報告の中にもありましたように、外交関係とこの収容所の問題が絶えず関連をして、そしてあるいは相原因となり、あるいは結果となっているという場合もずいぶん多いことですし、この外交上の問題にはやはり日本にかって日本国民として生活をしておられた方とか、あるいは日本の国内で犯罪を犯されてそして刑を負わされた方とか、という方々に対してなかなか日本送還を希望しても、その日本の国の送還の希望にあちらで応ぜられないというふうな場合が起り、そういうことから収容者の数が多くなり、あるいはその収容者取り扱いに問題が起り、それがまた外交上感情を害するというふうなことになると思いますので、特に今のような、最初にはそれほどでなかった問題が、かなりこじれるという場合もあると思いますので、私は決して今局長がおっしゃるようにいかなる場合にも、ということではないのでありますから、きわめて悪質な有害の場合、従って明直な実害のないという場合については、いわんや人情その他をじゅうりんされることはないという努力をしていただきたいというのが、そういう意味からでもあるのです。それからもう一つの点は、やはりこれが特に本委員会において常に各委員努力しておられる人権の尊重という点から、これはいやしくもその人権じゅうりんということが起ることは好ましくない、しかもそれが外交関係関係しているからということなんです。そこで次に二、三の点を本案に入って伺いたいのですが、二つ伺っておきたいのですが、第一は保証書の問題なんですが、保証書内容は大体どんなものをお考えになっておられるのか伺いたい。
  29. 内田藤雄

    政府委員内田藤雄君) 保証書の形式は法務省令で規定いたすつもりでおるのでございますが、大体は刑事訴訟手続において保釈の場合に使っております保証書の例に準じて考えたいと思っております。従いまして内容といたしましては保証の金額をきめ、またいつでも保証金を納めるむねの誓約の文書、こういう形になろうかと思います。
  30. 羽仁五郎

    羽仁五郎君 その点についてこれは特に希望として述べたいのは、この保証の場合にやはり何らかのいわゆる差別がこの団体その他について、ここに法案提出の理由としておっしゃっておる趣旨が、この通りに実行されれば問題ないというのですが、すなわちこの収容が適当でない、収容継続が適当でない、従って仮釈放なり、こういう手続をとられることは妥当だということがスムースに行われればいいと思うのですが、その際に従来の他のいろいろな例などを考えてみても、昨日中山委員からこれは中国の方々に対しての問題として指摘されたような問題を考えてみましても、引き受ける団体を、ある団体団体によって差別をするというふうなことが起ってきますと、そこにやはり一面においては弊害を生じ、他面においては不安を生ずるというようなこともあるのじゃないか。特にそれが政治上の理由を持った差別が行われるようなことになりますと、また今申し上げた弊害と不安とが発生してくる、悪質のブローカーのようなものがそこに発生してくるということになるのじゃないか。昨日の中山委員のあげられました例のようなことを、ある意味においては未然に防がなければ、やはりそういうことが生じてきてからそれをどういうふうにしなければならぬということももちろんあるわけですが、未然に防がなければならぬ。そのためには今御説明のような保証書としての要件、必要として十分なる要件のみに限られて、それ以外の無用な差別などをされないということを期待するのですが、これはそういうふうに了承しておいてよろしいことと思って特に御答弁をいただかないで、次の問題に移りたいと思います。よろしゅうございましょうか。何かお答えになることがありますか。
  31. 内田藤雄

    政府委員内田藤雄君) ちょっと一言さしていただきます。それは率直に申し上げますと、先ほども申し上げましたように、日韓間の話に基きまして、ある者を仮放免いたすということの話が出ましたときに、当時俗に民戦と申しておりますが、朝鮮人のいわば左翼的な団体の外郭団体であると認められます解放救援会からその仮放免者の世話もするから引き渡してくれというお申し出があったのでございます。その当時それはお断り申し上げました。その理由は、日韓の問題としてこういうふうに起っております際に、そういういわば韓国と非常に工合の悪い関係団体に人を渡すというようなことになりますと、その話自体がこわされてしまうおそれもあったからでございます。それでわれわれといたしましては、ことさらにその団体を差別しようという気持は毛頭持っておりませんのですが、しかし通常のこういう団体の性質といたしましてなるべく政治的な色合いなどはないような団体、そしてまた従来の保護の実績等におきまして十分の信頼のおけるような団体考えていきたい、こう思っておる次第でございます。
  32. 羽仁五郎

    羽仁五郎君 ただいまの御説明は、その後事情が変っている点も御承知の通りあることですし、それからそれは韓国のお立場としてそういうふうな御主張があるいはあろうかとも推察するのですが、しかし日本としてはおのずからまた別個の立場というものがあると思うのです。それからまたアメリカなどの立場もあるかもしれませんが、これもおのずから日本は独自の立場がなければならぬ。日本はやはりどうしても韓国のみ、長い将来のことを考えますとアジア全体の中で日本が国を立てていかなければならないという点もありますので、一時的のことまで申し上げているわけじゃない。行政上の御判断というものはおまかせするわけでありますけれども、原則的にはやはり日本独自の立場で、そしてまた韓国の国内事情にあまりそれによって判断をするということなくやっていただきたいと思いますが、それは御了承いただいてもういいと思います。  次にもう一つ伺っておきたいのは、第二点でありますが、すなわち平和条約発効後に生まれた子供さん力に対して手数料の問題、これは提案の御趣旨を拝見しますと、やはりこれも私どもが絶えずお願いしてきました寛大の処置ということを実現せられる点においては深く敬意を表するのであります。同時にちょっと心配になりますのは、そういうふうに親切をなさる半面において手数料徴収ということの、手数料の払える人に対しては強制的な態度をとられるということがあると、やはりこの御趣旨が貫徹しないのじゃないか、この手数料を払われるということにつきましてもやはりさっき申し上げたようなことをまた繰り返しませんけれども、長く日本におられ、一時は日本国民であった方々の子供さんである場合なので、あるいはこれについてこの手数料を払うということ、これは今回初めて実際に行われるわけですから、その実際に適用される場合にいろいろなやはり問題が起る場合も何らかあるのじゃないかという感じもするのです。従ってそれらの場合に、やはり客観的に事情をよく判断せられて全部一律にこういうふうにして、一面においては手数料を免除するのだから、免除の理由のない者は強制的に徴収するというような、一律のお扱いであるとまた紛擾が起るおそれがあるのです。その点でやはり先ほど申し上げた原則に基いて過去の歴史的な事情、また今日の外交的な問題がまだ解決していないこともあるので、やはり人情に反するような取扱いがないことを期待したいと思うのですがいかがでしょうか。
  33. 内田藤雄

    政府委員内田藤雄君) その点につきてましては、もう全然われわれ何かこの法律を差別的に使用するというようなことは毛頭考えておりません。もし今羽仁委員の御指摘になった事態はどういう場合を指しておられるのか、的確に了解いたしかねますが、われわれといたしましては、戦前から日本に在留しております朝鮮人、台湾人一般につきまして、その平和条約発効後に生まれた子供さんについてこの条文を適用いたしたいと考えておりますので、何ら差別的な問題は起らないということを十分申し上げ得ると思います。
  34. 羽仁五郎

    羽仁五郎君 ちょっと私の申し上げ方が悪かったようですが、そうでなく、今おっしゃるような場合でなく、かって本人の御意思か、あるいはそれに反してか、日本国民として日本におられた朝鮮の方がかなり多数おられるわけです。その方の現状は今さっきの講和条約発効前後の事情から、まだ終局的には決定していないわけです。長く日本においでになることになるか、それともお帰りになることになるのか、それらの点が親御さんたちは決定しないわけです。それでそのお子さんの方ははっきり一般外国人のお取扱いになるのでしょう、原則としては。ですからほかの外国人また過去においても外国人であられた方は問題ないのですが、過去において日本国民であられた方々のお子さんについては今さら手数料を子供さんについて払うというのは、それは納得せられない場合もあるのじゃないかという感じがするのです。それでそれらの場合にやはり事理を尽されて人情にそむかぬような取扱いを願いたいということです。どうですか。
  35. 内田藤雄

    政府委員内田藤雄君) それは十分了承いたします。
  36. 羽仁五郎

    羽仁五郎君 それでは最後に二、三の例について伺いたいのです。先ほど実害のある場合を除いては、収容を継続することが適当でない場合については、人情を踏みにじるようなことはない、釈放その他の寛大の措置をとられているという御説明があったのですが、遺憾ながら実例において見ますと、二、三の実例でいかにもこれは私どもが伺ったところでは少しむごいのではないかと思える場合がありますので、二つ、三つの場合を特に上げさせていただきたいのです。  第一は東京都足立区上沼田町八百三十二番地に移住する申祖昊、二十五歳の方がたまたま登録証を紛失し、持っていなかったために、登録法違反者として一九五三年二月以来大村収容所収容され、強制送還されようとしておるというような場合が訴えられておるのですが、これらの場合が代表しておりますように、この登録証を持っていないということについて、これはそれぞれの場合があろうかと思えるのですが、悪意をもって登録証を持っていない場合と、それからたまたま持っていないとか、あるいは紛失したということであって、従ってその登録証を持っていることを、その方も望ましいことと思っておるような場合ですね。そういう場合にまで大村収容所収容され、強制送還されるというのは私は少し妥当ではないのじゃないかというふうに思うので、この登録証携帯について実害のある場合をやはり除いて、実害のない場合については、今申し上げたのはそれに当るかどうかということは一応別問題としまして、しかし今の場合などもなおお調べを願いたいのですが、この登録証を持っていないということをこれをしばしば聞くのですが、八百屋に買い物に行ったとか、あるいは銭湯に入りに行ったとか、その途中で登録証を持っていなかった、それを登録証を持っていないというので、大へんきびしい扱いをされるというふうな場合も聞くのですが、こういう場合をそういうふうにきびしく扱われるということは妥当でないように思いますが、この点が第一。  それから第二点は、登録手続違反なんですが、その問題に関係して、昨年十月登録切りかえの当時、切りかえの日に一日、二日おくれた朝鮮人が全国で数万人に逃しておるが、それに対して検察当局は本人たちの事情も聞かないで、一方的に登録手続違反として一人千円から一万円までの罰金を科し、または検挙及び起訴しておるということが訴えられておる。これも切りかえの際に、切りかえの手続をなさるということは当然のことであろうと思う。従って実害のある場合を問題にしておるのじゃないのですけれども、その登録の手続切りかえその他手続をなさるのに、深い悪意に基くものじゃなくしてあるいはおくれた、あるいは何とかいろいろな事情がある場合があろうと思います。そういう場合にはやはり本人事情を聞いて、そうして処置されることが妥当であろう。それをお聞きにならないで、今申し上げましたように、罰金を科し、その他せられるということは妥当じゃないのじゃないか。  それから第三は、指紋の問題なんです。指紋の問題につきましても、しばしばこの委員会で見解を述べましたので、繰り返しませんが、指紋の問題は人権にも関係する問題でもり、現在の法律ができているのでありますから、その点については触れないのでありますけれども、私が先ほど申しましたように、新しく入国される場合に、現在の法律が適用されるということは、一応そういうことがあることは認めるといたしましても、やはり長く日本におられた方々に、この際あらためて指紋を取られるということについては、いろいろ感情上の問題があろうと思うのであります。従ってそこに納得のいかない点があって、日本に長くおられた方なども指紋を取られるということを承知しないで、それを拒まれるような場合、これは最近の例では佐世保などにそういう例があったようですが、それを直ちに逮捕せられるということが行われているようですが、これはやはり指紋は人権の問題に関係し、それについて新しく入ってきた場合でなく、日本に長くおられた方々がその指紋を取られることに納得されないという場合も、その理由も私は考慮すべき点があるのじゃないか。ですから、それを拒否されたということで、直ちに逮捕されるというようなことは妥当ではないと思う。  それから第四には名古屋市の南区の李粉時という方の場合ですけれども、この方はかなり前に、六年前に日本に戻られて、そして生活しておられたのが、最近密入国ということがわかって、それで九才と四才との子供さんと一緒に収容された。これも実際において実害がないのじゃないか。どうして実害のないのをそういうふうにして収容せられるのであろう。この方の夫が名古屋で生活しておられるのであり、その方のお母さんであるおばあさんが嘆いておられるというふうな点もあり、実害がない。六年前であろうと、何年前であろうと、密入国であるから収容するということでありますと、やはり人情にそむいているのじゃないか。  最後の場合ですが、これは最近の裁判になっている葛飾区の方の場合ですけれども、これもやはり夫をたずねて三年前に入国された。最近密入国ということがわかった。そしてその奥さんが収容所収容されて、現在裁判になっておる。第四の例、第五の例は形式からいえばいかにも密入国でありますけれども、日本に長く生活しておられる。夫もこちらにおられ、日本の敗戦当時に朝鮮に子供さんなり、何なりを連れて行かれ、夫のもとに最近来られた。これが密入国として収容されるということはどうも私どもが伺っても残酷に感ずるのです。これらの個々の場合について十分のお調べを願い、そしてそれらから帰納されますところの一般的な原則の上において、最初に申し上げましたような歴史的な事情、また現在の外交的な事情等も考慮して、いやしくも人情にそむかないような取扱いをせられることを期待するのでありますが、いかがでありましょう。
  37. 内田藤雄

    政府委員内田藤雄君) 第一の登録証不携帯による人のことでございますが、このお名前をおあげになりました申祖昊という人は、昨年の暮に仮放免になっております。それから一般的に少くとも私が着任しました以後におきまして、登録法違反の登録証不携帯であるとか、あるいは住居変更届出の違反とか、そういうものだけの理由によりまして退去命令を出したものは一件もございません。過去におきましても不携帯だけではないのでありまして、大ていの場合犯罪者であった者が同時に登録しておらんというのが多いのでございますが、しかし少くとも先ほど申し上げましたように私着任いたしまして以後、この登録法の問題を理由といたしまして、それだけで退令を下したものは一件もございませんということを断言いたします。今後もそういうことをいたすつもりはございません。  それから第二は、登録の切りかえに違反者の多数が越訴されておるという問題でございますが、この問題につきましては、実は昨年の秋なかなか厄介な問題を生じまして、各府県、市町村の窓口において朝鮮人相当、集団の威力をかりまして、吏員たちを困らせ、そして登録を拒否しようというような態勢に出たのであります。それでそういった関係から当時、治安機関と協議いたしました結果、今回は登録の切りかえを拒否するような者に対しては相当厳罰でいこうというようなことを当時きめまして、その結果、違反者が出ましたものが、相当起訴などをされたのだろうと存じますが、しかし私が聞いておりますところでは、ただ告発はこれは遺憾ながら市町村の義務でございまして、その期日までに登録していない者は自動的に告発はいたしておりますけれども、しかし検祭庁におきまして起訴するかいなかについては、相当事態の内容を検討した上でやっておるように聞いております。ただこれにつきまして先般朝鮮人団体の方が見えましたときに、一応申し上げましたことは、あなた方が扇動しておいて種をまいて、そういうものが発生したからといって、後始末をこちらに持って来られても困る。だから今後は一つ、こういうことが起らないように、あなたの方でも御努力願いたい。こういうふうに応答しておりますし、今後はそういうことが起らないことをわれわれとしても心から期待しておる次第でございます。  それから第三に、指紋の問題でございますが、これにつきましてはいろいろ人権の問題などから考えなければならない、慎重にいたさなければならないということを、われわれもこの政令を作ります場合に十分検討をいたしたのでございまして、とりあえず御承知のように新しく日本へ入国して参ります外国人についてのみ適用されるわけでございます。それでただ来年の秋ごろから前の登録の切りかえの問題が起りますと、これは当然従来から日本におります外国人にも適用されることになるわけなのでございますが、しかしただいままでのところ、幸い指紋の採取というものは非常に平静に行われておりまして、一、二これを拒否した者があったというようなことも報告には聞いておりますが、概して平静に行われております。そしてまた指紋と申しましても通常の方の場合にはただ申請書と、指紋原紙と称しておりますものに、左の人差指一本の指紋を押させるだけなのでございまして、通常われわれが拇印と称して押しておりますものとほとんど大差はない。ただ問題は登録証等を紛失いたしました場合に、再交付を要求いたしましたときには、十指の指紋を押さなければならぬことになっております。しかしこれは従来はなはだ遺憾なことでございますが、登録証が偽造されたり、あるいは他人に譲り渡されまして、そのために登録制度の本旨が没却されるような事態が非常に多く起っておりましたために、それを防止する意味で、こういうこともやむを得ないと考えておる次第でありまして、決して人権をそれによって侵すような、あるいは犯罪の捜査にこれを使用しようとか、こういう考えは毛頭持っておりません。  第四点に、御指摘になりました非常に古くからの密入国者の問題につきましては、あとで名前等を十分に伺いまして、事情を調査いたしまして善処いたしたいと考えます。
  38. 羽仁五郎

    羽仁五郎君 ただいまの御答弁で、私どもが心配している点は十分お考え下さるということを伺って非常に安心するのでありますが、どうか最初に述べましたような原則に基いてフェアーな取扱いをしていただきたい。これは私は絶えず思うのですが、われわれが外国に、われわれというか、日本国民外国におる場合のことも考えて、それでことにこの出入国管理令なり、外人登録令なりには、かなりアメリカでやっておられる現在のやり方に似ているようなところがだいぶあるように思うのでありますが、アメリカのような国の立場と日本のような国の立場とはずいぶん違う面があると思うので、やはりわれわれがそういう取扱いを受けても不服はないというような扱いを外国の方にもしていただくようにお願いしたいと思う。  なお最後に申し上げておきたいのは、私も実は日本に長く永住しておられる外国の方にお友だちがあって、音楽家のグルリットという方は皆さんも御承知の方ですが、グルリットさんなどが出入国管理局においでになるときに、私もお供をして行くことがあるのですが、なかなかつらい、感情的にどうかと思われるようなお取扱いを受けることを、実際限で見ております。これは局長の根本的な方針というのは、先ほどおっしゃったように外国人に対して決してフェアでない取扱いはしない、それでその人情等にそむかないという根本的な方針を立てておられるのですが、実際に第一線で仕事をなさっていらっしゃる方々の場合には、非常に忙しいこともありましょうし、しいて一々それをとがめるという意味ではないのですけれども、どうかその根本方針が明らかに第一線まで徹底せられまして、外国人あるいは外国人に準じて取扱っておられる方々、特に歴史的な事情外交上の事情などから朝鮮の方々が大部分を占めると思うのですが、そういう方のお坂扱いに対して、先ほどの御説明にもありました紛擾が起るというようなことについても、歴史的な事情外交上の事情などがあって必ずしも直ちにその紛擾が起ったということをとがめるというふうな場合に考えられない場合があり得ることだと思いますので、どうかその根本的な方針としてその侵害のある場合を除いて、できるだけ人情、風俗に沿い、いやしくも人情を踏みにじるということがないように寛大に処置せられるように希望する次第であります。
  39. 中山福藏

    中山福藏君 私、もう五分ほど一つやらして下さい。私は先だって十一名の中国人の名前をあげて局長次長に現在の本人などの住所並びに何ゆえに滞留することができるかという理由を承わりたいといって連名簿を差し上げておいたのです。それについての資料として私に交付されましたこの御返答によりますというと、玉柬東というものとこの周子楊というものは該当者にないということなんですが、これは私には居所も全部わかっているのです。居所も全部わかっておるのが、どういうわけで密入国をしたこの二人がわからないのか、あるいは私の手元で調べたところによるというと、これは入国管理局の出張所の有力な方とひもつきになっているということが、私の取り調べにはちゃんと明らかになっている。そういう居所もちゃんと私は知っている。それが入国管理局から該当者なしという資料、該当者なしという趣旨の書類が私に送付されたのですが、これは全然わからないでしょうか、こういう人聞、もしわからなければ、私のほうから居所を教えてあげます。どういうわけでこれはわからないのですか。
  40. 内田藤雄

    政府委員内田藤雄君) 私この書類を富下次長からいただいて、私も拝見いたしましたが、この該当者なしとお答え申し上げましたゆえんは、登録に出ておらないという意味でございます。そうして御指摘のようにもし万一にも入管の事務所の者がこれを知っていながら黙認しておるということでございましたならば、これはわれわれとして非常な問題でございまして、さっそく調査いたしまして、もしそこに汚職的なものでもございましたならば、直ちに適当な処置をとりたいと存じます。ただ一般的に申し上げまして、実は日本におります外国人の数というのは、非常に多くの数でございまして、登録に現われましたものだけで五十四万でございましたか、五十数万でございますか、大体われわれのざっとした推定では、その一割くらいの者が密入国をしてもぐっているのではないかと考えております。これは根拠はなかなかむずかしいのでございますが、いろいろ密入国者の一部の、たとえば二十人で入って参りまして、そのうち五人がつかまって、十五人がもぐっているというようないろいろな数の総計でございまして、かつそのほかの諸般の情報から想像いたしたものでそのくらいあるのでございます。そうしてこれらの密入国者の収捕というものはなかなか困難な問題なんでございまして、相当大っぴらにある所に働いているからといって、それが当然にわれわれが黙認をしているという御推定をいただきましては、ちょっと遺憾なことでございまして、おわかりになりましたならばぜひ教えていただきたいと考えます。それで従来もぐります密入国者の収捕というのは、先ほど申し上げました登録の切りかえを契機といたしまして、その前後に警察が登録証の呈示を求める、あるいはその登録を勧奨するというようなことを機会にいたしまして、密入国者があがって参る場合が相当あるのでございますが、しかし先ほどちょっと触れましたように登録証の譲り渡し、偽造、そういうようなものの数もこれまた相当な数に上っておりまして、一応表面的には警察官に登録証の呈示を求められましても、なお密入国者であるということがはっきりし得ないという場合もかなりあるわけでございます。そこでこれにはわれわれとしても今後努力いたしたいと思っておりますので、もし具体的な例を御承知でございましたならば、どうぞ御指摘いただきまして、われわれとしても善処いたしたいと考えます。
  41. 中山福藏

    中山福藏君 もう一つお尋ねしておきますが、周子揚というのは二十七年に密入国しております。私の調べでは。それから姜学曾というのは、退去理由不法入国の事と麻薬の取締法違反で懲役二年六ヵ月に処せられて、救済理由がないというので退去命令が下っておる。この人間が平気で日本で商売をしている。私はこういうことを言いたくないのですけれども、公平な取扱いをお願いするという意味から、まじめにやっておる人が日本から退去命令が下って、こういうような不正な者が堂々と商売をしているということは非常に不公平だとみておる。こういうことについてはお調べになっておるかどうか、これは現在横須賀におって商売をしているのですがね。
  42. 内田藤雄

    政府委員内田藤雄君) この姜学曾でございますが、これはたしかに昭和二十八年の六月二十六日付で退去になっております。これが今御指摘のような仮放免になっているままで今日に至っておるのは、ちょっと私も解せないのでございますが、まあよく実はございます。……よくというのもはなはだいかんですが、それほど多いわけじゃございませんが、病気が理由に仮放免になりまして、それで病気が直ったのか直らないのかという判定が、なかなかむずかしいためにだらけている、われわれ俗にくさった事件と申しておりますが、そういう事件がままあるということも承知しております。これもさっそく調べまして、病気でも何でもなければ、収捕いたしまして、退令の段階に入りたいと考えます。
  43. 中山福藏

    中山福藏君 私はお願いしたいのです。公平に取り扱っていただきたい。外国人日本人というものは金さえ出せばどうでもなるという印象を与えることは、きわめて国民全体に対して私は迷惑しごくなことだと考えておりますのでお願するわけであります。私は公平に取り扱っておられるかどうかということですね。ずっとこういうふうに個人々々について調べ上げている。これは人の名誉に関することでありますから、実はこれには金が五万から十万か渡っているということをある弁護士から報告を受けている。これは私は申し上げませんが、しかしながらこの書類はあなたの方にお貸し申しますから、一つ十分これらの取調べを願いたいと思います。どうか一つ公平にお取扱い下さいということをお願い申し上げまして私の質問を終ります。
  44. 内田藤雄

    政府委員内田藤雄君) これは全く御指摘通りでございまして、不公平なことをやっておって、しかもそこに汚職的な問題があるとすれば、私としては大いに責任を感ずる次第であります。ただこれは弁解がましいことで恐縮でございますが、従来終戦まで大体司令部がやっておりましたものが、急に平和条約発効後われわれの方に移りまして、以来非常な不整備のままで参りまして、実はこの間御指摘のその数人を調べましたところ、永住にななっている者は、永住になったという理由などの記録が、当時これは平和条約発効直後のことでございますが、全然見当らないというような例もございまして、大へんこれは遺憾に存じますが、当時われわれの方の整備ができないままで急に引き継いたりした関係で、はなはだそういったことが過去にはあったように存じております。これは私どもとしましてまことに申しわけない。できれば今後少くとも、私去年八月に参りましたが、それから以後そういうことのないようにということは、繰り返し私自身も監督しておりますし、また各町長の会同などにおきましては絶えず、必ずそういうことを申しております。過去の過失についきましては率直に遺憾の意を表明いたしますが、今後もしそういうことがございましたら、どうぞ遠慮なく教えていただきたいと思います。
  45. 吉田法晴

    ○吉田法晴君 簡単に一、二点伺いまますが、この仮放免の範囲を事実上拡大をして、おもに犯罪を犯した云々という者が仮放免をしていただいていることは大へん感謝にたえないのですが、私も、戦争中にこちらに来ておって帰られた、それから本人は、主人はそのままおって家族が参りました云々ということで、子供を連れて大村に入れられて、仮放免を願ったこと等もあるのでありますが、こういう法とそれから実情との運用を仮放免ということでやっていただいているのですが、これがどういうことになりますのか承わりたい。私も法務委員をやりましたのは、とびとびでございますが、出入国管理令が講和後日本法律になります際に審議をいたしました。その後運用を見て参りましたが、先ほど羽仁委員から言われましたように、法律占領中の管理令でありました点もありまして、アメリカ人から見ました日本に出入りされるアジアの諸民族に対する感じと申しますか、こういうものが相当あったように思います。それから日本人にも残念ながら、これは久保田発言を言うわけじゃございませんが、アジアの他の民族に対するなおやはり蔑視観念があるように思う。そこで進歩的保守政見として政策を御推進になろうという鳩山内閣の法務大臣、あるいは法務省は、出入国管理令の根本的な検討をせっかく今おやりになろうとしておりますが、法律と実情の矛盾の中で苦労をしてやっておられます点を、解決するような御意図はないか。法律の改正によって解決するような御意図はないかどうか伺っておきたいと思います。
  46. 小泉純也

    政府委員(小泉純也君) 前段の御質問趣旨につきましては、先ほど羽仁委員と管理局長からの質問応答で、できるだけ委員会の今日までの御注意、御指導に沿うように善処するという方針であることは御理解いただけると思います。それをさらに掘り下げてもっと根本的に入国者の問題等を解決する考えはないかという御質問でございまして、これは省内におきましても常にそういうような解決ができなければ、この問題はますます複雑になり、事務当局といたしましても法令と民情と申しますか、端的に申しますれば法令と実情の板ばさみになって苦慮する点が、ますます増加するのみであるのでございます。ただ問題は外交上の問題でございまして、端的に申し上げますれば、一例として韓国との問題のごときも、一時スムースに送還船をば向うで送還を引き受けておりましたが、日本外交政策の新たなる展開というようなことで、韓国は一方的にこれに対して非常に悪感情を起しまして、こういう話し合いにも応ぜずに入管当局としては全く手をあげて、ただため息をつくばかりというような状態がここ数ヵ月続いたのでございます。最近におきましては先ほど羽仁委員の御質問に対して内田局長お答えいたしました通り、断言はできませんけれども、最近好転をしたきざしが次から次にと現れて参りまして、この七月中旬にはしばらくとだえておった送還船が、また船出ができやしないかというような状態にもなっているのでございますが、これは大臣といたしましてもこの問題には常に頭を悩まし、私ども省内におきまして入管事務当局といろいろな面について相談することにも、今仰せられましたようなもっと根本的な解決というものが望ましいということは、異口同音に念願いたしているのであります。政府に対しましても、また外務大臣に対しても、法務当局からもこの点を強力に要請をいたしまして、外交上の手段と相待ってすみやかに根本的な解決ができるようにわれわれも善処いたしたいということをここに申し上げて御了承を願います。
  47. 成瀬幡治

    委員長(成瀬幡治君) 速記をとめて。   〔速記中止〕
  48. 成瀬幡治

    委員長(成瀬幡治君) 速記を起して下さい。  別に御発言がなければ質疑は尽きたものと認めて御異議ございませんか。   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  49. 成瀬幡治

    委員長(成瀬幡治君) 御異議ないと認めます。  それではこれより討論に入ります。御意見のおありの方はそれぞれ賛否を明らかにしてお述べを願います(「討論なし」と呼ぶ者あり)  別に御意見もないようでございますが、討論は終局したものと認めて御異議ございませんか。   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  50. 成瀬幡治

    委員長(成瀬幡治君) 御異議ないと認めます。  それではこれより採決を行います。出入国管理令の一部を改正する法律案を問題に供します。  本案を原案通り可決することに賛成の方の挙手を願います。   〔賛成者挙手〕
  51. 成瀬幡治

    委員長(成瀬幡治君) 全会一致でございます。よって本案は全会一致をもって原案通り可決すべきものと決定いたしました。  なお、本院規則第百四条により口頭報告内容、第七十二条により議長に提出すべき報告書の作成、その他事後の手続につきましては、これを委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ございませんか。   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  52. 成瀬幡治

    委員長(成瀬幡治君) 御異議ないと認めます。よってさように決定いたしました。  それから報告書には多数意見者の署名を付することになっておりますから、本案を可とされた方は、順次御署名を願います。   多数意見者署名     市川 房枝  一松 定吉     羽仁 五郎  藤原 道子     剱木 亨弘  小幡 治和     岩沢 忠恭  宮城 タマヨ     中山 福藏  吉田 法晴
  53. 成瀬幡治

    委員長(成瀬幡治君) 本日はこれにて委員会を散会いたします。   午後三時三分散会