○羽仁五郎君 この
法務委員会では常にこういう問題について、たとえば
逮捕状の
乱発の問題とか、あるいはその後には
警察官の拳銃の暴発の問題であるとか、そういう問題について重大な関心を持たなければならぬ任務があることは御
承知の
通りであります。これは
ほんとうの責任は
法務省がお持ちになっているはずですけれ
ども、それでわれわれが安心しておれないというふうに感ずる場合に、当
委員会においてこういう問題が取り上げられているのです。今御
説明を伺っていても、私は非常にびっくりするのですが、ただいま御
説明下すっておられる方は、
警察のきっと専門家でおられるのだろうと思う。私は何も存じないので想定をしているのですが、日本の
警察の技術というものはそんなような幼稚な技術でもって
捜査をやっておられるのだろうか。今
一松委員に対するお答えとして繰り返しておっしゃっている唯一の点は、そのあやまって
逮捕せられました
橋本さんという方を
逮捕した理由として、当時目撃した
方々の
参考人の供述の中に、こういうような
自動車とか、あるいはこういうような
人相とか、こういうような服装とかということが書いてある。それが公けになると
犯人が変装するだろう、こういうことですね、御
説明は。私は
警察に勤めたことは一回もないし、一向そういうことはわかりませんが、しかし何かそういう大へん悪いことをされたというふうに疑われている方が、かりにそういうような犯罪を犯したことがあるとして、その方が同じ
人相であるというはずがないじゃないか。
警察は同じ
人相の人を探しているのですか。私は常識的にもそんなばかなことは考えられないと思う。あなたにしても僕にしても、非常に悪いことをした、翌日同じ顔をして同じ服装で歩いている、これは精神に異常のある場合は別だろうが、そうでなければ、
人相を変え服装を変えるということは、犯罪が重大であればあるほど当然のことであると思う。従ってその
参考人からいわゆる伝聞証拠というのでしょうが、
つまり理論上からいってきわめてあいまいなところで、そんなところで検査を集中しておられるのか。私はそれだったならば、
警察庁でもう少しイギリスなり何なり、そういうところのスコットランド・ヤードとか、よほど
捜査技術の進歩しているところに皆さんが留学でもなすって、近代
警察の技術をもう少し習得されることの方が先のような気がする。今の
一松委員のたびたびおっしゃっておることに対するあなたのお答えの要点というものは、そのようなところにあるように伺ったから、これは私から専門家に対して言うのはおかしいけれ
ども、僕も法務
委員として多少言わざるを得ないのだが、イギリスなどの場合には陪審員がある。
つまり有罪なりやいなや、起訴すべきかどうかということの判断をするのに、しろうと、
つまりわれわれのようなものが陪審員となって、しろうとが聞いていてもこれは十分に証拠があるというだけの証拠を
警察で集めるためにどんなに努力をされているか、あなたも御
承知だろうと思う。そのことと今の御
説明とでは、いかにイギリスと日本と
事情が違うと言うかもしれないが、しかしこれは
本質的な点に
関係していることです。だからしろうとが聞いても、なるほどと思う証拠がなければ
逮捕するとかあるいは起訴するとかいうことはないはずじゃないですか。そうだとすれば、今の御
説明になっているような
人相、服装等が
本人に知られるためにその
書類がここに出せないという御
説明は、私ははなはだ、
一松先生もそれに納得せられないから、繰り返し
説明を求めておられるのだと思います。私にも全く納得がいかないのです。私はどうもやはり日本の
警察が、新しい主権在民という時代になっても、依然として何かちょっと疑いのある
人間を引っぱって、それをたたいて自白で証拠を固めようということをやっておられるという世間のうわさですね。これはあなたの方にも、
法務省の方にもお耳に入っていないはずはないと思う。この民主主義の憲法のもとに公務員たる
方々がそういう非難に対して、また批判に対してよほど敏感であられることが当然だろうと思う。そうだとすれば、その技術的な点においても、昔の程度の技術、いわゆる聞き込みとか、そんなようなことでそれを証拠だというようにおっしゃる。そうしてその証拠に基いてあるいは
捜査し、あるいは
逮捕状を
請求しておられるということじゃないだろうかと思う。
法務委員会がこういう
調査をしようというのも、実は
警察なり
検察なりがどうかもう少しそういう技術を高めていただきたい、そうして国民の信頼を得るような
警察や
検察になっていただきたい。やはり現在でも国民はどうも
警察なりあるいは
検察なりは、何かの疑い、
つまり見込みぐらいで人を引っぱって、それでいやな所に押し込めて、こわい顔をしておどかして、そうして国民は実際そういうことは不愉快ですから、大体
警察官なり
検察官のおっしゃるようなことでも申せば出していただけるのだから、一刻も早く家庭に帰りたいものだから、そういうことを言う。そういうことを言えば出してやるというようなことで、非常に無実な方が疑いを受け、名誉を棄損せられておる場合が多いのではないか。これは
警察や
検察では法務行政のためにとらないところなんです。どうかして新しい法務行政は、
警察が国民の信頼を受けられる、そのためには十分に証拠というものをつかんでやる。依然として今の
警察や
検察は、
犯人がつかまらないということについての国民の非難ばかりおそれておいでになるようですが、現在の国民は、もちろん
犯人をつかまえていただきたいのですが、しかしその
犯人をつかまえるということだけに熱中して、それで不十分の証拠に基いて人を
逮捕したり、名誉を棄損していることが多いのじゃないか、そういう点を国民が非常に心配し、
警察や
検察や法務に対して、あるいはそれがひいては
裁判についてまで、国民が非常に最近疑惑を抱いているということは重大な問題じゃありませんですか。ですから、私は今
一松委員からおっしゃる要点も、またわれわれ
法務委員会がこういうことをして
政府委員に来ていただいて
説明を求めている要点も、どうかいい加減なあれで人を
逮捕したり、
逮捕状を
請求したりして、とにかく
人間を引っぱって、留置場にほうり込んで、それでおどかしてみて何か聞き出そう、あるいは
参考人の供述程度でもって
逮捕状を
請求する、しかしこれは新らしい民主主義的に要求せられている証拠の考え方とはよほど違うだろうと思うのです。しかも、その
参考人というものが果してどの程度まで自由意思に基いたものであるか、
警察の要求せられるようなことを言わなければ何度でも呼び出しを受けるということでは、弱い商売をしている人々はこれではたまらないですよ。だから
警察で大体ああだったろうこうだったろうと言われれば、まあそんなふうだったと言えば家へ帰してもらえる。
裁判所では、最近の
裁判を見てもわかるように、その自白において強制は認められないとか、あるいはそれが任意の供述であったとか、
裁判所では
警察、
検察のその証拠というものを非常に寛大にお考えになっておられる、非常に期待しておられる。日本の現在の
警察や
検察がそんな強制的な自白をさせていることはあるまい、
裁判所の方はあれだけ寛大にして期待しておられる。
警察や
検察はいよいよその寛大と期待を裏切ってはならないというおつもりでもって、いやしくも強制的な自白を求める、いわんや強制的に
参考人の供述を求めたりするという努力はなされないはずです。けれ
ども、
捜査の主体というものを
参考人の自白や供述に置かれるのは、やはり物的な
捜査というものの技術というものを十分お持ちにならないからだと思います。やはり強制自白あるいは強制的
参考人の供述ということになるんじゃないか。そういう点はどうか
警察や
検察、法務行政が国民の信頼にこたえられるように十分の技術を持って、そうしてしろうとが聞いても、なるほどそういうあれだったら
逮捕状を
請求したりするのは無理がないと、国民がそう思うように、国民を
警察がめちゃくちゃに人を
逮捕しておるようだというふうに思われないようにしていただきたいということが、われわれの本
委員会の目的なんですから、その目的を達成するために、また
お話しのようなこの件につきましても、それは
捜査なり
逮捕なりについて若干御不便はあるかもしれませんが、目的は同じでしょう。あなた方にしても、われわれ行政の面にしても、立法の面にしても、その
警察や
検察の
逮捕についての国民の信頼を高めるという努力をする面では協力をせられて、本
委員会が要求しておる
資料を進んで御
提出になって、そうして、みずから
警察や
検察の科学的な、そうしてしろうとでも国民が納得するような
捜査の技術というものを進めていかれるという方向に協力せられるのは当然じゃありませんか。ですから今お二人の御
説明で、やはり依然としてそういう
資料を積極的にお出しになるお気持はないということは、もう一ぺんお考え直しを願ってお答えしていただいた方がいいんじゃないか。西沢君の場合にしてもやはり同様でしょう。その
現行犯なり何なりについての政府のかなり高いレベルの人のお考えが、先ほどのようなルーズなお考えであるならば、どうしても第一線に立っておられる
方々がやはりルーズになっていくんじゃないでしょうか。やはりですからその点については、もう少し専門家であるあなたが厳格にお考えになって、これがそういう意味において、やはり国民に信頼されるような
逮捕をやっていくということのために問題があれば、それを
法務委員会が十分検討するということに協力をせられるのは、当然じゃないですか、どうでしょう。