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1955-06-27 第22回国会 参議院 法務委員会 第9号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和三十年六月二十七日(月曜日)    午後一時三十三分開会   —————————————  出席者は左の通り。    委員長     成瀬 幡治君    理事            剱木 亨弘君            宮城タマヨ君            市川 房枝君    委員            廣瀬 久忠君            藤原 道子君            吉田 法晴君            一松 定吉君            羽仁 五郎君   国務大臣    法 務 大 臣 花村 四郎君   政府委員    法務政務次官  小泉 純也君    法務大臣官房調    査課長     位野木益雄君    法務省矯正局長 中尾 文策君   事務局側    常任委員会専門    員       西村 高兄君    常任委員会専門    員       堀  真道君   説明員    最高裁判所長官    代理者    (事務総局家庭    局長)    宇田川潤四郎君   —————————————   本日の会議に付した条件 ○少年院法の一部を改正する法律案  (内閣提出衆議院送付) ○参考人の出頭に関する件   —————————————
  2. 成瀬幡治

    委員長成瀬幡治君) これより法務委員会を開会いたします。  まず、少年院法の一部を改正する法律案を議題に供します。本案につきまして御質疑のおありの方は御発言を願います。
  3. 宮城タマヨ

    宮城タマヨ君 お忙しい大臣に御出席お願いいたしましてありがとうございます。ただいま少年院法の一部改正が当法務委員会にかかっておりますが、これは少年法並びに少年院法精神からいろいろ考えますときに、非常に根本問題にも触れなければならないような重大問題が私はあるよう考えるものでございますから、お忙しいところをまげて御出席を願いましたような次第でございます。  実は、最近世間を騒がせますよう少年院からの集団逃走もございますし、また年令が満二十才まで引き上げられましたという関係もありまして、少年院に送られております少年犯罪行為が、非常に子供と思われませんようなものもございますし、ことにそういう者を収容いたして矯正教育に当られているところ少年院教育も、非常にお骨の折れることも重々、わかっております。そうしてこれの集団逃走をいたしますような、また院内におきましてもなかなかその職員を手こずらせるよう行為も多々ございます者に対しまして、いかなる手を打つことが少年法の本当の精神にかなうことかということになると思っております。捨ておきがたい問題はここに私どもも大いに認めておるのでございますが、その手の打ち方について、今度この少年院法の一部改正に出てきますよう少年院職員にやむを得ざる場合には判事令状をもって連れ戻すことができるとか、あるいは一方には手錠をはめまして、子供手錠をはめて、そうしておそらくこの手錠をはめるということと強制力をもって連れ戻すというようなこととがからみ合いまして、いってみれば少年院職員はこれは民法を元にしまして少年法にも出ておりますように、ほとんど親権に近いものが精神におきましては、この間も矯正局長から御答弁がございましたように、親がわりの権利を与えられております職員子供を連れ戻しますときに、まあたまであるといたしましても、判事令状をもって、そうしておそらく反抗するというような場合のみに連戻状が使われるという説明もございますけれども、そういう場合にはおそらく手錠をはめて、その親にかわるべき者が手錠をはめて子供を引っぱって帰らなくちゃならぬというようなことが、これは必至やむを得ない場合も多々あると思いながら、しかし少年院矯正教育の場所であるという意味から申しまして、これよりほかに手の打ちようはないものかどうかということを、ここに私は慎重に考えなくちゃならぬと思いまして、今いろいろなこの立法上のこと、あるいは教育の点なぞから慎重に考えておりますことでございますが、そこで法務大臣根本精神として伺いたいと思っておりますことは、少年法ように、まあ愛の法律といわれております少年法は、保護処分刑事処分とちゃんと明らかに一つの建前がございます。保護処分でどうしてもいけない場合には、涙を振って刑事処分にしなければならないことになっておりますが、今日どうもこういう法律の一部改正子供手錠をはめて、ことに院内逃走を企て、あるいは暴行し、それから自殺をはかるといったような場合に、手錠をはめるというようなことになりますというと、この考え方では、だんだんだんだん子供保護から行刑に移すとしましたら、言うことを聞かなければ、もうがんじがらめに縄で縛ってそうしてそれをもって少年院教育ということになりますというと、これは私は大問題が起って参るのじゃないかと考えておりますが、その点法務大臣の見る御所見いかがでございましょうか。
  4. 花村四郎

    国務大臣花村四郎君) ただいま宮城委員のお述べになりましたことは、まことにごもっともの点がほとんど大部分であると申し上げてよろしいので、従いましてその大部分の御主張に対しましては賛意を表するものでございます。そこで、ただこの手錠をはめるということが少年法並びに少年院法等精神に反するんじゃないかという意味のお言葉もありましたが、しかし退いてよく考えてみますれば、決してこの少年院法等精神に反するものではない。むしろ少年を守る意味において、やはりこういう事柄も使わなければならないのである。それは少年に対して、何と申しまするか、強い戒めと申しまするか、戒めをするというよう気持でなくして、むしろ少年の力の足らざるところを、つまり補って、その少年の身を守ってやるのだというよう気持でやはりこういう条項が必要であるという意味改正を企図したわけでありまするから、やはり精神はどこまでも愛の気持をもって、やはり少年をどこまでも親切に導いてやるべきであるという思想に胚胎しておると申し上げてよろしいと思うのであります。しかもそのことたるや、以前から行われておらなかったわけではございません。省令でありまするところ少年院処遇規則というのがありまするが、その七十六条に、「暴行又は自殺の虞がある在院者に対しては、これを防止するため、適当な措置を講ずることができる。」という条文がありまして、この適当の措置という言葉意味には、ただいま改正案に盛られておりまするよう精神が織り込まれておりまするので、従ってやむを得ざる場合においては、よんどころなくやはりこの規定にのっとって手錠を使っておったわけでございます。しかしながら御承知のごとく、新憲法下において基本的人権を尊重しなければならんという思想が一そう強く認めらるることに相なって参りました今の時代においては、やはりこういう問題はなるべく省令などによって処置するということよりも、むしろ法律にのっとって処置していくべきであるという意味考えを及ぼしまして、人権を尊重すればするほど、やはり国会においてきめられるところの法をもってやはりやるべきであるということで、本改正案を提出いたした次第でありまするので、決して少年に対しまする、少年院法あるいは少年法等気持が、少年のために過酷に進んでいくというよう意味は毛頭含まれておらんわけでありまして、むしろ少年を救ってやる、少年の力の足らざるを補うというようなあたたかい気持から、やはりこういう規定を設けた次第でございまするから、その点御了承願いたいと存じます。
  5. 宮城タマヨ

    宮城タマヨ君 大臣のお言葉はよくわかりますが、その少年を守る、少年の力の下足を足してやる、導く方法として子供手錠をはめるということ以外に、現在の少年院のあの施設におきましても、私はあの考査室を活用すればいいというよう考えております。考査室は御存じでございましょうが、私も若いときに保護司を勤めております時代に、少年とともに多摩少年院考査室に一晩泊ってみております。実に、人間が外から錠をかけられて自由を失ったときの経験を持っております。しかしあそこに入れられまして、悪いことをしたという子供が入れられまして、静かに考査をする時間を与えてもらうということは、私は先ほどから大臣のおっしゃる守り導く一つの大きい方法だろうと思うのです。だけれどもそういうものがあるにかかわらず手錠をはめるということ、これは私はまだ手錠をはめられた経験はありません。考査室には一晩泊ってみました。あの考査室ほんとう警察察留置場刑務所独房と同じでございますが、あそこに入ってみましたその経験から申しましても、あれで十分である。手錠をはめて子供の自由をほんとうに破るということは、それは私は子供に対して反感を起させるだけでございまして、守り導く方法としたらまことに私は愚劣なものではないかと思っております。もっと子供手錠をはめてつなぐようにしなければならないという、私はそこまでまだ、少年院矯正教育というものについてもう一ぺん再検討をしていただかなければならない根本教育問題が私はあると思っておりますが、いかがでございましょうか。
  6. 花村四郎

    国務大臣花村四郎君) 考査室に入るることによって狂暴性が矯正できるというような者に対しましては、もちろんその方途を講じておりまするし、また今後とも講じなければならんことは当然でありまするが、しかしここにいうところ逃亡あるいは暴行もしくは自殺を企てるよう少年は、なかなか一筋縄でいかない狂暴性を持っておるというようなものでありまして、これは要するに何と申しまするか、まあ一時狂気の沙汰にも等しい態度になるというよう少年でありまして、なかなかこの狂暴性の発露を抑えるには、寸時を争うというようなものでありまするから、考査室などに収容するというような手ぬるいことではとうてい救い得ないものであります。御承知ようにたとえば逃亡のおそれのあるというよう少年は、少年院に送る場合、あるいは他の少年院に移す場合とかというので、たとえば、人込みの中等へ入って参りまして、まあ油断をせずにあらゆる手を尽して、そして、その少年逃亡せないようにもって参りましても、なかなかそれがうまくいかない場合が多い。ややともすればすきを見て逃げる。逃げれば足が早いというようなことで、係が追って行っても、それに追いつくことは困難であるというようなことで、なかなか現実と想像とは異なるのでありまして、まあどうしてもやむを得ない、同じ逃走の中でも、どうしてもそういう方途を講ずることが最も適当な方法であって、それ以外によりよい方法というものはないのだというような、やむにやまれぬ場合のみを考えてのこれは規定でありまして、たとえば、その他暴行にいたしましても、あるいは自殺の場合にいたしましても、なかなか係官等ではどうにもできない、しかも、それが継続、その狂暴性がたとえば継続するとかというような場合においては、やはり、ずっと監視をしておらなければならぬというような場合もありましょうし、監視をするにしても、なかなか簡単に、口で言えば簡単でありまするが、いろいろやはり、人の数の関係もありましょうし、まあいろいろの観点から考えて、どうもこういう手錠をはめるということよりよりよい方途というものを見出せないということで、やむを得ずやはりこういう規定を設けなければならないという必要性に迫られたような次第でありまするので、その辺を一つとくと御了承願いたいと思います。
  7. 宮城タマヨ

    宮城タマヨ君 大臣少年院考査室ごらんになったことがないとお話を伺って思いますが、考査室と申しますのは、ちょうど未決でも既決でも同じでございますけれども、殺人犯が入る部屋とほとんど同じで、外から大きい錠をじゃらっとかけられましたらどうすることもできない。逃走することももちろんできないのでございます。でございますから、私は一体手錠をはめて、子供をどういうところにどういうふうにつなごうとおっしゃるのか。これからこまかいことは局長に対して伺いたいと思っておりますけれども、手錠をはめて、一体どこにおつなぎになるのか知りませんが、考査室ほんとう独房と同じでございますから、それ以上の私は縛り方はないと思っております。そうして、それは効果は十分にあると思っておりますが、その問題は実際をごらんになりません大臣と議論しておりましてもどうもいけませんからそれはやめますが、もしも、そういう少年院教育対象にはならないと見なければなりませんね。手錠をはめたりしなければならぬ、たとえば、考査室にずっと入れておかなければならぬといったような者は、これは教育対象でございませんから、それはもう家庭裁判所少年審判部におきましての裁判が間違っておって、そして、これは保護処分すべからざるものを保護処分したという判事責任でもあることでございましょう。それからいま一つは、その判事は、子供犯罪事実はもちろんでございますが、環境の調査もし、教育調査もし、あらゆる子供に対しての調査をいたしまして、これは保護処分適当、少年院送致適当と判事が認めました者を少年院に送る、こういうので、そして少年院において矯正教育対象でないから、これは今のところ立法措置がないので、どうしても少年院矯正教育をしなければならん。そして何とかここで育てなければならないということで、少年院が引き受けましたのなら、私はここまで子供を追いやった責任は、私は少年院にあるだろうと思う。どちらにありますかというと、これは裁判官の見そこないか、それから少年院に引き受けて、職員のやりそこないか、教育のできそこないが、子供手錠をはめなければならない結果になったと、私はこれは一百つに一つだろうと思っております。大臣のお考えは……。
  8. 花村四郎

    国務大臣花村四郎君) 考査室というものも、多分あそこの八王子のそばにある多摩少年院であったと思いますが、私も少年院は二、三模範的なものを見たように思いまするが、とにもかくにも暴行を働く者とか、あるいは自殺企てる者とかというような者は、幾らがんこな室内へ入れておいても、決してその暴行ないしは自殺を防止するというようなことは困難であると、こう私は申し上げてよろしいと思う。と思うのでありまするが、たとえば自殺にいたしましても、昭和三十九年中に発生した数を見てみまするというと、統計が百五十八に相なっております。しかもその中で、ガラス破片等によるものが百二十五、あるいは刃物等によるものが十五、その他が十八ということに相なっておりまするが、これは少年院における自傷行為をいたしたものの数であります。しかもまた、少年鑑別所においても十二という数に上っておりまするが、これまたガラス破片によるものが八、刃物によるものが三、その他が一ということに相なっておりまするが、やはり相当にこういう自傷行為の数が高まってきておるのでありまするが、こういう少年はもちろんのこと、あるいは暴力をもって乱暴をする、暴行をするというような者を、いかなる厳重な室でありましても、ただ室の中に入れておくということだけでは、これは危険であると私は申し上げていいと思います。その例は、私はちょうどロスアンゼルスへ参りましたときに、ロスアンゼルス拘置所を案内されて見に行ったのでありまするが、この拘置所に収容された者の中で、乱暴を働いた者、あるいは暴力をふるう者、あるいはまた狂気狂乱と申しまするか、気違いになったようなすごい態度をしておる者とかいうような者は特に入れる房がありましたが、それは壁から、天井から、下から、戸から一切がっさい内部をゴムのようなもので作ってありまして、自分の頭をぶっつけてもけがをしない、握りこぶしでたたいても何らのけがをしないというような工合にできておりまして、なるほどこれはうまいものを作ったものだと私は感心して見てきたのでありまするが、そういう装置の部屋へでも入れておきますならば、それは幾ら自殺行為をしようというような者でもなかなかできない。自傷行為をあえてしようというても、することができんと申し上げてよいと思うのでありまするが、そうでない日本よう少年院に設けられておるところ考査室のごときは、これは自傷行為をやろうと思えば幾らでもやれるのです。でありますから、こういう点から考えましても、やはり手錠をはめることによって、どうにもできないのだと、ちょうどそのアメリカのロスンゼルスの拘置所ように、中で幾らあばれてもけがをしようと思っても、することができないというようなしかけにしておくということが、これが最も必要なことなんで、そのしかけにかわるために手錠をはめるというようなことは、これはやむを得ざることじゃないか。むしろその少年を救ってやり、いたわってやる意味じゃないか、こう私は申し上げていいと思うのでありますが、さらにもう一つ申し上げたいのは、そのロスアンゼルスで見に行った拘置所の中で、そういう部屋もありましたし、そうしてもう一つは、機械で手と足を縛って、そうして動けないようにする機械がありました。それは要するに医者の命令によってその機械を使うということになっておるそうでありまするが、これは酒に酔ってほとんど前後不覚の状態になって乱暴をする者、あるいは気違いようなことになって乱暴をする者で、その部屋へ入れておいても、部屋に入れる未決囚よりもなおそれより一歩進んだ者は、その機械にはめ込んで、そうして手も足もみんな縛って、体がちっとも動かないようにする機械がやはりあって、そうしてその機械を現に使用されておったのを私は見てきたのでありまするが、それは医師の命令なくしては看守だけではできんという話でありましたが、なるほどこれはうまいしかけを作ったものだと、こういうことはむしろその未決囚の体を守ってやるということなので、これは手を縛り、足を縛って、被疑者を手荒く扱うというような意志は毛頭ないのだということを私は見てきたのでありまするが、まあそれはちょうど同じことで、やはり放っておけば自傷行為をして、そうして体をいためるとか、あるいはいろいろのそこに問題が起きてくるのでありまするが、そういう何らの故障の起きないよにという意味で、この手錠をはめるのでありまするから、決して私はそうこういう事柄について特に気を痛める必要はないじゃないかと、こう考えるわけであります。
  9. 宮城タマヨ

    宮城タマヨ君 外国のことはよくわかりましたが、一体日本の未決監、既決監はどうしておるかというようなことはまたあとで伺うことにいたしますが、まあそういうふうにして子供がんじがらめ手錠をかけて拘束しなければ矯正教育ができない。つまり少年院少年としてそこに矯正教育を続けていくことができないというよう少年は、一体保護対象じゃないと思っております。むしろ私はこういう子供手錠をはめるなんていうことよりも、処分変更を……少年院に送ったと、それは判事のやりそこないかもしれない。それからまだ今から事務当局のお方と語り合いたいと思っておりますが、教育根本問題もございますけれども、時間を惜みまして、大臣に伺いたいことは、今の保護処分対象にすることができないよう子供に対して、刑事処分をすることも、つまり少年刑務所にやることは忍びない。私は大体から申しますというと、少年刑務所ぶっつぶせで、二十才以下の子供前科をつけますと、職業にも、学校の入学にも、ことに結婚ともなりますと、まことに結婚に失敗した者は一生うだつが上りませんから、どうかして前科の焼印は押したくない。そのためには私は少年刑務所をぶっつぶせと始終申しておりますけれども、しかしそれはまたそこにいろいろな重大問題がたくさん論議されなければなりませんので、今はちょっと棚上げをしておりますが、今の制度におきまして、この保護処分ができないものだったり、残念ながら少年刑務所に送らなくちゃならない。少年刑務所また今日の行刑でございましたら、教育対象として考えられるものでございますから、残念ながら少年刑務所に送った方が……。むしろ少年院でそうやってがんじがらめに縛られて教育を受けなければならないということは、私は不合理じゃないかと思う。そうして、そのことは少年のためにならないと思っております。気違ならいざ知らず、気の違わない正気の者ならば、私は教育でいくべきだと思う。保護処分においての矯正教育か、刑事処分においての教育か、どちらにしましてもこれは教育対象人間でございますから、そこで私大臣に御所見を伺いたいと思いますのは、旧少年法におきましては、第五十九条におきまして、この後段の方で、「禁固以上ノ刑ニ該ル罪ヲ犯シタル者ニ付第四条第一項第七号」、第七号は感化院、「又ハ第八号」、第八号はこれはもとの矯正院、今の少年院でございますが、「第八号ノ処分継続スルニ適セサル事情アリト認メタルトキ前項ニ同シ」、つまり処分の取り消しをすることかできるという法律があるのでございます。これは明らかに、少年院に入れた者でも、継続処分取り消して、そうして新たな処分をするという旧少年法でございまして、それが新少年法になりますというと、できるだけそういうことをしないようにという精神でございましょうが、この少年法の第四十六条「罪を犯した少年に対して第二十四条第一項の保護処分がなされたときは、審判を経た事件について、刑事訴追をし、又は家庭裁判所審判に付することはできない」となっております。「但し、第二十七条の二の規定により、保護処分を取り消した事件については、この限りでない」とございますが、これは少年の利益のためにこういうことが規定されておりますと思っておりますけれども、私はむしろこの処分変更をする方が少年のためになるのじゃないかと考えておりますが、大臣の御所見いかがでございましょうか。
  10. 花村四郎

    国務大臣花村四郎君) 本条の対象となりまする少年性格は、やはりどこまでも保護処分をもってすべき少年ということになるのでありまするから従って保護処分から変更する必要はないのでありまするが、そういう保護処分対象となるべき少年でありましても、あるいは一時的にあるいは偶発品にやはり暴力を振い、もしくは自殺行為を企てるというようなことが偶発的に起きるわけでありまして、決してその少年自身性格がそういう持続性をもった兇暴な性格であるとか、あるい自殺をはかるというよう精神状態陥った少年であるというわけではございません。でありまするからやはり保護処分対象となる少年でありましても、逃走暴行自殺というよう事柄を偶発的に起すというような場合が、すべてではありませんが、そのうちはややともすれば起きてくることがあるので、そういうときの備えのために、つまりこの条文を設けて、そうして万全を期するという次第でありまして、ことにこの法律として改正をするということに相なりましたことは、なおこの保護処分に属する少年であるだけに、やはり少年院処遇規則などによって、こういう手錠をはめるというがごとき処置をすることは不適当であるという意味で、丁重さを加えまして、ここに法律改正として提案をするに至った次第でございます。
  11. 宮城タマヨ

    宮城タマヨ君 幾ら言っておっても、同じことを繰り返すかもしれませんから、この問題についてはやめます。少くも少年が、矯正教育であろうとも、教育対象として少年院に送られたのでございますから、もしもそれがほんとうに一時の発作的なものでございますというような場合は、私は考査室で十分にまかなえると思っております。あの年令の多くの子供、それからまた性格的に非常に反抗心の強いあの子供たち少年たちに対しまして、手錠をはめて、そうして拘束するということが、教育効果があるかないかという問題につきましては、私はまたあらためてお伺いしたいと思っておりますが、今度の手錠の問題といい、それから少年を逮捕するという言葉は旧少年法時代で、現行の少年法におきましては、連れ戻すことができるというようにやわらかくなっております。それほど法律の上におきましてもだんだん進歩してきているのじゃないかといよう考えておりますけれども、それにもかかわらず今度四十八時間を経過した後には、少年をいわゆる連れ戻すという言葉でございますが、いってみれば逮捕してくる、そうしてそれは今まで少年を連れ戻す場合などになりますというと、よほどいろいろな技術的なこともございまして、実際問題としたら、少年が逃げた、この少年をいつまでも放っておきましたら、また悪いことをするから、あるいは社会に迷惑をかけるから、一刻も早く連れて帰らなければならないというよう意味合いで、警察に頼んで、それこそ八方手を尽してくるにつきまして、警察官に判事令状を持たせるということも私は大へん必要なことで、これこそ何とか手を打たなければならないと立法措置を待っておりました。で今度警察官に判事令状を出すということは大賛成でございますけれども、その四十八時間というようなことはこれは監獄法——明治三十年時代にできた監獄法によって、しかも監獄の囚人が出ましたときに、つまり四十八時間を過ぎたら、これは逃走罪になるのかと思っておりますが、ちょうどそれと同じように四十八時間経過した後に、いってみれば連れ戻し状、逮捕状を出すというようなことは、これはまず……、それのみではございません、この間も申しましたけれども、少年院の教官の着ます着物が、刑務官、監獄のあの人たちが着ているユニフォームに変ってくるとか、あるいは少年の着物が青い着物になるとかいったような、これはいってみますというと、もうだんだん保護行刑にいっております。そういうことから推して、私はこの手錠のことも、今大臣がいろいろ説明なさっておりますけれども、とにかく私は根本に掘り下げてみて、そうしてあの父となり母となるものの立場を思いながら、その立場を守りながら、この問題は、私取り扱ってみるというと、果してこれを今作るということは、一体どういう結果になるだろう。どうしても職員となりますというと、それは手放しにしておくよりも、教育をもってやるよりも、手錠をはめてもう動かないようにしておく方が、それは安易でございます。ことに今日刑務所からの職員の交流が多うございます。刑務官であった人が教官になっている人がたくさんございます。日々そういうふうに流れてゆこうとしております傾向がございます。そういうときに一体保護がだんだん行刑に変って、口では教育対象だ、これが子供を守る、これが力の足りない少年保護してやるのだとおっしゃっておりますけれども、実際を見ますというと、あの面もこの面も保護行刑に変ってゆくということは、事実においてその通りなのでございます。そういうときに、これは法務大臣責任だと思っておりますけれども、一体たとえどろぼうした子供でございましょうとも、ほんとうに私どもはこの子供を必ずよくなると信じてやっております。やらなければならないものだと思っております。そういう子供を一体少年院の中で、しかもあそこは教習の場所でございますが、その教育の場所で一体手錠をかけて子供がんじがらめにして、どういう教育をすれば子供がよくなるとお考えでございましょうか。
  12. 成瀬幡治

    委員長成瀬幡治君) 念のために申し上げておきますが、大臣たびたび衆議院の方に要請がありますから。
  13. 花村四郎

    国務大臣花村四郎君) 宮城委員のおっしゃるところまことに傾聴に値いするものがあろうと存じます。さればこそこの法案におきましても、手錠を使用するというような重大な事柄に対しましては、特に第十四条の三の2において、手錠は、少年院の長の許可を受けなければ使えないのだという規定を加えまして、慎重の上にも慎重さを加えておるという点は、宮城委員のお考えに一致するものであろうと存じまするが、しかしこういう規定を設けたから、常にこの手錠を使用するという意味ではございません。なるべくでき得る限りは使用しないようにいたしまして、宮城委員の言われる考査室で済ませるよう一つ全力をあげてやることに心がけていきたいと存じます。
  14. 宮城タマヨ

    宮城タマヨ君 まだ大臣にお伺いしたい点は幾多ございますけれども、じゃ次回にさしていただきます。
  15. 成瀬幡治

    委員長成瀬幡治君) ちょっと速記をとめて下さい。    〔速記中止〕   —————————————
  16. 成瀬幡治

    委員長成瀬幡治君) それじゃ速記を起して下さい。  少年院法の一部を改正する法律案に関しまして、東京家庭裁判所判事佐藤信一郎君、多摩少年院長徳武義君、愛光女子学園長大平エツ君、久里浜少年院長小川洋君から参考人として意見を聴取いたしたいと存じますが、御異議ございませんか。    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  17. 成瀬幡治

    委員長成瀬幡治君) 御異議ないと認め、さように決定いたします。   —————————————
  18. 成瀬幡治

    委員長成瀬幡治君) 続いて御質疑のある方は御発言願います。
  19. 藤原道子

    ○藤原道子君 ちょっと先ほどの大臣の御答弁の中に自傷少年が百何人かあったとかいう御答弁がございますが、それは何人とおっしゃったのですか。それから何人現在少年院に在院しておる者がいて、その中の幾名が自傷されたかということをちょっとお伺いしたいのです。
  20. 中尾文策

    政府委員(中尾文策君) 大体少年院の収容者は過去一年の間に一万一千人くらいちょっと欠けますが、そんなところでございますが、その中で自傷しまたは自傷しようとしたそういう関係の数でございますが、それは百五十八人でございます。これは昨年一年中の人数でございます。
  21. 藤原道子

    ○藤原道子君 百五十八人。
  22. 中尾文策

    政府委員(中尾文策君) そうでございます。
  23. 藤原道子

    ○藤原道子君 自傷しまたは自傷しようとした者、これを合せてですか。
  24. 中尾文策

    政府委員(中尾文策君) そうでございます。
  25. 藤原道子

    ○藤原道子君 自傷したものは何人くらい。
  26. 中尾文策

    政府委員(中尾文策君) そこまでちょっと。自傷しようとした者、少しくらい傷をした程度の者、程度の低い者それまで含まれておりますから、要するに自傷の既遂、未遂というものとして一括してそれだけの件数があるのでございます。
  27. 藤原道子

    ○藤原道子君 自殺した子供がございますか。
  28. 中尾文策

    政府委員(中尾文策君) たしか昨年一人汽車から飛びおりて……、二件ございます。
  29. 藤原道子

    ○藤原道子君 どういう理由で。
  30. 中尾文策

    政府委員(中尾文策君) それはちょっと……。あとで調査いたしまして御報告申し上げます。これが果してどの事件でございますか、ちょっとあとで調べまして……。
  31. 藤原道子

    ○藤原道子君 そこで私も宮城委員の言われるよう手錠をはめるというようなことには絶対に反対なのです。そもそも少年院なるものの精神から参りましてそういうことであってはならないと思います。ことに先ほど来の大臣の御答弁によりますと、まあ百五十八名も自傷少年があったと、非常にあばれて困るのだと、だから手錠をはめることが愛情だというようなことも言われたと思うのでございますが、そういうことは私は詭弁だと思うのです。少年院というところは、結局罪を犯すおそれのある少年が入っておるわけです。そうでしょう。従ってその自傷少年が出た場合にも、どうしてもそういうことを防ぐために愛情をもってはできないのか。どうしても手錠をはめなければ防ぐことができなかったか。もし観護の手が行き届いていたならば、私はそういうことは防げたのじゃないか。だから最善の努力をしないで、そうしてそういうことがあるから、手錠をはめることが必要なんだというようなことになれば、何やら私は責任をのがれる大人のずるい考え方から、それはあいつは悪いやつだから刑罰だという考え方にあるならば、この少年院法なるものの精神に反する、私はそう思いますが、いかがでございますか。
  32. 中尾文策

    政府委員(中尾文策君) 実は私はそういう気持といたしましては決してこれは悪いことをしたからとか、あばれるからというので懲罰的な意味でこういうものを使おうとは毛頭考えておりません。やはり私たちの気持といたしましては、これはそういう場合はもうほかに手段がない、どうしてもこの逃走逃亡あるいは自殺というものを防ぐためには、とりあえず臨時的な措置として本人の自由を一時的に拘束する以外にないという場合に、こういうことをやむを得ず一時やるわけでございますが、しかし自分たちのなすべきことをしないで、能力も尽さない、そうしておってただ安易にそういうものにいきなり飛びつくというようなことになりしては、これは大へんなことでございます。なおまた、御指摘の通りにそういう事態に、至らしたということにつきましては、おそらく私たちの方の職員責任がある場合も相当あると思います。もっと私たちがりっぱに仕事ができる、あるいは人格的な影響力も相当あるというようなことになりますると、おそらくは、もっとそういう手錠使用の場合も少くすることができたと思います。また実際そういうふうにやりたいものだと思っておりますが、何分にも私たちの方の実力はまだ足りませんので、はなはだ残念なわけでありますが、一時的にせよ、こういう処置をとらざるを得ないというのが実情であります。
  33. 藤原道子

    ○藤原道子君 私は職員がただなまけておると言うのではないのです。ただそういうことが起るのは、定員が足りないからということも考えられることの一つであります。もし定員等が足りなくて観護の目が届かないならば、手錠をはめようという考えを起す前に、これは人手をふやすということも必要であるのではないでしょうか。それもまず考えてほしいという点が一点。それから私のひがみかもわかりませんけれども、少年院に参りましてこれが矯正と教育を目的とした施設であろうかという疑いを持たざるを得ないのです。冷たい感じがする。愛情で指導するというような点が非常に私には感じられないのですね。そうしてまた罪を犯すおそれのあるものこれらを矯正指導、教育していくのだというようところで、結局板の間に薄べり一枚でせんべいぶとんで寝かしてある、ああいう点で子供気持にあたたかい愛情を感じせしめることができるのですか、ああいうところに入れたら。本当に愛情をもってやるならばもう少し親心があってしかるべきではなかろうか、そういう少年性格的にゆがめられておるということは、それはその周囲の環境がそうさしたので、少年子供には悪人はいない。こういう考え方に徹しておるわけなんです。だから刑罰をもってするのではない、手錠をもって臨むのではなくて、もっとあたたかい愛情というものがあったならば、教官と少年との間にもっと愛情の通うものがあったら、私手錠にまさる効果があると思う。手錠をはめる、やれ逮捕状、まあ連戻状とはなっておりましょうとも、実質は逮捕状、こういうことで臨まなければならないということになるならば、もう私は少年院法精神を逸脱していると思うのですけれども、いかがでしょう。私どものしろうと考えと一笑される勇気がおありになるでしょうか。
  34. 中尾文策

    政府委員(中尾文策君) 全く私たちが常日ごろ非常に深刻な気持考えております最も痛い点をつかれておると思うわけでありまして、まことにごもっともであります。私たちも少年院を何も刑務所的な気持ち、あるいは方法によってやろうということは毛頭考えておりません。できればあたたかくしてやりたいし、なおまたあたたかい、やわらかい雰囲気の中で矯正指導をやっていきたいということを考えております。しかしこれは、言いわけになってしまいますが、要するに私たちの実力が、そこまでいかないということが実情でございます。と申しますのは具体的に申しますると、第一非常に職員が足りません。たとえば夜勤なんかにいたしましても、非常に血気盛んな青年ばかりが夜たくさん泊っておるわけであります。そういう場合に起きて勤務しておる者は、そういう療舎なんかを見て回ろうといたしましても、職員が一人ぐらいで実際朝からずっと勤務した職員が夜眠るわけにゆかないで、そのまま勤務についてそういう部屋をずっと見ておるわけです。そういう場合に、これはまたしかし職員の常日ごろの訓練が悪いからとおっしゃるのならば、全くその通りということになりまするが、中にいろいろおもしろくないことをやっておる子がいる、ほかの者をいじめているボスがいるというような場合に……、これはしかし、私は悪い場合を申し上げておるので、今度出そうとしている改正案は悪い場合のことを考えておるわけでありまするが、しかし決してそのことばかりが全部じゃありません。そういうような何かボスとか、あるいは悪い者がおりまして、どうもいじめたりいろんなよからぬことをやったりしているというような場合に、教官が注意をいたしまして、その注意に、言うことをきいて、そうしてちゃんとその通りにおさまるというような場合もございますが、しかしまた、はなはだしばしば教官に食ってかかる、あるいは教官を部屋の中に引きずり込んで袋だたきにしてしまうというような事故がまあ起るわけでございます。そういうことになりまするというと、自後もこれは教官がそこ回って参りましても、つい実力の上では、腕力の上では勝てないというとになりますると、ちょっとまずいことがあっても、見て見ぬふりをせざるを得ないというようなこともあるわけであります。しかし、決してそういうことが全部ではありませんが、そういうことによりまして相当職員が困っておることは事実であります。なおまた、さっき宮城先生からお話がございましたが、考査室なんかを利用して、そこで一緒に少年と寝る、あるいはまた少年と一緒にその中に入ってひざを突き合せて話をするというようなこともこれは確かに有効でございます。そういうようなことをやろうといたしますし、また実際やっていることもございますけれども、しかし何と申しましても職員が足りませんので、あらゆる場合にそういうことができるということはなかなかできかねるわけでございまして、なおまた、考査室というのは、新入者、つまり新たに入って参りました者を、しばらくの間その考査室に入れまして、そしてそれについていろいろ調査をするというような場合に使う場合もございます。しかし、なおまた、反則なんかをいたしまして謹慎を命ずるというような場合にやはり使う。いろいろそういう場合の目的に沿ったおのおのの部屋の、種類をある程度の数だけ各少年院が持っておりますというと、そういう場合に非常にうまく使い分けが、できるわけでありまするが、何分にもそういう少年院の設備が非常に不足しておりますので、そういう特殊な部屋をいろんな目的のために使うことができて参りますので、なかなかそういうところ処分というものが各ケースに応じて手ぎわよくさばいていくということもやりにくいわけでございまするが、そういう場合にもしかし職員がたくさんおりますと、いろいろ目が届き手が届き、いろいろ指導もできるわけでございまするが、そういうことでついミスができてしまうというような場合もあるわけでございまして、まあ被服のこともこの前藤原先生からいろいろ御指摘を受けましたが、全くあの点は非常に申しわけないことでございますが、しかしあの青いのは、前に不足していましたときに手に入れたものを配ったもので、まあ破れるまで使おうというわけで使っておるわけでございますが、ただいまのところでは、最近はああいうものは使っておりません。今後はああいうまずいものを、あそこで破れるまで使おうということでお見せしたことになってしまいましたが、この少年院がだんだん刑務所的になってくるというような御心配も、これはごもっともでありまするが、そういう面もございまするが、しかしまた少年院本来の姿にだんだん少年院を確立していこうという場面も私はあるというふうに考えております。で、もう少し時間をかしていただきましたならば、そういうふうな愛の少年院的なものとして確立し得るものは確立し得るのじゃないかというふうにまあ考えているわけであります。手錠を使うとか、あるいはこの場合に逃げた者を強制力をもって連れ戻してくるというようなことは、非常にこれはきびしい感じを与えるわけでありますが、しかしそういうふうな処置をしなければならない少年も確かにあるわけでございますが、そういう者に対しまするところの処置が、もっとちゃんと一定の理想のもとに整備されてくるということになりまするというと、そういう者にはそういう者に適当な仕事を、またそういう者と一緒にいることによって無用な撹乱を受けるというような者は、そういうことから救われるということになりまするというと、そういうことがだんだんと徹底して参りまするというと、私はただいまの少年院の混乱状態というものは、もっとずっとよくなるのではないか、またぜひそうしていかなければならないということをかたく念じているわけでございます。
  35. 藤原道子

    ○藤原道子君 私は局長がしばしば言われる、職員がなまけているとか何とかいうことは少しも言っていないのです。けれども人が足りないということを大へんおっしゃっていますので、人が足りないならば、もっとふやしたらいいじゃないか、人が足りないから手錠をはめるというようなことになっては、本末転倒になると思うのです。職員の人は本当に命がけでやっていらっしゃると思うのですよ。その点は私は敬意を表している。同時に、職員の人で人手があって、ほんとうに愛情を持ってやっていられるならば、子供反抗心もなくなってくると思う。刑罰をもっていけば、今度はあべこべに反抗心を持ってくる。手錠なんかはめてやってごらんなさい、そのしこりというものはやはり何らかの形で出てくると思うのです。  ただ私はこの際さらにお伺いしたいと思いますことは、職員はどの程度なのですか。私はこの委員会がしろうとでよくわからないのですが、子供何人で、何人の職員ということになっているのでしょうか。今のお話しに、昼間働いた人が夜までやっているというようなことは、これは大へんなことだと思いますので、その点ちょっとお伺いしたいと思います。
  36. 中尾文策

    政府委員(中尾文策君) 少年院職員は、昨年の三十九年度で二千三百一十八人でございましたが、これは行政整理によりまして、今年度はこれから九十二名減ってしまいますから、二千二百三十四名というのが本年度の新しい職員の定員でございます。収容者の数は、一万一千人ちょっと割っておりますが、そのくらい常時入っております。なおこの職員のことでございますが、毎年増員を要求いたしております。これはもうずいぶん深刻に要求を出しておりますが、増員要求は押えられて、あべこべに行政整理の方が、相当がんばったのでありますが、減らす方だけ減らされてしまったというようなことで、今年はもっとこれは悲惨なことになったわけであります。
  37. 藤原道子

    ○藤原道子君 ちょっと伺いますが、二十九年度の二千三百二十六人、それを今年度九十二人この中から減るのですか。子供は減っていないですね。
  38. 中尾文策

    政府委員(中尾文策君) 子供は減りません。
  39. 藤原道子

    ○藤原道子君 相当お戦いになったと言われるのですけれども、最後にはこれはのまざるを得なかったわけですか。その実情は申し上げるまでもなくお話しになったと思うのですけれども、それでもなおかつ九十二名は削られたとおっしゃいますか。
  40. 中尾文策

    政府委員(中尾文策君) 私たちこの少年院のことに、特に少年院職員のことにつきましては、非常に大きな決意をもちまして戦った、という言葉は非常に不適当でありますが、主張をし続けたわけであります。昨年度は御承知のよりに、昨年度と今年度の二カ年にわたりまして行政整理があったわけです。片一方私たちが増員要求をいたしましたときは、大蔵省の事務当局は相当わかってくれた。なおまた少年院のいろいろな実情を見せておりますので、主計局の事務当局の人たちは非常にわかってくれまして、同情をしておってくれたのであります。ことによったら少しもらえるのじゃないかというような予感までして、非常に喜んでおったのでありますが、ところが、片一方におきまして、行政整理というものがこの期間に行われまして、そうしてその方ではさんざんな目にあいまして、数は減らしてもらいましたが、とにかく九十二名というものは、少年院は今年減らさなければならないということになったわけであります。ところがそのときの様子によりまするというと、来年度つまり三十年度のことでありますが、今年度になるというと大蔵省はあるいは少年院の増員を認めてくれるんじゃないか。片一方でそういうふうな行政整理ということをやりながら、片一方で増員ということはどうしてもできない。理論上これは一貫しないからということで、増員の方も同時に葬られたのでありますが、三十年度には何か考えてくれそうだというにおいがいろいろな方面からしてきたのであります。それでそれでは私たちのほうは矯正と申しておりますが、矯正関係の方は刑務所少年院少年鑑別所のほかに観護もございますが、そういうのがありますが、矯正全体で前年度、二十九年度に一定の行政整理の割当人数がございました。二カ年にわたってやるわけでございますが、少年院はもしかしたら来年になればもらえるかもしれないから行政整理は来年まで見合わそう、しかしそのかわりにほかの方で削ろうというわけで、刑務所の方から前年度少年院に割り当てられた方の部分だけは刑務所の方を削って、少年院の方は手を入れなかったわけであります。それで結果においては、少年院の欠員になっておりますところの九十二名、こういうものは今年度に持し越したわけでありますが、しかし今年度大蔵省から増員をもらって差引それをパーにするか、あるいはそれをもっとふやしてもらおうということで、一生懸命になってやったわけであります。大蔵省当局はよく同情をいたしまして、特に昨年暴動なんかが印旛少年院にありました当時も、すぐ暴動の翌日現場に行って、現場を見て回ったり何かしました関係上、なおまた久里浜の少年院の中を見てもらいまして、よくわかっておりますので、増員については相当好意的でございましたが、しかし結局政府の大方針として増員というものはこれは認められないということでとうとう増員のほうはだめ、しかも私たちがあてにしておりましたそういう増員的な措置がだめなために、昨年度から九十二人というものを一ぺんにやってしまわなければならぬという結果になって非常に困ったわけであります。しかし、長たらしくなりますがそれではどうしても困りますので、常勤労務者というのがございますが、常勤労務者でくれないかという交渉を始めました。そうしてこの常勤労務者につきましては、これはやはり結局は増員になるわけでありますので、なかなか認めてくれませんでしたが、これもずいぶんやりまして、結局それでは私どもの方で財源を出そうというわけで刑務所職員の超過勤務手当、これを割きまして、そうしてそれを財源にして大蔵省へ出した。そうしてその財源が全部ではありませんが、一部の財源でありますが、要するにそういう手当をいたしますことによって、初め大蔵省は超過勤務手当を出すなんていかんというようなことを言っておりましたが、刑務所の方は何とかして押えるから、だからぜひとも少年院の方へ増員をカバーしてくれということで、二百名の常勤労務者、これは正式の、正面切っての職員ではございませんが、そういうものをもらうことができたわけでありまして、その常勤労務者の使い方によりましては、相当これは手数もカバーできることと思いますので、九十二人の職員は減らされましたが、片一方常勤労務者を二百人というものはもらっておりますので、結果的には約百人ほどが増員ということになります。これを何とか活用いたしまして手不足を補いたいというふうに考えております。増員のことにつきましては、実際私たちも大いに関心を持っておるわけでありますが、なかなか思うように参りませんので、やむを得ずいろいろな小手先を使わなければならないということになったわけであります。
  41. 藤原道子

    ○藤原道子君 この常勤労務者の二百名を取られたことは大成功でございますが、この人たちはどういう人をお採りになるんですか。
  42. 中尾文策

    政府委員(中尾文策君) この常勤労務者というものは、やはり本来の少年院職員として使うのにはむずかしいと思いますので、本来を申しますと、つまり少年と直接接触してやるというようなことに全部使うのはむずかしいだろうと思いますが、しかし事務をやらせるとか、事務の方に大分教官を割いておりますので、その事務の方にそれを回しますと、教官を現場に使えるということになります。それからまたあるいはトラック、自動車なんかを運転いたしております、これもできれば常勤労務者にかえれば、本来の職員少年の方に回せるんじゃないかというふうに考えております。なお特殊な技能を持っておりまして少年を指導できるような者、これは思い切って常勤労務者を直接少年に接触させて、いろいろな技術指導、学課指導なんかに当らしてもいいじゃないかというふうに考えております。しかし二百人と申しましても全国の少年院の数は五十六ございますので、一個所、三、四人、二、三人くらいの程度しかならないと思いますので、そう大した多くのことはできないと思います。
  43. 宮城タマヨ

    宮城タマヨ君 第一番に局長に伺いたいことは、この重要な立法案をなさいますにつきまして、過日の委員会で確かに現場の少年院長の意見はお聞ききにならないで、立法案をお作りになったというように私は承知しておりますが、それはそう受け取ってよろしゅうございますか。
  44. 中尾文策

    政府委員(中尾文策君) 今度の立法案と申しまして、まあ項目が幾つかございますが、今回立法いたします場合は、これは非常に急ぎまして、内閣に送り送む間が一週間くらいしかない、しかも四月の終りから五月の初めにかけまして休みばかり続いておりまして、それで協議する方面も多いということで、大急ぎで作ってしまいましたので、その作ります場合には、現場の意見は聞きませんでしたが、しかしそれまでにしばしば少年院長との会同をやりますとか、現場からいろいろな意見が出て参りますとかということがございますので、そういう点につきましてはよく聞いておったわけであります。特に手錠の問題なんかにつきましては、早く何とかはっきりしてもらいたいというような意見は言っておりました。ただ今回問題になっております一つで、連戻状を少年院職員に必要とするかどうかという問題については、この問題につきましては前にも聞いておりますが、これは私たちの方といたしまして自粛をするために、当然これらのことはやらなけれならはないだろうということで書いたものであります。
  45. 宮城タマヨ

    宮城タマヨ君 それでは少年院側で少年教育しますのに、中で子供手錠をはめなければ矯正教育ができないという悲鳴をあげている院長というものは確かにございますか。これは私は重要な問題だと思います。
  46. 中尾文策

    政府委員(中尾文策君) 手錠矯正教育に必要であるという者は一人もおりません。またそんなことを考えるはずもないと思います。ただやむを得ない場合に手錠の力を借りなければならない、その場合の臨時的な措置として手錠は必要である。それは全く例外的な場合でありますが、そういう声はたくさんございます。なおまた、これまでしばしばの会同でも、そういう意見がなされております。
  47. 宮城タマヨ

    宮城タマヨ君 たとえばこういう場合はどうなんでございますか、集団逃走を企てる、そういうときに二十人も五十人も、印旛少年院は七十六人が暴動を起して逃走しております。そういう場合に、実際問題としたらその七十六人に手錠をはめて子供をどう処置しようというのでございますか、みんなつないでおきますか、それはどうしようというのですか。
  48. 中尾文策

    政府委員(中尾文策君) そういう大きな事件を実は私たちも予想しておりませんので、そういう場合にどういうふうにやるかということは、あらかじめ実は考えて処置をとっておったわけではございません。ただしかし、現実にそういう問題が起って、この前の印旛少年院の場合のようにどんどん逃げた者をつかまえて帰って来るという場合に、おとなくしている者には、職員監視をつけて、そうしてどこかの一定の場所に当分の間見ているということでいいかもしれませんが、しかしなかなか帰って参りまして、興奮状態で職員につっかかってくるという者につきましては、これはやむを得ず手錠をもってその少年を押えるということにならざるを得ない。
  49. 宮城タマヨ

    宮城タマヨ君 どうも私少年院をよく知っておりますために、一体あの中で大ぜいの者に手錠をはめて、そして、それこそみんなをつないでおおきになるのだか、部屋に分けていらっしゃるのだか、その辺の実際のことはわかりませんけれども、私はこれは矯正教育に対して全然暗い面だけで、実際から言いますと、私は局長の立場で、もしも少年院職員がどうしてもこれを非鳴をあげて手錠をかけなければこの子供たちを統制することができぬなんというよう職員がもしありましたら、私はそれは免職に値いする職員だと思っております。それに対してもう仕方がないから手錠をはめて、みんなをがんじがらめにせえというような、そういうことは一体やらすことは相ならぬと思っておりますが、私は実際の場面に出あっておりますのは、あの四国の四国少年院、男子の少年院でございますが、あすこは数回にわたって集団逃走いたしました。それで参議院の方から私ども調査に行ったのでございます。そして、あのときは四十何人逃走いたしまして、大方大部分の者がもう連れ帰っておるというところへ私は調査に行きまして、ずっと一回りして私はこういうことを言いました。院長、また逃げますよと言った。だけども、この施設は悪くて、日本一悪い少年院ですから、この通りですから、一つ政府の方に何とか手を打つようにしてほしいということを説明しながら、私が院長の官舎にみんな集まって食事をしておりますときに、院長の態度がどうしてもおかしい。子供が逃げたでしょうと言いましたら、また逃走しましたと、どこから逃げましたと言ったら、窓をこわして逃げたと、私はもう子供態度を見たら落ちついているか、逃げるかということはわかります。それはもう、もちろん、考査室もない、あすこは。考査室もないところに、逃げた者を一かたまりにして、それがもう何とも言えない興奮状態にあります。そして、先生方は何の手を打っているか、先生方は参議院から行った者のあるいは歓迎の意味からかもしれませんけれども、官舎で食事をしているときに私はもう心配で心配でならなかったら、そういうことが起っている。そして、そこに私は私だけ残りまして、二日も子供の帰るのを待っておった。そして、その主謀者の三人が帰ってきて、それこそ手錠をはめられておりましたときに、私は、主謀者に会いたいと言って待っておりました。院長室に連れてこられまして、そして、その院長が逃走した子供に対してどういう態度をしたか。全然これは教育するという意図のない院長であって、もう全く言語同断な院長の態度でございました。それはもう院長としたらもう怒らなければならない。それこそ腹が立って腹が立って仕方がないというよう態度でございましたときに、私はどうぞこの子供三人ちょっと私に貸して下さい。私に話させて下さい。そうしたら初めて少年がすっかり態度が変って、そして、先生、ほんとうのことを言おうかと、そして、私に言った言葉は何でございます。実に職員が冷遇する。時間がありませんから詳しいことを申されませんけれども、(「時間取ってもいいですよ」と呼ぶ者あり)それはゆゆしい問題です。そういう職員が、もしも、院長は取りかわりましたけれども、もしも、日本各地にそういう者があったとしたら、一番迷惑するのは私は子供だと思う。もう逃げるより道がないような設備であり教官であるもとで、どうして子供が落ちついていられましょうか。私ども少年院に行きましても、鑑別所に行きましても、ここは教育的にやっているぞ、ここはいけないな、取り扱いがいけないなということは、一回りしないでも中の空気ですぐ感じます。いつぞやでもこのここの委員会に五人の少年院長をお呼びして委員会でいろいろ問題を伺ったときに、たまたま手錠の問題がございましたときに、仙台の青葉少年院の院長はとてもいい証言をなさった。それはあの方はぞっこん教育家出で、三十年も普通の教育をやった人ですから、子供に対する態度が全くどろぼうを扱っているという態度でございません。しかも非常に悪質な子供が北海道から来ておって、来るときはもうがんじがらめに縛られて、手錠をかけて、しかも男の教官三人に連れてこられた子供を、北海道にもう一ぺん院長自身が連れていかれた話をここでなさいました。それは速記録に出ているのでございますけれども、手錠をはめるどころか、もう先生眠っていてもいい、この汽車が着くとね、早く船に行かないと船の席がないから、先生荷物みんな持って行って私が走るから先生あとからついてこい。そしてまあ長い桟橋を子供が先へ渡って、そして、先生、席を取っておくと言って、船の中で席を坂って、先生を、院長をやすやすと休ませてくれた。院長は疲れているものですから、そして北海道に初めて渡ったというその院長が、船の中でうっかりして眠っていたら、船が着いた。そうしたら着いたときに子供に起された。先生、船が着きましたと、今度札幌に行く汽車に乗るには、先生とても席が混むから私先に行って席を取っておきますからね、窓から手を出して先生を呼ぶからね、そして子供が走って行って席をとって先生を呼ぶ。そのがんじがらめに縛られていた子供を何のことなしに北海道に連れて行った。あれはきっと秒川の少年院にいた院長だろうと思いますが、その話をここでなさいました。そのときに、ほんとうに涙をもって院長は話された。それは、今からあなたを北海道に連れて行くよ、北海道にはお母さんがいるし、その方がいいじゃないの、と言ったら、もう子供が大へんいやな顔をした。帰りたくない、なぜ帰りたくないか。また汽車の中で、船の中で手錠をはめられ行くことはとてもいやだと、そのことは当委員会においても院長が証言なさっております。つい私この間、それこそ二月もたたない前に、またあの青葉少年院を訪問しました。そのときに院長から伺った。あの管区では子供を働きに出すというと、それはもう野放しで出すなんて大へんなことだから、みんな職員が朝連れて行って、それを連れて帰るという、一々つき添いをつけなくちゃ危ないじゃないかと言われたけれども、だけれども子供たちは、いいえ一人で行ってきますと言って、そして宿屋に行く。りっぱな主婦のある宿屋に日帰りで奉公さしている者もあるし、それから仕立屋もあるし、それから一番集団的に行っているのはせんべいを製造するところに十人も行っている。毎日通っている。私はそのせんべい屋に行った子供たちの働いている様子を見てきました。もう完全に働いて、夕方になるというとまた帰ってくる。一度も事故がない。それは、私は院長の考え方が自然職員に伝わって、職員があたたかく、そしてまたきびしく、実に緩厳よろしきを得てやっている。この矯正教育にのってきているからだと思っております。これを手錠をはめなければいけないと言ったり、手錠をはめてみたって、その次はどうしたらいいでしょう。その次はくつわをはめなければならんことになるかもしらん。それがいつでも因となり果となり、その根本はさっきから問題となっております私は職員の数の問題ですけれども、職員の資質の問題じゃないかというよう考えております。実際はこの教育の道はほんとうに遠くって、回り道が多いし、そして実際は金がかかる。それは、家庭教育でも、学校教育でもその通り、教育には金がかかります。その金は、それは私どもももっともっと大蔵省に働きかけ、法務省のお手伝いをすることが不足だったとはいいながら、法務省としてももっともっと考えていただきたいと思います。どうも仕方がないからこういう法律をこしらえて、がんじがらめ子供を縛り、しかも家の中で手錠をはめて、一体どこでどういうふうにされておるのか、私は想像するさえおそろしくてたまらないのでございます。で局長にいろいろ伺いたいことがあるのでございますが、一体さっき法務大臣がおっしゃった、アメリカの話だけはあんなことをおっしゃるのですけれども、一体日本刑務所というものは、これは殺人犯もいるだろうし、放火犯もいるだろうし、いろいろな悪い人を入れる、その独房というものはそんなアメリカみたいな完全なものが一体できておるのでございましょうか。今の少年院考査室とどういうところが違っているのでございましょうか。それを伺いたい。
  50. 中尾文策

    政府委員(中尾文策君) 独房はこれは普通の独房でありますが、刑務所はやはり高い塀がありますし、また警備が非常に厳重にできておりますので、そういうところのバックがしっかりしておりますために、独房について特に厳重にしてあるというようなことは、特殊な精神病者などを入れる場合のほかはございません。
  51. 宮城タマヨ

    宮城タマヨ君 それでは少年院考査室に入れておいても効果はないようなことをさっきおっしゃっておりましたけれども、それでは刑務所独房とあまり違いませんね。(「同じでしょう」と呼ぶ者あり)
  52. 中尾文策

    政府委員(中尾文策君) 設備としてはあまり違いはないと思います。
  53. 羽仁五郎

    ○羽仁五郎君 関連して政務次官にちょっと伺いたい。今宮城委員からるるお述べになりましたことに対しては、政府としてもただお聞き流しになるというようなことはないだろうと思うのですが、今度の改正法律案の要点というものは、要するに逮捕状なくして人を逮捕するということはよくないという一般刑事訴訟法なり、一般のそういう見地から、それが少年の場合に、やはり逮捕状がないのに、少年を強制的に連行するということは、人権を侵すことになるのじゃないかという政府の御説明ですが、そういうところに問題があるのじゃないということは、今の宮城委員の御説明でもよくわかると思う。最近政府はしきりにこういうよう法律案を出しておられますが、現に一般刑事訴訟法の適用の際に、現在の警察なり検事局なりは、多くの場合に人権を尊重しているという実績があるならば、かかる法律案をお出しになっても、宮城委員であっても、あるいはもう少し同情的にごらんになることができるかと思うのでありますけれども、現在の警察なり検察なりが逮捕状の取扱いにおいて、どんなことをやっているかということは、政務次官よく御承知だろうと思うのです。逮捕状の取扱いが非常に乱暴です。人権の尊重の実は上っていないのです。ですから人権を尊重するために逮捕状が必要だ、そういう趣旨からの改正だということが、どうしてもわれわれにその案は受け取れないのです。しかもこういうふうに法律改正することによって、果してその子供たち人権が尊重されるか。すなわち逮捕状なしに強制的に連行されるようなことがなくなるか、あるいは一般に法律に基くしっかりした逮捕状なくして人を逮捕するというふうな習慣が根絶されるということにおいて、得るところが少しでもあるかどうか。おそらく私はそっちで得るところはないだろうと思う。そうして失うところはどうだと言えば、今宮城委員からるるお述べになったような、せっかく少年院法なり少年法なりによって、現在少年にとって必要なのは、刑法的な取扱いではない、刑罰的な取扱いではない、教育的な取扱いだという大原則の方がくずれてしまうのじゃないか。だからどうもこの法律案は、いろいろな面から理論的に考えても、日本の現状から考えてみても、政府が堂々と法務委員会に持ち出して、議員各位の賛成を得られるというたちの法律案じゃないように私どもは思うのです。ごく最近イギリスで起っている問題がありますが、これはいわゆる子供に対する軍隊教育をやるようなそういうユニットですね。そこに入っておる子供の中に事件が起って、一人の子供自殺をしております。それをイギリスの新聞はどういうふうに取り上げているかというと、スクール・ボーイが必要なんだ、ソルジャー・ボーイが必要ではないということを、言ってております、だからやはりそれと同じ精神で、少年院法あるいは少年に関する民主主義的な立法の目ざすところは、スクール・ボーイを必要としているのです。クリミナル・ボーイを必要としているのじゃないのです。だからそういう点では、やはり政府がこの際いろいろ予算なり人員なりで苦しい中をやっていかれるときに、最も眼目とする点に重点を置かれなければ私はなるまいと思う。それで人権尊重でなすべき点は他の方面にあるのだ、この少年院法改正なんという点にあるのじゃない。だからもっと逮捕状の取り扱いあるいは逮捕あるいは取り調べということに対して、法務省としては特に法務一大臣がそういう点について、もしわれわれの期待に沿わない点があれば、あなたはどうか政務次官として十分に補佐していただいて、現在あらためて新内閣の法務省が、人権擁護の点においてはもう少し努力されなければしょうがないと思う。法務大臣の本委員会におけるたびたびの御答弁を伺ってみて、どうもこちらの耳が悪くなったのじゃないかと思うような御答弁が多いのです。あなたにはその点特にもう少し警察や検察に向って、これは先だって一松委員の賛成も得て、逮捕状の乱用については厳重な調査をするということも必要ですが、われわれみずからがその方を調査するよりも、法務省としてみずからがやって、この監督の責任を果していただきたいと思いますが、この法案については法務省として、やはり少年に関する立法というものについては、その教育という点に眼目があるのだ、それをくずしてしまうならば、民主主義的な少年に関する立法というものは意味がないのだ、そういう点から現在宮城委員もあの通りに御心配になっているのだということを十分一つ慎重にお考え下さって、あなたの御所見をどうぞ一つ法務大臣にもお伝えを願って、この法律案の取扱いについてわれわれあやまちを犯さぬようにお願いしたいと思うのです。先ほどの宮城委員の、特に青葉少年院長の例を引かれて、連絡船の中でもって、汽車の中で手錠などはめられなかった子供が、席を探して院長を座らせてゆくというような光景、それと反対に今度は逆に、人権を尊重するのだと言って、逮捕状を出して手錠をはめたり、これは容易にはやらぬというが、容易にはやらぬというようなことを今われわれは耳で聞いてそういうことが信じられるとお考えですか。容易にはやれなくなったはずのことを、最近新聞にしばしば手錠をはめられた被疑者の写真が出るじゃないですか。最近手錠の使用ということについて、われわれ法務委員としてこれは実に乱用になっていると思う。これはあなたもおそらく御同感だと思う。だからそういう手錠なり逮捕状なりの乱用をされている真っ最中において、こういう立法を出されるのが果して適当なのか、それとも政府としてなすべき努力は別の方面にあるのじゃないか。その点私は、こういうよう法律案を出されるならば、あるいは出されるかわりに少くとも二点、第一に一般に逮捕状や手錠の取扱いについてもっと、慎重であれ、何でも人の顔を見れば手錠をかけるようなことをして、そういう写真を平気で新聞に出している。僕らも法務委員として、ああいう新聞を見るたびに自分の責任を痛感しますよ。まだ罪があるかどうかわからない、あばれるといったって、回りに警察官が二、三人くっついている。二、三人の警察官が一人の人をつかまえて、一々手錠をはめている。しかも平気でやっている。同時に少年院においては、先ほどのような努力が奨励されないで、逆に、あばれるから手錠をはめるのだ、人権尊重の意味で逮捕状によってつかまえるのだ、そういうことじゃなく、少年に関する法律の適用に当っては、教育という点に全力を尽してくれ、この二点を政府として御努力になる御意思はないでしょうか、どうでしょうか。伺っておきたい。
  54. 小泉純也

    政府委員(小泉純也君) 先ほどの宮城委員の青葉少年院長の献身的な愛の指導のお話に、私も深く感動をいたしたのでありますが、ただいま羽仁委員から人権尊重という全般に通ずる大きな見地から少年の収容者に対する手錠問題ということだけで、これが人権尊重という立場からなされた立法であっても、それは全体を通じて人権尊重の実があげれなければならないではないか。それがまた法務当局としての重大ななすべき前提要件であるという御高見に対しましては、私も全くその通りであるべきであり、また法務当局として大臣初めわれわれその点において今後大いに格段の努力をしなければならぬということをば痛感いたしておるのであります。この少年院法改正における手錠の、連戻状の問題も、実は私も最初は多少の疑義を持ちました。座談ではございましたが、中尾局長に対して、どうも僕にはわからないというような、実は羽仁委員がおっしゃるよう関係において少しおかしいじゃないか、ここでこういうことを申し上げるのはどうかと思いますけれども、実は質問をして、いろいろと制定に対する者え方を個人的に伺ったことがあります、衆議院の論議のさなかに……。その後いろいろ衆議院の質問応答の経過を聞き、また矯正局長のお話などを承わりまして、これは決して人権の尊重ということをば強化するために、特にこの連戻状を必要とすることが、乱用を防ぐ結果になるのだという御説明を承わり、法案に盛られております通り、少年院長の許可を受け、いわゆる連れ戻しに行く者が、あらためて事を慎重にして、一つの手続の段階を経てやることが、かえって人権尊重という趣旨に沿い、少年の連れ戻しについても、ただ漫然と当然のごとく扱わないで、慎重を期して、一つの手続を終って、人権尊重という心組みを持って、連れ戻しに向うのであるというようなことをようやく納得いたしまして、実は私もそれでは一つそういうことをよく委員の方にも御了承願うように極力努力しなければならぬということを中尾局長にも申し、御承知の通り衆議院の方では御納得をいただいて、御賛成を得ておるような次第でございます。参議院の委員の方からもいろいろな御高見を承わりして、今羽仁委員のおっしゃるような一少年関係ではなくて、全般に関する逮捕状の問題、手錠の問題が非常な世論の反撃を受けておる。何らかの法務当局はこれに措置をして、人権尊重の実が日本の社会において日一日実績において高まりつつあるというような事実を示すことが、先決条件であるというような点につきましては、大臣にも特に私は御報告申し上げ、この点について十分羽仁委員のお気持のあるところを実際の面に実現すべく、努力しなければならぬということを決意する次第でございます。
  55. 羽仁五郎

    ○羽仁五郎君 ただいまのお答えは私はさっきお願いした、法務省はこの際検察、警察一般に向って最近逮捕状、手錠等が適当に使用されていないじゃないかというような疑いがある。従って逮捕状や手錠などの取扱については、一段と慎重に人権を尊重して、いやしくも人権をじゅうりんすることのないようにせられたいというように示達せられる御意志があるというように伺ってよろしいのでしょうか。それから第二の点は、特にこの少年院の取扱いについて、つまり先ほど宮城委員のおっしゃっているような、特にその院長が人格者であり、また少年の教導について深い識見を持っておられるということにわれわれは頼るわけにはいかないのです。つまり法律及び法務省の方針で、それは全国普通の院長でもそういう気持になっていなければ困るので、大へんに感心な院長がおられるということで、われわれは感動して涙を流すのである。けれども国会議員としてそれで満足していることができないので、普通の院長でもそういうふうにいかなければならない。その責任を法務省はお持ちになって、国民の税金をお使いになっておいでになるのですから、国民の税金をどぶに捨てていくというようなことでないならば、やはり先ほどのような、大臣が全国の少年院長に対して徹底なさる、尽力なさるのが当然の責任であります。従って第二の点は、この法律案を議会にお出しになっている以上は、この際全国少年院長に向って、先ほどの速記録がありますから、その速記録をおつけになって、少年院長は少年に関する法律というものが教育が主眼であるので、決して強制や刑罰が主眼でないのだ、この際、特にその点を御尽力を願いたいということを示達せられる御意思があるでしょうか。特にただいま改正法案を提出している際に、まあこれは少し荒っぽい言葉を使えば、顔を洗って出直しておいでになるのでなければ、こういう法律案は宮城先生なりわれわれが審議するという気持になれない。まあ顔を洗って出直せというのは、少し失礼ですけれども、私なり宮城先生のおっしゃるところなりをこの際政府は少くとも、そういう努力をなさる、今の二点、こういう法律を議会で審議している際に法務大臣、法務省としては特にその点を慎重にお考えになって、一面においては一般的に手錠や逮捕状の使用の際にい、やしくも人権じゅうりんの疑いのないように丁重を期すべきである。第二に少年院長その他、少年保護関係する責任者は教育をあくまで主眼にして、いやしくもその教育を主眼にするという観点を見失わないように努力すべきだというふうに考える。この二点を特にこの際お示しになり徹底する処置をおとりになる御意志がおありになるというふうに伺ってよろしゅうございましょうか。
  56. 小泉純也

    政府委員(小泉純也君) ただいま羽仁委員からおっしゃいました通り、私は少年院の指導というものは、どうしてもこれを教育する立場にある人間の問題である。人員の不足ということはさりながら、質の問題であることをば痛感いたしております。この前も少年鑑別所を視察いたしましたが、これは人間的の非常な偉業である。これを精魂を打ち込んでいられる職員の方は、この社会において最も尊敬をし、また待遇においても特別な待遇をして、いわゆる人材をこういうところに集めなければこの目的を達することができないと私は痛感いたしております。御承通の通り大蔵当局そ他の理解が漸次深まりつつありますけれども、私どもから考えますれば、一番大事な問題に金を出し惜んで、ほかの方面には何億、何十億というものをぽんぽん増加いたしましても、いわゆる人を作るという偉大な事業に予算が投ぜられないことが、日本の政治の欠陥ではないかと私は法務政務次官に就任いたしまして、予算関係に直接タッチするようになりましてから痛感をいたしたのであります。もちろんそういう方面において今後法務当局も努力をいたしますと同時に、人材をば集めて、いわゆる全般にわたって愛の指導、人間の魂をもってこの少年院ができたいわゆる目的を達成するというようなふうに持っていかなければならんことをば痛感をいたしております。ただいま羽仁委員から仰せられました二点につきましては、私はここで断言はできませんけれども、私自身の心持においては、大臣その他の方々に交渉をいたしまして、そういう措置を講ずべく最善の努力をしたいということをここに申し上げておきます。
  57. 宮城タマヨ

    宮城タマヨ君 私ははなはだ局長に対しても不遜な言葉もございましたでしょうし、矯正教育に当っていらっしゃる職員方がある点で無能なよう言葉も使っておりますけれども、そうではなくて、実に御苦労さまだということはもうしみじみと思っておりますが、ほんとうのことを言いますと、ゆうべも私は少年院を出たという者に夜中に襲われて、と言うとと言葉はきつうございますけれども、トラックを置かしてくれ、それから金を貸してくれと言って来ました。私は疲れて休んでおりましたし、私がじかに会いませんでございましたけれども、その少年というのは……、実はことしの春多摩少年院を卒業します六人の少年を連れて院長が見えました。それは私と一緒に座談会をしてそれを雑誌に載せるという意味合いでございましたが、ちょうど私の所へその日に放送局が来るというもんですから、そいじゃこっちへ来てもらって少年院の実態を放送するようにレコードをとったらどうでしょうかというようなことで参りましたのです。そのときに私は参議院という立場でなくて、ほかの大きい母の立場を守る意味で、それじゃ食事を一緒にするからと言って、まあ何にもございませんでしたけれども、お昼の食事を一緒にしたのでございますが、その六人の中の二人がヒロポン中毒で、そのために殺人未遂で人を殺しそこなったというまあ言ってみればおそろしい罪を犯していたものでございますが、今すっかりよくなってもう日ならず少年院を出るといってみんな喜んでいるその少年たちだったのです。ここに呼ばれて参りました者の一人ですよと言って私の所にゆうべ夜おそく参りましたのでございます。果してその少年かどうか、私がでればわかりますけれども、そこまで私はしないで、そうしてそうしない方がいいと思ったから、まあ休んでいたままで応答を聞いて、そうして名前も申して行きましたのですが、けさ早く金を返しに来ますと言ってゆうべ帰ってきましたが、けさはもちろん来ません。期待もしておりませんでしたけれども、それこそゆうべ夜中にそういうことがあっておりますが、それに類似したようなことは、この仕事に関係していればほんとうに数限りなく味わうことで、そのたんびに実に私はむずかしいなあということを身をもって体験しておりますから、それならばなおさらのこと、私は教育の非常に重大性を思っておるのでございます。ですけれども、昭和二十五年に世界からこの少年の問題アメリカのセントルイスで会議がございまして集ったときにも実際世界の世論といたしましたら、ことにアメリカなんかお金に飽かして少年院なんか完全にして、もう先生方も学校の先生よりも高い月給を払っている。そうして人数ももちろん足りておりますが、そうして完全にしてみたが、やっぱりこういう建物を建てて子供を集めているということ自体がいけないということは、もうそのときの会議の世論としては、もうみんな小さいものに作ってできるならそれを極端にいけば家庭に帰せば、一人の両親、つまり父と母とでもって、また父と母にかわる保護者が一人の子供をわが家であたたかく取り扱えということがこの仕事の理想だということは、もう期せずして世界の人がそういうことをその会議で言ったのでございます。でございますから、まだまだ日本ではこの少年院さえもろくにでておりませんけれども、私はなぜそんなことを申しますかというと、この間印旛少年院のあの大暴動がございましたが、さきの委員会でも申しましたように、私の調査がもしも間違っていなかったならば、七十六人の中の虞犯少年犯罪少年ではなくて、犯罪のおそれあるところの虞犯少年がそのうちに二十一人もおりました。その二十一人というものがどういうふうに処置されたかというと、それは里浜の特別少年院に入れられました。この印旛少年院は私ももちろん見てよく知っております。まことに設備の悪い、ほんとう子供のために気の毒なよう少年院でございますが、それが今度久里浜に入れられました。ここは特少で、なかなか逃げるにも逃げられないような所でございますが、その次に虞犯少年たちはどうなったかというと、今度は刑務所に入れられたんです。その刑務所ということは、つまり名前は刑務所内にあるところの名義上は久里浜少年院の分院ということで、これは神奈川の刑務所でございましょう。だから結局その虞犯少年がもうわずかな間に刑務所なんかに入れられたという結果になった。私はこの事実からだけでも、子供はこうした施設に入れたくないなあというよう考えておりますが、今の段階ではどらすることもできませんけれども、虞犯少年少年院からどうかして社会に送り出すようにして、これを特別少年院に入れるなんということでないようにしたい。最後には刑務所の中に入れられ、もう刑務所の中に入れられたこの虞犯少年は、りっぱな私はみがきをかけられて、もうそれこそしたたか者になって出てくるのじゃないかというように心配しているのでございますけれども、そういう意味におきまして、この仕事に対しましてのほんとに根本的に考えなくちゃならんような問題もずいぶんあると思っております。けれども、ここで手の打ちどころとしたら、初等少年院から中等少年院に、それからてこずる者は特別少年院に移るのでございますが、それは一体どういう手続で処分変更でもするようになっておりますのでしょうか、その手続はどういうことになっておりますか。
  58. 中尾文策

    政府委員(中尾文策君) 少年院から種別の違った少年院に参ります場合には、手続といたしましては、各管区ごとに管区長がそれを認可することになっております。しかし、そのためにはいろいろ事情を明らかにいたしまして、ただ自分の方で都合が悪いとか、これは気に入らんからとかいうふうなことで少年の居場所を簡単に変えるようなことは、これはできませんで、一一それにつきましては、御承知ように、各少年院に分類保護課というのがございまして、その方で、それほど優秀ではございませんが、一応これで分類などをいたしまして、専門家、専門にその仕事をやっている者がおりますので、そういう人とか、院内のいろいろな関係者が集まりまして、その分類の結果を根本にいたしまして、こういう理由があるからこういう性質を持ったところ少年院にやってもらいたいというような書類を管区長に出す。管区長の方ではそれを検討いたしまして、そうしてその管内の全体の少年院のバランスを見まして、あるいはほかの少年院の状況なんかとにらみ合せまして、その少年院についてなるほど言っていることはもっともである、それならこれをこちらの少年院に送ろうというような、あるいはもう送らなくても、やはりそこにいられるようにというような工合にいたしまして、管区長が選定してバランスをとるわけでございます。
  59. 宮城タマヨ

    宮城タマヨ君 それは少し筋が違やしませんでございましょうか。少年少年院に送られるというのは、裁判の決定で送られておると思うのでございますけれども、その決定されたものが、勝手に、いってみれば、書類審理のようなもので転々とこう動かされるということは、これはいいわけでございますか。
  60. 中尾文策

    政府委員(中尾文策君) これは、まあ場合によりましては、書類だけの審査になるかもしれませんが、管区の方といたしましては、不審な点であればこれは十分調査いたしまして、そして納得のいった場合にそういう処置をとるわけでございますから、ただいまの処置は少年院法の第十条でございまして、「少年院の長は、矯正教育の便宜その他の理由により在院者を他の少年院に移送する必要があると認めるときは、その少年院所在地を管轄する矯正管区の長の認可を得て、これを移送することができる。」と、こういうようなこれにのっとってやっておるわけでありますが、これを、ともしますると厄介払いというようになるおそれもございますので、この点については特に監督をしなければならんということで注意を喚起しておるわけであります。
  61. 宮城タマヨ

    宮城タマヨ君 いろいろございますけれども、私は今日は局長に対してはこれだけにしたいと思います。家庭局長が見えておりますから、ちょっと家庭局長に対して手錠の問題で伺いたいと思います。家庭局長は元少年審判所長、名審判所長として京都で名をはせていらっしゃいましたし、私も非常に信頼を持っておりました方でございまするが、実際にその仕事に長い間当っていらっしゃいまして、今は家庭局長でございますが、この手錠の問題についてどういうお考えを持っていらしゃいますか、私伺いたいと思います。
  62. 宇田川潤四郎

    説明員宇田川潤四郎君) 手錠の問題につきましては、私の従来の持論から申しますと、宮城委員と全く同説でございます。かって少年審判所長として京都におりました際も、手錠の使用につきましては極力これを避けるように、少年審判所の職員につきましても、また少年院職員につきましても、当時は少年院職員に対しは少年審判所長が一種の監督権を持っておりましたので、さように努めておったのであります。これは宮城委員また法務省におかれましても同じたうに手錠の使用というものが教育上おもしろくないということは、もうわれわれ保護関係の者の理想であります。そこで今度の少年院法改正につきましても、私どもこの手錠の問題につきましては非常に心配いたしまして、実は従来の現場の裁判官の意向などもしばしば聞いております。これにつきましては、現場裁判官は賛成する向きも、言いかえますと現在の少年院の実情、ことに先議権が裁判所にごごいまして、悪質の少年少年院へ入る、また一十才末満の少年家庭裁判所で取り扱いになっている。言いかえますと年令の引き上げがあったということで、相当悪質な者があるからやむを得ないじゃなかろうというような説、これは相当有力でございます。また一方それに対してさようなことを許すと、少年院の本質に反するのじゃないか、教育施設であるという本質に反するのじゃないか、これはとんでもないことで、そういうような場合には、他の保護処分取消変更というよう処分によって、検察庁へ送致して、刑事処分にまかした方がよいのじゃないかというようなことで、賛否両論強く争っております。最高裁判所の家庭局長としてもさような二説がございますので、この法案の提出につきましては非常に苦慮いたしまして、実はこの法案が出る前の審議の際も、この問題につきましては賛成を留保したような次第でございます。しかしながら少年院長の会同なんかへ出ますと、少年院長の一部の人は声を大にして手錠の必要であるというようなことを盛んに述べられるのもしばしば聞いたこともございますので、そういうような声を聞きますと、われわれの言っていることが実情に沿わないのじゃなかろうかというような反省もありまして、ただ、いかにも自分らの理想、また現場の裁判官の一部の理想と離れているので、これに対してたやすく同意することはできないというよう気持でいるわけであります。ただいまもさような次第でありますので、実際の保護処分の執行がうまく行われないというよう責任が、手錠をかけないことによって起るとするならば、私それに対して責任を負うということも、まあ管轄の違います面もありますし、またいろいろな点で私はできません。しかしながら保護関係の一員といたしまして、またあくまでもヒューマニズムに沿うて保護処分ということを考えたいというような私個人の気持から申したならば、やはり現在におきましても、この手錠の問題につきましては賛成というようなことは申しかねる次第であります。
  63. 宮城タマヨ

    宮城タマヨ君 宇田川局長、こういうことについてはどういうふうにお考えですか、非常にむずかしい問題ですが、裁判でもって決定して、そうして少年院に送りますというと、そこから今度は管轄違いの法務省の管轄になりまして、つまり決定と執行とが一本筋でないということに非常に私は皆さんの御苦労があるのじゃないか、そうして責任を、最後まで責任を一体一貫して負うものはだれかということになると、責任を問うところが二つあるようなわけで、これは少年院法の運営においても問題があるのじゃないかと思っておりますが、局長はどうお考えでございましょうか。
  64. 宇田川潤四郎

    説明員宇田川潤四郎君) この問題につきましては、私ども法務省の見解と異に従来いたしましたのでありますが、現場の意向といたしましては、少年を中等少年から特別少年へ変えるというような場合には、やはり家庭裁判所がこれを許可とか、その他の審判の形式で判断すべきものじゃなかろうか。それでこそ少年審判の本質に沿うものであるという考えが圧倒的に多いのでございます。ただ、少年院法十条ができましたときは、少年院に暴動などがやはり起りまして、そういう審判を受けるいとまがないというような実情などがありましたので、まあやむを得ず、私どもといたしましては、少年院法第十条制定に不服なまま国会を通過したような次第であります。しかしながら先ほど申しましたように、現場の意向も、さように中等少年から特別少年にかわるというのが、ことに特別少年というものは、施設から見まして現在旧少年刑務所等を利用しております関係上、少年人権に非常に関係がありますので、これについては慎重を期したいという気持を持っておりますので、この点、許可とか、あるいは処分変更とかというような形式をとるのが、保護処分の本質から当然でなかろうかという意見を持っております。この点につきましては、多少なわ張り争いのような形をとりますので、私こういう所であまり強調するのはいかがかと思いますけれども、私の気持あるいは現場の裁判官の気持はさよう気持でおることをお答えしておきます。
  65. 宮城タマヨ

    宮城タマヨ君 それでよくわかりました。その点が非常に、まあなわ張り争いと言ってはなんでございましょうけれども、系統が二つに、つまり決定と執行とが別になっておる。で、今のような当然裁判官がきめたことを変更するような場合は、またもう一ぺん裁判官が決定し直すということが私は道であろうかと、そうしてそれは少年のために必要なことではないかというよう考えておりますが、しかしその点は、もう少し条文にいって研究してみましょう。  ただしかし、ここに私は手錠のことから宇田川局長に伺ってみたいことは、ごく最近は私、東京の家庭裁判所に行ってみませんけれども、家庭裁判所に警察から連れてこられます者がみんな手錠をはめまして、なわでじゅずつなぎになって参ります。多いのは十人も一連となり、三人、五人というようなものがことごとく手錠をはめられて、しかもあの待合室におります間も手錠をはめられている。ただ手錠をはずされますときは、裁判官に会ってそうしてその委託先を決定されるときだけは手錠をはずしまして、それからまた手錠をはめられるというような事実が実際はあるのでございます。そしてこの審判の結果、これは大した子供でないのだからまあうちに帰せというような場合に、警察署渡しというのがあるのでございます。その警察署に、つまりおまわりさんが連れて警察に帰って、そしてそのおまわりさんが親を呼んで渡す場合もあろうし、またおまわりさんが家庭に連れていく場合もずいぶんたくさんあるのですが、そういうときに、この警察に連れていかれるときも手錠をはめ、そうして問題は、家庭に連れていくときも手錠をはめて、うちまで、しかももう観護措置をする必要はないというよう子供、親のところに帰すというよう子供を、やはりおまわりさんは自分の安全を預っているためにうちまで手錠をはめて連れていくというようなことが事実だそうでございますが、それを御存じでございましょうか。
  66. 宇田川潤四郎

    説明員宇田川潤四郎君) ただいま手錠の問題につきましては、今まで数回宮城委員から、手錠の使用は禁止するようにというようなことでございましたが、裁判所の職員が同行したり、あるいは同行するというような場合には、手錠の使用は厳禁しております。従いまして東京家庭裁判所におきまして調査官か、家庭裁判所が始まった当初は、手錠をはめてあるいは保護団体、委託施設、そういう所に連れて行った時代もございますが、現在は、もうこの三、四年間全くそのあとは断っております。ただ警察から逮捕状で家庭裁判所少年を送られる、勾留場に送られる、そういうような場合には、これを禁止するということが事実上できないのでございます。というのは、その間の責任というものは警察にございますので、その警察の身柄の保持と申しますか、それに関する責任は警察がとるべきであって、それを家庭裁判所で禁止して、それによるところ逃走その他による事故については、家庭裁判所がとるべき筋合いではなく、またとれもしないということで、だいぶ家庭裁判所の方から警察関係の方々に強く申し出はし、あるいは協議をいたしましたが、依然として警察から出てくるときはじゅずつなぎで来るというのが現状でございまして、これは非常に遺憾だと思っておりますが、しかし中にはそういうようなことを避け、家庭裁判所の意向なども十分聞いてもらって、同行するに手錠をはめないというのがだんだんふえてきていると思います。なお、警察署渡しというような処置がございましたが、現在非常に少くなっておってさようなことはほとんど聞いておりません。その際に手錠をはめるということは、私まだ聞いておりませんですけれども、この際現場の家庭裁判所の方に聞き合わせ、調査してみたい、こう考えております。
  67. 宮城タマヨ

    宮城タマヨ君 それはぜひ調査していただきたい。私は現に家庭裁判所調査官からそんな署渡しというものが、手錠をはめられて家庭まで連れてこられておりますということを聞いておりますので、これは何か手を打ちたいと思っておりますから、お調べ願いたいと思います。長い間私がその手錠のことをやかましく幾ら言っても、子供たちが、実際あの辺に行きますというと、ちょうどお昼ごろになると、たくさん子供がじゅずつなぎになって通っております。私がもしあの子供だったら、ほんとうのどろぼうになってやろうかと思うだろうと、ほんとうに思います。あの人通りの多い中をそんなことをして、手錠をはめられてじゅずつなぎになっていることは、私はそういう姿を見ると、保護教育とほど遠い事実なのでございますから、一つその点もあわせて、また家庭裁判所としましても、法的にどういう手を打てばそういうことは根絶できるかというようなことを、もうぜひ一つ御研究願いたいと思います。私はこれで今日は終ります。
  68. 宇田川潤四郎

    説明員宇田川潤四郎君) わかりました。
  69. 成瀬幡治

    委員長成瀬幡治君) 別に御発言もなければ、本日の委員会はこれをもって散会いたします。    午後三時五十九分散会