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1955-06-14 第22回国会 参議院 法務委員会 第6号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和三十年六月十四日(火曜日)    午前十時五十七分開会   —————————————    委員の異動 六月十三日委員羽仁五郎君辞任につ き、その補欠として須藤五郎君を議長 において指名した。   —————————————  出席者は左の通り。    委員長     成瀬 幡治君    理事            剱木 亨弘君            宮城タマヨ君            市川 房枝君    委員            中山 福藏君            廣瀬 久忠君            藤原 道子君            小林 亦治君            一松 定吉君   国務大臣    法 務 大 臣 花村 四郎君   政府委員    警察庁警備部長 山口 喜雄君    法務政務次官  小泉 純也君    法務大臣官房調    査課長     位野木益雄君    法務省刑事局長 井本 台吉君    法務省矯正局長 中尾 文策君    法務省保護局長 斎藤 三郎君    法務省入国管理    局長      内田 藤雄君   事務局側    常任委員会専門    員       西村 高兄君    常任委員会専門    員       堀  真道君   説明員    最高裁判所長官    代理者    (事務総局総務    局総務課長)  磯崎 良誉君   —————————————   本日の会議に付した案件 ○検察及び裁判運営等に関する調査  の件  (法務行政に関する件) ○下級裁判所設立及び管轄区域に関  する法律の一部を改正する法律案  (内閣提出) ○少年院法の一部を改正する法律案  (内閣送付予備審査)   —————————————
  2. 成瀬幡治

    委員長成瀬幡治君) これより法務委員会開会いたします。  まず、検察及び裁判運営等に関する調査議題に供します。特に法務行政に関する件について御質疑のおありの方は、順次御発言をお願いいたします。
  3. 中山福藏

    中山福藏君 私は斎藤警察庁長官並びに法務大臣に対しまして、いささか刑事行政について御質問申し上げたいと思いますが、これはいろいろと内面的な事柄を考えまするというと、この質問をしていいか悪いかということは、非常に私自身として種々考慮いたしたのでありまするが、やはりこういうことが先例になるということは、国家のために芳ばしくないのじゃないかというような気持でお尋ねをするのでありますが、実は、先日これは予算委員会において法務大臣に対して一言これに触れておいたのでございます。そのときは時間の関係上、中途で取りやめたのでありまするが、それは申すまでもなく白鳥事件です。白鳥警部暗殺事件に関するものでありまするが、過般四月の十四日でありましたか、植野光彦なる者が当東京都の警視庁逮捕された。新聞は、大きな見出しでこれを掲載いたしました。ところが間もなくこれが釈放されたということに、これまた新聞の報ずるところとなったのであります。そうしていろいろと各方面からその釈放の内容というものを調べてみまするというと、まことに私ども在野法曹という立場から腑に落ちない点があるのであります。それはこの事件がかつて思想的な背景を帯びるというので、多大なる関心を呼んでおったということは申すまでもないことであります。しかも至るところにひんぴんとして暗殺行為が行われ、暴力行為というものが台頭してくるということは、公共的な社会生活の上において、私ども寒心にたえないところであったのであります。しかも反面警察の力、検事局の力というものはかほど微弱なものであるかという疑惑を持たしたということは、これは私は当局としては十分御反省をなさらなければならん点じゃないか。今もってその究極的な結果が得られないということは、これまたまことに痛嘆にたえないところであるのであります。  そこでこの四月十四日に逮捕された植野光彦なる者は、これはかつて白鳥事件の重要なる嫌疑者としてもちろん逮捕状というものが出され、全国手配になっておったと思うのです。たまたま当人が捕えられた。ところがよく調べてみると、これは人違いだ、こういうのです。おやじが出てきて顔を見て、これは自分の子供と違う、しかも一方においてはあくまでも黙秘権というものを行使して、なかなか口を割らない。ところがこれを指紋によっていろいろと照合してみるというと、メーデー事件に関連しておりましたところの重要なる、いわゆる共産党員玉井仁であるということが明らかになった。しかもこれが逮捕状が出て、そうして全国指名手配されておる人間である。一方においては人違いである、黙秘権を行使した、人権じゅりんという問題が盛んに叫ばれるかもしれないというので、これは釈放されたということになっておるのです。そこに私は非常に疑点を持つのです。なるほど人違いであり、黙秘権を行使し、あるいは人権じゅうりんということが起るかもしれんということになりますれば、人違いであるということは直ちに釈放理由になる。ところが一方においてその指名手配されておるところの玉井仁ということが明らかになっておるのであります。それをなぜ私は釈放されたか、この点をまずお伺いしてみたいと思います。これは一つ、もし何でしたらあらかじめ警視庁の方から御発言を願って、その理由、その経緯を一つ承わってみたいと思うのです。
  4. 山口喜雄

    政府委員山口喜雄君) 私から釈放に至るいきさつの概略を申し上げますが、逮捕いたしましたのは、四月十四日の四時半ごろでございます。東京逮捕いたしまして、当日直ちに北海道に護送いたしました。十五日に札幌警察署に留置し、十六日に札幌地検に送致をいたしたのであります。二十六日に札幌地方裁判所勾留理由開示公判がございました。二十八日に別人と認めまして、釈放の手続をとるように検察庁に御連絡を申したのであります。東京逮捕しました際に、上野駅から身柄を送ります前に、植野の下宿をしておりましたと思われる家の人人、友人その他に面通しをいたしまして、本人に間違いないという、まあ証言を得ておりました。これを北海道に送ったのでありますが、その後植野という人物のからだの特徴、それと容疑者として逮捕しました者と比べ、その他また親にも面接等をさせましたし、そういういろいろ調べました結果、植野ではないと認めましたので、検察庁にその旨連絡をいたしたような次第であります。指紋照合も合せていたしました。
  5. 中山福藏

    中山福藏君 指紋照合の結果は、玉井であるということがわかったのですか、それは間違いないのですか、お伺いいたします。
  6. 山口喜雄

    政府委員山口喜雄君) 指紋の結果、だれであったということを申し上げますことは、要するに本人が何らかの理由によりまして、警察逮捕されたことがあると、あるいは前科があるというようなことに触れるわけであります。従って指紋照合の結果につきましては、まことに遺憾ではございますが、だれであったということは申し上げかねる次第でございます。
  7. 中山福藏

    中山福藏君 その指紋照合の結果は、書類として保存してあるのですか。それをお尋ねいたしたいと思います。
  8. 山口喜雄

    政府委員山口喜雄君) 別に書類として保存といいますか、要するに逮捕しました植野と認められる人物指紋を取りまして、既存警察庁保管をしております指紋との照合をいたしたのであります。照合をいたしたということを申し上げておきます。
  9. 中山福藏

    中山福藏君 その照合の結果は玉井であるということは言えないと、こう承わってよいでしょうか。また、指紋照合の結果を記録すべきものだと思うのですが、その記録は現に保存されておりますか。それを承わりたいと思います。
  10. 山口喜雄

    政府委員山口喜雄君) 結果、だれであるということは先ほど申しましたように申し上げかねます。それから書類保存という点でございますが、要するに、北海道から送ってきました植野と思われる人物指紋、これと既存の何百万という指紋とを照合いたしまして、その結果まあ同じ指紋を見つけ出したと、その事実は記録してあると思います。
  11. 中山福藏

    中山福藏君 その事実が記録してあると申しますれば、その名前をおっしゃるということはこれは絶対にできんですか。これは私はおっしゃらなければ、国会法第百四条によってその記録提出を迫らなければならん。私は玉井仁であるということを新聞が掲載して、これははっきり世間ではおそらく間違いはあるまいということになっておる。それをなぜ言えんのですか、また言えないという理由はどこにありますか、それを一つ承わりたい。
  12. 山口喜雄

    政府委員山口喜雄君) 本人が終始黙秘権を行使いたしております。自分氏名をどうしても明らかにしたくないという者に対しまして、これはだれであると、しかも指紋照合の結果だれであるということを申しますのは、先ほど言いました指紋照合の性質から申しましても、私どもといたしましては申し上げかねると思います。
  13. 中山福藏

    中山福藏君 指紋照合の結果、全国手配されておる者であるということは明らかになっても、氏名は言えない場合は釈放されますか。これは重大な問題でありますから承わっておきたい。
  14. 山口喜雄

    政府委員山口喜雄君) 指名手配をされておる者を、警察といたしましては釈放いたすわけには参りません。
  15. 中山福藏

    中山福藏君 しからば今あなたはその氏名発表することはできないからとおっしゃいますが、もし、かりに玉井仁氏はこれがメーデーの重要な首謀者であることが明らかになって、しかもその照合の結果、指紋が同一である、そういうような場合でも、これは国家捜査権を持っておるところの当局釈放してもよいのでしょうか。それで責任が努まるということが、あなた方の警視庁の方針になっておりますか、それを一つ承わっておきたい。
  16. 山口喜雄

    政府委員山口喜雄君) ある人物につきまして逮捕状が出ておりまして、それが全国指名手配されておりまする場合には、その人物逮捕しました警察は、これは当然に逮捕状を執行しなければならない、かように思っております。従って釈放するようなことはございません。
  17. 中山福藏

    中山福藏君 そうすると指紋照合の結果、その指紋がぴったりと合ったんだとおっしゃる。そのかっての指紋を取られた人の名前をも、あなたの方ではこの場合に御発表になることはできないのですか。今度取られた指紋者じゃないですよ。前に取られておったその指紋本人というものの名前発表するということもできないのですか。
  18. 山口喜雄

    政府委員山口喜雄君) これは指紋を取る人の範囲といいますか、どういう人について指紋を取っておるかという事柄から申しまして、だれだれの指紋検察庁保管をしておるという個人名前を申し上げることは、これはやはり差し控えたいとかように存じます。
  19. 中山福藏

    中山福藏君 そうすると、指紋というものは取ってもよし、取らんでもよしというようになると思うのですが、もちろん公判に付さない本人秘密を保持するために、それは公判に付されない場合には、すべてこれを秘密を保って、その人の名誉のためにこれは発表しないということは、私ども常識となっておるのであります。しかしながらあなたがおっしゃるところの、指紋照合して、これが少くともその指紋から推せば、全国手配されておる人間であるということがわかっても、これは議会においてもその名前発表することはできないし、あるいは平気で釈放する、そういうことで検察行政というものが行われるでしょうか、完全に……。これは特に法務大臣にあわせてお伺いする、その点をお尋ねしておきます。
  20. 花村四郎

    国務大臣花村四郎君) ただいま山口警備部長の申し上げた通りでございます。
  21. 中山福藏

    中山福藏君 私は実は、この問題をここで取り上げるということは非常に遠慮しておったのです。二晩三晩考えてみたのです。このことを明らかに質問することが、国家全体の検察行政の上に、どういう影響を及ぼすかということを考えてみたのです。それで利害を天びんにかけて考えた結果お尋ねしているのです。もしこれをあれだけ新聞にぎょうぎょうしく書いたものを、うやむやに当局答弁をして、葬り去られるということになりますれば、結局力を持っている者、少くとも暴力的にすべての圧力を加え得る人間は、いかに指紋照合の結果、これがぴったり合っておっても、検察庁警察は居眠りをするということで、国民に対する多大なる疑いを抱かしめると思うのですが、法務大臣はどうお考えになりますか。
  22. 花村四郎

    国務大臣花村四郎君) やはり人の名誉を尊重し、そうしてまた人権をあくまでも擁護してゆくという建前から考えまするというと、やはり指紋について公けにいたしますることは、やはり直ちにその人の利害に重大なる関係をもちきたして参りまするので、たとえば不起訴処分等に相なった事案についても、公けにしないというのが、今日までの建前に相なっておるような次第でありますもので、従って犯罪嫌擬として調べられる程度にまで至らんところの、ただ指紋に関する事項について、やはり発表するというようなことは、特にまたその人の名誉等に重大なる影響を及ぼしますので、なるべくそういうことについては、やはり公けにせない方が最も適当ではないかとこう考えます。
  23. 中山福藏

    中山福藏君 ただいま法務大臣の仰せのことは、私ども百も承知のことです。百も承知しながらこの質問をあえてするということは、国家のためになるからです。私は名誉棄損になるとか、あるいはその人の社会的地位を落とすとか、そういうふうな憂いがあるということは、これはある場合において慎しまなければならんことです。しかしながらこの問題は、ただいま警視庁当局は御発表になりませんけれども、私どもこれは玉井仁であるということを確認しているのです。この裏面に、これを発表せられない一つの何かの伏在した理由がなければならぬ。なぜこれが暗黙のうちに葬むられなければならんか、何か伏在した理由があるのでしょうか。それがあるかないかということを発表、この場合、この席で御意見を承わりたい。どうですか法務大臣。もしここで皆さんのいらっしゃるところで御発表ができないということになれば、秘密会にしていただいて御発表になってもけっこうです。
  24. 花村四郎

    国務大臣花村四郎君) それはまことに遺憾でありまするが、たとえ秘密会にしても、ただいまおっしゃられたような問題については、言明を避けたいと存じます。避けるのが穏当であると存じます。
  25. 中山福藏

    中山福藏君 そうすると法務大臣もその指紋照合の結果、何人であるという御報告も受けていらっしゃらないのですか。それはどうですか、警察だけがその名前を知っておるということになるのですか。
  26. 花村四郎

    国務大臣花村四郎君) 植野光彦にかわるべき人を逮捕をしたという事実については、報告を受けておりまするが、その逮捕された者が何人であるかという点の、この人名についてはいまだ報告を受けておりません。
  27. 中山福藏

    中山福藏君 私は法務大臣のために非常にそれを悲しむのです。よく聞いてもらわなければ困りますよ、法務大臣。私は法務大臣は公正な方と考えて、ふだんから信頼しております。どうもこの事件について相談し合っていろいろと私に答弁なさるようでございますが、それで法務大臣の職責は全うできるのでしょうか。(「できない」と呼ぶ者あり)私はもう少し、私はこういうことで共産党の最高幹部というものは捕縛せられないのじゃないかと実は疑いすら持つのです。そういう態度をとられますと、弱い者には強くて、強い者には弱い、こういうふうな傾向を帯びているのじゃないかという疑いすら持つのです。私は法務大臣はそういうお気持ではなかろうと思うのです。これは何か言うことのできない何かの理由を持っておるように思うのです。公衆の前で言うことができないとすれば、これは秘密会議に移らなければならんのですが、秘密会議に移っても、これを御発表になるということはできないのでしょうか。これは国民は多大なる関心を持っておる事項でございますから、私は特にお尋ねするのです。白鳥事件というものは、これは思想的に非常に大影響を及ぼしているのですよ、単に個人犯罪という問題じゃないと思うのです。対社会的に非常に私は背景を帯びておるものだと考えますから、こういう問題についてはやはり遠慮なく私は法務大臣にも聞き、検察当局にもやはり聞く責任がある。これが私どもは代議士として義務であると考えてお尋ねしているのです。これは左翼であろうが、右翼であろうが、そういうことは関係がない。私はいやしくも国家の治安を乱すものは何人でも遠慮なく引っ捕えて、そうして一面には社会公衆のために、一面には本人のためにすべての検察行政というものは行わるべきものだと思うのですが、どうも私はなぜこの事件だけを御発表になることができないか。しかも今度公安課の第二課長という人の発表によれば、新聞の……、これはある方面から発表してはいけないという指令があったとこういうのです。またある点から承わりまするというと、現在これにその玉井仁関係しておるところの被疑事件というものは公判に移されておる、それに非常な影響を及ぼすからこれも発表できないという声も高いのです。またあるいはせっかく玉井仁をとらえても、その裏づけになるところの証拠というものは十分集まるかどうかということにも疑問がある、こうおっしゃる。しかし、それはいやしくもその逮捕状を出して、全国指名手配をするということになりますれば、これは私は相当の証拠固めがあって、しかる後に逮捕状というものが出されなくちゃならんとこう考えるのです。それがその逮捕状が出されておりながら、今度捕えてみたら、その証拠が完全にそろうかどうかという疑念を持たれるということは、私はどうも前後の関係をずっと静かに考えてみますると、おかしいのですね。だから私はほほかぶりでそのまま検察庁も、それから警察も進んでゆかれるということになれば、ますます国民疑惑は深まると思うのです。ことに法務大臣名前を聞かなんだ、これはどういうわけですか、それで済むでしょうか。私は法務大臣人格識見に対しては、ふだんから敬意を払っておるものなんです。その私の信頼しておる法務大臣が、そういうお答えではいかがなものであると実は私は考える。それで済むんでしょうか。もう一回一つ明確なる御答弁をわずらわしたい。
  28. 小林亦治

    小林亦治君 議事進行……。これは果てしないことだと思うので、大臣の方でも発言いきさつもありましょうし、一つ午後なり、あるいはあすになりお譲り願って、中山君の御満足のゆくような結果を得られた方がいいと思います。  それから法務大臣ももう少ししっかりしなくちゃいけない。下僚相談をして、下僚に指図をされて答弁するようなことではいけない、これはどうなんです。一つ見識を持っておらなくちゃいけない。その点についてももう少し勉強してもらって、たとえば下僚所属官庁秘密にしたいということがあっても、ここは国会の舞台なんだ、国会議員からそういう質問を受ければ、これは直ちに相談をせずに、みずからの見識によって答弁を、即答せられなければならない、はなはだ遺憾です。そこで中に割って入ったわけなんだが、これは一つ中山君も御譲歩願って午後になり、あるいは早い機会一つ答弁を得られた方がいいと思う。発言いきさつを考えて、顔を立てる意味で、私がそういう提案をしたいと思います。
  29. 中山福藏

    中山福藏君 私は別に責め立てるという意味じゃないのです。はっきりと真相を承わりたいと、こういうお願いをしておるのですよ。こちらからお願いしておる。詰め寄るのじゃなくて、これは私は特に花村法相を信頼するからお尋ねしておるのです。幾晩も考えて、利害得失の上から考えて、しぼり出して、これはやはり尋ねておく方が国民のためになる、こう思って結論を得て私はお尋ねしておるのです。もしはっきりした御答弁ができなければ、今小林君の御勧告もありますから、一つよく御相談なさいまして、次の法務委員会にでも一つ説明を承わりたい、かように考えておるわけです。別に私は食ってかかるわけではないのですから、十分一つ御了解を得たい。
  30. 花村四郎

    国務大臣花村四郎君) 小林さんのおっしゃられたことでありまするが、下僚意見を聞いて答弁をいたしておるわけではありませんが、しかし事こまかいことに関しましては、私の関知せざる点もありまするので、そういうこまかい点は、やはりなるべく真実を申し上げる意味で、事の真相を究明して申し上げるという意味で、実は相談をしておるのでありまして、答弁を一々相談して申し上げておるのじゃありませんから、その点は一つ御安心なすっていただいてけっこうだと思います。  それから今の中山委員のお話しでありまするが、ごもっともな点が多いのでありまするが、しかしただいまの本問題に関する状況にかんがみて、私のただいま申し上げた以外の答弁はこれはできぬわけですから、その点は一つあしからず御了承を願いたいと思います。もちろん私も司法権の尊厳を維持する意味において、また世の誤解を避くる意味において申し上げられる程度のものは、一切もう赤裸々に申し上げることを決してちゅうちょ逡巡するものではありません。ありませんが、しかし本件に関しましては、ただいま申し上げた程度以外に申し上げ得られないという次第でありまするので、あるいはまた将来において御希望に沿い得るような答弁をなし得る機会も出てくるのではなかろうかと思いまするが、まあその辺で一つ了承を願いたいと思います。
  31. 中山福藏

    中山福藏君 これは私はきょうはほかの議案もありますから、きょうはこれでやめます。これは留保しておきます。  さらに、それから指紋をここに御提出を願いたいと思うのです。前後の二個の指紋ですね。それでこれには一々名前が書いてある。誰の指紋ということは、照合された指紋は二つでけっこうですから、国会法の百四条に基いて私は要求いたします。ここに一つその指紋を出していただきたい。これだけを一つ委員長にお願いして私はきょうはこの質疑を打ち切ります。
  32. 成瀬幡治

    委員長成瀬幡治君) ちょっと速記をとめて下さい。   〔速記中止
  33. 成瀬幡治

    委員長成瀬幡治君) 速記を起して下さい。  それではこれより秘密会に入りたいと思いますが、御異議ございませんか。   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  34. 成瀬幡治

    委員長成瀬幡治君) 御異議ないと認め、これより秘密会に入ります。  それでは委員政府関係者及び事務担当者域外の方は、恐縮ですが御退場を願います。    午前十一時四十八分秘密会に移る    ————————    午後零時二分秘密会を終る
  35. 成瀬幡治

    委員長成瀬幡治君) 秘密会を閉じます。速記をとめて下さい。   〔速記中止
  36. 成瀬幡治

    委員長成瀬幡治君) 速記を起して下さい。  これにて暫時休憩をいたします。    午後零時五分休憩    ————————    午後一時四十三分開会
  37. 成瀬幡治

    委員長成瀬幡治君) 休憩前に引き続き、委員会を再開いたします。  まず、下級裁判所設立及び管轄区域に関する法律の一部を改正する法律案議題に供します。  御質疑のおありの方は順次御発言をお願いいたします。
  38. 中山福藏

    中山福藏君 下級裁判所設立及び管轄区域に関する法律の一部を改正する法律案につきまして質疑をいたします。本案は最近における市町村の廃置分合等に伴う所要の改正を加えんとするものでありますが、下級裁判所、特に簡易裁判所管轄区域につきましては、実情に適しないものがあると思われるが、その廃合につきましてあらかじめ何らかの根本的な打ち合せ並びに計画というようなものがございましたら、一つお伺いいたしたいと思います。
  39. 位野木益雄

    政府委員位野木益雄君) 簡易裁判所は御承知のように、広く国民の利用に便利ならしめるという趣旨で設立されておりますので、特に調停あるいは令状の関係では、なるべく広く多数に置いておくということが適当で、また便利であるかと思います。そういう意味におきましては、これを現在の簡易裁判所をもっと統合するということは、必ずしも適当じゃないというふうに考えるのでありますが、本来の訴訟事件につきましては、これはあるいは適当にまとめた方がいいということも考えられるかと思います。特に大都会の場合はそういうふうなことが言えるかとも思うのでありますが、御承知のように昨年に裁判所法の改正がありましたのですが、その改正によりましてこの簡易裁判所の管轄が拡張されました際に、一部の簡易裁判所においては民事訴訟を取り扱わないということができることになりまして、すでに三十数カ所でありますか、そういう裁判所が最高裁判所から指定されておりますのであります。そういうふうな措置がとられたのもその趣旨であろうと考えるのであります。こういうふうな去年の改正の施行の状況なんかもなお見まして検討いたしたいというふうに考えております。
  40. 中山福藏

    中山福藏君 この簡易裁判所管轄区域につきまして、今度の町村の廃合というようなことから、この区域に食い違いが生ずるようなところが全国的に見てどれくらいございますか。またその調節をすでに完了されましたでしょうか。それはどうなっておりますか、ちょっとお伺いしたい。
  41. 位野木益雄

    政府委員位野木益雄君) 今度の市町村の廃置分合によりまして、簡易裁判所管轄区域影響を及ぼすものが今回の改正案の要点の一つになっておるわけでありまして、合計百三の簡易裁判所管轄区域をそれに関連いたしまして適当に変更したいというわけで、本案ができておるわけでございますが、この措置によって一応の現在までにおける大体の調整はされるというふうに考えております。
  42. 中山福藏

    中山福藏君 ちょっとこの際確かめておきますが、今度交通取締りに関する裁判所が設置されるところが相当にありますね。これは交通裁判所というものができない、また予算の上から建設不能というような地域には、簡易裁判所とかいろいろなものが、そのうちにその専務を取り扱うということになるのですか。
  43. 位野木益雄

    政府委員位野木益雄君) 御承知のように、交通裁判所ができまして、東京あたりは墨田区にまとめてその関係の専門の庁舎を作って、その事件を処理するということになっておりますが、そういうふうなことができない地域におきましては、既存簡易裁判所において、これをその手続に従って処理するということになるのであります。
  44. 中山福藏

    中山福藏君 交通裁判所なんというのは、独立してだんだんできていくということに方針はきまっておるのですか。これは普通の簡易、地方とかいう裁判所と別に、全国的にあれは広げられることに方針はきまっているのですか、どうなっているのですか。
  45. 位野木益雄

    政府委員位野木益雄君) その点でございますが、東京とか、大阪とか、そういうふうな非常に事件の多いところでございますと、専門のところを置くだけの必要もございますし、適当だと思いますが、地方におきましては、それほどの必要性が、財政上等の均衡もございますが、認められないということでございますので、地方もすべてそういうふうな方針に進めていくというところまでは考えておらないのであります。
  46. 中山福藏

    中山福藏君 次に、お尋ねしておきたいのですが、簡易裁判所の投資を、現在に及んでもなお未開庁のものが相当あるわけですね。たとえば奈良地方裁判所の管轄内における柳生簡易裁判所、あるいは十津川簡易裁判所、これはこれについての制度がきまって以来すでに十カ年間以上経過しておるということですが、これはやはり予算の関係上できないわけですか。どういうわけですか。
  47. 位野木益雄

    政府委員位野木益雄君) 御指摘の通り、奈良の柳生とか、十津川の簡易裁判所設立することになっておりながら、事実上はまだ開庁されておらないのであります。それはやはり現実にまず敷地の問題、庁舎の問題が解決しないので、現在に及んでおるのであります。しからばもう少し根本的に、もうすでに相当の年月を経ておるのであるから、何らかの見通しをつけて措置をするということは十分言えるのでありますが、地理的条件ということから見まして、やはりこの地方に簡易裁判所が必要であるということが認められるのでありますし、地元でもやはりこれは開庁されなくては困るということを申しておるのであります。地元の裁判所におきましても、適当な敷地、庁舎等を物色中であるということを照会のつど申しておるのであります。それで今日に至ったのでございますが、特にこれのみをとり出して、直ちに今措置するというほどの必要に迫られないままに、現在に及んでおるのであります。しかしながら、なるべくすみやかに何らかの見通しをつけて、適当の措置ということが必要と思われますので、そういうふうにいたしたいと考えております。
  48. 中山福藏

    中山福藏君 これは大体簡易裁判所の設置というものは、その土地の状況から事件数を累算して、そうしてここに設置するという方針をあらかじめきめられたものと思うのです。それが十年くらい放置されておるということは、これは非常に遺憾に考える次第でありますが、大体私は十津川方面を全部歩いてきました。東西南北三里も、七里もあるというふうなずいぶん広い所です。従ってこういうふうなところの人間は、五条とか、橋本とかいうところの裁判所に行くことは非常に苦痛です。交通が不便ですから。こういう点から考えましても、特にこういう場所には簡易裁判所が設けられないと、交通費とか、あるいはその他の宿泊とか、いろいろな問題で大へんに苦痛をなめて、権利の伸張ということが従っておろそかになるのじゃないかと実は考えるわけです。ですから、私はこういうところは、ことさらに他の便利なところに比べて早くおやりになるということが一般住民のために親切ではなかろうかと、こう思うのです。ことに、柳生の裁判所、これは奈良県の、柳生十兵衛のおったところだと思いますが、ここは三笠山の裏から一里半か二里ぐらいでございます。ここも相当不便です。やはりこういうところは予定地になっておるのですから、こういう不便のところを先にお建てにならないと、ほんとうの私は人権の尊重、所有権の関係また法律によって保護される人の立場というものが非常に災いされると思うから、だからこういう不便なところはあと回しにして、便利なところに設置されるということは、これは考え方が逆だと思う。それでこういう点についてあなたが責任をもってお答えになるということはちょっと私は望むのが無理かと思いますが、どういう方針になっておるでしょうか、一ぺんこの場合承わっておきたい。
  49. 位野木益雄

    政府委員位野木益雄君) ちょうど最高裁判所の磯崎総務課長が見えておりますので、この関係は最高裁判所の方から聞いていただきたいと思います。
  50. 磯崎良誉

    説明員(磯崎良誉君) 大体のところはただいま位野木課長からお話し申し上げました通りになっておりますが、柳生、十津川の関係は、やはり先ほど申し上げましたように、裁判所にふさわしい格好の土地が見つからないということが直接の原因で、奈良の小林所長、地元の方々にお願いいたしまして、いろいろと適当な土地を探しております。土地を見つけることが先決問題で、それができますれば、営繕の予算も計上いたしまして、充てるというような段取りにしたい。現地の方では再三陳情がございまして、早く建ててほしいというふうに申しておられますので、この問題を解決いたしますと、その次には庁舎が建つという段取りになると思っております。
  51. 中山福藏

    中山福藏君 これは十津川は近ごろ非常に国道が開設されまして、便利になったのです。それで相当の中心地というようなところにもなり、交通の便が開けておるわけでありますから、場所が手に入らないということはないと思うのですが、ことに柳生の庄というところは、これは昔の劔道の道場のあったところで、有名なところですが、こういうところも場所が手に入らないということはないのです。ほんとうに行ってみると、私は奈良の中学校を出たので、ようあの辺のところはよく知っておるのです。十津川も、ずっと吉野川を上ってあの辺を三日がかりで歩いてきた。あなたの言われることは、あなたはそういうことを間接にお聞きになっての御答弁だと思うのですが、どなたか実地においでになったことがありますか、全部私は見て歩いておるのですが……。
  52. 磯崎良誉

    説明員(磯崎良誉君) 裁判所設置の関係は私直接の所管でありますが、石田次長が総務局長をしておりまして、昨年現地に参りまして、柳生十兵衛の道場も見たのですが、やはり思わしい土地がなく、値段の点で折り合いがつかなかったのか、いまだに土地が見つからないというふうに聞いております。
  53. 中山福藏

    中山福藏君 値段なんか安いものですよ。そういうことは口実だと思います。あのいなかで土地が手に入らないということはありません。できるだけ早くお買いになるということが安く買うことになります。山でもどこでもあります。これは一時の御答弁だと承わっておきます。どうか一つお帰りになったら、一つ係り官の方にも御相談していただきまして、できるだけ早くお願いいたしたい。  最後にもう一点承わっておきます。簡易裁判所裁判官の配置がないために、令状を求めるのにきわめて不便であるという声を検察並びに警察側からひんぱんに聞くんですが、現に裁判官の配置のない簡易裁判所の数はどれくらいあるんですか。簡易裁判所だけあって裁判官がいないというところはどれくらいあるんですか。
  54. 磯崎良誉

    説明員(磯崎良誉君) 簡易裁判所裁判官は全部七百三十人でございますが、そのうち四十九人が六月十三日付現在で欠員になっております。昨年の四月から最近までに新らしく簡易裁判所の判事に任ぜられました者が五十人で、また昨年中に退官、死亡いたしました者が二十人で差引三十人欠員が埋りまして、現在のところ欠員が四十九人になっております。現在のままで参りますというと、今年一ぱい、あるいは来年の秋ごろまでに大体四十九人の欠員が埋まるのではないか、そういうふうにいたしますと、全国裁判所に一人残らず簡易判事を配置できる。現在は定員は全部配置いたしましてその欠員……、その定員が埋まりませんために、若干の裁判所に御不便をかけておりますが、来年一ぱいぐらいには今のままですと欠員が埋まるであろうという見通しを立てております。なるべく早く欠員をなくいたしまして検察庁警察庁の人に後不便をかけないようにいたしたいと思います。
  55. 中山福藏

    中山福藏君 これは大体簡易裁判所の判事はこれから六十歳までの人を採用しようという方針になったように私は承わっております。今までは六十五とか六十七だとか相当年配の方を採られて……、経歴の豊富な方を御採用になったようですが、私実際に弁護士会の状況を見てみますると希望者が非常に多いんです。ことに控訴院長とか検事長をせられた人でも、一つ簡易裁判所の判事となって最後の御奉公をしようという希望者が非常に多いんですね。それで御採用になるという気分さえあれば、私はきわめて時間的に早く採用できるんじゃないかと思う。これは予算の関係ですか、またはどういう関係でおそくなったんですか。それを一つ聞いておきたいと思います。
  56. 磯崎良誉

    説明員(磯崎良誉君) 予算の関係でございませんで、実際に適任者がなかなか得られないというのが実情でございます。昨年の五十人の新しく簡易判事になりました内訳を申しますと、弁護士が十一人になっております。それから他の裁判官、すなわち判事補三年やりますと簡易判事になれますが、判事補からふりかわりました者が十七人、それから大学の教授が一人、検察官が二人、そのほか特任のいわゆる簡易裁別所判事の方が十数人というふうになっております。検事長あるいはもとの大審院の判事をなすったような先輩の方々がみえまして、簡易裁判所の判事になっていただくと、大へん喜ばしいのでありますが、最近はよくなってきましたが、実際にはなかなか思うような方が得られないということになっております。
  57. 中山福藏

    中山福藏君 この簡易裁判所の判事ですね、これは若い人と年寄りと組み合しておかないと、非常に不便だと思うのです。年寄りは貫禄にものをいわしてうまくものを解決する、若い人は事務的に法律を調べてうまく事件を迅速に処理する、この二本建てでいかないとこれはいなかでは非常にその効果が薄いと私は見ておるのです。それで鹿児島のようなところへ行きますと前歴、たとえば知事とか警視総監とかしておったというような肩書きさえあれば、法律なんか棚上げしても、大体片づく、上の人の言うことは聞いておけという昔からの因習というものは抜けていない。そういう地方々々によっての国民の風俗慣習というものを一応頭に入れて判事を御採用にならんと、非常にその事務の処理上遅速が現われてくると私は見ておるのですが、将来予算の余裕さえできたら一簡易裁判所に二名の、年寄りと若い判事を組み合しておくというようなことはどうですか。最高裁判所では話に出ておりませんか、ちょっと承わっておきます。ただ、判事を年令にかかわらずやってさえおけばいいということは、これは事務的にも簡単なやり方ですけれども、それじゃ私はだめだと思うのですね。すべての風俗、習慣から、それからまた判事の個人々々の性格もよく検討しまして、私はすべてを配合していかんとだめだと思うのです。こういう点はどうですか、相当研究してあるのですか。
  58. 磯崎良誉

    説明員(磯崎良誉君) 中山委員の申されますこと、まことにごもっともな御意見でございまして、全国簡易裁判所におっしゃったような二人の組み合せの判事を全部配置いたしますには、予算定員でざっと四百人くらいまだふえませんとできませんので、現在大体都会地あるいは甲号支部、乙号支部あたりで二人以上の簡易判事を置いておきますところには、老齢になった方と若手の判事上りの方というふうな組み合せで大体配置するようにいたしております。将来予算の裏づけができますれば、そういったような方針で逐次組み合せをふやしていきたいというふうに考えております。
  59. 中山福藏

    中山福藏君 もうこれでおしまいですが、どうですか、私が先ほど申しましたように、六十才までを今度まあ何ですね、そういう気持はないけれども、基準にして一つ採用しようという方針をきめられたのですか。まあ六十五、六の人でも御採用になるのですか、それをちょっと聞いておきたいと思うのです。私がなるというのじゃないですよ、私はもう相当年輩だから……。しかし友だちが始終聞きにきますから、これはちょっと承わっておきたいと思うのです。
  60. 磯崎良誉

    説明員(磯崎良誉君) 年令の点はそれほど重きを置いていないように聞いておりますが、やはりその人の学識経験に重きを置きまして、いい方でありますれば、年令にかかわらず採るという方針であるように聞いております。
  61. 中山福藏

    中山福藏君 それじゃできるだけ一つこの判事の穴のあいたところは、早い機会一つお埋めを願いたいということを御希望申し上げまして、私の質問を終ります。
  62. 成瀬幡治

    委員長成瀬幡治君) ちょっと速記をとめて下さい。   〔速記中止
  63. 成瀬幡治

    委員長成瀬幡治君) 速記を起して下さい。  他に御発言がなければ、本法律案に対する質疑はこれをもって一応終了することに決定して御異議ございませんか。   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  64. 成瀬幡治

    委員長成瀬幡治君) 御異議ないと認め、さよう決定をいたします。   —————————————
  65. 成瀬幡治

    委員長成瀬幡治君) 次に、少年院法の一部を改正する法律案議題に供します。  本案について御質疑のおありの方は順次御発言を願います。
  66. 宮城タマヨ

    宮城タマヨ君 少年院法の一部を改正につきまして、法案についての質疑もたくさんございますけれども、その前にちょうどいい機会でございますから、少年院法、少年法などにつきまして、私はこの法律の精神についての根本問題を大臣に対して少し伺いたいと思っておりますが、まだ大臣の御出席はございませんから、矯正局長、保護局長、両局長に少し伺いたいことがございます。ことしの三月二十日でございますか、産業経済新聞に非常に詳しく出ておりましたあの河内特別少年院の事件でございますが、あれはほんとうの真相はどういうことでございましたでしょうか。新聞などによりますと、職員が少年に対しまして暴行、それから凌辱、傷害、そうして少年を水びたしにして非常にせっかんしたというようなことが出ておりました。もちろん少年法で守られる少年の年令が十八才から二十才までに引き上げられましたということは、この種の少年に対しまして非常にむずかしい問題が出ておりますことは、私どもも憂慮しておりますのでございますけれども、まず河内特別少年院のあの事件につきまして一つ真相をお話し願いたいと思います。
  67. 中尾文策

    政府委員(中尾文策君) ただいまの河内少年院のことにつきましては、大へん申しわけないことでありますが、大体におきまして新聞紙などで報道されておる通りでありまして、ちょっと私それにつきましての詳細な書類を持って参りませんでしたので、詳細正確なことをちょっと申し上げられませんが、あすこにおりました少年は特別少年でございまして、相当扱いにくい少年が入っております。特にその中で腕力のすぐれた数名の少年が始終職員に対して反抗いたしましたので、職員の方も、そこらが非常に足らないところでありますが、やはりある程度実力をもってこれに勝たないというと、平和が保てないというふうに考えたのが事件の始まりでありますが、なかなかいろいろな、タバコを吸うとか、あるいはちり紙を盗み出すとか、あるいはズボンを取ってくるというようなことで、反則をいたしまして、それに対しまして教官が取り調べをしようといたしましても、始終反抗する、場合によっては突き飛ばされるというようなことが出て参りましたので、だんだんこれが因となり果となりまして、こちらの方も強く出る、向うも強く出るというようなことが見られたわけでありますが、この水びたしにしたと申しまするのは、もちろんこれはいけないことでありますが、このやり方を調べてみましたところ、少年に以後そういうことをやらないということを誓わせるために、一緒に水の中に教官が入って、そうして誓いをさせておるというようなことをやっておりました。もちろんそういうやり方はこれはもう間違いでありまして、ただしかし、全く少年を完全に苦しめるというようなことではなかったのであります。なおまた、新聞によりまするというと、糞便を投げつけたというようなことも書いてございますが、まあこれも実にみっともない話でありますが、ある少年が教官をからかってみるつもりで、今この部屋のある少年がタバコを吸った、そのタバコを便所の中に捨てたのだというようなことを教官に告げ口をした。それで教官が、そういう中でタバコを吸うというようなことは、少年院といたしましては重大な反則でございますので、それを取り調べるために、その部屋に入りまして、いろいろ少年たちを調べて聞きただしたわけでありますが、みな相手にしない。それでしまいにとうとう教官がその便器の中に手を突っ込みまして、そうしていろいろ自分で調べて、その中からタバコの吸いがらが出ると思いまして探したわけでありますが、とうとうそんなものは出ません。結局これはうそだったということがわかりまして、教官が怒ってこういうふうに手を振って、その手についておった糞便がひっかかったというようなことのようでございます。なおまた電気攻めというようなことが出ておりますが、これは別に私は他意がなかっように聞いておりますが、電気の何か実験をやっておりまするときに、こうさわるというとびりびりとちょっとしたショックがあるわけでありますが、これは大したショックじゃありませんが、教官が実地に教えておる場合でありますが、これにさわってごらん、びりびりとなるというので、教官も自分でさわってみて、その中のいたずら者にさわらしたということでございますが、その中で私たちの非常に黙過できませんのは、少年が言うことをきかない場合に、さんざん踏んだりけったりする、もちろんこれは抵抗もするわけでありまして、その抵抗を抑える程度に、こちらで腕力、実力を使うという程度ならば、まだ恕せるわけでありますが、しかし必要以上に、少年が参ってしまうまで腕力を振ってなぐったという事件が相当ございました。そういうものは私たちの方ですべて取調べができておりますので、御必要とあれば私持って参りまして、詳細御報告申し上げてもけっこうでありますが、そうした行き過ぎた暴行が相当あったわけでありまして、その処置といたしましては、もう思い切った処分をいたしまして、その中の教官九名、これは懲戒免職にいたしました。それから院長は、これは厳罰にいたしまして、そうして少年院長の職を解きまして、今某所に勤務を、全然役づきでない、ただそこに勤務をさせておるというようなことをいたしました。なおその監督者をそれぞれ処罰、左遷をいたしました。  この河内少年院に関する限りは、そういうことでございましたが、しかし何分にもこれにつきましてほかに根本的に対策を立てなければならんというような問題もございますので、それにつきましていろいろ私たちの方でも検討いたしておるわけであります。いずれにいたしましても河内少年院の問題は、全く私たちの方の黒星であるということは確かでございまして、大へん申しわけないと思っております。
  68. 宮城タマヨ

    宮城タマヨ君 よくわかりました。御当局もこのことは、院長以下職員が手落ちだということはお認めになっておりますのですね。そして処分されたという九名の教官の前歴はどういう方でございますか。私の伺いたいのは、刑務関係の方か、教育畑から出た方かという意味でございます。
  69. 中尾文策

    政府委員(中尾文策君) そこの数がちょっと今正確にわかりませんが、刑務所から出たのもおりますが、しかしそうじゃない者の方の数が多かったと思います。これはあとで表を持って参りましてお目にかけようと思っております。なお、その中で私たちが非常にかわいそうに思いますのは、京都に仏教の大学がございまして、その仏教の大学に私たちの方で働きかけまして、あすこで私たちの方の矯正保護の関係などについて講座を設けてもらいまして、そこの聴講生の中で矯正なんかをやってみたいというような職員を優先的に採用いたしまして、そういう者が来て教官になっておったのでありますが、不幸なことに、たしか私二名だと思いましたが、そういうふうな前途のある職員二名までがこの事件に巻き込まれまして懲戒免職の組に入っておるということでありまして、その点については非常に私たち本人に対して気の毒に思って責任を痛感しておるわけでございます。
  70. 宮城タマヨ

    宮城タマヨ君 教官の方の処分はわかりましたが、そういうときに少年の処分はどういうふうになりますか。
  71. 中尾文策

    政府委員(中尾文策君) 少年につきましては、これもちょっと正確な数は忘れましたが、そこにおらせて工合の悪い者は他の特別少年院に数名送っております。なおどうしても何ともしようがない、もうどこの少年院に持って行っても、現在の少年院の設備、また現在の実力の程度では処理のつかないという者につきましては、やむを得ず、奈良に少年刑務所がございますが、その奈良の少年刑務所の一画を借りまして、そうしてそこに奈良少年院の分室というものを設けまして、その分室に入れることにいたしまして、数をちょっと私今正確なことを覚えておりませんが、二人か三人くらいではなかったかと思いますが、その程度の者を今の分室というところに入れることにいたしております。しかしこれはどこまでも暫定措置でございまして、本人らの気分が変ったり、また少年院の方で受け入れの態勢ができたりいたしましたら、すみやかに引き取るつもりで考えております。
  72. 宮城タマヨ

    宮城タマヨ君 あの大きな大騒ぎをいたしたのでございますが、少年院の中にボス的の少年がおりまして、それが指導するというようなことが、まあ全体の少年院にありはしないかということをおそれております。この河内少年院なんかの場合もそういうことがございませんでしたでしょうか。
  73. 中尾文策

    政府委員(中尾文策君) 仰せの通りでございまして、相当手に負えないボス的傾向を持った者が指導的立場に立ってやっていると存じております。
  74. 宮城タマヨ

    宮城タマヨ君 そのボス的存在というものは、やはり教官のあの、何といいますか、少年に対する指導力というものが少ないので、まあこれは普通の教育畑にもあることですけれども、やはりその中の者を手なずけておいて、それがいいものに、いい意味でもでございますけれども、それが悪い意味に使われるというようなときは、結局手の裏を返して、あの弱い教官をやってやれというようなことになって、少年院というものが実際院長を中心にしまして教官、職員の少年院と、それから別に裏側を流れております少年院の生活においては、また裏側のボスがつまり非常な勢力を持っておりまして、少年院の全体の行動については、むしろその裏側に働いておりますところのいわゆる裏の院長が非常な勢力を持っているというような場合もないかと心配いたしておりますが、その点いかがでございますか。
  75. 中尾文策

    政府委員(中尾文策君) まことに御心配の通り、その通りでございまして、それで少年院の一番大きな問題の一つは、どういうふうにしてそのボスを発見するかということ、またそのボスが発見された場合に、そのボスに対してどういう処置がとられるかということでございますが、できるだけその点については努力いたしておるわけでございますが、また的確に発見できない場合、発見できましても実力で立ち向わなければならないような羽目に追い込まれる場合が相当あるようでございますから、なかなかその点でまだ今のところは、思い切ってこちらの考え通りのことを実行できるという段階までには至っておらない実情でございます。
  76. 宮城タマヨ

    宮城タマヨ君 この河内少年院の事件なんかは、少年院法ができまして以来かれこれ三十年間の歴史において、まあゆゆしい問題の一つに考えられると思っておりますが、こういうことを他の少年院の者に、ラジオあるいは新聞等で知らせてあるのでございましょうか、どうでございましょうか。ということは、私はあの事件を中心にしましてその前後、ことに、この悪質の逃走がある、集団逃走が少年院にございましたということなども、あるいはこういう影響があるのじゃないかというふうに思っているのでございますが、いかがでございましょうか。
  77. 中尾文策

    政府委員(中尾文策君) 私その点で別に全国の、あるいは全国でなくても少年院につきまして調査をいたしたことはございませんので、河内少年院の問題がラジオなどによりまして少年の耳に入ったかどうか、ちょっと今断言いたしかねますが、しかし少年院長以下の職員はそういうラジオを聞かせます場合にでも、非常にそういうニュースにつきましては鋭敏でございまして、この前、現に会同で参っておりましたときに、ちょうどどこかの少年院で集団逃走があったというような放送がございましたが、すぐそのときにはっとして、自分のところはどうしておるだろうというようなことを心配しておった者もございますし、私はおそらくはそういう点につきましては相当注意をしておるだろうと思います。ただしかし、いろいろな機会を通しまして、そういうニュースというものはむしろ大げさにだんだん広がって、結局少年たちの耳にも入るというようなことにもなる傾向がございまして、やはりそういう点につきましてある大きな事件がございますというと、それが刺激になるのじゃないかと思われるような場合も、実際問題としては起っておるわけでございます。
  78. 宮城タマヨ

    宮城タマヨ君 今局長からいろいろ糞尿を子供に投げた、あるいは水びたしにしたというような、ちょっと真相を十分に伺いませんというと、せっかく子供が守られております愛の法律といわれる少年法で、ほんとうに守っておりながら、実際から言うと、つないでおきまして、つまり手足を縛っておいて子供にそういう、言ってみるというと、子供の人権を非常に侵害するというような、これは私はゆゆしい問題だと思っておるのでございますが、それにつきまして、私がその職員の前歴は何かと伺いましたのも、そこにあるわけでございますが、実際この少年院は刑罰の場所でなくて教育の場所、矯正教育の場所だと思っておりますのでございますが、この事件と限らず、近来非常に矯正教育、保護矯正教育という観念が、だんだん私は刑罰という方に、そういう考え方に、そういう取り扱い方に移ってゆくような気がしてならないのでございますが、いかがでございましょう。
  79. 中尾文策

    政府委員(中尾文策君) せっかくのそういう少年院でやっておりますような保安処分が、相当進歩的な処置でございますが、そういうものが刑罰的なものに移行してゆくような傾向があるというような警告は、たびたびいろいろな方面から耳にいたしておるところでございまして、私たちもその点は常に非常に警戒をしておるつもりでございます。ただ何分にも看板と申しますか、理想は非常に高くできておりますが、いろいろな点につきまして条件が整いませんために、せっかくのその理想が一部分の少年たちによってじゅうりんされてしまう。しかもそのじゅうりんされる結果というものが、他の少年たちにも悪影響を与えるというような事態があちらこちらに続発いたしましたので、そういうものに対しましては、私たちの方でよほどこれで気をつけなければなりませんが、分類ということをよほど徹底をいたしまして、そういうものに対してはやはりそれ相応の処置はとらなければならない。しかし、そのことのためにまたやわらかく処遇のできるそういう少年たちまでも、その犠牲にしてはならないということで、少年の中にも二十才までに年令が引き上げられました結果、非常にバラエティが広くなりまして、ものすごい、少年と言えないような少年たちも相当入っております。それでそういうものに巻き込まれないようにするために、大多数の少年たちは決してその程度までいっておらないわけでありますが、しかし何分にも現在一万人ちょっとしかおりません少年のうちでもって、十九才以上のものが六千人を越しているというふうな状況でございまするので、しかしその高年令のもの全部が扱いにくいというわけではございませんが、その一部分にはなりますが、しかしそういう一部分のために、みそもくそも一緒にしておきますと、処遇がやわらかくできるものに対してもやわらかくできなくなる、あるいは厳格にしなければならないものに対して厳格にできなくなるというようなことになりまするので、そこら辺をよく区別をして、そうしてそれぞれに適当した処置をとらなければならないという意味で、ある程度厳格に、ある時期につきましては厳格に処置しなければならないものがあるわけでございますが、しかしどこまでも少年院というものは、愛の教育という高い理想を掲げております建前もございまして、私たちといたしましては決して刑罰的な処置はしないというような決心でおります。
  80. 宮城タマヨ

    宮城タマヨ君 一々私の考えております通り今の御答弁でございますが、ただ分類で、最近において少年院の分類もあのように四種類に分かれまして、非常にその点はいいと思っておりますけれども、しかし先ほども申しました年令が引き上げられましたために、おとなもしのぐような困った少年がたくさん出ておりますことは事実でございますけれども、どうもそのために全部の子供たちが非常に損させられているのじゃないか。私は悪い子供に対して、今特別少年院なんかでもその取扱いをもっとゆるくせいよという意味でなく、私は一方から考えますというと、もっともっと私は厳格にしなければならん点があるのじゃないか。今は手ぬるいよというように感ずることもたくさんあるのでございます。けれども、考え方といたしましては、やっぱり二十才以下の子供にはできるだけ前科者という焼き印を押さない意味合いにおきまして、特少も大へん必要なことで、もっともっと私は本来から申しますというと、少年刑務所というものは、つまり二十才以下の少年に対しますところの前科者というものは、私はやっぱり考えものだというふうに思っているのです。その二十才以下のすべての、その少年院に入れなければならないような、少年刑務所にも送らなければならないような少年といえども、これは考えて見ますというと、家庭や社会や、私は究極のところは政治の貧困というために、あの子供たちがあそこまで陥っていくというものが私はほとんど大部分であろうかと考えております。そういう子供たちに対して、まあできるなら私は少年刑務所をぶっつぶせ、皆様方の御努力で十一カ所にございました少年刑務所が一昨年までに九カ所になりました。どうかして私は全部この少年刑務所というものをつぶして、そのかわり少年刑務所以上に私はもっとうんと働かせ、うんと窮屈な思いをさせ、愛のむちであるならばもっともっと当ててほしいというように考えております。けれども、そのために私はこの特別少年院のまた特別少年院といったような、名前はわかりませんけれども、とにかく非常な強力な、子供に対してもっと窮屈な思いをするような場所を作りましても、私は少年刑務所というものをぶっつぶして、すべては前科のつかない少年院に入れるといったような、私はそのくらいな考えを持っていて、少年院の施設なんかを見ておりますというと、あまりに保護から行刑に移って行くような気がするのでございます。その点についてはあとで保護局長からも伺いたいと思っておるのでございますが、今度出ました子供の連戻状につきましても、ことに手錠をはめるというようなことにつきましても、必要やむを得んということは認めますが、私はその根本の取扱い方、根本の考え方が私どこに一体置かれているのだろうかということについて非常に悩んでいるわけでございますが、きょうはこの法案についてではございませんで、矯正局長の少年院あるいは少年刑務所に対しましての一つの将来の見通しについて、またお考えについてちょっと伺いたいと思っております。それからあわせてそういう問題について保護局長の考えも伺いたいと思っております。
  81. 中尾文策

    政府委員(中尾文策君) 少年の処置につきましての宮城先生の御意見は、全く私たちもそういうふうに考えておるところでございまして、そういう年令の者につきましては、もうできれば保安処分の方に回しまして前科の焼き印をつけないような工合にいたしたいということば、私たちも希望いたしております。現にこの少年の関係につきましては、年令の引き上げ以後、ちょっと私今数字が確かではございませんが、五千人ばかりおりました少年刑務所の収容者の数が、現在は二千人程度に減っております。そうしてそれと片一方特別少年院、高年令の少年が少年院にたくさん入ってくるようになっておりまして、これは裁判所の方の政策によることはございますが、これは顕著にその効果、新しい少年法のねらったところは、現在結果としては現われているかと思います。ただそれにマッチいたしまするだけの施設の方の実力あるいは条件の整備というような点について欠けておりますために、せっかくのこの法律が精神が十分生かされておらないという現状でございます。しかし、少年につきましては、どこまでもこれは親の心をもってあたたかく導いていくようにいたしたいということは、私たちも念願でございます。
  82. 斎藤三郎

    政府委員斎藤三郎君) 少年院の問題についていろいろと私どもも心配をいたしております。私の考えでは、先ほどお話がございましたように、理想は非常にいいのであるけれども、現実の施設とか人とかいう問題が伴わないというところに、問題の根源があるのじゃないか、かように考えております。各地の少年院もできるだけ各地に参りますときに見させていただいておりますが、まだ施設、ことに教官活動が非常に少くて、あれではほんとうに少年をキャッチして教育していくというようなことができにくいのじゃないか。結局そのうちの有力者を使う、結局ボスができるというようなことがいろいろな問題になってくるということも感じさせられております。また、少年院外がかつて保護系統の機関でありましたのが、機構の改正によりまして行刑と一緒になりましたというところで、少年院の職員で心配をされておる点があるようでございます。しかし中尾局長は矯正のほんとうの中心の方として、ほんとうの精神で少年院を作っていきたいというようなお考えでおられるのでありましょう。私も及ばすながら協力いたしまして、ほんとうにりっぱな少年院を作って、少年院の理想に近づいて行きたい、かように存じておる次第であります。
  83. 宮城タマヨ

    宮城タマヨ君 今のお話の中にも、少年院の施設の問題が出まして、ことに職員が足らない、教官が足りないというお話でございましたが、まあ数のこともございますけれども、私はその質が非常に問題になるのじゃないかと思っておりますが、最近に非常に逃走が激しくなりまして、例の、少年院からも集団逃走が続々出ましたような形でございましたが一体御当局はこの少年の集団逃走というようなことについての原因はどこにございましょうか、御調査に十分なっておると思っております。それからまたもうそれに対しての手当も十分にできておると思います。数カ月も過ぎておりますが、どういうことになっておりますか、ちょっとその点についてお話し願いたいと思います。
  84. 中尾文策

    政府委員(中尾文策君) 原因と申しまするというと、まあこれは各ケースによりまして、おのおの多少の差異はあるわけでございますが一番特色と申しまするのは、ボスが扇動するという点が一番著しい特徴のように考えられるわけであります。少年は一種の英雄主義と申しますか、ボスが相当勢力がございまして、そういうのが何か指導的な地位を占めまするというと、他の少年たちは必ずしもそれに賛成ではない、進んでそういう気持にならないというような者までも引きずられて、つい一時的な興奮でぱっと出てしまうというような程度の、非常に悪質のこり固まったというよりは、むしろそういう突発的な……、もっともまあそういう突発的な衝動に負けるという点が少年の欠点と言えば欠点でございますが、しかし、あの年令にありがちな面であると思いますが、そういうことで集団的な行動をとるというようなことが多いように思います。しかしそれを誘発いたしまする原因は、これはいろいろございまするが、これは言いわけのようになりまするが、どうしても教官の指導が、質とそれから数の不足からいたしまして全面的に少年の心服、信頼を得にくい場合がかなりあるということのために、少年がだんだんとはずれていくのを、こちらで押えて引っぱっていくことはできにくいというようなことのために、だんだんとそれを大きくしてついにそういう場合に直面するというようなことが多いようでございます。なおまた、あるケースなんかにおきましては非常に設備が脆弱であってどうにでもなるというようなときに、ついその中の二、三の心がけの悪い少年などの気持に対して誘惑を与えるというような結果にもなっておりまして、大体そういうことが原因となって大きな事件が起きているというふうに考えられるわけであります。しかし中にはこれは自分が何か大きな反則をいたしまして、それについて教官からしかられたとかいうふうな場合、これはしかり方についても問題があると思いますが、そういうふうな不平不満でもってそういううっぷんを、そういう犯行によって晴らすというような場合もございます。  さてその対策でございますが、どうもりっぱな対策を立てたかとおっしゃられますと、はなはだお恥かしい次第でありますが、なかなか立ちません。それで私たちの今取りあえず立て得る対策の一番有力なものは、これは予算をもらいまして施設を充実する、たとえば非常に不まじめな非常にさわがしい少年がおりまして、そういうものを隔離できるような、場所的にも隔離する。しかしてそういうものが勝手にのこのこ出てきて、ほかの少年を扇動できないようにするというような処置がとられますならば、これだけでもだいぶ違いますが、そういうことをいたしまするためには、現在の少年院が相当設備をしなければ、現在の設備ではとうていそういうことは不可能であるという場合がかなり多いわけでありますが、従って設備について費用をもらわなければ、そういう点の充実はなかなかできませんが、しかしこれは相当猛烈にねばって、大蔵省当局に対しても要求いたしたのでありますが、少年院のことにつきましては、ほとんどあまり大した予算が取れなかったというわけであります。しかし現在あちらこちらに少年院をあるいは新築の計画、あるいは改築、設備の充実を全然やっておらないわけではないので、その程度の予算は若干ではありますが、もらいましたけれども、それができましたならば、少しは楽になると思います。  ただ、非常に困りました点は、職員につきまして相当強硬な増員の要求をいたしました。しかし大蔵当局もそれは事情はわかるということではありますが、しかしどうしてもこれを認めてくれるところまでいきません。かえって昨年から実行いたしておりまするところの行政整理を本年度、二カ年にわたっておりますので、今年度実行しなければならぬということになりまして、かえって九十二人という減員を実行しなければならぬという羽目になったのであります。この点につきましては実に私たちとしては相当その対策について大蔵省の方に食い下ったわけでありますが、とうとうその点は、増員の点はだめになりました。しかしそのかわりといたしまして特に二百人の常勤労務者の増員を新たにしてくれたわけでありますが、二百人もらいますというと差し引き百十人ばかり増員になったことになりますので、その常勤労務者をどういうふうに使うかという問題がございますが、しかしその二百人を上手に使うことによりまして、まあ今よりはプラスにできるのではないか。九十人の教官の犠牲もございまするが、しかし何かそれはカバーできて、使い方によっては、何とか効果のあることができるのじゃないかというふうに考えております。なお、この職員がやはり充実いたしませんというと、仕事がよくできませんので、ある程度小さな施設、これは分院でございますが、これは廃止しなければならないじゃないかということで、現に本日管区長会議をいたしておりますが、その席上で今協議をいたしておるはずであります。と申しまするのは、少年のためにはなるべく少年の数を少くいたしまして、そういうところで職員と接触を密にするようなやり方をいたしますると、もちろんこれがいいわけでございまするが、しかし何しろ今現在五十六カ所の少年院がございまして、それについて予算と職員とさえございましたならば、これはうまくいくわけでありますが、しかしそういうことができませんので、ある程度縮小して統合しなければならないというふうに考えまして、まあ消極的な手段ではございますが、そういう小さい施設を廃止するということをただいま考えております。  なお、職員のことでございますが、これにつきましては、もっとこれは研修に力を入れなければならない。また科学的な処置と申しましても、あまり派手なこともできませんが、単なる常識とか名人芸とかというのでなくて、もっと学問的にはっきりしたものにしたい。そういう知識教養というものがあって、そうしてそういう前提で矯正の仕事をやっていくようにしなければならぬということで、職員の研修を本年度はもっと充実いたしたいと考えまして、地方研修所、中央研修所におきまして、少年院の仕事についてもっと力を入れるというふうな計画を持っておりまして、現に分類保護課長を最近集めまして研修をいたしておるわけでございます。  まあいろいろやりたいことはございまするが、まあ小さいことは別といたしまして、大きい点ではその程度にしかできておらないというのが実情でございます。
  85. 宮城タマヨ

    宮城タマヨ君 小さいことを一つ一つ伺いたいと思います。この研修所の費用は、ことしは増額されていると思っておりましたが、今ちょっと数字覚えませんけれども、いかがでしたかしら。
  86. 中尾文策

    政府委員(中尾文策君) 何か日当のようなもので増額されたように……ちょっと私今はっきり思い出しませんが……。
  87. 宮城タマヨ

    宮城タマヨ君 あとでよろしいです。
  88. 中尾文策

    政府委員(中尾文策君) 人件費などは増額になっておりますが、これは例のベースの改訂とか、給与とか、いわゆる基準の改訂で上っておりますが、そのほかにつきましてちょっと私今正確にお答え申し上げられませんので、あとで調べまして……。
  89. 宮城タマヨ

    宮城タマヨ君 私も調べればわかります。それから今設備のお話しが出ましたけれども、何か子供が逃走をする数が多くなりますというと、だんだんがんじがらめにして、部屋には錠をかけよう、壁は高くしようというような設備は、必ずしも私は子供の逃走を防止するものではないと考えておりますが、一体この九州の筑紫少年院でございましたかね、あの特少の……。
  90. 中尾文策

    政府委員(中尾文策君) 筑紫少女苑。
  91. 宮城タマヨ

    宮城タマヨ君 少女苑ですか、私ここへ行ってみまして、ここは特少でありながら全然開放でございましょう。その開放の、つまりいつでも逃げられるといったようになっているところが、かえって逃走が少いというようなことを数において示されておりますようなことから、つまり設備をがんじがらめにするというよりも、もっともっと先決問題があるのじゃないかというようなことを考えておりますが、まあその点は今ここでどうという問題ではございませんから、一つ私の勘をちょっと申し上げたわけでございます。  それから今少年院の分室、あるいは支部と申しますか、そういうものがだんだん大きく吸収され、あるいはそれが本院になるといいますか、そういうことも必要でございますが、大体から言いますというと、こういう子供たちを、つまり悪い癖のある子供たちを集めれば集めるほど、やはり結果は非常に悪くなるし、骨が折れると思っております。だから小さいものをたくさん作るというように、方針を一つお変えになってやってみたらどうだろうと思います。それに関連しますけれども、旧少年法時代にございました保護団体なんというような、ああいう子供の性格に合ったような、ほんとうに少人数集めまして、寺小屋式の教育をする、取扱いをするということが、私はこの仕事の終極の理想ではないかというふうに考えておりますが、この点について保護局長の御答弁を願いたいと思っております。
  92. 斎藤三郎

    政府委員斎藤三郎君) 少年保護のために民間篤志家等の慈愛心によって矯正していくというような保護団体、これはまことに望ましいことである。私も全く同様に考えております。さような考えから、御承知通りに、少年保護団体が昭和二十四年三月三十一日をもって、当時の占領下にありました関係上、全国に多数の歴史のある保護団体があったのでございますが、一部の団体の不始末から誤解を受けまして、一斉に廃止することになりまして、厚生省の養護施設、あるいは少年院というようなものに変形をして参ったのでございますが、保護観察の制度が新しくできましてから、やはり保護観察をやる上においても、もとの保護団体と同じような機能を有する保護会が必要でございますので、各地にさような民間の保護施設の誕生、育成に努力いたしております。京都の白光荘といいました本願寺系統のものであるとか、あるいは名古屋においては立正園と申しまして、旧日蓮宗の保護団体の跡が、そのままほかの施設に転用されておりましたものが復活されまして、また新潟においても保護司会のあっせんによりまして、新潟市外のわずかのところに新しく保護施設ができました。さような施設ができますことによって、家庭裁判所で問題になった少年のうち、保護観察で効果が期待できるような少年がたくさんさような施設の充実によりまして、参ることができますならば、少年保護のために相当の効果をきたすじゃないかと、かように存じて、できるだけそういうような施設ができますように努力をいたしたつもりでございます。
  93. 宮城タマヨ

    宮城タマヨ君 時間がもうございませんが、もう一つだけ伺っておきたいと思っております。それは矯正施設に対します職員の希望者でございます。先ほどの河内少年院の職員のお話のところで、京都の仏教大学の人が希望して行っていらっしゃるというように私は伺いましたのでございますが、旧少年院時代もやはり特別な希望者があって、東大を出てすぐ受付から始めたというような、今管区長をしておられるような方もありますが、私はそういう特別な方がもう続々出られるように考えておりますが、その点いかがでしょう。それからもう一つは、女子少年院に対しては、大阪の片野の少年院長、これは婦人の方でございますが、その方がある程度までいきましたらおやめになった。あとは今度は男子の院長、ことに刑務所長であった方がおつきになっておるとか、群馬県の女子少年院も男子の院長でございます。とてもよくいっておるようでございまして、その院長を非難するのではございませんが、大体仕事の性質といたしまして、女子少年院は、やはり私は女子の少年院長を置いていただきたい、こうふだんから望んでおります。その希望者はあるいはお探しになっても、一体望めないものでございましょうかということなのでございます。
  94. 中尾文策

    政府委員(中尾文策君) この少年院の仕事をやってみたいという希望者が最近続々出ております。しかもそれは大学の卒業生が相当あるようでありまして、大へんその点、私たちは心強く感謝しておるのでございます。さっき申し上げました矯正保護の講座は、京都の東西本願寺の両方の大学が二、三年前から作られました。それから東京では駒沢大学で現にその方の講座を作っておられます。それでこういうところの講義の課程を経た者につきましては、優先的に私たちの方に採用するというようなことを大学当局とも約束いたしまして、相当これで野心を持った青年が入ってきております。現に、駒沢大学ではまだ作ったばかりでございまして参りませんが、京都の大学では、本年は何回目になりますか、相当申し込みがございまして、その中で試験をして選んで、そして欠員のあり次第採用するというようなことをいたしております。なお、ついこの前、横浜にございます神奈川大学から申し込みがありまして、あすこの大学で法科をやっております女の学生二人が札幌の少年院、愛光女子学院で、この夏休にぜひ実習をやらせてもらいたいというような希望の申し出もございます。相当これで教育を受けた者の申し込みもあるわけであります。もっとも大学を出た者ばかりがりっぱだということは申し上げるわけに参りませんが、少くとも一つの条件を満たしておると考えて喜んでおる次第であります。  それから女の少年院長の問題でございますが、片野の場合には、実は前の院長にはやめていただきたくなかったので、だいぶ私どもも引きとめたのでございますが、こういうことになってしまいました。その次の方につきましても、ぜひこれは女の院長にやってもらいたいと思いまして、いろいろ工作いたしましたが、この部内ではそれが実現できませんでした。それで日本女子大学の井上先生、これはだいぶん前のことでございますが、お願いいたしまして適当な方を推薦してもらうようにだいぶお願いをして時間をかけて待ったのでございますが、どうしても適当な方が得られなかった。その次には長崎の何とか女子大学の学長、この方は私学生時代から知っておる先輩のりっぱな方でございまして、大学長に交渉いたしまして、一時何とかものになりかけましたが、とうとうほかの方に引き取られて来られませんというようなことになりました。それであとの人選に困りまして、やむを得ずあすこら辺に落ちついたということでございまして、もっともしかし、現在の院長が女子少年院長として不適任とは考えません。まず一応女の人ということで物色をいたしたのでありますが、ただいまのところはあちらこちらにちょっと適任者がない関係上、そういうことになったと思います。
  95. 宮城タマヨ

    宮城タマヨ君 もう一つ、これは大事なことで言葉をちょっとはばかることもございますけれでも、一体管区がございますために、少年院がうまく運営できるかどうかという問題を私は非常に疑問を持っております。それはやはり少年院はいろいろの点において管区で指導されなくちゃならぬし、しかもその監督下にあるものでございますから、少年の取り扱いその他が、やはり一律に刑務所並みに考えられていくのではないかという問題なのでございますが、その点は中尾局長、どうお考えでございましょうか。私の少しひが目でございましょうか。
  96. 中尾文策

    政府委員(中尾文策君) ひが目とおっしゃられますると、私もちょっと何か申し上げにくくなりますが、私の方もこれは手前みそかもしれませんから、その点はお断わり申し上げておかなければなりませんが、管区がありますために、その運営がうまくいかない……、これはどうしても考えられないのであります。まず第一番に本省が、それでは管区を廃止いたしまして、本省と少年院との直結にしてうまくやっていけるかどうかという問題になりますが、これは現在のように、全国に施設が多いし、またいろいろの問題もたくさんあることでございますので、とてもこれは本省で直接に少年院を指導していく、あるいは少年院の問題を始終こちらでキャッチしていくというようなことは、これはなかなかできないわけでございます。それから管区がそれでは少年院に対して不熱心であればこれは別でございますが、しかし私たちの見まするところでは、管区は少年院の問題について、そう不熱心であるとも思いませんし、また刑務所を同時に見ておりますために、その方に牽制されて少年院に冷淡だというふうには、まあ私たちの見るところでは考えられないわけでありまして、現に管区では、少年院の問題につきまして事例研究というようなこともやっておりますし、なおまた、少年院は創立早々でございまして、少年院自身でいろいろな問題を持っておりますが、そういうものの共同研究というようなものにつきまして、管区が間の音頭をとりまして、お互い研究をやらしております。なおまた、刑務所の持っておりますものを少年院に都合するというような点につきましても、これは少年院が刑務所に話を持ち込んでも通りにくい場合もございますが、管区の方から刑務所の方に強制的にこういうものを都合してやれということができたらいい……。これは一つは本省が管区をよく督励いたしませんと、ともすればこれは数の上で刑務所の方が多いということになりますので、つい関心が刑務所側にいきやすいじゃないかという点を考えまして、その点につきましては、私たちも始終警戒をいたしまして、本省から職員を出張させる場合にも、必ず少年院について熱心に見てくるように、また管区の少年院に対する態度なんかにつきましてもよく見てこさせるようにいたしまして、そういう是正しなければならんものは、絶えず注意を払っておるつもりでございます。
  97. 宮城タマヨ

    宮城タマヨ君 まだ質問がございますが、今日は私はこれで一応打ち切りたいと思います。
  98. 成瀬幡治

    委員長成瀬幡治君) 速記をとめて下さい。   〔速記中止
  99. 成瀬幡治

    委員長成瀬幡治君) 速記を起して下さい。  それでは本案に対する質疑は本日はこの程度にいたしまして、本日はこれにて散会いたします。    午後三時六分散会