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政府委員(中尾
文策君) 原因と申しまするというと、まあこれは各ケースによりまして、おのおの多少の差異はあるわけでございますが一番特色と申しまするのは、ボスが扇動するという点が一番著しい特徴のように考えられるわけであります。少年は一種の英雄主義と申しますか、ボスが相当勢力がございまして、そういうのが何か指導的な地位を占めまするというと、他の少年たちは必ずしもそれに賛成ではない、進んでそういう
気持にならないというような者までも引きずられて、つい一時的な興奮でぱっと出てしまうというような
程度の、非常に悪質のこり固まったというよりは、むしろそういう突発的な……、もっともまあそういう突発的な衝動に負けるという点が少年の欠点と言えば欠点でございますが、しかし、あの年令にありがちな面であると思いますが、そういうことで集団的な行動をとるというようなことが多いように思います。しかしそれを誘発いたしまする原因は、これはいろいろございまするが、これは言いわけのようになりまするが、どうしても教官の指導が、質とそれから数の不足からいたしまして全面的に少年の心服、信頼を得にくい場合がかなりあるということのために、少年がだんだんとはずれていくのを、こちらで押えて引っぱっていくことはできにくいというようなことのために、だんだんとそれを大きくしてついにそういう場合に直面するというようなことが多いようでございます。なおまた、あるケースなんかにおきましては非常に設備が脆弱であってどうにでもなるというようなときに、ついその中の二、三の心がけの悪い少年などの
気持に対して誘惑を与えるというような結果にもなっておりまして、大体そういうことが原因となって大きな
事件が起きているというふうに考えられるわけであります。しかし中にはこれは
自分が何か大きな反則をいたしまして、それについて教官からしかられたとかいうふうな場合、これはしかり方についても問題があると思いますが、そういうふうな不平不満でもってそういううっぷんを、そういう犯行によって晴らすというような場合もございます。
さてその対策でございますが、どうもりっぱな対策を立てたかとおっしゃられますと、はなはだお恥かしい次第でありますが、なかなか立ちません。それで私たちの今取りあえず立て得る対策の一番有力なものは、これは予算をもらいまして施設を充実する、たとえば非常に不まじめな非常にさわがしい少年がおりまして、そういうものを隔離できるような、場所的にも隔離する。しかしてそういうものが勝手にのこのこ出てきて、ほかの少年を扇動できないようにするというような処置がとられますならば、これだけでもだいぶ違いますが、そういうことをいたしまするためには、現在の少年院が相当設備をしなければ、現在の設備ではとうていそういうことは不可能であるという場合がかなり多いわけでありますが、従って設備について費用をもらわなければ、そういう点の充実はなかなかできませんが、しかしこれは相当猛烈にねばって、大蔵省
当局に対しても要求いたしたのでありますが、少年院のことにつきましては、ほとんどあまり大した予算が取れなかったというわけであります。しかし現在あちらこちらに少年院をあるいは新築の計画、あるいは改築、設備の充実を全然やっておらないわけではないので、その
程度の予算は若干ではありますが、もらいましたけれ
ども、それができましたならば、少しは楽になると思います。
ただ、非常に困りました点は、職員につきまして相当強硬な増員の要求をいたしました。しかし大蔵
当局もそれは事情はわかるということではありますが、しかしどうしてもこれを認めてくれるところまでいきません。かえって昨年から実行いたしておりまするところの行政整理を本年度、二カ年にわたっておりますので、今年度実行しなければならぬということになりまして、かえって九十二人という減員を実行しなければならぬという羽目になったのであります。この点につきましては実に私たちとしては相当その対策について大蔵省の方に食い下ったわけでありますが、とうとうその点は、増員の点はだめになりました。しかしそのかわりといたしまして特に二百人の常勤労務者の増員を新たにしてくれたわけでありますが、二百人もらいますというと差し引き百十人ばかり増員になったことになりますので、その常勤労務者をどういうふうに使うかという問題がございますが、しかしその二百人を上手に使うことによりまして、まあ今よりはプラスにできるのではないか。九十人の教官の犠牲もございまするが、しかし何かそれはカバーできて、使い方によっては、何とか効果のあることができるのじゃないかというふうに考えております。なお、この職員がやはり充実いたしませんというと、仕事がよくできませんので、ある
程度小さな施設、これは分院でございますが、これは廃止しなければならないじゃないかということで、現に本日管区長
会議をいたしておりますが、その席上で今協議をいたしておるはずであります。と申しまするのは、少年のためにはなるべく少年の数を少くいたしまして、そういうところで職員と接触を密にするようなやり方をいたしますると、もちろんこれがいいわけでございまするが、しかし何しろ今現在五十六カ所の少年院がございまして、それについて予算と職員とさえございましたならば、これはうまくいくわけでありますが、しかしそういうことができませんので、ある
程度縮小して統合しなければならないというふうに考えまして、まあ消極的な手段ではございますが、そういう小さい施設を廃止するということをただいま考えております。
なお、職員のことでございますが、これにつきましては、もっとこれは研修に力を入れなければならない。また科学的な処置と申しましても、あまり派手なこともできませんが、単なる常識とか名人芸とかというのでなくて、もっと学問的にはっきりしたものにしたい。そういう知識教養というものがあって、そうしてそういう前提で矯正の仕事をやっていくようにしなければならぬということで、職員の研修を本年度はもっと充実いたしたいと考えまして、地方研修所、中央研修所におきまして、少年院の仕事についてもっと力を入れるというふうな計画を持っておりまして、現に分類保護
課長を最近集めまして研修をいたしておるわけでございます。
まあいろいろやりたいことはございまするが、まあ小さいことは別といたしまして、大きい点ではその
程度にしかできておらないというのが実情でございます。