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1955-05-25 第22回国会 参議院 法務委員会 第4号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和三十年五月二十五日(水曜日)    午後二時十八分開会   —————————————    委員の異動 五月二十日委員河合義一君辞任につ き、その補欠として亀田得治君を議長 において指名した。 本日委員亀田得治君及び宇垣一成君辞 任につき、その補欠として藤原道子君 及び廣瀬久忠君を議長において指名し た。   —————————————  出席者は左の通り。    委員長     成瀬 幡治君    理事            剱木 亨弘君            宮城タマヨ君    委員            井上 清一君            岩沢 忠恭君            藤原 道子君            吉田 法晴君            一松 定吉君            羽仁 五郎君   国務大臣    法 務 大 臣 花村 四郎君   政府委員    法務省刑事局長 井本 台吉君    法務省矯正局長 中尾 文策君    法務省人権擁護    局長      戸田 正直君   事務局側    常任委員会専門    員       西村 高兄君    常任委員会専門    員       堀  真道君   説明員    最高裁判所長官    代理者    (事務総局経理    局長)     岸上 康夫君   —————————————   本日の会議に付した案件 ○裁判所職員定員法の一部を改正する  法律案内閣送付予備審査) ○少年院法の一部を改正する法律案  (内閣送付予備審査) ○検察及び裁判運営等に関する調査  の件  (昭和三十年度裁判所関係予算に関  する件)   —————————————
  2. 成瀬幡治

    委員長成瀬幡治君) これより法務委員会を開会いたします。  まず、裁判所職員定員法の一部を改正する法律案議題に供します。まず、提案理由説明をお願いいたします。
  3. 花村四郎

    国務大臣花村四郎君) ただいま議題となりました裁判所職員定員法の一部を改正する法律案提案理由説明いたします。  行政費節約等のため、昨年来行政機関事務簡素化及び人員整理が行われておりますが、これに対応して、裁判所につきましても、司法行政事務を極力簡素化して人員の縮減をはかることとなり、すでに昨年の第十九回国会における裁判所職員定員法の改正によりまして、裁判官以外の裁判所職員が四百二十人減員されましたことは、御承知通りであります。この法律案は、同様の趣旨から、昨年に引き続き裁判官以外の裁判所職員二百八十人の減員を行おうとするものであります。  なお、この裁判所職員人員整理につきましては、この法律案の附則におきまして、一般公務員人員整理の場合に準じ、本年九月三十日までの間は、新定員をこえる員数の職員定員の外に置くことができるものとして、円滑に整理を行うことができるように配慮いたしております。  以上がこの法律案提案理由であります。何とぞよろしく御審議のほどお願いいたします。
  4. 成瀬幡治

    委員長成瀬幡治君) ちょっと速記をとめて下さい。   〔速記中止〕   —————————————
  5. 成瀬幡治

    委員長成瀬幡治君) 速記を始めて下さい。  前回委員会提案理由説明だけを聴取いたしました少年院法の一部を改正する法律案逐条説明をお願いいたします。
  6. 中尾文策

    政府委員中尾文策君) 今般提案いたしました少年院法の一部を改正する法律案につきまして、逐条的に御説明申し上げます。  第一は、第八条の二と関係いたします。従来少年院在院者職業補導等を受ける場合に負傷をいたします。その場合に、なおったときに障害を残すような場合に、何らの手当金支給できなかったのでございます。従来の事例を申し上げますと、昭和二十七年度では、職業補導中に死亡しました者が二名、けがをして障害を残した者が九名、計十一名でありました。昭和二十八年度では障害を残す程度けがをした君が三名ありました。昭和二十九年度は幸いにして一名もありませんでしたが、本年一月以降三月までの間にすでにけがをした者が二名という実情であります。このような場合に何の措置もとれないということは、まことに気の毒な事情もありますので、この際若干の手当金を給与することができることとするため、新たに本条を設けた次第であります。昭和三十年度予算案にはこのための費目に十万円を計上してあります。  なお、支給に関する詳細はすべて法務省令に譲ることといたしましたが、概略を申し上げますと、支給額は、死亡した場合は二万円、身体に障害を残した場合の最高は二万五千円程度と考えております。支給方法は、死亡手当金は死亡したときに、障害手当金原則として退院のときに支給する方針であります。死亡手当金を与える遺族の範囲は、配偶者、子、父、母のほか生計を一にしていた祖父母を含めることを検討しております。  第二番目は、第九条の関係であります。現在少年院に収容された者の所持する金品を領置する場合は、少年院会計事務章程、これは訓令でありますが、これによって処理しておりますが、本条規定によりまして、本人受領証を交付しなければならないこととされておりますので、それぞれ受領証を交付しておりまして、これらの受領証在院本人に所持されております。しかし、相当長期にわたる在院中には、これを亡失する場合が多く、かえって領置手続を繁雑にしておりまして、何ら実益がありませんので、この際領置手続簡素化をはかるために、受領証を交付しなくてもよいということにするものであります。  三は、第十四条の関係であります。従来少年院在院者逃走した場合の連戻しについては、その方法及び限界等について規定土明確を欠いておりますために、その取扱いが適正を失する場合もありますので、この際改正することにいたしたのであります。現行少年院法第十四条の規定は明確を欠くために、疑義を生ずるおそれがあるのであります。一つ見解といたしましては、少年院職員逃走者を時間の経過関係なく、たとえば三カ月たっても、六カ月たってもあるいはもっと二年でも三年でもたっても、いつでも強制的措置をもってしても連れ戻すことができるとする見解であります。これに対します一つ見解といたしましては、逃走者の連戻しは合理的な判断による瞬間の限度において強制的措置によって連れ戻すことができるが、その限度を越えた時日経過した場合は、強制的には連れ戻すことができないとして、そうしてその合理的な判断による限度とは、明文による規定がありませんので、具体的な事例によって決定されるとの見解であります。このような二つの意見が対立しておりましたことは、確かに規定が不明確であることによるものでありまして、運用上いろいろ支障もありますので、従来もその明確化が要請されていたのであります。また、逃走者の連戻しには、ほとんど例外なく警察官援助を要請して、その援助により逃走者を連れ戻しているのが従来の例でありますが、この際における警察官の連戻しに関する援助根拠規定がないので、それを明確にする必要があるのであります。なお、この点につきましては、警察庁からも強い要望があるのであります。このような事情がありましたので、今回次のように改正いたしましてこの点をはっきりさせようとする次第であります。  まず、従来の本文を第一項とし、これに後段を加えて、少年院長から連戻しについて援助を求められた警察官は、少年院職員が連戻しができると同じように、逃走者の連戻しができるようにいたしまして、従来の難点の解決をはかりますとともに、少年院職員は本来的に逃走者の連れ戻しができることを明らかにいたしました。  第二項におきましては、従来逃走者の連戻しをいたしまする場合に、相当時日経過しておりましても、何らの要式行為も必要としないで、強制的に直ちにこれを連れ戻すことができるといたしますことは、合理的でないという面もありますので、逃走後四十八時間を経過して連れ戻す場合には、裁判官の発する連戻状によらなければならないことといたしまして、手続を慎重にしたのであります。これは逃走後の時間の経過に伴う社会的安定状態を尊重することと、個人の人権の保障を重んじたにほかなりません。なお、この連戻状の性質は、刑事訴訟法上の逮捕状または勾引状等に類するものではなく、むしろ一極の許可状的なものであると考えております。  第三項におきましては、連戻状の発付手続規定いたしました。連戻状の発付少年院長請求にかからしめておりますが、これは少年院長には請求してもしなくてもいいというのではなく、連戻状の発付請求少年院長の義務であると考えております。  第四項におきましては、少年法第二十六条の同行状に関する同法の規定は、連戻し性質に反しない限りこれを準用することといたしました。従って家庭裁判所判事補も単独で発付することができることとなっております。なお、最高裁判所では、この件に関しまして少年審判規則の一部を改正することに了解を得ておりまして、目下その起草を検討中であると聞いております。  第四は、第十四条の二の関係でございます。最近の少年院実情を申し上げますと、昭和二十九年末では十八才以上のいわゆる高年令の者は全体の五三%を占めておりまして、また、これを行為別、すなわち犯した行為の別で見ますると、少年法適用年令が十八才までであった昭和二十五年末には、殺人及び強盗によって審判を受け、少年院に送致された者は全体の〇・一六%でありまして、人員にいたしますと、わずか十一人にすぎなかったのでありますが、今日におきましてはこれらのものは全体の四%で、人員にいたしますると四百二十人に激増しているのであります。このように在院者の反社会性は相当強いものが多くなっておりますために、往々にして集団的な騒擾や逃走、また場合によりましては自殺というようなことが起る場合がありますので、第一項におきましてこのような場合にやむを得ないときに限って、手錠を使い得るようにいたした次第であります。しかしながら、もともと少年院の性格から申しましても、手錠を使うというようなことはできるだけ避けなければならないことと考えております。従ってその使用につきましては、特に慎重にしなければなりませんので、第二項におきまして、原則として手錠使用少年院長の許可がなければできないということといたした次第でありますが、当局といたしましては手錠使用については、特に厳重な監督をするつもりであります。なお、手錠製式法務省令で定めることにいたしております。  第五は、第十五条及び第十六条の関係でありますが、これは字句の整理でございます。その次は、第十七条の関係、前記の第十四条及び第十四条の二の規定は、それぞれ少年鑑別所にこれを準用いたすことにいたしました。  以上簡単に逐条について御説明を申し上げました。
  7. 成瀬幡治

    委員長成瀬幡治君) 本件に関しましては御質疑もあろうかと存じますが、議事の都合上、次の議題に移りたいと思いますが御異議ございませんか。   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  8. 成瀬幡治

    委員長成瀬幡治君) 御異議ないと認めます。   —————————————
  9. 成瀬幡治

    委員長成瀬幡治君) それでは、検察及び裁判運営等に関する調査として、昭和三十年度裁判所関係予算に関する件を議題に供します。最高裁判所の方から一応の御説明をお願いいたします。
  10. 岸上康夫

    説明員岸上康夫君) それでは私から三十年度裁判所所管予算案につきましてごくあらましを御説明申し上げます。  お手元に配りました予算説明参考資料、今日お届けいたしました分についての説明であります。  まず、三十年度裁判所予算総額でございますが、これは第一表の一番下の欄をごらんいただきたいと思います。それによりますと、三十年度裁判所所管予算総額は九十一億七千六百三十二万円ということに相なっておりまして、その上の欄にございます前年度総額八十五億七千七百三十四万四千円と比較いたしますと、五億九千八百九十七万六千円の増額ということに相なっております。で国の一般会計の総予算に対する比率を見ますと、三十年度は〇・九二%ということに相なります。前年度は〇・八六%、結局〇・〇六%比率においても増加しておるという結果になります。  今度はその総額内訳を簡単に申しますと、第二表一をごらんいただきたいと思います。これが今申しました予算総額使途別による内訳の額であります。まず三十年度のところをごらんいただきますと、人件費が六十六億五千百三十二万八千円、旅費が一億五千二百二十五万三千円、庁費が四億七千八百七十三万一千円、裁判費が十二億五百三十七万五千円、営繕費が五億八千六十三万三千円、予備経費が八百万円ということに相なっておりまして、これをいずれも二十九年度予算額と比較いたしますと、この表の通り人件費庁費裁判費常備費はいずれもこの表に書いてありまする金額だけ増加に相なっております。旅費は逆に減額になっております。これは裁判所の各組織と申しますか、機構と申しますかに入っておりますあらゆる人件費旅費庁費をそれぞれ集計した金額でございます。  今度は別の観点から事項別裁判所経費内容を少し御説明を申し上げますと、第三表をごらんいただきたいと思います。これは裁判所経費のうちで事項別に分けましたものでございまして、一般的に申しますと、経常的な経費の分とその他の特別的な経費の分と分ける。特別的な経費のうちで、一定の事項的にまとまったものをまとめてここにあげましたのでございます。で一番上の欄にありますのが第三表の一でございますが、これが裁判所機構維持に必要な経費となっておりまして、三十年度予算額は六十九億一千八百二十三万二千円、これが予算額の大部分といってもいいのでございますが、これは結局経常的な人件費と経常的な庁費、経常的な旅費、そういうものをここに全部一括してあげたわけでございます。それから二番目は研修関係でございますが、これは裁判所法に基いて設置されておりまする研修所関係研修に必要な経費でございます。  三番目は、家庭裁判所整備、三以下が先ほど申しました特別的な経費になるのでございますが、三は家庭裁判所整備としてあげましたのは、家庭裁判所医療室設置するという経費でございまして、これは約五年ほど前から毎年一カ所ずつ新設を認められまして、三十年度の九カ所で、家庭裁判所の本庁四十九カ所については全部医務室設置が終るという勘定に相なるのでございます。その医務室設置に要する初度費と、それに勤務する非常勤医官手当というものでここに書いてありまする金額が計上されておるわけでございます。四番目は、夜間調停実施、これは三十年度に新しく認められました経費でありまして、表によりますと前年度は全然ゼロであります。これは簡易裁判所を二カ所と、それから家庭裁判所全国で十一カ所の裁判所夜間調停を扱う、そのために職員超勤手当あるいは、電灯代等庁費などの費用をこの程度認められたのでございまして、これに基きまして具体的な実施計画は今最高の方で計画中でございます。五番目は、裁判事務能率化とありますが、これは結局裁判事務機械化と申しますか、内容的にはそう目新しいものはないのでございますが、検証用の自動車あるいは調書の複写用機械、それから検証用写真機というようなものが若干入った経費でございます。  六番目の、裁判関係資料整備、これは最高裁判所あるいは全国裁判所におきまして、裁判事務をするに必要な図書、それから判例集あるいは法令集、こういうようなものの作成費でございます。七番目は、法廷整備、これは御承知公安事件等関係します法廷闘争事件につきまして、法廷秩序維持するための警備員手当及びそれの出動旅費というようなものでございます。  八番目の選挙関係費用、これは本年度衆議院選挙及び地方公共団体選挙関係違反事件審理に必要な経費で、それの出張旅費とか、あるいは職員超過勤務手当ということが若干認められたのであります。  九番目の検察審査会に必要な経費、これは毎年認められておるのでありますが、検察審査会運営のための経費でございまして、審査員旅費とか、あるいは証人の旅費とかいうふうなものを含めてこれだけの金額が計上されております。  十番目の裁判に必要な経費、これはいわゆる裁判費と申しておりますが、裁判に直接必要な経費でございまして、内容国選弁護人の報酬、旅費日当調停委員旅費日当、それから職員出張旅費、それから裁判関係庁費その他若干ございますが、その関係経費でございます。  それから裁判所営繕に必要な経費、これは裁判所の庁舎の新営及び修繕経費でございまして、金額は五億八千六十三万三千円で、前年度と比較しますと、倍以上に今年は増額になったわけでございます。具体的な実施計画予算の成立前でございますが、大蔵省事務的な打合せは一応できておりまして、その箇所につきましては、前回お配りしました裁判所営繕に必要な経費という表に載っております。  それから一番最後の裁判所予備金に必要な経費、これは裁判所法規定に基く経費でございまして、これは最近数年間ずっと八百万円ときまっておる経費でございます。事項別に申しますと大体そのようなことになっております。  それからその次は、予算的に見ました定員関係でございますが、第四表であります。これは裁判官関係は二十九年度、三十年度は全く定員関係は同じでございます。その他の職員関係でこれは二十九年度行政整理に引き続きまして、三十年度も総数二百八十名を減員するということで予算も組まれておるわけでございますが、その二百八十名の減員内容は、第四表の(2)のところに職種別にあげておりますのですが、それをごらんいただきますと、減員になりましたのは、雇員の関係で百十二名、傭人関係で百六十八名、合計二百八十名ということに相なっております。  その次の第五表は、これは今まで申し上げました経費関係を、予算書に基きましていわゆる月別にあげたのでございます。前年度予算額と今年度と比較いたしまして、その増減を書いております。これは非常にこまかくなっておりますので、説明は省略させていただいたらどうかと思っておりますが、御質問いただきましたらさらに御説明申し上げたいと思います。非常に簡単でございますが……。
  11. 宮城タマヨ

    宮城タマヨ君 ちょっと伺いますけれども、五億幾らの営繕費ですね、よく見ればわかるかもしれませんが、これは家庭裁判所の方の新設も入っておりますか。
  12. 岸上康夫

    説明員岸上康夫君) 大蔵省の方と実施計画を打ち合せました内容には入っております。
  13. 宮城タマヨ

    宮城タマヨ君 幾箇所くらい。
  14. 岸上康夫

    説明員岸上康夫君) それは新しく三十年度新規に始めます分は、横浜の家庭裁判所と鹿児島の家庭裁判所を、これは基礎工事をやるという程度で二カ所計上してございます。それから大分の家庭裁判所につきましては、これはちょっと特殊事情がございますのですが、地元のほうからある程度の寄付があるという話が従来から進んでおりまして、そのほかに国費として約二百九十万ほどを三十年度で支出する、これではまだ完成にはゆきませんが、残額は翌年度に入れたいという予定でございます。これは新規工事でございますが、継続工事の分といたしまして、岡山の地方裁判所家庭裁判所のこれは合同庁舎でございますが、それは二十九年度から引き続いて三十年度工事を継続するということで予算が計上されております。なお、甲号支部乙号支部の分も地方裁判所家庭裁判所合同庁舎にする予定で、その新規工事として甲号支部が二カ所それから乙号支部で五カ所分の予算が計上されております。
  15. 吉田法晴

    吉田法晴君 三十年度予算案事項別内訳と書いてある中に7の法廷警備に必要な経費としてわずかではありますけれども、昨年よりも増額をして計上がしてございます。その説明経費の概要という中に、労働事件公安事件等における法廷闘争に対処し、法廷の静穏を保持し云々とこう書いてあります。もう三年ぐらいになるかと思いますが、法廷等秩序維持に関する法律審議いたします場合には、まだ多少民主的な空気が残っておって、あの法律それ自身が非常に問題になっておって、そして通過をみた場合にも、ああいう法律はできるだけ適用をしないのだ、こういう御説明でしたが、ここに現われております労働事件公安事件等における法廷闘争に対処し、法廷における被告等の持っておる権利を十分発揮することが、いわゆる法廷闘争として色をもって、すでにこれは裁判所でありますか、あるいはその裁判所事務を取り扱われる法務省か知りませんけれども、そういう観念でこれはもう出ておる。最近のあの法廷いわゆる秩序維持のための動きと、それからかつての法廷等秩序維持に関する法律審議の際の空気との大きな開きをここにも感ずるのであります。わずかでもむしろ増額をして、法廷における被告権利擁護に対して、いわば何と申しますか、弾圧的な態度でもって裁判所が臨もうというのではなかろうかといった疑問さへ持つのであります。どういう工合に考えておられまするのか、この増額要求と関連して一つ承わりたいと思います。
  16. 岸上康夫

    説明員岸上康夫君) この経費は御承知のような法廷闘争と申しますか、法廷秩序維持が非常にむずかしいというふうな場合に、裁判所におきまして一定警備員を配置して、そしてその法廷審理をスムーズにしていきたいということから、もともとこの予算が計上されまして、本年度も前年度に引き続いて計上されておるわけだと思いますが、これがあるから今お話しになりましたその事件裁判所の方で弾圧するとか、そういうふうなことには、もちろん私といたしましてはやるべきではありませんし、形式的には関係のないことじゃなかろうかというふうに存じております。むしろ、なるべくそういう法廷秩序維持に関する法律等適用はないように、あらかじめそういう事態がないように、裁判所の方として十分の何といいますか、法廷整備をしておきたいというふうなことが、もともとの目的でこの経費が計上されておるものと存じます。
  17. 吉田法晴

    吉田法晴君 お尋ねをしておるのは、二つあるわけですが、一つはこれは廷丁の人件費という問題じゃなかろうかと思うのです。おそらく警察の人を要請するとか何とかいうことじゃなかろうかと思うのですが、若干でもそういう点で増額を見ている点から言うと、ふやそうとしておることもこれは事実だと思うのですが、そこで法廷等秩序維持に関する法律適用の際にも、原告、被告権利は対等であって、公正に裁判運営されるならば心配されるような状態は起らぬ、あれが適用されるようなことは法務省としても望まぬ、裁判所としても望まぬ、こういうお話しでしたが、それがここの文句に出てきますように労働事件公安事件でもありますが、その自分の主張しようとする、あるいは権利擁護しようとする動き法廷闘争として裁判所としても把握をして、そうしてそれに対して警備というか、あるいは警察力をもって対抗しよう、こういう御態度なのか、こういうことをお尋ねしたい。
  18. 岸上康夫

    説明員岸上康夫君) ただいまのお尋ねでございますが、私その方面の直接の主管ではございませんが、私の感じておりますところでは、正当な権利のといいますか、防御権の行使をどうこうするというのじゃもちろんないのでございまして、この法廷闘争といいます言葉の妥当、不妥当はあるかもしれませんが、要するに法廷が不当に乱れるという場合に、それを正常な位置にもっていこうというだけのことだと存じます。この経費内容は、今お話しのように法廷がそういう秩序が破壊されるおそれのあるという事件につきまして、警備員を配置したりするその警備員手当あるいは旅費というふうなものでございます。
  19. 吉田法晴

    吉田法晴君 それじゃ重ねて要望をいたしておきますが、裁判所関係経費要求に当って、法廷闘争というような言葉は私は不穏当だと思う。裁判の進行は法に基いてその権利擁護する闘争以外になかろうと思うのです。それを法廷闘争として、あたかも被告が自分の権利擁護するための活動を、罪悪視するがごとき観念がやはり法務省の中にあるのだ、芽ばえつつあるのだ、こういう感じがいたします。それからなお、裁判は私どもが信頼をしておる最後の公平な機関だと思いますが、相当の部分においてなお民主的な権利擁護されておることを認めます。認めますが、多少全体の反動化の傾向として、地方あるいは地区の裁判所等でこういう考え方をもってやはり臨もう、あるいは簡単に警察の人を要請しようという向きもございますので、考え方自体において法務省としても直してもらうところがあるし、それからその運用に当っては、法廷の問題あるいは正当な権利擁護、防御を不当視するがごときことのないように、厳重に一つ警告をしてもらいたいという要望をいたしておきます。
  20. 羽仁五郎

    ○羽仁五郎君 この裁判所に関する予算は、最高裁判所でお作りになるので、われわれとしてはなるべくそれに対して無条件的に支持したい、支持することを理想とするものなのですが、果して最高裁判所はそれだけのことを自覚してこの予算書をお作りになっているのでしょうか、どうでしょうか、まずその点を伺いたいと思うのです。司法権の独立という重大な使命を持っておられる以上は、出した予算について立法府においてとやかくの批判を受けるというようなことはいやしくもない、これは実に裁判民主化のりっぱな予算だという自信をもってこれをお出しになっているのかどうか、それをまず伺っておきたいのです。きょうこの予算を見て、いろいろな点で、今吉田委員からの御質問にもあるような点で、どうも裁判所予算が年々退歩して行くような感じがして、われわれが年々これについて多少の感想を申し上げていることは、全然御採用には相なっていない。そうすりゃ、どうも法務委員会において裁判所予算を拝見するということに、どれだけの意義があるのか、また裁判所がそれについてどれだけ期待をかけておられるのか、そういう点がはっきりしないのですが、まずその点について伺いたいのですが、もしきょうそれについてのお答えがおできになる方がなければ、次の機会にでも一番責任のある人に来ていただきたいと思うのですが、どうでしょうか、
  21. 岸上康夫

    説明員岸上康夫君) 大へんむずかしい御質問なんでございますが、一般的に申しまして、私どもの予算に対する考え方と申しますかは、裁判所の全体の機構維持しまして、そしてそれを円滑に運営していくために必要な経費といたしまして一定の額を最初要求いたしております。ところが、その要求いたしております額と、この政府の、政府と申しますか、大蔵省と申しますか、と事務的に話をいたしまして、ただいま説明申し上げました金額との間にはある程度金額的に隔たりはございます。それは裁判所といたしましては、その最初の要求通り経費事務運営上ほしい、ほしいと申しますか、あることが望ましいというのでありますが、いろいろ裁判所といたしましても、一兆円予算といいますか、そういう国の財政上の大きな基本方針というものについてやはり考慮を払う必要があるというようなことから、裁判所の仕事をやるについて最小限度どうしても必要だという経費はどうしても必要なんでございますが、まあまあ次の年にもっていってもやむを得ないというようなもの、あるいはこれはいろいろの経費のやりくりで節約してやっていかざるを得まいというふうな程度のものは、いろいろ相談の結果、最初の要求よりは打ち切る、減額するというふうなことで、個別的にいろいろこまかく話をいたしました結果、一応落ちついた数字が、ただいま申し上げた数字でございます。ですから、非常に理想的に申しますと、この金額裁判所が全部満足したという数字ではもちろんございません。しかし、現在の財政状態というふうなことも一般的に考えて、まあまあやむを得ない数字じゃないかというふうに考えておるというところでございます。
  22. 羽仁五郎

    ○羽仁五郎君 岸上局長をいじめるような意味は毛頭ないのですけれども、予算が十分あるならば、今のお話しのようにわれわれもそう心配しないのですが、不十分の予算の中で最高裁判所裁判所関係予算をお組みになるときに、どういう点に現在の日本の裁判の重点をお考えになっているのか。ことに司法権の独立という重大な使命を負うておられるのですから、あまりわれわれがいろいろとやかく申し上げることは差し控えなければならぬことが多いのです。それだけ実は御研究の結果お出しになった予算を拝見して、無条件に賛成できるような予算を希望するのですが、この点は一つどうかお伝えを願って、最近の機会に最高裁判所はどういうふうな考えで現在の予算を作っているのか、その根本方針を一つ伺わしていただきたい。それからそれに長官なりあるいは裁判官なりの御意見というものがどの程度まで反映しているものでしょうか。単に事務的にまさか予算が組まれているとは思わない。最高裁判所裁判官、あるいは全国裁判官裁判独立についての識見というものが当然現れているのだろうと思うのですが、どういう手続でそれをお表わしになっているものだろうか。それらの点について一つ裁判所予算についての根本方針及びそれをどういうふうな手続でおきめになっているのか。それらについてどうも毎年拝見していると、だんだんふに落ちない点が多くなってくるので、今の点を根本にさかのぼって伺いたいのです。  今吉田委員からの御質問がありました法廷闘争なんという文字を、予算書の上に裁判所がお書きになるということは、どういう何の間違いでこんなことになっているのか、不審にたえない。あれは大正十年ころでしたろうか、法廷闘争という言葉が一般に使われるようになって、そのときに美濃部先生が、たとえ被告なり何なりの方が、法廷闘争というような態度をとろうとも、裁判所においては法廷闘争というふうな態度をとるということがあれば、裁判は終りだということを述べておられて、私はその美濃部先生のお述べになったことを、今日もけんけん服膺して忘れないでいるのですが、現在の最高裁判所法廷闘争に立ち向うというお気持ですか。そうすれば、現在の最高裁判所は、法廷闘争の相手方として立とうとしているのだ。そんなところに国民の税金を司法権の独立だの何だのと言って予算を組むことは、全くむだなことだと思う。どういう量見でこんなことをお書きになっているのか。われわれの了承しているところでは、司法権の独立ということは、同時に司法権が清浄の立場、あるいはそういう階級闘争というものを越えた高い立場に立って初めて国民の尊敬と信頼とを受けられるということを期待している。ところがみずから法廷闘争という文字を予算の上にまで使い、法廷闘争の相手方であるという態度をとられるならば、可決権の独立を放棄したものと言って差しつかえない。そういうものに、憲法に従ってこれを裁判所と認め、国民の税金から予算を差し上げるということは、私はできないだろうと思う。その点なんか、どうしてこんなことをお書きになったのか、その点からまず伺いたい。ですから、最高裁判所すなわち最高裁判所長官法廷闘争の相手方たるそういうお考えで全国裁判をやっていこうとされているのかどうか。これはぜひ伺っておかなけりゃ、この予算審議はできない。まずこの点が第一点。こいねがわくは、こういう文字を一つ、これはほんとうにお願いですけれども、裁判所に向っちゃ要求できてないから、ひれ伏してお願いをするのですが、こういう文字はお削りを願えないものであるかどうかというふうに思います。
  23. 岸上康夫

    説明員岸上康夫君) 問題がだいぶ全般的な根本的な問題で、私には答弁できないかもしれませんが、ここに書きましたこの言葉については法廷闘争ということはどうも響きがおもしろくないという御意見につきまして、実はこの参考資料そのものを裁判官なり長官にお見せしたわけじゃないので、これは事務的に私どもの方で便宜上作った書類でございますので、その点は御了解願いたいと思うのですが、こういう言葉のよしあしにつきましては、さらによく研究いたしたいと存じます。それからまあこれは申すまでもないのですが、結局私自身の感じでございますが、裁判所法廷闘争の相手方になって闘争をするのだというようなことは全然考えていないことだと私は思います。ただ不当に秩序が乱れた場合に、それをあるべき姿に維持するためには、ある程度の実力が過去において要した、今後もそういう事態が起きるかもしれん。そのために一定の吏員も配置しておく必要がありはせんか、そのための経費ということで予算的には書き込んであるわけでございまして、具体的な法廷のやり方は、これは個々の裁判官がもちろんやるのでございますが、その場合に今御心配といいますか、御指摘になりましたようなそういう闘争の相手方であるというようなことは、これはないだろうと私は確信しております。
  24. 吉田法晴

    吉田法晴君 「対処し」と書いてある……。
  25. 岸上康夫

    説明員岸上康夫君) この言葉の悪い点は、これは研究いたします。
  26. 羽仁五郎

    ○羽仁五郎君 今の点は、実は毎年予算を拝見するときに感じておりましたですし、それから毎年全国裁判所検察庁などを本院から派遣せられて視察しております場合にも、絶えず一番私の心配しておる点なのですから、ただいまの局長説明はよく了承いたしましたが、なおその点について一つ高い御意見を伺わせていただきたいということを重ねてお願いいたしておきます。その際に局長がいろいろ御苦心になってお作りになった参考資料ですけれども、本年の分も削らなければ審議しないとは申し上げませんが、来年あたりはどうか一つこういう文字をお使い下さらないでお示しを願いたいということをこれは懇願をする次第であります。私はやはり今吉田委員もるるおっしゃいましたように、どうか一つ裁判所がやはり正義というものを実現する場所であるという、その趣旨が徹底するように、従って小さい字句の末に祭るまで、それがいわゆる対立する二つの力が、そこで力の関係で解決するのだということにならないように、局長としての御配慮を願いたいと思います。  第二の点の、やはり局長からさらにその今の根本問題に関係するので重ねて責任あるお答えをいただきたいと思うのですが、私が例年申し上げておるのは、今年もやはり昨年申し上げたような欠点が、ますますはなはだしくなっているのですが、この今の警備費、すなわち警察力などを用いて法廷を処理せられるという費用増額をしておる。しかもそれ自体はなかなか大きな額ですね。これは一億でしたか、十億ですか……。
  27. 岸上康夫

    説明員岸上康夫君) いや、一千万円です。
  28. 羽仁五郎

    ○羽仁五郎君 一千万円……、それでこの方が増額していって、そして国会図書館の支部、図書館として最高裁判所に置かれている図書館の費用というものは減額になっていますね。今年はこれは昨年にもこのことを申し上げたのですから、もう最高裁判所では十分私のこの意見はお聞き取りの上で、こういう予算を一そう私の反対する方向をますます激しくお出しになるのは、私の意見は聞くに及ばぬというまさか御意見でもないだろうと思うのですが、どういうのですか。大体が図書の費用が三分の一ですよ。これは私は昨年も申し上げたのですけれども、これを全国裁判所に割当てて見ると、大体一つ裁判所が本当に十万円か二十万円ぐらいの図書費にしかならないことになっちゃうのですね。大部分は最高裁でお使いになるのだし、あと図書購入費というものは、各全国裁判所には図書購入費に値しないような費用しか回らないのですよ。われわれ個人が自分の仕事の責任を果すために支出する図書費にも類するような程度の図書購入費にしか各裁判所には回らない。で、要するにこの予算の面でながめて見れば、例年そうなんですが、警察官を使って力で裁判をやろうという費用が、その図書などを使って理性でやろうという費用の三倍なんだ。そうしてしかもそれが力でおっ伏せていこうという方をだんだんふやして、理性で納得してもらおうという方を今年も削っていくのですね。去年もこの議論は聞いていただいたと思うのですが、どういうわけでまた今年はますますそれが激しいのでしょうか。
  29. 岸上康夫

    説明員岸上康夫君) ただいまの裁判所の図書関係の購入費は、第三表に移ってごらんいただきますと、第三表の六番の裁判関係費用の資料整備に必要な経費といううちに含まれておると存じます。この経費は何かと申しますと、備考にも書いてありますように、最高裁判所以下全国裁判所につきましていろいろな執務参考図書の購入費、それから判例集最高判例集、高等の判例集を印刷にしまして資料として各庁に配布する費用、それから判例カード、あるいは法例の索引カードを作成する費用、そういうものを一括してここへあげまして、その額が三十年度は一億三百二十七万一千円、これを前年度に比較しますと、その関係だけは約一千万円ばかり増額になっておるのでございます。先ほど羽仁委員から御指摘の図書館関係費用は、第五表の下から七番目のところに、国会図書館支部庁費とございまして、これは三十年度が二百七十二万一千円前年度に比べ二十一万一千円減になっております。これは裁判所図書館も含めまして裁判所関係全体から通じて見ますと、そういう資料関係経費は、むしろ前年度よりも若干ふえておるという結果になります。
  30. 羽仁五郎

    ○羽仁五郎君 私が申し上げておるのは、今の点でないのです。裁判所の直接関係する資料図書費は、今おっしゃったその裁判所整備に関する経費の中に盛られているのですが、私の申し上げるのは、裁判官の一般的教養という面を申し上げているのです。それで国会図書館の支部図書館としての裁判所がお持ちになっておる経費が三百万足らずであり、そしてそれが本年度もますます削られておるという点を申し上げておるのです。私は絶えず法務委員として裁判所に行くたびごとに、その図書室を拝見しておりますが、実に図書室と言うことのできないようなみすぼらしいものですね。従って御利用にちょっともなっちゃいないのです。どなたかの御寄付程度の本が少し並んでいる程度のことで、ああいうところで国民が裁判を受けるのですからね。それで裁判官の御自身が個人的にもちろん教養を高める努力は怠られないとは思いますけれども、やはり裁判所は相当一般教養に関する図書を購入されて、そして絶えず裁判官及び裁判関係せられるすべての方々が教養を高めて、そして人間的な取扱いをもって、裁判によって納得せられるならば、この警備費なんというものは、年々減っていくはずなんです。で、誰でも裁判所に行けば必ず救ってくれるという、あるいはその自分のしたことについて正しい裁判をして下さるという、自分のしたことが悪ければ、それはどういうふうに悪かったかということが納得さしてもらえるだろう。自分が無実の罪で迫害されておるならば、裁判所に行ったならば、救ってくれるというような気持ならば、裁判所に行って乱暴するというような人はなくなる。それが、裁判所に行って乱暴する人の方がふえて、裁判で納得する人の数の方が減ってくるというのは、警備費の増額ということと一般の教養費の減額というところに端的に現われている。ですから、毎年申し上げて、私も実ははなはだ遠慮しながら申し上げているんですが、情ないような気がするのです。ついでに伺っておきますが、この裁判官の研究費というようなものはどういうように現在なっているのでしょうか。一般的な教養のための研究費ですね。
  31. 岸上康夫

    説明員岸上康夫君) 裁判官の研究費につきましては、三十年度予算要求書に載せまして大蔵省の方と折衝いたしましたが、まあ結論的に申しますと、大蔵省の方では今の一兆円予算の時代に、まあ全然問題にならぬというふうな態度でございます。そこで私どもこれは相当前からの問題でございますので、われわれといたしましては重点にいたしまして折衝いたしましたんですが、結果的には認められなかった、非常に残念に思います。そういう状況でございます。
  32. 羽仁五郎

    ○羽仁五郎君 その裁判官の研究費の問題については、一ころは裁判官が特に、格別に研究費というようなものを支給せられるならば、検察官もやはりそういう待遇をしてほしいという意見があったと聞いておりますが、最近はそういう意見が出ないのですか、まだそういう意見があるのですか。
  33. 岸上康夫

    説明員岸上康夫君) それはちょっと私も最近聞いておりませんから、何ともお答えできないと思いますが……。
  34. 羽仁五郎

    ○羽仁五郎君 そうすると、法務省の方からも、ここにお見えのようですが、その点についてはどうでしょうか。裁判官に特に研究費を……。
  35. 成瀬幡治

    委員長成瀬幡治君) ちょっと係の担当官がお見えになってないのです。
  36. 羽仁五郎

    ○羽仁五郎君 私は今の点についてはこの機会に一言しておきたいのですが、検察官はやはりその被告なり弁護人なりと同じレベルの上で、まあフェア・プレーというか、議論されるわけですから、最終的なその決定をされるわけじゃない。もちろん検察官の教養も最も高いことを私は非常に期待するのですが、裁判官は特に最後の決定をされるんで、われわれ国民としては、その裁判官がどうおっしゃるかで、それがこの地上における最後の決定になるのだから、やはり裁判官が十分の教養を持たれることをあくまで期待するのです。で、今お話のように、せっかく研究費を要求せられても、それが、大蔵省がそういうものを削るという権利は私はないと思うので、特に司法権の独立ということを大蔵省が十分理解しているならば、そういうものを一兆円だの何だのという問題じゃないのだから、地上で正義が実現されるかされないかという問題なんだから、削るということは、はなはだ了解に苦しむのですが、裁判所態度もその点私は一そうきぜんたる態度をとっていただきたいと思うんです。どうか一つ、今年度でもまだそういう余地があるならば、その御努力を願いたい。裁判官の研究費を予算として支出するか、しからずんば国会支部図書館としての裁判所の図書館の費用増額するか、そのいずれかを必ず一つ実現していただきたいと思うんですが、どうでしょうか。私は裁判官を批評することはできませんけれども、私は裁判所を絶えず拝見している限りは、最近は特にいろいろ犯罪といいますか、いろいろな大事件というか、あるいは最近の若い人たちの教養というものは非常に進んでいます。新しい教育の結果もあり、そうしてなかなか古い時代の教育を受けた人々には、さばき切れないような進歩というものがあるんですから、現在の裁判官の御苦労というものは大へんなものだろうと思います。従って少しでもその裁判官が国民の納得する裁判をせられるために、専門の知識はもとよりのことですが、一般的な教養を備えられることが非常に急務であろうと思います。それがもし時代におくれていくようなことがあれば、裁判の権威が落ち、司法権の独立が害されるという大問題ですから、どうかただいまの裁判官の研究費を本年度から実現するか、しからずんば裁判所の図書館の費用増額するか、そのいずれかを実現するような御意向がないでしょうか、どうでしょうか。
  37. 岸上康夫

    説明員岸上康夫君) まことに裁判官に対して御好意あるお話しで、私どもは感激いたすのでございますが、技術的に申しますと、この国会図書館の庁費関係は、これも要求はこの金額よりも最初の要求は多かったと思いますが、各官庁に付属すると申しますか、国会支部の関係経費もことしは一律に一〇%程度減額をするからということで、裁判所といたしましても、それ以上を要求することは、ことしとしては無理だろうという結論になりまして、この程度で差し控えたいというつもりでおります。それから今の研究費でございますが、これも私どもといたしましてはぜひ実現したいという気持、これは変りはございませんですが、ことしの予算にそれをどうするということは、事務的にはこれは困難かと存じます。
  38. 羽仁五郎

    ○羽仁五郎君 ことしの予算にまだ不可能ではないでしょうから、一つ御努力を願いたいと思いますが、来年度においては、これは毎年申し上げていることですが、どうか裁判官が十分教養を持って、国民の信頼にこたえ、裁判の独立を着々実現させるように十分な教養がお備えになれますように、裁判官の研究費及び図書館の経費というものを十分に取っていただきたいと思うんです。これは何か抽象的の議論のようにお聞きになる方があるかもしれませんが、私は全くそうでない、裁判の実際をいろいろ見せていただきまして、つくづくその感じにたえないのです。最近松川事件などに関しましての社会の世論というものも、やはり裁判官の頭が相当やはりおくれているのではないかということを心配していることは、御承知のことと思います。で裁判手続さえ手落ちがなければそれでいいのだというお考えなどが、万一にもあろうとは信ぜられませんが、しかしそういう心配せざるを得ないようなことがあるし、それからやはり、たとえば事実の認定ということについての、主観的な認識というものと客観的な事実の認識というような問題について、先般来裁判官のお一人が非常な努力をせられて雑誌に発表せられた論文などを拝見しましても、その哲学上の素養などがいよいよ高いことを必要とする、現在の社会の進歩というものに匹敵したような相当哲学上の素養も必要とせられるということを痛感するわけなんです。で、この主観的な、裁判官も人間であるからその認定というものには、主観的たらざるを得ないような点があるという問題は、もう少し深く考えていただかないと、国民の納得を得られないと思うのです。あやまっていけば、裁判官は主観で勝手に裁判をやるんだというようなことになってしまえば裁判の客観的な価値というものはなくなってしまうので、そういうような議論をせられなければならないような時代になったことは、裁判官の任務がいよいよ複雑にして困難になってきたことに非常な御同情を申し上げるだけに、それに堪えられるような教養をぜひ備えていただきますように、そのような意味からも今のような点を本年度もなお御尽力を願いたいと思うのですが、来年度は必ずぜひ実現していただくようにしていただきたいと思う。いわんや裁判官の研究費も削られ、図書館の経費も削られ、両方を削られるというようなことをぜひ一つ防いで、いずれかは生かしていく、場合によっては両方とも生かしていくというように御尽力を願いたい。これは裁判所予算の部分的な問題でもあるのですが、私は実はそうじゃない、全面的な根本的な問題だと思う。  それから続けて伺いたいのは、第三に、衆議院の方でも、衆議院の議員から御質問もあったようですが、司法研修所に人が入ります場合にその入所される方々について思想調査をやっているという疑いがあります。私は日本学術会議の会員として、日本学術会議の委員会の中で、 これが国立大学の教授の方々から問題にせられたときに、非常に驚き、かつ自分の責任を痛感したのでありますが、この問題についても、これは次回に一つ十分のお答えを願いたいのです。司法研修所は、裁判官検察官、弁護士がここで勉強せられる所でありますから、そこに人が入ります場合に、いやしくも思想調査をしているのではないかというような疑いを受けられるということは、やはりこれは裁判の神聖というものに重大な害があります。ですからその点について次の機会に、この司法研修所の予算との関連において、十分の御説明を願っておきます。衆議院で御説明になりました程度では、私は満足を不幸にしていたすことができませんから、一段と深い御説明を願いたいのです。よろしゅうございますか、お願いできますか。
  39. 岸上康夫

    説明員岸上康夫君) その点は主管の者によく連絡いたしまして、答弁したいと思います。
  40. 吉田法晴

    吉田法晴君 まあ先ほど法廷警備に必要な経費について御質疑を申し上げ、羽仁さんからも深い御関心と、それから意見を承わりましたが、もう一つ別に、これは関連をいたしますので伺いたいと思います。5のところに、裁判事務の能率化に必要な経費ということで、自動車五台と、それから公判調書複写用コピア十五台云々、こういう記載がございます。こまかい数字を承わろうというのじゃございません。これを見ましても、法廷警備に必要な経費として、警察官の出動を要請する費用が多額に計上されている。あるいは能率化に必要な経費よりもこれは多い。これは数字を見れば明らかなことですが、多い。その中でも公判調書複写用コピア十五台よりも、おそらく自動車五台の更新費という方が、金額にすれば多くなるのじゃないかと思うのです。こういうものを通じて、裁判所というよりも、裁判事務経費の面から、裁判所の何といいますか、多少官僚化、あるいは合理性によらずして裁判を進めようといったような傾向が、羽仁さんの指摘されるようにうかがえる点を私どもも心配するわけです。私どもむしろ裁判に対してしろうとかもしれません。しろうとかもしれませんが、国民大衆の間にあるという点では、大衆とともに進歩しつつあるとみずから考えているのです。裁判にたまたま関連をして感ずることですが、依然として公判調書は要領筆記でやる。自由心証主義によって証人、あるいは被告、証人としての被告を含みますが、その陳述を聞いて、あとは自由に裁判官判断をする、こういうことかと思いますが、しかし陳述が要領筆記で大部分やられるというような点は、今日の社会情勢の中からだいぶ問題ではないか。あるいは相当大ぜいに関連をする事件等が多くなって参りますが、そうすると証人も多数になって参りましょう。それから不当に権利を侵害された、あるいは最近は事件警察、あるいは検察庁によって捏造をされてまで起訴をされるという事例が再び、はなはだ悲しいことでありますが、ふえているようであります。そういう際には大ぜいの傍聴者等が参るということも必然的に起って参りましょう。そうすると、たとえば、団体交渉の際にも、速記だけではなくて、あるいは録音機等も備えなければ、協定を結び、あるいはあとで協定が問題になりました場合に、どういうことが言われたかということが問題になって、録音機が持ち込まれておるような今の社会の実情の中で、ただ要領筆記を基礎にするというようなことでは、被告なり、あるいは国民を納得させることができない。従って能率化のためには、そうした事務の改善の費用も必要だろうと思うのですが、この能率化に必要な経費を見ておりましても、自動車五台という方が優先をして、おそらく公判調書複写用コピアのごときは、自動車更新費よりも少かろうと思う。あるいは最近の裁判から言いますならば、マイクをつけて法廷のすみずみまで、被告、あるいは裁判官の発言が徹底するようにという要請がございますが、これは客観的に事実ありますけれども、おそらくそういうことは従来の古い考え方からすれば、裁判の公正というか、あるいは頭の中にある神聖という点から、おそらく御賛成になるまいと思う。そういう新しい時代に即応した能率化、あるいは警察官によらない法廷の公正な進行をはかる、平穏裡に進行をする工夫については、御勘考がないのではなかろうか。従って私どもから言いますならば、法廷等秩序維持に関する法律の際の政府、裁判所の言明からいたしましても、そういうようなものは削っても、裁判官の資質、見識を高めることも必要でありましょうが、むしろそういう点にこそ改善の費用をお回しになるべきだと思います。ところがこれで見てみますると、他からの流用も不可能でありましょし、事務能事化云々という点からいっても、おそらく自動車を更新するという方が調書を作るよりもふえるのではないか、こういうことも考えられますが、そういう点についてどういう工合に考えられていますか。予算に現われましたこの後退といいますか、あるいは私は官僚化のやはり一現象が現われておると思う。あるいは裁判までも事務の面から、あるいは経費の面から一つの方向を与えられる危険を感じますが、時代が要請する裁判の公正を維持するために、あるいは能率化のために、どういうように工夫されようとしているか、一つ承わりたいと思います。
  41. 岸上康夫

    説明員岸上康夫君) この裁判事務を能率化するということにつきましては、私どもの方でもかねてから非常に関心を持ちまして、できるだけ正確にかつ迅速に法廷の供述等の記録ができるようにしたいという願望を持っておることは、今お話し通りでございます。その方法といたしまして、実はこの参考表には特に取り出してあげておりませんが、これは御承知かと思いますが、今具体的に考えておりますのは、いわゆる法廷の供述を速記する、タイプで速記する方法でございます。このために裁判所研修所に速記関係速記部というのがございまして、そこで毎年約百名近いものを研修いたしまして、そいつを各庁に配置して、それが法廷の証人その他関係人の供述をタイプで速記する、そいつを記録の一部にするようにもっていきたいということで、実は三年ほど前からその研修制度が始まったのであります。まだ現在では卒業した者はごく少数でございまして、東京とかその他ごく大きな裁判所だけに一部配置されておる程度でございますので、すべての事件関係についてそういう方法をとるということは、何年か先になりますけれども、一部はすでに実施に入っておるという状況でございます。これは私直接の専門家ではございませんが、将来訴訟法の改正、その速記の証拠力をどうするかというような問題が起るかと思いますが、いずれにいたしましても、早く正確に供述の記録ができるという点においてはいいことではないかというふうに考えて、そういう方向に向っておるわけであります。それからなお、事件によりましては録音機を使用しているのもございます。録音機関係は過去何年かにある程度の台数が予算化されまして、大体本庁程度では特殊の事件に使うには、大体差しつかえない程度に配付ができておるわけでございます。その関係費用は実は今申しました速記関係経費は、その研修関係経費のほかに、卒業生が使う速記タイプの購入費というのを三十年度で認められておるのでございますが、これはこの表の中の一番上の経費に含めて計上しておりまして、特に取り出すことをしなかったのであります。これはもう毎年きまって要る経費、経常的な経費と見まして一番の方に含めてあるわけであります。ここに出しましたのは自動車五台、これは検証用の自動車でございますが、コピアと申しますのは、記録を複写しまして合議体の裁判官が、やはり記録を一々自宅へもって帰って宅調するという不便をなくしていこうというところから始めたわけでございますが、これも全国的には相当な台数が要りますので、本年度は十五台認められたという程度でございます。  その次のデイトというのは、これは事件が判決の上訴がありました場合に、その判決書を特殊の謄写機で印刷して、そうして上訴審に送ります。上訴審はあらためて原紙を切る必要がなくてすぐに複写ができるという趣旨の目的のものでございます。いずれも事務の能率化に若干の役立つものだというふうに考えておるわけであります。
  42. 成瀬幡治

    委員長成瀬幡治君) ちょっと速記をとめて。   〔速記中止
  43. 成瀬幡治

    委員長成瀬幡治君) 速記を始めて。
  44. 羽仁五郎

    ○羽仁五郎君 先ほど申し上げました点に関連して、ぜひ最高裁判所の御尽力を願って、裁判の権威あるいは裁判の民主化を実現していただきたいと思うのですが、福井でしたかの裁判所が模範的の庁舎をお作りになった。福井の裁判所などを拝見しましたときに、福井の裁判所はあそこに移られてから後に、いわゆる法廷内の秩序が乱れたことが一回もないということを伺ったのですが、やはり裁判所の設備がよければ、りっぱな部屋でりっぱな裁判が受けられるという信頼が、被告なり弁護人なりの方々におのずとそこに沸き上ってくるので、無用な紛擾が起らないというのは、事実そうだろうと思う。福井の模範庁舎がりっぱ過ぎるというような意見があったということを聞きますが、それは裁判というものを慎重に考えない考え方からくるのであって、やはり殺風景なところで裁判が乱暴に行われているという感じが与えられれば、被告は自分の運命に関係することですから、とうてい不安にたえない。で、あれでもまだりっぱというには足りないと思いますが、さらに進んで芸術的な面からも、いろいろな面からも、法廷というものがほんとうに法廷らしい法廷を得られるということは、決して私は国の予算を濫費するとか、あるいは乏しい予算の中で遠慮すべきことだとかいうような考え方は、極力一つ裁判所は排撃していただきたい。あなたが予算の面で特に御苦労になっているので、それに対しては深く御同情申し上げるのですが、なお格段の御尽力を願いたい。先ほど申し上げましたような点、ぜひ来年はわれわれが無条件で御賛成申し上げるような予算を実現していただきたいと思います。  続いて伺いたいのは、ことに家事調停などに関してですが、名古屋の裁判所、家事調停などの実情は、われわれの調査報告書にもるる申し述べておいたのですが、家事調停というのは、ずいぶん他人に聞かれるのは好ましくないような話が隔意なく、腹蔵なく述べられて、初めてその目的を達するというふうに想像されますが、名古屋の家庭裁判所実情一つの部屋に何組もの調停事件が処理されているというような形で、こっちで話している話が隣りのところに聞えるというふうだし、ああいうふうな問題の性質上、相当しゃべってばかりいないで黙って考えているような時間もあるでしょうが、そういうときに隣りの話が聞えてきてしまって、黙って考えるということもできない。従って調停の成立の成績があまりよくない。これに反して福井の方は模範庁舎ができて、そうして家事の調停の部屋も平らな部屋で高低なんというものがない。きれいな応接間のようなところに、壁に洋画がかかっていたり、テーブルの上には花が飾ってあったり、そこでお茶などの接待もできるという、そういう好ましい雰囲気の中で調停ができるので、その成績が非常によろしいということを聞いたのですが、一例をあげて伺いますが、名古屋の家庭裁判所の改築計画というものは、この予算の中に含まれているのでしょうか。現状が改善されるようになっておるでしょうか、いかがでしょうか。
  45. 岸上康夫

    説明員岸上康夫君) ただいまの点でございますが、名古屋の家庭裁判所は本年度は計上されておりません。で、家庭裁判所につきましては、これは御承知通り終戦後制度はできたけれども、設備はゼロから出発したわけでございます。そうしてその後少しずつ家庭裁判所の庁舎の整備という目標に向って努力をして参ったつもりでございますが、何分数もかなりあります関係から、現在ではまだ名古屋の家庭まで手が届かないという状況でございます。で、私どもといたしましては、名古屋の現状も私自身もよく承知しておりますし、家庭裁判所の建物として、もちろん裁判所らしくない事情も好ましくないということは、十分承知いたしておるのでありますので、あれをできるだけ早い機会に改築と申しますか、新築と申しますか、新しく庁舎を建てるという方針には当初から変りはございません。ただ予算化するのに時間がかかるとこういう状況でございまして、まあ微力ながら、できるだけのことはいたしておりますので、今後とも十分の御援助を心からお願いしたいと存じております。
  46. 羽仁五郎

    ○羽仁五郎君 これおそらく名古屋だけでなく、各地の家庭裁判所はその家庭裁判所設置の趣旨に従っていないところが多いようにおそれておりますが、一つぜひ格段の御尽力を願って、ああいう新しい制度によって紛争が円満に解決されることは、国民生活全般にとって非常に大きなプラスになることでありますから、この予算についての大蔵省あたりの認識を啓蒙していただいて、ぜひ急速に実現を願いたいと思います。  最後に伺っておきたいのは、この裁判官及び裁判所で働いておられる方々の宿舎などの問題も、絶えずわれわれは心配している点でありますが、そういう点についてやはりずいぶん名古屋にせよ不便の点があり、毎年多少の改善がなされていれば、特に取り立てて申さないのですが、ほとんど見るべき改善がなされていないように思うのですが、それらの点については、この今議題になっております予算では、どの程度の御尽力が実現されているのでしょうか。
  47. 岸上康夫

    説明員岸上康夫君) 宿舎費につきましては、三十年度大蔵省の方に計上されておりまする公務員宿舎施設費というもののうちから、一部を裁判所予算のうちから受けまして、それによって裁判官の宿舎の整備をする。それから裁判官以外の一般職員につきましては、大蔵省の方で各庁全部を含めまして設置します公務員宿舎の一部の割当を受けまして、それを使用するという建前でございます。で、本年度大蔵省の方から移しがえを受ける額が、実はただいま折衝中でございまして、まだ金額が本ぎまりになっておりません。前年度二十九年度裁判官の宿舎費として移しがえを受けましたのが約三千八百万くらいでございます。それで全国に約三十五戸だったかと思いますが、ちょっと数字は多少変りますが、はっきりしませんが、三十数戸を新しく建てることができたわけでございます。本年度もおそらく大体それと似たりよったりの金額になるのじゃないかというふうに想像いたしております。全国的に申しますと、現在裁判官だけについて申しますと、全部の職員に対しまして、官舎のある数が全職員に対しますと約三六%、それから自宅あるいはその他借家でも安定しておる、差し当り官舎は要らないという方が全職員の約三〇%、残りの三四%が借家あるいは間借りその他で宿舎に困っておって、官舎をぜひ必要とするというふうでございます。そのうちの三四%、人数にいたしますと約八百人前後になるのですが、これが逐次整備していきたい。官舎関係裁判所、特に人事異動等にも非常に官舎のないということが障害になりまして、困っておる面もございます。その他裁判官には宅調という特殊な事情もありまして、ぜひ官舎の整備につきましては、私どもも特に重点を置いて、できるだけ多く設置するように、ただいま努力をいたしておる現状であります。
  48. 羽仁五郎

    ○羽仁五郎君 今御説明下さったように、家のない裁判官、あるいは裁判所で働いておられる方々で家の不安がかなりはなはだしいようですが、そのために優秀な裁判官を得られないとか、あるいは定員があっても、その人を得られないとかいうようなことが実際にあるようですが、特に最初から申し上げておりますように、裁判の重要性といいますか、国民にとって最後の場所であるというふうな面からも、優秀な裁判官が少くとも定員で認められているぐらいには、充実しておられることが必要でありますし、それについてもやはり何か今お話のように、およそ数百名の方々が不自由しておられる。それを何年かで解決するというふうな、何年計画かなんかの計画をお立てになってやっていらっしゃらないと、前途に希望というふうな点があれば、必ずしも今年立たなくても、来年立たなくても、二、三年後には立つというような点もあれば、裁判所あるいは高等裁判所のやり方もまた多少あるかと思うのですが、どうもいつも伺ってみるたびに、およそ十人ぐらいはぜひとも家が必要なんだが、それを要求しても、一人か二人ぐらいしかできない。従ってその裁判官に人を得ることに困難を感じているというようなことを伺う場合が多いのですが、何年計画かをお立てになってやっておられるのでしょうか。その点どんなものでしょうか。
  49. 岸上康夫

    説明員岸上康夫君) 官舎につきましては、特に裁判官の官舎につきましては、各地の実情と申しますか、現在の状況、異動上の不便ということは、相当詳しく報告を取りまして、そうして毎年それの順位の高いところから設置していくという一般方針でございます。何年計画かというお話しでございますが、結局これは主として経費関係から、経費がそれだけ入ればそれだけ短時間でできるということでございますが、今最近数年間の実績から見まして、毎年四十戸前後という状況でございますので、八百人ということになりますと、そのスピードでいけば、全部できるのに二十年かかるという計算になるのでございますが、おそらく全部裁判官について、簡易裁判所の判事あるいは判事補全部を含めまして全部官舎がそろうというのは、おそらく二十年くらい先のことになるのじゃないかという大体の見通しでございます。
  50. 羽仁五郎

    ○羽仁五郎君 二十年後に大体そろうというのは、永久にそろわないということと同じことになるのじゃないかと思うのです。またことに高等裁判所の所長の方々が各地で御心配になっておる定員が満ちていないところがかなりあるようですし、なぜ定員が満ちないのかというと、裁判官に人を得られない。なぜ得られないかといえばやはり家がない、ことに一般財政節約の趣旨に伴って定員の削減その他が行われますと、裁判官の負担が重く、いよいよ加わってくるわけですが、国家経済の困難な場合でありますから、裁判官が国民と苦労をともにされるということはやむを得ないことであるにしても、しかし同時に負うておられる任務の決定的な重要性ということを考えれば、やはり今のような点までもう少し御研究を願って、それで三十年後というようなことでなく、やはり五カ年計画とか、あるいは七カ年計画とかという点で御尽力を願い、それが当然私は一般の世論の支持も受けられましょうし、政府としてもそれを認めざるを得ないという論拠が十分にあると思う。ただその点を裁判所の御説明が十分ないために、無理解な取り扱いを受けておられるのじゃないか。私は裁判所がその事務関係予算関係の方々に、単にいわゆる事務の方々だけでなくて、裁判官がみずからそういうことに当っておられる点に非常に敬意を表するのですが、そういうことを裁判所がやっておいでになる。裁判官がみずから事務の責任を負うておられて努力しておられるというのも、裁判所事務というものが、他の行政官庁の場合と全く違って、司法の仕事の特殊な重要な意義というものが、その経営といいますか、予算なり事務の上にも実現されなければ、裁判の趣旨が徹底しない。昔のように司法省の管轄のもとにある裁判所ということになってしまっては大へんだというような意味から、事務の面にまで進んで裁判官がそれを担当して御苦労になっていることだと考えるのですが、それだけの御苦労をしていただいておるのですから、その御趣旨をぜひ一つ十分に主張せられ、十分に説明せられ、実現せられるように、繰り返して恐縮でありますが、強くお願いをするものであります。
  51. 成瀬幡治

    委員長成瀬幡治君) 他に御発言がなければ、本日はこれにて散会いたします。    午後四時八分散会