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1955-10-15 第22回国会 参議院 法務委員会 閉会後第2号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和三十年十月十五日(土曜日)    午前十一時二十七分開会     —————————————   委員の異動 本日藤原道子君及び赤松常子君辞任に つき、その補欠として岡三郎君及び小 林亦治君を議長において指名した。     —————————————  出席者は左の通り。    委員長     成瀬 幡治君    理事            劔木 亨弘君    委員            田中 啓一君            吉田 萬次君            中山 福藏君            岡  三郎君            吉田 法晴君            小林 亦治君            羽仁 五郎君   事務局側    常任委員会専門    員       西村 高兄君   説明員    警察庁長官   石井 榮三君    警察庁刑事部長 中川 董治君    法務省刑事局長 井本 臺吉君    法務省入国管理    局次長     下牧  武君    文部政務次官  寺本 廣作君    最高裁判所事務    総局人事局長  鈴木 忠一君     —————————————  本日の会議に付した案件 ○検察及び裁判運営等に関する調査  の件  (法務行政に関する件)  (司法行政に関する件)     —————————————
  2. 成瀬幡治

    委員長成瀬幡治君) これより法務委員会を開会いたします。  検察及び裁判迎営等に関する調査を議題に供します。本件について御質疑を願います。
  3. 羽仁五郎

    羽仁五郎君 昨日本委員会におきまして、去る二月の山形県の知事選挙の際に、選挙違反の疑いをもって山形県西田川郡温海町越沢小学校講師西村完司君が起訴せられたのでありますが、その問題についてではなく、この場合に第二回の公判が四月二十七、八日の両日に越沢部落総代五十嵐右衙門君宅に設けられた臨時法廷において行われました際に、検事がこの先生の受け持ちの小学校の二、三年生の学童十数名を証人として喚問された。児童はおそろしさのあまりに泣き出したという事件でございます。この選挙違反そのものについて今問題にしているのでなくて、こういう問題が教育上に及ぼす影響について文部省の御意見を伺いたい、ただしたいと思うのであります。  で、本件は直接には選挙法違反でありますが、関係してくるところは、やはり教育二法というものにあるように思われるのであります。先ごろ国会に教育二法案がかかりましたときに、私はやはりこの教育二法のいう、いわゆる偏向教育というものは教育性質上からしてその証拠がきわめて困難であろう、で教室教師が述べられたことというのは、聞く生徒によっていろいろにそれを解釈する。でほかに証拠がないので、結局しいて証拠固めをしようとする結果は、児童証人として法廷に呼び出すというようなことが起るのではないか、これは文部委員会法務委員会とが連合いたしました席上で、同僚の亀田得治議員から、当時の大達文相にその質問をしてもらいました。その際に大連文相のお答えとしては、児童証人として呼ぶということは、一般には必ずしも違法ではないけれども教育二法などに関係してそういうようなことはあり得ないと思う。その教育二法の違反ということは、証拠が明らかで、そうしてその実害が到底座視することができない場合にのみ教育二法は適用されるのであって、児童を呼んで恩師に対して証言を求めなければ証拠が固まらないというような場合を追及するということは考えられないという御答弁があったのであります。ところが直接教育二法に関係してではないのでありますが、やはりその影響において選挙法違反関係で、今回のような事件が起ったのであります。申すまでもなく教場というものは神聖なものでありまして、その教えを受ける生徒、それからその生徒にとっての恩師との関係というものはあくまで親愛の関係に立っていなければならない。しかるに法廷においてその教えを受けている生徒が、恩師に対して証人として立って、場合によっては恩師に対して不利益証言をしなければならないということは、教育に関して重大な問題があるのじゃないか、でここで想像されますのは、つまり二つの場合でありまして、一つはふだん教えを受けている恩師に対して子供不利益証言をするという場合、その子供の心情のつらいことは申すまでもない、そのつらさのあまり場合によってはその子供が偽証する、これまた容易ならざる事態に立ち至る。かつまた教師の方から考えますと、児童に対して教育をやっております場合に、その児童教師教えることをどういうふうに解釈するかわからない、場合によっては法廷証人として尋問されるというようなことがあれば、およそ何かの誤解を生むようなところまで教育が立ち入らないのがいいのじゃないか、従って一般に政治の問題にも立ち入ることを教師がちゅうちょするようになる。もちろん全国教員諸君は十分その職責の重大を自覚して、大胆にその教育任務に邁進しておられますことを私は信ずるのでありますけれども、しかしながらこういうようなことがしばしば起って参りますと、やはり人間としておのずからその教育の使命を大胆に遂行するという決意がにぶって、そうしてその言うべきことをも言わない、ことによると子供誤解して大へんなことになっては困るからということから、その教育任務を遂行することができなくなってしまうのじゃないか、こういう点で本件は、言論機関もかなりこれを重大視いたしまして、本年八月九日の産業経済新聞全国版でこれを重大な問題として取り扱い、山形県の地方の朝日新聞あるいは河北新報山形新聞など各紙がこの学童に、恩師に対して検事尋問をしているという問題を取り上げているのであります。かつまたこの小学校の二、三年の生徒でありますから、検事尋問に対して泣き出してしまう、泣き出してしまったという事実については、臨時法廷となりました五十嵐助右衛門君自身、また山形教組駒沢書記次長等もそれを目撃しておるのでありまして、検事が職権を乱用した疑うべきに足る事実があるのであります。私はこれは山形県に起った事件でありますが、最近選挙違反等関係して、そして教育二法との関連において他にも教員が不安を感じておる事実が多いので、この際文部当局からこういう問題についての所見を伺っておきたいと思うのであります。
  4. 寺本廣作

    説明員寺本廣作君) お答えをいたします。一般論として子供裁判所証人台に立たされるというようなことは、原告であります検察側の要求によってなされます場合でも、被告側教師の申請に基いてなされるような場合でも、それだけでも相当圧迫感子供に与えて、非常な不安の念を起こさせがちでございますので、教育的に見てよい影響を与えるはずはないと思います。従って関係者子供証人台に立たせなければならぬような事態になることを努めて避けてほしいと思うのでございます。一部にはこのごろの子供は、社会科教育等を受けることによって現実の問題についても相当批判力を持つようになっておるというようなことが考えられたり、また師弟の間柄でも昔と違って、まあ七尺下って師の影を踏まずというような時代と違ってきておるので、こうした事件についても聞かれると、子供たち先生について相当のことを言うだろうというふうに想像されがちでございますが、しかしこの問題は、ついこの間までいろいろ教わっておった自分たち先生を目の前において、その先生について不利な証言をしなければならないというような態度に子供が追い込まれておる事案でございますので、子供に非常な矛盾を感じさせるというふうに私どもは思います。大げさにいいますと、師弟情義に反して真実を語るか、真実をおおうことによって師弟情義に生きるかというような、おとなが立たされても相当判断に苦しみ抜かなければならぬような窮地に子供が立たされるわけでございますが、幼い子供をこうした立場に追い込むということは何としても遺憾なことだと思います。今度の事件公職選挙法違反事件でございますが、それだけでなく、一般刑法事件でも、先ほど起りました海水浴中のああいう惨事に伴い業務上の過失致死事件等も起っておりますので、子供証人台に立たされかねないような可能性のあるような事件がほかにもあるように私どもは憂慮いたしております。文部省としては初めに申しました通り検察庁側でも教師側でもいずれの側からするにいたしましても、童心を傷つけるような、子供証人喚問ということはできるだけ避けるように努めていただきたい、かように考えております。
  5. 羽仁五郎

    羽仁五郎君 文部省教育を守るために慎重にお考えになっておることを今伺いまして、感謝にたえないのでありますが、この教育二法につきましては、当時両院においても十分の質疑が行われておることでもございますし、特に教育の自由、かつまた教師が良心に基いて教育上の任務を十分に遂行するということが支障を生じますと、国家の将来にとってもゆゆしいことになるのでございますから、どうか教育二法に関し、いわゆる偏向教育または教員地位利用というようなことに関して、あくまでいわゆる法の取締りというものが必要である場合でありましても、それが必要にして最小限度にとどめられ、いやしくも教育の場を破壊することがないように、どうか文部当局におかれましても絶えず十分の関心をお持ち下さるよう、御努力下さるようにお願いしておく次第であります。
  6. 中山福藏

    中山福藏君 文部次官一つ関連してお伺いしておきます。先般新聞の報ずるところによりますというと、教師生徒をなぐって低能児になったという理由でもって、教師学校か、あるいは国か何かそこは忘れましたが、相手取って裁判を起しておる例が東京にありますね、相当頭が悪くなったというので。そういうことがあるのでしょうか、これは新聞では明らかに出ておりましたから、あなたも御存じだと思うのですが、大へんな、なぐってばかになったというので、親が損害賠償の請求を起したことがあります。それはどういうふうに文部省としてはその教師についてお取り調べなすったのでしょうか、一つ承わっておきたいと思います。
  7. 寺本廣作

    説明員寺本廣作君) 私も新聞で見た程度で、報告をくわしく受けておりません。学校教師体罰事件というのは、戦後は非常に減っているというふうに報告を受けております。ただ例外的にただいま御指摘になったような事実があることは非常に遺憾なことだと考えております。事件の直接の責任者といいますか、損害賠償事件でありますれば、被告になりますのは公立学校か、市町村であります場合には市町村が補償の当事者になろうと思います。学校の設備、教師その他の管理が不十分であるがゆえに故意、過失によって損害が起る、それが民法上損害賠償すべきものであるということであれば、普通の場合には学校設置者である市町村賠償当事者になろうかと考えます。ただいまの事件東京都であるわけでありまして、東京都が当事者になるような事件だというふうに考えます。文部省としてはこうした体罰事件などが行われないように、教育の全体の方針をそういうふうに持っていくべきだということに絶えず注意はいたしておりますが、ただいまの事件、私大へん申しわけないことでございますが、具体的な事件の結末がどういうふうになっているかというようなことは、ただいまここに資料を持ち合せておりません。御了承いただきたいと思います。
  8. 中山福藏

    中山福藏君 これは私もうすぼんやり記憶しておる問題でありまして、たまたま文部次官がお見えになったからお尋ねしておりますが、しかしこれは相当写真が掲げられて大きく取り扱っているのですね、新聞が。私は学校先生生徒をなぐってそれが低能になって、親から損害を請求されるというような、こういう事態が今日起ってくるということは、羽仁さんの立場からいえばまるでこれは反対の事柄を問題にしておるようなものでございますが、そういうふうな教員が万一あったとすれば、これは処分して罷免するとか何とか、これは裁判の結果を待たなければおやりにならぬのでしょうか。どういうふうにそこは一般学校には指示してあるのでございますか。ちょっと承わっておきたいと思います。
  9. 寺本廣作

    説明員寺本廣作君) 教職員非行事件について、具体的に文部省からそういう指示をするというようなことはいたしておりません。ただいまのところ先ほど申しました通り教職員の身分を扱っておられますのは学校設置者でありまして、特に全国的に非常にそういう傾向が起って、文部省として全国的に問題を処理しなければならぬというような事態でありますれば、文部省から地方に対して、地方教育委員会に対して助言勧告をするという措置をとっておりますが、ただいまの事件については、非常に異例の事件ではございますが、この問題が起ったために特にまあ文部省から措置をする、その処分について、教職員処分について何らかの指示をするというようなことはおそらくいたしておらぬだろうと思います。地方の都道府県の教育委員会なり、市町村教育委員会なりで非常に非常識な事件でありますれば、通常こういうのは処置いたすだろうと思っております。
  10. 田中啓一

    田中啓一君 今の中山さんの御質問関連してございますが、ただいま損害賠償のお話がございまして、実は私はあまり法律をよく知らないのでありますが、しかし議員というものはこれはむしろ立法者なんでありまして、まあ少しでも法律的に勉強しておかなければならぬというので御質問申し上げるわけですが、賠償責任管理者であるといってまあいらっしゃるのですが、それだけ伺っておりますとね、多分それだけじゃないのだろうと私は思いますけれども、本人は責任はないのだというようなふうにもとれるような、そんなことばないのだと私は思いますですよ。だからおそらくこれは管理者にも責任があるという御趣旨であったろうと私は思うのでありますが、今日そういった思想があるんですよ。先生がそうだとは私は思いませんですよ。でありますから、これはやはり学校先生生徒の場合でありましても、やはりまずなぐった者が責任を負わなければならないのだ、賠償責任はもう当然のことだ、こういう私はことだと思うのであります。その点を一点明らかにしていただきたいことが一つ。  それからもう一つはですね、このまあ私どもそういうばかなことがあるのかなと思うようなことが新聞にちょいちょい出るのですね。それはですね、私が先日予算委員として東北地方を回っているときに、岩手県の新聞に出た事件でありますが、どこか岩手県のいなかの方の東南部であったと思います。学校で相手は女の先生であったか、あるいはそうでない婦人であったか忘れましたのですが、集団暴行をやったというわけですね、宿直室に集っておって先生たちが。まあ大きく出ているんですよ。私はそういった記事はいやですからね、あまり中もよく読んでもみなかった、個人から言えばそんなことは早く忘れたいのです。ところがやはり先ほど申しましたように、ほんとう教育場所というのは、私も若いとき先生をやっておったのでございますが、神聖な場所としておきたいのですね、それが私はほんとうの人情だと、人間人間性だと思います。それがこのごろ妙にいや学校先生人間だ、こういうような思想が一面どうもその戦後現われてきたのじゃないか。で、まあ修学旅行などでもですね、先生たちが別室で、よその場所で酔っぱらっている間に、生徒があまり立ち寄ってはよろしくないようなところへ立ち寄ったので、警察でまあ生徒をとめて学校先生を呼び出してみると、その酒気を帯びてしどろもどろでもらい下げをやったというようなことも出ましたり、とにかく私はこれもほんとうにそうかと思うのですけれども、これは私の県での学校にあったことですけれども、これは生徒がデパートで集団万引をやったんです。それでそいつは二年続けてやったんです。そういうようなことですね。でどうも何らかその底を流れる一理共通なものがあるような気がしてならないのです。まあ教室の方は神聖だから、先生は飯は食わねど高ようじというような、そういういわゆる村夫子のような格好をしたってつまらんのだと、なに人間というのはそんなものだというようなところから、そいつが今の岩手県のようなことがもし事実としますれば、これはおそらく何人も常識を逸するような事件じゃないかと思うのですよ。一人くらいの人がこっそりそういうようなことをやったというなら、それはまだわからぬことはないのです。ですが集団暴行に至ってはこれは実に常軌を逸した、われわれの想像に絶するような事件だと思うのです。これは新聞が針ほどのことを棒大に報道したものならばそれまでのことですが、やはり私は文部省としましては、今昔のようなふうに一つ命令系統人事管理していらっしゃるわけではないのですから、まあ間接的に必要な場合は教育委員会勧告ができるというようなことではありますが、やはり私はしかしこの勧告権というものはきわめて重大なものだと思うのです。でありますから、今の子供をなぐったというような事件、あるいは私が申した集団暴行というような事件、こういうのはむろんきょうはそんなことを質問申し上げることを申して連絡しておいで願ったわけではありませんから、それは今政務次官が一々実は具体的には報告を受けておらぬとおっしゃるのは当然のことでありまして、その点は何も言うことございませんが、私はやはり文部省としては相当私が申したような意味でこれは御注意を願い、絶えず御調査を願って対策を難じ、必要な勧告をするというようなことはぜひ一つやっていただきたい、こういうように一つ存じますので、これらに関する御方針もあわせてこの際お伺いしたいと思います。
  11. 寺本廣作

    説明員寺本廣作君) 先ほど中山委員に対する私のお答え不十分であったかと思うので、補わしていただきたいと思います。御指摘のような誤解が起る点はできるだけこれは訂正しておかなければならぬと思います。私が申し上げましたのは、被用者の、雇われておる者の業務行為に関する違法行為があった場合に、それによって損害をこうむった者が雇用者に対して求償する場合の一般論を申し上げたわけでございまして、雇用者賠償責任があることによって、違法行為をやったその当時者が免責されるものでないということは全く御指摘通りでございます。その点補わしていただきたいと思います。  なお集団暴行集団窃盗など、いろいろ教育関係あるもの、場所などでの不詳事件についていろいろ御指摘がありました。さような事件が起ったことを私も非常に遺憾に考えております。ただ集団暴行であるとか集団窃盗であるというような、まあこれは刑事事件と言いますか、何人が見ても悪いことであって、そういう事件が起ると、そのつど文部省から地方教育委員会に対して助言勧告をするというようなことは事件性質からいっていかがなものであろうかと考えます。問題はむしろこうした刑事事件が非常に教育場所なり関係者の間で起ってくるというようなことは教育内容、戦後偏理に関する教育その他いろいろな点でまあ遺憾な点があるというふうに議論をされております。これを昔のような形で修身科の復活というような形で取り上げるか、あるいはいろいろな学科の教育の中に織り込んで子供たちが受け入れやすいような格好で織り込んでいくか、そこは議論の分れるところでございますが、全体として倫理問題についての関心が比較的少くなったんではなかろうかということが、まあ一般に反省されつつある時期であると考えます。そういうことでむしろ教育内容としてそういう事件が少くなるように、教育内容に改善を加えていくべき問題ではなかろうかと考えますが、十分さような点考えまして、今後の文部行政上の参考にして参りたいと考えます。
  12. 田中啓一

    田中啓一君 これはそれに関連もあり、教育の問題でございますが、例の暴力教室ですね、映画の。私は実はその映画そのものを見たんじゃないのです、その映画の広告をよくほかのフィルムをやっているときにやるのでそれを一部を見ただけなんです。言語道断な教室であります。こういうものの輸入を黙って一体見ておらなければならぬのだろうか。いろいろ一種の思想取締りにもなり、思想の自由でありますか、というようなものに対して制限を加えるということになります。問題はなかなか深刻なところにあると思うのでありますが、しかし外貨割当というものは今日日本国際経済の状態から厳然たる国家管理のもとに置かれておるわけです。まああのアメリカ暴力教室だけと言わず、とにかく劇というものはああいうものかもしれませんが、日本劇そのものにもむろんそういった暴力的な要素がないわけではない。いろいろな問題になるものもあると思いますが、実際あれだけアメリカから暴力的な場面映画が入ってきて、しかもこれは学校を対象にした映画であって、実にひどいものですね。私は一場面を見ただけでありますけれども、どうも私はまことに素朴な常識的な感情から申するのでありますけれども、国民は黙ってドルを払って入れなければならぬとは私は思われないのですね。でありますから、やはり私はその教育というものは環境というものはできるだけおとなが整理をして悪影響のないようにするということが私は大事なことだろうと思うのです。それで教育の場というものは神聖になっていくわけです。一方学校を出ればああいうものがはんらんしているということでは、やはり教育の場を守ろうとしても守り得るものじゃないのじゃないか。だから広く映画検閲だとか、フィルム検閲だとか、あるいは思想制限だとかいうような問題が掘り下げていけば根本にございましょうが、外貨割当の点から取ってもらって取れぬことはないのであろうと、こう実は思うのです。でもうこの経済問題に関しますと、そんなものは輸入する必要はないのだということで、全然外貨割当はやらない、必要なものだけ輸入する、これは明らかなんです。そうすれば、私はフィルムだとてそうではないか、これはやはり議会も関心を払わなければならないのは当然でありますが、文教の責任者であられる文部省というものもこういった一つ対策をいろいろ御考慮なさって、そうして円満な共同生活が送っていけるようにしていただくということは、私はいいことではなかろうかと、こう思うのでありますが、これは今すぐ結論というわけにはいきますまいが、これに対する御所見御所感がございましたら、一つ御表明を願いたいと思います。
  13. 寺本廣作

    説明員寺本廣作君) 御指摘のように、映画青少年に与える影響は非常に深刻なものがございますので、文部省としても映画の問題については十分関心を払っております。国内映画につきましては業者の自主的な申し合せによりまして、映画倫理化委員会というものがございまして、子供に見せるのは好ましくない映画というものについては、この四月から各映画館切符売場成人向きという札を出すことになっております。その際に、この映画は十六才でありましたが、十六才未満の人は見ないようにということを書き添えたそういう札を出すことになっております。それで国内映画につきましては、大体まあ青少年に対する悪影響を防ぎ得るような措置がとられておるわけでありまして、輸入映画につきましても、イギリス、フランス、ドイツなどの映画業者は、やはり日本国内映画倫理化委員会審査を受けるという建前になっておりますので、同一措置外国映画をふるい分けることができるわけであります。ただアメリカだけが、御承知のようにアメリカにやはり映画倫理化委員会があって、それを通過したものであるから日本でまた再び同様なものを受ける必要はないというようなことで、今日まで日本国内映画倫理化委員会審査を受けることを拒否しておる状況でございます。これに対して私どもの方では、アメリカ日本の国情というものはまるきり違うのであるから、やはりアメリカ映画で向うで審査を受けたものでも、もう一度日本映画倫理化委員会審査を受けてくれるようにと前から交渉をいたしております。ただ今度の御指摘暴力教室であのような不祥事件が起りましたし、この機会にもう一度これを強くアメリカ側に交渉したいということで、ただいま映画関係者を通じて向うと折衝をしておるという状況でございます。暴力教室につきましては、ああいうような事件が起りましてから、映画倫理化委員会の方々、並びに文部省にありますところの優良映画の推薦をいたします映画審議会の委員の方にごらんをいただきまして、なるほどこの映画教育上非常に悪影響を与えるだろうという結論に達しましたので、文部省としては県教育委員会地方教育委員会に対して、そういう委員会の委員の方々の意見を付しまして、学童に対してこういう映画を見せることをとめていただきたいということで関心を呼び起しております。  なお輸入映画外貨割当の問題につきましては、占領以来とられております前年度実績で翌年度の外貨割当を、外貨の所要額を割り当てるというようなやり方には非常に問題があると思います。再検討すべき段階に達しておると思います。今度内閣に御承知のように映画審議会を設けまして、これらの問題を審議することにいたしておりますので、御趣旨のような結論に到達することができようかと思います。
  14. 中山福藏

    中山福藏君 もう一回念を押しておきたいと思います。先ほど私から質問した問題でありますが、これは毎日新聞の三十年十月十三日に出ております。私の質問した暴行事件、これは文部省、日教組、PTAが問題として取り上げておるということを新聞が報じておる。だから文部次官としては当然御存じなければならないはずです、新聞の記事がもし事実とすれば。文部省の権限というものは文部省設置法の第五条に、これは大体第一号から第三十二号まで掲げられておるこの権限のうちの第十九号ですね、「地方公共団体及び教育委員会、都道府県知事その他の地方公共団体の機関に対し、教育、学術、文化及び宗教に関する行政の組織及び運営について指導、助言及び勧告を与えること。」ができると、まあこれは助言勧告というお言葉を文務次官お使いになっているのですが、私の申し上げました教育委員会なんかに指令なんかの問題をいろいろやるということができるようになっておりますが、私の御質問申し上げた点についての問題は指導、助言勧告の中に入らぬというお考えを持っておられるように先ほど聞こえたのですが、どうでしょうか。この点は一つはっきりさしておいていただきたい。
  15. 寺本廣作

    説明員寺本廣作君) ただいま御指摘になりました文部省設置法の規定、御存じのように設置法では権限を付与するというよりも、各実体法規にある権限をそこへ並べている、個々の実体法規で権限を与えているのを並べているという書き方だろうと思います。それで教育委員会法などにも助言勧告のことは入れてございます。指導なり、指揮、命令なりの問題になりますと、それぞれ実体法規で文部省に権限を付与している、これに指導権なり指揮権なり命令権なりがあろうかと思います。その文部省設置法の規定だけから文部省が都道府県なり公共団体に対して直ちにいかなる場合にでも指導権が出てくるというふうにはまあちょっと解釈しにくいのではなかろうかと考えます。ただ先ほどの問題につきましては、私の説明が不十分であったと存じます。体罰事件のような問題について文部省が指導なり助言勧告——指導じゃございません、助言勧告なりをすべきでない、ないしは文部省助言勧告をするという、その教育委員会に対して実体規定があるわけでございますが、そういう規定のほかにあの事件は置くべきだというふうに私が考えたわけではございません。やはり事件としては非常に遺憾なことでございますので、注意勧告するということは適当であろうと思います。ただその教員を免職にしろとか、どの程度の懲戒にしろというようなことを文部省が具体的に指示するということは行き過ぎであろう、こういうふうに考えます。
  16. 中山福藏

    中山福藏君 私は別に具体的にかれこれなさいということを申し上げたのでございません。どうも先ほどの御答弁では、法律の条項の精神をはき違えていらっしゃるのじゃないかという考えを持ったものですからお尋ねしたのですが、ことにこの新聞に、もう一回申し上げますが、「小中学校教員による体罰行為が最近ぐんとふえている。」とこう書いてあることで、これはぐんとふえた結果、文部省でもこれは問題になっていると思うのですが、どうか助言勧告、指導ということについて十分一つ御研究を賜わって、教師もにこにこ笑って教育の任に当り、生徒も嬉嬉として親のように慕うというこの情勢を作り上げなければ、やはりここに人権じゅうりん、こういう問題も起ってくると、かように考えます。ですからもう少し真剣にこの問題とお取り組み下すって、一つ文部大臣とも御相談の上適当な処置をとっていただきたいと、かように考えます。
  17. 寺本廣作

    説明員寺本廣作君) お話のような御趣旨に従いまして、十分研究したいと存じます。
  18. 羽仁五郎

    羽仁五郎君 先ほど中山委員が私を引用せられましたので、その点について一言釈明しておきたいと思います。私はやはり教師児童に対して暴力をふるうということはあくまでも許されないんだということを強く終始一貫確信しておるものであります。私の数えました人が不幸にしてそういう状況に陥りましたときも、私は涙をのんでその人を許さないという態度をとったのであります。先ほどからの各委員に対する文部次官の御答弁の中にちょっと私の気になる点がございましたので、今一応最初の私の問題に対しましての問題の関連において、三点ばかり伺っておきたいと思います。  第一は、やはり文部次官文部省の現在のあり方及び現在の教育の民主主義のあり方につきましては、先ほどからの御答弁によって深い認識をお持ちになっていることは深く敬意を表するのでありますが、先ほど教育内容ということに触れられた点で、私はやはり少し心配をするものであります。私が本件についてお願いをいたしましたことも多少そういう問題に関連をしますので、各委員からの御質疑があったことと思うのでありますが、私が今伺いたい三点と申しますのは、第一点は文部省が他の行政機関との連絡をよくはかられて、そして他の行政機関が教育の場をいやしくも侵すことがないように御尽力を願いたいと思うのであります。この一例としましては、先年東大において起りましたポポロ座事件については、すでに裁判第一審の判決が出ておりますが、この場合にはやはり大学の自由というものが最高のものであるということを裁判所においても認識せられ、りっぱな判決が出ております。やはり文部省はあくまでも大学の自由、また各学校の自治というものを尊重せられる趣旨に立たれまして、ただ他の行政権力が、どうかしますと大学の自由や学校の自治を侵害をするおそれのあるような行為に出ることがございます。最近御案内のように、新聞紙上でしばしば警察官が生徒あるいは学生の思想調査をやるというふうな事件が起っております。で、本件の場合も検察官が児童の人権を侵害した疑いがあるのであります。そういう意味で特に最近の事件にかんがみて、検察あるいは警察がそういう方面において児童生徒、学生、これらの教育を受けている人々、並びに教員、これらの人人も教育という最高の意義を持った仕事に全力をあげて不安なく努力を尽されることができますように、いやしくもそれに不安を与えないように、絶えず連絡をしていただくことができるかどうかという点が第一点。  それから第二点は、教師が不幸にして生徒に対して暴力をふるう、あるいは教師人間としても恥ずべき暴行的な行動をとるというふうなことについて、私は深く心を痛めているものでありますが、文部省のなすっていることで、そういう点で私はお願いしたいと思うのは、やはり今日の学校建築が学校の場としてふさわしくないところがずいぶん多うございます。で、学校の中で教員教育をするのは、やはり最上の環境が与えられたいと思うのです。で、これはそうぜいたくなことを私は希望するのではございませんけれども、私自身の経験から申しましても、学園が美しいということは必要であり、どうしても非常に乱雑な、きたない、そしてどうすることもできないようなそういう校舎の中で教育をしておられる、この教員の苦労というものは察するにあまりがあるのであります。私ども全国において実験いたします場合においては、ずいぶん二部教育であるとか、あるいは教員子供たちを最も望ましい環境において教育をなすことが不可能じゃないかと思えるような、そういうところがある。その点で文部省はもう少し教育を行われる設備、学校の校舎その他に対して、これは文部省自身が負うておられる責任において御尽力を願うべきではないか。教育の内容に云々せられる前に、その教育の設備についてやはり尽さるべきことを尽していただきたいというふうに考えるのです。  それから第三は、やはり教員の教養が不幸にして今日十分ではないように考えられます。これも内容的の御指導をいたただくということは私はお断わりをしたいと思うのでありますが、教員教員たるにふさわしい教養を高めるだけのあるいは学校図書館その他の設備において、遺憾ながらきわめて不完全である。これは私も実際痛心していることでありますが、これらの点につきましてもやはりこの学校において共同に図書が購入せられて、教員の教養が高められる、かつまたその図書の購入については自由に図書が購入せられることが望ましいと思うのでありますが、この第三点についても、やはりこれは文部省助言し、勧告し、あるいは他の行政官庁に要望せられることができるのではないかと思うのでありますが、各委員からの御質疑を伺っておりまして、私がふだん痛心していることにも関係しておりますので、以上三点を伺っておきたいのであります。
  19. 寺本廣作

    説明員寺本廣作君) 第一に御指摘になりました、他の行政機関に対して教育立場を十分に守るように主張し、連絡をするように、これは御指摘通りぜひ一つどもとしても心がけて務めて参りたいと思います。  それから学校の建物、場所教育の環境をよくするようにというお話がございました。幸い今年から二部教授、三部教授というような都市の不正常授業の解消をするための建築に対する助成金も本年度から出るようになりましたし、東京都などでもこの点はずいぶん不正常授業の解消が促進されていることと存じます。  学校の環境の問題は、都市計画、市街地建築物等いろいろの法律の関係もございますが、御趣旨のようにできるだけ改善に努力して参りたいと考えております。  教員の教養を高める図書購入の問題など御指摘がございました。教員の講習会場への出張旅費の問題とか、図書購入の問題とか、日々こういう問題については組合の方からも非常に要望がありまして、本年度もいろいろ議会側の御協力を得まして、予算の増額をもらっておりますが、来年もぜひこういう点には力を入れて参りたいと思っております。
  20. 吉田法晴

    吉田法晴君 せっかく文部次官おいでになっております際に、一点来年度予算に関連してお伺いいたしたいのであります。それは基地周辺の教育関連してでありますが、風教上の問題については時間がございませんから省略をいたしますが、騒音が最近増加をして参り、ジェット機の発着をいたします飛行場の周辺において一週間統計を取りますと、一週間に一日分は完全に授業ができない。従ってこれはまあ六分の一といいますか、五分の一と申しますか、実際にはそれ以上になると思うのでありますが、大学から小学校に至りますまで、あるいは幼稚園、保育所を含めまして教育が不可能になって、質の低下が今のままに放置いたしますならば必然になって参ります。そこで去年——おととしと申しますか、最近は防音装置をするという御方針のようでありますが、昨年から今年にかけて実際にやられた結果、夏は高温になって、それから空気も汚染をしてその目的を達しない。しかもホーン数の減少は所期されるような効果を上げることはできない。数字は上げなくても御承知だろうと思うのでありますが、これに対してどういうように今後対処せられようとしておりますか。その一点だけ一つお尋ねをしておきたいと思います。
  21. 寺本廣作

    説明員寺本廣作君) 基地周辺の学校での騒音防止問題、これはまあ最も解決に困難を感じておる問題でございます。御指摘通り今までは騒音防止施設を装置をするということに主力を注いで参りました。お言葉ではございましたが、防止設備をしたところはある程度効果はあると思います。ただ空気が非常に汚染される、夏の間は非常に温度が高くなって耐えられぬ、それでせっかくの防止設備が使えぬというような点は御指摘通り事態が起っておると思います。今のところ騒音防止施設を充実していくという以外にこれにかわるいい方法というのは当面何としても考えつきません。この点は一つ基地があるという現実をまあ一応前提にしながら、何かいい方法はなかろうかということで非常に苦心をしておる現状でございます。非常に残念でございますけれども、現在のところ文部省としては騒音の防止施設をふやしていく、その防止施設を改善していくということ以外にいい案を考えつかぬということを申し上げるだけにさしていただきます。
  22. 吉田法晴

    吉田法晴君 時間がありませんから長くは申し上げませんが、お話の通りに百ホーンに近い数字が七、八十には下ります。下りますけれども、この教育上の効果云々という点からいえば、所期の目的を達することができない。それから空気が汚染され、夏は暑くなって子供はもうぼうっとなってしまう。そこで今までのところでもこれは学校を移転するよりほかない、九大でもあの飛び立つ直下ですし、非常に実験ができない。だから板付を移すか学校を移すかしてもらいたい、そこで福岡市内からの板付移転という要望が五十万市民の一致した要望で出ておるわけなんですが、結局小学校についてはこれは移転せざるを得ないだろう。そこでなおこれは今までやってみたけれども、結局失敗であった、こういう結果が出ておるわけであります。しかも今後ジェット機がさらに大型のジェット機が発着するということになれば、さらに騒音は大きくなるということを当然予測しなければなりません。そこでこの一、二年の騒音防止という方向でこられたのはそれは失敗であった。さらに騒音は大きくなる、こういう現実に立って来年度の方針を立てられるのでありますから、それは困った問題だけれども、基地を前提にすれば騒音防止以外にはないというこういうお言葉でありますが、もっと御検討をいただきたい。  それからさらに学校教育機関、あるいは移転先機関、こういう問題についてももっと文部省としては一つ前提を是認した上でなくて、百尺竿頭一歩を進めて御検討になることを要望しまして、私は質問を終ります。
  23. 成瀬幡治

    委員長成瀬幡治君) ちょっと速記をとめて。   〔速記中止〕
  24. 成瀬幡治

    委員長成瀬幡治君) 速記を始めて。
  25. 羽仁五郎

    羽仁五郎君 最高裁判所に対して質問を許されたいと思います。問題は司法研修所に入所される方に対するいわゆる思想調査についてであります。たびたびこの問題について質問をしなければならないことをはなはだ遺憾に考えます。かつまた私どもは立法府でありますから、あくまで司法部に対して干渉がましく立ち入るというようなことを極力差し控えたいという心持、司法部の独立というものを心から念願をし、できるだけ何も申し上げたくないという気持でありますのに、申し上げなければならないということを実に遺憾に考えます。以上の点をお含み下すって次の点にお答えを願いたいと思います。  大体この要点は三点でありますが、この前に本委員会において最高裁の御意見を伺いましたときのお答えが新聞紙上に報道せられて、それに対していろいろな意見が出ておりますが、その中の一つでありますが、この前のお答えに、やはりある程度の身元調査というものはしなければならぬ、それは思想調査とは考えないというそちらのお答えでございました。その理由として、やはり入所した人たちは国からある程度の手当を受けるのであるから、従ってそういう身元調査をしなければならぬ。法律を重んずる精神に欠けているとか、あるいは法廷を侮辱するとか、そういうようなことのある人は入ってほしくないというようなお答えがあったようであります。これはまた最高裁におかれましては、十分に一般にいわゆる今日国家公務員法などによりましてもそうでありますが、特に司法研修所に入所するというような人に対する試験の限界ですね、というものをもう少しはっきりされないと不安が解消されないのじゃないか。というふうなことも、これはまあ果してどういう理論的根拠に基いて、またどういう内容を持っておるとお考えになっておるのか。やはり単純な試験ですね、将来裁判官あるいは検察官、あるいは弁護士としてその職務を遂行することができるという必要にして最小限度の入所試験というものにとどめられるべきではないか。そうでありませんと、憲法に違反するというようなおそれも起ってくる。また身元調査というものの範囲も、あるいは幅が広くなったりして不安を与える。この点について特に最高裁判所のはっきりしたお答えをいただいておきたいのは、最高裁判所の最高の使命は憲法の擁護にあろう、最近不幸にして警察あるいは検察関係から、この思想、信条というものの憲法によって保障されておる自由の侵害の疑いのある事件がひんぴんとして起っておる。こうした際に最高裁判所がこういう問題についてやはり疑いをお受けになるようであるならば、一体われわれは何によってこの憲法の保障する基本的人権の尊重ということを実現することができるのか。最高裁判所が負うておられる特別の重大な使命にかんがみられまして、司法研修所に入所せられる方々に対する試験の内容は必要にして最小限度にとどめられるお考えがないか。従いまして、その方がたとえ過去においてあるいはいかがであろうと思えるような人であるにしましても、人は過去のあやまちを常に改めるということをしておるものでありますし、従って一般に同じ事件について二度裁判を受けないというような原則もあることですし、そうして憲法が保障しておる思想、信条その他によって差別を受けないという趣旨を最高裁判所が特に率先して尊重せられ、実現せられる趣旨から、この入所の際の試験についていわゆる身元調査というようなものを私はなさるべきではないのじゃないかと思う。その方が裁判官あるいは検察官あるいは弁護士に適任なりやいなやは試験の結果だけで御判断になったらどうですか。その試験の答えによって判断せらるべきである。さかのぼってその人の過去まで洗うというようなことをなさるべきじゃないのじゃないか。最高裁判所がそんなことをなされば、検察なりあるいは警察なりが人の過去を洗って、たたけばほこりが出るというようなやり方をどうして一掃することができましょう。今そういう弊害がひんぴんとして起っておる際に、特にこの点についての御意見を伺いたい、これが第一点であります。
  26. 鈴木忠一

    説明員(鈴木忠一君) お答えします。基本的人権を尊重して思想その他の信条、そういうものの相違によって差別待遇を受けないという原則、これは毛頭異存がございません。それからただいま具体的事件として司法研修所に入所する際に、試験に合格したのみで、それで採用してもいいじゃないか、それ以上さらにいわゆる身元調査というようなことをする必要がないじゃないかという御意見、これに対しては若干異論が私もあるのでございます。と申しますのは、形式的に申しましても、司法試験に合格したということはもちろん学力の点においては国家がこれを将来裁判官、検察官、または弁護士として成長する資格があるのだということを公認されたことになるから、この点は異論がないと思います。しかし形式的に申しますと、司法試験に合格した者のうちから最高裁判所がこれを任命するということになっております。だから司法試験に合格した者すべてを採用せよとはいっておらない。しかし実際上、司法試験に合格したものは九九%、一〇〇%といっていいほど採用されておりますけれども、形はそうなっております。なぜそうなっておるかということをわれわれ考えますと、この前にも申し上げましたように、司法修習生は現在修習期間中も、それから修習終了後も少しも国家に対する法律上の義務というようなものは何ら負担させておらないのです。これはおそらく国会が当時発足なさったときに将来をお見通しになって、裁判官、検察官ないし弁護士というものは結局国民の基本的人権に沿う擁護者の地位なんだから、だからそれはいわゆる無料で教育しても将来必ず有形無形に国家に対して、社会に対して貢献する人物になるということを予想しておる建前だろうと、私どもは思うのです。そういたしますと、ただ試験に合格したから将来国家の期待に一応沿うような適格性があるかどうかということは、これはやはり一応私ども責任者としては考えなければならないことじゃないかと思うのです。ここがおそらく立場の相違、議論の相違だと思います。  それからもう一つよく言われることなのですけれども、なるほど検事または判事になるにはある程度の調査もいいだろう、しかし在野として弁護士として活動する分野が司法修習生の将来というものにはあるのじゃないか、そのものに対してこういういろいろな規制を加える必要はないじゃないか、これはわれわれの間でもたとえば司法研修所の試験の及落をきめる際に、そういう議論が時々出て議論分れをします。と申しますのは、弁護士だからある種の寛大さを持たせて司法研修所に入れてもいいじゃないか、弁護士になるのだから合格させてもいいじゃないかという議論は、今の少くとも法律の建前、裁判所法の建前から言いますと、いわゆる在野から裁判官、検察官を採用するという建前から言うと、将来司法研修所を出たものは甲乙なく判事に採用し得る人物であり、検事に採用し得る人物であり、そして同時に弁護士として社会から非難を受けることなき人物たることを私どもは理想としてもいいじょないか、こういう立場に立ちまして、このいわゆる身元調査というものをやるのです。しかしこれはこの前にくどく申し上げましたけれども、決して思想そのものを調査しようというようなことを目的とはいたしておらないのです。これは各官庁で職員を採用する場合にも、私の会社で採用する場合にも一通りどういう人物か、勤惰その他の性格を前に勤務しておったところ、出身の学校等について調査をいたす例と同じです。それから採用する際の面接の際も、思想がどうだとか、政党がどうだとか、過去にどういうことをしたかというようなことは、これは原則として聞いておらないのです。聞くのは、ただ家族関係と任地の希望というのがこれが原則なんです。これが百人のうち九十八人がそうなんです。ただ思想調査云々ということが問題になりますのは、身元を調査した場合に、学校に照会いたしますと、停学させたとか、こういうことをしたとか、それから郷里の方に照会いたしますと、こういう前科があるとかいうようなことが、これは例外でありますけれども、いわゆる法曹として、裁判官だろうと検察官だろうと弁護士だろうとを問わず、ひっくるめて法曹としてそういうものが一体なった場合に、ああいう人が弁護士になっているのか、ああいう人が検察官になっているのかと言われる程度の問題になる者のみが、わかった場合にそれについて一体どういう事実なんだということをわれわれは調査しているのです。しておりますけれども、そしてその結果を、私の事務局の方で調査をいたしました結果を裁判官会議に出します。しかし、裁判官会議は、これは採用してはいけないというように終局的にはきめておらないというのが実情なんです。どうもこれは少しおかしいからしばらく様子を見ておったらいいじゃないか、いわゆる言葉をかえて申しますが、少し期間を置いて様子を見ておったらいいじゃないかという意味で留保をいたしておるのが実際であります。それから多くの場合は翌年大ていは採用いたします。採用いたす際には、事務局の方でまた去年調べたことその他について、地方の者は地方裁判所等に連絡いたしまして調査いたします。その結果は大てい採用いたしております。それからなお、ただいま過去にどういうことがあっても現在さえよければそれでいいじゃないかとおっしゃることは、これは私はその通りだと思います。過去にどういうかりに間違ったことがありましょうとも、ことに修習生になるような者は若げの至りなんですから、若げの至りというと語弊がありますけれども、まあそういうものなんですから、間違いがあるくらいの者がかえって間違いないと私は思います。ですから、これは申し上げていいかどうか存じませんけれども、東大で一年間休学になって、そして、それは特定の政党に属しておって、その指令に踊らされて学校で騒動をして、一年休学になった人があります。これが休学中に勉強しまして、司法官試験を通って採用を申し込んできた場合には、私は面接しましたけれども、そういうあれがありますから一年はこれは留保されたのです。翌年採用いたしました。この男に対しては私は司法研修所を出たときに、君、裁判官になれと私は勧めたんです。私だけでなく、私の局でその男を間接に知っておる者がありましたから、その者を通じても勧めたんです。本人は、非常にありがたいけれども、父親が郷里から東京へ出てきて事業をするので、裁判官になると東京におれないから、ありがたいけれども辞退するといった例がありまして、最高裁判所といたしましては留保をして、そして採用したら、その者はもう卒業したのちに裁判官には絶対に採らぬということは毛頭考えておらないのです。過去にどういうことがあろうと、現在させよければ、また人間のことですから将来のことはそれはわかりませんけれども、現在さえよければそれでいいんじゃないかということはお説の通りどももしごく同感であります。大体今申しましたようなのが実情でございます。
  27. 羽仁五郎

    羽仁五郎君 第一点についての最高裁判所の御見解については、批判あるいは非難を差し控えますが、しかしながら、最高裁判所が負うておられる、特に日本で唯一のそして最高の使命というものについて、今一応御反省を願いたいと思うのです。一般の銀行、会社とはおのずから立場を異にしておられるのですから。かつまたその最高裁判所があるいは思想調査をやっているのじゃないか、あるいは過去をとがめだてしているじゃないか、あるいは警察やその他に対して一方的な調査をされているじゃないか、弁解の余地のない形においていろいろな資料をとられているのじゃないかという疑いを受けられることは、私ははなはだ悲しいと思うのであります。残念ながらそういう事実がございますので、ここに、私の所に寄せられました手紙その他資料というものを証拠として差し出すことは差し控えますけれども、しかしながら、いかにもそういうような、決して今御説明がございましたように、最高裁判所は十分その地位と権威と使命とを自覚して、いやしくも憲法をみずから最高裁判所がじゅうりんしているというようなことがないことを私も信じたいのではありますが、しかしながら、不当な取扱いを受けたと考えておる人がかなり多く、そしてまたそれを救う方法がない。一つの例をあげますと、会社に御紹介になる、会社でその方が企業整備によって退職せられておる、そしてその退職金の請求の訴訟をしておられる。従って会社にとっては愉快なことではないでしょうから、御紹介に応じて会社から差し出される書面は、必ずしも公平にして妥当なものであるというように考えられない書面が出てくる。それに対して本人の弁解を聞かれるというふうなことはおそらくないのじゃないか。で、それをそのまま御採用に相なってそして円滑に入所が運ばないというような場合があるのじゃないか。場合によってはそういう書面がその逆に訴訟取り下げに対して強制的に利用されるというようなことにもなってくる。司法研修所に入れなかったり何かして、それは退職金請求の訴訟をやっているからだ、だからそちらを取り下げれば来年は入れてもらえるかもしれないというような、そういう不当な取扱いを受けたというふうに感じておられる方がございます。これらの事実は一々ここに列挙いたしませんが、私が申し上げたいと思うのは、やはり最高裁判所がいやしくもそうした思想調査、あるいは憲法の保障する基本的人権の尊重において、一般の銀行、会社と同じ程度の立場に立たれておるのじゃないかというような疑いを受けられないように、もちろん私は一般銀行、会社も憲法に命じておる基本的人権の尊重において欠けられるところがないことを希望するのですが、しかし、実際において政党支持を聞くというようなことも、憲法及び選挙法及び選挙の秘密というものによって十分に守られているものを、どういう根拠があって侵するのだ、そういう点にも問題があると思うのですが、特に最高裁判所がいやしくも思想調査、そのほか憲法の保障する基本的人権を尊重しておられないのではないかという疑いを受けられないように、身元調査などをこの際撤廃せられる御意思はないだろうか、かつまた、一年延ばして大体お入れになっているようですが、一年延ばしてお入れになるんだったらどうして最初にお入れにならないのか、そういうような御調査は慎重を期せられるのかもしれませんが、しかし、それによって得られるところは少くして失うところは非常に大きいのじゃないか、最高裁判所が筋の通らぬことをやるのじゃないかというふうな疑いを受けられることの方が、私は失う点において大きいのじゃないか。で、いろいろ御紹介になったって、実際において確実な証拠を収集するなんというふうなことをなさるというわけにはいかない。人というものはどんなに調べてみたって、心の中まで知れるものではない。従って身元調査というものも、はなはだ雑駁な言葉を使えば中途半端なものです。中途半端なものでもってある程度までの慎重を期せられるというお気持もわかりますけれども、しかしそれによって最高裁判所みずからが疑いを受けられるという方の失う点が多いのじゃないか。そういう利害得失を考えられて、この際公明正大に試験の結果によって採用するという処置をとられた方がよいんじゃないか。かつまたその試験の内容において私はそういうことは十分わかるはずだと思う。その方が将来法律の正しさというものを守っていかれる上に貢献せられる方であるか、そうでないかということは、試験の内容によってわかるのではないか。従って私は、あいまいなあまり得るところも多くなく、そうして失われるところの多い方法は、この際一掃せられる御意向はないかどうかということを伺っておきたいと思うのです。
  28. 鈴木忠一

    説明員(鈴木忠一君) ただいま御指摘になりました試験について、退職金云々について訴訟を起しておったがために、最高裁判所が何かそれをきらって採用を延ばしたのじゃないかというようなケースをお述べになりましたが、その一年延ばされたその者については、そういうこともございました。しかし私の記憶しておるところでは、なぜその者を採用しなかったといいますと、退職金請求にからんで当事者になって、その本人が訴訟を起しておるんです。その訴訟のいきさつで裁判長を忌避したのです。その忌避の書面を見ますと、当該裁判官に対してばり雑言、法律論ではなくてばり雑言をしておるのです。たとえば今でも記憶しておりますが、きさまは資本家の手先だ、犬だというようなことを公然と忌避書の中に書いておるのです。それからもう一つは、さらに進んでその当該裁判官を弾劾をしようというようなことを企てて、その裁判官についての名誉棄損になるような事実をビラ張りをした、その指令をしたというような事実を私ども伺っておるのです。そのために、法律の線に沿って裁判所なり裁判官というものを忌避するのはいいけれども、ちっとも法律の線に沿った行動をしいないじゃないかという意味で留保されたということを、私はそれははっきり記憶しております。御指摘のように、退職金云々のことで訴訟を起しておったということは確かにございます。そういうことが問題ではなくて、その本人の法律を守り裁判所に対する態度というようなこと、そうしておきながら司法研修所に入ろうというような——いわゆるクリーン・ハンドをもってこいというような気持だったものですから、それで採用されなかったものだと思います。  それから政党の支持を聞くというようなことは、これは例外の者について聞く場合にもそれはないと思います。あるいは言葉のやりとりの関係であった例はあるかもしれませんけれども、これは絶対にそういうことは裁判官、検察官がそれほど非常識じゃないと思うのです。これはあったとすれば、言葉のやりとりでそういうようになったのではないかと思います。質問の項目として掲げておるというようなことはもちろんございませんし、私の記憶では支持政党を聞いたというような覚えはございません。これはあったとすれば、きわめて例外中の例外ではないかと思います。  それから、ただいま身元調査というのを一般的にやめて、ただ試験に合格したというだけだ採用したらいいじゃないか、その方が最高裁判所としても賢明ではないか、こうおっしゃられること、これは考えようによっては確かに賢明とも存じますけれども、それで最高裁判所が果して責任を十分尽したと言えるかどうか、これは私一存でもここでお答えできませんですから、御趣旨のことを帰りまして、事務総長とも相談して伝えたいと思います。ただ、ただいま申し上げましたような関係で留保された者の中には、確かに特定の政党に属しておったとか、特定の思想を熱烈に持っておったとかいうような者はございます。しかしそのために採用を留保されたというのではなくして、それぞれ特定の行動をいたしておるのです。その行動から見て、その行動自体が法曹としての適格を疑わせるじゃないか、これじゃ困るじゃないかというような観点でやったので、思想そのものを対象としてその差別をつけてはおらないのです。そういう関係で留保された者から言えば、不平には相違ないと思います。従って、それがすぐ思想調査というような内容を掲げて、私どもが至らないわけでありますけれども、攻撃されるわけだと思います。しかし事務局の方には、どうしてああいう者を採用したのだというような投書もございます。ああいう者を採用されては郷党として承知できないぞというような投書もあることは、これは一方においてお含み願いたいと思います。
  29. 羽仁五郎

    羽仁五郎君 今伺っている第一点が長くなったのですが、要するに今御指摘の第一の場合ですね、ばりざんぼう、ビラ張り云々というのも、本人の意思でやったものであるかどうか、いろいろな点は詳しく調べてみなければわからぬことですし、かつその方は翌年は入所をしておられ、現在は弁護士として活動しておられるので、やはり弁護士としての信頼を受けておられるものと私は考える。だからその程度まで、とことんまで昔の旧憲法時代みたいにお調べになるなら別のこと、中途くらいまでお調べになっていろいろ非難を受けられるなら、およしになった方がいいのではないか。それから私は特に最高裁判所アメリカなりイギリスなりその他の国の最高裁判所と同じように、国民から深い尊敬とそうして信頼とを受けられることを念願いたしますので、最高裁判所がいやしくもそうした疑いを受けられることであるならば、他の方法でもってなさるとかいういろいろな御工夫をなさるということは御自由なことでありましょうが、今までしばしば非難を受けておられることをお続けになることを御反省を願いたい。繰り返して申し上げますが、最高裁判所が、最高の権威とそうして信頼とを全うせられますように、どうか誤解を受けられるようなことのないことを他の場合と違ってお願いをしたのです。政党支持を聞くということは、司法研修所のことについて申し上げたのではないので、一般の銀行、会社などがそういうことをやっておるので、私は実に不当なことだと思いますが、一般にはやはりまだまだ思想、信条などによって人を差別しないという憲法の命ずるところが十分尊重せられておりませんので、特に最高裁判所に対して、私は公明正大にしていやしくも疑いを受けない、そうしてそういう意味においては人の過去をとがめず、かつまたいろいろな立場というものに立って寛大な態度をとられることを、これはお願いをするのであります。  第二点になりますが、この司法研修所の教育の内容について十分御説明を賜わりたいと思うのです。これはどうか一つ詳細に、どういうことをあそこで教えておいでになるのか伺いたいのです。私の心配いたしますのは、そういう理由がございますのですが、今ここに述べませんが、一つ詳しくどういう教育をなさっておるのか、わかるように御説明を願いたいと思います。
  30. 鈴木忠一

    説明員(鈴木忠一君) これは司法研修所関係の者が出て述べるのが一番適切に述べられると存じますけれども、私が知る限りは申し上げます。  最高裁判所で司法修習生を命じますと、司法修習生の修業の期間は二年以上ということになっております。ですから、現在は最小限度二年でやっております。まず任命いたしますと、全部東京におきます。これは四月の一日付で採用いたしますが、四月から七月の末まで四ヵ月間は司法研修所に入所させます。そうして司法研修所で民事、刑事、検察、弁護、そういう教官がそれぞれおりまして、弁護の教官はもちろん弁護士から民事の。弁護士、刑事の弁護士が来ております。それから裁判検察の方はそれぞれ判事、検察官が当っております。これが理論と実際を主にいたしまして、理論に即した実際的ないろいろな取扱いを教えます。そしてそれと同時に今まで一般に法曹は法律のみの狭い世界に片寄っておる、はっきりした世界観も十分持たず、芸術その他に対する鑑賞力もはなはだあやしい、いわゆる世間知らずに陥る弊があるということを非難されておりますものですから、今申しました理論、実際の法律以外に教養的な分野、これをかなり広く、あらゆる方面から講習をお願いをし、あるいは場合によると実地の見学もするということを並行してやっております。七月の末研修所をみんな出しまして、それからその出す前にあらかじめどこで実際の事務を修習するかということを、任地をきめておるのであります。東京へ何人、横浜へ何人、福岡へ何人というようにきめておるのであります。ですから七月の末に司法研修所が解散になりますと、暑中の休暇が一月か二十日かありますので、それ以後は各自それぞれ振り当てられた裁判所検察庁の所在地へ行きまして、そしてそこで一年二ヵ月実務の修習をするわけであります。その間に裁判所検察局とそれから弁護士の事務所、これにそれぞれ期間を割り当てて修習をいたすわけであります。弁護士の事務所においては、まあ卑近な例から言えば先生のカバン持ちもいたしますでしょうし、それと同時にいろいろ法律上のテクニックも教えられますし、そういうようにしてやります。それから最後の四ヵ月を今度また司法研習所にみんな集めます。そしてその間にまた最初と同じように法律の分野、教養の分野ということを教育をして、そして最後に、二年たったときに全部東京で一斉に民事、刑事、検察、弁護、弁護もこれは民事と刑事に分れまして、そういうものについて試験をいたします。それと同時にその学科試験にあわせて教養的なつまり言葉をかえて言えば法曹人としての常識、教養というような点について口頭でやはり試験をいたします。理論の方は筆記試験と口頭の試験を両方併用いたします。  大体今申したようなことであります。もちろん現地に配属されておる間も法律の分野だけでなくて、一般教養的、社会学的な社会を知るという方面についての心づかいもできるだけしておるはずであります。
  31. 羽仁五郎

    羽仁五郎君 私が特に伺いたいのはさらに内容ですね。研修の内容というものについてもお差しつかえがなければ資料によってお示しを願いたいというようにお願いします。どういう科目をやっておられるのか、どういう先生がやっておられるのか、私はあらゆる教育機関というものはやはり教育的見地からまず第一義的には考えらるべきではないかと思うのです。たとえばこれは少し極端な例ですが、防衛庁の防衛大学というのでしょうか、そういうところでその校長なり何なりを防衛庁の役人がやっておられることは、はななだそれは笑うにたえたる古い考え方だと思う。これは国際的にもごく最近西ドイツの軍関係教育に対してイギリスの新聞が、ドイツでは依然として軍の学校の一番上には軍人がすわってやれるものだというふうに考えておる、イギリスなどではそういう考え方はもう古くに一掃されておる、やはり教育は第一義的に教育でなければならぬ、それに端的な表題をつけて、やはりグッド・ソルジャーというものを作ろうとすることは間違っておる、そうではなくて、やはりグッド・シティズンというものを作ればそれがまたグッド・ソルジャーにもなり得るということを主張しておりますが、私は司法研修所の所長あるいはその教育を指導をする方が裁判官であるというお考え方についても御反省を願いたいように思うのです。やはり裁判官は裁判官としてはりっぱな方でししょうが、教育上の識見という点においては他に人を求められることの方が妥当ではないかというようにも思うのです。そういう点についても御研究を願って、次の機会に御所見を伺わせていただきたいと思いますが、第二点についてはお差しつかえなければどういう方が先生でおいでになるのか、どういう教科目でやっておいでになるのか、どういう教科書をお使いになっておるのか、どういう参考書をお使いになっておるのか、そういう点のお示しが願えればはなはだありがたいとお願い申し上げます。
  32. 鈴木忠一

    説明員(鈴木忠一君) 司法研修所の所長は高等裁判所裁判官をしておられて、商法の方で学位も持っておりますが、これは羽仁委員と多分高等学校時代に同窓であった松田二郎氏がやっております。それからそれ以外の判事、検事、これは高等裁判所に席のある判事、地方裁判所に席のある判事、検察官の方はやはり高等裁判所、高等検察局、地方検察局に席のある方々がやっております。弁護士の方はこれは東京に三弁護士会がございますが、その弁護士会からそれぞれ出ております。
  33. 羽仁五郎

    羽仁五郎君 時間もあれですから、書類によってもしお示し願えればどうぞ。
  34. 鈴木忠一

    説明員(鈴木忠一君) それでは書面で申し上げます。教科書というものは別に使っておりません。これは実務が主でありますから、実際の記録について記録を修習生に渡して、その記録に盛られた事件をどういうふうにみるかということが、これが検察裁判、弁護を通じての共通のやり方であります。教科書といえば記録自身が教科書というような実際でございます。いずれ詳しいことは書面で申し上げましょう。
  35. 羽仁五郎

    羽仁五郎君 第二の点について申し上げました点も、なおお考えをお願いしておきます。  第三点ですが、結論としまして、やはり現在のような状況を続けておられるようならば、司法研修所を最高裁判所が所管しておられるということを改正した方がいいのじゃないか、改めた方がいいのじゃないかということを私は考えておりますが、最高裁判所はその点についてどうお考えでございましょうか。私はこれをまあ昔の古い考えでいえば、おそらく法務省所管のような研修所ということになったんでしょうが、それはよくないということで最高裁判所にお願いしようということになって現在これをお願いしておるわけでありますが、しかしながら、いろいろな数年にわたって実際の事実の現われてくる点から、あるいはこれは弁護士の団体にお願いする方がいいのじゃないかというような意見を聞きます。私もあるいはそういうことも考えられるのじゃないかというようにも考えられますが、この点について最高裁判所ではやはり最高裁判所がやるのが一番いいというふうにお考えか、それとも弁護士の団体の方にお願いする方が一そういいのではないかというふうにお考えになりますか、その点を最後に伺っておきたい。
  36. 鈴木忠一

    説明員(鈴木忠一君) ただいま御指摘になりましたように、司法研修所を一体どこで所管したらいいか、在野の弁護士会にやらしたらいいじゃないかというようなことは一部のものにはたしかにそういう説がございます。私どもも承知いたしております。これは御承知のようにたとえばイギリスのような制度、アメリカのような制度、と申しますと弁護士を二十年、三十年やった者の中から必ず判事を採用する。ほんとうの意味の法曹一本化というよりも、つまり弁護士を唯一の裁判官の人材源としている法制のもと、こういうもとにおいては弁護士になるのを養成するわけになりますから、そのために在野にやらしておるというのがこれは一番すなおな考え方で、国家なり官吏の方がそれに介入するということは差し控えるのがこれは当然だと思います。けれども今の法律は在野から来るということを予想しておりますけれども、実際は在野からは来ないのです。来ないと言いますのは俸給の関係もございましょうし、それからわかりやすい話を申し上げれば、きょう弁護士から裁判官になられて、裁判官とすぐ机を並べて仕事ができるかと申しますと、非常に優秀な弁護士の方が来られても、凡庸な裁判官と肩を並べてすぐにはやれないのが実際じゃないかと思うのです、手続面から申しますと。そういう面から申しますと、在野法曹、つまり法曹一元化といいましても、実際にアメリカ風あるいはイギリス風の法曹一元化が実現するのはずいぶん遠い将来じゃないか、その前提としてはやはり今のように苗のうちから判事を仕立て、苗のうちから検事を仕立てるという制度、これは卑近な言葉でございますけれども、そういう制度がある以上は、やはりこれは国家の方が主体になって、つまり裁判所なり検察官の方が教官的な少くともことになり、そして養成機関を運営していくというのが今の日本の現状ではより自然ではなかろうかと私どもは思います。そういう関係で、法務省と裁判所の共管というわけにもいくまいというので、おそらく裁判所の所管ということにいたしたのだとは思いますけれども、確かに今の時勢から申しますと、国の公務員のやることは一々気に入られないような面があるかと思いますけれども、そうかといって、それならばそれを弁護士会に全部まかしてしまえと言い切って、それを実行していいのかどうか、これはやはりもう少し私どもは慎重に考慮していい問題じゃないか、こういうふうに思っております。
  37. 羽仁五郎

    羽仁五郎君 弁護士の方が裁判官になられるという場合は非常に困難であるということについては、御説明はそのままちょうだいできないように思う。他にもいろいろな理由があるように思います。そしてまた弁護士の方から裁判官あるいは検察官になられて、非常にりっぱにお仕事をしている方も拝見をいたしますし、やはり私は本筋としてはそういうふうに弁護士として御苦労になって、しかるのちに初めて裁判官あるいは検察官として国民の信頼を受けられるという方が、今の御説明にもありましたようにすなおな考え方じゃないかと思います。学校を卒業して六法全書だけ持って検察の仕事に当る、裁判の仕事に当るということは、実際その方が不自然じゃないかというふうに思うのですが、結論的には司法研修所を実際弁護士会に、国の費用によって、しかもその管理は弁護士会によってなされるという方向にいく方が——早くそういうふうにいくべきではないかと思いますが、最高裁判所御自身におかれましても、十分に御研究をお願いいたしまして、私の質問を終ります。
  38. 鈴木忠一

    説明員(鈴木忠一君) 申し落しましたが、在野からなぜ弁護士がおいでにならないかということは、私は今手続の面を申しましたが、これは主として待遇の面が多いだろうと思います。つまり在野で普通に活動しておられる弁護士から申せば、裁判官の報酬というようなものが、新憲法のもとで高くなったとはいいながら、なお在野の弁護士としての収入にはとても及ばない。しかも神経を在野以上に使わなければならないような仕事には、やはりどうしても自然に来なくなるということが当り前のことじゃないか、そこが一番最大の原因だろうと思います。
  39. 吉田法晴

    吉田法晴君 ちょっと簡単に。二十二国会の最終段階で、小倉炭鉱の争議に関連して起りました暴力団、その暴行事件について暴力団に関連して御質問をいたしました。それから籾井炭鉱の事件関連いたしまして、これは民事事件であります。これに対して裁判が行われた、その仮処分の申請を暴行、脅迫をもって裁判を取り下げさせた。しかもそれは裁判所の構内、裁判所の大屋根まで追い上げて、人を脅迫して告訴を取り下げた、こういう問題について御質問をいたしました。その際事件がよくわからぬからという点もございまして、懸案で残っておったのです。法務委員会の方は、先般西村調査室長が現地に参りまして調査をしてくれまして、この委員会に報告がなされております。その中から二つお尋ねをするわけですが、小倉炭鉱の暴力団が出ておりましたのは、参議院法務委員会が取り上げたということで漸減をし、そうして暴力団の暴力をふるうということはなくなりまして、争議は解決をいたしました。ところがその中で、当時解雇をしたというその解雇が、有効であるか有効でないかが争われておったわけですが、その解雇したというその独身の従業員を寮の中からふとんもろともほうり出して、そのほうり出したことについて告訴をいたしました。労働者の側から告訴をいたしました。その告訴は私の知っている限りでは、取り上げられなかった。先般法務委員会から参りましたときには、取り上げられずに、そうしてそのときに名前をあげて告訴をしたのですが、その名前が違っておった、一名違っておったというので、誣告罪でこれは起訴になっております。ほかのこともいろいろございますが、労働者の方から告訴をしたものは取り上げられない。それから会社の方からやることについては、これは起訴された。極端な例を申し上げましたが、これは人権問題だと思うのですけれども、住んでおります者を解雇の通知をして、翌日ふとんもろともに人間を実力をもってほうり出した、それを告訴した、それについては検察庁は取り上げない。それらの中の告訴をした一人の名前が違っておったからといって、その方を誣告罪として起訴した、小倉地方裁判所支部でありますが、こういうように私は聞いておりますが、どういう工合に御存じなのか、あるいはその辺がどうなっているのか、一つお尋ねをいたしたい。もし私が申し上げますように、片っ方の人権じゅうりんの告訴は取り上げないで、それについての誣告が取り上げられるということになりますならば、これは小倉署だけでなしに、検察庁が会社側に味方をしたうんぬんという暗い面が、暗い検察行政が出て参りますので、一つ御明答を願いたいと思います。  それから籾井炭鉱の方は、私どもが参りますと、参議院の法務委員会が取り上げるということで、急遽調べをしたようでございます。調書をとったようであります。ところがそれがその後どうなったか、伺いたい。小倉炭鉱の方は、参議院法務委員会で問題になったということで、暴力団がだんだん影をひそめていって片づいたわけでありますが、片っ方の方は、参議院の法務委員会から調査に行きましても、その調査の席上で問題になっておるような、まあ組合と申しますけれども、御用組合、自主性のない組合員でありますが、参りまして、法務委員会調査を妨害するかのごとき、あるいは多少どうかつするかのごとき態度さえある、あるいは席を立ちます際に書類がなくなる、こういうふうな事態があるのでありますが、あるいはその後参議院の法務委員会調査に対して、労働組合の名前でありますが、何と申しますか、いや周章ろうばいをしたとか、いやそういう目的はなかったといったようなビラさえ配られておることをあとで知ったわけでありますが、一応調査の事前に調書をとられたようでありますが、その後どうなったか。こういう暴力事犯が認められるかどうか。警察のことをついでに申し上げますというと、そのときに警官は出て参りましたけれども、それも問題が済んでおるということで引っ込んで参りました。ここにもその従の経緯を見ておりますというと、少くとも検察陣においては、言われております従来の戦前の、ような警察とボスと、こういうものとの関連が疑われるような節が若干ございますが、告訴事件はどういうことになりましたか、その点だけ一つお尋ねをしたい。
  40. 井本臺吉

    説明員(井本臺吉君) 全般的な立場におきまして、暴力が許されないことは申すまでもないことで、われわれといたしましては、会社側が雇った暴力団、これは暴力行為がありますれば厳重に取り締るように、そのつどくどいうように現地には言うてあります。また組合側の組合活動、これをとやかく言うのではありませんが、これも暴力行為がございました際には、同様取り締るべきであるというふうに現地には言うてあります。従いまして、われわれの方の調べで暴力行為がはっきりいたしましたものは、全部そのつど処置をしておるのでありまして、ただ、いろいろの関係から、現在まだ取り調べ中のものもございます。  まず最初に小倉炭鉱の方の事件でございますが、われわれの方には八月の末に報告が参っておるのは、小倉炭鉱の会社側に雇われておりました警備員十二名は、全部解雇して、引き取らしたということが来ております。おそらくこの警備員が、会社の御用暴力団であるというようなことで、いろいろ非難攻撃を受けたので、さような処置になったのではないかと考えるのであります。お話しの解雇した独身の従業員をふとんごと投げ飛ばしたというような事件は、ただいまのところ、われわれの報告された書類には見当らないのであります。なおそれに関しましての誣告罪が公判で問題になっておるというようなことも、われわれの方には何ら報告がきておりません。従って、御趣旨の点はさっそく現地に問い合せまして、その報告の結果を待ちまして、さらに御答弁申し上げたいと考えます。  なおここに一件誣告罪の告発事件がございますが、これはわれわれの報告では先月の十三日付で不起訴処分になっておりますので、お話しの誣告罪の事件とは違うように考えます。  それから籾井炭鉱の関係事件でございますが、この関係につきまして、八月の十五日付で野村宗一郎という告訴人から告訴が出ております。これは告訴状によりますると、裁判所構内でいろいろ暴行行為を働いたことが詳細に書いてございますので、この通りであるとすれば、相当問題になる事件であると考えるのであります。私どもに対する報告では、現在なお取調べ中であるという程度で、その後どのような処置をしたか、はなはだ恐縮でございますが、この点も至急に現地に問い合せまして、適当な機会に御報告申し上げたいと考えます。
  41. 吉田法晴

    吉田法晴君 大体大事な点はまだ報告がないということでございますから、お取調べを願って、別の機会に御答弁を願いたいと思います。いろいろございますけれども、時間がないから簡単に問題の点だけ、はっきりする点だけ申し上げたいと思います。  社宅の住宅に住んでおります者を、ふとんと一緒にほうり出して、それについて告訴をしたが、それは問題にならない。じんぜん日が送られておる。その中で一名の名前が違っておったという誣告罪については、これは新聞で見たんですか、あるいは今不起訴になったということと同じであるかわかりませんけれども、私は西村調査室長が調査をいたしました翌日の新聞には不起訴処分になった、こういう新聞がございましたから、明らかにしてもらいたい。一つ取調べを願って、別に機会に報告を願いたいと思います。  それから裁判所構内における事件についても、別の機会に承わりたいと思います。要するに、たとえば小倉の場合に、別なときもございましたけれども、あるいは労働者が門のところでわっしょいわっしょいやって、門が破れた。それは起訴されたところが、労働組合の中に請負師という形で、これは会社側と意思を通じたわけです。それが乱入して、窓ガラスを破った。こういうことは問題にならない。こういうことが小倉地検における実績でございます。何と申しますか、暗い影を予想させるような実績もございましたので、特にその点については十分の一つ調査の上、回答をお願いしたいと思います。
  42. 成瀬幡治

    委員長成瀬幡治君) 速記とめて。   〔速記中止〕
  43. 成瀬幡治

    委員長成瀬幡治君) 速記を起して下さい。
  44. 羽仁五郎

    羽仁五郎君 昨日法相に伺いました山形県の選挙違反事件関係して、学童検事法廷証人として呼んで、尋問して挽き出させたという事件でありますが、昨日の法相、法務当局の御答弁はまことに悲しい御答弁であったのですが、本日本委員会文部当局においでを願いまして、文部当局に意見を伺い、これはまだあなたが御出席になる前でありましたので、どうかあとから速記録をよくお読み下さりたいということをお願いをするのでありますが、この問題については、もちろん私どもも場合によっては本委員会に証人なり何なりに来ていただきまして、はっきりさせなければならないと思うのですが、問題は教育の問題に関係するので重大でありますから、法務当局においても昨日の御答弁以上に御研究あるいは御調査下すって、なるべく近い機会にまた伺いたいと思うのです。  で、昨日法相は幾分感情的の御答弁があったようですが、非常に悪質なる選挙違反の場合では必ずしもないのです。むしろ選挙違反とか教育二法とかいうものとの関連において、教育の神聖を害している。先ほど文部当局の御答弁の中にも、一般子供を呼ぶということが、第一、その児童に与える教育上の点から考えるならば避けられたいという、これは検察側からもまた教師の側からも、いずれの側から証人に申請するということもできるだけ避けてほしいという切々たる御意向を伺ったのですが、それは速記録でよく読んでいただきたいのです。こういうことが二度と起らないように十分の調査をして、その措置をとっていただきたい。もしそれが法務当局において妥当の処置が早急におとりになれないということであるならば、この委員会で調査を進めなければならないのですが、やはりこれは第一義的には法務当局御自身が是正せられることを期待したいと思う。その点お願いしておきます。
  45. 井本臺吉

    説明員(井本臺吉君) 昨日お尋ねの山形県の選挙違反の件でございますが、御承知の通り、公職選挙法の教員地位利用に関する選挙事件でありまして、公職選挙法では教職員児童生徒その他を利用して選挙運動をしてはならないという規定がございます。この事件におきましては学校生徒がその重要な関係人になっておるのでありまして、その関係上、おそらく法廷生徒証人に呼ばれたものと考えます。われわれといたしましても、可憐な児童を刑事裁判法廷に出すというようなことは、これはできるだけ避けなければならぬものであると、原則論におきましてはまことに御趣旨の通りでございまして、この場合の事件におきましてはおそらくやむを得なかったものと私は考えますけれども、御趣旨の点もございますので、なおよく現地の事情を調べて善処いたしたいと考えます。
  46. 羽仁五郎

    羽仁五郎君 なお、私が主として問題にしているのは、その教育関係する点なんです。その選挙違反についてではないのです。教育について、つまり検察の行き方というものが教育を破壊するようなことがあっては困るという点ですけれども、なお関連しまして、私が現地で調査をしましたところによると、床屋さんを一人偽証で引っぱっておられるようです。しかもそれを一ヵ月前後に拘束しておられるようで、それもやはり人権を侵害しておられる疑いがあるのじゃないかと思います。しかもそれは偽証というのは、その床屋さんが、うちの子供は帰って来て、別に先生がだれに投票しろというふうなことを言ったということは言わない。ただ選挙の話があったということをうちの子供は言っていたというように述べた。ところが、それ以前に警察で、おそらくいわゆる内偵というのでしょうかな、聞き込みというのでしょうか、それをやったらしい。そうしてその床屋さんにおそらく変装した刑事か何かが来て、学校先生がそういうことを、地位利用の選挙運動のようなことをやったんじゃないかというようなことを尋ねたときに、それを肯定するような答えがあったというのでしょう、おそらくは。そこで、前には肯定し、あとには否定したというので、偽証だという。そうしてそれを一ヵ月も自由を拘束している。これも現地の世論の批判を受けておられることでもありますので、どうか一つ、その児童証人として喚問したことに警察の行き過ぎないか、ことに教育を一方に破壊するようなおそれがあったようなことがあるのじゃないか。またあわせて今の床屋さんを偽証で引っぱったということについても、やはり人権を不当に侵害しているということがあるのじゃないか。それらの点を一つ十分お調べを願って、この一つ事件でこれでもうそういうふうなことが起らないようにお願いしたいと重ねてお願いしておきます。
  47. 成瀬幡治

    委員長成瀬幡治君) 速記をやめ  て。   〔速記中止〕
  48. 成瀬幡治

    委員長成瀬幡治君) 速記を始めて。
  49. 羽仁五郎

    羽仁五郎君 警察の方に伺いたいことなんですが、すでに御承知のように、最近各地において警察があるいは思想調査であるとか、あるいはいろいろな、神奈川県においてはずいぶん個人の私に入ってくるようなそういう調査をしておられるということが問題になり、これは新聞紙の報道するところだけでも、あるいは群馬県であるとか、ただいまの神奈川県であるとかに起っております。そうして個々の場合につきますと、その警察官が自分でやったことであるとか、あるいは県の警察本部長が陳謝せられたとか、あるいはそういうような措置を撤回せられたとかいうことになっておりますが、これについて一々伺わないのでありますが、伺いたい要点は、これらを通じて国民の受けております不安は、何か警察が全国的にこういうような方針を最近とられているのじゃないか。おそらくそういうふうに伺うと、そういうことは全くないという御答えをなさるのじゃないかと思うのですが、そういうふうな形式的な御答弁でなく、どうしてこういうことが最近あっちこっちに起るのか、その点を伺いたいと思います。
  50. 石井榮三

    説明員(石井榮三君) お答えをいたします。ただいま御指摘をいただきました最近の具体的事例としまして、神奈川県におきまして、犯罪捜査の態勢整備のために、神奈川県本部長が各管下の署長に通牒を出した問題、並びに群馬県におきまして、原町警察署のある巡査が地元の吾妻校の女子生徒にお願いをして、いろいろ自分の知りたい学内の学生の会合の模様と申しますか、そういうことを知ろうとしたという事案が新聞紙上にも出まして、ただいま御指摘のあった通りでございます。こうした事案があちこちに頻発するについては、何か警察全体として、特に私ども中央の方からそういったような指導でもしておるのじゃないかというお尋ねでありまするが、全くそうしたことは私どもといたしては指導はいたしておりません。一々のこまかく状況を申し上げることはいかがかとは思いますが、念のため、御理解をいただくために、一応あらましを申し上げて御参考に供したいと思います。  神奈川県の通達の問題は、これは神奈川県の本部長がいわゆる知能犯捜査の態勢が神奈川県としてはあまり十分でないというところから、この態勢を整備しよう、少しそういった方面についての警察官の関心を深め、犯罪の捜査が能率が上るようにしようという観点から、通牒を出すことを計画をいたしたわけであります。犯罪情報の収集の仕方、あるいは一たび犯罪が起った場合に迅速に捜査ができるように、平素からいわゆる基礎資料的なものをある程度整備しておいた方がいいのじゃないか、こういうことから、そういった意味の内容のものを盛り込んだ通牒という形で出たわけであります。意図は必ずしも悪くはないのでありますが、たまたま文章の表現等に適切でないものといいますか、あるいは舌足らずと申しますか、そういったような関係から、若干誤解を生ずるような内容のものがあったのでありまして、関係のない個人の私生活に干渉するようなことになるのではないかとおそれられるような内容の点がありましたので、これは新聞にそれが掲載されたということで初めて本部長は気づいたのじゃなくして、本部長はそうした通牒を部内に出したことによって、部内の警察官がこういうやり方は果していいのだろうかという疑問をすでに持ったのであります。本部長はさっそく、なるほど確かにそれはそうだ、それで不十分、不適切、あるいは誤解を招くおそれがあるということで反省をしておるところへ、ちょうど新聞にも出たというので、それを契機にあやまちを改むるにはばかることなく、いさぎよくその通牒を全面的に撤回をした。従いまして、まあ不幸中の幸いと申しますか、何ら実害を生ずることなくしてこの通牒を全面的に撤回し得たということは、私どもせめての幸いであると、かように考えておるのであります。  いま一つの群馬県の具体的事例の問題でありますが、これも私ども前々から、中央においてはむろんのこと、府県の本部長におきましても、個人の思想調査をするなどということはもってのほかであるということは十分承知をいたしておりまして、部下の警察職員に対しましても機会あるごとにそういったことは強調し指導をして参っておるのであります。たまたま今回起りました事案が、全くあの巡査個人の着意と申しますか、個人的に興味を持ってそういうことをやったということでありまして、これは決して責任のがれの申し分ではなくして、私、新聞に出ましたときに直ちに部下をして実情を調査いたさせましたところ、県本部長はそんなことはむろん指示するはずはない。また所轄の署長においても何ら指示をしておることはありません。全く個人的な思いつきによる。その調査の内容にしましても、方法にしましても、全く遺憾にたえないことであります。  そういった事例について、あるいは警察全体が何らかの誤解を受けるというふうに至ることは、私どもといたしましてもまことに遺憾にたえない、こう思っております。今後そういったことは絶対にないように、これを契機にさらに、従来とも注意を喚起いたしておりますが、一そう注意を喚起いたしまして、そういうことの絶無を期するようにいたしたいと、かように考えております。
  51. 羽仁五郎

    羽仁五郎君 今御説明をいただきました以外にも、これは本年八月三十一日の信濃毎日新聞でありますが、その社会面のトップに「青年団の集会を警察が調査」という題で、「出席者のメモ取る」「県連青、近く当局へ抗議」というのが出ている。これを読みますと、松本市で開かれた県教委主催の県連青指導者講習会で、各地区の青年団幹部からこの実情が訴えられておる。各地区というのは、豊科町南穂高の上川手部落で平和の集会を開いたところ、会場の通り道に当る自転車屋の主人に、巡査が会場に行く者の名前をメモしてくれと頼んだ。それから長野市の若槻吉部落で、うたごえの会について、同部落の団長にうたごえの会を始めた時期や歌の種類について巡査が調べておる。それから須坂市では、うたごえの会に出席した女子に、赤だから行かない方がいいと巡査が注意した。東筑摩広岡村で、機関紙、細胞の有無やミチューリン農法について駐在所から調べに来たというふうに、各地で起っておるのです。これがまあ各地で盛んに起っておるということは、どうもその巡査の個人の問題とばかりも考えられない点があるのじゃないか。  そこで、これはまあいわゆる議会答弁ということになれば、それは巡査の数は多いのですから、多い数の中にはずいぶんひょうきんなおまわりさんもいるということになるかと思うのですが、しかし言論機関が問題にするということになってくると、それはまあまれにそういう人がいて申しわけないという程度じゃ済まないのじゃないかと思う。それで社会に不安を与えておられる警察がある。そこでこれを根絶せられるためにいろいろ御苦心になっておる。  また現在の警察制度というものが果して一体どういう趣旨になっておるのか。日本の警察は自治体警察で出発したはずである。昔の国家警察の弊害というものを国民が痛感して、それで敗戦後自治体警察で出発した。ところが、その後に警察法がしばしば改められて、現状においては、自治体警察で出発したときにも国家地方警察というのは地方警察というものであって、ただ都市の警察がない地方を国が世話する地方警察というものだったのに、いつの間にか地方というのは抜いてしまって、国警、国警というふうに略称せられるようになり、せっかく新しい自治体警察の趣旨というものが少しも徹底しない間に、現在のようになった。現在では一体、この警察の最高の責任というものをどなたがおとりになるのか。またこういうような各地に起ってくる問題について、やはり現在も尊重せられておるでありましょう自治体警察の趣旨というものをも解しないで、しかもこういうような不幸な事態の頻発を防ぐには、どういうふうにお願いしたらいいのか。実際私ども見当に苦しんでおる点もずいぶんあるのです。あまり中央から、たとえ弊害を防ぐためとはいえ、中央から今日存置せられておる程度の自治体警察の趣旨をも侵害せられるということは、私どもお願いしたくないことでありますので、事実どういうふうに考えていただいていいかわからないのです。  以上のような前提のもとに、次の二点を伺いたいのです。  それはこの法務委員会におきましては直接に警察の問題を扱っているわけじゃないので、人権の問題について重大な関心を持っていることは御案内の通りでありますが、人権が警察によって侵害せられる大多数の原因はいわゆる捜査の行き過ぎということにあるように思う。その点で、警察の捜査というものは必要にして最小限度にとどめなければならない。従って、そこに現に犯罪があり、そしてその犯罪に関係していると疑うに足る十分の証拠があるという場合に、初めて警察が捜査をなし得るのじゃないか。一般に、過去のように、見込み捜査というのは許されないはずのものだと思う。ところが、そういうことが十分おわかりであるのに、やはりこの見込み捜査的なことをなさる、必要にして最小限度をこえた捜査をなさるというのは、やはり一般的に警察のあり方についての問題があるのじゃないか。これは一つは、警察の技術が日本は各国に比べて非常に劣っておりますが、この警察の技術が非常に劣っていることは、私の信ずるところでは、やはり人権を尊重しないからだと思う。人権を尊重しないために、引っぱってきてたたけば何か出るというようになってしまう。ですから、人権を尊重していたのじゃ警察の機能が発揮できないという考え方は一掃していただきたい。前に鳥取県の盗聴器の問題のときも、県の警察の方をここにお招きをして伺ったときに、人権もくそもあるものかというような放言をされました。で、それは直ちに取り消されましたが、そういう考え方があるのじゃないか。それで警察が犯罪を捜査することを第一に考えられて、警察が人権を守らなければならないというものであるという考え方がないのじゃないか。これは売春法などの場合にも、パリなんか実際見てみますと、そういう不幸な女性に対してパリの警察官はちょうど自分の姉さんか妹に対するように、雨が降ってくれば雨のかからないような所に入れてやるという態度をとっておる。日本ではどう見ても、自分の姉さんか妹というふうにお扱いになっちゃいない。そういう点で、ぜひこの際、さっき申し上げましたような今日なお残っておる自治体警察の趣旨というものを侵害せられない範囲内におきまして、どうか一つ全国の警察が今の調査とか捜査というものに、あくまで現に犯罪があり、そしてそれとの直接の関係があると疑うに足る十分の証拠があるという場合にのみ調査をするのであって、それ以外に調査とか捜査ということをやるのは警察みずからを葬るものであるという趣旨を徹底せられる御意思があるかどうか、この点をまず第一に伺っておきたい。
  52. 石井榮三

    説明員(石井榮三君) 全くただいまの御意見の通りでございまして、私ども機会あるごとに、口をすっぱくいたしまして第一線の警察の職員にお願いしております点は、ただいまお話のありました犯罪捜査のあり方というものにつきまして、犯罪捜査の実績を上げるためには手段を選ばずといった考え方は絶対に排しなければならない。あくまで捜査に当る者の基本的な心構えとしまして、人権尊重ということを常に基本的な理念にいたしまして、合理的、科学的な捜査方式をもちまして、犯罪ありと疑うに足りる相当な理由のあるときは、さらにそれを深く掘り下げていきまして、有力な証拠を収集いたしまして初めて正式に捜査をするというのでなくちゃならぬということは、機会あるごとに強調をいたしておる次第でございまして、先ほどもお説のありました通り、従前のいわゆる見込み捜査といったような安易な捜査方式というものがあったために、人権の侵犯ということがかなりあったことは確かに否定できない過去の事実であったと思うのです。今日そういうことであっては絶対に相ならぬのでありまして、先ほど申しましたように、どこまでも人権尊重の理念を基本といたしまして、合理的、科学的捜査ということで捜査に当る者は進んで参らなければならない、捜査の実績をかせがんために手段を選ばずといったような考え方は完全に払拭してもらいたいということで指導をいたしておるのでありますが、目下その指導方針に基きまして漸次改善されつつある過程にあると、私ども手前みそかもしれませんがそういうふうに考えておるのであります。しかしながら、なお数多い警察官の中でもありますし、しかもまた、こうしたものは長い年月をかけてみっちり教養を積み重ねて初めてできる。警察官がそういう心がまえを体得しまた捜査技術を身につけるのでありまして、今その過程でありまして、間々例外的に遺憾の事態を起す者がありますことは、私どもとしましてもまことに不本意でありますから、今後一日もすみやかにそうしたことのなくなることを、理想的な犯罪捜査のあり方を具現するように、一そうの努力精進をいたして参りたい、かように考えておる次第であります。
  53. 羽仁五郎

    羽仁五郎君 今お答えをいただきました要点、すなわち警察は第一に人権を尊重しなければならない、そのことは警察自体にとっても、人権を尊重しなければ警察の捜査技術というものも発達しないのだ。必要は発明の母というように、あるいは欠乏は発明の母といわれるように、警察が苦しまれなければ警察の技術は発達しないのだと思う。民主主義の各国において非常に発達した警察の技術を持っておられるのは、やはり人権侵害があればきびしくこれをとがめられて、そのために、いやしくも人権を侵害しないでいこうというために、警察の技術が非常に発達してきたのだ。敗戦まで日本では人権尊重ということは全く鼻の先であしらわれているようであり、また今日でもそういう警察官が不幸にして間々おられるようでありますが、それではとうてい警察の技術は発達していかないのだと思いまするので、どうか一つ、人権を尊重しなければならないことは第一義的にそうであり、第二義的には、警察の近代的に発達していくためにも、その人権尊重がなければ警察の捜査技術というものも近代化しないのだと、この二点を、ぜひ現在の警察制度の許される範囲内において、第一線に至るまで徹底せられるように重ねてお願いしておく次第であります。  そこで第二点に移るのですが、私はやはり警察官の教養の問題についていろいろ御苦心があることだと思いますが、最近は幸いにして、裁判などにおいてこの人権の尊重をすべきゆえんを明らかにせられた判決もあります。私たち法務委員会関係いたしました問題でも、たとえば東大において数年前に起りましたポポロ座の事件というものについて、第一審の判決でございますけれども、警察官の警察手帳を奪うとか、学生がそういうことをすることは好ましいことではないけれども、しかしながら大学の自由というものはさらに重大な問題である、従って大学の自由が侵されるというようなおそれが抱かれた場合にそうしたことが起っても、それを有罪というふうにすることはできない。やはり警察としてもそれは大学の自由というものを第一義的に考えられるべきであろうという判決などもありましたが、ああいうような判決などにつきましても、やはりこれは警察の直接関係しておられる問題でありますから、かなり警察官の教養という面でああいうものを御承知になっている方がいいのじゃないか。まだもちろん第一審でありますから、検察側としては控訴せられたのでありましょうが、しかし少くとも第一審において裁判官がそういう判決をしておられる。従ってたとえそれが終極的な判断でないにしても、参考にせらるべき十分の理由があると思うのです。そういうような点についても、教養の面で考慮しておられますかどうでしょうか、伺っておきたい、かように思います。  第二点は具体的の点になりますから、並べて伺っておきたいのですが、次に私が伺っておきたいのは、警察官の拳銃の問題であります。これはわれわれは法務委員会において初めからかなり、初期には拳銃の暴発事件が頻発をいたしましたので、静岡県その他にも、現地にも参りまして調査をし、その結果を国会に報告したりして参ったのであります。その間にも重ねてたびたび警察側に向って拳銃について反省せらるべき点がないか伺って参ったのであります。最近の事態をも考えますと、敗戦後かなり社会が動揺しておりました時代は別でございますが、最近は幸いにして、やや一般の世相も安定して参ったわけでございますから、警察官が拳銃を必要にして最小限度の場合にのみ携帯せられるというふうにされる必要が、その時期に到達しているのではないかというふうに思います。これも例を引いて恐縮でありますが、イギリスなり、ロンドン・スコットランド・ヤードなどの場合を考えると、絶対に警察官が拳銃を持っていかない。しかも持っていった場合にも、相手が発砲したあとに初めて発砲するというような慎重な態度であります。やはり平和な社会において武器を携えた人を眼前に見るということは、国民の基本的人権の侵害とまでは言わないが、圧迫感を与えるのは事実であります。最初、警察制度改革の際に、バレンタイン君が、大体において民主主義社会における警察官の数というものは市民二千人当り一人ぐらいが妥当である。ところが、日本では六百人当り一人警察官がいる。一般の民主主義社会よりも三倍も警察官が多い。警察官の数を多くみるということが、民主主義社会においては国民の自由に対する圧迫感を与えるという点を指摘しておられますが、警察が国民の自由を圧迫せられるということではどうしても民主主義社会は成長しないのです。それらの点についてからむ警察官の拳銃を常時携帯せられるということも、必要にして最小限度にとどめられるような措置をとられるお考えはないか、これが個々の問題についての第二の質問であります。  それから第三は、警察の任務を遂行せられる上に、どうしても第一線警察官が間々陥りやすいことは、社会におけるいろいろな活動というものは警察だけではないということで、他にいろいろ言論もあれば、政治もあれば、経済もあり、いろいろな人間社会の活動というものはあるので、それらの方面で是正せられるものが多々あるのです。ですから、たとえこれは犯罪に関係があるのではないかというような疑いを生じた場合でありましても、たとえば学校の場合、学校に多少の事件が起っても、第一義的には学校の内部で解決するという作用を尊重しなければならない。そこに直ちに警察が活動しますと、自己是正の作用というものの発達を著しく阻害する。これは警察が行き過ぎるために及ぼす社会的な弊害として非常に重要な点です。こういう点についても、私はやはりぜひ十分に徹底する措置をとっていただきたい。第一義的に警察は活動するのだというお考えを一掃されて、第一義的には社会のさまざまな活動によってそれが是正せられる。従って、先ほどの犯罪がありました場合にも、犯罪があったと疑うに足る十分な証拠という考え方について、近来は日本ばかりじゃない、アメリカでもかなり幅が広く解釈する考え方が強くなってきた。公安調査庁などでも間々そういう疑いを受けられるものがあり、あまり幅の広過ぎる調査権の発動というものが起っておるようでありますが、この際特にその社会の各種の活動はそれぞれ自己是正の作用を持っているんだから、それに対して警察が第一義的に活動するというようなことは百害あって一利がない。そういう意味で特にさっき申し上げた原則的な点、犯罪が現にあり、そうしてそれと直接の関係があるということを疑うに足る十分の証拠というものがあって初めて捜査をするという趣旨が徹底せられれば、これらの点も救済されるのじゃないかと思うのであります。  以上の個々の点についてお考えを伺いたいと思います。
  54. 石井榮三

    説明員(石井榮三君) 第一のお尋ねの教養の問題でございます。教養の重要性につきましては私ども十分承知をいたしております。昔の警察に比べますならば、私ども自己宣伝になるようでございますが、今日教養にはかなり力を入れておるつもりであります。警察官の初任教養といたしましても、さらに拝命後の勤めてからの再教養にいたしましても、さらには幹部に昇進する者の教養にいたしましても、あらゆる機会と方法をとらえまして教養を反復いたしておるのでありまして、一人でもすみやかにりっぱな警察官、紳士たる警察官を作り上げるということに、及ばずながら苦心をいたし、また努力をいたしておるつもりでありますので、この点を一つ御理解をいただきたいと思うのであります。その際に具体的にお示しのありましたように、新しい判例といったようなものをむしろ十分教養の一資料といたしまして、絶えず社会の新しい情勢の変化、そういったものも十分認識把握せしめるように絶えず苦心をいたしておるつもりであります。しかしながら、何と申しましても数多い警察官でなかなか思うように飛躍的にレベルが向上するというわけにも参りません。教養というものそのもの自体が、申すまでもないことでございますが、じみなことであります。長い年月をかけてじみちな努力を積み重ねて初めて効果があがるのであります。一朝一夕に速効的特別な方法があるのではなくして、きょう教えたからあすからすぐ効果を発揮するというようなものでないだけに、なかなか苦心もありますし、長い時間をかけなければならないので、いましばらくその推移をお見取りを願いたいと思います。漸次改善向上の方向をたどっておるということだけは申し上げて差しつかえないかと思っております。今後一層努力をいたしたいと考えております。  第二点の警察官の拳銃携帯の問題でございます。警察官の拳銃は、本来はこれは攻撃のためのものでなくして防御のためのものであり、警察官は、御承知の通り、身命を賭して事に当らなければならぬということが、職務の性質上、宿命づけられておるのであります。そのために、自己の防御のために拳銃を携帯せしめているということが本来の目的、さらに警察官の職務を全うするために時と場合によっては、犯人の逮捕のためにこれを用いることもあります。そういう建前のものでございますので、御指摘のありましたように、できるだけ必要最小限度の携帯にしてはどうかという点、一応ごもっともな御意見であると思います。私どもも最初におきましては、警察官は常時携帯ということにいたしておりましたのを、漸次これを緩和しつつあるのであります。お目にとどまっているかどうかしりませんが、たとえば交通係りの巡査というようなものには拳銃をはずさせている。あるいは部隊で活動するような場合に、大ぜいの群集と接触するような場合に、もし何かの間違いで拳銃の暴発あるいはその他のことがあって、不詳の事故を起すというようなことがあっては相ならないというような見地から、そういう場合には拳銃を取りはずして、現場に出動し職務に当るというようなことも臨機応変にやっているのでありまして、漸次その方向に、必要ない場合には緩和していくという心持は持っておりますが、今直ちに大幅にこれを携帯を廃止するということは、私は現段階においてはちょっと早計ではないかと思いますが、いろいろ研究いたしまして、御趣旨の線に沿いまして善処していきたい、かように思っております。  第三点の、警察外の各種団体、たとえば学校あるいは会社工場、いろいろありましょうが、そうした内部における自己トラブルと申しますか、それに対してはまず第一義的にその自己是正、自主的解決ということにまかして、警察はなるべく手出しをしない方がいいのじゃないかというふうに伺ったのであります。これはもとより問題の内容いかんによるかとも思うのでありまして、簡単に一がいにお説に賛成あるいは反対するというふうには申し上げかねるのでありまして、明らかに法に反する、いわゆる犯罪行為が発生をいたしておりまする場合には、警察といたしましてはこれを取り締るということになろうかと思うのでありまして、事犯がきわめて軽微であって、これは特に警察がいち早く飛び出して手をつけなくても、自主的是正によって一応問題が解決をし得る、またそれで別にさしたる支障もないというようなものであるならば、これは警察としてはしばらく形勢を見るというようなこともあろうかと思うのでありまして、これは一々具体的の場合を内容を検討してみてからでなければ、直ちにいずれかにはっきり割り切るということは至難である、かように考えております。一応お答えいたしておきます。
  55. 羽仁五郎

    羽仁五郎君 大体私どもの心配している点はよく御了解下すって、その是正に御尽力下さることと拝承するのですが、第一点、特に警察権が行き過ぎて基本的人権を侵害したりするようなおそれがあると考えられて社会の問題になる、あるいは国会において討議され、あるいは裁判において判決があったというような事実について、警察官が具体的な教養としてそういうものについても御勉強下さるように、なお格段の努力をお願いいたしておきます。  第二の点は、私は個々の点について追及をいたしませんけれども、最近やはり、必ずしも新聞がセンセーショナルに取り上げているだけでもないと思うのであります。やはり新聞紙と警察との関係において、あまりセンセーショナルに取り扱うことは、新聞と警察との友好関係にも害があることですから、よほど目に余った場合を取り上げておられるのじゃないか。近来、特に本年に入って、また一時はかなりよくなってきたようですが、本年に入って集会の調査とか、思想調査するとか、そういう基本的人権の侵犯のおそれのあるような事件が多々起っております。この際でありますから、それをいろいろな面から努力を願いたいのですが、拳銃の携帯という面においても根本的な検討が願わしいのじゃないか。そこで趣旨においては私の申し上げることを御理解下さったようですが、やはり常時携帯というのも、必要にして最小限度というのは、ある意味においては両極端になっておる。常時携帯というのは拳銃を持っているのが当り前で、必要最小限度というのは持っていないのが当り前だということになる。よくよくの場合でなければ持ってはいかないということになるのですが、私はそろそろ、現在の警察法の範囲内におきましても、民主主義的な基本というものを確立していかれる上において、最近警察の受けておられる非難ですね、これは私は思想調査をやったのじゃないか、集会の調査をしたのじゃないか、あるいは基本的権利を侵害したのじゃないかという疑いを受けられたというのは、非常なる不名誉です。これば決して個々の警察官、あるいは署長、県の本部長ということにとどまらない。日本の警察それ自体にとって非常な重大な問題です。そういう重大な問題に対して深く反省をせられて、それのさまざまな是正をせられる方途を講ぜられるその一つの方法として、拳銃について根本的な検討を願いたい。これはお願いをしておくのです。  それから最後に、さっきの第三の点は、集会調査などについて私は申し上げているので、直接犯罪の是正ということまで申し上げるつもりも今はないのですが、その集会調査というような、そういう集会について、この集会の中にあるいは何か問題があるんじゃないかと思っても、集会の中には右もおれば左もおる。その中で是正していくという点が多いのです。その点について申し上げるので、これには御異論はないと思うので、その方向に御尽力を願いたい。  で、最後に、こういうことを私が申し上げることははなはだ私としては本意ではないのでありますが、しかし、やはりこういう非難を受けられるような、あるいは疑いを受けられたような事件を根絶するための措置一つとしては、やはり責任の追及ということをなされなければならない場合があるんじゃないか。不幸にして、これは特に最近どうも逮捕状が乱発されておるのじゃないかというような疑いを受けられておる事件が多々ある。これらについても、別に裁判になって無罪になったというわけではないから、国家補償を受けるということはむずかしい問題があります。そうすると、結局泣き寝入りということになります。また警察の方では、大へん申しわけなかったということで謝罪はせられる。しかし、この程度で私はいいものであるかどうか。私はやはりこれは、かなり警察官の数ばかりふやして、その待遇が十分でないという点などにも問題があるのじゃないか。ですから、警察官の数をふやさない。さっき申し上げるように、六百人に一人。現在はどうなっておりますか、日本の警察はどうも数が多くて、そうして質が悪いということは定評ですから、数を減らして、そうして待遇を十分にせられるという面と、その待遇をせられると同時に、そうしてまかせておられる警察権というものの重大な性質にかんがみて、いやしくもそれを乱用したと、あるいはそれについて必ずしも故意ないし過失でない場合であっても、その警察権によって国民の人権を圧迫した、あるいは侵害したという場合に対しては、相当の処置をとられることが必要じゃないか。先ほどの県の警察本部、神奈川県の警察本部長ともあろう人が、先ほどの御説明では、警察官から注意を受けるような調査の指図をなすったと、それで警察官から御注意を受けて、なるほどこれはまずかったというようなことでよろしいのでしょうか、どうでしょうか。そういう方が本部長をしておられるということにあるいは国民が不安を感ずる理由なしとしないけれども、警察の人事については現在どういうふうになっているのか。これもまたあまりに何というか、中央集権的な、勝手に首をぽんぽん切るとかいうことも許されないことでありますけれども、しかしながらその警察権というものは、ややもすると国民を圧迫するおそれがある。そういうことになっては警察官みずから葬むるにひとしいという点から、それらの点についてはどんなふうにお考えになっていられるのか。警官が女生徒に対して、群馬県の場合、思想調査をして、就職に支障があるといっておどかした。この場合には徴戒ということになる。しかしそれは署長の監督ということにも関係しているのじゃないか。かなり上の方では私は責任をとられる必要があるのじゃないか。上の方で責任をとられるということをお考になっておられるかどうか。私は必ずしも下の警察官をやめさせろとか、あるいは警察本部長をやめさせろというのじゃない。そういう問題が起ったときには、かなり上で責任をとるということを十分お考え下さる必要もあるのじゃないだろうかと思うのでありますが、この点について最後に伺って、私の質問を終りたいと思います。
  56. 石井榮三

    説明員(石井榮三君) 逮捕権を乱用しているのでないことは、最初にお答えいたしました場合にも、重々私どもの方の考え方を申し上げたので、重ねて繰り返すことは省略さしていただきます。  乱用をした場合の処置、これにつきましてはもとより私どもも十分に考えているのでありまして、責任をとるべき者には責任をとらせるということも十分考えているのでありまして、最後に例にお上げになりました先般の群馬県の一部調査の問題にしましても、当の巡査の責任もさることながら、その直系上司が日ごろその巡査に対してどういう指導監督をしておったかということは、これは確かに問題であると思うのであります。その点、十分県本部長にもよくその真相を究明して責任をとらしめるということで注意を喚起いたしておるわけでございます。今後ともそういう具体的な事犯が不幸にして発生した場合、その事故を起した当の警察官のみならず、その監督者の責任ということにつきましては十分考えて参りたいと、かように考えております。
  57. 羽仁五郎

    羽仁五郎君 さっきの神奈川県の県警察本部長という方のはどういうことになっているのですか。それを念のため伺っておきたいのです。  もう一つで、これは私の質問を終るので……。前にわれわれ法務委員会で、この逮捕状の乱発のような疑いを受けておられるような事件が多いので、いわゆる人違い逮捕とかあるいはその証拠不十分のため釈放されたりした場合についての資料の提出をお願いしておいたのですが、当時は捜査上に関係したりしているので十分に資料をお出し願えなかったのですが、もうすでに解決した問題で差しつかえない資料はやはり出していただいて、われわれが研究した方がよろしいのじゃないか。しかもああいうふうにして私ども委員会で問題にしました後にも、また類似の事件が起っています。それで世田谷の中国留学生が殺されたことについて楊君という方の夫妻が逮捕せられた。そうして無関係ということであった。あるいは医師免許証の偽造の事件で厚生省の事務官が逮捕せられて、全く無関係で釈放せられたという事件が、その後もあとを絶たない。これは実に重大な問題であり、本委員会においても委員会として取り上げられて、そうして資料を要求しておるのですが、これは決して警察をただとがめだてしようということでなしに、どうしてそういうことが起るのか、そういうことを防ぐためにわれわれとしても努力しなければならない責任を感じてのことでありますから、この点についても一つ誠意をもって御協力下さって、資料提出など十分誠意をお示し願いたいと思うのですが、以上二点、追加してお願いしたいと思います。
  58. 石井榮三

    説明員(石井榮三君) お尋ねのありました二、三の具体的事例についての資料提出の件につきましては、私承知をいたしておりませんでしたので、刑事部長から後ほどお答えを申し上げます。  神奈川県の本部長の件については私からお答え申し上げます。神奈川県の本部長が問題の通牒を撤回する気持になったことについて、部下から言われて初めて気がついたというふうに、私先ほどの答弁の言葉が適切でなかったために、お取りいただいたようでございますが、これは部下から言われて初めて気がついたというのではなくして、(羽仁五郎君「そういうりっぱな部下がいるということはいいことですけれどもね」と述ぶ)その通牒を出す前に、もう少し検討すべき余地があったのを、そこまで十分検討しないうちに出してしまって、出してからさらに見直したところが、まずい点があったということが、本部長の部下等と直接再検討しておって本部長も同時に気がついた。これはなるほど適切ではなかった、表現が少し不十分であったというようなことで、誤解を一掃するために、全面的に撤回するという決意をいたしたのでありまして、本部長が全然気がつかなくて部下に言われて初めてわかったというのではないのでありますから、その点は御了解願いたいと思うのであります。  この本部長の身分、さらに責任という点でございますが、県の本部長は、御承知のように、国家公安委員会が県の公安委員会の同意を得て任命する。こういうことになっております。従って、任命権者は国家公安委員会であり、またそれに同意権を持つ府県の公安委員会であります。日常の仕事のやり方につきましては、県の公安委員が本部長を全面的に管理いたしておる、こういう建前になっております。問題の神奈川県の本部長の場合、あの事故を起したことにつきまして、神奈川県の本部長は十分責任を痛感いたしまして、神奈川県の公安委員会に進退伺いを出したのであります。ところが、県公安委員会では、十分に慎重審議されました結果、本部長が自発的にそういうふうに悪かったということでこれを撤回する気持になっているので、また県公安委員会としても撤回するのが適当であるというので、本部長のその熱意を支持するということでありましたので、今後十分気をつけてくれという将来を訓戒するということで、進退伺いは下げ渡しになった。こういう状況でありまして、国家公安委員会におきましても、同様に、この報告を受けまして、神奈川県公安委員会がとった措置はおおむね適当である将来を十分注意して、再びそういう間違いの起らないようにしていただけばそれでよかろう、こういうことになっておるのでありまして、県本部長といたしましては十分に責任を痛感をいたしておるのであります。これを契機として、おそらく今後は再びそういうことは絶対にしないように自重してくれるものと確信をいたしております。
  59. 羽仁五郎

    羽仁五郎君 今の点については誤解があるといけないので……。私は県本部長に対しては、部下の警察官から注意があったことを少しもとがめているのではない。それは非常に喜ぶべきことだと思います。それで、今日の民主主義の社会でありますから、警察官が本部長をよく助けるということはまことにりっぱな態度であり、そんなことをうっかり言うとあとでひどい目に合うのではなかろうかというので黙っているということはない。りっぱな警察官だというので、その点では非常に尊敬をしておるのでありますから、誤解がないようにお願いいたしたい。また一般にそういうふうであれば頼もしい。たとい上の方が判断を誤られても、第一線で働かれる方がそれに対して正しい意見をお出しになる、そういう風潮はぜひ奨励していただきたいと思う。その点は誤解のないようにお願いいたしたいと思います。  なお、今御説明いただいたことで了承いたしますが、どうか単に、末端という言葉は私は非常にきらいですが、第一線の方の責任ばかり問うというのは妥当な方法じゃない。かなり高いレベルで責任をとるということが必要だと思うので、その点はなおまた御研究願いたいと思います。
  60. 中川董治

    説明員(中川董治君) 第二十二国会の相当末期であったと思いますが、法務省の政府委員と私、当委員会にお伺いしまして、結果におきましては、その被疑者が白らしい、こういう事件の逮捕をする場合の疎明資料等を当委員会に提出して、ざっくばらんに、疑うに相当の理由があったかどうか、そういう点を検討したらどうか、こういう御意見等もあって、私は法務省の政府委員とともに、われわれの承知している限りにおきまして詳細申し上げましたが、資料としてお出しするのはまことに結果においてごかんべん願いたいと申し上げたのでありますが、そのごかんべん願いたいという趣旨は、当時その被疑者は大阪地方において非常に捜査中でありましたので、そういう捜査上の一つの重要な資料でございますので、そういった点がだんだん広く周知徹底するということになりますと、自然ほんとうの犯人がつかまるということがおそくなるということになると、皆さんの御希望と逆の結果になる、こういう点をるる説明もしておりますし、法務省の政府委員の方もその御趣旨で説明がありました。その後、あの事件は、いろいろ警察で努力いたしまして、ほんとうの被疑者がわかりまして、一応警察としてはその事件の捜査が完了いたしましたので、一件事件検察庁に送致したわけでございますけれども、こういった事件は、検察庁が起訴、不起訴ということを御決定になりまして、起訴された場合には、裁判におきましてその真相が明らかになる、そういった関係にあるものですから、その点、主管は法務省でございますが、われわれはいろいろ法務省とそのときも相談しておるのですけれども、結局は裁判法廷証拠として出される関係等がありますので、その点いかがかと思うのですが、正式には法務省の関係でございますが、その程度で御了解を得たい、こう思っておるわけです。
  61. 羽仁五郎

    羽仁五郎君 趣旨がどうも御了解願えないのではなはだ因るのですが、法務委員会関心を持っておりますのは、今御説明がありましたような点ではない。そうじゃなくして、間違った人に逮捕状が出たり、あるいは明らかに間違った人が逮捕されたりするようなことを根絶したい。従って、どうしてそういうことが起るのかという関係の資料を研究調査したいという点なんですね。ですから、ちょっと十分御了解いただけない点があるのですが、明らかな証拠がなくて、釈放された人に対してもどうも警察は男らしくないことをあとからおっしゃっているようですね。あれはまだ少しあるのだ、けれども、明らかな証拠がないために釈放したんだ。従って、全く白というわけじゃない。自分の方の黒白というわけじゃないんだ。ことによったらまた引っぱってみるかもわからないというようなことを、新聞にも語られたり、またそういう態度をとられたりすることがあるのですが、それは私は新しい民主主義の警察のあり方じゃないと思う。やはり男らしく、証拠のないものについては一切何にも警察としては言うことがないのですから、そういう材料はお出しになった方がやはりよろしいのじゃないかと思う。それを、やっぱり何だかその人を追っかけているようなことをなさっているというのでは、よくないじゃないか。そういう意味で、まず第一には私どもの本委員会が要求しております趣旨をよく御了解になって、警察がそういう疑いを受けられることをなくしたい。いやしくも人権を侵害しているというような疑がないようにして差し上げたいというのは、はなはだ僭越ですけれども、そういう気持なんですから、御協力を賜わりたい。特にもうやはり明らかなる証拠がなくて釈放せられた方についての資料は、今御説明のように、裁判と何も関係はないのですから、お出し下さることのお差しつかえがあろうとは思われない。  それからその後にも起っている事件がございますね。つまり当時問題にした以後の今申し上げた中国留学生殺人事件に関する楊夫妻の逮捕とか、あるいは医師免許状偽造事件に関して厚生省事務官が逮捕せられた。これらはいずれも明らかな証拠はないのですから、それは明らかに妥当でない逮捕であったということは、男らしくお認めになって、そうしてそれに関係する資料というものをお出しいただくことが、私は警察の民主化を促進する上から望ましいことではないかと思うのですが、どうでしょう。
  62. 中川董治

    説明員(中川董治君) お説のように、警察が未練くさく、失敗したものをミスとしてほっておくよりも、あるいは黒かもしれぬというなことを新聞等でごらんになることもございます。私も見ることがあるのですが、そういう未練そうな点は全く同感でございまして、そう未練がましく言うべきではないと、こう思うのでございます。その点は全く同感でございます。  ちょっと私の申し上げたことを誤解願っていると思うのですが、そういった点でなしに、そういうことに関連する資料は、いずれにしても、当該非疑事件証拠関係書類なんです。いずれにしても、たとえば大阪の自動車の事件につきましては、何者かが自動車強盗をやったことは事実でございますので、何者かがやった事件が、幸い大阪の場合はほんとうの犯人とおぼしき者が出て参りまして、それが刑事手続が進行しておりますが、検察官が起訴なさる場合におきまして、それが訴訟の書類になりますので、この点は裁判上の関係等もありますので困難でないかと私も想像いたしますが、ただ私は困難と言い切るのには適当な人間でございませんので、困難な旨を申し上げている、こういう趣旨でございますので、御了承いただきたい。
  63. 成瀬幡治

    委員長成瀬幡治君) ちょっと、私やはり人権問題に関連するのですが、実は先ほど羽仁委員指摘されました、点取り主義と申しますか、そういうようなことのために、やはり人権が侵される。警察の点取り主義と申しますか、そういうものは片一方では職責に非常に熱心であって、犯罪捜査に熱心であるから、そういう結果になったのだ。その点はよくわかるわけですけれども、やはり誤まって逮捕されるとか、あるいは誤まってそういう人等が新聞に出て、真犯人つかまるなんていう格好新聞に出てしまえば、あれは誤まっておったからといったところで、実際追っつかない問題だと思う。たとえば大阪の自動車運転手殺しにいたしましても、あるいは雑貨商殺しにいたしましても、先ほど羽仁さんの指摘されました厚生省の事務官の問題とか、あるいは中国人留学生殺しとか。そこでこういう問題がいま少し慎重に扱われて、こういう方に迷惑もかからずに人権が尊重されておって、しかも実質的に犯罪があがる格好に私は警察当局としては努力するのがしかるべきだと思うのです。それにはどういう方途があるか、これはどういうようなことをやっていったら一番いいかということについて、私は相当の抱負があるだろうし、御意見があろうと思う。今後どうする、こういう問題をなくするにはどうするのだという御意見がありましたら、一つお漏らしを願いたい、こう思います。  それからもう一つ、砂川のあの問題で非常に警官が勇敢にやられたわけです。そこであれを見ておった砂川のあの町の子供たちが、警官はにくいと、こういうことを言うわけですね。その場合に、ただ単に基地に取られる、基地拡張に警官の方たちが協力されたからと、そういう問題じゃないのです。女の、自分たちのお母さんや姉さんが、知っている人たちが無抵抗でこうやっている。それを踏んだり蹴ったり、あるいは何にもせぬのに強引に引っぱっていって、あとからつついてゆく。そういうことをじっと見ておったのですね。そうしてそういうことを言っておる。ですから、これは私はああいう子が大きくなったときに及ぼす影響というものは非常に重大なことだと思うのです。ですから、そういうようなことについてもどういうふうにお考えになっているか、この二点について一つお伺いしたいと思います。
  64. 石井榮三

    説明員(石井榮三君) 犯罪捜査に当る者の心がまえにつきましては、先ほど羽仁委員の御質問に対してお答えしたところなんでございます。どこまでも人権を尊重するということを基本理念といたしまして、昔のようにいわゆる見込み捜査というようなことで簡単に着手をするということでなしに、真に犯罪ありと思量されるに足りる相当な理由があり、証拠があって初めて、しかもこれを合理的に科学的に捜査を進めてゆくと、こういうことでなければならないと思っているのでありまして、捜査に当る者の心がまえ、また捜査のための技術、そういったものを絶えず機会をとらえて教養を加えており、漸次改善向上されつつある今過渡期であります。そうした基本的な心がまえ、あるいは新しい科学的、合理的な捜査方式の技術の身についておらない不十分な警察官によって、まま昔流の捜査方式のために失敗をする、人権を侵害するような結果になるということが、遺憾ながら間々あるようであります。そうしたことを今後なくするために、われわれは目下鋭意努力中である状況でありまして、かすにしばらく時間をもってしなければならないと思っているのであります。できるだけ早く理想的な犯罪捜査の態勢が成立することを念願をいたして、目下精進をいたしているのでありますので、御了解を願いたいと思うのであります。  それから砂川の基地の取締りのことにつきましてお尋ねでございます。私ども基地の問題につきましては基本的にはこういうふうに考えておるわけであります。地元の関係者がいわゆる基地反対運動をされるということは、これはまことにごもっともな点もあるということは十分了解をいたしております。先祖伝来の住みなれた土地を取り上げられるということは、これは情において忍びないもののあることは、私ども個人としては全く同感であります。なるがゆえに、いわゆる反対運動というものに対しまして、警察の取るべき態度は不介入、不干渉という態度を堅持して参ったのであります。しかしながら、それはあくまでも限界があるのでありまして、いわゆる反対運動が合法のワク内においてなされる限りにおいては、警察はこれに対して何ら干渉もしなければ介入もしない。しかし不幸にして、もしその反対熾烈なるあまり、運動が行き過ぎまして、いわゆる不法行為の事態に立ち至りますならば、警察の職責上これを放任しておくわけには参らないという態度をもって、今日までやって参ったつもりであります。具体的にあの砂川の九月十三日、十四日の測量隊の測量の際に起りましたトラブルというものは、私どもといたしましてはまことに遺憾だと思っております。しかし道路を占拠して道路交通の妨害をする、あるいは正規の手続によって測量をする測量隊の業務を妨害するという、道路交通取締法違反ないしは業務妨害といったような事態が発生をいたしておりまする以上、警察としてこれを黙認するというわけには参らないのであります。ただ何もしないでただ坐っている者について警察が実力を行使するのは行き過ぎじゃないかとおっしゃられる方もあるかもしれませんが、無抵抗の抵抗と申しますか、道路上を占拠し、道路交通を阻害するという行為そのものは、積極的に手を下さなくとも、これは一つの不法行為と申しますか、不法事態であると解さなければならないのでありまして、その不法事態を排除するということのために、警察が遺憾ながら実力を行使せざるを得なかったというのが実情なんでありまして、そうした現実の姿が純真な子供の目に映じて、警察官に対する悪印象を持ったということは、これは私どもとしましてもまことに遺憾にたえないところであります。しかしそれはそれといたしまして、今後若い子供たちにわれわれの新しい警察の理想の姿と申しますか、そういったものを十分に認識して彼らの目に映ずるように、今後われわれの努力精進によりましてりっぱな姿の警察を子供の目に映ぜしめるように一そう努力して参りたい、かように考えております。
  65. 成瀬幡治

    委員長成瀬幡治君) 非常に抽象的なことはよくわかるのですけれども、具体的に、たとえば予算というものに制限されると思いますので、実質的な員数は十二万確保するという方針にすれば、そこに科学的なものを加えていけばいいと思いますが、しかしそういうことが許されないとするならば、たとえば員数は減らしてきて、その費用を機械化の方に回してくるとかというようないろいろの問題がありますから、一つその御方途を研究願いたい。その場合にたとえば指紋だけじゃない、もっと科学調査の費用が要る、それは予算措置で削られてしまう。これはやり得ないことだから、員数だけを減すわけにいかないから、そこの員数だけでやっていく。だから、そこに聞き込み捜査とか見込み捜査が行われるということで、そこに人権侵害が起る。そこがあなたの方で具体的に方針を立てなければならない。そういうことについていま少し具体的の今後の御指導を願いたい、こう思っております。
  66. 石井榮三

    説明員(石井榮三君) 捜査のための科学的な施設という点につきましては、私どもも絶えず意を用いております。逐年向上されつつあるのであります。しかし先ほどのお話にもありました通り、予算の制約等もありまして、なかなか一気に飛躍的な刷新改善というわけには参っておりませんのは事実でありますが、年々改善向上されつつあることは事実であります。今後さらにそういうことについて私どもとしましては一そう努力を進めて参りたい、かように考えております。
  67. 羽仁五郎

    羽仁五郎君 根本的な点については鋭意努力せられ、かするに時日をもってせよというお気持はよくわかるのですけれども、警察民主化発足以来すでに十年近くになっておりますし、しかも次第に人権尊重の実績が上っているということであれば、まことに喜ぶべきことなんでありますが、不幸にして、ちょっと油断していると、たちまち人権侵犯の疑いを受けられるという実情でありますから、きょうは時間もおそいことでありますし、土曜日の午後でもあるので、いろいろ伺いたいこともあるのですが、次回にまた伺わしていただきたいと思いますので、きょう申し上げました趣旨はいずれも御同感下すったようでありますから、それらについて今委員長からもお言葉がありましたけれども、具体的に御研究を願って、そうしてまた伺わしていただきたいと思う。  先ほどの誤逮捕と申しますか、要するに、逮捕状の使用が妥当でない多くの例ですが、それについて裁判の直接のそれは資料ではないのです。まさか裁判所でも間違って逮捕した方の資料まで必要とされるということでもなかろうと思うし、それから犯罪を根絶するということよりも以上に、それよりもはるかに重大なのは人権の尊重ということでありますから、人権の尊重のないところに警察権はないのです。それをまだまだ十分御反省になっていないのじゃないか。それで昔の考え方では、一人の真犯人を捕えるためには百人ぐらいの人権じゅうりんをしても仕方がないという考えがあったかもしれませんが、今日ではたとえ百人の真犯人を逃しても一人の人権を侵すことは許されないというように、全く百八十度に考え方を変えていただかなければならない。その根本的な警察の民主主義のあり方について徹底せられる意味においては、今日多少支障がおありになっても、われわれが努力している趣旨を御了解いただいて、逮捕状の妥当でない使用に関する資料で、本委員会において調査し研究するのに役立つであろうというものに対しては、一つ積極的にお示しを願いたい。これはなお時間もありませんからあれですが、長官がよく御研究下さいまして、一つわれわれをして尊敬の念を高からしむるような態度をとっていただきたいと思うのです。
  68. 成瀬幡治

    委員長成瀬幡治君) ちょっと速記をとめて下さい。   〔速記中止〕
  69. 成瀬幡治

    委員長成瀬幡治君) 速記を起して。
  70. 羽仁五郎

    羽仁五郎君 出入国管理庁に一言だけ伺っておきたいのですが、最近この、つまり問題は大村収容所の問題でありますが、韓国政府の側から、大村収容所に収容されている朝鮮の方々であって、敗戦前から日本におられ、そうしてその日本におられたには歴史的理由がありいろいろな事情がある。そういう方々がおよそ数百名ですか、三百何名か、その方々に対しては釈放せらるべきではないか。もしそれが釈放せられるならば、敗戦後に日本に密入国された方々に対しては韓国側でも引き取るという措置を考慮しよう。それからまたその後密漁ですか、そういう関係で韓国側に逮捕されている方々の刑期の終った方々は日本にお返ししようという申し入れがあったということを、新聞で読んだのでありますが、そうしてそれについて外務省側と法務省側と協議をせられたのだということについても報道せられていたのでありますが、詳しいことを今時間が土曜日の午後でありますし、恐縮でありますから、だから一点伺っておきたいのですが、やはりこの問題は法務省においてもいろいろのお考えがあろうと思われますけれども外交とも、深く関係している問題であり、私はその前から歴史的事情などを十分考慮して、そうして大村収容所に収容せられる方針というものは全く必要にして最小限度にとどめられ、それらの方々が自由を回復せられることによって明らかなる実害のない場合、またその引き取り方などがおる場合は、大幅に釈放せられることが妥当ではないかということを申し上げていたのです。不幸にしてなかなかそういうふうにならない。最近はそれが外交上の問題にまでなっているのですが、その新聞の報道が事実であるとすれば、それに対してどういうふうに政府としては考えておられるのか。外務省と法務省との合議せられた結果どうなったのか。私としてはやはりそういうような措置が一刻も早く実現せられることが望ましいのではないかと思うので、その点伺いたい。
  71. 下牧武

    説明員(下牧武君) ただいまお尋ねの問題は、事務当局の間で、今外務省と法務省と協議中でございまして、結論は出ておりません。それで問題になっております点は、韓国の言い分は、ただいま羽仁先生がおっしゃいましたように、戦前からおる韓国人を犯罪を犯したからといって退去を強制するというのは、これは筋違いじゃないか。だから、そういうものは今大村収容所に収容されているところの刑罰法令違反者これは全部釈放すべきである。そうしたら、日本の漁民も返してやろう、こういう建前でございます。ところが法令的にも私どもの方としては、朝鮮人は外国人としての扱いをいたしております。それを国際法的に果して外国人であるかどうかという点はこれは議論のあるところでございまして、両国間のそれは条約によってきまるべきだという議論は一応成り立ち得ると思いますが、ところが、事実問題といたしまして、終戦後全部外国人として扱ってきておる。しかも日韓会談の交渉の過程において、両国間においてそれを外国人として扱うことについては一致しておるわけでありまして、また在留朝鮮人のその処遇についていろいろ韓国から申し入れあるものも、やはり一つの外国人としてそれを認めているということに帰着するので、その点私どもは既成事実として、すでにもう在日朝鮮人が外国人であるということはこれは動かし得ない事実のように考えて取り扱っているわけでございます。そこでそういたしまするというと、外国人としてやはり退去強制の事由に該当するような形態に立ち至った場合には、これは一律に外国人の扱いをしなければいかぬ。ただ朝鮮人の方は従来から日本との関係もございますから、そこは非常に大目に見まして、それでその最近の数字はまだまとまっておりませんが、九月二十六日現在の刑罰法令違反者と認められるのが三百三十八名大村に入っております。そのうちちょっとこれはこまかくなりますが、前科の数によってこれを区別いたしますと、一犯と二犯というごく犯数としては少い者が五十四名でございます。それから三犯、四犯、五犯、この三つを合計いたしまして二百十一名、それから六犯、七犯、八犯、これを合計しまして、五十五名、それから九犯から十三犯まででございますが、これを合計しまして十二名というような数字でございまして、大部分は三犯以上の累犯者ということになっております。それから初犯あるいは二犯の者にいたしますても、その内容は麻薬を何万本——三万本とか二万本とか密造いたしましたとか、それから強盗を行いましたとか、それから強制わいせつをやったとか、非常に全然身元引受けもなくて住居不定、これをほうり出したらどうにもならないというような者のみをここに入れておるわけであります。それで一般に出入国管理令に規定しておりますところの犯罪者としての退去強制事由に当る者のうち約八割程度は、最近は特別在留にいたしまして、よほどの者、ただいま申し上げたように、犯罪の上に生活しているとしか思われないこういう者だけを収容しているという状況でございます。そこでこれを無条件で韓国側の申し出の通り釈放してしまうと、果してこれは国内の治安にどういう影響があるかということを考えますと、直ちに踏み切れない面があるわけであります。  それで私どもといたしましては、御存じのように、韓国側は密入国者を引き取りませんし、それから収容人員はだんだん増加して参りますし、いたずらに過剰拘禁にし、また収容して詰め込んでゆくことだけが決して出入国行政の能ではございませんから、これは適当な機会にある程度仮釈放、放免というようなことも考えなければならないかとこう思っておりますが、今申し上げましたようなものを野っ放しで出すということも、これは非常に考えもので、そのほかの国内治安維持の面と、それからそれにかえて加えて漁民引き取りの問題、私どもといたしましてはこの漁民の引き取りとこの韓国人の釈放というものを天びんにかけるのは、本来筋が通らないことのように考えております。私どもの方が向うが返せ返せというのを返さないで、漁民がそれで天びんにかけられるなら、これは話はわかりますが、こちらで返しましょう、それから向うは返してくれというのをいやというのは、どうも話の筋が逆になりまして、ちょうど私どもの感じをざっくばらんに申し上げますと、人質外交に困っているというような感じがあるわけでございますが、しかしそういうことは別問題といたしまして、漁民の引き取りということも、これは日本政府としても何とかして考えなければならぬ問題でございますから、そのてん何か打開の道がございますれば、極力そこで考慮いたしたいということで、いろいろせんだって外務省とも話し合いましたが、まあ一度よくほかの関係機関も入れて相談しようということになって、まだその次の会合が持たれていないという状況でございます。  ただいま申し上げたような状況で、釈放するにいたしても、何か手当てをしてやらなければなりませんし、どうしても全面的に全部釈放しろという要求にはちょっと応じかねるのじゃないか。ある程度その中で、これならば、まあたとえば犯罪の質としてはそうほかに比べて重くないけれども、身元引受人がない、それから住居不定で困っているというような人々は、これは実際にそれを適当な保護団体に預けて、補導期間は三ヵ月間なら三ヵ月間もちまして、そこでいろいろ職業のあっせんなんかもいたしまして、それで大体これならば一本立ちになれるということならば、特別在留扱いをする。それからまたとうてい見込みのない者は再収容するなり、何とか特別の措置を講じてやりませんことには……。ところが、御存じのように、全面釈放の線でぐっと乗り出してきているものとの調節をはかるというわけで、非常にはずかしい問題で、私どもも悩んでいる状況でございます。
  72. 羽仁五郎

    羽仁五郎君 御苦心の点はよくわかるのですが、たびたび申し上げたので繰り返すのも恐縮でありますが、歴史的な事情というものをよほど慎重に考えていただきたい。それから過去において日本が朝鮮を植民地として支配していたということに対する朝鮮の方々のお感じというものは、やはりわれわれが想像し得ない深刻なものがある。従いまして、今御説明の講和条約発効以後外国人として取り扱うという場合にも、つまり現行法規が国会で審議せられた場合にも、それを直ちに形式的に適用するということはしないと、当時の外務省の御意見、また人情に反しその他残酷な措置というものは絶対にとらないという、いろいろなことがある。それらもよく御了解のことだと思うのであります。  いずれにしましても、根本的な解決は、日本と朝鮮あるいは韓国との正常なる外交関係が打ち立てられるということにあるということは私から申すまでもないことであります。その正常なる外交関係の回復がおくれるために、ただいま御説明に相なりましたような、非常に御苦心にならなければならないような事情が次から次へと発生してきて、原因結果が重なると思われる。ですから、私はやはり根本的には外交関係の正常なる回復ということの努力が第一義ではないかと思うのです。従って、今の御説明はよくわかりますが、しかしながら、その眼前、今目前にありますいろいろな困る問題ですね、そちらの方に重点を置かれますと、容易に外交交渉が進行しないということになって、その間にますますお困りになるようなことがでてきてしまって、しまいにはとんでもないことになる。私が繰り返し申し上げましたのは、ああいう状態でもし不祥なる事態などが発生いたしました場合には、なおさらそういう国際関係上にも容易ならぬことになってしまうのじゃないか。そういう点もありますので、今御説明の御趣旨はよくわかりますが、その点をさらにまた検討下さいまして、外交関係が円満に進行することを第一義的にお考えを願いたいと思う。もちろん、これは先方の御要求をことごとくそのまま直ちにいれるということはできない事情もおありになるでしょう。ですから、それはよく御説明になりまして、戦前からの方々は全部即時釈放ということがかりにできないとすれば、戦後の方々についてまた別に方法を講ずるとか、いろいろなそれぞれの条件を相照合いたしまして、先方がこれをお考えになっている趣旨の、こちらとしても実現できる最大限のところを一つ御尽力願いたいと思うのです。  これは要するに、法務省の方からだけごらんになれば、犯罪が及ぼす危険ということを第一にお考えになるでしょうが、それが起ってきた根本原因は、やはり外交関係が円満でないということからきていることでしょうから、外交関係が円満になることによって解決される部面も多分にあるということを、なお一そうお考え願いたいと思います。  関連しまして伺っておきたいことは、最近出入国の管理ではない、つまり旅券法の関係で出入せられる方々に対して、出入国関係の法規を適用しておられるのじゃないかというふうに私は疑いを抱いておる事件がございます。先ほど中国あるいは朝鮮から日本に旅行せられる方々に対しても、法務省なり出入国管理局なりが、必要にして最小限度以上にタッチせられておるのじゃないかというように考えられるのでございます。これはごく最近のアメリカの判例などを見ましても、やはり海外旅行というものは基本的人権に属するものであるということが明らかにせられておるようでありますから、この短期の海外旅行、あるいは短期に日本に旅行して来られるという方々に対して、出入国関係の法規を適用せられるということは、私はどうも妥当でないように思う。かつまたこれは国際的な礼儀にも反するように思います。ごく最近——きょうここに持って参りませんでしたが、多分朝日新聞の夕刊に載っていたように思うのですが、この間中国からお入りになる方々についてかなり詳しいことを、たとえば中華人民共和国という名前でなく、中国という名前にしてくれとか、あるいはお入りになってから、日本に旅行して来られてから、どこどこを訪問せられるのであるかとか、あるいは日本に旅行しておられる間に絶えず日本の官憲が尾行しておるとかいうようなことを、朝日新聞がそれに対する批判をしておりましたが、これは実際、第一必要であるかどうか。それだけのことをしたからどれだけの効果があるかわからぬ。また最小限度であるかといえば、最小限度とは言えないのじゃないか。だから、効果もないし、そうしてまた行き過ぎという疑いを受けやすいというような措置をとられることは、世論の批判を受けられてもし方がないのじゃないか。  それでこれは多分面接お仕事と関係がありますから、そういう世論の批判もごらん下すっておることと思いますが、ああいう国際上失礼でもあり、そうしてまたそれによってどれだけの効果をあげるかということもわからない——わからないじゃない、どれだけの効果も上りはしないというようなことまでなさるということは、ぜひ一つやめていただきたいと思うのです。それで治安というものの根本的な点からいえば、やはりそういう数人の人が行ったり来たりして治安が乱れたりなんかするということもないでしょうし、まあこういうことまで申し上げたくないのですけれども、疑えば、直接関係しておられる管理の方々がそういう問題について反対の立場をとっておられる政党などからの非難をおそれて、まああまり自由に出入りしておるようじゃまずい。だから、相当厳重にやってごく差しつかえない方だけの出入りを願っておるのだというような弁解のために、そんなことをなすっておるのじゃないか。実際その必要があるというふうにお考えでそういうことをやっておられるのじゃないのじゃないかというような疑いさえも、はなはだ失礼な疑いでありますが、生ずるのでありますが、外国から日本に旅行して来られる方、それから日本から外国に旅行しようとしておられる方は、旅券法の精神に従って、その自由を尊重せられることが第一義的に必要だと思う。それに出入国管理に関する法規を適用せられるということは不当だ。そういうことについて最近まで実際やっておいでになることは妥当でないと思うのですが、その点についてはどうですか。
  73. 下牧武

    説明員(下牧武君) 最初の送還の問題でございますが、これは私どもとしましては、まあ外交関係もさることながら、事務的に韓国代表部との折衝を打ち切っているわけじゃございません。現にもう一昨日、それから昨日も、話をしている事実がございますので、それでまあ何とかそこを折合いをつけて、密入国者でも引き取って、ある程度こちらで考えられるものは考えるということで、極力妥結するように、非常に困難だとは思いますが、努力はいたしております。  第二点は入国の問題でございますが、これは個別的な例を資料にいたしましてお答え申し上げますと、これはやはり響きがございますから、抽象的に申し上げたいと思いますが、私どもで拒否と申しますか、そのした中には、この調査が絶対間違いないかどうかということはこれはちょっと断言はできませんけれども、一応私どもが集め、あるいは関係機関によって集められた資料によりますと、過去において相当具体的な好ましくない状況が出ておるものもございます。それでまたそれと関連しまして、そういう個人だけを取り上げてということはこれは外交的にも非常に響きが強くなりますので、その点はあれやこれや考えて、ある程度そこで線を設けたというようなこともございます。それでまあ私どもといたしましては、ちょっとそこは羽仁先生と御見解が違うと思いますが、出入国で入国というのはこれは外国人の自由であるというところまでは考えておりません。やはり出入国管理ということは、現在の国際情勢のもとにおいては、これはやはりそのおのおのの主権国家のこれは自由であると、従って、ただそこで旅券に査証を与えるかいなかということはこれは全くの自由で、これは国際的な常識で、理由なしに断わってもこれは国際的に決して非礼にもならぬというふうな、一般に欧米関係なんかにおいては、もちろん外交官とかなんとかいうのは別でありますが、そういうふうなのが一般的な常識だと言っていいかと思います。  そうして出入国管理令の建前からいたしますというと、国内において非常に好ましくない、これは法令の上でちゃんと規定がございますが、そういうことに該当するかいなかということをあらかじめやはり審査をいたします。それでその審査をいたしますについては、ある程度資料を求めまして、そうしてその資料によって判断していくわけであります。一般の入国者につきましてはほとんどその資料が出て参ります。ところが、問題になったようなケースについては全然その資料が、ほとんど職業くらいやっとわかるというような程度で、中には職業もわからないというようなのもございます。それを普通の外国人の管理と同じように、コレクトリイに扱うという立場から申しますというと、こういう書類だけではとても入国は認められないというのが、非常に大部分がそういうケースでございますが、そこにいろいろ外交的な面もございますので、ある程度その点をゆるめて、そうして適当なところで線を切っておるということもございます。もしそれを厳密に普通の外国人の入国と同じように扱うということにいたしましたら、あれで一人も認められないというようなおそらく結果にならざるを得ないような状況のままで入国を求められておる。しかも一般の外国人に求めておりますところの誓約書のようなものも求めておりますが、それをやはり、そういうものを条件をつけなくちゃ困るというような注文もございまして、その辺も本人に直接それを誓約させるという措置を緩和しまして、スポンサーになりますこちらの日本の団体にそれを誓約させるというところでゆるめておるような状況で、私どもの入国の管理から申しますと、その人たちだけをなぜほかの外国人以上にそれだけゆるめてやらなければいけないかという辺が、むしろかえって割り切れないような気持になっているわけでございます。  まあ御趣旨の点はよく了解できますから、そこは非常識にならないようにまかなっていきたいと思います。実情はそういう実情にあるということを一つお含みおきいただきたいと、かように考えます。
  74. 羽仁五郎

    羽仁五郎君 よく御説明の趣旨はわかるのですが、私の申し上げているのは大体二点ですが、一つは旅券法の取扱いですね。旅券法の中にも、つまり法務大臣から異議があった場合にはということがあったように思うのですが、これはしかしよほどの例外の場合だと思うのです。それで今国際的にもという御説明がありましたが、さっき引例しました日本の最近の旅券の取扱いなり、あるいは出入国の管理ということについては、アメリカの例によってやられている場合が多いと思うのですが、アメリカでは、御承知のように、旅券並びにビザの取扱いについてかなり厳重である。それについて最近訴訟が起って、巡回裁判所の判決などで、やはり外国旅行などというのは基本的人権に属する。だから、それを国家の権力によって制限するということは妥当でないという、こればごく最近の判例が出ているようです。従って、アメリカで政府がある特定の人々に対しては旅券を出さない、特定の人々にはビザを出さない。そういうふうにしてアメリカに入りまたは出ようとする方の自由を制限されているということは、少くとも巡回裁判所の判決などで不当だということが最近判断されているようですが、つまり私の第一点は、旅券法の取扱いの範囲で解決する問題に対して、出入国の関係が少し出過ぎているのじゃないかという点が第一点。ですから、長く日本にお入りなられるとか、あるいは長く外国に行こうとかという方に対しては、出入国の管理というか、入国管理という面が出てくるのは、現在の法規上やむを得ないことだと思うのですが、きわめて短い期間日本に入ってこられる、あるいは外国に出られるという方に対して、ビザあるいは旅券の発行ということはやはり、主として、あるいはもっぱら旅券法の関係だろうと思います。ですから、外務省だけで解決される問題で、特段に実際に非常に困る、弊害がある、実害があるという場合に限って、法務大臣が異議をおっしゃるというようなこともあり得るのかとも思いますが、しかし大体においては旅券法の取扱いはもう少し自由に考えられるべきじゃないかと思うのです。そこへあまり出入国管理の法規を適用されるというふうにされるのは、どうも国際的慣例にも反するし、また必要でもないし、また最小限度でもないというように思うのですが、その点が第一点なんです。つまり旅券法の関係なのに、出入国の法規を適用され過ぎているのではないだろうか。  それから第二点は、全面講和ができてあらゆる国と大公使が交換せられる、そういう外交機関があれば問題ないのですけれども、現在はそうでない。不幸にしてまだそうでないのですね。それでお互いにそういう外交機関でないわけですから、ですから、それに対しては外交機関があれば問題なく向うから旅券を出す、ビザを請求せられることに対して、拒否せられることはかなり困難だろうと思うのです、一般の場合。ですから、そういう外交機関を交換していない国との、やはり外交関係は回復していないが、文化面の交流などは望ましいことですから、そういう方々に対して、外交機関を交換している国の方々に対してよりも寛大な措置がとられるということは、今御不審のような御説明がありましたが、私はそれはちっとも不思議じゃないじゃないか。で、外交機関にかわるような何らかの団体が責任をもってその代表として日本にお入りになる、あるいは日本からそういう関係で外国に旅行されるというのは、そういう団体があたかも大使館なり公使館なり領事館なりにかわる責任をとられるわけですから、そうでなければ外交関係が回復しない前に文化的な交流をやるということはできないことですから、外交関係の回復ということが望ましい、そのためにも、まだそれができないまでも、文化的な文流などというものが望ましいという趣旨からいいましても、そういう場合は外交機関が双互にないから、そういう団体の保証によって旅行の自由が阻害されないようにしていただくということは当然じゃないかと思うのですが、その二点について特に一つ御留意をいただきたいと思います。
  75. 下牧武

    説明員(下牧武君) まず第一点の旅券と入国審査関係でございますが、これは理論的に申しますと、旅券法によって入国のビザを出すということと、それから出入国管理令に照らして上陸を認めるかいなかということは、理論的には別問題であります。それで、ある程度在外公館におきましてまあ適当にビザを出して、持って参ります。そのビザの性質というのは、これはもう直ちに入国を認めるという、そういう内容の文書ではございませんで、一応まあ適当と思われるがどうでしょうかという一つ勧告的な意味を持った文書だと、こういうふうにまあ解釈をされておるわけです。そこで今度は出入国管理令に照らしてこれは上陸を認めるかどうかということが判断されることになるのですが、せっかくビザを持ってきたものを、こっちへ来てから追い返すということは、何としても非常識なやり方なんで、それで疑問のある場合にはあらかじめ、出入国管理の面から見た見方と、それから今度在外公官においてビザを出す場合の見方と、これを調整しようというので、連絡をとってやっておるというのが実情でございます。それでおっしゃるように、まあ理論的には旅券は旅券で、勝手にビザを持って来てもこっちはこっちで拒否すればいいんだということは、それはそこまでやるのはもちろんなおさらに非常識なことになりますから、そういう趣旨で、私どもは権限のないところに乗り出していくというよりは、むしろそれを調整するためにそういう処置をとっておるわけです。そこで、もちろん外交なんかで入ってくるような場合には、これはもう事前の協議もなくして、そうしてビザを自由に出すように、それから外交官が入って参ります場合、それから公用旅行の場合というような、はっきりしている場合は大体在外公館にまかせて、そしてこっちへ参りますれば、特殊な上陸禁止の理由のはっきりしたものがない場合には、一応そこに上げておると、こういう状況でございます。それから一般の商業者でございますとか、それから学術のなにでこっちへ来る、あるいは留学生、こういうものはあらかじめやはり協議を受けまして、そうして関係書類を提出して、学校の方の関係も調べる、それから会談なんかの場合にはその会議の内容も調べるというようなことで、関係書類をそろえて、それで私どもの方から外務省を通じて在外公館の方に、この査証は差しつかえないということで、まあ入国をさしておるわけであります。それで、先ほど申し上げましたように、そういう事情でやっておりますので、私ども本来のやり方といたしますれば、そこに十分な資料をもって検討した上でというのがノーマルなやり方になるわけであります。  それから今度、旅券法で自由だとおっしゃいましたが、これは出国の場合入国の場合とは建前が違っております。それで出国の自由ということは、これは日本におきましても憲法に保障されておることでございまして、そのために旅券法というものがありまして、旅券法で法務大臣に協議しなければならないというのは、その出国の自由をある程度押える場合に、しかもその出国することによって国内治安に影響を及ぼす、あるいは日本に非常に不利益を及ぼすというような場合には、それで事ある場合には法務大臣に協議すると、こういうことになっておる。ところが、一方入国の場合は、これは建前は法務大臣に協議は要らないのでありまして、自由に外務省の方で措置されていいようになっております。ただ、先ほども申し上げましたように、本邦の港に来たは、そこで拒否するというようなことになっては、これは大へんですから、これは事実上事前の協議で調整しようじゃないかと、こういう運用になっておるわけであります。その点一つ御了承願いたいと思います。
  76. 羽仁五郎

    羽仁五郎君 御説明の中にも、私の申し上げておる趣旨の了解せられた点と、そうでない点とが混在しておるようですが、つまり、なぜ、たとえば日本なら日本に入ってくる人あるいは出ていく人に対して、ある程度の旅行の自由というものを制限するかという、今あなたは旅券法と出入国管理法規と理論上は別だということを一応お認めになりましたが、その理論上別になる理由ですね、その理由の方も十分考えていただきたいと思うのですよ。つまり短期間に旅行するということについてはやはりあくまで自由を尊重する方が当然だし、そうしてまたそれで差しつかえがないと思うのです。長期に日本に入ってこられるなり、あるいは日本で生活の収入を得られるなり、いろいろなことになれば、労働基準法であるとか職業安定法とかいうこととも関係してきますから、その日本の主権というものの発動があるのは当然でもあり、またやむを得ない点もあるのです。外交官はなぜ特別に待遇されるかといえば、外交官は別に特権を持っておるわけではないので、その外交官が特別に待遇せられる理由は、やはり外交官の仕事と、それからその外交官が別に相手方の職業安定法にも関係しないしするという面もあると思うのです。ですからその国として、日本なら日本として、入っておいでになる方にせよ、出ていかれる方にせよ、日本の国の結局は治安に関係するということなんでしょうが、その治安の実際上の具体的な危険、眼前明白の危険というものに限らるべきで、または職業安定法なりその他そういう具体的の問題に関係してのみ起ってくるので、そうでない限りは、やはり旅行の自由ということが第一義的に尊重される。その旅行の自由が制限せられるのはそういう具体的の支障がある場合に限られるという趣旨で、ぜひ一つやっていただきたいと思うのです。  それで念のためになお申し上げますが、さっきも申し上げたからあまり繰り返すのは恐縮ですが、最近文化団体なりいろんな団体で交換をしているのは、ある意味では外交官に準ぜられて、外交機関のない場合ですから、まだ外交関係は回復していないのですから、またそういう文化文流によって外交関係の回復に近づけようとしているのでありますから、文化団体、学術団体、貿易団体などが相互に交換せられるもの、これに対してはやはり積極的にそういうことが盛んに行われるように御尽力願うことが望ましいのじゃないかと思うのです。  それで最後にあれしたいのは、その制限をされる場合にも、思想上の理由で制限されるということは私は不当だと思うのです。過去において思わしくないことがあったという御説明もさっきあったのですけれども、過去においてあったからといって、今度またあるというように判断せらるべきものじゃない。今度はそういう団体の代表としてお入りになるのですから、あちらにせよ、また日本にせよ、団体自身がその団体の権威と名誉にかけて、そういう迷惑をかけないという努力をあくまでされるでしょうから、そういう点も十分尊重せられて、いわんや思想関係制限せられるということははなはだおもしろくないのです。  で最後に、先ほどの朝日でしたかが批判しているような点ですね、そんなことをやったって仕方がないことなんだし、しかも非常に無礼なことになるような、そういうことはぜひ避けていただきたいと思います。
  77. 成瀬幡治

    委員長成瀬幡治君) 他に御発言がなければ、委員会はこれをもって散会いたします。    午後三時四十分散会