○羽仁五郎君 その旧憲法時代のような
選挙干渉というものは今日それほどのものはないだろうということですが、まあそれほどのものがあっちゃ大へんなんです。しかし全く私の伺っているところその反対なんで、われわれが努力すべきことは、
選挙の自由をどうして実現するかということに、今日の民主政治家は唯一のそして最大の目標を置くべきではないか。それを
選挙違反の取締りなどによって
選挙の公明を期そうなんというお
考えじゃ、やはり旧憲法時代とあまり頭の切りかえができていないのではないか。昔やったようなことをまた繰り返しているのではないか。そして
選挙の自由に関する政府のセンスというものは、私は国民を必ずしも納得させていないと思う。その最も顕著な例は、
最高裁判所の
裁判官に対する国民審査の実際行われている形です。あれは明瞭に、つまり
選挙は秘密でなければならないという憲法の命ずるところを侵しているのではないのですか。平気にそれをやらせている。
各地においてそれを実際行なっている。われわれに向って事例をあげようというふうに法相がおっしゃるということは、はなはだ責任を回避したもはなはだしい。そういう事例について政府こそそういう事例を直ちにわれわれ
議員に
報告せられる責任があるのではないか。われわれが伺っているのも、その意味で伺っている。
最高裁判所の
裁判官の国民審査の実際において
選挙の秘密を破っている事実がないとおっしゃることができますか。
選挙の秘密はりっぱに破られておりますよ、
各地において。そういうことを平気でやっておられて、それで
選挙の自由というものを実現する確言があるというようにおっしゃることは私はできまいと思います。
私は
最高裁判所についても、あとで御
意見を伺いたいと思のですが、
公職選挙法の
違反事件の
処理状況というような問題につきましても、第一にわれわれが伺いたいことは、
選挙の自由がどれだけつまり実現されつつあるかということを伺いたい。ところがその点についてはおそらく何らの御
説明がないだろうと思う。かつまた、
選挙違反事件の
検挙件数が多いときと、それから
検挙件数が少いときと、
選挙の自由がどっちにおいて実現されておるかということこそ、民主主義をもし標榜されるならば、その政府が最も関心を集中しなければならないのであって、
選挙違反をやった人間が一体どのくらい検挙されているかなんということを勘定しているような政府に今日国民は税金を出しているつもりじゃないのです。ですから結論的にそういう意味において
選挙の自由を実現するためにどういう御努力をなされるか。それから
選挙の自由を阻害するようなことはすべてやめる。で、私は実際問題として今申し上げた三点、ことに第二点、第三点、政党政派によって
選挙の取締りの公正を期するということはなかなかむずかしいことです……、実際問題として、神様でない以上、人間である以上……
それから第三の
選挙に官憲が干渉する、あたかも
警察官や
検事が
選挙の公明をやるというように
選挙を監督するようなこと、これこそ最大の腐敗ですよ、政党間の腐敗どころじゃないですよ。民主党が今回
選挙違反をそんなに大ぜい出されたということを初めて私聞いて驚いているんですが、政党の
選挙の腐敗というものは直すことができる。しかし官憲が
選挙に干渉してくるということは、われわれ国民が直すことができないのです。それがすなわちファッシズムですよ。ところが日本ではそういうことが一番大きな危険だということを十分政府においても、あるいは
裁判所においても、ことによると十分の御認識がないのじゃないかということを今回の
選挙においても私は痛感する。この
選挙を政府や
検察官や
警察官が監督することによって公明を期することができるなんという
考えは、この際一掃せられるべきではないかと思うのですがどうでしょう。そしてそういうような方法によって、
選挙違反事件の検挙によって、
選挙の自由というものを実現することはきわめてむずかしい。しかもややもすれば、それは
選挙の自由を阻害するおそれがある。すなわち百害あって一利がないというような
選挙事犯の検挙
方針というものを今後も続けていかれるおつもりかどうか。その辺について結論的に御
意見を伺いたい。ことに政党政治家として、今御自身おっしゃったように、しばしば
選挙を重ねておいでになりました体験に基づかれまして、この点については必ずお
考えがあるだろうと思う。政党間の
選挙の腐敗ということよりも、官憲が
選挙を監督するということがはるかにおそろしい。そういうことになったなればこそ、日本がああいう戦争に引ずり込んでいかれた。そしてまた今日そういうふうにして新たにファッショが発生するということは法相においても断じて許されないところだろうと思う。そうすれば政府が主として、もっぱら努力しなければならないのは、
選挙の自由をいかにして伸ばしていくかということにあくまでも努力を尽されるべきで、
選挙違反事件を検挙することによって……、しかも検挙はずいぶん多い。そしてややもすれば
警察官、
検事が国民の上に支配するというような弊害は防ぎにくい、そういういろいろな弊害がある。
選挙取締りというものを一生懸命やって、それで
選挙の自由を失ってしまうという方向にいかれることは、断じて阻止せられる私は御決意だろうと思うのですが、どうでしょうか。