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1955-06-30 第22回国会 参議院 文教委員会 第17号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和三十年六月三十日(木曜日)    午前十一時十七分開会   —————————————  出席者は左の通り。    委員長     笹森 順造君    理事            木村 守江君            竹下 豐次君            荒木正三郎君    委員            大谷 瑩潤君            川口爲之助君            堀  末治君            加賀山之雄君            高橋 道男君            安部キミ子君            矢嶋 三義君            山田 節男君   国務大臣    文 部 大 臣 松村 謙三君    国 務 大 臣 川島正次郎君   政府委員    自治庁財政部長 後藤  博君    外務政務次官  園田  直君    外務省情報文化    局長      田中 三男君    文部政務次官  寺本 広作君    文部大臣官房会    計課長     北岡 健二君    文部大臣官房総    務課長     田中  彰君    文部省初等中等    教育局長    緒方 信一君    文部省大学学術    局長      稻田 清助君    文部省社会教育    局長      寺中 作雄君    文部省調査局長 内藤譽三郎君   事務局側    常任委員会専門    員       工樂 英司君   —————————————   本日の会議に付した案件 ○教育文化及び学術に関する調査の  件  (教育財政に関する件)  (文化アタツシエイ及び文化交流に  関する件)   —————————————
  2. 笹森順造

    委員長笹森順造君) ただいまより文教委員会開きます。  本日の議題は教育文化及び学術に関する調査であります。御発言のある方はお願いをいたします。
  3. 荒木正三郎

    荒木正三郎君 義務教育国庫負担法に基く国の経費負担算定基準関連をしてお尋ねをしたいと思いますが、その一つはこの本年度の予算定員の問題ですが、政令三県の教職員定員が昨年度に比べて二十四名しか増員になっておらないというようなことですね。ことしは総計小学校において七千名に近い定員増が見込まれておるわけですが、政令三県についてはわずかに二十四名しか定員増を見ていないということは私は常識的に判断してわかりにくいのです。というのは今年は小学校において五十万の児童加がある。それに伴って七千名の定員増を見ているわけなんです。しかし学童増加が一番その率が多いのは政令三県ではないかと思うのですがね。ところがその分の定員増が非常に少い、ほとんど見ていないということはなぜこういう結果になつたのか、ちょっと判断に苦しみますのでお尋ねをいたします。
  4. 内藤譽三郎

    政府委員内藤譽三郎君) ただいま私の方で見ました七十七万人に対応する教職員の増につきましては全体で一万二千五百十人見たわけであります。そのうち政令該当県が東京、大阪、神奈川の三県でございまして、その他の四十三府県につきまして約一万人、政令三県につきまして二千五百人、こういう計算になっておりますわけでありまして、ただいまお尋ねの点ちょっと私のみ込めないのでございます。
  5. 荒木正三郎

    荒木正三郎君 私は小学校の分についてお尋ねをしておるのです。ここに資料がございますが、小学校においては昨年度に比べて六千八百三十一人が増員になっております。この内訳は政令三県においては二十四名、それからそのほかの四十三県については六千八百七人、こういうふうな数字が出ておるわけです。そこで政令三県の定員増があまりにも少い、これはどういうわけかということを尋ねておるんです。
  6. 内藤譽三郎

    政府委員内藤譽三郎君) 政令三県は前から政令係数をきめておりますので、二十九年度、今荒木さんのお話の分は実績でございますので、実績政令定員との相違から来ているんではないかと思うのです。それからもう一つの原因は、これはこの際全国小学校及び中学校児童数教員数との比率をとりまして、児童すなわち学級数をとったんですが、学級数に対する教員比率をとって全国平均によって、もう一ぺん政令を締め直したわけであります。そういう点から増加が少い、こういうことになると思います。
  7. 荒木正三郎

    荒木正三郎君 だから、結局政令のきめ方が私は問題になると思うのです。こういう結果が出てくるような政令のきめ方自体に問題があるんじゃないかというふうに考えるわけです。先ほども申し上げましたように、学童自然増というのはやはり大都市に非常に多いわけです。従って学童自然増による教員増加ということになると、政令三県においては相当増加を見なきゃならぬというふうに常識的に判断されるわけですね。それがほとんど増加されていないということは、やはり政令のきめ方に若干無理があるんじゃないかというふうに考えるわけです。
  8. 内藤譽三郎

    政府委員内藤譽三郎君) 御承知通り義務教育費国庫負担法実績主義ですが、特別の事情ある場合には政令最高限度をきめることができる、政令のきめ方の問題でございます。そこで従来の実績基礎にして前の算定基準といたしましては小学校六分の七、中学校は六分の九という算定方式を使っておったわけです。ところが最近の実績で各府県実績を見た結果、小学校は十二分の十三、中学校は九分の十三というのが全国平均になっておりますから、全国平均のところで検討をし直したわけでございます。そういう意味でその数字が少い。もう一つは特に中学校の方に児童生徒の増が多かった、こういう点もあるわけなんです。
  9. 荒木正三郎

    荒木正三郎君 そこで昨年度の基準は六分の七であり、中学校においては六分の九という係数を使っておった。今年はその率を下げて十二分の十三、それから九分の十三と率を下げた根拠は、全国平均実績が大体この程度であるということから来ているという御説明でございましたが、それでは政令府県においてはこの係数にさらにプラスをして、いわゆる産休補助教員とかあるいは結核教員の補充として三%を見込んでおるのですか。
  10. 内藤譽三郎

    政府委員内藤譽三郎君) 見込んでおります。
  11. 荒木正三郎

    荒木正三郎君 そこで政令以外の県には実績だけしか見ていない。それから政令該当県には三%見込んでおる。少しつり合いがとれないように思うのですが、もし十二分の十三、九分の十三というのが実績に合う数字であるというならば、政令府県に三%見てあれば、やはりそのほかの四十三県にもこれは見てやるべきだと思うのですが、なぜ見ていないのですか。
  12. 内藤譽三郎

    政府委員内藤譽三郎君) この法律の趣旨によって実績主義でございますから、実績をとりまして、三十年度の増加人員に見合う分については、一般府県もこの十二分の十三あるいは九分の十三という数字を用いたわけでございます。増加人員について、この実績の中にはすでに産休補助教員あるいは結核休職実績の中に出てくるわけでございます。ですから新たに三%見ると、それだけ重複して見ることになる。ところが政令該当県については基準そのものが低いわけでございますから実績より若干低いのです。そこでその基準結核休職産休を見るというのが当然だと、こういうふうに考えます。ちょっとくどくなりますが、政令該当県でない県は、二十九年度の実績の中にすでに産休結核休職人員が含まれておる。それを基礎にして組んでおる。ですから新たに三%を見ない、こういう意味でございます。
  13. 荒木正三郎

    荒木正三郎君 そうすると、政令府県には三%見てやる。それから政令に該当しない府県については実績の中にそれが見込んであるので、別に見込むということになると、それだけ余分になる。そういう意味数字の上からは見込んでないのだ、こういうことですね。
  14. 内藤譽三郎

    政府委員内藤譽三郎君) さようでございます。
  15. 荒木正三郎

    荒木正三郎君 これは産休補助教員立法化の際にも私は問題になる点だと思いますので、今お尋ねをしたわけでありますが、その次に単価の問題です。単価を見ますと、政令府県小学校教員単価は一万五千二百七十四円になっております。それから四十三県の単価は一万五千二百九十九円というふうになっておるわけですが、こういうふうに単価が違うのはどういうわけですか。これを同じにするということが私はいいんじゃないかと思うのです。
  16. 内藤譽三郎

    政府委員内藤譽三郎君) ちょっと数字荒木さん違うのじゃございませんか。二十九年度というのを今おっしゃったのじゃないでしょうか。二十九年度の単価でございませんか。
  17. 荒木正三郎

    荒木正三郎君 これは二十九年の四月一日です。三十年度の予算基礎になっているのがこの数字ですから、これに対して五%の昇給率を見たのが今年の単価になっているわけです。
  18. 内藤譽三郎

    政府委員内藤譽三郎君) そうです。
  19. 荒木正三郎

    荒木正三郎君 従って五%の昇給率を見た単価は一万五千五百七十円です。これが政令府県、それから四十三県の単価が一万六千六十四円、政令府県単価を非常に低く見ておるわけです。これが中学校になると、政令府県は一万六千三十円、四十三県は一万七千六十三円、大体千円の単価開きがある。政令府県の方が低くしてある。もし定員の際に、政令府県定員をきめる場合に、全国実績というものを基礎にしてきめたというのであれば、これは私は当然単価についても全国実績というものを基礎にして単価を出してくるというのが筋合いとしては当然じゃないかと思うのですが、そういう点文部省考えを聞きたい。
  20. 内藤譽三郎

    政府委員内藤譽三郎君) 大へんごもっともな御質問だと思いますが、実はこの単価をきめる場合に荒木さんも御存じだと思うのですが、当初に単価をきめるときには国立学校単価基準にしたわけです。ですから、当時国立学校単価が低かったのでこういう結果になった。で、私どもはこの単価を是正するのに努力いたしまして、去年はまあ据え置きになったのです。それでせめて今年は二%だけ上げた。しかしお話のように問題点も私はあるかと思いますが、今後の問題として単価の問題は解決しなければならぬと思っております。
  21. 荒木正三郎

    荒木正三郎君 それじゃこの点について政務次官お尋ねをしておきたいと思うのですが、これは私はやはり定員をきめる場合と同様に将来全国平均というものを基礎にするならば、定員においてやはり単価においてもそういう見方をする必要があるのじゃないかと思うのですが、今後の問題として政務次官答弁しにくいかもしれませんが、是正しようという考えを持っておられるかどうか。
  22. 寺本廣作

    政府委員寺本広作君) 地方公務員である教職員給与は、国家公務員である教職員給与に準じてきめるという一本規定が入っておるはずであります。ただ、いままでのところは国家公務員の方が給与基準が低く、地方公務員教職員給与基準が高くなっている、この問題につきましては御承知通り地方公務員給与国家公務員給与の基本的な調査も行われておることでありますし、そこらの結果が明らかになりました際に将来の方針をきめていく、こういうふうに考えております。
  23. 荒木正三郎

    荒木正三郎君 少し政務次官は取り違いをしておられるように私は思うのです。そういう問題をお尋ねをしておるわけではないわけですが、この政令府県小中学教員単価とそれから四十三府県小中学校教員単価には相当開きがあるということを言っておるわけなんですが、これは予算を組む場合にやはり同一の単価考える必要があるのじゃないか、こう言っているわけです。他の公務員との関係を言っているわけではないわけです。
  24. 寺本廣作

    政府委員寺本広作君) 問題を取り違えてはいないつもりでありますが、定員については政令府県について全国政令府県を除いたその他の府県基準を現在まで用いてきております。給与についてはしかしながら国家公務員に準じてきめるという建前もありますので、その建前を全然くずして政令府県単価をきめるというわけには参らぬだろうと思います。政令府県以外の府県予算単価をきめるということでなく実績負担をいたしております結果、その方が高くなっている。それでそれは予算単価の問題としては使いにくいのじゃなかろうか、かように考えております。
  25. 荒木正三郎

    荒木正三郎君 そうするとこれはだいぶん私もむずかしい問題になってきたと思うのですが、そうすると政令府県の一万五千五百七十円というのはこれは何を基礎において作られているのですか。
  26. 内藤譽三郎

    政府委員内藤譽三郎君) これは国立学校教職員単価基礎にしたのであります。
  27. 荒木正三郎

    荒木正三郎君 そうすると、将来政務次官考えでは、これを変える考えはないということになってくるわけですね。
  28. 寺本廣作

    政府委員寺本広作君) 変える考えがないとは申し上げておりません。国立学校教職員地方教職員給与の基本的な調査も現在行われておることでありますので、その結果を見た上で将来の方針を立てたい、こう申し上げたのであります。
  29. 荒木正三郎

    荒木正三郎君 私はこの問題はこの程度にしておきます。しかしこれは相当よく研究をしてもらわないといけない問題であるというふうに考えておるわけなんです。というのは、この政令府県は、政令改正によって非常に条件が悪くなってきておる。特に定員の問題について六分の七から十二分の十三に引き下げられておる。そういう点から相当不利益な立場に立たされておるわけなんです。やはりこれをカバーする道としては、私は単価の問題を検討してもらう必要があるというふうに考え質問をしたわけであります。この問題に対する質問は以上で終っておきます。
  30. 木村守江

    木村守江君 私今来てどこのところを荒木質問をしておるのかわかりませんが、重複するかもしれませんが、地方財政がだんだん赤字になって参りまして、これから教育費に対するしわ寄せ相当ひどくなってこやせんかと思う。今荒木君が質問されたようでありますが、定員の問題についても本年度十二分の十三、九分の十三というような状態になって参りまして、そうすると、これは定員の上から言っても地方財政状態によって非常なアンバランスができて参ると考えるのです。その点はどうですか。
  31. 内藤譽三郎

    政府委員内藤譽三郎君) 現在三府県を除いては実績主義で組んでおりますから、実績の上に、実績人員はもちろん各府県とも確保していますから、三十年度の国費を今お話基準増加したわけでございますので、地方財政に大きな支障はないかと考えております。特に地方財政計画におきましては、国庫負担令と同様な数字をあげておりますので、教育費の面だけを申しますと、そういうことはないと私ども考えております。
  32. 木村守江

    木村守江君 どうも内藤局長の今の答弁は、私の質問とちょっと違うと思うのです。私はこういうことを聞いているのです。かつて、定員定額をやって、小学校に一・二五と中学校に一・五というような定員を、いわゆる義務教育によって適正規模定員というような格好考えていったことがありますね。ところが、だんだんそれが地方教育に対する熱意も欠けてきたかもしれませんが、また実際、地方財政の逼迫する状態に従って、これは一・二五とか一・五とか、あるいは一・七とかいうようなことからほど遠く、辛うじて一・一くらいを保つておる方がいいというような格好になってきている。それで、各都道府県で非常なアンバランスがあると思うのです。そういう状態がこれからなお著明にならないかということを聞いているので、これは義務教育国庫負担というものが地方財政圧力になっておるということを言っておるのじゃないのです。どうですか。
  33. 内藤譽三郎

    政府委員内藤譽三郎君) ちょっと私もあるいは御質問意味を取り違えているかもしれませんが、各都道府県の従来の実績昭和二十九年までの実績をもちろん考慮いたしまして、それは当然その基礎の上に三十年度の増加人員を見込んだわけでございます。その見込んだ基準学級数基礎にいたしまして、十二分の十三なり九分の十三という数字を用いたわけであります。ですから、それに見合うところの地方財政計画も同じ規模になっておりますので、さらに教育面の方からアンバランスを招来するということはないと考えておるのであります。ただ、お話の、地方財政全体として非常に窮屈なので、教育費の方にある程度圧力がかかるということは考えられるかと思うのです。
  34. 木村守江

    木村守江君 私の質問の仕方が悪いかもしれませんが、それでは各都道府県が今教員定数学級数に比較してどのくらいになっていますか。おそらくは一・一のところもあるだろうし、一・二近くのところもあるだろうし、小学校でですね。中学校で一・五のところもあるだろうし、一・七くらいになっておるところもあるだろうし、そういうアンバランスがあることが実情じゃないですか。
  35. 内藤譽三郎

    政府委員内藤譽三郎君) 一応のアンバランスがあるのですが、木村先生お話の中に、これは学級数なのか、児童数基礎にするのかという問題が一つあるのです。従来、文部省がとっておった方針は、五十人で総数を割りまして、五十分の五十という仮定学級数を置きまして、小学校が一・五、中学校が一・八という数字をとっております。実際学級とは相当開きがございますので、むしろ、実際学級基礎にして、それで教員比率を見た方がいいんではなかろうか、こういう考え方から十二分の十三とか、あるいは九分の十三という数字をとったわけでございまして、従来の実績から非常に離れているとは思っておりません。各県におけるアンバランス状況も一学級一人以下のところはないと思うのでございます。
  36. 木村守江

    木村守江君 私は、結局、文部省で前に定員定額ということを考えたときに、たとえば、一学級五十人として一・五、一・八という線を出して、これが適正規模学校経営定員数だというような考え方をしたような考え方で、これは五十人で割ったものであっても私は相当アンバランスがあるのじゃないか。将来これは、義務教育は、いろいろこの間から説明を聞いて、義務教育に関する限りは、これは地方交付税の方でも九六%ぐらい見ているから地方財政しわ寄せにならないということを言っておりますが、これは教育費全般から考えた場合に、これはどう考えても地方財政には相当教育費というのは圧力がかかっているのです。年間平均五億ぐらいだと思うのですが、私の県なんかでも、教育費赤字が五億です。その赤字の五億というのは、結局義務教育でない、高等学校費義務教育圧力をかけるのだということも私どもよくわかっておりますが、それは、やっぱり教育費として見る場合に、これはどう考えてもやっぱり義務教育費の方にも圧力がかかっていると思うのです。そうした場合に、実績半額負担するのだと、そういうことを言っておりますが、自治庁からくるいわゆる半額の金というものが明瞭でないために、あたかも教育費が、金額が多いという関係から圧力を加えられるのだという関係で、人員増を、教職員計数増をこれはちゅうちょするというようなことが招来してくると思うのです。そうしてこれは、どうしても将来私は、義務教育定員というものも、全国的にアンバランスにならざるを得ないと私は考える。あなたは、それは、そういうことはないと言うかも知れんが、私は実際場面を検討いたしまして、それはどうしても将来このままの状態では、私はどうしても定員アンバランスがくると言わざるを得ないのです。こういうことについて、一体文部省はどういうふうな考え方をもっているか。これはほんとうに、何といってもこれは教育の、新しい教育の一番のねらいは、教育機会均等だというような点から考えて、アンバランスになってきたのを、それは地方財政状況でやむを得ないのだというような格好で放置しておくわけには私はいかないと思うのですよ。どういうふうな考え、どういうふうにして将来起ってきそうな、また、現在起りつつあるそのアンバランスを是正していくのか、そのお考えをお聞きしたいと思います。
  37. 内藤譽三郎

    政府委員内藤譽三郎君) 大へんむずかしい問題でございまして、今お話のように、義務教育について地方財政を圧迫しないという意味から、実績半額主義をとっておるわけでございますから、そのために、地方赤字を出すことのないように文部省の方では措置しておるわけでございます。ですから過年度支出とか、あるいは適当な機会不足額は必ず支出いたしております。そこで、あとの残り半額の問題になるわけでございまして、ただ残り半額の場合は、他の経費と全部一緒になっておりますので、これは、教育費だけではなくて、あらゆる地方行政の全部の経費がここに上っております。そこで、これの配分の問題とも関連しまして、地方税交付税交付金によってまかなっておりますので、現在の制度では、文部省だけではいかんともなしがたいと思うのであります。で、この場合に、できるだけ交付税交付金やり方が、前の平衡交付金やり方でやっておりますので、平衡交付金の中における基準財政需要見方、あるいは単位費用見方と、こういうもの等を実情に合うようにするとか、交付税をできるだけ実際の地方団体財政需要額にマッチしたようなやり方をとっていただく以外には、今のところ適当な方法はないのではなかろうかと思います。
  38. 木村守江

    木村守江君 これはほんとう文部省だけじや現在のところは何ともしようがないというようなことになるかもしれませんが、御承知のように、昭和三十年度の地方財政計画から見ましても、これは明らかに百四十億の赤字になっておる。これはしかも大蔵省は閣議の決定で一夜づけであの百四十億の赤字を解消するような机上の計算を作っておりますが、われわれ予算委員会でそのことを追及しましたところが、自治庁ではこれでほんとう赤字にならないのかといったところが、赤字になりますという。大蔵省では初めから赤字になりますというような考え方では困る、これで赤字にならないようにやってもらわなければいけないのだという答弁をしている。そういうふうに義務教育費は国で、それは文部省で持った半額については九六%程度いって、何ら地方財政圧力は加えていないのだというようなことを言っておりますが、ほかのいろいろな交付金一緒に行く関係で、特にその中で教育費が大きいウエートを持っているために、不足する額は教育費だということになるのです。そういう点から考えて、これはどう考えても将来義務教育ほんとうに正しい、できるだけ適正規模に近いような経営をしていって将来アンバランスを除去して行くためには、これはどこから出した金でも同じですよ、文部省から出しても自治庁から出しても、どこから出してもこれは国家の金で、同じです。そういう点から私はどう考えても義務教育を守っていくためには全額文部省で責任をもって、義務教育に関する限りはちっとも地方財政圧力にならないのだというところまで私はいかなければいけないと思います。これはやっぱり、松村文部行政の大きなねらいはそういうところにあるのじゃないかと私は思うのです。このままでいったら金は出しているのだ、出しているのだがきき目のない金では何にもならない、しかも教育費としては支障のないように出しているのだが、ほかのものに使われても差しつかえないような格好で出してあったのでは、これは教育を守るための財政措置とはいえないのじゃないかと思います。結論は、ほんとうに現在のままでは文部省はどうにもしようがない、どうにもしようがないが、そこまで持っていって私は初めてこれから地方財政の逼迫した中に義務教育を正しく守っていくことができるのじゃないかと思うのです。いかがですか、その点。
  39. 内藤譽三郎

    政府委員内藤譽三郎君) 今のお話全額国庫負担ですが、これにも相当技術的に問題があると思うのであります。たとえば今地方税交付金でまかなっておりますが、その場合に一ぺんに全額負担にした場合に必ず財政上のロスが出て来ると思うのです。そういう点、地方財政全体の、地方税改正とも関連があるでしょうし、またそれによって地方が今後富裕なところがもう少し基準以上に上げたいという場合の措置ができなくなるとか、いろいろな問題もありますので、そう簡単には全額国庫負担ということもむずかしいのじゃなかろうか。ですから、どうしたら一番よく基準を守れるかという点については、もう少し検討してみなければならぬのじゃなかろうかと思います。
  40. 荒木正三郎

    荒木正三郎君 今の問題に関連して、今木村委員から御質問になっておる点は私は非常に重要な問題になってくると思うのです。今の地方財政赤字で苦しんでおる。今後この赤字を解消して行かなければならぬ、それにはどうしても節約という方向に行かざるを得ないと思うのです。その場合に一番節約の対象になってくるのは教育費ではないかと思うのです。やはり地方財政に占めておる教育費の割合というものが非常に大きいのですから、これに目をつけてくるということは、もう予想にかたくないわけです。自然国の予算では今の実績半額はみてやる、こういうことになっておっても、結局地方財政赤字のためにその分まで食ってゆく、こういうふうな現象が実際問題として私は起ってくると思うのです。その現われはいろいろの面に出てきております。今後一そう激しくなると思われるのは、昇給昇格のストップ、この問題はもう全面的に出てくるのじゃないかというふうに考えられるのです。それから一学級の生徒児童定員増加してゆく、私の聞いておるのでは、最近ある県では一学級定員を六十二名においておるというところも出てきております。だんだん一学級の生徒をふやしてゆく、それによって教員の数を減らす、節約してゆくわけです。それから教員給与のストップをやっていったり、そういう事態が今後非常に私は起ってくると思うのです。これはだんだん私はひどくなってくると思うのです。これをどういうふうにしたら赤字財政の立て直しのために、教育費問題が全然らち外で超然としておられるというふうには私は考えておりませんが、非常な犠牲を教育費が受ける、こういうことについては相当な対策が必要になってくるのじゃないかというふうに考えるわけなんです。そういう点で、これは私は文部省は今にして対策をやはり樹立しておかなければならぬ問題じゃないかと思っておるのですが、そういう点、私は木村委員質問にも関連をして、今内藤局長の答えでは、検討はしなければならぬというようなお答えでありましたが、これは検討をして、やはり対策を立てる必要があるというふうに考えておるのですがね、これは政務次官でも局長でもけっこうですが、どういうふうにお考えになっておるか、もう少し詳しく御説明を願いたいと思います。
  41. 寺本廣作

    政府委員寺本広作君) 地方財政の窮乏化がだんだんひどくなりまして、定員の問題とか昇給の問題とか学級の大きさの問題とか、いろいろな点で府県間のアンバランスが出て、必要なる最低基準の維持もできなくなる情勢が差し迫ってきておるように思われる、その場合にどういう対策を立ててゆくかということは、実は私ども地方財政再建整備促進法案の審議、政府部内におけるこの法案の作成その他の過程でもいろいろ研究をしたところでございます。ただいまの問題としては、やはり第一番には、今差し迫っておる府県赤字をとにかく今国会で御審議願っております地方財政再建整備促進法、これの運用によって切り抜けてゆけるような事態に持ってゆく、そうして地方財政を再建してゆくということが一番当面の問題としては大事なことではなかろうか、あの法律が通って再建計画がうまくゆかぬ、それでもなお事態が悪化してくるという場合にどういう措置をとるかということで、先ほどからお話のように、全額国庫負担の問題であるとか、いろいろなことがこの次の問題として論議されておるのではなかろうかと考えます。さような事態までに地方財政が悪化しないことをわれわれとしてはもとより希望しておるわけでありますが、そういう事態に立ち至りました場合には、今の教育でとっておりますこの教育地方分権化の問題とか、いろいろな問題がありますので、この府県財政が窮乏化した場合に、義務教育をどういう観点から国が守ってゆくか、こういう場合には同時にやはり教育地方分権化の問題などもそれを犠牲にしないように考えていかなければならないと思っております。先日から各方面で意見を伺っておりますと、いろいろな意見が出て参っておりますが、私どもの立場としては、現在では地方財政が今度の再建整備計画促進法によってこれより以上悪化しないうちに立ち直ってくるということを期待しておる、それに教育の立場からも協力していくという考え方で、今の段階では対処いたしております。これより以上悪化した場合には、先ほど申し上げます通り、今の制度の立っておりますところの基本的な原則をくずさんようにして、教育をどうして守るかということは、これから、先ほど来の御意見も十分承わりまして検討したい、かように考えております。
  42. 荒木正三郎

    荒木正三郎君 私は政務次官と若干見解が違うのですが、地方財政再建特別措置法が成立をして、漸次地方財政が強固になってきておる、なおかつその上でも、地方財政があの法律をもってしても非常に困る状態がきた場合にどうするか、こういうふうに政務次官考えられておりますが、私はそうではなしに、あの法律によって一そう教育費が圧迫されてくるというふうに考えているわけなんです。あの法律によって、あの法律の主眼とするところは節約ですから、節約必ずしも悪いとは言いません。けれどもその対象が私は非常に教育費に向けられてくると思うのです。従ってあの法律の成立によって教育費がだんだん少くなっていって、そうして今起りつつある昇給、昇格の問題にしても、教員定員の問題にしても基準を割ってくる、非常に悪くなってくる、こういう実情になってくるのじゃないか、現になりつつあるというふうに考えているわけなんです。そう長い将来の問題でなしに、今年来年においてこういう問題が悪化してくるというふうに考えているのですが、それにどう対処するかという問題なんです。
  43. 寺本廣作

    政府委員寺本広作君) 地方財政再建整備計画促進法が実施されることによって、教育しわ寄せがくるのをどう防ぐかというお話でございますが、地方財政再建整備法の促進によって地方財政が立て直される、それによって教育も同時に立ち直っていくということを私ども考えておるわけでございますが、地方財政の再建に当って教育財政が全然地方財政とは切り離された立場で運営されるように考えると、こういうことであれば、地方財政のワクから教育財政が飛び出すよりほか方法がない、かように考えられるわけでありますが、現在の段階では地方財政のワクから教育財政を飛び出させる、そこまでは私どもの方としては考えておらんわけであります。今の地方財政の中に国から半額国庫負担はいたしておりましても、地方財政のワクの中で教育の費用がまかなわれているということには、それなりに地方分権化その他の立場から非常に大きな役割が果されておると、かように考えますので、やはり現在の段階では今のままの情勢で教育が立ち直っていくということを考えたいと考えておるわけであります。
  44. 荒木正三郎

    荒木正三郎君 私は地方財政のワクの中で教育の費用の問題が操作されるということはもっともなことであると思っているのです。そのワク外に、はずすべきであるというふうな考えを持っているわけではないのです。ただ実情としてこの再建整備特別措置法が成立すれば、あの法律の主眼とする節約の方向に地方財政は緊縮政策をとらざるを得ないと思うのです。それは趣旨としては私は必ずしも反対でないわけですがね。しかしその際に必要以上に一番大きな犠牲を受けるのが教育費になってくる、こういう見通しをもっているわけなんです。それは教育費が占めている地位が非常に高いのですから、教育費にあのしわ寄せが非常に強くかかってくる、そのために教育界に非常に困る問題がだんだん起ってくる、こういうふうに心配しているわけです。ですから、これが不当に教育費しわ寄せされないようにしていかなければならぬ、たとえば今度の三十年度の予算を見れば、五%の昇給をみてあります。ところが実際はそれでは昇給が可能なのかどうかということをみると、私は今年の昇給は容易でないと思っております。これは明らかに私は不当な圧迫が教育費にかかってきておるという結果を見せておると思うのです。そういうことをどう救済してゆくか、これは昇給の問題は一例ですが、その再建整備法によって教育費に圧迫が不当に起ってくる、そういう問題をどう救済してゆくかということです。だからワク外にはずせとか、そういう議論ではないわけです。
  45. 寺本廣作

    政府委員寺本広作君) 地方財政のワクの中で、教育に対する地方財政しわ寄せをどういうふうに守ってゆくかということについては、再建整備法の法案の作成に当って私どもも非常に苦心をしたところでございます。そういう建前から、原案にありました教育委員会の予算原案送付権の削除の規定には、文部省としてはどうしても同意しがたいということで、この規定は現在のまま残ることになっておるわけであります。また再建整備計画を作ります際にも、自治庁長官から文部大臣に協議を受けるような規定が設けられておるわけでございます。現地の問題といたしましては、教育の立場を守る府県教育委員会、市町村の教育委員会があって、それぞれの財政のワクの中で最大限に、今申します再建整備計画の決定やら、翌年度、次年度以降の年々の予算の編成に当っての原案送付権の問題等、これらの規定をよりどころにして、教育委員会がそれぞれ地方財政のワクの中で教育を守られる仕組みになっておりますので、私はこの法律が通りましても、教育財政にのみしわ寄せがくるというふうには考えられない、一にこれは今後の行政運営の上で、文部省府県教育委員会、市町村の教育委員会が、いかにして地方財政の再建の過程で教育しわ寄せがくることを防止するかという、その運営の問題にかかっていると、かように考えます。
  46. 木村守江

    木村守江君 私も荒木委員と大体似たような質問なんですが、私も実は今政務次官答弁されたように、これは国家財政考えないで日本の文教政策を立てようという考えを持っていないし、また府県財政考えずに府県教育費の実態を論じようというような考えも持っておりません。しかし、実際問題といたしまして、これは地方財政赤字になって、それを再建しようというような途上でですね、これは教育費だけが非常に締め出されているんじゃないですか。割合に教育費地方財政赤字の原因になっているのだというようなところから、これはどうしてもその節約の重点が教育費に向けられるというようなことは、私はこれは考えなくちゃいけない問題じゃないかと思うんです。これは先ほど内藤局長から、国では実支出の半額を持っているんだ、それから地方交付税交付金の中にも、まあ九八%ぐらいを支出して、そのしわ寄せにはならないんだと言っておりますが、これは実際問題として、そういうふうに出ていくんだから、たとえば今昇級昇格の問題も出ましたが、昇級昇格をしろと言ったって、なかなかこれはおそらくやれないでしょう。それから、もちろん退職資金や共済組合の分担金というようなものにおいても、これは相当地方負担になっていると考えます。そういう点から考えると、これはどうしても再建整備をする対象の重点が教育におかれるようになるんじゃないかということは、これは少くとも教育関係する者は考えなくちゃいけないんじゃないかと、これはどうしても、やはり橋がこわれた、道路がこわれたというようなことになりますと、相当に大きな政治力でやって参りますが、学校の先生の欠員があったというような場合の補充に対する力というようなこと、学校の設備が足りない、学校が古くなってきたというようなことに向けられる重点よりも、どうしてもそういう教育以外のものに及ぼす影響の方が力が強い。そのためにどうしても教育しわ寄せしてくるんじゃないかというような考え方がされるのです。だからこれは、再建整備促進特別臨時措置法ができ上って、地方財政が立て直つていっても、教育が云々というのじやなくて、それと並行して、これは地方負担というもののアンバランスというものを生じてくると、それを考えて、教育を守る、教育行政に携わる者は、教育のことをこれと並行して考えていかなくちやならないのじゃないかというところが政務次官考え方とちょっと違うのですが、どうですか。
  47. 寺本廣作

    政府委員寺本広作君)  地方財政再建整備計画の促進の過程で、府県間における教育アンバランスが非常に出るだろうということを懸念しておられてのお話だと存じます。この問題は、まあ各一府県から出てきます再建整備計画自体の問題にもなってきます。その計画によって特定な府県で非常に教育費に大きな負担がかかっておるというような場合には、当該府県教育委員会としても黙ってはおられんことと思いますし、私どもといたしましても、そういう府県教育委員会と緊密な連絡をとって、全国的な再建整備計画と見合った上で、自治庁長官と文部大臣が交渉する余地は残されておる、かように考えますので、再建整備計画によって非常なアンバランスが出てくるということは防ぎ得ると考えております。
  48. 木村守江

    木村守江君 あの、これは失礼ですが、内藤局長はどう考えていますか、今のかような心配はよけいな心配だという、今政務次官お話ではそういうことは出てきてから、いろいろ文部大臣も自治庁と話し合いをしてやったらいいのじゃないかというような話をされますが、われわれ教育に携わってきた者から見ると、これは府県における教育行政を担当している力というものと、そのほかの力というものとは相当力が違うんですよ。そういう点から私たちはどうもやはり政務次官が割合楽観的であるが、(「楽観し過ぎる」と呼ぶ者あり)私はそう楽観はできない問題であると考えているんです。あなたはずいぶん長い間文部省の一番の生き字引であって、そういう点から一体どうですか、そういうような心配はよけいな心配ですかね。
  49. 内藤譽三郎

    政府委員内藤譽三郎君) まあ非常にむずかしい問題だと思うのでございますが、ただ、今までの赤字が何によってきたかということなんですが、やはり私は赤字の大きな原因は平衡交付金制度の中にもあったと思うんです。そこで過去の赤字のやはり累積が一つの原因になっていると思うんです。そういう意味で先般御協賛をいただいた義務教育費国庫負担法によって、実支出の半額がいくということになったから相当地方財政は改善されると思うんです。今一つ本年度から十四府県が今まで政令で頭打ちになっておりました。これを取っ払うことによって約十億地方財政が助かるわけでございまして、これから今後は義務教育地方財政を圧迫することは比較的少いと思うのでございます。そういう点からこの再建整備計画が出た場合にどうか、こういうことでありますが、政務次官のおっしゃったように、運営によってまあできるだけそれをしわ寄せにならんように食いとめることは、ある程度可能だと思います。ただ御疑念はごもっともだと思うんです。ですから、私どもも一生懸命そういうことのないように努力したい、かように考えております。
  50. 木村守江

    木村守江君 これは非常にくどいようなことですがね、内藤局長お話を聞いていますと、この文部省は実支出額の半分を支出するんだ、それだから教員の定数においても、あるいは給与の問題についても、出したものを半分やるんだから問題ないのじゃないか、だから上げれば上げたっていいし、やめればやめたっていい、決して府県アンバランスになるような、自分の県だけ節約しなくたっていいんだ、こういうようなふうな御答弁に聞えますが、これは文部省半額実支出を、半額をどうしても、これはそれから自治庁がその半分のまあ九八%全部を出していると言っておりますが、これは実際都道府県ではあなたの考えているようには考えていないんです。そうしてあなたが考えているようにはこれは実際やっていけない状態です。それはもう私たちはいろいろ昨日から聞いておりまして、ほとんど義務教育に対しては地方財政的な圧力をかけないというふうに言っておりますが、私はやはりそうではないと思っております。たとえば退職金の問題だって、これは実際使っているものの半分ぐらいしか地方交付税交付金の中に載っていないと思います。それから共済組合の負担金でも、これはほんとう相当赤字しわ寄せしている、そういうところを考えると、あなたが実支出額の半分を出すんだから、地方はそんなにこれからしわ寄せにならないんだと考えることは、実際地方教育状態をキャッチしていないのじゃないかと思うのですが、どうですか。
  51. 内藤譽三郎

    政府委員内藤譽三郎君) これは私が申し上げたのは、要するに地方財政が苦しいわけなんです。苦しい中からこういうことになってくるのです。その苦しい原因が何にあったかということは、私は過去において平衡交付金制度の中において義務教育費が十分見られてなかった、かように考えております。そこでこの平衡交付金から義務教育を抜いたわけでございますが、その抜いたのは昭和二十七年、二十八年から実施したわけであります。そういう点に過去の赤字の累積があったということは私も認めているわけなんです。しかし実支出の半額にしましたので、生徒がふえればそれだけ教員数の伸びもみえるし、今までよりは地方財政に対する手当は十分とは……。全く十分とは申せないにしても、平衡交付金当時、総額で、ある意味で、つかみと申しますか、まあ前年度を基礎にして、ぽんと千二百なら二百というふうに切られておった状況よりは少くとも義務教育費については改善されたのではなかろうか、それが一点。もう一つは先ほど申しましたように三十年度の予算で十四府県政令を取っ払いましたために、これによって頭打ちされた額が約十億ございますから、その十億がそれだけ地方財政が救われるわけでございますから、そういう点で結局地方財政は前の平衡交付金当時よりはだいぶ義務教育費府県財政を圧迫することは少くなっただろう、こう申し上げたのです。しかしながら実際の段階において、それでは義務教育は全然十分かと、こうおっしゃると、文部省の方でみておる経費国庫負担実績半額でございますから支障がないのですが、あとの残り半額につきましてはある一定の算定基準に基いて全国平均でやっておりますから、必ずしも個々の府県実情に合つていないわけなんです。ですからこれは一つの財源付与でございますので、そこに問題があるから、今お話のようになかなかそう簡単に手放しに私ども楽観しているわけではございません。実際府県の衝に当っておられる方は非常に苦労していらっしゃる。で、私どもの方も再建整備計画についてはよく自治庁と相談して、無理なしわ寄せのないように最善の努力を尽して、教育しわ寄せがこないようにいたしたい、かように念願しておるわけでございます。
  52. 矢嶋三義

    ○矢嶋三義君 関連。これは先日の委員会から引き続いて質疑が行われているわけで、本日もずいぶん質疑が行われたと思います。私はこのことはもう明白だと思うのですね。今内藤さんが平衡交付金時代から比べて、昭和二十七年度ごろに比較すれば、今の義務教育関係予算は幾らか好転した云々という御発言は私はその通りだと思います。で、あなたの発言されたものの大部分は私は実情はそうだと思いますが、木村委員のこの前から指摘している問題は、あなたも認められているように残りの二分の一の問題が主になっていると思います。そこで今度地方財政の再建という名分のもとに地方関係の法律が国会に出ておりますが、これが成立した暁においては今よりは教育委員会は力を喪失して、そうして予算獲得に非常に圧力を受けるようになり、その結果が地方財政の中で大きな比重を占めているところの教育予算に不当にしわ寄せがくるであろうということはこれは私は常識だと思うのですね。これは必ずきますよ、それは、絶対間違いない。だからこの前から木村委員がそれを心配して質問しているのだと私は思うのです。そこで私はもう解決策としては、この残りの二分の一の自治庁における算定基準というものをこれを改める以外にないと思うのです。改めることと、それから地方財政再建計画を立てる場合に、その計画なるものは自治庁が指導し、また自治庁の承認を得なければならぬようになっているわけですが、そういう場合の自治庁の態度に対して今内藤政府委員が言明されましたように、教育を守るという立場から文部省自治庁とほとんど対等くらいな発言権をもってしわ寄せがいかないように常に心掛けると、こういうことで対処していく以外にないと思うのですね。だから文部省としてはあの地方財政再建特別措置法案並びに地方自治法一部改正法律案の方はちょっとそれよりは影が薄いのですが、これらの法律案が出ても地方教育財政には何ら心配がないというような答弁をされるからいつまでも問題がかかるのであって、そういう答弁は聞えません。だからさらに満足するような質疑をし、結論を得るためには、やはり自治庁長官と文部大臣と一緒にそこにおいで願って、そうして質疑なりあるいは懇談なりで今後に対処せにゃならぬかと、かように私は考えます。  そこで、今質問を展開されているのは木村委員がされているわけですが、木村委員のお許しを得れば私はここで議事進行について発言を求め、お諮りしていただきたい点があるのでございますが、よろしゅうございますか。
  53. 笹森順造

    委員長笹森順造君) 木村君今のいいのですか。
  54. 矢嶋三義

    ○矢嶋三義君 了解得ました。
  55. 笹森順造

    委員長笹森順造君) 木村君よろしゅうございますか、関連質問中なのでありますが、関連質問中に議事進行の発言をやるということは。ちょっと速記をとめて。    〔速記中止〕
  56. 笹森順造

    委員長笹森順造君) それでは速記を始めてもらいます。  午前の審議はこの程度とし、午後は一時半から再開することといたします。暫時休憩いたします。    午後零時三十七分休憩    —————・—————    午後二時四十五分開会
  57. 笹森順造

    委員長笹森順造君) 午前に引き続き、これより文教委員会開きます。  現在自治庁長官、文部政務次官外務政務次官が見えております。御質疑のある方はお願いいたします。
  58. 木村守江

    木村守江君 ちようど自治庁長官が見えておりますので、今まで文部大臣並びに当局に質問いたしました質問と重複するようになりまするが、結果を明らかにするために長官に、もう一度お伺いいたしたいと思います。御承知のように地方財政が非常に窮迫して参りまして、地方財政赤字の点から、今回その解消のために二つの法律案が提出されたのでありまするが、地方財政赤字解消というようなことに直面いたしまして、一番地方で大きく叫ばれておるのは、地方財政赤字の根本というものがあたかも教育費にあるようにこれは論議されておるのであります。このことにつきましては、文部大臣も現在の六三三制というものがわが国の国情に合わない、これはわが国の国情としては力不相応な教育の制度だということを何回も言っております。そういうようなことからしても、教育費地方財政しわ寄せになっておるということは否定でき得ない問題だと思うのです。そういう点から申しまして義務教育費の問題につきましてはいろいろ論議いたしまして、実支出額の半額文部省から支出しておる。あとの半額については地方交付税交付金等によって自治庁がほとんど地方財政にはしわ寄せにならない程度に支出しておるというようなことでありまするが、地方教育費というものは決して義務教育費ではないのです。文部省関係しておるいわゆる義務教育の問題ではそういう問題の解消ができますので、教育費と申しますと義務教育費だけではなくて、自治庁においては地方教育費ということについては、高等学校を含めた教育費考えていかなければならないと思うのです。御承知のように現在の高等学校の経営というものは昔の高等学校の経営と違って、昔は授業料で少くとも職員給をまかなって、なお施設設備に回すことができたのが戦争前の高等学校の経営状態だったのです。終戦後のいわゆる経営状態というものは、これは授業料では到底職員給をまかない得ないというようなところで、県の大きな負担になっておると思うのです。そういうような教育費がこれは義務教育しわ寄せされて、そうして実際地方財政しわ寄せにならないと言いながら義務教育までしわ寄せが及んで、しかもその教育費というものは膨大な金額になって、地方財政を圧迫しておるというような状態であろうと思うのです。しかるところに今度この地方財政の再建を目途として二法案が出るようになりまして、地方財政の立て直しをするというようなことになって参りましたときに、一番先にしわ寄せになって参るのが私たち教育費だ、これは本当に政治力の弱い教育費だというように考えられるのですが、これに対して自治庁長官はどういうように考えていらっしゃいますか。
  59. 川島正次郎

    ○国務大臣(川島正次郎君) 地方財政赤字の原因は多種多様でありまして、地方団体状況によってもおのおの原因が違うのでありますが、総括して申し上げますると、各地方団体が自分の財政負担能力以上の仕事をここ数カ年間継続してきたということが根本の原因でありまして、教育費関係から申し上げますると、府県市町村を合計して平均しますと、二七、八%近くのものが教育費でございまして、ことにそのうちのおもなものは教員給与であります。現在地方公務員は百四十万おりますが、そのうちの六十万は教育職員でありまするからして、当然教職員給与費というものが教育費の大部分を占めておることは言うまでもないのでありますが、しかもこれは年々ふえる一方でありまして、今年も七十七万人の児童増加に伴いまして、教育教職員給与費において約四十億、その他の設備費において十億、合計五十億以上のものが増加をいたしております。これは今後とも年々ふえていくのでありまするからして、教育費のために地方財政が圧迫されるということは、これは事実でございまするけれども、これは義務費でありまして、これを削減することのできない費用であったことは言うまでもないのであります。今後義務教育費の費用を、どういう形で負担をしていくかということも考究すべき問題ではないかと考えております。義務教育費以外の高等学校の関係並びに大学などを経営している県もあります。兵庫県のごときは、大学経営のため、非常な赤字を出して今日苦しんでおる現況もありますので、一般の教育費全体を含めて申し上げますると、教育費負担はかなり重くなりますが、今度の提案して御審議願おうとしておる地方財政再建促進特別措置法にいたしましても、また自治法の改正にいたしましても、これが成立の暁に、義務教育費しわ寄せがくるということは、これはないのでありまして、これは義務費のうちでも最も重要な義務費でありまするからして、義務教育費しわ寄せは絶対に参らないのであります。府県によって経営している大学その他につきましては、あるいは府県状況によりまして、これを改廃することが起るかもしれませんけれども義務教育費にはそういうことは起らんことは、これは当然であります。
  60. 木村守江

    木村守江君 ただいまの御答弁を聞いておりますと、これは義務教育費しわ寄せはないという話をしておりまするが、これは義務教育費地方交付税交付金の中で、これは義務教育の金額だと銘打ってあれば、もうひもつきであれば、そういう結果になると思うのです。ところがほかのいろいろな交付金と事業費と一緒に参るのです。そういうような関係から、これは自治庁考える場合には、ひもつきでないというところに教育費は全体として見なくちやいけないと思うのです。そういうあんばいのないところに、私はどうしてもやはり高等学校あるいは大学の教育費というもののために義務教育が圧迫され、しかも教育費全体はほかの事業費の圧迫をこうむるということが実際の状態だと思うのであります。  一例を申し上げますと、先日私はいろいろ地方の問題で自治庁にいろいろ相談しに参りまして、学校の建築をやめればいいのだと、学校の建築をやめてほかの事業をやればそれでいいのじゃないか。学校の建築などやるからだというような話が端的に出たことがありますが、そういうふうにですね、教育の施設というものは、教育経費というものは、一がいにしわ寄せさせるということは、これは認めなければならないと思うのです。あなたは義務教育しわ寄せになることはないと言いますが、これは義務教育費に使わなければいけないのだというようなひもつきになって、初めてそういうことを言えるのだ。これは交付税交付金として大きなワクで参りました場合に、どうしても私は、もしも赤字であった場合には全然支障がないはずである。義務教育費しわ寄せになって参るというのが実際の状態だと思いますが、どうですか。
  61. 川島正次郎

    ○国務大臣(川島正次郎君) 交付金計算する基礎といたしまして、義務教育費におきましては、児童数学級数教員数など、きわめて詳細なる基準が法律にきまっておりまして、その計算によって出すのでありますから、義務教育しわ寄せになって非常に差しつかえが起るということはないのでありまして、ただ、今大村さんのお話のように、学校の新築等の場合、老朽校舎につきましては、これは文部省の補助金がありまして、そのあとは地方では負担することになっておりますが、それにしましても新築にしましても大体起債でまかなっておるのでございまして、本年も校舎の新築等に対しては相当の起債を認めることにいたしております。ただいま計画しておりますところの地方財政再建促進法の直接の影響として、義務教育費しわ寄せがくるということは私は考えておりません。また義務教育の性質上、そういうことはなるべく避けるように、こう考えております。
  62. 木村守江

    木村守江君 私の質問の仕方が悪いのかもしれませんが、これは昭和三十年度の地方財政計画をお立てになりましたね、あの場合に百四十億の赤字が出るというようなことになりましたところが、いろいろ問題になって、あれが収支バランスのとれるようなプラス、マイナス、ゼロになったまあ地方財政計画というものが実際出された。しかしその場合、われわれがいろいろ論議しまして質問しました場合に、これで一体ほんとう赤字が出ないのかと言いましたところが、赤字は出ると、これはあなたの方の事務当局の答弁でした。そういうような赤字の出るような地方財政計画であって、そういうような地方交付税交付金の制度であって、県が赤字が出た場合にですね、義務教育費だけは赤字が出ないのだ、しわ寄せにならないのだということはなく、やはり義務教育費に対しても赤字は出てきて、いわゆる義務教育が、あなた方が考えておるような状態ではなく、圧力が加えられて教育の形態がゆがめられているという実態は認めなくちゃいけないと思うのですが、どうですか。
  63. 川島正次郎

    ○国務大臣(川島正次郎君) 義務教育費につきましては、教育委員会の原案送付権、二重予算権などもございまして、各公共団体とも教育委員会と話し合って予算をつけておるわけでありまして、ほかの費用に優先して計上されるふうに規則もできておるのでありまするからして、木村さんの御心配のことは私はないと思うのですが、全体の赤字の問題といたしましては、なるほど今回自治庁で策定いたしました地方財政計画は、終局におきまして赤字が出ることを私は予想しておるのであります。もともと二十九年度の地方財政計画基礎にしまして、三十年度において当然増加すべき金額と、当然減少し得る金額とを計算して歳出を計上し、また収入の方も地方税交付金、国庫支出金その他いろいろ計算した結果、約百四十億程度赤字が出るということになりまして、これは二十九年度通りの、すべて地方が仕事をしていけばそうなるのでありまするけれども、今日は全部の地方団体でありませんけれども赤字に悩んでいる地方団体の立場は、いわば非常事態でありまして、従来と全く違った財政の運用をして参らなければならぬ。事業費の面におきましても、事務費の面におきましても、頭を全く切りかえて、新しい観点に立った財政運用をしなければ、赤字の解消ができないのでありまして、この百四十億という赤字は、三十年度におきましては事業費の圧縮その他におきましてぜひこれは解消してもらいたい、赤字を出さないようにしてもらいたいということを、私は先般の知事会議におきましても強く要望をいたしておるわけであります。従いまして百四十億が直ちに赤字になるとは考えておりませんけれども、もともと二十九年度の財政計画そのものが赤字の要素を含んだ計画であります。それは給与の面におきまして国の見る給与のベースと、地方の実際のベースとは食い違っておるわけであります。この給与をどうするかということは、昨年吉田内閣当時に給与の実態調査というものを始めまして、これが近く完成する予定になっておりますので、その完成の結果を見て処理しようと考えておりますので、一応二十九年度の財政計画を基礎にして三十年度は立ったわけでありまするからして、若干の赤字の出ることは、これは予想し得るのでありますけれども、百四十億という多くの赤字が出るとは私考えておりません。現に二十九年度の決算も大体百二十億程度赤字で済んでおるのであります。その二十九年度に比して三十年度は一そう圧縮してもらうのでありまするからして、相当程度地方財政赤字というものは食いとらめられるのじゃないか、こう考えております。義務教育費につきましては大した影響のないように各公共団体とも運営するのだということを私どもは強く期待をしておるわけであります。
  64. 木村守江

    木村守江君 私は義務教育に対しては文部省の方からも自治庁の方からも実際支障がないように、しわ寄せにならないような方法で今まで資金計画が立てられて来たというようなことでありまするが、一般的に一般地方財政というものが赤字になる場合は、現在の制度下においてはやはり義務教育赤字の仲間入りをしなくちゃならない、それだけしわ寄せになるというような考えでありますが、せっかく義務教育費は優先だ、義務教育は特別に守らなければいけないというような立場からいたしますと、これはどうしてもあなた方の考え通りに、これは義務教育に対しては、まあ何かひも付のような格好、どういうふうな格好か、義務教育費を守ってやらなければ私は義務教育しわ寄せにならないというようなことにはいかないのじゃないかと思うのです。それに対して何かお考えありませんか。
  65. 川島正次郎

    ○国務大臣(川島正次郎君) 木村さんのような御心配も一部にありますので、初め地方財政再建促進特別措置法を立案しました当時におきましては、教育委員会の原案送付権、二重予算権というものをこれを認めないような態度に出ようという意見もあったのでありますが、文部省等といろいろ相談いたしまして、これは依然として教育委員会の権限を認めよう、こういうことになったその考え方からもお察し願いまして、義務教育費を圧縮しないように政府は考えているのだということを御了解願えると思うのでありまして、私ども地方赤字を、再建するために義務教育費に影響があるということは考えていないのであります。義務教育費支障のないように一つ地方赤字を克服したい、こういう考え方でいっておるわけであります。
  66. 笹森順造

    委員長笹森順造君) ちょっと申し上げますが、内閣委員会で今採択があるので、特に自治庁長官の出席を求めておりますから……。    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  67. 笹森順造

    委員長笹森順造君) どうぞ……。   —————————————
  68. 笹森順造

    委員長笹森順造君) 文部大臣に対する御質疑のある方は御発言を願います。
  69. 高橋道男

    ○高橋道男君 私はこの際、今回の予算で初めて盛られました文化アタッシェイにつきまして文部、外務両御当局の御見解を承わりたいと思うものであります。せんだって文部予算について文部省政府委員お尋ねいたしましたら、文部省の方には百万円だけ計上してある、あとは外務省の予算に計上してあるというお話でございましたが、まず外務省の方に文化アタッシェイとしていかほどの予算を組んであるのか、それから伺いたいと思います。
  70. 園田直

    政府委員(園田直君) お答えをいたします。アタッシェイのための細部の予算はただいまここで即答はできませんが、予算の折衝経過中におきまして文部省と外務省との間の折衝で、大蔵省の見解では文部省の庁費を百万円削減をして外務省に一千万円をつける、人員は、定員を外務省に一名つけた、こういう見解を大蔵省では持っておるようでありますが、この一千万円と定員の増の一名は外務省では文化交流文化アタッシェイ並びに科学アタッシェイのいろいろな計画を持っておりましたが、文化アタッシェイはただいまのところ各在外公館に担当官を置きまして、戦後予算の少い時期ではございますが、各方面に文化的な活動をやっておりますが、とりあえず重要な科学アタッシェイの方をヨーロッパの方に一名増いたしたいと考えておったのでございますが、その後文部省の方といろいろ折衝いたしました結果、この科学アタッシェイの計画を文部省と御相談をし大蔵省とも協議をした上で、状況によっては文化アタッシェイの方に切りかえる用意をいたしております。
  71. 高橋道男

    ○高橋道男君 ただいま外務政務次官からのお話では、文部省予算のうちから百万円を削ったというようなことでありましたか、文部省予算のほうには百万円ある、こういうように了解をしておるのですが、その点を文部省関係の方からお伺いしたいと思います。
  72. 内藤譽三郎

    政府委員内藤譽三郎君) 文部省の所管の庁費を百万円減にいたしまして外務省のほうに一千万の増を見込んだ、こういうふうに私ども承知しております。
  73. 高橋道男

    ○高橋道男君 そうしますと、この前プリントでお示しいただいた文部省予算にはたしか百万という数字も出ておったように思うのですけれども、そうでなかったのですか。
  74. 内藤譽三郎

    政府委員内藤譽三郎君) 百万の数字が出ておりましたのは三角で出ておったはずでございます。
  75. 高橋道男

    ○高橋道男君 そうするとそれは全部削られて、一切外務省のほうへ移されたと、こういう意味なんですか。
  76. 内藤譽三郎

    政府委員内藤譽三郎君) これは従来在外公館に勤務する職員につきましては、各省もそれぞれの所管で、アタッシェイを出す場合には、そこの所管の人員を減にしまして外務省所管に増にする。それから所要経費につきましてはそれぞれの省から百万円落しまして外務省所管に必要な経費を計上する、こういう建前になっておるのであります。
  77. 高橋道男

    ○高橋道男君 次にただいま外務政務次官からは現在すでに現在の在外公館において文化担当官をそれぞれ配置してあると、こういうような仰せでありましたが、実は私一昨年在外公館に数カ所参る機会がありましたので、その節文化関係のことにつきましてその実情を見てきたのであります。もちろん一介の旅行者でありますから、十分の視察ができたということは申せませんけれども、外務省から派遣されておられる方の外国における当該国の文化方面に対する視野、これは決して広いとは申せないと私は思うのです。しかしこれは当時の外務大臣にもお話し申したことでありますけれども、外務省からの派遣官として当然その筋の本務を持っておられると思うのであります。今文化を担当させておると言われましたけれども、その文化の担当という意味はおそらく第二義的、あるいは第三義的な重みしか持っておらないとしか私には思えないのであります。そこで私は、そういう外交上の技術とか、あるいは経済とか貿易とか、そういう関係だけの、あるいはその方面に重点を置いた外交にとどまらず、その国との文化交流ということをもっと重点を置いて考える場合には外務省直属の、あるいは外務省だけの見解のもとに担当官を派せられるよりも、文部省関係文化アタッシェイと申しますか、文化方面を担当される係官を派せられるほうが、むろんそれは外国にあられる限りにおいては外務省の配下と申しまするか、その人事などは外務省のもとに置かねばならんかもしれませんけれども、主要任務については文部省のひもつきというような、そっちのほうに重みのある人を派していただくほうが、これは日本の国策上から申しましても、またいずれ将来はそういうようなことがあるかないかしりませんが、防衛力が強化されてゆく場合には、昔の武官のアタッシェイといういうなものが各国に配置されておつたように、そういう方面からの担当官が出られるに違いない。で、わが国が文化国家を標榜しておる限りにおいては、それより以前に当然に文化を担当する専門係官を派しておかれるほうが、国の建前からいってもしかるべきことじゃないかというような立論から、私は文化アタッシェイの主張をしておったのでありますが、そういう意味におきまして私は外務省から派せられる文化担当官よりも、文部省から、少くとも文部省のひもつきの形で文化担当官を派せられるほうがいいというように考えておる次第でありまするが、その点につきましては文部大臣からも御見解を伺いたいと思うのであります。
  78. 矢嶋三義

    ○矢嶋三義君 これは今高橋委員から質問がありましたが、私は高橋委員の見解の通りになるものと確信いたしております。この点については答弁に当って特に外務政務次官心して答弁していただきたいと思うんですが、わが国のどの在外公館に行っても農業関係の在外公館の諸君は農林省の役人が在外公館に勤めるときだけ外務省に籍を移して行かれる。それから通産関係では通産省のしかるべき人物が在外公館に派遣される期間だけに限って外務省に籍を置いて派遣される、こういうことですから、私は当然文化担当官については、今高橋委員の申された通りになるものと、つとに了承しておったわけですが、幸い高橋委員質問がありましたから、もし高橋委員の見解と違うような答弁が出れば、事ちょっと厄介になるかと思いますので、そのつもりでお答えを願いたいと思います。
  79. 松村謙三

    ○国務大臣(松村謙三君) ずっとこの問題の経過につきましては園田外務次官からお話のあった通りでございます。今日文部省からそういう面に外へ出ておりますのはワシントンに科学アタッシェイが一人、たしか東京大学の助教授と思いましたが、行っていると思います。それから今度のこの文化アタッシェイはそういうわけですから、今度はヨーロッパに置きたいと考えております。ヨーロッパに置けば、やはり文化の何からいえば、これはまず外務省とも十分お打ち合せをいたしたいと思っておりますが、フランスと交流をいたしておるのであります。それからその人選につきましては、これも外務省とよくお打ち合せをしたあとでないと確かなことは申しかねますけれども、やはり文部省から見れば、その道の専門家を出したい、こういうふうに私ども考えております。
  80. 園田直

    政府委員(園田直君) 先ほども答弁申し上げましたが、外務省としては戦後の外交が逐次変ってきておることを痛感いたしております。それは仰せの通り移民の問題あるいは文化の問題等、本来の外交の付随物か何かのごとく取り扱われておったような点、謙虚な反省をいたしております。従いまして外務省といたしましては、文化交流については特に意を用い、ただいままでの情報局が情報文化局に改変され、文化交流を重点にして情報局の任務を進めておる半面、また各在外公館にはその点を十分注意をしておりますが、何分定員予算の面に縛られて、各位の御期待に沿うに至らない点はまことに申しわけないと考えておりますが、外交にいたしましても、戦後の外交はまず文化より逐次始めることを考慮いたしておりまして、御承知のごとくフランスとの文化協定を結びまして、日仏、日伊、日墨、日タイとの各文化協定を締結いたし、今日インドネシアとの国交も問題になっておりますが、こういう面も文化協定のほうから入っていくことがきわめて有効であると考えておりまして、単に日本文化の水準の向上という面ばかりでなく、外交の本来の目的を達する意味におきましても文化の面が非常に重要であると考えております。従いまして先般申し上げましたが、予算の折衝上の経緯におきましては、文部省と外務省に若干の解釈の相違がございまして、外務省の事務当局としては文化アタッシェイあるいは科学技術アタッシェイとしての予算が組まれておりませんので、外務省一本の定員予算をもらつておりますが、従ってそれは外務省としてはわずかに二人の定員でございますから、科学アタッシェイを作りたいという見解もあったようではございまするが、その後いろいろな意見から、文部大臣のほうからもいろいろ御意見の御開陳がございまして、ごもっともでありまするから、その御意見に従って大蔵大臣等とも協議して、そのようにしたいと考えておるところでございます。
  81. 高橋道男

    ○高橋道男君 先ほど文部大臣からの御発言もありましたように、これは当然文部省のひもつきであることを私は希望いたしておるのであります。これは決して外務省とセクショナリズムを作ってもらいたいという意味では毛頭ございませんので、先ほど申しましたような趣旨によって、文部省のひもつきでない、どうしても担当官がやはり外務省の本筋と申すか、そういう方面に重点を置いてしか活動できにくい、こういう意味において、この制度をぜひ活用するようにしていただきたいということをこの際希望いたしておきたいと思うのでありますが、ただいま政務次官から仰せられた諸国との文化協定がすでに結ばれておりますが、そういう国に対して今申されたような文化アタッシェイ、科学アタッシェイと称するものを今年度は無理といたしましても、逐次専任のものを設けていかれるお考えであるか、これをお伺いいたします。
  82. 園田直

    政府委員(園田直君) ただいま置いておりまするのは専門のものでなくて、各在外公館の官にかりに任務を与えておる程度でございますが、今後予算及び定員の範囲が許されるに伴いまして、さようにしたいと考えております。
  83. 高橋道男

    ○高橋道男君 ただいま文部大臣の仰せられた今年はフランスに置きたいということ、人は別としましてその御方針は決定しておるのでございますか。
  84. 松村謙三

    ○国務大臣(松村謙三君) まだ外務省と細部的のお打ち合せをいたしておりませんから、決定とは申しかねますけれども、私のほうの希望といたしましては、文化アタッシェイとしてはまずフランスに置きたい、こういうふうに考えて、これからお話を進めたいと考えております。
  85. 高橋道男

    ○高橋道男君 一部には東南アジアのどこかの国に置くというような風評も、これは私への風評ですから確かなことではないかもしれませんが、そういうことも伝えられるのでありますが、やはり現在国際的な文化活動と申せばユネスコ関係かと思うのでありますが、そういう方面に対しましても、ユネスコ本部がパリにあるというような意味で、政府の代表官がパリに駐在する参事官ですか、それから任命されておるかと思うのでありますが、そういうようなことも考え合せますと、やはりパリから始められるほうが国際的な関係もいいのじゃないかというように私も考えておるのでありますが、東南アジアにも置くというような御意見も一部にはあるのございましょうか、それも念のためにお伺いいたします。
  86. 松村謙三

    ○国務大臣(松村謙三君) 近来直接この東南アジアの諸国それからヨーロッパあたり、アメリカはもちろんですが、いろいろ文化の交流についてのお話が多うございます。そういうようなことからして、経費等の都合で今年は大体一カ所ということでありますけれども、年々増していきたいと考えておるのでございまして、とにかく今後、この次はどうか一つアジアにも置きたい、またあちらこちらにも漸次拡張していきたい、こういうふうに文部省としては考えております。
  87. 矢嶋三義

    ○矢嶋三義君 これに関連した問題をこの際承わっておきたいと思いますが、当初文部省は約三千百万円を大蔵事務当局に要求したかと記憶いたしております。それが結論的には文部省関係に百万円となり、その百万円が落ちて、外務省に千万円ということになったようでありますが、当初文部省が三千万円程度要求した際の構想というものはどういうものであり、それが大削減を受けた理由はどういうところにあるのか、簡単に御説明願いたい。
  88. 松村謙三

    ○国務大臣(松村謙三君) それは実は私の前任者の計画であったろうと思いますが、やはりあちらこちらに、できるならばもう二、三カ所も作りたいという希望を持ってやられたことだと思います。それがせんじ詰めてみますと、今年は一カ所だけだということに大蔵省との話し合いができた、こういう経過でございます。
  89. 矢嶋三義

    ○矢嶋三義君 前会計課長が幸いにお見えになっておりますから、内藤政府委員から簡単に……。外務政務次官もお見えになっておることでございますから御答弁願いたい。
  90. 内藤譽三郎

    政府委員内藤譽三郎君) 今大臣のお話のように、今年は特に一兆円予算の緊縮なんでございますし、新規事項はなるべく認めないという方針でございます。文部省としては画期的な制度でございますので、とにかく突破口を作って欧州あたりに置きたい、こういうふうに考えて一名ということでやったわけでございます。
  91. 矢嶋三義

    ○矢嶋三義君 次に外務政務次官に伺いますが、私はおせじを言うわけではございませんが、先ほど申し述べられました外務政務次官の見解は私は全く同感で、敬意を表します。さすが保守党内においでも若さと斬新なる清新さを持っておる将来性ある政治家として私はまことに好感を持って承わつたわけですが、そのお言葉だけでなくて、迫力をもって一つ外務省内でがんばっていただきたいことを、まず私は激励申し上げる次第ですが、これはおせじでなくて実際力の外交というものから、多くは私は申し上げませんが、やはり先ほど政務次官が述べられた言葉だけの問題でなくて、そういう方向に今後の外交を推進していく、ある意味においては外交の軸の転換とも言えると思うのですが、私はそういうことをぜひともやらなければならぬ世界情勢と歴史的な時代というものが、段階というものがきてておる、かように考えているのです。そこで吉田内閣の末期から鳩山内閣になって、次々と文化協定その他に努力をされているようでありますが、私はここで具体的に政務次官に伺いたい点は、政務次官は自分の政務次官の任期はここ暫くだというように考えて、私は政務次官を勤められるとは思いません。従ってやはり外交の中におけるところの文化面を、文化交流を、いかように推進するかについて私は一つの野望を持っておられると思うのですね。それで来年度において、さらにいかようにこの線を躍進させようとするか、そういうお考えを持っていらっしゃると思うのですが、概要を大体承わっておきたいと思います。
  92. 安部キミ子

    安部キミ子君 関連して。ただいま矢嶋さんから外務政務次官に対する絶賛の言葉を述べられまして、私もぜひそうあってほしいと思う次第でございますが、過日インドのニューデリーで開かれましたアジア諸国会議の決議にもありましたように、アジアの諸国との文化交流をぜひ実践してもらいたい、特に具体的に申しますれば、中華人民共和国の方から先日来日本から歌舞伎を招きたいという要請がありまして、その筋の人たちが盛んに外務省なりあるいはその関係の省に交渉しておられますが、いまだにその許可がないということは、今度園田さんが政務次官になられましたので、どういうふうにお取り計らい下さいましょうか、この点が一つと、その次に北朝鮮、朝鮮人民共和国に参りましたときに、日本の文化人の間あるいはそれに関係する業者の間からは崔承喜さんをぜひ呼びたいと、そしてお互いの文化の交流をしようというお話も具体的に持ち上ったのでありますが、この点も果してわれわれが期待するような査証をすなおに出して下さいますかどうか。それからもう一点は、実は中華人民共和国に行きまして、あの有名な中村翫右衛門さんですか、もう三年近くにもなろうとしておりますのに、いまだに帰ってこられないというのが実情であります。本人はやはり日本へ帰って、日本の人たちのためにりっぱな芸術を作りたい、その道に励んでりっぱな歌舞伎を見せたいという熱意を持っておられることを聞きまして、私は何だか胸が詰ったのでありますけれども、その翫右衛門さんも何にひつかかるのですか、出入国管理令にひっかかるのですか、日本に帰ったらすぐ留置場へ押し込められるのじゃないか、逮捕されるのじゃないかというふうな懸念もあるそうでありますが、その点はどうなさるお考えかどうか。この三点についてお答えを願いたい。  さらに大きな問題を取り上げて、日本と諸外国との文化の交流は、主としてアメリカ一辺倒のきらいがあったと思いますが、何と申しましてもアジアの文化というものは、朝鮮にしましても中国にしまして、あるいはインド、インドネシアと、こういうふうにアジアの諸国との関係は歴史的にも地理的にも非常に深い関係がある。私は昨年奈良の正倉院の美しい美術を見ましたときも、あの美術は一体どこから生れたのだろうとつくづく眺めたのでありますが、今度中国へ行って中国の美術を見まして、やはり中国との関係が非常にある、また朝鮮とも非常に関係が深いものだということを身にしみて感じたわけであります。われわれはやはり東亜のアジア諸国との文化の交流が、経済や政治と同じように重大であるということを感じたわけですが、総括して園田さんの御意見を聞きたいと思います。
  93. 園田直

    政府委員(園田直君) お答えをいたします。文化が外交の重大な要素になったことは決して私個人の考え方ではなくて、矢嶋委員のおっしゃる通り世界外交推進の方向でございまするから、この方向に日本外務省も当然いくべきであると私は考えております。  次に将来の、特に明年度の外務省の文化方針というお尋ねでございまするが、的確な資料を持ってきておりませんので、抽象的にお答えをして、こまかい分はごかんべんを願いたいと考えておりまするが、外務省といたしましては、世界各国との文化交流はやはり文部省の方で考えておられまする文化交流を重点とすることよりも、やはりおしかりを受けるかわかりませんが、日本外交の本来の目的から、この文化交流というものをどのように活用をし、これを推進していくかということが私のほうの重点でありまするから、その点はいささか食い違いがあるかもわかりませんが、私といたしましては、外務省の文化雑誌あるいは文化交流の重点は、やはり予算の少い、しかも定員において縛られている段階でございまするから、これが許すならばヨーロツパ文化その他の文化を吸収することに重点をおきたいのでございますが、先ずわが外務省の今後の外交の重点はアジアに指向されておりますので、主として明年度の文化交流並びに文化協定等の重点もアジアに重点を注ぎたいと考えております。なおそれにつきましての具体的ないろいろの問題等は本日は資料を持っておりませんので、そういう方面から情報文化局の活動あるいは条約、文化協定の締結、あるいは映画、あるいは経済貿易交流に付随する文化交流等の計画をしているところでございます。  次にお尋ねになりました歌舞伎の問題でございまするが、仰せの通り私も中共からして猿之助一座でございまするか、これに対して日本の歌舞伎を招待したいという意向の伝達があったように、正式ではございませんが、漏れ承わって聞いております。なおそれとともに今秋行われまする国際芸術祭に日本の歌舞伎も参加せよという御意見もございまするし、中共の方は自分の方で費用を持つという御意見のようでございまするし、ヨーロッパの方は費用は半額ぐらいの担当だと覚えております。従いましてそれについては、ヨーロッパの方についてはNHKと松竹の方でいろいろ企画なりその他のことをやっておられるようでございまするし、なお中共から招待された猿之助一座も中共に行くならば、それ以前に各国に自分たちも行って、自分たちの腕を宣伝をするなり、海外に歌舞伎を紹介したいという考え方もおありのようではございまするが、いずれもまだその段階でございまして、外務省に渡航なりあるいはその他の正式な願い出は全然ございません。将来このことがございましたならば、よく検討をいたしたいと考えております。  なお崔承喜を北鮮から迎えたいという意向があるようでございまするが、御承知のように国交未調整の国からの入国は外務省の渡航事務ではございませずに、入国管理局を主体とする法務府の権限、主管に入っておりますので、そういうお話に具体的に入れば連絡をいたします。これも検討したいと考えております。  次に中村翫右衛門の帰国の問題につきましては、これも私いろいろ情報で聞いておりまするが、これも入国管理局の問題でございまして、全然……。崔承喜、あるいは猿之助の歌舞伎一座の中共招待等は私の方もこれは所管しておりますが、中村翫右衛門氏の帰国に関するその後の取扱い等については、一切外務省の手を離れて、これは法務省の方に入っておりますので、そちらの方で取扱いをすでに研究されてある模様であると考えております。  それから文化の交流について米国一辺倒であるが、これを是正する考え方はないかという仰せでございまするが、これは先ず映画の面を取り上げてみましても、御承知のように米国映画が主体になって、イタリーあるいはフランス、あるいはその他のヨーロッパの諸国、あるいはソ連邦等の純粋文化的な映画等の輸入が非常に少くて、アメリカの、いい映画もございまするが、中にはギャング映画などが多数ございまして、これはしばしば御指摘を受けているところでございます。先般外務委員会の、文化協定を結ぶ際におきましても、委員の方からもそういう御指摘を承わりましたし、われわれの方針も御答弁申し上げておきましたが、これは御承知のごとく、大蔵省主体とする映画輸入の割当の審議会がございまして、その審議会で実績に基いてやっております。しかし遺憾ながら今までのところは謙虚に反省をいたしまして、商品として実績に伴う割当に堕しておったようでございます。幸いに外務省からも一人委員を出しておりますから、商品としての面でなく、文化資材としての面から、単にアメリカばかりでなく、ヨーロッパ各国から輸入をするよういろいろ申し出ておるところでございまして、すでに数本の映画は情報局の申し入れによってヨーロツパその他の映画を輸入しておる状態でありまして、将来ともそういう面につきましてはしばしば意見を通しまして、業者の利潤に関係あることでございますから、業者との了解を得てやりたいと考えておりますが、この方面につきましては文教の関係も非常に大きい問題でありますから、各位の御支持を願いたいと考えておるものでございます。ごく映画は一例でございますが、その他の文化交流につきましても、今までは貿易商品あるいはドルその他の関係に伴い附随物としての文化交流でございましたから、ややもすればこういう点がございましたが、これは単なる意図的なものでございませんので、将来御指摘の通り文化交流は国境を問わず、その他を問わず、必要なる文化交流はやるようにしたいと考えております。
  94. 矢嶋三義

    ○矢嶋三義君 私の質問で、外務政務次官の雄弁を承わりましたが、他に質問もあるようでございますから簡単にお答え願いたいと思います。私はやや具体的なことを伺いますが、文部大臣並びに外務政務次官にお答え願いたい、東南アジアの後進国ですね、失礼かもしれませんが、インドとかビルマ、タイ、インドネシア、こういう方面に医学の指導者を中心に医学徒の何人かをもって医療班を編成し、そして日本の医療器具の紹介かたがた、先ほども申し上げました諸国あるいは中共等に派遣するようなお考えはございませんか。私多く申し上げませんが、そういう計画を実施するということは、あらゆる角度からずいぶん私は有意義であり、わが国にプラスになるものと私は考えておるのですが、大臣並びに政務次官の御所見を承わります。
  95. 松村謙三

    ○国務大臣(松村謙三君) お話通りでございまして、文化の交流の一斑として、日本の優秀なる医術、薬等を使いますことは、これは非常に望ましいことであり、今後力を尽すべきことと考えております。ただいまのところはまだ条約もできていない、下地ができていませんですから、まだその段階には達していないかもしれませんので、極力そういう点に努力をすべきものと考えております。
  96. 園田直

    政府委員(園田直君) 仰せの通りでございます。きわめて重要なことと考えておりますが、今なお計画は持っておりますので、早急に決定いたしたいと考えております。
  97. 矢嶋三義

    ○矢嶋三義君 次に簡単なことで承わっておきたい点は、このわれわれに出された予算説明書の中に、外国人学生招致千二百二十九万円という予算が計上されております。これについて、かつて資料を私は要求いたしましたところが、四月二十八日現在の日附をもって、三十年度国費による外国人留学生は五十一名分を予算化しておるという資料を四月二十八日現在で本委員会に出されております。その資料によりますならば、当時はその留学生は全部確定してないようでございましたが、その後五十一名というのには変りないかどうか、さらに五十一名の人員というのは、最終的に留学生は確定しておるかどうか、そういうことを承わります。
  98. 内藤譽三郎

    政府委員内藤譽三郎君) この点につきまして外務省を通じて関係の国に照会しております。大体順調に行く予定でございますが、学年の関係で九月になると思いますので、今現在入っておる者、新規に来る者はおそらく九月か十月になると思います。人数については変らないと思います。
  99. 矢嶋三義

    ○矢嶋三義君 この際にこれに関連してお伺いしておきますが、日本人にして外国に留学しておる人は、あるいは私費で、あるいは国費で、あるいは団体から派遣されておる各種各様だと思いますが、この資料もそのときに一緒に請求したはずでございますが、いまだにいただいておりません。従って後日その資料をいただきたいと思いますが、この留学生数は、国費による留学生数は予算関係で漸減傾向にあるやに聞いておるのですが、さようですか、どうですか、その点伺います。
  100. 内藤譽三郎

    政府委員内藤譽三郎君) むしろ漸増しておるような傾向でございまして、今までのところ外国政府等でいろいろなケースがございまして、在外研究員のように、私のほうから大学の教授、助教授級を丸がかえで出す場合、向うで滞在費を持つから旅費だけ負担してくれ、こういうケースもございまして、現在二十九年度に参りました者が、外国政府の奨学金等による者が百二十二名、そのほか文部省所管の在外研究費で出しました者が八十三名、こうなっております。だんだん漸増の傾向にございます。
  101. 矢嶋三義

    ○矢嶋三義君 そこでさらに具体的になりますが、簡単でありますから文部大臣の御所見を承わります。ただいま文部省関係から八十三人在外研究員が出されておるということでありますが、実は私どもの文部委員会が先般東京大学の視察に参りました。そのうちの一部ですが、宮本という非常に若くして優秀なる学徒がサイクロトロンの研究をされておりました。現在設備のセット中でありますが、それができ上れば外国でも珍しい型のものだという説明をなされておりました。で、私はこういう科学というものは日進月歩の世界情勢であるし、宮本教授は広く世界の先進諸施設、設備を私は視察なさっているものと思って宮本教授に聞いてみたところが、私は外国には行ったことございません、全部文献で勉強しているのだ、書面で勉強しているのだと。そこで私は主任教授に対して一体宮本さんがこういう方面の外国の事情を視察するような機会は何年ぐらいに来るのでしょうかと言ったら、とても見込みがたちません。東大を通じて一年に二人程度しか国費をもって外国に留学はできないのだと、こういう説明を聞いて、私は今まで知らなかったことを恥じると同時に驚いたのですが、大臣どういうお考えをもっていますでしょうか。東大にしてさような状況であれば、日本に七十二の国立大学があるのですが、必ずしも外国の文化学術の水準が日本よりすべてが上というわけではございませんけれども、しかしこういう時代になって、少くとも日本の文化学術の第一線をいくような、しかも将来性ある若き学徒にはそういう機会を私は与えられるだけの用意がなくてはならぬと思うのですが、御所見はいかがでございましょうか、この際に承わっておきたいと思います。
  102. 松村謙三

    ○国務大臣(松村謙三君) 全く同感でございまして、私ども驚いた一人でございます。戦争前にたしか、誤るかも知れませんが、一年に四百名くらいのものを出していると記憶しております。それが戦後学術の立ち遅れがずっとこういうふうに開いてきた後において、今お話の五十名や八十名という数でありまして、しかもごく短期のものだけですから、これではとてもこの遅れたのを回復することが非常な困難だと考えております。それでこれをできるだけ増加するように今後も予算措置その他で努力をいたしたいとは考えております。今内藤君から御説明しましたのは、あとの部分も加わっているかどうかしりませんが、今度の予算修正でこの金額がだいぶふえましたので、またある一定の数が増し得ると思うております。そういう状態でございますから、今後大いにその点は努めたいと考えております。
  103. 矢嶋三義

    ○矢嶋三義君 この予算修正とどの程度関連があるのですか。
  104. 内藤譽三郎

    政府委員内藤譽三郎君) ただいま申しましたのは二十九年度の人員でございますが、大臣がお話になりましたのは当初の政府原案では在外研究員の予算は六千万円になっておりましたのを修正によりまして七千万円、千万増になっておりますので、相当数派遣できると思っております。
  105. 矢嶋三義

    ○矢嶋三義君  わかりました。これはおせじではないのですが、松村文部大臣は、民主党はそのまま政権を担当しようが、保守合同はできようが、日本の保守政界の第一人者であるということには相違ないわけですから、文部大臣として来年度の予算編成までにその職にあられれば、なおけっこうのこと、仮に文部大臣の職を去られても、日本の政界の第一人者と自他ともに許しておるお方でございますから、この点はぜひともお忘れなく胸にとどめておいていただきたい。他日またあなたに公的にあるいは個人的に伺いたいと思っておりますので、かように要望いたしておきます。  最後に、これで質問を終りますが、承わりたい点は、外務政務次官がおいでになっているから、この機会に伺うのですが、それは私は昨年ほんのちょっと一部の、この在外公館を伺ってみたのですが、非常に印象に残っていることは、語学が非常に不十分じゃないかということと、やはり失礼かもしれませんが、文化を解するということについて比較的に教養が低いのではないかという、この二つは一非常に印象づけられて帰りました。それは私は語学はできないわけなんですけれども、ちょっとしたことを通訳していただくとわかるので、ちょっと人心の機微に触れたようなことは在外公館の方ではどうしても通じない、現地人の方が在外公館に何人か雇われておりますが、そういう方が実に鮮かに捌いている。従って私は現地における対外交渉の主動権は彼ら現地人の公館に勤めておる人が握っているのじゃないかと思うくらいに、私が数カ所お伺いした範囲内では非常にその感を深くして私は帰ったのでありますが、こういう批判というものは外務省内部にはないのでございましょうか。せっかく外務政務次官がおいでになった機会ですから、それだけ伺って私の質問を終りたいと思います。
  106. 園田直

    政府委員(園田直君) 戦争によって外交、特に在外公館の設置、あるいはこれに対する海外の勤務等が欠けておりましたので、そういうために外交上のいろいろな空白があることが所々に現われておると考えております。語学の点につきましても特殊な、たとえば英語であるとか、あるいはその他しょっちゅう使っておる言葉は、かえって戦前よりも戦後占領軍等が参りましてから進んでおることもございまするが、中には非常に遅れておる点もまたあると遺憾ながら考えております。そういう点につきましては十分検討いたしまして、外務省で持っておりまする研修所の教育方針等も、そういう面は十分考慮して教育方針に繰り入れておりますので、そういう空白におけるいろいろな欠陥は早急に取り戻したいと考えております。
  107. 高橋道男

    ○高橋道男君 先ほどお伺いした中で、政務次官から念のためにお伺いしておきたいことは、文化アタッシェイを置くことが、あるいは本筋の外交関係と違ったものができるかもしれんというようなおそれのあり得る言葉を言われたと思うのであります。もしそうであれば、私はこれは外交はもちろんのこと、文化アタッシェイの本務も尽されないと、こういうように思うのでありまして、私は大きな視野から見た場合には、文化アタッシェイを置く、あるいは文化交流することが大きい意味の外交に含まれていくのが当然だ、こういうように考えておるのでありますが、そこでお伺いいたしたいのは、先ほど文部大臣から、この文化アタッシェイ等の人事に関しては、文部省においてイニシアティヴをとると言いますか、あるいは発言権をもっておると、もちろん外務省には相談するが、ということをおっしゃいましたが、外務省においてもそういうように了承しておられると思うのですけれども、念のためにお伺いしておきます。
  108. 園田直

    政府委員(園田直君) その通りでございます。
  109. 高橋道男

    ○高橋道男君 それでけっこうでございますが、さらにもう一点だけ文化アタッシェイについてお伺いすることは、いかなる資格で御派遣になるのか。あるいは大使とか公使とか、参事官とか、そういう身分関係でございますね、それはどういうようにお考えになっておるか。
  110. 園田直

    政府委員(園田直君) それは文部大臣のほうでどういう御人選をなさるか、それによって決定いたしますが、たぶん今までの先例からいたしますると、参事官級であろうと想像いたしております。
  111. 高橋道男

    ○高橋道男君 その点につきまして文部大臣にお考えがあれば伺っておきたいと思います。
  112. 松村謙三

    ○国務大臣(松村謙三君) まだ外務省との具体的のお話も、御相談も進めておりませんものですから、人選等についてはまだいたしておりませんでございます。私個人の希望といたしましては、できるだけ有力に働ける人を選びたいと考えておるのでございまして、一つはあちらの文化の進歩の状態、もう一つ文化の交流の問題がずいぶん出ておりまして、それらの意味からいってヨーロッパのどこかに一つ相当の人を出しておくことが必要だと、こう思っておるのです。それを出しますのには、それがどういう参事官というものですか、まだ何ですかわかりませんけれども、人によってその位置も御相談してきめたいと思っております。まだ何が、外務省と打合せをいたしておりませんが、希望としてはそのように考えております。
  113. 高橋道男

    ○高橋道男君 文化外交に関しての質問はこれで終りますが、ぜひこの制度を活用して文化外交の上にも十分の貢献あらんことを希望いたします。  この際もう一点、それ以外のことでお伺いしたいことがありますが、それは文化関係の条約は私は、私が関知している限りにおいては二つ結ばれております。著作権に関する条約と、それから文化財保護に関する条約ですね、その二つが結ばれて相当の日時がたっておりますけれども、まだ国会に批准を求めてきておられませんが、どういう理由によるのか、その内容については今日は伺う段階ではないと思いますけれども、いつ頃国会に提出される予定か、あるいはなぜ今日までおいてあるのか、これをお伺いしたいと思います。
  114. 園田直

    政府委員(園田直君) 申しわけございませんが、主管担当官がおりませんで即答できませんので、あとで調査してお答え申し上げます。
  115. 高橋道男

    ○高橋道男君 これは情報局担当ではないのですか。
  116. 田中三男

    政府委員田中三男君) そうではございません。条約局の方でやっておりますので、ちょっと事実をよく知っておりませんので……。
  117. 高橋道男

    ○高橋道男君 その著作権に関しまして最近パイアレーションが横行とまでは参りませんけれども相当あることは御存じでございましょうか。
  118. 園田直

    政府委員(園田直君) よく調査をしてお答え申し上げます。
  119. 高橋道男

    ○高橋道男君 この点につきましては国際信義の問題もありますから、国内における著作権はもちろん文部省の所管でございまするし、文部大臣において何らかの手をお打ちいただいていると思うのですけれども、今本会議のベルもなっておりますから、次回にお尋ねいたします。
  120. 笹森順造

    委員長笹森順造君) 申し上げます。ただいま本会議が開かれておりまして、議長との連絡をとってこの会議を継続するような準備をまだしておりません。何時に本会議が開かれるかわかりませんので、やはり本会議が優先と思いますので、本会議が終ったらなるべく早い時間において開かれるようでありますると委員会を開きます。  暫時休憩いたします。    午後四時四分休憩    〔休憩後開会に至らなかった。〕