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説明員(
石井喬君) 私からお
手元に先日配付いたしました
日本海外移住振興株式会社目論見書案というものにつきまして、概略御
説明申し上げます。
この
目論見書案でございますが、実はこれはこの
法律に基きまして
会社ができ上りまして、その
会社が
現実に
事業をいたします場合には、
現地のいろいろの
事情に即応いたしまして、いろいろと
現実に即応した
事業の
やり方をやるわけでありますが、この
目論見書案におきましては、
中南米各地を
対象といたしまして、大体いろいろな定型的なものを拾いまして、それにどのくらいの金を割り振るかという
程度の、きわめてもくろみ的なものを書きました次第でございます。
順次御
説明申し上げますが、
最初の商号、目的につきましては、これは
法律案にございます
通りでございまして、そこにそっくり写したわけでございます。
それから
資本金は当初一億五千万円をもって出発するという予定でございます。うち一億円は
政府の出資でございまして、それ以外に本年度におきまして五千万円
程度を集めたいというふうに考えている次第でございます。これは
民間から募集したいというふうに考えております。なお、三十一年度におきましても、さらに一億五千万円
程度政府、
民間から金を集めまして、増資したいというふうに考えておりますが、それから先のことにつきましては、この一応の
目論見書におきましては、それをもって
資本金として、それ以上の額は計算してないということでございます。
それから、それは
資本金でございまして、主として
経費その他に充てられることになると思いますが、
事業資金といたしましては、
アメリカから借り受けますところの千五百万ドルをもってこれに充てるということにいたしております。
それから事務所でございますが、これは当然に
本社は東京に置くことになると思います。そういたしまして、
事業地はすべて
中南米諸国、
外国でございますので、
外国に
支店を置きまして
事業をやって行かなければならないわけでございますが、ただ
外国の
事情によりまして、直接この
会社の
支店が出てやれる所もあると思いますが、あるいはこういったような他国の
会社が
支店を設けて、こういったような
事業をやることをいやがる所もございます。その
支店を設け得ないような所につきましては、
現地の
法律によりまして、
現地の
一つの法人を作りまして、それに実質的には
支店のような役割を果させるというような形体をとることも、やむを得ない所があるというふうに考える次第でございます。
それから
役職員でございますが、これは一応
法律は
取締役四名、
監査役二名ということでございますが、当初はもうできるだけ
経費を節約したいというような気持、それから実際は何と申しましても
調査等に重点を置いて行かなければならぬというような
関係で、
経費を節約したいというので、当初はまず
取締役三名中、
代表取締役が一名でございますが、
監査役一人というようなきわめて簡素な
格好でまず出発して行きたいというふうに考えておる次第でございます。職員はまあ大体一応の
見通しといたしましてはとりあえずは
本社に十人
程度、それから
支社と申しますか、
現地で
事業をいたしますのはまず
日本から二人くらいの人を派遣いたしまして、
あとは
現地のエキスパートと申しますか、
現地の方々の有能な
人々を採用いたしまして、一カ所四人
程度を置いてやって行こうというふうに考えてやっております。
それから
事業の開始でございますが、ただいまの目標といたしましては、まあできれば九月一日にこの
会社を設立いたしまして、それから実際の
事業計画でございますとか、
収支見通し、その他一切の
準備をいたしまして
外務大臣の認可を得まして、その上で十月一日より実際の
業務を発足させたいというふうに考えておる次第でございます。
それから次に
事業の概要でございますが、「
事業の
範囲」はこれは
法律に書いてありますところと大体同じでございます。第一に
移民に対する
渡航費の
貸付、それから
移民またはその
団体に対する
資金の
貸付、
移民を受け入れる
事業体に対する
資金の
貸付、
移民を受け入れる
事業体に対する
投資、必要に応じ
移民を受け入れる
事業の経営ということでございます。ただここにこういうふうに並べましたのは、実はこの
会社が今直ちにこういう
事業を全部始めようとするわけでは決してございませんので、まあ今後
日本からの
移民を推進し、
現地においていろいろこれの
独立のための
援助をしてやるというようなために必要と思われるような
事業をここに羅列したわけでございまして、実際問題といたしましては
現地の
事情に即応いたしまして、
資金の限度もございますのでその
範囲内におきまして最も緊要だと思われる
事業から順次着手して行くということになると思うのでございます。一応
法律の面におきましては今後の
移民の推進のためにしなければならないと思われるような
事業を一応網羅的に掲げたという次第でございます。
そこで、その
事業の
内容でございますが、第一の「
移民に対する
渡航費の
貸付」でございます。これはいろいろ問題があるところでございますが、この
渡航費は戦前におきましては
補助金というような
格好で出ていたこともございますので、これを
会社が、何と申しますか、
会社的な観念、コマーシャル・ベースでもって貸すというようなことは、これは
移民政策上とるべきではないのではないか、もちろんこの
法律の
規定によりまして
会社がやるということでありまする以上、
会社がこれによって
欠損をする、この
事業によって
欠損が出るということでは困るのでございまして、この点は例の
法律第九条に基きまする政令のきめ方によりまして
大蔵省と
いろいろ話をいたしまして、この
渡航費の
貸付業務のために
会社が損失を生ずることがないようないろいろの
条件をきめることに
了解が成立いたしましたので、この点についてこの
事業のために赤字が出るということはないと思われるのでございますが、しかしこれは一応本来の
事業とは多少性格的に異る点がございますので、この
目論見書の中からは、一応
渡航費の
貸付に関するバランスは除外した次第でございます。
それからその次に「
移民又はその
団体に対する
資金の
貸付」これは
向うに参りました
移民、あるいは
移民が集まりまして作りました
協同組合、その他の
団体に対しましていろいろ必要な
資金を貸してやろうとするものでございます。その
内容を申し上げますと、これはいろいろな
種類があろうと思いますが、
一つは
営農資金の
貸付でございます。これはすでに入りました
移民、たとえば現在非常に問題になっておりまするアマゾンの、
相手国の
連邦政府の
植民地に入りました
移民につきましても、
資金的にいろいろ
援助してやる必要があればこれに
援助を与えてやる、あるいはこれから新しく入植いたします
移民に対しましてもいろいろ
援助を与えてやる。こういうような人人、あるいはそういう
人々の作ります
協同組合を
対象といたしまして、農具でありますとか
種代でありますとか、いろいろ必要な
資金をこれに貸し付けてやろうということでございます。その次は「
独立資金の
貸付」、これは御承知のように現在この
自営開拓という
格好で、
連邦政府の
植民地に入ります
移民もあるのでございますが、それに劣らず、ほとんど同じくらいの数が、現在
コロノ契約、
雇用移民といたしまして、
ブラジル人なり
日本人の
コーヒー園とか、農園とか、あるいは技術的な面におきましてはいろいろな
工業労働者というような
格好で
向うに渡っているものがございます。これはいつまでもそういう境涯に甘んじておるわけではないのでございまして、数年にして
向うの気候になれ、風俗、習慣、
言葉を覚えました上で、だんだん
独立して行かなければならないのでございますが、こういう
人々が
独立いたします際に、
資金を必要とする人も出てくるわけでございます。もちろん中には
自分の努力でもって、あえて
独立資金の
貸付を受けなくても十分
独立して行ける人もおるのでございますが、そういう
人々が
独立の際に
資金が必要であるというような場合には、これに
資金を貸し付けるというのが
独立資金の
貸付でございます。
その次には「
移民を受け入れる
事業体に対する
資金の
貸付」これはたとえば、
向うでもって古い
日本人で
コーヒー園のプランテーションを
自分が
一つやりたい、相当の
資金、ある
程度の
資金を借りることができれば
コーヒー園を経営いたしまして、それによりまして
日本人の
移民を大いに入れよう、こういうことがございました場合に、そういう人に
日本からの
移民を受け入れるという
条件のもとに、いろいろ必要な
資金を貸し付けて行きたいということでございます。それから「
水産企業資金の
貸付」これも大体同じような
思想でございまして、
水産企業を
向うでやる、そのためにいろいろな
資金が要る、その
水産企業を興すことによりまして
日本からの
移民、あるいはそれの
付属施設技術者、
労務者等が
向うに行けるというときには、その
水産企業に対しまして
資金の
貸付を行おうということでございます。それから「
工業企業資金の
貸付」、これも
思想としては大体同じような行き方でございます。
中南米諸国の中には農民を非常に
要望する国もございますし、あるいは現在の
工業化の過程に対応いたしまして、
工業的に
日本から来てくれというような
要望もございますので、そういうような場合に必要がありますれば、これにも
資金を貸し付けることができるようにして行きたいということでございます。それから「
運転資金の
貸付」これは
工業、
水産業等が一時的な
運転資金が必要であるというような場合には、短期に
資金を貸してやることもできるようにしておきたいということでございます。
それからその次に「
移民を受け入れる
事業体に対する
投資」でございますが、これは大体
融資でもって事が済む場合には
融資で済ますのが、この
資金が寝るということから考えまして、
融資がいいと思うのでありますが、中には
水産その他におきましてやはり
日本から
投資してもらいたい。
相手国と
合弁事業でやろうじゃないか、やはり
日本側からある
程度投資しまして、
合弁事業でやるなら、
日本側からもある
程度移民を受け入れてやろうという話もございますので、そういう場合には
投資もできるようにしておきたいということでございます。ただいま申し上げましたようないろいろ
事業を将来だんだん必要に応じてできるものからやって行きたいというふうに考えておるわけであります。
その次に
業務の
対象となる
移民の概数の一応の
数字があげてございますが、これは大体このくらいの
人々が
会社の
業務によって
援助される
移民の数になるのではないかという
数字でございます。
それからその次に
資金計画でございますが、
所要資金、これは先ほど申し上げましたように、私
どもとしては一応この農
水産関係、
工業関係というふうに分けてみまして、どのくらいのウエイトをおのおのに置くかということをここに表わしたに過ぎないのであります。これは必要に応じまして、もし農
水産関係が非常に必要であるということでありますれば、
工業関係を削ってそちらに回すということもあり得ると思うのであります。また逆の場合もあり得ると思うのであります。私
どもとしましては大体ここに出ておりますような
数字を一応のワクとして考えておる次第でございます。
次に
資金の
調達方法でございますが、これは第一年度、第二年度におきまして一億五千万円ずつ株式の払い込みを受けます。それ以外の
資金といたしましては、
アメリカからの借款をこれに充てるということになっておるわけでございます。それから次に
回収金というのが出て参りますが、これはだんだん貸したものを回収して行くというようなものが出て参るわけでございます。ただこの場合には
融資をいたしました場合におきましても、
融資の性質によりましては一年限りで返ってくるものもあると思います。あるいは二年、三年、四年、五年というふうに寝せる必要のある
資金もあるかと思いますので、この
回収金の場合には前年度の
融資額がそのまま返って参りませんで、一応ただいま申し上げましたようなことを考慮いたしまして想定いたしました
回収金の額がここにあがっている次第でございます。
それから
収支の
予算でございますが、これは収入、
支出、これは
現実に
仕事を実際やってみませんとなかなか確定的なものは出ないと思うのであります。一般に申しまして
中南米は金利が高いということが言われておりますが、それにしましても、
ブラジル、アルゼンチン、パラグアイ、ドミニカ、ボリビア、
各国情勢が違いますので、この
会社が
仕事をやる地域によりましても、あるいはその
融資その他の
対象になります
事業の
種類によりましても、いろいろ差異があるのでありますが、一応私
どもは
農業関係、
工業関係、
漁業関係というようなものにつきまして一定の
利子を想定いたしまして、これを出した次第でございます。もし
配当をやるということがありますれば、その
配当も考えに入れましてここに出した次第でございます。それから
預金利子と申しますのは、いろいろ
資金が回転いたします間に、多少とも
手元に現金が余ってくる場合もございますので、そういう場合を考えまして
預金利子というものもあげてある次第でございます。
支出の部は、これは
経常費でございますが、借入金の
利子、これはできるだけ
アメリカ側に払います
利子はこの
会社の
事業でできるだけまかなって行きたいというつもりでございます。それから
本社の
費用、
支社の
費用、これはきわめて僅少な額でございまして、まあこういうことでできるかという御批判を仰ぐと思うのでございますが、何分にも出発当初のことでございます、できるだけ
経費は節減して行きたいというようなつもりでこういう
少い額をあげておる次第でございます。
それから損益の
見通しでございます。これもはっきりしたことがただいまとても見通せるものではないのでございますが、私
どもが一応いろいろ仮定いたしましたところに従いまして算出いたしましたものがここにあがった
数字でございます。第一年度におきましては当然
利益金……
利益金というと非常におかしいのでございますが、赤になってくる。それから二年目、三年目、四年目、五年目とだんだん多少ふえて参りまして、税を引き、いろいろの
積立金、
貸し倒れ準備金等を公定の利率によって見る、それと多少の
配当金も見るというようなことをいたしまして、ここにございますように五年目に五十四億円の
事業資金を運転いたしまして四千百万円の繰越金が出てくるというような、きわめて微々たるものになるのでございますが、毎々繰り返し
政務次官から申し上げましたように、この
会社自体決して
利益の追求をするものではないのだ、しかし国内において、あるいは
現地におきまして、金を集めて、ただ単に
アメリカの
資金だけじゃございませんが、その他にもいろいろ
資金を集めてやって行きたいということになりますと、やはり多少の
配当金等は見て行かなければならないというようなことで、まあぎりぎりの
数字を出してみた次第でございます。一応私の
説明を終ります。