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政府委員(園田直君) ただいま御審議を願っておりまする
日本海外移住振興株式会社法案は会期末期になりまして
提案いたしまして、まことに
政府として不行き届きでございまして反省をいたしております。この問題は前内閣当時からアメリカ三銀行からの千五百万ドルの借款という話が出て参りまして、それに伴い、戦後の移民というものの特質並びに移民というものが今までのような移民であってはならぬという、移民外交の転換期という時期に来まして、今般の国会で外務省といたしましては外務省設置法の一部
改正法律案を
提出をいたしまして、今まで外務省自体といたしましても、どちらかというと、移民というものが外交本来の重点からややはずれた感じであって、海外に行かれた方々からよく御注意を受けます
通りに、在外公館等においても、移民などについて外務省の手配、援助が足りないという点を御指摘を受けるのでありますが、今般移住局を設置いたしまして、そうして本省には強力なる企画その他の体制を整え、それに応じましてこの株式会社
法案を
提案御相談をしておるわけでございます。この
法案がおくれました
理由は、率直に申し上げまして、
関係各省、すなわち外務省と
大蔵省、及び外務省、
農林省、通産省、労働省との間等にそれぞれまじめな移民というものに対する見解の相違から主張の食い違いがあったことは率直に御報告を申し上げます。
大蔵省との見解の相違は、主として資金面に関する問題でございまして、本
法律案の第九条にこの点が現われております。
大蔵省と外務省の言い分は、この会社を作るに際しまして、外務省は、移民というものを、戦後狭隘な島に押し込まれたる国民に働く場所と
土地を与えることは、国家の責任と義務であるという解釈をいたしております。従いまして国家
財政上これを許すならば、イタリアやその他各国と同じように、渡航費は国家が支給するのが当然ではあるが、今日は国家
財政これを許さないから、国家から貸し付けてもらってこれを移民の方々に貸し付ける。なお渡られた
あといろいろな移民の生活の苦しい問題やいろいろの問題等が新聞に取り上げられておりまするが、今までは移民された
あとの生活の保障及び営業資金その他の国家の援助が全然してございませんから、こういう面もすべきである。その中で渡航費はわれわれは
政府はほんとうは出すべきであるが、国家
財政がつらいのであるから、貸し付ける。従ってこの渡航貸付というものは、移民された
あと成功しない方や、天災地変、あるいは死亡等で回収がなかなか困難である。従ってこの渡航貸付費とその他の
事業貸付費、
事業費などというものは切り離してもらいたいというのが外務省の言い分であり、国家資金の規制をやっておりまする
大蔵省としては、これを一本にまとめていけというので、いろいろ
意見があったのでありまするが、これはいろいろな経過をたどりまして調整をされ、第九条の「政令で定める。」ということで、この渡航費の貸付は
政府で政令でもって損失補償の点を
考える、こういう点が論議になったのであります。労働省、通産省は別としまして、
農林省の方々と外務省の
意見の食い違いは、これは今までしばしば論議されておったところでございまするが、移民の今度の
法案では、今までのように農業移民ばかりでなく、イタリア、各国がやっておりまするように、
一つの企業移民と申しまするか、工業やあるいはその他の企業をやる移民技術者、こういうものを入れたいとは
考えておりまするものの、何と申しましてもやはり当分の間、しかもこの会社の
計画ができましたにしましても、やはり重点は農業移民である。従って農業移民であると、これは主として農業技術に関することが多いから、移民された方々のことをほうっておくわけにはいかぬ。われわれは何としても技術的な見地から、こういう方々のお世話をするのは
農林省の責任であるから、従ってわれわれも外務省と同等の、企業の
計画なり、その他の面について発言権を持たなければならぬ、こういうことから主張されるし、われわれはそれに対して、移民外交というものは全責任は外務省が負うべきであって、その責任を負うまでの
段階においていろいろな
協力は求めなければならぬ。これが主として
農林省と外務省の主張の食い違いでございまして、
相当まじめな意味における論争がございましたが、逐次内閣の方で調整をされて、三省の間におのおの言い分もございましょうが、
政府として
法律案を
提出するに当っては、この
程度で調整をしてやって行こうということででき上ったのがこの
法律案でございます。従いまして、農業移民がもちろん今後とも重点でございます。ただ、今日、
日本の移民をやりまする際に一番ガンになっておりまする点は何であるか。
日本移民の障害点はいろいろございますが、各国を通じて
日本移民の障害になるべきものは、ブラジルに例をとりますると、ブラジルの基本的人種型統一の見地から、
日本移民、黄色人種というものに対する
一つの感情的なものがございます。次には、言語、風俗、習慣が異なっておって同化性が乏しい。すなわち国内随所に集
団地を
日本人が形成する。戦前は
日本人の軍国主義というものに対して
相当手きびしい批判を加え、これが排日の原因となって参ったのでありますが、今日では勝ち組と負け組の争いになって、随所に乱闘事件さえありまして、これを要約するに、定着した移民及びブラジルに国籍を有する子弟に対して
日本の
政府が何か
計画的なものを持っておって、集団的な、組織的な浸透をはかるのではなかろうか。もっと言葉をかえて申しますると、
日本の帝国主義的な侵略の足場にするのではなかろうかというのが、各移民を受け入れる相手国から出ている疑念であり、これが一番大きな障害になっておるわけでございます。従いまして、そもそもこの会社は、移民された方々のお世話を国家が責任をもって見るという点にあるならば、国家資金を出しておる点もございまして、公社というものが最も適当であるという理論的
根拠ではございますが、そういう意味において、先例等もたくさんございますが、
政府の出先機関のような印象を与え、
政府が相手国に行っていろいろな指導をしたり、
計画を立てたりすることは相手国を非常に刺激いたします。従って会社の形態をとり、なるべく
政府と縁の遠いような格好で
法律案を提示をし、お願いするようなことに至ったのであります。従いまして、まず
農林省と外務省と御相談をしてやるのは当然でございまして、責任上、
農林省の方はわれわれにも同じいろいろな
法律内における発言権を与えよという御主張をなさるし、外務省としては、移民外交に関する終末の責任は自分たちにあるからという主張を続けて来たのであります。ところが結論としまして、
大蔵省と外務省との
関係は、直接資金を出すので、
法律的に規制をしなければこれはとうていその効果がございません。従ってこの
法律の各個所に、大蔵大臣の認可並びに協議事項というものが記載されております。
農林省と外務省との言い分の調整は次のようにされております。それは今後とも
関係各省、特に移民外交というものが過去のごとく簡単なる外交ではなくて、あるいは労働移民、農業移民、各種の
関係が出て参りますので、各省とのいろいろな
関係が出て参ります。その
関係が各省のなわ張りなどという意味ではなくて、熱心に自己の所管事務を遂行しようとすればかなり主張が違って参ります。そういう際に、いい意味における各省の主張する
意見なり、
計画なり、力を調和をして持って行くために
審議会というものを内閣に設けまして、この
審議会における審議
委員というものは、それぞれ農林大臣、外務大臣、通産大臣、労働大臣及び各省から推薦する審議
委員を加えて、ここで年々、もしくは長期にわたる移民
計画なり、あるいは
事業計画なり、内閣総理大臣に対する答申の形をもって作成することに相なっております。なお個々の問題につきましては、国内の募集、選考及び訓練等につきましては、これは主として農業移民に対しては
農林省の方々の非常なお力添えを願わなければなりませんので、これについてはいろいろ相談するようにしてございます。今日もやっております。なお国内の問題、国外の問題等は、次官申し合せによって
農林省と外務省がいろいろ相談、協議をして、ここに遺憾なきを期するような手はずもしてございます。なお、この在外公館の配置に当りましては、すでに
農林省からは御希望等も申し出られておりまするが、農業開発、農業技術等に堪能なる技術を持たれておる
農林省の方々を迎え入れまして、在外公館、すなわち相手国の要所に配置したいなどとも
考えております。そういうような
措置をいたしまして、このような
法案になったわけでございます。