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1955-11-11 第22回国会 参議院 農林水産委員会 閉会後第14号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和三十年十一月十一日(金曜日)    午前十時三十一分開会     —————————————    委員の異動 本日委員白井勇君及び清澤俊英君辞任 につき、その補欠として田中啓一君及 び佐多忠隆君を議長において指名し た。     —————————————  出席者は左の通り。    委員長     江田 三郎君    理事            秋山俊一郎君            白波瀬米吉君            戸叶  武君            三浦 辰雄君    委員            青山 正一君            大矢半次郎君            重政 庸徳君            関根 久藏君            田中 啓一君            亀田 得治君            佐多 忠隆君            松浦 清一君            三橋八次郎君            森崎  隆君            飯島連次郎君            森 八三一君            菊田 七平君   委員外議員            有馬 英二君   事務局側    常任委員会専門    員       安楽城敏男君   説明員    国税庁直税部    所得税課長   亀徳 正之君    農林大臣官房長 谷垣 專一君    農林大臣官房総    務課長     檜垣 好文君    農林大臣官房予    算課長     昌谷  孝君    農林省農林経済    局金融課長   和田 正明君    農林省農地局参    事官      戸嶋 芳雄君    農林省農業改良    局長      大坪 藤市君    林野庁業務部経    理課長     花園 一郎君    水産庁次長   岡井 正男君    水産庁漁政部漁    業調整第二課長 諏訪 光一君    日本専売公社生    産部長     西山 祥二君    日本専売公社塩    脳部長     三井 武夫君     —————————————   本日の会議に付した案件 ○派遣委員報告農林水産政策に関する調査の件  (農業課税に関する件)  (昭和三十一年度農林省関係予算に  関する件)  (業務用つけもの原料塩価格に関  する件)  (タバコ耕作による養蚕被害に関す  る件)  (台風被害対策に関する件)  (有明海における漁業被害に関する  件)     —————————————
  2. 江田三郎

    委員長江田三郎君) それではただいまから農林水産委員会を開きます。  それでは最初に台風被害調査派遣委員報告を議題にいたします。  台風被害調査のため先般本院から関係委員会委員による調査班が構成され、一班は大分宮崎鹿児島の各県に、他の一班は山口愛媛高知の各県に現地調査をわずらわしたのであります。第一班は私が加わりましたので、私から御報告申し上げますが、第二班につきましては、本委員会からの参加がございませんかったので、これに参加されました社会労働委員会有馬議員からこれに関連しての御報告委員外発言という形式で承わりたいと思いますが、よろしゅうございますか。  〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  3. 江田三郎

    委員長江田三郎君) ではさようにいたします。
  4. 有馬英二

    委員外議員有馬英二君) それでは委員外発言ではなはだ恐縮でありますが、台風第二十二号及び第二十三号による被害実情調査現地において行なってきました。高知県、愛媛県及び山口県に参りまして農林水産関係を私が調査をいたしましたので、御報告を申し上げます。  去る十月二十一日、八日間の日程で東京を出発いたしまして、高知県では高知市から西の方中村市、宿毛等県下被害市町村現地調査を行いました。愛媛県では宇和郡南、北、東、それから宇和島市、喜多郡、松山市、特に興居島等被害市町村を視察、山口県では岩国市を初めといたしまして、光、柳井、下松、徳山、山口、宇部、小野田、下関及びこれら各市の附近町村被害地を順次視察いたしたのであります。県並びに地元関係者との協議、懇談を行いました。  各被害地ごとの、また種類別の個々の詳細につきましては、時間の関係もございまするので省略させていただいて、別途報告書並びに資料によってごらんをいただきたいと存じますが、被害概況、特に農林水産関係被害並びに現地において要望せられましたおもなる点を申し上げます。  高知県では九月二十九日及び三十日に台風二十二号が九州を縦断しましたために台風圏内に入り、足摺岬では瞬間風速五十四メートルを記録し、また県下一円は豪雨となり、高岡郡檮原では五百十ミリの降雨となり、各河川とも警戒水位を突破し、続いて二十二号台風による増水が減水するいとまもなく、十月三日、四日には台風二十三号が襲来をし、渡川の本、支流を始め、県下西南部の諸河川増水はんらんをいたしました。室戸台風以来の高水位を示したため、橋梁はほとんど流失し、河川堤防が決壊し、農業用施設破壊をされ、水稲倒伏冠水を初め、農地農作物被害が甚大に上っております。県下全体から見ますと被害は局地的でありますが、それだけにこの西南部地区の清水市、中村市、宿毛及市び附近町村が深刻な被害を受けております。  一方愛媛県並びに山口県では、豪雨のほかに台風の時期が年間の最高の潮位を示す九月の満潮時に遭遇しましたために、河川流域のほか、海岸線一帯高潮、風浪による被害を受けて、特に愛媛県下では松山市の興居島を初め、内海島嶼部が深刻に被害を受け、また農作物関係では近年にない豊作が予想されていましたが、この台風襲来により登熟期にあった水稲風害によって倒伏し、わせ、なかの稲が高温気象に伴って穂の発芽現象が起って、品質低下による損失ははなはだ大きいものであります。またカンショ雑穀風害潮害により茎、葉の損傷を受け、果樹倒伏、落果、果実の損害によって八幡浜市、西宇和郡半島部北宇和郡の海岸地帯がはなはだしく被害を受けております。県下全体としては南予地方が最も多く被害を受けて、被害総額の五六、七%を占めておるのであります。山口県では内海側高潮を見て、特に大島郡から厚狭郡に至る各郡市は軒並みに護岸を破壊され、二十一ヵ市町村災害救助法適用され、また旧藩時代から埋め立て、干拓等が盛んに行われたために人工海岸が多いのでございますが、決壊個所から浸入した波浪、高潮のため、家屋の流失破壊田畑浸水農作物塩田被害が激甚であります。  各県の被害額を申し上げますと、高知県は十月七日現在調べによりますと、両台風を合せまして総被害額が二十億三千八十九万七千円となっております。このうち農林水産関係被害は、耕地農地が三百五十反三千二十万円公共施設が五百四十カ所一億六千九百二十万円、林道が四十三カ所一千四百七十万円、崩壊地が八十一カ所一億三千百十万円、防潮林が六カ所百八十万円、漁港七十一カ所二億一千二百五万円、開拓地建物が四十七カ所、四百八十三万円、漁船が二十九隻、二百二十万円、漁具十統、二千四百三十五万円、林産物が一千八十九万八千円。農作物といたしましては水、稲被害面積が一万三千七百九町歩減収量が三万二千十九石、被害金額が三億一千二百三十四万五千円、蔬菜園芸が二千六十町歩減収量八十九庁八千二百七十貫、被害金額が八千三百三十七万四千円、開拓地作物被害が三百十六万一千円、その他作物が二十一万円、合計いたしまして約十億円の被害となっております。  愛媛県は十月十日現在調べによりますと、総被害額三十三億八千八十万円であります。このうち農林水産関係としては耕地関係農地では田畑五十七町九反、三百七十一万円。畦畔一千百四十五メートル、四百二十七万円。農業用施設は、ため池、頭百工、水路その他被害額が二億三千五百四十一万八千円、林務関係新生崩壊地林道林産物等合計五千四百七万円、農業関係水稲十二億二千七百四十一万円、カンショ一億二千二百五十八万円、雑穀八千五百五十二万二千円、蔬菜一億五千三百九十一万円、果樹五億六千三百九十九万円、水産関係では漁港が八十五件、六千四百七十二万円、無動力漁船が百六十九隻、動力漁船が九十六隻、漁具が十件、共同施設が四十五件、養殖物が六千貫、水産製品が二万一千二百九十五貫、これら合計いたしまして二千三百五十九万円であります。これは水産関係でありますが、これら農林水産関係被害総合計は二十六億三千二百十九万三千円となっております。  次に山口県におきましては総被害額は五十七億五千八百十二万となっておりまして、このうち農林水産関係被害は、耕地関係被害としては、農地が四十町二反、一千八百八十万五千円、農業用施設、道路、水路堤塘ため池橋梁頭首工等二億九千三百九十六万円、水産関係漁港施設が百三十六カ所、二億二百二十三万八千円を初め水産施設漁船漁具養殖施設等合計四億一千三百八十六万円、山林関係被害は、山地崩壊林道木炭施設林産物一般林業施設合計四千六十二万四千円、農業関係水稲流失、埋没、冠水倒伏潮風害潮冠水潮浸水土砂浸入、並びにカンショ被害、合計して主要農産物被害七億九千九百二十二万円、蔬菜果樹等特産物一億四千五百二十五万二千円、肥料が五十万六千円、家畜及び施設が一千七百五十一万七千円、塩田被害は十億円となっております。これら農林水産関係被害は合計して約二十七億三千万円に達し、総被害の半ばを占めております。  以上被害額の状況を申し上げましたが、各県ともにこれが復旧と救済に県及び地元が一体となって日夜努力を続けておりましたが、特に農林水産関係に対し要望せられました事項を申し上げますと、高知県では従来の災害復旧対策を講ずることはもちろんであるが、今回のような異常な災害復旧事業費の支出に対しては、政府財源措置によらなければ災害復旧が施行できない。また農業施設農地等単に原形復旧だけではなく、総合的に計画を立ててもらいたいということであります。  また渡川、中筋川、後川の三河川流域河川改修がおくれているため、毎年耕地が浸水し、数年に一度くらいしか収穫がないという実情である。今回も甚大な災害をこうむったが、改修が完成すれば千数百町歩耕地が確保できるのでこれが改修について予算等農林省として考えてもらいたいとの要望がありました。また各種国庫補助金末端自治体交付される時期が年度末になったときには年度を過ぎて交付されるというようなことで、御承知のように地方自治体は財政上きわめて不利になるから早期にどうか交付してもらいたいということでありました。  愛媛県におきましては、農地及び農業用施設被害原因過年度災害の未復旧個所から拡大されるため、早期に完成するよう過年度災害復旧事業費増額をはかり、また災害復旧費融資をはかられたいという要望がありました。また愛媛県においては南予地方は特異な急傾斜地帯中心地であるが、昭和二十七年に制定されました急傾斜地帯農業振興臨時措置法による土地改良事業予算が僅少であるため、当初計画の一割余が実施されているにすぎないような状態である。同法は昭和三十一年度をもって効力を失うので、ぜひ予算増額と同法の延長措置を講ぜられたいという強い要望がありました。  農業関係では水稲が倒れ、また穂が発芽するということのために品質低下したものがあるが、規格価格を適正にして買い上げてもらいたい。また水稲果樹蔬菜の病虫害が異常に発生しているので、農薬購入費助成をはかられたい。また果樹樹勢回復に要する肥料購入費助成災害融資借入金償還期限延長に対する措置並びに低利の新規融資措置を講じていただきたい。それから開拓住宅、及び農舎、畜舎復旧費に対する助成水稲に対する大幅の共済金早期交付、本年度産米の予約数量の減額、被害激甚農家に対する租税免税措置等について要望をされました。  それから水産関係としましては、災害復旧がおくれている、また復旧していないので、恒久的漁業共済制度早期に確立されたい。また漁業個人施設災害復旧に対し融資措置を講じていただきたい。また特に南予地方漁業に依存する度合いが高いので、漁港復旧並びに整備について特別の考慮を払われたいとのことであり、漁船保険についても早期支払いを望むとのことでありました。  また宇和島市では、宇和島市並びに北宇和海岸地帯の五カ村は従来から鼠族繁殖が多く種々対策を講じてきましたけれども、昨年五月から再び非常な繁殖を示し、これがために農作物被害は甚大であわ、対策について補助金交付するなど格段の措置農林省としても考えてもらいたいとのことでございました。  最後に山口県におきましては、一として農林省関係としては、海岸堤防復旧については全額国庫負担とし、査定前に本工事の実施を承認せられたい。二が、過年度災害の未復旧工事を早急に実施せられたい。それから三は、農林漁業生産確保のため「天災による被害農林漁業者等に対する資金融通に関する暫定措置法」を適用し、同法の政令指定地域に指定し、被害が全県的であるから全県を指定されたい。また自作農維持創設資金融通法の規定による災害罹災農家に対する融資をはかられたい。第四は、漁船被害が甚大であり、漁船保険早期支払い措置を講ずるとともに、漁船災害復旧のための特別措置を講じられたい。また被害漁船復旧漁船大型化をはかるため漁船建造資金ワクを拡大せられたい。「天災による被害農林漁業者等に対する資金融通に関する暫定措置法」において漁具は全漁具政令で指定せられたい。また損失額の百パーセントを算定額とされたい。漁船被害が大きいがこの法律から除外されているのは不合理であり、従って農林漁業金融公庫災害漁船資金ワクについて相当額手当をされたい。それから系統金融機関資金源特別手当措置を講ぜられたい。五が、七割以上の被害に対する農業共済金概算払いにて交付せられたい。六が、農林漁業資金融資ワクを拡大せられたい。七が、病虫災防除対策、特に秋ウンカとして即時に農薬購入費防除器具購入費補助されたい。それから八が、罹災種もみ購入費補助金交付せられたい。九が、塩害地に対する除塩対策費交付ぜられたい。十が、果樹樹勢回復用肥料購入費助成されたい。十一が、罹災農家に対する米の予約売渡数量減免措置を講ぜられたい。十二が、収穫皆無農家に対して食糧の配給措置を講ぜられたい。十三が、畜舎消毒に要する薬品等助成されたい。畜舎施設復旧について融資措置を講ぜられたい。以上が農林漁業関係でありますが、県としては農林漁業経営復旧のため、必要資金についてただちに県議会の議決により予算外義務負担を行い、五割の損失補償を行い、また漁船保険農業共済等についても利子負担措置を講じているとのことでありました。以上災害復旧に関し要望がありました。  また下関市では下関漁港余剰農産物見返り円資金による整備充実計画について強く要望されましたが、内容の詳細は省略さしていただきます。  以上各県の概況につき御報告申し上げましたが、各県とも台風の常襲地域であり、累年の災害により困窮いたしており、いずれも政府の強力なる施策を待望いたしております。何とぞ各位の御理解と御協力をお願い申し上げまして報告を終ります。
  5. 江田三郎

    委員長江田三郎君) ただいまの有馬議員報告に対する御質問ございますか。政府に対しましては後ほどということにしまして、有馬委員に御質問ございますか……。ございませんか……。それじゃ第一班の方の報告を私が参りましたからいたします。  私が参りましたのは鹿児島、それから桜島、大隅半島を回りまして、それから都城から宮崎県へ入って途中椎葉村へ参りました。そうして大分県の方へ参りました。大体今度の台風被害は全般的に農作物被害が多いのでありまして、施設災害の方はあまり大したものではないと思います。農作物被害はたとえば水稲について申しますと、地元報告では鹿児島は三二%、宮崎は二三%、大分は一八%という被害、その他の作物についても大体三県で鹿児島が一番ひどく、宮崎大分がこれに次ぐと、こういう状態と見ております。それで被害総額につきましては一応県の報告では、鹿児島農林水産関係が合せて八十五億六百九十余万円、宮崎は七十億九千七百余万円、大分は四十二億五千八百余万円こういう数字になっておりまして、先ほど申しましたようにその多くのものは農作物被害でございます。そこでそれらについての要望はただいま四国、山口の方の問題について有馬議員からお話がありましたが、大体似たようなものでございますが、ただこれらの所を回りまして、特に問題となるという点につきまして若干御報告したいと思いますが、それは先ほど申しましたように水稲被害について鹿児島は三二、宮崎二三大分一八%ということになっておりますが、これは今年の収穫期待量からの減収比率でして、従って平年作に対してどのような減収になるかということにつきましては、これはいろいろ問題があると思うのであります。そこでそういうことがすぐに「天災による被害農林漁業者に対する資金融通に関する暫定措置法」の適用にも関係いたしますし、また今後農作物共済の方の扱いにも関係してくるわけでありまして、連年災害を受けて、いわゆる平年作といわれるものが非常に下っておる場合に、一体その平年作をどう見たらいいのかということは、相当慎重に検討いたさねばならぬ問題だと思います。これはまあ今後の問題だと思います。  それからこういう地帯はいずれも災害襲地でありまして、私ども視察いたしましても全く連年災害でもう力も根も尽き果てたというような印象を非常に受けるわけでありますが、そこで問題はそういう所をどうして行くかということ、地元の方ではいろいろ保護あるいは助成というようなことを言われるわけですが、一体この保護助成、それからもう一番大きいのは資金融通ということを言われるのですが、資金をただ融通するだけでいいのかどうかということでありまして、資金融通して借金ばかりができて行く、しかしまた来年も再来年もおそらく台風のいわゆる銀座通りとし一毎年やられるだろうということになると、それだけではどうにもならぬのではないかということが問題になると思います。そこでたとえば資金融通の中にでも、三県共通して出ましたのは、自作農資金ワクを広げて融通してくれという問題ですが、しかし自作農資金をこういう連年災害の所へ融通した場合に、その場合に取扱いが、担保ということになりますか保証ということになるか知りませんが、おそらく今の農林漁業金融公庫あたりやり方から行くというと、土地担保ということになると思いますが、それじゃ一体ことし土地担保にして自作農資金を借りて、来年も再来年もこれまた連年災害があったら、これは一体どうなるかということでありまして、そういうようなことは軽々しくただ借入金だけでその場を過ごすということではいかぬのじゃないかということを考えさせられるわけであります。特にこの自作農資金の場合には、もしどうしてもこういう所が自作農資金でやって行かなきゃならぬとすれば、その際は土地担保にすべきではなくして県あるいは地方公共団体保証をするという形にでもしなければ、もうこの次には何も残らなくて、娘以外にはないということになると思います。そういう、ひとり自作農資金の問題だけでなしに、借入金によってとにかく逃れて行こうということは、災害がときどき忘れたころに来る地帯なら、そういうやり方もいいと思いますけれども、災害襲地では別な考え方がなければならぬと思うのであります。そこでこの三県とも例の災害襲地特殊立法の成立を要望しておられますけれども、しかしながらあの特殊立法は先般の議会の模様からいたしましても、なかなかそう簡単にはいかぬと思いますが、今後そういう特殊立法として行くのか、あるいはそうでなしに、たとえば防災営農というものに重点を置いて、あるいは水稲の早植えをするとか、あるいはまた風にあまり被害を受けないところの畜産に重点を置くとかあるいは防風林なんかもないのでありますが、そういう防風林等を今後作って行くとか、そういう災害に堪え得る営農を築き出して行く、それに対して補助をして行くというような形も考えられるのではないかと思いますが、いずれにいたしましてもこういう災害襲地対策については単に資金融通というようなことは、もうこれは限界に達しまして、いよいよもってそれらの諸君を泥沼に落し込むことになるのじゃないかと思います。  それから今度の災害じゃございませんけれども、鹿児島では例のボラ地帯土地改良をやっておりまして、これを拝見いたしましたが、これは非常に喜ばれておるようでありまして、ただこの法律適用が来年で切れるわけでありまして、これをぜひ延長してもらいたいということでありましたが、そういうような、その地帯の特殊な十壌あるいは災害の特殊な条件に対する何か特殊な対策に対して補助をするというような形で行くことがいいのじゃないかということを考えるわけであります。しかしいずれにいたしましても災害襲地へ何らかこの辺でカンフル注射でもいたしませんというと、もう疲れ切ってどうにもならぬということを先ほど申しましたように強く感じたわけであります。  それから宮崎県の椎葉村の崩壊状態を視察したわけでありますが、それは先ほど写真を配っておりますからごらん願いたいと思うのですが、まあ私ども実際見まして、ちょっとあきれた次第です。大河内、あそこは一ッ瀬川耳川と二つありまして、その一ッ瀬川の方の流域崩壊だけを見たのでありますが、耳川関係も同じような、あるいはもっと大きな崩壊を来たしておるということであります。そこでそのために大河内で申しますというと、川が埋もれまして、九州電力のダムが役に立たぬようなことになっておりますが、さらにそれから下がずっと土砂で川が埋没しまして、村所というようなところでは三メートルも河床が上っておるためにことし四百五十ミリ程度の雨でも橋よりも水が上に上ったというようなことで、今後この状態で行きますならば、ほんのわずかの雨でも災害を受けなけれなばらぬというような大へんなことになっておりますが、なかなかこれは今のような状態では、予算つけ方では、この崩壊地復旧ということができないのじゃないか、そうしますとこれは下流に及ぼす影響等も大へんなことになると思うのであります。そこでこの復旧は、これは急いでやらなければならぬことでありますが同時に私ども考えさせられましたことは、こういうような大きな崩壊が何を原因にして起きているかということです。それをよく聞いてみますというと、一つは採草地が腹が割れるようになって押し出していますが、それなんかは採草地の管理が悪いということが原因じゃないかと思います。それから木を切ったあとの焼畑をいたしますが、それを菜種あたりを三年くらい作ると、そして古成層の土壌で三年も焼畑をやりましたならば、これはもう危険なことが起るということは当然考えられる、そういう原因もあります。それから木を切り出すときの何といいますか、谷みたいにして落して来ますが、それが原因ということもありますが、それにいたしましても焼畑菜種をとりましても、木を切りましてもほんの数十万円の収穫あるいはもっと小さい収穫のために、それが原因になって数億円に及ぶような崩壊を来たすということは、これは一体このままでいいのかどうかということになるわけでして、この問題につきましてはやはりもっと取締りということが考えられなければならぬのじゃないか。もっとも一律に全国の山を焼畑をしてはいかぬということは、これはできませんけれども、たとえば土壌が、土質が非常に安定していない所、そして雨量が椎葉村のように平年二千ミリ以上もくるという、こういうような所については、何らかの取締り措置を講じなかったならば、ほんのわずかばかしの収益のために、あと百倍、千倍というような大きな被害を出すということは放置できないと思いまして、これは今後当局においても十分考えられなければならぬと思います。  それから問題が飛び飛びになるのでありますが、都城を中心にいたしまして、あそこの平野は約一万七千町歩耕地があるわけですが、その一万七千町歩耕地の受け口に轟ダムというのがあります。これは最初できるときに相当問題を起したようでありまして、大正十五年に竣工いたしましたが、これは九州電力の大淀川第一発電所です。これはできるときに県議会の方でも問題になっておって、一応中止になっておったものを、どういう事情であったか、強行してこのダムを作ったということから、このダムのためにそれから上流の河川がだんだんと埋没されまして、そこで昭和十八年から昭和二十八年までの十一年間に四百町歩以上千町歩のはんらんが二十九回、千町歩以上のはんらんが十五回、こういうことであります。昨年の第十二号台風によりましてはんらんが三千五百町歩、それから今回の二十二号で二千四百二町歩、毎年こういう状態になっております。そこで地元では水害対策委員会を作りまして、この轟ダムを撤去せよという要求をもって県庁に押しかけてすわり込みをやっているというような状態でございましたが、どうも今後もこういう発電ダムと農業あるいは漁業との関係というものについては、よほど慎重な扱いをしてもらいませんと、このようなどうにもならない毎年毎年一年に二回も三回も四百町歩以上のはんらんを起すというような状態がくるわけでありまして、これにつきましては現在宮崎県庁の方が九州の建設省の地建あるいは各大学等に委嘱いたしまして、専門家に調査をやってもらっているようでありますが、どうも私どもは初めに一つダムができておりますというと、なかなかこれを撤去せよというような結論は、いろいろな条件からして出しにくいんじゃないかと思うのでありますが、これはただダムの問題だから建設省だ、あるいは通産省の問題だということでなしに、農林関係におきましても被害者の立場から重大な関心を持たなければならぬと思います。  それから建物の災害というものはこれは相当多いわけでありますが、ただ私ども奇異な感じに打たれましたのは、案外建物共済というものが利用されていないということであります。それで、ほんの一部分だけ建物共済が利用されておりますけれども、ほとんどの地帯で聞いてみますというと、農業協同組合でも建物共済というものがほとんど関心を持たれていないという。建物共済については中央では両団体がしのぎを削っているのでありますが、一番肝心のこういう所に行って見ると、両方ともほとんど関心がなくて、ほとんど加入者がないという状態で、このけんかもなかなか何をけんかしているのかわからぬという印象を受けた次第であります。  それから国有林の問題につきまして、仮設住宅をやった場合に、国有林の特売という取扱いを受けるかどうかということが問題になっておりまして、仮設住宅は将来これは個人の住宅になるのだからして公共施設ではない、従って国有林の特売の適用は受けないのだということを現地の営林署で言っているというのでありますが、これは少し国有林の営林署あたりの解釈が私は間違っておるのじゃないかと思うのでありまして、将来は個人の住宅に移ろうと何であろうと、一応県として仮設住宅で行く以上は、当然これはこの特売の恩典にあずかるべきものでありまして、その点はどうも営林署の現地の諸君というものは、昨年の北海道のときにも痛感いたしましたが、あまりにも規則にとらわれ過ぎて、本来そういう国有地がだれのものであったのか、地元の大衆とどう結びつけなければならぬかというようなことにつきまして、特別会計の、こちこちになって少し融通がきかぬといいますか、少し反省を要する点があるのじゃないかということを痛感いたしました。  そのほかいろいろ問題はございますが、大体地元からの陳情書も皆さんのお手元に参っておると思いますので、簡単でございますが以上御報告いたします。  質問ございますか。それでは以上の報告に対する対策の問題は、政府にお聞きしなければならぬのでありますが、これは後刻の議題にいたしまして、ちょうど出席された事務当局の関係からいたしまして、先に農業課税の件を議題にいたします。     —————————————
  6. 江田三郎

    委員長江田三郎君) 政府としては去る十月二十八日に本年の水稲所得に対する所得税の課税について閣議決定をされたのでありますが、本日は右閣議決定の趣旨、実施方法及びその影響等について、当局の説明を求めることにいたします。それでは国税庁の亀徳所得税課長
  7. 亀徳正之

    説明員(亀徳正之君) 農業課税につきましては、特に水稲につきまして従来石当り標準を適用して課税しておりましたことは、皆さんよく御存じの通りでございますが、本年から供出制度がなくなりまして事前売渡し制度に切りかわったということによりまして、実は石当り標準をこのまま採用して行けるかどうかということを内部的に一応検討してみたのでありますが、どうしてもこの石当り標準は困難ではないかということで、反当り標準に切りかえたわけであります。  で、国税庁といたしまして、こういう課税の方式を持って行こうという決意は、すでに八月にいたしたのでありますが、この農業課税の標準の切りかえに伴ういろいろな問題が予想され、これを円滑に実施して行くためには、どうしても関係官庁並びに農業諸団体各位の絶大な御協力のもとでないとなかなか進み得ない、またこの切りかわるということを農家の方々にも十分やはり認識しておいていただかなくちゃならないというようなことで、特に本年の農業課税に関連いたしまして閣議決定をお願いいたして、十月二十八日皆さん御存じのような閣議決定がなされたわけであります。  で、この中で特にわれわれが考えました点は、この石当り標準から反当り標準に切りかえることによって、そのいわゆる課税技術上の面から、一般的にそれだけによって所得がよけいになるというようなことはおもしろくないのじゃないか、これにつきましてはやはり反当り標準に切りかえても、できるだけこの標準をある程度区分して行くというような考え方によって、これらの急激な変更を避けて行きたいということを考えておるわけでありますが、われわれとしてはこういう基本線は一般的に標準の技術的な変更によって所得が伸びる、それだけによって伸びる、これは作柄によって伸びることは当然でございますが、こういった課税技術上の問題だけで一般的に税が増徴になるということは避けるように、私どもは努力したい。それからなおまた今度は反当り標準になりますと、どうしてもこの収量の見方とか、そういったものにつきまして税務署も相当の調査をしなければならないという際に、いろいろ適切な資料をやはり農林省関係でもお持ちであろうかと思いますが、そういった有力な資料を十分参考にして、われわれの仕事をより適切なものにして行きたい。またあるいは今度は農家の反当り標準になりますために、いろいろ農家の方々の耕作面積というものを、われわれとしてはできるだけ的確につかまなくてはいけないわけでありますが、これらにつきましては従来やはり農業委員会、そういったところにいろいろ農家の方々の耕作しておられる面積を記載した台帳、その他を持っておられますので、そういったものの提供あるいはそれらの引き写しの手伝いといった面で相当御協力を得なければならない、この協力関係を強く打ち出しておきたい。また他面われわれとしてもこの標準の適正な実施をはかるという見地から、市町村長あるいは農業協同組合あるいは農業委員会の長というような方々に対しまして、積極的にいろいろの意見をお聞きする、またこれらの課税の対象に当りましていろいろ農林省関係の適切な資料も参考にして適切な課税を行なっていきたい、こういう趣旨を盛り込んだ閣議決定の内容は以上申し上げましたような趣旨でございまして、これは従来協力関係につきましても、実は従来の石当り標準を実施いたしましたときでも、やはり各農業団体、あるいは市町村長の意見はできるだけ聞くようにということを、かねがね第一線にも申しておることではありますが、こういった標準の改訂というまあ重大な時期でもありますし、これらの改訂の事務を円滑に実施するという上において、特に従来よりも一層、何と申しますか、意見を聞き協力していただくという面を強く出して行きたいという気持から、この閣議決定をお願いいたしたわけでございます。大体またこの閣議決定の線に沿いまして、われわれも適切な課税を行なって行きたいと、こう考えておる次第でございます。
  8. 江田三郎

    委員長江田三郎君) 御質問ございませんか。
  9. 森八三一

    ○森八三一君 きわめて形式的な問題でございますが、この水稲所得に対する所得税の課税についてという閣議決定でありまして、陸稲についてはここに触れていませんが、陸稲はどうなさるおつもりか。
  10. 亀徳正之

    説明員(亀徳正之君) 実は従来の石当り標準は水稲だけに適用しておりまして、陸稲はほかのたとえば野菜とかそういった作物と一緒に従来からも反当り標準でやっておりますので、特に今回の標準改訂の問題は実は水稲だけの問題、こういうことになっております。陸稲についてはすでに従来からこれは陸稲と一緒にたとえば野菜を作られるというような関係で、これは従来畑、いわゆる水稲以外の畑につきましては反当り幾ら、その作付状況を調べまして、反当り幾らというような標準で従来課税しております。今回石当り標準から反当り標準に切りかえるという問題は、水稲だけに限った問題でございます。
  11. 森八三一

    ○森八三一君 所得基準の変更により税の増徴が行われないようにすると、これは当然のことでありますが、税務当局で所得標準の変更によって増徴が考えられるという場合はどういう場合にあるか。
  12. 亀徳正之

    説明員(亀徳正之君) これは従来はまあ石当り標準と申しますのは、ちょっと作り方から申し上げますと、大体一つの基準の町村を設けまして、その基準の農家につきまして標準的な調査をいたすわけであります。その平均の基準の農家につきまして反当り標準的な所得は幾らかということを一応算出いたすわけであります。その所得をその付近の村の平均供出割当の基礎になりました数量によって割りまして、そして石当り所得は幾らになるかということを出すわけであります。それに対しまして、各農家の具体的にきまりました割当の数量につきまして割り当てました石数に、その石当り標準をかけまして、その人の所得を算定する、こういう方式であります。実際の収量をつかみまして、それに基きまして、それによって所得を算定して、そして供出の割当石数で割って、そして具体的にきまりました供出の石数をかけて所得を算出するという操作をとりますことによりまして、実は実際の収量をある程度現実にはつかんでおるわけでございますが、ただ個人間の個人差は、供出割当の基礎となる数字が正しいものとするならば、それで個人差が的確に出てくると、こういうような仕組みになっておるわけであります。ところが問題は、従来の供出割当の数量をどういうふうにしてきめていたかということが一つの問題になるわけです。従来のもしも供出割当につきましてある村の、何と申しますか、非常に地力が違っておるというと、上は三石から、下は一石八斗という工合に収量が非常に違っておる場合、そうするとそういったような違った村につきましては、やはり地力の違うことに応じてたとえば一番上の三石程度の所はA地区といたしますと、その地域につきましては、反当り大体何石何斗くらいにしようとか、それから下のところは一石幾らくらいにしようという基準をある程度きめて、供出割当をもしもしておると、こういたしますと、もしもわれわれが反当り標準に切りかえて、全部を一本にして、反当り標準をその村につきまして一本にして割当を適用するということにいたしますと、これは従来よけい収量のあった人については甘くなる、それから下に従来一石八斗くらいしかない人は、全体が平均されることによって高い収量が見込まれるということになるわけです。ですから一律に標準の切りかえによってふえると、こう書いてございますが、ふえる分と減る分とそれが激しい形で現われてくる、こういうことになるのです。もう一度要約して申し上げますと、従来の供出割当の数字がある一つの村について五段階なら五段階に分けて、収量がそれぞれの地区が違うということで、五段階の地区に分けて割当がきまっておる従来の石当り標準でございましたら、大体その収量で、割当はそういう区分できめられて算定される石数にわれわれ行当り標準をかけるのですから、この五段階に分かれておる割当の関係では、五段階に分けてそれぞれ農家の方々の収量を違えて見ておるという見方を、われわれの課税面でもそれを取り入れて見るということになっておるわけであります。ところが今度反当り標準になったという場合に、われわれが反当り標準の、従来はその調査はその村については標準的な所を一本と押えて調査しても、先ほど申し上げたように石当り標準の方式によって事実上その供出割当の石数が正しいとするならば、収量についてはその区分したところで見ておる結果になるわけであります。ところが反当り標準に切りかえて従来通り調査をその村については一本だけにして標準を区分しないということになりますと、高い所も低い所も全部平均したところでその村の収量を、たとえば上が三石下は一石八斗という場合には、平均して反当り二石三斗という標準を作るわけであります。そうしますと上のところは非常にこれで甘くなりますが、非常に収量の少い所は標準が一本にされることによって高い収量を見込まれるということによって、急激に負担が増加するという形になる。そこでわれわれは反当り標準に切りかえるについては、そういった激しい所得の増減がないように、やはり割当が従来地力等級などを参考にして五階級に分けておるというような場合には、反当り標準に切りかえましても、その市町村についてできるだけ五階級に分けて、その収穫量をそれぞれ算定してやった違った標準を適用するということにすれば、ひどい標準の切りかえによる増減はないのではないか、こういうふうに考えております。
  13. 森八三一

    ○森八三一君 そうするとこの説明は所得税の本質の、当然なことをやることであって、別に何も不思議なことではないということに解されると思うのですが、その場合に、今のその御説明の通りにうまく行けばよろしいが、反当り所得標準というものを形式的に三段階なり四段階に区別しただけでは、真の所得を把握するわけにはいかぬと思うのです。それはどうおやりになりますか。
  14. 亀徳正之

    説明員(亀徳正之君) 実はその問題でございますが、これは割当の方法を実はこの切りかえに当りまして各市町村に当ってみますと、実は非常に千差万別でございます。そこでまあ平坦部、普通のなだらかな平坦部につきましては、ほとんど割当も全部その村一本で、何と申しますか、その反当り大体何石何斗くらい取れるというよりも、割当がきまりましたら、そこの耕作面積で割って反当り幾らと出して、そうして個々の方の耕作面積をかけてその割当量をきめるというような簡単な所については標準一本でもいいだろう。ところが非常にこまかく、たとえば地力を四十数階級にも分けて、そうしてまあ点数制なんかを設けられておる例があるわけでございますが、実にこまかく分けて作業されておる所があるわけでございます。ところがそうかといって、じゃ課税の面で四十数階級にまで標準を区分しなければならないかということは、必ずしも言えないので、そこはある程度標準を統合してもさしたる問題はないのじゃないか、こういうことも考えられます。そういった場合には、ある程度標準を統合して、統合については、実はその標準の区分につきましては十分に市町村長その他の意見を聞いて区分するようにということをまた指示いたしておりますが、この間をよく意見を聞きつつ、この区分の作業をいたしますので、さしたる弊害はないと、こう考えております。私実際に見ました町村につきまして、今言ったそういう石当りから反当りにもしも変える場合に、標準はどのくらいにしたらいいだろうかという意見を私求めました場合に、大体たとえば四十数階級の市町村については五本か六本でいいだろう。それから隣の村に私参りまして、全然今のことを言わないで、こういったことにすれば隣の村では何本にしたらいいだろうか、こう申しますと、やはり五、六本でいいだろうということを言っておられるので、大体何本にしたらいいかという感度は、そうひどく違うものではないという印象を私持って帰ったわけでございます。大体ある程度の間差を設けて標準を区分するということで、大体閣議決定の趣旨の線に沿って作業はできると考えております。
  15. 森八三一

    ○森八三一君 今の御説明の前段の一町村一本の基準反収というものを考えて、供出割当を、その基準反収に耕作反別をかけて出てくる収量というものを基礎にして一律にやっているという所では、そう大した問題はないというお話でありましたが、供出の問題は、そういう村ではきわめて政府に対する協力的な熱意が強いということで、あるいは過酷な割当を受けておってもしんぼうして出しておるというような場合が多いと思うのです。それは税務当局が見た場合に、当然な了解というか、計算上理解さるべき姿において行われておるのだというようにお考えになることは、これは非常に疑問があると思うのです。そういう場合でも供出割当の問題と所得の問題とは非常に違っておるという事実が幾多あるので、今回は供出割当はありませんけれども、それにしても実質的には供出割当に類することが行われているわけですから、それだけで見て課税の実務を進行されることは非常に疑問があると思います。同時にあとでおっしゃいました農業諸団体の意見を十分聞いて尊重するということですが、これは今までの税務当局のとってこられた態度というものは、いつでもこういうことは表明されておりますが、実はそうなっていないのです。という具体的な例をあげますと、匿名供出の場合には、課税の対象にはしないということがしばしば言明されておったのです。それを拾い上げている事実は幾多あるのです。そういう場合に、それは違うじゃないかという抗議をすると、所得のあるところにかけるのは当り前じゃないかという表現で、匿名供出の場合といえども課税対象にされているという事実は現存しているのです。だから尊重するとおっしゃっても、今農民、あるいは農業諸団体は、過去における税務署のおとりになった態度から、尊重されるものとは理解しておらぬ。そこに僕は問題があると思うのです。尊重するということはどの程度に一体お考えになるのか。それを明確になされなければ、今までの態度が間違っているのですから、しないと言うてやったのですから、そういうことがないとおっしゃるなら、具体的に出します。それをどう尊重されますか。
  16. 亀徳正之

    説明員(亀徳正之君) まず先ほどの第一点の御質問からお答えいたします。従来の供出が一本であったから、すでに税の面でも標準一本でいい。これは基本的な考え方でございまして、これは実際に回りまして私も感じたのですが、供出の関係では従来一本というか、もうみな反当り二石幾らということで、一本で済ましておった。しかし税の問題になると、これはやはり標準は二本か三木にしていただかなくては困るというような意見も現実に聞くわけです。そういった所につきましてはもちろんこれは二本にし、あるいは三木にするということも当然考えております。標準の区分をどうするかということにつきまして積極的に十分意見を聞くようにということは強く言ってございます。先ほどの、それに関連いたしまして従来いろいろ意見を聞くようにということをいつも表明していたが、現実はなかなかそうでない、こう御指摘になった点でございますが、あるいは事実一部そういった傾向も見られたところが全然なかったとは申し上げにくいのでありますが、本年度におきましては、これは特に閣議決定でもこの点をうたっておるということは、従来とは相当気持を変えてこの問題に臨んでおるという趣旨をわれわれとしてもはっきり認めて、注意するということでございます。実はこの反当り標準に切りかえるということを最終的に九月の末の国税庁会議において決定したわけでございますが、それが終りまして直ちに、実はこの閣議決定が行われます前に、農林省関係各課とも十分な連絡をとりましたし、また十月の初めに農業団体特に農業協同組合の全国の中央会、各府県の中央会の幹部の方々も御参集を願いまして、この標準の区分の説明、また反当り標準に切りかわったこの課税方式の説明、並びに今言った区分、あるいは標準作成、その他に関連して、本年度は十分市町村その他の意見も聞いて、適正な課税を実施して行くということは、十分よくお話し合いもしております。また各国税庁会議の席におきましても、本年度は切りかえに当りますので、摩擦のないように十分意見を聞いてやるようにということを強く申しておりますので、今までよりもその点はよくなるものだと、こう信じております。
  17. 森八三一

    ○森八三一君 今の最後の、意見をお聞きになるというのじゃなしに、その意見を尊重するという、ここに私は非常に重要な閣議決定の意味があると思うのです。意見を聞くというのじゃなくて、意見を尊重すると言われる。その尊重の度合いというものは、どう具体的にお取扱いになるのか。もっと端的に申し上げれば、税務当局の方でも一応反当基準というものを、これは現地調査をしてお考えになるでしょう。農林省の農林統計調査事務所の方でも、ここは精密な、科学的な調査をしておりますから、それからも一応の資料は得られるのでしょう。それからまた農業協同組合等も、現地におるわけですから、ことに問題になるのは反別のごとき——通例申しますなわ延びと申しますか、これなんかはかなり問題も巻き起ることであります、——ことについて一応の資料を持っておる。そういうような各種の資料が出た場合に、尊重するということは、そういうものをよく突き合わして、お互いに話し合って見れば、これは了解の行くことであると私は思います。了解が行くように話し合うという内容を持っておるのか。もうどうやって見ても了解が行きそうにもないというときには、一方的にやってしまうと、従来の例に一応意見は聞くと、そこで押し問答をしてやって見る。どうしてもわからなきゃ税務署が一方的にぱんぱんやってしまう。文句があるならば、帳面持って来いといったようなことで、農家の方にはそういう記帳というようなことはございませんから、結局泣き寝入りになるとか、あるいはひどい場合には、そういう小言を言った場合にはほんの鶏一羽までまたつっつき出してきて、変な、長崎のかたきを討つようなことにまで行くという例がなかったわけではないのです。結局農家としてはそんなことに応接しておったのでは、とても自分の生産を維持して行くわけに参りませんから、手間が惜しいから、最後には泣き寝入りするというふうになった例もある。そういう尊重するということには、どこまでも関係者の意見を聞くということで調整して、納得が行くまでこれは行われるべきである、そういう内容を持っている。従来のように意見を聞くということが尊重という文字に変ったことは、閣議の意思はそこにあると私は理解しているが、税務当局はそういうようにお取扱いなのかどうか、ということを一つ明確にしていただきたい。そのことは、今豊作ということで、これは七千九百万石というような、十月十五日の数量というものは、その後の情勢においてこれは減少するとは思いますが、とにかく端的に表現すれば、有史以来の大豊作ということで、この際に二千七百万石の供出予約数量というものを、さらに増して、一俵でも政府に供出させるという、食管法の本来の筋を通すべきときであると私は思うのです。税の問題がもやもやしているために、せっかくの豊作が、政府の期待しているように出てこないという最大の障害をなしているということであれば、これはもう非常に考えなければならぬと思うので、今申上げた尊重するという意味は、そこまで行くということを言明しなくちゃ……また当然言明して然るべきと私は思いますが、そこはどうなんですか。
  18. 亀徳正之

    説明員(亀徳正之君) もちろん文字通り尊重するということでございます。ただこれは今われわれとしてもやはりこの標準の切りかえということは、どうしても皆さんに納得して、やはりこの作業を進めなくてはならない。そうでなければ非常に円滑には実施できないということは十分考えております。ただその際、これは蛇足かとも思いますが、向うがうんと言わなければこれは決定できないんだと、こういうような、また何というか、極端なところまで行くことは、これまたどうだろうかと、やはり税務官庁の責任において課税しなくちゃならないという、この本来の建前は当然あるわけですから、それで本来の建前があるから、われわれはその意見も場合によれば無視して独断専行して行くかということは、これはおのずから別問題ではないか。やはり課税の最終の責任は、税務官庁が持っているわけでございますから、しかしながら、だからと言って独自の判断で強行して行くということは、決して円満な課税を実現するゆえんではないと、そこにそういった基本的な立場を持ちつつ、しかし十分一つ第一線の意見も尊重して、納得の行く姿で課税して行きたい、こう考えている次第でございます。
  19. 谷垣專一

    説明員(谷垣專一君) 農林省といたしまして、今の問題に関係ありますので、申上げさしていただきたいと思います。  先ほど来御指摘になっておりますように、この予約集荷の方法をとりましたため、従来の石当り所得標準から、反当所得標準に切りかえるということは、当然考えられてくるわけですが、そのことと、ことに今年度の豊作、あるいはまた現在行われておりますような予約をもっとふやして、供出させるというような点等をからみ合せまして、この切りかえということによって、税の増徴が行われるということにもしなりますというと、農村に対する影響は非常に広範な範囲にわたってくる、こういう心配をいたしたのでございます。従いまして、この時期にこういう変更をいたします際には、特に慎重に、農村の実情に合ったやり方をとっていただく必要がある、かように農林省の方としては考えまして、大蔵当局の方と相談をして、この閣議決定をいたす、こういうことに相なったわけでございます。従いまして先ほど来御意見の出ておりましたように、現地におきまする税務当局と、関係市町村あるいはまた農業委員会でありますとか農業協同組合、その他の農業関係の諸団体との間に十分な意思疎通をはかっていただく、従来もこういうことは行われておったと思いますし、あるいはまた、そのやり方について甲乙いろいろと批判があったおけでありますが、この際はこういう基準の変更というような重要な時期でもあり、かつまたこの豊作下におきまして、少しでも多く政府への供出をやっていただきたいということが裏にもなっておりますので、この際は特に今申しました現地におきまする農業関係の諸団体、市町村等と税務当局との間に十分な連絡をやっていただきたい、まあそれが意見を尊重するというこの言葉の中に実は表現をいたしておるつもりであるわけであります。もちろん税務当局が税の決定をいたされるということ、このことは法律等がはっきりあるわけでありまして、今さら論議する必要のないほど当りまえのことなのでありますが、そのやり方につきまして、特にこの際は慎重にまた十分に時間もかけて、こういう団体の意見をよく聞いてもらいたい、こういう趣旨でございます。これは先ほどお話がありましたように、税務当局の方も御了承になりまして、それぞれ下部の機関に流しておられると思いますが、農林当局の方といたしましても、それぞれの末端の地方庁にも、また関係諸団体の方へもこのことを一応連絡いたしまして、関係の諸団体の方はそれぞれまた末端の機関にこういう連絡をいたしていただいて、上だけではなく現地におきまして十分な連絡の行くように、関係の諸団体にも農林省としてお願いをいたしておるわけでございます。また統計調査の資料等をこれらの資料の一つとして使いますことにつきましては、これはいろいろとまた別個の意見もあろうかと思います。と申しますのは、税と統計との関係におきまして統計をとります場合、調査をいたします場合に、このことが税の一つの関係になる、基礎になるということにつきましては、いろいろと統計調査をいたしますものの立場から申しますと、議論のある問題であろうかと思います。しかしながら、ここで言っておりまするように、市町村の反当収穫量等につきましては、これは従来も実際はそれらの資料が末端において利用されておる事情もございます。特に今年におきましては、そのように重大な切りかえの時期でございますので、それらのものを十分参考にされるということが妥当ではないかと、こういうふうに考えた次第であります。大体農林省といたしましては、かような考え方でこの閣議決定をいたし、またそれぞれ措置をしておる次第であります。先ほどからの御意見に触れておりますので、一言申し上げておきます。
  20. 亀田得治

    ○亀田得治君 今年の水稲の所得の予想並びにそれによる税収ですね、これはすでにあなたの方じゃ相当多く取れるという見込みを立てておるのですか。あるいはそういうことを少しも立てないで、ともかくこういう基準だけを下に流して行く、こういう立場で純粋に技術的にやっておられるのか、これはどっちなんですか。
  21. 亀徳正之

    説明員(亀徳正之君) 今年は大体どれくらい取れそう、それを指示してどうやるということは一切いたしておりません。指導はもっぱら技術的な面その他で指導しております。ただ収量の面につきましては、もちろんこの間の十月十五日現在の推定実収高によりますれば、水稲については前年に対して三〇%ふえると、こういうような具体的な農林省の発表なさった数字は、もちろん資料としては出しております。しかし、だからそこから所得は幾らと算定して、税金が幾ら取れるから取れるように作業するということはいたしておりません。また別個にどうなるかという算定は、主税局の側で、当然歳入見積りを主税局の方は担当しておりますから、別個の見地からやられると思うのでありますが、国税庁が幾ら取れるという見込みを立てて指導するというようなやり方はいたしておりません。
  22. 亀田得治

    ○亀田得治君 実はそこが非常にポイントなんで、主計局がいろいろな計画を立てるのは当然なんですが、今あなたの方じゃ、そういう点は白紙で考えるというように説明になったのだが、農林省収穫予想ですね、三〇%増、何かそういうものをつけて出した。私はそれがやはり一つの、下部に対しては指示になるのじゃないかと考えるのです。だから純粋に技術的にやっておるならそれは要らないけれども、実際に下部の方、税金を取るのは一人々々から取るわけですから、全体において三〇%増といったような、そんなことは新聞を見ればよくわかっておることで、それを特に徴税面を扱うあなたの方がつけて出されるのは、私はちっとまずいのじゃないか。ほんとうの白紙でやるというのは、それはどういうふうにお考えですか。
  23. 亀徳正之

    説明員(亀徳正之君) 今の御質問の点、あるいは私十分了解しておらないかもしれませんが、これはわれわれの方も、やはり税務署の方の第一線が、実際の収量の調査、坪刈り、在庫米調査、そういったものをやるように指示しております。そういった現実をつかんで処理する。先ほども農林省の官房長がおっしゃいましたように、税務署だけの調査ですべて万全を尽せるというものではないので、そういった場合には統計調査事務所の資料も一応参考にする、こういう有力な公表された資料をわれわれとしては、やはり一つの有力な資料として参考としつつ仕事をして行くということは、当然なのではないか。先ほどの農林省の発表された数字というものは、これらの数字が全部集約された最終的な姿であって、われわれが実際の税金は幾ら取れるだろうということで割り当ててやるということとは話も別であり、やはり収穫量がどうであるかということは、これは課税の上で最も重要な問題でありまして、各市町村ごとにどれだけの収量があったか、反当りどのくらいとれるものであるかということは、実はこの課税の上について最も重要な問題でありまして、そういった収量の見方その他については、農林省のいろいろ計算されておられる数字をやはり有力な参考としてわれわれが見て行くということは当然なことではないか。先ほど全体の収量は大体こうなっておる、それから価格はどうだということは、当然会議の席で言わなければならないことでありますので、それで、どうこう、お前の方は幾ら取れということに直接結びつくわけじゃありません。やはり具体的には各省ごとに適正な収穫量をつかみ、その基礎経費も適正なところを押えて、適切な課税をする。特に一番問題になるのは収量であります。その収量につきましては、われわれとしても先ほども申し上げましたように、坪刈り調査あるいは在庫米調査というものをやる、そのほかに農林省の有力な資料も参考に入れて、適正に課税して行きたい、こう考えておる次第であります。
  24. 亀田得治

    ○亀田得治君 各税務署においては、各市町村において反当収量を調査するわけですね。そうして農林省の資料それから協同組合の資料、種類としてはこの三つは当然予想されますね。その際この三つをどういうふうに取扱うつもりなんですか。
  25. 亀徳正之

    説明員(亀徳正之君) これは市町村の具体的な問題でございますからこの席でどこをとるということは簡単に言い切れない問題かと思いますが、一応われわれの調査で一つのもちろんめどをつけるわけであります。それが正しかったかどうかということを最も裏付ける資料としてはやはり作物統計調査事務所の資料というものが有力な一つのわれわれの調査に対する反省の材料として使うべきものではないか、こう考えております。ただこれはこの資料の使い方につきましても実は農林省の方からも御注意をいただいておるわけでありますが、統計調査事務所のこの数量というものは、全国全体の収量が幾らかということをサンプルを多数とりますことによって推定するために作業しておるわけでありまして、やはり全国全体の数字になればなるほど確実性が増すということで、やはり市町村ごとの数字というものは直接そのままとるということは、またこれは農林省の方とされてもいろいろ問題があるところではなかろうか、それは一つの有力な資料としていろいろにらみ合せて、またその市町村側のいろいろな意見もございましょし、またあるいは災害があったとかそういった具体的な事情は、これは市町村長が十分やはり把握されておるので、そういったところも十分やはりわれわれとしては織り込んで作業を進めて行かなければならない。こう考えておる次第でございます。
  26. 亀田得治

    ○亀田得治君 この三つの材料のうち、特にどれという軽重はないというように解釈していいのですか。
  27. 亀徳正之

    説明員(亀徳正之君) これはやはり具体的な状況に応じてでないと申し上げにくいし、やはりこれらの三つのものを総合して適正な収量をわれわれとして判定して行くというしかちょっとお答えできかねると思いますが、とにかくそれらの資料をそれぞれやはり十分一つ参考にして、その市町村の収量というものを抑えて行きたい、こう考えております。
  28. 亀田得治

    ○亀田得治君 税務署が調べたのだからということで特にそれにとらわれることはないのですね。
  29. 亀徳正之

    説明員(亀徳正之君) 税務署が調べたものだけを絶対にして行くということはなかなか不可能だと考えております。
  30. 亀田得治

    ○亀田得治君 先ほど森委員からも御指摘になっておったのですが、この末端の各税務署長個々への指示、これはやはり親切なものを出してほしいと思うのです。閣議決定の写しだけではやはりいかぬと思います。私どもが今聞いたようなことを織り込んで一つ出してもらうようにしてほしいと思います。
  31. 森八三一

    ○森八三一君 今亀田委員所得税課長の質疑応答を聞いておりますと、どうも私はやはり今回の閣議決定に特にこの尊重という言葉を用いられた趣旨が十分税務当局には理解されておらないと思う。やはり相も変らず参考にするという程度にこの閣議決定をとっておられるというしか理解できません。特にこの尊重ということをどう取扱うか明確にしません。これは少し言い過ぎた、うがち過ぎたことを申し上げて恐縮かと存じますが、従来大蔵省としてはこういうような統制的なことはやめることによって財政負担の軽減を期したいという意図は、これはもう何とおっしゃっても心の底には流れておる。だから今年の豊作ということによって、当然農林省が努力しておる収量の確保ということの前進をむしろはばんで行って、最後には統制をはずすということをこの際一つ実現してみたいという意図があるのじゃないか。もしそれがなければこの尊重という言葉はもっと明確にお答えになっていいのじゃないかと思う。尊重という言葉は少くとも米の第二次予約というものをはばまないように、第二次の予約供出というものが非常に順調に多量に出てくることを、これは閣議は企図してこの言葉を私は使っておると思うのです。それである限りにおいては、もちろん税務署が最終決定をする権能を持っておることについて私はとやかく申すのでなしに、法律は当然それを規定しておるのですからよろしい、よろしいが、税務署で坪刈りその他の方法でお調べになったものと、農業協同組合の調べたものと、それから統計調査事務所の調べたもの、この三つが一応有力な資料に私はなると思いますので、その三つをつき合せて懇談なされば、個々の農家の所得をここできめるわけではないので、標準をきめることですから、相手方はどちらもそれは相当な人です、話をして理解もできぬというようなそんな連中はここへは登場するわけではないので、もし三者の意見が一致しないということであれば、それは税務署の努力が足りないと、こう思うのであります。足りないということは結局今うがち過ぎた意見を申し上げたところへ続いてくる。こういう結果になる。それじゃ非常に残念なことでございますので、この際は一つ尊重という言葉は参考にするというのじゃない、あくまでも意見が一致するという努力を払うべきである。そのことを言明なさることは、この豊作をほんとうに国民のために役立てる、たとえ三日分でも四日分でも余計配給してやって、公定価格で、大衆の生活が守られて行くということが実現するための最大の僕は要素になると思うのです。そういうお努力ができませんか。
  32. 亀徳正之

    説明員(亀徳正之君) 先ほど申し上げましたこの意見を尊重する、あくまでももちろん尊重するということには変りはないのでございまして、何と申しますか、これはちょっと気持の上であるいは食い違いがあるようでございますが、われわれは決して従来とは変えて、十分こちらは積極的にこういった市町村長やこういった農業団体の長の方々に積極的に意見を聞いて、それらの有力な意見は十分くみ込んでわれわれの作業を進めて行く。それで、先ほどのまあ一致すべく努力することはもちろんでございます。ただ問題は先ほどちょっと私蛇足のような形で言いましたが、一致するまでは、向うが納得するまでは、これは決定できないということは、これはまた行き過ぎな面がございます。またその行き過ぎの面をまあ私多少心配した形で申したかと思うのでございますが、もちろん皆さんの納得の行く姿でやはり課税して行かなければこの標準の切りかえによる農業課税ということは非常に困難であろうことを十分認識し、また農林省とも十分その点は打ち合せて、そうしてこの閣議決定になったのでありまして、この閣議決定の線をはずれてわれわれが作業するということは決してございません。なお多少誤解がおありかと思うのでございますが、この第二次予約の申し込みについて、税の問題が大きな、何と申しますか、妨害をしておるのじゃないかという御懸念でございますが、実はわれわれがこの石当り標準をやめて、反当り標準に切りかえる、それでもっぱらわれわれは実際の収穫量の数をつかまえて課税する、そのことは予約されようとされまいと、やはりわれわれは本来の実際の数をつかまえて課税するということは、逆にむしろ予約されれば、いわゆる早く供出された所につきましては二千四百円、それからそれ以外の何と申しますか、十一月以後に売られたような方につきましては千二百円というものが、その売り渡された石数にそのものをかけた分だけ税金がまかるわけでございますから、やはり予約をされた方がそれだけ減税になるわけでございます。しかも実際の収量というものは何といいますか、予約売り渡し数量といったものから判断するのじゃなくして、やはり実際どれだけとれたということを抑えて行こう、しかも売り渡ししたものについては、今まで申し上げたような具体的にその売り渡しされた石数が多ければ多いほど減税額が多くなるのでありますから、むしろ今度の反当り収穫量に切りかえるというこのわれわれの作業によって、予約売り渡しを阻害するということよりも、むしろ逆にこういった措置が促進してなされなければならないと、こう考えるわけであります。
  33. 大矢半次郎

    大矢半次郎君 関連して……。私は森委員の質疑に関連して伺うのですが、この閣議決定の第三ですね。「前記の場合において、市町村の反当収穫量につき、当該税務官庁は、農林統計調査機関の作成する市町村別反当収穫量を尊重して妥当な課税標準の基礎となる収穫目黒を決定すること。」これを特にうたっているのはどういうわけなのですか。本年に限って特にうたっているのは……。
  34. 亀徳正之

    説明員(亀徳正之君) 実は従来からも農林統計調査機関の調査事務所の資料を事実上まあ拝見さしていただいている面もあるわけでございます。しかし第一線のいろいろな事情によっては、なかなか協力を得がたい向きもあるわけでございまして、この際そういった協力を積極的に得たいということと、農林省としてもこういった公的な機関によって適正な収穫量をつかんでおられるわけでありますから、われわれ徴税機関といたしましてもそういった公的な機関の調査による収量というものも十分尊重して行くという線をはっきり出すことによりまして、何と申しますか、われわれの仕事というものが適正な方向へ進んでいるということをやはり一般に知っていただきたいということを考えております。特にこれによってたとえば収量は作報の収量でなくちゃならぬということで縛られるというところまで進んでいる問題ではございません。
  35. 大矢半次郎

    大矢半次郎君 私は従来の税務署の課税状況を見まするというと、供出の割当と必ずしも一致していない。それからまた農林省の統計調査事務所のものとも一致していない。相当食い違いがあると思っております。各税務署の調査状況を見ましてもいろいろ苦心して収支調査をやっておるようであります。また郡市別に一定の基準調査と申しましょうか、各農家について収支計算を厳重にやるようにというような指示もやっておるような状態であります。しかしなかなか税務署の仕事が忙しいために、徹底して十分調査ができないのが実情であります。ことに今年のようにこういう大きな切りかえをやるというと、税務署の第一線におるものはなかなか非常に忙しいのです。ふだんでさえ十分に行かない収支調査が、今年はなお一そう困難だ。かてて加えて有史以来の大豊作といわれ、ことに本年は山間部は非常に調査はむずかしいものがあろうと思うのです。それらの点を考えまするというと、平常の年のように税務官庁に対して、税務署の第一、線におる者に対して、上の方から収支調査を相当厳重にやれという指令を下すというと、なかなかこれは第一線の税務官庁は実行困難な点があると同時に、また農業団体あるいはまた農林統計調査機関との間に相当の食い違いが起ってくる問題が多いのじゃなかろうか。そういう点を避ける趣旨において第三の閣議決定が行われておる。原則としてもちろん坪刈りのようなものを事務官庁は今年はやらないで、できるならば農林統計調査機関の作成する市町村別の反当り収穫量を尊重してやる。もしもそれが農業団体の方面の調査と食い違って、ある程度の調整をはかる必要がある場合には、それは税務官庁が進んで調査してもいいのだ。そうでない場合には原則として税君署が第一線の坪刈り調査というようなことは今年はやらぬで行こうというのが閣議決定の趣旨だろうと思うのでありますが、そうでないのですか。
  36. 亀徳正之

    説明員(亀徳正之君) 若干今申されました市町村ごとの作報の統計調査事務所の収量は、市町村ごとに出まして、市町村一本の何といいますか、全体の収量が出るわけであります。ところが今度はある程度また区分される、こういう問題も別にやはり先ほどの標準の切りかえによる摩擦を避けるという意味で、標準の区分ということを考えているわけであります。しからば標準の区分ということは現在の段階では一応地力というものを基礎にしてある程度標準を区分するということも一つの考え方と思っております。その区分された地帯ごとに収量はどういう差があるだろうかということは、統計調査事務所のお調べだけでは、これはわかりかねますので、少くとも標準を区分するというその区分された地帯ごとに、ある程度どういう差が現実に出てくるかという見当をつける意味では坪刈り調査、在庫米調査ということはどうしてもやらなければいけないのじゃないか。従って本年度もその意味では収獲量を確かめる意味で特に標準の区分という作業を円満に実施する意味からも、やはり収穫調査ということもやるように指示しております。しかし市町村全体の収量がどうなるかというような場合には、この統計調査事務所の数字というものが非常に……、こういった数字をわれわれとしてはやはり十分尊重して行きたいと考えております。
  37. 江田三郎

    委員長江田三郎君) 実はもう一つ午前中に農林省関係予算の件を議題にいたしたいのでありますが、官房長も予算課長も大蔵省との予算折衝等の関係で一時からそちらの方に行かれますので、時間があまりありませんので、そういう点をお含み願いたいと思います。
  38. 大矢半次郎

    大矢半次郎君 重要な問題だからポイントだけを……。そうすると町村一本でやる所は農林統計調査機関の作成したものを十分尊重してやる、こういうのですか。
  39. 亀徳正之

    説明員(亀徳正之君) 一本でやると申しますよりも、統計調査事務所でせいぜいわかりますのは、市町村全体の収量がやはりわかるだけでありますから、標準を少くとも区分した関係からいいますと、区分地帯ごとにどういう収量の状況かということは、どうしても調査しなければならない。それから標準をかりに一本にした所でもやはりそのまま統計調査事務所の数字を、なまの形で使うということは、農林省の方でもちょっと、御都合が悪いのじゃないか。われわれとしてもその辺の調査をやはりやって行く、十分この資料は尊重して行きたいと思うのでありますが、そのまま直接なまの形で使うということは、やはり若干問題があるのじゃなかろうかと、こう考えております。
  40. 大矢半次郎

    大矢半次郎君 それでは最後に確かめますが、一体従来の調査と今年の閣議決定の調査とどこが違うのですか。特にこの閣議決定の第三があるのはどういう趣旨のことなんですか。
  41. 亀徳正之

    説明員(亀徳正之君) これはやはり今年は、従来は石当り標準でございますから、供出割当の石数というものに実はわれわれはある程度相当よっておったのであります。そういうものが一切なくなりまして、実際の収量をやはりつかんで行かなければいかぬ、いわゆる収穫量を的確につかむということが石当り標準から反当り標準に初りかわりました際には、最も重要なことになっております。そういった際には、こういった農林省調査機関のやはり資料を、従来以上われわれとしては尊重して行くということにはなろうかと思います。ただ、そのために税務署の方では収量の調査を一切やめにしていいということまでにはなり得ないと、こう考えております。
  42. 大矢半次郎

    大矢半次郎君 農林省の御意向を伺います。
  43. 谷垣專一

    説明員(谷垣專一君) 第三の問題でございますが、これは従来実はこれらの市町村別の反当収穫量というものを、公式には税務官庁の方にお示しは実はしていないのでございます。事実上そういう御連絡があって間々出ているというのが実情でございます。と申しますことは、先ほどお話がございましたが、農林省の方といたしましては、非常に税務当局の末端の方がお忙しいので、その仕事を農林統計調査の末端の機関で受け持って、それに代る仕事をやって行くという趣旨は全然持っておりませんのです。と申しますのは、両方の目的がやはりかなり違った目的を持っておりますので、そういうことは実は考えておりません。ただ先ほど来お話がありましたように、市町村ごとの市町村別の全体といたしましての反当収穫量というものは、これは私たち積み上げをやって参ります場合に出てくるわけでありますし、また従来の過程等を考えておりますと、Aの村とBの村というような場合に、やはりいろいろと問題があるようでございます。で、そこらの点に対しましても、これらの市町村別の反当収穫量というものは十分尊重して、御参考にしていただく価値があると思いますし、また市町村ごとの市町村別にいたしまする反当収穫量につきましても、十分に資料といたしまして御参考になることと存じておるわけであります。まあそういうようなところにおきましての協力と申しますか、御利用は、ことに今年のように切りかえの場合には有効でもありましょうし、また十分に尊重していただくことが、この二にうたっておりまする「関係市町村長」あるいは「関係諸団体」等といろいろと議論をかわされ、また意見を税務当局として聴取される場合に、一つの有力な資料ということになろうかと考えます。そういう意味で三をうたった次第であります。
  44. 三橋八次郎

    ○三橋八次郎君 課税技術によって増徴は考慮しておらないということでございますが、それにはやはり適正な反当収量を把握するということは一番重要なことだと思います。ところが税務署でやっております坪刈りの様子を聞きますと、村の協同組合の人、そのほかの人が出まして相談しましても、一方的に決定いたしまして、ここを刈り取れ、こういうようなことを言っておるそうであります。そうなってきますると、やはり適正反当収量の把握ということは非常に農家にとりましては不公平になると思うのでございます。もちろんこの供出の際における地力に等級のあります所におきましては、その等級の地区を代表いたします所で坪刈りを行うのが至当だと思いますが、そういうような、たとえば六等級あるとしますと、その地区を代表する六カ所で坪刈りをやっているのでございますか、それとも村をいいかげんに一カ所か二カ所やっておられますか。
  45. 亀徳正之

    説明員(亀徳正之君) 標準の区分をした地帯全部ということはなかなか困難と思いますが、少なくとも一番上とか、まん中、下ぐらいの所はやはり調査しなければならない、こう考えております。ただ市町村全体のこの収量をつかみ、その他はやはり統計調査事務所の資料というものがやはり有力な資料でございまして、これは尊重する、ただ区分したときにどのくらい違うかということは、税務署としては的確につかんでおらなければいかぬ。特にこういう豊作なときには、地力が悪いというような所が案外収量が伸びたり、必らずしもその点は地力の差に応じないで収量が現われてくるということは、やはり税務署としてはしっかりつかんでおらなければいけない、こう考えておるわけであります。
  46. 三橋八次郎

    ○三橋八次郎君 今のお話によりますと、実態をつかむということを、地力の悪い所でもことしのような豊作のときには収量の多い場合がある、そういうようなことをつかむためにはなおさら各等級の地力を代表する場所で坪刈りすることが必要と思いますが、それをまあたとえば六等級ある所で二カ所か三カ所坪刈りをしておりまして、しかもそれを税務署の一方的な場所を決定して坪刈りを済まして、それで一体この適正な反当収量というものは把握できる小どうかということが一つの大きな問題になると思います。もしそういうような代表の各等級の地区において坪刈りをしておらぬ場合に、それを補正する場合はどういう計算を使うのでございますか。
  47. 亀徳正之

    説明員(亀徳正之君) 先ほど申しましたように、われわれとしてはやはり現地の意見を尊重する、聞く、こういうことは、今申し上げましたようにこの収量の面で全部をやはりなかなか調べるわけには参らぬ、また反当りになりますと、たとえば岩地と申しますか、谷合いの所とか、非常に特殊な事情を考慮に入れまして、そういった所はどうしてもやはり現地の市町村長とかそういった方々の方からいろいろの実際の状況をお話しになると思います。そういった意見は十分われわれとしてはお聞きして、そうして適正な収量をつかんで行く、こういうことで仕事を進めて行きたい、こう考えております。
  48. 三橋八次郎

    ○三橋八次郎君 現地の意見を聞くといいましても、その坪刈りを行うその際におきましても、現地の意見を聞いておらぬという実例がたくさんございます。みな相談してこの場所を刈るという場合に、税務署の方はこっちの方がいいという場合に、どうしても税務署の言う所をむりに刈らしているというような実例がございます。そういうような実例がある場合に、今度は収量を補正する場合に、やはり現地で話し合いをしたと言ったって、やはりこれは税務署の意向を通すということになるだろうと思います。それから今地力調査に関しての話は、一向なかったのでございますけれども、ことに地力の悪い所でも収量が多いと、こういう豊作の年は……。ただその話だけですが、それは逆に、地力のいい所でも収量の少ないという現象も現われるから、ただ地力の悪い所でよけいとれるということだけを見ないで、地力のいい所でも今年は少くとれる所があるということを見てもらわなければ大へんだと思います。その逆の現象もあることも十分注意してもらわなければならないと思います。なおまた一番問題なのは供出の際に等級がある、それを尊重するということは農林省もこれはやっているわけでございますから、この等級ごとに坪刈りをしておらぬ場合に、これをどういうような計算法で各等級を代表するような収量を出すかというようなことは、これはただに一つの地区ばかりでなく、村と村を見合わせる場合においても必要になってくるのです。それをどういうふうにして補正をして行くかというようなことを、あらかじめ基準を設けてやってもらわないといかぬと思うのですが、何か御考慮ありますか。
  49. 亀徳正之

    説明員(亀徳正之君) これは各地力の等級ごとに従来の供出の割当の基礎になった反当り収量というものが一応それぞれついておる実情であります。ですから、第一等級、二等級、三等級、四等級、五等級と、こう分れておりますときに、何といいますか、収量の差がどのくらいになるかということは、従来の供出の実績に関連しては数字はわかっております。従いまして一番高いところ、まん中、それから低いところというものをある程度調べますと、その間の関係は大体そうひどくはずれない形で見当はつくんじゃないか。従ってまあ従来の供出割当の場合に、そういった地力等級ごとに反当り幾らに収量を見込んだかというような過去の実績が、現在の推定の強力な参考になるんじゃないか。またそれを参考にすることによって合理的な推定がなされるのじゃないか。こう考えております。
  50. 三橋八次郎

    ○三橋八次郎君 そうなって参りますと、過去の資料、現地実情というものを十分に考慮してということになってきますると、先ほど問題になりました意見を尊重するということにまた問題が戻ってくるわけでございます。そういう資料なり、現地の意見なりを十分徹底をするということであれば、現地の人の意見をそれこそ文字通り十分に尊重しなければならぬ問題だと思うのでございますが、先ほどから尊重という字句につきましてずいぶん議論があったのでございますが、これは文字通りの尊重を願えるのでございますか、いかがでございますか。
  51. 江田三郎

    委員長江田三郎君) ちょっと、まあその問題に関連しまして、いろいろこの問題についてやっておりますと、まだ何ぼでもやらなければならぬことでして、そこで、大矢さんからも言われましたように、とにかく新しい制度に切りかえるということと、それから未曾有の豊作だと、従って未曾有の豊作なんということになると、ただ地力の等級というものだけでそれに比例した収穫ができるかどうかということは、これは疑問であって、なかなか収穫の実態というものはつかみにくいと思うのです。で、統計調査を積極的に使うといっても、これは統計調査の精密度というものが個々のたんぼに及ぶわけじゃありませず、ましてあなたのところの坪刈りというようなものは、これはしろうとのいいかげんなものであって、だれもあんなものは信用しておらない。ああいうことをやられるから、かえって反感を生むくらいのことで、あなたの方では自信があるような顔をされておるが、一体どこに標準をとっていいのかとかいうことだって、そこにいろいろとり方の問題があるのに、そういう専門家でない者がいきなりランダムに標準地点をとってやったところで、そう納得ができるものじゃない。やはり何といっても地元の農業協同組合等の意見を尊重して行かなければならぬのですから、先ほど言われておるように、この意見を尊重するということは、従来ともよく尊重したつもりである。つもりであるが、しかし今度は、この際いやしくもこういう閣議決定をした以上は、従来とは打って変って積極的な尊重の仕方をして行く。従って別な言葉で言えば、一つ納得が行くまで話し合ってみるということだと思いますが、そういうようなことをあなたの方でも末端の方へ十分趣旨を徹底して行くということが必要なんじゃないかと思うのです。それからまあやってみると、今年の問題はこれはいろいろ起りますよ。だからやっておるうちにまたわれわれも現地の模様を見て、あらためてあなた方の方へまたわれわれの意見を聞いてもらわなければならぬような問題もあると思いますが、一応そういう趣旨を末端へ徹底さしてもらうということが、私は肝心だろうと思うのです。そういうことについていろいろやれば切りがありませんが、一つ結論的にもうわれわれがものを言わぬでも済むような発言をしてもらいたい。
  52. 亀徳正之

    説明員(亀徳正之君) 今お言葉がございましたように、今年の標準の切りかえということは非常に大きい問題でございまして、単に税務署が独自の立場でやるということは実際できませんで、やはり最終の責任はわれわれにあるという体制は維持しつつも、できるだけ第一線の皆さんの御意見というものを十分尊重して納得の行く課税を実施して行きたい。またそのように努力し、またそのように指示して参りたいと、こう考えます。
  53. 江田三郎

    委員長江田三郎君) いろいろあると思いますが、しばらくまたこの模様を見て、税務署の方の作業等を見て、重ねて問題にするということで、一応この程度にしておきたいと思います。     —————————————
  54. 江田三郎

    委員長江田三郎君) それでは次に三十一年度農林省関係予算の件を議題にいたしますが、この件は一昨日の委員会で官房長から一応説明を聞いたのでありますが、本日重ねて問題にいたしまして、前回の説明に対して御質疑を願いたいと思います。ただ先ほど申しましたように、官房長も予算課長も非常に時間が制約されておるようでありまして、従って十分審議を尽すことができないと思いますが、いずれこの問題は次の委員会ででももう一ぺん重ねて問題にすることにいたしまして、ただこういう予算大綱をもとにして大蔵省との折衝が始まっておるようでございますから、特にこの大綱について農林省として考えてもらわなければならぬという点を重点的に一つお取り上げ願いたいと思います。
  55. 森八三一

    ○森八三一君 この大綱で拝見いたしますると、各種の補助金を貸付制度にかえて行くという農業改良基金制度というものを構想されておるようでありますが、実際問題としてこの種の補助金は財務当局の方ではもう年来打ち切りたいという主張のあったものでありますが、それを農林省が基金制度にかえて行くということによって、果して実効が期待し得られるかどうか。これは実際問題です。保温折衷苗しろのことにいたしましても、一坪当り一昨年までは二十二円五十銭だったものが、今年はその率が多少下ったものです、それが小農家の場合にはわずかに何十坪というような苗しろ面積をかけますると、一農家当り千円とか千五百円というようなきわめて零細なものになる。そういうものに対しても連帯保証で貸付するなんということが果して実際農家の実情に合うのか合わぬのか。そういうことを十分に検討になったのかどうか。おそらく私はこの制度に切りかえるということは、こういう施策については農林省はもう打ち切るのだということについての同意を与えられたものという結果が生まれてくる。こう理解するのでありますが、具体的に書いたものでこうやればいいらしい。しかし今の貨幣価値と農家の感覚からいって、そういう零細な補助金額について連帯保証で借りるなんという厄介な手続をやるのかやらぬのか。そういうことを御存じかどうか。まるっきりこれは農家の心持というものを全然把握していないということになるのじゃないかと思うのですが、その辺どういうふうに理解されてこういう案が立ったのか。
  56. 谷垣專一

    説明員(谷垣專一君) 御指摘のありましたこれらの、このうちに含めました従来の補助金は、しばしばいろいろといわゆる零細補助金であるというような表現で問題になっておるものが多いことは事実でございます。大体このごろ非常に補助金を削減する、あるいはそれを廃止するという意見が非常に強いのでありますが、農林省としましてはこういう批判に対しまして、その批判をすなおに受け入れて、これをどういうふうにするかということの結果、これが出た。簡単にこれが出たというものではないのであります。と申しますのは、考えてみますと、補助金の中にやはりいろいろな性格がありまして、それがみな違っておるように考えるのであります。いわゆる零細なものでありましても、十分にいわゆる補助効率が上がる補助金もあろうかと思います。一がいになかなか言えない問題があろうと思います。ただ従来ありましたように補助制度がなくなりまして、補助金というやり方からすぐに従来の政策金融と申しますか、あるいは系統の金融と申しますか、農林漁業金融公庫のような金融制度、あるいは中には利子補給をいたしまするようなやり方、そういう補助金を多く出しまするやり方と、政策的な金融、あるいはまた系統金融というような間に、何かもう一つ何かの形が考えられてしかるべきではないか、こういうような結論を農林省といたしまして持ったのであります。で、端的に申しますと、新しい技術を導入いたしまするような場合におきましては、これは一種のリスクがあるわけです。危険があるわけでございますが、その新しい技術等がある程度普及いたしますというと、これは今申し上げるような危険度というものが薄らいで参ってくるわけでございます。そこですぐに補助を打ち切ってしまう段階に持って行くのが妥当なのか、あるいは野放しの系統金融等のやり方のところへすぐにつないで行くのがいいのかというようなことを考えますというと、何かその間に一つの新しい方策が出てくる必要があるんじゃないか、まあこういうような考え方からいたしまして、当初のいわゆる新しい技術等を導入いたしまして、その危険度があるような場合には、これははっきりした補助金という考え方で行くか、ある程度普及度が伸びました場合においては、それをすぐに通常の金融に持って行かずに無利子のいわゆる貸付金制度のごときものに吸収して行ってやって行くことが、その奨励をいたしました新しい技術が普及いたすにおきましても、また個々の農民がある程度の自律的な判断によりまして伸ばして行くというような観点からいたしましても、妥当なのではないかと、まあこういうような結論をもちまして、この改良基金制度というやり方をとったわけでございます。従いましてこれによりまして、いわゆる新しい技術を導入いたしまするような場合におけるようなもの、それがよしんば零細なものでありましても、そういう補助金をなくするという考え方ではないのです、それがある程度地につきまして、なれてきた場合において、こういう無利子貸付というやり方をとった。まあこれは単に改良基金は無利子貸付ばかりではございませんので、あとで施設に関しまする利子補給あるいは債務保証等も基金制度の中にとってございますが、とにかくそういう考え方に立っておりますので、今御指摘になりましたような保温折衷苗しろ等のごときものもまずまず農民各位は一応なれて、こういうことにも適応して行けるというふうに考えまして、この中に加えた。こういうことでございます。
  57. 江田三郎

    委員長江田三郎君) ちょっと今のに関連して聞いておきますが、そうしますと、たとえば鹿児島等のボラ地帯土地改良等は、これはもう補助金からははずして改良基金の方へ入れ込む、こういう考え方ですか。
  58. 谷垣專一

    説明員(谷垣專一君) アカホヤの中に入っておりますのでこれに入れ込む……。
  59. 江田三郎

    委員長江田三郎君) これに入れるということは、補助金からはずすということですか。
  60. 谷垣專一

    説明員(谷垣專一君) アカホや改良というようなものはこれに入れまして、無利子の奨励資金の貸付でやって行こう、こういうことでございます。
  61. 森八三一

    ○森八三一君 ただいまの官房長の説明は、今までしばしば財務当局とわれわれは議論をしてきたことの過程において財務当局の主張されたことをそのまま農林省も受け継いでおっしゃっているということになると思います。  そこで時間がございませんので、この基金制度の基金の総額は、今までの補助金総額と同様の予知があるのかないのか、それがありますればこの制度を審議するときにもとに戻せばちっとも問題にならないので、予算額はどうなりますか、要求額は。
  62. 谷垣專一

    説明員(谷垣專一君) これは従来の予算額よりも実は多いのであります。と申しますのは、大ざっぱに申しまして、これは従来補助金を受けますのは、八億程度の補助金に相なるかと思います。このたびはこれで国庫の支出は、十六億程度の国庫の方の支出があることにいたしております。と申しますのは、今度の基金は国で三分の二を出すことにいたしております。そういう点が今の補助率等の関係もございまして変っておる点が一つと、それから従来補助金等に何にもなかったようなもの、新しいものをこれで考えている点が一つということになります。ただこれは基金でございますのでその間に回転いしたます、漸次下って参りますけれども、大体五年くらいいたしますれば利子補給金は別といたしまして、償還がありますので、自然にころがって行くような仕組みになっておりますから、当初の国庫の支出金は今申しましたように従来の補助金よりも多い形になって初年度は出て行く、こういうことになります。
  63. 森八三一

    ○森八三一君 二十一億円の三分の二で十四億円でございますが、十四億円は今度の基金制度の農林省のお考えになっている農薬や保温折衷苗しろ、いろいろなものを含めた従来の総額よりも少いのじゃないですか、十四億では。それは多いということになるのですか。というのは、今委員長のおっしゃったような補助金までとっておることですし、十四億という国庫支出では従来よりも減ってきておるというように私は考えておりますが、多いというのはどういうことによるのですか。
  64. 昌谷孝

    説明員昌谷孝君) 私から補足的に申し上げますと、基金の貸付金勘定に入れて考えております種目は、従来の保温折衷苗しろ、西南地方それから酸性土壌の改良、アカホヤの改良、通し苗しろ解消、秋落水田、そういったような一連の土地改良事業とそれから従来なかなか補助金のつきにくかったイモゴの改良でありますとか土層改良、そういう種類のものであります。御指摘の農薬等につきましてはこの基金で取り扱うようなことを考えておりません。それで金額といたしましては無利子貸付金が、そういう種目につきましての無利子貸付金の国庫支出額が十二億五千七百万円となっております。そのほかに施設につきましての貸付金勘定が債務保証制度でございますので、それに見合います利子の補給額が三値六千四百万円、それを合せまして国の支出が所要資金総額の三分の二と押えまして十六億八千五百万円、これをそれぞれの種目につきまして、貸付金をかりに従来の補助金の行き方で、これだけの事業分量をやったと仮定いたしますと、それに要します国庫支出金額は十四億五千六百万円見当になります。従いまして補助金でやっております場合よりも、補助率の関係で初年度の国庫支出が約二億ほどふえて参るわけでございます。そういう関係でございますが、ただこれを三十年度補助金の成立いたしましたもの、今度私どもが基金でやろうと思っておりますものの中で、補助金の成立いたしましたものを拾いますと、その額は正確に申しますと七億一千九百万円、そういう関係になっております。
  65. 森八三一

    ○森八三一君 くどいようですが、そうすると要綱の第六にある「差し当り保温折衷前代事業、耕土培養事業、西南地方水稲早植栽培事業、菜種共同育苗圃設置事業、特殊土壌改良事業、通し苗代解消事業、土層改良事業、桑園改良事業、防災桑園及び茶園事業とする。」、この具体的に例示されておるものについて、昭和三十年度予算に盛り込まれておる補助金額と要綱第四に言われておる基金の資金第一年度二十一億で三分の二でありまするから、国庫は二、七の十四億、対比いたしますると十四億の方が多いというように理解していいか、いかぬか、結論はどうですか。
  66. 谷垣專一

    説明員(谷垣專一君) いいのです。
  67. 三橋八次郎

    ○三橋八次郎君 農業改良基金のことでございますが、今までの補助金というものは、私は全面的にはよろしいとは申しませんけれども、ことにこの農業方面の補助金というものは、多分に奨励の意味を含んでおったのでございます。今度ここに掲げられておりますことは、大がい皆技術と関係のあることばかりがその対象になるようになっておりますが、そうなってきますると、おそらくこれは金を借りぬし、農業の改良も行われないという、こういう事態が生じてくるのではなかろうかと思われます。補助金が、奨励金があるからやってみようというようなことでまあ金がよけいかかります、補助金よりもよけいかかりますけれどもも農業改良というものをやってきたのでございますけれども、金を借りてまでやるというようなことになりますると、一年かかってできるものが五年も六年もかかるというようなことになって、かえってこういうような制度は農業改良というものに対しましてブレーキをかけるという結果になるのではなかろうかと思います。これまでいろいろやってきました私の体験を通しましても、かりにいい品種ができましても、この品種を作れば確かに反当一俵の差はあるということは試験場の成績で明らかでございますが、それを持っていきましても、なかなかこれは普及いたしません。交配をいたしましても県下三分の一に普及するまで大体十五年かかります。それも種はただでやる、しかもこの品種を作る者は反当幾ら幾らの奨励金を出す、こういうようなことをしましても、なお交配後十五年かかって、予定した三分の二より広がらぬというような実情があるのでございます。おそらく保温折衷苗しろにいたしましても、補助金をもらって実施すれば、これは採算がとれるかもしれませんけれども、金を借りてやったり、自分の金を出したりしてやるのでは、保温折衷苗しろにかけました資材、保温折衷苗しろをやるための労力、こういうものを考えますと、おそらく収量が上ってもやらぬ方が得である、こういうような実態が起りまして、先ほど申し上げましたように、農業改良というものにかえってブレーキがかかってくるのではなかろうか、こういうような点が一つ。  もう一つは、これが今までのように補助金を出して土地改良事業ができるかどうかということでございます。金でも借りてやろうという意欲のある所はそれはやるでしょうけれども、まあ借りるならば見合せておけという所になってきますと、せっかくその地帯でそういう事業が適しておるにもかかわらず、そこは金を借りるのがいやさに、その事業が進まないという、こういうような事態が起ってくると思うのです。そうなってきますと、いろいろな場面を考慮いたしました場合におきましては、やはり従来の補助金あるいは奨励金というものを、もっと吟味をして、農家のために出すような、吟味をして出すということはもちろん必要でございます。そういうふうにしまして、日本全体の農業方面の収量を高めて行く、こういうふうにした方がむしろ金を借りたい者、おそらく金を借りるとしても、だれでもかれでも、貧乏な組合なんかは金を借してくれるというわけにいかぬでしょう。ところが金のないところほど奨励金、補助金にたよって改良しなければならぬという実情があります。特殊土壌地帯におきましても、私鹿児島県には何べんも行って見ておりますけれども、ああいうような所の農家は、家を見たらすぐわかると思うのです。いかに農業生産力が低いかということがすぐわかります。ああいう所は補助とか奨励金によって伸展するのですが、借金してまでこの土地を改良して生産を高めるという意欲は、おそらく起らないと思います。そうなってきますと、あの地帯の農家の経営というものは永久に放置しなければならぬということが当然起ってくると思うのです。そういう意味におきましても、基金制度というものは、そういうような方面にいろいろ農業改良というものに対してブレーキがかかるということがないかどうか、こういうことを一つ御説明願いたいと思います。
  68. 谷垣專一

    説明員(谷垣專一君) 今の御指摘のことは、実は私たちこれを議論いたします際に、一番実はいろいろ意見を戦わした点でございます。一つには現在考えております基金には、新しい技術を奨励する、そしてその刺激として補助金をやるんだ、こういう考え方は否定をいたしておりません。そういうことは、やはり現在の農民の受け入れる受け入れ方からいたしましても必要だという考え方でございます。ただここでは問題が分れるわけでございますが、それがある程度行われまして数年たち、そしてそれぞれの所で実際に農民がやって行く形になっていった場合において、そういうものを基金に入れて行くという考え方でございます。農林省といたしましてはそういう考え方を持っておるわけでございます。もちろんその際に補助金があればやる、この基金の貸付ではやらないと、こういうような気持が農民にやはりまだ残っておるということも、これはある程度事実だと思いますが、そこの問題はやはり一種の農民に対しまする指導あるいは啓発と申しまするか、そういうような部面におきましての指導が非常に重要になるのではないか、で、この基金制度そのものを運用いたします場合に、従いまして末端において動いて行きますところの受け入れ組織、またそれをいろいろと協力して啓発をいたしまするような組織が非常に重要なのではないかと思います。従いまして農業改良普及員の制度というものを十分に活用いたしまして、そういう方面からも今言いましたような切りかえをいたし、あるいはこの貸付金で動いて行くような仕組みを従来以上にやって行かなければならぬ、かように考えておりまして、これとうらはらになりますが、改良普及員等の増員を要求しているということになっております。またこれは個人々々の場合でもそうでございますが、借り受け地帯といたしましての農地改良組合でありますとか、その他のいわゆる農業者の協同組織というようなもの、これらの組織も十分に育成して行くような措置を同時にとりまして、今御指摘になりましたような点を危険なくこの基金の方に、貸付金制度という方向に向わして行きたい、こういうふうな考え方でやっておるというわけであります。
  69. 江田三郎

    委員長江田三郎君) ちょっと、いろいろ御質問があると思いますが、どうせきょうはこれは徹底しませんから、今度の臨時国会の召集される前に、休会中の委員会の一応整理をするために、どうせ委員会を開かなければなりませんから、そのときに予算の問題だけをもう一ぺんやりかえるということで、きょうは官房長も予算課長もそろそろ浮き足立っているようですから……。
  70. 佐多忠隆

    佐多忠隆君 ちょっとおやめになる前に簡単に一言、先ほど御説明があったかと思いますが、天災による特別措置法の中には、鹿児島県の関係あたりで桜島爆発による災害が非常に多いのですが、これは含まれるのかどうか、その点を一つ御説明願いたいと思います。  それから第二点は……。
  71. 江田三郎

    委員長江田三郎君) その災害の問題は午後やることになっております。
  72. 佐多忠隆

    佐多忠隆君 きょう継続してやりますか……。それじゃそれでけっこうです。
  73. 江田三郎

    委員長江田三郎君) 災害は別にやります。  それじゃしばらく休憩いたしまして、午後は二時から再開いたします。    午後一時五分休憩      —————・—————    午後二時二十一分開会
  74. 江田三郎

    委員長江田三郎君) ただいまから委員会を再開いたします。  最初に業務用つけもの原料塩価格の件を議題といたします。この件につきまして森委員から質問の御要求がありますから、この際御発言を願います。  なお政府の方は農林省の農林経済局長、日本専売公社の方は塩脳部長が見えております。
  75. 森八三一

    ○森八三一君 ただいま議題となりましたつけもの用塩に関連いたしまして、まず最初に基本的な専売公社の配給の実態についてお伺いをいたしたいと思います。先日委員長を通じて資料の提出を要求いたしましたその前半の昭和二十九年度の輸入先別数量と金額単価については資料をちょうだいいたしましたが、配給の関係で、配給先別数量金額というものの提示がありませんので、その点につきまして御説明をいただきたいと思います。
  76. 三井武夫

    説明員(三井武夫君) お尋ねの塩の配給状況につきまして御説明いたします。昭和二十九年度の実績につきまして申し上げることにいたしたいと思います。お手元にお配りいたしましたように、昭和二十九年度の食料塩だけについて申しますれば、食料塩の消費総額は九十三万四千九百八十トンということに相成っております。この中でそこにございますように一般の家庭に配給いたしましたものが四十八万七千二百六十五トン、それから業務用といたしまして各業者に配給いたしましたものが四十四万七千七百十五トンでございます。家庭用の四十八万七千二百六十五トンの内訳を申し上げますと、食卓塩として、食卓塩の形で配給いたしましたものの数量が九百九十四トン、それから精製塩として配給いたしましたものが二千四百二十三トン、これはごくわずかでございますが、大部分は白塩でございまして、白塩が四十七万三千百五十五トン、それから粉砕塩が一部使われておりまして、これが八千八百五十八トン、それから原塩として配給いたしましたものが一千八百三十五トン、合計いたしまして四十八万七千二百六十五トンに相なるわけでございます。  それから業務用の四十四万七千七百十五トンの内訳を申しますると、食卓塩、これはごくわずかでございまして三トン、それから精製塩の使われましたものが三千四トン、それから白塩として配給いたしましたものが八万二千三百三十七トン、大きいのは粉砕塩、これが十六万二千九百九トンでございまして、それから原塩が十九万九千二百十九トン、それからそのほかに雑塩といたしまして、これは等外の悪い塩等でございまするが、これが二百四十三トン、合計いたしまして四十四万七千七百十五トンということに相なっております。
  77. 森八三一

    ○森八三一君 私の質問しておりますのは、食料用塩という特別のものを指して要求したのじゃなく、専売公社の配給せられた全量のうち、食用塩もあり工業用のものもあればいろいろあるので、そういうような大ワクの大別についての要求をしているので、その説明を願いたいと思います。
  78. 三井武夫

    説明員(三井武夫君) ただいま御説明いたしましたが、いわゆる一般用塩でございます。そのほかに工業用といたしまして配給いたしております毛のが二十九年度の実績で申しますると、合計いたしまして百三十六万一千八百五十八トン、その最も大きいのは申すまでもなくソーダ工業用塩でございまして、これが百三十三万八百五十トンでございます。そのほかに雑工業といたしまして約三万トンほどのものがございます。合計いたしまして百三十六万一千八百五十八トンになります。化成品、火薬、無機薬品、それから皮革用、繊維用、油脂製品その他となっております。一番大きいのは化成品、これが一万九千六十七トンでございます。そのほかは二、三千トン台のもの、これを合計いたしまして三万六千トンほどになります。一般用塩とそれから工業用塩と合計いたしますと、総額は二百二十九万六千八百三十八トンに相なります。なお工業用塩の塩種別の内訳を申しますると、申すまでもなく原塩が大部分でございまして、これが百三十五万五千六百三十一トンになっております。そのほかに粉砕塩の使われましたものが四千七百三十八トン、それから白塩の使われましたものが千四百六十三トン、それから精製塩を、ごくわずか二十六トン使っております。そういうような状況になっております。
  79. 森八三一

    ○森八三一君 政府から出るときの各用途別の配給価格、それはもちろん今お話の精製塩、原塩、白塩といろいろ種類の違うに従って価格も違うと思いますが、その価格の内容を承りたいと思います。
  80. 三井武夫

    説明員(三井武夫君) 塩の売渡価格につきましては告示で定めてございます通り、まず固形塩について申しますると、公社の売り渡し価格は十三万円、それから固形塩の砕塩は四万円、それから食卓塩は一トン当りにいたしますと二十二万五千円、これは百グラム入りのびんの場合でございます。五百グラム入りのびんの場合でございますと十一万五千円、それから精製塩は一キログラムのビニール袋入りの場合で一トンが四万円、それから二十五キログラムの紙袋入りの場合で二万九千円、これはいずれも特殊のものであります。普通の塩種で申しますると、上質塩、これが一トン一万四千五百円、それから白塩は上質塩よりも千円安くなっておりまして、これが一万三千五百円、それから粉砕塩は一等塩と二等塩とがございまして、一万三千五百円、これが一等塩、それから二等塩が五百円差の一万三千円、それから原塩は一等塩が一万三千円、二等塩が一万二千五百円、三等塩が一万二千円ということになっております。このほかにソーダ工業用に使われまする塩につきましては全然価格を別計算にいたしておりまして、これが現在は一トン当り三千六百円、それから水産物の塩蔵用に使われまする塩につきましては一たんただいま申し上げましたような価格で売り渡しまして、そのうちで水産用に使われました数量につきましては二千円だけ交付金の形で戻しております。それからソーダ工業以外の特殊の工業用に使われまする塩につきましては五千五百円だけ交付金の形で戻しております。
  81. 森八三一

    ○森八三一君 そこでお伺いいたしたいのですが、ただいまの御説明によってソーダ工業用に対しましては特殊の措置として三千六百円で売り渡しが行われておる。化学製品製造用についてはお示しの価格で配給して、別途に交付金として五千五百円を差し引いてある。結論としては九千円程度になると思います。漁獲物塩蔵用としては二千円引きますから結論としては一万二千五百円という金額になると思いますが、そういうような措置が講ぜられておりますことは、どういう趣旨でそうなっておるのかという点について御説明を願いたいと思います。
  82. 三井武夫

    説明員(三井武夫君) まずソーダ工業用塩でございまするが、これは御承知のようにわが国のソーダ工業を育成いたしまして外国のソーダ工業に競争させるようなレベルまで発達させるという長い政策がとられて参ってきておるのでございまして、今日もその政策を続けておるわけでございます。その意味から申しまして、御承知のようにわが国のソーダ工業の置かれておりまする客観的地位と申しまするものは、申すまでもなく欧米の同種の工業に比べまして非常に不利な状況に置かれておるわけです。この点を何とか除去いたしまして、少しでも外国のソーダ工業と競争できるような地位に置くために、ソーダ工業に使われまする塩につきましては、一般用のその他の塩と全然別計算にいたしまして、ソーダ工業に使われまする塩はもちろん先ほども申しましたように全部外国から輸入いたしました原塩でございまするので、このソーダ工業用の輸入原塩だけを別計算にいたしまして、輸入価格にそれに使われまするところの必要経費をプラスいたしました値段で売り渡す、そういう建前になっております。一般用の価格とは全然別になっているわけです。ただ御承知のように輸入価格は年々、また時々変って参りまするので、そうしたときどきの変化によってしょっちゅうソーダ工業用塩の売り渡し価格が変るということでありますと、かえってまたソーダ工業としては採算が安定しないということで、ある程度安定させまするために、時期を区切りまして、できるだけ限られた期間は安定した値段でもって塩を売り渡すようにいたす、そのために多少ときどきの輸入原価と開きがありましても、実際に売り渡す値段がそれよりも高い場合には計算上差額が積み立てられたようなことになります。その積み立てを計算に入れまして、輸入価格の方が売り渡し価格より高くなりましても、その積み立ての限度におきましては、売り渡し価格を変更しないで均衡をとるというような操作を二、三年来やっております。従来、昨年の九月であったかと思いまするが、それまでは四千円でありましたが、四千円の値段はもちろん当時の輸入価格よりはよほど高かったのでありますが、それを昨年の九月から三千六百円に改定いたしたのであります。昨年の改定当時におきましてもまだ三千六百円では当時の輸入価格よりは相当高かったわでけなんす。それで売り渡し価格との差額が計算上積み立てられておることになっておったのでありまするが、その後輸入価格がだんだんと上って参りまして、現在では三千六百円でありまするから、十ドルという値段になっておるのでありますが、実際の最近の輸入価格は十二ドルをこえているような状況でございます。しかし従来の計算上の積み立てがございまするので、それらを計算に入れまして、現在では直接に輸入価格と配給価格とを比較いたしますると、配給価格の方が低いのでありまして、つまり公社といたしましては損をして売り渡しをするような形になっておりまするけれども、現在ではまだ過去の計算上の積み立てが残っております、それを計算に入れまして、今の配給価格を変更せずに、そのまま使っている状況でございます。しかしその積み立ての額もだんだんと少くなって参りまして、これがゼロになりまするときには、やはり売り渡し価格も変えたければならないという問題が残っているわけでございまして、最近におきましてはソーダ工業用塩の価格の改定ということがいろいろ私どもといたしましても研究の一問題になっておりまして、いつの時期にどのくらいそれを改定いたしたならば、将来のまた輸入価格の見通しというようなものから考えまして、ここしばらくまた安定した値段でもって配給できる値段として決定できるかというような点を、ただいま考えているのでございます。そういうような建前でございまして、ソーダ工業用塩につきましては全くほかの塩の値段と切り離しまして、輸入価格をそのまま計算して必要な経費をそれに加えて、その値段でもって売り渡すということになっておりまするので、ほかの一般用塩の価格に比べますると、よほど安いというような状況になっておるのであります。しかしながらもちろんこのくらいの安い値段で売り渡しましても、日本のソーダ工業が置かれておりまする条件は御承知のように欧米の同種の工業に比べまして、まだまだいろんな点で不利がございますので、ソーダ製品の輸出市場におきまして外国の製品と競争することがなかなかむずかしいというような状況に置かれているわけでございます。
  83. 森八三一

    ○森八三一君 なお、次の化学製品製造用塩の交付金の関係はどういう理由か……。
  84. 三井武夫

    説明員(三井武夫君) その他の化学製品につきましては、塩の占めまするウエイトがソーダ工業ほどは大きくはないのでありまするけれども、ややソーダ工業に近いような状況にございます。かつまたその製品は主として外国に輸出されるというような点もソーダ工業に似ておりまするので、なるべくその価格をソーダ工業用塩の価格に近づけたいというのが方針でございます。ただソーダ工業と違いまして、その他の特殊な工業は、それぞれ規模が小さいわけでございまして、従って消費の数量等もソーダ工業のように大量ではないわけでございます。公社から配給いたしまするルートも、ソーダ工業につきましては公社から直接にソーダ会社に売り渡すという方式をとっておりまするが、それ以外の工業用塩につきましては、元売り業者を通じて配給するというような違いが出ております。従って一たん元売り業者から普通の価格で売り渡すのでありまするけれども、実際にそれらが使われる塩の種類に応じまして原価計算をいたしまして、その価格によって差額を交付金の形で割り戻すという形にしております。昨年の価格改定のときに、従来五千円の交付金でありましたのを五百円引き上げまして五千五百円にいたしました。これでソーダ工業とのバランスをできるだけとるということになっておるのでございます。なおソーダ工業との間によほど開きがありまするのは、使われまする塩の種類が多少違っておりますのと、それから配給のルートが違っておりまするための差異でございます。それらの工業方面は、現在の五千五百円の交付金でも、まだソーダ工業用塩とはよほど違います。この交付金の額をふやしてもらいたい、また交付金を適用する範囲を非常に拡張してもらいたいという要求は常々あるのでありますけれども、現状はまだそれの要求に応じられる実は情勢でございませんので、ただいまのところは五千五百円の交付金ということに相なっておるのでございます。
  85. 森八三一

    ○森八三一君 その次に水産物の塩蔵用の……。
  86. 三井武夫

    説明員(三井武夫君) 水産物の塩蔵用に使われまする塩につきましては、使われまする塩はこれは原塩と粉砕塩と一部白塩も使われておりまするが、やはりソーダ工業用塩以外の工業塩と同じように大口のものは元売り業者から直接に水産物の加工業者に売り渡します。小口のものは小売店を通ずる場合もあるのであります。この使われまする塩のやはり内容に応じまして計算をいたしまして、その差額を割り戻すということで、現在この計算をいたしますると、大体二千円ほどの割り戻しができることになりますので、交付金を二千円と定めまして、それだけをお返しするわけでございます。水産用と、水産物の塩蔵用と特殊の工業塩につきましては、特に専売法の中に規定がございまして、この規定に基きまして交付金を出しておるのでございます。専売法の規定は値段を別にきめてもよろしいし、それからあとで交付金の形で戻すことにしてもよろしい、両方の方法ができることになっておりますので、現在は、公社は交付金の形で価格の調整をいたすことになっております。
  87. 森八三一

    ○森八三一君 ソーダ工業を除く他の化学工業用の塩につきましては、お話を承りますと、輸出貿易との関連において競争、という言葉は適当でないかもしれませんが、その振興のために適当な措置を講ずる必要があるということで、五千五百円の値引きが行われているという御説明であります。水産用の、塩蔵用の塩につきましては、今そういう趣旨の御説明はなかったのであります。私の承知をしているところでは、せっかく漁獲をいたしました貴重な食糧が、塩蔵を怠るために腐敗をするとかいうようになるということを防ぐという意味と、それからおおむねこういうような塩蔵物は高級なものではなくて、大衆の食糧に供される。そのために大衆の生活を守って行くというような意味も含めて、こういうような措置が講ぜられると思うのであります。その当時のいきさつはまさにそうであったと思うのであります。そこでそういうようなことが専売公社と申しますか政府の方針であり、態度であるといたしますれば、同様に蔬菜類の貯蔵につきましても、さらにその塩蔵蔬菜というものがほとんど大衆の食用として供せられるという趣旨から行きましても、その取扱いを二様にしておるということは、同じ公社のもとにおいて、趣旨が一貫をしておらぬ。態度が二様になっておる。その二様になっておる態度はわれわれの理解し得ないところでありますが、どういうわけでそういう二様の扱いをされておるのかという点についてお伺いをいたしたい。それからソーダ工業用その他について、お話の通り輸出貿易に関連のあるものであるということに言い切ってよろしいのであるかどうかという点を御説明願いたいと思います。
  88. 三井武夫

    説明員(三井武夫君) 特殊工業用の塩の問題を先に申し上げますが、現在交付金の適用されておりまする品目は、大部分が輸出になっておりますものでありますが、全部とは言いかねるのであります。しかし法律を作りまして、特殊工業用の塩につきましては交付金を設けて援助しようという趣旨の根本は、やはりソーダ工業用の場合と同じように、主として輸出を対象とする工業でありまして、これらの特殊の工業を保護するために、その原料塩をできるだけ安く供給する、こういうことで、塩専売法の二十九条に、特殊工業用の塩の割引きということがきめられたというふうに私ども承知をいたしております。  それからつけもの用の塩と、それから水産物の塩蔵用の塩とは、ともに大衆の食品に関係があるので、区別する理由がないのではないかという御議論に対しましては、まことにその通りでございまして、この法律を作りました当時も特に水産物の塩蔵用だけを法律の二十九条で優遇するということにつきましては、国会におきましても非常に御議論があったように承わっております。しかし結局塩蔵用の塩だけについて規定が設けられたということであったのでありますが、この法律ができました二十四年当時におきましては、大衆の蛋白補給源として魚類をできるだけ安い値段で配給する必要があるので、そういう点から塩蔵用の魚類を特に優遇しなければならないという御議論に基いて、この規定が国会の御賛成を得たというように承知しておるのでございます。  その当時の状況と、今日の状況とを比べますると、だいぶ違っておるのでございまして、従ってこの二十九条によりますと、塩蔵用の塩の価格を特に優遇しなければならなかったという事情も今日では多少違って参っているのではないかと私どもも考えておるのでありまして、その後におきましてつけもの用の塩だけではございませんので、しょうゆ用の塩につきましても、あるいはみそ用の塩につきましても、それから工業用の塩につきましても、この二十九条の規定を拡張して、交付金の制度を設けるべし、あるいは特別の安い値段をもって塩の配絡をしてもらいたいという御陳情がしばしば繰り返されておるのでございます。私どもといたしましてもなるほど、ただいま申しまするように、法律によって塩蔵用の塩だけは特別な扱いがなされておるのでありまするけれども、大衆生活というような観点から申しますれば、塩蔵用の魚類も、あるいはつけもの、あるいはみそ、しょうゆというようなものも、ひとしく大衆の生活に非常な関係があるのでありまして、これらの塩をできるだけ安い値段で配給することができれば、それだけ大衆の生活がうるおうのだからという点は、まことに御議論ごもっともと思うのであります。ただ塩の会計の建前というものが、御承知のように、公益専売の建前でございまして、収益を全然目的にしない。つまり収支とんとんということが理想でございまして、毎年の予算におきましても、原案としては必ず収支とんとんということを大蔵省からも要請されまするし、また公社としても収支をとんとんにするということを建前にして予算を編成しておるような状況でございまして、一つの塩の値下げをいたしますと、特に塩のコストが下らない限り、どこかで高く塩を売りませんと、塩の会計のバランスがとれないというように、まことに窮屈な会計の状況でございまするので、これらの御要望まことにごもっともだとは思うのでありまするけれども、なかなか塩の会計の現状からしてすぐに御要望通りに応じかねるというような状況になっております。もちろん塩のコストをできるだけ下げまして、塩の配給値段を安くしなきゃならないということにつきましては、われわれといたしましても大いに努力いたしておるのでございます。われわれの今日特に努力いたしておりまするのは、塩全般の値段をできるだけ下げるようにしたい。昨年小売価格におきまして九月から一円の引き下げをしたのでございまするが、小売価格においてわずか一円の引き下げでもいいから、たびたび今後も価格引き下げをやって、できるだけ大衆に安い塩を供給するように努力しなければならない。塩全体の値段の引き下げということに特に主眼をおいて努力したいというような考えでおるわけでございまして、その点から申しますると、個々の塩につきまして割引きをいたしますると、その償いを、どちらかの塩でもって高くしなければならないという点が出て参りますので、なかなかそういうような操作ができかねるというような状況になっておるのでございます。
  89. 森八三一

    ○森八三一君 そういう御趣旨だとすれば、この塩蔵用なり、その他に特別の交付金制度を設けられるそのときに、その他の一般用塩はそれだけ値上げをなすったというように理解していいのかどうか。あなたの今の御説によると、特別の措置を講ずると、それだけは他の方へしわ寄せが行くんだ、だからやりかねる、こういう御説明でございましたが、塩蔵用のものを特別に割引いたというとき、あるいは一般工業用に割引いたときには、そういうしわ寄せが一般の工業塩、食用塩、その他に及んでおったというふうに理解していいのですか。おそらくそういうことはなかったと承知しているのですが。
  90. 三井武夫

    説明員(三井武夫君) 塩の値段につきましては、私も古いことにつきましては詳しくないのでありまするが、前には非常にいろいろな、特殊の価格があったのでありまするが、この塩専売法ができましたときに、それを一般用塩の価格としては統一いたしまして、そうして二十九条で特別に一般用塩の中では、塩蔵用の塩の値段と、それから特殊工業用の塩の値段とを別扱いをするということに統一したと聞いているわけです。もちろん終戦からこの塩専売法ができますまでの間には、非常に塩の配給の窮屈であった時期でありまするので、あまり価格の面でのいろいろの種類というものはなかったようでありまするが、この塩専売法ができましたときに、この塩蔵用と、それから特殊工業用とは特別の値段ということを前提にして、塩の値段というものがきめられるような建前が確立されたように聞いております。
  91. 森八三一

    ○森八三一君 今私の聞いているのは、塩専売法ができるときに、特別の交付金の制度を設けたということによって、そのしわ寄せがその他の一般用塩に及んだという計算がなされていると理解していいのかどうかということなんです。
  92. 三井武夫

    説明員(三井武夫君) 当時しばしば塩の価格の引き下げがございましたので、その引き下げのときを利用して、ただいま申しましたような例外をうまく調節いたしたのでありまして、特に二十九条の例外を設けるために、ほかの塩の値段を高くしたということはなかったわけです。
  93. 森八三一

    ○森八三一君 おそらく僕はそういうようなことで、今お話のように塩専売法に基く収支は、プラス・マイナス、ゼロというようなことで、これは一応組み立てられておりましても、相当膨大な数量の取扱いをするわけでありますので、趣旨に賛成であるということであれば、趣旨に同意だということであれば、そういうものについて措置を講ずる余地がないということはないんじゃないか。今日の専売局から、元売り、小売りというルートを通じて配給せられているその実態についても、研究をいたしますれば、なをかつ合理化される部面というものは相当にあると思うのです。元売りの面における運賃プールの問題にいたしましても、かなり、相当のこれは抜け穴があると、これは公社でも十分御承知と思います。そういう点を合理化することによって、大衆の直接生活に密着している部分については、でき得る限りそれを低下して行くことが必要であるという点について、同感であれば、十分の措置がとられ得ると私は思うのでありますが、そういう御研究をなすったことはございませんか。
  94. 三井武夫

    説明員(三井武夫君) 当面私どもが今悩まされておりまするのは、昭和三十年度におきましては、先ほど来申しましたような輸入塩の価格の非常な騰貴がございました。予算の単価よりはよほど高くなっておりまするので、ただいまの予想では、塩の会計といたしましては、五億円ないし六億円くらいの赤字を予想されるような状況になっております。この赤字をどういうふうにするかということにつきまして、いろいろと頭を悩ましているような状況でございまして、こういうような状況に直面いたしておりまするので、お説のような大衆生活に密着した塩の値段をできるだけ安くするということにつきましては、いろいろと検討はいたしているのでありまするけれども、当面の問題といたしましては、なかなかそういうような余裕が出て参らないのであります。従って現在のところ、この二十九条の改正をいたしまして特別の価格を拡張するという考えは公社としては持っておりません。ただ先ほども申しましたように、塩の値段をできるだけ安くしなければならぬ、お話の中にありましたように、この配給等に要しまする経費等につきましても、できるだけの節約、能率化を遂げまして、塩の配給価格というものを少しでも安くしなければならないことは、これはもう申すまでもないことでございまして、公社といたしましても常にその点の研究はいたしておるのでございます。ただその場合に、先ほどもちょっと申しましたように、特殊の値段を割り引きする、数をふやして行くのがいいか、あるいはそういうような例外的な方法でなしに、全体の塩の価格をできるだけ安くして行くようにする方がいいのか、この問題につきましては、なかなか公社といたしましても慎重な検討を要する点だと思うのでありまして、現在の公社の考え方といたしましては、むしろ塩全体の価格を少しでも引き下げるように持って行きたいということを主に考えておるわけでございます。
  95. 森八三一

    ○森八三一君 今のお話の趣旨もわからぬわけではありませんが、すなわち全体の塩の配給価格を低下せしめて行くということ、これは最も必要なことはよくわかりますが、特に本年のような非常に天候に恵まれた年には、生産者の努力以上に各種の生鮮観葉類が増産をされておるということは、これはもう現実の問題なんです。そこでそういう事態に直面をしたときには、これをやはり大衆の食品として十分に利用するという姿に置くことが、国の全体の利益からいっても大切だと思います。そういうような臨機の場合における処置について特別な操作を考えるということも、これまた一つ政治としては大切な面であろうと思うわけであります。そういう点について何かお考えになりませんかどうか。それは専売法の規定を曲げるわけにもいかぬので、いかんとも仕方がありませんという程度のことなのか、そういう具体的な生きた事実にぶつかったときには臨機の処置が講ぜられるというようなことを考えるというような御親切がないかどうか、お伺いしたいと思います。
  96. 三井武夫

    説明員(三井武夫君) 年々の特殊の情勢に従ってそれぞれ臨機の処置を考える必要があるというお説は、まことにごもっともでございます。ただ塩の会計といたしましては、もちろん法律に制限されておるわけでありまするし、また本年のように天候がよろしいので塩の生産が非常に上って参りまして、食料用塩としては、それだけ輸入を減らしても内地塩でまかなえるというような状況になりますると、これは実にまことにおかしなことでありまするけれども、御承知のように内地の塩の価格の方が輸入塩よりは非常な高い価格で収納いたしておるような現状でありますると、内地の塩の生産がふえるに従って、実は塩の会計としては苦しくなって参るのでありまして、従って臨機の処置を講じて塩の価格を下げるというような実は操作がむずかしいのでありまして、私どもといたしましては、むしろ先ほど申しましたような、今年度の塩会計の赤字をいかにして整理するかという大きな問題に今直面しておる状況でございます。専売公社の今年度の状況は、私の所管ではございませんけれども、御承知のように、たばこの売り上げの方も思わしくないのでありまして、予算で予定されておりまするような専売益金を果して確保できるかどうかということに日夜苦慮をいたしておるのであります。その上に持ってきて塩の会計にも赤字が生ずるということで、まことに公社といたしましては、余裕のないような状況で本年に立ち至っておりますので、お話がありましたような臨機の処置と申しましても、実際問題といたしましてなかなか自由がきかないというような状況になっておりまする点を御了承願いたいと思います。
  97. 森八三一

    ○森八三一君 公社の経理の状況につきましては、私も大体聞いておりまするので、よく承知はいたしておりまするが、大体今までの質疑を通じまして、その趣旨は十分了解されるところであって、そういう点については好ましいようなふうの御答弁があったわけでありまして、公社の経理と関連いたすことではありまするが、特に腐敗性を持っておる蔬菜類の貯蔵による大衆食品の確保という点から、つけもの用の特殊な塩につきまして格別の御研究を願いまして、同感の意を表せられておる趣旨に合いまするように御配慮を願うということを要望いたしまして、私の質問を打ち切ります。
  98. 飯島連次郎

    飯島連次郎君 今の塩脳部長のおっしゃった専売法の二十九条を改正する意図はないと言いましたね。これはほんとうに改正する意図はないのですか。
  99. 三井武夫

    説明員(三井武夫君) ただいまのところ、公社といたしましては、二十九条を改正いたしましてこの特別価格の範囲を拡張する考えは持っておりません。
  100. 飯島連次郎

    飯島連次郎君 それは本会計年度中にやる意図がないという意味ですか。それとも来会計年度になればやる意図があるというのですか。
  101. 三井武夫

    説明員(三井武夫君) ただいまのところ、来年度につきましても、ただいまの海運状況、船賃の見通し等から申しますると、一そう輸入の価格が上ってくるという予想の方が強いのでありまして、従って塩の会計といたしましては、来年度は今年度以上に苦しくなるのではないかという覚悟をいたしておるような状況でございます。従って塩の価格を特別の価格を設けるという、範囲を広げるということは、実際上もなかなか余裕が出て参らないのじゃないかという予想でございますので、ただいまのところ、二十九条を改正するという意思は公社としては持っておりません。
  102. 江田三郎

    委員長江田三郎君) じゃ、この問題よろしいですか……。それではこの問題はこの程度にいたします。     —————————————
  103. 江田三郎

    委員長江田三郎君) 次にタバコ耕作による養蚕被害の件を議題といたします。  この件につきまして、一昨日の委員会の前に陳情をお聞き願ったのでありますが、この問題につまきして白波瀬委員から質問の御要求がありますから、この際御発言を願います。  なお政府の方からは蚕糸局長と専売公社の生産部長が見えておられます。
  104. 白波瀬米吉

    白波瀬米吉君 私はこの際に、タバコ栽培が養蚕に被害を与えておる問題に対して二、三お伺いをいたしたいのであります。  このタバコと養蚕というものは常に非常に注意をしなければならぬということは、以前からこれはよく問題になっておる問題であるのでありますために、専売公社においてもタバコ耕作と養蚕というものは両立させようとすれば、非常にそこにきびしい条件のもとにやらなければならぬということは十分御承知であろうと思うのでありますが、いわゆるタバコを新しく栽培する場合には桑園との関係をどういう条件で指導されておるのか、まずそれをお伺いいたしたいと思います。
  105. 西山祥二

    説明員(西山祥二君) 本問題につきましては、一昨日養蚕関係の代表者より詳細お話を伺ったのでありますが、従来タバコと養蚕との関係につきましては、しばしば紛糾をかもした事例があるのでございます。それだけに公社といたしましても、新規にタバコを許可いたします場合にはきわめて慎重な考慮を払っておるのであります。ことに群馬県のごとき養蚕の大産地につきましては、この見地より従来ともタバコの産地の開発には最も消極的な態度をもって参ったのであります。わずかに一部の地方に、それは専売の以前よりタバコを作られておりますような歴史的産地に限ってタバコを耕作いたして参ったのでありますが、数年前より、県当局初め地元の有力者あるいは農家の代表者より、タバコを許可してほしいという熱烈たる要望を受けて参りました。もし、われわれといたしましても養蚕との協調が円滑に進められますならば、地方産業としても歓迎せられることと考えまして、さような前提のもとに本年初めて県下の勢多郡赤城山ろくにタバコを六十五町歩耕作を許可いたしたのであります。新規にタバコを作ります場合には、もちろんその地形その他の自然条件を考慮いたしましての上のことでありますが、実際に耕作を開始するに当りましても、その技術の指導につきましては、公社の技術員の配置をいたしますのに、通例は耕作反別が約四十町歩に一人の程度の配置に過ぎないのにかかわらず、勢多郡に対しましては三名をも配置いたしまして指導の徹底をはかった次第であります。その指導に当りましては、タバコ栽培本来の技術的な指導はもとより、対養蚕関係をも十分考慮し、特に慎重な指導をはかった次第であります。しかしながら、何分相手といたしましてタバコ耕作者は多数であります。勢多郡において約七百名余の耕作者であるのでありますが、その全員に指導をいたしますので、中にはその指導が理想的に忠実に実行せられたかいなかということは、常識で考えましても完全な裏書きをすることはできないのでありますが、公社といたしましては最善の努力をいたして、それらの点についての指導に当ったわけであります。しかもタバコと養蚕との関係は技術的に種々考慮すべき事項が多いのでありまして、一がいに両者が両立しないと申すものではないのであります。現に養蚕の大産地であり、またタバコの生産においても大反別に持っております福島県、その他徳島県、各地におきましては、この両産業が並列して何らの紛糾を来たすことなく発展を遂げておるのであります。それは要するに両産業の経営が最も協調を図られて支障のないように行われておる事例と思うのであります。たまたま群馬県の勢多郡におきまして、今回のごとき紛糾を見ましたことはまことに遺憾に存しておるのであります。また代表者の方の申されるがごとき被害がありましたならば、その被害をこうむられました農家に対しましては心から御同情を申しておる次第でありますが、今年の天候が異例でありまして、元来養蚕産地におけるタバコ耕作の協調の趣旨といたしましては、両者が話し合いの上、養蚕の季節とタバコの栽培の季節とが支障の起らないようにあらかじめ考慮を払われるのが建前であります。すなわちタバコより発散する毒物によって蚕が中毒を受けますのは、主として秋蚕であります。それまでの養蚕につきましては格別の被害を認めないのが事実であるのであります。従いまして、タバコの栽培をできる限り早期に終了いたすよう、すなわち生育の時期の繰り上げに重点を置いて指導をいたしておったのでありますが、たまたま今年の天候が、御承知のごとく晴天続きのために生育が予定よりもやや遅れたということが今回の紛擾の因をなした一つと考えるのであります。また指導の項目の一つといたしましては、タバコを収穫いたしました後にも、畑にその幹がそのまま存置いたされますと、タバコの葉の二番葉が発生いたしまして、これによる有毒物質の発散を防止いたしますために、タバコを収穫いたしました後は即刻これを残幹を抜きとるように極力指導をいたしておるのであります。これらの点が養蚕関係を顧慮いたしまして、特別にタバコ耕作者に対して指導いたしております事項のおもなものであります。
  106. 白波瀬米吉

    白波瀬米吉君 生産部長の今のお話は、まあ一般的なお話しですが、徳島、福島においては何もそういうことがない、すこぶるうまくそういう被害がなしにいっておるとおっしゃっておるのでありますが、今ここに福島県の全養連の会長も見えておりますが、やはり各地において相当な被害を見ておる。しかしながら、それらはそれほど取り上げて非常に因った困ったという話は聞いておりません。京都府からもそういうことを私の方に申しておりますが、しかし今回における、群馬県における問題は、私は今、生産部長のお話になったような程度のものではなくて、これは専売公社の方もよほどお考えにならなければならぬ問題があると思う。その第一点は、私はこれは聞いたのでありますが、たくさんの人から聞いたのでありますが、指導員がタバコと養蚕はそう大して心配がないんだ。そういう被害はないからということを盛んに言うて、そうしてそれを奨励した。それを聞いた養蚕家は、それは近ごろ品種が非常に改良されて、昔のような被害はないんだなというようなことで栽培をやったということが第一点、それから群馬県の実情は、大部分が全面的に桑園であって、その合間合間にいわゆる空地となっている場所に、そこへ持ってきてタバコを全面的に栽培したというために、その被害というものは非常に大きな被害があって、日本でまあこういう大きなタバコの被害があったことは、あまり聞いたことがないほど大きな被害を与えておる。これは今、生産部長のお話のようなふうに厳重な注意をされるのであれば、桑は永年作物であるし、タバコは一年作物であるから、桑園というものも、もうほんとに被害が、風が非常に吹くとか何とかということならばともかくも、そうでなければ、この距離であれば、もう被害がないんだというところに持って行って栽培をすべきだ。だから桑園というものは永年作物であるから動かせない。そこへ持ってきて、ごく接近して、いわゆる間作のようなタバコの栽培をあえてしたということは、私は指導員をつけておられる、専売局の指導員がついて指導してそういう栽培をされるというようなことは、これは技術的な問題じゃなしに、場所の問題ですから、これは非常に私は専売局としてお考えにならなければならぬ問題でないかと実は思うのであります。さらに第三点としては、八月の十六日になって、どうも被害が相当ありそうだということで、その養蚕家は高崎の専売局の方に一ぺん調査してもらいたい。それは県と専売局と、そうして養蚕団体と、この三者が寄って、共同調査をしてもらいたいということを申し出たにもかかわらず、専売局の方がそれを拒否されたというようなことは、どうしてもこれは、私はこの地帯におけるこの問題は、これは専売局として相当どの面から考えても責任を感じられる必要があるだろうと私は思うのです。この点に対して部長はどんなようなふうにお考えになっておりますか。一昨日でありましたか、ここへもたくさんな養蚕家が来て陳情されて、またあなたの方にも行って陳情された。不幸にしてあなたがおられなかったから直接お会い願えなかった。こういう他地方におけるタバコの被害というものと、今度の群馬県における被害というものとは非常に私は趣きが違っておる。これは専売公社として、相当これに対しては責任をお感じになる必要があると考えるのですが、その点に対していかようにお考えになっておるか、承わりたいと思います。
  107. 西山祥二

    説明員(西山祥二君) ただいまお尋ねの事項でありますが、まずダバコを初めて勢多郡に入れます際に、指導の第一線にあります耕作技師が、対養蚕関係の点につきまして、きわめて安易な説明をし、従って農家の注意をおろそかにしたという御指摘であります。事実につきまして何ら地方の責任者より聞き取っておりませんので、私も断言はいたしかねるのでありますが、おそらく想像いたしますのに、耕作技師の言が、もしさように手軽に申したといたしますならば、それは養蚕とタバコの関係が原則的に両立しないものではない、やり方のいかんによっては両者はりっぱにどちらも成り立つものであるという趣旨のことを申し、説明をいたしたと思うのでありまして、これは話のしよう、聞き取り方によっての食い違いはありますが、真意はさようであろうと私は想像いたします。次に、近接地にタバコを植えたという問題であります。実はこの勢多郡にタバコを入れたいという切実なる地元からの要望がありました際にも、われわれは特に養蚕関係を顧慮いたしまして、ちゅうちょをいたしたのでありますが、その当時の説明といたしましては、今後タバコを入れたいと思うのは主として養蚕地帯よりも山がかった上の方であって、開拓者が産業がなくて困っておるので、さような人に、また地帯を異にする区域にタバコを入れるからして許可してほしいというお話であったのであります。それゆえにこちらもその希望を受け入れた次第でありますが、実際としてタバコが桑畑に近接して植えられたという事実があるようであります。しかし公社はタバコを許可いたしますのに、一々現地の畑ごとに調査の上その採否を決定いたすのではございませんので、書類審査の上でその許可を決定いたしましたために、結果においてそごを来たしたと思うのであります。それがために今回のごとき紛糾を来たしましたことはまことに遺憾でございますが、われわれといたしましては、責任のがれで申すのではありませんが、直接の責任を負うことは無理のように考えるのであります。次に、被害調査を高崎地方局に求められたのに対しまして、地方局がその意に従わなかったというお話であります。実は今回の問題は、過去の専売五十年の歴史を見ましても同様な紛糾問題はしばしばあったのでありまして、そのつどその解決は現地において両当事者間において適当に処理解決をせられて参っておりますので、高崎地方局といたしましても同様な方法によって解決を考えまして、本社に詳細の報告をいたして参っておりませんので詳しくは存じないのでありますが、地方局の真意といたしましては、養蚕の被害につきましては専門外のことでありますので、公社が直接それに参加いたしましても実効が伴わない、むしろ公正なる第三者の立場にある県当局の調査を求めるのが適当であろうと考えまして、その意に応じなかったのではないかと思うのであります。
  108. 白波瀬米吉

    白波瀬米吉君 地方から、この地方にタバコを耕作したいと言えば、それで許した、こういうことですが、あなたの方は四十町歩に一人ずつの指導員、ことにあの地方に対しては、それでは初めてのところだから指導員が足らぬということで余計に置いた、そういうお話ですが、その指導員はもう与えられた土地に、どこでもかまわぬ、とにかく申請して許可されたところには、それはどうもこの土地ではいかぬというようなことは、指導員としてはそういうことには触れないのかどうかということを承わりたい。指導員がついておって、そういう被害があるにきまっておる場所に植えるのを、それを指導員はここではいかぬとかいうような権限を与えていないのかどうかということを一つ承わりたい。その次に、十月の三十一白に、この地方からいわゆる損害賠償の書類を高崎の地方局に出した。そうしたところが、それに対して地方局の方では県当局の調査でないと受け付けられない、こういうことであったそうでありますが、それは県当局の調査であれば、それを取り上げて問題にする、あるいはそれに対してある程度の責任を負うと、こういう意味において県当局の調書を出せと、こう通知をなさったものであるか、その点を承おりたいと思います。
  109. 西山祥二

    説明員(西山祥二君) 耕作指導員がタバコの土地が適当でないと認めた場合に許可を取り消す権限があるかいなかというお尋ねでありますが、指導員は技術指導を専担いたしておりまして、耕作許可は地方局長の権限に属しておるのであります。従いまして、直接指導員が許可を取り消す等の措置を命ずることはできないのであります。また畑の立地条件が不適当であると見られましても、先ほど来申し上げましたごとく、養蚕との協調のいかんによりまして、すなわち技術的の方法によっては被害を避けることは不可能でないのでありますので、機械的に近接しておるから耕作許可を取り消すという意見を立てることはできないと考えております。次に、今回の損害に対して損害賠償を高崎地方局に求められたようでありますが、元来この種の損害に対しまして公社が補償をするという建前は許されないと考えるのであります。と申しますのは、公社自身が製造し、あるいは生産をいたしております事業によって引き起されました損害につきましては補償の責任があるのはもちろんでありますが、タバコを作りますのは個々の農家でございまして、公社はその耕作を許可し、生産物を収納するのが建前でありますので、(「大へんなものじゃないか、これは」と呼ぶ者あり)補償をするということは不可能と考えられます。また県当局の調査によりましては相当考慮の余地があるかないかというお尋ねでありますが、従来この種の紛糾につきましては、(「総裁を引っぱり出そう」「だめだ、そんなこと言っていちゃ」「ふざけちゃいけないよ」「でたらめ言うなよ」「まあまあ答だけ一応聞いてからこれは相談しよう」と呼ぶ者あり)県単位あるいは市町村単位に経営の協議機関を設けておりますので、そこにおきまして損害の補償を調停をするという仕組みになっておりますので、その際損害の基礎となりますものが、県当局の調査が適当であろうという趣旨で申したと思うのであります。
  110. 江田三郎

    委員長江田三郎君) ちょっとお諮りいたしますが、先ほど来の答弁を聞いておりますと、まさに専売暴君といいますか、言われている間にも相矛盾するような点もあるわけでして、たとえば被害調査の問題になると、専売公社は専門でないからわからないということを言われますが、しかし指導員というものを派遣しているのだということを言われて、よろしきを得れば両立するのだということも言われる。そうなると相当損害がどんなものかということがわかる人でなければ指導できぬと思うのです。そういう答弁ではなかなか問題は進展しないと思いますから、この問題につきましては日を改めまして、専売公社の総裁を当委員会に招致いたしまして、もう一ぺん審議をやり直したいと思います。さよう取り計らってよろしゅうございますか。  〔「賛成」と呼ぶ者あり〕
  111. 江田三郎

    委員長江田三郎君) そういたします。     —————————————
  112. 江田三郎

    委員長江田三郎君) それでは問題を次に移しまして、台風被害対策の件を議題にいたします。  台風被害につきまして先刻現地調査報告を行なったのでございますが、この被害対策について農林省当局から説明を伺うことにいたします。なお対策につきまして資料が配付されております。
  113. 檜垣好文

    説明員(檜垣好文君) それではお手元に資料といたしまして農林水産業風水害対策というのを配付いたしてございますが、これはただいま議題となりました台風以外に、本年の四月からの風水害対策につきましての現在までの概要を書いているのでございます。  一応その中から今回の九州並びに四国、中国地方の台風二十二号あるいは二十三号の関係を特に取り出して御説明申し上げますと、まず金融措置の中の(3)にございます経営資金及び事業資金融通でありますけれども、この点につきましては、本年の八月から十月までの間に発生いたしました暴風、豪雨及び早魃による被害につきまして、台風二十二号、二十三号等も含めまして被害農林漁業者あるいは被害農林漁業組合に対しまして、二十億円を限度といたしまして低利の経営資金及び組合につきましては事業資金融通するよう、先般国会で成立いたしました天災による被害農林漁業者等に対する資金融通に関する暫定措置法、それに基きまして必要なる政令を制定いたしまして、これが十月三十一日に公布施行になっているのでありまして、この資金ワクに基きまして、現在都道府県別の融資額の配分について関係県当局と打わ合せをいたしている次第でございます。  それから次に、特に今回の台風によりまして連年被害をこうむっているようなところにつきましては、これまた先般の国会で成立いたしました自作農維持創設資金融通法に基きまして、その資金ワクのうち四億円を特別なワクといたしまして、この台風その他によりまする被害の激甚なる農家に対しまして配分いたしますように、この府県別の配分を現在いたしておる状況でございます。  それから次に、この農林漁業金融公庫資金でございますが、たとえば今回の台風等によりまして、農家の畜舎その他の施設に相当な被害を受けておるのでありますが、それにつきましては、従来の実例にならいまして、公庫の資金から、主務大臣指定災害といたしまして融資いたしますように手続を進めておるのであります。これにつきましては、二億円のワクのうち、御承知の通り北海道その他の災害につきまして三千万円を充てておりますので、残額の一億七千万を台風二十二号等の災害に振り向けるような予定になっておる次第であります。  それから農地あるいは農業用施設その他の施設被害につきましては、現在現地におきまして災害査定官において査定をいたしておるのでありまして、先般申し上げましたように、今月の中旬までには終る予定で目下査定を急いでおる次第でありまして、これに基きまして必要なる予備費の要求をいたすことになっております。それまでのつなぎ資金といたしましては、ここに、(1)に書いてありますように、系統金融機関等から融資できますように、現在農林中金等とも折衝をいたしておる状況でございます。  それから府県市町村等の地方公共団体の行いまする災害復旧事業につきましてのつなぎ資金といたしましては、御承知の通り、先般来この農林関係のつなぎ融資は簡易生命保険並びに郵便年金積立金の資金から融資されることになっておるのでありますが、この台風等の関係で現在府県から出ておりまするものは、農地及び農業用施設につきまして、広島、鹿児島県、それから林道につきましては宮崎県、漁港施設につきましては広島県から要望が出ておるのでちりまして、農林省といたしましては、県と郵政当局との折衝につきましてのあっせんをやっておる次第であります。  予算措置につきましては、ただいま申し上げましたように、農林水産業施設災害復旧につきましては、現在査定を実施中でありますので、これが終り次第に予備費の要求を出す考えでございます。  それから農薬購入費関係でございますが、これは六月、七月の水害につきましては、すでに北海道、東北等の農家に、御承知のように一千万円の予備費支出をいたしておりますが、八月以降の北陸等のウンカの問題等も合わせまして、二十二号、二十三号台風以後の問題につきましては、県の備蓄農薬の放出等によりまして防除に努めさしておったのであります。相当防除費が多額に上っておりますので、これにつきましては大蔵省当局に対しまして予備費支出の要求をいたしておる次第であります。  それから災害地におきまする食糧増産とあるかと思いますが、これはミス・プリントでありまして、食糧対策の間違いでありますが、先般の北海道等の水害につきましては、特別法によりましてこの不足飯米等の特別価格による売り渡し、あるいは代金延納等の措置が講じられておるのであります。現在までのところ、売り渡しの実績はございません。東北、九州等の台風被害によりまして、必要なる向きにつきましては現在府県と連絡いたしながら調査中でございます。必要に応じまして代金延納等の措置によりまして不足飯米の供給確保に努めたいと考えておる次第であります。  その他といたしまして、ここにお手元に農薬の現在までの放出状況の表がございますが、それは台風その他全般の本年度におきまする災害におきましての放出の数字でございます。それから直接台風二十二号との関係でありまするが、これに関連いたしまして、新潟市におきましての大火がございましたが、これにつきましては、国有林等の復旧用材につきまして払い下げをいたしておるのでございます。その数字等はここに掲げておるような状況になっておる次第でございます。  それからこの表にはございませんが、特に今回の九州の災害等におきまして、澱粉工場等が相当な被害を受けておるのでございますが、これにつきましては公庫の資金融資をいたすべく手配をいたしておるのでございますが、現在までのところ、公庫の本所の方にはまだ要望金額は上ってきておりませんが、現地の支所あるいは農林中金等の系統機関において、よりよりこの要望数字等も検討いたしておることと存ずる次第でありまして、これは本所に上って来次第、早急に手配をいたすことになっております。  それから今回の台風被害におきまして漁船等の損害が相当多いのでありますが、その関係漁船保険の再保険金の支払いということが問題となってくると思うのであります。大体本日の調べによりますと、二十二号台風によりまして、再保険金として考えられます金額は三千百万円程度でありまして、そのうち現在までに支払済のものが四百三十万円でございまして、該当県は広島、山口、長崎、大分宮崎鹿児島、福岡、佐賀、高知、岡山というような各県になっておる次第であります。  以上概略でございますが、台風関係につきましての現在までの対策状況の御説明を終ります。
  114. 江田三郎

    委員長江田三郎君) 御質疑がございましたらどうぞ。
  115. 森八三一

    ○森八三一君 ただいま御説明中の二ページの2というところに「自作農維持創設資金融通法に基く資金天災資金法による営農資金との関連において考慮する必要があるので、」とあるこの意味は、どういう意味かということ、それからその意味を私が理解いたしておりますのは、災害によって自作農地を処分してその復旧に充てなければならない、たとえば住宅等の復旧に要する資金というようなものを指しておると思いますが、そういうように理解してよろしいのかどうか、なお四億円を特別なものとして留保しておるというのでありますが、承わるところによると、四億円中鹿児島県に二億五千万円が決定せられておるということを現地から聞かされたのでありますが、そういうように、すでに一部は配分が決定されたのかどうかということについてお伺いいたします。
  116. 和田正明

    説明員(和田正明君) お尋ねの第一点は、ただいまおっしゃいましたと同様の趣旨でございますが、単に住宅とか、農地復旧以外に過去の災害のための借金等を背負っておりまして、それの償還等にも農地を売らなければならないというようなものもございますので、そういうものを含めて考慮いたしておる、こういう趣旨でございます。なお四億円の特別ワクにつきまして、鹿児島県に二億五千万円云々のお話がございましたが、その二億五千万円というのは誤報でございまして、これは御承知のように、この融資ワク総額二十億円でございますが、そのうち十六億は農地の移動の状況でございますとか、農家の戸数でございますとか、そういうことで一般的に全国府県別に割当をいたすように考慮いたしておりまして、この四億円につきましては、現在府県の希望によりまして、鹿児島県、宮崎県、山口、北海道等につきましては、一応追加のワクを県と打ち合せをして決定いたしております。その他の府県につきましても、今後県の御要望に応じて配分をいたすというふうに考えております。
  117. 森八三一

    ○森八三一君 総額この資金の原資が二十億ということは法律審議の際に承わったことであります。そのうち十六億をすでに各府県に配分をして、法律の当初の趣旨に基き進行がせられておるということも承知をいたしております。残りの四億ですね、四億円を今回の災害に関連をして、この法律の趣旨に基いて特別追加配分をする、こういうことになっておると承知をしますが、その四億について今申し上げましたように、現に鹿児島は知事が出てきて、二億五千ということを決定して帰ったということを現地からは通報があったのでありますが、そういう措置は講ぜられておるのかおらぬのか。
  118. 和田正明

    説明員(和田正明君) 二億五千万円という数字については、私は承知をいたしておりませんで、鹿児島県につきましては、数字を申し上げますれば八千五百万円を追加するということで県との話し合いはついております。
  119. 江田三郎

    委員長江田三郎君) ちょっとこの問題に関連をしてお聞きしますが、一体、本来言えばこういう資金というものは、その他の資金ワクから出すべきものじゃないのか、災害融資というものを自作農維持創設資金から出すということは、初めからほんとうにお考えになってやっておられたかどうか、もしそうだとすれば、こういうときの一体安定計画というものは、どういうふうにお考えになっているのですか、災害を受けて一つもプラスの条件というものは出てこないので、非常にこういう常襲地帯というものはマイナスの条件ばかり出てくるのですが、そこで災害の跡始末にこんな金を貸しても、安定計画というものはあなたの方で立ててやっておられるのかどうか、それから災害のときには土地担保にお取りになるのか、あるいは公共団体等に保証をさしてやられるのか、どちらでやられるのか、そういう方針をちょっと承わっておきたい。
  120. 和田正明

    説明員(和田正明君) 第一点の問題は、法律御審議の際に、御承知のように第二条の第一項の四号で、「疾病、負傷、災害その他省令で定めるやむを得ない理由により資金を必要とする農業者で、」農地を売り渡さなければ、農業経営に著しい支障を及ぼすという場合で、法律制定の際から災害復旧あるいは災害によりまして収入が減少したために、農業経営上の資金が不足するものについても、この資金を貸すということは一応予定をいたしておったわけであります。今度の場合には天災法による営農資金と、この資金を両方組み合せて出して参りまして、過去の借金等については、それを低利にかつ長期に肩がわりをして農家への負担を減少し、さらに明年度の再生産資金については天災法による経営資金を合わせて見て行こうということも考えたわけでありますが、一応四億の保留の問題と経営安定計画との問題につきましては、安定計画が立つということを条件にして追加をいたしておりますので、午前中、委員長現地調査の際におっしゃいましたように、単なる金融処置だけでは限界があるという点も、御意見のような点もあろうかと思いますが、できるだけ安定計画等を立てることと組み合せてやって行くようにいたしたい。
  121. 江田三郎

    委員長江田三郎君) 保証は……。
  122. 和田正明

    説明員(和田正明君) 保証の点は、別に災害があるから特に担保を取るとかいうことではなしに、自作農維持資金全体の問題として、保証人が立つ場合には保証人を主とし、保証人ではなおかつ不十分という場合は担保を取るという一般原則で処理をいたしております。なおこれにつきましては、もともとが政府資金でございますので、県での保証ということは特別に考えておりません。
  123. 江田三郎

    委員長江田三郎君) まああなたの立場で答弁すれば、そういうことになると思うのですがね、だけれども実際問題として、こういう災害襲地自作農維持創設の金を貸して、土地担保に取って安定計画を立てさせなければならないと言ったって、安定計画は実際には立ちゃしない。ただ作文だけして、安定計画と称する作文をして金を貸すんですよ。そうして払えぬようになることはさまっているのですよ。それで今度は土地をもぎとっている。そういう政治が親切だとお考えになっておりますか。まあ答弁はいいでしょう、答弁はせぬでもいいです。そういう点をよくお考えになってやられぬと、一時は喜んでもらえるかわからぬが、あとではこれはとんでもないことになるということを申しておきます。  それから私、ちょっと視察に行きましたから、なおついでにお聞きしておきたいのですが、ここに治山崩壊地復旧事業費というのがありますが、私、今度見た中であきれたのは、椎葉村の崩壊の現状なんですが、あれについては大体今後林野庁としてはどういうふうに御計画なんですか、なまやさしいことではとても防げないだろうという気がするのですが、これはやはりちゃんと計画は立っているのでございますか、その点よく林野庁の方でお考え願います。なお午前中の報告にも申しましたように、今後山の保全ということについては、よほど積極的に考えてもらわなければならないと思います。  それから経理課長さんですが、復旧用材の問題ですが、県が建てる仮設住宅に国有林の特売という問題があるのですが、これは特売をなさる方針でやっておられますか。
  124. 花園一郎

    説明員(花園一郎君) 実は地方公共団体という言葉の解釈の問題になるわけですが、都道府県そのものをこの中へ入れました場合は、一応都道府県ということは……。
  125. 江田三郎

    委員長江田三郎君) いや、県という意味じゃなしに地方公共団体の場合……。
  126. 花園一郎

    説明員(花園一郎君) 市町村がやる場合については、当然これは省令で考えております。
  127. 江田三郎

    委員長江田三郎君) そこで市町村が仮設住宅をやっても、これは結局は個人のものに将来はなるのだと、だからしてこれは適用さるべきじゃないというような解釈をしておられる向きもありましたが、その点はどうですか。
  128. 花園一郎

    説明員(花園一郎君) その点は最終的に個人の利益に帰属するものにつきましては、これは大蔵省との話し合いでは一応救助用というものの中に特売は考えないで行こうということです。
  129. 江田三郎

    委員長江田三郎君) しかし最終止に個人の用になるかどうかということは、利益になるかということは、これは実際わからぬ話なんで、その仮設住宅に入った人がその家を自分で買い取るかどうかということはわかりゃしません。だから地方公共団体が仮設住宅を作れば、これは当然特売の適用を受けるものだというのが私は法律の趣旨だと思うのですが、そうじゃないのですか、おそらくそういうあなた方はお考えでおられると思うのですが。
  130. 花園一郎

    説明員(花園一郎君) 市町村が援助をして、救助法の建前によりまして公共用に仮設いたしますものにつきましては、当然考えているわけです。
  131. 江田三郎

    委員長江田三郎君) 将来のことは未知数……。
  132. 花園一郎

    説明員(花園一郎君) はあ、将来のことは未知数……。
  133. 江田三郎

    委員長江田三郎君) それからこの融資の場合に、先ほど佐多君がちょっと質問しておられましたが、鹿児島の桜島の噴火による果樹園等の数字は考慮されておやりになっておられるのですか、どうですか。
  134. 和田正明

    説明員(和田正明君) 桜島の噴火による被害につきましては、先般の政令の規定の中に相接そういう文句が時間的都合で入りませんでしたので、その後県及び会計検査院と打ち合せをいたしましたところ、桜島の噴火による被害地帯が二十二号台風である程度災害を受けてダブった地帯ということでありましたので、文書で会計検査院と打ち合せをいたしまして、二十二号台風被害に桜島の噴火の被害を加えたものとして被害認定をし、援護資金措置を講ずるということで検査院も了解をいたし、大蔵省も了解済みでございまして、鹿児島県の融資額の配分につきましては、そういう趣旨で噴火の被害を加えてワクの考慮をいたしております。
  135. 江田三郎

    委員長江田三郎君) ほかにございますか……。なおもう一つちょっとお聞きしますが、ちょっと午前中の報告にも申したのですが、たとえば防災営農というようなものを積極的に指導助成なさるというようなことは今後農林省としてお考えになりますでしょうか。
  136. 檜垣好文

    説明員(檜垣好文君) 御指摘の特に台風等につきまして毎年被害をこうむっておる地帯につきましては、ただいま御説明いたしましたような台風等に伴う被害に対する対策だけを講じておりますのでは、御指摘のようにむだな国費等の冗費でございますので、この点につきましては、すでに一部予算等によりまして、あるいは西南暖地の対策とか、いろいろな施策を講じて参っておるのでありますが、それによりましても相当の効果をおさめておるように見受けられますが、さらに積極的に、先般来台風あるいは災害襲地帯の法案等につきましての御審議の際にも、いろいろな問題点が出たのでございましたが、それらの点につきましては、単に災害復旧あるいは善後対策ということではなしに、災害を未然に防止し、あるいは災害が起りましても被害を最小限度にするという意味合いにおきまして、御指摘のような事項は重要なる点でございますので、来年以降等の予算につきましても、それらの点を加味いたしまして、積極的に、あるいは防風林施設とか、あるいは早植えの奨励、各種の事項が出たのでございます。これらにつきましては、積極的に推進して参りたいというふうに考えております。
  137. 江田三郎

    委員長江田三郎君) 佐多委員もお見えになったのですが、ちょうど台風被害対策をやっておりますので、御質問ありましたらどうぞ。
  138. 佐多忠隆

    佐多忠隆君 桜島爆発による災害の問題ですが、何か私のいない間にもうすでに御説明があったそうですから、これは繰り返しません。これは大体二十二号台風と一緒にして見ていただくということになっておるわけですね、それじゃそれでけっこうです。  さらにもう一つ、けさほどの委員長現地視察での御報告にもありましたように、暴風雨の常襲地帯になっているので、単にその災害復旧のために個別の企業に融資する、その他では問題は解決しないという点において御報告通りだと思うのですが、しかしそのことはだから今現在災害を受けているもの、その他について何もめんどうをみてやる必要はない、そういうところにめんどうをみることは、どぶに金を叩き込むようなものだということにはならないので、むしろそういう災害の常襲地帯で個々の農家が災害を非常にたくさん受けることの基本的な原因は、やはり施設その他についていまだ至らないところが非常に多いので、そういう意味でこの災害予防、あるいは暴風雨その他の被害の防止にいろいろな施設その他が十分になされなければならない、そういう意味で個々の企業、個々の農家経営の対策以外に、そういう方面でもっと積極的に大規模な施設がなされなければならないということに結論はなるだろうと思うのですが、そういうことを合わせやりながら、同時に現在災害をこうむっているものには特別な融資その他の救助施設をやらなければならない、こういうふうに考えるのですが、それらの点は当局としてはどういうふうにお考えになっておりますか。
  139. 檜垣好文

    説明員(檜垣好文君) 御質問の点につきましては、ただいま委員長からの御質問にもお答えしたのでございますが、御指摘のように災害復旧対策、あるいはそれに伴う善後措置だけではなしに、根本的にまあこの災害そのものは天災でありますので、必ずしも完全にというわけにはいかないかも存じませんが、人力の及ぶ範囲におきましては、できるだけ防除対策を事前に講ずるということが最も災害対策としては重要な点でございまして、御指摘のように根本的な防除施設、たとえば防災ため池とか、あるいはまた老朽しているため池の補強、さらにはまた防風林あるいは防潮林、また特にこの九州の南部等に多いところの特殊土壌地帯に対しまするところの土壌保全の対策等、いずれも根本的には災害に対しまする防除対策として必要な施設でありまして、これらにつきましては先ほども申し上げましたが、一部予算措置等によりまして実行しておる点はございますが、まだまだ不十分でありますので、来年度以降の予算措置等におきましても積極的に推進して参りたいというふうに考えておる次第であります。
  140. 佐多忠隆

    佐多忠隆君 そういう施設その他について特別な配慮をするということが、今度の災害を契機にして、今年度中にすでに着手されるというようなことが必要だと思うのですが、ただ、今のお話によると、考え方としてそういう考え方を持っておる、従って来年度あたりでは、さらにそういうものをもっと具体的に考えようという程度のことにしか受け取れないのですが、もっとその点を今度の災害を契機にして、従って今年度の問題として措置をするというようなことをやられる必要があると思いますが、そういう配慮はしておられないのかどうか。
  141. 檜垣好文

    説明員(檜垣好文君) 御指摘の点でございますが、本年度等におきましての、たとえば治山におきましては林地の崩壊しましたところ対しまする復旧、あるいは西南暖地に対しまするいろいろな耕種改善施策、あるいはまた林野関係におきましては造林等によりまして、それぞれこの防災事業に相当しまする事業を実施いたしておるのでありますが、何分この事業費等の不足のために十分な状況には至っておりませんから、特にこの災害等を契機としまして、この予算の不足等につきましては、今後できるだけの措置をして参りたいというふうに考えておる次第であります。
  142. 佐多忠隆

    佐多忠隆君 その点今年度からでもさらに積極的な施策をお願いをしたいのですが、同時に先ほど委員長の御報告にもあったのですが、委員長現地視察をされた以外の土地で、特に離島、鹿児島県の種子島、屋久島というような所は、大隅半島、肝属郡、囎唹郡あたりよりもさらに被害が甚大である状況でありますが、しかし非常に遠隔な地であるし、従って現地視察その他に何ら行き届いた調査その他が行われないために、今まで非常に見捨てられているのですが、こういう点は今度の災害にさらに特殊な配慮をされることになっているかどうか、その辺をどういうふうにお考えになっておるか。
  143. 檜垣好文

    説明員(檜垣好文君) 御指摘の離島につきましては、御承知の通り離島振興法等に基きまして、各種の施設を特別にやっておるのでございますが、これまた御指摘のように必ずしも十分ではございませんような状況になっておる次第であります。この点につきましては、特別な離島だけの施設ということにつきましては、この災害そのものについては現在のところ考えておらないのでありますが、御指摘のように現地視察等は必ずしもできませんような状況で、十分その施策が反映いたしてないことも考えられますのであります。これらにつきましては県当局と十分連絡いたしまして、この対策に不公平のないように、特に離島等につきましては、少くともほかの地帯以上に手厚い保護ができまするように措置して参りたいと考えます。
  144. 佐多忠隆

    佐多忠隆君 その点はこれまでしばしば見捨てられておるところでありますから、離島振興の特別対策もさることながら、今度の災害あたりには特にひどい災害を受けておりますから、特別の一つ御配慮をお願いをしたいと思います。それからさらに今度の融資の利子の問題でありますが、何か聞くところによりますと、天災法によって普通の場合には三分五厘であるのに、今回はそれが適用にならないで、六分五厘の高い利子を負担をしなければならぬというようなことで、非常に罹災者その他はその負担に堪えかねるというような問題があるようですが、それらの点は実情はどうなっておるのか、御説明願いたい。
  145. 和田正明

    説明員(和田正明君) 天災融資法律によりますと、建前として六分五厘になっておりまして、特別の場合に政令で指定をした町村については三分五厘にすることができるということで、六分五厘が原則になっておるのであります、法律として……。その三分五厘の利子の適用をするかどうかということでございまするが、災害の際の営農資金を貸付けをいたしまする立法は、御承知のように昭和二十八年の凍霜害以来、毎年そのつどの立法で繰り返して参りまして、先般の国会で半恒久的なこの法律に変りましたわけでございますが、前例といたしまして従来三分五厘の融資措置をいたしました例は二回ございます。その最初は昭和二十八年の西日本の風水害を契機といたしまして、その後の冷害対策、それから昨年の全国的な冷害対策と、いずれも融資総額が百億から二百億という非常に膨大な被害の際に、考慮いたしました前例があるわけでございまするが、今回の災害につきましては、全国的には大体豊作型でございまして、融資額を例年の例において計算をいたしましても二十億を割るようなワクしかできないような被害でございますので、特に預金金利が六分である現在、それより安い金利で貸付をいたしますという特殊な事情の考慮について、なかなかうまい考え方が出て参りませんので、被害の全体の状況から考えて今回はやむなく見送りをいたしたのでありますが、ただこのお配りをしてございます書面にもございますように、非常に過去二年も災害が続いたような地帯につきましては、三分の金利の低下を考慮するということの前に、できるだけ長期に返還をするという問題の方が農家負担を軽減するというような考慮から、先の国会で成立いたしました自作農維持創設資金融通法等で、そういう農家を救って行くという、両方かみ合せて考えましたので、特に三分五厘の問題を実行いたさなかった、こういういきさつでございます。
  146. 佐多忠隆

    佐多忠隆君 これまでの例によれば、三分五厘の特殊指定をされたのは非常に金額が全国的に多かった場合にそれをやったというお話のようでありますが、それも非常に大事なことであると思うのですが、今度の場合には、たとえば今お話の通りに二十億程度のものであり、従って全国的に見れば災害の金額は比較的には少なかったということが言えるとも思いますけれども、しかし少くとも災害を受けた局地については、その災害の状況は非常にひどいものであったから、従ってそれならばその局地に関する限りは、やはり特殊指定をされることの方が然るべきだし、当然なんじゃないか。しかもそういう場合には、仮に特殊指定をされても金額が今お話のように全体としては非常に少いのだし、従ってそれに要する資金といいますか、あるいは資金源といいますか、そういうものも割合に軽微な負担で済むのだから、むしろそういう全国的な被害金額総額にかかわりなく特殊事情として指定をされることの方が資金的な面から見ても容易な問題じゃないかと思うのであります。今のお話のように、弁済期間を長くされることも一つの負担を軽減することにはなると思いますけれども、やはり大きな問題としては利払いの問題だと思うのであります。ただ単に一律に被害額が、全国的に見て被害規模が少ないからというようなことで、特殊事情指定を渋られるということはちょっと御趣旨が通らぬように思うのですが、それらの点をもう一ぺん一つ考慮して、金額はいかに全体としては小さくても、その局部については、非常にひどかった局部については特殊事情の指定をされるというようなふうな配慮の進め方をされる意思はないかどうか。
  147. 江田三郎

    委員長江田三郎君) ちょっとその問題は私も佐多委員と同感なんでして、百億をこえるからさせるなんとかいうのじゃなしに、連年災害で痛めつけられて、ほんとうに立ち上る気力もないというようなところへこそ、そういう特殊指定が必要なんであって、どうも金融課長の今の言い分は本末を転倒しているようです。それからさらに期限の長い方がいいから、自作農の方へ持って行くというその考え方が非常に危険だというのです。何か自作農の金というものは災害のしりぬぐいをすると、そんな今言われたような意味で使われるものじゃないと思う。それを、本来別なワクで出すものを、別なワクの方が窮屈なものだから、この自作農の方へ伸びてしまうわけです。これは金融課長ちょっとおかしいですよ。これは特に土地担保という問題、どうせあなたの方で土地担保をとるのでしょうが、土地担保がつくだけに、この自作農資金の乱用ということは、将来はっきり、たとえば耕地がふえるのだとか、あるいは経営がどういう工合になってプラスの条件があるのだとか、借金の支払い条件がはっきりしないと、この災害の常襲地帯へ持って行って、期限が長いからこれの方へというようなことを考えられたらちょっとおかしいので、現地へ行きましても、天災融資というものは農協相手でなかなか貧乏人には貸せないのですから、いよいよもって貧乏人は土地担保ばかりになります。その点はよほど考えてもらわなければ、えらいことになると思います。
  148. 和田正明

    説明員(和田正明君) ちょっと私の言葉が不足いたしましたので、若干誤解を招いたのではないかと思いますので、そのことを申し上げますと、その百億あるいは二百億というのは過去の例を申し上げたので、今度の災害としては、全国的規模においては非常に軽い災害であったという程度のことを申し上げて、前例を御参考に申し上げたのです。お話のように、たとえ全国的に被害が少くても、特殊農家としてたとえば連年の被災事情等については非常に苦しい状態になっておりますことは申し上げるまでもないわけでございますが、問題は、この連年被災者は過去二年なら二年という返済法による資金融通措置を受けておるわけであります。それを単に借かえを、それの償還と、それからさらに明年度営農資金を借りますことの償還とダブらせて考えますと、償還の能力と申しますか、借金の返済に非常に苦慮しなければならないという状態が一つ出て参りますので、過去の被災民については、それを二年なり、あるいは三年なりで返還をするところの農地を売らなければならないというような非常な負担がかかるだろうから、その分については自作農資金等でなるべく調達して、一年間の負債の返還限度を落した考慮をしてやろう、新たな営農資金はこの返済法によって貸付をして行こう。こういうことで自作民との関連を考え合せたということでございます。なお三分五厘、六分五厘の問題は、先ほどもちょっと触れましたように、預金金利より安い貸出金利ということになりますので、よほどの非常事態でないとなかなか政令、事務的な話合いもつきませんので、府県に対しましては三分五厘を主張するに足るような、町村別に過去の災害による負債がどうなっておるかとか、あるいはその農家が今度どういう償還能力になるかというようなことについて、町村別、地域別の資料を提出してもらいまして、その資料を基礎にして対大蔵省との交渉もいたしたいからということで、府県に資料を依頼をいたしておるものでありますが、まだ必ずしも事務的な折衝をし得る程度の詳細な資料が私どもの手元に参りませんので、大蔵省とは、そういう資料ができた上で三分五厘という特殊の指定をするに足る理由があるという話し合いがついた上では、この政令をのちに直すべきことあるべしという条件だけは保留をして、差し当って急ぎ貸付をやることにしたと、こういうことになっておりますが、今後府県からそういう詳細な資料をいただきまして、対大蔵省と事務的に折衝するに足るようなデーターがそろいました上では、さらに再考慮するというような含みを残して措置をいたしたわけであります。
  149. 佐多忠隆

    佐多忠隆君 それならば三分五厘、さらに考慮の値打があるということですから、さらにもし各被害地からそういう資料が、説得するに足る資料が出てきたら、必らずそれを実現するように努力をしていただきたい。すでにもう今までに、それは六分五厘で大体とりあえず出すことになってしまったのだから、あとからどんな資料なり、どんな実情を訴えられても、それはもう通らないのだというような責任逃れを言われないで、今の一つ留保条項は必ず資料の整備次第実現をするというようなふうに措置をされることを希望しまして私の質問は終ります。
  150. 江田三郎

    委員長江田三郎君) それじゃほかによろしいですね。なお農地局の戸島参事官がお見えに相なっておりますが、これは答弁は要りませんけれども、午前中申し上げました轟ダムの問題については、これは私どもがじっと様子を見ておりますというと、一たんダムが建設されたために、今度調査会を作って結論を出すといっても、おそらくあのダムを、たとえば地元農民が要求するような撤去という方向にはなかなかいかぬと思いますが、これは何と申しましても、建設省や通産省は既存の条件から出発しておると思うのです。その点はやはり年々、年によると二回も、一千町歩の浸水があるというこの問題については、農地局として一つ重大な関心と積極的な態度をとっていただきたいということを希望しておきます。     —————————————
  151. 江田三郎

    委員長江田三郎君) それじゃ次に、有明海における漁業被害の件を議題にいたします。  この件につきましては、前回の委員会において、今回の委員会までに政府対策を決定して報告をするよう申し入れておきましたので、右について、ただいまから当局の報告を聞くことにいたします。なお報告につきましては資料が提出されております。
  152. 岡井正男

    説明員(岡井正男君) 有明海における漁業被害に対する対策といたしましては、基本方針といたしまして、有明沿岸漁業資源の確保増産に重点をおく建前をとって対策の基本といたしたいと考えております。で、あの海区に最も適応性のあると思われるような事業方法並びにそういう種類ということを考えますると、あの海区におきましては、ノリの養殖と貝類の養殖、この二つが一番適応性が多いのではないかと、かように考えてこの施策を推し進めたいと考えております。なお若干、いわゆる沖合いに出ました地区、海区におきましては、築磯事業もまたこれを適当に按配いたしたい。従いまして、ノリと貝類と築磯、この三本立でいたしたい、かように考えております。そのほか非常にあの地区で困っている漁業者に対して、この前の委員会でも御示唆がありましたが、入殖関係とか、その他いわゆる水産以外の農地関係などでも考えたらいかがかという点でございますが、これについては、農地局の方の参事官からお答え願うことにいたしまして、なお御質問に応じまして、内容の具体的数字は主務課長から申し上げることにいたします。
  153. 森崎隆

    ○森崎隆君 資料はいただいておりますのですが、まあ魚介類の問題ももちろんそうでありますが、今築磯の問題も出たようでございますが、この築磯につきましては、やはり三割、四割というような形で地元資金も当然要るように期待されておるのでございますか、どうでしょうか。
  154. 諏訪光一

    説明員(諏訪光一君) 現在私どもがこれから要求しようと思う予算では、全額を要求しようと、かように考えております。
  155. 森崎隆

    ○森崎隆君 そのことは大体御確信があるのですか、どうですか。
  156. 岡井正男

    説明員(岡井正男君) われわれの考え方は、必ずしも予算にそのまま結末を見ない場合も多いのでございます。従来の築磯は瀬戸内海あたりの貧困な漁村におきましても、先ほど森崎委員の言われたように、三分の一助成の建前になっております。この点はこういうふうな特殊な海域におけるまあ範囲を広めて考えれば、一種の災害とも思われるのでございますから、その点をよく財務当局へも十分誠意をもって説明をいたしまして、相なるべくは全額でなくても、従来の他の補助率よりも高率に、いわゆる地元負担が非常にかからないように努力いたしたいと考えております。
  157. 森崎隆

    ○森崎隆君 地元の方からもいろいろお話を聞きますると、ずいぶん農薬関係で受けた被害は甚大なんです。これは二、三年前にすぐに気がつけば、そういうことをどうでもして、ある程度国からの援助も仰いだのでございましょうが、知らず知らずの間に今日にきて非常にひどい。特に浜地区なんというところなんかは、数万貫とっておりましたのが、現在は百貫くらいにアミ漁者がやられておるというような現状だと承わっておるわけです。そういうことを考えますと、今申しましたように、瀬戸内なんかの経済事情もございましょうが、補助三分の一といったようなことでは、せっかく築磯の基礎ができたといたしましても自己資金というものは全然不可能である。聞くところによりますと、今度有明海に関する問題につきましては、国の方から非常にまあ少額の金をある程度何かのことで出して、それでお茶を濁そうというような行き万もあるように聞いておるのですが、これは一つ根本的にこの周辺におる漁業者を救う根本方策、こういうけちくさい、一応そこに補助というものを若干出したということでお茶を濁すようなことでなくて、根本的に立て直す、再建をなし得るように水産庁では考えてもらわぬと因るのです。このままで行きますと、普通の場合と違いまして非常にこれは生活もできないし、みんな脱落して行く、脱落してもどうにもしようがないということになると、これは自滅以外に手がないわけです。そこを形式的な形で、一応こういう災害についてはこういう措置をとって、こういうことをいたしますからということではたく、もっと根本的な応急対策をやってもらわなければいかぬ。その点について非常に地元としては政府の出方に対して強いふんまんを持っているわけです。これは決して欲得で言っているわけでない。せっぱ詰った考えから非常にふんまんしているだろうと私は思うのです。そういう点十分に一つ勘案されまして、根本的な応急対策というものをぜひとも一つ考えてやってもらいたい。そうしないと困る。こういうケースはほかにもありましょうけれども、まあ有明も内海といえば内海かもしれませんが、内海の場合でも特に違って、外海的性格を持ったこういうところでは、こういう被害も非常に強いし、今後も続くだろうと思います。そういうような点も十分考慮して、彼らが生活の道を立てる漁業について建設的な基盤を確保する国としての責任を十二分に果たしてもらいたい。これを一つ要望されておりますので、私から申し上げておきたいと思います。
  158. 秋山俊一郎

    秋山俊一郎君 今、森崎委員からこまかく要望がありましたが、その点は今の築磯といったようなことに発しておるのでございまして、この対策のうちのノリ及び貝類の養殖事業の施設がのっておりますが、これらに対して、ノリにしましても、貝にしましても、そう全部が全部できるものではないので、ある適地がなければならない。有明海は貝類の養殖というものは旧来からやっておりまして、そうどこにも余地があるものとは私思いませんが、御承知のようにきわめてあの辺は零細は漁民でありまして、しかもこういう被害を受けて非常な収入減じゃなくて、ほとんど皆無状態にある場合に、かような事業をやらせましても、とても自力ではできないことは御承知の通りでありますので、このノリ養殖、あるいは貝養殖についての仕事を助成する意味の補助というものは、どういう程度のものを考えておられますか。元来農薬等の被害は農薬使用の奨励ということからも発しておるのでございまして、政府にも相当の責任はあるはずであります。従ってその結果に対する補償というわけには参りますまいが、それにかわるべき助成補助といったようなことがどの程度考えられておるか。築磯については先ほど御意見がございましたが、ノリ及び貝類の養殖等についてはどういうふうに考えておりますか。融資等によってはとうてい支払いなど当分できるものじゃないと思っておりますが、水産庁はどういうふうに考えておられますか。
  159. 諏訪光一

    説明員(諏訪光一君) ノリにつきましては種ひびの購入費というものを全額で一応みておりますが、種ひびにつきましては女竹を使ったり、竹を使ったり網紐を使ったりいろいろいたしますが、一応計算のめどといたしましては、女竹を使うという計算をいたしまして、一千万本、一本が一円五十銭といたしまして一千五百万円計上しております。それからこれは種をつけるひびでございますが、これに現在では種をつけるのに種場の代金が非常に高くて困っておりますが、つい二、三年前から人工的に採苗をするということもある程度成功をみておりますので、この種をつけるもとの貝殻とか、いろいろなそういったようなもので四百六十五万円の施設をみまして、これによって種をつけて、それを漁場におくことによって、先ほど申しました種ひびに種がつく、そのための施設を四百六十五万円みております。これは今のはノリを作る材料と種でございますが、そのほかにノリ場といたしまして、現在各県の状況を聞きますと、何万町歩くらいの程度のものはまだまだ養殖適地があるのだけれども、種がないために現在まだ拡張されないでいるのだというような御報告も伺っておりますので、このノリ場の造成といたしましてみおを作る、そのみおを作る金として二千七百万円計上しております。このみおを作ることによって相当ノリ場が拡張する、そしてしかもそのノリ場といたしましては、みおを作る以外に整地作業を行うという意味におきまして、整地の機械の購入代金を二千七百万円みております。合計いたしましてノリの養殖事業として九千四十六万五千円、約九千万円のものを財政当局に対しましては一応全額ということで要求いたしたい、これによっての効果はまちまちでございますが、現在までわれわれの大体の推定の計算では六、七億円くらいの収量はあるだろうという見当をつけております。それから貝類につきましては種苗の購入費をみております。これはアサリ、ハマグリ、カキ、モ貝、これら全部を含めまして八千百万円の被害をみております。それを全額負担いたしましてこの種苗をまきつけることによって大体二億五千万円くらいの増収はあるだろうという見当をつけております。そしてこの貝類養殖場も耕耘しなければなりませんが、先ほどのノリ場の整地作業を行う機械を、ノリ場を八カ月使いまして、この貝類養殖場に四カ月使うというふうにいたしまして、耕地の機械は両方に使えるということで計算いたしております。  それから築磯につきましては五千万円計上いたしておりまして、これは一カ所平均五十万円の漁場を百カ所設置する、これによってその効果は、これもまだ昨年から始めました事業でございますので的確なことはわかりませんが、一応学者あたりに計算いたしてもらいましたその計算だけの基準でございますが、その効果は約一億円だろうということで、それだけの予算を計上いたしますと、大体九億から十億ぐらいの増産結果が得られるのじゃなかろうかというふうに考えております。
  160. 秋山俊一郎

    秋山俊一郎君 これは来年度予算に要求しておるのでありますか、本年度は何もないのでありますか。
  161. 諏訪光一

    説明員(諏訪光一君) これは先日まで各県から出て参っておりました資料がまだ整いませんものですから、非常にラフな計算をいたしておりまして、これに基きまして予算書を作って財政当局と予備費でもって要求するつもりで、今作業を進めております。大蔵省の方にはこういう数字は出しておりませんが、こういう被害でこういったようなことを要求いたしますということだけを連絡してございます。
  162. 三橋八次郎

    ○三橋八次郎君 米の増産のために使います農薬が水産に影響を与えるということはまことに遺憾なことでございますが、この被害の実際を視察に行きました一人といたしまして、研究方面にとりましても、まだ十分な結論が出ておらぬように思うのでございますが、これは研究の結果が出ませんと、いつまでもこういう被害を継続しなければならないことになるわけでございまして、研究の方も一つ十分促進をしてもらいたいと思うのでございます。なお、これは改良局及び水産庁でやっておるのでありますが、来年度の研究費は幾らぐらい計上しておられるのでございますか。
  163. 大坪藤市

    説明員(大坪藤市君) 水産の被害に関連いたしまして、いわゆる農薬による被害の疑いがきわめて濃厚でありますし、非常な御迷惑をかけておりますので、本年の年度初めよりこの問題を取り上げまして、当委員会におかれましても非常な御議論の対象になっておりまして、七月より今年度予算におきましては、約百万円見当の予算をももまして、大学並びに私どもの方の農業技術研究所並びに地域農業試験場、福岡及び滋賀県の農業試験場等、各方面の試験研究機関を動員いたしまして、これが対策につきまして研究を継続中でありまして、まだ遺憾ながら、いずれもその結果につきましては満足なる結果を得ていないのであります。これはしかしながら非常に急ぐ問題でありますし、また絶えず研究を続けて行かなければならぬ問題でありますので、来年度におきましても、少くとも本年よりも以上の予算を計上いたしまして、この試験を継続し、すみやかにその結論を見出したいと、かように考えております。
  164. 岡井正男

    説明員(岡井正男君) ただいま改良局長からお答え申し上げました予算のうちに、やはり水産も含めまして、水産の試験機関でやはり横の連絡を密にしながら研究をするという建前をとっております。
  165. 三橋八次郎

    ○三橋八次郎君 この問題は原因のいかんにかかわらず、あの有明海の零細漁業家の窮乏は極に達しておるということを見て参ったのでございます。従いまして、水産庁の方といたしましては、早急にこの対策を立てていただくと同時に、養殖業、あるいは他種漁業への転業、あるいは他業に転業するということにつきましての資金のあっせんということにつきましては、どうお考えになっておりますか。
  166. 岡井正男

    説明員(岡井正男君) 希望者がありまして、漁業転換を、これは沿岸のうちでも密着した沿岸でございまするが、さらに沖合いの方へ進出したいというような希望者がありましたら、その場合には資金のあっせん等はやる用意があります。
  167. 三橋八次郎

    ○三橋八次郎君 なお、あの地域における零細漁業家は、干拓によりまして漁場を失い、その漁獲高の減るのに対しまして非常な窮乏を遂げておるようでありますが、干拓地ができますと、農地法の関係で、今まで農業をやっておる者だけは入植をさせるということになっておるそうでございますけれども、これはあの漁業家の窮乏を見た場合におきまして、特にまたあの地帯の人からそれを訴えておったのでありますが、漁場を取られました漁業家の干拓地への入植ということにつきまして、農地局の方ではどういうふうにお考えでありますか。
  168. 戸嶋芳雄

    説明員(戸嶋芳雄君) 入植者につきましては、現在たとえ漁業者でありましても、この際農業の方に専念したいという者でありましたならば、入植の選考をいたしまして、適格者ということになりますと入植するということもできます。なお、現在少しばかりの田畑を持っておって、かたわら漁業をやっておるというような方に対しましては、われわれの方では増反と申しておりますが、もう少し漁業の方の手を少くして、農業の方にもう少し力を入れたいというような場合には、増反者として同じく選考いたしまして入植をさせる、こういうことができることになっております。現在私の方で手をつけております干拓は、国営としてやっておりますのは、あの関係県で六地区あります。それから代行事業として県が主催になってやっております干拓が十一地区ございまして、その計画によりますと、大体五千八百町歩ぐらいの水田ができることになっております。それで今まで大体入っておりますので、今後の計画上の入れられる余地は、純粋に入植いたしますものが大体二千戸ぐらい、それからいわゆる増反者として入れ得るものが三千戸ぐらいになっております。従いまして、関係県の方でそういった漁業者の救済の一つの方策としてそういうことを考えられるというような場合、あるいは個々の漁業者がそういう希望を持っておるという場合には、われわれの方としてもできるだけの応援はいたしたいと考えております。
  169. 三橋八次郎

    ○三橋八次郎君 これはぜひやってもらわなくてはならぬことでございますが、今のお話を聞きますると、農業に専念する者とか、あるいは今まで現在耕地を持っておる者というようなことがかなり強い条件になっておるようでございますが、あそこの漁業家はきわめて零細で、一坪の畑も持たぬ者も現在たくさんあるようでございます。そういう者に対しましても入植の条件にしていただくように、特にお願い申し上げたいと思うのでございますが、いかがでございますか。
  170. 戸嶋芳雄

    説明員(戸嶋芳雄君) まあ大体農業にほんとうに精進し得るというような方であったら、われわれの方としてはできるだけのことはしたいと、こう考えております。
  171. 江田三郎

    委員長江田三郎君) それでは本問題はこの程度にいたします。  ちょっと速記をやめて下さい。   〔速記中止〕
  172. 江田三郎

    委員長江田三郎君) 速記を始めて。次回の委員会は臨時国会召集の前日ということにいたします。  本日はこれで散会いたします。    午後四時五十三分散会