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1955-06-02 第22回国会 参議院 農林水産委員会 第14号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和三十年六月二日(木曜日)    午前十時五十三分開会     —————————————  出席者は左の通り。    委員長     江田 三郎君    理事            秋山俊一郎君            白波瀬米吉君            戸叶  武君            千田  正君    委員            青山 正一君           池田宇右衞門君            大矢半次郎君            重政 庸徳君            関根 久藏君            田中 啓一君            長谷山行毅君            奥 むめお君            溝口 三郎君            森 八三一君            亀田 得治君            清澤 俊英君            三橋八次郎君            森崎  隆君            東   隆君            菊田 七平君   政府委員    農林省畜産局長 原田  伝君    農林省蚕糸局長 塩見友之助君   事務局側    常任委員会専門    員       安楽城敏男君    常任委員会専門    員       倉田 吉雄君    常任委員会専門    員       林  達磨君   説明員    最高裁判所長官    代理者    (事務総局民事    局長)     関根 小郷君    農林省農地局管    理部長     立川 宗保君    農林省蚕糸局糸    政課長     大戸 元長君   参考人    警視庁防犯部長 養老 絢雄君     —————————————   本日の会議に付した案件 ○参考人の出頭に関する件 ○農林水産政策に関する調査の件  (福島鏡石村における農地問題に  関する件)  (競馬法の一部改正に関する件) ○繭糸価格安定法の一部を改正する法  律案内閣送付予備審査)     —————————————
  2. 江田三郎

    委員長江田三郎君) ただいまから農林水産委員会を開きます。  最初に、参考人出席要求に関する件についてお諮りいたします。本日の日程に競馬法の一部改正に関する件がございますが、この問題につきまして、警視庁防犯部長養老絢雄君から本日参考意見を聴取したいと思いますが、御異議ございませんか。   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  3. 江田三郎

    委員長江田三郎君) 御異議ないと認めてさよう決定いたします。     —————————————
  4. 江田三郎

    委員長江田三郎君) それでは前回に引き続きまして、福島県岩瀬郡鏡石村における小作地返還問題に関する件を議題にいたします。  本日は委員の御要求によりまして、最高裁判所民事局長行政局長の御出席を得ましたので、直ちに御質疑を願います。
  5. 亀田得治

    亀田得治君 農地仮処分に関する一般的な取扱い方について若干お尋ねしたいと思います。まず最初に、おそらく資料を準備して来られたと思うのですが、農地に関する仮処分事件を処理する際に、口頭弁論または審尋を必ず開いてやっておられるのかどうか、その点どうなっておるか、一つお伺いしたい。
  6. 関根小郷

    説明員関根小郷君) ただいま亀田委員からお話の点でありますが、実は仮処分事件は、御承知のように通常の訴訟手続でやります普通の裁判手続を待っておりますると間に合わないために、権利者保護するために一応普通の手続よりも簡略化された手続でやっておりますが、この仮処分手続の問題につきまして、特に農地だけに関する統計はとっておりません。あるいは借地の問題なり、借家の問題なり、さらに農地の問題一切を含めました統計をとっておりますので、それを申し上げたいと思います。この一年間を通じまして、こういった仮処分事件が大体全国地方裁判所を通じまして約一万五千件ございます。それでこのうち不動産事件が大体一万件ございまして、これらの仮処分事件に関します手続の段階に入りますると、この仮処分手続につきましては二つやり方がございまして、一つは、ただいま御指摘の口頭弁論を経る場合、それからもう一つは、口頭弁論を経ませんで、いわゆる公開法廷ではございませんで、そこでやりまする決定手続、この二つ手続に分れるわけであります。それで今お尋ね口頭弁論手続はどのくらいの割合でなされているかということを申し上げますと、全体の数から申しますと非常に少いのでありまして、約一年間にございます一万五千件の事件のうち三百件内外しかやっておりません。それから、さらにお尋ね口頭弁論手続をいたしません、いわゆる公開法廷ではない一般傍聴人に聞こえないところでやっておりまする決定手続、このうちでさらに審尋手続をやる場合と、そうでなくて書面審理でやる場合とがございますが、この審尋手続と申しますのは、申請人に来てもらって口で聞く手続でありますが、この審尋手続を正式にやりまして調書を取るという件は、これは大体六百件内外でございます。しかしこの審尋手続を正式にやりませんが、当事者に来てもらいまして、口で説明を聞くということを実際上やっておりますが、これは大体の事件でおおむねやっておるのではないか、こういうふうに考えられるわけでございます。
  7. 亀田得治

    亀田得治君 この不動産仮処分が約一万件ということですが、このうち農地に関するものはおよそですが、どの程度になっておるとお考えでしょうか。
  8. 関根小郷

    説明員関根小郷君) 実は先ほど申し上げましたように、農地に関するものとして特に調べておりませんので、的確なことを申し上げられませんが、やはりどちらかと申しますと、全般の宅地あるいは建物事件の方が割合といたしましては多いのではないかと思います。
  9. 亀田得治

    亀田得治君 それから口頭弁論並びに審尋をする数は三百と六百とおのおのわかりましたが、そのあとの分は審尋ではないが、双方当事者に来てもらって事情を聞くのが、ほとんどやられておるという意味ですか。これは双方当事者ですか、申請人だけですか、どういう意味ですか。
  10. 関根小郷

    説明員関根小郷君) ただいまのお問い、私の説明が足りなかったかと思いますが、申請人側だけの口頭説明が多いと思います。
  11. 亀田得治

    亀田得治君 で、申請人側だけの口頭説明は三百と六百の残りについてはほとんど行われている、こういうふうに解釈していいですか。
  12. 関根小郷

    説明員関根小郷君) 実はこの仮処分申請をしますには、亀田委員承知だと思いますが、弁護士さんが大体書類を持って裁判所に参りまして、判事に会いまして、そして保証金というのを積むのが普通であります。そういったいろいろな手続がございますので、必ず書面を持って当事者が来るわけであります。ですから、その際口頭で聞くということは実情ということになるわけでございます。
  13. 亀田得治

    亀田得治君 まあ、それは申請書と大して違いはないわけですから、大して重要なことにならんかもしれませんが、そこで私の明らかにしたい重点は、農地に関する紛争事件なんです。地主小作の間で農地返還という問題を中心にして争われておる事件ですね、で、こういう事件は絶対に口頭弁論なり、審尋を当然開くようにすべきじゃないかと考えておるんです。で、たとえば社会的に非常に重要だということで、労働争議等においては今日これはもうほとんど慣習になっておると言っていいくらいだと私も思うのです。単に申請者の一方的なものだけで仮処分決定をすると、こういったようなことは私ほとんど聞きません。やはり私は、戦前ほどではないわけですが、地主小作関係における事件というものは、当事者にとっては、これは非常に深刻な問題なんですね。そういう意味で、これはやはり生活の根底に響く問題なんですから、弁論あるいは少くとも審尋は必ず開くこと、こういうふうに指導するのが当然ではないかと思いますが、どういうふうにお考えでしょうか。
  14. 関根小郷

    説明員関根小郷君) 今、亀田委員のお問いの点ですが、これはもうすでに十分御承知だと思いますが、仮処分手続もやはり裁判所独立立場でやっております関係から、まあ最高裁判所からこういった方法をとれとか、こういった行き方は悪いとかいう指導はできないわけでございます。これはやはり仮処分といえども裁判手続ということになりますると、どうしてもそういうことを言うこと自体、むしろ司法独立に反することになる、しかしながら、全体の、日本全国地方裁判所やり方がまちまちというような場合には、少くとも妥当じゃないということから、裁判官会同を、会同と申しますと、会議ですね、これを年に数回催しまして、こういうところで各裁判所のまちまちなところを是正する、お互いに反省し合おうじゃないかということでやっております。で、今お話農地小作人地主の問題、こういった問題は相当重大な問題である。少くとも当事者立場から考えられると、非常にそう軽々しく扱うべき問題じゃないということは、これはどなたも申せることと思いますが、しかし具体的な事件になりますると、先ほど申し上げましたように、何分にも非常に急ぐ手続であるということと、ほうっておくというと、権利者の方の側の保護が全うされるということが非常に危くなる、全うされないおそれがあるという場合にやるわけでございますので、もし仮処分申請者側で出しておりまする疎明ですが、この疎明である程度もっともだと思われる場合には、債務者側を呼ばずにやるのが普通でございます。債務者側を呼びますと、その間にまた妨害手段が非常になされる、債務者側権利の保全が完全に行かなくなるということと、時間的に間に合わなくなるといったようなことから、結局先ほど申し上げましたように、口頭弁論でやります事件が少くなる、そういったところから出て参ると思います。地主小作人との間で、なるほど確かに小作人の地位あるいは地主立場というものを相当考えなくちゃならない事件でありましょうが、法律的に見ますると、非常に地主側にはっきりしている疎明がある場合には、これは農地事件といえども口頭弁論を開かないということになるわけでございます。
  15. 亀田得治

    亀田得治君 私のお伺いしたいのは、具体的な事件について、最高裁下級裁判所指示するということはもちろん法律上許されません。ただこの仮処分一般取扱い方について、国民の迷惑にならないように、国民の迷惑にならぬようにということは、ひいては、やはり司法権威信ほんとう意味で確立することだと思います。そういう立場で、この取扱い等について一般的な考え方というものを明らかにして行くということは、私は必要なんじゃないかと思います。で、この農地の問題について、民事局長は少しく軽くお考えになっているようですが、これは後ほど少し私具体的に、しからばこういう場合はどうかということで論議をしてみたいと思いますが、まあそれはあとのことにして、具体的なことじゃなしに、端的に私はやはり何らかの指示というものがなされていいのじゃないか、手続だけなんですからね、手続とまあ実体というものは相関連はしているものなんですが、安全な手続という立場から少しぐらいの指示というものがあっていいのじゃないか、裁判官の合同の会議というものが持たれると言いますが、それはやはりある一種の指示に相なるものだと思いますね、だからそれは指示にかわるので、そこでやっているのだということであれば、それでいいのですが、何もしないのだということであれば、こう仮処分実情が、はなはだしく債務者に迷惑がかかることがあるということが明確になってくれば、これはやはりわれわれとしては必らず特定の事件については弁論なり、審尋は開かなければならない、法律改正までしなければならないことになるわけでしょう。しかし、そういうふうなところまで一々やらなくても、安全なことをやることには、これはこしたことはないのですから、そういうわけで実は指示ということを聞いたわけなんですが、これはどうなんでしょうか。そういう手続的なことについても最高裁というものは全然指示はしないのだ、こういうふうに解釈していいのでしょうか。
  16. 関根小郷

    説明員関根小郷君) 今お尋ねの件は非常にむずかしい問題でございまして、手続の問題だから少しの指示はいいのじゃないかというお話でございますけれども、訴訟手続は御承知のように法律できまっておりまして、法律裁判官がある程度裁量を許されている限界になりますと、これは裁判官裁量の範囲内でやれるわけでございます。その裁量の中でできると法律できまっておりますことを、最高裁判所主要行政立場から、それをしぼるということはこれはいかがかと思います。それでありますからして、先ほど私が申し上げましたように、会同その他で考えることは、お互いに反省し合うことがあれば反省し合おうじゃないかという程度意味でございます。でありますから、いやしくも訴訟手続に関することについては、最高裁判所から通達などは出しておらないわけでございます。それから先ほど申された中で、私の方で特に農地事件を軽んじているような疑いがあるとおっしゃいましたが、私はそういうことは絶対にない。具体的な事件で非常にシリアスな問題もありましようし、あるいは簡単に扱っていい問題もあるんじゃないかということを申し上げたに過ぎないのであります。
  17. 亀田得治

    亀田得治君 それでは私一、二具体的な問題を申し上げて一つ意見を伺いたいと思います。  それは今年の五月二十三日、福島地方裁判所白河支部農地に関する仮処分決定が出ておる事件です。これは申立人円谷義春、被申立人、つまり小作人常松辰雄、これは弁論はもちろん、審尋もしないで全く小作人にとっては寝耳に水といったような感じで仮処分決定が出ている。そうして立ち入り禁止を言い渡された問題なんです。ところがこれはケースとしてはなかなかいろんな問題点を含んでおる事件なんです。で、御承知のように、地主農地小作人から返還させるには前提として地方長官許可を得なければならない、こういうことに農地法の二十条ではなっております。そこで申立人はこの知事許可を得たということだけを疎明して、そうしてこの返還請求をしておるのです。その申立申請書の内容には、たとえば昭和二十八年の小作料滞納があったかとか、なかったとか、そういうようなことがちょっと入っているようですが、これは全然問題にならないことなんです。農業委員会を通じて正規に小作料を納めて領収書もちゃんとあるやつですから、それは問題にならない。問題になるのは二十条の許可を得たということだけでこの申請をやっておるわけたんです。こういう事案です。ところが、これはそれでぽんと仮処分決定が出たのですが、これは誰が考えたって農地法の中にはまず問題点が三つあると思うのですか、まず第一には、農地法には訴願という制度が許されている。だから知事の判があったって、一体訴願がどうなっているか、これは判事として事然考えるべきことでしょう。それから許可そのものか果して正当な許可かどうか、これもやはりこちらからいえば問題があるわけなんです。許可が正当だとしても訴願という問題、先ほど申し上げたこういう問題がある。それから最も重要なことは、本件について五月十八日に福島県の農地部からは、前には知事の判を押したものを出したけれども、少くとも今年一年は小作人に作らすべきものなんだという指令書が五月十八日に出ておるわけなんです、公文書ですよ。たから私は、もし判事ほんとう農地法というものを検討しておれば、これは法規上は当然こういう点はどうなっているかと聞かれてしかるべきものなんだ。申請人は今私が申し上げたような三つの大きな点は伏せて出しておるわけなんです。だからこういう問題がやはり審尋なり、弁論な開かないから起きてくる。小作人としてはこれは非常に重大な問題です。金持ち同士が一年間幾らか自分の財産が影響されてもいい、こういう問題じゃない。たんぼに入れないわけです、この植付期を前にして……。私は農地というものは、これは地主の方からすれば取り上げが一年間遅れたって何も農地というものはほかに逃げて行くわけじゃないので、ほんとうに取り上げできるものが取り上げできなかったということなら、法律上は損害賠償方法がある、しかしながら、取られる方から行けば、これは生活の基礎がくずれてしまうわけでしょう。で、そういうものについては、これは少くとも審尋程度はやってくれれば、今申し上げたようなことが必ずそこに裁判所に提出されるわけなんです。で、小作人あとから裁判所にかけつけて、これは一体どうしたことか、自分の方は県庁からこういう判を押したものをもらっておりますと示すが、もう判を押した以上は裁判所としては仕方がないでしょう。一定のめんどうくさい手続をとらなきゃこの問題というものは解決つかない。だから私はどういう場合だってそうだと思うのです。これだけじゃないですよ、これは……。だから何も一回だけ耕作者を呼んで聞いたって、地主権利保護に非常に差しつかえる。そんなことは私は全然考えられない。あなたは先ほどちょっと急いでやらないと債権者権利保護に云々と言われたから、私は農地に関してはそれは違うのだという立場からちょっと批判したわけなんですが、それは一般不動産以外の債権等で、ほうっておけば隠されるとかといったような種類のものとは、これは違うわけなんですからね。しかも地主小作間の問題は必ずいろいろな問題がからんできておるに違いないのです。だからそういうただいま一例をこれは申し上げたわけなんですが、これなんかを見ても、農地に関するものはやはり審尋くらいの程度はやる。相手方の言い分だけは一応聞いてやる、そうして決定をしたって少しも遅くない、こう考えるのです。まだまだほかにこういう例はありますよ。具体的な例をたくさん出すと、おそらく民事局長はどうも具体的なものの批判はしたくないというお答えになるだろうと思ってあまり言わないのですが、これは全くもう被申請人立場からしたらかわいそうなことなんですよ。そうしてしかもこの小作人裁判所にかけ込んで行くと、書記はこういうことを言っているのです。仮処分というものは一方の方で申請してきて保証金さえ積めばできろのだ。あなたの方も何かそれに対して反対の理由があるたら、また何か持っていらっしゃい、そうしてまた保証金を積めばそれで解けるのですからと、こういうあいさつでしょう。これでは法の威信なんというものはありませんよ。これは仮処分制度はなるほど双方からそういうふうに利用できるようになっておりますかね。やはり労働問題なり、農地問題なんというものは、もう少しこう慎重な考え方が私はいるだろうと思います。だからこういうものについても最高裁としては今の法律上はもう指示権限も何もないと、こういうことなら、あとはこれはやはり立法上の問題になってくると思うのです。こういう点、まあ一つ事例を申し上げたわけですが、どういうふうにお考えでしょうか。
  18. 関根小郷

    説明員関根小郷君) 今の亀田委員からお話ございましたように、具体的の事件は私の方で回避するようになるのじゃないかというお話しでありましたが、その通り具体的の事件につきましては、やはり訴訟になりまするとわれわれの立場からとやかく言えない。ただ、今申されました事例を機縁として、それならば立法措置を講ずべきこ左になるじゃないか、これは確かにお考え通りですけれども、非常に仮処分事件というものが特に戦後利用される割合が多くなりまして、御承知のように労働争議等におきましても、非常に大きな事件仮処分で事実上解決するような事件が多い。それから農地の問題におきましても、これは戦前もございましたが、かなり仮処分で実際上の解決をしてしまうようなことがあるんですね。そういうことではやはり仮処分というものの手続きが、余りに裁判官のほうに酌量する、酌量権限と申しますか、裁定権限と申しますか、大幅にいろいろなことができるというような規定では困る、もう少しこういった事件については、必ず口頭弁論を開けというようなふうに規定を設けたらどうか、これはもう従来から申されておる問題であります。しかし非常にいろいろな種類事件が出て参ります関係から、立法ができれば一番われわれとしてもありがたいことなんですけれども、これはかなり困難なことじゃないかと思います。でありますから、今申されましたように、いろいろ両方の立場考えるべきだという事件のうちで、特に社会問題あるいは経済問題なんかを惹起するような問題につきましては、裁判所としてもなるべく口頭弁論を開くか、あるいは審尋手続きをやるという方向に持って行くべきことは、これは特に指示しなくても当然のことじゃないかと思うのであります。ただ具体的の事例になりますると、今お話がございました具体的の事件というわけじゃなく、たとえて申し上げますと、農地の引き上げの問題につきまして、一応地方長官許可処分が出ておりますると、その許可処分というものは、直ちに何らの手続を待たないで無効なんだ、法律効力がないんだとは、普通の見方からいっても、そうはいえないのじゃないか、そういたしますると、許可処分に対して何らかの訴願なり、あるいは行政訴訟を起しまして、それを効力なからしめてしまうというところまで行けば別でありますけれども、その許可処分効力があるうちは、やはりそれを一々有効と認めざるを得ない、そういったことから、あるいはこの一方的な疎明だけで手続きを進めるということがあるのじゃないかと思うのです。これは私想像でありますが、そういったことも考えられるんじゃないかと思う次第でもります。
  19. 亀田得治

    亀田得治君 それははなはだ民事局長ともあろう人の答弁じゃないですよ。許可がありましても……、許可がありましたのは今年の二月の十四日です。許可後に解約の通知をすることになるわけなんです。民法の六百十七条で一年間はどうしてもこちらが作れるわけなんです、それまでの行政措置が全部有効だと仮定しましてもですよ。そういう立場に立って福島県庁が念のため行政指導をやっておる事件なんです。しかしそれは行政指導がなくても、判事ぐらいであれば、これは法律上当然わかるべきことなんです。そうでしょう。許可処分があったって、それから一年たたなければならぬ、これは農地法二十条と民法六百十七条の問題なんです。だからそういうことは、それはなるほど私も判事農地法から労働法から全部が一々わかっておるものとは思いません。思わぬが、それだけに労働問題なり、農地問題なりというものは、法規も複雑だし、それからやはり社会関係も複雑なんだから、だから弁論なり審尋という方法をとれば、これは相手方は出て来て、あるいは専門家もつけてわれわれの立場というものを裁判所で出すわけですから、こういう重大な間違いというものは起りっこないわけなんです。こういうことが起るというのは、ポンポン判を押しておるからです。これは私どもの組織の中に入って来た事案だから、こういうふうに掘り返されて来ているが、おそらくわれわれの手の届かぬところにある事案で、泣き寝入りで、ポンポン判を押されて、そのままになっておるのが相当あるんじゃないか、こういうことなら……。あなた自身がそう簡単に事をおっしゃるようでしたら、どうなんですか、そういう知事の判だけで今農地問題について仮処分をやられたら大変ですよ、知事の判は単なる一つの要件ですよ。
  20. 関根小郷

    説明員関根小郷君) 亀田委員の今のお話の次第は、地方長官許可といった場合に、いろいろな場合があるわけで、これは御承知通りと思います。今お話のように許可を受けてから解約をするという場合と、それから御承知のように合意解約をまずやる。そうしてそれについて許可を受けるということも考えられるかと思うのであります。でありますから、私の先ほど申し上げましたのは、これはお互いにこの土地は地主に返す、地主が引き取るという約束ができ上って、地方長官許可を受けるというような場合には、その合意書と、それから知事許可処分の写しでも出せば、そうすれば一応は裁判所の方では、これは適法にこういった解約があったのだという推定をする場合があろうではないかということを申し上げたのであります。でありますから、今民法の条文をお引き出しになりましたが、そういう場合を私は申し上げているわけじゃなかったので、具体的の事件は、私は存じませんから、具体的の事件を中心にお話しになると、あるいは私のお答えがまた出てくるかもしれません。
  21. 亀田得治

    亀田得治君 これは当事者間で合意ができておらない事件なんです。合意がないにもかかわらず、地方長官が一方的に判を押したというところから、実はこの問題が起きているというところに……、事案はそういうことなんです。合意の解約になっておらない事案なんです。だからこんなものは、判事が少し慎重にかまえておやりになれば、たとえば私がその際判事であれば、相手方を呼ばぬだって法規の上から見たって、こんなものが出ておかしいじゃないか、そうなるべきことなんです。それをポンと判を押してある、これははなはだふに落ちないのですよ。だからあなた自身が今そんなことはなかろうというふうにお考えになっておるくらいに、ふに落ちない。それからもう一つ、いろいろな法律が出た、その際に最高裁としては、特殊な法律について裁判上必要な問題点等については、これは裁判官の方にずっと資料等をお出しになっておると思うのですが、その点どうでしょうか。
  22. 関根小郷

    説明員関根小郷君) 裁判官がいろいろな法律を知ってなければならないことは御承知通りであります。それで特にこの裁判上出てくる法律が非常に多いものについては、国会で論議された質疑応答とか、それから立案の趣場等をパンフレットにいたしまして、裁判官に配っておりますが、これは一応は参考資料という意味であります。
  23. 亀田得治

    亀田得治君 そこでこの農地法裁判上重要な個所というのは、民事局長どの点を重要だとお考えですか。そうしてその点について福島地裁初め全国裁判所農地法に関する裁判官として注意すべき点を、そういうパンフレットにしてお出しになったことがありますか。
  24. 関根小郷

    説明員関根小郷君) 農地関係におきましては、おそらく農地法の問題だと思いますが、これは特に解説書は配っておりません。おそらくあのときは、法律を、改正法をまとめまして、従前の特に農地関係は、ときどきかなり改正がございます。でありますので、裁判官法律を適用いたしますときには、現在の農地法ではなくて、問題の起きた当時の法律が相当問題になるのであるますので、従前の条文から変ってきたところをずっと関係条文にまとめまして、そういったものを配っております。
  25. 亀田得治

    亀田得治君 その変るたびに変ったところを出しておる、農地法改正法案だから、そういう形をとって出しておるということですか。それではその変る前の元の農地調整法並びに自作農創設特別措置法ですね、この時代のものについて裁判官として特に注意しておるべき点をお出しになったことがありますか。
  26. 関根小郷

    説明員関根小郷君) この農地法に関する限りは、そういった解釈的なものは出しておりません。要するに、条文だけにとどめております。これは特に農地法を軽く見ているわけではございませんで、労働関係にいたしましても、それからそのほかのいろいろな各種の法規が出て参りますが、それについて一々全部註釈書を出すというようなことはとうてい予算上もできませんし、事実上できないことであります。やっておりますのは、しょっちゅう使いまする訴訟手続関係というようなものについてはやっておりますけれども、それ以外やりましたら限りがない、そういった意味で、法律改正条文はなるべく手元に早く知らせるという意味で送っておりますが、それ以上はやっておりません。
  27. 亀田得治

    亀田得治君 そういう状態だから、農地問題を私は軽く見ているのではないかと、こう想像するのだし、やはりそういうことがずっと下級の裁判所に私は影響しておると思うのです、われわれ実際に接触してみて……。しからば私改めて、こういう農地法についての問題点を明確にして一つ注意をしてほしいと思う点もありますのでお聞きしますが、それじゃ民事局長自身は、この農地法のどことどこが実際の裁判官としてはぜひ心得ておらなければならぬ点だというふうにお考えでしょうか。
  28. 関根小郷

    説明員関根小郷君) それはちょっとむずかしい問題でございまして、農地法全部を研究しなければ申し上げられないかと思うのであります。ただ具体的に申し上げますと、農地の問題で裁判所に出て参りますのは、新しい憲法後は、御承知のように農地買収の問題で相当問題になりました。農地買収問題がひとまず今事件が少くなって参りましたが、それからその次には今問題にされておりまする引き上げの問題ですね。これなどはかなり大きな問題として出て来るかと思います。で、結局姿となって出て参りますのは、農地の返還の問題と、さらにもう一つは、御承知のように地方長官の処分に対する不服の行政訴訟の面ではかなり農地の問題が出ております。先ほどパンフレットのようなものは配ってないかというお話で、申し上げなかったのですが、私申し上げるのが遅れて恐縮なんですが、実は戦前から小作問題については、かなり前でありますが、小作調停法ができましたその当時から、特に農林省と協議いたしまして、小作官と地方の裁判官との合同協議会を開いております。そういった席上で、裁判官の方といたしましても、農地の現在の実情を明らかに教えていただく、それから小作官の方のお立場になると、法律問題を聞くということで、かなり有効にその会議が続けられているわけであります。それでこの会議は従前は小作調停協議会と申しましたが、その後農事調停ということに変りまして現在も続いております。そういった席上で各地の小作官と、それから裁判官農地関係実情につきまして、相当論議をした上で、そうして実情については裁判官の方でかなり研究する機会を与えられておるわけでございます。
  29. 亀田得治

    亀田得治君 農地に関する民事事件、行政事件は別として、民事事件としてはそんなに問題点はたくさんあるわけではないのでしょう。今、民事局長みずから言われた点だけなんですね。農地法の二十条とそれに関連する訴願規定と、そうしてさらに第三条、これはまあ釈迦に説法のようなことになるかもしれませんが、三条の所有権移転に関する地方長官許可と、こういうことだけなんですね。しかしこれは効力規定なんですから、重要な問題なんです。だからこのくらいのことはすべての裁判官がきっちり全部知っておるというくらいに周知徹底さしておいてもらいませんと、これは大へんなことになりますよ。それができておらぬからこういう福島県のような事件が起る。それから昨年のことですが、おそらく民事局長にそういう下級審のぶざまなことは耳に入らんでしょうから、私参考に申し上げておきますが、大阪の布施簡易裁判所昭和二十九年(ト)第六号という事件です。これは二十九年の六月十八日に仮処分決定をしておる。申立人は角田、被申立人は芝野、この二人ですね。これなんか、全くこれは裁判威信を傷つけるもはなはだしいのですよ。なぜかといいますと、この事件は二人の間で売買があったというのです。実際は、角田というのは教会に関係しておる人で、芝野はちょうどそれに信心して入れ込んでおったのですね。そういう関係で妙な格好で売買の形で所有権がとられようとして、そうしてそのことが信仰がさめて問題になってきたわけなんです。そういう事件なんです。ところが、この角田がおれはこれの所有者なんだということで布施の裁判所仮処分申請をしたら、それを許しちゃった。しかもこの判事は信心はしておるのです。信心しておる。そうしてお前はもうとにかく売買の判を押したのだからあかんと、そう言われてびっくりして私のところに飛んできた。私ちょうど農民組合の事務所におりましたが、一緒に飛んで行ってみると、一時間前に判を押したところです。それで私、これはいろいろ事情はあるのですが、そういう事情はまた口頭弁論になってからにして、形式的に考えても、知事の判があるのですか、判事はそれを確めたのですかと言いますと、それは知らない。判がないのですよ。確めてもいない。そういう効力規定があることも知らないのです。だから、こういうことで仮処分がやられて、そうして一時間前に判を押したんだが困ったこっちゃと、こんなことで司法威信が保てるかというのです。法律専門であなたが飯を食っているわけですからね。こういう実際に私どもが少し耳に目に触れるところを見ても、もうはなはだしくこの農地法に対する取扱い態度といいますか、これが非常に徹底しておらない。戦前小作争議が盛んであった頃には、相当これは判事も注意しておりましたよ。しかしどうも最近はそうじゃない。こういう場合に、私一つあなたにお聞きしますが、こういうぶざまなことを判事がやりましても、判事というものは良心に従ってやればいいのだから、ほかからはとやかく非難すべきじゃないのだと、それを破るのは上級の方に行って破ってしまったらいいのだと、こういう考え方であなたはもうよいというのか。あるいは私は、国民のだれもが見て、何だあんなことをされてと、こういう感じを受けるようなことをやった場合には、やはり私はいかに裁判官といえども何らかの処置をすべきものだと思うのです。処置の仕方は、たとえば内部では懲戒とか、あるいは外部からやる場合には弾劾裁判所の判決とか、そういうことはありますが、そういうのは、従来私が聞くのでは、主として何か私行上ぶざまなことがあったとかいったような場合が多いようです。職務上のことについては、どうも裁判官というものは独立権限を持っておるのだと、こうういうことにとらわれ過ぎるがゆえに、相当国民から見るならば批判さるべき判断をしていても、あまり懲戒とか、そういう問題が起きておらぬように思うのですが、私はそれじゃならぬと思うのですが、そういう点は民事局長実情とあなたのお考えというものはどうでしょうか。
  30. 関根小郷

    説明員関根小郷君) 非常にむずかしい問題でございまして、今お話がございましたぶざまなことやっておる、これは私も実は果して亀田委員がおっしゃる通りかどうかわかりません。わからないだけに、そういうことを仮定論として申し上げるのもどうかと思いますが、もし国民全般が考えまして、これは原告も被告も合わせました意味国民ですね、一方だけでなくて、両方から見てけしからぬということになれば、これは国民全体の指弾を受けることになる、そういった声はもちろん裁判官といたしましても聞かなくちゃいかぬことだと思います。そして反省に反省を加えなくちゃいかぬ、その点は当然だと思います。それから先ほど申されました職務上のことになると、どうも懲戒もないし、弾劾もないとおっしゃったのですけれども、職務上正当の段階を越えたものについてはやはり懲戒に付されざるを得ないのではないかと思います。でありますから、著しい非行があるような場合には当然懲戒あるいは弾劾の対象になるわけであります。現に懲戒問題になったこともございますが、そういった意味でそれに達しないものについては、国民一般の方々の声を聞かないということは、これはいかぬと思います。
  31. 亀田得治

    亀田得治君 職務上の関係から懲戒になったのはどの程度今までおありでしょうか。
  32. 関根小郷

    説明員関根小郷君) たとえば、これは非常に簡単に申し上げますと、少年の事件なんかで、少年が悪いことをしたときに、一定の期間懲役に入れるというようなことはいけないのですね、長期何年、短期何年という、そこにゆとりを設けた刑を課さなくちゃいかぬのを、それをうっかり成年扱いをしたというような場合には、これはかつて懲戒になったことがございます。そのほかにはそう懲戒の事例は多くございません。それから最高裁判所が出発いたしましてから、例の誤判問題というのがございましたが、あれは結局懲戒ということで終ったわけでございます。
  33. 亀田得治

    亀田得治君 そういたしますると、先ほど引用しました布施のですね、これは口頭弁論を一回開いてすぐこれは取り消してしまっておるわけです。判事仮処分決定を取り消しておる、そうして取り消しの状態になっておるわけです。だから事案としてはこれは済んでおるから、あなたの方でも十分調べてもらいたいと思います。しかし私は福島県の事件が起きたし、福島県の地検はただいまはなはだめんどうくさいことですが、異議の申し立てをして正式の裁判の過程にあるものですから、まだまだ言いたいことがたくさんあるのですが、これはちょっと遠慮しておくわけですが、大阪のなんかは仮処分事件としては済んでおる、だから検討してほしいと思うのでありますが、判事が当然知るべき第二十条、第三条の効力規定を知らないのですね、これは私明らかに職務を怠り、あるいは司法威信を汚した、こういうことになると思うのですが、あなたはどうお考えですか。
  34. 関根小郷

    説明員関根小郷君) その農地法法律を知ったか、知らないかということは、私具体的の事件判事が果して知っていたかどうか存じませんけれども、法律の適用を、法律があるのに忘れて適用しなかったという場合には、これは今お話がございましたように、その後異議とか、取り消しの手続きがございまして、そうしてそこで訂正されるわけであります。最終審になりまして最高裁判所でそれをやりますると、それを改めるにはまた別に再審とかいう手続きでやらなくちゃならぬ、でありますから、最後の段階になりますとあるいは懲戒ということになるかも存じません。しかし下級裁判所裁判官についてそういうことがあるといたしますると懲戒になるかもしれませんが、私今ここでちょっと断定はできかねると思います。具体的の事案をみませんと、このことだけでは直ちに懲戒になるかどうかということははっきり申し上げられない次第です。
  35. 亀田得治

    亀田得治君 これは最高裁判所の方々がそういうゆるい考えを持っておられるとしたら、私これはもう非常に問題だと思うのです。私も法律家の端くれですから、司法権独立立場というものは十分尊重して行きたいと思っておるのです。しかし独立立場司法権に与えるというのは、それは何といったって国民がそれに信頼して行く、こういうことが裏付けにならなければこれは形だけですよ。裏では舌を出して笑っておることになるのですから……。だからそれを実質的にも司法権というものはなかなかきっちりしておるのだということのためには、農民にとって、あなた第三条の効力規定とか、第二十条の効力規定というものは、これはもう大事な規定なんですからね。これを知らないということになったら農民は裁判所というものをどう考えるのですか。私はこれはほかのむしろいろいろな手続規定なんかをちょっと誤まったというようなことなんかの問題じゃなかろうと思うのです。だからこの問題はもっと最高裁としても反省してほしいと思うし、そうして国会等でもあまり裁判所のやることについては口を出さぬような傾向がありますが、われわれもその気持もわかるし、またその意義も十分あるわけなんですが、しかしこういう農民にとって大事なことについて、本日まあ民事局長から私が答えを得たような程度でありますと、あらゆる意味で私はこれは考え直さなければいかぬと思うのですよ。本当に司法権独立を正しい意味で守るには、しからばどうするのか、これは判事に対するわれわれの成規の法律に基く対処の仕方も必要でしょうし、また先ほど問題になったような仮処分規定そのものをもある程度改正して行くというようなことも必要になってくるのじゃないかと思うのです。だからそこでもう一度最初の質問を私繰り返しますが、こういう実態なんですよ。現在こういう実態ですから、私は農地問題については少くとも審尋くらいはするように、すべきだということを最高裁として何らか私は下級の裁判所でもわかるように、そういう手を打つ、裁判官会同を通じてでもよろしいし、それはもう当然だと私は思うのですが、これだけ事案が出ておるのですから……、最初のときにはこういう問題に触れないという御答弁でしたが、結論としてどうでしょうか。
  36. 関根小郷

    説明員関根小郷君) この事件の問題についてのお話のように、一方の見方からおっしゃることと、反対の側からお聞きすることとまるで違うことが多いのでありまするから、小作人の側だけを聞くとこうなる、あるいは地主の側だけから聞くとこうなる、まるで正反対のことが多い、裁判所としてはその中道を行かざるを得ない、でありまするから、裁判所のやることがあるいは地主にとってとんでもないことだといわれることもありますし、小作人からは非常に恨まれる場合もある、しかし裁判所はどっちの味方をするということは当然あり得ないことでありまするが、今お話のように、相当重要な問題については、これはできるだけ慎重な手続きをとるべきことは当然のこと、今、亀田委員がおっしゃったことがほんとうかどうか私にはわかりません。しかしおっしゃる通りで、かなり問題の大きい事件といたしますると、そういった問題については、あるいは口頭弁論を開くべきであったかもしれないと思うのです。具体的の問題を離れまして、かなりその地方々々の重要な問題については、むしろわれわれとしては口頭弁論を開けと言いたいくらいであります。そういったことを指示ではとうてい私はできないと思いますが、先ほど申し上げましたように、地方々々の裁判官会議がございますので、その席でわれわれの方から課長が参りますから、そういった席になるべく懇談的に御趣旨を伝えたいと思います。そういったことによってお互いに反省すべきことを反省して行きたい、こういうふうに考えております。
  37. 亀田得治

    亀田得治君 最後に要望しておきますが、ともかく私が今まで申し上げておるのは、実態的な関係はなるべく避けて申し上げて、少くとも法律的な観点だけからみても、判事としてはなはだ手抜かりじゃないかという面から特に申し上げておるつもりなんです。そこでやはり事件が終了したならば検討してもらいたい。私どもの目に入った以上は、これはもう明らかに私どもは懲戒に該当するし、そうしてまた場合によっては、これは著しく職務を怠っているということにも私なりかねないと思うのです。そうなれば当然これは訴追さるべきものなんですね。私どもは裁判官を尊重するけれども、しかしながら、そんなに甘やかしておくということは決してよくないのですから、そういう点を一つよく進行の適当の過程において検討してもらいたいと要望して、私の質問を終ることにします。
  38. 関根小郷

    説明員関根小郷君) 今、亀田委員が最後に仰せられた点ですが、もしそういった疑問の事件がございましたら、一つ具体的の事件をわれわれの方にお示しいただきたいと思います。これは進行中の事件は今お話のように調査することは非常に問題かと思いますが、終ってしまった事件については、われわれの方で調査いたしますから、事件名とそれから当事者名、それをお知らぜいただきたいと思います。あるいは調べられましたら、また御報告してもよろしゅうございますから。
  39. 清澤俊英

    清澤俊英君 関連でちょっと質問申し上げたいというよりは、むしろ御要望申し上げたいと思います。大体亀田君の法律を中心にした質問応答で問題は解決していると思いますが、最近、戦争以来、小作争議等がなくなりましたので、従って立禁というような処置があまり裁判所がとられなくなった関係かと思いますが、また最近ぼつぼつと方々に立禁がまた現われて来ましたが、これらを聞きますと、立禁の申請手続をしますれば、無条件で許される、こういう格好が出ておるのでありますが、戦前の激しい係争中に起きました立禁もしくは仮執行等に対しましても、一応は口頭弁論を開いて、これを許すべきか、許すべからざるかを審議していただいて、それからやった。これはもう一つの長い間の慣例だと思うのです。ということは、もうこの立禁を立てますれば、立ったあとで、今の時期に立てますれば、すぐそこへあとに耕作する、労力も投資する、あるいは肥料も入れる、作付もするというような、なかなか解決しにくい問題がたくさん残って来る。あるいは収穫期にこれをやりますと、争いの済まぬうちに一晩の夕立で田の方に水がたまっちゃって、カモがみんな食べて、争うべき品物が全部一晩のうちにどっかへ行ってしまうというような事件がひんぴんと出ましたり、また不意に出て参りまする立禁が元になって、つい直接行動等が起きたりして、非常に事件が急速に紛糾をしまするので、従ってそういう実情の山積しておりますことは、当然事前に一応立禁申請に対してはどちらがやった場合でも、口頭弁論を開いて、そうして一応は軽く調べて、それから立禁を許す、こういう不文律の私は習慣があった、こう思うのです。最近どうも農地が改革せられましたり、あるいは戦争中にそういう事件がなくなりましたために、ほとんどそういう習慣、いい習慣ですな、をなくしておられまするので、従って今、亀田君が申しますような、至って不合理な立禁状態が来ておるというようなことに相なりまするので、一つただいま局長が言われる通り、何か機会がありましたら、そういうような方向に御相談していただくように一つ御努力をお願いしたい、こう御要望申し上げておきます。
  40. 関根小郷

    説明員関根小郷君) 御趣旨に沿うようになるべく努力いたします。
  41. 江田三郎

    委員長江田三郎君) ちょっと今のに関連して農林省の方にお尋ねしますが、今の民事局長の御答弁の中にも、小作調停法の時代から、小作官と地方の裁判官との合同協議会を開いて来ておると、こういうことでございましたが、農林省関係では小作官の方から、ただいま問題になっているような事件については口頭弁論を開くようにというような御要望でもされたことがございますか。
  42. 立川宗保

    説明員(立川宗保君) 私の承知いたしております限りでは、従来特に裁判所の方にさようなことを正式に申し上げたことはないと存じておりますが、十分事態を考えまして今後適当に処置いたしたいと思います。
  43. 江田三郎

    委員長江田三郎君) 私ども戦前小作争議にいろいろ関係して参りましたが、その当時でも小作官の方からは、そういうことをたえず裁判所に要請もし、連絡もとっておやりになったと思うのでして、裁判所が立禁等をなさるときでも、一応小作官の意見等も当時は聞いておられたと思うのですが、そういう点は今の管理部長お話では、戦前の場合よりもずっと農林省としてはもう遠慮なさっておるということなんでございますか、特別に理由ございますか。
  44. 立川宗保

    説明員(立川宗保君) 戦前の場合より遠慮をしておるというつもりはさらさらございません。農地法規定が厳正公平に守られるということについての熱意は、決して時代の変遷に従って変るというつもりはないのでございますか、従来正親に裁判所の方にさようなことを申し上げたことがないのは、最近非常にシリヤスな問題が数多く起ってなかったというようなことでもあったろうかと思いますが、いろいろ最近、この前の機会にも申し上げましたように、農地法二十条にかかります問題が頻発をしておりますので、十分慎重に検討いたしまして適当に処置いたしたいと考えております。
  45. 亀田得治

    亀田得治君 ちょっと管理部長に簡単にお聞きしておきますが、農林省、あなたの方から出してもらった昭和二十七、二十八年の農地年報、これの三百六十二ページを見ますと、農地調整法違反事件、つまり刑事事件になったやつの統計が出ておるのですが、この統計はこれは裁判所または検察庁から出してもらった資料でしょうか。
  46. 立川宗保

    説明員(立川宗保君) これは私どもの行政の組織を通じまして取り調べました資料でございます。
  47. 亀田得治

    亀田得治君 そういたしますと、これは民事局長は管轄外ですが、裁判所等ではまた別個な統計になっておるかもしれんですね。その点は……。
  48. 関根小郷

    説明員関根小郷君) 刑事の関係としては実はちょっと今存じませんが、おそらくかなり詳しい統計をとっておりますから、あるのじゃないかと思いますが。
  49. 亀田得治

    亀田得治君 それじゃまた別個にこれは出してもらうことにして、それから管理部長お尋ねしますが、二十八年、二十九年の数字等は集約できておりますかしら……。
  50. 立川宗保

    説明員(立川宗保君) 現在地方庁の方から報告をとっております過程でありまして、一部参っておりますが、全部かような形で集計はできておりません。
  51. 亀田得治

    亀田得治君 この統計の内容によりますと、たとえば昭和二十三年には違反件数が三千二百五十五となっております。ところがどんどん毎年下ってきて、昭和二十七年には百六十一件と非常な違いなんですね。ところが実際の社会の情勢は、やみ小作料が横行し、土地取り上げが反動的な空気を反映して横行しかけておるわけです。これは管理部長はこの統計をどういうふうにお読みになっているか、実際の社会もこの通りと、こういう解釈でしょうか。
  52. 立川宗保

    説明員(立川宗保君) これは正規の方式で調査をいたしました結果でありますので、この数字と実態との関係の問題については、簡単にどうだ、こうだということが申せませんと思いますが、私個人の感想を申すことを許していただけますならば、最近公訴の提起あるいは検察機関で問題になっております件数が非常に減っておりますが、事柄の、違反事実の実態は、必ずしもかような比率では減っておらぬのではなかろうかというような想像をいたします。
  53. 亀田得治

    亀田得治君 まあ私も、これはだれが考えてもそう思うでしょうが、そうすると、大体検察庁なり、そういう農地法に関する罰則を取り扱う諸君がどうも農地法を無視しておる、軽く考えておる、そういうことの表われがやはりこういう数字になってきているのじゃないか。幾ら検察庁に持って行ってもだめだというふうなこと、これはちょうど民事関係においても判事が三条や二十条の効力規定を忘れておったり、そういうことと私は同じ傾向が刑事関係にも、こういうふうな形でやはり出てきているのじゃないかと思うのですね。がしかし、これは私の想像ですが、これはあらためて一つ農地に関する重要な問題点ですから、適当なときに法務省なり、あるいは最高裁の刑事局長裁判の結果等については最高裁の刑事局長がいいと思うのですが、何か適当に委員長の方で責任者を呼んでもらって、私もう少しこの実態をそういう面からも明らかにいたしたいと思いますので、これは要望しておきます。
  54. 江田三郎

    委員長江田三郎君) よろしいですか……。それじゃあこの問題はこの程度にいたしておきます。  それからなお、亀田委員からも要望がありまして、それに民事局長もあるいはまた管理部長もお答えになりましたが、一つこういう問題については、社会的な非常にシリアスな問題でございますので、今後十分御検討をされてやっていただきたいと思います。     —————————————
  55. 江田三郎

    委員長江田三郎君) それでは次に競馬法の一部改正に関する件を議題にいたします。  競馬における勝馬投票券の購入取次ぎに関する不正及び弊害の防止に資するため競馬法改正することにつきましては、五月三十日の委員会の開会前におきまして一応御相談いたしておきました。また、その後各派の理事のお方とも連絡をとって参りましたが、本日改めて議題として御協議を願い、何分の決定を願いたいと思います。  なお、御協議に先だちまして、この問題に関しまして、農林省、警視庁及び警察庁等の見解を聞くことにいたしたいと存じます。最初に農林省の方の御見解をお聞きいたします。
  56. 原田伝

    政府委員(原田伝君) ただいま委員長からお話のございました問題につきまして、農林省の所見を申し上げたいと思います。  競馬の投票券、いわゆる馬券の購入の取次業ということにつきましては、実情を申し上げますと、かような業務を行うための場所並びに設備等につきまして、現在法的には何らの規定がございませんために、全く自由にさような営業をいたしておるのでございまするが、実際には単なる取次ぎでございませんで、いわゆるのみ行為、競馬法第三十条第三号違反の行為をいたしているものと考えられるのでございます。しかしながら、表面単なる取次ぎという形をとりまして、実際において依頼者からの依頼に応じました馬券の購入というものをしないで、のんでしまうという形態でございますので、その事実を立証することが非常に困難でございまして、そのために、申し上げました競馬法三十条第三号の違反の取締りの実効がなかなか上らない、こういう状態になっておる次第でございます。そこで、他の類似の競技につきましては、自転車競技法なり、小型自動車競走法なり、モーターボート競走法などでは、あるいは法律の一部改正により、あるいは当初からの立法の際にかような取次業者に対しまする罰則の規定が制定せられておりまして、このために申し上げましたような取次業というものは禁止されておるのでございますが、ひとり競馬に関しましては、さような徹底した罰則規定がございませんために、かような取次業というものが繁盛いたしまして、特にこの点は場外馬券発売所の設置の少い地方競馬に関しまして、その影響が多く現われておるのでございますが、現在のところでは、全国を通じましてかような業者が一千以上に上っておるという状態でございまして、申し上げましたようなやり方でございますので、はっきりした計数はつかみにくいのでございますが、おそらく一日に一千方円以上の利得を得ておるのではなかろうか、かように推定される状態でございまして、これが直ちに競馬施行者の馬券の収入に甚大な影響を与えるばかりでございませず、社会公安上からもこれを閑却できないという問題になって参っておるのでございます。  これらの事態にかんがみまして、競馬の健全な発展をはかり、取次業者の不当な利得を押えるというために、何らかの措置が必要ではないか、かように考えまして、いろいろ研究をいたしておったのでございまするが、たまたま昨年の暮れに最高裁判所の判例が出まして、申し上げました競馬法の三十条第三号の違反の行為というものは、相当広く解釈すべきものであるという趣旨の判例が出ましたので、この判例の線に沿いまして、徹底した取締り、事実上ののみ行為の取締りというものを強化できないかという考えから、法務省その他関係方面と御相談をいたしたのでございますが、この判例の内容は、改正前の自転車競技法ののみ行為に関する判例でございまして、すでにその自転車競技法そのものについて、直接収次業者の禁止の規定が置かれた現在、最高裁判所の判例そのものだけにたよって、取り締りを強化するということにつきましては、いろいろ実際上徹底し得ないといううらみがございますので、やはりこれにつきましては、はっきりした同種競技関係と同様の、しかもひとり競馬のみが残されておる問題を、法的にはっきり規定を置くべきではないか、かようなふうに考えられまして、自来この種の立法措置を取り運びたいと考えまして、立法技術の点につきましていろいろと研究を進めて参った、かような状態でございますので、この際かような問題につきまして、ただいま御審議になりますところの改正法案が実現いたしますならば、競馬の健全な発展をはかります上におきまして、非常に効果がありまして、まことに私どもといたしましてもけっこうな御趣旨であると、かように考えておる次第でございます。
  57. 江田三郎

    委員長江田三郎君) 次に最初にお諮りしましたように、参考人として警視庁の防犯部長をお呼びしておりますので、警視庁の方で見られた弊害の実情を御説明願いたいと思います。
  58. 養老絢雄

    参考人養老絢雄君) 警視庁立場から、いわゆる馬券取次所、つまり街頭に店を張りまして馬券の購入の委託を受けるという名目で手数料をとって、委託を受けるのでありますが、事実は相当ののみ行為をしておるのではないかと思われるそうしたことにつきまして申し上げたいと思います。  現在東京都内にはそうした取次店といいますか、取次所が数百個所あると思うのであります。中には非常に何といいますか、はっきりした看板を立てまして、非常に確かな店のように見せておるのもありますし、中には非常にもぐったような形で営業しておるものもあるのでありますが、こうした取次所は昨年の五月ころまではほとんど見るべきものがなかったのでございます。数個所都内にあった程度ではなかったかと思うのでありますが、それが急激に増加して参りまして、ただいま申しましたように、今日では数百個所もあるのではないかというふうな状態になっておるのであります。これは二十五年ごろ自転車競技法によります車券の取次所が非常にはやっておったのでありますが、これが二十七年の七月に改正を見まして、車券の購入の委託を受けるということは、そのこと自身が業として行われる場合、ないしは不特定多数の者から利益を得るためにやることはいけないということになりましたために、一時にこれが終息をいたしたのでありますが、その後競馬法には同様の規定がない。ただ勝馬投票類似の行為をしてはならないという規定があるのでありますが、馬券の購入委託を受けること自身を直接に禁止するような規定がありませんことが、だんだんと、何と言いますか、法の盲点として気づかれて参ったのではないかと思いますが、急激にふえて参ったのであります。われわれの考えからしますと、自転車競技法等にそうした規定が特に設けられたということが、かえって競馬法に同様の規定がないことに対する反対解釈を生じまして、自転車競技法等にはあるにもかかわらず、競馬法には同様の規定がないということは、つまり競馬についてはそうした行為が許されるのだということになったのではないかと思います。そういう事情からかと思いますが、非常にふえて参りました。これは何と言いますか、都会の街頭各所に出て参りまして、正常の生産活動の行われております個所にこれができましたために、サラリーマン等が簡単にこれに応ずることができ、結果的にはわざわざ競馬場に行きまして、馬券を買う場合と同じように、当らなければそのままでありますが、当れば同様の払い戻しを受けるわけでありますから、これに応ずるところのお客の方では、何ら自分たちの利益を害されるということはない。そういうことで非常に盛んになったかと思いますが、そうした町の中で、正常な社会活動の行われる所にこうしたものを持ち込まれております関係上、相当世人の批判を受けたのであります。そこでわれわれの立場としても、何とかしてこれを取り締りたいということから、競馬法の勝馬投票類似の行為をしてはならないという規定に該当する面がありはしないかということを研究いたしまして、本年に入りまして、三十数件の取締りを実施いたしたのであります。その結果を見ますと、これはまだ事件としては公判等が終了いたしておりませんけれども、ほとんどがのみ行為をしておるようであります。しかし、のみ行為をしておるかどうかということを立証する段階になりますと、非常に困難を来たすのでございまして、一応その取次店でお客の委託を受ける。そうしますと、競馬場に従業員を派遣しておりまして、電話で連絡をする。それからその競走の結果を直ちに受けるようになっておるのでありますが、一々その連絡の内容等をそばにおって警察の者が傍受することもできません。また競馬場におきまして、どういうふうに委託を受けた馬券等を買っておるかという状況を詳細にこれは向うに知られないように調べることが非常に困難なのであります。結局こちらから取り締りますと、適当に捨てられたような馬券を拾っておりますれば、これだけちゃんと買っておるのだということを言われれば、なかなかのみ行為があったということは立証しにくい。中には非常に原始的なものがありまして、近くの旅館や茶屋などの電話を借りておるというのでございますと、その店の人からあとで聞きまして、どういう内容の電話の応答をやったかということで立証し得る場合もあるのであります。最近検挙いたしましたものなどでは、携帯用の超短波機を持っておりまして、その店とそれから競馬場に派遣しております取扱い人と言いますか、その間に連絡をし合う。こうしたことになりますと、非常に捜査上立証に苦労するわけであります。こうしたところの弊害ということを具体的に一々ここであげることはできないのでございますが、われわれ取締りの捜査官の苦労、人員を要すること、費用を要すること、非常に時日を要すること等を考えますと、もしこうした規定改正ができまするならば、おそらくこれだけの警察の活動というものが、改正によって一挙に私は解決を見る結果になるのではないかということを思っておるのであります。そういう意味からいたしまして、われわれの今までの捜査の苦労をいたしましたことからいたしましても、ぜひこうした規定改正を得られますならば非常に幸いだというふうに考えておるわけであります。
  59. 江田三郎

    委員長江田三郎君) 御質問ありませんか。
  60. 森崎隆

    ○森崎隆君 この問題は相当以前から私たちは聞いておりますが、今ごろになってやっと気がついたような格好で、本省から話があったということは、ある意味で今日までこれを捨てておいたということにもならぬともいえないわけでございます。それで特に農林省関係ではいつごろからこれに手をつけられたか、またもう少し詳しい調査をしておるのかどうか伺いたいと思います。
  61. 原田伝

    政府委員(原田伝君) お答えを申し上げます。この馬券の取次業の問題は、先ほど申し上げましたように競馬につきまして罰則規定がございませんために、それ以前におきましては、むしろ他の競技、たとえば競輪等についてこれが非常に盛んに行われております。その当時におきましては、競馬につきましてかような現象があまり多くなかったという時代がございまして、それが昭和二十七年の七月一日以来、競輪に関しまして罰則規定ができまして、その方に行くことができなくなったということになりましてから、だんだんと競馬につきましてかような業態が発生して参る傾向が現われて参ったのでございます。さような状況でございましたので、昭和二十八年に入りましてから主としてその被害を受けておりました地方競馬の開催の主体者等からこの問題につきまして何らかの措置をすべきであるという趣旨の陳情もございまして、私どもといたしましても、その事情をいろいろと調べてみますと、これは放っておけないのではないかというふうに考えまして、対策を考究いたしたのでございますが、当時たまたま競馬制度の民営移管の大きな問題が持ち上っておりまして、競馬につきましていろいろ問題はあるが、この民営移管の根本問題というものを何とか片づけなければならないというような御意見も多うございましたので、その根本問題と関連して必要な法制上の改正を行うというふうにしたらどうか、かような考えに立っておった次第でございます。ところがその民営移管の問題につきまして、いろいろ調査会等におきまして審議をされました結果、結局昨年日本中央競馬会法というものが制定されることになりまして、中央競馬について民営の移管が行われたのでございます。その際、地方競馬の問題についてどうするかということにつきましていろいろ御論議があったのでございますが、地方競馬につきましては、さらに研究をした上でその処置をきめるべきであるというお話になりましたので、せめてその際、日本中央競馬会法の法案の付則をもちまして、競馬法改正いたしたらどうかということを考えてみたのでございますが、その日本中央競馬会法の内容との関連が十分でないという考え方から、ついに法案の内容は日本中央競馬会の組織運営に関しまして直接必要な規定を設けるということにとどめてしまったのでございまして、そのためにその機会におきましても法律改正の措置がとれなかったということでございます。その後におきましても、先ほど申し上げましたように、この問題につきましては何とか措置をしなければならないという考えで研究を続けておったのでございますが、先ほど申し上げましたように、昨年の暮に最高裁におきまして新しい判例が出ましたので、これに基きまして取締りの徹底が期し得るのじゃないかという考えから、この方法につきまして関係方面と協議をいたしたのでございますが、やはり一応判決の趣旨から見ますれば、相当広範囲にのみ行為の取締りができる。従いましてこの取次業というものに対しましても取締りが相当徹底できるのじゃないかというふうに見えたのでございますが、十分研究いたしました結果、やはり立法措置が必要であるという結論に到達いたした、かような経過になっている次第でございます。
  62. 森崎隆

    ○森崎隆君 これをですね、今の説明を聞いてよくわかるのですが、ある意味ではやはり今までに立法措置をしなかったためもあろうかと思うのです。と申しますのは、これは自転車競技法におきましてもモーター・ボートの競技法におきましても、小型自動車の競技法におきましても、ちゃんと罰則ができ上っている。この競馬だけについてはこんなところに大きな穴があいたままこれを今まで放置しておいたというところに問題があるのです。  それともう一つ、多少根本問題になるかと思いますが、こういうような抜け道ができ上るのも何と言いますか、場外馬券発売所ですか、これは正規にあるわけですね。これがあるからこういう抜け道ができるのじゃないかという気もするのですが、この際、根本的に場外馬券発売所というものについて再検討する意思があるかどうか、それをお聞きいたしたいと思います。
  63. 原田伝

    政府委員(原田伝君) 場外馬券の売り場というものにつきましては、これはいろいろ沿革もございまして、昭和二十三年までは当時の競馬法におきまして、競馬場に入場した者のみに馬券の発売をするという制度になっておったのでございますが、現行の競馬法の法案を国会で御審議いただきました際に、議員修正で、その入場者に対しという字句を削除されまして、その結果現行の競馬法では場外馬券の発売もできるようになった、こういう経過でございます。もちろんその場合におきましても、場外勝手な所で馬券の発売所を作るということは許しておりません。競馬法の施行令で、農林大臣の認可を受けて必要な場合にのみ認めるようにいたしている次第でございます。で、その修正の際の考え方といたしまして、主たる理由は、当時の国営及び地方競馬というものの収入の増大をはかるという点にあったようでございますが、当時の事情といたしましては、競馬場に出向くということにつきましても競馬場そのものの場所が不便な所にありましたり、また交通関係もなかなか楽でないというような事情がありましたために、競馬フアンというものが時間的な制約その他のために、馬券を買いたいが現地に行かれないというような不便がございますので、そういう点を考えて、フアンに対する一つのサービスということにもなるのじゃないかという考えがございます。またこういう場外の馬券売場の公認のものを設けておきますことによりまして、いわゆるのみ屋の厄介になる必要のない、のみ屋のところへ行くよりも、公けに認められた、また馬券が当った場合の支払い等につきましても全然心配のない公認の場外馬券売場というものを利用することによって、半面いわゆるノミ屋というもののばっこが抑えられるのではないかという点も考えられるわけでございます。またさようなふうに、場外におきましても競馬の馬券の発売が行われるということによりまして、いきおい競馬というものの宣伝にもなり、またその効果といたしまして、競馬フアンというものもだんだんふえて参る、こういうことも考えられますので、全体といたしましてこの制度はやはり競馬発展のためになのじゃないか、こういうふうに考えまして、必要な個所に馬券の売場を認めたわけでございます。さような趣旨でございますので、この場外馬券売場の運営問題につきまして、できるだけ堅実なものにいたすというふうに指導監督をいたしまして、この制度はやはりこのまま存置することが適当ではないか、かように考えております。
  64. 江田三郎

    委員長江田三郎君) ちょっと速記をとめて。   〔速記中止〕
  65. 江田三郎

    委員長江田三郎君) 速記をつけて。  只今までの懇談で御審議を願いました競馬法の一部を改正する法律案の草案が確定いたしましたので、一応読み上げてみます。    競馬法の一部を改正する法律(案)競馬法昭和二十三年法律第百五十八号)の一部を次のように改正する。   第三十一条第一号を次のように改める。   一 業として勝馬投票券の購入の委託を受け、又は財産上の利益を図る目的をもつて不特定多数の者から勝馬投票券の購入の委託を受けた者    附則   この法律は、公布の日から起算して一月を経過した日から施行する。    理由   競馬の健全な発展を図るため、勝馬投票券の取次業者に対する罰則を定める必要がある。これが、この法律案を提出する理由である。  というように確定いたしましたので、右草案を競馬法の一部を改正する法律案として本委員会から提出することに御異議ございませんか。   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  66. 江田三郎

    委員長江田三郎君) 御異議ないものと認め、さよう決定いたします。  なお、法律案の字句等の整理、提案理由の説明等につきましては、便宜上委員長に御一任願いたいと存じますが御異議ございませんか。   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  67. 江田三郎

    委員長江田三郎君) 御異議ないものと認めてさよう取り計らいます。  なお午後は二時から開会いたします。  それでは暫時休憩いたします。    午後零時三十六分休憩      —————・—————    午後二時二十三分開会
  68. 江田三郎

    委員長江田三郎君) それではただいまから委員会を再開いたします。  繭糸価格安定法の一部を改正する法律案を議題にいたします。本法律案につきましては、去る五月二十六日の委員会において提案理由の説明を聞いたのでありますが、本日は法律案の内容、及び関係事項について農林当局から説明を聞き、続いて質疑に入ることにいたしたいと存じます。質疑につきましては、さしあたり事務当局から説明を聞き、残された重要な問題に関しましては、日を改めて農林大臣の出席を求めて、問題を処理したいと存じます。なお質疑は、この前に御相談申しましたように、この法案の質疑と並んで、蚕糸関係の予算、その他一般的な問題についても、この際一緒に取り上げて行くというような方針にいたしておりますので、なるべく初めに予算関係その他一般的な問題について質疑を願いしまして、続いて法律案の内容について御質疑願いたいというように存じますので、その点御了承をお願いいたします。それでは事務当局の補足の説明をお願いいたします。
  69. 塩見友之助

    政府委員塩見友之助君) それでは繭糸価格安定法の一部を改正する法律案につきまして、逐条概略の御説明をいたしたいと思います。  提案理由でも説明してございますように、改正法律案の第一は、輸出適格生糸の特別買い入れをやるというふうな点でございます。これは現在の繭糸価格安定法では、出発当初に糸を持っておらなかったわけで、それで上値押えの糸が持ちたいという希望は、国内はもとより、海外からも強い希望があったわけでありますが、その買い方が非常にむずかしくて、過去の歴史等もいろいろ検討してみましたのですけれども、市場に非常に大きな影響なしに持つというふうなことはなかなかむずかしいので、それでやり方としましては、この条文にございますような、いくらか複雑な形をとって買い上げるというふうな形を考えたわけでございます。でこれはお手元にお配りしてございます資料にもございまするが、資料の六、七に生糸の需給状況、それから生糸輸出高及び国内引渡高の内訳というのかごさいますように、またそのあとに、十というところに、繭及び生糸の価格というのがございまするが、まあ繭と生糸の価格というのが、昨二十七生糸年度、及び二十八生糸年度に、繭糸価格を二度突破するような価格ではね上っておりまするし、まあその関係が非常に海外に対しては悪影響を与えまして、輸出の方もそれによって相当制約を受けたという形になっております。最近は比較的安定しておりまするので、この表でもごらんになりますように、逐次ふえつつありまするし、おそらくこの調子で行けば、前年に比べますと、期間のとり方で差はありまするが、一割五分とか、あるいは二割の輸出量の増加を見ておりまするが、来年度もまた同様の増加を見るだろうというのが、この専門家筋の大体観測になっておるわけでございます。そういうふうな点から言って、上値抑えのための生糸を持つようにというふうなことは、まあ今日この法の欠陥を是正する意味で大事なわけでございますが、先ほど申しましたように、市場に非常に悪い影響を与えないで政府が持つ、政府としては非常に強い買手ですから、政府が下手な値をきめますれば、一ぺんにその値がつり上るとか、あるいは市場で損をしたとか、得をしたというような者が出てくるという形になりまするので、ここでまあ考えましたのが、昔政府が持ちましたようなやり方考えたわけでございます。昔やりましたのは、やはり非常に生糸の市場の在庫がふえましたときに、在庫をふやしておいて、それを生糸の保管会社というふうなものが生糸を持ちまして、その持たれて動かなくなったものを政府が買うというふうな形態を最後にとったというのが数回ございまするが、まあそういう方法しかやはりないであろうというふうな考え方からして、今般は政府の買い上げの方の特別会計の方が先に出ておまりするので、それとあわせて、農林大臣の指定するところのものを相手としまして、それで一定の数量のものをそれによって買い取ろう、それでその指定するものとしてはこれは輸出適格生糸を一定期間持つというふうなことと、それからその糸は最高価格になれば輸出として必ず売り渡すということと、それからそのものはアメリカのCCCと同じように買い戻す条件つきで会社が買いまして、それを輸出以外には売り渡させないという、そういうふうな条件をつけまして、まあ一定期間、大体六ヵ月くらいをわれわれとしては目標としておりまするが、そのくらいの期間を経過してなお売りさばけないというふうなものはこれは特別価格でもって買い入れることができるようにするというふうな形で、過去の何回かありました経験を利用しまして、そういう買い入れ方をやろうというのが第九条の二の大体買い入れ方であります。その買い入れ価格は第二項に書いてありまするように、最低価格では必ずしもなくて、条文にございます通りに、政令で細かいところは定めまするが、海外における生糸及び主要繊維の市価並びに物価その他の経済事情を参酌して農林大臣が定める価格で買うというふうな考え方をとっております。それからまたそういうふうな買い方をする数量と、それから第二条で買いますところの、十九万円になりましたときに、最低価格になりましたときに買いまする数量との関係を特別会計の総ワクの中で大体考えて行かなければならないということ、及びもう一つは、今般は従来から御要望の強かったところの最低繭価保障のために、政府は場合によって繭を買い入れるというふうなことをやっておりまするので、繭を買い入れた場合に、政府がそれを糸にして持つ場合に、糸との関係を六十四億の総ワクの中で調整しなければならないというふうな関係からして、第三項というのが入っております。そういうふうな関係からして第三項が入っているわけでございまして、そういうふうな意味から言うと、その政府の買い上げというのが、糸につきましては最低価格で買いますものと、輸出適格生糸を特別価格で買いますものと、その二段がまえになっておりまして、輸出適格生糸として買う数量というものは、やはり政令でもって一応きめるということにしておりまして、またもう一つは繭からくる生糸及び輸出適格生糸の買い上げ並びに最低市価での買い上げという三つのもの、これを合せたものは、これは大体生糸の異常価格を防止するための、上値押えのための数量としての一定量を限って、その中で調整して契約を締結するという考え方をとっております。またその関係からして、糸価安定特別会計の予算額は六十億余りで押えられておる関係からして、これの総数量の中で全体を調整するというふうな考え方からして、その次の第九条の三にございますところの生糸の売り渡しは、上値押えのために必要な数量を政府が確保したならば、それ以上になった部分は必ずしも最高価格でなくても売れるというふうな条文が第九条の三に書いておるわけでございまして、まあ二項及び三項というのは、その売り渡しの価格及びその売り渡しの方法等を規定しておる、こういうわけでございます。第九条の二及び第九条の三という部分は、糸についての特別の部分として今度新たに加えられたわけでございますけれども、条文に即しましての御説明は、この折衝を法制局及び大蔵省とやりました糸政課長から聞いていただいた方がよいと思いますので、条文で細かく逐条御説明したいと思います。
  70. 大戸元長

    説明員(大戸元長君) まず第九条の方から御説明いたします。これの趣旨は、ただいま局長が申し上げましたように、糸値が二十三万円になってどんどん騰貴しているときに、その一定の数量を政府が持ちまして、それを輸出には必らず売って行くということによって、糸値が上ったときに輸出の確保を続けるということを眼目として、そういうふうな糸を持とうというための規定でございます。大分条文が細かく規定いたしておりますので、おわかりにくいと思いますので、条文を読みながら説明さしていただきます。  「第九条の二 政府は、第二条の規定により売り渡す生糸として輸出適格生糸(輸出に適する種類、繊度及び品位の生糸で省令で定めるものをいう。以下同じ。)を保有する必要があるときは、農林大臣の指定する者を相手方として、その者が、農林大臣の定める条件に従い買い入れて保管する輸出適格生糸のうち、その買入後政令で定める期間を経過してなお保管しているものを買い入れる旨の契約を締結することができる」。ここでまず「第二条の規定により売り渡す生糸」と申しますのは、本法の第二条で、政府は糸値が最高価格になったときは、その申し込みに応じまして最高価格で糸を売るという規定が二条にしてございまして、現在のところでは最高価格は二十三万円、本生糸年度及び来生糸年度については二十三万円でございますが、この二十三万円で売り渡すべき生糸として糸を持つわけでございますが、それは二十三万円になったときに、その糸値一般を抑えるためには、相当多量に持たなければならないのでありますが、今度の改正によって特別買入れをいたしますのは、先ほど申し上げましたように輸出に向ける糸でございますので、その持ちます糸といたしましては、輸出適格生糸を保有するために買うのでございます。そこで輸出適格生糸と申しますのは、そのカッコの中に書いてございますが、「輸出に適する種類、繊度及び品位の生糸で省令で定めるものをいう。」と申しまして、省令で定めることになっておりまする糸の種類と申しますのは、白繭糸、黄繭糸、これが種類でございます。玉糸という糸がございます。これも種類でございます。そのうちの黄繭糸と申しますのは、今日はほとんど生産されておりませんので、問題になりません。それで指定といたしましては白繭糸、それから玉糸というようなものが輸出適格生糸として指定されることになると思います。それからその次の繊度と申しますのは、糸の太さでございます。これは大体二十一中、十四中というのが普遍的な糸でございますので、現在も最低価格に達しましたときに十九万円で買い入れます糸の繊度といたしましては、十四中及び二十一中が指定してございますが、輸出に適するものといたしましては、そのほかにいわゆる特太生糸というようなものがございますので、あるいはそういうものも輸出適格生糸としては包含させるかもわかりません。それから品位と申しますのは、今申しましたその同じ二十一中の糸の中でも、いろいろA格、B格、C格、あるいは高級物になりますと6Aから5A、4A、3A、2A、A、B、C、というふうに生糸検査に基きますところの格づけが行われておりますが、この中で高格の糸、つまり輸出に適しまするところの糸を指定することになります。従いましてこれは十九万円下値押えのために買い入れますところの糸の範囲よりは、ずっとしぼられまして、いい糸だけを買う、こういうふうな形になります。それが輸出適格生糸でございます。その輸出適格生糸を保有する必要があるときには、農林大臣の指定する者と買い入れの契約をいたすわけでございます。その「指定する者」と申しますのは、現在考えておりますのは、主として製糸業者がこの目的のために会社を作りまして、その会社が糸を買って保管をするということにいたしたいと思っておりますが、これをかりに保管会社というふうに呼ぶといたしますと、その保管会社が農林大臣の定める条件に従って、保管する生糸を買う、こういうことでございます。そこでその保管会社が「農林大臣の定める条件に従い」、どういう条件かと申しますと、その会社は、製糸業者がそこへ糸を持って参りました場合には、一応それを買い戻し条件付で買うわけであります。従いまして買い戻し条件付をつけてございますので、その糸は将来いつでもそこへ入れた製糸家が買い戻すことができる、こういう糸でございます。と申しますのは、先ほど局長が申しましたように、政府が直接市場から買い入れますと、その影響で、たとえば今日糸値が二十万円いたしておりますときに、政府がいきなり市場からかりに千俵なり、二千俵買うとしますと、たちまちその影響を受けて市価が高騰するということになりますので、一応この会社が買い上げますが、その後市価が上ればいつでもこの糸は買い戻し条件でまた市場に出て行くわけでございますので、この会社が買って保管することによって、なお市場には悪影響は起りません。そこでそのようにして会社が持っております糸、これをそういうふうな買い戻し条件で買へということを農林大臣が定めておくわけでございます。そういたしまして会社が六ヵ月持っておりましたが、その間糸の著しい値上りもなかったために、その糸はそのまま製糸家から買い戻しの申し入れがないままに六ヵ月を経過いたしました場合、その六ヵ月を経過したあかつきには買ってやる、こういう買うぞというところの契約を、その保管を始めるときにおいていたしておくわけであります。このように買い入れを会社が行います前に政府と契約いたしますから、銀行もこの糸に対しては会社に融資をつけてくれるはずでございますので、この会社はそのような買い戻し条件付で糸を買ってそれを保管することができるのでありまして、ちょっと機能といたしましては平たく申しますと、質屋に似ておるわけでございます。製糸家が糸を一応その会社へ持って行って金をもらっておる。その後糸値が上ればそれを引き出す。しかし引き出さなければいわば質流れでございますが、その質流れになった糸を政府が買う、こういうことによりまして、何ら市場には悪影響を与えることなく、政府が輸出適格生糸を保有することができるわけでございます。しからば政府が買います値段はどういう値段で買うかと申しますと、それが第二項に規定されております。「2 前項の規定により契約を締結する場合における政府の買入の価格は、政令で定めるところにより、海外における生糸及び主要繊維の市価並びに物価その他の経済事情を参酌して、農林大臣が定める。」、この買い入れの値段を農林大臣がきめます要素といたしましては、そこに書いてございますような海外の生糸の値段あるいは競争繊維でありますところのレーヨンその他の主要繊維の価格というものをおもに参酌いたすわけでございます。その理由といたしましては、政府が買い入れをいたします値段は、最低価格よりも高いところで買うわけでございます。最低価格は先ほど申しましたように、十九万円でございますが、十九万円ならば、これは現行法の規定によりまして、幾らでも政府が申し込みに応じて買うわけでございますが、実際十九万円まで落ちるというのは非常に市価が異常に悪いときでございまして、本法が始まりましていまだ一度も十九万円の買い入れは行われておりません。従って政府は今のところ一俵も持っておらないわけでございますので、政府がこの輸出適格生糸を保有するために買い入れをいたしますとすれば、当然十九万円よりは高いところで買うわけでございます。しかしながら政府で買いますのが非常に高い価格で買いますれば、これは当然いつでも政府が買えるわけでありますが、そのような高い価格でかりに政府が、最高価格が今二十三万円でありますが、二十二万円というような糸値で買いますというと、なるほど政府には入って参りますが、その間、政府が一定の数量を買います間は、市場の価格がその二十二万円まで上ってしまって、そこへ維持されるというようなことになります。そういたしますと、そういう高い価格では海外は買いに参りません。従って輸出を阻害することになりまして、本法の企図する輸出振興の結果とは全く逆なことになりますので、そのような高い値段で政府が買うことはできない。そこで政府が買います価格は、政府の買い入れによってそのために市場価格がそこまで持ち上げられるようなことがあっても、それによって輸出が減退するというおそれのない価格、そういう価格をきめなければならないわけでございます。これをたとえば現在の市況について見ますと、現在アメリカでは一ポンド当り四ドル五十セントならば買い得る、その辺で安定していれば買う、こういう向うのほうの業者の一般的な見解でございますので、その辺でありますれば、たとえ政府がその辺の価格、一ポンド四ドル五十セントと申しますことは、こちらの値段に直しますと大体一億二十万円でございますが、その程度の価格でありますれば、政府がそういう価格で買い入れをいたしまして、その結果附随的な効果として糸値がその辺にまで一時的にせよ上っても、海外に対して迷惑はかけない、輸出の阻害にはならないというふうに考えられますので、そのような海外が買い得る値段であり、かつまたそれよりも安く売ることはむしろ必要がない、必要以上に安い価格になるというような点を押えまして、定める。その定める方法等につきましては政令で規定をいたしておく、こういうふうにいたしたいと思っております。これがその政府の買い入れ値段の規定でございます。  それから三項は、政府がこの輸出適格生糸をそういうふうな方法で特別買い入れいたします数量を限定しておる規定でございまして、これは今度同時に提出されておりますところの糸価安定特別会計法の改正によりまして、政府が糸の買い上げのために使い得る金はおおむね六十億円になるわけでございます。六十億円と申しますと、大体三万俵くらいの糸が買えるのでございますが、これは糸価が非常に値下りいたしまして十九万円になったときの下値押えのために必要な金でありまして、この金を全部使ってこの特別買い入れをやるということは、本法の根本的な目的にも反しますし、またそんなに多量な糸をこの特別買い入れによって確保しておく必要もございませんので、この特別買い入れによって買いますところの輸出適格生糸の数量々限定しようというのが第三項の規定でございます。朗読さしていただきます。  「3政府は、第一項の契約に基く買入の結果保有する輸出適格生糸の数量(第二条の規定による買入又は第十二条の二第一項の規定による加工若しくは交換の結果保有している輸出適格生糸がある場合には、その数量を含む。)の合計が生糸の輸出を確保するために必要と認められる一定数量をこえることとならず、かつ、その輸出適格生糸の数量の合計に他の政府保有生糸の数量を加えた総数量が農林大臣の定める生糸の価格の異常な騰貴を防止するために必要な数量をこえることとならないように、同項の契約を締結するものとする。」非常に条文が長くなっておっておわかりにくいと思いますので、それを切りまして、そのちょうど四行目のところに「かつ、」という字がございますが、その「かつ、」というところの前までとあとは別の要素を規定いたしておりますので、その「かつ、」までのところを御説明いたしますと、政府がこの第一項の規定によって、つまり特別買い入れによりまして持つ生糸の数量、これはカッコ書の中は後ほど説明いたしますが、この特別買い入れによる生糸の数量の合計が、生糸の輸出を確保するために必要と認められる一定の数量をこえてはならない、こう規定いたしております。そこで、「生糸の輸出を確保するために必要と認められる一定数量」と申しますのは、次の四項で、「前項の一定数量は、政令で定める。」と書いてありますが、この数量を政令であらかじめ定めておくわけでございます。この数量はどういう数量かと申しますと、先ほど申し上げましたように、糸値が二十三万円という最高価格になった、あるいはそれ以上の価格になった、その場合に、この二十三万円、内需も輸出も含めて全部の糸値を二十三万円でとめておくためには、非常にたくさんの生糸を必要とするので、場合によっては政府はそれだけ多量の生糸を持っていない場合もあり得るわけでございますが、その間、少くとも輸出だけは二十三万円で出せるようにするとすれば、それはどのくらい持っておればよいかと申しますと、これはなかなかむずかしいのでございますが、従来の経験などにかんがみましても、そういう非常に異常な相場が出るというのは、何らかのこの一時的な異常な状態でございまして、そう長続きはするものではない。従いまして、かりに政府が、一ヵ月くらいの輸出量、あるいは一ヵ月半くらいの輸出量が適当でありましょうが、とにかく一定の長さの間は、たとえ普通の市場から輸出へ出て行く糸がなくても、政府で持っている糸だけでつながる、そのうちには異常な高値状態がおさまるというようなことを考えまして、そういう点から一定の数量を定めておきたい、こういうように思っております。大体今申し上げましたような考え方からいたしますと、大体一万俵くらい政府が特別買い入れで買って持っておればよいのではないか、こういうように考えられるのでございます。そこで、かりにそういう一万俵ということとするといたしますれば、その一万俵という数量はあらかじめ政令で定めておくわけでございます。そこで、この第三項の「かつ、」までの規定は、政府が特別買い入れをやる数量は、政令で定めてあるかりに一万俵といたしますると、その一万俵をこえてはならない、こういう規定でございます。その第一行目のカッコの中は、現在のように政府がまだ一俵も糸を持っておらないときは、この輸出特別買い入れのために、今申しましたかりに一万俵といたしますと、この一万俵までは買えるわけでございますが、将来の事態を想定いたしまして、かりに、政府がこの特別買い入れをやります以前に、糸値が下りまして十九万円、つまり下値押えのために政府がある程度の糸を買い込んだといたします。そういたしまして、その政府の一般買い入れによる、 つまり最低価格による買い入れによって持った糸の中に、輸入適格生糸、つまり先ほど申しました種類、繊度及び品位の輸出に向く糸があったといたしますれば、その分はもう一万俵から差引いておけ、と申しますことは、そだれけ持っておるなら、その分だけは特別買い入れで買わなくともいいではないか、かりにそういうような糸をもうすでに政府が三千俵持っておるといたしましたときには、この特別買い入れで買い得る糸は先ほどの一万俵から三千俵を引いた残りの七千俵ということになるわけであります。それがカッコの中の第二条の買い入れ、それから、「又は第十二条の二第一項の規定による加工若しくは交換の結果保有している輸出適格」品、これは後ほど出て参りますが、政府が繭を買うことがあります。今度の改正によって政府が繭を買うことになるのでございますが、その繭で買ったのを政府が繭のまま持っているわけには参りませんので、これを加工いたしまして、あるいは交換いたしまして、生糸として持つことになりますが、それによって持っている生糸の中に輸出適格生糸がある場合には、それもその一万俵の中のワク内である、そういう糸があれば、この特別買い入れのできる数量はさらに減るわけでございます。そういう言うにいたしまして、まず一定数量、この特別買い入れのできる一定数量を限定いたしております。  それから、その「かつ」、以下でございますが、この「かつ」、以下は、政府の保有する数量が相当多量になりまして、この特別買い入れ以外の方法によりまして、たとえば先ほど申しました最低価格維持のために十九万円で政府が買った糸、あるいは繭で買って糸にした生糸、そういうものが相当多量にございまして、その生糸に、さらにそれにこの特別買い入れの数量を加えますというと、必要以上に多量の糸を政府が持つことになる場合、こういう場合には特別買い入れはやらない、そこで必要以上と申しましたが、必要以上ということはどういうことかと申しますと、糸値が上りまして二十三万円になったときに、政府が自分の糸を持っておれば、その二十三万円という相場を押えることができるわけで、その二十三万円という最高価格になったときに、政府が放出をして、その相場を押えることのできるに十分な程度の数量の糸ということでございます。それだけ十分糸を持っているときには、もうこの特別買い入れはそれをこえてやることはできない、こういう規定でございます。そこでその場合輸出適格生糸をどの程度持つか、特別買い入れによって持つ糸の数量は政令で、先ほど申しましたように、かりに一万俵なら一万俵と定めるわけでございますが、最高価格に達したときには、糸値全体を押えるためには一体どのくらいの数量を持っておればいいかということは、なかなか算定が困難でございまして、いろいろ理論的な数字も出し得ないことはございませんが、必ずしもこういう糸の値段というのは、そのように理論的に動くものではございませんで、この数量はまあ政府が相当の数量を持ちましたときに、いろんな要素を考えまして、あるいは繭糸価格安定審議会等の議を経ましてきめることと相なると、こういうふうに考えております。  それから五項でございますが、「第六条の規定は、第二項の場合に準用する。」、第六条の規定は、現在最高価格及び最低価格は毎年定めることになっておりまして、その定めたときにはこれを告示する、こういう規定でございます。そこでこの特別買い入れの価格、先ほど申しました政府が特別買い入れをやります価格をきめましたときには、これを告示しておけという規定でございます。  それからその次の第九条の三の規定と申しますのは、逆に今度は政府が非常にたくさんの糸を持って、必要以上にたくさんの糸が政府にたまった場合には、これを売ることができるという規定でございます。現行の規定では、政府が持っている糸を売ります場合は二つしかございません。一つは第二条の規定によりまして、糸値が最高価格に達したときに、その最高価格で申込に応じて売るわけでございます。それからもう一つは、現行の十二条の規定にございますが、政府の持っております糸が、あるいは虫が食ったとか、あるいは品質が低下したというために整理売却をいたしたり、あるいは新規の用途のために売る、この整理売却、または新規用途のための売り渡しは、時価に準拠してやることになっておりますが、そういう二つの場合しか政府は糸を売ることを規定いたしておりませんので、今度のこの第九条の二は、政府が最高価格を押えるために必要であると考える数量以上に政府が糸を持ってしまったというようなときには、そのこえる部分につきましては最高価格でなくとも売り渡してもいいと、こういうことを書いておる規定でございます。朗読いたします。「第九条の三政府は、第二条の規定による買入又は第十二条の二第一項の規定による加工若しくは交換によって保有する生糸の数量が、前条第三項の農林大臣の定める生糸の価格の異常な騰貴を防止するために必要な数量をこえるときは、そのこえる部分に相当する数量の生糸を売り渡すことができる。」「第二条の規定による買入」は、先ほど来申しておりますところの糸値が最低価格に達したときに、最低価格維持のために買い入れる買い入れでございます。十二条の二第一項の規定によって保有する生糸と申しますのは、繭で買ってこれを糸と交換し、または糸に加工して政府が持つ場合の糸でございますが、こうやってその二条または十二条の二の規定で政府が持った生糸の数量が、先ほど申しました最高価格維持のために必要であると認められる数量をこえるという場合には、そのこえる数量を売り渡すことができるのでございます。そこでこの売り渡す場合の値段は、これは会計法一般の原則に従いまして時価で売るわけでございますが、その時価で売りましても一それは政府がそういう糸を売り出すということが、また市場の価格を引き下げることになりますので、政府がこういう余剰生糸を資金繰りの関係で売ります場合にも、市場価格が相当程度高いときに限って売ることができるというふうにいたしております。それが二項の規定でございまして、「前項の規定による売渡は、生糸の価格が、政令で定めるところにより、繭の生産費の額に生糸の製造及び販売に要する費用の額を加えて得た額以上である場合に限り、することができる。」ここで「繭の生産費の額に生糸の製造及び販売に要する費用の額を加えて得た額」と申しますのは、現在十九万円、二十三万円の最低価格、最高価格を定める基準となっておりますところの、一口で申しますれば、生糸の生産費、コストでございます。従って市場価格が生糸のコスト以上である場合に限って、この糸の持ち過ぎた分量を売り渡すことができる。こういうふうになっておるわけでございます。  それから第三項は、「第一項の規定による売渡は、生糸の時価の悪影響を及ぼさない方法によってしなければならない。」これはかりに市場の価格がこの生産費以上でありますれば売っていいわけでございますが、かりに政府がこれによって売り渡す余剰生糸の数量が一万俵といたしましても、この一万俵を一時に市場に放出いたしますと、それによって市価が暴落するというようなことがありますので、売り渡し方法も市場の時価に悪影響を及ぼさない方法で売れと、たとえば一万俵売り出します場合にも、これを何回かに分割して平均売りをして行きますとか、あるいは売る前に相当前に予告をいたしまして売るというような方法を講ずることが必要なわけでございます。  以上が大体生糸の方の買い入れ及び売り渡しに関する規定でございます。
  71. 塩見友之助

    政府委員塩見友之助君) ただいまの御説明で大体御納得が行けると思いまするが、現在の市場の在庫、横浜及び神戸の市場の在庫は非常に少うございまして、ここ大体昭和二十五年から二十九年の間の五カ年間の状態を見ますると、年間のその横浜及び神戸市場に対する総入荷量に対して、二%から五%ぐらいの市場在庫しかございませんが、戦前昭和七年から十三年の間を見ますると、政府在庫も含めまして一三%から二四%の間にある、こういう状態でございます。で、非常に現在の状態は製糸の方も輸出商の方も、あるいは問屋の方も資金が逼迫しております関係からして、換金投げの傾向がございまして、市場の在庫も非常に不健全である、こういう関係にございまするが、この会社が特別買い入れのために予備的なこういう買い入れをやり、CCC式の買い戻し条件で物を持つことによって、在庫は相当豊富になるというふうな関係からして、生糸の上げ足も下げ足も割合にゆるやかな形をとりまして、おそらく海外市場の要望に沿うことが、間接的にはできるのではないか、こう考えております。なお、この会社は投機的な営業は全然やらないで、ただいま説明いたしましたように非常に機械的な仕事をやりますわけで、売ったり買ったりするというのは、政令あるいは農林大臣との契約で、それ以外の仕事につきましてはすべて機械的になっております。あと自由な判断をするというのは、買い戻し条件付きでもって売りましたところの糸を、側々の製糸業者が途中で買戻しができるという判断の部分であって、これは個々の製糸業者がやるわけでございまするので、そういう関係からいたしましても独禁法の規定に触れるような関係はございません。これは公取とも十分打ち合せてございます。  それからただいま御説明しました中にありますところの、特別買い入れの価格であるとか、輸出確保のために必要な保有数量であるとか、あるいは上値抑制のため必要な保有数量であるとかいうふうな重要な事項及びその次の条文に出てきますところの最低繭価、最低の繭の価格というふうな重要事項につきましては、これは当然この法律の十五条及び十六条にございますところの繭糸価格安定審議会の議を経てやるつもりでございます。  また、当委員会で長い間御要望のございましたところの玉糸につきましては、この形をもって大体買い入れをやって行くという考え方をとっております。で、現在第二条で買いますものは、十四中及び二十一中の生糸のうちでもって全部で二十四銘柄でございまするが、そのうちの十銘柄に限られております。で、これは今般のこの特別買い入れの場合には、その十銘柄のうちの大体現在まで研究しております段階では、半分の五銘柄ぐらいに輸出適格生糸としては考えたらどうか、そのほかに特太物を一銘柄、それから玉糸四銘柄と、合せまして十銘柄ぐらいを考えているんではないか、こういうふうに考えておりまして、まあ大体輸出適格生糸十銘柄のうち四銘柄ぐらいが玉糸として入ってくるというふうに考えておる状態でございます。  で、現在の規定では第九条に輸出確保のための条件付き売り渡しという条項がございまするが、輸出確保のために特別なこういうふうな買い入れ制度というものがございませんで、繭糸価格安定法の建前は、この条文にもございまするように、異常なる価格が出ましたときに発動するという建前はもちろんでございまするが、その異常なる価格というのが、国内市場、国際市場を通じました価格全体を調整しようという考え方に立っておりまするが、現在のような市場在庫の状態と、年々生産される糸はほとんど全部が完全に輸出、あるいは内需で使われてしまうという状態、ことに内需の方は日本経済の現状からして、そう伸びるという見込みはなくて、やはり伸びるとしますれば輸出の方に伸びる部分が非常に期待できる、こういう状態から見まして、どうしても輸出確保のための糸の買い入れ及び売り渡しという点につきまして、二段がまえで特段の措置を講ずるという形が、特に輸出振興のためにも養蚕業及び製糸業の安定、振興のためにも必要であろうというふうな関係からして、この条文ができたという次第でございます。  その次に繭価維持のための補充措置というのが第十一条にございます。現在の第十一条は「繭価維持のための特別措置」としてございまして、建前といたしましては政府は糸を買うことによって間接に繭の価格の異常な低落を防止するというふうな考え方をとっておりますわけでございまするが、なおこの繭不足の状態のときは、それで維持できましても、順次繭の生産の方も安定して伸びてくるに従いまして、それは必ずしも確実性が足らないというふうな点が、前にこの法案を審議いたすときにも当委員会において大分鋭い質問がございましたようでございまするが、その点は確かに心配の一点でございまするし、また現在伸びつつある生糸の輸出等を見まして、農民が増産もやりたいけれどもやはりその永年の作物である桑を作る、あるいは桑を改値するというふうな点に当りまして、やはり繭の値段というものが安定しておらないことには、そういうふうな増産の方にも力を十分尽すわけに行かないというふうな点からして伸び悩んでおりまして、繭の価格をはっきりと政府が保証して維持してやるということが増産上またコストの低下上、すべての点で第一に大事なことでありまして、それがあって初めて各種の増産に対する指導奨励措置も生きて、農民がほんとうにその方向でもって技術的な改良もできるというような根本条件でございまするので、これはこの際にどうしても入れる必要があるというふうな意味でもって、繭価に対する措置を全部書き改めたわけでございます。現行の条文は、繭の価格の異常な低落を防止することが糸の買上げだけではできないというふうな場合には、「異常な低落を防止するため必要な措置を行う」とだけ書いてございます。これは昔もございましたわけですけれども、こういうときに単に「必要な措置」と書いてあるだけでは、その具体的なやり方等が明示されておりません限りは、やはりそういう異常事態に対しては、いろいろ政府においても県、地方庁においても、あるいは農業団体においても、うまい手が打ちにくくて失敗した例が多いわけでございまして、今般はそういうふうな意味でそういう措置について十分具体的に書いておいて、いざというときに手が打てるようにしておくという考え方からして、条文が非常に長くこみ入っております。このやり方としましては、政府が維持したいと思う繭の価格というのは、政令で定めるところによりまして生産費の額を基準といたします生糸の最低価格と物価その他の経済事情を参酌事項として、農林大臣が定めるわけでございまして、これはもちろん繭糸価格安定審議会に諮問いたします。そういうふうな額を下るおそれがあって、糸の買入れだけでは防止できないと思う場合に、農林大臣は、指定しましたところの農業協同組合連合会に対して、省令で定める手続その他いろいろな条件を加えまして、予算の範囲内で保管に要する経費に対して補助金を交付することができるとなっておりまして、これにつきましては金利、倉敷全額を大体補助するということで大蔵省との打ち合せばできておりまして、今般の予算につきましても予備費十一億のうちからこれに大よその見当、二億くらいまでは出せるという申し合せになっております。従来やりましたやり方は、常に補助金交付だけでやっておりましたわけですけれども、農民団体の要望その他いろいろの状態を考えまして、かなり従来むずかしいといわれておりました繭の買い入れまでやるという考え方を、この第二項で決定しているわけでございます。  繭の買い入れは、これは政府が扱いにくい商品でございますので、やりたくない、また流通の関係からしましても、そこに製糸の間に政府の繭の買い入れという形が入ることによって、円滑な運営がとにかく阻害されるという危険もございますので、それで保管に要する経費も全額補助するという形をとりまして、できるだけ途中において値が上った場合に農協連が売り渡してしまうというふうな考え方をとっているわけでございまして、第二項に規定しておりますごてごてと書いてありまするが、これは結局は農林大臣と農協連との契約によってできるだけ売るように努力する、売れなくなって最後に、もちろん半年以上たちまして、それで売れなくなってしまったというふうな場合に、やはりそれを売らなければならぬということになりますると、最低繭価の保持は怪しくなりますし、農協連のほうも共同保管をやる場合に危険が伏在しますので、そういう弱味を払拭する意味において、最後まで持ち続けて、なお値が上らなかった場合には、その繭は全部政府でもって買い取るというふうな契約をやるというふうに考えておりまして、その繭は最後的には政府が買うというふうな考え方をとっております。二段がまえになっているわけです。  その買いましたところの繭につきましては、これは政府が売りますと繭の値がさらに落ちるという危険がございますので、これを売ることもできれば、加工することもできれば、最も便宜な方法として糸との交換もできるというふうな形で処理をしたい、こう考えて第十二条の二を加えているわけでございます。  この繭を買います場合は、三項にございますように、乾繭になったものを買うわけでございますので、金利、倉敷等は補助を出しますが、乾繭に要する費用等につきましてはこれを加えまして農林大臣が買い入れる、こういうふうな考え方をとっているわけでございます。  それから次の十二条の三も一緒に説明しておきますが、この条文は全体としまして、第三条の買い入れ、それから第九条の二の規定によるところの特別買い入れ及び第十一条の第一項によるところの補助金あるいは繭の買い入れというふうなものがございますが、それらの額は全部特別会計の総ワク内できまるわけでございまして、すなわち糸価安定特別会計の当該年度の収納済歳入額、これは現在三十四億ございます。それにプラスしますところの糸価安定特別会計でもって今般改正をこれと並行して提案しておりますところの三十億の限度でもって、預金部資金も借りられる、あるいは国庫余裕金の振り替え使用もできる、あるいはそれでも不十分な場合には蚕糸証券を出しましてそれで金額を調達することができる。その三つを大体併用しまして、三十億の額を資金としてといいますか、借入金として持てるわけになっておりますので、それを合せてみまして現在六十四億でございますが、その中でもってその三つというか、補助金を入れると四つのものを全部調整をして、それでやりくりをするというふうな規定を、これを法文として詳しく書きますと十二条の三のような条文になるわけでございます。  逐条詳細にわたりましては糸政課長から御説明申し上げます。
  72. 大戸元長

    説明員(大戸元長君) 第十一条から読みながら御説明申し上げます。  「第十一条政府は、第二条の規定による生糸の買入によっては、繭の価格が、政令で定めるところにより、その生産費の額を基準とし、生糸の最低価格及び物価その他の経済事情を参酌して農林大臣の定める額を下ることを防止することが困難であると認める場合において、農林大臣の指定する農業協同組合連合会が、省令で定める手続に従い農林大臣の承認を受け、保管及び売渡につき農林大臣の定める条件を遵守し、繭(くず繭その他省令で定める繭を除く。以下この条において同じ。)の保管をしたときは、予算の範囲内において、政令で定めるところにより、その保管に要する経費につき、補助金を交付することができる。」、第一項は補助金交付の規定でございます。これが二項の買い入れの前段の措置としてまず補助金を交付して保管をさせる、それによってまず繭価を第一次的に維持しようというのが一項の規定でございまして、最初の「第二条の規定による生糸の買入によっては、」これこれの「農林大臣の定める額を下ることを防止することが困難であると認める場合」と申しますのは、先ほど局長から申しましたように、この法律の建前は、糸の最低価格を維持し、最高価格以上を押えるというのが根本になっておりまして、糸を十九万円で維持すればおのずから繭値もそれに見合うところで維持されるであろうという建前が現行法の建前になっております。そこで、しかしながらその建前によって十九万円で生糸は維持したが、なお繭がその十九万円未満の価格を割るというようなときに限ってこれを行うのである、こういうことをまず言っているわけでございます。この「生糸の買入によっては、」と申しますのは、現在の規定では「生糸の買入によつても」となっております。これを「は、」と直しましたのは、「よつても」といたしますと、ちょっと読みますと、一度政府がとにかく生糸を買い入れして、まず糸価を維持し、しかる後にこの繭価を維持する。だから生糸の買い入れを一ぺんもやらないうちはこの繭の規定は動かないと読まれるおそれがあるのでありまして、そういうことに間違って読まれることを避けますために、「生糸の買入によっては、」というような今度規定の仕方にして、やや感じを変えたわけでございます。従いましてこの繭の下値押えは、生糸の買い入れが現実に行われないでも、またたとえ今買って糸価を維持したとしても繭は維持されないであろうというときに行うのであります。そこで繭の価格が「その生産費の額を基準とし、生糸の最低価格及び物価その他の経済事情を参酌して農林大臣の定める額」と申しますのは、これはまず現在生糸の生産費の内容といたしましては、繭の生産費に生糸のすなわち製糸工場における加工費を加えたもの、これが生糸の生産費でございますが、これが糸価の方の最低価格、最高価格の基準になっておりますので、そのうちの繭の生産費というのはこれは毎年計算をして出しております。そこでこの繭の生産費の額を基準といたしまして、さらにそれに生糸の最低価格、つまり現在で申しますと十九万円でございますが、これは生糸の生産費の大体八五%を下らない額ということになっておりまして、現在のところ大体その辺できまっておりますが、その生糸の最低価格、それに見合う繭値を維持しようというわけでございます。そこで「生糸の最低価格及び物価その他の経済事情を参酌して」農林大臣が繭のかりにこれを維持価格とでも名づけますれば、そういう繭の維持価格というものを定めるわけでございます。そうしてその農林大臣が定めた生糸の最低価格に見合うような繭の価格をさらに下るというようなおそれが出て、それを下ることを防止することが糸の買い入れだけでは困難であると認める場合におきまして、次の補助金交付の措置を講ずるわけでございます。その措置は農林大臣があらかじめ指定いたしましたところの農業協同組合連合会、これは大体全国単位のものを考えておりますが、場合によりましては、県単位のものも指定することがあり得ると思います。この農協連が農林大臣の乾繭保管の承認を受ける。またこの保管及び売り渡しについては、農林大臣の定める条件を守らなければならないわけでございます。この条件と申しますのは、保管をいたしましても、その繭が最低価格、農林大臣の定めますところの繭の維持価格またはそれ以上で販売できる場合にはどんどん販売して行けるという条件がつくわけでございます。しかしながら養蚕家がこれによって繭値をつり上げるというふうな操作をやるための保管ではなく、最低価格を維持するための保管でございます。少くともこの補助金を出します保管は、そのような意味の保管でございますので、その最低価格で保管中にでも売り得るような状態にあったときは売って行くということが条件としてついておるわけでございます。そのような条件を遵守して、繭の「保管をしたときは、」と、そのときには、政令で定めるところによりまして、その保管に要する経費について補助金を交付するのでございます。ここで政令で定めますのは、その経費のうち、いかなるものを補助金として見るかというようなことを定めるわけでございまして、先ほど局長が申しましたように、金利及び保管料、それからその他あるいは繭の検定の費用とかいろいろなものも、あるいは載ることになるかもわかりませんが、その点こういうような費用のどれを補助するかというような点を政令で定めておくわけでございます。  それから繭といたしまして、「(くず繭その他省令で定める繭を除く。」とこう書いてありますのは、いわゆる普通上繭と呼ばれているつまり普通の機械生糸になり得る繭、これに限っているわけであります。その繭の保管をした場合に補助金を交付する。  そこで今度は第二項は、そういうふうにして保管をした繭をその後糸値が上がれば製糸家は買い得るわけでございますので、買い得る状態になったときは、製糸家に売って行ける、あるいは糸値が上らなくても、その繭は政府が金利、倉敷料を補助しているわけでございますから、一定期間がたちますと、製糸家は最低価格で買い得るわけでございますが、大体はこの補助金を交付して保管をさせておきますと、だんだんと売れて行くはずでございますが、どうしてもそれが売れなかった場合には、それを政府が買うという規定がその次の二項でございます。「政府は、前項に規定する農業協同組合連合会が同項の規定により保管する繭を同項の農林大臣の定める条件を遵守して売り渡すとしても、政令で定める期日までにはその全部を売り渡すことが困難であると認めるときは、その農業協同組合連合会を相手方として、その者が引き続きその条件を遵守する場合には、その繭のうち政令で定める期日を経過してなお保管しているものを買い入れる旨の契約を締結することができる。」非常にこみ入った書き方になっておりますが、このようにして補助金をもらって保管をいたしました繭を「同項の農林大臣の定める条件を遵守して売り渡すとしても、」というのは、今申しました保管中でも売り得るときには、製糸家に売って行くという条件をつけているのでありますが、その条件を守って売るべく努力いたしましても、政令で定める期日、これは大体会計年度末、三月末を考えておりますが、そのころまでに売り渡すことができないと、こういうふうに認められますときには、政府はその保管をいたしております農協連を相手といたしまして、そのものがなおずっと引き続き保管をし、しかもその条件を引き続き遵守する場合と申しますのは、政府が買い入れの契約をいたします、これはかりに晩秋蚕も出回りまして、すっかりその年の繭の総需要量もわかって、どうもあと残って保管してある繭は、もう売れる見込みがないと思うときには、買い入れ契約をするわけでございますが、その保管している団体は、政府と契約したからといって、もう安心して売る努力を怠ってはならないのでありまして、政府と契約いたしましても、なお売れるときには、売るような努力をしてもらいたいという意味で、「その者が引き続きその条件を遵守する場合」、こういうふうに書いてございます。そうして、しかし引き続いて遵守しても、なおその繭が政令で定める期日、今考えておりますのは、三月三十一日までに売れないで、その期日を経過してなお保管をいたしておりますものを買い入れるということの契約をすることができるのでございます。  そこで、この買い入れますときの値段のことを三項に書いてございます。「前項の規定により契約を締結する場合における政府の買入の価格は、政令で定めるところにより、第一項の規定により農林大臣の定める額に乾繭とするために要する費用等を加えて得た額を基準として、農林大臣が定める。」、この価格は第一項で先ほど申しました、かりに最低価格あるいは維持価格と申しますか、繭の維持すべき価格を、生産費それから糸の最低価格を基準としてきめるわけでございますが、この農林大臣のきめます価格は、なま繭についてきめた額であります。これを保管いたしますためには、乾繭として、かわかしまして中のサナギを殺して保管をするわけでございますので、この第一項で、なま繭についてきめました価格に、その乾繭にするために要した費用、それを加えまして、ここに「要する費用等」と書いてございますが、この「等」の中には、たとえば乾繭をいたすためには、袋に入れまして乾繭をいたしますので、そういう袋代というようなものも見るわけでございますが、そういうものを加算した額、つまり第一項できめますところの、なま繭できめた価格に見合う乾繭の価格で政府が買い入れるわけであります。  それから今度は「第十二条の次に、次の二条を加える。」といたしまして、「(政府保有繭の売渡等)」、これは先ほどの局長説明で尽きておりますように、政府がそういうふうにして繭を買いまして持つわけでございますが、その持った繭を売り渡しますか、あるいは生糸に加工したり、生糸と交換したりする道を開いたのであります。ただ、政府がこの繭を買いますような状態のときには、非常に繭価が安いために政府に持ち込まれたのでありまして、そういう繭をまた政府がすぐ売りますと、繭の値段をくずしますしいたしますので、売る場合には、繭で売る場合はむしろ少いのではないかと考えております。従いまして、この繭は、主として加工によりまして、あるいは交換によりまして、政府が糸として持ちまして、その糸は、将来糸値が二十三万円に上りましたような場合には、これを売り出して最高価格の押えのために役立たせるということになるのでございます。  そこで二項で、「前項の規定による売渡及び交換は、繭の時価に悪影響を及ぼさない方法によってしなければならない。」ここに、売り渡します場合には、当然繭の値段をくずしてはならないので、そういう方法で売り渡さねばなりません。それから交換の場合には、繭の時価に影響を及ぼすことは非常に少いとは思いますが、なお念のためにこのように規定いたしておくわけでございます。  それから三項は「政府は、第一項の規定による交換をする場合において、その価格が等しくないときは、その差額を金銭で補足し、又は補足させなければならない。」これは交換は一般の会計上の原則によりまして、その政府の持っております繭の値段、つまり大体時価でございますが、その時価と生糸の時価とで取っかえるわけでございます。もちろんその間に生糸の加工費に要する部分を換算して差し引くわけでございますが、その両方の時価で交換いたすわけでございますが、ぴったりとかりに繭千貫をこれで何俵の糸を持って来いと言って取っかえると申しましても、数量的にはぴたっと一致するということはなかなかむずかしいのでございまして、かりに一俵と何百匁というような数字が出ましても、そういう端数の一俵にならないような糸を政府が持っても、これは保管上も、あるいは売り渡すときにも困りますので、単位は俵として政府が受け取る。そこで、その場合にできましたその端数の差額は金銭で補足をし、これはこちらで金銭で補足する場合、あるいは向うからとる場合と、両方考えられますので、こういう規定を置いておるわけでございます。  それからその次は「(買入又は補助の契約の限度額)」、これは非常に込み入った規定でございますが、趣旨はただいま局長の御説明いたしました通りでございますが、第十二条の三、「政府が、第二条若しくは第九条の二の規定による生糸の買入の契約又は第十一条第一項の規定による補助若しくは同条第二項の規定による繭の買入の契約を締結する場合における当該契約に係る買入又は補助の金額の限度は、当該契約を締結する時における糸価安定特別会計の当該年度の収納済歳入額(証券の発行及び借入金によるものを除く。)及び糸価安定特別会計法(昭和二十六年法律第三百十一号)第十一条に規定する額の合計額から左記の各号に掲げる額の合計額を控除した額とする。」、このあとはまた後ほど説明いたすとしまして、この規定でこういう書き方が必要になりますゆえんは、いろいろな、政府は糸の買い方、あるいは繭の買い方をいたしまして、しかも、それが契約でやるわけでございます。そういたしますと、かりに先ほど申し上げました繭を買う契約をして、その契約が結ばれましたあとにおいて、糸の値段が暴落してきた。そのために今度は、糸で買い入れてくれという申し出がありますれば、これは即座に買うわけであります。そこで、政府の持っている金を、その糸を買うのに全部使いますと、初めに繭で買うことで契約してある繭、これはまだ契約だけで、現実に買っていない繭がございます。保管されておるわけでございますが、その契約してから今度は、糸で全部金を使い果しますと、その繭の契約の履行期が来たときに、政府は債務不履行に陥るわけでございます。そのような場合には、すでに前に契約してある額を差し引いた残りの額だけしか、生糸の買い入れには使えない。もし、それ以上に買う必要がある場合には、これは予算によって資金の増額を行うか、あるいは糸価安定法の改正によって借入金の限度を増大するか、いずれかの予算的または法律的措置をとってから行うべきである。こういうところから、このような規定が必要になってきておるわけでございます。  そこで条文に帰りまして、「第二条若しくは第九条のこの規定による生糸の買入の契約」、これは第二条は最低維持のための十九万円による買い入れでございます。「第九条の二の規定による生糸の買入」と申しますのは、先ほど説明いたしました輸出適格品の特別買い入れ。それから「又は第十一条第一項の規定による補助」、これは繭を保管さしておきましたものに対する補助、それの契約でございます。それから「同条第二項の規定による繭の買入の契約」、こういう契約を締結する場合におきましては、その契約にかかわる金額の限度とは、「当該契約を締結する時における糸価安定特別会計の当該年度の収納済歳入額」、これは現在、資金といたしまして糸価安定特別会計に三十四億の金を持っております。これが今のところ収納済の金額でございます。ところがこのほかに、年にこれは二回に分けて入って参りますが、年度の途中でも糸を全部買わずにその金を持っておりますときには、これは預金部に預託してございますので金利がついております。これは年二回にわたって特別会計に金利が払い込まれて参りますので、その金利が入りました場合にはその金利も歳入額に入るわけでございます。あるいは糸を持っておりまして年度の途中においてその糸を二十三万円なりで売り払った場合には、その売払代金が歳入として入って参りますので、そういうような額、それが今先ほど申しましたような契約をいたしますときに、とにかく糸価安定特別会計の中に入ってきておる額、その額、それにカッコをいたしまして、「証券の発行及び借入金によるものを除く。」とありますのは、これはすぐあとに書いてありますのと、借入金の方の金をダブらないようにこれを除いておるわけでございます。つまり証券発行以外で、つまり元金としてこちらの持っておる金と、及び糸価安定特別会計法第十一条に規定する額と申しますのが、今度糸価安定特別会計法の改正によりまして政府が借入または証券を発行することのできる限度でございまして、これが三十億と規定されております。そこで歳入済合計額、現在で申しますとその三十四億と、それに証券または借入のできる金の限度三十億、これを足しました六十四億というものが一応の政府が買う契約のできる額の全部のワクになるわけでございまして、政府はこの六十四億という額の財布を常ににらみながら操作をする、こういうことになるわけでございます。そこでその六十四億という金の中からまず次のものを控除していくわけでございます。「一 当該契約をする時における糸価安定特別会計の当該年度の支出済歳出額」これは六十四億ございますが、その中でもうすでに糸を買いました場合には、それだけの金は出ていっておりますから、残った分だけがあと使える金であるということでございます。現在のところはまだ政府は一俵も糸を買っておりませんから、今申しましたように六十四億使い得るわけでございますが、将来糸を買ったり、あるいは糸を買って支出をしていきました場合には、それがだんだんと減っていくわけでございまして、まずその一号ですでに支出した額は除く。  それから二で「第二条の規定による生糸の買入契約金額」、これはすでに契約をしてしまっている金、これはいずれ支払わなければならぬ金でありますから、まずそれを除き、カッコの中で、「当該契約をする時までに支払われた金額を除く。」と書いてございますのは、もうすでに支払われたものは第一号の方へ入っておりますから、第一号の方ですでに除いておりますから、ここでは買入契約金額としてすでに金で払ってしまった分は一号の方に該当しておりますので、カッコでそういうふうに除くと規定いたしております。  それから第三号は「第九条の二の規定による生糸の買入契約金額」、これはそのときに特別買入の契約をしておればその金。  その次は四号で、第十一条第一項の規定による補助の契約をしておれば、それもすでに約束済みの金でありますから除いていくというふうにして、すでにあるいは十一条二項の規定による繭の買入の約束のできた金は除いていくというので、すでに支払った金、もうすでに約束のできておる金を除いた残りの金が常に新たに契約し得る限度である。こういうことでございます。  それからなおその中から除くのは六の「糸価安定特別会計における政令で定める経費の額」こう書いてございますが、これは何かと申しますと、糸価安定特別会計は常に一定の経費を、これは糸を買って持っておるときも、持っていないときでも、一定の額は毎年、毎月要るわけであります。たとえばその内容を申しますと、この特別会計が糸を持っております場合には、それの保管料というのは毎月払っていかなければならない、それからあるいはこれの三十億の元金、三十四億の基金は全部使ってさらに借入をやって糸を持っておる場合にはその借り入れた金のあるいは証券の利子は毎年払っていかなければなりません。それから糸価安定特別会計を動かすための事務費も必要でございます。そこでこの六十四億で全部糸を買い、繭を買い、契約してしまいますと、その買った糸の保管料も払えない状態になりますので、そういうものは一定の金額をきめましてあらかじめこの六十四億から保留をしておいて、その分は手をつけない、こういうふうにいたす規定でございまして、これらの点ですべて買入契約を行いますのは、そのときの金六十四億の中からいろいろなすでに契約したもの、あるいは支払済を除いたもので残った金の範囲内でできるという規定でございます。  なお付則は「この法律は、公布の日から施行する。」ということになっておりますが、もちろん公布施行されましてもいろいろ政令その他を定めるのに若干の日時が要ると思いますので、その政令等ができた日から現実に行うこととなるのであります。  二項では、農林省設置法の一部を次のように改正するといたしまして、今までの農林省設置法では、ただ生糸を政令で買ったり売ったりできることとなっておりましたのを、今度は、生糸または繭を買ったり売ったりすることができる、またはその繭を加工したり、もしくは生糸と交換することができるというふうに、農林省の設置法の中に必要の改正をいたしたわけでございます。
  73. 江田三郎

    委員長江田三郎君) 御質疑があれば……。
  74. 森八三一

    ○森八三一君 今回の改正によりまして繭糸価格安定法に基く十一条の繭に関する具体的な措置が講ぜられたということは、先刻も局長お話のように、本法制定当時に相当強く論議のあったことが具体化したことでありますので非常にけっこうだと思います。それからさらにかねがね当委員会の希望しておりました玉糸の問題が今回の措置によって入って参りましたことも、これも国会の意思が法律の上に具現して参ったのでございまして、喜ぶべき現象と思うのでありますが、そこでお伺いしたいことは、第一にお話の中に、予算はただいまのところでは六十四億、年度しまいになりますれば六十八億になるということになると思いますが、その予算上本法の改正によって対象となります範囲が生糸と玉糸と繭と補助金という四つの内容に区別されると思います。これは今お話のありました法律にも規定いたしておりますように、十二条の三によってあらかじめ御計画が立っておりませんと予算の運行がなめらかに参りませんと思うのであります。そこで当局におきましてはそれぞれおよその心がまえはおありになると思うのでありますが、今申し上げました予算上四つの区分に分れて処理をするわけであります。それに対するただいまの情勢における心がまえと言いますか、見込みと申しますか、それはどういうふうになっておりますのかという点が第一点。  第二点は、玉糸の問題は今回の九条の二、すなわち輸出適格生糸という面において解決はいたしましたが、原則の法律二条による解決はできていないのであります。これはおそらく関係外務当局と相当折衝の結果こういうことに落ちついたものであろうと思います。原則の買入に最低価格を割るというときに買入れの対象に玉糸が登場しておらなかったというのはどういう理由に基いておるのか、その点を第二点としてお伺いをいたします。  それから九条の二によりまして、先刻糸政課長お話では、指定する銘柄はおおむね十銘柄である、その内訳が糸で六銘柄、玉糸で四銘柄というように承わったのでありますが、その具体的な内容はどういうものを意味しておるのか、現在政府でお考えになっておるそれぞれの具体的な銘柄についてお伺いいたします。  第四点は、九条の二によりまして、九条の二の二項ですか、「前項の規定により契約を締結する場合における政府の買入の価格は、政令で定める」こうなっておりますが、この政府の買い入れ価格というものは、抽象的にどういうようなことをお考えになっているのかをお伺いいたしたい。  第五は、九条の三によりまして、「必要な数量をこえるときは、」この必要な数量というのは具体的にどういうことをお考えになっているのか、この必要な数量のきめ方いかんによって、業界にいろいろの問題の巻き起って来る危険があると思われますので、必要な数量とは具体的にどういうことを考慮されておるのか、お伺いをいたしたいと思います。  それから第十一条に参りまして、「農林大臣の指定する農業協同組合連合会」、これは全国を区域とする連合会が原則である、ただし時によって郡区域の段階における農協連をも指定するというような御説明があったのでありますが、それは関係連合会の申請に基いて、希望に基いて、そういう措置が行われて行くということに解釈してよろしいのか。農林大臣が指定するということでありますので、あらかじめ全国区域のものはかくかくのものである、郡区域のものはこういうものであるといった、具体的な指定をされているのかどうかということをお伺いいたします。  それから同条の中に、補助金の交付に関連いたしまして御説明もありましたように、「保管に要する経費」ということは、金利、保管料、それから検定料等があればそういうものを加えるのであるというような御説明でありましたが、現在生産農民はあまねく保管の設備というものは持ってはおりません。といたしますと、この法律改正によって繭価の維持をはかりたいと考えましても、保管の設備が十分でありませんとその目的を達するというわけには参りかねると思いますが、この法律改正に伴う実際の効果を具現して参りますために、保管に対する施設というものは、一体どういうように考慮されておるのかどうか。もちろんそういうことについて考慮が払われるといたしましても、急速に充足をするというわけには参りません。といたしますると、相当遠隔の倉庫に搬入をしなければ、この保管の対象という姿には持ち来たし得ないという場合が存在をする。相当私は全国に多量にそういうものが存在するであろうと思われます。そういう場合に、その搬入する運賃等は補助のうちの対象になるのかならぬのかということをお伺いいたしたいと思います。  それから最後に十二条の三の六、「糸価安定特別会計における政令で定める経費の額」これが非常に多くなって参りますれば、本来の目的に使用せらるる額は、それだけは減少するということになるわけであります。先刻御説明の、それぞれのものは、本法の運営上当然必要とは思います。ますが、これが大体策定されておりませんと、最初に質問いたしました予算上の四つの品目に振り分けてどう考えるかということが出て参りませんので、六に基く経費の額というものは、現在の姿においてどういうことが想定されておるのかということを最後にお伺いいたします。
  75. 塩見友之助

    政府委員塩見友之助君) ただいまの御質問にお答えいたします。  この第十二条の三に、六つの項目をあげておりまして、その個々の支出額を一つ一つ明定しながら、法律を作った方がいいか、それとも総額でくくった方がいいかということが、これが大蔵省と最後まで論点になったわけでございます。それで個々のものをずっとあげますると、これは非常に乾繭共同保管なんかをやりました場合の、繭を一体幾ら買い上げたらいいかという踏み方や何かになりますと、非常にそのときそのとぎの事情によって、数量等も相当変りまするし、それからまた外国に対する輸出量がふえるとか、出回る量がふえるとかいう状態によって上値押えのための数量も相当変ってくるわけでございますが、そういうものを一つ一つここできめるよりも、やり方としましては、まあ上値押えに必要上する額を、現在もう予算で……、この法律と、糸価安定特別会計法が通りますならば、大体三万俵くらいの見当は買えることになるわけでございまするので、まあ上値押えに必要な数量を一応見込みまして、そのくらいの総ワクの中でやりくりできればいいじゃないかということで、それで数量の総ワクを大体三万俵見当……、幾らかの余裕はございます。少し糸格の高いものが入ってもかまいませんが……、で六十四億の範囲内でやって行こうということでございまして、大体の見込みとしましては、この総ワクとしては三万俵見当のところで、それから特別買い入れのは、先ほど糸政課長が申しましたように、これはもちろん繭糸価格安定審議会にかけて、審議していただくつもりでございまするが、大体一万俵見当というふうに考えておるわけでございまして、その中で考えて行く。で、もしそれでもって一番これでは足りなくなるというおそれが多く考えられるのは、乾繭共同保管をやりました場合に、非常にその景況が悪くて、売れにくいというのがどかっと入ってくる場合があるために、このワクでも足りなくなるかもわからない、こう考えられるわけでございますが、それは大体時期といたしましては三月末まで補助金を交付して持ってもらう。で、買い入れるとしまして、大体四月以降というふうになりますれば、大体十二月くらいにはおよその見当はつきまするので、もしそれが非常に大量になって、繭価維持のための買い入れ数量が非常に多くなるということになりますれば、国会の方であらためて資金量なり、あるいは買い入れ限度なりというふうなものをふやして、それでそれによって、それだけのものに対応することができるようにすればいいというふうに考えられまするので、今のところ一つ一つについてはこまかく分けておりません。この予算の説明のときに、前の買い入れ限度として、大体考えましたのは、過去におけるいろいろのデータからして市場からの隔離、七%から八%見当のものを隔離すれば過去のいろいろな数字から見ますると、大体繭価は安定できるのじゃないかという数字で、今の出回り量から申しますれば大体百九十万見当ということで大蔵省には説明をしたわけでございますけれども、これはやはり市況が悪いときとか、いいときとかによってその数量も相当変りまするし、その部分が相当大きくふえると考えられまするが、まあ見込みとしましてはそのくらいの見当でございます。で、区分けとしての腹ぶみはそういうふうにとっておりますが、それは最後的には非常に糸も売りにくいし、繭の方も売りにくい、こういう状態が並行してくる可能性がございまするので、そういう関係からして資金量が足りなくなるというときにはあらためて国会の御審議を経た上でふやしていく、こういう形をとるわけになっておりまするが、差し当りは総ワクとしまして三万俵見当のものがございますれば足りる、こういうふうにおおよその腹ぶみはつけておる、こういう状態でございます。それから玉糸につきましては、これは現在輸出量が非常に大きい比重を示しております。機械生糸に比べますると非常に輸出比率が高いというふうな形からしてこの特別買い入れによって玉糸総体に及ぶところの糸価安定の効果というものは、機械生糸の場合は非常に少いわけですけれども、玉糸については圧倒的な比重をもって糸価安定ができる、こう考えられまするので、大体これの特別買い入れと、それの予備段階としての共同保管というふうな形によりまして、第二条の規定によるものはやらなくても十分最低価格の維持の方はできる、こういうふうに考えております。この特別買い入れの価格の方が大体最低糸価で買う価格よりは、先ほど御説明しましたように高めにきまりまするので、そういう意味からいって特別買い入れの方に十銘柄のうち四銘柄入っていくというふうな形において実効は十分あがると大体考えておる次第でございます。なおその特別買い入れの銘柄の点について、先ほどちょっと玉糸に関連がございますので御説明をいたしましたが、現在は十四中及び二十一中という二十四銘柄のうちで十銘柄になっております。普通買い入れは今まだこれは最後的な結論を得たわけではないのでございますが、大体の見当としまして先ほどちょっと御説明いたしましたが、今まで技術者の間でいろいろ検討してもらっておりまする部分はまだこれは最終的な結論ではないし、もちろん専門家の意見も十分尊重して最後的には確定いたしたいと思いますが、われわれの方で検討しておりますのは、十四中では三Aと二Aと、この二格、二銘柄くらいでいいのじゃないかと思います。それから二十一中五銘柄でございますが、その中で三Aと二AとAと、この三銘柄くらい、それから特太物としては四十二中四Aくらいというふうに見当をつけたらいいのじゃないか。これらが非常に輸出量全体で占めておる比重も高うございますし、支配的な品種に考えられます。それから玉糸につきましては百十中優等と一等と、百二十五中の優等と一等、この四銘柄、全体としては太糸六銘柄、玉糸四銘柄、全部で十銘柄くらいの見当でいいのではないか。これらはもちろんわれわれが専門家の御意見を聞いた上で最後的にはきめて参りたい。必要があれば繭糸価格安定審議会等で十分意見を承わってきめたい。こう考えておりますが、今およそ想定しておりまするのは、審議の必要上大体御質問も出るかと思ってわれわれの方で検討した段階ではその程度になっております。  その次は特別買い入れ価格の問題でございますが、この価格は輸出生糸確保のための補充買い入れをする場合の価格でございますので、十九万円よりはある程度、どうしても高値となります。その買い入れ価格に応じて市場価格が最低価格以上の水準に維持されることに相なると思います。従ってその価格は輸出の阻害となり、また海外の生糸需要を減退せしめるような高値であってはならない、こういう関係からして、買い入れ価格は海外の最大の生糸市場であるところの米国市場における生糸の価格とか、関連するところの主要繊維の価格、物価その他の経済事情から適正価格を算定して繭糸価格安定審議会に諮問して決定する、こういうふうに考えております。価格決定の上には、先ほど申し上げましたように、告示をされまして、特に海外の生糸市場その他経済事情の変化によって不適正になった場合には改正するという考えでおるわけでございますが、この価格は今年度はこの法律通りますれば、政令等も作りました上でできるだけ早く今年度のこういう価格を現在繭糸価格安定審議会できめられましたところの最低価格及び最高価格のほかに決定しなければならないと思いまするが、普通の年では大体最低価格、最高価格を決定しますときに審議会であわせてこの価格もきめる、こういう形で進んでいったらいいのではないか、こう思っております。現在のところアメリカ市場での状態では、大体向うでの相場四ドル五十セント見当の値段であれば、まあ海外市場に対して売るのに困難はないという価格のような状態でございますので、これらも十分勘案してきめるべきであろうかと、こう考えまするし、また一方この会社自体は非常にもうけもしないし、損もしないというふうな形で、堅実に先ほど申し上げましたような、機械的な仕事をやってもらうように、会社として運営する建前からも言いますると、ある程度最低価格というふうなものと、あとかかるところの経費というふうなものも見合いまして価格をきめるのが適当ではないか、こう考えておる次第でございます。これももちろんこれが通りましたらできるだけ早い機会に繭糸価格安定審議会にかけまして、市場等の動揺の起らないように、またそれによってマイナスの効果はもちろん出ないでプラスの効果が出るような形できめ、また告示もして不安動揺がないようにいたしたい、こう考えている次第でございます。  それからその次は最肩価格を打えるための必要数量でございまするが、これもなかなかむずかしい問題でございます。戦後の経験でいろいろ数字を検討して見たわけでありますが、朝鮮動乱によるブームと、それから一昨年の凍霜害による大凶作と、これにまた生糸課税の問題が重なったとき、この二回に非常な暴騰を示しております。それも非常に短期間で平静に復したところから考えまして、政府の保有生糸の量は現在の状態からすると、必ずしも大量を要しない。恐らくその数量は下値支持のために必要数量よりは現在の状態ではある程度少くて、大体、特殊な事態が起れば別でございますけれども、足りるのではないか、下値支持の方が額としては十分なものを取っておかなければならないのじゃないかと、こう考えております。しかしながら価格騰貴の原因となるところの原因というものはいろいろなものがございまするので、また凶作であるとか、原糸課税の問題とか、あるいは世界的な動乱とかというふうな、そういう過去にありました非常に大きく影響のありましたそういうものが起りますれば、これはまあどのくらいの程度になるかということは今から推定ができない数量ではございますけれども、この数字につきましては、そういう状態で、そういう異常な経済的にも大きな変動がある場合という場合を十分に予測しなければならないわけですけれども、今のところは特別会計としては三万俵見当を予定しておる、こういう状態で、専門家筋の意見等を聞きますると、そのくらいのものがあればまあそう危険はないのじゃないかということでございまするので、ここらの点につきましては、これもこの法案が通りました直後において、繭糸価格安定審議会においていろいろの観点からどのくらいの数量が要るということを審議して決定するという予定でおるわけでございますから、今の予算としてはそのままの数量を一応もくろんで考えておる、こういう状態でございます。  それからあと三項目ほど御質問がございましたが、糸政課長からお答えていただきます。
  76. 大戸元長

    説明員(大戸元長君) その次の御質問は十一条の「指定する農協連」、これは原則といたしましては全国の団体と、こう考えておりますが、場合によりましては県の養連あるいは県の農協連というふうに考えております。先ほど郡という御質問であったかと思われますが、郡は大体考えてはおりませんですが、県段階までは考えられると思います。これは原則といたしまして全国的にやります方が全国的な統一のある繭価維持という面からいいと思いますが、その蚕期によりまして全国的には大体指定価格としては維持される。しかし県におきましては、たとえばその県におきましては製糸工場が一工場だけで、その製糸工場が一工場であるために製糸家の方が非常に強い。その県だけは最低繭価を割るおそれがある場合には、その県だけでやるというようなことも考えられるのではないかと思います。もちろんこの場合指定価格と申しますが、当然その場合には向うから申請を待ってそれを指定するというふうな形になると思います。  それからもう一つの設備の方は局長からお答えいたしますが、保管に要する経費の中て運賃その他はどうするかという御質問でございますが、この保管に要します経費の中に、金利、倉敷はまず大体はっきり入れるわけでありますが、この場合に、たとえば通常の場合は、なま繭で売ります場合には、部落または村の集荷所までは農民が持って参りまして、それから普通のなま繭取引の通常の形態としては、そこから製糸工場へ持っていく分は製糸家の負担になっております。そこで乾繭をいたしました場合に、それよりも、その部落からその乾繭所までいく経費、これが製糸家へ売った場合でないのでございますから、負担するものがないので、これは搬入費は見なければなま繭で売ったものとの均衡がとれないのではないか、こういうふうに思っておりますが、たとえばそういう場合の補助金についてはどうするかというようなこまかい点については、現在まだ大蔵省との話し合いでは大体予備費の中でいろいろ見ようというようなことになっておりますが、具体的にどの費目どの費目というこまかい点までまだ話をきめておりません。そういうような搬入費というのは、当然それだけの負担部分が農民にかかるわけでございますから、やはりこれは補助で見るべきものではないかと考えております。  それから全体の六十四億の中から引いておきますところの経費の額でございまするが、一番最後の御質問でございますが、これにつきましては大体何年分を見るかということで非常に大きくもなるし、小さくもなるわけでございます。そこで私どもといたしましては、これをあまり大きく見ますというと、御指摘の通り、買い得る限度がそれだけ減りますので、これはなるべく短かい期間を見たい、こういうようには思うのでございますが、一方大蔵省側といたしましては、非常に短かい期間見ておきますと、繭なり生糸なりで一ぱい賢い込んだ、そうしてあと保留してあったところの保管料その他の額が少いというとすぐ保管料が払えなくなる。そこでまた増額をせねばならぬというような点もありますので、これはやや長く見てくれというような話もございますが、今のところまだそこははっきりとはきめてございません。しかしながら大体長くても二年分あるいはもうちょっと短かい方が私どもとしてはいいのではないかと、こういうふうに考えております。なおその費用として見ます中には、生糸の保管料、それから支払い金利、それから事務処理費というものでございますが、これらは一年ないし二年分くらいを見ておきまして、その時期が経過してもう保管料も払えなくなるというような事態が起りますれば、当然それは資金を増額いたしますとか、何とか根本的な方法考えなければならぬのじゃないかと、こういうふうに思っております。
  77. 塩見友之助

    政府委員塩見友之助君) 保管設備の問題の御質問がございましたが、非常に専門的な部分で、私どもも非常にその点を考えたわけでございます。これはやはり一般の営業倉庫あるいは乾繭協同組合の倉庫等がございますが、それだけではやはり偏在しておりますので、大体製糸工場の倉庫も借りるということも考えなければなりません。その関係からして農民団体の方からもその意見が出ましたが、大体農民団体の方と製糸協会の方と大体話がつきまして、こういうふうな最低繭価の保証のための仕事をやる場合には、これは単に養蚕農民だけでなくて、製糸の方もそれによって操業率も増産ができて上るという、こういうような関係からコストの低下もはかれるというような合理化もできますし、また金利、倉敷全額を政府の方で補助する、これは大蔵省と話し合いがついておりますので、そういうふうな形であるならば、自分たちにも相当やりいい面が金融その他でできる、こういう関係からして両者の意見が合致しておりまして、倉庫はいつでもお貸ししましょう、こういうふうに大体内約ができておりまして、公用徴収とか、法律的にぎしぎしやればそういうことになるかもしれませんが、その必要はないかと考えておりますし、またその倉庫の設備とか乾繭方法とかにつきましても、過去の経験等から考えますると、いろいろ問題がございまするので、殊にこれば最後に買います政府だけではなくて、農民団体も関係が深いし、またこれに融資をいたします金融機関も非常な関心を示しておりまするので、本法が通りますればやはり優秀な倉庫というものを、金融機関の指定倉庫あるいは農協連とか協同の指定倉庫、そういう形でしっかりしたものを固めていくという関係で、前もって話し合いをつけるという形で進めていけばいいんじゃないか、それで運用は大体つく。これは、この法案を作りながら民間の方とも話し合ってきたわけでありますが、大体うまくいくと、こう見ております。  それから最後の経費でございまするが、現在の状態では収入の金利は大体二億見当でございまして、事務人件費等は大体六千万円見当でございます。その差額だけがたまってくるわけでございまして、事務処理費は一年で見ますと三千万円、二年分見て六千万円、こういう経費でございまするので、六十四億、このままで糸を持たずにいけばまだふえまするが、その経費はそう多額なものではなくて、やはりその金利、保管料等が大きいと思います。金利の方も三十億で、自分の基金でやっている間はその利子と見合って利子が入らないという形になるだけでございまするので、大体今のところはやっていける、こう考えております。
  78. 江田三郎

    委員長江田三郎君) ちょっと速記をとめて下さい。   〔速記中止〕
  79. 江田三郎

    委員長江田三郎君) 速記を始めて。
  80. 清澤俊英

    清澤俊英君 ちょっと関連してお伺いしますが、まあこれから繭の値が下るということを非常に心配していられるようでございます。それからいま一つは、大体政府では輸出適格価格というのですか、輸出に対する安定価格というのですか、これくらいのものの維持をしておったらよろしいという腹がまえの価格ですね、それは大体どれくらい見ておりますか。御説明をずっと聞いておりますと、本年の場合とを比較して言いますと、昨年から今年にかけては大体二十万円台を輸出価格は持っておると資料では拝見しておりますが、この場合、かりに二十万円台の糸を最高価格を押えるために輸出適格価格としてある量数を買い上げるとか、こういうことになりますれば、結局二十三万円が土台になって、そこまで買い方によっては上るという目安がつきますがね。市場から糸をさらうのですから、政府が現在かりに二十万円という考え方なら二十万円でいいんだが、二十万円で売る、そういう考え方のところに、今なら買わなければならぬ、この法律からいけば買っておかなければならぬ、ある量数を、現在維持しているものを買えば上るのだ、これはおかしいものができ上る、こういうことになりますが、大体政府の考えておる輸出適格価格は幾らなんですか。
  81. 塩見友之助

    政府委員塩見友之助君) 繭値は今下るとか、どうとかいうことではなくて、今までは非常に生産最をフルに輸出しておりますので、非常に売手市場で強かったわけですが、全体の情勢から見ますと、増産の方もある程度下降されつつありますし、全体の経済状態、糸価の状態等から見まして、今までみたいに繭や糸価が強調を呈するという形よりも、数年後、今年とか来年とかということではございませんが、繭の価格という問題については今から十分な手を打っておかなけばならない、こういう見解でございまして、今年繭が落ちるとはもちろん考えておりません。  それから輸出価格の問題でございまするが、一時新聞等に誤まった報道もございましたが、あれは農林省の見解ではございませんので、別にこれでもって十九万と二十三万の最低、最高の価格のほかに中間の輸出価格というふうなものを設定する考えはございません。これによって十九万円と二十三万円の価格を、それをがっちりと守るという手だてを作ろうと、こういう考え方でございます。その間に中間の価格を作るという考え方は、今のところは持っておらないわけでございます。ただこれによって政府は最高価格の糸は買い入れやすくなるということと、また玉糸等についてはあわせて最低価格まで、底値の方までも間接に維持されるという形がとられるということと、この保管をする会社等におきまして、相当の死蔵在庫を持ちますので、そうであれば先ほど申しましたように、ここ五年間で二%から五%ぐらいしか横神在庫が年間出回り量に対してないと、こういうわずかな量で、ちょっと買手が出ればすぐ上る、それから製糸の方で、輸出商や問屋が非常に資金難ですから、ちょっと悪ければすぐ投げ売りする、こういう形で変動は非常に早いのですけれども、それが幾らか在庫がふえることによってゆるやかに上り下りをしております。全体としまして二十万円から二十三万円ぐらいの見当のところで、三カ月ぐらいのところは動いていく。またアメリカの購買力が出るとか、景気がよくなれば二十二万から二十三万のところで数カ月、こういう形で、期間々々を区切りますれば割合かたく動きますが、年間を通じまして、全体としての価格としては、やはり十九万円から二十三万円と、この間をかたく守るという考え方でございまして、その間に政府が実際的に中間価格を設定するという考え方は持っておらないのであります。
  82. 清澤俊英

    清澤俊英君 さっきあなた方が説明せられたのでは、大体はアメリカにおけるところの買い入れ糸の値段が四ドル五十セント、それは大体二十万円だと、こうおっしゃるのでしょう。これあたりならば大体輸出は妥当の線にいくだろう。ところが、内地の糸はやっぱりそれくらいの糸で現在はやっているんだ、相場がですね、ここ一年くらい。それを買うというのでしょう。そうすると上る、こういうことなんでしょう。あなたが微妙な資金難と言うから、微妙なことで糸の値段が上る、こうおっしゃるのでしょう。それはこちらもそうじゃないかと思いますから、そういうときに買うとしたら上るのじゃないか。そうすると二十三万円引き上げる形になるが、一体どのくらいに考えておられるのか、こういうことなのです。
  83. 塩見友之助

    政府委員塩見友之助君) この糸は最後的にはあれです、政府が数量が超過しない限りは二十三万円でないと売れないわけですから、輸出適格生糸として買いますところの数量は大体一万俵、先ほど申し上げましたように、数量としては限られておりますもので、それほど市場に直接的な影響はこないことと、それから、それの買い入れにつきましては、こういう保管会社というものができまして、それで半年なら半年間、金利、倉敷をかけて持つというような関係からして、その経費もかかるわけでございますので、二十万円で買うからと言って、製糸会社自体は、その十九万円で売れる分が、この分だけ二十万円で売れたというわけではなくして、それは半年間の金利、倉敷をかけたものを二十万円見当で売れる、こういうような形になるわけです。数字の方は、まあもちろん繭糸価格安定審議会にかけてきめるわけですが、そういう見当のものでございますし、そういう途中で買い戻し条件がついておりますから、そう長くかからないうちに製糸会社の方で途中で引き出して、いい値ごろを見ては売っていくわけでありますから、そういう関係からして政府は二十万円で買って、売るのは二十三万円でなければ売れないという関係から、二十三万円まで上ってしまうというような結果にはならないと、こう考えます。
  84. 清澤俊英

    清澤俊英君 それは二十三万円まではいかんかもしれないけれども、現在目的の価格ができているのですから、ここで買ったら上りゃしないか、こういうのです。むしろ糸の値段を上げるだけの話、だから買う時期がなかなかなくて、そういう調整する時期がなかなか見つからんのじゃないかということです。今二十万円が妥当な向うの買い値段です。向うの市場から見ると、そのくらいが妥当な線だと、こうおっしゃるのですね、現在これだったら買う時期がないでしょう。
  85. 塩見友之助

    政府委員塩見友之助君) おっしゃるところは、われわれも一番苦心をした点でございまして、この制度をとったからといって、上値押えのものが確実に買えるということはおっしゃる通りに申せません。ただ今までよりも買うチャンスは非常に多くなるということだけは言えますけれども、これで確実に上値押えのものを手に入れるということはここでは申されません。しかし、ただ今までの最低価格で買うというやり方では買えなかったわけです。ここ数年間、この形なら買うチャンスはそれよりはずっと多くなるということだけは申し上げられるわけでございます。確実にこの上値押えで乗り切れるということは、これは市況が悪くなれば、チャンスは非常に多くなりまするが、必ず買えるということはこれは申せないことでございます。
  86. 清澤俊英

    清澤俊英君 結局二十一万円くらいまでは引き上げておこう、こう言っておられるのでしょう。二十万円で買って何すれば二十一方円に引き上るようなことも考えられるでしょう。そのときは買い戻しで売ってやればいいので、今現在とんとんのものがきているのに底値じゃ買わない、とんとんで買うのだといったら上るよりしようがないでしょう、だからおかしいというのですよ、いかがですか。
  87. 大戸元長

    説明員(大戸元長君) 私の、先ほど逐条説明のときに、まだ十分御納得を得ていないのじゃないかと思いますが、かりに政府が今千俵買おうというので、千俵を市場から買いますれば、おっしゃる通り買ったとたんに上るわけでございます。そこで、そういう政府が買ったために、糸が上ることを避けるために、前に一ぺんプールを作りまして、そこで保管会社で一応持たせるわけです。そこで保管会社が持った結果上りますれば、そこへ入れたやつは買い戻しをして売りますから、その上りがとまるわけでございまして、そういうふうにいたしますから、糸値が保管したために上れば、保管したやつが出ていきまして、従いまして、最後まで残った政府が買い上げる値の状態がどうなるかと言いますと、そのように糸値が上らなかったときだけ政府へ持っていく、従いましてお説のように政府が必ず買えるとは限らんじゃないかとおっしゃるが、まことにその通りで、保管をいたしておきましても、その結果糸値が上りますれば政府へ入って参りません。その間糸値が上らずにずっと横ばい、または加工いたしましたときに限って、政府に入って参る、従って政府に入るということは、確実ではございませんが、しかし、十九万円買い入れなら十九万円まで下らないまでは政府へ入ってくるチャンスがない。そこで今よりは政府へ入ってくる、買うチャンスをふやすというのがこのねらいで、しかも政府が買うことによって糸値が上ることを避けよう、こういうのが、こういう保管という回りくどいやり方をやった理由なんであります。
  88. 清澤俊英

    清澤俊英君 結局は糸があまりどさ上りしないために、保管利子はつけて系統会社に一応の保管をさせて、安定性を持たせる、こういう結論になりますですね。
  89. 亀田得治

    亀田得治君 ちょっと、もう終るのですね、資料の要求を正式にお願いしておきたいと思うのですが、繭のことじゃないのです。昭和二十六、七、八、三カ年の統計調査部における米の生産費調査。それから第二は農地法第三条の自作地の所有権の有償移転に関する統計、これは全国一括でけっこうですから、なるべく昭和二十二、三年ごろまでさかのぼって最近まで。それから第三には農地法二十条の耕作目的のための土地の引き揚げの統計、これも同じく全国一括で、できるだけ昭和二十二、三年ごろから以降のものをとってほしい。それから、これは午前中委員長に非公式に申し上げたのですが、第四番目には、農地法の刑事罰違反事件統計、これも全国一括で、そうしてできるだけ昭和二十一、二年にさかのぼって、これは法務省にお願いしておきます。
  90. 江田三郎

    委員長江田三郎君) 承知いたしました。  それでは本日はこれで散会いたします。    午後四時三十九分散会