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1955-11-10 第22回国会 参議院 農林水産委員会 閉会後第13号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和三十年十一月十日(木曜日)    午前十時二十六分開会     —————————————  出席者は左の通り。    委員長     江田 三郎君    理事            秋山俊一郎君            白波瀬米吉君            三浦 辰雄君            戸叶  武君            千田  正君    委員            青山 正一君           池田宇右衞門君            大矢半次郎君            重政 庸徳君            白井  勇君            関根 久藏君            亀田 得治君            清澤 俊英君            棚橋 小虎君            松浦 清一君            三橋八次郎君            森崎  隆君            飯島連次郎君            菊田 七平君            鈴木 強平君   事務局側    常任委員会専門    員       安楽城敏男君   説明員    水産庁次長   岡井 正男君    水産庁調査研究    部調査資料課長 岡  伯明君   参考人    全国漁業協同組    合連合会専務理    事       岡  尊信君    大日本水産会副    会長      伊東 猪六君     —————————————   本日の会議に付した案件 ○農林水産政策に関する調査の件  (水産業振興に関する件)     —————————————
  2. 江田三郎

    委員長江田三郎君) それではただいまから農林水産委員会を開きます。  最初水産業振興の件を議題にいたします。  当委員会におきましてかねてわが国水産業振興に関し多大の関心を払って努力をして参りましたが、今回わが国水産業現況及びこれが振興上の問題点について水産庁当局及び民間有識者各位の御意見を伺って問題を一段と推進していきたいと存ずる次第であります。つきましてはきのうの予定では、水産庁関係は三部長からということにしておりましたが、これは都合で次長の方で一括して御説明を願うことになりました。午前中に水産庁次長中心とし、それから午後は水産界及び全漁連の方の参考人の御出席を願いましてお話を聞き、各位からそれぞれ御忌憚のない質疑なり御意見を出していただきましてこの問題を掘り下げていきたいと考えておる次第でございます。  それでは最初水産庁岡井次長にお願いします。
  3. 岡井正男

    説明員岡井正男君) お手元へお配り申し上げました資料は過般委員長の方から御示唆をいただきまして以来、昼夜兼行資料課中心にいたしまして、わが国水産業現況を、最近の資料を集計し、それに説明を加えまして、いわばこの資料全部を御情誘いただきましたら、私からちょうちょう申し上げる必要がないという程度に収集いたしましたものをお配り申し上げたのでございます。従いまして、私から御説明申し上げる点はこの内容のポイントだけをさらに引き抜いて申し上げることにいたしたいと思います。従って本日はむしろ先生方の方で、この資料に基いての問題点並びに問題とつながる水産行政政策面は他日主務課長あるいは主務部長をよこしましてとくと御検討の結果をわれわれとしても御意見をちょうだいいたしたいという考え方を私の方はいたしておるわけでございます。従って私はこのなまのままの現況を要約して申し上げたいと存じております。  第一章で、この資料に基いて御説明申し上げます。第一章で申し上げておりまする要点は、日本漁業の現在の地位世界各国に比較してどういうような姿であるかという点でございます。簡単に要点のところを申し上げますと、日本漁獲高は、最近一九五一年の統計によりますると、世界漁獲高の一四%余を占めておりまして、世界一でございます。これが戦前と比較しますと、日本漁獲高は、戦前に比べまして現在は二%しか増加しておらないのでございますが、世界はどういうふうに動いておるかと申し上げますると、世界漁獲高は六〇%近く増大いたしております。従って日本戦前漁獲高に比較すれば、戦後の日本漁獲伸びは少いということが言えるわけであります。むしろ戦前において、比較的小水産国というようなところの漁獲量伸びております。そういう点は御精読いただきましたら一ぺんによくわかると思いますが、それにつながりまして、漁業従事者はどういうふうな漁獲量を得ているかと言いますると、一人当り漁船一そう、または一トン当り漁獲高というものは、諸外国に比べると非常に低位にあります。いわゆる日本漁業の姿というものは、零細な漁民数が非常に多い割合に、漁獲総量伸びていないということを現わすということに相なります。しかるに国民経済のうちでの漁業地位国民所得で見まするならば、二・七%にしか当っていないのでありますが、逆に日本人が要求する、いわゆる保健衛生上からいたしまする動物蛋白質源といたしましては、漁業地位、これは日本国内における漁業地位意味でございまするが、それは非常に責任の多い要素を備えておると考えられるのでございます。いわゆる他の諸外国に比べまして、動物蛋白質を必要とする日本の国情からいたしまするならば、いわゆる日本畜産業などに依存するよりも、やはり海の資源を、より高度に利用するという必要性日本国民にはあるのではないかということがはっきりとわかると思うのであります。こういう点を中心といたしまして、第一章には漏れなく統計を添えて表にいたしておりますので、その点をよくお調べいただきたいと考えます。  次に六ページでございますが、第二章でうたっておりますのは、漁業生産面から見た様子はどうなっているかという点でございます。わが国の総漁獲高は、戦後二十七年にやっと戦前水準をこえる程度に復旧いたしました。その額は約十三億万貫でございます。ところがそれ以降は、依然高水準にあるとはいいながら、伸びが非常に鈍化してきました。いわゆる二十七年に一度戻ったものが、その後それ以上伸びがとまっている、少しずつしか上っていないということでございます。戦後遠洋漁業比率は非常に高くなりまして、沿岸漁業漁獲量というものは逆に低下して参りました。それから制度改革漁業構造変化とにより、漁業権漁業の比重は非常に下りまして、逆に許可漁業比率が非常に高まったのでございます。この点は皆さんの方もよく御留意いただきたいと思いまするが、後ほども出て参りまするが、いわゆる日本戦前における漁業権漁業、いわゆる沿岸中小企業以下の小漁民といいますか、漁家当りの総生産量が六五%あったものが、逆に遠洋漁業の方のウェートが非常に高まったという実態でございます。それから最近増加傾向をたどっておる魚種をいいますると、キワダマグロとか、アジとか、サンマとかいうのが多くなりまして、減少をたどっておるおもな魚種は、ニシン、マイワシ、タラというようなものが非常に減少いたしております。先ほど御陳情の方でもいろいろその点に触れられておったようでございまするが、研究所あたりでは、こういう魚種変化ということについてメスを入れたいというので、特に日本海あたりでは、相当各府県の試験場を総動員いたしまして究明いたしておりまするが、今のところ最終的な結論を得ておりません。しかし暖寒流交流変化ということがおもな原因であろうというような中間的な報告は受けております。なお、皆さんの方へ一言参考に申し上げますると、海の資源の元をなすところのプランクトンそのものは大体変化はないのでございます。いわゆるその総量においては変化はないのでございまするから、従って考えによれば、ある魚種が非常にふえ、かわりにある魚種が非常に減ったということは、いわゆる元の基本的な海の資源の元、農地でいえば窒素、燐酸、カリのような基本的な生産源でございまするが、その源をなすところのものの総量は減らないのですから、魚が単に置きかわっていったというような解釈もできるわけです。たとえばイワシサンマに置きかわったというような簡単な見方もでき得るわけでございます。それから最近増加傾向のおもな漁業は、まき網サンマ棒受マグロの延なわ等が、件数では増加いたしております。なお、最も近いところでは、母船式サケマス漁業等がふえておるわけであります。減少傾向のおもな漁業といたしまして、以西トロール、それからニシンの定置並びにさし網、それから各種の地びき網漁業、こういうものがいわゆる減少傾向をたどっておるわけであります。  次に、漁場生産手段、第三章になります。十ページ以降でございまするが、第三章では、漁場生産手段について解明いたして参ったのでございますが、まず第一に、これを小分けいたしますならば、漁場の変遷でございます。漁区制限の撤廃によりまして、遠洋漁業への進出が促進せられましたが、というのは、例のマ・ラインのことでございます。進駐軍が来まして日本漁業に大きな制約を加えましたが、やがてそれが撤廃せられまして、日本の押えられていた遠洋漁業が、それを機会にいたしまして進出したわけでございますが、他方、国際漁場問題が重要度を増してきております。御承知通り日米加漁業条約は、あの当時の事情としてはあの程度条約しかできなかったと推定せられますが、しかし西経百七十五度以西サケマス漁業は従って日本としてはとらないという契約があの条項の中にあるわけです。もっともとらないというと、従来とっておったのをとらないという意味ではなくて、日本戦前においてもサケマスを百七十五度から以西、いわゆるアメリカカナダ寄りではいたしておりませんでした。ですから実体においてはさほど日米加条約について実際としてはそう損はしていないわけでございまするが、しかしああいう百七十五度という線が引かれているということが損でなくても、李承晩ラインに引用せられたり、他国の方でもそれを悪い意味で利用せられるというようなことがありますので、将来の課題といたしましては、日米加条約をより有利に日本転換せしめるようにいたしたい。こういう気持を持って今でもそれを中心に研究いたしまして、日本に有利な資料を収集すべく努力中でございます。  日韓漁業問題、これは御承知李ラインで、なまなましい問題が今も継続中でございます。  日豪漁業問題、これはアラフラ真珠採取業、これはもともと日本が開拓した真珠採取業でございまするししますが、今は豪州の方がやはり自分のところの自国の漁業許可による拡大をはかりまして、日本進出を防止したいという意欲がはっきり現われております。それで国際裁判日本側では出そうということに外務当局農林当局が相談いたしまして、手配中でございます。  日中漁業問題、これは御承知通り民間から協定を合意によって成立して、今そのワク内で操業中でございます。  日ソ漁業問題はまだこれからの問題でございまするが、北洋問題などはこれに間接ながらつながった操業区域でございます。  以上のような国際的な漁業の問題がまだ今後も近東その他で起るかもしれないのでございます。  かわって沿岸沖合漁業における連合軍演習場立ち入り禁止区域、防潜網などによって漁場制約を余儀なくせられたり、あるいは漁場を喪失したというような問題も現に起っているわけでございます。  次に漁船勢力変化を申し上げたいと思います。戦争による直接間接の打撃から立ち直りまして、漁船勢力全体といたしましては、目ざましい復興をいたしておることは事実でございます。最近の傾向といたしましては、カツオマグロ漁船中心とした大型化が著しく現われております。また小型船の無動力動力化したという点も、終戦後これは非常に急速度に動力化した傾向がございます。動力漁船中の五トシから九トンクラス、この漁船減少しておりまするが、これは主として漁業転換政策の結果、沖合漁業操業する大型漁船への代船建造が進行いたしましたので、こういう結果に相なったものと思われます。中型以下の木船で老朽船が三〇から四〇%ぐらいあるわけでございます。この更新をはかることがわが国漁業の今後の動向を大きく左右するものと考えられるし、これの金融——漁船金融ということが非常に問題になりまして、諸先生方もこれは非常に御好意的な応援をしていただいておるし、われわれとしても漁船金融を非常にあせっておるわけでございますが、主としてどういうところに重点が置かれるかといえば、この終戦直後に作った木造船の寿命がもうきておるわけでございまして、これらを更新してやらなければいかぬという問題が迫っておるわけでございます。  次に漁網の問題でございますが、漁網生産は戦後順調に回復、上昇しております。しかも最近合成繊維漁網の台頭は目ざましいものがあります。しかしその全般的な普及は、その価格がまだ高いために若干の時日を要するものでございまするが、これが促進することは漁業経営上非常に安定化するというようにも考えますししますので、これを急速に推し進めるためには公庫資金の導入をわれわれは期待いたしたいと考えておる次第でございます。話がそれますが、私、過般欧州を回ってみまして、日本化学漁網というものは、いわゆる化繊は決して欧州には負けていない。アメリカはまだ見ておりませんが、欧州には負けていないという点を考えましたし、それから化繊が、非常に欧州あたりでも将来化繊にすべきだということを盛んに言っておりました。日本は決して負けてはおりませんが、伸びはまだ今のところは二割以内でございますから、これからせめて半分の六割に進めるためには、さっき申し上げた相当国援助でもしてやらねばいかぬのじゃないか、かように考えております。  次に石油消費状況でございます。漁船動力化大型化遠洋漁業進展に伴いまして、漁業での石油消費量も相当増大してきておりますが、輸入に依存しなければならない石油企業独占性に支配される石油価格問題の解決はきわめて重要な問題になっておりまして、本委員会でもしばしば御同情のある御議論をいただいておりますが、今後もなお諸先生におかれましては、漁業経営の非常に大きな分量を占める石油については、一つ格別の御援助と御同情をいただきたいと考えております。  次に魚群探知機漁業無線普及でございますが、魚群探知機は二十五年ごろより急速に普及しまして、漁業生産力を高める上に大きな役割を果たしてきております。普及度の高い漁業まき網トロールカツオマグロ漁業などでございまして、これは非常に漁業操業能率を高めるという上には役立っております。しかし能率が高過ぎるために瀬戸内海などではこれをとめておるわけでございます。まことに残念ではありますが、そういう海区もあるわけであります。それから無線電話などの普及は漸次小さな型の漁船にもだんだん伸びて参っておるわけでございます。最近の傾向といたしましては、その運航面だけでなくて市況を迅速にキャッチして有利な市場に水揚げしたりというような、いわゆる経営面に相当これが利用されまして、しかも大きな役割を果しているような現状でございます。  次に第四章に移りますると、漁業段階層動向、まあ簡単に申し上げますと、わが国経営体の中でこれを分化して考えますると、漁家中小企業のものと資本系、いわゆる大資本のものというように大きく分けられるわけでございますが、わが国経営体のうちでこの一番零細なきわめて貧弱な企業をやっている漁家層というのが大部分を占めておりまするので、その生産性はきわめて低く、しかも停滞をいたしております。わが国漁業生産力むしろにない手は、経営する人手は非常に少いのでございまするが、大資本漁業中小漁業がいわゆる日本漁獲数量の大部分をこれがやってくれておるというような格好でございます。この漁家というのについてもう少し申しげますと、戦後漁家層増加しておりまするが、低位生産性のために兼業が、ことに賃労働を兼業してくる向きが非常に多くふえました。漁家所得水準が低いためその消費水準もまた低いのでございます。生産性が停滞しているため消費水準の上昇も遅々としておりまして、都市勤労者世帯や農家との開きはますます大きくなる傾向があります。最近の沿岸漁業の漁況や経済事情から漁家経済は窮迫しており、雇用の機会も十分与えられておらない状態なのでありまして、沿岸漁業振興対策は急務とされているゆえんはここにあるわけではないかと、かように考えております。しかもこういうふうな漁家救済策漁業、いわゆる水産ワク内でのみは救えない。たとえば漁家が非常に困っている、それを水産のどこか有利な漁場へ回していくというように有利な漁場に殺到するとさらにそこが行き詰まる、するとさらに別な漁場への転換というように、たらい回し漁業という一種の産業ワク内でとまっているのをまかのうていこうというような施策が無理ではないか。むしろ大きくこれをある部分には厚生的な、社会施設的な考え方でやるとか、あるいはまた他産業へどういうふうにか置きかえていくとか、あるいは漁業移民もけっこうでございましょうが、ありとあらゆる手段方法を高度に総合的に考えるということでなければ、この漁家対策は満足な結論は得られないのではあるまいか、かように考えております。  次に中小資本漁業の件は、中小資本漁業わが国漁業生産力のさっき申し上げました通り分担役といたしまして各種漁業政策の重要な対象にされておりますが、この層にはさまざまの経営規模を含んでおります。上層の一部のものを除きますとまだまだ経営合理化安定化は確立されておらないのであります。個別経営はこの状態から抜け出そうとしていわゆる競争もむしろ激しくなるというような現状であります。それに引きかえましていわゆる俗に水産五社といわれております大洋、日水日魯、極洋、日冷というような大資本とでもいいますか、漁業の中ではそういうような漁業経営をやっている諸会社の様子を見ますと、これらはいわゆる多角経営を合理的にやっておる関係もありまして、最近の様子は順調に経営されているように思われます。むしろ漁家の窮迫、中小漁業経営の不振に比べてまず好調であるということは十分言えるのじゃないか、かように思います。  次に漁業労働者階層とその現状であります。漁業賃金労働者漁業従業者数に占めまする比率は多く、ことに主要漁業について見まするならば漁業賃金労働者生産の真のにない手になっていることは否めないと思います。漁業労働者の数の上から見まするならば、戦後の遠洋漁業あるいは沖合漁業進展によりまして、この部分に若干の増加を見ましたが、漁業賃金労働者の大部分が従事しているのはやはり沿岸漁業であります。この沿岸漁業が不振であるということは、やはりとりもなおさずこういう労働者購買市場は依然として狭いということを意味いたします。  一方労働者供給面は戦後における漁家層の分解が進むにつれまして増大してきておるので、漁業労働市場における需給のアンバランスは、漁村に潜在的過剰人口の累積と失業者の増大を顕著に現わしてきておるように思われます。  次に第五章に参りまして、水産物流通動向を申し上げたいと思います。  まず国内市場について申し上げますと、戦前における水産物の諸生産のうち、国内食糧消費部分が増大したこと、また漁業生産戦前水準まで回復しまして、国民栄養の面から見まするならば、国民一人当り動物性蛋白質摂取量はまだまだ必要量には達していないのであります。水産物消費する水準一般消費水準回復とともに上昇しておりまするし、戦後特に農村水産物消費は増大してきております。昭和二十九年度以降水産物消費水準都市では減少農村では頭打ちというような状態にあります。ことに最近都市での水産物に比較いたしまして牛肉とか、豚肉あるいは卵、牛乳等消費が増大してきております。それでよく水産生産者の会合などにおきまして、魚肉の普及宣伝をもう少し国でやってくれというような問題が起るゆえんもここにあるのじゃあるまいかと考えられます。  以上国民栄養の面から見ますると、動物性蛋白消費はまだまだ増加しなければならないが、しかし水産物消費市場の発展については決して楽観できないというふうに思われます。  次いで貿易について触れますると、水産貿易は二十八年、二十九年と大きく増加しておりまするが、それでも戦前に比べますると六三%にとどまっております。水産物輸出構造戦前欧州あるいはまたいわゆる中共ですかなどが最大のお客さんであった。ところが戦後はアメリカ市場が大きな輸出先と変りまして、輸出水産物鮮魚冷凍品が大きく増加して参りました。しかし最近はアメリカ市場変化から、マグロカン詰輸出減少しまして、それにかわってサケマスカニカン欧州への輸出増加して参りました。  次に価格面から見ますと、水産物価格は二十七年七月ごろより下落傾向を見せております。二十九年は二十八年より年平均約二%下落しまして、魚の種類別にはサケマス下落が最もはなはだしく、タイ、クルマエビなどの高級魚マグロ類下落しております。また大衆魚であるイカ、サバ、イワシなども三十年度に入って下降の傾向を見せつつあるような現状でございます。  次に水産物流通機構変化について申し上げたいと思います。輸送手段といたしまして鉄道輸送量戦前の三倍、輸送距離も延長しましたし、自動車輸送が非常に発達いたしまして、鉄道輸送の三倍以上になっております。この輸送手段発達水産物市場拡大には大いに役立っていると思いまます。ただ問題点といたしましては、国鉄の冷蔵車の不足、そういうもののために鮮度保持ということが十分にできないというような点が非常な悩みになっておるように考えられます。製氷冷凍事業発達終戦後著しく能力増加して参りました。水産物生産量の三五%は冷凍庫を通過しております。製氷冷凍工場は現在千八百二十七、このうち所有の比率は大漁業資本によって一〇%、漁業協同組合系統によって一〇%、中小企業者の持っているのが八〇%、こういうような持分になっております。これを能力から見ますると、大資本漁業製氷三一%、冷凍能力は一九%、この事業部門内における大資本漁業の優位がここでもはっきりと見られるわけであります。水産物加工に触れますると、工場数は二十五年以降減少してきました。しかし従事人員増加しているところから、小規模工場減少し大規模なものに集中したと考えられるのでございます。加工水産物の特徴は素乾品煮干品減少いたしまして、塩干、塩蔵品と順次加工のいわゆる手の込んだ品物の方が多くなって参りました。  次に卸売市場変化でございますが、六大都市市場への入荷が非常に増加しまして、総漁獲量の約二〇%が集中しております。これは六大都市卸売市場都市近郊農村市場への中継市場という性格にだんだんウエートが重くなってきたという証拠であると考えられます。戦後乱立した荷受機関が整理統合せられておりまして、また系統機関卸売り業務が不振であるということははっきりいたしております。いわゆる漁業組合連合会等荷受機関というものが六大都市、中都市に退却しているというような状況でございます。  第六章の水産関係予算金融の動きを申し上げてみたいと思います。水産関係予算といたしましては、公共事業費、非公共事業費と、こういうふうな分け方にいたして考えてみますならば、水産関係予算の約六〇%が公共事業費であります。また一般的公共事業費のうちで水産関係公共事業費は、二十八年より減少し始め、三十年度は二・〇八%であります。このような水産関係公共事業費の支出に対して漁港整備状況はどうかということを見まするならば、整備計画の二〇%にしか今達しておりません。ことに小規模漁業のための小漁港と言いますか、そういうものの整備がはなはだしくおくれているということは遺憾しごくでございます。非公共事業費といたしまして、農林関係公共事業費中の水産関係のものは戦後平均三・九%と戦前に比べて著しく下っております。これは戦前の補助金政策から金融政策へ切りかわったということでこういうふうになったかと思われます。従いまして非公共事業費の補助金の占める比率戦前の七三%から四二%に減少いたしました。この予算のうち直接使用分の変化を見ますと、三十年度は沿岸関係費用は一一%に減少いたしまして遠洋漁業関係費が増加いたしております。三十年度予算規模縮小の中で、海外漁   未開発漁場の開発関係費用が新規に取り上げたわけでございます。  次に金融関係について申し上げます。一般金融と政府金融と分けて申し上げますと、一般金融の貸し出しは貸し出しの数、買出残高とも二十八、二十九、三十と年を追うて増加して参りました。金融引き締めの顕著な影響は見られなかったのでございます。しかし銀行別に見ますると、大企業への融資を中心として行なっている十一大銀行は二十八年度以降貸出先数、貸出残高とも減少しまして、漁業融資の引き締めと貸出先の厳選の傾向が現われております。中小漁業が依存する地方銀行は年々増加いたしまして、漁業金融に重要な役割を果しているようであります。  政府金融機関について申し上げますと、二十九年度以降の緊縮財政の影響は政府金融機関に顕著に現われております。たとえば日本開発銀行、これについて見ますると、貸出残高は二十八年三月末四十一億から二十九年度三月末は二十億円、貸出額も二十八年度九億四千万円、二十九年度は二億三千万円ということになりました。そして対象事業も捕鯨業、合成繊維の漁網という二つだけになったのであります。農林漁業金融公庫の貸付はどういうふうかといいますると、二十八年の三十九億円ら二十九年の三十四億へと減少いたしました。貸出対象も漁港から共同利用施設への貸付が年々減少いたしまして、漁船への貸付が二十九年度には六六%を占めるように相なりました。それで中小漁業融資保証保険制度の利用状況はどういうふうになっておるかといいますると、この制度の利用実績は二十八年度で保険契約額の四一%、三十九億円にしか達していないのでありまするが、これは信用基金協会の債務保証に堅実な方針を維持しているということと一般的な金融引き締めの影響によるものであります。しかし二十九年度には四十三億円に増加いたしました。この資金は二十八年で九五%、二十九年で九七%が系統金融及び地方銀行に依存し、中小漁業、漁協の運転資金に大きな役割を果しております。  最後に農中の関係はどうかといいますと、農林中金の預かり金総額に対する水産業団体の預け金は二十九年度末で四四・五%に対し、貸出残高は一五・九%となっております。いわゆるオーバー・ローンでございまして、よく中金の方へ漁業金融について申し入れますと、理事の人たちは、漁業者は中金に預金をしないで借りるときばかり利用する、これは非常に農業関係の諸団体から文句が出て困るということをよく聞かされるわけであります。まさしく数字にはその通りになって現われております。水産業団体への貸し出しは二十九年度以降年々増加し、二十九年度末には百三十九億円となり、また長期の貸し出しが増加しております。その他の金融機関といたしまして、相互銀行とか、信用金庫には中小規模漁業経営がその融資に依存しております。ことに相互銀行の貸付先数は地方銀行の約二・五倍となっておりますが、貸出残高は三分の一で一件当り融資額は零細であります。しかしこれらの銀行の融資額は年々増加いたしまして中小漁業のための融資には大きな役割を果していると思われるのであります。  以上で大体水産のなまの現在の状況を要約して申し上げましたが、何とぞ私の方としては的確でしかも非常に誠意を持って作り上げましたこの資料を諸先生で御検討をいただきたいとお願いを申し上げる次第であります。私が以上申し上げました説明について御質問等ございましたら、主務課長を連れて参っておりますので、お答えをいたしたいと思います。
  4. 千田正

    ○千田正君 今岡井次長からの説明は、従来の水産漁業から引き続いて今日に至る現況報告にとどまるような気がするのですが、特に私が質問したいと思いますのは、特に今あなたの御説明の中に漁家経済の問題に触れておったようであります。今一番苦しいというのは、おそらくきょうも陳情されたと思いますが、日本漁業の再編成ということを先般も河野農林大臣がここで声明しておられましたが、それに対する根本方針は何か。漁家経営は非常に苦しい。たとえば本県などはサンマの豊漁によってむしろ大漁貧乏で、今度はそれを過ぎるというと、不漁のときは不漁対策をしなければならぬ。変転きわまりない自然の漁場を相手としての水産業であるだけに、それに対する根本的な方針が盛られなければならぬ。ことに現実の問題として漁家経営の苦しい立場を救うべきところの方途は何か。その根本方針は何によってやっていくか。この点を、もしあなたの方で樹立されるところの根本方針があるとするならば、簡単でいいですから御説明願いたいと思います。
  5. 岡井正男

    説明員岡井正男君) 千田先生からの御質問でございまするが、それが簡単にここで言えるくらいでありましたら(笑声)非常に私も楽なんでございますが、水産行政のガンであるし、またガンを解かなければ明るい漁村は生まれぬだろうというのがまさしく御質問の点でございまして、漁家経営を救う道は、単に漁業だけでは、先ほど私が説明の中に差しはさみましたが、解決せないのじゃないかと、私個人的には思っております。それで昔から漁村へは副業の奨励だとか、あるいは多角経営の奨励とかいいましても、先だつものは金であるし、いわゆる技術であるという点もありますので、これは一応苦しまぎれに明年度予算で私の方では最も漁家で苦しいようなところが集中しておるようなものを全国なんぼか取り上げまして、そういうところへ集中的な技術指導と補助政策も加味いたしまして、まず救済する。モデル的な救済策としての集中漁業計画といいますか、そういうようなことでもやってみようというようなアイデアを持っておるわけでございますが、基本的な考え方につきましては、いずれなお研究いたしまして、新長官も二、三日したら帰りまするし、急速に来年の予算を中心にいたしましてどういうふうに持っていくかということでできる限りの事務当局案を持ちたいと、かように考えております。
  6. 千田正

    ○千田正君 資本漁業であるところの大きな会社の経営しておるところの漁業は、はるかに国際的な漁場まで進出して相当な成績をあげておるのですが、漁民の大部分を占めるところの中小漁業、あるいは零細漁民に類するところの漁民の生活というものは極度に困窮しておる。これを積極的にやらなくちゃならないことは初めからわかっておるのであって、しかも農林方面においてはやや軌道に乗った方策が立てられて漸次それが向上しつつあるというのが現況であります。ところがこの漁業方面においては、あなたは先ほど複雑でとても一ぺんには言えないと、これはわれわれもその通りであるが、何かそこに今あなたのおっしゃったような、抽出して集約的な方策を考えてもらわなければ、とてもこのままでいくならば、漁民などというものは一番日本生産面に所属するところの国民の中の生活の最低線を彷徨しなければならない。ですから水産行政のこれからの行き方というものは、根本政策をどこに一体求めて、どこに一体それをやっていくか、これを一つ考えていただきたい。まあ新長官も来られるといいますからそのときでもいいですけれども、これはまあ速記を要する問題もあるし、また恒久的に考えなければならない問題もありますから、二段、三段のかまえをもって十分にこの問題を実現していただきたいと思います。
  7. 青山正一

    ○青山正一君 ただいまの千田委員の質問に関連いたしまして、私からも発言さしていただきたいと思うのでありますが、現在のこの漁業状態、これは占領時代とはまるきり違っておるだろうと思うのであります。たとえばこの漁業組合の形も順次変化しておる。先ほど千田さんがおっしゃったようにいわゆる漁家経済、いわゆる漁業組合でのいわゆる漁村政策でいく面と、それから中小企業でいく面と、それから大資本漁業、こういった三段がまえで進みつつあると、私はそういうふうに考えておるわけでありますが、その問題について、たとえば漁業法を改正するとか、これは根本的に漁業法を改正しなければこういった問題はこれは解決しないと思うのでありますが、漁業法を改正するとか、あるいは協同組合法を改正するとか、そういうお気持があるかないか。それともそういった点に、最近水産庁は非常に考究しておるというふうにも聞いておるわけでありますが、その点について一つ承わりたいと思うのであります。
  8. 岡井正男

    説明員岡井正男君) お答え申し上げます。漁業法、協同組合法をあわせて臨時国会には間に合いませんが、通常国会で御審議をいただきたいと思いまして、鋭意研究中でございます。中身については役人の独創ではもちろんおしかりをこうむると思いますので、各府県の地方の水産行政に明るいような人たちの意見も寄り寄り徴しておりまするし、各水産関係の団体の幹部の御意向もわれわれは取り入れる、重要な参考にいたしたいと思っておりまするので、かねがね千田先生や青山先生が御心配いただいておるような点も十分織り込んだ案に相なろうかと思っておりますが、いずれ案を国会に持ち出す前には何らかの形で水産関係のある先輩諸兄の御高見は拝聴いたしまして、遺憾ないような案を持ち出したいと、かように存じております。
  9. 森崎隆

    ○森崎隆君 今、次長の御説明で大体、十分読んじゃいないのですけれども、これを見たら大体日本漁業全体のことがわかると思います。これに従いまして、将来漁業対策、振興対策を立てられるだろうと思うわけなんです。ただ私は緊急の問題として一つ特にお願いいたしたいし、もし今腹組みでもできておれば御説明いただきたいと思いますのは、沿岸漁業の非常に困窮しておる状況なんです。その一番モデル・ケースは内海漁業、瀬戸内の中に六十万もの漁民が詰め寄って、ほとんど最近は漁獲がない。またサケマスなんかの大量漁獲によりますしわ寄せで魚価が非常に下りまして、もう今じゃとにかく食っていけないというような非常に深刻な状況が今出ておる。これは沿岸漁業を救うという意味、またその漁民を救済するという一つの中心的な課題として、内海漁業に対する振興対策といいますか、救済対策というものを早急に考えられるべき問題だと私考えるわけなんです。そういう案をこれから立てると申されればそれまででございまするが、現在の段階で水産庁の方ではどのように内海漁業を考えておられるか。これをどうすればいいのかということについて、何か御定見があれば伺いたいと思うのであります。
  10. 岡井正男

    説明員岡井正男君) 森崎先生の御指摘になった瀬戸内海は申すまでもなく私も前、関係いたしておりまして、十分に承知いたしているわけでございます。ただいま六十万と言われたのは家族数を合せてのお話ではないかと思うのでありますが、家族数を合せて六十万余と思いますが、関係を持っておる、しかもたらいのような狭い所で非常に零細な漁家を抱擁しているのでございます。さっき申し上げたように救済策としてのモデル的に取り上げる漁家も瀬戸内海では相当あるわけでございます。なお瀬戸内海の資源について将来どういうふうな漁業施策をマッチさせたらいいかというような問題の基本的な問題になる水産資源の再検討というような意味ももちまして、瀬戸内海の試験機関を一応何らかの形で統合して有機的にもう少し働かしてみたらいわゆる永久的な施策はその方からもう一ぺんしぼり出すこともできるのではあるまいか、また漁業施策といたしましては瀬戸内海の漁民を将来移民計画が確保すればああいうところから優先的に移民計画の中へ織り込む施策も考えてみたらどうかというようなことはまあ今抽象的な申し上げようで失礼ではございまするが、考えておるわけでございます。  なお瀬戸内海全般にわたっての考え方、今までの、現段階におきますると、これは全国的にもそういうような方程式は当てはまるのではないかと考えますが、瀬戸内海でも非常に困っているところはいわゆる香川にもあるようでございまするし、広島、あるいはまた岡山などにもありますが、畑を一枚も持たない、ただ単にもう漁業専業であるというような漁村が一番困っているような実情でございます。畑、田を若干持っているような漁村は非常にまあ困りながらも楽であるというようなことがあります。一つは釈迦に説法でおしかりをこうむるかもしれませんが、私はかねがねこういう考えを持っております。一体非常に零細な漁家といえどもこれをもう少し経済的な考え方でいわゆる家計を支配すればああまで窮屈にならないで済むのじゃないかというのが今資料課長もおりますが、瀬戸内海は非常に困る困ると言いながらも漁家一戸当りの年収何ぼかということを百姓さんの、非常に零細な三反くらいしか作っておらない百姓さんの収入に比べると何とか創意工夫すれば最小限度の生活は、できるのではあるまいかと思われるのにもかかわらず、これらが非常に端境期にふとん二枚で親子七人が寝ているというような悲惨なような現象も見出せるわけでございますが、畑一枚、二枚を持っている漁村が非常に収入がさほど大きくないのにかかわらず生活ができるという理由をさらに深く掘り下げて考えてみますると、百姓さんは金銭に対しては、非常に金というものを大切にします。ところが日々の収入が現金収入であるために、漁村は零細な人たちでも金に対する考え方が非常に乱暴でございます。従って私は純漁村に畑の一枚も持たすということは、いわゆる経済面からしてということよりも、考え方そのものが変ってくるのではあるまいかというようなことを今まで考えてみたことがございます。それで私は同じ農林省内であるから、水産だけの問題は水産で割り切るというようなことをしないで、機会があるたびに農地局とか、あるいは改良局などとも連絡をいたしまして、できれば純漁村で余地ある限りは、畑の一枚でも副業的に、兼業的に持たすような方向へ全国で悲惨な漁村にはそういうようなあり方はできぬものだろうかという点も協議をして研究せいということを私は言っておるわけであります。なおほかにいいお知恵があれば教えていただきましたら、いいことは全部それらをできる限り努力いたしたいと思います。
  11. 青山正一

    ○青山正一君 最後に一点お聞きいたしたいと思いますが、この北洋の漁業はおそらく来年度は母船をふやすとか、あるいは独航船をふやすとかいうようなことにはならないと思うのであります。おそらく今年をもってピリオドを打つんじゃなかろうかと、こういうふうに私どもは常識的に考えるわけなんですが、今年度はいわゆる実績を作る意味合いにおきまして、たとえば来年度あるいは再来年あたり、あるいは今年、このソビエトといろいろ講和条約を結ぶとか、結ばぬとかいうような問題もあるわけなんですが、その際におきまして、この北洋の漁業が相当これは問題視されることになると思うのであります。その前に一応日本としては、戦前に匹敵するだけの実績は作らなければならぬと思うのであります。たとえばカニ工船にしましても、あるいはサケマス漁業にいたしましても、これは何か戦前に匹敵するだけ母船を出し、これは資源のいろいろの法の問題もありますけれども、現在におきまして昔のように、日本は実力でもってやるというような考え方じゃなしに、いわゆる三海里というようなところまで進出せずに、二十海里沖合でこのサケマスなりカニ工船の関係はやっているわけなんですが、それでもこの資源が非常に豊富である。とすればこのカニ工船にしましても現在のところ三つの母船しかない。これをあるいは五つにするとか、あるいは七つにするというような議論も行われているわけなんです。あるいはサケマスにつきましても樺太の西海岸とか、カムチャッカの西海岸とか、あるいは東海岸での操業が相当数今年あたりはふやさなければならぬというような議論も行われておるわけなんですが、そういったことについて農林省として今年度は、これはもちろん次長としてお答えにくいかもしれませんが、水産庁の長官もおいでにならないし、あるいは大臣もその点にあまり触れていないような模様ですが、どうなんですか。幾らかふえるような見込み竜あるわけなんですか。あるいはこの独航船としても、それに関連してふやすというようなお気持があるかどうか。それと、先ほど陳情にもあったように、底びき船を整備して独航船にするというようなことも、今年度は底びきからそちらへ転換するというのは非常に数も少いように思われるわけなんです。たとえば四十七度線で操業しておる船を転換させると心あるいは以西底びきの船を転換させるとか、あるいは長崎のまき網の船を転換させるとか、あるいは関東北あるいは中部と、こういうふうな議論も相当あちらこちらと行われておるわけなんです。それについての考え方、もし片りんでも伺えれば非常にけっこうだと思いますが、一つお伺いしたいと思います。
  12. 岡井正男

    説明員岡井正男君) 初めから、青山先生から答えにくいだろうという御注意で、その通りでございます。片りんだけと言われますと、やや個人的な意見にわたりますが、カニを例にとってみますと、西カムのカニは戦前八船船持っておったのです。ところが現在は試験操業という名目で、本年は二船団だけ操業をされた、あるいは共同経営でやらされましたので、従来のケースから言いますと、常識的には共同経営の分派するものを優先的に許可するということで、常識に従いますと四船団に相なります。青山先生はやはり将来日本が対ソ関係でも、実績を標準にしたような交渉も予想して少し多く許可したらという御示唆のようにも承わりましたが、ただ御考慮いただきたい点は、昔日本が八船団やっておりました時分には、いわゆる距岸三海里までを日本の方針といたしまして、自由自在にやりました時代の八船団でございます。今距岸二十海里でやっておりますと、やはり操業には相当の困難がありまして、おそらく許可をする以上は、辛うじて採算がとれるだろうという推定でやはり許可をすることが役人の親切だろうと思いますので、操業上経済的な面を合せて資源及び網入れの際に、漁場に輻湊せぬようにというような三つの観点を加味いたしまして許可をいたしたい。こういうことで鋭意その点を部課では今研究中でございまして、やがて資料は整います。新長官が二、三日中に帰りますので、できれば早目にそういう点も割り切りたいと考えますが、今の段階ではおそらくあまり多くふやすというようなことはないのではないだろうか、あるいは今より若干はふえるでしょう、分派したとしても、四船団になるのですが、あまり多くはふやすようなことにはならぬのではあるまいか、今中間的な資料を積み上げた程度の報告は受けておりますが、あまり多くはふやせぬだろう、サケマスにつきましても東の方はあまり多くふやせないだろうということが常識的になっております。西の方は大臣が新聞にも御発表になっておられるのでございますが、西の方ではサケマスについて若干ふやせるように思われるというような表現をされたと思いますが、われわれも西カムについては、サケマスは若干ふやせるだろう、ただ西カムの漁場が非常に日本に近いところでございまして、小さな規模のものでもよさそうだと言えますが、逆でございまして、西カムの方の魚種から言いますとマスが大部分でございます。マスは御承知通りある一定の短い期間に非常に多くとれるわけでございます。いわゆる罹網数は非常に多い、多いかわりに短期間であります。従って処理、加工する能力が非常に高度であって、多量に一度に処理できるような施設を持つということが条件に相なりますので、その点も考えて、どういう規模のものをどのくらい当てはめればいいかということを今積算いたしておるさなかでございます。西カムの方では若干ふやし得るというように思っております。
  13. 飯島連次郎

    飯島連次郎君 私はちょっと陳腐な質問かもしれませんけれども、きょうの委員会の議題は、わが国水産業現況とこれが振興上の問題、こういうのですね。ただいままでの説明を拝聴したり、質疑応答を承わっておっても内水面のことについて全然触れられておらないのですが、これは別にわが国水産業の範疇の中では全然ネグレクトしていいのですか。大へん海洋漁業の方にはあるいは差しさわりがあるかもしれないが、この資料を拝見しても、内水面という文字がただ一カ所あるだけで全然ないというわけですか。
  14. 江田三郎

    委員長江田三郎君) ちょっとその点私も疑問に思ったのですが、一体この日本漁業、まあ漁獲高の中で占める淡水漁業のパーセンテージというものはどのくらい見ておられるのですか、それもあわせてお答え願いたいと思います。
  15. 岡井正男

    説明員岡井正男君) 計数の点資料課長からお答えしてもよろしゅうございますか。
  16. 江田三郎

    委員長江田三郎君) どうぞ。
  17. 岡伯明

    説明員(岡伯明君) お許しを得ましてちょっと先ほどの御質問にお答えいたします。  わが国の内水面漁業は養殖業及び河川湖沼の全体を合せまして約四千万貫ぐらいの生産であります。これらの統計も非常に零細のものを集計しておりますので、各国の統計を比較することはできませんが、そういう制度はございませんが、各国では非常に大きな内水面を持っておりますので、重要漁業だけをピック・アップして統計を作っておる。日本では小さなものまで集めまして四千万貫という数字になっております。これは御承知のように、大部分が農業の片手間にやっておるところの漁業でございます。専業と申しますのは諏訪湖でございますとか、琵琶湖でございますとか、霞ヶ浦そういうところにごくわずかにあるのみでございます。内水面の漁業はそのように全体の比重は少いのでありますけれども、農民の動物蛋白の給源であるとともに、また同時にその生活の中に非常に潤いを与えるというふうな意味で非常に大きな役割を果しておるのではなかろうかと思うのであります。ただ最近内水面につきましては農薬の普及とか、あるいは河川の改修その他のいろいろな工業化のために内水面漁業というものはふるわなくなってきております。養殖業について申しますと、戦争中から戦後にかけまして飼料の不足によりまして経営が非常に困難になりまして、一般の大衆的なコイであるとか、フナであるとかそういうものの養殖はだんだんその数量が、生産量減少いたしまして、もっぱらマスであるとか、アユであるとか、ウナギであるとか高級品の養殖業に変っております。金額としましては相当の額に上るのでありますけれども、その生産量は非常に少くなってきている。一般に奢侈品を生産しておるということによって農家経済を潤おすということに理解されるのでございます。  さらに内水面の養殖業について若干触れてみますと、そのような意義を持っておるところの内水面の養殖業は、科学的に申しますというと、非常に生産力の高い、人為をもってコントロールしやすいところの水面でございますので、種苗の放流でありますとか、あるいは産卵場の造成でありますとか、そういうふうな事業は、集約的に、集中的に施策をいたしておりますところでは非常に効果をあげておりますが、何分にも工業化が非常に進んで参りますというと、その根拠になっておりますところの孵化場でありますとか、あるいは種苗産卵場とかいうようなものは非常に短期間に移転して参らなければならないというふうなことから、全般には、統計上には非常にふるわない数字になって現われてきているように思われます。先進国の各国におきましては非常に考え方が違っておりまして、こういう産業を単に経営の面からでなしに天然資源の保存という観点からこれを維持しております。わが国においてはもっぱら農民の経済の上からこれを維持しようとしておるところに非常に無理があるように考えられます。いずれにしましても内水面漁業はそういうことでございますので、水産庁といたしましてもいろいろな施策を加えてこれを維持することに努めております。簡単でございますが、一つお答えいたします。
  18. 青山正一

    ○青山正一君 ちょっと飯島さんの問題に関連いたしましてちょっと次長にお伺いしたいのですが、ただいま飯島さんのお話のあったように、この内水面のいわゆる予算規模が非常に少いのです。わずかに昨年ちょっと一割か二割ふえたくらいの程度で、今まで私が委員になってからこの九年間、この内水面あるいは浅海養殖の方の費用を何とかしてやらなければいかぬじゃないか、たとえ農業者であろうとも、あるいは水産業者であろうとも内水面の業者の生活を考えてやるべきように手段を考えなければいかぬじゃないかというふうなことで、いつもこの国会があるごとに第二調整課の関係の予算というものはもう少しふやす必要があるのじゃないかということをもう再三申し上げておるわけなんですが、一向に行われていない。それからこの内水面の関係に関連いたしましてたとえば干拓の問題とか、あるいはダムの問題とか、そういうふうな問題と関連しての補償の問題が日本全国各地に行われてるわけです。これもほとんど顧みられていないというふうなことで、これはもうほとんど委員会のあるごとにこういうことが問題になっているわけなんですが、一つ来年度は予算を相当増していただくということと、それからそういった補償の問題、いろいろ干拓とか、あるいは開拓とか、あるいはダムの建設とか、あるいは河川を変更するとか、そういった問題についていろいろ漁業に及ぼす影響も相当大きいわけですからして、その補償の点も一つ十分考えていただくように一つ農地局あたりともよく折衝していただくというふうな点を、一つ強力に発揮していただきたい、こういうことを望むわけなんですが、一つそれについての考え方をこの席上で一つはっきり次長から承わりたい。
  19. 岡井正男

    説明員岡井正男君) 飯島先生と青山先生から示唆と御注意とをいただきましたが、内水面漁業についてきょう御説明いたせませなかった点はこれは私の方が手落ちでございまして、深くおわび申し上げます。内水面漁業についての実は資料は他の調整第二課の方で収集いたしておりますので、いつかの機会に一つもう一度御配付いたしたいと、御注意のありました点は内水面について水産庁は海にだけ重点を置いて、内水面を等閑に付するようなことは困るという点は非常にごもっともでございまして、私の方の先ほど資料課長がひとこと触れましたように、いわゆる日本は河川、湖沼は世界でも国の面積に比較して多いところでございますので、これを最高度に利用するような方向に行きたいと、かように考えております。従って施設といたしましては淡水区の試験場を独立に持っている以外に、さらに十和田、日光等の養魚場では優良種をこれを作って、御希望のところに配付せしむるとか、あるいはまた東北の方で県で施設をして、人工孵化をやっているようなところへは相当御助成を申し上げるとか、あるいはまた内水面の海なし県の方へは、それぞれ改良普及員の方の手を伸ばすというような点もわれわれとしてはやっておるわけなんでございます。遺憾ながら予算総体において少いじゃないかというおしかりは甘んじて受けます。しかしこれは年々われわれとしてはより以上に要求はいたしておりますのですが、われわれとしても総体的としての予算で削減をされているようなことでございますので、この点はむしろ先生方もわれわれの足らざるところを一つお力添えいただきたいと思っております。なお明年度は新しい予算の含みといたしまして、やはり琵琶湖を中心といたした試験研究をしたものを当面利用をするような所、内水面のうちでも冷水と温水とありますが、温水系の魚をやはりあそこを中心にしてもう少し広範囲に指導面を拡大したい、かように考えて明年度予算では一応琵琶湖へ新設の試験地を持ちたいというような予算要求もして手配をいたしております。  なおダム、水質汚濁についての補償関係についても水産庁がより積極的に立ち入って世話をしてやれという御注意でございますが、従来ダム、水質汚濁について、いわゆる害をこうむる関係業者と被害を与える施行者との間には、双方が水産庁の方でしかるべくデータを出せという場合には調査もやりまするし、データの方も私の方は出すようにいたしておりますが、双方から御注文がないという場合には私の方は積極的には働いておりません。と申し上げるのは、直結する場合が非常に多いわけでございます。私の方も御用聞きみたいに一々どうだどうだと言うて回るわけには行きません。ダム関係あるいは水質汚濁関係が非常に数が多いわけでございまして、あるいは被害関係組合などは直接交渉をした方がより有利になるという観点で、あるいは私の方へ持ち込んで来ないという場合もあり得るのじゃないか、かように考えております。双方かう私の方へ御津、文があれば私の方は喜んでその間のごあっせんをする気持は持っております。
  20. 江田三郎

    委員長江田三郎君) 今の水面汚濁の問題、あなたの今のお話を聞いておると、持ち込まれたらあっせんをするというような話ですが、この水面をよごさぬということは別に考えていないのですか。
  21. 岡井正男

    説明員岡井正男君) それはまた別の問題でございまして、先ほどの春山先生の御質問は、損害補償についてというお話でございましたので、ああいうお答えを申し上げました。
  22. 江田三郎

    委員長江田三郎君) ちょっともう一ぺん……。これは飯島さん流に言うと、私はやはり問題点として水面汚濁の問題は当面した問題だと思うのですけれども、それもこの中には字が書いてない、これも私は疑問に思うのですが、一体この水面汚濁の問題というのは新しく立法措置をやらなければ解決つかぬ問題なのか、あるいは現在あるところの法律に基いてあなた方の方で、政令等で解決つく問題なのか、そういうことについてあなた方の方でどうお考えになっておるのか、この点はどうなのですか。
  23. 岡井正男

    説明員岡井正男君) 水質汚濁の問題は当初にお断り申し上げたように、私はきょうは問題点に加えて言わないつもりの説明をいたしたいと思いまして、あらかじめお断りしたのですが、実は問題点としては水質汚濁の問題は、これは当面の問題といたしましても、また将来水産等に対して非常に大きな悪影響を来たす問題といたしまして、これは問題中の問題点だと思っております。水質汚濁の問題につきましては、これは結論だけを急ぎますると、単独法か何かをお出し願わなければ現行法規では押えがききません。それでこれにつきましてはいずれあらためてとくと先生方の御意見も十二分に拝聴すると同時に、われわれの方からもこの問題については例をあげて一つ究明いたしたい、かように考えております。一口に申し上げますと、ずっと前に水産委員会がありました時分に、委員の諸先生の方から水質汚濁の問題については漁業者で非常に困る問題が、最近の日本の近代工業化によって非常に激しくこれが起ってくるのじゃないか、従ってこの問題を法律化そうとなさった時代に国会の方で御意見がまとまらずしてそれが実行に移されなかったということもございますので、水産関係だけで水質汚濁の問題の法律化ということは非常に困難である。むしろ厚生省、あるいはまた通産省、関係するところが非常に大きいのでございまするから、そういうところとどういうふうに話し合ってこの問題を考えるのか、単に水産だけでなくてこれはひいては人畜にまで害を来たすような悪水質のものも出ぬとも限りませんので、この問題は非常に大きな重要な問題としてわれわれは決しておろそかに考えておりません。
  24. 清澤俊英

    清澤俊英君 あの、先ほどお伺いしておったのでちょっとわからんところがありますので、魚種が変ってきて沿岸魚業に属する魚族がだんだん減ってくる。その原因としてプランクトンは別に量は変っておらない、従ってその他の魚族が繁殖して行く上のいろいろの基礎の物質も変っておらないが、それが自然に魚種が変ってきているのだ、こういうお話がありましたが、そこを今少し詳しくお伺いしたいのと、それからそうした状態沿岸の魚族が減っているにもかかわらず、いわゆる零細漁業が第三段階にある個人漁業が三万戸もふえておる、一方では漁獲高が減りつつある、魚族が減りつつある中で、漁業者がふえるということを放置することは、これはどうもおかしいと思うのですが、農耕地等につきましても、こういう無方針なことをやりましてこれは大へんな問題になるのですが、たまたま海という大きな場所でありますから魚は減っているがとりたければ幾らでもとれ、こういうことではだんだん沿岸漁民が苦しくなってくることはわかっておりますが、こういう点を一つよく聞かしてもらいたい。私は漁業という問題はほとんどしろうとでありますからわかりませんが、沿岸漁民の話などを聞きますと、非常にいわゆる中小企業とでも申しますか、いろいろ企業体をなしたような底びき網だとか相当機械化した漁業が進んでおるために魚族の生息地を破壊しているのだ、それがもとで沿岸漁業というものは年々減少しているのだ、こういうようなことを言われておるが、それに対する御意見が一つも聞けませんが、その点を一つお伺いしてみたい、こう思うのであります。このことは先ほど青山さんが大資本企業であるところの遠洋漁業中小漁業、及び個人漁業の三段階における各階層別の何か漁業法を改正しなければならないという問題と私は非常に重要な関係を持つと思いますので、その点をよくわかるようにいま一度一つ聞かしていただきたいと、こう思っております。
  25. 岡井正男

    説明員岡井正男君) ただいまの御質問でございまするが、これをわかりやすく、列を瀬戸内海にとりますと、瀬戸内海の持つ海の資源量というものは、先ほど申しましたように、プランクトン、いわゆる浮遊動植物、これはありとあらゆる魚のえさのもう一つ前のもとでありまして、これが孵化した稚魚あるいは小さな魚、こういうもののえさになります。そしてその小さなのをさらに若干大きい魚が食っていくというような順序になりますが、一番下のもとになるのはプランクトンでございます。プランクトンはまた窒素、燐酸、カリのような肥料の三原則のような要素が多いところがやはりプランクトンも大体に多いのだということがいえると思います。瀬戸内海は御承知通り、池みたいなところに、人口が密集した四国、本州から注入される河川によって肥料分がやはり海へ注がれてプランクトンは世界でも豊富な所であります。ところがそこの漁民数は、先ほど御発言がありましたように、非常に大きな人口をかかえておりますので、そこの生産量を上回った人口があるので、瀬戸内海は窮屈になっておるわけであります。ところが先に私言葉が足りませんでしたが、そういうふうに一定の肥料分を持っている海の生産量というものがどういうふうな形になっているかといいますると、瀬戸内海で値段の高かった高級魚がだんだん減りまして、そのかわりに、たとえばエビ、ジャコのようなものは非常に多くなってきております。だから瀬戸内海の最近の統計を見ましても、漁獲総量はあまり減っていないのです。ところが魚種の内容が変化いたしまして、高級魚が安い魚に切りかわっておるというような変化を来たしておる。それから先ほど陳情もございましたが、日本海のサバ、イワシ変化がきたとか、あるいはニシンの不漁がずっときたとかいうようなのは、これは大きな変化がございまして、たとえば暖流系の対馬暖流が強くなり、黒潮が強くなりますと、親潮が今度弱まるというようなことになりますと、昔より海流の変化によりましてそれぞれ魚は、たとえばイワシを例にとりますと、イワシは暖流系の魚でございますから、暖流が流れている末端まではイワシはとれるわけであります。極端にいいますると、暖流の末端が北海道まで日本海では流れているということになりますと、北海道まではイワシはとれる。ところが逆に太平洋沿岸の黒潮は北海道までいかないで、東北の近海なら近海でずっと親潮に押しつけられてもぐってしまうということになりますと、イワシはあそこまでしかいかぬというのが従来の形だった。それは暖流の変化によって、黒潮がもっと強くなって、親潮の力が逆に弱まったということになりますと、イワシはいわゆる樺太となにとの海峡まで足が延びるということもあり得るわけであります。そういうふうに暖流の変化によって魚の置きかえというようなこともあり得るわけであります。それから瀬戸内海のようなところはいわゆる高級魚を非常に多獲した結果高級魚が減って安っぽい魚種が置きかわって安っぽい魚種総量においてはあまり減らないというような変化も起るわけであります。それがまあ早く言えば海流の変化による場合漁獲がある一定のところで非常に多獲された場合に起る変化でございます。なおこういうような科学的なことについてはいずれ機会を見て研究部長によく今までの研究結果を話す機会も持ちたいと思っております。それから、次に御質問がありました点、漁業法改正に伴ってそういうのをどういうふうにあんばいするつもりか、こういう御質問でなかったかと思いまするが、漁業法改正に当っては漁業組合法の改正と漁業法の改正とをやはり結びつけて考えまして、いわゆる小さな漁民層の組合単位で共同化してやらなければ漁業経営がうまくいかないというような漁村については、従来の分立した弱小な漁業組合などは形態をもう少し強力化するような方向へ向けるような形にしてみてはどういうものか。要は経済的にもある程度共同経営をやるとかというような点にいたしましても、今の組合の方では農業も同じかもしれませんが、二十人以上であって届出をやればそれでいいというような簡単なことをやっていますと弱小な組合が非常に多くなります。現在でも困っているような組合はたくさんありますが、そういうものは大きくさす、そのかわり大きくさして資本の結集、金融の面もめんどうをみてやって沖へ出るというような場合にはそういうものが出やすいようにしてやるとかいうようなことも考えてみてやったらどういうものだろうかと、かように考えております。
  26. 清澤俊英

    清澤俊英君 わしの申し上げますのは、高級魚の乱獲という言葉で表わせば一番いいと思う、をやったためにそれが減ってそれで非常に安い劣等な魚種がふえて来ておる、こういう御説明ですが、その現象は漁獲法によってまあ機械的漁獲といったようなものがやられるために沿岸漁業のそういう高級魚の住む場所を荒したためにそういう現象が出ているのだとこういうことを沿岸漁民は始終言うのですが、それに対してどうお考えになっておるか、こういうことなのです。ところが御説明によりますると、もうそれは仕方がないのだから一つそういう弱いものは負けない高級の漁獲法をもっていったらいいじゃないか、こういうように御説明になるのでちょっとそこがわかりませんので、お伺いするのであります。沿岸漁業というものを生息地を保護してそうしてある程度沿岸漁民を保護するという考え方があるのかどうか。
  27. 岡井正男

    説明員岡井正男君) いや、しごくごもっともでございますが、そういう建前からいたしまして、沿岸の方の漁獲方法、時期等について漁業法をもって制約いたしましてあまり一人で多獲せないように押えるというような制度は現行法でも行なっておるわけでございますが、これも一部では議論がございまして、たとえば新しい漁業法ができたのにかかわらず他産業はそういうものを認めるのに漁業に関しては沿岸では、たとえば電探ができた、そうすると電探で魚のあり場所を探せばしごく簡単である。しかるに押えているために船を朝から晩までうろうろ走らしてむだな油を使う、そうして魚のあり場所をやっと見つけるというようなばかなことをさせんでもいいじゃないかというような一部には反論も出るわけです。瀬戸内海などは魚探を使わさぬというようにしておるのも、一つは先生が今御指摘になったように、あまり新しいので能率がよくなり過ぎるので、漁獲減少が急角度に落ち込んでしまうというようなことのないようにということで、そういうようなこともやっておるわけであります。それはちょうど海区とそこの漁業との見定めをよくあんばいいたしまして、今の漁業制度施行以来各地区には漁業調整委員会がありますが、委員会の決定に従って大体府県でもそういう委員会考え方を大体受けて、漁業方法については制約をいたしておるようであります。ただ来たるべき漁業法改正に当って今の漁業委員制度そのものにも相当批判がありますので、それをどう持っていくかというのは今研究いたしておるさなかでございます。
  28. 清澤俊英

    清澤俊英君 それでこの問題は私は非常に重要な問題だと思うのだ。結局農家にしましてもいわゆる五反百姓という零細農家でありますが、ただ日本の国の今のような状態で五反百姓ではいけないのだと、適正農家の二町四反にしてしまえ、どんどん機械化かなんかして進めていってみたところが、やはり日本の社会問題として大きな問題が残されると思うのです。漁業の問題も何かそういう問題を、そういう観点に立って沿岸漁業漁民保護の施策というものは根本的に考えなければならぬと思うのです、私は。それがまあ今の御説明ではどうも納得しかねるが、そういう点を一つ十分研究していただくことが私は一番重要なのじゃないかと思うのです。今のあなたの御説明を聞いていると、今までもそうであったかもしれないが、これから先でもどうも古めかしい漁業法をやっておれば、漁獲が少いんだから、新しい方法に従った漁獲をすることが正しいんだから、漁業協同組合でも育成してそれに全部し直すんだと、こうすれば余った小さな漁民というものは片っ端からつぶれるということははっきり見えますわね。日本の人口問題その他から考えると、果してそれまでにどんどんやっていいか悪いかということは重大問題だと思うんです。
  29. 江田三郎

    委員長江田三郎君) それでは今の清澤君の御意見は十分検討してもらうことにしまして、ちょっと恐縮ですが、きょうは二時四十分から東海区水産研究所へ視察に行くことになっておりまして、その前に同じくこの問題につきまして今度は参考人として大日本水産会副会長と全漁連の専務理事の意見を聞くことになっておりますし、また問題はどうせこの一回では済まぬと思いますので今回の委員会の模様によりましてまた御相談いたしまして、さらに問題を発展させ、掘り下げるために第二回目をどういう工合にするかということも御相談いたしたいと思いますから、午前中はこの程度にしておきまして、午後ははなはだ恐縮ですが、ただいま申しましたような日程の関係がありますので、ちょっと昼食時間が少うございますが、一時から始めたいと思いますので御協力を願います。  しばらく休憩いたします。    午後零時十四分休憩      —————・—————    午後一時十八分開会
  30. 江田三郎

    委員長江田三郎君) それでは、午前中に引き続きましてただいまより委員会を再開いたします。  午前中に申し上げましたように、午後は参考人としておいでを願った大日本水産会副会長の伊東さんと全国漁業協同組合連合会専務理事の岡さんのお話を承わりたいと思います。  参考人におかれましては、御多忙中御出席下さいましてまことにありがとうございました。それではただいまから岡さんの方からお始めを願いまして、委員各位の御質問はお二人のお話が終ってからお願いしたいと思います。  それでは全国漁業協同組合連合会専務理事岡尊信君。
  31. 岡尊信

    参考人(岡尊信君) 私はただいま委員長より御紹介願いました全漁連の専務の岡であります。お手元へ今日申し上げることを概要書いてありますので、わが国水産業現況水産業振興上問題となる点、第一としてわが国水産業現況を申し上げるつもりであります。この点はすでに水産庁からもお話があったと思いますので概略だけを申し上げることにいたします。それから第二は水産業振興上問題となる点、第三が水産業に関する法律の改廃と制定を急務としておるものをここへあげてあるのであります。二と三とはだいぶ重複する点もありまするので、その点は御了承を願いたいと思います。  第一は、水産業現況でありまするが、漁業のセンサス、これは水産庁調査によるものでありまして、正確なものと私ども信じております。このセンサスによりますると、わが国水産業現況はその生産構造の面から見れば、生産力の乏しい漁家層を基盤に、独占的資本漁業を頂点とする。ピラミッド型になっておるのであります。さらに第一次のセンサス、これは二十四年でありますが、センサスから第二次のセンサス、二十九年までの五カ年間の変遷の跡を見ますれば、漁家層の激減が、その他経営体の漸増に対応しているという特徴的事実があるのであります。これはあとで表によって御説明申し上げます。しかも全体としての漁獲高は大幅に四億五千万貫増大しておるにもかかわらず、漁家層漁獲がごくわずかで、千五百万貫しかふえておらないのであります。それから漁獲高経営件数との逆比例をますます増大せしめる結果になっておるのであります。この次にある表をごらん願いますと、二十四年三月一日現在の漁業経営体の数は総計が一番左の方に書いてあります。二十六万九千二百十二という、そのうちの漁家が二十四万六千七百三十一であります。これは一〇〇に対して九一・七%あったのであります。それが次の段の二十九年の一月一日現在におきますると、一〇〇に対して八五%というような数字になっております。ところでこの表はいわゆる企業的個人企業、それから会社、それから共同経営、漁組の自営、それから漁業組合のいわゆる生産組合、官庁その他、こういうようなことによって経営体というものは二十九年になると八五%が漁家であり、その次が八・八%、会社が〇・四%、共同経営が五・五%、自営は〇・二%、その他が〇・一%、その下はごく少いのであります。ところでこれが一番右の方のDマイナスBというものの下のFという実数を見ますと、漁獲高の実数で見ますと、四億五千二百九十五万六千貫ふえておるうちで、大部分経営体である、いわゆる八五%あるものはわずかに千五百二十三万四千貫で、三・四%というようなことになっております。しかるにその他のものを見ますると、いずれもが企業経営体は一億八千三百七十万一千貫とか、あるいはその次の会社というようなものが一億四千九百五十六万一千貫と、こういうふうに非常にふえております。従って漁家につきましては、こういうように大部分を占め、幾分減っておるけれども、八五%も持っておるにもかかわらず、千五百万貫しかふえない。こういうような事実がこのセンサスから出てきておるのであります。この点をよほど考えていかなければならないじゃないか。  その次に、もとの第一のところへ戻ってきまして、このことは一経営体平均漁獲の増減比が、漁家の二五・七%と、会社の八〇・五%の対比から明瞭に見られるごとく、五カ年間の推移の中においても、会社経営において生産性の飛躍的発展に比しまして、漁家層におけるそれは経営規模の零細性のために、その生産力の発展が阻害されているので、依然として低位生産を余儀なくされているという現状である。よって沿岸漁業の施策は、かかる現状認識の上に立脚して行われることが望ましいと、こういうことはあとから出てくる一つの総論的なこととしてお考えをおいていただきたい。  その次の船舶のことはあとにしまして、その次、  第二として、水産業振興上問題となる事項の中で、第一、漁業振興に関する総合計画を一つ樹立してもらいたい。日本漁業の全経営体二十五万一千七百四十四の、これは二十九年度で、いわゆる八五%も占めている漁家層生産額が全体の一七・六%であるのに比して、わずかに九・二%の中小企業、これは大きな会社の経営の〇・四%も入れて、この九・二%というものが、いわゆる六二・七%の生産を上げている。すなわち経営体の中の企業的個人というようなものが、三七・五、会社が二五・二、こういうことで、六二・七%もの生産を上げている現状にかんがみて、政府は漁業に関するすべての指導、調査機関を動員して、総合的に三カ年計画なり、五カ年計画なりを樹立して、漁業振興ということに努力すべきである。二十一年度の水産庁の予算要求などを見ましても、漁村の聚落、いわゆる部落でありますが、五千六百のうちの自営できるもの、半農半漁で、農地を幾分か持っているもの、いわゆる半農半漁的のものを二千二百六十のうち約一〇%、二百二十について聚落の調査をするというような予算として、千五百万円ばかり出ているようでありますが、こういう細部的な、部分的な調査ということももちろん必要でありまするが、総合的に計画を樹立するということが、今日における重要な問題であると考えているのであります。  その次に基本法の改正に関する事項であります。これはあとに法律関係を一括しておりまするから、そのときに申上げまするが、いわゆる漁業法並びに水産業法の改正が論議されているが、両法は漁村経済の安定と、漁民生活の向上に決定的影響を持つ基本的な、基本法でありまするがゆえに、これが改正に当っては、慎重を要する。よりて目下各般の調査及び改正意見というものは、私どもの方としてもやっております。また水産庁におきましても、国会におきましてもおやりになっていると思いまするが、このこと……。  その次には、漁業生産力増強に関する事項でありまして、(一)として漁業災害補償制度の確立、これも法律のところで詳しく申上げるつもりであります。その次が水産資源の培養と水質汚濁の防止、これも法律事項のところへ詳しく書いて、そこで説明を申し上げることにしたいと存じます。すなわち、水産資源の増殖保護に関し、抜本的施策を確立するとともに、水質汚濁防止に関しては、強力な立法措置を考えなければならぬのじゃないか。(三)は、生産及び経営指導事業の拡充、水産試験、あるいは研究、調査事業の拡充強化をはかるとともに、特別指導員を設置して国庫の助成をしなければならぬ。これも三十一年度の水産庁予算にあるようでありまするが、これについてもまた後刻申し上げたいと思います。  その次は、漁港施設網の拡充、これもあとで法律事項でありませんからこの際に申し上げたいと思いまするが、この一番しまいの表から次の次のページ、一、二、三とある三のところをごらん願いたいと思います。三としまして漁港の整備促進であります。全国沿岸に散在する三千余の漁港は、わが国漁業の根拠地であると同時に、漁船漁業財産の保護場でもあるし、また避難場でもある。漁業振興漁港の整備促進は急務である。しかるに第十国会の承認を得て四百五十港を対象とする第一次漁港整備計画が決定し、その総事業費が四百九十四億円、うち国費予定額が二百九十七億円、三カ年着手で六カ年完成の予定であったものが、二十六年度より着手したのであるが、今日までの進行状態では、完了までに十数年を要することとなり、さらに二次計画はいつの日に見るか、その見通しもつかぬ現状である。すみやかに予算措置を講ずるか、あるいは——これから先は私のこれは私見でありますが、いわゆる道路促進法有料道路というようなことも考えて、起債を財源として一挙に完成する、重要漁港というものを起債を財源として、この二百億なり三百億のものを一挙に、あるいは全部できなければ、重要漁港だけでも一挙に完成させるということは、わずかばかりの補助を振りまいておるために、毎年の災害で築いては流され、いわゆる賽の河原と同じようなことをしておったのではいけないから、一挙に完成する必要がある。そうしてその起債は将来どうするかといえば、現在国庫から漁港に対する補助が出ております。あるいは県費の負担もあります。地元の負担もあります。そういうものを財源として十カ年間なり十五カ年間の間に完成後もこういうものを出せるような法律にしてもらいまして、そうしてそれを償還財源に充てるということになれば、一挙に私は漁港というものは、重要漁港というものができるのじゃないか。重要道路についてはこれと同じようなことを考えております。あるいは有料道路にするなり何なりして、こういうようなことを考えるべきである。これは私、法律化するためにこの償還年次表なり、二十カ年くらいのいろいろな表をこしらえてみますと、政府としても少しも予算をふやさないでもいい、県としても負担を急激にふやさないでもよろしい、地元としても急激に大きな金を出さないでもよろしい、こういうようなことによって一挙に漁港というものが、重要漁港だけでもせめてこういうような方法を考えるべきではないか、こういうようなことを考えております。  それからまた元へ戻りまして、漁港施設の次にらっこ・おっとせい海上猟獲の実施、これも法律事項のところで詳しく申し上げます。  それから公海における安全操業確保と被害漁民漁船の救済措置これもあとで申し上げます。  それから漁業生産に支障ある爆撃演習の即時撤廃。  それからその次に水産気象の観測及び通報の拡充強化、これは毎年問題になっておることでありまするが、生産気象というものが、完全なものを即時即刻出すということによって、日本の今日の漁船の遭難というものを救済することができるのであります。今世界の各国が非常に発達しておりまして、たとえば方眼式模写電送機、すなわち方眼式写真電送機というようなものによりまして、そうして天気図、気象図というようなものを各漁船にラジオで放送するばかりでなしに、気象図までも備えた明細なものを電送するのであります。今日、日本におきましても各銀行間で帳簿の帳じりを合せるためにやるとか、あるいはいろいろの為替電送とかいうように、すべて写真電報でやるというように今日なっておるのであります。こういうようなことを考えるべきではないか。現在国におきましても、また全漁連におきましても、次にくる中央市場の問題もありますが、魚価あるいは漁獲高というようなものを刻々と方眼式の写真電送機によりまして、各漁連なり重要漁港に知らしてやる、きょうの東京の何々の魚の相場が幾ら、最低が幾ら、最高が幾ら、中値が幾らである、本日の日本国中の魚の生産は、どこの港で幾ら、どこの港で幾ら、生産量が即刻全国のものが知れるようにすることによって、価格の安定、取引の安全というものができてくるというようなことで、全漁連を中心にしまして主要漁港にこの方眼式の機械を置いて、そうして電送したいというようなことも考えておりまするが、この気象観測というものはそれらと一緒にやりますれば、りっぱな仕事になるのじゃないか、こういうように考えております。  四は水産物価格安定並びに流通秩序確立に関する事項、これもあとから出てきますから申し上げたいと思います。  中央卸売市場法の改正、これも現行市場法は大正十二年でありますから、三十年を経過しておりまして、現在においてはもはや当初の目的に沿い得ないばかりでなしに、現制度下においては出荷者、特に生産者は最も不利の立場に置かれておるので、抜本的改正が必要ではないか。  それから共同販売機構の確立、これも同様のことであります。  それから水産物輸送合理化並びに貨物運賃の適正化であります。これは毎年問題になることでありまするが、何といったって鉄道運賃が高いのでありますが、今年は幸いにしてサンマは豊漁であります。豊漁のためにサンマの値段は一貫目二十円であります。運賃が大体十五円から十七円かかる。その他の諸手数料を入れまして、市場へ行って四十円ぐらいは諸手数料がかかります。それが東京市場で売られておるものが大体において七十円、われわれ消費者の口に入るときには、それがもう倍になって百五十円ぐらいになっております。今日、海岸ではサンマは二十円で出荷されておる、こういう現状であります。二十円の魚を食うのに、十五円ないし十七円の運賃がかかるということでは、水産物はどうにもならぬということで、この問題は十分検討しなければならぬ問題じゃないか。  それから製氷冷凍使用電力の特別割当並びに特別料金の設定、こういうようなこと、それから製氷冷凍事業に対する現行料金は生産原価の三〇%の高率を示しておる。そうして公共的使命を持つ漁協系統のこれらの施設に対しては電力の特別割当及び特別料金を実施すること。今全漁連を中心としまして海岸に約二百八十ぐらいの冷蔵庫を持っております。あるいは製氷所を持っております。これは系統機関がやらなければ、氷などにしてもトン四千円ないし六千円もするものが、公庫の融資を受けてやるとしますれば、大体氷にして千四、五百円、高くても千八百円でできるのであります。それでもなお高い。電力料が三〇%の電力料であります。しかもこれは、これに対しては税金をかけるというような問題もありまして、こういうようなことによりますと、ますます氷の値段を高くするということになる。  それから第五は、水産物輸出振興方策の樹立、これはすでに政府のなんとしまして、農林水産物輸出協会を作って、ある程度やっております。けれども水産については特にお考えを願いたい。一番最後のページをごらんを願いたいのであります。これは最後の法律の説明のときに必要と思いますが、今日、農産物、林産物、畜産物、水産物加工食品、油脂類、生糸、この合計をしまして、二十九年の一月から十二月までの実績が合計で二億五千九百万ドルであります。この中で、これは農林省の経済局で三カ年計画というようなもの、あるいは五カ年計画を立てた、この結果から見ますると、農林、畜産、その他で伸びようとしても伸びないものがたくさんあるにかかわらず、水産物においては二十九年の一月から十二月までの実績が四千四百万ドルというものが、五年後には一億五千九百万ドル、約四倍近くまで伸びたというのが農林水産物のうちの水産物だけであります。このほかに加工食品のうち、あるいは油脂というものは、これは鯨油と、それから沿岸漁業からとれますビタミンというようなものでありまするから、これも水産物であります。こういうようなものを加えて参りますると、日本の外貨獲得のために五カ年後を考えて見ますると、こういうような数字、約一億五千九百万ドル、これがその他を入れますると、二億ドル以上のものが水産関係でとれる。これは幾らでも発展させようとすれば発展させる可能性のある私は産業と考えます。従ってこういう点に大きな重点をおいて政府は施策すべきものである、こういうように考えておるのであります。これは全漁連が作った計画ではなくて農林省の経済局がこしらえた五カ年後の計画であります。こういうようなことから考えても、この水産に対してやって行かなければならないのじゃないか、こういうように考えております。  それからその次は老朽小型漁船の代船建造及び近代漁具への転換促進に関する事項、老朽小型漁船の代船建造を制度的に促進すること、収益性に乏しい沿岸漁業の実績にかんがみて、これが代船建造については国庫助成による資金措置を講ずること、二が漁船機関及び付属設備合理化普及助成策の樹立、機関の換装、あるいはこういうものとその他合成繊維の問題もあります。これは一番最初の二枚目の表をごらんを願うと出ておりまするが、今日漁船の総数は昭和二十三年の十二月に約四十一万一千隻、それでトン数にいたしまして、約百七万三千トンというものが、二十八年の十二月三十一日になりますると、この隻数においては四十万八千九百二十六隻、そうしてトン数においては百十九万一千トン、こういうようなことになっております。ところで、このうちで非常に年令がもう、八年なり十年を木造船の寿命といたしますると、こういうものがほとんど船令がきておる、そういうような際に、この普通の場合ではできません大型船を作る、一万トンなり、何万トン、あるいは数千トンの船を作るときには開発銀行というものもあります。あるいはその他の転換漁業については公庫からの金があります。カツオマグロとか、あるいは底引から転換するというようなときについては、そういうようなものもありまするが、二十トン未満というものに対する政府資金の融通というものが今日欠けておる。こういうようなことから見ても、この問題を非常に重大視して行かなければならぬじゃないか、こういうように考えております。  それからまた元へ戻りまして、漁業金融の事項、これもあとから出てきまするから、あとで詳しく申し上げます。それから漁業信用基金制度の整備拡充、それも法律事項のとき。それから水産税制に関する事項、これも漁民の課税あるいは協同組合の課税というものに相当不合理な点があることをあとから詳しく申し上げます。  そこで、その次は水産振興上の改廃または制定を必要とする法律ということを少し申し上げて見たいと思います。  第一に漁業法、二十四年の法律であります。その次に漁業法施行法、これも二十四年の法律であります。右二法律は漁業の基本法であって、連合軍最高司令部の勧告、指示によってできた法律案を法律としたものでありまして、これは根本的に改正する必要があります。今どんな改正を考えるかというと、基本方針としては、沿岸漁業の持つウェートが急速に低下し……、これは最初私が申した通りであります。急速に低下し、しかも低下せる沿岸漁業に圧倒的多数の漁民が依存しております。これは引揚者やいろいろ入り込んできた方もありまするが、戦前私の推定では百万人と思っていたものが、現在五百十万人にもなるというような、非常に低下しておる沿岸漁業のうちへこういうように殺到してきておる。ことに漁業権の生産における比重が極度に低下した今日、漁業漁場は特定の個人または会社的資本に独占されるべきではなくて、従って沿岸漁業漁場を制度的に制定して、この漁場は上記の漁民生産の場所として確保しなければならない。かかる見地から、圧倒的多数漁民が組織する団体にこそ漁業権の配分をなさるべきである。しかも漁民による漁場の自主的な総合利用のためには、共同漁業権はもとより、その他の漁業権についても、その享有を認めなければならない。しかも配分された漁業権は、その団体の内部において最も民主的な方法によって行使運営されなければならない。これは水産庁の今日考えていることとは少し違うかもしれませんが、これは水協法の改正というものと比べて検討してみますると、この措置は必ずしも悪いとは言えないのであります。その次は、漁業漁場沿岸漁民生産の場として確保するが、さらに沖合漁場進出して生活の道を開拓する必要がありますので、漁業権のいわゆる許可漁業についても、業種別、隻数別制限の許可方式を緩和して、沿岸漁民団体の進出を制度的に可能ならしむるように優遇措置を講ずる必要がある。その次は漁業調整委員会、これには非常に議論があります。廃止すべし、いや存置しなければならぬという意見といろいろあります。けれども今までの結果から見ると、弊害も十分あります。調整委員会があったために、一つの定置漁業をとるために財産をなくなしてしまったというようなところもある。これは悪い方の例、いい方の例から言えば、これは非常に貢献しているところもありまするので、私どもの現在の考えとしては、調整委員会は原則的には存置して、地域構成等を再検討し、漁業調整については中央地方を一貫せる方針を樹立するとともに、指示権並びにその内容等についても再検討をする。この場合漁協は末端における調整機構として活用する。この場合にうっかりすると、大蔵省が予算措置でだんだん削ってきまして、おしまいにはないようなものになって、法律できめてありましても運営ができないようなことをされるおそれもありますので、この点は十分検討して行かなければならぬのじゃないか。  その次は水産業協合組合法、これは昭和二十三年の法律であります。この法律も前二法律と同様であります。連合軍最高司令部が相当干渉して作り上げた法律でありますので、この機会に大いに改正をしなければならぬ。改正の要点としては、漁協はややもすると最近漁業協同組合をいろいろの名目で分散しようとする考え方があるのであります。たとえば水産庁等におきましても、漁業権管理は別に団体を作ったらどうかというような意見を言う者があります。あるいはまたその他の経済事業においても、分離したらどうか、指導事業についてはまた別にこしらえたらどうかというように、いろいろ分散させようとする考え方があるのでありまして、これはもし漁村の漁業組合というもの、漁村というものと漁業者の生活というものを一緒に考えて、これはどうしても、むしろ私どもは分散よりも一緒にすることが必要じゃないか、すなわち漁業権管理、経済事業、漁業自営、指導事業、福利厚生共済事業というような、あらゆるものを行える団体が末端の団体でなければならぬではないか、こういうように考えております。その次、組合員の数というものが法律上今日非常に問題になっております。これは前の法律制定当時、作るのに困りました結果、現行法では十八条で「漁業を営み又はこれに従事する日数が一年を通じて三十日から九十日までの間で定款で定めた日数をこえる漁民とする。」というようになっておりますけれども、私はこれはもう少し地方々々によっても違いまするが、漁業収入がその者の生活の大部分の収入であるものにつき、都道府県単位に設けた委員会である程度きめろと、こういうような少しゆとりをとっておいて、そうしてきめていったらどうか。なぜならば、これには農業と漁業との関係が非常にあります。半農半漁というのが先ほど申しました通り相当数のものがあります。農業から申しますれば、漁業に行くことによって農業が成り立つ。あるいは漁業は畑へ出ろ、山へ登れといってもなかなかその分はできませんが、これは農業政策と同時に多く問題として考えるべき問題じゃないか。従ってこの規則はこういうようになっておっても、土地の事情によってやはりやって行かなければならぬのじゃないか、こういうように考えております。設立に関して地区をどうするか、これは前の法律では二十人発起人ができさえすれば幾つでもできる。従来でさえも狭くて人数の少なかった漁業組合が、現在の法律では一つの部落に四つも五つも漁業組合があるというような事実もあります。従って地区をどうするか。すでに日本におきましては明治維新に町村合併というものをし、今度また非常に大きな決心を持って町村の合併ということをやったという事実から考えてみても、こういう問題を取り上げて漁村というものの、果して今日のような二十人あれば組合ができる、漁業権についてもちょっと手が出せるというようなことをしておいてよろしいか、これは私はこの際よほど考えて行かなければならぬのじゃないか。加入の問題脱退の問題、従来は当然加入、いわゆる強制加入みたいなものでありました。今日必ずしも私は強制加入を主張するものではありませんが、少くとも漁業権管理をする団体となる以上は、ある程度のこの加入に対しても、脱退に対しても制限を加えてやるべきではないか。最低組合員数、先ほどの二十人というものも、二十人では漁業組合を作っても何もできません。ただ組合を作ったというだけであるから、これらについてもある程度規制を加えて、出資等につきましても昔は一口五十円であります。五十円を百倍にしても五千円であります。もし物価その他からいって三百倍とするならば一万五千円であります。こういうようなことも十分考慮においてやるべきものじゃないか。こういうように再検討をすべきものであるということを考えます。それから漁業権管理委員会の設置問題とその運営とか、法規となった場合の実行組合をどうするとか、漁業権運営の問題、理事の制限の問題というような問題がたくさんありまするが、これなども十分加味して、これは一つの法律の改正についての意見を申し述べるだけでも二時間も三時間も要りまするが、ここでは大綱だけを考えて、詳細なことはまた何らか機会がありますれば申し上げたい。  その次は中央卸売市場であります。これは目下参議院に議員立法で御研究になっておると思いますが、長い間の問題であります。この法律は大正十二年制定以来そのままで、終戦連合軍最高司令部の勧告によって、荷受人、仲買人等無制限自由のもとにおかれたため、荷受会社の経営は成り立たず、生産者及び各方面に被害を与え、非常に大きな損害を加えております。こういうような事例もある。仲買人が権利化され、今日東京都市場だけでも千八百人仲買人がいる。仲買人の権利が百何十万円、仕事はしないで貸しておるだけでも月々二万五千円ぐらいの権利が取れる、こういう現在の状況でありまして、公正なる取引は困難になっておる現状で、各方面で改正の要望がある。目下参議院農林水産委員会におきましても一部改正の法案審議中であり、政府におきましても、先に中央卸売市場対策協議会を作り検討中でありますが、この際抜本的に改正する必要がある。改正に対しての要望は左記事項、細目については別に申し上げますが、大体申し上げますると、生鮮食料品の生産者、消費者双方の利益をも考慮して円滑に流通をはかるためにするということを根本精神にして行かなければならない。市場法の性格は市場開設と取引に関する規定を内容として、両方内容として価格の適正化とか、取引の公正化等における責任と職域の分野を明瞭にする。すなわち市場開設については、市場というものを、私の考えでは指定卸売市場、これは先般参議院においても相当研究した問題でありますが、いわゆる六大都市等重要地区の卸売市場、それから普通卸売市場、六大都市以外の都道府県または主要市町村の卸売市場というようなものができる。そして指定卸売市場の開設者は国家もしくは公共団体、全く公共性を帯びたもので公共性にしてもらいたい。そうして普通卸売市場の開設者は、これまた公共団体または民法の法人、これは法人を入れてもいいですが、今では法人というものはほとんどない。私は公共団体でいいと思う。公共団体が開設者になる場合に、卸売市場は農林大臣、普通卸売市場は都道府県知事の認可を必要とする。指定卸売市場の取引関係の規定については、卸売人無制限自由を廃し、その都市の取引量、卸売人の経営の採算、市場施設の規模等を十分に勘案の上、卸売人の適正数を決定して農林大臣が許可をする。これは今まで開設者が許可とか、業務規程でやるというために市場がボス化されます。ボス化されるために、その実質は消費者と生産者に全部損害を持ってくる。どこまでも適正数をきめて農林大臣が許可権を持つ、仲買人も同様であります。農林大臣が数をきめて、農林大臣の承認を受けたものについて都道府県知事がきめる。こういうように公共性を持つ市場の一群取引に関係のある人というのは厳格な規定をする必要があるのではないか。それから普通卸売市場の取引関係の規定については都道府県の条例で定める。この法律にはただ一条か二条をおきまして、適用条文をおいて、あとは条例に譲るということになります。それから卸売人の適格条件、これは現在の法律にありますが、いわゆる法定の権利能力、行為能力というような条件のほかに、保証金の問題、代金決済のできるかできないかの問題、資産状況調査の問題、施設の状況、取扱い、取引状況調査の問題、こうあります。それから仲買人の問題、あるいはせり人の問題、この卸売人と仲買人とせり人、この三つを十分に一つ厳格な規定を設けることが必要ではないか。それから取引高及び価格の公表、市場開設者は当該市場における水産物の毎日の売買取引高及び相場表をその日に公表する。その日のうちに公表しますれば、私どもとしては、先ほどの方眼式の模写電送機によりまして全国主要都市に、東京市場の値段、大阪市場の値段を放送します。放送というのは写真放送、電送でその価格表を放送する。そうすると、出荷する人の便益になる。現在の状況では魚がきょうは高いなあと思うと、たとえばマグロが八百円に売れても生産者への仕切りは六百円と書いて出してある。なぜこんなことをするかというと、荷主に、四百円というような安く売れたときに足してやらないと荷がさばかれない。そのためにとっておくというわけです。六百円に売れたときには六百五十円か、七百円で仕切る。何とか荷を取る政策としてやる。これは公正な取引とは私たち言えないと思う。こういうような事実は農産物にもあります。青果類にもあります。こういうようなことから考えて、これは毎日出すべきものである、こういうわけであります。その次は、農林大臣は重要事項の決定に関し運営委員会を設け、諮問する。その他指定卸売市場開設に関し、法律に規定する重要事項としては、市場の地区の指定、類似市場の規制、市場の施設の整備強化、それから指導、監督、罰則、こういうものをおいてやっております。普通卸売市場については都道府県の条例に譲るようにしてあります。  その次、順序が少し狂いますが、ラッコ、オットセイの猟獲取締法の問題であります。これは明治四十五年の法律第二十一号でできたものであります。これは日本が一九一一年、すなわち明治四十四年に日、英、米、露四ヵ国のラッコ、オットセイの保護条約に加盟した。その翌年、明治四十五年四月、この法律を制定して、海上猟獲をしてはならぬ、全面的に禁止したが、その当時はどのくらいいたかというと、この四国の関係の領海に住んでおるラッコ、オットセイというものはわずかに十四万頭しかなかったのです。それが今日では、昭和十五年になりますと二百二十万頭になった。そうしてわが国の近海に現われて、有用漁族の脅威となったので、同年日本政府は本条約の廃棄を通告しまして、条約失効になって、そうして昭和十七年五月、農林省では省令の施行令によりまして、農林大臣の許可を得まして、海上猟獲をなすことができることとなり、昭和十七年より昭和二十年までの間に六十隻の範囲で操業して、七千頭を猟獲しておる。終戦後、連合軍から、この猟獲の中止を命じられて、司令部の勧告によって同法を改正した。参議院の水産委員会におきましても、これは非常に大きな問題になったのでありまするが、当時ある程度修正をして、これは通ったのでありますが、今日考えてみますると、すでに四百万頭もおり、もうラッコ、オットセイの猟獲を禁止するという条約の目的も達せられておるし、そういう必要がないので、今日考えてみますれば、どうしてもこの改正はやらなきやならぬ。ただし、これに対して吉田・ダレス交渉の交換文書があるから、これはちょっとできないと言いますが、これは私少し疑義があります。最初の吉田・ダレスの交換文書というものはこういうものじゃなかった。こういうものじゃなかったけれども、あわてて、あとから日本政府声明として、これを出したのであります。でありますから、この吉田・ダレスの交換文書というものは、必ずしも私は適正なものではないと思っております。それで目下アメリカ日本でこのオットセイをつかまえて、腹の中の食った魚を調べてみて、有用な漁物を食っておるか、いないかということを調べて、調査ののちにこれをやるというようなことを言っておりますが、御承知通り、オットセイは普通の魚を食うばかりではないのです。サケマスなり、その他のものがありましても、頭をくわえて、そうして振り回して殺して海に捨てるものがたくさんある。そのうちで自分の好きなものは少しとって、あとは大体において、殺して海に捨ててしまうというような数を計算してみたら非常に大きなものになります。ゆえに私はこの問題は十分考えて行かにゃならぬ問題じゃないか、こういうように考えております。  その次は、水質汚濁防止に関する法律、これは長い間、第一国会以来やっておりまするが、まだできません。ヨーロッパにおきましても、この問題は欧州あたりは百五十年間もかかった。まあかかったのでありますが、りっぱな法律ができております。アメリカにおいてもできております。これはどういうことで今まで参議院でできなかったか、これは……。その前にこの鉱工業、下水、その他により水質が汚濁され、人体はもちろん農水産業等の被害は甚大であるので、従来経済安定本部の資源調査会でも、これは二十六年と思っておりますが、内閣総理大臣に対して勧告をしております。いわゆる、従来厚生省所管として研究が進められているが法律制定に至らず、しこうして、水産関係においても工鉱業の水質汚濁による内水面漁業沿岸漁業に対する被害はきわめて甚大で、生産減少の重大な原因となっている。水産行政の立場から水質汚濁防止は、漁業法または水産資源保護法施行に伴う命令等で、やればやれないことはないのでありますが、実際問題としては、鉱工業者または日本に大きな負担をかける関係もあり、政府としては通産省なり、運輸省、運輸省との問題はタンカーが海でタンクを洗うのであります。これは条約がありまして、五十マイル以内ではやってはいかぬというのでありますが、今、日本はたしか加盟していないと思いますが、こういうような問題、国会においては、通産委員会等から相当反対もあったように思いますが、しかしながら、これは今までの法律制定の考え方が違っておった。それは被害者が加害者を訴えるような法律を考えておったから、これはいけないのでありまして、今日外国で作っておる例を見ますると、被害者は第一が農業者であります。第一が農業者、その次が水産業者であります。その次は鉱工業者も同様被害者であります。農業者の何は経済安定本部の勧告の中にも書いておりまするし、外国の例にもありますが、下水、あるいは産業の廃水を過度に公共水域に放流すれば水中の溶存酸素の不足と害毒物質の混入によって灌漑用水は腐敗し、そのために有機肥料の酸化を妨げ、かえってその還元までに至り肥料の効果をしない、また作物も枯らしめるというような生物を死滅せしめることによって農産物をはなはだしく減産させる、こういうことが外国におきましても非常な大きな問題になって取り上げられて、農業者からも強い要望が出ているのであります。また水産業におきましては御承知通り、この悪水の流れるために稚員、稚魚はもちろんのこと、みな失なわれております。今日部分的にまあ農業の方はどうとか何とか言っておりますが、そういう問題じゃないのです。たとえば澱粉工業とか、いろいろそういうようなものによるあの繊維質を流すことによって、海底が全部いわゆるおはぐろ泥と称しまして、もうひどいものになります。大牟田あたりの石炭の関係の川に行ってみますと、川の水というものは黒インキみたような色をして流れております。これは田畑に入ってもこれが灌漑用水になったら非常な被害があるでしょう。これが流れるために、この石炭の粉が沈澱してもう何十尺という間のものがこの泥になったら、ここにいる魚類が生育しない、そこに魚が寄りつかない、また稚魚はそこに発生しない、発生しても成長しない、こういう問題になりますので、この問題は日本水産業振興させる点からも、また農業というものを振興させる点からいっても、私はきわめて重大である。しからば鉱工業者は加害者であって被害者ではないかと申しますと、今日の工場、たとえば澱粉の工場、あるいは醸造の工場、あるいはこの化学繊維の問題、あるいはまああらゆる薬品の問題は、製鉄もそうであります。非常に清水、きれいな水を必要とするのが工業であります。従ってもし川の上流に悪い汚物を流す工場ができたために、その下流には、こういうような重大な工場というものはできないのであります。これを浄化しなければできない。そこで私はここで考えておりますのは、この法律をただ普通の法律ではいけない。今日私ども水産政治連盟というものがありまして、これはこれだけではいけないから、経団連にも一つ呼びかけまして、経団連の石川さんに頼みまして、あとから植村副理事長も招いて、鉱工業の関係者も見えて、水産関係者も入れて、一つこの問題を取り上げて考えてみようじゃないかというので、目下研究をしているようなわけであります。そこで私はこの法律の骨子をどういうふうにしたらいいか。これは元来が外国なぞの例もむろんそうであります。この経済安定本部から内閣総理大臣に勧告した文書もそうでありますが、国または都道府県市町村等、公共団体が主体となって水質汚濁防止施設をやって行かなければいかぬ。一体工場の誘致というものはだれがやるか、都道府県または市町村が税収入の増加都市の繁栄策等を目標として行なっておるのであります。もうやっておる。従って上水道、下水道、汚物の処理と同様に、鉱山工場等の廃水の処理を一つ公共団体の当然の仕事としてやるべきじゃないか、財源は国庫、公共団体、関係鉱工業者等の負担によってやる、今までできなかったことは黒字の出る工場はりっぱにやっております。たとえば滋賀県の石山でありまするが、あすこの東洋レーヨンの工場を見ますると、あれが百億円の工場施設をする際に、この汚濁水の浄化施設のために四億円の金を使っております。そうして毎年数千万円の経常費を使って、その水を浄化して、毎日川へ流れる水を検査して、そうして有毒でないということを確かめなければその水を流しておりません。大きなため池を作っておりまして流しておらない。こういうふうにすることによって、これは問題は解決はつく。ところが小さい工場で赤字の工場にこういうことを要求してもできません。従ってあの辺へ行ってこういうことを言いましたならば、日本の鉱工業発達のためには水産業ぐらいは犠牲にしてもいいじゃないかというような暴言すら言っている。こういうようなことから考えてみても、どうしても鉱工業者の困る点をも十分考慮に入れて、負担ができるだけの負担金、起債等によってやりますれば、わずかでありまするから、これは公共団体の事業として下水道、上水道の汚物を整理するのと同じようにやって行けば、これはできるのじゃないか。そうしてどういうことをやるかと申しますると、これは昭和二十六年三月五日に経済安定本部資源調査会長、これは当時は周東さんでありましたが、ここから経済安定本部総裁に答申せられた答申書に基いて、内閣総理大臣の所管のもとに委員会を置いて、委員会は屎尿その他の汚物または産業廃水などにより公共水が汚濁され、農業、水産業、鉱工業が不当な損害をこうむるのを防ぐために、関係者に対し適当な行政機関を通じて必要な命令をする、こういうような命令をする。それから水質調査事務局を置いて中央委員会の事務を処理する。それから国立の水質科学研究所を前記の委員会の所属機関として設置し、水質汚濁防止に関する一切の技術的調査をする。これはなぜこういうことをするかといいますると、一つの川に上流から下までの間にいろいろな工場があります。硫酸を使う系統の会社もあれば、あるいはソーダを使う会社もあれば、いろいろありまして、いや、おれの水を流したために悪水が中和してよくなっているのだ、おれにはむしろお礼を言ってもらわなければならないという者が出てくる。ですから、その水を上から下まで検査をする、調査をする、実験をするというようなことをやる機関、あるいはまた各府県にこの騒動というものがしょっちゅうあります、最近富山県の騒擾事件もあります。農民が何百人か工場へあばれ込んだ、これは絶え間がないのでありますので、各府県に水質汚濁防止委員会を設けまして、艦工業者、農水産業者、関係行政官庁、あるいは学識経験者を委員として紛争を処理すると同時に、工場を設置する前に、昔は工場法というものがありまして許可をするのでありますから、そのときある程度のことは言えましたが、今それは言えない、こういうようなことから考えても、こういう委員会の了解を得て工場を建てるようにして行ったらいいのじゃないか、こういうことを考えております。  その次には漁業の災害補償に関する法律、これは農業におきましては、米麦等主食を初めとして各種の農産物に対して災害補償制度があり、これに対して国庫も相当の、数十億円の負担をしておるのにかかわらず、漁業については漁船の一部に対して損害補償制度があるのみであって、生産物に対する損害補償制度がない。もっとも漁業は農業と異り、制度として確立することには多年にわたる各種資料も必要であるし、従って政府においても二十九年度からわずかに調査しているのでありますが、この問題は一般の営利保険をやるようなつもりでいろいろのデーターを集めて考えておったならば、私は永久にできないのではないかとも思います。これははなはだ乱暴な言葉かもしれませんが、たとえばまあ私はいろいろ保険業者の人の話を聞いて見たりすると、これは今そういうものでなしに、いわゆる災害を救済するということを目標にしていわゆるそれによって水産業を助成するという考え方で補償法を作って行けばいいのじゃないか、むろんデーターというものもある程度必要でありましょうが、精密なデーターでこれは保険として成り立っか、成り立たぬかということを考えておったのでは、これはできない、こういうようなことを考えているのであります。  時間もだいぶん何のようでありますから簡単に申し上げますが、その次は、現行諸税法中水産関係において改正すべき点がたくさんあります。法人税の問題、事業税の問題、あるいはその他ここにずっと列挙してあります。こまかい点まで列挙してありますので、これをごらんを願いたいと思います。税金なども非常に考えて行かなければならぬ問題があります。  最後に一つ、一番最後の数枚めくったところに水産省設置法に関する法律というものがありますが、これは他にも何でありますが、この参議院でかって取り上げたところの農業と水産業日本の食糧生産の一大産業である。戦後における日本漁業は申すまでもなく戦前と著しく異った様相を呈している、ことに公海における海洋漁業はひんぱんに国際紛争を惹起しているが、将来ますますその繁きを加えんとしている、平和的な産業外交ないし経済折衝を推進するために、政府に強力な水産行政機構をこしらえる必要がある。今日では閣議に水産の専門の大臣というものがいない。水産長官は次官会議へも出席できないというような、国内においてはこういうことである。しかるにこの貿易のことについては、先ほども申した通り、現在も一億ドル、五年後には二億ドル以上のものが水産に動いて行かなければならないのじゃないか、その三は、漁業の実態が複雑多岐である、四は公海における捕鯨、遠洋漁業というようなものは、先進国とその技術及び施設において鋭意競争して、国際場裏で競争して行かなければならぬのではないか、そのほかこれに対しましては、外国におきましては、あるいはカナダ、ソ連、英国、デンマーク、ニュージーランドというところでは、漁業省、農林水産省というものができている。こういうようなことを考えて、あるいは法律の整理、こういうような問題、この一番終いにあります昭和二十六年三月に漁民七十万人の陳情に基き、参議院議員百五十九名、衆議院議員二百八十九名の賛成を得て八十四名の議員発議で提出したのでありますが、ただ、たまたま行政機構改革という問題のために一時保留になっているような形になっているのでありますが、どうしても国際場裏に立ってやるためには、国内に強力な行政機構というものが必要であるということをまあ最後に挙げまして、こまかいことを申し上げたいのでありますが、時間がないというお話でございますから、この辺で終らせていただきたいと思います。
  32. 江田三郎

    委員長江田三郎君) それでは次に、大日本水産会副会長の伊東猪六君。
  33. 伊東猪六

    参考人(伊東猪六君) 私、大日本水産会の副会長の伊東でございます。本日は私どもの非常に困っておるところの問題、並びにこうしていただきたいといったような問題をお聞き下さるべく、私に時間をお作り下さったということで、大へん私ども感謝申し上げております。つきましては、私の大日本水産会のいろいろの会の機関がございますので、実はその機関にそれぞれ諮りまして、そうしてお願いの申し上げるべき点を整理してこなければならない、こういうことにも考えましたのでございますが、いただきましてから時間が十分ございませんので、それからその機会もなしに、ただ大日本水産会として従来取扱ってきておりました問題が一向解決をしていない問題がある、あるいはまた会としまして、ぜひこうしていただきたいといって研究をいたしております、あるいは調査をしておりますこういう事項について、本日みなさんのお耳に入れまして御配慮を請いたいと考えております。従いまして、あるいは問題はまだたくさんほかにもあると思いますけれども、さような意味で大体困り抜いておる問題をお耳に入れるということで一つ御了承願いたいと思います。  大別いたしまして、国際漁業関係と、それから国内漁業関係と、それから双方に通じておるところの関係と、こう三つに分けられるんじゃないかと思います。で、国際漁業関係につきましては、もうたびたび先生方には機会のあるごとにお願いを申し上げておりまするので、すでにもう御了承の問題のみだと存じますが、問題を並べる意味におきまして、一通り一つ並べさしていただきたいと思います。で、国際漁業関係といたしましては、どうしても今焦眉の急務としては日韓漁業問題で、この日韓漁業問題については、昨日も日韓対策本部の意見をお聞き下すったということを私伺っておりまするので、あまりこの問題に対して深入りすると重複のおそれもあろうかと存じますので、簡単にお願いを申し上げたいと思います。これは昨日も出たろうと思いますが、六百十一人からの抑留者を即時返還をしていただきたいということ、それから安全に操業のできるように漁業協定を締結してほしい、拿捕されておるところの漁船がまだ百六そうからございますが、この船も取り戻していただきたい。さらに日本漁業者が李ラインのためにこうむっておりますところの損害賠償を韓国に強くやっていただきたい。で、この四項の目的を達するためにあらゆる外交の手を打っていただくと同時に、もし必要があるならば適当なところの手段をとっていただきたい、こういうのが韓国に対する対策として私どものお願いいたしたいこころでございます。この日韓の問題の国内対策といたしましては、抑留船員の救済の道を一つ講じていただきたい。これは実は七日の日に下関から差し入れ船が出ましたのでございますが、この問題については大へん先生方の御配慮をいただきました次第でございまして、寒さにふるえておる者には一つ衣類を送ってやれ、かつえておる者には食糧を出そうじゃないか、病気で困っておる者に対しては医薬を出そうというような、適切な救済の道を講じたいということでいろいろと御援助を得まして、ようやく六百十一人に対する差し入れ品が七日の朝下関を出て韓国に回ったわけでございます。この点は大へんありがとうございました。厚く御礼を申し上げます。なお、この国内の日韓漁業に対する対策の措置といたしましては、特殊保険料が非常に高い、同時にまた給与保険料の率も高いのでございますが、従いまして、船主の立場並びに船員給与の面におきまして十分の保険が付し得ずにおります。どうか一つこの特殊保険料並びに給与保険料といったようなものを保険的の独立採算制にしないで国家で御援助下さる意味におきまして料率をうんと低下していただきたいことをお願いしたい。なおそういう制度がありますることを存じてか、あるいは存じないのか、その辺がはっきりしない点もございますけれども、事実問題として保険を付せないでおいて出かけて行って拿捕されたところの気の毒な漁船もたくさんございます。この漁船は特にそういう保険の恩典を得ておりませんので、船主としても船員の家族としても困っておるようでございまするので、特にこれにつきましては、この前のおはからい下さいました同様な扱いの要領によりまして、お見舞の金が国家から出るというような措置に一つおはからいを願いたいと思います。  次に、中共の問題でございますが、中共との関係は御承知通り民間代表があちらに行きまして、民間協定ができておりますので、大へん都合よく安全に今日操業いたしておりまするわけでございますが、その際に代表団から先生方にも御報告がありましたように、一年だけの契約になっておりまして、来年の六月の十三日にはあの期限は満了いたすことになっておりまして、この次はなるべく国と国との間で話し合いをした正式協定を結ぶということになっておりまするわけでございまするので、日本と中共との問題において、そういう御交渉ができるか、できないか私存じませんけれども、できるだけこの漁業問題については、来年の六月の十三日の期限満了までに、どうか一つ政府同士で話し合って協定を締結していただきますように御配慮願いたいと存じます。その際には、まだ中共に百四そうの船が拿捕されたままおりますので、当然この百四そうの返還関係につきましても御配慮にあずかりたいと存じます。  次に、対国府と申しますか、台湾の関係になりまするが、これは今日漁業上のいざこざはございませんが、過去の問題が清算されてございません。現在拿捕されておるところの船が二十九そうございます。それから国府のために撃沈されたものが二隻、射殺された者と、それから撃沈されたときに死んでしまっておる、こういう死亡した者合わせまして十一名ございます。この問題については、これは当然国府に対しまして損害を要求しなければならない関係でございますので、政府の方でもお取り上げ下さって、十分この点はいろいろの観点からお調べになった結果、私の承知いたしておるところでは約十四億円程度の損害を計上されております。この損害額というものは、話によりますると、国府側は損害を賠償するということを認めておるやに伺っておりますが、ただ原資がない、払えないのだというので、払ってくれないんじゃないかというような事態のようでございます。日本大使館を通して、それぞれやかましく交渉はしていただいておるようでございまするが、一向まだらちがあいて参りません。どうかこれもらちがあきまするように至急に一つ御配慮願いたいと存じます。  次は、対ソ漁業問題でございます。これは非常にまあ微妙な関係にございますようでございますが、私ども漁業者の立場からいたしましては、領土の問題が解決いたしますれば、これは自然漁業の問題は解決いたしまするから、まず領土の問題を先に解決していただきたいという希望を持っております。その領土の問題といたしましては、旧日本領土であったところの千島、これは北千島も南千島も同様でございます。歯舞、色丹はむろんのこと、この千島におけるところの領土の問題が解決せられることを念願いたします。しかし、どうしてもその点がひまが要るんだという問題になりまするならば、漁業者の気持といたしましては、旧領土の周辺におけるところの沿岸漁業をやれるように一つ折衝をしていただきたい。なおでき得るならば、適当なところの漁業根拠地も租借できるというようなところも話し合っていただいたら、大へん漁業経営する上に都合がいいがと念願いたしております。なお、今度は北洋漁業のソ連領との関係になりまするが、現在は御承知通り領土から二十マイル以上離れて操業をさせろと、こういうことになっております。どうかその制約をもっと短縮されて、ソ連領へもっともっと近寄って仕事のできるというようなふうに交渉していただきますようにお願いいたす次第であります。以上が大体国際漁業関係の点につきましてお願いを申し上げたいことでございます。  国内関係につきましては、先ほども全漁連さんからいろいろお話がございましたが全くその通りでございます。私がお願いしますことも大半重複いたしておりますると存じますが、重複いたしておりますることは、問題が緊急重要なためだというふうに御判断願いまして御配慮を願いたいと思うのであります。国内漁業関係といたしましては、生産増強の措置として、どういうふうにしたらいいかということを大日本水産としては考えております。これに対しては、どうしてもやはり今、岡さんからも懇々とお話がございましたように、漁業法の改正をやっていただかなければならぬ。これはもうどなたでもお気づきのようでございまして、現在の漁業法が生産増強の障害になっておる点がたくさんございます。ここには私はかように書いていただきたいという点は差し控えまして、一つ水産庁でも、また全漁連さんでも、私ども大日本水産会でも、かく改正していただきたいということを十分研究をいたしておりまして、案も作っておりまする次第でございます。いずれまた具体的のことにつきましては、お願いに出ると思いまするので、現在の漁業法は一つ改正するということに進めていただきたいと存じます。  漁港の修築、先ほども出ましたのでございますが、これはもうこの業界でも始終問題になる重要な問題でございます。すでに既定計画が出て、その計画に基いて漁港の修築が進められておるわけでございまするが、漁業状態が多少違ってきたり、船も大きくなったりいたしますので、漁港最初おきめになったところの規模や緊急の程度なんかも多少違ってくるということもあるんじゃないかと思います。そういうものはいち早く片づけておいて、できるだけ早く完成ができますように、積極的に一つ漁港修築予算を出していただきたいというのがお願いでございます。  それから設備の整備でございますが、先ほども、これも同じように岡さんから出ましたが、老朽漁船が、これは終戦後に大体できた船でございますので、粗製といいますか、もう老廃してしまっておる漁船が多いのでございます。これはどうしても代船を建造しなくちゃならない。それから漁業状態が変って参るにつきまして、小型漁船は大型の漁船にかえなければならぬ、さらに漁業転換が迫られておる種類がございますので、そういうものは新しき漁業に発足するために、やはり新しい船を作らなきゃならぬ。そういうことで漁船の建造資金というものが必要になるわけでございます。これに対しましては、早くかかりたいのだけれども、資金がととのわないというので作れずにおるというのが漁業者の現状でございます。どうか必要な資金については、財政金融の措置でもってこの計画を遂行できるようにやっていただきたい。  資材の確保、漁業生産の増強をはかりますのにつきましては、どうしても資材を確保していただかなければならぬ。まあ資材の中で特に燃油と漁網というものは絶対必要な資材でございますからして、数量を確保するということとともに、その値段も適当な、適正妥当な価格で供給できるというような措置を一つ御配慮をいただきたいと存じます。  次には、漁村を向上発展せしむるための措置といたしまして、いろいろな方法があると存じますが、それは技術的並びに経済の両面にわたって方法があるように思いまするが、大日本水産会で考えておりますものとしては、優秀な指導員を配置して漁民の直接指導に当らせるということが、その漁村の向上をはかる一つの手段じゃないかと、かように考えております。それで現在でも相当りっぱな指導員がおられるところがあるように聞いておりまするが、まだまだその数は少い。どうかうんとそれを増してもらってほしい。しかし、そうするためには大へんな経費がかかるので、これは貧弱な漁村ではどうにもならないということになりますので、この際国費でまかなうところのりっぱな指導員を必要数だけ一つ漁村へ配置していただくというような処置をとっていただくことが、大へん漁村を向上するのに役立つことではないかと考えております。  次は、資源の方の問題でございますが、これも先ほど岡さんからも懇々御意見がありましたように、内水面や浅海におけるところの魚介や藻類の増殖についてもっと積極的に国で助成をしていただきたい。それから水質が汚濁のために非常に魚介類の繁殖を阻害しておるという実態がありますが、最近では工場の汚水ばかりでなしに、農薬のために内水面の魚介が非常に減っておるというふうに聞いております。そのためにも積極的な一つ施策をとっていただきたい。  次は、資源調査研究するためにもつとたくさんの国費を一つ惜しまず出していただいて、地方にあるところのこの種の機関と相連携して、私どもの念願するところは、漁業行政を左右するくらいの権威ある結論がこの機関から出てくる、こういうところまでこの調査研究機関を強化していただきたいと存ずるのでございます。  以上が国内対策の一般でございますが、その他の雑件といたしまして、税の問題について二、三お願い申し上げたい。これは燃油の輸入税を廃止していただきたい。これは関税廃止の関係についてたびたび先生方にもお願いして参りまして、最近の関係は、御承知通り漁業用の重油に対しては税のかからないように行政措置をすると、こういうことになっておりますわけでございますが、行政措置の方法についてははなはだ不安でなりませんので、実際面といたしまして、この漁業に使うところの油と申しますか、それに税がかかりますることは、税を払ったところの油を使った魚として高く売れるという筋合いのもので決してございませんので、結局関税だけはそのまま生産者の方で単独負担と、こういってその関税をよその、たとえば機帆船のような状態のように運賃にかけるということができるものは、多少なりその点で埋め合せがつきまするが、漁業は絶対にその道が立ちませんから、まるまると関税は生産者の負担になるわけでございます。この点ははっきりと一つ漁業用の油に対しては税を課さないのだという点を強くはっきりさしておいていただきたいと存じます。それから漁船漁網の耐用年数の短縮の件でございまするが、これはいろいろ先生方の御配慮によりまして、先年まで、この三月まででしたか、鋼船——鉄の船に対しては十五年のものが十二年に短縮され、それから木造船に対しては九年を六年に短縮していただいておったのでございますが、これが三月でなくなってしまったので、大へんに御心配下さいまして、先生方の御配慮によりまして、新船に対する特別の措置として御配慮を得ましたことを厚くお礼を申し上げます。これは新造船に対する御配慮はいただけることになるのであります。実際のすべての漁船は、やはりこの初めの十五年と九年で処理せられるわけでございまするので、重ねてその点も一つ、どういうふうに扱っていただけるかということにつきましても、それぞれみな希望もあるようでございまするが、お願いいたしたいと思いますから、よろしく一つ御配慮願いたいと存じます。なお網の方の問題についても、ことに化学繊維の網に対しましての耐用年数は、かなり大蔵省では長く見ていられるようでございます。この点につきましては、目下いろいろとお願いは申し上げておりまするが、まだ片づいておりません。いずれまた先生方に具体的にお世話を願わなければならぬようになるかとも存じますが、よろしく一つお願い申し上げます。  次は漁業の安定資金制度を創設してほしいということなのでありますが、御承知通り漁業は非常に大漁年と不漁年とございますので、これが大漁年に対してはかなりたくさんの税金がかけられ、不漁年にはまったくもってその穴を埋めることができない、こういうことになりますので、税の徴収の方法でありますとか、あるいは漁業の安定資金の制度といったような行き方によりまして、大漁年にはある程度漁獲の一部を一つ棚上げする、こういうことをお認め願いたい。棚上げした漁獲物は不漁の年にこれを引きおろす、そうして、バランスをとるのだ、こういう制度が制度化されますれば、大へん漁業は安定するということに考えております。従いまして、それじゃ棚上げする資金はどうなるかというと、これは政府のお指図の機関に積み立てするということになると思います。従いまして、また不漁年にこれを引下げてバランスをとろうとする場合においても、政府の御承認を得て引き下げるということになると思います。それだけ漁獲高がまず減ったような形になりまするような結果になるわけであります。ちょうど定置網のような場合にはっきりいたしますことは、魚の処理ができない場合においては、ブリなり、サワラなりの魚をそのまま袋の中に入れて、次の運搬船がくるまで三日でも四日でも浜へ引き揚げて持ってきておりますが、そこで次の処理船が来た時分にその袋から出して魚を揚げておる、こういったような格好になるわけであります。ことしうんと大漁がありました場合においては、その大漁の魚そのものをことしの漁獲に入れないで、そうして不漁年の漁獲に振り向けてやる、こういうような制度が認められると大へん漁業は安定する、こういう考え方がございますが、どうぞよろしく御配慮願いたいと思います。  次に、水産金融機関、先にも出ました問題でございますが、これはどうしてもやはりいろいろ水産のためにお世話下さっておるところの特殊機関もございますが、やはり水産とともに栄える、水産とともに倒れるくらいの覚悟の専門の水産金融機関があってしかるべきじゃないか、かように念願いたしております。  次は、輸出振興のための施策でございますが、輸出振興法によっていろいろの制度を作り得るようになっておりまするが、いつも悩んでおりますところの問題は資金の裏付がない、こういう点につきまして生産者も輸出業者もともに悩んでおるわけであります。輸出振興のためにおいては、どうしてもこの金融の裏付がないとできませんので、この資金は国でお世話を下さるというところへ一つ御配慮願いたいと思います。  流通消費面の改善も先ほど岡さんからもお話が出ましたように、中央卸売市場と申しますか、魚市場の問題は再検討されなければならないということになりますので、これもいろいろ今御意見が出た通りでございます。私どもの万においても、かく改善すべきじゃないかということを目下委員会を組織いたしまして研究いたしております。いずれ成案を得まして先生方の方へ御配慮願うようになると存じますので、よろしくお願いを申し上げます。  鉄道運賃が高い。これはどうしても下げてもらわなければならぬということは、先ほども岡さんからお話が出たのと同様でございます。鉄道運賃の低減と冷蔵貨車が足りませんので、普通貨車で送らなければならぬような格好になっておりますので、国鉄に一つ冷蔵貨車をうんと増していただくようにお世話願いたい。この消費面をよくいたしますについては、どうしても地方と申しますか、小さいところの町村あるいは農村だとか、山村だとかいうところに魚をうんと供給するような道を立てていただかなければならぬのじゃないか。そのためには一つ小型の冷蔵庫を、こういう小町村、それから農村や山村に普及する、このためには助成をしていく、国庫の助成金によって普及する。大消費のあるところには自然営業関係から冷蔵庫というものができて参りますけれども、そういう小さい消費のところにはいろいろできにくいのでございますので、これを一つぜひ助成していただきたい。  次は、今も出ました水産省の設置と常任水産委員会の復活という問題でございますが、これはもう申し上げるまでもなく、皆さん御理解を得ていただいておりますことでございますので、どうぞ実現しますように御配慮願いたい。  次に、水産庁漁船の船員を管理するところの、担当するところの主管課とでも言ったようなものを一つ設けていただきたい。その理由といたしましては、現在この運輸省が管理いたしておりますところの船員の数が約二十一万人なんだそうでございます。その二十一万人の船員中に八万人漁船船員がございます。これは三十トン以上の船員だけで八万人の漁船船員でございます。これは運輸省の船員局でもってむろん管理をしておられるわけでございますが、漁船の船員は漁船としてのまた立場もありまするし、いろいろな面において都合の悪い点が多いものでございますから、水産庁漁船船員を直接管理するところの一課が設けられて、そうして所要の資料なり何なりをお集め願っておいて、そうして漁船船員の普通船員と違って困っているところの問題につきまして御配慮にあずかりたい、かように考えます。  以上、私のはなはだ粗雑なものでございますけれども、問題をお耳に入れるというような程度にすぎないのでございますが、これらも逐一解説と言いますか、御説明いたしまして、御納得の行くところまで御説明申し上げなければならぬと存じますが、時間が大へん少いと伺っておりまして、三十分でやるようにというお指図でございましたので、そのつもりで用意して参りませんので、あしからず御了承願いたいと思います。どうか御配慮願いたいと思います。
  34. 江田三郎

    委員長江田三郎君) 御苦労様でした。なお予定としましては、二時四十分から試験所の施設に行くことになっておりまして、時間がちょっと違って参りましたが、そういう点をお含みの上御質問がありましたらどうぞ。あるいはどうせ今回で終りでございませんので、今後私たちの方も問題を十分研究いたしまして、また必要に応じまして、はなはだ御迷惑かとも存じますが、参考人の方にまた御足労を願う、こういうことにいたしまして、一応この程度にして視察の方へ参ったらと思いますが、よろしゅうございますか。  〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  35. 江田三郎

    委員長江田三郎君) それではさようにいたします。  どうもお忙しいところ御苦労様でございました。  それでは本日の委員会はこれで散会いたします。    午後二時五十一分散会