○
参考人(岡尊信君) 私はただいま
委員長より御紹介願いました全漁連の専務の岡であります。お手元へ今日申し上げることを概要書いてありますので、
わが国水産業の
現況と
水産業振興上問題となる点、第一として
わが国水産業の
現況を申し上げるつもりであります。この点はすでに
水産庁からもお話があったと思いますので概略だけを申し上げることにいたします。それから第二は
水産業振興上問題となる点、第三が
水産業に関する法律の改廃と制定を急務としておるものをここへあげてあるのであります。二と三とはだいぶ重複する点もありまするので、その点は御了承を願いたいと思います。
第一は、
水産業の
現況でありまするが、
漁業のセンサス、これは
水産庁の
調査によるものでありまして、正確なものと私ども信じております。このセンサスによりますると、
わが国の
水産業の
現況はその
生産構造の面から見れば、
生産力の乏しい
漁家層を基盤に、独占的
資本漁業を頂点とする。ピラミッド型になっておるのであります。さらに第一次のセンサス、これは二十四年でありますが、センサスから第二次のセンサス、二十九年までの五カ年間の変遷の跡を見ますれば、
漁家層の激減が、その他
経営体の漸増に対応しているという特徴的事実があるのであります。これはあとで表によって御
説明申し上げます。しかも全体としての
漁獲高は大幅に四億五千万貫増大しておるにもかかわらず、
漁家層の
漁獲がごくわずかで、千五百万貫しかふえておらないのであります。それから
漁獲高と
経営件数との逆比例をますます増大せしめる結果になっておるのであります。この次にある表をごらん願いますと、二十四年三月一日現在の
漁業の
経営体の数は総計が一番左の方に書いてあります。二十六万九千二百十二という、そのうちの
漁家が二十四万六千七百三十一であります。これは一〇〇に対して九一・七%あったのであります。それが次の段の二十九年の一月一日現在におきますると、一〇〇に対して八五%というような数字になっております。ところでこの表はいわゆる
企業的個人
企業、それから会社、それから共同
経営、漁組の自営、それから
漁業組合のいわゆる
生産組合、官庁その他、こういうようなことによって
経営体というものは二十九年になると八五%が
漁家であり、その次が八・八%、会社が〇・四%、共同
経営が五・五%、自営は〇・二%、その他が〇・一%、その下はごく少いのであります。ところでこれが一番右の方のDマイナスBというものの下のFという実数を見ますと、
漁獲高の実数で見ますと、四億五千二百九十五万六千貫ふえておるうちで、大
部分の
経営体である、いわゆる八五%あるものはわずかに千五百二十三万四千貫で、三・四%というようなことになっております。しかるにその他のものを見ますると、いずれもが
企業経営体は一億八千三百七十万一千貫とか、あるいはその次の会社というようなものが一億四千九百五十六万一千貫と、こういうふうに非常にふえております。従って
漁家につきましては、こういうように大
部分を占め、幾分減っておるけれども、八五%も持っておるにもかかわらず、千五百万貫しかふえない。こういうような事実がこのセンサスから出てきておるのであります。この点をよほど考えていかなければならないじゃないか。
その次に、もとの第一のところへ戻ってきまして、このことは一
経営体平均
漁獲の増減比が、
漁家の二五・七%と、会社の八〇・五%の対比から明瞭に見られるごとく、五カ年間の推移の中においても、会社
経営において
生産性の飛躍的発展に比しまして、
漁家層におけるそれは
経営規模の零細性のために、その
生産力の発展が阻害されているので、依然として
低位生産を余儀なくされているという
現状である。よって
沿岸漁業の施策は、かかる
現状認識の上に立脚して行われることが望ましいと、こういうことはあとから出てくる一つの総論的なこととしてお考えをおいていただきたい。
その次の船舶のことはあとにしまして、その次、
第二として、
水産業振興上問題となる事項の中で、第一、
漁業振興に関する総合計画を一つ樹立してもらいたい。
日本の
漁業の全
経営体二十五万一千七百四十四の、これは二十九年度で、いわゆる八五%も占めている
漁家層の
生産額が全体の一七・六%であるのに比して、わずかに九・二%の
中小企業、これは大きな会社の
経営の〇・四%も入れて、この九・二%というものが、いわゆる六二・七%の
生産を上げている。すなわち
経営体の中の
企業的個人というようなものが、三七・五、会社が二五・二、こういうことで、六二・七%もの
生産を上げている
現状にかんがみて、政府は
漁業に関するすべての指導、
調査機関を動員して、総合的に三カ年計画なり、五カ年計画なりを樹立して、
漁業の
振興ということに
努力すべきである。二十一年度の
水産庁の予算要求などを見ましても、漁村の聚落、いわゆる部落でありますが、五千六百のうちの自営できるもの、半農半漁で、農地を幾分か持っているもの、いわゆる半農半漁的のものを二千二百六十のうち約一〇%、二百二十について聚落の
調査をするというような予算として、千五百万円ばかり出ているようでありますが、こういう細部的な、
部分的な
調査ということももちろん必要でありまするが、総合的に計画を樹立するということが、今日における重要な問題であると考えているのであります。
その次に基本法の改正に関する事項であります。これはあとに法律
関係を一括しておりまするから、そのときに申上げまするが、いわゆる
漁業法並びに
水産業法の改正が論議されているが、両法は漁村経済の安定と、
漁民生活の向上に決定的影響を持つ基本的な、基本法でありまするがゆえに、これが改正に当っては、慎重を要する。よりて目下各般の
調査及び改正
意見というものは、私どもの方としてもやっております。また
水産庁におきましても、国会におきましてもおやりになっていると思いまするが、このこと……。
その次には、
漁業生産力増強に関する事項でありまして、(一)として
漁業災害補償制度の確立、これも法律のところで詳しく申上げるつもりであります。その次が
水産資源の培養と水質汚濁の防止、これも法律事項のところへ詳しく書いて、そこで
説明を申し上げることにしたいと存じます。すなわち、
水産資源の増殖保護に関し、抜本的施策を確立するとともに、水質汚濁防止に関しては、強力な立法措置を考えなければならぬのじゃないか。(三)は、
生産及び
経営指導事業の拡充、
水産試験、あるいは研究、
調査事業の拡充強化をはかるとともに、特別指導員を設置して国庫の助成をしなければならぬ。これも三十一年度の
水産庁予算にあるようでありまするが、これについてもまた後刻申し上げたいと思います。
その次は、
漁港施設網の拡充、これもあとで法律事項でありませんからこの際に申し上げたいと思いまするが、この一番しまいの表から次の次のページ、一、二、三とある三のところをごらん願いたいと思います。三としまして
漁港の整備促進であります。全国
沿岸に散在する三千余の
漁港は、
わが国漁業の根拠地であると同時に、
漁船等
漁業財産の保護場でもあるし、また避難場でもある。
漁業振興上
漁港の整備促進は急務である。しかるに第十国会の承認を得て四百五十港を対象とする第一次
漁港整備計画が決定し、その総事業費が四百九十四億円、うち国費予定額が二百九十七億円、三カ年着手で六カ年完成の予定であったものが、二十六年度より着手したのであるが、今日までの進行
状態では、完了までに十数年を要することとなり、さらに二次計画はいつの日に見るか、その見通しもつかぬ
現状である。すみやかに予算措置を講ずるか、あるいは——これから先は私のこれは私見でありますが、いわゆる道路促進法有料道路というようなことも考えて、起債を財源として一挙に完成する、重要
漁港というものを起債を財源として、この二百億なり三百億のものを一挙に、あるいは全部できなければ、重要
漁港だけでも一挙に完成させるということは、わずかばかりの補助を振りまいておるために、毎年の災害で築いては流され、いわゆる賽の河原と同じようなことをしておったのではいけないから、一挙に完成する必要がある。そうしてその起債は将来どうするかといえば、現在国庫から
漁港に対する補助が出ております。あるいは県費の負担もあります。地元の負担もあります。そういうものを財源として十カ年間なり十五カ年間の間に完成後もこういうものを出せるような法律にしてもらいまして、そうしてそれを償還財源に充てるということになれば、一挙に私は
漁港というものは、重要
漁港というものができるのじゃないか。重要道路についてはこれと同じようなことを考えております。あるいは有料道路にするなり何なりして、こういうようなことを考えるべきである。これは私、法律化するためにこの償還年次表なり、二十カ年くらいのいろいろな表をこしらえてみますと、政府としても少しも予算をふやさないでもいい、県としても負担を急激にふやさないでもよろしい、地元としても急激に大きな金を出さないでもよろしい、こういうようなことによって一挙に
漁港というものが、重要
漁港だけでもせめてこういうような方法を考えるべきではないか、こういうようなことを考えております。
それからまた元へ戻りまして、
漁港施設の次にらっこ・おっとせい海上猟獲の実施、これも法律事項のところで詳しく申し上げます。
それから公海における安全
操業確保と被害
漁民、
漁船の救済措置これもあとで申し上げます。
それから
漁業生産に支障ある爆撃演習の即時撤廃。
それからその次に
水産気象の観測及び通報の拡充強化、これは毎年問題になっておることでありまするが、
生産気象というものが、完全なものを即時即刻出すということによって、
日本の今日の
漁船の遭難というものを救済することができるのであります。今
世界の各国が非常に
発達しておりまして、たとえば方眼式模写電送機、すなわち方眼式写真電送機というようなものによりまして、そうして天気図、気象図というようなものを各
漁船にラジオで放送するばかりでなしに、気象図までも備えた明細なものを電送するのであります。今日、
日本におきましても各銀行間で帳簿の帳じりを合せるためにやるとか、あるいはいろいろの為替電送とかいうように、すべて写真電報でやるというように今日なっておるのであります。こういうようなことを考えるべきではないか。現在国におきましても、また全漁連におきましても、次にくる中央
市場の問題もありますが、魚価あるいは
漁獲高というようなものを刻々と方眼式の写真電送機によりまして、各漁連なり重要
漁港に知らしてやる、きょうの東京の何々の魚の相場が幾ら、最低が幾ら、最高が幾ら、中値が幾らである、本日の
日本国中の魚の
生産は、どこの港で幾ら、どこの港で幾ら、
生産量が即刻全国のものが知れるようにすることによって、
価格の安定、取引の安全というものができてくるというようなことで、全漁連を
中心にしまして主要
漁港にこの方眼式の機械を置いて、そうして電送したいというようなことも考えておりまするが、この気象観測というものはそれらと一緒にやりますれば、りっぱな仕事になるのじゃないか、こういうように考えております。
四は
水産物価格安定並びに流通秩序確立に関する事項、これもあとから出てきますから申し上げたいと思います。
中央
卸売市場法の改正、これも現行
市場法は大正十二年でありますから、三十年を経過しておりまして、現在においてはもはや当初の目的に沿い得ないばかりでなしに、現制度下においては出荷者、特に
生産者は最も不利の立場に置かれておるので、抜本的改正が必要ではないか。
それから共同販売機構の確立、これも同様のことであります。
それから
水産物輸送の
合理化並びに貨物運賃の適正化であります。これは毎年問題になることでありまするが、何といったって鉄道運賃が高いのでありますが、今年は幸いにして
サンマは豊漁であります。豊漁のために
サンマの値段は一貫目二十円であります。運賃が大体十五円から十七円かかる。その他の諸手数料を入れまして、
市場へ行って四十円ぐらいは諸手数料がかかります。それが東京
市場で売られておるものが大体において七十円、われわれ
消費者の口に入るときには、それがもう倍になって百五十円ぐらいになっております。今日、海岸では
サンマは二十円で出荷されておる、こういう
現状であります。二十円の魚を食うのに、十五円ないし十七円の運賃がかかるということでは、
水産物はどうにもならぬということで、この問題は十分検討しなければならぬ問題じゃないか。
それから
製氷冷凍使用電力の特別割当並びに特別料金の設定、こういうようなこと、それから
製氷冷凍事業に対する現行料金は
生産原価の三〇%の高率を示しておる。そうして公共的使命を持つ漁協系統のこれらの施設に対しては電力の特別割当及び特別料金を実施すること。今全漁連を
中心としまして海岸に約二百八十ぐらいの冷蔵庫を持っております。あるいは
製氷所を持っております。これは
系統機関がやらなければ、氷などにしてもトン四千円ないし六千円もするものが、公庫の融資を受けてやるとしますれば、大体氷にして千四、五百円、高くても千八百円でできるのであります。それでもなお高い。電力料が三〇%の電力料であります。しかもこれは、これに対しては税金をかけるというような問題もありまして、こういうようなことによりますと、ますます氷の値段を高くするということになる。
それから第五は、
水産物輸出振興方策の樹立、これはすでに政府のなんとしまして、農林
水産物の
輸出協会を作って、ある
程度やっております。けれども
水産については特にお考えを願いたい。一番最後のページをごらんを願いたいのであります。これは最後の法律の
説明のときに必要と思いますが、今日、農産物、林産物、畜産物、
水産物、
加工食品、油脂類、生糸、この合計をしまして、二十九年の一月から十二月までの実績が合計で二億五千九百万ドルであります。この中で、これは農林省の経済局で三カ年計画というようなもの、あるいは五カ年計画を立てた、この結果から見ますると、農林、畜産、その他で
伸びようとしても
伸びないものがたくさんあるにかかわらず、
水産物においては二十九年の一月から十二月までの実績が四千四百万ドルというものが、五年後には一億五千九百万ドル、約四倍近くまで
伸びたというのが農林
水産物のうちの
水産物だけであります。このほかに
加工食品のうち、あるいは油脂というものは、これは鯨油と、それから
沿岸漁業からとれますビタミンというようなものでありまするから、これも
水産物であります。こういうようなものを加えて参りますると、
日本の外貨獲得のために五カ年後を考えて見ますると、こういうような数字、約一億五千九百万ドル、これがその他を入れますると、二億ドル以上のものが
水産関係でとれる。これは幾らでも発展させようとすれば発展させる可能性のある私は
産業と考えます。従ってこういう点に大きな重点をおいて政府は施策すべきものである、こういうように考えておるのであります。これは全漁連が作った計画ではなくて農林省の経済局がこしらえた五カ年後の計画であります。こういうようなことから考えても、この
水産に対してやって行かなければならないのじゃないか、こういうように考えております。
それからその次は老朽小型
漁船の代
船建造及び近代漁具への
転換促進に関する事項、老朽小型
漁船の代
船建造を制度的に促進すること、収益性に乏しい
沿岸漁業の実績にかんがみて、これが代
船建造については国庫助成による資金措置を講ずること、二が
漁船機関及び付属設備
合理化の
普及助成策の樹立、機関の換装、あるいはこういうものとその他合成繊維の問題もあります。これは一番
最初の二枚目の表をごらんを願うと出ておりまするが、今日
漁船の総数は
昭和二十三年の十二月に約四十一万一千隻、それでトン数にいたしまして、約百七万三千トンというものが、二十八年の十二月三十一日になりますると、この隻数においては四十万八千九百二十六隻、そうしてトン数においては百十九万一千トン、こういうようなことになっております。ところで、このうちで非常に年令がもう、八年なり十年を
木造船の寿命といたしますると、こういうものがほとんど船令がきておる、そういうような際に、この普通の場合ではできません大型船を作る、一万トンなり、何万トン、あるいは数千トンの船を作るときには開発銀行というものもあります。あるいはその他の
転換漁業については公庫からの金があります。
カツオ、
マグロとか、あるいは底引から
転換するというようなときについては、そういうようなものもありまするが、二十トン未満というものに対する政府資金の融通というものが今日欠けておる。こういうようなことから見ても、この問題を非常に重大視して行かなければならぬじゃないか、こういうように考えております。
それからまた元へ戻りまして、
漁業金融の事項、これもあとから出てきまするから、あとで詳しく申し上げます。それから
漁業信用基金制度の整備拡充、それも法律事項のとき。それから
水産税制に関する事項、これも
漁民の課税あるいは協同組合の課税というものに相当不合理な点があることをあとから詳しく申し上げます。
そこで、その次は
水産振興上の改廃または制定を必要とする法律ということを少し申し上げて見たいと思います。
第一に
漁業法、二十四年の法律であります。その次に
漁業法施行法、これも二十四年の法律であります。右二法律は
漁業の基本法であって、
連合軍最高司令部の勧告、指示によってできた法律案を法律としたものでありまして、これは根本的に改正する必要があります。今どんな改正を考えるかというと、基本方針としては、
沿岸漁業の持つウェートが急速に低下し……、これは
最初私が申した
通りであります。急速に低下し、しかも低下せる
沿岸漁業に圧倒的多数の
漁民が依存しております。これは引揚者やいろいろ入り込んできた方もありまするが、
戦前私の推定では百万人と思っていたものが、現在五百十万人にもなるというような、非常に低下しておる
沿岸漁業のうちへこういうように殺到してきておる。ことに
漁業権の
生産における比重が極度に低下した今日、
漁業権
漁場は特定の個人または会社的
資本に独占されるべきではなくて、従って
沿岸の
漁業権
漁場を制度的に制定して、この
漁場は上記の
漁民の
生産の場所として確保しなければならない。かかる見地から、圧倒的多数
漁民が組織する団体にこそ
漁業権の配分をなさるべきである。しかも
漁民による
漁場の自主的な総合利用のためには、共同
漁業権はもとより、その他の
漁業権についても、その享有を認めなければならない。しかも配分された
漁業権は、その団体の内部において最も民主的な方法によって行使運営されなければならない。これは
水産庁の今日考えていることとは少し違うかもしれませんが、これは水協法の改正というものと比べて検討してみますると、この措置は必ずしも悪いとは言えないのであります。その次は、
漁業権
漁場は
沿岸漁民の
生産の場として確保するが、さらに沖合
漁場に
進出して生活の道を開拓する必要がありますので、
漁業権のいわゆる
許可漁業についても、業種別、隻数別制限の許可方式を緩和して、
沿岸漁民団体の
進出を制度的に可能ならしむるように優遇措置を講ずる必要がある。その次は
漁業調整
委員会、これには非常に議論があります。廃止すべし、いや存置しなければならぬという
意見といろいろあります。けれども今までの結果から見ると、弊害も十分あります。調整
委員会があったために、一つの定置
漁業をとるために財産をなくなしてしまったというようなところもある。これは悪い方の例、いい方の例から言えば、これは非常に貢献しているところもありまするので、私どもの現在の考えとしては、調整
委員会は原則的には存置して、地域構成等を再検討し、
漁業調整については中央地方を一貫せる方針を樹立するとともに、指示権並びにその内容等についても再検討をする。この場合漁協は末端における調整機構として活用する。この場合にうっかりすると、大蔵省が予算措置でだんだん削ってきまして、おしまいにはないようなものになって、法律できめてありましても運営ができないようなことをされるおそれもありますので、この点は十分検討して行かなければならぬのじゃないか。
その次は
水産業協合組合法、これは
昭和二十三年の法律であります。この法律も前二法律と同様であります。
連合軍最高司令部が相当干渉して作り上げた法律でありますので、この
機会に大いに改正をしなければならぬ。改正の
要点としては、漁協はややもすると最近
漁業協同組合をいろいろの名目で分散しようとする
考え方があるのであります。たとえば
水産庁等におきましても、
漁業権管理は別に団体を作ったらどうかというような
意見を言う者があります。あるいはまたその他の経済事業においても、分離したらどうか、指導事業についてはまた別にこしらえたらどうかというように、いろいろ分散させようとする
考え方があるのでありまして、これはもし漁村の
漁業組合というもの、漁村というものと
漁業者の生活というものを一緒に考えて、これはどうしても、
むしろ私どもは分散よりも一緒にすることが必要じゃないか、すなわち
漁業権管理、経済事業、
漁業自営、指導事業、福利厚生共済事業というような、あらゆるものを行える団体が末端の団体でなければならぬではないか、こういうように考えております。その次、組合員の数というものが法律上今日非常に問題になっております。これは前の法律制定当時、作るのに困りました結果、現行法では十八条で「
漁業を営み又はこれに従事する日数が一年を通じて三十日から九十日までの間で定款で定めた日数をこえる
漁民とする。」というようになっておりますけれども、私はこれはもう少し地方々々によっても違いまするが、
漁業収入がその者の生活の大
部分の収入であるものにつき、都道府県単位に設けた
委員会である
程度きめろと、こういうような少しゆとりをとっておいて、そうしてきめていったらどうか。なぜならば、これには農業と
漁業との
関係が非常にあります。半農半漁というのが先ほど申しました
通り相当数のものがあります。農業から申しますれば、
漁業に行くことによって農業が成り立つ。あるいは
漁業は畑へ出ろ、山へ登れといってもなかなかその分はできませんが、これは農業政策と同時に多く問題として考えるべき問題じゃないか。従ってこの規則はこういうようになっておっても、土地の
事情によってやはりやって行かなければならぬのじゃないか、こういうように考えております。設立に関して地区をどうするか、これは前の法律では二十人発起人ができさえすれば幾つでもできる。従来でさえも狭くて人数の少なかった
漁業組合が、現在の法律では一つの部落に四つも五つも
漁業組合があるというような事実もあります。従って地区をどうするか。すでに
日本におきましては明治維新に町村合併というものをし、今度また非常に大きな決心を持って町村の合併ということをやったという事実から考えてみても、こういう問題を取り上げて漁村というものの、果して今日のような二十人あれば組合ができる、
漁業権についてもちょっと手が出せるというようなことをしておいてよろしいか、これは私はこの際よほど考えて行かなければならぬのじゃないか。加入の問題脱退の問題、従来は当然加入、いわゆる強制加入みたいなものでありました。今日必ずしも私は強制加入を主張するものではありませんが、少くとも
漁業権管理をする団体となる以上は、ある
程度のこの加入に対しても、脱退に対しても制限を加えてやるべきではないか。最低組合員数、先ほどの二十人というものも、二十人では
漁業組合を作っても何もできません。ただ組合を作ったというだけであるから、これらについてもある
程度規制を加えて、出資等につきましても昔は一口五十円であります。五十円を百倍にしても五千円であります。もし物価その他からいって三百倍とするならば一万五千円であります。こういうようなことも十分考慮においてやるべきものじゃないか。こういうように再検討をすべきものであるということを考えます。それから
漁業権管理
委員会の設置問題とその運営とか、法規となった場合の実行組合をどうするとか、
漁業権運営の問題、理事の制限の問題というような問題がたくさんありまするが、これなども十分加味して、これは一つの法律の改正についての
意見を申し述べるだけでも二時間も三時間も要りまするが、ここでは大綱だけを考えて、詳細なことはまた何らか
機会がありますれば申し上げたい。
その次は中央
卸売市場であります。これは目下参議院に議員立法で御研究になっておると思いますが、長い間の問題であります。この法律は大正十二年制定以来そのままで、
終戦後
連合軍最高司令部の勧告によって、荷受人、仲買人等無制限自由のもとにおかれたため、荷受会社の
経営は成り立たず、
生産者及び各方面に被害を与え、非常に大きな損害を加えております。こういうような事例もある。仲買人が権利化され、今日東京
都市場だけでも千八百人仲買人がいる。仲買人の権利が百何十万円、仕事はしないで貸しておるだけでも月々二万五千円ぐらいの権利が取れる、こういう現在の
状況でありまして、公正なる取引は困難になっておる
現状で、各方面で改正の要望がある。目下参議院
農林水産委員会におきましても一部改正の法案審議中であり、政府におきましても、先に中央
卸売市場対策協議会を作り検討中でありますが、この際抜本的に改正する必要がある。改正に対しての要望は左記事項、細目については別に申し上げますが、大体申し上げますると、生鮮食料品の
生産者、
消費者双方の利益をも考慮して円滑に流通をはかるためにするということを根本精神にして行かなければならない。
市場法の性格は
市場開設と取引に関する規定を内容として、両方内容として
価格の適正化とか、取引の公正化等における責任と職域の分野を明瞭にする。すなわち
市場開設については、
市場というものを、私の考えでは指定
卸売市場、これは先般参議院においても相当研究した問題でありますが、いわゆる六
大都市等重要地区の
卸売市場、それから普通
卸売市場、六
大都市以外の都道府県または主要市町村の
卸売市場というようなものができる。そして指定
卸売市場の開設者は国家もしくは公共団体、全く公共性を帯びたもので公共性にしてもらいたい。そうして普通
卸売市場の開設者は、これまた公共団体または民法の法人、これは法人を入れてもいいですが、今では法人というものはほとんどない。私は公共団体でいいと思う。公共団体が開設者になる場合に、
卸売市場は農林大臣、普通
卸売市場は都道府県知事の認可を必要とする。指定
卸売市場の取引
関係の規定については、卸売人無制限自由を廃し、その
都市の取引量、卸売人の
経営の採算、
市場施設の
規模等を十分に勘案の上、卸売人の適正数を決定して農林大臣が許可をする。これは今まで開設者が許可とか、業務規程でやるというために
市場がボス化されます。ボス化されるために、その実質は
消費者と
生産者に全部損害を持ってくる。どこまでも適正数をきめて農林大臣が許可権を持つ、仲買人も同様であります。農林大臣が数をきめて、農林大臣の承認を受けたものについて都道府県知事がきめる。こういうように公共性を持つ
市場の一群取引に
関係のある人というのは厳格な規定をする必要があるのではないか。それから普通
卸売市場の取引
関係の規定については都道府県の条例で定める。この法律にはただ一条か二条をおきまして、適用条文をおいて、あとは条例に譲るということになります。それから卸売人の適格条件、これは現在の法律にありますが、いわゆる法定の権利
能力、行為
能力というような条件のほかに、保証金の問題、代金決済のできるかできないかの問題、資産
状況の
調査の問題、施設の
状況、取扱い、取引
状況の
調査の問題、こうあります。それから仲買人の問題、あるいはせり人の問題、この卸売人と仲買人とせり人、この三つを十分に一つ厳格な規定を設けることが必要ではないか。それから取引高及び
価格の公表、
市場開設者は当該
市場における
水産物の毎日の売買取引高及び相場表をその日に公表する。その日のうちに公表しますれば、私どもとしては、先ほどの方眼式の模写電送機によりまして全国主要
都市に、東京
市場の値段、大阪
市場の値段を放送します。放送というのは写真放送、電送でその
価格表を放送する。そうすると、出荷する人の便益になる。現在の
状況では魚がきょうは高いなあと思うと、たとえば
マグロが八百円に売れても
生産者への仕切りは六百円と書いて出してある。なぜこんなことをするかというと、荷主に、四百円というような安く売れたときに足してやらないと荷がさばかれない。そのためにとっておくというわけです。六百円に売れたときには六百五十円か、七百円で仕切る。何とか荷を取る政策としてやる。これは公正な取引とは私たち言えないと思う。こういうような事実は農産物にもあります。青果類にもあります。こういうようなことから考えて、これは毎日出すべきものである、こういうわけであります。その次は、農林大臣は重要事項の決定に関し運営
委員会を設け、諮問する。その他指定
卸売市場開設に関し、法律に規定する重要事項としては、
市場の地区の指定、類似
市場の規制、
市場の施設の整備強化、それから指導、監督、罰則、こういうものをおいてやっております。普通
卸売市場については都道府県の条例に譲るようにしてあります。
その次、順序が少し狂いますが、ラッコ、オットセイの猟獲取締法の問題であります。これは明治四十五年の法律第二十一号でできたものであります。これは
日本が一九一一年、すなわち明治四十四年に日、英、米、露四ヵ国のラッコ、オットセイの保護
条約に加盟した。その翌年、明治四十五年四月、この法律を制定して、海上猟獲をしてはならぬ、全面的に禁止したが、その当時はどのくらいいたかというと、この四国の
関係の領海に住んでおるラッコ、オットセイというものはわずかに十四万頭しかなかったのです。それが今日では、
昭和十五年になりますと二百二十万頭になった。そうして
わが国の近海に現われて、有用漁族の脅威となったので、同年
日本政府は本
条約の廃棄を通告しまして、
条約失効になって、そうして
昭和十七年五月、農林省では省令の施行令によりまして、農林大臣の許可を得まして、海上猟獲をなすことができることとなり、
昭和十七年より
昭和二十年までの間に六十隻の範囲で
操業して、七千頭を猟獲しておる。
終戦後、
連合軍から、この猟獲の中止を命じられて、司令部の勧告によって同法を改正した。参議院の
水産委員会におきましても、これは非常に大きな問題になったのでありまするが、当時ある
程度修正をして、これは通ったのでありますが、今日考えてみますると、すでに四百万頭もおり、もうラッコ、オットセイの猟獲を禁止するという
条約の目的も達せられておるし、そういう必要がないので、今日考えてみますれば、どうしてもこの改正はやらなきやならぬ。ただし、これに対して吉田・ダレス交渉の交換文書があるから、これはちょっとできないと言いますが、これは私少し疑義があります。
最初の吉田・ダレスの交換文書というものはこういうものじゃなかった。こういうものじゃなかったけれども、あわてて、あとから
日本政府声明として、これを出したのであります。でありますから、この吉田・ダレスの交換文書というものは、必ずしも私は適正なものではないと思っております。それで目下
アメリカと
日本でこのオットセイをつかまえて、腹の中の食った魚を調べてみて、有用な漁物を食っておるか、いないかということを調べて、
調査ののちにこれをやるというようなことを言っておりますが、御
承知の
通り、オットセイは普通の魚を食うばかりではないのです。
サケや
マスなり、その他のものがありましても、頭をくわえて、そうして振り回して殺して海に捨てるものがたくさんある。そのうちで自分の好きなものは少しとって、あとは大体において、殺して海に捨ててしまうというような数を計算してみたら非常に大きなものになります。ゆえに私はこの問題は十分考えて行かにゃならぬ問題じゃないか、こういうように考えております。
その次は、水質汚濁防止に関する法律、これは長い間、第一国会以来やっておりまするが、まだできません。ヨーロッパにおきましても、この問題は
欧州あたりは百五十年間もかかった。まあかかったのでありますが、りっぱな法律ができております。
アメリカにおいてもできております。これはどういうことで今まで参議院でできなかったか、これは……。その前にこの鉱工業、下水、その他により水質が汚濁され、人体はもちろん農
水産業等の被害は甚大であるので、従来経済安定本部の
資源調査会でも、これは二十六年と思っておりますが、内閣総理大臣に対して勧告をしております。いわゆる、従来厚生省所管として研究が進められているが法律制定に至らず、しこうして、
水産関係においても工鉱業の水質汚濁による内水面
漁業、
沿岸漁業に対する被害はきわめて甚大で、
生産減少の重大な原因となっている。
水産行政の立場から水質汚濁防止は、
漁業法または
水産資源保護法施行に伴う命令等で、やればやれないことはないのでありますが、実際問題としては、鉱工業者または
日本に大きな負担をかける
関係もあり、政府としては通産省なり、運輸省、運輸省との問題はタンカーが海でタンクを洗うのであります。これは
条約がありまして、五十マイル以内ではやってはいかぬというのでありますが、今、
日本はたしか加盟していないと思いますが、こういうような問題、国会においては、通産
委員会等から相当反対もあったように思いますが、しかしながら、これは今までの法律制定の
考え方が違っておった。それは被害者が加害者を訴えるような法律を考えておったから、これはいけないのでありまして、今日
外国で作っておる例を見ますると、被害者は第一が農業者であります。第一が農業者、その次が
水産業者であります。その次は鉱工業者も同様被害者であります。農業者の何は経済安定本部の勧告の中にも書いておりまするし、
外国の例にもありますが、下水、あるいは
産業の廃水を過度に公共水域に放流すれば水中の溶存酸素の不足と害毒物質の混入によって灌漑用水は腐敗し、そのために有機肥料の酸化を妨げ、かえってその還元までに至り肥料の効果をしない、また作物も枯らしめるというような生物を死滅せしめることによって農産物をはなはだしく減産させる、こういうことが
外国におきましても非常な大きな問題になって取り上げられて、農業者からも強い要望が出ているのであります。また
水産業におきましては御
承知の
通り、この悪水の流れるために稚員、稚魚はもちろんのこと、みな失なわれております。今日
部分的にまあ農業の方はどうとか何とか言っておりますが、そういう問題じゃないのです。たとえば澱粉工業とか、いろいろそういうようなものによるあの繊維質を流すことによって、海底が全部いわゆるおはぐろ泥と称しまして、もうひどいものになります。大牟田あたりの石炭の
関係の川に行ってみますと、川の水というものは黒インキみたような色をして流れております。これは田畑に入ってもこれが灌漑用水になったら非常な被害があるでしょう。これが流れるために、この石炭の粉が沈澱してもう何十尺という間のものがこの泥になったら、ここにいる魚類が生育しない、そこに魚が寄りつかない、また稚魚はそこに発生しない、発生しても成長しない、こういう問題になりますので、この問題は
日本の
水産業を
振興させる点からも、また農業というものを
振興させる点からいっても、私はきわめて重大である。しからば鉱工業者は加害者であって被害者ではないかと申しますと、今日の工場、たとえば澱粉の工場、あるいは醸造の工場、あるいはこの化学繊維の問題、あるいはまああらゆる薬品の問題は、製鉄もそうであります。非常に清水、きれいな水を必要とするのが工業であります。従ってもし川の上流に悪い汚物を流す工場ができたために、その下流には、こういうような重大な工場というものはできないのであります。これを浄化しなければできない。そこで私はここで考えておりますのは、この法律をただ普通の法律ではいけない。今日私ども
水産政治連盟というものがありまして、これはこれだけではいけないから、経団連にも一つ呼びかけまして、経団連の石川さんに頼みまして、あとから植村副理事長も招いて、鉱工業の
関係者も見えて、
水産関係者も入れて、一つこの問題を取り上げて考えてみようじゃないかというので、目下研究をしているようなわけであります。そこで私はこの法律の骨子をどういうふうにしたらいいか。これは元来が
外国なぞの例もむろんそうであります。この経済安定本部から内閣総理大臣に勧告した文書もそうでありますが、国または都道府県市町村等、公共団体が主体となって水質汚濁防止施設をやって行かなければいかぬ。一体工場の誘致というものはだれがやるか、都道府県または市町村が税収入の
増加や
都市の繁栄策等を目標として行なっておるのであります。もうやっておる。従って上水道、下水道、汚物の処理と同様に、鉱山工場等の廃水の処理を一つ公共団体の当然の仕事としてやるべきじゃないか、財源は国庫、公共団体、
関係鉱工業者等の負担によってやる、今までできなかったことは黒字の出る工場はりっぱにやっております。たとえば滋賀県の石山でありまするが、あすこの東洋レーヨンの工場を見ますると、あれが百億円の工場施設をする際に、この汚濁水の浄化施設のために四億円の金を使っております。そうして毎年数千万円の経常費を使って、その水を浄化して、毎日川へ流れる水を検査して、そうして有毒でないということを確かめなければその水を流しておりません。大きなため池を作っておりまして流しておらない。こういうふうにすることによって、これは問題は解決はつく。ところが小さい工場で赤字の工場にこういうことを要求してもできません。従ってあの辺へ行ってこういうことを言いましたならば、
日本の鉱工業
発達のためには
水産業ぐらいは犠牲にしてもいいじゃないかというような暴言すら言っている。こういうようなことから考えてみても、どうしても鉱工業者の困る点をも十分考慮に入れて、負担ができるだけの負担金、起債等によってやりますれば、わずかでありまするから、これは公共団体の事業として下水道、上水道の汚物を整理するのと同じようにやって行けば、これはできるのじゃないか。そうしてどういうことをやるかと申しますると、これは
昭和二十六年三月五日に経済安定本部
資源調査会長、これは当時は周東さんでありましたが、ここから経済安定本部総裁に答申せられた答申書に基いて、内閣総理大臣の所管のもとに
委員会を置いて、
委員会は屎尿その他の汚物または
産業廃水などにより公共水が汚濁され、農業、
水産業、鉱工業が不当な損害をこうむるのを防ぐために、
関係者に対し適当な行政機関を通じて必要な命令をする、こういうような命令をする。それから水質
調査事務局を置いて中央
委員会の事務を処理する。それから国立の水質科学研究所を前記の
委員会の所属機関として設置し、水質汚濁防止に関する一切の技術的
調査をする。これはなぜこういうことをするかといいますると、一つの川に上流から下までの間にいろいろな工場があります。硫酸を使う系統の会社もあれば、あるいはソーダを使う会社もあれば、いろいろありまして、いや、おれの水を流したために悪水が中和してよくなっているのだ、おれには
むしろお礼を言ってもらわなければならないという者が出てくる。ですから、その水を上から下まで検査をする、
調査をする、実験をするというようなことをやる機関、あるいはまた各府県にこの騒動というものがしょっちゅうあります、最近富山県の騒擾事件もあります。農民が何百人か工場へあばれ込んだ、これは絶え間がないのでありますので、各府県に水質汚濁防止
委員会を設けまして、艦工業者、農
水産業者、
関係行政官庁、あるいは学識経験者を
委員として紛争を処理すると同時に、工場を設置する前に、昔は工場法というものがありまして許可をするのでありますから、そのときある
程度のことは言えましたが、今それは言えない、こういうようなことから考えても、こういう
委員会の了解を得て工場を建てるようにして行ったらいいのじゃないか、こういうことを考えております。
その次には
漁業の災害補償に関する法律、これは農業におきましては、米麦等主食を初めとして
各種の農産物に対して災害補償制度があり、これに対して国庫も相当の、数十億円の負担をしておるのにかかわらず、
漁業については
漁船の一部に対して損害補償制度があるのみであって、
生産物に対する損害補償制度がない。もっとも
漁業は農業と異り、制度として確立することには多年にわたる
各種の
資料も必要であるし、従って政府においても二十九年度からわずかに
調査しているのでありますが、この問題は
一般の営利保険をやるようなつもりでいろいろのデーターを集めて考えておったならば、私は永久にできないのではないかとも思います。これははなはだ乱暴な言葉かもしれませんが、たとえばまあ私はいろいろ保険業者の人の話を聞いて見たりすると、これは今そういうものでなしに、いわゆる災害を救済するということを目標にしていわゆるそれによって
水産業を助成するという
考え方で補償法を作って行けばいいのじゃないか、むろんデーターというものもある
程度必要でありましょうが、精密なデーターでこれは保険として成り立っか、成り立たぬかということを考えておったのでは、これはできない、こういうようなことを考えているのであります。
時間もだいぶん何のようでありますから簡単に申し上げますが、その次は、現行諸税法中
水産関係において改正すべき点がたくさんあります。法人税の問題、事業税の問題、あるいはその他ここにずっと列挙してあります。こまかい点まで列挙してありますので、これをごらんを願いたいと思います。税金なども非常に考えて行かなければならぬ問題があります。
最後に一つ、一番最後の数枚めくったところに
水産省設置法に関する法律というものがありますが、これは他にも何でありますが、この参議院でかって取り上げたところの農業と
水産業は
日本の食糧
生産の一大
産業である。戦後における
日本の
漁業は申すまでもなく
戦前と著しく異った様相を呈している、ことに公海における海洋
漁業はひんぱんに国際紛争を惹起しているが、将来ますますその繁きを加えんとしている、平和的な
産業外交ないし経済折衝を推進するために、政府に強力な
水産行政機構をこしらえる必要がある。今日では閣議に
水産の専門の大臣というものがいない。
水産長官は次官会議へも
出席できないというような、国内においてはこういうことである。しかるにこの
貿易のことについては、先ほども申した
通り、現在も一億ドル、五年後には二億ドル以上のものが
水産に動いて行かなければならないのじゃないか、その三は、
漁業の実態が複雑多岐である、四は公海における捕鯨、
遠洋漁業というようなものは、先進国とその技術及び施設において鋭意競争して、国際場裏で競争して行かなければならぬのではないか、そのほかこれに対しましては、
外国におきましては、あるいはカナダ、ソ連、英国、デンマーク、ニュージーランドというところでは、
漁業省、農林
水産省というものができている。こういうようなことを考えて、あるいは法律の整理、こういうような問題、この一番終いにあります
昭和二十六年三月に
漁民七十万人の陳情に基き、参議院議員百五十九名、衆議院議員二百八十九名の賛成を得て八十四名の議員発議で提出したのでありますが、ただ、たまたま行政機構改革という問題のために一時保留になっているような形になっているのでありますが、どうしても国際場裏に立ってやるためには、国内に強力な行政機構というものが必要であるということをまあ最後に挙げまして、こまかいことを申し上げたいのでありますが、時間がないというお話でございますから、この辺で終らせていただきたいと思います。